○赤松
委員 本来労働者を保護すべき労働省がそんなばかげたあいまいな
見解ではだめだと思います。これは労働
大臣とよく話をして、もう一ぺんよく当時の現場の事情について労働省は責任を持って調査して報告して下さい。
そこで私は長官に対して申し上げたいのだが、あなたは警察の
立場からものを見ているわけでしょう。しかしわれわれとしてはあくまで労働法という法律の
立場からものを
考えているわけでありますけれ
ども、当時現場の見取図があったが、あなたはあとから第一組合のピケ隊が応援に来るということをおそれて、多数の警察官を動員したんだ、こう言っているけれ
ども、あの当時の状況は、この三川のかぎの手になった門の
ところへ警察官をどんどん大量に投入して全部遮断してしまうんです。これじゃ説得も何もあったものじゃない。炭労大会までは第一組合と第二組合ちゃんとパイプが通じておって、ある程度話し合いをしておった。向こうの組合長菊川君それから第一組合の宮川支部長双方である程度の話し合いはしておった。炭労大会以後警察が全面的にぐっと出てきて、そういう話し合いの余地が全然なくなってしまった。とにかく中へ入るといえば、無条件に警察の方は第二組合員を擁して、持っている権力を駆使して一拠に第一組合を排除して、強行就労させる、そういうような状況なんです。三友炭鉱事件の昭和三十一年十二月十一日の最高裁の判決は「組合が争議権を行使して罷業を実施中、所属組合員の一部が罷業から脱落して生産業務に従事した場合においては、組合は、かかる就業者に対し口頭又は文書による平和的説得の方法で就業中止を要求し得ることはいうまでもないが、これらの者に対して暴行、脅迫もしくは威力をもって就業を中止させることは
一般的には違法であると解すべきである。しかし、このような就業を中止させる行為が違法と認められるかどうかは正当な同盟罷業その他の争議行為が実施されるに際しては特に諸般の状況を」諸般の状況というのは十三対千五百ですが、「考慮して慎重に判断されなければならないこともいうまでもない。」それから新聞印刷事件で昭和三十三年七月三十日、大阪高裁ではどういうことを言っているかといえば、「ピケッティングにおける
実力行使としてのスクラムは、スト破りを受けとめる限度すなわち消極的、防衛的なものであるかぎり、違法とすることはできず、また身体を捕えたり、引っ張るような積極的な
実力行使であっても、使用者側のスト破りまたはピケ突破のちょう発的行為に対抗して、ピケラインを防衛するため必要な最小限度のものであるときは、違法性がないものと解すべきである。」これは大阪高裁の判決です。さらに新聞印刷事件で、大阪地裁が昭和三十三年六月十九日にやはり同じような判決をしておる。それから古河雨龍炭鉱事件、これについては、「労働組合のなす争議行為の態様なるものは、使用者の施す対抗策との折衝面に於て相対的に流動してこれに対抗せんとするものであるから、この具体的な態様を無視して、常に固定的に争議行為の手段、方法の正当性の範囲を限ろうとする
考え方は、往々労働組合の側にのみ不利益を強いる結果となり、労働組合法第一条第一項に明定する斯法の根本理念であり、且つ基本的な
目的である労使対等の
立場を失わしめ、労働組合の団結権を不当に圧迫するおそれが多分にあると云わねばならない。」さらに第二港湾司令部の横浜輸送陸上部隊事件、昭和二十八年十二月二十四日の横浜地裁の判決は、「ピケ・ラインの組合員が非組合員の就業を阻止すべく、ピケ・ラインにおいて、非組合員に対し、平和的に説得することは当然許された
権利である。しからば、この
権利を無視し、説得する余裕もおかせず、ピケ・ラインを強引に突破せんとする非組合員の行為に対し、それが正当であるからとの理由で、ただ拱手傍観するよりほかないことを組合員に
期待することは不可能であるから、かくのごとき場合、」——これは三池の場合ぴったり当てはまる。「かくのごとき場合、説得の余地を作るためにのみする組合員による或程度の妨害行為もピケ・ラインに対する現在の危難を避けるためやむことを得ざるに出た行為として許されてしかるべきである。」これが横浜地裁の判決なんです。そうするとあなたがさっき言っているように、ある場合には説得の余地を与えなくてもいいという理論はどこからも出てこないじゃありませんか。(「そういう
警察庁長官じゃ大へんだ。」と呼ぶ者あり)これでもってもしあなたがわからなければ、さらに私はこの大阪地裁の決定の判決文の重要な点について、あなたの
認識を改めさせるために、もう一度くどいようであるが言っておく。それは「組合のストライキ中といえ
ども、使用者たる会社が組合の統制外にある従来の従業員を使用してその操業を続行することは、それが著しい協約違反又は信義則に反する行為と認められない限り
権利の行使として許されなければならない。一方組合においても、これに対し集団的」この点は三池においては、第二組合の就労ということについては、今争議が不利益になるからそうしているのであるけれ
ども、これは会社があのロック・アウトを解いて団交に応じて、そうして全体として
一つの団体交渉権として会社が誠意を持って争議を
解決するという態度を示すならば、いつでもピケは解くとこう言っている。「一方組合においても、これに対し集団的ピケッティングによりストライキ中の会社の操業に関与してくる者に対し言論による説得乃至団結による示威の方法によってこれを阻止し会社の業務運営に打撃を加えることは、これまた組合に与えられた争議権行使の正当な範囲に属し、またその範囲に止まることが好ましいことはいうまでもないが、実際上右の如き単純な説得、団結の示威のみでは殆んどその効果を
期待し難い争議の現状よりすれば、右説得・示威に止まらず、その補助手段として必要な最小限度の有形力の行使を絶対に排斥するものでなく、争議という力の対抗関係に照し、
社会観念上使用者側も忍受するが相当であると
考えられる程度のものであれば、これを違法視して仮処分の保護を求めるに値しないものというべきである。」こういう場合には裁判所は仮処分をやってはいかぬ、こういうことを言っているのだ。さらに「争議継続中はこれをとり巻く諸々の具体的事情に応じて、時々刻々労使双方の力関係に微妙な変化が生ずる性質のものであるから、偶々労働行為に際し組合のとった手段の中に正当性の限界を逸脱していると認められる部分がかりにあったとしても、仮処分によってその禁止を命ずる必要性があるかどうかは別個に慎重な考慮を要する
ところである」こういっているのです。たとえば違法性があると認められる場合でも、裁判所が仮処分を出す場合には、これは別個に慎重な考慮を要する、こう言って、いやしくも労働争議に対して仮処分を出す場合には、このような配慮の上に立ってやれということを裁判所の判決は言っているのですよ。あなたは行政官でしょう。裁判所の判決を尊重することは言うまでもないはずです。われわれはこれを行動の基準にしなければならないわけです。この裁判所の判決の中にどれ
一つとして——説得の余裕と時間を与えようということはもう第一、説得をする余裕と時間を与えるばかりでなしに、かりにそれが逸脱した違法な行為であると思われる場合においても、仮処分は別個の問題である、仮処分を出すという場合には、裁判所は非常に慎重に考慮をしなければならぬ、といって労働者の団体行動権については、このように慎重な上に慎重な態度を裁判所はとっている。
ところが今警察庁の長官の
答弁は何だ。ある場合においては説得の余地を与えなくてもいいというような
答弁は、私は絶対に承服することはできない。この点についてはどうです。