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1960-04-27 第34回国会 衆議院 社会労働委員会 第32号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十五年四月二十七日(水曜日)     午前十時三十七分開議  出席委員    委員長 永山 忠則君    理事 大坪 保雄君 理事 八田 貞義君    理事 藤本 捨助君 理事 滝井 義高君    理事 八木 一男君       池田 清志君    加藤鐐五郎君       亀山 孝一君    川崎 秀二君       倉石 忠雄君    藏内 修治君       河野 孝子君    中山 マサ君       古川 丈吉君    柳谷清三郎君       山下 春江君    亘  四郎君       赤松  勇君    伊藤よし子君       板川 正吾君    大原  亨君       岡本 隆一君    河野  正君       小林  進君    五島 虎雄君       多賀谷真稔君    中村 英男君       武藤 武雄君    本島百合子君  出席国務大臣         労 働 大 臣 松野 頼三君  出席政府委員         法制局長官   林  修三君         警察庁長官   柏村 信雄君         警  視  監         (警察庁刑事局         長)      中川 薫治君         厚生政務次官  内藤  隆君         厚 生 技 官         (医務局長)  川上 六馬君         厚生事務官         (医務局次長) 黒木 利克君         厚生事務官         (兒童局長)  大山  正君         通商産業政務次         官       内田 常雄君         通商産業事務官         (石炭局長)  樋詰 誠明君         鉱山保安監督官         (鉱山保安局         長)      小岩井康朔君         海上保安庁長官 林   坦君         労働政務次官  赤澤 正道君         労働事務官         (労政局長)  亀井  光君  委員外出席者         警  視  長         (警察庁警備局         警備第三課長) 倉井  潔君         検     事         (刑事局公安課         長)      川井 英良君         専  門  員 川井 章知君     ————————————— 四月二十七日  委員河野正君、山口シヅエ君及び木下哲辞任  につき、その補欠として板川正吾君、多賀谷真  稔君及び武藤武雄君が議長の指名委員に選任  された。 同日  委員板川正吾君及び多賀谷真稔辞任につき、  その補欠として河野正君及び山口シヅエ君が議  長の指名委員に選任された。     ————————————— 四月二十六日  薬事法案内閣提出第一二七号)(予)  薬剤師法案内閣提出第一二八号)(予) 同日  失業対策事業労力費基本日額の増額に関する請  願(齋藤邦吉紹介)(第二八五一号)  国立和歌山病院閉鎖反対に関する請願坊秀  男君紹介)(第二八五二号)  戦傷病者のための単独法制定に関する請願(小  平久雄紹介)(第二八七六号)  同(志賀健次郎紹介)(第二八七七号)  同(菊池義郎紹介)(第二九二九号)  同(木村俊夫紹介)(第二九三〇号)  同(瀬戸山三男紹介)(第二九三一号)  同(田中角榮紹介)(第二九三二号)  同(中村三之丞紹介)(第二九三三号)  同(山手滿男紹介)(第二九三四号)  同(池田清志紹介)(第二九九一号)  同(高橋禎一紹介)(第二九九二号)  同(高橋清一郎紹介)(第二九九三号)  同(古川丈吉紹介)(第二九九四号)  同(逢澤寛君紹介)(第三〇四一号)  同(岡本隆一紹介)(第三〇四二号)  同(原健三郎紹介)(第三〇四三号)  酒癖矯正施設設立に関する請願栗原俊夫君紹  介)(第二九二八号)  同(足鹿覺紹介)(第二九三九号)  一般職種別賃金即時廃止に関する請願岡本  隆一紹介)(第二九三五号)  日雇労働者健康保険法改善に関する請願(岡  本隆一紹介)(第二九三六号)  医療施設不燃化等建築費助成に関する請願(  岡本隆一紹介)(第二九三七号)  酒害対策費に関する請願足鹿覺紹介)(第  二九三八号)  引揚者給付金等支給法の一部改正に関する請願  (池田清志紹介)(第三〇四四号)  未熟児養育指導に関する請願岡本隆一君紹  介)(第三〇四五号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  医療金融公庫法案内閣提出第三四号)  労働関係基本施策に関する件      ————◇—————
  2. 永山忠則

    永山委員長 これより会議を開きます。  医療金融公庫法案を議題とし、審査を進めます。質疑の通告がありますので、これを許します。河野正君。
  3. 河野正

    河野(正)委員 今日まで御審議をいただいております医療金融公庫法案、私どももこの法案そのものには全く同意でございますけれども、しかし本法が施行されます以上は、所期の目的を完全に果たしていただかなければならぬ。そういった意味で若干の御質問を申し上げて御所見を承って参りたい、かように存ずるわけでございます。  そこでまず最初に総論的な面からお伺いを申し上げておきたいと思いますが、御承知のように医療金融公庫法案目的といたしますところは、本文の第一条にもございますように、「国民の健康な生活を確保するに足りる医療の適正な普及向上に資するため、」金融処遇を行なうのだ、こういうことが明記されておるわけでございます。なおまた今日憲法を振り返って参りましても、今日の民主憲法の中にも国民としての権利というものが明確に規定されているわけでございますが、その第二十五条の中にも、「すべて国民は、健康で文化的な最低限度生活を」保障されておる、こういうことでございます。  そこでこういうふうな憲法保障されておりまする健康で文化的な生活保障、あるいはまた医療金融公庫法案の第一条に明記されておりまする目的、こういった点を私どもがながめて参りました場合に、しからば今日の国民健康保持、こういった点が医療政策面から見て、どのような地位に置かれておるのか、憲法でも保障されておるし、かつまた本法の第一条の目的の中でも、その大綱というものが明示されておる。そういう大きな大義名分が示されているわけでございますが、それと現実国民の置かれております健康保持立場がどういうふうに置かれているとお考えになるのか。この点せっかく金融公庫法案が成立して今後運用されていく、そういたしまする以上は、やはり本来の目的なり使命というものを完全に達成してもらわなければならぬ。そういう意味から、私はやはり今日の国民健康保持という地位がどういう地位にあるかという認識が今後の発展にも非常に大きな影響をもたらすと考えるわけでございます。単に国民の健康な生活を確保するのだ、そういうことに足りる医療というものに資するために本法を施行するのだというかけ声だけではなくて、やはり憲法保障された権利、あるいは本法一条に示された方針、そういった方向に基づいてこの法案が完全に運用されていかなければならぬという立場から、まず先ほど申し上げますように、今日の医療政策面から見ましたところ国民健康保持という地位に対しまする価値判断と申しますか、評価と申しますか、そういった点に対しまする御所見をまず一つ承っておきたいと考えます。
  4. 川上六馬

    川上政府委員 憲法でいいますところの健康で文化的な生活国民保障するという面につきましては、厚生省といたしましても公衆衛生の面、あるいは医療の面、その他の面におきまして努力をいたしておるわけでございますが、特に医療の面におきましては国民にひとしく適正な医療を均霑させたいという考えを持っておるわけでございまして、その面から申しますと、貧しい人の医療ということがやはり一番問題になることだと思います。貧困と疾病というものは御承知のように悪循環をいたしておるわけでございますから、特にそういう階層に対するところ医療というものを考えて、今後一そう努力しなければならぬというふうに考えておるわけでございます。
  5. 河野正

    河野(正)委員 御努力を願う点は非常にけっこうだと思うのですが、考え方として非常に大きな問題がございますのは、ただいま局長がおっしゃったように、まず貧困の階級に対して医療の手を伸ばしていくということは当然必要なことだ。それから科学日進月歩と申しますか、非常にものすごい勢いで進歩発展を遂げつつあるという今日でございます。そういう科学進歩なり発展というものに伴って、国民医療水準というものが上がっていかなければならぬ。貧困階層に対して医療のあたたかい手を伸ばしていくということが必要だということは当然なことでございますが、一般科学進歩に伴う医療水準を高めていくということも当然必要なことだと思います。そういう点を考えて参ります場合に、単に第一条で国民の健康な生活を確保するに足りる適正医療向上発展というようなかけ声でなくて、実質的にやはり国民医療そのもの向上さしていかなければならぬ。私はこれは財源の上からも、非常に重大な決意がなければ、そういった実をあげていくということは非常に困難だろうと考えるわけです。そこでこの点は次官がおいでになりましたから、次官からも御所見を承っておきたいと思いますが、そういった点に対しまする認識を深めてもらわぬと、単に医療金融公庫ができた、これで開業医助成いたしますということで、開業医助成するだけでは、結局国民医療というものが適正な水準に達するということにはならぬと思うのです。そこでやはり現在国民の置かれておりまする健康保持地位というものを、どう認識していくかということが私は今後国民医療金融発展、育成という意味においても非常に大きな影響をもたらすのではないか、こういうように考えるわけです。そこでこの点は多少政治的な面にもわたりますので、大臣がおられませんけれども次官から一つ明快にお答えを願っておきたいと思います。
  6. 内藤隆

    内藤(隆)政府委員 少しおくれて参りまして、先の方の御質問等を伺っていないではなはだ申しわけございません。仰せのごとく日進月歩医学でございまするから、医療機関としての最も大切なそれを実現することが必要なことである、私はかように思っておりますので、従って金融公庫もそういう方面に、ことに何と申しますか、開業医等内容を充実しまして、その進歩におくれないような内容を持つようにしたい。またそれがやがて福祉国家を作る一つの大きな基盤となる、かように私考えております。
  7. 河野正

    河野(正)委員 医療水準というものをだんだん高めなければならぬ。そういう立場から今日の国民健康確保地位というものがどういう地位に置かれておるのかということもあわせ考えて、今後いろいろ御努力願わなければならぬ。そういう意味でただいま御見解をいただいたわけでございますが、それに関連をしてさらにもう少し突っ込んで一つ所見を承っておきたいと思います。御承知のように、今日世界医学潮流というものは、病気の治療からさらに予防という方向へだんだん進みつつあることは、私今さら御説明申し上げるまでもないと考えております。このことは病気を治療するというよりも、むしろ国民の健康をより高めていくという——言葉をかえて申し上げますと、そういう方向に進みつつあるというふうに申し上げても過言ではなかろうかと考えます。このことは医療というものが非常に社会性を帯びてきた、これは当然のことでございますが、そこでその解決はむしろ政治的な解決を行なわなければならぬということは、私は政治の常道から当然であろうかと考えます。従って国民保険の達成ということはわが国今日に与えられました医療政策の当面の急務であることは、これは申し上げるまでもございません。もちろんこれはあくまでも達成しなければならぬのでございますけれども、しかし先ほど申し上げますように、日進月歩科学進歩医療水準というものはどんどん上がっていきますから、従ってそれに歩調をそろえてその医療内容というものも整えていかなければならぬ。今日医療保険社会保険という狭いワク内で技術的な論議で明け暮れるようでは、私は今日の世界の大きな科学技術進歩という一つ潮流に逆らうようなことになりはせぬかということを、常日ごろ痛感をいたしておるわけでございます。そこで今までいろいろと御見解も承って参りましたが、こういう私ども所見を述べますことは、これは何も今度の医療金融公庫発足精神にもとるものではない、これは当然医療金融公庫発足精神とかね合わしてやはりやらなければならぬと考えるわけでございます。この点は、むしろ政治的な質問でございますから、大臣にお尋ねした方が適切かと思いますけれども世界一つの大きな潮流科学技術進歩に伴いまする潮流、そういった一つ潮流に応ずる態勢というものが諸政策の中に織り込まれていかなければならぬ。これは単に医療金融公庫だけの問題ではございません。保健行政問題等にもございましょう。そういう科学技術進歩に伴いまする世界的な潮流に応ずる態勢の整備が必要だということはただいま申し述べた通りでございますが、そういった一つの今日の方向に対して、推移に対してどういうふうにお考えになっておるのか。大臣がおられませんから次官でもけっこうでございますけれども、この点もこの際明らかにしていただきたい、かように存ずる次第であります。
  8. 内藤隆

    内藤(隆)政府委員 要するに、御趣旨は医療水準を上げるというような点にあると思いますので、全くその通り考えます。
  9. 河野正

    河野(正)委員 もちろん抽象的に申し上げますと医療水準を上げるということに違いはないわけでございますけれども、単にそういう観念的なことでは、実際問題としてこれは財政の問題も伴うわけですから、簡単に医療内容水準を上げるというわけには参らぬと思うのです。それを上げるためにはやはりなみなみならぬ決意なり努力というものが当然必要となってこよう。もちろんそういった具体的な一環として医療金融公庫というものが誕生するわけでございますから、その点は異論ございませんけれども、単にそれだけで医療水準向上をはかられるというようなことでは私は問題があると思う。  そこで、本日もいろいろ具体的に突っ込んで御見解をお聞きする時間はないと思いますけれども、単に医療水準向上世界技術進歩潮流に応ずる態勢だというぐらいの御答弁では満足できぬと思うのです。やはり具体的にこういう世界潮流に応ずる態勢というのはどういう態勢であるべきかという具体的な構想が示されなければ納得するわけには参らぬと考えますが、大綱でけっこうだと思うのです。これこれこうするという御即答を願うのは困難だということは、私ども了解するにやぶさかでございませんから、ある程度具体的に御答弁を願えればけっこうだと思います。
  10. 川上六馬

    川上政府委員 今の御意見のように、医療それから予防、さらに国民の健康をより増進していくという方向、それから医療内容水準を上げていくということが必要であることは全く私も同感でございますが、それをどうして今後やっていくかということだと思います。厚生省といたしましても皆保険を本年度に達成していくということになっておりますので、今後は医療内容をよくしていくということに当然努力を向けていかなければならぬと思うわけであります。今の制度のままでは今御意見があるところを実現することもむずかしいのではあるまいかと私も考えておるのでありまして、こういう点につきましては、近く発足いたしますところ医療制度調査会におきまして、昨日も申しましたように、医療機関はどうあるべきかとか、あるいは医療関係者というものはどういう質のものをどういうふうに配置すべきかというような問題、あるいはそれを裏づけていくような医療経済の問題というようなものがいろいろそういうところで論議されるだろうと思うわけでございまして、そういうような点で識者の意見を十分に伺いまして、そういう意見を今後どう実現していくかということを慎重に検討したいと思うわけでございます。
  11. 河野正

    河野(正)委員 本日はそういうことを具体的にいろいろ究明するということが目的でございませんから、いずれそういった方向で具体的に検討を続けていただきたいというふうに希望を申し述べておきます。  そこで、せっかく医療内容向上という問題に触れましたから、最近具体的な実例もございますので、一点だけ申し上げて御所見を承っておきたいと思います。  医療内容向上という点についてはいろいろの考え方があると思うわけです。そこで、その中の一つ実例でございますが、先ほど申し上げましたように、今日医学科学技術進歩に伴って非常に発展進歩を遂げていく、そこである学者のごときは、今日の医学というものはもう自然科学の域を脱して、むしろ社会科学であるというふうな意味のことを言っておるようでございます。従って、医学というものが社会科学の域に到達するということになりますと、医療に従事することはやはり社会に奉仕するということにだんだんなっていこうかと考えます。これは医療社会化一つの流れでございますから、当然そのようなことになっていこうかと思うわけでございます。従って、今度の医療金融公庫もそういった意味開業医師助成の手を伸ばそうというような具体的な政策だと考えるわけでございます。しかし、先ほど申し上げましたように、自然科学から社会科学だというふうにだんだんと推移をしていく情勢でございますと、単に開業医師に対して助成の手を伸ばすということのみならず、やはり勤務医師に対しても十分の処遇というものが必要になっていく、これは社会に奉仕するのですから当然のことだと思います。この点はこの前の委員会でも若干御所見を伺ったわけでありますけれども、たまたま福岡におきましては、地方公務員であるべき医師実力行使と申しますか、二カ月間の期限を切って総辞職をするというふうな実情も生まれて参った。これは地方的でございますけれども医療政策面に非常に重大な影響を及ぼさんといたしておる。具体的には地方の問題でございますけれども、これは何も福岡県に限った問題でなくて、そういう例というものは全国にある。地方公務員に限らず国家公務員の中にもある。そこで、これはやはり国が板本的に考えを改めて、医療金融公雄法案の第一条に示されておる、国民なり地方民健康保持という面において非常な責任を持たなければならぬということに相なろうかと考えます。ところで、これは先般の委員会におきましても若干大臣からも局長からも御所見を承っておりますけれども、今日その解決を見ざるために地方的にそういう重大事態が発生しておるというふうな、非常に緊急を要する事態も発生いたしておりますので、私はこの際さらに当局の御所見を承り、また御決意を承って、一刻も早く国民なり地方住民健康保持に対しまする不安を一掃してもらわなければならぬ。そういう意味から、若干そういう事態に対しまする御所信というようなものをこの際明らかにしていただきたい、かように思います。
  12. 川上六馬

    川上政府委員 医療内容向上する面におきまして、医師が進んで国民医療に協力していく、あるいは担当していくためには、処遇の問題が非常に大事だと思うわけでありまして、ただいまお話しの福岡の問題につきましても、私ども心配をいたしております。確かにお説のように、そういうような不満というものは、全国的にあるわけでありまして、厚生省としても、この問題はきわめて重要だと考えておるわけであります。国家公務員につきましては、民間勤務医に比べまして、その処遇が大へん悪いものでございますから、これを改善するために、以前から努力いたしておりますけれども、まだきわめて不十分な状態があるわけでございます。最近国立病院医師その他におきまして、だんだん不満が高まってきまして、医療に対するところ意欲を欠くような心配も出てきておることでございますので、この問題は、今後一そう改善努力をしていく所存であります。
  13. 河野正

    河野(正)委員 厚生省が今まで改善努力された、そういう御意向なり、御努力に対しましては、感謝するわけでございます。しかし、努力していただきましても、現実改善されなければ、これは意味がないと思うわけです。特に、地方的にも問題はございますが、やはり中央である程度明確な態度を示していただかぬと、地方解決する場合にも、いろいろ困難性が伴うだろうというふうに私ども考えるわけです。ことに、医療担当者というものは技術名でございます。ところが、長く、あるいはまた経験の豊富な人が国家公務員なり、あるいはまた地方公務員になるということになりますと、ますます民間給与との格差が増大していくわけです。結局、民間では経験年数なり、あるいはまたそういった技術なりというものに対して、給与というものは逓増する。ところ公務員の場合には、豊富な技術を持ち、あるいは経験年数の深い医師というものは、民間との給与格差がだんだん増大していく、幅が広くなっていくというような矛盾が露骨に現われておる。特に国家公務員なり、地方公務員が勤務されますそれぞれの施設というものは、これは全く公共的な施設でございますから、そういう公共的な施設に対しては、国民なり、住民が非常に強い信頼なり期待を寄せておる。ところが実際国民なり住民が強い信頼期待を寄せておるその施設で働く勤務者が、その意欲が低下するということは、私は国民なり住民に対しても非常な不幸なことだと思うのです。ところが、現実問題としては、なかなか給与の問題が改善できないということで、私どもその点に対しては非常に心配いたしております。そこで、この問題を抜本的に解決するためには、厚生省も相当強い決意を持って臨まれぬと、この問題を解決することは至難の道であろうというふうに考えます。そこで、今までも努力をしていただいたと思いますけれども、今までの努力では、私は地方の問題まで解決するというようなことには遠いというふうに判断いたします。そこで、この点は大臣でなくてもけっこうでございますけれども次官の方から、それに対する決意のほどを示していただきたい。
  14. 内藤隆

    内藤(隆)政府委員 仰せの点につきましては、将来ともに十分検討を加えて、努力したいと考えております。
  15. 河野正

    河野(正)委員 この点は、人事院の調査等では、民間給与との格差が三三%程度であるということでございますが、これは対象が問題であって、必ずしも平均して三三%かどうかということには疑問がある。少なくとも三三%以上であることは確実であろうと思います。それでありますから、そういう実情も十分御認識の上に立って、一つ早急に解決していただきたい。これは国家公務員だけじゃなく、これを解決しなければ、地方公務員まで解決しないというようなことでございます。ことに具体的には、福岡県では、公務員である医師が総辞職をする、しかも、これは五月中旬で期限がくるのです。そういうことですから、それまでに解決が困難だということは私どももわかりますけれども、そういう事態もだんだん派生し、将来は福岡県だけの問題じゃなくて、全国にも派生してくると思います。そういう重大な状況に追い込まれつつございますので、今後重大な決意のもとに、この改善のために努力していただきたいというふうに、この点一つお願い申し上げておきたいと思います。  ただいま希望意見を申し上げたのでございますが、さらに公庫の問題について質疑を続けて参りたいと思います。御承知のように、医療保障という問題につきましては、これは厚生省でも各種の審議会で、いろいろ検討を加えられて参り、また近く医療制度調査会発足するというようなことでございます。そこで、今度の医療金融公庫の資金源が三十億ということで、せっかく医療金融公庫が誕生いたしましても、その資金源につきましては、われわれ非常に不満だということは、厚生省当局でも十分お考え願っていると思います。そういった面もございますので、ここで若干方針をただしておきたいと思いますが、それは、近く医療制度調査会発足する、その医療制度調査会に対して、病院、診療所の機能の分化、あるいは医療経営の実態調査というようなことが諮問されるというようなことも、私ども仄聞いたしております。そこで、そういう病院、診療所の機能の分化なり、あるいは医療経営の実態調査等が諮問される、そういう格間に対して答申が出てくるわけですが、答申が出て参って、そしてその結果によって、医療金融公庫の通常をするという面において、また何らかの影響が当然起こってくるのじゃないか。たとえば、この医療金融公庫を運営する面において、具体的に申し上げますと、病院と診療所とどういう比重で取り扱うか、もう少し突っ込んで申し上げますと、どちらの方に重点を指向していくのかというような問題も、やはり出てこようかとも考えます。特に資金源が非常に弱体でございますから、総花式でやろうというても、なかなかできるものじゃありません。窓口を広げていただくのは、将来資金源が増大されていく、そういう意味で窓口を広げておくということは意義があると思いますけれども、一面私は多少問題があろうかというようにも考えられますので、一つ病院と診療所とをどういう形で取り扱われていこうとお考えになっているのか、そういう点についての御所見を若干伺っておきたいと思います。
  16. 黒木利克

    ○黒木政府委員 御質問は確かに重要なポイントだと思いますけれども、一応現在の段階で考えておりますのは、この参考資料の八十七ページに、資金需要見込額調というのがございます。ここで、病院なり診療所に対して、過去五年間に平均して一体年間どれだけ資金需要があったであろうかという推定をいたしたのでございますが、これによりますと総額百三十億のうちで、病院関係の資金需要が五十一億、診療所関係が歯科を含めまして七十三億六千万円、大体五十億と七十億の比率になっておるのであります。そこで一応この実績を基礎にいたしまして、病院と診療所に対する基金の配分等は考えられる。大体たよりにする資料というものはこれしかないものですから、これを参考にせざるを得ないというふうに、今の段階では考えております。
  17. 河野正

    河野(正)委員 なるほど、今までの実績に基づいて今後の運営をはかっていくということは、一つの方法だと思います。しかし病院あるいは診療所、それぞれその内容が違うわけです。ですから資金の総ワクだけで、病院の実態がどうであるとか、あるいはまた診療所の実績がどうであるというようなことを判断することは、なかなか問題があろうと思うのです。かつまた過去の実積がそうであったから今後それに応じて配分していくということが、国民医療を適正化ならしめる方法であるかどうかというようなことについては、私は問題があると思うのです。というのは、今までそういうように片寄っておった。たとえば、今までそれぞれの金融機関から融通を受けるというようなことはきのうもいろいろ論議がございましたが、コマーシャル・ベースに乗るか乗らぬかというような立場からそれぞれ融資を受けておったというようなことが過去の実積になっておったと思う。ところがこの本法では、法律をそのまま解釈しますと、コマーシャル・ベースに乗らぬというようなものを救おうということですから、私は過失の実積に基づいて今後運営していくことが適切であるかどうか、これは非常に大きな疑問があろうかと思う。そうであるならば、過去の実績に基づいて今後の運営をやっていくということになるならば、何も第一条のような明文は要らぬと思うのです。それは結局、中小企業なら中小企業、国民冷徹公電なら国民金融公庫のワクを増大すれば、それで事が足りると思うのです。しかるに、あらためて医療金融公庫を作るというのに対しては、やはりそれ相応の理由、使命というものがなければならない。そうしますと、過去の実績を尊重することがいいことか悪いことか、これはやはり一考を要するのではなかろうかというふうに判断をするわけです。そういう建前から、実は今後医療審議会でいろいろ経営の実態なりあるいは機能の分化というようなものについて諮問するということも聞いておるし、それが今後の運営にどういうふうに影響をもたらすか。このことが私はやはり運営の面においては重大だと思うのです。そこで、やはり過去の実績に応じてということであるならば、私はもちろんそれは国民金融公庫なりあるいはまた中小企業金融公庫のワクを増大してもらってもけっこうだと思う。それでも私はこの医療金融公庫は相当努力願ったと思いますけれども、わざわざ努力して誕生せしめていただいた意義というものが非常に薄らいでいくと思うのです。ですから、私はやはり実績を尊重するということについてはもう少し一考を要すべき問題ではなかろうかというふうに思いますが、この点いかがですか。
  18. 黒木利克

    ○黒木政府委員 少し言い足りませんでしたが、もちろん公の金を使用しておる公庫でございますから、国の医療政策に即応をした運営をしなければならぬことは当然であります。従いまして、昨日も申し上げましたように、医療機関が過剰な地域に対しては、その新設なりベッドをふやすことに対しては貸し出しをしない。いわば医療機関が必要であり、その普及が必要である地域に新設、増床というものは限る、こういうような方針をきめておるものですから、先ほど申しましたような国の医療政策に即応せしめるものでございます。ただこの各病院なり診療所なり、あるいは地域別の配分の問題は公正を期さなければなりませんから、一応資金の需要と申しますか、どういうような申請があるかということはもちろん基礎になると思いますが、ただそういう業種別、地域別の配分を公正ならしめるために、何らかのよりどころが要るという面で、とりあえずは過去の実績と申しますのは、この数年間に毎年診療所がどれだけふえ、病院がどれだけふえ、ベッドがどれだけふえておるか、そういうような実績がございますから、それを参考にして、先ほども申しました国の医療政策に即応せしめながら、しかも公正に配分をするという意味で、過去の実績を参考にしてと申し上げたのでございまして、御意見のように、国の医療政策に即応せしめるということが根本でなければならないと思っております。
  19. 河野正

    河野(正)委員 御参考に供していただく点については、これはわれわれ異論ないと思います。ただそれを金科玉条のごとく心得て、過去がそうであるからそうであるというようなことになると、私は医療金融公庫発足せしめた意義も、全然ないとは申しません、薄らいでいくというふうに考えておるわけです。そこで、一つ過去の実績は参考程度にして運営をしていくというようなことで、今後運営に当たっていただかぬと、やはりそれがために結局医療金融公庫発足せしめた意義を減少せしめるということになっては、これは非常に意義が薄らぐから、そういう点につきましては、一つできるだけ慎重に進めていただきたい、かように思います。  それから、この国民保険制度がだんだんと実施をされて参りますると、医療保険というものの一つの大きな網が全国民の間に張りめぐらされる。そういたしますと、もうこれは私が今さら御説明申し上げるまでもないと思いますけれども、この法案というものは私立の病院、診療所というような言葉を使っておられますけれども、実質的には診療所なり病院というものは、公共性を帯びて参りますから、自由企業というふうにも言えないような状態になっていくと思うのです。そこで医療の内応というものも、この診療報酬のワクにはめられてしまって、自由な診療ができない。従ってこの病院なり診療所の施設の利潤、平たく言うともうけというものが非常に薄らぐ。これはきのう、おとといあたりの委員会でも、いろいろと単価の問題についても適正であるかどうかというような論議がかわされておったのでございますけれども、そういった医療保険のワクに縛られて、自由企業という性格を失うとともに、利潤というものが薄くなるというか、なくなるというふうな状態にだんだんなってくる。しかもその反面においては、医学及び医療機械、そういったものが非常に急速に進歩していく。それからまた診療をするにあたりましても、科学技術進歩に伴って高度の施設あるいは設備の必要性というものが要求されていく。そこでこれは医療内容という先ほど申し上げましたような点にも関係があると思いまするけれども、患者を納得させる十分な診療を行なっていくためには、今いろいろ申し上げましたような条件が伴って参りますから、従って相当の資金というものが要求される。これは今まで委員会でもいろいろ論議されておったようでございまするけれども、公立あるいは日赤、そうした公的な医療機関には、政府の補助なり、あるいはまた厚生年金の還元融資、そういったものがある。ところが、先ほど申し上げましたように、私的医療機関については今まで助成政策というものはほとんど見当たらない。それは間接的には国民金融公庫なり中小企業金融公庫等がございましたけれども、直接的なものは皆無だ。しかも先ほど申し上げましたように、科学技術進歩で、非常に高度な施設、高度の内容というものが要求される。それに伴って金。そこで非常に矛盾というものがだんだん増大、拡大されていきつつあるというふうな状態であるということは、これはもう私があらためて申し上げるまでもないと思う。ところが、せっかく誕生する医療金融公庫の資金源というものは三十億ということで、これはさっき、今までの実績が百三十億というようなお話がございましたけれども、これは何も需要額が百三十億ということじゃないわけです。実績が百三十億ということは、実際はいろいろ融資の要求なりあるいは希望なりがあっても、コマーシャル・ベースに乗らなければ今までの制度では融資を受ける対象にならぬというようなことでございますから、何も実際の需要額が百三十億ということではないと思う。ところが、今申し上げましたように資金面については非常に負担が加重している。そこで今後この三十億の資金源をふやしてもらうということは当然なことだと思います。抽象的に三十億が少い、それをただふやせばいいのだということではちょっと満足するわけにはいかぬ。そこで百三十億というような需要額が示されておりまするけれども、これは具体的実績ですから間違いないと思いますけれども、実際どれくらいを目標に置いたらある程度国の医療政策に応ずる改善なり進歩というものがはかられるのか、こういうことについての御所見がありますが。
  20. 黒木利克

    ○黒木政府委員 実はお手元の資料の百三ぺーシに医療機関の整備計画というのがございますが、ここで今後昭和四十年までに医療機関をどの程度整備したらいいものであろうかという一応の目標を立てたのでございますが、この目標に基づきまして、各都道府県におきましてどのくらい医療機関が不足をしておるであろうか、特に一般病床がどの程度不足しておるか、どの程度必要であるかというようなことの試算をしてみたのが、その同じ参考資料の百三十ペーシ以下にございます。これによりますと、昭和四十年までに約十四万床、十四万のベッドというものを整備する必要がある。そこでこの十四万床を増設するためにどれだけ資金が必要であるかという推計をしたものがございます。一応の数字を申し上げますと、昭和三十五年から昭和四十年までの六年間に整備を要する病床が先ほど申しましたように十四万床、ところが昭和三十四年中におきまして整備される予定の病床数が一万八千八百余りございますので、差引十二万床というものを今後六年間に整備をする必要がある。そこでこれを、国及び公的機関、それから社会保険団体、それから私立病院、この三つのグループでそれぞれ満たすわけでございますが、一応その比率を過去の実績によりまして、国及び公的医療機関がその四五%を満たし、社会保険団体が一五%、私立の病院が四〇%、そうしますと、私立の病院の満たさなければならない病床数が四万八千床になるのでございます。これを新設で五分の一を見る、あとの五分の四を増床で見る、こういうような計算をいたしますと、建設資金だけで年間百七十一億二千八百万円程度になります。これに設備資金等を三分の一と見ますから、六十四億円程度加えまして、約二百三十億円程度の資金が必要となる、こういうような試算をしたことがございます。
  21. 河野正

    河野(正)委員 机上の計算だと思いますけれども、いずれにしても今日の百三十億の需要額の倍くらいの数字が、最小限見積もっても今日それぞれの施設考えており要求している需要額だということがある程度理解できると思うのです。多少数字には差異はあっても、大体現在の実績の倍以上の要求があるということは判断できると思います。そこで今度の法案で一番問題になるのは、やはりこの資金ワクが、最初ですから非常に御努願ったと思いますけれども、非常に薄いということです。それから今後の運用をどうしていくかということがやはり一番大きな問題点だろうというように考えるわけです。そこで、幸いにして二百三、四十億が一応机上ではじいた今日の医療機関の需要額に相当する数だろうというような数字も出ておりますから、一つそういう点を十分念頭に置いて、今後とも大蔵省その他の折衝において御努力願うというふうにお取り計らいを願いたいと考えます。  それから少し具体的な面に入って希望意見を申し述べて参りたいと思いますが、これは金利は幾らになっているのですか。
  22. 黒木利克

    ○黒木政府委員 一応おもなものは六分五厘ということになっておりますが、具体的なことはまだ話し合いがついておりませんが、本日中に大蔵省とある程度めどはつけたいと思っております。大体厚生省考えておりますのは三案くらいございますが、これは資金の配分と——たとえば病院なり診療所を新設したりあるいは増設したりする場合の資金の金利をかりに六分五厘といたしますと、運転資金とかあるいは機械器具の設備資金、こういうものを大体九分二、三厘くらいに見ないといけないのではないかと思う。もう一案は、こういうような新設の場合を六分五厘にいたしまして、今度は増改築等の費用をたとえば七分五厘というふうにいたしますと、運転資金は七分八厘ぐらいでいく。いろいろな案の組み合せがございまして、きょう中に大体のめどをきめたいと思いますが、大体先ほど申し上げましたように、おもなものに対しては六分五厘、平均して七分三厘九毛に運営をしなければならないという制約がございまして、業種別にそれを適当に配分するということでございます。
  23. 河野正

    河野(正)委員 資金源が非常に弱小であるという一つの難点がございますことは先刻申し上げた通りであります。御承知のように公的医療機関の整備資金に対しまする起債及び融資の状況を見て参りますと、地方債それから厚生年金還元融資とも年六分五厘ということですね。そこでただいま利率について若干お尋ねをして御所見を承ったわけでございますが、この公的医療機関については、今申し上げますように、利率が低い。今度の場合は平均して七分三厘ということになりますと、私立のものに対して保護政策のあたたかい手を伸べていただくことはけっこうでございますけれども、これは利率が高い。しかも国民保険医療機関というものが公的な性格を帯びてくる。にもかかわらず公的医療機関の整備と私的医療機関の整備とについては、利率の格差がある。これは私は一つの矛盾だと思います。そういたしますと、きのうもいろいろ論議の中心になっていたようでございますが、そのために結局公的医療機関とともに私的医療機関をせっかく育成してやろうということでございますけれども、これは利率だけの問題ではない。それは税金の問題等もございますし、いろいろ出費も違うわけです。そういう支出が公的医療機関と私的医療機関は違う。それに利率が違うということになりますと、だんだん発展格差というものがついていくと思う。むしろ私はやはり私的医療機関の方に対して、何かもっと利率を低くするというような形で、ある程度さらに強い育成方針をとっていただかぬと、せっかく親心で医療金融公庫を創設していただいても、実質的には公的医療機関との格差を広げていくという結果に陥っていくと思う。それですから、これは大蔵省との折衝でどうなるかわかりませんけれども、そういうことを十分お考えになっても、なおかつそういうことになったかもしれませんけれども、さらにこれは政府の方針である国民保険制度というような制度でございますので、そういう矛盾を作らぬように、一つ努力をしていただかなければならぬというふうにも考えるわけですが、この点は一つ次官の方からいかがですか。
  24. 黒木利克

    ○黒木政府委員 ちょっとその前に、補足的にお答えをしておきたいのでございますが、実は公的医療機関は機械器具とか運転資金を貸付の対象にしていないのでございます。医療金融公庫では、私的医療機関に対してはこれを対象にする。そこで金利のおもなものは先ほど申し上げましたように、とか増床に対しましては、公的医療機関と同じように六分五厘、ただし運転資金とか機械設備等については、公的医療機関の先例もございませんから、全体の平均の利率が七分三厘九毛でございますから、それで計算して適当な金利をきめたいということでございます。確かに御説のように公的医療機関の方に貸付条件をだんだん近くしていこう、あるいはそれ以上に低くしていこうという考えであるわけでございます。
  25. 内藤隆

    内藤(隆)政府委員 ただいま黒木政府委員から説明があった通り、われわれは公的医療機関あるいは私的医療機関の利率が格差のないように将来やっていきたい。従って現在の立場では不利な立場にある私的医療機関の利率を、公的医療機関の方の利率にだんだん接近させていきたい、かように考えております。
  26. 河野正

    河野(正)委員 私ども希望としては、接近させるというよりも、むしろさらに負担というものを公的医療機関よりも低くしてもらいたい。これが私どもの願望です。ですから当面は格差を縮めていくということでございましょうけれども目的はやはりどこまでも公的医療機関よりも、むしろ利率を下げるという方向にぜひとも努力していただきたい、こういうふうに考えます。  それから貸付の限度ですが、これについてはどういうことになっておりますか、事務当局でけっこうでございますけれども、一言承っておきたいと思います。
  27. 黒木利克

    ○黒木政府委員 実は貸付の限度も貸付条件の一つでございますから、まだ大蔵省と話し合いがついておりませんが、昨日御説明申し上げましたように、全体の資金のワクが初年度少額でございますために、できるだけたくさんの人に均霑せしめたいという趣旨からいたしますならば、貸付の限度をそう高くするわけには参らない。特に病院の貸付の限度を高くしますと、実際に均霑を受ける人が少なくなりますから、今のところは貸付の限度というものを金額で表示しないで、大体医療金融公庫で貸し付ける場合の規模と申しますか、たとえば診療所も有床診療所なら五十坪程度以下のもの、無床診療所なら三十坪以下のもの、あるいは病院にいたしましても、大体個人の場合は五十床程度のものとか、そういう規模で一応建物の場合は限度を考えていこう、それから機械器具等の場合は、病院の場合は一品目十万円以上のものを対象にして、最高額はせいぜい五百万円どまり、診療所の場合は機械器具も五万円以上のもので、大体二百万円程度のものというような現在見当をいたしております。
  28. 河野正

    河野(正)委員 この限度の問題は、なるほどお説のような一つ考え方もあると思うのです。ところがまた別の考え方もあるわけです。というのは、この公庫法案の第一条に、「医療の適正な普及向上」という明文があるわけです。この「医療の適正な普及向上」という文字に対する考え方にいろいろ相違があると思うのですが、やはり皆保険の今日、医療の公共性ということが非常に強くなってきている。しかも「医療の適正な普及向上」というような点とも兼ね合わせて考えまする場合に、その限度を作ることがいいことか悪いことか、これは必ずしも私は悪いとは言わぬ、いいこともある。しかし多少問題があると思うのです。たとえば「適正な普及向上」ですから、そのためには結局適正だと考えられる規模に対して全額融通するという考え方もありましょう。その場合に画一的に五十坪に押えるとか、三十坪に押えるとかいうことが国の医療政策にマッチするかどうかということには問題がある、たとえばお説のように資金源が非常に薄いから、そこでできるだけある程度押えて、総花式に助成してやろうという親心的な考え方もわからぬわけでもない。しかしそういうふうに機械的にやられてしまうと、適正な医療普及向上という大目約が達成されるかどうか、これにも多少問題があると思います。そこで、これはそれぞれ立場も違うし、考え方の相違もあるから、そういう考えも出てくるかと思いますけれども、私はやはり「適正な普及向上」という文字そのものから考えますと、必ずしも一つの限度を設けることがいいか悪いか、これはやっぱり御一考を願わなければならぬ。たとえば五十床という申し出があっても、それは医療の適正な普及向上という立場からは三十床に御遠慮願わなければならぬという事態があるかもしれません。しかし適正な医療普及向上という立場から要求された規模が当然な規模だと思う場合には、やっぱりそれだけ完全に認めていくという考え方も、私は当然これは筋が通っていると思うのですよ。それで資金源が少ないからできるだけ総花式にという考え方もわからぬでもないけれども、そういうことにあまりとらわれると、適正な向上普及ということが非常に薄らいでいくのですね。それでその辺については私は一考願わなければならぬと思うのですが、いかがでしょう。
  29. 黒木利克

    ○黒木政府委員 確かにそういう限度額をきめるということにはいろいろ利害得失があるわけでございます。そこではっきりと限度額をきめるというよりも、むしろ医療金融公庫で対象にする病院なり診療所の最高限の規模と申しますか、それはこの程度のものだというような意味で申し上げたのでございまして、たとえば医療金融公庫で一カ所何億円もするような病院を対象にするわけにも参らぬものですから、そのような意味で中小病院というものを対象にした企画を一応考えたわけでございます。もちろんこれは最高限度でございまして、資金の需要に従いまして実情に合うように運営をしていかなくちゃなりませんが、公庫法が成立しまして、公庫の当事者が申請を受け付けてみまして、関係団体なり、あるいは県の意見を聞いてきめることだと思いますが、貸付条件を業務方法書に書く場合の大体の考え方の一案として申し上げたにすぎません。
  30. 河野正

    河野(正)委員 そういう考え方も、私ども理解できぬわけじゃないわけですからけっこうですけれども、そういう考え方で画一的に運営されると、やはり適正な医療向上普及という使命というものが非常に薄らいでいくというようなことは、十分念頭に置いて考えていただきたい、かように存ずるわけです。  そこで、資金源々々々でたびたび非常に恐縮でございますけれども、さらにそれに関連をしてお尋ねを申し上げたいと思います。それは本法の十八条に「公庫は、第一条に規定する目的を達成するため、病院、診療所、薬局その他政令で定める施設を開設する個人又は医療法人、民法第三十四条の規定により設立した法人その他政令で定める法人に対し、当該施設(当該施設の運営に関し必要な附属施設を含むものとし、」云々、こういうふうになっているわけです。そこで付属施設の問題はきのうも滝井委員からいろいろ論議されておったようです。私立の医療施設に対する保護政策ですから、いろいろな保護の手を伸べていただき、門戸を広げていただくことはけっこうでございますけれども、そのための資金源は非常に小さいわけですね。ところが、あれもこれもということで所期の目的を達成し得るかどうか。それはもちろん資金源を拡大していただくということになれば私のそういう心配も解消するかと思いますけれども、ただ現実に資金源は三十億、しかも門戸を広げて、あれもこれも総花式、そういう形で第一条にうたわれた目的が達成し得るかどうか、私は非常に心配するわです。そこでこれは重点的に資金の配分をやること、それから総花式に資金の配分をやること、それぞれ考え方はあると思う。いずれにしても、結局第一条の適正な普及向上という目的が達成されるということが先決でなければならぬというように考えるわけです。そこできのうもいろいろ論議されておりましたけれども、なるほど門戸を広げていただく、あるいはまた各方面にわたって保護政策の手を伸べていただく、これは非常にけっこうであると思うが、一方においては資金源が非常に弱小である。そこで私はなかなかむずかしい面も出てこようかと思うのです。しかしながら、やっぱり本法の一条に示された目的だけはちゃんと筋を通していただかなければならぬということになろうかと思います。そこで、この点についての明快な所信というものを表明していただきたいと思うのです。そうしないと、せっかくの医療金融公庫法になっても、結果的には何をやったかわからぬ。なるほど借りた人はそれだけ得をするかもしれないけれども、実際にそれで第一条の所期の目的が達成されるかどうかという点については、若干問題があろうかと思う。そういう意味で、これに対する御所見を承っておきたいと思います。
  31. 川上六馬

    川上政府委員 確かに今のお説のように、何しろ資金量がまだ小さいわけですから、あまり間口を広げて対象を多くするということは、私どももよく考えてみなければならぬ問題だと思っておるわけです。付属施設はむろん病院経営をするために必要な施設という限度にしたいと思うわけでございますが、順序から申しますと、おそらく個人あるいは医療法人などの医療機関が主体になると思います。そういう点のバランスもよく考えて参りたいと思います。
  32. 河野正

    河野(正)委員 その点は、いずれにしても本法の第一条に示された目的をちゃんと一本筋を通していくように、適切な運営をはかっていただきたいということでとどめておきたいと思います。  それから、これも今までたびたび論議をされておりますが、私も先ほどから申し述べますように、国民保険の推進の中で問題となりますのは、やはり医療機関の合理的な配置ということであろうかというふうに考えるわけです。そこで、今日まで無医地区の解消という問題に対して厚生省当局はいろいろ御努力願い、あるいは五ケ年計画等の推進等に対しましても御努力願うということは、私ども国民医療立場から感謝をしておるわけでございますが、これの推移と、今度の医療の適正な普及向上というものの関係に対してどういう御所見を持っておられるのか、一つ承っておきたいと思います。
  33. 黒木利克

    ○黒木政府委員 僻地医療対策と医療金融公庫法との関係からまず申し上げますと、この僻地医療というのは大体第一種から三種まで分けておりまして、採算というと語弊がありますが、一応収支が償うようなところは僻地と考えていないわけでございますが、そういうような収支の償わないところに対しましては、おそらく医療金融公庫に対する融資の申し込みもないだろうと思います。従って僻地対策は主として公的医療機関が担当する。そこで、僻地以外で病床が、あるいは医療機関が不足しておる地域におきまして、診療所なりあるいは病院なりあるいは増床をしたいというものをもちろん対象にするわけでございますが、金融でございますから、償還をしなければなりません。従って、一応収支が合って、ある程度償還財源がやはりあるというところに結局限定をされて参るわけでございます。従いまして、僻地対策はあくまでも公的医療機関でやるという従来の方針は踏襲して参らざるを得ないと思います。
  34. 河野正

    河野(正)委員 この僻地対策は僻地対策として、国が別な立場から努力をしていく、そういう政策を進めていく、この点は全く同感だと思うのです。ただ問題は、僻地は収支が償わぬから、結局金融公庫に対しても申し出がないだろう、これはまたその通りだと思うのです。建物を建てましても、実際運用ができぬという状態でしょうから、もうけられないところに金まで借りて建てる必要はないということは当然のことですから……。さればと言って、僻地以外で特に助成をしなけれなばらぬ地域というものは、非常に選定がむずかしかろうと思うのです。それですから、密度でいくという考え方が私は必ずしも適切であるかどうか、これは疑問があると思う。やはり医療の適正な普及向上ですから、単に密度だけで、医療普及向上をはかられた。薄いところに若干診療所なり病院の設立に助成を与える、それだから医療普及向上という目的が達成されたということにはならぬと私は思うのです。そこで、全然ないところ助成をして建てさせる、これはそういうことができれば非常に簡単なことですけれども、それは建てようとする希望者がない。そこで結局、僻地を除いた、償還ができる、そこに希望者があれば、これは問題ないわけですね。そこで、償還はできる、利潤はある程度期待し得る、しかも結局密度が非常に薄いという地域の選定ですね、これはなかなかむずかしいと思うのです。実際やってみなければわからぬですね、利潤が期待できるかどうか。ただ医者の数が少ないから、そこで開業すれば、利潤が当然期待されるということではないと思う。やはりそれは施設を開設する個人の能力にもよりましょうし、あるいは内容にもよりましょうし、いろいろな付帯的な条件というものが加わって初めて結果が出てくるわけですから、なかなかその辺の判定はむずかしかろうと思います。しかも密度ばかりで断定するわけにはいかない。問題は、住民なり国民がそういうりっぱな医療を受け得るということが、やはり目的でなければならぬ。そうすると、なかなかその辺の選定というものがむずかしいのじゃないかというふうに考えるわけです。そこで、これはまあ私どもがいろいろ心配するまでもないかと思いますけれども、その辺の困難性というものに対して、どういう所見をお持ち願って運営をしようというふうにお考えになっておられるか、一つその辺のお考えをお漏らし願いたい。
  35. 黒木利克

    ○黒木政府委員 先ほど申し上げましたように、無医地区というのを大体三種ぐらいに分けまして、三十三年の八月現在で、いわゆる無医地区と称される地区が千百八十四ございます。そのうち、交通機関の関係または地理的な事情から、その地域に医療機関がなくとももよりの医療機関が利用できる、従って特に医療に支障がないと認められる地区、これを第一種と考えておりますがこれが四百十六ございます。それから、第二種と申しますのは、人口、面積や地勢から、あるいは交通の状況から、医療機関が設けられても、その経営が事実上困難であると認められる地区、これが六百五十六ございます。それから、人口、面積なりあるいは地勢の状況から、医療機関が設置されるならば、その経営は可能だと認められる地区が百十二ございます。ただし、ここで融資を受けても、はたして償還できるかどうかは問題でございますが、しかし一応この百十二の無医地区というものは、医療金融の対象にぜひしたい、まあその申請の期待をいたしておるわけでございます。
  36. 河野正

    河野(正)委員 まあいろいろな統計からそういう指数というものがはじき出されたというふうに思うわけでございますし、全く根拠のない数字でもないというふうに理解をいたすわけでございますけれども、なかなかその認定をする場合に、実際問題として非常に困難性がありはせぬかというような心配もいたしますので、その点については一つ運営を誤らしめることのないように、取り計らっていただきたいというふうに考えます。  今日、御承知のように、財政資金によりまする融資といたしましては、今さら申し上げるまでもないと思いまするけれども国民金融公庫あるいは中小企業金融公庫、こういった両金融公庫によりまして、この私的医療機関というものはかなりの融資を受けて参っておりますことは、御承知通りでございます。しかしながら、やはりこの医療金融公庫が誕生するということになりますと、それに基づきまする恩恵と申しますか、利益と申しますか、そういったものは当然なければならぬわけですね。先ほど申し上げますように、国民金融公庫なり中小企業金融公庫、これにかなり今まで依存してきた。ところが、それでは結局、適正な医療向上普及ということをはかることができぬということで、今度の医療金融公庫が誕生するということでございますから、今までの恩恵、利益プラス・アルファというものがなければならぬということは、当然のことだと思う。ただ一般心配をいたしておりますのは、この医療金融公庫が誕生する。そのために、今まで恩恵に浴してきた国民金融公庫あるいは中小企業金融公庫の両公庫における門戸というものが非常に閉ざされるのじゃないか、圧迫を受けるのじゃないかというような心配があるわけです。そこで、医療金融公庫のワクが非常に膨大なものであって、結局、今まで中小企業金融公庫なりあるいは国民金融公庫、これは利率も高いから、ですから、それ以上のものが今度の医療金融公庫を通じて利益の供与を受けるということであれば、これはもう問題ないわけですね。ところが、こっちの方は非常にワクが小さい。それが誕生したばかりに、こっちで圧迫を受けるということになりますと、これはもう非常に厚生省努力して、この設立にいろいろ御尽力願ったと思いますけれども、実際結果的にはマイナスの面が出てくる。利益を受ける方の面から考えますと、マイナスの面があるということ、この点が一番やはり下部の人々が心配しておる点だと思う。たとえば窓口に行きましても、結局大てい、医療金融公庫ができたじゃないか、そちらの方にどうぞというようなことで、追っ払われる口実ができはせぬかというような点を一般の下部の人は心配しているわけです。そこで今後そういう中小企業金融公庫なり国民金融公庫、それから医療金融公庫、こういう関係に対してどういう処置をとっていかれるのか。この点は一般開業医師が非常に聞きたがっておることだと思うのです。そこをここで一つ具体的に明確に、医療金融公庫が誕生してよかったという気持が出てくるように、一つここで明快に御答弁を願っておきたいと思います。
  37. 黒木利克

    ○黒木政府委員 確かに御質問の点は大きな問題でございますが、この法案では、附則に書いてございますように、公庫の成立した日から一年以内に政令で中小企業金融公庫との関係をきめることになっております。厚生省の方の考えといたしましては、医療金融というものはできるだけ医療金融公庫で一元化して参りたい。ただしせっかく一般医療資金の需要というものが中小企業金融公庫なり国民金融公庫で、ある程度の実績があるのでございますから、このような実績は当然確保しなければならない。そこで結局資金量の問題になるわけでございますが、もし中小企業金融公庫なり国民金融公庫が貸し出しを渋るということになりますと、この医療金融公庫で一元的にやるのだという時期が早まることになる。私たちはそういういわば機会を持っておるわけでございますが、ただ一方中小企業金融公庫なり国民金融公庫立場としては、せっかくそういうような資金需要があり実績があるのだから、いろいろ貸付条件は違うにしても、そういうような需要があるのだから貸したい。もし貸付をしないということになりますと、従来の実績額だけ中小企業金融公庫なり国民金融公庫なりの信用から落とされる危険があるという心配があろうと思います。そこで厚生省としては、そういうような希望に応じまして、私の方はとにかく医療の資金というものができるだけ多額になればいいわけでございますから、それは中小企業金融公庫で、この政令でしかと定められるまでは、やはり従来の実績だけは確保しておってほしい。またそういう前提で三十億の初年度の資金量を定められておる関係でございますから、もしそうでなしに貸し出しを渋ることになりましたら、これは年度の途中でもその実績というものは、こちらの方の公庫の原資に移してもらわなければならぬという要求を打っております。ともかくも初年度は私の方は三十億だけしかありません。従って政令で定められる日までは従来のような実績によって中小企業なり国民金融公庫努力してほしい。こういうような要望をいたしておる次第であります。
  38. 河野正

    河野(正)委員 ただいまの要望、全く私どもも意を強うするわけですが、しかしながら現実問題として非常に困難性もあるのではなかろうか。これは今までのお役所のいろいろな行き方なり考え方、態度、そういった点を見て参りましても、非常に困難性があるのではないかという気持を強く持つわけです。そこでなるほど今おっしゃったように、医療金融公庫ができたために、中小企業金融公庫なり国民金融公庫の門戸が狭められるのみならず、閉ざされるということに対する要望はけっこうでございますけれども、しかし私どもが一番心配するのは、そういう傾向が逐次出てくるのじゃないか。その場合に医療金融公庫で一元化するということができれば非常にけっこうだと思います。ところが今までのお役所の傾向を見て参った場合に、私は非常に困難性があろうと思う。それぞれなわ張りがございますから、困難性があろうと思う。そこでそういう御要望はけっこうでございますし、ぜひとも御要望を貫いていただかなければならぬということでございますけれども、この点が下部の皆様方が一番心配しておる事柄なんです。それでそういう不幸な予想が現実になって現われてこないように今後とも十分御努力を願いたい、かように考えるわけです。  それから一元化ということも、きのうのいろいろな論議の状況を見て参りましても、医療行政の一元化という問題がございましたし、金融政策の一元化もけっこうだと思いますが、もし一元化ということになりますと、医療金融公庫法の第一条の目的が多少変わってくると思うのです。一定の水準まで医療向上普及させるということは当然必要でございましょう。今日の医療金融公庫の主たる目的はそこにあるわけです。ないところに新設をする、あるいは器械がないところに器械を設備させる、あるいは更新させる、一定の水準まで助成政策によって引き上げていこうというのがねらいだと思う。ところが今日は科学技術がものすごい勢いで進歩発展を遂げつつあるのですから、相当資金をつぎ込まなければ、先ほどいろいろ論議いたしましたように、医療内容が今日の科学技術進歩についていけぬのです。それですから医療金融公庫の一元化、医療金融機関の一元化、これはまことにけっこうでございますけれども、その場合には当然第一条の目的というものが多少変わってこなければならぬ。これは先のことですから余分のことかもわかりませんが、今までの考え方で一元化ということになると、かえって医療というものが一定の段階に集約されてくるという格好になる。下の方は上がってけっこうですが、上の方が下がってくるという結果にもなろうと思うのです。従って医療金融機関の一元化ということはけっこうでございますけれども、その場合には多少内容が変わってこなければならぬというふうに判断するわけでございます。この点についてちょっと所見を承っておきましょう。
  39. 黒木利克

    ○黒木政府委員 実は医療金融公庫が設立された背景に、私的医療機関がだんだん公的性格を強化させられるという事情がございまして、一般の市中銀行なりあるいは中小企業金融公庫なり、一般のそういうような企業に対する融資とはやはり性格が違うんだという根本の趣旨からスタートしておるものでございますから、私が申し上げました医療金融の元化というのは、そういう私的医療機関の性格がだんだん変わって参る。皆保険下におきまして公的医療機関と何らその使命において変わりがないようになりつつありますから、その意味で貸付条件が中小企業金融公庫なりあるいは一般の市中銀行とははるかに違う低利、長期の資金がやはり必要となる、こういう前提で一元化ということを申し上げたのでございます。
  40. 河野正

    河野(正)委員 ただいま私が申し上げましたような点を十分考慮に入れて将来の問題に対しては対処していただきたいということでとどめておきたいと思います。  それからもう一つ、これは下部の皆さん方が非常に心配いたしておる事柄をここで御指摘申し上げて、明快な御答弁を願って皆さん方が安心されるようにお取り計らいを願いたい、かように思うわけです。それは医療金融公庫法案目的の中に、「一般の金融機関が融通することを困難とするものを融通することを目的とする。」一般の金融機関で貸し出しのベースに乗らぬ、条件が整わぬというものに対して融通をしてやる。これはきのうも銀行局の方々と滝井委員とでいろいろ論議が繰り返されておったようでございます。これを一般の人は非常に心配しているわけです。と申し上げますのは、これはきのうもいろいろ論議されておったようですが、金融のベースに乗らぬものに対して貸付のワクが与えられるということで、実際問題として医療金融公庫は将来成り立っていくかどうか、一般論としてそういう心配があるわけです。そうすると、なるほど金融ベースに乗らぬものを公庫で救い上げるのだということがうたわれておるけれども、文字通りそれが実践されると、結局医療金融公庫は成り立たぬのじゃないか。そうすれば結果的には中小企業金融公庫なりあるいは国民金融公庫で借り得るようなケースにのみやはり融資が受けられる、こっちは金利が安いですから。そういうケースの人が金利の安い方へ押しかけていくという結果に陥りはせぬか。それは結局医療金融公庫が誕生しても、中小企業、国民金融公庫と同じことだ、結局ベースに乗るものだけが恩恵に浴するのだというような非常に冷ややかな態度で見ておる人が非常に多いということですね。これは率直に、私どもは下部の意見を申し上げるわけです。そこで、実際問題として一般の、たとえば中小企業金融公庫なり国民金融公庫、こういうところで金融のベースに乗らぬものが文字通り公庫で救ってもらえるのかどうか、こういう疑念を私どももそこに持っているのです。そういう金融ベースに乗らぬものをどんどん救い上げると償還ができなくなってしまう。そうすると原資も少ないし、結局医療金融公庫は行き詰まってしまうのではないか、私もそういう気持を持っている。これはきのう滝井委員もいろいろ論議を繰り返されておったようですけれども、この点は一般の下部の人たちも非常に疑念を持っております。この際少し明快に御答弁願って、皆さんの御了解をいただくようにしていただきたい。
  41. 黒木利克

    ○黒木政府委員 この第一条の文理解釈でございますが、一応大蔵省の係官から説明をいたしましたように、一般の市中の金融では融資することが困難なものを対象にする。従って一般の市中銀行のいわば補完的な役割を果たすというふうに文理的には読めるわけでございます。しかし、中小企業金融公庫法なり、あるいは国民金融公庫法にも同じような文言がございまして、やはり一般の金融機関が融資を困難とするものを対象としておる。従って、中小企業というものは、一般の市中銀行から融資を受けることがなかなか困難だというような意味にとらざるを得ないのでありまして、私の方では一般の市中銀行からやはり融資を受けることが困難だから、こういう公庫ができたというふうに解釈しておるのでございます。特に医療機関が先ほど申しましたように、だんだん公的性格を強める。本来医療法で営利を目的としてはならないということでありますから、営別企業とはまるで性格が違うわけでございます。従って、この一条の解釈は、そういう意味からも医療機関の大多数が社会保険を取り扱っておる限りは、営利企業とはまるで違うのであって、一般の金融べースには乗らないんだという前提で考えておるのでありまして、そういう点は、一応文理的には補完的なものだというふうな説明はできますけれども、これは医療機関の本来から考えて、医療機関の大多数が対象になるという判断には間違いないと思います。  第二の問題として、ところがやはり金融でございますから、償還はやはりしてもらわなければ困る。そこで問題は償還能力の問題になって参りますが、私の方でもこの償還の問題はいろいろ検討しておりますが、要するに貸付の金額の程度の問題、それから利率の問題、それから償還期限の問題、要するに貸付条件とこれは相関関係がある。そこで、市中銀行とか中小企業金融公庫とかの条件よりはるかに低利長期のものをやはり貸付条件にしなければなかなか償還できぬのではないかというようなことで、貸付条件を公的医療機関と同じようにということで大蔵省と折衝しておるわけでありますが、大体公的医療機関に近いような貸付条件に落ちつくことを期待しております。そうしてみますと、特に償還期限が十年以上になりますと——中小企業金融公庫も五年以内ということで、事実上は四年とか三年でございますが、問題は償還期限が長ければ、いろいろ計算しておりますが、大体は先ほど申しておきましたが、無床診療所の場合に、三十人の患者があるならば、償還ができる計算になりますので、一応そういうことで貸付条件がわれわれの期待するようなことにきまるならば、かなり均霑を受ける医療機関があるのではないか。もちろんいろいろ償還ができないというような人たちもありましょうが、そういう人たちに対してはまた別途の対策を講じなければ、医療金融公庫でこれを解決するのは、一方が金融機関でございますから、無理じゃないか。これはまた別の問題として考えるべきじゃないかと思います。
  42. 河野正

    河野(正)委員 今の後段にあったのですが、要するに、償還が不可能に陥る、そういう場合には、医療金融公庫は金融機関であるからそれで処理するわけにいかぬ、別途方法によって処理しなければならぬ。ところが実際問題として医療普及向上ということになりますと、どうしてもやはり自己資本でできないから、結局保護改策の恩恵で開設したり改善したりということですから、なかなかベースに乗せる——ということは、結局償還能力があるということです。そういうケースを求めるということはなかなか至難ではないかというような気がするのです。私自身、病院を経営しておりますが、今まで金融機関の援助を受けた体験があるのです。それからしますと、中小企業金融公庫のベースに乗っても、なかなか償還が困難だ。一応据置期間はいいけれども、償還が始まりますと、課税の対象になる。ですから、なるほど医療法では利潤を追求するようになっておらぬけれども、実際は——きょうは大蔵省おいで願っておりませんから、ここで論議するわけに参りませんが、実際には、結局もうけだということで税金をとられるわけですね。そこで非常に償還が困難になるわけです。もうけだということではなくて、借りたのを戻すという関係なら、私どもの体験からですけれども、割合うまくいく。ところがそれが償還し得るということは、それだけ利潤を得たという断定に基づいて課税処置が行なわれる。そこで非常に圧迫を受けるわけですよ。今まで中小企業金融公庫なりあるいは国民金融公庫の恩典にあずかってきたケース、これはまあまあとしても、それ以外のケースの機関——これはなるほど据置の間はまあまあ何とかなると思う。ところが実際償還が始まりますと、それは据置期間が長いというだけの話で、いつかは償還しなければならぬ。その場合に一般の——一般といいましても、中小企業あるいはまた国民金融公庫を対象として申し上げておるわけですが、それ以外のケースを救い上げるということになっても、現実の問題としてはなかなかなか問題があるんじゃなかろうか。その場合、据置が長いということ、金利が若干低いということだけですね。そういうことだけですから、実際問題として、今の中小企業なり国民金融公庫のベースに乗ったケースと、今度の場合の医療金融公庫の利益を受けるケースと、大した開きはないのですね。要するに期間が若干うしろに送られるということと、金利が低いということ。実際償還が始まると大した問題でないのですよ。これも非常に膨大な融資を受けるということになりますと、金利そのものの額は非常に大きくなるわけですから、利率は低くても金額そのものが大きくなりますから、これはいいとしても、さっき申し上げましたように、大体ある程度限度を作ることがいいとか悪いことかはいろいろ論議しましたけれども、金融のワクというのが、非常に使いわけですね。ですからその場合の金利というのは、低きに越したことはないけれども、そう大して大きな影響はないのですよ、それは考え方の相違ですけれども……。それですから、やはり私は現実の問題としては、中小企業なり国民金融公庫のベースに乗るようなケースでないと、なかなか償還も完全にできない。それは金融機関だから、この金融機関で始末するわけにいかぬ。別途の方法で始末するということになれば問題はないけれども、それがない限りは、本文に書かれておるような運営というものはなかなか困難ではないかという気がしみじみするのですが、いかがでしょう。
  43. 黒木利克

    ○黒木政府委員 私の方もいろいろ検討してみたのでございますが、中小企業金融公庫で五年以内、事実上は三年くらいになっております。私の方の償還期限をかりに十五年といたしましても、五倍なんですね。一年で返すのを五年で返すとか、あるいは三年のを十五年で返す。私は償還期限というのをいろいろ計算してみますと、非常に有利な融資になりまして、返す元利償還の額も三年と十五年では非常な違いがあるということがわかりまして、現在中小企業金融公庫でも借りられない金融を、医療機関がかなり均霑されるのではないか、大体そういう見当をつけておるのでございます。
  44. 河野正

    河野(正)委員 結局本文にありますように、業務を一部委託するわけですね。これは具体的に申しますと、いろいろな金融機関に委託をされてやられる。窓口は、市中銀行その他の金融機関が窓口になるわけです。これは実際問題となりますと、窓口では、なかなか償還期限その他でいろいろ厳格に取り扱うわけですよ。なるほど償還期間が長いということ、それはけっこうですよ。非常に助かることは御説の通りです。また金利の安いということも、助かることは御説の通りです。通りですけれども、実際の運営としては、今申し上げましたように、それぞれの金融機関が窓口になるわけですから、その場合に、申し込みが少なければいいです。たくさん来ると、その中で、どうしても今までの金融ベースに乗るようなものを引き抜いてやる傾向が強まってきやしないかという気がするのです。その点は、なるほど医療金融公庫はできたけれども、実際問題として、おれはそういう利益を享受することができぬという心配を持っておるというふうに、実は申し上げておるわけです。
  45. 黒木利克

    ○黒木政府委員 確かに御説のような懸念もあると思いますから、これは委託いたしました金融機関の信用調査の問題になると思いますが、信用調査の場合に、滝井委員からの御質問もございましたように、各医療機関の収支について大体の見当をつけまして、償還の年限が幾らなら年に幾らぐらい返せばいいというような、そういう個々の収支なり償還の計画を十分に検討した上で貸し付けをする対象をきめるような指導をして参りたいと思います。この金融公庫の設立の趣旨が、先ほども申しましたように、むしろそういうような大衆の医療関係者に対する施策というような意味も大いにあるわけでございますから、単なる金融的な関係から、償還が最も有利な、可能性のあるものから優先順位で貸すということではなしに、そういうような一応の信用調査をして、あとは先ほど申しましたようないろいろ国の医療政策に役立つようなものから順位はきめていくというようなことに、運営がだんだんなって参らなくちゃならぬと考えております。
  46. 河野正

    河野(正)委員 医療政策にのっとったケースから優先的に取り扱う、それは全くその通りでなくちゃならぬ。ところが実際の運用と申しますか、特に窓口の運用です。中央は別です。窓口の運用としては全く安易な道を選ぶと思うのです。金融機関としては代理機関ですから、そのための償還ができなくなると困るということで安易な道を選びたがると思うのです。なるほど中央では、御説のごとく、医療政策にのっとってと、それを優先的にということでございますけれども現実の問題としては、私どもが御指摘申し上げるような傾向にだんだんなっていくと思うのですよ。あなたはそうあってはならぬということですから、そうあってはならぬということで強力に指導をやっていただかなければならぬというふうに考えるわけです。  それから、これもさっきの金利の問題とも関連いたしますけれども、償還の期間の問題、据置の問題ですね。これも、公的医療機関では木造が二十年、耐火が二十五年ということになっています。ところ医療金融機関の場合……。
  47. 黒木利克

    ○黒木政府委員 要求は二十年。
  48. 河野正

    河野(正)委員 要求は二十年——最終的にはまだきまってないのですね。そこで、今再三再四申し上げてきたように、国民保険制度の今日、私的医療機関というものは公共性を帯びてきておる。これは当然、さっきの金利と同じような関係から、一つ公的医療機関と同じような形に、この据置についても御配慮の努力を願うということに、ぜひともやっていただきたいと思うのです。据置というのが非常に助かるというような御意見でございましたから、助かるなら、この際やはり公的医療機関と同様に、二十年、二十五年という方向に話を進めていただきたい。この点、次官、いかがですか。
  49. 内藤隆

    内藤(隆)政府委員 償還期限が長ければ長いほど、私的医療機関は有利になりますから、御趣旨に沿うようにぜひ大蔵当局とも折衝したい、かように考えます。
  50. 河野正

    河野(正)委員 その点は一つ、非常に抽象的に失しましたけれども、これは金利の問題とも関連しますが、ぜひそれと並行的にお願いをしておきたいと思います。  それから、時間も非常におそくなりましたので結論に参りたいと思いますが、この医療向上普及、ことに冒頭に私申し上げましたように、内容の充実——単に向上普及という形だけでなくて、それには内容を伴わなければならぬというようなことを力説をして参ったわけですが、この医療向上普及、あるいはまたそれに伴う内容の充実、そういう目的のために医療金融公庫が創設をされる、これはその通りと思う。そういたしますと、今までいろいろ論議をして参りましたように、医療金融公庫を創設される、これは非常にけっこうなことです。またそれに対して御努力願った点については私ども感謝いたします。ですけれども、いろいろ今日までこの委員会でも質疑を繰り返されて参りましたように、いろいろな問題点はあるわけですね。そういう問題点をできるだけ芟除するといいますか、除去する、善処をしていく。せっかく私的医療機関を育成しようという保護政策ですから、その実を達成してもらわなければならぬ。その達成し得るかどうかということは、今後この法案の運営いかんに私は一にかかっておるというふうに理解をするわけです。それを画一的に、機械的に、今までの実績がそうであったから、そういう実績なら実績を金科玉条のごとく心得て、画一的にこの法の運営をはかっていくということになりますと、今までいろいろ長い間委員会質疑を繰り返されて参りましたが、そういう貴重な意見というものが全然意味なくなってしまうということになろうかと思うのです。そこでそういう運営を完璧ならしめると申しますか、完璧に近いものにしていくというために、やはりいろいろ衆知を集める必要があるのではなかろうかというふうに考えるわけです。そこでこれは私の私見ですけれども、そういう運営というものを民主的にやっていく——民主的にというのは、これは一般の受益者のために設けられた法律ですから、益を受ける方の意見というものを十分くんでいただく。そうしなければせっかくの親心も意味ないわけですね。ですから、結局一般の受益者の意向というものを常に尊重しながら運営していくということが必要だろうと思うのです。これは天下り式の法案じゃないわけですからね。要するに下部の意向を尊重していろいろ努力願って誕生する法律ですから、当然受益者の意向というものがこの法の運営に常に尊重されていかなければならぬ、これは当然のことだと思う。そういう意味で、この公庫の運営についていろいろな人の意見を聞く機関を設ける必要があるのではなかろうかというような感じを強く持つわけです。それは審議会というのか何というのか、そういう名称は別としても、そういう考え方を持つわけですが、その点についての御所見はいかがでしょうか。
  51. 黒木利克

    ○黒木政府委員 医療金融公庫の運営を民主的に行ないますために審議会を設けてはどうかという意見はごもっともでございますが、従来の既存の公庫のいろいろな調査をいたしましたところが、一番最初にできました国民金融公庫にしかこの審議会がないのでございます。この国民金融公庫審議会も、いろいろ調べてみますと、従来ありました庶民金庫とか恩給金庫とか、いろいろなものが一緒になりまして、それの清算事務等がありまして、そういうことでこういう審議会を設けたというようないきさつがありまして、実際に国民金融公庫審議会の運営の実情を見ておりますと、ほとんど開かれてもいないし、実際は開店休業みたいな格好であるということがわかりました。そこで一体なぜこういうようなことになるかということを検討したのでございますが、要するに受益者側の代表が一本にまとまればいいのでございますが、たとえば医療金融公庫みたいに医師、歯科医師、薬剤師、助産婦と、いろいろこういう業種がございまして、その利害がなかなか一致しないような部門におきましては、特にまた金融機関が金融機関としての独立性といいますか、純粋性を保つためにも、こういうような公庫の具体的な運営についてはやはり審議会を設けることはあまり適当でないというような判断に達したのでございます。従いましてこの法案では審議会の規定は、従来の既存の公庫法の例にならいまして設けておりません。ただ公庫の運営を民主的にあるいは効果的ならしめるためには、やはりいろいろ工夫をしなければならないと思います。国会の御審議公庫運営の大綱と申しますか、あるいは先ほど来御意見のございました重点主義でいくべきか、あるいは網羅主義でいくべきか、その辺の方向を国会の御審議でおきめ願いまして、そういうものによって運営の大綱というものはきめて参りたい。かつ実際に公庫がスタートいたしまして、これが運営を民主的にやるためには、正式にそういうような機関はありませんけれども、受益者の関係の医療関係の団体なりあるいは県なりというものの意見は十分に反映するような運営をやって参りたい、かように考えております。
  52. 河野正

    河野(正)委員 従来の中小企業金融公庫等における諮問機関の存在価値というようなことについて率直に述べられたのですけれども、私は若干違う志見を持っております。と申しますのは、中小企業金融公職なり国民金融公庫なりと今回の医療金融公庫というものはおのずからその目的なり使命というものが違うわけですね。というのは、中小企業金融公庫なり国民金融公庫から漏れたケースがこの医療金融公庫によって救済されるというようなことが目的の第一条にうたわれておる。そういたしますと、中小企業金融公庫の場合にそうであったから、そこで今度の場合もそうであるというようなことには私はならぬと思うのですね。今までそうであったけれども、それに対するいろいろな反省から今度あらためて医療金融公庫が誕生するということになるならば、私は医療金融公庫の場合には独自な立場からいろいろな機関、あるいは委員会でもけっこうですが、そういう問題があらためて検討されなければならぬ。過去の実績がそうであるからこうであるというわけには参らぬ。というのは、中小企業金融公庫の場合と今度の医療金融公庫の場合とはそもそもおい立ちの目的が違うのです。それですから、そういうおい立ちの目的に即応するような立場で物事を判断をし、考えていかなければならぬ、こういうことは当然なことだと思うのです。それからもう一つは、それぞれ医師、歯科医師、薬剤師というような関係があって利害が一致しないであろう——利害が一致しないというようなことがあればあるだけ、私はやはり民主的にやるためにそういう一つの調整機関なり諮問機関というものが必要でなかろうかというような考え方を持つわけです。利害一致すれば何も要らないわけですね。一致しない場合にそういう機関がないと、力関係で独善的に運営されはせぬか、非民主的な傾向を帯びてきはせぬかというような気持を持つわけです。そこで今おっしゃった御意見と全然別な考え方から、私はそういう機関というものが必要ではなかろうかという考え方を持つわけです。あなたの方は、それだから持つべきではなかろうというのですが、私どもはそういう理由だから持つべきではなかろうか、こういうふうに考える。それの方がどうもこの公庫を民主的に運営する意味において意義があるのではなかろうかというような気持を持つのですが、この点局長さんいかがですか。
  53. 川上六馬

    川上政府委員 ただいま次長から申しましたように、一応金融の審議をやるために特別な機関を設けないで、国会の御意見のあるところ、あるいはその他関係団体の御要望などを十分に聞いて、事実上御要望にできるだけ沿うようにやっていきたいと考えておるわけであります。その点は公正にやるつもりでございますし、信用していただきたいと思います。
  54. 河野正

    河野(正)委員 公正という言葉は非常にいいのです。ところがどれが公正かということになると、それぞれの立場によって違ってくると思うのです。そういう場合に私どもは、やはり衆知を集めて、その中から公正だという方向をつかんでいった方が最も公正ではなかろうかと判断する。ただ川上局長が公正だとおっしゃっても、信用はしますが、たまたま一方的な力の関係で公正だという断定をされても困るし、さっき局長がおっしゃったように医師、歯科医師、薬剤師それぞれの立場があって利害が一致せぬだろうという心配があればあるだけ、民主的に調整する機関が必要ではなかろうかという気持が強くするわけです。しかしそれは今局長がおっしゃったように、医師会なり県なりあるいは特に国会という御意見もございましたが、そういうところ意見を十分に尊重するいうことであるならばそれでけっこうだと思いますけれども、そういうことも必要ですけれども、やはり下部の意思なり意見を尊重する必要があるんじゃなかろうか、やはり受益者というものは一般の下部の人、ことに今までの力がなかった人——力があるないの考え方もいろいろございますけれども、もちろんそういう力がなかった人に今度の保護政策の手が伸べられなければ意味がないわけです。力持ちは、今までこういう保護政策を受けぬでも、今の金融ベースに乗り得る力がある人ですから、そういうことになりますと、力のないという言葉は適当であるかどうかわかりませんけれども、そういうケースの人々の意見が反映する方向というものが当然とられてしかるべきじゃなかろうか。それの方がより民主的な運営のあり方じゃなかろうかというような考え方を持つわけです。しかし十分国会の意見も聞く、あるいは医師会の意見も聞く、地方団体の意見も聞くということであるならば、それはある程度目的を達する。しかしながら、そういう私ども希望なりほんとうの目的を達するゆえんのものは、やはり下部の意思を尊重する、下部の意思が反映する機関を設けていただくということでなかろうかというように考えるわけです。しかし、いろいろ各機関の意見を尊重するということでございますならば、この際一応承了することにやぶさかではございませんけれども一つその点は十分含んで、一般の受益者たるべき下部の人の意見を反映せしめる、それは医師会を通じて反映するか、地方団体を通じて反映するか、国会を通じて反映するか、間接的にはそうなりましょうけれども、その点は十分おくみ取り願って、将来できるだけ公庫の運営の民主化に努力するという方向で進んでいっていただきたい、こういうように思うわけです。この点は最後ですから、一つ次官から所感を述べておいて下さい。
  55. 内藤隆

    内藤(隆)政府委員 御趣旨の通り医師会なりあるいはまた各団体あるいは国会の意思を十分尊重して、片寄った運営の仕方をやらぬように考えております。
  56. 永山忠則

    永山委員長 午後二時まで休憩いたします。     午後零時四十四分休憩      ————◇—————     午後二時三十七分開議
  57. 永山忠則

    永山委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  労働関係基本施策に関する件について調査を進めます。質疑の通告がありますので、これを許します。赤松勇君。
  58. 赤松勇

    ○赤松委員 質問に先立ちまして委員長にお願いしておきたいことは、昨日来委員部を通じて運輸大臣並びに国家公安委員長の出席を要求したのでありますけれども、運輸大臣は何か連絡がつかないというような無責任、そして国家公安委員長は先ほど気分が悪くなった、病気のゆえをもって参議院から帰っていったようであります。これは私は非常に無責任だと思うのです。現に三池におきましてはあのような血みどろなストライキが繰り返されておる。しかも昨日は全学連に対しまして許すべからざる弾圧を加えておる。そういう中で公安の最高量の責任者である国家公安委員長が急に、質問を前にいたしまして病気を理由に帰っていくということは無責任もはなはだしいと思うのです。従って私は国家公安委員長並びに運輸大臣に対する質疑は留保しておきます。従ってこの次の委員会におきましては、委員長は責任を持ってこの二人を本委員会に呼んでいただきたい、こう思います。  まず最初に警察庁長官にお尋ねをしたいのでありますけれども、労働争議というものは一般の争いと違って、特に憲法二十八条によって保障されておるところの団結権、団体行動権の行使である。つまり一般の市民法から独立をして、特に労働者が憲法でもってその行動権が保障され、あるいはストライキの権利が認められるということは。言うまでもなく。資本家階級の金力、権力に対する弱い労働者の立場を、団結権を保障することによって認めていく、これが近代憲法精神であり、労働法の精神であると思います。従って、労働争議に国家権力が介入する場合には、あくまでも無頼漢どものけんかと違って、特に憲法によって保護を受け、労働法によって保護を受けているという立場から、きわめて慎重に、つまり警察の中立性を保持しながら、いやしくも国家権力の介入によって労働者の団結権が破壊されることのないような措置を講じていくことは、これは当然のことであると思うのです。三池の争議に関して、その争議の性格、発生の原因及び現在の進行の状況、そういうものを概括して、この争議に対する警察庁長官——私は国家公安委員長に聞きたかったのでありますけれども病気のゆえをもって先ほど退院したようであります。この点については私は後に労働大臣にもお尋ねいたしますけれども警察庁長官見解をこの際承っておきたいと思うのです。
  59. 柏村信雄

    ○柏村政府委員 労働争議等につきましては、労働者に団結権が保障され、ストライキ権が確保されておるということ、これがまた現在の社会において憲法上当然に強く認められる性格のものであるということは、ただいま赤松委員のお話の通りに私どもも理解いたしておるわけでございます。従いまして警察といたしましては、労働争議そのものについては絶対介入しない。常に警察の中立性を保持して、公正な立場に立って事に臨むということは、私ども終始頭に置き、また地方の警察官に対してもそういう趣旨で指導いたしておるわけでございます。ただその争議に伴いまして暴行傷害等の不法事犯が起こるということに相なりますれば、これは当然に警察が取締まるという立場にあるわけでございまして、そうした不法な行為については警察としてこれまた厳正に取り締まりを実施して参るという方針を貫いておるわけであります。
  60. 赤松勇

    ○赤松委員 長官の答弁は、私の期待した通りに、それが刑事上の事犯を発生しない限り、警察は中立の立場を保持すべきである、こういう御回答でございまして、私はこれは当然のことであると思うのであります。  そこでお尋ねしたいのは、例の四山事件の発生の原因でありますけれども、すでに現地に曽我参事官を派遣されまして、つぶさに調査をされたと思うのであります。四山の事件は、これは第一組合が第二組合に向かって暴力を加えた、あるいは脅迫をしたりした結果発生したものでないことは御承知通りであります。これは会社側が暴力団を雇って、その暴力団が先頭になって、四山正門にピケを張っておる第一組合員に対して凶器を持って突撃をしてきた。その際に会社側の方は相呼応して、へいにくぎずけにされた第一組合のピケ隊に対して、へいの中からつけもの石大の大きな石を盛んに上から投げつけた。私は現場においてこの石を見たわけです。その際に警察の方は——本来第一組合と第二組合、三井鉱山と労働者、こういう労使の紛争に暴力団が介入するということは、言うまでもなくこれは違法な行為であります。従ってその際になぜ警察の方がその暴力団を取り締まらなかったのであるか。すなわち私が第一に聞きたいことは、あとで三川の事件も聞きますけれども、四山事件の方は暴力団の暴力によって発生した。そしてやむを得ず第一種合のピケ隊は、からだを守るために若干の抵抗はしましたけれども、多くのけが人がでた。いわゆる正当防衛の行為であった。あの事件は、先頭に立った暴力団の手によって挑発されたものである。この点について長官はその事実をお認めになりますか。
  61. 柏村信雄

    ○柏村政府委員 去る三月二十九日に起こりました四山事件というものは、私どもも非常に遺憾な事件と考えておるわけでございます。元来あそこに参りまして暴力をふるった団体——諸団体が入りまじっておったようでありますが、これはその日まではいわゆる情宣活動を主としてやっておった連中であります。当日あそこに至る前に阻止し得なかったということは私も非常に遺憾に思うわけでございますけれども、検問所をわずか六、七名の警察官の制止を聞かずに突破していくというようなことで、事態を未然に、部隊を配置して取りしずめることができなかったということは非常に遺憾なことに存じますけれども、あのときの警察として、もちろん万全とは申しませんが、非常な過誤があったために起こったというふうには私も見たくないのであります。  そこで、あの事件が起こりましてから相当多数の関係者の逮捕をいたし、ただいま鋭意この捜査を続行中でございます。また会社側でこれに援助をしたと見られるような情報もございますので、それらについても捜査を進めておるわけでございます。ただ会社側があの暴力団を雇ってああいう行為をさせたということは、現在までのところ確認するに至っておりません。そういうことがあったかどうかということは今後の調査、捜査によってはっきりする問題だと思いますが、現在はそう断定できない状況でございます。この点は先ほど来申し上げましたように、非常に重大な事柄でございますので、警察といたしましても鋭意捜査を続けておる次第でございます。
  62. 赤松勇

    ○赤松委員 今御答弁のように、四山の事件は警察官の挑発によって起った事件ではない、これは私も認めます。現地に参りましてつぶさに調査いたしました。ただその場合に、警察の方が暴力団に対する十分な取り締まり対策を講じていなかったという手落ちについては、これは免れることはできないと思うのでありますけれどもそのことは別として、ただいま長官は明らかに暴力団がしかけて発生した事件であることをお認めになりましたから、次に三川の事件について申し上げてみたいと思うのであります。  三川事件につきましても同様であります。ここに私は現場の写真を持って参りました。暴力団がまさにあいくちを抜こうとし、それから暴力団がこん棒を持って一せいに第一組合のピケ隊になぐり込みをかけております。そうして第一組合の方は全然武器も何も持っておりません。しかし整然たるピケ隊なんです。法律で許されたピケを張っているわけであります。これを一つごらんいただきたいと思うのであります。今検問所とおっしゃったけれども、四山は検問所でなしに、検問所は三川のことなんです。三川のあの四山の引込線のところに検問所があったわけです。これは五、六人の警察官がおったわけです。しかもこのトラックの上にこの通りこん棒をちゃんと積んでいるのです。これは久保君が殺される寸前です。そして九州の何々組、山代組その他の親分衆は——この写真を長官に見せますが、これが親分衆がタクシー、バス、トラックにそれぞれ分乗して凶器を満載して現場に向かう写真です。それからこれは社宅で生産党の党員が武装して、写真にありますまき割りを子供や女にふるって乱暴を働いた。それを警察官がうしろから抱きとめている。しかし暴力団はその場で釈放になっている。逮捕されていない。これは東京から行った生産党であると思いますけれども、その通り鉄カブトで武装している。  当時新聞がどういうことを言っておるかといえば、これは三月三十日付の読売新聞ですけれども、大牟田から現地の記者が電報を打って参りまして、「通り一ぺんの警戒」、「凶行の際もバスから警察官は下りず」、こういう見出しです。その見出しで「大牟田発、三池めがけてぞくぞくはいり込んでくる暴徒に対して警察当局の処置は手ぬるいと非難の声がたかまっている。警察当局は二十八日日没から大牟田市内九か所、荒尾市内三か所に一か所七人から十人の警察官を配置、検問所を作って警戒に当たったがその警戒は通り一ぺんだったようだ。山代、寺内両組が集団でトラック、バスを連ねて市内パレードをしたときも大牟田署の警戒はジープ一台という粗末さ。しかも事件の現場は福岡、熊本県境で熊本県側の荒尾署にひきついだあとジープは引き返しているが事件は県境からわずか五百メートル離れていただけ。そのうえ荒尾署管内ではパレードの最後尾についていたバス一台の警官五十人は事件のとき」、事件というのは、久保君が殺されるとき、今あいくちを抜きかけているでしょう。警官五十人は事件のときバスに乗ったままでいた。やっと現場にかけつけたのは事件後ひき続いて起った乱闘騒ぎになってからだった。しかもこの暴力団の一行が四ツ山坑の南門で事件直前にピケ隊にすごんでいたときに、危険を感じた第一労組員が荒尾署に警官の増員を要請したが間に合わず、しかも警官隊から見えるところでこの殺人、乱闘事件が起きたのだ。」こういうように当時の新聞は、警察の怠慢を指摘しているのですが、この事実はお認めになりますか。
  63. 柏村信雄

    ○柏村政府委員 先ほども申し上げましたように、事前に警察官を配置して未然にあういう事態を防ぎ得なかったということについては、非常に残念に思っておりますけれども、あの際は一番後尾に警察のバスがついていったというふうに聞いておるわけでございまして、先ほどお話のように十数台のバス——ある程度間隔もだんだん詰まったでありましようけれども、十数台のバスということになりますと、そこから警察が現場に到達するについても、若干の時間というものはかかるわけでございます。従いまして、一瞬にして起こった事案というものを防ぎ得なかったということは、あのとっさの場合としては私はやむを得なかったのじゃないかと思います。
  64. 赤松勇

    ○赤松委員 長官は現場にいないからわからないのです。私は現場で見ておったからわかる。それは五十人の今の警察官はバスに乗ってちゃんと南門の久保君の殺された現場におったのです。その手元にある写真は、こん棒を持ってピケ隊におどりかかっているでしょう。その中にいないと言えますか。ちゃんとバスの中におったんだ。その犯人が逃げるときに、第一労組が追っかけて犯人をつかまえた。そうしたら一警察官がやってきて、これはおれが預かるからと言ってそのまま行かしておる。そういう事実がある。警察官は現場におるんですよ。あなたは間に合わなかったと言っておるけれども、そうではない。その答弁は事実とは違います。曽我参事官はどのように報告しておるのですか。そのことを法務委員会で曽我参事官も認めたじゃないか。もう一ぺん答弁しなさい。
  65. 柏村信雄

    ○柏村政府委員 私が申しましたのは、全然おらなかったということを言ったわけではないのであって、それを十分に制止するだけの部隊が事前に配置されていなかったということを申し上げておるわけであります。
  66. 赤松勇

    ○赤松委員 二百人の暴力団ですよ。二百人の暴力団に対して五十人の警察官がおる。五十人の警察官でもって二百人の暴力団に対して、現にその場で現行犯でもって犯罪を犯しておる、それを十分食いとめることができませんか。あるいは不十分でも、若干でもそれをとめることができないのですか。いかがですか。
  67. 柏村信雄

    ○柏村政府委員 十分とは申せないかもしれませんが、阻止する努力はすべきものと思います。
  68. 赤松勇

    ○赤松委員 阻止することが当然ですよ。その努力をすべきことは当然ですが、努力をしていない。現にそのことに対しては警察庁長官としてどのようにお考えですか。現にそのために人が一人殺されておるんですよ。
  69. 柏村信雄

    ○柏村政府委員 久保さんが殺された時間というものが、非常に長くかかった後であるというふうには私は聞いておらないのでありまして、私は先ほど申しましたように、警察官として十分の措置をとったということは申せないということで遺憾の意を表した次第でございまして、私も警察官を事前に配置し、また現場におって十分な働きをしたというふうに申し上げたつもりはございません。不十分な点はもちろんあったと思うわけでございます。
  70. 赤松勇

    ○赤松委員 不十分なということは、その五十人の警察官が二百人の暴力団に対していろいろそれを阻止するために、制止するために努力した、しかしそれにもかかわらず、久保君が殺されたという場合のことをいうのです。全然警察官は傍観しておるじゃないですか。不十分だと言えますか。不十分ではなしに、全然傍観しておる。手を出していない。写真にはっきり出ておるじゃありませんか。どうして制止をしないのですか。不十分どころの騒ぎではない。全然傍観しておるじゃありませんか。もう一ぺん答弁していただきたい。
  71. 柏村信雄

    ○柏村政府委員 そのぶつかったときには、駐在所におりました四、五名の警察官が中に割って入って阻止すべく努力したわけでございますが、これらは全部けがをしている状況を聞いておるわけでございます。従って警察が全く手をこまぬいておったというふうには私は考えておりません。
  72. 赤松勇

    ○赤松委員 それは暴力団が、もう現行犯でもって暴力をふるって第一組合員におどりかかって、終わったときに初めて出てくるんですよ。だからあなたの手元の写真をごらんなさいよ。こん棒をふるってテントの中にいる第一組合員におどりかかっておるでしょう。そこに警察官の姿は一人でもおるか。しかも久保君は非常に温厚な男で、五人家族を残して死んでおるのです。だから三池の久保君の葬儀のときに、炭協の代表が言ったのだ。本来国民の命を守るべき警察官の前で久保さん、あなたは殺された、こういう弔詞を読んでおる。これは長官、私はあなたの責任をもちろん追及しなければならぬ立場におるけれども、当時のあの状態としてはある程度やむを得ない点も私はあると思う。そこで率直に不十分であったというのではなしに、確かにそれは手抜かりがあった、自後このようにして暴力団の検挙をやっておるということを一言言ってもらえば、死んだ久保君も草葉の陰で喜ぶでしょう。あなたのように、やったことはやった、五人警察官がそのためにけがしておる、そういうような事実に相違する答弁をしてもらっては困るのです。この点もう一度はっきり答弁して下さい。
  73. 柏村信雄

    ○柏村政府委員 久保さんの死ということについて私は心から哀悼の意を表するものでございまするし、ああいう事態が起こったことについて、先ほど来申し上げておりますように、私は非常に遺憾に思っておるわけでございます。従いましてこれについての捜査というものをもちろん事後でありますけれども、徹底してやりますとともに、暴力団等について十分の警戒をとって現在に至っているわけでございます。
  74. 赤松勇

    ○赤松委員 四山、三川両事件は暴力団の挑発によって起きた事件であるということを警察当局は認められましたので、私は次の質問に移りたいと思います。  その後のいわゆる強行就労に対する警察官の態度につきまして申し上げてみたいと思うのでございますけれども、その前に一つだけ明らかにしておきたいことは、これは党の決定でありまして、ここで申し上げておきますが、実は公安委員長が来ればこの点についても質問したかったのでありますが、速記録によりますと、武藤武雄君が本会議におきましてこういうような発言をしております。ピケ隊で入院した者はわずかに三名だった、それから新労組側は職員を合わせて三十六名の多数に及んでいることでも明らかであります。ピケ隊の三名も前後の事情から云々ということがあるのでありますけれども、私はこの際事実を明らかにしておきたいと思うのであります。それは第二組合の入院が三十六人、第一組合の者は三人、こういうようにおっしゃっておりまするけれども、実は第一組合の方は私どもが調査をいたしました結果、あるいは警察もこれを十分に調査をいたしまして、その結果、昨日法務委員会における板川君の質問に対して警察側もその事実を認められたわけでありますけれども、第一組合は三名でなしに負傷者は百十名、それから五十八名入院しておるのであります。従って武藤君の本会議における質問は事実に反しております。この点については、昨日の法務委員会で警察当局も認められたと思うのでありますけれども、もう一度この点について警察当局の調査の結果について一つ答弁をお願いしたいと思います。
  75. 柏村信雄

    ○柏村政府委員 二十八日に起こりました三川事件は二つに分けて考えられるのではないか。すなわち、先ほどお話しになりましたピケ隊と新労組とのぶつかりという問題と、それから新労組が入ったあと旧労組がこれに対して暴力をしかけていったという二つの事案として分けて考えられるのではないか。そういうことであと詳細もし必要ならば警備三課長から申し上げたいと思いますけれども、そういうことで双方に多数の負傷者を出しておるわけでございまして、これにつきましてもそのピケ・ラインにおける暴行傷害事案、それから構内においての暴行傷害事案というものをできるだけ捜査をいたしまして、目下関係者の逮捕等を進めて捜査を続行いたしておるような状況でございます。
  76. 赤松勇

    ○赤松委員 昨日法務委員会におきまして警察当局は明確に答弁したのでありますけれども、あなた自身わかっていなければ至急これを調査いたしまして、本委員会において正式に答弁されるかあるいは委員長の手元までその調査の結果について報告をしてもらいたいと思います。  その次にお尋ねしたいのは、十八日発生いたしました三川事件です。十八日に発生いたしました三川事件につきましては四月十八日の朝日新聞の夕刊によりますど、大牟田発の電話でもって「三井三池鉱業所は十八日午前四時、第二組合員百五十三人を三川鉱に強行入構させた。」「同鉱正門には第一組合側がピケを張っていたが、第一組合ではこの強行入構を全く予想していなかったためピケも手薄で、正門前から約二十メートル離れた三井病院三川分院通用門前にバス三台で乗りつけた第二組合員は約三千人の警官隊の人がきに守られ、わずか二分間で全員構内に入った。」こういうふうに言っております。そのときにピケを張っておった人数はわずか十数人であります。その十数人のピケ隊に対して三千人の警察官が第二組合の諸君を人がきで守って構内に入れた。あなたは先ほどピケの問題について、一般市民法と労働法の相違、特に労働者の団結権団体交渉権について憲法二十八条で守られているゆえんについてもあなたも私も見解が一致している。だとするならば、十数人のピケ隊に対してなぜ三千人の警察官が要するのか、これは権力の介入でなくて一体何ですか。本来言えば、まず第一に警察のとるべき態度、中立的な立場から言えば、かりに強行就労をする場合も会社の要請などがあって、第二組合を守って強行就労をさせるという場合には、たとえば事前に第一組合に対して何時何分強行就労をやるという通告をする。なぜ通告をする義務が警察にあるかといえば、説得の時間が必要なんです。最高裁の判決でも、高裁の判決でも、地裁の判決でも、労働法によっても、憲法によっても、説得の自由は認められているじゃありませんか。しかも時間も何も知らさないで、説得の時間も余裕も与えないで、しかも十数人のピケ隊に対して、いきなり三千人の警察官にわずか三百名ぐらいの第二組合員が守られてそれで強行就労するということは、明らかにこれは憲法違反である。それから労働法によって保護されている労働者の権利をじゅうりんするものだ、こう思うのです。これに対してあなたはどう思いますか。
  77. 柏村信雄

    ○柏村政府委員 十八日の三川……。     〔発言する者あり〕
  78. 赤松勇

    ○赤松委員 ちょっと待って。委員長、まじめに僕は質問しているのです。いつでも大坪君が質問しているときだって僕は妨害したことはないのだ。このあと駐留の問題で武藤君の質問どもあるのだから、そういうようなやじで妨害するのならば、これは質問できませんよ。だから一つ制止して下さい。それは社会党の方も注意します。
  79. 柏村信雄

    ○柏村政府委員 本月十八日三川鉱におきまする新労組の就労は、これは執行吏からの要請に基づいて警察が出たわけでございます。もちろん会社といたしましては、四時ごろに入構させる予定をしたようでございまして、三時ごろ警察側も、四時ごろ入構させるつもりであるという通報を受けたわけでございます。あのときの状況を達観してみますると、わずか二十日前にああした二十八日の非常な流血の惨事を見た後でございますので、両者の衝突ということによって、また不測の事態が生ずることを警察としては十分警戒すべきであるという判断に立ったものと思うわけでございます。ただいま三千人というお話でございますが、大体あのとき警備に当たった者が千五百名、実際に新労組についていきましたのはたしか一個中隊程度でございます。そうして十三名の組合のピケに対して、これを排除するために行ったというのではなくて、途中あるいは現場においてどういう事態が起こらないとも限らないというようなことから、そういう事態に対処するために警察が出動したということでございます。実際の問題としては、通用門から何らの抵抗なしに新労組が入ったわけでございまして、これについて警察としては持別にどうこうということでなしに、その入るまでの間における不測の事態の発生を防止し得るだけの警備力を持っておったということにすぎないのでございます。現に新労組が入構するという動きを察知して、旧労組においては花火等を打ち上げ、あるいは伝令を飛ばす等して、その後相当数の旧労組員が集まってきておるわけでございまして、あの事態において平和的な説得、これは今赤松さんのお話のように、ピケというものの団結権の保持であるとかあるいは平和的説得ということが当然認められるべきことは私も全く同感でございますが、そういう域を越えて衝突するおそれは——幸いにしてあのときはそういうことがなくて済みましたけれども、もし時間的なずれが生じでもすれば、そういうおそれは多分にあったという判断は、私は現地警察の情勢判断として誤っておらなかったというふうに思うわけでございます。また説得する権利はあるわけでございますが、必ずしもその説得を一々聞かなければならないという義務は私はないと思うのであります。
  80. 赤松勇

    ○赤松委員 これは非常に重大な問題だと思います。それであのときの新聞社の写真を見ますると、十数名のピケ隊は板べいのところで非常にたくさんな警官に取りまかれて、押えつけられてしまった。そのすきに中へ入っているわけですけれども、今聞けば、十三人のピケ隊に対して千五百人の警察官を動員した。これでも労働者の団結権や団体行動権をじゅうりんしていないと言えますか。しかもあなたは今、時と場合によれば説得の自由を与えなくてもいいのだと言われたが、これは非常に重大な発言であると思うのです。これは労働大臣がおればこの点をはっきりさせておきたいと思うのですが、労政局長どうですか。この点について労政局長見解一つ承りたい。
  81. 亀井光

    ○亀井政府委員 ピケの限界が平和的な説得を越えるものでないことは先ほど来申し上げた通りでございまして、説得の機会というのが、現実にその事態においてどういう限度までが機会であるかどうかということは、現実に私その場の事情を承知いたしませんので、警察庁長官の御説明が説得を聞かなかったのか、あるいは聞く余裕がなかったのか、そういう点につきまして判断はつかないのでございますが、一般論としましては、そのピケが合法的なピケであれば、そういう合法的な行動について一応耳をかすということは、これは一般論としては当然なことだと思います。ただし今の現実の問題につきましては、私は現場の事情を知りませんので、具体的に判断はいたしかねると存じます。
  82. 赤松勇

    ○赤松委員 十三人のピケ隊に対して千五百人の警察官を動員している。これは長官自身はっきり答弁したのだから、労働省の方はそれに対してどう考えておるか。説得の時間も何も与えていないじゃありませんか。警察の権力で説得の自由を失っているじゃないか。これに対してあなたはどう考えるか。
  83. 亀井光

    ○亀井政府委員 十三人対千五百人という数だけの問題ではございませんで、その場のいろいろな事情、条件というものを見ませんければ、はたしてそういう機会を与えなかったかということは判断できかねるわけでございます。
  84. 赤松勇

    ○赤松委員 本来労働者を保護すべき労働省がそんなばかげたあいまいな見解ではだめだと思います。これは労働大臣とよく話をして、もう一ぺんよく当時の現場の事情について労働省は責任を持って調査して報告して下さい。  そこで私は長官に対して申し上げたいのだが、あなたは警察の立場からものを見ているわけでしょう。しかしわれわれとしてはあくまで労働法という法律の立場からものを考えているわけでありますけれども、当時現場の見取図があったが、あなたはあとから第一組合のピケ隊が応援に来るということをおそれて、多数の警察官を動員したんだ、こう言っているけれども、あの当時の状況は、この三川のかぎの手になった門のところへ警察官をどんどん大量に投入して全部遮断してしまうんです。これじゃ説得も何もあったものじゃない。炭労大会までは第一組合と第二組合ちゃんとパイプが通じておって、ある程度話し合いをしておった。向こうの組合長菊川君それから第一組合の宮川支部長双方である程度の話し合いはしておった。炭労大会以後警察が全面的にぐっと出てきて、そういう話し合いの余地が全然なくなってしまった。とにかく中へ入るといえば、無条件に警察の方は第二組合員を擁して、持っている権力を駆使して一拠に第一組合を排除して、強行就労させる、そういうような状況なんです。三友炭鉱事件の昭和三十一年十二月十一日の最高裁の判決は「組合が争議権を行使して罷業を実施中、所属組合員の一部が罷業から脱落して生産業務に従事した場合においては、組合は、かかる就業者に対し口頭又は文書による平和的説得の方法で就業中止を要求し得ることはいうまでもないが、これらの者に対して暴行、脅迫もしくは威力をもって就業を中止させることは一般的には違法であると解すべきである。しかし、このような就業を中止させる行為が違法と認められるかどうかは正当な同盟罷業その他の争議行為が実施されるに際しては特に諸般の状況を」諸般の状況というのは十三対千五百ですが、「考慮して慎重に判断されなければならないこともいうまでもない。」それから新聞印刷事件で昭和三十三年七月三十日、大阪高裁ではどういうことを言っているかといえば、「ピケッティングにおける実力行使としてのスクラムは、スト破りを受けとめる限度すなわち消極的、防衛的なものであるかぎり、違法とすることはできず、また身体を捕えたり、引っ張るような積極的な実力行使であっても、使用者側のスト破りまたはピケ突破のちょう発的行為に対抗して、ピケラインを防衛するため必要な最小限度のものであるときは、違法性がないものと解すべきである。」これは大阪高裁の判決です。さらに新聞印刷事件で、大阪地裁が昭和三十三年六月十九日にやはり同じような判決をしておる。それから古河雨龍炭鉱事件、これについては、「労働組合のなす争議行為の態様なるものは、使用者の施す対抗策との折衝面に於て相対的に流動してこれに対抗せんとするものであるから、この具体的な態様を無視して、常に固定的に争議行為の手段、方法の正当性の範囲を限ろうとする考え方は、往々労働組合の側にのみ不利益を強いる結果となり、労働組合法第一条第一項に明定する斯法の根本理念であり、且つ基本的な目的である労使対等の立場を失わしめ、労働組合の団結権を不当に圧迫するおそれが多分にあると云わねばならない。」さらに第二港湾司令部の横浜輸送陸上部隊事件、昭和二十八年十二月二十四日の横浜地裁の判決は、「ピケ・ラインの組合員が非組合員の就業を阻止すべく、ピケ・ラインにおいて、非組合員に対し、平和的に説得することは当然許された権利である。しからば、この権利を無視し、説得する余裕もおかせず、ピケ・ラインを強引に突破せんとする非組合員の行為に対し、それが正当であるからとの理由で、ただ拱手傍観するよりほかないことを組合員に期待することは不可能であるから、かくのごとき場合、」——これは三池の場合ぴったり当てはまる。「かくのごとき場合、説得の余地を作るためにのみする組合員による或程度の妨害行為もピケ・ラインに対する現在の危難を避けるためやむことを得ざるに出た行為として許されてしかるべきである。」これが横浜地裁の判決なんです。そうするとあなたがさっき言っているように、ある場合には説得の余地を与えなくてもいいという理論はどこからも出てこないじゃありませんか。(「そういう警察庁長官じゃ大へんだ。」と呼ぶ者あり)これでもってもしあなたがわからなければ、さらに私はこの大阪地裁の決定の判決文の重要な点について、あなたの認識を改めさせるために、もう一度くどいようであるが言っておく。それは「組合のストライキ中といえども、使用者たる会社が組合の統制外にある従来の従業員を使用してその操業を続行することは、それが著しい協約違反又は信義則に反する行為と認められない限り権利の行使として許されなければならない。一方組合においても、これに対し集団的」この点は三池においては、第二組合の就労ということについては、今争議が不利益になるからそうしているのであるけれども、これは会社があのロック・アウトを解いて団交に応じて、そうして全体として一つの団体交渉権として会社が誠意を持って争議を解決するという態度を示すならば、いつでもピケは解くとこう言っている。「一方組合においても、これに対し集団的ピケッティングによりストライキ中の会社の操業に関与してくる者に対し言論による説得乃至団結による示威の方法によってこれを阻止し会社の業務運営に打撃を加えることは、これまた組合に与えられた争議権行使の正当な範囲に属し、またその範囲に止まることが好ましいことはいうまでもないが、実際上右の如き単純な説得、団結の示威のみでは殆んどその効果を期待し難い争議の現状よりすれば、右説得・示威に止まらず、その補助手段として必要な最小限度の有形力の行使を絶対に排斥するものでなく、争議という力の対抗関係に照し、社会観念上使用者側も忍受するが相当であると考えられる程度のものであれば、これを違法視して仮処分の保護を求めるに値しないものというべきである。」こういう場合には裁判所は仮処分をやってはいかぬ、こういうことを言っているのだ。さらに「争議継続中はこれをとり巻く諸々の具体的事情に応じて、時々刻々労使双方の力関係に微妙な変化が生ずる性質のものであるから、偶々労働行為に際し組合のとった手段の中に正当性の限界を逸脱していると認められる部分がかりにあったとしても、仮処分によってその禁止を命ずる必要性があるかどうかは別個に慎重な考慮を要するところである」こういっているのです。たとえば違法性があると認められる場合でも、裁判所が仮処分を出す場合には、これは別個に慎重な考慮を要する、こう言って、いやしくも労働争議に対して仮処分を出す場合には、このような配慮の上に立ってやれということを裁判所の判決は言っているのですよ。あなたは行政官でしょう。裁判所の判決を尊重することは言うまでもないはずです。われわれはこれを行動の基準にしなければならないわけです。この裁判所の判決の中にどれ一つとして——説得の余裕と時間を与えようということはもう第一、説得をする余裕と時間を与えるばかりでなしに、かりにそれが逸脱した違法な行為であると思われる場合においても、仮処分は別個の問題である、仮処分を出すという場合には、裁判所は非常に慎重に考慮をしなければならぬ、といって労働者の団体行動権については、このように慎重な上に慎重な態度を裁判所はとっている。ところが今警察庁の長官の答弁は何だ。ある場合においては説得の余地を与えなくてもいいというような答弁は、私は絶対に承服することはできない。この点についてはどうです。
  85. 柏村信雄

    ○柏村政府委員 まず最初に申し上げたいことは、今お読みになりましたように仮処分の決定は慎重に行なうべきである、こういう慎重な裁判所の決定がすでに下りているということです。それから先ほど来千五百対十三というお話でございますが、不測のことをおもんぱかって、整備要員全体として千五百を要所々々に配置したということでございまして、新労組のあとからついていったのは先ほど申しましたように、約一個中隊でございます。 (赤松委員「長官、僕の質問通りに答えて下さいよ。そんなことを僕は言っているのではない。」と呼ぶ)しかもピケの線は、新労組がどんどん入っていってしまったわけでございます。従ってそこで説得をする余裕があったのかなかったのか。一緒についていった警察官はむしろ新労組のあとからついていったということでございます。
  86. 赤松勇

    ○赤松委員 それならばなぜ事前にピケ隊に対して、就労するについて警察の方は仮処分が出ておるのであるからこれを守らなければならぬという通告をしないんですか、そうして説得の時間をなぜ与えないんですか。第一組合、第二組合が衝突するという非常に険悪な場合に、そこであなたたちが警察権を発動するということなら、私はある程度了解できる。了解できるけれども、初めから全然説得の余裕を与えないで、いきなり十三人のピケ隊に対して数百人の警察官が襲いかかって、これを板べいのところに押しつけて、そうしてそのすきに第二組合号員をどっと就労させるということは、今の判決の精神からいって絶対に容認できない。ある場合には説得の余裕を与えなくてもいいんだという長官の答弁は絶対に承服できません。
  87. 柏村信雄

    ○柏村政府委員 私先ほど申し上げましたのは、説得の余裕を与えなくてもいいと申したのではなくて、説得を聞かないで無理に入る者はやむを得ないという趣旨で申し上げたわけです。これは新労組についてでございます。それからただいま事前の通告とか警告というお話がございましたが、もちろん新労組、旧労組間あるいは旧労組、会社間においてできるだけ話し合いを尽くして、条理に基づいて問題を解決していくという態度が望ましいということは私は同感でございます。しかし警察が今から行くから説得の用意をしろ、新労組には聞くようにというようなことまで警察が世話をやく必要は私はないんじゃないかと思います。それからまたピケは、できるだけ合法の範囲にして、暴行事案等が起きないように、そのためにはバリケードであるとか有刺鉄線であるとかあるいはまたこん棒であるとかいうものを持ったり、施したりしないようにという注意、警告というものは時々やっておるわけでございます。
  88. 赤松勇

    ○赤松委員 ここに写真がありますけれども、警察官はこん棒をふるってピケ隊におどりかかっているのだ。それからピケ隊の方は全然何も持ってない。これは旗ざお一本持っているだけじゃないですか。何も持ってない。私のさっき言ったことは、もし警察官が事前に通告ができなければ、第二組合もやればいいじゃないですか。それで第一組合と第二組合との間に激突が起こるというような場合においては、私は警察がある程度介入することも場合によってはやむを得ないということを先ほどから言っているのです。それを全然そういう措置をとらないで、わずか十三人のピケ隊に数百人がかかっていって、それを押えつけておいてそうして強行就労する、三百何十人に対して千五百人の警察官がそれを守って強行就労させるということは、これは国家権力の争議への介入でなくして一体何だ。今多賀谷君が来ておられるのですが、多賀谷君は現場におってそれを見てきて全部知っておる。会社のへいのところに警察官をどんどん先へ配置して、そうして妨害している。説得も何もあったものじゃない。それをごらんなさい。こん棒をふるって第一組合員に対しておどりかかっているじゃないですか。ちょうどきのう全学連にやったことと同じことなんだ。そういうことをやるから、韓国においても軍隊に対しては非常に友好的な態度を示すけれども、警察に対しては非常な憎しみを持っておる。多賀谷君から関連質問があるそうですから……。
  89. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 関連して長官にお尋ねしますが、今赤松委員質問の個所は十八日の三川鉱で起こった事件とさらにその後の宮浦の事件ですが、三川の場合は第一組合が門のところに二カ所ピケを組んでいる。そのピケを警察官が封鎖をしたわけです、遮断をして……。ですから何で事件が起こったか知らない。だいいち第二組合が入ったこと自体をあとから知ったという状態です。とにかくさあっと警察官で第一組合のピケを封鎖しちゃったわけです。そうしてその中へ自動車を入れて第二組合が別の門から、診療所のわきから就労をした。こういうことなんですね。ですから第一組合の方は説得も何もない。とにかく警察官が取り巻いて一体どうしたんだろうかということで、あとからあれは第二組合が就労をしておったんだ、こういうことがわかったという事情ですね。ですからそういったことが許されるかどうか。警察官で人がきを作って説得行為が全然行なわれない。ピケの威力そのものを封殺する行為がはたして国家権力としてできるかどうか、これは行き過ぎではないか、こういう点が問題になっておると思うのです。その点一つ解明願いたい。
  90. 柏村信雄

    ○柏村政府委員 どうもお話を聞いておりますと、新労組が入るのに正門の大ぜいピケを張っているところに行って説得を受けて、それを断わって入るなら筋がわかる。そこで乱闘になれば警察が出て制止をするならわかるというような御趣旨のように私受け取れるのでありますが、とにかく、あの二十八日の事件というようなことを二十日の前にいたしまして、これはどうしても衝突が必至ではなかろうか、大ぜいの者が集まる、そこでぶつかり合えばまたさらに応援部隊も来るというようなことで非常な混乱に陥るであろうという情勢判断のもとに、できるだけたやすく入れるところから入るということで、執行吏に続いて新労組が入ったということでございますから、むしろああいうことによって衝突が避けられておるというふうにわれわれは考えたく思っておるわけでございます。
  91. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 私はピケが威力を全然発揮しないで、警察権力によってこの団結権の一部であるピケが封殺できるかということを聞いておるのです。前段の場合を別として、そのことを聞いているのです。一体、それができますか、それが妥当ですかということを聞いているのです。
  92. 柏村信雄

    ○柏村政府委員 建前としてはできるだけピケというものが合法的であり、また正常な形において先ほど赤松委員がお述べになりましたような、平和的な説得、またこれに応ずる応じないの判断は入ろうとする者において行なう。そうしてそこに暴行傷害等の事案が起こらずに済むということが私は望ましい労働争議の状況であろうと思うのであります。しかしながら警察としましては、先ほどから申し上げておりますように、二十八日にああいう事件があり、その後も炭住街等においてはやはりトラブルが随所に起こっておる。もちろんそういうことで警察もパトロール等を強化いたし、できるだけ民心の安定をはかり、トラブルのないように努力をいたし、またこん棒等も任意に提出してもらって、事態を平穏に導いてきておるわけでございますけれども、まだまだ相当両組合の間のみぞというものは深いものがあるように思うのでありまして、こういう情勢下においてぶつかるということを極力避ける。もちろん、これは団結権ということは大事であります。ピケの正当性ということについても、これを十分尊重すべきでありまするけれども、それにも増して生命、身体の危険を保護するということも、また大事なことでありまするし、警察として守らなければならない線であろうと思うのであります。従って現地の警察においてあのときにああいう一カ月以来の状況というものを背景として見、そうして新労組がどうしても入るという場合、執行吏の応援を求められた場合、警察が臨機にああいう措置をとったということは、私はあの時点、あの地点においてやむを得なかった措置であろうというふうに考えるわけでございます。
  93. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 しからば聞きますが、執行吏の依頼があったといっても、一体人間の行為といいますか、人間そのものの行動を封殺するような、そういう執行ができるのですか。
  94. 柏村信雄

    ○柏村政府委員 執行吏の仕事は執行吏の仕事でございまして、先ほどから申し上げておりますように、警察が建前としてそういうふうな人間の行動を封殺するというようなことはすべきものでないことは、これは建前としては当然であります。しかし非常に危険があると判断される場合において、一時この自由についてある程度の制約を加えることもまたやむを得ない場合があるというふうに考えるわけでございます。
  95. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 それほど就労の権利というものが保護されておるのですかね。これは非常にむずかしい問題です。権利権利がぶつかっている形ですからね。これはなかなかむずかしい問題でしょうけれども、一方の権利をあなたの方は行使するために、一方の自由権まで束縛して、しかも団結権の一部、しかも人間の自由権まで封殺してそういう行為ができるかどうか。一体この行為は犯罪の予防としてされておるのか、あるいは執行を成功さすために、いわば執行を遂行するためにやられた行為であるのか、これをお聞かせ願いたい。
  96. 柏村信雄

    ○柏村政府委員 主たる目的は犯罪の予防でございます。
  97. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 では警職法のどこの条文でそれをおやりになっておるか。
  98. 柏村信雄

    ○柏村政府委員 警職法五条でございます。
  99. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 その条文を御明示願いたい。
  100. 柏村信雄

    ○柏村政府委員 警察官職務執行法第五条でございますが、犯罪の予防及び制止、「警察官は、犯罪がまさに行われようとするのを認めたときは、その予防のため関係者に必要な警告を発し、又、もしその行為により人の生命若しくは身体に危険が及び、又は財産に重大な損害を受ける虞があって、急を要する場合においては、その行為を制止することができる。」
  101. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 まさに犯罪が行なわれようとしておるという場合じゃないですよ、その時刻といい、その時期といい、人数からいってもね。それも時間はおそらく二時から三時ころに行なわれたんでしょう。そうして今申されるように、ピケにおりました人間はごくわずかなのです。そして警察が入らなくても、就労した人は少なくとも百五、六十人ですから、力関係からいってもこのピケは解けたピケなのです、その事態においては。その時刻を選ばれたならば、それは若干摩擦はあったかもしれませんが、ピケの突破というのはできた。そうして現実にその現場に行っておる第一組合員も、あるいは第二組合員もそうでありましょうが、危険物を持っているような人は全然いないのです。ですから私は、犯罪の予防として行なわれたというならば、非常に問題があると思う。それは私は第二組合の就労の時期のことを言っております。その時間というものは、虚をついて非常に適確かもしれませんね。しかしその時期から言うならば、それだけ警察官を導入してやらなくてもいい。今言うようにわずか十数名だというのです。一方においては組合員だけでも十倍からの人間が突破しようとしているのですからね。その時刻といい、時期といい、その状態といえば、これはまさに犯罪が行なわれようとした状態ではないのです。あなたの方で、その条文を運用されて、あの警察官を導入されたということならば、これは誤りだ。少なくも警職法に規定している行為以外の行為をやられておる。こう考えざるを得ないのです。どうですか。
  102. 柏村信雄

    ○柏村政府委員 これは非常に見解の相違に相なるかもしれませんが、その時期、その時間が適当であったろうというお話でございますが、あるいはそうであったかもしれません。しかし場合によって、もし旧労組が、あのことをさらに早い時刻において察知すれば非常な混乱が起こっておったかもしれないのであります。そういうことのために警察が警備要員を要所に配置したということでございます。事がなかったのは幸いでございますが、事があった場合に警察が手おくれになるということにならないための措置でございます。現に当日警察官で、きりのような刃物による傷を受けている者がおるわけでございまして、これは医者の診断書について見ても明らかなのであります。そういう凶器と思われるものを旧労組側において持っておったと想像されるような事態でございます。そういうことで二十八日の事件からさらに、まだみぞの深い両者の間に相当先鋭な空気がみなぎっているときにおいて、警察がああいう措置をとったということは、警職法第五条に基づいて当然行なってよろしいものであるというふうに考えるわけであります。
  103. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 少なくとも現場の状況においては急迫なる、あるいは明白な事実がないですよ。そういう犯罪が行なわれようという明白な事実がないです。その時点においてはそういう状態にないのですよ。十数名です。一方は百五十名が就労しようとするのでしょう。警察がいても、その様子、その状態を見ておけばいいじゃないですか。わざわざ封殺して百五十名を構内に入れなくてもいいのですね。別の要件でおやりになるならば別です。それはわれわれとしては異議があるが、それは別として、犯罪の予防であるというが、その状態はまさに犯罪が行なわれようとしておる状態では全然ない。ですからそういった乱用をされるならば、これはこの前出た改正警職法の案と何ら変わらない。今のことができるならば、あなた方が言った改正の警職法なんか出す必要はないですよ。十数人に対して十倍の人間が就労しようとするのに、警察官がそれを封殺するということはおかしい。どうしてもわれわれ納得できない。
  104. 柏村信雄

    ○柏村政府委員 これはまた見解の相違ということになるかもしれませんけれども、現にこれは旧労組側としてはちょっと察知するのがおそかったという気持をしておられる向きがあるであろうと思うのであります。それほど非常に大勢の者が直後に蝟集してきておるわけでございます。これがもし三十分前に状況というものが旧労組側に把握されておれば、相当の混乱があの近辺において予想される。そういうことは二十八日以降の現地の状況から、現地警察において判断した判断の仕方が——まさにとおっしゃいますが、まさにというまさには、どんな事態についても、一人と一人の争いという場合と、何百、何千というものの争いの場合とは、時間的に同一に論ずるわけには参らないというふうに考えます。
  105. 五島虎雄

    ○五島委員 関連して。そうすると、あなたは、質問されたかどうかわかりませんけれども、きのう参議院では、参議院の法制局長が呼ばれて、民事訴訟法の五百三十六条、この二項について質問があったとき、法制局長はこういうように言っておるわけですね。妨害があるときは、警察官に要請してその妨害を排除することができる、これは二項によってそうかもしれません。ところが法制局長の二項の解釈によれば、妨害が実在するときに行なうことがある。蓋然性があるときは執行吏が警察に要請する場合があり得る。ただし警察がこれを要請された場合は、妨害が実在しなければ排除することはできないということに、法制局長は法の解釈を行なっておるわけです。そうすると十三名のピケ・ラインが早朝におって何も予測しない場合、執行吏から警察がどういうような形式によって要請されたかわからぬけれども、警察が千五百名で十三名を排除するのは、妨害が実在していたかどうかということは、どういうことになります。実在しておったのですか。その場合ただ予防だけでやれるのですか。そうすると労働運動上の平和なピケ・ラインを、警察は千五百名の力をもって排除をしたということになるのですが、どうでしょう。
  106. 柏村信雄

    ○柏村政府委員 きのう参議院の社会労働委員会で、法制局の方がお述べになりましたのは、民訴の執行吏の権限についての問題だろうと思います。私ただいままでお答えしておりますのは、警職法五条によって犯罪の予防のために制止したということであります。  それから先ほど来重ねて申し上げておりますように、千五百人を動員したということは、わずか十三名の者を排除するために動員したわけではございません。
  107. 五島虎雄

    ○五島委員 それなら警察はあらゆる事態を想定して、その中の一部が——現実に十三人が労働運動の平和なピケを張っていて、これから来た人たちを説得しようというときに、説得もさせないように、警察の能力を行使することによって排除することができますか。それは正当なピケ・ラインの排除といえますか。それは警察権の乱用じゃないですか、言いかえるならば弾圧じゃないですか。あらゆることが想定されるといっても、想定は自由でしょう。警察がいろいろの情報をあらゆるところから引っぱり出して、うその情報でもそれを主実なりというような解釈をして、そうして、要請された場合、こうこうこういう想定があるから、千五百名動員して、現実に妨害している行為がないにかかわらず、十三名を千五百名で排除するのだったらやさしいことですよ。そういうようなやさしいことを千五百名がやって、堂々と第二組合を入れるというようなことは、ピケッティングというものに対する弾圧にほかならないのじゃないでしょうか。
  108. 柏村信雄

    ○柏村政府委員 先ほど来たびたび申し上げておりますように、千五百名動員したというのは十三名を排除するために動員したのではないのであります。それから事態、情勢を判断するにつきまして、ただ架空に、警察が勝手な情報に基づき、あるいは勝手に夢を見るようなつもりで情勢判断をするというのでありますれば、これは警察としてやるべきことでないことはもちろんでございます。しかし、たとえば二十八日あるいは二十九日の事案についても、殺人傷害あるいは暴行傷害というようなものが現実に起こってしまっているのに、なぜ事前にやらないのかというおしかりを各党からわれわれは受けておるわけです。現にピケ・ラインにおいて、無手の者に対して、新労組あるいは暴力団というお話でございましたが、そういう者が突っかかってきた、こういうことについて警察が事前に措置しなかったということで手ぬるさを指摘されておる。また構内に新労組が入ったのを、旧労組が追っかけていってこれになぐり込んでおる。これについても、警察が行ったときにはもう散らばってしまっておった。手ぬるいではないかということを言われておるのです。これは言われたから今度は手ぬるくなくやるという意味ではございませんが、そういうふうな過去の実積や何かをすべて勘案しまして正しく情勢判断をする、それに基づいて警察が事前の措置をいろいろと講ずるということは、私は警察の当然の責務であると思います。
  109. 赤松勇

    ○赤松委員 この問題は非常に重要な憲法上の問題です。特にピケの問題については、現に三池が争議中で、今後いろいろなことが発生すると思うのです。従って、私ども立法府において、やはりこの見解は明確にしておかなければならぬと思うのです。本来からいえば、労働大臣がここにおって、労働者を保護すべき労働大臣立場からの答弁を要求したかったのでありますけれども、特にILO問題できょうは非常にあれだというので了解を求めて参りましたから、きょうのところは労働大臣の欠席を認めますが、一つ法制局長官を呼んでいただきたい。
  110. 永山忠則

    永山委員長 要求しておきます。
  111. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 今の民事訴訟の強制執行の面ではなくて、警職法の第五条でいったのだというお話であります。ところが、執行吏の方から要請があったという点がありますから、これは民事訴訟の方の強制執行の面からもとにかく出動したのはそれだ。現実にピケを封鎖したのは警職法の第五条でいったのだ、こういう話です。ところが、第五条の点が、私は事実問題としてやはり行き過ぎであったのではないかと思うのです。それは千五百の人間があそこに一カ所におったとは私は言いません。しかし、かなりの数、相当の何百という数がいたことは事実です。そうして封殺していったわけですから、封殺行為が行われるということになりますと、今後ピケというものの効力がないだけでなくて、そのことは非常に大きな問題になると思うのです。そこでやはりそこに待機をされて、その様子を見て起こりそうだというなら全然別です。あのときの行為というものはちょっと問題にならぬのです。それにしても第五条の予防的措置としてはあまりに行き過ぎである。あまりにも事態を明白に把握しないで、単にあぶないというか、あるいはこれは何とかして就労させなければならぬとかいう気持を持つわけです。それはなるほど犯罪が、あるいは殺人が行なわれようとしたときに何をしたかということはわれわれも言いました。しかしあのときの事態はちょっと違うのです。そのことによって警察を責められたから、今度は警察が万全の措置をするためにやったのですと言われても、それではあまりに警察の判断がなさ過ぎる、こう考えざるを得ないのです。これは一つよくその実態を把握してもらいたいと思うのです。ですから、あの程度のピケに対して、百五十名の第二組合員が就労しようとする場合に、はたしてあれだけの警察権力が要るものかどうか。ピケはまだほかの方から応援に来ていないのですから、そういうことは的確に現場で指揮者が判断をして行為をなさらないと、私はこれも乱用であるということになると思うのです。とにかく第一組合の連中は就労したことを知らなかった。それは就労の面からいえば、これは確かに虚をついて成功したと言えるかもしれない。それにしてもあまりにも団結権が踏みにじられておるじゃないかということになるのです。そこで再度御答弁願いたい。私はこれでこの質問はやめます。
  112. 柏村信雄

    ○柏村政府委員 ただいまお話のように、三月二十八日、二十九日の事件について警察が非難されたから、今度は必要以上に強くしたということではございません。いわゆるあつものにこりてなますを吹くというような気持でやったとは私は考えないのであります。しかし神様の目から見れば、あそこまでしないであるいはうまくいっておったかもしれない。しかし現地の警察として、先ほど来たびたび申しますように、一月この方の情勢を判断すると、あのくらいの慎重なやり方が双方にとって犠牲を少なくしたのでないかというふうに私は考えるわけでありまして、現地のその情勢判断というものは、私現地には行っておりませんけれども、いろいろ報告を聞いた範囲においては、私は警察としてあの程度のことはやむを得なかったというふうに考えておるわけであります。
  113. 大坪保雄

    ○大坪委員 関連して。三池の争議をめぐってピケの問題が、本委員会に限らず現在非常に問題になっておるわけであります。先刻来赤松委員の御質問を伺っておっても、その後の関連質問等を伺っておっても、ある場合には警察が手おくれであった、そういうことのために傷害事件や殺人事件等も起こっておる。しかしながら、またある場合には、警察があまりに準備よくしたがために、第二組合員の就労自身をピケ隊員が説得ないしピケの効果をあげることのできないような状態にまで追い込まれたというようなことであるわけであります。そこでこのピケの限界ということは、実はもとから非常に問題だと思っておったのでありますが、わが国の労働争議の場合に普通行なわれておるピケというものは、ちょっと世界に類例のないような実情である。これは今回の三池の争議でもそうでございますが、一昨年の王子製紙の苫小牧の争議の場合もそうであったし、最近あちこちで行なわれる中小企業における争議の場合もそうである。これが常に就労をしようとする労働組合の脱退者、今回の場合でいえば第二組合員でありますが、そういうものの就労で、平和なる説得ということであれば問題ないのであるが、その範囲を常に逸脱して乱闘事件等を起こしておるのであります。これはほんとうに世界に類例のないわが国の労働争議の実情からして、非常に遺憾な事態であると思うのであります。そこで私どもがここで考えなければいかぬことは、先刻来委員諸君のかわるがわるのお話を承っておりますと、警察が、申さばサンドイッチの肉みたいになって、たとえば予防警察としての効果をあげた場合には、警察が行き過ぎとなり、それの効果があげ得なかった場合には、警察は何をしておったかということになっておる。これは警察としても大へん苦しい立場であろうと思いますが、われわれ平和を愛好する一般民衆からすると、ピケの名による、たまには竹きれ、青竹、こん棒あるいはピッケルというようなものを持って、いつでも乱闘になるような場合の準備をしておるのもこれはピケである。これは労働組合の、あるいは労働者の当然の団体行動権の一部であるというようなことで見のがされてきているわけであるのであります。そこで私は労働省にちょっとお伺いしたい。労働省は、たびたびであろうと思いますが、ピケの限界等について通牒等も出しておいでになる。こういうことでおそらく労使当事者に警告を発し続けておられると思うのでありますが、その労働省の期待するようなピケ行為が現状行なわれておると私ども思わないが、その点についてどういうような判断を持っておられるか、現状で労働省のたびたびの通牒によってはこれはとうてい世界の文明諸国並みのピケの状態にはなり得ないのだ、労働省のPRによってはそれは困難なんだということでないかと、私ども思うが、もしそうであるならば、この際ピケの限界というものをもっと有効的に有権的にはっきりとする必要があると思うのであるが、その点についてどういうふうにお考えになっておるのであるか、どこまでは当然労働者の団体行動権の範囲として認められることであるが、どれ以上は認められない。それはすなわち違法になるのだということであれば、これをはっきり、これはこの程度は合法だ、有効であって、これのらちを越えたものは違法である、そういうけじめを立法措置等によってもはっきりするという必要が今日の段階ではもうすでにあるのではないかと思うが、そういう点についてそういう考えを持っておられるのであるかどうか、これを労働省に一つお伺いしたい。
  114. 亀井光

    ○亀井政府委員 ピケの限界につきまして外国の事例をおあげになりましたが、私自身外国のピケの状況を現実に目の前に見たわけではございませんが、いろいろな情報なり、いろいろな文献で見ますと、確かに平和的な説得という限界は非常に守られておるように考えております。一間おきに一人ずつ立って平和的説得の態勢を整えておるというような状況をよく聞くわけでございます。それに比べまして日本の労働組合の行なっておりますピケというものが、外国並みであるかどうかという判断、これはいろいろ状況々々によって違いますが、一がいに概括的に申しまして必ずしも外国並みのピケではなくて、いわゆる行き過ぎたピケが多いのではないだろうか、そういうことで昭和二十九年にこれに関しまする労働省の見解を出しまして、労使に対する一つの教育の指針としまして、これに従って労使双方とも十分自戒してこの限界を越えないようにという通達を出しておりますし、またいろいろ具体的な事件々々の場合におきまして、労働大臣の談話をもちましてその通達、警告を発し、正しい合法的なピケが実行されるよう要請をして参ってきておるわけでございます。しかしながら現実の姿はまだそこまでわれわれの通達を十分そしゃくし、理解されて、それに従ってピケ・ラインを張るというようなことではなくして、むしろ限界を越えまするいろいろなピケが行なわれておる。このことは先ほど赤松先生からも御指摘のありましたほかにも、たくさん裁判事件になりましてそれぞれ裁判の判決、特に最高裁の判決として確定したものもたくさんございますが、そういうものもすべてやはり平和的な説得という限界を越えてはならないということを言っておるのでございます。しからば今後そういう現状からいって、どんな施策で合法のワクにはめていくか、あるいは合法のワクを守ってもらうようにしていくかという問題でございますが、これにつきましてわれわれはやはり労働組合の自覚、使用者の自覚、両方を私はうながしていかなければならぬ、これには根気が要るだろうと思います。根気が要りますが、われわれとしましては最高裁の判決をよりどころといたしまして、われわれの従来のピケの通達を、またその裏づけといたしまして今後とも労働教育その他の面におきまして十分徹底して参りたい。今お説の中に立法化のお話が出たようでございます。この問題を、今直ちに立法化をどうするという考えはございませんが、御承知通り労使関係法研究会におきまして労働組合法、労働関係調整法等につきまして根本的な研究を今進めておる段階でございまして、こういう研究会におきまして今後研究題目として取り上げられるということは当然われわれも考えておる次第でございますが、今政府がみずからすぐに、これに対して立法措置を考えるかどうかということにつきましては、今直ちにそういうことは考えていないというふうにお答えをいたしておきます。
  115. 大坪保雄

    ○大坪委員 それはいいです。ですけれども、労働教育によってやろうと仰せられるところは、それは大へんけっこうであると思うけれども、なかなかこれは百年河清を待つことになるだろうと思う。そこで御研究中だそうですから、一つなるべく早く結論を得るように御研究を急いで進めてもらいたいと思うのです。現にたとえば現在の三井三池の争議の状況を見てみますと、三井労組が分裂をして、そして第二組合ができている。この人たちは会社と正当に契約を結んで、協約になっているかどうか知りませんが、話し合いをして、そうして生産再開をする、そのために就労するという形、これは労働者が仕事につくということは当然認めらるべき、国の法律によっても保護せらるべき労働者の権利だ。食うために働く。働くために働く場所に行く。それは当然何人も尊重しなければならぬ私は労働者の最高の権利であると思うのです。それを暴力ないし暴力に類するような威力によって妨害するということ自体は、これはいわゆる平和なる説得ではあり得ないのです。これははっきりしているのです。だからそこのところは日本の現在の労働争議の場において行なわれておる現実をはっきり確認して、そうであろうというようなことでなしに確認して、立法措置等も必要であれば講ずるということでなければいかぬと思います。私は関連質問でありますから多く申しませんが、どうか準備中であるならば——立法措置がいいか悪いか、これは問題だと思う。私どもは立法措置をしなければ、いつまでたっても議会論が紛糾して、ピケというものが平常な、国民全体が期待するような、世界で笑われないような状態にはなり得ないと思うのであります。どうか一つ熱意を込めて御検討願いたいと思います。
  116. 五島虎雄

    ○五島委員 ちょっと関連します。長官には先に多賀谷さんから質問があります。ところが今大坪委員から質問をされたわけですけれども、平和なピケットというのは一体どうなのだ、あくまで説得である、こういうようなことなのですが、外国の状況というものはつまびらかではないけれども、しかしわが国においてはこの平和な説得の限界を越した場合があり得る、こういうようなことを言われるわけです。ところが外国におけるところの平和的なピケ・ラインというのは一体どういうことかというと、私もいろいろ書物で読んで、大体日本の労働運動とは違うのだ。日本の労働運動とは大体成り立ちが違うのではないか。彼ら外国は、先進国の労働情勢は第二組合に分裂することはない。従って組合が会社に要求をした場合、ピケ・ラインは、プラカードを持って事業場の付近を回ったり何かする。そうすると労働者自体が、ああそうか、ストライキやるのかというようなことで、そのまま受け入れられるのだ、こういうようなことです。それから今度は会社側が暴力団とかなんとかを利用してピケを、説得のラインを破るというようなことはない。もしも破れば、世論がこれを袋だたきにして、会社自体がめちゃくちゃになるのだ。従って、外国では説得の範囲を越えずして説得ができるのだということが、外国の労働情勢らしい。ところが、一歩ひるがえってわが国では、説得だ、説得だといって、第二組合を威力を持って作る。あるいは使用者がそのピケ・ラインを破ろうとして暴力団を使用する。現に三井三池ではこれが行なわれた。これはみな確認している。もう犯人もあがっているのですから……。そういうような情勢が、日本の労働情勢の現状である。それに、平和な説得、平和な説得と言っていたら、警察が状況を判断することによって排除しましたというならば、第一組合のピケ・ラインは説得もできないうちに排除されてしまうということならば一体、日本の労働運動どこにありやといわなければならぬ。そういうような事態を勘案することによってお互いに審議しなければ、物事が歪曲されてしまうおそれがある。こういうようなピケの平和な限界ということは非常にむずかしいということをいわなければならない。そういうようなことを基本としてこの委員会で論じなければ、物事がまことにゆがめられたところ審議が行なわれるであろうということを、私は関連して意見を述べておきたいが、労政局長はどう思われますか。日本の労働情勢においては、ピケを破らないかどうか。
  117. 亀井光

    ○亀井政府委員 御意見は承りましたですが、これはまあ外国の例を申し上げましたが、外国には第二組合ができないから、そういう平和的な説得も容易だというお説の裏には、日本の労働組合の中でなぜ第二組合ができていったか、なぜできていくのか、こういうこともやっぱり考えてみなければならない。すなわち、そういう強力なピケを張らなければならぬほど、組合の団結力というものがそう強くなかったのじゃないか。そこに問題があろうと思います。それだからといって、暴力を行使するようなピケが許されるか、これは別問題ではないか。団結権を守って、自分の団結の組織を守っていくというのは、組合員みずからがやっていかなければならぬ。これはピケとは別です。ピケというのは、結局使用者に対抗する手段、すなわちストライキというものに対する一つの裏づけなり、それを効果あらしめるための措置であるわけです。使用者は使用者で、ストライキというものに対して対抗する手段として何があるかといえば、これは正常な業務の運営をはかっていくのだということにあるわけです。そこにお互いが対等の立場でお互いの権利を主張して、その中からお互いの解決を見出していく、これが労使関係の一番いい姿でございます。そこで問題は、今の五局先生のお話にあるように、平和的なピケというものが外国にあって、日本ではやはりある程度の力をもってピケを張らなければ団結権は擁護できないのだというような裏の御意見があるように思いますが、(五島委員「違いますよ」と呼ぶ)そうでなければ私の聞き間違いでありますが、それとこれとはまた別であります。ただ、現象的に、ピケそのものが、最高裁の判例にもたくさんございますように、平和的な説得を越えてそこに暴力が行なわれるということは、これは許されるべきものではない。それは、判例にございますように、威力業務妨害罪になっていくという形でございまして、必ずしも外国の今のその例と日本の例と結びつかないと思いまするが、私はそういう見解でございます。
  118. 大原亨

    ○大原委員 今の問題で、これは法制局長官がすぐ答弁されると、またとちってもいかぬから、私がもう一つ局長とそれから警察庁長官に聞いたあとであなたに質問するから……。  労政局長、今の問題は、大坪先生が政策論を展開されたわけですけれども、これは非常にむずかしいのです。むずかしいのですが、このピケ破りとかそれに伴う就労、就労権とそれから団結権の一部としての説得行為についての権利保障だね、そういうものをどちらを重く見るか、これは憲法の二十五条から二十八条の趣旨からいえば、団結権の一部として説得権を認めているのですから、そういたしまして、もしそれを、就労権の方を優位に置いて、三池の場合を頭に置いてやった場合には、それは団結権を否定することはできるのですよ。それを天びんにかけて論議することは、私は生存権を認めました労働基本権の立場からいっていけないと思う。これは一つあとで答弁を聞きますから……。  それから警察庁の長官に御答弁を願いたいのですが、あなたは説得を聞かなくてもよい、赤松委員質問に対してこう言った。私は速記録をとってみたらそうだった。説得は聞かなくてもよいのだ、こう書いてある。警察権力という第三者の立場にあるものが、説得を聞かなくてもよいのだというような立場で警察権力を行使するということは、警察権力の不当介入になる。もう一つは、この問題と関連して御答弁いただきたい点は、あなたの方は午前三時にもう出動しておった。それからこれは法制局長官質問との関連もあるけれども、執行吏が口頭で、しかも夜中ですよ、夜中に、要請したのは三時五十分ですよ。この二つから考えてみたって、あなたの方は、そういうふうに、これは不当に労使の間の関係に介入する、こういう問題になるのです。ほかにもたくさん施設利用なんかある、あるけれどもこれはいけないと思うのです。二つの問題について、一方は、最初の問題はあなたの答弁、第二の問題は、これは事実の問題についてあなた答弁して下さい。
  119. 柏村信雄

    ○柏村政府委員 説得を聞かなくてもよい——説得する権利はあるわけですけれども、どうしてもこれを聞かないで、おれは入りたいという人がある場合に、それを強制的に聞かせるわけにはいかない。従って説得は聞かなくてもいいという部分が起こり得るということを申し上げたのであります。  それから、先ほど来警察部隊の出動については、申し上げましたように、確かに執行吏からの当日の要請は三時何十分かであったと思います。しかし、警察はその以前において、これだけの就労ということが旧労組に知れることによってどういう衝突が起こらないとも限らないというための警戒態勢をとったわけでございます。そのために千五百名というものを出動させておるわけであります。従って、警察官が執行吏に要請されたから千五百名出たということではないわけです。
  120. 大原亨

    ○大原委員 その点については、私はこういう点を指摘しておく。あなた答弁考えておきなさい、今の答弁は大切な答弁だから……。これは、あなたは十三人の第一組合のピケ隊に対して、こういうふうにたくさんの警察官をやって、傍観しておったのではなくて、監視しておった。守っておったのではなしに、一方に押しつけたのですからね、そうしてそこを通って第二組合がずっと入っていったのだから。そういうことがあるから、そのことの事実をあとで質問いたしますから答えて下さい。この問題とは一応離しておいて、これはあとで、純粋に法律問題であるから法制局長官にお聞きしたいのですが、きのうの参議院の法制局長答弁にも関連しておるのだけれども、つまり執行吏がこれは命令を出して警官に要請する場合があるわけです。その場合は、民事訴訟法の五百三十六条の二項は「抵抗ヲ受クル場合ニ於テハ執行吏ハ威力ヲ用イ且警察上ノ援助ヲ求ムルコトオ得」、こうなっておる。第一項は読みませんけれどもそうなっているのですよ。この法解釈について、まあ議論があるわけです。その議論を私は一つ、大坪先生も急いでおられるようでありますから早く解決するためにきのうの法制局長見解をちょっと私がここで言っておきますから、あなたの法律的見解を聞きたい。それは、「抵抗ヲ受クル場合二於テ」云々という場合は、実際的に妨害があったとき、こういう意味であって、おそれがあったり憂いがあると判断したときは含まない、こうなっているのです。こういう解釈をしたわけです。つまり蓋然性がある場合、憂いがあると判断する場合は、その問題は含まない。そういう点については参議院の法制局長は、きのうはきわめて明快に答弁をせられまして、十三人では憂いがあるとは考えられない、今お聞きの通りですが、そういうふうに答弁をいたしておるのです。第一組合員は十三人おったのです。二百人の第二組合員が入るときに、待機しておった千五百名もの警察官がだあっと入って第一組合員を押しつけた。その問題をめぐって討論されておる場合に、これは長官の話とは違いますよ、一応切り離して質問いたしますけれども、林法制局長官、この場合を考えて、参議院の法制局長答弁いたしました見解とあなたの見解は違いますか同じですか。
  121. 林修三

    ○林(修)政府委員 この民事訴訟法五百三十六条第二項でございますが、参議院の法制局長がいかなるニュアンスを用いて答弁いたしましたか、私も直接聞いたわけでもありませんし、速記録を読んだわけではありませんから、その点は参議院の法制局長と違うことを言ったのか同じことを言ったのかちょっとわかりませんが、私の考えといたしましては「抵抗ヲ受クル場合」確かにいわゆるおそれとか憂いということまでも含むものではなかろうと思います。しかし「抵抗ヲ受クル」というのは現実に実力をふるわれた場合だけかというと、必ずしもそうではないと思います。そのときの状況に応じて、やはり抵抗を受けるという状況が客観的に判断されれば、必ずしも暴力を用いられなくても執行吏が抵抗を受くると判断する場合はあり得る。抽象的に申せばそういうことだと私は思います。現実の場合にどうだったかということは、十三人対百何人というだけですぐ言えるかどうか、私もそのときの状況を見ませんと、それが当たるとか当たらないとかいうことを断定的に申し上げるだけの勇気がちょっとないわけであります。抽象的に申せば私がさっき言ったようなことになると思います。
  122. 大原亨

    ○大原委員 ちょっと端的に聞きますけれども、この条文の解釈は、憂いがあるとかおそれがある場合を含んでいるのか。あなたはいつもよけいなことを答弁するからいかぬ。端的に答弁してもらいたい。その点だけを一つ質問いたします。
  123. 林修三

    ○林(修)政府委員 先ほどから申しましたように、法律の解釈というのは、いろいろな場合を想定して申しませんと、実はつまらない誤解をお与えすることになるおそれがありますので、まあそのようなことを申し上げるわけであります。従って先ほども申し上げましたように、抵抗を受けるおそれ、あるいは憂いというものを含まない、この字は文字通りそうでございます。しかし、現実の場合に、抵抗を受けるというのは実力があった場合だけに限るかといえば、客観的情勢によって、非常に緊迫している状況のものにおいては抵抗を受けると執行吏が判断をする場合もあるだろう、こういうことであります。
  124. 大原亨

    ○大原委員 法制局長官、今の点はこういうように解釈してよろしいですか。この場合、民事訴訟法の五百三十六条二項の解釈につきましては、警察権力を要請する場合の解釈につきましては憂いがあるとかおそれがあるというふうな場合は含みません、ただし具体的な場合において判断する場合にはいろいろな議論はありましょう。この問題は次に十三人云々の場合を言うと長くなるから、あなたにその解釈だけを私聞きたいのですが、私の言った通りでよろしいですね。
  125. 林修三

    ○林(修)政府委員 大体同じことを言う形になると私は思いますが、要するに単なるおそれ、憂いだけでは、これは書いてございませんが、そうじゃない。要するに抵抗を受けるという客観的情勢があれば、それは必ずしも実力でもって執行を阻止されたというだけに取るわけではない、そういうことでございます。
  126. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 今の点ですが、執行吏が要請する場合には、やはり抵抗を受ける蓋然性があるということで要請はできる。しかし現実に警察官がそれを排除する場合は、実際に妨害されない場合に警察官が出ていけますか。出ていけないでしょう。そのことを言っているのです。
  127. 林修三

    ○林(修)政府委員 結局警察官は、公務執行妨害があると認めるかあるいは警察官職務執行法第五条の要件があると認めるか、そういう場合に出る、こういうことだと思います。
  128. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 犯罪のおそれというが、これは民事ですよ。この場合は民事ですから、犯罪のおそれがあるということはないでしょう。
  129. 林修三

    ○林(修)政府委員 この五百三十六条二項は、今多賀谷委員仰せられた通りに援助の要請の場合でございますね。しかし執行吏はまさに公務執行をやるわけでございます。公務執行を妨害すれば公務執行妨害罪になるわけであります。つまりこれは犯罪という問題が起こるわけであります。その犯罪があればもはやこれは問題はないわけでございますが、犯罪に至らない場合において、警察官職務執行法第五条の要件が備わっている場合があれば、警察官は行政警察として一定の予防、制止、このことはできるのじゃないか、かように考えるわけであります。
  130. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 そうしますと、警察庁長官にお尋ねいたしますが、このあなたのまさに犯罪が行なわれんとする、この犯罪というのは、公務執行妨害のことを言っているのですか。何を言っているのです。
  131. 柏村信雄

    ○柏村政府委員 私が警職法五条の発動として申し上げた前提の犯罪は、威力業務妨害罪ないし暴行傷害罪であります。
  132. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 私はやはり組合員同士の場合は暴力団とは違うということです。あなたのものの考え方の根底は、ピケそのものが暴力である、こういうものの考え方でしょう。組合自体の衝突、しかも武器も何も持ってない状態、二十八日の事態とは現実にちょっと違うのですね。そういう場合に、もう暴力団というように第一組合を見たものの考え方というものは間違っていやしないかと思う。根底にそれがあるから、第五条を発動して予防措置を講じた、こういうことになるのだと思うのです。私はあれだけの警察官がいるのですから、待機をして、その情勢を見て適切な処置をとれぬことはないと思うのです、初めからピケを封殺しなくても。私はそこに問題があると思うのです。
  133. 柏村信雄

    ○柏村政府委員 警察が旧労組を暴力団と見てはおりません。しかし、二十八日の事件といたしまして、旧労組、新労組の大量の衝突ということが起こる場合におきましては、これは平和な話し合いというような段階をたちまちに越えて乱闘騒ぎになるおそれがあるという判断を現地でしたというのは、私は当然のことであろうというふうに申し上げておったわけであります。
  134. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 そうしますると、あなたの方は、もうこの状態では、第一組合と第二組合とぶつかれば大衡突だ、もうこれは犯罪が行なわれる、こういう判断ですか、それを承っておきましょう。
  135. 柏村信雄

    ○柏村政府委員 当日の情勢において、一カ月前ころからの情勢を勘案し、当日の情勢から見れば、数百、数千の者のぶつかりということになれば、相当の混乱、暴行傷害も起こる危険性が非常に濃厚であるというふうに判断したわけであります。
  136. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 問題をごまかしてはいけませんよ。何が数百、数千ですか。数千なんということはない。今、十三人と百五十名の話をしておるんですよ。まあ私は十三人の三人は知りませんが、とにかくわずかの人間とそれに十倍するような人間だったですね。ですから私は、あなたの方で、第一組合はもう暴力的なものであるという判定をされておるならいい。その判定がいい悪いは別として、一つ筋が通っていますがね。しかし、私はそういう事態じゃないと思うのですよ。ですから、そういう状態でないのに封殺するという行為は、これはやはりピケの封殺であり、団結権の侵害であり、警察権の乱用だ、こう解釈をせざるを得ない、その場に立って考えれば。ですから、その点は、はっきりしてもらわなければいかぬですね。
  137. 五島虎雄

    ○五島委員 多賀谷さんの質問に関連して質問をしますが、そういうように、犯罪の発生のおそれがあると諸種の要件から判断したことは正当であろう、こういうように思われるならば、第二組合が二百数十名をもって押しかけて就労をしようとした。第一組合は十三名、平和なピケ・ラインを張っていた。それに、犯罪が起こり得るであろうと判断するがゆえに、十三名を排除して第二組合を入れたのはどうなんですか。だから、犯罪が起こるであろうというならば、第二組合も第一組合も排除して、平和な問題の地位に置くのが警察の任務じゃないか、こういうように思うのですが、どうですか。  それから、一方に判断するならば、執行吏が要請をしたのならば、外見上、現実に犯罪行為が行なわれてなければ排除はできないということは、参議院の法制局長が言われた通りである。林法制局長官も、そういうことになりましょう、しかし現実に犯罪が行なわれておるというならばそうだけれども、何か、いろいろ種々の要件によって、客観的情勢によって暴力行為が行なわれるということの判断であれば、その場になって、その排除をすることができるかもしれません。しからば、第二組合が角棒を持って第一組合に襲いかかろうとしたのか、あるいは第一組合の十三名が竹やりを持って、来たらば来たれというわけで、うしろはち巻で待っていた状態があったのかということは、僕たちは何にもないということを聞き及んでおる。しからば、平和なピケ・ラインであるから、そうであるとすると、説得もさせないうちに千五百名が粛々とそれを排除するというようなことはないじゃないか。そうすると、柏村さんが言われるように言うならば、第一組合も排除するかわりに第二組合も排除することによって犯罪を防止したというならば、これはまあいいと思うのですが、その点はどうですか。
  138. 柏村信雄

    ○柏村政府委員 ちょっとお二人の焦点が違っているんじゃないかと私は思うんです。正面におったピケ隊が知らない間に入るように封鎖するのはけしからぬじゃないかという趣旨の御質問であったので、それはピケが強化されることによって両者の衝突ということから非常な混乱が起こるであろうということで、正面の方を、こっちにくるのを阻止した、その制止をしたということを申し上げているわけでございます。  十三名については、何も妨害もなしに新労組が先に立ってどんどん入っていったわけであります。
  139. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 私は、警察官が出動した場合、出動したのは実は執行吏からの要請があったというのですが、だからその執行を確保するためには、五百三十六条の規定を適用されればいいのだけれども、その点が今度は、要請は民訴で強制所行で要請されたけれども、やった警察官の行動は別の犯罪予防であるという点が、あの状態から見てどうもその条文を適用されるのは妥当ではないか、こういうことを主張しているわけであります。これは一つもう少し実態を見て適切な処置をとってもらいたいと思います。ああいうことがずっと行なわれるならば、今後ピケは、どんなピケをしても平和的説得の機会がなくなります。警察官が封鎖をしてやるのですから、ピケというものは、なるほど衝突が起らないかもしれない。衝突が起こらないかわりにピケの威力というものがなくなり、団結権の一部であるピケというものは効力そのものがなくなる。これはピケの否認です。そこに私は問題があるのじゃないか、こういうことを申し上げているわけでありまして、これは一つ十分現業の状態を調査されて後刻回答を願いたい、かように思います。
  140. 大原亨

    ○大原委員 警察庁長官には、議事の進行上残っていてもらって、通産省の方は急いでいるそうですから、通産省の方をやります。特に赤松委員の御意見によりましてその方をやりますから、通産省の方に端的にお尋ねします。  当日、四月十八日に問題となりましたバケット、これは大体何のために使うものですか。私はいろいろ聞いているのだけれども、疑惑があるのでお尋ねいたしますが、何のために使うのですか。
  141. 小岩井康朔

    ○小岩井政府委員 三池炭鉱で問題になっております港沖の縦坑のバケットは人を昇降せしめるために使うものであります。
  142. 大原亨

    ○大原委員 今ちょっと聞こえなかったのですが、バケットは縦坑において人を上げたりおろしたりするために使う、運搬のために使うのですね。
  143. 小岩井康朔

    ○小岩井政府委員 先ほど申し上げましたように、港沖の縦坑の目的は、ある縦坑を開さくする間人を昇降させる、特にあのバケットにつきましては、もちろん人だけではございませんけれども、縦坑開さくに関係のある作業人員を昇降せしめるという目的でやっているものであります。
  144. 大原亨

    ○大原委員 採炭夫じゃないのですね。
  145. 小岩井康朔

    ○小岩井政府委員 縦坑開さくに必要な作業人員を昇降せしめる、こういう目的に使っております。
  146. 大原亨

    ○大原委員 それははっきりいたしました。つまり縦坑を掘る開さくのためにこのバケットは使うのだ、こういうことです。そういたしますと、今回の争議にあたって、第二組合の採炭夫を上げおろしするために使っているのじゃないですか、資料を出しましょうか。
  147. 小岩井康朔

    ○小岩井政府委員 現在あの縦坑で、あの縦坑の開さくに直接関係のある作業人員以外の者も乗せておるという報告は受けております。
  148. 大原亨

    ○大原委員 ところが一応私どもは通産省とか国家警察なんかがこういう労使の問題で微妙な問題について今まで既定の法律解釈やそういう方針をこういう際に便宜的に曲げてやると、いよいよ大きな感情問題になって、労使間のこういう関係というものが感情的に悪化する、そういうことが非常に大きな問題になるのです。あなたの答弁を聞いていると、今の答弁は非常にあいまいです。採炭夫を上げおろしするために争議中に使っておる、そういうことはいけないと思いますけれども、あなたはどう思いますか。
  149. 小岩井康朔

    ○小岩井政府委員 縦坑の人員の昇降につきましては、石炭鉱山保安規則五十八条の節一項第五号の人を昇降させる巻揚装置という内容で正式に認可をいたしておるわけであります。従って縦坑の開さくに関連のある作業人員は乗せてもよろしいということではっきり認可をいたしておるわけであります。しかしながらあの一連の設置の認可をいたしておりますその内容につきましては、その計画あるいはその明細、そういうものの内容が非常にたくさんありまして、その中で勝手に認可内容と違って実際にやっているような場合には非常に困る。重要な項目について認可通りにやらない場合あるいはどうしてもやれないような事情の起こった場合には、再認可、変更認可というものを受けなければならないことになっておるわけでございます。ところが縦坑の関係者を昇降せしめるという項目につきましては、もし変わっても変更認可の対象になってないわけであります。それはなぜそういうふうになっておるかということを申し上げますと、保安法、保安規則は御承知のように正常の操業を対象に作り上げられてあるわけであります。従ってああいうところから人間を昇降せしめる——現在はまだ完成しておりませんから、縦坑の関係者が昇降するのはいいのでありますけれども、それ以外の人間が昇降するということは別にうたう必要がないわけであります。もっとりっぱな出入りの坑口が別にあるわけでありまして、あそこを使えと申しましても、普通山では使わないわけです。事態がこういう特別な事態である関係で使っておるというような実情であります。従ってその内容が変わりましても変更認可の対象になっていないということになっております。それは今申し上げましたように普通の状態では変わるはずがないわけであります。そこで非常に好ましい状態ではありませんけれども、法律的にはどうしても違法状態は出てこない。ただ目的をはずれてよけいな人間を乗せておる。しかも私どもの一番肝心なセーフティの問題から申し上げますと、人間は乗せてよろしいということになっておりまして、ただその人間の昇降の頻度がよけいになるということで、乗せたから危険になるということではございません。従って現地の監督部長も——私ども当初すぐ心配いたしまして、現地の部長に連絡をとったのでございますが、保安上問題がない。管理も非常に完全にやっておって、現在のところ違法性が出ておらぬ、心配要らぬという報告を受けております。
  150. 大原亨

    ○大原委員 それでは再認可をしておるのかいないのか、あなたは最初はなかなかわかったような答弁をするが、再認可をやっているのかやっていないのか。やっているとすれば、いつやるのか、やっていなくてもよろしいといえばなぜよろしいのか、この三つの点について明快に、よけいなことを言わずに答弁してもらいたい。
  151. 小岩井康朔

    ○小岩井政府委員 人を昇降させるという項目は変更認可の対象になっておりませんから、再認可はいたしておりません。
  152. 大原亨

    ○大原委員 縦坑の掘さくに使うところのバケットの用途についてあなたは答弁になったわけですよ。それ以外の問題についてしかも争議中にこういうものを使うと逸脱行為になって、争議行為というものは感情的になるのです。そうして公平であるべき国家権力というものが政策的に利用されることになる、そのことをあなた不当とは思いませんか、どうですか。
  153. 小岩井康朔

    ○小岩井政府委員 違法性はございませんので、違反とするわけにはいきませんけれども、好ましい状態だというふうには考えておりません。
  154. 大原亨

    ○大原委員 あなたは違法ではないけれども不当である、こういうことですね。
  155. 小岩井康朔

    ○小岩井政府委員 違法ではないけれども好ましくないと申しますのは、違法性というものは実際には出ていないけれども、ただ道義上といいますか、縦坑の掘さくに関係のある人間を乗せると一応うたっておって、それ以外の者を乗せておる。しかしそれは人間をよけい乗せたからといって危険性がよけい出てくるというわけでありませんで、ただ回数がよけいになるというような、非常に軽い項目でありますので、まあ好ましい状態ではないというふうに軽く考えております。
  156. 大原亨

    ○大原委員 定員があるのでしょう。定員があって、定員を過ぎてやっておる事実もあるのです。そのことも認められておるし、あなたは好ましくないと言っておるのだけれども、争議中に好ましくないことをやるのはいかぬと思うけれども、どうですか。あなたは注意しましたか。
  157. 小岩井康朔

    ○小岩井政府委員 定員を超過しているという報告はまだ現在受けておりません。あそこのバケットの定員は、山の保安規程では十三名以内ということになっておるのでありますが、十三名以上乗せたという事実については現地から何ら報告を受けておりません。むしろ十三名以内でやっておるという報告を受けております。  バケットの使用をやめろということを注意したかどうか。この点は現地の監督部長もまだ現在やめろという考えを持っていないので、どういうふうにしようかとかなり苦慮しておるようでありますが、法的に違法性が出ていないし、ただ形が悪い、好ましくないというだけの状態で、行政的な処置としてはなかなかできにくいのではないかというように考えております。
  158. 大原亨

    ○大原委員 炭鉱の災害とかいろいろなことがある。法律できめてないからといっても、好ましくないことについていろいろ指導助言して強力にやらなければならぬ場合もある。事件がないからといって、あなたはこんなことで事件が起きたらどうしますか。とにかくあなたは好ましくないことをどんどんやってもよろしいというのですね。よろしいか、はっきり答弁しなさい。
  159. 小岩井康朔

    ○小岩井政府委員 先ほどから何回も申し上げておりますように、違法性がないし、またそれを乗せたからといって危険性が出たということもないのであります。従って私どもの方の最も大切なセーフティという問題につきましては、現在の管理状況のもとでは何ら問題はない、こういう解釈をいたしておるわけであります。
  160. 大原亨

    ○大原委員 私がもう一つ指摘しておるのは、こういう争議中に好ましくないことをやっておる、それを黙認しておるのはけしからぬというのです。あなたのこれこれこれのために保安上の条件を設けておいて、それを出ておらないから違法でないといってほっておくというようなことがあるのですか。しかも争議中じゃないですか。好ましくないことをやっておっていいのですか。あなたの鉱山行政、保安行政というのは労働組合運動に対してそういう好ましくないことについて、争議に介入してもいいのですか。
  161. 小岩井康朔

    ○小岩井政府委員 好ましくないというのを非常に強くおとりになっておるようでありますけれども、これは使用の目的にもはっきり人間を昇降させてよろしいという認可のもとの、その設置認可されたその内容の設備で昇降させておるわけでありまして、昇降に際しては別に危険はないわけであります。ただ一番私どもで好ましくない状態だというのは、使用の目的に対して縦坑の掘さくに関係のある人間を乗せるというふうに書いてあるのが、それ以外の人間も乗せておるということだけであって、乗せたから危険状態になるということは、現在のところはないわけです。
  162. 大原亨

    ○大原委員 最後に一つ。私も再三言っておるのだけれども、御承知のような争議状況があるわけです。現実にあるのです。そういうときに、鉱山保安法からいって好ましくないことを、あなたは危険でないからといって見のがしておる、こういうことについて肯定されるのですか。もう一回答弁していただきたい。
  163. 小岩井康朔

    ○小岩井政府委員 参議院の方でもお話し申し上げましたように、現地の部長から、法的の違反はないけれども、行政的の措置を考えたらどうかという陳情もたくさんあるようでございます。従いまして、私どももセーフティという問題だけでなしに、もっと大きい観点から総合的に、行政的に何かとる方法がありはせぬかという点につきまして、至急省内でも幹部に相談いたしまして、適当な行政方法を検討してみたい、こういうふうにお答えしてあるわけでございます。同じような趣旨で、一つ検討してみたいと思います。
  164. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 関連して。今の点で、縦坑掘さくが終わればその施設は取り払う、しかもそのバケットは本来人を運搬するために作られたものじゃない。掘さくをするときに出た砂や岩やあるいはボタ等を運搬するために作られたものですね。ところが作業をする人を入れるところがないから、いわばこれは便乗して乗っておる形です。こういった形のものが、石炭鉱山保安規則の五十八条の認可の対象になっておるのか。率直に言って少しおかしいのじゃないか。これはむしろ石炭鉱山保安規則の二百六十三条の、本来人を運搬する車両やケージやバケットではないけれども、その必要上特別の許可を与えた場合に人を運搬することに使用する、こういう規定の認可の方が、監督官庁の認可の方法としては妥当ではないか。これは三池だけの問題ではありませんが、私はそこが問題ではないかと思うのです。これはどういうことになるのですか。
  165. 小岩井康朔

    ○小岩井政府委員 これはよく私どもも問われる点でございますが、最近の縦坑は非常に深い。深いのですと六百メートル、七百メートルという非常に深い縦坑で、何年もかかるわけであります。従って縦坑を開さくする途中におきましては、バケットに乗る以外にないわけであります。従いまして縦坑のバケットに人間を乗せるという点につきましては、私はやはり五十八条でいくべきだという考えを持っておりますし、またそういう方向で従来やってきておるわけであります。二百六十三条は、御承知のように初めから乗せる目的でないものに、いろいろの事情があって乗せなければならないときに、部長の許可を得る条項でありまして、たとえばベルトに人間を、乗せるとか、あるいは炭車にやむを得ず人間を乗せるとか、そういう場合の条項であります。従って、今後ますます深い縦坑を掘り何年もかかるような、常時使うような場合には、やはり五十八条でいくのが私は適当だというふうに考えております。
  166. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 そういたしますと、ケージの場合には人が安全を保つために、握りまたは鎖を備えるとか、いろいろの条件がついておるのです。バケットの場合には条件がついていない。バケットというのは両方でくびっておるから、ふらふらしておる。それに人を乗せる。しかも今申しましたような状態で、人を運搬する装置として今後も認むべきだという方針であるならば、私はバケットについての人を乗せるような規則の改正が必要じゃないか。これは事故が起きていますよ。三井田川ではこの前事故が起きたでしょう。許可をしておっても、このバケット方式では事故が起きるのですよ。ですから、この二百五十条の、人を昇降させる縦坑巻き上げ装置の、法の予定をしておるものは、むしろバケットが入ってないというような感じすら受けるような仕方になっておる。これは一体どういうような状態ですか。むしろ法は、バケットの場合は人を乗せる装置としては考えていないのじゃないですか。ほかのところの条文にはなるほどありますけれども、ケージのような厳格な規定はない。
  167. 小岩井康朔

    ○小岩井政府委員 バケットをそのまま放任しておるという状態ではないのでありまして、もちろん縦坑の開さくが完成するまでという期間でありますから、普通のケージと比べればかなり粗雑になっておりますが、これは開さく中である程度はやむを得ないと考えておりますが、法規でもやはりその上ぶたをつけるとかあるいは鎖をつけるとか、いろいろなものがあるわけでありまして、そういった関係のない場合には、特別の許可を得なければできないように、全然放任というわけではございません。  それから田川のように例がございますけれども、あれはバケット自体のために災害が起ったのではないので、あのバケットは、ほかのものの出っぱりが出てきておって、それに突然ぶつけたために事故が起きたというので、バケットそのものの欠陥から起ったわけではないわけであります。
  168. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 私は、どうも法律規則が悪いのか、その適用が悪いのか、この三池の問題は別にしても、これは縦坑のしかもバケットの場合ですね。掘さくのために人を乗す。そういう場合に認可をするについての適用がどうもおかしいと思う。ケージには御存じのようにかなり詳しい規則その他条件がついておる。バケットにはついてないのですね。これはあぶないですよ。人をそのまま乗すというならば……。それをあなたは、縦坑開さく期間であるというならば、やはりそれは使用期間を明確にして——もう縦坑開さくは終わっているのですからね。要するにあれは入気ですからね。将来あれは人を入れるのじゃない。ですから私はここにも問題があると思う。使用目的が終っているのをなぜ存置をしておるか。入気口です。将来あれから運搬をしたりあるいはまた人を上げるのじゃない。ここにも私は非常に問題があると思う。
  169. 小岩井康朔

    ○小岩井政府委員 あの三池の場合の縦坑につきましては、大半はもちろん完成いたしておりますけれども、まだ中段坑道の掘さくも予定いたしておりますし、坑底の水たまりにつきましても、現在ではできておりますが、当時はまだできてなかったというような関係で、まだ完全な完成というわけにはもちろんなっておりません。
  170. 永山忠則

  171. 板川正吾

    板川委員 五、六分まずお伺いしたいのですが、今度の三池の争議の起こった原因というのは、一体どういうふうに理解されておりますか。一つ労働省、通産省、警察庁長官にお伺いします。どういう理由で、この争議は起こっておるかということです。
  172. 亀井光

    ○亀井政府委員 石炭産業の不振からいたしまして、企業の合理化あるいは企業の整備というものが経営者側として必至な問題だということから端を発しておると私は考えております。
  173. 小岩井康朔

    ○小岩井政府委員 私も同様に考えております。
  174. 柏村信雄

    ○柏村政府委員 今度の争議が起ったことについて、私ども争議自体についてとやかく言うべき筋ではありませんが、私なりにはただいま労働省の労政局長が話したことが大筋だろうと思います。
  175. 板川正吾

    板川委員 この争議の一番発端は、どちらから要求が起ったものか理解しておられるでしょうか。労働省と警察庁に聞きたいのですが、一般に争議というと、まず労働組合が要求をして、使用者側が、これは受け入れられぬというので争議に入るのですね。労働組合があまりにも過大な、会社、企業をつぶすような要求をしているから、会社が受け入れられないというので争議が長引くというのが、一般的に感じられている争議ですが、今度の場合もそれと同じようにお考えですか。
  176. 柏村信雄

    ○柏村政府委員 先ほども申し上げましたように、警察といたしましては、争議がいかなる原因で起こってくるか、またその状況がどうであるかというようなことにつきましては、個々的に研究するものはございますけれども、警察自体の職責といたしましてはそういうことでなしに、争議行為に伴って起こりまする不法事案というものについての取り締まり、規制ということを主眼に考えておりますので、私としてはあまり深くその議論をしたくないと思います。
  177. 亀井光

    ○亀井政府委員 団体交渉は双方が対等の立場で論議をいたしまして、いろいろな結論を出していくわけであります。従って団体交渉のきっかけとなりまする要求というものは、組合も要求をすることができまするし、経営者でも要求することができると思います。
  178. 板川正吾

    板川委員 それはできますが、今度の争議の原因を一般はどうも誤解しているのですよ。今度の争議の原因は、組合は何も要求してないのです。これは経営者側、会社側が千二百名の首切りをするというのです。その首切りもエネルギー革命のためにどうしても千二百人人減らしをしなければならぬ、こういうのであれば、組合側は話し合いに応じようということを言っておるのですよ。現在月に一人十六トンでありますが、この十六トンの採炭量をもっと上げたいというなら、これも組合側は話し合いに応じようと言っておるのです。しかし会社はこれを拒否しておる。なぜ拒否しておるのかというと、会社は過去における組合活動家を生産阻害者という名において千二百名首切るというのです。合理化といって人を減らして経費を少なくしていかなくちゃならぬというなら、組合側はある程度話に応じます、こう言っておる。しかし会社はそれじゃいかぬと言う。千二百名を首切るというのは、普通の人が千二百名減ったのじゃだめなんだ、組合活動家を生産阻害者という名前において千二百名首切るということですから、そこに今度の争議が非常な治安問題にまで発展する原因があるのです。組合が賃金の二倍も三倍も要求して、二カ月も三カ月も争議をやって、そうして攻撃を加えていったならば、世間の世論はどうか、企業をつぶすような要求をして組合はむちゃだというような批判を受ける。ところが今度は逆で、会社側が千二百名の組合活動家を全部首切る、ほかの人がやめたのじゃだめなんだ、この千二百名首切りという横車、不当労働行為ですが、この不当労働行為的な要求をあくまで通したいということに対して、組合側からいえば組合がつぶれてしまう、労働運動がつぶれてしまうことなんですから、あらゆる手段を用いて会社の首切りを阻止しようという動きになり、それが今度の争議が今までにない非常に激烈な、治安問題にまで発展するような状況になっておるのです。この点を理解しないと私はいかぬと思うのですが、一体警察庁は——それは警察庁は争議不介入の原則ですからけっこうです。しかしこの争議で、大体警察庁が現地に寝泊まりしているのはみな会社の施設じゃないですか。もちろん金は払うそうです。金を払うからいいといって会社の施設にみな入っておるということは、どうも警察が三井資本の私兵化して、請願巡査的になって、しかも不当に、法の手続をとらないで第一組合を弾圧するということになれば、第一組合がますます警察に対して不信の感じを持つということは当然なんです。一体今度の問題をどういうふうに理解されておるか、私は事実を言ったのですが、この事実が間違っておるかどうかお伺いしたい。
  179. 亀井光

    ○亀井政府委員 今回の争議の発端が企業整備、企業の合理化ということにありますことは、先ほど申し上げた通りでございますが、しからばその前の団体交渉の話し合いのテーマといたしまして会社側がどういう計画で企業の合理化をやりたいかということは、会社みずからがお考えになり、会社みずからがその計画を作って組合と交渉に当たるのであります。そこでその計画の中に不当労働行為的なものがあれば、これは法律上許されないことだと思いますが、それでない限りはどういう計画を団体交渉の議題として出そうと、これは使用者側の自由であります。そこでその議題をめぐりまして労使双方で話し合いがつかない場合にどうなるか、これはすでに今度の三井の場合におきましては昨年の十一月とことしの三月、中労委のあっせんということであっせん案が出された。しかしそれでもなお解決しないということになっておるのでありますから、結局これは自主解決、労使双方で最終的に話をつけていくということ以外にはないと思います。そこで私が先ほど御答弁申し上げましたのは、企業の合理化の計画自体は経営者みずから作って、そして団体交渉の議題に供する、このこと自体は経営者の自由であるという考えを申し上げたのであります。
  180. 柏村信雄

    ○柏村政府委員 この三池の問題のよって来たるところは非常に深いものがあるのではないかと思いますが、そうした原因等については労働省の方の御意見によっていただきたいと思います。  ただいま御指摘の会社の建物を借りておるということ、私どももできることならそういうことのないように、もちろん先ほど来警察の立場ということはるる申し上げておりますが、そういう立場を誤解されるおそれのあるようなことはできるだけ避けるべきだと思います。しかし御承知のようにあそこの治安を守るため相当数の警察官を動員いたしておりますので、適当な場所がなかなか見当たらないというようなことから、やむを得ず会社の一部を借りておるということも私聞いておるわけでございますが、適当な場所がもし見つかりますならば、そのことに努力もし、できるだけ誤解を招かないような方法をとって参るのが適当ではないかと思います。     〔委員長退席、大坪委員長代理着席〕
  181. 板川正吾

    板川委員 警察庁長官に言いますが、それは料金を払っても、第一組合側からいえばこれはもう警察が会社側の手先になっておるというふうにどうしても思うのです。そこにこの問題がかえって紛糾をしておる原因があるというのですよ。ですから、陽気もそんなに寒くないのだから、私は野営されるなり、そういう形で、あくまでも争議に不介入の立場という形を表わしてやるべきじゃないかと思うのです。それで非常に各地の会社側の施設を借りておるのですが、この際私はそこを出て、それでやるべきじゃないかと思うのです。大体その警察の考え方が——この争議は会社側からしかけた争議なんです。そこに問題があるということと、しかけた方に宿舎を借りて御厄介になっているという形はどうもおもしろくないし、しかも組合側に了解もない。警察官がおって、治安を維持したり、どこも場所がないために、こういうところを借ります、そのかわり私らが借りたからといったって中立を守りますとか、何とかと言って、ある程度了解でもした上でやるというならまだしも、相談もしないで会社側の土地を借りて、金を払えばいいんだろう、こういう態度が、この争議を非常に混乱さしている一つの原因だろうと私は思う。だから即刻適当な処置を講じてもらいたいと思うのです。その点要望をいたします。  もっとあるのですが、私の時間がないようですからやめますけれどもこれを要望します。
  182. 赤松勇

    ○赤松委員 私の質問が多採な関連質問のために時間がなくなってしまったわけですけれども、問題は、昨年八月から行なわれておりまする三井の賃金遅欠配の問題、これが不当労働行為にならないかどうか、あるいはロックアウトの問題、これも不当労働行為、つまり防衛的なロックアウトでなしに、きわめて攻撃的なロックアウトであるという意味からいって、やはり不当労働行為の疑いがあるのではないか。さらに、中山あっせん案においても示されておりまするように、生産阻害者であるかどうか。組合活動家として、レッド・パージとして首を切るのじゃないだろうか。これも不当労働行為の疑いがある。あるいは海上保安庁の争議介入の問題また、やはり警察問題について、国家公安委員長に対する質問、運輸大臣、労働大臣、これらの質問が実はあるわけであります。しかし時間がありませんので、私の質問は保留しておきたいと思いますが、最後に、けさ社会党本部の現地から帰って参りました書記の話によりますと、現地の警察官はずいぶん疲労こんぱいしておるようです。それは、各地から集まってきておるようで、長い間家を離れて、何かこういうことは初めての経験らしいし、精神的にも肉体的にもかなり疲労しておるようです。その疲労が異常神経を呼んで、そうして必要以上の警察官の暴力ざたにもなっておるというようなことを言っておりますが、こういう点については、私は指揮者には相当問題があるし、責任者は追及しなければならぬと思うのですが、しかし一般警察官は、警視庁の機動隊じゃないのですから、こういう素朴な一般警察官に対しては、長官は十分あたたかい思いやりを持って、すみやかにそれぞれ現地に復帰をさして、そして今の三池の状況に応じた、不当介入の疑いを受けるようなそれでなしに、暴力団の方もだいぶ片づいたようでありますから、ある意味でいえば、私は、三井争議に関連する警察行政としては、一つの転機にきているのじゃなかろうか。そういう意味において、どうぞこういう点について深い検討を加えて、そうしてこの争議が一日も早く円満に解決するようなことのために、政府もわれわれもお互いに努力をしたい、こういうように考えております。私の質問は保留しておきます。
  183. 大坪保雄

    ○大坪委員長代理 武藤武雄君。
  184. 武藤武雄

    武藤委員 冒頭に先ほど赤松議員の、私の本会議質問の中で負傷者の数において事実に相違するというお話がありましたけれども、これは私実際に現地に行って当日の模様を聞きまして、しかも重傷、軽傷を問わずだれかれの差別なしに病院にかつぎ込んだ、実際の入院をした者、診断をした者の数字を申し上げたのでありますから、これは事実が証明するのではないかと思います。  この際私は一言重要な問題について警察庁長官質問をしたいと思うのでありますけれども、先般の本会議質問におきまして、赤松議員の方から四山鉱における殺傷事件について職員組合の方の出身者の中で長浜、白谷ですか、この二人の職員が暴力団に凶器を渡したことによって、これは殺人幇助罪として告発をされて、取り調べをされておる、こういうことが名前をあげて質問をされたわけであります。これは、この質問内容から見ますると、事実を言っておるわけだろうと思うのでありますけれども、私どもがあとから調査団として第二次の調査団を派遣いたしまして実際に熊本の警察署等も調べましたけれども、ただいまのところかような事実は存在をしていないという署長の正式の説明を聞いて帰ってきたわけであります。     〔大坪委員長代理退席、委員長着   席〕 その後この問題について職員組合の組織の方からも、そういう宣伝をしておるということで第一組合の責任者を告発をしておるようでありますが、この両名、いわゆるそういうふうに宣伝をされておる両名からも名誉棄損の告発がされておるようでありますが、私どもが現地を調べたいわゆる熊本警察署長の説明と中央の警察庁本部においてこの情報を聞いておる事実とがどういうふうになっておるのか、この間の説明を一つ願いたいのであります。
  185. 中川薫治

    ○中川政府委員 先月二十九日の事件につきましては熊本県警察で鋭意捜査を遂げておりまして、現在当該暴力行為等に関係した人間も相当逮捕しておるのであります。その間におきましてそれ以外の者の凶器提供の情報等もあって、鋭意調べておりますが、ただいまのところ第三者が凶器を提供した、こういう事実は判明しておりません。
  186. 武藤武雄

    武藤委員 長浜、白谷という両名を逮捕して、容疑でもって取り調べたという事実もないということでありますか。
  187. 中川薫治

    ○中川政府委員 私は、暴力行為に関係した人たちの人数は、七十二名の人に対して、かような事実を調べておることは事実でありますけれども、その七十二名中六十八名を逮捕しておりますが、その中に会社の関係者とか、そういった関係者が入っていないということは聞いておりますけれども、人間の名前までちょっと今正確に記憶しておりません。
  188. 武藤武雄

    武藤委員 入っていないという断定があればそれでいいのであります。そうすると、赤松議員はどういう考え方でこういうふうに名前をあげて、しかも取り調べをされておるということでありますから、これは客観的にも現実的には実際のことを指摘しておるわけでありますけれども、宣伝をするにしてはあまりにも重大な誤謬であろうと思うのであります。この点はあとでわれわれの方でもはっきりさしたい、こう考えるのであります。今度の三池炭鉱の争議について第三者が暴力をもって介入したという問題については、これは議論の余地はないのでありまして、こういうものを労働運動に介入させること自体が、わが国の社会情勢の中にそういった大きな悪が存在をしておるということでありますから、これらに対しては徹底的な鉄槌をやはり下す必要があると私は思うのであります。従いまして、これらは警察当局においては何ら仮借するところなく、徹底した追及をしてもらわねばならぬと思います。ただ私はここで取り締まり当局あるいは法行政に対して責任を持っておらるる法務省関係の方々の見解をただしたいのでありますけれども、やはり私は、今までいろいろ質問の中で意見も出ておったようでありますけれども、暴力というものはたといそれが個人であろうが集団であろうが、近代社会の法秩序によって国家が維持されておる範囲においては、そういうことはいかなるものであろうとも排除されなければならぬ、こう考えるのであります。私はかりにそれが労働組合という組織の名前で行われるにしても断じて許すべきではないし、容赦すべきではないと思うのであります。かりにそういうことが行われるとするならばやはり法に従って仮借なく取り締まりをさるるべきだと思うのであります。そういう意味で私は、今三池炭鉱の中で行なわれておる、特に住宅地域における非常な不法事件がいまだに繰り返されておる、われわれが参りましたときにもそうでありますけれども、それから相当時間が経過しておりますが、ここ二、三日われわれのところに報告されておるのを見ますると最近は特にひどい状態になってきているということで、まことに憂慮にたえないのであります。  そこで私はまず第一にピケの問題について一言質問をいたしたいのであります。私どもはピケを、暴力の伴わないいわゆる平和的説得という範囲でどう合法的に使うかという問題については、労働組合としてもいろいろの戦略戦術を考えられなければならぬと思います。しかしいかに戦略戦術を考えたといたしましても、それがわが国の法秩序を根本的に無視するような状態において行われるということは、明らかに行き過ぎになって参ると思うのであります。そういう意味でまず第一に、あの社宅の入口における封鎖の問題であります。私はあの状態を見まして、あれはもうピケではなくて明らかに封鎖だと思うのであります。労働組合が自分の傘下の組合員がいろいろの行動をする場合に機関の決定によってある程度それに対して団結のために統制を加えるというようなことはあり得るかもしれません。しかしながら天下の自由に交通さるべき道路において、そこに多数の者が幕舎を張ってがんばっておる、そしてすべての通行人に対して威圧を加える、威圧どころかこれは事実上中に入れない状態にしておく。この間私どもが参りました際にも、新聞記者報道関係の諸君ですらも入るわけには参らない、こういうことを言っておりましたけれども、そういった意味ですべての者を遮断をする、しかもそれはわが国の法律によって保護されておる住宅地、自由に横行濶歩できる道路においてそういうことが平然としてピケ・ラインという格好で行なわれておるということに対して、警察当局あるいは法務当局、あるいは労働関係——きょうは労働大臣はいないようでありますけれども、いわゆる労働運動の延長としてそういうことが正当なのかどうか、一つ見解を承りたいのであります。
  189. 柏村信雄

    ○柏村政府委員 いわゆる暴力団はもちろんのことでございますが、かりに争議行為に伴うものでありましても、個人的あるいは集団的な暴力というものは絶対否定さるべきものであるということは、武藤委員のお話の通り私も考えておるわけでございます。警察といたしましてはそうした暴力行為というものについてはきぜんとして徹底的に取り締まりをやっていくという方針でございます。ただいまお話の炭住街におきます検問的行為の問題でございますが、御承知のように先月以来非常に事態が急迫し、不穏な状態がみなぎり、新労組の相当の人間が疎開せざるを得ないというような、居住の不安というようなことに追い込まれ、そしてまたこん棒を持っていわゆる炭住街におけるピケ、検問的な行動をやっておるということも事実でございますが、これらにつきましてわれわれとしましては現地を督励いたし、まずそうしたこん棒等、衝突した場合に暴行傷害などの起こりやすい因子というものを極力除くということで、これは直ちに押収するというわけには参りませんが、強力に警告をいたしまして、提出をさせておるわけであります。これによりまして現在ではまずほとんどそういうこん棒を持って徘徊するというような事態はないようでございます。また炭住街につきましては、大体一個分隊単位くらいにいたしまして集団警らを励行するようにいたし、そしてまたただいまお話しの道路上におきまするそうした検問所的なものについては、これを取り除くように時々警告をいたしておるわけでありますが、これはいまだにまだ徹底いたされない状況でございます。そういうふうに努力をいたして参りまして、だいぶ炭住街における状況も改善されて参ったように私は聞いておるわけでございます。しかしながら炭住街によりましては疎開して帰らない者がまだ相当数あるというような状況で、そうした不安がまだ一掃されるに至ってない。それが先ほど来御質問に対して申し上げておりますように、全体の情勢を判断すればまだ相当に険悪なものが残っておるということを申し上げた次第でございますが、さらに私ども警備局の参事官、また捜査一課長を派遣し、最近におきましてはここにおります警備三課長を現地に派遣して、実情をつぶさに視察させ、そういう報告を受けまして、さらに炭住街等におきましてはもっと緻密に徹底した警戒態勢と申しますか、民心の不安をなくすような方途を講じて参りたいというように考えておるわけでございます。ただいまの武藤委員のお話は重々私同感でございまして、今後もできるだけそういうように力を入れて参りたいと考えます。
  190. 亀井光

    ○亀井政府委員 労使関係の問題は言うまでもなく生産の場、すなわち工場、事業場を中心として起こって参るわけでございます。今御質問のございました炭住街におきますいろいろな問題は、労使関係以前の問題と申しますか、あるいは以外の問題と申しますか、そういう問題でございます。
  191. 武藤武雄

    武藤委員 そうすると局長、労使関係以前の問題だということになると、炭住に張っておるピケというものは、いわゆる労働運動におけるピケという解釈でない、こう解釈していいわけですね。
  192. 亀井光

    ○亀井政府委員 いわゆるピケと申しますのは、生産にあたりまして労務不提供のストライキという効果を発揮するための手段でございます。従ってそのことは生産の場である工場、事業場を中心として行なわれるべきでありまして、炭住街で行なわれておりますそういういわゆるピケと申しますか、あるいは封鎖と申しまするか、これは治安上の問題としての処理がなされるべきだというふうに考えます。
  193. 川井英良

    川井説明員 法務当局におきましても、暴力に対しましては、ただいま警察庁長官労政局長が述べられたことと同じような考えを持っております。
  194. 武藤武雄

    武藤委員 警察庁長官は、最近は非常に努力をして、逐次よくなってきているという答弁でございますけれども、実際は私どもの第三次の調査団が勝立社宅ですか、あそこへ参りましたときでも、検問所では強力な阻止はしなかったようでありますけれども、ちょっと中の道路に入りますと、いわゆる主婦の人たちがもう二、三百人集まってきて、自動車を完全に押えて、ガラスから何から全部手でつかんで、絶対にその中へ入れないというようなことをやって、悪口雑言の限りを尽くして、女の人ですからそれを排除して入るなんということは、もちろん考えるべきではありません。それで戻ってきたようでありますけれども、しかしこれはたといいかなる人であろうが、自由に通行できる地点において、そういった、たといそれは婦人であろうがなかろうが、集団の実力で阻止されるというようなことが、これはいいというふうに警察庁長官はお考えになっておりますか。何か現地におった警察の方は、これを全部傍観しておったようでありますけれども……。
  195. 柏村信雄

    ○柏村政府委員 ただいま御指摘のような事実はまことに遺憾な事態で、決してそういうことが許されるべきものではないと思います。十分先ほど来申し上げましたような方針に基づいて、平穏な炭住街が確保されるように努力して参りたいというふうに考えております。
  196. 武藤武雄

    武藤委員 どうも警察当局は事態を楽観されるきらいがあると思いますから、一、二の例をあげて、いかに最近またひどい人権無視が行なわれておるかということを申し上げてみたいと思うのであります。報告によると、最近小浜社宅に婦人による洗たくデモ、ふろ場デモが相当ひどく行われておるようであります。第二組合の婦人がふろ場に入っていくと、たとえば着物を隠してもう出られないようにしてしまう、あるいは流し場を全部占領してしまって、いっときも入っておられないようにしてしまうとか、とにかくあらゆる、手段を選ばぬ行為が繰り返されておるようであります。しかしこれは婦人の浴場でありますから、警察は中へ入っていけないという盲点をついて、もうとにかく社宅内にはどうしてもいられないような圧迫を加えようという戦術に最近は変わってきておるようであります。その前に社宅内における非常な脅迫、暴行が数限りなく行なわれておるわけでありますが、私どもも実際に、住宅内の窓ガラスがもう全部破壊されておる、あるいは玄関の戸が二つにへし折られておるという実態をまざまざと見て参りまして、写真にもって参りましたけれども、ひどいのになりますと、第二組合の婦人が産けづいて参りまして、もう苦しくなってきたというので、隣の第二組合の主婦を頼んで、分会の事務所から産婆さんに電話をかけようとすると、その電話はもちろん拒否されてしまう。それでやむなく飛んでいって表からようやく連れてくる。そうすると、今度は、毎日やられておるような脅迫が妊婦にされたのでは大へんだというので、雨戸や何かを締めておると、どんどんと戸をたたいて脅迫をする、あるいは台所の玄関を破って入ってきて騒ぐというような、そういうことがもう平然として行なわれておるということが事実として指摘をされております。われわれが手に入れておりまする資料の中にも、そういう一家の妊婦の名前から体験談も出ております。あるいは婦人がちょっと買いものに出ようということで表へ出ると、突然洗たくデモをかけられてめちゃくちゃにされてしまう。中には、どこから飛んできたともない投石のために、実際に出るより早くけがをして重傷を負った婦人もここに出ておりますけれども、とにかくひどいのであります。絶対に表へ出られないような状態が戦術としてとられておるわけです。私どももあの中を回ってみまして、どこの炭鉱に参りましても、炭住の中は大てい子供や主婦が雑踏しておるものでありますけれども、まさに死の町という言葉が当てはまるような状態の町であります。恐怖の町といいますか、死の町といいますか、そういった言葉がぴったりするような状態であります。ですから、もう二階に閉じこもってふるえておる、しかしものを食わぬわけにはいかない。それでやむなく主婦が買いものに出ると、たちまち三、四十人も集まってきて、品物を買ってきて家に入るまで、あらゆるいやがらせ、あらゆるつるし上げが行なわれる、そういうことのために、やむなく多数の者が住宅を着の身着のままで飛び出すという状態にあったわけでありますけれども、私どもが参ったときには、すでに六百家族に近いものが着の身着のままで飛び出しておりまして、われわれも一々慰問をしましたけれども、顔を見ただけで泣き出すというほどで、どのくらいひどい脅迫が行なわれておったかということは、表情を見ただけでわかるのであります。現地の警察署長に対して、一体法治国家の日本において、そういった例外の地域がここに現存しておるということをわれわれまことに驚いたのだけれども、一体それに対して警察はどういう態度をとっておるのかということで質問をしますと、署長さんは、まことにその通りでありまして、それで昨晩から実は一家族を救出するのに、一個小隊から一個中隊も警官を動員をして、そうして辛うじて脱出をさせておるということを説明しておったのでありますけれども、こういう無法地帯といいますか、日本の特殊地帯といいますか、そういうものが長期間にわたって存在しておる。しかも最近になると、ただいま申し上げましたようなふろ場デモのようにますますそのやり方が悪らつであり、しかも巧妙をきわめて、盲点をついてますます激しくなっておるという実態に対して、警察庁長官は、だいぶ警備が行き届いてきたような答弁でありますけれども、実態は違っておる、こういうことも一つ認識をしてもらわなければならぬと思うのでありますけれども、その間の、中央の現地についての把握はどうなっておりますか、御答弁を願いたいと思います。
  197. 柏村信雄

    ○柏村政府委員 先ほどだいぶ安定をしてきたように申し上げましたのは、最も悪い時期に比してのことを申し上げたのでありまして、ただいま御指摘のような不法事犯というものが、やはり現にしばしば行なわれているということは、私ども承知いたしております。さればこそ、先ほど申し上げましたように、パトロールの強化というようなことについても、単に時間をきめて部隊で回るというような方法のみでなく、方法等につきましても十分に検討し、もっと緻密にやっていくというようなことで指導をいたしておるわけでございます。  それからまたただいまふろ場の問題もございました。これはなかなか警察として立ち入る等のことは困難でございますけれども、非常に不法なものにつきましては、やはり遠慮せずに警察に十分に届け出る等の協力をしていただくということによって、警察としては、そのことが刑事事件として取り上げられる場合におきましては、もちろん断固として、取り締まりを行なっていくという考えでおるわけでございます。  とにかく、炭住街における生活の安定ということは、先ほど労政局長からもお話がありましたように、ほんとうに基本的な人権の問題であろうと思います。警察は何よりもそうした生活権の確保ということに重点を置いて、今後の警察活動も実施をして参りたいというふうに考えております。
  198. 武藤武雄

    武藤委員 この家庭の主婦に対する脅迫、圧迫というものは、これはもう言語に絶するものがあるわけです。しかもそれははっきり形の上に暴行となって現われておる例がたくさんあるわけです。しかもこれらについては、某有力婦人が現実にそういう暴行をしたということがとらえられて、氏名まで新聞に発表されておるという例もあるのであります。また多くの被害者が口をそろえて、あの者にやられたということを現実に言っておるのでありますけれども、これらの問題に対して、警察当局はどうもほおかむりをしておるという現地からの非常に強い叫びがあるのでありますけれども、一体こういう事態が住宅内において今戦術を変えて、主婦を中心とした脅迫の戦術が公然と行なわれようとしているときに、そういった婦人間における暴行であり、脅迫であるということで、法の処置というものがおろそかになっては、私は大へんなことだと思うのであります。そういうことがおろそかになることによって、これは幾らやってもいいんだ、われわれの地区は完全な治外法権の、何をやってもいい無法地帯になっておるんだ、そういう感じを与えたならば、ますます現地の空気というものは険悪になるばかりだと思うのであります。ですから、そういう問題に対して、取り締まり当局として一体どういう態度をもって臨んでおられるのか、一つ答弁願いたい。
  199. 柏村信雄

    ○柏村政府委員 警察の取り締まりの態度としまして、もちろん悪質なものに重点を置くということは当然のことでございますけれども、ああいうふうな集団の住宅地におきまして組織的ないやがらせ、あるいは暴行というようなことが行なわれることに相なりますと、たとい軽微なものでありましても、そういうことを放置することによって、だんだん積み重ね方式で事態が悪化するということも考えざるを得ないわけでございますので、もちろんまだまだ十分とは申せませんが、今後とも警察の活動の重点を炭住街の生活権の確保というところに指向いたしまして、御趣旨に沿うように努めて参りたいと考えております。
  200. 武藤武雄

    武藤委員 それから私は今度の三池事件に対する暴力の問題でありますけれども、実際にあの二十八日の三川鉱の事件において起きた暴力というのは、繰り込み場に入ろうとする事前における暴力行為による負傷者というものはごくわずかであったのです。最大の犠牲を出したのは、第二組合が構内に乱入したそのあとをすぐ追尾して入った約二百名くらいの第一組合員の人々が何か古材置場にあったつるはしとかスコップとか大きなバーナとか、そういったものに全部持ち物を持ちかえて、そして繰り込み場に入った。何にも持っていない素手の組合員に対して、そういう凶器ともいうべきものを持って攻撃をしかけた。そしてものすごい残虐的な乱闘が行なわれたというその操り込み場の中における乱闘によってたくさんの犠牲者が出たわけであります。大体あの中における人々の二分の一くらいは全員が負傷をするという状態になったわけです。そういうことを考えた場合に、確かに当日の警察当局は千名くらいあそこに動員をしておったようでありますけれども現実にあの繰り込み場の内部で惨劇が繰り返されておるときに、あそこの副長か何か警察関係の者に電話で連絡をしたそうでありますけれども、構内に入るということに対して、多分警察側もちゅうちょされたと思うのでありますけれども、そのときに、もう少し早く入ってくれれば、あれだけの惨劇は行なわれなかったろうということが言われておるのであります。ところが、警察官の中に入るのがどうしても二十分以上おくれた。その二十分の長さというものは生涯忘れることができないとあの負傷した人々は言っておりましたけれども、このときに、警察当局がああいった非常な事態が起きるということに対する予防処置、あるいは起きた場合の現場に処する態度というものが非常に敏速を欠いた、これはどう考えても、結果の事実から見ても、そう思うのであります。あの程度に入った人たちの中で、千名も警官がおれば、もう十分にそういう惨劇は防ぎ得たのでありますから、なぜもっと早く連絡されなかったかと、その電話をかけた副長はじだんだを踏んでくやしがったそうでありますけれども、そういった惨劇が予防できる十分の力を持っておりながら、それが見過ごされたということは責任まことに重大ではないかと思うのであります。  それともう一つは、これは労働運動であるとか、ピケの合法か、限界か云々とかいう問題を抜きにして、場合によっては生命にかかわるほどの暴力が行なわれたということに対して、この責任の追及というものは徹底的に行なわれる必要があると思う。相当数の逮捕状も出されておるようでありますけれども、現に十六名まだ逮捕状を出された者の逮捕が行なわれていないようでありますけれども、私はこれは従来の労働争議の中で、ややもすると争議解決を条件として、争議の間に起きた事件の責任は問わないというようなことが往々にしてあったわけでありますけれども、私は事暴力事犯に関しては絶対容赦してはならぬと思うのであります。従いまして暴力を実際にやった者、実際に計画した者は、それはもちろん第一であろうが、第二であろうが、区別なしに仮借なく私は追及をしなければならぬと思うのであります。ところが明確になっている十六人がいまだに逮捕することができないというようなことはちょっと考えられない。相当迷宮入りともいわれるような緻密な形に行なわれた犯罪ですからもあらゆる追及をして逮捕しておる現在の警察行政の中で、ああいう公然たる場所の中で、しかも公然と名前も顔も知っている容疑者が、いまだに逮捕されないというのはどうもわれわれ考えて不思議でならないのであります。何か警察当局がピケ隊の大きな圧力あるいはその他の背景の圧力におそれて怠慢をしておるのではないかという心配があるのでありますけれども、これはどうなんですか。
  201. 柏村信雄

    ○柏村政府委員 三月二十八日の三川事件につきましては、ただいまお話しのように警察の部隊が到達する以前においてあの惨劇が行なわれておったことについては私も非常に遺憾に存じます。卒直に申しまして警察の事前にキャッチした各種の情勢判断というものが結果的には甘かったと申しましょうか、あれを事前に防ぐような配置をとり得なかったということでございまして、非常に遺憾に思っておるわけでございますが、その後の捜査につきましては、本庁からも捜査一課長を派遣して指導に当たらせると同時に、現地も十分に督励いたしまして、鋭意捜査を進めておるわけであります。決して私ども組合争議に関係する暴力行為だから手をゆるめるとか、あるいは組合の団結の力が強いからこれに対して遠慮するというような気持は毛頭持っておりません。あくまでも徹低的に追及いたして事件の処理を完璧にしたいというふうに考えております。
  202. 武藤武雄

    武藤委員 私はどうも今度の三井三池の事件を考えてみると、何か警察当局の中に士気の弛緩というようなものがあるのではないかというような誤解すらも与えておるような言動がたくさんあるのであります。たとえば現地に参りまして、あそこの警察の責任者あるいは県の本部長等に会って当日の問題についていろいろ追及をしましたときに、たとえば新聞はもうすでに、ラジオ・ニュースもみなそうでありますけれども、必ず衝突事件が起きる、必至だという報道をしておったことは間違いがないのであります。そういうときに、あの当日のいろいろのピケ隊の写真や何かも全部われわれのところに入っておりますけれども、近く大きなものを画集にして出そうというようなことにしておりますけれども、ほとんどがやはり何か手に持っておったんです。竹の棒を持つとか、あるいは角棒を持つとか何か持っておった。この写真にも出ておりますけれども、どこかの分会長さんがデモの先頭に立って行進をしておるのがあります。ピケのところに行くデモ隊の先頭で、これは指揮官でありますね、その指揮官が、この短い棒の先にとがったピッケルをつけて、ちゃんとそれを持って行進をしておるのですね。あの先のとがったピッケルなんというのは、何のために持っているかといえば、やっぱり相手をやっつけるために持っていく以外には、携行の理由は何もないのですね。現実にそういう武装が行なわれておった。だからそういう問題に対して、新聞も非常に危険な状態を報道しておった。乱闘は必至だというようなことも言っておった。そういうときに、しかも多くのピケ隊の人たちがそういった持ち物を持っておるということに対して、それを警察側として何らかの処置が一体とれなかったのかどうかというようなことで、その質問をしたところが、私ども確かにこれは場合によっては非常に危険な持ち物になる、こういうふうに考えたものだから、何とかそれを放棄してもらえないかということで、組合側に申し入れをしたところが、これはピケを強化する道具であって、必要なものである、大体われわれは従来もこういうものを使用してピケを強化しておったのだから、今に始まったことではない、従ってこれは必要なものだ、こう言われたものだから、しいてそれ以上押さなかった、しかしこれは結果的に非常な失敗でありました、こう言っておりましたけれども、ほんとうに治安を確保して、国民の生命、財産を守ってやらなければならぬというほんとうの責任感があるならば、これはもうだれが考えても、混乱したときにそれがどういう形に使われるかということは明らかなんですね。だから、そういう問題に対する配慮というものが非常におろそかであったのではなかろうか、こう思うのです。こういったことに対して、実際の責任者である長官として、この前後の事情から見てどうでありますか、こういう状態に対する対処の仕方として、現地警察側の態度は当然であった、こういうふうにお認めになっておりますか。
  203. 柏村信雄

    ○柏村政府委員 先ほどから申し上げておりますように、ああいう事態が起こって相当数の死傷者を出した、これを警察において阻止し得なかったことは私も非常に遺憾に思っております。ただ現地の警察といたしましては、私が言うのはどうかと思いまするけれども、何と申しましても、東京警視庁のような非常に訓練の進んでおったものとは違い、かなり混成部隊であるというようなこと、また経験も比較的薄いというようなこともありまして、十分の態勢をとることに、あるいは遺憾な点があったのではないかと思いますけれども、先ほど申し上げましたように、甘いと言われれば甘いのでありますけれども、事前の情報においては、ピケ・ラインにおいてのいろいろのいざこざの問題はともかくとして、まさか中に入った者に追い打ちをかけていくというような、あの惨劇のようなものを当初から想像するということは非常に困難だったのじゃなかろうか。と申しますのは、現に被害をこうむられた方々もほっとしたというような状況だったのじゃないか。もう入ってしまえば安心というふうなお考えだったのではないかと思うのでありまして、警察がそこまで明敏に事態を判断して、事前の態勢をとるということに欠けておったということは、結果的には非常に私は遺憾に思いますけれども、宮地本部長以下、あのときの警察がとった態度を、直ちに非常な不手ぎわであったというふうに私から申すわけには参らないと思います。しかし、結果的には非常に遺憾なことでございまするし、ただいまお話しの士気の問題もございますが、その後中央からも時々係官を派遣いたしまするし、私も現地の村井局長、また宮地本部長等にも電話等で時々指導をいたしまして、その後非常に態勢は整ってきておるというふうに私は聞いておるわけでございます。現在においては警察は、先ほど赤松さんからもお話がございましたが、それはああいうところで長いことおりまするから、若干疲れる者がありますが、時々交代いたしておるわけでございまして、士気は相当に上がっておるというふうに聞いておるわけでございます。態勢は当初よりは非常に整備され、また近県からの応援部隊も相当数出しておりますので、先ほど申し上げておりますように、炭住街を中心として、その他あの地域一帯の民心の安定を期するということに最大の努力を払っておる次第でございます。
  204. 武藤武雄

    武藤委員 私は、少なくとも外部の者が炭住の中を歩く場合に、事実上歩けないような脅迫が行なわれるということは、近代社会にとってあり得ないことなのでありますから、どうしてもそれが説得なり勧告でできないとすれば、やはりこれは警察の力をもって確保する以外にはないのではなかろうかと思います。それからもう一つは、新組合員がたとえば今入構しておる者もあります。これはいつまでも構内にいるわけには参らぬのでありまするから、当然にいずれ出て参ります。その際にこれらが自由に住宅に通行する自由というものは、これは法治国家である以上は、やはり権力機関は責任をもって確保してやる義務と責任があると思うのであります。これがいろいろな名目をつけて困難であるとかなんとかいうことは許されないことだと思います。従いまして、これは人道的に考えても、当然に自由に通行し得る方策を考えてやらなければならぬ、こう思います。これらに対してもやはり万全の対策をとってもらわなければならぬ。きょうは国家公安委員長がいないのははなはだ残念でありますけれども、私どもとしては、たといどんな理由があろうが、構内に入っておる従業員が帰ってくる場合に、それが通行ができないとか、あるいは当然就労の権利を持っておる新しい組合員が入構しようとするときに、これが暴力によって阻止される、あるいはけがをさせられるというようなことは、断じて許すべからざる行為でありまするから、これらに対しては取り締まり当局は万全の保護を与えるように十分の配慮をしなければならぬ、こう思います。  そこで、きょうは通産大臣来られる約束でしたのですけれども、何か事故で来られなくなったようでありますけれども、私はこの三池争議の問題は、やはり前途にいろいろの困難な情勢が横たわっておると思います。私どもは決してこういった労働争議の問題を権力で解決をするというようなことは、これは断じて避けなければならぬし、やはり労使が自主的に話し合いをして、あるいは第三者の公平なあっせん等によって問題を解決するという方向にもちろん進めなければなりません。しかし、現在の石炭界の現状なり、あるいは今直面しておる三井の労使の問題を考えると、なかなかそれはわれわれの公式論あるいは理想論では解決できない幾多の大きな要素を持っており、将来に対する不安を持っておると思うのであります。あれだけの大争議をやりました過程において、それは今三井の問題がどう解決するかわかりませんから、はたして千二百名のあっせん案そのまま解雇されるかどうかということは、これは予断の限りではありません。しかし、現在の石炭界の現状なり今の労使の力関係、あるいは中労委のあっせん案等を見れば、やはり早晩三井においては、あの程度の解雇ということは実行される余儀なき運命にあると私ども考えておるのであります。そうするとこれは、そういった人たちがあれだけの大争議をやり、あれだけのPRをされた段階において、将来の自分の職場というものに対して、これは全く自信を失っておるのではないかと思います。そういうときに、ますます将来に対する不安から争議が険悪な情勢になり、社会混乱の大きな危険が横たわっておると思うのであります。これは単に労働争議である、従って労働省の問題であって、われわれ生産官庁としてはそんなことはらち外でもよいんだ、こういう考えで通産当局がおられるとすれば、これは大きな間違いだと私は思う。日本の経済界の大きな動揺の中でこういった苦悶が、しかも不幸な事態発展をしておるのでありますから、あれは三井争議という労使間の問題で、労働省の管轄であるということでなしに、政府部内は力を合わせてこれらの再就職の問題等についても政治的に道を見つけてやる、そういうことはできないながらも真剣に努力をして、一つ一つその再就職のルートが開けてくることによってこれら現地の人たちの間に前途に対する光明も出るでありましょう。また、現在のもうほんとうに自暴自棄といわれるほどの環境に追い込まれておる、あすからの職を失うという羽目に追い込まれておる人たちの心理状態というものも落ちついてくるのではないかと思うのであります。労働争議が険悪になって、起こってくる治安問題に対して取り締まり当局がきぜんたる態度をとることも絶対必要でありますけれども、同時に、こういった空気を出さないようないろいろな施策というものが必要になってくるのではなかろうか。そういう意味で生産関係に行政的な責任を持っておられる通産当局においても、単にあれは離職者問題だ、労働省の問題だということでなしに、真剣にこれらの問題に対して考えてやる必要があるのではなかろうかと思うのですが、見解を伺いたいと思います。
  205. 内田常雄

    ○内田(常)政府委員 三井三池の炭鉱から発生いたすであろう離職者につきましては、広く見ますると、石炭鉱業の合理化、近代化から発生する離職者でありまして、御承知のように、政府におきましては、国内資源等の関係上、石炭鉱業の合理化、近代化を進めて参っております。そういう際にやむを得ず発生する労務者でありますから、まことに気の毒なことだと考えます。三井三池の今の千二百名につきましても、レッド・パージではない。     〔「桃色パージ」と呼ぶ者あり〕 大きく言えば石炭鉱業の合理化、近代化、小さく見ても企業の再建から生ずる離職者でありますので、国といたしましてもあらゆる手を尽くし、通産省は、労働省とも協議をいたしまして、できるだけ再就職の道を講じてやりたい、かように考えております。ことに、昨年の暮れ労働省関係で炭鉱離職者援護協会というものができましたが、そればかりにまかせるつもりもございませんので、通産省におきましては、今月の初め、単に石炭関係ばかりでなしに、あらゆる有力な企業を組織化いたしました炭鉱離職者の再就職対策中央協議会というような民間団体の編成をも願いまして、逐次発生する炭鉱離職者につきましていろいろな部門、これは通産省所管ばかりではないと思いますが、ある場合には建設省、ある場合には運輸省というように、通産省所管のいろいろな部面にできるだけこれを吸収するように通産省だけでも努力をいたしますし、労働省とも十分協議をしてやって参るつもりでおります。
  206. 武藤武雄

    武藤委員 私の質問の一番説明を求めたいことは、今炭鉱街に起きている、一般的な離職者の問題としてこれを考えていくというだけでなしに、一般的な離職者はどうでもよいというのではなくて、それも必要でありましょう。しかし、当面今どうしたらこの争議を解決し得るかという——権力当局である警察当局も思案に余しておる、中労委も余しており、労使は行き詰まってどうにもならない。これは政党にあっても同じであります。そういうときにほんとうにまじめに、親切な気持で見てやる立場に立ってこの三池の問題を取り上げて、しかも、どこへ行っても、今桃色パージという話もありましたが、結果的にそういう形に追い込まれて心配している人たちを、何とかこの問題を取り上げて解決してやろうという指導的な立場をこの際通産大臣はとるべきである、こう思うのでありますけれども、その点について私は特に質問したい。
  207. 内田常雄

    ○内田(常)政府委員 私が前段申し上げましたのは、三井三池の労務者だけが特殊なものでないという意味から申したのでありまして、合理化の結果生ずるものである。ただし、今御意向にもあります通り、これは非常にむずかしい環境において集団的に発生するものでありますから、御意向にもありますように、通産省としてもできるだけこれに力を注いで、再就職の道なりあるいは職業の再訓練なり、それらの方途につきましてできるだけの手を打ちたい、かように考えております。
  208. 武藤武雄

    武藤委員 次に労働省側に質問したいのでありますが、ピケの限界については、昭和二十七年十月二十二日の最高裁判所の大法廷において、平和説得以上の行き過ぎの行為はもう労働法の保護を受けざる不法行為であるとはっきり判決が出ておるのであります。従いまして、その他いろいろの地区において、それぞれのケースの中で、たとえば経営者がほんとうにそのピケ隊の生命の危険を感ぜしめるようなおそるべき脅迫の事態において、場合によっては正当防衛の形でこれに対して実力をもって立ち向かったというような格好における合法性というものもあるかもしれません。しかし、全体に対しての最高裁の判決が、平和説得以上の行為はもう不法行為であるという以上、法治国家の最高裁の判決でありますから、やはりこれは慣例的に守っていく必要があるのではなかろうかと思います。しかし、今度の三井事件のような状態から考えて、先ほどちょっと御意見が出ましたけれども、ピケの限界についての法制化の必要はないか、こういう御質問があったようでありますけれども、私はこれは必要がないと思うのであります。日本の労使の関係というものは、労働組合が大きな行き過ぎをやる反面、経営者も労働組合に対する理解と寛容の態度が非常に薄いのであります。従いまして、ここでピケの限界について法制化をされるということになると、これはもう経営者にとってはすきなことが勝手ほうだいにできるという情勢を作ることであって、労働運動の非常な後退になって、せっかく日本の民主化の大きな手段として労働運動で合法的に保護されているこの限界が大きな後退を来たすのではなかろうかと思うのであります。従いまして、労働省は、労働組合が法治国家の一員としてまじめに組織活動を行なうように、このピケの限界についてはあらゆる機会に、教育と言っては語弊がありますけれども、そういうことを勧告する必要があると思うのであります。そういう労働運動の自然の成長の中で諸外国の労働組合運動のようにピケの限界が自然と守られていくというような格好をこの際作っていかなければならぬのではなかろうか。こういう一つの問題に便乗して限界をはっきりと法によって定め、権力によってこれを排除するというようなことになると、労使の力関係というものは一ぺんに転覆をしてしまうのではなかろうかと私は思うのであります。労働省の責任者はきょうはいないようでありますけれども、特にそういう問題に事務的責任を持っておられる労政局長から見解を聞きたいのであります。
  209. 亀井光

    ○亀井政府委員 労使関係は言うまでもなく一本の法律で規制さるべき性質のものではなく、非常に複雑多岐な面を持っておりまして、労働慣行が成熟して後に労働法規ができていくのが世界の趨勢でございます。従いまして、今のピケの問題にいたしましても、先ほど大坪先生に対しまして御答弁申し上げましたように、最高裁の確定判決にもたくさん出ております。われわれといたしましても、昭和二十九年に次官通達をもちまして、ピケの合法性の限界を明確に示しておるのであります。問題はそれをどういうふうに普及徹底していくかというのが残されておるだけでありまして、そういう点につきましては、かねてからも十分各方面の手段を通じまして、たとえば日本労働協会を通じ、あるいはわれわれの行政機関を通じてそれぞれやっておりまするが、まだ十分われわれの意図する目的が達成されていないことはまことに残念でございまするが、引き続きその努力は私として行ないたい。そうして労使ともにみずからの判断によってその限界をみずから実行していただくという方向に持っていきたいと思います。
  210. 武藤武雄

    武藤委員 最後に、私はいろいろ申し上げましたけれども、これは労働運動を行なう労働者側にも大きな責任がある。これは、私も労働運動をやってきた一人として、この去年を私はちゅうちょすべきではない。やはりこういった運動の過程の中から労働運動は一つ一つ反省して、やはり進歩をしていかなければならぬ。それはしかも近代社会の中における国民のあたたかい理解の中に、やはり特別に法律によって労働者が保護されているというこの事実の上に立って反省は大いに反省として、それは将来の発展のために成長していかなければならぬと思います。しかし同時にそれはやはり実際の生産面を担当しておられる通産省、先ほど申しましたような日本の産業構造の転換に対するいわゆる経営者が対処する、これを企業の安泰ということに重点を置くことも必要でありましょうけれども、同時にそれによって派生する労使問題に対してもやはり真剣な考慮を払っていく、これはやはり通産省として行政的な立場における認識が必要であろうと思います。同時にまた労働省関係においても、ただいま申し上げましたような労使間の実態をよく見られて、いたずらに法律によって問題を解決するというようなことでないような方向に万全を尽くしてもらいたい。特に三池の闘争の終末の段階における事態をいかに収拾するかということは、まことに重大なる社会問題、また大きな政治問題でもあろうと思います。それに対して私は間違いないような労働省の態度を特に望んでおきたいと思うのであります。警察庁長官は先ほどから、まじめにやってだいぶよくなったよくなったと言っておるのでありますけれども、現地の情勢は決してそうではないのだということを認識されまして、きょうも何か現地からそういった住宅街の非常な圧迫に耐えかねて、何とか政治的にやってもらいたいということで代表が上京してくるようでありますけれども、こういう現地の情勢は決して好転はしていない、実態はますます形の変わった陰険な方向に進みつつあるということを特に注目をして対策を立ててもらいたいということを要望いたしまして、私の質問を終わります。
  211. 永山忠則

    永山委員長 滝井義高君。
  212. 滝井義高

    ○滝井委員 同僚の皆さんが相当いろいろ質問をされましたので、私は炭鉱に生まれて炭鉱に育ちましたし、炭鉱資本家の実態もよく知っております。従って私は、警察庁の柏村さんなり通産省の方々にやはり良識をもってこの問題を判断してもらいたいと思うのです。  そこで、まず私は筑豊炭田の実態、特に三井鉱山の実態を述べて、なぜ三井鉱山の労働者がこれほどまでに命を投げ打って戦おうとするかということを知ってもらいたいと思うのです。昨年の夏ごろから日本の石炭鉱業の第一流の炭鉱といわれる三井鉱山は賃金の遅配、欠配をやりました。賃金の遅配、欠配をやるとともに、一方においては筑豊炭田を見ますと、約十万の炭鉱失業者がひしめき立っておりながら、そうしてこの炭鉱失業者は食うに飯なく、つくに職がない。子供が学校に弁当を持っていくことができないんです。みんなお昼の弁当のときになると、炭鉱労働者、特に失業者の子供は漫画の本を目の前に置いて、みんなの食うのを隠れて見ないようにするという姿だったわけです。そういうときに、三井鉱山、いわゆる日本の第一流の鉱山ですよ。これが賃金の遅配、欠配を始めた。そうして賃金の遅配、欠配を始めて今度はどういう政策をとったかというと、次には希望退職を募ったのです。そして希望退職で目的が達せられないとするならば、指名解雇をやりますぞと、こういう政策です。これは十万の炭鉱失業者がひしめき立っているということは、いわばすでになま首を切って眼前に置いているということです。賃金の遅配、欠配をやるということは何を意味するか、昔でいえばいわゆる水の手を断つということです。食糧の道を断つということです。いわゆる前になま首を置き、うしろから水みちを断ってどうだ、これでおれの言うことを聞かないか、これが石炭資本のとった政策です。そうでしょう。そこで労働者はたまりかねたのです。もう失業したら行くところがない、こういうことなんです。一体この原因はだれが作ったか、むしろ柏村さんは、こういう状態、社会不安を作った通産大臣をひっくくらなければならない。教唆扇動した元凶は通産政策、石炭政策です。これが元凶なんです。これをあなた方は見落としておる。そうして単に労働者がピケをした、騒いだといってこの根本的なところを見落としておる。いわゆる警察法の第五条をあなたのように広義に解釈するならば、まさに日本の労働者を餓死に陥れようとする元凶は一体誰であるか。岸内閣の石炭政策ではないか。これをあなた方は忘れておる。これをまず第一に警察行政をやるものは頭の中にたたき込んでおくことが必要である。これが第一です。  さらに二番目に私は全く公平な立場で三池に行って三池の現状を見てみました。そうして労働者からも新聞記者諸君からも聞いてみました。ところが私は公平に見て、これは大へんなことだという点を発見したのです。その第一は、いわゆる人工島のバケットを会社が使っておるということです。これを強行就労させるために使っておる。ところが今通産省のその方面の一番の権威者は好ましくないことだけれども、それはしかし違法ではないといってほおかぶりをして手をこまねいておるということです。これはあなたの方からいってそれが好ましくないことであるならばとめなければいけないことです。一回だって警察はとめたことはない。これが一つ。  もう一つは国家機関であるところの海上保安庁の船が強行就労の加勢をしておるというこの事態です。しけがあって行方不明になりそうだからといろいろ理由はつけておりますが、現地に行って聞いてごらんなさい。その日はしけでも何でもない。しかも海上保安庁の船が桟橋の役割をして強行就労させておる。いわば国家機関が石炭資本とぐるになってやっておるというこういう状態が出てきておるということです。  そうしてもう一つは警察官も、現地に行って見ましたが、会社とは密接な連携をとっておるけれども、第一組合との連携というものは行なわれていないということです。中立であるべき警察官の立場というものが会社に片寄り過ぎてしまっておるということです。こういう形が労働者に国家機関を信用しない、憤激の気持を起こさせました。これが三井の背景です。前になま首をかかげ、うしろからは水みちを断つ、中立であるべき国家機関が全部会社に傾いてしまっておる。百八十度傾いておるとは申しませんけれども、少なくとも三十度か四十度か六十度くらい傾いておる、そういう事態がある。そういう事態の中で三月二十七日にいわゆる人工島に、わずか二十七人の国鉄の職員がそれを守っておったのに、金子建設と山本組という——これは現地で聞いたのですが、二つの組が約二十台のトラックに乗ってそこへやってきて、その二十人を軟禁してしまった。そうしてこれを救援するために、国鉄の門司地方本部の諸君が七十人ばかり行ったところが、これらの連中がまっ暗い中でトラックのサーチライトをまん前につきつけられて右往左往しておるところを、石を投げこん棒でたたいたのです。これがそもそも三池における感情激発の発端です。それまでは平静だったのです。そうして翌二十八日には三川鉱があり、二十九日には久保君が暴力団に殺されるということから感情の激発になったのです。従って国家機関に対するところ信頼というものは全くなくなっておるという、こういう背景を、まずわれわれはこの事件を見る場合に考えておかなければならぬ。  そこで、これは柏村さんにお尋ねをいたしますが、あなたの方で、今会社の施設を警察がお使いになっておる現実があるかないか。
  213. 柏村信雄

    ○柏村政府委員 先ほども申し上げましたように、若干借りておるように聞いております。
  214. 滝井義高

    ○滝井委員 一体営利会社の施設を、労働者と資本家が対決して争議をしておるときに、警察がそれを借りていいんですか。片一方は営利会社ですよ。それでいいんですか。それで公平な警察行政というものが行なえますか。今あなたはいろいろ、私は黙ってここで聞いておったけれども、実にうまいことを言う。うまいことを言うけれども、この中立であるべき警察が、三池という石炭資本の営利会社の施設を使って、公平な警察行政ができると、国民が中正に見ると思うのですか。どうです、責任を持って答弁して下さい。
  215. 柏村信雄

    ○柏村政府委員 この点につきましても、先ほど申し上げましたように、警察官のおる適当な場所がないので、やむを得ずそういう一部使用をいたしておりますが、ただいまのお話しのように誤解を招くおそれがあるようなことはできるだけ避けるべきであるということで、指導いたしたい考えております。
  216. 滝井義高

    ○滝井委員 今これを使い始めたものじゃないですよ。私が先月行ったときに使っておった。自来もうすでに二十日以上もたっておる。  児童局長にお尋ねしますが、あなたの方の施設を、何か警察に使わしておりはしませんか。
  217. 大山正

    ○大山政府委員 大牟田市における保育所は、児童福祉法による保育所が十六カ所、児童福祉法によらずに会社が経営しております鉱山保育所が十二カ所ございますが、警察がこの保育所を使っておるのではないかという御趣旨の御質問が、昨日参議院の社労委員会でございましたが、私どもの方でも、その間の事情を十分承知しておりませんでしたので、直ちに県当局に昨日連絡いたしまして、事情を調べ、さらに適当な措置をとるように要請いたしましたが、ただいままでのところ、まだ返事を得ておりません。
  218. 滝井義高

    ○滝井委員 警察の方ではお調べになっておりますか。
  219. 倉井潔

    ○倉井説明員 ただいまの詳細な、どこの個所を、どれだけの会社の施設を借りておるかという数字は今持っておりませんので、お答えできません。
  220. 滝井義高

    ○滝井委員 それはあなた方卑怯ですよ。あれだけの大争議をやり、あれだけの警察官を動員をしておって、一体会社の施設のどういうところを借りておるかということを知らなくてどうしますか。そんなことでどうしますか。それじゃあなた責任はとれぬじゃございませんか、柏村さん。
  221. 倉井潔

    ○倉井説明員 今の保育所あるいは体育館等を借りておるということは、私も承知しておりますけれども、私が今申し上げたのは、その正確な数字を今持ち合わせていないということであります。
  222. 滝井義高

    ○滝井委員 ごらんの通り、体育館と保育所は、借りておるけれども、数はわからぬ。これはあなた方はどういう措置をとりますか。
  223. 大山正

    ○大山政府委員 ただいま申し上げましたように、警察の借りておりますのが、会社経営の児童福祉法による施設でない保育所であるということでありますれば、法律による私どもの措置ということはできないかと思いますが、広い児童福祉の立場からいたしまして、警察当局あるいは県当局あるいは現地の市当局等と話し合いをいたしまして、できるだけ早く幼児の保育に欠けることのないようにという措置を講じたい、かように考えております。
  224. 滝井義高

    ○滝井委員 幼児の保育に欠けるところがないようにといったって、現実に警察が入っておったら、あなた、幼児は休んでおるでしょう。
  225. 大山正

    ○大山政府委員 警察におきまして、適当な他にかわるべきところがあればかわっていただく。また会社が再び保育所を開くことができるように、会社側と話し合う、そのようなことを県当局に要請しておるような次第でございます。
  226. 滝井義高

    ○滝井委員 柏村さん、こういう争議の場合に、営利会社の施設というものを、警察は平気で借りていいんですか。問題はここなんです。私がさいぜんから、現地の警察は会社当局と実によく連絡をとっておるというのは、ここなんです。これではまるっきり御用警察じゃないですか。あなたが何と言おうと、三井の請願巡査です。こういう形では、警察が公平だとか中立だとか言ったって、大衆は絶対信用しない。大衆というものは肉体で物事を感じていくのですからね。どうですか、こういう状態は即時きょうからでも全部解消させますか。
  227. 柏村信雄

    ○柏村政府委員 先ほど来申し上げておりまするように、国民の誤解を招くようなことはできるだけ避けなければならないことは、申すまでもございません。しかしながら、警察が、あの治安状況におきまして相当数の者を大牟田に動員をいたし、これに対して適当な宿舎というものを確保するということは、これまた警察活動をいたすために必要なことでございます。従いましてこれが好ましいことというふうには必ずしも申せませんが、人から物を買ったり、物を借りたりするということが、会社のものは絶対使ってはならないものというふうには、私は考えておりません。
  228. 滝井義高

    ○滝井委員 それならば、使用料を払っていますか。
  229. 倉井潔

    ○倉井説明員 会社側の施設を借りた場合におきましては、正式な契約を結んでおるというふうに聞いております。
  230. 滝井義高

    ○滝井委員 結んでいますね。
  231. 倉井潔

    ○倉井説明員 結んでおります。
  232. 滝井義高

    ○滝井委員 使用料を払っておりますか。そうすると、どういう形でどういう会計からどういう額を払っておりますか。
  233. 倉井潔

    ○倉井説明員 契約書の内容は見ておりませんが、金銭の支払いは、現在までしていたかしていないかは、今申し上げることはできません。
  234. 滝井義高

    ○滝井委員 そうしますと、当委員会はまたあすありますから、あすまでに契約書とそれから金銭の支払いについて一つ速急に出してもらいたいと思います。もしこれが契約書もないし、金銭の支払いもしてないなら、収賄です。よその施政を国家機関である警察が会社となれ合いで使っておる、こう思われても仕方がない。そうでしょう。借りるならば、宿舎がない、炭鉱のどこかあいているところを借りますというのなら、当然借り賃を払わなければならない。ただで置いてくれというのは、それは権威のない話ですよ。これはあなた、三才の童児といえども知っていますよ。昔から——柏村さんあなたも漢文で習ったでしょう。モモの木の下に行ったら、冠を正すために手をあげてはいけませんよ、ウリやキュウリの畑に入ったならば、くつのひもを結んではいけませんよ、ということをあなたは習ったでしょう。われわれも習った。あなたもわれわれと同じ年配の方ですから、習っておるはずです。これは警察行政のいろはです。これがどっかりと、血みどろの戦いを、食うか食われるかの戦いをやっているときに、警察が会社側に行って泊まる。それなら労働組合員のうちにも行って警察がお泊まりになったらいい。みな一人々々泊めますよ。見てごらんなさい、韓国の軍隊を。李承晩があのようになったら、堂々と大衆と一緒に行動しておるじゃありませんか。だから、会社に半分泊まるなら、あとの半分は組合員のうちにお泊まりになるくらいの公平さがあればよい。みな泊めますよ。三井の組合員は、公平な警察行政をおやりになるような警察官なら、みな喜んで泊めますよ。そのかわり泊まり賃を払ったらいい。これはあなたがここで何と言いわけしようと、小学校の生徒を連れてきて、そして日本の警察行政の一番の取り締まりの長官が警察はたくさんの人を動員するから、泊まるところがないから、会社の方に泊まるのは当然だというような答弁をしたら、みな大笑いしますよ。だから、こういうことをあなたがそういう答弁をするなら、きょうここに岸総理に来てもらいたい。そういう警察庁長官で日本の公平な警察行政がやれるというなら、大へんですよ。これはあとに問題を残しますから、あす直ちに契約書とそして幾らの金を三井に払ったか、その会計はどこかをきちっと出すように要求をいたしますから、お願いします。委員長、ちょっと言っておいて下さい。それから厚生省の方は、保育所が一体幾らの貸し賃で貸したかを早急に調べて下さい。今、契約して金を払っておるはずだ——払っておるかどうかわからぬが、契約をしておるとおっしゃるから、お願いいたします。  次は、今武藤さんの方からお話のありました四山における久保君の殺人の問題についてでございますが、その首魁と思われる山代、寺内といいますか、こういう人たちは逮捕されたのでか。
  235. 中川薫治

    ○中川政府委員 先ほどもお答えいたしましたように相当数逮捕されましたが、お示しの二人も逮捕されております。
  236. 滝井義高

    ○滝井委員 さいぜん職員組合の長浜、白谷両氏が何かカシの棒を提供したというお話があったわけです。そこで私も現地に行って、職員組合から、そういうことはないという多分長浜さんか何かがそういう疑いをかけられておるがそんなことはないという声明が新聞紙に折り込みで入っておるのを私は見ました。今、武藤さんからもそういうお話があったと思うのです。私も非常に真摯な長浜さんや白谷さんがそういうことをしたことは信じたくございません。同じように働く労働者同士としても、おそらくそう信じたくないのだろうと思う。ところが三井三池の現地に行ってみますと、もう異口同音にこの二人が提供したということを言われております。そこで、これは今第一組合から両者を告訴しているということだそうです。しかも提供したものは現地でもなかなか手に入らないカシの棒であると言われております。われわれも現地でつるはしの柄になるカシの棒を見ました。しかもこれは四山鉱の南門から正門に至る間、久保君の殺された現場のすぐ近くに安全灯の部屋があります。その安全灯のところから壁越しにそれが出されたと言われております。こういう点はすでに今から約一カ月くらい前に殺されて間もなくの三十日には大牟田の町にそれが広がっておるわけですから、当然警察当局としてもはっきりお調べになっておると思うのです。ここで一つ長浜、白谷両君の名誉のためにも明らかにしてもらう必要があろうと思うのです。これはあなたの方ではお調べになっておると思いますが、一体どういう工合になっておりますか。
  237. 中川薫治

    ○中川政府委員 先月二十九日にこの種の事件が起こりましたので、この犯罪行為に疑いがあると認められる七十七名につきまして逮捕状の発行をいたし、しかもそのうちの六十八名につきまして取り調べを継続中でございます。お話の要点は現在取り調べ中の者でなくて、それ以外の者にカシの棒等を提供した者があるというような事実でございますが、お話のようなうわさのあることは事実でございます。そういううわさを供述する者があるということも事実でございます。何者がそういうことをやったかということにつきましては目下鋭意捜査中でございますので、それが何者であるということは今捜査段階でございますので、今後の捜査に待ちたい、こう考えておる次第でございます。
  238. 滝井義高

    ○滝井委員 そうしますと、カシの棒がだれかによって提供されたということまでわかっておる、しかしそれがだれであるかはわからない、こういうことなんですね。
  239. 中川薫治

    ○中川政府委員 正確に申し上げます。そういうカシの棒が提供されたということを言う人があるということは、事実でございます。現実にカシの棒が提供されたかどうかということは、今後の捜査でないとわかりません。
  240. 滝井義高

    ○滝井委員 そういうことを言うことは事実だということははっきりしてきました。そうしますと山代、寺内等の諸君を中心とする二百人余りの暴力団がタクシーやトラックに乗ってきたときに、その安全灯の壁のうち側からホースで水をかけたというような事実はありますか、ホースで第一組合員に水をかけた。すなわち内外呼応したわけです。暴力団はぐんぐん進行してくる、うちからは職員組合がかけたと現地ではうわさが出ておるわけですが、消防ポンプか何かホースで水をかけた、そのかけた写真を今赤松さんがここに持ってきてあるのです。かけておる現場が写真に写っておる。そういたしますと、そういう人も当然うちから提供されたということになっておりますからお調べになっておると思うのです。これはやはり職員組合と労働組合とのいろいろの今後の友好関係をうまくやるためにもすみやかにこういう事件というものを解明をして、そして一番先に明らかにしなければならぬ問題だと思うのです。これは労使関係なり、職員組合と労働組合とを順当に今後就労する場合にも両者の関係を軌道に乗せる一番重要な点だと思うのです。お互いに疑心暗鬼であっては困ると思うのです。そういう点はお調べになっておりませんか。
  241. 中川薫治

    ○中川政府委員 この種の刑事事件に限りませんけれども、刑事事件と申しますのは、その当該行為が起こりました内容、その環境というものを精密に把握する努力をするのが刑事事件の捜査の本筋でございますので、こういった殺人行為が行なわれた状況、並びにそれ以前に行なわれた暴行等の状況においてつまびらかにすることは第一線でやっております。その捜査活動は第一線で十分やっておりますが、その真実を発見するためにはすべてのきめ手の証拠が必要なんでありまして、証拠の採取ということを第一線の熊本県警察は一生懸命努力しておりますけれども、その証拠全体を全部東京へ持ってきて検討するということは建前上適当でございませんので、得られました証拠につきましては厳重に捜査を行ないまして、検察庁に送致し、送致を受けた検察庁ではさらにお調べになって公訴に持っていく、こういう性質のものでございますので、お話しのようなこまかいそういった証拠の一つ一つを全部東京へ報告する、こういう手続をとっておりませんので、またそういう性格でございませんので、ただいまお示しのホース云々の点につきましては私どもは報告を受けておりません。
  242. 滝井義高

    ○滝井委員 こまかいこととおっしゃいますけれども、これは私は日本の労働運動の非常に大きな点だと思うのです。なぜなれば久保君が殺されたということは、ごらんなさい、東京までやってきて葬儀があった問題ですよ。日本の労働運動の一つの歴史的な大きな問題だと私は思うのです。そういう問題について警察当局が何か一地方の小さな問題のようなものの考え方であるところに私は問題があると思うのです。さらに一体山代組とか、寺内組と申しますものの実態は、これはどういうものなんですか。
  243. 中川薫治

    ○中川政府委員 私はこまかいことと申しましたのは、事件がこまかいと言ったのではないのでありまして、殺人事件というようなことは大きな事件でございます。そうしてこういった労働争議が行なわれる最中に起こったような事件は大きな事件と考えております。大きな事件であることにつきましては同感なんでありますが、大きな事件といえどもそれを証明するにつきましてはこまかい資料を集積するという必要が生ずるのであります。こまかい資料を根こそぎ東京で検討するというのは適当でないのでありまして、刑事訴訟法の手続に従って検討するという建前が正当である、こういう旨を申し上げたのでありますので、御了承を得たいと思います。  御質問の寺内組、山代組の実態でございますが、こういう組があるという社会的事実も警察では把握しております。この組が比較的暴力行為等を行なうおそれがあるという団体であることも警察で注目してかねがね警戒しておるという組織でございますので、具体的に犯罪行為があって初めて警察活動が的確に行なわれるのでございますので、そういう意味におきましては具体的な犯罪行為に基づいて的確な捜査活動をやる考えを厳重に持っておりますけれども、この組の実態につきましては、われわれ警察内部におきましては犯罪行為を犯すおそれのある人間があり得るという角度で厳重に注視しておる組合でございます。
  244. 滝井義高

    ○滝井委員 私は炭鉱に行ったことがあるので、こういう実態はよくわかるのですが、これは多分興行師だと思うのです。山代組とか、寺内組というのは三井鉱山とどういう関係にありますか。問題の核心はここにある。あなた方は学校の先生方が勤評反対の闘争をやる。そうすると一網打尽に教唆扇動したと言って全く関係のないような諸君とか、中央の労働組合の幹部まで一網打尽的に家宅捜索したり、逮捕したりしましたね。一体、命を投げ出すような争議に人間が無料で来ますか。あなた方は一体、山代組や寺内組というのは三井鉱山と過去にどういう関係があったかということをお調べになっておれば、ここで一つ明確にしていただきたい。
  245. 中川薫治

    ○中川政府委員 山代組、寺内組等がお話しのように、興行等の事業に従事する者が組合長その他の職にある、こういうことも承知しておりまして、それらの問題は、われわれ犯罪事件の捜査にあたりましては、刑法総則の教唆罪等につきまして精密に捜査を遂げるわけでございますが、この二十九日に起こりました殺人その他の刑事事件につきまして、会社関係者その他が共謀しておる、こういう事実の証拠はただいまのところございません。
  246. 滝井義高

    ○滝井委員 会社側が教唆扇動しているとは言っていないのです。山代組や寺内組というのが三井鉱山と過去においてどういう関係があったか、わかっておれば知らして下さい、こう言っておる。
  247. 中川薫治

    ○中川政府委員 私ども警察活動は犯罪を中心にして捜査を遂げますので、それ以外のことは犯罪を捜査する手段としていろいろ事情を調べるということはあり得るのでありますが、犯罪捜査を中心に警察の職務が限定されておりますので、警察活動は犯罪捜査を中心に進めるにつきまして調べるべき事実は十分調べることはやぶさかでございませんが、犯罪に直接結びつかないものにつきましては範囲を越える問題でありますので……。
  248. 滝井義高

    ○滝井委員 私はちょうど先月の三十日に大牟田におりました。ところが、この大牟田の町を知らない私の耳にひんぴんと入ったきたのは、たちばな荘という家がある。これは会社の幹部がよく行くところらしいが、そこで私の耳に入ったことですから、真実であるかどうかわかりませんが、火のないところに煙は立たないという昔のたとえもありますので参考のために申し上げますが、私が大牟田で耳にしたのは、午後六時か七時ごろだったのですが、きょうは会社の幹部とこの暴力団の親分、その人が山代氏か、あるいは寺内氏かわかりませんが、首脳部ときょう会っているのだ、暴力団はこれで解散じゃ、会社は困っておるんじゃ、もうこれで暴力団はあしたからいなくなるぞ、その通りいなくなりました。そういううわさが大牟田じゅうに流れておる。私の耳にも入った。問題は、筑豊炭田の特殊性というものは、ちょっと筑豊炭田に行ってお入りになってみればすぐわかる。一体こういう興行師その他は何によって食っておるのか、どういう関係がそういう鉱山なり工場とあるのだ、ちょうど東京における松葉会みたような、ああいう問題は私たちはやはり参考になると思うのです。それと同じです。警察行政というものは、あなた方がちょうど教組の勤評をやったときに、県の委員長の家宅捜索をしてやると同じように、やはりこういうときにはそれくらいの勇断がなくちゃいかぬですよ。ところがその勇断というものは、殺し合いはおれが殺したのだ、あとは関係ないといえばそれまでで終わるところに、日本の暴力団というものが絶えないのです。またそういうところにあなた方行けないところに問題がある。たとえば総会屋、見てごらんなさい、新聞にいつも出ている総会屋は会社が届け出ない、飼っておった方が得なんです。争議があったときには適当に来てくれる。そのときに犯罪と直接結びつかないかもしれないけれども、陰に陽に興行があると、この前私たちが行ったときに、ある有名な一団が来ておりました。それはこの寺内組が呼んでありました。ところが、そういうときにぽんと会社が五十万なら五十万寄付すればそれでいいのです。この争議に関係して何も金銭の授受はやる必要はない、問題はこういうところですよ。だから今のような木で鼻をくくったような答弁では満足いたしませんが、結局会社の威をかりておるような状態では、そのくらいしかできないと思うのです。しかし今お隣の朝鮮の状態をお互いによく考えてみる必要があると思うのです。昨日純真な学生がプラカードを立てて言っておりました。何と書いておるかを私は見ました。そうしたら、岸の末路は李の末路、と書いておる。これは学生の真実の叫びですよ。今まで怒ったことのない慶応も今度は怒ったと書いておる。岸さん、戦場でまた会いましょう、こうプラカードに書いておる。一面の真理を語っておると思うのです。こういう点、警察行政に当たる柏村さんたちはやはり斎戒沐浴、そして冷静な気持で、権力の前に断固として身を張ってでも公正な立場でいくという精神があなた方になければいかぬと思うのです。僕らは、労働組合が悪かったら悪いと言いますよ。ただ、われわれが今度の三井の問題について言わないのは、私が冒頭に述べたような状態があるからです。一体監督官庁は、賃金の遅配、欠配に何回警告してやったか、二回くらい警告しただけで、あとは何もしていない、こういう状態です。すべて行政というものが片寄っておるところに、労働者がもう国家機関はたよれぬ、われわれだけで、われわれの命とわれわれの自由と権利を守る以外にないんだという気持が、あの大牟田の姿です。それは向坂教室でも何でもない。労働者の本能の叫びですよ。血の叫びですよ。だからこそ全国の労働者が、仕事を放棄してでも、手銭を切ってでも、大牟田へ大牟田へと行っている。そして現地のおまわりさんの状態を見てごらんなさい。見ただけで、おまわりさんの気持はよくわかる。この前の砂川にやってきた、社会から隔離されておるようなあの予備隊とは違いますよ。みんな大衆に口々接しているおまわりさんです。常識があります。ところがその常識のあるおまわりさんは、あなた方が権力でしりをたたいて行け行けというから、やむなく行っておる。柏村長官は一つ隠密に長官でない服装で行って、現地のおまわりさんに聞いてごらんなさい。こんなばかなことはない、何でわれわれが三井の石炭を出すのに行かなければならぬか、とおまわりさんはみんな言っていますよ。ただ表面にそれを言わないだけです。みんな早く帰りたいと言っていますよ。だから、あなた方が警察行政をやり、部下を現地へやるときには、もう少しあたたかい気持でしてやらなければいかぬ。あなたは一回も三池に行っていないというが、あなたも一ぺん三池に行かれて、一週間あの三池の現地で労働者の気持も聞くし、会社の気持も聞くし、あなたの部下の警察官の気持も聞いて、この問題を解決するにはどうしたらいいか、警察をむちゃくちゃに使わなければならぬかどうかという判断を、あなたはすべきだと思う。東京におって、下からくる報告だけでものを見てはいけません。現地の宮地君も、それから第一線で指揮している和田警備部長も、気違いのようになっていますよ。あの二十九日、三十日ごろの状態の和田警備部長はもはや常人ではない、普通の判断を下せない。僕は会ってきたけれども、まるきり思考能力がない。僕は医者です。心理学を勉強しております。和田君は顔面蒼白で、ゆうべは熱が出ました、もうあなた方の言うことはよくわかりません、こう言っておる。現地の指揮官がそれですよ。そういう状態で五千、四千の警官をまかせてやらせようとしている。それでいいか。こういう点はもう少しフランクな気持で考えて、公平な警察行政をやっていただきたいということを、私きょうお願いしておきます。  次に、これで最後になりますが、保安局長にお尋ねしたい。先月の二十八口の強行就労以来、武藤さんのお話もありましたが、相当の就労がやられているわけですが、現存貯炭の状況は、一体どうなっておるか。
  249. 小岩井康朔

    ○小岩井政府委員 数字はあまり確かでないかもしれませんが、一応報告を受けておりますのは、抗内が二千八百トン、抗外が一万七千トンであります。
  250. 滝井義高

    ○滝井委員 私がこの問題を特に通産省当局にお聞きするのは、今後この問題が三池における労使の対決の上に非常に大きな影響を及ぼすからです。それは、実は先月の二十九日でございましたか、いわゆる立入禁止の仮処分が出たわけですね。このときは、裁判所は大して審議もせずに、一挙に立入禁止をやっちゃったのです。ところが、今後のいわゆるホッパーと申しますか、貯炭槽ですね。三川鉱とそれから港務所との間にある貯炭槽です。これはいわばのど首になるところです。このホッパーの、貯炭槽のあるところは、今立ち入り禁止の区域外です。今これをやろうとしているわけです。ところが、今あなたの方で——これは新聞でございますから、そうではないと思いますが、貯炭が多くなった、もう自然発火するのだという記事が出ているのですね。まあ一万七、八千トンぐらいの石炭ならば、そう大してあわてることはないと思うのです。一万トンやそこらものは、電力会社に行くとみんな野積みしております。たとえば苅田発電所のごときは、三カ月も四カ月も五カ月もみんな積んでいますよ。石炭をたくさん積んでいます。こういう点について、あなた方の見解をお聞きしておきたいと思うのです。これはもう非常に、今あなた方が拝借をしたんだ、だからこれは早くやらないと自然発火が起こるんだと会社が主張して、あそこの仮処分をしようとしている。もうこれは私がるるあれして参りましたが、やはりこういうものは科学的に、公平に、やはり学問的な研究もあると思いますから、一つ良識的な御答弁をいただいておきたいと思うのです。
  251. 小岩井康朔

    ○小岩井政府委員 三池の坑外の貯炭が自然発火のおそれがあるという点につきましては、日経で私どもも一応拝見いたしております。直ちに現地に連絡をとりまして、そういった事実があるかどうかという点を確かめてみました結果、まあ会社側から、危険である、相当温度も上がっておるというお話があったようであります。従いまして、通産局長ともよく連絡をとりまして、監督に行く機会をつかまえまして、抗外貯炭の内容検討いたしてございます。しかし目下のところは温度も、当時の報告では十九度とこう申しておきましたが、もちろんあまり高い温度ではございませんので、現状では自然発火のおそれはない、こういうような報告を受けておりますが、今後長期にわたれば、自然発火のおそれが出て参りますので、注意するようにという警告は一応与えておるようでありますけれども、現段階におきましては、自然発火の危険はないようでございます。
  252. 滝井義高

    ○滝井委員 現段階で自然発火のおそれはない、相当長期にわたればそのおそれが出てくるかもわからない、こういうことでございますから、これはこの程度でいいと思います。どうもありがとうございました。おそくまで済みませんでした。
  253. 永山忠則

    永山委員長 本日はこれにて散会いたします。     午後六時五十三分散会