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1960-03-30 第34回国会 衆議院 社会労働委員会 第23号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十五年三月三十日(水曜日)     午前十時四十二分開議  出席委員    委員長 永山 忠則君    理事 大坪 保雄君 理事 田中 正巳君    理事 八田 貞義君 理事 八木 一男君    理事 堤 ツルヨ君       池田 清志君    大橋 武夫君       亀山 孝一君    川崎 秀二君       齋藤 邦吉君    中山 マサ君       古川 丈吉君    山下 春江君       亘  四郎君    伊藤よし子君       大原  亨君    小林  進君       五島 虎雄君    中村 英男君       西村 力弥君    本島百合子君  出席国務大臣         厚 生 大 臣 渡邊 良夫君  出席政府委員         法務事務官         (人権擁護局         長)      鈴木 才藏君         厚 生 技 官         (公衆衛生局         長)      尾村 偉久君         厚生事務官         (社会局長)  高田 正巳君  委員外出席者         総理府事務官         (宮内庁長官官         房参事官)   井下田孝一君         総理府事務官         (宮内庁長官官         房総務課長)  橋本 健寿君         厚 生 技 官         (公衆衛生局防         疫課長)    高部 益男君         専  門  員 川井 章知君     ————————————— 三月三十日  委員山口シヅエ辞任につき、その補欠として  西村力弥君が議長指名委員に選任された。 同日  委員西村力弥辞任につき、その補欠として山  口シヅエ君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 三月三十日  優生保護法の一部を改正する法律案参議院提  出、参法第一号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  精神薄弱者福祉法案内閣提出第五三号)  厚生関係基本施策に関する件      ————◇—————
  2. 永山忠則

    永山委員長 これより会議を開きます。  内閣提出精神薄弱者福祉法案を議題とし、審査に入ります。  質疑の通告がありますのでこれを許します。山下春江君。
  3. 山下春江

    山下(春)委員 精神薄弱者の問題が長い間政治の光の外にほうり出されていまして、この精薄者を持つ親たちは、世論も必ずしもこの精薄者に対する同情と理解がない社会情勢でありましたために、精薄者を生みました母親などは暮夜ひそかにふとんをかぶってその不幸を泣いて暮らした長い歴史がございます。しかもこの精薄者の中でも、児童の問題はきょうまで児童福祉法である程度措置されてきましたが、十八才になって児童福祉法からはみ出した精薄者というものは笑に気の毒な——たとえば施設におりました者が有無を言わさず家庭に引き取らせられた結果、狂暴性を持っていたりいろいろなことで非常な家庭悲劇を起こしたり、あるいは社会的に非常な凶悪な犯罪を犯したり、あるいは女の子供たちは、その多くが売春婦に転落したりして、いろいろな社会悲劇を起こしておりましたが、今回この精薄者の問題に対して政府福祉法を制定されるに至りましたことは全くこの全国三百万の精薄者といわれ、特にその三百万につながる血縁の人、一千数百万の人々に対しては画期的な善政、光明でありまして、私はまずそういう意味におきまして、今回の精神薄弱者福祉法を制定しようとする政府の熱意に深き敬意と感謝を捧げるものであります。  さりながら、今回提出されました法律は、いわゆる精薄問題の芽を出したものであるために、幾多の満たされないものがございます。今後政府がどのようにそういう問題を処理していかれるか、あるいはこの福祉法そのものの中でもどういうふうに扱っていこうとされるかの点について若干の質問をいたしたいと思います。  申し上げるまでもなく、精神薄弱者人々も、その大多数は、適切な保護のもとに、医療と教育職業補導機会さえ与えれば、やはり一個の社会人として十分自立できるものであることがきょうまでの経験から立証されておるのであります。そこで、私はまず、今回のこの福祉法お作りになるについて、これは役所の機構その他の問題で非常に困難なこととは思いますが、一貫した政策、要するに粘り強く、しんぼう強く、長きにわたって対策を講じていかなければその効果が現われないと思いますゆえに、大へんむずかしい問題をお尋ねして御返事に困らせるのではなかろうかと思いますが、その精神だけを聞いておきたいと思います。  今この児童福祉法と今回できる精薄者福祉法との間に一つみぞがございます。十八才を境にしてこのみぞがあることが、福祉法ができてみましても、私どもどうもこれではいけないのじゃないかというような感じがいたしますが、政府といたしましては、十八才までを今日までのような児童福祉法にまかして、それから十八才以後を今回の福祉法で引き受けていっても所期の目的を達成するのに大して困らないとお思いでしょうかどうでしょうか、伺いたいと思います。
  4. 高田正巳

    高田(正)政府委員 ただいまお尋ねの児童福祉法との関係の問題につきましては、法案を立案いたします際に私ども最も迷ったと申しますか、苦しんだ点でございました。精薄者というものは、体はおとなであっても知能の発達の程度子供だということで精薄者の問題は起こるわけでございます。従ってこれを十八才で切ることによりまして、そこにいろいろな施策の不十分な点ができてくるというふうな点を配慮いたしまして、理屈といたしましては、できるならばむしろ法律も何も一本にした方が理屈としては非常にすっきりする、こういうふうなことを考えたのでございます。理屈はそうでございますが、ただ現実の問題となりますと、これは法律相互間の権限争いとかあるいは役所権限争いとかいう問題とは別に、実態をながめてみますと、児童福祉法の方はすでに十数年の歴史を持って参りました。施設の数にいたしましても百数十もすでにできておりまして、相当な積み上げによる成果をある程度上げておるわけでございます。ところが今日の法律が主としてねらっておりまする成人の場合におきましては、実は今まで大した仕事をやってきておりません。従ってそういうふうな今日までの児童福祉法が果たして参りましたこの仕事積み上げによる一つ成果というものが現実にあるものでございますから、これを児童福祉法からひっぺがして一本の法律に取りまとめてしまうというようなことをいたしました場合に、従来の児童福祉法仕事のやり方におけるいろいろな実績というものがある程度乱れてくるおそれがあるので、これは具体的に実例をあげてお話しいたしますと御了解いただけるのでございますが、たとえば相談所とか福祉司というふうなものにいたしましても、児童福祉司なり児童相談所は、すでに今日精薄児を扱いまして相当やってきておるわけであります。新しくこちらの法律相談所とか福祉司とかそういう専門機関設置いたしますが、これは新しく設置をいたすわけでございますので、まだまだ今後の充実強化を待たないと、児童福祉法の方からいきなりこちらに移してみましても、かえってその間において少したるみが出てくるという心配も、現実問題としてあるわけであります。さような点に配慮をいたしまして、今回はこの法律案のようなことで出発をいたしまして、そうしてただいま御指摘の問題を将来の問題にしていこう、こういう考え方に到達をしたわけでございます。ただしかしさような配慮をいたしましたので、従ってこの法律案では十八才という年令を明記してございません部分は、すべて児童にもかぶる法律案になっております。たとえば精神薄弱者というものは、これは児も含んで考えております。それから審議会でございますとかあるいは相談所でございますとか、福祉司仕事でございますとか、こういうふうなものはいずれもこの法律案の中でごらんいただきますと、児童部分にも手を伸ばす建前になっております。従ってこの限りにおきましては、いわゆるサービスというようなことにおきましては、児童福祉法とオーバーラップする面が出てきておるわけであります。しかしこれはサービスでございますので、オーバーラップいたしましても近い方へいけばいいということになるのでございますから、何ら差しつかえがない。かようにいたすことによりまして、今御指摘のような将来の方向を若干差し示しておる、こういうふうな法律の構成をとったわけでございます。それからなお三条に関係職員協力義務という規定がございまして、これは今までの法律から見ますると非常におかしな条文でございますが、この辺にただいま御指摘のような法律が二つに分かれていることによりまする福祉措置に穴があくようなことのないようにということを特にうたいまして、その苦心の結果、こういうふうな条文を置いて、お互いに関係者が十分戒め合って福祉措置を充実していこう、こういう趣旨を表わした規定が入っておるのも、実はその次第でございます。将来の方向といたしましては、先生今御指摘のような方向に向かってやって参りたい、かように考えております。
  5. 山下春江

    山下(春)委員 社会局長のこの法案の将来進むであろう方向を非常に苦心されて御配慮いただいておる点で、私もそういう方向に進まれるならば、非常に安心してこの法律発足を見守ることができるような気がいたしますから、これはぜひそのようにいたしたいと思いますが、今お話がありました社会福祉司という制度が今度新設されるわけでございますが、聞くところによると、この身分あるいは経費等がどうなるのかということを若干心配いたしておりましたところ、地方行政の方でこれは交付税のワクの中に入れたというふうに漏れ聞いておりますが、この身分について今度法律全国にこれが義務的に設置されるわけでありますので、みんなが心配いたさないようにこの点を詳しくお知らせを願いたいと思います。
  6. 高田正巳

    高田(正)政府委員 精神薄弱者福祉法案の第十条に書いてございますが、これは都道府県におきましては必ず置かなければならないということになっております。市におきましては、それから福祉事務所設置しておりまする場合には町村も問題になってくるわけですが、これは置くことができるということで任意設置機関ということになっております。法律でかように設置規定されてございますので、精神薄弱者福祉司という職種設置ということにつきましては、これは御心配のような点はなくなったわけであります。はっきりとその名称なりそういう職種というものは法律の上に規定をされるわけでございますので、これは問題はなくなった。ただ御指摘のこれらを置きまする人件費でございますが、これはほかのかような職員と同じようにその設置をいたしまする地方公共団体の負担という姓前をとっております。ただこれに対しまして交付税の方でその基準財政需要額の中にこれを見込むかどうかという問題が出てくるわけであります。これは関係当局理解によりましてこの福祉司設置人件費につきましては手当を三十五年度から受けることに相なっております。ただその数が十分満足すべきほどの数が見込まれておりませんが、これは逐次増員をいたして参りたい、かように考えております。それから精神薄弱者福祉司活動をいたしまする旅費とか事務費、これはこの法律によりまして二分の一を国庫が負担するということで、これは予算に補助金が組み込まれておる、この法律案にもはっきり明記してございますので、その辺の活動に伴う経費は確保されておる、こういう関係に相なっておる次第であります。
  7. 山下春江

    山下(春)委員 精神薄弱者を受けてこれの指導をしてくれるという地方の個別の機関がやや不満足ながらも確立したということで、法律ができましても各地方でこれを引き受けてほんとう指導してくれる機関が不備だと十分な効果が上がらないと思っておりました点が、それによって非常に安心して私どもまかせることができると思うのですが、さてそうなりますと、今度は精神薄弱者福祉司あるいは社会福祉司等指導をいたしますにいたしましても、これは何せ相手が精薄でございますから——この精薄の判別ということ、これは人権に大きな影響のある問題を判定するのでありますから、権威ある機関がないと今後いろいろな問題を起こすと思うのでございますが、その判定、鑑別の機関、今回のこれでは幾らかその内容心配な点があるようでございますが、この判定機関については、どのような方法をおとりになろうとするのでありますか。
  8. 高田正巳

    高田(正)政府委員 今回の法律の十二条に「精神薄弱者更生相談所を設けなければならない。」この更生相談所業務は、主として十八才以上の精神薄弱者医学的、心理学的及び職能的判定を行ない、並びにこれに付随して必要な指導を行なうことが、この相談所業務になるわけでございます。この相談所におきましては、精神衛生のお医者さんとか、あるいは心理方面専門家によりまして、この相談所が主として構成されるわけでございますが、ここにおきまして、医学上の診断なり職業適性判定なり、あるいは知能検査等をやって参ることになるわけでございます。ただこれは、山下先生のよく御存じのことでございますが、今日精神薄弱者知能判定をいたしまする方法というものは、実は三、四あるのでございまして、それでそれらの方法が統一的な、画一的なものが確立されておらないという一つの問題があるわけでございます。それからそれらの方法で各個人の判定をいたしました場合におきましても、その場合におきまして、いろいろ知能打数が別に出てくるというような問題もあるわけであります。一口に申しますると、精神薄弱程度判定いたしまする方法におきまして、まだ学問的に十分な研究を要する過程にあると言っても差しつかえないと思います。それらの問題をも含めまして——これはこの法律案とは別でございますが、国立精神衛生研究所精薄研究部を新たに設置をしていただきまして、ここで、国立機別といたしまして、今の精薄の出てくる原因なりあるいは予防方法、それから今の判定基準の問題、こういうふうなものを自分で研究をしていきますることをやりたい、かように考えておるわけであります。さらに国立機関だけの研究では不十分でございますので、さような問題についての各大学の研究者とか、あるいは世間広く、方々研究者がございますので、そういうふうな研究者の情報の交換とか、いろいろそういうふうな役割をこの研究部においてとっていただきまして、日本全体のそういう研究の促進にその画からも資して参りたい、こういうふうなねらいを持った精神薄弱者研究部というものを、精神衛生研究所に新たに来年度から設置をお願いする、こういうつもりでおるわけでございます。さようなことと相待ちまして、この判定の万全を期して参りたい、かように考えるわけでございます。
  9. 山下春江

    山下(春)委員 この判定の問題は、今御苦心いろいろ構想を承りましたが、今の日本医学その他の面からいっても、ほんとうに正確を期するということはこれからの問題だと思うのでございますが、この点はやはり今後いろいろな問題を起こす要素になりますので、この判定機関内容と権威を持ったりっぱなものを一つ確立していただいて、その面でのいろいろな問題が起こらないように今後も十分な御研究を願いたいと思うのであります。  さて、そうなりまして判定されました精薄者が、私の漏れ聞いておるところによれば、総数大体三百万といわれておりますが、その三百万といわれておることも、実は数度にわたって厚生省でもお骨折りでいろいろ調査をなさったようであります。あるいは内閣の中青協あたりでもそのようなことをなさったようでありますが、いまだ正確なものとはいえないと思うのであります。そこでこの中には魯鈍といわれる比較的軽い者、あるいは痴愚といわれる中くらいな者、それからほんとうの白痴、こういうふうなこともまだ正確な数字は把握してないだろうと思うのでございます。そこでこれは法律お作りになる前からいろいろ問題にいたしましたし、政府でもお考えになったのでございますが、これから福祉法を発展強化さしていくためのこれは台張になるものがどうしても一つ必要でございます。この福祉法発足いたしますれば、何としても長い間悲しみ苦しんでおった精薄者のいる家庭に、経済援助ということも考えてやらなければ意味ないと思うのでありますが、そういうことを考えるにしても基本になるものさしをぜひ持つ必要があると思うので、この登録をするということも大へんな問題だと思いますし、相当な経費も必要とすることであろうと思いますが、今回は発足当時でやむを得ませんが、将来登録をぜひしてもらいたいと思いますが、政府では来年あたり経費をとってそういうことをしようとお考えになりますか。登録の問題については精薄問題を推進していく一つの重要なポイントだと思うのですが、政府はどのようにお考えでございますか。
  10. 高田正巳

    高田(正)政府委員 実はどうも法律案を立案いたします際におきまして、今御指摘登録問題等につきましても実は検討をいたしたわけでございます。確かに御指摘のように、それを行ないますことが、福祉措置を今後伸ばしていきます上におきまして基礎的な一つのものになってくるということでございまして、実はほしいわけでございます。ただこれを行ないまするにつきましては、金がかかるというようなことだけでなしに、いろいろ考えてみる必要があるのではないかということから、直ちに今回の法律にこれを取り入れる踏み切りが正直に申しましてつかなかったわけでございます。しかし将来の問題といたしまして、そのことは確かに必要だと私ども考えまするので、合同の法律が成立いたしますならば、その結果できます福祉審議会等にもお諮りいたしまして、その問題はもし御同意が得られるならば、ぜひとも将来の問題として実現を期して参りたい、かように考えておるわけでございます。
  11. 山下春江

    山下(春)委員 これはどうも大へんむずかしい問題だと思いますが、これがないと、ばく然と頭をなでたような福祉法で進んでいきますと、どうしても私は十分なことが期していけないと思います。重症者の中には相当狂暴性を持った、あるいはその他の疾患の重なった者がおりますので、今は幸いにして児童福祉法によって施設へ収容されておるのが、今年はもう満十八才になります、満十八才になると家へ帰ってくるんですということで、全く生きたそらもなく、何とかならないかということを全国的に非常にたくさんの人から訴えられて、私どももまことにお気の毒だと思います。私、せんだって宮城県の母子福祉大会に参りましたら、それは十九才の精薄子供ですが、今日まで母親は常に一方の手でその精薄者をつかまえながら一方の手で内職をして辛うじて生命をつないできたという。それは母子家庭でございますが、母子大会から何か通知が来たので、ほんの三十分ほど手を放したら放火した。ちょうど強い風の吹く日で、強風にあおられてその母子の家は全焼しました。たまたまその大会で、お気の毒だからというので、その家の復活のために皆さんが醵金をしておりました。その知事さんも聞いて、大へん気の方だから県としても何らかの援助をしようということでございましたが、この精神薄弱者対策というのは、どうしてもそういう重症患者を一番先に押えていかないと、今日までいろいろな福祉立法もできたのでありますが、せっかく今回精神薄弱者福祉法が制定され、私の見るところ、ほんとう鶏鳴暁を報ずるというのがこのことかどうか、とにかく親たちの喜び方は大したものでございますが、その喜びにこたえるためには、むずかしくても何でもこの登録制度を推し進められ、重症患者というものを厚生省できちっと知っておられて、それから措置していく。この福祉法内容として、ことしは北海道、東京、岡山の三カ所に援護施設をお建てになる御予定と聞いておりますが、今回は発足当初でございますからやむを得ませんけれども、ぜひ来年はその登録制度を、今局長からお話のありましたようにあらゆる機関を動員して賛成させ、推進させて、少なくとも三十六年には重症患者全員施設に入れられるような基礎をこしらえていただきたい。この登録問題については、この福祉法を推進していく根本問題だということで、できればわれわれ委員会においてこれだけは附帯決議でもつけて政府を鞭撻したいと思いますが、局長のこの問題に対する御決意を重ねて承っておきたいと思います。
  12. 高田正巳

    高田(正)政府委員 登録の問題につきましては、先ほどお答えをいたしましたように、非常に重要な問題だと考えておりまするので、私ども審議会等にも諮りまして、近い将来にその実現に努力をして参りたい、かように考えておるわけでございます。
  13. 山下春江

    山下(春)委員 教育の問題あるいは職業訓練問題等についてもいろいろ承りたいのでございます。それから施設ができるまでの間職親と申しますかそういうところに預けるというような問題もございます。その職親問題について、政府のこれからなされようとする構想一つ聞いておきたいと思います。
  14. 高田正巳

    高田(正)政府委員 職親につきましては、すでに児童福祉法でも実施をいたしておるところでございます。御存じのように精神薄弱者知能程度は劣っておりましても、知能程度の低さにもよるのでありますが、単純な反復継続するような仕事におきましては通常人よりもかえって非常にまじめに仕事に励むという美点もあるわけであります。従いまして、精薄についての十分な理解を持つ方々にこれをお預けする。そうしてわずかながらその経費を、食費等を差し上げまして、それを預かっていただくことによりましてその職業訓練といいますか、さようなこともあわせて行なって参るつもりでおるわけでございます。ただこれはよほど注意をして取り扱いませんと、労働の搾取というふうなことに堕するおそれもございますので、その辺のところは十分注意をしてやって参りたい、かように考えております。
  15. 山下春江

    山下(春)委員 精薄の問題は、各省に広くまたがっておるのでございます。内閣の中青協文部省、法務省、厚生省が主になっておりますけれども、いろいろなところにまたがっておりますために、各役所でほんの少しずつちょこんちょこんといろいろな対策があるために、この対策そのものも生きないし、それから、そのつど小さい問題で各省が寄り集まって相談をして推進するということもなかなか困難でございますが、この福祉法が制定されましたのを機会——教育の問題が、この福祉法の中に必ずしもございませんから、今日は文部省に対する質問はいたしませんけれども文部省にいたしましても、今年あたりはぜひ特殊教育義務教育とする方向に踏み出してもらいたいと思いましても、いろいろな施策がありましてなかなかそこにいかない。考えてみますると、普通の子供が九九・七%の就学率であるにかかわらず精薄着は一・九二%というような全くみじめな状態でございます。アメリカあたりは今精薄者子供でも一五%以上が就学しておるようでございます。文部省は、精薄であろうと何であろうと、子供が一人生まれればこれに対して義務教育を与える責任があるわけございますから、これらの問題も、精薄者福祉法という今度のこの輝かしい大きな柱の中にこういうものがみな入って相談をすると非常に前進しやすいと思うのですが、今後これを前進していくのに、この法律に直接今度は出ておりませんけれども関係各省と何か協議機関のようなものをお作りを願って——それを内閣にお置きになっても厚生省にお置きになってもよろしゅうございます。そうすることが便利だし、そうしたいとお思いでしょうかどうでしょうか、一つ局長の御意見をお聞きしたいと思います。
  16. 高田正巳

    高田(正)政府委員 この法律の中にございます審議会には、実は文部、労働それから法務関係各省方々は全部御参加を願う予定でおります。この審議会も十分今の御指摘の趣旨に活用できると思いますが、なおこの審議会をしばらく運営いたしてみまして、さらにさような機関が必要であるということであれば、これは一つその際に考えてみたい、かように考えておるわけであります。
  17. 中山マサ

    ○中山委員 関連質問。ただいま登録に踏み切れなかったという御答弁がございましたが、その踏み切れない理由は何でございましょうか。今お金の問題ではないとおっしゃたのでございますね。ところが相当な家庭においてそういう精薄者がいるということが世間に知れますと、その兄弟だとかいうものにいろいろな響きがあるから、そういう点を考えて踏み切れないのか。私、実はこういう精薄の親の会に行ったことがございますが、ある官庁のえらいお方に三人子供があって、二人は非常な秀才である、ところがその一人がどうしたものか精薄である、それで非常に苦しんで、何とかして特殊学級を設けてもらいたいということで心配をしておるというお話を承ったのでございますが、そういう点で御遠慮をなさっていらっしゃるのか、何が登録に踏み切れない理由か、私は承っておきたいと思います。私がちょっと考えたところでは、そういう関係者の名誉のため、あるいはもし女の子、男の子でもそうでしょうが、結婚の問題が起きたときに、そういうふうなことで登録されておれば、いい縁談も立ち消えになるのじゃないか。これは親という立場から私ども考えますと、そういうことも御配慮になって、これは登録しない方がいいとお考えになるのかどうか。  もう一つ伺っておきたいことは、私は地方へ参りますと、よく売春の問題でいろいろと、ついこの間もそのことを聞かれたのですが、売春婦の中にも相当の精薄がある。大阪の松島あたりでは六五%あったと聞かされております。そうするとこの精薄の問題が登録されて調査が行き届いて参りますと、売春関係も私は何か解決の曙光も見えるのではなかろうか、こういうことも考えておりますので、第二点に対する御当局のお考え方を、私が一番気になります今の登録に踏み切れないという理由を聞かせていただきたいと思います。
  18. 高田正巳

    高田(正)政府委員 登録という制度をとります上におきましては、もちろん金もかかますし、人手もかかるわけでございまして、それに伴ういろいろな準備も必要でございます。その点ももちろんあるわけでございます。今ちょっと先生がお触れになりました関係者の心理状態というものも私どもやはりあると思いますが、しかしそれがあるから登録をやらないのだと、そこまで割り切っているわけじゃないのでございます。そういうこともある。その点も十分配慮していかなければならない。  それからいま一つは、そういう登録なり何なりをいたしました場合には、率直に申しまして政府として登録をした人については相当お世話できるだけの準備をしておかなければならぬのです。登録はしたけれども、何にもお世話しない。まず施設といたしましても今日そんなにたくさんまだあるわけじゃないわけでございます。ただ登録をしただけで、さっぱり何もして差し上げられないという準備不十分の状態ではあまり意味がないじゃないか。従って今日直ちに登録をするということは、私どもとしては、この法律でも作っていただいてそうしてお世話が行き届くような態勢ができた上でないと、しかもそこには今御指摘になりましたような関係者のいろいろな心理状態というものも十分配属をしていかなければならぬというふうな性格のものでございますから、それをも思い切って登録をいたしまして、さてさっぱりお世話の手が届かないというふうなことになってはまことに申しわけがないというような気持も実は非常にあるのでございます。今日身体障害者につきましては、御存じのように手帳を交付しております。これは登録よりもう少し進んだ強い制度でございます。身体障害者福祉法もおかげさまで十年の歩みをとって参りまして、相当なお世話ができるだけの予算もあり、態勢が整っておるわけであります。ところがこちらの方はさっぱりどうもこれからというところだと思うのでございますので、その辺も今回登録に直ちに踏み切ることのできなかった大きな理由でございます。  それから第二点として御指摘になりました精薄の問題が売春の問題と非常に関係があるという御指摘でございます。これはまさしくそうでございます。従いまして精薄の問題として、これに行き届いた福祉の手を伸ばすことによりまして、売春問題にも非常にいい影響を及ぼすであろうということは、私どももさように考えておるわけでございます。
  19. 中山マサ

    ○中山委員 もう一点だけ。今は十分なお世話ができないから、そこまで踏み切ることはむずかしいと考えるとおっしゃっていただきましたが、これは御当局としては非常に責任のあるお考えでおやりになっておるということがわかったわけであります。しかしこういう子供をかかえている階層は、今申しましたように、インテリの中にも悩んでいる家庭は相当あると思いますが、やはり下積みになっておる階層に多いのではないかと思いまして、十分なる運動ができないのではないかと私は思うのでございます。身体障害者なら団結して自分たちのためにやっていく、しかしこういう人は団結するだけの力もないし、金もない人が相当あろうかと思いますので、この点をお考えいただきまして——国家も何も金のなる木を持っているわけではないのですから、十分なこともできないかもしれませんでしょうが、せめて一番ひどい者から登録していただきませんことには、今山下委員もおっしゃいましたが、放火の問題——今日国家が建築する以上に放火がある。それでよく新聞で見ることでございまするが、ごみ箱に次々に放火して歩いているということから、これはただ精薄という問題でなしに、国家の財産を消滅するということにもなる。ことに春先になりますると、そういうことが多い。痴漢もそうです。ことに女の人たちが着物を切られるまではまだよろしゅうございますけれども、肉体を切られたりすることは、やはりこのころは頭がはっきりならないで、食糧事情もよくなってきておりまするがために、からだだけが成長して、からだの中にあるところの精神は今のように虫ばまれているんです。その害をこうむるのは男の人ではなく、女性である、私はこう思うのでございます。これは方々にまたがっておる問題でございますから、これはぜひ一つ一番きついものだけは早く登録していただきまして、治療ができるものならやるし、できないものなら一生飼い殺しにでもしていただいて、ほかの国民を守っていただかなければなるまいか、私はこう思います。どうぞ一つ今後ともよろしくこの問題でお力添えをお願いいたしまして、私の関連質問を終わらせていただきます。
  20. 高田正巳

    高田(正)政府委員 登録の問題につきましては先ほど山下先生にお答えをいたしましたように、私ども将来の問題として実現を期したい、かように考えております。ただ人を傷つけたり、自分を傷つけたり、つけ火をしたりするようなことの分につきましては、現在でも精神衛生法という法律がございまして、そういうみずからを傷つけ他人を傷つけるおそれのあるような精神障害者につきましては、これは精神薄弱者も含んでおりますが、精神病院に強制人院させる道は開かれております。これは憲法の基本人権との関連もありまして、法律的な手段といたしましてはなかなかむずかしい問題でございますが、精神衛生法にはこの道が開かれておるわけでございます。さような問題につきましては福祉法で扱うべきものではなくして、将来におきましても精神衛生法の方向で十分徹底させていくということに相なろうかと思う次第でございます。
  21. 山下春江

    山下(春)委員 今中山委員の関連質問の中にありました精薄者を、これは福祉法と必ずしも関係ないんですが、これから日の当たるところに出していただく当局の一番責任者である高田局長の頭に置いておいていただいて、何か考えなければならない問題が一つあるんです。ということは、精薄者親たちが深刻に訴えることですが、ばかでもやはり性に目ざめるんです。これをどうやるかということは、親たちの身になれば大へん深刻な問題なんです。そこでこれを一体どうしていくかというような問題については、今後できます施設にそういったような種類の人を両方入れておくことができるか、これら非常に重症な、悪質なのに対しては断種等のことも考えなければならぬ問題じゃないか。これは社会局にお願いしても、ちょっと畑違いのような気がいたしますが、しかし親たちの深刻な訴えには、私たちもやはり何か法律で規制をしなければならないところにも来ているんじゃないかというふうな気がいたします。これは大問題であり、この精薄の問題というのは国家としてはほんとうは重、要施策なんです。今お話がありましたが、売春問題にしてもあるいは肉親殺人、親子心中あるいは放火等による国家の貴重な資材の消滅——要するにばかに金は使っておられないという考え方が、きょうまで精薄問題に日を当たらせなかったと思いますが、今この精薄問題に相当な資金を投資すれば、将来国家資金の大きな節約になる時代がくる、私は必ず実を結んでくることを信じて疑いません。IQ五十ぐらいまでの人に職業訓練その他の訓練さえすれば自立ができる。精薄者の父兄たちがほとんど自分たちの力で作っております名張育成園などでも、私はきょう持ってくるのを忘れましたが、焼きものを作っております。とにかく小皿などを作らしても、五枚とも全部同じ色に作らせるんだそうですが、合じ色に上がってない。それがまた精薄者らしい、えも言われぬ芸術味にあふれているすばらしいものを作っておる。あれを見ましても、とにかく私は熱心にねばり強く訓練をすれば、IQ五十ぐらいまでの人は必ず自立し得るという感じを持っておりますので、将来の施設に対する局長の御熱意と、人間ですから、性の問題は、人道上無視して笑って見過ごしてはおれない問題だと思いますが、多少役所では御検討になったことがあると思いますが、どういうふうに解決していごうとするか。これは私ども委員会としてもお互いに知恵を出し合って、何とかいたさなければなりません。その重症者に対する断種ということを今言える時代かどうかわかりませんが、私はやはりそこまで考えなければならぬときだろうと思うのですが、政府ではこれを御検討になったことがございましょうか。
  22. 高田正巳

    高田(正)政府委員 御指摘の性の問題は、児童福祉法ではまだ子供でございますけれども、こちらの年長者の方の問題を取り扱う方では、実は非常に大きな問題でございます。私もすでに相当な年長者を収容しておる施設に参りまして、さようなことにつきましていろいろ伺ったこともございます。しかしこれはなかなかむずかしい問題で、今どうするつもりだといってお聞きをいただきましても、私にもどういうふうに取り扱っていったらいいのか、まだ見当がつきません。一つそういうような問題も、将来施設を作っていきますについても、施設収容という、ことだけを取り上げてみても、分類収容をするかあるいはそうでないかというようないろいろな具体的な問題があると思います。そういうような問題も含めまして、一つ精薄審議会でもう少し専門的な学者なり実際に扱ってこられた方々なり、そういう方々の御意見を十分拝聴して、そこいらで何か一つのお知恵を借していただきたい、かように私どもは期待をいたしておるわけでございます。
  23. 山下春江

    山下(春)委員 それはその通りで、なかなかここでこういたしますなどという答えの出ない重大問題でございますから、委員会役所審議会、あらゆる機能を動員して考えたいと思いますが、小林委員からちょっと関連があるそうでございますから……。
  24. 小林進

    ○小林(進)委員 私はまたあとで時間をいただきまして、いま少し本質的な問題を質問さしていただきたいと思っておりまするが、ただ関連して、ただいま山下委員と中山委員からお話がありました件についてだけ一点お伺いしたいと思います。  それは精神薄弱児と痴漢の問題でございます。これからいよいよ春先に現われて、着物を切るだけでなくて肉体にまで傷害を及ぼす、そういう痴漢薄弱児が多いんじゃないかという話でございまするが、そういう点をこの新しい法律の上で、一体どういうふうに処置しようとお考えになっておられるか。私ども今も中山委員と私語をいたしたのでございまするけれども、どうも精神薄弱児の性欲に目ざめてきた者の狂的な欲望といいまするか、理性がございませんから、実に危険きわまるものであります。普通の精薄児の処置と別個に考えなければならないのではないか、かように考えているわけでございます。どうも私どもは古い法律研究牛でございまするから、最近のことはわからぬけれども、どうもそういう精神喪失者というか、気違いは断種した方がいいんじゃないかというような学説のあったことも古い記憶にあるのであります。しかしやはり人間の身体に障害を与えることはどうも法律上不可能であるということで、そういう断種ということはまずできないというふうに私どもは学んできたのでありますけれども、先ほども局長のおっしゃった精神衛生法においては、断種などというものはどういうふうに扱われているのか。それに関連して、この精神薄弱児あるいは痴漢のそういう押えることのできない性欲問題を一体どう処置せられるのであるか、お伺いをいたしておきたいと思います。
  25. 高田正巳

    高田(正)政府委員 精神衛生法を先ほどあげましたのは、そういう人を精神病院に入れて一種の隔離処分ですね、保安処分といいますか、それで本人を治療できるなら治療するということでございますが、今の断種の問題になりますと、これは非常に問題でございますが、優生保護法という法律がございまして、ここに優生手術、いわゆる断種でございます。その第三条に、医師はこれこれに該当する場合においては優生手術を行なうことができるという規定がございまして、その二号に「本人又は配偶者の四親等以内の血族関係にある者が、遺伝性精神病、遺伝性精神薄弱、」云々というような場合には、優生手術ができることになっております。
  26. 小林進

    ○小林(進)委員 その優生保護法ができたのはいつですか。
  27. 高田正巳

    高田(正)政府委員 これは二十三年から施行されておる法律でございます。それで一応法律的にはそういう根拠があるわけでございますが、私専門家でございませんので、これはよく御説明いたしかねるのでございますけれども、遺伝性精神薄弱ということに医師としてはっきり断定し得るのがそう簡単ことであるのかどうか、私ちょっとその辺がよくわかりませんけれども、とにかく法律的な根拠といたしましては、遺伝性のものについてはそういう道が開けておる、こういうことでございます。
  28. 小林進

    ○小林(進)委員 いま一つ関連してお尋ねいたしますが、年令の問題も、今の精神薄弱者福祉法案の中に含まれる年令は満十八才からでございますね。あとは児童福祉法とおっしゃいましたけれども、ただこの性欲の問題は、だんだんどうも犯罪が若返って参りまして、最近はともかくもう十二、三才からメンスなんかも始まるそうですな。大体もう小学校の五年生くらいに半分くらいはいわゆる初潮を見出して、六年生くらいになると、七、八割くらいになるというふうなことで、いわゆる精神状態も、理性が発達しないうちに、教養が備わらないうちに肉体的な方ばかり進んでしまって、これは薄弱児とは言えないでしょうけれども、まだ未完成のうちに、精神、肉体のアンバランスから生ずる性的犯罪というものが非常に大きいですな。直接この法律とは関係がないかもしれませんけれども、私どもはこの精神薄弱者福祉法案を審議する場合には、やはりそういうことも関係事項として十分考慮しながら、この法律の審議に当たらなければならぬのではないかと思うのですが、局長はこういうことの処置を一体どういうふうにお考えになっているか。これは児童福祉法の範囲だとおっしゃればそれっきりでありますけれども、どういうふうにお考えになっておられるか。  それからいま一つは、私は先ほどちょっとおくれてきましたけれども、新しく法律ができると、東京、和歌山というふうに何か設備をお作りになるそうですけれども、今でも何かこれに似通った設備はありますね。そういう設備の中における性欲の問題、いわゆるいまだ知能至らざる者の性欲の問題が、一体どういう現象として現われて、管理者は一体それをどういうふうに処置をされているのか、これは具体的な経験の記録か何かあるならばお示し願って、そうして将来のわれわれがこの法律を作り上げるための参考までに一つお聞かせを願いたいと思うのです。こういう類似の設備があるんですから、そうして常時こういう精神薄弱児なんかの囲いの中におけるいわゆる狂態といいますか、常態にあらざる姿が私は露呈せられているんじゃないかと思うんですが、それも含めて一体どうこれを処置しておられるのか、一つお聞かせを願いたいと思うのです。
  29. 高田正巳

    高田(正)政府委員 どうも大へんむずかしい御質問で、お答えいたしかねるのでございますが、第一点の、これは精薄者も含めて、非常に低年令の人たちに性的な非行行為といいますか、そういうようなものが非常に多くなってきたというふうな問題でございますが、これは私も御指摘のようにその傾向は十分承知をいたしておるわけであります。ただ、これはなかなか簡単に速効的な薬はないので、結局精薄者のような場合におきましては、やはり何か本人が熱中をして興味を持ってやるような事柄ができて参りますと、こういうことも非常に防げると思うのです。従ってそういうふうなことを防ぐ意味におきましても、また将来社会に復帰して自分が少しでも自活の道を立てていくためにも、やはり何か適当な興味を持って行なうような仕事といいますか、職能訓練といいますか、そういうふうなことに一生懸命に励んでいくように生活指導をして参るということが、精薄者のような場合におきましては一番大事なことじゃないかと私ども考えておるわけであります。しかも精薄者の場合におきましては、先ほど山下先生も御指摘になりましたように、仕事によりましては、気が散らなくてかえって常人より成績を上げるという場合が相当あるわけであります。そういうふうな生活指導といいますか、職能訓練といいますか、そういうふうなことを重点に物事を進めて参ったらどうか、かように考えておるわけであります。  それから第二点の、今日すでに似通ったような施設があるのだが、そこでそういう性の問題はどういうふうに処置しておるか、何か統計でもあるかというような御質問でございましたが、実はさような統計は持っておりません。ただ私ども施設に参りました場合に、施設経営者の一つの悩みといたしまして、私が具体的に遭遇したのは相当な年令の女の方でございましたが、あの子は男を見ると非常に工合が悪いんだ、それについては実は私どもはこういうふうにしておりますというふうな、具体的なケースとして聞いたことはございますけれども、統計的にどういうふうなことがどうあって、傾向はどうだというような、御指摘のような資料を御提供いたすことができないのは、はなはだ残念でございます。ただ将来こういうふうな施設がたくさんできて参りまして、そして施設経営の一つの大きな問題点として、先ほど山下先生が御指摘になりましたような問題は非常に大きな問題でございますので、私どもは将来としてはもう少しあけっぴろげに施設経営の重要な問題点の一つとして検討して参りたい、かように考えておるわけであります。     〔小林(進)委員「断種なんということは考えられないですか」と呼ぶ〕
  30. 山下春江

    山下(春)委員 そこで今、小林委員が不特定発言のようなことで言われた、施種というようなことについて考えられるかということでございますが、私は何回か父兄に会いまして、いろいろの意見を聞きましたが、父兄は遺伝性の場当重度の者については、断種もしくは優生手術を断行してくれということが、父兄の偽らざる告白であり、訴えでございます。やはり手ぬるいことをして、なまじ、なまなか、親たちを嘆かして死なしていくよりもそうしてくれ、断種もしくは優生手術を行なってくれということを、重度の親たちは心から、泣きながら訴えております。そこで、それは政府としてはそうお考え願って、そしてそれがさっきの登録問題に戻ってくるのですが、重度の者に対してはそう踏み切っていただくということで、私はいささかも人権問題、人道問題等に問われることのない——そこには今言う判定の問題が、もし誤れば大へんなことになりますので、判定内容を権威あるものに確立するということがもちろん前提になりますけれども、そういうふうにお考えを願いたいと思います。  今回の福祉法と同時に、政府では国立精神衛生研究所の中に精薄部をお作りになって、そして発生予防、あるいは早期発見というようなことに全力を尽くされるように聞いておりますが、要しまするのに、この精薄問題は、精薄君たちを教育していくということに粘り強い熱意を示すこと、それから精薄者福祉法をフルに活用いたしまして、何としてもこれは経済援助のある面は見てやらないと意味がないと思うのでございます。そこでそれをどういうふうにしていくかということは、現在でございます身体障害者の福祉年金などを考えてみるか、あるいはいろいろなことを考えてみることがあると思いますが、直ちに今それを踏み切るのには、まだまだいろいろ研究の余地があろうと思いますが、将来どうしても経済援助の面に伸びていきませんと、私は非常に意味のない空虚なものになると思いますので、その問題をぜひ研究をしていただく。それから今の国立精神衛生研究所の中に精薄都というもの——これは国立精薄研究所をこしらえるというところまで推し進めなくても、その部を強化していただいて、そして熱心にやっていただけばよろしいと思いますが、この三本の柱をきわめて熱心に強化をしていただいて、それによってこの問題の解決をはかっていくということが将来の姿だと思うのでありますので、これはぜひ御実行願いたい、お考えを願いたいと思うのであります。  そこでこれをせっかく——これも郵政省に聞くことであって、厚生省にお聞きしてもしようがないのでありますが、私はこの機会にやはりこの福祉法ができたということは、きょうまでほんとう社会一般も政府も、ばかに金をつぎ込んでも仕方がないということで、なおざりなおざりなってきた、何年この方の、日の当たらなかった、じめじめしたところに、ほんとうにあたたかい日がさっとさし込んだようなこの福祉法制定を機会に、ことしというのでありませんが、やはり中央に精薄福祉センターというものを一つお作り願って、そうしてすべての職業訓練あるいは今の優生手術等の問題についても、衛生方面の問題からいっても、福祉方町の問題からいっても、ぜひこの中央センターでやるというようなことを実行していただきたいと思いまして、ちょっと話がそれますけれども、そこでこの福祉法制定を機会全国の国民にPRする意味もあり、ちょうど精薄出身者に八幡学園出身の山下清画伯がおります。この山下清画伯の筆になる郵便切手を記念に売り出しまして、この郵便切手はただ十円で売るだけでなく、そのうちの一円は精薄中央センター建設資金に御寄付を願いたいというような構想によって、これをこの福祉法制定を機会に売り出しまして、そうして全国の津々浦々の皆様がこの日本の一番おくれておった精薄問題というものに、その切手を通して協力を願うと同時に、認識を新たにしていただくという意味で、私はそういうことをやってみたいと思うのでありますが、御賛成ならば、ぜひ政府とわれわれ国会とが一体になってこの問題を強力に推進していきたいと思いますが、局長はどのようにお考えでしょうか。
  31. 高田正巳

    高田(正)政府委員 私どもの立場としましては、大賛成でございます。ただ郵政省がそう言ってくれませんと何にもなりませんが、さような御計画がございましたら、私ども一つ驥尾に付しましてこれが実現に努力をいたしたい、かように考えております。
  32. 山下春江

    山下(春)委員 精薄問題はまだいろいろ問題がございますが、要は私は今回政府精薄者福祉法を制定することに踏み切っていただき、予算等は必ずしも政府が意図するものが得られなくて、きわめて些少な金額であったにもかかわらず、それを非常に有効に適切に生かしてこの福祉法を制定されたことに対して、重ねて満腔の敬意を表すと同時に、今いろいろと御注文を申し上げたりお願いをしたりしたように、この問題の内容は、いまだ空疎なものでございますので、これを契機といたしまして、ここで投資いたしますことは、長い将来においては国家の非常に大きな出資を防ぐ種をまくことになると私は思いますので、この福祉法が所期の目的を達成するに値するようなりっぱな法律に成長いたしますことを心から念願いたしまして、私の質問を終わります。
  33. 永山忠則

    永山委員長 午後一時まで休憩いたします。     午前十一時五十九分休憩      ————◇—————     午後一時三十九分開議
  34. 永山忠則

    永山委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  休憩前の質疑を続けます。五島虎雄君。
  35. 五島虎雄

    ○五島委員 午前中に山下委員からうんちくのある質問が行なわれましたけれども、この山下委員質問並びに関連質問の全体において一部ダブる面があるかもしれません。私出たり入ったりしておったものですから、ダブるかもしれませんし、それからまたほかに同僚委員もたくさんこの問題について質疑の通告があっておるようですから、私はできるだけ簡単にこの本法の問題を明らかにして、若干の質疑をしておきいと思います。  山下代議士も言っておられたように、この精神薄弱者福祉法の芽が出たという意味におきましては、われわれも非常にこれを期待しておるものでありまして、今後この法の発展と拡大、拡充がすみやかに行なわれることを希望し、われわれも協力したいと思っておるのであります。この精神薄弱者福祉法案の提案理由の説明を見てみますと、精薄者が三百万人もおるというようなことで、一日もこれに対してゆるがせにすることができないのだ、従ってこれの指導と援護、そうして治療の問題を中心に考えなければならないということでございますけれども、いろいろの資料をひもといてみますと、精神薄弱者——もちろん児童の方には兄貴の一精神薄弱児がございまして、それについていろいろの機関もあり施策も行なわれておるわけですが、この精神薄弱者という定義を簡単に明らかにしておきたいと思います。何か魯鈍とか痴愚とか愚鈍とか——愚鈍はなかったようですが、これをはっきりここに明らかにしておいてもらいたいと思います。
  36. 高田正巳

    高田(正)政府委員 精神薄弱者の定義はどうであるかという御質問でございますが、一口に申しますと、知能の発達の程度がおくれた者ということになるかと思います。そういうことでございますが、大体知能指数で知能の発達の程度をはかることが実際に行なわれておるわけでございますが、かりに通常人を一〇〇といたしますと、七〇以下程度精神薄弱者と普通呼んでおるわけでございます。
  37. 五島虎雄

    ○五島委員 三百万人の中には、児童も含まれて全国で三百万人ということでしょう。そうすると、この法案の対象となる十八才以上の精薄者は一体どのくらいあるのですか。
  38. 高田正巳

    高田(正)政府委員 二十九年の精神衛生調査によりますと、その結果から推定いたしましておおむね三百万人程度、わが国に精神薄弱者と称せられる者が存在するであろうという推計が出ておるわけでございます。今十八才以上と十八才未満の内訳はどうかという御指摘でございましたが、その中で十八才未満が百万程度でございます。それから十八才以上が二百万程度というように、大体の推計をいたしております。さらに、その三百万人の中で、知能程度のひどい、軽いの観点からの分け方でございますが、その三百万人の中で五十八万人程度が大体知能指数が五〇以下、言葉をかえて申しますと、普通痴愚、白痴と呼ばれております部類の人たちだと推定されております。その残りが五〇以上のいわゆる魯鈍級でございます。それからその五十八万というIQ五〇以下の中で年令別に見ますると、十八才未満と十八才以上が大体同じ程度、少し十八才以上の方が多い、こういうふうに推計をされておるわけでございます。
  39. 五島虎雄

    ○五島委員 精神薄弱者に対するところの更生の問題ですけれども、今まで国が取り扱った精神薄弱者の中に、健全な職業等々に更生のできる人々は、この中で何%くらい大体可能かということ、現代医学あるいは現代の技術上の問題から、どのくらいの更生度があるというように推定されておるのですか。
  40. 高田正巳

    高田(正)政府委員 今申し上げました三百万人の中で、いわゆるこの知能指数五〇以上の程度の軽い方々、約二百万人と推定されておるわけでございます。これらの人々は、これは特殊教育が十分に発達をいたしておりませんけれども、現在でもいろんな職業につきまして大部分社会に溶け込んでおられるわけでございます。もっとも溶け込んでおられまするけれども、その溶け込み方が適当でなくて、いろいろな問題が起こっておることは否定できませんけれども、大体溶け込んでいっている方々だと思います。さらに将来、これは文部省の方の所管になりますけれども、特殊学校、特殊学級、こういうふうなものがいま少し発達をいたしまして、義務教育等も十分に行き渡りまするならば、まだまだこの溶け込み率はよくなる、かように考えておるわけであります。問題は、この特殊教育等の対象にならない、いわゆる就学免除になる程度の、言葉をかえて申しますと、知能指数が大体五〇以下、しかもその中でもさらにひどい白痴級の二五以下、こういうふうな方々になりますと、これは非常に問題がむずかしくなるわけでございます。しかし、お手元に差し上げてあります法律案の資料の七十二ページ以下等に「精神薄弱者の適職に関する研究報告」というものが載っておりますが、従来ともいろいろ研究され、実際に施設等で実施をしてみまして、いろいろ研究をされてきておるわけでございます。午前中にもお答えをいたしましたように、知能指数が非常に低い方々でございましても、適当な単純な向くような職業を与えまするならば、普通人ほど気が散らないというふうなことから、かえってまじめに成績を上げられるというような場合が相当あるのでございます。従いまして、五〇以下の方々におきましても、やりようによりましては十分更生をしていく方々があるというふうに申し上げられるかと思います。ごくひどいので、もう何ともならないという方々も、これは今後研究が進みますれば、そういう方々は非常に数が減ってくると思いますが、それでもごくひどいので、何ともならないという人々も残ってくると思います。従いましてそれらにつきましては、やはりずっと一生涯お世話をしていかなければならぬ方々、いわゆるこげつきの方々も残ってくる、こういうふうな予想もいたし得るわけでございます。大体そういうふうな考え方を私どもいたしておるわけであります。
  41. 五島虎雄

    ○五島委員 精神薄弱児の援護とか、それからいろいろ医学的、職能的研究をこの法律はし、そうして援護更生の方に重点を注ぐ法律になっているわけですけれども、一体この九千二百万の国民の中に三百万人もいわゆる精薄児がおるということですが、精薄が発生するということは、非常にいろいろの原因があろうと思います。私よくわかりませんけれども、それは胎児のときどうかしたとか、あるいは遺伝もあるのでしょうか、何かわかりませんけれども精神薄弱者の生まれる理由、その原因は大体わかっておるのですか。わかっておればその適切な治療方法——何か今までいろいろ参考資料を見たんですが、また人の話も聞いたのですけれども、治療の方法がなかなか困難だということも聞いておるわけです。この点についてどうなんでしょうか。
  42. 高田正巳

    高田(正)政府委員 精薄ができてきます原因ということにつきましては、以前は全部遺伝によるのだというふうに言われておったのでございますが、最近では後天的な原因、すなわち妊娠中の母体の障害とかあるいは出産時の障害、出産後の病気による障害というふうに、いわゆる遺伝以外の原因によるものが相当あるということは明らかになっておるわけでございます。しかしその詳細な点は、率直に申しましてまだ学問的な研究が十分に行き渡っておりません。それでこれらのことを研究いたしますることが、その発生の予防になるわけでございますので、原因の研究をいたしまして、初めて予防の対策も立つことになるわけでございます。そこでそれらの任務を持ちまして、これは来年度からでございますが、精神衛生研究所精薄部を設置していただきまして、さような点を特別に専門に国立機関研究いたして参りたいという予定になっておるわけでございます。  一日に申し上げますとさようなことでございますが、ただここにごく限られた範囲の調査でパーセンテージが出ておりますので、御参考までに申し上げてみます。それはお手元の資料にはございませんですが、大きく分けまして、これは千人足らずの人たちの分類でございますからほんとうのサンプル調査でございますが、先天性と認められるものが七六・四%、それから後天性と認められるものが二三・六%、その先天性をさらに分けまして遺伝性というふうに認められまするものが一〇%、それから母親の胎内での原因と認められまするものが三三%、それから先天性ではあるけれどもどうも原因がわからぬというものが三三%、合評しますと七六・四%程度になるわけでございます。端数を切り捨てて御説明いたしましたから数字がぴったり合いませんが、大体そういうふうな内訳の資料でございます。それから後天性の方では、これは出生時のものが一四・五%、新生児時代のものが一・一%、乳児の時代の原因のものが四・一%、幼児時代のものが三・九%、合計いたしますと大体二三・六%になる。こういう数字が出ておりますが、これは非常にサンプル的な統計でございまして、これをもって全部を推すわけに参りませんが、この程度一つの統計があるということは御参考に相なるかと思います。しかし根本的に詳細に学問的な研究はまだそこまでいっておりません。従って精神衛生研究所精薄部というようなものを設けて国でも研究をいたし、さらに各大学その他民間の、相当研究者がおられますので、そういうふうな御研究の情報の交換とかなんとかいうことについてその精薄部が尽力して参ろう、こういう予定でおるわけでございます。
  43. 五島虎雄

    ○五島委員 そうすると、その精薄部というのはこの法律が通ってから新らしく作られるわけですね。
  44. 高田正巳

    高田(正)政府委員 これはこの法律に直接関係ございませんで、公衆衛生局所管になっておりますが、精神衛生研究所という国立機関がございます。ここで従来ともただいまのようなことを研究してきておりますが、さらに来年度から人を増しまして、一つの部を作っていただきまして、そこで精薄を専門的に研究をしていただきたい、こういうことで予算の御審議をお願いしたわけでございます。
  45. 五島虎雄

    ○五島委員 これは蛇足になると思うのですが、精神薄弱者対策として今どういうような政策を政府は行なわれておるだろうか、政府はいろいろやってこられていると思いますが、その概略をちょっと説明して下さい。
  46. 高田正巳

    高田(正)政府委員 この精薄の問題につきましては、根本的には今御指摘のございましたような発生の原因をきわめ、その予防をやっていくというふうな根本的な対策が含まれるわけでございますが、さような点は今申し上げましたようなことで、今日までさほど進んでおらないのでございます。ただし福祉面につきましてどういうふうなことをやっていくかという御質問であろうかと思いますが、今日のところは比較的軽い魯鈍級の者に対しましては、文部省において特殊教育の拡充施策をとってもらっております。これがまだ義務的なものになっておりませんけれども、逐次この特殊教育の拡充を文部省でやってきていただいておるわけでございます。それから程度のひどい、特殊教育の対象にならない痴愚、白痴級の方々に対しましては、今日まで児童福祉法が、この十八才未満の方々につきましては、収容施設あるいは通園施設というふうなものを中心といたしまして今日まで相当な仕事をやってきております。これらの施策は年々充実して参ってはおりますが、その対象数に比べますと、なお、学校にいたしましても、施設にいたしましても、それから専門職員にいたしましても、まだまだこれから充実していかなければならないというふうな状況でございます。  大体以上のようなことをやって参っておるわけでございますが、その御説明でおわかりをいただきましたように、おとなの精薄につきましては、今日までほとんど見るべき施策を講じておりません。この点はわれわれの足らざるところであったわけでございます。それで新たに御審議をいただいておりまするような法律案を成立さしていただきまして、この法律を手がかりに将来拡充をして参りたい、かように考えておるわけでございます。今日までおとなの面におきましては、三十四年度、本年度に施設が三カ所、これはまだ完成しておりませんが、本年じゅうにもうそろそろ始まる予定でございます。これは公立の施設でございます。そのほかに民間の施設といたしまして、収容施設が十数カ所ございます。そのうちで、社会福祉法人が経営しておりますものは五カ所でございます。大体そういうふうな状況でございまして、今日までのところは十分に措置がとられておりません。特に、児童の部面においては相当なことが行なわれておるけれども、おとなの部面において非常に立ちおくれておる、こういうふうな状況が率直に申し上げられるかと思います。
  47. 五島虎雄

    ○五島委員 おとなの面については何もない。もちろん、今まで政府があまりしなかったものだから、何もないことはわかるのですが、問題をちょっと外国に目を向けて、というとえらい大きいことですが、外国はこの精薄者の問題について大体どういうような施策をしておるのですか。日本は、今局長が言われたように、わが国では何ら見るべきものがない、やっと芽を出したということですが、外国との開きがどれだけあるでしょうか。僕はまだ外国に行ったことがありませんからよくわかりませんけれども……。
  48. 高田正巳

    高田(正)政府委員 私ども実はあまり外国のことは十分詳しくは承知をいたしておりませんが、大体社会福祉事業の進んでおります諸外国におきましても、精薄者の援護施策の中心は、やはり特殊教育とそれから援護施設における指導訓練というものが中心になっておるようでございます。ただそれらの施設と、そこに勤務いたしておりまする専門職員が非常に充実をしております。アメリカの例で申し上げますると、精神薄弱者の総数が大体四百五十万人といわれておりますが、施設の収容定員が十五万人ほどございまして、従って希望する十は、また施設に入れる必要のある者は入れるというふうな大体の状況でございます。それからイギリスにおきましては、施設の数は、これはやはり日本と同じように若干不足をしておるそうでございます。ただそれを補う意味で、うちから通いまするところの職能訓練所とか庇護授産所というふうなものが発達しておる。それから在宅指導体制といいますか、家におる精薄者指導するという体制も比較的整っておるようでございます。大体そういうふうな状況でございまして、やり方といたしましてはこの法律がねらっておりまするやり方とあまり変わっておりません。それぞれ外国でやっておりますことの芽はこの法案の中に大体筋としては盛り込んであると思います。ただその裏づけになる実力が、わが国の場合におきましては実態がなかなか外国ほどいっておらない、こういうことが一口に申し上げられる比較ではないかと思います。
  49. 五島虎雄

    ○五島委員 その点わかりました。ところがアメリカでは四百五十万人の精薄者がおって十五万人収容施設がある。イギリスはなお日本と同じで不足ぎみである。ところがさいぜん局長が言われたのは、三十四年度まで公立が三カ所、それから私立が十数カ所である。これは一カ所でどのくらいの収容定員があるか知りませんけれどもほんとうにちょっぴりだろうと思うのです。しかも二百万人の精薄者があって、その中で五十点以下の人々が五十八万人もおる。そうするとこれを収容するのに、この法律が通って四月一日から実施されて、国庫の負担がこれについて、やおら県や市町村がやろうかなとみこしを上げて初めてできる施設なんですね。そうすると三十五年度ではどのくらい全国に収容施設ができるものだろうか、このように何か心配になるわけです。できればできるだけいいのですけれども、遅々としていては精薄者家庭とか精薄者自身も救われないのではないかこのように思いますから、この点をちょっと明らかにしておきたいと思います。
  50. 高田正巳

    高田(正)政府委員 その点はまことにどうもお恥ずかしい次第でございますが、三十五年度に新設を予定しておりまする補助のついた施設でございますが、これはやはり三カ所ございます。それで私どもといたしましては、少なくとも公立の施設を都道府県に一カ所くらいずつはできるだけ早い時期に作って参りたい、かように考えておるわけでございます。ただ児童の方はすでに十数年間努力いたしておりますので、施設の数も百数十に上っております。それで、ない府県はございません。おとなの方は今のような状況でございます。
  51. 五島虎雄

    ○五島委員 私ちょっと誤解しておりました。さいぜん局長は本年度じゅうに三カ所、法律ができる前に三カ所というふうにおっしゃったのかと思って、三十五年度はどうかなと思ったのですが、三カ所というのは来年度のことなんですね。三十四年度、三月三十一日までは三カ所、そして三十五年度は三カ所、合計両年度で六カ所ということで、僕の心配は当ったということなんですね。そこで三百万人の精薄者、十八才以上二百万人をすべて収容するわけにはもちろんいかぬ。しかし将来三百万人が三百五十万人にふえるかもしれないが減るかもしれない。そうすると百パーセントこれを収容する気持は全然国にはなかろう。僕たちはこういうような人たちは国がどんどん収容して、国の費用をもって更生せしめるということが一番完全な社会保障であると思うわけですけれども、そうはできないだろう。そうするとこの三百万人の中でどういう人々を対象として指導をしたり、あるいは施設に入れたりするのか、この区分を説明してもらいたいと思うのです。
  52. 高田正巳

    高田(正)政府委員 当面は三百万人おりますけれども、この人たちを全部施設に収容する必要はございません。私どもの大体の見当では六、七万人程度施設の収容力があれば、いろいろな事情の方がございますので、大体入れたいと思われる方々については何とか格好がつくのではないかというふうに考えておりますけれども、しかし今とてもそれだけの収容力はございませんので、当面といたしましては、年令層から申しますと二十才から三十才くらいまでの——児童福祉法が十八才までを扱いますから、その上の比較的若い層で、しかもある程度指導訓練をいたしますれば十分社会復帰のできる人、訓練効果の上がる人を主として考えたいと思います。施設が非常に少ないときでございますので……。しかし午前中来も問題になりましたように、非常に重度の方であって、家庭の非常な重荷になっておるというふうな方々もやはりこの際、どうせ収容力が少ないのでございますので満足には参りませんけれども、あわせて収容をして参りたい、当面の施設につきましてはさような考え方をいたしております。施設が拡充を見ますにつれましていろいろとまた別の考え方をいたして参る必要があるかと思いますが、当面はそういう考え方をいたしております。
  53. 五島虎雄

    ○五島委員 今度は条文のことについて、飛び飛びになりますけれども御勘弁願いたいと思います。十条で精神薄弱者福祉司ができるわけですね。十条を見ると「都道府県は、精神薄弱者福祉司を置かなければならない。」ということになっておるわけです。もちろん福祉司は専門の技術者、あるいはお医者さんとか、その他経験のある人がなられるわけですけれども、この福祉司だけは都道府県に必置しなければならないとこの法は規定しておるわけです。ところが、ただいま施設々々と私が言いましたけれども、十八条の精神薄弱者援護施設ですね、これは十九条を見ますと「都道府県は、精神薄弱者援護施設設置することができる。」というように任意規定になっておるわけです。福祉司は必置であって、援護施設は任意になって必置でない。こういうような条文になりますと、政府提案の法の趣旨が那辺にあるかわかりませんが、ただ都道府県は義務が出てこないわけですね。必置する必要がない。従って福祉司だけを数人置いて相談指導に応ぜしめれば都道府県の実施機関の責任は免れるように受け書取れるわけです。しかもやりたいと思っても、地方財政の逼迫等で、府県では二分の一程度の国庫の負担では積極性が欠けてくるのじゃなかろうかというような杞憂も感じられるわけです。そうするとこの施設が都道府県で必置でないものですから、ある県ではできた、ある県ではできてないというように、ちぐはぐな都道府県の実情が出来するのではなかろうかと思うわけです。実施機関はどこかというと、条文には、住所がはっきりしている者は当該市町村長であって、住所の不分明な者は県知事にあるのだ、こういうようになっておると思います。そうするとその人たちが当該のある県の精薄児について相談に行ったけれども、その県の施設に入れないで、隣の県の施設に入らなければならなかったり、あるいは自分の希望しないほかの施設に入らなければならなかったりというような状況が出てくるのじゃないかと思うのです。なぜこれを任意規定にされたのか。福祉司が必置のことはわかります。しかし任意条項がちょっとわかりませんから、その気持を説明して下さい。
  54. 高田正巳

    高田(正)政府委員 十九条の施設の方は、都道府県は必置でございませんで、御指摘のように任意になっております。それで福祉事務所とか福祉司精薄者のごめんどうを見るために更生相談所判定を求めたりいたしましても、これは施設に収容する必要があるというふうなケースがあった場合に、ある府県では自分の施設がないという事態が起こることは先生指摘の通りでございます。従ってそういう場合にはよその府県に紹介をしてそちらにお願いをするか、あるいは自分の県内にあります民間の施設に収容を委託するというふうなことになるわけでございます。その点は確かに先生指摘のような法律構成になっております。そこで、しからば十九条をなぜ必置にしなかったかというおしかりが出て参ると思います。実は私どももできれば都道府県に義務を課したいというふうに一応考えたのでございますが、考えてみますと、すでに十年の歴史を持っております身体障害者福祉法におきましても、やはり施設設置につきましては都道府県の義務にはいたしておりません。そういうふうな均衡といいますか、社会事業施設の多くが、ほとんど全部が任意設置になっておりますので、この際精神薄弱者福祉施設だけを特に義務設置にいたしますことにつきましては若干無理があるようで、実は私どもも踏み切れなかったわけでございます。ただしかし今日ほかの施設でもそうでございますが、特に精神薄弱者施設におきましては、都道府県の方でむしろ積極的に作りたいという希望が実は相当たくさん殺到いたしております。従いまして、国の方の財政援助、いわゆる補助金の確保、予算的な確保をいたしますれば、法律が任意規定になっておりましても、実際上はそういう都道府県の希望と私ども指導とによりまして、国の予算の方さえ権保できますれば、相当程度急速に普及して参るのではないか、実態関係ではさように考えております。ただ法律の建前としまして必置基準にならなかったのは、今申し上げましたようにほかの社会施設との均衡その他からなかなか踏み切りがつかなかったということであります。
  55. 五島虎雄

    ○五島委員 他の福祉関係の均衡からこれを必置事項にしなかったということですが、国の予算をつけてやればたくさんできるのじゃないかという見通しが、僕がさいぜん聞いたところの来年はどのくらいできるつもりかということになるわけなんです。三カ所だけだったら少しも期待するところはないじゃないか。法律が通れば格都道府県は一体どれくらい希望してくるのだろう、国の協力を求めて国庫負担を仰いでくるだろう、どこの府県が非常に積極的だろう、こういうようになると思うのですが、これはどれくらいあるのですか。
  56. 高田正巳

    高田(正)政府委員 法律が成立をいたしました場合には、またふえるかもしれませんが、今私どもの手元にと言ってきておりますのは、十六、七の都道府から、ぜひとも自分のところでやらしてもらいたい、こういうことを言ってきておるわけです。それは国の予算が三カ所しか入っていないということを承知の上で言ってきておるわけでございますから、今後そういう希望というものは相当強く広がって参るものと私ども考えております。
  57. 五島虎雄

    ○五島委員 そうすると、この法律は作った。そうして法律は四月一日から発足する。しかし何といっても現在精薄児を早く更生せしめなければならぬ。原因を追及せよといっても原因はなかなかわからないと局員はさっき説明されたわけですが、発生予防もなかなかできない。しかし原因は今後精薄部などを作って研究すれば、それもだんだん明らかになるだろう。今急がれることは施設を作ることなんだ。これは芽を出したのですから、私たちは厚生省を、ほんとうによく踏み切ってやられたわいというように思いたいのですけれども、計画性がないじゃないかというようにも考えられるのです。来年三カ所だ。そうして十六都道府県から希望がきているけれども、三つしか許せないのだ。そうすると再来年は一体幾つできるのだろうか、その次の年は幾つできるのだろうか、全国の都道府県にこれが普及するのは一体何年先だろうか、こういうような疑問が生じてくるわけですが、この点の計画性はどうですか。
  58. 高田正巳

    高田(正)政府委員 将来の国の予算の問題になりますので、三十六年度に幾ら、三十七年度に幾らということは、ただいま申し上げかねるのでございますが、先ほど申し上げましたように、少なくとも全都道府県に一カ所ずつは早急に普及させたいという私ども強い熱意を持っておりますので、三十五年度は一応三カ所ということになっておりますが、しかし三十六年度以降におきましては、できるだけい機会に、少なくとも一カ所ずつ各都道府県に設けるということについて最大の努力を払って参りたい、かように考えております。
  59. 中山マサ

    ○中山委員 ちょっと関連してお尋ねしたいのですが、一体今この精薄児がどんな程度でふえているのか、あるいは今までよりも精薄児の生まれる率が減っているのか。この間も何か新聞に出ておりましたが、気違いと性格的変質者、ふだんは何ともないような者が何かの拍子にぱっと気違いじみた行動をする者がふえた、近ごろはミサイルだ何だかんだと言って騒ぐので、人の心を異常に刺激する、こういうふうな記事が、ある学者の論文か何かで新聞に出ておりましたが、そうするとまた近ごろのように安保反対だと騒いでいるときに、それが妊婦に一体どういう精神的な影響を与えるか。これは相当激しいものだと思います。  それからこの間どこかで見たのですが、精薄児の生まれるには遺伝というものが相当ある。そうして先ほどおっしゃいましたお産のときの生ませ方、その取り扱いの上手下手によって、たとえば悩を圧迫するとか、いろいろ生ませ方によって変わってくるということ、それからほんとうに原因不明のパーセンテージは非常に少ないということをどこかで発表してございました。そうなって参りますと、これと関連をして、お産を世話する人たちの技術というものも大いに厚生省の医務局で監督をしていただかないと、稚拙な助産婦さんでしたら、やはり生ませ方が下手ですから、悩を圧迫するとかなんとかでそういう結果が出ると思いますが、そういう点はどうなっているのですか。  それから精薄児の生まれてくる数というものが時代の動きにつれて多くなっているというのであれば、今五島先生がお尋ねになったように、わずかなものを希望する府県に建てさせるというようなことで追いつくかどうか、この点どうなんでございますか。
  60. 高田正巳

    高田(正)政府委員 精神病につきましては、これは確かに世の中が、物質文明が進みまして、交通量も激しくなるし、だんだんふえてきておるというふうなことは私ども聞いておりますが、精神障害者の一部類でございますけれども精神薄弱者が特別に近年ふえてきているということは私ども聞いておりません。今まで未発見であったものが発見されてくるということはございます。しかし最近御指摘のようないろいろな社会環境によって特別にふえてくる、精神病のような傾向を持っておるということは私ども聞いておりません。むしろ御指摘のように妊娠中なり出産時の事故に原因をして精薄が生まれてくるということは学者も言われておりますが、その方面におきましては母子衛生なり何なりが、これは全国的に見ますれば、以前よりは相当進んで参っております。そういう関係から申しまするならば、そういうことに基因する精薄の発生はむしろ減っておるのじゃないか、かように私ども考えておるわけでございます。しかし何さま最初に申し上げましたように、精薄についての学問的な、あるいは統計的な研究というものはまだ不十分でございます。私もしろうとでございますし、確かなことは申し上げられないと思いますが、私ども聞いておりまするのは今のようなことでございます。
  61. 中山マサ

    ○中山委員 それでは、今わかっていますのは三百万、ひどいのは六、七五とおっしゃいましたが、そういう人たちの年令別の統計というものはないのですか。幾つぐらいの人が一番多いかという精薄児の年令別の統計ですね。——今わかりませんでしたら、またあとでお調べいただいて、何か書いたものをいただければ非常に参考になると思います。
  62. 高田正巳

    高田(正)政府委員 二十九年の精神衛生調査から推計をいたしました数字から申しますと、全国的には魯鈍級も含めて三百万くらい、そのうちで五十八万がIQ五〇以下の痴愚、白痴で、その中で十八才をとってみますると、大体十八才以上と十八才未満が半分々々くらい、こういう統計が出ております。さらにその中の年会別の統計がありますかどうか、それはもしございましたら調べて御提出いたします。  一般的に申しまして、重度の精薄の方はやはり命が短いのです。従って今全体的に見ますと、百万が十八才未満で、二百万が十八才以上だということを申しましたが、それが痴愚、魯鈍級になりますと、その五十八万が半分々々になる、ということは、重度の精薄右はやはり生命が短い、こういうことは一般的な傾向として今日言われております。
  63. 山下春江

    山下(春)委員 五島委員のお許しを得て、ちょっと関連して。  五島委員からの、政府は計画性がないのではないか、今回ささやかな福祉法を作って、将来に対する計画がないとすればちょっと心細いじゃないかということ、私大へんごもっともだと思います。そこで私が政府にかわって言うわけではございませんが、これは政府関係があるようなないようなことで、わが党といたしましては精薄の専門委員会というものを作りまして、私専門委員長としてその衝に当たりましたので、ただいまのような御質問が出ることは当然であり、この福祉法だけをもってして政府精薄対策に踏み切ったなどというわけには参りませんが、そこで三十九年を用途とする五カ年計画を一応策定いたしました。それで五年の間に今のIQ五〇以上の魯鈍級という者を全体の二〇%の七十八万人といたしまして、これを特殊教育を受けさせるような、要するに特殊学級の義務設置をさせるというようなことを教育の面では目標にいたし、なお大学学術局とのいろいろな折衝の結果、発生の原因ということが世界的にまだ明確になっておりませんので、各大学に研究部設置してもらうことを要請いたしまして、ここで鋭意研究してもらう。特殊教育設置に見合う教員の養成等も必要でございますから、それらのものを各大学に設置してもらうと同時に、発生の原因も研究してもらうというようなことを文教関係としては考えております。  それから厚生省といたしましては、今局長からお話のありました大体七万八七千人というような要保養精薄児を対象にいたしまして、国立及び公立あるいは私立というような施設を、これはちょっと国の予算も要りますので、これだけのものを全部収容するのには大体十カ年を要するかと思っておりますが、そういうようなことでやっていきたい、こいうふうに思っております。  それから今の福祉法の中に、先生方が与野党ともに多少不安と思われる経済援護の方途が何ら講じられていないことは心細いではないかということですが、これらの精薄者は、何もわからない、知恵の足らぬ子供でありますけれども、これを持っている親から言えば、一体親がなくなったあとの愛情と経済の保障はどうなるのかということが死に切れない悩みでございますので、これを考えていきたいと思います。ただいまこれの具体的なことは申し上げませんが、考えていきたいと思うし、政府でも考えていただきたいと思っております。  それから国民年金に対しても、これを国民年金の福祉年金の中にどうやれば入れられるかという研究をぜひ役所でもしていただきたいし、われわれもしていきたい、かように考えております。  それから最も大切なことは今の魯鈍級の者の職業訓練ですが、訓練をすれば必ず社会人として自立できるのだという確信を私どもは持って、職業訓練所の中には精薄部を併設いたしまして、徐々に訓練を始めて、五年くらいたてば専門の精薄訓練所を一つ設置していただきたい、こういうようなことを計画的に考えております。  今回厚生省福祉法に踏み切られたということに対しては、いろいろな御不満もあるし、心細くお感じになる点がありましても、これはやはり長い間暗かったみさきに灯台ができて灯が入ったというような非常な善政であり、そうして、こういったような精薄者がちまたにうろうろとさまよい歩いていることに対して手をつけなかったということに対しては、大へん遺憾なことであったにもかかわらず、今回踏み切って第一歩を踏み出されたということに対しては私は非常に敬意を払い感謝をするものであります。  今、五島先生が計画性がないと言われましたので、政府にも計画はあると思いますが、私は、かつてこんなようなことを考えたということを申し上げて御参考に供したわけでございます。  そこで私は、立ちましたついでに、大臣が午前中おいでになりませんでしたので、御賛成なら一つぜひお骨折りを願いたいということがございます。精薄問題について、ある精薄者の親が、「教えても教えてもなおのみ込めぬ悪をしかりてわれも涙ぐむ」と歌った歌がありますが、これは精薄者の親の気持を表現するのに全く適切な歌でございます。そういう状況で、精薄者親たちの悩みというものは非常に大きいのでありますが、合同厚生省から、内容のいかんにかかわらず、高らかにこの福祉法というものを打ち出されたということに対して、内容の多少みじめさを補う意味におきまして、やはりこれは国民全体がこういう問題を解決してやろうという熱意がないと、なかなか国家の予算だけでは急速に進みませんので、国民の皆様方にも、もし自分がそういう子供を持ったらとおぼしめして、一つ協力をしていただきたいというので、寄り寄り相談をいたしておる問題があるのでございます。それはこの福祉法が両院を通過いたしましたころを契機といたしまして——まあこれはあす通過しなければなりませんので、ある日を選びまして、そしてちょうど精薄児であった千葉県の八幡学園から出られた山下清画伯に一つの構図を頼みまして、そして精薄者福祉法制定記念という切手を売り出したいのです。この切手の中には、けだし文化国家、福祉国家として、こういう精薄者がちまたにほうり出されておるということに対して、われわれも一つ片棒をかついで、それを何とかしようという愛情を込めて、一円だけ精薄施設へ、厚生省に寄付をしてもらいたい。それでその金によって精薄者の中央センターを作りたい、こういう目的を持ってそれを売り出したい、こう思うのです。もしそういうことはいいことだと大臣がおぼしめすならば、寄り寄り下相談はいたしておりますが、ぜひ一つ閣議で御発言を願って、急速に政府もこのことに賛成をしていただきますように、そうすればこの精薄子供を持った親たちもどのように救われる気持になるかと思いますし、国家としても、国民全体のあたたかい心でそういうものができ上がったということは、私は文化国家として非常に好ましい姿のように思いますので、立ちましたついでに、大臣の御決意を承っておきたいと思います。
  64. 渡邊良夫

    ○渡邊国務大臣 大へんりっぱな御意見を承りまして、私もいたく感銘いたしたような次第でございます。政府といたしましても、この法案を出すにつきましては、広く国民の問にこの問題が今悩みの種となっておることは、私ども地方を回ってみましても、各閣僚が回ってみましても、いずれもみな同じ感慨に打たれて帰ってきておるような状況でございます。でございまして、ただいま山下さんの御発議になりました非常なけっこうな御意見を私は拝承いたしまして、それをできるだけすみやかなる機会をとらえまして、そうしたような具体案を作ってみたい、かように考えております。
  65. 五島虎雄

    ○五島委員 十二条と十三条の関係で、更生相談所ができますね。それから今度は福祉事務所がいろいろ指導したり、相談に応じたりするわけです。それからこの更生相談所指導をしたり、相談に応じたり、あるいは職能的判定を行なったり、これに付随して必要な指導を行なったりするわけです。さいぜん申しましたように、福祉事務所もやはり一項の二号を見ますと、精神薄弱者福祉に関する相談に応じたり、必要な調査や指導を行なうことや、あるいは付随する業務を行なうことができることになっている。このように、何か仕事という面がダブっておるように見えるのです。しかし特に相談所があって、その機能を発揮せしめようとし、あるいはこの十三条には福祉事務所を置いて、そうして機能を発揮せしめようとする、しかも仕事の表面的な外見的なことは同じであるということの違い、関連、その点について説明をお願いしたい。
  66. 高田正巳

    高田(正)政府委員 ごもっともな御質問だと私も拝承いたします。この相談所福祉事務所との関係は、他の福祉立法におきましても、たとえば児童福祉法におきましても児童相談所というものがございまして、それと別に行政の第一線機関としては福祉事務所がこれに当たっておるわけであります。それから身体障害者の福祉法関係におきましても同じような関係がとられております。ところがこの条文を読んでみると、今仰せのように相談に応ずるとか指導するとかいうようなことで、同じようなことじゃないかというような御指摘でございまして、確かに条文の上ではそういうことでございますが、この二つは非常に役割が違っておりまして、更生相談所の方は、精神科の医師とか心理判定員あるいは職能の判定員、それからいわゆるケース・ワーカー、いろいろ環境を調整したり何かするようないわゆる社会事業家といいますか、そういうようなもの、それから看護婦、事務員というようなものが中心になって組織する機関でございます。それでやりますことは、精神薄弱者に関する問題について特にどういうふうにこれを援護したらよいかという方法を決定いたしますためには、そういう専門家の総合的な判断によりまして、すなわち医師の診断とか、心理学の専攻職員による知能検査とか、その他の心理判定職業能力適性検査というふうなことをそれぞれの分野の専門家が行ないまして、さらにケース・ワーカーによる家庭の状況調査というようなことをもとにいたしまして、ごく専門的に判断をする機関でございます。これに対しまして福祉事務所の方は、これは数が多いのでございまして、第一線の機関といたしまして精神薄弱者の発見とかなんとかいうふうなことを主たる任務とする。従って片一方は県に一つしかない非常に専門的な機関であります。片一方はもう少し数の多い、しかもいわゆる第一線機関です。こういう相違があるわけでございます。ところが福祉事務所の方にも一般のケース・ワーカーとは別に福祉司という若干の専門家がおりますので、従って福祉事務所におきましても、やはり相談に応ずるということもいたすわけでございます。むずかしい件は相談所の方に送りまして、そうして専門家判定を求める、こういうふうな段取りに実はなるわけでございます。条文の表面から見ますと、非常に重複なり不明な点があると思いますが、他の福祉行政と同じように、いわゆる純粋に専門的に判定を主とする機関、それから第一線で取り次ぎをしたり、お世話をしたり、家庭を訪問したりというふうな仕事を任務とする福祉事務所、こういうふうな関係になって参ると思います。
  67. 五島虎雄

    ○五島委員 次に、この法律では収容施設を国自身が作るのだという条文があるだろうと思って見ましたけれども一つもない。みんな都道府県とかあるいは任意規定によって市町村が作ることができるということになって、国はただ費用だけを相当部分負担するのだ、予算の面だけ、財政の面だけをあれして、施設を作るのだったら、条文を読むと、希望だったら作れというようなことで放置している感があるのです。しかし厚生大臣は単に地方、都道府県にこれをまかせ切るというようなつもりではよもやないと思うのです。さいぜんから山下委員やその他の委員からも言われた通り、自分の罪で精薄者になるわけではないのです。先天的といい、後天的といい、ほんとうに自分の責任ではないのですから、これらを指導し、あるいは早期発見、治療とかあるいは防止とかいうような機関設置し、施設等々を作っていって更生に導くというようなことは、国の仕事でなければならぬのじゃないかと思うのです。この法律を作るに当たって、政府は、国なんかが考えなくていいのだ、予算さえつけてやればいいのだ、それで都道府県が作ろうと思えば作らしたらいいのだ、こういうような態度でこの法律案を提案してこられたのか、そうじやなかったのか、あるいはどこかで阻害があったのか、その点についてお伺いしたい。
  68. 渡邊良夫

    ○渡邊国務大臣 先ほど私ども山下さんがいろいろとお話をされまして、私ども精神薄弱者法というもの、今までちまたを彷徨するところのこれらの人たちを救うために、こういう暗い社会の中から明るい一つ法律を作り上げた、こういうことでございまして、できるだけ国の財政の許す算囲におきまして、各府県に漸次一つずつこれを作っていきたい、また地方の大衆の声も、これはどうしても各府県に一つずつ持ちたいという声は、もはやちまたにみなぎっているような状況でございますので、できるだけ御意見に従いまして、国といたしましては、国の予算で足りない面は、先ほど山下さんが申されましたように、いわゆる慈善切手の発行というようなことも一つ方法といたしまして私ども考えてみたい、かように存ずる次第であります。
  69. 五島虎雄

    ○五島委員 やはり問題は予算の問題に阻害があるというようなことで、私たちは残念に思うのです。  それから次に第五章、二十二条以下に費用の項目がずっと盛られております。これをずっと一通り読んだのですけれども、非常にわかりかねるわけです。この要綱を読みますと、国は設置費に二分の一をつけるのだ、運営費に十分の八をつけてやるのだからというようなことで、中を見ますと、さいぜんのように任意規定になっております。ところがこの費用の条項は、二十二条以下市町村の支弁とか、都道府県の支弁とか、あるいは繰りかえ支弁とか都道府県の負担、国の負担とかずっとあるのですけれども、簡単にいえば国は一体どうする、国が二分の一つけてやった金を県はどうするのだというようなことを、ここにはっきり私たちにわかるように説明してほしいと思うのです。  それからもう一つ、できるだけ端折りたいと思いますから一緒に質問しますが、費用の問題で、民間施設精神薄羽音の援護を知事なんかが必要とあれば委託することができるという条文になっております。その委託資の支弁はどこからどのくらいあるのかということを第二点に伺いたいと思うのです。  それから第三点は児童福祉法の問題で、今日まで十八才未満は精薄児の収容その他の世話をやってきたわけですが、いろいろ世間で問題があって、十八才以後になりますと、児童福祉法では収容することができないからはみ出してしまう。こういうようなことになろうと思うのですが、行政措置で大体二年間ばかりこれを延期されているやに聞いているわけです。しかし国立の収容施設に入った人でも、やはり二十才になればどうしても出ていかなければならぬ。そこに今回の新法が救うところがあるのではないか、こういうようなことになろうと思うわけです。ところがさいぜんのように、国立というものが一つもないのですから、児童福祉の方では国立施設に収容されておりながら、ほっぽらかされたら、今度は民間かあるいは公立かというようなところに収容されていかざるを得ない。従ってだれかさいぜん理事会で言われていたように、精薄児福祉の問題については一貫性がないのだ、こういうような指摘もあろうと思うし、私もそのように思うのです。従って児童福祉法と新法の関係、それからもう一つは、さいぜん中山委員が言われていったように、気違い、すなわち精神異常者の問題ですから、精神衛生法の問題がここに出てくるのではないかと思う。従って精神衛生法の方と新法との関係を、一体どのように関連してわれわれは考えていったらいいのかという疑問が出てくるわけですけれども、この三点について御説明が願いたいと思います。
  70. 高田正巳

    高田(正)政府委員 第一点の費用の負担の関係でございますが、確かに御指摘のように条文を読んでいただきますと、なかなかややこしくてよくわからないのでございます。従ってわかりよく事柄として申し上げてみますると、まず第一には、新しく収容施設なり通院施設なり、いわゆる施設設置する場合のことでございますが、施設設置いたしました場合には、都道府県がその設置主体でございまする場合は、都道府県が二分の一持ちまして、国が二分の一援助をいたします。半分々々でございます。それから市町村が設置主体でございます場合には、市町村自体が四分の一、都道府県が四分の一、それから国が四分の二というふうに金を出し合いまして施設を作るわけでございます。それからできました施設に人を収容しまして、運営をしていく費用がございます。そこにおりまする職員人件費でございますとか、入りました人たちの食費でございますとか、そういうふうな運営費がございます。この運営費につきましては、設置主体でありまする都道府県または市町村が十分の二を持ちます。二割でございます。それから国が十分の八を援助いたします。施設に関連する費用の関係はそうでございますが、その他今度新たに設置されます更生相談所、それから精神薄弱者福祉司、こういうふうなものに関連をいたしまする費用といたしまして、その人件費は、これは地方職員でございますので、地方費負担でございます。これに対して国は交付税の方で財源の手当をいたすわけでございます。それから更生相談所でいろいろやりまする事務費判定に要するいろいろな事務費、それから福祉司活動をいたしまする事務費、そういうふうな経費につきましては、更生相談所におきましては都道府県が二割、国が八割、それから福祉司活動費につきまして半分々々、こういう負担区分でございます。  それから第二点の御質問の民間の施設に委託をいたした場合には、その委託をいたしました都道府県なりあるいは市なりが一律に一人につきまして百二十三円出すことになります。従いまして月にいたしますと三千七百円くらいになるわけでございます。そうしてそれをまず委託をいたしました都道府県なり市なりが負担をいたしまして、それに対して国が十分の八補助をいたします。こういうふうな関係になります。  それから第三点の御質問でございますが、児童福祉法並びに精神衛生法と本法との関係でございますが、精神衛生法は精神障害者といたしまして精神病者、精神病質者、それから精神薄弱者を全部一緒にいたしまして精神衛生法で規定をいたしております。従って午前中問題になりましたような、人を傷つけたり、自分を傷つけたりするような危険な精薄者精神病院等に強制入院させるというふうなことにつきましては、精神衛生法が働きます。それで精神衛生法で規定されておりまする精神薄弱者のうちで、福祉の面に関することを本法が扱う。従ってその関係におきましては、精神衛生法が一般法で本法が特別法である、こういう関係になります。それから児童福祉法との関係におきましては、本法が福祉面における一般法でございまして、それで十八才未満の児童につきましては児童福祉法が特別法になる、こういう関係になるわけでございます。従って本法に十八才未満云々と書いてございませんところは、全部十八才未満の児童についても適用がある、こういう法律構成になっておるわけでございます。
  71. 五島虎雄

    ○五島委員 それではもうちょっと聞きます。この法律は金持ちも貧乏人も一律に取り扱う法律だと思うのです。一行に取り扱う法律であれば、施設に入る場合の費用はどういうことになるのか、たとえば資産のあるうちの十八才の青年ですか、そういう人たちを施設に入れなければならぬと指導された場合、入れるということになるのと、それから貧乏人というか生活の困窮した人たちの子弟が入るというような場合の県の費用とか、あるいは市町村の費用はどういう関係になるのかというようなことがちょっと法文上わかりかねますから、質問しておきます。
  72. 高田正巳

    高田(正)政府委員 それに関する規定は二十七条にございますが、今御指摘のように本法は金持ち、貧乏人ということを区別いたしませんで、精薄の方であれば本法を適用するわけでございます。それで施設に収容いたしました場合には、その一切の費用をその施設設置いたしておりまする公共団体が一応払います。そうしてその払ったものに対しまして、先ほど御説明をいたしましたように、国が援助をいたすことになるわけでございますが、その御本人なり親なりで豊かな方があるといたしますれば、二十七条の規定で、その費用を一応支弁をいたしました公共団体が徴収をいたします。まずお宅におられましても食事はされるわけでございますので、食費の実費程度は徴収をいたすということに相なるわけでございます。
  73. 五島虎雄

    ○五島委員 もう一つ、二十一条に運営の基準があります。厚生大臣は何々で必要な基準を定めなければならないとあるのですが、この基準はできているんですか。
  74. 高田正巳

    高田(正)政府委員 これは法律が成立いたしましたならば唇議会ができまするので、審議会にかけまして、専門家の御意見等も拝聴いたしまして、取り扱いの具体的なことを相当詳細に定めて参りたい、かように考えております。
  75. 五島虎雄

    ○五島委員 あと一点です。福祉司仕事は直接精薄者に接触しながら指導をしていく、これが福祉司の最も効果を上げるゆえんじゃないかと思うわけです。ところがさいぜんからたびたび言っておりますように、市町村の方では、置いてもいいが、置かなくともいいことになっておる。そこで家庭と密接に関係し、実際の指導ができるというところは市町村の福祉司で、日常の生活で、どうだというように肩をたたける、大都市にあってはそうでもないでしょうが、そういうようなことが最も好ましいのじゃないかと思う。ところが県には必置であって、その他市町村では任意の条項になっておる。この点についてはちょっと矛盾があるような気がするのですけれども、この点について説明をしてもらって、私の質問を終わりたいと思います。
  76. 高田正巳

    高田(正)政府委員 福祉行政の第一線機関は、市町村と申すよりは福祉事務所が第一線機関になっております。それで福祉事務所は市には全部設置することになっております。それから町村では特別に設置したいところはしてもよろしいということになっております。これはほとんどございません。従って大体各市それから郡部におきましては県が、児内を数ブロックに分けて置いておるわけでございます。これが第一線機関でございまして、そこに社会福祉主事と称します一般的なケース・ワーカーがおるわけでございます。これが直接家庭を担当いたしまして、家庭との接触を保つわけでございます。ところが精薄とか身体障害とかというような特殊なむずかしいケースになると、そういう一般的なケース・ワーカーでは不十分でございますので、そこに精神薄弱者福祉司というやや専門的なケース・ワーカーを置くということになるわけであります。それでさらに専門的な判定等を求めたいというときには、県一カ所の相談所までいく、こういうしかけが全体の福祉行政のしかけでございまして、そのしかけをこの精神薄弱者福祉法案でもとっておるわけでございます。従ってただいま申しましたように、社会福祉主事というほんとうの第一線機関は、福祉事務所がありますところには必ずおるわけでございます。従ってそれはあるわけでございますので、まず見つけたり手がけたりする人は必ずおるということになっておるわけでございますが、若干専門的な知識を持ったケース・ワーカーである福祉司が、今御指摘のように県だけに必置になっておって、市町村には必置になっておらない、こういうことになっているわけであります。これを必置にいたしますればよりベターでございますが、身体障害者福祉法等におきましても、市の方は必置になっておりません。従って将来この仕事が進むにつれまして、そこらにも必置義務を課していくというふうに漸進的に進みたいと思っておるわけでございます。
  77. 永山忠則

  78. 本島百合子

    ○本島委員 先ほどからの質問を聞いておりまして、ダブる点もかなりあると思いますが、できるだけはずして参りたいと思います。  今回の精神薄弱者福祉法案というものが出されたということは、従来の福祉三法に一つ加えられた、こういうことになるわけでございます。私、この条文をずっと読んでみましたが、この精神としては、一体福祉を目的とされておるのか、援護を目的とされておるのか、明確でない点が非常に多いように思うわけでございます。ただいまの福祉司の問題にいたしましても、こちらに書いてあるのは技術的な援助、助言、こういうことが書かれております。そうすると、どういう技術的な援助、助言があるのか。そのことが、たとえば今回この法案を出されたことによって、何かその諸施設ができる、その施設に入る人についてはある程度いけるでしょうけれども、入れない、残された人たちに対しては一体どういうことになるのだろうか、こういう不安が非常に大きく出てくると思います。そこで、すでに身体障害者の福祉法はもう実施されておって、先例があるのでありますから、精薄の場合においてもこれに相当近寄ったものが出されてくるならば、先ほどからの質問が不明確のままでいかないで済んだのじゃないか、こういうように思うわけなんです。従いまして、そういう点も私一つ質問したいと思います。御答弁になる際に、最初に、今回出された目的が福祉にあるのかあるいは援護にあるのかということを明確にしていただきたいと思うのであります。午前中も言われておりましたように、判定はしなければならない。判定はするけれども登録はしないのだ、そういうことになりますと、ここで突っ放された形が出てきてしまう。身体障害者の場合は、重症者の場合には重い規定もありまして、非常に重く考えられておりますが、精薄の場合には等級も設けられていない、登録もされない、こういうことになりますと、どういう形でこれを把握して、そうして収容されない人たちに対してどうしてやろうとしておるのかということが不明確だと思いますが、その点はどうでございましょうか。
  79. 高田正巳

    高田(正)政府委員 ごもっともな質問だと存じます。第一点の、援護なのか福祉なのかという御質問でございますが、これは第一条にこの法律の目的として書いておりますように、その更生を援助するとかあるいは必要な保議を行なう、こういうことが今先生の御指摘の援護だと思いますがそういう援護をすることによってその人の福祉をはかる、援護というのは手段でございます。福祉をはかるというのがその目的でございます。その辺の言葉の使い分けをちゃんとやらないで御説明をしておりましたので、今のような御疑問を起こしたものと思います。これは私どもの方の説明が不十分でございました。  それから施設に入った者はいいけれども、入れなかった者を一体どうしてくれるのだ、これは確かにそういう御質問が出ることは当然であると思います。それで、やります措置といたしましては、十六条に書いてございますが、施設に収容する場合は別といたしまして、施設に収容しない場合にはどういうふうな措置をやるかということになりますと、まず職親に委託するというようなことが一つございます。それから福祉司なりあるいは先ほど申しました社会福祉主事の指導に付するということが一つ福祉措置になるわけでございます。それで問題は、職親に委託する場合は別といたしまして、しからば社会福祉主事なり福祉司指導に付するということはどういうことだという中身になってくると思います。これはケース・バイ・ケースによりまして一がいに申せないのでございますが、(「お金がない」と呼ぶ者あり)金がないということよりは、いろいろな事情の方がございますので、精神薄弱者程度にも関係いたしまするし、その家庭環境等もいろいろ影響があります。従ってそういうようなケースによりまして、たとえば家庭環境の調整を援助いたしまするとか、あるいは職業紹介所と連絡をいたしましていろいろ就職のあっせんをいたしまするとか、あるいはまたその人が非常にあぶない、たとえば先ほど午前中にも例が出ましたように、ほっておくと自分を傷つけたりあるいはつけ火でもしそうだというようなことがありますれば、精神衛生法との関連におきまして、そっちで連絡をして家族の承認があれば病院に入れるとか、そういうふうなケース・バイ・ケースで、一がいに申せないのでございますが、その人に適合したようなできるだけのお世話を申し上げるということが具体的な内容になってくるわけでございます。これは条文に書きまするとただ指導するというだけでございまして、具体的にさようなことが一々書けないわけでございますが、これは生活保護法におきましてもあるいは身体障害者福祉法におきましても、児童福祉法におきましても、そういう指導というようなことで一応条文としては片づいておるわけでございます。その内容は実に複雑多岐で、ここにケース・ワーカーの働く分野というものがあるわけでございます。決してほっぽっておくということではないのでございます。そこにケース・ワーカーが働く余地があり、従ってまたケース・ワーカーとしては相当な経験なり素養なりを持った人でないとなかなかその仕事が勤まらない、こういうふうなことに相なってくるわけでございます。御満足が参りませんかもしれませんが、一応お答えといたします。
  80. 本島百合子

    ○本島委員 現行法の中でも、今言われたようなケースについてはすでに児童福祉主事なりがやっておるし、また十八才以上の方々に対しましても措置はとってきたはずなんです。そこで、これが精神異常者だということになればこれは問題ないのですね。しかし、今回出されたもので施設ができて、そこへ入られる方を除いて考えて私質問するのですが、そういう場合に、精神異常者だと判定されれば精神衛生法でいくし、それからまたそうでなくて、今度は施設に入れない——先ほど五島先生からも聞かれておったようですが、施設が少ないために入れないで残された人たち、施設に入れてはもらいたいが、それでも入れない、家族はそれをかかえて困っておるというような場合、これは従前でもある程度福祉事務所では指導されてきたわけなんです。ところがここに「特に」と書いてあるのですが、そういう場合に、これでは従来とちっとも変わらないものじゃないか、こういう不安が出てくるわけです。どこか前進した姿が出てくるかしらということで受け取っておったのですが、全然出てこないという形がここにあるわけです。この点は施行に当たられたときには十二分に考えていただきたいと思います。  それからもう一つ、中学までは大体特殊教育でなされておる。ところが中学を出てそして十八才になるまでの区間、先ほども聞かれておったのですが明確を欠いておったようですから、もう一度お尋ねいたしますが、この区間の子供たちで、家庭ではどうにもその子供がおるために精神的に苦痛だ。一々それについて歩かなければならない。いろいろ先ほどから言われるように種類がたくさんあるようですが、現在非行少年と言われる、あるいは犯罪少年と言われる者は、この年令の者がちょうど入ってくるわけです。これがちょうど野放しになっているのです。特殊教育の線で拡充されて将来はこうこうするとおっしゃるのですが、中学を出て後十八才になるまでの間、この区間が一番心配な区間であるにもかかわらず、ここの区間がないということになっている。今日あります児童福祉法によって指導されていく人をこれまたはずして考えていただきたい。そこで、これの父兄の人たちはこういうことをやっていらっしゃるのです。自分たちでお金を出し合って、この子供たちが高等教育というところまでいかないでも、ある程度教育とそれから職業の補導、こういうようなことを考えて、多少の施設まがいみたいなものを作って、それはもう父兄の方々のなみなみならない苦労の結果でやられているのです。ところが、たまたまこれは福祉法人になっていないのですね。ですから、これを作る場合の資金の援助もないし、また多少でも増設したいとか修理をしたいという場合も全く認められていない、現実にこういうことになっておるわけなんです。そうすると、一番心配の区間に自分の家庭子供が見られない、どこにも入れてもらえない、だから親もこれだけの苦しみをやっておる。そういう悪循環がなされておるにもかかわらず、この福祉法が出ましてもこれに対してはどうこうするということはしてないわけなんです。そして、国で三カ所、民間で五カ所ぐらい委託するとおっしゃったと思うのですが、それだけのことで、一体こういう区間の子供並びに十八才以上の収容されない人たち、これをどうやってしあわせに持っていけるかという不安が生まれてくる。福祉法がせっかくできまして、この期待が非常に大きかったにもかかわらず、そういう穴があるという感じがするわけです。そういう点についてどういうふうにお考えになっていらっしゃいますか。
  81. 高田正巳

    高田(正)政府委員 まず問題としましては、十八才以上の者と十八才未満の者とに一応分けて御質問がございましたので、その線でお答えいたしますと、十八才以上の精神薄弱者につきましては従来もやっておったと思うがというお話しでございますが、実は、従来は精神薄弱者という立場からは法律的には何もやっていない建前になっております。そこで、今回はこの法律ができますれば、まず第一線の下の方から申しますと、福祉事務所の一般的なケース・ワーカーである社会福祉主事もこのことに従事するという法律的な義務が課されたわけであります。それから、新たに精神薄弱者福祉司というものも置かれて参る。それから更生相談所というものも新たに設置されるというふうなわけでありまして、ごめんどうを見る行政組織といいますか、お世話をする係の者がこれでできてくるというプラスがあるわけでございます。従って、その面におきましてはこの法律内容がはなはだしく貧弱で、大したこともないのじゃないかというおしかりがあるかと思いますが、とにかくそういう専門にお世話をする行政の系統なり人なりができてくることは、施設に収容されません方であっても、私は相当なプラスになって参るものと考えておるわけでございます。  それから、第二点の、十八才未満で、しかも特殊教育を大いに文部省でやってもらうといっておるけれども、中学を卒業して十五才から十八才ぐらいまでの間がブランクになるじゃないかというおしかりでございます。これは、法律の建前といたしましては、実はその点につきましては、施設に収容しない者につきましても児童福祉法の方でごめんどうを見る建前になっておるわけでございます。児童福祉司なりあるいは児童相談所なり社会福祉主事というものが従来でもめんどうを見ていくという建前に法律はなっておるわけでございます。ただ、その点が十分手が伸びておらないという欠陥があるわけでありますが、その点について、法律の分野といたしましては実は穴はないわけでございます。しかし、そういう施設に収容されない十五才から十八才ぐらいの一番問題をかかえておる人たちに対して、この法律ができたために何らかプラスになるかという御質問といたしますれば、その点につきましては、午前中も御説明いたしましたが、本法によります更生相談所なり福祉司なりというものが、十八才未満の者についてもごめんどうを見る。サービスの点につきましては児童福祉法の方とオーバーラップしてやれることになっております。従って従来の児童福祉司なり児童相談所なりがやろうとして手の伸びていかないところに、この法律による更生相談所指導なりあるいはは精神薄弱者福祉司指導なりというようなものがサービスとしては加わっていくということになりますので、従来よりは御指摘の面におきましても強化されて参るということが申し上げられるかと思います。  それから第二点の御質問の、現在の公立施設なんかに入れなくて、しかも親御さんが家庭に置けない、従ってお互いで施設みたいなものを作っていろいろ苦労をしてやっておられるが、それに対する援助というようなものがこの法律にはさっぱりないじゃないかというふうな御質問でございます。そういう事情は私どもも十分承知をいたしております。この法律によりますと、さような施設お作りになります場合の臨時費につきましては、国が援助を出すというような規定は抜けております。しかしさような父兄方が集まってお作りになりました施設でございましても、それが社会福祉法人になっていただきますれば、そこへ入っておる子供さんのごめんどうを見る費用につきましては、いわゆる運営費につきましては、この法律は建前上御援助申し上げられることになっております。若干社会福祉法人というしぼりがかかっておりますので、何でもかんでもというわけには参りませんけれども、いやしくも人を預かる施設でございますので、任意の団体でなく社会福祉法人ということにしていただく方が適当でございますので、そうしていただくことによりましてこの法律の御援助がなし得るという道は開かれておるわけでございます。不十分ではございますが、以上申し上げましたようなプラス面は出て参る、かように私は考えておるわけでございます。
  82. 本島百合子

    ○本島委員 ただいま申されたように、児童福祉法と法内には明確に分かれておる。ところがそうなされていないということは、そういう十八才未満の者の施設が足りないためにそういうことが起こるわけですね。こういう点について、精神的な援助あるいは社会福祉司の多少のお世話をやくということが加わってくるから、こう言われますが、現実には、そういうことよりはむしろこの子供たち——高等学校まであるところもありますが、全国的にいってみたら僅少なわけですから、現実にはこの子供をどうすることもできないというわけなんですね。ですから今言ったように父兄の方々が努力をされておる、それでそれを社会福祉法人にしたらばいいじゃないかと言われますが、それはだれでも考えるけれども、簡単にそれができるものでないことはあなたの方で御存じなわけなんです。従いましてこの法案が実施されるときには、そういう面の何か政令なり施行規則なりにおきましてめんどうを見る気があるどうかということなんです。これが一点。  それから一つは、そういう子供さんを、十八才以上とこうなっておるんですが、十八才以上と限定しないで、その区間中において最もお気の毒なものもあるわけなんですから、そういうものをも含めて考えられることができるかどうか、こういうことなんです。
  83. 高田正巳

    高田(正)政府委員 第一点の方の、現実にそういう精薄者を入れておられまして社会福祉法人になっていない団体、施設等について、社会福祉法人にするということは非常にめんどうだから、社会福祉法人にしないままで何か政令等の便宜の措置援助をするようにしたらどうか、そういう意思があるかどうかという御質問に対しましては、これはどうも法律社会福祉法人としぼっておりますので、下級の政令、省令等でさような便宜な措置を講じるわけには参らぬと思います。しかし社会福祉法人になっていただきますことは、決してそうむずかしいことではございません。しかも、いやしくも人間を預かってそのめんどうを見ていくということでございますので、できればそういうふうな施設社会福祉法人として組織変更をいたしまして、しっかりした態勢でやっていただくということがむしろ私どもの希望でございます。社会福祉法人に組織変更されるような場合には、私どもとしましては十分に御協力をいたしまして、やぼったい、むずかしいことを申すつもりはないわけでございます。  それから第二点の、今回この法律によるそういう施設ができた場合に、十八才未満の者も児童福祉の中へ入れない人は入れるかどうかという御質問でございますが、これは児童精薄児童福祉施設の収容力との比率と、おとなの精薄とおとなを収容する施設の収容力との比率は、たくさん施設がございまして児童の方がずっとまさっておるわけなんです。従って児童の方であぶれた者をこちらに入れるということは、平たく申せば金持ちの援助を貧乏人がするというような格好に実はなるわけでございまして、実際問題として非常にむずかしいことになると思います。従いまして建前としてそこまで広げるということは非常に骨が折れると思います。しかし脱臭具体の問題としましては、これはこういう福祉の行政でございますので、何もそうやかましくけじめをつけていかなければならぬという問題でもございませんので、情勢に応じたような措置をとって参りたいと思います。しかしそれをやれとおっしゃることは、ちょうどお金持ちの援助を貧乏人にしろというようなことになるわけでございまして、これはちょっと建前としてはむずかしかろうと思います。
  84. 本島百合子

    ○本島委員 次に十二条のところの問題でございますが、医学的、心理学的、職能的に判定を行なう、こうなっているのですが、判定を行なうという、この判定だけで、あと何も援護措置はない。必要な保護をはかると最初に申されたのですが、それが全然ない。そこで私は身体障害者の面で引用してみますが、身体障害者の場合は、重症者に対しては無拠出の傷害年金が月に千五百円与えられる、あるいはまた税金の面では家族控除が五千円ある、こういうような特典があるわけなんです。生活控除については不具者、高年者となって未亡人、勤労学徒、こういうものが入っておるわけですが、精薄人々もこういう点で考えられなかったかどうか。私どもにすれば、やはりこれらの人たちについてはこういう点も考えてよかったのではないだろうか、すでに身体障害者福祉法があるのですから、それに見習ってこういう点も考えていただければ、この十二条のいわゆる判定をする——この判定をするということは人権にも相当関係があるということで、なかなかむずかしいことでしょうが、判定に対する基準もどうこうするというふうにはしてございませんし、ですから先ほどから登録をなぜしないのか、手帳を下付しないのかという質問が出てくるわけです。手帳を下付する、登録をするということは、一面そういう援護政策というもの、経済保障というものが裏づけられる、また裏づけてほしい、こういう希望が私どもにあるから、特にこういう点が質問されたのだと思うのですが、そういう点はこの身体障害者福祉法を関連いたしまして、どういうふうにお考えになったか、また今後これをどういうふうに考えていかれるのかということを承りたい。
  85. 高田正巳

    高田(正)政府委員 この十二条の更生相談所という機関条文につきまして、今判定だけというふうな仰せでございましたが、この機関はいわゆる判定を主といたしまして、この判定に基づいて他の都道府県知事なり市長なりが福祉措置を行なうということで、これは顧問的な専門機関でございますので、この機関にさような経済保護というような仕事を課することは若干無理があるかと思いますが、しかしそれは別といたしまして、今回の福祉法には経済保護の面が全然抜けておるじゃないか、たとえば税金の問題であるとかあるいはその他いろいろ経済保護の点が抜けておるじゃないかという御指摘でございます。この点は先ほど山下委員の御質問にも、そういうことに関連をして御発言がございました。確かにその通りでございます。この法律といたしましては、経済保護は一応生活保護法というふうなものにまかせまして、精神薄弱という一つのハンディキャップというものだけを中心に、この法律を組み立てておるわけでございます。しかしこの精神薄弱者福祉を総合的に考えまする場合には、今御指摘の経済保護というものについて、身体障害者福祉法等と均衡をとってもう少し考えていく必要があるじゃないかということにつきましては、私どもも同じように考えております。従ってただいま御指摘の税金の問題にいたしましても、あるいはその他の問題にいたしましても、こういう福祉法ができまして、これを糸口に、身体障害者等と均衡をとって、その経済保護の分野につきましても今後その増進をいたしますることについて一つ努力をいたしてみたい、かように考えておるわけでございます。
  86. 本島百合子

    ○本島委員 その点は、やはり福祉法とうたってあるからには、その制定の際に等級をつけて、これこれのものについては特に生活能力がない、稼動力がない、こういうような場合にはやはり考えてやるべきであろうと私ども思うわけなんです。ですから、芽を出したのだから、そこまでいかなかったということを、予算がとれなかったというようなことでこういうことが抜かったのだろうと——思いますが、これは当然見直されるべきだろうと思います。  それから、その措置費の問題でございますが、児童福祉によります措置費は大体月額六、七千円くらいになると私は考えておるのですが、そうすると、こちらで先ほど言われたのは三千七百円くらいだ。そうすると、十八才以上のおとなになっておるこの人々子供の面から見て半分くらいにしかならない、こういうことになると、実際委託をされる場合に、委託を受ける方が受けるだろうか、こういう疑問が生まれてくるわけなんです。それからまた実際に人のめんどうを見ている場合に、子供の場合は倍で、十八才以上の食べる率、いろいろな率を考えていって、三千七百円程度ということになれば、これは施設に入っても十二分なめんどうは見てもらえないのじゃないか、こういう不安を感ずるのでございますが、この点はどうでございましょうか。
  87. 高田正巳

    高田(正)政府委員 児童福祉法によりまして委託をいたしました場合の委託費の金額が幾らになるかというこの金額につきましては、私ただいま記憶をいたしておりまんので、正確にお答えをすることはできませんが、今御指摘のような不均衡はないはずでございます。ということは、所要カロリーなんかが、国民栄養所要量のあれによりまして、年令によって差別がございますとか、それから児童児童として特別の、たとえば間食費とかなんとかいうものが入っておるというふうな、子供とおとなとの相違はございますけれども、思想としては同じような思想で、この経費積み上げをして計算をしてあるはずでございます従ってただいま御指摘のように、片方を預かればいろいろ得になるのだが、片方を預かればいろいろ損になるのだという不均衡はないはずでございます。児童の方の点を金額的に私ただいま承知をいたしておりませんので、金額的に御説明することはできませんけれども考え方といたしましては、今のように栄養のカロリー所要量等が違いますので、食費についてそれだけの差があるとかなんとかいうことはございますけれども、別に考え方の上での不均衡はないようにこれは計算してあると私は承知いたしております。
  88. 本島百合子

    ○本島委員 六千円で厚生省は要求されたと聞いておりましたが、それがけられて三千七百円になった、こういうことを聞いておりますが……。
  89. 高田正巳

    高田(正)政府委員 六千円で要求したというような事実はございません。やはり私が今お答えをいたしましたように、これは生活保護法の保護基準でございますとか、児童福祉施設の収容費でございますとか、私の方にもほかに身体障害者の施設とか養老施設とか、たくさん施設がございます。それらの施設の収容委託費というものは、先ほど私が申し上げましたように、その収容される対象の区別によりまして、当然差ができてくる部分は差ができておりますけれども、いずれも一貫した考え方によりまして計算をいたしておりますので、御指摘のようにこの分を六千円を要求してこれが三千七百円に削られたというふうなことにはなっておりません。
  90. 本島百合子

    ○本島委員 精薄を収容する施設、そういうところですから、児童保護と比べまして費用がかかるのじゃないか。たとえばその治療の面についてもある程度見なければならない、それから職業補導的なものも見なければならない、そういうことを含めて入るわけじゃないのでしょうか。そうしていきますと、こういう低さで一体やれるだろうか。養護施設その他を考えていきましても、そういう点の予算が非常に少ないために、中に入られてもうまくいかない、そういう批判が出てくるわけなんです。そういう点を考えていけば、非常に低過ぎるように思うのですけれども、それをあなたの方では、これはほかのものと比較してとおっしゃったのですが、この特殊な精薄というものをあずかるものとしてお考えになったときに、これでいいのかどうか。
  91. 高田正巳

    高田(正)政府委員 確かに御指摘のように、精薄の場合には普通人を収容します施設等とは違いまして、そこに職業訓練とかなんとかいうものも入って参りますし、ただ中にいて食わしておけばいいのだというようなことではございませんで、費用がかかることは事実でございます。御承知の通り今一回一律一人当り百二十三円というので、これはもうこれで十分で御の字なんだという考え方は私どもは決していたしておりませんけれども、しかし先ほど申し上げましたように、精薄児を収容いたします施設の費用と、この精薄を収容いたしまする施設の費用とは、子供とおとなということの特殊性に基づいて違うところはございますけれども、決して御指摘のような不均衡な予算にはなっておりません。精薄児を収容委託いたしました場合の経費というふうなものと十分にらみ合わせまして、この経費の計算をいたしておるわけでございます。
  92. 本島百合子

    ○本島委員 質問者が非常に多いものですから、私は要点だけで、あとやめますけれども、この福祉法が出ることは万人が希望し、望んでおったところなんです。ところが現実に出て、朝からの御説明をずっと聞いて参りますと、まず第一番に十八才以下の人たちにとっても施設が足りないということなんです。だから先ほど基準を下げられないかということを聞いたわけです。それから今度十八才以上にいたしましても、当初だからやむを得ないのだという考え方で、大蔵省に強腰に出られなかった。大体厚生省は予算をとるのがへただと世間でいっておるようですが、今度は多少ふえたとしても、いつでもいわれるのはここなんです。そうしますと、こういう福祉法案が出るということは、憲法によって福祉国家を作るという線に沿いながらやっている仕事なんです。そうしますと、今申したようなところどころ漏れていく人たちが出てくる。それから予算が少ないために施設が非常に少ない。精薄の学校でお調べになればわかりますが、いい学校だといわれるところでは入学難で困るといわれる。それからそれを緩和するために父兄の方々が十何年間運動されて、そして東京の場合ですと各区に何校か特殊学級を設置して入れていく、こういうふうな形をとったわけなんです。こういうふうにやりながらも、なおかつそこから漏れていくお子さんもあるし、また出ていく場合は十八才からの監護の問題が出てくるとか、こういうことから漏れてくるわけです。そうしますと、やはり午前中山下さんが言われたように、こうした特殊なケース、こういうものについては揺籃から墓場まで一貫したものでなされるのが至当じゃないかという考え方、これは当然生まれてくると思うのです。将来そういう考え方に立たれるかどうか、大臣の御答弁を願いたいと思います。  それと同時に、もう一つ大臣に承りたいことは、民間施設の場合に、こういう法案が出ましただけに、何とかして今まで作っていたものを、小さいままではいかないから、まあ何とか法人にでもしようという考え方もあるわけなんです。政府考えられているものはごく僅少しかないのですね。ですから福祉法人の方に切りかえていかれることを望むといわれたことから、望んでその手続をされた場合には、大幅にそれを認可し、しかも援助金を出してもらえるかどうか、この二点を伺い、そしてこういう人たちに万全を期してもらいたい、こう思うわけです。
  93. 渡邊良夫

    ○渡邊国務大臣 ただいま申されました点につきましては、いずれもごもっともと私は肯定いたす次第でございます。しかしそれが今直ちに国の財政ともにらみ合わせまして、全面的にこれを実行に移すというわけにもいきませんので、段階的にこれをそのような方向に持っていきたいと、かように存じておる次第でございます。大いに努力いたしたいと思います。
  94. 本島百合子

    ○本島委員 大臣は、たとえば民間施設にもっと援助して下さるのかどうなのか、こういうことなんです。そうしなければ、今考えられている線では、収容する場合に、もう東大や早稲田の試験を受けるよりもっとむずかしい基準になってくるのじゃないかと思うのです。ところがそういう人たちを持っておる家庭ではどこでもいいから入れてもらいたい、そのことによって自分の生計も成り立つが、その子供がいるために、また十八才以上の者をかかえておるために、一家じゅうの者が重い十字架を背負って暮しが成り立たない、こういうことが多いわけです。ですからこういう点からしまして、この機会にもっと大幅にやる意思があるかどうか。
  95. 渡邊良夫

    ○渡邊国務大臣 もちろん民間団体にも私どもは大幅に公費負担を考えております。
  96. 本島百合子

    ○本島委員 もう一つ、先ほどの質問に関連しますけれども国立でこういう発生予防に対する研究機関というものが将来考えられるかどうか、また考えなければならぬことだと思うのです。精薄に対する発生予防、そういう点の研究機関を国の権威ある施設で作れるかどうか。
  97. 渡邊良夫

    ○渡邊国務大臣 これは三十五年度からこの精神衛生研究所におきまして、精神薄弱部という専門の部を設けまして、そしてこの面につきまして専門的に検討いたしたい、かように計画を立てております。
  98. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 大臣がお見えになっておりますので、ちょっと一言だけ本島さんの質問に関連してお尋ねいたします。これは先ほどから聞いていらっしゃいますように、せっかくできはできましたけれども、なかなか精神薄弱者に対する保護といいますか、援助といいますか、それから完全な福祉施策といいますか、そういうものはちょっぴり芽を出したけれども、実際はなかなか行き渡らないわけで、何百万人かのうち、その何百分の一か何千分の一かの二百人くらいがモデル・ケースのモルモットのようにその中にやっと入れて試験してもらえるというような感じのものでしかこれはあり得ないわけです。これはないよりはましですけれども、野放しの精神薄弱者でなしに、福祉国家としては捨てておけない問題だ。私は厳密に言いますと、身体障害者の一角に入れて、国民年金の対象として生活能力のない人たちを保障しなければならぬ建前のものじゃないか、こう考えておりまするが、政府はそういう面について単に生活能力のないこの人たちを、二十才になっても一人前にならない所得のない人たちに対しまして、——これをかかえておる家族も大へんです。扶養者も大へんです。国家の政治でこの人たちに対して年金の対象として生活保障をしていくという建前に立って考えなければならぬのじゃないかと思いますが、将来年金制度の中にそういうものを政府考えることを、今までこの準備をなさった過程において、将来の青写真としてお考えになったことがあるかどうか、それを一度承っておきたい。
  99. 渡邊良夫

    ○渡邊国務大臣 現在支給されておりまする障害福祉年金の対象者はいわゆる外部障害者だけでありまして、内臓機能障害者並びに精神機能障害者は含まれていないのでありますが、その理由は、障害の程度及びその永続性の判定が困難なこと、従いましてそれら内部障害者の福祉はむしろ医療保障の面ではかるべきではないかということでございます。従いまして本来治療してもなおる可能性のない精神薄弱者につきましては、その判定方法判定基準の画一化を研究した上で、将来これを十分検討いたしてみたい、かように思います。
  100. 永山忠則

    永山委員長 小林進君。
  101. 小林進

    ○小林(進)委員 私はなるべく重複しないようにちょっとお尋ねして、御迷惑にならないようにしたいと思います。ただこの法律を見せていただきますとこれは精神簿弱者福祉法案なんですが、精神衛生法、それから優生保護法、もっと広く言えば刑法の第三十九条、それから刑法の第四十条、こういう関連が一体どうなっているのかということを私はお尋ねしたいと思います。というのは、精神薄弱者福祉法には精神薄弱者という言葉があるのです。ところが、精神衛生法の中にも精神障害者という言葉があって、その第三条には一体精神障害者というのは何かといえば、精神病者、それから精神薄弱者という言葉がある、それから精神病質者、こういうわけで、今度は優生保護法に参りますと、この第三条の第一項の第一号には、これは「配偶者が精神病若しくは精神薄弱を有しているもの」、精神薄弱者とは言わないで、精神薄弱を有しているもの、こういうふうな言葉が出てくるわけでございます。この三つの法律の中にみな含まれている精神薄弱者というものは一体これは同じなのか、同じでないのか。扱いがみな変わってくるわけですから、この精神薄弱者内容一つお聞かせ願いたい。それから、それにあわせて刑法の第三十九条でいう心神耗弱者との区別を明確にお聞きかせを願いたいと思うのです。
  102. 高田正巳

    高田(正)政府委員 大へん法律的な御質問で、まず精神衛生法でございますが、精神衛生法は、精神障害者といたしまして、今御指摘のように、精神病者と精神病質者と精神瀞弱者とを一本に規定をいたしております。しかも、精神衛生法の二条に、これらの者についての福祉の面についての努力をしなければならぬというふうな規定がございます。従いまして、その限りにおいては精神衛生法は精神薄弱者の問題をも扱っておるわけでございます。ところが、扱ってはおりますけれども、その福祉の面におきましては、特に精神障害者の一部であるところの精神薄弱者福祉の面におきましては、あとの規定を全部お読みいただきますとわかりまするけれども、大した規定はないわけでございます。先ほど申し上げましたように、ただ精神薄弱者であって、自己を傷つけたり、他人を傷つけたりするおそれのある者がありました場合は、これは本人の福祉をはかるという意味よりは、むしろ本人を守る、他に迷惑を及ぼすことを避けるという意味におきまして、精神病院に強制入院をさせるという規定一つあるだけでございます。従って、精神衛生法は一応精神薄弱者のことを規定しておりまするけれども、その福祉の面につきましては非常に不十分である。従って、今回本法を設けましてその福祉の面だけをより丁寧に立法していごう、こういうのがこの関係でございます。従って、これを一口に申し上げれば、精神衛生法は精神汗弱者について一般法である、本法がその精神薄弱者福祉面についての特別法である、こういうふうに理解できると思います。  それから優生保護法でございますが、そこにやはり精神薄弱という言葉が出て参ります。これは御承知のように、優生保護法はいわゆる種の劣悪化を排除していくという立場から、断種のできるのはこういうことである、断種をするための手術を行ない得るのはこういう場合であるという建前で規定をいたしておるわけであります。従って、その中の一つ精神薄弱であって、遺伝性ということがはっきりわかっておる精神薄弱は優生手術ができるということが規定してあるわけであります。しかし、これは今のようにその人自身の福祉をはかろうという意味ではございませんで、むしろ観点は別で、子孫にさような者が出てこないようにして、種の劣悪化を排除していくと申しますか、そういう趣旨の法律でございますので、精神薄弱ということは同じでございますけれども、別の観点の法律でございます。  本法は、先ほども精神優生法との関係で申しましたように、精神優生法で  一応一般的に精神薄弱までも含めて対象にはしておりまするけれども、その福祉面については何ら見るべき規定もなし、行なっていることも大したことはやっておりませんので、従って、その福祉面だけを取り扱う特別法といたしましてこういう法律を御制定願いたい、こういう趣旨で実は立案をして参っておるわけでございます。  それから刑法の三十九条との関係でございますが、これは私不用意なことを申し上げまして間違っておるといけませんので、その点は、私が今これを読んでの一応の答弁としてお聞きを願いたいのでございます。ここの心神喪失というのは、あえて精神薄弱のために心神を喪失しておるというだけでなく、精神病のために心神喪失の場合もございましょうし、あるいは非常に泥酔をして心神喪失になった場合もございましょうし、もう少し広い、恵味のいわゆる心神を喪失しておるという一つ  の状態をさした規定である、かように私は理解をいたすわけであります。ただ、この点は私専門でございませんので、一応の答弁としてお聞き流しをいただきたい、かように考えるわけであります。
  103. 小林進

    ○小林(進)委員 大臣もおそばでお聞き願いましたように、これは私に例をとれば一番いいのですが、小林進という私が精神薄弱者だと想定いたします。そうすると、この私を優生保護法に基づいて隔離する、反社会性といいますか、精神衛生法なら衛生法に基づいて精神病院へ入れるか、あるいは保護拘束するか、あるいは優生保護法に基づいて、あいつは遺伝性があるからといって断種をやられるか、あるいはあなたが今提出をせられました精神薄弱者福祉法に基づいて、これは今のところ法作による強制力はありませんが、私がどこか任意の都道府県か市町村の設備に収容される、そういう場合が想定せられるわけです。それからいま一つの場合は、刑法三十九条の心神喪失、心神耗弱の場合は、泥酔の場合もあるでしょうし、精神病の場合もあるでしょうが、私はやはり精神薄弱の場合もこの中に含まれる、多くのケースの中に含まれると思う、そうすると、精神薄弱者としてあるいは予防拘禁かあるいは保護観察か何か、一応刑法ではないけれども、別個の法律の対象として予防拘禁か何かの拘禁をせられるという場合も想定せられるわけです。そうすると少なくとも、ここに一人の精神薄弱者がいる場合に、適用される法名が幾つもあるわけです。収容せられるとか措置せられるとか、四つも五つもケースが出てくるわけです。そのケースを一体どう判断をするかということなんです。精神薄弱者だから精神薄弱者福祉法に基づいて単なる市町村の設備に入れておけばいいのか、精神病院にまで持っていけばいいのか、あるいは断種法なら断種を行なってからどこかに持っていかれるかわかりませんが、これはケースは違ってきますけれども、あるいは予防拘禁か何か、いわゆる法務省かどこかの管轄へ持っていかれるということで、こういう形が出てくるのを一体どう具体的の場合に処置をされるかということなんです。私はそれをお聞きしたいのです。
  104. 高田正巳

    高田(正)政府委員 まず刑法の場合は、あるAという精神薄弱の方が何か罪を犯さなければ刑法の問題は起こりません。人を殺したとか放火をしたという場合にしか起こってこないわけです。たしか刑法の系統では、今日は予防拘束というものは刑法の系統のものではございません。従ってそのAという人が何か人を傷つけたり、殺人でもしそうだとか、あるいは自分でも傷つきそうだとかいうふうな場合には、これは精神衛生法の規定精神病院に入れるということが起こってくるわけであります。それから断種の問題は、これはちょっと別にいたしまして、本法の方はそういう方ではなくして、施設に預かりましてごめんどうを見ましても、人を傷つけたり、自分を傷つけたりするようなおそれのある人だと、これは非常に困るわけでありますから、施設へも入れられませんから、従ってこれは精神病院に行ってもらって、そうしてそうでない方で、ほうっておいてはいろいろ家庭の負担になりあるいは御本人もふしあわせになるというふうな方々を本法の対象として、その人の福祉をはかっていく、その人を援助いたしまして福祉をはかっていく、こういうふうな関係になるかと思うのでございます。
  105. 小林進

    ○小林(進)委員 それはなるほど私も御説明はわかるような気がするのです。同じ精神薄弱の中でもおっしゃるように危険性があったり、他人にも危害を加え、みずからの身体も傷害する危険性がある者は精神病院だ。けれどもそこに至らざる者はやはり保護あるいは更生のために、教育を主として今ここで新しい法律で扱うというのですが、その判別を明確にするものはないでしょう。だれが一体それを判別するのですか。私は、そこでやはり法律的な何か一つの基準を示さなくていいのかどうかということをお聞きしているわけです。優生保護法では別表に書いありますよ。優生保護法に該当するものは書いてあります。遺伝性精神病、精神分裂病、そううつ病、てんかん、それから遺伝性精神薄弱というのが書いてあって、それから顕著な遺伝性精神病質の中に顕著な性欲異常というやつがある。ここら辺になりますと、顕著な性欲異常、顕著な犯罪傾向なんというのになりますと、同じ精神薄弱者の中でも、これを一体精神病院に入れるかどうか、あるいはこの法律に基づいて、病院まで行かぬが、精神簿弱者福祉法に基づいて、いわゆる都道府県立あるいは市町村立、あるいは特殊法人のそういう施設の中に入れる程度にとどめておくのかどうかということになってくるのであって、具体的になったら私は非常に判別に困ってくると思うのですよ。こういうところを一つも明確に示していない。しかし幸いにして、あとにも質問しますけれども、三つの法律はどの法律厚生省でおやりになっておる。おそらくは厚生省公衆衛生局の何課かでおやりになっておるかと思いますが、ちょっとお伺いしますが、この法律ができたらどこで扱うのですか。厚生省の何課でお扱いになるのですか。
  106. 高田正巳

    高田(正)政府委員 この法律ができました暁におきましては、社会局の更生保で主管いたします。
  107. 小林進

    ○小林(進)委員 社会局の更生課……。そういたしますと、これは同じ厚生省関係だからいいけれども精神薄弱者が出た場合は、今おっしゃったように、社会局の更生課で、これはおれの方の役割だから私の方でお預りしようというので一つ施設へ案内される。そうすると公衆衛生局の方でも、これはどうも狂暴性がある、反社会性が強過ぎるから、とても社会局なんかにはおまかせできない。これは私の方の公衆衛生局の方にまかせて、こっちでやらしてくれ、こういう問題が出てくると思うのです。法律の適用の問題ですから……。一体この区別をどこでやられますか。法律の上では明確でないのです。これを一つお示し願いたいと思います。
  108. 高田正巳

    高田(正)政府委員 これはどこでやるかということを判定する統一的な機関があるわけでございません。たとえば刑法でいえば、心神喪失の状態にあったかどうかということは、これは最終的には裁判所が判定をするわけでございます。それから精神衛生法で強制入院をさせるかどうかということは、精神衛生法による鑑定医、医師でございますが、これが判定をするわけでございます。それから優生保護法では、どういう名前でございますか、やはり医師がやります。これらの法律はいずれも人の自由を束縛したりなんかするわけでございまして、これはもうそれこそはっきりと、しっかりした裁判所とか専門的な医師とかいう人々がやらないといかぬということで、それぞれそういうものがきまっておるわけでございます。ただ私どもの方は、その人のしあわせをはかって、少しでも助けていこうというわけでございまして、別にその人の自由を拘束したりというようなことは一切ないわけでございます。従ってそちらの方でめんどうを見ていただけない者で、しかもその人が自分はもう少しよくなりたい、福祉をはかってもらいたいという、本人なり親御さんなりの希望があれば、みな私どもの方の対象になり得るわけでございまして、特に私どもの方としては、そう厳格に、これは向こうの領分だというようにはねつけるつもりもございませんし、またさような必要もない法律の性格でございます。従って私どもの方では、特別にこれをどういうふうに処遇したらいいかということについては、判定をする機関として相談所を設けております。しかし本法の対象になるかならぬかということについて一々やかましく、裁判所が認定をいたしましたりあるいは強制入院をいたします場合に必要とされるような手続等は要求をいたしておりません。それは今の法律の受け持つ分野が違う、事柄の性格からさようになるわけでございます。小林先生の御質問ほんとうにごもっともだと思いますが、そういうむずかしいことをやりまする場合には、その判定機関がそれぞれはっきりとしておるわけでございます。それ以外のものにつきましては、とにかくそれの福祉をはかるという目的でありますれば本法の対象になる、こういうふうな関係になるかと思います。
  109. 小林進

    ○小林(進)委員 私も今のお話がわかるような気がするのです。気がするのですけれども、決して私は意地悪い質問をしているわけではないのですけれども、結局あなたの話を直接的に言えば、同じく精神薄弱という言葉を使っておるけれども、その精神薄弱者の中にも差があって、重い、軽いがある。重い、軽いという言葉は悪いかもしれないけれども、反社会性が強いのと、強くないのがあり、危険性があるのと、ないのがある。危険性があるのは精神病院へやるけれども、そこまで至らざる軽いやつというか、危険性のないやつをこっちの方は扱うのであって、世の中へほうりっぱなしにしておいても、自己または他人を傷つけるような危険性はないが、社会人としての完全な責任ある行動を信頼してまかしておくわけにいかない、こういうお話と解釈してよろしゅうございますか。私はそこが非常に了解できないのです。精神薄弱者というものが危険性がある、ないというようなことは、これは科学というものが進歩してくれば明確な区別ができるかもしれませんけれども、今は私は区別ができないと思うのです。気違いでも、十年目か二十年目に一回発生してくるのですからね。しかしわれわれは、その人に危険性がなくても、十五年目に一回でも、どうもうな危険性なり、あるいは異常性欲の発作が出てきたら、十年の平穏などというものは、直ちにそれで吹っ飛んでしまうのですからね。その意味においては、危険性は別として、反社会性という点においては、精神病院へ行くも、いわゆるこの福祉法に基づく施設へ入るのも、本質的に私は同じじゃないかと思う。だから、単にあなたのおっしゃるように、この法律で個々の人の福祉とか、あるいは更生を援助するとかということでなしに、やはり私は反社会性という点に重点を置いて、ある程度世の中から隔離する。正常な人々社会秩序と平穏を守る意味において、そういう人たちを社会から隔離をするというのが、私はこの法律の第一の目的でなければならないのじゃないかと思う。その意味において、その費用というものも、十分の八とか二分の一とかいわないで、全額国家が負担をして、少なくともこの世の中にお互いに肩をすれ合って歩いている者や交際している者は、みんな正常な人間であって、危険性があろうとなかろうと、今言ったような者は全部社会から隔離しなければならない。その隔離の方法に、施設へ行って更生や福祉を十分にする方法と、精神病院に入れて、金網や鉄棒の中に入れるのと、予防拘禁所に入れて刑罰的なものを加えておるのと、区別はあるけれども、反社会性における取り扱いは同じでなくちゃならないと私は解釈するのですが、どうでしょうか。この法律の立法論をあなたにお聞きしているのですよ。
  110. 高田正巳

    高田(正)政府委員 小林先生の御意見、ごもっともなところがあるように思います。ただ反社会性があるから隔離をするという、そういうことを目的とした法律ということになりますと、これは全然性格が別になってくるわけです。実は私かって他の局の仕事をいたしておりますときに、麻薬中毒者あるいは覚醒剤の常用者、こういうふうな者について、これは精薄の場合より以上に、常用者についてはさようなことを要望する声が強いのであります。何かそういう観点から、いわゆる社会から隔離をするというふうな目的を達成するような立法はできないものかというわけで、いろいろ法務省等にもお願いをいたして研究をしたことがございますが、これは今の憲法の建前からいいますと、いわゆる予防拘禁といいますか、そういう種類のものになってくるわけでありますが、非常にむずかしい問題になるやに私も聞いておるわけであります。ただ精神衛生法に、自傷または他書のおそれのある精神障害者は、精神病院に強制入院せしめ得るという規定は、おそらく現在の法制として、唯一のさような性格を持った規定であるやに私も承知いたしております。これは、罪を犯した場合は別でございます。それで、そのむずかしさというものは別の問題といたしまして、ともかくさような目的をこの法律は持っているわけではございません。精神薄弱者の問題としては、さような問題もあるということは、これは先生の御指摘の通りでございますが、しかしこの法律のねらっておりますのは、社会から隔離をするということをねらっておるわけではないので、その人間なりその家庭なりの負担を少しでも軽くしてあげたい、あるいはその人が本来ハンディキャップを持っている、そのハンディキャップを埋めてあげよう、こういう性格の法律でございます。それをねらった法律でございますので、問題が別であるというふうに私は考えるわけでございます。
  111. 小林進

    ○小林(進)委員 私も法律のねらいはわかりましたけれども、ただ精神薄弱者福祉法案と称するものは、今もおっしゃられるような、各個人の負担を一つ軽くしてやろう、ある程度国家が保護しようというねらいだけですが、そういう考え方は、私は非常になまぬるいと思う。そういうものは反社会性という立場に立って、やはり国家が全面的に責任を持つべきではないか。そしてそれは犯罪者と同様に隔離——という言葉は少し悪いけれども、国家が全額負担で、国の責任において、その反社会性あるいは異常状態がいつ飛び出してくるかわからない危険性というものも、やはり考慮の中に入れて、もっと徹底した法律を作るべきじゃないか、私はこういうことを言っておるのですが、これは水かけ論になりますし、三十分でやめるという約束ですから、この点はこの程度にしておきますが、これは私ども内閣を組織しましたら、こんななまぬるいものでなく、こういう人たちは国家の責任において、国家の経費において全額を負担するという法律を作りますよ。  次に個々の問題に入りますが、精神薄弱者は、この法案の第十二条で、更生相談所というものをおきめになっておりますが、同じく精神衛生法の第七条には、精神衛生相談所というものがある。これは規定を見ればそれぞれ違っておるけれども、同じ厚生省の管轄の中に、精神薄弱者更生相談所と、精神衛生相談所という別個のものを特に作り上げて、制度や人員の複雑化をはかられるのもどうかと思うのですが、これを一つにできないものですか。厚生省が同じく掌握して持たれるのですから、こういう問題はどうですか。
  112. 高田正巳

    高田(正)政府委員 その点は、御指摘のような御質問が出ることを、私どもも十分期待しておりました。この法案を作ります際にも、実はその点、ああでもない、ごうでもないというので検討した結果、かようなところに落ちついたのでございますが、確かに精神衛生相談所を一本にしたらいいじゃないかという御意見、ごもっともだと思います。ただその実態を見ますと、精神衛生相談所というものは、実は今日法律で必置の機関になっておりませんし、それからやっておりますことも、実は主としてお医者さんの系統だけのお仕事が多いのでございます。それでこれと一緒にしてお茶を濁したのでは、とてもどうにもならぬという気がいたしたのでございます。むしろそれよりも現実相談所における仕事の中身といたしましては、身体障害者の更生相談所や、それから子供精薄の問題を扱っております児童福祉関係児童相談所というものがございます。こういうところにおりまするのは、やはりお医者さんと、それから心理系統の人、職能判定をやったりするような人、これがおるわけであります。むしろ仕事の中身としてはそっちの方に近いわけでございます。そして私どもといたしましては、法律の建前としては、精神薄弱者更生相談所というものを一つ立てますけれども、実際の運用といたしましては、身体障害者の更生相談所と同じ建物で、別に新しく相談所の建物を建てるのじゃございません。その中に職員を増しまして、これと一本に運用をしたい、かように考えておるわけでございます。これらの精神衛生相談所も含めて、これらの相談所全体をどうするかという問題については、一つ将来の問題として検討を加えてみたい、かように考えております。
  113. 小林進

    ○小林(進)委員 大臣、今お聞きになりましたように、今は精神衛生法に基づきまして、精神衛生相談所があるのです。今度はここでもって精神薄弱者更生相談所というものができ上がってくる。そこへ身体障害者相談所が出てきます。こういうふうに出て参りますると、私ども役所の係を探して歩くだけで、これはもう二日や三日で頭が疲れしまう。その名前の区別をつけるだけでも迷ってしまう。精神衛生相談所へ行ったら、いやここじゃない。精神薄弱者更生相談所だから、そっちへ行け、そんなことをいわれたら、半日、三日、いわゆる機構の上に踊らされて、役所の窓口を探すだけで疲れてしまう。ですから、こういうことはわれわれの言う官僚政治の最も弊害の現われである。今局長も言われましたが、こういうのはどうしても窓口を一つにして、人員は何人でもいいのです。係の中に何名いてくれてもいいですけれども、窓口は何々相談所といったら問に合うようにやってもらわなければ大へんですよ。私は時間がありませんから——こういうことは官僚政治の一番悪いところでございますから、一つ十分御考慮を賜わりたい。法律に基づいて人がふえることはいといません。大いにふやして、みんなの福祉、しあわせのためにやってもらわなければなりませんが、同じような名前の、だれが開いてもわからないようなものを——それはそうですよ。おそらく厚生省へ行ったって、関係の係官がわからぬと私は思うのです。だれもがわからぬというふうな、こういう複雑な組織はやめてもらいたい。これは将来のために注意を喚起しなければならぬ。  次に予算の面でちょっと私はお尋ねするのですが、この法律が通ることを予定されまして三十五年度で厚生省が組まれた予算が一億四千八十七万円です。(「まだ少ない」と呼ぶ者あり)いや、少ない、問題にならぬのだけれども、それを大蔵省は三千三百万円に査定された。この予算が四月から出てくるわけだ。これは私の数字が違っているかもしれません。違っていれば数字を御訂正願えばいいのだが、問題にならないくらいのものを大蔵省からもらっておる。それに対して三十四年度は精神薄弱者援護に関する費用として二千五百七十万円ですか、そうすると今年度は三千三百万円、わずかに八百万円ばかりしかふえていない。これは私どもの調査なんだが、一体最初の一億四千万円はこの法律が通過することを予定されてこの予算を組まれたと私は思うのだけれども、一体この一億四千万円で何をおやりになるおつもりだったのですか、それを私は参考までにお聞かせを願いたいと思うのです。
  114. 高田正巳

    高田(正)政府委員 一億四千万円とおっしゃいますのは、私どもの要求額であろうと思います。それで今御審議を願いました予算は三千幾らと仰せでございましたが、たしか五千万円弱であったと思います。四千九百幾らであったかと私は記憶いたしております。それで相違は一体どうだ、こういうことでございますが、その中で一番大きいのは、私どもは都道府県立の施設を三十五年度にもう少したくさん作りたい、この委員会でも先ほど来いろいろおしかりを受けておりますように、施設が非常に不十分でございますので、もう少し作りたい、こういうつもりで要求をいたしたのでございますが、その辺が削られまして、三カ所ということに削られたということが一番大きな相違であります。その他いろいろなことも考えておりますが、その他のやり方、この法律の裏づけになります、たとえば相談所でございますとか、あるいは福祉司経費でございますとか、運営費の補助でございますとか、いろいろ経費がかかりますが、そういうふうなものは、金額の少なくなったものもございますけれども、大体認められております。大外そういうわけでございます。
  115. 小林進

    ○小林(進)委員 こういう法律は私も賛成なんですよ、大臣。私どもは非常に賛成なんです。こういう法律はより完全なものにして、これは厚生省方向は同じです。私どもも賛成しておるのです。ただこれは不完全ですから、もっと完全なものにして、こういう施設こそ国の誇りですから、全額国費でまかなってりっぱなものを作ってやっていただけばいいのです。だから施設は都道府県が設置することができるなどという、これは任意規定ですね。やはりやらなくてもいいのですね。これはどうしてもやらなければならぬというふうにできないものですか。さっきも出ましたから、この点はあまり強く言いませんけれども、こういう予算はあまりけちけちしないことですよ。こういうことこそ、大いに予算獲得に狂奔してもらわなくちゃいかぬです。わずか一億四千万円とって各都道府県に作らせて、やはり設備費に二分の一くれるとか、運営費に十分の八補助してやるとか、総額の元締の要求が一億四千万円で、何ですか、こんなもの、私どもはまるで俗言でいえば小ばかにした法律を審議をやらなくちゃならぬ。これでも百億ぐらい大蔵省に予算要求をしておきながら、設備費の二分の一、運営費の十分の八十出すつもりだというならばいいのですけれども、一兆五千億の予算を組まれた中にたった一億四千万円の、それも全額もらったというならよろしい、それも削られて何か五千万くらいしかもらわない。そうして三百万人ですか四百万人ですか、実にこれは冗談じゃないのです。こういうことを厚生省が真剣に予算を組んで、真剣にこういう法律を完全なものを作るように企てていただくことが、おいおいに再軍備費が減ってきたり、ロッキードの費用が削減されてきたりして、日本の政治がいい方向に向かってくるのでありますから、その意味においても、大臣一つ大いに腹をきめて、予算の獲得のために御努力をお願いしたい。その意味におきまして、私どもはこの法律には基本的な考え方には賛成ですけれども内容に至っては非常に不備な点が多いと思う。そういうわけでございますから、いずれ完全なものに御修正願うということにいたしまして、私の質問を終わりたいと思います。
  116. 大原亨

    ○大原委員 ちょっと関連いたしまして、大臣に一つだけ御質問いたしまして、御意見を聞きたいと思います。  それは本局委員が御発言になりましたことの中からなのですが、この精神薄弱者の十八才以上のおとなの福祉法なんですけれども、その一つといたしまして、税金上の問題を本島委員質問いたしました。つまり身体障害者、不具者に対しましては、家族や勤労控除についてやはりちゃんと項目を設けて、特別の措置がしてあるわけです。つまり成人の十八才以上の精神薄弱者、白痴とかあるいは痴愚とか、そういうような知能指数五〇以下の者をかかえたら一生涯大へんだ。そういう人々に対して税法上の措置をとる。これは実態を把握して手帳を交付したり、いろいろなことをして健康管理するということと一緒なんですけれども、そういう措置をとることは当然だと思うのです。身体障害者に対しても手帳を交付いたしまして、それから税法上の控除措置をしてあるのです。そういう措置を将来とってもらいたい。こういうことについて大蔵大臣とも話をしていただいて、まじめに誠実にこれを実行してもらいたい。こういうことを、お願いをかねて御質問をいたしまして、最後に一言だけ所見を聞いておきます。
  117. 渡邊良夫

    ○渡邊国務大臣 税法上の問題でありますので、大原さんが申されたように、関係当局ともいろいろ協議をした上、善処いたします。     —————————————
  118. 永山忠則

    永山委員長 これにて質疑は終局いたしました。  引き続き討論に付するのでありますが、申し出がありませんので、直ちに採決するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  119. 永山忠則

    永山委員長 御異議なしと認め、そのように決しました。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  120. 永山忠則

    永山委員長 起立総員。よって本案は原案通り可決すべきものと決しました。     —————————————
  121. 永山忠則

    永山委員長 この際、大原亨君より本案に対し附帯決議を付すべしとの動議が提出されておりますので、その趣旨の説明を求めます。大原亨君。
  122. 大原亨

    ○大原委員 私は、自由民主党、民主社会党及び社会党の共同提案にかかる精神薄弱者福祉法案に対して附帯決議を付すべしとの動議を提出いたします。  案文を朗読いたします。     精神薄弱者福祉法案内閣提出)に対する附帯決議  一、精神薄弱者の実体を明らかにするため積極的に調査を進め、その発生予防、 援護、更生のための総的援護措置をすみやかに確立すること。  二、精神薄弱者援護施設の収容力が入所必要者の数に比し著しく不足な現情にか んがみ、国は思い切った予算措置をとり、国立施設の増加、公私立の施設に対 する国庫負担の増額をはかること。  三、児童福祉法と成人を対象とする本法の施設との関連を明らかにし、経費の負   担、責任の分野など移行措置に遺憾なきを期すること。  以上でございます。  皆さん方全員の御賛同をお願いいたします。(拍手)
  123. 永山忠則

    永山委員長 本所歳について採決いたします。これに賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  124. 永山忠則

    永山委員長 起立総員。よって本案には大原委員の動議のごとく附帯決議を付することに決しました。  この際、厚生大臣より発言を求められておりますので、これを許します。渡邊厚生大臣。
  125. 渡邊良夫

    ○渡邊国務大臣 精神薄弱者福祉法案に対しまする本委員会附帯決議に対しまして、政府はその趣旨を十分に尊重いたします。     —————————————
  126. 永山忠則

    永山委員長 お諮りいたします。本案に関する委員会報告書の作成等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  127. 永山忠則

    永山委員長 御異議なしと認め、そのように決しました。      ————◇—————
  128. 永山忠則

    永山委員長 厚生関係基本施策に関する件について調査を進めます。  発言を許します。西村委員
  129. 西村力弥

    西村(力)委員 時間がだいぶたちまたしので、簡単に要点だけをお尋ねして今後の善処方をお願いしたい、こう思うわけでございます。  朝日新聞に数日前出まして全国的な関心を集めておる山形県鶴岡保健所の検便の問題でありますが、高松宮がスキーにおいでになった。それをお泊めする宿屋、それに食品を納入する業者、そういう関係者全員に直接検便をやった、こういう事件でありますが、この件については山形県から厚生省にも報告がきておると思うのですが、どういう報告が参っておりますか、お尋ねしたい。
  130. 渡邊良夫

    ○渡邊国務大臣 概略の経緯につきまして申し上げまして、あとは政府委員から説明させます。  三月二十五日より高松宮が山形県に来県をされ、湯野浜温泉、肘折温泉、酒田市菊水旅館等の旅館に参られた際に起こりました事件であります。この事件の発生は、そのときに山形県の鶴岡市の湯野浜のかめやホテルに起こった問題でございまして、検便実施の方法人権じゅうりんである、行き過ぎであるというように現在法務委員会で問題になっております。それで私どもも急遽これの調査をいたしまして、その結果の報告といたしまして、検便実施の日はちょうど三月十六日、十九日、二十二日の三回にわたりまして、かめやホテルの主人及びその家族六名、従業員三十名、計三十六名に対し、それぞれ二回ずつの検便を行なっておる。その理由といたしまして、赤痢予防策を徹底するため、保菌者発見の方法として、食品取り扱い者、給食従事者等に対して少なくとも毎月一回健康診断が行なわれるよう指導しているが、特に次の事情にもかんがみまして、指導の徹底を期するためにこれの実施を行なったということを言っております。その理由といたしまして、本旅館では一昨年赤痢患者が一名、保菌者が五名出ておるということ、これが一つ。それから昨年高松宮が山形県に来県の際、高松宮初め五十名くらいの者が下痢様の疾患にかかった。第三といたしまして、観光シーズンを迎えるにつきまして、赤痢対策の推進が非常に要請されておるということでございます。私どもといたしましては、保健所が厚生省の所管になっておりますから、これが行き過ぎになっておったということであればまことに遺憾な点でありまして、これにつきましては、十分調査の上処理いたしたい、かように考えておりますが、ただその検便実施に当たりまして、いわゆる科学上の取り扱いというものをどういうようなことでやったのかにつきましては、政府委員から答弁させます。
  131. 高部益男

    ○高部説明員 ただいま公衆衛生局長が法務委員会でいろいろ御説明申し上げておりますので、私がかわりまして説明させていただきます。  検便実施の方法につきまして、県からの報告によりますと、次のようなことになっております。ただいま大臣が御説明申し上げました三十六名の者に対する検便の内容は、客室を検便室に充てた。それに従事した人員は、採便棒を用いた者が保健婦である。もう一人細菌検査の技術負が——これは男性でございますが、これは一つ問題点であろうと思いますが、男性が壁に向かって培地に検査材料を塗っておった。被検者には毛布をもっておおい、第一回の三月十六日の検便でございますが、この際は前かがみの姿勢で実施した。しかしそのとき従業員等からのいろいろな要望もございまして、十九日並びに二十二日は横臥して採便を実施したというふうに報告が来ております。従いまして四つんばい検便というような事実はないというふうに報告を受けております。
  132. 西村力弥

    西村(力)委員 直接検便の方法をもって防疫の万全を期しようとした根拠は、一体どこに求めておると思われますか。
  133. 高部益男

    ○高部説明員 伝染病予防法によりますと、都道府県知事は伝染病予防上必要と認める場合は健康診断をすることができるという規定だけでございまして、健康診断の内容については別に触れてございません。検便も健康診断の一環として、普通赤痢対策の場合、特に保菌者検査等の際には必要なものでございますので、昨年度赤痢対策の推進に関する通牒を出してございますが、その際にやはり健康診断方法医学技術的な問題として特段の規定をいたしてございませんので、直接採便をするかしないかということは、一にそこの各種の状況によって都道府県知事にきめていただけばよろしいという考え方でおったわけでございます。ただ常識的にわれわれ防疫担当者が考えておりますことは、やはり直接採便という方式は特段の場合に限って実施すべきではなかろうかというふうに通例考えておりまして、もし採便の目的あるいは検便の目的が達せられるならば、直接採便はなるべく避けた方がよろしかろうというふうに口頭ではいろいろな機会に申し述べておるわけでございます。ただ問題は、いろいろな間接方式をとりますと間違いを起こす場合があることでございます。それから間接方式をとった場合に、えてして保菌状態にありそうな者あるいは患者のような方々からの採便がかなりむずかしくなってくるような技術的な場合もございます。そういうような場合には、やはりこの場合もそうでございますが、大体集団的にいろいろお話をいたしまして、こういうふうな方法でやるのだから一つ協力してもらえないかという納得の方法を、特に飲食店業者等についてはやりませんと協力を得られませんので、始終やっておるわけでございますが、やはりどうしても客観的に見て直接採便を必要とするということを関係者には十分納得してもらうということが先行するのではなかろうかと存じます。そういうことは常識的に私ども防疫担当者としてはやるべきだと思っているわけでございますが、たまたま今回の事件に際しましては、直接に採便をするということのいわゆる具体的な方法等について、ある意味では関係者方々が十分納得しなかったようなことがあったかも存じませんけれども、県の報告にはその点は触れてございません。これはいろいろ県当局に対しましてもっとこまかく報告を求めたいと思っておりますが、まあそういうこともあったのではなかろうか。直接採便しか方法がないのだと御本人が納得すれば、おそらく実際上私どもそう考えるのでありますが、そう気分のいいものではございませんので、納得しないでやるということはございませんし、できることもございませんので、ある程度は納得していただいたように私も推量いたしておるわけであります。直接採便法は、医学的に申しますと、あるいは公衆衛生の技術から見まして、一番検出率が高いということはもう御承知の通りでございますが、大部分は検便の目的は間接法で達成せられる場合が多いといふうに私ども考えておるわけでございます。ただ特段の場合に、先ほども申し上げました通りに、どうしても直接採便をせざるを得ないという場合もあることを、私どもはいつも念頭においている次第でございます。
  134. 西村力弥

    西村(力)委員 伝染病予防法第十九条に基づいて、健康診断の一種として検便をやったということになりますが、それは高松宮様がおいでになったという事態に、やはりイコールになって適用になるものかどうか、それはどういう工合に考えられますか。
  135. 高部益男

    ○高部説明員 ただいま申し上げました伝染病予防法第十九条に基づいてということは、今度の事件の場合にはございません。これは県が飲食店業者と話をいたしましてやっておるという方向でございます。従いまして、伝染病予防法の十九条の発動でないというふうに私どもは承知しております。  なお、特に防疫問題でございますが、十九条の発動の場合は、非常に緊急である、それから患者の発生が非常に予測されるということがある程度客観的に説明される場合に、都道府県が——十九条の規定は、御承知の通りに即時強制の内容を持っておりますので、非常に慎重に取り扱わなければならないというふうに防疫当局者は考えておるわけでございます。
  136. 西村力弥

    西村(力)委員 今御答弁でございますが、山形の県議会で問題になったときには、県当局ははっきり伝染病予防法の第十九条に基づいてこの措置をやったんだ、こう答えておるのですが、今厚生省としてはそれに基づかないで、ただ任意的に保健所と業者が話し合って、合意の上に行なわれたのだと  いうことになっていますが県当局としては、はっきり十九条を基礎にして答弁しておるのです。であるから私としましては、この十九条の趣旨が、すなわち宮様のおいでのあるときまでも含めた範囲を持つと解釈されるものか、適用されるものかということを、今お尋ねしておるわけなんです。その点お答え願いたい。
  137. 高部益男

    ○高部説明員 宮様だけということではないと私は思って、県の衛生当局とは連絡をとっております。これは山形県が従来とも他府県に比しまして非常に赤痢の流行地でございます。それで、その上に昨年度の赤痢対策推進についての通牒によりまして、観光シーズンを前にいたしまして、遊覧地あるいは旅行者の非常に多いような土地の飲食店業者を中心にいたしまして、慣習による検便ということを盛んにやってもらいたいという指示をいたしております。宮様等がお見えになりますと、通例そこに非常に多数集合して飲食する機会が出て参りすまので、これは修学旅行なんかでも同じでございますが、やはり通例の方式よりは、やや赤痢対策等のいろいろな方式を濃厚にやるようなのが一つの慣例になっております。それに基づいて私は山形県当局がやられ、同時に十九条の規定というものを発動するかしないかということは、府県知事の一つ考え方でござ  いますので、県当局はその赤痢対策の通牒に基づいてやったものであるというふうに申しておりますが、あるいはそのときに、十九条の発動によって健康診断を実施したというふうに形式上は考えておるかもわからないと思います。この点が実は私ども県当局から明瞭にそういうような連絡がございませんでしたので、ただいまお答えしましたようなことで、はなはだ申しわけないと思います。
  138. 西村力弥

    西村(力)委員 重ねて申しますが、県議会で知事の答弁は、伝染病予防法第十九条に基づいてやったんだと、はっきりこう言っております。それからその検便に至るまでの経過といたしましては、県の係員の予防課長ですか、それが保健所の予防課長を二回にわたって集めまして、高松宮が来県されるそのスケジュールに基づいて、どこそこに泊るからここはいつ二回、厳重に検査をやるように、こういう工合に指示し、文書によってもその指示をしておるのです。ですから、これは今厚生省当局がそう仰せられますが、これは明らかに県としては伝染病予防法の第十九条に基づいてやった。こういう工合に実際の運び方から言うても、また議会の答弁から言いましても、これは間違いないことだと言わざるを得ないと思うわけであります。ですからそれをあなたの方では、県がはっきりそう申しておるのを否定されるのでありますが、そのところはやはり認めざるを得ないじゃないかと思うのです。認めた場合に、その十九条の適用というものは、宮様がおいでになったときにやはりその通りに適用されるものだという合に考えられるものかどうかということを答えてもらいたい。私は今そういう質問をしておるわけなんです。
  139. 高部益男

    ○高部説明員 先ほど申し上げましたように、宮様だから特段に十九条一項の一号を発動するというふうなことは現在まで別に私どもとして防疫当局に指示したこともございません。宮様等がお見えになりますときには、事実問題としていろいろなそういうふうな事件が従来ともよく起こっておりますので、一般的に予防措置を強化してほしいというふうなことは就学旅行等を含めまして昨年度の赤痢対策推進の場合には伝えてございます。
  140. 西村力弥

    西村(力)委員 この検便は肘折というところの旅館に泊られたときには家族、女中、番頭、料理人、それから旅館外のとうふ屋、そば屋を含めまして三十人、それから酒田の菊水ホテルに泊まられたときには十三人、鳥海山の山小屋では七人、湯沢町というところの食品関係者、これは一般の商店が四十九人、吹浦の郵便局員が二十一人、それから営林署の職員が三人、湯沢というところのすし屋が二人、合計七十五人、それから湯野浜では家族、番頭、調理人、そういう者で大体二十人ですか、こういう工合に全部実施しておるのですが、これはさっき申したように、予防課長を二回にわたって招集して、宮様がおいでになって、こういうスケジュールで鳥海山のスキーを楽しまれる、防疫にあたっては前回と違うぞ、こういうきつい指示を出した。前回と違うということはどういうことかと言うと、前年赤倉というところに泊まられたときに宮様とその他の人々が下痢症状になった、それでおそれ多いことであったと、こういう工合に考えたわけです。しかし行政処分にも何にもしないで、宮様にはおわびを申し上げて済んだ。今回は違うぞ、こういうようなことできつい指示を出した、こういう経過でこの事件というものは発生しておるのですよ。私はここの保健所の職員のやり方が適当でない点もあったかもしれませんけれども、それよりも伝染病予防法十九条というものが、宮様がおいでになったということによって、そのままそこに同じように適用される、そうしてそういう行政系統の命令が強まって、こういう事態が発生するところに一番問題があると思うのです。ですからそういう点をお尋ねしておるわけなのでございまするが、そうしますと、あなたは旅行シーズンになると、一般的に接客業者、食品業者については防疫の措置をとるのだという指示をしておると言うが、今回は泊まられる旅館と関係者だけですから、それは一般的な方法ではないということははっきりするわけです。やはり特定の宮様がおいでになるその周辺の者に対して防疫措置をとる、こういうことは出違いないことだと思うのです。でありますが、結局伝染病予防法の十九条というものが、宮様がおいでになったということによってそのまま発動されるようなものとは違うのだということ、緊急性のものだということをあなたはおっしゃった、その通りでよろしいだろうと思うのです。そうしてまた宮様がおいでになったから、特段に防疫措置をやるのでなくて、一般旅行者も含めてそういうことをやってもらいたいということを指示しているのだ、こういう答弁でありますが、その通りでよろしいのでございますか。
  141. 高部益男

    ○高部説明員 その通りでございます。
  142. 西村力弥

    西村(力)委員 そうしますると、今回のやり方は、厚生省指導の方針からいいますると度を過ごしている、さように断定せざるを得ないということになってしまうだろうと思うのです。  それでその次に問題になりますのは間接検便、普通の場合ですと間接検便ですが、直接検便ということもこれは適確性を求めるために必要な場合もあると思うのですが、その場合の方法としましては、どうでしょう、やはり自分で取るというような工合にできないものか、直接検便であっても部屋のすみあたりにびょうぶを置いて、あなたこの棒で取ってこいという工合にできないものか、それからまた新聞なんかによると、形が四つんばいという表現をされております。ところが今の答弁によりますと、横臥してもやったということ、事実一回目は変な形をさせましたけれども、二回目からは横に寝せて取っておる、こういう工合に実際やり方が変わっておるらしいです。だからそれでもできるのだ。それよりいいのは、自分で取るのが一番いいのじゃないか。取ってくると他人のものを持ってくるかもしれませんが、一つの部屋の特定されたところで、そのびょうぶの陰でやらせれば、それが結局一番いいと思うのです。そういう方法上の問題としては、科学的、医学的にいうとどういうのがいいのか、またそういう医学的な問題は少し不備であっても、羞恥心という一般的なそういう問題からいいますと、自分で採便するということは不可能かどうか、それはどうですか。
  143. 高部益男

    ○高部説明員 ただいまお話を受けました点は、私どもも常日ごろいろいろそういうふうな直接採便に伴う各種のトラブルがございますので、なるべく穏当な方法で直接採便を必要とする場合にはやってもらいたいというふうな話を続けておるわけでございますが、そのうちの一つの具体的な方法として御指摘のような方法も確かに検便の目的を達し得るならば妥当かと存じます。ただそういうふうな方法によりまして、場合によりますといろいろな間違いを起こす場合もございます。それはやはり事柄と申しますか、状況の非常にむずかしいような場合もございますので、ごく最近もある地区におきまして大集団発生がありましたときに、一部の住民、これは中学生だったと私は思いますが、そういうふうな勧奨をいたしまして、採便方法をやりましたところ、ほかの住民からはかなりの菌の検出があったにかかわらず、そこの中学生集団からは一名も出てこなかった。これはあるいはそれ以外の事情もあったのかもしれませんが、そういうようなこともありまして、時と場合によってはそういう方法もとり得ない特段の例もあろうかと思います。
  144. 西村力弥

    西村(力)委員 私が言うのは、間接検便ならそういうことがあるかもしれませんが、直接検便の場合の方法として自分で取るということ、きれいに消毒した棒を与えて、そうして隠れたところで取ってもらって持って来てもらうのですから、それは間違いなく本人の便だということがわかると思うのですが、そういう方法が可能でないかどうかということです。
  145. 高部益男

    ○高部説明員 可能でございますし、なるべくそういう方法で直接採便を必要とする場合にはやらせたいというふうに思っておるわけでございます。
  146. 西村力弥

    西村(力)委員 鶴岡の保健所の職員に聞きますと、直接採便、自分で取るということは不可能だということを聞きましたが、あなたはお医者さんでございますかどうか、今まで自分で直接に取らせて間違いない、そういう方法で取らせて検便するという実例がございますか。
  147. 高部益男

    ○高部説明員 これは各地で直接採便を必要とする場合に試みてやはり成功しておる場合もございますので、必ずしも不可能だとは存じません。また私自身が、今御質問がありましたように百医者かどうかということですが、私もやはり医師でございます。防疫に現場で従事しておりましたときにもそういう方法をとってかなり——教育は必要でございます、事前の具体的な教育は必要ですが、それがよくわかってもらえばできない方法ではないと思っております。
  148. 西村力弥

    西村(力)委員 ところで、それでは人権擁護局長にお尋ねしますが、あなたの方でも調査をなさっていらっしゃると思うのですが、その結果はどういう工合になっておりますか。またその御判断はどういう工合でございますか。
  149. 鈴木才藏

    ○鈴木(才)政府委員 私の方は朝日新聞の記事を見まして、早速所管の山形地方法務局に指示をいたしまして、一応調査を命じ、その結果二十六日、二十七日にわたりまして山形地方法務局の人権擁護課長、係長が現地に参りまして調査をしております。正式の文書の報告はまだ受けておりませんが、電話報告で大体の経過は報告されております。それによりますと、お聞きした方は被害者側として五名、それから鶴岡の保健所の職員四名、山形衛生部予防課長、この方々からいろいろ事情をお聞きしたわけであります。もうすでに内容御存じかもしれませが、私の方の中間報告によりますと、まず昭和三十五年三月三日付をもちまして山形県衛生部長から鶴岡、新庄、酒田の各保健所長あて高松宮来県に伴う防疫措置についてと題する通達が出されました。その通達の中で検便を要する者として、まず宿舎、休憩所の料理人及びその助手並びに給仕人等、食事、食品に直接、間接携わる者全員、さらに食品材料納入者らが対象とされまして、検便を二回実施するように指示されたのであります。県の衛生部は、右各保健所の予防課長を集めまして、右通達実施の事前打ち合わせを行なったのであります。鶴岡保健所ではこの指示に基づきまして、第一回は三月十六日、第二回は三月十九日の検便計画を立てたとのことであります。その検便の実施状況でありますが、まず鶴岡市の湯ノ浜一番地、株式会社亀屋ホテル二階七十一号室におきまして、鶴岡保健所の予防課長ほか二名の職員が受付事務に当たりました。その隣室の七十二号室の八畳の間におきまして、保健婦一名、男子検査技術者一名が直接採便を行なったのであります。採便の方法は、八号の間に座ぶとん一枚を置きまして、そこに両ひざをつかせ、両手を前につかせ、婦人に対しては、保健婦が採便管を挿入して便をとり、採光の関係で被採便者の臀部を窓の方に向けたとのことであります。次に第一回目の直接採便を受けた者、特に未婚婦人の方から、採便の方法につき不満の声が起こりましたので、第二回目からは第一回の前述の方法を改めまして、ふとんを敷きまして、横に寝かせて直接採便を行なったのであります。新聞記事にあります、直接採便を受けた者が泣き騒いだり、便所に逃げ隠れたという事実は現在のところ認められない。婦人、特に未婚の者が、男子職員のいる部屋で直接採便を受けたことを憤慨しておる。検便を受けました延べ人員は次の通りであります。三月十六日に十六名(男子六名、女子十名)三月十九日には二十名、内訳は男子六名、女子十四名、三月二十二日に六名、内訳は男子二名、女子四名、三月二十四日一名、男子一名であります。計四十三名ほどになります。ただ、右の人数は、二回検便を受けた者も含まれておりまして、実員は二十八名、そのうち男子十名、女子十八名、こういうふうになっております。けれども、この数字につきましては、電話報告でありますので、確実な数字であるとは申しかねるのであります。その他鶴岡保健所におきまして、検便を強制的に実施したという事実はなく、三十五名の予定者のうち、七名がこれをきらって受けていなかった事実があるのであります。大体以上のような報告を受けております。  今までの中間報告によりましても、この女子に対する採便の方法、その姿勢、その他特に陽子の保健所の職員がそばにおったということ、そういう私室でやったということ、やはり女子の恥辱感といいますか、恥しい思いを相当さしたのではないかと思っております。人権尊重の立場から、この採便の方法というもの、その部屋のあり方その他につきましては、相当考慮を要するものであるというのが現在の結論であります。
  150. 西村力弥

    西村(力)委員 大体そういう方法で第一回目は行なわれたということになっていますが、私たち兵隊に行ったときに、やはり四つんばいになって、やってもらうときには口をあけと言われる。口をあくと括約筋があく、こういうことになりますから、おそらくそういうことで口をあかせられたのじゃないかと私は想像しているのです。そういう格好を、若い婦人なんかは口をあいているとますます——想像をたくましゅうすると変なことに感ぜられるのですが、その点については、人権擁護局としてはこれ以上そういう調査をなさるつもりでございますか。
  151. 鈴木才藏

    ○鈴木(才)政府委員 今までのはまだ中間の報告でございますので、どの程度までまた調査するか、山形県の方の課長の考えにまかせております。報告のいかんによりましては、やはり私の方からこういう点とこういう点と、また指示することもあると思います。
  152. 西村力弥

    西村(力)委員 では厚生省にお尋ねしますが、今ああいう工合に人権擁護局長から話された。その方法としては、ちょっと行き過ぎの点もあると思うのですが、要は、やはり宮様がおいでになるからといって特段にこういうことをやらせる、こういう指示の仕方が一番問題じゃないかと思う。ですから、そういう点については、再度十分に行き過ぎのないように指示をし、かつまた、ただいまの防疫課長の話ですと、自分でもとれるということになれば、今後直接採便を必要とする場合においては、全部そういう方法を徹底的にとらせるという指導をしてもらわないと、やはりこういう問題が発生する危険性というものはいつまでもあるのじゃないか、こう思うのです。ぜひそのように一つお願いしたいと思いますが、いかがでありますか。
  153. 尾村偉久

    ○尾村政府委員 ただいまの御意見の通り、やはり行き過ぎのないよう十分一つ指導いたしたいと思います。それから採便の方法につきましても、原則として菌検査の目的を達するならば——常識から見まして一番協力してもらえる形を第一原則にいたしまして、その順序でやる。ただ、直接採便でも本人に渡して措置できますが、子供の場合、小さい子供、幼児とかあるいはごく老人、さらに、従来多数例があるのでありますが、長い便泌をしている方で、何としても肛門に採便管を入れてもらわないと菌がとれぬという特殊の例の場合には、親ないし本人の納得によりまして、ほかの方法では何としても検査できぬということをわかっていただいて、それは依頼という形で、ちょうど医師が健康診断をする場合に、これも無理にするのではなくて、患者の信頼感で引き受けて診察するわけで、そういうような形で、これはぜひ良識的にやるように厳重に指導いたしたいと思います。なお、昨日から全国の予防課長会議を招集いたしまして、昨日も、今お説の通り厳重に指導いたしましたので、今後はそういうことのないように努めていく、こう存じております。
  154. 西村力弥

    西村(力)委員 それから湯ノ浜の場合は、主人に話をしてその承諾を得たことによって全部の従業員が包括的に承認した、こういう工合にみなしてやったということになっている。今人権擁護局の報告によりますと、個々人みな一人々々承認を得たということになっておりますが、だんなさまがよろしいというからやむを得なかろうというような考え方のようであります。ああいうところは御承知のような占い仕組みになっておりますから、女中さん方は弱い立場におりますから、だんなさまがよろしかろうと言ったらやはりやむを得ないということになり、それが暗黙に承認したという形にとられるかもしれません。こういう包括承認ということは決して正しいものではない。そういう立場で承認を受けたという主張をされることは間違いではないか、こう思うのです。この点に対する見解と、それから、それを拒否した場合においてはやることはできない、間接検便の方法をとらざるを得ない。ただ、その場合に、強制的になし得る場合があるのかどうか、そういう点についての見解をお尋ねいたします。
  155. 尾村偉久

    ○尾村政府委員 これはあくまで個々の承諾を得ることが必要でございますし、しかも、先ほど御説明いたしましたように、個人によって、もっと簡単な方法で十分目的を達する場合吉もある。子供とかあるいは今のように自己採便が不可能の場合、あるいは間接採便では非常に工合が悪い、自己採便でも非常に工合が悪いというような場合等、個々に違いますので、やはり原則的なやり方から始まりまして、十分に個々の納得と承諾を得る、こういうことでないと、こういうような直接他人がやる、棒を突っ込む採便ということは、これは包括的には不適当と考えますので、今後はさようなあやまちのないように指導いたしたいと思っております。  それから拒否の場合でございます。これは先ほどお話のございました十九条をたとい発動いたしましても、これは健康診断——とにかく検便をするということでございまして、間接採便でも、これはもう健康診断であり、また培養の目的を達するわけでございますから、ぜがひでもこの方法でなければいけないということで、その方法自身を拒否した場合、法律に基づいてやるのだというようなことは不適当でございますから、あらゆる方法を講じまして、真の検便という目的を達するということで協力を求める、こういうことで一向差しつかえなく大体済むと存じております。
  156. 西村力弥

    西村(力)委員 ほんとうに伝染病が多発して、自分自身が病気を持つかどうかという不安な場合には、これは進んで直接検便でやってもらうようになるだろう、こう思うのです。ですから、今仰せられたような工合に、伝染病予防法に基づく強制力を発動するなんということは、これは法律からいうても正しくないでしょうし、あくまでも、やはり個々人の承認に基づいて、自発的な意思に基づいてやっていく、こういうような方法指導していただかなければならぬじゃないか、こう思うわけなんです。それにつきまして、厚生省が出しておる行幸啓の防疫要領というのがありまするが、この行幸、行啓という言葉が今でも存在するかどうか、私自身わかりませんけれども、この要領の範囲というのは天皇とか皇后様とか、そういう方だけでございますか。
  157. 尾村偉久

    ○尾村政府委員 これは五年前に各府県の防疫担当者が実質的な知識の便宜のために、防疫課におきまして編さんして、民間の出版社から、一般の有償の普通の本として発行いたしまして、参考書として出したものであります。その中にあります行幸啓の事項につきまして、当時私おりませんでしたので、どの程度議論したものかよくわかりませんが、当時関係した者の話を聞きますと、天皇、皇后、皇太子様、このお三方を行幸啓の防疫ということで考えて編さんした由でございます。従いまして、ただいまの御質問につきましては、そのお三方のために当時できたものである、こう存じておりまして、これはそれぞれの地方の技術官が参考書として相当利用しております。これは決して行幸啓だけではなくて、数冊に分かれておる大部の技術的な辞書のようなものであります。ただ、今のような形で当時編さんされたものでございますが、地方によりまして、これを広く解釈したりいたしまして、これは通達でも通牒でもなければ何ら規定でもないのでございます。あくまで参考書なんでございますが、これを適当に活用しておるという向きもなきにしもあらずでございますが、やはりこれはいろいろと間違いのもとになる、またこの内容自身がたといお三方の問題でありましても、最近の伝染病に対する医学の進歩その他の学理のわかってきた点から見まして、不適当な点が多々ございますので、今のところでは、もうこの条項は廃棄する、かように存じております。これは決して尊敬し得るものではなくて、あくまでも公衆衛生の立場で学問的にもう不適当である、かようなこともございまして、こういうような必携の辞書の中にかような形で入っているのは不適当である、こういうふうに存じておりますので、今後は、むしろこういうような公衆衛生上の問題と国民の尊崇心と学理と両方が結び合ったような、ごっちゃになったようなものが、かえって混乱のもとでありますので、これは別途に考え、公衆衛生上は、あくまで合理的に、学問的に、必要なことを網羅して辞書に載せておく、こういうふうにいたしたいと思います。
  158. 西村力弥

    西村(力)委員 今お答えのあったような工合に私たちも考えられるのですが、私たちとしましては、今回の事件について考えましても、ことさらに重大に考えて宮様とか天皇御一家とか、そういう人々を国民から離してしまう、むしろ逆な結果を生むんじゃないか。もちろん国民感情の中に、ことに旅館業者なんかは、宮様なんかがお泊まりになったときに、そこに不幸にして赤痢とかその他のものが発生したとなると、これはその店の信用にもかかわりますので、そういう考え方からも、慎重に慎重を期するのでありまして、法律的な強制力をどうこうというような、あまり行き過ぎたことをやるとかえって逆効果が生まれるんじゃなかろうか、こう思うわけなんです。これについて宮内庁の方は、この新聞の談話なんか拝見しますと、宮内庁長官は、「いろいろひどいことがあるので、そのつど指導しているが、なかなかなおらない。困ったことだ。厚生省や県当局を追及しても、知らぬ存ぜぬで、結局うやむやになることが多い。迷惑な話だ。」こう言っておる。高松宮自体が言われたことも、そういう趣旨のことが新聞記事に載っておりますが、これがなかなか跡を断たない、これに困った困ったと仰せられるが、強い意思表示を何か具体的になさったことがあるかどうか。今回これだけの問題になりまして、鶴岡の保健所には全国から山ほど抗議文が今届いておるのです。鶴岡の保健所はお気の毒なんだ。指示でもって、法規的には少し間違ったかしらぬけれども、やはりまじめに、科学的に誤りなかろうというわけでやった。それが新聞に出たために、全国からすばらしく抗議文を受けて、ちょっとノイローゼぎみになっておるわけなんですけれども、こういうことを機会にして、はっきりこういうばかくさい問題を防ぐ、こういう工合にいかなきゃならぬのじゃないかと思うのですが、宮内庁の方としては、今まで迷惑だ迷惑だと、ただ言われておるだけじゃなく、具体的にどうなさったか、今回を契機としてどういう意思表示をされるか、この点について宮内庁の考え方を聞かしてもらいたいと思う。
  159. 橋本健寿

    ○橋本説明員 次長が事故のため私かわってお答え申し上げます。  この行幸啓防疫実施要領が出ましたときに、私まだおりませんでしたが、前任者の総務課炎が厚生省の担当課の方に参りまして、これは相当きついものでありますから何とか緩和できないだろうかというふうな要望をしたところが、なかなか言うことを聞いてもらえなかったということを聞いております。私の方といたしましては、山形県でああいったことがございましたので、その結果人権擁護局の方でいろいろと御調査になっておられるそうでございますので、その結果に基づきまして検討したいと考えております。
  160. 西村力弥

    西村(力)委員 迷惑だと仰せられるならば、そういうことが完全に払拭されるように積極的な意思表示なり何かこの際なさるべきだと思うのですが、これによりますと、厚生省や児当局は知らぬ存ぜぬと逃げると言っていますが、これは新聞記事でありまするから、これをとって強く責めたりするわけじゃないですけれども、これじゃ、幾らやっても繰り返し繰り返し同じようなことが発生してくるんじゃないかと思うのです。宮内庁としましても、ほんとうに宮家の、何といいますか、国民の尊敬というか、それを維持するためには、決して離すのが正しいのではなくて、近づけるのが、親近感を深めるというのが正しい方法だ、こう考え措置していくのが正しい、こう思うのですが、いかがでしょうか。
  161. 橋本健寿

    ○橋本説明員 私の方は、行幸啓がありまするたびに、いろいろ県と打ち合わせをいたしますが、そのときにくどいように、実はこういうことを申しております。あまり大げさにならないように、あるいは行き過ぎたことのないように、そういったことのために皇室と国民が離間するということがあってはならないと考えて、いろいろとそういった点を要望しているわけであります。そのつど実は要望して参ったわけであります。  強い意思表示をするかどうかということでございますが、私の方といたしましては、実はその権限も、指揮監督権といったものもございませんので、要望する、お願いをするということになろうと思います。その点につきましては、いろいろ目下上司も相談しておられると思います。
  162. 西村力弥

    西村(力)委員 俗的な言葉で言うと、ありがた迷惑だということになるわけですが、そういう工合に宮内庁が意思表示しても、そういう工合に、次から次にあまり大事にし過ぎる事件が起きるということは、一体どこにあるのか、大臣はどう考えますか。そういう工合に、一方においてはそんなに丁寧にされたんじゃありがた迷惑だということを言うておるのに、現実にはやはり御丁寧過ぎる扱いになってしまって、事件まで発生した。これが繰り返されている。その根源は一体どこにあるんですかね。
  163. 渡邊良夫

    ○渡邊国務大臣 先ほどうちの公衆衛生局長からも申しましたように、いわゆる実施要領でございまして、命令でも通牒でも何でもない、こう申しておるわけでございます。私どもも、戦後のいわゆる日本の風潮からいたしまして、国民と皇室とはますます親近感を持たなければならない、こういう立場におきまして、いろいろと心配をしているわけでございます。特に厚生省は、宮家あるいは宮家に類するところの高貴の方々が、いろいろの外郭団体の会長や総裁などをやっておりまして、私どももそれによく随行といいますか、命令が——とにかくありまして、時おり出かけるのでございますが、宮家におかれましても、できるだけそういう、ただいま橋本総務課長が申されましたように、大げさなことは避けてもらいたい、私どももそのような気持で指導はしておるつもりでございます。
  164. 西村力弥

    西村(力)委員 今までも一緒に会食した人は十数人ばかりおりまして、それからつれづれのままに宮様を含めてマージャンをなさった。こういう会食している人々、マージャンをしている人々、そういう人々の健康診断は全然なされていないで、旅館従業員の健康診断あるいは手すりの果てまで消毒する。一方は野放しにされている。これではやはりしり抜けじゃないかと思うのです。しかし高松さんのお気持としますと、やはりほんとうに平民的に、マージャンもつき合う、一緒に会食して談笑なさる、今宮内庁が要望せられておるような趣旨にいかなければならぬ。この根本は、やはり私たちとしましては、大臣は否定されるかもしれませんけれども、少しこのごろ、憲法改正は天皇を元首とするというようなことを一つ書こうという気持があるわけですね。そういう動きが一番中心になっておるんじゃないかということが一つ。  それから第二番目は、保健所の権限という問題について、やはり厚生省としては相当検討を要するんじゃないか、こういうことを私は考えるのです。相当の権限を持っておる。旅館業者あるいは食料品業者、そういうものに対する権限というものは相当強い。これは環境衛生、食品衛生、そういうものをあやまちなからしめるためには、相当の権限を付与し、やっていかせるということが正しいかもしれませんが、その権限について、あまり強まっている点の是正なり、あるいは根本的にいうと、権限を持つ者のとかく陥りやすい官僚主義的な弊というもの、これを矯正するという方向、やはりこういうふうな方向にいかなければならぬ。私は問題点は、現在の逆行する、憲法を改正して天皇元首をまた取り戻そうとするような一つの動き、それからもう一つは、技術的に保健所の認許可の権限、それの執行のあり方、こういうところに問題があるのではないか、こう思うのです。まあ先の方はとにかくとしまして、あとの点の保健所の権限に対して検討を加えるという点については、一体どういう工合にお考えになりますか。部長でもけっこうですが……。
  165. 尾村偉久

    ○尾村政府委員 ただいまの保健所の権限でございますが、今回の事件のようなことが保健所の権限のために、特に直接からだに触れての採便が、保健所の権限に基づいてするようにできているというわけではないと存じております。またさようには与えてないわけでございます。ただ保健所法に基づきまして、並びに保健所に知事から委任を受けておる営業の諸法とか、こういうような認可、許可それから監視の権限等は確かにありまして、これによりまして公衆衛生上の必要な監視、許認可をしておるわけであります。これと、今回のような伝染病予防法の検便、要するに保菌者の発見ということとこれが結びつきまして、決してこの検便は、からだに触れる強制措置を保健所の権限として強制したということではないのでございますが、対象の者がふだん別な意味で許可権等を握られておる人でありますと、どうしても反対の意向あるいは意見を言いにくい、そういうことが生じやすいのであります。従いまして、保健所の方で、そういうようなことのために、何でも言うことが一番簡単に、しかも良識的に考えますと、いろいろ人のいやがることでも簡単に、はいはいとのまれやすい、こういうことで、つい必要な納得をしてもらうとか、あるいはもっと良識から見て、まずやるべきこと、たとえば間接検便から始めるというようなことをとかく忘れてしまいまして、どうしても便利な方に走りやすい、こういうことが誤りのもとと思いますので、その意味でも保健所の権限を、現在でも直接保健所長にあるというわけではないので、さような点が誤りやすいので、われわれといたしましては、保健所の技術的な、今の必携のような、技術を中心にした指導の要領も必要でございますけれども、これは新しく改定もし、新しい学理はやはり十分利用しなければいけませんが、やはり住民に接するわけでございますので、保健所の良識ある判断、これの方の指導が、実は私どもの方も府県もどうしても忘れがちになりますので、実は今編さんを進めておるのでございますが、病院管理学というものと同じように、保健所運営管理要綱というもので、そういう住民との接触面の指導というものを今編さん中であります。かような形で県も指導し、県からも保健所を指導してもらう、さようなことによって大体こういうようなあやまちは起こらぬ。別に法律それ自体が起こしやすいようにできておるとも存じません。むしろその運用にあるんじゃないかと存じておりますので、さように改めたいと思います。
  166. 西村力弥

    西村(力)委員 私もこの厚生関係はよくわかりませんけれども、やっぱり保健所の監督下にある業者から見れば活殺の自由を握られておる、こういう工合に受け取って保健所と対する、こういうことがあるんじゃないか。今お話のような気持で具体的にそういうことが進められるとするならば大へんけっこうなことじゃなかろうか、こう思うわけなんです。それでかりに今回高松さんがおいでになって、保健所としても旅館としても細心の注意を払ったが、それでも何か下痢を起こされたとかなんとかという場合に、役人としてそのことを考えるとき、一体事故責任がどうくるかということ、その場合には一体どうなりますか。
  167. 尾村偉久

    ○尾村政府委員 これは普通の予防措置でやる場合に十分な注意をいたしまして、それでもやはり事故は起こる場合があるわけであります。いろいろな手だての中で起こり得るわけでございます。そのために特別に宮様にそういう事故を起こしたからということで特別の処分とか、さようなことはむろん児も考えておりませんでしょうし、私どももさような方針は別にとっておりません。
  168. 西村力弥

    西村(力)委員 それではこれでやめにしたいと思いますが、行幸啓の防疫実施要領を廃棄されるというような点、それから伝染病予防法の第十九条というものがあっても、これは普通一般の伝染病蔓延のおそれのある場合で、宮様方がおいでになったからといって、それが適用されるものではないかということ、それから真接採便をやらざるを符ないような場合においても、方法においては自分で採便する、そういうようなことを勧奨したいというような点、いろいろお話を承りましたが、ぜひそういう工合にして、気軽に宮様たちがおいでになるということをことさらに騒ぎ立てて、そうしてこうした大問題が起きることがないようにやっていただかなければならない。ただこの根源は、山形県の当局が強力に指導したというところに問題がある。しかしその根源はやはりあなた方の厚生省にあるのじゃないか。そう山形県だけが指導が悪いのだ、こうのがれないでもらいたい。そういう基本のあなた方の指導のあり方がそうせしめたのだという、こういう立場を、まあ少し不満でもあるかもしらぬけれども、とってもらって、そうして今いろいろお答え願ったような点を早急に実施せられまして、再度こういう問題が起きないように一つお願い申し上げたい、こういうことを申し上げまして私終わります。
  169. 永山忠則

    永山委員長 本日はこれにて散会いたします。     午後五時五十四分散会