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1960-03-29 第34回国会 衆議院 社会労働委員会 第22号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十五年三月二十九日(火曜日)     午前十一時十四分開議  出席委員    委員長 永山 忠則君    理事 大坪 保雄君 理事 田中 正巳君    理事 八田 貞義君 理事 藤本 捨助君    理事 滝井 義高君 理事 八木 一男君    理事 堤 ツルヨ君       秋田 大助君    池田 清志君       大橋 武夫君    亀山 孝一君       鴨田 宗一君    川崎 秀二君       倉石 忠雄君    齋藤 邦吉君       志賀健次郎君    中山 マサ君       濱野 清吾君    早川  崇君       古川 丈吉君    柳谷清三郎君       山下 春江君    亘  四郎君       赤松  勇君    伊藤よし子君       大原  亨君    小林  進君       五島 虎雄君    多賀谷真稔君       戸叶 里子君    中村 英男君       佐々木良作君    本島百合子君  出席国務大臣         労 働 大 臣 松野 頼三君  出席政府委員         警  視  監         (警察庁警備局         長)      江口 俊男君         海上保安庁長官 林   坦君         労働政務次官  赤澤 正道君         労働事務官         (労政局長)  亀井  光君         労働基準監督官         (労働基準局         長)      澁谷 直藏君  委員外出席者         議     員 五島 虎雄君         労働基準監督官         (労働基準局労         働衛生課長)  加藤 光徳君         専  門  員 川井 章知君     ————————————— 三月二十五日  委員池田清志辞任につき、その補欠として世  耕弘一君が議長指名委員に選任された。 同日  委員世耕弘一辞任につき、その補欠として池  田清志君が議長指名委員に選任された。 同月二十八日  委員多賀谷真稔辞任につき、その補欠として  中嶋英夫君が議長指名委員に選任された。 同日  委員中嶋英夫辞任につき、その補欠として多  賀谷真稔君が議長指名委員に選任された。 同月二十九日  委員加藤鐐五郎君、藏内修治君、河野孝子君及  び河野正辞任につき、その補欠として濱野清  吾君、秋田大助君、鴨田宗一君及び戸叶里子君  が議長指名委員に選任された。 同日  委員秋田大助君、鴨田宗一君、濱野清吾君及び  戸叶里子辞任につき、その補欠として藏内修  治君、河野孝子君、加藤鐐五郎君及び河野正君  が議長指名委員に選任された。     ————————————— 三月二十九日  けい肺及び外傷性せき髄障害療養等に関する  臨時措置法の一部を改正する法律案滝井義高  君外十三名提出衆法第二四号) 同月二十六日  けい肺及びせき髄障害者保護に関する請願(  島上善五郎紹介)(第一五一二号)  地方公営労働関係法改悪反対に関する請願(下  平正一紹介)(第一五五二号)  同(多賀谷真稔紹介)(第一五五三号)  同(島上善五郎紹介)(第一七二三号)  ILO条約八十七号の即時批准等に関する請願  (下平正一紹介)(第一五六四号)  同(多賀谷真稔紹介)(第一五六五号)  動員学徒犠牲者援護に関する請願谷川和穗君  紹介)(第一五六六号)  同外一件(綾部健太郎紹介)(第一六一二  号)  同外七件(池田清志紹介)(第一六一三号)  同外三件(亀山孝一紹介)(第一六一四号)  同(倉成正紹介)(第一六一五号)  同外五十六件(竹山祐太郎紹介)(第一六一  六号)  同(谷川和穗紹介)(第一六一七号)  同外十四件(床次徳二紹介)(第一六一八  号)  同外十件(中村三之丞紹介)(第一六一九  号)  同外四件(平野三郎紹介)(第一六二〇号)  同外五件(前田正男紹介)(第一六二一号)  同外四件(大石武一紹介)(第一七三〇号)  同外二十四件(田中龍夫紹介)(第一七三一  号)  同外三件(大橋武夫紹介)(第一七三二号)  同外二百四十七件(田口長治郎紹介)(第一  八五六号)  同外五件(八田貞義紹介)(第一八五七号)  同(穗積七郎紹介)(第一八五八号)  同外三件(野田武夫紹介)(第一八五九号)  一般職種別賃金の増額に関する請願小川平二  君紹介)(第一五七八号)  医療施設不燃化等建築費助成に関する請願(  中村三之丞紹介)(第一六二二号)  同(小林絹治紹介)(第一七三四号)  同外一件(高石幸三郎紹介)(第一八六〇  号)  同(原健三郎紹介)(第一八六一号)  同(野田武夫紹介)(第一八六二号)  酒害対策費に関する請願前田正男紹介)(  第一六二三号)  同(山中吾郎紹介)(第一八六三号)  中小企業退職金共済事業団の組織運営改善に関  する請願小川平二紹介)(第一六二四号)  日雇労働者健康保険法の一部改正に関する請願  外一件(伊藤よし子紹介)(第一七三三号)  酒癖矯正施設設立に関する請願山中吾郎君紹  介)(第一八六四号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  労働者災害補償保険法の一部を改正する法律案  (内閣提出第三号)  じん肺法案内閣提出第四号)  けい肺及び外傷性せき髄障害療養等に関する  臨時措置法の一部を改正する法律案滝井義高  君外十三名提出衆法第二四号)  労働関係基本施策に関する件      ————◇—————
  2. 永山忠則

    永山委員長 これより会議を開きます。  内閣提出労働者災害補償保険法の一部を改正する方立案及びじん肺法案の両案を一括議題として審査を進めます。  質疑の通告がありますので、これを許します。滝井義高君。
  3. 滝井義高

    滝井委員 じん肺法案労働者災害補償保険法の一部を改正する法立案の両法律案について質問しますが、まずじん肺法の方から質問いたしたいと思います。  今までけい肺特別措置法なり臨時措置法なりがあったのが、今度ははっきりと、じん肺法案労働者災害補償保険法の一部を改正する法律案というふうに二本立てになって出てきております。じん肺というような病気労働省当局も御存じのように、急に起こるものではないわけです。ほこりの立つ、しかも特殊なほこりの立つ仕事場仕事をしておるうちに、自然にじん肺になってくる、こういうものです。一方この法律と姉妹的な関係にある労働者災害補償保険法対象では、今までわれわれがけい肺一緒にしておりました脊髄骨折、これは一つ事故で突発的に起こってくる負傷なんです。いわばその仕事に従事することによって、いつの側にか徐々に病気に冒されるというものと、突発的に起こってくるものとが、一つ法律の中で取り扱われるにはいろいろな矛盾があると思うのです。一体この二つ矛盾というものを、労働省当局が過去において法律運営する上にどういうことを御経験になったのか、それを一つお教え願いたいと思うのです。
  4. 澁谷直藏

    澁谷政府委員 四年前に特別保護法制定されました際に、最初に問題となりましたのは、けい肺患者についての対策が問題となったのでございます。御承知のように当時の医学の段階では、けい肺患者はもう不治の病であるというふうに言われておりました。ところが労働基準法なり労災補償保険法によりますると、三年間の治療期間が過ぎますると、あと打ち切り補償によって、事後の補償の責任が解除される。従って不治の病といわれておるようなけい肺患者についての長期療養措置がなされておらなかった。これは人道上も放置することができないというので、特別保護法制定考えられたわけでございます。その過程におきまして、同じような状態不治の病、それに近い状態だといわれて、あとから追加されましたのがせき損患者でございます。そのようないきさつから、けい肺患者にプラスして、せき損患者が加えられて特別保護法でそれの手当がなされたわけでございます。それがそのまま一昨年の臨時措置法に引き継がれた、こういうことで現在まで至っておるわけでございます。
  5. 滝井義高

    滝井委員 その経過をお尋ねをするのではなくて、過去四カ年間の法律運営の上でアクシデントとして起こってくるせき損と、それから徐々にその仕事場におれば、ほとんど必然的に、ある程度の体質的な相違はあるにしても、そこにおれば大体の人はそういう状態になってくるというものと一緒法律運営してきたのだが、そこであなた方が運営の上で矛盾感じたことはないかという質問をしておるのです。
  6. 澁谷直藏

    澁谷政府委員 ただいま御質問のございましたように、けい肺患者はいわゆる職業病でございまして、粉じんを発散する作業場長期に働いておるために、いつの間にかいわゆるけい肺に罹患する、こういう症状であるわけでございます。これに対しましてせき損の方は、いわゆる偶発的な事故によって脊髄損傷という災害が起こる。両者の性質は全く異なっておるわけでございます。従ってこれに対する予防措置なりあるいは健康管理の点におきまして、両者は全くその性格を共にしておるという点で、特別保護法臨時措置法施行の中におきまして、その全く性格、中身の異なるものを同じ法律の中で取り扱っておったということにつきましては、理論的にも実際的にも、どうもそこには無理があるという感じを私どもは抱いてきたわけでございます。そこで今回の抜本的なその対策を講ずる段階におきまして、けい肺審議会中心として対策を御検討願ったわけでございますが、その結論といたしまして、従来のけい肺とそれからせき損というものは全くその性格を異にするものであるから、けい肺については特にその職業病という特殊な性格から、これに対する予防健康管理ということが非常に重大な問題である。従ってこれはせき損とも切り離し、また補償の問題とも切り離して、このじん肺予防健康管理について、それだけを内容とする単行法制定することが望ましいと、こういう結論がましたので、その答申の線に沿って、今回じん肺法案を提案いたした次第でございます。
  7. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、政府の力もはっきりとした矛盾をお感じになって一応単行法案というものをお出しになったところがこのじん肺法を見ますと、この前佐々木さんの質問に関連をして御指摘を申し上げたように、予防健康管理まではまあ至れり尽せりとまでは言わなくとも、これに相当のものが書かれておるわけです。ところか一たび療養、あるいはリハビリテーション、後保護というようなものになりますと、これは一行か二行しかないですね。二十三条のところに療養というのかあるわけです。それから三十四条のところに職業紹介及び職業訓練、それから三十五条に就労施設等のことかあるわけです。これだけで単行法か、まあじん肺法という形で出たのだけれども予防健康管理は十分に行なった、しかしなお依然として病人が出てくる、それに対する手当というものかこの立法には欠けておるのですね。底が抜けておる。その底の抜けたところは労災法という全く別個のものに持っていっておるわけです。そしてその労災法ではどうも一緒にしちゃいかぬというものが今度は一緒にされて出たわけです。それからせき損じん肺もみんなここで一緒にされておる、こういう矛盾が出てきておるわけですね。だからあなた方が今までの四年間の運営の上において、どうもこれはやはり何か特別のものにしなければいかぬのだ、アクシデントとそれから徐々にその職業につくことによって起こってくる一つ病気については、これは別個のものにしなければいかぬという考えじん肺法を作られたのだが、今度は源は違っておったのだけれども、流れていったらみんな海に注いだということでは——川ならばいいですよ、川ならば。しかしこれは人間なんですから、これではちょっと困るのです。あなた方はじん肺法という単独法お作りになった、そうだとするならば、こういう点に対して将来何かじん肺法の本来の精神に基づいて、一貫をして体系というものをじん肺法お作りになる考えですか。
  8. 澁谷直藏

    澁谷政府委員 ただいまも申し上げましたように、このじん肺という職業病は非常に特殊な性格を持っておる。従ってこれに対する予防健康管理、さらに療養、さらに配置転換、その過程における健康診断、治癒した者をどうするか、さらにそれについての健康診断を実施して、治癒した者については職場復帰なり、あるいはその職場復帰する前提としてのリハビリテーション施設整備というようなものは、一貫してこのじん肺法案の中でその対象として考えておるわけでございます。ただこの補償の問題になりますると、これはいわゆるその療養した場合にそれの必要な経費をどのような形で負担するかという金銭の負担の問題がすなわち補償であるわけでございますが、これは職業病であると偶発的な事故による場合とを問わずして、同じようにあるいは入院し、あるいは通院して医者にかかった場合に、その費用をどのようにして負担するかという問題でございますので、その方は一括して労災補償保険法の中で措置する、しかしながらじん肺予防なり健康管理健康診断、さらにアフター・ケアというようなものにつきましては、じん肺法案の中で一貫してこれを処置していく、こういう考え方をとっておるわけでございます。
  9. 滝井義高

    滝井委員 だから、そこにあなた方は矛盾感じないかどうかという点なんです。これは私がさいぜんから御指摘申し上げておるように、たとえばアクシデントの場合には、基礎になる賃金というものはその事故が起こったときには依然として今まで続いておった賃金の姿で断ち切られてくるわけです。ところが職業病の場合には賃金というものは、段階的にずっと下がってくるわけです。だんだん能率が悪くなるわけですから、たとえば潜水液にかかってくる、あるいは放射線障害にかかってくる。そうすると皮膚病ができて、だんだん能率が上がらなくなってくる。あるいはベンゾール中毒になると、だんだん貧血が起こって、仕事能率が悪くなってくる。けい肺だって同じです。その能率が二年、三年、五年とかかって悪くなってきたときに、もうお前はだめだ、これでお休みなさい、こういう形になるでしょう。その休んだときの三カ月の賃金基礎計算をされる場合と、元気で働いているときにアクシデントがぽっと起こったときとは、賃金基礎か大いに違うわけです。それが年金基礎になるというような考え方労災に持ち込んでくると、根本的な支障を来たすわけですよ。そういうところに、年金にしていく場合に賃金をもとにしなければいいですよ。人間が食える最低の生活の保障をやっていくんだ、賃金とは関係ない、こういう話が別に出てくるというなら、これはまた刑に考えようがあると思うのです。ところがあくまでも働いておったときの姿の賃金がその年金基礎になってくるというところに問題があると思う。そうしますと、そういうものを一つ労災の中にぶち込んでやられるということになると、これは同じ労災の中でも非常にアンバランスが起こってくる。これは元気で働いておるときに賃金が大企業中小企業の間でアンバランスがあったというなら、これはやむを得ないことなんです。これは元気で働いておるときの姿かそのままくるのですから、やむを得ないと思う。ところがこのけい肺というような一つ職業につくことによって起こってくる疾患と、アクシデントによって起こるせき損のようなものとか一緒状態ではめ込まれていくということに問題があるわけです。こういう点に対する矛盾といいますか、労働省のヒューマニズムと申しますか、そういう点はどういう工合にあなた方はそれを打開していくつもりですか。
  10. 澁谷直藏

    澁谷政府委員 けい肺患者のように長期にわたって粉じん作業場で働いておったために漸進的にいわゆる慢性的なけい肺という症状になっていくというようなものにつきましては、確かにただいま御指摘のように、漸次労働能力が下がっていく、そのために、事故が発生したと認められた段階における賃金が相当低くなっておるということは十分考えられるわけでございます。そこでこの点につきましては、先般佐々木委員の御質問の際にもお答えいたしましたように、現実にいわゆる原則通り平均賃金の算定をした場合に、当該労働者に対して非常に不当な計算になるというような場合が発生したときには、労働基準法第十二条の第八項の規定の運用によって、当該労働者に不当な損害とならないように、運用面で考慮して参りたいということを考えておる次第でございます。
  11. 滝井義高

    滝井委員 不当な損害とならないようにするというのですが、もともと日本賃金というものは安い。安い賃金の六割なんですから、これは直したところで、そうむやみやたらに汚せるものじゃないですね。これは基準法の十二条を適用するまでもなく、常識論でけっこうだと思うのです。従ってそういう場合にアクシデントとこういう職業的な疾病との間には、非常に大きな矛盾が出てくることは明らかだと思うのです。そうなりますと、やはりこれはじん肺法というものの中にそういうものをきちっと入れなければならぬと思うのです。議論をしておるとなかなか水かけ論になりますが、一体国際的にどうなんですか。ILOその他の条約を見ましても、こういうこの職業につくことによって除々に起こって参る職業的なものと、アクシデントによって起こる負傷というようなものとは、国際的には別個にしておるのじゃないですか。
  12. 澁谷直藏

    澁谷政府委員 外国の法制の状況を申し上げますると、じん肺と申しますが、けい肺につきまして特別な保護法を持っております国はアフリカオーストラリアの二国でございます。その他のアメリカ、イギリス、西ドイツ、フランス等におきましては、いずれも労災補償保険というような当該国で持っております法律の中で、一般災害事故と同じように、一つ法律の中で補償の問題を取り扱っておるという国が大部分でございまして、ただいま申し上げましたアフリカ西オーストラリアにおきましては、この労災補償保険法というような法律と別にけい肺についての特別法規を持っておるわけでございますが、これらの国の場合は労災補償保険法の方である程度の給付に制限がある、その制限されております給付不足分をカバーする意味においてけい肺についての特別法を持っておるというのが、ただいま申し上げた二つの国でございまして、その他の国におきましてはいずれも一本で取り扱っておるというのが実情でございます。
  13. 滝井義高

    滝井委員 最近における日本状態を見ても、こういうように一つ職業につくことによって非常になおりにくい病気が起こる状態が相当出てき始めたわけですね。最近のニュー・フェイスとしてはベンゾール中毒がありますし、潜水病は昔からありました。おそらく航空機が発達すれば、航空機病気なんかも出てくるのじゃないかと思うのです。原子力の発達によって放射線障害というものが必然的に白血病を中心として出てくるわけですね。そのほかに、おそらくわからないような放射線障害というものは、たくさんあるだろうと思うのです。そうしますとやはり事故によるものとそういうものとを区別して、法体系を、外国ではアフリカオーストラリアの二国しかやっていないということでございますか、アフリカなんか労働条件がよくないでしょうから、労働条件のあまりよくない日本としては、私はそういう本のを作る必要があると思うのですが、政府は今後そういうものを検討する意思がありますか。
  14. 澁谷直藏

    澁谷政府委員 いわゆる職業病といわれておるものは非常に数多くあるわけでございますが、この職業病につきましては、それぞれの非常に特殊な性格を持っておるわけでございます。従ってこれらの特殊な性格をそれぞれ持っておる職業病につきましては、これに罹患しないように、つまり予防健康管理をどうするかということがまず第一段階としてきわめて必要なわけでございます。従いまして私どもは従来包括的に労働基準法安全衛生規則において一般的に処理しておりましたこれらの規則考え方を改めまして、個別々々の職業病特殊性に応じた予防規則というものを制定していきたいという考え方に立ちまして、ここ数年来逐次その方向に沿って規則整備をはかって参ったわけでございます。昨年の七月から実施になりました電離放射線障害予防規則というようなものは、最近放射線による障害が非常に多くなってきたという事態に対処しまして、これが規則具体化をはかった一つの例でございます。さらに最近ベンゼン中毒の問題が相当やかましくなってきておりますので、こういったベンゼン等有機溶剤による中毒防止するためには、どのような規則整備したらいいかという問題が一つと、さらには、高気圧作業による障害防止するためにはどのようにしたらいいかという、この二つのテーマを取り上げまして、現在中央労働基準審議会にそれぞれ専門の部会を設けまして、これらに関する規則制定を委嘱しておるわけでございます。従いまして私どもは、これらの職業病につきましては、でき得るならばそれぞれ個別の予防規則というものを作って、予防健康管理の徹底を期して参りたいと考えておる次第でございますが、これの補償の問題というのは、先ほど来繰り返し申し上げておりますように、先進諸国の例もその方向をたどっておりますので、労災補償保険法の中で総合的に考えて参りたい。ただしその補償の問題につきましても、職業病とその他一般偶発的事故による災害とは、おのずからその性格も異なりますので、その点については労災補償保険法の中で、その特殊性に対処してできるだけの手当を加えていく、こういう方向考えて参りたいと思っております。
  15. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと政府考え方としては、単独法みたいなものを作るのはじん肺法だけであって、そのほかのべンゼンの中毒とか高気圧障害防止とか、あるいは放射線障害防止というようなものは単独法は作らない、規則だけでお茶を潤していくのだ、障害が起こればあと労災にたたき込んでいく、こういう考え方ですか。
  16. 澁谷直藏

    澁谷政府委員 大体の考え方としてはただいま申し上げましたようなことでございまして、すでにできております規則を見ましても、ボイラー及び圧力容器安全規則、それからただいま申し上げました電離放射線障害予防規則というようなことで、それぞれ具体的な予防規則を作って参りたい。しからば今後じん肺法というような単行法考える意志はないかという御質問でございますが、この点は将来の問題でございますので、単独法による必要があるという事態が起きますれば、それはやはり単独法によるという場合も考えられると思いますが、ただいまのところといたしましては、具体的にそういった単行法によるものは考えておりません。
  17. 滝井義高

    滝井委員 たとえば放射線障害、将来十年くらいすれば原子力発電も行なわれることになるわけですが、あるいはレントゲンとかいうようなものの使用も非常に多くなってくるということになると、その方の障害も私は非常にふえてくるだろうと思うのです。そうなった場合にまた別に電離放射線障害防止法とかいうようなものを作ることも、これはまたなかなか問題が出てくると思うのです。そうだとすればやはりそのときになって、こういう一つ職業に従事することによって、必然的に知らぬ間に病気になるというようなものを総合的に一つ体系にまとめて、それぞれの予防治療と後保護までひっくるめた体系を作る方が私は非常にいいじゃないかと思うのです。そしてその法体系にのっとってあなたの方で施行の細則を作っていく、そう上ないと、あるものは優遇されるが、あるものはちっともかまわれぬというようなことでは困ると思うのです。最近は知らぬような、たとえば水銀燈なんかでも職業病が起こり始めているのです。科学が進歩して参りまして、知らぬ間に、いろいろの新しい材料が使われますから、いろいろの職業病が近代の文化国家には起こる可能性が多いと私は思うのです。これは局長にいろいろ言ってもしようがありませんから、あとで大臣が来たらもう一ぺん尋ねますが、われわれとしては、あとの処理、補償というものは何もかにも全部労災でやってしまうのだという態度につきましては、さいぜん申し上げました賃金その他の問題からいってどうも納得がいかない点が多いのです。これは一応このくらいにして、あとで大臣が来たらもう一回尋ねます。  次は、少し具体的に入っていきますが、一体この粉じん作業の定義はどういうことになるのですか。
  18. 澁谷直藏

    澁谷政府委員 じん肺法案の第二条の第一項第二号に粉じん作業の定義が掲げられております。「当該作業に従事する労働者じん肺にかかるおそれかあると認められる作業」を粉じん作業といっておるわけでございます。
  19. 滝井義高

    滝井委員 それはわかるのです。「じん肺にかかるおそれがある」ということでございますが、その粉じん作業というものかどういうものかということは労働省令で定めるわけでしょう。だからわれわれとしてはその範囲が知りたいわけです。
  20. 澁谷直藏

    澁谷政府委員 第二条の第二項におきまして、「前項第二号の粉じん作業の範囲は、労働省令で定める。」ということになっておりまして、粉じん作業というものは具体的にどのようなものをいうのであるかということが労働省令で定められることになるわけでございます。これは先生も御承知のように、現在の特別立法あるいは臨時措置法段階におきまして、第一表と第二表という表に大体けい肺にかかるおそれのあると思われるような粉じん作業が具体的にあげられておるわけでございますが、今回は従来のけい肺に加えまして、じん肺という工合に対象が拡大された、従ってここにいう粉じん作業の範囲も当然拡張されるわけでございますので、私どもは従来のけい肺審議会における専門家の御意見等も十分参酌いたしまして、漏れることのないようにその点は省令で万全を期して参りたい、こういうふうに考えております。
  21. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、粉じん作業の定義はここに出いてあるか、「じん肺にかかるおそれがあると認められる作業」の範囲というものはまだきまっておらぬわけですね。
  22. 澁谷直藏

    澁谷政府委員 大体の結論は出ておるわけでございますが、ただいま法施行を前にいたしまして最後の仕上げの検討をいたしておる段階でございます。
  23. 滝井義高

    滝井委員 あとでけっこうですから、一応現在労働省でやっておるものをプリントにして出してくれませんか。今までのけい肺及び外傷性せき髄障害に関する特別保護法の別表第一と別表第二、これは別表第一が十三くらいあって、別表第二が十二ぐらいですかありますが、このほかに相当範囲が広くなってくると思うのです。今まではけい肺だったのですけれども、今度はじん肺になりますと相当範囲が広くなりますから、一つ国会を通過するまでに至急出してもらいたい。  次はじん肺と結核との関係ですが、粉じんが非常に立つ、そして労働省でこれは粉じん作業場だ、こう認定されますね。その場合、そこで働いているうちに結核がくっついたという場合に、その因果関係というのはどういう工合に見るのですか。これは全部業務上の障害になるのですか。
  24. 加藤光徳

    加藤説明員 全部が業務上の疾病とはならないのであります。と申しますのは、けい肺を持っておりまして、そのけい肺の一定以上のものがありまして、それに結核か合併したものが業務上の疾病となっております。従いまして、じん肺という診断のついてないものに結核が合併したものは業務上の疾病にならないのであります。
  25. 滝井義高

    滝井委員 そうすると、ほこりの立つ職場で働いておって、お前はじん肺だ、こう言われない限りは、結核が合併しておってもそれは業務上にならない、こういうことですね。じん肺だと言われることになりますと、管理一あたりでも、結核かくっついて結核の方が重いと業務上の疾病として取り扱われますか。
  26. 加藤光徳

    加藤説明員 管理一には結核は入っておりません。
  27. 滝井義高

    滝井委員 ちょっと言い方が悪かったのだが、それは結核は入っておりませんけれども、一くらいでも結核がつくことがあり得るわけです。「かつ、肺結核がないと認められるもの」というのに、結核があるという場合があり得るわけです。これは勝手にこう書いておるわけですけれどもね。
  28. 加藤光徳

    加藤説明員 それは管理四のところに書いてありますように、エックス線写真の像が一型、二型、三型及び四型というのがありますが、そのうち一型、二型は軽いものでございます。それに結核か合併したものにつきましては、管理四の中で取り扱いますから、療養を必要とするものになります。
  29. 滝井義高

    滝井委員 いや、それは心肺機能の障害その他の症状がなければだめなんですね。そういうものがない、しかし明らかにこれはわずかなじん肺だ、そしてそれに結核がくっついている、こういう場合があり得るわけです。これは労働省の方で勝手にこういう工合に分けておるのであって、人間のからだですから、四つが千変万化に組み合わされておるものだと思うのです。従ってただこの一、二、三、四の管理通りにはいかないと思うのです。
  30. 加藤光徳

    加藤説明員 管理四の三をごらんになりますと、それに「エックス線写真の像が第一型、第二型、第三型又は第四型で、活動性の肺結核があると認められるもの」とありますから、今の先生のお話しになっておりますものが四に入りまして、療養の必要があるものと認められるわけであります。
  31. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、第一型があって、そして結核があれば、それは全部業務上の災害と認められる、こういうことなんですね。そうしますと、一体なぜ結核だけをとるのかということです。じん肺に結核か関係したときは業務上の傷病と認めていくか、たとえば肺炎なりぜんそくが合併してくる。冬になったらもうじん肺のためにしょっちゅうぜんそくや肺炎が起こるのだという場合があり得るわけです。これは一体なぜ業務上の障害に認めないかということです。これは解剖学的にいえば、一方は融解性の壊死、一方は凝固性の壊死ということで、違いますけれども、肺炎が起こったことによって今度は二次的に、粉じんの立つ作業場で働いておるうちに結核がそれに触発されて出てくることもあり得るわけですね。こういうぜんそくとか肺炎というようなものは何にも書かれていないわけです。たとえばほこりを吸い込むことによってだんだん体質が変わって、しょっちゅうぜんそくか起こる。あなたはお医者さんだから御存じだろうと思いますが、ぜんそくの方がむしろ肺気腫その他が起こってきますから、じん肺症状というものは当然激しくなってくるわけです。なぜぜんそくとか肺炎などを、法律を作るときに考えないかという点です。
  32. 加藤光徳

    加藤説明員 じん肺と結核が合併する場合につきましては、従来とも、お互いに触発するということが認められておりますので、この際じん肺の中に結核の合併したものを取り入れるべきである。しかしながら肺炎その他との因果関係につきましては、まだ十分な究明かなされておりませんので、この際直ちに業務上の疾病とすることは困難であるという医学部会の答申に基づきまして、結核だけをまず取り上げていきたいということでございます。
  33. 滝井義高

    滝井委員 肺炎と結核とは、さいぜん申しましたように凝固性の壊死と融解性の壊死ですから、レントゲンのあとの像もずっと違ってきますけれども、ぜんそくということになりますと、これはむしろ場合によっては、冬になって発作が連続的に起こってくるときには、結核よりも労働能力は落ちてくるわけですね。そういう場合に、これは答申がなかったといって、それを今度は業務上の障害対象にしない、しかし結核はやるんだ、こういうことになる。これを病因的に見ますと、結核は結核菌で起こってきているわけですが、ぞんそくは菌ではないわけですね。これはアレルギー性の疾患ですから、非常に体質が変わったことによって起こる。たとえば粉じんを吸うこともぜんそくの一つの大きな契機になるわけです。そうすると、作業場に出てほこりの吸い方が激しいとぜんそくが起こるのはあなたも御存じの通り。たとえばぜんそくの患者が非常に過労になって、ほこりの多いところに行くときには、必ずぜんそくが起こりますよ。花紛でも起こるし、ネコの毛を吸っても起こるというように敏感なんです。そうすると、こういうところで長年働いているうちに体質が変わってくる、そして寒さとか気候の変化によってぜんそくがしょっちゅう起こってくるという場合には、私はある程度これは業務上の障害として取り扱わなければならぬのじゃないかと思うのですがね。こういう場合は全然、お前はぜんそくだからだめだということになるのですか。
  34. 加藤光徳

    加藤説明員 今回特にこのじん肺法におきましては、鉱物性の粉じんだけを取り上げておりまして、植物性あるいは動物性の粉じんは取り上げておりません。ぜんそくとの関係につきましても、一応医学部会においては検討いたしたのでございますが、現在直接の因果関係を明らかにすることができないということになっておりますので、一応取り上げないでいったわけであります。
  35. 滝井義高

    滝井委員 どうもそういう点はやはり非常に問題があるところだと私は思うのです。実際にぜんそくの患者を扱ってみればわかる。非常に敏感で、ほこりを吸い込めばほとんどぜんそくか起こります。少し過労になっておる場合に、ほこりを吸い込めば、のどがぜいぜいいい始めるわけですが、そういう点で、肺炎なりぜんそくなりについてはもう少し結核とともに考えてみる必要があるのじゃないかと思うのです。それから心肺機能障害ですね。心肺機能障害というものの基準が法律のどこを読んでわからぬのです。たとえば三条四項で心肺機能検査というものはあるのです。それから健康管理区分の中にも盛んに心肺機能障害ということを書いておるわけです。ところが心肺機能障害というものはこういうことを言うのだという定義が書かれていない。その基準は厚生省令か規則か何かで具体的に示すのですか。
  36. 加藤光徳

    加藤説明員 現在のところでは、心肺機能検査につきまして研究会を開きまして、そこでやっておりますので、一応の数字は出て参るわけであります。そして、その検査の方法につきましては、省令で出して、内容とかそのこまかいことにつきましては通牒で取り上げていくことになっております。現在研究中でありますが、大体まとまっております。
  37. 滝井義高

    滝井委員 私が特にそれをここで御指摘申し上げるのは、これはやはりそれぞれ神ならぬ身の医師かやるわけです。そうすると、じん肺による心肺機能の傷害があるかないかということは、非常に大きなウエートを占めてきておるわけです。従ってそういうものの基準を、あとでいろいろ御質問もしますが、基準監督署のじん肺診査医と申しますか、こういう人たちには漏れなく周知徹底させておかないと、それぞれの医者によって判断が違ってくるわけです。この前私はここで尋ねたのですが、年金をやるのに、身体障害者の診断書を出せというわけです。骨盤の引き上げという言葉を使っておるのですね。一体骨盤の引き上げって何ですかということを外科の医者や整形外科の医者に尋ねると、だれも知らない。それで私それを持ってきて、ここでそれを作った局長さんに骨盤の引き上げというのはどういうことですかと尋ねた。ところが、その主管の局長さんが知らないのですよ。それはお医者さんでないから知らないのかもしれない。医務局長もおりました。医務局長知っておりますか、さあ、そういうことは……ということなんです。整形外科の医者に聞いたけれども、だれも知らないから、骨盤の引き上げということは書くことができない。だれに聞いても知らない、局長も知らないのですから、そのままほっておいて、これはもう私には書けません、こういうことになっちゃったわけです。と同じように、心肺機能障害というのは一体どういう基準できめるかということは、けい肺患者にとっては死命を制する問題ですよ。これはやはりわかりやすく、こういう機能だということをきちっと、個条書きなり、数字で表わすなら表わして、そうして知らせておかないと、私はこれは大へんなことになるのじゃないかと思うのです。三度、四度というような場合に、これは一体ほんとうに転換をやらなければならぬのかどうか、療養を要するのか要しないのかという点の分かれ目は労働者の一生を左右する問題になってくるわけです。ですから、もう少しそういう点がわかれば、そういう点もあわせて一つ国会に出してもらいたいと思うのです。これはおよそいつごろくらいにはできるのですか。
  38. 加藤光徳

    加藤説明員 こまかい数字のところで一部できておりませんが、検査の方法とそれから判定の数値というものはほとんど全部できております。
  39. 滝井義高

    滝井委員 それでは、非常に詳しければあとで文書で出していただければけっこうですから、一ぺん出して下さい。次には、予防なり健康管理をやる場合に、使用者が労働者の教育をやりますね。労働基準法なり鉱山保安法の規定によるのほか、常時粉じん作業に従事する労働者に対しては予防及び健康管理のために必要な教育を行なうことになっているのですが、これは具体的に、どういう教育を労働者にやりますか。
  40. 加藤光徳

    加藤説明員 具体的な方法といたしましては、各事業場別の粉じん作業についての正確な、ここからこういうものか出るというようなことをやりまして、それから同時にけい肺の病理とは申しませんか、一応じん肺のでき方というもの、あるいはじん肺の現在の被害の状況というようなもの、それからさらにその粉じん作業におきまする発じんをいかにしてとめるかというようなこと、これは作業別にやらなければわかりませんので、作業別にそういうことを考えていく。さらにある一定の場所におきましては、防じんマスクを使うというような一貫した教育をやっていくということで、基準法におきましては就業の常時のものがございませんので、それをあらためてここに出しましたので、普通の基準法の場合におきましては、雇い入れた場合にのみそれをやって、常時のものがございませんので、常時のものもこれをやらせるということでございます。
  41. 滝井義高

    滝井委員 私もかつてこういう公衆衛生的なことを勉強してやったことがありますが、実は職場の衛生教育というものは、もちろん労働者も必要ですか、これは事業主に必要なんですよ。この教育は、なるほど使用者及び労働者の義務というところでちょっとうたっております。「使用者及び粉じん作業に従事する労働者は」云々と、こういうことを書いております。しかしその教育というものは、労働者も大事だか、むしろおやじ教育が大事じゃないかということですよ。使用者の教育については書いていないですね。労働者よりもむしろ使用者の教育が大事なんですよ。粉じんが立つところの使用者の教育をやって、それで金を惜しまず予防措置を講ぜられるような指導というものが大事なんだ。そういうおやじが粉じん作業に対する衛生的な頭と教育を受けて動き始めると、そこにおける労働者というものはおやじに従って自然そういう方向に動いていくし、それから働く労働者の教育もうまくいくんですよ。あなた方は使用者の教育というのを怠って労働者にやろうとするから問題なんです。私の経験では、衛生教育はおやじ教育に始まらなければいかぬということは、職場の医者のみんなのスローガンですよ。ところか使用者は労働者の教育をすることになっておるが、使用者の教育というのか書かれていないんです。こういうところが落ちているんですよ。上手の手から水が漏れるというのはこのことかもしれません。私はむしろ全国の粉じん作業場を持つ資本家側を集めて、ちょうど資本家がどこか箱根か何かでゼミナールをやったでしょう。あれと同じように、労働省一つがちっとやって下さい。粉じんの立つ作業場の労務部長、課長をみな集めてやるんですよ。過去にそういうことをやったことがありますか。
  42. 澁谷直藏

    澁谷政府委員 この衛生教育についてのおやじ教育というものが非常に大事だという点については私どもも全く同感でございます。同じ労働基準局の中に安全と衛生といういわゆる技術的な分野が二つ並んでおるわけでございますが、私ども率直に申し上げまして、安全につきましては民間の企業主におきましても、比較的その重要性というものについての認識が漸次高まってきておりまして、これは日進月歩と申しまするか、年を追うて安全に対する関心の度合いというものは深まってきております。これに比べますると、衛生に関する使用者といいますか、企業主側の認識というものはどうも安全よりはおくれておるということを私どもは率直にいって認めざるを得ないわけでございます。そこで今回このじん肺法案におきまして、使用者に、労働者に対する衛生の教育の義務を課することになったわけでございますが、これを機会に私どもはいわゆる使用主に対する衛生の教育を労働省として一つ本格的にやって参りたいというふうに考えて出るわけでございます。なお先般事業主側におきましても、労働省のこういった考え方に全面的に賛成されまして、全国安全協会というような形式にならいまして、全国衛生協会というものか設立されまして、現在着々とその専務を始めておる次第でございまして、私どもはこういった使用主の労働衛生に関する全国組織とも十分連絡をとりまして、使用者に対する衛生の教育を一つ本格的にやって参りたいというふうに考えております。
  43. 滝井義高

    滝井委員 そこにはいわゆるアクシデントと徐々に起ってくる職業病の違いがある。アクシデントというものは偶発的なものでも、目に見えて起こっている。だから安全は何とかやります。ところが職業病というものは目に見えないで忍び寄ってくるわけであります。従ってそれに対する衛生という方面については金を惜しんでなかなか入れない。こういう結果が出てきているんです。そういう点からも、賃金がけの面からだけでなく、安全と衛生という面からもやる。これは車の両輪ですけれども、車の両輪であるという点においても、一つは左の車であり、一つは右の車であるということにおいて違っておる。これは衛生という面からも私たちは職業病に対する立法というものは、世論を喚起する意味でも必要ではないかという感じがますますするわけです。今局長が言われたように、衛生教育、労働者の教育も必要ですか、特におやじ教育というものにうんと力を入れてやっていただきたいと思います。  次は定期の診断、この定期の診断で、常時粉じん作業に従事する労働者は三年。これは三年以内でしようけれども、一応最大限に延ばせば、三年に一回やればいいわけですね。そうすると、一体この三年という理論的な根拠というものはどういうところからきているんですか。
  44. 加藤光徳

    加藤説明員 従来の経験からいたしまして、じん肺にかかります者は大体五年程度のものから出ているのが普通でございます。従ってその安全率をとりまして三年という一つの数字をとったのでございます。
  45. 滝井義高

    滝井委員 そうすると、管理一程度になるのは五年かかる、こういう意味ですか。
  46. 加藤光徳

    加藤説明員 そのうちの一部の者が五年くらいかかって初めて管理一の一型程度のものになる。二型、三型になるには十五年あるいは二十年という年限をとらなければなりませんので、最低をとりまして、従来の経験から、五年でございましたのを、安全率をとりまして、三年という数字をとったわけでございます。
  47. 滝井義高

    滝井委員 大体一型程度になるには五年も六年も、長ければ十年もかかるか、一応とにかく三年程度でいわゆるけい肺の管理一程度にはなる、こういうことになるのですね。そうしますと、この常時粉じん作業に従事する労働者で管理二や三は一年です。それからその次の粉じん作業以外の作業に従事している労働者で管理三であるものはやはり一年、こうなっておるわけです。そうすると、管理一というものは当然これはじん肺なわけですよ。これについてはどうですか。これは定期の健康診断をやる場合に、この区分に入らずに普通の健康診断をやっておればいいということなんですか。どうして一を抜かしておるのですか。
  48. 加藤光徳

    加藤説明員 二や三におきましては、速度が割合に早くなるという心配がございますので、そういうふうな二と三は一年に一回ということでございますが、一の者の健康診断につきましては、基準法に基づく健康診断が年二回やられておりますので、それによって——急性に悪化する者がもしもあるとすれば、それは結核合併でございますので、その点で結核合併を見た場合にはさらにけい肺健康診断の方に回してその不足分健康診断をしながら、じん肺にかかっておる者で軽い結核にかかった者は、基準法による健康診断から拾い出していくというやり方でやっておるわけであります。
  49. 滝井義高

    滝井委員 じん肺に対する健康診断というのは非常に専門的な知識を必要、とするわけです。従って普通の健康診断でレントゲンの像を見ておるだけでは、たとえば第一管理から第二管理に移行したかどうかということは、これはとちらも結核はありませんから、なかなかわかりにくいわけです。私は粉じん作業でも、第二管理になる程度の者は人数としてはそう多くないんじゃないかと思います。これはどの程度のパーセンテージに出てくるかわかりませんが、そう多くない。そうすると管理二と管理三は非常に進行が早い、二は三に三は四になる可能性があるから一年以内にやるんだとおっしゃるわけですか、もう少し予防ということに力を入れるとするならば、私は管理一も一年以内にやるべきだと思うのです。そのわずかな金を惜しんで、これは一文惜しみの百文失いという形に私はなると思うのです。だからむしろこういう点に、もう少し予防のあたたかい手を差し伸べて、一の段階でひんぱんにやるべきだと思うのです。そうして結核の合併しないように、じん肺が進まないようにやるべきだと思うのです。そういう点で、どうして一を入れなかったのですかね。
  50. 加藤光徳

    加藤説明員 従来の健康診断の結果からいたしますと、けい肺にかかった者は全体の一一%くらいでございまして、その一一のうちの一〇が一でございます。そして二、三が約一%ということでございます。それは直接関係はございませんが、一の進行というものは非常におそいものでございますので、そういう点からいたしましても、三年に一回の健康診断をやれば十分であるという判断で、その三年に一回の健康診断でも、その上のものに移る者は非常に少ないのでございますので、そういうふうな三年に一回という数字をとって参ったわけでございます。
  51. 滝井義高

    滝井委員 けい肺になる者は一一%、一一%のうち一〇%が管理一だとおっしゃるわけです。ところがその一〇%の中からさらに一%の管理二ないし管理三が、次の段階になると出てくるわけです。そうしますと、二、三を出さないことが予防が上手だということで、二、三を出すことは予防が下手だということなんです。結局一年に一回やらなきゃならぬものを三年に一回やっておるところに、こういう者が出てくる可能性も出てくるのですから、私は一年に一回やるべきだと思うのです。こういうこまかい修正点は話し合いませんでしたが、局長さん、こういう点はどうですか。私は進みやすい二、三に移らせる前に一で一年に一回やるべきだと思うのです。私は、こ前のけい肺の特別措置法の修正を出すときには、普通の健康診断のときにけい肺を見るようにしようということを番強硬に主張したのですが、重くなってから幾ら健康診断をやっても労働者はありがたくないのです。やはりころばぬ先のつえを与えてくれるところに、非常に政策のあたたかさがあり、ありがたさがあるわけです。だから私は、むしろこの一一%の人か一%の二、三にいかないようにする政策というものをやってもらいたいと思うのです。これはわずかな金ですよ。もし千人おったって、それが一割そこそこしか出ないのですから、百人そこそこじゃないですか。これは少し金がかかるかもしれぬけれども、そのくらいの負担というものは、私は使用主はやってもいいと思うのです。これは当然ですよ。無過失賠償責任とかなんとかいってごまかされて、力関係——これは社会党が天下をとったら、こんな無過失賠償は許さぬですよ。三年では絶対打ち切らせぬ、永遠にやらせる。ところが今は与党や日経連の力が強いから、こういう状態でわれわれは泣き寝入りしておるだけなんですよ。そういう点で、こういう点はもう少し根本的な法律お作りになるならば、先で莫大な金を出すよりか今わずかな金を出す方が、労働者自身も幸福になるのです。事業主自身も負担が軽くて済むし、われわれの税金も二分の一とか四分の三とか出さなくて済むわけです。ですから僕は、健康管理区分を管理一も管理二または管理三と同じように一年、こういうふうに修正したいところですが、こういう点はどうですか。局長さん、法律ができないなら行政指導か何かで、これは与党が来れはむしろここらあたりの一つ修正点を入れてもらいたいところなんですか、どうですか。
  52. 澁谷直藏

    澁谷政府委員 この辺は、非常に医学の専門的な分野でございますので、私どもしろうとではその的確な判断ができにくい部分でございますが、先生も御承知のように、この法案の立案段階におきまして、日本におけるけい肺じん肺関係の最高の権威者にお集まりをいただいて、その医学部会において慎重に検討をいたしました結論としまして、定期診断としては「常時粉じん作業に従事する労働者」については三年に一回程度の定期診断でけっこうであろう、こういう結論が出ましたので、私どもはその結論に従って、このような案を作成いたしたわけでございます。しかしこれはあくまでも今の段階において、そういった権威者の結論としてこういうことでございますか、将来この三年という定期診断では十分ではないというような事態が出て、参りますれば、当然この辺は私どもも検討しまして、そのような必要性が発生しますれば、その段階において当然政府として考慮していくことになるかと考えております。
  53. 滝井義高

    滝井委員 その必要性が発生すればということでなくて、すでに二、三が出てきておるということは必要性が発生しておるということなんですよ。これはもし管理一程度であとはないというのならば、それは今の健康診断でいいと思うのです。ところが、今までの一年に一回やっておる健康診断ではそれがずさんなために、結核が合併をしておってもけい肺があるかどうかよく診断がつかぬということで、ずるずると粉じん作業の仕事をやっているわけです。ですから私は、三管理になったときに職場転換をやらせるというのはおそいと思うんですよ。むしろ一か二の段階で職場転換をやらした方がいい、働く者にとっては非常に幸福なんですよ。それを二、三になったらどんどん進むということが医学的にわかっておりながら、なおこれに仕事をさせるというところに問題があるんですよ。これは日本に人口が多いからといって、そう人間の犠牲において事業主をもうけさせる必要はちっともないと思うのです。ですからそういうことでは、どうも今のところは納得がいきませんから、これはあとで与党さんがおいでになったときに一つ修正条項に加えてもらいたいと思うんですがね。早い方が、これは明らかにいいわけです。  そうしますと、これはまた関連してくるのですが、粉じん作業場の範囲を御決定になる場合に、けい肺健康診断の実績及び事業場における粉じんの調査結果等を基礎にして労働省令を定めることになっておるわけです。そうすると労働省としては、けい肺健康診断の実績というものが相当詳細に表にしてできていると思うのですが、その実績を見ると私はわかってくると思うのです。まず四年前に健康診断をしたらとういう状態だ、ところがその四年の後の現在ではこの第一管理の者——あのときは第一症度といっておりましたが、第一症度の者は、こういうように第四症度になっておるのだと、こういう実績がお宅に統計的に、具体的に出ているのじゃないかと思うのですが、そういう実績から見てどうですか。そういう実績でおきめになるということは、お宅のじん肺法案逐条説明の中に書いておるのですがね。
  54. 加藤光徳

    加藤説明員 じん肺けい肺健康診断の結果につきましては、三十四万人の者について各産業別、それから作業別、経験年数別の表が出ております。従ってそれを参酌いたしまして粉じん作業というものを決定して、さらに新しく出ましたじん肺として、けい肺以外のじん肺の者は、それを入れていくということになります。従いまして従来の行き方から見ましても、この程度のものでこれをまかなっていけるということでございまして、なおかつけい肺の中には、あるいはじん肺の中には、一型以上には進まないというものも相当あるのでございまして、そういう点からも考えなければならぬのではないかとも思います。
  55. 滝井義高

    滝井委員 私が指摘したい点は、過去の健康診断をおやりになって、その実績で肺じん作業場の範囲その他をおきめになるということの説明をしておるわけです。そうしますと、その実績が、ずっとやってこられておるわけですから、同じ労働者についてやはり健康診断がやられておるはずです。第一管理、第二管理というような者について、昔は第一症度だったのですが、その第一症度の人が症状かどういう経過をたどって何年で第三症度になり第四症度に入ってきたか、こういう経過ですね、それは体質によっても違いますか、そういう経過が出ていないかどうかということなんです。
  56. 加藤光徳

    加藤説明員 部分的にはそういうものを調査いたしてありますが、全体としての統計は未だ出ておりません。と申しますのは、部分的に見まして、ゼロの者から一型になります者が、三年に一回の健康診断ではよくわかりませんけれども、四、五%くらいのものかと思います。それでなお一型からそのほかに行きます者も四、五%くらいではなかろうかと思います。これは推定でございます。従って三年に一回の健康診断でその部分についてはまかなっていけるというのは、一、二の事業場において経験的にやって参りました結果から見ますとそういう実績が出ているということであります。なお事業場の種類によりますと、ほとんど二型という者も出ていないというようなものも出ておりますし、また一型だけの状態で最後まで進んでいくというような作業というものも相当たくさんあるわけでございます。そういう点を勘案して参ったわけでございます。
  57. 滝井義高

    滝井委員 これはどうも常時粉じん作業に従事する労働者で、何もレントゲンにも所見がない心肺機能障害もない、結核もないという者ならば、三年以内に一回でいいと思うのです。しかしこれはもうけい肺だ、あなたは管理一ですぞといわれた人に対して、やはり三年に一回ということではちょっと納得かいかないのです。これはけい肺という認定を受けたのですからね。だからこれは体質によって管理二と同じ程度に進む人もあるだろうし、あるいはそれよりかもっと進み力のゆるい人もあるだろうと思うのです。体質によっても違ってくるだろうし、また三年の間にほこりの軽いところからもっと激しいところに職場転換があるかもしれない。そういうところから、どうも私は管理二、三でなくて、一年に一回の健康診断をやるのは、管理一もやはり加えなければいかぬという感じがいたしますから、きのうこういうこまかいところまで気づきませんでしたか、委員長、ぜひ一つあとでお願いしたいと思います。  次は、管理区分の変更について、管理区分の変更が行なわれた場合に、お前は三だといわれておったのが四、四が三に返る。結核がずっと最近は抗生物質その他が出ましたから、心肺機能その他にも、休養の次第によってはやはりいろいろ変化が起こってくるわけです。この場合に、補償措置との関係はどうなるのですか。たとえば初めは重いものに決定をされておった。ところが今度はそれかよくなって、管理四が三に戻ったというような場合です。
  58. 澁谷直藏

    澁谷政府委員 御承知のように、この健康管理一から健康管理の三までは、じん肺にはかかっておりますけれども療養は必要としないというのか健康管理一から三までの区分でございます。健康管理四の段階に至って初めて療養を必要とするということで、補償問題が出てくるわけでございますが、そういった療養を必要とする症状であったものが健康管理三あるいは二になったということになりますれば、これは療養の必要がないわけでございますから、これは従って補償の必要はない、こういうことになるわけでございます。
  59. 滝井義高

    滝井委員 いや、これはあなた方は抽象的に三は療養を必要としないと、こうおっしゃいますけれども、管理三をお読みになると、五なんかは「病勢の進行のおそれがある不活動性の肺結核があると認められるもの」と、こうなっておるわけでしょう。人間というものは病気ばかりではなくて、一個の生ける精神を持っておる人間ですから、ノイローゼも起こるわけです。そうすると、その結核があると、あなたは活動しておる結核じゃない、大した心配要らないのじゃといったところで、本人が神経衰弱になって、どうも私仕事ができませんと言えば、これはやはり、むしろこういう肉体的な機能的な変化よりか、その精神的な変化というものは非常な大きなウエートを持つわけです。都会におけるノイローゼなんというものはざらです。そうしますと、ただ肉体的なエックス線の像その他だけで、お前はもう仕事ができるのだというわけにはいかないのですよ。これはそういう機械的にはいかぬと思うのです。いわんや管理四だといわれておったのが、今度は結核が不活動の結核になった、空洞はもう閉鎖してしまった、菌も出ていない、君は働いてもいいよ、こういうときになっても、まあ病勢の進行のおそれはあるけれども、もう君の結核は大丈夫だから働け、こういうことは無理だと思うのですね。だからもし四から三に返されたという場合に、その労働者仕事に行けと言われて、まるっきり障害対象にならないわけです。こういうときの問題が、さいぜんも関連しましたが、心肺機能その他の決定が非常に重要になってくるわけですね。いわゆる境界線のところにあるものですよ。こういうときに恣意的に強引に医師が、財政上の理由あるいは労災病院その他のベッドの状態等によって、もう君帰れというようなことが今現実に至るところに起こっておるわけです。もうお前帰ってもいい、やることはないとこう言われますと、私はどうもまだ悪いですという訴えがわれわれのところによくある。結局この補償費の支給というものは三になったらもらえないわけでしょう。四ならばいいのだけれども……。ここらあたりの関係が非常に私は問題になってくると思うのです。その場合に、では一体結核プラスじん肺で、結核が治癒したときに職場復帰というものが大っぴらに事業主によって受けられるか。その職場復帰を政府がその場合は保証するかどうかという問題ですか、それは。
  60. 澁谷直藏

    澁谷政府委員 これは法律論というよりも一般論として、当該作業場で働いておって業務上疾病にかかって病気になった、それが治療の結果なおったという場合は、これはやはり当該の事業主としては、本人が十分に労働能力を回復したという場合には、できるだけもとの職場に復帰するように努めるべきであると同時に、政府としましてもそのように使用主を指導していくということは当然であろうかと考えております。
  61. 滝井義高

    滝井委員 何かそういう条項がこの条文の中にありますか。病気がだんだん二から三に重くなっていくときには職場転換という条項はあるわけです。ところが今度は四から三から二と逆転をしてよくなっていく過程における職場転換というものはないですね。それは職業訓練か何かのところはありますけれども、悪くなるときには作業転換をやらせるのだと書いてあるのだから、よくなったときにも、やはりもとの職場に返してもらって、もとの賃金で働かしてもらわぬと困るわけです。このじん肺法案の中に適用できる条文がありますか。
  62. 澁谷直藏

    澁谷政府委員 ただいま御指摘になったような条文はございませんけれども、それは法律上の問題としてでなしに、事実上の問題としてこれは十分措置できる事項ではないかというふうに考えております。
  63. 滝井義高

    滝井委員 あなたは措置できる事項だとお考えになりますけれども、これは管理四が三になっても、二になっても、レントゲンの像を見れば影があるわけですから、この人がもし三年たったころになって職場をおっぽり出されておったら、これは天下のどこへ行っても採用してくれませんよ。公務員だって採用しないでしょう。レントゲンの像に影があればだめです。そういう場合には、じん肺なんという診断は普通の医者はなかなかできないから、結核だ、つぶつぶがたくさんあるからあなたの結核はたちが悪い、こういう診断ですよ。そうすると、これは管理二くらいにあとでよくなったにもかかわらず、三年で切れて解雇されたら、もう職場復帰はできないですよ。だから私が言うのはここなのです。悪くなったときに職場転換をするのなら、よくなったときにはもとの職場に返すのだという条項を入れなければいかぬと思うのです。この点が落ちておる。きわめてやってもやらぬでもいいような職業紹介職業訓練というようなことはお書きになっておる。それならば、これと同じように並べて、管理四の者が三なり二にずっと病気がなおって労働能力が回復したらもとの職場に返すのだ、事業主はそうしなければならぬという規定は、やはり労働者のために入れておかなければならぬのじゃないかと思うのですが、それは当然そうなるのだとおっしゃっていても、法律に書いてないことは今の日本の事業主はやらぬですよ。だからこういう点は大臣が来ていてもらわぬとちょっと困るのですが、大臣がきょう来られなければあしたにしてもらえますか。こういう政策的なことになってくると困るのです。
  64. 永山忠則

    永山委員長 今出席要求をしております。食事をせずにすぐここに来るように……。
  65. 澁谷直藏

    澁谷政府委員 従来の実績では、治療を開始しまして三年以内になおったという者はすべてもとの職場に復帰しているという実績が出ておるわけでございます。その他、一たん三年以上で打ち切り補償を支払われて雇用関係が切れてしまったという者を、なおった場合にもとの職場に復帰させるということを法律で書くということは、今の段階としましては、なかなか問題がございまして、今直ちにそれを立法化するということは困難があるわけでございます。しかしながらこれは労働協約というような面で、外国等で見られる先任権というような問題がこれに該当するかと思いますが、そういった方法で解決していくのが妥当ではないかというふうに考えておるわけであります。なお身体障害者雇用促進法というような法案も現在国会に提案されておる次第でございまして、私どもは、そういったような法律施行、さらには今回のじん肺法案の中に規定してございます三十四条ないしは三十五条の規定を運用いたしまして、そういった事態に対処して参りたいと考えておる次第でございます。
  66. 滝井義高

    滝井委員 外国にある先任権のようなものを活用したらということでございますけれども、実際には日本ではなかなかそういうことが行なわれないわけです。だから問題は、今度の労災法の改正、そしてじん肺法制定、こういう二本立てでおやりになった場合に、三年で解雇された、不治の病だということで千二百日の打ち切りをもらって解雇された。そうしたところが、最近は抗生物質の非常に画期的なものが出て、カナマイシンのようなものがあとからあとからどんどん出てきているわけですから、今まではこれは十年くらいかからなければならないと思っておったものが、あにはからんや外科手術も進歩したものだから二年くらいでなおってしまった。そうすると、お前は不治の柄だと言われておったのが、結核は固まった、じん肺ほこりのたつところの仕事をしないのだから停止をしたということで、もとの職場なら私は仕事ができますといった場合に、これは処置ないです。よくなってそういう形になれば、これはやはり補償はずっと続けてくれるのですか。いわゆる第一種障害給付と申しますか、入院をしないで二百四十日分のお金をその人にはずっとくれるのですか。
  67. 澁谷直藏

    澁谷政府委員 御承知のように、病気がなおってその障害が残存した場合に障害給付が行なわれるわけでございますので、完全に治癒して労働能力にも欠損がないという場合は、当然障害給付の支給はないわけでございます。
  68. 滝井義高

    滝井委員 そうするとこれはますます重大になってくるわけです。今までは不治の病だということで千二百日の打ち切りをやったわけですね。ところが今度はその千二百日の打ち切りをやめて、お前の病は不治の病なのだから通院しなさいということで二百四十日分を一年くれるわけでしょう。ところが二年たってなおってしまったらだめだ。労働能率が落ちただけわずかなものをくれるということになると、労働者は大へんなことになるわけです。医学が今のように進歩して結核がさっとなおってくる。そうしてあとじん肺だけになれば——これは結核があることによって初めて、あなたの障害は業務上の傷病になりましたぞ、こういうことを言われて治療しておった。それがさっとなおってしまってお前はだめだということになると、不治の病がなおった病にいつの間にかかえられてしまうのですね。それならばわずかな金の傷病給付に切りかえられるわけです。障害が傷病に切りかえられる。そうしてわずかもらって、もとの職場には復帰できない。どこへ行っても、お前レントゲンで見たら影があるから雇わぬということになるとあわれなものですよ。だから、その人間にすれば、なおったときには——解雇は三年でもいいですよ。しかしもとの職場に復帰さしてやるのだというギャランティがないとこれは大へんです。そこらあたりの矛盾がやはりこの法案には出ているのですよ。最近のように医学が進歩してきますと、不治の病だと思っていたものがなおる可能性があるわけだ。そうすると、なおったのだから、労働能力が出たのだから、今までの年金というものはあげられません。一時金の障害給付になりますぞ、こう切りかえられると、労働者としてはほかのところに行っても雇ってくれないのだから、もとの職場に帰して下さい。そんな一時金はもらわなくてもよろしい、こういう形になるわけです。そうすると一時金を返上したら、もとの職場に帰すというか、何かをしてもらわなければ労働者は大へんですよ。そういう形になっておるのです。管理四ということで医字的にきめたものが、医学的にきめたものよりも今度医学的によくなってきたというときには、その処置を越えてやらなければ大へんでしょう。どうもこういうことを天下の学識経験者がお集まりになっておやりになったにしては、少しわしのようなやぶ医者が質問をしてもどうも矛盾があるのですがね。どうですか、そこらあたりは。職場復帰を労働省は保証しますか。
  69. 澁谷直藏

    澁谷政府委員 先ほどもお答えいたしましたように日本の現在の法制といたしましては、一たん雇用関係が切れた、その者が何年かたってなおった場合に、法律によってもとの職場に復帰を保証するという法制は今のところわが国としてはないわけでございます。労働者の立場から言いますれば、もちろんそういったような法律による保証があることは望ましいわけでございますけれども、これは他方使用者の雇い入れの自由という問題にも非常に大きな影響がある問題でございますので、今の段階で直ちに法律によってそれを保証することには困難があるということを私は申し上げた次第でございます。しかしながら病気にかかってなおった、労働能力も回復した、従ってこれは当然そういう人々には働く職場が必要なわけでございますから、私どもは使用者の方々の理解と協力によって、そういうことが法律による措置ではなくとも円滑に行なわれるように、私どもとしても十分の努力をして参りたいと考えておる次第でございます。
  70. 滝井義高

    滝井委員 そういう点は努力してもらうということでけっこうだと思いますが、病気が重くなったら職場転換をするのだということを法律にお書きになったら、今度病気がなおったらもとの職場に帰すのだということを——なるほど使用者は雇用の自由かもしれないけれども、雇用の自由だからといって、労働者の人権まで侵害する必要はないと思うのですがね。だから当然病気がなおったらもとの職場に帰る制度というものをやはり法律に入れてないということは非常に画龍点睛を欠いています。  次に、十一条に受診の義務を課していますね。その場合に、使用者が指定した医師の行なうじん肺健康診断を受けることを希望しないという場合があるわけですね。これは一体どういう意味のことですか。
  71. 加藤光徳

    加藤説明員 これは事業場などの場合におきまして、事業場におります医師の診断を拒否するような場合がございますので、そういう場合があることを一応考えたわけでございます。
  72. 滝井義高

    滝井委員 医師の選択の自由という意味でこういう規定を書いておるわけですね。そうしますと、その場合の費用はだれが持ちますか。
  73. 加藤光徳

    加藤説明員 労働者でございます。
  74. 滝井義高

    滝井委員 事業主が指定をした医師のじん肺健康診断を受ける場合は、これは事業主が持つのでしょう。そうすると、その医者がどうも私はきらいだから、よその医者で見てもらいますというときには、労働者が出すことになるのですか。それはどういうことでそうなるのか。医師選択の自由ならば、医師はだれに見てもらっても自由なんだから、当然事業主が出さなければいかぬじゃないですか。
  75. 加藤光徳

    加藤説明員 基準法の立場からしますと、健康診断をする義務は使用者にございますが、それを拒否した場合には労働者がやるということになっておりますので、それにならったわけでございます。
  76. 滝井義高

    滝井委員 健康診断を拒否したのじゃない。その病院のお医者さんがいかぬ、私は受けます、しかし別の保健所、他の病院でやってもらいますということになれば、これは当然健康診断をやらなければならぬ義務は使用者が持っておるわけでしょう。これは使用者の義務もあるが労働者も義務がある、費用は事業主が持つのだ、こういう形になっておる。たまたま事業場の医者でなくて、別の医者に私は見てもらいますといった場合に、その医者の費用というものは私は当然事業主が負担しなければならぬのじゃないかと思うのですが、どうも私はこの書き方から、労働者に費用に持たせるのじゃないかと思って実は質問した。それはおかしいと思うのです。そうすると、その金がないというので健康診断をやらなかったら、労働者は罰則か何かありますか。
  77. 加藤光徳

    加藤説明員 罰則なしでございます。
  78. 滝井義高

    滝井委員 どうですか、こういうときは私は使用者がその金を出してやるべきじゃないかと思うのです。こういうところに労務管理のニュアンスがあるのです。何でも使用者のやるものに労働者が反旗を翻す、言うことをきかなければそれはお前らが自分でやれ、日本ではこういうのがいけないところなのです。これは事業主の作った病院が健康保険の保険医療機関になっていない思想がこういうところにも現われている。一種の労務管理です。そういうところがここに現われている。これはむしろ私は大っぴらに出してやっていいのじゃないかと思うのです。きちっとしたものさえ持ってくれば、労働者の希望するところでやらしてもいい。よほど理由がなければそういうことはやらないですよ。普通の労働者は便利その他から考えて事業場でやります。だから費用は当然使用主が負担すべきだと思うのです。というのは、私はじん肺健康診断というのは、幾らくらいのお金がかかるか知りませんが、相当の金がかかるからこういう質問をするわけです。大体じん肺健康診断をやる場合に、一人どの程度の費用がかかりますか。
  79. 加藤光徳

    加藤説明員 大体健康診断の費用は五、六百円かかります。レントゲンだけでございますが。
  80. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、労働者の方はそういう場合は当然レントゲンの写真や、じん肺健康診断の結果を証明する書類というものを事業主に出すわけです。労働者が自分で着服して自分の用に使うのじゃないのですから、事業主に出して、事業主が今度は、自己の労働者健康管理はこういう工合に基準法に基づいてやっておりますということを示すわけでしょう。そうするとそれは労働者の利益であるが、同時に使用者についても利益であるから、どうせ自分のところでやる分をよそでやっても、その費用というものは同じだから、負担すべきじゃないかと思うのです。
  81. 澁谷直藏

    澁谷政府委員 労働基準法の第五十二条に健康診断に関する規定があるわけでございますが、ただいま問題になっております第十一条と同じような規定が第三項にあるわけでございます。使用者が指定した医師の診断を受けることを希望しない労働者は、他の医師の健康診断を求めて、その結果を証明する書面を使用者に提出しなければならないという工合に、今度は逆に労働者の義務になっておるわけでございます。従ってそれは労働者の負担でやる、こういう建前を労働基準法はとっておるわけでございまして、じん肺法はこの労働基準法考え方を踏襲したわけであります。
  82. 滝井義高

    滝井委員 労働基準法のこの規定でも、われわれは経験がありますが、領収書を書いてくれ、事業主が払うからというのは幾らでもあります。普通の健康診断ならば百円かそこらでできる。じん肺健康診断は今おっしゃったようにレントゲンをとるのですから五、六百円かかる。従ってこれは当然事業主負担とすべきだと思うのです。こういうところまで事業主に気がねしなければ政府は踏み切れないのですか。わずかに五、六百円、しかも全部の労働者が事業主の指定したところに行かない、拒否するというわけのものではないと思う。どうですか。
  83. 澁谷直藏

    澁谷政府委員 使用者が自分の使用しておる労働者について健康診断を行なうというのは、労働基準法上も使用者の義務になっておるわけでございます。従って使用者が医師を指定してここで健康診断を受けなさいという場合に、それを拒否するということはきわめてまれなケースでないかと考えております。労働者の方で使用者が指定した医師を拒否することについて何か正当な事由があるというような場合があればまた別の問題になるかと思われますが、ただ受ける労働者側の方で、あの医師の診断を受けることは自分としてはどうも気が進まないといって自分の方で医師を選択するというような場合がこの場合でございますが、そういった場合は今の基準法の第五十三条の場合におきましても、労働者が自分の負担において診断を受けてそれの必要な資料を出しなさい、こういう立て方をとっておるわけでございまして、じん肺法はその考え方を踏襲したわけでございます。いずれにしましてもこれはきわめてまれなケースではないかと考えております。
  84. 滝井義高

    滝井委員 最近における交通機関の進歩によって、非常に遠隔地から労働者はみんな通勤を行なうわけです。そうすると会社の指定したところに行くのは非常に不便だということがあり得る。拒否とおっしゃるけれども、拒否と書いてない。希望しないと書いてある。この法文は書き方が拒否という強い書き方になっておらぬ。希望しないということは、今言ったように通勤の関係で自分の帰りと反対の方向だ、向こうに行ったら汽車その他の便利も悪いのだから、自分は自分の近くでやってもらいましょう、そのかわり証明書はきちっと出します、事業主が負担して下さい、こういう場合があり得る。だから原則としてはやはりこのくらいの金は事業主が持つべきだと思う。こういうことまで労働者にやらせれば、じん肺予防なんてできやせぬです。これは全部事業主が負担すべきだと思うのです。
  85. 澁谷直藏

    澁谷政府委員 労働基準法は言うまでもなく最低基準を定めておる法律でございますので、ただいま滝井先生から、使用者に払ってもらうからそれの受領書を作れという事例が非常に多いというお話がございましたが、使用者と労働者との間にそのような話し合いがあれば、これは使用者が払っても一向差しつかえないわけでございます。むしろそういったような方向で行なわれることが望ましいと私ども考えております。しかしながら、基準法の建前としては、使用者の指定した医師でなしに自分が希望する医師に診断をしてもらった場合は労働者が負担しなさいというふうに書いてあるわけでございます。しかしながら、実際上の話し合いにおきまして、交通その他の関係で、使用者が指定した医師よりもこちらの医師に診断してもらった方が便利だというような場合は、実際問題として十分考えられることでございますので、そういった場合は使用者との話し合いで使用者に負担してもらうということはむしろ望ましいというふうに考えております。
  86. 滝井義高

    滝井委員 じん肺法なり労災法は独立の法律なんですから、じん肺法基準法とはそう大して関係かない。それならば基準法を根本的に改正をしてこなければならぬが、それは関係がないことで、基準法基準法労災法労災法という説明をするかと思うと、今度は基準法の例をとられるわけです。じん肺法のような単独をお作りになった。基準法は最低のものなんです。しかも拒否という条文の書き方になっていない。「希望しない場合において」と、こういう婉曲な書き方になっておる。そういう希望しない場合は、さいぜん申し上げましたように通勤の都合その他もあって、どうも行けないという善意の場合もあるわけです。悪意で拒否したのではない場合だってあるわけですから、原則としてじん肺健康診断の費用は、事業主の指定した病院であろうとそうでなかろうと、事業主が負担をするのだという原則は確立をしなければいかぬと思うのですが、なかなかこういうことも確認ができぬようであります。松野さんどうですか、一つこういう点を行政指導で——エックス線写真をとるわけですから五、六百円の金がかかるわけですが、当然このくらいのものは事業主が全部払うべきだ。しかもこれは、労働者健康診断をしたその結果を事業主に提出する書類ですよ。この写真は全部取り上げてしまうのですからね。労働者にくれない、基準監督署に出すわけでしょう。ですからますますこんな経費は事業主が負担すべきだと考えるのですが、労働大臣これはどうですか。
  87. 松野頼三

    ○松野国務大臣 事業主が負担するとは義務づけておりませんけれども、やはりじん肺法の特別の精神から申しまして、事業主が負担してはいけないという禁止ではございません。逆にいえば、しても差しつかえないのですから、労使間を円満な雇用関係にするために、事業主がなるべくそういう場合に負担し得るように行政指導していきたい、というふうに考えております。
  88. 滝井義高

    滝井委員 そのくらいのところで努力して下さい。  随時申請をする場合、基準局長に対して、じん肺にかかっておるかどうかの別及び健康管理の区分を決定すべきことを申請することができることになっておりますが、この随時申請の費用はどうなるのですか。
  89. 澁谷直藏

    澁谷政府委員 この場合は、定期診断その他定期外診断を含めて、使用者が義務としてやらなければならない健康診断については、法律上使用者の責任、負担において実施するということを規定してあるわけでございますが、それに対しまして、第十五条の随時申請は、一般的に法律上使用者の義務として課してある健康診断のほかに、労働者の方から自分の都合で随時に健康診断を申請する場合でございます。この場合の費用負担は申請をした当該労働者が負担することになるわけであります。
  90. 滝井義高

    滝井委員 どうもこういう関係が出てくるので、私がさいぜん申しましたように、管理一つ健康診断というものはやはり一年に一回でなければならぬという主義が出るわけです。これは今与党が来ておったのですが、田中さんにもお願いしたいのですが、実はこの条文の八条に、定期診断の中で管理二と三だけが一年間以内に健康診断をやるのだ。管理一というのはやらないことになっておるのでしょう。それで一つ田中さんの方で管理一もやるようにちょっと加えてもらいたいのです。そうしますと、今申しました随時申請と八条との関係ですね、これは一体どういうことになるのですか。
  91. 澁谷直藏

    澁谷政府委員 八条の定期診断は、言うまでもなく、使用者はこの八条の規定によりまして一、二、三の区別があるわけでございますが、三年に一回あるいは一年に一回必ず使用者は、定期にじん肺健康診断を行なわなければならない、これが原則でございます。これに対しまして、ただいまの十五条は、そういった定期診断のほかに、何かの事情で労働者が自分でじん肺健康診断を受けたいという場合は、この随時申請第十五でいくわけでございます。従いまして、第八条は一般的な原則、それに対する定期外診断という第九条の例外規定がございますが、これはいずれも使用者が自分の義務として実施しなければならない診断の規定でございますが、第十五条は使用者側からの規定ではなしに、労働者が自分でそれらの定期診断以外に自分が健康診断を希望する場合の規定が第十五条であります。
  92. 滝井義高

    滝井委員 私は、従ってこれは労働者の側から随時申請をするというようなことは、やはり何かそこに肉体的な異常その他を感じているときだと思うのです。これは一体何によって感じたかというと、結局粉じんというところの特殊な環境に従事している。これは病気だと決定されれば公務災害になるわけです。そういう費用を一々労働者に持たしているところに、この立法の精神というのが私は気に食わないのです。労働者が希望すれば、このぐらいの経費は、もし使用者が見られなければ、国でも見てやってやらせなければいかぬと思うのです。これはめちゃくちゃに何もかも見てくれということにはならぬと思うのです。肉体的な違和を感ずれば、異常を感ずるならば、それは健康保険の保険証で見てもらうことになると思うのです。そうすると、本人ですから健康保険の診断なら無料なのです。ところが健康診断は御存じの通り健康保険ではできないですから、そうするとその書類を出さなければならぬ。そうするとあなたは病気だ、そうなれば保険証で見てもらえる。ところが病気でないということになると、これは健康保険証は通用しないのですから、自分がお金を出さなければならぬ、こういうことになるわけですね。こういう点はもう少し現在の健康保険法とじん肺関係、特に結核というものが加わる、あるいはぜんそくは認めない、こういう関係になるならば、この条項についてあなたの方が厚生省とお話しになって、この場合には健康保険の保険証を使うことができるのだというくらいの親心を示さなければ、この場合うそです。もし労働者に負担させるとするならば、こういう常時粉じん作業に従事する労働者あるいはその粉じん作業にかつて従事したことがあった労働者健康診断を受けたいというときには、それは健康保険の保険証でよろしいのだ。あるいは国民健康保険になっておれば国民健康保険の保険証でよろしいというくらいの交渉はしていいと思うのです。ところがそういうことをやらずに、これは労働者が負担するのだという。一体何のために皆保険政策をやるのだということになるのです。全く労働省と厚生省というものは、厚生省は厚生省の道を行きなさい、労働省労働省の道を行くというので、こういう疾病予防の面について、労働者の持っておるとうとい健康保険制度という権利を活用していないのですよ。現金で払わせるなんて、こんなばかなことはないですよ。常時粉じん作業に従事する労働者というのは、多く健康保険か国民健康保険の保険証を持っておるわけです。三十六年以降に、それから常時粉じん作業に従事する労働者である者は、これはおそらく国民健康保険か何かになるはずなのです。そこで健康管理の区分その他を決定してもらおうとするときは、何か肉体的な異常を感じておるときですから、健康保険の保険証か国民健康保険の保険証を活用する道というものは、当然これは法文の中に出てこなければならぬと思うんですね。ところがどうも労働省は保険制度についてはちっとも頭が働いていない。今、健康保険組合や何かは人間ドックをやろうとしているんですよ。人面ドックをやって、今後、病気予防をやろう、成人病の予防をやろうという時代に、けい肺にかかるか、かからないかという一生の問題を決定するというのに、その保険証さえも使えるような道を講じてないということ、これは大きなミステークだと思うのですよ。こういう点はもう少し厚生省とお話し合いにならなければいけないと思うのですよ。これはどうですか。
  93. 澁谷直藏

    澁谷政府委員 従来の特別、臨時措置法運用の場合に、従来の症度一ないし三の場合の身体の五和についての健康診断については健康保険でこれを見るという、これは保険局長と基準局長との連名で——三までのあれですね、これは出ておるわけでございます。そこでただいま御指摘のございました第十五条の随時申請の場合も、健康保険でその費用をまかなうことができれば、これは労働者にとっても非常に望ましいわけでございますので、私の方から保険局の方と十分折衝をして、でき得ればそのような措置ができるように一つ努力したいと考えております。
  94. 滝井義高

    滝井委員 ぜひ一つ随時申請というものの経費を——私はこれは当然事業主が持つべきだと思うのですけれども、事業主といってもなかなか日経連の力が強いからあなた方も言いにくいでしょう。これは一つくらいは保険局に無理をいって、国民健康保険なり健康保険の保険証で随時申請の場合は特別に診断をしてもらうという——人間ドックさえやろうとしておるのですから、このくらいなことはできないはずはないと思います。ぜひそうして下さい。あなたの御言明の通り期待をしておりますよ。  次は作業の転換です。健康管理の区分が管理三になると、粉じん作業以外の作業に常時従事させる勧告権か都道府県の基準局長にあるわけですね。もしこれを使用者が聞かないときは一体どうなるのですか。
  95. 澁谷直藏

    澁谷政府委員 第二十一条の規定は、先般佐々木委員の御質問の際にもお答えいたしましたように、当該労働者がそのまま粉じん作業場で働いておるならば、症状が進行して非常に悪化する、これを予防するための作業の転換措置を規定したのが第二十一条でございます。そこで使用者が基準局長の勧告を受けたときに、これを実施しない場合はどうかという御質問でございますが、これは私どもは実際問題として、そのまま放置するならば当該労働者が非常な健康上憂慮すべき状態になるということが専門家の診断の結果出て、その専門家の診断に基づいて都道府県労働基準局長が勧告するわけでございますから、そういった事例はまず考えられないと私ども考えております。また私どもは、実際の行政指導の面におきましてそういうことがないように、あくまでも使用者を十分に説得して、そのようなことがないように一つ指導をして参りたいと思います。
  96. 滝井義高

    滝井委員 まあ、ないように期待をすると言ったって、その事業主が粉じん作業場以外の作業場を持たないときは、これはどうもしようがないわけです。そういうときは一体どうなるのです。
  97. 澁谷直藏

    澁谷政府委員 第二十一条の節二項でこの努力義務を規定しておるわけでございますが、それはただいま御指摘のあったように、当該の事業主の事業場にはそういった事業場がないというような場合が考えられるわけでございます。そういった場合に使用者にその義務をかけましても、実際上当該使用主としては変更することは非常に困難であるわけであります。そういったような点も考慮いたしまして、使用者の努力義務という規定の仕方にしたのでございますが、これは当該使用者だけの責任でできない場合は、当然国がその間に立ってその当該事業場以外の働く職場を見つけるように、政府の責任と努力によってそれを解決していく。これは当然のことでございますので、このじん肺法案の中にもそういった意味を含めまして、政府の努力義務を規定したような次第でございます。
  98. 滝井義高

    滝井委員 問題はやはりここにも一つひそんでくるわけです。努めなければならぬというけれども、努めてもできないということになれば、労働者は干ぼしです。作業の転換もできない、転換給付の一カ月分のお金をもらっただけで、あとは三十四条の職業紹介及び職業訓練のところで政府が努める、しかし努めたけれども、さいぜん申しましたようにレントゲンの像が管理三なんといったら、どこもこれは雇いませんよ。現実に私は知っていますが、雇わない。そうしますとこれは、私はどうも大へんなことになるという感じがするのです。どうもこういう訓示規定的なものだけでは問題があると思うのです。勧告することができるだけで、勧告に従わなかったからといって別に罰則があるわけじゃない。訓示規定にすぎない。そうすると使用者が努めなければならぬという努力の程度は、どういう程度なんですか。努めたか努めないかは外から見たらちっともわからないわけです。あなた方基準局長が、おい、やったか、私は一生懸命やりましたけれども、何せよろけには雇い手がおりませんでと、こう買えばそれまでです。わずか一カ月分の二万か一万五、六千円の金をもらって、それでおさらばということでは、こんなりっぱなじん肺法案と銘打った単独法お作りになっておって、そうしてただ勧告をする、努めなければならぬ、努めてできなければ政府が引き受けます、政府も努めます。努めてできなかったときは、政府はどこかへ確実にはめてくれるという保証があるならばいいけれども政府も努めて——お役所仕事で、努めたけれども君、職がないよ、君のようなレントゲン像じゃどうもならぬと言われたらそれまでですよ。使用者の努力の程度、政府の努力の程度というものは一体どういうものなんですか。必ず就職をせしめるという義務がない限りは、その程度というものはどの程度のものなのかをちょっとお聞かせ願いたいと思うのです。
  99. 澁谷直藏

    澁谷政府委員 従来の実績によりましても、二百名程度の名がその勧告を受けて、現に職場の転換をやっておるわけでございます。どのような努力の程度かという御質問でございますが、これは都道府県の労働基準局長が勧告するわけでございますから、勧告するからには相当やはり職場の転換をする必要性があるという前提に立っての勧告でございますので、具体的には当該都道府県の労働基準局の監督官あるいは現地の所長等が労使の間に入りまして、三者立ち合いの上で具体的な相談をして、とにかく粉じん作業以外の働く場所を見つけるように三者一体となって努力をして参るわけでございます。  ただ先ほど申し上げましたように、当該の事業主の持っておる作業場にはそういった適当な場所がないという場合には、実際問題としては非常に困ってくるわけでございますが、そういう場合は政府がその間に入ってほかの職場を見つけるという努力をして参る、こういう考え方でございます。
  100. 滝井義高

    滝井委員 努めなければならぬということで、努めてもできなければ政府が入るのでしょうが、この場合に、労働組合があれば労働組合、労働組合がなければ労働者自身と相談をしてやる、こういう条文がどうして入らぬのですか。
  101. 澁谷直藏

    澁谷政府委員 従来の特別保護法臨時措置法運用の場合も、これは当然当該労働者とは十分話し合いをした上でやっておるわけでございます。今回この第二十一条の第二項で、法律による画一的な強制を避けたというのは、実はそういう点を加味してこういう法律の規定にした次第でございます。言うまでもなく、当該労働者が非常に長い間粉じん作業場で働いておった、その者が突然その病気の進行のために職場を転換しなければならない。当該労働者にとっては非常に長い間習熟しておりました職場を変わるわけでございますから、生活的にも非常に大きな影響がある。そういう意味で、これはあくまでも当該労働者と十分話し合いをした上で今後の対策考える方が妥当である。こういう考え方に立って努力義務の規定をした次第でございまして、あくまでもこの第二十一条の運用にあたりましては、当該労働者の意見というものを中心にして、そうしてこの法の運用をはかって参る所存でございます。
  102. 滝井義高

    滝井委員 あなた方がそういう御答弁ができるならば、やはりこの条文に、使用者は前項の勧告を受けたときは労働者と相談をして、あるいはその労働者の組合があれば組合とも相談をしてやるという工合に書く方が非常に民主的じゃないかと思うのですが、どうも労働省は業者間の最低賃金を作って以来、労働者の「労」の字を条文の中に入れることをきらう感じがするのです。こういう法律というものは、やはり労使双方かお互いに協調していかなければ、予防というものはうまくいかないわけです。それから職場転換もなかなかうまくいかないですよ。もう少しそういう点の配慮というものが必要じゃないかと思うのです。一つ今のようにぜひ——労働者の意見を十分お聞きになるということは、同時に組合の意見も聞くことになるだろうと思いますから、そういう行政指導をしていただきたいと思います。  それから転換手当ですが、これは三十日の転換手当を出すことになるのですが、この場合に管理三くらいになると心肺機能の障害もあるから労働能力は落ちているわけです。落ちた安い賃金で職場の転換をやったりするということに余ると、これは労働者にとっては非常に損なわけです。これは一たび四になると業務上の傷病になる、三ではまだ業務上の傷病じゃないんだ、こういうはっきりとしたそこに限界がついているわけです。ところが実際は理論的にいえば管理三だってこれは業務上の傷病なんですよ。実際にはこれは四にいけばなるのですから、一歩手前ということは、私たちはその底流としてはりっぱに業務上の傷病としての素地はできている、こう見ていいと思うのです。そうしますと、当然賃金の差額について事業王が努めてくれて、どこか職場転換をした、ところがもとの賃金と比べて非常に安くなったという場合にはその差額の補償というものは私はやるべきだと思うのです。これは普通の業務外の病気と違って業務上の傷病ですから、当然私はそういう措置を講ずべきだと思うのですが、この場合は労働省はどういうように考えておるのですか。
  103. 澁谷直藏

    澁谷政府委員 滝井先生も御承知のように、この健康管理区分の第一から第三までの軽度のものは、いわゆる労働能力という観点から見ますと、普通の健全な労働者労働能力の点においてはほとんど差がない、療養の必要もほとんどないというのが、会までの健康診断等から見た実績からもそういう見方ができるわけでございます。従いまして、私どもはこの第二十二条の転換手当を支給する場合に、健康管理三である者がそれ以前もらっておった賃金よりも非常に下がっておるという状態は、今までの実績から見ると、ほとんど見られないというふうに私ども考えておるわけでございます。しかしこの前の補償の場合にも御質問がございましたように、かりにそういったようなケースが現実に発生して、普通の平均賃金の算定の方法によった場合に当該労働者に対して非常な不当な損害になるというような場合がかりにありとしました場合には、先ほどもお答えいたしましたように、基準法第十二条第八項の運営によってそういうことがないように、これに行政運用の面において十分考慮して参りたいと考えております。
  104. 滝井義高

    滝井委員 たとえば管理三になると、明らかにX線の像に陰影が出てきておるわけですから、自己の職場内部の転換ならば、その場合でも問題があると思いますが、まあ何とか私は解決できるのじゃないかと思う。ところが政府職業訓練を受けて他の職場に行くという場合には、レントゲンの像は今度雇い入れる側は必ず見ますから、どうも管理三では激しい仕事はできぬということで、軽い仕事に行けばその分だけ賃金が下ることは明らかです。炭鉱でも非常に粉じんの激しい坑内から坑外に上がれば賃金は減るわけです。石屋さんが第一線でちんかんちんかんと石を刻んでおった、ところがどうもいかぬということで、今度はみがく方になったということになれば、それだけ賃金が下るわけです。そうすると、その下った差額というものはこれはどこかで補償しなければ、無理やりにそういう職業病にさせておって賃金の差額はやらないんだということでは困る。上になればいいですけれども、下る場合の方が多いですね。ところが、ただ一カ月の転換手当を与えただけで、あとは野となれ山となれというのでは、あまり働く労働者の方がかわいそうですよ。その処置か何もされていない。それならばここに、事業主は転換手当を支給する、なお粉じん作業場以外の作業場に就業をした場合には前の賃金と同じものを支払わなければならぬというくらいのことは書いてもいいんですよ。それも書いてない。事業主が職場転換をやらせる努力をすると同じ程度のものはここに書いていいんじゃないかと思うのですか、どうして書かないのか。当然賃金は下ることがないと思ったから書かないのですか。
  105. 澁谷直藏

    澁谷政府委員 作業の転換を行なうことによりまして賃金が下る場合もございまするし、また上がる場合もあるわけでございます、労働者側から言いますれば当然賃金が上がることが望ましいわけでございますが、なかなかそのようにばかりはいかぬ事例もあるかと思います。従来の臨時措置法なり特別保護法平均賃金の三十日分の転換手当を支給して、現に今まで実施してきたわけでございますので、今回の立案にあたりましても、従前の例によって平均賃金の三十日分の転換手当を支給することにいたした次第でございます。
  106. 滝井義高

    滝井委員 松野さん、この法案は管理四のものがよくなって管理三になってくる、こういうときには当然療養しなくてもよくなったんだから、職場復帰ができるわけです。悪くなるときは、二から三にいくと、職場転換を努めなさいと書いている。ところが逆に四が三によくなったときは何も書いていないのですよ。当然職場復帰してくれるのだとおっしゃるのです。ところがそうとは限らないのですよ。鉱山で鉱夫が坑内から坑外に上がって、また坑内に帰ると悪くなるのです。ところが食わなければならないから、ある場合には悪くなっても行かなければならない。ベンゾール中毒の内職のおばさんたちをごらんになっても、サンダルぐつを作った方が私の生活には一番いいのです、しかし長くやったら私の肉体は虫ばまれて悪くなるのはわかっているけれども、私はこれ以外にやる仕事がないのです。こういうように結局ほかに仕事がないから命を犠牲にして生活をするという形が日本の家内労働では行なわれている。これと同じことがここでも行なわれている。労働省は、四から三によくなった場合には職場復帰を事業主はさせなければならないとか、職場復帰をさすのはもとの粉じんの立つところではなくて、少なくとも同じ程度の賃金のところへやらなければならぬ、こういう親心のある規定にしてもらえばいいのですが、それがない。だからこの法案は、労働者にとって大事なところはみんな抜けているのですよ。私に言わせれば、いろいろ質問もしてきたけれども、事業主の方には割合至れり尽くせりのところを書いている、ところが労働者側については抜けている。今のような点も大いに抜けているところですよ。四から三によくなるのは今後の医学においては非常に多いところです。ところが職場復帰は何も書かれていない。悪くなったときには職場転換させるということが書いてある。職場転換をさせたときにはもとの賃金については何も書いていない。それは当然もとの賃金と同じもので転換した職場で使ってくれるなんていうような常識は今の日本の現場の状態から考えて通らぬですよ。三の労働者労働能力が落ちていないとおっしゃるけれども、では三の労働者を今度新しい職場で雇うかどうか、今の日本の現場ではレントゲンの像を見まして雇わない。だから身体傷害者の雇用促進法というものを作っているとおっしゃるけれども、これもまた努めなければならぬということで、義務的にやらなければならぬということにしていない。どうですか、こういう点、きょうはこれは修正の中にはとても入れるなんて言ったてむずかしいことですが、これは重要な労働行政のポイントをなす点かと思いますし、将来身体障害者の雇用促進の問題とも関連しますが、そういう点は松野さん自身はどうお考えになりますか。
  107. 松野頼三

    ○松野国務大臣 基本的に雇用関係はいわゆる労使間の自由の原則をたっとんでおるわけであります。ただ特殊な場合にそういうことが起こっておりますから、そういうことが起こらないような要望的措置を今回は特にきつくしたわけであります。なお、非常に労働者に不親切だと言われますが、私は不親切だとは考えておりません。これはじん肺というものに対する患者の管理区分あるいは予防措置あるいは将来の療養については、基本的には非常に前進だと思っておる。ただいろいろな点につきまして御満足のいかないところもあるかもしれません。しかし、今日までのけい肺特別措置法及び臨時措置法を通じてわれわれが体験を得ましたところは、三年以内に早期に療養をやった、そうした方は大体職場復帰をされている方が非常に多いのであります。従って、早期な治療と早期な療養によって職場復帰を促進させることがよりいいことであって、それを放置して非常に重体になったものよりも、事前の策を講ずべきであるというのがこの法案の趣旨でございまして、多少いろいろな点はございますけれども、今回は一つこれで、将来の問題はまた将来の問題として十分考えるべき余地はあるかと存じております。そのためにじん肺審議会というものがいろいろな場面を想像して、今後重要な条件を審議することができるようにしたわけであります。
  108. 滝井義高

    滝井委員 二、三点ありますけれども、一時半になりましたから二、三十分休憩させてもらって、あと続けましょう。
  109. 永山忠則

    永山委員長 それじゃ午後二時まで休憩いたします。午後一時三十二分休憩      ————◇—————     午後二時十五分開議
  110. 永山忠則

    永山委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  この際、ただいま付託になりました滝井義高君外十三名提出の、けい肺及び外傷性せき髄障害療養等に関する臨時措置法の一部を改正する法律案を議題とし、審査を進めます。     —————————————
  111. 永山忠則

    永山委員長 まず提出者より趣旨の説明を聴取いたします。五島虎雄君。
  112. 五島虎雄

    五島議員 ただいま議題になりました日本社会党及び民主社会党提出の、けい肺及び外傷性せき髄障害療養等に関する臨時措置法の一部を改正する法律案に関する提案理由並びにその趣旨を説明いたします。  けい肺及び外傷性せき髄障害につきましては、根本的な治療を必要とし、従って患者に対しましては生活面と療養面において十分な施策を必要とするものでございます。この十分なる施策のためには根本的な法改正を必要とするものでありまするが、短時日におきましてはとうていこの要請にこたえる改正をすることは困難であります。従ってこの根本的法改正のためには、さらに十分な検討を要するものと思考し、ここに日本社会党及び民主社会党がけい肺及び外傷性せき髄障害療養等に関する臨時措置法の有効期間を一年間さらに延長いたしまして、この一年間の延長期間中に十分にしてかつ根本的な法の改正を検討し、昭和三十五年十二月三十一日までにけい肺及び外傷性せき髄障害に関する特別保護法の改正に関する法律案を国会に提出する必要があります。これに要する経費は約二億三千九百万円の見込みでございます。何とぞ慎重審議の上、本提案に御賛成下さることをお願いいたしまして、提案理由の趣旨の説明を終わります。どうぞよろしくお願いいたします。     —————————————
  113. 永山忠則

    永山委員長 引き続き、労働者災害補償保険法の一部を改正する法律案じん肺法案、及びけい肺及び外傷性せき髄障害療養等に関する臨時措置法の一部を改正する法律案、以上三案を一括議題とし、審査を進めます。質疑を許します。戸叶里子君。
  114. 戸叶里子

    戸叶委員 滝井委員質問に関連いたしまして、二点だけ伺わせていただきたいと思います。  その第一点は、外国にいた人で日本に帰ってきてからけい肺になった人、あるいは外国にいまして粉じん作業に携わっておりました場合に、捕虜などになって苦しい生活をしていて、帰ってきてからけい肺になった方、こういう方々に対する御考慮というものが今までなかったように存じます。この人たちに対してはどういうふうなことを考えておられるか。なぜ私がこれを責問するかと申しますと、何月何首ということがはっきりいたしませんのでまことに残念でございますけれども、たしか次官通牒というようなものが出ているはずでございます。それはどういうのかと申しますと、労災保険者の管轄の特例というので、被保険者であった者が被保険者として最後に使用された事業所の所在地が日本にない場合におけるその者に関する第一条各号に規定する権限は、当分の間受給権者の住所地(日本に住所がないときは日本における最後の住所地)の都道府県知事が行なうものとする。  前項の場合において、受給権者の住所が初めから日本にないときは、その者に関する第一条各号に規定する権限は、当分の間同条の規定にかかわらず、都道府県知事に委任しないものとする。こういった次官通牒が出ているやに伺っているのでございますが、これは二十六年か七年くらいのことだと思うのですが、ちょっと日もわかりませんので、どうなっているか。実際こういうものがあったにもかかわらず、それが運用されずに非常に悲しい状態に置かれて自殺をしたというような事件もあることでございますので、どうなっているか。また、今後どうなさろうとするのか、その点を伺いたいと思います。
  115. 澁谷直藏

    澁谷政府委員 ただいま御指摘のございました次官通牒については、私ども今のところ心当たりございません。帰って調査をいたしたいと思います。なお、そういった外国から帰還されてけい肺にかかったという人の法の適用関係でございますが、これは特別保護法を適用する際に、そういう人を含めまして、それ以前に打ち切り補償を支給されまして特別保護法の適用外に置かれた人たちと全く同様な立場に置かれるわけでございますが、こういう人たちの法の適用関係をどうするかということが非常に議論されたわけでございます。そのときの結論といたしましては、一応法律施行後に対して適用されるという一般原則論に立って、そのような人にははなはだ遺憾なことでございますが、特別保護法の適用は受けられない。しかしながら、そういった生活の実態にある場合は、それについては生活保護なり、別の面で何らかの措置を講ずる、こういうことで特別保護法の適用にはならなかったわけでございます。
  116. 戸叶里子

    戸叶委員 次官通牒として出されているのでございますけれども、そういうふうなことを御存じないというのは少し私も不可解千万だと思うわけでございます。あとから帰ってお調べになるというようなお話でございますけれども、この法律が今どうなるかという運命にあるときに、この通牒も御存じないというようでは、まことにたよりない話だと思うわけでございます。  そこで、また今の御説明によりますと、たとえば基準法とか労災法だけの適用しか受けなかった人たち、特例法の適用を受けなかった人たち、そういう方々の扱いは生活保護か何かでやるより仕方がないというようなまことに愛情のない御答弁でございましたけれども、そういう方々がたくさんおられるわけでございますので、特にそういう事情をおくみ取り下さいまして、この法案の制定にあたっては、そういう内容を含めた改正を私はぜひやっていただきたいということを念願するものでございます。この問題、あるいはほかの問題は滝井委員あとから御質問になると思いますから、私はその点を特にお願いをいたしたいと思います。  もう一点は、けい肺にかかった方たちが手術をして、一応なおりまして、またもとの職場へ帰っても、あるいはほかの職場へ行きましても、いろいろな形でからだがもと通りにならないというような、重労働にも耐えられないような、いろいろそういう欠陥が出るわけでございますけれども、そういう方たちが安心して働けるという意味からも、希望を持たせる意味からも、けい肺手帳というようなものを出してあげればいいのではないかと思いますが、こういうことに対する政府のお考えはどうでございましょうか。
  117. 澁谷直藏

    澁谷政府委員 けい肺にかかりまして、その後病状がだいぶ軽くなったといったような人たちには、その後安心して働けるような配慮をすべきだという御意見に対しては全く同感でございます。従いまして、けい肺手帳というような考え方は今回の法律案には入っておらないわけでございますが、今後の問題として十分検討いたしてみたいと思います。
  118. 田中正巳

    田中(正)委員 ただいま議題になっております三案については質疑を終局せられんことを望みます。
  119. 永山忠則

    永山委員長 田中正巳君の動議に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  120. 永山忠則

    永山委員長 起立多っ数。よって、三案に対する質疑は終局いたしました。     —————————————
  121. 永山忠則

    永山委員長 この際、齋藤邦吉君より労働者災害補償保険法の一部を改正する法律案に対する修正案が提出されております。     —————————————
  122. 永山忠則

    永山委員長 提出者よりその趣旨の説明を求めます。齋藤邦吉君。
  123. 齋藤邦吉

    ○齋藤委員 本修正案の趣旨を御説明申し上げます。修正案の第一は、第二種傷病給付金を政府原案の一年につき平均賃金の百八十八日分から二百日分に改めることといたしたものであります。これは労災保険による入院療養は完全看護でありますが、入院療養に伴う諸雑費の必要であることを考慮いたしまして、平均賃金の二百日分に増額したのであります。修正点の第二は、遺族給付及び葬祭給付長期傷病者補償開始後六年以後に死亡した場合にも行なうことと改め、給付額の端数を切り上げたものであります。遺族給付及び葬祭給付の支給を長期傷病補償の開始後六年以内とする政府原案は、打ち切り補償の意味合いからこのように限定したものであると認められますが、六年以後に死亡した場合に遺族に対して全く給付が行なわれないことは気の毒でもあり、また、葬祭費用及び当座の生活費も必要であると考え長期傷病者補償開始後六年以後に死亡した場合にも遺族給付として平均賃金の百四十日分と、葬祭料として平均賃金の六十日分を支給することとしたのであります。修正点の第三は、経過措置により長期傷病者補償を受けることになる者の給付金の減額分を平均貸金の七十九日分から四十日分に改めることとしたものであります。経過措置により長期傷病者補償を受ける者の給付金の減額分を平均賃金の七十九日分にすることは、すでに行なわれた打ち切り補償相当額を減額する措置としては合理的であると考えられますか、これらの者のうちにはすでに打ち切り補償を消費した者もあり、療養生活の継続に困難を生ずることも考えられますので、このような事情を考慮いたしまして、減額分を四十日分に減ずることとしたのであります。修正点の第四は、長期給付の額の改訂について、改訂後の改訂を行い得るように改めたものであります。政府原案では、長期給付の額の改訂は、社会保障制度全般の調整の機会において再検討することとし、それまでの間の暫定措置として一回限りの改訂を行なうこととされておるのでありますが、社会保障制度全般の調整を行なうにはなお相当の時日を要することも考慮され、その間に賃金の上昇が生ずることも十分考えられますので、改訂後の改訂をも行ない得ることとしたのであります。  以上修正案の趣旨を申し上げた次第であります。
  124. 永山忠則

    永山委員長 本修正案に対する質疑はないようであります。     —————————————
  125. 永山忠則

    永山委員長 この際、労働者災害補償保険法の一部を改正する法律案に対する修正案及びけい肺及び外傷性せき髄障害療養等に関する臨時措置法の一部を改正する法律案は、いずれも国会法第五十七条三の規定に該当するものでありますので、内閣に意見があれば、この際意見を求めることにいたします。松野労働大臣。
  126. 松野頼三

    ○松野国務大臣 政府といたしましては、修正案については社会保障制度の総合調整の際に検討することが望ましいと考えますが、諸般の情勢上やむを得ないと考えます。     —————————————
  127. 永山忠則

    永山委員長 引き続き労働者災害補償保険法の一部を改正する法律案及びこれに対する修正案、じん肺法案並びにけい肺及び外傷性せき髄障害療養等に関する臨時措置法の一部を改正する法律案、以上を一括して討論に付します。通告がありますのでこれを許します。滝井義高君。
  128. 滝井義高

    滝井委員 政府提案のじん肺法案並びに労働者災害補償保険法の一部を改正する法律案並びに自由民主党提出労働者災害補償保険法の一部を改正する法律案の修正案に反対をして、日本社会党並びに民主社会党提出けい肺並びに外傷性せき髄障害療養等に関する臨時措置法の一部を改正する法律案に賛成の意を表するものであります。  以下その理由を申し述べます。まずじん肺法案についてでございますが、近代の資本主義国家における産業の急激な発達は、多くの職業病を生む状態が顕著に生まれつつあります。そういう中で政府は急遽じん肺法という、単に肺に関係のある一つ職業病的なものに対して法律を出しておりますが、これだけでは多くの欠陥があると思います。従って当然将来政府職業病の総合的な対策樹立のために、職業病の総合的立法を行なうべきだと思うのですが、そういうこともやらずに当面を糊塗しようとしております。特にじん肺法の中において労働者の教育についてはある程度の条文を持っておりますが、労働者を使用する使用者側の教育等についてはきわめて不明確でございます。また、じん肺が進行をして、管理一から二、二から三と病状が進行していくと、その場合には職場転換を行ない、わずかに二十日間の転換手当を支給しますけれども、一たび管理四から三、二と、こう病状が回復していった場合についての職場復帰の問題については、法案は何ら積極的な意図を示しておりません。そればかりでなく、管理三から管理四になろうとする労働者が職場転換をする場合に、一カ月門の転換手当だけで、その後における賃金の格差、職場転換によって下がるであろう賃金の格差については何らの考慮が払われていないということでございます。こういうように、この法案は一面じん肺法という単独法の進歩的な様相を持っておりますけれども、しさいにその内部を検討してみますと、羊頭を掲げて狗肉を売るというようなニュアンスが見えることは非常に遺憾でございます。なお個々の身体検査その他についても、事業主の指定する身体検査以外で、みずから積極的に随意の申請による身体検査やあるいは自分の希望しない医師で身体検査を受けるというようなわずかな身体検査の料金さえも、事業主の負担でなくて労働者に負担せしめておるという、こういう形態がとられております。こういう点から考えても、今回のじん肺法は一面進歩的なものを持っておりますけれども、このじん肺法というものは当然法体系としては予防健康管理治療と後保護という四つの柱が一貫をしてこの法律の中に盛られていなければならないにもかかわらず、根本的に、予防健康管理の面は強調せられておるけれども療養の面、治療の面、後保護の面についてはわずかに二、三行の条文で片をつけておるというきわめてずさんなものでございます。社会党としては、このじん肺法方向としてのある程度の進歩性は認めるけれども、幾分底抜けの感かあるので、今回はこれに賛成するわけには参りません。  さらに、労働者災害補償保険法の一部を改正する法律案については、今与党の方から一部の修正案が出されましたけれども、この修正についてもきわめて不満足でございます。今度の労働者災害補償保険法の一部を改正する法律案政府提案の根本的な欠陥は、労働基準法というものはそのままにしておいて、労働者災害補償保険法だけを手直しをしておるという点でございます。基準法上の事業主の責任以上のものを労災法できめることは法体系としては邪道であるといわなければなりません。労災法を修正するならば当然基準法についても政府は根本的に改正をして出してくべきでございます。ところが昔から日本では基準法をいじることはタブーだといわれておりますが、それをそのまま松野労政は今度は踏襲しておるようでございます。若い松野労働大臣としては勇気に欠けるところがあって非常に遺憾と思います。特に労災法の一部を改正することによって、そこに膨大なわれわれ国民の税金を、事業主の出した保険料以外につぎ込むことになりました。そういうことになると、労災法の適用のない労働者労災法以下の待遇しか受けないことになって、国民の税金が不当に使われて、労災法の適用を受けない人との間に大きな差をますます拡大していくことになるのです。これは結局基準法を当たらなかった根本的な矛盾がそこに出ております。従って政府はその矛盾を何らかの形で糊塗するために事故の発生の後においても特別加入の制度を認めて、苦肉の策をとっておることがこれ具体的に現わしております。  こういう根本的な矛盾を、労災補償保険法の一部を改正する法律案は含んでおりますが、さらにもっと重大な点は、労働基準法において打ち切り補償を受けた場合に、三年で解雇制限というものが撤廃されることになるわけですが、今度のこの法案においてはその千二百日分という打ち切り補償基礎にして年金の体制を作っております。従って当然これは基準法にいう打ち切り補償がもし分割払いにせられた場合には六カ年間というものは解雇してはならないという、労働省自身が書いておるコメンタールの中にもあるのでございますが、そういう精神が法案の中に出てこなければならぬにもかかわらず、分割払いをしながらも、実際は打ち切り補償とみなすという形をとってきておるわけでございます。従ってわれわれはこういう画期的な改正をやろうとするならば、政府としてはこの際非常に不治の病にかかって悲惨な生活を送るけい肺患者なりせき損患者について、雇用の三年の打ち切りということでなくて、少なくとも六カ年くらいは延長する温情のある政策を出すべきではなかったかと思うのです。これについては資本家側の日経連の圧力が強く与党なり政府に加わって、その実現ができなかったことは非常に遺憾でございます。法体系の問題もさることながら、これがまずわれわれか反対をする第二の大きな問題点です。  第三の問題点は、労働者災害補償保険法における第一種傷病給付と第二種傷病給付二つの点に分けた点であります。第一種傷病給付は二百四十日の年金を与え、第二種傷病給付は百八十八日の年金を与えます。今回与党の一片の良心によって百八十八日は二百日に修正をせられておりますけれども、これは二百四十日と百八十八日、あるいは修正による二百四十日と二百日では、どうも論理のつじつまが合わない。政府の方としては、百八十八日と決定をしたのは、一カ年周の療養費が入院の場合に二十四万四千円程度要るんだ、通院の場合は年間三万二千円程度であるので、第一種の通院の場合は二百四十日で、入院の場合は百八十八日にしたのだ、こうおっしゃいます。そうしますと二十四万四千円と三万二千円で、この二百四十と百八十八と、つじつまが合わなくなってくるわけです。そういうお金の計算でいきますと、こういう差よりももっと差が開かなければならぬということになると思うが、こういう腰だめ的な数字で差をつけておる。当然われわれの経験、患者からの意向を聞いてみますと、むしろ入院の方がよけいに金がかかる、こういう形があるとするならば、入院と通院とを一本にすることの方がより合理的であろうと思う。二百四十と百八十八で通院によけいの金を払うということは、労災病院からこの悲惨なけい肺なりせき損患者に出ていけという形を暗黙のうちに政府がとっておるのではないかという、痛くもない腹を探られるおそれもあるわけでございます。政府がせっかくあたたかい気持で作ったその法律というものが、そういう疑いをつけられるだけでも不徳のいたすところにもなりかねないので、こういう点がわれわれの納得かいかない点でございます。これが第三。  第四に納得のいかない点は、年金との併給の問題でございます。元来労働者災害補償保険と厚生年金とは、その発足当初から約束が違っております。厚生年金労働者と事業主とがそれぞれ保険料を半分ずつ納めて、多分千分の三十の保険料を千分の十五ずつ納めて作っておる保険でございます。労働者災害補償保険は、これは事業主自身が労働者の負担を持って保険料を払っておる保険で、発足の当初から約束の違った保険であります。その保険がたまたま障害というその言葉が一致したからといって、形式的には併給しておりますが、これを併給せずに、百分の五十七・五、国家公務員共済組合では百分の七十というのではどうも納得いきません。しかも老齢年金については併給をして起るという点でございます。年金は厚生省所管、労災保険は労働省所管であるにもかかわらず、こういう独断が行なわれておる。皆年金制度の樹立にあたって政府はこういう矛盾をすみやかに解決すべきだと思います。むしろそれまでは併給の形をとっておって、そのときになって何か調整するというのならばわかりますが、今からこういう差別待遇をするということは、これは将来の年金制度確立の上からいってもむしろ隘路を形成するものとして賛成いたしかねます。こういう点が根本的な点でございます。  そのほか与党の方でわれわれ民主党なり社会党の主張を入れたものは、わずかに打ち切り補償を受けた人たちに対して七十九日差し引くというのを四十日の差し引きにしてくれた点でございます。鬼の目にも涙という言葉がありますが、まさに四十日間は鬼の目の涙であったことは非常に悲しい思いがいたす次第でございます。  そのほかスライド等も認めましたけれども、こういう点についてはなお賃金のとり方等についても問題のある点でございます。これは悲惨な労働者でございますから、労働者に最も有利な点をスライドの賃金基礎にしてもらわなければなりません。と申しますのは、今回の改正というものが職業病とそれからアクシデントである脊髄骨折のようなものを全部一緒にして労災法の中にほうり込んできておるということです。しかもその人がほうり込まれるときには、その働いておったときの前三カ月間の賃金基礎になるという点です。従ってアクシデントによって長期の傷病給付を受けるところの労働者と、長くけい肺ベンゼン中毒労働能力が落ちて、そしてこの法律の恩恵を受ける労働者との間に、非常に賃金の算定の基礎、いわゆる年金基礎に差が出てくるわけです。こういう点についてもわれわれはどうも納得のいかない点かございます。  とにかく一応方向としては、こういう悲惨な傷病に対して年金方向に向いたいという点については、私は労働省のその努力には感謝を申し上げますけれども労働省というものはもう少し科学的な見地に立って、ほんとうにヒューマニズムを持ってこの法案を作る必要かあると思うのです、もちろんわれわれ社会党にしても、現実の政治というものが力関係によって決定せられておるということはよくわかっております。しかしある程度ヒューマニズムというものが力を乗り越えるということがないとするならば、政党政治というものは意味をなさなくなります。私は今度の法案の方向としては、ある程度そのいい方向を認めますけれども、その根本的な底流を流れるものを見ていきますと、非常に多くの矛盾点をはらんでおります。政府はすみやかにそれらの矛盾点を克服して、りっぱな法律にしていただくことを要望いたし、悲しいかな政府提案のじん肺法並びに労働者災害補償保険法の一部を改正する法律案、並びに自由民主党の提出した労働者災害補償保険法の一部を改正する法律案の修正に対しては賛成することができません。従って社会党と民主党の提出をいたしておりますけい肺及び外傷性せき髄障害療養等に関する臨時措置法の一部を改正する法律案に賛成をいたしたいと思います。この法律によって、とりあえず一カ年間延長をいたし、ゆっくり一つ、根本的な方向はいいのですから、その方向をよりよき方向にきちっと法体系をまとめて、基準法労災法矛盾を服して出していただくことを要望し、私の討論を終わります。
  129. 永山忠則

  130. 佐々木良作

    佐々木(良)委員 私は、民主社会党を代表いたしまして、日本社会党と民主社会党との共同提案になっておりますところの、けい肺及び外傷性せき髄障害療養等に関する臨時措置法の一部を改正する法律案、つまり現行の臨時措置法を一年延期する法案に対しまして賛成し、同時に政府提案のじん肺法案並びに労災法の改正に関する法律案に反対の討論を行ないたいと思います。  趣旨の中心点は、まず政府案に対するものでありまするか、政府案は、私が質疑の過程におきましても、るる指摘をいたしましたように、法体系上に多くの疑問点を持っておりまする点、並びに一番中心でありまするところの今度の補償内容が不十分であります。従って、本来の提案理由の趣旨を生かすための内容を伴っておらないという二点に実質的には尽きるわけでありまするが、今その基本に触れまして少し内容に立ち入ってみたいと存じます。  私どもは、今申し上げましたような趣旨に従いまして、政府提案のこの二法案に反対をいたしまして、臨時措置法の一年延期を要望するわけでありますか、この一年延期をいたしておりまする期に、ただいま滝井さんの方からもお話がありましたように、私どもは、特に民社党といたしまして独特の内容を持ちますところの職業病法——この審議の過程におきまして考え方を明らかにいたしました職業病法を提案をいたしまして、そして本来の現行の臨時措置法の十一条の趣旨にそのまま合致するところの法体系を整えたい、こういう考え方なのであります。  まず今政府提案になっておりまするところのじん肺法案労災法の一部改正法、この二法案は、長い間の懸案でありましたところのけい肺等の職業病に対しまして特別保護を加えるために根本的な、抜本的な立法として提案するんだ、こういう建前で提案をされたものであります。従いまして類似傷病の問題でありまするとか、あるいはその他の関係あるところのものとのバランスの問題かありまするが、一番根本としては、けい肺をどういうふうにして防ぎ、そしてその疾患からどういうふうにして療養をして立ち上がらせるかという根本的な立場が明らかになりまして、これと似たような病気に対して、似たような措置をとられようということでありまするから、その根本が薄れないように私ども考えなければならぬと存じます。けい肺審議会結論を見ましても、けい肺に対する考え方は、従って今度の提案になっておりまする二法案の中にはっきり入っておらなければならぬ内容をなすものでありまするが、その基本について明確に次の三点を指摘されておる。つまり予防の徹底化をはっきりとはかること、それから三番目には不幸にしてそういう病気にかかった場合には適切な健康管理を行いまして、それによって病勢の悪化を防ぐこと、そして三番目には療養をするようになった場合には、仕方ないから必要な療養を継続し得るような、そういう素地を作ること、以上三点。予防の徹底化と適切な健康管理と必要な療養を継続して得るところの補償、この三点が一番基本になりまして、これらの法律は作られなければならぬものだと存ずるわけであります。ところが政府提案によりますところの二法案によりますというと、まず予防健康管理の問題につきましては、じん肺法案で扱っておられるのでありまするけれども、特に事業者に対する新しい義務を課することを避けようとせられましたがために、そしてまた補償関係におきましては、従来の労災保険の概念の中に押し入れて、かつまた従来の打ち切り補償制度の費用でもって大体まかないたい、こういう立場をとられましたがために、先ほど写し上げましたような予防の徹底化、適切な健康管理、必要な療養を継続せしめるための補償という三原則が知らぬ間に失われてしまいまして、従来の有様と大同小異、特にけい肺だけをとってみまするならば、従来よりはもっと改悪の結果になっておるというような状態にさえなっておるとわれわれは考えざるを得ないわけであります。簡単に内容を、ほんとうに大まかに拾ってみましても、予防につきましては事実上じん肺法案の第五条に一カ条文だけで規定をしておりまして、従来審議会などでも最も強く要望されておりましたところの粉じんの管理につきまして、いわゆる衛生学上の粉じん恕限度を設定しなければならぬこと、そのために粉じんの測定器械の指定統一を行なわなければならぬこと、粉じん測定の定期的な実施を義務づけなければならぬこと、こういう基本的な粉じん管理に関するところの三つの原則について何にも触れておらない。これでは予防に対しまして、従来より一歩も先に歩んだことにはならぬ結果になっておるわけであります。さらにまた健康管理の面を見ましても、その中心措置になっておりますところの作業転換の規定はしてあるのでありますが、しかしながら当該労働者がこの措置に協力しようとするならば、当然に従来から主張しておりましたところの賃金が引き下げられないこと、転換先の職場が保証されること、この最低の三原則を措置の中に入れるのでなければ、措置の効果は決して実効果をおさめることができなかったはずでありますにかかわらず、これらにつきましては何ら規定は触れておらないわけであります。さらに予防健康管理につきまして、法案は種々の政府の援助措置を規定はいたしておりますけれども、質疑によって明らかになったところによりますと、それらにつきましては、三十五年度におきましても、ほとんど予算措置に講ぜられておらないのでありまして、それでありますと、これはから念仏に終わる危険が多分にあるわけであります。このようにじん肺法案に対しまして新しい法律の形をとられましても、実際は予防健康管理について見ますと、従来の労働基準法あるいは鉱山保安法あるいはまた結核予防法、これらの従来の法律考え方並びに規定から一歩も先には出ておらない、現状のままでありまして、従いまして、法律によって盛られておるものはない、こういうふうに思わざるを得ないのであります。  さらにまた政府提案の今度の中心でありますところの、そうしてまた政府自身が最も自賛しておられますところのいわゆる長期給付を内容とするところの補償、そのための労災法の改正法案の内容を見ましても、先ほどから繰り返し申し上げますように、長期給付の内容は当然に必要な療養を継続し得る補償、その内容を持たなければならぬわけであります。しかながら実際は従来の打ち切り補償費を分割払に引き直した程度のものでありまして、何にも大してプラスはないというのが現状だと思います。詳しい内容につきましては、すでに質疑のときにも出ておりますから省略いたしますけれども、要するに提案をされておりますところの長期給付の内容というものは、われわれの主張し、そうして現行法が要請しておるものの内容にはかなり遠いものであることを指摘せざるを得ないわけであります。長期給付の内容は当然に医療に必要な実費と、最低限の、少なくとも基準法の上で認められておるところの休業補償、すなわち生活保障の費用の両方を包含しておらなければならぬものだと私ども考えておるわけであります。同時に、遺族補償や葬祭料を六年後はやめようという最初の提案、これはようやくにいたしまして、先ほどのお話の通りに改正の段取りになることは私どももまことに喜ばしいことではありますが、最初の考え方から見ましても、これらの措置に対しましてわれわれと非常に考え方を異にされておる点を私ども指摘せざるを得ないわけであります。  なおまた、長期給付を行なうようになると打ち切り補償が完了したときと同じように見まして、これでもって解雇制限を廃止しようという措置になっておりますが、これも質疑のときに明らかにいたしましたように、従来の考え方から見ても、打ち切り補償を全部行なった後でなければ解雇制限を廃止する条項の適用は受けないわけであります。しかしながら、長期給付の第一回の給付というのは、これは長期給付の開始でありまして、従来の打ち切り補償が全部支払われてしまったときと同じようには絶対に扱えないものでございますから、これらはまことに遺憾な内容を含んでおるものと言わざるを得ません。  さらにまた、厚生年金によるところの支給分は減額をするという措置、これも先ほど言われた通りでございますし、また経過措置の中におきまして、それこそ血も涙も合理性もない態度をとっておる。そういう状態から見まして、私どもは今度のこの補償の内容が、必要な療養を継続させるという根本趣旨にはるかに遠いものであることを指摘せざるを得ないわけであります。  かくいたしまして、けい肺等の特別保護を目的として出発したところの今回の二法案の提案でありましたけれども、実際上は昭和三十年の特別保護法制定以前の状態あと戻りしてしまう結果となるおそれが多分にある法案となってしまっておるわけであります。政府は、じん肺として従来のけい肺よりも対象を拡大したことや、労災法の改正では、類似傷病あるいは重障害等に対しましてけい肺同様の補償を行なうように、そうしてそこにバランスかとれたということを非常に声を大にして言っておられるのでありますが、それらけい肺に対する特別保護措置が、他の類似件病に対するバランスのために水増しをされたり、そのために薄れてしまったりするならば、本法の本来の意味を大いに失うものでありまして、そのことは臨時措置法十三条の本来的な趣旨にも反するものである、こういうふうに言わざるを得ないわけであります。  そこで一番最初申し上げましたように、私ども政府のこの提出の二法案に反対をいたしまして、とりあえず現行の臨時措置法を改正して一年延期することといたしまして、その間に、今申し上げましたような一切の職業病及び類似傷病を対象としたところの、予防から健康管理補償給付を含む単独の職業病法の制定を期したわけであります。従いまして、私どもはこの二法案に反対をいたしまして、わが党独自の職業病法を制定をいたしますために、両党で提案をしておりまするところの臨時措置法の一部を改正する法律案に賛成をいたしまして、政府提出法案に反対するとい立場をとるわけであります。
  131. 永山忠則

    永山委員長 以上で討論は終局いたしました。     —————————————
  132. 永山忠則

    永山委員長 まず、内閣提出労働者災害補償保険法の一部を改正する法律案について採決するのでありますが、本案については齋藤邦吉君より修正案が提出されておりますので、まず修正案について採決いたします。本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  133. 永山忠則

    永山委員長 起立多数。よって本修正案は可決されました。  次に、ただいまの修正部分を除いた原案について採決いたします。本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  134. 永山忠則

    永山委員長 起立多数。よって本案は修正議決すべきものと決しました。  次に内閣提出じん肺法案について採決いたします。本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  135. 永山忠則

    永山委員長 起立多数。よって本案は原案の通り可決すべきものと決しました。  ただいままでの議決の結果、滝井義高君外十三名提出けい肺及び外傷性せき髄障害療養に関する臨時措置法の一部を改正する法律案は、議決を要しないものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  136. 永山忠則

    永山委員長 起立多数。よって本案は議決を要しないものと決しました。     —————————————
  137. 永山忠則

    永山委員長 この際大坪保雄君より、内閣提出労働者災害補償保険法の一部を改正する法律案に対し附帯決議を付すべしとの動議が提出されておりますので、その趣旨説明を求めます。
  138. 大坪保雄

    ○大坪委員 私は自由民主党を代表いたしまして、ただいま委員長の宣言されました附帯決議をしていただきたいという動議を提出いたすのでございますが、その決議案について御説明をいたしたいと思います。まず附帯決議の案文を朗読いたします。    労働者災害補償保険法の一部を改正する法律案内閣提出)に対する附帯決議  一 長期傷病者補償を受ける者については、にわかに住居に困難を生ずるごときことのないよう、住宅等の福利施設の確保等につき関係機関において配慮せられたいこと。  二 遺族補償及び遺族給付は一時金となつているが、遺族の生活の安定をはかるため、政府はすみやかに遺族年金制を採用するよう検討せられたいこと。  三 けい肺患者外傷性せき髄障害患者のうち、過去に打切補償のみによつて災害補償を打切られる等(労災保険法の適用を受けないものを含む)今回の長期傷病者補償を受けることができないものについては、療養生活を継続しうるよう政府関係機関において適切な措置を講ずるよう配慮せられたいこと。  四 長期傷病者補償を受ける者のうち、生活困難なものについては、生活資金の融資につき有効適切な方策を考究すること。  五 今後職業病についての総合的立法について検討すること。  以上であります。  内容は御説明申し上げるまでもなく案文の中に明らかになっておるのでございますから、詳細な説明を省略いたしたいと存じますが、どうか社会党と並びに民社党の諸君も御賛成下さいまして、満場一致でこれを御決定下さることをお願いいたします。
  139. 永山忠則

    永山委員長 本動議について採決いたします。これに賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  140. 永山忠則

    永山委員長 起立総員。よって内閣提出労働者災害補償保険法の一部を改正する法律案に対しましては、大野委員の動議のごとく附帯決議を付することに決しました。  この際、労働大臣より発言を求められておりますので、これを許します。松野労働大臣。
  141. 松野頼三

    ○松野国務大臣 政府としてはただいま議決されました附帯決議の趣旨を尊重し、善処する所存であります。     —————————————
  142. 永山忠則

    永山委員長 なお、ただいま議決いたしました各法律案に関する委員会会報告書の作成等につきましては委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  143. 永山忠則

    永山委員長 御異議なしと認め、そのように決しました。  ちょっと速記をやめて。     〔速記中止〕
  144. 永山忠則

    永山委員長 速記を始めて。      ————◇—————
  145. 永山忠則

    永山委員長 次に、労働関係基本施策に関する件について調査を進めます。  質疑の通告がありますのでこれを許します。大へん済まないのですが、本会議が始まりますから、二十五分ずつにお願いしたいと思います。多賀谷真稔君。
  146. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 昨二十八日三池炭鉱に起こった両労組の激突事件並びに争議の収拾について政府に所信をお伺いいたしたいと思います。  会社の生産再開に伴いまして、三池新労組の強行就労となり、これが大混乱になり、労働者同士の血で血を洗う惨事を引き起こしたことは、これは労働者の最大の悲劇であり不幸であると言わなければなりません。生産再開を強行すれば、流血の惨は見なくとも労働者の激突が起こり不測の事態を惹起することは、かねてから憂慮されておったのであります。かかるかゆえにこそ炭労は二十七日緊急中央闘争委員会を開き、百八十度に近い戦術の大転換を行ない、中労委のあっせんを申請し、あわせて三鉱労組を通じて生産再開中止を申し入れたのであります。激突が回避されるであろうことをわれわれは期待いたしたのでありますが、しかるに中山中労委あっせんをけり、いわゆる組合活動を含む千二百七十七名の指名解雇を通告し、労働史上まれに見る先制的ロックアウトを断行し、加えて組合の切りくずしを行ない、第二組合の結成なるや生産再開の強行を企図した会社は、この申し入れにも応ぜず、遂に大惨事を引き起こしたことは、会社に責任かあるといっても過言でないと思います。経営者に真に従業員に対する一片の愛情があるならば、かかる事態は当然避けられたと私は思うのであります。     〔委員長退席、大坪委員長代理着席〕 生産再開といっても、実は坑内直接夫の少ない新労組の組合員の構成からしては、ほんとうに正常な生産かできるわけではないのでありまして、生産再開すればかえって赤字累積になるわけであります。結局は石炭を出すことが目的よりも、第一組合員の動揺とその団結の崩壊をねらったということは明らかです。そこで会社は三鉱連の申し入れに対して十分考慮をすべき余地があったにもかかわらず、あえてそれを強行させた。この強硬な態度は当然私は非難さるべきであると考えるのですが、政府はこれに対してどういう所見をお持ちであるか。  時間がありませんから続いて簡単に質問いたしますが、激突をした三川鉱において、青い腕章をしたいわゆる従業員でない灯をともす会の会員であるものが、こん棒や金棒や目つぶしをもっておどりかかったというのが実情のようであります。一体こういうことが許されるかどうか、この点あわせて御答弁を願いたい。
  147. 松野頼三

    ○松野国務大臣 三井の争議は昨年の十一月中労委の中山氏があっせんに入りましたが、労使ともにあっせんに対して拒否されました。いわゆる自主解決という方向に進まれて、今日までわれわれも非常に心配をしながら見守っておったわけでございます。たまたま炭労から藤林会長にあっせん依頼が行なわれました。あっせんということは、いわば平和解決でございます。そのさなかに昨日のようなまことに多数のけが人が出るという労働問題については、まことに政府としても残念に考えております。その内容についてはまだ詳細の報告を受けておりません。警察当局からもまたわれわれの方にも詳細な内容については、争議そのものの昨日のけが人の内容についてはまだ報告を受けておりません。しかしいずれにしましても、この数カ月の商に労働組合というものに対して政府は公平な立場で見ておったわけであります。もちろんある一部のものは不当労働行為ということで労働委員会に申請をされた事件もございます。これは労働委員会で現実にそれは調査されなければ、政府としてもこれに対する見解を申し上げることはできません。従って不当労働行為があったかどうかということは、労働委員会で現地調査及び実証調査の上でないと、ちょっと判定は軽々にはできない。また組合が分裂したことも、これは組合員自身のお考えで分裂されたことと存じますので、これに対して政府が関与することはできません。そういう立場で今日まで政府は公平な目で、不当労働行為がないように、暴力事件か起こらないように今日まであらゆる努力をしてきたわけであります。
  148. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 私は労働関係にかなり知識のある、体験のある人は、こういった組合の激突が不測の事態を招くということは、当然考えなければならぬと思うのです。その処置が十分されなかったというところに問題がある。炭労はとにかくこの事態を避けるために平和解決への方向を踏み出した。炭労のような大きな組織で、大会を開かないでこれだけの転換をするということは容易ならざる幹部の考え方ではないかと思うのです。その異常な決意をもって解決の方向に乗り出したのに、それを会社が受け入れなかったというところに私は問題があると思うのです。これは非難をされてしるべきじゃないかと思うのです。ですから当然これについては、あの事態政府だって見守っおったのですから、そうして炭労の中闘が開かれてその戦術を決定したのは六時過ぎだったと私は思う。ですから当然時間的にいいましても経営者の力でその受け入れる態勢はあった、かように考えざるを得ない。それができていないところには問題がありはしないか、かように考えるわけですか、これに対して御答弁願いたい。
  149. 松野頼三

    ○松野国務大臣 とにかく昨日ああいう事態か起こった直後でございますから、まず暴力を排して秩序ある態度をとって、その上で平和的解決というものを求めることが一番今日の問題であろうと存じます。いずれにいたしましても昨日のああいう事態か起こったことは、それはいずれの側にとりましても非常に大きな損害だと私は考えます。従って私は平和的解決というものを求めるならば、まず平和裏に秩序を保った上でこの平和解決という道を求めることが一番現実的である。しかもその可能性が一番多いことだ。昨日会社が拒否したということは、これは会社自身のお考えであって、これは非難するわけに参りません。しかし永遠に拒否するということも、これもまた見通しがつかないのです。従って昨日の問題はおそらくそういうことから問題か起きたことであろうし、第二組合は御承知のごとく生産再開、ストライキもいたしておりません。従って正常な立場における労働協約というものを締結せられておるのでありますから、われわれは第二組合が今日まで合法的であることは、これは論を待ちません。ただその中においてやはり暴力ピケ的なものがあるために、これに対して実力行使をするということは、これは騒動を起こしやすいことだ。強行就労ということにつきましても、これについては大いに考えなければならないこともございましょうけれども、昨日はやはりともにまだまだ考えるべきところは多々あると私は考えております。
  150. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 組合が二つに分れて、しかも人数から申しましても非常に大きな組合、それが激突をすればどういう事態になるかということはわかっておる。しかし組合間の問題だけでなくて、ここに先ほど申しましたように暴力団的ないろいろな他からの人々が来て、その人々がいわばピケを破ろうとする、あるいは強行就労をしようとする側の先頭に立ってこういう事態を招いたというところに、会社としても私はそれは排除して、そういう方々の遠慮を願って行なうべきではなかったか、こういうところに問題があると思うのです。これは事実新聞においても、あるいはまた昨日のNHKのラジオにおいても、記者団の会談においてそういうことが言われておる。ここに私は非常な不幸を招いた原因があると思うのです。これについてはどういうようにお考えですか。
  151. 松野頼三

    ○松野国務大臣 いずれの場合にいたしましても、第三者の暴力にしても、これは労働争議には厳に慎しむべきことであります。ただその暴力団をどうのこうのということは、現実にまだ報告を受けておりませんので、調査をいたしましてからその問題は考慮いたします。しかしいずれにしましても、組合運動というものに、当事者であろうが第三者であろうか、暴力を使うことは断じて禁止されていることであります。
  152. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 これは第二組合といいましても、争議の始まる前から組合が分れておる場合は、初めからいわば第一組合といいますか、その側はそのことを予期して闘争戦術に入ったのでありますから、私はそれほど感情を入れる必要はないと思います。ところが争議の途中から分裂したという場合には、これは感情が高まるのはあたりまえでありますし、また統制の問題も起こると思う。これはいい悪いは別としてそういう状態になる。ですからこれが激突をするということは、非常ないろいろな事態か起こることを予想しなければならぬ、ここにも私はやはり会社に問題があると思う。しかも先ほど申しましたように、本来生産再開といいましても石炭を出すのが目的じゃないのです、直接夫は少ないのですから。要するに気勢をそいで第一組合の動揺をねらうということが目的であることは、その構成人員から見ても明らかです。ですからこういったことはむしろ避けるべきではなかったか、しかも一方においては平和交渉をし、平和解決に乗り出そうと炭労が戦術転換をしたのですから、当然経営者としてそういう処置をとるのが妥当ではなかったか、こういうことを私は聞いておるわけです。     〔大坪委員長代理退席委員長着席〕
  153. 松野頼三

    ○松野国務大臣 生産再開で出炭をするかしないかということは会社の判断で、労働大臣が介入すべきものじゃございません。また第二組合の結成の順序と方法というものは組合員自身がおきめになることであって、それによって不当なものが起こったとか起こらぬとかいうならば、これは労働委員会において実証をあげて判定さるべきものであって、これもあえて私は言及するわけには参りません。
  154. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 時間がありませんから、続いて今度の三池争議の特色の一つとも言うべき点を取り上げて質問いたしたいと思いますが、いわゆる組合活動者なる人を生産阻害者という名前で簡単に解雇をしておる。ここに私はやはり問題があるのじゃないかと思う。御存じのように労組法の七条には不当労働行為の規定がある。さらにまたこのことは憲法でも十分保障されておる点である。これは小さな組合でありますと、必ず労働委員会でも問題にし得ると私は思うのです。しかしあれだけ公然として、しかも日本の最大のクラスの会社が堂々行なうというこの事態、私はここに問題があると思うのです。もう労働法規も憲法も問題でないという会社の態度、この態度が今日のような争議の紛糾した原因をなしておると思うのです。これに対しては一体政府は、どういうようにお考えですか。
  155. 松野頼三

    ○松野国務大臣 労働組合運動を弾圧すべき組合干捗ということは、これは組合法の第七条によって禁止されております。三井の場合及びその個々につきましては、われわれもその内容をいろいろ調査いたしませんと、それがはたしてどういうことかわかりません。しかし要するにこれが業務阻止あるいは業務命令違反ということになれば、それはおのずから別の問題であります。しかしてその判定はじゃだれかするのだ、労働委員会及び裁判所がこの判定をすべきことであって、労働大臣かこれは不当労働行為だと一々判定するには、時間的に私としてはまだ判定がつかない。ただ私が聞いておりますのは、組合干捗であるかどうかということが問題であります。従って、これは組合活動家というのか業務阻害者というのか、どういうことかが問題であって、それは内容、実例をあげてやりませんと、軽々にどちらがどうだということは言えるものじゃないと私は思います。
  156. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 私はもしこのことが許されるならば、日本の労働法は死文に化したもひとしいと思うのです。私も具体的にこれこれの人、これこれの人とは申しませんが、一般に組合活動家が解雇されておるという。そうしてこの活動家解雇というものが、この争議を今日のように長引かせた原因にもなっておる。ですから中労委会長のあっせんも、結局希望退職は認めて、将来の問題としての職場規律の問題は考えるけれども、そういう指名解雇はよくないというので、あっせんに出てないのです。ここにも私はやはり問題がありはしないかと思うのです。相当の期間がたっている今日、全然わからないということでは労働行政を扱う大臣としては、私は職責を果たしていないと思う。一体その後どういう調査をされたかお尋ねしたい。
  157. 松野頼三

    ○松野国務大臣 労働法の保護というものは現存してございます。従って労働大臣としては労働法の完全な実施と保護を生命とするものである。しかして個々の問題については、それの調査と保護というものが厳然とあるのであります。それは労働委員会で調査する、裁判所で判定を下すという機関があるのですから、これは労働大臣が判定を下すわけじゃありません。しかしてその保護が与えられないというときには、労働大臣としてはそれは大いに考えなければならないことであります。今日ではまだその段階に至っておらないということを私は今申し上げておる。明細にまだ明らかになっておらないのです。従ってその保護が全然ないのじゃございません。保護は今日でもあるのです。従って個々の問題については当然保護が与えられておるのでありますから、私は労働法が空文になっているとは断じて考えておりません。
  158. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 私は時間がありませんから、問題の提起だけをしておきます。  去る三十七日と記憶しておりますか、会社は第一組合員の保安要員の差し出しを拒否いたしました。これは明らかにスト規制法違反になると考えますが、一体どういう見解でありますか。
  159. 亀井光

    ○亀井政府委員 鉱山保安の責任は会社側にございまして、その鉱山保安法の規定に従いまして保安を保ち得るかどうかという判断は会社側にあるわけであります。そこで会社側が、いわゆる第一組合員の差し出しておりました保安要員を引き揚げて、第二組合員にかえるというこの今社側の意思決定、そのこと自体については何ら鉱山保安法に反するものではない。ということは、先ほど申しますように、鉱山保安の責任は会社にあるわけでありまして、会社がその責任を果たすためにどういう方法をとるかいうことは、会社側みずからの判断にまかされておるわけであります。
  160. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 そういたしますと第一組合が、職員と第二組合がおるから保安要員は十分ではないか、こうして差し出しを拒否したらどうなりますか。
  161. 亀井光

    ○亀井政府委員 それは会社としましては結局保安上の責任を全うし得るという自信がおり、あるいはそういう計画につきまして十分の自信があるからこそ会社としてはおそらくそういう措置をとられたのではないかと思います。
  162. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 私が質問いたしましたのは、第一組合の方が、職員と第二組合員がおるから保安は十分でしょう、保安は確保できるでしょう、こういって保安要員の差し出しを第一組合の方で拒否したらどういうことになります
  163. 亀井光

    ○亀井政府委員 これはむずかしい法律問題がございまして、多賀谷先生御存じと思いますが、われわれの解釈としては、そういう第一組合員が保安の業務命令を受けまして、保安要員として差し出すべき義務がある場合におきまして、その義務を怠りまする場合におきましては、やはりこれは法律に違反するというふうにわれわれは考えております。
  164. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 そうすると第一組合員の場合はスト規制法違反になり、会社の場合は違反にならぬわけですか。
  165. 亀井光

    ○亀井政府委員 先ほど申し上げまするように、会社は保安の責任があるわけでございますから、会社が保安要員につきましてその数をきめ、あるいはその配置をきめて参りまする際におきまして、業務命令としてその責任を負わされた労働者がそれに違反する行為を行ないます場合は法律違反になるわけであります。今の場合におきましては、会社としていわゆる第二組合あるいは職員をもって保安の責任を全うし得るという会社の判断のもとに、いわゆる第一組合員の保安要員の引き揚げを行なうということは、これは会社みずからの判断でございます。その判断のよしあしにつきましてわれわれかとやかく言う筋ではございませんが、法律上はそういう判断は経営者側の判断にまかされておることであります。
  166. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 ちょっとスト規制法を見てごらんなさい。第三条は「石炭鉱業の事業主又は石炭鉱業に従事する者は、争議行為として」云々で、要するに保安の放棄をしてはならぬと、こう書いてあるのですね。事業主もそういう行為をしてはならぬというのですよ。事業主がする場合は、当然ロックアウトをして、そして第一組合と第二組合、職員がある場合で——私はその例をあげて説明をしておる。それで聞いておるのですよ。要するに第一組合と第二組合と職員組合というものがあった場合に、ロックアウトか行なわれた。そうすると経営者の方は、第二組合と職員で十分保安はやっていけるから第一組合は全部保安要員も要らない、こうくる場合には、一体何になろかというと第三条の違反だ、こう言っておる。当然第三条違反になるでしょう。この条文はそういう例しか考えられませんよ。会社が保安を争議行為として放棄するという場合がほかに考えられますか。事業主が争議行為として放棄する場合はこういう場合ですよ。
  167. 亀井光

    ○亀井政府委員 その保安要員の問題は、この条文にございまするように、争議行為として行なうことを禁止されておることは、もう多賀谷さんのおっしゃる通りであります。ところがこの保安要員はそういう場合ではなくして、鉱山保安という特殊な目的のためにその保安の責任があり、またその責任を遂行するための保安要員に対する業務命令というものが一貫して経営者側から行なわれて参る。これは言うまでもなく鉱山保安法上の要求に基づくものでございます。そこで争議行為の紛争が労使間にありましても、保安というものは鉱山保安法によりまして坑内の保安を維持しなければならぬという別な目的があるわけであります。そこで先ほど来申し上げますように、保安か確保されるかどうかということの判断は経営者がいたすわけであります。これは経営者が保安責任者であります以上、当然なことであります。そこで経営者がその保安につきまして、いわゆる第二組合あるいは職員をもって充て得るというふうな判断をし得るとすれば、これは会社の保安責任者としての判断であります。それかいいか悪いかということは、先ほど来申し上げますように私は判断をすべき筋ではございませんが、それをもって直ちに法律に違反するというふうには考えておりません。
  168. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 そういううそを言ってはいかぬ。この法律か延長された場合に、今おられませんけれども、倉石労働大臣が答弁になったのは第三条に違反する、それは事業主である場合には、私が例をあげたので、こういう場合だろう、その場合だ、そうなっておる。ただ罰則がないという問題が起こったことは事実です。しかし第三条違反ということはそのとき明らかだ。そういう間違った答弁をするということは、労働行政担当の亀井さんとしては非常におかしいやり方じゃないか、不公正じゃないか、私はこういうふうに考えます。これは問題をあとに残して、その次に私は国家機関がこの争議行為の中に入っていったという事実を指摘したい。  これは三角海上保安部から巡視艇か出て、そうして海上から船で来た第二組合が第二人工島に上陸をする場合に援護をし、これに支援を与えておるという事実です。これは私は非常にゆゆしき問題だと思います。ここにあります西日本新聞でもその巡視船の名前も書いてある。「いそちどり」「すずなみ」「もくせい」こういう巡視艇が三角海上保安部から出ておるわけです。そうしてこれを援護しながら行ったということです。この事実は大牟田の海上保安署の署長も、わが党の田中稔男代議士並びに吉田法晴参議院議員にその通りであると言っている。私はこの事実は看過できない大きな問題だと思う。一体労働大臣はこれに対してどういうようにお考えであるか。それをお聞かせ願いたい。
  169. 松野頼三

    ○松野国務大臣 そういう事実があるかどうか、まだ私は運輸大臣から聞いておりません。
  170. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 事実はすでに確認を見ておるわけです。海上保安署の署長はそういう事実はありました、こう言っている。あったとするならば、一体これに対してはどういう責任をとるのか。これこそ労使紛争の中に国家機関が入ってきておるといっても過言でないでしょう。一体どういうようにお考えですか。
  171. 松野頼三

    ○松野国務大臣 いまだに責任ある運輸大臣からその事実の内容の説明を聞いておりません。けさも予算委員会で多少それに関連したことが出ましたけれども、運輸大臣の答弁も私は明確に聞いておりませんでしたが、私は実はそういうことについてまだ明確に、こういう動きをしたのか、どういうことをしたのか、それを聞いておりません。
  172. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 それでは海上保安庁長官に伺いたい。三角海上保安部から出動をした巡視船、これは明らかに労使双方の争議に介入をした問題ですが、なぜ政府機関が一方の組合を応援をしなければならなかったか、これをお聞かせ願いたい。
  173. 林坦

    ○林(坦)政府委員 海上保安庁といたしましては、本件の争議には不介入の立場をとっていることは申すまでもありません。当日一部の新聞に報ぜられましたように、海上保安庁の船か新組合に便宜を供与したかのごときうわさに関しまして事実と相違しております点かございますので、御説明申し上げます。  ただいままでの私どもの方へ参っております報告によりますと、二十七日の午後八時三十分過ぎに有明海の長洲を出航いたしまして、第二人工島に向かった第二組合員を乗せた漁船十三隻が、一時間たっても未着である、消息がわからない、消息不明になっておるというので、捜索してほしいということを会社の人事部の係員から依頼を受けました。それで三池保安署におきましては、こういう消息不明の船が出た場合でございますので、灯台の見回り船であります「ありあけ」その他をして捜索に当たらせたのであります。この「ありあけ」という船は、三池の南防波堤における組合員に対しまして、その捜索中の船が到着しておるかどうかということを確認する必要がございますので、第二人工島桟橋に到着いたしまして、そこにつなぎまして、搭乗保安官が調査のため上陸しておる間に、これは別のあれでございますけれども、大牟田港を出港した新組合の用船の「さらし丸」という機帆船が灯台見回り船「ありあけ」の左舷に接舷いたしまして、乗っておった人たちが上陸した、こういうわけなのでございます。ちょうどそのときにほかの巡視船の「うぐいす」というのが、やはり同様の任務で引き続いて捜索に従事しておりましたので、「ありあけ」に接舷しようとする船影を認めましたので、これが捜索中の船であるかどうかということを確認するために探照灯を照らしたという事実があるのであります。これは決して「さらし丸」の便乗者に便宜を与える意図をもって照射したのではないのでありまして、ただいま御説明申し上げましたように、はたして今探しておる船であるかどうかということを確認する意味で探照灯を照らした。海上保安庁といたしましては、争議介入を不当に行なうというようなことは考えておらないのであります。海上におきまして暴力行為等の公共の秩序を乱すような不法行為が行なわれるような場合には、これは会社側であろうと組合側であろうと、もちろん取り締まるべきであるとは考えております。また紛争に際しましていろいろ衝突とか、ただいま申し上げましたように海難等がございますれば、これの救助に当たることは当然の責任であると考えております。
  174. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 今長官がお話しになったのと、現地の保安署で署長が話したことと相違がある。それはなぜかというと、会社とは全然関係がありません、これはしけがあってあぶないから出ていったんだという、あなたは会社の人事部から依頼があった、こう言う。私は非常に重大な問題だと思うのです。ですから、とにかく会社から依頼があったということは事実でありますし、そのことがこの争議の介入になるかどうかという点は今後われわれはさらに追及していきたい、かように考えるわけであります。この問題は私はきわめて重大な問題を含んでおる、かように考えておりますから、さらに質問を保留しておきたい。  続いて、本質的な問題の解決として、今三池争議については中労委があっせんに乗り出さんとしておるわけであります。私たちは本来政府の介入とか争議行為に対する政府の所信を聞くということは控えて参りました。しかし今日の事態は人道上放置できない問題を含んでおると思うのです。そこで組合側のあっせんが申請されておるのに会社側の方であくまでも力の対決で臨んできておる、こういうところに問題があり、これでは解決できないと私は思います。しかも今同じ従業員が血で血を洗うような対決の状態になっておる。争議は一時的です。しかし職場は三池に関する限り永遠であると言ってもいい。しかも作業環境は暗い。住宅では集団生活をしておる。こういうところで同じ従業員が仲間同士けんかをする、そして将来憎しみを持ち怒りを持ってお互い同士がずっと持続するということになると、この職場は永遠に暗い職場から解放されることはないと思うのです。ですから、経営者にしてもいろいろ事情はあるでしょうけれども、この際やはり中労委のあっせんを受けるというのが世論の声だと思う。国民の声だと思う。ですから政府は中労委を通じてやはりあっせんを積極的にやって、どうしてもできなければ、その場合は職権あっせんもやむを得ないと思う。それほど決意を持ってしなければ今日の争議の解決はできないと考えるのですか、政府はどういうようにお考えですか。
  175. 松野頼三

    ○松野国務大臣 いろいろな情勢もございますが、中労委の今後の努力というものを期待して、平和解決ということに私は進むべきであろうと考えております。なお昨日会社のあっせん拒否はございましたが、永遠の拒否ではございません。まだ昨日のような暴力事件の直後でございますから刺激的な要素も残っておるかもしれません。しかしいずれ平和になりましたときには、平和解決という道が必ず開けるのと私は信じております。そういうときに、いきなりこうだああだと今日即断するにはまだ諸般の情勢は早い。同時に中労委の動きをもうしばらく期待することがこの解決に一番早い道だと私たちは信じて起ります。
  176. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 この問題は単に三池だけの問題でなくて、今後地方の炭山にも起こり得る様相を持っておると思います。昭和三十八年までに千二百円コストを下げると政府は言っている。経営者は十一万人首を切ると言っている。十二万人の首切りと一口に言いますが、これは三人に一人の首切りです。しかもその首切りの大部分はこの筑豊炭田から長崎の北松炭田にある。ですからこれをほんとうに強行するならば大へんな事態になると思う。そこで政府は根本的な石炭対策をやる必要がある。抜本的な政策をやる必要がある。今出ておる合理化臨時措置法を審議しておりますが、千二百円コストを下げるという根拠も何もない。そういうことで一体解決ができますか。それから炭鉱離職者臨時措置法を作っていただきましたけれども、これはほんとにまだスズメの涙です。こんなことで解決にはならないと思う。経営者がその職員を派遣して全国から鉱員を募集して、そしてあの筑豊炭田やその他の炭田に集めたあのときの熱意の半分をもってするならば、私は就職のあっせんも決して至難ではないと思う。こういうことを総合的に考えなければ、この問題は三池だけの問題に終わらぬと思う。一つ大臣の決意を私はお開きしたい。
  177. 松野頼三

    ○松野国務大臣 今後の離職者及び合理化の問題につきましては、まだ一部の案か出ているだけで、政府がこれを容認したとか承知したとかいう意味では断じてございません。もちろん何年間という期限のこともございましょうし、一年に十何万ということは不可能でございます。同時に私どもも三年とか五年とかいっておりますが、それは一つの試案であって、私どもが特に望みますことは、離職者が一〇〇%円満に転業できるように努力することが会社側にとりましても重大なことではないか、こう考えて、先般の離職者援護会が実はできたわけであります。これはもちろん多くの会社も参加しております。同時にこれに対して、今日まだ発足二カ月でありますが、とにかくある程度の成果は上げております。従って私たちが将来ともに安定した転換産業あるいは転職というものがまず前提にならなければ、なかなか労使問題というものは円満にいかないということを痛切に感じて、雇用問題には特に力を入れておるわけでございます。
  178. 永山忠則

    永山委員長 堤ツルヨ君。
  179. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 私は三井三池の争議の流血事件に関しまして、労働大臣に二つの観点から重要なことだけ、今の段階において求めておかなければならない問題を一つ質問いたしたいと思うのでございます。  私の質問の第一の要旨は、何と申しましても治安を回復しなければなりません。二十八日朝の三池における流血の惨事は、つまり労働者同士が血を流し合っておるところのまことに悲痛な問題でございます。これは単に九州におけるところの三井三池、大牟田市の問題だけではなくて、全国の国民がテレビ、ラジオ、新聞等の報道によって、この惨事については同胞として国民は非常に胸を痛めておるのでございます。従って国会は、このような不祥事に対しまして、単なる労働争議の問題ではなくして、もはや政治問題、社会問題として重大な関心を持たなければならない段階にきたと私は思うのでございます。このような衝突は現地の空気からずっと見ておりますれば、だれが常識で見ましても必至と見られておりました。にもかかわらず、地元の警察が、どうも両組合の乱闘が始まってからでも、まだマイクだけで遠くの方から警告しておるというようなありさまで、激突制止を実施しなかったのではないか、こういう感じを国民に与えておるのでございます。これが惨事を拡大してしまった大きな理由ではないかと思うのでございますが、地元の警察の予防出動がおくれたのではないか。これは大牟田市民の批評をいろいろ検討してみますると、現地における批判は、市民の声の大半は、治安維持の上からなぜ警察はもっと敏速に適切に動いてくれないのだろうということを申しまして、非常に不安がっておるのでございます。この警察側の責任がある程度今度の社会問題に対しましては所在が明らかにされなければならないと私は思うのでございますが、江口警備局長並びに労働大臣お二人に、一つこの警察の責任の所在をどう考えられるのかただしておきたいと思います。
  180. 江口俊男

    ○江口政府委員 お答えいたします。二十八日朝の事件につきまして、ただいまは警察の出方がおそかったということと、もう一つは、ああいう状態にあったのだから、だれが見ても激突は必至ではなかったのかという二つの点が含まれておると思うのであります。まずああいう激突が必至であったかどうかということでありますが、現在におきましては衝突があったのでありますから、結果におきましては必至であったということもいえると思いますけれども、私たち警察といたしましてその前まで情勢判断をいたしておりました材料をただいま申し上げまして——これは多少希望的な観測ももちろん結論としては入っておりますけれども、私たち自身としては、流血的な激突は必ずしも必至でない、しかしながら場合によってはああいうことになるかもしれぬ、こういう判断のもとに対処したのであります。  それでもうよく御承知のことだと思いますけれども、どうしてそういう判断をしたかということでございますが、会社なり新労なりの方針と第一組合のこれに対処する方針を、情報によってわれわれはとっているわけであります。そのいずれもがああいう形の激突必至の結論をもたらすような形勢ではないのであります。たとえば会社あるいは新労におきましては、一日もすみやかに生産の再開に入りたいという希望をもちろん持っておりまして、そのためにはもちろん積極的な行動をするということになっております。しかしながら第一組合との間に衝突が起こったならば流血の惨事をあえて辞さずにやるということではなしに、やはりその場合におきましては衝突を避けて、引き返して自宅待機の状態に入るやにわれわれの方としては情報を得ておったのであります。また一方、旧労、第一組合側におきましても、二十五日及び二十六日の戦術会議しおいてきめられた事柄は、新労の就労に対してはもちろんこれに反対する。しかしその反対の方法はすわり込み等を行なって、これには無抵抗主義で対処するというようなこと、これは二十五日の戦術委員会できまったようでありますが、また新労がたくさんの入口の中から、ゲリラ的にどこからか少しずつ入るというようなことであれば、これもまた阻止し得ないのはやむを得ないというようなことも言っておりますし、また一般的な準備といたしましても、旗ざお等も五列隊形の幅に作る、その大きさも握って多少余るというような程度の大きさのものを作る。しかし両側は布で巻いておくんだというようなこととか——ただちょっと気になりますのは、新労の生産再開についてはこれを違法と考えておりますので、仮処分が出るまでは、そういう場合は、自分たち第一組合も中に入る権利がある、こういうことを言っている。あるいは坑内に対する会社の物品の搬入についても、食糧を入れることは阻止はしないけれども、その他の資材の搬入は阻止する、こういうようなことをきめてあるやに——これはその会議に列席して聞いたわけじゃございませんけれども、そういうふうに聞いておったのであります。彼我の状況がそうでありますし、また炭労あるいは会社、今までこういう事態にはきわめてなれておる人たちの争議でありますので、流血というような状態で解決していくということが事柄の解決にはならないことを十分知っておる人同士のことであり、まあ大勢のおもむくところは、何とか対峙の形で話し合いといいますか、解決の方向にいくのじゃないか、またいってほしいというような結論を持っておったのであります。しかしながらただいまお話のありましたように、こういう勢力がしかも感情が高ぶっている中に接触するのでありますから、あるいは不測の事態というものも起こり得るということは、警察としても十分考えておったのでございまして、この点につきましては、現実に分けて入るのが早かったかおそかったかということについて批判の余地があろうかと思いますが、準備の態勢としては、福岡県側において約二千近く、熊本県側におきましても現実に五百人動員、千人の待機というようなことで、その時間前に現地近くに警察官を配置いたしておったのであります。  話は少し飛び飛びになりますが、ただいまお話しになっております三川鉱内における乱闘事件が大きくクローズアップされておりますが、その以外にも、二十七日の晩から二十八日の朝にかけて、方々でたくさんの事故が起こっておる。それらにつきましても、今待機というか、前線に出ておりまする警察官が、事件が起こったらそこにおもむいて、あるいはこれを制止したりあるいはその後の採証活動に当たったりいたしております。そのうちの一番大きいのが三川鉱内における問題だろう、こう思います。それで三川鉱の繰り入れ場付近におきまする乱闘事件の際に警察がどうしておったかということを申し上げますと、あの事件が起こりましたのは、私の方に参っておりまする報告では、七時五分ごろから始まった事件だと聞いております。六時五十分ごろには、三川鉱の近くの三川巡査派出所及び諏訪橋というところまで千人くらいの部隊が出ております。ということは、あの乱闘事件が起こります前に、五時半ごろに、旧労の一部が三川鉱の坑内に入りまして、鉱長室とか事務所等の窓ガラスをたたき割って乱暴したという事案もございまして、その場合もすぐあとからパトカーで出向きまして、それを検視いたしております。しかしそのときには済んでおったので、引き揚げた。しかしながら情勢はどうも平穏でないということで、ただいま申し上げたような大部隊が近くまで行っておったということに相なります。しからば七時五分に起こりました事案に対して、警察が着きましたのが七時十五分ということになっておりまするか、これはスムーズな状態でありますと、それは確かに十分間もかかるような距離ではないように思います。しかしながらなぜ十五分間も、あるいは十分間もかかってそこに着いたかということについては、私たちも事情をつまびらかにいたしておりませんけれども、警察の向かいました一隊はやはりへいを乗り越えて入ったという報告があったところから申しますと、やはり警察官といえども大道を闊歩するような自由さで現場に行けなかった状態じゃないか、こういうふうに思うのであります。警察のおもむきましたときには、乱闘は大体片がついて起りまして、あと負傷者の収容というようなことに相なりましたが、大体同時刻ごろ旧労は坑外に出てすわり込みに入った、こういうことになるのであります。  ただいま申し上げましたことは、まず第一点は、大牟田の三池争議全体のことについてどういう見通しを持っておるがということと、三川鉱の七時何分かに起こりました負傷者百何十名を出す事案に対して、警察の出方がもうちょっと早く出たらどうか、あるいは事前からでもそこに起ったらどうかというような問題に対してお答えしたわけであります。
  181. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 実にたよりない警備局長で、なってないですね、あなた。新聞をごらんになって、責任者として一々情報はキャッチしておられたと思うのです。そのときに、第一組合と第二組合にすでに分かれてしまって——私は第一組合がいいとも等二組合がいいとも今は言いませんけれども、会社側は生産開始をするということで、第二組合にロック・アウトを解除して、組合はこれを団体交渉でやってもらって、いつ就労するんだということを発表したときに、第一組合は、その事態が起こったときには実力をもって阻止するという声明をしたじゃありませんか。この声明をあなたは知っておられたか、知っておられなかったかどっちですか。
  182. 江口俊男

    ○江口政府委員 第一組合が、今堤委員が言われるように、ただ一言実力をもってこれを阻止するというだけの声明をしたのじゃなしに、やはり阻止はするのだけれども、その阻止の仕方について、戦術会会議その他でいろいろなことをきめておったということをわれわれは知っております。
  183. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 最悪の事態の場合には実力阻止が起こって、その実力阻止というものは、いろいろな今までの例から見て、おおよそ乱闘事件になりそうなものであるというところの常識を当然備局長として働かして、これを第一線に命令してもらわなければならぬ。あなたはどう考えておられるか知らないけれども、三川鉱の入口で片目になった人がある。ということはどういうことかと申しますと、第一組合員が持ってきた鉄の棒の先のとがったので目をつつかれて、目玉が飛び出てしまったのです。失明です。この人を加えて六名の重傷者がありますが、これは第一組合員か第二組合員か、あるいは第三者のはたの人であるか、この重傷者六名についてあなたつまびらかなことを御存じですか。
  184. 江口俊男

    ○江口政府委員 負傷者が方々に出ておりまするが、この点につきましてはどの負傷者のことを言っておられるのか私つまびらかでございません。しかしながら一番問題を起こしました三川鉱の構内におきましての負傷者は、病院のカルテによって確認をいたしておりまするけれども、重傷二十五名、軽傷九十名、計百十五名、そのうちで、これはけさまで所属がわかっておらぬ者——わかっておらぬというか、警察にわかっておらぬ者もございまして、私の方に参っております報告では、その百十五名、旧労が三十六名、会社、新労側が四十一名、なおその他の者については目下調査中ということになっておるのでございます。ただいま御指摘のけが人がこの中に入っておるかどうかということはつまびらかにいたしておりません。
  185. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 警備局長が立場を異にして、あなたがこの三川鉱の入口で争わなければならない炭坑夫の一人であったときに、警備局長や警察がこんなのんきなことを言ってくれておってたまりますか。家族にしてごらんなきい。かたわになってしまったのですよ。再び立つあたわずじゃありませんか。こういう問題を起こしておきながらまだ今ごろつまびらかでないなんてけしからぬことだ。私はこういうことはもっとはっきりしていただいて、三川鉱の構内において両組合の衝突がありましたが、第一組合員のけが人がなんぼであったか第二組合員のけが人がなんぼであったかということをぜひはっきりしていただいて、次の私が保留いたしておきます再質問の時間にお答えいただきたいと思います。  次に私はお伺いをいたしたいのでございますか、何と出しましても治安回復の問題においてお尋ねしなければならないのは、御存じの通り二十八日の夜福岡の地方裁判所が第一組合に対しまして、立ち入り禁止と妨害排除の両仮処分を決定しております。そこで労働大臣と警備局長にお尋ねしたいのは、妨害排除の焦点はつまりピケ排除問題であるということは明らかでございます。第一組合側のピケの動向次第では、またこのような流血の惨事すら誘発しかねないということが考えられます。そのときにこのピケに対して政府はどういう見解をとっておられるか。このピヶが問題なんです。このピケに対して労働大臣はどう考えるか、警備局長はどう考えるか、一つはっきりしていただきたい。
  186. 松野頼三

    ○松野国務大臣 ピケの定義としては、一般的に平和説得であります。いわゆる平和的に説得をするということがピケの限界であります。従っていろいろそれ以上に力とか暴力で静止するということは、ピケの限界を越えたことであります。
  187. 江口俊男

    ○江口政府委員 同様でございます。
  188. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 ピケの問題についてそういう御見解を持っておられるならば、このピケに対して、もし今の見解以上の行為があったとき、政府はどう考えられますか。
  189. 松野頼三

    ○松野国務大臣 労働組合の争議行為としては限界を越えたことだと私は考えます。
  190. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 このピケ排除することがいざこざの中心になることは御存じの通りでございます。従ってこの第一組合のピケの今後のあり方についてはっきりとしたところの見解を第一組合に対しましても第二組合に対しましても表明なさってもし限度を越えたときには断固たるところの処置をとらなければこの治安は回復できない、こう考えますが、そういう御処置を考えておられますか。
  191. 松野頼三

    ○松野国務大臣 今回立ち入り禁止と妨害排除という仮処分が出ますならば、当然その対象になるものは正常な姿に戻さなければならない。またそれをなおかつ違法状況を続けるというならば、これは非常な紛争が起こる。同時にその紛争の保護はやはり警察権というものが当たらなければならない。権利に対する保護に当たるべきであろうと私は考えます。
  192. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 そこをはっきりやっていただかないと、これはやはりピケを中心としていざこざが絶えないと思う。これがだんだんと発展していきまして、ついにお互いにかたわになるというような問題が、感情と相待ちまして起こってくるわけでございます。  そこで私もう一つ触れておきますが、テレビなんかを見ておりまして非常に不思議な問題は、しきりと負傷者を三川鉱の構内から引っぱり出しております。私たちの常識では、この乱闘事件だとか暴力事件というものは構内で起こるものでなくして、外であってしかるべきだと思うのですけれども、けが人は中から引っぱり出されてくる。そういうことになりますと、私たちから見ておって第一組合と第二組合が中でやり合ったという結果にしかとれないわけです。そういたしますと、第一組合がこの構内に立ち入るということは、もはや立ち入り禁止になっておりますから、これからはできないと思いますけれども、実際はすでに第二組合が入る前か、あるいは入ったと同時か、それからあとかどちらかに、第一組合と第二組合が一緒に入ったといたしましても、とにかくあと先をいわずに両方ながら入っておった、こう見なければならぬと思うのですか、三川鉱のあの一番大きな乱闘の起こった場合には実際はどうであったのか。
  193. 江口俊男

    ○江口政府委員 両方構内に入っておったのでございます。
  194. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 これからは立ち入り禁止かありますから、こういうことは起こらないだろうと思いますけれども……。  それから三井鉱山側並びに新しい組合が生産再開に熱意を持っておるということは私たちは賛成したいと思うのです。操業再開に際しまして再び混乱を惹起させぬような態勢を会社側に整備させることが必要だと思う。生活のために就労を希望するところの新組合員に対して、安全に就労し得るところの環境を整備してあげるということが、会社側の責任であると私たちは考えております。政府はこれに対してどうお考えになりますか。
  195. 松野頼三

    ○松野国務大臣 新組合は合法的組合であります。従って組合員は労働協約を結んで、就労の権利と賃金を受け取る権利を持っておるわけであります。従って、これは当然組合員みずから、あるいは組合みずからの持つ権利であり、労働者に対しても当然働く権利を持っておると私たちは解しております。
  196. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 私はくれぐれも申し上げておきますが、食わんがために働きたいという、しかも生産をしたいという意欲を持っている組合員の立場は保護さるべきであります。これを保護し得ないということは法治国家に私はあり得ないことだと思いますので、政府はそこを一つ考えていただきたい。その次に、時間がございませんので、私は争議をあっせんする問題について少し政府の見解をただしておきたいのですか、中労委か職権あっせんに乗り出したのは当然でございます。私たちは中労委の努力が成功いたしますようにできるだけ援助したいと思っております。けれども、職権あっせんに当たって、中央労働委員会規則第七十二条によって、調停委員会は事実を調査しなければならない、こう書いてありますが、私たちの見るところでは、新しい組合員は福岡地裁の仮処分に基づいて就労する権利を持っております。もはやその就労の権利を第一組合員が妨害したという事実が厳然として存在しておるのでございまして、三池争議は今やこの新しい事実を除外しては調停の判断はできないはずだと私は思います。従って、第二組合か就労する権利を持っておるのに、就労の権利を第一組合が妨害したという事実を政府はどういう見解を持っておられるか。
  197. 松野頼三

    ○松野国務大臣 今回の中央労働委員会の申請は、第一組合が申請をして紛争問題の解決をはかってくれという申請であります。これを受けて中労委があっせんに乗り出しておるわけであります。第一組合には今回ストライキもございませんし、ロックアウトもございません。正常な姿の立場であります。従って第二組合からは特に紛争という問題のあっせん申請もいまだに出ておりません。同時にそれは平常な姿です。中労委か出て参りますのは、第一組合に対するあっせん申請を受けて会日中労委の機能を発揮しておるわけであります。
  198. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 私はやはり中労委がなるほどと国民の納得のいく判断を下してこれか成功するところの最も大事な要点は、今の現実に対して中労委が誤らない判断を持つことが根本だと思うのです。その誤らない根本の原因は、第一組合と第二組合に対していかなる見解を持つか。私は、就労する権利のある労働者、法で認められた就労する権利を持っている労働者にこれを妨害した第一労働組合というものは、これは正しく見て非難さるべきものだと思う。この事実に対して中労委がそこから判断を誤らないように一つあっせんに出られるように臨まれたいと私は思いますので、一つ大臣といたしましてはそこを御留意いただきたいと思います。  それから、今回の争議の原因は、経営者の労務管理上の責任が確かにございます。それからもう一つは労働組合側の誤った指導、この相互の欠陥の累積が今日の衝突事件、流血事件になったと私たちは思います。政府は中労委の職権あっせんを支持するのは当然ですけれども政府としても労使関係の正常化について政府独自の確たる方針がなければならぬと思いまするが、今日まで三池におけるところの経営者側の労務管理上の問題に対して、それから労働組合側の誤った指導に対してどういう見解をとってこられたか、そしてこれにどういう指導を与えてこられたか、どういう監督をしてこられたか、こういうことについて一つ御見解を承っておきたい。これは今後に大切な問題でございまするので承っておきたい。
  199. 亀井光

    ○亀井政府委員 今御指摘の三井の会社におきまする労務管理の不手ぎわあるいは労働組合の行き過ぎな指導というものに対して労働省はどういうふうに対処してきたかという御質問でございますが、労働省の行政上の立場としましては、一般的な労働教育を通じまして経営者側の労務管理の正常なあるいは合理的な運営をわれわれとしては指導して参りますし、あるいは組合に対しましても一般的に労働組合というものの健全な発達あるいはその運営というものにつきまして指導して参ったのでございまして、個々の企業あるいは個々の組合に対しまして直接的な指導をするという建前をとってないのでございまして、そういう意味におきまして、具体的に三井の会社に対してあるいは三井の労働組合に対しまして直接的な指導はしたことはございませんが、一般的な労働教育の場を通じまして労使双方に一般的に教育して参ることはわれわれの務めでございまするし、また今後もそういう方向で指導して参りたいと思っております。     〔委員長退席、大坪委員長代理着席〕
  200. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 私は今日の労働組合の左翼化、行き過ぎというものに対しましては政府にも一半の責任があると思う。守らなければならない労働法規を政府自体が上守っておらないで、資本家に一方的に加担して労働組合が左に寄り過ぎざるを得ないような政策の貧困を重ねてきておる。これに便乗いたしましたのが経営者でございまして、この中から労務管理の手落ちが生まれ、同時に労働組合は極左に走るという結果になって、その中に人間の自由を奪われたところの、この第一組合の指導方針についていけない人たちが第二組合に走ったというところのやむを得ない状態もあると思うわけであります。私は、こうした労使双方におけるところの誤りを単に三井三池のこの問題だけでなく全国的に真剣に考えていかないと、どうも壁に突き当たってしまって、曲り角に来てどうにもならないところに労使双方が追い込められてしまうような、こうした問題が起こってくるのではないか、かように懸念をするわけでございまして、政府におかれましてはそうした問題につきまして、今後経営者側に対し労務管理上の重大なる警告を発して、今後政府が左傾化していくところの組合に対して、経営者、資本家、政府はどうあるべきかというところの根本施策がこの辺で考えられなければならないと思うのでございますが、労働大臣はいかがお考えでありますか。
  201. 松野頼三

    ○松野国務大臣 やはり労働教育を通じて各当事者間に十分な理解を得さしめることが第一だと存じております。なおいろいろな問題もございますので、目下労働法研究会というものを設置いたしまして、そうして基本的な問題についての答申を得たい、政府としても学者に今諮問をいたしておるところであります。要するに、やはり労使当事者間の労働法に対する十分な常識と理解がなければ、いかなる法律運営はうまくいかないのではなかろう  か、こう考えて、本年は特に実は労働教育に力を注ぐような方針を立てております。
  202. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 時間がございませんからこの辺で私中止をいたしまして、あと質問を残しますが、最後に、やはり何といたしましてもこの社会不安の問題を解決して治安を回復いたしますためには、操業をしようとする会社並びに第二組合と、これを阻止しようと  いうところの第一組合が対立しておるのでございまするから、会社並びに第二組合の操業したいという意思については混乱を起こさない態勢を作らなければならないと思うのでございまして、これにつきましても政府が会社側に対して懇切丁寧な指導をなさって、流血の惨事を起こしてまで操業をやらなければならないような悲劇を会社が作らないようにするように指導されるということ、それから第二組合は働きたいのでございますから、働きたい人をして働かしめるということの労働者保護の立場から局長は一つ考えられたい、こういうことをお願いいたしまして、所信のほどをはっきりしていただいて、私の質問をこれで本日は終りまして、私なお視察のあといろいろな問題が出て参りますので御質問をいたしたいと思います。
  203. 大坪保雄

    ○大坪委員長代理 本日はこれにて散会いたします。     午後四時三十分散会