○
八木(
一男)
委員 だから困るのです。歴代の
大臣がそうですから、松野さんだけを責めませんけれ
ども、もっとそういう点について関心を持っていただきたい。松野さんくらいの頭をもってすれば、関心があってやる気になればすぐわかるはずです。ですから、
一つ今御
説明しておきます。今すぐ覚えていただきたい。
健康保険という問題は労働者に非常に
関係の深い問題です。
健康保険法の改悪というのが二年ほど前に強行されたんです。そのときに強行された改悪点は何かというと、一部負担をふやすということです。一部負担というのは二つありまして、入院町の一部負担と初診時の一部負担です。初診時の一部負担は五十円だったのを百円までとれることにした。非常に安いものは七十円という場合もあるのですが、そういうふうにした。それから入院時の一部負担というものを作った。これが二年間くらい、けんけんごうごう大騒ぎして、
国会の審議がストップになって
委員会差し戻しになったことは労働
大臣も御存じだろうと思う。それほどの大問題であった。その大問題にもかかわらず
与党が無理やりに押し切ったというのは、
健康保険が赤字で赤字で、どうにもこうにもならない、ひっくり返りそうだからというのが理由だった。ところが、押し通したときにはすでに黒字に転換をしていた。黒字に転換をしているのに、赤字だ赤字だとうそをついて押しまくった。社会保障制度審議会が答申をしたときには、その前の年に出したときには、赤字だ赤字だ。その次には答申なしですりかえてごまかして通そうとした。制度審議会で問題になって、そこで赤字だ赤字だとうそをいっている。黒字の基調が出ているわけです。それを赤字だといって通した。そんな赤字で、
健康保険までひっくり返ってしまって破産するなら、しょうがないから最小限度の一部負担なら涙をのんで、という言葉はなかったですけれ
ども、そういう気持で、やむを得ないという答申が、非常な反対があったにかかわらず、比較的多数で通った。それをもとにして、社会保障制度審議会という最高の審議
機関でも言っているからということを援用して、それで通した。通したら、そういう経過は違うじゃないかといいましたら、そうじゃないのだ、赤字だけが理由じゃなしに、一部負担を上げる理由があるということである。その理由というのは何かというと、安くしておくとたくさん医者にかかってしょうがない、そうすると注射や何かして費用がかかってしょうがない、高くしておけば見せにくる者が少ない、そういうことであった。それは
健康保険のはき違えでありましょう。医療というものは、早く診断して早く病気をなおさなければならぬ。ほうっておいて、かぜを肺炎にしてから見ても何にもならぬ。肺炎になってからでは、それだけ
国民も苦しむし、医療費も多くなる。医療の常識は早期診断、早期治療だと思う。それには早く見せなければならぬ。それを、初診町の一部負担を多くしておそく見させようとする。
健康保険の逆行です。それで困るのは
患者であります。
健康保険というものは、労働者と使用主と両方が
保険料を負担している。国の方は、なまけて、つまみ食いして、
保険料をだんだん減らしておる。それで、そういう制度を作ったのは、病気になったときにすぐ見てもらって完全に病気をなおしてもらえるように作ったのです。またそれをみんなが希望したのじゃなくて、そういうことだから入れといって
強制加入にして、俸給袋から無理やりにふんだくっている。払わなければ差し押えを食うわけです。
法律的な違反に問われるわけです。だから、五十円さえ出せば見てもらえると思って、そのつもりで、無理やりにとられてもみながまんしておる。丈夫な者はとられてつまらぬといっておるけれ
ども、国できまったものはしようがない。ところがそれを赤字という理由でぽんと上げた。松野さんは非常に裕福な家庭に育っておられるから、百円の金はそんなに大したものじゃないと思っておられるでしょうが、そうじゃない。貧しい家庭では重大問題です。私は貧しい時代がありました。十円、二十円の金に困ったことがある。困っていたときには、まず第一に子供が学校にいっている、学校の先生は幾ら持ってこいという、そっちの方に金を出すために、女房に渡してしまうのです。この二十円は何に使おうと思っていたのがなくなってしまう。次の子がまた持っていくと、隣のうちから借金しなければならぬ。子供だけには恥ずかしい思いをさせまいとする。そういうような家庭では、今度はからだが悪くて見てもらいたいときでも、一部負担の五十円、百円がないから、腹痛だけれ
ども明日になったらなおるかもしれない、暖めてなおそうということになる。そうしますと、これが考え違いで盲腸だった、暖めたために化膿してひどいことになる。ときには命にかかわることもある。かぜで大したことはないと思っておったのが肺炎で死ぬこともあれば、死ななくても非常に苦しむ、そういうことがある。一部負担の値上げはそういうことを招来するわけです。そうであるからいけないと言うとしかし赤字で
健康保険財政がつぶれてしまう、破壊されてみなだめになってしまうということを盛んに言われるから、最小限度のものはやむを得ないと答申が出た。ところがそのときにはごまかして、もう黒字になっておる。黒字になっておるのを赤字だ赤字だといって無理やりに通そうとした。そして最後に追及されれば、そういうへ理屈をいってごまかしておる。これなんかも変なんです。
患者の一部負担を受益者負担みたいな考え方でさせるなら、こんな
健康保険制度はなくしたらいい。みんな自分で貯金してその金で見てもらえばいい。社会保険というものは連帯制で、
保険料を払って病気になったときは安心して見てもらえるという建前でやっている。それを、
患者は見てもらえる、得しているんだから百円出させる、そういう考え方だったら、
健康保険は全部解体したらいい。それで病気で注射してうんうんうなって、金を五十円使わした、百円使わした、四百円使わしたから得だと思っている。病気になりたい者はありはしない。この被保険者というものは労働者です。労働者がそういうひどい目にあっているにもかかわらず、労働
大臣は
一つもこの点に触れない。最も聰明で
政治に熱心である松野さんすら、さっき
質問したらほとんど御存じない。労働基本権の問題、弾圧の問題を考えるより、こういうことを考えるのが労働
行政の大事なところです。
厚生省の所管であろうと、同じ国務
大臣として閣議でそういうことを論議されるわけですから、当然
厚生大臣をカバーしなければならない。
厚生大臣が一部負担をなくしたいと思っても、大蔵
大臣の頑迷なやつがいけないと言った場合、何を言うかといって
厚生大臣と連合して大蔵
大臣を圧服してもとへ戻さなければいけない。そのときに労働
大臣は
一つもこういうことについて御理解がないということでは、非常に頼りない話だ、情けない話だ。そういうことについて即刻十分に勉強になって、こういう労働者に
関係のある
健康保険が非常にとんでもないこじつけの理由で悪化されて、今黒字になったからもとへ戻せるのに戻そうとしない。
一部負担の悪い制度を廃止しないで、
保険料の値下げというような日経連がもうかるようなことを強行する。労働者や
患者を考えないで、日経連のことばかり考えるのは
政治ではない。
厚生大臣も労働
大臣もしっかり考えてもらいたい。事業主はぐんぐんもうけている。
保険料を下げるような心配は断じてない。それを事業主や日経連の圧力で
保険料を下げて、それが労働
行政か。そんなばかなことでは社会保障制度を論ずる資格はない。それについて労働
大臣と
厚生大臣の御意見を伺いたい。