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1960-03-15 第34回国会 衆議院 社会労働委員会 第16号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十五年三月十五日(火曜日)     午前十一時開議  出席委員    委員長 永山 忠則君    理事 大石 武一君 理事 田中 正巳君    理事 八田 貞義君 理事 滝井 義高君    理事 八木 一男君 理事 堤 ツルヨ君       池田 清志君    大橋 武夫君       加藤鐐五郎君    亀山 孝一君       齋藤 邦吉君    中山 マサ君       早川  崇君    古川 丈吉君       山下 春江君    亘  四郎君       大原  亨君    中村 英男君       本島百合子君  出席国務大臣         厚 生 大 臣 渡邊 良夫君  出席政府委員         厚生事務官         (大臣官房長) 森本  潔君         厚生事務官         (保険局長)  太宰 博邦君         厚生事務官         (年金局長)  小山進次郎君  委員外出席者         大蔵事務官         (理財局総務課         長)      澄田  智君         大蔵事務官         (理財局資金課         長)      鈴木 喜治君         厚生事務官         (保険局厚生年         金保険課長)  加藤 威二君         専  門  員 川井 章知君     ————————————— 三月十一日  委員小林進君辞任につき、その補欠として風見  章君が議長の指名で委員に選任された。 三月十日  優生保護法の一部を改正する法律案谷口弥三  郎君外一名提出参法第一号)(予) 同日  けい肺患者の援護に関する請願菊川君子君紹  介)(第九二五号)  戦傷病者医療制度確立に関する請願山下榮  二君紹介)(第九二六号)  同(森島守人紹介)(第一一二一号)  医療施設不燃化等建築費助成に関する請願(  菊川君子紹介)(第九二八号)  同(本島百合子紹介)(第九二九号)  同(藤枝泉介紹介)(第九五三号)  同(寺島隆太郎紹介)(第九九七号)  国民健康保険事業に対する国庫負担増額に関す  る請願齋藤邦吉紹介)(第九四七号)  同(八百板正紹介)(第一一二〇号)  市町村、労働組合等の行う職業訓練に対する経  費負担に関する請願八田貞義紹介)(第九  四八号)  同(松平忠久紹介)(第一一一九号)  薬事法の一部改正に関する請願池田清志君紹  介)(第九九二号)  栄養士法及び栄養改善法の一部改正に関する請  願(田中伊三次君紹介)(第一〇五八号)  一般職種別賃金即時廃止に関する請願松平  忠久紹介)(第一一一七号)  日雇労働者健康保険法改善に関する請願(松  平忠久紹介)(第一一一八号)  松丘保養園施設整備に関する請願淡谷悠藏  君紹介)(第一一二二号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  失業保険法及び職業安定法の一部を改正する法  律案齋藤邦吉君外二十三名提出、第三十三回  国会衆法第二三号)  厚生年金保険法の一部を改正する法律案田中  正巳君外二十三名提出、第三十三回国会衆法第  二四号)  日雇労働者健康保険法の一部を改正する法律案  (田中正巳君外二十三名提出、第三十三回国会  衆法第二五号)  船員保険法の一部を改正する法律案田中正巳  君外二十三名提出、第三十三回国会衆法第二六  号)  船員保険法等の一部を改正する法律案内閣提  出、第三十一回国会閣法第一六八号)  健康保険法等の一部を改正する法律案滝井義  高君外十六名提出衆法第四号)      ————◇—————
  2. 永山忠則

    永山委員長 これより会議を開きます。  齋藤邦吉君外二十三名提出失業保険法及び職業安定法の一部を改正する法律案田中正巳君外二十三名提出厚生年金保険法の一部を改正する法律案日雇労働者健康保険法の一部を改正する法律案船員保険法の一部を改正する法律案内閣提出船員保険法等の一部を改正する法律案及び滝井義高君外十六名提出健康保険法等の一部を改正する法律案、以上六案を一括議題とし、審査を進めます。  質疑の通告がありますので、これを許します。滝井義高君。
  3. 滝井義高

    滝井委員 船員保険法等の一部を改正する法律案について質問を続行いたしますが、どうも政府与党においては、厚生労働関係法律に対して、国会においてこれを本格的に審議をしてものにしようとする熱意が非常に薄いように見受けられます。これは一つ渡邊厚生大臣閣議発言をして、岸総裁与党議員国会への出席方を要請してもらいたいと思うのです。こういうことでは、野党としても法案審議には御協力ができかねるのです。安保のような派手なところには委員が集まるけれども、じみな、福祉国家を建設する土台となるようなこういう委員会には与党出席が悪いということは、渡邊厚生大臣なり松野労働大臣の権威にもかかわる問題だと思いますので、ぜひ一つ閣議で御発言を願って、岸総裁に重大な反省を促してもらいたいと思います。同時に内閣総理大臣岸信介氏にも反省を促してもらいたいと思うのです。  質問に入りますが、船員保険御存じ通り総合的な社会保険であります。この保険の中には、健康保険年金失業保険労災と、四つが含まれておるのです。ところが今回の改正では、労災関係改正というものが出ていないということです。一体どうして労災関係改正を出さないのかという点です。すでに労働省は、かつてけい肺といわれ、現在じん肺といわれておる法律中心として、労災法の一部改正国会提案をしております。当然これに見合う船員保険法改正というものが行なわれなければならないにもかかわらず、厚生省はこれをやっていないというのは一体どういうことなんですか。
  4. 太宰博邦

    太宰政府委員 御承知通り船員保険法等の一部を改正する法律案として、四法まとめて御提案いたしましたのは昨年の三十一国会でございます。当時といたしましては、この船員保険関係におきましては、陸上失業保険との関連及び厚生年金保険との関屋あるいは疾病部門というような点を問題にして出したわけであります。労災保険改正法案政府が御審議国会にお願いいたしましたのは昨年の十二月末でございました。これは船員保険の方にも若干の影響がございますので、政府といたしましても、これについて何らか改正法案国会に不日提出いたしまして御審議をわずらわしたいと考えておるところでございます。
  5. 滝井義高

    滝井委員 不日船員保険法についても若干の関係があるから、改正をして国会出したいということでございますが、これは太宰局長御存じだと思いますが、けい肺臨時措置法というのは、これは時限立法なんです。従って、この法律昭和三十五年三月三十一日には期限が切れるということは天下周知の事実です。政府としては昨年四月の三十一国会にこの法律をお出しになりましたならば、当然それを頭に描いて出してこなければならぬ、それが一つです。  もう一つは、今回与党が、あなた方のお出しになったこの船員保険法等の一部を改正する法律をばらして、四つ法律にして出してきておる。この出したものについては政府賛成でございます、こうおっしゃっておるのです。そうしますと、与党の昨年十二月に出し船員保険法の一部を改正する法律の中には、政府は十分連絡してそれを入れなければならぬ。ところがこれも入れていない。こういうように大事な点が抜けておるのでございますが、この際思いかえてこれを追加する意思がありますか。
  6. 太宰博邦

    太宰政府委員 けい肺及びその他の職業病関係については、先ほどお答えいたしましたように目下準備を進めておりまして、不日提出いたしたいと考えております。それから与党の方で議員提案をされました件については、労災関係でなしに失業対策関係じゃなかったですか。
  7. 滝井義高

    滝井委員 今回あなた方の船員保険法等の一部を改正する法律案が、四本が一本になって出てきておるから、これではいかぬというので、与党はそれぞれ船員保険船員保険厚生年金厚生年金とばらして出してきておるわけです。それは昨年の四月にばらしたわけじゃなくて、昨年の十二月になってばらしてきておる。そのばらして出したときには、すでに労働省けい肺審議会その他にかけて、そして労災法の一部を改正する法律案なり新しいじん肺法として法律出してきておるわけですから、それは与党承知の上なんです。そうすると与党がそういうものを出すことについてはあなた方も同意しておるわけですね。これは予算を伴う法律ですから、まさか政府与党出したものを、おれは知らぬと言いやしないと思う。当然与党の中にそういうものを入れさしていかなければならぬ。労働省は入れさしてきておる。労働省は今後の日本雇用やその他の状態考えると、失業保険というものはある程度給付を延長したり、就職の支度金というものをやることが必要だ。だからそれはよろしいといって失業保険はやってきておる。おたく船員保険与党がばらして出すなら、当然やらなければならぬ。それをおたくだけおやりになっていないのはなぜかというわけです。
  8. 太宰博邦

    太宰政府委員 与党議員提案いたしました場合に、失業保険法改正案に追加された点がございます。その点に関する御質問だと思いますが、その一つ公共職業訓練所に……。
  9. 滝井義高

    滝井委員 いやいや、それは知っておる。実は与党は、自分でそういうものを追加した。だからなぜあなたの方もやらないかというのです。
  10. 太宰博邦

    太宰政府委員 それにつきましては、船員の方の場合でございますると、いずれも陸上と海上とはいろんな職業雇用情勢というものは変わっておりますので、格別かような点についての改正をする必要がないということで、これを切り離しておるわけでございます。
  11. 滝井義高

    滝井委員 それは認識不足ですよ。今回の労災法改正というものは、単にけい肺だけの狭い範囲の改正じゃないです。いわゆる労災の根本的な改革目途としておるわけです。すなわち不治の病については、これは生涯一つ見ましょう、医療賃金の六割だけを補償していこうという形になっておるのですよ。当然船員保険法における労災も、そういう改正を加えられなければならぬと思うのです。当然そうならなければならぬ。ところがそれを今度はおやりになっていないわけなんです。そうすると、一般労働者はそういうものができてくるのだが、一体船員における労災関係はどうなるんだと、こういうことになるわけです。そうすると、不日改正いたしますということがはっきりしておるなら、今度改正したらいいじゃないかというのです。国会はまだ通っていないのですから。
  12. 太宰博邦

    太宰政府委員 労災保険法改正案は昨年の十二月末に政府提案でもって出しているわけでございます。それとの関連でございますが、私の方も船員保険の方においてさような点を改正する必要もあろうかと考えて、これは不日国会に御審議を願うということで、ただいま関係審議会等の手続をして、今意見を聞いている最中でございます。こういう点の意見を聞いた上で、政府としての態度をきめて、国会の御審議を願うことに不日相なろうかと、こういうことを先ほどから申し上げておるわけでございます。
  13. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、その関係審議会意見を聞いているその法案というのは、いつ国会にお出しになるのですか。
  14. 太宰博邦

    太宰政府委員 これはまあできるだけ早く出したいと思っております。
  15. 滝井義高

    滝井委員 この国会ですか。
  16. 太宰博邦

    太宰政府委員 さようでございます。
  17. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、ますますこれはわれわれはあわてて通す必要はなくなるわけです。そういう大事な船員保険法労災法改正に見合う分をこの国会で出すというならば、これはわれわれは待つべきだと思う。待って、そしてその上でこの国会を通したらいい。そしてこれをこの国会で通す。通さなかったことによって隘路が生ずるのは、どこに隘路が生ずるかというと、三分の一の国庫負担が四分の一に切り下げられる、この点について隘路が生ずるだけです。それはあなたの方はもうかることなんですね。特に船員保険失業保険部門なんというのはもうかることになるわけです。これはあわてる必要はなくなるのじゃないですか。大臣どうですか。この国会にまた船員保険法の一部を改正する法律案をお出しになるのです。そうすると、今与党船員保険法の一部を改正する法律案というようなものを出してきておるわけです。与党出していますから、これにその労災部門をつけ加えてもらえば、これはもう、われわれ二度また同じことを繰り返す必要はないのです。だから従って、そうなればこの船員保険法の一部を改正する法相というのはしばらく足踏みをして、その分が出てきたときに一緒並行審議をする、これが一番私は合理的であるし、しかも総合調整という観点からも非常にいいことになるわけなんですよ。どうもこういう点が何と申しますか、与党政府、それから政府のやり方のちぐはぐな行き方というのが、全く大局的な社会保険考えずに、単にそのとき、そのときの風のまにまにゆれて、財政当局の意向によってこういうものが左右されておるということは非常にいけないことだと思うのです。今の御答弁で、この国会船員保険法の一部を改正する法律案をお出しになるということでございますから、われわれとしてはそれを待って、船員保険というものは一緒にして通したい。だからむしろ政府はこの際これを撤回をして、出すものを新しくつけ加えて一緒にしてお出しになるか、それともこのものの修伍としていただくか、何だったらわれわれが御修正を申し上げてもけっこうです。もう労働省から労災法の一部を改正する法律というものは出てきておりますが、ぼくらは労働省から出ておるあれは気に食いませんから修正しなければならぬと考えております。できれば船員保険に少し理想的なところを——船員保険積立金も八十六億円が三十三年末にありますから、業務上の不治の負傷をある程度理想的な形で入れても、そう困難はないと思うのです。大臣どうですか、今御説明通り、またあと船員保険が出てくるというのじゃわれわれ迷惑な話だと思うのです。まだたくさん法案がつかえておりますから、できれば一緒に通したいというならば、御修正に応じていただいて、労災部門をこれに加えて通す、これが一番いいことだと思うのです。
  18. 渡邊良夫

    渡邊国務大臣 改正部分が多少違うのじゃなかろうかと思いますから、先に出たものから順次御審議を願いたい、かように思います。
  19. 滝井義高

    滝井委員 それは違うのですよ。片一方は労災関係する部門です。ところが船員保険というのは健保厚生年金失業保険労災と、この四つ含んでおるのですから、だからその中の健保分年金分失保分はおやりになるわけです。もちろん健保分はおそらく料率改定だけだろうと思いますけれども労働者にしてみれば全般の保険料関係してくることですから、この際どうせあとにこの国会労災部門改正が出るならば、これは総合保険ですから、やはり総合的観点から見ておかぬと、あとからまた局部的な改正が出てくると、われわれも迷惑です。大局を見誤るおそれがあるわけです。だからこれは今、太宰さんはあとでこの国会にお出しになるということでございますから、これ以上言いませんけれども、われわれとしてはもう少し手のうちを見せてもらいたいと思うのです。一体どういう改正労災部門についてはおやりになりますか。
  20. 太宰博邦

    太宰政府委員 これはまだ関係審議会などの意見を聞いておる段階でございまして、政府としてまだ意思をきめておらぬのでございますから、ここでただいま申し上げるわけにもいかないわけであります。ただ今度の労災保険法改正けい肺とかあるいは職業病の重度の人たちに対する手当を厚くしていこうということでございますから、それと船員保険法とにおいてもそれににらみ合わせまして、その方面の改正をいたしたいということでございます。これは先ほど大臣から御答弁申し上げましたように、改正の点が、同一国会においてあとから事情が出まして、また御審議を願うということも従来とも間々あるわけでございます。改正部門は違うわけでもございます。この四法の関係は冒頭に申し上げましたように、昨年来の継続の法案でございまして、その内容というものは私どもといたしましては極力早く御審議を経、御賛成を得て実施に移したいと念願しているものでございます。ことに日雇健康保険には、国庫負担を三十四年度分からぜひとももらいたいと考えております。そういうような観点からいたしまして、これは早急に御審議を願いますようにお願いいたしたい、かように考えておる次第でございます。
  21. 滝井義高

    滝井委員 私が申し上げておるのは、一体労災部門でどういうような改正をやるかということをお聞きしておるのですが、それは審議会意見も聞いておらぬから、ここで申し上げるわけには参らぬ、こういうことでございますが、それならば、審議会が大事で、国会というものは審議会の下にあるのですか。あなた方は、この前の健康保険料率改定の問題なんかは、委員会意見をお聞きにならぬうちに、先に予算にお組みになって出しておられる。国会に、政府はこういう考えであるくらいのことも言えないということになれば、僕はその考えを言うまでは、船員保険は待ちます。それがはっきりするまではわれわれもあれできませんし、日雇いは、これは議員提案の方がありますから、やれるのです。労災部門はきわめて重大です。なぜならば、今度の労災法改正というものは、今までの労災に対する考え方を根本的に変えてきておるのです。それだけに大事な法案ですから……。もうすでにそれは労働省から出てきておる。船員部門に対する厚生省考えは、今から審議会意見を聞かなければまとまらぬというなら、同じ労災に対する労働省考え厚生省考え方とは、一体これは打ち合わせをせずに労働省が先行したのか、こういうことになる。船員だって労働者ですから、当然これは労働省厚生省が打ち合わせておって、じん肺法なり労災法の一部改正法出してこなければならぬわけです。じん肺というのは医学的に厚生省に重要な関係があるのですから、それを厚生省は全然ノー・タッチで、労働省だけが先行をしたということではいけないと思うのです。しかも船員労災関係というものは、あなた方の所管であるが、同時に労働基準法なりの問題からいって労働省にも関係があるんですよ。ところがまだその方針は、厚生省の方はおきめになっておらぬ、今から審議会意見を聞くのだ、労働省はすでに意見がきまって出してきておる、こんなばかなことはないですよ。ここで言えなければ言えるまで待ちます。徳川家康で、鳴くまで待とうホトトギス、こういう形でいかしてもらいます。船員保険のことは、今のことがわかるまでちょっと留保します。船員保険にはまだたくさん尋ねたいことがあるのですが……。  次に厚生年金にいきます。厚生年金は、二十八国会農林漁業団体職員共済組合法というのができまして、二十六万人の人、これはほとんど厚生年金加入者だったのですが、こういう人が、結局厚生年金から離れていきました。さらに労働省関係で、中小企業共済年金制度というものができたわけです。これである程度厚生年金に零細な中小企業からの加入者というものは制御される形になったわけです。一昨年ごろから鮎川さんの中小企業政治連盟の方を中心として、中小企業者を独立せしめて、年金をここに持ってこようとする動きがありましたが、これは一応やめましたね。中小企業団体鮎川金次郎さんの選挙違反等で熱がなくなったようでございますから、そういう運動もなくなるだろうと思います。こういう二十八国会以来の年金関係の変遷を見ても、結局厚生年金に対する労働階級魅力が薄れておるところにこういう状態が出てくるのです。で、どうしても厚生年金は根本的に改正をしなければならない段階にきておるわけです。特に昭和三十六年から国民年金が発足をしていくということになると、ますますそういう状態が強く出てくると思いますが、一体大臣としては今後厚生年金をどういう方向へ持っていかれるのですか。これもまさか審議会に今からかけるのだから言えないとは言われないでしょう。それなら岸内閣政策を持たないことになる。指南番の意見を聞かなければ政策は行なえないということになるだろうと思うのです。そういうことは政党内閣で、責任政治であるから許されないと思いますが、一体二十八国会以来の客観的なこの事態の推移を見たときに、厚生年金魅力を持たせる必要があると思うのだが、その改正方向は一体どういう方向へ持っていこうとするのか、これを一つ説明をまず願いたいと思います。
  22. 渡邊良夫

    渡邊国務大臣 事務当局からお答えいたさせます。
  23. 滝井義高

    滝井委員 これは事務当局ではだめなんです。事務的なことではなくなっておるわけですよ。これはあとで触れていきますが、一国の財政投融資の根本をゆるがすような大きな問題ですよ。だからきょうは私、大蔵大臣にも来てもらいたいと思って要求をしておるわけです。大蔵大臣が来れなければ政務次官でも理財局長でもいい。今理財局総務課長さんが見えておりますが、大蔵大臣にかわって責任ある御答弁が願えなければ総務課長さんは要らぬわけです。厚生年金改革方向がどういうことになっているかということについて事務当局答弁するようでは処置なしですよ。太宰さんの事務的なことはあとから聞きます。あなたが答弁されるというなら私はやめますよ。これは改正方向ですから、こういう方向にやるのだくらいのことは当然大臣がしなければだめです。これは大きな問題です。私ども社会党は、ことしの社会保障関係三つの柱を立てておる。一つは、生活保護基準引き上げなければならないが、引き上げるとすれば、一体日本財政なり労働賃金にどういう影響を及ぼしていくのか、引き上げをやらなければならないが、その影響をどう考えるかということが一つ。それからいま一つは、厚生年金積立金運用の問題です。これがやがては国民年金ともからまってくるので、これを一体今後どういう工合考えていくかということが一つ。もう一つは三十六年の皆保険目途として、日本医療制度というものはどういう工合改革されなければならないか、あるいは改革すべきであるかという三本の柱を立てて私たち社会保障の重点的な施策にしておる。従って当然岸内閣としても、これはもうここ数年来予算委員会大蔵委員会やこの委員会では絶えず論議をされ、問題とされておる厚生年金積立金運用問題等もあるわけですから、今後厚生年金というものをどういう方向に持っていくかという根本的な内閣方向大臣答弁できぬで、事務当局がやるのだというのではいかぬと思うのです。一つ大臣、簡明率直にお答え願いたいと思います。
  24. 渡邊良夫

    渡邊国務大臣 ただいま滝井委員からお話がありました三つの柱は、私もよく存じておるのでございます。標準報酬引き上げにつきましては、現在のいわゆる標準報酬の実態につきまして、一万八千円から三万六千円の引き上げということは、当然であろう、かように考えられるのでございます。年金額引き上げにつきましては、標準報酬引き上げによりまして年金額が千分の五から千分の六に引き上がるということは、私どもはこれは当然やらなければならぬ、かように考えております。かような意味におきまして、やはり給付内容改善をはかっていく、あるいはまた厚生年金積立金問題等につきましても、将来私ども自主運営の面から検討する、こういうような面から客観諸情勢等も勘案いたしまして、これは当然このたび改善しなければいかぬ、かように考えておるわけでございます。
  25. 滝井義高

    滝井委員 今のは今回改正する法律のことを述べたので、もう少し大局的に、どういう方向厚生年金を持っていくのだということを私は聞きたいのですがね。今のはこの法案内容のことをおっしゃっておる。では大臣の方がお答えができなければ、今の改正内容に入って将来の展望を聞いていきます。  まず、今標準報酬を一万八千円から一万六千円にお引き上げになる、こういうことです。大臣はお知りにならないかと思いますが、太宰さんはお知りになっておるはずだと思うのです。衆議院で十九国会のときに附帯決議をつけたのです。そのときには標準報酬というものは健康保険法などと同様の最高額を三万六千円まで引き上げるということになったわけですが、三万六千円はこの附帯決議に基づいてやったのですか。
  26. 太宰博邦

    太宰政府委員 標準報酬賃金の実態に合わせねばならぬということは、国会の附帯決議を持つまでもなく、私ども当然考えていかねばならぬ、ことにその標準報酬年金額の算定の基礎となるとなりますれば、当然被保険者の利益のためにもこれを考えていかねばならぬ、かように存じておるわけでございます。今般改正に際しましてその実態を見ますると、相当多くの人たちが、一般男子において三十何%という人が頭打ちになっておる、こういう実態でございまするので、これを直さなければいけないということで、三万六千四までに一応いたしたいということで提案いたしたわけであります。健康保険の方は、御指摘がありますように今日は五万二千円までの段階になっております。しかしながら一挙にそこまで持っていくということも少し荒過ぎるのじゃなかろうかということで、一応今回は三万六千円のところにとどめたわけであります。将来は健康保険の方にもできるだけ近づけるような努力をすることは当然だと思うのであります。
  27. 滝井義高

    滝井委員 私が御質問申し上げたいところを先に言いましたが、十九国会では、国会健康保険と同様にやってくれということだったのです。当時は三万六千円だった。ところが現在は、今あなたの言われるように健康保険は五万二千円です。賃金の実態に即して標準報酬をおきめになるとおっしゃるならば、健康保険賃金の実態に即していないのですか。五万三千円に健康保険をお引き上げになっておって、国会健康保険と同じにしてくれというのにぐずぐずして、十九国会から三十四国会まで延ばしておって、今度やるときにはもとの健康保険の三万六千円にしておる。これはどうも賃金の実態にどっちが即しておるのかわからなくなってしまう。三万六十円が即しておるのか、五万二千円が即しておるのか、これは一体どういうことですか。
  28. 太宰博邦

    太宰政府委員 健康保険の方は三千円から五万三千円までに分かれております。これはその方が私は賃金の実態により即しているとは存じます。しかしこの厚生年金保険の方は三千円から一万八千円に従来ございました。これをもし五万二千円まで一挙に持っていくとなりますと、大体一万八千円で従来頭打ちのものを、五万二千円でございますから約三倍弱くらいのところまで一挙に持っていく、こういうことに相なるわけであります。そういたしますと、従来一万八千円で出しておった人たちが相当多額の負担を労使ともに負うことにも相なろう、今回はそれと同時に、いわゆる修正積み立ての方式にのっとりまして保険料率引き上げておるわけでございますので、その両者相待って急激に巨額の負担をかけることにも相なろうかということを考えまして、今回は三万六千円というところで一応まとめたい、こういうことでございます。三万六千円でいたしますと、それ以上の人たちの占めるパーセンテージは約六%くらいになると思います。従来の三十数%という率から一応六%程度にまで頭打ちの人たちが下がるわけでございますから、その程度のことでありますならば一応妥当ではないか、かようなことを考えておるわけでございます。将来はまた機会を見まして、さらにそれを上の方まで持っては参りたいと考えておるわけであります。
  29. 滝井義高

    滝井委員 その標準報酬健康保険は五万二千円にして、今回一万八千円の厚生年金標準報酬の頭打ちを三万六千円に引き上げていくというその目標は、老後を保障するということなんでしょう。老後を保障することが目的ならば、今のような月に三千円そこそこしかもらえぬような厚生年金では、老後を保障するということはなかなか言えないわけなんですね。それでこの標準報酬というものは昭和十六年以来何回か変わってきていますね。一体この標準報酬はどういうところに理論的な基礎を置いて改定しておられるのですか。
  30. 太宰博邦

    太宰政府委員 標準報酬改定の理論的基礎というお話でありますが、標準報酬の等級は先ほど申し上げましたように、やはり被保険者の賃金、給料の実態というものに極力合わせるべきだと私ども考えております。ただし法律でございますので、法律改正を要します関係上、そのときによりましてそれが実態に合わないようなことになる場合も間々出て参るわけでございます。これはなるべくすみやかに法律改正の手続をとるなりして賃金の実態に合わせるということが、被保険者のためにもなることであろうと存じます。しかしながら今日一万八千円で頭打ちになっておるということ自体は、私どもとしては非常に遺憾に思っておるわけでございますけれども、この一万八千円の頭打ちになっておりますもの自体を直ちに健康保険のように五万二千円まで上げていくということになりますと、先ほど申し上げましたように、被保険者なりあるいは事業主なりにその分に関して相当大きな負担を一挙に与える、これは打撃ということにも相なろうかと思います。かてて加えて保険料率引き上げる、こういうことでございますので、やはりその辺を勘案いたしまして、今回は前回政府提案いたしました三万六千円という線に一応落ちつけて参りたい。そしてあと五万二千円なり何なりに引き上げる件につきましては、将来できるだけすみやかな機会において、次回においてまたこれは考えて参りたい、こういうことを考える次第でございます。
  31. 滝井義高

    滝井委員 その三万六千円に大体一万八千円の現在の標準報酬の最高を引き上げたことはわかるのです。標準報酬昭和十六年以来今度で九回目の変更です。健康保険もずいぶん変えてきております。頭打ちを五万二千円に引き上げても、その等級を一級から二十五級というように多くしておるわけですね。今度のは一級から二十級まででしょう。五級違うわけです。一挙に労働者の負担がふえるというのじゃなしに、刻みを小さくすれば分に応じた負担になるわけですから、その心配は大してないわけなんです。企業はもうけますから、事業主の負担は、あなたは心配されますが、そう心配ないのです。この健康保険厚生年金との標準報酬が絶えず違うということもこれは問題なのです。私どもも、なぜ標準報酬の等級区分が厚生年金健康保険と違わなければならぬかという理論的な根拠は、いろいろ調べたけれどもよくわかりません。それからこういうふうにずんずん変遷をしていくのは、これは賃金が上がる、社会情勢も変わってくるから上げていかなければならぬということもわかりますが、一体その変遷をする理論的根拠というものは、何に合わせてこれは変わらなければならぬか。私はそれは老後を保障する年金給付額が基礎になってくるのじゃないかと思うのです。何を根拠にしてこれは変わるのですか。根本的にはこういうものを基準にしてこれが変わっていくんだというあなたの見解が知りたいのです。ちゃちな、老後を保障しないような年金というものはもらったって希望が持てない。希望が持てないから、冒頭に申し上げたように、一つわれわれは脱退をしてりっぱなものを作ろうじゃないかというので、脱退者が出てくる。厚生年金で希望が持てるならば、何も脱退する必要はない。ところがその脱退者が出るというのは、あと運用その他の問題に触れてきますが、問題があるから脱退者が出てくる。脱退を防ぐためには老後を保障する姿に年金がなることが必要だと思う。そのためには年金給付額が老後を保障する額になっていなければならぬ。なるためには最小の保険料でしかも最大の効果を上げるような状態保険経済というものを持っていくことが私は一番いい方法だと思うのです。そういう点で、標準報酬がいかなる理論的な根拠をもとにして変遷をしていくかということがもう少し解明されぬと、今の答弁では納得ができないのです。
  32. 太宰博邦

    太宰政府委員 老後の保障を基準にして考えるというお考えも、私は意見として一理あると思います。ただし、標準報酬の等級はやはりそういうこととは関係はないと思うのでございます。それは保険給付をよくするためには、保険料率なり運用の問題なりあるいは給付の仕方なりというような問題はあると思いますが、この標準報酬の分は、これはあくまでも被保険者の賃金の実態になるべく合うようにするということでございまして、この賃金の実態を離れて特別にこれをきめるということは、これは理論として、政策としてはおかしいのじゃないか、かように考えておるわけであります。
  33. 滝井義高

    滝井委員 どうして標準報酬の額を理論的に決定をしていくかということは、どうも納得いかないですね。保険局長は勉強不足のようですが、もう少し理論的に解明をしてもらう必要がある。どういう理由で標準報酬をこういうように変えていくかということをもう少しはっきりさしてもらいたいと思うのです。それは国民年金ならば定額ですから、年令で百円と百五十円と分けているのですから、保険経済と見合っていっておるのだろうと思うのですが、この標準報酬のきめ方というものは、賃金にも関係してきておりますし、それから賃金の等級の区分によって出していく保険料は違ってきますし、保険料が違えば当然今度は受ける額が違ってきますから、どうもそこらあたりは納得がいきませんので、もう少し先に延ばします。  次は日本における年金制度の今後の見通しというものは、被用者保険の中の厚生年金と、それから国民年金と二本の大きな柱だと思うのですが、今後の日本の経済の発展なり雇用情勢から見てどういう推移をとるとお考えになっておりますか。国民年金が非常に伸びていく推移にあるのか、厚生年金の方が人間がどんどんふえていく方向にあるのか、この推移の仕方は一体どういう方向にあなた方はごらんになっているか。現在一番新しい統計を一つ教えてもらいたいのですが、ことし出た厚生白書を見てみますと、厚生年金が千三十九万三千人、国民年金は、拠出制はこの前小山さんの御説明によれば、僕ら三千三、三百万入るのだと思っているか二千万、もっとシビアに言えば千六、七百万ぐらいという御説明であった。そうしますと所得倍増計画から見ても、国民年金というものは中小企業や農村を中心にして伸びていく年金ですから、これは飛躍的に伸びる情勢ではないです。そうすると日本雇用構造を近代化するためにはどういう方向政府は五カ年計画でとろうとしているかというと、家族従事者をなくそうとしているわけです。そしてイギリスや西ドイツと同じような近代的な雇用労働者を作っていこうというのが雇用の近代化の方向です。そうしますと、方向としては厚生年金がふえるような感じがするのですが、厚生白書では千三十九万三千人、船員から国家公務員の共済から、ずっとこういう年金関係、恩給もひっくるめて全部入れますと、千四百四十二万八千人というのがことしの厚生白書の広義の年金関係の恩恵を受けている人ですよ。だから結局雇用労働者の六割九分二厘が恩恵を受けていることになります。これに国民年金のものが加わることになるわけですが、あなた方の今後の見通しは一体どういう見通しをお持ちになっているのかということです。国民年金厚生年金との被保険者と申しますか、対象者の今後の推移というのを、一つ国民年金の方は小山さん、厚生年金の方は太宰さんから御説明願いたいと思います。
  34. 太宰博邦

    太宰政府委員 雇用を増大するということは政府としても一番大きな政策一つでございまして、当然今後とも力を入れて参るべきところでございます。この被用者人口というものは今後いよいよふえて参るだろう。先ほどあげられました厚生年金の適用人口も、三十三年度末で千三十九万でございますが、三十四年七月には千百九万とまた大幅に伸びておるような状況でございます。今後私どもといたしましては相当ふえて参るというふうな考えを持っております。しかし、これがたとえば五カ年計画とか長期計画というふうなものにおいてどれだけ出て参るかという見通しは、なかなかむずかしい要素も含んでおりますので、これは政府としても今後そういうような面の計画というものを持って参らねばならぬというように考えておるわけでございます。
  35. 小山進次郎

    ○小山(進)政府委員 国民年金の対象は、ただいま先生仰せの通り、主として農業における従事者と、それから零細企業における従事者でございますが、農業における従事者は、現在日本雇用者のうちおよそ四二%くらいになっているのであります。これが一体将来どうなるかという問題につきましては、これは先生が結論をおっしゃったように、減る方向にあることは間違いないわけであります。どの程度に減るかということについては、まだ計数をもって示したものはございませんけれども、今比較的大胆な試算として現われておりますのが一橋大学の篠原教授の試算でありますが、これによりますと、二十年たつとこの四二%というのが二七%くらいに落ちる可能性が非常に強い、こう言っております。この点は何しろ将来の予測でありますから一がいに言えないと思いますけれども、どうも感じとして三〇%から三五%の間くらいまで落ちることはまず確実らしい、こう見るのが常識であろうと思います。そういう意味合いにおきまして、国民年金の対象は、傾向としては将来減る傾向を持っております。それから現実の問題としてどうなるかということでありますが、これは前回申し上げましたように、三十六年の四月から入って参りますのは、法律できめております適用対象のうちの二十から五十までの者でありまして、五十から五十九までの者は一応適用除外をしております。これが逐次入って参りますから、従って大きい流れとしては今のように減るはずでありますけれども、しばらくの間は国民年金の対象はぐんぐんふえる、しかしそれは決して被用者保険の方に入るべき人間が国民年金に入ってくるということでなくて、どの制度にも入っていなかった者が入ってくる、こういうようなことからふえて参る、こういうことであります。  それからもう一つの問題は、これが将来の大きい問題でありますが、現在国民年金の対象の中には、被用者のうちで零細企業に従事しておる者が入っております。この状態が、たとえば将来においてある程度また考え直される、およそ被用者であるならば被用者年金考えていく、こういうような時期が参るとしますならば、この面の減が、当人でいって大体二百万見当、これに家族がつきますから、まず一倍半程度になると思いますが、それがある時期においては減る可能性がある、大体こういうことになると思っております。
  36. 滝井義高

    滝井委員 大臣、お聞きの通り、農業関係はこれは明らかに減少傾向をたどります。それから零細企業は、今政府の方針としては、これを被用者年金に入れる方向には積極的に推進しておりません。むしろ医療では国民健康保険年金では国民年金に入れる方向にあるわけです。そうしますと、今回の改正にあたって、標準報酬をある程度上げていく、料率改定をしていくということで、厚生年金というものが二割だけの保険給付費の引き上げに結果的にはなってくるわけです。そうしますと、国民年金は三十六年の四月から発足をして、零細企業なり所得の伸びない農家、すでに米は八千万石を上回る状態がもはや平年作の状態になってきておるという情勢の中で、一体この両者の老後の保障の不均衡というものをぐんぐん伸ばしていっていいかどうかということです。そうでなくてさえ日本の貧富の格差がだんだん拡大して、大企業、中小企業の所得の格差が拡大して、地域の格差が拡大しておるというときに、今度は年金にまで格差をつけていくということになれば、これは非常に相互調整ができにくくなると思うのです。だから、大臣社会保障制度審議会にいろいろ諮問をして相互調整をやるのだとおっしゃるが、今度の国会でこういうものをどんどん先行さしていき、あとから審議会の答申が追いかけてくるというような状態では、大体一線に並んでないのです。もちろん一線に並ぶ必要はない。どんどん上がっていく方向あとのものが追いついていけるような経済的な客観的な情勢があれば異議ないです。ところが国民年金に所属する側にはそういう明るい面が非常に薄いのですよ。この問題を私はやはりこの段階考えておかないと、あとになってほぞをかむ思いをすると思うのです。どうですか、大臣、もう一回この段階で今度の改正をストップして、国民年金とある程度頭をそろえながら進んでいくという相互調整をやる橋渡しをやるのですから、将来は国民年金から厚生年金に、厚生年金から国民年金に有無相通じ、お互いに移動ができる姿というものをどうしても考えなければならぬ。厚生年金がどんどん先行していって、国民年金はこれに追いつくことができないということになると、相互調整は絵にかいたもちになるおそれがあると私は思うのですが、これに対する打開方針というものは、この法案国会を通るまでにはやはりはっきりしてもらわなければならぬと思うのです。これを一つお答え願いたい。
  37. 渡邊良夫

    渡邊国務大臣 漸次各制度との調整をはかりつつ進んでいきたい、かように思います。
  38. 滝井義高

    滝井委員 その調整をはかることは今私も言っておる。調整をはかることが必要だ。しかし、機会というものはそうしょっちゅう回ってこない。人生には有効な機会というものは一回か二回しかこない。その機会をとらえたからこそ渡邊さんも厚生大臣に就任されておるのです。それと同じですよ。機会というものはそういつもやってこない。厚生年金だって、かえてやるのは五年に一回しかこないのです。その五年に一回めぐりめぐった最良の機会がやってきておるときに、この機会をのがせば一体いつの日にかまたこれをやるかということになるのです。また五年待ちますか。これはなかなか、年金をやるについては相当の計算も要りますから、そう簡単にはいかぬですよ。だからやはり国民年金との調整の問題をこの機会に十分考えなければならぬ。それならば何も三分の一か四分の一を大蔵省にとるかとられるかという問題でやるよりか、もうここ一年待って、そうして調整の問題をきちっとやって、この改正の見通しをつけて出す、こちらの国民年金も来年度から発足しますから、そのときには同時に見通しをつけておく、これは来年発足するときにその見通しをつけるというお約束ですよ、小山さんそういう約束ですね、それは約束です。ある程度これは見通しをつけなければ、総合調整をやりますからということでは、その総合調整をやることを前提にして私は質問しておるわけですから……。
  39. 小山進次郎

    ○小山(進)政府委員 私先ほど間違って申し上げたつもりはないのでありますが、国民年金の対象が減るということは、国民年金自体の内容として決して悪くなることではないのであります。むしろそれは国民年金も被用者年金もよくなり得る条件を整えて行き得るということであるわけであります。  それから、厚生年金がこの際二割上がってしまうのに国民年金がついていけないじゃ困るじゃないかという趣旨のお尋ねのようでございましたが、これは先生おっしゃったように、将来の経済発展に対応して国民年金をどういうふうに改善していくかという改善の計画は作って次の通常国会にはお目にかける、そういうつもりでおります。従ってその点において今回の厚生年金改善国民年金改善とは、これは全く同じ地盤に立って考えているわけであります。相互の間を行き来するについての措置は単に二つの制度だけではなく、およそ日本のあらゆる公的年金制度の相互間について通算の道を講ずるということで、これは着々準備を進めている。これはもう必ずやるということを申し上げているわけであります。こういうわけでありますから、ちょうど先生がおっしゃったように、まさしく事態が進んでいる。そこで今は、おくれている厚生年金を上げていただくということだ、こういう事情になっているわけであります。
  40. 滝井義高

    滝井委員 まさしく私の言うように、厚生年金が進むことは私は賛成なんです。しかし、その息せき切ってあとを追っておる国民年金がこれに追っつけばいいのです。追いつく客観情勢にないのですよ。これはあと年金の問題でも出て参りますが、年金積立金が今だんだんふえてきます。これは現在三千億をこえている。八四、五年になると四兆くらいになるでしょう。同時に、そのころになると国民年金もうんと出てきます。あと積立金のことに触れていきますが、その積立金が一体どういう方向に使われているかということはお宅の方もずいぶん御研究になっている。この使われている工合は所得格差を拡大する方向にしか使われていないのです。そうすると、雇用というものはどこに集中してくるかというと、最近の雇用の形態は大企業に集中しないで、中小のところにずっと集中してきている。財政投融資、中小にも恩恵がいくでしょうが、そういう大企業関係に大体使われている。そうすると、その中小企業と大企業との間の格差はますます開いてくるのです。そうすると、そういうところの賃金はよくなって、潤沢に保険料も納め得るのですから、これは年金額は上がってくるのです。農業や中小企業財政投融資その他もちっとももらっていませんよ。三千億の資金運用部の厚生年金関係の金が農業や中小企業に行っておるかといったら、行ってない。今後国民年金積立金ができさても、なかなかそういう方向にいかないのです。今の日本の安保体制のもとでは特にいかない。それは、頭を振っておるけれども昭和十六年に厚生年金ができる以前から、あのできた以後の状態を見ても、軍備調達のために厚生年金が役立ったのです。今度岸内閣のもとにおける安保体制のもとにおいて、国民年金の演ずる役割というものは、厚生年金と両々相待って、日本の独占化を促進するのです。これはいわゆる軍需産業の拡大に役立つ。だから、あなた方厚生省厚生大臣が、命をかけてこれを守らなければ、必ずそういう方向にいくのです。私は予言しておく。そうなると、所得倍増をしない零細な中小企業と農村の金を吸い上げて財政投融資に投入せられていく。中小企業から引き上げられた金も同じく、この厚生年金としていったものはそういう方向にいく。そうすると、これはますます農村と雇用労働者との格差は開いてきます。問題はここですよ。この役割を見落してはならぬ。ここに日本社会党が厚生年金積立金運用の問題を、一九六〇年の黄金の時代における重要な役割にこれをやりたいという理由があるのです。いわゆる一握りの大資本の黄金の時代にするか、それとも日本の庶民の黄金の時代にするかというそのがんばりは、社会党のがんばりにもかかるが、与党の中の内閣における厚生省なり労働省の役割もまた大きいのですよ。それを私は指摘したい。そういう点で私が心配するのは、国民年霊と厚生年金との結びつきをしっかりしておらぬと、これは大資本にやられてしまうということなんです。そうしてその厚生年金国民年金との格差がますます離れて、いわゆる厚生年金国民年金が分断をされるという形が出てくるのです。そういう点で、あとでまた具体的に触れていきますが、私はここに渡邊厚生大臣の決意を促して、この際すみやかに、厚生年金国民年金が一線にそろうことはなかなかむずかしいが、できるだけ有機的な連係を保つような状態を作らなければいかぬというのはここなんです。私は今から予言しておきます。小山さんがそんなことはないというように首を振っておりますが、必ずそうなる。もうことしの予算編成の状態を見てもわかる。来年度から日本には財源がないのです。二千五百億の自然増収を全部使ってしまって、今や与党の中には建設公債論が起こっているのですからね。藤本さんなんかも、水道や何かも公債でよろしいという意見です。なるほど建設公債ではインフレは起こらぬ。起こらぬかもしれぬけれども、そういうように財源が枯渇している。だからこれは必ず財政投融資に持っていく。あと財政投融資の具体的な現状を大蔵省に説明してもらえばすぐわかりますから、説明してもらいますが、この点、渡邊大臣どうですか。五年に一回めぐってくるこの最良の機会に、あなたが国民年金厚生年金との橋渡しをやるという一つの施策をここにがんと打ち出す以外にはこの壁は乗り切れぬと思っているのです。どうですか。
  41. 渡邊良夫

    渡邊国務大臣 この問題はことしの予算編成のときにおきましてにも、大蔵当局とも十分協議いたしまして、漸次厚生年金の福祉施策に対します方面にこれが還元する、レストレーションするということで努力いたして参ったのでありますけれども、幸いに国民年金が来年の四月に始まる、こういう時期までに、私どもこの年金問題の流用の問題につきましては、関係各省並びに財政当局ともいろいろ折衝いたしまして、できるだけ社会福祉の方に還元融資をいたしたい、かように考えております。
  42. 滝井義高

    滝井委員 大臣それは自信がありますか。自信があるかないかは一つ具体的に聞かしていただいて、その御答弁の中から得たいと思いますが、現在資金運用部資金の中における厚生年金積立金の比重はどの程度ですか。
  43. 太宰博邦

    太宰政府委員 二割くらいでございます。
  44. 滝井義高

    滝井委員 一つ数字で、資金運用部の運用原資総額幾ら、累計幾ら、そうしてその中における厚生年金積立金の額が幾ら、従って二割何分、きちっと科学的に言ってもらわぬとだめですよ。これは大事なところです。
  45. 鈴木喜治

    ○鈴木説明員 資金運用部の一月末の状態でちょっと御説明いたします。資金運用部の一月末の資産の総額は一兆六千六百五十億でございます。これに対しまして厚生保険預託金は、預託金別で申し上げますと、一月末で三千三百七十八億でございます。比率から申し上げますと二〇・二九%ということになります。
  46. 滝井義高

    滝井委員 一月末の資金運用部の資金一兆六千六百五十億のうち二〇・二九%を厚生年金の預託金が占ております。そうしますと、三千三百七十八億円のお金は一体どういう方面に運用せられておりますか。それを一つ具体的に示してもらいたいと思うのです。
  47. 鈴木喜治

    ○鈴木説明員 資金運用部の運用先はもちろんわかりますが、そのうちの厚生保険関係の預託金が何に運用されているかといいますのは、資金運用部は一体として運用されておりますので、類推で比例計算でもやりますれば出ますが、あまり計算してみても意味がないと思いますので、一応資金運用部資金総額について申し上げたいと思います。  先ほどの一兆六千六百五十億という資産の総額でありますが、その内訳は、若干技術的になりますが、長期国債に運用されておりますのは百四十一億、一%に足りません。短期国債に運用されておりますのは、これは余裕金の段階のときに運用されておるわけでありますが、千六百七億、約一〇%でございます。それから非常に特殊なものでございますが、過去に一般会計及び特別会計に運用されておりましたものが二百七億、一・二%程度でございます。それからいろいろな国民金融公庫その他の政府関係機関でございますが、これに運用されておりますものは六千三百六十七億、三八%強でございます。それから地方団体に地方債として運用されておりますものが四千七百八億、二八%強でございます。それから商中その他の金融債に運用されておりますのが千六百五十六億、約一〇%でございます。その他電源開発あるいは公団等に運用されておりますのが千九百四十九億、約一二%弱でございます。手元現金としまして十五億程度ございます。以上が一兆六千六百五十億の内訳でございます。
  48. 滝井義高

    滝井委員 今長期国債から現金の十五億に至る一兆六千六百五十億円の内訳をお聞かせ願いましたが、民生安定のために使われておる経費は幾らくらいありますか。私がこういう質問をするのは、厚生省が資金運用部資金に預けておる厚生年金積立金を自主運用せられようとする目的は一体どこにあるかということです。これを詳細御説明願って、そして後段の今の民生安定の経費は幾らか、こういうことを御説明願いたいと思います。
  49. 太宰博邦

    太宰政府委員 私どもの見解というものは、まだ政府部内で調整されておらないのでございますから、その点をお含みおきの上で申し上げたいと思います。私どもは、こういう厚生年金保険というような被用者の老後の保障を中心として積み立てられました保険料でございまして、今日の積立方式におきましては、老後の給付の重要なる部分を占るものでございますから、この積立金というものは極力安全確実に運用する必要がある、それと同時にまた有利に運用する必要がある、かように考えておるのでございます。さらにまた、長い間の積み立てでございますから、その間被保険者の人たちがかけっぱなし一方であるというような点も、これは感情論としては無視はできないことになりますので、できますならば、そのうちの若干の経費はそういう人たちの福祉のためにも使う、こういうことがこの長期保険積立金運用のまず基本的な心がまえであろうと考えておるわけでございます。これにつきまして、まず安全確実という点からいたしますれば、政府の資金運用部に預けるということが私は今日一番確実であろうと存じます。そしてそれがまたこの国の産業の再建なり何なりに大いに役立つということであるならば、それもけっこうなことであろうと思うのであります。ただ、はたしてどの程度有利であるかということにつきましては、遺憾ながら私どもの見解といたしましては、今日これが必ずしも有利に運用されているとは申しかねる。この点は私どもとしては、さらにこの運用をよくするということについて検討して参らねばならないということでございまして、そういう点につきまして、今日のような資金運用部で一括運用するということが最善の方途であるかどうかということについて少し検討してみたい、かように考えておるわけでございます。
  50. 滝井義高

    滝井委員 そうすると、自主運用の目的は安全有利に運用する、かけ捨てでは労働者なり事業主の不平が出る、何とかいたしたい、こういう程度ですか。一体三千三百七十八億円ということしの一月末までに預託をしている金の行方を厚生省はお考えになったことはないのですか。
  51. 太宰博邦

    太宰政府委員 これは先ほど大蔵省の方でお答えになりましたように、運用の点については、国債あるいは政府機関の貸付、あるいは地方公共団体貸付、各種公団、金融債等にいろいろ分かれて運用しておるわけでございます。この中にはやはり民生安定と考えていいものはいろいろあるわけでございます。勤労者厚生、あるいは住宅公団というようにいろいろあるわけでございまして、これは今日といえども政府といたしましてはこれの運用については民生安定というものを考えておるわけであります。ただしこれは過去のあれから申しますれば、やはり日本の産業を再建するということが一番大きな国家的要請であった時代もあると思います。そういう時代におきましては、そういう基本的産業の方に回される分のウエートが多かったという場合もあるのでありますが、私ども承知している範囲におきましては、最近こういう民生安定の方に逐次力を注いで運用するようになっておると存じておる次第であります。
  52. 滝井義高

    滝井委員 どうも無責任な答弁です。民生安定の方向運用しておると思うではだめなのです。一体三十五年度に三千四百十六億円の資金運用部特別会計のお金があるわけです。厚生保険の方から原資としては七百七十億入っておるのですよ。五分の一は入っておる。だから累計をすれば全般的に一兆六千六百五十億の二割になる。毎年二割くらいずつ入っておるのです。日本財政投融資の二割を握って、その金を集めた厚生省というものが、三千四百十六億円のことしの運用部の特別会計の中の金が、一体民生安定の方向に使われておるか、使われてないかという、その確実な数字さえ握っていないのでは、これは大へんなことだと思う。ただ安く有利に運用さえしてもらっておけばよろしいというものではない。この金の運用状態によって、少なくとも老後が安定をするかどうかという問題にもつながってきておるのです。だからその分類というものは当然やられておらなければならぬ。厚生省は、これをやったことがあるはずです。小山さんのところでやったことはないのですか。国民年金運用の問題が出てきた場合には、当然これはあなたの方だってやっておらなければならぬ問題です。僕もお宅のやっておる作業を一ぺん見たことがある。やっていないですか。そういう民生安定の方向に資金運用部の金がどの程度使われておるのだということくらいはおやりになっておらなければ、自主運用も何も話にならぬですよ。
  53. 小山進次郎

    ○小山(進)政府委員 ただいま保険局長からお答えいたしましたように、いろいろ研究はしているわけであります。問題はその民生安定という範囲にどれだけ入るかということについていろいろの議論はある。それで私どものところで民生安定というものをやや狭い考え方で整理をした場合の試算をしたことがございますが、これは三十三年度の財政投融資の実績に基づいてやったわけでありますが、その場合には二〇%をややこえる程度が民生安定と確実にいえる範囲内に入っている、こういうような結論が出たことがございます。ただしこれについては国民年金審議会において資料をもとにして説明いたしましたところ、この種の仕事に精通している人々の共通の意見として、どうもそれは見方が狭過ぎるぞ、従ってもう一回その数字については検討し直す必要がある、こういうような強い批判がございました。そういう意味におきまして、いろいろ御判断願う場合には、この数字はかなりふやしてお考え願わなくてにはならぬ数字だと思いますが、一応のめどとしてはそんな結論になっております。
  54. 滝井義高

    滝井委員 大蔵省は、この一兆六千六百五十億の金が今言ったような長期とか、短期の国債あるいは一般会計、特別会計、政府機関、地方公共団体、金融債、電源開発というように分けて御説明になりましたが、これを今小山さんの言われたような民生安定のためとかあるいは公共用の設備とか、一般の産業に、たとえば電力とか、石炭とかいうものにいったものというふうに分けて資料をお作りになったことはありませんか。あなたの方は、今厚生省から資金運用部のお金を返してくれといわれる、現在の立場からいえば被害者の立場にあるわけです。被害者は当然今度は害を加えようとするものを防御する立場にあるわけですから、守備の立場で、こういうふうに分けて使っているのだというものがなければならぬと思うのです。
  55. 鈴木喜治

    ○鈴木説明員 今厚生省の小山局長からもお話がありましたように、分類につきましてはいろいろ前提がございましてむずかしいのでございます。従いまして公式に発表できる程度の分類はございません。ただしわれわれとしましては資金運用部の資金も、簡保の資金も、産業投資会計の出資原資も、一応全体として財政投融資についてどういう時期にはどういう方向に重点を置いて運用するというめどとしまして、分類も若干やっております。ただその場合に、たとえば三十五年度の五千九百四十一億という財政投融資をそのまますきり分けるのには、どうしても機関別と申しますか、財政投融資の対象別をやや詳細なる程度にしか分類できないのでございます。たとえば一例で申し上げますと、開発銀行あたりにいっております資金は、自己資金を除きました政府資金が財政投融資ということになっておりますが、これは目的別に分けますと、閉路銀行の自己資金を含めた貸付金全体を、たとえば海運に幾らとか、電力に幾らというような分類になりますので、どうしても恣意的な試算といいますか、推計が入って去りますので、あまり参考にならないかもしれませんが、財政投融資の機関別に近い分類で多少参考になる分類を拾ってみますと、これはまことに申しわけありませんですが、われわれの課内でやりました非公式の試算であります。三十五年度の産業開発、これは一応開銀を全部産業開発に入れております。それから、ちょっと長くなりますが、電発とか、北海道公庫、石油資源、地下資源を全部産業開発でとりますと、五千九百四十一億のうち、千二十五億が産業開発という分類になります。それから一応輸出入銀行に対する財政投融資を輸出振興という格好で入れますと三百六十億、中小企業関係で国民公庫、中小公庫、保険公庫あるいは商中、不動産、これが六百六十三億、農林水産関係、農林水産振興、これは農林公庫を主体にしまして、あとは愛知用水とか、開拓者会計とかというものでございますが、四百五十九億、それから交通通信、これはたとえば先ほどの開銀の中にも若干交通関係のものが入っておるわけでございますが、機関別に交通通信としてとれるものだけをとってみますと、広い意味で交通通信でございますが、道路関係とか国鉄、電電、港湾というようなものを拾いますと千百二十七億、住宅建設は住宅公庫、住宅公団、多少乱暴でありますが、勤労者厚生を全部入れた数常が八百十九億、地方債、この中にはただいまのような分類のたとえば産業開発とか、農林関係とか、交通通信というようなものも全部入っておるわけでありますが、これは機械的にとるものとして地方債という格好で、地方債と公営公庫をとりますと千四百六十三億、そのいずれにも入らない、たとえば海外移住のようなものが二十五億ということで、五千九百四十一億ということであります。  これはただいま御披露しましたように、非常に中途半端な分類でありますが、機関別に正確に分けるとすればこの程度の分類しかできません。あとは若干推計を加えまして、これはたとえば地方債をさらに分類するとか、産業開発の中の開銀をさらに分類するとかいうことをやりませんと、先生の御要望されるような意味の使途別分類はなかなかできないと思います。
  56. 滝井義高

    滝井委員 財政投融資関係の五千九百四十一億の大ざっぱな内訳ですが、非常に参考になるわけです。ただ私は厚生省と大蔵省にお願いしたいのですが、やはり資金運用部の金が民生安定の方にどの程度運用せられておるかということを今後論議する場合には、やはり共通の土俵というものがなければいかぬと思うのです。従って、今のように大蔵省は大蔵省の分類をやる、厚生省厚生省の分類をやる、分類をやって出してみたら、それはとり方が広いんだ、狭いんだということでは、やはりなかなか問題だと思うのです。従って、こういう問題をお互いに共通の広場として論義をしようとするならば、まず内閣の中でやはりこの分類についてもある程度意思統一をして、それから話をする必要があると思うんですね。どうですか大臣、幸い大蔵大臣大臣と親しい佐藤さんですから、あなたが自主運用一つうちの方でやらしてくれとおっしゃるならば、やはり守備の側と攻める側とがお互いに話し合いの広場というものを持たなければ、なかなかできぬと思うのですね。こういう問題についてはある程度話し合う必要があるんじゃないですか。中小企業金融公庫に六百六十三億、農林水産関係に四百五十九億、住宅建設に八百十九億ということになると、千八、九百億はある程度民生の安定の方向に行っておるといえばいえぬことはない。非常に広くとるということになれば、約四割近くが行っておるんだ、こういうことになりかねないと思うのです。狭くとって住宅建設と中小企業の一部ということになると、これは千億くらいになってしまうというように、水かけ論じゃ困るのですね。大臣どうですか、ここらあたりで、この問題は非常に大事なところですが、大蔵大臣と一応お話し合いになって、お互いにデータを作るときにはこういう範疇でいこうじゃないかということを両省で話し合って、過去のものを検討してみると非常にいい数字が出るのではないかという感じがするのですが……。
  57. 渡邊良夫

    渡邊国務大臣 これは現在も話し合っております。内閣に公的年金制度通算調整連絡会議というものを設けまして、ここでいろいろと現在検討してもらっておるわけであります。なるほどあなたの申されるように、住宅あるいは農業関係あるいは開拓関係、かようなところへ、あるいは重要基幹産業にこれを融資するということはあたらない、こういう向きもありますけれども、しかし民生に直結し、あるいはまた雇用問題等にも直結する問題でございますから、私どももできるだけ表面に出たものはやはり一般国民大衆の福祉施策に対するところの共同施設、そういうものに使いたい、かように考えて、いろいろと自主運営の問題につきまして努力いたしておるような次第でございます。また今後もこれは努力いたすつもりでございます。
  58. 滝井義高

    滝井委員 いろいろなところでおやりになることは私はかまわぬと思うのです。しかしやはりこういう問題が具体的に政治問題として舞台に登場してきたからには、大臣としては政治的に、一つ両省の間でこういうことをやってみようじゃないかという広場の話し合いというか、共通の問題を共通の項目をとらえてお互いに討議し合うということが非常に必要だと思うのです。その点で、今いった大蔵省のような分類もありますし、さらに私が見たのでは、厚生省の分類というのは大ざっぱに四つか五つに分けておりますが、私の読んだ限りでは、なかなかその分析はうまいところを分析しておるのです。今の大蔵省の分類よりも、項目は四つか五つくらいで大分類になっておりますけれども、その内容の分析というものはなかなかいいところをついておるのですよ。そういう点もありますので、これに二つの資料を出されると、一体どっちがいいのかということで、ここで大蔵省の意見厚生省意見が違うということはだらしのないことですよ。だから出た資料のどちらに質問をしても、方向として同じような答弁が出てくるということでなければ政党内閣の意義がなくなってしまう。大蔵省は大蔵省の道を行く、厚生省厚生省の道を行くのではお話にならぬのですよ。だから民生安定の経費は三千億の金の中にどの程度入っているのだ、それも、厚生省に聞いても大蔵省に聞いても同じ答弁が出なければわれわれは判断のしようがないのですよ。民生安定の項目はわれわれはこういうものをとりました、大蔵省としてはこういうものをとった、厚生省もこれに同意している、こうなると、それを一本にしてわれわれは論議ができるわけです。ところが大蔵省の言うように、民生安定の項目はなかなか幅が広うございますから、どういうものかわれわれはよくあれでございますが、非公式の発表はこうなる、厚生省の方も、いや私の方もこれは一ぺんやりましたけれども審議会にかけたらちょっと幅が狭いのではないかと言われましたから、ということで引き下がっていったら、一体どこにこの三千億の金を回わしているか、どれを信用したらいいか、こういうことになる。これはあとにも触れますが、この運用状態によっては保険料料率も違ってくる、将来の年金給付の額も違ってくる。これは一円や二円の利子があがってくるのではない、何百億という利子があがってくる問題ですから、今年あなた方がこの改正出しても二百二十五億円しか金がふえない。運用がよかったら、一文も今年上げなくても二百二十五億の金はあがってくるのですよ。こういう大事な保険経済の将来に活殺自在の剣を握るような運用の問題ですから、もう少し両省の間に意思統一をして、きちっとしたものでやってもらわなければ処置なしですよ。どうも大事なところへいって内閣意思統一ができていないということになると、われわれはこういう大事な法案を今週中に通したいと思っても、ますます通されぬことになってしまう。もう少し意思の統一をして——これはこの法案を通すことの条件にはしません、そういうけちなことはいたしませんが、大事なことですから、民生安定のものは一体どの程度あるか、民生安定はどの項目とどの項目と入れろという意思統一をして下さい。どうですか渡邊厚生大臣、それができますか。
  59. 渡邊良夫

    渡邊国務大臣 できるだけ努力いたします。
  60. 滝井義高

    滝井委員 まだこれから核心に入っていくので、今ほんとうの前払いだったのですが、十二時半にやめろということですから、あとでまた続けます。
  61. 永山忠則

    永山委員長 二時まで休憩いたします。     午後零時三十七分休憩      ————◇—————     午後二時二十一分開議
  62. 永山忠則

    永山委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  休憩前の質疑を続けます。滝井義高君。
  63. 滝井義高

    滝井委員 午前中、資金運用部資金の運用面における厚生年金積立金の役割みたいなものを幾分お尋ねをいたしました。そして民生安定の方向に、どういう工合にそれが使われておるかということについては、的確な御説明を得ることができませんでしたが、まずまず二割前後くらいは使われておるであろうというような、おぼろげながらの御説明はいただいたわけです。そこで次は、積立金が直接被保険者の利益のためになるというような方面に、積極的にこれが活用をせられるということが、今後われわれが自主運用をするにせよ、大蔵省に今まで通り国家的な見地からこの資金の運用をまかせるにせよ、そういう方向に向かってもらわなければならぬということについては、これは厚生省にしても大蔵省にしても、意見の一致を見る点だろうと思いますが、その点は大蔵省ないし厚生省どうですか。
  64. 渡邊良夫

    渡邊国務大臣 私どもといたしましては、当然一致すべきと考えております。
  65. 澄田智

    ○澄田説明員 大蔵省といたしましても、もちろん直接には、被保険者の利益も含まれる一般国民の利益のために、この資金が活用されるというのは当然のことでありまして、現在の財政投融資も、われわれの立場から申し上げれば、そういうふうに利用されている、こういうふうに思っております。
  66. 滝井義高

    滝井委員 特にここで強調するのは、被保険者の利益になるような部門に十分使われるということです。一般国民ということは、これは被保険者も含まれるわけですけれども、そうなると、おのずから色が薄くなるわけです。重点が被保険者の利益になるような方向に使われるかどうかということが、やはり当然厚生省としては、自主運用を求めるという一つの大きな理由の中に入ると思うのですが、その点大蔵省どうですか。
  67. 澄田智

    ○澄田説明員 直接被保険者の利益という場合の、直接という言葉の意味なのでございますが、これは先ほどから御指摘のありますように、民生安定に役立つという、この民生安定の範囲等についてもいろいろ問題がございまして、われわれも、先ほど御指摘のありましたように、その内容の分析とか、その方法等については、今後厚生省の方とも十分御相談してはっきりさしていきたい、こう思っておりますが、そういう民生安定に役立つというような面において使用されました資金は、すなわち被保険者の利益に役立っている、こういうふうに信じております。
  68. 滝井義高

    滝井委員 回り回って被保険者の利益になるということでございますが、ねらいは、やはり被保険者の利益になるというねらいであって、同時にそのねらいは、やがて広く民生安定の方向に通ずる、こういうことでなくてはならぬと思うのです。被保険者のお金なんですから。そうしますと、一体現在の運用部の預託制のもとで、預託金利が低いという議論があるわけです。現在厚生省としては、運用利回りをどの程度見ておりますか。
  69. 太宰博邦

    太宰政府委員 今資金運用部に預託しておりますものの運用利回りは、五分九厘八毛くらいだと思っております。
  70. 滝井義高

    滝井委員 それは、厚生省としては低いとお考えになっているのですか。適当とお考えになっておるのですか。高いとお考えになっておるのですか。
  71. 太宰博邦

    太宰政府委員 ただいまの資金運用部の運用の利率表から申しますと、最高が六分でございまして、これはたしか七年以上かと思います。われわれの方は、ほとんど大半それに回しておるわけです。若干のそれ以外のものがありますために、先ほど申し上げたように、全体として五分九厘八毛であります。かりに最高の六分ということになりましても、これが高いかどうかというのは一般の市中における金利との見合いでございまして、われわれといたしましては、そういう点から考え、あるいは各種の共済組合が自分のところで自主的に運用いたしておりますその利回りと比較して考えて見まして、私どもはこれは高いとは言えない、なお改善する余地がある、かように考えております。
  72. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、高いとは言えないということは低いということですか。どうも回りくどい表現をするのでわかりにくいが、しろうとわかりのするように、低い、こうはっきり答弁して下さい。五分九厘八毛は預託金利としては低い、こういう結果が出た。そこで、低いということの比較は、一体どういうところと比較して低いのだ、こういうことになるわけです。そのためにはわかりやすく、運用部の預託から分離した簡易生命保険、郵便年金の積立の運用状態は今どうなっておりますか、これは大蔵省にちょっと御説明願いたい。
  73. 鈴木喜治

    ○鈴木説明員 三十三年度の実績で申し上げますと、五分八厘強になっております。ただしこれは、簡保が自主的に運用しておりますのは積立金に限られておるのでありますが、簡保の資金としては、積立金になる前の年の余裕金の段階もございますので、そういうものを含めた簡保の資金総体としての運用利回りは、五分八厘強になっております。
  74. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、簡保の方は、厚生年金の方が運用部に預託しておるより低いのですか。
  75. 鈴木喜治

    ○鈴木説明員 それぞれの資金運用部の預託レートは、それぞれの期間に応じてレートがきまっております。七年以上は、先ほどのように六分になっております。そういう意味では同じ扱いをしておりますが、総体の運用の結果、利回りとしましては、簡保は、先ほど申し上げたように五分八厘で低い結果になっております。
  76. 滝井義高

    滝井委員 共済組合の積立金運用状態は、一体どうなっておりますか。
  77. 鈴木喜治

    ○鈴木説明員 国家公務員共済組合の法律改正によりまして、資金運用部に厚生年金相当部分といたしまして、三割程度の額が現実に預託になりましたのは、三十三年度分が三十四年度において約数億だと思います。正確なところは後ほど調べますが、数億だと思います。これが平年度化いたしますのは、来年度において平年度化いたします。これにつきましても条件その他は全部同じでございます。
  78. 滝井義高

    滝井委員 共済組合の積立金は六分九厘二毛くらいで運用されているんじゃないですか。
  79. 鈴木喜治

    ○鈴木説明員 私の御説明のし方が足りませんでしたが、資金運用部に預託されております分について御説明いたしました。
  80. 滝井義高

    滝井委員 問題は自主運用関係なんです。そうすると前の簡保も運用部に預けた分のことですね。
  81. 鈴木喜治

    ○鈴木説明員 簡保につきましては、その大部分は財政投融資の原資にいたしておりますし、われわれとしましては、一応簡保については全面的な総資産についての運用利回りであります。
  82. 滝井義高

    滝井委員 厚生省でこれはお調べになっていると思うのですが、前へ戻りますが、簡易生命保険なり郵便年金積立金がさきに分離しましたね。多分二十七年十二月ですか、分離している。この分離した分の運用の利率が問題なのです。これはどうなっていますか。お調べになっていませんか。
  83. 加藤威二

    加藤説明員 郵便年金と簡易保険につきましては、ただいま大蔵省の鈴木課長が説明されたのが、要するに自主運用した後の簡保の運用利回りであります。私どもそう存じておるわけであります。それから滝井先生の御質問の中に含まれるんじゃないかと思いますが、それ以外の各種の共済組合の運用それぞれ自主軍用いたしております。運用利回りにつきまして、私どもの方で調べた比率を申し上げますと、国鉄の共済組合につきましては三十三年度で六分九厘六毛であります。それから専売公社の共済組合につきましては七分一厘五毛であります。電電公社につきましては六分九厘一毛であります。市町村職員共済組合につきましては七分一厘二毛、私立学校教職員共済組合につきましては七分一厘九毛でございます。
  84. 滝井義高

    滝井委員 今大蔵省の皆さんお聞きの通り厚生年金五分九厘八毛よりか国鉄、専売、電電、市町村職員共済組合、私立学校職員共済組合、市町村恩給組合まで入れまして、大体七分くらいですね。これはだいぶ違うわけです。これが一分違いますと一億、二億の金じゃないので、七百億、八百億、千億台の金ですから莫大な違いになってくるわけです。五分九厘八毛は預託金利としては低いというのが厚生省考え方ですが、これを具体的に何か大蔵省としてはもう少し厚生省の要望にこたえ、あるいは厚生省の要望と言わんよりは、零細な勤労者の金を集め、事業主の金を集めたものですから、これをもう少し有利に軍用をする見通しと申しますか、そういうものが何かありますか。
  85. 澄田智

    ○澄田説明員 ただいまの御質問にお答えいたす前に、僣越かと存じますが、その低い高いという問題について少し私見を述べさせていただきます。実は低い高いと申しましても、それはその資金の目的と資金の運用関係から考えなければならぬと思います。先ほどから御質問にありましたように、あるいはご指摘のありましたように、その被保険者の利益のために、あるいは民生安定の目的のために広く使う、そういう点を考え合わせまして、そういう目的でもって、なおかつ資金運用としても有利である、そういうことが一番肝要なことかと存じます。そういう意味におきまして、その範囲内でできるだけ利回りの向上に努める、こういうふうに考えていかなければならないかと思います。先ほど共済組合の例を引いて御指摘がありました。共済組合の利回りはそういうふうな運用の利回りになっておりますが、これは共済制度全般の問題で、私からあまりいろいろ申し上げるのはいかがかと思いますが、その資金は全体でもってそういう利回りになっておりまして、中にはいろいろ債券類に運用したりしております。若干ではございますが、投資信託等にも運用されておるものがあると聞いております。そういうようなものを全都入れまして利回りが上がっておるわけでありまして、民生安定あるいは被保険者の利益ということを考えまして、資金量も非常に大きくなり、国民生活に対する意義も非常に大きいという場合には、その運用の有利なことももちろんでありますが、運用の目的自体も考え合わせていかなければならないかと思います。今の共済組合の例は、必ずしも今の運用が悪いというように申し上げたのではありませんが、高くしておる要素にはそういう面もあるわけでございまして、厚生年金などの場合にそういうふうなものと現状において比較することは必ずしも妥当でないのじゃないかという面があると考えます。  次に御質問の点でございますが、資金運用部といたしましては、これはつとに御承知のように、いろいろな目的に使っておって、その対象の機関、たとえば先ほどお話に出ました中小金融とかあるいは農林とか、あるいは住宅、そのほかにさらに地方債というようなもの等につきまして、それぞれ相手の機関としては少しでも安い資金を利用したい。それこそその資金の目的である福祉の向上とかあるいは所得の格差の是正とか、中小企業、農林、そういった方面に使うためには、少しでも金利を低くしたいという要望があることは当然でありまして、また常に国会でもその金利の問題について御指摘を受けておるわけであります。そこでそういうふうな運用部としての融資の先に対してできるだけ低い金利を供給する、それが目的にもかなり有意義であるということになりますと、その資金源を預託する方の金利もその範囲においてできるだけ高いものにする。いわば金融機関でありますとこれが中間の経費でありますが、それに至りましては〇・〇二程度でございまして、これはおよそ考えられる最低でございます。いわば中間でとっておりますのはそれだけでありまして、あとは全部運用に回しておるわけです。運用の金利の方を直ちに上げることができないということになりますと、資金運用部の方の預託を受けるレートも七年六分ならやむを得ないのじゃないかという面もございます。もちろんこの点につきましては、逆に資金運用部自身の立場で、今のその運用の目的を害さない範囲で少しでも資金運用部としてもその資金を利回りよく回して、逆に預託の方の利子も上げたい、こう考えておりまして、この点につきましては今までも検討いたしておりますが、先ほど申しましたように、その間のあれというものは〇・〇二くらいしかないので、どうしても運用する方の運用利回りを改善してかからないと、もとの預託の方に回せないということもありまして、その辺についてはできる限り今後も検討して、預託の金利については少しでも改善をはかりたい、これは資金運用部として従来から——今後ことにそういう点について力を入れて検討してみたい、こう思っておりますが、現在について申し上げられるのは、大体そういったところでございます。
  86. 滝井義高

    滝井委員 資金の目的と利用の関係考えると、これは当然大事なお金なんだから安全確実な方向に持っていかなければならない。共済組合のように信託投資、これは見方もありましょうが、今のような御説明ではある程度危険があるのかもしれません。そういう方向にいっておるので共済組合は七分程度にいけるのだろう、しかし資金運用部の方は、そういう方まではどうもいきにくいというような大ざっぱな御説明のようにあるのです。しかし考えてみると、三千億をこえる積立金ができた。法律では今度は千分の三十から千分の三十五に保険料率を引き上げる、そうして二百二十五億円の増収をはかる、同時に標準報酬も一万八千円から三万六千円に最高を引き上げていく、そして二割の年金給付額をふやして参る、こういうことなんです。そうするとよく考えてみると、おそらく現在そういう計算ができてきた——二割程度の引き上げができるというのは、五分九厘八毛の利率でできてきていると思うのです。ところがもしこれを七分程度に運用していっていただく。少しはあぶないけれども、大蔵省の銀行局その他が十分監督をしておるのだから、この際社債や信託に向けていく、ある程度共済組合と同じ方向に向けていくということになりますと、これは百億やそこらのお金はすぐに入ってくるわけですね。そういうことになると、この際逆に保険料率の引き下げ、給付改善というものが、簡単に言えば手をこまぬいておってできるわけです。だからここが被保険者にとっては大事なところなんです。大蔵省や厚生省にはそれは直接関係はないかもしれぬけれども、お金を出す被保険者なり事業主にとってはここが大事なところなんです。従ってこの点が一体どう決着を見るかということは、今度出た法律案というものに対して、われわれがどういう態度をとるかということにも結びついてくるわけですね。一体その資金運用部の運用にあたって、大蔵省なり厚生省というものが、労働者保険料率の引き下げとか給付の増額というものを、労働者の負担をふやすことなく、現状のままにおいてどの程度の熱意を持ってくれておるかということについての疑問がここで出てくるわけです。この点については、被保険者に役立つ方向にこれを運用していただく。しかもその運用の中から、共済組合が運用している程度の七分台の運用利回りをいただく、そして保険料は上げないでもらいたい、同時に給付率は上げてもらいたいという、いわば曲芸みたいなことがここでできるわけですよ。運用の仕方いかんによってはできる、こういうことなんですね。この点を大臣、この法案提出にあたって真剣に取り組み、こういう方向にいくんだという方針が、今度の法案の中に出ていないことを私は非常に残念に思うのですが、この点どうですか。
  87. 渡邊良夫

    渡邊国務大臣 法案の中には入っておりませんけれども、ただいま澄田説明員も申しましたし、私も午前中に申しましたように、できるだけ厚生年金は被保険者の利益のために使いたい、それにはやはり利子というものは相当今より高いものにしたい、こういう結論にほかならないのでございまして、できるだけ御意見方向に私どもも以前からそういう考えを持っておりまするので、さよう御承知を願いたいと思います。
  88. 滝井義高

    滝井委員 そういう意見を持っておるということでございますが、そうなると、一体方向というものはどういう方向にこの際具体的に持っていくかと、こういうことになるわけです。厚生省としては今言ったように、できるだけ利回りをよくして運用をしてもらう、しかも被保険者の利益になる方向にそれを運用するのだ、それを利子からまかなって、料率引き上げをやらないようにする、こういうような方向に向くとすれば、これは端的に言って、一体この際どうするというお考えですか。
  89. 太宰博邦

    太宰政府委員 少し補足して申し上げます。午前中申し上げましたように、積み立てた金は私どもとしては将来の給付の引き当てになる金でございますから、安全確実にする、同時にまたできるだけ被保険者の給付をよくするというためにこれを有利に運用する、それからまたその間におきましても、被保険者の長い間かけておる金でございますから、被保険者の利益のことも考えて参るというようないろいろな含みを持って運用して参らねばならぬと思います。その点で、今の資金運用部に預託して国の財政投融資の一環として運用されておるということ自体について、私どもとしても意見を持つ者でございます。しかしこれはまた同じ政府部内におきましても、財政当局の方においては財政当局としての意見が当然あろうかと思います。その点についてこれは調整を要する、かように私ども考えておるわけでございます。それは厚生年金の問題につきましてもそういう問題がございますが、これは国民年金の拠出制が始まるということになりますと、おそらく同じような問題が起こって参る。そこで私ども昨年来この点について検討を始めておるわけでございますが、問題が問題でございますので、ただいままでのところはそれが政府部内として意見の調整ができておらない、こういうことでございまして、これは明年の国民年金の積み立てが始まりますまでの間にはぜひともこれは解決いたしたい、こういう今日の段階で、せっかく今検討しておる段階でございます。  それからそれと同時に、この保険給付内容をよくする、今のままでもって料率を上げないでいく、これは給付内容をできるだけよくするということでございますから、それは料率はなるべく上げないで済むならそれにこしたことはないと思いますが、今の修正積立方式をとっておるわけでございまして、今の料率自体は申し上げるまでもなくまだほんとうの標準料率になっておらぬわけであります。これを段階的に上げていくという段階でございますので、これはやはりそれを上げて参らなければ結局後代の国民に大きな負担を残すことに相なるわけでありますから、私どもとしては料率は必要の程度のところまでは上げて参るということは、先ほどの積立金運用の問題とは別個にやって参らなければならぬと、かように考えております。
  90. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、これは大蔵省にもお尋ねしますが、今澄田さんは、できるだけ運用利回りをうまく高くするようにしてやっていきたい、こういう御説明だったのですが、これは厚生省にも同時に見解をお聞きさしたいのです。現在の資金運用部の状態から見て、一体軍用部の利回りが非常に高くなっていくような情勢がありますか。
  91. 澄田智

    ○澄田説明員 先ほど申し上げましたように、運用部の運用する先の利回りとの関係等もございまして、飛躍的によくするということは運用部の性質上非常に困難でございます。全体の各政府金融機関、それは中小企業とか農林とか住宅とかというようなところももちろん中に大きなものとして含まれておるわけでありますが、そういうところへの運用利回りを現状において上げるというようなことは、これまた別な要請に非常に相反することになるわけでありまして、従いまして運用部で考えられますことは、そういうところの利回りは上げずに、運用部の全体、たとえば過去にいろいろ持っております債券類もございますし、あるいは政府の特別会計等に対する運用の額等も検討いたしまして、運用部として、いわばこれを一つの企業にたとえれば企業努力というようなことになりますが、そういう方面で運用部の運用採算を上げまして、その範囲でそれを預託金の方に還元する。非常に回りくどいことでありますが、それ以外に現在の運用部といたしまして預託の金利を上げる方法はなかろうかと思います。従いまして相当運用部としては努力をして、なおかつ徐々に改善するという以外にないわけでございまして、その意味におきまして、改善の幅というものはある程度の限界は当然あるわけであります。
  92. 滝井義高

    滝井委員 一兆六千六百五十億円の資金コスト、これと運用利回りとのバランスを一つ説明願いたいと思います。
  93. 鈴木喜治

    ○鈴木説明員 三十五年度の予算におきましては、これは毎年予算上はそうなんでございますが、運用利回りと資金コストを総体としてはとんとんと見ております。従いまして実績を申し上げた方が正確だと思います。三十四年度はまだ出ませんので三十三年度の実績で申し上げますと、運用利回りは——実はこの運用利回りにつきましても、こまかいことを申し上げますと、たとえば利子が三月三十一日に入るか四月一日に入るかによって当然計算が違ってくるわけでありますが、一応今までやっておりました資金運用部の計算に従いますと、運用利回りが六分三厘五毛に三十三年度はなっております。資金コストはそれに対しまして六分八毛になります。従いましてその差額の〇・二七、金額にしまして三十七億が資金運用部の積立金になっております。  もうちょっと詳細に申し上げますと、資金コストの六分八毛でございますが、これの基礎になりますのは平均残高でございますが、三十三年度の年間の平均残高が一兆四千億でございます。これに対する支払い利子がパーセントにいたしますと五・六二、五分六厘二毛、資金運用部の資金コスト、経費でございますが、事務費が金額で二億くらいで、先ほど澄田総務課長から申し上げましたように〇・〇二%に当たっております。そのほかに郵貯会計におきましてただいまのところ赤字が出ておりますので、それに対する繰り入れが〇・四四ございます。(「額で言って下さい」と呼ぶ者あり)先ほどの利子が七百九十億、事務費が二億でございます。郵貯会計への繰り入れが六十二億、合わせまして八百五十四億で、平均残高が一兆四千に対しまして、六・〇八に当たっております。
  94. 滝井義高

    滝井委員 今御説明がありました通り六分八毛で八百五十四億円ですね。そうしますと今後の状態から見ていきますと、現在資金運用部の最高七年以上のもので六分、最低、多分一カ月以内のものは二分くらいです。そうすると最近における運用部に預けられる金の状態は、さいぜん厚生年金が大体六分ものがだんだん多くなりつつあるという御説明がありましたが、他の資金も同じように五年以上の長期預託が多くなりつつあるのではないですか。
  95. 鈴木喜治

    ○鈴木説明員 ただいまの滝井委員のお話の通り、逐年五年ないし七年もの、特に七年ものでございますが、七年もののウエートが急激に上がってきております。
  96. 滝井義高

    滝井委員 五年以上特に七年もののウエートが非常に上がってきておる。そうすると三十五年度の支払い金利は幾らになりますか。
  97. 鈴木喜治

    ○鈴木説明員 予算上計上しておりますのが総平均いたしまして五分八厘二毛。先ほどの三十三年度実績の五分六厘に相応するものが五分八厘二毛になっております。
  98. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと今お話の事務費が入りますね。それから郵便貯金の三十三年度に出た四厘ですか、六十二億円に見合うものが出てくるわけですね。これを入れますと資金コストは幾らになりますか。
  99. 鈴木喜治

    ○鈴木説明員 三十五年度の予算上の資金コストは、ただいまの支払い利子率が五分八厘二毛、事務費は〇・〇二、郵貯会計の繰り入れが〇・三七、合わせまして資金コストとして六二一、運用利回りは同額に見ております。
  100. 滝井義高

    滝井委員 六分二厘一毛、これだけを払うことになる。そうしますと、さいぜんの御説明でもわかるように、五年以上とかあるいは七年もの、利子でいえば六分、こういうものがふえつつあるということになりますれば、郵便貯金の定額とか積立金という非常に利子の高いものが中心として現在伸びておるわけですね。そうしますとここに逆ざやが出てきて、資金運用部から郵便貯金の会計に、今の三十三年度でも六十二億——今年は〇・三七に当たるものは金額にして幾らになりますか。
  101. 鈴木喜治

    ○鈴木説明員 六十七億に相なります。
  102. 滝井義高

    滝井委員 六十七億、これは何も厚生年金の三千億をこえるお金には縁のないものです。全然関係のないものに、労働者の血と汗との結晶を、三千億をこえる金を資金運用部に預けておって、そしてその利子の中から六十七億を長期の郵便貯金会計の赤字補てんのために持っていくのですよ。六十七億あってごらんなさい。これは千分の一だけ保険料引き上げをやらなくてもいいのですよ。こういうことが出てきておるわけです。だから私はこういう点に一つの問題があると思うのです。これの状態から見ても、今大蔵省当局の御説明のように、今後だんだんと運用の利回りというものを引き上げていく情勢にはない。六年ものとか七年ものというような、うんと利子を払わなければならぬものがどんどん出てくるということになり、しかも郵便貯金も長期のもので定額とか積立金というものがふえてくることになると、運用部のコストに低下を来たす要因というものは非常に少ない、こういう形がどうしても結論として出てきて、運用部の収支というものはますます苦しくなるというのが客観的な情勢じゃないでしょうか。これは大蔵省の方に……。
  103. 澄田智

    ○澄田説明員 ただいま御指摘の郵貯への赤字の繰り入れの問題でございますが、これは運用部の今までのいろいろな経過等もございまして、本来赤字を逐次解消するという目的でやっておりましたものが意のごとく行かないというような事情もございまして、いろいろ御指摘のような点もあるわけでありますが、この点だけをとって考えましても、実は運用部資金の総額がふえて参りますので、郵貯の赤字の繰り入れが占めます比率だけをとりましても、先ほど申し上げましたように三十三年度を見まするとこれが四厘四毛、〇・四四でございますが、それが三十五年の予算におきましては金額の方こそ六十二億が六十七億とふえておりますが、比率としては三厘七毛、〇・三七というふうに四厘を割りまして三厘になっております。こういうようなことで割合としては減るということに、この面だけを限って申し上げるとあるわけでございます。それから全体の問題といたしまして資金コストの方を減らしていくということは、御指摘のように七年もの等の預託がふえて参りますから非常にむずかしいわけでございまして、先ほど私が申し上げましたことはやや回りくどくておわかりにくかった点もあるかと思いますが、資金運用部がその金を運用する運用利回りの方の向上を少しでもはかりたい。企業努力と申し上げたのもその意味で、その間の差を改善したい、こういう意味で申し上げたわけであります。
  104. 滝井義高

    滝井委員 客観的には長期のものがふえるのですから、預託金利というものをだんだんと上げなければならぬという情勢がある。運用利回り、いわゆる運用部から、貸し付ける金利というものを高くとる、こういう形が出てくれば、これはいいわけですね。そうすると客観的に見ると三十五年度の財政投融資の貸付金利は一体幾らと見ておるのですか。
  105. 鈴木喜治

    ○鈴木説明員 財政投融資のうち、先ほど申し上げましたように資金運用部の貸付金の利回りは六分二厘一毛と見ておるわけであります。
  106. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、それは事務費その他も入れてとんとんになっていく、こういう形になりますと、そこにはあまり改善というものが見てないわけですね。私が調べたのでは、財政投融資は三厘くらいことし上げておるのじゃないか、全体としては貸付金利を六分三厘くらいにしておるのじゃないですか。
  107. 鈴木喜治

    ○鈴木説明員 ただいま申し上げましたのは、資金運用部の予算上見込んでおります貸付金利、運用利回りが六分二厘一毛ということでございます。先ほど来澄田総務課長から御説明いたしておりますように、財政投融資運用対象の資金コスト上、問題のない限りできるだけ運用部としての運用利回りを上げるという点では、ただいま先生のお話にちょっと出ましたような特別会計に対する貸し付けレートを、従来は資金運用部のコストと同じような六分というような特別な金利でやっておりましたのですが、これはものによるわけでございますが、一応原則として全部六分三厘に上げるということにいたしました。そのほかに資金コストの許す範囲内で運用利回りを上げることに努めまして、従来からの資金運用部の安全確実という第一のモットーにこたえるという意味で、いろいろな政府機関に対する運用につきましても、資金コストが許せばできるだけ債券を引き受けるという格好に——それは政府機関の債券でございます、いわゆる社債ではございません——部併用いたしまして、運用利回りの向上ということに実際上は努めておるわけでございます。
  108. 滝井義高

    滝井委員 まあ最近の傾向としては運用利回りの引き上げに努めていらっしゃる、こういうことでございますが、今から三、四年前までは、日本経済というものは主としてやはり重要な基幹産業を立て直さなければいけないのだというようなことで、主として設備資金に金がいきましたね。ところが最近の、昨年以来の予算編成の状態を見てみますと、道路、港湾、住宅、水道、こういう経済基盤の強化の方向に資金が注ぎ込まれる、いわゆる公共投資です。そうしますと、公共投資ではあまり高い運用利回りをやるということになると、これは住民の生活と相当密接をしておる部面の投資なんですから、問題が出てくるわけです。最近における財政投融資というものが基幹産業中心でなくて公共投資的な、経済基盤強化的な方向に向いておるということが、今後における運用部の利回り改善一つの大きな障害を与えてきておるわけです。そうすると、そういう公共投資の面で一つの障害が出てきた一方においては、預けられてくる金は長期のものが多くなるから、利子は高く払わなければならない。こういうように、運用部は今や内外両面から締めつけられているという状態であると思う。従ってこういう中でもう一つ、預けている金をおれらに返してくれという奪回運動が厚生省その他から今起こってきている。まさにあなたの方は今四面楚歌ですよ、私に言わせれば。その中で一体どういうふうに勤労者に有利な運用をするかということになると、事業家にはこの金を貸してやるのですが、さいぜんから議論しておったように、この金が出ていくところというのは主として大企業から中の企業までしか出ていかない。他の方面には出ていかない。一番ばかを見ているのは労働者なんです。だから資金運用部の金の中から、今のような運用部の利子に見合うような金を労働者に回す。ここをもう少しあなた方考えなければいかぬのじゃないかと思うのです。こういう四面楚歌の中で、この状態を打開するためにはどうしたらいいのかということになると、もう少し民生安定の方向意見一致を見て、思い切って貸し出すということですよ。そうでないと、この運動というものはおそらく全国民的な運動になる。社会党もことしは全国民的な運動にしなければならぬということで、ここで社会党の方針もあわせて御説明をしておかなければならぬですが、実は今度の大会でわれわれはそういう方向を打ち出すことにしておる。低所得階層の生活引き上げ運動を中心とする地域大衆闘争の進め方、健康で文化的な生活要求国民運動ということで、この中で当然私たちは、この年金の自主運用の問題というものをそういう面から考えておるわけです。これはもうこういう面から考えなければ、日本の大企業と中小企業の格差、大企業の労働者中小企業労働者の格差を是正していく財政的なささえというものは出てこないのですね。この金を持ってくる以外には出てこない。国の金というものは税金です。われわれの税金というものは軍備調達のために使われてしまって、民生安定の金なんというものはさかさまにしたって出ないです。そうだとすれば、われわれ自身の出した金をわれわれの方向に返してもらいたいという運動にならざるを得ない。ところが今のように資金運用部でそれをやろうとしても、もう資金運用部というのは八方ふさがりで、どうにもならぬような状態になってきておるのですね。だから、この段階で一体どういう工合にこれを打開していくかということが一番問題なんです。ことしは利子は百五億ですか、四十億くらいふえたんですね。それくらいでは、おそらく全国のこの厚生年金に入っている千万をこえる労働者諸向は満足しないです。だから、その八方ふさがりの中で一体これをどういう工合にして民生安定の方向運用してくれるかということなんですね。どうですか、大蔵省は長期ものがふえる、財政投融資方向は公共投資の方向に向いている、こういう中で自主運用厚生省から要求せられる、社会党は今後この国民年金積立金労働者の福祉の方向にやろうという国民運動を展開しようとするとき、大蔵省としては一体どう対策を講じますか。
  109. 澄田智

    ○澄田説明員 御質問にうまく適合するかどうかわかりませんが、資金運用部が行き詰まっているというふうに、非常に御同情ある御観察でありますが、確かに収支の苦しくなっている面はございます。ただ、先ほど説明いたしましたように、今度政府関係の特別会計の金利をまず上げて、六分を六分三厘にするということを申し上げましたが、それはその方針ですでにやりかかっております。それからあと公共投資が非常にふえてきていることは事実であります。これは国民経済、国民生活の要望にこたえてそういう方向にやっておるわけでございますが、その場合も、それぞれの機関あるいはそれぞれの事業の資金採算というものをよく見まして、そしてたとえば運用部から貸付もできるし、あるいは債券も引き受けることができる——一つの例として国鉄を例にとると、国鉄は債券も出しておりますし、運用部から貸し付けることもできるということになっております。そういう場合に、それぞれの資金コストあるいは外部資金との関係等もありまして、一がいに申せませんので、その辺は十分そういうことを検討してやらなければならないのでありますが、その上で可能なものは債券を引き受けるとか、いろんな方法で、運用部としては運用利回りを改善したい、また改善のある程度の成果は上げ得ると確信いたしております。  先ほど三十三年度の決算で申し上げましたように、とにかく運用積立金を積んできている。これは総額に比べますと非常に少しでありまして、金融機関の積立金等から比較すると問題にはなりませんが、そういうようなあれで、予算の場合には収支とんとんというのを組むのは、特別会計の予算としてやむを得ないと申しますか当然そういうふうにやるわけでございますが、実績においてはそういう積み立てを過去においても若干して、その額がここ一、二年はふえてきておる状態でもございますし、そういう意味のぎりぎりの中におけるゆとりのようなものを少しでも作って、そうして、できれば預託金の金利の方にもそれを還元する、これはいろいろな機会にいろいろな御要求があるところとしては、当然われわれとしてそういう方向で努力すべきではないかと考えております。財政投融資としては、毎年要望が非常に多い。本年においても一兆円くらいの財政投融資の要求になっておりまして、それを五千九百四十一億ということにしております。この要求の多いのは、もちろん国民生活の必要から出ているものでありまして、そういう意味の資金としては運用部資金がその中核であります。さらにその運用部資金は、厚生年金に依存するところきわめて大きいわけでございます。そういう厚生年金の貴重な資金を、先ほどからいろいろ御指摘のあったような被保険者の利益等も十分に考慮して、今後ともますます要求の多くなっていく財政投融資の原資へ活用していくというのが、われわれの立場としては最上であるし、またそうしないと財政投融資も今後とも——あるいは国民所得の倍増というようなことがいわれます、そういうものは、一般予算でいかない面は、出てくる中には、民生の安定もあれば国民所得の格差の是正もあるわけでありますが、すべて財政投融資の要求になってきておるわけです。そういう意味で、財政投融資の原資の確保ということは国民経済的に最も重要なことではなかろうか、こういうふうに考えております。
  110. 滝井義高

    滝井委員 大蔵省として財政資金を統一的な見地から運用することが望ましいということは、立場としてよくわかる。その場合に、今言ったように資金運用部自体というものが、客観的に見ても収支が相当苦しくなってきておる。厚生省からは自主運用してもらいたいというし、野党の社会党も、金を納めたその張本人である勤労者自体もそういう要求があるのだ、こういうことになると、必ずしも大蔵省の初志を貫徹できにくい情勢がだんだん出てくると思いますが、そうなった場合に、大蔵省としてはこういう状態の中で一体どういう方向に、厚生年金積立金だけに限ってけっこうですが、持っていく御所存ですか。どういう方向で問題を解決したらいいとお考えになっているのですか。
  111. 澄田智

    ○澄田説明員 先ほどお答えいたしましたように、資金運用部としては、あとう限り利回りの向上に努めまして、ひいては厚生年金の預託の利回りも向上するように努めるということを当然やるべきだと思いますし、資金運用部資金等を統合しております財政投融資といたしましては、国民生活あるいは国民経済、そういった要望に最も適応するように運用する、財政投融資運用計画の内容をできる限りそういう要請にこたえ得るものにするということになろうかと思います。
  112. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、現状の資金運用部の運用方法を改善をしていくということ以外に大蔵省の考え方は出ていないようでございます。厚生省としては自主運用をやりたいということですが、今言ったように、客観的に見て資金運用部というのは収支が非常に弾力を欠く状態が出てきている。六十七億の金は長期の郵便貯金の方に取られていっておる。こういう形の中で大臣としてはどうするつもりですか。
  113. 渡邊良夫

    渡邊国務大臣 先ほど来申し上げました通り、自主運用をあくまで貫きたい、主張したい、かように考えております。
  114. 滝井義高

    滝井委員 これは大蔵省と厚生省意見の一致を見ませんから、料率引き上げの問題にしても、標準報酬改定の問題にしても、これはなかなか重大問題ですよ。大蔵省と厚生省意見が並行だということになれば、だれかここにどっちかに軍配をあげてくれる人が出てこなければならぬ。これは当然総理になるわけですね。そこで一方は自主運用を突っぱり、一方は現状の資金運用部の運営方式で、これは利回りその他を改善して民生安定の方向に金を持っていったらいいだろうということで、意見が分かれてきました。そうしますと、三十四年に八十五億とか三十五年に百五億とかいう還元融資の額の決定は、一体どこで、どういう基準でこれをおきめになっておりますか。
  115. 鈴木喜治

    ○鈴木説明員 もちろん閣議で決定されます。
  116. 滝井義高

    滝井委員 その決定の基準ですが、その前に厚生省からお預けになっている積立金の利子の総額は幾らですか。
  117. 加藤威二

    加藤説明員 利子の総額と申しますのは、三十四年度におきまして私ども厚生年金積立金から入ってくる利子収入として計上いたしましたものが百八十六億九千万であります。
  118. 滝井義高

    滝井委員 こういうように説明をしてみてくれませんか。昭和二十七年くらいから三十五年までの原資の伸び、それから融資のワク、それから積立金の累計、そうした積立金の累計に見合うものとして、たとえばことしでいえば積立金が幾らになったから百五億もらった。実際には積立金の利子は三十四年には百八十六億九千万円になっておるのですが、百八十六億九千万ということにずっと見合って、二十七年からわからなければ最近でもいいですが、それを一つ説明になって下さい。
  119. 加藤威二

    加藤説明員 二十八年から申し上げますが、二十八年の保険料収入が百七十六億八千八百万でございます。それに対しまする運用収入が三十九億二千万でございます。そのときの還元融資のワクが二十五億でございます。それから二十九年が保険料収入が二百九十五億七千万、運用収入が五十億九千万、融資のワクが三十五億でございます。三十年が保険料収入が三百四十二億四千万円、運用収入が六十七億九千万円、融資のワクが四十五億であります。三十一年が保険料収入が三百八十三億七千万円、運用収入が九十三億三千万円、融資のワクが五十五億。三十二年が保険料収入が四百三十億八千万円、運用収入が百二十億二千万円、融資のワクが七十億。三十三年が保険料収入が四百六十六億、運用収入が百五十億七千万円、融資のワクが七十五億。三十四年が保険料収入が六百十二億、運用収入が百八十六億九千万、融資のワクが八十五億でございます。
  120. 滝井義高

    滝井委員 三十五年の見積もりは。
  121. 加藤威二

    加藤説明員 三十五年の保険料収入の予定が七百六十五億五千万、運用収入が二百三十三億二千万、融資ワクが百五億でございます。
  122. 滝井義高

    滝井委員 大臣、ここが一つ大事なところです。今の数子の経緯をずっと達観してみると、保険料収入というものは比較的に増加をしていきます。百七十六億台から二百九十五億台、三百億、四百億、六百億、七百億というように飛躍的に増加をしていきます。一方還元融資はどうかというと十億ずつですね。ことしは初めて二十億増加したんですよ。やかましく言うたから二十億増加したんです。そうすると、少しはやかましく言わなければならぬ。やかましく言い賃十億、安いもんですよ。三十五年度に二百三十三億二千万の運用収入があるなら、やはり百五、六十億、百七、八十億くらいは、どんなに安く見積もってももらわなければいかぬですよ。ところが積立金利子さえもようもらわない、こういうことですからね。これは矛盾をしておる。この八十五億とか七十五億、百五億というものは一体どういう基準できめるのかということです。このきめる基準が問題なんですね。これは一体どういう基準で閣議で決定されておるのですか。大臣は当然閣議に出て了承されたわけですが、これはどういう基準できめられたのですか。目の子算用ではおかしい。
  123. 渡邊良夫

    渡邊国務大臣 閣議は最終的にきめるのでありまして、その前に、あなたも御存じのように、事務折衝をしばしばやりまして、諮ってこれに落ち着いたわけですが、明年度以降は御趣旨のような線に沿いまして、私どもは初めから、先ほどから申しましたように、できるだけ多くの還元融資をしたいということは念願でございますので、事情よろしく一つ御推察のほどを願います。
  124. 滝井義高

    滝井委員 よろしく御推察を申し上げておるので、今還元融資のところにまで問題をしぼってきたわけです。その前に大臣は、還元融資どころではない、これは自主運用をしたいというもう一つ上の段の要求を持っているわけです。それから二段の要求としては、自主運用がすぐできないなら、還元融資の金をもう少しこちらにということだと思うのです。その百五億というものは一体いかなる基準できめられているかということなんです。これはやはりはっきりしておかないと、そのときそのときの状態で五億ふえたり、十億ふえたり、二十億ふえたり、また文句を言えば四十億ふえる、こういうことでは私はおかしいと思うのです。だからこれは運用収入の半分なら半分をいつももらうようにして——アメリカとの間の防衛分担金だって、日本が防衛努力をして、その防衛費をふやしたら、そのふやした半分だけは分担金を減らしてやるということで、今までアメリカとわれわれはやってきたんですよ。今度はなくなっちゃったんです。百十一億ぱっとなくなっちゃったわけですね。これはやはり半分なら半分、八割なら八割という何かきちっとした約束をしておかぬと、計画が立たぬですよ。これは、局長、事務当局が悪いですよ、こういうしろうとの私から指摘をされなければ、どうも理論的な根拠がはっきりしないということでは——あるなら、一つ言って下さい。
  125. 太宰博邦

    太宰政府委員 今までの経緯は、率直に申しますと、やはり各方面から要望いたしましたそれと、大蔵省の方で回し得る額との間の折衝で大体きまっておるわけであります。そこで先ほど申し上げましたように、毎年少しずつは増加しておりまするけれども、この額自体につきましては、厚生省の立場からいえばはなはだ不満を持っておるわけてございます。これについてはどの程度やったらいいかということにつきましては、またいろいろ意見がございます。たとえば運用収入程度のものは回したらどうかという意見もあるいはあろうかと思います。またその他の何かのめどもあるいは出るかもしれない。しかしいずれにしても今日の還元融資のワクは、私どもの方に参っております希望と比べてみたら、私どもはこれはまだ不満でございます。この点につきましては午前中から問題になりましたようないろいろな問題も含めまして、私どもはいろいろな点でなお今日のこういう運用のやり方、程度というものについては意見を持っておるのでございまして、これは根本的に一つ調整をはかってもらいたい、かような考えをもって昨年来これをやっておるわけでございます。ただ問題が相当大きな問題でございまするので、今日までこれが調整ができておらぬのでございますが、今御指摘の点も、今後調整すべき場合における一つの問題点として十分に努力いたすつもりでございます。
  126. 滝井義高

    滝井委員 どうも一つの問題としてということでございますが、あなた方は不満だ不満だと、不満の連続です。少ないのだとおっしゃるのですが、大蔵省の方は還元融資の額の決定は、何かきめるのに基準を持っていらっしゃいますか。
  127. 鈴木喜治

    ○鈴木説明員 先ほど大臣のお話の、われわれは、前の段階の事務的折衝の話でございますが、事務的折衝としまして毎年、これは原案の段階でございますが、前年の融資実績あるいは申し込み額等を勘案しまして、翌年の原資の増加も見まして、お互いに話し合いできめております。
  128. 滝井義高

    滝井委員 前年分を基礎にしておきめになるということは当然のことだと思うのです。しかし、それじゃその前年のものはどうしてきめたんだ、こういうことになる。あるいはまたその前年であるということになれば、一体一番先の——たとえば昭和二十八年からでございましたが、百七十六億八千八百万円で、運用収入が三十九億二千万円、そのときに二十五億、こうきめているわけです。そうしますと、これは約七割に当たるわけですから、その七割なら七割とこうきめてもらえば、ことしは、七割ならば百五、六十億になる。その前年の実績を基礎にしたという、その前年は何を基準にしてきめたかということです。こういうところはもう少し厚生省としても科学的な基礎をもって国会説明できるようなものを作らなければいかぬし、労働者に対して説明することができるものを作っておかなければならぬ。そのときそのときで厚生行政というものは波のまにまに決定をされて、まさに一本の風にそよぐアシですよ。風にそよぐアシでは困るんです。やはり中にがんとした筋金がそよがぬように入っていなければ困るんです。これは自主運用というものがすぐできないとするならば、大臣一つ何かはっきりとした基準をきめて、七割なら七割いただくんだ、五劇なら五割いただくんだということをきめてもらわなければいかぬと思う。これは国民年金ができるということになると、また同じことですよ。国民年金ができると、これがすでに実績だ、厚生年金がまあまあ五割以下四割くらいしかやっておらぬのだから、それでいきなさい、そうして農民なり中小企業者の福祉厚生あるいはその他何かその方面の融資に使いましょう、こういうことになって、その累はみんな小山さんの方に及んでくる。そのときに幾ら泣いても間に合わない。実績はこの通り厚生年金国民年金とは均衡をはからなければならぬ、そのときには必ずそうおっしゃるんです。それではいかぬと思うのです。  それからもう一つは、燈用の利子をある程度安くしていいという場合は、私は民生安定のときだと思う。そういうときはこれは安くしていいと思う。たとえば住宅とか、大臣の方のお得意の、今にわかにやらなければいかぬといっている上水道、下水道、環境衛生関係、こういうところに民生安定の経費として国民年金積立金のお金なり厚生年金積立金を今後つぎ込んでいくということになると、今あなたの方で隘路になっておる下水道の十カ年計画とか上水道の緊急整備五カ年計画というものが片づくんです。ところが今は二割か三割、超債をひっくるめてせいぜい年度計画の五割か六割にいっていない。そのくらいしか金がこない。だからこれは積立金の金をがっと持っていく、こういうことになると、あなたの施策というものは国の一般会計のお世話にならなくともやっていける、こういう形が出てくる。老人ホームを作ったりするのも、一般会計からあわててお金を借りなくとも、この金でどんどんできていくと思う。そういう点、自分の金を持っているのでありますから、もう少し頭を働かしてもらっていけば、ああいうけんか腰にならなくとも、理詰めでいってある程度筋を通せば、大蔵省も納得せざるを得ないと思う。結局、結論的に言えば、国家的な、この重要な財政投融資の資金源になっておるこの厚生年金積立金、あるいは今後できてくるであろう国民年金積立金というものを、勤労者のためのものとして利用をするという側面と、国家的な財政投融資という観点に立って運用する側面との調和というものを一体どういう工合にとっていくかということが、当面の一番問題だと思うのです。この根本的な問題を大臣同士で政治的にきちっと話し合って、そしてその話し合った大綱に基づいて下の方で作業をしていく、事務的に折衝していく、こういう形が出てこなければならぬ。事務的に出てきたものを今度は大臣が承認をするというのでは政党政治じゃないでしょう。こういうところに、もう少し大臣初め与党の政調の皆さん方がふんどしを締め直さなければならぬ点が出てくるのです。これ以上私はこの問題は申しません。しかし、いずれこれはまたの機会に、予算委員会かその他があるときがあれば、やはりもう一回やらなければいかぬと思うのです。今のように大蔵省と厚生省意見が食い違っており、その運用の問題についても確固たる見通しというものがないということでは、労働者は大へんです。さいぜん、私が午前中に申し上げました通り、再び国民年金なり厚生年金が安保体制下における軍需産業拡大のために使われることはまっぴらですから、これは再び岸さんを戦犯に追い込む道にもなりかねないので、再びわれわれは岸さんを戦犯に追い込みたくないと思うのです。午前中安保の特別委員会で、岸さんが巣鴨にMPから引っぱられていっておる写真を松本さんが高々と掲げて質問をしておりました。再びあなたがそういうふうになってはいかぬ、あなたの背後には今アメリカのMPが立っておるじゃないか、ちょうどあなたが巣鴨に引っぱられていくときにMPがうしろに立っておった姿と同じ姿になっておるじゃないか、へまをすればこの財政投融資の中からそういう姿が出てこぬとも限らない。私たちは岸さんの誤まった道を歩まないためにも、この際われわれみずからがこれを断ち切っておくことが必要です。そういう意味で、大臣、ふんどしを締め直して、国民年金がやがて三十六年にいよいよ起こるし、今国会厚生年金審議されておる、この過程の中で、ぜひ一つ熱意をせられて、そして正しい年金運用の道を切り開いていくことを最後に一応お願いをいたしておきたいのですが、大臣どうですか。
  129. 渡邊良夫

    渡邊国務大臣 前年までの基準、あるいは前々年度の基準、こういうよってきたるところの基準というものをお尋ねのようでございますが、これはやはり財政投融資も、一般労働階級のためのいわゆる社会福祉共同施設というものに対しますところの財政投融資でございまして、われわれといたしましては、別にそれが軍需産業につながるものであるとかなんとかいうことは考えておりません。ただ、私どもは直接に、あるいは間接に、特にこの労働者のためあるいは被保険者のためにはかるところの社会福祉施設に対する融資、こういうワクというものは漸次拡大していきたい。私どもとしましては、できるだけこの厚生年金というものは厚生省によって自主運用をいたしたい、かように考えておるのでありまして、その趣旨におきましては大蔵省とは何ら考え方が違っておるわけでも何でもないのでありまして、どうぞその点は御了承を願いたいと思います。
  130. 滝井義高

    滝井委員 厚生年金の大ざっぱな、重要と思われる運用上の問題は、大体以上にしておきます。
  131. 太宰博邦

    太宰政府委員 午前中、労災保険法改正とのからみ合いで、船員保険法改正はどうなるかという御質問がありましたが、その点について申し上げます。  午前中にも申しましたように、まだ関係審議会意見も聞いておりませんので、政府としてこまかいところまで申すわけには参りませんが、一応私どもとしては、船員保険の職務上の事由による傷病につきまして、現在は療養の給付が開始してから三年を経過して治癒しない場合においては、これを障害年金あるいは障害手当金に回す、これはやはり労災保険改正とのにらみ合いにおきまして、治癒しない人に対しては、その期間経過後も治癒するまで療養の給付及び傷病手当金を支給する、そしてその後において、傷病が治癒したときからその廃疾認定をいたしまして障害年金なり障害手当金を支給する、こういうことにいたしたい。  それから、現在職務上の事由に基づく外傷性のせき髄障害によって障害年金の支給を受けている人がありますが、これはもしその障害が治癒していないということを——やはり障害年金の方に回しているという場合におきましては、その人についても、申し出がございますれば、治癒するまでは一たんその障害年金の支給を停止しまして、先ほど申し上げたような療養の給付、傷病手当金の支給を行なう、こういうことにいたしたいというのが大体大筋であります。
  132. 滝井義高

    滝井委員 そういう改正社会保障制度審議会か何かに諮問をしている、こういうことですか。——そういうことですね。——わかりました。そうしますと、そういう意思厚生省ははっきりしている。しかしそのことは結局二年前からわかっていることなんです。なぜならば、労働省が今出している労災法の一部改正法並びにじん肺法というものは、これは時限立法なんですから、ことしの三月三十一日にはこの法律はなくなるぞ、それからけい肺臨時措置法の中に、十二月三十一日までには国会けい肺法の改正は出さなければいけませんぞということをうたっているのです。だから当然それに見合う船員保険法改正というものは、あなた方はやっておかなければならぬ。それはあなた方の不勉強ですよ。自分の方の船員保険というものにそういう関連があることを忘れておって、今になってやるということは、どろぼうを見てなわをなうようなものだ、労働省から先に出してしまった。お宅は出してない。だからこういうところに——厚生省労働省は大体兄弟じゃないですか。いとこなら他人の始まりということがあるが、兄弟ですよ。厚生省労働省は昔の内務省から分かれている。これは話をしておかなければならぬですよ、私に言わしめれば。私はまだその内容は知りませんでしたけれども、僕が、しろうとが考えてみても、労働省労災が出たならば、船員保険というものは総合保険労災が含まれている、どうしてこれが出なかったかと思って不思議に思っていたのです。それでけさから聞くけれども、とんちんかんな説明しかできないから、どうもおかしいと思った。午前中は言ってくれないで、午後になって言うというような、そういう手おくれじゃ人間は死んでしまいますよ。やはり適時適切に手を打ち、知恵を施さなければ患者は死ぬ。そういうことで、政治もやはり適当なときに手を打たぬとまずいですよ。法案はおくれるですよ。そういうことがおわかりになっておるならば、与党に言うて一つ船員保険修正案を出させて下さい、一緒に通しますから。そういうことを一つお願いをしておきます。船員保険の方は午前中そういうことがまだはっきりわからなかったものですから、私は今ちょっとペンディングにしていたのですけれども、そういうことがわかっておれば——与党厚生関係理事が来ておらぬけれども一つ齋藤さんにお願いします。今言った通り政府船員保険法改正意思があるのですから、一つぜひやっていただくようにお願いをしておきます。
  133. 太宰博邦

    太宰政府委員 午前中申し上げましたように、この関係労災関係でございまして、他の法案につきましては、御承知通り昨年から継続審議になっております。非常に急いでおるものでございますから、その点はよろしく御考慮をいただきまして、追っかけてまた御審議いただくようになりますから、よろしくお願いいたします。
  134. 滝井義高

    滝井委員 今労災労働省では出ておるのですよ。そうして、齋藤さんなんかおられますけれども、三月三十一日までに上げなければもうだめだ、こういう法律なんです。与党は今急いでおるのです。あなたの方だけ三月三十一日までに上げなくてもいい、今から制度審議会にかけて、そうして今度法律案にして出してきますというのでは、労災は終わってしまいます。そうしますと、労災の方は船員保険が出るまで待っておってもいいのですか。あなたの方が、労災があるのだからおれの方が出すまで待てというのなら、こっちを待っておってもいいです。どちらでも自由です。待てとおっしゃれば労災を待ちます。
  135. 太宰博邦

    太宰政府委員 政府といたしましては、御承知通り大へん急いでいる法案でございますので、今回の法案はぜひ先に御審議をいただいて通過をお願いいたしたい。それから労働省労災保険の方も、御指摘のように非常にまた急いでおるわけでございます。私ども関係船員保険の分がおくれましたのはまことに申しわけないと思いますが、目下鋭意急いで提出を準備いたしておりますので、これも一つ一緒でなければ云々というようなことでなしに、一つ御好意をもって御審議を賜わりたいと思います。
  136. 滝井義高

    滝井委員 今八木先生が、船員保険法の一部を改正する法律の制定についてという制度審議会意見がこうまとまったというのを持っていらっしゃった。それによりますと、むしろ船員保険制度自体における被保険者保護措置の一つとしても、当然実施さるべきものであり、かかる観点から、今回の改正は適宜の措置と認められる。ただし、潜水病その他の職務上の傷病に対する云々と出ております。これは当然もっと早くあなた方が気づいて出さなければならぬのですよ。それをあなた方気づいていない。僕はもっと早く気づいておったが、これは最後になってからでないとこういうことは言ってはいかぬと思って、意地悪い意味ではないが、最後になって言ったわけです。それで、この答申が出れば、この国会に間に合いますから、一つすぐに船員保険法修正案として、政府が出すわけにいかぬですから、与党から出して、与党が出さなければ社会党が出してもけっこうです。これはこういうものが出れば、制度審議会を重んじておるようですから——ときどき重んじたり軽んじたり、どっちかわからぬですが、とにかく今度は重んじているらしいですから、ぜひそうしてもらいたい。
  137. 八木一男

    ○八木(一男)委員 関連。今の滝井委員のお話の通りでございまして、厚生省から船員保険法の一部を改正する法律案についての諮問が制度審議会にございました。厚生省の方からは、これは非常に急いで答申してくれということで、社会保障制度審議会では非常に急速にこの問題の審議をして、審議の結果の答申を確定をして、直ちに今答申ができるような状態になっております。これは本日か明日くらいにされると思います。そういう状態でありますから、当然答申を期待して諮問されたわけでありますから、厚生省は責任を負わなければならない。急いでくれということを厚生省から制度審議会に要請されたわけです。制度審議会の方は、それに従って非常に忙しいところを会を重ねて、まさに答申が出かかっておるわけです。一両日の間に必ず出る。ですから、当然あなたの方で船員保険法についての改正案について要請されたのですから、今度の船員保険法改正案にあなた方はそれを込めて提出するのがあたりまえだと思います。ですから、この問題については非常に重大な問題になりますから、前に出された船員保険法の一部改正案を至急に撤回して、この内容を盛ったものをあさって出しなさい。このくらいのことはしようと思えばできる。そういうふうにされなければ、これは非常に重大な問題になるということを厳重に警告しておきます。
  138. 永山忠則

    永山委員長 本日は、これにて散会いたします。     午後三時五十六分散会