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1960-03-09 第34回国会 衆議院 社会労働委員会 第14号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十五年三月九日(水曜日)     午前十時三十七分開議  出席委員    委員長 永山 忠則君    理事 大坪 保雄君 理事 田中 正巳君    理事 八田 貞義君 理事 滝井 義高君    理事 八木 一男君 理事 堤 ツルヨ君       池田 清志君    大橋 武夫君       亀山 孝一君    倉石 忠雄君       齋藤 邦吉君    中山 マサ君       柳谷清三郎君    赤松  勇君       伊藤よし子君    大原  亨君       五島 虎雄君    多賀谷真稔君       中村 英男君    本島百合子君  出席国務大臣         厚 生 大 臣 渡邊 良夫君         労 働 大 臣 松野 頼三君  出席政府委員         厚生事務官         (大臣官房長) 森本  潔君         厚生事務官         (保険局長)  太宰 博邦君         労働事務官         (職業安定局         長)      堀  秀夫君  委員外出席者         大蔵事務官         (大臣官房主計         官)      岩尾  一君         厚生事務官         (保険局健康保         険課長)    加藤信太郎君         厚生事務官         (保険局厚生年         金保険課長)  加藤 威二君         労働基準監督官         (労働基準局労         災補償部長)  村上 茂利君         専  門  員 川井 章知君     ————————————— 三月九日  委員賀谷真稔君及び中村英男辞任につき、  その補欠として櫻井奎夫君及び黒田寿男君が議  長の指名委員に選任された。 同日  委員櫻井奎夫君辞任につき、その補欠として多  賀谷真稔君が議長の指名委員に選任された。     ————————————— 三月八日  原子爆弾被爆者医療等に関する法律の一部を  改正する法律案内閣提出第九五号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  失業保険法及び職業安定法の一部を改正する法  律案齋藤邦吉君外二十三名提出、第三十三回  国会衆法第二三号)  厚生年金保険法の一部を改正する法律案田中  正巳君外二十三名提出、第三十三回国会衆法第  二四号)  日雇労働者健康保険法の一部を改正する法律案  (田中正巳君外二十三名提出、第三十三回国会  衆法第二五号)  船員保険法の一部を改正する法律案田中正巳  君外二十三名提出、第三十三回国会衆法第二六  号)  船員保険法等の一部を改正する法律案内閣提  出、第三十一回国会閣法第一六八号)  労働関係基本施策に関する件      ————◇—————
  2. 永山忠則

    永山委員長 これより会議を開きます。齋藤邦吉君外二十三名提出失業保険法及び職業安定法の一部を改正する法律案田中正巳君外二十三名提出厚生年金保険法の一部を改正する法律案日雇労健者健康保険法の一部を改正する法律案船員保険法の一部を改正する法律案及び内閣提出船員保険法等の一部を改正する法律案、以上五案を一括議題とし審査を進めます。  質疑の通告がありますので、これを許します。滝井義高君。     〔委員長退席田中(正)委員長代理着席
  3. 滝井義高

    滝井委員 昨日は船員保険法等の一部を改正する法律案の中の、主として日雇労働者健康保険に関連する部門の質問をいたしたのですが、特に傷病手当金それから療養費払い、それから待期二カ月間の撤廃問題等、御質問をいたしました。きょうはなお日雇健康保険に関連する被扶養者の問題を少し質問をさしていただきたいと思うのです。  これは健康保険全般にわたる問題でございますが、まず被扶養者認定の問題でございます。現在健康保険法等で、法律にはないけれども、多分これは政令省令か知りませんが、何かそういうのでやっておるのじゃないかと思うのですが、十六才以上六十才までの者は健康保険でも、それから日雇労働者健康保険でも、扶養家族の中に入っていないのですね。これはその人が、たとえば働いていないという場合でも除外をされておるようですが、それはどういうことからそういうことになるのですか。
  4. 太宰博邦

    太宰政府委員 これは法律には、そういう十六才から六十才までの者は適用者としないというよう規定はございません。被扶養者認定につきましては、年令によって制限は課しておらないのであります。扶養されておるかどうかというその実態をつかまえて認定いたしておるわけでございます。ただ十六才から六十才までというのは、今日の日本の段階におきましては、一応稼働年令というふうに考えるのが常識でございまするので、そういう場合には、むしろ稼働しておらないということについて調べる必要がある。十六才未満であるとか、あるいは六十才を越えている場合においては、むしろ稼働していないというふうに考えるのが原則でありまして、その辺から、多少扶養されておるかどうかの実態を確認することにつきましては、考えねばならぬ点はございますけれども法律上は、そういうことで制限はいたしておらないのでございます。
  5. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、多くの日雇労働軒健康保険の被保険者保険証を見ても、健康保険の被保険者保険証を見ましても、十六才以上、六十才未満の者は被扶養者欄に記入されていないのですが、仕事をしていなくて、何が稼働していなければ、これは全部被扶養者として認定できるのですか。その働いておる本人、いわゆる被保険者によって生計を維持されておる、そして働いていない、こういう者はすべて認定ができるのですか。
  6. 太宰博邦

    太宰政府委員 明らかに働いておらない、それから本人から扶養されておるということを調べて認定するわけでございます。
  7. 滝井義高

    滝井委員 実際問題としては入っていない場合が多いのですね。それから五人未満事業所なんかに働いておりますと、たとえば標準報酬で三千円とか三千五百円があるように、非常に安い徒弟的な賃金しかもらっていない。いわば家計補助的な、出かせぎ的な仕事に従事しておる。うちに帰れば、それはほとんどその者の小づかいで、家計の足しになっていないというような、十六とか十七の新制中学を卒業して一、二年の人がおりますと、それらの者は健康保険はない。国民健康保険も、お前働いておるじゃないかというので入れてくれないということになりますと、その人は保険入りようがないのですね。これは私は、保険がなければ当然被扶養者に入れるべきじゃないかと思うのです。そういう者も入れていないのですね。この被扶養者認定というのを今後どうするかというのは、皆保険が進行していくにつれて非常に重要な点になってくるのです。被扶養者認定をどういう工合にやるかによって、国民の中に相当の部分の皆保険恩典に浴さない層が現実に出ておるし、今後も出てくる可能性があるわけです。働いておる人は、一応五人以上ならば健康保険に入る。五人未満は、これは現在の政府方針としては、国民健康保険に入れていくのだ、こうおっしゃっておるのだが、そういう人は、まあ悪いつもりではないのでしょうが、わしは働いておるのだから健康保険に入りたいと思っても、事業場健康保険に入れてくれない。国民健康保険の勧誘がくると、私は健康保険に入りたいからというので、いつのまにか盲点になって、入っていないという者が相当あるわけです。特に日雇労働者健康保険において、その傾向が強いのです。なぜならば、日雇い労働者は、やはり財政自体赤字の問題もありますので、被扶養者をよけいに入れるということは問題が出てくるわけです。だから十六才以上、六十才未満認定というものを厳重にやって、排除する傾向が強い。これは保険経済赤字だから、そういう形が出てくるのです。この問題を、もう少し政府としては合理的にやって、明確な基準を作ってやる必要が出てくると思うのです。今、あなた方の方針としては、一応五人未満事業場に勤める者は国民健康保険だ、こう言っておるのだけれども任意包括というものが別にあって、任意に五人未満事業場でも入るという制度で、五人未満事業場というものは二またをかけていると思うのです。国保でも健保でもいけるのだ、こういう状態になりますと、必ずそれは谷間で、盲点になるのです。だから今後日雇労働者健康保険法を進めていく場合でも健康保険法を進めていく場合でも、あるいは国民保険の重要なにない手である国民健康保険の進展をはかる上においても、一体この谷間家族をどういう工合認定していくか。すでに健康保険の被保険者配偶者奥さん方年金強制適用でなくて、任意加入ということで谷間に落としている。それと同じような問題が今この健康保険でもあるわけです。だから特にこの約八十万を越える日雇労働者健康保険の被保険者家族の問題を基本的に今後どう進めていくか。これは局長も御存じの通り日雇い労働者というのは原則として一人しか働くことができないのです。そうしますと、これは他には働き手がいないという格好です。働いておってもわずかな賃金で、そういう仕事場には健康保険がないというのが原則です。だから私はこの際、六十才未満十六才以上というようなものを日雇い労働者健康保険についてはある程度撤廃して、そうして主としてその者により生計を維持している者は、全部これは被扶養者に入れるべきだと思うのです。大臣、その点どうでしょうか。
  8. 渡邊良夫

    渡邊国務大臣 なかなかお説のようにむずかしい問題で、ございまして、これは実際あなたのよう専門家でさえも私に問いただすのでございますから、実情によって私どももいろいろ研究をしてみなければ、今即答はしかねる次第でございます。
  9. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと十六才以上六十才未満の者を被扶養者認定をする場合に、何か具体的な基準でもあなたの方はお持ちになっておりますか。基準がなくて、ただ社会保険出張所の勘や経験だけにまかしていると、何かそこに、こういう条件の者を被扶養者としては保険証に載せないという基準がないと、ばらばらになる可能性があるのです。われわれのところにやはり言ってくるのです。私は被扶養者に載っていない、何とか載せてもらわなければ困るが、載せてくれる方法はないですかということを患者の方から言ってくるのです。何か明確な基準がないと、社会保険出張所によってばらばらになる可能性がある。何か基準があればそれをお示しいただきたい。そういう認定基準政令省令で定めているのですか。
  10. 太宰博邦

    太宰政府委員 政令省令等でも定めておりません。これは基準を設けましても、なかなか実態に合うようなはっきりした基準というものは困難でございます。やはりその実態を見きわめてやりませんと、なまじっかそういう基準を作ることによって、かえって実態にそぐわない場合も出てくるおそれなしといたしませんので、これはあくまでもその家庭実態というものとにらみ合わせまして、そして実情に合ったようなところで常識的に判断するという以外は今日のところないわけでございます。基準を作ることも一つのやり方と存じますけれども、その作り方、またその適用がもし万一うまくいきません場合は、かえってマイナスの効果もあって、認定してしかるべきものをしゃくし定木にはずすというよう事態も起こるおそれなしといたさないのでございます。さような点から、この点はなお十分に考えなければならないと存じます。
  11. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、基準がないということになると、全く出先機関の恣意的な、認定によって、十六才から六十才までの被扶養者というものは入ったり入らなかったりすることになるわけですよ。これは私は行政統一性一貫性というものが、ある場合にはうまくいくし、ある場合には非常に大きな欠陥が出てくる感じがするのです。現在、日雇労働者健康保険の被保険者の被扶養者というものはどの程度おりますか。
  12. 加藤信太郎

    加藤(信)説明員 今はっきりした数字は覚えておりませんが、被保険者一人当たりについて大体一・八人くらいだと記憶しております。政府管掌は一・一八でございますから、それの五割増しくらいの見当でございます。正確には今覚えておりません。
  13. 滝井義高

    滝井委員 貧乏人の子だくさんと申しますが、おそらく政府管掌健康保険の被扶養者より日雇いの方が多いと思いますが、実は政府管掌の方が日雇いよりか被扶養者認定は厳重です。健康保険の方が厳重なんです。日雇いの方がおそらくそういう点から見るとあるいは幾分緩和しておるかもしれません。しかし一・八では、ちょっと私は少ないのじゃないかという感じがするのです。この点、厚生省としては、皆保険政策の推進に当たって盲点になる被扶養者というものをもう少し正確に把握してもらって、きちんと保険証の被扶養者欄に登録してもらわなければならぬと思うのです。そのためには、現在労働組合運動もだいぶ進んで参りましたから、日雇労働者健康保険関係労働組合というものが全国にあると思うのです。だからそういう労働組合の協力を得て、生計ををその者によって主として維持をしておるというようなものは、やはり全部被扶養者に入れていくという必要があると思うのです。そうしないと、相当皆保険恩典に浴せない者ができて参りますから。どうですか、今後こういう問題について、もう少し具体的に広く恩典に浴せしめるような方策をお考えになる意思はありませんか。
  14. 太宰博邦

    太宰政府委員 私どもは、先ほどお答え申し上げましたように、現在この被扶養者範囲を特に狭く解釈するというような特別の意図を持っておらないわけでございまして、やはりその家庭実態というものをよく見きわめまして、常識的にこれをきめていくということで、従来まで格別行政一貫性が阻害されたということも承っておらないわけであります。従いまして、今日特にこの認定範囲を広げる必要があるとは考えておりません。しかしお話のように、その辺に何らかの尺度というものができれば、これは一つの進歩でけっこうなことでもあろうかと存じます。これにつきましては、先ほど申しましたように、かえってそれがあるために認定からはずれるような、実態にそぐわないよう事態が起こっては逆効果でございますので、御意見のあるところはよく了承いたしましたので、その点は今後検討してみたい、かよう考えております。
  15. 滝井義高

    滝井委員 十分検討するということですが、この日雇労働者健康保険法の第三条の第2項で「この法律で「被扶養者」とは、次に掲げる者をいう。」ということで一号、二号で書いております。一号は「被保険者又は被保険者であった者の直系尊属配偶者及び子であって、主としてこれらの者により生計を維持するもの」こうなっておるのです。その次の二号は「被保険者又は被保険者であった者の三親等内の親族であって、これらの者と同一の世帯に属し、主としてこれらの者により生計を維持するもの、だから主たる条件は、「主としてこれらの者により生計を維持するもの」こういうことになっておるわけですよ。だから幾分働いて三千円かそこらもらっておっても、日雇い労働者本人によって養われておるという現実がはっきりしておれば、これはもう全部保険証の被扶養者に載るわけです。ところが現実はそうじゃないですよ。少しでも働いておれば載っていないのですね。だから、主として生計を維持しておるという状態というものをどういう工合に見るかということが問題なんですよ。これが出先社会保険出張所認定で、それは君のところのむすこが十七になって働いておったらもうだめだ、一挙にこれですよ。そうすると、そのむすこは五人未満の零細な企業に働いている。徒弟みたいな状態だという。その働いておる工場のおやじさんが国民健康保険に入っているというと、その徒弟さんは国民健康保険にも入れられないし、といってこの被扶養者にもなれぬというので、宙ぶらりんですよ。だから今の中小企業に働いておる十七、八の若い青年をつかまえて、君保険証を持っているかといって尋ねてごらんなさい、みんな持っていないというのが多いです。保険証は持っていないし、じゃおやじ保険証に載っているかといえば載っていないのが多いです。だから今の新制中学を卒業して間もないぐらいの十六、七の青年で、被扶養者として登録されあるいは本人保険証を持っておるというのは比較的少ないと私は見ておる。こういう点は、この条文の通りでいけば、主として生計を維持するという認定をどう見るかということです。これをあなた方は一体どう見ておるかということですよ。これをお教えいただけば、今後の検討の非常に有力なてこになるわけです。
  16. 太宰博邦

    太宰政府委員 これらの者により生計を主として維持するとかいうことは、他の法令においてもこういう規定があるわけでございまして、大体そのもの生活実態というものをつかまえまして、そしてその人の生計費というものが大体だれによってまかなわれておるか。もちろん百パーセントにまかなわれております場合には一番異論がないわけでございますけれども先ほどお話しように若干よそへ行ってかせぎがあるという場合には認定の問題が起こってくるわけでございます。しかしそのかせぎも、たまさか行ってアルバイトみたいなことで入った場合と、それからとにもかくにも一つのところに雇われて雇用関係ができて、そこで給料をもらっている。それは賃金の問題になるわけでございますが、そういうような場合とによりまして、これは実態に合った認定をしなければならない。おそらくはかの方におきましてもこういう規定はございますけれども、それの主として云々ということにつきましては、やはりこれは実際の認定の問題ということで解決するよりほかないのじゃないか。これをどの場合にはどう、どの場合にはどうということになると、いざとなるとかえって実態に合わないような場合を来たすおそれがございます。しかしこういう方面認定は、主として云々というようなことで、大体そう間違いのない認定を従来やっておると私どもは思っておる次第でございます。
  17. 滝井義高

    滝井委員 「主としてこれらの者により生計を維持するもの」という、その「生計を維持する」ということは、たとえば日本で申し上げますならば、生活保護基準というものが、おとなでは大体二千円程度だ。そうすると、二千円の給料をもらっておれば食えるということになるわけなんです。生活保護の対象にならないわけです。そうしますと、これは主として生計を維持しておるんだ、だから君それはだめだぜ、こういう言い方ができるわけです。おそらく私は今の日本出先機関常識からいえば、そういうところに落ちつくんじゃないかという感じがするのです。だから女中奉公に行って二千円か三千円もらっておると、もうそれはだめですよと言って、被扶養者はみんなとめられていますよ。だからこういうことになりますと、私はそこに一つ盲点ができておると思う。そういう二、三千円もらっている人というのは被扶養者でもないし、といって独立して国民健康保険なり何なりにかかる力もないということで、それらの者は盲点になっているのですよ。お調べになると必ず盲点になっている。きょうこの点はこれ以上つきませんが、こういう点もう少し御研究になっていただいて、皆保険政策を推進する上に、日雇労働者健康保険の被扶養者盲点になっておるというようなことのないようにしていただきたいと思うのです。そこで今度はその家族に関連をして、この被保険者が二カ月について二十八日、六カ月について七十八日以上の保険料を納付する、そうしますと、印紙を貼付しますと、ここに受診資格ができるわけですね。そして今主としてその者によって生計を維持しておる家族は被扶養者に登録されるわけです。     〔田中(正)委員長代理退席大坪委員長代理着席〕 ところが、たまたまその本人が長く病気になっておりますと、保険証は持っておるけれども、今度は別な病気になったり、家族病気になったときにかかれないという問題が出てくるわけです。そうでしょう。
  18. 太宰博邦

    太宰政府委員 そういう場合が起こり得ると思います。
  19. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、これは大事な問題ですよ。今言ったよう資格は、二カ月に二十八日印紙を張る、それから六カ月に七十八日張っておって資格を得た。そして病気になって、ずっと二カ月、三カ月かかっていきます。これは日雇いは六カ月しかかかれないのですよ。そしてかかっていきますと、今度は新しい病気が起こっても、その本人はもうだめなんです。印紙を張ってないから資格がないのです。そうすると家族はもちろん資格がなくなるわけです。問題はここなんですよ。本人はこれはやむを得ぬと思うのですが、その累が今度は家族に及んでくる。家族は現金でなければ医者にかかれぬという問題が出てくるのです。これが現在の皆保険下において——もちろん国民健康保険でも転帰を三年ときめれば、その先はそういう問題が起こって参ります。これはわれわれが国民健康保険を審議するときに、三年以降の問題で皆保険政策というものがくずれるんじゃないかという主張をして参りましたが、日雇いはもっと前にそれがくずれてしまう。本人もくずれるが、家族もくずれてしまうのです。そうするとこれは皆保険政策を進めていく場合に、八十万程度日雇いがおって、その一・八ですから約二倍程度の百六十万の家族がおるわけです。その百六十万の家族が、これはすべて一挙にそういう状態になることはないですが、一挙にそういう状態になったとすれば、百六十万は皆保険盲点になるわけです。今回日雇労働者健康保険を皆保険下総合調整の一環としてお出しになる場合に、これを一体どうお考えになっておりますか。
  20. 太宰博邦

    太宰政府委員 お尋ねように、日雇労働者健康保険の被保険者であって、受給資格を持っております人が、たとえば病気にかかって二、三カ月就労できない、そういたしました場合に、本人がそれから別な病気が出た、あるいは家族がそういうことになったといたしますと、今日の制度におきましては、その疾病の始まります前の月までに二カ月二十八枚という条件が満たされておりません場合には適用が受けられないことになります。こういう点は確かにお尋ねよう問題点であると存じます。しかしこれは昨日も答弁いたしましたように、今日の日雇い健康保険制度の仕組みの技術的な問題として、どうしても今日のところでは、そういうことは避けがたいのでございます。もちろんできるだけ緩和措置をはかる意味におきまして、二カ月間に二十八枚というほかに、六カ月間に七十八枚ということで資格を得る、そうしますと比較的今の人たちも幾らかは救われることに相なるわけでございますから、そういうよう緩和措置を講じてはございますけれども、やはり制度としては、多少そういうところになお十分でない点があることは事実でございます。これは国民保険になって参りますと、やはりそういう面が表に出て参るわけであります。そのほかに日雇健康保険制度自体については、いろいろな点で私ども検討せねばならない問題があると考えておりますので、これは皆保険が明年の四月以降に参りますまでに、できるだけすみやかに私どもとしても検討をいたして、またそれぞれの関係方面意見も聞きまして、工夫をこらしてみたいと考えておる次第でございます。
  21. 滝井義高

    滝井委員 どうもこれは検討ばかりの検討質問になっておるのですが、本人はその病気でずっとかかっておるわけですから、別な病気が起こっても何とかそこに医者の方で都合をつけてくれると思います。結核をやっておって今度はほかにおできができれば、兼何々ということで何とかやっていけると思いますが、家族はもう何ともしょうがないんですね。本人は、その病気で現在受診中であるならば、何とか医者の方が気をきかせてくれるのじゃないかと思いますが、しかし家族は、資格がないのですから気のきかしようがないですよ。そこで家族についてもやはり特別措置というものを考えなければならぬと思うのです。そうすると被扶養者の問題で、被扶養者に載るか載らないかということが第一の難関としてとにかく十六才以上六十才未満家族にはある。そうして第二の難関は、日雇いおやじ病気すると、その家族というものは、病気が三カ月以上になったときには、もう印紙を二十八枚張るのがだめになるのですから、そのころになったら、そのときたまたま切れた翌日病気をしたら処置ないですよ。保険証があると思って医者に持っていったら、いやこれはだめですよ、あなたはかかれない、お父さんはかかっているからしようがないけれども、あなたはだめだ、こういうことになったらかわいそうですよ。やはりここらあたりで、保険証を持ってお父さんが行っておれば、その間は家族を見てやるくらいの愛情はあっていいと思う。幾らこれが保険だといっても、社会保障の一環だというからには、その程度の温情はこの制度の中に置いてもいいのじゃないかと思いますよ。いつも同じようなことを言って恐縮ですが、そうでなければ、この家族生活保護法の医療扶助ですよ。それなら医療扶助でどうせ税金を使うならば、その分の負担を日雇い労働者健康保険の方に回した方が手続がめんどうくさくないですよ。どうですかここらあたりで大臣一つ、今の局長の御説明、私の質問大臣も御理解がいったと思いますが、この家族は、おやじ保険証を持っておってもかかれない場合が出てくる。名前は出ておるけれども、もう印紙が張ってないからだめだ、こういうことになるんですよ。これはやはり早急に考えてもらう必要があると思います。
  22. 渡邊良夫

    渡邊国務大臣 基本的な制度の問題としてやはりこれは検討しなければならぬと思います。しかし私どもは、ただいまあなたが申されたような、いわゆる生活保護法における医療扶助のような形において何らかそういうよう措置ができればと、かよう考えております。
  23. 滝井義高

    滝井委員 この日雇い労健者の家族は、被保険者証には扶養家族として載っておる。そうすると、たまたまお父さんの病気が長くなって、その家族である子供が、二十八日なり七十八日の資格が切れた後に病気になった、お父さんは現在病気なんだというようなときに、これを医療扶助にすぐ切りかえるということは、今度は福祉事務所の認定がなかなかおりてこない。それは、まず確かめて、そうしてこれは大丈夫だということでするというのでは、病気は進行しておるから間に合わない。医療券はさかのぼってはくれませんから、認定をした日から医療券が出るわけです。その間にブランクができてしまう。こういうよう日本の医療制度というものは全部、命の問題になったときに立ちどころに間に合うよう制度になっていない。なかなか間に合わないのですよ。結局医療扶助でいくというけれども、そういうように一定のブランクができて、認定をするのには下手をすると一カ月ぐらいかかる。その間に病気は死ぬかなおるかしておる、こういうことなんですね。だから家族の問題は、何か局長いい知恵が出ないですかね。
  24. 太宰博邦

    太宰政府委員 これは、先ほどからお答えしましたように、やはりこの制度の非常に技術的な仕組みのむずかしさというものがございまして、昨日も申しましたように、のっけからすぐ医者にかかるということができないというようなこととの関連でございます。もちろん生活保護に入ります前に、この日雇い健保の適用除外を申請して、国民健康保険に入る道はあるわけでございます。従いまして、そういうような方法やなんかはとり得ると思うのでありますが、それはそれといたしまして、やはり家族の問題についても私ども考えねばならぬ点があると思います。これは先ほどからしばしばお断わり申し上げておりますように、この日雇労働者健康保険制度全体について、やはり検討しなければならぬときがきておるというふうに私ども考えておりますので、それの一環としてやはり考えて参りたいと、かよう考えます。
  25. 滝井義高

    滝井委員 被扶養者に対する特別措置というものを私は速急に具体化してもらいたいと思うのです。そうしないと、これも一つ盲点として皆保険下では残ってしまう。それは保険ということの精神を貫けば、保険料をかけてない者は、保険という制度を貫いていく限りは医療を与える必要はない、これは当然の理屈です。しかし、少なくともそれを社会保障の重要な一環だと考えていくならば、単に保険という冷厳な原則だけでなくして、そこにもう少しあたたかい、弾力性のある政策というものが加わっていいと思う。それがなかったらこれは社会保障とはいえない。だから、これはむしろ健康保険よりか貧しい階層の日雇い保険だから、もっとふんだんに社会保障的なものを入れてもいいと思うのです。そういう意味で、今度ある程度国の経費をつぎ込むようにしたというのは、そういう精神からだと思うのです。それならばそれだけの特別措置をこういうものに講じていただきたいと思うのです。  もう一つ扶養者について、東京都の国民健康保険が今度実施されることになったのですが、東京都では本人の給付を七割にしました。これは日本国民健康保険一つの画期的なものを私は打ち立てたということで、非常に高く評価しております。この際、これは渡邊厚生大臣お尋ねするのですが、厚生大臣どうですか、今私が御説明申し上げ、質問をいたしましたように、日雇労働者健康保険の被扶養者についてはいろいろの隘路がある。それらの隘路は根本的に検討をしなければならぬと思いますが、この際日雇い労働者の生活水準を上げるという意味からも、社会保障の前進をはかる意味からも、最も低い日雇いの被扶養者の給付率、今は五割です。五割給付して五割を家族は負担しなければならぬのですが、これを七割に引き上げたらどうでしょうか。
  26. 渡邊良夫

    渡邊国務大臣 日雇い労働者の収入につきましては、非常に不安定なものでございまして、先ほどあなたが御指摘のように、この保険制度というものは、やはり保険をかけることによってこれが運用されておる、こういう面からいたしましても、私は将来の問題として検討すべきであって、今直ちにここで七割にすると言うことは、まだ即断過ぎるのではなかろうか、かよう考えております。
  27. 滝井義高

    滝井委員 まあ即断するのは早過ぎ錢かもしれませんが、ものの考え方としては、私は保険というものが、現在の日本で、家族が半額を負担をしておるということが、日本の社会保険が、保険としての色彩を払拭できない一つの大きな問題点になっておるわけです。これが六割、七割と前進をしていきますと、非常に社会保障的な色彩がここに強く出てくるわけです。それだけに国の出費もあるいは多くなるかもしれません、国民保険料の負担も多くなるかもしれませんが、しかしそれは国民にとっては福祉国家への道なんですよ。そういう意味で、あまり負担が多いと、その負担にちゅうちょしてかかれないのですね。これは現実本人家族の入院の状態受診状態を見れは一目瞭然です。国民健康保険なんかは、結核療養所に入っておる者はりょうりょうたるものですよ。健康保険本人か、あるいは生活保護の人が結核療養所には入っておって、健康保険家族や、特に国民健康保険の被保険者というものは入っていても少ないのです。これが雄弁に物語っておると思うのです。そういう意味で、最も給料も少ないし、それから暮らしも豊かでない日雇い労働者家族を、まず第一段階として他の社会保障の前進をはかる一里塚として、家族給付を七割に引き上げるということが私は非常に必要なことじゃないかと思うのですが、大臣検討になることはけっこうでございますけれども、いろいろの保険が七割給付をいわれておりますが、やはり第一歩の前進としてやらなければならぬものは、日雇いが他のものに先行することだと思うのです。保険局としては、こういう問題について御検討になったことはありませんか。
  28. 太宰博邦

    太宰政府委員 今、家族の給付率を引き上げるということは、日雇健康保険だけでなくして、健康保険においても、五割の療養費を支給しておるような状況でございますから、極力給付をよくしていくということは、お話のよう国民の福祉の問題で、福祉の増進に相なると思います。ただし、それ自体は、はなはだけっこうでございますけれども、それには当然保険の給付費というものが非常にふえてくる。それをどういうふうにしてまかなうかという問題にかかっておると思うのでございます。すべてを、国の負担においてまかなうというふうな行き方もあるかと存じますが、私どもといたしましては、やはり今日の制度のもとにおいては、基本的にはそれぞれの被保険者が、自分たちでできるだけのものを負担をする、国もさらにそれにてこ入れをするという方式をとっておるわけでございます。特に日雇健康保険の場合につきましては、国のてこ入れは、他の場合よりは多くあってしかるべきだということは、私ども考えておるわけでございますけれども、やはりそういう面の配慮というものも必要でございますので、先ほど大臣からお答え申し上げましたように、これは検討しなければならぬ。私どもといたしましても、先ほど私からお答え申しましたように、そういう将来の問題として、漫然と延ばしておくような段階ではございません。皆保険の仕上げが間近に迫っておりますので、これは早急に、何らか検討をせねばならないと考えておりますが、ただし、その中において、家族給付率をよくするということにつきましては、これはやはり相当むずかしい問題ではなかろうかと、ただいまのところ考えておる次第であります。
  29. 滝井義高

    滝井委員 今回政府船員保険法等の一部を改正する法律案をお出しになるにあたって、労働省の方の日雇い失業保険というものは、これは、内容を改善して出して参りました。日雇い失業保険保険金は通算して六日または継続して四日失業した後の失業の日について支給されることになっておる。ところが今回は通算は五日、継続三日と、受給要件の緩和をはかってきたわけです。厚生省は日雇労働者健康保険法の一部を改正して、国庫負担の率をガラガラ計算の十分の三、三割にしたんです。しかしそれにつれて内容は何もやってきていない。これは一体どういうことなんですか。今度のものは、船員保険法等の一部を改正する法律を出すにあたっては相当内容の改善もし、厚生年金もやっておる、失業保険もやっておるわけですが、日雇いだけは、これは国庫負担はガラガラ計算で幾分ふえることになる。しかし内容は検討々々でちっとも改善してないわけです。これは一体どういうことですか。
  30. 太宰博邦

    太宰政府委員 まあ内容をよくしておらないと申しましても、御承知の通り今日の日雇健康保険の財政は非常に苦しいのでございまして、従来規定されておりました範囲の給付、これは昨日来、はなはだまだ不十分じゃないかという御指摘がございましたが、そういう御指摘を受けるような給付の内容を実施するにいたしましても、なおかつ赤字であるというような今の段階でございます。そこで、それに対する国のてこ入れをふやしたということは、やはり内容の改善に私は大いに貢献しておることであると思うのでございます。しかしながら先ほど来だんだんお尋ね通り、皆保険になって参りますと、国としてももう少し考えねばならぬ点は私どもあると思います。これにつきましてはいろいろございまするので、これは全般の問題として早急に解決したい。もちろん私ども今日申し上げるのはどうかと思いますが、国もさらにてこ入れをする必要があると思います。また同時に被保険者なり事業主の方々にも、なおふんはっていただく余地がある限りはふんばっていただかねばならないと思います。お互いに協力し合う態勢において、この制度の内容を盛り上げていくようにしなければならぬ、かよう考えております。今日のところでは、遺憾ながらこの内容の範囲を広げるというところにまでは、今日の赤字財政のもとにおきましては困難であるということで、今回はやむを得ず見送ることにいたした次第でございます。
  31. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと政府としては、日雇労働者健康保険法の根本的な検討というものはおやりになる。しかし方向としては一体どういう方向で根本的な検討をおやりになって赤字を解消される所存でございますか。方向だけをお示し願えればいいんです。日雇労働者健康保険はこういう方向に持っていく、そうすれば赤字の解消ができて、健康保険程度にまではいかなくても少なくとも健康保険とそう見劣りのしないものになっていく、こういう方向がなくてはならぬと思うんですが、その方向は一体どういう方向でおやりになるんですか。大きな一つ二つの柱をお示し願いたいと思うんです。
  32. 太宰博邦

    太宰政府委員 まだ特別申し上げるほどの段階に至っておらないのでございますが、これは相当根本的に検討する必要があるというふうに考えておるわけでございます。いずれこれにつきましては私ども事務当局ばかりじゃなしに、関係の審議会なりそれぞれの人たち意見を十分に聞き、またその人たちとひざを交えて検討して参るつもりでございます。
  33. 滝井義高

    滝井委員 もう一つ、この労働基準法の六十五条との関係ですが、日雇い労働者健康保険の出産手当の給付は、十四日間しか給付しないわけです。そうすると労働基準法の六十五条においては、「使用者は、六週間以内に出産する予定の女子が休業を請求した場合においては、その者を就業させてはならない。」こうなっており、さらに「使用者は、産後六週間を経過しない女子を就業させてはならない。」となっている。つまり産前産後六週間就業禁止の規定が労働基準法にあるわけです。そうしますと、この産前産後六週間ずつ就業させてはならないその女子が、日雇い労働者であった場合、分娩をして休まなければならぬということになった場合に、この生活の保障が日雇労働者健康保険法でできていないということなんです。これは制度としては健康保険ではできた、日雇いではそれは保険ということを建前にして全くやっていない、一体この矛盾を今後どう解決していくお考えですか。
  34. 太宰博邦

    太宰政府委員 出産ということは何も突然出産するのではないので、やはり相当の前から予想できるわけでございまして、普通の人でありまするならば、やはり乏しい家計費の中でも少しずつそれに備えてやっていくのが今日の実情でございます。そういう点もございますので、こちらの給付はそれ自体といたしましては、できるだけよくしたいということは私どももいたしたいと思いまするが、しかしながらこの点については、今日の日雇労働者健康保険の財政との問題もございまして、遺憾ながら給付だけでもって全体を満たすだけのことはできないのは、私どもも残念だと考えておるわけでございます。これはやはりできるだけよくする方向に努力せねばならないということは、私ども考えておるわけでございます。
  35. 滝井義高

    滝井委員 この前大臣は親王の御誕生にあたって、お産の給付の改善をはかるということを岡本君の質問に対してお答えになったわけです。そうすると健康保険でお考えになったことは、当然日雇い労働者健康保険でもお考えになることだと思うのです。同じ労働者の妻なり、婦人の労働者自身がお産をした場合には、当然やはり健康保険と同じようにお考えにならなければならぬと思うのですが、今財政々々とこうおっしゃるけれども、財政という鳥は、いつでもそういう鳴き方をするらしい。検討中とかいましばらく待って下さいということらしいのですが、しかし日雇い労働者本人が出産した場合に、わずかに十四日しか休ませないのですから、十五日目から働きなさいということと同じです。きのう私は傷病手当金の問題をやりました。これは働いておって医者に行っておって、労務不能という二つの条件がなければだめだったのです。今度はお産をしたら産前産後六週間は休めるということが労働基準法に規定されておるけれども、十四日しか休めない。それ以上休んだら金をくれないのですから、働きにいかなければ食えない、干ぼしになるということなんです。これは大臣健康保険に示された良識を日雇労働者健康保険にも示さなければいかぬと思うのですが、この点はどうお考えになっておりますか。
  36. 渡邊良夫

    渡邊国務大臣 社会政策上できるだけ考えていきたいと思います。
  37. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、社会政策上できるだけお考えになるということになると、それはもうちょっと具体的に言うとどういうことになりますか。
  38. 渡邊良夫

    渡邊国務大臣 二週間以上も認めていきたい、こういうことになります。
  39. 滝井義高

    滝井委員 これは二週間以上認めるということになったので、ありがたい御言明でございました。そうすると局長、具体的にどういう工合に——現在の法律は二週間ですね。基準法は産前産後六週間ずつお休みなさい、こうなっておるわけです。そうしますとこの改正ということは、千載一遇の好機です。きのうは渡邉さんが、大きな竜を描いて右の目を入れておかなかったが、乙表で請求したものは乙表で療養費払いをする。今まで乙表で請求しても甲表で支払っておったけれども、乙表という一つの目を入れた。きょうはお産で一つの目が入ったのですから、これで私の質問も、日雇労働者健康保険法に関する限りはやめてもよいと思っているわけなんですが、これは具体的にどういう方法で十四日以上にするわけでありますか、技術的に太宰さんから……。
  40. 太宰博邦

    太宰政府委員 これは私ども大臣から命を受けて検討して参るべきものでございまして、前回はできるだけ現物で給付し得る方法ということでございまして、私どももそれがよろしかろうと思います。しかし、これがどの程度御期待に沿い得るか、なおいろいろな点とにらみ合わせて検討して参らなければならぬと思いますが、そういう方向で考えて参りたいと思っております。
  41. 滝井義高

    滝井委員 とにかく、十四日以上出すという御言明を得たわけです。これは与党にしろ二人証人もおるようでありますし、委員長もお聞きになっておりますから、後刻十分与党との意思の疎通をはかってやりたいと思いますが、現在の日雇労健者健康保険法の、ここ一、二年の赤字状態をちょっと御説明をしてくれませんか。
  42. 太宰博邦

    太宰政府委員 日雇健康保険の財政は、ここ数年政府の方でてこ入れをいたしておるのでございますが、それにもかかわりませず、最近の財政状態は非常に悪うございまして、そこでさしあたり三十四年度におきましては、積立金を全部くずしてなお足りませんので、借入金といたしまして二億五千万円ほど借り入れまして、そうして辛うじてやっておるわけでございますが、三十五年度予算におきましても、やはり財政の好転する見込みがございませんので、五億七千八百万円ほどやはり借入金によってやっていかなければならぬ、かようなことであります。これには国から先ほど来お話の給付費の三割を補てんするという立場におきまして、なおかつそれだけの借入金をせねばならぬ、こういうような状況でございます。こういう面から、このままじんぜんと放任しておくこと自体が、やはりこの制度の破壊を来たすおそれがあると考えますので、この点は今後行政的な努力ということはもちろんでございますが、なおかつ制度全般についても検討していかなければならぬ、かよう考えます。
  43. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、今の御説明では、三十四年度で三億五千万円、三十五年度で五億七千八百万円の借入金が赤字になっていく、こういう意味のことですか。それとも、それは先になって借入金は、たとえば国庫余裕金か何かで泳いでいって、最後になって資金運用部か何かから借り入れて一カ月分の利子を払うという、健康保険がとったような形式でいくのですか。そこらあたりの日雇い労働者健康保険会計のやりくりの状態というものを、ちょっと簡単に説明してみてくれませんか。
  44. 太宰博邦

    太宰政府委員 できるだけ保険財政の悪影響を防ぎたいために、お尋ねように、やはり年度中は国庫余裕金で泳いで参りますけれども、年度を越します場合にはどうにもなりませんから、資金運用部から借りまして、そうしてまた年度を越しましたならば、それを余裕金に振りかえるよう措置をできるだけ講じたい、かよう考えておる次第でございます。
  45. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、ことしの財政投資計画にそれが乗っていすか。乗っていないじゃありませんか。
  46. 加藤信太郎

    加藤(信)説明員 それは健康保険のときもさようでございましたが、年度末に数日借りるだけでございまして、財政投融資計画のワクに乗せないで、向こうで処理してもらえるようでありますから、それで本年度もそのつもりでございます。
  47. 滝井義高

    滝井委員 それは、財政投融資計画に乗せずに、余裕金で借りておって、最後に財政投融資でちょっとやるというのは、財政法の違反じゃありませんか。あれは資金運用部審議会というんですか、あれにかけなければならぬのでしょう。そうしてきまるんですから、前の健康保険のときもそういう問題があったと思いますが、それがそれで知らぬ顔してできていけばいいんですが、財政投融資計画に五億もの金を乗せずに、ちょっと回わして、ちょっと返していくということは、利子は計上しなければならぬですから、五億の利子といったら、一年に三千万円としても、一カ月三百万円かそこらになりますね。そこらをあなた方がうまくやりくりができればいいんですが、実質的にはその借入金を返して、それからまたすぐに借りて泳いでいくわけですから、だんだん借入金が累積しますね。たとえば三十四年度二億五千万円で足りたものが、三十五年度に政府のガラガラ計算で国庫負担を三割に引き上げても、なお五億七、八千万円になっていくということになると、倍になっておるのですから、だんだん累積してくるということになると問題だと思います。どうしてもこれは、この面からも断ち切らなければならぬという問題が出てくると思う。そういう財政の根本的な建て直しというものについては、根本的な改正のときにあわせてやる、こう理解してさしつかえないのですか。
  48. 太宰博邦

    太宰政府委員 健康保険におきましても、従来そういう年度を越すときだけ資金運用部から借りてやっておりますので、これは私ども財政当局の協力でやっておるわけですから、今年は日雇い健保につきましても、私はこれはできると思っております。なお三十五年度の五億七千八百万円は、三十四年度の二億五千万円は一応三十五年度に返したとして、三十五年度もこのまま通り動くとすれば、借入金の累計は五億七千八百万円というわけです。それにいたしましても、そのよう状態が今後改善されていくという見通しは実はなかなかございませんで、むしろ日雇健康保険制度というものの今の状態でいきますと、こういう状態が今後さらに続いていくということになります。この辺からいきましても、私は制度運営の非常に大きな問題としてこの点も考えて参らねばならないと思うわけであります。この制度全般について検討するというその中の一環として、こういう財政的な赤字というようなものによって制度の運営が不円滑になるというようなことについても、同時に解決するよう考えて参りたい、かよう考えます。
  49. 滝井義高

    滝井委員 健康保険も同じでございましたが、日雇い労働者の借入金をもし資金運用部から借りるということになると、健康保険の方で三十億ほどことし借りているわけでしょう。そうすると、それを合わせると三十五億ぐらいになるわけです。当然これは財政投融資計画の上に乗せるべき性質のものだと思うのです。それを乗せずして、どうもそういう行き方をするということは、私はこの前も警告をしたのですが、問題じゃないかと思うのです。資金運用部計画に厚生保険特別会計というのは全然乗っていないのですね。——乗っていないでしょう。だからこれはやはり乗せて、はっきりと大蔵当局なり国民に、こういう経理の状態である、こういうように資金運用部から金を借りて、一カ月であるけれども利子を払ってやっておるのだ。今まで健康保険は何年三千万円ずつ、一カ月分だけ計上して利子を払っていましたよ。だからこういう点をもう少し私はきちんと経理をわかるようにする必要があると思うのです。大臣がいなくなりましたが、何かこそこそと陰の方でやりくりをしておる、そういうことでうまくやっていける、こう思いがちなんですね。そうしますと根本的な解決というものがはばまれてくるわけです。こういう財政的な金融的な面になると、厚生省はどうも弱くてはっきりしないのですが、私、当然これは計上すべきだと思うのです。
  50. 太宰博邦

    太宰政府委員 その投融資計画に乗せるべき筋合いのものであるかどうか、これは財政当局ともあとで話し合ってお答えすることにいたしますが、ただわれわれの方から言えば、おそらく一億五千万円、これは健康保険の方もありますが、これなんかはそのうちどれだけを借りるかという問題も、現実の場合に、年度末になりました場合に出て参るかと思いますが、とにかく従来そういうふうにしてできておりますので、日雇健康保険制度についても、これは間違いなくそういうことでもって一応切り抜けることができるとは考えております。
  51. 滝井義高

    滝井委員 どうしてそう言うかというと、おそらく今度は利子が国債整理基金特別会計に入っていくのです。その場合に、一体予算の面でみますと、金を借りておるのがわからないわけです。一体その金はどこから借りてきたのか、借りた行方がわからぬのです。説明を聞かなければわからぬわけです。そうしますと、国債整理基金特別会計に厚生保険特別会計から利子が入っていっておるわけです。その利子が入っていくということがわかることによって、初めて、待てよ、これはどこからか金を借りている、資金運用部から借りておる、なんぼ借りておるか、こういうことが追及されていって、じゃ今度資金運用部から借りておるならば、資金運用部の運用計画の中にそれが入っておらなければならぬ、運用計画にも入っていない、こうなったら、これは私のようにたまたま何回も調べたことがあるからわかるので、調べなければだれもわかりませんよ。その借入金はどこから来て、どういう工合にやっていたのか説明を聞いてみると、借入金は、いや国庫余裕金を動かしていました、最後の一カ月になってから借りてきました、こういう手の込んだやり方は私はやるべきじゃないと思う。それはやり方としては、利子を節約するから保険経済にとっては非常にいい行き方です。しかし最後の一カ月でも、きちんと運用計画に私は乗せるべきだと思う。何か一つのからくりですから、体のいい盲点をついてやっているという言い方になると思うのです。ですからやはりカメの子をしょっております。三十五億なら三十五億のカメの子を、借金をしょっておりますということを天下に示して天下の大衆の世論を待つべきで、そうして苦しい中から保険経済の改善と福祉国家の建設に邁進していくということを、私はざっくばらんに示す必要があると思う。その点は私はいつかも森永さんが主計局長のときに要望したのです。じゃ今後そういうようにというよう意見もあったと思うのですが、やはり依然として昔ながらのやり方をやっているということは、私はけしからぬやり方だと思うのです。これを御検討になっていただきたいと思うのですが、どうですか。
  52. 太宰博邦

    太宰政府委員 先ほど申し上げましたように、財政当局とも話し合ってあとで御報告いたします。ただし予算面として明らかに借入金というもので計上しておるということ自体は、日雇健康保険制度の財政そのものが苦しいということは、これは私は明瞭に世間にわかっていただけることだと思うのであります。これのよって来たるところ及びこれをどうしたらいいかということは関係者の人たちがよく存じておることだと思いますので、これの改善には努めて参りたいと思います。
  53. 滝井義高

    滝井委員 ぜひ一つそういうことをお願いをしておきます。日雇労働者健康保険については、作品ときょうにわたって少しこまかく御質問申し上げましたが、この日雇労働者健康保険法の根本的な弱点は、結局賃金水準が低いということなんですね。昨日も申しましたように、賃金によって保険料というものが支払われている。そうしますと、その賃金の水準が低いので、従って常に保険料の額を決定する場合に低くしか決定できない、こういうところが問題なんですね。日雇労働者の賃金はPWによって決定されておる。一般職種別賃金によって決定されておる。これの八割ないし九割だ、こういうことになっておるわけです。厚生省としては日雇労働者健康保険制度というものを推進するために、一体賃金の問題を考えたことがありますか。
  54. 太宰博邦

    太宰政府委員 お話のように、こういう社会保険は大体賃金水準というものとの見合いにおいてその給付費などもきまる、もちろん国のてこ入れはございますが、そういう点から言えば、やはり賃金水準の上がっていくということは私ども非常に望ましい、また国民の一人といたしましてもこれは望ましいところでございますが、これは厚生省でどうこうするわけには参りません。国の経済情勢、いろいろな観点からきまって参ることだと思います。ただし今日日雇労働者健康保険の対象になっておる人たちの中で、失対の労働者というよう人たちは約半ばでございます。そのほかにもっと高い賃金をとっておる人もおるわけであります。そういう人たちと、それからどれだけ働いても遺憾ながら安い賃金しかとれないという人たちとの間のバランスというものもあろうかと思います。こういうものの検討考えて参らなければならぬと考えておるわけであります。
  55. 滝井義高

    滝井委員 厚生省としては賃金の問題はどうにもならぬと、こうおっしゃいますけれども、われわれが保険制度考える場合に、賃金問題を度外視してこれを考えることは、木によって魚を求むるよりかもっとつまらぬことだと思うのですよ、能力のないことだと思うのですよ。それはどうしてかと云うと、社会保障制度審議会は、昨日私が指摘をいたしましたように、常に経済の成長に合わせて社会保障の手直しをする、こういうことは、必然的に経済の成長と賃金というものは密接に結びついております。そこでこれは大内先生の方のあの社会保障制度審議会でも三月中に総会を開く、そうしてその中で生活扶助の基準規定やら社会福祉やら衛生などの分野の検討、それから昨日も指摘した社会保険における問題点検討、住宅、学校給食、失業対策、遺族援護及び社会保険の分野の再検討、それらの問題を正確に把握するとともに、雇用、賃金、税制など関連する他の政策への注文を考えるという項目があるのですよ。だから当然日雇労働者健康保険の順当な発展を願うならば、この発展のまず第一関門、第一にやはり隘路になっている点は賃金です。賃金が低いということです。賃金が低いから保険料が低くしか決定できない、こういうことでしょう。それならばその賃金の問題について、特に日雇い賃金の決定の重要なファクターであるPW等について、厚生省はやはり労働省に注文を申し出なければならぬ。渡邊厚生大臣をして閣議で発言をせしめなければならぬと思う。それがやられていないために日本の社会保障というものが基盤ができないのでしょう。やはり賃金あるいは利潤から出てくる事業主の負担分、これは実際は利潤ではなく経費の中に入っておるのですが、事業主の経費の中から出てくる事業主の負担分の保険料、こういうようなものは必然的に賃金と結びついてくる。だから厚生省は日雇健康保険法の飛躍的な発展を願うならば、賃金問題に重大な関心を寄せなければならぬと思う。給付内容の改善その他に関心を寄せるより以上に賃金問題については関心を寄せて、そして厚生省の保険運営の立場から労働省に対して、日雇い賃金というものはかくあらなければならない、あるいは生活保護の立場から日雇い賃金はこうしなければならならのだという、その基礎はむしろあなた方の厚生省がお持ちになっていますよ。生活保護基準から当然日雇い賃金というものは決定される要素があるし、同時に日雇い賃金はPWから決定されるという要素があるのですから。この点、厚生省は保険経済をほんとうにお考えになるならば、賃金問題についてもう少し発言力を持ってもらいたいというのが私の第一の要望です。もう少し積極的に御関心をお持ちになって、労働省と賃金問題を少しやり合ってみたらどうですか。
  56. 太宰博邦

    太宰政府委員 私どもも確かに賃金の問題については重大な関心を持っております。これはまたお話しのようにひとり保険ばかりではございませんで、生活保護その他社会福祉の面からいきましても大事な問題でございます。もちろんこれは一厚生省だけの問題ではございません。政府全体としても大きな問題でございます。厚生大臣も閣議等におきましては、そういう点について十分審議に参画しておられるものと思いますが、なお御意見のほどは大臣によく申し上げて、われわれといたしましても将来そういう方面にさらに注意をいたして参りたいと思います。
  57. 滝井義高

    滝井委員 日雇健康保険の進展に一番大きな問題は賃金でございますが、もう一つの問題はスタンプ・システムなのですね。このスタンプ・システムによって多額の保険料の徴収をやる。従って収入自体に弾力性がないのです。やはりその一つの底流には賃金の問題がからまってきているわけですが、このスタンプ・システムというものは一体再検討する意思があるかどうかということです。いわゆる保険経済というものが赤字になり、あるいは黒字に転化をしていっても、これはスタンプ・システムである限りにおいては、有効適切な弾力を持った保険経済の運営というものはできかねているわけです。この保険経済に弾力性を持たせるいい方法を何かお考えになったことがありますか。
  58. 太宰博邦

    太宰政府委員 御指摘のように、今日の日雇健康保険制度はそういう弾力性がなかなかないというところが、実は私どもも頭を痛めているところでございまして、他の社会保険制度でございますれば、賃金が上昇していけばそれに伴って等級の改定が行なわれ、保険料の額も上がっていくというようなことで、そういうふうに世の中の景気の変動、雇用状況の変化というようなものが直ちに保険の経済に反映するように相なっております。日雇健康保険法の制度は、そういう点からいきますと定額の負担でございまして、これはそういう点では非常に弾力性がないということもいわれておるわけであります。この点につきましても、片方の医療費というものは日進月歩の今日でございますから、非常によくなって参る。そういう場合において今のような弾力性のないものでもって運営ができるかどうかということは実は大きな問題でございます。こういう点については私ども先ほど申し上げたように、今後検討いたします場合の実は一つの大きなポイントであろうというふうに考えておるわけであります。これをどういうふうにするかということは、ただいまのところまだ申し上げるまでに至っておりません。これも十分検討すべき問題だと存じておる次第であります。
  59. 滝井義高

    滝井委員 賃金水準が低いし、しかもその低い賃金水準の中から納入する保険料がスタンプ・システムになっておる。さらにもう一つは、昨日の私の質問に対して保険局長お答えになりましたように、必ずしも全部職業安定所の窓口で労働者をとらえることができないというところに問題点がある。いわば保険料徴収の点ですべての労働者を確実に把握ができないという、この問題ですね。これは行政機構の問題とも関連してくるし、日雇い労働者自体の特殊な業態から保険料徴収の上において捕脱、脱落が多くなってくるわけです。こういう点についてあなた方は何かその捕捉方法について御検討になったことはありますか。五億の借入金をやらなければならぬ段階でやはり水も漏らさぬ計画が必要になってくると思うが、その点について何かお考えになったことはありますか。
  60. 太宰博邦

    太宰政府委員 従来ともその捕脱防止のための手は相当打っておりまして、それはそれなりに私どもはある程度効果は納めていると思います。しかしなかなか今のような仕組みでは十二分な効果を発揮することは、幾ら努力しても困難な面があるのではなかろうかというような点で、先ほど申し上げましたように、今の制度の仕組みが、ただ行政の努力でその穴を埋めるということだけではどうしてもうまくいかない点もあるというふうに感ずるのであります。そういう行政の努力の方は当然なすべきことといたしまして、なおかつ、さらにその上に制度全般の仕組みについて一段のいい方法はないものだろうかということを考えて参らねばならぬと思うのであります。今日の制度ができます前にはいろいろ考えてみて、どうしても技術的にこういう方法しかないということで、実際にこういう制度ができたことと存ずるのでありますけれども、やはり今日になって、実施後数年をけみした今日といたしましては、もう一ぺんその問題を考えてみる必要があるのではなかろうかというふうに——はだしていい案ができますかどうかは今後の問題であろうかと思いますが、この点も検討の重要なる一つのポイントとして考えておる次第であります。
  61. 滝井義高

    滝井委員 日雇労働者健康保険法に関してはこれでやめますが、昨日から本日にかけての質疑を通じて、大体日雇労働者健康保険は社会保障というにはあまりにもかけ離れたものである、しかも日雇労働者健康保険という保険の面から見ても非常に多くの欠陥を持っておる、従って政府としてはこの日雇労働者健康保険について、皆保険制度の確立を目前に控えて、根本的な検討をやらなければならぬ、こういうことが結論になったようであります。従って今回のこの船員保険法等の一部改正法律案提出にあたっては、日雇労働者健康保険に関する限りにおいては、とりあえずの赤字というものを克服するために、まあまあ国家負担を幾分調整をして引き上げていった。で、給付の内容その他についてはかかって今後の根本的な検討によって解決するという、こういうことがはっきりわかりました。これ以上いろいろ言ったところで、検討々々でございますから、われわれとしてもかすに時日をもっていたします。しかしたださいぜん御言明になった出産手当の問題だけについては、われわれは皆さんのお知恵も拝借するし、与党との意思の疎通もはかって、何らかの修正は、大臣の言明もありましたのでできるという確信を持ちました。  一応私個人は、日雇い労働者の部分については終わりましたから、次からは船員保険と厚生年金をやらしてもらいますが、きょうはちょうど昼食の時間になりましたので、ここらあたりでちょっと昼にさしてもらいたいと思います。
  62. 太宰博邦

    太宰政府委員 昨日法改正に伴う保険料の収入と給付費の増加見込みについてお答えいたしましたが、一カ所だけ訂正さしていただきたいと思います。厚生年金保険の給付費の増十三億とか、ちょっと私申し上げましたが、それは実は医療費の伸びも込みになっておりますので、法改正に伴う給付費の純然たる増といたしましては三億九千五百万でございます。大へん恐縮でございますが、御訂正いただきたい。
  63. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、十八億一千万円というのは何ですか。
  64. 加藤威二

    加藤(威)説明員 三十四年度と三十五年度の予算上の比較をいたしまして、給付費が全部で三十四年度に比べてどのくらいふえるかというのが十八億ばかり。従って、人員の伸びとか一般の俸給の上がりとか、そういう要素を加えたものが十八億。そういうものを全部捨象いたしまして、純然たる法律改正だけの給付の増が三億九千万でございます。
  65. 大坪保雄

    大坪委員長代理 午後二時まで休憩いたします。     午後零時二分休憩      ————◇—————     午後二時二十三分開議
  66. 永山忠則

    永山委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  労働関係基本施策に関する件について調査を進めます。  質疑の通告がありますので、これを許します。伊藤よし子君。
  67. 伊藤よし子

    ○伊藤(よ)委員 労働基準局にちょっとお尋ねいたしたいのでございます。これは愛知県の事例でございますが、私はほかにもこういうことがあると思いますのでちょっとお尋ねしたいと思います。  それは鋳物工場におきまして、ことしの初めでございますが、鋳物の上の型と下の型か組み合わせる作業中に、非常に上の型が重いわけでございますね、中腰でそれを持って作業をしている最中に、腰の捻挫をいたしたわけでございます。その人は捻挫のために働けなくなりまして、その日は早びけをし、それから二週間作業を休業したわけでございます。それで当然業務上の障害であると思いますが、市の基準監督署では、腰部の捻挫は労災の対象ではないと言っておられるそうでございます。その理由としては、捻挫というものは非常に判定がむずかしいからということですし、特にまた労働省の方から、捻挫については昨年の四月ごろに取り扱い上の解釈について通達があって、労災の適用から除外するということになっているというようなお話でございましたが、そうですか。私は考えますのに、明らかに使用者側でも業務上の障害であるということを認めておりますし、鋳物工場が非常に多いところで、そういうことはほかにもございますので、どういう意味で基準局の方でそういうのを労災にお認めにならないのか、その点の根拠を一つお伺いしておきたいと思うわけでございます。
  68. 村上茂利

    ○村上説明員 ただいま御質問がございました案件につきましては、愛知県の西尾労働基準監督署において今実地調査をいたしておりまして、まだ決定はいたしておらないと聞いております。この腰部の捻挫につきましては、これが業務上の負傷、疾病に該当するかどうかという点につきましては非常に判断が困難でございまして、たとえば既往症について脊椎変性症があったとか、あるいは椎間軟骨ヘルニアがあった、そういう既往症がございまして、それが何らかのはずみで表面に現われたという場合もございますし、それからかなりの年令の人につきましては、俗に四十腰、五十肩と申しますか、ある程度年令に達しますとそういうような現象が生理的に惹起する、こういう現象がございますので、業務上の負傷、疾病であるかどうかという認定が非常に困難な場合が多うございます。そこで従来その腰部捻挫に伴う疾病につきましては、業務上の負傷、疾病かいなかいうことについて監督署で決定をいたします際に、非常に判断がおくれてかえって労働者に御迷惑をかける、こういう事例がありましたので、労働省としましては昨年、三十四年の四月でございますが、こういう関係の専門医師の御意見を聞きまして、認定基準を通牒として流したわけでございます。これは一般的に腰部捻挫は業務上の負傷疾病として取り扱わないという趣旨の通牒ではございませんので、その要旨を申し上げますと、「脊椎変形症椎間軟骨ヘルニアその他の腰痛の原因となる疾病については、既往に脊椎の変性手の素因があるため発病する場合が多いのであるが、その業務上外の認定については、個々の具体的事例について当該労働者の外傷の有無(打撲、捻挫等)、年令既往の疾病、疼痛の程度及び部位、X線所見、臨床諸検査結果、現症記録等につき主治医の意見、同僚労働者の証言等を調査した上綜合的に判定すべきである。」というのでありまして、判断を下す場合のいろいろな資料なりあるいはいろいろの所見なりについて、これこれのものは調べて総合的に判断するようにという通牒を出したわけでございます。ただこのような方法によりまして、その業務と腰部捻挫が相当因果関係があるかどうかということにつきましては、そのような資料を調べてもなおかつ判断がはなはだ困難な場合がございます。そのような場合には個々のケースにつきまして、本省にも相談をして、個別的に解決をするように、こういう取り扱いをいたしておるわけでございます。本件につきましても事務的にそのような相談を受けておりますので、今慎重に検討しておるような事情でございます。
  69. 伊藤よし子

    ○伊藤(よ)委員 私はこういう問題についてしろうとでございますので、しろうとの感じでございますが、私はそういういろいろな判定が困難だという理由でいろいろの場合を想定して、ただいまおっしゃいましたよう基準局の方から通達をお出しになったことはいいと思いますが、実際しただいまおあげになったような原因がからだにあったかもしれませんが、その起きましたその日までは働いていて、そうして明らかにその業務最中に起きた障害であることには間違いないわけでございます。そういう点、今度の鋳物の場合などは非常に重たいものを持ちますので、腰部の捻挫は起こる可能性があるので、もし重たいものを持たなければ起こらなかったのですから、そういう点について使用者側も、周囲の者も明らかに業務上の障害だということをはっきり認めている場合に、基準局などがそれをお認めにならないというようなことは、むしろおかしいんじゃないかと思うのでございますが、そういう点をただいまのように御調査中でございましたら、ぜひ進んで基準局の方では、業務上の障害であると使用者も認めた場合には労災の適用を受ける方向に御審査になるように願いたいと思うわけでございます。私はその点は少しおかしいように思うので、ただいまおあげになりましたからはっきり申しますけれども、西尾市の問題でございますが、あの平坂あたりには大へん鋳物工場がたくさんありますので、そういう場合もたびたび起きているそうでございますから、そういう点も今後基準局としては御研究になっていただきたいと思いまして、特にこの問題を取上げたわけでございます。
  70. 村上茂利

    ○村上説明員 御指摘の点、十分実態を調査して判断したいと思います。なおこの業務上の負傷、疾病につきましては、業務遂行中に業務に基因して生じた負傷、疾病、こういうことになっております。それで実際どういう作業をしておったかということを同僚労働者の証言等をいろいろ聞きまして、たとえば普通何も作業してないのに、いわゆるびっくり腰になった、いろいろな例があるのでございます。従いまして十分実態を調査いたしまして決定をいたしたいと思います。      ————◇—————
  71. 永山忠則

    永山委員長 次に失業保険法及び職業安定法の一部を改正する法律案外四件を一括議題とし、質疑を続けます。滝井義高君。
  72. 滝井義高

    滝井委員 先週、失業保険法に関連をして、経済の成長と雇用の状態の中から、今後の日本の失業保険というものはどういう方向に持っていくべきかという点、それから投資の増加が雇用効果に非常に大きな影響を及ぼすという点、そういう中で一体日本の失業保険というものはどういう方向に向かわなければならないかという点、さらに労働需要において非常な質的な変化が日本の経済の内部において起こりつつある、これは一体どういう工合に失業保険がその需要の変化に対応しなければならぬかというような点を御質問申し上げました。きょうは少し具体的な問題に入って御質問をしたいと思います。  そのまず第一は、炭鉱離職者の職業訓練をやる場合に夜間百三十円、昼間二百三十円の訓練手当を援護会から支給することになっておると思います。現在すでに職業訓練所が発足をして、相当炭鉱離職者が入って教育を受けておるのですが、その職業訓練手当は現在出しておりますか。
  73. 堀秀夫

    ○堀政府委員 職業訓練手当につきましては、実は炭鉱離職者援護会の設立準備を急いでおりまして、二月の十六日に北九州地区で支部の開所をいたしたわけでございます。そこで現在この増設等によりまして職業訓練所に炭鉱離職者を収容しておりまするが、これにつきまして今その申請事務を始めております。それで現在までのところ、これは移住資金関係のものも含めまして、大体一日に平均八十人くらいの相談があるという状況でございまして、北九州地区だけで、現在までに千四百人くらいの相談を受け付けておるわけであります。その移住資金もしくは今の職業訓練中の者に対する訓練手当の支給につきましては、申請を受け付けておりまして、現在支給するばかりになっているところでございます。
  74. 滝井義高

    滝井委員 千四百人ばかり受け付けておるということでございますが、職業訓練がすでに二月十六日前後から始まっておるわけですから、従ってそこに入る人たちというのは、御存じの通り失業保険が切れた、あるいはある人もあるでしょうが、生活的に苦しいわけですね。やがて三月中ごろになろうとしておるのに、支給がこないというので、現地では非常に問題になっておるわけです。これはやはりすみやかに支給する手続をとっていただきたいと思いますが、いつごろになったら具体的に本人の手元に渡りますか。
  75. 堀秀夫

    ○堀政府委員 ここ数日中に御本人に渡るように手続しております。  なお、この額につきましては、十二月の法施行当時にさかのぼりまして支給をするという予定になっております。
  76. 滝井義高

    滝井委員 ぜひ一つすみやかに、ここ二、三日じゅうに支給をするようにお願いをしたいとい思ます。  それからこの炭鉱の職員ですね。この前も炭鉱離職者臨時措置法案の質疑をするときに少しお尋ねをしたのですが、炭鉱労働者というのが、その定義において、「石炭の掘採又はこれに附属する選炭その他の作業に従事する労働者」こうなっておるのですが、これに職員というものが入るか入らぬかという問題なんです。この前は、私当時の速記録をきょう持ってきておりませんので、記憶が薄らいでおるのですが、「その他の作業に従事する労働者」——職員が労働者であることは、これは間違いないことです。問題は、その場合に、職員というものを一体どの程度までその他の作業に従事する者ということで入れるかということなんですよ。これはあなた方はどういう指導をしておりますか。
  77. 堀秀夫

    ○堀政府委員 臨時措置法の第二条で、「「炭鉱労働者」とは、石炭の掘採又はこれに附属する選炭その他の作業に従事する労働者」というふうに規定してございます。そこで労働者であることに間違いはございません。そこで第二段の問題としまして、石炭の掘採に付属する作業であるかどうかという点が具体的に問題になるわけでございます。この点につきましては、掘採作業、これはもう問題ございません。従いまして掘採作業に付属する選炭、それからこれに準ずるような作業については問題はないわけでございます。そういうような作業現場におきまして事務的な業務をやるという職員は、もとよりこれに入るわけでございます。あと問題になる点は、その他の全然付属しないような作業に従事する職員はどうなるであろうかということでございますが、これは法律第二条の解釈から申しまして、臨時措置法の炭鉱離職者には入らないわけでございます。ただ現場の実情を見まして、私どもとしましては下級の職員その他の方で、今まででも掘採もしくはその付属作業に従事した経験がある、それが配置転換等によってその他の作業につくというような場合には、なるべく弾力的に、現実に即して一つ退職認定をいたしたい。あとの問題はその場合々々に応じて現実に即して認定をして参りたいと考えております。
  78. 滝井義高

    滝井委員 現在、三十八年度までに大手、中小、職員も含めて約十万人の炭鉱離職者が出るというのが大体石炭鉱業界の方の国会における答弁なんです。従ってその場合に職員も離職者の中に相当入ってくる。そうすると、この定義から申しますと、石炭の掘採ということが一つと、それからこれに付属する選炭が一つと、その他の作業に従事する、このその他の作業に従事するというので、これは掘採なり選炭に関連する事務職員、こういうような事務的な職員というものが、当然問題になってくるわけです。それは何と申しますか、掘採部門や選炭部門というものが縮小すれば、自然的にそれに関連する事務的な部門というものはなくなってくるわけですから、そこに首を切られて、事務職員が技術を身につけたいというので、ブロック建築なり、工作機械の修練なりに行くわけです。だからここらの取り扱いというものはよほど慎重にしてもらわなければいかぬところだと思うのです。一つ大臣どうですか、これはある程度拡大をして解釈をしていただいて、やはり職業訓練所にでも入って技術を身につけて広域職業紹介に応じようという者については、それだけの行政指導をやってもらわなければこれは問題が出てくると思うのです。
  79. 松野頼三

    ○松野国務大臣 もちろんこれは現実に即してやるということで、そういう幅を持たせました。ただこの法案の提案当時のいきさつを申しますと、いわゆる事務的なものでなしに、いわゆる単純な筋肉労働者を主体とするという方向でこれは提案をいたしました。その趣旨は、提案理由にありますように、炭鉱労務者の特殊性ということからやってあるのでありますから、一般的にできる計算とか、あるいは一般の事務というものは、炭鉱労働者という特殊性はこれは薄いわけであります。従って単純に、労働力を炭鉱において使う人という意味は、広義な意味でありますが、ただ事務専門の者は一般の雇用の線に入る方でありますから、これは除外するというのが提案当時からの政府方針であります。
  80. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、その他の作業に従事する労働者という点で、これは選炭なり掘採に関連をする事務的な職員というのは必然的に失業者になってくるわけですが、炭鉱労働者であることは間違いないわけなんですね。それからその他の作業に従事するということで幾分解釈が、私はそういうものはできるのじゃないかという感じがするのです。やはり訓練手当をもらうかもらわぬかということになると、本人にとっては非常に大事なことなのです。訓練所に入って、十人の人はもらったが、あと三人の元職員の身分だった人はもらえないということになると、わずかに百三十円か二百三十円のお金で非常に卑屈感を与えるわけです。これは何か考慮する必要があると思うのですがね。
  81. 堀秀夫

    ○堀政府委員 法案の趣旨はただいま大臣が述べられました通りでございます。そこで石炭の掘採に付属する作業であるかどうかということが問題になるわけでございますが、この点は現実に即しまして、現場の状況によりましてこの法案の趣旨を考えながら、現実的に認定をしたいという考えでございます。
  82. 滝井義高

    滝井委員 ぜひ一つそういうことをお願いをしておきます。  次に、今度の船員保険法等の一部を改正する法律案の中の失業保険の改正で、過去六カ月ごとにその保険収支に不足が生じた場合の保険料率の引き上げの義務規定を削除しておるわけです。これはどういう理由でそれを削除することにしたのですか。むしろ弾力的に失業保険保険料を、保険経済が苦しいという場合には上げるという手も将来賃金が上がった場合には可能になると思うのですが、これを今回削除した理由というのはどういうことですか。
  83. 堀秀夫

    ○堀政府委員 最近の失業保険の経理状況を見てみますと、一般的な好況を反映いたしまして、保険の積立金も増加する傾向にあるわけでございます。根本的な問題といたしまして、この失業保険特別会計の費用負担をどうするか、また国庫負担をどうするかというような問題につきましては、三十四年から三十六年までの実績を見まして、そこで最終的に一つ費用の負担調整をはかろうという考え方でありまして、その旨の規定も設けられております。そこでここしばらくの間におきましては、現在のよう保険の収支状況でございますので、このような収支に不足を生じた場合に保険料率を引き上げるということの必要はないであろう、このよう考えまして、その意味でこの義務規定は削除したわけでございます。なおその上で、三十四年から三十六年までの三年間の保険収支の実情を見まして、最終的に費用負担の調整を決定したい、このよう考えであります。
  84. 滝井義高

    滝井委員 過去六カ月ごとにその保険収支に不足が生じた場合には、保険料率の引き上げをする義務規定を、今のような説明なら削除しなくてもいいわけですな。削除しなくてもちっとも差しつかえないわけです。三十四年から三十六年までの保険収支の実績を見てやるということにしておるのだからということになれば、削除しなくてもいいことになるわけですよ。今の理由は削除する必然的な理由にはならぬですね。
  85. 堀秀夫

    ○堀政府委員 ただいま申し上げましたことと、それにつけ加えまして、今回の改正によりまして、国庫負担の割合を三分の一から四分の一に改めるということと、それから毎会計年度において失業保険の収支に不足を生じた場合には、その不足額分について三分の一に達するまで国庫が補てんする、このよう規定が設けられておるわけでございます。従いまして赤字が出ましたときにおきましては、保険料率を引き上げるということによって赤字を解消するのではなくて、三分の一に相当するまで国庫が負担する、こういう考え方で参りたい、そうして三カ年の実績を見まして、あとは最終的に全体を見渡しまして費用負担の調整をはかりたい、このよう考え方で義務規定を削除したわけであります。
  86. 滝井義高

    滝井委員 それもどうも理由にならないのです。三分の一から四分の一に改める。そして不足が生じた場合は三分の一に達するまで国庫が負担をして、なお赤字が生じるというが、これはそういうことはないだろうと思いますけれども、経済が急激な変化をした場合にはあり得ることなんです。三分の一にしてもなお赤字だったという——今積立金がありますけれども、莫大な失業者が急激に出てきたという場合があり得るわけです。そうすると、何でこういう弾力的な規定というものを削除しなければならぬか。何か労働者には、これを削除しましたぞといって恩を着せるような格好をして、国の金をごそっとポケットに入れたという、こういう羊頭狗肉の策の感じがするのです。この改正の仕方はそういう感じがするのです。こんなものは削らなくても、労働者にはちっとも義務を課さないのですから、置いておいてもいいのです。経済の変動があればこれをやることもありますぞ、ところがそれを置いておったのでは、労働者から反対されるから義務規定は削りますよという。ところが削ってもちっとも恩恵のないものです。恩恵のないものなら、またそこへ残しておいてはっきりさした方がいいのですよ。
  87. 堀秀夫

    ○堀政府委員 ただいまお話しのような悪意は毛頭ございません。結局最近の保険収支の状況を見てみますと、順調に推移しておるわけでございます。そしてこの三分の一を四分の一に国庫負担は引き下げましたが、保険料率も千分の一ずつ引き下げた、こういうことでございます。そうしてこれを今後変えるのは、この三年間の収支状況を見た上で、そこで決定をいたしたい。それまでは保険料率をさらに引き下げるという必要はない。また保険料率を負担する方々に対しましても、この三年間はそういうことはいたさないという気分で安心感を与えることも必要なことではないかと思うわけでございます。要するに三年間の収支を見まして、そこで最終的に決定をいたします。そのような意味でございます。
  88. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、三十四年から三十六年までの保険収支が、一体どういう実績になったらお変えになるのですか。どういう実績のときに三十八年の三月三十一日までに所要の手続をとることになるのですか。
  89. 堀秀夫

    ○堀政府委員 この問題につきましては、あらゆる面から総合検討しなければならないわけでございます。たとえば関係方面から非常に強く熱望されております保険給付の内容をこの際改善しなければならぬ、こういう考え方もあるわけでございます。この問題につきましても、やはり社会保障全体の見地から総合的に一つ検討しなければならないという考え方で、社会保障制度審議会に対しまして昨年の九月に内閣から諮問を申し上げまして、この御審議が一方において行なわれるわけでございます。これによりまして、われわれさらに検討していきたい今のような点もございます。それからさらに現在五人未満事業所につきましても、先ごろ改正が行なわれました事務組合等を活用いたしまして、零細企業の加入促進をはかる、このようなことも考えておるわけであります。そのような点をいろいろにらみ合わせまして、そしてこの三カ年間にそのような面も検討しつつ、そして収支の状況がどうであるか、それから給付の内容を改正するとすればどのくらいの費用支出が必要になるか、これらの点を総合的に勘案いたしまして、その場で判断をいたしていきたい、このよう考えております。
  90. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、関係方面から給付内容の改善の要望が非常に強い。それからできれば零細企業もどしどし失業保険に、任意加入から強制加入へ持っていく、こういう意味のことをおっしゃっておるのですが、あなた方自身の失業保険の改正の方向というのは、前の週の私の質問によって大体はっきりしてきたのです。与党の一部からは、支度金だとか、多発地帯に対する失業保険の延長というようなことを出してきておるわけです。これも一つの方向です。そうしますと、そういう状態になったならば、だんだん四分の一の負担ではどうもならぬということになれば、三十八年になったら、内容の充実のためには三分の一に戻す意思があるということですか。
  91. 堀秀夫

    ○堀政府委員 その面につきましては、ただいま社会保障制度審議会にも、給付内容の調整について諮問を申し上げておるところでございます。ここで十分御検討があると思うわけであります。それから、最近三年間の収支の実情をよく見まして、彼此勘案いたしまして態度を決定したい。ただいまのところ、三年後においてどうするというようなことを申し上げる段階ではないと思います。
  92. 滝井義高

    滝井委員 三年後の収支の実情をごらんになると申しますが、日本経済の伸び、いわゆる経済成長の状態それからそれが雇用にどういう影響を及ぼすかという雇用の関係、これは前の週にやったわけですが、それと勘案してみると、失業保険経済というものは、三分の一の国庫負担を四分の一に削られても、なお健全であるという答弁が松野さんから出てきたわけです。そうしますと、三カ年間を待つ必要はないわけです。待たなくても、今の日本経済の推移の状態から雇用、失業の状態考えてみれば、大体黒字を持続していく。ということになれば、今の段階で具体的にどういう方向に改善していくのだということが出てくることになるのではないでしょうか。三年間わざわざ待たなくても、もはや今までに六百億をこえる積立金ができた過去の実績ははっきりしておるわけです。そうしますと、わざわざ二年間見なくても、これからは、経済企画庁の菅野さんの説明じゃないけれども、大体高原的な歩みを続けていく、ことし中は高原を歩む、こうおっしゃっておるのですから、そうすると、三十五年中は高原を歩んでいくということになれば、ますます黒字の累積ですよ。だから何も三十五年、六年、七年と待たなくたって、はっきりとした方向が出てくるのじゃないかと思うのです。だから、今あなたの言われたようなことは、社会保障制度審議会の答申を待たなければということはないと思うのです。こういうように、四法を一緒に総合調整して出された、そして、もっと徹底した総合調整は、社会保障制度審議会の大内先生の方にかけておりますから、その結論が出てくるというならば、この法律はお待ちになったらどうですか。大内さんの方では、二年も三年もかかるということはない、ここ一年くらいで結論をお出しになると思います。さいぜん私は厚生省にも言ったのですが、五日にすでにそれを出して、社会保険における問題点として、医療、年金、失業など各種保険の均衡をはかるということを、大内先生の方では具体的に今検討に入っておるのですから、そうすると、今のように、こういうむずかしい、羊頭を掲げて狗肉を売るような、六カ月ごとに、保険収支の不足が生じた場合には、保険料率の引き上げの義務規定を削除するというような、何も実のないものを削っておって、そして実のある三分の一の国庫負担を四分の一にねじ下げていくということは、お待ちになったらいいと思うのです。そういう点ではどうですか。今のあなたの答弁と、社会保障制度審議会のやっていることと同じことをやっておるのですから、こんなちゃちな改正はお待ちになった方がいいのではないですか。
  93. 松野頼三

    ○松野国務大臣 今の時点で議論になれば、滝井さんのおっしゃることも一つの議論です。これは一年二カ月前に提案したものです。もちろんその間における情勢の変化はございます。しかし、政府は一年二カ月前そういうことを勘案して、与党案というものが出たのではなかろうかと思います。約三十一億という非常に積極的な財源を与党案はお出しになった。しかしそれは、今日の時点と一年二カ月前の議論とは、少し議論が違うし、また社会保障制度審議会の進行状況も今日とは違う。そこで私は滝井さんの議論は否定はしませんけれども政府提案は一年二カ月前の時点で出して、そして今日同じ方向にあるのですから、一年二カ月の間にいろいろ情勢も変わったことはございましょう。しかしこれを早く通した上で次の問題にかからなければならぬので、いつも同じ議論を繰り返すことは無理な説じゃなかろうか。そういう意味で与党案というものは、やはり時点の変更を認めながらお出しになったのが与党案じゃないか、こう拝察するのであります。従ってそういう議論よりも、早く通してしまう方が大事だと思います。  それからもう一つ、削除しましたのはやはり提案当時の政府の意向というものは、三年間は自信を持って保障するという信念がなければいけないのです。これは何も政府の方が下げるばかりじゃありません。被保険者は、千分の十六を千分の十四に下げているのもあるのです。従って、政府案だけポケットに入れるのじゃなしに、やはり被保険者の立場も勘案して、両方面からやっておるのです。そういう意味で、三年間は信念を持ってやるのだという見通しのもとに、いわゆる六カ月ごとの改訂、しかもそれは赤字のときに改訂という趣旨ですから、いいときの改訂じゃないのです。そういう条項はとることが、より信念を固めるゆえんだと思います。逆に、もしこれを置いておくならば、政府はそんな信念のないものを置くかという議論がきっと出てくる。この条項をとることは、被保険者にとってはプラスの条項です。足らないときにやるという条項はあぶないじゃないかという議論の方が、私は政府提案としては当然じゃなかろうかと思います。一年前の提案ですし、私ももちろんそういうふうな申し継ぎを受けたのですから、一つ善意の意味に解して、早期に御審議をいただきたいと思います。もしこの問題が解決しなければ、政府行政としては進まない面もありますので、一つよろしく御協力願いたいと思います。
  94. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、松野さんは政府案を通した方がいいですか。与党案を通した方がいいですか。
  95. 松野頼三

    ○松野国務大臣 私は、政府案を通していただきたいと思います。
  96. 滝井義高

    滝井委員 政府案を通した方がいいということでございますが、そうすると、松野さんはなかなかいいところをついてくれたのです。今後おれの方の出した失業保険の改正は、これは前の大臣から受け継いだもので、一年前からやっておる、滝井君は、減らした、三分の一を四分の一に改めたと悪いことばかり言うけれども、いい方もあるのだ、それは、保険料率を千分の十六から十四に下げているのだ、こうおっしゃいますが、しからば今度の社会保険の四法、船員保険法等の一部を改正する法律案の提案によって、労働者側の保険料の支出額はふえたのですか減ったのですか。
  97. 松野頼三

    ○松野国務大臣 失業保険に関しては、間違いなしに負担が減っております。
  98. 滝井義高

    滝井委員 これは総合調整をするという形で四法を出しておるのですから、一体全部としては幾ら減ったか、幾らふえておるかということです。船員は一応除外をして、労働者の出すのは、健康保険も出しますし、厚生年金も出しますし、失業保険も出す。事業主は別に労災だけ出すわけですが。だからその関係を全部見ていかぬと、あなたのところだけ見てはいかぬ。さいふの口は一つですから、労働省で減っておっても、厚生省でふえておったら何のことはないのですよ。従って四分の一の方はねじ込まれた、しかし実際労働者のがまぐちから出ていくのは多かったということでは、これは改悪になるわけです。その点どうですか。
  99. 堀秀夫

    ○堀政府委員 失業保険の面からいえば、千分の一引き下げになっておりますので、労働者にとっての負担は減少しております。
  100. 滝井義高

    滝井委員 それはわかります。ところが、政府案の方を通してくれというこの法律は、一本になって出てきているのですよ。だから、それはごらんになったらすぐわかるのですよ。一本になって出てきている法律で、労働者全体の負担はどうなっておるか、これが大事なんですよ。総合的にものを見なければならぬのですから、日本経済全体の中における失業保険はどうなんだ(「それは大蔵省だな」と呼ぶ者あり)大蔵省といっても、労働省はそのくらいのことを見て厚生省とやっていかなければ、おれのところだけは減ったんだというのでは、これは情けない。
  101. 松野頼三

    ○松野国務大臣 これはしかし滝井さん、あれじゃないですか。当時の提案は一本にしたんですが、四つの法律を一本にまとめるというのじゃないのです。今個々にある法律の中で、ここだけを一本にまとめた。基本には触れておらぬわけです。いわゆる負担率とか、一部の局部には触れております。四つの法律を廃止して一本の法律にしたのならば、滝井さんおっしゃるようにふえたとか減ったとかいう議論が出るけれども、基本法は残っておる。その中で、一部修正というものだけを書き抜いて一本にしたという意味であって、四つの法律は個々に残っておるから、減ったところもありましょうし、ふえたところもありましょうが、失業保険に関しては、被保険者の利益になっておることだけは間違いない。それが私の答弁の限界ではなかろうか。当時、私は提案をしておりませんので、そのいきさつはわかりません。
  102. 滝井義高

    滝井委員 それは労働大臣としてはだめですよ。不合格ですよ。労働者の保険料というものは一体何から出るか、賃金から出るんです。賃金は二つ三つのがまぐちに入るんじゃない。一つのがまぐちに入っているんです。その一つのがまぐちから厚生年金、失業保険健康保険と、こう出すのですから、その出す総額が今度のこの四法の改正で一体ふえるのか減るのかということですよ。これが一番大事なところです。それを労働省が、おれのところは失業保険担当だから、ほかのことはよそに聞けというのでは、これはあてはまらぬのです。局長さんなんかはそれはわかっているはずですよ。わからぬのですか。
  103. 松野頼三

    ○松野国務大臣 これは私の古い知識ですが、失業保険の受給者は必ずしも他の三法の全部の受給者ではございません。差があるわけです。これは御承知の通りです。従って個々の、たまたま三つ——四つはありますまいが、三つのものを一緒に持っていた者の話であって、それはいろいろ議論があるが今でもやっているんですから、特にこの法律改正によって変わるんじゃない。今でもやはり三つに関係されている方は、三つの負担金をやっておられる。そういう意味においては、失業保険は確かにこれは軽減であります。これはもうおそらく議論がないんじゃないかと思うのですがね。
  104. 滝井義高

    滝井委員 それは松野さん認識不足ですよ。これは松野さん、大内兵衛先生のところへいって勉強しなければいかぬ。それは今度大内さんが、経済成長に合わせて日本の社会保障を手直ししなければいかぬと言っておる。その手直しをするにあたって、一体労働省なり厚生省は何を要望しなきゃならぬかという点については、やはり、雇用とか賃金とか税制など関連する他の政策への注文というものは、当然要求しなきゃならぬ。そうすると、あなた方は賃金については一番大事な官庁です。その賃金の中から、あなたの方の失業保険保険料も出ていくわけですから、当然これは賃金に関係する部面ができる。ですから、やはり保険料を出す場合には考えるんですね。大蔵省の岩尾さんおいでですが、今度あなたの方でも三分の一から四分の一に切り下げる、同時に料率をお下げになるというなら、あなたの方では総合的にものが考えられてきておるはずです。今大蔵省だという声がかかりましたが、あなたの方ではこれを一体どう見ていますか。健康保険、それから日雇いは関係ないですが、失業保険、長期の厚生年金、これらの三つのものを同じ労働者が持っているのが失業保険の加入者には多いですよ。これは総合的に見た場合、労働者の負担は一体ふえるのか減るのかということです。
  105. 岩尾一

    ○岩尾説明員 ただいまの御質問でございますが、被保険者個人について全体の負担がふえるか減るかという問題は、法的に見ますと、当面の坑内夫の場合と一般の場合、あるいは一般の失業保険といろいろ事情が違いますので、われわれといたしましては、全体の率がどうなるかということよりも、昨年政府から各会計に繰り入れます金額につきまして、その他の社会保険の必要なる増額に対しまして、失業保険の方へ入れていかなければならない金額というものを削減することによって、全体として均衡のとれた社会保険、社会保障制度の推進を期待する、こういう意味で考えたわけでございます。御質問にありましたような意味で、ほかの保険についての具体的な保険料率の引き下げ案もありますけれども、端的に労働者については、たとえば健康保険でこれだけ、失業保険でこれだけ、厚生年金でこれだけ減るから、こうなんだという議論はいたしておりません。
  106. 滝井義高

    滝井委員 それは、厚生省はそういう議論をしておるんですね。なぜならば、この法律のうちに厚生年金と、それからこの法律に直接関係はないけれども、これと密接に関係のある健康保険法が、千分の六十五から二減らして千分の六十三になりました。この二を減らしたのは、一体なぜ減らしたのかというと、これは表面にはなるほど国民経済は黒字だといっておりますが、長期給付の厚生年金もふえるんですよ。長期給付の厚生年金健康保険の労働者と大体一致してきたわけです。これはもちろん健度保険までも入りますけれども、一致しております。それから失業保険も一致しております。失業保険は、今松野大臣が自慢されるように二下げておる。ところが、今度長期給付が二割の引き上げをやりますから、これで上がってきておるわけです。そうしますと、今まで千分の百十一が千分の百十二くらいに上がるんですよ。もちろん下がるのも——女子は下がるらしいのですが、大体男子だったら上がりますよ。大宗は男子ですからね、上がるんですよ。労災は変わらない、事業主も変わらない。従って一上がれば〇・五だけ上がることになるわけです。だから全般に見ると、今度の改正は上がっておりますよ。健康保険で下げても、健康保険法律改正でなく行政措置で千分の五十五から千分の六十五の十だけの幅を持っていますから、上がっておるというのは事実なんです。そうして国庫の支出は、日雇労働者健康保険にちょっぴり出したわけですね。そうして三分の一だった金を失業保険から巻き上げていった、こういう形になる。健康保険で料率を下げるかわりに、一文も国は出さぬで失業保険から巻き上げたんですよ。だから全般の社会保障を見ると、結局国の負担というものが減ったのです。もと、三者一両損という言葉を言ったのです。国と保険者と被保険者、みな一両ずつ出そうじゃないか、そうして日本の社会保障をよくしようじゃないかということが、健康保険の改正のときに言われたのです。その一両損の、国が今まで一両損をしておったのを今度は巻き上げちゃったんですね。だから国は損はなしです。そうして今度は、一両損をしておった労働者に、また一両追加して支払わした形になったのです。だから何ということはない、日本の社会保障というものは、労働者の負担の加重において前進をしたという格好です。だからこういう点については、今松野さんもそういう点を考えてやっていなかったのは非常に遺憾ですが、やはり各保険の料率全部を見て、わが事なれり、自分のところだけよかったらあとのことはというけれども、労働者はあなたの所管の賃金でこれを払っておるんですからね。今後やはりここらあたりちょっと見てもらっておって、一つついでに、十六から十四に下げるというなら、もう一ふんばりしてこれを十二くらいに下げてもらって、千分の百十一払っておったものを百十か百九くらいにするということを考えてもらいたいのです。そうしないと、どうもそこら論理が合わないんですね。実際はこれはふえておるのです。
  107. 岩尾一

    ○岩尾説明員 ただいまの御質問は、労災についての御質問だと思いますが……。
  108. 滝井義高

    滝井委員 労災はそうじゃない、これはまた別だから。厚生年金がふえておるわけですよ。
  109. 岩尾一

    ○岩尾説明員 三十から三十五ですね。今の計算をやりますと、その計算はあまりやらないわけなんですけれども、失業保険で二下がる、それから健康保険で二下がります。それから労災で五でございますね。だから一だけふえる、こういう計算になるわけであります。それだけで、実際の労働者の負担がふえるというふうには、われわれは考えておりませんので、全体としての経済の動向もございますし、安定しておる今後の見通しもございますし、先ほど申しましたように、社会保障全体の均衡のとれた推進、均衡のとれた国からの支出ということを前提にものを考えております。
  110. 滝井義高

    滝井委員 それはその通りです。均衡のとれた労働者の負担、均衡のとれた国の負担、ところが国は、今度健康保険においても負担をみんな減らしているのです。だから一両損をして社会保障を前進させようといって、三十年以来労働者と保険者と国とが話し合って得たルールというものを、ここ一、二年でばっさりやめようとしているのです。国が一両損を取り返したのですよ。取り返して、そしてなおその上に失業保険の三分の一を四分の一にすることによって、またそこで二、三十億取り返しているのですからずるい、こういうことなんです。そして日雇いにちょっぴり金を出した。日雇いは何億出したですか。日雇いに二億五千万円出しただけで、失業保険その他から莫大な金を、何十億という金を巻き上げていったわけです。これはこういう改正であるということを、一つ松野さんよく知っていただきたいと思うのです。政治というものは、やはり労働省にぴたっと切りつけたときにあ痛っ、厚生省に切りつけたときもあ痛っという有機体でなければならぬのですよ。厚生省に切りつけたときに労働省は笑っておって、労働省に切りつけたときだけあ痛っというのじゃ有機体じゃないのです。そういう点で、一つこういう料率は十分有機的に話し合ってやっもらいたい、こういう点です。  次は、少し悪態をつくようになるけれども、今度の改正で、議員立法の方は三十一億増になるということを言われましたが、政府の方の提案の改正案で、失業保険経済というものは一体どういう状態になるのか、その財政収支の状態をちょっと簡単に、保険料でどうなり、それから支出でどうなるということを御説明下さい。
  111. 堀秀夫

    ○堀政府委員 今回の改正によりまして、国庫負担が三分の一から四分の一に引き下げられました結果、大体二十八億九千万円の減少になります。
  112. 滝井義高

    滝井委員 保険経済全体の影響を説明してもらいたいのです。これで保険料収入がどのくらいになって、支出が大体どのくらいになる、それから国の負担がどのくらいになる、従ってどのくらいずつ黒字になるのか、赤字になるのか。
  113. 堀秀夫

    ○堀政府委員 昭和三十五年度の予算の収支見込みについて申し上げます。保険料収入が、昭和三十五年度におきまして三百七十八億五千万を予定しております。これは本来ならば、もとの料率で計算いたしますと、四百三十一億の収入になるはずのものでありますが、約五十二億の減少になるわけでございます。それから一般会計から繰り入れる国庫負担の負担金、それから業務取扱費の経費、これによりまして八十七億の収入になります。これは先ほど申し上げましたように、三分の一といたしますれば、これよりも二十八億九千万円多いであろう、このよう考えられます。そのほか運用収入、雑収入、印紙収入等を合わせまして三十五年度の収入の見込みが五百二十一億であります。それからこれに対しまして歳出の方は保険費の支出が三百四十六億、業務取扱費が二十四億、それから福祉施設関係の経費二十一億、そのようなものを合わせまして、それに予備費百二十七億を合わせまして五百二十一億という見込みを立てております。このよう考え方で参りまして、来年度においても大体現状のまま推移すれば百二十億程度の余剰が生ずるであろう、このように見通しております。
  114. 滝井義高

    滝井委員 こういう失業保険の年度別の収支状況と申しますか、たとえば船員保険法等の一部を改正する法律案に関する参考資料の十八ページを見ますと、そこに日雇い労働者健康保険の収支状況というのが出ておりますが、こういうのを失業保険についても一ぺん出してもらいたいと思うのです。年度別の収支状況、決算の状況をずっと出して、そうして三十四年度の予算と決算の見込み、こういうものを出してもらうと、われわれは失業保険会計の状態が非常に一目瞭然としてくるのですよ。労働省は一つもこういうものを出さない。厚生省は全部の保険について出しておる。従って僕らは失業保険の会計の状態がさっぱりわからない。今あなたの御説明になったようなものならば、われわれは予算書を見ればすぐにわかるのです。僕はどういう御説明をされるかと思って黙って聞いておったけれども、今のような大ざっぱなことになる。こういう状態保険料収入それから受け入れの状態を出して、そうして一人当たりの保険料からその一人当たりの給付、それを今度は項目に分けてきちっと出してもらうと非常にはっきりしてくるのです。こういう資料を今まで労働省は保険についてお出しにならないのですよ。厚生省は全部各保険別にこれを出しておる。われわれがこれを見せてもらえば、二十八年からずっとここ五、六年の収支状態というものがはっきりわかってくるのです。こういうものを失業保険についてお出しいただけませんでしょうか、これはできるはずだと思うのですが……。
  115. 堀秀夫

    ○堀政府委員 後ほどお出しいたします。
  116. 滝井義高

    滝井委員 次はこの失業保険の特別会計に対して国庫負担を三分の一から四分の一に削減した理由です。これは、一体どういう理由で削減したのか少し論理的な説明をしてもらいたいと思うのです。総合調整を目前に控えて、この削減した理由というのが私どうものみ込めないのです。
  117. 堀秀夫

    ○堀政府委員 今回の三分の一を四分の一に引き下げました理由は、現行の各種社会保険制度の費用負担の総合調整を行ない、これを基礎として各制度について均衡ある発展をはかるという趣旨によるものでございます。本年度におきましては国民年金の創設であるとか、あるいは国民健康保険の拡充であるとか、そういうような面が実施されておるわけでございます。これらと相待ちまして費用負担の調整をとりあえずはかるという見地からいたしますと、失業保険の国庫負担を三分の一から四分の一に引き下げる。これは失業保険だけの見地から見ますと後退のようにも思われますけれども、全体の社会保障制度総合調整をはかる、その費用負担の調整をはかるという見地からいたしますればやむを得ないところでなかったか、このよう考えておるわけでございます。
  118. 滝井義高

    滝井委員 総合調整をして均衡ある社会保険の発達をはかるということになりますと、さいぜん申しましたように、国だけでなくて労働者の負担の方も考えないと、総合的にならぬわけです。そういうことはとにかくとして、さいぜんの御説明で、一般会計からの繰り入れは、業務取扱費もひっくるめて、四分の一にしたために八十七億になったわけです。この八十七億の中に事務費は幾ら入っておりますか。
  119. 堀秀夫

    ○堀政府委員 業務取扱費への繰り入れは三千九百七十七万円でございます。
  120. 滝井義高

    滝井委員 業務取扱費は歳出の面では二十四億何がし要りました。これはいわゆる失業保険法の二十八条の二にいう事務費というものはこれですか。
  121. 堀秀夫

    ○堀政府委員 さようでございます。
  122. 滝井義高

    滝井委員 これは予算委員会で一応質問したのですが、時間がありませんでしたから私は突っ込んだ質問は当時できなかったのです。ただ一つここに大きな問題点があるということを指摘をしておいたのですが、幸いに失業保険の審議が始まりましたから、これは少し問題にしておかなければならぬ点だと思うのです。予算委員会でも私は質問したのですが、厚生年金も莫大な積立金ができました。三千億をこえる積立金です。健康保険も二百億をこえる積立金ができたのです。失業保険も六百億をこえる積立金ができたわけです。それぞれみんなこれらの社会保障の総合調整を必要とする保険はみんな積立金を持ったわけです。日雇い以外は持ったわけです。そうしますと、基準局長は厚生年金健康保険は一体事務費を幾らぐらいもらっておると思いますか。
  123. 堀秀夫

    ○堀政府委員 私は健康保険業務取扱費二十四億を繰り入れられておると承知しております。
  124. 滝井義高

    滝井委員 国庫から二十四億繰り入れたのですか。そんなことはないですよ。今あなたは一般会計から繰り入れた額は業務取扱費も含めて八十七億とおっしゃったでしょう。八十七億の中に幾ら入っておりますかということです。今三千九百七十七万円入っております、こういうのがお答えだった。それから歳出の面で業務取扱費というものは幾らですかと言ったら、二十四億円ちょっとですというのです。そうしますとその二十四億円というものは一般会計から繰り入れられたものじゃないでしょう。今あなたの御説明では三千九百七十七万円が一般会計から繰り入れられたということですから、社会保険総合調整をされるという、厚生年金健康保険は一般会計からどれくらい金がつぎ込まれておるとお考えになりますか。
  125. 堀秀夫

    ○堀政府委員 厚生年金健康保険等につきましては二十四億と承知しております。その意味で先ほど答弁いたしました。
  126. 滝井義高

    滝井委員 数字がたまたま一致しておった。そうしてますと健康保険なり厚生年金には億をこえる金がつぎ込まれておる。同じ労働者の保険である失業保険はわずかに三千九百七十七万円だというと、一体失業保険法の二十八条の二項をあなた方はどう読むのですか。二十八条の二を一つ見てみて下さい。
  127. 堀秀夫

    ○堀政府委員 二十八条第二項は「国庫は、前項の費用の外、毎年度予算の範囲内において、失業保険事業の事務の執行に要する経費を負担する。」このようになっております。従いまして二十八条二項の趣旨から申し上げまして、予算の範囲内で失業保険事業の業務の執行に要する経費を負担するとなっておるのであります。ただこれと同時に、御承知のごとく失業保険特別会計法第三条におきましては歳入歳出の費目を定めております。歳入の予定といたしましては、保険料、一般会計からの受入金、郵政専業特別会計からの受入金、積立金からの受入金、積立金から生ずる収入、借入金、付属雑収入、これが歳入の費目に定まっております。歳出の費目といたしましては、保険金、保険施設費、労働福祉事業団への出資金及び交付金、借入金の償還金及び利子、一般借入金の利子、業務取扱費その他の経費というふうに定められております。この歳入をもって歳出に充てるということでございます。従いまして失業保険法二十八条第二項は、ただいま読みましたように、業務取扱費について、国庫は毎年度予算の範囲内において負担するという旨を規定しておりまするが、失業保険特別会計に財源があるときはその一部をこれに充てる、不足分を一般会計が負担するということも通常考えられることでございます。失業保険の特別会計の従来の状況を見てみますると、この十数年の間このような経理をいたしておるのでございます。
  128. 滝井義高

    滝井委員 その経理は間違いです。他の会計がそうやっておるかどうかということをお調べになったことがあるでしょう。厚生年金健康保険がそういう経理をやっておるかということです。予算の範囲内で事務費を負担するという予算の範囲は、一円でも予算の範囲、十億でも二十億でも予算の範囲、三千万円でも予算の範囲、こういう解釈をすることになれば私はおかしいと思うのです。これは概念的には全額です。予算の範囲というものは少なくとも事務が遂行できる程度に負担をするのです。あなたの方の会計だけ積立金があって、失業保険特別会計に余裕があるからといって、事務費というものは国が負担をしない。その会計から四十億以上の利子があるのです。その利子の二十億を事務費回してしまうのだというようなことをやるのだとすれば、他の保険もやっておるはずなのです。ところが厚生年金も余裕がある、健康保険も余裕があるが、ほかのものは全部やっていないのです。なんで失業保険だけやらなければならないかということなのです。もしそういう事務費に回す金があったならば、これを労働者の福祉施設なり、失業保険の内容の改善に持っていくべきだと思うのです。何も三十四年から三十六年までの経理の状態を見なくても、莫大なる金は出てきているのですから、四十億以上の運用利子があるのでしょう。これをなぜやらなければならないかというのです。よそは厚生省にしてもやっていない。国家公務員共済組合だってそんなことはやっていない。そうするとあなたの方だけ、失業保険だけなぜやらなければならぬか。失業保険というのは職を失って路頭に迷わんとする労働者を救う政策の保険です。その保険が国から事務費はもらわない、三分の一を四分の一に切り下げると、踏まれたりけられたりしても、労働省というものは、今度は前進でございますと言えますか。どうも私は納得がいかない。そういう点で事務費を出さなければならぬ理論的根拠は薄弱ですよ。よそのものは出していないのです。だからあなた方これは突っぱって、うしろに岩尾さんおいでですが、来年から私は事務費は国が出すべきだと思う。そうでないと他の保険と論理が合わない。厚生年金健康保険も事務費を出させるというなら話は別だ。出させるというなら、あなた方全部合従連衡して政府に当たることができる、事務当局に当たることができる、こういうことになるわけです。ところが事務費はこれだけふんだんに運用資金の利子から出させておって、そうして今度は補助金は削られるというのは、松野さん、これは大蔵省から踏んだりけられたりですよ。だから保険が前進した、いい方になったということは絶対言えないと思う。岩尾さん、あなたの方はどうですか。他の保険でやらぬのになぜこれだけやるのですか。
  129. 岩尾一

    ○岩尾説明員 事務費の財源の問題でございますか、保険の事務費につきましては、ただいまお話のありましたように、現状から申しますと、失業保険特別会計だけが運用収入を事務費に充てておるのではございませんで、ほかの厚年等につきましてもそういう措置をとっております。ただ、従来の経緯を申し上げますと、従来は一度か二度そういったことを厚年でやったことがあるやに聞いておりますが、従来は大体失業保険だけが中心で、運用収入というものを事務費に繰り入れるということをやっておるのであります。  そこで先ほど申されました条文の意味でございますけれども、われわれはもちろん予算の範囲内だから一円でも入れておればいいのだというふうには解しておりませんけれども、しかしその年その年の財政事情によりましてできるだけ——財政が苦しい中から出すわけでございますから、その会計その会計の状況を見て、国としては運営をやるのだというところに弾力性を持たしておるのがこの条文の意味だろうと思います。  そこで失業保険につきましては、先ほど御質問のございましたように、六カ月ごとに料率を再検討するということは、いわば短期保険としての特質をいっておるわけでございまして、従ってそういう場合に運用収入というものをもって保険給付というものに充てることはできないわけでございますが、それができないということであれば、そういった運用収入を全体として事務費なりあるいは福祉施設なりに使うということは決しておかしくないのじゃないか。先ほど二十四億というお話が出ましたけれども、福祉施設等を入れて匹十一億の中身をいろいろと失業保険に入れておりますが、事務費の中にも、たとえば公務員宿舎の施設のようなものも入っておりますし、われわれとしては全体として失業保険の健全な運営に資するように使うということでやっておるつもりでございます。
  130. 滝井義高

    滝井委員 失業保険の特別会計に金が入ってしまえば、金にはしるしがついていないのですから、一般会計から入ったものかどうかわかりません。わかりませんけれども歳入の面をぴしっと見れば、一般会計から入ってきておるのは三十五年は八十七億である。その八十七億というのは、三分の一から四分の一に切り下げられた三十八億はすでに減らされておる。そうしてその中に事務費は幾ら入っておるか、たった三千九百万円そこそこしか入っていない。そうして事務費は幾ら必要なんだというと二十四億必要なんでしょう。そうすると一体この三千九百万円と二十四億の差額の約二十三億六千万円程度のものはどこから来たのだ。財源をたぐっていくと結局四十何億の運用利子から来なければ来るところがない。それから福祉事業団に入っていく金はどこからきた。これはやはり運用収入から入ってきたのだ。そういう経費というものは、福祉事業団にこれが四十億入っていくなら私はまあ目をつぶります。ところが事務費の中に入っていくということになると——予算の範囲内で事務費を負担しますということになれば、これは読み方としては全額負担するということです。他の読み方はみなそう読んでおる。ところがあなたの労働省だけが、それは一銭でもいいのだ、二円でも三千万円でもいいのだ、二十億くればなおいいのだというような読み方にはならぬと思う。やはりすなおに読めば、事務費の大部分は国が見るという読み方だと思う。失業保険の性格からいってますますそうです。だからこういう予算の編成方針は変えなければならぬと思う。そうしてもしあなた方でどうしても切らなければならぬというなら、全部運用利子は出させて、施設の方に金を出すことを削ればいい。法律の読み方としてははっきりしておかぬと、どうも失業保険だけがいじめられておる感じをわれわれは受けてならないのですよ。今度は特に三分の一から四分の一に切り下げられておるということが目につき、しかもだんだん調べてみると事務費は出していない。これでよくも私は労働者が今まで黙ってきたものだと思うのですよ。だからそういう点では、これは松野さんの時代になってぜひ大蔵省と折衝をして、こういう他の同じような社会保険の会計に例を見ないようなことを労働省が甘受するということのないようにしていただきたいと思うのです。これはまたそういうことを強制する大蔵省もよくない。だから、法律はすなおに読まないといけないのじゃないか。そういう読み方をするなら、私は運用利子というものを事務費に使ってはならぬというただし書きか何かをやはり入れざるを得ないと思うのですよ。なるほどこれは労働者のためになる事務費だといえば労働者のためになる。なるけれども、直接労働者に影響のあるものではない。労使双方でためておいた金を事務費に持っていくという行き方というものは、私は今の行き方としては邪道だと思うのです。それを過去十年以来見のがされてきたということは、まあ私自身の不勉強もありますが、しかし気づいたからにはあやまちを指摘して直してもらわなければならぬと思うのです。私は労働省だけがこういう取り方をするのはよくないと思うのですが、岩尾さん、あなたのお考えはどうですか。
  131. 岩尾一

    ○岩尾説明員 先ほども申しましたように、予算の範囲内というのは、大蔵省といたしましては、実際のその年の財政事情によって弾力性を持ちたいということでできておるわけであります。再々ほかにはないというお話でございますけれども、たとえば会計によりまして、厚生年金ように、そういった運用利子自体を給付財源にしなければならぬというようなものもございますし、たとえば船員保険よう保険料率の中に事務費が入っておるというものもあります。そういうものは当然そういうことがあり得ないわけであります。ただ健康保険日雇い等がどうであろうかということになるわけでございますが、この点につきましては先ほど私が申しましたように、過去において一度か二度やったことがございますし、本年は広義の公務員宿舎あるいは庁舎新営まで入れますと、健康保険等におきましても三億五千万ほどの金を運用収入から回すということをやっております。まあ先生の御質問もよくわかりますけれども、やはりその会計その会計の私立金の状況その他を見まして、国といたしましては同じように金をつけるわけでございますから、できるだけ、たとえば積立金がたくさんあって運用収入がたくさんあるようなところには遠慮をしてもらって、苦しいところへ出していきたい、こういうことで見ておるわけであります。
  132. 滝井義高

    滝井委員 どうもその答弁では納得がいきかねるのです。これは今速急にいっても、現実に衆議院を予算が通ってしまっていますから、まあ死児のよわいを数えるようなことになりますけれども制度としては、こういう行き方というものは私はよくないと思うのです。労使双方のためておった金から出てくる利子の上前を体よく国がはねておるようなものですよ。少なくとも事務費と施設費くらいのことはやはり国が責任を持つというのが私は社会保障だと思うのです。そういう点で、やはり検討してもらいたいと思うのです。  それからもう一つ、今あなたの答弁の中にありました船員保険なんか、給付費の中に事務費が入るという問題です。この給付費の中に事務費を入れるかどうかという問題は、今後社会保険検討する上にやはり非常に大事な点です。というのは、国民健康保険も給付費の中に事務費——をたとえば事務費の中でも特に審査をする経費というものは給付費の中に入っておるのです。今度国民健康保険団体の県の連合会に一億円金を出しましたですね。これを出すにしてもいろいろ問題があったと思うのですが、おそらくこれは事務費の形で出しておると思う。ところが給付費の中に事務費が入っておるのですね。こういうように、ある保険は給付費の中に事務費を入れ、ある保険は事務費は別個に独立したものだ、こういうばらばら状態は、今後社会保険総合調整をやる場合に非常に計算がしにくくなるし、客観的にものを見る場合のじゃまになる。だからやはり事務費は事務費、給付費は給付費ときちっと分ける形をすべての保険がとるべきだと私は思う。そうでないと、いたずらに予算編成を混乱せしめて、相対的な比較ができないのです。今後われわれは料率についても総合的な観点から、賃金の中で一体社会保障の経費というものを幾ら労働者が出せるのだ、国の総歳出の中から幾らの社会保障費を出すのだというようなことを見ていく場合に、これはどうしても明確にしておく必要があるのです。そういう点で、今後大蔵省当局のそういう点に対するきちっとした予算編成上の分け方をこの際希望したいのですが、あなたの方はどうですか。
  133. 岩尾一

    ○岩尾説明員 ちょっと補足させていただきますが、先生のおっしゃいました船員保険の問題は、給付費の中に事務費があるということではございませんで、船員保険保険料率の中に千分の二というものは事務費に充てるのだというよう考え方でできておるということを申し上げたわけであります。従って事務費につきましては料率自体にそういうものを織り込んであるものもあれば、あるいは今申しましたように運用収入等でまかなうものもあるということを申し上げたのです。  それからなお、今申されました国民健康保険の給付費の中に事務費が入っておるという問題ですが、これはいろいろ議論がございますけれども、今回われわれの方が国民健康保険に補助金をつけましたのは、そういった事務費を見るということではございませんで、単なる予算補助といたしまして、先生も御承知のように、新しくこれから国民健康保険連合会というものができまして、それが審査事務をやることになるわけであります。そうすると、今の建前では国が補助するのは市町村ということになっております。市町村は金を出したり、審査の費用を出して現に審査をやっておるわけでございますが、新しい国民健康保険法によります連合会の機能というのはかなり強い機能を持っておりますから、またそれが動き出しますと相当な費用がかさみますので、それがはね返って市町村の負担を重からしめてはいけないということで、単なる予算補助ということで出しておるわけであります。
  134. 滝井義高

    滝井委員 そうすると、私がちょっと聞いたのと今の説明は違うようでありますが、事務費として一億円が要った。それは審査事務ですね。法律で、国民健康保険連合会はその都道府県の保険者の三分の二以上が加入しておれば審査権を持つわけです。だから基金または個々連合会が審査権を持つわけですから、その審査権を持った国民健康保険連合会に事務費として出す、こういうことだったのですが、今の説明は少し違うようになります。しかしともかく給付費の中に事務費が入っておるのだという考え方が根本にあったことは間違いありません。しかし給付費と事務費というものは今後截然として分けていく格好を各保険につけていかないと、この保険は一体どの程度の事務費が要るかということはわかりかねる。やはり事務と給付というのは別個の建前ですから、これは今後予算編成の上でぜひ考えていただきたいと思うわけです。  きょうはあと多賀谷君が来まして、少し失業保険をやりたいそうでございますから、私はこれでやめまして、あと多賀谷君に譲ります。
  135. 永山忠則

  136. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 失業保険法の一部改正の本文に入る前に、今問題になっております点を緊急に質問いたしたいと思います。  その第一点は、炭鉱離職者の訓練手当は失業保険と併給されるかどうか、この点をお伺いいたしたい。
  137. 堀秀夫

    ○堀政府委員 失業保険と併給はいたしません。
  138. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 ところが、「石炭鉱業離職者特別職業訓練生募集要項」の中に、「経費及び処遇」ということで、イロハニとありますが、その二に「生活保護適用世帯は入所中でも適用されます。ホ 失業保険金は入所中でも支給されます。ヘ 昭和30年9月1日以降の炭鉱離職者には訓練手当が支給されます。(失業保険と併給)」と書いてある。それでこの募集要項に従って入ってきた訓練生が、失業保険が併給されないということで非常に問題を起こしておるわけです。もう一つ生活保護法の適用を受けておる者は、訓練手当との関連はどうなるか、この点もお答え願いたい。
  139. 堀秀夫

    ○堀政府委員 生活保護との関連につきましては目下厚生省、大蔵省と打ち合わせておりますが、考え方といたしましては、われわれといたしましては、生活保護世帯というのは特別な階層でございますから、訓練手当を支給する、その場合に、それが収入になるから生活保護をそれだけ差し引かれるというようなことになりますと、せっかく生活保護階層から抜け出そうとする努力を無にするようなおそれがありますので、その点は訓練手当は別の経費でやるという考え方で併給できるよう措置したい、そんなような方向で労働省としては目下検討しておる。しかしこれは厚生省、大蔵省との関連もございますので、至急に結論を出したいと目下鋭意努力しておるところでございます。
  140. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 局長が今生活保護法の関係については御答弁なさったわけですが、今のお気持で、その線に沿ってぜひ折衝してもらいたい。これいかんによりますと、せっかく職業訓練所を拡充しましても、現実問題としては役に立たない法律になる可能性があるわけです。理屈はいろいろあるでしょう。生法保護の支給金の性格からいってもいろいろ問題があると思いますが、これは一つぜひ御努力を願いたいと思います。失業保険との関連についても、若干そのうちの経費的な面については訓練手当のうちに併給さしたらどうかと思いますが、その点はどうですか。
  141. 堀秀夫

    ○堀政府委員 この点についてもいろいろな考え方が成り立つと思います。お話のように、当初はそんなような気分で募集をいたしたというような事例も聞いておりますが、その後検討いたしまして、やはり失業保険が支給される方については、併給するということは適当じゃないのじゃないかという結論になりまして、そのため、前に事実上そのような募集の掲示をいたしたというようなところが若干あったようでありますが、それはすぐ関係者に話しまして取り消すというよう措置を講じておるのであります。今後の問題といたしまして、ただいま御審議になっております法案にも関係があるわけでございます。議員提案によります失業保険法の改正が実施されれば、基礎訓練の一年間は失業保険が支給されることになりますので、そういうような面からいたしましても、その一年間の訓練期間の間、失業保険金が支給される、現状よりもさらに改善がされるというふうに考えられますので、だいぶ楽になるのではないか、このように思っております。多ければ多いに越したことはありませんが、やはり失業保険の性格からいたしまして、それと職業訓練手当の考え方からいたしまして、併給はいたさない、このよう方針で決定しておるわけであります。
  142. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 失業保険が訓練手当より低い場合はどうですか。
  143. 堀秀夫

    ○堀政府委員 訓練手当の差額を支給いたします。
  144. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 やはりこの点についても、必要経費についてはその範囲内においては訓練手当を出してやるのが至当ではないかと思う。理論はいろい政府のおっしゃるような理論があると思いますけれども、実際の扱いとして、それをやらなければ非常に困難である。というのは、一つは、つぶれていく炭鉱の労働者の中には、比較的賃金が低くて、遅配欠配が続いて失業保険をもらうようになったという人々もあります。ですからある限度のものには必要経費は見てやる必要があるのではないか、こういうよう考える。ここに六カ月間訓練所に通うことによって余分に要る費用、これはラフな数字ですが出されておりますけれども、六カ月間で二万数千円要っておるわけです。教材といいましてもいろいろ要るのです。やはり教科書も要りますとか、コンパスとか三角定木とか、それからエンカン服とか通勤パスとか地下たびとかノート、こういうものも要る。ですから、彼らの家庭はわれわれが想像する以上に非常に貧困ですから、普通のように、そんなものは子供のものでも持っていって使えばいいじゃないかというよう家庭じゃないのです。家庭が今まで非常に貧困な家庭ですから、そういう点も一つ考慮になって、少なくとも必要経費のある部分程度は訓練費の一部をさいて支給されたらどうか、こういうふうに思うのですが、どういうようにお考えですか
  145. 堀秀夫

    ○堀政府委員 いろいろお話のような点もございますが、やはり失業保険との併給ということを考えますると、他の被保険者との間のいろいろな均衡問題が出てくるわけでございます。やはり失業保険が支給されて、その失業保険の額がこちらで予定しております訓練手当を上回るような場合には、失業保険を受けておるわけでございますから、訓練手当は支給しない。ただし、ただいまのお話のように、離職直前に遅欠配が非常にあった、あるいは賃金の切り下げがあったというようなことで、失業保険の金額が訓練手当より少ないような場合には、差額に達するまで訓練手当を支給する、このような方法で考えて参りたい、現在はそのよう考え方でございます。
  146. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 炭鉱離職者はいわば特殊な法律によって保護されているわけですが、いろいろな事情があってそうされたわけです。そこで訓練手当というのがむずかしければ現物支給でもいいと思う。教科書を見てやるとかあるいは自分で出さなければならない必ず必要な教材を支給するとか、何か方法があるのじゃないかと思う。他の法律の関係で併給することはいかぬということになりますと、他の便宜の方法がありやしないかと思う。訓練手当のある限度に限って、その範囲内において現物支給する、こういう点一般の訓練生と違った扱いができやしないかと思うのですが、どうですか。
  147. 堀秀夫

    ○堀政府委員 なかなかむずかしい問題でございますが、援護会等ともよくこの問題について今後検討を重ねたいと思います。
  148. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 一つぜひそういうようにお願いしたいと思います。  次に、炭鉱離職者の定義を施行規則か何かでやられたと思うのですが、実際炭鉱業で行なっている仕事で、必ずどこの炭鉱にもあるという職種がかなり落ちている。これはやはり私は、職種で炭鉱離職者の範囲をきめるということ自体問題ではないかと思うのですね。首を切られるのと同じですよ、どうですか。
  149. 堀秀夫

    ○堀政府委員 先ほど滝井委員からも同じ趣旨の御質問がございました。炭鉱労働者、炭鉱離職者、この定義は、御承知のように、炭鉱離職者臨時措置法第二条できまっておるわけでございまして、そのワク内におきまして、炭鉱のいろいろ実際の特殊事情等も十分考え合わせまして、現実的に認定をいたしたい考えであります。
  150. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 労働者を職種によって区別する何ものも根拠がない。たとえば事務屋であろうと、あるいは坑内夫であろうと、あるいは坑木かつぎであろうと肉体労働をやっている。坑木かつぎなども除外されておるのですが、坑木かつぎはどうなんですか。
  151. 堀秀夫

    ○堀政府委員 具体的に個々の場合に当たって認定しなければならない問題でございますが、掘採に付属する作業に従事する労務者でありますれば、これは入るという考え方であります。ただいまのお話の点、よく事実を調べてみなければなりませんが、私は入るのではないか、このように思っておりますが、なお現場の実情等をよく調べまして認定をいたしたいと思っております。
  152. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 炭鉱は何も軽労働がないということはないのですね。しかも重労働の労働者だけを対象とするということは法律上おかしいですよ。それはその他の作業だって炭鉱はやるのですよ。これはなぜ制限したのですか、この定義の弾力性は十分できる。要するに炭鉱に勤めておるものだと考えればよろしいわけですから……。これはなぜシビアに施行規則でおやりになったのですか。
  153. 堀秀夫

    ○堀政府委員 ただいまお手持ちの資料が何であるかよく存じませんが、そのようなものを公にいたしたことはございません。あるいはその部内でいろいろ研究しておりますものがお手元にあるのではないかと思いますが、公には何らそのよう措置を肯定しておりません。要するに現場で炭鉱の現状に合った現実的な認定をいたしたい、こういう考え方でございます。
  154. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 実は私も資料を持たないのですが、おととい実は私は帰りまして、飯塚の訓練所から援護協会をずっと見てきたわけです。ところが訓練生の方からの声なんですが、非常に扱いが限られておる、こういう声を聞きました。炭鉱労働者の定義を書けといえば、だれだって石炭の掘採または付属する選炭その他の作業、こう書きますよ。作業に従事する者、これは全部入れるべきですよ。普通そうでしょう。炭鉱労働者の統計なんかを出すのに全部入れるでしょう。炭鉱に勤めておってこれから除外するなんというのは、この法律の趣旨からいってどこから出るのでしょうか。定義を書けと言えば、炭鉱労働者は掘採またはそれに付属する作業に従事する者とだれだって書きます。それをあなたの方で、その中でさらに制限するというような思想はどこから出るのでしょうか。
  155. 堀秀夫

    ○堀政府委員 炭鉱離職者臨時措置法二条には、御承知のように掘採に付属する作業に従事する者このように書いてございます。石炭を掘採する事業に従事する者というふうには書いておらないわけでございます。この考え方は、大体この臨時措置法の制定のときにあたりまして、やはり炭鉱に勤めておる肉体労働者、こういう方々については、他に転職しにくい。普通の職安行政の紹介ベースにはなかなか乗りにくい特殊性があるという考え方から、このような肉体労働者もしくはこれに準ずるような方について特別の援護をいたしたい、このよう考え方でできたものでありまして、二条もそのよう考え方になっておると思います。ただお話のように、その現実認定につきましては、もとより石炭産業の特殊性は十分考えなければなりませんので、われわれといたしましては、今後認定をいたします際、現実に即しまして現実的な認定をしていきたい、このよう考え方でございます。
  156. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 私はなるべく炭鉱労働者の範囲を狭めるような解釈はすべきでないと思うのです。炭鉱事業に従事するというなら、文章だって、掘採またはこれに付属する選炭その他の作業に従事する労働者と書きますよ。これは一般的に入ると考えなければ——離職者対策に、ある特殊な技能、職種に従事した者だけを扱うというのは、むしろ法の精神を曲げて運用されておるのじゃないか、こういうように思うのです。普通にすなおに解釈して下さいよ。
  157. 堀秀夫

    ○堀政府委員 今後の運用の問題でございますから、現実に即して現実的な認定をいたしたい考えでございます。
  158. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 次に職業訓練所の実態です。大臣お聞き願いたいと思いますが、実際まだ訓練ができていないのです。第一、指導員がいない。それから労働省の予算、補助金をつける予算が、たとえば自動車の整備工といいましたら、運転をするような整備員なんか出していないのです。運転ができないで整備なんかできっこないですよ。こういうのをやってない。補助金の対象をものすごく短くしている。県の方では何度も設計がえ、設計がえをしてやっと施設の入札をやるような段取りになった。これでは少なくとも第一期生は授業にならない。たとえば塗装にしましても、自動車の塗装だけです。塗装というと自動車の塗装よりも、今はむしろ家屋の塗装とか、船舶の塗装とか、木工の塗装とかあるのです。ほんの一部だけしか教えない。第一、教える先生がいない。ですから、これはよほど政府でお考えになって——今景気のいい、就職のいいような産業は確かに技術者が足らないことは実態ですけれども、何か考慮をされて、指導員の確保をしていただかなければ、私はせっかく作った施設がものの役に立たないと思うが、どういうようにお考えになるか、一つお聞かせ願いたいと思います。
  159. 堀秀夫

    ○堀政府委員 石炭離職者の職業訓練につきましては、昭和三十四年度、昭和三十五年度にかけまして、増設もしくは新設ということで総合的な計画を立ててもらう措置も講じてあることでございます。その結果、現在までに増設等につきましては、すでに開所したところがあります。入所して実際やっておられるところもあります。ただその際に、増設早々のことでございますので、機械施設等が間に合わない、あるいは指導員が足りないというような摩擦が起きておるところもございます。本来ならばもう少し整備するまで開所を待つということも考えられますが、やはりわれわれとしては一日も早く開所いたしまして、離職者に一日も早く入所してもらって、そこでとにかくできるだけの訓練をしたいという考え方で開所を急いだわけでございます。その結果、まだ過渡的な状態として今のような問題があることもわれわれ現地から聞いておりますので、目下鋭意その整備拡充を急いでおります。これはわれわれ職業訓練の中で最も重点を注いで、一般の職業訓練よりも施設内容の充実に努力したい考えでございまするので、御了承を願いたいと思います。
  160. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 次に家族用のパイプ・ハウスの問題ですが、家族用の宿舎を作ってやらなければ労働者の移動というようなことはきわめて困難ですね。これは家庭悲劇が起こるだけです。ですから、転職をしたところにほんとうに腰を落ちつけて、安住の職を見つけるということになって参りますと、どうしても家族とともに移動しなければならぬと思うのです。ところがいまだに家族用のパイプ・ハウスの宿舎が貸与されない、こういうようなことを聞いているのですが、一体どういう状態になっているのでしょうか。
  161. 堀秀夫

    ○堀政府委員 広域職業紹介の計画は予想以上に順調に進んでおるわけでございまして、最近までに二千百七十六人の方が、いずれも広域職業紹介の線に乗りまして就職されたわけでございます。ただその中で家族を呼んでおる方というのは非常に少ない。この方々には東京等に来ておられる方がだいぶございます。実は私も職安局長に就任しまして、さっそく現場を見て慰問してあげたいと思いまして、従事しておられるところを回りましていろいろ実情を聞いてみましたが、やはりその方方の共通の希望は、早く家族を呼びたいということでございます。従いましてこういうものについては、本年度援護会の予算におきましては、パイプ・ハウスを作り、来年度におきましてもさらにこれを拡充する。そのほかに産労住宅、厚生年金の住宅等の割当につきましても特別のワクをもらうというよう考えで進んでおるわけであります。移動用のパイプ・ハウスにつきましても、独身者用、世帯用に分けまして、実はその実行計画も大体きまりましたので、これからさっそく早急に現物をその希望のところに送るという段取りにやっとなりました。これから軌道に乗ると思います。
  162. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 私も神戸製鋼のある下請のところに炭鉱離職者が行って働いておる実態を見てきました。ところが、四十名ばかり行った中で、半分が独身者です。そうしてあとの半分は家族持ちですが、そのうち半分の十名は、会社から金を借りて家族を連れに帰り、さらに会社からアパートの敷金を借りてアパートに入りました。こういう経営者のおられるところはいいのですが、その経営者でも、まだ半分の家族はそのままになっておるわけです。ですから、その半分の家族持ちをどこか別の宿舎に入れられれば、さらにまた炭鉱離職者を呼びたい、こういう話ですから、一つ家族用のパイプ・ハウスについては重点的に考えてもらいたいと思います。そうして三十六年ということでなくて、三十五年度に、もう十分一つ予算をとっていただきたい、このことを要望して、失業保険の問題はあとに残しまして、本日は一応質問を終わります。
  163. 永山忠則

    永山委員長 本日はこれにて散会いたします。     午後四時二十九分散会