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1960-03-03 第34回国会 衆議院 社会労働委員会 第12号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十五年三月三日(木曜日)     午前十時四十九分開議  出席委員    委員長 永山 忠則君    理事 大石 武一君 理事 大坪 保雄君    理事 田中 正巳君 理事 八田 貞義君    理事 藤本 捨助君 理事 滝井 義高君    理事 八木 一男君 理事 堤 ツルヨ君       池田 清志君    倉石 忠雄君       齋藤 邦吉君    柳谷清三郎君       山下 春江君    亘  四郎君       伊藤よし子君    大原  亨君       小林  進君    五島 虎雄君       中村 英男君  出席国務大臣         労 働 大 臣 松野 頼三君  出席政府委員         労働事務官         (職業安定局         長)      堀  秀夫君  委員外出席者         専  門  員 川井 章知君     ――――――――――――― 三月二日  未帰還者留守家族等援護法の一部を改正する法  律案内閣提出第九三号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 三月二日  一般職種別賃金に関する陳情書  (第一九〇号)  動員学徒犠牲者援護に関する陳情書  (第二〇六号)  同  (第二〇七号)  高血圧性疾患対策等に関する陳情書  (第二〇八号)  国民年金事務体制整備等に関する陳情書  (第二二四号)  精神障害者対策に関する陳情書  (第二二五号)  昭和三十五年度瀬戸内海国立公園施設整備予算  増額に関する陳情書(第  二二六号)  ILO条約第八十七号批准促進に関する陳情書  (第二二七号)  同(第二八九号)  国民健康保険制度整備強化に関する陳情書  (第二九  〇号)  国民健康保険調整交付金増額に関する陳情書  (第  二九一号)  原子爆弾被爆者医療等に関する法律の一部改  正等に関する陳情書  (第三五三号)  同(第三六九号)  家族計画普及促進に関する陳情書  (第三六八号)  社会保障制度の確立に関する陳情書  (第三七〇号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  失業保険法及び職業安定法の一部を改正する法  律案齋藤邦吉君外二十三名提出、第三十三回  国会衆法第二三号)  船員保険法等の一部を改正する法律案内閣提  出、第三十一回国会閣法第一六八号)      ――――◇―――――
  2. 永山忠則

    永山委員長 これより会議を開きます。  第三十三回国会齋藤邦吉君外二十三名提出失業保険法及び職業安定法の一部を改正する法律案及び第三十一回国会内閣提出船員保険法等の一部を改正する法律案、両案を一括して議題とし、審査を進めます。  質疑を許します。滝井義高君。
  3. 滝井義高

    滝井委員 労働大臣にまずこの法案提出の仕方についてお尋ねをしたいのですが、松野さんも御存じ通り岸内閣政党内閣でございます。従って政府国会法案提出するときには、当然閣議にもかけて、そうしてその前には与党との間に意思統一をして出すものだと私は心得ております。政府出し法案に、その後の情勢変化によってどうしても付加しなければならないというものがあれば、法案修正の形で出してくればいいんじゃないかと思うのです。ところが今回は、政府船員保険法等の一部を改正する法律の中で、失業保険法改正案出してきておりまして、政府出した法条の内容の一部を含んではおりますか、与党が別個に全く異なった法案出してきたわけです。これは松野さん、政党内閣のもとで内閣方針として出したものが、今度は与党が別なものを出してくるということになると、政府与党の同に意見の一致を見ていないということになるわけですが、こういう出し方が政党内閣のもとで公然と行なわれるということになると、政見内閣というのは、結局この法案に関する限り与党から不信を受けておるわけです。これはあなたとしては一体どうお考えになっておるのか。この点を御説明願いたいと思うのです。
  4. 松野頼三

    松野国務大臣 不信を受けておるというわけのものではございますまい。かりに言えば、政府案が全然否決をされたというならば、これは確かに与党から不信を受けていることになります。今回の場合は、政府案を根本的に否決しているものではございません。与党意思として修正案は出ておりますけれども、これは政府案趣旨を全然否定する修正案ではないはずであります。その意味で、私は公平に考え否決じゃない。政府案修正はされましても、政府案趣旨否決した条文はございません。政府案と全然右と左の修正案といえば、修正案といえどもやはり否決的なものもありましょうけれども、今回の与党から出ておりますものは、御承知のごとく政府案に幾らかプラスした改正案という趣旨でありまして、精神においても方向においても不一致という意味は毛頭ないと私は思います。
  5. 滝井義高

    滝井委員 船長保険法等の一部を改正するというこの法律は、もし与党が強行するとすると通らないということを意味するわけです。結果から見ると、この四案が一緒になったものは与党を相手にせずということなんです。なぜならば与党四つばらばら出してしまったからです。もしその中の一つ、だけしか通らなかったら、これはだめだということなんです。内閣四つ一緒にして通して下さい、与党の方は四つばらばらにして個別々々に通して下さいということですから、これは全く違うでしょう。四つ一緒にやるのと、個々に分けてどれでもいいから一つずつやって下さいということとは全然違う。内閣は、四つ一緒でなければこの法律はだめなんですよ。ところが与党の方は一つ一つでいいんです。内容は、なるほど与党出したものの中には内閣のものも含まれておる、その点については一致しておるけれども、この法案全体から見ますと、全くこれは違ったものになってきておる、ものの考え方が根本的に違っておる。四つ一緒でなければだめで、この中の一つだけを否決するというわけにはいかないんですよ。内容一緒ならば修正してこれにつけ加えられたらいい。一体与党は、松野さんの出し法案のどこが悪くて別のものを出したのか。(「そんなことどうでもいいじゃないか。」と呼ぶ者あり)どうでもいいと言うけれども、これは今後非常に大事なところなんですよ。(「ILOにも関係する。」と呼ぶ者あり)ILOの話も出ておりますけれども、なかなかあなたは孤軍奮闘されておるらしいことを新聞で見て敬意を表しておりますけれども、それならばこれについても、一つおれのところだけ修正にしてくれとか、どっちか撤回するとかしてもらわなければならぬと思うのですよ。与党撤回をして修正をするか、あなたが撤回をして与党のでよろしいと言うか、この二つのものを出してくるとわれわれは迷惑なんですよ。審議を早く促進したいと思うけれども、どっちを先にしたらいいか、非常に迷っておるわけです。混迷を来たしておる。これは三月三十一日までに、ぜひ僕らは法律にしたいということを念願しておるわけですよ。ところが二つがこんがらがって、非常に困っておるのです。だからきょうも要求しておるのですけれども、一回岸総理に来てもらって、一体岸内閣方針というものはどうなのか、政党内閣として総理自民党総裁であるはずなんです。総裁統制力総理大臣統制力が違った形で出てくるというのは困るんですよ。こういう出し方は、これは今まで前例があったかというと、前例がないんですね。われわれはこれは非常に困っておるのですが、松野さんどうですか、与党と交渉して修正にしてもらうか、それともあなたの方がこれを御撤回になって厚生省と——きのう私は厚生大臣にも言っておるのですが、撤退をして下さって、そうして四法を通すということならこれでもよろしい。しかし政府方針はこっちだ、与党はこれだといいますと、さてわれわれは四法を一緒に通したのがいいのか、個別々々にやって、一つ一つを各個撃破的に通したらいいのか、どっちがいいか迷っておるんですよ。(「いい方にしろ」と呼ぶ者あり)いい方にと言いますけれども、あなたの方が、いやそうじゃない、与党から出ておるからもっとわれわれは修正に応ずるんだということになると、またあなた方の方にわれわれは同調することになるんですよ。だからあなたの方が、いや滝井君、おれの方は与党のあれは賛成だということになると、そのほかにもまだ賛成のものがあるということになると、あなたの方の修正でもいいんですよ。だからそこらあたり政府与党とが意思を統一して、やはりこれに対する修正をしていくか、これは撤回をするか、どっちかきめてもらわぬと、野党としてははなはだ迷惑して混迷を来たしておる。混迷を来たすということは、法案が三月三十一日までになかなか上がりにくいということになるわけですよ。だからぜひ三月三十一日までには、われわれの意向否決されるにしても通っても、どちらかにしてもらいたい。これは内閣としては当然法案審議する上において、参議院にいってもこれはついていくのです。審議の過程では、これはついていくんですよ。否決されてきても、お前の方はこういうものでよろしいかということになるのです。だからそういう点でもう少しあなた、意思統一をされるお考えがあるかどうか。
  6. 松野頼三

    松野国務大臣 政府案は、ちょうど満一年前の昨年の二月に提案をいたしまして、三十四年度予算一緒にこれは提案をいたしたわけであります。同時に政府案与党案が同じに出るならば、滝井委員のおっしゃるように、どちらが本物だという御議論が出るかもしれません。しかし政府案はすでに一年前に出してある。与党の議案は、その後において自民党において大いに研究された結果、昨年の暮れに出てきたわけですから、これは私は当時大臣じゃありませんでしたが、私以上に滝井さんは御存じなはずなんです。ただやり方として、外形としていろいろの御議論がありましょうが、内容においては与党の案も政府案否決した案じゃございません。政府案否決した精神のものは一条もございません。従って方向は同じでございます。ただ与党としては、こういう今日の状況ではこうすることの方がいいという御趣旨のもとに、改正案修正案というものが提案されたと私は信じます。もちろん国会国権最高機関でありますから、私がこれに関与していいの悪いの批判する能力はございません。私は政府案として今日説明いたしておるわけであります。
  7. 滝井義高

    滝井委員 政府案が一年前にお出しになったんだ、だからどうもその後情勢が変わったらしくて、与党の方が去年の終わりに新しい情勢変化に対応した法案をお出しになったといいますけれども、審議する方からいうと、これは今初めて審議する法案なんですよ。与党出した方も今初めて審議をしておるし、それから松野さんの方の政府のお出しになったものも今初めて審議をしておるわけです。そうしますと、政党内閣ですから、何もこれが悪いのだ、与党の方がよろしいのだということならば、御撤回になったらよろしい。御撤回になっても、内閣意思というものは、船員保険法の一部を改正する法律案失業保険法の一部を改正する法律案として、ちゃんと与党意思政府意思が合致したものとして再現をしてきているわけですから。この問題は政府出したものだから、といって、撤回することにこだわるのは非常に私はまずさがあると思うのです。間違っておったら多数ですから撤回されたらよろしい。河野一郎さんの言うように、何も条約修正権国会にあると言ってもいいじゃないか。今安保条約修正しなければならぬという気持はないんだし、与党は多数なんだから、修正権国会にあると言ったって、何も安保条約修正されるわけじゃないんだというのと同じですよ。与党の方がいいということになれば、これを御撤回になる、院の議を経れば撤回できるのですから、院の意思というものを聞いて御撤回になる。そして今度は与党の万をやるということになると、われわれもあなたにお聞きしたり、今度は斉藤さんにそこにすわってもらってまた聞くという手間も省ける。そうすると、この法案は早く日の目を見るのです。そういう国会審議のテクニックからいっても、あなたの腹をきめてふん切りされる方がいいと私は思うのです。それを、二つのものをどちらかよろしくお願いします、どちらでもよろしゅうございますから、社会党の自由に選択してくれというのなら、われわれはさてどちらを選ぼうか、あなたの方を見て、あなたの方がもうちょっと斉藤さんの方の出したものよりか一つでもつけ加わると、こっちになりますよ。だからそこらあたり、どうももうちょっと納得いかないのですが、出し方としてはこういう出し方は私はまずいと思う。四本が一本では工合が悪い。だからこれを一つばらばらにして政府出してくれというのがわれわれの要求だったんです。ところがそれを今度は与党は受けて、われわれと同じような意向出してくると、与党気持というものはありがたいが、しからば内閣のこの気持撤回してくれないと困る、こういうことなんです。私の行うことは間違っていない、筋が通っておると思うのです。これは小学校の子供でもわかるのです。この一つのものと四つのものとどっちを選んだらいいでしょうか、こうなると、しかも二つは同時にかかっておるのですから——これは同時にかかっていなければいいです。こちらはやらなくてもよろしいのだということならば、話はわかるのですが、こっちはやらないというわけには参りません。こっちをやらないようにするためには、撤回をされるか、与党の方を撤回をして修正をするか、どちらかしかない。このまま二つを置いて、どちらでもというわけにはいかぬと思うのです。提案の理由もだいぶ違いますし、そこらあたりもう少し松野さんの御意見も聞かしてもらって、厚生大臣と相談をして、やはり明確な態度を打ち出してもらいたいのですが……。
  8. 松野頼三

    松野国務大臣 厚生大臣とももちろん十分連絡をいたしました。その後与党修正案閣議にも、内閣意見をつけなければいけませんので、内閣意見をつけるときにも十分審議いたしました。その結果今日は政府案というものが、多数をお持ちの与党から修正案として意思表示が出ました以上、非常に立場が悪くなったことだけは間違いございません。しかしやはり議会意思の決定におまかせしているのですし、私は自民党の党員であると同時に、政府当局者でありますから、その意味でも議会でおきめいただくことに従うことが一番いいんじゃなかろうか。そういう立場でこれは判断していただくのがいいと思うのです。ことにこれは昨年の一月出して、あるいは表面上審議は行なわれなかったかもしれませんが、しかし内容については、与野党ともこの約一年間にこの法案内容をよく御存じなんです。従って速記をとった形式的な審議は一年間なかったかもしれませんけれども、内容的には各党とも議を尽くされた問題であります。その結果、与党はこういう修正案をお出しになったというのでありますから、審議しなかったのじゃありません。一年前に出し法案当該委員の方で御存じない方は一人もおりません。従って各人自己審議はされたわけです。また政党審議はされたわけです。その結果でありますから、私の方は急にこれを政府意思として一年前にさかのぼって変えるということはなかなかできるものじゃありません。そういう意味でこれはさっぱりした気持で、いいものを国民のために御審議いただく、その結果において多少の派生的な、あるいは形式的な議論はありましょうが、より以上、これによって受益する方、必要のある方にはより早くこの法律を通すことがほんとうの使命じゃなかろうか。私はそんなに面子ばかりにこだわっておるわけじゃありません。しかし政府意思というものは、一年前に出したものを、一年前にさかのぼって変えろということも御無用な話であります。それならば与党としては、よりいい案が今日の情勢として可能だという趣旨改正案修正案をお出しになることも、これも当然なことです。それは滝井さん、一年前にさかのぼってこの意思を取り返せというお話しは非常に無理な話じゃなかろうか、こう考えるわけであります。
  9. 滝井義高

    滝井委員 松野さんの気持はよくわかるのです。だからそれならば、与党なり政府の出された失業保険法の一部を改正する法律案内容をそのままそっくり包含をして、さらにその上によりよきものをつけ加えたものをお出しになる、こういうことなんですから、政府出した案を包含しておるならば、それに今度はさらにまたよくなるものをつけ加えた修正案をお出しになったらよろしいのです。なぜ与党だから政府案修正できないかという問題がここに出てくるわけです。だから、私としては、国会国権最高機関であるとするならば、政府のお出しになった案をなぜ修正できないかということになると思うのです。これは齋藤さんにあとで尋ねなければならないことになるのですが、これは修正されたらいいんです。何でわざわざ新しく出して、そうして同じもの——政府与党というものは気脈相通じているものなんです。その一つの方から、政府とは別の形の法案を出すことはおかしい。これは修正されたらいい。そうしますと、われわれもその修正意見賛成だ、それじゃ賛成しましょう、こうなるわけです。別のものを出すから、政府意図というものはこっちだ、与党意図はこっちだ、一体どうなんだろうか、与党出したものは予算がつくだろうかという心配が出てくるわけです。だからこれはどうも今の松野さんの御説明だけではまだ納得いかぬですから、また政党内閣における国会法案取り扱いの重要な問題になるわけですから、あとで一回総理に来てもらってお尋ねいたしたい。これはきょうはこれ以上私はやりません。問題を残しておきます。  それじゃ次に移ります。今後われわれが失業保険経済なり、失業保険あり方というものを考える場合に、具体的な法案のこまかい審誠に入る前に、少し大局論を聞かしてもらいたいと思うのです。それは最近における日本経済成長と申しますか、これはヨーロッパ諸国に見ない非常な経済成長率を示しておるわけです。そうしますと、この経済成長率というものが雇用に大きな影響を及ぼすことは当然なことだと思うのです。戦争前においては日本ではせいぜい三十五、六万というのが雇用実勢だったのです。ところが最近はそれに百がつき始めたのですね。百三十五万とか百三十万とかいうように。まあ三十三年は九十六万台くらいだったのですが、三十四年度はやはり百何十万と百がついておるだろうと思うのです。一体こういうように経済成長が非常に大きくなって、そして雇用も伸びておるという情勢の中で、一体あなた方は、今後の失業保険というもののあり方が今までのようなああいう六割給付というような、内容の悪いちゃちなものでいいのかどうか。経済成長雇用拡大という中における将来の失業保険あり方というものは一体今までの姿でいいのか悪いのかということです。一体内閣として、あるいは労働省としてどういうお考えを持っておるのか、御説明願いたいと思います。
  10. 松野頼三

    松野国務大臣 失業保険内容を改善するということは、いわゆる雇用の問題と裏はらの問題であります。滝井委員も御承知のごとく、失業保険を受けるということは、雇用関係からいうならば、あまりありがたいことじゃありません。臨時にしばらく休業する。野球の選手でいうならば、しばらくベンチをあたためるということで、あまりいい状況じゃありません。といって、最悪かというとそうでもありません。やはり必要な一つ措置だと考えます。失業期間を延ばすということはとりもなおさず雇用戦線にそれだけ立ちおくれるということです。従ってすべての場合失業保険を長期に受けた方は、次の雇用条件はよくありません。だんだん悪くなるのです。従って失業保険を短かく、次の雇用に進むことが一番いいことなのです。その趣旨から私たちは失業保険というものをいたずらにだらだら延ばさず、これは社会保障じゃございませんで、あくまで雇用に対する臨時的な措置でありますから、なるべく失業保険を六カ月もらわないうちに雇用されるように、雇用促進に向かうのが労働省として一番いいことだと思う。同時に世界の趨勢は、失業保険をどんどん延ばしている国はあまりございません。大体短かいところは四カ月なんというところもございます。従って日本の六カ月、九カ月というのは世界水準から申しましても、ちょうどその水準に達しておるわけでございます。なお近代国家として進んでいる国は失業保険を延ばす傾向は出ておりません。雇用促進に進むのは当然なことでございます。その意味で私は雇用促進の方に向かうべきだと思う。もし失業保険改正が必要ならば、そちらの方に改正すべきだというのが私の持論でございます。従って失業保険金をもし延ばすような傾向があるならば、何とか雇用促進方向を切りかえるべきだと私は思うのです。それが雇用を助ける労働大臣としては一番正しい道であると思う。そういう趣旨で今回与党修正案の中にもそれが入っておるのです。やはり政府与党、この辺は一致しておるのです。すなわち、もしも六カ月以内に仕事が見つかった場合は、残余の失業保険金に対するものは、今度は就職支度金というふうな、雇用促進方向に持っていこうというのが与党修正案であるように私は拝聴しております。そういうふうになるべく早い機会に次の就職機会を求めるように職業訓練に対する手当金とか、あるいは早く就職をして六カ月の失業保険を使われなかった方は、その保険金を今度は就職支度金として逆にやるというのが与党修正案に出ているらしい。そういうことからいいまして、雇用方針というものはそういう方向に進んでいくべきだと思う。ただ臨時的に石炭のような場合もあるかもしれない。非常に特殊なものがある。これは本人がいかに努力してもその地域的、あるいは産業的になかなか就職できないという方は別格であります。それは別な方法で何とか失業保険の中に別格を設けるか、あるいは別な法律をもって炭鉱離職者臨時措置法というものを設けて、離職された方が就職できるような別の方向に持っていくべきであって、失業保険総体給付をくずすようなことは、私は今日の状況としてやるべきでないと思う。また雇用を担当する者は、その次の段階、非常に不幸な状況のときを対象としてやるべきじゃなく、幸福になっていくように進んでいくべきだと思います。
  11. 滝井義高

    滝井委員 現在日本経済というものが世界に類を見ない勢いで拡大をしておる、雇用も戦前に比べたならば百万台をこえて増加をしておる、こういうことでございますが、その中で一体失業保険あり方というものはどうあらなければならないか。もちろん失業保険を長く受け、それから失業保険が終わった後もなお失業状態にあるということは、その失業期間が長ければ長いほど次に就職した場合の雇用条件が悪いことはもうわれわれ経験済みであります。これはお説の通りです。これについては異論がないところです。そういうことも考えまして、雇用促進方向失業保険法というものが今後改正されていかなければならぬ。それにしても今の平均賃金の六割程度の給付では失業の間の生活はあわれなものになるわけです。特に日本のような低賃金状態のもとにおいては——賃金かどうかということはまた議論のあるところですが、常識的に見て、日本は低賃金といわれておる状態のもとにおいては、六割ではますます大へんだということになるわけです。それで経済成長をして雇用拡大をしておるところにおける失業保険あり方が、雇用促進方向改正をさるべきだということ、支度金をやるというだけでは具体的ではないと思うのですが、もう少し具体的に二、三あげてみてくれませんか。今後の松野労働行政失業保険あり方としては雇用促進方向に持っていくということは、与党出したようなただ支度金をちょこっとやるというだけではどうも政策としてはあまり特筆大書するものにはならぬと思うのですが、もう少し具体的に説明をしていただきたいと思います。
  12. 松野頼三

    松野国務大臣 給付額の内容についてもいろいろございますが、これは各国の例をごらんいただけばわかるように、カナダが大体給付額は四〇%です。ギリシャが五〇%の範囲内、ノルウエーが三〇から四五、スイスが六〇、アメリカが五〇から六〇、従ってILOの基準は四五%以上という基準であります。従って日本の六〇というのはILOを尊重するという意味ではございませんが、その態勢は一応私はとっておられると思う。これは御参考にお聞きいただけばけっこうです。  なお就職の問題はどういうふうにすればいいか、これはいろいろあります。炭鉱に例をとりましたのが一つの新しい問題でございます。従ってまたすべてに関係する産業の失業保険法をいじくるというか、特殊な産業について今回特別措置をとった石炭離職者の例が一番いい例だと思います。これを失業保険全部に及ぼすということは、これは保険財政からいいましても、また過去の失業保険の姿からいっても、それはなかなかむずかしいのじゃなかろうか。従って私の方も何とか一つこの方向を進めたいというので、職業訓練所に入っている者に対する、これもいわゆる就職促進、また労働省としては公益職業紹介もやりたいという意味で、失業保険金の中から訓練所の経費を出しておるわけです。だからいろいろな施設を置いたり、促進をしたり、支度金をやったりして、今後の雇用方向にこの問題を持っていくためには、あらゆる総合的のものを考えなければならぬ。それをすべて失業保険金で支払うというわけには参りません。失業保険金の約束がそうじゃない。掛金徴収のときにはそういう約束はあまり大きく出ていないのです。従ってやはり基本は失業保険であります。失業者に対する保険、この基本をくずしてどんどん積立金を使っていく、そうはできません。やはり契約者からの貴重な金を預かっておるのですからできません。ただその限度内においてあらゆる面を考えていきたいというのが今の私の考えであります。
  13. 滝井義高

    滝井委員 失業の多発地帯の問題や支度金やら職業訓練する場合の保険給付の延長とかいうようなことは、これはいいことだと思います。それは雇用促進の一面を確かについていると思いますが、それではあまりにも局地的で、しかも特殊なものに限られるということになるわけです。潜在失業者も非常に多いし、それから現実においてもなお四十万、五十万の新規労働力の未就労状態というものがあるわけです。だから何かここらあたりで、失業保険の会計がよかった、そのために三分の一の補助金を四分の一に削るのだというならば、この経済拡大雇用拡大の中でもう少し私は考える余地があるのじゃないかという感じがするわけです。しかし一応一つ方向として、今後松野労働行政失業保険というもののあり方はやはり雇用促進という面をベトーネンしなければならぬということは、一つのあなたの政策の新しい方向としてきょうは聞かしてもらったのですから、この問題はまたいずれ別の機会に譲るといたします。それは一つありがたく拝聴しておきます。  次は、最近において日本の投資というものも非常にふえてきました。特に技術革新をやるための投資あるいは企業の体質改善のための投資、そういう投資というものが非常にふえてきたわけです。ところがこの技術革新をやるために投資がふえるということは、一面非常に重大な影響が失業保険にも出てきている。というのはそれは同時に雇用の減少を来たすということです。一体日本の投資の増加によってどの程度の雇用が減少される傾向が出ておるか、これを一つ数字があれば御説明を願いたいと思うのです。
  14. 松野頼三

    松野国務大臣 一産業の投資金額を比例いたしますればいろいろの統計が出て参ります。付加価値生産の低いものほど投資に比例する労働力というものがふえるわけであります。一番原始的な機械を使わないものが、同じ仕事を同じようにやるならば、人力でやる方が雇用が多いわけであります。しかしそれは生産性あるいは付加価値というものがゼロなんです。非常に低くなってくる。それはもうすべて産業の発展途上においてできる。しかしそういう原始的な話は別として、それでは最近の経済事情のもとにおける付加価値はどうなのか。もちろん技術革新をされるならば、それだけ機械化されている産業が多いことは事実であります。一番はっきり言うならば、石油化学工場の例をごらんになれば、資本の割に雇用者が少ないという例は出て参ります。逆比例に中小企業の機械化されておらぬのは、投資金額に対して雇用が多いのです。今日ではそういう状況は確かに見られます。しかし化学工場ができるに従って、それに関連してまた別な統計が出て参ります。これは確かにその投資した事業、会社、工場以外に輸送がふえております。消費がふえております。そういう関連をとっていただくと、この数字がやはり必ずしも機械化されたから人員が減るという結果は出ておりません。その国家的産業としてアメリカの最近の技術進歩の趨勢を見ていただけば非常なものであります。逆に雇用もアメリカはどんどん伸びております。日本の産業も同じようにどの産業をとっていただいても、その工場とかそのポジションだけとられれば意見はございましょうが、上下をとっていただけばその産業が、工場ができたために輸送が非常にふえた。第三次がふえた。消費がふえた。それに関連して日本の産業すべてに潤いができてきた。こういう産業拡大はまた見のがすわけにいかないのです。従って資本系統によってとった統計がございます。産業別にとればいろいろあります。付加価値の少ないものほど労働力がよけいになっております。付加価値の高いものほどやはり近代化されておる、これはわかっております。従って一つの産業だけ議論されれば議論がありましょうが、一番いいのはアメリカの国全体をとっていただけばこれは機械化されているけれども、機械化と比例してどんどん雇用が伸びております。従ってその意味で、そう局部的な意見でなしに総合して見れば産業がふえることはいいことなのだ、それだけ労働力というものが今度高い意味で使われる。そういう産業に従事された方の賃金は非常に高い。機械化された産業というものを、今度は労働者の数から見れば、あるいは滝井委員のおっしゃるような御趣旨になるかもしれない。しかし逆に言うと、技能料というものが非常に高い賃金になってくる。その意味では逆にそこに働く労働者にとっては機械化はプラスになっている。賃金が上がり、時間が非常に短かくなってくる、そして効果が上がるのですから、高価な労働価になってくる。これは近代国家として進める一つ方向だと思う。これを否定するのはあまりにおかしいのじゃないかと私は思います。
  15. 滝井義高

    滝井委員 方向としては私お説の通りだと思います。そこで投資がだんだん進んでいく、特に技術革新の面に投資が進行しますと、その部面における雇用が減少をするということ、これは確実だと思うのです。従って今あなたは、その部面においては雇用は減少するけれども、上下左右の関連をした部面について雇用が増加するから、結局結論は同じだとおっしゃるのですが、問題は、そう議論をするときには、全部を初めから見るわけにはいきませんから、まず集中的になる、いわゆる技術革新の投資がやられた部面においては、最近の経済成長率がぐっと伸びていく。ここ二、三年の状態を見て、  一体雇用はどういう部面で減少をしておるかということを、まず何か一、二の数字があればお示し願いたいと思うのです。私は確実に減少しておると思う。
  16. 松野頼三

    松野国務大臣 製造業における従業員数及び出荷額の推移という一つの統計がございますので、局長から説明いたさせます。
  17. 堀秀夫

    ○堀政府委員 製造業における最近の雇用の伸びを、ただいまお話のありました重要な業種について述べてみたいと思います。昭和二十六年と昭和三十一年とを比べてみますると、製造業総数では従業員の数は二九・九%の増になっておるわけでございます。しかし業種によりましていろいろな違いがあるわけでございまして、たとえば電気機械器具あるいは機械あるいは自動車というような、成長産業的な業種におきましては、雇用の伸びが非常に著しい。たとえば電気機械器具について見ますると、二十六年に比べまして三十一年は七〇・六%の増加になっております。また自動車産業について見ますると、大体二倍以上すなわち二十六年を一〇〇といたしますと三十一年は二〇・九三というふうになっております。また機械産業につきましても、二十六年に比べまして二七・二%の増加になっております。次に鉄鋼、化学というようないわゆる基礎産業部門について見まするとこれは技術革新が大規模に導入されまして労働節約的な面もあったわけでありますが、生産が著しく増大したしましたために雇用はやはり伸びておるわけであります。鉄鋼について見ますると、七一・一%の増、化学について見ますると九%の増ということになっておるわけであります。ただ停滞的な産業につきましては、技術革新に伴って雇用も減少するような万も見られるのでありまして、たとえばパルプ等について見ますると、二十六年と三十一年と比べまして、三十一年は二十六年の九〇・八%、硫安は九六・二%というような数字になっております。次に、これに関連するいわゆる第三次産業部門等について見ますると、これは技術革新の導入に伴う労働生産性の向上に伴いまして生活水準が上昇する。雇用の増加は関連の第三次産業においても著しいわけであります。これは二十六年と三十二年を比較した数字がございますが、たとえば卸、小売関係につきましては四八・二%の増、運輸、通信関係では二九・六%の増というような数字になっております。また、道路旅客運送業につきましては、二十六年を一〇〇といたしますると、三十二年は二六五・九%というような非常に著しい雇用の伸びを示しておるわけであります。従いまして全産業、全経済について見ますると、技術革新の導入、投資の投入によりますところの結果はどうであるかといいますと、一部の停滞的産業におきましては労働節約的な効果が非常に現われまして、雇用が減少する面もありまするが、全体として見ますると、雇用は、技術革新の導入、投資の増大によりましてやはり全体として見れば非常に大きく伸びておる。要するに今後の問題点は、このような一部の企業におけるところの摩擦をいかに排除していくか、すなわち、労働力を企業内でいかに配置転換して参るか、あるいは産業間においていかにこれを配置して参るかという面になるわけであります。この点につきまして職業安定行政の果たす役割は非常に大きく、微妙になっておるのではないか、このように考えるわけであります。
  18. 滝井義高

    滝井委員 今の、技術革新が進行していって投資が増大をすると雇用というものはふえるという点について、特に停滞的なパルプとか硫安というようなものについては、これはある程度停滞をしておる、伸びていないが、その他においては雇用が伸びているということです。私はその通りだとやはり思います。そこで問題は、その投資をやる。そうしますと、さいぜん松野さんは石油のお話をしましたが、たとえばわれわれが九州に帰るときに、松野さん熊本ですから、あの出光興産の徳山の工場、あれはどのくらいの投資か知らぬが、聞くところによると百億くらいだといいますが、とにかく通っておっても工場に人影がないですね。あれだけの投資をしてあんなりっぱな工場を作っているけれども、あそこに働いている人は二百七、八十人だ。そうすると、労務費は、コストの〇・八%くらいしか占めない、こういうことなんですね。そうしますと、私は問題はここが大事だと思うんです。百億投資した。ところがそこに使われる労働者というものは二百六、七十人だ。ということは、これを今度はもうちょっと拡大をして見ていきますと、今個々の自動車業とか電気機械器具だとか、鉄鋼、パルプ、硫安、こう御説明になりましたが、今度それを企業の規模で見たら一体どうなるんだ。技術革新が急激に進行していく企業は一体どういう企業なんだ。大企業なんですね。いわゆる失業した場合に失業保険をよけい食う部門なんですね。いわば、よけい食うというか、一人々々でいえば賃金がいいんですから、その六割でいけばよけいに食うわけですから、そのいわゆる企業別に見た場合にはどうなりますか。技術革新が進行するのは大企業で、中小企業は技術革新の進行が大企業に比べておそいですよ。その場合に、一体雇用というものは大企業に増加をしておるのか、どういうところに雇用の増加を集中的にしてきているか、これはあなたの御説明だけでは企業別にはわからぬ。ただそれぞれの産業については伸びた縮んだということはわかってきたわけですが、それを今度千人以上とか五百人から三百人までとか、三百人から三十人までとか、これは統計があるはずです。最近の傾向としてわれわれの勘で感ずることは、大企業は雇用が伸びていない。それであなたの今御説明になったように第三次産業部門は中小企業の部門です。ここに集中的に伸びてきておる、こういうことだと思う。そうすると日本全体としては雇用情勢は、なるほどみんながそれぞれ百三十万程度新しく出てくる労働力が、雇用機会にはありついておるけれども、その質というもの、労働者の質ではなくて、賃金その他の、いわゆる生活面の質的な面を見ると、大企業で雇用血が減少して中小企業でふえるということになると、労働者の生活は必ずしも大きく全般的に上昇しておらない。局部的には上昇しておるが、個々のものについて見ると、やっと食えるだけの賃金だという結論にもなるわけです。そういう点一つ御説明願いたいと思います。そうして、さいぜんの資料は三十二年だったですから、できれば、それを三十三年、三十四年くらいに引き伸ばして次会までに議員にも配っていただきたいと思うのです。
  19. 堀秀夫

    ○堀政府委員 あとの御質問から先に申し上げます。先ほど御説明申し上げました数字がやや古いのは、実は出荷額と対象しました統計がございましたものですから、その関係でやや年次が古かったのです。ただ、雇用だけについてみますると、やはり最近の分も出ておるわけでございます。これをまた後ほど資料でも差し上げまするが、一応ただいま私どもでわかっておりますので申し上げますけれども、毎月勤労統計による同じく常用雇用指数で比べてみますると、たとえば昭和三十四年十二月という最も新しい時点におけるところの雇用を前年三十三年の十二月同期と比べてみますると、製造業全体といたしましては一〇・九%の伸びになっております。その中で、先ほど申し上げました電気機械器具につきましては、二七・五%の増、それから機械につきましては一三・四%の増、このようなことになっております。次に鉄鋼、化学部門につきましては、鉄鋼は一五・四%の増、化学は四・七%の増、このようなことになっておるわけでございます。またこれに対しまして第三次産業部門においてはどうかということでありますが、卸、小売関係におきましては前年の同期に比べて六・七%の増、運輸通信関係は前年同期に比べて三・八%増、このような伸びになっておるわけであります。次にしからばこれが企業の規模別に見ましたときにどのようなことになっておるであろうかという点が問題になるわけであります。これは労働力調査の臨時調査等を使うよりほかに方法がないわけでございまするが、これについて概略を申し上げますると、たとえば昭和三十一年の七月の臨時調査の際におけるところの雇用者は、総数が千七百七十万でございます。そのうち一人から九人までの事業場におけるところの雇用者は三百九十三万、十人から二十九人につきましては二百五十五万、三十人から九十九人につきましては二百一万、百人以上につきましては九百三万、このような数になっておるわけでございます。これがどのような推移をその後示したかという点でございますが、三十三年三月の労働力臨時調査によりまして雇用者の数を申し上げますると、総数は千八百九十四万でございます。それからそのうち、これはやや分類が先ほどのものとずれておりますが、先ほど申し上げましたものをそれぞれ足していただけばわかるわけでございますが、一人から四人までの規模の事業場においては百七十七万、こういうことに相なっております。それから五人から二十九人までの事業場における雇用名は五百七十万、このようなことになっております。それから三十人から九十九人までの事業場における雇用者は二百五十一万でございます。それから百人以上について見ますと、百人から二百九十九人が百三十四万、三百人以上五百人未満が三百七十八万、五百人以上が三百十八万、このような数字になっております。従いましてこの二年間の推移を見てみますと、雇用全体としては順調な伸びを示しておりますが、大企業と中小企業と比べてみますと、大企業においても伸びを示しておりますが、中小企業におきましてはやはり同じような伸びを示しておるということが結果として現われるわけでございます。
  20. 滝井義高

    滝井委員 製造業なら製造業一つをとってみましても、非常に中小企業の方が伸びておることは事実です。そこで今あなたの方の数字——私の調べた数字もそうなっておるので、あなたの方の数字を確かめてみたのですが、とにかく二十九人以下、十人から二十九人が二百五十五万、これは五人から二十九人にしても五百七十万ですね。これは五人と十人ですから、ランクが違いますが、これだけを見てもとにかくふえておることは事実です。千人以上くらいにおとりになると、もっとこれが大写しに出てくるのです。われわれが大企業というときは千人以上です。そして健康保険組合でも作ろうというのは千人以上です。そうすると千人以上で、三十一年から三十三年くらいの間の統計を見ても、たとえば製造業では千人以上は十八万四千人くらいしかふえていないが、三百人未満になると五十二万七千くらいです。だから集中的に現われておる。そして千人以上でふえているのを、今度は労働者の質で見てくると非常に特徴的なものが現われてくる。ふえているのは社外工か臨時工ばかりです。こういう層は失業保険の恩典に浴さないのです。そして景気の変動によってさっと首を切られていくのですから、ある者は失業保険の思典に浴しているものもあるが相当浴さない者がある、こういうことです。それで大企業の増加をしておるものは、その労働者の質が、雇用の形態というものが非常に不安定な状態雇用形態です。そこで今後の日本の産業のオートメーション化につれて、大企業の雇用は総体的に見て増加をしない。しかし増加する分についてそれを見ると、これはあと雇用の一般の問題のときにまた質問をしたい思いますが、見てみますと、それは臨時工的なものです。非常に雇用の不安定なものがふえてくるということです。そこで今後失業保険の部面で活躍しなければならぬものは、やはり大企業におけるこういう臨時工的なところに失業保険というものは大きく手を伸ばさなければならぬという感じがするのです。そういうところにもう少し手厚い失業保険の政策というものを拡大していく必要がある。もちろん臨時工だって六カ月以上勤めれば失業保険があるわけです。しかしそれが短期に切りかえられていくことになると非常にこれは不安定になるわけです。こういう点についての対策を一体あなた方はお考えになっておるのかということです。私は特にきょうその技術革新、投資経済拡大、こういうものと失業保険との関係を遠巻きながら持ってきたのは、こういうところにいきたいからなんですが、結局日本の大企業は、雇用はふえておるけれども、不安定雇用がふえておるということです。それに対して一体どういう対策をこの失業保険との関連でお考えになるのかということです。
  21. 堀秀夫

    ○堀政府委員 いわゆる臨時工につきまして、その数が総体的に増加しておるということは御指摘の通りでございます。これはやはり日本経済の底の浅さを反映する一つの証拠ではないかと思うわけでございます。失業保険につきましては、御承知通り失業保険法十条によりまして除外の規定がございますが、それにつきましても、今までの雇用数、その勤務した日数を見まして、これが相当部分継続すればこの除外をはずしていく、こういうことになっておるわけでございます。また日雇につきましては日雇いの失業保険がある、こういうような状況であります。  そこで、さらに離職した場合の保護を手厚くする方法はないかという問題であります。これにつきましては、労働政策全般的な見地からの問題と、失業保険からの問題と、二つに分かれると思うわけでありますが、労働政策全般的な考え方といたしましては、やはり臨時工的なものはなるべく常用的なものに切りかえていくということが好ましいことであり、われわれとしても基本的な考え方は今のような考え方で配慮しておるところであります。特にいわゆる臨時工的なもののうち、雇用形態のはっきりしない、たとえば貸し工であるとか社外工であるとかいうような問題については、これをなるべく直用的のものに切りかえるということが望ましいと考えまして、特にこのような形態の多いような産業につきましては個別的な指導を行なっておるところでございます。  次に、失業保険の面からの対策でございますが、これは先ほど申し上げましたように、臨時的なものでありましても、勤務期間が相当長い者については、この失業保険の規定を活用いたしまして、失業保険給付も受けられるように行政的に考えておるところでございます。なおそれ以上の問題につきましては、これはやはり他の社会保険との関連も出てくるわけでございまして、総合的な観点から今後検討を進めなければならないと思っておるわけでございます。社会保障制度審議会に対しましても、昨年の九月政府から、社会保険全体の総合調整につきまして諮問を申し上げておるところでございます。これらの問題についてわれわれの方でも社会保障制度審議会の御検討を仰ぐと同時に、昭和三十四年から三十六年までの間の保険経済状況を総合的に検討いたしまして、国庫負担あるいは費用調整の面についても考えたいと思っておりますが、そのこととあわせまして、この給付の面についても全体との総合調整を見ながら検討を進めて参りたい、このような考えでおるわけであります。
  22. 滝井義高

    滝井委員 労働政策の方ですが、労働政策全般から臨時工を常用工に、社外工を直用工に切りかえていくと言うけれども、最近の傾向をごらんになりますと、たとえば製造工業におきまして、三十三年九月と三十四年九月を比較してみますと、常用雇用の指数は、三十三年九月が一二六、これが三十四年九月になると一二九と、三しか上昇していない。ところが、お宅の方の労働省で調べた資料ですが、臨時日雇いの延べ人員指数の伸び方を見ると、非常に顕著ですね。三十四年八月では前年度比で三九・七%の増ですが、それが今度は九月になりますと、わずかに一カ月の後ですが、五二・八ですよ。これはもう明らかに製造工業においても臨時工的なものが伸びてきておるいわゆる岩戸景気——神武景気を上廻る岩戸景気だといっても、いつも私が言うように、日本の資本家階層というものは、今の岸内閣経済政策産業政策というのは、信頼していないんですよ。いつまたパニックがやってくるかもしれない不況がやってくるかもしれないのだ、だからとても常用的なものでは大へんだ。臨時的なもので、いよいよ首切るときに労働攻勢がかけられないようにしておかなければいかぬ、こういう気持があるんですよ。これは松野さんが労働政策全般の問題として、日経連でよく演説されるんですから、こういう点は演説するときはやはり冒頭に演説してもらわなければいかぬですよ。最近における経営者諸君は、臨時工をふやしておる。これは日本雇用形態をますます不安定にするものである、もしも真に愛国心があるならば、日本国民の生活の安定を願うならば、これを常用工にしてもらいたいということをやはり言ってもらわなければいかぬと思うのです。ところがそういう点はどうもあなたのあれを読んでみるとあまり触れておらぬようでありますが、これは触れてもらわなければいかぬです。  その次は、失業保険法の十条で、被保険者から除外されるものについては、徐々にその除外からはずすようにしておるというのですが、何か具体的に、最近これとこれとがこういう方向で除外からはずされたというのがあればお示し願いたいと思うのです。
  23. 堀秀夫

    ○堀政府委員 十条の適用につきましては、日雇い労働者でありましても、このただし書きにありますように、「二月の各月において十八日以上若しくは六月において通算して六十日以上同一事業主に雇用されるに至った場合、」これは適用されることになっておるわけでございます。それから同じく「季節的業務に四箇月以内の期間を定めて雇用される者」、これにつきましても「所定の期日を超えて引き続き同一事業主に雇用されるに至った場合、」は適用する、このようになっておるわけでございます。またいわゆる「試の雇用期間中の者」につきましても、これが「十四日を超えて引き続き同一事業主に雇用されるに至った場合は、」同じく適用する、このようなことになっております。従いましてわれわれの方の行政的な措置といたしましても、事実上同一事業主に引き続き雇用されるに至った者につきましては、失業保険を適用する、このような考え方で進んでおるわけでございます。
  24. 滝井義高

    滝井委員 そういうのが相当程度に実際に適用されておりますか。できれば現在の実態を少し……。
  25. 堀秀夫

    ○堀政府委員 ただいまそのこまかな数字は手元に持っておりませんが、後ほどまたお手元に差し上げたいと思います。
  26. 滝井義高

    滝井委員 失業保険法十条関係の被保険者から除外された者に、さらに恩典を浴さしめる方向にいった最近の傾向をお示し願いたいと思うのです。  次は、今までの結論としては、結局大企業においては雇用はふえておるけれども、それは臨時工的なものだ。実質的に日本の技術革新によって雇用の増加を集中的に見ているというのは、三百人未満の、いわば中小企業に集中的に現われている。従ってそこらの雇用というものは、非常に不安定な雇用であるので、ここに、失業保険というもののあり方が、日本の現在の産業構造、雇用構造に見合ってやはりある程度再検討されなければならぬ段階が来ておるというのが、今の質疑応答を通じての私の結論です。おそらくこれはあなたもお認めになると思うのです。ぜひもう一回失業保険労働省としては見直してもらいたいと思うのです。  次にはもう一つの面があるのです。それはどういう面かというと、この日本においてはそのようにたくさんな雇用が一応ふえつつあります。戦前三十五、六万というのが、百三十万台、百四十万台、こうふえつつあります。問題は、そのふえつつある労働者の需要の内容変化です。現在新しい労働力というものは幾らできていきますか、それをまず先に説明していただきたい。
  27. 松野頼三

    松野国務大臣 先ほどの、統計で三十四年度には非常に臨時工がふえた。確かにふえましたが、滝井さんも御承知のごとく、一定期間は、半年とか一年とかいうようなものは、雇用者というのは、臨時見習いという期間があるのです。こういう雇用形態も社会通念として御承知の上で三十四年はふえたではないかという——三十四年は、新規雇用者は、ややもすれば、暫定期間は見習工、臨時工あるいは暫定勤務というのが今日の雇用の通念になっております。これがいつまでも、三年も四年も続くという場合と、ことに三十四年のふえた部分については、その辺ももちろんお考えでございましょうから、私の方も御説明を申し上げておきます。  なお賃金の問題は、いろいろな問題がありますが、御承知のごとく最近は上から下まで全部ふえております。ふえ方の比率が今の御議論だろうと思います。従って最近の雇用情勢はどうだというと、一番はっきりしますのは、第一次産業、第二次産業、第三次産業という統計をとっていただくと、日本は何といっても、第一次のものが一番多い。それから第二次が少なくて、第三次がふえておる。一番極端な例は、第一次がだんだん減って、第三次がふえております。第二次もふえておりますが、ふえる比率は少ない。第三次が目立ってきております。最近第二次が——おそらく設備投資というお話ならば、これは第二次産業だと思うのです。従って第二次産業を伸ばすことが今後の日本雇用の中心だと私は思います。これは私のみならず、先般の雇用審議会の答申もそこに焦点を置いたものです。従って財政経済政策から言うならば、いわゆる投資、これは第二次産業です。第二次産業に健全雇用を伸ばすことが、今日日本の置かれた一つ立場ではなかろうか、こう考えております。アメリカは、一、二、三で、第一次が一番少なくて、第二次がその次、第三次が一番多いのです。アメリカは、一、二、三となっております。ドイツではそれと逆になっております。第二次が一番ふえておる。国柄によっていろいろ問題がありますけれども、日本では一番目立ちますのは、第一次が多くて、第二次が少なくて、第三次はどっちかというと相当伸びております。そこに産業と雇用を結びつけるならば、そういう今年の方向を打ち出すために、第一次産業から第二次に入りやすいように、農林省は農村の二三男対策とおっしゃる。私の方は農村の雇用対策として職業訓練所というものを今回十四個所設置したのはその趣旨からです。十四個所ではこれはとても問題になりません。問題にならないが、方向を打ち出したのは、その意味であります。それは第一次産業をなるべく減らして、第二次に持っていきたい。それには雇用条件として技術訓練をやることが一番望ましいというので、農村に職業訓練所を設置するという予算をことし作ったのはその趣旨なんです。そういうことから考えて参りますと、日本は今後やはり健全な第二次産業——ただ第二次産業の中で、大中小のお話が出ました。多いものはどんどん伸びていくのではないか、しかも雇用はあまり伸びないのじゃないか。一番はっきりしておるのは、自動車工業です。これを見ていただけばわかる。自動車工業を中小でやれるか、これはやれません。あくまで自動車工業は大企業、大資本でなければやれません。鉄を見て下さい。製鉄事業は中小企業じゃできません。従ってやはり事業種別に、そこにおのずから占める分野が私はあると思う。大が必ず中小を圧迫するんだという概念は、私は今日の産業には通らない。大は大の、大企業の持つべき使命と方向があります。中小は中小として存在する方向と理論があると思う。日本の産業形態というものの諸外国と違う基礎を把握しなければ、私は産業政策は立っていかないと思うのです。従って、自動車工業はどっちかというとうんと伸びている。しかしある部面、シャーシーをとると、大きなプレスをするのに、十人使っていた者が五人になれば、確かにプレスは五人減ります。しかし生産能力は三倍にふえております。三倍にふえるためには今度エンジンの部面ということになりますが、エンジンは人間の手で作らなければなりません。十人の者が今度は三十人要るわけです。三倍のシャーシーを作るには、三倍のエンジンが要るのです。従ってプレスのときに減っても、今度エンジン部門では三倍、十人が三十人必要になってくる。従ってプレスで五人減ってエンジンで二十人ふえるのです。そういう形態が今後自動車工業の機械化が進むにつれて出てきます。従って雇用の中では、精密機械、レンズそういうものが機械化が進んでおります。一番生産性か高くなっておる。しかも雇用は逆にふえておる。だからそういう場面が、今日の雇用と産業形態が、大企業が常に中小を圧迫するということは今日ではすでに時代が変わってきた。もう一歩前進した近代産業になりますと、大は大の占める道がある、中小は中小の占める道があるというので、混乱した時代からは、産業の発送した今日では変わってくるべきだと私は思う。その意味で常に大が小を圧迫するということはだんだん整理されてきている。大は大の占める位置、中小は中小の占める時代がくると思う。その方向雇用の面においてぼつぼつ現われてきております。私は、そういう意味で大も育てなければならない、中小も育てなければならない。臨時工もなるべく常用工にしなければならないということが先ほどの統計の中から出ているのに、なお私からつけ加えて御説明すると、今日の問題がはっきりするのではなかろうか、こういうような考え方です。
  28. 滝井義高

    滝井委員 私のさいぜんの質問は、新規の労働力、これの増加というものはどういうようになっているか、それをちょっと数字で示してくれというのです。
  29. 堀秀夫

    ○堀政府委員 新規の労働力人口の伸びは、昭和三十四年四月から十二月という最も新しい数字で、平均して前年同期と比べてみますと六十六万の増になっております。それから昭和三十五年度につきましては、三十四年度に比べまして六十二万伸びる、このような予測をしております。それから先は、これは御承知のように終戦向後の非常な混乱を反映いたしまして出生人口等が非常に違っております。その関係で年によって食い違いがあります。ある年におきましては九十万、ある年においては六十万というような食い違いがございますが、大体落ちつきます昭和四十年度以降につきましては、一年に大体六十万程度の増加になるだろう、このように考えております。
  30. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、具体的に申しますと、新規に学校を卒業して就職戦線に入ってくるものを一応押えればいいわけですね。そうしますとこれは一体どういう形になりますか。今まで過去の統計をざっと、一番最近のものを見てみますと、これは三十三年くらいになるのですか、このごろ文部省から出た統計を私ちょっと見たのですが、大体大学卒業生のうちの就職希望は十万、それから高等学校が四十五万、中学校が七十万程度で百二、三十万になるのじゃないかと思うのですが、新しい学校卒業者の就職希望者というのはどの程度労働省として押えていますか。
  31. 堀秀夫

    ○堀政府委員 大学は先ほど滝井委員御指摘の通りでございます。それから中学校、高校、これが問題になるわけでありますが、三十四年の三月の卒業者数は中学校が百九十六万、高等学校が八十五万合わせまして二百八十一万、こういう数子になっております。そのうち就職希望者は、昭和三十四年につきまして、中学校は六十万、高校が四十六万合わせまして百六万、このような数字になっております。それから三十五年、本年についてはどのような見込みであるかということになりますれば、これは卒業見込み者の数が中学校百七十六万、高校が九十二万、合わせまして二百六十八万、そのうち就職を希望する者の見込みが、三十五年におきましては中学校五十四万、高校五十万、合わせまして百四万、大体こんな数字になるのではないか、このように思っております。
  32. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、百十万から百二十万程度の者が就職を希望する、こういう大ざっぱな数字が出てきたわけです。そこでこの就職希望者に対して経済拡大をし、雇用が増加をし、技術革新が進行する過程の中で、一体需要側は今の供給に対してどういうものを望んでおるかということです。これはわかりませんか。これがやはり失業の問題と重大に関係してくるのですね。
  33. 堀秀夫

    ○堀政府委員 最近の求人側の希望を申し上げますと、中学卒、高校卒につきましては需要が非常に伸びておるわけでございます。要するにそのような新規学卒というものに対する需要を特に望んでおるわけでございます。それに反しまして、たとえば中年あるいは老年というような層の者につきましては、これも最近の状況から見まして、  一時に比べますれば需要はふえておりますが、学校卒業者に対するほどのものはない。求人の側からいえば、やはり何と申しましても新しく学校を卒業する者をぜひほしいということで、求人の数は本年につきましては求職を上回っておる、このような状況でございます。
  34. 滝井義高

    滝井委員 どうも労働省は少し分析が足らぬのじゃないかと思うのです。私は、達観的にずっと見てみますと、まず第一の特徴は、技術系統が非常にふえておるということです。たとえば出光興産の徳山工場なんかを見ましたが、これはやはり増加しておるのは技術系統ですね。特に工業高校ですか、こういうのがふえてきておるのです。そうして雇用というものは、学校卒業者の中でも事務系統、無技能者はありませんよ。雇用は非常に少ないのです。少ないというのは相対的に少なくなってきておるということです。いわゆる求人側の求めるのは何かというと技術系統です。これが非常に多いのです。特に特殊な技術革新が進む部面においてはそれが著しいのです。これが私は一つの特徴だろうと思うのです。そうしてその特徴に対して、大学卒にしても高校卒にしても技術系統が少ないという第二の特徴が現われてきておる。だから娘一人に婿八人ですよ。そういう特徴が現われてきています。それからもう一つの特徴は、今あなたのおっしゃったように新しい卒業者というものが非常に要望されて、そうして中年以上の者が——これは昔の技術のない中年以上の職長クラスの者が一たび職を失うとあと就職機会がないですよ。こういう形態が現われてきておる。そういう傾向は特に技術を必要とする大企業になればなるほど著しい傾向として出てきておるわけです。こういう状態が顕著に出てくる。技術系統というものが非常に重んぜられて、無技能者、事務系統というものがなくなってくるという、こういう形態は、失業保険で余った金を失業救済の施設に金をつぎ込んで施設の充実をはかる場合に、どうしてもわれわれが失業保険制度とともに一つの政策転換を考えるべき理論的な支柱をなしてくるのではないかと私は思うのです。一応日本の産業政策としては、貿易自由化の中で外国に負けないようにするということになれば、当然技術革新をやらなければならぬ。雇用がある程度減ってくる。ところが、松野さんがさいぜん言われたように、技術革新をどんどんやって、雇用のふえる面というのが、私は安定したものにはないという見方をするのです。これを調べてみますと、何せ日本の技術というものは、外国から輸入してくる技術です。そうしますと、その技術部門ならばメーターを読むだけのもので、いわゆる工業学校、工業高等学校を出た者がずっとメーターを読んでおればいい。新鋭の火力発電なんかみなそうです。目をつけていればいいのです。昔の古い職工さんなんというのは役に立たない。昔ならば六十キロの鉄棒をかついで、そして二百メートルの競走をして一番早かったから雇う、こういうことであったのです。ところがそういう労働力を今必要としないのです。六十キロの鉄棒かついで二百メートルを一番早く走ったやつが採用だというわけにはいかないのですよ。やはりメーターを読み、温度計を見ながら、炉の温度その他を科学的に調節をしていくという能力が必要になってくるのですね。そういうことになってきますと、やはり雇用の増加の中における教育政策といいますか、職業安定行政の中でもむしろ職業訓練の面や何かというものに、今後やはり失業保険失業保険金のほかに金をつぎ込まなければならぬという面が出てくると思うのです。だからそういう点にしても、今のような中学校やら高等学校卒業者が新規に増加を望まれておるのは、これは事実その通りです。しかしそれは、日本に新しい工業技術を持った人はいないから、やむなくそういう人でやっておるだけです。こうなってくると、日本の産業政策のあり方、それから日本の学校教育の問題とも関連をしてくるが、労働省の内部においては特に職業補導、職業訓練制度というような技能者養成の面に非常に大きな関連が出てくると思うのです。こういう点、昔ながらの、失業したら平均賃金の六割の失業保険をやります、支度金をやりますというようなことでなくて、もっと積極的に支度金も上げます、それから職業訓練手当も上げますが、同時に余った金があるならば、労働者の再訓練のための経費というものを、やはり失業保険というものは失業救済の施設にも活用していかなければならぬという問題が顕著に出てくると思うのです。そういう点でもう少し、やはり失業対策というようなものを、単に首を切られて失業したから失業保険をやるという昔ながらの失業保険あり方ではなくして、日本の産業政策なりあるいはこれは公共事業にも関連が出てくる。今までのようなちゃちな一般失対とか炭鉱の緊急就労対策事業ということでなくて、やはり公共事業というものの方がもっと安定するのですから、そういう部面に産業政策としての方向失業保険方向、公共事業と失業保険方向、教育政策的な面、職業訓練、そういうものと失業保険との関係というような、もう少し高度な失業保険のあらゆる政策への結びつきというものを日本では考えなければならぬ時期がきていると私は思うのです。それはちょうど今、日本経済の自由化のあらしの中における一番盲点になり、労働省考えなければならぬ政策の一つの柱になるのじゃないかと思うのです。今のように労働省が単に中学、高等学校の卒業生がうんとふえて、それを望む者がふえましたというようなきわめてありきたりな答弁では、どうも労働省の労働政策というのは分析が足らぬという感じがするのですが、何かそこらあたりでいい御答弁があればお伺いしたい。
  35. 松野頼三

    松野国務大臣 今の滝井さんの御意見は私の今まで申しました労働政策と同じ方向であります。私も失業保険というものの性質をその方向に持って参りたい。同時に本年の予算編成のときにもそういう議論が出ました。御趣旨のような議論自民党から出まして、そして失業保険の一部を職業訓練に積極的に使えという意見が出ました。その声にこたえて今回は、今までにない画期的な六億という増額がやってあるわけであります。方向はその方向であります。ただどの程度かということは、初年度でありましたから、その趣旨に沿って六億円の増額と、今までになく画期的なものであります。比率にいたしましても、相当な比率であります。三〇%ぐらい私は対象になるのじゃなかろうか。実は相当な職業訓練の比率をふやしましたのは、そういう趣旨からであります。私たちも失業保険金をいたずらに積み立てるだけが能じゃない、それをやはり活用するにはその方向に向からことがすべてにおける近代的労政だと思っております。たまたま実は自民党からも同じようにそういう声が出て、その結果が実は六億という金額になったわけであります。その声に応じておそらく与党修正というものをお出しになったのじゃなかろうか、方向はやはりそっちの方向です。世界じゅうその方向に向かっているのです。やはりもうこうなれば腕の競争と質の競争になってきた。その時代になお腕と質を高めるには職業訓練、また先般御賛同を得ました技能検定もこれに当てはまるのです。労働市場を広く求めるためには、技能検定というものによって格づけをして、ことにこれは中年であります。いわゆる大体技能検定を受ける方は中年であります。中年の雇用が非常に不安定である。あるいは間口を狭めていけませんから、広く日本じゅうの産業に通用するように今後は技能に格づけをして、どこのだれだというふうに履歴書によって一本で就職が自由にできるようにしなければならぬ。これは中年層に対して私は特に必要だと思う。こういうことがやはり雇用市場の流通化をよくすることであるという意味で、私はまず職業訓練には滝井さんのお考え通り私も賛成であり、与党も実はその方向に沿って今回の予算にはずいぶん努力をいたしました。
  36. 滝井義高

    滝井委員 とにかく新しく出てくる高校なり中学の卒業生については非常に需要が多い。しかし中年以上の者には中間採用が伸びていないということですね。それでこれに対して今職業訓練のこともちょっと出ましたが、一体日本全体における雇用の構造の質的な変化の中で、すでに古い教育を受けた中年以上のこの労働層、しかも日本では今後中年以上というものが非常にふえていく。そうして一方においては、昭和二十二年、二十三年に生まれた子供が今小学六年ですから、これが三年後には新しい雇用労働力として雇用市場に出てくるわけです。そうすると、若い労働層はひしめき立っておる。一方中年以上の人たちはやがて停年前で、だんだん企業がオートメ化されてくると、首切られていくことは明らかです。すでに炭鉱においてはそれが見えておるわけです。これは炭鉱だけでなく、他の産業にも今のような産業政策を進めていけば必ず余るのです。そうしますと、労働省としては、中年以上の失業者に対して——もちろん失業保険も中年以上の人が家族を養っていくだけのものを、今のような六割だけじゃなくして、内容の改善もやらなければならぬと思うのでありますが、それ以外に何か中年以上の人たちに対して具体的な対策がありますか。単なる訓練をやるということだけではなかなかうまくいかぬと思うのですが、中年以上の増加をする失業者群に対して、一体どういう方法をとるか。単なる緊急就労対策事業とか一般失対事業だけでは、とても社会的な不安は除去できぬと思うのですが、何かそこに新しい構想でもお持ちであるならばこの機会に御説明を願いたい。
  37. 松野頼三

    松野国務大臣 中年層の雇用が一番離間だという大きな問題は日本賃金構造であります。やはり勤続賃金というものを日本はとっております。従ってなかなか雇い入れないというのは、かりに能力が同じであっても、年令が高年令になれば、いわゆる賃金構造というものは年令賃金でありますから、そのためにおのずから雇う方が間口を狭めるのであります。諸外国の中にも日本のような賃金構造をとっておる国もあります。しかし全然その点が薄い国もあります。それはおのずから国柄の歴史と、今日の賃金構造がやはり年令賃金ですから、また扶養家族もふえてくるというので、同じ労働力でもなるべく若い者をというところにも一つの問題点があるわけです。同時に日本は高年令層を首切るということはなかなか少ないのです。ただ大きな産業変化はこれは別であります。平均が正常な場合には、中年というのは身分がその会社にずっと子飼いされて移動力が少ない。たまたまそういう移動力の少ないところから失業者が出たというと、今度は他の産業がなかなか雇用してくれない。石炭離職者のときにもこれに一番苦労いたしました。その後において、やはり産業内における技能訓練というものが必要になってきた。臨時的には、石炭離職者に職業訓練を当てはめて、他の産業への転換を容易にしたわけであります。そういうところも非常に問題があるところで、まだ万全じゃありません。しかし今後とも方向としてはその方向に踏み切る以外にない。他の産業への転換指導と技能を与えること。そのために企業内における訓練というものを常々やるべきだと思っております。これが中年令層における一番大きな問題である。数よりも質において中年令層は非常に問題が多いのじゃなかろうか。それは日本の社会的状況賃金構造、それからもう一つは技能というものがありません。石炭については長年勤続しても、他の産業において能力検定はだれもできないのです。人物試験はできましても、能力がわからないのです。そこにおのずから流通市場に出られるような格づけをすることも必要なんです。一番はっきりしておりますのは大工さんとか左官さんで、これは日本中共通にどこでも使えるのです。これは高年令層でも失業という問題はあまりございません。何らか腕に、産業戦線に出て通用する技能を常々持たせるように訓練することが、私は必要であると思います。これはただ職業訓練所に入れるという意味ではありません。職場内において常々そういうことを認識しながら、産業と雇用問題を解決していかなければできないのじゃなかろうか。この一番いい例が石炭であります。
  38. 滝井義高

    滝井委員 日本賃金形態が年功賞金の様想を帯びていることはその通りです。そうしますと、現在日本の完全失業者というものは——これはその統計が正確かどうか、どうも問題がありますが、大体五十万前後を上下しておるわけです。この五十万前後を上下する完全失業者の年令構成ですね。完全失業者というのは労働省はよくお出しになりますが、その年令的構成というものは一体どういう把握をしておるかということです。おわかりになりませんか。
  39. 堀秀夫

    ○堀政府委員 完全失業者につきましては、御承知のように総理府の労働力調査、これによりまして抽出方法によって推計をしておるわけでございまして、その年令別な構成はわかっておりません。
  40. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと失業保険の受給者というのが、最近は三十四、五万くらいおりますか、三十万台になってきました。一九五五、六年ごろはずっと四十万台だったのですが、五六年ごろから三十万台になってきたのです。この三十万の失業保険の受給者の年令構成はおよそわかりますか。
  41. 堀秀夫

    ○堀政府委員 ただいまのところ、業務統計では年令構成が出て参りませんので、把握しておりません。ただ将来の問題といたしまして、いろいろな社会保険全体の総合調整の見地から全般的に検討いたしますには、そのような資料が必要になってくると思いまして、近くそういうような抽出的な調査をしてみたいとは思っておりますが、現在ではございません。
  42. 滝井義高

    滝井委員 私はそこがやはり労働省の盲点になっておると思うのです。失業保険を六カ月——一番多いのは六カ月ごろだろうと思うのですが、二百十日とか二百七十日というのは割合少ない方でしょう。六カ月間なり七カ月同の失業保険をやったら、あとはその労働者がどういう運命をたどろうと、それはおれらの知ったことじゃないということではいけないと思うのです。これはさいぜん松野労働大臣も御指摘になった通り失業保険をもらう期間が長ければ長いほど、失業保険が切れて就職する機会がなければないほど、次の就職のときは前よりずっと悪い条件になることは確実です。特に炭鉱地帯では顕著に現われているのです。二年くらい失業が続くと元の炭鉱労働者の賃金の三分の一くらいになっているのです。急激な生活水準の低下を来たしているわけです。従ってこの三十万、四十万の失業保険の受給者の運命が一体どうなっていくのかということになれば、そこに重点的に、失業保険が切れたならば、すぐ職安の窓口で、君、一つ職業訓練に入りたまえ、君の年令になったならば職の転換は腕に技術を持つ以外にはない、それには大工さんでもいい、左官屋さんでもいい、ブロックの建築でもいい、これに入りたまえという指導が行なわれないと、もはや失業的な病いが膏肓に入って、生活保護に入ってき、生活保護がどうにもならぬようになってからこの人たちを持ってきて、そうして職業訓練をやろうということになっても、生活意欲を減退したような者に対して生活意欲をかき立てるようになるから、時間がかかるのです。ところが失業保険が切れる直後ならまだ一個の労働者という意欲は旺盛です。だからそこらあたりで次の失業保険を延ばして訓練して、新しい職業に転換さしていくという政策が、失業保険にすぐ継続して、きびすを接して行なわれていないところに問題があると思うのです。こういう点、松野さんは今年度の予算通りましたら、さっそく各職業安定所の所長を呼んで訓示されると思うのですが、そこらあたりの新しい行政指導をもう少しやると、この社会不安というものはある程度軽減ができるのじゃないかという感じがするのですが、どうですか。
  43. 松野頼三

    松野国務大臣 滝井委員の御指摘の通りであります。失業保険を支給している期間は、どちらかというとまだ失業保険があるからという安心感が非常に多いのです。失業保険が切れそうになると就職活動が非常に苛烈になる。そうじゃなしに、失業保険受給当時から就職活動を始めた方がよりいい条件です。しかしやはり人間というのは、失業保険受給期間中は何となしにまだいいんだという安心感があるのですが、なるべく早く、失業保険受給の六カ月の中の三カ月、四カ月、五カ月の間に就職するように私は進めて参りたいと思います。それでは残余のものがもったいないじゃないか、失業保険のある間は満杯をもらった方がいいのだということではなかなか条件が悪くなる。その意味で、政府与党一致したと言うとおかしいのですが、今回の議員修正案というのはそういうところに御着目をされたように私は感ずるのです。なるべく早く就職させるというふうなところはおっしゃる通りで、そういうことが顕著に見えてくるので、何とか早く、失業保険を支給されても早い期間就職してもらいたい。それは最近の雇用条件から全然不可能じゃありません。ある程度熱心にやれば相当就職がふえるのですから、この機会に私はより以上これを進めるという方向失業保険精神を導いていきたいと思います。最近の状況はおっしゃる通りであります。私もなるべく早く、失業保険期間中だからと安心感を持たずに、早い時期に就職されるように進めたい。これは失業保険の財源がプラス、マイナスという意味じゃありません。雇用全般に及ぼす大きな問題だと思っております。
  44. 滝井義高

    滝井委員 これで終わりますが、一つそこらあたりの政策をもう少し積極的に進めていただきたいと思うのです。私はなぜそういう主張をするかと申しますと、私の経験からして、健康保険の結核の療養給付は三年、傷病手当金は一年半です。ところが結核患者が一番あせりを感じて死ぬのは——最近はパス、マイシンができたのでだんだん死ななくなりましたけれども、その傷病手当金が一年半で切れるというところでうんと死ぬのです。だから一年半近くなりますと、結核療養所の所長は、結核患者の病気をなおすことの相談よりも、その患者の家族の生活をどうするかの身の上相談所の所長になるのです。失業保険も心理は同じです。ただ一方は健康で一方は病気だということで、一方の結核患者の方の心理が濃厚に現われてくるだけであって、その潜在的な心理は同じだと思うのです。そういう意味でやはり失業保険の切れる前、あるいは切れた直後に積極的な次の政策というものを、もう少し大きく転回してもらいたいと思うのです。与党出しているようなちゃちなものではなんですから、今の御意見もありましたから、われわれも与党なり松野さんと御相談をして、できればああいうところをもうちょっと力を入れて、一つこの際思い切って修正をして、一九六〇年が単に一握りの人たちの黄金の時代じゃなくて、貧しい失業者の黄金時代にもなるようにしてもらいたいと思うのです。  全般的な質問はこのくらいにして、あと個々の質問はあとに譲ります。
  45. 永山忠則

    永山委員長 午後二時まで休憩いたします。     午後零時三十一分休憩      ————◇—————     〔休憩後は会議を開くに至らなかった〕