○
八木(
一男)
委員 今
滝井さんからのいろいろ示唆に富んだ御
意見があって、
小山さんの方からいろいろな御
答弁があった。私は、尊敬する
滝井さんだけれ
ども、ちょっと見解が違うのです。それで私の見解も
一つ参考にしていただきたいので、先にちょっと言っておきます。
非常に
保険料徴収が困難であるという事情は、
滝井先生の言われたように、
小山君が
お答えになったように、そういう
現状があることを私も知っております。知って、そういう
年金制度について、党の承認を得て私なりの案を作った。それで
政府の案は、私
どもの案と
内容は非常に違いますが、形態は似ているわけです。われわれの
考え方も
政府案で
相当に参酌されたことを私知っております。そこで違うのは、
拠出制が前進しないのは、さっき言ったことに関連をしておるわけです。たとえば
年金保険料は
ほんとうに完璧にやったならば、差し押えをして取ってもいい。それでなければ
財政が続きません。ただ差し押えをして取ってもいいかわりに、それが取り得る態勢の
保険料——われわれは
年金税と言っておりますけれ
ども、そういう態勢を作らなければこれは強行できない。そこでさっき
定額制はどうかという問題を申しあげた。百円、百五十円の
定額制で、その日暮らしの人も、
住友吉左衛門も同じであれば、それを強行して差し押えをすることはできない。これは社会問題です。そして収入の割合で増減をした
保険料制度を作るべきであるということを申し上げた。そういうことが完全になれば、これは差し押えをしても取らなければ
年金制度というものはでき上がらない。ところがそういう
制度でないから、
滝井先生のおっしゃるように取ったらいかぬじゃないか、取ることは困難ではないか、これは当然の
議論です。
ほんとうの案は、当然取り得るところは差し押えをしても取るという態勢になる。それを
考えていただきたいということです。免除をやる
——政府には
減免という
規定はない。免除
規定だ。そういう、一割は取れない人があるだろうから、免除
規定を作った。
社会党案の一部をまねしておる。いいところをまねしているのはいいけれ
ども、いいところは全部まねしてほしい。
社会党案は
減免とある。百円を全部免除すべきだとか、全部無理やりに取るべきだという見解ではないのです。百円は取れる、九十九円なら取れる、七十円なら取れる、三十円なら取れる、十円なら取れるというのもある。それを片っ方では免除、片っ方では取らなければだめだというような
事務的なことだけを
考えた
制度をやっておる。このためにそれが完璧にいかない。免除ということが必要であれば、当然減額ということが必要だということは
考えられなければならない、そういうことなんです。全体の
保険料として、
定額ではなしに、こういう態勢を作るべきであるということ。それから
相当下の方の
ほんとうに払えない人を実際的に
考えるときに、全額が免除でなしに減額。減額、免除という過程を踏まなければ合理的なものはできない。それをしたならば今度は
強制的に取り上げるべきだ。一般的にいろいろな学者がいろいろなことを言いますけれ
ども、この
年金を
根本的に
検討しない学者が多いのです。
社会保障制度審議会の特別
委員会に参画した
人たちは
検討しているけれ
ども、ただ片方の方面から
年金制度を批判する人が多い。あらゆる面から
年金制度を
根本的に
考えた学者は、
日本の中で非常に少ない。それで、ある有名な学者が、こっち側から批判したからといってぐらついては、
年金制度はつぶれます。すべての側から
検討してやらなければならない。
年金制度というものは非常に複雑なものである。そういうタイプです。そこで
ほんとうに合理的な計算があり、減額があり、免除がある
制度を作り上げた以上は、
強制的に取り上げなければ
年金制度というものは発達しない。無拠出で完全にやることは賛成です。完全にやるということであれば賛成ですけれ
ども、その
金額が千円程度ではだめだ。月に少なくとも最低七千円、そういうものを
ほんとうに無拠出で完全にやる覚悟があれば、今の
制度をつぶしてもけっこうです。ところがそれができないからということで、自分の老後を養うために、今の人心に適した方法で拠出をさせることを加味して、そして比較的十分な
年金制度を作り上げようということに踏み切ったところに
拠出制のもとがある。そういう過程ですから、それを貫かなければならないけれ
ども、貫くためには合理的にしなければならない。それともう
一つは、
年金は教育であります。どんないなかの農家の人でも、無尽に入っておる人は多数あるのです。郵便貯金をしておる人も多数ある。酒を飲む人もある。着物を買う人もある。
年金制度というもののありがたさをいまだ知らないがために、月百円のものを出し惜しむという傾向がある。それを知らしめる方法が
政府は非常に不十分だ。今
発足する
拠出年金がもっと十分なものであれば、これが完成されたものが将来に保障されるということになれば、
年金制度に対する意欲が沸く。ところが今の
政府の
制度が不完全であるために、こんなちゃちなもののために月々取られてはかなわないというような気持が起こる。しかも
金持ちも貧乏人も同じじゃかなわない、そういうところに、今の
年金制度を完全にするということに踏み切るということ
——年金制度を合理的にして、この
制度というものを動かして十分なものにしなければ、
日本のいろいろな
制度ができない。完全雇用をやり、片方は社会保障で完全にカバーをして
——病気の問題は大事であります、失業の問題も大事でありますけれ
ども、一番大きな問題は
——病気なんかは医療ですぐなおってしまう時代が来るかもしれない、ガンでも全然心配の要らない時代が来るかもしれない。しかし
老齢は永久に来るのです。そういう場合にあっても、
年金制度というものは、非常に大きなもので、それが完全な形で早く完成しなければ、
日本は福祉国家にならない。そういうことをするためには、今から合理的な
制度を作っておいて、それも強行するという態度をとらなければならない。強行だけではいけません。合理的にするように踏み切らなければならない。そういうことのために来年度、論議のかわされたことを
検討して、りっぱなものを出していただきたいということを申し上げた。そういうことです。
年金制度というものは、ただ気の毒な人にものを上げるという
制度であると
考えてもらっては困ります。
年金制度が完全になることによって、たとえば農家の人も
老齢年金で完全に保障されれば、安心をして早く家督相続をする。そうしたら農業の近代化、共同化が進むわけです。零細企業でもしかり、労働戦線でもやめた人が
——国民年金は農民、中小企業だけではありません、厚生
年金と一緒に通算してやらなければならない。それも完全にやれば、やめてから退職金にかじりついて、今まで部長だったけれ
ども、嘱託で雇ってほしいとか、それから普通の社員であった者が門番でもいいから雇ってほしいということを言わなくても済む。また小さな退職金でつまらない商売を始めて、うまくいっても十分の一、十分の九はつぶれてしまって、路頭に迷う。かくて零細企業の過当競争が起こる。そうすると、ほかの商売人も困る、そういう過当競争だとか、雇用の近代化とか、農業の近代化、中小企業の近代化、そういうことのすべてに関連がある。そういう関連があるものをよくするための
制度には
熱意を入れなければいけません。そうなれば、
発足まで不完全な形で去年提案されたが、来年はできるだけ完全なものにしてやるという
ほんとうの
熱意を示していただかなければ困る。それで
滝井先生の御
意見は十分
検討していただきたいと思いますし、同様に大事な御
意見だ。しかし私の
意見は、そういう見解を持っております。そういう見解も十分に参酌して、そうして来年度には
事務的には間に合わないとか何とか、そんなことは
——いいことを
一つだけでもいいのです。とにかく
改正案を出して、いいことだけでも出していかなければいけません。
それからもう
一つは、
滝井先生がお触れになったうちの一部分ですけれ
ども、労働者の配偶者が任意
適用になっておる。これは任意
適用だからいいとすぐお
考えになる。ところが、
渡邊さんは
法律を全部覚えておられないと思うが、任意
適用には
減免、免除の
規定が
適用されない。一般的な特権が
適用されないわけです。それでは国民公平の原則に反するわけです。当然同じようにやられなければならぬ。また任意
適用では実際にだめなのです。だんなさんがうちで酒を飲んで、女房の将来を
考えているように見えて、
ほんとうに具体的に合理的に
考えていない人がいる。おれは丈夫で百まで生きる、
金持ちになる、だから
あとは心配するなと言ったって、その人は死んでしまうかもしれない、
金持ちにならないかもしれない。そうなれば婦人の
老齢年金というものは確保しておかなければ、婦人は将来が保障されないわけです。それで
強制適用でなければいけない。非常にりっはなだんなさんであれば、奥さんの将来を心配して入れと言う。ところがそうでない人は気がつかぬし、奥さんも気がつかぬし、気がついてもだんなさんの酒飲み代が百円減るということになれば、言い出しにくい。また子供の方の学資が必要だというので、自分の将来はどうあろうとも、子供の方に金を出してしまう。そういうことで、任意
適用では労働者の配偶者は
老齢年金の
適用は受けられない。農村の人の配偶者は受けられる、商売人の配偶者は受けられるけれ
ども、勤労者の奥さんだけが
老齢年金から排除される。そんな行政があったものではない。任意
適用というのは、ごまかしであります。もちろん厚生
年金や公共団体の共済
年金があるから、そちらの方の
給付を受けて、その配偶者の遺族
年金ではなしに
老齢年金を
考えるというならば、もちろんそっちでやられてもよろしい。方法はどっちでもいい。
老齢年金が確保されていれば、そっちでやっていただいてもよろしい。そっちでやっていただくことが
考えられないならば、当然
強制適用ということも
考えられなければならない。こういうことであります。これはもうその
通りです。賛成する。
滝井先生の
意見と違うところは、
あとから
検討するでいいのですけれ
ども、とにかく徹底的に
年金制度について積極的にやらなければ、具体的な
内容として来年度にわかったものだけでもいいから、とにかく
法案として出す、そういう御
答弁を願いたいと思います。