○
八木(
一男)
委員 そこで
厚生大臣、
赤字対策以外の
理由であるという
厚生省の言い分は全部わかった。全部インチキであります。全部
けしからぬ。全部
社会保障を無視したものである。そういうことを言う連中は
社会保障を語る資格はない。というのは、端的に申し上げますと、こういうことです。
最初の
診療費の一部
負担の金が安いと、みんなちょっとした
病気で、前は金が五十円くらいだから、見て下さいといって来る。お
医者が見る、
診療費が高くなる、そうすると
保険財政が困るというようなことから、高くしておけば、ちょっとした
かぜ引きくらいだったら、金を持っていくのはこたえるから行かないということなんです。金の面ではそれはいいかもしれません。それだったら、そんなことを
考えたら、金の面では、一部
負担を千円にでもしたらどうですか。それだけやったら、そのかわり
社会保険というものはないも同じなんです。そういうことでしょう。
厚生大臣はおわかりでしょうか。そういうことなんです。金が多ければ見にくるものが少ないから
財政がいたまないというのです。そうしたら
財政のための
健康保険であって、
病気をなおすための
健康保険ではない。
健康保険というものは、
厚生省がいつも言っているように、
健康保険で
医療の問題は
早期診断、
早期治療ということが本筋であって、そういうことは逆だということは絶対にいえないわけです。早く診断を受けて早く処置した方が、その
患者は早く
病気がなおる。非常に重大な
病気だったら、死ぬことが助かるということになる。
政府管掌の
健康保険に入っているような人は、そんなに裕福な人ではありません。それのためには、金の問題でそれにブレーキがかからないようにするのが
健康保険の本筋なんです。それはすべての人がそう思っている。ところが金の問題も全然無視することができないから、
赤字だ、
赤字だで、どうにでもひっくり返ってしまう。だから、
社会保障制度審議会の
答申は、そんな状態だったら、ごくわずかな
値上げだったらやむを得まい、私
ども反対しましたけれ
ども、総体の
意見で、そういう
結論が出たのです。ところがそれが
赤字だ、
赤字だという条件でなければ、そういう
答申は出ない本筋としては、一部
負担を上げるのはいかぬというのが本筋になっている。あなた方が信頼されている、たとえば末高君であろうと今井君であろうと、みんなそういう
考えです。ただ
赤字で困るからということで、最小額の
値上げならこの場合やむを得ない。
赤字という
理由の
もとに……。
赤字の原因が全然消えている今の状態においては、
もとへ戻すのが
ほんとうなんです。あなた方が信頼しておられる学者も、今は
意見が変わっているかどうかしりませんが、その当時はそういうことです。末高君や今井君だけが権威者ではないですから、もっと総体的に
考えなければならない。だれが何と言おうと、総体的に
考えたら、
ほんとうの
政治家として
考えたら、そういう一部
負担が多いことは、早く見てもらうことのマイナスの現象になる。そうしたら
病気が重くなる、その人に不幸になる、あるいは命を奪われるかもしれない。お
医者さんも重くなって来られたら、非常に労苦を受けることになる。おまけに重くなったら、その間にいろんな処置も薬もたくさん、いろんなことをしなければならぬ。長い目で見たら、
保険財政全体で見たら
負担が多くなる。実にばかな話なんです。
保険財政全体から見ても、早く行って早くなおしたら、かぜで済めば簡単に済むものを、肺炎になったらよけい
診療費が要る、そういうことになる。
患者としては重くなるのはいやだ。
保険財政という長い目で見てもそういうことになってはいかぬ。お
医者だって苦しんでいる
患者を見ておるのはよくないし、忙しいのに肺炎にするよりは、かぜの間に早くなおした方がずっといい。それを一部
負担を
もとに戻さないのは
厚生省の意地なんです。片から
厚生省は一部
負担をとって一時的の
赤字解消をしようとしておる。そんなでたらめの
やり方に対して、
方々から攻撃を受けるので意地になっておる。完全に意地であります。
健康保険の
改正をこの前の二十九年ごろに出したときはまだしも、一番最後に通したときは、
赤字から
黒字に転換しておるときに無理やりに意地で通した。それを
岸内閣総理大臣に私は申し上げた。この人たちが意地で日本じゅうが困るようなことを無理やりに通した。そういう一部の官僚のために日本の政治はひん曲げられておるということを岸さんの前で
高田さんに言ったのです。それで
高田さんは怒っておられた。追及としては最極限の追及であったと思います。
高田さんはほかの点ではりっぱな公務員であろうと思います。熱心な方であることは存じておりますが、それだけ失礼を言ったのは別の
意味では悪かったと自分で思っておりますが、その当時としては、それは言わなければならないだけの情勢であった。どこの人もいかぬと言っておるのに、ただ
厚生省のこの問題に実際に当たった、それの進行に当たった、通過のために努力した人だけが意地で、何でもかでも無理やりに押し切ってしまった。だからそういうあやまちが起こってしまったのです。今度
黒字になって解決するときは、少なくともそのあやまちを三、四年続けたけれ
ども、今度はそのあやまちのないようにするのが当然
厚生省としてやる道である。
厚生大臣は
厚生省のお役人をかわいがりたいでしょう。かばいたいでしょう。そういう気持はあってもいいと思いますけれ
ども、
健康保険という問題は人の生命に関する問題である。そういう事情があっても追及はなさらなくてもいい。あやまちを改むることを早くすればいいのです。それにはこの時期なんです。それを差しおいて
保険料値下げというような一番
あとで
考えるべきことを先にやる、それが総合的に見ていいのだ、そういうでたらめな
厚生行政というものはあったものではない。直ちにやめて、直ちに
方針を変えていただきたい。