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1960-02-16 第34回国会 衆議院 社会労働委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十五年二月十六日(火曜日)     午前十時四十四分開議  出席委員    委員長 永山 忠則君    理事 大坪 保雄君 理事 田中 正巳君    理事 藤本 捨助君 理事 滝井 義高君    理事 八木 一男君 理事 堤 ツルヨ君       池田 清志君    大橋 武夫君       亀山 孝一君    川崎 秀二君       倉石 忠雄君    藏内 修治君       齋藤 邦吉君    早川  崇君       古川 丈吉君    山下 春江君       伊藤よし子君    大原  亨君       小林  進君  出席国務大臣         厚 生 大 臣 渡邊 良夫君  出席政府委員         内閣審議官         (内閣官房内閣         審議室長)   大島 寛一君         文部事務官         (社会教育局         長)      齋藤  正君         厚生事務官         (大臣官房長) 森本  潔君         厚生事務官         (薬務局長)  高田 浩運君         厚生事務官         (社会局長)  高田 正巳君         厚生事務官         (保険局長)  太宰 博邦君         建 設 技 官         (住宅局長)  稗田  治君  委員外出席者         総理府事務官         (自治庁財政局         財政課長)   松島 五郎君         大蔵事務官         (主計官)   岩尾  一君         文部事務官         (初等中等教育         局初等教育課         長)      上野芳太郎君         文部事務官         (大学学術局学         生課長)    西田亀久夫君         厚生事務官         (大臣官房審議         官)      牛丸 義留君         農林事務官         (振興局参事         官)      橘  武夫君         専  門  員 川井 章知君     ————————————— 二月十一日  委員池田清志辞任につき、その補欠として吉  田茂君が議長指名委員に選任された。 同日  委員吉田茂辞任につき、その補欠として池田  清志君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 二月十一日  社会保険審査官及び社会保険審査会法の一部を  改正する法律案内閣提出第四〇号) 同月十五日  精神薄弱者福祉法案内閣提出第五三号) 同月十二日  せき髄障害者保護に関する請願今井耕君紹  介)(第七三号)  国立病院療養所看護婦処遇改善に関する請  願(小川半次紹介)(第七四号)  戦傷病者のための単独法制定に関する請願(櫻  内義雄君紹介)(第七五号)  同(椎名悦三郎紹介)(第七六号)  同(大久保武雄紹介)(第一一〇号)  戦傷病者戦没者遺族等援護法の一部改正に関す  る請願椎名悦三郎紹介)(第七七号)  原爆被爆者及び遺族援護に関する請願(星島二  郎君紹介)(第七八号)  動員学徒犠牲者援護に関する請願保利茂君紹  介)(第七九号)  定年退職者失業保険金一括支給に関する請願(  中山マサ紹介)(第一〇九号)  日雇労働者健康保険法改善に関する請願外一  件(淺沼稻次郎紹介)(第一三〇号)  同外四件(加藤勘十君紹介)(第一三一号)  同外一件(島上善五郎紹介)(第一三二号)  同(八木一男紹介)(第一三三号)  同(山花秀雄紹介)(第一三四号)  同(和田博雄紹介)(第一三五号)  市町村、労働組合等の行う職業訓練に対する経  費負担に関する請願外一件(淺沼稻次郎君紹  介)(第一三六号)  同外四件(加藤勘十君紹介)(第一三七号)  同外一件(島上善五郎紹介)(第一三八号)  同(下平正一紹介)(第一三九号)  同(山花秀雄紹介)(第一四〇号)  一般職種別賃金即時廃止に関する請願和田  博雄紹介)(第一四一号)  一般職種別賃金の増額に関する請願中澤茂一  君紹介)(第一四二号)  同(松平忠久紹介)(第一四三号)  けい肺及び外傷性せき髄障害に関する特別保護  法の一部改正に関する請願和田博雄紹介)  (第一四四号)  職業訓練法の一部改正に関する請願和田博雄  君紹介)(第一四五号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  厚生関係基本施策に関する件      ————◇—————
  2. 永山忠則

    永山委員長 これより会議を開きます。  厚生関係基本施策に関する件について調査を進めます。質疑の通告がありますので、これを許します。滝井義高君。
  3. 滝井義高

    滝井委員 先日、大臣厚生行政全般に対する考え方を聞かしてもらったわけですが、どうも日本厚生行政というものが、今後一体どういう方向に進んでいくのかという、その展望がはっきりしないのです。これは昭和三十六年の四月一日から国民保険が一応形式的に完成される形が出て参りますし、拠出制国民年金が始まる、こういういわば皆保険体制の整備のための最終年度に当たっているわけです。従ってこの年度に立って三十六年以降の日本社会保障展望というようなものを、やはり確立させなければならぬと思うのです。それがはっきりしていないということです。あんな説明だけでは、実は自分の心の中にはそういうものを持っているのだが、言っていなかったのだ、こう言われれば幸いだと思いますが、それを私は聞かしていただきたいと思うのです。なぜ私はきょう特にそういうことをお願いを申すかと申しますと、まずことしの予算を見てみますと、どうしてもそれを強硬に厚生省がやはり腹をきめて推進していかなければならぬ重要な要素を含んでおるから、そういうことを申すのです。と申しますのは、ことしの予算というものは災害救助予算、別の言葉でいえば国土保全予算だ、同時にこれを財政的な見地から見たら中立予算だ、こう言っておるわけです。実際には中立予算としての基本的な精神というものは、相当くずれておりますが、一応政府はそういう説明をしておるわけです。そうするとその災害救助国土保全中立予算というものが一兆五千六百九十六億円、この中で厚生行政というものが将来の展望を少なくとも確立されておらなければならぬと思うのですが、それが確立されて、いないということが私の一つの心配なんです。と申しますのは、防衛関係費というのは、ことしは名目的には九億しか増加しておりません。しかし防衛庁自体経費というものは、百二十五億増加しているということです。しかもそのほかに、それは表向きだけであって、裏にいってみると、今まで予算委員会なり本会議等で問題になりましたように、千四十九億円というロッキードなり、艦船建造費という債務負担行為がついているということです。そうしますと千四十九億円というものは、これは少なくともここ四年くらいで確実に予算に一定の割合で計上をされてくる。算術平均で言えば二百億程度が計上をされてくるということです。そうして赤城防衛庁長官もちょっと言葉をすべらしたように、昭和四十年には、日本防衛費は二千九百億円になるということなんです。いわば防衛六カ年計画ということで、日本防衛費は少なくともここ四、五年はロッキードなり艦船建造費という債務負担行為をとることによって保証されたわけです。  もう一つ災害国土保全の面では、昭和三十五年から三十九年までに治水事業長期計画、これは治水特別会計で三十五年から三十九年までに四千億、四十年から四十四年までに五千二百億、これで治水特別会計が九千二百億。それから治山事業で三十五年から三十九年までが五百五十億、四十年から四十四年までが七百五十億、これで千三百億です。そうしますと、九千二百億と千三百億の治山治水長期計画を合わせますと、一兆五百億というものが十カ年計画で出ていくわけです。算術的に見てみますと、一年に千億出ていくのです。  それからもう一つ大事な点は、昭和三十五年度の現在の軍人恩給なり、官吏の恩給なり、公務扶助料等を合わせると千三百億です。恩給は来年が一番ピークになって、ふえていくのです。  それからもう一つ吉田総理ガリオアイロアの資金を債務心待る、こうやっておるわけです。これはまだ最終的な結論は出ておりませんが、西ドイツの方式をとっても、少なくとも五億五千万ドル程度払わなければならぬ。とすれば、これは何年で払うか知りませんが、一年に五十億その他は確実に出ていきます。ここ一、二年の間に話がまとまれば出ていく。  そうすると、もう一つ、あなた自身の政策の中における拠出制年金というものが、来年これは保険料の半分は政府負担しなければならぬ。これはあなた方の計算によっても百二十五、六億、百三十億から要るのです。無拠出年金が来年は十二カ月分になる。ことしは十カ月分でしたが、十二カ月分になりますと一体どういうことになるかといいますと、無拠出は今非常に制限をしておりますが、当初あなた方の考えでは、これは三百億ぐらい要るはずだったのです。ことしは二百五、六十億に圧縮しております。これは給付制限を窮屈にしておりますから二百五、六十億だけれども、これを少し緩和しますと三百億にはなる。当初の予算計画は三百億だったのです。そうするとこれを二百五、六十億と見ても約三百六、七十億から四百億の金が年金で出ていく。こういうものは、今言ったいわゆる国庫債務負担行為関係防衛費、それから治山治水の十カ年計画軍人恩給ガリオアイロア、これはまだ不確定にしても、これもどうせここ一、二年で日米新時代が来たならば、これは債務と心得たのだから、何とかしなければならないということになる。年金は義務的な経費だ。そうすると昭和三十五年度国民保険の網の中に入らなくて残るものが、ぎりぎりのところで出ていくものがある。これが四、五十億要るのです。そうしますと、今のように今後三十六年度に確実に出ていくものを見てみますと、新しく国民保険政策というものの内容を充実をして、その基礎を固めて躍進をしていくためには相当の金が要るのです。これは、今の国民健康保険のような状態では、来年年金制度一緒保険料を払うということになると、農民とか中小企業年金を払い保険料を払うのですから、大へんなことになるのです。そうすると国の財政の面で、これはある程度社会保障長期保障というものを取りつけておかなければならぬのです。ところが、大臣御存じ通り防衛費というものは要領よく赤城さんが取りつけてしまった。村上さんなり農林省というものは、治山治水特別会計でうまく十カ年取りつけてしまったのです。あなたの方の社会保障というものは一体何を取りつけたかというのです。何も取りつけていないのです。あなたは大臣に就任をされたときに、社会保障長期計画を立てなければならぬ、所得倍増計画に見合う社会保障長期計画を立てなければならぬということを言明されたのです。もう大臣になられてから、一年生に入ったときは、いろはをかたかなで習い、ひらがなで習うのですが、もう漢字で書ける渡邊厚生大臣になったはずですから、当然財政的表づけを持った厚生行政が出てこなければならぬ。ことしの一兆五千六百九十六億の予算には厚生行政裏づけがないのです。ですから行き当たりばったりの厚生行政というものが、ことしの一兆五千六百九十六億円の中にはあって、皆保険最終年度に立って、四カ年間の過去の実績を振り返って、三十六年度以降いかなる展望日本の皆保険政策を持っていくかという、その展望がないところに問題がある。これをあなたは一体どうお考えになっているのか。これはほんとう予算委員会大蔵大臣を前にして聞くところですが、きょうは一回トレーニングをやって予算委員会に出ないと、あなたと私と意思の疎通が欠けておってはいけませんし、あなたの主務大臣としての腹がまえがなければ、これはもうだめです。だからあなたが一体どんな腹がまえを持って、防衛ももうすでに六カ年計画を確保しておる、治山治水も確保しておるというのに、人間投資をしなければならぬ——人間で世の中が動く、その人間投資というものが大事だと思っている厚生省では、一体人間投資にどういう計画を持っているかということですね。
  4. 渡邊良夫

    渡邊国務大臣 厚生行政長期にわたる予算裏づけがないではないか、こういう御叱正でございますが、私ども経済の十カ年計画、これは十カ年計画が五カ年となり、第二期五カ年計画というふうな二段階を持っておるようでございまするが、この長期経済計画に対応いたしまして、いわゆる厚生行政は常こそれと並行いたしまして、いわゆる日の当たらない階層、あるいはいわゆる生活環境、低所得者対策医療保障、あるいは所得保障というものにつきまして、漸進的に政策を進めておるのでありまして、今年度におきましても所要予算はまずまず一歩前進をいたした。しかしながら、はっきりした裏づけがないではないか、こういうお話でございますけれども、私どもは漸次これを明確ないわゆる費目の上に計上いたさせまして、そしてこれを発足しておるような状況でございます。
  5. 滝井義高

    滝井委員 大臣、ありきたりの答弁ではいかぬと思うのです。よその省ではみな計画を持ってきておる。防衛庁だってすでに防衛六カ年計画というものを作って、その裏づけをとるために赤城さんを先頭にやっていらっしゃる。村上建設大臣だって、福田農林大臣だって治山治水会計というものをどうするか、これは日本国土を保全するためには十カ年計画をやらなければならぬ、こうおっしゃっておる。あなたは所得倍増計画で、いろいろなものをそのときそのときで計上されてくるとおっしゃるけれども与党なり経済企画庁所得倍増計画を作ってみたところが、農業というものは所得が倍増しない、今の日本経済所得の伸びの状態でいくと、農業というものは倍にならないのだ、こういう欠陥を見つけて、所得倍増計画というものは当分発表はできない、簡単にいえば御破算になっている。そうすると、農業というものは国民保険政策を推進する上に一番大事なところです。日本人口の四割というものは農業だ、三千六百万から八百万というものは農業で食っておる。この人口国民年金国民健康保険の対象になる層である。その層が所得が倍にならないという現実は、与党の政調、経済企画庁、みなそれぞれどうもならぬということで、あいつはもう一ぺん検討し直そう、こうなっておるのだから、そうすると、今あなたの言われるようなことではどうも納得ができないのです。  それから、もう一つ環境衛生だとか何だとかおっしゃいますけれども下水道の十カ年計画、あるいは水道建設の十カ年計画というものはちっとも実行できていない。この水の問題はいずれ予算委員会でやりますが、ちっともできていない。それは「水道新聞」という新聞に出ているのを見てごらんなさい。長期計画というものはちっとも実行されないじゃないかということで、けんけんごうごうたる不満がある。水の問題は圧力団体がないからどうもならぬとみな言っている。なるほどわずかな予算計上されておるけれども、そういう点について厚生行政というものが人間投資をやらなければならぬなら、その投資というものは計画的でなければならぬ。そのときそのときの行き当たりばったりでは、厚生行政文部行政と同じく一番弱い行政です。だから、必ずどこからかの圧力というものがみなそこにしわ寄せされてくることは、もはや過去の行政の歴史が示しておる。これはあなたが厚生大臣になられましてから、僕らは初めからそれを主張してきておる。やはり計画ある行政をやらなければならぬ。国民保険四カ年計画の基づけがなかったからこそ、さてどうするかということで、そのときそのときの行き当たりばったりの予算を組んできた。いわゆる大蔵省のほんろうにまかされる予算を組んできた。それではいかぬのです。あなたは、今年の予算はやむを得ないと言われるなら——もう八月はすぐくるのです。八月になったら来年度厚生省予算を組まなければならぬ。三十六年度から計画的にやる、今年は計画的にいかなかったということなら、その反省の上に立った答弁でもかまわぬのです。何かそこに計画がなければならぬ。環境衛生をやるといったって、ちっとも計画性がありません。当初の水道十カ年計画も、下水道十カ年計画も立てたけれども実行ができていない、予算がつかない。これをどう思いますか。
  6. 渡邊良夫

    渡邊国務大臣 御指摘のように、長期計画がないではないかと言われるが、しかし私どもは、今までは国保の関係におきましても、あるいは年金制度におきましても、結核対策五カ年計画あるいは環境衛生等の十カ年計画もこれを軌道に乗せておるのでございますけれども、いかんせん、御指摘のように予算裏づけというものがあまりはかばかしくいっていなかった。しかしながら、私どもは、この厚生行政全般といたしましては、いわゆる昨年度から比べてみますると防衛庁費よりも百二億も上回っております。しかも、防衛庁費のただいまお話しになりました債務負担行為というものは、来年度ロッキード分が、大蔵省で聞いてみますと六十億だそうでございます。六十億を明年度防衛庁費にプラスいたしましても、社会保障費はことしは千八百十七億でございまするが、明年はいかにふえても、いわゆる社会保障費というものは防衛庁費よりもはるかに上回る。建設省治山治水特別会計、あるいはまた農林省治山事業につきましての特別会計におきましても、これは厚生省特別会計内容というものは、厚生行政の私どもがやらんとし、また今年度やりましたところの厚生行政施策と比べてみましたならば、はるかに私は大衆に受け入れられるというか、要するに喜ばれるような予算措置を講じたつもりでございまするので、今後とも御指摘の線に沿いまして、大きな長期計画を今年の八月ごろまでにおきましては私ども計画いたしまして、御支持、御協力を得たい、かように存じておる次第であります。
  7. 滝井義高

    滝井委員 こういうことは、私はやはり政治のいろはだと思うのです。だから、人間投資の問題が非常に重要にもかかわらず、日本ではそれがやられていない。従って、日本社会保障というものは逆ピラミッドであって、一番社会保障の必要とする五人未満の事業場においては健康保険もない、厚生年金もない。ようやく失業保険組合を作って初めて適用されるという状態になってきたのだ。こういう逆ピラミッド状態になっておるのです。これは結局計画的にこのものを健康保険なり国民保険にきちっと入れるというような姿を早く打ち出さないところに問題があるのです。従って、逆ピラミッドのまま——その逆のピラミッドはますます底辺が小さくなって、上部が大きくなるという、今の状態はこういう形になりつつあるのです。こういう点に、私は現在の日本厚生行政というものは非常に大きな欠陥を宿しておると思うのです。これは何も私は防衛庁に負けるな、などとけしかけるわけじゃありませんが、少なくとも防衛計画があり、経済長期計画があるならば、あなたの方でそれに見合った社会保障長期計画を立てなければいかぬと思うのです。私はこの前に言った。月給はきちんきちんと払います、炭鉱みたいな遅払いなんかやりません。だから仕事だけはきちっとやって、大臣に献策して下さいということをこの前一ぺんお願いしたのです。こういう点で、これは国会はどうなるかわかりません。解散になるか、岸内閣が野たれ死にになるか、あるいはうまく乗り切るかわからない。あるいは内閣が改造になるとまた渡邊さんはかわらなければならぬ。だから、これはやはりあなたが種をまいていただきたいと思うのです。今まで川崎君のときに、社会保障長期計画を立てなければいかぬと言ったのです。いかぬと言ったのだが、作らない。作らないというか、できないのかもしれません。一回出したことがある。経済企画庁に出して、そうしてその数字を少しもんでおる。ところが、その数字をもんで、あなた方のものの考え方経済企画庁のものの考え方と全く違っておった。そうして私は一応予算委員会でそれを鳩山内閣のときに出したことがある。ところが、あなたの方の答弁経済企画庁答弁大蔵省答弁が、みんな違うのです。てんでんばらばらだった。だから、それではいけないのです。内閣というものは一つの有機的なものでなくちゃならぬ。どこか一つぴしゃっと切ってみたら、やはりあっ痛いというようでなければいかぬ。厚生大臣に切りつけてみたら、大蔵省経済企画庁が笑っておるということではいけない。そういう点で、経済企画庁なり大蔵省と連絡をとってやる。これはほんとう大臣の言明の通り、あなたは就任されたときに所得倍増計画に見合う長期計画を立てる、こうおっしゃっていたのだから、私はもう今ごろできておると思っていたが、まだできていない。だから、皆保険にしても年金にしても、これは今言った下水道上水道——これは下水道建設省の所管になりますけれども、密接な終末処理関係がある。そういう意味では、長期計画を立てて、金額は少なくとも、やはり、そういう事業に携わる人に希望を持たせなければいかぬと思うのです。来年は必ずこれだけの予算がくる。ことしはこれだけあっても、来年は幾らくるかわからぬということではついてこない。こういう点、もう一回あなたの腹がまえを聞かしていただきたい。
  8. 渡邊良夫

    渡邊国務大臣 これは、私も昨年から言明いたしましたように、長期計画につきましては、今も準備中であり、また着手した面もございますけれども、ことしは特にもう少し具体的に、できるだけ明年度予算に間に合うように、経済企画庁なり、大蔵省や、あるいは関係各省と調整をいたしました政策を打ち出して皆様方の御批判を願いたい、かように考えます。
  9. 滝井義高

    滝井委員 ぜひそうしてもらいたいと思います。  この機会にもう一つついでに具体的に問題を出しておきたいのは、拠出制年金の国の負担分です。これはあなたの計算によると、来年度予算に百二十六億くらいになりますが、これは来年計上するんですか、それとも四十年くらいの後になったら、拠出制年金の支払いが最終的には始まるわけです。しかし、その前に始まっているわけですが、その始まるときに、具体的に給付を支給するときに、保険金額を払うときに国が計上していくのですか、それとも来年度から計上しておって、保険料一緒にして積立金としてたくわえておって、その利子をやはりかせいでいくという形をとるのですか。どっちですか。
  10. 森本潔

    森本政府委員 拠出制年金におきまして、国庫負担負担金額でございますが、これは年金給付する時期でなしに、保険料を出す時期において国庫負担をすることになっております。従って、来年度所要額計上されることになります。
  11. 滝井義高

    滝井委員 そうすると、大臣、あなたの心がまえは大丈夫ですね。私が聞いておきたいのは、来年度予算を折衝するときに——これは小さくない、百二十六億です。無拠出年金が来年度は十二カ月分になるのですから、皆保険の残り五十億くらい金が要るから、百二十六億ぐらい要るのです。だから、大臣、ここで腹がまえとして、事分もその通りだということを言明してもらわぬと、来年になったら、いや、そうじゃなかったということで逃げられては困るんです。一年の計は元旦にあり、初めにやっておかぬといかぬと思うのです。
  12. 渡邊良夫

    渡邊国務大臣 十分そのつもりでおります。
  13. 滝井義高

    滝井委員 ぜひ十分そのつもりでおってもらわぬと困ります。それだけのあなたの腹がまえを押しておけば、今度はあとは私が大蔵省に……。  次に、長期計画が立っていないから、従って今度われわれが長期計画を立てる場合に、当面やはり問題にしなければならぬものがあるのです。それは一体何かというと、三十五年の終わりには国民保険制度というものが形式的にできます。また、むろん拠出が出るかもしれない。大体出る。離島以外は大体法律的には入ることになっておる。そこで、そうなりますと、まず第一に検討しなければならぬものは、医療制度の根本的な検討をやらなければならぬということが一つです。これは皆保険の場合に、一体今の開業医制度なり、病院なり、診療所のあり方が今の姿でいいかということは当然検討しなければならぬということは、あなたも再々ここで言明されておるところです。従って、皆保険四カ年計画最終年度に当たる三十五年度末までに検討しなければならぬことが一つ。もう一つ検討しなければならぬのは、社会保険制度自体の間の相互調整の問題をやらなければならぬ。一体こういう医療制度の根本的な検討と、社会保険制度の相互間の調整の問題、これは多分昨年の十月に社会保障制度審議会にあなたの方で諮問をしておる。これらの二つのものは、結局別な言葉で言えば、いわば皆保険の四カ年計画に引き続く四カ年か五カ年の第二次の厚生省長期計画というものにこれはなってくるわけです。社会保険相互間の調整なり、医療制度の根本的な改革というものがその基礎になって、土台になって、その上に第二次の長期計画というものが財政的な裏づけを持ってそびえ立たなければならぬと思うのです。そこで、今後第二次のと申しますか、長期計画をあなたがお考えになる場合に、医療制度なり、社会保険の相互調整の問題というものを一体どういう工合にしてそれを具体的にやっていこうとするのか。この点を一つ説明願いたい。
  14. 渡邊良夫

    渡邊国務大臣 医療制度の全般的な問題につきましては、近く発足でき得ることと私ども考えておりまする医療制度調査会におきまして、十分に検討をいたして結論を出したい、かように考えております。  社会保険の総合調整の問題につきましては、昨年総理大臣より社会保険審議会に諮問いたしまして、目下審議をいたしておりますが、なるべく早く結論を得て、私どもはこれに対して対策を立てていきたい、かように考えております。
  15. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、今のような総合調整の問題なり、医療制度の根本的な検討の結論というものは、三十五年度末というのではおそくなりますが、少なくとも今年中には結論は出るのでしょうね。三十五年の十二月末くらいまでには結論は出るのでしょうね。
  16. 渡邊良夫

    渡邊国務大臣 なるべく早く出したい、かように考えております。そう長くはないだろうと考えております。     〔「不十分だ」と呼ぶ者あり〕
  17. 滝井義高

    滝井委員 これも不十分だという声が後からかかっておりますが、大臣、政治というものは、やはり目標を立てて力強く推進をしていかぬと、今のように資本主義の社会が複雑になって、もろもろの関係団体ができておる時代は、やはり一つの目標を定めたならば、それに向かって、所信貫くべしという精神でまっしぐらに進んでいかぬと、なかなか問題が解決しない。今あなたは、医療制度の調査会というものが近く発足する、そこで十分検討して、日本の医療制度の根本的な問題をやるのだ、こうおっしゃるが、三十四年の十月に臨時医療制調査会は発足をしますということを、私にあなたは約束をしておった。ところが十月、十一月、十二月、一月、二月と、もう五カ月たちますよ。そして御存じの通り、医療制度調査会は二年の時限立法ですよ。もう九カ月たちますから、あと一年三カ月しかないというのに、まだこれはいつ発足するかわからぬという状態ですが、大体いつそれでは発足させるつもりでございますか、今度は間違いなくその時期を一つ明確にしてもらいたい。
  18. 渡邊良夫

    渡邊国務大臣 明確な時期とおっしゃいますけれども、明確な時期をここで申し上げまして、あるいはまたはずれますと、またおしかりを受けたりなんかする、そういうこともあり得るかと存じますけれども、まあ三月末くらいまでを目標といたしまして、目下急いでおりますが、私どもは、それよりも早ければできるだけ早い機会に発足させたいというので、今相当準備に準備を重ねまして、各方面との意見調整をやっておりまするから、あまり長くないのじゃなかろうかと思いますけれども、当分一つ御静観を願いたいと思っております。
  19. 滝井義高

    滝井委員 三月末に医療制度の調査会を発足させたい、こうおっしゃっておるわけですが、大臣も御応じの通り、三月末には予算が衆参両院を通ることになるわけです。その時期からは、おそらく安保問題というものが、国会で非常に白熱的な論議が展開をせられることになるわけですね。いわば、何と申しますか、平和的にものを処理しなければならぬこういう問題を、いわゆる国の運命をかけた、保守と革新とが思想的にも対立をしなければならぬという問題が激化する時期に、これを発足させるということになると、なかなかこれはそう簡単にはいかぬということになるのです。私はやはり今のような、国会が割合平静な時期に、こういう問題というものは大臣が腹をかまえて、腹をくくって発足さしていくべきだと思うのです。これは三月なんかになりますと、あとにも申し上げますが、どういう隘路があるかというと、甲、乙二表を選ばなければならぬ時期が、三月の十日前後からやってくるのです。そうすると、これはやはり一つの議会における混乱を引き起こす問題点になってくるわけです。それから、御存じの通り現在医師会は選挙が行なわれております。これもやはり一つの要素になってくるわけです。全都道府県の医師会長の選挙が行なわれております。あるいは日本医師会の選挙も行なわれるでしょう。こういう時期です。従って、それは時期としてはあまりいい時期じゃないじゃないか。むしろやられるならば今だ。むしろ今くらいの早い時期の方がいい。これは、あなたが腹がまえをきめてやればできることだと思うのですよ。じんぜん日を過ごしていくことになると、これはいつできるかわからない。三月といっても、またできないですよ。今あなたから三月末と御答弁いただきましたが、それでは一体どういうところに隘路があるのだ、三月末まで待たなければならぬという理由は、一体どこにあるのだ、ということなんです。今どうしてできないのか、今まで九カ月間は一体何をしておったのだ、こういうことを国民としては聞かなければならぬことになる。いろいろ新聞を見てみますと、とにかく去年の五月に発足しなければならぬものが、今まで発足しないというのはけしからぬじゃないか、何をしているのだという非難ごうごうたる状態が、一方的に厚生省に出ているわけなんです。私はこの前も言った。こういう問題はやろうと思ったら、二晩、三晩徹夜してでも大臣やってごらんなさい、すぐできますよ。大臣は徹夜を幾晩やったか知らないけれども、まだできないわけですよ。一体その隘路は、どういう問題が隘路になっているのか、これを一つ説明をしていただけば、われわれも馬の足になって協力いたしますよ。
  20. 渡邊良夫

    渡邊国務大臣 先ほど申し上げましたように、三月末までにはと申しましたが、それからまた補足いたしまして、なるべくそれよりも前にできれば、こう申しておるのでございまして、できるだけすみやかに医療制度というものは、厚生省だけの知識でもいけませんので、いわゆる関係方向のいろいろ広い知識を求めまして、そして総合されたところの医療制度調査会として発足するためには、一方的にのみ偏したような格好ではいけませんので、これは、できるだけ多くの人材を取り入れました制度調査会にいたすべく、広く呼びかけていきたい。こういう点につきまして、今までせっかく苦労いたしておった次第でございまして、大へん長くなりましたけれども、御了承願いたいと思います。
  21. 滝井義高

    滝井委員 隘路は一体どこにあるのだということの御答弁がないので、次の問題と一緒にもう一ぺん隘路の質問をさせてもらいたいと思うのです。大臣も御存じの通り、現在の日本の具体的な診療に必要な薬物で、保険に使うか使わないかということを決定する機関は、中央社会保険医療協議会ですね。この中央社会保険医療協議会というものは、三十三年六月以来実質的に機能を停止しておる。昨年の六月にちっと一回開かれて、そして結核の治療指針の一部改正をやったわけですが、これは六月十八日にあなたが大臣になられてからおやりになったわけですよ。自来、その委員の半数は任期が切れているはずです。あれは法律では、六カ月に一回は開かなければならぬわけですよ。この前も私は申し上げましたが、政府は労働組合には、法治国家の国民は法律を守らなければいかぬとよくおっしゃる。政府も守るから君らも守りなさい、これはよき労働慣行の確立だと、大坪先生など先頭に立っておっしゃるでしょう。ところが、あなたの方は法律を守らない。医療制度調査会も、昨年の五月にできて予算もついていますよ。去年の予算を戻さなければいかぬですよ。去年の予算というか、三十四年度予算は、三月までできなければ返さなければいかぬですよ。医療制度調査会の予算は二百六十一万八千円ですよ。これは、牛丸さんなんかが上審議官になっているから、この予算を幾分使っていると思いますけれども、まだ相当残っています。これを返さなければいかぬ。そういう点で、とにかく去年の五月に法律が施行されてやらなければならぬものを、八カ月も九カ月も法律を施行しない。中央社会保険医療協議会というものは半年に一回開かなければならぬが、去年の六月に開いて以来開いてないのですから、七月、八月、九月、十月、十一月、十二月、一月、二月と八カ月になる。これも法律違反です。このように法律違反をさんざんおやりになっているのですが、これらは一体どういうことになるのですか。この中央社会保険医療協議会はいつになったら開かれるのですか。今やはり新聞を見てみますと、中央社会保険医療協議会を早く開け開けということを、いろいろな団体が書いています。厚生省、馬耳東風ですよ。馬の耳に念仏か何か知らぬが、知らぬ顔をされておる。これは一体なぜ開かれないのですか。
  22. 渡邊良夫

    渡邊国務大臣 この問題は、私よりも滝井さんの方がよく御存じなはずでございまして、やはり新しい治療指針等を取り入れまするには、広く関係者と話し合いまして、円満に遂行いたしたい、私どもはかように考えておりますので、中央社会保険医療協議会も、医療制度調査会等が発足いたしましたならば、直ちに解決つき得る問題だ、かように考えております。その医療制度調査会の発足に対して、何が隘路か、こう御質問でございまするが、やはり医学界の全面的な協力というものが必要なのじゃないか、こういう意味におきまして、医学界の協力というものをやはり全面的に取り入れるように、こういたしたいということで、せっかく骨を折って参りまして、今だいぶ進んでおりまするから、その時期につきましても、先ほど申し上げた通りでございます。
  23. 滝井義高

    滝井委員 中央社会保険医療協議会は医療制度と一緒に発足させるということになると、三月の終わりまでには発足させる、できればそれより早くという注釈がついたわけです。そうしますと、今あなたが、これらのものを発足せしめるためには医学界の全面的な協力が必要だ、こうおっしゃったわけです。医学界の全面的な協力は、一体なぜ、どういう原因で今まで得られなかったと考えておられますか。その原因がわからなければしようがない。
  24. 渡邊良夫

    渡邊国務大臣 事務当局から……。
  25. 滝井義高

    滝井委員 それは事務当局でなくて大臣考えたところでないと、保険局は一面しかないでしょう。保険局だけのあれでしょう。厚生省全般、厚生行政全般から見て、どういう点が一番ネックになっておったか、これだけ教えてもらえばいいのですよ。そんないろいろこまかいこと、監査がどうだ、二人死んだとか、あるいは医療金融公庫にちょっと金が足らなかったからとか、いろいろあると思うのですよ。そんなものは片々たるものだと思うのです。何かもっと根本的なものがあったはずです。それは、厚生省には赤がおるとか特高官僚がやっておるとか、いろいろあったですよ。しかしそんなことでこういうことになったのじゃないと思うのです。何かもっと、ネックになった根本的なものがまだあったと思うのです。それは一体何だったのか。
  26. 森本潔

    森本政府委員 医界の協力を得て、医療制度調査会あるいは中央医療協議会等の運営を進めてきたのでありますが、これがきょうまでの状態では思わしく進展しておらぬというわけでありますが、この原因となりますことは、いろいろありまして、ある一つの点がネックになっておるというように言い切るごとではなかろうと思うのでございます。だんだん国民保険になりまして、開業医の、社会保険国民保険の今後のあり方、そういうことについての不安もございましょうし、あるいは近くは昨年に起きましたところの甲表、乙表の問題でありますとか、それに関連しますところの医療協議会の脱退というような問題、その他いろいろな問題が錯綜したしまして、こういう状態になっておるのでございます。それらの点をしさいに解きほぐしまして、また先ほどもお話がございましたように医療制度についての根本的なあり方、これらのことが総合的になされまして協力が得られると思うのです。ただこの一点で中央社会保険医療協議会の協力が得られない、そういうことではなかろうと思います。これはやはり今後の医療制度全般の問題あるいは国民保険下におけるところの開業医のあり方、それに関連いたしますところのもろもろの問題、これらの問題を総合的に解決していく必要があると考えております。
  27. 滝井義高

    滝井委員 皆保険に対する不安とか、甲乙両表の問題とかいろいろある、それらのものを総合して、と、こうおっしゃるけれども、これはやはり話は順序があると思うのです。だから医療制度調査会なり中央社会保険医療協議会を、少なくとも三月末までに各界の全面的な協力を得て、これらのものを軌道に乗せるためには、いま一つの隘路としては医界の全面的な協力というものを要請しなければならない。その要請をするためには、話の順序としては一体どこにメスを入れたならばいいかということなんですよ。それは外科医者が、筋炎ができて、足がぱっとふくらんでおるというとき、ふくらんでいるところどこでもメスは入れませんよ。やはり化膿の一番中心部にメスを入れていきますよ。これと同じだと思うのです。ですからどこか一番行き詰まっている、あなたのいわゆる糸を解きほぐすところがあるはずです。糸をほぐすためには、やはり一番先に糸のほぐれたところから解いていかなければはならない。あっちこっちから結びを解いたってなかなかほぐすことはできない。やはり発端から糸をほぐしていくということが必要だと思うのです。そうしますと、一体一番のネックになっておるところはどこであるかということでしょう。その隘路ができたのは、医療制度調査会よりも中央社会保険医療協議会の方が先だったのです。医療制定調査会はあとにできて、そうしてこれは協力ができないということになっておるのですから、やはり問題は前ではないですか。中央社会保険医療協議会のところにある。中央社会保険医療協議会は一体何が問題になったのですか。これは甲乙二表ですよ。そうすると、甲乙二表を、医界の全面的な協力を得るためには一体どうすればいいかということです。それは一本化以外にない。問題はここですよ。この一本化の方針をあなた方が腹をきめて、いわゆる日病なり七団体なり、学術団体なり、医師団体なりを納得させる姿を作れば問題は解決しますよ。これをもしあなた方が腹をくくって一本化の問題が解決できるならば、私は医療制度調査会も中央社会保険医療協議会も軌道に乗ると断言してはばからない。その点、一体大臣はどうお考えになりますか。
  28. 渡邊良夫

    渡邊国務大臣 就任以来私も非常にこの点には努力をいたしまして、できるだけ、ただいまあなたがあげられました各団体に対しまして、表からも裏からもいろいろ打診工作を努めておったようなわけでございます。甲乙一本化につきましては、御承知のように昨年十一月におきましても当委員会において決議をされておりまするし、その以前におきまして、厚生省の方針といたしまして、すでに一本化をやるのだという厚生省の方針も確立いたしておりまするが、やはりその甲乙一本化の内容等につきまして、いろいろな意見の食い違い等がございまして、これを調査することにおきまして、私は非常に急がせております。これはなるべく早い機会に——早い機会と言いますると、またあなたから笑われるかもしれませんけれども、やはり早い機会という表現でなくてはこれはなし得ないのじゃないか。それでまず順序といたしまして、医療制度全般の問題につきまして医療制度調査会を発足させ、そして引き続きまして医療協議会、こういうような順序を経て、そう長い期間を経ないでことしは一つ大馬力をかけてみたい、かように考えておるようなわけであります。
  29. 滝井義高

    滝井委員 それは今の大臣答弁では、木によって魚を求むると同じことになる。医療制度調査会なり医療協議会は、私の見方では絶対に先に発足しないと見ております。やはりこれは一本化が先です。従ってあなたが三月末までにこの医療協議会なり医療制度調査会を発足をさせようとするならば、三月末までに一本化の基本的な態度というものをきめなければだめだというのが私の見方です。これは私の見方が当たっておると確信しております。だから、私はきょうはこれ以上答弁を求めませんが、あなたは一体その腹をくくり切るかくくり切らないか。もしあなたがこれをおやりになれば、それを契機にして日本厚生行政というものは非常にスムーズに流れます。それをもしあなたがじんぜん日を送って、今度三千万円、取るといったのが千三百万円になった。千三百万円では、これは根本的な調査はできませんよ。そういうちゃちな千三百万円の金でやろうとしても、これは全面的な協力は得られないですよ。そうすると一本化はますますおくれて十二円五十銭とか十一円五十銭の単価問題が、暫定単価であったのが、昭和二十六年からずっと三十三年まで足かけ八年間も解決しなかったと同じ状態が出てきて、厚生行政の混乱にまた輪をかけることになるのです。そこでやはりあなたがその協議会と調査会の二つの委員会を順当に円滑に発足をせしめて、厚生行政長期計画を、それらの諸団体の一致した結集した力をバックにして大蔵省とかけ合うという、こういう姿を作ろうとするならば、これは早い方がいい。そうでなければとてもこれは、もうこの機会を過ぎて四月、五月になったら、安保の問題で、こんな問題はどこかへふっ飛んでしまいますよ。われわれだってここでこんなのんきなかまえで、あなたとこれはこうしたらどうだということをやるひまはなくなってしまう。自民党だってそうです。もはやそういうものは頭にない。なぜならば岸内閣の運命にかかわる問題だからです。だから私は政治というものは機会が大事だと思うのです。打ち出す機会が大事だと思うのです。それで、私はきょうはこの問題についてはこれ以上追及しませんが、もしかすると明日もう一ぺんこの問題をやらしてもらうかもしれません。一つあなたの腹がまえだけを聞かしてもらっておけばけっこうだと思います。
  30. 渡邊良夫

    渡邊国務大臣 お説の通りでございまして、その御指摘の点につきましては私はできるだけ十分認識しておるつもりであります。
  31. 滝井義高

    滝井委員 そういう問題のけりを、三月末までに一本化をやはり片づけなければいかぬという共通の認識に立っておる、これは非常に心強いことでございますので、一つ大臣の馬の足になってわれわれもそういう方向に推進したいと思います。(「前向きでなけりゃだめだ」と呼ぶ者あり)もちろん前向きに推進したいと思います。私は、イデオロギーの対立もなければ何もない、政党政派をこえて日本社会保障の前進のために、ほんとうに心からそう申し上げておるわけですから、これは誤解のないようにしていただきたいと思います。この問題はそこまでの御言明をいただいておけば、次の問題に移ります。  次に、今新聞で非常に問題になっております乱売の問題です。その次にもう一ぺん保険の問題に返ります。池袋の駅の西口で二つの会社ですか、薬の安売り競争みたいなものが行なわれているわけです。これは日本の薬事制度の一つ欠陥を露呈したものだと私は思うのです。幸い政府は薬事法の改正を企図しようとしております。この機会にやはり私は、あの乱売問題というものの中に現われておる矛盾というものを抜き出して、そしてこれを改革していく絶好の機会がきたと思うのです。われわれは国会で診療報酬並びに薬価に関する小委員会というものを作って、そうして同僚の野沢君が生きておるときには、ずいぶんこれは調査をしました。大体委員会としてはある程度の基礎的な調査はできておるはずです。しかしそれが今こういうように日本の薬事制度、いわゆる製薬から第一線の販売まで改革したらいいだろうというような具体案はできておりませんが、一体どこに製薬企業自体の問題があるのか、あるいは販売機構はどういうところに問題があるかという問題点くらいは、おぼろげながら、われわれは製薬企業を見、流通機構を検討することによって、ある程度わかりできております。そこであの乱売問題というものを厚生省当局、大臣は一体どうお考えになっておるのか、どういう認識をあれについて持っておられるのか、これからまずお聞かせ願いたいといます。
  32. 高田浩運

    高田(浩)政府委員 便宜私からお答え申し上げまして、大臣に補足をしていただくことにいたしたいと思います。  それにつきましては薬の特殊性にかんがみまして、私どもとしましてはまず第一に品質を確保するということが一番大切なことであると考えております。そして薬についての国民的信頼、信用というものが確立されておりまして、しかもそういう薬が正常な配給系統に基づきまして円滑に自民に配給をされる、そういうようなことが薬の問題についての基本的な考え方でなければならないのではないかと思います。そういう意味においては、言葉は適当でございませんが、いわゆる乱売という現象に現わされているいろいろな問題というものは非常に遺憾な事態でございまして、従ってこれが是正、すなわち宣伝の方法なりあるいは薬の品質なり等については行政当局としても厳重に気をつけて参っておる次第でございますし、今後もそういう方針でいきたいと思います。もちろん御推測の通りに、こういう事態に立ち至りますにつきましては、メーカー、卸、小売、それぞれの段階について非常に複雑な原因があると考えられることは当然でございまして、これらの問題については関係者の十分な話し合いを基礎として解決を推進して参りたい、かように考えております。
  33. 滝井義高

    滝井委員 先日あなたのところで抜き取り調査をおやりになったのですね。六十三社か何かの薬をずいぶんたくさん抜き取り調査をやられた。私はその事を見たのですが、新聞記事ですから、それがその通りのあなたたちの調査の結果になっておるかどうかわかりませんが、苦味チンキと、ちょっと名前を忘れましたもう一つと、その二品だけがよくて、あとは全部何らかの欠陥がある、こういうことが出ておるのです。これは新聞に出ておる。新聞の影響というものは大きいのですから、これは大事なことなんです。そうしますと、これはやはり現在いろいろ問題がありますが、そういう問題点から考えていくと——一つ一つ問題点を指摘していきますが、私は現在の薬事法の欠陥というものを露骨に現わしておると思うのです。  御存じの通り薬店というものは、だれでも、しろうとでも、金さえ持っておって薬剤師を雇えばできますね。一号業者というのになってしまう。こういうところに問題の欠陥がある。薬剤師が薬局を開く。ところが薬局は必ず薬を売っているが、調剤もやる、調剤の設備を持っているが、一号業者というのは、高等学校の化学の先生なんかがちょっと名義を貸して、それでやっておるのですね。そうして一号業者になると調剤室は要らない。薬の実験か何かやる室を持っておればいいのだということになれば、金さえあればだれでも一号業者、薬品販売業者になれるわけですよ。現在現われておるあの池袋の問題は、そういうことが一つの問題点として私は出てきておると思います。こういうものについて、あなた方は何らのこれを制御する方法がないのですよ。一体あなた方は今後薬事法の改正なりその他にあたって、この問題をどう解決するかということです。だれでも金さえ持っておれば、薬剤師を雇ってどんどん薬の商売をすることができる、こういうことです。僕らは薬というものはもう少し権威のあるものだと思っておった。なぜならば、保険医は薬価基準に載った薬以外は使うことはできませんというのが厚生省のやり方だった。薬価基準に載らないような薬を患者に使ったら、監査にひっかかった首をちょん切られる、こういうことだった。ところが同じ保健に携わる薬剤師は、皆保険体制になったならば、すべて保険薬局にならなければならぬ。そういう制度の中で、とにかく薬剤師の免状さえ持っておれば雇われて薬の販売業に奉仕することができる、こういう制度が公然と行なわれるならば、これはわれわれとしては国民医療を守るために、現在の製薬機構に根本的にメスを入れなければだめだという、根本にさかのぼらなければならぬ。そういう点を一体あなた方はどう考えておるのかということなんです。薬事法の改正は依然としてこういう姿でいくのか、それともここにメスを入れていくのか、薬剤師以外は薬店をやることはできないという一刀両断にやるのか、私はそういかなければだめだと思う。弁護士でなければ弁護士を開業することはできないというのが今の弁護士法の建前です。ところが金を持っておって店舗をかまえて薬剤師を雇えば薬を売れる、調剤はやりません、こういう制度を作ることは、今の日本の医療制度の建前からいったら間違いですよ。その間違いを依然として犯していくかどうかということです。
  34. 高田浩運

    高田(浩)政府委員 最初にちょっとお話がございました先般の薬事監視の結果についての問題でございますが、これは御承知のようにメーカーにつきまして数品目をきめて抜き取検査をした結果のものでございますが、たとえばガーゼ脱脂綿、苦味チンキ、オウバクエキス、それからオキシドール、そういった数種類の品目のうち、薬事監視の結果不良品がなかったというのがオウバクエキスとお話の苦味チンキの二つであるという意味でございます。  それから後段にお話のありました点は、これは確かに薬事制度上の非常に重要なポイントでございます。この点については御承知のように、薬の管理につきましては専門の薬剤師をして当たらしめるために、自分が薬剤師をやらない限りは、薬局あるいは全品目の販売については薬剤師をして管理せしめなければならないというのが現在の制度であるし、同時にこの制度は大体において明治以来ずっとそのままで参っておるような状況でございます。いわゆる一号——全品目の販売について、薬剤師が自分でやる以外のケースをどういうふうに取り扱うかということにつきましては、かねがね滝井先生からも御意見のほど私ども十分承っておるのでございますが、この点、先般の薬事審議会においてもいろいろ議論のありました点でございます。一応答申の形としては、従来の形を踏襲するということになっておりますが、せっかくの御意見でございますので、立案にあたりましては十分検討を加えまして結論を出したい、かように考えております。
  35. 滝井義高

    滝井委員 これは非常に大きな問題ですから、薬事法が出たときにもう少しあれしたいと思いますが、私はこれは賛成いたしません。そういう形で出るならば日本の医薬制度というものはこわれてしまいます。われわれとしては薬剤師に調剤の権限を与えるわけにいかないんです。少なくとも薬科大学を作って医薬分業を明治以来やってきて、ようやく形式的に医薬分業ができた、今後医者の技術料が確立されれば医薬の分業ができる。ところが一方においては、調剤をやらなくてもその名義で商売をやれるのだということになれば、薬剤師がやるのと同じことになる。それならば薬剤をやめて商売人になったらいい。ところが薬剤師であれば全品目を売れる、こういう形をとることはわれわれとしては了承できません。薬事法がもしそういう形で出ればわれわれは反対いたします。あとでも触れてきますが、こういう制度を作ることは大へんなことですよ。その結果が今度の乱売に現われておる。その乱売をあなた方が何ら手を下して阻止することができないということは、制度としてこういうものを作っておるからなんです。  それからもう一つは、今度の問題は結局大衆に薬はやはり九層倍であったということを示したことです。薬を九割引でやってもなお薬屋はやっていけるということを大衆に示した。だから楽屋はぼっている、私自身もそう思いますよ。少なくとも五割引で売ってもなおもうかる。きょうの毎日新聞か何か読んでみましたら、あの店でも一日二百万円か何か売り上げがあって相当もうけている、だからやっていけるということが書いてある。それならばこれは一般に薬は高過ぎるという認識を持つことになるが、あなた方それをお認めになりますか。
  36. 高田浩運

    高田(浩)政府委員 今日のああいういわゆる配給秩序のある意味の混乱というのは、これはひとり末端の小売段階における問題のみならずメーカー、卸、小売、いわゆる薬の製造配給を通じての全般の問題に関連するのでありますので、その点は末端機関の問題という形に一応象徴されておりますけれども、深い問題として私どもはこれを検討していかなければならない、かように考えておるのでございます。  それから今お話の薬価の問題につきましては、確かにお話のような印象を与えた点があり得るということもこれは否定できないと思うのでございますが、薬価の問題につきましては、これはいろいろ見方はあると思いますが、ただ責任を持ってお答えをするということになりますと、やはり原価計算から積み上げた結論を出さなければなりませんので、ここで私から高いあるいは安いというような単純な形での表現のお答えは差し控えさせていただきたいと思います。
  37. 滝井義高

    滝井委員 とにかく高いという印象を与えたことは、お認めになりました。この問題は、私もう一回薬事法を審議するときに、今言った具体的な原価計算その他の問題を問題にしなければならぬと思うのです。さいぜんのあなたの御説明にもありました通り、苦味チンキ外一品以外は抜き取り調査の結果、品質の正常なものはなかったということですね。特に綿花の類に至っては、これはもうはなはだしいということが新聞にも報道されておるのです。もうごみやほこりや、綿花の中に幾らでも入っておる。大臣、局長も今そういうことをお認めになったのです。苦味チンキ以下一品以外は抜き取り調査の結果、全部品質が悪いということをお認めになったわけです。そうしますと、結局これは乱売というものは、今始まったものではないのです。もう大阪やら名古屋やら、ずっと乱売というものはここ数年来行なわれているのです。しかも何かの週刊誌に書いておりました。薬屋が薬石効なく、乱売の結果倒産いたしました、こう書いておる。お薬局さんが、とにかく自分の薬を売って、その薬で命を断たれた、こういうことなのです。これは一向、今に始まったことではないでしょう。大阪、名古屋、全部です。あるところに行くと、奥さんたちが金を出し合って、薬の安売りをやっておるのです。こういうのは、ざらです。それくらいに薬というのは、むしろ大衆性は持ったけれども、販売経路がむちゃくちゃになっておるということです。これではいかぬと思うのです。今デパートに行くと、これは何といいますか、安売り場がありますよ。見切り品だといって売っておる。今のこの姿は、簡単に言えばあれと同じです。そうすると、特売、見切り品と同じような姿で薬が売られるということになれば、その結果は一体どうなるかというと、それは必然的に上にはね返ってきますよ。製薬企業自体にはねかえってきます。それだけ製薬の利潤というものが、安く売るだけ減るのですから、従って製薬の品質が下ることは、これはアダム・スミスの昔から正統派の経済学がわれわれに教えておるところです。悪貨は良貨を駆逐しますよ。そういう品物がどんどん大衆の中に安く買われるということになれば、これは薬価基準なんか作ったって同じですよ。どんどん悪い薬が出てくる。それが一体どういう影響を及ぼすか、結局薬の知識のない国民大衆の生命をむしばむことになる。許容量とか容認量とか何とかいうものは、なるほどそれだけのものを飲まなければ、それは死なないかもしれないけれども、その許容量の範囲内において、それが毒になっておることは確実なのです。ただそれが肉体的に現われないだけのことなのです。そういう薬を平気で、あなた方が今売らしている。乱売を阻止することができない。薬石効なく、小さな店や問屋が倒れていく。こういうことを放置しておる厚生行政なんというものは、ナンセンスだと思うのです。しかも一一方では、その薬を厳重に専門家の医者に使わせる。あるいは薬価基準に載せている以外は使っちゃなりませんぞと言っておる。ところがちまたでは、平気でそれがどんどんしろうとに安く売られておる。薬価基準をはるかに割った安いもので売られておる。こういう状態になれば、これは製薬企業ばかりでなくして、日本の社会保険制度に重大な影響を及ぼすのですよ。一体そこまであなた方はこの問題をお考えになったことがあるかどうか。一体保険局はこういうように薬価基準を割って、薬を乱売されておるときに、薬価基準との関係をどう考えておられるのか。これは一つ保険局もあわせて——これは保険局は門外漢ではないはずです。
  38. 高田浩運

    高田(浩)政府委員 今お話しの薬価基準との関係については、私どもも気をつけて検討してみました。実際に池袋において乱売の対象となっております薬のうち、薬価基準に載っておりますのが六品目でございます。そのうち二品目につきましては、近く収載から削除する考えでおります、従って全体としましては、この乱売の対象となっておるものは、いわゆる薬価基準収載品目以外のものがほとんど大部分である、こういうふうに考えております。
  39. 滝井義高

    滝井委員 それは業務局長の認識の不足であって、ああいう乱売のメーカーの売る薬というものは、いろいろの単品を合わせて、今度は総合的な薬を売っおるわけです。従って、一つ一つの品物をとってみると、それらのものは薬価基準に載っているようなものです、内服薬のごときは。ただ、今あなたの言われたように、なるほどそれは六品目かもしれない、しかし千丈の堤もアリの小さな穴からこわれるということもあります。すでにこれはもうその発端ですよ。一方においては薬価基準以外のものは使ってはなりませんぞといって、医師には厳重な制限を加えるけれども、ちまたにおいてはそれがめちゃくちゃに乱売されておる、薬価基準を割っていくのだ、こういうことでは、これは私は成り立たぬと思うのですよ。従って、一体薬務局にどういう考え保険局としては述べておるのか。これは保険局は、医療の方だから、われ関せずえんと知らぬ顔をしておるのか、どういうことですか、保険局の方は。
  40. 太宰博邦

    ○太宰政府委員 御説の通り、今日の状態は放任しておきますと、これは保険医療の方にも影響があることは当然であります。ただ今日のような現象は、資本主義の自由経済における正当なる競争とは言いかねる問題だろう、これは何とかして早く処置していただく必要があろう、薬務局とも連日相談いたしております。そういう線で薬務局の方でも指導していただいておる次第であります。
  41. 高田浩運

    高田(浩)政府委員 私が先ほど申し上げました品目が少ないということは、別に薬価基準との関係が、この問題がそう深い関連はないという意味で申し上げたわけではございませんで、この問題は薬の品質それ自体の問題から、薬価基準の問題から、いわゆる薬の問題全般に対して非常に重要な問題である、そういう認識に立っておるということをお含みおきいただきたいと思います。
  42. 滝井義高

    滝井委員 今保険局長からも発言がありましたが、これはやはり薬価基準に及ぼすところが大きいということは、健康保険制度自体に相当の影響が陰に陽に及んでくることを意味するわけです。すなわち薬の公正なる資本主義社会における競争ではないのだという意味の今の御発言があった、そうしますと、裏を返せば過当競争が行なわれておる、その過当競争を一体どうして防止するかということなんです。それは今の日本の立法上の問題として、過当競争を防止して適正な価格で品質の優秀なものを国民医療の中にもたらそうとするならば、これは結局公正取引委員会の特殊品目が何かに指定する以外に今の段階ではない、そういうことを御検討になっておりますか。
  43. 高田浩運

    高田(浩)政府委員 この不公正な取引をやめるについて法的な手段としては、今お話しの独禁法の適用ということになるわけでございます。私ども、これらの問題は法的な問題もさることながら、先ほど来申し上げておりますように、メーカー段階、卸段階、小売段階、それぞれに深くかつ複雑な原因が介在しておるわけでございますが、それらの業界相互の間に、協力をしてこれを解決していくという努力が幸いにして非常に真摯に行われている現状でございますので、一面においてはそれを十分期待をすると同時に、今お話しの独禁法との関係については慎重に研究を重ねておる次第でございます。
  44. 滝井義高

    滝井委員 私は、薬は安い方がいいと思います。しかしそれは何も公正な取引の対象にしたところで、これは高くなるはずはないと思います。さいぜんあなたがちょっとお触れになったように、確実に原価計算というものをよく見て、そうしてその上で公正な薬を薬価基準できめていったら、できないことはありません。できるのです。薬価基準によってそのほかの薬もきめられてくるのです。そうしますと、もとをもう少し追及してみますと、今乱売しておる、三共で乱売されておる薬の出どころは、一体どこですか。薬はどこから出ておるのですか。
  45. 高田浩運

    高田(浩)政府委員 どういう経路を通ってきているかということについては、率直に言っていまだ判明いたしておりません。従ってこれらの点につきましては、特に乱売のひどい品物、あるいはロット番号等を切り取ったり、あるいは抹消したり、そういうような薬事監視上特に注意を要するものにつきましては、その経路を追及するように報告を求めることにいたしておる次第でございます。
  46. 滝井義高

    滝井委員 今日本の薬は、全般的に見て、それは一品々々見れば問題があると思いますが、大局的、全般的に見て、薬は生産過剰ですか、それとも適正な薬の生産が行なわれておるのですか、生産不足ですか、どちらです。
  47. 高田浩運

    高田(浩)政府委員 特殊な品目を除いて、生産不足の状態とは考えておりません。
  48. 滝井義高

    滝井委員 大体生産過剰の状態だと思うのです。一体一カ月でどの程度の薬の生産がありますか。
  49. 高田浩運

    高田(浩)政府委員 年間約千四百億でございます。
  50. 滝井義高

    滝井委員 そうすると、百十億か二十億程度の生産ですね。これは二、三年前に調べたときに、輸出は三十五、六億か四十億程度だったんです。貿易自由化の声がかかってきておりますが、貿易自由化にさらされて薬品は困る部面に入る。多分困る部面に入ると私は見ておりますが、一体日本でどの程度売れていますか。
  51. 高田浩運

    高田(浩)政府委員 輸出は現在年間約五十億でございます。  それから貿易自由化との関係につきましては、これは品目によって非常に相違がありますので、抽象的に申し上げる段階ではないのでございますが、概しては、日本の薬企業というものがまだそう年数を経てない関係もありまして、いわゆる完全自由化を行ないました場合においては、国内の製薬企業は相当の影響を受ける、かように考えております。
  52. 滝井義高

    滝井委員 貿易自由化と薬の問題は機会を改めるといたしまして、とにかく貿易自由化によって薬は相当の影響を受けることは、私の調べたところではその部類に入っております。そうしますと、千四百億作っておって、専門家の意見を聞いても——これを月に割ると百十億か百二十億程度です。おそらく六割ぐらいしか日本の国内では売れていないんじゃないかと思います。そうしますと、あとの四割程度のものは、これはストックになっている。それは一体どこにストックになっておるか。メーカーですよ。メーカーにストックにならざるを得ない。そうすると、メーカーは——最近私の知っておる一、二の問屋を調べてみても、昔は問屋が大体主導権を握っておった。ところが最近における問屋というものは力がありません。私の知っておる限りでは、問屋はすでにメーカーに直結する形になっていますよ。従ってこれは月でいったら四十億かそこらの薬というものが生産過剰の状態になって、どこかにはけ口を求めなければならないので、乱売という形になってきていると思うのです。そうすると根源はメーカーということになる。一体厚生省は薬のメーカーの指導というものはどういう工合にやっておりますか。これはなるほど企業としては通産省かもしれませんが、しかしこの薬が薬価基準に載せられ、あるいはその薬がいいか悪いかの調査の権限というものは厚生省にあるはずですよ。そうするとその製薬メーカーに対するあなた方の指導というものはどういうようになっておるかということですね。現在日本のマスコミの寵児は、薬と化粧品と電気器具だといわれている。高田さんの関係する薬事法の中の化粧品と薬という二つが日本のマスコミの寵児ですよ。その二つを作る製薬企業について、一体あなた方は権限もなければ何もない、ただじっと見ておるというわけではないと思うのです。一体こういう問題が起こったときに、製薬企業にどういう注意をしましたか。どういう相談というか、やったことがありますか。
  53. 高田浩運

    高田(浩)政府委員 製薬企業につきましては、厚生省において全面的に見ております。通産省でございませんで、厚生省においてこれの管理をいたしておるわけであります。もちろん御承知のように薬事法によりまして製造の登録、あるいは品目の許可等を行ないまして、あるいは薬事監視等を行なって品質の確保に努めておるわけでございますが、ただ今問題として出されました生産量についての調整あるいは統制というようないわゆる権力による介入はいたしておりません。しかしお話しのように、こういうようないわゆる薬の乱売というような自態に対しましては、メーカーは非常に大きな関係を持っておることは、言うまでもないことでございますし、その意味において取引のやり方、その他の問題について十分現状を是正し得るような対策を確立するよう、私の方としては慫慂をいたしておる次第でございます。
  54. 滝井義高

    滝井委員 末の方の水を清らかにしようとすれば、やはり源から正していかなければいかぬと思うのですよ。だから従って乱売を防止するというならば、まずその大もとである製薬企業について、あなた方がある程度検討を加えてみられたら、これは一番早いわけです。しかも品質のいいものであるか、悪いものであるかということも、ここで押えれば一番はっきりしてくるわけです。そうすると、品質のいい品物ならば、そうむちゃくちゃに安く売れば原価を割ってメーカー自身が致命的な打撃を受けるわけですから、そういうこともなくなってくるわけです。今の高田さんの御答弁を聞いておっても、乱売に対してどうも的確な対策をお持ちでないような気がするのです。これはきょう参議院でも、たしか高野さんか何か質問をしておるはずですよ。私はこの前に質問しようと思っておったのですが、ちょうど委員会の都合でできませんでしたけれども、やはりこの問題についてもう少し厚生省が基本的な方針を出して、こういう工合にやるのだということをきちっと出さないと、これは国民医療に重大な影響を及ぼしますよ。そういう今のような御答弁では、今、一体乱売をどういう方向に持っていって、どういう工合に片づけるのだという基本方針が何も出てきませんよ。大臣お聞きの通りです。それで私は、あす厚生と労働がありますから、あすとは申しません。少なくとも来週あるまでには、厚生省はこの乱売というものについてはこういう態度で臨む、と一貫して、いわゆるメーカーから卸、小売に至るまでの基本的な態度というものをやはり示してもらいたいと思うのですが、大臣どうですか、示せますか。
  55. 渡邊良夫

    渡邊国務大臣 これは御指摘のように非常に重大な問題でありまして、薬価基準と社会保険、ひいては国民医療の問題に及ぼすところの重大なる影響がありますものでございまするから、十分検討いたします。
  56. 滝井義高

    滝井委員 今大臣お聞きになって、薬価基準にも、健康保険にも、国民医療にも重大な影響があるということを十分御認識いただいたと思います。なかなか渡邊厚生大臣はやることが多いですけれども、これはしかし厚生行政の宿命ですから、こういう製薬企業の流通機構なんというものについても、それだけ前の大臣がやっていないんです。現在製薬企業というものは自由化のあらしに直面をしておる。簡単に言うと、系列化がなっていないのです。いわゆるメーカーから問屋から小売に至る系列がなっていない。系列化がりっぱに完成しないときに、薬事法の改正というものが出てきているわけです。この根本的な問題については、私はいずれ機会を改めて御質問いたしますが、結局系列化されない販売機構のもとで薬事法をどう変えるかということになると、メーカーは大恐慌を来たすわけです。従って薬事法の改正というものはメーカーから相当の抵抗があるはずです。それはどうしてかというと、末端の販売機構、一号、二号、三号、配置業というものを規正していくということになると、製薬企業が手足を失うことになるのです。そういう点で、これは非常に大きな要素をはらんでおる問題ですから、あなた方は少なくとも当面この乱売についてはこういう方針で臨む、将来の根本的な薬事法の改正はこういう方針だということを、当面の対策と恒久的な薬事法の改正と関連する問題、これは薬事法のときにお聞きしますから、あとでいいです。少なくとも前の問題だけは、今大臣の御答弁通り高田さんの方でも腹をくくって、日本国民医療の前進のために制度を確立して下さい。お願いしておきます。
  57. 高田浩運

    高田(浩)政府委員 あるいは繰り返しになるかもしれませんけれども、一応申し上げておきたいと思いますが、さしあたり池袋問題についての対策といたしましては、先日、十日に東京都を通じまして、いわゆる誇大な宣伝あるいは薬の乱用を助長するような宣伝、そういったものの取りやめでありますとか、それを勧告いたしまして、両者ともこれを了といたしました。それから次に薬の品質の確保につきましては、随時抜き取りを行ないまして、特に乱売のひどい品種、ないしロット番号等の切り取りあるいは抹消されているものにつきましては、たびたび抜き取り検査を行ないまして、品質の遺憾なものが出ないように気をつけて、さらにそれらのものについては、先ほどもお話がありましたように、その経路を追究いたしまして、薬事監視上遺憾なきを期する、そういうような考え方をとっておりますし、これらの問題に関連をして、メーカー、卸、小売各団体の関係者の幹部の参集を願いまして、協力をしていただくようにお願いをいたしたのでございます。その後全般的には漸次平静に帰しまして、この問題が解決の方向に、少なくとも方向としてはそういう方向に向かっておるというふうに考えておるのでございます。恒久的には先ほど来申し上げておりますように、メーカー、卸、小売それぞれの立場において協力をして解決をするという前提が一番大切でございますので、それらの三者の協議会を設けまして、問題を出し合って検討し、解決の道を導き出していくというような方式をとっておるのでございます。特に先ほど来御指摘のメーカーの関係者におきましても、事態の重大性を考えまして、非常に熱心に真摯にこの問題に取り組んでおられるのでございますので、私どもとしてはその成果を期待いたしております。もちろん恒久的な、最終的な法的な問題としては、先ほど御指摘の独禁法の問題がございますが、これらは慎重に研究して参りたいと思います。それからさらにやはり自主的にお互いの調整をはかっていくという趣旨からして、御承知の中小企業の団体組織法に基づきまして、小売商業組合の設立を促進して、その調整規程を整備することによって、お互いの不公正な過当な競争を防いでいくというようなことがやはり、一つの方途だと考えられますので、それらの方途もわれわれとしてはできるだけ促進をし推進をしていく、そういうような考え方をとっているのでございます。
  58. 滝井義高

    滝井委員 できれば来週でも、当面の対策と、そういう恒久的なものはこうしたらいいだろうというものがあれば、一つ文書で出してくれませんか。お願いしておきます。大臣、今根本的な検討はやるとおっしゃりましたから、それは薬事法の改正のときまでに一つ検討していただきたいと思います。  次は、今度また保険に返りますが、三十六年から皆保険になりますが、その場合に、地方税法で、地方税の中の市町村民税を減免された者は国民健康保険に入れられるのか、入れられないのか。
  59. 太宰博邦

    ○太宰政府委員 ちょっと正確にお答えいたしかねますが、たしか入れないところが多いのじゃないかというふうに思っております。
  60. 滝井義高

    滝井委員 市町村民税を減免されるということになれば、それはまず第一に考えられる人は生活保護の対象者です。これは私は入れられないと思うのです。生活保護の対象者ははっきりしていますから……。そうしますと、第二点は、生活保護の対象にはなっていない、しかしあなたが病気になったならばいわゆる単給、生活保護の医療扶助の単給をやってあげましょう、こういうのがあるわけです。そうするとそのときは、単給の場合は、全部扶助してあげる場合と、一部負担をさせる場合と、二つあるわけです。そうすると、一部負担をさせる人はその一部負担のお金が払えないという問題がこの前からあるので、私はそれを高田社会局長にいろいろ質問をしたのですが、最終責任は国にはないから、医療機関がおとりなさいと、こういっているのだが、現在国立病院その他にその未収というものが非常にたまってきておることは御存じの通りです。そうしますと、一体国民健康保険に生活保護の対象者は入れなくても、これは全部医療扶助でいくから問題ないとしますが、その単給の人たちですね。いわゆる生活保護の対象になっていない、病気になったときには医療扶助を受けられるかもしれないという人たちは一体どうするか。これはあなた方の方では局長通達で入れないことにしておるらしいです。それはどうも専門的になるから、ちょっと局長あれですがね。これはあなたの方で局長通達を多分出しておるはずです。施行通達と局長通達を出しておると思うのですがね。これは私はどうも法律違反じゃないかと思うのです。皆保険政策をとって、みんな入らせるというときに、入れないということはちょっと問題じゃないかと思うのです。これはあなたの方でそれがおわかりにならなければ、次会でもけっこうですよ。しかしこれは非常に大事な点です。大都市に行ったらボーダー・ライン層というのはたくさんいるのですから、東京、大阪等の大都市の国保をあなた方が推進される上に、これは非常に重大なところになると思うのですがね。
  61. 太宰博邦

    ○太宰政府委員 それでは、恐縮でございますが、次会に……。
  62. 滝井義高

    滝井委員 もう一つ、豊中市で最近、国民健康保険で転帰まで見ることになっていた。ところがそれを三年までにしたのです。給付の期間は三年ということになったわけです。短縮するときは一体どうですか。これは条例を変えるわけですから、短縮するときには知事と相談することになるのですか、どうですか。
  63. 太宰博邦

    ○太宰政府委員 大体国民健康保険法の方で給付期間を延ばします場合においては、保険財政に対する影響、あるいは運営がうまくいくかどうかという点を一度チェックする必要がございますので、たしか知事の方の承認を受けることにしております。そうでない場合においては、国民健康保険法の方では知事のあれを要求はしていないと思います。
  64. 滝井義高

    滝井委員 その通りなのですよ。どうもこれは世にも不思議なことだと思うのです。なるほど延長ずるときには保険経済自身から考えると影響があると思うのです。しかし今度短縮されるときは、その地区の住民にとっては大へんなことです。自治体の政治というものは、これはリンカーンじゃないけれども国民による、国民のための、国民の政治でなくちゃならぬと思うのです。ところが短縮をするときは知事の協議事項になっていないのですね。法五十三条ただし書きの規定による給付の期間の延長だけが条例の協議事項になっておって、短縮するときはなっていない。条件を悪くするときにはなっていないのですね。ある人に尋ねたら、給付延長のときでさえもやるのだから、当然短縮のときはなおやるのだ、この法律はそういう読み方をするのだという人もありましたけれども、私は、それはどうもそう読めぬのじゃないかと思う。結局短縮はそこの議会が勝手にやる、こういうことになると、条件を悪くするときはいつでも自由にそこでできるのだ、ところが条件をよくするときは知事が監督するということは、どうもこういうところに厚生行政の官僚性が現われておると私は思うのですよ。私はこの点は、短縮するときもやはり知事が、いかぬじゃないか君、短縮しないでもうちょっとくらい考えたらどうかというふうになることが筋だと思うのですよ。それをやらぬのですね。この点は皆保険政策になったときに明らかに問題です。それは赤字だった場合には赤字の補てん方法を何か考えなければならぬが、住民の治療の期間を短くしていく、今まで転帰までは無期限にしていたものを三年とがちっとするのは、あまりにも激しい変え方だと思うのです。これは国民健康保険法の施行令、政令でそういうふうに指導しているから、やむを得ない、文句は言えないということかもしれぬが、国民保険になるときにこういう大きな欠陥が残されていることは私は問題だと思うのです。これは局長さん、いろいろな人に尋ねたところが、それはどうもうっかりしておったという人が多かったのですよ。延長だけしかやらない、短縮の場合はやらない、知事に協議しなくても議会が良心的に決定してくれればいいといっても、現実には御存じの通り一般会計から国民健康保険特別会計に金がなかなか入れにくいということがあるのです。だから赤字になって短縮しようということになると、健康保険に比べて給付内容その他が劣っておる国民健康保険が、国民年令制度の給付制の発足とともに、ますます条件が悪くなる方向に向かうということです。豊中市といえば、すでに日本でも模範的な健康保険の都市ですよ。ところがその模範的なところがこういう状態です。これは保険局長、健帳保険ばかりに力を入れずに、これからは国民健康保険をもう一回洗ってみる時期が来たと思うのです、この時期を転機として。その点はどうですか。
  65. 太宰博邦

    ○太宰政府委員 豊中市のことというのは、ちょっと私まだ詳細に聞いておりませんが、一般的に申しまして、国民健康保険の実施を市町村にまかせた。市町村はそこに当然住民の福祉のことを考えていろいろな施策を進めるわけであります。従いまして豊中で条例を改正して、従来転帰までであったものを三年にするということについては、これは考えようによりましては住民の福祉をそこねるというような考えもあるわけでありますから、その点に関しては、豊中の市議会その他ででも非常に慎重に検討されていることであろうと私は思うのであります。一般的に申しますと、そういうようなことを一々知事にあれする必要もない、市町村の当局が市町村住民の福祉をはかることは当然なことである、そういう建前でこの法律は作っておるわけでありますが、この豊中の場合に、住民の福祉をそこねるということについて、条例がもう出たとするならば、それは市議会を通っているわけでありますけれども、そういうようなことをやることは考えられません。これは調査してからお答えしたいと思います。
  66. 滝井義高

    滝井委員 問題は延長の場合でも同じようなことなのですね、今のような議論をするとすれば。それは議会が自主的に延長するとすれば知事の協議は要らないのです。運営の主体は市町村ですからね。ところが住民にとってみれば、延長の場合も大事だが、既得権が今度短縮される場合はもっと大事ですよ。そういう点について、上部官庁である知事と協議するということに延長も入れておるならば、短縮も公平に入れるべきではないかという感じがするのです。そうしてもっと高い見地から、県下全般の給付期間なり給付内容を知事が見て、豊中市の短縮というものはいかぬという形になると思う。私は条例が決定されているかどうかは知りませんが、豊中市でそういう問題が起こっていることは確実です。  次は約束違反の問題です。それは健康保険の国庫の補助金がことしは五億円になったのですけれども、これは思い起こすと、一萬田さんが大蔵大臣のとき、それから池田さんが大蔵大臣のとき、当時は厚生大臣は小林さんだったと思うのですが、昭和二十九年から三十年にかけて、日本では健康保険の赤字というのが非常に大きな問題になってきた。ところがそれを救済するために、厚生保険特別会計に資金運用部からお金を六十億ばかり借りていく、同時に国は三十億出しましょう、こういうことで五者泣きというのがあったのです。それは保険者も被保険者も泣いて下さい、千分の六十の保険料を六十五に上げることによって、その半分を保険者が負担した、被保険者は同時に一部負担もやりなさいということになった。医者も診療報酬を上げるというようなことはもうちょっと待ってくれ、製薬企業も泣いてもらおうじゃないかというので、薬価に関するいろいろな調査の委員会を国会に作ったことを私は記憶している。その四者が泣いたから今度は国も泣いてもらおうというので、国がお金を三十億出すことになった。これは三十億じゃ少ないということだったのだけれども、とにかく資金運用部から金を貸す。そうして借りたお金の返済は年十億円ずつ入れますぞという形で、これがいれられない状態ならば法律はずっと延ばしていきますよということで、厚生保険特別会計法の一部を改正する法律案というのを出してきたわけです。これは赤字でも黒字でも必ず三十億は出しますと、固い約束だったでのす。これはもう今生き証人で池田さんと一萬田さんがおられるし、それから太宰さんは当時保険局長じゃなかったが、社会保障制度審議会の事務局長だったか何かでおったんですが、外からその社会保障の全般的な見地に立って知っておるはずです。そしてこれは代々厚生省の文書にもなり、大臣の引き継ぎ事務になってきておるはずですよ。ところで、それが、堀木さんが厚生大臣になったときに、いつの間にか十億円にされてしまった。そこで私が予算委員会に文句を言うために出ていったら、堀木さん胃けいれんを起こして予算委員会を休んでしまった。武士の情じゃということで、堀木さんと当時の防衛庁長官二人が、私が予算委員会で質問をする番になったら病気で体んじゃった。悪い言葉で言えば肩すかしを食って、この追及はできないままで終わった。その堀木さんにかわって出たのが、しろうとの自治庁長官がかわって厚生大臣になり、それから石田博英氏が防衛庁長官にかわって、まことにお説ごもっとも、そういうことは私は今大臣に臨時兼摂で任命されたばかりで知りませんでした、ということで通ってしまったです。そして追及の機会がなかった。ところが今度は渡邊さん、あなたになったら、それをまた半分の五億に減らされてしまった。従ってあなたは、われわれが一萬田、池田両氏に約束をし、国民が両大蔵大臣に約束をしてもらった三十億の六分の一しか約束を果たしていない。あと六分の五というものは、結局あなたはほごにされてしまった、こういうことなんですね。それをある人は、それは滝井さん、あなたが貧乏で食うや食わずのときに、毎月一万円上げますと約束をした。ところがあなたが競馬か競輪かで当てて、百万長者になっちゃった。あなたが百万長者になったのに、まさか毎月一万円やる必要はないでしょうと言う。それと同じように、現在健康保険は黒字になったのだから、ことしの終わりになると二百十億くらいの積立金ができるのだから、いわば二百億長者になったのだから、もう国から十億や三十億の金はもらわぬでいいのじゃないか、五億でよかろう、こういう形に結果としてはなるんです。そうすると五者泣きだとか、いろいろ言っておったのですが、どうも私は、これは幾ら目をこすってみても納得いかないのです。それは日本社会保障が非常に躍進をしておればいいです。ところが五者泣きのときに泣かした被保険者には、依然として一部負担があり、依然として千分の六十五がかかっていっておるのです。このごろ厚生省はこの千分の六十五を六十三にして二くらいを下げて、千分の一ずつを被保険者と事業主に上げましょう……。なるほど千分の一がざっと十一億か十二億になるのですから、二十二、三億から二十四、五億の金がいくことにはなりますが、それならば一体一部負担はどうしてくれるんだということになるのです。もっと、たとえば一部負担のほかに家族の給付を、五割から六割とか七割に上げるという方法もあるのじゃないか、こういう問題が出てくるのですが、一体渡邊大臣は今度の予算編成のときにどういう交渉とどういう結果で五億を納得されたんですか。その理由を明らかにしないと、これはもうあんまり政治をばかにしておると私は思う。私はきのうかおとといか、朝日新聞だったか何かで、梅原とか梅崎とかいう人が書いておるのを読んだが、政治はうそばかりだ、岸さんが、極東とはと言ったら、極東とはフィリピン以北、日本の周辺と解釈いたします——当の自分で調印をしてきた総理大臣が解釈をいたします、こう答えておるが、解釈というのはいろいろありますぞ、調印をしてきた本人が、こうであると断定もできずに、解釈をいたしますなんて、こういうごまかしをやっておる、ということを書いておったですが、私はやはりうその政治というものはいかぬと思うのです。約束したらやはりそれを果たさなければいかぬと思うのですね。こういうところが日本社会保障というものに計画性がないことを示すのですよ。昭和三十年なら三十年にきちっと約束をしたものを、貫いていくことができない、これはもう計画性のない証拠ですよ。行き当たりばったり、黒字になれば減らしていく、赤字になればまた借りたり、もらってくる、これではいかぬと思うのです。計画的に、千分の六十を六十五に上げた、一部負担をやった、今度はこれをもとに返してより前進せしめるためには、まず第二年度には一部負担もどけましょう、四年度には千分の六十五をもとの六十に返しますよ、こうかう計画性のある保険行政が行なわれないところに、こういう体たらくになってしまうのです。約束が守られない、その時その時の政治、力関係できまっていく。保険会計に金を出せという声が大きいと三十億出る、声が小さくて少し黒字になると五億になる。こういう状態でいっておれば、来年はゼロになりますよ。こういう姿が日本社会保障に出ておることは、私は非常に残念だと思うのですね。私が冒頭に指摘したのはこういうところですよ。こういうところが保険局自体、大臣自体、社会保障に対する情熱というものがわいていない証拠ですよ。これは健康保険が非常に満足すべき状態にあるならば何をかいわんやです。ところが今の健康保険を見てごらんなさい。五人以下も入っていない。ですから三十億をとって、少なくとも五人未満にも失業保険と同じ程度の組合を作って、組合を通じて入るものは入れるのだ、こういう制度くらいは三十億あれば打ち出せますよ。ところがそういうのはやらない。そして既得権の三十億というものは、いつの間にか外堀を埋ずめられ、内堀を埋ずめられ、今や本丸のやぐらだけが残っておるじゃないですか。こういう厚生行政というものはどうも私は納得いかないのですがね。いろいろあなた方は弁解がありましょう。しかしこれは弁解ですよ。答弁にはならない。弁解にしかすぎないことになってしまう。大臣、あなたは一体どういう形で、こんなに上着を脱ぎ、ワイシャツを脱いで、ズロースだけになったでのすか。これはもう数字的な答弁はいいです。こまかいことはまたあなたにゆっくりあとで聞きます。三十億が五億、六分の一しか約束を果たしていないのですよ。
  67. 渡邊良夫

    渡邊国務大臣 これは減らされるということは公約違反であるということは私どもよく存じておるわけであります。それで私ども健康保険財政上いろいろ検討いたして参ったのでありますが、今年やむなく五億円の計上にとどまったような次第でございますので、今後なお検討を要する問題として考えております。
  68. 滝井義高

    滝井委員 これは検討を要する問題ではない。もう既成事実になっておる。外堀を埋ずめられ、内堀を埋ずめられてしまったのですよ。しかも天守閣だけしか残らぬという状態で、このくらい攻め上げられてきて、今度はこれからまた城の外べいを築いて、内堀を掘り返して外堀を掘り返したら、大へんな努力が要りますよ。いわば私に言わせれば、大臣の時代になって三代目はから様の文字で貸家と書いたようなものですよ。(「新築するんだよ。」と呼ぶ者あり)貸家が新築になればいいですよ。新築になるには見通しがなければいかぬです。ところがこれは足場がないですよ。足場はみな大蔵省にくずされています。これはいろいろ抗弁はありましょうが、私はどうも納得ができない。資金運用部の金というものは一体なぜ消えてしまうのですか。ことしは三十億くらい残っておるのですがどうしてこれは消えてしまうことになるのですか。そうするとあなた方は、これは会計の中から返すのでしょう。これは当然国から入れてもらわなければいかぬものです。それを返す。これはやはり何というか、たとえがなかなかむずかしいのだが、おうようになり過ぎてしまって、金を持ったことのない者が持ったときと同じような状態になっておるのです。(笑声)笑いごとじゃない。こういう保険行政というものはないと思うのです。基礎が確立したら、その基礎の上に日本社会保障の土性骨を築かなければならぬ。社会保障に土性骨がないのです。こういうように、あしたには一城を抜かれ、ゆうべには一つのとりでを抜かれるような状態では話にならぬと思うのです。これは何といっても保険局長の黒星です。あなたが大臣の補佐に欠けておったことを天下に示したのです。その原因は、堀木厚生大臣のときに、局長の高田さんですか、この人が作ったことにもなる。しかもそれをさらに拡大したのがあなたであり、渡邊厚生大臣であるということになる。もう少しここうあたりでふんどしを締めてかからなければいかぬと思うのです。あなたの方でわれわれの納得のいく理由があるなら御説明下さい。
  69. 太宰博邦

    ○太宰政府委員 滝井委員はもうすでに御承知のところで、あまり申す必要もございませんが、国全体といたしまして社会保障にも相当力を入れなければならぬ、こういうようなときでございますので、健康保険の方を一時こういうような状態にせざるを得なくなった、これは大臣はおっしゃいませんでしたけれども大臣には最後までがんばっていただいたわけでありますが、全体としてやむを得ずこういうふうに相なったわけであります。過去の六十億の関係のものは、これを国の一般会計から十億ずつ補てんしてもらう件につきましては、今日のところでは法律でもって延期の措置をとっておるわけであります。  なお、料率の引き下げ等は、政府管掌だけの問題でありまして、これは引き下げたいということで目下社会保険審議会に諮問してその意見を聞いておる段階であります。他の一部負担の問題と家族給付引き上げというような問題は、これは単に政府管掌だけではございません、制度全体の改善でございますので、冒頭の問題とも関連をいたしまして目下検討を進めておるところでございます。
  70. 滝井義高

    滝井委員 一体料率の引き下げはいつから実施されるのですか。
  71. 太宰博邦

    ○太宰政府委員 社会保険審議会の答申がありますれば、大体私どもは二月分からという一応の予定をいたしております。
  72. 滝井義高

    滝井委員 三十五年の二月、今月から料率の引き下げをやる、こういうことはよくわかりました。これは異論がありますが、一応答弁はそういうことで承っておきます。そうしますと、現在健康保険会計の黒字は一体幾らになっていますか。そして同時に、三十三年度末で幾ら、三十四年度末、すなわち三十五年三月三十一日までに一体幾らになる予定ですか。
  73. 太宰博邦

    ○太宰政府委員 三十三年度末で百八十三億でございます。三十四年度はまだ年度が経過しておりませんが、ほぼ予備費程度、三十億くらいが残るかと存じております。
  74. 滝井義高

    滝井委員 大臣、今お聞きの通り、二百十三億の長者になるわけであります。おそらく大蔵省はこれで三十億はごにし、十億ほごにして五億にしたと思うのです。しかも借りておった六十億の金を多分三十億くらい戻しております。私の調べたところでは、予算書を見ると三十億くらいしか残っておりません。こういう形で黒字になったからといって、保険内容改善をやらずにどんどん返していく。もともと国がくれるというものを返していく。こういう状態ではどうもいかぬと思うのです。一つ大臣は十分局長あたりのレクチャーをお聞きになって、やはり公正な——あまり専門家の意見を聞くと間違うのです。やはり客観的に見て正しいと思ったら、さっと裁断を下してやらなければいかぬと思うのです。こういう保険経済、今まであれだけ赤字々々と騒いでおったのに、黒字になったら一挙に既得権を剥奪されてしまう形は納得できない。大臣、十分御検討になっていただきたいと思います。  生活協同組合の非課税の問題なんかありますが、社会局長がきょう見えておりませんから、次回に譲らせてもらって、きょうはこれで打ち切ります。
  75. 八木一男

    八木一男委員 今の滝井委員の質問に関連して、ちょっとこまかなことだけ申し上げておきます。大臣によく知っておいていただきたいことがあるのです。今保険局長から全体の大勢とかなんとか、いろいろ説明がありかけたのですが、大臣もそういうことを聞いておられると思うのですが、この問題のころには大臣厚生省にあまり関係がなかったらしいと思いますから、ほんとうの背景を御存じにならないと困る。あそこで初診時の一部負担、入院時の一部負担をやる、それから国の方も三十億出すというようなことで健康保険の赤字が解消することを政府が言われたわけですけれども、そのときにすでに黒字の徴候が見えておったのですが、前年度の赤字々々で押し切って、いろいろの審議会にも、猛烈に赤字が出て健康保険特別会計がひっくり返ってしまうというような資料を全都出して、それだからということで意見を求められた。そういう資料のもとに、それほど財政がひっくり返ってしまうならば仕方がないから、政府の方で三十億出すのならば一部負担もやむを得ないというような意見が方々で出て、各審議会で、これは反対もずいぶんあったけれども、いろいろそういうような意見が多数出て、それを背景に政府が押し切られた。そこをそれと違う意味で、一部負担が必要であるというようなことを厚生省保険関係では言っておられるけれども、論議の中ではすべて公正な——厚生省だけではないところの論議では、赤字があるから、一部負担はよくないけれども、仕方がないけれどもやるのだというような論議のもとにあれが押し切られた。そうなんでしょう。今聞かれると、ほかの理由があるのだというようなことを言われると思う。そうではない。赤字というものがあるから仕方がないのだ、だから一部負担をふやすのだということで、あれが全般的に政治的に多数で決定された傾向になっておる。今おそらくは違う意味で、赤字とは関係なしに一部負担が必要だというようなことを厚生省の当局は言うかもしれませんけれども、それがほんとうの政治の動きでないということを厚生大臣はよく覚えておいていただきたい。従って赤字がなくなり黒字になったら、そのときに一番論議の対象になった初診時の一部負担と入院時の一部負担は当然第一にやめなければならぬ。保険料を下げるという問題よりも前にやらなければいけない。前に保険料を上げたのはその一つ前に上げた。保険料を上げてから、その次に一年ほどたってから一部負担を作った。問題は黒字になったのだから、もし戻すときにはまず第一に初診時の一部負担と入院時の一部負担をやるべきだ。それからさっき滝井委員の御質問があったように、医療の審議会が開かれないので、いろいろな医療方針、新しい薬品を使うということが入れられなかった。厚生省の非常な怠慢によってそうなっておるわけでありますから、それが普通の状態でいったら、たとえば結核のカナマイシンだとか、そういうものは当然健康保険で使っていいものに入るべきものなんです。そういうことを考えると、当然、診療内容のおくれておるのをあとからすぐ追いつく、そういうことがその次に考えられなければならぬ。それが先なんです。それより先に保険料の引き下げということを考えるならば、ほんとう健康保険制度の考え方ではない。厚生省の中でいろいろの論議はあるかもしれないけれども、政治の大きな動きと医療保障ほんとうの姿はそういう点にある。制限診療をなくす、入院時の一部負担をなくす、それから家族なり国民健康保険でもそうですが、給付率を上げる、そういうことが先であって、保険料を下げるということはその次の問題である。それをひっくり返して考えられるようなことのないように、大臣に申し上げておきたいと思う。今度十分に御質問申し上げますけれども、その問題について一番最初の、ほかの理由で一部負担をやったということは、一般的な各審議会、一般的な国会の論議では、そういう根底では論議をされておらなかった。赤字で仕方がないからそういうふうにしたという論議であった。それをすりかえた理由で、そうでない理由があるのだから、今の黒字でもそれをやっておかなければならないという理屈は、この国会では通用しないということを厚生大臣はよく覚えておいていただきたい。この問題を私は続けてやるつもりでありましたが、これからやりますから、ほんとう医療保障を完成するという意味で厚生大臣考えて、慎重な答弁を願いたいと思います。それについて御答弁があればいただきますし、御答弁がなければこの次でもけっこうです。
  76. 永山忠則

    永山委員長 午後二時まで休憩いたします。     午後零時五十二分休憩      ————◇—————     午後三時四十一分開議
  77. 田中正巳

    ○田中委員長代理 休憩前に引き続き、会議を開きます。  休憩前の質疑を続けます。大原亨君。
  78. 大原亨

    ○大原委員 私は、これから岸内閣の同和対策について御質問いたしたいと思います。  岸内閣は同和政策につきまして、いろいろと宣伝もございましたけれども、実際上の予算編成を基礎にいたしまして、どういう同和政策をもって対処せんとしておるのか、こういうところを一つ責任者の方から責任ある御報告をまず、最初にしていただきたいと思います。
  79. 渡邊良夫

    渡邊国務大臣 同和対策は、御承知の通り各省にまたがっておりまして、格関係閣僚がおりませんから、私が一応国務大臣としての立場で御答弁を申し上げます。  政府部内においては、同和対策関係閣僚懇談会というものがあり、また自民党の方におきましては、同和対策特別委員会というものを設けまして——堀本委員会、こういうことを言っておりますが、これで明年から同和対策十カ年計画のもとに発足いたそうとしておるような次第でございます。
  80. 大原亨

    ○大原委員 それでは今のお話は、厚生大臣が閣僚懇談会を代表して、その意向を責任を持って御説明になり、御答弁になるのですか、その点一つ……。
  81. 渡邊良夫

    渡邊国務大臣 これは責任を持ってというよりも、やはり各省の分担のことがございまするから、関係各省の事務当局も参っております。関係各省それぞれやはりその方向に向かいまして同和対策というものを立てておりますから、各省の政府委員からの御答弁にしていただきたい。私は厚生省の同和対策につきまして、御質問に応じまして、お答え申し上げます。
  82. 大原亨

    ○大原委員 岸内閣の、政府の部落対策を進める事務官庁としましては、やはり事務をとる人がいないと、各省にまたがっております事務を総括する中心母体がないと、なかなか仕事は具体的に進まない。それを閣議において代表する国務大臣があるということにつきましては、閣議においてお互いに確認して了解されれば、それでいいと思うのですが、事務機構は一体どこですか。どこが中心になって各庁の部落対策を進めておられるのですか。
  83. 渡邊良夫

    渡邊国務大臣 内閣の審議室が中心になりまして、各省の事務次官、関係局長が連絡幹事、こういうことになっております。
  84. 大原亨

    ○大原委員 それでは、ただいままでの御答弁にも若干問題がありますけれども、質問を進めていきますが、政府の十カ年計画の概要について御説明をいただきたい。
  85. 高田正巳

    高田(正)政府委員 おおむね十カ年を目途にしてやろう、こういうことでございますけれども、十カ年計画というものがぴしっときまっておるわけではございません。大よそ十カ年程度でこの程度のことをやろうというふうなめどをつけていこう、こういう問題でございますので、いつまでもだらだらとやっておって効果が上がらぬということでは困る、十カ年というようなものを一応のめどにおいてやって参る、こういうことでございます。従いまして十カ年計画の各年次の方針、具体的な細目というものがきまっておるわけではございません。ただ方法といたしましては、大きく分けますと、たとえば経済確立対策とか、あるいは環境改善対策とか、教育事業の推進でございますとか、かようなことを大柱といたしまして、それぞれその中で、たとえば環境改善対策でありますればこういうふうなものを取り上げていこう、こういう大よその方向といいますか、それはきまっておるわけでございます。
  86. 大原亨

    ○大原委員 それでは部落対策の十カ年計画のおもな項目は今三つあげられましたけれども、三つの点につきまして具体的な内容と、そして金額の規模等につきまして御用意ありますか。
  87. 高田正巳

    高田(正)政府委員 金額の規模につきましては先ほど申し上げましたように、確定的な金額をはじいてはおりません。ただ内容といたしましては、たとえば環境改善対策という一つの大柱を申し上げましたが、その中身といたしましては第二種公営住宅、低家賃住宅の建設でございますとか、その他二つほど建設省所管の仕事が予定されております。     〔田中委員長代理退席、委員長着席〕  それから厚生省関係といたしましては、上水道、簡易水道の整備、井戸新設でございますとか、共同浴場、共同便所、隣保館、保育所、児童遊園地の設置とか、さようなものが五つほど上がっております。従いまして環境改善対策として行ないまする事業は大体八種類くらいを予定しておるわけでございます。さような工合に経済確立対策につきましても、教育事業の推進と、私が先ほど申し上げましたことにつきましても、それぞれ中身の細目が一応方向としてきめられておる、こういうことになっております。
  88. 大原亨

    ○大原委員 方向としてきめてあるというのですけれども予算の規模や、あるいは具体的な内容を、もう少しこまかな資料はありますか、提示できますか。
  89. 高田正巳

    高田(正)政府委員 三十五年度予算の規模その他につきましてはお話を申し上げることができます。ただそれ以降の年次にわたりましては、これは予算のことでございますのでまだきまっておりません。こういうことでございます。
  90. 大原亨

    ○大原委員 十カ年計画の中身はないのですね。私がお尋ねしたいのは、日本には六千部落、三百万人の未解放部落がある、こういうのです。政府は、今回特にこれを同和対策と銘打って、取り上げておられるのですけれども、そのいわゆる六千部落、三百万人の未開放部落の対策を総合的に十カ年でお立てになって、そうして第一年度をおやりになっている。私はこれが十カ年計画だと思うのですけれども、そういう展望に立った十カ年計画はないのですか。
  91. 高田正巳

    高田(正)政府委員 先ほど申し上げましたように、来年度から始まる十カ年ということでございまするので、一応来年度予算案をきめまして、今後検討をいたしまして、十カ年の長い間の一つ計画をもう少し詳細に相談をいたすということになって参ると思います。ただいまのところは、それぞれの年度の金の支出に関係することでございまするので、将来をしばるような確定的な計画というものを立てておるわけではございません。ただ、方向といたしまして、大よその見当というものはつけて仕事を進めているわけでございます。
  92. 大原亨

    ○大原委員 十カ年計画の中身につきましては、具体的に御答弁がないわけですけれども、これは事務当局の責任者である大島審議室長にお尋ねいたします。政府の方でいえば、同和対策となっているのですが、十カ年対策の初年度である三十五年度予算を遂行していく、そういう基本方針なり、あるいは具体的な、有機的なつながりを各省の政策は持っていると思うのですが、そういう要綱はちゃんと策定して仕事を進めているのですか。でなかったら、予算はお手盛りで、あちらこちらで乱費する結果になります。結果的には、部落対策について基本的にどう考えているのかということが問題になります。そういうことでありましたならば、これではやはり血税の乱費になります。私はモデル地区その他についてお尋ねしたいと思いますけれども、それは事務当局の責任者としては審議室だということですが、閣僚懇談会では厚生大臣、こういうふうに言っておられますけれども、私は、そういうふうに承知いたしておりますが、事務当局は、そういう基本的な予算を使う心がまえなり、将来の展望なりをちゃんと立ててやっておられますか。
  93. 大島寛一

    ○大島政府委員 お答えいたします。ただいまの御質問、厚生省社会局長からお答えしました通りでございますが、なお、事務当局が各省間の連絡調整その他どういうふうになっておるという点につきましては、ただいま御指摘もございましたように、内閣、各省にまたがって多岐にわたっておりますので、各省間十分連絡を密にいたしまして、この間総合調整を緊密にはかりながら、たとえば三十五年度予算におきましても、総合的な考え方から予算が組まれるようにしておる次第でございます。
  94. 大原亨

    ○大原委員 これはどなたが答弁なさってもよいのですが、政府の方針といたしまして、部落問題というのを基本的にどういうふうに考えて、そしてどういうふうに施策を進めるのだ、これは文書に書いてないというのですけれども、そういう部落問題に対する考え方、認識の仕方について、私は質問すまいと思ったけれども、てんでんばらばらの気がいたしますから、一体どう御認識になってやっておられるか、だれでもよいから、責任者答弁して下さい。
  95. 高田正巳

    高田(正)政府委員 これは長年の問題でございまして、最近特に始まったことではないのでございます。結局、直接には、差別にまつわる人権問題としてこれは放置できない社会現象である。それで、その原因をいろいろ調べてみますと、その地区の経済的な低位性と、住宅その他生活環境の非常に工合が悪い、劣悪性と申しますか、そういうふうなものが悪循環をなしましてかような差別観を醸成する原因ともなっておるように考えられるのであります。従って、これらの悪循環を断ち切るために、まず経済的地位の向上と生活環境改善をはかるということが必要であると考えまして、先ほど申し上げましたように、経済的地位の向上ということに関連をいたします対策の方面と、環境改善関係する対策、さらに加えて、結局人のものの考え方関係をするわけでありますので、社会教育といいますか、広く教育といいますか、さような方面も非常に重大なる問題であるから、それをも柱の一つとしてつけ加えまして、かような大柱のもとに仕事を進めて参ろう、かような考え方をいたしておるわけでございます。御質問のお答えに十分なっておりますかどうか内心危惧を持っておりますけれども、さような考え方をもって仕事を進めているわけであります。
  96. 大原亨

    ○大原委員 いわゆる封建的な身分差別、それを根源といたしまして、人間の上に人間がおり、就職や結婚、日常生活全般にわたって差別を現実に受けている。しかも現在生きていく上において、この資本主義の社会において非常な貧乏に突き落とされて、差別と貧乏が重なって特殊な部落を形成している。ですから、これを根本的にどういうふうになくしていくか。そういう社会の暗い面をなくすることがいわゆる人間の人権を尊重するゆえんだ、こういう建前で考えていきましたならば、部落問題というのは民主主義社会を形成する上の基本的な問題である。だから、もう少しやはりちゃんとした、各省とも、あるいは事務機構においても、国務大臣においても責任ある態勢をもって臨まるべきであるというふうに私ども考えるわけです。これは単なる六千部落、三百万人の同胞の問題ではない。日本の民主主義社会の基本的なあり方の問題である。だから、そういう観点からいたしますと、政府がこの問題を取り上げられることにつきましては、非常に問題点が多いので、これから逐次具体的な質問をいたしますけれども、第一に、十カ年計画の第一年度においてモデル地区を設けて対策を立てる、こういうことなんですけれども、そういう政策の中における考え方の基本、どういう観点からモデル地区を選んで、そしてこの部落対策を現実に進めていこうとするのか、あちらこちらで言われておるモデル地区の考え方についてまず最初にお伺いしたい。
  97. 高田正巳

    高田(正)政府委員 モデル地区というものを設定をいたしまして、これを推進して参ろうという考え方の一体基礎はどういうところにあるか、こういう御質問でございますが、御存じのように、同和地区の経済確立でありまするとか、あるいは、環境改善——かりに環境改善一つを取り上げてみましても、関係の各省が非常に多いのでございます。従いまして、関係各省が協力をいたしまして、しかもいろいろな各省の持っておりまする施策というものを効果的に、有機的に進めて参りまする場合には、やはりモデル地区というふうなものがありました方が非常に効果が上がって参る、かような考え方をいたしておるのでございます。こういうことは、ほかのいろいろな仕事をやりまする場合にも、これは大原委員よく御存じのように、モデル地区を作りまして仕事の効果的な推進に寄与するということは行なわれておることでございます。さような意味合いで、別に事新しいことではございませんが、さような観点からモデル地区を設定をいたしたのが一つでございます。  それから、非常にこまかい問題になるかもしれませんが、また、このことが非常に重要な点なのでございますが、地区によりましては、従来から同和関係事業として実施されましたような事業でない、非常にこまかいばらばらしたような仕事なり施設なりというものが、現実にその地区として見ました場合には、地区の環境改善をするためには必ず必要だというふうなものがあるわけであります。全国の一般的な施策としましては、なかなかそういうものは予算なんかにも載りにくい。また、どこでも要るものではない。しかし、その地区をほんとうによくしようとした場合には、非常にこまかい仕事ではあるけれども、そういうものをやっていかなければならぬ。そのことがないために全体の他の施策もちんばになってしまって、非常に不十分なもものになるというふうな性格の仕事があるわけでございます。さようなものは、全国一般的に同和地区を見渡してどうするというふうな施策はなかなかいたしがたいのでございまして、具体的に何々県の何市の何部落というものをつかまえてみて、初めて、ああこの仕事はどうしても要るというふうなのがあるわけでございます。これはこまかい点でございますが、さような仕事を新たに予算に盛り、実施していく便宜のためにも、このモデル地区というふうなものを設定いたした方が便宜であろう、かような考え方から、かような施策をとったのでございます。
  98. 大原亨

    ○大原委員 私は部落対策については、やはり差別と貧困ということがよく言われるけれども、そういう問題を解決するために、それぞれの地域において特殊な事情があるということはわかるのです。わかるのですけれども、たとえば部落産業を育成するとか、あるいは半失業状態、失業状態にある雇用政策を集中的にどうするとか、あるいはさらに基礎的にはいろいろな保険の制度を適用したり、あるいは社会保障制度全般をどういうふうに全般として進めていって、貧乏を追放する政策を立てるとか、そういう積極的な基本的な政策があると思うのです。それからいろいろ言われたような、また本年度も若干計上されておるような計画もあると思うのですけれども、そういう産業政策とか、あるいは雇用政策とかいう面における積極的な政策面は本年はどういうふうなお考えで具体的にどう取り上げられておりますか。それぞれ関係省は部落対策ということについて意識統一をされているということですから、あとで教育面、住宅面あるいは厚生省環境衛生面、こういう問題はあわせて逐次御質問申し上げますけれども、雇用政策とか、あるいは産業政策、就職とか、いろいろな問題について非常に不利な条件にある。これは結局は生活が安定してない、貧乏だ、そういうものが悪循環をしておる。差別と貧乏が集中的に悪循環しておるのが私は部落だと思う。だからそういう問題については、やはり適正な雇用政策をとる、あるいは部落産業をどういうふうに育成するかという積極的な政策をとる、もちろん社会保障制度全般につきましては別にあらためて私どもは各般から討議いたしますけれども、今言ったような積極面における政策につきまして、関係省におきまして昭和三十五年度の方針を明らかにしていただきたい。
  99. 高田正巳

    高田(正)政府委員 直接厚生省関係した御質問ではないようでございますが、全体の考え方といたしまして御披露申し上げておかなければなりませんことは、今御指摘のような基本的な問題というのが同和問題を解決いたしますためには非常に大事なことは申し上げるまでもないところであります。しかし、そういうものは基本的な問題であるだけ非常にばく然とした問題でございますが、そういうものは長年叫ばれておりながら、ちっとも——ちっともと申しては大へん語弊がありますけれども、今日やはりこの問題の解決には、この問題はあくまでも残ってきた。こういうふうな事態でございますので、従ってばく然とした基本的なことを論議をいたすことも大切でございまするが、ともかくできるところから手をつけていこう、少しでも前進をして参ろうというふうなことが、私ども考えておる一つの大きなものの考え方でございます。そういうことがございますことが一つ。  それから同和関係予算として特別に計上をいたしておる経費もございますが、それは他の一般的な予算の項目に載りがたいものをそういうふうなことで計上いたしておるのでございまして、他の一般的な予算の施行にあたりましても、同和部落といいますか、そういうふうなものに重点的に施策を集中して参る。たとえば例をあげて申しますると、厚生省で申しますれば、あるいは児童関係の保育所とかいろいろな施設がございますが、これは保育所設置の経費といたしまして一般的に計上しておるわけであります。さような経費の執行につきましても、同和部落ということを十分頭に置いて、その位置の選定等においては相当——何と申しますか、優先順位を重んじていこう、こういうふうなことも各省の施策全般を通じて行なわれていくので、これはなかなかばかにできません。このことは非常に大事だと私ども考えておるわけでございます。従って同和関係といたしまして特別に計上いたしましたのは、むしろさようなものに載らないそういうふうなものを特につまみ上げて計上をいたしたような次第でございます。従いまして関係各省におかれましても、ことにただいま御質問の経済関係のいわゆる経済確立対策というふうな問題になりますると、今申し上げました特別にそのために計上された予算というよりは、むしろ一般的な経費として計上されたものをそちらの方向に指向をして参る、あるいは施策として重点を置いて参るというふうなことが比較的大きな部分を占めてくるものと私ども考えておるわけでございます。御関係の省からそれぞれお答えあると思いまするが、さような観点で、産業関係の省にも若干の特別な経費計上されておる次第でございます。
  100. 大原亨

    ○大原委員 自治庁の財政課長がお急ぎのようだから、これは一番最後でちょっと逆になるのですけれども、御質問いたします。  私ども地方に行きましても、政府の部落対策、同和対策と銘打っている部落対策につきましていろいろ聞くのです。たとえば建設省政策でも、その他の各省の施策にいたしましても、一番大きな問題は地方財政が非常に貧困なところに部落が多いのです。基本的に部落の多いところの地方財政は貧困なんですよ。これはやっぱり所得が少ないし、購買力も少ないし、財政負担能力も少ないからなんです。そういうところに政府施策は、たとえば二分の一補助とかいう格好でたくさんあるわけです。これは具体的に建設省その他について御質問いたしますけれども、そういたしますと、結局は部落の問題というのは、全国をずっと地域的に見ますと、全国へまんべんなく普遍的にわたってあるのではなしに、地域的に偏在しているのです。歴史的にもです。そういたしますと、結局地域的に偏在をしているそういうところに対しまして、財政負担能力のない自治体に二分の一とか三分の二の国費負担でおっかぶせます。政府与党の、自民党のモデル地区の当初の三十億円あるいは三百億円十カ年計画というのは、相当国庫負担率も多かったのですけれども、今度はばっさりと大蔵省の方から予算を削られました。地方の自治体といたしましては、ずいぶん仕事を返上しているというふうに私も聞いている。こんなものをやったって二分の一くらいじゃなかなか受けられない、こういう意見が非常に出ているのです、建設省でも何でも。自治庁といたしましては、そういう自治体の実情や要求をどういうふうに把握しておられるか、それがこのモデル地区の推進を円滑にするかどうか、こういう点について一つ自治庁の財政課長の方の認識なり、実態把握なり、あるいは財政上どういうふうに裏づけをするかという御見解なり、この三つの点についてお伺いをします。
  101. 松島五郎

    ○松島説明員 お答えをいたします。  同和事業の行なわれますような市町村は、財政的にも貧弱であるという御指摘でございますが、御承知の通り、現在の地方財政の諸般の措置は、一応当該団体において必要とされますいろいろな経費を算定をいたしまして、それと同時にその団体において徴収されます地方税の額を算定をいたしまして、その差額を地方交付税によって補てんをしていく建前をとっておるわけでございます。従いまして財政力が乏しい、裏を返して申しますと、当該団体におきます地方税収入が少ない団体に対しましては、総体的に多額の交付税が配布されるという仕組みになっておるわけでございます。従いまして、一般的にはこういう制度を通じまして、いわゆる地方団体間の財政の均衡化をはかっておるわけでございますが、ただいま御指摘のありましたような同和地区において特別の事業が行なわれますような場合には、その事業に対する財政負担というものは、一般的な、今申しましたような均衡化の方式によっては必ずしも十分に補てんされないという問題は、御指摘通りでございます。そこで、現在でも地方債の制度がございますが、それは結局ある臨時の仕事等をいたします場合には、さしあたっての財源を補てんをする意味におきまして地方債を許可をするというようなこともやっておるわけでございます。で、モデル地区の問題のみならず、一般的に同和地区対策のためにいろいろな事業が行なわれます際に、たとえば住宅建設でございますとか、あるいは街路の拡張というような事業を一般的にも適債事業として取り扱っておりますので、同和地区等において行なわれます場合も、もちろん起債を充当して参りたいと考えております。そのほかにたとえば隣保館、公民館、集会所あるいは公益質屋あるいは共同浴場の建設というような事業もあるようでございます。これらにつきましてもそれぞれそれらが集中的に行なわれます場合には、当該団体の財政方響を勘案いたしまして、起債において十分考慮して参りたいと考えております。またいろいろ一件金額につきましては起債の制限もございます。たとえば町村でございますと、百万円以下は起債の対象にしないというような面もございますので、一つの町村で幾つかの事業が小規模ながらあるという場合において、それらを一括して起債の対象となし得る道も開きたいと検討中でございます。それからなお特別交付税の面につきましても、これは一般的な財政需要としては捕捉されない特別な経費に対して財源措置をとるという建前のものでございますので、従来も特別交付税の配分におきましては、同和事業等を対象といたしてきておりますので、今後とも引き続きその点に力を入れていきたい、かように考えておる次第でございます。
  102. 大原亨

    ○大原委員 地方財政の組み立て方については私どもも承知しておるのですが、実際には交付税でやるといいましても、これはあれもこれも入っておるというので、あまりよけい入り過ぎておって、簡単に言えば足りないわけですよ。だからこういう問題は国庫の補助率を増額するとか国の責任でやる、このことは政治上の責任で明らかにやる。十割補助ができないにしましても、四分の三とかいうふうに完全に補償するとか、いよいよ最後の場合に自治庁がどういうふうに確認をしておるかということになれば、たとえば特別平衡交付税——この問題だけは一つ項目を上げて確保するのだ、そういう方法で裏づけをするとか、そういうふうにしないと、交付税でやって足りないから、今度は起債でやる。それを将来今度は年次的に少しずつ返していくのだ、こういうことでは足りないと思うのです。実際できないという陳情書なんかをずいぶん私はもらっておる。各地方においてこんなものはできやせぬ、実情を無視しておる、こういうような声が大きい。そうすると財政負担能力がないから差別がつけられる。モデル地区の指定の仕方が一つの問題だ。その財政の組み立て方が問題だから、ますます差別をつけられるようになってくる。十カ年計画も何もない。十カ年計画も中身のないことがわかったから、そういうことについては私は問題があると思うのですが、自治庁としては、たとえば特別平衡交付金ですか、そういうものの中に特に取り上げて、この問題については見ていくとか、そういう裏づけをしますか。
  103. 松島五郎

    ○松島説明員 御指摘の特別交付税の点は、先ほど御説明申し上げた通りでありまして、従来も一般的な経費として普通交付税で算定されますほかに、こういう同和地区等におきます特殊な事情を考慮いたしまして、特別の財政需要があるものといたしまして、特別交付税を配分しております。今後もこの線に沿って続けていきたい、なお特別交付税の総額に余裕ができますならば、増額をはかって参りたい、かように考えておる次第であります。
  104. 八木一男

    八木一男委員 財政課長にちょっと関連があるのです。今まで特別交付税で、部落の問題に、ここ三十年くらいから、どのくらい各県で出したか、それを一つ資料を提出していただきたい。  次に、厚生大臣に先ほど国務大臣として、部落問題にいささかお答えになったわけですが、閣僚懇談会のメンバーに厚生大臣は当然入っておられるわけです。御就任後、この閣僚懇談会は何回開かれて、厚生大臣は何回御出席になったか、教えていただきたい。
  105. 渡邊良夫

    渡邊国務大臣 閣僚懇談会は関係閣僚、こういうことになっておる。別に座長も、それから責任大臣もおりません。私どもは主として自民党内にありまする同和対策特別委員会の方々と約四回くらい党でまとめたものについて協議をいたしたわけでございます。それによりまして、明年度から同和対策十カ年計画、それから先ほど来しばしば事務当局から申しましたような今年度の問題につきまして、昨年の五千万円を上回ること二・六倍の予算措置を特別委員会と協議いたしまして、ことしは一億三千三百万円、そうしてモデル関係におきましては四千六百万円、それから一般の同和対策厚生省関係といたしましては、私どもは八千七百万円、こういうふうに各省それぞれ予算措置を講じたわけでございまして、厚生省の分といたしましては二・六倍をふやしまして、さきのような共同炊事場とか、共同便所とか、あるいは隣保館とか、あるいはまた下水排水とか、こういうことの処置を講じております。
  106. 八木一男

    八木一男委員 別に座長はおられませんと言われますけれども厚生大臣、これじゃ困るのです。閣僚懇談会は内閣総理大臣議長とするということを内閣総理大臣から言っておられる。実際上内閣総理大臣が出席されなかったのか知りませんけれども、閣僚懇談会の議長内閣総理大臣、今だったら岸さんです。これを厚生大臣が御存じないとしたら、それは岸さんが御出席になっておられないということの証拠です。それをはっきり岸さんから言われたのです。総理大臣議長とする。そこで閣僚懇談会というものが、岸さんなり内閣の方からいろいろ御答弁になったように運行されていないということです。座長なる岸さんの出ていることを厚生大臣渡邊さんが知らないのですから、出ていられないことが大部分なのです。出ていられてもすぐ帰って、実際上座長としての任務を果しておられない。それから今も何回開かれたか伺ったら、その回数をはっきり言われないで、自民党の同和対策特別委員会と相談した。それはやはり政党内閣ではありますけれども、そういうことではいけないのです。やはりこの問題についての経緯を、もう一回厚生大臣は岸さんにも聞かれ、それから高田社会局長も、みんな経過を御存じですから、聞かれたら、そういう御答弁はできないはずです。部落解放の問題については、政党政派を超越してやろうということは、自民党の総裁であり内閣総理大臣である岸さんが、何回も御自分の方から言われているわけです。われわれもそうしよう、そういうときに閣僚懇談会が自民党の同和対策特別委員会とだけ懇談したような形で運行されたのでは、うまくいくはずがない。こんな何百年の間、何百人の人が完全に人権をじゅうりんされて暮らしてきた、今でもその通りになっておる、こういうような重大な問題を根本的に解決するのには、ほんとうに衆知を集めなければならない。そこでどんな大政党であろうと、一政党であれば、そこに政党の利己心が入ります。そんなもので解決されるということではいけない。社会党の言うことばかり聞かなくてもいいけれども、政党はすべての政党の意見を聞き、団体はその関係団体の意見を聞いて問題を進めていかなければ、問題がほんとうに解決しない。この問題が内閣で取り上げられたのは、自民党がどうであるとか、岸内閣がどうであるとか、そんなことで取り上げられたのではないということを言っておられる。私どもはそれを期待しておる。社会党のわれわれが言っておるのは、社会党がそれで得をしようなんということは一つ考えていない。五百年ほどの間、同じ日本人で何百万人の人がほんとうに人間らしい気持で生きられなかった。人権をじゅうりんされながら、その問題がいまだにこの民主社会でも続いている。それを根本的に解決しようという問題で取り上げた。そこで内閣に公平な強力な審議会を置いてやるべきであるという主張をした。それに対して岸内閣総理大臣は、はっきりと置くという約束をなさったんですよ。それは渡邊さん覚えていらっしゃるでしょう。昭和三十三年三月十一日にはっきり御承知をなさった。ところがそれが閣僚懇談会に一応横すべりしたような格好になったので、岸さんの真意を伺った、昭和三十三年十二月であります。ところが岸さんは前のことを覚えておられて、そうではない、閣僚懇談会において内閣に審議会をどう置くかということを審議するのだ、内閣に審議会を置くことは基本的な政策としてちゃんと持っておる、閣僚懇談会でその問題を進めるために今審議しておるのだと言っておられる。ところがその問題が、有力閣僚であるところの、有名メンバー、必要メンバーであるところの渡邊さんの口から出ないということになれば、閣僚懇談会においてそういうことがまだ進んでいない証拠である、そんなことではいけないと思う。厚生大臣になられて半年以上、その点は非常に怠慢ですけれども、怠慢を私はこれから責めることはいたしません。怠慢は全部です。労働大臣も怠慢だ、文部大臣も怠慢だ、すべてが怠慢だ。すべてが怠慢だけれども、それではいけないから、これから怠慢でないようにやっていただきたい。私は厚生大臣をどなりつけまして、みずから快としても何にもならない、そんなことは何でもない、厚生大臣がよくやっていただいたときに、私はありがとうございますと言ってもいい。そんな政党間の問題は何でもない。何百万人の人が何百年の間人権を侵害されて、その問題が解決しないという問題でありますから、だれの功績でもない、だれの怠慢でもない、一刻も猶予を許さぬ、この問題が解決する努力が続けられなければならないわけです。ですからこれから、この瞬間からこの問題に真剣になっていただきたいと思う。各省の問題でありますから、各省々々というけれども、それではいけないから、内閣に審議会を設けて法的に予算を組んで徹底的に、環境改善はもちろん、ほんとうの問題である経済の基盤、生活の基盤を確立する問題をやろうということに与野党一致してなっている。それで中心人物がない、中心人物がないところに中心を作るためには、今まで中心であった厚生省大臣である渡邊さんが中心になってもらわなければいけない。この問題の発端は、ほかの点で非常に不十分な点があったけれども、堀木鎌三さんのときに問題が取り上げられた、その伝統を受け継いで、やはり歴代の厚生大臣にそれをやっていただかなければならない。渡邊さんだけがなまけたとは言いません。全部がなまけておる。どうかきょうの瞬間から今までのおくれを取り返して、この問題を推進していただきたい。今までの経過は全部高田さんなんか知っているはずですから、帰られたら即時全部お聞きになっていただきたい。必要ならば私御説明に参ります。そうしてそれを推進していただきたいと思います。閣僚懇談会で自民党の同和対策議員協議会ですか、それとだけしたからそれでいいんだということでは困る。そういうことからさっきのモデル地区のような間違いが起こる。よければわれわれも賛成してもいい。ところが、モデル地区には、高田さんの御説明のようなことでは説明し切れない非常な欠陥がたくさんある。これは大原君の質問中ですから、またの機会に私申し上げますけれども、そういう誤りがあってはいけない。形式的な財政効果がわかるという問題ではないんです。何百年からの問題を解決するのに、一つのところにやって一つのところにやらなければそこに差別が生まれる。それをもらいたいために百の要望をしなければならない。当然の権利のある人が、もらいたいために三十くらいの要望になり、それが解決をしないことになる。安易に大蔵省あたりが考えて、一時に問題を集中すれば効果はある。目に見える効果というのは、方々でも目に見えるんです。目に見えたら大蔵省の人に説明しやすいという問題だけなんです。見えにくくても注意すれば大蔵省の人もわかるはずです。それだけの努力を怠っているわけです。集中すればそれだけきれいになって効果があるから、これだけの金を出していただきたいというと、いいでしょうと大蔵省が言う。それだから出してもらえるでしょうと言う。これは厚生省としてはすぐ考えられるだろうと思うことなんです。しかしそれは大蔵省が、簡単に目に見えなくても、ちゃんと見に行けばわかるような効果が方々にあれば、一つに集中しなくてもいい。集中しなければならない問題もあるけれども、原則的にはそうなんです。そういうような今のイージーゴーイングな財政の組み方を踏襲して、この部落問題に出たろうということが間違いである。ほかの問題ならある程度進んでいるから、一時そういうことであっても、それほどの問問題ではありません。ところが何百年の問題を解決するときに、ほかのイージーゴーイングなモデル地区というものを持ち出して、それがいいんだということを結論づけることは非常な間違いです。その間違いは何から起こったかというと、自由民主党の意見だけを聞いたことから起こった。しかもこういう方法でやりましょうという責任を持って答弁する人がないから、結局それに対しての追及もできない。ぐるぐるとやっているうちに勝手に予算にモデル地区をきめて出している。それでは予算に組みかえにくいということになる。そういうことにならないために内閣に審議会を置いてやりなさいということを前から言っているわけだ。それを何百年の歴史を変えようという大きな観点からじゃなしに、小さな観点から、これから審議会を整理する段階であるというなまけた考え方から、総理大臣が責任を持った重要な審議会をストップしてまだやってない。くだらない審議会はストップしてもかまいませんが、ほんとうに大事な審議会をストップさせるというばかな話はないんですよ。ところがそういうようなことが内閣全体に行なわれている。渡邊さんはその経過はあまり御存じないから、こんな大きな声で申し上げたら失礼かもしれませんが、私なまいきな態度で言っておりますけれども渡邊さん、人間がほんとうに人間扱いをされない時代が五百年ほど続いてきて、そして何百万人の人がどんなに努力をしようとしても人間として扱われなかった時代がある。今どんなに努力しようと、基盤が少ないために、人間らしい経済的な基盤を固めることができない人がある。そういう問題を解決する重要な審議会を、ただ今までのあまり小さな、こまごました能率の上がらない審議会を整理しようとしている段階だからということで延ばしていくということが行なわれている。総理大臣が約束しながら延ばされている。そういうことではいけないと思う。大きな立場からやっていただきたいと思うんです。いろいろな個々の問題ではないんです。それで審議会を設置するためにぜひ厚生大臣が推進力になっていただきたい。ところがなっていただいてない現状でありますけれども、これからでけっこうです。日本人全体が五百年誤りを犯していた。厚生大臣が六カ月間だけなまけられたことは、その中のごくわずかなことです。これからさえやっていただければ、私は厚生大臣の功績を大いにたたえる決心を持っているわけです。ですからこれから厚生大臣が閣僚懇談会の中で中心になって、この問題が停頓しているが、停頓さしてはいけないという主張をして、内閣に完全な事務局を持った有力な審議会を置くということを、これは予算上はなんでもない。ここに予算の大家がおられますけれども、審議会を置くこと自体は、予算は大したことはないです。これを少なくともこの二、三週間の間に厚生大臣の口から、そのときは岸さんのかわりでもけっこうです。そういうものを置くことになりましたと、ここで御報告になっていただくくらいの推進をやっていただくということをお約束願いたいと思う。
  107. 渡邊良夫

    渡邊国務大臣 先般の臨時国会のときにおきましても、この問題は強く皆様方から要望されておる問題であります。政府といたしましては漸進的に、手ぬるかったかもしれませんけれども内閣におきましては閣僚懇談会、そうして審議室を中心にいたしまして、各省との連絡事務を強化いたしまして、推進をいたしておったわけでございます。また党におきましては、非常に熱心に、堀木さんが中心となられまして連日のごとくこれを繰り返しておったわけです。結論が出るたびに内閣に持って参りまして、総理を初め関係閣僚が集まりまして、そうしてこれを熱心に協議いたしました。その結果といたしまして、ことしは不足ではあるかもしれませんけれども、今日の予算を見るに至ったわけでございまして、十分ただいまお述べになりました趣旨に沿いまして努力することにいたしたいと思います。
  108. 八木一男

    八木一男委員 前段の説明、そのくらいのことは知っています。そんなことはいいんです。あとで、今お述べになりましたといっていただいたからけっこうですけれども、前段が入るとぼやけるのです。内閣に審議会を置くことを厚生大臣、職務にかけても通過さしてみせるという決意を一つ表明していただけば、ほかのことはいいのです。
  109. 渡邊良夫

    渡邊国務大臣 総理大臣が、これは皆様方にお約束になっておったということであれば、そういう御発言に基づきまして、われわれ関係閣僚ともそれを推進するように努力いたします。
  110. 八木一男

    八木一男委員 今非常に大きな声を出しましたことを正式におわびをいたします。非常に大事なことでしたので、ぜひしっかり聞いていただきたいと思って、大きな声を出しましたので、その点はおわびを申し上げてけっこうですけれども、三十三年の三月十一日だと思います。日にちを調べて間違いがあるといけませんからはっきり言いますけれども、社会労働委員会で岸さんがはっきりお約束をなさいました。お約束をなさいましたことは五点であります。一点は部落問題は——高田さん、うそは言いませんからそこで何か言わないで下さい。ちゃんと聞いてもらわなければ困るのだから、あなたはしゃべらないで下さい。——一点は部落問題、これの責任は歴代の政府である。徳川時代から明治以来、わが党の片山内閣も入ります、ずっと歴代政府の責任であり、今後何党の内閣になろうとも、これの解決には強力に責任を持って推進しなければならない問題だということを発言をしておられます。それが第一点で大原則です。それを解決するためには、今までとられた環境改善等だけではいけない。生活の基盤を完全に建て直すようなあらゆる処置をとらなければならない。これは岸さんがこのことを言われたのです。もう一つは、そのために完全に予算裏づけをしなければならない。それを推進する調査審議推進機関としては、厚生省じゃなくて、内閣直属の強力な審議会を置くということ、この問題の取り扱いは、政党政派を超越してお互いに協力してやろう、その五点をはっきり岸さんから言われた。ところが非常に残念なことに、この問題については、北海道の人は一つもわからないのです。どんなに頭のいい人でも北海道にはそういう事象がないから、北海道の人には実感がこない。東京で生まれた人もそういう事象がとぼしいですからわかりにくい。東北の人もわかりにくい。わが党でもあるのです。政策の一番の権威者でも、そういう地区の人は、この問題については幾ら説明してもわかりにくい。そういうことがあるから、内閣の閣僚の入れかわるごとに、わけのわからぬ意見を吐いて、進みかけたのがとまることがある。岸さんが苦労されたけれども、これは一回わけのわからぬのが入ってきて、そんな問題はいいだろうなんて言い出してとまったんです。岸さんも、ほんとうにやる気ならそんなものは押えつけてやるのでしょうが、それほどでもないらしいのでそういうことになった。そういうことだから、審議会を置いておかないと問題はストップになる。岸内閣が何年続くかわかりませんけれども、そのうちにかわられますでしょう。あと何内閣になるか、石井内閣になるか池田内閣になるか、わが党の鈴木内閣になるかわかりませんけれども、どの内閣になっても、これは政党政派の問題ではない。この問題を知っている人がやらなければ、そこで一時的のストップが起きる。それをストップさせないために、内閣に、たとえば社会保障審議会のような審議会を置かないと、セクションの責任者に当たった人が、ほかのことについては有能な人であっても、この問題についてはわけのわからぬ人がくるとストップになる。ですから審議会が必要なんです。岸さんがこの問題に取っ組まれてやると言われた以上は、細々と続くでありましょう。ところが内閣がかわったらどうなるかわからない。そういうことではいけないから、どうしても審議会を置かなければならない。それは岸さんも同感なはずなんです。ところがこれは総理大臣も同感なんですけれども渡邊さんが一生懸命にやっていただけば、これは完全にきまると思う。どうか渡邊厚生大臣、それが今国会中に置くことの法律が出されるように——法律の出し方で時間がおくれるようでしたら、内閣委員会にわが党の法律案を出しております、それを与党の手で修正をしていただいてもいいんです。そのまま受け取っていただければ一番けっこうですが、そのまま内閣として出されてもけっこうです。そうすればわが党でも話し合いに応じます。内閣がそのまま出されれば、わが党もこれは引っ込めてもいい。この問題の推進に協力しますから、ぜひとも今国会中に審議会の設置法が出るように御努力願いたい。その予算裏づけというのも、そこに大蔵省の方がおられるけれども、一言うんと言えば出るくらいの金額です。審議会の設置法の金額というものはわずかですよ。それをぜひ今国会中に強力に推進願いたい。職を賭すくらいの覚悟で実現していただくことを、ぜひお約束願いたいと思います。
  111. 渡邊良夫

    渡邊国務大臣 現在の段階におきましては、この前、昨年の暮れの臨時国会のときにおきまして、たしか予算委員会では岸さんは、現在の機能を十分に発揮させておればこれでも十分推進できるのではなかろうかといったような御答弁をしたように私も記憶しておるわけです。私ども関係閣僚といたしましては、できるだけこの同和対策問題というものを十分に皆様方の御納得いくような方向に向かいまして検討いたしまして、結論を出したいと思っております。
  112. 八木一男

    八木一男委員 たしかなんてぼやけた話は、一つなしにしておいていただきたい。はっきりお約束になって、速記録にも載っておるのです。それから昨年の十月に閣僚懇談会ができましたね。その後にこの問題について突っ込んで御質問申し上げたら、岸さんからはっきりと、この問題で閣僚懇談会を置いたから内閣の審議会を置かないということでは絶対にありません、この閣僚懇談会で内閣の審議会を置くことを具体的に進めておくのですという御返事をなさいました。その点が一つ確かでないと思いますから、そういうことが岸さんの真意であるはずです。もしその口を裏返されたら、岸さんは内閣総理大臣としての値打は一分一厘もないということになって、国民の猛烈な指弾を受けるということを、岸さんにおっしゃっていただきたいと思います。
  113. 大原亨

    ○大原委員 大臣急いでおられますから、最後に一つお願いしておくのですが、やっぱり中心者がはっきりしないわけですよ。     〔委員長退席、大坪委員長代理着席〕 それで十カ年の目安を立てておやりになるということは、これは目標としては一つの目標です。そこで、今の八木委員の質問に対する答弁と裏表の関係で一応は御答弁になったのですから、モデル地区を設けてこれを広く推し進めていって対策を進めていくというのも、これは政府施策一つの基本線です。そうしますと、たとえばモデル地区は百五十戸以下の部落には設定しないということになっている。百五十戸以上だということになっているらしい。しかし六千部落、三百万の未解放部落の問題を自民党との関係とかそういう差別意識でなしに——自民党との関係が深いとか自民党の選挙基盤になるとか、そういうことだったら差別扱いですよ。行政の中立性を侵犯することになるのですから、そういうことは、私は各省にわたって短時間でありますが、せっかく皆さん見えておるから、これから一々問題点だけは質問したいと思いますけれども、私はそういう百五十戸以上というだけでなしに、そういう未解放部落の公平で差別のない、差別解消の政策を具体的に十年間にどうするのか。こういう全般の考え方なり構想というものを具体的に一つやってもらいたい。どこがやっておるのかわかりゃせぬ。社会局長が御答弁になっておるのが事務当局の責任者らしい。事務を推進しておるところは内閣審議室でもあるらしい。これはなかなかどこであるかわからない。厚生大臣もなかなかお忙しいし、ちゃんとそういう事務機構がなければ仕事が進まない。大蔵省もきょうは出席になっておるから、その点は理解いただきたいと思うのだが、そういうことで中身の方におきましても、非常に疑点が多いわけですよ。そういう部落政策展望、公平で差別のない中身のある展望——十年間このモデル地区をやるということの前提がなかったら、これは差別行政ですよ。差別の再生産ですよ。これはまた、今日までやった以上のあやまちを犯すことになるのです。単なるお茶を濁すということでしたら、これは意味がないのです。だからそういう十年間の展望の具体的な各省にわたっての内容を、一つ口先だけで議事録に残すというのじゃなしに、私は第一年度の税金というものを有意義に使ってもらいたい。そうでなかったら、こんなものはチャランポランになってしまうんですよ。部落対策のモデル地区というものは、社会局長の言われたように、一つやっておいたら周辺に波紋が広がっていくようなものではないんですよ。やはり財政的な基礎と具体的な政策をやらなければいけないわけですよ。農村なんかの小さいところに行けば台所改善もあるし、それから能力はあっても進学できないから育英資金を集中的にやるということもあるし、それから道路を作って仕事の便宜をよくするということもあるし、あるいは農林政策なんかで林野が解放されていない、農地法の欠陥から零細部落農民が非常に差別扱いを受けている、そういう政策もたくさんあるのです。これは私は今から各省にわたって具体的に言いますけれども、そういうことで百五十戸以上、以下というようなことでなしに、総合的なしかも十カ年間のそういう展望を持ったものを樹立して、厚生大臣が受けて出て、一応内閣の国務大臣としては責任者であるということを言明になっておるのですから、そういうことを取りまとめていただいて、どこか事務当局が責任を持ってこれが答弁のできるような、そういう十カ年の第一年度の税金を正しく使う方法——自民党の言われた三百億円計上、これが初年度は六億数千万になりましたけれども、しかしこれもやはり税金としては非常に大きな税金です。だからその税金の使い方について、展望を持った具体的内容のある公平な、そういう全般的な政策を、私は、今の八木委員の質問に加えて政府の方としては策定して、そうして本委員会に出しておいていただきたい。そういうことを最後に要望いたしておきます。厚生大臣は責任者ですから、最後までおっていただきたいのですけれども、それに対する御所見を伺いまして、あなたに対する質問を終わります。
  114. 渡邊良夫

    渡邊国務大臣 私は当初、部落対策といったようなものを考えというよりも、いわゆる置き忘れられたところの社会、恵まれない社会、日の当たらない社会、こういうものをやはり一律にあるレベルまで考えなければならない福祉行政ということを私は考えておったわけです。ところが、昨年の臨時国会等におきまして、やはりたしか八木委員だったと思いますが、伝統的に差別扱いを受けておる、こういう状況であるから、これは特別な措置を考えたらよかろうというようなお知恵があったわけでございます。そういうことで、私もそれではと——私は今の民主主義社会、それから福祉国家建設、こういうような目標のもとにおいてわれわれがおる以上は、もはやすでに過去の差別待遇をしたような、同和対策といったようなものじゃなくして、もう新しい時代におけるところの平等な社会の建設ということを考えたわけです。しかしやはり現実におきましては、結婚にしても、就職にしても、あるいはまたいろいろな面におきまして、差別的な目で見られ、現実的においてはそういうような境遇に置かれておるということである以上は、やはり同和対策として差別的なものを早く撤廃しなければいかぬ、そういうことで考えておるわけでございます。それでありまして、モデル地区は百五十の基準を設けるということは考えておりません。これは私は全部、ただいま大原さんが申しましたような六千部落、三百万というものを全部、この十カ年の間においてモデル対象——モデルという言葉は、まあこれはちょっと語弊があったのかもしれませんけれども、全部を対象といたしまして、そうして全部がモデル——モデルというよりも一つの基準が上がる方向におきまして、福祉国家の、平等なる民主主義社会の建設に私は努力いたしたい、かようにお答えしておきます。
  115. 八木一男

    八木一男委員 厚生大臣、善意でお答えになっておられると思うのです。ところが、問題がややこしいですから、短時間で言えないのですが、善意でありながら、ちょっとだけ食い違ったところがある。部落問題の解決は、一般行政でやってもらうことが原則だ。結局、たとえば完全雇用政策。それはもう言葉通りほんとうに文字通りですよ。一人も失業者がなくなって、それがたとえば臨時工であるとか社外工であるというような状態ではなくて、ほんとうに労働者として生活を保てるような状態において、質的の点も完全な、そうして量的にも完全な、完全雇用の政策が完全にでき上がる。そうして小さな農地しか持っていない零細農も、完全に農民として自立できる。一本づりの漁民も自立できる。それから商売人の小さな者も、みんな自立できるという態勢が完全にでき上がる。そうしてそういう労働力のない人は年金、これは今の政府年金の十倍くらいになって、年金だけで完全に食っていける。それから病気のときも、医療給付は、五割の給付でなくて十割給付までいって、完全にいける。そういうふうな状態になって——これは一ぺんにいきませんけれども、ぐっと進めていただけば、これは部落の人はもちろん、一般の貧乏な人もみんな救われることになる。それは一般行政でぐっと進めていただく。特にその進め方は、一ぺんにいかなければ、一番貧しい階層が救われるような方向でやっていただきたい。ところが、それが全部いっていないから問題が起きる。そこで、結局、家がきたなくてくずれかかって、地震があるとつぶれて死ぬかもしれない。また家に住んでいても、便所がなくて困っている人もいる。そういうときには、個々にそういうことを、ほかの対策が完全じゃないから、貧乏の集中しているところにやらなければならない。そういう点で、たとえば環境改善の問題やなんかは、現実の問題として取り上げて、部落問題として取り上げてやっていただかなければならない要件がある。将来の大きな問題としては、一般行政がすべて完全な形で、貧乏を追放するという完全な形になれば、これはいいわけです。それから、具体的な問題としては、たとえば生活保護の問題なんか、部落の問題が一番大きい。厚生省では、とにかく今まで環境改善が部落の問題だと言うけれども、生活保護の問題が実態的に関係が深い。生活保護の問題、これは具体的にこまかいことは知りませんから、私の言うことは間違いかもしれませんが、対象者の査定やなんかやるときに、各府県でふわっと人口割りでやっちゃ困る。実態的に、部落というものはある府県、ある市町村に多いわけです。そういうものを頭に入れて、今の生活保護費が少ないから、それだけの総ワクをふやす。総ワクをふやしたものを、貧乏が多いという理由のもとに、そこにたくさん割り当てる。失業対策事業もそうです。これは労働省。そうだったら、失業対策事業である生活保護の問題は、そういう一般行政のもとにおいて、実態的にそういう対象者である部落民に生活保護費がたくさん回る。査定のときにごちゃごちゃ言われないだけの十分な予算が回る。失対事業も一軒で、あんなものは失業者が二人でも三人でも働いてもいいけれども、これは労働省ですが、それは予算のワクのために一人しか働けない。しかし二人働かなければ困る人が部落に多い。そこでわざわざ夫婦別れをして働かなければならないということが起こる。こういう人権じゅうりんが今行なわれている。そういう部落の多いところには失業者が多い。従って失対事業が多い。従って大蔵省はけちけちしないで、そういう要求に対して予算を出す。出された予算を多いところにちゃんと配分すればできる。そういうことを根本的に一般行政で解決していただきたい気がする。それは厚生大臣が最初におっしゃった前段ときちっと合っている。ところが、そういうことが完全でないから、その特別な対策が今必要になるわけです。将来の何十年の問題は、一般行政で完全に解決していただきたい。いつまで部落対策予算なんて組まなくていいように、もうそんなものは要らないという事態に早くしていただきたい。ところが、残念ながらそういうことになってないから、結局そういう予算を組まなければならぬことになる。環境改善の点は、今申し上げたことが一番大きな特徴的な点で、そういう貧乏な状態にあるから、家がどうだとか、そこにふろがない、ふろがないからそういうことをしなければ困るとか、内職のことを覚えてもらわなければ困るから、そこにセンターも置いておかなければならぬとか、そういう具体的なことが起こる。もちろんそれはやってもらわなければならないのですが、ほんとうの部落対策の本則は、一般行政のもとで、完全に差別の根本である貧乏が根絶するという形で大きく進めていただきたい。厚生大臣のおっしゃったことと私の言っていることは、百パーセンと食い違っているわけじゃない。九十八くらい合っているのですけれども、ちょっと観念が——私が特別の対策をしていただきたいと申し上げたのには、そういう背景がありますので、そういう点を一つ御理解を願いたいと思うのです。まあちょっとややこしいことを言いましたけれども……。  それから、モデル地区の問題ですね。モデル地区の問題は、さっきも大きな声で言ったので、かえってわかりにくかったと思いますが、一般行政でモデル地区をやって効果が上がる、その趣旨はわかります。ところが、部落の問題では、やはり六千も部落があります。ことしの自民党の原案は十カ所でした。政府の決定は幾らか今覚えておりませんが、六千あるところに十だけやられたら、五千九百九十はやはり差別扱いになる。そうすると、政府の言うことを聞かないとそれをやってもらえないということで、運動競争になる。そうなれば、百ぐらいしてもらいたいと要請しているところが、五十でいいから早くしてくれということになってしまう。そうすると、当然要求がそこでストップされる。そういうようないろいろなまずいところがある。一般に恵まれた、比較的部落の人の中でも恵まれたところにおいては、予算の効力が集中して、それで効果がはっきり明示されるように、モデル地区という考え方も幾分成り立つと考えますが、この点に関しては、一つそういう考え方は反対の要素の方が多いというふうに考えていただきたい。それで、たとえば年金の問題であるとか社会保険の問題、これは一般的に国民に全部普通にいくわけです、モデル地区ということでなしに。ただし、地方行政関係で、生活保護費でも、地方負担がないところではうまくいかないというまずいところもありますが、形式的には全部でしょう。ところが、施設の問題になりますと、共同浴場をどこに建てる、保育所をどこに建てるということになれば、これは一般にまともに頭割りにして、家を半分建てることはできないので、ことしはここに作る、来年はここにということが、どうしても行政上起こります。モデル地区というような考え方をしないでも行なわれているわけです。ことしはここまでの道を直す、ここまでの堤を直す、ことしはここの学校を直すというふうに、やはり切れ切れになるわけです。どうしたって施設ですからすうっといかない。そういうことで、モデル地区なんかと特に言わなくたって行なわれている。モデル地区ということを無理にするから、ここに共同浴場も建てれば保育所も建てれば診療所も建てればということになるので、一度に五つやる必要はないわけです。そういうことを全部一斉にやってもらえればいいですけれども、そうでなかったならば、やはりここには共同浴場を建てて、ここには集会所を建てるということの方が具体的に進むわけです。それを一ぺんに集中したら、政府が特によくやった、五千九百九十九は別にした、一カ所だけ見せて、こんなによくしてあるといったらいい気持かもしれませんけれども、これは子供らしい気持であって、ほんとうの三百万の部落の大衆を救う道ではないと思う。ちょっといいところだけ見れば、いい気持です。われわれでも掃除した部屋だけ見ればいい気持ですけれども、そういうようなことではいけない。ですからモデル地区という考え方でなしに、少なくともモデル地区をやろうとしたくらいのことを一斉にことしぐらいから全国六千くらいの部落、大きいも小さいも関係なしに、もちろん小さいところには大きな建物は必要ないけれども、同じように推進させるというようにしてもらいたい。それから、一ぺんに集中されれば、その市町村が半額負担は困るというようなことが起こる。そういうようなこともありますから、なるべくモデル地区でなしに、予算をできるだけ多くして、そうしてそれをできるだけ平均にいくように、そういうような方向で進めていただきたい。  どうも大へんやかましいことばかり申し上げましたけれども、いつかゆっくりおひまのときに、私ども考えの至らぬところもあると思いますから、そういう点を申し上げに行きますから、どうかそういう点よろしくお願いいたします。
  116. 大坪保雄

    ○大坪委員長代理 答弁要りませんね。大臣は非常に急いでおられますので……。
  117. 大原亨

    ○大原委員 大臣、今の記録の通りでいいですから、そういう十カ年計画で、モデル地区ということで進んだのだから、その展望のあらましを一つずっと出してもらいたい。その初年度として税金がいくように、そういう資料を策定して出してもらいたい。それからまた一つ審議を進めます。
  118. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 関連して。補正予算厚生省説明をしていただくと、やはりモデル地区という言葉が出てくるのです。これは地方に行きまして、モデル地区とどういう意味でおつけになったのか知りませんけれども、モデル地区ということでおやりになると、特殊部落の予算、同和対策の予算なんでありますから、モデル地区を作って、これがモデル地区だということになると、また新しい一つの見せものになってしまう。そうすると、なおさら意識を強くさせるのです。ですからそういう意味でモデル地区という言葉を廃してほしいという要求が非常に強いわけなんです。同和対策に逆行するのです、その言葉自体が。ですから、できたらこれは一つことしは方法をお考えになって、言葉をなくすると同時に、いろいろな方法がありますから、二階から目薬になってもいかぬという考え方もあるわけでありますけれども、どうもモデル地区という言葉は、この際にはよくないということを一つ考えて、引っ込めていただくことをお願いしておきたいと思います。
  119. 渡邊良夫

    渡邊国務大臣 モデル地区といって予算もとり、そうして——決して私どもは政党政派にとらわれてやっているわけでもありませんし、自民党の党勢拡張といったようなそういう気分はいささかもございませんですから、むしろそういうことは前進的に私どもは同和政策をやっていくんだという意味において、これは国会で皆様の協賛を得ることでございますから、一緒になってこれをやっているんだ、こういう意味合いにおとり下さるようお願いいたします。
  120. 大原亨

    ○大原委員 農林省関係は、雇用政策なり、あるいは部落に関係した生活の基礎になる産業を振興するという、政策の面といたしましては積極的な面の一つです。しかしこの本年度予算の編成を見てみますと、それぞれそのモデルというものがあり、いわゆる部落の指定をやりまして、そして予算をやっているのですが、これはやはり農村部落の実態を把握して、昭和三十五年度にはこれだけやるのだ、こういう計画でお立てになったのですか。
  121. 橘武夫

    ○橘説明員 農林省といたしましてこういう部落を選びまして、いろいろ一定のタイプのもとに共同利用施設を進め、あるいは土地整備を進めていくという対策を立てるにつきましては、それぞれの部落の条件、各都道府県等とも打ち合わせをいたしまして、それぞれの条件に応じた、それぞれの部落としての農民、漁民と申しますか、その地域での農業なり漁業というものを進めて参る上の、非常に効率の高い仕事というものをできるだけその地方の自主的な希望も重重して進めて参るという方針で、こういうそれぞれの事業を選んだわけであります。
  122. 大原亨

    ○大原委員 土地整備事業で、共同利用施設で——共同利用施設の中には共同育雛場とか、共同畜舎とか、共同豚舎とか、部落はちゃんとあるのですね。あるのですけれども、たとえばこれを見てみますと、広島県はない。広島県は一文も載っていないわけです。広島県の農村なんかは大体こういう施策をいつやるのですか。
  123. 橘武夫

    ○橘説明員 さしあたりといたしまして、三十五年度においては、この十二の地区を一応選んだわけでございます。その今回選ばなかった地域につきましても、来年度以降におきまして、逐次それぞれの地域に適しました事業を選んで取り上げて参りたいというふうに考えておりますけれども、具体的な三十六年度以降にいつどの地域を選ぶというふうな計画はまだきまっておりません。
  124. 大原亨

    ○大原委員 まあ行き当たりばったりにやられたということなんですけれども、これは私が渡邊国務大臣に質問いたしましたように、十カ年計画で大体農村において農林省が初めて部落対策を取り上げていることはいいことなんだから、部落の実態に即して十年間のうちに大体どういう政策をやるのだという、そういう政策農林省において討議して作って下さい。これは一緒に国務大臣のところに——どこが事務局かわからぬけれども、審議室のところでもよろしいし、高田局長のところでもいいから作って下さい。     〔大坪委員長代理退席、委員長着席〕 そうしないと、これは見た目に全然予算計上しないでおっぽり出されたようなところでは、やはり国の施策が及んでいないし、またいつやられるということがないということになると、これはやはり差別になるからいけない。ですからそういうことについては一つその展望を協議してやって下さい。私は審議会ができなければそういうことは強力にできないと思うのですよ。たれかが責任を持ってちゃんとやらなければできぬと思うけれども、しかし今の現状で、私は農林省はそういう政策を第一年度に担げたけれども、十年間にはどういうふうにやるか、広島県なんかは全然ない。それからたとえば農村の施策の中で、部落の要望の中にこういう要望があるわけです。部落民の多くは農地改革以前にも小作権を持っていないで、ほとんどが農地改革の利益にあずかっておらぬです。しかも多くが三反以下です。今日の農地法のもとでは三反以下の農地の拡大は御承知の過り制約を受けているわけです。しかも入会権もないのです。だからこれらが農村部落を、土地も仕事もない貧困に陥し入れている根因である。漁業権についても、三反以下の農地についても、土地取得ができるよう農地法の改正ができるか、あるいは部落近くの開拓地において優先的に入植せしめるか、あるいは山林、草地の入会権の解放、これは農地法に関係がある。あるいは国有林野の払い下げです。それから、農道とか林道を、そういう部落が貧困でありますけれども、そこへ国が予算裏づけしてつけると、小さな部落でもやはり生きてくるわけです。それが今まで行政上も政治的にも差別を受けておったのだから、それを育成する意味においても、あるいはこれを補う、差別を撤廃する意味においても、そういう農道とか林道を集中的につけるというふうな政策もあるわけなんです。こういう点について一々聞きたいのですけれども、たとえば国有林野の払い下げなんかでも、そういう入会権の問題等とも関連いたしまして、近くにある場合には国はたとえば山林自体を払い下げるとか、あるいは立っている立木を払い下げるとか、あるいはまきを平生伐採させるようなことをほとんど無償でやるとか、そういう施策をやっていきますと、やはり部落の対策になるのです。これはモデルを作らぬでも原則をきめたら一般的にできるのですから、そういう点についても私は一々あなたに質問いたしまして確かめたいけれども、たとえば国有林の払い下げなんということは一つ考えていただけるかどうか、これを一つだけ私、質問いたしておきます。
  125. 橘武夫

    ○橘説明員 ただいまいろいろ御質問のございました中で国有林の払い下げについて特に御意見があったわけでありますが、国有林の問題につきましては今お話しございましたように、いろいろ入会権の問題とからみまして、いろいろなむずかしい問題があるわけです。しかし現存の国有林野法のもとにおきましても、共有林野という制度がございまして、この国有林の一部を、その地元との契約に基づきまして、そこへ木を植えさせてそのできた木はその地元に売り払う、あるいは取得させるというふうな制度もございます。それの活用によりまして、ある程度そういう問題も地域的には解決を見ている点もあるわけでございます。  それからなおその場合にもいろいろ入会権の問題など大きく問題になるわけでございますが、入会権の内容は御承知の通り非常に歴史的な関係がございまして、それぞれの地域によって内容も異っておりますし、入り組んでおりますから、そういうものをできるだけそれぞれの地元のその住民の利益を生かしながら、しかも土地利用といいますか、国土利用といいますか、そういう上においてもできるだけその林野の有効な利用をはかっていくという趣旨におきまして、今の入会権の問題をどういうふうに解決し、前進させていくか、これは林野の政策としての大きな問題でございまして、農林省といたしましても、ただいま林野庁でことにこの部落林野の問題をどういう格好でそういう利用度を高めながら、しかもできるだけ住民の意思を生かすような格好で入会権の問題を前進させていくかということは、協議会を設けまして現在検討している段階でございます。まだ結論は出ておりませんけれども、そういうことで、なおさらにできるだけ研究を進めまして、御趣旨のような方向において何らかの解決策を考えていきたいというふうに考えております。
  126. 大原亨

    ○大原委員 農林省の方へお願いしたいのは、初年度はこういうふうなことですけれども、これは内容的にも非常に貧困だから、他に私の申し上げたような施策も含めて十カ年間の初年度政策、そういう見通しを一つつけてもらいたい。共同作業場なんというものはどんどんふやさなければならない。しかし農道とかそういう問題についても集中的にやるという政策はできるのです。今のような山林の問題でもそうです。私が知っている部落でも、みな三反以下です。そして子供は竹細工や皮細工なんかをしている。親は副業を部落で一生懸命やっている。作業場も一つくらいある。しかし子供は帰ったらカバンを置いて、そうして共有林、国有林へ冬は寒いからたきぎをとりに行く。しかしそこでとっていたら入会権その他の問題もからんで、子供はおっぽり出されてしまう。子供はどろぼうするような気持、親は忙しいから仕事をやっている、こういうことです。しかしそれを公然と下刈りなんだから、枯れている木や小さいまきをとるのだから、そういうことについて国がそういう部落の実態に即して国有林の開放について原則をきめて便宜をはかれば、これはできるのです。林野庁初め農林省が方針をきめればできるのです。そういうみじめなことをさせぬでもいいのです。そういうこともあるのですから、私は二、三例を申し上げましたけれども、もう少し総合的な施策をもって部落対策を考えながら、初年度のこの経費というものを全体として生かすように一つ使ってもらいたいのです。他の地域と差別されていないという実態を示してもらいたい。これを強力に推進するのには、よほど決意が要ると思うのだが、そういう計画を総合的に進めて、近く審議会が開かれるときに局長に出てもらいますからそれを出してもらいたい。農林省に対してはそれだけです。  次に建設省の不良住宅地区改良費補助、こういうのがあります。これは二分の一であります。その中に清掃費の補助がある。御承知のように清掃費は現在ある不良住宅を清掃しまして、そして新しい耐火性の建物その他を作るのだと思うのです。おそらくそういう趣旨だと思うのですが、実際にこの仕事を進めて参ります際にはどういうことがあるかと申しますと、最初市なら市、町なら町が移転できるような土地を作っておいて、年次計画で今度は清掃したところに対しまして、また次の年にやる、こういう仕組みがいるわけです。実際上はそういうことです。公有地がばんとあるところはいいわけです。そういうふうに、たとえば最初の初年度は二重の土地をやらないと、実際建築はできぬという。そのことが一つ示しますように、これ以外にも評価の基準がやはり低いのです。きびしいのです。だから実際市町村がやろうと思いますと、国が見積った予算額ではできないから、それに対して二割か三割増さなければならぬ。土地をどこか見つけて作らなければならぬ、買わなければいかぬ。評価が非常にきびしいから、ふやしていかなければならぬということなんです。そういたしますと、この財政面だけ出た以上に、これに対して建築をやろうと思いますと地方の財政負担になるのです。改良住宅建設の補助費が出ているけれども、やろうと思いますとやはり地方の負担は大きいわけです。地方自治庁の財政係長は特別平衡交付金だというふうに明確に言われたし、大蔵省の方もおられるのだから、了解はできておるだろうと思う。これはあとで確認してもいいが、そういうふうに地方の財政負担が非常に多いのです。だからそういうことも考え一つ建設省においてもやってもらいたい。それからそういう希望と一緒にこれは同和対策、いわゆる不良住宅の問題、土地区画等の問題を部落だけを対象としているのですか、それ以外に入っておるのですか、これを一つ建設省に聞いておきます。
  127. 稗田治

    ○稗田政府委員 お答え申し上げます。不良住宅地区の改良事業につきましては、昭和二年に立法されました不良住宅地区改良法というのが、かたかなの法律でございますけれども、現在法律は生きてはございます。それで戦後におきまして不良住宅地区改良事業建設省におきまして進めて参ってきたわけでございますけれども昭和二年に立法されました不良住宅地区改良法は適用しないで、行政措置として今日までやってきたわけでございます。その理由は、全体の補助が精算補助になっておりまして、二分の一の精算補助ということになっておりましたので、戦後におきます不良住宅改良事業の対象にいたしますようなところでは、実際の住居費の負担力からいきまして、二分の一の補助では実情に合いませんので、それで今日までやって参りましたのは、公営住宅の三分の二の補助のある第二種公営住宅をこれに当てて参ってきたわけでございます。本年度におきましては、新たに公営住宅と別に不良住宅地区の改良事業予算を項目を立てたわけでございます。それで古い建物を買収し、除却する費用は二分の一の補助率でございますけれども、建設いたします改良住宅の補助は三分の二という高率の補助をとっておるわけでございます。  なお対象は、もちろんこの現行の古い法律でございますけれども、目下不良住宅が密集して、衛生とか防災上とか、そういう観点から好ましくないという地区を、健全な住宅地に改良していくという趣旨でございますので、住宅の環境事情が同じような状況になっておるところは、全部適用の対象になるわけでございます。本年度二千戸改良住宅の戸数を予算計上したわけでございます。  なお、清掃費につきましては、これは三十四年度から清掃費も若干予算がついておったわけでございますが、本年度はさらにそれを広げまして、千九百万円という程度の額を計上してあるわけでございます。現在私たち考えておりますのは、この二千戸のうち千百戸程度は、同和関係の地区にこれを振り向けたいというように考えておるわけでございます。
  128. 大原亨

    ○大原委員 それで、そのあれは精算払いですか。できた半額を払うのですか。もう一回、私は聞き落としたから聞くのですが……。
  129. 稗田治

    ○稗田政府委員 昭和二年にできました不良住宅地区改良法というのは精算補助になっておりまして、二分の一の補助率であったわけであります。従いまして、戦後不良住宅地区改良事業をやって参りましたけれども、不良住宅地区改良法を適用しないで、行政措置として今日まで参ってきたわけでございます。三十五年度におきましては、一応公営住宅のワクから別に項目を立てまして、改良住宅の建設費等を別な項目に立てたわけでございます。従いまして、そういった新しい制度の住宅——不良住宅地区改良法をそれに合うように全面改正を行なおうというわけで、ただいまいろいろ案を練っておるところでございます。
  130. 大原亨

    ○大原委員 それでは要望しておきますが、これもやはり十カ年計画でやられる際に、どういう順序で、どういうふうにその部落の実態に即して全国的にやっていくのか、こういう大体の見通しを示してもらいたい。そうしませんと、これは財政問題が私は非常に大きな問題だと思うので、もう少しあとで究明したいと思うのですが、やはり財政問題は大へんな問題ですからね。しかし財政問題はともかくといたしまして、ここで一歩前進するのですから、一つそういう全体の見通しを持った初年度としてやってもらいたい。それを建設省関係についてまとめて資料を出していただきたい。よろしいですね。
  131. 稗田治

    ○稗田政府委員 われわれ現在まで調査いたしました資料によりますると、同和だけの意味ではございませんが、全国に改良しなければならないと考えておるような対象戸数は、少なくとも二十万戸はあるというように考えておるわけでございます。従いまして、この二十万戸の不良住宅地区を解消いたしますのに、長期計画の樹立は当然必要である、さように考えております。ただ同和関係ので十カ年というようなことにつきましては、われわれの方の考え方は、不良住宅地区を改良していくという考え方でございますので、同和の関係は、もちろん同じような不良住宅になっているところは入ってくるわけでございますけれども、それだけを取り上げて十カ年ということにつきましては、確かな資料等がまだございませんので、十分検討いたしたいと思います
  132. 大原亨

    ○大原委員 それで、密集住宅とか低家賃住宅を建設省が取り上げて、一昨年くらいから進めてこられたということは、私は非常にいいと思う。非常に各方面で期待していると思う。その際に、衣食住の面から、雇用や産業、そういう面からやはり部落対策について認識を持った上で政府が十カ年計画をやろうというのですから、それじゃ住宅の面からあるいは土地の区画整理の面から、まあ住宅局長は住宅の関係だからそういうお話ですけれども、そういう面からやはり一つの方針を持ってもらいたい。特別にやはり今までしわ寄せを食っているのですから、そういう政策については理解を持って進めてもらいたい。せっかく大局として建設省の住宅政策というものは進んでおると思うのです。しかしながら現実に見てみましたら、これは善通の地域よりか非常に財政負担を伴うものです。広島にとってみましても、どこをとってみましてもそうです。これはもう大へんなことです。区画整理とかあるいは住宅建設をやるのですから、家賃自体が高くてはいけないのです。だからそういう点では、住宅という面は環境の面からも非常に大切な面ですから、そういう私の申し上げた認識の上に立って一つ進めていただきたいと思います。  それから次に、どこの省になるか知りませんけれども、たとえば皮革産業というのが一つあるわけです。これは斜陽産業だといわれておる、近代化したのがありますから。そういたしますと、皮革産業を育成するためには、やはりいろいろな点があるのですが、二つの点をあげる。たとえば協同組合を作って融資を特別に無担保でやるのを便宜をはかる。これはいろいろな金融機関があるでしょう。これは大蔵省にお聞きしたいのだけれども、そういうものが一つある。それからもう一つは、たとえば社会保険で、皮の職人さん、皮とかそういうような皮革産業、家内業をやっておるそういうのがグループを作っておる。協同組合なんか作りましたら、たとえば日雇健康保険の擬制適用をしてもらいたいとか、これは厚生省関係ですが、他の大工とか左官等においてはせっかく進めておるわけです。国民健康保険が非常に不備な段階においては、そういう職人に対しまして、現在ある特別の、十分ではないけれども、不完全ではあるけれども、そういう日雇健康保険を擬制適用してもらいたい、そういう政策を進めるという方法があろうと思うのですが、大蔵省厚生省の方からそういう点についてのお考え一つお聞きしておきます。
  133. 岩尾一

    ○岩尾説明員 私厚生省の担当でございますが、今のような組合に金が貸せるかどうか、ちょっと不勉強でよくわかりませんですが……。
  134. 高田正巳

    高田(正)政府委員 御趣旨は、皮の職人なんかを日雇健保の擬制適用をしてくれ、こういうふうな御趣旨だと思いますが、皮の職人と申しましても、五人以上の企業に覆われておれば政府管掌になりますから、一がいにさようなことは申し得ないと思います。皮の職人の集まりが全都日雇いの擬制適用ということにはいかぬと思います。もう少しよく実情等を承りまして、関係局に連絡をして検討いたしたいと思います。
  135. 大原亨

    ○大原委員 五人以上でしたら強制適用になりますけれども、私どもは五人以下についても強制適用をするという改正案を持っておりますが、現状ではなっていないわけです。そうしますと、大工、左官などが一人親方のような格好でやっておる分につきましては、労災や日雇健康保険をやっておるわけです。これはある面では社会保険を適用するのですから善ばれておるわけです。皮革産業においても、たとえば日々内職をしながらやっておるのですから、下請をやっておるのですから、そういう人が日々保険をかけるという格好で日雇健康保険の適用を受けられればいい、こういうことですから、現実に社会保険の強制適用がないという実態の上に立って日雇健康保険を言っておるのですが、その点についてもまた次の機会に御質問いたしますから、一つ研究しておいて下さい。たとえばこういう問題につきましても、集中的にやるという考えでやればいろいろあるのです。  それから、時間もたちましたから文部省にお尋ねいたします。文部省は同和教育について根本的にどう考えておられるかということを聞きたいのですが、幸か不幸か時間がないので、社会教育局関係の指導旅費、研究教育協議会費、団体育成費、研究集会費というものがありますが、たとえば団体育成費の七十二万六千円というのは、昭和三十五年度予算は具体的にどういう考え方でお使いになるのですか。
  136. 齋藤正

    齋藤(正)政府委員 社会教育局関係の同和対策の予算の主要なものは、今お示しの団体育成、研究集会の経費が中心でございますが、これは子供会であるとか、あるいは青年団であるとか、それから婦人団体であるとか、そういうものの活動を助成しようということが主でございます。これは従来予算はございませんでしたけれども、同和地域に対しまして、他の一般の地域よりは、そういう子供会とか、あるいは青年団の活動とか、あるいは地域の住民が、いろいろなグループの学習を通して、具体的な生活経験を通して民主的な社会の形成者としての教養を積む、こういう活動がないか、あるいは割合に活動が不十分だという実態がありましたので、そういうものを助成するという経費を市町村に渡すわけでございます。
  137. 大原亨

    ○大原委員 それじゃ念のために別の方から御質問いたしますが、団体育成というのは、たとえば自民党とかあるいは文部省なんかが気に入る団体を作って育成する、こういう意味じゃないのですね。
  138. 齋藤正

    齋藤(正)政府委員 これは文部省の従来やっておりました子供会あるいは婦人学級の問題等をごらんになればわかりますけれども、その地域のいろいろな小さな集まりの活動を促進していく、こういう経費でございまして、特定のものにやって特定のものにやらない、こういう経費ではございません。
  139. 大原亨

    ○大原委員 部落の関係者が、同じ条件の人が集まって自主的な団体を作って、そこで自主的な成人教育やあるいは子供の発達段階に従って自主的にやっていくことを育成していくということはいいことです。それはやはり一つ精神的な自主的な解放ですからいいのですけれども、とかく非常に近視眼的な対立的な考え方でやられるのではないかという疑念があるから、これは今御答弁ありましたように、現在ある自主的な子供会とか青年会とか婦人会とか、そういうものが自主的な活動ができるように助成するのが団体育成だ、こういうように解釈してよろしいのですね。
  140. 齋藤正

    齋藤(正)政府委員 私の言葉が足りませんでしたが、これは団体に直接経費をやるというのではございませんで、従来やっておりましたように、市町村が、自分の地域にありますいろいろな団体の活動を容易にするために、子供でありますれば、場合によっては遊び道具を買って提供してやることもございましょうし、運動会等ならそういう経費を持ってやることもございましょうし、あるいはグループの学習活動をいたしますならば、必要な教材あるいは講師の謝金を持ってやるとか、そういうような経費でございまして、団体自体に金を渡すということではございません。
  141. 大原亨

    ○大原委員 それでは文部省関係では初中局の関係だと思いますが、たとえば部落の家庭は非常に貧困なんです。貧困なところの子供は、やはり教育の条件が悪いから、なかなか能力を伸ばすことができないのですが、しかし、いい条件で高等学校へでも大学へでも入れてやったら、能力を伸ばすことができる。こういう子供に対しては、教育だけはしてやることが就職対策その他の上においていいのだ、こういうように親はこいねがっておっても、できない場合が多い。だから、育英会の方針で、それも戦没者なんかに対して一つの基準を与えたように、成績がまんべんとはよくなくても、本人にやる意思と能力があるというふうに判定できる場合には、やはり部落の子弟に対して育英資金を出すという方針を文部省の中でいろいろ御討議いただいて、やっていただく。これは現在の予算の範囲内の運営でできることですけれども、これは雇用対策にもなるし、切実な親の願いです。子供だけは教育してやりたい。そうしたらそのことを通じて自分の能力を伸ばすことができる。だからこれはいいことですけれども、そういう方法について一つ研究して、実現するように努力してもらいたいと思いますけれども、いかがですか。
  142. 西田亀久夫

    ○西田説明員 ただいまお尋ねの育英資金の問題につきましては、同和対策の一環として、部落出身者の就学を積極的に奨励する必要があるだろうということを私ども痛感いたしております。御承知のように、育英会の採用では、高等学校に入りました者の中から、学業、家計状態で審査をいたしますので、従来とも進学いたしておりました場合には、当然その家計状態において優先的に扱われておっただろうと私ども想像いたしておりますが、残念ながら的確な現在の実情がわかっておりません。今後の育英会に対する指導といたしましては、部落の出身者が一般生徒と同じような割合で高等学校に進学してきた場合にも、一般の生徒が奨学金をもらう割合と同等以上に奨学金をもらうチャンスを確保するようにしたい。そのためには、この地域においてこれだけの奨学金をもらう人ができるという目標数が一応推定できるわけでありますから、それを府県支部に一応内示いたしまして、それを目標にして採用の場合に十分配慮するようにいたしたい、かように考えております。ただし、その実施につきましては、その採用そのものが個人を差別したような印象を与えますことを非常におそれますので、方法につきましては慎重に検討いたしたいと思っております。
  143. 大原亨

    ○大原委員 たとえば部落というのは、実際上存在しているのは、歴史的にも地理的にも西日本に多いわけです。そういたしますと、そういう地域に対しましては、そういう要素を加味した育英資金のワクを出さないと、やはり実現できないわけですね。だから、それは全体としては、そういうワクを組まれる際に、そういうことを十分に念頭に置いてやっていただける、こういうふうに解釈してよろしいですか。
  144. 西田亀久夫

    ○西田説明員 お話の通りに、高等学校の奨学金の採用は、育英会本部が各都道府県支部に採用のワクを内示いたしまして、それによって採用いたすわけであります。その場合に、府県に対する割当のワクというものは、従来とも府県のそのような必要者の条件を種々考慮いたしましてやっておるわけでございますが、今申し上げましたような政策に基づいて、そのような採用が確保されるための措置をしようといたしますならば、府県の配分のワクの計算の中にそれを顧慮することが当然だろうと考えております。
  145. 大原亨

    ○大原委員 これは文部省に対する要望ですが、長欠児童とか未就学児童が部落には多いのですから、こういうことにつきましても一つ十分考えていただいて、いろいろな施策があるわけですから、たとえば給食費の補給とか、給食を要保護児童家庭あるいは準要保護児童の家庭に出すという場合がありますが、そういう点につきましても、そういう部落の実態というものを頭に置いて予算の配分その他をやっていただく。これは特に初中局関係だと思いますが、こういうふうに御配慮いただきたいと思いますが、これらの点よろしくお願いいたします。
  146. 西田亀久夫

    ○西田説明員 初中局長が来ておりませんので……。ただいまお話しの点は文部省の各局にまたがる問題でございますが、学校給食の問題、就学奨励の問題、準要保護児童対策の問題でございますので、それらの点は省内で十分連絡をとりまして、準要保護生活の、程度の低いような部落がありました場合には、そういうものが救われるように注意して参りたいと考えております。
  147. 大原亨

    ○大原委員 これは要望です。文部省も、いろいろ現在の特別の予算を作る以外に、最初説明がありましたように、一般的に予算を使う際に、そういうことを基礎にいたしまして、集中的に重点的に差別と貧困をなくすような、そういう物的な基礎、予算的な基礎を行政の運営に置いて考えていただく。そういう点は、ほかの面もあると思いますが、この際そういう問題もできるだけ拾い上げていただいて——私はいずれまた次の機会にお尋ねしたい、資料の提出も求めたいと思いますけれども、各関係局長において、現在できる範囲においても十分配慮した上で措置をしていただく、こういうふうに要望をいたしておきます。  それから厚生省関係です。厚生省、労働省は残っているわけですが、たとえば厚生省の中で、住宅の問題はどっちかといえばおもに都市ですね。しかし、たとえば生活改善で、台所改善なんかを部落なんかにするとか、農林省関係だったら林道、農道、こういうものですね。台所改善なんかについても、補助金を上げてやれば零細な金で台所改善が可能になる。こういうことは私はできると思うのです。これは、小さな部落に対して具体的な施策をするという問題としては一つの大きな環境改善の問題です。だからそういう予算の組み方や運営の仕方をぜひ考えてもらいたいと思うのですが、これらの点についてはいかがですか。
  148. 高田正巳

    高田(正)政府委員 厚生省関係施策といたしましては、個人に直接金をくれてやって、その個人のうちをどうこうするというふうなことは実は今日まで考えておりません。従って、主として共同利用でありますとか、そういうふうなものを考えておるわけであります。今の大原委員の御指摘はどういう御趣旨か、私はその辺が十分わかっておりませんけれども、かりにそれが各家庭の台所を政府の手で改善をしてやるとか、地方団体の手で改善をして差し上げるというふうなことになりますと、これはまた別の問題が出てくることだと思います。しかし、事柄は非常に大事な問題でございますので、別に今考えておりませんけれども、将来の問題としてその問題自体は一つ検討をして参りたい、かように考えております。
  149. 大原亨

    ○大原委員 モデル地区、一般と、こういうふうに書いてあるのです。隣保館、共同浴場、共同作業所、この中には非常にいいのもあるわけですけれども、たとえば館長なんかの費用をふやしたのはこれはいいと思いますが、館長なんか、モデルだけ作って、あとふやすといってないでしょう。あと全部やるのですか。
  150. 高田正巳

    高田(正)政府委員 隣保館運営費というものは、今まで厚生省が国費の補助を出しまして作りました隣保館にその運営費をつけていこう、こういうことでございますので、モデル地区は一つもありません。その他の地区ばかりであります。先ほどモデル地区の問題でいろいろ御意見がございましたのですが、厚生省予算といたしましては、ごらんのように、モデル地区よりは一般地区の方の予算関係が多いわけでございまして、大体一対二くらいの関係になるわけであります。私どもといたしましては、今の隣保館の運営費ということで例をあげて申し上げたわけでございますが、その他の一般地区におきましても大いに力を入れて参りたい、こういうつもりでおるわけであります。
  151. 大原亨

    ○大原委員 厚生省の方へわれわれ要望したい点は、隣保館、共同浴場、共同作業所、下水、排水路等や共同便所はみなモデルをやっておりますね。私は、モデル方式をとっておるところはとっておるので、撤回して下さいということを実質上は言いたいのですが、しかし、やる以上は公平に差別なしにやらなければならぬ。そして予算を作るときに、行き当たりばったりでなしに、十カ年なら十カ年間の見通しをもってやらなければならぬ。他の地域はどうかということを考えてやらなければならぬわけですから、モデル地区をやる以上は、全体の構想はどうかということでやらないと、モデル地区は意味がない。そういうことで十カ年なら十カ年計画を立てておると政府は言うのですから、その中身といたしまして、全国のそういう実態に即するモデル地区と一般の地区との考え方を筋道を立てて、みんながこういうふうに税金を使うのかと、わかるようにやってもらいたい。これは一つそういう資料を作ってもらいたい、こう思います。本年だけモデル地区を作るというのだったら意味がないのです。それでぱっと消えるものであっては、それこそほんとうに税金を私のために使うことになるので、これは差別をしたことになると思います。だから、モデル地区をやられる以上は、モデル地区をどういうふうにして全般的に広げるのか、こういう広さと時間的な展望を持った十カ年の上にやろうとする構想を立ててもらいたい。それで私は他の農林省その他に言いましたような構想のような資料を作ってもらいたいと思うのですが、局長どうですか。
  152. 高田正巳

    高田(正)政府委員 一番当初に申し上げましたように、十カ年計画という気持で一つ物事を取り運ぼうというところまでは思想が一致しておるわけでございますが、各年度に一体どこでどういう仕事をするというふうなことまで、私ども精密に検討いたしておるわけではございません。なおそれは各年度の国の歳出にも関係するわけでございます。さようなものを軽々に作りまして、それがそのままいくとも考えられません。従いまして、なおそれにはさようなものをもし作るといたしますれば、私ども今日部落の地区の一応の調査は持っておりますけれども、もう少し精密な実態調査というものを前提にしなければ、これは大原委員もよくおわかりになりますように、なかなかさような具体的なものはできるものでもございません。従いまして、厚生省が担当いたします分野におきまして、各年度の一体どういうふうな事業でどういうふうにやって参るというようなことを今計画をしろという仰せでございまして、そのお気持は十分わかりますけれども、今のような事情でそれを直ちに今作成をいたしましてどうこうお出しをするというふうな運びには、とうてい現実の問題としてむずかしいのじゃないか、私はかように考えておるわけでございます。
  153. 大原亨

    ○大原委員 予算が足らぬでしょうが、少ないでしょうが、そうすると、求めている他の地域に対しては、やるのかやらぬのか、いつごろやるのか、どういう内容でやるのかという大体の方針は、部落の実態に即して出さないで、自分の気に入ったところだけ出しておく、そういう税金の使い方なんて許せませんよ。だから、それは次年度予算をそう拘束するような計画を出せということは言えぬかもしれないけれども、僕はやはりそういう総合政策の中で当然そういう構想があってもいいと思うのですよ。十年間にこれくらいはやりたいという構想はあってしかるべきだと思うのです。それを初年度にどのくらいやるか、三年度にどのくらいやるかは別です。これをやらないと、頭を下げて陳情したところにだけやるということになってしまう。そういう条件のないところには及ぼさぬということになってしまう。だから、こういう仕事をモデル地区という方式で始めたのだったら、モデル地区とは何ぞやという客観性を立証する責任が政府の方にあると思う。拘束するような、そういうものじゃないけれども、そういう全貌を、十カ年計画ということを大臣も言ったのだから、そういうものを示す必要があると思うのですが、どうですか。それでなければ差別になる。
  154. 高田正巳

    高田(正)政府委員 いろいろお伺いをしている間にだんだんわかってきたような気がするのですが、モデル地区というものを今回準モデル地区と一緒にいたしますと、十六地区ほど作りましたのですが、これをどういうふうに広げていくか、その計画を出せというような御趣旨のように、その趣旨がだんだんわかって参りました。ところが、モデル地区というものは、これは読んで字のごとくやっぱりモデルであるわけでございますので、全部がモデル地区になったのでは、モデル地区という意味はないわけです。しかし、政策としては、全部の地域に行きわたるような政策を講じていかなければならぬ。従って、今後三十六年度にモデル地区を幾らふやし、三十七年度に幾らふやすというふうな計画を、おそらく御要望になっておるやに、私は推察をいたすわけでございますが、モデル地区方式というものは、全部がモデルになったのではおかしなことになるということとも関連をいたしまして、なお来年度モデル地区という方法で施策を進めてみまして、その実施の結果等を検討をいたしまして、今後の問題を考えて参りたい。十年間必ずモデル地区方式を続けて参るというものでもあるまいかと思います。従いまして、その辺のところは、三十五年度一つこういう方式でやってみまして、厚生省といたしましては、先ほど申し上げましたように、一対二の予算の振り分けになっておるわけでございますが、こういう方法でやってみまして、これで非常に効果が上がるということになりますれば、今後も引き続きかような方向でやって参るということが効果的である。しかし、かようなことで工合が悪いというようなことになりますれば、これはまた考え直すということも当然いたさなければならぬ。従って、今から十カ年の回にモデル地区を幾らにふやして、それを何年度に幾らふやすのだということを申し上げてみましても、それはあまり意味がないのじゃないか、私はかように考えておるわけであります
  155. 大原亨

    ○大原委員 たとえば共同便所がないところヘモデルで作るのでしょう。ないという実態がほかの地域にあれば、作った方がいいにきまっているのだから……。下水、排水路がないところにモデルを作るのでしょう。あとは自力で作れというのでなしに、ないという実態があれば、環境衛生上作るのです。共同作業場を部落産業とくっつけて運営していこうというのでモデルを作るのでしょう。初年度ですから、そういう実態に即してやるという前提でやるのでしょう。共同浴場だって衛生上やるのでしょう。それから火葬場のモデルを作る。墓地移転だってそうです。塵芥焼却場だってそうではないですか。畜犬抑留場だってそうでしょう。塵芥集積場だってそうです。モデル、モデルというふうになっておるけれども、そういうことに初年度に一部の予算を使う以上は、全体としてそういうないところについては当然やるという前提でやらなければ、予算の使い方としては許せない。それは差別であるということを言っておるのですから、それは当然実態がどうだということを見きわめた上で、最初にこういうふうにやるのだ、こういう展望がない限りはできない。ないところに対しては逐次やっていくということはいいにきまっている。私らも賛成です。超党派的に賛成だ。ひもをつけて気に入ったところだけ、よく陳情するところだけ、なびくところだけやるというのは差別です。そういう税金の使い方は許せない。国民みんなが税金を出しておるのですから、そういうことはいけないということを言っておるのですが、いかがですか。
  156. 高田正巳

    高田(正)政府委員 共同便所がたまたま例にあがりましたから、共同便所で申し上げてみますと、九十九万八千円がモデル地区に参ります。そうして二百九十九万二千円、約三倍の金はその他の一般地区として振り向けますという内訳を示しただけで、従って二百九十九万円というのはモデル以外のところでございますが、今大原委員の言われるように、全国の部落に共同便所の必要なところが幾ら幾らあって、それがはっきりわかっていないところに二百九十九万円使ってはならないということになりますと、これは最初申し上げましたようにはなはだ遺憾でございますが、そこまでの実態調査は実は私ども持っていないわけです。モデルの九十九万円がかような意味で問題になるとすれば、二百九十九万円の一般地区の経費というのも、その議論からいえば問題になってくるわけです。かようなわけ合いでございますから、そういうものはあったに越したことはない、全国の部落に共同便所の足りないところが全体で幾らある、これをやるには金がこのくらいかかるというふうな精密なものがあったに越したことはないので、私どもの今日までの努力の足りないところかもしれませんが、実情といたしましては今のようなことでございまして、逐次さような資料も一つそろえて参りたい、かようなつもりでおるわけでございます。
  157. 大原亨

    ○大原委員 一般とかモデルとかいうふうに分ける理由がわからないのです。基本的にいえばそういう理由がわからない。必要度の緊急性のあるものから総合的に計画を立てて逐次ずっと解決していくべきです。地域的に見てみると、集中的になっておるからモデルになるかもしれないけれども、そういうことがいいのかもしれませんけれども、しかし緊要度のあるものから実態に即してやっていくのですから、総合的に十年間のうちには、だんだんと生活も、あるいは工場が建ったりして雇用条件もよくなってくるかもしれない、そういうことがあるかもしれないが、大体のことについてやっていって、必要度のあるところに逐次及んでいくのだという、そういう客観性なり、公平というものを方針として示すことが、私はやはり公平な行政だと思うのです。恣意的な、感情的な、あるいは天下り的官僚的な、そういう形式的なことになってはいけない。公平なことをやってもらいたい。モデル地区というのはとかく誤解を受けておるのです。やっておる過程から与党の諸君が入っていって、あそこをやれ、ここをやれといって、行政の中立性も客観性も阻害しておる、そういう疑惑を持っておるから、私は逆の面から言っておるのです。私はそういうふうな税金の使い方は許せない、そういうことがあったらいけないといって、前の厚生大臣八木委員一緒に言っておるのです。厚生大臣はそういうことはありませんと言うから、事実が出たら承知しません。そういうことは、国民が公平ということを考えたら、あなた方次官、局長以下が行政の中立性を保つということは当然である。だからそういう不平等な差別をやってはいけない。正当なモデル地区を作って逐次それを拡大していく方針、原則を示すならいい。しかし、それを実際にやる場合に、一々やる場所まで裏づけておいて、あとは野となれ山となれというのじゃないけれども展望もないようなことはやってはいかぬ、それでは部落行政にならぬ、こういうことを私は心配する。そういうことではいかぬから、部落行政をやる際に、他の地区の非常にいい例になるから、趣旨がわかったら、それにできるだけこたえるような客観的な資料を出してもらいたい、そういうことを私は要望します。それについて答弁を求めます。
  158. 高田正巳

    高田(正)政府委員 御趣旨は十分わかりましたが、私どもの持っております程度の調査で、はたしていかなる資料を作成してお出しをすればある程度御満足がいただけるか、その辺の見当が私ただいまつきません。よく検討をいたしまして、できるだけ御趣旨に沿うようなことにいたしたい、かように考えております。
  159. 大原亨

    ○大原委員 最後に、厚生省の実態調査はいつごろできますか。相当金をかけて実態調査をやっておられますね。あれは私はいい調査だと思う。それができたら、予算の使い方の裏づけができると思うのですよ。実態に即してやるのだから、これが一番客観的なんですよ。
  160. 高田正巳

    高田(正)政府委員 厚生省で、今まで部落の問題につきまして、特別にいわゆる実態調査費というふうなものを計上いたしまして、一斉調査とか実態調査をやったことはございません。ただ私どもは、行政のいろいろな系統を通じまして、特別にさような経費計上することなく、自分たちの行政の系統でできるだけの範囲の資料を集めておる、こういう状態でございます。それから、来年度におきましても、特に部落地区、この同和地区の問題につきまして、特別な実態調査の経費等は計上されておりません。大体そういう状態でございます。
  161. 大原亨

    ○大原委員 それじゃ私は誤解しておったんだな。何かやはり相当の調査員を出して、モデルになるような部落を対象にしてやっておられると思っておった。それはよその方がやっておるのを手伝ったのですか。
  162. 高田正巳

    高田(正)政府委員 私は思い当たるところがないのでございますが、おそらく都道府県当局なりあるいは市町村当局が、私どもの要望にこたえるために、自分たちが実態を把握しておかなければいかぬというふうなことで、いろいろと調査をしたようなことはあるいはあるかもしれない。しかし、特に厚生省から、御指摘のような実態調査費というようなものを計上して、一斉の調査をいたす——三十五年度に身体障害者の一斉調査をいたす予算が入っております。さような意味合いで調査をいたしたことはございません。
  163. 大原亨

    ○大原委員 それは、実態調査が、そういう府県でモデル地区を作るのに自主的にやったにいたしましても、他から要請があってやったにいたしましても、与党の諸君から要請があってやったといたしましても、そういう実態調査があれば、できるだけそれらも活用して、実態に即するような、客観性のある、実態がこうなんだから初年度はこういうモデルを作ってやったのだと説明できるような——それは検討されると言われたんだから、検討して出してもらうように要望いたします。  労働省の方はきょうはお見えになっておらぬから、社会局長なり審議室の方からお伝え願いたい。雇用政策上、職業訓練ということは——最近の雇用政策には見解はあるけれども、注目されておる。技術指導をして雇用をやるということは、雇用政策を立てる一つのチャンスになるから、これを集中的に、計画的にやるべきだという意見ですが、遺憾ながら労働省は用事があって来ていない。労働省には、社労の委員関係でもあるので、その際また質問いたしますが、その方へ連絡をとってもらって、お願いしたいのです。  最後に申し上げたい点は、大島審議室長の方かあるいは高田政府委員の方か、どちらが中心かわからないようなことですが、八木委員も言われたように、この問題については、せっかく税金も使うし計画も立てるということで、第一歩を踏み出そうといたしておるわけですから、どうしてもやはり実態に即しながら、しかも関係団体から審議委員も出し、保守、革新超党派的に出して、審議委員会で、実態の把握なり予算の使い方に対して、客観性のあるように、年次的に逐次使っていくようにして、差別のない行政をやっていく。しかも各方面の意向が浸透するように審議機関を作って、そうして行政府がそれぞれ緊密な連絡をとってやる。こういうことが、私は部落政策として解決の第一歩を進める際にやるべきことだと思う。立案の過程においても、あるいは推進の過程においても、保守、革新、関係団体の意見を聞きながら、そうしてこの問題を集中的に取り上げていって、差別と貧乏から解放するような政策を立てることが、政府がお考えになっておることを実現することになるし、私どもが今日まで要望したことの趣旨でもある。そういう点で、この問題も含めていろいろな施策を立てられます際には——実態報告やあるいは十年間の抱負について各省に要望いたしておりますが、少ない予算、限られた予算で十分ではないが、国の施策全体がそういう低所得者や日の当たらないところに集中して——厚生大臣も言っておるから、逐次それを解消していくような行政をやる。こういうように、有機的な、総合的な、年次的な計画で、税金を有効に使って、行政府の施策が浸透できるような方策をとってもらうように——その問題は、大島審議室長から、あるいは高田政府委員から、だれが中心になっておやりになるかは別にいたしまして、渡邊厚生大臣とも十分連絡をとってもらって、次の機会に、今まで申し上げましたような、あるいはまだ申し上げ足りなかった点を含めて、もう一回審議する機会を持ちたいと思いますので、そういう点を御要望申し上げまして私の質問を終わりますが、この際、高田政府委員でも大島審議室長でもよろしいが、一つ所見をお伺いいたしたいと思います。
  164. 大島寛一

    ○大島政府委員 ただいまの御質問でございますが、便宜私からお答えいたしたいと思います。先ほど来の御質問、御意見の中には、厚生大臣から御答弁がありましたような次第でありまして、私どもとしましては、厚生大臣がお答えになりましたような線に沿いまして十分検討いたしたいと思っております。ただ一言、各省間その他連絡を総合的によくやるようにというお言葉が、ただいまの御質問の中にもございましたが、その点につきましては、私ども、もちろん関係各省——厚生省建設省農林省、自治庁、それだけではございませんが、常時必要に応じて緊密な連絡を今までもとっております。今後もますます緊密な連絡を深めて参る考えでありますことをあわせて申し上げまして、御了承を得たいと思います。
  165. 八木一男

    八木一男委員 審議室長に事務的なことでちょっとお伺いするのですが、閣僚懇談会の事務局は審議室ですね。
  166. 大島寛一

    ○大島政府委員 閣僚懇談会の庶務は内閣官房でやることになっておりますが、事務的には私ども審議室がその庶務を担当することになっておるわけでございます。
  167. 八木一男

    八木一男委員 それからもう一つ内閣に直属の既設の各審議会、それを扱う官庁は総理府ですね。
  168. 大島寛一

    ○大島政府委員 内閣に直属の各審議会というお話でございますが、普通たくさん審議会がございますが、審議会は全部と申しましてもよろしいほど、これは総理府に所属することになっております。それぞれ法律でその所属がきめられておるわけでございまして、たとえば各省にも審議会がございますが、これは総理府所属ということになっております。ただその総理府所属の審議会の事務をどこで扱いますかにつきましては、いろいろな例がございまして、必ずしも総理府で扱わないものも、前例と申しますか、実際においてあるわけでございまして、たとえば一番密接な関係のある省なり庁なり行政権関が総理府所属の審議会の庶務を担当するという例もあるわけでございます。
  169. 八木一男

    八木一男委員 そうすると、総理府直属の審議会を作るという方針がもし内閣で決定した場合に、その原案の作成を命ぜられる役所はどこですか。
  170. 大島寛一

    ○大島政府委員 ただいまの御質問は、かりに総理府所属の審議会が新たにできる場合、その原案はどこの役所で作るかというお尋ねと存じますけれども、これはその時によるわけでございまして、総理府所属の審議会であれば、通例総理府におきまして原案を担当することにはなろうかと思いますが、問題によりまして特に密接な関係の深い役所がありますような場合におきましては、それぞれの役所で原案を作るという場合もあるわけでございます。一がいには申し上げられないかと思うわけでございます。
  171. 八木一男

    八木一男委員 閣僚懇談会の事務的なまとめ役は官房長官が中心になるわけですね。ちょっとはっきり言っていただきたい。
  172. 大島寛一

    ○大島政府委員 閣僚懇談会につきましては、従来の例によりますと、閣議におきまして、こういう趣旨の、こういう構成の閣僚懇談会を作るという決定なり了解が行なわれまして、それに基づいてできるわけでございます。その場合の事務をどこが担当するかということは、閣僚懇談会の設置をきめられます方針決定と申しますか、その際にあわせてきめられるのが従来の例と承知しておる次第でございます。
  173. 八木一男

    八木一男委員 別に言い違えても、あとでこう言ったからどうとは言いませんから、もう少しざっくばらんに言って下さい。えらい慎重な御答弁でわかりにくいのですが、閣僚懇談会は今まで何回行なわれたのですか。それが行なわれたときに、行なわれますという通知を出すような事務はどこでやっておられたのですか。
  174. 大島寛一

    ○大島政府委員 お答えいたします。実は私閣僚懇談会一般についてのお尋ねと思ったものでございますから、いろいろな例を含めまして一般的なお答えをしたような次第でございますが、御趣旨は同和問題閣僚懇談会についてということでございますか。——そういうことでございますと、これは先ほど申し上げました内閣官房で処理いたすことになっておりますので、私どもの方が事務的に案内その他をすることになっております、
  175. 八木一男

    八木一男委員 それでは前の懇談会できまったのを事務的に処理なさるだけで、こういうことがありますようということで、事務局として議題を用意するというようなことは一切なさっていらっしゃらないのですか。あなたの方で何かなさっていらっしゃるのですか。
  176. 大島寛一

    ○大島政府委員 お答え申し上げますが、それは時と場合によるわけでありまして、閣僚懇談会の開催をきめられます場合に、各省が相談しました原案を提出する場合もございます。また関係の省から出ましたものを、閣僚懇談会でございますので閣僚が構成員になっておられますから、それぞれの閣僚から御提案になるなりお話しになる場合もあります。あるいはまた、事務的な原案というものが必ずしもなしに、大所高所からお話し合いの行なわれる場合もあり得るわけでございます。
  177. 八木一男

    八木一男委員 それだから困るのです。一つも動いていない証拠なんです。各省で出すか、大所高所から閣僚懇談会のメンバーである大臣が何か言うか、大体そういうことになるわけですね。各省で出したら、やはり十分な経綸を高山さんがお持ちになっても、労働省のことまで口を出したらほかで文句が出るというようなことで、厚生省関係のことしかやれない。厚生省はもっと元気を出してほかのことを言っていただいてもいいと思いますが、そういうような御遠慮がある。ましてや農林省厚生省のことをもっとやったらいいと思っても、それは遠慮なさるというのが今の状況です。厚生省がこの部落問題については一番御熱心なんだから、総体的な意見が出されることがあると期待し、ある程度あったかもしれませんが、それでもやはり各省間の遠慮があって完全なことにならない、ところが、閣僚懇談会に大所高所からといっても、率直に申し上げて、総理大臣なり各省大臣が問題の全部を精密に知っておるわけではない。実際には大臣より局長の方がよく知っておる。具体的な問題は局長よりも課長の方がよく知っておる。だから、原案を作ってそれを見て、大臣がこういういいことがある、それを言ってみようということになるわけです。それが今までの状態だと、各省から来た各省別の原案だけになって、総合的な原案が作られない。あとは大臣考えたことだけです。厚生大臣はいい大臣でありますけれども、今の御答弁でも、あなたが聞いておられるように、一番主管官庁の大臣がそんなにこの問題をわかっておられるわけではない。ましてやほかの大臣はわかっておるわけではない。これでは問題は一つも進まない。閣僚懇談会という名前のものを作ってやっていますよという自己満足をしておるだけなんです。そういうところに部落問題の審議会を作らなければいかぬということがある。ですから、少なくともあなた方の方で、昨年の十二月の——日にちは必要があったら調べますが、内閣総理大臣が、閣僚懇談会において、部落問題解決の審議会を設置することをそこで進めるということを言っておるのでありますから、その総理大臣言葉に従って、あなたの方で準備されてもいいと思う。別に決定権はなくたって、それを進めるための原案くらい作られたらいい。なければ、今の内閣委員会に新たな案が出されておりますから、そのままそっくりとっていただいてもいい。そのくらいのことをやっていただかないと問題が進まない。そういうことで申し上げておるわけであります。あなたはもっと元気を出してやってもいい。総合的な政策を作られるのは内閣の責任である。総合的な政策を作られるような事務的なやり方が一切やられていない。大臣はおれはやっておるのだといっても、実際はわからない。各省大臣の一番中心で総合的なことをやっておるはずの岸さんでも、渡邊さんの返事だと、座長の役割を果たしていないらしい。そうなるとあなたのところでやるよりしょうがない。それは厚生省が今まで一番関係が深かったから、異論があったら聞くけれども厚生省が自分でダイナミックにやるのだということで、高田さんも元気を出していただく。両方協力してやっていただく。そうでなければ問題は進まない。そんなことをいつまで続けてもだめなんです。少なくともあなたの方で部落問題の内閣の審議会を作る必要があるということの提起をされる必要がある。それはあなたのほんとうの任務だ。形式的にいわれたことの事務通知を出しているだけじゃ任務を果たしていることになりません。そういうことをしていただきたい。あなたに結論がつかなければ、あなたの上司であってこの問題の担当者の官房長官にそれを強力に言っておいてほしい。本日官房長官は、大原さんの質問があったときに、わしはわからぬからということで渡邊さんに頼みますと言って逃げたらしい。そんなことで官房長官の任務は勤まらない。今度私は呼び出してしかりつけます。もしそのときに審議会の設置法案を準備している、やるつもりだということを言っていなければ、官房長官即時辞職しろという要求を出すつもりです。そのことをあなたからよく官房長官に言っておいていただきたいと思う。御答弁をいただきたい。
  178. 大島寛一

    ○大島政府委員 この同和の問題につきましての原案その他先ほど来申し上げましたが、厚生省が最も関係の深い役所でございますので、厚生省もいろいろ案を出されるわけでございます。同時に厚生省以外の各省にもまたがる点でございますから、各省の連絡その他十分、これは厚生省も積極的に希望されますし、また私どもとしてもそういう線に沿って努力しておるわけでございます。  御質問の第二点でございますけれども、御意見がありました次第につきまして上司に報告いたすつもりでおります。
  179. 八木一男

    八木一男委員 即時強力に伝えておいて下さい。次に官房長官に必ず来ていただきます。来ていただけなかったら辞職勧告をしますから……。
  180. 永山忠則

    永山委員長 次会は明十七日午前十時より開会することとし、本日はこれにて散会いたします。     午後六時二十二分散会