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1960-02-11 第34回国会 衆議院 社会労働委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十五年二月十一日(木曜日)各派割当数異 動後の本委員は、次の通りである。    委員長 永山 忠則君    理事 大石 武一君 理事 大坪 保雄君    理事 田中 正巳君 理事 八田 貞義君    理事 藤本 捨助君 理事 滝井 義高君    理事 八木 一男君 理事 堤 ツルヨ君       池田 清志君    大橋 武夫君       加藤鐐五郎君    亀山 孝一君       川崎 秀二君    倉石 忠雄君       藏内 修治君    河野 孝子君       齋藤 邦吉君    志賀健次郎君       田中 角榮君    中村三之丞君       中山 マサ君    早川  崇君       古川 丈吉君    柳谷清三郎君       山下 春江君    亘  四郎君       赤松  勇君    伊藤よし子君       大原  亨君    河野  正君       小林  進君    五島 虎雄君       多賀谷真稔君    中村 英男君       山口シヅエ君    木下  哲君       本島百合子————————————————————— 昭和三十五年二月十一日(木曜日)     午前十時四十六分開議  出席委員    委員長 永山 忠則君    理事 大坪 保雄君 理事 田中 正巳君    理事 八田 貞義君 理事 滝井 義高君    理事 八木 一男君 理事 堤 ツルヨ君       池田 清志君    倉石 忠雄君       齋藤 邦吉君    中山 マサ君       早川  崇君    古川 丈吉君       柳谷清三郎君    亘  四郎君       伊藤よし子君    大原  亨君       小林  進君    五島 虎雄君       本島百合子君  出席国務大臣         労 働 大 臣 松野 頼三君  出席政府委員         労働政務次官  赤澤 正道君         労働事務官         (大臣官房長) 三治 重信君         労働事務官         (労政局長)  亀井  光君         労働基準監督官         (労働基準局         長)      澁谷 直藏君         労働事務官         (職業安定局         長)      堀  秀夫君  委員外出席者         労働事務官         (大臣官房労働         統計調査部長) 大宮 五郎君         専  門  員 川井 章知君     ————————————— 二月十一日  五島虎雄君が理事を辞任した。     ————————————— 二月十日  医療金融公庫法案内閣提出第三四号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  理事辞任の件  労働関係基本施策に関する件      ————◇—————
  2. 永山忠則

    永山委員長 これより会議を開きます。  この際お諮りいたします。理事五島虎雄君より、理事辞任の申し出があります。これを許可するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 永山忠則

    永山委員長 御異議なしと認め、そのように決しました。      ————◇—————
  4. 永山忠則

    永山委員長 労働関係基本施策に関する件について調査を進めます。  質疑の通告がありますので、これを許します。大原亨君。
  5. 大原亨

    大原委員 最初に、岸内閣所得倍増計画というのがあるのですが、初めは非常にはっきりしておりましたが、だんだんとぼけてきました。一番初め池田さんが言われたころには、月給二倍論というのがございました。それから所得倍増論になりまして、最近は所得倍増基礎を確立するというふうなことになったと思うのです。まあ所得倍増論が起きてきました経過から考えてみましても、労働者賃金水準、特に低所得労働者賃金水準をどう引き上げるかということが、非常に大きな問題だと思うのですが、所得倍増計画の中における労働大臣の御所見一つお聞かせいただきたいと存じます。
  6. 松野頼三

    松野国務大臣 内閣が昨年成立した当初に、所得倍増計画を十カ年でやるという計画を確かに打ち出しました。その後、毎年七・二%ですか、十カ年でちょうど倍になるわけです。算術平均すればそうなりますが、現実日本経済日本所得を総合的に考えて参りますと、ある場合には七・二以上に上昇するものが出てくる。もちろんこれはけっこうなことであります。従って十年という期限を切ることが一つ問題点である。あるいは七、八年で倍増になるかもしれないということなら、これはけっこうなことだというので、倍増計画をさらに検討して、所得倍増目標に、いかなる対策と、いかなる期限を切るかということでただいま作業中であります。さしあたり三十五年の見通しとして、つい先般企画庁から発表いたしましたのが、三十五年だけの一応の見通しでありますから、これを基礎に、今後所得倍増計画というものを立てていくわけであります。従って十年という期限を切るということの問題点、七年か八年かということの問題、さらに不均衡な、あるいは所得の低い階層をどうやってその所得倍増計画の中に合わせていくかということが第二の作業であります。労働省から申しますと、所得のみならず雇用というものも勘案しなければ、これは同じ倍増になりましても、労働行政としては、一、二の者が倍になってもあとの者が倍にならないという不均衡是正を、この中でやっていかなければならない。今日労働省として、その所得倍増計画に参画している焦点は、所得倍増と同時に雇用も伸ばさなければならないというので、雇用政策もあわせてこの倍増計画に加味させようというのが、今日の作業の実態でございます。
  7. 大原亨

    大原委員 昭和三十五年度は所得倍増計画における第一年度のそういう計画見通しを立てておる、こういうお話ですけれども、所得倍増計画という中には、今お話しのように七二%ずつ上昇いたしますと、十年間で国民所得は倍になる、こういうことですが、しかし、先般自民党からおしかりを受けたという話ですが経済企画庁で出しました見通しの中には、労働者賃金は倍にならないで、日本経済全体の中では非常に低いわけです。つまり百億円ある大法人所得が二百億円になるというのは見通しがつくと思う。しかしながら具体的に労働者とか農民とか中小企業の諸階層が、ではどれだけ所得上昇していくのかということについては、何ら明らかにされていないだけでなしに、農村では三判以下、こういうことにもなっておる。従って第一年度、昭和三十五年度の計画見通しを立てて、それに着手しているのだということですが、やはり主体的に能動的に労働大臣労働者生活をどういうふうに上げていくんだ、こういう計画を持って政府計画立案の中に臨んでいただかないと、自由放任でありましたら、強い方に富は寄っていくのであります。従ってそれについては労働大臣は大きな責任があると私は思うのですけれども、昭和三十五年度のそういう所得倍増計画における労働大臣としての、労働省としての一つの主体的な態度というものは何なんですか。
  8. 松野頼三

    松野国務大臣 所得倍増統計農民が三〇%しか上昇しない、三十五年度を見ましてもわずかに一〇三ぐらいの指数しか実は出ておりません。しかしこれはその指数のとり方によってだいぶ議論の内容が変わってくる。これは全農家所得上昇率からいえばあるいは三〇%かもしれませんが、各農家別に割って参りますと、これを逆に考えて見ますと、農家雇用者になって農業労働者が減ってくる、やはり五、六%という数字が出てくる計算も出てくるわけであります。賃金も同様に、にわかに上昇——統計だけでこれを議論するわけに参りません。かりにいえば、新しい雇用が、ある年にはふえます。今まで二万円平均賃金水準があった、その二万円の方が九人働いておった、一万円の者を一人雇いますと所得水準が一割減って参ります。一万九千円という平均賃金になる。しかし総合所得はどうだといえば、これは雇用がふえたのですから、十八万円、さらに一万円がふえたのですからこれは確かにふえた。しかし算術平均統計上出て参りますと、賃金は一割減ったじゃないかという議論も成り立たないではない。従って、勤労所得総体をずっと過去にわたって調べて参りますと、勤労所得も六年ぐらい前は四七、八%でありました。最近は五三%くらい、国民所得の中で占める勤労所得は五十何パーセントにふえて参りました。そうすればこれは確かに勤労所得というものは国民所得の中においてふえている。これはこの五、六年ずっとふえております。逆にいえばそれは中小企業所得が減っているではないか、こういう統計もあるいは出るかもしれません。しかし中小企業個人企業が、ある場合には税法上の問題で、いわゆる法人化された個人企業もだいぶふえております。そうすると、中小企業の中では個人法人というものの動きも考えなければならない。そういうところに実は統計のいろいろな議論焦点があるわけで、私は今後におきましては、労働省としてはまず雇用をふやそう、そして賃金上昇をはかろう、この二つが国民所得の中における労働経済として今後働かなければならない問題で、賃金水準ばかりにこだわりまして雇用というものを置き去りにするわけに参りません。統計では確かにふえましょう。雇用をふやさずに特定の労働者賃金ばかりふやせば、これは確かにふえましょう。しかしそれでは雇用面における上昇は出てこないから、私たち雇用賃金を平等に、車の両輪の意味統計上において見ていかなければならないというので、今後の計画を作るときには、雇用賃金というものを合わせて、そうして日本国民所得の中にどう占めるかということを考えてやるために今日やっておるわけでありまして、つい先般は、九十万の新規雇用がどうしても必要だ、そうあるべきだというのが三十五年の一つ計画になっておるわけであります。従って九十万人の雇用というものも念頭に置いて賃金水準を加味していきませんと、賃金統計だけで倍になったといったって、その賃金統計に入らない階級というものを忘れては政治にならない、雇用をふやしながら、そうして賃金をふやしながら、この両面を私は考えるべきだと思う。賃金水準は三十年から今日まで、大体一六%上がっております。雇用は二五%くらいふえております。従って賃金は三年間に一六%じゃないか、しかし雇用の二五%の増を見込んで参りますと、これは実は相当上昇といっても過言ではございません。だから、そういうところに私たち労働経済として苦労するところがある。雇用の二五%は、来年はもっと伸ばしていきたい、同時に賃金水準も合わせていきたい。賃金ばかりから議論するわけに参らないというのが、一番私が苦労しておる今回の経済計画における雇用面であります。ことに、今後五年間は相当生産年令人口はふえます。百六十万から百八十万くらいふえる、そうすれば労働力人口として九十万から百万というものを見込まなければならない。それから五年くらいたちますと大体百十万から百二十万に生産年令人口が減って参ります。そうして統計も六十万前後に落ちつくだろう。従って、十年の倍増計画の中で、今後の身近な五年間に雇用をどう伸ばすかということは、これがまた問題の焦点になってくるわけであります。従って、そういう面を勘案して雇用の吸収を考え賃金上昇をはかっていくということが、今日この経済計画の中における基本的な考えであります。
  9. 大原亨

    大原委員 この所得倍増というのは、労働者賃金水準を引き上げることじゃないのですか。というのは、たとえば三十年から三十四年一ぱい、三十五年までに一六%上がったというのですが、しかしそれにいたしましても、七・二%ずつ上がっておれば、大体平均して上がりますと、十年間に所得倍増するわけです。しかしやはり失業者、半失業者がおったのでは賃金水準は下がるのですから、雇用賃金相関関係にあるということです。国民所得の上においてもそうですけれども、所得倍増というのは、現在の状況におる労働者が、大体において常識的に、努力をすれば十年後には政府施策の中で倍に上がる、こういうことじゃないのですか。これから国際場裏においては、部分戦争というか局地戦争全面戦争危険性を持ってくるという一つの大きな危険はあるけれども、戦争はできぬ時代になりつつあると思う。そうすると生活水準向上の競争になると思うのです。だからそれに対して政府は、やはり政治の上において確固たる計画を立てて示さないと、労働者国民希望を持たない。そういう面において、ばく然所得雇用との関係において倍増するのだということでなしに、具体的に、自分たちと同じような条件にある者の所得が引き上がってくるのだ——あと統計上の問題を申し上げますけれども、同じような条件にある者が、努力すれば十年後は、家族が多くなったりあるいは子供が大きくなったり、そういうことは除きまして、よくなっていくのだ、そういうことがなければいかぬわけです。だからその点については、底上げ方式というか、具体的に下の方が上がってこないと、全体の所得水準は上がらない、具体的に個々所得水準は上がらない、私たちはこういう考えを持つわけです。政府の方は、極端に言えば、ばく然と上の方が上がったらそのうちに貧乏人も米を食うようになる、こういうふうな政策じゃないかと思う。だからその点については、賃金水準をどう上げるのだということは、具体的に最低賃金制の問題をどうやっていくかということもあるし、あるいは失対賃金につきましては若干上がりましたけれども、生活保護費水準とか、失対賃金とか、国が雇用しているそういう人々が、扶養家族やその他そういう条件に即しながら上がっていく、具体的にそういう方向が上がっていかなければ私は決して水準の引き上げにはならぬと思う。漫然と雇用との関係において、相関関係所得倍増計画を宣伝するのは間違いだ、こう思うのですけれども、一つ労働大臣の御所見を伺いたいと思います。
  10. 松野頼三

    松野国務大臣 ただいま所得倍増については経済委員会諮問中でございますから、総合的に結果が出なければ私も何とも申し上げられません。ただ私の考えで、労働者における所得倍増計画というのは何だ、こういうことになれば、もちろん現在所得を受けている方が何年か後には倍になる、これも一つ所得倍増方式でありましょう。ある方は倍以上なる方も出て参りましょう。ある方は、非常に低いところは倍以上になっても大したことはありません。ある方は、必ずしも倍にならない高所得の方もおられましょう。平均していわゆる勤労所得というものは倍になる。その中においての入り込みはある程度はあるかもしれません。そういうことから考えて、さしあたり政府でこの計画を立てるというときには、そういうことを中心として考えなければならないのじゃなかろうか。同時に最賃法というものもございます。最賃法は最賃法自身で、独自の考えで動くのでありまして、所得倍増計画の中において最賃法を急に足踏みさせろとか、これをどうしろということはできません。最賃法は最賃法として動くのでありますから、当然必要なものは最賃法を今度ふやして、——昨年の七月以来どうやら十万人をこえましたけれども、まだ十万程度では問題になりませんので、本年はより以上この最賃をふやしていく、そういう関係を経まして一つ計画を立てる。これは強制計画ではなくて、この中に注意すべきところはどこだといえば、やはり所得水準を上げること、そうして所得者総体国民所得における比率を上げていくこと、今日国民所得を国際的に見ますと、日本はまだ低い方であります。それに負けないように、国民総生産における国民一人当たり所得割を逆算して参りますと日本アメリカの八分の一くらいです。アメリカ国民所得一人当たりで割って参りますと日本は大体八分の一くらい、イギリスの四分の一くらいです。ドイツの三、フランスの三・五。しかしまた逆に言えば、インドは日本の六分の一くらいの国民所得にしかなりません。フィリピンでも日本の四分の三くらい、そういうところもあるのですから上、下考えて私たちはふやしていく。そういう観点から言うならば、国民所得総体倍増ということは一つ目標になる。その中において農業所得所得割勤労所得所得割というものもまた上げていくという計画を立てるわけでありまして、ただいま諮問中でございますから、どういう数字が出てくるということはまだ私が申し上げるには無理かと思います。そういうところを注意して国民所得の問題を私たち考えていかなければならない、こういう考えでおります。
  11. 大原亨

    大原委員 やや具体的な御答弁があったのですが、雇用労働者平均賃金が十年後には倍になるのだ、こういうことを労働大臣としては目標として経済企画官庁に対して——政府方針自由主義経済だから限界があると思うけれども、経済計画の中へ織り込むのだ、こういうふうな方針で臨んでいる、こういうふうに考えてよろしいですか。
  12. 松野頼三

    松野国務大臣 算術平均でただ倍になるかならないかということは、やはり雇用面の数というものを勘案しないと、ただ今統計に出ている人だけが倍になるというならば、これは雇用の数がふえない、今大体二千万人の雇用者になっております。二千万雇用者が将来おそらく毎年々々八十万から九十万ほどこの五年間にふえれば約二千四、五百万、あるいは十年後には三千万近い雇用者になる。これがみな今の倍になるのか、そうはいきません。今の三千万なら倍になるということは言えましょう。しかし二千万がふえてくれば、それだけの数が倍になるかというと、そう簡単にはいきません。もう一つ大事なことは物価だと思います。物価が上がって賃金が上がるなら、実質賃金というものは必ずしも上昇になりません。幸い今日においては、日本は三十年からの統計を見て参りますと、物価指数というものは上がっておりません。上がったといえば三%くらいです。アメリカ日本よりも賃金は上がっておりません。しかし物価は八%くらい上がっております。従って日本物価というものも考えなければ、ただ名目的にこの数字を倍にすれば所得倍増、そうはいきません。やはり名目賃金にあらず、実質的な物価指数も勘案しなければならぬ。そこにいろいろな統計といろいろな苦労があるわけであります。二千万雇用では、十年後にはとても追いつくものではありません。従って雇用の数がふえる。それは新しい労働者がふえる。新しい労働者というのは若年の労働者がふえる。そうすれば初任給というものは、今の初任給よりも上がるかもしれませんが、しかし賃金水準からいえば、それは平均賃金になりませんから、数がふえただけは統計上あるいは平均頭割りにすれば下がるという統計が出るかもしれません。しかし、個人々々の所得の倍ということは、私たち目標とすべきものであることは当然のことだと考えております。
  13. 大原亨

    大原委員 労働大臣は若いのが出てくるのだと言うけれども、古いのはある程度死んでいくのです。労働新陳代謝というものがあるのです。あなたが出てこられたらお父さんはそのうちなくなる。自然の順序です。だからその新陳代謝というものによって、毎年毎年百万人の労働力人口がふえるから、こういったところで、それはそう計算に入れる必要はないのです。それから、雇用の面をあまり極端にいいましたら、二千万が三千万雇用労働力になるといいましたら、そうしたら平均賃金が薄れてくるということになって、そして賃金が下がってくるのだったら、何のために所得倍増計画を立てるのかわからないのです。そうでなしに、雇用労働者はふえていく中において個々労働者平均賃金がふえていく、インフレでなくて実質賃金がふえていく、こういう目標をぴちっと立てて経済計画の中に参画しておられるのかどうか。前の答弁に対して平均賃金——平均賃金というものは賃金総額労働力人口で割ったものでしょう。それが上がっていかなければ意味ないと思うのです。所得倍増計画というものはインチキだと思うのです。十年後にはそれだけ生活水準が上がっていくのだ、そういうことでなければ個々の者も上がらないし、全体の水準も上がらない、こういうことになってくる。アメリカが八倍、イギリスが四倍、こういうふうなお話ですけれども、実際にそういうふうに近づいていくためにはそうしなければいけない。最近ドイツから帰った炭鉱労働者新聞記者会見でちょっと話しておりましたが、たとえばドイツでは〇・五リットルのビールが三十円だと言っておりました。大体ビールとか二級酒、そういう大衆的な消費物資にはドイツでは税金をかけない。そういう面においても主張することがやはり実質賃金を引き上げることになる。それと一緒に、たとえば五日間しか労働しておりません。これは労働時間の関係でありますけれども、五日間しか労働しておらないのに生活水準が高い、そういうふうに労働条件に伴うて労働者実質所得が十年後には少なくとも倍にはなるのだ、そのためには、労働大臣は各般の労働施策はもちろんだけれども、総合的な国の施策においてどういう主張をするのだということを明確にされないと、雇用条件とか新陳代謝とか全部入れて見て総合的にどうだということでなければ、はっきりしないと思います。その点についてもう少し整理してお話をいただきたいと思います。
  14. 松野頼三

    松野国務大臣 老齢者が滅って新しい方がふえる。差し引いて九十万ふえる。従って相当のものなんです。減る方とふえる方と同数ならば、二千万雇用を守れば、労働大臣は二千万労働者に対する賃金の二倍をやればいいわけです。しかし日本の現状はそうではない。減る方を差し引いても、なおかつ九十万くらいの雇用というものは念頭に置かなければいけないと思う。そこに非常に問題があるわけです。その上になおかつ賃金を倍にしていかなければならない。そこに問題が非常に多いわけです。それに実質賃金、今度は物価にもこれを及ぼさないようにしなければならない。その三つの関連のもとにおいて、私は実質的に倍というものを念頭に置いております。それで今の統計が傍になるか、こういう御質問ですから、それは雇用統計も加味して下さい、物価統計も加味して下さいということを私は言っている。現実的には所得が十年後には倍になるということを目標にしておる。統計上においては、雇用の増もあります、物価の問題もありますから、従って実質的に倍にならなければ意味がないというので、統計上と実質上の説明をするわけであります。現実雇用の方のふえ方が非常に多い。差し引いてとんとんならば私は労働大臣として非常に楽な雇用政策が立てられる。私は差し引いて九十万くらい増ということで、来年の雇用政策を非常に心配しているわけであります。その意味で、説明にならなかったかもしれませんけれども、そういう観点で私はこの所得倍増計画念頭に置いて、労働大臣としては関与したい、こういうのが私の基本的な考え方であります。
  15. 大原亨

    大原委員 経済企画庁最初に素案として出しました、新聞で一応取り上げましたが、それによりますと、十年後には五割くらいです。放任しておけばやはり賃金格差は増大するのですよ。強い者勝ちになってしまうのです。だから失業状況にもありますけれども、それは一つそういうことで問題点をそこに置いておきまして、昭和三十二年の労働力臨時調査によりますと、必要な最低生活費すらまかなえない低所得就業者及び日雇い労働者を含めた失業者、半失業者が約一千二百四十万人、こういうふうに出ておる。この労働力臨時調査は毎年一回やっておられる、こういうのですけれども、昭和三十三年、三十四年と、それ以後の状況はどうなんですか。
  16. 松野頼三

    松野国務大臣 労働力臨時調査就業希望追加就業希望、あるいは転業希望者は二百四十万前後だと私は記憶しております。
  17. 大宮五郎

    大宮説明員 お答え申し上げます。労働力調査臨時調査は、毎年三月行なわれておりまして、一番最初数字といたしましては、三十四年三月の数字が最も新しいものでございます。その調査はいろいろなことを調べておりますが、結局不完全就業者といったようなものは、今のところ学識経験者におきましても、これが不完全就業者だという一致した基準がとられておりません。そこでこういう臨時調査の資料やあるいはそのほかの各種の資料をもとにしまして、内閣に設けられております雇用審議会の方が昨年の五月に発表しておりますが、それによりますと、雇用労働者の中で十八才未満の者が月収五千円以下、それからそれ以上の年令の者では月収七千円以下、それを雇用審議会としましては一応不完全就業者という形でとりまして、その場合の数字が三百十六万という数になっております。さらに、同じようなことを業種あるいは家族従業者について、所得に基準を設けまして出しましたものを足してみますと、全部合計しまして六百八十七万という数字になっております。これが、一番最近の資料を利用して、学識経験者が広く研究しました結果のつまり一番新しいものと言えると思います。  このほかにも、いろいろやり方はございますが、たとえば、労働力調査臨時調査を使いまして、さらに就業の緊要度が高いものといったような基準から、いろいろ選んでみますと、三十四年の三月で二百四十万といったような数字も出ますし、いろいろなものの考え方によって、各種の数字がとられておる次第でございますが、雇用審議会の数字が、比較的世の中では認められておる方の部類の数字だろうと思います。
  18. 大原亨

    大原委員 不完全就業者の今の数字を、三十二年、三十三年、三十四年、こういうふうに並べてみて下さい。
  19. 大宮五郎

    大宮説明員 雇用審議会の方の系統の数字は、これは一回限りの時点でしか出ておりませんので、先ほど申し上げました三十四年三月の臨時調査によりまして、比較的就業緊要性の高いもの二百四十万という数字を申し上げましたが、これを数年間の動きとして申し上げてみますと、三十一年の三月で三百十三万、三十二年の三月で二百六十五万、三十三年の三月で二百四十九万、三十四年の三月で二百四十万、大体こういうふうになっております。
  20. 大原亨

    大原委員 それから、最低賃金制の実施状況を、大体適用人員と、それから初任給賃金の最高と最低、そのくらいを頭に置いて、一つ話をして下さい。
  21. 澁谷直藏

    ○澁谷政府委員 最低賃金法が昨年七月から施行になりまして、一月二十六日現在の適用状況を申し上げますると、まず第一に法第九条に基づくいわゆる業者間協定といっておる条項でございますが、件数におきまして五十一件でございます。適用事事業場数が四千八百三事業場でございます。適用労働者数が十万二千五百七十五人でございます。  次に、法第十条に基づく最低賃金、これは業者間協定の地域的拡張の条項でございますが、件数としては一件でございます。適用事業場数が百二十四、適用労働者数が二千七百人でございます。  以上が、最低賃金法に基づいて正式に最低賃金として告示された件数でございますが、このほかに業者間協定、最低賃金法による最低賃金として告示されてはおりませんけれども、業者間協定として締結されたものの件数を申し上げますると、件数といたしまして百八十五件、適用事業場数が一万五千九百五十一、適用労働者数二十三万七百三十人、そのほかに現在地方の基準局が業者間協定を締結する準備事務と申しますか、援助業務をやっております件数が百三十件ある。以上が全体の状況でございます。
  22. 大原亨

    大原委員 それから、その中で初任給最低と最高を……。
  23. 澁谷直藏

    ○澁谷政府委員 最低賃金として告示されました五十一件の金額の状況を申し上げますと、二百円をまん中の線といたしまして、二百円以上の分と二百円以下の分がちょうど約半分という状況でございまして、正確に申し上げますと、二百円以上の分が二十六件、以下の分が二十五件、二百円をまん中にして上下に大体平等に分かれておるという状況でございます。
  24. 大原亨

    大原委員 労働省が行政指導をする際に、基準局がほとんど全責任を持ってやっていると私は思うのです。諮問機関がありましても、何がありましても、これはほとんど業者間協定ですから、基準局が全責任を持ってやっていると思う。そのときに、最低生活を保障するという観点から、生活費を、最低生活保障をするという観点から一貫して指導をしていますか。
  25. 澁谷直藏

    ○澁谷政府委員 最低賃金目標といたしましては、労働者生活を十分にささえるに足る賃金額が望ましいのはもちろん言うまでもないことでございまして、労働基準局といたしましては、事情の許す限り、業者間協定にいたしましても、その協定賃金というものを高い方に持っていきたいという気持で指導をいたしておるわけでございますけれども、何分御承知のような日本の中小零細企業の現状から申しますると、これを一挙に今までの支払い能力、それからそれに基づいてでき上がっております現行の賃金というものを無視して一挙にこれを引き上げるということはできませんし、そこは非常に無理があるわけでございます。そこで、私どもといたしましては、自主的な業者間協定の場合もそうでございますが、労使協定の際におきましても、あくまでも民間の自主的な盛り上がりの上に立って、円滑に最低賃金法の施行事務を進めて参りたいというふうに考えておるわけでございます。  そこで、ただいま申し上げました、でき上がりました五十一件について見ますると、二百円を中心といたしまして、上下にちょうど半分ずつ分かれておるのでございますが、そのでき上がった最低賃金がそれ以前の貸金状態に比較いたしましてどのような影響があるかということを申し上げてみますと、この最低賃金の結果、今までの賃金が引き上げられました率を申し上げますと、大体平均して一五%程度アップになっておるわけでございます。それから、この最低賃金によりまして、現実賃金上昇された労働者の数がどのくらいであるかということを申し上げますと、約二割五分から三割程度の労働者数が最低賃金によって賃金上昇の影響を受けておる、こういうことが全体として申し上げられる数字でございます。
  26. 大原亨

    大原委員 全体の労働者からいいましたら、最低賃金制が適用されているのは非常に微々たるものでありまして、これは百年間かかるといつか私が言ったことがあるが、実際業者間協定でやっていたら、百年くらいかかります。これは今の最低賃金制というのは底が抜けていると思う。従って、やはり最低生活費についてはっきりした根拠を持っていて、そして国の賃金政策と一緒に、一つの経営をなす場合においては、少なくともこれだけは出して、労働者労働を雇うのだ、こういう経営者の社会的な責任を明確にする必要があると思う。逐次そういう方向へ行かない限りは最低賃金制実質を伴ってくることはないと思う。  そこで、今の成果の面について、一五%のアップになっておるとか、あるいは賃金上昇労働者の数が、最低賃金制をやったために二割、三割というふうに影響しておる、こういうお話ですけれども、そういう点を考えてみますと、そういう低所得労働者の問題は、労働者が組織されていない、組織がないということが一つと、それから、日本においては有効な最低賃金制が実施されるかどうかということが一つ、この問題が、やはり社会保障制度と完全雇用と相伴うていって、初めて私は国民生活水準が上がると思う。だから、有効な最低賃金制を実施するということが必要だと思うのですが、これが実績では、まだなお最終的な、結論的な判断はできないにいたしましても、私は非常に問題点があると存じます。特に、初任給だけを上げておきましても、あとから上がらないとか、労働条件にしわ寄せするとか、そういうことがいろいろあると思います。そして、実際に業者間協定を進めておりますと、行政指導が中心でありまするから、とかく組織があるところ、組合があるところは、有効な最低賃金制がなかなかまとまっていかないということ、まとめようと思うと、相当引き上げなければならぬということ、そういう労働政策との関係があると思う。だから私はそういう問題について、全労の諸君は、全繊同盟の大会でも十八才八千円ということを決議をもってこれを支持いたしております。いろいろやってみてそういうふうにやらなければならないということを言っておる。総評は八千円ということを言っておる。十八才八千円というのは毎年々々同じお題目を繰り返すのはどうかと思うが、一つ目標としましては、私は今日労使の間において相当浸透した数字ではないかと思う。私はそういう一つの法律のワクで最低賃金を規定しないのであったら、行政指導の面において企業間の格差あるいは地域間の格差、いろいろあるけれども、行政指導の面において、賃金についてどれだけは経営者としては出すべきだ、これが一つの社会的な責任として必要なんだ、そういう方針を毎年々々改めてもいい、引き上げてもいいから、実情に即して出していくべきだ。これは学者にいろいろ意見を聞いたりして生活費調査もやる、あるいは賃金の形態やその他についても指導していく、そういう中において、法律で規定しない一歩手前の問題といたしましても、少なくとも百歩譲っても、行政指導の面において、これだけは出すべきだ、こういうことをやはり規定する必要があると思うのですが、労働大臣所得倍増計画の中から考えてみて、あるいは当面の最低賃金制の問題を有効に実施するという面から考えてみても、そういうふうな具体的な責任のある指導方向を示す御意思があるかどうか、こういう点を労働大臣からお聞きしたい。
  27. 松野頼三

    松野国務大臣 今年は幾ら賃金を上げるべきだという計算をするということはなかなかむずかしいことだと私は思います。しかし、最低賃金最低問題につきまして、もちろん今日最低賃金を実施しなければ、あまり賃金が安過ぎるというその階層につきましては、やはり最低賃金法の実施をより以上効力的に、より以上上昇することを目標に指導するということは当然なことだと思います。ただ今年は一割、来年は一割五分という基準制を適用することは、賃金問題ですから私はむずかしいと思います。同時にやはり雇用の場を失うようなことは差し控えなければならぬ。その限度内において私はなるべく賃金というものを上げていく、また最低賃金上昇を期していくのがこの法律の趣旨でありますから、また行政指導にまかされた点も多いと思いますから、より以上効力を発揮して、最低賃金の実施と同時に貸金の上昇をはかりたい、これは私の念願であります。
  28. 大原亨

    大原委員 その問題につきましては、いろいろの最低賃金制実施の実情を見ておりましたら、やはり基準局、政府の意向というものがほとんど左右しているわけです。あまり低かったらこれは作る値打がないじゃないかということも言えるわけです。少なくともこれだけは必要じゃないかということも示すことができるわけですから、学問上も生活費の上からも、そういう調査をすべきだと思う。そうして一つの指導目標を立ててやっていくことが最低賃金制の趣旨だと思う。そういたしますと全般がそういう意識統一をしまして、そうして最低賃金制の実施を前進させていけば、そうすると雇用者、経営者にとっては社会的な責任になってくるのです。そういたしましたら、これで最低賃金制を有効に実施したために企業が倒れるということはどこの国でもない。それは何かというと、必要な社会的な生産というものはそういう条件の中でやっていくんです。それが最低賃金制です。だから労働者の人権を尊重するという基本的な建前か最低賃金制ですから、法律的に私どもは毎年々々審議会を設けて討議をいたしまして、その結論をもって政府が実施していくことがいいと思うけれども、法定することがいいと思うけれども、しかしその一歩前の問題といたしましても、現行においてもそういう生活費の問題について、あるいは最低賃金制の問題について、政府がそういう客観性ある指導性ある方針を確定して、そして最低賃金実質的に引き上げていく、そういうことによって全体の所得水準を引き上げていくのだ、私はそういう有効な方策を立てていただくことが、岸内閣の言っている所得倍増計画労働者の立場で基本的に明らかにすることだ、これを除いてないのじゃないか、こういう点、大体においては労働大臣も御賛成いただいておるようですけれども、もう一回その点について御答弁いただきたい。
  29. 松野頼三

    松野国務大臣 最低賃金をなるべく引き上げることは私の念願であります。私はぜひとも最低賃金というものをどんどん上げていきたい。同時に、これはもちろん大原委員もお考えの通りでありますが、日本雇用状況というものが、やはり諸外国の雇用のように確立した雇用もあれば、いわゆる不完全雇用もあるものですから、そういうことを考えながら私は雇用というものを確立していきたい。その中に最低賃金を上げていきたい。ここに一つ問題点が存在すると思うのです。しかし、とにかく最低賃金はまだ全部の業者に及んでおりませんから、少なくとも最低賃金の及ぶ業種についてはより以上、私は毎年でもこういうものを考えながら、その統計を出しながら、最低賃金上昇をはかっていきたいということが私のほんとうの念願であります。ただ機械的にこうすればいいと法律できめられないこともございますから、きめられるようなところは最低賃金法によってどんどん上昇をはかっていきたい、こういうことで私も実はいろいろ上からも下からも横からも考えながら、この問題で非常に苦労しております。また十万人という成果は、初年度においては少数ではございますが、これが一つの基準として同じ業種に及ぶことは多大な影響があることは御承知の通りであります。従って十万人のものをきめるということは百万人に必ず影響してくるというので、この成果は今後は大きな期待をかけられる。所得倍増というならば、差しあたり最低のものから引き上げていきたいという趣旨で、今回は特に家内労働がもう一つ問題がありますので、家内労働に触れたわけであります。いか最低賃金にばかり触れても、実はその賃金に入らない、あるいは賃金というにはどうかという家内労働の面で日本に大きな問題があるのですから、これにやはり先に触れていかなければ、最低賃金ばかりに期待するのには、あまりに大きな穴をあけてはいかれないというので、家内労働のことを念願しながら、今回調査を委嘱しておるわけであります。また最低賃金の中においても家内労働問題が大きく取り上げられて、また法律でも大きく取り上げられている。従って最低賃金法の実施の中には家内労働を勘案するということは、その過程においても当然の話であります。私は、家内労働という問題を念頭に置きながら今回調整していく、あるいは四月ころは調査の結果をいただけるのではなかろうかと思います。そうすればこの国会にも間に合うように私の構想を実現したい。これはやはり最低賃金ともちろん同じ意味であります。法律的に同じだといえば疑義がありますが、賃金上昇を念願とする私としては同じ意味であります。そこに考えをいたしたわけでございます。その一つ一つ考えていただくと、私ども労働省というものが本気で最低賃金と取り組んでいる姿は認めていただけるのではなかろうか、こう考えております。
  30. 大原亨

    大原委員 今の最低賃金制との関連において、特に家内労働法について努力されるという、こういう労働大臣方針は私ども賛成であるし、努力されているということは認めます。そしていいやつができることを望むのですが、それにいたしましても、やはり最低賃金というものが家内労働においても労働条件の中心になります。だから賃金水準最低これだけはあるべきなんだということを国としてはあらゆる面において指導する、あるいは実態を把握することが必要である。基準局の最低賃金制の指導や実態調査なんかの仕事の上においても、予算が去年もほとんどなかったらしいのだけれども、第一線に出て行きまして私ども聞くのは、基準局はようやく最低賃金制で息を吹きかえした、やりがいがあるということでもあったでしょう。しかし実際には最低賃金制というのは、もうできるところは割合に早くできたけれども、限界に来た面もあるわけです。立法上いろいろな制約があるから。そこで、最低賃金制のために本年はどのくらい予算を出しているのですか。
  31. 澁谷直藏

    ○澁谷政府委員 今年は最低賃金法の施行に要する経費といたしまして千五百万の予算が計上されておるわけでございます。前年度に比しまして三百万余の増額になっております。
  32. 大原亨

    大原委員 それでは次へ進みますが、今お話しになりました雇用の問題ですが、私は労働時間の面から一つ質問いたします。先ほどちょっと話をいたしましたが、ドイツへ行きました炭鉱労働者日本人が帰って参りまして、そしていろいろ報告をしておりました。ドイツでは石炭は斜陽産業だという面も確かにあるだろう、あるだろうけれども、しかし経済的な総合政策がうまくいっている点もあり、雇用政策がうまくいっている点もあって、労働者にしわ寄せになるということはないようです。そこでいろいろ聞いてみると、やはり労働者はどんどん各職場、各企業において要求をしている、たとえば炭鉱労働者であって五日間労働だ、こういうことです。そういう点から考えてみまして、私は、日本労働者労働条件を引き上げる、雇用を引き上げる面からいって、労働時間の短縮の問題について、政府はこの際一つ大英断をもって取り上げていくべきじゃないかと思う。ドイツなんかむしろ完全雇用ができていて、しかも五日間労働、こういうことであります。超過勤務に対する考え方などにいたしましても、うんと違っておる。そういたしますと、労働の質の問題にもなって参ります。生活水準等の関係においても労働の質の問題になってくる。そういうことから考えてみまして、労働時間の短縮ということについて、家内労働法、有効な最低賃金法と一緒に、本年はやはり労働行政の中で一大飛躍をする年ではないか、こう思うのですが、労働大臣労働時間短縮に対する御所見はいかがですか。
  33. 松野頼三

    松野国務大臣 最近の労働時間を見ますると、この三年間に二時間ばかり平均いたしましてふえております。三十年が月に百九十八時間くらいです。それが大体二百時間から二百一時同、二百二時間という月もありますけれども、平均して二時間半くらいふえております。それでは時間外と時間内はどうなるか。これは現状を見ますると、今日基準法では一週四十八時間で、四十八時間からオーバーするものが月に約二十時間というのが現状であります。従って、だんだん率は、ことに昨年ふえました。労働時間がふえたのは、経済の急激な伸張と、製品において生産活動が上昇したということが確かにふえた原因になりましょう。従って、やはり経済状況にかみ合わせた労働時間の上下が確かに行なわれております。  その次は、所定外、所定内の賃金格差というもの、これが労働者に対する所得増と現に関係いたしております。従って、ほんとうに四十八時間という労働時間を変えなければいかぬというと、まだそこの実情まで至っておりません。それよりも労働時間、基準法を守るということが今日の状況ではないか。これを急に引き下げるということになれば、いろいろ大きな派生的な問題が出てきはしないか。第一には、その賃金時間における生産の問題、経済の問題、第二には所得賃金の問題、そういう問題が多種多様に加味されますから、一つの企業で、あるいは短縮して能率を上げて、賃金も今の手取りと変わらないということが可能かもしれません。しかし、すべての日本の総合産業の中で、基準法の適用される全部の産業に直ちに基準法をいじくることがいいか悪いか、これは事が重大であります。従って私は、そういう所得の問題あるいは生産の問題、能率の問題、そういうことを加味し、あるいは上下の関係、関連産業の上下の関係というものを考えてやらなければならないのじゃなかろうか。一番端的に申しますれば、国家公務員のような問題が出てきはせぬか。かりに一週五日制をしいたときに、五日では関連民間業者に対する関係はどうなるか、金融業者であるならば、産業関係にどうなるかということも考えないと、かりに一つの例をとりましても、いろいろな問題が出てきはせぬかと私は思います。従って、これは総合的にもう少し研究さしていただかないと、一つの産業でこうだああだと言うよりも、社会の経済情勢ということも考えなければならぬ。一番端的に言えば、役所の五日制というのが問題になると思う。そうなったときに、公務員法はどうなるか、あるいはそれに関連する産業はどうなるかということも考えると、日本の今日の状況では、なかなか役所が土曜日休みになるということは大へんだということも出て参ります。そういうことはやはり縦横から考えなければ、ただ基準法の四十八時間をいじくるというよりも、私はその現実をもう少し研究させていただきたい。私は必ずしも時間短縮に反対ではありません。時間短縮も労使間で話がついて、その産業が成立すれば、時間短縮には私は反対ではございません。しかし、基準法をいじくるというのは、また別個な問題として、もう少し研究さしていただきたい、こういう意味であります。
  34. 大原亨

    大原委員 アメリカも大体五日制でしょう。それからドイツもそうなんですが、特にソビエトは一週四十時間労働とか、あるいは五年後には、一日六時間労働とか、そういう一つ目標を示しているのです。平和競争とか平和共存とか経済競争とかいうのは、具体的には労働者生活水準労働条件の問題が一つあるのです。そういたしますと、雇用問題に影響するから、農村の次男、三男の問題、総合的な雇用政策の問題になるわけです。ドイツ日本の農村人口は、農村の経営形態を比べてみても一律にはいきませんけれども、しかし、日本の方が非常に農村に過剰人口を抱えている。ドイツは農村人口が二割以下、一割五、六分。そういうことから考えてみましても、労働時間を短縮していくということは、何といっても、日本人は相当優秀な教育の程度や技術があるのですから、それが国民全体として、ほんとうに助け合って働いていくという態勢というのは、やはり完全雇用の形態の中において、労働条件を引き上げていく、特に二重構造の中で働いている労働者生活条件をよくしていくということが必要です。だから、国際的に見ましても、労働時間を短縮するという問題は大きな問題ですし、ある意味においては、日本中小企業の体質を改善する一つ条件になるわけです。たとえば、最低賃金制をやりましても、初任給を規定して超過労働でずっとやっていきましても、実際にはどこかでしり抜けになっている。だから、労働時間というのは、労働条件の中においては賃金に匹敵する大切な問題ですから、労働時間を短縮すべきであるという労働大臣労働省政府方針をきめて、漸次行政指導から立法化に向っていく方向を大きく示すことが、私は、平和共存の時代における労働行政としての中心的な一つの課題である、こう思うのですが、一ぺんにその法律を改正して、労働時間をどうするということは別にいたしましても、労働大臣は、少なくともその点については大きな抱負を持って、労働時間短縮の問題を取り上げていただくことがいいのではないか。もう一回その点に関する答弁をいただきたい。
  35. 松野頼三

    松野国務大臣 確かに日本雇用問題では、農村の雇用が多いわけです。日本は世界のうちでも多い方であります。アメリカは一二%くらいです。イギリスは五%くらい。しかし、インドに行きますと五十数パーセント、六〇%近い。日本は三七%くらいが第一次産業に従印する労働者の数である。従って、日本は世界第一ではありません。インドは日本よりも多い。未開発地はもっと多いはずであります。イギリスなどは特別であります。そういうわけで、アメリカでもやはり一二%今でもあるわけであります。日本の三七%は非常に多いから、新長期経済計画では三十七年度に三五%程度に持っていくよう計画を立てております。また、今後政府雇用政策を立てるときの重要な方向だと実は私も思います。同時に、時間の問題は、ただいまお話しのように、最賃法できめますときには基準内時間できめたわけであります。基準外のときは基準内に二割五分の割り増し、深夜業になったときには五割増しということを最賃法できめておるわけであります。従って、延びたときにはそれは所得に影響するだけであって、それを最低賃金の中へ加味するというわけではございません。これは中小企業であろうと大企業であろうと守らなければならぬので、違反があった場合は、これは基準法違反で取り締まるつもりであります。これは今日のところあまり大きな問題ではありません。ただ、いわゆる基準内賃金をふやして所定賃金労働者生活できるようにするかどうかというのがおそらく今度の時間短縮賛成論者の意見ではなかろうかと私は思うのであります。それには、先ほど申し上げましたように、なるべく時間を短縮して、能率を上げ、生産を上げて賃金を上げることの可能な産業もありましょうし、また、それはとてもできないという産業もございましょうから、一律に法律できめるにはまだ産業の実態をきめなければなりません。労使間でおきめになるというならば、それは労使の問題で、私も政府も反対というわけではない。四十八時間が最高限度でありまして、四十八時用以内ではいけないという基準法ではない。最高四十八時間にきめた趣旨は、世界においても四十八時間が今日大体常識的になっている。従って、特に日本が長い時間ではございません。それ以下の国の方が例外であり、それ以上の国も例外である。世界の労働水準からいくと、四十八時間は水準を保っているのできめたのであります。最近は、世界の情勢もいろいろございましょうが、四十八時間という基準法を急速にいじるのはもう少し考えさしていただきたい。世界の趨勢、経済の動き、また、日本の産業構造も少し見ていきたい、こう考えております。
  36. 早川崇

    早川委員 関連して。かねがね私考えていた問題でありますので、積極的に御研究を願いたいと思うのであります。  ただいま週五日制の問題が出ましたが、これは私早急に考えるべき問題であると思います。今の官吏が五日になったら困るじゃないか。私の言うのは、官吏のような事務的な、人間的な労働に従事するものは週五日制にしなくてもよいと思います。ただ、工場へ行きますと、全く同じことを続けてやっているわけです。これは人間的労働ではないのです。従って、そういう非人間的労働に対しては、どうしてもやはり週五日くらいにしなければならぬ。非常によくないことだと私は常に思っていたわけです。そこで、経済に対する影響ですけれども、週五日を目標に法律でしばれというのではございませんが、この問題は西ドイツにおいてもアメリカにおいてもどんどん進めておりますから、一つ真剣に取り上げて、その結果消費がふえて、経済全般からいってもむしろプラスではないか。それから、交代制ということで雇用増をもたらす。幸い自由化という方向を打ち出しておりまして、これは諸外国と対等ですべていこうというわけであります。従って、この労働問題、特に肉体労働に対してはそういう先進国と同じぺースで、経営者も生産性向上なり機械化ということもいろいろ考えて、そういう意味で、労働行政におきましても週五日制という問題を大きく取り上げて、むしろ推進していく、こういうことを労働大臣にお願いしたいと私はかねがね思っておりました。その点一つ所見なりを伺って、われわれも一つ協力したいと思っておったわけです。何か五日にすると生産が落ちるというのですが、そういうことは私はないと思うのです。大臣の御所見を伺えれば非常に幸いと思います。
  37. 松野頼三

    松野国務大臣 ただいま答弁しましたように、私も時間短縮に賛成か反対かというなら、実は賛成派なんです。ただ、それにはどういう手続と、どうなるかということが議論の問題で、さしあたり早川さん、今でも危険労働と婦人少年労働は基準法の中でも特別扱いしておるわけです。従って、私はやはり、もし時間の問題に差手するならば、危険労働とか婦人少年労働が、改正に進むならば、まず先じゃなかろうかということが実は念頭にあるわけです。きょうは内輪の委員会ですから、いろいろしゃべってしまうのですが、そういうふうな感じで、私はつい先般も本会議で、賛成か反対かといわれれば私は賛成だが、直ちに法律でいくというのは少し待ってくれというふうな答弁を実はしておるわけであります。従って、婦人少年労働と危険労働は今でも基準法において特別扱いしておりますが、時間の問題にもし触れるならば、まずこういうところから発足をするのがほんとうじゃなかろうか、その次に一般労働になりはせぬか、こういうふうな感じで、世界もだんだん時間短縮という方向にみな研究しております。従って、自由化して国際的に太刀打ちするならば、日本もやはりそれに太刀打ちするのにひけはとらない、負けはしない。できれば、貿易の自由化と同時に労働力も自由化してもらいたいと私は考えておる。せっかく貿易自由化をするならば、労働力も自由化してもらいたい。これが、将来国家として今後の世界労働界の重要な問題になろうかと思います。従って、ヨーロッパもぼつぼつ社会保障とか失業保険とかいう問題に着手して、自由化できるような準備をしておるようであります。失業保険はどこでもらってもとれるのだとか、労災保険はどこの国へ行ってもとれるのだとかいうふうなことで、一つ基礎条件のワクをはずしつつあるわけであります。従って、まだ日本はそこまで行っておりませんし、諸外国もそこまでまだ踏み切っておりません。ということを考えれば、労働時間、労働条件というものも、やはり世界水準よりも日本を上にしていきたいという考えは私は変わっておりませんので、もう少し政調会で御研究いただいて、私の方も、政府も研究いたしますから、そういう意味で、この基準問題は、私はそういうふうな考え方で進んでいくのが妥当じゃなかろうか、こう考えております。
  38. 早川崇

    早川委員 非常に前向きの労働行政で、非常にけっこうでございますが、関連がありますからもう一つお伺いしたいのは、今まで大原さんの御質問を聞いて大いに参考になる点が多いわけでございますが、結局組織労働者議論なんですな。非常に恵まれている人々の福祉の向上について施策を進めたいという場合に、われわれは常にお役人の友人に申すのですが、日本の現在の社会構造で一番取り残されておるのは組織労働者ではなくて、たとえば沿岸漁師とか、あるいは山林労務者なんですね。この人たちは、数は非常に何百万とあるわけです。この人たちには失業保険というようなものはない。一般の組織された労働者は八十何億の国庫補助金を計上しておるわけですね。ところが、そういうほんとうに恵まれない人に対しては、国家の労働行政の補てんがゼロなんですね。ただ沿岸漁師の場合でも、私の県で失業保険をやっとこの六、七年前に掛金をして受給したけれども、だんだん不漁になって赤字だからというので、なるべく縮小しようというので、われわれはむしろ防衛にやっきとなっておる。われわれ山村へ行きますと、これはほんとうに何にもないですな。そういう問題は、むろん労働行政では考えられませんけれども、こういう人たちは、労働者であることには間違いない。そういう人の雇用政策というものを産業政策も含めてもう少し真剣に、一つ労働省で問題として取り上げてもらいたいと思うのです。そういう点から申しますと、労働行政は単なる組織労働者中心——最近は中小企業まで下がってきたのですが、もう一つ下がるものがあるわけです。この問題につきまして、できましたならば、労働大臣が音頭をとられて、多少でもけっこうですから、いわゆる未組織の山林労務者とか、あるいは沿岸漁業労働者とか、そういう人に対して、国家の補助によるあるいは失業保険なりその他、多少赤字でも押えないで、むしろふやしていく方向にお考えになっていただけないものであろうか。これは私は全国的な問題だと思う。その点の御所見一つこの機会にお聞かせ願いたい。これも、うしろ向きでなく、前向きに御研究願えれば非常にありがたいので、尊敬する労働大臣の御所見をお伺いしたいと思うのです。
  39. 松野頼三

    松野国務大臣 おっしゃるように農林漁業に従事しておる数は膨大なものであります。千五百万人。このうち五百万くらいが自営業主といえるのです。あと千万が実は家族労働者という範疇に入ります。従って雇用者というのは、実は働いている方はうんとありますけれども、雇用条件を調べてみると、五十万くらいしかほんとうの雇用の形態になっていないのです。ということは、賃金もきめていない、ただ食べさしてやるというふうな、いわゆる家族労働が非常に多いのであります。従って、賃金によって生活を主としてする者というのが雇用者の定義になっております。俸給、給与によって生活をする者ということになっておりますと、ほとんど衣食住は全部こっち持ちというと、家族労働という範疇に入る者が非常に多いのです。日本の農林漁業にはそのためになかなか基準法の適用ができない。しかしだんだん上がって参りまして、雇用者の形をだんだんとってもらえる形に指導しております。雇用者の形で賃金俸給をきめてもらえれば、その範囲においては、任意加入ですからこれを認めて入れていきたいというので、まず願わくは雇用体系をはっきりしてもらいたい。半年は雇うけれども、あと半年は知らぬ。来年は雇うか、これもわからぬ。いわゆる半期というやつが非常にあるのです。これは雇用形態が何年も続くんじゃない。それでは安定雇用がないわけです。従って、半年働いたらうちに帰す、帰休だ、また翌年は必ず来るという継続的な雇用契約をきめてもらうと、私の方も一応雇用者という範疇に入り得る条件が整うということで、今盛んに指導しております。実はそういうふうなことで基準局も非常に苦労しております。今日では何十万か入っておられますが、全部は入っておられないということです。私どももおっしゃるように前向きのために指導しながら、雇用条件をきめながら、そうして雇用者に入れて失業保険とか、あるいはすべての保険をこれに加味して、ぜひ私も進めて参りたいと思います。今直ちにはできませんけれども、私も聞いてみて、なるほどこれは容易なものじゃないと思ったわけです。ぜひそういう方向に進めたいと考えております。
  40. 五島虎雄

    五島委員 関連して。早川さんが大原さんの関連質問で、労働時間短縮の問題について、四十時間程度にしたっていいじゃないかと言われたことは、いわゆる前向きでちょっとびっくりしたのです。ところが大臣も、個人的には私も賛成だ、こう言われる。ところが労働省を担当する大臣として、個人的には賛成であっても、それは行政の面になかなか触れていかない。従って今後努力していくかどうかという熱意そのものが労働省全体に反映しなければ、その雇用の問題の解決の方途にもなかなかなっていかないのじゃないかと思います。ところが、今年国際労働機構の総会が六月に開かれるわけでありますが、このILO総会に、全国労働者労働時間は四十時間制にしようじゃないかというような提案が行なわれるということを聞いております。それは労働省も御存じだろうと思うのです。従って、アメリカ、先進諸国では、すでに四十時間制が確立されて週五日の労働日になっておる。日本ではまだ神武景気だとか、あるいは岩戸景気だとか、黄金の年だとかいわれながら、この景気がいいから雇用が増大したということで、労働大臣の所信説明の中にも三つの柱の一つにしておられて、こういうように雇用が増大していくし、雇用の問題はだんだん解決していくんだと言うが、これは景気がいいから少し雇用が伸びたことであって、雇用の全般的な細部にわたって調査いたしますると、伸びるということはどこに伸びたか、そしてその伸びたところに矛盾はないかと調べてみますと、非常に矛盾がある。しかしこれは雇用の中の各論の方でまた他日質問をしていきたいと思うのですけれども、この労働時間短縮の中に、われわれが労働時間を短縮しなければいかぬのじゃないか、雇用の問題を解決しなければいかぬのじゃないか、完全雇用を実現しなければいかぬのじゃないか。それを所得倍増論とかなんとか、国民所得は倍になる、そして給与所得も二倍になるというようなことを、端的に表現されておるわけですから、これが実現のために努力してもらわなければならぬ。それで、さいぜん申しましたように、ILOで四十時間の時間制が提案されるというようなことに対しては、日本政府はこれに賛成していかれる気持があるのでしょうか、どうでしょうか。そういうようなことを聞けば、前向きの大臣個人としては時間短縮に賛成だということが、これが行政面に現われるんじゃないかと思いますので、そうすると、大原君の質問もそれで大体質問が終わるんじゃないかと思います。でなければ、ただ単に、抽象的に賛成だ賛成だと言ったって、われわれはお茶を飲んであなたと話しているのではない。これは委員会ですから、はっきりした労働大臣の所信を聞いておきたいと思います。
  41. 松野頼三

    松野国務大臣 今五島委員の言われた四十時間制に賛成だということは、私はまだ四十時間制という時間は明示しておりません。何時間制というのは明示しておりません。今早川委員の週五日制という言葉を四十時間というふうにお考えかもしれませんが、四十時間制という考えは、私はまだそこまでいっておりません。いわゆる時間短縮ということで私は議論しておるわけであります。誤解のないように。  なお、ILOの問題は基準局長からお答えさせます。
  42. 澁谷直藏

    ○澁谷政府委員 今五島先生から御指摘のございましたILOの労働時間の短縮の問題でございますが、今度の総会におきまして、確かに労働時間の短縮の議題が取り上げられまして、第一次討議が行なわれる予定でございます。これに対する日本政府の態度といたしましては、労働時間の短縮の問題というものは、各国の経済の発展の段階、産業構造あるいは社会慣行等によってきわめて複雑でございまするし、それぞれの国情が異なっておる。そういったような現状におきまして、国際的に画一的な労働時間の規制を行なうということは、各国の労働時間短縮についての努力に対して、現実に有効な方策であるかどうかということについては、日本政府としては、疑問を持っておるわけでございます。特にわが国のように、経済が二重構造になっておりまして、労働時間の問題につきましても、大企業と中小企業においては非常に大きな格差なり断層がある。こういったような状況におきまして、画一的に労働時間を規制していく、条約によって規制していくという方向が、はたして有効な方策であるかどうかということについて、疑問を持っておるわけでございます。そこでわれわれといたしましては、今度の第一次討議に際しましては、労働時間短縮の方向でどのような方策をILOが考えていくかということについては、趣旨にはもちろん賛成でございまするし、それについては積極的な協力を惜しまないという態度を持っております。  そこでわが方の政府といたしましては、ILOの中に労働時間短縮に関する正規の機関を設置したらどうであろうか。その設けられた機関を中心として、ILO加盟各国の労働時間についての実施状況、またそれの背景となっております経済、社会の実情というものを、正確な資料を入手してもらいまして、加盟各国に適時適切にその正確な資料を配付してもらう。その資料を入手いたしまして、それを参考として、それぞれの各国がその実情に応じた労働時間短縮に関する努力を行なっていく、これが今の段階としましては適当な方策ではないか。大体このような考え方を持って今度の通常総会には臨みたい、こういうふうに考えております。
  43. 大原亨

    大原委員 そういうこまかい配慮は必要なんですけれども、そういうことを申しましたら、労働大臣は大きな政治方針を出そうと思っても何にもできなくなっちゃう。だから、労働時間を短縮しようと思ったら、政府雇用の全体政策からこうあるべきだという方針を出しておいて、そうして労使間において自主的にそういう協定が高まっていく、最後には基準法で未組織労働者を含めて、そういう最低労働基準を設定する、こういうことがやはり一つの大きな方向だと思うのです。だから、やはりそういう面においてそういう方針を、早川委員お話しのように、一つ前向きの政策をとるという方針を明確にして、次から次へと施策を進めていくということが望ましいと思う。  それから、今も早川委員お話がありましたが、山林労働者やあるいは沿岸労働者と言われたけれども、そういう人に対して、たとえば日雇い健康保険の擬制適用の問題あるいは労災保険の問題、そういう未組織の労働者に対する社会保険の適用あるいは労働条件に対する規制、こういう問題を言われたわけです。こういうことも後退しないように、全体としては社会保障、国民皆保険が内容が十分充実していないなら、そういう点についても労働省全体として意識統一をして、未組織労働者に対してそういう国の施策の恩恵があるようにやっていただくように、私も要望しておきます。  それから、時間もありませんから申し上げるのですが、ILO条約の問題がこの国会は非常に問題ですけれども、ILO条約はこの三十四国会において政府は批准されますか。
  44. 松野頼三

    松野国務大臣 目下関係法規を早急に整備するように、各省間において連絡をいたしております。
  45. 大原亨

    大原委員 三十四国会が始まる前は早急にとかなんとか——すみやかにと言うのもいいのです。しかしもう三十四国会に入っているのですから、そして会期も所定の会期があるわけですから、もちろん今日まで研究をしてこられていると思うのですが、関係法規の整理がどういうことかまたあとでお尋ねすることといたしまして、まず大方針としては、すみやかにということは、これを本国会中に出す、こういうふうに私ども考えてよろしゅうございますか。
  46. 松野頼三

    松野国務大臣 それを目途としてただいま進めておるわけであります。
  47. 大原亨

    大原委員 三十四国会に提出することを目途として準備をしている、こういうことでありますが、そういたしますと、関係法規の中にはどういう関係法規がございますか。もし大臣でこまかいところがなんでありましたらあれですが、これは労働省及び関係各省、公共企業体とかいろいろな労使関係のことがあります。しかし労働省としては、そういう各関係省の直接労使の当事者でない、そういう第三者の労働行政を進める政府の機関であります。国際的にも国内的にもそうでありますが、どういう関係法規をお考えになっておるか、こういう点を、もし大臣でわからなかったら政府委員でもよろしいですが、御答弁願います。
  48. 松野頼三

    松野国務大臣 各省の連絡は政府委員がやっておりますので、政府委員から御答弁させます。
  49. 亀井光

    ○亀井政府委員 国内の関係諸法規と申しますのは、昨年の二月十八日に出されました労働問題懇談会の答申にございますように、直接的には公労法四条三項、地公労法五条三項、こういうものが条約に抵触するということで、この廃止を含めまして、公労法自体につきましての検討がなされなければならないと思います。さらにまた、閣議決定にございますように、また労懇の答申の中にもございますように、正常な業務の運営を確保するためにどういう措置をとるべきかということで、鉄道営業法の改正という問題が取り上げられておりまして、これも関係当局におきまして検討が進められておるというふうに考えております。そのほかの問題点としましては、国家公務員あるいは地方公務員という問題につきましてもいろいろ意見がございまして、そういう面につきましても、それぞれ関係当局におきまして検討が進められておるというふうに考えております。
  50. 大原亨

    大原委員 鉄道営業法の改正その他いわゆる三公社五現業のそれぞれ事業法の改正、そういうものもやっておる、考えておる、こういうことですね。
  51. 亀井光

    ○亀井政府委員 正常な業務の運営を確保するためにどの範囲までそういう事業法を対象として検討しなければならぬかということにつきましても、それ自体において、各当局におきまして検討はいたしております。ただ昨年二月二十日の閣議決定におきまして事業法として取り上げておりますことは、一応具体的には鉄道営業法だけでございますが、労懇の答申の中にもございますように、正常な業務の運営を確保するためにはいかなる諸措置が必要であるかという点で関係方面でも検討されておるものと考えております。
  52. 大原亨

    大原委員 そのことは鉄道営業法だけでなしに関係事業法をも、やはり公共企業体等労働関係法における廃止その他修正の条項以外にこの際手直しすべきであるという、そういう労働大臣としての御見解の上に立っての考え方を統一しておやりになっておりますか。
  53. 松野頼三

    松野国務大臣 ただいま政府委員から答弁いたしましたように、四条三項と五条三項及びこれに関連する問題というのは、鉄道営業法というのが他の営業法の中でもずいぶんその内容が異なっておりますから、それはさしあたり昨年の国議決定で明確に鉄道営業法というのが決定になっておるわけであります。その他の事業法について特にこうだという労働省の主張でやっておるわけではありません。他の各営業の所管の管理者の志向というもの、それは個々にありましょう。しかし私の方はそのほかにどれを変えろ、これを変えろという統一見解を持って、他の常業法に触れるという見解で今日進めておるわけではございません。
  54. 大原亨

    大原委員 それでだいぶん明確になりましたが、つまりILOの八十七号を批准する政府の態度としては、関係各省でそれぞれの事業法については検討しておるが、しかしILOの直接批准の問題としては、公共企業体法の四条三項、地方公営企業法の五条三項の廃止を含む公共企業体等労働関係法の改正、これで労働省としては事が足りる、他の方は事業自体の問題だ、こういうふうに考えてよろしいですか。
  55. 亀井光

    ○亀井政府委員 先ほども御説明申し上げましたように、直接的に条約に抵触するという条項として指定されたものは公労法の四条三項と地公労法の五条三項でございます。ただ公労法四条三項、地公労法五条三項の削除だけで足りるかという問題になりますと、答申の趣旨にもございますように、要は労使関係を安定し、業務の正常な運営を確保することにあるので、特に事業の公共性にかんがみて関係労使間の法規を順守し、よき労働慣行の確立に努めることが肝要であるという、この趣旨を受けまして、それぞれの各事業主体が検討をしておるだろうと思います。ただ閣議決定として具体的に現われておりますのは、先ほど申し上げましたように鉄道営業法だけであるということでございます。
  56. 大原亨

    大原委員 では鉄道営業法以外の問題については、関係各省がそれぞれ進めておるべき問題であって、批准の準備には関係ない、こういうふうに考えてよろしいですか。
  57. 亀井光

    ○亀井政府委員 批准の条件として抵触するとかしないとかいう問題を離れまして、批准を契機としての労働政策としてどういうあり方にあるべきかという問題につきましては、今読み上げましたような労懇の答申の精神というものは、やはり批准のこの際において検討さるべき問題だというように考えて、当局は検討しておるだろうと思います。
  58. 大原亨

    大原委員 だからILOの八十七号を出されると、こういうことに段取りを政府がきめられる際に、労働省といたしましてはそういう労懇の答申もあり、国内法規を尊重するのは当然です、それはそれぞれ事業法があるのですから。しかし労働省としてはそういう問題の準備等というふうなこととは関係なしに、これは他のそれぞれの部面で努力すべき問題として、つまりあなたの方としては関係諸法規を整備するということを今まで言っておられたけれども、その中にはこういう関係法規の整備は入っていないのかどうか伺いたい。
  59. 亀井光

    ○亀井政府委員 労働省所管といたしましては、今申し上げますように公労法並びに地公労法、この二つに限定されるわけであります。
  60. 大原亨

    大原委員 労働政策全体、閣議決定、こういうことになれば、労働大臣としては国務大臣でもあるわけだから、そういういろいろな広範な問題があるでしょう。しかし八十七号の批准の問題は、もうそれだけの条件を整えたら、すぐ出されてもいいはずです。国会が始まったからすぐ出してもいいでしょう。もう四条三項と五条三項を削除するくらいなら何でもないじゃないですか。法律は一時間もあればできる。
  61. 松野頼三

    松野国務大臣 削除と批准ということは他にも影響することがございますし、労懇の答申にも御承知のように、よき労働慣行とそれから関係法規の整備ということが書いてあるのです。しかし四条三項と五条三項は絶対必要だというのが四条三項、五条三項の指摘であります。他にもいろいろ関連することはございますから、それをただ労働省所管だけでやればいいじゃないかという——法律そのものよりも、今後における影響とその運営というものは各省の考えを聞かなければできません。従って政府全体として特に必要だというのは、鉄道営業法は特に必要だという閣議決定がございますし、これはその次にぜひ必要な法案だ。そのほかにも各省の所管省として、自分のところの労働慣行もあるだろうし、よき労働慣行を確立するためにはこうあるべきだという意見もあるでしょう。そういう意見を総合して八十七号批准に積み立てられていく。労働省所管だけでいいという問題ではございません。従ってその及ぼす影響、範囲を考えながら各省の意見というものを調整することは、これは当然必要だというので、ただいま検討して連絡しているわけでございます。
  62. 大原亨

    大原委員 事業法の改正をやる場合も、このILOの八十七号の精神というものは無視されてはいけないわけですね。その点はよろしいですね。
  63. 松野頼三

    松野国務大臣 批准をいたします以上は、八十七号の条件に合うようにしかこの問題は考えられません。この八十七号で片一方批准する、営業法では批准にじゃまになる方向で改正するということは、これは常識的に私は考えておりません。批准ということを前提として、そうしてなおかつ今後のよき労働慣行とか管理上においていろいろな影響があるだろうから、その影響を各省から十分意見を徴しているという段階であって、八十七号のじゃまになるような問題をここで議論するということは、これは私の念頭にはございません。
  64. 大原亨

    大原委員 江戸のかたきを長崎で討つようなことはせぬようですが、鉄道営業法の改正はどうなんですか、どこが問題なんですか。だからあなたの方としては八十七号との関係において検討しておるのだ、そういうことになりますよ。鉄道営業法の改正点、問題点はどこですか。この国会に出されようというのだから、この際私はやっぱり明らかにして国民議論を聞かれたらいいと思う。
  65. 松野頼三

    松野国務大臣 当時、私は閣議決定のときに閣内にいませんでしたから、私がどこだと指摘するわけには参りませんが、事務引き継ぎを受けたときの報告と申しますか、事務引き継ぎのときの感じとしては、鉄道営業法というものは非常に古い営業法であるし、いずれ改正しなければならないことであろうから、こういう機会に改正をしてはどうだという意味で鉄道営業法という項目が入ったという、私は引き継ぎ事項を聞いておるわけであります。どこだ、ここだということは、これは私の方の所管じゃございませんから、私は一条々々実は研究しておるわけでではございません。やはり所管省において御研究を願いたい。こういう意味で鉄道営業法というのは閣議決定であった、私はこう聞いております。
  66. 大原亨

    大原委員 労働運動に対して刑罰法規なんか課するようになったら大へんですよ、結果的に、実質的に……。だからそういう点でやっぱり労働大臣としては、これは百五号の強制労働の廃止のこともあるのだから、いろいろな問題がありますけれども、労働省としてはそういう見地から見たら、この国会には出そうというのに、この鉄道営業法で閣議決定があった。そういう問題について大体どういう点が問題になっておるのかという、どういう点を問題としようとしているのか、そのくらいは、労働大臣がもしおわかりでなければ、政府委員の方から御答弁をいただきたい。
  67. 亀井光

    ○亀井政府委員 ただいま大臣から御答弁ございましたように、当時の閣議決定の趣旨としましては、この法律がすでに明治三十三年の古い法律でございまして、その内容につきまして近代法的な体系を持っていないというふうなことで、もうすでに数年前からこの鉄道営業法の改正の問題は取り上げられて参ったわけでございます。たまたま労働問題懇談会の答申で、先ほど申し上げましたように、正常な業務の運営を確保することが必要だということの趣旨から見まして、現在の鉄道常業法がはたしてその趣旨に合うか合わないかという検討を加えました結果、鉄道営業法の問題につきましては、この機会に正常な業務の運営を確保するためにも改正すべきじゃないかということで閣議決定となったわけでございまして、その具体的な内容につきましては、関係当局におきまして今検討しておる段階でございまして、私といたしましてもその内容をまだ十分承知していない段階でございます。
  68. 大原亨

    大原委員 いつごろまでに関係各省にそういう法案の検討をするように労働大臣としては要請されておるのですか。
  69. 松野頼三

    松野国務大臣 なるべくすみやかにということをたびたび要請しております。だた鉄道営業法に関しては、所管が運輸省でありますから、運輸省は運輸省の方針で、まだ提出準備ができていないという連絡があったので、早くしてくれということを何べんも常に閣議の席上におきましても要請しております。運輸省は運輸省所管でみずからおやりになることでありますから、私は何日までというふうに強制するわけに参りません。願わくはそういう空気が議会内にもできまして、運輸省も急いでやろう、また非常に円満にこれが通るのだというふうな空気でも出れば、これは促進の一つの材料になりましょうが、やはり運輸省所管ですから、運輸省も自分の計画と方向によって運輸行政をやっていく、鉄道営業法についてのいろいろな考えもおありになるでしょう。しかしそれを一々どこだここだ、いつまでに出せということはできませんので、実は常に促進をしておるわけであります。こういう問題が早く片づけば私の方の方向も早くきまるのです。これは重要法案ですから、審議される議会においても、早く出して、急いで通してやるという空気があれば、またこれも促進の材料になるかもしれませんが、そういうことが政治ですから、いろいろな影響があるんじゃなかろうか、遠くから運輸大臣の苦労を察しているわけで、私が所管でございませんので、そういうふうな感じで私も実はたびたび要請はしております。運輸省所管の法律でありますから、何日までに出せというわけには参りません。というので、昨年二月閣議決定以来この問題を運輸省で御研究をいただいておる、これは申し上げられますけれども、いつまでに出すということは私はまだ聞いておりません。
  70. 大原亨

    大原委員 国会に出す準備としましては、鉄道営業法を改正するということを審議いたしまして、これが通る。あるいは郵政事業その他がどうだか知らないが、そういう各事業法の改正案が通って、そのあとにILOの条約の批准を上程して議決する、こういうことになりますか。
  71. 松野頼三

    松野国務大臣 どちらを先に出すということはまだきめておりません。そういうことよりも各省の連絡、八十七号批准について関連の各省が非常に広範囲でありますから、その関連各省の意見を今徴して調整しておる段階であります。どちらを出すとか出さぬとかというところまではまだ進んでおりません。従ってほとんど連日と申しましても何ですが、常にこの問題の促進をしておるわけであります。どうするのだ、こうするのだ、まだそこまでいっておりません。
  72. 大原亨

    大原委員 これは重要法案ですから、出しておいてすぐ通してくれというようなことはないですよ。十分審議するひまがなければいかぬわけです。こんな重要法案を会期の半ばごろ以降になって出すということはない。六月ごろになれば内閣改造があるかもしれない。大臣がかわったら——さようなことはないと思うけれども、そういうことがあるかもしれません。これは重要法案ですから、早く出してもらわなければいかぬじゃないか。この問題はめどを閣議なら閣議で決定して促進していただかなければいかぬですよ。倉石労働大臣なんかに遠慮せぬでもよろしい。
  73. 松野頼三

    松野国務大臣 私は遠慮しておりませんが、倉石前大臣からの引き継ぎ事項の中にそういうふうなことが書いてあると私は申し上げているので、やはりそういうものを中心に今後研究を進めていくのでありますから、特に私は急ぎたい。本気に急いでおる。しかし各省の意見、各省の考えというものはなかなかそう簡単にはまとまりません。それで連日苦労しているのです。準備はずっと前から備準していても、意見の一致が一年かかってもなかなかむずかしい。だから、私の方ではずさんであるのではない。各省もなかなか考えがかたい。それを一致させるのに苦労している。もちろん昨年以来この問題は各省も一年間研究しておりますが、その研究が一致した研究ならいいが、各省がおのおのの考えの意見を非常に勉強し過ぎて固めておられるから、これを一致させるのは容易なものじゃありません。全逓問題も一年八カ月かかっておる。まして私の方は一年でやるなら大成功だと思って、この国会を目標に非常に努力しております。これは大原委員も御承知のように、なかなか容易なものじゃありません。労働省だけならそれはまとまりましょう。しかし各省に及ぶのですから——及ばない役所は一つもありません。そういう関連のある問題でありますから、私は各省の意見を聞いてやるというので実は非常に努力しております。何としてもこの国会を目途に努力したい。しかし各省の意見がまとまらない間に政府案として出せません。力の及ぶ範囲努力しているのがほんとうの姿であります。
  74. 大原亨

    大原委員 たとえば労働大臣が閣議で問題を提起して、いついつまでに法案の整備をしようじゃないか、こういうふうに促進される意思があるか。倉石前大臣はずっと前から引き継ぎましたから今日までおられたら——これはILOの総会に行って言明して約束しておられるから非常に責任を感じておられる。大臣がかわったからと松野労働大臣は言われたけれども、ずっと準備しているのですから閣議で発言されて、いついつまでに整備しようじゃないか、こういう促進方について労働大臣として具体的に御意思がありますか。
  75. 松野頼三

    松野国務大臣 いついつまでに一つこれをまとめようじゃないかと私発言したいと思って、その前にやはり各省の連絡をやらなければいかぬというので、まず連絡をやっております。これが一応のめどがつけば、そういう考えを持っております。めどがないわけじゃありません。ほとんど毎日この問題は各省で連絡しているのですから、その案で積み立てながらこの問題の成果をはかっていきたい、こう考えております。
  76. 五島虎雄

    五島委員 関連して。そうすると、国内法の整備が行なわれなければ八十七号の批准はしないということになって、各省の連絡を毎日々々努力しているんだけれどもとうとうできなかったということになると、この国会中には八十七号の批准はしないという結論になることをはっきり確認してよろしいのですか。そういうことになるのですね。そうすると第二点として、この三月にILOの結社の自由委員会理事会がありますね。結社の自由委員会で、先年の十一月ですか、この次の三月の理事会には日本政府の意見を出すようにという勧告が行なわれていると思うのです。そうしてそれらの経過は、どうしてそういう勧告になったかというと、ラマディエ委員長倉石労働大臣の間に——当時の倉石労働大臣がここにお見えになっておりますけれども、必ず批准するからというような約束があったとかなかったとか——あったらしいのですね。そういうような国際的な関連、内情もあるのに、ILO会議場裏において四条三項あるいは五条三項違反じゃないか、その違反した法律をいつまでも持っておるのは日本労働法においてはちょっと恥じゃないかという機運が国際的に盛り上がってきている今日、国内法が整備されないから四条三項、五条三項はまだ削除しないのだ、国内法が整備されないから批准しないのだということであれば、整備されないという理由をもってどんどん批准はおくれても、これは正当化されるということになるのです。ですから歴代労働大臣が、八十七号批准についてはすみやかに批准するつもりだ——大原君は八十七号を中心に言っておりますけれども、二十六号の最低賃金もそうでしょう。このことについては労働大臣所見方針の中には、二十六号の最低賃金の批准の問題なんかは一つも言っておられない。そういうようなことですが、今度のILOの理事会における日本政府の態度は、どういうようにお臨みになっていかれるのですか。そうすると、理事会で決定したら、今度は六月の総会においては、各国から日本政府自身が袋だたきになりはせぬかと思って、今から心配しているのですよ。どういうような態度をもって理事会あるいは総会に臨まれるのですか。
  77. 亀井光

    ○亀井政府委員 事務的な経過の御質問でございますので申し上げますと、昨年十一月の結社の自由委員会におきましては、理事会に対する報告案を各委員に配付をいたしました。その報告案を中心としまして、今回の理事会におきましては論議がかわされるだろうと思っておるわけでございまして、そのまま結社の自由委員会の報告が採択されますかどうか、これから理事会の審議の経過を見なければわからないのでございますが、かりに十一月の報告書が採択されたといたしましても、八十七号条約は未批准条約でございます。しかも政府としましては、この条約は批准するという態度をきめておるわけでございます。批准するにつきましては、それぞれ各国の事情がございまして、日本政府のように、国内のこれに抵触する、あるいは関連ある法規を事前に改正をいたしまして、そうして条約批准の手続きをとるという建前をとっておる国におきましては、その批准の時期等につきまして、ILOとしましてできるだけすみやかにという要請はあるだろうと思いますが、いついつまでにというふうな条件をうけることは、国際慣行上ないことでございます。従いまして、ただいま大臣からの御答弁にございますように、われわれとしましては、できるだけ早く国内諸法規の整備を終わりまして、条約批准の手続きをとりたい、かように思っております。
  78. 滝井義高

    滝井委員 ちょっと私は、一、二点関連をさせていただきたいと思います。実は今大原さんが尋ねておると同じようなことを、六、七カ月前に私はお尋ねしたわけです。きょうと同じことを、当時亀井さんがお答えになった。今の答弁を聞いておると、全く政府の態度というものはわれわれをばかにしておる態度だと思うのです。そこで、これはわが党の国会対策に非常に重要なことですから、私はもう一回お尋ねをしておきたいのです。もし労働省が今のような態度であるならば、今後私どもは、労働省から出た法案は、全部、審議はしますけれども、あと回しにしていきますから、そのことをます前もって言っておきます。  そこで労働省としては、全部労働省関係をする批准の準備を完了しておるかどうか。他省のことはよろしいから、労働省としては完了しておるかどうか、これだけをまず大臣に伺いたい。
  79. 松野頼三

    松野国務大臣 労働省としてはいろいろな関連がございます。労働省だけの法案で全部済むならば、それは完了と言えましょうが、他に影響のあることがあるのです。他の法案によってあるいはこの労働省の法案にはね返ることもないとは言えない。従って、法案ですから、労働省だけじゃなく、すべてに関連しているのですから、今の既定方針通りずっと全部の役所が賛成してくれるなら、労働省の方はそれは完了と言えましょう。しかしほかの方の意見によってあるいは影響するのですから、他の方の役所の意見がきまらなければ、総合的に、最終にきまったと言えません。しかし四条三項、五条三項削除ということだけは、御承知のごとくきまっておる。だからその点については、私の方は準備は完了と言えば言えないことはございません。しかし四条三項、五条三項だけではないのですから、ほかに関連のある法律というものがまだきまらない、こういう段階であります。
  80. 滝井義高

    滝井委員 これは事務的なことになるから労政局長でいいですが、公労法の四条三項と地公労法五条三項のほかに、一体労働省はどういうところに関連があると考えられますか、あなたの答弁では、もうすでに昨年の六、七月ごろ以来各省検討しておるわけです。特に鉄道営業法を中心として検討しておるわけです。従って各省からあなたのところに、こういう点とこういう点が問題だということは言ってきておるはずです。従って鉄道営業法その他から、公労法、地公労法に一体どういう点がはね返ってくるかということを御説明願いたいと思います。
  81. 亀井光

    ○亀井政府委員 公労法自体の中は、労懇の条約小委員会で御指摘ございましたように、いろいろ法律的な問題点のほかに、四条一項ただし書きの問題があるわけであります。これの削除という問題も含めまして、目下検討を加えておるわけでございます。他の省の関係におきとましては、先ほど一応申し上げましたように、鉄道営業法の問題もございましょうし、あるいは国家公務員、地方公務員につきましても、各省の中で意見があるわけでございます。そういうようなものがどういうふうにきまって参りますかによって、ただいま大臣から御答弁ございましたように、公労法自体にも影響が出てくる可能性があるというところで、われわれ独自の立場で公労法、地公労法を改正し得る部分がございますれば、その部分については、今大臣の御答弁のように、完了していると申し上げてさしつかえないのでございますが、そういう関係もありますので、まだ最終結論に達しておりません。
  82. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、労働省としては現在も問題はない。ただ問題は、他の省からはね返ってくる問題について問題が残っておる、こういうことですね。この確認はよろしいですね。  それから第二点は、他の省がILOに関連をする法律を出してくるわけです。たとえば鉄道営業法その他を出してくることになりますが、それらの法案は国会を通過しなければ批准もしないということかどうかということです。今までの大臣の施政の方針にしても、労懇の答申にしても、違法状態、特に全逓を中心とする違法状態——いわゆる正しい労働慣行を作るということが一つです。これは一応全逓の昨年の十二月二十日の藤林あっせん案によって、大体われわれは解消したものと見ております。まずこの点は解消たと見るのか、いわゆる全逓の違法状態というものは解消したと見るのか、この点まず御説明を願いたいと思います。その点を一体どう考えておるか。
  83. 松野頼三

    松野国務大臣 団体交渉権というのは回復いたしまして、裁定を受けました。従って、この問題については一応解決ということになっております。同時に、藤林あっせん案はその他の場面にも及んでおります。その他の場面については、なお公労委から全逓に対して、いろいろな解釈上の疑義について明快な文書が出ております。ということは、まだ藤林あっせん案全部が完了したんだと言うわけに参らないのではなかろうかと思います。しかし一応、基本的な団体交渉権というものについて回復いたしました以上は、労働省としては大部分のものは解消したという見解をとることが妥当でなかろうか。藤林あっせん案に労働省が責任を負うわけでありません。藤林あっせん案は、労使間の調停のためのあっせん案であって、これが直ちに労働法じゃないんだ。ただ労働省は、労働法上基本的な団体交渉権は回復したということは認めたということで、一応大きな問題は解決した。しかし、これで全部いいのかというと、それはまた別個の問題です。これは藤林あっせん案が指摘しております。まだ全部回復したんじゃないという解釈をしておりますから、それは別の問題。私はそういうふうな二つの問題を考えて、一応全逓問題というものは、団体交渉権は回復したということは認めております。
  84. 滝井義高

    滝井委員 あなた方がこのILOの八十七号を批准をする前提条件というものは、まず第一には正しい労働慣行ができるということ、特にその中心は全逓の違法状態が解消されればよろしい、これが一つだったわけです。そうしますと、現在の全逓のあの状態では違法状態が解消されていないと、こう言うのかどうかということです。このいわば批准をする第一の条件はもはや解消した、こう見るのかどうか。この点ははっきりしたならした、してないならしてないということを聞きたい。
  85. 亀井光

    ○亀井政府委員 昨年の二月二十日の閣議決定の中で表現されておりますものは、全逓の労使関係が正常化されるまでは批准の手続はとらないのだという決定でございます。そこで、藤林あっせん案を労使双方が無条件受諾をいたしたわけであります。従ってまたその面からしまする団体交渉も開かれたという面から見ますと、最小限の一応の条件というものは満たされたというふうには一応考えられます。
  86. 滝井義高

    滝井委員 最小限の条件が満たされたということになれば、大体第一の条件というものは批准をする程度には解消したと見て差しつかえありませんか。
  87. 亀井光

    ○亀井政府委員 ただその前提としまして、閣議決定、労懇の趣旨にもございますように、右の法的措置のほか、この際、公共企業体等の労働組合が国内諸法規を誠実に守り、正常な労働慣行が確立されるよう諸般の施策を講ずること、そうして今の全逓の問題が一つの具体的な問題として取り上げられたという点から見ますると、全逓問題としましては最低条件が満たされたといたしましても、はたして、この公共企業体の労働組合が、労懇で期待をいたしておりますように、あるいは閣議決定の趣旨に従って全体として正常な労働慣行が確立されておるかどうかという問題もひっかかってくるわけでございます。
  88. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、公企業体の労働組合は正常な労働慣行が現在確立されておると労働省当局は見ておるのか見ていないのかということです。これはとにかく閣議における主導権というものは労働大臣が持っておるわけですから、一応その労働省の認定というものは非常に大きな比重を占め、非常に大きな評価をされるわけです。従ってあなたの方で、公企業体の労働組合の正常な労働慣行が確立されておると見ているかどうかということです。問題の全逓というものは、一応最小限の条件は満たされたということになる。その場合にまた一つ条件が今出てきたわけです。公企業体の労働組合というものが正常な労働慣行を確立しておるかどうか、この認定はどうですか。
  89. 亀井光

    ○亀井政府委員 一般的には、現在におきましては、一応慣行としては樹立されておるように見られますが、しかし、あるいは批准までの時期におきまして、春闘その他の際にまたこういう違法な状態とか問題も起こるかもしれません。しからば、そういう違法な状態をなくすること、すなわち十七条違反を解消していくためには一体どういう措置が必要かということもこれからひっかかって参りまして、それぞれの当局におきましても検討されておるところでございます。そういうところの問題がなお未解決でございますので、国内法規の整備という問題は各省間で議論がなされておるところでございます。
  90. 滝井義高

    滝井委員 どうも、労政局長あとの第二の条件と第一の条件と混同しておるのです。現在の客観的な情勢の中で、公企業体の労働組合というものが正常なる労働慣行を確立しておるかということは、今行なわれようとする春闘というものでまた起こるかもしれない、そういう仮定の問題ではなくて、現在はよろしいということですね。今のあなたの御答弁では、今はいいということですが、現在は労働慣行が大体確立されておる、こう見て差しつかえありませんね。
  91. 亀井光

    ○亀井政府委員 法律的に厳格にいえばいろいろ問題はございますが、大きな流れとしては、現在の段階として私はそういうことが言えるのではないかと思います。
  92. 滝井義高

    滝井委員 大きな流れとして、大体正常な労働慣行が確立をされておる、こうなりますと、いわゆる労働問題懇談会の第一の条件なり閣議決定の線というものは、少なくとも最小限度においては満たされておる、これは確実になりました。そうしますと、第二の条件のいわゆる国内法の整備です。松野労働大臣の施政方針においても、「関係諸法規全般について慎重に検討を進めている段階でありまして、政府としては、できる限りすみやかにこれらの関係諸法規を整備した上で、本条約批准承認案件を提案する手続をとりたい」、こうなっておるわけです。そうしますと、「関係諸法規を整備した上で」ということは、整備をした関係諸法案が国会を通過した後に手続をとるのか、整備をして国会に出したならば同時に批准の手続もとっていくことになるのか。これは批准の手続をとる議決が行なわれなければ、並行してペンディングしておりますから同じです。これはどうですか。手続の問題ですから、これは政治的にそう関係することはないと思います。
  93. 松野頼三

    松野国務大臣 閣内において関係諸法規の決定がありましたら、順次批准の手続をして関係法規も国会に提出いたすつもりであります。私は可決されなければ提出しないという気持はありません。関係法規を整備して、はっきり言えば同時に提出することが一番妥当ではなかろうかと私は考えております。あとはどちらが可決されるかされないかということは、国会でおきめいただくことでありまして、政府としては関係法規を整備したら、その整備と同時にすべてのものが一緒に発足することが一番フェアな立場であろうと思います。一日違うとか二日違うとか、それは別でありますが、従って閣議決定は同時にやることが一番いいと思います。私はそういうふうに考えておるという意味で、私の今後の所見の中に入れたわけであります。ただ可決したあとでなければいかぬ、そんな感じで私は書いたわけではありません。閣議決定を同時にいたしたい、従って国会に対する問題も同時にやりたいということが、私のほんとうの気持であります。
  94. 滝井義高

    滝井委員 それでよくわかりました。さいぜん大原さんの質問では、一年八カ月も全逓の正常化がかかったのだから、一年くらいはというような御答弁がありました。そこでこの問題をしぼってくると、第一の条件である、いわゆる公企業体の労働組合の労働関係の正常化というものは、大体最小限度に満たされておるということから、第一の条件はうまくいったわけです。そうすると、第二の条件で、後半から今質問をしたのですが、大体批准の閣議決定と関係法規の整備とほとんど時を同じくして行なわれることがいい、自分もそのつもりだ。そうしますと、関係法規の整備だけが問題になってきた。とにかく労働省としては労働省の態勢というものはできておるのだ、ここまで来たわけであります。労働省として残っておる問題は、運輸省その他からはね返ってくる分についてということになっておる。これだけわかればけっこうでありますから、それだけは松野さん、確認していただけますね。
  95. 松野頼三

    松野国務大臣 国内法の整備というものは多種多様でございますが、ただ鉄道営業法だけ一応閣議決定がございました。おそらく滝井委員の御趣旨もそうではないかと思います。いわゆる関係法規というものが整備したら、同時に閣議決定をいたしたいということであります。
  96. 滝井義高

    滝井委員 私はその通りです。関係法規ということは、鉄道営業法を中心とする他のいろいろな関係法規であります。運輸省のもあれば他の省のもあるわけでありますから、われわれとしては今度は運輸大臣その他からはっきりとした言質をもらえば、大体これであなたの方ははね返ってくる分だけ以外はないわけでありますから、これから予算委員会でその関係法規の整備はわれわれやりますが、一つさいぜんのような何かうやむやなことを言っては困る。なぜ私がここまで言わなければならぬかというと、実は昨日か一昨日か官房長官が、ILO八十七号の批准というものは、今国会は見送りだという談話を発表しておる。ところがあなたは目途とすると言われた。目途とするというあなたの御説明を、私はそのまま率直に受け取りたいと思うのです。これはあなただけではできないのだ。他の運輸省その他、楢橋さんのところなどもあるのだから、そことの意見の調整ができなければできないということでありますが、あなたの立場の善意を信頼して、あなたは、この国会でどうしても批准したいと考えておるのだ、しかし問題は相手があるのだから、相撲は一人でとれないから、相手の方がきまればということでありましょうから、われわれは相手をはっきりさせて、もう一ぺんここでやりたいと思います。私あとから質問したいと思いますから、ILOはこれだけにします。
  97. 松野頼三

    松野国務大臣 今の官房長官の発表は、さっそく問いただしましたところ、官房長官は、なかなか範囲が広範囲でそう簡単にいかぬぞという印象で自分はしゃべった。従ってそういうふうに新聞記事に出たことは、自分の説明が足らなかったことだという私に対する連絡が実はありました。思ったよりも非常に広範囲に影響があるのだ、そういうふうな趣旨で自分は話をした。しかも夜の会見だったものですからという釈明がありました。とにかく新聞記事に出まして、私の意見と違っておるように見られますけれども、実はそういう私に対する連絡がありました。機会があればその誤解は解くということが昨日ありましたから、内部の発表はどうかそういう意味で御了解願いたいと思います。
  98. 大原亨

    大原委員 簡単に質問いたしますが、それでILO条約の八十七号批准にあたりまして、国家公務員、地方公務員関係には八十七号の適用がある、こういう御見解をとっておられますか、おられませんか。
  99. 松野頼三

    松野国務大臣 これは労働問題懇談会でも非常に議論の出たところでございます。従って答申案につきましても、これは必ずしもあるとかないとかいうふうな明確なものはなかった、そういうふうに考えますので、やはりこれも今回批准するにあたっては当然議論もし、政府部内において意見の統一を見るべき問題だと私は考えております。あるとかないとか、私は国家公務員法は主管省ではありませんので、従って各省の意見を徴しながら——当然これは法規としては関連するかせぬかという大事な問題だと私は考えておりまして、まだするとかせぬとか、関係各省の意見と政府部内の意見はまとまっておりません。
  100. 大原亨

    大原委員 労働大臣が八十七号の解釈において関連がない、こういうふうな立場に立たれれば各省の調整をする必要はないわけです。だからあなたの御見解の背後にあるものは、これは関連ありという前提でお考えになっているんだと思う。これは八十七号の条約はこの条約の通りであって、あるいは議事録の通りであって、この八十七号の解釈において公務員を除外するというふうなことはどこにもないでしょう。どういう解釈が成り立ちますか。
  101. 松野頼三

    松野国務大臣 労懇の答申の中には、特に八十七号ということは明記してはございません。八十七号と関連しなければいけないのだとか、しちやいけないのだという明記はございません。ただこれは非常に議論の多いところだというさわり方をしているわけであります。従って、私も議論の多いところだというので、特に注意して各省の連絡を十分やっておりますが、なかなかこれも議論の多いところであることは事実でございます。ただ八十七号の批准にどうしても絶対に必要なものか、あるいは八十七号の批准には関連しなくてもいいのかということが今問題点であります。私どももその意味で研究しているわけであります。まだどちらだときめるのには少し早いんじゃないかと思っております。
  102. 大原亨

    大原委員 公労法の四条三項、地公労法の五条三項という問題に匹敵する団結権の問題ですね、そういう問題について八十七号を公務員に適用するかどうかという問題は、労懇の決定とか政府の見解ということ以外に、やはり国際的にもそういう常識もあるし、あるいは条文もあるわけです。当該労働者関係労働者がそういう権利を国際舞台に主張すれば、また全逓のような問題も、八十七号の批准問題も起きてくるんだ、あるいは九十八号に抵触するしないも出てくるんです。そういう性質の問題であります、ILO条約は。それはみな専門家だから知っておられる通りです。だから労働大臣はこの問題については、たとえば私は文教委員会にたまたま出て参りました。文部大臣の意見を聞きましたところが、これは教育公務員その他についても、特に教育公務員の場合においては団結権について、四条三項や五条三項に匹敵するそういう制約を加えることはいけない、それはすっきりした方がよろしい、八十七号の条約は当然公務員も適用あるんだ、こういうふうな見解なんだ、こういうことをしばしばあの人は答弁しておる。あの人は外国を方々回ってこられたからそういう感覚で言っておられる。これは立法上の根拠その他の論争をすればずうっとありますけれども、そういう点につきまして労働省はこの問題を関係法規を整備して、もうことしの国会に出すという決意でやっておられるのに、それに対する見解がないということは、これはまたいろいろな停滞する理由になりますけれども、この点はいかがなんですか。どこに条約の解釈上公務員を除外するということがあるんですか。疑義があるところがあったら指摘してもらいたい。
  103. 亀井光

    ○亀井政府委員 労懇の条約小委員会の答申の中におきましては、国家公務員法九十八条二項、あるいは地方公務員法五十二条一項というのは八十七号条約の適用を受ける。いわゆる、具体的に言いますと、国家公務員、地方公務員が適用を受けるということ、これは条約の中で除外例が九十八号条約のように書いてございませんから、適用を受けることは間違いないことであります。ただそこで、適用を受けるには現行の国家公務員法九十八条なり地方公務員法五十二条がこの条約に抵触しないかどうかという問題を条約小委員会は検討した。条約小委員会としては一応各国の事例等も見ながら、現在のままでも一応いけるのではないかという当時の見解でございました。しかしこれに対しましては各省の中でいろいろ意見がございまして、もう少しはっきりとした態度でこの条約との関係を検討すべきであるという意見が出て参っておりますために、各省間で今意見の調整をしておるという段階でございます。
  104. 大原亨

    大原委員 全国の教育長会議は、きのうの新聞によりますとやはり適用すべきだという見解を言っておるのです。方々でいろいろな意見が出ておる。今まではそんなことは関係ないのだといって教育長会議をやった。日教組対策とか組合対策とか、政策上ちょっと何か手がかりになりそうになるとそういうことを言う。関係方面がそういうことをちょいちょい言うのはいいと思う。意見を出すのは、それは民主主義だから……。しかしながら法律については、条約については百鬼夜行であってはいけない。その点についてははっきりした解釈をすべきだ。労政局長が今非常にはっきり言われたことは、これは当然のことなんだが、八十七号を適用するということについては異議がないのだ、ただしこの関係法規のどこが、この適用をした場合において抵触するか、支障があるか、こういうことについてはまだ具体的でない、こう言われているのだから、それだったら、そういうことについて労働大臣考え方を統一して、それに対する、いろいろな法律に対する見解を示してもらいたい。これは労働基本権の問題ですから当然憲法にも関係するし、あるいは関係労働者もこの点については論争を主張するはずです。そういうことの消化をしないで、前の報告書みたいに、関係労使の代表団体に対して報告書なんかも提示しないということで、ジュネーブへ行ってはけんかするようなことになってはいけない。その点については十分方針を示してもらって、そうして国内における討論の帰趨を見きわめて、労働省は指導しながら一貫した方針を持つべきだ。そうしないと、これがどういう条項が抵触するか、いろいろな問題が、専従問題とも関連いたしますけれども起きてくるということになると思うのです。百鬼夜行になってしまう。そういう点は労働大臣は第三者である。労使関係の第三者——資本家のかいらいかどうかわからないけれども……。そういう事柄も考えて、やはりそういう踏むべき議論は踏んでおいて、そうしてやっていかないと、また全逓のようなことになる。大きな問題だから、これは権利を自覚する人がどういうふうに受けとめていくかということが半分の問題だから、その問題を除いておいてどうこうするということはいけない。だから今御答弁のように八十七号を公務員に適用することは、これはよろしい。ただしこれを適用することによって関係法規に起きてくるそういう問題についてはなお検討中だ、こういうふうな話ですけれども、そういうふうに解釈してよろしゅうございますか、労働大臣
  105. 松野頼三

    松野国務大臣 労懇の答申の審査がそういうふうな方針が出ておりますので、答申を尊重して私はやって参りたいと思います。八十七号の問題だと思いますが、ただその問題は労懇でも非常に議論がありましたように、その解釈と、直ちにそれでは法律を解釈しなければならぬのかということについては非常に疑義があったわけであります。これは国家公務員の特殊性で、九十八号をごらんになればわかるように、九十八号は公務員は特別扱いにしておるというふうに、必ず国家公務員という性質からいってその基本的なものは適用がある。それでは直ちに国家公務員法を改正しなければならぬかということは答申までとうとう意見がまとまらずに、研究課題としてこれは残されておるわけであります。そこを私は今一番苦労しておるわけです。どうしても国家公務員法に触れなければILOに抵触するかしないかということはこの答申案の中にも明確に出ておりません。法律問題として改正しなければならないという制約はございません。しかし影響があることは事実であります。従ってその影響を法律で改めてただすのか、あるいは法律は変えなくてもよろしいのかということは、これは各省と連絡をしながらやらなければならない。第一には国家公務員法の解釈と方法というものをまず検討しなければならないというので、これは労働省所管でありませんから、それを連絡しながら今日やっているというわけでございます。従って当然基本的には関連があることは、これは労懇の答申で明らかである。ただ法律を改正しなければならぬのかというと、あるいは国家公務員の特殊性を考えればこれでいいじゃないかとか、いろいろ意見がある。そういうことを考えて私はやっているという意味であります。
  106. 大原亨

    大原委員 それでは大臣、こうですか。労政局長は私の質問に対して首を振ってうなずいておられる。労政局長の専門的な説明も、八十七号の適用はされるのだ、こういうことですね。よろしゅうございますか。それでは労働大臣、いろいろな説明は聞きましたから、見解はもうあいまいな言葉をつけてもらわぬでもいい。公務員に対する八十七号の適用はあるのですね。
  107. 松野頼三

    松野国務大臣 八十七号の中には特に国家公務員というものを除外してございませんから、当然基本的には適用はございます。
  108. 大原亨

    大原委員 今その問題で問題になっているのは、九十八号にも関係いたしまして、いわゆる公務員のことについて言われたわけです。ただしこれは、特に今政府といたしましては日教組対策が中心ですね。そういうことから考えてみまして、たとえばこういう国際舞台における議論もあるわけです。つまり、教職員というのは九十八号にいう公務員には該当しないという学説があるのです。公務員というのは、この条約中にはただ単に公務員となっておりますけれども、この原文にはアドミニストレーション・オブ・ザ・ステート、こうなっております。国の行政をつかさどる云々となっているわけです。そういたしますと、行政職とか管理職とか、そういうふうに通常いわれている問題です。たとえば教員が行政職かといいますと、私立学校でもどこでもできるのですから、これは学説上、法律上、行政手段でもなければ行政職でもないのです。公務員というのは翻訳の仕方が足りないわけです。原文に即して解釈していないわけです。九十八号はそういう問題がある。八十七号に至りましたら徹底したものです。警察とか軍隊とかいうものについては、そういう慣行があれば尊重するのだということで、この範囲においても労働基本権を確認しているのに、これだけ除外している。だからこれは適用があるとかないとか、今まで政府政府の中で議論されるということ自体が労働行政の貧困だと思う。そういう点についてははっきりしている。そういう前提に立って考えますと、八十七号が公務員には適用になるという御答弁ですけれども、条約というものは批准をいたしますと法律に優先するのです。労政局長に言わせると、そうでしょう。
  109. 亀井光

    ○亀井政府委員 国内法的な関係におきまして、優先といいますよりも、前後の関係です。法律と同等の効力を持っております。従って新法は前法にまさるという形のものが出てくる。
  110. 大原亨

    大原委員 新法が旧法に優先するという形で優先適用になるというふうに考えてもよろしいし、あるいは条約と法律はどっちが優先するかといえば条約が優先する。これに対しての反対論の少数説はないのです。もしあったらあげて下さい。条約に適合せぬ法律、政府の行動というものは、権利者が主張すれば当然無効になる。そうでしょう。その点はよろしいですね。労政局長答弁して下さい。
  111. 亀井光

    ○亀井政府委員 御意見の通りでございます。
  112. 大原亨

    大原委員 そういたしますと、漸次はっきりいたしましたが、そういう見解を持って関係法規なりその他をずっと整備する、鉄道営業法、国家公務員法、全部整備するように意識統一すればと思う。法律、権利というものは自覚をして主張する人がなければいかぬわけですから、そういうことを考えながら、ILOの条約の問題を考えて、国際舞台において日本が恥をかかないように、完全に意識統一して、閣議によって改まった百鬼夜行の政策的な主張、これは国際問題ですから、そういうものについて手落ちのないように、整然と行なわれるように、しかもすみやかに行なわれるように労働大臣に要請いたしたいと思います。最後に労働大臣の御所見を承りまして私の質問を終わります。答弁がまずかったらもう一回質問いたします。
  113. 松野頼三

    松野国務大臣 先ほど申し上げましたように、ILOの問題につきましては各省の意見の調整をできるだけ急いで、そうしてできるだけ早くその調整を済まして、そうして批准の手続に努力いたしたい、こう考えております。
  114. 永山忠則

    永山委員長 それでは二時まで休憩いたします。     午後一時六分休憩     〔休憩後は会議を開くに至らなかった〕