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1960-02-10 第34回国会 衆議院 社会労働委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十五年二月十日(水曜日)     午前十時三十七分開議  出席委員    委員長 永山 忠則君    理事 大坪 保雄君 理事 田中 正巳君    理事 八田 貞義君 理事 五島 虎雄君    理事 滝井 義高君 理事 八木 一男君    理事 堤 ツルヨ君       池田 清志君    藏内 修治君       齋藤 邦吉君    中村三之丞君       中山 マサ君    亘  四郎君       伊藤よし子君    大原  亨君       河野  正君    小林  進君       中村 英男君    本島百合子君  出席国務大臣         厚 生 大 臣 渡邊 良夫君  出席政府委員         厚生政務次官  内藤  隆君         厚生事務官         (大臣官房長) 森本  潔君         厚 生 技 官         (公衆衛生局         長)      尾村 偉久君         厚 生 技 官         (医務局長)  川上 六馬君         厚生事務官         (社会局長)  高田 正巳君         厚生事務官         (保険局長)  太宰 博邦君         厚生事務官         (年金局長)  小山進次郎君  委員外出席者         専  門  員 川井 章知君     ————————————— 本日の会議に付した案件  厚生関係基本施策に関する件      ————◇—————
  2. 永山忠則

    永山委員長 これより会議を開きます。厚生関係基本施策に関する件について調査を進めます。質疑の通告がありますのでこれを許します。河野正君。
  3. 河野正

    河野(正)委員 大臣承知のように、医療金融公庫の創設によりまして、厚生省と日医との関係雪どけ状態にいくだろう、こういった世間の取りざたが行なわれておるのであります。しかしながら、甲表乙表の一本化問題を初めといたしまして、今日なお未解決のままで懸案となっておりまする事項が幾多存在するわけでございます。私は、本日はその中で特に社会保険診療報酬地域差問題を中心として若干の御質問を申し上げて、大臣及び当局の所信をただしておきたいと思います。診療報酬の不合理という点におきましては、ただいま申し述べました例の甲表乙表の問題、それから地域差問題、全く同様であるというふうに私ども理解をいたしております。御承知のように、先般中表、乙表の一本化の決議が本委員会でも取り上げられたのであります。従いまして、先ほど申し述べました地域差問題に対しましても、すみやかに不合理是正していく、そういった意味で、この問題も早急に解決していかけなればならぬことは当然のことだと考えるわけでございます。そこで、まず第一に社会保険診療の不合理一環でございます地域差、この問題について今日大臣がどのような所見を持っておられるか、まずその辺の御所見を承っておきたいと思います。
  4. 渡邊良夫

    渡邊国務大臣 地域差問題につきましては、できるだけこれは撤廃するところの方向に向かって検討を進めております。
  5. 太宰博邦

    太宰政府委員 補足して私からも申し上げます。御質問のように社会保険診療報酬処置につきまして、地域差というものが現在ございます。これは前々からどうも不合理じゃないかという御意見がございました。私ども大体これは今日の実情から考えまして、撤廃という方向に持っていくのがいいのじゃないかというふうに考えております。ただ一挙にやるというようなこともあるいはあまり現実に沿わない点もあるかもしれません。その辺大臣からお答えがあったように、漸進的ということにあるいはなるかもしれませんが、方向といたしましてはそういう方向に持っていきたいと考えております。
  6. 河野正

    河野(正)委員 ただいま大臣並びに保険局長から、本問題に関しまする基本的な構想が述べられたわけでございますが、不合理一環でございますから、当然この問題を是正するとか、あるいは撤廃をしていくというような構想が正しいということは私どもも全く同感でございます。しかしながら、漸進的にという言葉が使われて参りましたが、しからばこの問題を具体的にどういうふうに処理していくかということが、当面の課題になるのではなかろうかというふうに理解いたすのでございます。そこで、今後具体的にこの問題の処理をやっていただかなければなりませんので、私も若干この問題に対しまする所見を申し述べて、そして当局側でも十分一つ考慮に入れて善処していただきたい、かように考えるわけでございます。そこで、若干私ども意見を申し述べて参りたいと思いますが、御承知のように、最近における著しい社会情勢変化といたしましては、一例でございますけれども都市周辺における団地等の問題もございます。しかし、そういった社会情勢変化もございますけれども消費地生産地という関係だけで物価指数を律することができないということは、これまた御承知通りでございます。なるほど、東京の魚と北海道の魚のように、生産地では非常に安いが消費地では非常に高い、こういう具体的の例もあるにはあります。しかしながら現実物価指数検討して参ります場合には、そういった例のみでは律することができないということは当然の事柄でございます。そこで、日本銀行あるいは経済企画庁等でも消費物価指数を算定いたしておりますが、その結果を見て参りましても明らかでございますように、六大都市よりも地方都市の方が高いというような例もございます。ところが、今日までの社会保険診療報酬に関しまする地域差というものは、ただ漫然と六大都市はいわゆる甲地である、特別地域であるというようなことで、今日までこの事態が推移して参ったというところに私は非常に大きな問題があったというふうに理解をいたします。しかしながら、私が今一、二の例を具体的な事実をあげて申しましたように、事実というものは必ずしもそういった事態ではないのでございます。にもかかわりませず、六大都市ということを基準にしてこの問題が今まで処理されてきたというところに、私は非常に大きな問題があったと考えます。そういった点について、当局はどういう御所見を持っておられまするか、この点も一つお尋ねを申し上げておきたいと思います。
  7. 太宰博邦

    太宰政府委員 御承知通り、今日地域差を設けて非常に割高の支払いをいたしておりまする地域は、お尋ねのように東京を初めとして六大都市、そのほかにも近辺衛星都市の一部が入っておるわけであります。お尋ねのようにこの地域差の問題も今日になって参りますと必ずしもそういう大都市だけが高いということは言えない。ものによりましては地方の、衛星都市の方がかえって割高だという場合が、われわれの日常生活においてもあるわけでございます。ことに医療の場合におきますると、薬などというようなものにしましても、かえって地方の方で高くかかるというようなことで、そういう点についても私どもも先ほど御答弁申し上げましたように、今日の段階になりますれば、地域差は減らす方向でなければいけないということで、かねがねそういうことを考えておるわけでございまして、ただある都市、ある都市というように、個別的に考えるよりは、今日の段階になりますと、もう全国的な意味において考えていくべき段階にきているのではないか、かように考えるわけでございます。  それでこの前の、三十二年に診療報酬点数衣を改正いたします場合におきましても、私ども従来の八・五%の地域益がありましたものについて、これを引き下げたいということで、結果におきまして甲表の分については三・五%を引き下げた。乙表の方はいろいろ事情もございまして、八%まででございますが、私どももそういう補償を考えておるわけでございます。従いまして御質問のように従来——従来と言ってもだいぶ前の感覚で六大都市中心にものを考えるということは、今日では考え直さなければならぬのではないか。ただ御承知通り公務員の給与なんか地域差がございますので、その点になりますとやっぱり全然無視するわけにも参りませんので、そういうものとにらみ合わせばいたしますが、方向として先ほど来申し上げている方向で参りたい、かように考えております。
  8. 河野正

    河野(正)委員 ただいまの答弁の中で、ことに東京を初めといたしまする衛星都市の一部、あるいはまた今日撤廃という方向で進めなければならぬけれども、個別的ではなくむしろ全国的な問題として取り上げていかなければならぬだろうというような御所見がございましたので、その二つの問題点中心として若干質問を重ねてみたいと考えておるのであります。  たとえば支払い基金実情を見て参りましても、一応傾向としてはなるほど東部地区が高くて西部地区が低い。すなわち俗間では東高西低というような言葉も使われておるようでございます。しかしながら具体的に一々検討して参りますと、必ずしも東高西低というようなことでもないようでございまして、私は必ずしも一定した実情ではないというふうに判断をいたしております。そのことはとりもなおさず、この問題の設定というものに非常に複雑な要素が含まれていると私は考えるわけでございます。  それからなお先ほど局長が申されましたいわゆる個別的ではなくて、全国的な問題としてこの問題の処理にあたって参りたいというような一つ方向が示めされたわけでございますけれども現実の問題としては、現在の甲地域と、それに隣接いたしまするいわゆる衛星都市、もちろんその一部は解決しているというようなお話でございますけれども、しかし現実の問題としては甲地域隣接地域と申しますか、衛星都市と申しますか、そういった地域が極端に矛盾をはらんで参ったというような事実を私ども決して見のがしてはならぬと考えます。そこで、なるほど方向としては個別的でなくて全国的な問題というようなことでございますけれども、それがここで直ちに実現するということでございますれば問題でもございませんが、それについてはかなりの時間をかけなければならぬ。局長も漸進的にというお言葉を使っておいでになる。そういたしますと、当面して私はやはり段階的にそういった極端に矛盾の出てきた地域、こういった問題は、その以前に処理をしておくべきではなかろうか。そういう形の中から漸次撤廃という方向に進んでいくことが私は現状に即したいわゆる漸進的な処理方法ではなかろうかと考えるわけでございます。たまたま局長から漸進的、それから個別的ではなくて全国的な問題として取り上げるというふうな御指摘もございましたので、私はそういった精神を生かすにいたしましても、やはりただいま申し上げましたように、当面して解決すべき問題は解決していくというふうな具体的な処置をとられることが適切な当局処理方法ではなかろうかというような感じを強くするわけでございます。従ってここで特にお尋ねをいたしておきたいと思いまする点は、そういった当面する問題をどのように処理しようとお考えになっているのか、その辺の事情一つお答えを願っておきたいと思います。
  9. 太宰博邦

    太宰政府委員 現在特別に診療報酬単価を引き上げて支払います地域は、先ほど申し上げましたように六大都市と、その若干の衛星都市、その衛星都市追加というものは、私の記憶に違いがなければ、たしか昭和二十九年かに若干追加になったと思うのです。そのときの経緯を今日聞いて参りますると、ある都市は非常に熱望が強くて、そういった点を取り入れる。しかしあとから考えて参りますると、どうもその都市だけが高いということはないわけでございまして、同じような状態都市がその近辺にもあるということでございます。結局そういうことのバランスというものを考えて参りますと、ある時だけを取り上げてやるというようなことはどうも適切ではないであろう。そこで厚生大臣諮問機関でございまする医療協議会など、当時の経緯などを聞きますと、こういうふうな個別的な取り上げ方というものを今後さらにやるということは、どうも好ましくない。むしろ今日の段階においては、そういう特別のものをピック・アップしてやるというよりも、全般的視野においてこの地域差を縮めるということを考えていかなければならぬということでございまして、これは私どもも確かにそういう方向でいくのがむしろ公平であろう、かように考えるわけであります。  そこで、そういう地域差を全般的に考慮いたすといたしますると、やはり診療報酬の体系というようなワクが広がるわけでございますので、診療報酬改訂というようなときを利用いたしまして、極力これを早急に解決して参りたい。そこで先ほど御答弁申し上げましたように、昭和三十二年の改訂の際にも、一ぺんにゼロにするというわけにも参りませんので、そのうちのおおむね半ば程度にまで引き下げたいということで、私どもが案を考えたわけでございます。従いまして先ほどの御議論は、私どももその御議論の筋はよくわかっておりまするけれども、私どもの見解といたしましては、これをまた個々の時で云々するよりは、もう今日の段階においてはもう少し広い視野でもって考えていきたい。そしてそれはなるべく近い機会においてその方向に進むようにいたしたい、こうお答え申し上げておるわけであります。
  10. 河野正

    河野(正)委員 御説の趣旨はもっともな点もあると思いますが、それでは端的にお尋ねしておきたいと思います。どのくらいの時期を目標にして撤廃という方向考えて参るのか、その時期が非常に長いと、やはりその間長い間矛盾した情勢というものが続くわけですから、そういった意味でどのくらいの時期を目標撤廃というような方向に持っていこうと判断しておられるのか、その辺の事情一つ明らかにしていただきたいと思います。
  11. 太宰博邦

    太宰政府委員 どうもただいまのところ具体的に明年度とか明後年というふうにお答えできないこと大へん遺憾でございまして、その点は御了承いただきたいと思いますが、ただ私どもといたしまして、これは前々から申し上げますように、できるだけすみやかにいたしたいという気持は、これは申し上げて差しつかえないと思います。それで時期といたしましては、やはり診療報酬改訂というようなものが一つの時期であろうかと思いますが、そういう時期がいつくるかということは、今日具体的に御返事する段階にございませんので、その点は御了承いただきたいと思います。
  12. 河野正

    河野(正)委員 その時期は具体的には申し述べられない、診療報酬改訂の時期がくれば、その時期にでもという御意見でございましたが、御承知のように診療報酬改訂という問題が予算上の問題からも、あるいはまた政治上の立場からも非常に困難な問題であるということは、もう今日までの診療報酬改訂の歴史を、あるいはまた経過を見ていただきましても明らかな事実でございます。そういたしますると、なるほどすみやかに早い時期において撤廃という方向に進みたいということでございますけれども、一応具体的には先ほど局長が申されましたように、診療報酬改訂の時期というようなことになりますと、私は予算上の面からもかつ政治上の面からも非常に困難な事態に相なって参るのではなかろうかと思う。そういたしますと、実際問題としてはなるほどできるだけ早い時期ということでございますけれども、実際にそれが実現するということは、なかなか私は時間的にも困難な事態に相なって参るのではなかろうかというような感じを強く持つわけであります。それに関しまする御自信のほどがありますかどうか。この点は一つ大臣の方からちょっと御披瀝願っておいた方が好都合かと思います。
  13. 渡邊良夫

    渡邊国務大臣 御趣旨の線に沿いまして、できるだけ私どもも鋭意その方面に力を入れまして、できるだけすみやかなる機会に実施できるように努力いたしたいと考えております。
  14. 河野正

    河野(正)委員 努力していただくのは非常にけっこうでございますが、診療単価改訂ということになりますと、なかなか予算上の問題が伴いまして、私は非常に困難な問題だというふうに考えるわけです。そこで考え方としては、診療費改訂一つ契機として改善をしていくということはけっこうだと思います。しかし実際問題として、その問題は非常に困難な問題だというふうに判断をするわけです。そこでその点について大臣の方で御自信がございますならばけっこうでございますが、単に努力をする、そういう方向努力をしてみるということでは納得しがたいのです。そこでさっき局長が言われたように、できるだけ可及的すみやかにということでもけっこうですが、それに対して御自信があるのかないのか、この点を承っておかないと、ただここで可及的すみやかに、はいそうでございますかということでは了解しがたいのです。それで御努力はけっこうですが、その努力の成果について御自信があるのかないのか、その辺のお心持ちも一つ承っておきたいと思います。
  15. 渡邊良夫

    渡邊国務大臣 なかなかむずかしい問題でございまして、ここで自信を持っていると言い切るわけにもいきませんが、客観的諸情勢を勘案いたしまして、できるだけ自信の持てるような努力をいたす次第でございます。
  16. 河野正

    河野(正)委員 そこで、少し具体的な問題についてお尋ねを申し上げて参りたいと思います。  御承知のように、今日まで若干地域差是正が行なわれた。たとえば、衛星都市の一部が追加されたというような御報告もございました。ところが、かつていわゆる甲地区に選定された都市の中で、昭和二十三年八月の社会保険報酬単価を算定いたしまする審議権中央社会保険医療協議会という中央に移されたというような事情契機として、実は乙地区格下げをされたというふうな特殊事情のある地域も若干ございます。これは福岡北九州横須賀というような都市がそうでございますが、そういった地域もございます。その後、先ほど局長もそういう点については、公務員地域給との問題とも関連しておるというふうなお話もございましたからあえて申し上げるわけでございますが、先ほど申し上げましたように、地方長官裁定をいたしました当時、昭和二十二年の三月二十日当時でございますが、その当時においては地方長官裁定によって旧地だったものが、この報酬単価審議権中央に移ると同町に、乙地域格下げを受ける。ところが、一方さっき局長が言われました地域給の問題については、すでに四級地域であるというふうに、実際何のために格下げされたのか事情がさっぱりわからぬまま今日まで推移してきた特殊事情のある地域も若干ございます。そこで、先ほど局長がいろいろ御説明を願いましたような方向でも、これは一般論としては了解するといたしましても、そういった特殊事情で推移した地域、こういう地域に対しましてはどういう考え方で臨もうとされておりますのか、その辺の御所見もこの際承っておきたいと思います。
  17. 太宰博邦

    太宰政府委員 御指摘通り北九州あるいは横須賀もそうであったと思いますが、もともと甲地だったのが乙地になったというところも間々あるようでございます。そういうところの方々は、今日の段階になって参りますと、普通の人でも甲乙の地域差撤廃してくれという議論が出るのです。いわんや、かつてそういう地域から格下げされたというところの人々からより強い御要望があるのも私は当然だと思います。しかし、また一面、たとえば大都市衛星都市のうちで、ある隣の都市だけが甲地域になって、自分のところが漏れておるということにつきましては、その漏れた地域方々は、これまた、なまじっか隣にお手木がありますだけに、非常な不満を覚えておるところもあると思います。そのどちらの方をより早く是正をしてあげるべきかということにつきましては、やはり御意見もいろいろあると思うのです。これは過去に実績があったという御意見も一応ございましょうが、同時に、しかしそれは下がるのが下がって、一応既成事実で、今の条件でいえばわれわれの方がひどいという意見も、これはそれぞれの立場から意見が立つと思います。そういうようなことがからみ合いまして、今日私どもといたしましては、個々都市ということで、そこの沿革的な理由なり何なりだけを考えて参るということも、ある場合においてはむしろ適切でない。それをやりまして、またあとしこりが残り、次々としこりが残っていくことになりますから、今日の段階においては全般的に地域差を縮める。漸進的と申しましても、先ほど御答弁申し上げましたように、前回の際には八・五%、一挙に五%ぐらい縮めるくらいの相当大幅な地域差を縮める方の努力をいたしたわけでありまして、そういうような漸進的と申しますか、段階的というような格好で全般的にこれを縮めて参るのが今日の段階で適当ではないか、こういう考えを持っておるのであります。
  18. 河野正

    河野(正)委員 ただいま局長の御意見を承って参りますと、個々にこの問題の検討を行なっていくと、いわゆる連鎖反応が起こってくるので、そういう面に対して非常にお気がねのようでございます。この地域差、あるいは公務員地域給もそうでございますが、これの格づけについていろいろ意見のあることは、これは周知の事実でございます。非常に困難な問題でございまして、それに対して百パーセント満足のいくような格づけができないということは周知の事実でございますが、さればといって、やはり現実に今日までいろいろと不合理が存在するということは、そういう不合理を見のがす理由には相ならぬと私は考えるわけでございます。  そこで、重ねての質問でございますけれども、これは一種の既得権でございますが、やはり既得権剥脱をする、いわゆる甲地域として指定された既得権剥脱をして、乙地域格下げをするということは、これは大きな憲法上の建前から申しましても相当重大な問題だというふうに考えざるを得ないと思うのでありますし、なおまた、これは局長承知だと思いますけれども昭和三十四年の六月十九日、第七十回中央社会保険医療協議会の席上でもこの地域差の問題がいろいろと検討されたようでございます。局長もいろいろ意見を述べられておりますから、おそらく御承知のことと思いますが、その中でもやはりこの福岡北九州横須賀というような、かつては甲地域であったけれども、今日は格下げをされたという地域の問題についての質疑が若干取りかわされておるようでございます。その席上、委員である局長も、段階的にこの地域差を解消していくという中でも十分考慮を加えて参りたいというような意味意見を申し述べておられるようでございます。そこで、これは私は今からあらためて初めてここで提議するというようなことでなくて、すでに大体検討済み案件だと思うわけでありますが、そういうかつては甲地域であった、特別地域であったけれども、今日は乙地域格下げされたというような都市に対して特別の考慮を払われる意思があるのかないのか、重ねての質問でございますけれども、その辺の事情を、先般七十五回中央社会保険医療協議会の席上でも論議されておるようでございますので、重ねて御所見を承っておきたいと思います。
  19. 太宰博邦

    太宰政府委員 確かに旧甲の地域乙地域格下げになったところの方々の御要望というものは、私は十分考慮して参らねばならぬ点だろう、こういうことで考えておるわけでございます。しかし、そうでない地域方々も私どものところにいろいろ陳情と申しますかあるいは実情を御教示いただいておるのでありますが、その方々の御意見も伺ってみますと、またきわめて切実なものもあるようでございまして、そういう地域差の問題のほかに、たとえば寒冷地などというようなところでもまた御要望が強いのであります。そういうものも実は最近は方々から伺っておるわけなんでありまして、これはまさしく地域差に対する全国的な意見、こういうふうに判断して差しつかえないのではないか、こういうふうに思うわけであります。そういうふうな点を勘案いたしまして私といたしましては、今日の段階においてはやはり全般的な視野で、そうして極力早くこの地域差を、たとい一挙にできなくても段階的でもそれを下げていく、こういう方向に持って参りたい、こういうようなことを考えておる次第であります。
  20. 河野正

    河野(正)委員 ただいま局長の御意見を承っておりますと、十分考慮はしなければならぬけれども、しかし、及ぼす影響もあってなかなか困難だ、端的に申し上げますとそういう御意見のようでございます。  そこでそういう考え方のもとで、そういう実情であるならば、やはりこの際一挙に地域差というものを全面的に撤廃をしていくというような処置をとりたいというようなことに大体結論づけられるようでございます。しかしながら、一挙に撤廃をしていくというような方針をとるといたしましても、やはりその暁においては、第二義的にいろいろな問題が派生をしてくる、これは当然今日から予見されるところでございます。と申し上げますのは、たとえば特定地域甲地域撤廃されますと、勢いその中から大都市の大病院あるいは診療所等においては、何らかの人件費、経費等にかわるべき要求というものが出てくるのではなかろうかというような事情もあらかじめ今日から予見されるところでございます。そこで撤廃するといっても、なかなかそのままでその問題が完全に終止符を打つというような情勢にはならぬと私は思う。そうしますと、また今度は予算上の問題を伴って、そこでまた二義的にいろいろな要求も出てきましょうし、そのために政治的な混乱も出てくるというようなことも当然考えておかなければならぬというように考えるわけです。  そこで私は、やはり方向としては、先ほど大臣からも局長からも申し述べられましたような方向というものについて了承いたしますが、しかし、当面してそういった具体的な問題を何らかの形で一応処理していただくということにならないと、私はなかなかこの問題をスムーズに解決するわけには参らぬのではなかろうかというふうな感じを強く持っております。そこで将来の方向は別として、その間当面して何らかの処置をお考えになるお心づもりはないのかどうか、この点を一つ大臣から御所見をいただければけっこうだと思います。
  21. 渡邊良夫

    渡邊国務大臣 ただいま局長から御答弁がありましたように、やはり段階的に一つ何らか考究する道があればそういう処置をとらせ、てみたいと思っております。
  22. 河野正

    河野(正)委員 そこで、それに関連しまして、若干さらに御質問を申し上げておきたいと思います。御承知のように、厚生省においては僻地医療対策を樹立をいたしまして、一九五六年、今から四年前から五カ年計画の予定で各地に診療所を設立する、そうして僻地における医療を普及していくというような方針を樹立されましたことは御承知通りでございます。ところが、なるほどりっぱな理想的な案でございますけれども、その実施については私どもなかなかはかどっておらないというようなことも仄聞をいたしております。昨年度三十六カ所でございますか、それを含んで百二十五カ所の設立を見た。もともと五カ年計画の中では二百三十七地区に設立するというような方針でございますけれどもあと一年余りでございまするにもかかわりませず、その五〇%程度の実現を見るにすぎないというような状況のようにも仄聞をいたしております。聞くところによると、五カ年計画ではなかなか思うようにいかぬので、七カ年計画に変更してはどうかというような御意見もあるかのように承っております。私は先ほど地域差にも関連してお尋ねを申し上げたわけでありますが、それではその計画が非常にスムーズにいかない、その隘路は一体どういうところにあるというふうに厚生省ではお考えになっておるのか、その辺の事情一つ医務局長からお答えを願っておきたいと思います。
  23. 川上六馬

    ○川上政府委員 僻地医療対策は、今御指摘のような状態にございます。それがなかなか思うように参らないという一番大きな原因は、何といいましても僻地に行ってくれる医者がなかなか得がたいという点が一つ。次に、現在の僻地医療対策につきましては、御承知のように研究機関その他の公的医療機関が出張所を設けるということでやっておるわけでありますが、それによって親元病院の方にとかくしわが寄る。医者を派遣するということもある程度非常な負担でありますし、その上に現存の補助金が整備費なり運営費の赤字の半分ということになっております。そういう関係で、その半分を親元病院で負担するというようなことになっておりまして、親元病院といたしましてはかなり迷惑に感じておる向きがあるわけでするそこで私どもといたしましては、医者あるいは看護婦の待遇をよくするということと、親元病院にしわが害らないように、むしろ地元の町村がやることにいたしまして、町村が診療所を作って親元病院に委託をする。町村も分担をする、あるいは県も分担をする、国も補助金を出すというような、そういう格好で親元病院に迷惑をかけないようなことをしたいという考え方を持って、実は三十五年度の予算を要求したわけでございますけれども、その獲得が不十分でありまして、大体従来の建前でやはり国庫補助をするということに三十五年度はならざるを得なかったわけであります。ただ医者の住宅につきましての補助金が新たに計上されたわけであります。なお、私は将来機動力を持たして僻地の医療対策に一そう効果を上げたいというように考えておりますが、これも三十六年度からそういうようにやりたいと考えております。
  24. 河野正

    河野(正)委員 実は僻地医療対策と地域差の問題と関連してお尋ねを申し上げたわけでございますが、ただいまの医務局長の答弁を承りましても明らかでございますように、非常に僻地の診療所等に赤字ができる、そのために親元病院もなかなか積極的に僻地医療の対策を講じない、こういった点が、僻地医療対策がスムーズに進まない原因かのように御説明になったようでございます。そこでこの赤字の一環として、僻地医療対策が思うように進まぬということはほかにもいろいろ原因はあろうかと思いますけれども、私はやはりその一つ理由として、地域差の問題というものが一つのウェートを占めていくのではなかろうか。もし地域差の問題で赤字が出ていく、そのために僻地医療対策というものが円滑に進まぬということになりますならば、厚生省としては僻地医療対策の一環としても、やはり私はこの地域差是正ないし撤廃というものを早く考えていただかなければならぬのではなかろうかというような考え方を強く持つわけでございます。  そこで一つ大臣お尋ねをしておきたいと思いますが、僻地医療対策、これは厚生省の五カ年計画でございます。し、強力に推進していただかなければならぬ問題でございますが、その問題の一環としても、この地域差の問題を早急に解決される、責務があるのではなかろうかという考え方を持つわけでございますが、その点に対しまして大臣がどのような所見を持っておられますか、一つこの際承っておきたいと思います。
  25. 渡邊良夫

    渡邊国務大臣 冒頭に申し上げましたように、できるだけすみやかな機会をとらえまして、地域差の全面撤廃ということをいたしたい、かように申し上げたわけでございますけれども、しかし諸種の事情等がありまして、そうすることができない場合におきましては、段階的な処置をとることもやむを得ないと思います。御趣旨の点はよく尊重いたしまして、私どもそれに対する万全の措置を講じたい、かように考えております。
  26. 河野正

    河野(正)委員 大臣も私の申し述べました趣旨につきましては御同意でございましたので、この際医務局長にもお願いを申し上げておきたいと思いますのは、赤字という問題が僻地医療対策の遂行をはばむということになりますならば、私はやはりこの僻地医療対策の一環として、地域差の問題も今後十分考慮に入れてやっていただかなければならぬというふうに理解をするわけでございます。そこで一つこの際医務局長に、厚生省の方針でございまする僻地医療対策を強力に推進するという意味においても、この地域差の問題とからみ合わせて今後御努力を願いたいと思いますが、その点に対しまする心がまえをこの際承っておきたいと思います。
  27. 川上六馬

    ○川上政府委員 御承知のように、僻地の診療件数というものは比較的に少ないわけでございまして、この僻地差をなくすという問題よりも、僻地医療を進める上におきましては、今言いましたような補助の対象をもっと広げていくとか、あるいは補助率を上げるとか、そういうことの方がウエートが大きいように思うわけであります。しかし確かに医療費の地域差というものもそれに伴っておりますので、今大臣がおっしゃいましたように、私どもといたしましても僻地差の解消の方に努力いたしたいと思います。
  28. 河野正

    河野(正)委員 先ほどちょっと医務局長も触れられましたが、この僻地あるいは無医村、そういった方面に医師が行きたがらない、これは現実の問題でございますが、そのことはいろいろ原因はあると思いますけれども、一、二例をあげますならば、技術の修得あるいはまた医者の子弟の教育、そういった方面に非常に不便を感ずるというようなことも、私は今日医者が僻地や無医村に行きたがらない理由一つであるというふうにも考えます。しかし一面においては、やはり地域差があるので、従って収入が少ない。従ってそのために、やはり医者も人間ですから、収入の少ないところには行きたがらないというようなことも、無医村、僻地に医者が行きたがらない原因の一部が私はある、こういうふうに考えるわけです。  そこでこれも僻地差というものをなくしてもらいたいという一つ要望から申し上げるわけでございますが、そういうことでいろいろ無医村あるいはまた僻地に医者が行きたがらないという理由はあるけれども、何といってもその行きたがらない原因の第一は、やはり収入が少ないからだ。収入が多ければ多少不便はあっても、それは子弟の教育も都市に出して教育をするという方法もありましょうし、いろいろ方法はあると思いますが、何といっても収入が少ないということだと考えます。御承知のように今日約五%の地域差があるわけですが、これは今日まで単価の引き上げが何何か行なわれました。その一回分、今度は一回分ちょっと切れて少ないようですが、単価の引き上げの一回分に相当する金額でございます。そこで私は先ほど来申し述べますように、僻地問題あるいはまた無医村問題を解決していくというためにも、この地域差の問題を解決しなければ、そういった問題も根本的に解決するということが不可能だということは明白に申し上げることができると思います。そこで、むしろ私は今日の地域差というものは、内容的には、実質的にはやはり技術料の一環になっておるというように私ども判断せざるを得ないと考えます。そういたしますると、これは医療の根本にも戻るわけでございますが、厚生省としては大体この地域差というものを、今日私が申し上げますように技術料の一環として、そういう性格でお考えになっておるのかどうか。もしそういう性格でお考えになっておるとするならば、私はやはりこの問題は直ちに解決してもらわなければならぬというふうに考えるわけでございますが、一体この今日の地域差というものをどういう性格にお考えになっておるのか、この点は一つ局長の方から御答弁を願っておきたいと思います。
  29. 太宰博邦

    太宰政府委員 率直に申しまして、技術のりっぱな方が大都市あたりに相当おられますし、いなかの方には間々どうもそういう方面で腕が上がらないというので、回り道した、まあ落伍したといいますか、そういう意味でいなかに引っ込まれる方もそれはあると思いますけれども、しかしまた同時に、必ずしもそうは言えないで、大都市はそれだけに技術の優秀な人ばかりでなくて、一般の開業医の中には——開業医となりますと、ただ技術のことだけでなしに、いろんなサービスの方面等において十分そういう大家の方々と伍していっておられる方もあると思います。これを一がいに、地域差の問題を技術の差だけで言うことは、私どもとしてはあるいは少し言い過ぎになるのではないかというような感があります。むしろ率直に申しまして地域差がいろいろあるということは、当初は河野委員の御指摘がございましたように、昔の、都市と農村の消費生活なり何なりというものの生活程度の差というものが基本であったのじゃないかというふうに私は感じておるのでございます。それがだんだんこういうふうに交通が発達し、国民生活が向上して参りますと、いなかにおるからといってそこにできた大根や野菜ばかり食っておるわけじゃございませんで、消費生活においても、当然各地のいろいろなものを食べたり使ったりして生活する。またいろいろな文化的な欲望というものは農村においても都市に劣らず強い。いろんな点から今日においては——昔の消費生活なり生活の面では、確かに現実にウエートの差があったということでできた地域差の問題が、今日の段階においては、むしろそういうものはあまり区別することがかえっておかしい。またものによっては、逆に都市を経由していなかに流れていくだけに、かえって高いものもできてきたということでありまして、国民の全般的な気持としては、地域差というものはない、みな平等じゃないか、こういうことであろうと思います。従いまして、これは国家公務員の給与につきましても、そういう面で漸減の方向になっておるわけでございまして、もちろんこういう点の中には、御指摘のように、医療の面について、技術という面で無視できない面もあろうかと存じますが、率直に考えます場合に、むしろ今日の地域差というものはそういう沿革でできたのじゃなかろうか。従いまして、今日においては、そういうものは、地域差考えるウエートが非常に減少してきたから撤廃する、こういう方向でないかと私自身は考えておるわけであります。
  30. 河野正

    河野(正)委員 いろいろお尋ねをいたして参りましたが、結論いたしますと、今後段階的にこの問題を処理して参りたいという御意見のようでございます。段階的に処理するといわれましても、やはり予算上の問題も伴って参ります。そこで非常な困難性も多々あろうかと思いますけれども、しかしながら地域差というものが社会保険診療に当たっての不合理であるという点については全く御同感のようでもございますので、この際すみやかに一つこの問題を解決していただくように、そうして国民皆保険の実を上げていただくように、この点はくれぐれも強くお願いを申し上げておきたいと考えます。  そこで、この問題に対しまする一つの結論として私は大臣にも御所見を承っておかなければならぬと思うのでございますが、今日国民皆保険が着々と実現の方向に進みつつあることは全く御同慶の至りであります。それと同時に、先ほど申し上げましたような地域差の問題、あるいはまた甲乙二表の問題等いろいろあると思いますが、いずれにしても今日日本の悩みとまで極言されておりますように、わが国におきましては、医師、医療機関の偏在ということが国民再保険を実現していきます場合に非常に副題を残しつつあると私は考えるわけでございます。そういたしますと、国民皆保険を完全に理想的に実施するためには、医師、医療機関の偏在を是正するということでなければならぬと思いますし、その是正というものは地域差その他が非常に大きな隘路となっているとすれば、やはりこの問題については国民皆保険を完全に実施するという建前からも、最善の努力をせられるべきが至当であると考えるわけでございます。そこで、そういう国民皆保険を国民のために理想的に完全に実施していくという建前に立って、こういう問題の解決に大臣当局も臨んでいただかなければならぬというふうに強く念願をするわけでございます。従いまして、一つ大臣からもそういった点に対しまする御決意のほどをこの際承っておきたいと思います。
  31. 渡邊良夫

    渡邊国務大臣 公的医療機関に対しましては、医療法の改正等によりまして偏在是正というようなことをやっていきたい、また私的医療機関につきましては、このたびいろいろ皆さん方の御努力によりまして医療金融公庫等もできましたので、これによって十分調整をとっていきたい、かように考えております。
  32. 河野正

    河野(正)委員 時間がございませんけれども、この際、いい機会でございますので、そういう点と関連をして一、二の点について若干御質問を申し上げておきたいと思います。  御承知のように、医師という職業は、人命を預かるきわめて貴重な存在といわなければならぬと思います。そういった意味で、世界いずれの国を見てみましても、医師の処遇と申しますか待遇と申しますか、それは、非常に良好というか、そういう言葉が適切であるかどうかわかりませんが、非常に待遇がいいというのが常識的でございます。しかるに、先ほどいろいろと地域差の問題も申し上げて参りましたが、そういった問題は別といたしましても、今日特に官公立の医療機関に従事いたしまする医師の給与というものは、世界各国の例を見て参りましても、あるいは民間の例を見て参りましても、必ずしも適当な給与ではないということ、これはもう常識的でございます。給与が悪いということだけでございますれば、それは医師だけの犠牲でございますけれども、しかしそのために、公立医療機関において医師が欠員を生ずる、あるいはまた長続きがせぬ、あるいはまたそのために、研究、診療に意欲をなくしていく、そういたしますると、これは単に医師の処遇という問題でなくて、国民医療という意味において非常に影響をもたらす重大な問題だというふうに私は考えるわけでございます。こういった点について、何とか是正しなければならぬということは一般の声でもあろうかと思いまするし、また実はそのために、先般人事院は、医師及び研究職員の給与改善を勧告するというような事態も起きて参りました。しかし、なるほど給与改善を勧告されましたけれども、その実態というものは、必ずしも抜本的な解決には当たらぬ、間々そういった実情だったと私は理解をいたしております。たまたま本日地域差の問題が出て参りましたから、この際こういった面に対しましても一つ当局の御所信を承って、国民皆保険の立場からも、国民医療立場からも万全を期して参りたいというふうに判断をいたします。そこで、この際、大臣からも、医務局長からも、若干そういった点についてそれぞれ御所見を承っておきたいと思います。
  33. 渡邊良夫

    渡邊国務大臣 御指摘通りでございまして、公立医療機関における職員の待遇改善の問題につきましては、私どもも非常に苦心をいたしておるような状況でございます。三十六年度におきましては、ぜひこれに何らかの色をつけていきたい、かように考えております。
  34. 川上六馬

    ○川上政府委員 医師の社会的経済的な地位を上げていかなければならぬという点につきましては、私どもも非常にに関心を持っておるわけであります。ことにただいまも申されましたように、国立の医療機関の医師の待遇というものがしばしば公的医療機関の基準になるわけでありまして、私どももそれを改善したいということで努力いたしておるわけであります。御承知のように今日は中だるみ是正もできたのでございまして、三十六年度におきましてはさらに医師の待遇の改善に努力をしていきたいと考えております。
  35. 河野正

    河野(正)委員 趣旨には賛成であるので今後改善に誠心誠意努力していきたいという御意見のようでございますが、具体的にはどういうことをお考えになっておりまするか、この際承っておきたいと思います。
  36. 川上六馬

    ○川上政府委員 三十五年度の予算には一応診療手当として本俸の一割を給するという予算を要求いたしたのであります。そういう手当のような形式と申しますか、あるいは将来は医師に対する特別の給与制度というものも検討をしていかなければならぬというふうに今考えておるわけであります。
  37. 河野正

    河野(正)委員 具体的には診療手当という形で臨みたいということでございましたが、やはり私は将来根本的には給与体系というものを是正していく、そして一つの正しい姿として医師の地位を認めていただくことが適切であろうかと考えております。ことに人事院の勧告等によって、いわゆる中だるみ是正が行なわれましたけれども、役職員の少ない医師は必ずしもそういう方策によってこの問題が解決されるという事情でないことはすでに御承知通りでございます。しかも民間の医師と比較してもわかりますように、人事院の調査だけによりましても約三三%余り低いというようなことがいわれておりますし、これはどういう病院を対象にして比較したのかわかりませんけれども、実際に私ども承知する範囲におきましては、三三%どころではなくてもっともっと大きい格差があるのではなかろうかという感じも強く持っております。しかしこの点については局長も非常に努力をされておるようでございますので、今後ともさらに一そう努力していただいて、そして国民医療の万全を期し、あるいは国民皆保険の実を完全に上げていくという方向で臨んでいただきたいと考えております。  いろいろ申し上げたいことはたくさんございますけれども、時間もございませんので、地域差に関連して実はこの国民医療の向上あるいは国民皆保険の理想的な向上という立揚から若干御質疑を申し上げたわけでございます。  そこで、時間もございませんから、最後に一つ大臣に御所見を承って私の質問を終わりたいと思います。国民皆保険の実を上げていく、あるいは国民医療の向上をはかっていくという意味で、今後公立医療機関の医師の待遇改善を実現していただく、そういう点については、ただいま医務局長からいろいろ御所信が申し述べられましたが、最後に大臣からもその点に対する強い御決意のほどを承りますならば非常に幸いだと考えるわけでございます。
  38. 渡邊良夫

    渡邊国務大臣 先ほど申し上げました通り、三十六年度において必ず何らかの措置を講じたいと思います。
  39. 永山忠則

    永山委員長 八木一男君。
  40. 八木一男

    ○八木(一男)委員 厚生大臣初め各政府委員に御質問を申し上げたいと思います。いろいろと御質問申し上げたいことはたくさんあるのでございますが、午前中の時間がだいぶ迫って参りましたので、最初に国民年金の問題についてお伺いをいたしたいと思います。  渡邊厚生大臣は、就任されましたときに、記録は今ここに持ち合わせがございませんが、たしか国民年金と国民皆保険の問題について最大の力を入れるというふうにごあいさつにあったように覚えておりまするけれども、その通りでございましょうか。
  41. 渡邊良夫

    渡邊国務大臣 国民皆保険は、おかげをもちまして今年中に終了する運びと相なっております。  国民年金につきましては、御承知通り養老年金、身体障害者年金、母子年金——順調な運びを遂げておるのでございますけれども、母子年金につきまして多少まだ、養老年金の九八%、身体障害者年金の七九%に比較いたしまして、わずかに三七%という状況を示しておりまするので、これらにつきまして、いろいろ原因、真相を調べまして、できるだけすみやかなる、円満なる発達をせしめるように考慮しております。
  42. 八木一男

    ○八木(一男)委員 私の御質問申し上げたことと違う御答弁なんですが、国民年金制度の充実とそれから国民皆保険の完成に最善の力を尽くすという御就任のごあいさつがあったと記憶いたしておりますが、その通りでございましたか、伺っておるわけです。
  43. 渡邊良夫

    渡邊国務大臣 さようでございます。
  44. 八木一男

    ○八木(一男)委員 その国民年金の充実の問題でございますが、それについて、非常に不十分であると思うのです。本会議のときに、わが党の議員の質問に対しまして、大臣は、厚生省の予算が非常に十分であるという御答弁をなさったわけです。十分という御答弁が四回出て参りました。ほんとうに実質的に十分であればこれは非常にけっこうなことでございますけれども一つも十分じゃない。不十分過ぎる予算だと思う。形式的に金額がふえておりますが、国民年金法が去年通って、事務的に今年、これは大体十カ月しか組まないのはおかしいのだけれども、とにかく百何十億というものがふえた。これはあたりまえのことなんです。それから、国民皆保険は今年が完成年度である、対象者がふえるというのも当然のことなんです。だから、こういうものは前からふえるにきまっておった。それを考えると一つも発展がないわけです。そういうことでは困ると思う。それについて厚生大臣のお考え一つ……。
  45. 渡邊良夫

    渡邊国務大臣 まことに理想論から申せばこれはまだ不足でございましょう。私どもは、日本の財政上、今日段階的にここまでとにかく予算の獲得をしたということは十分であったというように考えるわけでございます。
  46. 八木一男

    ○八木(一男)委員 非常に人柄のおよろしい厚生大臣ですから、あまり強いことを言いたくないのですが、言わなければものが発展しないわけです。実は、日本の財政上と、言われた。財政上で見ると、今までより厚生省の予算のパーセンテージが今度ふえた、実質金額が前年度よりふえた、非常に十分だということになる。しかし、その前が不十分過ぎる。大体大蔵省の考え方が間違っておるわけです。もっと早く社会保障は十分なものになっていなければならない。それがおくれておった。前の不十分なところから不十分さがちょっと減ったくらいで、それで十分と思ったら問題の発展がないわけですね。特に政府側の息のかかったような学者の諸君が日本の社会保障は相当のレベルに達したというようなことをよく言うのです。そういうことを厚生大臣はどこかで間接に聞かれたことがあるかと思うのですが、それは非常な勘違いだというお考えを持っていただきたい。先進諸国といいますか、ほかの国が非常に進んでいる、日本の国はそれに追いつきつつあるのだ、だからそういう問題もほかの国と同じかちょっと下の程度でいいのだという考え方が一般に世の中にあるようですけれども、それは問題によって違うわけです。ぜいたくな外車に乗るとか、役所がめちゃくちゃなりっぱな建物を建てるとか、こんなものは国の状態によって遠慮してもいい。外車なんか乗らないようにしてもいい。ところがまだすべての政治が完成していなくて、貧乏人が多い、病気が多い、失業が多いというような状態の国では、そういう問題に対処することはほかの国よりもはるかに高くなければいけない。ところがそういう問題もならして、諸外国にちょっと追いつく程度でいいじゃないか、これは俗論中の俗論ですが、学者の中にもそういう俗論をはく人がいるわけです。そういう気分が厚生省にも反映している。ましてや金を出したがらない大蔵省ではますますそういう基盤でものを考えようとする。そういうところに社会保障が発展しない点がある。そういうことについて厚生大臣はどうお考えですか。
  47. 渡邊良夫

    渡邊国務大臣 お説の通りでございまして、私どもはできるだけその線に沿いまして努力いたします。
  48. 八木一男

    ○八木(一男)委員 非常にぴたっという御返事をいただいてけっこうなんですが、そういたしますと、今度の国民年金の予算などはとんでもない、発展のない予算なんですね。これをとにかく変えていただかなければならない。昨年国民年金法が提出されましたときに、ずいぶんと精密な論議をせられました。社会党の方も案を出しましたが、その比較をしまして社会党案に対しては与党側からも御質問があったり何かして国民年金の問題はずいぶん論議が重ねられたわけです。そこでこれを与野党が一致して見た場合において、政府の国民年金法案は、ないところにあるものを作ったのだからその意味では発展であるけれども、非常に不十分なところがたくさんあるということが指摘され、満場一致で附帯決議がついているわけですね。厚生大臣御存じだろうと思います。そういう問題が出て、あのときには何にもないところにこういうものが出たのだから、そこまでは予算関係もいかないということで、与党の熱心な方々でさえ翌年度にはもっと変えられるという考え方のもとに、しぶしぶあれを通した。ところがその附帯決議が一つも今度実現されようとしていないわけです。野党のわれわれはもちろんあの附帯決議でも非常に不十分で困ると思っているのですから、それが一つも今度入っていないと、そういうことでは発展どころか——前にそういうことが翌年に変えられるであろうということを期待して通ったことが、やられていないのだから、ストップです。発展どころじゃないと思うのです。当然厚生省がもっと本腰でかかればそのくらいのことは、大蔵省のわけのわからぬ連中でも押し切って実現できたはずです。それが一つも実現できていないことについてはその責任をどう考えておられるかということです。
  49. 渡邊良夫

    渡邊国務大臣 附帯決議の趣旨は十分尊重いたしまして今後努力いたしますが、ことしは生活保護の加算だけは認められたことは私は喜ぶべきことではないかと考えております。
  50. 八木一男

    ○八木(一男)委員 生活保護の加算はだめ押しの附帯決議として言いましたし、衆議院の社会労働委員会では私ども質問で最高の責任者たる岸信介さんがはっきりやりますと確言しているので、あのときに大体において確定している問題なんです。だから次に厚生大臣がやられる問題は、そこで確定してない問題をやられるのが責任であって、あれは当然のことなんです。そのときに再三速記録に記録され、だめ押しをされて、総理大臣政治生命をかけてもやるという御返事をなさったのだから、こんなのは自動的にやるのがあたりまえだ。だからそのほかについて一つも実現してないのはどういうわけかということです。
  51. 渡邊良夫

    渡邊国務大臣 お説の通り、まことに遺憾でございます。
  52. 八木一男

    ○八木(一男)委員 実は非常に人柄のいい厚生大臣に文句ばかり言ってもものは発展しないので、あまりいやなことを言いたくないのですが、とにかく実現してもらわなければいけないんですよ。来年度ではこれは困ると思う。その中のいろいろな部分は大した金額はかかりません。今の予算案の総ワクの中でも十分できる問題である。予備費でも十分できる問題だ。ですから、今のままでは非常に困ると思いますけれども、今責任を感じられたんですから、きょう即刻からでも大努力をされて、責任を果たされるということをしていただかなければ困ると思いますが、それについての厚生大臣の御意見を承りたい。
  53. 渡邊良夫

    渡邊国務大臣 技術的ないろいろな問題につきましては、その経過と今後の見通しにつきまして詳しく事務当局より申し述べさせます。
  54. 八木一男

    ○八木(一男)委員 事務当局の小山さんにはあとでまた詳しく伺います。  それで厚生大臣どうですか。さっそくしなければ非常に工合が悪いものばかりだろうと思いますけれども、それについて厚生大臣個人として何か政治的に御意見がありますか。
  55. 渡邊良夫

    渡邊国務大臣 十分考慮中でございます。
  56. 八木一男

    ○八木(一男)委員 考慮中ということはどういうことですか。たとえば国会の附帯決議だから絶対に実現してもらわなければ困る、こういうことはあたりまえのことです。厚生大臣がそのことが必要であるということがじっくり頭に入ってないと、熱意を込めてやるといってもそれが形式的になり、ほんとうに困った問題になるだろうと私は思う。ごらんになれば一目でおわかりになると思うんですが、それについて厚生大臣どのように研究しておられるか、どういうように考えておられるか。
  57. 渡邊良夫

    渡邊国務大臣 みな必要な問題ばかりでございますが、やはりいろいろな諸情勢考慮いたしまして、十分努力いたします。
  58. 八木一男

    ○八木(一男)委員 年金というものはいろいろな意義がありますが、一番最初の基本的な意義は、所得能力のない人たちに年金を支給して、幾分でも生活を楽にしていただくという考え方だろうと思います。別の観点からのもっと大きな効力はありますけれども、そういうことになろうかと思います。それについて厚生大臣同じような考え方をしておられるのでしょうか。簡単でけっこうです。
  59. 渡邊良夫

    渡邊国務大臣 御趣旨通りでございます。
  60. 八木一男

    ○八木(一男)委員 そうなりますと、そういうことのより必要度の多い人に先に上げるとか、たくさん上げるということが必要だと思いますが、それについてどうお考えになりますか。
  61. 渡邊良夫

    渡邊国務大臣 その通りでございます。
  62. 八木一男

    ○八木(一男)委員 そこで、十分御承知だろうと思いますが、具体的な問題を出しますと、たくさんあることは小山さん御存じですからよく御研究願いたいのですが、準母子年金という問題があります。母子福祉年金というものを政府の方が今度法律で出しておるわけです。それはお母さんと子供さんの世帯、所得の低い人にという制限条項はありますが、それに出しておるわけです。それはお父さんがなくなったから、子供は育てにくいし、お母さんも苦しいということで出すわけですね。ところがそのお母さんと子供さんの家庭よりも、両親が死んでしまって、非常に年とったおばあさんが一人残っておって孫を養っている場合の方がより気の毒な状態にある、より生活がしにくい。ところが、そういう人には政府の母子福祉年金は一文も出ておらない。そんなひっくり返った話はないわけです。そういうでたらめなことがあるかといって徹底的に論議がされたわけです。ところが、とにかく年金法案ができてしまって、予算も組み立てられてしまったから、ことしはこれでかんべんをして下さいと坂田さんも小山さんも一生懸命頼まれるわけですので、来年以降は必ずそういうことを直すであろうということで、附帯決議をつけて通った。ところが来年度になったらしりくらえ観音、政治はそういうことではいけないと思うのです。厚生大臣、率直にお考えになって、おばあさんと孫の方が苦しいということはおわかりだろうと思う。その苦しい方の人にあげないという理屈は立たないと思う。そういうことが一つでもほったらかしになっているのはいけないと思う。十七ぐらいのねえさんが、両親の死んだあと幼い弟妹を一生懸命養っておるという場合も一文も出ない。こういうふうなねえさんとかおばあさんというものを準母子家庭ということで——むしろこの方が必要度はずっと高いわけですけれども、母子という名前が法律についているから、準母子家庭ということで適用したらどうかという論議がいろいろな論議の中の一つの点であったわけです。それについて、厚生大臣は、どうしてもこれはすぐしなければいけない問題であると率直にお考えになれると思うのですが、もう一回それについての御意見を伺わしていただきたいと思います。
  63. 渡邊良夫

    渡邊国務大臣 できるだけすみやかにこれも実現いたしたいと今準備中でございます。
  64. 八木一男

    ○八木(一男)委員 いつごろ実現されますか。
  65. 小山進次郎

    ○小山(進)政府委員 この問題につきましては、大臣御就任直後から重要な検討項目の一つとしてなるべく早く実現させるという気持で検討するようにという御指示があったわけでございます。私どもも、その後いろいろ筋の整理その他を検討しておりまして、現在のところこういう考えならばおそらく一通り筋の整理はつきそうだという程度のところをまとめているわけであります。ただ、先ほど来お話がありましたように、附帯決議に仰せになっておりまする事項のうちには、今年度から直ちに実施すべきものと、それから問題の性質上やはり一回実施の結果を見て、十分あらゆるデータをそろえた上で総合的に調整をして実施すべきものと、二色に分かれるわけでございます。ただいまの準母子家庭に対して年金を出すかという問題も、当然これは筋の整理として後の部門に入るわけでございますけれども、私ども大臣からいただいております御指示では、この問題はなるべく早くしたい。従って、実施の結果が正確につかめる今年の五月ごろになりましたならば、ほかの問題と含めて総合的に検討して、今年のうちに一つどういうふうな改善をしていくかということについて、まとまった具体案を考えていく。それを三十六年度から実施していくというような目標で、これにおくれないように、こういうふうなことになっているわけでございます。そういうふうな気持で現在は進めております。
  66. 八木一男

    ○八木(一男)委員 厚生大臣に伺いますが、今のことについて、大蔵省の予算とかいうようなことに縛られて、そういうような漠然とした附帯決議にはなっておりますけれども、そういう問題を、今母子福祉年金をこの三月から支給する以上、それよりも支給しなければならない状態が強い人に即時支給した方がよいということは、大臣も率直にすぐお認めになれると思うのです。ですから、これは至急に今年の国会で何とか実現をさせるように大臣のお約束を願いたいと思います。それについていかがでありましょうか。
  67. 渡邊良夫

    渡邊国務大臣 できるだけそのお約束を果たしたいと思っております。
  68. 八木一男

    ○八木(一男)委員 これは今年の国会で法律改正をする、それから予算をつけるということをしていただけるかどうか。
  69. 渡邊良夫

    渡邊国務大臣 三十五年度中における国会において、できるだけこれを決定いたして参ります。
  70. 八木一男

    ○八木(一男)委員 三十五年度というと、暦年の三十五年度ですね。
  71. 渡邊良夫

    渡邊国務大臣 会計年度ですから、三十六年三月三十一日までにはです。
  72. 八木一男

    ○八木(一男)委員 とにかく最低限必ずしていただけるということを確約していただけますか。
  73. 渡邊良夫

    渡邊国務大臣 確約と申しましても、やはり予算上のことでございますので、できるだけ御趣旨に沿うように最大の努力をいたします。
  74. 八木一男

    ○八木(一男)委員 その点は大臣、弱いのでね。最初申し上げたようにこれは大した金額ではないでしょう。特に母子年金は今三七%というように、計算が合わないで予算は余っている。こんなものは、これの十倍も百倍もやると言っていただかなければ困るけれども、少なくとも一番小さなものですね。このくらいは私の責任でやりますというようなことを言われなければ、大臣政治家としての大きさを疑わなければならないことになるのですがね。必ずやります、政治生命をかけてもやりますということを一つおっしゃっていただきたい。
  75. 渡邊良夫

    渡邊国務大臣 問題の性質上、財政当局もそうがんばれないだろうと思うのです。だから、ここではっきり政治生命をかけてやるとかなんとかいうことよりも、これは政党政派を超越いたしまして、皆様方の御協力を得まして、最大の努力をして実現させたい、こういうことだけで一つ御了承をいただきたいと思います。
  76. 八木一男

    ○八木(一男)委員 大臣が必ずやるということを表明されたと理解して、問題を先に進めたいと思います。  次に、よく御検討になっておるようですから、今度は遠回しな言い方はしないでやりますが、障害年金の方で、内部障害についての年金の問題はどうなっているのですか。
  77. 小山進次郎

    ○小山(進)政府委員 これにつきましては、かねてから申し上げておるように、なるべく近い機会に実現させるような方向検討したい。こういうことで、明年度の予算におきましても、国民年金審議会の中に障害の専門委員会を設けることにいたしまして、これに関する費用を若干組んでおります。委員は六人を予定しておりますが、こういう人々によって、かねてから問題になっておりますところをよく検討してもらって、そういうものがまとまりましたならば、その上に立って整理をはかっていきたい、こういうふうなことでございます。
  78. 八木一男

    ○八木(一男)委員 厚生大臣の今の問題についてのお考え一つ……。
  79. 渡邊良夫

    渡邊国務大臣 事務当局の言われた通りであります。
  80. 八木一男

    ○八木(一男)委員 事務当局の言った通りとおっしゃっても、一つ厚生大臣みずからこの問題にあたっていただきたいと思うのです。というのは、この問題については小山さんと趣旨は同じながら、その具体的な問題については——年金をよくしたいという考え方は同じなんですが、小山さんは年金問題の優等生であるのに、実はこの科目については落第生なんです。ですから、事務当局と打ち合わせてからということでは問題は進みません。小山さんはこの問題では完全にいかぬのです。というのは、今までの御答弁では内部障害——結局白血病であるとか、肺を切って肺の容量が少ないとか、いろいろなものがあるわけです。手がどうとか足がどうとかいうことではないけれども、働く能力がないということでは、手がない、足がないと同じ状態にある人、そういう人たちには支給しなければいけないではないかということが、この前の国民年金の論議でかわされたわけです。趣旨は賛成だけれども、なかなかできない。できないというのは、厚生省の御用お医者さんの中で、どういう内科障害については、とにかく障害が固定したものは年金給付の対象になるけれども、その内科障害がなおってしまって、そういうような労働能力が回復する者があるかもしれないからできないのだと、そのときはいつも答弁される。今は変わっているかもしれない。こんなことは非常になまけた話で、それはたといどんな障害だって将来医学が発達したら、足が切れちゃったって、どこかの人の足をくっつけるということだって、百年後はできるかもしれないですね。目玉がなくなったって、目玉がついて見えるように、百年後か二百年後にはできるかもしれない。それと同じようなことだ。内科障害だとなおるかもしれないから、今全然労働能力がないのに年金をつけないというようなことは非常に形式的な話だ。特に内科障害の中でも、今の足が再生することが不可能であったら、同じように絶対に不可能なものだってある。肺切除といって、左の肺を全部とってしまって、肺活量が八百くらいしかないというような人だっている。そういう人はかぜを引いたら、肺炎になって死んでしまう。うっかり段階も上れない。片足の人は、苦しいけれども段階を上ろうとしたら上れる。そういうふうに、外には見えないけれども、ずっと障害の多い人がいるわけです。そういう人は、片足の人も気の毒だけれども、それよりも生活する能力がないわけです。それが内科障害であるからということで一文も金を上げないというのが政府の国民年金法なんです。それはおかしいじゃないかというと、なおるかもしれないから、なおってしまったときに困るからという御答弁なんです。ところが足が再生しないと同じように、内臓の器官である肺の方も、結核で悪かったが将来なおることがあり得るかもしれないけれども、とってしまったものがなおるということは、今普通の医学上の常識では、足が再生しないと同じように、ないわけです。そういうはっきりわかっておる部分がある。わかっておる部分があるのにかかわらず、内科障害だから上げない、こういうことは全く子供のように形式的論議を意地をはって言っているようなものです。そういうことではいけないと思う。ですから内科障害については、そういう気の毒な人が生活できるようにすることですから、ひょっとしたら百のうち五つか六つはなおるかもしれないという者までも上げてもいいのです。それから後にまた回復したらやめてもいいのです。そこまでやらなければいけない。少なくとも今回復することができないとわかっている白血病であるとか、肺の容量が減っているとか、精神病であるとか、そういうものについては、当然外科障害と同じように、障害福祉年金を支給すべきであり、また将来醵出年金においても、それを完全に支給するような態勢で整備をしなければならないというふうに思う。小山さんだってそれはわかっておるはずなんです。わかっておるはずなんだけれども予算関係とかなんとか、顧問のお医者さんの小うるさい関係か何かそういうことで、ごちゃごちゃとしてはっきり答弁なさらないのですけれども厚生大臣がそういうものにとらわれない考え方考えられたら、外科障害と同じ程度の障害については障害年金を、あるいは醵出年金についても障害年金をさせる制度に踏み切るというような態勢がなければ、これはもうとにかく厚生行政を担当する大臣としての資格がないと思うのですよ。厚生大臣はそういう方々に非常にあたたかい温情を持っておられるし、ほんとうにいいと思うことは実行する能力を持っておられるから直ちに実行すべきである、またするというお約束ができると思う。これは小山さんの御答弁でなくて、厚生大臣の御答弁をお願いしたい。
  81. 渡邊良夫

    渡邊国務大臣 この問題は私も就任以来いろいろと事務当局から話を承りまして、皆様方から強い要望があるというお話を承っておるわけでございます。しかし何しろ内科疾患でございますから、先ほど私どもの事務当局が答弁をずっとされてきたところのいわゆる内科疾患の限度というものについて、どの程度廃疾患者であるかどうかという、そういう点についてなかなかむずかしいので、ただこの問題について十分検討をいたした上、その限度を、そういうものにつきまして、今後の問題として研究いたして参りたいと思います。
  82. 八木一男

    ○八木(一男)委員 もっとすなおに答えていただきたいのです。今までの厚生省の見解はどうであったから、それをはずしたら問題が起こるとか、大蔵省が怒るとか、そんなことでは政治は発展しないのですよ。厚生大臣のすなおなお考えでお考えになったら、私のまずい説明ではあるけれども、それは当然やるべきだということはわかるはずです。百パーセントわかるはずなんです。それがどうかと思うということなら、今までの悪い伝統でなるたけ金を払わないというようなことで諮問をするような、そういう医学の専門家と称する連中が、内科障害はなおるかもしれないから廃疾と認定するかどうかは検討を要するというようなことを言っておったから、そういうことに縛られておる。またそれをやれば金がかかるかもしれない、大蔵省から文句を言われるかもしれないということが働いておるから、そういうことを言われる。大臣はそういうことを打破して、年金制度がよくなるようにしなければ、年金制度で大臣の果たす役割はどこにあるのですか。それが大臣の役割ですよ。そういう繁文縟礼のことはやめて、ほんとうに正しい道を進め、障害があったらおれが押えてみせるというのが大臣の役割ではないですか。いろいろな事務的なことだったら小山さんだっていいのです。そういう障害を打破してやらせるというのが大臣の役割です。大臣それについてもう一回御答弁を願いたい。
  83. 渡邊良夫

    渡邊国務大臣 八木さんの御趣旨はよくわかります。また御激励、御叱咤のほども私十分にありがたく感じております。しかしこれは先ほど申しましたように、今後の問題として今検討中でございますということで御了承願いたいと思います。
  84. 八木一男

    ○八木(一男)委員 検討中でございますと言われましたけれども、それでは最大限度譲って、今の内科障害の中に、医学的に回復する余地があって、廃疾と認定するかどうかわからないという小むずかしい議論を言うやつがいるから、そういう問題は一応百歩譲って、譲りたくないのだけれども、厚生省の立場として、疑いのあるものは半年か一年で一生懸命研究してもらって、はっきりわかっているのはすぐ踏み切ったらいいじゃないですか。どこの医者を呼んでも——僕は医者じゃないけれども、ここに医者としては河野さんがいらっしゃるかもしれないけれども、とってしまった足が再生するなんという学説はどこにもない。それはしろうとだって知っている。ただお医者の、厚生省の嘱託という肩書きのある人が、それまで含めて廃疾じゃないかもしれないと言ったら、それはお医者の資格がない。足が再生する、そういうような学説はどこにもないはずです。今あったら聞かしてもらいたい。そういうはっきりわかったのまでごちゃごちゃに込めて検討を要する、廃疾であるかどうかわからない。これは別な意図があるとしか思えない。そんなやつは死んでしまえ、一文も金を払うのはいやだ、そんなやつらのために大蔵省に交渉するのはめんどうくさい。ほかの方の理屈があるから、そういうところまで食いとめておいた方が、福祉年金の支払いがふえないで済む。お医者の方が厚生省の方にいろいろ世話になっているからそういうことを言ったというようなことで無理やりにとめておるとしか思えない。はっきりわかっているのだけでもすぐ支給するという態度をきめたならば、あとは医学的に問題になるのは半年か一年で大急ぎで検討しようということで筋が通らないこともない。非常に不満ですけれども、はっきりわかっているのだけは内科障害でも踏み切るという御返事をいただきたいと思います。
  85. 渡邊良夫

    渡邊国務大臣 今ここで直ちに踏み切るということは断言できません。私も医者でもございませんので、なかなか不治の病だなんといいましても、なおったという奇跡的な例もありますので、おそらく厚生省の事務当局もなかなかそれに対して直ちに——その御趣旨はよくわかりまして、直ちに進めというラッパを吹きたいのでございますけれども、もうちょっと研究させていただきたいと思います。
  86. 八木一男

    ○八木(一男)委員 医務局長おられますか。医務局長じゃなくとも、医師の資格のある厚生省の職員の方おられますか。公衆衛生局長いないですか。——医務局長を呼んでやったらはっきりわかるのですが、厚生大臣は頭がいいからのらりくらり逃げるけれども、奇跡的になおるということはあっても、そんなことを言ったら、さっき僕が言った通り、足がなくなったのがはえてくるかもしれない。それは廃疾として認めておるのでしよう。肺を取っちゃったらはえてこないんですよ。同じじゃないですか。ただからだの中にあるのと外にあるだけですよ。呼吸というのは歩行よりももっと大事ですよ。死んでしまう。歩行の方はとまっても、不十分であるけれども一ぺんに死にはしないですよ。明らかに足と肺という問題であれは、同列以上に、肺が重大な問題であるということはわかるでしょう。医者が言おうが、言うまいが、厚生大臣が奇跡的なんて言ったら、今度は目の悪い人だって、足の悪い人だって出せないでしょう。そうでしょう。そう思いませんか。ですから奇跡的になおるというようなことで、それに藉口して出さないというのは理屈が通らない。だから少なくとも、はっきり今の医学において回復不能と認定されるものについては即時福祉年金を支給する。それからあとの醵出年金の方でもそれに対応した処置考えるという御返事をいただきたい。
  87. 小山進次郎

    ○小山(進)政府委員 少し問題が別の方で御議論になっているわけでありますが、私どもが申し上げているのは、今先生がおっしゃったような趣旨でできないというようなことを申し上げているわけじゃないのであります。その点少し誤解なさっているようでありますが、内部障害についてこれを今入れる入れないということがにわかにきめかねていると申しますのはこういうことなのであります。  内部障害の場合には、症状がもうすっかり固定している場合と、固定していない場合ということで、区別する実質的な事由が非常に乏しい。むしろ内部障害の場合には、そのときどきの状態において、いわばたとい症状は固定しておらなくても、労働能力の回復といいうのはそのときの医学水準から見ると、ほとんど期待できない。あるいは事実上喪失しておるものと、もう判断できるという場合が非常に多いわけであります。たとい病状としては進んでおりましても……。従ってそういう場合も同様に含めなくちゃならぬ、これは内部障害の特質がそういうわけであります。こういう事情からして、たとえば厚生年金保険の場合については症状が固定するしないということを問題にしないで、治療を始めてみて、三年たってもどうにもなおらぬということであれば、そのときの状態においてしかるべき障害年金を出す、こういうふうにきめておるわけであります。この点はおそらくもし将来精神障害の系統を入れるということになるとしても、やや同じようなものがあり得ると思うのであります。従ってそういうことについては技術的に解決しなければならぬ問題が非常に多い。第一にそういうことが成り立つためには、国民年金の被保険者全部につきまして医療が一応できるという態勢が前になければならぬわけであります。何年間か見ておって、これでどうにもなおらぬということになって初めて、そこで障害というふうに認定するかしないかという問題が出るわけであります。その道具立ての整わないときにこれをやるということが技術的にむずかしい。前会にも申し上げましたように、現在福祉年金できめておりまする障害の範囲というのは、もうお医者さんの水準から見ますならば、非常に判定の楽な場合なんであります。あれでさえも診断書をつけるということについて技術上非常にむずかしい問題がありまして、四苦八苦しまして、やっと九割くらいの人について今申請をしてもらっているというところまでこぎつけて、最後の追い込みをかけている。それでも診断を受けられない人があるので、これは国と県の方で金を都合いたしまして、お医者さんを各地に回しまして、そこで見てもらって出す、こういうふうなことをやろうというわけであります。いわんやその内科障害についてそういうふうなことができるためには、相当段取りが要る。ほかの場合にも、御議論になっておりますように、現在の日本の医療機関の配置の状況から見て、内科障害についてそういうふうな必要なだけのことが全部できるというふうになるにはまだ時間がかかる。従ってそういう問題も含めてどういうやり方でやればできるかということを技術的にきわめなければ、正直なところ、大臣に私ども政治的に決断してもらうだけの素材が整わないわけであります。別に大蔵省がどうのこうのということを私ども考えて言っているわけじゃないので、問題はむしろその最後の断を下してもらうだけのまだ事務的な整理がつき切っていない。これをつけるためには今後この方面の専門家の協力によって相当いろいろ論議をして固めてもらわねばならぬ問題がある、こういうわけでございまして、決してサボっているわけでもなし、また大臣も決断を渋っておられるわけじゃないので、実は決断していただくだけの素材がまだ整いかねている。これを整えるために、おそらく今後、先生がおっしゃる通りとても半年や一年というわけにはいかぬと思います。やはりある程度時間をかしていただいて、がっちり固める。その上で大臣なり国会の先生方に決断をしていただいて、やれということで、大いにその範囲を広げていただく、こういうふうにお願いしたいというので、一生懸命やっているわけであります。
  88. 八木一男

    ○八木(一男)委員 大臣、あの事務当局の御説明も御一緒にお聞きになったと思う。そうなると内科障害について、障害福祉年金または将来の醵出年金等についての障害年金を支給するということの方針は——方針ですよ、いつから具体的にするという問題でなくして、方針はこれで確定したと思う。今のところ事務的に診断がどうするとかなんとかということでなく、福祉年金及び将来の醵出年金において内科障害について支給するという方針は確定したと思うのですが、それでよろしいわけですね。その通りでございますね。
  89. 渡邊良夫

    渡邊国務大臣 方向としてはそう了解していただいて差しつかえないと思います。
  90. 八木一男

    ○八木(一男)委員 それからさっき小山さんは、何か私が考え違いしたように御答弁ですけれども、一緒に非常に苦労した小山さんだから、あまり文句は言いたくないけれども、去年の論議のときには何といいますか、労働能力が回復するかどうかということを主点にして御答弁になっていた。事務的にどうかこうかというのは、ことしやってみてから、外科障害の診断をやってみてからのことであろうと思うのです。まあどちらでもいいですけれども……。そういうことです。結局そういうことだから、準備に時間がかかるから、スタートがおくれるといわれるけれども、逆にそういうことだから急がないとこれはできないのです。逆な点では、急がないとほんとうに差し上げるべき人に金が入るのがおくれるということになるわけです。特に内科障害で、ひどい障害の人は、その間に死んでしまうかもしれない。障害年金をもらって、幾分でもかすかに人間らしく、その間に暮らしたいという人が、そういう事務的の手続がおくれたために、もらえないで死んでしまう。わずかな人間的な生活もできないで死んでしまうということがあると思う。ですから事務的というのはスタートしてから、また事務的な問題が起こるわけです。スタートは早くないといけない。完全に準備してからスタートをしたいということは、事務当局立場としてはそれは都合がいいかもしれないが、もらう方の立場としては、とにかく大体の方針がきまったら早くスタートして問題を現場で片づける。それでお医者さんが足りなければ、お医者さんにほかに幾分そういう協力費を出して早く見てもらうというような処置でもとってもらって、そうしてやってもらうということにしなければ、整ってからといったのでは、今度は具体的な事務の点でまたおくれます。こういう問題は早くスタートすれば早く解決するわけです。万全を期してやられるのは、小山さんの立場はそれでいいかもしれないけれども、小山さんも御自分の立場だけがよければそれでいいというお考えではないと思う。労働能力の喪失した人に一日も早く福祉年金が渡って、少しでも人間らしい気持を持ってもらうということがいいことだと考えて、国民年金問題に一生懸命当たっておられるはずです。そうなれば、事務の問題も事務的だけに完璧を期しておくれては本旨と違うことになる。大体のところで踏み切ってやる。幾ら事務的に頭で考えて完璧だといっても、具体的には問題が起こります。大体のところでやれば、残るところと具体的なことが一緒に解決されるから、一年なり半年なり早く解決されると思う。そういう意味でほんとうの年金の趣旨に立って、事務というのは年金の趣旨の一番末端のことです。極力猛烈に急いで、大臣に一月くらいで決断を迫る、いつ実施するということまで迫るというところまでやっていただかなければ因ると思うのです。これは大臣でなく年金局長の御答弁でけっこうです。
  91. 小山進次郎

    ○小山(進)政府委員 気持は先生の仰せの通りの気持でございますが、先ほど申し上げましたように、正直のところ、この問題についてはまだ総論をやっておるくらいの段階でございまして、まだ各論に類する問題がたくさんあるわけであります。もちろん実際の仕事について、それは百パーセントもう問題がないというふうにしてやろうなんとは考えておるわけでは毛頭ございません。あるところまでこなせばそれは実施に移せる。ただそのところにいくまでにまだまだ相当こなさなければならぬ問題がたくさんある。こういうことで、先生のようにこの問題を非常に促進するという立場で御議論願いますと、困難性については大へん甘く見ていただけるのでありますが、そうでないと、お前一体ほんとうに正気でやるつもりかといわれるような問題が幾つかあるわけでありまして、その問題についてはやはりこれはこうやればできるはずだ、これはこうやって措置をするというところまで固めないと、この問題は正直のところ厚生省側としていよいよやるべきだ、従って政治家にはこういうふうに御決断願いたいというふうに申し上げるわけにはいかぬのであります。何とか早くそういう時期を迎えたいという気持でございます。
  92. 八木一男

    ○八木(一男)委員 その問題は審議会にいろいろ意見を聞いていられるわけですか。
  93. 小山進次郎

    ○小山(進)政府委員 先ほど申し上げましたように、有沢広巳先生が会長をやっておられます国民年金審議会にこの問題のための専門委員会を明年度早々から設けることにして、それに必要な予算を今度計上するようにしているわけでございます。
  94. 八木一男

    ○八木(一男)委員 専門委員会はこれからの予算だけれども、その年金審議会は今あるのでしょう。それは一月に何回くらい開いておりますか。
  95. 小山進次郎

    ○小山(進)政府委員 国民年金審議会はこのほかにたくさん問題をやっておるわけでありますが、少なくとも月一回、月によっては二回やっております。
  96. 八木一男

    ○八木(一男)委員 年金審議会の方は月一回、二回というようなことで、普通のレベルでは熱心の方の委員会になりますけれども、本腰を入れてやるなら一週間に二、三回開いてもいいと思う。制度審議会でそのくらいのことをやってきたことは御承知だろうと思いますけれども、非常に急を要しますので、そういう審議会に厚生省側から問題を促進していただくように一つやっていただく必要があるのではないか。専門委員会を開かなければできないという問題でもないので、今からどんどん審議していただくように御慫慂を願いたいと思う。  こまかい問題で一時間過ぎてしまいましたが、これで年金の問題でお伺いする十分の一くらいです。まだまだありますから質問は続けますので、午後も厚生大臣に出ていただきたいと思います。
  97. 永山忠則

    永山委員長 午後一時半まで休憩いたします。     午後零時三十七分休憩      ————◇—————     午後二時八分開議
  98. 永山忠則

    永山委員長 休憩前に引き続き会議を再開いたします。  休憩前の質疑を継続いたします。八木一男君。
  99. 八木一男

    ○八木(一男)委員 午前中に引き続きまして年金のことについてお伺いをいたしたいと思います。  先ほど準母子家庭に年金をあげる問題について伺ったわけでございまして、来年度からは必ずやるというお返事で、非常にけっこうだと思います。それでもおそいのですけれども、最小限度ということで……。それで、準母子世帯の幅の問題でありますが、おばあさんが孫を養う、あるいはねえさんが弟妹を養う、これは当然入らなければいけないと思いますが、それと同時に、おじいさんが孫を養う場合、あるいはおじさん、おばさんという場合もあるわけであります。     〔委員長退席、田中(正)委員代理着席〕 そういう点で、実施の場合にできる限り実情に即して、広く所得保障をすべき人に年金が入るように問題をお進め願いたいと思うのですけれども大臣の御答弁をお願いしたいと思います。
  100. 渡邊良夫

    渡邊国務大臣 さような方針でおります。
  101. 小山進次郎

    ○小山(進)政府委員 これは、気持は、先生おっしゃったような気持がもとになくちゃならぬ問題でございますが、同時にまた筋の整理の問題としてはいろいろむずかしい問題が出て参りますので、いずれにしても、十分もつれのないような筋で整理をするように考えていきたい。今おっしゃったうちで、私どもが現在まで検討しておりますところでは、直系血族と兄弟姉妹を中心にした範囲までは大体そうもつれがなく伸ばし得る、しかし、この場合でも、おじいさんとか、あるいはおにいさんというものを入れてくるということになると、おそらく母子年金と違った性質のものを別に考えざるを得ない問題が出てくるという点で、これは相当問題が残るように思います。それから、おばさんがめいとかおいを母親と同じような状態において養っているという事例もよくあって、同情すべき事例が非常に多いわけですが、ここまで問題を伸ばしていくことになりますと、なかなか筋の上で整理のしにくい問題が残る。そういうようなこともございますので、いずれにしても、先ほど大臣が申し上げましたように、ことしの五月ころから検討を始めます一つの大きい項目の中に当然準母子というのが入ると思いますので、そういう場合には、あらゆる方面から吟味をしていただいて、お気持が生きるように、しかも筋の整理がもつれなくできるように、こういうことで検討を進めたいっと思っております。
  102. 八木一男

    ○八木(一男)委員 大臣局長の御答弁、その通り至急に実現していただければ、大体においてけっこうな御答弁だと思いますが、そこで、ちょっと気になりますのは、今の筋という話であります。筋という点で考えていただくのに、これは、所得保障、国民年金という本質から考えていただきたい。国民年金の本質は、所得能力のなかった人とかそういう世帯に対して年金を差し上げて、幾分でも人間らしく暮らしていただこうということから始まっているわけであります。それで、日本語の言葉の語彙がどうであるとかこうであるとかいうことよりも、この方が大事だと思います。母子世帯というのは、その概念は、所得の中心である父親、男親という概念ではなしに、所得の中心になる者がなくなったために所得の能力がそこになくなったということで、そういう所得保障をする必要ができたというのが国民年金としての考え方の筋道であろうかと思います。そこで、母子ということは女性に特有な字であるとか、そういうような本質に合わないようなせせこましい議論で問題にブレーキがかからないように、大臣局長の御配慮をぜひ願いたいと思います。当然必要な人にそういうものがいくようにしていただきたいと思います。  それから、直系血族という話もございました。普通の概念としてはそういうお話もあるのですけれども、しかし、直系血族が全部なくなったそういう子供の方が、一人でも年とったおじいさんやおばあさんが残っている人よりもはるかに気の毒である、所得保障をあげなければならない状態にあるという点もぜひ強くお考えいただいて、所得保障、国民年金という本質に基づいた準母子——準母子という言葉にとらわれなくてけっこうですけれども、そういう人たちの所得保障が来年度から必ず行なわれるというふうに一つ問題を進めていただきたいと思います。概括的でけっこうですけれども大臣から一つ御答弁願いたい。
  103. 渡邊良夫

    渡邊国務大臣 そういう方針で準備を進めていきたいと思います。
  104. 八木一男

    ○八木(一男)委員 その次に、遺児の問題でございますが、拠出年金の方には、この間通りました国民年金法では、母子年金と寡婦年金と遺児年金と三種類ある。ところが、こちらの福祉年金の方にはそういう制度がないわけでありまして、できるだけ福祉年金も拠出年金と同じような項目、そういう所得保障をあげなくてはならない状態があるということは、拠出年金ですでに認められている状態です。ですから、できる限りそういう人たちに福祉年金を広めていただく必要があると思う。特に、遺児なんという場合にはこれは父親、母親両方ともなくなってしまういわゆる孤児という状態、そういう人は非常に気の毒なので、いろいろな施設へ収容しているというお考えもあると思いますけれども、施設へ収容された内容は必ずしも十分ではないし、収容されておる者ばかりとは限らない。ですから、そういう遺児に対して福祉年金をやるということを当然考えてしかるべきだと思う。それについても一つ考えをいただかなければならないと思いますけれども厚生大臣のお考えを伺いたい。
  105. 渡邊良夫

    渡邊国務大臣 孤児とか、そうした身寄りたよりのない者に対しては別途生活保障のことを考えておりますが、年金といったような形は、現在のところ相当検討しなければならぬと思っております。
  106. 八木一男

    ○八木(一男)委員 多分そういう御返事があるだろうと思った。ところが、そちらの方でも、非常に不十分な処置しか行われていないし、必ずしも施設に全部収容されているわけではない。施設外でそういう遺児が生活に苦闘している場合もあるわけです。そうなれば、お母さんがいる子供よりも、お母さんまでなくした、おばあさん、おじいさんをなくした遺児は一番そういう措置をしなければならぬ子供たちだろうと思う。こんなものはダブっても一つもかまわないと思う。それだけ気の毒な状態にある子に、施設のほかに年金があって、それで、今のおやつ代が少ないような施設ではなしに、少しは子供の時代でも生きている時代ですから、人間らしくその子が暮らせるというような状態があってもしかるべきだと思う。施設と年金の二つ行なわれて少しも差しつかえない。ましてや、施設に入らない子供のことを考えると、当然考えなければならぬことだと思う。それについての厚生大臣のお考えを伺いたい。
  107. 小山進次郎

    ○小山(進)政府委員 先ほど準母子のことについていろいろ仰せになった際に、筋の整理ということを申し上げたわけでありますが、むしろ私どもの頭の中で考えております限りでは、おそらく、母子年金に準ずるものに準母子を含めるということ自体に、やはりどうしても一種の遺児年金に見合うものを構想していくということが一部必要であろうという考えが入っているわけであります。それと別に、先生がおっしゃるような遺児年金を別建にする可能性というものは、私どもが今日まで検討しているところでは非常にむずかしい。むしろ、その道をとるならば、もう年金という形でにはなしに、遺児手当というべきものを別個に考えていく、こういうようなことで問題を整理していかなければならぬのではないか。いずれにしても、これは別に筋の整理の問題になりますので、今後関係者の間で十分議を尽くして、先ほど来申し上げているように、もつれなくいろいろな施策が発展し得るように考えていきたい、こういうふうに思っているわけでございます。
  108. 八木一男

    ○八木(一男)委員 今の年金では筋が通りにくい、遺児手当なら通るというお考えは、わかったようなわからないようなことですが、具体的には遺児手当ではるかにたくさんのものを出せる、たとえば母子年金よりもはるかにたくさんのものが出せるという考え方で推進しておられるならけっこうでありますが、ただ文字をいじくっている問題であれば何にもならないと思いますが、それについて、今言われた小山さんからちょっと伺いたいと思います。
  109. 小山進次郎

    ○小山(進)政府委員 遺児年金という形で制度を作ります場合と、遺児手当という形で制度を作ります場合の違いは、一つは、受給資格のきめ方につきまして、年金ということになりますと、どうしてもこれは画一性ということがつきまとうわけであります。手当という形になればその点がかなり緩和される可能性があるということが一つと、それから、もう一つ、やはり遺児に対するこの種の所得保障というものは、もともと子供のあり方にいろいろあるわけでありまして、十五くらいになりますと、大体お金をもらって自分の判断でそれを役立てるように使っていくということもかなりできやすくなるでありましょう。それが、二つ三つということになりますと、どうしてもそういうわけにいかぬわけであります。そうしますと、単純に一定の金の受給資格を与えるということだけではどうしても立ちいかなくなる点が出てくる。そうすると、どうしてもそこにその金がほんとうにその子供の生活内容を高めることに役立っていくということとの結びつきが必要になるわけであります。そういう結びつきを考えますと、かなりそれぞれの子供の状態や何かについての検討を含んで、その上で支給するとかしないとか、あるいは場合によっては金額を調節するというようなことが出て参る必要があるわけであります。そういうような意味において、将来考えるとすればそういう方向考えざるを得ない、こういう筋道だけを今検討しているところであります。
  110. 八木一男

    ○八木(一男)委員 厚生大臣、お聞き願いたいのですが、今小山年金局長の言ったことは一理のあることであります。その点は私も認めるわけでございますが、将来考えるとしたらという最後の点がどうも気に食わない。年金よりほかのことで支給した方がいいという理屈があって、その理屈は理屈としてよろしいです。しかし、年金で遺児よりも——遺児が一番気の毒だが、そうじゃない人の方に年金がつく世の中です。その世の中に、これから将来の問題として考えるというようなことがある点が問題なんです。ですから、年金のときに遺児年金をつけるべきであるという議論をしなければならぬ。当然それまでに遺児手当等で対処すべきであるとしたら、そういうことが先に打ち出されるか、同時に打ち出されておればこういうことが起こらない。ですから、少なくともそういう年金の来年の問題が片づくまでにそういう問題を具体化していただきたい。検討した一番いい方法でけっこうですから、具体化していただくことを厚生大臣から一つお約束を願いたい。
  111. 渡邊良夫

    渡邊国務大臣 十分研究した上で結論を出したいと思います。
  112. 八木一男

    ○八木(一男)委員 次に、また母子年金の問題に返りますけれども、本年度母子年金の予定額の三七%しかにならなかったという話でしたけれども、数字はそんなものですか。
  113. 小山進次郎

    ○小山(進)政府委員 これはまだ現在申請及び裁定を進めている途上でございますから断定的な結論を申し上げることは差し控えなくちゃいかぬわけでありますが、現在までのところでは、母子福祉年金の申請の出が、私どもの見込みに反しまして非常に少ない。その結果、私どもがこのくらいは出てくるであろうといって見込みを立てておりましたものの大体四割足らずというような状況でございます。その後もちろん若干はふえつつありますけれども、その前後を今歩いている、こういう状況でございます。
  114. 八木一男

    ○八木(一男)委員 そこで、一つお願いしたいのですが、今は死別家庭じゃないと母子年金を出さないという法律になっておる。ところが、厚生省が大体このくらいあるだろうと思ったところが、調べたら四割足らずだったというところに、今までの想定よりもはるかに生別の母子家庭が多いということの実態が証明されていると思うんです。そのように生別母子家庭が多いという状態から考えまするときに、やはり生別家庭が、アメリカのようなところと違って、離婚をするときに非常に多くの離婚の条件で婦人が保護されているという状況にありませんし、男の方が勝手をして婦人が子供と一緒に実質上追い出される、あるいは遺棄されるというような状態が多いですし、そこまでならなくて協議離婚のような体裁を整えておりましても、やはり実際上は意に反して離婚をしなければならなかったということが多分にありますので、そういう点について考慮をされて、生別母子家庭に対して母子福祉年金を支給することの方に踏み切っていただきたいと思う。それについて一つ積極的な御答弁を願いたいと思います。
  115. 小山進次郎

    ○小山(進)政府委員 生別母子世帯が従来いろいろな統計数字に現われておったよりも多いと思わざるを得ないという感じは、どうも私ども今の段階でかなり強く持ちかけているわけでございますけれども、ただ、これを完全に論証するための基礎固めはまだできないわけであります。しかし、母子寮における実態等を調べてみますると、少なくとも従来生別、死別の割合として掲げられておったものよりも生別の割合がはるかに多くなっているというような事情でございますから、その意味におきまして、従来とかく母子世帯の問題といえばもうこれは単純に夫に死なれた気の毒な母子世帯という考え方で対策の本筋をもうきめてしまっておったという考え方をもう一回考え直してみなくちゃいかぬじゃないか、その意味で母子福祉対策についてはもう一回そこのところから検討し直す必要がある、こういう気持が現在の厚生省の中でもかなり強くなって、児童局、年金局、社会局、統計調査部、こういうようなところも加わりましていろいろ検討しておるわけであります。その場合に、生別の母子世帯が思ったより多いという場合に、これに対する対策として、これを母子福祉年金の支給対象に入れるかどうか。これについては、入れるべしという意見も非常に強く内外から出ております。どうも、私ども、現在の研究段階では、これを年金で処理するというのは非常にむずかしい、こういう感じでいるわけでありますが、なおこの点については一つ将来とも研究したいというので、いろいろな角度から研究を続けているようなわけでございます。
  116. 八木一男

    ○八木(一男)委員 今の生別母子家庭の問題ですが、いろいろと論議があると思うのですけれども、日本の現状においては、生別母子世帯は死別母子世帯と同じような状態に大体あるわけです。理屈を言えば、死別のときはとにかく自分の意思が働かないでそういうふうになったのだ、生別のときは自分の意思が働いたのだというようなへ理屈を言う人が出てくると思います。そういうへ理屈を言う人が出てくると思いますけれども、日本の現状では、夫がお前とは別れると言ったら、しぶしぶ、いやいやながら協議離婚するみたいな形になるが、その賠償金もほとんどとれないというようなことになる。また、日本の母親は子供を非常にかわいがるから、子供を、女と一緒に逃げたような道楽者の亭主にはまかせられないということで、自分で子供をかかえてしまうということになる。ですから、諸外国の例とは違うわけで、日本の生別母子家庭は死別母子家庭とほとんど同じ状態にあるというふうに私ども考える。この点で、厚生大臣も同じような認識をなさるだろうと思います。今、福祉年金を支給したところ、案外死別母子家庭よりも生別母子家庭の方が多かった。それは支給の四割にも満たなかった。だから、大体の財政計画も合うわけです。それで、思い切って生別母子家庭に福祉年金を支給する方向にぜひ最大の御努力を願いたい。これは非常に研究時間が要りますから、即時御答弁は要りませんが、努力をするという御答弁だけはいただきたい。お約束といっても、きょうは無理でしょうが、最大の御努力はいただきたい。そうして、今会期中ぐらいに、それに踏み切るというようなことになったという方針を厚生省みずからここで御報告なさることができるというふうなところまでやっていただきたいと思う。その努力についてのお考えを伺いたい。
  117. 渡邊良夫

    渡邊国務大臣 母子家庭が何がゆえに申請がおくれているか、いろいろな家庭の事情や何かによってというふうに報告を受けておりますが、なお努力いたしたいと思います。また、生別母子家庭の問題につきましては、もう少しよく生別母子家庭の実態を調査いたしまして、なるべく御趣旨に沿うような線で検討いたしてみますから、この点は御了承を願います。
  118. 八木一男

    ○八木(一男)委員 年金の問題については、拠出年金の問題もありますし、また、無拠出年金の問題もまだあるのですけれども、そういうような状態ですから、近日また続けてやりますが、この点について、年金をよくするように一つ最大の努力をしていただきたい。  それから、小山さんにちょっと続けて残った問題を質問いたしますが、福祉年金の問題です。老齢福祉年金がおもな問題ですけれども、老齢福祉年金について、権利が発生していながら支払い期日前になくなった方がありますね。それについて、何か厚生省の方では支給をしないというような態度をきめておられるそうです。そういうことを伺いましたけれども、それについてはどうなっているのでありますか。
  119. 小山進次郎

    ○小山(進)政府委員 これは、現在の法律にはそういう場合には金を差し上げないということにきまっているわけであります。別に厚生省の態度ということでなく、法律にそういうふうにきめてありますので、大へんお気の毒だけれども差し上げられない、こういうことでございます。
  120. 八木一男

    ○八木(一男)委員 年金の権威者として、小山氏は、それはいいことと思いますか、よくないと思いますか。
  121. 小山進次郎

    ○小山(進)政府委員 この問題については、八木先生御存じの通り、今までのやり方に二つあったわけでございます。一つは、恩給法の流れをくむやり方でございまして、このやり方に従いますと、そういう場合には死亡する日までの分を遺族に差し上げる、こういうことになっているわけであります。これに対しまして、厚生省所管になっております社会保険系統では、そういう場合には差し上げない、ただし、その人の遺族が遺族年金とかあるいは母子年金をもらうような資格のある場合にはそれを差し上げる、こういうきめ方をしているわけであります。厚生年金でそういう態度をとりましたので、それに従って現在こういうふうにしてきたわけであります。ただし、今日に至りまして考えてみますと、これは二つの流儀でございますから、一がいに言えないと思いますけれども、日本の年金の中に、一つはそういう場合に遺族に差し上げる、一つは差し上げないという態度をとっている、これはいずれにしてもどっちかに統一と申しますか整理することが望ましい。従って、私としましては、こういう問題の場合に、とかくどこも音頭をとることがないので問題がはかどらないのでありますが、一応私どもの方で音頭をとることが適当だろう、こういうふうに考えておりますので、ことしの五月ごろから全般について検討します際に、検討の項目の一つとして、どちらが将来の問題の整理として適当であるか、同時にまた、私ども、国民年金や厚生年金につきましては、人情論としてはむしろこれよりも恩給法系統の処理の方が望ましいという感じはおそらく国民の大多数の方が持っておられるに違いない、そういう場合に、一体どうしてこういう態度を貫かなければならぬかということで、もう少し掘り下げて考えてみたい、その結果、もしそうまで固執すべき筋はないということになりましたならば、むしろそういう際には恩給法系統のやり方に合わせるということも十分考えてみなくちゃいくまい、こういうような気持で今いろいろ材料を集めているところでございます。
  122. 八木一男

    ○八木(一男)委員 全部の解決にならないかもしれませんが、その大部分は毎月々々に支給するということになれば、ほとんど解決するわけだ。それを事務的な手続で四カ月分をまとめて払おうということをされているからこういうことが起こったわけですね。これはよく存じませんが、厚生年金は毎月毎月ではないのですか。
  123. 小山進次郎

    ○小山(進)政府委員 厚生年金の方は三カ月ごとでございます。
  124. 八木一男

    ○八木(一男)委員 そのように、毎月毎月にすべきところをまとめたからそういうことが起こったんで、事務的に四カ月にまとめなければいけないというのが大体おかしいと思うのですけれども、もしそれがどうしてもだめであれば、やはり今小山さんも言われたように、遺族に渡すという考え方に踏み切らなければいけないのじゃないかと思います。というのは、年金制度ができて十一月から年寄りはもらえると楽しみにしておったが、それがもらえないで死んだ、本人が死んだからあとはかまわないんだという冷やかな考え方がありますけれども、これは、そういうように千円ぐらいの年金を楽しみにしている老人の場合だったら、やはり、それがあるからということで、ほかから金を借りた、それを当てにして嫁から小づかいをもらって使うということもたくさんあったのじゃないか。そのときにやはり遺族の方はそれだけの負担をしているわけですし、ほかから借金をしておれば、それを遺族が返さなければならぬという事態になる。そうなれば当然遺族にその期間は支給していいのじゃないか。一身専属というような考え方で、冷たく理屈だけで割り切って人間の世の中が動くようなことではいけないと思います。ほんとうは毎月払いにすることが一番いいわけですけれども、それが困難なときにおいては、途中で死んだときには、その老人なりほかの人たちの遺族に年金を与えるようにしていただく必要があると思います。それについて至急にそういう措置をしていただくように最善の御努力をお願いしたいと思います。どうぞお気持を伺わしていただきたい。
  125. 小山進次郎

    ○小山(進)政府委員 先ほど来申し上げておりまするように、国民年金について早急に検討をして、先ほど大臣が申し上げましたように、三十五年中くらいに対案を固めて、三十五年から六年にかけての国会にまたいろいろ御論議をお願いしなければならぬ問題があるわけであります。そういうふうな問題の中にはあるいは登場する問題になり得るのではないか、国民年金と厚生年金を含めましてこの際やはりそういうふうにすることがいいということになる可能性が非常に強い問題の一つではないか、こういう気持を持ちつつ、ただ、何分、この問題は、先ほど来申し上げましたように、社会保険についてだいぶ長い間いろいろ多くの人々が練って作り上げてきている原則でございますから、これをくずすにしても、十分各方面の御意見を聞き、念には念を入れて、そういう措置をとりたいと考えているわけであります。
  126. 八木一男

    ○八木(一男)委員 総合的に問題を一番完全な形に進められることも非常にいいことですけれども、とにかく、これは、ほかの年金と違って、今まで三年間も四年間もらったところで途中でなくなって何とかという問題と違いまして、ごくわずかな金を初めて老人がもらうわけであります。ですから、千円とか二千円というような、極端に運の悪いときには四千円もらいそこなうことがあるわけですから、その年寄りについて、あるいはその年寄りの生活を見ておりました回りの者については非常に大きな問題です。母子年金や障害年金の場合でも同じようなことが起こると思いますけれども、そういう問題ですから、総合的に解決するというのはお役所としてはいいでしょうけれども、それだけではなしに、やはり対象者の立場になって至急に解決する。たとえば、過渡的にそういう問題をすぐやっておいて、そして総合的のときに一緒にやるというような二段構えの考え方とか、そういうことで考えていただく必要があるので、やはり、お役所の立場でなしに、国民の立場考えていただくということになれば、便法でも使って至急にやらなければならぬという問題になると思います。そういう気持で一つ進めていただきたいと思います。再度御返事をお聞きしたいと思います。
  127. 小山進次郎

    ○小山(進)政府委員 先ほど来申し上げておりまするように、私ども、こういう問題はなるべく早い機会に正すものは正したい。ただ、先ほどかなり私の個人的な判断を言い過ぎたわけでありますが、あとで申し上げましたように、現在の筋の整理というのは、私どもよりはこの方面にはるかに長く年期を入れて研究してこられた方が作られた一つの原則でございます。従って、これをかりにくずすとしても、こういくべきだという確信がなければならぬはずであります。そういう意味合いにおきまして、こういう問題は広くいろいろな方々の御意見を聞いて、間違いがないという確信ができたところでやりたい。しかし、おそくも、この問題は、ほかの問題の手直しをするときに、もし直すならば一緒に直すべき問題だ、こういうふうに考えておるわけであります。
  128. 八木一男

    ○八木(一男)委員 もっと確信を持たれていいと思うのです。何とかかんとか言いますけれども、いいと思ったことはもっと確信を持って推進されれば、最後の問題は国会でまたここで論議しますから。ですから、規則の問題で処理なされたらやっていただいてけっこうですし、また、法律の改正の問題になったらここで論議するので、それまでにほかがとやかく、言うことはあまり気にされる必要はないと思います。確信のつかない間は相談するのもけっこうだと思いますけれども、確信がついたらもっと迅速に勇敢にやっていただいていいと思います。  それから、大臣がおられるときに申し上げないと、小山さんには何回も同じことばかり繰り返しているのであまり意味がないのですけれども、途中まで聞きましたから、また大臣に申し上げるとして、残った問題をずっと並べてみます。  福祉年金の問題で年令制限の問題がありますけれども、七十才じゃおそ過ぎる。少くともわれわれは六十と思っているけれども、六十五くらいには即時しなければならないということは大体論議し尽くされた問題だ。それから、所得制限が特に母子や障害についてはきつ過ぎるというような問題があります。そういう問題についても、この社会労働委員会の決議の精神を生かして、来年度までにいい方向に推進するような結論を持たれて出していただきたいと思います。早ければ早いほどけっこうであって、本会期中であればさらにけっこうです。それについて一つお約束を願いたいと思います。
  129. 小山進次郎

    ○小山(進)政府委員 先生が今おあげになった問題は、いずれも将来検討しなければならぬ項目でございますが、私ども検討しておりまする場合の心がまえとして、やはり、順序として、まず所得制限が今の線の引き方でいいかどうか、——特に、先生がおっしゃったように、今の国民年金法では老齢、障害、母子三年金全部同じ線で引いてあるわけであります。ところが、同じ線で引いてあることがあるいは結果としてかえって不公平になっているきらいはないかということで、今データを集めて検討しているわけであります。率直に申し上げまして、老齢年金の場合には、あの線の引き方は大体私どもが見込んでおった斜度の引き方で、まずそうひどく支障を来たしているというような傾向は、初めはすいぶんいろいろ言ってはおりましたけれども、よくわかってくると非常に減ってきておる。障害年金についてもまず大体そういう状況であります。母子年金の場合には、どうも結果としては、先ほど来お話がありますように、母親としても働いて子供を養っていかなければならぬという意味においてこれは現役であるわけでありまして、その点、老人が予備役であるのとだいぶ事情が違っている。そういう点から、あるいは十三万円プラス一万五千円かける子供の数という線が結果的にはどうも母子年金受給権者に一番きつく響くという結果になっていはしないかという角度から、今いろいろ検討しているわけであります。従って、将来の問題としては、そのあたり、実施の結果をつかみましたならば、いろいろの角度から検討して公平を期するようにいたしたい、こういう気持で今準備のための材料を集めているというような状況であります。
  130. 八木一男

    ○八木(一男)委員 公平を期するというよりは実態に即して所得保障が行なわれるというような立場からやっていただきたいと思う。公平というと低い方にならされるおそれがある言葉でございますから、ぜひ所得保障の必要度に応じてという言葉でやっていただきたいのと、それから、母子世帯が現役であるからそういうことがきついということは、私どももそう思う。もう一つ、障害年金も対象者は現役なんです。現役だけれども、そういう所得保障措置がないから予備役みたいな格好になっている。結婚したくもやはり暮らせないから結婚をしない。暮らせないから子供を作らないということになっているわけです。これでは基本的人権に侵害があると思う。そういう意味で、障害年金も現役だという考え方考えていただかないと、イージー・ゴーイング過ぎる。その人たちはどっちみち結婚したいのです。子供も持ちたい。それが現存の経済上の状態から持てない状況になっている。そういうことを幾分でもカバーするのが障害年金の役割なんです。母子年金の方は、主人がなくならないと思って子供を作ったところが、なくなってしまったから現役という問題になっているけれども、障害年金対象者を現役に見ないという考えは間違いだと思う。そういう意味一つ障害年金についても同じように考えていただきたいと思う。それについての御所見を伺いたい。
  131. 小山進次郎

    ○小山(進)政府委員 どうも私が大へんよけいな言葉を使いましたために正しく理解していただけなかったわけでありますが、私が申し上げました趣旨は、私どもの反省として、この種の所得制限の措置というのは三年金を通じて同一でなければならないという気持が強くて考えておった、ところが、実施をしてみると、形の上で同一の線を引くということが実態から見て必ずしも公平になっていないというふうに見ざるを得ないところがある、——例をあげてなまじ申し上げたからいけなかったのですが、そういう点についてよく実態をきわめて、現在の線の引き方がどういう結果になっておるかということを実績の上でつかんだ上で、実態に即した線の引き方としてはどういうものがあるかということを研究したい、こういうことであります。
  132. 八木一男

    ○八木(一男)委員 何かわかったようですが、わからないところもありますね。実態に即してやられるということは、所得制限がきびし過ぎるという委員会趣旨を生かして、それをもっとゆるやかにする考え方にしていただきたい。その所得制限では、私の考え方では、母子年金と障害年金がきつ過ぎると思う。それから、老齢年金については配偶者所得制限が何といっても意味がないと思う。あれは撤廃すべきだと思うが、御意見を伺いたいと思います。世帯所得制限——本人の所得制限はある程度理屈は立ちますが、配偶者所得制限というのは年金の本旨からはどうしても立たない。あれは廃止するお考えがあるかどうか。
  133. 小山進次郎

    ○小山(進)政府委員 いろいろ所得制限の問題を検討する場合に登場し得る問題の一つであるという気持で研究をしておりますが、所得制限は将来ある程度実態に即して直すといたしましても、いずれにしろこれは順序と段階を踏んで考えざるを得ないということになろうと思います。そういう場合に、配偶者所得制限の緩和というものが一番最初に登場し得るものになるかどうかという点については、私ども、どうも先生のおっしゃるような工合には必ずしも考えていないわけであります。
  134. 八木一男

    ○八木(一男)委員 具体的な問題としては、母子世帯とか障害福祉年金の対象者の所得制限を緩和するのが先であってもいいと思いますが、理屈としては配偶者所得制限というのは一切成り立たないと考えている。小山さん、配偶者所得制限がどういう意味を持つか、一つ説明していただきたいと思う。
  135. 小山進次郎

    ○小山(進)政府委員 どうも、この問題についての権威である先生から言えと言われると非常に言いにくいわけなんでありますが、ほんとうに常識的な意味で、配偶者というのはもともと同居して生活するというのが本体でありますから、そういう意味において、いろいろの所得制限ということを考える場合には、あわせてそういう考え方はどうしても出てくる筋合いのものではないか、こういう考え方でございます。
  136. 八木一男

    ○八木(一男)委員 本人の配偶者といっても、とにかく世帯所得制限が別にあるわけですから、実際に今暮らせるかどうかという問題と、本人の所得能力からも所得保障をしなくてもいいという考え方、この二つが年金として考えるべき要素であって、配偶者の所得というものは要素にはならないと思う。何回も論議したことですからこれ以上申し上げませんが、私どもの論拠は十分御承知のことですから、一つ考えていただきたいと思います。  それから、先ほど年令制限の方を軽視しておられるように考えておられますけれども、これは非常に大きな問題だと思う。今所得保障を七十才から支給になっておりますが、六十九才、六十八才、六十七才ぐらいで死ぬ人はずいぶん多いと思います。そういう意味で、現状として具体的に言いますと、今平均余命は非常にふえておりますが、七十才以上に生き長らえた人の相当部分は、比較的若いときにしあわせであって豊かな暮らしをし、からだを酷使しないで、あまり心配もしないで過ごした人である。そういう人たちに年金を差し上げることはもちろんいいです。賛成ではありますけれども、それ以上に、表面的な年令で六十九才であっても六十八才であっても、それ以上に老衰をして、金持ちであった人の七十才のときよりも所得能力を喪失しておる人がずいぶんあるわけです。特にそういう人たちは、若いときから人間としての楽しみをほとんど知らないで、馬車馬のように働いて、それで老齢期に達して死期を迎えつつあるというような人もあるわけです。それを、ただ七十才ということで切ってしまう。六十九、六十八というところで死ぬ人が多い。非常に老衰した人が多いという現状を考えないと、所得制限よりも年令制限の方をあと考えることは、これは現状に即していないと思う。少なくとも老齢年金に関する限りは、問題は所得制限の問題よりも年令制限の緩和の問題だろうかと思うのです。六十五才くらいまで下げたい、そういう気持を持っておるというのは、この立案の当時、提出の当時の厚生大臣であった坂田君も言っておられたように思います。あるいは岸信介君も言われたように思います。そういうような意向も当然政府の首脳部にもあるわけでございますから、原局としては一番この点に重点を置いて考えられてしかるべきだと思う。年令制限についてどのような努力をされて具体的に下げてこられるか、そういう見通しについて一つ伺いたいと思います。
  137. 小山進次郎

    ○小山(進)政府委員 七十才という年令を引き下げることが望ましいという点は、もう先生おっしゃる通りでございまして、この点、私ども別に異論はございません。ただ、実際問題として、七十才を六十五才に引き下げるということは非常に困難が多いということでございます。これはもう申し上げるまでもない事情でございます。ということと、もう一つは、そういう困難を冒してやる前に、やはり、解決する問題としては、所得制限の問題とかなんかがありはしないかというのが私ども判断でございまして、まずそういうものを解決した後に、今の年令引き下げというものは議論し得る時期が来るのじゃないか、これは順序の問題としてそういうふうに考えているわけでございます。
  138. 八木一男

    ○八木(一男)委員 小山さんも下げるのは賛成だと思うのです。問題は、七十を六十五に引き下げる、あるいは母子年金、身体障害者福祉年金の所得制限を大幅に緩和する、こんな問題は同じように大事な問題だ。結局そのブレーキは大蔵省ということになるわけです。それを、最初厚生大臣に申し上げたように、今までの予算ワクから何パーセントふえたというようなことでなしに、やはり、社会保障というものが、所得保障というものが飛躍的に増大しなければいけないという確信のもとにやられるならば、それくらいの問題は一ぺんに片づくわけです。僕らは六十才でなければいけないと思っている。六十五才にするのは相当の金額が要ることはわかっておりますけれども、少なくとも年令を下げるということを具体的にやる。たとえば、六十七才まで一応来年はやってみる、再来年から六十五才にするということだって、これは頭のいい小山さんだから考えておられると思う。それができないという予測のもとに、先に母子年金の所得制限解除の問題があると言われるのは、大蔵省の動向がきついということを予測しておられると思う。そういうことでは困る。原局で一番かんかんになっている人が今からそんな消極的であっては、国民年金というものは完全になりません。当然六十五才にすべきなんです。所得制限は十三万円でなくて三十万円にすべきであると思うが、なかなか困難であって、最善の努力をするから与党の方も野党の方も応援願いたいというくらいのことを小山さんがここで言うくらいの元気でなければ困ると思う。いかがでございますか。
  139. 小山進次郎

    ○小山(進)政府委員 先ほど申し上げました考えに変わりはございません。
  140. 八木一男

    ○八木(一男)委員 先ほど申し上げました考えに変わりはございませんというと、消極的なままになるでしょう。それじゃ困ると思うのですよ。国民年金を早く充実するということは、少なくとも与党、野党を問わず、ここの委員で反対の方はほとんどないと私は思っております。与党の大部分もないはずです。問題は結局財政計画になる。財政の方の問題ですね。その問題の許す限りにおいてやるということは、与党の方でも賛成だろうと思う。与党の方は二人くらいしかおられませんけれども、ほとんど、別にそんなでたらめなことを言うなとかいうようなヤジもありませんし、そうだろうと思う。国会でもそういう気持を持っておるし、国民もそういう要望を持っておるときに、一番熱心である原局の方がそういう消極的じゃ困る。そんなものじゃいけないんだ、六十才からだ、支給制限の方は老人の方は百万円だ、片方の方は五十万円だというくらいな勢いで原局が当たられて、それで大蔵省になたをふるわれて減る。最初からそのような消極的な意見じゃ、国民年金はなかなか充実しない。先ほどの意見と同じというようなことでは困ると思う。これは小山さん一人ではきまらない問題でありましょう。厚生大臣とも——厚生省の省議にかけなければならないけれども、また閣議にかけなければならないけれども、少なくとも原局の局長としては、そのように推進したい、最善の努力を払いたいと思います。そのくらいな御答弁がないようなことじゃ年令局長としての資格はないと思う。一番年金に熱心な小山さんとしても、ほんとうはそういうお気持をお持ちになっておられるでしょうけれども、そんなことをうっかり言ったらたたかれるというふうにお思いになって、非常に消極的な返事でありますけれども、そういう必要はありません。そういうふうに言われることが問題を推進するのですよ。一つ勇敢に推進をするという御発言を願いたいと思います。
  141. 小山進次郎

    ○小山(進)政府委員 非常な御鞭撻をいただいて、大へんありがたいわけでありますが、私ども考えとしては、現在の国民年金の内容を充実するについてはこういうふうなものにいたしたい、やるについてはこういう順序と方法でやりたい、それは、私としては、なるべく早い機会に、福祉年金のみならず、拠出を通じまして、将来の目標をはっきりつかんでみたい、これは非常に強く考えております。ただ、その場合に、やはり考えたいと思っておりますことは、われわれがやりたい仕事は、国民年金もやりとうございますが、同時に医療保障の充実もやりたい、いろいろな問題を総合して考えた場合に、どの程度のものがこの方面に使えるものとして主張できるか。これは単に大蔵省だけを意識しているわけではございません。日本の財政力と申しますか、これについては、おのずから一つ判断が、かなり幅はありますけれども、出てくるわけであります。そういうものを頭に置きつつ考えたいというわけでございまして、熱意は、もうおっしゃるように十分持っているわけでございますが、ただ、その考えそのものは、やはりある程度冷静なものでありたいと思って、いろいろ今いじくっているわけであります。
  142. 八木一男

    ○八木(一男)委員 総理大臣のような御答弁をなさるのですけれども、やはり、厚生省は厚生省の立場を強力に推進する、年金局長は国民年金のことで強力に推進されるということでなければ、ほかに押されます。財政の組み方は、財政的の見地は幾らでもあると思う。われわれの考えですれば、千二百五十億の金額をいきなりことしから支給しても財政計画は成り立つ。それは質疑応答で完全に与党の方に御説明してある。そういう見方もある。幅というのは、全体の総ワクで百億や二百億の幅ではなくて、総ワクでは五千億くらいの幅がある。ごく常識的に考えた社会保障の幅でも千億や千五百億の幅はある。そのくらいの勢いで考えていただかなければ因ると思う。一つそういう点で、熱心にやっていただけると思いますが、とにかく最善の努力を尽くすという御返事をいただきたいと思います。
  143. 小山進次郎

    ○小山(進)政府委員 最善の努力をいたします。
  144. 八木一男

    ○八木(一男)委員 そこで、希望ですが、順序として母子年金と障害年金の所得制限のことを言われましたけれども、老齢年金に関する限りは所得制限の問題よりも年令制限の問題の方が重大であると私は思う。その論議の根拠は皆さん御承知通りであります。それをイージー・ゴーイングに後回しということにしないで、並列して考えていただきたいと思います。並列して考えていただけるかどうか。
  145. 小山進次郎

    ○小山(進)政府委員 これは十分今後各方面の方々の御意見をお聞きして考えて参りたいと存じておりますがただ、先生が仰せになるほど老齢年金における所得制限問題は現在のやり方でいいとは言い切れない事情を私は感じておるわけでございます。と申しますのは、農村方面においては現在の所得制限のきめ方でそうひどい実情はない。これはかなり確信を持って言い得るように私今考えております。ところが、都市の勤労者の親を考えますと、どうも今の所得制限の引き方が非常にきつく響いている。結果的には、現在のあの所得制限のきめ方でいくと、都市の勤労者の両親というものがかなり不利な扱いを受けている結果になっているように思わざるを得ない面があります。何かこういう問題は考えてみなくていいのか。私、別にこうすべきだというような結論を申し上げるほど考えが調整されているわけではございませんが、そういう問題を感じているわけでございます。従って、そういう問題も含めて、それから先ほど来仰せのような問題も含めて、よくバランスをとってやるとすればどっちを先にやるべきかというようなことを十分国民年金審議会その他のところで検討していただくようにしたい、かように考えております。
  146. 八木一男

    ○八木(一男)委員 それで、所得制限の問題も考えていただいていいでしょう。しかし、年令制限の問題は世の中が知らないために声があがってこないけれども、実際は年令制限の問題は大事なんです。審議会の意見を聞くというけれども、この国会の委員会では、年令制限の問題が、ぼやっとしていないから問題になった。それで、特に附帯決議にも年令制限という言葉が入っている。年令制限の問題は、普通制限というと所得制限のように考えている国民の方が多いようですが、年令制限というものは非常に重大な問題であるということが論議された結果、附帯決議に年令制限というものが入っている。それを、まだ年金について理解の少ない国民の声をぼやっと受けて、専門家である年金局が年令制限をあと回しにするということではいけない。少なくとも並行的に考えていただきたいということです。十分その点はおわかりだと思いますから、その結果をぜひお待ちをしていますから、しっかりやっていただきたいと思います。     〔田中(正)委員長代理退席、委   員長着席〕  その次に、処出年金の問題については、これは今申し上げたことは全部厚生大臣にもう一回申し上げます。厚生大臣にもう一回申し上げないと年金局長は進めにくいと思いますから申し上げますけれども、今時間があれですから続けて言っておきますけれども、拠出年金が来年から実施される。それのいろいろな諸欠陥も指摘をされました。そういう点について検討をされて、実施をされるまでに欠陥を改めて、それで実施をされるということは当然であろうと思いますし、この前の通常国会においては、そういう点で論議をされ、そういう御答弁を厚生大臣から伺っているわけであります。そういう点で、論議をされた結果、欠点と思われる点について来年国民年金法の改正法案を出して、そして審議を求められるかいなか。当然求められなければいけないと思う。それについての御答弁をお願いいたします。
  147. 小山進次郎

    ○小山(進)政府委員 国民年金については、いろいろな問題があとに残っているものが幾つかあるのは仰せの通りであります。特に一番大きい問題は、通算調整問題であります。従って、こういうような問題を中心といたしまして、残された問題はことしじゅうに解決をいたしまして、どうしてもこれは立法事項になりますので、ある部分は国民年金法の改正をしていただく手続を進めるべきでありまするし、また、ある部分については、また別個の法律、一種の付随的な法律になるかと思いますが、それを一つ御審議を願う、そういうことにすべきであると考えまして、準備を進めているわけであります。
  148. 八木一男

    ○八木(一男)委員 拠出年金の欠点はいろいろでございますが、まず第一に、保険料が一率である。保険料が一率であれば、これは生命保険を合理化したにすぎないのであって、社会保障ではない。保険料を納めにくい人が、納め方が少なかったために年金額が減る、あるいはなくなる、あるいは拠出した金額まで返してもらえないというような条件であるならば、これは非常に困った問題が起こると思います。部分的には年金制度を通じて収奪が行なわれるわけです。全体的にはそうでありませんけれども、そういうような欠点がある。そうでなくても、保険料を納められる者は年金を支給される。保険料を納めにくい人が老齢になったら、年金がさらに必要であるのに、そういう人たちの年金が少なくなったり、なくなったりする。そういうことを直すためには、当然現在の三十五才まで月百円、それから五十九才まで月百五十円、この一率の保険料を、収入とか資産の度合いに応じて上げ下げして、そうして貧しい人は少ない保険料で済むというような考慮が払われなければならないし、今社会党案を参考にせられて免除規定を作られたけれども、免除規定の適用の範囲をもっと広く大きくして、そういう欠点の補正に努められなければならない。大体、六十五才から返すのでは非常に少なくて実態に即さないという問題もあります。また、母子年金及び寡婦年金、遺児年金、この金額は差等がある。こういうことは論理上おかしいことであります。特に、遺児年金が拠出年金でありながら母子年金より少ない。こんなばかげた話は世の中にないと思う。それから、労働者の家族が強制適用でない。強制適用でないと、免除その他の特権が与えられない。そういうような国民的な不公平な状態では困る。当然、そういう特権の問題以外でも、強制適用でなければ、年金制度というようなことに思慮が少ない主人であれば、任意適用を受けさせないようにするという問題があります。また、主婦の場合も、子供や主人の目先のことを考えて、自分の年金に入ろうとしないというような場合がある。それでは労働者の配偶者の人たちの老後保障は完全を期せないという問題もあります。それから通算の問題ではまた重大な問題がありますので、年金局の仕事は非常に多くてそれはお気の毒だと思うけれども、これは意義のある仕事であります。ほんとうにそういう問題を完全に全部解決して、国民年金法の改正案を出されるというような最善の努力をお願いしたいと思いますが、それについての概括的な御答弁でけっこうです。
  149. 小山進次郎

    ○小山(進)政府委員 ただいま先生がおあげになった問題、いずれも検討すべき重要な項目でございます。  第一の保険料の問題については、これは免除基準のきめ方を現存いろいろ調整をしておるのでございますが、これは、おっしゃるように、最善を期してきめたいと考えております。ただ、保険料が一率であっていかぬ、これは所得比例に直せという問題、これは、昨年の際にも繰り返し申し上げましたように、私どもも、そういうふうにすることが望ましい、できるならそうしたいという気持は持っておりますが、ただ、これは、少なくともここ二年や三年の間には技術的にできないし、こういうことで少なくともこれが次の改正の際に出てくるというようなものにはなり得ない、この事情一つぜひ御了承願いたいと思います。ただ、将来の問題として、五年先の改正——早くて五年先だと思いますが、あるいはひょっとすればその次になるかと思いますが、そういうなるべく早い時期にこの問題を取り入れることによって、仰せの通り、この年金制度に所得再配分的な要素を相当取り入れていくという努力は積極的にすべきものと考えております。  それから、第二の母子年金、遺児年金の問題につきましては、私どもも現在いろいろ研究しております。特に、先生が率先してあまりほかの方が御指摘にならない遺児年金の問題を御論議下さったことは、私ども非常に敬意を表しておるわけでありまして、私どもも、何とか一つ遺児年金というものは育てたい、とかくこれはあまりかわいがってくれることの少ない年金でありますが、日本でこういう年金制度を盛り立てていきたいという気持で、技術的にはかなり無理をして籍だけは設けたという次第でありますが、仰せの通り年金額がいかにも不十分であるという実情でございます。これも何とか条件さえ許すならば調整したいという項目の一つ考えておるわけでございます。  それから、第三番目の、被用者の家族の任意適用の問題については、私どもも初めからいろいろ苦心をしている問題でございますが、実のところ、まだ、被用者年金制度を持っております人々及びその被保険者を代表すると思われる人々の考えと私ども考えとが必ずしも一致しておりません。率直に申しまして、まあほうっておいてくれという感じがかなりこれらの人々の間には強いという状況でございますが、この点は、社会保障制度審議会にも適当な機会に持ち込みまして、もう一回一つ将来の年金の整備としてどうするかということを御論議願って、それによって問題を軌道に乗せるようにいたしたい、こういう気持でおるわけでございます。  それから、最後の通算の問題は、かねがね申し上げておりますように、やろうということで、今関係省で技術的な研究をしておりまして、だいぶ進んでおりますので、おそらくこれは来たる改正の際には重要な項目として入れることができる、かように考えております。
  150. 八木一男

    ○八木(一男)委員 今の御答弁、満足でないところと、やや満足のところとありますが、申し上げたような趣旨で最善の努力を願いたいと思うのであります。  通算の点は、今大体どういう方式が軌道に乗りかかっているわけですか。
  151. 小山進次郎

    ○小山(進)政府委員 これはかねがね申し上げておったことでありますが、いろいろ行きつ戻りついたしたのでありますが、関係省の間で最終的にと申しますか一応考えとして一致いたしました点は、社会保障制度審議会で勧告しておられるあのじゅずつなぎ式の年金の方式で通算問題を解決していこうということが一つ。それから、被用者年金につきましては、どんな場合でも、厚生年金にその間ずっといたとしたらもらえるという程度の年金以上の年金を一つ保障するように工夫してもらおうじゃないか、言いかえますならば、被用者年金の期間に関する限りは、厚生年金にずっと二十年なり三十年いた人が当然もらうべき年金額は何とか保障されるように、通算用の年金のきめ方を工夫しようじゃないか、こういうようなことで今研究を進めておりまして、国家公務員共済組合に関しては一応財政的な研究を終えて、まずやれそうだ、やりたいという気持で、これは大蔵省が主管でございますので、今技術的な研究をしております。現在残っておりますのは、公共企業体関係について検討は残っておりますが、これは現在計算を進めてもらっているというところでございます。これが終えますと、今度は、そういうような数理的な検討をもとにいたしまして、通算のためのいろいろな要綱のようなものをまとめるというような段取りになるわけであります。大体四月の上旬にはその程度のものが、この間申し上げました関係省の小委員会でまとめ得る、こういう予定でございます。
  152. 八木一男

    ○八木(一男)委員 厚生年金程度のものを保障するという背景をすっかり伺わないと、それがほんとうに私ども考え方と合っているかどうかわかりませんので、それについての意見は差し控えることにいたしまして、出ましたときに申し上げることにいたしますが、じゅずつなぎ方式の方で、十分小山さん御承知だと思いますが、一昨年の九月、社会保障制度審議会で宮尾君の発言のじゅずつなぎ方式が満場一致きまりました経過をぜひずっと覚えておいていただきたい。あの経過は、私が完全な持ち分移管方式というものを主張し、それから日経連の代表である斎藤君が脱退手当金に幾分水増しした持ち分移管方式を主張され、今井一男君が少しそれを水増しをしたものを主張された。それで、末高君が内ばき二重加入方式を主張され、末高民の意見は皆さんのいれるところにならないで、あとの問題で論議された。宮尾君が、じゅずつなぎ——凍結方式という言葉でしたけれども、主張された。そのときに満場一致になりましたのは、凍結方式であるけれども、完全なる持ち分移管方式というように、とにかく途中脱退したときに、本人の保険料並びに使用主の保険料並びに国庫負担分、この分が全部自分の持ち分として計算されて、それで移管されるというのが僕の主張の完全な持ち分移管方式でありますが、それと同じ意味で、同じような考え方に立って、金額を凍結しておいて、各年金制度においてその支払い開始時期から各個別的に開始をする、ですから六十五才を過ぎたときにはそれが合体されてじゅずつなぎになるというようなこと、そういう認識のもとに決定されたわけです。宮尾君の提案もそういう考え方のもとにしたものであった。このように凍結のじゅずつなぎ方式をとる場合において、途中脱退者の場合、または途中での制度転換者の場合に、そういう完全な自分のすべての権利、使用主の分、あるいは国庫負担分の権利も含めて計算されて凍結され、じゅずつなぎされるという方式でないと、社会保障制度審議会の答申の趣旨と違ってくることになるのです。小山さんは十分御承知ですけれども、ただ、あの方式だけを読まれた方は、往々にしてその前提を忘れるおそれがなきにしもあらずと私は危惧しております。その点を十分、小山さんは方々にタッチされますから、御説明になって、そのような社会保障制度審議会の答申の意味のじゅずつなぎ方式が実現されるように御努力を願いたい。それについて一つ御返事をいただきたいと思います。
  153. 小山進次郎

    ○小山(進)政府委員 今先生が仰せになっておることは、私もかねがね承っておりますのでよく承知をしておりますし、その点は関係者には十分伝えたつもりであります。それで、現状といたしましてはこういうことになっておるわけでございます。先生の仰せになっているお気持から言いますと、問題が二つあるわけであります。一つは、現在の被用者年金制度では、たとえば被用者期間が二十年以上の者に年金を支給する、こういうことになっておるわけであります。二十年にならない人については、あるいは退職一時金とかあるいは脱退手当金という形で出す。この退職一時金なりあるいは脱退手当金の額そのものが一つ問題であるわけであります。先生仰せのように、二十年以上いた人が受けるのと同じ割合で受けることになっていない、非常に不利になっておる、こういう事情にあるわけです。そういうような問題についていろいろ論議をいたしました結果、まだ完全に各省が同調してくれているというところまでいっておりませんけれども、大体今到達しておりますことは、厚生年金できめます場合において、厚生年金の制度に二十年以上いた人のもらうべき年金の額と、それから、二十年に至らずして途中でやめた人がたとえば十年分、五年分としてもらう年金の額は、少なくとも一年は実質的に同じ意味を持つものとして、じゅずつなぎの単位年金額をきめるということを何とかいたしたい。実を申しますと、これもまだ完全に厚生年金を取り扱っておる関係者の人々が了解し切ったことではございませんけれども、現在の計算の基礎としてはこれを取り入れていく。そういたしまして、それと同じものを少なくともどの被用者年金制度でも確保していく。残るのがあり得るわけでありますが、その分についてはどうか従来通り有利にいくようにしてくれ、それは脱退手当金の形で出すもよかろう、退職一時金の形で出すもよかろう、しかし、できるならば、これを全部年金に直してほしい。しかし、その点が、どうしてもそれぞれの制度の関係者、被保険者、事業主その他の関係者の間で、やはり自分のところでは退職一時金を残したいということであれば、そこまでは現在の関係省の調整の場合には強制はしない。しかし、じゅずつなぎの年金のきめ方はその程度にする必要がある、こういうことで、大筋は先生仰せの通りの気持で関係省は検討しているわけでございますが、結論はまだこれからだいぶ間がかかるわけでございます。
  154. 八木一男

    ○八木(一男)委員 今の小山さんの御答弁で大体いいと思うのですが、そこで、心配なのは、ならして一年当たり同じようなものにするということは合理的だと思うのです。そうなると、今まで少ないものをふやした分をほかの方で埋めなければならないということが起こると思います。そうすると、厚生年金の現在の支給規程から、ほかの財政負担か何かない限りにおいては、そっちが減るか、減らないにしても厚生年金会計の黒字が減るとか赤字がふえるとかいう問題が起こってくるわけですね。そこで、私どもは、今までのものは既得権益だろうと思うのです、二十年を越えた場合は。二十年を越えてない部分は、そういう不都合な保険に強制適用で入れて保険料を取ってやった政府に責任があると思う。これは、やはり、国民年金についての答申がありましたように、いろいろの年金制度を整備するに必要な整備資金というようなものを国庫から支出せしめて、その問題を直していかないと、厚生年金会計だけでやれば、ちょっと途中脱退者が正当な権利を回復すれば、今まで二十年を越えた人の期待権が侵害されるということが起こる。それはやはり今までそういう不完全な法律を強制適用して労働者から保険料を取ってきた政府の責任である。その不完全なものを直すには整備資金を国庫から支出して埋め合わせしないと問題が起こるのじゃないかと思います。そういう点について、一つ整備資金が出てその問題は合理的に解決できるように小山さんの方で御努力願いたいと思います。それについてちょっとお答え願いたい。
  155. 小山進次郎

    ○小山(進)政府委員 ただいま仰せの問題が実は最後の難関と言えるわけでございますけれども、この問題をどうするかということは、現在それぞれの制度の担当省損当局において検討しておるわけでございます。厚生年金については当然のことながら厚生省において検討することになっておるわけであります。今のところどういうふうにこれを処理するかということについてまだ結論を出しておりません。いろいろな事情考えながら、どういうふうな解決をすることが一番望ましいかということで研究をしておるわけであります。
  156. 八木一男

    ○八木(一男)委員 きょうは厚生大臣もおられませんからもうこれで打ち切りたいと思いますが、きょう厚生大臣がおられなくなってからの質問は、厚生大臣がお見えになってから再度重ねて続けたいと思います。そこで、時間を合理的に使うために、一つ厚生大臣にいろいろと御連絡をしておいていただきたいと思います。  最後に、最初に厚生大臣に申し上げましたように、また途中で小山さんに申し上げましたように、年金制度が早くよくなるように、完全になるように、強力に推進していただきたいと御要望申し上げて、きょうの質問は一応これで打ち切ります。
  157. 永山忠則

    永山委員長 本日はこれにて散会いたします。     午後三時二十五分散会