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1960-03-17 第34回国会 衆議院 建設委員会農林水産委員会連合審査会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十五年三月十七日(木曜日)     午前十時四十五分開議  出席委員   建設委員会    委員長 羽田武嗣郎君    理事 井原 岸高君 理事 木村 守江君    理事 二階堂 進君 理事 南  好雄君    理事 山中 吾郎君 理事 塚本 三郎君       砂原  格君    徳安 實藏君       橋本 正之君    石川 次夫君       岡本 隆一君    兒玉 末男君       實川 清之君    山中日露史君       今村  等君   農林水産委員会    委員長 吉川 久衛君    理事 田口長治郎君 理事 永田 亮一君    理事 丹羽 兵助君 理事 本名  武君    理事 角屋堅次郎君 理事 芳賀  貢君       天野 光晴君    倉成  正君       坂田 英一君    田邉 國男君       高石幸三郎君    松田 鐵藏君       八木 徹雄君    保岡 武久君       中澤 茂一君    松浦 定義君       山田 長司君    神田 大作君       小松信太郎君    中村 時雄君  出席国務大臣         農 林 大 臣 福田 赳夫君         建 設 大 臣 村上  勇君         国 務 大 臣 菅野和太郎君  出席政府委員         総理府事務官         (北海道開発庁         総務監理官)  木村 三男君         総理府事務官         (経済企画庁総         合計画局長)  大來佐武郎君         農林事務官         (林野庁長官) 山崎  齊君         建 設 技 官         (河川局長)  山本 三郎君         建設事務官         (河川局次長) 曽田  忠君  委員外出席者         総理府事務官         (自治庁財政         局理財課長) 佐々木喜久治君         大蔵事務官         (主計官)   宮崎  仁君         農林事務官         (農地局参事         官)      正井 保之君         専  門  員 山口 乾治君         専  門  員 岩隈  博君     ————————————— 本日の会議に付した案件  治山治水緊急措置法案内閣提出第六九号)      ————◇—————     〔羽田建設委員長委員長席に着く〕
  2. 羽田武嗣郎

    羽田委員長 これより会議を開きます。  案件を所管している委員会委員長であります私が、委員長の職務を行ないます。  治山治水緊急措置法案議題とし、審査を進めます。     —————————————
  3. 羽田武嗣郎

    羽田委員長 まず、本案の趣旨につきまして説明を聴取いたします。  村上建設大臣
  4. 村上勇

    村上国務大臣 ただいま議題となりました治山治水緊急措置法案につきまして、提案理由及びその要旨を御説明申し上げます。  治山治水事業は、国土保全及び開発を行ない、経済基盤を強化し、もって国民生活の安定と向上をはかる見地からきわめて緊要な施策であることは申すまでもないところでありまして、政府はつとにその促進をはかって参ったのであります。しかしながら、近年における台風豪雨等による激甚なる被害並びに産業経済の発展に伴う諸用水の需要の急増等の事態にかんがみまして、政府といたしましては、治山治水事業につきまして昭和三十五年度を初年度として、新たな構想のもとに長期計画策定し、これを強力かつ計画的に推進することといたしました。すなわち、昭和三十五年度以降の治山事業及び治水事業に関する十カ年計画を、昭和三十五年度以降の五ヵ年間の前期五ヵ年計画及び昭和四十年度以降の五ヵ年間の後期五ヵ年計画として策定し、これを計画的に実施することといたしたのでございます。  以上が、この法律案を提出する理由でありますが、次にその要旨について御説明申し上げます。  まず、この法律の目的は、治山治水事業を緊急かつ計画的に実施することにより、国土保全開発をはかり、もって国民生活の安定と向上に資することでありますことは、先ほど申し上げた通りであります。  第二に、治山事業及び治水事業の各十カ年計画内容となるべき治山事業及び治水事業の範囲について定めまし柔。すなわち、この法律でいう治山事業または治水事業とは、国が行なうもの及び国の負担または補助により都道府県または都道府県知事が行なうものでありますが、計画的に実施することが不適当と考えられる災害復旧事業災害関連事業等は除くものといたしております。  第三は、治山事業十カ年計画及び治水事業十カ年計画策定の手続を定めたことであります。農林大臣及び建設大臣は、それぞれ、昭和三十五年度以降の十ヵ年間において実施すべき治山事業または治水事業に関し、昭和三十五年度以降の前期五ヵ年計画及び昭和四十年度以降の後期五ヵ年計画の案を作成し、閣議決定を求めなければならないものといたしました。なお、農林大臣及び建設大臣は、計画の案の作成にあたりましては、治山治水事業総合性を確保するために、あらかじめ相互調整をはかるとともに、長期経済計画との関係において経済企画庁長官協議することといたしたのであります。  第四に、治山事業十カ年計画及び治水事業十カ年計画実施を確保するためには財政上はもちろん行政上の見地からも諸般の措置を講ずる必要がありますので、政府は、これらの計画実施するため必要な措置を講ずるものとすることといたしたのでございます。  以上が、この法律案提案理由及びその要旨でありますが、何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御可決あらんことをお願い申し上げます。     —————————————
  5. 羽田武嗣郎

    羽田委員長 質疑通告がありますので、順次これを許します。  なお、この際お願いいたしますが、質疑通告者がただいま七名ございますので、あと発言者のこともお考えをいただきまして、なるべく三十分以内で簡単に質疑を行なっていただきとうございます。  角屋堅次郎君。
  6. 角屋堅次郎

    角屋委員 本日は、ただいま建設大臣から御提案になりました治山治水緊急措置法案中心といたしまして、治山治水の抜本的な問題について総括的な問題をお伺いしたいと思います。  御承知のように、本問題は、昨年の累次にわたる災害、特に伊勢湾台風等の大災害にかんがみまして、政府あるいは与党におきましても、国土保全あるいは国民生活の安定の見地から真剣な検討が加えられて、ここに抜本的に治山治水の本格的な推進に乗り出そうと、こういうことで本計画案が出されて参っておるわけでございます。御承知のように本計画案が具体化する前に、すでに昭和二十八年度の十三号台風あとにおきましても、政府は緒方副総理中心にいたしました治山治水対策協議会等を作りまして、十カ年計画作成をし、あるいはその後においても累次計画変更等がありましたが、従来の経過考えてみますというと、常に竜頭蛇尾に終わる感が深かったわけであります。今度の治山治水緊急措置法決定経過にかんがみましても、予算策定あるいは諸法案計画推進過程においては、治山治水特別会計の一本化、あるいは治山特別会計治水特別会計設置、こういうようなことがいろいろ論議されて参ったわけでありますけれども、結果的には、治山については国有林野事業特別会計治山勘定でこれを処理する、あるいはまた治水についてはここに初めて治水特別会計設置する。こういうふうな経過に相なったわけでございます。  そこで、承りたいのは、治山治水の抜本的な計画推進として討議の過程で出て参りました治山治水の一本化の特別会計の問題がくずれまして、治山については国有林野事業のいわゆる治山勘定で処理する、あるいは治水については特別会計設置される、こういう異なった対策が出て参ったというその根本的な理由について承りたいと思います。  同時に、昨年の伊勢湾台風等の問題を中心にいたしました臨時国会において、特に災害地対策特別委員会が衆議院に設置されて、いろいろ論議の過程で問題になりましたまず第一の点は、いわゆる災害に対する事前対策、あるいは災害発生事後における臨時措置のために、この際総合的な災害基本法ともいうべきものを設置すべきじゃないかという、ほうはいたる世論があり、政府もこれを受けて、岸総理大臣は、災害基本法通常国会の機会に提案をいたしたい、こういうことを言っておったわけでございます。これらの問題が閣議の中においてどういうふうに論議され、今日通常国会においてこれが提案される運びになるのであるのかどうか、こういう問題についてまずお伺いしたいと思います。
  7. 村上勇

    村上国務大臣 特別会計治山治水に分かれておるということについては、別にそう変わった意味ではありません。御承知のように、それぞれその事業体が違っておりますし、また所管も違っておりますから、経緯をはっきりするためにも、治水特別会計あるいは治山特別会計というように分けるべきが妥当であったと私どもは思う次第であります。  次に、災害基本法につきましては、総理からたびたびお答えいたしておりますように、これは目下慎重に各関係方面協議をいたしております。成案を得まするならば、本国会提案するということであります。私どもは、これももとより必要なことでありますけれども、ともかくも災害の起きないような、災害を未然に防止するような治山治水基本法提案いたしまして、抜本的に国土保全をいたしたいと思っております。
  8. 福田赳夫

    福田国務大臣 治山治水、これは一本の法律にすべしという御意見でありまするが、特に治山事業につきましては植林と非常に関係がある。植林と申しましても、これは国有林中心でありまするから、これと切り離して治山対策を進行するということにつきましては、これは実質的にいろいろ障害があるわけであります。さようなことで、杉の上だけで一本の特別会計ということにとらわれるよりは、実質を尊重した方がよかろうということで、治山治水を別にしたわけであります。
  9. 角屋堅次郎

    角屋委員 この特別会計設置の問題については、特に大蔵省において、あるいは与党内において、場合によっては財源確保のために公債発行も考慮すべきじゃないか、こういう議論等のあったことも新聞等で報道されておるわけでございます。当初、治山にいたしましても、治水にいたしましても、特別会計設置については大蔵省はこれに反対であるというふうに伝えられておりました。結果的には、治水については特別会計設置をされ、治山については治山勘定ということで処理されることになったわけですが、当初こういう特別会計設置ということに反対をした理由について、大蔵省の方からお伺いしたいと思います。
  10. 宮崎仁

    宮崎説明員 お答え申し上げます。御承知通り財政基本原則といたしまして、すべて国の重要な施策一般会計において統一して表わす、統一運営原則と申しておりますが、こういった原則によって処理していくということが財政の基本的な方法となっております。従いまして、治山治水事業のようなものは非常に重要な事業でございますから、こういうものは一党会計で処理していけるのであれば、こういう方法でやっていくことが望ましいということが大蔵省意見であったわけであります。しかしながら、御承知のような経過をたどりまして、治山治水につきましては、十ヵ年の長期計画を作りまして、これに基づいて計画的に事業実施するという政府の方針がきまったわけでございますので、こういった特定の事業であれば、特別会計実施していくということも、これはいいのではないか。こういうことになりまして、特別会計設置ということになったわけでございます。
  11. 角屋堅次郎

    角屋委員 治山治水のそれぞれの事業前期五ヵ年計画あるいは後期五ヵ年計画、あるいはそれを全体としての十カ年計画立案が、それぞれ治山については農林省治水については建設省、全体の協議としては経済企画庁長官ともこれを協議する、こういう運び法律案ではなっておるわけでございますが、申し上げるまでなく、治山治水の問題は、これは総合的に関連のある問題であり、統一的な立場からこれを計画しなければならぬ、こういうことに相なるわけでございます。  そこで、治山関係計画立案にあたりましては、これは法案によりますと、中央森林審議会意見を聞いてやる。つまり森林法の従来の既設審議会を適用する。また治水関係については、河川法でいう従来の既設審議会である河川審議会意見を聞いてまとめる。こういうことに相なっておるわけでございますけれども治山治水の総合的な関連性あるいは統一的な計画推進必要性から見て、政府は真に本腰を入れて、治山治水の抜本的な計画樹立と、そしてこれの推進に当たるという立場から申しましたならば、新たに治山治水のための特別の審議会設置して、総合的な見地から、五ヵ年計画にいたしましても、あるいは十カ年計画にいたしましても、これはやはり樹立するということがいいのではないか、かように思うわけでございます。なぜ、既設中央森林審議会であるとかあるいは河川審議会であるとかにこだわるのか。もっと大きな見地から総合的な計画樹立のために、いわば治山治水対策審議会ともいうべきものを設置して、総合的見地から国土保全国民生活安定等の問題について十分論議し、計画樹立をやるべきであると考えますが、これらの点について御意見を承りたいと思います。
  12. 村上勇

    村上国務大臣 御指摘の点は全く私どもも同感でありますが、しかし、ただいま河川審議会にいたしましても、あるいは治山のいわゆる森林関係審議会にいたしましても、それぞれ専門的に治山関係の人も審議会に入っておりますので、これはもう全く密接不可分な関係にある限り、いずれもその審議にあたりましては支障を来たすようなことはないと思っております。
  13. 福田赳夫

    福田国務大臣 ただいま建設大臣からお話のような次第でございまして、両者の調整企画庁でもって十分やりますので、支障はないと思います。
  14. 角屋堅次郎

    角屋委員 両大臣とも非常に形式的な御答弁をされておるわけでございますが、戦後のみならず、戦前からでもそうでございますけれども、たとえば戦後二十一年から三十年の十ヵ年間の被害状況等を見ましても、年間二千四百億に上るような災害被害額が出て参っておりますし、特に昭和二十八年度の災害の場合においては五千五百五十九億というような膨大な、いわゆるお互いの資産の損失があるわけでございますし、今度の伊勢湾台風等の場合においては、これをはるかにこえるような被害額であろうと思うわけであります。そういう意味からいって、治山治水の、やはりこれからの災害防止のための抜本的な計画樹立するにあたって、既設のそういう森林法なり河川法で作られておる審議会でもって審議をやっていくということは、これで十分役目が果たされるかどうかは、やってみなければわからぬということに相なりましょうけれども政府本腰を入れてこの問題に取っ組む、予算編成においてもこれが最重点の項目の一つである。こういう意味からいたしましても、既往のこういう機構を一新をいたしまして、もっと総合的な見地から、先ほど申しましたように治山治水のための総合的な審議会を作って、根本的な検討を加えるべきである。そういうことによって、やはり血のつながった治山治水の総合的な計画推進ということに相なるだろうと私は思う。従来から言われておりますことは、災害あとで、たとえば海岸の場合で言いましても、ややともいたしますと、これに関連するところの農林省あるいは建設省あるいは運輸省等三省のセクショナリズム、あるいは三省の連絡が不十分なために、あるいは工場その他設計等において必ずしも統一されてないために、災害をさらに大きくしたんだというようなことが批判として出されて参っておる経緯にかんがみましても、やはり計画樹立の問題の出発点において、もっと総合的な立場をとった計画樹立、私はこういうことが必要であろうと思う。これは何も法案を出したからといってこだわるのではなしに、やはりその必要性を私は過去の累次の災害から指摘をされておると思いますので、これらの問題については意見として私はこの程度にとどめますけれども、十分やはり考えてもらわなければならぬ。かりに、こういう法案でそのまま実施するにいたしましても、やはり中央森林審議会あるいは河川審議会相互の連携問題については、十分にやはり経済企画庁等中心になって努力をする必要があるだろう。そうでないというとやはり、計画のそごということはもちろんありませんでしょうけれども総合性において欠ける面がくるのじゃないか。かように考えられるわけでございますので、この辺のところは両大臣とも十分考えてもらいたいと思いますが、いかがでございましょう。
  15. 福田赳夫

    福田国務大臣 お話はまことにごもっともでございます。ただ治山治水とも、先ほど申し上げましたように相当違った内容を持っておりますので、特別会計の方も別にしたわけでございます。従いまして、その計画立案審議機関も別になっておるというのでございます。しかし、お話のようなことも十分一面において考えなければならぬわけでございます。あるいは連合調査をいたしますとか、あるいは企画庁本腰を入れて調整に当たるとか、実行上におきましては御趣旨の線のようなことを十分気をつけて参りたい、かように考えております。
  16. 角屋堅次郎

    角屋委員 計画樹立の問題について意見を申し上げたわけでございますけれども、同時に私どもが今後五ヵ年なり、十ヵ年なりで治山治水計画推進に当たる場合に、過去の経験にかんがみまして一つ心配になります点は、財源見通しの問題でございましょう。つまり治水特別会計で予定されておる予算額を見ましても、九千二百億に上るような大きな金額でございまするし、また治山勘定で処理すべき問題につきましても千三百億に上る膨大な金額を必要とするわけでございます。この財源見通しについては、法律では第四条で「政府は、治山事業十箇年計画及び治水事業十箇年計画実施するため必要な措置を講ずるものとする。」こういうふうに相なっておるわけでございますけれども昭和二十九年度に十カ年計画樹立された場合においても、その後において累次計画変更があった場合においても、実際に実施した。パーセンテージというのを見て参りますと、きわめて不十分な結果に終わっておる。これはやはり非常な大災害を起こす根本的な原因の一つになっておるわけでございます。こういう今後の計画推進のための財源見通しというものについて、どういうふうにお考えになっておるのであるか。これはやはり一つのどうしても組まなければならない至上命令予算額として確保される見通しがあるのか。あるいは従来の経緯のように鳴りもの入り出発をいたしましても、最終的にはやはりそのときの予算編成のいろいろな諸条件によって修正が加えられる、こういう危険性を含むのであるかどうか。これがやはり一つの大きな問題であろうと思いますが、これらの点についてお伺いしたいと思います。
  17. 村上勇

    村上国務大臣 昭和二十九年に策定いたしました治山治水の十ヵ年計画が、どうもまことに思うようにいかなかった。それはいろいろな財政的な事情で、いい年もあれば、悪い年の方が多いというようなことで、これがはかばかしくいかないので、これでは私ども国土保全を期しがたいというので、ここに新たに三十五年を初年度とする十カ年計画、そのうち前期緊急五ヵ年計画等策定いたした次第であります。治水で申しますならば五ヵ年間四千億、十カ年九千二百億ということを大体予定いたしておりますが、従来も二十九年に策定いたしましたものは、今日ただいま御審議をいただいておるような治山治水基本法とかなんとかいうような、こういう法律によって正式な閣議決定というようなこともできていなかったように私ども考えておるのですが、そういうようなことのために、ともすれば国の財政都合で左右されまして、どうもこれが実現に至らなかった。今回は、この法律によって正式に閣議決定する。  これとまた、他面今回の治水の四千億と申しますのは、私どもとして、当初は五千億といったくらいはと思いましたけれども、しかし、いわゆる経済伸びとかあるいは国民総生産とかいうような、いろんな財政的な都合で、緊要度の非常に高いところから四千億にしぼって、それで実効を上げていこうということでやっておるのでありますが、これはそう無謀な計画でないのでありまして、これから五ヵ年あるいは十カ年問、大体年率にいたしますと一一・五%程度伸びでこれが実現できることになります。経済成長率から申しますと、少し上回っておりますけれども、少なくとも国土保全はこれらに上回ってやっても、この際やむを得ないだろうと思いまして、かようなことにいたしておるのであります。今後は私は、前回二十九年に策定いたしたようなことでなく、今回はよほどの国に大きな何か大災害等が起きない限りは、十分実現できるものと、かように確信いたしておる次第であります。
  18. 角屋堅次郎

    角屋委員 今後の計画推進にあたっての国の財源確保という、このことは、過去の経緯から見ましても、非常に重要でありますが、半面、この事業推進するにあたっての地方負担の問題についても、またこれは、やはりあわせて考慮しなければならぬ重要な問題であるわけでございます。今日の地方財政状況等を見て参りますというと、地方財政の各県の財政状況というものは、決して均衡のとれた状態ではなくて、各県ごとにアンバラが非常にあるわけでございます。従いまして、こういう計画推進にあたりましては、これを十分受け入れられる県もあれば、受け入れなければならぬ条件にありながら、後進県あるいは赤字県のために、この計画推進を受け入れがたい県も私は出てこようと思います。今度の計画推進にあたって、従来の交付公債というものをやめまして、いわゆる実施にあたりましては直接現金を納めなければならぬという責任を持ってくる。その場合に、もちろん起債等でもって十分これに対処しなければならぬ配慮等も今後加えられると思いますけれども、従来計画策定過程で、あるいは治山促進法あるいは治水促進法等計画もなされ、あるいはその際補助率等についても統一的な検討の上に立ってもっと前進をさせようという動き等もあったやに聞いております。いずれにいたしましても、全額現金で納められるような県もあろうと思いますけれども、同時に逆に全額起債にたよらなければならぬ——最小限現金を分担するにいたしましても、せいぜい五%か、場合によっては一割が限度であろうというふうな県も私は相当出て参ろうと思う。その場合に、補助率を今日のような状態ではなしに、意見としては、この際地方財政の各県の状況等を十分分析検討いたしまして、補助率に差をつけるべきじゃないかという意見等も出ておるやに聞いておりますけれども、今度の治山十カ年計画あるいは治水十カ年計画推進するにあたりまして、地方財政のこれに対応する体制というものについて、自治庁はもちろんでございますけれども関係各省としてどういうふうに配慮されるつもりであるか。また、この計画推進の中において、治水関係においては一体地方負担分総額どの程度、あるいは治山関係においては総額どの程度と予定されておるのであるか。それらの経緯について承りたいと思います。
  19. 福田赳夫

    福田国務大臣 昭和三十五年度の予算について申し上げますと、治山関係では民有林が八十七億円の事業費を必要とします。それから国有林におきまして二十四億円の事業費を要するわけであります。国有林につきましてはこれは全額国庫負担をいたします。それから民有林につきましては、八十七億円の事業費の中で六十一億円を国庫負担し、地方が二十六億円負担する。かようなことになるわけでございます。  地方負担につきましては、ただいまもお話がありましたが、一つ起債ということでございますが、実質的には二十六億円、並びにそれに引き続くところの後年度の事業費負担というものは、そのまま地方負担になるのでなくて、起債の償還及び利息の支払いという形におきまして地方負担になって参りますので、その傾斜度というか、負担の度合いというものは、年に伸ばしますと非常に薄いものになって参ります。また、特別な措置といたしましては、貧弱県に対しまして特別交付税というような考え方もとられておりますので、このくらいの事業をやっていく上におきまして、さような率で進む限りにおきまして、地方財政に大きな支障を及ぼすということはない、かように考えております。
  20. 村上勇

    村上国務大臣 治水関係におきましては、本年度と比べて五十三億程度の増額になっておるのであります。しかし、これは八〇%までは起債、それからあとは特別交付金等によって、後進県については十分考えるということで、何とかやっていける、かように私どもは思っております。
  21. 角屋堅次郎

    角屋委員 この点について関連いたしますので、自治庁にお伺いしたいわけでありますけれども、承りますところによりますと、自治庁においては地方負担分の問題については、これは各県の財政状況というものにランクをつけまして、現金全額支払うべき段階の県、あるいはその次に位するような県、あるいは相当程度起債によらなければならない県等についての分析検討をやられ、それに基づいて地方財政と見合った地方負担分のこれからの処理方法検討中だというふうに聞いておりますが、その間の経緯について少しお伺いしたいと思う。
  22. 佐々木喜久治

    ○佐々木説明員 本年、昭和三十五年度から新しく設けられました直轄事業債の取り扱いの問題でございますが、直轄事業債として地方計画の中に入れております数字は、国の特別会計にかかる直轄事業地方負担分についての起債の問題でございますが、その総額治山治水含めまして二百三億予定いたしております。それに対しまして地方計画に計上いたしました地方債のワクは百六十億円ということになっておりますので、この間に四十三億円の開きがあるわけでございます。自治庁といたしましては、この直轄事業債を地方計画に計上いたしました趣旨によりまして、この四十三億円につきましては、地方交付税の基準財政需要額中に投資的経費としてこれを算定することにいたしまして、その残余のものについては起債を許可するという形でもって参りたい。従いまして、その取り扱い方法から申し上げますと、各府県の基準財政需要額にどれだけ投資的経費としてこれらの事業費が計算されておるかということを見まして、その残額につきまして直轄事業債を許可していくというような扱いにしたい、かように考えておるのでございます。ただ、地方団体におきましても、この直轄事業の各府県に対する負担分量というものに相当な差異がございます。それからまた、団体によりましては、一般財源によって十分にこの地方負担金をまかない得るというような団体もございますので、その間に、事業費の分量、それから財政状況等を勘案いたしまして、この直轄事業債の配分については、この事業の遂行に支障のないように十分に考慮いたしたい、かように考えておる次第でございます。
  23. 角屋堅次郎

    角屋委員 ただいまの地方負担分の問題については、これはやはり計画が相当膨大であるだけに簡単な問題ではなしに、今日の地方財政の状況から見ましても、十分公平な処理によって地方計画推進に停滞が起こらないように、これはもちろん自治庁のみならず、関係各省においても配慮していただきたい、かように考えるわけでございます。  次に、治水関係の問題で若干触れたいと思いますのは、これは過般建設委員会等においても論議されておるやに承っておりますが、治水の五ヵ年計画なり十カ年計画策定にあたっては、これは建設大臣も御配慮願うわけでございますけれども河川審議会で論議をする等の場合に、治水の問題は治水の問題、利水の問題は利水の問題として分離して考えるべき問題ではなしに、一つの水系の水をどう治めるかという問題と、これをどう総合的に産業経済に利用するかの問題は、密接不離の関係にあるわけでございます。従いまして、むしろ治水事業計画推進にあたっては、利水の問題を並行して考えなければならぬと申し上げていいと思います。その辺の治水と利水との総合的な検討の上に立っての治水の五ヵ年計画なり十カ年計画作成、こういう問題を具体的にはどういうふうに配慮して計画樹立をやられるお考えであるか、この点を承りたいと思う。  同時に、今度の治水計画策定にあたりましては、海岸関係計画、いわゆる海岸保全関係計画というものはこの法律から除外しておるわけでございますが、治山の問題、治水の問題、あるいは海岸保全関係の問題は、伊勢湾台風等被害経緯から見ましても、これは相互関連しておる問題であります。なぜ海岸関係の問題を分離して治水関係の問題を考えられようとしたのであるか。承るところによりますと、海岸関係の問題については、類似の問題が伊勢湾台風等に起こった場合にどう対処すべきであるかという問題については、今調査の段階であるので、今次の五ヵ年計画なり十カ年計画には残念ながら同時並行的に乗せることはできないのだ、従ってこれは別にしたのであるけれども計画推進にあたってはこれは総合的に考えなければならぬ、こういう御見解のように承っておるわけであります。いずれにいたしましても、やはり本計画樹立にあたっては海岸関係保全問題を分離して考えることはできない。この辺の問題も、今後治水計画樹立するにあたってどう配慮されようとしておるのが。この点、承りたいと思います。
  24. 村上勇

    村上国務大臣 お答えいたします。治水事業は、御承知のように台風に対するあらゆる防災措置ということで尽きると思いますが、しかし、私どもといたしましては、この治水事業を完遂し施行するその間に、利水ということと離れての治水はないと思っております。特に最近のように、工業用水、あるいは農業用水、またいろいろな水の利用によって国の経済基盤を大いに強化していくという点については、私どもが夢寐にも忘却できないことでありますことは御指摘通りであります。従いまして、これらは十分この点を考慮に入れた計画を立てておる次第であります。最近の地盤沈下等から考慮いたしましても、これらの原因等を除くためには、どうしても利水事業によって、水の供給、いろいろな点については十分勘案して参らなければならぬと思っておる次第であります。  なお、海岸をこの治水事業五ヵ年あるいは十ヵ年計画から除きましたことは、御指摘のように、海岸は非常に膨大な計画を要することでもありますし、また地盤沈下等による原因、あるいは今後の動向等を十分考慮に入れなければ、急速にこれをこの計画に入れてやるということについては、そこにそごを来たすおそれもあります。そういうことから、これは十分調査をし、また現在調査したものを実行に移しておるものについては積極的にこれをやらなければなりませんし、慎重に調査の上、なおこれに倍加してその規模を大きくするというようなことも考えられますので、私どもとしてはこの際、東京あるいは大阪湾等の海岸の重要性にかんがみまして、この計画の中から除いた次第であります。
  25. 角屋堅次郎

    角屋委員 ただいま指摘しました海岸保全関係の問題、あるいは治水関係の問題にいたしましても、これは関係各省相互連絡というものがやはり今後きわめて重要でございます。御承知のように、昨年の伊勢湾台風等の場合には、伊勢湾等高潮対策協議会というのを作られまして、建設、農林、運輸等三省が連携をとって、最近これに対する結論を出された経緯がございます。今後関係各省間の相互連絡というものを、具体的にはどういうふうに進めて、そごの起こらないようにするのであるか。さっき治山治水の総合的な計画にあたりましても指摘いたしましたように、森林法なり河川法関係既設審議会を使うという形をとっておられる。そこはやはり、機構としては直接関係がないという形で出発をする。そういう点から見て、私どもが今後の計画推進にあたって心配をいたしますのは、従来の批判等とも関連いたしまして、関係各省相互連絡というものが緊密にいくのであるかどうかという問題が一つある。そこで、伊勢湾等高潮対策協議会等で、伊勢湾の高潮対策というものについては十分連携をしながらやったというこの経験を、全体的な計画樹立にあたっても、今後の計画推進にあたっても、この考え方をとられなければならぬと思うのでありますが、具体的に関係各省相互連絡というものをどうされるつもりであるか。いわば従来から機構改革の問題としてこれを論議し、国土省を設置しようという議論があるわけでありますけれども、今、にわかにそういうことをとらえてみたところで、現実の問題に合わない。問題は、現在の機構の中で、今度政府が重点項目の一つとして掲げた治山治水計画推進をやるにあたっての問題である関係各省相互連絡、今後の緊密な連携による計画推進、こういう問題についての御見解を一つ承りたいと思います。
  26. 村上勇

    村上国務大臣 お説のように、伊勢湾等高潮対策協議会というようなものは、東京湾にいたしましても、あるいは大阪湾にいたしましても、その他の港湾、海岸にいたしましても、私はこれをどこまでも強化して、これらによって各省間の連携を保ちながら強力に進めるべきであろうと思っております。また、これらの港湾の最も被害の原因をなすものは地盤沈下でありますか、この地盤沈下の対策協議会も、やはり企画庁の中にそれぞれの関係各省か集まって協議をいたしております。これらを私どもは御指摘通り強化して、そうして海岸の万全を期したい、かように思っております。
  27. 羽田武嗣郎

    羽田委員長 ちょっと角屋君に申し上げますが、先ほどお願いしました時間もだいぶ経過しておりますので、でざるだけ簡単にお願いします。
  28. 角屋堅次郎

    角屋委員 わかりました。  この治山治水の今後の計画推進にあたっての一つの問題は、先ほど来指摘しておりますように、計画樹立の問題、予算の裏づけの問題、あるいは関係各旨の緊密な連携の問題等もありますけれども、同時に、計画ができ、設計ができ、実施できるという段階になりますと、建設関係の業者といいますか、これはもちろん直轄等の場合もございますけれども、こういう建設業者の仕事に対する指導監督という問題がやはり重要であろうと思う。これは建設委員会等でも十分論議がなされておりまして、私どももその経緯承知しておるわけでございますけれども、本年度あたりで建設関係の仕事は大体一兆五千億に上るといわれておる。明年度は一兆八千億に上るというようなことが推定をされておるという段階の中で、七万数千からある建設業者、もちろん大小はございますけれども、そういう建設業者が仕事を請け負う。その場合に、中小企業の建設業者の育成あるいはこれの利用、活用、そういう問題もありましょうけれども事業推進にあたっての監督指導の問題についてやはり十分配慮しないと、せっかく金をつぎ込んでもこれが災害防止にならないという結果は、伊勢湾台風等の場合にも特別委員会の中で横山委員から材料を持ってきて指摘した通りでございます。この辺の、建設業者の仕事をやる場合の指導監督、あるいは大企業、中小企業等のそれぞれの企業能力というものもございますけれども、特に零細な建設業者に対するところの活用の問題等も含めてどうされるつもりであるか、簡単に承りたいと思います。
  29. 村上勇

    村上国務大臣 事業を遂行する上に、十分監督等を、技術的にも、またすべての点について、落度のないようにしなければならないということは、私どもも十分考えておるところであります。建設省といたしましては、それぞれ業者をその重要度によって適材適所に指名いたしておりますので、この点については十分意を用いて参っております。なお、最近の業者は昔と違いまして、非常に良心的に、また技術的にも進歩して参っておりますので、監督上、比較的監督する者も昔のような苦労をしないでもやっていけるように私ども思っております。でありますから、御指摘の点については、全く抜本的な対策を講じておっても、これがその目的遂行にもし支障を来たすようなことがあってはなりませんので、この点は十分意を用いて、今日もそうでありますが、今後一そう気をつけて参りたい、かように思っております。
  30. 角屋堅次郎

    角屋委員 農林大臣治山関係の問題で数点お伺いしたいと思います。  まず第一点は、最近の木材の需給状況等とも関連をいたしまして、治山の問題の一つとして、やはり過伐対策を根本的に考えていかなければならぬじゃないか。私ども承っているところでは、今日の木材の需要量は年間一億六千万石程度で、そのうち国内で生産をしているものが一億五千万石に上っているといわれている。現在の既開発林の生長率の六千五百万石から見て、三倍になるような形において伐採が行なわれている。こういう状況にあるわけでありまして、いかに農林省として治山を真剣に考え対策を立て、これが計画推進に当たろうといたしましても、やはり一方において過伐が行なわれ、このことが災害一つの原因になるというようなことに相なってはいかぬので、この辺、やはり木材の需給状況に見合って、過伐対策を具体的な林野行政として今後どう進めるかということを基本的に考えていかなければならぬと思うのですが、これらの点についての所信を承りたいと思います。
  31. 福田赳夫

    福田国務大臣 積極的にはやはり今の非能率な林野を改良いたしまして、植樹をすることだろうと思うわけです。国有林の方はなかなかうまくいっていると思うのですが、どうも公有林、民有林についてはそうも考えておりません。今後特に力を入れなければならぬ。特に民有林につきましては、一つ国有林の方で来年以降において計画造林の伐採が行なわれる時期において、そういう財源民有林につぎ込みまして、相当大規模な植樹をやらなければならぬというふうに考えているわけです。また保険制度なんかも、今火災保険がありますが、そういうものも不備であるというふうに考えておりますので、保険の分野の拡大ということを考える必要があろうと思います。それから、山林の担保金融でございますが、これまたきわめて脆弱な状態にあるというふうに私は考えております。この山林担保金融、これも私は大いに強化していきたい、こういうふうに考えている次第であります。  それから、一つは消極面でございますが、これにつきましては、やはり平坦地というか原野に隣接した地域が非常に切られている。しかし、半面において奥地の開発が一向進まない。こういう問題があるわけです。奥地に林業を急速に導入していかなければならぬというふうに考えている次第でありまして、そのための林道の開発という面に力を注ぐことが一つ。それからやはり、適当な調節は必要でございますが、外国の木材の輸入ということも考えていかなければならぬ。積極、消極両面をもちまして、だんだんと山を青くしていくことに今後とも力を注いで参りたいと思います。
  32. 羽田武嗣郎

    羽田委員長 角屋君、ちょうど一時間になりますから、ごく簡単に、これ一問に願います。
  33. 角屋堅次郎

    角屋委員 では、これ一問だけにして終わりたいと思います。  農林大臣に最後にお伺いをしたいのでありますが、治山問題を考えるにあたって、今後の重要な、しかも非常に困難な問題でございますけれども、今日の山は国有林で使用している部面、あるいは公有林で使用している部面、あるいは民有林で使用している部面、こういうふうに雑然と今日区分されておるわけであります。この辺のところを、やはり林野行政全般としても、あるいは治山の観点からいたしましても、もっと国有林として保有すべき地域、あるいは地方財政等と勘案をいたしまして公有林等で所有さすべき地域、あるいは里山その他の問題と関連して民有林等で保持すべき地域、こういうものを、やはり国土の総合開発、土地利用区分、こういうふうなものとも関連させながら、一つ根本的な検討を加えていったらどうか、こういうことを考えるわけでございます。これは、戦後農地改革が行なわれたときに、山林問題に手をつけなかったという問題の簡単な議論ではなしに、やはり林野行政全般の問題の一環として、治山の問題とも関連してその辺のところを今後十分検討すべきではないかというふうに思いますが、いかがでございましょうか。
  34. 福田赳夫

    福田国務大臣 角屋委員お話、まことにごもっともと存ずるのでございます。いよいよそういう時期に私は来ておるのじゃないかと思います。三十五年度の予算で森林経営研究施設を作るということを企図しておりますのは、全く御意見のような観点からいたしておるわけであります。御審議をお願いしておりまするこの法律案とも並行いたしまして、林野の調整ということに大きく踏み出していきたいと考えております。
  35. 羽田武嗣郎

    羽田委員長 倉成正君。
  36. 倉成正

    ○倉成委員 私はただいま提案されております治山治水緊急措置法案に関しまして、政府のこの法律案の根底にある基本的な考え方についてお伺いをいたしたいと思います。  時間もございませんので、まず第一にお伺いしたいのは、最近、特に二十八災以来、災害が非常にたくさん日本の国に起こっておりますけれども、これは一体どういう理由によって最近特に災害が多くなったとお考えになるか。農林、建設両大臣に、まずお伺いをいたしたいと思います。
  37. 福田赳夫

    福田国務大臣 お答えいたします。災害が不幸にして近年集中的にありますのは、これはまあ天候とか、そういう気象の関係も御承知通り大きく作用しておると思うのであります。しかし、これをさらにかみ砕いて考えてみますと、戦争中林野が荒廃に帰しておるという面がありますので、それに気象条件等が積み重ねられまして大きな被害をもたらしている、こういうふうに考えております。でありまするから、戦前のような安定した状態に河川、山野を置こう、こういうつもりでおる次第でございます。
  38. 村上勇

    村上国務大臣 ただいま福田農林大臣からお答え申し上げた通りだと思います。特に河川災害につきましては、やはり砂防関係等に非常に災害のおもなる原因があるように考えられます。まあとにかく、海岸につきましては地盤沈下の関係とか、あるいは従来明治以来の統計を基礎にしたもの、それによっての施設、それ以上の台風が来た、大波があったというようなことが原因だろうと思います。
  39. 倉成正

    ○倉成委員 実はどうしてこういう非常に単純な、簡単であるような御質問を私が申し上げたかと申しますと、ただいまの両大臣の御答弁に対しても、私は非常に大事な点が欠けているのじゃないか、こういう感じがするわけでございます。それはもちろんお考えになっておって、言葉が足らなかったと思うのでありますけれども、最近災害がいろいろ起こって参っております原因は、単なる自然的な条件、たとえば雨が最近多く降ったというようなことではなくして、雨は統計数字には上がりませんが、あるいは昔でもこれだけ降っておったかもしれない。しかし、この自然的な条件に加えるに社会的、経済的な条件、すなわちもう少しかみ砕いて申しますと、従来人が住まなかったところに、人口が増加するにつれて人が住んでいく。あるいは伊勢湾台風被害があれだけ大きかったのも、土地が非常に不足しているために、安い土地を求めてああいう海岸地帯にどんどん工場が建てられていった。これを決して悪いとは申しませんけれども、そういった問題が中心災害が非常に大きくなってきたと思うわけであります。従って、災害というのは決して自然的な条件あるいは財政の投資という問題だけでこれをはかるべきではなくして、自然的な条件、社会的な条件経済的な条件、もっと突き詰めて申しますと、ちょうど大臣提案理由にありますように、国土保全国土計画という点からこういう問題を考えていかなければならないと思うわけであります。その意味におきまして、国土計画とこの治山治水緊急措置法との関係をどのようにお考えになっておるか。そういう基本的な認識の問題を、これも両大臣にお伺いしたいと思います。
  40. 村上勇

    村上国務大臣 災害の原因が、御指摘のように、天上川の下にも軒を並べなければならぬ、あるいは一波でむねまでかぶるような海岸にも住まなければならぬほど、最近の自然にさからった国土の高率需要とでも申しますか、そういうことが非常に大きな災害を招いておる原因でもあろうと思います。従いまして、私どもが今回のこの治山治水基本法によって計画的に国土保全をはかる。これが要するに国土開発であり、また国土保全であるという、大きな役割をなす立法措置であります。災害の原因は幾つもありましょうけれども、その大きな問題としては、やはり自然にさからっていろいろと施設をしておるこの現状、これを私どもは軽視するわけにはいかないので、そのために、それらの安全を期するための私ども措置は、やはりこの計画によってのみ解決し得ることであるということを考えております。
  41. 福田赳夫

    福田国務大臣 お説まことにごもっともです。企画庁中心といたしまして国土の総合的な発展ということを、これと並行いたしましてさらにやっていきたいと思います。
  42. 倉成正

    ○倉成委員 また非常に単純な御質問をして恐縮ですが、両大臣にお伺いしたいのです。治山治水五ヵ年計画前期後期とに分かれて十ヵ年計画、これを進めていく上におきまして、大蔵省予算査定によりまして、毎年これを一応財政規模に従ってやっていくわけですけれども、どういう基準で優先順位をおきめになるか。これは非常に抽象的になって恐縮ですが、たとえばどの川から先にやる、どの治山事業から先にやるというのは、どういう基準をもっておやりになるか。基本的な考え方だけでけっこうですから、一つお伺いしたいと思います。
  43. 村上勇

    村上国務大臣 一応私ども災害防止ということを重点的に考えております。従いまして、その地方とかいろいろなことも勘案しなければなりませんが、一台風が来ると必ずここでは犠牲者が待っているというような、そういう危険のあるところ、そういうものを取り除きたい。こういう意味で、緊要度の高いところからこれを逐次完璧にしていくということをまず考慮に入れて、計画いたしておる次第であります。
  44. 福田赳夫

    福田国務大臣 建設大臣お話通り災害防止の観点から、緊急度の高いものから実施していく、これが中心でございます。
  45. 倉成正

    ○倉成委員 大体お気持はわかっておりますけれども、その緊急度というのがそもそもくせ者であり、問題でございます。どういう基準でこの緊急度をきめるかという問題について、あえてこれ以上申し上げませんけれども、これらの点については、もっと科学的な根拠が必要になってくるんじゃないか。     〔羽田建設委員長退席、古川農林水産委員長着席〕 たとえば河川改修をいたしましても、河川工事を大きな堤防、強い堤防を作れば、必ずこのリアクションがある。たとえば災害が非常に起こったところを見てみますと、非常に強い工作物のそばについて大きな災害が起こっておる。こういう問題は両大臣も御承知通りでございます。従って、こういった災害防止のための治山治水工事をするためには綿密な計画検討と、それから緊要度という問題を検討しなければならないと思いますけれども、問題を簡単にするために、こういった治山の問題にしましても、治水の問題にしましても、その工事がほんとうに適切な効果があるかどうかという検討、試験研究という面をどういうふうになさっておるか。両省でやられておりますことをお伺いしたいと思います。またその予算の額等わかれば、大まかでけっこうですから、伺ってみたいと思います。
  46. 村上勇

    村上国務大臣 これはもう緊要度の高いところからということで尽きると思いますが、たとえば治山におきましても、できる限り山腹砂防をやっていただいて、私の方、建設省としては、その場所によっては堰堤を特定多目的ダムを設けて、これによって洪水の調節をやる。これでも今までの経験から、あるいは実績から申しますならば、非常に上がっておると私は思います。昨年の台風にしても、またその前の台風にしてもそういう治山治水にともに力を入れて、ここは絶対危険なところであるというところに対しこの抜本的な措置をしたところは、これは十分災害から免かれることができておりまして、これらは全国各地にその事例があるのであります。こういうような意味で、私どもはこの五ヵ年計画、あるいは十ヵ年計画を遂行することによって十分所期の目的を達成できると思っております。
  47. 福田赳夫

    福田国務大臣 基礎的な研究は、従来から林業試験場、本場、支場、あるいは量水試験地において取り進めておりますが、応用研究の推進のために三十三年度から二ヵ年間東京大学の方へお願いいたしまして、量水曲線、そういうものの研究をいたしております。また三十三年から三カ年計画で水利科学研究所にお願いいたしまして、拡水法の試験をいたしておる次第でございます。そういうものの研究をもちまして、林業試験場がこれを科学的、合理的に決定していく、かように御了承願います。
  48. 倉成正

    ○倉成委員 非常に端的な御質問を申し上げます。建設省関係には、ダムは洪水を調節できるか。それから農林省関係には、先ほど山の乱伐の問題がございましたけれども、そういう保水という面で森林の方がいいのか、草地の方がいいのか。そういった点で基本的な研究結論が出ておるかどうか、一つお伺いしたいと思います。
  49. 山本三郎

    ○山本(三)政府委員 ダムにつきましては、建設省で自分で作ったり、あるいは県営の事業補助をいたしておりますが、これらのダムは洪水調節をほとんど全部が目的の中に含んでおりまして、これにつきましては、従来のいろいろな経験あるいは計画の中に具体的にどういうふうに洪水調節をするかという計画を織り込んでおりまして、ただ相手が天然現象でございますので、必ずしも計画通りに行くかどうかということが問題でございます。従いまして、ダムの操作をうまくやらないと目的通りの実績が上げられないわけでございますので、毎年昨年度の実績を全部持ち寄りまして、いかにしたならばダムの効果を完全に全うできるかという研究会を毎年開催いたしておりまして、できたダムが四十余りございますが、実績は逐次上がって参っております。
  50. 山崎齊

    ○山崎政府委員 森林の治山治水上の効果というような点につきまして、御存じの通り、保水機能の増大によります水の流量の調節の問題でございますが、これにつきましては、場所によっても相当の差はあるのであります。森林の今までの成果におきまして、森林のあることによりまして洪水時におきましては二〇%程度の流量の調節をはかることができる。また渇水時におきましてもやはり二〇%程度の流量の増加をもたらすものである、というような経過は一応出ております。また、これらの土砂の崩壊を防止するという点につきましても、森林の存在によって数倍ないし場所によっては数十倍の効果があるのだというような試験経過も出ておるわけであります。なお、これを森林の状態あるいは地質の関係というような点で、さらに研究を進めて参りたいというように考えております。
  51. 倉成正

    ○倉成委員 ただいまお答えがございましたけれども、多目的ダム、洪水調節の、ダムについても、いろいろまだ将来検討すべき問題があるし、また森林の治山治水に及ぼす効果については、確かにあることはある。しかし、これを森林として置いておくのがいいのか、草地としてこれを保った方がいいのかという問題については、私は学者の間でもまだ相当議論の余地があると承っておるのでございます。こういった点をもっと真剣に、もっと掘り下げて御検討いただいた上で、治山治水計画というものを立てていただきませんと、せっかく予算をとって努力をいたしましても、これが効果が非常に薄れてくる。こういう点につきまして、私は日本の行政機構の中でこういう試験研究機関の充実、あるいはこれに対する予算措置というものが非常に少ないと思うわけでございますから、これらの点については今後十分御検討いただきたいと思うのであります。  それから、さらに予算をせっかくとりました場合に、これをどういうふうに使っていくかというのが大きな問題であります。村上建設大臣はその道の権威者でありますが、たとえば河川を一つとってみましても、河川改修をやります場合に、一本の水系の川を全体として予算をつけられる。そうして、ある年は大蔵省予算の査定の結果、ある予算額がきまったといたします。ところが、川は生きておるわけでありますから、ある年に相当の金額を投じた工事をしますと必ずリアクションが出てくる。強い工作物を作れば必ず川の流れを、また川の態容を変えていくわけでありますから、次の年の工事というのはやはり弾力的に、相当技術的な検討をして、これを実際に合わすようにしていかなければならない。ところが、現在の予算のあり方、毎年々々区切っていくあり方におきましては、なかなかそういう運用はむずかしい。私ども、現地の実情から考えているわけでありますけれども、もっと技術者を信頼して、少なくともそういう一本の水系の川なら、総合的な作業をやらなければならない点については、予算を効率的に運用していくということが何よりも大事なことと考えるわけでありますが、これらの点についてどういう御配慮をなさっておるか、お伺いしたいと思います。
  52. 村上勇

    村上国務大臣 一河川あるいはその一区域の事業の施行にあたりまして、これを重点的にやるということは先ほど申した通りでありますが、特に連年を通じてそれらの事業推進をはかっていくということはこれはきわめて重大なことであります。私どもはある事業計画するにあたりましては、この河川においてはどの部分をまず第一に完璧にすべきか。その部分がかりに完璧になったとして、今度その次はどこ、その次はどこというように毎年のようにその川の完璧になるまで、その重要度は変わらないのであります。従いまして、ことしは一千万の事業費をかけてその部分の完璧をはかったが、来年は三百万しかつかないのでそれがどうも実現できなかったというようなことであってはなりませんので、今回のいわゆる長期計画策定いたしましたのは、そういう非常な不安を除くための一つの現われであります。従って、この計画樹立いたしまして、御指摘のような点の心配がないようにいたしたいと思っております。
  53. 倉成正

    ○倉成委員 予算実施につきましはいろいろ御検討されておるようでありますが、現地の実例をあげますと、いろいろ多くの問題があることは御承知通りでございます。従いまして、これらの点については将来十分留意をして予算実施をお進めいただきたいと思います。  なお、先ほど角屋委員からも御指摘がありましたけれども、今後災害防止治山治水というような点と関連しまして、水の利用という問題が非常に大きな問題になってくるわけであります。昨年アメリカの上院におきまして水資源の調査委員会が設けられました際に、いろいろ検討された結果、一九八〇年のアメリカ経済を見ますと、経済発展のための一番大きなファクターの一つが水である。こういう一つのサゼストがされておるわけでありまして、単に洪水を防ぐということだけでなく、もっと積極的に水を利用するという面について検討していくことが、今後の日本経済の発展のために非常に大事なことじゃないかと考えるわけであります。これらの点について、特にお考えになっていることがありましたら、一つお伺いをしたいと思います。
  54. 福田赳夫

    福田国務大臣 お話通り、今後水資源をどういうふうに活用していくかということは、国土計画上最も重大な問題であるというふうに考えております。しかし、水資源と申しましても、抽象的に事を論ずるわけにはいかないので、川一本々々についてその川の利用計画を作っていかなければならない、そういうふうに考えていきたいと思います。そういう見地からも、建設省におきまして水の問題を研究されておることはもとよりでございまするが、農林省におきましても、まず利根川利水事務所というようなものを作りまして、利根川の水を総合的に一体どういうふうに活用するかという研究を進めようという企画になっておる。三十五年度の予算においてもさようなお願いをいたしております。そういうものを持ち寄りまして、企画庁が総合的に最終的な決定をする、こういうふうにしたいと思うのです。今後、非常に重要視していることだけ申し上げておきます。
  55. 倉成正

    ○倉成委員 この治山治水緊急措置法の細部の問題については、同僚議員の時間をとりますので申し上げませんが、林野庁長官にちょっとお伺いしたいのです。三十五年度を例にとりまして、この治山治水緊急措置法に基づいてやられる治山事業のうち、災害復旧事業と予防的な治山事業との比率はどういうことになっているか、お伺いしたいと思います。
  56. 山崎齊

    ○山崎政府委員 お答えいたします。三十五年度について申しますと、復旧治山は、工事におきまして六十四億円、予防治山につきましては工事において八億円ということになっております。
  57. 倉成正

    ○倉成委員 河川局長、河川の関係ではどういうことになっておりましょうか。
  58. 山本三郎

    ○山本(三)政府委員 建設省の河川改修なりダムの事業は、いずれも事前に災害を防止しようという防災事業でございまして、従いまして、災害復旧は別に、この治山治水五カ年計画以外にやっておるわけでございます。砂防におきまして、お説のように、渓流が荒廃をいたしたところに対して緊急砂防をいたしております。これは工作物はいたんでおらぬけれども、谷が非常に荒廃しておるというところにありましては、これに対しまして砂防の処置をいたすわけでございますが、これは災害でなくてこの治山治水事業の中の事業でやるわけでございます。これの割合は、大体一割五分程度が荒廃地に施行されるというふうに考えております。
  59. 倉成正

    ○倉成委員 ただいま、どうしてこういう御質問を申し上げるかと申しますと、この治山治水緊急措置法が、国土を積極的に保全していくいわゆる前向きの法律であるためには、たとえば治山事業につきましても、山がこわれたからこれを復旧するということではなくして、もっと積極的にこわれないようにしていく。少なくとも、こういう、復旧が六十四億で予防が八億というのでなくて、半々程度、あるいはもっと意欲的にそれ以上な対策を講じていくということが大事なことではないかと私は思います。しかし、今日の技術の段階では、あるいはそれは不可能かもしれない、どこがこわれるかわからないのですから。そういう予防的な、やみ夜に鉄砲を撃つようなことはできないかもしれないというところにいろいろ問題があるのではないかと思います。また建設省の所管につきましてもいろいろ、治山の問題とは多少性格が違うかもしれませんけれども、それに類似した問題があると私は考えるわけでありまして、この治山治水緊急措置法が現在までの治山治水に関するいろいろな措置一つ法律の体系にいたしまして、そしてこれを政府に義務づけをする。それから、この必要な措置政府が講ずるというようなことで、一応まとめられたことにつきましては、私は満腔の賛意を表するわけでありますが、率直に申しまして、この法律がややもすればうしろ向きの、今まであったのをただ集大成したというだけであって、前向きに積極的にほんとうに国土計画を立て、国土保全をやっていくのだ、こういう意欲がこの法律からは感ぜられないのでございます。  この点は、将来いろいろ基本的な法律をお作りになるというお話でございますから、譲るといたしまして、先ほど治山であげましたほかに、試験研究機関の充実、また国土計画との関連も、先ほど作業の緊急度というお話がございまして、今これをやっておかなければ人命に非常に支障を来たすとか、いろいろそういうお話がございました。しかし、これは現在の社会的な条件、現在の工場配置、人口配分というのを前提とした議論でありまして、この狭い日本でこれから先いろいろ総合的な国土計画を立てていくためには、新しい工場敷地、新しい人口配分ということが積極的に考えられていかなければなりません。そういった将来の国土計画関連した治山治水事業ということが、新しい時代の治山治水事業でなければならないと考えるわけでありますから、これらの点についても、今後十分御検討いただくことを要望いたしまして、私の質問を終わります。
  60. 二階堂進

    ○二階堂委員 ちょっと関連して、農林大臣にお伺いをいたしてみたいと思うのです。この水の利用の問題、特に農業用水の問題に関連してでございますが、最近早期栽培が非常に普及して、その増産効果というものは非常に顕著なものがある。私どもは周囲でよく知っておるのでございますが、特にこれに関連いたしまして、大臣も御承知かと思いますが、最近早期栽培に利用されている水田の面積というものが飛躍的に多くなってくる。昭和二十八年は約一万二千町歩くらいあったものが、三十一年度におきましては六万一千町歩、三十二年度におきましては十万五千町歩、三十七年度の予想におきましては三十五万六千町歩というふうに、飛躍的に早期栽培が奨励されて、面積が多くなってきておる。これに関連いたしまして、特に水の利用に関する問題が各地で真剣に検討されつつあるように承っております。特に、私の見ましたある報告によりますと、西日本の河川等にはこの農業用水、特に早期栽培に利用される水の問題について、緊急に水の利用に関する再編成の計画樹立しなければならぬということが述べられておるわけであります。こういうようなことを考えましても、これは電力に必要な水、あるいは上水下水に必要な水等も当然のことでございますが、農業関係の利水という問題を考えてみましても、これは真剣に検討されなければならぬと思っております。こういう計画をやはり同時にお考えになって、今後この治山治水計画にも織り込んでいかなければならぬと私は考えております。こういう問題について、十カ年にわたる長期の事業計画をお立てになるわけでございますが、こういう面について積極的にこの計画に自分の意見農林大臣としての意見を述べられて、そうしてこの農業用水の利用についても遺憾なきを期するというお考えもあってしかるべきだと思うのですが、これに対してどうお考えになりますか。  それからもう一点は、この農業用の水田に水を取り入れるための取り入れ口が全国に約四十万カ所以上に上ると言われております。この個所が水害等には非常に災害の原因になっている。これは事実、私災害各地を回って見ましても、しばしばあるわけでございます。今回この治山治水、特に災害防除という見地に立って治水計画をお立てになるわけでありますが、こういうような具体的な計画をお立てになる場合に、従来、ともすれば河川の管理者と農林関係の管理者との間に計画が統一されてないといったような場面があったのでございますが今度の計画は特に長期にわたる計画をお立てになるわけでありますので、これらの計画樹立についても、私は相当緊密な連絡をとってお立てになる必要があろうと思っております。これらの計画樹立についても、農林大臣としての御意見を積極的に建設省と相談をされていかなければいかぬと思いますが、なおまた、この取り入れ口に対する管理の問題、これの責任が明確にされておらぬために、水の調節等においてしばしば災害の原因をかもすようなことが起こっておるということもございますので、こういう点についてどうお考えになるか。  第三点は、治水関係におきましても、災害が非常にふえてきている一つの原因は、山の中の小さな土地の河川が非常に荒れてきているということにも大きな原因があると思っております。ところが、最近建設省あたりが洪水調節のために山間の奥地に作った小さなダム、五、六千万ないし七、八千万程度で作ったダムが洪水の調節を非常にうまくやっておる。従って、下流における災害が大きくなるのを防いでおるという、ほんとうに効果の出ているダムがあるわけであります。今回、治山治水を総合的に十カ年計画をお立てになるこの計画の中に、そういうようなダムを相当作っていかなければならぬと私は思っております。これはやはり建設省農林省との間において、その具体的な計画をお立てになる前に、一つ十分検討をしていかなければならぬ。小さな川を局部的に改修するのに相当な金を使うよりも、一カ所に五、六千万ないし七、八千万かかるようなダムを作っていった方が、非常に効果をおさめておるという事実を知っております。当然そういうふうに計画を進められていかなければならぬと私は思っております。そういうような計画をぜひ立てていただきたい。その場合、やはり費用の負担についても、特別会計が二つになって、この問題についてもいろいろ議論が出てくると思いますが、そういうようなことに対して一つ基本的に十分検討して計画樹立し、管理等に遺憾なきを期していただきたい。  こういう三点について、大臣の所感を承っておきたい。
  61. 福田赳夫

    福田国務大臣 お説、一つ一つごもっともでございます。建設省とよく連絡いたしまして、間違いのないようにいたしたいと思います。
  62. 吉川久衛

    ○吉川委員長 神田大作君。
  63. 神田大作

    ○神田委員 大臣に率直にお尋ねします。一体この治山治水の十カ年計画というものをやることについて、いつごろからお考えになっておられたか。この法案を出すことについて相当検討を加えておったろうと思うのでございますけれども、こういう法案を出すことについて、あるいはこの計画を立てることについて、いつごろから、どのような考えを持っておられたか、お尋ねします。
  64. 福田赳夫

    福田国務大臣 伊勢湾台風直後からでございます。
  65. 神田大作

    ○神田委員 伊勢湾台風前は、もうこの計画が五ヵ年計画とか、あるいはその前の二十八災の直後においても、やはり治山治水の十ヵ年計画というようなものを立てておった。これらを計画いたしましても、政府はかけ声だけで実際にそれを実行してはおらない。そういうようなときに、農林大臣は伊勢湾台風のときに考えておったと言われますけれども、われわれの見るところでは本年度の予算編成にあたって、与党の諸君からも、おれのところの仕事が足らぬ、こういう仕事もやってくれというような、そういう予算ぶんどりにからまっていろいろと要求を受けて、そういうことを緩和するために、これの言いわけのためにこの計画を立てたようにわれわれには見受けられます。これは村上建設大臣がいないのでまことに残念でありますけれども、その点についてわれわれはそう思い、世間でもそう言っているが、その点について農林大臣の見解をお聞きします。
  66. 福田赳夫

    福田国務大臣 前から長期計画がありまして、その進行がどうも思わしくないので、建設、農林両省におきまして非常にそれを遺憾としておったというのは事実でございます。そういう背景から数年来特別会計設置論というものが出てきておったわけでございます。そういういきさつを経まして、昨年秋の伊勢湾台風、そういうものがあった。そこで政府といたしましては、政府といたしまして根本的な措置を講じなければならぬという決意をいたしたわけでありまして、決してこれは予算編成期じゃない、予算編成前の臨時国会におきましてすでにその方針は宣明しているわけでありますから、さよう御了承願います。
  67. 神田大作

    ○神田委員 それではお伺いしますが、この特別会計予算を見ましても、あるいはこの法案を見ましても、長い間かかってほんとうにこれをやっていこうというような抜本的な計画の片鱗も見えないということは、今、与党である倉成君からも指摘されている。国土総合開発を推し進めるための遠大な計画のもとに、はたして出発したのかどうかということに対して、与党である倉成君でさえも疑問を持って今質問されている。  たとえば林野関係を見ましても、これは去年の予算に比べますと、わずかに五億円程度しかふえていない。これは三十四年度の補正予算では百十一億五千万円ですが、三十五年度の計画では百二十一億三千万円。そういたしますと、三十四年度の補正後の計画との比較を見ますと、十億程度しかふえていないことになる。しかし、これは民有林の費用もありますから、実際は五億円程度である。こういうように特別会計をやらなくても平常の予算でやれるものを、わざわざ治山治水特別会計を作り、こういう法案を出す意味がないと思う。もし、真に国土総合開発の観点に立って治山治水をやるならば、もっと抜本的な、財政面におきましても、計画面におきましても、今後の災害の防止あるいは今後の国土開発という観点に立って、その規模に応じたちゃんとした予算を提出すべきである。常にやるのと何ら変わりもない五億円ぐらいの予算の増加しかない計画を出して、そして五ヵ年計画であるとか十ヵ年計画であるとかいうようなことは、われわれは納得できないことである。この点について、どうお考えになっておりますか。
  68. 福田赳夫

    福田国務大臣 せっかくの御意見でございますが、私どもといたしましてはこれ以上の対策はないというぐらい抜本的なものだと理解しております。どうも神田さんのお話を聞いておりますと、五億円だ何だと言っておられますが、そうじゃなく、治山につきましても、民有林だけでも前年度の事業量に比べまして二十二億円増加をするのです。しかも今後十カ年千三百億円、その速度は毎年八・七%ずつ増加していく。これは日本の財政上容易に実行できる問題なのです。河川におきましてもほぼ同様の速度でこれをやっていく、こういうことです。実現可能の問題であり、しかもこれを確保するために特別の会計を設ける。また、基本計画を立てるためには、ただいま御審議を願っている特別法まで作る。こういうことで、これによって十ヵ年後には必ず安定した状態が実現できる。かように確信をいたしておる次第でございます。
  69. 神田大作

    ○神田委員 私は、大臣の言われるように必ずしもこれでもって安定した施策ができるとは思われない。たとえば、きょうは建設大臣がいないから河川局長にお尋ねしますが、治水計画の基本方針は、一体どういうふうな考え方を持っておられるのですか。  それから、先ほど農林大臣が、僕の五億円というのは違うと言うのですが、僕は林野関係だけを例にとって申し上げたのです。治水関係は含んでいない。その点は御了承願います。
  70. 山本三郎

    ○山本(三)政府委員 建設省治水関係予算といたしましては、前年度に比べまして三〇%の増になっております。それから、事業費にいたしまして三二%の増になっております。従いまして、従来に比べますと画期的な増加でございますし、また三十五年度以降におきましても、平均いたしますならば、五カ年間の平均毎年一一・五%の伸び率が想定されるわけでございますので、画期的な事業の遂行というふうに考えておるわけでございます。  それから、治水計画の基本方針でございますが、これは終戦後非常に災害が激増いたしておりまして、終戦後の毎年の被害額は直接の被害だけでも二千億以上に達しておるわけでございまして、戦争前に比べますと非常に大きな不安をもたらしているわけでございます。十カ年計画の目標といたしましては、比較的安定をいたしておりました昭和の初期の時代の災害の状況に戻して、安定した状態にしようというのが目標でございます。
  71. 神田大作

    ○神田委員 災害の大きな原因は、中小河川のはんらんが非常なる大きな原因になっておると思うのでありますが、この中小河川の改修あるいはこれの治水計画ということに対しては、どういうようなお考えを持っておられますか。
  72. 山本三郎

    ○山本(三)政府委員 お説の通り、最近は非常に局地的の豪雨が多いわけでございますので、中小河川あるいは小河川に非常に災害が頻度が多く発生しております。従いまして、今回の治水五ヵ年計画におきましても、これらの事業のうち早急に施行する必要のある中小河川、小河川を取り上げまして積極的に促進して参りたいというふうに考えておるわけでございまして、五ヵ年計画におきましては大河川のみではなくて、災害の原因をなしております中小河川あるいは小河川等に重点を置いて施行して参りたいというふうに考えております。
  73. 神田大作

    ○神田委員 われわれが見るところによると、この中小河川のうち、治水計画を遂行するために十億円かかるという河川がある。ところが、それに対して建設省予算は一年に五百万円ないし一千万円。そうすると、百年かからないとこの河川は達成できない。あるいは場合によると二百年もかかるというようなこともある。そういうような現実の河川が全国にたくさんあるわけです。だから、あなた方が、抜本的な治水計画によってこの災害を防止するとか、あるいは国土開発をはかると言ったところで、こういう河川を今日このままにしておいては、とうていその達成はできないと思うのでありますが、このことについてどうお考えになりますか。
  74. 山本三郎

    ○山本(三)政府委員 お説の通り、現在までにおきまして施行中の河川におきましては、現在の今までつけた予算から計算いたしますと二十年三十年、あるいはもっとかかるような形態になっている河川がありまして、これでは災害が抜本的に除去できない。それから、一度手をつけたのがそう長くかかるということは非常に残念でございますので、今回の五ヵ年計画あるいは十ヵ年計画立案に際しましては、少なくとも十ヵ年間におきましては、手をつけた河川におきましてはこれをできるだけ完成に持っていきたいというふうにいたしたいわけでございまして、これが五ヵ年計画なり十ヵ年計画を作る私どものおもなる目的でございますので、地元の方々も毎年々々、予算が幾らかわからない金が回ってくることは非常に不安でございますので、五ヵ年間ではここまでできる、あるいは十ヵ年間にはここまでできるというふうな形にいたしまして、地方の方にも安心をしていただくように、いつまで待てばどこまでできるというふうな形にいたしたいというのが、この五ヵ年計画、十カ年計画を作りたいということの基本的な考えでございます。
  75. 神田大作

    ○神田委員 局長の言うことはもっとものように聞こえるのでありますが、一体それに対する財政的な裏づけがはたして得られるかどうか。今のような状態では、あなたが言うように、手をつげた河川を現在のままでおると百年もかかる。これを十ヵ年間で仕上げると口で云うのはやさしいでしょうけれども、それに対する財政的な裏づけは、私はそれの保証はないと思うのですが、その点は、局長はどうお考えになりますか。
  76. 山本三郎

    ○山本(三)政府委員 この点につきましては、先ほど来、各大臣からお話がございましたように、五カ年計画なり十カ年計画は、現在の経済伸び率から見ると多少それを上回っておるのでございますけれども、現在の治水の状況が非常に悪い状況でございますので、これを経済伸び率よりもさらに拡大いたしまして促進しようということでございます。しかし、その拡大の率にいたしましても、現在の経済伸び率からいえばこのくらいの程度なら確信ができるということで、閣議でもその点御了承をいただいておるわけでございますので、現在考えておる五ヵ年計画なり、十カ年計画は確実に実行できるものと確信いたしております。
  77. 神田大作

    ○神田委員 これは水かけ論になりますから、この程度でやめますが、この五カ年計画あるいは十カ年計画というものを、今までの経済五ヵ年計画とか、あるいは十カ年計画が中途において挫折したようにこれを挫折しないで完成するということを、先ほど村上建設大臣も申されましたが、しかし、大災害があるとこれが予算の獲得は困難であるというようなことを申されましたけれども、大災害というのは、どういう程度災害をいうのか。あるいはそういう災害にかこつけて、あるいはまたいろいろ諸情勢の変化などということを理由にして、これを中途で放棄するようなことがないかどうか。それをお尋ねいたします。
  78. 福田赳夫

    福田国務大臣 さようなことは絶対にございません。それは先ほど来、るる申し上げております通り、十ヵ年間の事業費伸び率が八・七%だというような軽微なものでありまして、わが国の財政としてこれくらいを調節できない、かようなことは考えられません。三十五年度は先ほど来五億円だというようなことを言われますが、そうではなくて、民有林でも二十二億円であります。三三%の増加であります。さようなことからいきまして、たとえば災害があったその年にどうも回りが悪いというようなら、その次の年にすればいいといいことも考えられまするし、ことにこの計画をごらんいただけばよくわかりますが、前五ヵ年が非常に速度が早いわけです。一一・七%という速度でやっているわけであります。あとの五ヵ年間は非常に軽くなりますから、あるいは十カ年計画というのが、相当早目に繰り上げてやれるというようなことになるかもしれない。相当余裕を持った計画である、かように御了承願います。
  79. 神田大作

    ○神田委員 林野庁長官にお尋ねします。この治水治山計画をする上において、保安林の整備というものは、やはり大きなウエートを持つと思いますが、この保安林整備についてどのような考えを持っておられますか。
  80. 山崎齊

    ○山崎政府委員 保安林につきましては、昭和二十八年の大きい災害にかんがみまして、保安林整備計画樹立いたしまして、当時全国におきます保安林は二百六十万町歩程度であったのでありますが、これを四百万町歩に増加しようという計画を立てまして、三十五年度をもちましてこの計画は完成されるという計画になっております。あわせて、この保安林の中で特に重要な地域にありまして、国がその所有権を持ちまして管理していくべきだというふうな重要地域につきましては、国有林特別会計において買い上げの措置を講じて、その買い上げる際に治山事業もあわせて国有林特別会計実施するという計画でいきたいと存じております。
  81. 神田大作

    ○神田委員 その保安林の整備をする上において、審議会か何かあると思いますが、この審議会におかけをして、そうして、どこの保安林を買い上げるとか、あるいはどこの保安林を指定するとかいうことをなさるわけですか。
  82. 山崎齊

    ○山崎政府委員 保安林を指定いたします場合に、林野庁におきまして、重要な保安林としてぜひとも経営を管理しなければならないという地点を調査いたしまして、それを地域別に取りまとめまして、これを森林審議会にはかるということをやって、その審議会決定を待ってさらに具体的な調査をいたしまして、指定措置も行なうというふうにいたしておる次第であります。
  83. 神田大作

    ○神田委員 私は、この審議会にかける前に、どこの保安林を買い上げするとか、こういういろいろの秘密事項が漏れて、そうして前もってその保安林が売買され、そして相当の利益を含んで国に転売というような形で売る。あるいはまた保安林に指定する前に、保安林としての非常に必要な巨木が伐採されて、そして小さな木ばかりになったものを保安林として買い上げるという、そういうことがあるようにも私は聞いおるのでありますが、そういう点について徹底的に追及する時間がありませんから、あとの機会にこれはやっていきたいと思うのでありますけれども、一応長官の所信を承っておきたいと思います。
  84. 山崎齊

    ○山崎政府委員 民有保安林を国が買い上げます計画は、二十九年度以降に十カ年計画を立てまして、約三十万町歩程度を買い上げたいということで当初臨んだのであります。その買い上げいたします地域につきましても、やはり林野庁で十分な調査をいたしまして、森林審議会に諮ってその大体の予定地域というものの輪郭をきめるということにいたしております。この面積は現在で約五十万町歩という面積になっておるのでありまして、この中から年々二万町歩ないし三万町歩足らずのものを買い上げるというような実行をいたしておるのであります。  なお、保安林にいたしましても、これが全然伐採を禁止するというものではないのでありまして、一定の森林法に定められております施業条件によって伐採は許されておるわけでありますので、この買い上げというものと伐採というものとの直接そこに関係があるという形のものではないのでありまして、伐採跡地を買うといたしました場合は、それにはえております立木が小さいものであるならば、小さいものとしての価値しか持たないということでこれを買うわけでありますので、そういう点にいろいろな問題点は絶対にないというふうに確信いたしております。
  85. 神田大作

    ○神田委員 あなたは問題点がないと言うが、われわれは非常な問題点があると思う。これも時間がありませんから、後刻の機会に御質疑申し上げます。  最後に、大臣にお尋ねします。この治山治水緊急措置法の中に、提案理由説明にもある通り国土保全及び開発ということがあります。非常に大事なことだと思うのです。保全はもちろん必要でありますけれども開発ということが日本の今日の農業の事情、経済の事情から申しましても非常に大事なことだと思いますけれども、これが積極的な計画をどのようにお考えになっておられますか。
  86. 福田赳夫

    福田国務大臣 今回お願いしております法案は消極面の災害をなくしようという面が性格上強く出るわけでございまするが、同時に国土開発の積極面につきましては、これは企画庁の重要任務でありまして、これは大いに進めておる。特にこれは抽象的な議論では事は済まないので、具体的にやらなければならぬ。かようなことから、北海道、東北につきましては、御承知のような仕組みでこの総合開発を進めております。また九州、四国等につきましてはそういう総合開発を進める。また水を中心にいたしましては、重要水系ごとにそういう電源開発計画を進めておる。こういうことで、積極的に水の基盤を作りましたあとにおける施策につきましては、企画庁中心に進めておる。こういう考えであります。
  87. 神田大作

    ○神田委員 これは議論をしますと限りがありませんが、たとえば那須野ヶ原の開発というようなこと、これはずっと前から言われておる。この那須野ヶ原の広大な荒野に水を入れて水田にしていきたい、そういう要望が相当あります。実際これに水を入れれば美田と化することでありますけれども、すぐ手近に、そういう開発すれば美田になる、相当の原野が農地になるということがわかっておっても、長年の間手がつけられないでおる。こういう現実の問題。これはやはり治山治水特別緊急措置法をやる以上は、もちろん国土保全は必要でありますけれども、この開発促進して、そうして日本の農業の近代化を推し進めなければならぬと思うのでありますけれども、こういう点について積極的な計画を立てられることを一つ要望いたしまして、私の質問を終わります。
  88. 吉川久衛

    ○吉川委員長 芳賀貢君。
  89. 芳賀貢

    ○芳賀委員 委員長に申し上げますが、この法案審議にあたって、主管の建設大臣の出席がないと審議が進みませんので、至急出席するように連絡を願います。
  90. 吉川久衛

    ○吉川委員長 承知しました。
  91. 芳賀貢

    ○芳賀委員 それでは、大臣が出席するまでの間、農林大臣にお尋ねします。  今度の法案内容を見ると、非常に内容が抽象的で、何を目的にしてこういう法律案を作ったか、ちょっと理解に苦しむのです。その点について、具体的に一応の御説明を願いたい。
  92. 福田赳夫

    福田国務大臣 これは提案理由の御説明で先ほど建設大臣から申し上げた通りでございますが、要するに今回治山治水十カ年計画を進めよう。その予算的裏づけといたしましては、三十五年度予算でお願いをしておる。またその予算を執行する財源を確保する、さような面からは会計法の改正につきまして御審議をわずらわしたわけでございます。そのもとになる計画をどういうふうに裏づけて進めていくかということにつきまして御審議を願うのが、この法律案の大体の趣旨でございます。
  93. 芳賀貢

    ○芳賀委員 これは建設大臣にも尋ねたいのですが、最近政府の方針は、公共事業についてはほとんど特別会計方式をとっておるように見られるわけであります。たとえば特定土地改良事業であるとか、あるいは特定多目的ダムであるとか、あるいは特定港湾事業、さらにまた今度の治山特別会計とか、あるいは林野特別会計の中における治山の勘定科目のような点を見ても——こういうことになると、公共事業計画性というものは非常に減殺されると思いますが、この点はいかがですか。
  94. 福田赳夫

    福田国務大臣 政府の会計はなるべく総合的であって、総合的に計画が見られるという仕組みの方が原則としてはいいわけです。しかし、特に重点を置いて、この事業は特定の財源で進めていこうというようなものにつきましては特別の会計にして、それがやりいいようにするということも、例外的にはそれをとるべきではないかというふうに考えるわけであります。さような観点から、土木関係の仕事につきまして道路のような仕組みになっておるものもある。もう少し機動的に仕事をやろうというという観点から公団というような組織を用いている部面もあるわけでありますが、今回治山治水につきましては相当思い切って財源をととのえてやる、こういう意味から特に特別会計にいたした次第であります。
  95. 芳賀貢

    ○芳賀委員 公共事業の中の重点的に行なう事業ということになると、ほとんど全部特別会計になった、道路初め、港湾にしても、河川にしても。それじゃ、公共事業のほとんどすべてが特別会計方式になった中の重点事業というのは、何ですか。
  96. 福田赳夫

    福田国務大臣 事業が重点というばかりでなくて、その重点と考えられる事業が特定の財源をもって実行できるというような性格のものを選んで、たとえば道路ではガソリン税とか、あるいは港湾につきましては港湾利用者からの収入でありますとか、そういうようなもの。今回の治山治水特別会計につきましては、地方団体からの交付金を見返りにしまして借入金をするという、特別の財源をととのえて会計を別にした。かような次第でございます。
  97. 芳賀貢

    ○芳賀委員 建設大臣にお尋ねします。大臣が出席されないので、農林大臣に質問しておったのですが、公共事業がほとんど特別会計方式に最近移行しておるということは一つの問題だと思います。そのことは、一方から見ると重点化、能率化ということも言えるかもしれぬが、しかし公益事業総合性というものは失われるという大きな欠陥があるわけです。そういう点については建設大臣はどうお考えになりますか。
  98. 村上勇

    村上国務大臣 公共事業につきましては、建設省としては建設省中心としてすべて企画して参っておりますし、また他の省に関係のある部分につきましては企画庁がこれを統括して、それぞれ総合的にまた統括してやってくれると思います。
  99. 芳賀貢

    ○芳賀委員 それで農林大臣は、今度の治山治水の緊急措置は、これは会計面では特別会計法が出るわけですが、たとえば道路整備事業の場合には、特定財源としてはガソリン税が年間九百億ぐらいは見込まれておる。しかし今度の、たとえば治水特別会計等の場合においては財政法十三条に示すような、特定の事業を特定財源を確保して行なうというようなものには当てはまらないのじゃないかと思うのです。ほとんど一般会計からの繰り入れに依存して、一部それは地方からの委託事業費等はあるが、ほとんど九〇%近くは一般会計に依存しておるということになれば、何も好んでこの際特別会計を設けなければならぬということにはならぬと思うのですが、どうですか。
  100. 村上勇

    村上国務大臣 一般会計から繰り入れるほかに、交付公債一般会計に繰り入れるべきものを特別会計に繰り入れて直轄事業等においては施行できるというような点、あるいはまた、ただいま御指摘になりましたような電気事業者とか、そういうような特別なものからの事業費の繰り入れ等もこれに加わります。
  101. 芳賀貢

    ○芳賀委員 そこでお尋ねしますが、この法案内容は、長期的な治山治水事業策定するということも一つの目的なんですが、これに関連して政府策定されておる長期五ヵ年経済計画と今度の治山治水長期計画との関連性というものは、どういう内容になっておりますか。
  102. 菅野和太郎

    ○菅野国務大臣 さしあたり、治山治水長期経済計画を大体これによって定めるわけでありますが、今、国民所得倍増の長期経済計画を立てておりますので、その長期経済計画策定する場合に、やはりこの治山治水長期経済計画をにらみ合わせて検討していまたい、こう存じておるのであります。でありますからして、並行的にこの計画策定していきたいと考えている次第であります。
  103. 芳賀貢

    ○芳賀委員 今まで政府におかれては、たとえば昭和三十年に経済自立五ヵ年計画というものを作られたんですね。それから、その次には昭和三十二年の十二月に新長期経済五ヵ年計画というものがある。これらはいずれも閣議において決定されたというようにわれわれは承知しておるのですが、いかがですか。
  104. 菅野和太郎

    ○菅野国務大臣 お話通りであります。閣議において決定されたものであります。
  105. 芳賀貢

    ○芳賀委員 閣議決定によるこの二つの長期経済計画は、いずれも、たとえば五ヵ年計画の場合においては、五ヵ年間の達成の成果を見ないうちに、もう常にこれが放棄されて、また次々に経済計画というものが出てくるわけです。三十二年のは新長期経済計画ですが、それでは今度作るのは新新長期経済計画ということになるのですか。閣議決定に基づくいわゆる経済計画決定事項というものは、一体どの程度の権威を持っておるのですか。法的な根拠、あるいはこの閣議決定事項なるものは行政上、予算上にどの程度の拘束力あるいは権威を持っておるものであるか。その点をお聞きしないと、この法律審議はなかなか困難だと思います。
  106. 菅野和太郎

    ○菅野国務大臣 今お話しの、現在やっております新長期経済計画は、これは三十三年から始まっておるのであります。ところが、あのときの立てました案が、今日から見ますると小さかったということになるのでありまして、その後における経済の発展が新長期経済計画を立てたときよりも、はるかに上回って発展しておるのであります。でありますからして、どうしてもあの現在やっております新長期経済計画をやり直さなければならぬという必要が起こってきたのであります。もともと長期経済計画をかりに立てましても、二、三年たてばやり直していくというのが世界各国のみなやり方であります。でありますから、して日本も最近における経済の格別な躍進からして、どうしても今やっております新長期経済計画をやり直さなければならぬということで、国民所得倍増の長期経済計画というものを新しく立てることになりました。これは三十五年が初年度で、昭和四十四年で大体十カ年ということにいたしておりますが、その国民所得倍増計画と今度の治山治水長期計画と、やはりにらみ合わせていくということを先ほど申し上げたのでありまして、今やっておりますお話昭和三十二年に策定しました新長期経済計画と今度の計画とはまた別の計画である。新しい計画でありますから、さよう御了承願います。
  107. 芳賀貢

    ○芳賀委員 ただ問題は、新長期経済計画の場合においても、この中には国土保全事業なるものはやはり計画として盛られてあるわけです。それから経済自立五ヵ年計画の場合においても、公共事業に対する五ヵ年計画というものは示されておるわけです。ですから、今回の法案は、これは前後通じて十カ年の長期の計画ということになって、当然これは国の長期経済計画と緊密なつながりのもとにこの可能性というものが発展していくわけですから、このもとになる長期経済計画が時々刻々に狂っていくようなことになると、たとえば治山治水前期五ヵ年計画とか後期五ヵ年計画とかいうものでは、やはり長期的な計画とかそういう内容に自信が持てないと思うのですよ。そういう計画であれば、何もこれはこういう法律まで作って長期的な計画を立てる必要もないじゃないかということにもなると思うのです。そういう点に対して、企画庁長官並びに建設大臣の御意見を伺っておきます。
  108. 菅野和太郎

    ○菅野国務大臣 長期経済計画は十カ年の経済の発展の見通しなのでありまして、それに基づきまして、それを基準として一応公共事業計画を立てるということに相なるわけであります。でありますから、今回治山治水長期経済計画も国民所得倍増の長期経済計画を基準として立つべきでありますが、先般来私がたびたび申し上げました通り、この国民所得倍増の長期経済計画の具体策というものは実はまだできておらないのであります。目下経済審議会において審議中なのでありますから、その長期経済計画の具体策はできないのでありまするが、しかし、大体国民所得倍増の長期経済計画を立てる場合に、一体経済を発展せしむるにはどういうところが基本であるかということを考えてみれば、産業基盤の強化ということが第一に考えられる、あるいは生産技術の向上ということが考えられますから、そういうような問題の費用は昭和三十五年度において一応計上しておく必要がある。個々の経済活動に対する具体策は経済審議会において決定して、それによってきめたいということで今日進んでおる次第でありますから、従いまして、お話治山治水長期経済計画も国民所得倍増の長期経済計画とにらみ合わせて今後進捗させたいというように考えておる次第であります。
  109. 芳賀貢

    ○芳賀委員 この新長期経済計画と同じ起点で始められた、たとえば治山治水の五ヵ年計画なんというものがあるのです。これは当然昭和三十三年、三十四年と実施されておるのです。従って、この際現在まで続けられておるこれらの五ヵ年計画がどのような実績を示して達成されており、現在の五ヵ年計画から見るとまだ残事業というものがあるのですから、こういうものの内容がどうなっているかという点を御説明願いたいと思います。
  110. 村上勇

    村上国務大臣 この前に想定いたしました五ヵ年計画は、経済伸び反対に、どうもこの五ヵ年計画の裏づけがついていっておりません。従って、幸いに長期経済計画も新しくまたより以上に伸びてきたから、その伸びたところを標準にしてここに改めていく。この際私どもとしては、治山治水事業におきましてもあるいは治山におきましても、ここで抜本的な国土保全をやろうとすれば、どうしても予算の裏づけというものをはっきりしてもらわなくちゃならぬ。そのためには、どうしてもこういう治山治水基本法に基づいて、正式に閣議決定してその規模をきめる。ところが、経済成長率治山治水伸び率というものは必ずしも並行していない。むしろ経済の今日予定される伸びよりも、治山治水の方が率が相当上回っている。これは戦後の台風による国土被害、また昨年あたりのああいう伊勢湾台風等の実績にかんがみて、民生の安定、あるいは経済基盤を確立するためには、どうしてもまず国土保全には少しピッチを早くやらなくちゃいかぬ。そして一刻も早く災害から国土を守らなければならないという面が相当加味されまして、経済伸び率とは率としては、必ずしも同じものでありませんが、はるかに上回ったものを策定いたした次第であります。かような意味で、今回の治山治水長期計画は、私どもはここに非常に大きな何か災害でもない限りは、必ず実施できるという確信を持って策定いたした次第であります。
  111. 芳賀貢

    ○芳賀委員 私の聞いておるのは、昭和三十三年から始まった治山あるいは治水事業等の五ヵ年計画策定されており、すでに三十三年、三十四年は実施されておるわけです。ですから、その実施の成果ですね。計画に対してどういうような実績を示しておるかという点を、これは事務当局からでもいいですが、お答え願いたい。
  112. 福田赳夫

    福田国務大臣 治山について言えば、前の計画を立てました当時には荒廃地が三十六万町歩あったのですが、それを大体昭和初期の八、九万町歩程度に減らそうということで始めたわけでございます。ところが、財政上の都合がありまして、それがなかなか進捗しない。わずかに六万町歩しか減っておりません。従って、三十万町歩というものが残るわけであります。ところが、その間にさらに災害が発生しまして、二万町歩も逆にふえておるというので、今日は三十二万町歩あるのです。これを十カ年で解消しよう。前回の計画では財政的な裏づけがないということがこの事業の進まなかった原因だというふうに考えましたので、今度は会計を別にし、しかも特定の財源をこれに引き充てて必ず実行しようというのが、今度の計画であります。
  113. 山本三郎

    ○山本(三)政府委員 お説の通り昭和三十三年度以降五ヵ年の治水計画を作りまして、建設省といたしましては、その線によって三十四年度までの事業実施したわけでございます。三十三年度と三十四年度との実施額の合計は約八百億でございまして、全体の五ヵ年計画に比例いたしますと約二四、五%程度でございます。その間におきましていかなる事業が行なわれたかという点でございますが、その間にできましたダム、あるいは河川の改修、砂防等におきましては、昨年の災害におきましても、でき上がりましたダム、あるいは作りました堤防等におきまして効果を発揮いたしておるわけでございまして、地元からも、最近作りましたものの効果が非常にあったために引き続いて早くやってくれという要望がたくさんきておるのが実情でございます。
  114. 芳賀貢

    ○芳賀委員 この法律の目的にも、国土保全開発ということがうたってあります。国土保全ということになると、先ほども同僚委員から意見がありましたが、これは単に治山治水だけでなくて、やはり海岸保全事業等は当然不可欠なものだと思うわけです。ですから、国土保全を重点にこの際計画的に進めるということになれば、やはり海岸保全事業というものはこの中に総合的に取り入れて計画化する方がいいんじゃないかと思うのですが、特にこれをはずした理由はいかかですか。
  115. 村上勇

    村上国務大臣 海岸をこの計画からはずしましたのは、海岸につきましては、東京湾とかあるいは大阪湾、またその他の地区におきましても、ただいま一応継続事業としては積極的に施行はいたしておりますものの、地盤沈下等の関係からまだ十分な調査も完了いたしておりませんし、またこの海岸の問題につきましては、御承知のように各省に関連のあることでもありますし、規模におきましても、伊勢湾等の経験にかんがみますと相当大きな規模になるのじゃないか。こういうようなことが想像されますので、ただいまこの計画に入れて年次予算を組んでいくということにつきましては、いささかまだ不安なところがあります。従いまして、この計画からは除いて、海岸は別にこれを十分検討した上で海岸保全をいたしたい、かように思っておる次第であります。
  116. 芳賀貢

    ○芳賀委員 では、この海岸保全事業は現在のところはまだ調査検討が未熟な点があるので、十分検討した結果成案ができれば、総合的な国土保全事業としてこれも加えてやりたいと、そういうわけですか。
  117. 村上勇

    村上国務大臣 この計画に加えるかどうかは別といたしまして、ともかく現在なお調査をいたしております。しかし、現在ただ単に調査をしているというだけでなくて、現在はすでに調査ができ、従来から継続して施行いたしている部分につきましては、非常に強力に事業推進いたしておりますが、なお地盤沈下等どうしても、もう少し調査をする必要のある重要な点がありますので、これらの調査ができますれば、抜本的な海岸の保全ができる、こうなっておりますから、私どもとしては、必ずしもこの計画に入れなくてもいいのじゃないか、こう思っております。
  118. 芳賀貢

    ○芳賀委員 次にお尋ねしたい点は、この長期計画を立てる場合に、これは農林大臣建設大臣計画上の調整をはからなければならないという点と、もう一つ経済企画庁長官協議しなければならぬという点が明記されているわけです。  この際、もう一つお伺いしたい点は、北海道総合開発を進める場合、やはりこれと接触面が当然出てくるので、特にこの法案ではありませんが、あと治水特別会計法等が出る場合においては、なおさらこれは問題点になると思う。ですから、そういう競合とか関連するような点については、特に建設大臣は北海道開発庁官を兼ねているわけですから、その立場においても、この法案内容というものが、全国の治山治水長期計画を立てるということになれば、これは北海道だけを除外するというわけにもいかぬと思うのです。  もう一点は、経済企画庁関係では国土総合開発法という法律もあるわけです。この中には、やはり国土保全に対する調査とか計画策定、あるいは全国の総合開発計画とか、あるいは特定地域の開発であるとか、それらの計画策定をこの国土総合開発法に基づいて経済企画庁長官が——これはまあ責任は総理大臣ですが——行なうことになっておるので、これらの関連性というものをこの際それぞれの所管から明らかにしてもらいたい。
  119. 菅野和太郎

    ○菅野国務大臣 この法案の第三条の4に「あらかじめ経済企画庁長官協議しなければならない。」ということが規定されてあるのでありますが、この治山治水長期経済計画閣議決定できまるのであります。その閣議決定する前には、閣議の中に治山治水の閣僚懇談会というものがありますが、その懇談会で大体きめまして、そのきまったものが閣議にまたかけられるということになっております。その治山治水の閣僚懇談会の世話役を経済企画庁はやっておりますので、そこで、あらかじめ経済企画庁長官協議しなければならぬという意味は、治山治水の閣僚懇談会へやはりかけよ、という意味も含まれておると思うのです。それからまた、経済企画庁長官協議しなければならぬということで、今申し上げまし通り、この治山治水長期計画は、国民所得倍増の長期経済計画と相関連するものでありますから、従って、その意味において、経済企画庁長官と相談協議してもらいたい。それからもう一つは、今お話国土総合開発という方を経済企画庁でやっておりますので、やはり治山治水というこの事業国土総合開発という観点から観察しなければならぬということで、そういう三つの意味がありますので、あらかじめ経済企画庁長官協議してもらいたいということを規定している次第であります。
  120. 村上勇

    村上国務大臣 ただいま経済企画庁長官からお答え申し上げましたように、治山治水関係閣僚懇談会、これには北海道開発長官もそのメンバーの一人になっておりますし、またこれを補佐するための事務的段階におきましては、治山治水協議会、いわゆる幹事会がありまして、各省のそれぞれの責任者が検討する。そうして連絡をとって治山治水閣僚懇談会の議題とするというように、緊密な連絡をとっております。また農林省その他各省との関連は覚書等も局長の間でとっておりまして、事業遂行にあたりましては万事遺漏のないように措置いたしておる次第であります。
  121. 芳賀貢

    ○芳賀委員 その場合、北海道の総合開発計画とこの治山治水長期計画との競合というものをここで明らかにする必要があると思うのです。経済企画庁の全国の総合開発とかあるいは特定地域の開発の場合には、これは調整はできると思うのです。しかし北海道の場合には、北海道という地域だけに限った公共事業中心とした総合開発が進められておるわけなんです。特に村上さんがやっている北海道開発庁は企画庁で、実施庁ではないのですからね。北海道における、たとえば治山事業とか治水事業とか、そういう公共事業に関する計画策定をやっているわけですから、そういう場合、この法律ができて、全国一体となったところの長期計画というものは当然策定されなければならぬのですが、その場合の北海道開発庁の行なう仕事の計画の部面とか、立場というものは一体どうなるのですか。
  122. 村上勇

    村上国務大臣 北海道の治山治水につきましては、やはりこの治山治水の基本法の適用を受けると同じように、すべてこの治山治水計画に盛り込んでやっておりますので、別に北海道だけ遊離して考えておりません。そのためには北海道開発長官がやはりこれらの治山治水閣僚懇談会、あるいは協議幹事会等のメンバーになって、この中に解け込んでやっておりますので、その点については、私は御心配ないものと思っております。
  123. 芳賀貢

    ○芳賀委員 あなたは心配がなくても、心配があるのです。心配より、問題があるのですよ。たとえば治水計画の場合には、建設大臣中心になって全国的な計画を立てるわけです。治山事業の場合には農林大臣がこの計画策定をするわけなんですが、これはあくまでも全国計画ということになる。その場合に、それでは北海道開発庁は北海道だけを分担した、そういう計画を立てる役所だからして、端的にいえば、今度はそういう開発庁の仕事はなくなるのではないかということになる。これは重大な問題と思うのです。
  124. 村上勇

    村上国務大臣 「治山治水緊急措置法の施行に関する覚書」といたしまして、北海道開発庁の事務次官と建設省の事務次官との間に覚書を交換いたしております。読んでみます。  「治山治水緊急措置法の制定に際し、この法律成立後の円滑なる実施を期するため左記事項につき相互に諒解するものとする。    記 一、治山治水緊急措置法第三条第一項の規定により治水事業十ヶ年計画治水事業前期五ヶ年計画及び同後期五ヶ年計画をいう)の案を作成するに当っては北海道開発法第二条の規定による北海道総合開発計画との調整をはかるため建設省は、事前に北海道開発庁に協議するものとする。二、前項の計画変更しようとする場合も同様とする。三、一般会計から特別会計への繰入額は従前のとおり、北海道開発庁において予算を要求し(所管)総理府、(組織)北海道開発庁に計上するものとする。」ということになっておりますので、従来と、北海道開発については、何ら差しつかえないものと思っております。     〔吉川農林水産委員長退席、二階堂建設委員長代理着席〕
  125. 芳賀貢

    ○芳賀委員 法律のどこに差しつかえないということが現われておるか、その点を聞いておるのです。今審議中の法律で、それじゃ長期計画を立てる場合に、北海道分だけの計画開発庁にまかせるということなのですか。そういうことになると、これは全国の計画ということになれば、北海道以外の計画をあなたが作って、そして北海道だけの計画は独自に開発庁が作って、それを継ぎ足したものが全国の計画ということになるのですか。それとも、全国計画はあなたの方でこしらえて、そのうちの北海道分だけを切り離して、これを北海道開発庁所管の長期計画ということにされるのか。このいずれかだと思うのです。この点については建設、農林両大臣の御意見をこの際聞いておきたいと思います。
  126. 村上勇

    村上国務大臣 事業規模につきましては、法律で示されておりますように閣議決定いたします。その年次の予算の裏づけにつきましては、その総額の中から北海道あるいはどこというようなことに積み上げたものでその年次予算ができるのであります。これは道路の場合も、河川の場合も同じように私どもは処置いたしておるのであります。
  127. 福田赳夫

    福田国務大臣 それは今北海道の開発計画をやっておる仕組みとちっとも変わりがないのです。それは今度の十カ年計画で北海道分もおそらく相当ふくれ上がると思うのですが、量がふえる、そういうだけのことです。仕組みにつきましてはいささかも変わりはない、かように考えております。
  128. 芳賀貢

    ○芳賀委員 予算額がふえる減るの問題ではなくて、これは機構上の問題にも関係があるのです。ですから、全国計画を立てる場合、一体北海道だけは別にして、現在ある北海道開発庁においてこれらの計画策定をやらして、それと北海道以外の本州分とを継ぎ足したものを全体計画とされるお考えか。それともまた全体計画というものを農林省建設省において策定して、そのうちの北海道分というものを切り離して、それを開発庁に預けておくようなやり方をするのか。そのいずれかと思うのです。それを聞いておるわけです。
  129. 村上勇

    村上国務大臣 計画を立てる場合は、北海道と相談して、北海道だけ切り離して進んでいく、取り上げていくとか、あるいはどうということはないのであります。これは北海道と建設省あるいは農林省等とも相談して、そうして策定いたして参ります。
  130. 芳賀貢

    ○芳賀委員 北海道と相談するというお話なんですが、一体農林省建設省の行政範囲というものは北海道に及ばないのですか。及ばなければ、これは相談してきめるとかなんとかいうことも必要になると思いますが、これは非常に大事な点だと思うのです。北海道開発庁というものが、この法律によって特に長期計画策定等については大きな影響を当然受けるわけです。  その次にくるのは、今度は特別会計の面において、先ほど覚書のようなものを読まれたが、ここにも私は問題が起きると思うのです。きょうこの場で十分質疑を尽くすわけにはいきませんが、これは当然であると思う。そういう点を十分検討されてこの法案というものをお出しになったかどうか。その点を明らかにしておいてもらいたいのです。
  131. 福田赳夫

    福田国務大臣 先ほどもお答え申しておるように、これは仕組みの上からはちっとも変わりがないのです。ただ、予算の額が長期計画でふえたというだけでございまして、今まで、たとえば土地改良事業につきましては、北海道当局とも政府は相談いたしまして計画を立てますが、それは農林省が主体となって相談をします。きまったものにつきましては、これを開発局の方へ予算を移しまして、それをそのまま北海道へ持っていって実施する、こういうふうにいたしております。この建前はちっとも変わりはない。ただ事業量が長期計画でふえる、こういうだけのものであります。
  132. 村上勇

    村上国務大臣 事務的に政府委員からよく説明させます。
  133. 木村三男

    木村(三)政府委員 この問題を裏返しまして、北海道開発庁の立場から考えてこの問題をお答えいたしたいと思います。御承知のように、北海道開発庁は、北海道における総合開発計画樹立する役目を持っております。事業実施につきましては、建設関係の仕事は建設大臣農林省関係農林大臣実施する。つまり建設大臣農林大臣というのは所管部門について全国に権限を持っておる。私どもの方は北海道に関する諸般の事業を総合的に計画いたしまして、それに基づいて予算を要求して、でき上がりました予算関係省に移しかえしまして、事後の実施の段階は各省がやるということで、現行の行政機構の上に矛盾がないように北海道開発庁という仕組みを考えたものでございますから、一種特別の役所になっております。  それから、それと関連いたしまして、今回全国の治山の十ヵ年計画治水の十ヵ年計画を立てる、こういう面につきましては、全国計画というものは、今の機構の上から見ますと、それぞれ農林省建設省にあるということは明らかなんであります。ただ、その場合北海道としましては、開発法の趣旨に基づきまして、総合開発計画というものを立てておりますから、北海道分につきましては、いわゆる第二次計画として、現在でも、河川についても、治山につきましても、計画があるわけなのであります。これと今後できます全国計画との調整ということが問題になるわけでありますが、ただいま出ております緊急措置法を見ますと、現行の官庁の権限その他については何ら触れておりませんから、結局計画面の調整という問題が出て参りまして、それじゃ全国計画というものは、北海道以外のものに計画を立てて北海道の分を継ぎ足せばいいかというと、そういうような簡単なものではございませんで、結局北海道分は全国計画の一部に入るということは事実なのであります。ただ、北海道につきましては、やはり閣議決定等によってできておりますから、その辺の組み合わせというものにつきましては、行政機構の運用上、緊密な連絡をとっていかなければならない。先ほど大臣から申し上げられましたように、治水につきましては、建設省が全国計画を立てる場合には北海道と事前に協議をいたしまして、その間に矛盾がないようにやっていく。農林省関係治山につきましても、同様に北海道には北海道としての従来の計画があるし、将来の計画もありますから、それと矛盾のないように継ぎ合わせて参る。最後的には閣議に持っていくというような趣旨に相なると思いますので、これによって、北海道開発庁の治山治水に関する仕事がなくなるとか、あるいは全国の計画に押されて影が薄くなるというようには私ども考えておりませんし、それにつきましては何ら心配はいたしておらない次第でございます。
  134. 芳賀貢

    ○芳賀委員 それでは具体的にお尋ねしますが、昭和三十二年の十二月二十七日に北海道総合開発第二次五ヵ年計画というものが策定されて、これは十二月二十七日の閣議決定になっております。ですから、これはことしがちょうど第二次五ヵ年計画の第三年次になっております。この閣議決定された計画は、三十六年、三十七年になってやっと第二次五ヵ年計画が到達するということになる。そうなると、開発長官にお尋ねしますが、国の長期計画は三十五年を起点にして前後五ヵ年計画で十カ年計画が立てられますが、北海道の第二次五ヵ年計画はことし三年目なのです。そういうことになると、国全体の治山治水長期計画と北海道の五ヵ年計画というものに当然食い違いが来ることになるわけです。しかも、この第二次五ヵ年計画策定は、三十二年からに入るのと、国の新長期五ヵ年計画策定が一年おくれるという見通しの上に立って、北海道の開発計画を第一次、第二次の間を一年間空白にして、この第二次五ヵ年計画は現在の新経済五ヵ年計画に合わせてできている。しかも閣議決定を経ておる。そういう経緯と実態があるから、これに対して開発長官としてはどのような解明をされるのですか。
  135. 村上勇

    村上国務大臣 北海道の五ヵ年計画は第三年目でありますが、今回の新しい国全体としての三十五年を初年度とする治水長期計画、これに北海道も切りかえていくということは、どうしてもそうならざるを得ないと私は思っております。従いまして、今回のこの計画には北海道も含まれているわけであります。
  136. 芳賀貢

    ○芳賀委員 それでは、北海道の五ヵ年計画はどうなのですか。これは、ことしからまた別の計画が第一年目として出発するわけですか。
  137. 木村三男

    木村(三)政府委員 北海道の総合開発五ヵ年計画は三十三年から三十七年までと当初きめられております。内容につきましては、治山治水だけではなくて、ほかに道路もありますし、港湾もございます。結局全体として一つの構成物になっているわけなのであります。そこで今回治山計画治水計画で新たに全国計画が立つと、私どもとしましては、端的に申しますと、この全国計画にわれわれの考えております五ヵ年計画のそれぞれの治山なり治水の部分が完全に盛り込まれていくかどうかということが問題なのであります。それを今いろいろ事務的に関係省と相談いたしまして、大体結論としてはこれから出るのでありますが、全国計画の中に北海道開発総合計画の残っております三十六年、三十七年分というのがございますが、それが十分に盛り込まれるようになるならば、矛盾がなければ、しいて北海道関係の五ヵ年計画というものをこの際急速に変更する必要はなかろう。そういった関係につきましては、ただ事務的だけでも参りませんので、北海道開発審議会というものがございますので、そういった機関とも相談いたしまして、一方におきましては全国計画に矛盾なく五ヵ年計画関係部門が織り込まれるように相談をする。一方また、五ヵ年計画全体としての考え方をこの際変えるかどうかということについては、専門の審議会等にかけまして、慎重な態度で臨んでいきたいと思います。
  138. 二階堂進

    ○二階堂委員長代理 芳賀君に申し上げます。時間もだいぶ経過しておりますが、あとまだ山中吾郎君からの質問の通告もございますので、なるたけ簡潔にお願いいたします。
  139. 芳賀貢

    ○芳賀委員 次の問題に移ります。計画策定されて、閣議決定が行なわれて、今度はそれを都道府県の知事に通知するということになりますね。この知事に通達する計画内容というものは、あらかじめどういう点を計画内容として通達するか。もちろん前後五ヵ年計画という大ざっぱなものも示すでしょうし、たとえば前期五ヵ年計画の場合、これを目標計画として示すか、実施計画として示すかという点についても問題がある。目標ということになれば、これはちょいちょい経済企画庁で作っているところの経済長期計画は、経済指標というものを付表につけて参考にしておる程度で終わる場合もあるわけですが、実際にこの十ヵ年計画が実のある計画だすれば、やはり実施計画というものを長期に立てて、たとえば前期五ヵ年計画実施計画の場合にはそれを示して、さらに各年次計画等についても実施内容というものは明らかにして、そうしてこれを関係都道府県知事に示さなければ意味をなさないと思うのですが、どういう内容計画都道府県知事に示すかという点をお尋ねしたいと思います。
  140. 村上勇

    村上国務大臣 毎年の事業量あるいはその地点というものについてはその年ごとに協議することでありますが、しかし、一応五ヵ年計画についての策定したものの実施計画というものは地方の各団体に示す必要があります。と申しますことは、国の費用でやるばかりでなく、御存じのように補助事業地方負担する部分も相当ありますので、一応実施計画を示しておくということをいたす次第であます。
  141. 芳賀貢

    ○芳賀委員 この点は非常に大事な点で、今、建設大臣は五ヵ年計画実施計画を示すと言われた。そうなると、当然年次計画もそれに付随していくということになると思いますが、農林大臣もこの点は意見に相違はないですか。
  142. 福田赳夫

    福田国務大臣 ただいま建設大臣から申し上げた通りであります。
  143. 芳賀貢

    ○芳賀委員 それでは、この計画内容ということになりますが、たとえば治水事業のような場合においてはどの程度まで細部に示すかということなのです。各都道府県知事に全部全国の計画内容を示すのか。それも参考にはなるだろうが、なお大事な点は、当該都道府県における実施計画内容というものが明細に示されてこそ初めてそれは価もあるし、当然治水事業等の面については、原則としてはほとんど国が全額直轄でやるという面は案外少ないわけですね。当然これは地方財政負担も伴うことになりますから、その内容というものは、どういう形のものを知事に示すか、お尋ねしたい。
  144. 村上勇

    村上国務大臣 その点につきましては、できる限り明細に、しかも緊要度の高いところから、建設省ならば建設省意見としてはこうだ、しかしまた地方と緊密な連絡を常にとっておりますから、地方の要望はこの方が先とかあととかということについても、十分実施計画策定するまでに相当緊密な協議をいたしまして、それをできる限り正確に都道府県に示すということにいたしたいと思っております。
  145. 芳賀貢

    ○芳賀委員 具体的な事例をお尋ねします。治水事業の場合にはそれでは、方法としては水系別の計画というものもあり得ると思うのです。またそうじゃなくて、河川別の事業実施計画というもの、これも当然あると思うのです。その場合、どういうやり方をとるか。  もう一つは、河川改修事業というものならば、河川名をあげて、この河川については何カ年でどれだけの事業費をつけてやるということが、当然計画として出てくると思うのです。その場合は河川法に基づくわけですけれども、適用河川、準用河川、あるいは開拓事業等に関連した特殊河川というものもありますが、こういうのはすべて法律に基づいた河川名をあげて、河川別に事業実施計画というものを明らかにして、この河川については何カ年計画で終わる、そこまで行き届いた計画というものを作って、それを知事に示すのかどうか。その点はどうなんですか。
  146. 山本三郎

    ○山本(三)政府委員 お答えいたします。治水計画はもちろん水系ごとに立てることが必要でございます。そういう観点に立ちまして、建設省といたしましては、数府県にまたがるような河川もございますので、水系的に考えまして計画立案するわけでございますが、そのもとになる事業といたしましては、国の直轄事業もございますし、また府県でやりまする県営事業もございます。従いまして、県営事業等につきましては県が主体でございますので、県の希望等もいろいろ聞かなければなりません。国のやる事業も、もちろんございます。ございますから、その間の調整建設省として十分よく見なければならぬわけであります。従いまして、計画を立てる場合におきましては、水系的に見て、水源の砂防からダムから河川改修を一貫したものでなければ、局部的にやりますと、非常に被害が集まってくるというようなことがございますので、計画立案する場合には、そういうような全体的に見て計画立案する。しかし、今度事業実施する面になりますると、お説のように、直轄でやる場合もございますし、補助でやる場合もありますし、あるいは砂防をやる場合もございますので、事業量ということになりますると、直轄で行なう河川が何本で金は幾ら、それから中小河川は何本で幾らということになるわけでございまして、県に知らす場合には、その県に関係ある事業につきましては、あなたの方は直轄河川が何本で幾ら、中小河川が何本で幾らというふうなことにして通知をいたしたいというふうに考えております。
  147. 芳賀貢

    ○芳賀委員 それでは、農林省の方はどういうやり方ですか。
  148. 山崎齊

    ○山崎政府委員 治山事業内容の業種別の事業分量、こういうものを府県別に通知するという考え方でございます。
  149. 芳賀貢

    ○芳賀委員 農林省の方は、ばかに大ざっぱではありませんか。建設省の方では水系別に河川、多目的ダム、すべて総合したものを理由に細目にきめる。林野庁の方の場合は府県だけに示すということになると、たとえば北海道なら北海道のどの地域でやるという場合、これは治山事業も、やはり建設省の方が治水計画というものを水系別に立てるということになれば、当然農林省の方も水系別の計画に合わせていかなければ、両大臣計画調整ということはできないと思うのです。そういう点はどうなっておりますか。
  150. 山崎齊

    ○山崎政府委員 これの計画を立てます場合には、もちろん建設者とも十分連絡をとりまして、水系別な計画は立てるわけでありますが、それを県ごとに集計するという形におきまして県には御通知するというふうにいたしたいと思っております。
  151. 芳賀貢

    ○芳賀委員 それでは、水系別の計画を作って、ただ府県単位に全体の計画の集計されたものを示すが、内容については水系別に明白になっておるということですか。それともまた、治山事業の場合は、当然これを分けると山地治山事業、あるいは防災林造成事業、保安林整備事業等に分類されると思うのですが、こういうのもやはり総合的な計画を進めていかないと、先ほど農林大臣あと三十万町歩を十年でやるというようなことを言われましたが、そう簡単にはいかないと思うのです。その点についても、もう少し確信のある御説明を願いたい。
  152. 山崎齊

    ○山崎政府委員 先ほどお話ししました通り、われわれが計画を立てますのはもちろん水系別に、今お話にありましたように治山事業、防災林、水源林造成というような項目に分けまして、水系別、地域別に建設省との関係も十分に協議しまして計画を立てるわけでありまして、それを県に通知いたします場合に、そのこまかい水系別に全部県に通知しなければいかぬというようには考えていないのですが、その基礎は、もちろん水系別にちゃんと計画を立てたものを持つ、という形でいきたいと考えております。
  153. 二階堂進

    ○二階堂委員長代理 ちょっと芳賀君にお願いですが、だいぶ時間も経過しておりますので、なるべく簡潔に願います。
  154. 芳賀貢

    ○芳賀委員 大体内容がわかりました。結局、そういうことで都道府県知事に五ヵ年計画を示される。これは、また北海道の問題に戻るようですが、そういう形で今度は治山事業治水事業は五ヵ年計画というものが、たとえば北海道の場合には北海道知事に示されるわけですね。そうなると、今度は北海道の五ヵ年計画の中で治山治水事業だけは今度は中央から五ヵ年計画がはっきり示されるが、それ以外の残った公共事業計画というものは、依然として現在進行中の第二次五ヵ年計画で進めていかなければならぬということになると、結局北海道の総合開発事業の全面的な促進ということには非常なそごがくるような感じもするわけです。特にこの際申しておきたい点は、北海道の場合においては除外例を設けておる。たとえば特定土地改良事業にしても、道路整備事業にしても、多目的ダムにしても、特定港湾事業にしてもすべて北海道開発庁というものがあることによって、北海道についてはこれを除くというような、そういう断わりをしなければ、こういう公共事業の特に特別会計を裏づけとした事業というものは全部分割されたような状態に置かれておることは御承知通りであります。ですから、残されたものとして今度は治山治水特別会計の形でできれば、北海道における総合開発事業は全部切り離されて、総合性というものはもうすでに失われておるのです。そういう点は北海道開発長官としても常に考えておられると思うのです。私はそれを含みにして先ほど繰り返してお尋ねしておったわけですが、期待に沿ったような答弁は全然得られなかったので、もう一度この点をお尋ねいたします。
  155. 村上勇

    村上国務大臣 北海道の開発計画、この残りがあと二カ年間に完全実施されるようになれば、あえて新しい五ヵ年計画に入れる必要はないということを今、木村政府委員が話しておりましたように、本事業計画通りに進んでいけばあえて計画を立て直す必要はないと思います。今回の特別会計につきましては、北海道に限りとか、あるいは北海道を除くとかというようなことは全然ないのでありますから、別にその点については私は何ら不安はないと思っております。
  156. 芳賀貢

    ○芳賀委員 時間がありませんから、最後にもう一点お尋ねしておきます。建設大臣は今そういうことを言われていますが、公共事業関係のいろんな特別会計法の内容を見ると、あなたが答弁されたのとは事情が違うのですよ。今度政府が出された特別会計予算書の内容を見ても、各公共事業特別会計事業の建設計画表の中には北海道関係のそれぞれの事業も記載されておるが、ただ問題は、特別会計ということになれば、財政法の三十三条の規定にもありますが、これはやはり一省専管というのが建前なのです。たとえば治水特別会計建設省が専管するとか、国有林特別会計農林省が専管ということに当然なるわけです。建設省や北海道開発庁の共管というような特別会計はあり得ないと私は考える。ですから、そこにやはり予算の移用の問題が出てくると思うのです。非常に苦しい事実上の操作をしなければ、北海道地域における公共事業は進まない。そういう問題もだんだん露呈しておるわけです。この点については、特別会計法の方は大蔵委員会に付託になりますので、いずれその法案審議のときにまた究明する必要があると思うのですが、そういう点についても所管の北海道開発長官としてどのくらい勉強されておるのですか。建設大臣としては一生懸命でやっておる仕事は一応認めるとしても、とにかく北海道開発庁の長官としては、こういうような問題についてあまり深く勉強されておらないと私は見ておるのですが、いかがでしょうか。
  157. 村上勇

    村上国務大臣 非常にむずかしい質問ですが、予算は北海道開発庁に計上する、これは従来と変わりがない。ただ、その金を特別会計へ入れるというだけですから、全く簡単なことで、何もあなたの御心配なさるような、北海道が特にどうとかこうとかいうようなことは絶対にありませんし、もしあるとすれば、私も北海道開発庁の責任者として、それは十分話をして参りたいと考えております。
  158. 芳賀貢

    ○芳賀委員 時間がありませんから、きょうはこのくらいにしておきますが、建設大臣に申しておきますが、問題は、今あなたの言ったような安易な問題ではありませんから、この次の機会にゆっくり北海道開発庁の置かれた立場とか、公共事業の各特別会計の制度ができたことによる困難性とか、不合理性というものは当然できておるわけだから、この点については十分質疑をしたいと思いますから、それまでにできるだけ御勉強なさって、きょうのような答弁に終わらぬようにしていただきたいと思います。
  159. 二階堂進

    ○二階堂委員長代理 山中吾郎君。
  160. 山中吾郎

    山中(吾)委員 時間がないので、簡潔に農林大臣並びに林野庁長官に御質問いたしますから、簡単にお答え願いたいと思います。  建設委員会にはこの法案提案になったのですが、まだ農林大臣が一回も御出席になっておられないが、一体として治山治水法案が出ておるわけですから、そういう立場でこの法案が破綻のない法案として実施されるかどうか、それを見きわめる責任があるのでお聞きするわけです。この法案に現われた姿から、治山治水国土保全に対する農林大臣の責任はどういう責任であるか、お聞きしたい。
  161. 福田赳夫

    福田国務大臣 国土保全治山治水計画を進める上における治山事業をやっていくというのが、農林省の責任でございます。
  162. 山中吾郎

    山中(吾)委員 治山事業の欠陥から洪水その他の場合に非常に大きい影響を与えるという場合については、農林大臣は政治的にどういう責任をお持ちになるわけですか。
  163. 福田赳夫

    福田国務大臣 山がもとになって洪水が出るとか、さようなことを絶対になからしめることが農林省の責任でございます。
  164. 山中吾郎

    山中(吾)委員 私がお聞きいたしておるのは、やはり農林省考え方からは農業振興の立場が主でありまして、国土保全についての責任感は、建設省その他と比べますと、従来薄いのではないか。  そこで、確かめたいわけなんですが、たとえば伊勢湾台風の場合についても、あの干拓堤防の欠陥からああいう不慮の災害が起こったというなにがあるのですが、資源科学研究所の所長である馬場博士がこういうことを新聞に発表しているわけです。数年前から調査の結果、木曽川河口の干拓地は危険であることをしばしば警告を発しておったけれども、少しもその採択がない。それで、どうしても農業関係立場国土保全に対して第二次的な責任しか考えないのじゃないか。治山治水事業一つの法的根拠を持って生まれてきておるわけですから、その点については十分にそういう責任を農林省大臣以下省内の者の考え方については、私は十分警告を発して、大臣としては執行体制について遺憾のないようにしていかなければならない、そういう意味であります。  それから、治山関係について林野庁長官にお伺いします。建設省の砂防工事と農林省関係の土砂くずれ工事、こういうふうな関係、それから同じ砂防工事においても、両者が競合しておる区域があるのじゃないかと思うのですが、そういう場合について具体的にこの法案が別々の計画を立てていかれるわけですけれども、その点について、具体的にはどういうふうに破綻のないように調整をおとりになるのか。その点をお聞きします。
  165. 山崎齊

    ○山崎政府委員 現在におきましても、いわゆる渓流工事を主とします事業につきましては建設省の砂防事業として実施しますし、山腹工事を主とする場合には農林省治山事業としてやることにきめられておるのでありまして、従来からこういう考え方に基づいて相互に連絡して事業をしてきたのでございますが、最近におきましては、事業の拡大にも伴いまして、各都道府県及び本省の関係部局相互に連絡協議会を持ちまして、流域別に、また市町村別に、さらに個所別に全体の計画と年次計画というものを相互に出し合いましてこの調整をはかる。そういたしまして、関係区域の重複をすることのないように、また総合性を両者で持てるように、現在建設省と十分な連絡をとって進めておるわけでありますが、今後におきましても、なおこういう方向を強力に進めまして、総合性を持つように進めていきたいと考えております。
  166. 山中吾郎

    山中(吾)委員 上流の治山工事と治水工事の場合には、いわゆる土砂くずれ、砂防、全部を含みまして同時に同一計画で同一事業主体がやるという体制でないと——土砂くずれの方の事業は一年あとで、砂防工事の建設省は先というふうに、一年、二年の差があれば、その間にせっかく一方で砂防工事をやっても、その周辺の土砂くずれ工事について農林省あと回しになっていると、私はそこに破綻がくると思う。治山治水が別々の農林大臣建設大臣の責任になっておることから完全に破綻を来たす。そういう点について私はまだ疑問があるので、お聞きしておるわけですが、その点はいかがですか。
  167. 山崎齊

    ○山崎政府委員 お説の通り、両者におきまして計画なり実行のそごがあるということになりますと、非常にまずい事態が生まれるわけでありまして、先ほど申し上げました通り、流域別にも、町村別にも、あるいは個所別にも、両者で同時に打ち合わせまして、建設と林野の仕事がお説のようなそごを来たさないように、従来も努めて参りましたし、今後もさらに一そうそういう方向に努力いたしたいと考えます。
  168. 山中吾郎

    山中(吾)委員 長官の言葉を信じておきます。  今度の年次計画前期予算四千五百五十億のうち、治山関係は五百五十億でしたか、四千億の治水予算と五百五十億の治山予算というものは、偶然に一方の国有林関係特別会計の残部ですか、そういうものがくっついただけであって、全体として治水治山一つの流れの中にある一貫作業でなければならぬわけですが、その治水工事の予算治山工事の予算が科学的根拠に基づいて組み合わされているのか。偶然に財源を寄せ集めたのか。その点、私は疑問なのです。そういうところからも、権限が二省に分かれており、計画も別々にお立てになって、予算も全体としての組み立てでなしに、二つ合わせてなっておるとすれば、私はそこに、この法案の制度的にも、実際の施行の面についても欠点が出ると思うので、この予算の内訳というものが、全体の計画の中に計算されてできておるかどうか。それを大臣にお聞きしたいのです。
  169. 福田赳夫

    福田国務大臣 これは総合調整をしてでき上がっておるのです。治水費の方で治山費と見合うものは砂防の費用でございます。これらにつきましては、大蔵省企画庁で十分検討いたしまして、つり合いがとれるというところのものを算出いたしまして、全体として、御審議をお願いしておる、かように御了承願います。
  170. 山中吾郎

    山中(吾)委員 そうならばけっこうですが、何か継ぎ合わせたような感じがしているのですが、あとでまた長官にも聞きます。  この法案の生きるか生きないかというのは第三条の三項であって、おのおの各大臣が別々に計画作成しようとするときに、あらかじめ相互調整をはかる。この調整がうまくいくかいかないかが、今度の計画が破綻するかどうかのかぎなわけで、これが要点だと思うので、その調整の具体的方法、これをお聞きしてお答えが満足できるものでしたら私の質問を終わります。
  171. 山崎齊

    ○山崎政府委員 治山事業と砂防事業調整につきましては、主要な工事を必要といたします場所ごとに五万分の一の地図に両者がそれを明示し合いまして、両者がそれを持ち寄って、それぞれの個所の重複を避けるということと、それから工事をやる年度を一緒にするということ、それから両者がバランスのとれた事業量を考えるという点について具体的打ち合わせをするということを、従来もやっておりますし、今後も続けていきたいと考えております。
  172. 山中吾郎

    山中(吾)委員 大体わかりました。  最後に、一つつけ加えて大臣にお聞きしたいのですが、上流にダムを作りますと、下流の河床が下がる。そして今まで農業用水として、灌漑用水として役に立っておるのが、水位が下がるので、灌漑用水として役に立たない面ができてきている。それから、大きいダムを作ると、上流の方は河床が上がって、前には予想しない洪水の原因になっておる。将来ダムをたくさん作りますと、そういうふうに、下流には灌漑用水に影響を与え、上流ではまた思わざる洪水の原因になっておる。こういうふうに、建設省の工事と、農業用水あるいはその他の関係において、相互に科学的に調査をしないと、いろいろの影響があるということが明らかになっておるので、その点については、農林省の上流の建設工事による農業に対する影響の調査、それから建設省は、自分の工事による農業に対するいろいろな影響の調査、こういうものを別々にされておるようなことでは私はこういう工事の中に非常に矛盾が出て、そごを来たすと思うのです。工事の進むに従っての科学的調査は一本にさるべきであると思いますが、両大臣にそれだけお聞きをいたしまして、質問を終わります。
  173. 村上勇

    村上国務大臣 ダムを作る場合の調査は、これはもう非常に厳格なものでありまして、調査した上にも調査するというほど厳重にいたしております。従いまして、農林省あるいはその他の関係省と十分な協議をしてダム・サイトをきめることになっておりますが、それがために下流の農業用水等に支障を来たすようなことがもしありとすれば、それはそれだけの措置をいたしておりますし、またしなければならない。  それから、上流に土砂がたまるということはあり得ることでありますが、これにつきましても、砂防等によってこれらの問題を解決していくというようにいたしておりますが、ただいま私の聞き及んでいるところでは、今までダムのために農業用水に支障を来たしたということはあまり聞いておりません。むしろダムによって渇水をのがれたということは聞き及んでおりますが、もしそういうことがあるとすれば、これはダムをうまく活用して農業用水等に支障のないようにするということを、十分心がけていきたいと思います。
  174. 二階堂進

    ○二階堂委員長代理 本日はこれにて散会いたします。     午後二時十二分散会