○
岸参考人 世銀の借款の問題でありますが、これは
道路公団が発足当時、すでに
日本政府から世界銀行に対して借款の申し入れをしておったわけであります。その当時は
名神高速道路を作るということだけでやっておったわけであります。その後、
公団ができまして、
ワトキンス調査団が来まして、世銀は
ワトキンス調査団の報告を見まして、
日本には高速
道路が必要である。特に名古屋—神戸間には急いで作らなければだめだろうというような
意見が、だんだん世銀にも沸いて参りました。世銀はだんだんと
日本の借款に応ずる態勢を持ってきたわけであります。昨年そういう状態におきまして、世銀当局者も
日本に参りまして、われわれと接触しているうちに、われわれの高速
道路の
計画に対していろいろな
意見が出てきたわけであります。それは、
日本ではいまだ高速
道路を作ったことがないということが
一つ。それから、戦後非常に発達した
道路に対する技術、特に土質力学に対する進歩、その土質力学が
日本の設計には十二分に活用されておらぬということが
一つ。いま
一つは、高速
道路についての線形が戦後非常に進歩した。戦前のドイツのアウトバーンにおいてすら、戦後においては非常な批判の対象になっておる。そういうような状態において、
日本は十分なる技術者を持っておるか、設計技術者を持っておるかというようなことにつきまして、非常にいろんな問題が起こってきたわけであります。わが方においては、技術者において、その頭脳的においては非常に優秀でありまして、これらにつきましては、世界銀行並びに諸外国の技術者もみな敬意を表したのでありますが、いかんせん、その経験が乏しい。というよりも、高速
道路においては経験がないわけでありますから、それらについての
観点からまたいろいろ
意見が出まして、そこで線形についてはドイツのアウトバーンを作りましたドルシュ、これは世界的の線形の大家であります。また、土質に関しましてはアメリカの、ミラーワルデンという会社の人に来てもらいました。そうして、これらの線形その他についていろいろ判断をしてもらったわけです。その結果、昨年、この
日本の設計は大体よろしい。ただ、
実施するまでには、もう少し詳細にいろいろやってもらわなければいけないということから、先ほど申しました二人の人も積極的にこれを見るということになったわけであります。そうして、さらに必要なことは、高速
道路を作る場合に、
日本の政府並びに地方団体がこの高速
道路と協調して、高速
道路の仕上がりをできるだけ円満に、かつりっぱなものにするということに協力をしてもらわなければ困る、というようなことから、昨年の三月から四月にかけまして、
建設省、大蔵省、農林省の政府代表機関とわれわれが参りまして、世銀当局と相談したわけであります。その場合に、やはりいろいろな問題がありましたが、当時ここにおいでになる佐藤
道路局長初め大蔵省、農林省の方々がその協力体制について非常な熱心な
説明をされました結果、世銀当局もだんだんそれによって満足をいたしまして、昨年の十月に最後の
調査団をこちらへ派遣したわけであります。その結果、借款が具体的になったのでありまするが、世界銀行としましては、尼崎—東京、名古屋—神戸間の高速度
道路を一本に対象にすることは
日本の場合少し飛び過ぎはしないか。もう少し段階的にやったらどうだ、というわけであります。しかし、
道路としましては東京—名古屋—神戸間が同時にできることが望ましい。しかし
建設技術の
関係からいうならば段階的にやるのがよろしい。こういうことで、まず第一次目標といたしまして名古屋—神戸間の百八十八キロに対しまして尼崎—栗東間の七一・六キロを借款対象といたしまして、それに対しまして四千万ドルの借款を依頼いたしまして、今回の成立まで持ってきたわけであります。世界銀行としましては、このたび私どもが参りましたときに、非常に協調的に、熱心に、そうしてわれわれに対して普通の貸し人と借り人というようなあれでなしに、非常に協調的にやってくれたわけであります。しかも、世界銀行といたしましては、
有料道路に今まで金を貸したことはないということが
一つ。それからいま
一つは、高速
道路というようなものに対しても、世界銀行としては金を貸したことがないという、すべて初めてのケースのために、先ほど申しましたように、過去においていろいろ心配はしたわけでありますけれども、現地に参りまして、三月の八日から始めました約三週間にわたる折衝の結果、四千万ドルを二十三カ年の期間で貸してくれることになった。世界銀行といたしましては、
道路借款に対して今まで最長が二十年でありまして、二十三年というのは今回が初めてであります。もう
一つ、初めから
道路に対する——初めてではありませんが、われわれにとって不利であったことは、アメリカの資金需要が旺盛になった結果、金利が非常に高くなりまして、アメリカの世界銀行がニューヨークにおいて二月に世界銀行債を一億ドル発行いたしたのでありますが、その利率が今まで四分七厘五毛であったのが五分になった。世界銀行は金を貸す場合に、その銀行の実務費は二厘五毛、それからエマージェンシー用の積立金というのがあります、それが一%。従いまして、世界銀行が得たコストにプラス一分二厘五毛というものは貸す金の利息になりまして、六分二厘五毛が今回の借款の利息であります。で、一番先に六分二厘五毛の率を適用されたのは、イランの借款でございます。その次がアフリカのマウリタニアの鉄鉱資源開発と
鉄道建設とわれわれ
日本道路公団ということになったのでございまして、そういうような過程においてこのたびの借款が成立したわけであります。しかも、この
道路公団の借款に対しては
日本政府の保証が要る。これは当然なことでありますが、そういうことであります。この間におきまして、わが国の政府、特に大蔵省並びに
関係各省、
建設省はもちろんのことでありますが、
関係各省、それからまた、非常に御声援下さいました国
会議員の皆さんに対して心から感謝するわけであります。
今後、この残りの部分に対する借款でございまするが、これは
日本が非常に
経済の成長がすみやかであって、現在の
日本の
経済力が非常によろしい。そこへもってきて、ドルがだいぶたまっておるというような
関係から、
日本は金を借りる方でなくて貸す方の立場にあるのではないかというような
関係から、第二次借款その他に対しては、世界銀行は、この尼崎—栗東の借款の
道路をさらに有効ならしむるためには、名古屋までを作らなければならぬということを十二分に
考えながらも、そういう諸般の事情から、借款は成立するでありましょうが、
金額あるいはその他、一部アメリカの市中において債券を募集するとかなんとかというようなことになる可能性もなくはないかと思っております。今後われわれとしましては、
日本の
経済がさらに伸びる、そうしてドルの蓄積も十二分できまして、もうほんとうに貸方に回って、借りなくても済むような
経済になる日の一日も早からんことを願いつつも、現在の段階においては、少しでもよけい世銀から金を借りるような方向に持っていきたい、こういうふうに存じております。何分、
建設委員の方々並びに
国会の方々、並びに
建設省、大蔵省の方々の今後の御協力と御支援を心からお願いする次第であります。