○白木
会計検査院説明員 決算報告について、概要を御説明申し上げます。
まず、一般会計の方から申し上げますが、一般会計におきましては、例年、決算額の約半ばを占めておりまする失業対策
事業に対する補助金を重点的に検査をしておりまして、ここに掲げておりますのも、その
関係でございます。ここ数年来、私
どもといたしましても、失業対策
事業を、経理の面あるいは
事業効果の面から、重点的に、地方公共団体について相当こまかい広範囲な実地検査もやっておりますが、制度自体がきわめて問題の多い
関係から、種々の指摘事項がございます。
まず、経理面から申し上げますと、その大部分は、補助基本額に算入してならない経費を含めておるという事態でございまして、具体的に申しますと、労働省において年末年始の対策として認めております、日数以上に就労しない者に賃金を払っておるとか、あるいは半日就労しておる者に一日分の賃金を払っておるとかいうものが、大部分であります。その他、監督のために特に地方公共団体に補助金を交付して、監督要員であるとか事務補助員とかいうようなものを設けておりますが、これらの職員が予定
通りに充足されておらないのに補助金を支払っておるという事態でございます。
そのほかに、失業対策
事業も、その実質においては一般の公共
事業と同じものでございますので、失業者の吸収のほか、さらに
事業効果というような面も要請されるところでございますが、この面が必ずしも十分でないという観点に立って検査をいたしました結果が、ここにあげております三件でございます。
長くなりますので、ごく概略だけを申し上げますが、たとえば、北海道の留萌市の失業対策
事業について申しますと、これは直接海洋に面した海岸道路でございますのに、から石積みで施行したため、これが崩壊いたしまして、その復旧においても、海岸道路としての十分の根入れがされていないという
関係から、再度崩壊をしておるという事案でございます。これは失対
事業における資材費の
関係、その他いろいろ問題もあると思いますが、やはり
事業として施行する以上は、一般の公共
事業と同じような効果を確保すべきであるという観点から、指摘しておるわけでございます。
次の青森県の分は、これは多少地域的な制約もございますが、普通の失対
事業として、砕石の製造をやっておるという事案でございます。その結果は、非常に高い砕石についておりまして、一般の市販の砕石を購入した場合の倍以上になっておる。ほかに適当な
事業がなければ、場合によってやむを得ない面もございましょうし、また、冬季等におきましては、青森等ではやむを得ない面もあるかと思いますが、その他の場合には、道路整備
事業その他適当な
事業が相当ございます。現に、労働省の
承認を受けてなお未施行のものもあるような状況でございますので、こういう不経済なことをしないで、砂利は普通の砂利を買って、ほかの有効な
事業に回した方がいいのじゃないか、こういうのでございます。
次の高知県の大方町の海面埋立
工事でございますが、これは地元
事業主体の失対
事業就労者の発生が非常に少ない、それから
仕事自体に相当の技術あるいは経験を要するといった
関係から、本来失対
事業としてはやや無理な
仕事ではなかったかというような観点から、指摘しておるわけでございます。現在ごく一部を着工しただけでありまして、失業労務者の不足その他のために、そのまま放置されて現在に至っておるものでございます。
なおこのほかに、失対
事業につきましては、一般的に公共
事業に比べまして、能率が非常に悪い。これは専門の労務者ではございませんので、ある程度能率の低いことは当然でございますけれ
ども、概説のところにもちょっと触れておりますように、三倍以上、はなはだしいものは二十二倍というような点も見受けられます。この点については、労働省におかれましても、能率向上のためのいろいろな措置を講じておられますが、やはり失対
事業の基本的な問題であるかと
考えております。
次に、特別会計について申し上げます。労働省で所管いたしております、労働者災害補償保険特別会計及び失業保険特別会計の給付及び保険料の徴収の
関係でございます。
まず、労災保険の
関係から申しますと、保険給付の点につきましては、主として休業補償を中心に検査をいたしております。これは、被災労務者が、休業期間中に
事業主から賃金の支払いを受けておるのに、保険金を支払っておる、あるいは休業日数が所定の日数に満たない短期間の場合にも給付しておるというようなものにつきまして、労働基準監督署におきまして、人手の不足その他の
関係から、あまり実査が行なわれていない、そういう
関係から、相当こういった不正支給が行なわれているということでございます。なお、この点につきましては、基準局に給付
調査官という制度が設けられまして、その後の私
どもの検査では、著しく改善されておるように見受けております。
次に、保険料の収納の
関係でございますが、これは、次に申し上げます失業保険の保険料の場合と同様に、保険料算定の
基礎となりますところの賃金総額について、
事業主が事実と相違した報告をしておるものを、実際に
調査しないでそのまま徴収しておる。従って、徴収不足になっておるのでございます。この点については、私
どもの検査では、県の失業保険の担当課で同じような賃金総額の
調査をやっておりまして、これは
事業主について具体的に
調査をしたものでございますが、こういったものを労働基準監督署でも労災保険の保険料に活用されれば、私
どもが指摘しましたような徴収不足は相当防止できる、こういう観点から掲げておるわけでございます。
次に、失業保険特別会計の給付と保険料の徴収の
関係でございますが、失業保険の給付の面につきましては、失業者が再就職しておるのに、引き続き公共職業安定所で保険金を支払っておるという事態でございます。この種の事態は、従来からもたびたび指摘されております
関係から、三十二年度についても、この点を中心にやったわけでございますが、従来と異なります点は、適当に各安定所を選ぶという
方法でなくて、失業保険金の受給者の多い都市の大きな安定所について実施したわけでございます。その結果、やはり従来と同様に、相当数のこの種の不正受給の事実を指摘しております。なお、この点につきましては、再就職の事実、あるいは失業保険の受給資格の不足というような点を、近接した各安定所間で適当に通報いたしまして、
調査を綿密にやれば、相当数この種の事故は防止できるというものでございます。なお、労働省におかれましても、失業保険給付
調査官を活用されまして、その防止に努力されておる点は、私
どもでも十分にその成果を認めておるわけでございます。
最後に、失業保険の保険料でございますが、これも、普通は大体労災保険の場合と同様でございまして、やはり賃金総額が間違ったままで徴収決定がなされておる、そのために保険料及び追徴金の徴収不足が相当多数見受けられる、こういう事態でございます。
簡単でございますが、以上をもちまして御説明を終わります。