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1960-03-31 第34回国会 衆議院 外務委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十五年三月三十一日(木曜日)     午前十時三十七分開議  出席委員    委員長 小泉 純也君    理事 加藤 精三君 理事 佐々木盛雄君    理事 竹内 俊吉君 理事 床次 徳二君    理事 戸叶 里子君 理事 松本 七郎君    理事 竹谷源太郎君       石坂  繁君    菅家 喜六君       菊池 義郎君    椎熊 三郎君       野田 武夫君    福家 俊一君       森下 國雄君    岡田 春夫君       穗積 七郎君  出席政府委員         外務政務次官  小林 絹治君         外務事務官         (移住局長)  高木 廣一君  委員外出席者         外務事務官   伴  正一君         専  門  員 佐藤 敏人君     ————————————— 三月三十日  財団法人日本海外協会連合会に対する移住者渡  航費貸付資金貸付条件等に関する法律案(内  閣提出第一〇八号)(参議院送付) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  財団法人日本海外協会連合会に対する移住者渡  航費貸付資金貸付条件等に関する法律案(内  閣提出第一〇八号)(参議院送付)      ————◇—————
  2. 床次徳二

    床次委員長代理 これより会議を開きます。  小泉委員長は所用のためおくれて出席されるとのことでありますので、委員長の指定によりまして、小泉委員長がお見えになりますまで私が委員長の職務を行ないます。  財団法人日本海外協会連合会に対する移住者渡航費貸付資金貸付条件等に関する法律案を議題といたします。  質疑通告がありますので、この際これを許します。戸叶里子君。
  3. 松本七郎

    松本(七)委員 ちょっと議事進行について。この法律案はいろいろ検討してみるとかなり問題が多いように思うのです。それで、参議院関係もあるでしょうが、これが正式にこっちに回ってきたのがきのうです。そして政府の説明によれば、一日から実施したいという非常にお急ぎのようだけれども、どうしてこんなにせっぱ詰まって短い審議期間審議しなければならなくなったのか。これは問題があろうがなかろうが、審議してみて問題が出ることもあるんだし、もう少しゆとりを持って提出あるいは回付されるというような配慮をしていただかないと、審議に差しつかえがある。きょうもおそらく予定した時間よりも多く質疑がかかるだろうと思うのですけれども、なるべく促進はしますけれども、どういう事情か御説明願いたい。
  4. 高木廣一

    高木政府委員 まことに時間が切迫いたしまして諸先生に御迷惑をかけることを心苦しく存ずる次第でございます。日数が少なうございましたのは、全くわれわれの怠慢でございます。実は外務省だけでなかなかいきませんで、大蔵省法制局とも案を練りまして、こんなにせっぱ詰まった次第でございます。ただ移住者渡航費貸付条件緩和に関しましては、現在の条件終戦後間もなくこのころから開始されました関係で、きわめて過酷でございますので、この法律によりまして四月一日からぜひともこの過酷な貸付条件を緩和いたしたいと思う次第でございます。この法律につきましては、(「内容はいい。どうしておくれたかということを聞いているんだ」と呼ぶ者あり)おくれた理由につきましては、さっき申しましたようにわれわれ事務関係審議がおくれまして、まことに申しわけないと思っておる次第でございます。一つ事情を御了承下さいまして、四月一日にできましたら間に合うように御審議をいただきたいと思います。
  5. 松本七郎

    松本(七)委員 答弁がはっきりしないのだけれども、過酷なものを緩和する点だけだから、そう十分な時間はなくても、事務的におくれた点を了承してもらいたいということだろうと思うのですが、それだけに限らず、これはあと同僚委員から質問すると思いますけれども、連合会の運営だとかあるいは移住全般関係があることなので、当然そういうことにも問題が出てくるわけです。だからそれを予定してやはり十分な審議ができるように提出を急いでもらわないと、はなはだ工合が悪いことになると思うのです。そういうようなことを考慮されて、しかもやむを得ずおくれたのか、しかし問題は簡単だという考えからそういうことになったのか、この点をはっきり御釈明願って、今後注意していただきたいと思います。
  6. 床次徳二

    床次委員長代理 質疑通告がありますので、この際これを許します。戸叶君。
  7. 戸叶里子

    ○戸叶委員 今松本委員からも御指摘がありましたように、移住関係というのは非常に重要な問題を含んでいるわけでございまして、今御答弁によりますと、移住者貸付金条件を緩和するだけだからというふうなことでございましたけれども、それだけで片づけられないいろいろな問題があるわけでございます。そういう点から見ますと、きょうわずか一時間か二時間か三時間か知りませんけれども、それだけの間に審議して通すというような、そういう簡単な法律ではないと私は思います。ですから、今後またこういうような問題もあると思いますので、そういう点はよくお考えになってお出しいただきたいと思うわけです。私は一応これから質問をしてみて、はっきりしなければまた皆さんと一緒に相談をして、はっきりさせた上で通していきたい、こういうふうに考えるわけです。  まず第一に伺いたいことは、この法律によりまして渡航費貸付というものは、直接に渡航者に貸し付けるのではなくて、日本海外協会連合会というものを通して貸付をするということになると思うのですが、いかがでございますか。
  8. 高木廣一

    高木政府委員 御質問通りであります。
  9. 戸叶里子

    ○戸叶委員 そうしますと渡航費貸付によって政府との債権債務関係というものは、政府と直接渡航者というのではなくて、政府日本海外協会連合会というふうなことになると思うのですが、どうでございますか。
  10. 高木廣一

    高木政府委員 その通りでございます。
  11. 戸叶里子

    ○戸叶委員 そういうような場合に、政府と直接渡航者との間にそれを行なうというようなことはできないわけですか。
  12. 高木廣一

    高木政府委員 そういう問題も今後は考えたいと思うのですが、従来政府貸付につきましては、大体ほかの貸付の場合も直接ではなくて間接的に貸し付けているものが多うございますので、現在の貸付海外協会連合会を通じて従来からやっていたわけでございます。しかし本件は、貸付条件法でございますが、これの基礎になる貸付法というものも将来は考えなければいけないと思うのですが、そういう場合には十分検討の上でやらなければいけないと思っております。
  13. 戸叶里子

    ○戸叶委員 そういたしますと、貸し付けた渡航費回収という問題ですけれども、直接責任を負うのは、日本海外協会連合会となりますけれども、貸付金回収をしようと思っても不可能な場合には、政府は一体海外協会連合会に対して強制執行というようなことができるのでしょうか、どうでしょうか。これは考えてみましても、海外協会連合会というのは、全額国庫補助しておる機関でございますので、実際問題としてはたして強制執行ができるかどうかということが問題になってくると思いますけれども、この点はいかがでございましょうか。
  14. 高木廣一

    高木政府委員 今おっしゃいましたように、海外協会連合会全額政府補助でやっておる次第でございます。従って海外協会連合会から強制執行するといっても、結局財政的には政府と一体でございますから、そういうことはおかしいことだと存じます。海外協会連合会としましては、できる限り回収についての努力はしておるわけでございますが、これに対する貸付金回収事務費としてはきわめて少なうございます。実際上またこの貸付金性質上、非常に広い範囲に散らばっており、また海外移住者が長い間かかって移動していくわけでございますから、これを一々取りにいくということになると大へんな金がかかる次第でございまして、そういう点につきましてもこの貸付につきましては、その性質相当研究を要するものでございまして、国内で申しますれば育英資金のような性質にも似ておるようなものでありまして、そういう点は十分将来検討を要することであると考えております。
  15. 戸叶里子

    ○戸叶委員 質問に入ったときからもうこんなに問題があるわけです。回収政府としてもできない状態だ、そういうこと自体も問題がある。これからも研究していかなければならないということでございますけれども、相当多くのお金を扱う機関でございますから、そういう問題なども考慮しておかなければならないのではないかと思うのですが、その問題は、もう少し先に問題を進めていきながら伺っていきたいと思います。  そこで今度は、渡航者日本海外協会連合会とは、渡航費貸付については個別的に契約を結ぶことになるのだ、そういうふうに考えるのですが、そうでございますね。
  16. 高木廣一

    高木政府委員 その通りでございます。
  17. 戸叶里子

    ○戸叶委員 そこで初めて渡航者海外協会連合会との間に債権債務関係が発してくる、そうして実際の渡航貸付金というものの回収業務というものは、今度は日本海外協会連合会というものが行なう、こういうことになるわけですね。そうすると政府日本海協連に貸して、そこから今度は渡航者契約を結んで直接にする、回収不可能なときには、政府もこの海協連には強制執行はできないので、今度は海協連契約者から回収不可能な場合には、この間で債権債務状態が生じてくるから強制執行するということになるわけですね。ところがさっき局長がおっしゃいましたように、実際問題としてはあっちこっちに散らばっている、そういう方たちからは取れないというふうな状態になっておるわけですが、これはどういうふうにして解決なさるのですか。
  18. 高木廣一

    高木政府委員 今おっしゃった通りでございます。しかしながら海外移住を促進いたしますためには、どうしても渡航費を貸し付けなければいけないということは、だれも否定することのできない事実でございます。そういう意味におきまして、われわれは本年度の予算では、実は補助金を申請したわけでございます。しかし予算のほかの方とのつり合いがございまして、それが達成できませんでした。大蔵省でもわれわれの要求するポイントは非常によく了解してくれまして、十年無利子据え置き、あと十年年三分六厘五毛元利均等償還という非常に余裕のとれた条件を出してくれまして、これならば、普通でやれば移住者は十分払えることは考えられるわけであります。問題は一々回収をするということがなかなか事務的にはむずかしい。従ってわれわれといたしましては、こういう条件政府の協力も得て、海外移住をした人に、将来はさらに後続の移住者を送るために、精神的にも物質的にも協力するのだという立場から、海外移住者にこういう趣旨のモラル・ムーブメントも起こして、彼らの方から積極的に払ってもらう、そして今度の条件は非常にゆるい条件でございますが、海外移住者が将来成功いたしましたならば、単にこの条件だけではなくて、さきに貸しました条件程度、あるいはそれ以上のコントリビューションも積極的にやってもらって、移住振興に協力してもらう、こういう運動をしてやっていきたい。こういうふうに考えて、この案をわれわれとしては出したわけでございます。
  19. 戸叶里子

    ○戸叶委員 海外移住者に対して非常にあたたかい気持を持って考えておあげになるのは大へんけっこうだと思うのですけれども、今もお話の中にありましたように、それならもう少し考えてあげて、補助金というようなことにすればよかったのではないかと思うのですが、そういうふうに具体的にしますと、財政法か何かに関係があるのでしょうか、どうでしょうか。  それからもう一つ、ついでですから伺いたいと思いますけれども、利子なんかも五分五厘から今度は三分六厘五毛というような引き下げ方をしているのですけれども、今のような考え移住者をよく盛り上げていってあげようというお気持があるならば、補助金か、あるいはもっと利子なんかもぐっと下げてしまうとか、そういうふうなところまで徹底的にお考えになってあげればいいと思うのですけれども、五分五厘から三分六厘五毛という数字をお出しになった根拠が何かおありになるのでしょうか。
  20. 高木廣一

    高木政府委員 五分五厘というのは、終戦後間もなくの、すべての金利が非常に高いころの金利の標準からベストな金利が五分五厘ということだったと考えるのでございます。今度の年三分六厘五毛と申しますのは、国内開拓でもこの利率をとっております。大体公債の平均利率が年三分六厘五毛という計算になっておりまして、この利率は現在では、貸付金利としては一番便宜をはかった金利というふうに考えられるわけであります。これをさらに無利子にしたらどうか、あるいはそれ以上の便宜をはかってやったらどうかというお考えは、われわれ移住を担当しておる者としては非常にありがたいお考えであり、われわれに対する非常な支援であると考えるのでございますが、国の予算の全体の立場から、なかなかすぐそこまで一足飛びに飛んでいけないものですから、われわれといたしましては、この利率ならば移住者は十分払えるだろう、これで払えないような移住なら、われわれが推進するのも無意味である、こういうふうに思うのです。しかしそういう状態におきましても、いろいろの事情でどうしても払えないという者も出てきましょうが、そのときは債権管理法適用によりまして、支払いの延期なりあるいは免除も考えるということは考慮できる、こういうふうに思っております。
  21. 戸叶里子

    ○戸叶委員 私の申し上げますのは、移住者に対してそれだけのあたたかい気持がおありになるなら、中途半端ということでなしに、一そう徹底してやったらどうかということを伺ったわけですけれども、今のお話で急にそこまでいけないから、だんだんにいくのだというふうなことでございました。そこで三分六厘五毛というのも、大体このくらいの利子ならば何とか払えるんじゃないかというふうな大ざっぱな見通しを立てておやりになって、別に根底のあるものじゃないというふうに了解したわけです。二十年間で一人に対して十万円くらいずつお貸し付けになるようですけれども、ほんとうに二十年間でこれなら回収できるんだという見通しを持っておやりになっていらっしゃるのでしょうか。それともまあできないことも多々あるけれども、そういうときには何とか債権管理法か何かでカバーしてやるのですか。大体見通しがつかないのじゃなかろうかというふうな考えでおやりになっていらしゃるか、いや二十年には必ず返せるのだという見通しでやっていらしゃるのか、この辺のことを伺いたいと思います。
  22. 高木廣一

    高木政府委員 この移住者がこの条件でございましたならば返せる立場に立つことは間違いない。十年間無利子で、あと十年間は年三分六厘五毛で払うわけでありますから、これが払えるということは確信があるわけであります。ただ、これを彼らがほんとうに払ってくれるかどうかということになりますと、われわれの方には確信がないのでございまして、その点モラル運動なりで呼びかけて、できるだけ協力してもらうということ以外には方法がないわけであります。  なお、この条件が不徹底であると申されましたが、この移住を担当しておる者として、移住だけの立場から申しましたならば、確かに不徹底であり、われわれも決して満足しておるわけではございませんが、しかし全般立場もございますし、これだけでも進んでもらったならば非常にけっこうであるということと、それからこの条件緩和法律適用せられますならば、来年の末までは、昭和二十七年の最初に行かれた人も利子も何も払わないでもよろしいという期間ができますので、この間に根本的に貸付法あるいはその前の移住法まで検討してやらなければいけない、こういうつもりでおるわけであります。
  23. 戸叶里子

    ○戸叶委員 そうすると今のお言葉で、移住関係貸付なり、それからそれに関連する法律というものは、来年の暮れまでに徹底的に考慮し直す必要があるというふうにおっしゃったのですが、その通りでございますね。——それで先ほどの、返してくれるかどうかということを考えると自信がないというお話でございますが、行かれた方たちは、別にそれを踏み倒すつもりで借りた人はないと思います。一生懸命で何とかして返そうという気持で一ぱいだと思いますが、現実の問題として返せないというふうな窮地に陥れられる場合が多いものですから、返せないのだと思います。ですからそういうふうな内容というようなことも、十分に先々にわたってまで考えてあげなければならないのじゃないかと思いますので、今度の移住法というようなものに手をつけられる場合には、特にそういうふうな点も考えていただきたいと思います。  これに関連して伺いたいことは、そうしますと海協連渡航者との間の契約をする場合の内容はどういうことになっておりますか。たとえば今度の法律で十年間無利子で据え置きで、あとの十年間はこうで総計二十年間で返すというふうなことがその条件でございますけれども、貸付をするその取りきめの内容というようなことはどういうことになっておりますか。
  24. 高木廣一

    高木政府委員 政府と同じ条件契約を結ぶわけであります。
  25. 戸叶里子

    ○戸叶委員 もうちょっと具体的におっしゃって下さい。
  26. 高木廣一

    高木政府委員 手数料はとりません。海協はチャンネルだけでございます。
  27. 戸叶里子

    ○戸叶委員 それからたとえば返済ができなかった場合にはこういうふうな条件があるとかないとか、そういうふうなことは契約の中にはないでしょうか。
  28. 高木廣一

    高木政府委員 ございません。ただ債権管理法適用されるというふうにわれわれは理解しております。
  29. 戸叶里子

    ○戸叶委員 それでは次に、この法案の第二条には、「(アメリカ合衆国移住した者を除く。)」ということが書いてございますけれども、アメリカ合衆国移住はできるのですか、できないのですか。
  30. 高木廣一

    高木政府委員 戦後難民法によりまして出たものであります。
  31. 戸叶里子

    ○戸叶委員 そうすると難民法で行った人たちは、この改正されない前の法律適用を受けていたわけでございますか。
  32. 高木廣一

    高木政府委員 前はこの法律なくして予算措置だけで貸し付けていたわけでございますが、アメリカだけは特別の条件で、金利は他の地域一緒ですが、償還金月賦払いで貸していたわけであります。
  33. 戸叶里子

    ○戸叶委員 そうすると、中南米の方の移民とその性質を同じくするものじゃないわけですね。そういう人に対しても同じ形で貸していたわけなんでしょうか。
  34. 高木廣一

    高木政府委員 償還方法が違うだけで、ほかは全部同じ形で貸しておりました。
  35. 戸叶里子

    ○戸叶委員 そうすると、そういう方たち渡航費を貸し付けていながら、どうしてこの第二条から除外したわけなんでございましょうか。
  36. 高木廣一

    高木政府委員 北米難民法によって移住した方は、条件一緒でも支払い方法月賦ということでやっておりますが、八八%支払っておるわけでございます。つまり北米ではあの条件十分支払い能力がございましたものですから、今後とも前の条件では貸し付けますが、この特別の緩和した条件からは除外したいというのがねらいでございます。
  37. 戸叶里子

    ○戸叶委員 最近季節移民というのがアメリカに行っておりますけれども、ああいう人たちに対する渡航費は貸し付けているのですか。もし貸し付けているとすると、どこへ、どういう方式で貸し付けていられるか。
  38. 高木廣一

    高木政府委員 アメリカのカルフォルニアに対する短期派米労務者というのは三年間であります。これにつきましては海外移住振興株式会社渡航費を貸し付けておりまして、これは一〇〇%償還されております。
  39. 戸叶里子

    ○戸叶委員 先ほどもお話にありましたように、昭和二十七年から中南米移住業務が再開されたのでございますけれども、私どもが聞くところによりますと、移住者生活状態がいいとか悪いとか、いろいろ報道されているわけでございますけれども、大体上中下くらいに分けて、どんな生活をしているか、この機会に承りたいと思います。
  40. 高木廣一

    高木政府委員 わが国の海外移住の八割がブラジル向けでございまして、さらにその八割くらいがサンパウロの呼び寄せ移住でございます。従って、呼び寄せ移住が大部分でございます。それ以外はブラジル政府植民地あるいは日本海外移住振興株式会社パラグァイ土地を買い、これを造成して入れた植民地とか、あるいはボリビアのごとく無償土地を提供せられてそこへ入ったもの、こういうものがあるわけでございます。  サンパウロの呼び寄せ移住につきましてはあとにいたしまして、これらの計画移住と申しますか戦後の新しい移住につきましては、新聞等でいろいろのニュースも出たわけでございます。確かに植民の初期におきましては、新しい環境でもあり、相当の困難も経過してきたわけでございますが、今日ではアマゾン川のグアマというところがまだわれわれとしては目が離せない心配なところでございますが、それ以外はみな明るい希望が持てる段階まで参りました。  パラグァイの開拓いたしました移住地につきましても、一昨年あたりは、あの移住地が非常にうまくいっていないというような新聞報道日本に伝わったわけでありますが、私、昨年十月、参りまして、つぶさに見て参りましたけれども、その問題になっていた沼隈町は、これも他の地域が非常によくいっているものですから、今では他の地域に負けぬようにという気分が出て、雄々しく立ち上がっております。他のパラグァイ移住地は、最初から計画通り順調に進んでおりまして、大体三十町歩から五十町歩、もっと多く持っている人もございました。彼らは、参りましてまだ平均二年半、三年にならないのでございますけれども、大体十町歩から二十町歩くらい。もっと多く開拓しておる人もおりますが、平均して昨年では十町歩開拓しておりました。トウモロコシを植えたり、その他いろいろのものを作っております。営農も割に順調にいっておりまして、日本の中農以上の生活をしておるといってよいのじゃないかと思います。私行きましたときに、あちらの人に、どうですか、日本へ帰る気はありませんか、と言ったら、とんでもない、来年はさらに馬力をかけて、十町歩なりまた十五町歩なり開拓するのだという、えらい勢いでございました。特にパラグァイでは、こちらは意識せずに、向こうから言われてびっくりしたのですが、政府の方であっせんいたしまして、パラグァイ移住者に大豆を作らせて、その作ったものを日本に送るという手配をいたしまして、その仮契約がちょうど去年十月にできたのですが、それが非常に移住者に力強い安心感を与えたようでございまして、至るところで感謝をせられました。そういうふうで、パラグァイ移住地は非常に発展の道を驀進していっておるといってよいと思います。  もう一つ、昨年の春から夏ごろまで非常に問題になっておりましたのは、ボリビアのサンファンというところの移住地でございます。これはボリビア政府から無償で提供せられた土地でございますが、内部の道路建設が十分でないうちに入れた。ところが、あのあたりに、入植後、去年ごろまでですが、従来にないひどい雨が降りまして、道路が不完全なところに雨が降ったものですから、作ったものが搬出できない。これは人道問題じゃないかということがいわれておりました。その雨は実は二十年に一回のような大きな雨であったということで、従って、昨年あたりは平年になって、えらい豊作になった。道路につきましても、いろいろの議論があったのでございますが、ボリビアの公使館に配付しておりました八千ドルの移住地救済のための費用で、道路建設間道地ですか、プラクティカルな道を作ることをとにかくやりまして、それで移住地搬出目的を十分果たすような道路になりました。その後さらに海外協会連合会に支給しております道路建設機械あるいはあそこに与えてあります製材機械を活用いたしまして道路をさらに完備し、移住者のための共同施設の建物の建設とか、その他着々とやっております。さらに、ボリビア政府が非常に日本移住者の真剣な働きぶりに感激して、移住地と外部との間でまだ一部道路が完成していなかったところがございますが、これも向こう道路公団が動き出して、道路がほとんど完成したということで、最近参っております情報では、ボリビア移住地パラグァイに負けない将来明るい移住地になりつつあるというのが実情でございます。さきにちょっと申しましたアマゾンのグアマというところだけは、実はブラジル政府植民地でございまして、低湿地でございますが、みぞを掘ってここで米作をやればいいというえらいかけ声でやられ、政府予算相当つくはずであったのが十分回らなかったということで、移住者に割り当てられた土地平均十五町歩くらい、しかもその中で低湿地は水につかって困るというようなことで、われわれといたしましても、入りました移住者を間引くとかその他の方法を今でもとっているのですが、このグアマを除きましたほかは、全部日本よりもずっとよい生活をしているということができると思います。
  41. 戸叶里子

    ○戸叶委員 今局長お話のようですと、移住者にとっては非常にけっこうなことで問題はないと思う。みんなそういうふうな状態だったら、何も渡航費を貸し付けても回収困難だということは全然起こらないと思うのです。ところが一方においてそういうふうな面もごらんになっていらっしゃるでしょうけれども、また個々のケースで非常にいろいろな問題があって、渡航費を貸したけれども、それが回収できないというようなところに問題があるわけで、やはりそういう点も根本的に考えておいていただかないと、こんなにいいんだ、いいんだけれども、渡航費回収できないなんということでは、何かそこに非常に矛盾が起きてくるのじゃないかと思います。そういう点ももっと深く掘り下げて御研究になっておいていただかないと、この問題は円満に解決できないと思いますので、その点も御注意いただきたいと思います。  それから渡航費を貸し付けるということなんですけれども、最近はなかなか移住業務の希望者が計画数に満たないというようなことも聞きましたし、また二十九日の朝日新聞にもそういうようなことが出ていたわけでございます。そういう移住業務がはかどらないという理由なんですけれども、これは結局移住者渡航費だけは借りていくけれども、向こうへ行って農業なら農業をやるための営農資金がないとか、あるいは何かの資金がないために十分な仕事もできないというようないろんな悩みがあるのじゃないかと思うのですけれども、契約者の数が満たないというような理由は一体どこにあると思いますか。
  42. 高木廣一

    高木政府委員 第一の理由は、移住というものは非常に複雑であり簡単でないということ、従って、最初作りました三十四年から始めまして、三十四年度は一万一千、その後毎年五千人ずつふやして五年間で十万という計画があまりに楽観に過ぎたということであって、実際の移住事務というものは数字できめたからその通りいくというそう簡単な性質のものでないにかかわらず、かなり楽観過ぎたということだと思います。  それからもう一つは、われわれの移住政策といたしまして、戦後新しい方式ですが、自営開拓というのをやり出して、パラグァイあたりで、だれも世話する者もないから会社自身が土地を買って造成してやるということをやり出したわけですが、これが一つの型になりまして、たとえばサンパウロ土地を買って集団移住さすということになりますと、非常に高い土地になります。一人当たり百五十万円くらいということになってきますと、土地代の頭金は三割くらいとることになっているのですがそれ以外に一年の営農資金その他のいろいろな費用がかかりますので、相当金がかかる移住になったということも一つの原因であったと思います。  それから現在のところ、さきにも申しましたように、移住の大宗はサンパウロの呼び寄せ移住であります。これはあそこにおります三十数万の日本人が必要とする移住者でございまして、政府の方で集団移住さすとかなんとか言いましても、やはり限度がございます。従って、ほんとうにふやすのにはパラグァイ、アマゾン、ボリビアというところの新しい計画移住でありますが、これはそう簡単にいかない。やはり周到な準備と相当の年数をかけぬと、相当にいい計画でありましても、パラグァイのように最初のうちはいろいろの問題が起こって、日本の方にむしろ悪い情報ばかりくるということもございますから、そういう点で簡単でないいろいろの事情があるわけでありまして、これは日本移住が特にやり方が悪いからということだけではなくて、移住の非常に複雑性の結果である、従って今後も長い目で見ていただくということが非常に必要ではないかと思います。
  43. 戸叶里子

    ○戸叶委員 移住業務の沈滞、契約者が満たないというような悩みの状態を一応分析されたわけでありますけれども、そういうようなものももちろん打破していかなければならないのですが、近い将来においてこの沈滞を打ち破ることができるという自信がおありになりますか。
  44. 高木廣一

    高木政府委員 今年中とか来年度と言われると非常に困りますが、もう少し余裕をいただけばこれは破れるという自信がございます。特に海外移住地がだんだん明るくなりつつありますから、これが日本に反映してきますと移住熱が高まってきます。それから海外移住自身が従来の農業移住だけではなくて、今後は工業移住に重点が置かれるようになって参ります。移住と同じ性質を持つものだと思うのですが、今、後進国経済開発国際協力というものが世界的の呼び声となり、日本もこれに積極的に応ずるということになりますから、移住をその線に乗せまして、農業移住だけでなくて企業技術も含めた総合的な移住計画をやっていく、そして貿易と海外投資と移住と三位一体的に運営していくというようになっていきますと、国の移住に対する力ももっと加わるのではないかと思いますが、私自身は、ことしだけと言われると困りますが、二、三年の時間をかけてもらいますれば相当伸びる確信を持っております。
  45. 戸叶里子

    ○戸叶委員 日本のように狭くて人口の多い国では、そういう移住問題は非常に重要な問題であります。これは役所のなわ張りとか、会社、協会とかのなわ張りということでなくて、それを超越したもっと大きな観点に立ってやっていかなければならない問題だと思うわけです、そういう点もどうぞ考慮していただきたいと思うのです。  そこで、私ちょうど去年イタリアに参りましたけれども、イタリアで話を聞いてみますと、ヨーロッパで大体一年に十万人、それから季節移民として十七万人、それから南アメリカに十万人というふうな移民をやっておるようであります。そしてそれが非常に成功して本国への送金も一年に三億ドルだというようなことを、あの小さな人口の多い国が誇っていたわけであります。そういうふうな成功しておる国から見まして、イタリアと日本とどういう事情の違いがあるかという点を御説明いただきたい。     〔佐々木(盛)委員「自民党の政策がいいから移住者が少ないのだ」と呼ぶ〕
  46. 高木廣一

    高木政府委員 イタリアと日本は全然違うものであります。それは歴史的に違うわけでありまして、イタリアは百年も前から、これはツバメ移民と言っておったのですが、冬の農閑期に南米に出かせぎに行く、南米は夏でありまして、仕事が済むと帰っていくというようなことをやっておりまして、その中から南米に定着する人がだんだんできまして、御存じの通りアルゼンチンの人口の四割以上はイタリア人であり、四割弱がスペイン人である。つまり国を開いたスペイン人よりもイタリア人の方が多い。ブラジルには日本人は四十万といっておりますが、イタリア系及びイタリア人は三百万以上もおるわけであります。その他南米各国もイタリア人が多うございます。そういう関係からこれらすでに入った者が呼び寄せる、あるいは世話をするということが何といっても一番大きな働きになっていくわけで、その点に関しましては、日本はブラジルに四十万の日本人を持つ以外は、アルゼンチンに一万ちょっと、ペルーに三万くらい、メキシコも一万足らずというように、比較にならない数字でございます。勢いイタリアとは径庭がございます。しかしながら、さきに申されましたように、イタリアの大陸を渡っていく移住が年十五万を越すということは、われわれとしては非常にうらやましいことであって、南米の天地は人種的偏見もございませんし、日本人が入ることを歓迎しておりますから、われわれの努力次第では、イタリアまでいかなくても相当の進出ができるのではないかと思っております。
  47. 戸叶里子

    ○戸叶委員 今もおっしゃいましたように、日本人に対する信用、こういうような問題も十分取りつけていかなければならないというふうにお話になりましたけれども、私もそうだと思います。やはり日本は大きな戦争というようなことをしていますから、ああいうふうなことを契機にして、何か日本人の軍国主義的な考え方が入ってきちや困るというふうな考えを持っている国が非常にあるわけで、さっき佐々木さんは自民党の政策が大へんいいからとおっしゃいましたけれども、やはりこういうふうな政策を自民党が持っていますと、なかなか移民ということも成功しないだろうと私は思うわけでございまして、信用というものも十分かち得るようにしてもらわなければならないと思います。  そこで私は思い出すのですが、たしか第二十二国会だと思ったのですが、海外移住振興株式会社法というものが通りました。あの八条で、業務として、「外国へ移住する者に対し、渡航費を貸し付けること。」とございますけれども、一体現在渡航費を貸し付けているのかどうか、この点を伺いたいと思います。
  48. 高木廣一

    高木政府委員 さっき申しましたように、移住会社が貸し付けておりますのは、カリフォルニアに参ります三年契約短期派米労務者、これだけに貸しておるのであります。それ以外は従来通り、今の移住振興株式会社の法律がございますけれども、海外協会連合会から貸し付けていたわけであります。その貸付が今日までで約一万件の契約になっておりまして、海外移住振興株式会社貸付に一本化するということになりますと、前の契約をどうするか、これを更改して会社の方に振りかえるか、あるいは並行してやるか。並行してやりますと大へんな混雑になります。こういう問題もございまして、あの法ができましたときに最初考えるべきでございましたが、なかなかいろいろの事情もございましておくれておりますので、われわれといたしましては、この法律によると来年の終わりまで利子も何も払わないような状態になりますから、その間に根本的に移住及び貸付方法というものを再検討したい。現在移住審議会もございますので、これらで真剣に考えていただく、こういう方針でおります。
  49. 戸叶里子

    ○戸叶委員 そうすると、今渡航費貸付というのは二本立になっておるということがわかったのですが、海協連の方から渡航費貸付について、移住会社の方に何か申し入れなり話し合いなりしたことがございますか。全然そういうことは別個にして、季節移民はこっち、こっちはこっちというふうに、どこで分けてどういうふうにしていらっしゃるのですか。貸付のやり方を伺いたい。
  50. 高木廣一

    高木政府委員 今のカリフォルニアへ参ります短期派米労務者、これは移住者の部には入らない、行って帰って参りますから……。その他のあそこへ行ってしまう移住者につきましては、全部海外協会連合会でやっておるわけであります。今の海外協会連合会移住振興株式会社と話をしまして、その結果、今やっておるような話し合いになってやっておるわけであります。
  51. 戸叶里子

    ○戸叶委員 そうするとたとえば直接農業でなくても、農業に関係のある事業なんかで移住するような場合も、やはり海協連貸付を受けるわけでございますね。
  52. 高木廣一

    高木政府委員 移住者につきましては農業に限定しておりません。従って工業移住者も技術移住者も貸し付けるわけでございます。たとえば石川島のリオの造船所でございますが、これの雇用技術者あるいはサンパウロでやっております豊和工業の技術者、こういう連中にも渡航費を貸し付けておるわけです。彼らは移住しておるわけであります。
  53. 戸叶里子

    ○戸叶委員 移住会社が発足いたしましたときに、政府の資金を一億円と民間の資金五千万円でそれを予定したようでございますけれども、現在の移住会社の資金状態がどういうふうになっておるか。それからついでですから伺いますが、貸付金とか、どういうふうな種類に貸したか、また回収状態というようなものを説明していただきたい。
  54. 高木廣一

    高木政府委員 海外移住振興株式会社の現在の資本金は十八億円でございます。それから会社はなお本年度で五億円来年度で、五億円増資することが認められております。それから海外移住振興株式会社は、米国の銀行三行より借入金十六億二千万円を借りております。従ってこの合計三十四億二千万円が会社の活動資金になっておるわけでございます。その事業の大要を申しますと、投資が九億、融資が九億ということでございます。投資は土地に対する投資が七億七千万円余り、企業投資が一億三千四百万円、融資は農業融資、これは渡航前融資と、行きましてからの短期営農融資、長期営農融資、これらを含めまして五億二千四百万円、それから漁業融資、これは三千八百万円余り、それから工業融資が九千五百八十万円余り、こういうような細目でございます。まだ会社が始まりましてから間もなくでございまして、今のところ回収をするというような——大部分のものはまだそこまで達しておらないのでございます。投資据え置き据え置き期間のないものが大部分ございまして、従って今のところはもっぱら持ち出す方でございます。大体そのような状態であります。
  55. 戸叶里子

    ○戸叶委員 今外貨資金として三銀行から十六億二千万円借りているというようなことをおっしゃったのですけれども、それは現地で使うために借りたわけでございますね。その外国で払う利子とかそれから業務内容というようなものはどんなふうになっているのでしょうか。
  56. 高木廣一

    高木政府委員 利子は一定しておりませんが、大体年五分でございます。借りるときの状況によって若干の高低があります。その資金は海外のさっき申しましたような事業に使っているわけであります。
  57. 戸叶里子

    ○戸叶委員 その三銀行に対する支払い期間というものはきめられてあるわけですか。
  58. 高木廣一

    高木政府委員 期限三年でございます。それで大体今までに二回ぐらい借りております。そして三十五年度にはさっき申しました十六億二千万円、これは米貨で四百五十万ドルになるわけですが、今年度は百五十万ドル返済することになっております。
  59. 戸叶里子

    ○戸叶委員 四百五十万ドル借りているのですか。たしか移住会社ができたときに、日本で五年間に千五百万ドルの借款があったように思うのですが、それとの関係はどうなっているのですか。
  60. 高木廣一

    高木政府委員 大体一回三百万ドルぐらいずつ借りているのですが、毎年借りているわけではございません。それで、三年でございますから、支払い期がきて借りたり返したりしているわけでございます。今ネットわれわれが借りておる残高が四百五十万ドル、十六億二千万円であります。
  61. 戸叶里子

    ○戸叶委員 そうしますと、これは現地で移住者が使うわけですね。その場合に、返せないときには政府がそれを負担するわけですか。
  62. 高木廣一

    高木政府委員 さようでございます。政府が保証しておるわけであります。
  63. 戸叶里子

    ○戸叶委員 そうしますと、先ほど、移住会社の貸付金はまだ日が浅いので回収する時期まできていない、こういうふうにおっしゃったわけですけれども、外国から借りて現地で使うドルというのは、もう回収する時期がきている。それを返している状態はどうなっているか。全然返さないで政府でそれまでも負担しているのかどうか、これも伺いたいと思います。
  64. 高木廣一

    高木政府委員 全部期限がきたら返しておるわけであります。さっきまだほとんど期限がきておりませんと申しましたのは言い過ぎでございまして訂正いたします。短期営農資金は大体一年ぐらいでやっておる。これは確実に返っております。成績良好でございます。
  65. 戸叶里子

    ○戸叶委員 ドル借款による貸付金回収状態もまあまあということなんですね。そうすると、この移住会社の方は現在までのところ独立採算制で一体やっていけるのかどうか、この点を伺いたいと思います。先ほど移住会社あるいはまたその他の移民関係全般にわたって根本的にお考えになるというようなお話でございましたので、そのあと移住会社に関してはいいと思いますが、ただ独立採算制でやっていけるのかどうか。それから現在までの会社の業績というものはどんなふうに上がっているか、この二つを伺います。
  66. 高木廣一

    高木政府委員 会社はできる限り独立採算で、もうけなくても、少なくとも欠損なくしてやっていくということが理想でございます。ただ、まだできまして早々でございますので、現在のところは欠損が出ております。今日までのところでは二億五千万円、これは営業経費がおもなものでございまして、欠損でございます。しかし、将来は移住会社が十分経費をまかなって、これらの欠損も十分埋めてやっていくように考えていかなければいけないと思いますし、それは十分できると思います。
  67. 戸叶里子

    ○戸叶委員 二十二国会のときに、今参議院にいかれた山本委員が、日本海外移住振興株式会社法第八条二項に、「会社は、前項第一号の渡航費貸付の事務を外務大臣の指定する団体に委託することができる。」こういうふうにあるのですけれども、これはどういう種類の団体であるかというような質問をされたわけです。それに対しまして、この移住会社は海外渡航費貸付海外協会連合会に委託する趣旨であるというように当時答えているわけですけれども、そしてそのあとで、それを説明しているときには海外連合会というものはまだ法制化されておらなかったものですから、法制化されておらないのでというようなことで言葉を濁されておるわけです。今、海外協会連合会というものはここに法律化されて出ているわけですけれども、当時はまだはっきり法制化されていなかったので、この移住会社でさえ正式にこの海外協会連合会渡航費貸付事務を委託することができなかったのに、今度の法律案では一条で政府が直接日本海外協会連合会渡航費の資金を貸し付け得ることになっているのですけれども、海外協会連合会の性格というものはその当時と今日とでは一体変わっているのかどうかということを伺いたい。
  68. 高木廣一

    高木政府委員 海外協会連合会はそのときも今も同じ性格であるというふうに了解いたしております。海外協会連合会はもっぱら政府補助金で、移住者に一方的に与える補助考えております。海外移住振興株式会社の方は独立採算で、貸したものは返してもらうという建前をはっきり守ってやっておるわけで、この二つの性格をはっきり区別されておるわけであります。
  69. 戸叶里子

    ○戸叶委員 私が伺っておりますのは、あの当時にはまだそういうようなものがはっきりと法制化されていなかった、にもかかわらず、こういうところに委託するのだと言ったわけです。今日ではそれが法制化されたわけです。だからそこに今委託されるわけです。そうすると、その当時と今日とでは変わったもののように考えられるのですけれども、その点がいつの間にか同じものだというふうになってしまっているのですけれども、その点非常にふに落ちないのですが、いかがでしょうか。
  70. 高木廣一

    高木政府委員 四年前の答弁では法制化してからするというふうに答弁せられておるわけでございますが、実は、われわれの方といたしましては、このままで放置いたしますと、現在の渡航費貸付条件は、さっき申し上げましたような年五分五厘という条件でございます。それ以外に延滞金というのですか、これが日歩四銭というきわめて高い延滞金でありますので、ほおっておきますと雪だるま式に非常に大きな負債を移住者に負わせますので、不都合な点もございます。今おっしゃったような点もございますけれども、われわれとしてはここでストップをかけたいというのが真情でございます。
  71. 戸叶里子

    ○戸叶委員 海外協会連合会の第二条によるところの未納の利息、つまり延滞金ですね。それは現在どのくらいになっているのでしょうか。
  72. 高木廣一

    高木政府委員 要償還の延滞金は九千百二十三万五千六百三十二円でございますが、そのうち納入済み額が三万九千四百九十七円、差引残っております延滞金は九千百十九万六千円余りということでございます。この延滞金の支払いは〇・〇四%の回収率でございます。
  73. 戸叶里子

    ○戸叶委員 貸付金とか、それから利子の延滞については、取り立ての不可能の場合には時効を認められるのでしょうかどうでしょうか。もし認められるとすると、その場合は財政法の八条によりまして、何らかの立法化をすることが必要になると思うのですが、いかがでございましょう。
  74. 高木廣一

    高木政府委員 債権管理法上によりますと、時効が中断せないように催告をして続けていくわけでございます。
  75. 戸叶里子

    ○戸叶委員 財政法の八条に「国の債権の全部若しくは一部を免除し又はその効力を変更するには、法律に基くことを要する。」とあるんですから、やはり立法化していかなければならないと思うのですけれども、その点はどうなんでしょうか。
  76. 高木廣一

    高木政府委員 失礼いたしました。免除は債権管理法で個々につきできることになっております。
  77. 戸叶里子

    ○戸叶委員 私それは何のことかちょっとわからないのですが……。
  78. 高木廣一

    高木政府委員 それでは、私その点非常に弱うございますので、説明員の伴君から説明させます。
  79. 伴正一

    ○伴説明員 国の債権でございますから、時効が成立しないように、時効で債権が消滅しないように、必要な時期に国の債権管理官から催告をして、時効の進行を妨げなければいけないわけです。これは国の債権管理法の建前からどうしても起こるわけです。そういうことで答弁になっておりますでしょうか。
  80. 戸叶里子

    ○戸叶委員 そうすると、結論としてどういうことになるのですか。
  81. 伴正一

    ○伴説明員 だから、国の債権は結局債権管理官が間違いなく職務を執行している限りにおいては、その時効のために消えるようなことはあり得ない。だからそういうときに国の債権を免除しようとすれば、まず考えられることは、特定の場合に個々のケースについて債権管理法に基づいて免除するなり、時効を延期するなりする必要があるわけです。そしてこれを一斉に棒引きにするような場合には、そのときに初めて債権管理法の特別法を作りまして、一斉免除というようなことをやらなければいけないと思われるわけであります。
  82. 戸叶里子

    ○戸叶委員 まだちょっとはっきりしないのですけれども、そうすると、個々の場合にそういうふうな回収ができなかったとか、それから利子の延滞については、ずっと引き続いてその法律で拘束するというわけですか。
  83. 伴正一

    ○伴説明員 債権管理法は、普通は債権が妙なことで消えないように、債権者としての立場で債権を保全していくわけですが、特に特殊な事情があって国の債権を強行することが酷であるという認定を債権管理官がいたしましたら、一定の、債権管理法に載っている限度においては免除も、時効延期もできるわけです。
  84. 戸叶里子

    ○戸叶委員 そうすると、たとえば利子の延滞を行なったとか回収不能になった人、個人を対象にして、その人が死亡したとか、もう取り立てられなくなったという立場にはどうなるのですか。
  85. 伴正一

    ○伴説明員 それは債権管理法で、こういうトンネル方式で、三当事者があるような国の債権がたくさんございますが、それについてもやはり規定がございまして、第三債務者がそういう立場になりました場合には免除できる、いろいろ条件を緩和することができるということがあるわけでございます。
  86. 戸叶里子

    ○戸叶委員 そうすると、財政法の八条というものは、この場合は全然関係ないのだということですか。
  87. 伴正一

    ○伴説明員 ございます。結局財政法の八条というのは、法律に基づかなければならないと書いてございますが、その法律が個々の処理の場合には債権管理法に基づいてやる、こういうことになるわけでございます。債権管理法以上に出ようとしますと、債権管理法の特別法を何らかの形で作らなければならぬ、こういうことになるわけでございます。
  88. 戸叶里子

    ○戸叶委員 そうすると、債権管理法の特別法を作るような場合も今までに私はあったのではないかと思うのですが、そういうことは全然なかったでしょうか。
  89. 伴正一

    ○伴説明員 ございます。
  90. 戸叶里子

    ○戸叶委員 その場合どういうふうに処理していらっしゃったのでしょうか。お作りになったのですか。
  91. 伴正一

    ○伴説明員 これはわれわれの関係ではございませんけれども、先例を調べますと、国が国有鉄道に貸した債権を免除するというので一つ法律を作った例もございます。
  92. 戸叶里子

    ○戸叶委員 では、この場合に何か特別法を作らなければならなかったようなケースがあったのではないかと思いますけれども、なかったのでしょうか、移住関係に関連して。
  93. 床次徳二

    床次委員長代理 移住関係で、そういう特別法を作る必要があったかどうかという質問です。
  94. 高木廣一

    高木政府委員 ございません。
  95. 石坂繁

    ○石坂委員 関連して。ただいまの国の債権に関する時効の問題でありますが、念のために伺っておきたいと思います。ただいまの説明員の御答弁では、国の債権については債権管理官がその職務を怠らざる限りにおいては、時効の進行するはずがないすなわち催告等の方法によって時効中断の手続をとっているから、時効の進行するはずがない。ただし特別の場合、債権を免除するような場合は、債権管理法の規定にある場合には免除することもあるが、しからざる場合において免除する場合においては、特別の立法を必要とする、そうして渡航資金貸付については、今まで特別立法を必要とするようなケースは出ておらない、こういうふうに承知してよろしゅうございますか。
  96. 高木廣一

    高木政府委員 その通りでございます。
  97. 戸叶里子

    ○戸叶委員 私の質問したことを今石坂委員が総合的に整理していただいたものですからよかったと思いますけれども、そうすると、今おっしゃった通り、この移住渡航関係に関しては、債権管理法に関する特別立法というものは今まではなかった、今後そういう問題が起これば作るのだ、こういうふうに了解いたしました。  それから昭和二十七年以来の渡航費貸付を受けた移住者の動向というものを明確に把握しておられるかどうか。この資料によりますと、今日までに三万四千二百七十五名が行っておられますけれども、このうちには行方不明の人もあると思いますけれども、そういう方々の調査というものは行き届いているかどうか。そうしてまた大体何%くらいになっておるか、これを伺いたいと思います。
  98. 高木廣一

    高木政府委員 現在われわれの方といたしましては、海外協会連合会東京の本部及び現地の支部におきまして、移住者のリスト並びに貸付カードを備えまして移住者及びその現地引受責任者には年賦償還表を交付してありますので、支部を通じて移住者またはその現地引受責任者に対しまして口頭、文書、新聞公示の方法で催告をし、一方巡回指導等の際に督促や償還勧奨を行なっておるのでありますが、たとえばサンパウロのようなところでございますと、この呼び寄せられていったところから転々とする人もございます。そういう点で着実にかつ即刻にフォローすることがかなりむずかしい場合もございます。ただ、それが何%であるかということは、ここで即答いたしかねます。
  99. 戸叶里子

    ○戸叶委員 そうすると行方不明なんかの調査というものは、大体何%くらいになっているかということもまだおわかりにならないわけですね。
  100. 高木廣一

    高木政府委員 何%という正確なことはわかりませんが、そう大したパーセントではございません。大体次々と聞いておるわけですから、あとフォローしてカードに入れているわけです。
  101. 戸叶里子

    ○戸叶委員 移住関係のことでお骨折り願うのでしたならば、やはり行方不明になるというのは何か理由があるのですから、そういうような点までもよく調査をして、そして徹底的に、やるからには親切にしていただきたいと思うのです。  最後に伺いたいのは、今日までの貸付総額というものがどのくらいになっているか。それから回収が大体どのくらいになっているか。回収は、二十七年ですからまだ七、八年で、そんなに能率は上がっていないかもしれませんけれども、その回収の率がどんなになっているか。それから何件くらい貸し付けられたか。この点を大体でけっこうですから……。
  102. 高木廣一

    高木政府委員 貸し付けました総額は、ラウンド・ナンバーで申しまして三十億円でございます。それは中南米向け移住者北米向け難民と両方の合計でございまして、中南米向け移住者に対する貸付金は二十九億八千八百万円でございます。そのうち——お手元に貸付件数の表がございます。パーセンテージが出ておりませんが、要償還になっております利子は、去年の十二月三十一日現在ですが、二億三千六百八十万円、そのうち納入済額が百二十六万七千円、パーセンテージにいたしまして〇・五三%、それから要償還元金は三億四千二百四十三万五千円、そのうち納入済額が五百七十七万円、パーセンテージにいたしまして一・六八%であります。     〔床次委員長代理退席、委員長着席〕  それから違約金が、先ほど申しましたように要償還額が九千百万円、うち納入額が三万九千円、〇・〇四%、全体を平均いたしますと一・〇六%いとうのが償還率でございます。
  103. 戸叶里子

    ○戸叶委員 最後にもう一点伺いたいのですが、東南アジア諸国に対する移住というものが今もってまだあまり実現していないわけでございます。それは経済的条件あるいはこの気候的な条件もありましょうけれども、それ以外に何か重要な阻害要件というものがあるのではないかと考えますけれども、この点を伺いたいと思います。たとえばカンボジアなんかの例を聞きましても、移民をするというので非常に気勢を上げていたようなんですけれども、そのままになってしまったというような状態から見まして、何かそこに阻害するものがあるのではないか、この点をお伺いします。
  104. 高木廣一

    高木政府委員 東南アジアに対します移住は、われわれも非常に関心を持っておるのですが、総体的に申しますと、やはり政治的理由が一番大きい理由でありまして、東南アジア諸国はナショナリズムが非常に盛んでございます。特に戦争の点で日本に対する猜疑心が非常にございます。そういう点で移民を入れるという空気が出るのは非常にむずかしいわけであります。ただ先申されましたように、カンボジアとかあるいはラオスとかいうような国で、日本移民が入ってもよろしいあるいはいらっしゃいという声もあるのでございます。これらに関しましては、経済的条件というものが十分整っておらない、あるいは移住者を出しますために必要ないろいろの調査データが全然そろっておらないというのが実情でございます。従ってわれわれといたしましても関心を持っておりますので、コロンボ・プランその他で技術者を集め先方に協力するとともに、移住をやりますために必要なデータを集めたいと思います。それから東南アジアヘの移住は、ただ移住者をあそこへ送り込むということだけでは、先方の生活程度が非常に低うございますから、非常にむずかしいのではないかと思います。従って東南アジアヘの移住は、何といっても企業的な計画と結びつけていく、技術も加わっていくということがどうしても必要じゃないかと思います。そうなりますと、東南アジア諸国でも移民はいらっしゃいといっていても、そういう企業の進出についてはいろいろ問題もございましょうし、なかなかむずかしいわけであります。しかしわれわれとしては大きな関心は持っておる次第であります。
  105. 戸叶里子

    ○戸叶委員 私は一応この程度で質問を打ち切りますけれども、今までの質疑を見ましても、そしてまた政府の御答弁を伺っておりましても、この法案自体から読めることは、なるほど海外移住者に対する渡航費条件緩和ということでございますけれども、その底流において非常にいろいろな問題があるということが、今までの質疑応答の中にも現われているわけでございます。ことに政府移住関係に力を入れようとするにもかかわらず、また一方においては徹底しておらないという面もあるわけでございまして、やるならもっと徹底したらいいと私たち思うのですけれども、そういうことでもないし、また移住会社とそれから海協連との関係等におきましても、まだまだ不明瞭な点もいろいろあるわけでございまして、先ほどからの政府の御答弁によりますと、今後近い将来において移住関係をもっと根本的に考え直すというような御答弁でございましたので、そういうことに期待をいたしまして、一応私の質疑を打ち切りたいと思います。
  106. 小泉純也

    小泉委員長 岡田春夫君。
  107. 岡田春夫

    ○岡田委員 ちょっと簡単に伺いますが、今戸叶さんの御質問にも関連していると思うのですが、第一条の条文の中で「連合会中南米諸国その他政令で定める」この「その他」というのは具体的に何をさしておりますか。
  108. 高木廣一

    高木政府委員 現在は一応中南米だけを考えているわけでありますが、「その他」というのは、将来必要が生じました場合の地域考えているわけです。
  109. 岡田春夫

    ○岡田委員 それでは今これは考えていないというのですか。この中には今御質問のあった東南アジアというものを含めてないということですね。それはどういうわけでしょう。
  110. 高木廣一

    高木政府委員 現在のところ先も申しましたように、東南アジアへそういう移住者が行く実際上の実例がございませんですから、考えておらないわけであります。
  111. 岡田春夫

    ○岡田委員 しかし東南アジア諸国、先ほどお話のように、カンボジアとかラオスとか——ラオスはちょっと問題があるけれども、カンボジアあたりにはある程度の移住者があり、実際には移住局がかつてカンボジアの移民について相当積極的に骨を折ったこともあるし、アジア協会がカンボジアの調査にも行っておりますので、そういう場合にはむしろこれを適用するのがいいのではないかと思うのですが、どうですか。
  112. 高木廣一

    高木政府委員 御意見通りでございまして、われわれは一日も早く東南アジア地域がその他の地域として指定されるように工作をしたいと思っておるわけでありますが、今のところは移住者が送れないのでございます。
  113. 岡田春夫

    ○岡田委員 それじゃ最近はカンボジアに対する移住者は全然ないということですか。
  114. 高木廣一

    高木政府委員 さようでございます。
  115. 岡田春夫

    ○岡田委員 それはこの数年間全然ないわけですか。
  116. 高木廣一

    高木政府委員 さようでございます。
  117. 岡田春夫

    ○岡田委員 それでは今までとって参りました外務省の移住政策の中で、東南アジアを含むということは完全に失敗したということになるわけですね。
  118. 高木廣一

    高木政府委員 失敗ではございませんで、さっき申しましたように、いろいろ政治上のデリケートな関係もありますので、これもやはり気長にお待ちを願いたいと思います。われわれといたしましては、政治上の誤解も解き、そうして移住者が進出できるような経済的基盤あるいはそれに必要な調査もできるだけ早く整えるようにしたい、こう思っておるのでありますけれども、ただ移住者を経済的のめどもなく、先方へ送るというわけにもいきませんし、また実際上内地から行くという人はないわけなんです。しかしいろいろの計画がございますので、われわれは、行けるような、実現可能な計画をできるだけ早く実現さしたい、こう思っておるわけであります。そのときにはすみやかに政令をもってきめるわけであります。
  119. 岡田春夫

    ○岡田委員 しかし、失敗したわけじゃないというけれども、成功したわけでもないのでしょう。成功したわけではないだろうと思うのだが、ともかくずいぶん東南アジアの方に対して移住政策についていろいろなことを今までやってきているのは事実なんです。そこでそれのための経費も相当かかっていると思うのですが、アジア協会その他を通じて……。そういうことにもかかわらず、今まで全然ないということはちょっと話が承れないのだが、それはもうどう見たって、失敗ではないと言うが、成功ではないどころか、明らかに失敗じゃありませんか。
  120. 高木廣一

    高木政府委員 従来経済協力までは相当やっておるわけであります。これも十分でございません。しかし移住までは残念ながらまだこぎつけておらないのでありますが、これは数年ではできないから、失敗と言われるのは非常に短気過ぎるので、もうしばらくお待ち願いたいと思います。
  121. 岡田春夫

    ○岡田委員 実はその思想が悪いのだと思う。というのは、企業と一緒に人を出すということは、東南アジアとしては日本からそれを受け取ることに問題がある。これはいわゆる資本の輸出だ、帝国主義的な侵略の前触れであるという考え方を持っている。しかも今までのいろいろなケースを考えてみると、軍事生産に関係のあるような形の資本輸出をする。具体的に言うと、東南アジアでは南ベトナムの場合には軍事生産に関連していろいろな産業を持ち出しておる。まあこれは銃弾工場とかいろいろなものですね。そういうような形で資本の輸出とその企業に結びつけた移民をしようとしたって、南ベトナムのゴ・ディジェムのところは、こう言っちゃなんだけれども、大体岸さんと似たり寄ったりだから、そういう点ではアメリカさんのおひげのちりを払うという意味で、適当にある程度受け入ればするだろうけれども、それ以外のいわゆる中立主義の国においてはそういう形では私は受け取れないと思う。だからあなたの方では移住政策は失敗ではない、それは進めておるのだということを言っておられるが、結局あなたの方のやり方にいわゆる混乱がある。一方思想の中にそういう向こうの受け入れられない条件をもとにして、移住政策を進めようとしても、これは実際には成功できない。もう四、五年待って下さい、気を長くということを言っても、これは百年河清を待つようなもので、百年目にはできるかどうか知らぬが、少なくともこれは成功するとはいえないだろうと思うのですが、これはどうなんですか。
  122. 高木廣一

    高木政府委員 たとえば、ビルマあたりからも来てくれ、カンボジアあたりからも来てくれというところは非常にへんぴなところで、そこへ移住者を出しても一体どうして自活していくかという問題がございます。これには膨大な金をそこへつぎ込んで移住者を援助せぬ限りはできないわけであります。従って政府で、カンボジアあるいはビルマで移住者を呼んでいるからみな行けといったところで、どうしても行く人はないし、われわれとしても無思慮に送って餓死させるわけにはいかないわけです。従って少なくとも移住者が自活して暮らしていけるようにしなければいかぬわけです。そういう点で人間を送るだけではいけないのであります。そういう点御了解願って、われわれは決して資本的侵略とか、そういうことでもございません。企業資本も技術もみながこう組み合わされたものが行かなければ、経済的に移住者が自活し発展していけないのじゃないかと思いますし、先方でもそういうことはだんだんわかりつつあるように聞いております。現に沖縄あたりは非常にこちらへの移住について御熱心でありまして、人を出したりなんかして、このような思想も申しておられ、先方でも若干はその思想に共鳴しておられるのですが、まだ十分移住が実現するところまでは話が進んでいないということであります。
  123. 岡田春夫

    ○岡田委員 まあ、あまり政策上の問題になりますと、これは局長より大臣に伺った方がいいと思うので、私はこの程度にしますが、ただたとえば今後において——今後というのは今年というような場合とかごく近い場合、東南アジアに永住の目的をもって移住するということはいえないと思うのですよ。だからそういう場合にはやはりこれを、「その他」ということが政令でまだ定められないにしても、便宜な措置を考えて上げることが必要ではないか。そういう特別な便宜という点については、何か御考慮されておるかどうか、この点だけを一つ伺っておきたいと思います。
  124. 高木廣一

    高木政府委員 われわれの方といたしましては、この政令をきめることによって、すぐに用を足せるわけでありますから、それで十分であると、かように思っております。
  125. 岡田春夫

    ○岡田委員 というのは、政令の中でその含みをつけておくと、こういう意味でございますか。私の言うのは、これは自民党だって反対しないだろうと思うのだが、こういっては失礼だけれども、たとえば、役所の仕事というのは一人か二人の場合は、政令がこうなっていますから、あなたは気の毒だけれども、だめなんですということが多いのですよ。そうではなくて、一人でも二人でも、せっかく行こうという場合には、これに適用して上げるという親切なやり方が必要ではないか。そういう意味では、ここでその点を御答弁をしておかれたならば、国会でもこういうように答弁しておるから何とか考えましょう、というようなことで、あなたの方の余地が開かれるのじゃないか。むしろ私は外務省に大鼓をたたいているわけなんですから、そこをうまいこと御答弁になった方がいいのじゃないですか。
  126. 高木廣一

    高木政府委員 非常に御親切なことで、さようにいたしたいと思います。
  127. 岡田春夫

    ○岡田委員 御親切だけではちょっと……。
  128. 高木廣一

    高木政府委員 だから、そのようにいたします。
  129. 岡田春夫

    ○岡田委員 さっきちょっと沖縄の話が出ましたね。沖縄からの移住の話がだいぶぽつぽつ新聞なんかに出ておるようですが、それは大体中南米移住させるというようなことになっておるのですか、どうなんですか。
  130. 高木廣一

    高木政府委員 現在沖縄が計画移住としてやっておりますのは南米のボリビアでございます。それ以外は呼び寄せで行っております。それからそれ以外に、さっき申しましたように、東南アジアに対しては非常な関心を持って、現在人を出したり研究したりしておられるわけであります。
  131. 岡田春夫

    ○岡田委員 沖縄の場合には、これはこういう話が、さっきの政策の失敗成功の点に関係するのですが、一昨年岸さんが東南アジアの訪問したときにカンボジアに行った。カンボジアでその沖縄の移民を、日本としては出しましょう、向こうの方は受け入れます、という話になった。これはきわめて非公式の話であったらしいのだが、そういうような話も実は出ておるわけです。こういうような点については、先ほどお話のように、事実上今ないということになれば、これは沖縄からもないわけなんでございますか。その点はどうなんですか。
  132. 高木廣一

    高木政府委員 現在のところは、移住はございません。
  133. 岡田春夫

    ○岡田委員 沖縄の人が中南米に行っていろいろな問題が起こった場合に、外交法権は日本国籍として外交法権を行使するわけですね。その点はそうでございましょう。
  134. 高木廣一

    高木政府委員 海外における沖縄県人は、実際の問題として全部日本人として扱っております。私、戦後アルゼンチンにおりましたが、沖縄県人は戦後来た方なんかも、みんな大使館へ参りまして、日本の旅券に書きかえております。
  135. 岡田春夫

    ○岡田委員 それじゃ、移住先では日本国民として扱っているのなら、この法令は当然適用されることになりますか、いかがでしょうか。
  136. 高木廣一

    高木政府委員 現在日本に見える限り、日本から行きます沖縄県人は全部これで扱っております。
  137. 岡田春夫

    ○岡田委員 日本からとおっしゃいますが、沖縄から出発する場合はどうですか。
  138. 高木廣一

    高木政府委員 沖縄からの場合は、われわれと連絡があり得ないわけで、まっすぐ行ってしまうわけです。しかしこちらへ見える場合が相当多いわけですから、その場合は、あちらへみんな一緒に入れば区別することはできないわけでございます。
  139. 岡田春夫

    ○岡田委員 中南米へ行って、沖縄の人は、沖縄から来たか、日本から来たかわかるのですか。
  140. 高木廣一

    高木政府委員 海外においては沖縄からまっすぐ行っても、日本から行っても区別はございません。貸付の場合は、日本から出かけるわけです。
  141. 岡田春夫

    ○岡田委員 これは日本の人の移民を多くするためにやるのでしょう。日本の国籍を持っている人に、沖縄から出た場合は適用しないというのはどういうわけですか。
  142. 高木廣一

    高木政府委員 沖縄島におきましては、今アメリカの行政権が行なわれておりまして、あすこにわれわれの方から出張るわけにいかないわけなんです。あすこから行きます場合にはわれわれに連絡なくまっすぐ行ってしまうわけであります。
  143. 岡田春夫

    ○岡田委員 そんなことわかり切っています。わかっているから聞いておるのです。日本の国民である沖縄の人が海外に、沖縄から直接中南米へ行くのに、なぜ日本の国として援助してやらないのかということですよ。アメリカがそういうことを勝手にやっているから、日本の国民のことはまっすぐ沖縄から出るからおれは知らないんだということはおかしいじゃないかというんです。何かアメリカにこれを交渉する必要があるじゃないですか。
  144. 高木廣一

    高木政府委員 実際上の問題でありますが、これは渡航費貸付を申請してくるわけでありまして、こちらでわれわれとしては一応内地から出る人を考えておりまして、あちらのは今考えておりません。
  145. 岡田春夫

    ○岡田委員 だって申請は幾らでもしますよ。沖縄の人は日本国民だと思っているのですから、たとえば西表島その他の開発等においても、政府は盛んに日本のあれでやっているのだとかなんとかいっているのだから、これは当然やりますよ。なぜ私がその点を申し上げるかというと、沖縄から移民というような形で、アメリカはどんどん沖縄から沖縄の人を追い出してしまうという政策をとろうとしておる。その追い出してしまおうという政策に対して、こういうものができて、日本政府でその点を交渉しなければ、その追い出してしまう政策に対しては、日本政府日本国民である沖縄の人に対してノータッチである。これは行政の措置としては琉球からまっすぐ行く人についてはわれわれは関係いたしません。日本を通ってくる人には幾らでもやりましょう、こういうことになるわけですね。そうすると、渡航した沖縄の人でも、琉球の港を出ていった人はもらえないし、琉球ではなくて、回り道をして東京から行った者はもらえるのだ、そういう不公平が起こるばかりじゃなくて、アメリカの追い出してしまうという政策にこれは結果的に協力することになってしまうのじゃないか。少なくともこれに対して何ら日本国民としての保護を与える、あるいはこの法律適用して援助を与えるということにはならないではないかということを言っているわけです。
  146. 高木廣一

    高木政府委員 渡航費を貸し付けるためには、いろいろの手続も要しますし、行政上のあれも要るわけですが、日本の行政権を沖縄まで伸ばすことはできないわけであります。従ってこちらの行政権の範囲内まで来てくれれば、それができるわけであります。
  147. 岡田春夫

    ○岡田委員 ともかくあなたのお話では、沖縄は日本ではないんだということになりそうなんでありますが、私は、それじゃ沖縄の人は日本を経由してくるという形をとるということは、あなたの方はその場合はどんどん援助するわけです。この点を伺っておきたい。というのは、私たちが沖縄の人に対して、そういう話を聞かれた場合に、それじゃどうせ行くのなら日本経由でいらっしゃいということが言えると、その人も援助がもらえるわけですから非常に喜ばしいことになるわけなんで、この点だけをはっきりしておいてもらいたいと思う。
  148. 高木廣一

    高木政府委員 実際上そうやっております。
  149. 岡田春夫

    ○岡田委員 終わりました。
  150. 小泉純也

    小泉委員長 別に他に御質疑はございませんか。——他に御質疑がなければ、これにて質疑は終了いたしました。     —————————————
  151. 小泉純也

    小泉委員長 これより討論に入るわけでありますが、討論の申し出がありませんので、これより直ちに採決いたします。  財団法人日本海外協会連合会に対する移住者渡航費貸付資金貸付条件等に関する法律案を可決するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  152. 小泉純也

    小泉委員長 御異議なしと認めます。よって本案は可決いたしました。  なお、ただいま議決されました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  153. 小泉純也

    小泉委員長 御異議なしと認めます。よってさように決しました。  次会は公報をもってお知らせすることとし、本日はこれにて散会いたします。     午後零時十七分散会