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1960-03-10 第34回国会 衆議院 外務委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十五年三月十日(木曜日)     午前十時三十分開議  出席委員    委員長 小泉 純也君    理事 加藤 精三君 理事 佐々木盛雄君    理事 竹内 俊吉君 理事 床次 徳二君    理事 松本 七郎君 理事 竹谷源太郎君       岩本 信行君    野田 武夫君       森下 國雄君    岡田 春夫君       木原津與志君    黒田 寿男君       田中 稔男君    中村 英男君       帆足  計君    穗積 七郎君       受田 新吉君  出席国務大臣         外 務 大 臣 藤山愛一郎君  出席政府委員         外務政務次官  小林 絹治君         外務事務官         (条約局長)  高橋 通敏君  委員外出席者         外務事務官         (大臣官房審議         官)      三宅喜二郎君         専  門  員 佐藤 敏人君     ――――――――――――― 三月八日  委員受田新吉辞任につき、その補欠として水  谷長三郎君が議長指名委員に選任された。 同月九日  委員岡田春夫君及び黒田寿男辞任につき、そ  の補欠として木原津與志君及び中村英男君が議  長の指名委員に選任された。 同月十日  委員木原津與志君中村英男君及び水谷長三郎  君辞任につき、その補欠として岡田春夫君、黒  田寿男君及び受田新吉君が議長指名委員に  選任された。 同日  委員受田新吉辞任につき、その補欠として水  谷長三郎君が議長指名委員に選任された。     ――――――――――――― 三月四日  世界連邦実現促進に関する請願北村徳太郎君  紹介)(第七七五号)  同(稻葉修君紹介)(第七七六号)  同(佐々木盛雄紹介)(第七七七号)  同(櫻内義雄紹介)(第七七八号)  同外一件(村瀬宣親紹介)(第七七九号)  同(山本猛夫紹介)(第八一五号)  同(佐々木盛雄紹介)(第八一六号)  同(北村徳太郎紹介)(第八一七号) 同月十日  韓国抑留漁船員救出等に関する請願田口長治  郎君紹介)(第九四六号)  世界連邦実現促進に関する請願北村徳太郎君  紹介)(第九八八号)  同(佐々木盛雄紹介)(第九八九号)  同(櫻内義雄紹介)(第九九〇号)  同(山本猛夫紹介)(第九九一号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 三月二日  核兵器使用禁止等に関する陳情書  (第一九九号)  日中国交回復促進に関する陳情書  (第二〇〇号)  ソ連覚え書に対し厳重抗議に関する陳情書  (第三五二号)  日中国交回復促進等に関する陳情書  (第三六五号)  日ソ平和条約締結促進に関する陳情書  (第三六六号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  国政調査承認要求に関する件  連合審査会開会申入れに関する件  所得に対する租税に関する二重課税回避のた  めの日本国インドとの間の協定締結につい  て承認を求めるの件(条約第七号)  日韓問題に関する件      ――――◇―――――
  2. 小泉純也

    小泉委員長 これより会議を開きます。  まず国政調査承認要求に関する件についてお諮りいたします。本委員会といたしましては国際情勢に関する事項について調査をいたしたいと思いますので、この旨議長承認を求めたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 小泉純也

    小泉委員長 御異議なければさように取り計らいます。      ————◇—————
  4. 小泉純也

    小泉委員長 この際連合審査会開会申し入れに関してお諮りいたします。ただいま商工委員会において審査中のアジア経済研究所法案について商工委員会連合審査会開会申し入れをいたしたいと存じまするが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 小泉純也

    小泉委員長 御異議なければ、商工委員会に対して連合審査会開会申し入れを行なうことに決しました。
  6. 小泉純也

    小泉委員長 次に、所得に対する租税に関する二重課税回避のための日本国インドとの間の協定締結について承認を求めるの件を議題といたします。     —————————————
  7. 小泉純也

    小泉委員長 まず政府側より提案理由説明を聴取いたします。藤山国務大臣
  8. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 ただいま議題となりました所得に対する租税に関する二重課税回避のための日本国インドとの間の協定締結について承認を求めるの件につきまして提案理由を御説明いたします。  御承知のようにわが国さきにアメリカ合衆国、スカンジナビア三国及びパキスタンとの間に二重課税防止条約締結いたしましたが、その後、引き続きアジア諸国とこの種条約締結促進努力して参りました。その結果、このたびインドとの間に交渉締結いたしまして、去る一月五日ニューデリーにおいて両国全権委員の間でこの協定に署名が行なわれた次第であります。  この協定の内容は、基本的にはわが国さき締結した二重課税防止条約にならうものでありますが、新しい規定といたしまして、インド経済開発のためにとっている特別措置により軽減された税額は日本納税者インドで払ったものとみなして日本で税額控除することにしております。  この協定は、日印両国間の経済協力の推進に寄与するのみならず文化等の分野における両国交流緊密化に貢献するものと思われます。  よって、右の利益を考慮し、この協定の発効のため必要な手続をできるだけ早急にとりたいと存じ、ここにこの協定締結について御承認を求める次第であります。何とぞ慎重御審議の上、本件につきすみやかに御承認あらんことを希望いたす次第であります。     —————————————
  9. 小泉純也

    小泉委員長 日韓問題について調査を進めます。質疑の通告がありますので順次これを許します。中村英男君。
  10. 中村英男

    中村(英)委員 外務大臣日韓問題について御質問申し上げたいと思います。きのう柳大使が帰ってきょう交渉されておると思うのですが、きわめてデリケートな段階ですので、そういう観点に立って私は質問をしたいと思います。この問題は昭和二十七年の一月に韓国李承晩大統領が領海の主権宣言をいたしまして、それから韓国周辺の海域から日本漁船を武力で締め出している、こういう状態が今日まで続いております。これで、御承知のように下関を基地としてあるいは長崎を基地としている西日本漁民が非常に痛手を受けて、金高にしたら年間百十五億くらいと思いますが、漁獲の方でもそうですが、ことに二十七年以来今日までたくさんの船と人間が拿捕されまして、その家族人たちも非常に心痛をしていることは御承知通りです。政府も今日まで非常に努力を願っておりますが、一体二十七年から今日までどれくらいの船が拿捕されて人間向こうに連れていかれたか、釈放された者も含めて人員はどれくらいですか。
  11. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 政府委員より御答弁させます。
  12. 三宅喜二郎

    三宅説明員 お答え申し上げます。李承晩ラインが宣言されまして以来拿捕されました船舶総数は百七十隻、そして抑留されました船員総数は二千二百九名でございます。そのうち船舶で返還されましたものが十九隻、船員帰還せしめられましたものが千九百九十名でございます。そのほか沈没した船が二隻、それから死亡——これは病気でございますが、死亡いたしましたのが五名でございます。従いまして現在向こうにとらわれておりまする船は百四十九隻、抑留されております船員は二百十四名でございます。
  13. 中村英男

    中村(英)委員 大変な数字ですが、これは承知のように日韓会談が再開されて、昨年三十四年七月三十一日かと思いますが、韓国大使館から再開の申し入れがあって、そして八月二十日ですか、相互釈放というような共同声明が出まして、抑留者家族も非常に期待を持ち、少なくとも三十四年十月末ころまでには漁民釈放もあるのじゃないか、こういう期待をしておったわけですが、それもできなかった。またその前の三十三年の例から見ても、十二月の暮れには釈放も実現するのではないかと思われて、留守家族も非常に待望しておったわけですが、それもできなかったというので、西日本漁民家族人たちは非常にいらいらして参っておる。しかし日韓問題は、自分たちの亭主や子供人質になっておっても、日本の大きな外交という立場から、そういうことをも犠牲にしてもやむを得ぬのじゃないかというきわめて悲壮な決心でおる人たちが大ぜいおるのです。しかしそういうふうな気持限度があるわけですし、昨今の週刊誌を見ると、子供なんかも非常に悲惨な状態に置かれておる。そういうことから、この人たちもこれはたまらぬ、いつまでもこう低姿勢しても日韓会談も好転しない、低姿勢にも限界があるのではないかという、追い詰められた気持に今日なっておると思うのです。そこで私どもこの事態をほっておくわけにはいかない。この前米の問題が出まして、これは米と抑留者を引きかえにするということではおそらくないでしょう、米の問題はかねがねあったし、貿易の問題あるいは釈放の問題を解決しながら日韓会談を好転させたいという、そういうことには違いないでしょうが、しかし米を買ってもらいたい、こういう問題が出てきて、これでうまくいけば日韓会談軌道に乗りやすいし、釈放の問題も好転するのではないかという一縷の希望をつないでいるのが現状だと思うのです。そこで柳大使も昨日お帰りになったそうですが、まだ交渉事態はわからぬでしょうが、一体米だけの問題かあるいは米以外の問題がからんできそうなのかどうか、あるいはそれ以上の問題が出たらどうするかというような大体の心がまえがあろうと思う。私はここで外務大臣にそういう見通し——伊關さんが交渉されておると思うのですが、一体どういうふうな心がまえ見通しを持ってやっておいでになるか、その辺をちょっとお伺いしたいと思います。
  14. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 釜山抑留漁船員方々送還問題につきましては、われわれとしても留守家族方々の心情を思いますと、まことにお気の毒なわけでありまして、ただいまお話のように日韓会談が大局的にまとまるならば、自分たちもできるだけがまんしようという心持ちを持っていただいていることも私ども承知いたしておりますので、なおさらその問題については十分努力して、一日も早く解決しなければならぬと思っておるわけであります。  御承知通り、昨年の八月に日韓会談を無条件再開いたしますときに、前提条件として大村収容所におります人と相互釈放ということで、九月の二日に日本側としては大村収容所収容者名簿向こうに渡しました。越えて九月の五日に向こうから釜山収容者名簿を提出して参りましたので、それから話し合いを進めて参りまして、十月末もしくは十一月にはその処置がとれると考えておりましたが、たまたま北鮮帰還の第一船が十二月十四日に出るということがきまりまして、韓国側態度を豹変して参りまして、そうしてこの問題が停頓することに相なったわけであります。その後われわれとしては、韓国側北鮮帰還の問題と日韓間の関係というものは全く別個の問題であって、北鮮帰還人道上の立場から日本がこれをとり行なっておるわけであるという十分な説明もいたしたわけでありますが、容易に韓国側としては抑留船員方々釈放について言を左右にしておったわけであります。たまたま二月の初めから韓国側経済関係を確立したい、それについては韓国から米も買ってもらいたいし、日本から物資を入れたいという話もありましたので、われわれとしてはそうした話し合いを進めることは、釜山抑留漁船員方々帰還が実現した後でなければ、実際にはわれわれは承諾できないということを申したのでありまして、向こう側としてはそういうことを自分の方でもできるだけ努力してやるから、もしそういうことが可能になった場合には、あとの問題として米、のりその他物資を買ってもらいたいし、また日本側からも買おう、こういう話で進んで参ったわけであります。並行してそういう話があり、そのあと処置として物資交流問題等がきておりますから、米について五万トンなりを要求して参りましたけれども日本側としては三万トン程度しか買えないということで、ほぼそれらについては話し合いが別途にできております。しかしわれわれとしては、何としてもそういう話を確定いたします前に、漁船員帰還という問題できちんと話をつけ、日付を確定いたさなければ、今回の問題はできないわけであります。そこで日本側といたしましてその点を強調いたして交渉をいたしたわけであります。韓国側におきましても、それらの日本側意向を組み入れまして、そうしてある一定の日時に帰すことにして、現在刑期を終わった者については、全員一定の期日に送還をする。なお今後は刑を終わった者は、逐次そのつど帰していくというようなことでありまして、われわれとしては何らかの形で今度はそれを文書で取りつけるという交渉を実はしておったのであります。たまたまそういうことで進めて参りました状況下におきまして、一方ではそういうことが終わりまして経済的な交渉をするというので、側面でやっておりました経済談義の中で玄米と白米との関係の問題も出てきたようなわけであります。今日ではわれわれとしてそれについて最善の努力をいたしておりますが、先般柳大使が二月の二十八日でありましたか、帰国をいたしまして、日本側のそれらの意向を体して京城におきます意見をまとめて打診して帰ってくるということでありまして、昨日夜、柳大使日本に帰任されたわけであります。本日の午前十一時からアジア局長との会談をいたすことにいたしておりますので、その結果によりましてどういう話が向こうから出ますかは、まだはっきりいたしておりません。若干京城における新聞談話等もございますけれども、はたしてどれだけ信憑し得るものかどうかわからないものでありますから、私どもといたしましても、きょうの会談を待っておるようなわけでありまして、われわれとしては何といたしましてもすべての日韓会談前提として抑留漁船員即時帰還日の確定、実行ということを主張しておりますので、若干長引きましてもこれができるようには努力はして参りたいと思いますけれども、どうしてもこれができない、困難であるという見通しがついて参りますれば、日韓間の調整についてはさらにわれわれとして新たな構想を持っていかなければならぬのではないか、というようなところに立っているということを私自身も認識いたしておるわけでありまして、今後それらの問題についてどう処置して参るかということは、今申し上げかねますけれども、そういうような立場にあることを御了承願いたいと思います。
  15. 中村英男

    中村(英)委員 これからの交渉ですから、向こうがどう出てくるかという予想はできませんが、しかし私どもが予想するところでは、従来の経過にかんがみて米だけの問題ではなくして、何かはかに問題を出してくるのではないかという感じもしております。しかしこれはこの前農林大臣が米の問題を出してきて、どうも人間と米をかえるのはなんだかというようなそういう発言があって、人道問題と米の問題を取引しているような感じ世界に与えて、国際世論を刺激してはいかぬ、そういう配慮もあって米の問題は別なんだそういう意味合いで韓国はいるようです。しかし昭和三十三年ですか、九百二十二名の釈放の問題のときにもちょっとこれと似たようなケースがあったと思います。日本の文化財の問題を出した、すると日本釈放問題を早く解決したいものですから、譲れるところまで譲って、九百二十二名の釈放をやられたと思います。そういう経過から見ても、どうも今度何かそういう人質外交というものが、国際世論上そういうことは非難されるから言わないだけのことであって、私どもの認識しているところでは、明らかに人質外交をやっておる。ことに日韓会談経過中におきましても、日本の漁夫を九百二十二名帰しても、すぐそのあと百五名を拿捕した、そういう過去に経過があるものですから、私どもはこの問題はすなおに受け取れない。そういう意味であなたは何か米以外の問題が出てきた場合には、全然新たな観点に立ってこの問題を取り扱いたいという十分な決意をお持ちになるかどうか、そういう点をお伺いしておきたいと思います。
  16. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 私といたしまして韓国側がこういう米の問題と引きかえにということを考えているとは思っておりませんけれども、しかし韓国側としては、いろいろな意味においてなかなか強硬な態度をとっておりますので、従って問題が複雑化してくるわけでございます。しかし何といってもやはり予備会談を終結して以来、われわれのとっております態度というものは、むろん日韓会談を側面的には進めておりますけれども、しかし抑留漁船員方々が帰ってこなければ、最終的に日韓会談そのものを妥結するわけにはいかないという立場で、並行してやっておるわけであります。従いまして、今回、今申し上げましたような形において、釜山漁船員方々が帰り得ますならば、好意を持って他の問題をできるだけ十分に考えてはいきたい、こう思っておりますけれども、それができない場合には、やはりわれわれとしても新たな見地に立って日韓会談そのものを検討し、あるいは両国関係についてあらためて考え直して参らなければならぬのではないかと考えております。しかし何と申しても、日韓会談を決裂いたしますことは、釜山に抑留されております漁船員方々が、ある時期帰れないことになるというような状況にも置かれるのではないか、そういうことは、われわれとしてできる限り隠忍して、何かの手で帰ってもらうようにしなければならぬのではないか。日韓会談そのものが決裂して、いつ帰り得るかわからないような状態釜山漁船員の方を置くわけにはいかぬ気持も、一方では非常に強く働いておりますので、できるだけその意味においては隠忍自重してやって参ることは、当然やらなければならぬ、こう思っております。しかし一方から申しますと、お話のように国民的な感情というもの——国民立場からいって、単に抑留漁船員方々留守家族ばかりではございません。国民的な感情というものも、韓国に対しましてこういう状態が続いて参りますと、相当感情上おもしろくないことになって参りますので、そういう点もわれわれは考えて参らなければならぬとは思っております。
  17. 中村英男

    中村(英)委員 これは日本国民も考えなければならぬ点もあろうと思うのです。きょうの新聞を見ると、柳大使が、日本のある新聞は高圧的に出ておる、こういうことを申し述べておりますが、私ども昭和三十二年ですか、代表部に行きまして、九百二十二名の釈放の問題について折衝したのです。そのときに、当時日本漁民が五名ですか、向こうで死にまして、そういう人道上の問題であるから、また年の瀬であるから帰してもらいたい、こういう話をした際に、私どもはもちろん人道上の問題として扱う、日本の漁師が五名死なれたことは非常に気の毒に思う、しかし考えてごらんなさい、日本漁船員は男ばかりであるが、私ども女子供を含めて二十一名大村収容所で死んでいる、だから人道上の問題と言われると、むしろ自分の方に言い分がある、ことに自分たちは、自分のポケット・マネーを出して外務省に折衝して、いろいろ人道上の問題として相当釈放の問題を積極的にやっておる、だから積極的にやっているのは自分の方だ、積極的にやっていないのは外務省だ、こういうふうに開き直られたのです。私はそのときにその実情は知りませんが、なるほどそういう事実があれば、それはそうだろうというふうに思ったのです。  それからもう一つは、四十年の長い間、日本朝鮮を統治しておった、その歴史的な経過の中に、やはり朝鮮民族としては、日本人に対する感情というものもあるでしょうし、あるいは日本民族朝鮮民族と比較してみて、そういう扱い方の点で、私ども日本人は考えなければならぬ点があると思うのです。そうであるからこそ、今日までまるで人質みたいなこういうやり方に対して、ことにこの間の第五八幡丸撃沈事件のごときは、全く日本人感情というものを非常に刺激していると思うのです。それでもなおかつ低姿勢日韓会談というものを好転させなければいかぬ。日本民族朝鮮民族は従来地理的にも民族的にもきわめて密接な関係にあるから、これはどんなことをしても、苦しい目にあっても、そういうことを忍びながら好転させよう、これが国民熱意だと思うのです。私どももそういう熱意には変わりはないのです。決して私どもは高圧的に出るべきだという主張はしておりません、しておりませんが、それには限度があろうと思うのです。いつまでもそういうやり方をされるということは耐え切れないという国民気持もわかるし、私どもも今外務大臣から言われましたように、この人質外交、この釈放の問題が数日のうちに解決しなかったら、いつまでもこういうふうな外交はやり切れない段階にきたと思うのです。そうすると私どもは根本的に李ラインの問題あるいは日韓会談の本質の問題を検討しなければならぬと思うのです。  そういう意味一つお尋ねしたいのですが、大体釈放がうまくいけば日韓会談軌道に乗ってくるし、貿易の問題も好転するでしょうし、韓国日本はもちろんそういうことをやらなければいけませんが、今の時期に立っての見通しとして、米を三万トン買えば人を釈放するということではないでしょうが、釈放問題は人道上の問題として扱おう、相互釈放しましょう、こう出てくれば会談も進展しますし、貿易の問題も軌道に乗ろうと思うのですが、そうならない場合には、一体日韓会談を、今日朝鮮北鮮韓国に分かれているのに、韓国だけを相手にしてやるというこの会談の方式がどうかということも、国民としては一つの議論があるところだと思うのです。これは一つ構想ですが、釈放という問題が他の条件を持ち出してきてうまくいかないということになると、誠意がないと見なければならぬのですから、そうなるとやはり外務大臣は基本的な問題を新たな角度に立って検討するという心境らしいのですが、こういう基本的な問題を一体どうお考えになりますか。
  18. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 ただいまお話がございましたけれども大村収容所におります人たち不法入国者でありまして、韓国側がこれを引き取らなければならぬ実は義務を持っておるのでありまして、釜山抑留者帰還相互送還というのは、ほんとうはおかしいわけでございます。われわれもそこまでおりて実は交渉しているのであります。その点は残念でございますけれども実情から申してやむを得ない、こう思ってやっております。  そこで今回釜山抑留漁船員方々帰還という問題に集中して参りますと、昨年二月に北鮮帰還のために赤十字井上外事部長がジュネーブに参りましたときに、私から国際赤十字ジュノー委員長あてに、この問題について国際赤十字関心を呼び起こすようにお願いをした手紙を出しました。国際赤十字は、その後公にはされておりませんけれども、この問題については非常に同情的であって、数回韓国側に勧告されたのではないかと——何ら発表もされておりませんけれども、そういうことであったようにわれわれも推測をいたしております。同時に北鮮帰還の問題が始まりますときに、国際赤十字方等おいでになりましたときにいろいろなお話を伺ってみましても、やはりこの問題は相当関心のある問題として国際赤十字においても留意されておられます。でありますから、さらにそういう方面から、これらの問題についての解決のために協力を得ますことは、現実の問題としては必要ではないか。またさらに国際的な規模においてこういう問題を訴えて参りますときに、国際赤十字等がこういう問題に関心を持っておるということが、しかも同情的立場を持って日本のこの問題に関心を持っているということが、一つは非常に大きな国際社会に訴えて参ります場合にも強みであろうかと思います。従ってそういう方面とも十分な連絡をとって参らなければならぬと思うのであります。それらのことをいろいろ今日考えておる段階でございます。ただ日韓会談そのものにつきまして、お話し申し上げましたように、われわれとしては円満に参りますれば、李ラインの問題の解決の一案として、魚族保護の見地から農林省等が考えられました一つの案を一昨年の暮れにすでに韓国側にも提示をいたしておりますので、そういう問題に入りまして根本的な解決に持っていきたいと考えております。不幸にして釜山抑留漁船員方々の問題が解決いたしませんければ、日韓会談をスムーズにやっていくような状態にはならぬのでありますから、そういう場合にはこれらをどうするかということをあらためて考えて参らなければならぬわけでありまして、今日私からどうするということは申し上げかねますけれども、今日ではできるだけ韓国側日本期待に沿うように取り運んでもらうように、ただいまとしては努力をいたしておるわけでございます。
  19. 中村英男

    中村(英)委員 政府としては当然なことでしょうが、ここでこの数日のうちに釈放問題が好転しないということになれば、この前のときには国際赤十字にお願いして、そうして推進方を、石原さんでしたか、ジュネーブにいらっしゃった経過があるものですから、これはもう一つステップがあるようなものですね。そういうなかなかもたもたしておる場合に国際赤十字に依頼して善処方をお願いするという手はある。しかしなおかつこの人道上の問題がどういうふうに扱われているか、こういう事態がはっきりしてきたら、やはり李承晩ラインの問題について、もちろん日韓会談そのものの本質問題の上に立って、そういう新たな角度に立って韓国との間を考え直す、そういう決意ですか。
  20. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 日韓会談をこのまま進行させるのは、漁船員が帰ってこない以上は私は適当だとは考えておりません。しかしどういうふうにそれをとり行なうかということは、今私の立場として申し上げかねると思うのでありますけれども、今申し上げたような決意を持っておることだけは申し上げられると思います。
  21. 中村英男

    中村(英)委員 私どもも、かねがねこういう外交上の問題は野党があまり責めるに急だとあなた方もやりにくいだろうと思って、実は今日まではあまりやかましく言っていないのです。またあなた方の方にも社会党のそういう基本的な態度については十分了解といいますか話し合いをして今日まで来たのです。しかしもうこれで八年になりますよ。昭和二十七年から八年になった今日、李承晩ラインが全く既成事実みたいなこういう状態にいつまでも置かれておることは、拿捕も続きますし、非常に困るのです。そういう点から、もしこの問題がうまくいかない場合に、これは根本的に考え直す時期に来た、こう思っておるのです。そこではっきり私どもの党の立場からもそういう意味合いで説明もして御理解を願ってやってもらいたいと思うのですが、私どもはもともと財産権の請求の問題であるとかあるいは李ラインの問題であるとか、そういう基本的な問題について韓国日本だけで日韓会談という形式でやることは間違いだと思っておるのです。それは南北朝鮮が統一されてから基本的な問題を話すべきだ、原則的にはそう思っておるのです。また将来統一されて日本との友好関係を結んでもらいたい、こういう信念の上に立っておるのです。しかも現に北鮮もあることですから。だからそういう現実の中で、韓国とだけで会談という形式で基本的なこういう問題を扱うことはいけないのじゃないか。韓国日本でいろいろな問題で問題が起きておりますから、貿易の問題なり漁業の問題で話をしなければならぬということは、これは必要なことですから会談という形式でなくて、交渉といいますか、そういう形式を踏んで、個々の当面しておる貿易なり漁業の問題は扱うべきであろう、こういう見解を持っておるのです。そういう点は外務大臣としてはちょっと答弁しにくいでしょうが、私どもはそういうように思っておるのです。ですから釈放の問題が、向こうが誠意がない、こう読み取れた場合には、むしろ会談を打ち切るべきじゃなかろうかとさえ国民は大ぜい思っておるのではないかと私は思うのです。そういう世論の受け取り方は外務大臣どうなんです。国民感情国民の今の世論は相当きびしいというような気もしておるのですが、そういう受け取り方をしておいでになりますか。
  22. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 先ほど来申し上げておりますように、われわれは便宜上日韓会談と並行して漁船員送還問題を扱ってはおりますけれども、しかし漁船員送還前提であることは申すまでもないわけであります。従いまして漁船員の問題が片づきません限りは、われわれとして日韓会談をそのまま進めていくというわけになかなかいかないのではないか、こういうふうに考えております。ただ、御承知通り日韓間の一番大きな日本としての問題は李ラインの問題でございます。従ってこの問題の話し合いをつけないと相なりませんので、これがつくように努力していくことは、当面やはりどうしても必要ではないかと考えておるのであります。ただ今申しましたような韓国側態度で、これ自身も二国間の話し合いにおいて非常につきにくいということでありますれば、やはり他の方法を何か考えて参らなければならぬのでありまして、かりに漁船員方々が今回の話し合いによりまして帰ってきても、李ラインのものが設定されておる限り、また拿捕等が起こりますれば問題は悪化するわけでございますから、再び同じことを繰り返していくわけであります。でありますから、この李ラインの問題は、日韓会談の上でも、あるいは日韓会談を別にしても、二国間の問題として何とか一日も早く片づけなければならぬ問題である、こういうふうに考えて、その面に向かって努力をしていくという線をとって参りたい、こう考えておるわけであります。
  23. 中村英男

    中村(英)委員 日韓会談の中で、日本としては特に李ラインの問題が一番大きいから、その問題を切り離してでもやりたい、こういうことになれば、私もその通りだと思うのです。日韓会談で、これは日韓相互の問題をうまくいかせなければならぬということは当然ですが、しかし先ほど申しましたように、南北の朝鮮の統一ということを私どもは念願もしておるし、また歴史的に見ても、朝鮮日本というものの将来の交流というものは考えなければなりませんから、私どもは今の代表部も、北鮮韓国とあるなら両方あって、そして早く日本も双方に大使館を置いて、そういう姿で国交回復というものをやっていきたいというのが、私ども国民の念願と思うのです。そこで、今の日韓会談において、在韓資産の請求権の問題なりあるいは在日鮮人の法的地位の問題なり、こういう基本的な問題が扱われてくると、やはり問題を北鮮の方に残すのですね。そういう点はこの際——もう従来やってみても、釈放した、釈放して話し合いをしている最中にまた拿捕した。依然としてやはり人質外交に見えるやり方をやっておるところの不誠意というものは、私はもう気づいておる。ですから、私は、新しい立場に立って外務大臣がこの問題を検討しなければならぬというふうにお考えになるなれば、こういう基本問題を、もしやるとしたら扱わないように、扱うとしたら、やはり統一された政府によってやるべきだ、こう私どもは思っておるのです。  そこで、李ラインの問題は非常に重要だから切り離してもやりたいという御意見ですが、私もそう思うのです。それで、この李ラインの問題は全く不当であるということは外務省、その通り思っておいでになりますか。
  24. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 その通りに思っております。
  25. 中村英男

    中村(英)委員 この三月十五日ですか、海洋法会議で、結論がどう出るかわからないが、今の情勢では、アメリカの提案、六海里以内、魚族の問題で十二海里くらいですね、まあそういう意見とか、いろいろ議論があるようですが、しかし李ラインは平均四十海里ぐらいあるのですからね。しかも公海でそういうことを宣言しておるのですが、この不当性は、外務省認めておいでになる。しかし実際問題としては、向こう向こうの言い分があるでしょう。ですから、こちらはこちらの言い分があってやってみても、すぐその李ライン問題は、そのままだけでは私は解決がなかなかしにくいと思うのです。そこで、これは私自身の一つの思いつきみたいなものですが、そういう議論のあるところはなかなか解決しにくいとしたら、この問題は一つたな上げしてしもうて、実際に魚族保護という、そういう見地から取り上げていくという、そういう行き方も一つの方法と思うのです。そういう方法に韓国側はなかなか話に応じてこないものですか、見通しはどうですか。
  26. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 われわれも今お話のありましたように、韓国側の若干の面子もあろうかと思いますから、従いまして、李ラインの撤廃というよりは、それにかわるべき魚族保護の見地に立った一つの区域を設けるということが、今のお話のように具体的解決の一つの案だと、こう存じておりました。この点は、農林当局等におきましても十分検討いたした上で、一昨年の十一月に、一つの案を韓国側に提示いたしたわけであります。たまたま昨年は、北鮮帰還の問題で日韓会談が中絶いたしてきましたので、その後われわれも再開にあたりまして、乗組漁船員の早期帰還ということを条件にいたしておりますので、この問題についての具体的討議をいたす機会が今日まで、ございませんし、またわれわれとしても、漁船員が帰らなければ具体的討議になかなか入れぬわけでありますから、そういうことで停滞いたしておりますが、しかし今お話のような考え方は、一つの案として、政府もそういう考えのもとに一案を韓国側に出したのでございます。
  27. 中村英男

    中村(英)委員 第二回国際海洋法会議にこの李ラインの問題は、議題として出せますか。
  28. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 議題として海洋法会議にかけますことは、今回の海洋法会議の性質とは若干違うかと思います。しかしながら、こういうあらゆる機会にわれわれとしては、こういう問題について世界の世論に訴えることを今日までもやっておりますので、こういう機会に領海問題等その方面の専門の方、ことに海洋法に関する国際的な専門の方々に、十分こういうことを了解していただきますことは、将来国際的視野において、この問題が二国間で片づきませんときに解決する方法としては、非常に必要な措置だと思うのでありまして、そういう点については、出ました代表等に十分説明させるようにはいたしております。直接の議題には相ならぬのじゃないか、こう思っております。
  29. 中村英男

    中村(英)委員 そうすると、なかなかこれは実際問題としては扱いにくいということになるのでしょうが、もうこれは私は日本の漁法が非常に進んでいるからだと思うのです。それで、韓国としても私は、非常に漁法がおくれておるものですから無理からぬところがあると思うのです。そういうところから考えてやるのでしたら、それは私は理解できないことはないと思うのです。ですから、そういうラインがないと、日本の進んだ漁法のために漁族も絶えるし、そうして韓国の漁業が圧迫されてどうにもならぬそういう角度からだけ韓国が考えるなれば、私どもは十分これについて話をつけなければならぬと思っているのです。思っているのですが、従来の八年間の経過を通してみても、それもあるでしょうが、それだけではない。やはり日韓問題の取引にこういう問題が使われておるきらいがあるから、私どもは忍ぶことができない段階にきた、こう読み取ってきたわけですね。そこで私どもは、もしそういうふうに韓国に誠意——どもはすでに八年の間忍びがたきを忍んできたけれども、依然として同じように、きのうの辻君の質問を新聞で見ると、竹島問題ではアメリカがどうこうというようなことを言っていましたが、私ども昭和三十三年に、この人道上の問題について、アメリカとしてはこの問題について居中調停するように本国に要請してもらいたいとアメリカの大使館に行ったのです。またこの間の第五八幡丸を見ても、アメリカの武器、貸与された武器で日本の船が撃沈されているのですよ。こういうことはどうも国民の中に、何か李ライン問題は日本の再軍備に道具として使っておる、国民感情を刺激する道具として使っておるのだという誤解を生むのは、これはあたりまえだと思うのです。ですから、いよいよそういうふうにものを考えてくると、これはやはり新しい角度に立って李ライン問題、韓国問題を扱わなければならぬ、こういうふうに国民気持がなってきたと思うのです。私はこの際、そういう意味で、もうこの数日の間に釈放の問題が人道上の問題として誠意をもって扱われぬとしたら、今までの藤山外交というものは、軟弱外交じゃないかといって、国民世論の強い非難を受けると思うのです。また非難されなければいかぬと思っておるのです。そういう意味で、もしこの数日の間に、誠意をもって相手が——こちらは誠意をもって低姿勢でやるにかかわらず、依然として相手が人道問題として扱わないということが読み取れたら、外務大臣一つ決心をしてもらいたいと思うのです。そうしなければ大へんだと思う。西日本漁民として耐えられないだけじゃない。国民として耐え切れない。これは、しかしそうだからといって、外交上の折衝を放棄するわけにはいかぬ。あくまでも話し合いをしていかなければならぬと思います。その方法としては、今日まで外務省は、一体韓国代表部を認めておいでになるのですか。一体韓国代表部は、どういう資格で日本にあるのですか。これはおそらく終戦後マッカーサー司令部の関係で置かれたものです。アグレマンもないと思うのです。そのまま資格なしで置かれておると思うのです。一体法的な代表部としての資格というものはどうなんです。
  30. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 今お話のありましたように、われわれも二国間の問題については、できるだけ二国間でまず話し甘いをして解決するというのが適当と思います。むろんアメリカその他第三国に依頼いたしまして、仲介の労をとってもらうということも、場合によっては必要であろうと思いますけれども、二国間の問題はできるだけ二国間で解決することが適当と思って、今まで努力いたしておるわけであります。ただ残念ながら、今申し上げたような状況にございます。  代表部のことでございますが、昭和二十七年四月二十八日、平和条約が発効いたしましたときに、日韓交換公文でもって、両国間に正規の外交領事関係が樹立されるまで、暫定的に政府機関としての地位を有する代表部を相互に設置するという交換公文がございます。それで、占領中に司令部で認められておりました韓国側代表部を認めたわけでございます。同時に、日本側といたしましては、この交換公文によって京城代表部を作りたいという申し入れをいたしておるのでございます。当時は御承知通り政府釜山に移っておったような状況でありましたので、韓国側としても、ここに代表部を設置するのは、その当時の事情からして困難であろうということで、日日本側におきましても、当時はその事情をくみまして、しばらく設置を猶予したわけでございます。その後、日本かりは数回にわたりまして、韓国側に対して代表部設置の話をいたしておるのであります。京城代表部、それから釜山代表部の分室を設置してもらいたいということを、数回にわたって韓国に言っております。しかし、それにもかかわりませず、韓国側はまだなかなか日本人の生命その他を保護することが困難であるからというような理由でもって、毎回断わってきております。われわれははなはだ遺憾に思っておりますので、そういう点については、韓国側の理解を深めていかなければならぬと思って、今日までも対処して参っております。それが今日、何か一方的に東京に代表部が置かれている経緯でございます。われわれとしては、今後ともこの問題については当然処置をいたさなければならぬことはもちろんでございます。
  31. 中村英男

    中村(英)委員 そういうように何ら法的根拠もなし、しかも、そういうことで韓国側の方にも日本代表部を置くという交換公文をかわしながら、生命の約束もできないということで置かれていないのです。その法的な根拠は別として、現実にこちらには韓国代表部が置かれ、向こうには全然置かれていないという姿が今日あるのですから、誠意がないと認めたら、やはり外務大臣もはっきり踏み切ってもらいたい。代表部という資格のないものでは、私はちょっと了解しにくいと思うのです。  きのうの日経の夕刊を見ると、来月七日に新潟で、日朝貿易の正常化について全国大会をやることになっております。日本の国も私どもも、朝鮮の問題を持ち出すということは、日韓間のこういう問題が好転しにくいというので、こういうことに対して非常にこまかく配慮してきたけれども、しかし国民の間から、もう韓国会談してもなかなからちがあかぬ、ことにああいう人道上の問題を、何か米なんかと取引するということでは相手にならぬ、これは、やはり統一された朝鮮との間で会談すべきだという世論も、実際の必要上出てきておる。そういう事情からいっても、代表部を置くのだったら、資格はなくても朝鮮韓国と両方置きなさい。それなら話はわかる。北鮮の方は、国交を回復していないから置けないと言われるかもわからないけれども、しかしそういう正式のものでなかったら、近い国との貿易なり、あるいはいろいろな問題を話し合うのに、そういう窓口があることは必要なことですから、そういう意味韓国の方の代表部があるのだったら、北鮮代表部も置いて、そして双方の統一を促進するような格好で、日本と全朝鮮との国交を正常化していくという一つ努力を払っていただきたいと思います。そうでなくして、今のような不自然な姿であることは、国民は了解しにくいと思う。そういうことはどうなんです。
  32. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 われわれとしては、韓国の将来の統一ということについて望んでおりますことは、むろんでございます。ただしかし、現在の実情から申して、そういうことが非常に困難であることも、申すまでもないことであります。現状においては、やはり李ラインの問題を中心にして、これを解決していくということが、一番重要な日韓間の問題だと思います。でありますから、これをまず解決することが一番適当なことでありまして、その意味から申しますと、韓国側を相手にして何らかの話し合いをしていくということでなければならぬ、そう考えております。
  33. 中村英男

    中村(英)委員 そうすると、抑留者の問題、それから李ラインの問題を解決して、それを糸口にしながら日韓の正常化、あるいは朝鮮の正常化というものを考えておる、こういう趣旨ですか。
  34. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 何と申しても、李ラインの問題を解決しなければ、西日本の漁業者のためにはいけないわけであります。これを解決することが、やはり私どもは大きな問題だと思います。しかも、それは不法な李ラインという線を引いておるのでありまして、そういうものを撤去してもらうという、一つの国際紛争としても、これを片づけなければならぬわけであります。その問題を先決問題としてわれわれは扱っていく、こういうことでございます。
  35. 中村英男

    中村(英)委員 時間がないそうですから大体の大ざっぱなことを質問したわけですが、しかし大臣、柳大使も帰ってきたわけですから、非常な決心を持ってやっていただきたいものです。そうでないと、今の事態は、西日本抑留者家族も非常に心配をしておるし、また相当長い間忍びがたきを忍んで参っておりますから、相当決意を持って韓国に当たらなければならぬ、そういう態度を持っておるようですし、私も無理からぬことだと思うのです。その人たちの心境を聞いてみると、非常に忍んだ、もう代表部を置いてもらっては困る、経済断交をしてもらいたいという強い希望を持っておる。しかし私どもは、やはり朝鮮日本との関係ですから、そういう強い気持を持っておるということは理解できますが、それは政府が軟弱外交ではなくして、非常に強い決意を持って、もし誠意を持って抑留者の問題をやらなかったら、新たな角度に立って自分たちはこういう態度を持っておるのだというきぜんたる態度をもってやってもらいたい。今までみたいなずるずるべったりでは今度はいけないわけです。そういう点を特に希望いたしますから、強い決心を持ってやっていただきたいと思っております。  それから水産庁の方おいでになっていますか——おいでになっていなかったら、抑留者の援護の問題がありますから、これは後ほど私お伺いいたします。
  36. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 われわれといたしましても、できるだけ国民の皆様方の御期待に沿うようには努力して参りたい。ことに私も抑留家族方々からいろいろ悲壮な手紙もいただいておりますので、その気持がよくわかるわけでありますから、問題解決に対しては相当の決意を持って当たらなければならぬということは承知いたしておりますので、できるだけそういう決心を持って参りたい、こう思っております。
  37. 竹谷源太郎

    ○竹谷委員 関連して外務大臣にお尋ねをしたいのであります。ただいま中村委員に対する御答弁によりますと、サンフランシスコ平和条約の発効のときに、日本韓国の間に協定が結ばれ、それに基づいて、代表部が相互派遣をせられることになった。そういうことで柳大使が来ておるということでございましたが、韓国の正式の政府の使節としては、柳大使もしくは代表部のほかに公的な機関、たとえば通商部とかあるいは総領事、領事というものが来ておるのかどうかお尋ねをいたしたいと思います。
  38. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 ほかにはございません。
  39. 竹谷源太郎

    ○竹谷委員 それから、韓国人が日本へ旅行する、あるいは商用で一私人が日本へ来ることは許されておるかどうか。許されておるとすれば、それに対して日本のどの領事がヴィザを与えるのか、あるいは入国を許可するのか、それはどういうことになっておりますか。またこれに対して日本の一私人が商用その他で韓国に旅行したい——これは相互主義の外交では当然認められておるはずだと思うが、それは一体どんな手続でどうして行けるのであるか。もとに戻るようですが、しからば日本代表部あるいは通商部というものが、現実には今行っておるのか行っていないのか。非常にしろうとくさい質問でございますが、はっきりお答えをいただきたい。
  40. 三宅喜二郎

    三宅説明員 韓国人の日本への入国につきましては、韓国政府の発行した旅券に日本の査証を求めることが必要でございます。
  41. 竹谷源太郎

    ○竹谷委員 査証はどこで与えるのですか。
  42. 三宅喜二郎

    三宅説明員 査証は、日本といたしましては韓国に出先がございませんから、東京でその許否を決するわけでございます。  それから日本人韓国への渡航につきましては、従来からも、たとえば新聞記者を韓国に入れるようにというようなことを要求いたしておるのでありますが、それに対しましては韓国は拒否いたしております。それから日本政府として通商代表部とかそういうものは置いておりません。向こう日本代表部を置くことも断わっておる次第でございます。通商代表部のごときものも向こうは許しておりません。
  43. 竹谷源太郎

    ○竹谷委員 お答えによりますと、日本代表部向こうに行くことも拒否しておる。日本人韓国へ旅行することも拒否しておる。これは一体日韓協定では、韓国だけが代表部もしくはその他の公的機関を日本に派遣することができる、韓国人は日本を旅行することができる、日本はそれを許さなければならない。ところが韓国の方は日本外交機関の派遣もしくは日本人韓国渡航を拒否する、それは許されるのですか。そういうことは国際慣例上みな相互主義だと思うのですが、そういう協定が結ばれておるのかどうか。
  44. 三宅喜二郎

    三宅説明員 その点につきましては、通商条約もその他協定は何らございませんので、日本韓国人の入国を許可いたしますのは、一方的、恩恵的に必要に応じてやっている次第であります。
  45. 竹谷源太郎

    ○竹谷委員 そうすると、先ほど外務大臣が、サンフランシスコ平和条約発効のときに日韓の間に協定ができて、韓国外交使節が日本へ来ることになったというお話ですが、これは協定も何もなくて恩恵的に日本が一方的に韓国に特別な許可をしている、こういうことになっているのかどうか。
  46. 三宅喜二郎

    三宅説明員 先ほど外務大臣が御説明になりましたのは、代表部の交換の問題でございます。それにつきましては往復の書簡があるわけでございます。
  47. 竹谷源太郎

    ○竹谷委員 その代表部に関しては、日本もまた韓国に派遣し得るということが定められていると思うのだが、これはどういうことですか。
  48. 三宅喜二郎

    三宅説明員 往復書簡におきましては、お互いに置くことを原則的に同意するということが定められておりまして、その実施につきまして、日本側からも置きたいということを申したのに対して、当時は朝鮮事変中でございまして、韓国政府釜山に移っておるというような状態でございまして、とても日本代表部も置けるような状態ではないということを申して向こうが断わったのでございます。その後におきましては、治安状況がなお悪くて日本人の生命身体を保護できないからもう少し待ってくれ、ということを言っている次第であります。
  49. 竹谷源太郎

    ○竹谷委員 日本代表部韓国が受け入れる義務が相互的にあるだろうと思うのだが、それを向こうが拒否している理由は、治安について保障ができない、日本外交使臣の生命身体の安全を保障できないからということで断わっているようなお話でございますが、しからば韓国は、日本以外の世界各国の外交使臣を、全部その生命身体の保障ができないからという理由で断わっておるのであるかどうか。
  50. 三宅喜二郎

    三宅説明員 その点につきましては、イギリス、アメリカその他の外交使節は韓国に行っております。これは韓国との間にもちろん正式の外交関係がある次第でございまして、大使館が設けられておる次第であります。そして韓国におきましては、そういうふうに明示的に言うわけではございませんが、日本に対してはなおいろいろと従来の経緯から見て感情や空気が悪いので、日本人については生命身体の方が今のところは保障ができない、こういう意味で言っているのだと解しております。
  51. 竹谷源太郎

    ○竹谷委員 そうすると、イギリスやアメリカの外交使臣は安全に韓国においてその使命を果たしておる、日本代表部は出し得ない。それはもちろん生命身体の安全を保障できないから、こういうのですが、李承晩政府は、国家が認めた日本の正式の代表機関の生命や身体その他の安全を保てないというようなことでは、実質的に統治権を持っている政府としての資格はあるのですか。この点いかがなものでございましょう。英米の使臣の生命、身体の安全の保障ができるものを、多少英米人に対する感情とは違うところがあると仮定いたしましても、それくらいの能力がないはずではないと思うし、かりに多少日本人に対する感情があるといたしましても、限られたごく少数の代表部員の安全が保てないというようなことでは、一体李承晩政府というものは、政府としての値打ちがあるものかどうか、それはどうお考えですか。
  52. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 その点はわれわれも遺憾に思っておるところでございます。韓国側としては、従来の経緯から見て、日本人に対するなかなか困難な問題の惹起もあるのではないかというようなことが理由でありますので、全面的に政府としての資格がないとは、それだけで見るわけには参りませんけれども、しかし日本としてははなはだ遺憾なことだと考えております。
  53. 竹谷源太郎

    ○竹谷委員 それはどうも韓国民がそう思っているのではなくて、政府の一部の者だけが勝手にそういうふうにきめ込んで、そして安全が保てないというようなことを理由にしておるのじゃないかということが疑われる。韓国国民大衆は、ぜひ日本と友好善隣、親善の関係を結んで、お互いに生活の向上や福利増進、平和な社会、世界を進めていきたい、こう考えておるということをわれわれは聞いておる。それはどうなのですか。政府の一部の者だけがそういうことを口実にしているのではないか、そういう疑いを持つ。平和なる一般韓国民は、日本と親交を結びたいという熱情にあふれている、こう私は思うのであるが、外務省はどうお考えでありますか。
  54. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 終戦後ある時期には、今のような若干の感情があったのではないかと思いますけれども、今日に相なりますれば、竹谷委員の言われるように、韓国の一般国民人たち日本に対する感情というものは、お話のように、特に国を接しておる関係で、やはり両国が親善関係を持っていかなければならぬ、そうしてお互いにそれが有無相通じて繁栄の道に進み得るのだという考え方に大部分があろうと私は考えております。
  55. 竹谷源太郎

    ○竹谷委員 一握りの日本外交団あるいは代表部の安全の保障ができないというような、そういう実力を備えておるかどうかわからないような政府を相手にしないで、善良なる韓国民を相手に外交をやる、外務大臣も、何ら韓国国民日本に対して終戦直後のような感じを持っていない、こういうふうに認識されておるのであるが、これら平和的な国民外交をやるという決意を持って、力強い外交をぜひお進めいただきたい。これは日本人全部の熾烈なる国民感情であると考えるのです。それからまた聞くところによると、向こうから商社の人たちがどんどん来て、日本の品物を買ったり売ったりする。日本の商人は全然向こうに行くこともできない。状況がわからないからめくら貿易をやらなければならない。そこでアメリカに対する関係ども、従来そういうものでございまして、バイヤーの勝手ほうだいに買いたたかれる、あるいは高く売りつけられるというようなことで、非常に損な貿易をやっておる。こういう点からも、どしどし日本の商社も向こうに出かけていって経済情勢を把握して正当な貿易通商をやりたい、こういう感じも持っており、行ったところで絶対生命身体などそう心配はないというふうにその人たちも考えておる。こういうふうなことでございますので、一体外交は相互主義でいくべきものであり、日本から行くものを拒否するなら、こっちも向こうからくるものを拒否するという権限があってしかるべきものだと思うが、その貿易問題についてはどうお考えであるか、御所見をお伺いいたしたい。
  56. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 御承知のように、最近では直接の貿易は途絶いたしておるわけでございます。貿易交流ということは、両国間の根本的な問題が解決すれば、これはほんとうに隣の国でありますから、盛んにやりますことは当然の必要であります。そのためには両国の実業家が往復いたしますことが、これらのものを円滑に進行させるゆえんでありますこと、今竹谷委員の御指摘の通りでありまして、私どももそういう点については全く同じような考え方を持っております。
  57. 竹谷源太郎

    ○竹谷委員 日韓の間には、あるいは李ライン問題や竹島の問題や抑留者の問題、その他もろもろの懸案がたくさんございます。しかし懸案を着々と一つ一つ解決していって、そうして日韓関係、国交の正常化をはかろうというのも一つの方向かもしれませんが、それをもう七、八年もやってどれも成功していない。ましてやこの際韓国国民自体も、日本との正常なる関係を望んでおり、われわれ日本国民はむろんでありまして、この両国民の意気の合ったところで、今やそのような個々の懸案を一つ一つじっくりと向こうのごきげんをうかがいながら、始終ばかにされながら交渉するようなことはやめて、一刀両断に日韓関係の根本問題をこの際解決すべきときがきたのではないか、こう私は考えるのですが、外務大臣はその点に関して今後どのような方針で日韓外交を進めていく考えであるのか。もはや根本問題に手を触れて一挙にそれを解決して、その他の懸案はそれに従って当然解決されていくというようにやるべき時期がきたと考えるがいかがでございますか。
  58. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 先ほど来御説明申し上げておりますように、韓国との関係の調整の一番大きな点は李ラインの問題だと思います。これの調整がつきませんければ、両国関係は円滑になりませんし、日本としてもこれを何とかして解決しなければならないのであります。私どもとしてはこの問題に対して解決の道を得るような方途を選んでいかなければならない、こういうふうに考えておるわけであります。
  59. 竹谷源太郎

    ○竹谷委員 時間がきましたから、私の質問はこれで終わります。
  60. 小泉純也

  61. 受田新吉

    ○受田委員 大臣はお忙しいようでありますが、あなたの御主管の委員会でありますので、一つゆっくりとお願いしたいと思います。今まで質疑応答された中で一、二拾ってお尋ねを申し上げたいのですが、今竹谷委員から問われた韓国に在韓代表部を置くということに対して、使臣の生命財産の保障ができないから置かないということですが、これは国際通念上から見て、そういう生命財産の保障ができ得ないような国を法治国と言っておりますか、言っておりませんか。
  62. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 この点は最初の時期におきましては、釜山政府が移っておった時期でもございます。あるいはまた終戦後のいろいろな関係からいたしまして韓国日本との問の感情的な問題もございます。でございますから、そうしたことを理由にいたしますこともある場合にはうなづけたと思いますが、今日になりますと、なかなかそういうことだけではわれわれとしても承服いたしがたい。先ほど竹谷委員の言われましたように、韓国国民感情というものは、日本に対してそう悪化しているとは私どもも考えておりません。でありますから、そういう意味においてはむろん不当な処置であろうと思います。また何かそういうようなことを理由にして、あるいはそれは法治国としても、従来のいきさつからいってやむを得ない場合もあったろうと思いますが、今日ではそれが当を得ているとは私どもは考えておりません。
  63. 受田新吉

    ○受田委員 普通の場合に国際通念から見て、そういう場合は法治国であるとは言えない。言えますかどうか、そこを一つ伺いたい。
  64. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 法治国としても、何か特定の国家間の非常な不満と申しますか、その関係が円滑を欠いているという場合には、やはりなかなか困難な場合があり得るとは思います。ですからそのことだけですぐ法治国でないと断定するのは、その状況において見ざるを得ないのでありますが、今日はななはだ適当ではないと思います。
  65. 受田新吉

    ○受田委員 その問題は明らかにしておかないと、今後国際間に風雲を巻き起こすおそれもありますから、代表部が派遣されることに対して、そういう保障ができない国は法治国でないということがあなた方からはっきり認識されれば、私はそれで質問を終わります。
  66. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 むろんただいま申し上げましたように、終戦後からある程度最近の時期まで、長い間のいろいろな両国関係でありますから、特殊な感情国民間にあったのは事実だと思います。そういうことのために、なるべく危険なことのないようにという注意をいたすこと自体は、何も法治国でないという断定にはならぬと思います。しかし普通の状態になりまして、そうしてそれが取り締まれないということはまことに遺憾なことでありまして、今日になって参りますと、もうそういうことはあまり理由にならないのではないか、われわれとしてはこう思っております。
  67. 受田新吉

    ○受田委員 今日も依然としてそのことを言うておるのではないですか。
  68. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 引き続きまだやはり韓国の中の国民感情というものは、必ずしも日本に対して全部が全部あれしたというような意味向こうは言ってはおりません。しかしわれわれの見るところは、先ほど竹谷委員の言われましたように、韓国の多くの国民人たちは、日本に対して相当従来の感情をぬぐい去っておるのではないか。むしろぬぐい去っておるばかりでなく、積極的に今日の時代では日本と友好関係を持つ方がいいのではないかというふうになっていると私どもは見ております。
  69. 受田新吉

    ○受田委員 私はこういうことをお尋ねしたいのです。最近もなおあなたが、この間もそういうことを言っておられたわけですが、最近も保障ができない、こう言われるということになると——今日の段階でそういうことが保障できない、あなたは今も問題だ、こう言われたが、そうすると法治国でないということになる。今日もなおそういうことになれば、法治国でないということをあなたが御判断になれば、もう日韓会談などという対等の立場交渉はさっさとおやめになる方がいい。問題はそこなんです。もしあなたが、今日はそういうことを言えないだろうと期待を持たれるならば、直ちに日本代表部向こうに置くという手続を今からとればいい、どちらにされますか。
  70. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 むろんわれわれとしては、日韓会談を通じましても絶えずこの問題を取り上げて話し合いをいたしておるのでありまして、決してないがしろにいたしておるわけではございません。この日韓会談を通じまして、政府が何か非常に軟弱なようなお話がございますが、われわれも実は苦慮するところでございまして、日韓会談そのもの話し合いを途絶いたしますことは、ある意味から申しますと、抑留者方々が当分帰れないというような事態が起こるわけであります。われわれとしては、釜山抑留者が帰ってくることを念頭に置きながら隠忍自重して交渉しておるわけであります。そういうようなことでありますから、ある意味からいえば非常に弱腰だというふうに見られる点もあるわけであります。しかしその辺のところは一つ御了察を願いたいと思います。
  71. 受田新吉

    ○受田委員 はっきりお答えを願いたいのです。要らぬことをおっしゃらなくてもけっこうです。端的にお答え願いたい。それは、もはや今日の段階では法治国でないと断定をされるか、ここに至っては向こうもそれを反省して、法治国になったから代表部を受け入れようということになるのか、その二つの一つをあなたはおとりにならなければならぬ。そうして後者であるならば、韓国日本代表部を置く交渉を直ちにやるということをあなたは今決意されておるかどうか、それをお答え願いたい。
  72. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 他国に対して法治国であるか法治国でないかということを断定いたしますことは、私は適当でないと思うのでありまして、これはやはり誠意の問題だと思います。従ってそういう点についてそういう断定をいたすことは適当ではないと考えております。
  73. 受田新吉

    ○受田委員 そうすると代表部向こうに置くという交渉を始めますか、どうですか。
  74. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 代表部の問題については、常に機会あるごとに話し合いをいたしております。むろん今後ともそういうことについて強い要望をいたして参りますことは当然のことでございます。
  75. 加藤精三

    ○加藤(精)委員 関連して。ただいま他の委員より法治国云々のお話がございましたが、とにかく外国に対して法治国だかどうだかということの詮議は、外交政策の検討上は非常に必要かもしれませんけれども、明らかに憲法があり法律があり命令があって国が治められている国に対して、法治国だかどうだかということは、わが国外交の進展の上に幾多の余韻を残す問題でございまして、われわれはわが国外交が円滑に進むことを望む立場からあまり好ましきことではないと思います。先ほど中村英男委員よりもそういうことを非常に考慮した御発言があった直後でございまして、そのときにはただいまの質問者は席におられなかったような関係もありまして混乱したようなこともあるかと思いますが、そういう点は国家の利益のために非常にお考えになって、そうして外務大臣の自由な手腕をふるっていただくということにしていただきたい。常識から見ましても、憲法や法律や行政命令があって国が治まっている外国に対して、法治国であるか法治国でないかという論議が日本の国会で行なわれますことは、どうも私としては残念でたまらないのでありまして、そういう点から見て、こういう重要な時期にこういう問題は十分に外務大臣におまかせした方がいいのじゃないかと思います。これに対する外務大臣のお考えをお伺いしたいと思います。
  76. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 加藤委員の言われますことは、まことにその通りだと思います。
  77. 受田新吉

    ○受田委員 これは大事な問題だから、十分討議しなければならないわけです。これはそういう簡単な問題じゃない。われわれとしては侮辱とかなんとか——全然侮辱しているわけじゃない。法律をもって治めている国ならば、生命財産の保障ができないということはいえないはずなんです。そういうことを、堂々と国会で生命財産の保障ができないという以上は、法律で治めている国じゃないわけですよ。だからそういうことについて保障ができる段階になっておるならば、ここであらためて代表部を置くように強力な交渉をせよと激励しておるのだから、少しもおかしくない。私の今の発言は、国民の代表としての自由な発言であって、これは何ら束縛を受ける段階じゃないわけです。国民の世論の代表であるということを一つ御認識願いたい。
  78. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 私は、先ほど御答弁申し上げているように、法治国であるとかないとかいう断定は、私からは当然いたすわけには参りません。しかし代表部を両方が設置する約束をいたしておりますので、その約束の履行の上からいって、当然十分な主張をいたしますことは、むろん私の任務でございます。
  79. 受田新吉

    ○受田委員 これに関連する問題で、先年星丸事件が起こって、日本の五島列島の領域の中で日本の船が拿捕された。これは普通の立場で言うならば海賊行為と断定していいかどうか。
  80. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 先般起こりました問題については、まことに遺憾でありまして、われわれとしても二月十五日に厳重な抗議をいたしました。
  81. 受田新吉

    ○受田委員 その前の星丸事件です、五島沖の。
  82. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 いずれにいたしましても、公海上でそういう行為をいたしますことは適当でないことむろんでありまして、われわれとしてはそのつど厳重な抗議をいたして日本立場をはっきりいたしておるわけであります。
  83. 受田新吉

    ○受田委員 それは通常の正当な権利の行使でないということになるならば、国際法でも容認されない海賊行為というようなことと同じものになる、かように了解してよろしゅうございますか。
  84. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 海賊行為というのかどうかは知りませんけれども、不法な行為であること申すまでもございません。
  85. 受田新吉

    ○受田委員 その問題がもう一つ広く考えられることは、竹島の場合も同様です。あそこへ今上がっている韓国の人々は正当な権利を持っている人々か、公権の発動によって上がった人か。
  86. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 竹島に韓国人が上がりまして占拠いたしておりますことは不法な占拠であり、そうして日本の施政権が行なわれないようにいたしておりますことは、今申し上げたようなことで不法な占拠であるとわれわれは考えております。
  87. 受田新吉

    ○受田委員 これは不法占拠で、そこに上がってきている人々は公的な立場の人か、あるいは海賊行為で上がってきている人か、どちらかお答え願いたいと思います。
  88. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 今上がってきております人は政府の人のようでありますから、公的な資格を持っているものではないかと考えております。
  89. 受田新吉

    ○受田委員 そうしますと、日本の領域、施政権のもとにあるところに公的な資格の人が上がってきておる。しかもそれは軍隊か普通の人かということも問題になる。それをちょっとお尋ねいたします。
  90. 三宅喜二郎

    三宅説明員 現在上がっております、韓国の官吏は、内務省の管轄下にある警官でございまして、軍隊ではございません。
  91. 受田新吉

    ○受田委員 そこに上がってきている警官は、兵器を持っているかどうか。
  92. 三宅喜二郎

    三宅説明員 兵器を持っております。
  93. 受田新吉

    ○受田委員 それは兵器を持っておる。あれを占拠された当時に、日本漁船や巡視船が出かけてこれに砲撃を加えられたという事実があることを御存じでありますかどうか。
  94. 三宅喜二郎

    三宅説明員 たしか機銃であったと思いますが、日本の海上保安庁の船があそこを偵察に参りまして、近寄った際に撃ったことがございます。
  95. 受田新吉

    ○受田委員 日本の領土であり、施政権が及んでいる竹島に、外部の武力を持つ部隊が上がって、日本の人民及び日本船舶を攻撃するということは、いわゆる武力攻撃という形のものにとられても私は仕方がないと思うが、どうお考えですか。
  96. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 その当時武力的な行動をいたしておりますれば、当然武力の伴った侵略だと考えられます。
  97. 受田新吉

    ○受田委員 武力の伴った侵略。そうすると、今不法占拠ということになっているけれども、占拠する前は、侵略をして占拠したわけです。侵略なくして占拠はないわけです。そうしますと、外部からの武力攻撃によってそこが侵略され、不法に占拠されていると解釈してよろしゅうございますか。
  98. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 そう解釈されると思います。
  99. 受田新吉

    ○受田委員 これははなはだ大事なことであって、侵略によって占拠されたという解釈になるならば、ここに問題が起こるわけなのです。今度の新しい条約案の五条にある問題が起こってくるわけです。これは、明らかに、今あなたがお答えになられたような点に対する対応策が共同宣言されているわけなのです。この外部の武力攻撃に対して、現在これが占拠されて、そこに部隊がとどまってそのまま占拠が続いているわけですから、新しい条約が効力を発する場合には、当然これに対して、外交交渉などということでなくして、これを排除する武力排除ということも考えていいのではないですか。
  100. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 これは八年前に起こりましたことでありまして、外交手段によってこれが解決をするという方針に従いまして今日までやってきております。国際司法裁判所に提訴するという提議をいたしたのもそれからきておるわけであります。現在国際紛争になっておりますので、国際紛争は、国連憲章によっても、できる限り平和裏に解決するのが当然でございます。そういう状況でございます。今度の新安保条約が発効いたしまして、その後にどういう事件が起こりましたときには、新安保条約はこれに対処することに相なろうと思います。
  101. 受田新吉

    ○受田委員 そうすると、新安保条約は遡及効を有しない、こういうふうに解釈するわけですか。
  102. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 現在すでに国際紛争になって外交手段をもって解決をしようといたしておりますので、これに対して適用することはいかがかと思います。
  103. 受田新吉

    ○受田委員 私はここに一つ問題があると思うのですが、外交交渉をやっている、しかもその外交交渉を非常に長期にわたってやって、解決していない、しかも解決の見通しがついていない、そうして今回あなた方の方でこういう条約をお結びになるということになるならば、あなた方の立場から、外交上停滞して解決の見通しのつかない場合に、その条約の発効当時そういう状況にあったものを排除する行動に出ることは当然じゃないですか。
  104. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 現在の安保条約ではそういうことが行なわれませんので、むろん当時そうした手段をとらなかったことは当然でございます。従って外交交渉によりまして解決し、あるいは国際司法裁判所に提訴したということは、平和裏に国際紛争としてこれを片つけようというのでございますから、国際紛争の処理というものは、できるだけ平和的に国際機関によってあるいは二国間によって片づけて参らなければならぬのでございまして、新安保条約が発効したからといってすぐにこれに対して武力を用いるということは、適当ではないと考えております。
  105. 受田新吉

    ○受田委員 そうしますと武力を用いてこれを排除し得る方法もあるということは考えられるのですか。
  106. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 われわれとしては今考えておらぬのでありまして、国際紛争はできるだけ国連の規定によりましても平和裏に解決していくということが原則でありまして、武力をもって解決すべきではない。ただ新安保条約の発効後に新しく今回のような事態がどこかに起こりましたようなときには、当然新安保条約というものの適用を受けることになります。
  107. 受田新吉

    ○受田委員 条約が発効する当時も、やはり不法侵略で不法占拠されておるということが続いておるんですよ。そのときにそういう状況になっておるのですよ。そういう状況になっておる場合に、外交交渉だけでなくて、そうした五条の発効をしてもこの条約の上には間違いがないという解釈はできるのですか。
  108. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 そう解釈することは適当でございませんし、条約の精神から申しましても、国連憲章から申しましても、国際紛争は武力によって解決しないで、できるだけ平和裏に解決すべきだというのでありまして、現在これは国際紛争として取り扱っておりますし、日本が過去においてこれを国際司法裁判所に提訴する提議をいたしたのもそういうことでございます。今直ちに兵力を用いるということは適当ではございません。
  109. 受田新吉

    ○受田委員 どうもはっきりしない点があるのですが、第五条の「いずれか一方に対する武力攻撃が、自国の平和及び安全を危うくするものであることを認め、」とある以上は、現在においてこういう状況が続いている以上は、それがもう立ちやみになっているなら別ですよ、条約発効当時にこういう状況にあるというならば、当然この五条のこれに当たるのではないですか。そのときに自国の安全、平和が危うくなっているのではないですか。いずれか一方の武力攻撃ということに、そのときはなっているんじゃありませんか。
  110. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 先ほど来申し上げておりますように、これは国際紛争として処理すべき問題になっておりますので、新安保条約ができましても、直ちにそれによって武力行動をいたしますことは適当でございません。
  111. 受田新吉

    ○受田委員 そうしますと、この五条の適用は発効当時にそういう状況にあったものはこれを除くというようなお断わりか何かするわけですか。
  112. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 別段そういう規定がなくとも、当然条約上からそう解釈できるわけでございます。
  113. 受田新吉

    ○受田委員 「自国の憲法上の規定及び手続に従って共通の危険に対処するように行動する」と書いてあるわけですから、これはその条約発効当時にそういう状況にあることは間違いないじゃないですか。継続してそのときの状況はそうなっているのです。状態としてはそういうものだと私申し上げていることをお認めになりますか。
  114. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 状態としてはそうでありますけれども、先ほど来申し上げておりますように、国際紛争として話し合いによってこれを解決する方途をとってきております。そうして現在国際紛争としてこれを処理することになっておりますので、国連憲章の精神から申しましても、国際紛争というものはできるだけ平和裏に武力を用いないで解決するということでございます。また、過去におきましても日本はこれをそういう意味において国際司法裁判所にも提訴する提議をしたこともございます。そういう意味において御了解いただけると思います。
  115. 高橋通敏

    ○高橋(通)政府委員 ちょっと私からも補足させていただきたいと思いますが、ただいま大臣が申し上げましたように、八年前の問題でございます。八年前は明らかにただいまの武力攻撃をもってこれを不法占拠した状態でございます。しかしながら、当時政府といたしましては、あくまでも平和的にこれを解決しようとして現在まで来たっているわけでございます。従いましてこの問題はそういう方針でございますから、全然第五条の問題とは別個の問題として取り扱ってきておるわけでございます。ただ、現在の状態が第五条の適用であるかどうかという法律論でございますが、これは現在そういう事態がありますし、これがどうだということは、私どもとしてこの際それが法律論としてどういうふうに解決するかということは問題でございますので、発言を差し控えさせていただきたいと思います。
  116. 受田新吉

    ○受田委員 発言を差し控えては困るわけです。これははっきりしてもらわなければいかぬ。大体この第五条の規定というものは、竹島の現状に対しては容認できない、これを含む規定でないという解釈なら解釈にしてもらわなければいかぬし、そうして今状態は全く第五条と同じ状態だと大臣は言うておられる。竹島の不法占拠された状態は、不法侵略でそうして武力攻撃で占拠されておる、こういう状況は全く五条の該当と状態は同じだ、こうおっしゃっておられる。状態が同じで法的に問題がある。発言を差し控えるというのはどうも理解に苦しむわけですが、明瞭にしてもらわないと、これは日韓問題に関連する問題としては納得できませんから一つ……。
  117. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 すこぶる明瞭でありまして、今日八年間外交交渉でこれを国際紛争として扱ってきております。従って新安保条約が発効いたしましても直ちに武力行動が是認されることには相なりません。
  118. 受田新吉

    ○受田委員 条約局長、あなたの今仰せられたこの竹島の状況を法律的に宣言することは非常に困難だということについてもう一度お答え願います。
  119. 高橋通敏

    ○高橋(通)政府委員 法律的な解釈の問題でございますが、私が指示を受けておりますところによりますと、政府の方針としては平和的な交渉、これをいろいろな手段によって平和的にあくまでも交渉していこうそうして現在まできております。そうして今後ともその方針でございますので、この第五条の適用ということは初めから考えておらないというわけでございます。従いまして御質問は、その場合適用を考えておらないというのが方針でございますが、法理論的に現在の事態をどうかという問題で、これは法理論の問題でございます。これは私としては、現地の事態として私から申し上げるべき筋合いの問題でもないのではないか、こういうふうに考えております。
  120. 受田新吉

    ○受田委員 そこで、外務大臣も法理論としてはこの第五条の対象になり得る問題である、しかし、そうした今までの行きがかり上、平和的に外交交渉をやっておるので、現状はそういうことで処置しておるのだ、そういうことで区別してお考えですか。
  121. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 いずれ安保委員会においてこれは申し上げますけれども、第五条は、武力攻撃が直接ありましたときに、それに対したときにそれに対して自衛権を発動することでございます。そうしてその発動されました自衛権というものにつきましては、安保理事会に報告いたしてその処置を待つことになるわけであります。今日八年前に起こりましたこの事件が、今申し上げましたように平和裏に解決するということで国際紛争の扱いになっております。従って国際紛争というものを武力でもいきなり一方的にいたしますことは適当でないわけでございまして、第五条がすぐに適用されることにはなりません。
  122. 受田新吉

    ○受田委員 これはまた別の問題として関連して次の安保で引き続きやることですが、最後に一言あなたにお答え願いたいことは、この間二月二十四日の農林委員会で、農林大臣は、今度の日韓交渉の中で抑留者相互釈放とあわせて韓国米三万トン輸入、こちらへ買い込むことを全く抑留者相互釈放と関連する問題だとはっきり言明しておるわけです。ところが同じ委員会外務省アジア局長は、韓国米の輸入については、相互送還問題と何ら関係のない純経済的な問題だと言っておられる。これは政府部内の責任者が明らかに食言をやっているわけですが、この委員会外務大臣、あなたの明確な御答弁で解決してもらいたい。
  123. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 韓国側が、韓国米を日本に売りたいという希望を持っておりますことは事実でございますし、またそれについて数量等のことも言って参りましたことも事実であります。しかしわれわれはこの問題は、釜山抑留漁船員帰還を待って正式に話をすることにいたしておりますのでこれに何ら関連を持っておりません。従って漁船員帰還してこなければ、そういうような経済上の話し合いには全然入れないわけでございまして、全然別個の問題として扱っております。
  124. 受田新吉

    ○受田委員 農林大臣の答弁はあなた方と御相談してなくて独断で関連問題として発言をされたわけでしょうか。
  125. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 農林大臣としては、むろんその間の事情をよく御存じでありまして、別個の問題であるということを御存じでございます。同時に、こういう問題が、現在向こう側の希望があることを聞いておりますので、下打ち合わせ的に農林省とも打ち合わせておりますので、あるいは若干そういうことで農林大臣の御説明が何か誤解を招くようなことがあったかと思いますけれども、われわれとしては全然別個の問題として、抑留漁船員帰還があって、その後に経済問題がどう解決するかということをやって参るわけでございます。
  126. 受田新吉

    ○受田委員 これで終わりますがもう一つ農林大臣の心配していることは、国内の食糧問題などに関連して政治的に買わされたのだ、こういう意味でやっておると私は思うのです。事実経済断交は韓国側から一方的にやってしまっておる。向こうに今貿易上の帳じりがどれだけ貸しになっておるかというような問題になっておるわけです。そういうときに、こういうものをやられては大へんだという意味の大臣の意思があったと私は思います。閣内が不統一では強力な日韓会談ができませんよ。貿易上の帳じりが今どれくらい残っておって、それをどう処理しようとするか、そういうことを一言最後にお答え願って質問を終わります。
  127. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 正確な数字は覚えておりませんけれども、残っおりますのは約四千万ドルだと思います。これにつきましては、むろん今日では貿易が途絶しておりますので、これをすぐに解決するわけに参りません。しかし貿易が再開することがありますれば、両国間で逐次清算をして参ります。ことは、これは当然でございます。
  128. 小泉純也

  129. 木原津與志

    ○木原委員 時間がないそうですから簡単にしますが、あなたが大臣に就任されてから日韓問題で私質問するのは、これで四回目です。覚えていらっしゃると思います。ずいぶんしつこいやつだとお考えになるかもしれませんが、昨年の十二月に私がいつ抑留者を帰すといって聞いたら、あなたは安保条約調印でアメリカに行くが、その前に解決していきたいということをおっしゃっておる。とうとうそれがだめになった。先月の二十六日予算分科会で私がこの問題をまたあなたに聞いたら、三月中には何とかめどがつくだろう。めどがつかなかったら、自分たちとしても重大な決意をするということだったと思うのです。私はそれを非常に期待して今までおったのです。柳大使がきのう朝鮮から帰ってきたということを聞いておりますが、今月中にほんとうに解決する自信をあなたは持っておられますか。もし今度もやれないということになれば、あなたは重大な政治上の責任をとるべき段階に必ず今月は来ますよ。これについてのあなたの最終的な見通し——もう私どもも何べんもだまされたくない。同じことで何回も質問したくないから、最後と思って今月の見通しをあなたにお聞きします。
  130. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 私といたしましては、決して木原委員をだましておるわけじゃありません。そのときどきの状況によって私どもの見込み得る範囲内においての可能性を申し上げたわけでございます。今回の場合におきましては、御承知通り先般来話し合いをいたしております点について、柳大使が先月の二十八日でありましたか、韓国に帰りまして、一応政府との相談も十分やってくるということで帰っております。昨晩帰って参りまして、今日の十一時からアジア局長会見をいたしております。その結果は私まだ承知いたしておりませんけれども、どういうふうにこれが進展いたしますかは、今後の柳大使との帰国後の会談によって見当がついて参ろうと思います。
  131. 木原津與志

    ○木原委員 そういたしますと、今度解決できないということになれば、あなたも異常な決意をせられると私ども確信をするのですが、この異常な決意ということになると、今度こそ国連提訴あるいは国際司法裁判所に提訴する、あるいは赤十字社にあっせんを求めるとかあるいは米国の居中調停を求めるとか、そういうような態度をとられるよりほかに道がないと思います。あなた方が交渉ができないということであり、しかも抑留者を帰すためにはそうするよりしょうがない。従って今度もしそれがうまくいかない場合には、国連提訴その他の用意があるかどうか、さらにまたそういう場合には経済断交あるいは韓国代表部の閉鎖、こういったような処置もらとれなければならないと思いますが、そういう処置をとる用意があるかどうか。  さらにもう一点は、私が聞くところによれば、最近李ラインにおける拿捕船は、これはアメリカから武器の貸与を受けた韓国の艦艇がこれを拿捕しているということでありますが、そういうことが事実であるかどうか。もし事実ならば、これは明らかに、アメリカと韓国との間の武器貸与の規定や何かで李ライン日本漁船を拿捕するということをやっているわけではないと思う。従ってこれについて、私どもは、あなたが、韓国に貸与している艦艇がわれわれの漁船を拿捕しているということで、堂々とアメリカ大使館に対して厳重な抗議をすべきだと思うが、そういう意思を持っておられるかどうか、簡単に結論だけお聞かせ願いたい。
  132. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 今回柳大使が帰りまして、抑留漁船員送還の問題が話がつきませんならば、何らか抑留漁船員かできるだけ早く帰り得るような方法をわれわれはまずとっていきたい。抑留漁船員の方が長く引っぱられるような形の措置はなるべくとりたくない。どういうことでありまして、どういう措置をとるかについては、今何とも申し上げかねます。また今日まで韓国の巡ら艦艇がアメリカの武器等を持ってやっているということについては、そういう事実はないと存じております。
  133. 木原津與志

    ○木原委員 そういう事実がないと言われるが、外務省調査されたことがありますか。それではお聞きしたい。もしこれからでも直ちに外務省調査をして、これがアメリカの貸与艦艇だということになった場合には、アメリカに抗議をする御意思があるかどうか、これがまず第一点。  それから何らかの方法によって引き掲げができるようにしたいということをおっしゃいましたが、この何らかの方法によってということで八年かかった。それでこの間あなたは予算委員会でもうこれが最後だというような趣旨の発言もされたわけです。そうすれば残されるところの問題というのは、今私が指摘した三つか四つの方法よりほかにないと思う。この際あなた方が国連に提訴するということをなぜちゅうちょされるのか。あなたはいつも国連中心主義といって、国連ばかりを中心に考えておられるような外交方針のように私は聞いておりますが、こういうせっぱ詰まった段階において、なぜ国連に提訴することをあなたはちゅうちょされるのか。特に先ほどから問題になっております竹島の問題もあるし、ちょうどいいと思うのです。この際提訴すれば国民も一応納得しますよ。このままあなたがここで何らかの方法によってというようなことでは、もう国民は、特に抑留家族人たちは納得いたしません。なぜあなたは国連に提訴することをちゅうちょされるのか。する用意があるかどうか、この二点をお伺いしたい。
  134. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 ただいまこの問題の解決に当たりましては、木原委員の言われましたような方法が、当然だれでも考えられる問題でございます。ただ国連提訴等につきましても、どういう段階でどういうような形でこれを処理するかという技術的な問題が相当ございます。従いまして、かりに国連に提訴するにしても、その方法等につきましても十分検討して参らなければならぬ。今私どもそれについてできるだけ適当な方法をとって参らなければならぬと思います。ことに、抑留者が帰ってこないような道をなるべくとりたくないわけでありまして、そういう意味において、われわれは国連提訴とかあるいは国際赤十字とか——だれでも考えられる方法というのはそうたくさんはございません。でありますから、そのうちのどういうものをどういうふうな順序で、どういうふうにやっていくかということはこれは慎重に検討して参る必要があると思う。今直ちにどういう方法をとるということをここで言明することは私は適当ではないと思います。
  135. 木原津與志

    ○木原委員 くどいようですが、これは国連に提訴するよりほかに方法がないのですが、それをいまだに検討しておるということでは——もうこれは最後の段階だとあなたもこの前おっしゃった。これはそういう方法をとるよりほかに道がないのです。それを全国民が要望しておるのですよ。急いでとるように決意して下さい。
  136. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 今申したように、私ども抑留漁船員方々の早期帰還というものに全力をあげております。その全力をあげる方法がどれが一番いいかということについては、そのときに最終的に決定すべきものであって、従って今からこの方法だけがいいんだということを私がここで申し上げることは適当だとは思いません。
  137. 木原津與志

    ○木原委員 話し合いができないという段階になれば、これはだれが見たって国連提訴よりほかに方法がないじゃありませんか。それをなぜあなたの方で手続や何かを検討するといって八年問も渋っておられるのか、そこが国民にわからないのです。なぜ政府はそういう手段をとらないかということを国民が疑問を持っても、あなたに直接話ができないから国会を通じて私が聞くんだ。一つこういう方法で解決するぞということを、もうあなた外務大臣として言わなければならぬ段階ですよ。はっきりしなさいよ。
  138. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 今柳大使が帰ってきまして、最終的段階にありますので、今私の立場からそういうことをはっきり申し上げることは適当だとは思いません。しかし先ほど来御答弁申し上げておりますように、今回の柳大使の帰任によっても解決できないことになりますれば、二国間の話し合いということは相当に困難でありますから、何らかの処置をとらなければならぬということは私が重ね重ね申し上げておるところでありまして、決してそういうことについて何と申しますか、弱い気持でおるわけではございません。
  139. 木原津與志

    ○木原委員 何らかの措置というのは、国連提訴と考えてよろしゅうございますか。
  140. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 従来国際赤十字に依頼をいたしました経緯もございます。また国連提訴も一つの方法であることはむろんであります。外交上においては一番有効な方法でいきますように、順次方法等は考えて参らなけばならぬこと、これまた当然だと思います。
  141. 小泉純也

    小泉委員長 これにて質疑を終ります。      ————◇—————
  142. 小泉純也

    小泉委員長 先ほど決定いたしました商工委員会との連合審査会の開会につきましては明日これを行なうことといたします。なお開会時間につきましては外務大臣の出席の都合もございますので、公報上の時間と時間的にズレがある場合も予想されますので、右御了承を願います。  本日はこれにて散会いたします。     午後零時三十四分散会