○
鈴木参考人 私は
営団の
鈴木でございますが、
地下鉄建設の実際を申し上げることが非常に御
参考になると思いますので、多少
自画自賛だというきらいがあるかもしれませんが、遠慮なくここで申し上げますからお聞き取りを願いたいと思います。おもに
建設を主とした実際を申し上げます。
まず
銀座線でありますが、
浅草—渋谷間、これはもうとうからできておる線でありますが、戦争中の修理は大体
自己保有金でやりまして、他の
会社のごとく外部の金をとらないで完成いたしたのでございます。ただ
銀座線の
輸送量が非常にふえますので
——ところが
御存じのごとく
浅草と
新橋は六両
ホームでありますが、五島さんの作られた
渋谷—新橋間は三両
ホームであります。これを改良しながら六両
運転できる
ホームに改築いたしまして、それで
あとで述べまする
新線の
開通の三十六年三月を目がけて全部が六両
編成の
運転をいたすために
車両、
変電と、今申しました
ホームの拡張をいたしました。これに要しました金が二十九億ばかりでありますが、これはいわゆる
財政投資外の金でわれわれは支弁したのであります。ただいま約四十一万人を運んで五両
編成でラッシュをやっております。
次には
丸ノ内線でありますが、これは
池袋—新宿間の十六キロで、ただいまのところ三十八万人ばかりであります。
赤坂見附で連絡できてから非常な便利を
都民に与えておると思いますが、三十六年の三月より少し前に
新宿と
池袋の本駅ができ上がりまして、東西の両方から入れることになると思います。そういうような
状態でありますが、この
丸ノ内線の
建設概要について申しますと、最初は対
日見返り資金と
交通債券でまかなっていこうと思ったのでありますが、着手いたしまするときに
資金運用部の法律が出ましたので、これの
資金を受ける
適格者となれるような
方法をとったのでございます。
資金面の詳細な
数字にわたりますが、御
参考に差し上げておりまするこの
ガリ版の二ぺ一ジをごらんおき願います。この二ぺ一ジを見ますと、
昭和二十六
年度は十三億五千万円であります。これから始めたのでありまするが、その前に一億ありますが、これは二十五年の暮れあたりから
鋼材が非常に値上がりいたしましたので、前もって私は
鋼材を買うたのであります。これは非常によかったので、このときは
トン二万円でありましたが、
工事に着手いたしますときになりますと、
トン五万四千円になり、さらに上昇して参っております。かくして昨年の三月
池袋—新宿間を
開通しましたが、その
投下建設費は二百七十八億であります。そうしますと、一キロ十六億四千四百万円であります。しかしこれは安いのでありまして、実際の
区間別に見ますると、
池袋—御茶ノ水間は
地上線がありますので、一キロが七億八千五百万円であります。しかしこれは当時
営団がゆとりがありましたので、
建設利子、
営業収入で負担しました金が五億ばかりありますので、実際は八億八千万円くらいであります。
御茶ノ水—西銀座間は一キロが二十億七千二百万円、
西銀座—新宿間は二十二億五千五百万円、これは
御存じのごとく
ケーソンを施工し国会のそばは
シールド工法を採用したからであります。それならば
工法によってどのくらいの
経費が要るかというと、
開さく式の、
地上からいわゆる
オープン・
カットでやりますと、土かぶり五メートルで一メートル約六十六万円、
ケーソンでやりますと、帝国ホテルのところは一メール八十六万円、山王下のところが百三万円で
オープン・
カットから約五割増しであります。
シールドに至りますと一メートル百五十万円で約二倍くらいの
工費が要るのであります。こういうふうにして
建設されたのでありますが、
昭和二十五
年度から三十三
年度までに調達いたしました
建設費は
ガリ版の
資料の2にありますように二百四十五億であります。前に申しましたところの二百七十八億に対して
資金の狂いのありますのは、
車両を一部三十三両信託して
信託会社に預けてありますのと、
池袋—新宿の本駅の支出が三十四
年度以後になっておるからであります。かくして二百四十五億は片一方の
参考資料にあると思いますが、
預金部資金が百二十八億、
見返り資金が二億五千万円、
公募公債が七十七億三千四百万円、増資が二十三億一千六百万円、ほか十四億は借入金その他であります。
預金部資金から約六割を借り
公募から約三割を借りております。
このように
資金を得ましたが
日本経済の伸展とともに
資金も多く集まり、
建設規模も拡大されたのでありまして、この
ガリ版をごらん下さればわかりますように、大体三十
年度あたりまでは
財政投融資と
公募とまぜて三十億
程度であったのでありますが、三十一
年度からは
財政投融資をまぜて四十四億になり、三十二
年度は五十億になり、三十三
年度は六十二億となって
建設は
速度を高めたのであります。
預金部からのお金は、
預金部において
交通債券を
引き受けて下さるのを
預金部から金を貸してくれるのと、いわゆる
貸付と
公債と両建になっております。さらに一般の
公募の金は全く
日本経済の
金融事情によって消化されることが年によって違いますので、この
ガリ版でごらん下さればわかりますように、
昭和三十二年のごときは
公募公債が七億きり、七億という金は銀行の協力によりまして借り入れてわれわれは
建設して参つったのであります。なお本
年度三十四
年度は大体七十五億を調達して
予定のごとく
工事ができると思います。
ここで少し申し上げておきますが、われわれが
地下鉄を
建設する根本の
考え方と思っておりますことは、
規模がいたずらに大きくないように、将来の
輸送量を勘案してあまり大きくならないように、しかしながら
輸送の
安全性ということをはかるためには当時の
最高の
技術を使う、それから
建設資金を寝かさないために
工事の効用が発揮する時期をつかまえて
請負工事にかける、こういうことを方針としてやっております。それで
工事に対しましては
請負者に
鋼材となま
コンとを支給しております。これは、
鋼材は時によって価格の値上がりが激しいので、自分の責任においてやるということを考えております。しかも
土木工事が
工費の大体五三%でありますが、その中の約一割一分ぐらいが
鋼材に当たりますので、われわれは
鋼材について非常に注意しております。なま
コンは
地下鉄建設によって初めて大々的に使用されるようになりました。それまで
道路に使用されておりましたが、わずかのものでありました。それから安全の
速度を高めるためにウエスティングハウスの特別な
制御装置を
日本で初めて採用しました。これはその後私鉄及び国鉄の
電車にも採用せられるようになったのであります。また軌道についてもゴムの
プレ—トを使うようにいたしました。今度作ります二号線は東武の
郊外電車と連結いたしますから、今までの
安全装置でなくて、
日本で初めて高周波によって
電車を自動的にとめる
方法、
速度を
コントロールする
方法を採用するつもりであります。これは世界においてはソビエトが使っておるのであります。そういうように
技術的には
最高水準の
技術を使うよう心がけております。
それで
丸ノ内線が
開通いたしましたので、
丸ノ内線開通後の
営業成績を申しますと、
ガリ版の三ページをごらん下さい。三十三
年度の末に
新宿まで
開通いたしましたが、ごらんの
通りに
収入の合計が三十四億六千九百万円、
減価償却を七億六千三百万円やりましてとんとんであるのであります。ところが、これが
新宿線開通で、いわゆる
建設費勘定のものが
固定資産になって
利子を支払うようになりますと、
収入が四十三億八百万円でありまして、
減価償却を七億六千三百万円やりましたと同等の
方法、大体において七三%の
償却率でありますが、それをしますと、十三億五千七百万円になりまして、十二億四千九百万円の赤になります。先ほど
人見さんが、
全線に対して十三億と言われましたが、十二億四千九百万円の赤になります、それは
建設利子の十七億という
利子が非常に大きなファクターとして、ここに現われておるからであります。これを
線別に見ますと、
丸ノ内線において見ますと、
丸ノ内線の
収入が二十億八百万円、これに対する
利子が十六億五千九百万円であります。今までの
償却の
方法をそのまま適用すると、十七億二千万円の赤になるのであります。この赤のあるものが、
銀座線の利益でカバーされましたので、先ほど申しますごとく、十二億四千九百万円の赤となるのであります。それは
丸ノ内線におきましては、この
利子が
収入の八〇%に当たります。
営団全体から見れば
利子は四〇%でありますが、新しい
建設をしたものから見ますと八〇%に当たるのであります。こういう点をお考え下さいまして
新線の
利子補給という問題を御考慮願いたいと考えるわけであります。
次に、
資料の4の
工程表によって御説明を申し上げますが、
池袋駅と
新宿本駅は、先ほど申し上げましたごとく三十六年の三月に
——これは少しそれより前に完成いたします。それから
新宿から南中野及び
分岐線の本町通三丁目と富士見町間は、これも三十六年の三月に
開通いたしまして、この期間に
丸ノ内線の現在四両
編成を五両
編成で
運転いたします。その先の荻窪までは、約一年おくれて
開通させるつもりであります。その際において
池袋—新宿間は六両
運転を実行いたす
予定でおります。この各線の
工費は、
建設費総額のところに書いておりますので、省略させていただきます。
それから、ただいまもう
一つ建設いたしております
北千住—中
目黒間の二号線でありますが、そのうち
南千住—仲御徒町は、同じ三十六年の三月に
開通させます。それから
あとは、
北千住と
南千住間、
仲御徒町と
人形町間は約一年おくれ、そして
人形町—中
目黒間は三十八
年度中に完成するつもりであります。
総額は省かしていただきます。
こういうような
建設をやっていきますにあたって、三十五
年度以降の
資金は、この4の
ガリ版の下に書いてありますが、三十五
年度は、今度百十五億の
財政計画を受けたのでありますが、
営団としてはなお十億の金を必要とするのであります。それから第五号線の
中野—東陽町及び
大手町—下板橋間でありますが、これに対するところの
準備調査は完了いたしまして、本
年度より本格の設計に入るところであります。それで
資金手当ができれば、三十六
年度中から着手したいと思っております。ただこの五号線というものは、
路線そのものについて、
交通計画上研究すべきものがあると思いますので、その点もこの際研究してみたいと考えております。
池袋—向原間は、これはほとんど同時にできます。
ここで新
線建設上の
問題点を申し上げると、
地下鉄には
建設上の困難と、
建設後の運営の困難と二つがあるのであります。
建設上の困難は、
技術はもとよりでありますが、第一は
用地買収及び地下の
埋蔵物の処理であります。この
用地買収が
かなり工事の時期をいろいろずらせますので、これに対して何らかもっといい
方法はないか、御研究を願いたいと思うのです。
次は
官庁に対する
認可であります。
一つの工区は大体二年半、あるいは三年かかりますが、そのうち一年半くらいは
官庁の
認可事項や
対外折衝であります。ことに、いろいろの河川あるいは公園、そういうものの
計画との
関係から
認可事項が非常におくれがちであります。これは何とか
認可事項を早くやっていただくことをお互いに考えなければならぬと思うのであります。
次には膨大なる
建設費の調達であります。これは
財政投融資計画がきまりましたので、非常にこの点においては
政府の
補助政策が完成しておると思うのでありますが、この額をふやしていただきたい。
次に
運営上に及ぼす問題は
建設費の負担でありますが、ニューヨークのバーマンという
高速度地下鉄の技師が発表したところによりますと、
地下鉄は陸上の二十倍、高架は三十倍だといっておりますが、大体その
程度であります。ここで
運営上においては
一つは適正な運賃を施行することを認めていただきたい。
第二は
固定資産税であります。
地方税法三百四十八条によりまして、
新線の
トンネルだけの
税金は無税であります。三百四十九条の三によって
変電所その他は五
年間三分の二免除され、
あとは三分の一免除されるのですが、この
固定資産は
都民の幸福をはかるためで、また
地方公共団体に入る金でありますので、この
税金は免除するようにお願いいたしたい。
それからもう
一つは
利率であります。今
預金部から借りておる
利率は、
貸付は七分三厘であるが、
債券の
引き受けは七分五厘であります。これを考えていただきたい。もう
一つは、先ほど申しました
預金部から借りるものは、
貸付と
交通債券と両建になっておる。
貸付の方が有利なのであります。その両建を、
預金部資金から借りる金が、大体半々に、半分は
貸付でくる、半分は
債券引き受けでやる。この方を
貸付にやっていただきたい、こういうことがわれわれの考える念願であります。
くだくだと申し上げましたが、失礼な点は
お許しを願いまして、
建設上の実情を申し上げました。