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1960-05-17 第34回国会 衆議院 運輸委員会 第23号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十五年五月十七日(火曜日)     午前十時五十九分開議  出席委員    委員長 平井 義一君    理事 天野 公義君 理事 生田 宏一君    理事 木村 俊夫君 理事 關谷 勝利君    理事 久保 三郎君       宇田 國榮君    高橋 英吉君       高橋清一郎君    竹内 俊吉君       長谷川 峻君    福家 俊一君       三池  信君    館  俊三君       正木  清君    内海  清君       菊川 君子君  出席政府委員         運輸政務次官  前田  郁君  委員外出席者         日本国有鉄道副         総裁      吾孫子 豊君         日本国有鉄道常         務理事     磯崎  叡君         参  考  人         (中央大学教         授)      細野日出男君         参  考  人         (中央大学教         授)      大島藤太郎君         参  考  人         (毎日新聞論説         委員)     渡辺三樹男君         参  考  人         (日本生活協同         組合連合会専務         理事)     中林 貞男君         専  門  員 志鎌 一之君     ————————————— 五月十六日  委員兒玉末男辞任につき、その補欠として飛  鳥田一雄君が議長指名委員に選任された。 同日  委員飛鳥田一雄辞任につき、その補欠として  兒玉末男君が議長指名委員に選任された。 同月十七日  委員兒玉末男辞任につき、その補欠として淺  沼稻次郎君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 五月十六日  道路運送法の一部を改正する法律案反対に関す  る請願外三件(山下榮二紹介)(  第三七四二号)  船舶航行安全のための強制施設に関する請願(  池田禎治紹介)(第三七四八号)  名古屋、豊田及び稲武間鉄道敷設促進に関する  請願小林かなえ紹介)(第三八三一号)  三鷹市新川公団住宅地内にバス乗入れ反対に関  する請願山花秀雄紹介)(第三九〇〇号)  北海道国鉄路線廃止反対に関する請願(横路  節雄君紹介)(第三九〇一号)  出雲崎漁港口航路標識設置請願三宅正一  君紹介)(第三九〇二号)  国鉄自動車営業係臨時雇用員の定員に関する請  願外四件(辻原弘市君紹介)(第三九〇三号)  長野県の観光施設に対する融資順位の引上げに  関する請願中澤茂一紹介)(第三九一四  号)  同(原茂紹介)(第三九一五号)  同(松平忠久紹介)(第三九一六号)  観光事業に対する財政措置に関する請願中澤  茂一紹介)(第三九一七号)  同(原茂紹介)(第三九一八号)  同(松平忠久紹介)(第三九一九号)  新玉川線東急案早期実現に関する請願(床次  徳二君紹介)(第三九三〇号)  大糸線の輸送改善に関する請願中澤茂一君紹  介)(第三九三一号)  同(原茂紹介)(第三九三二号)  同(松平忠久紹介)(第三九三三号)  同(増田甲子七君紹介)(第三九七四号)  国鉄長野、新潟間の各駅停車デイーゼルカー導  入に関する請願中澤茂一紹介)(第三九三  四号)  同(原茂紹介)(第三九三五号)  同(松平忠久紹介)(第三九三六号)  小海線の輸送力増強等に関する請願中澤茂一  君紹介)(第三九三七号)  同(原茂紹介)(第三九三八号)  同(松平忠久紹介)(第三九三九号)  鹿児島管区海上保安本部設置に関する請願(  山中貞則紹介)(第三九七五号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  国有鉄道運賃法の一部を改正する法律案(内閣  提出第一二三号)について参考人より意見聴取      ————◇—————
  2. 平井義一

    平井委員長 これより会議を開きます。  国有鉄道運賃法の一部を改正する法律案を議題とし、審査を行ないます。  本日は、本案審査のため、参考人より意見を聴取することといたします。  この際参考人各位に一言ごあいさつ申し上げます。参考人の方々には、御多忙にもかかわりませず、本委員会に御出席下さいまして、まことにありがとうございます。本案は御承知のように、日本国有鉄道の経営の合理化を促進するため、旅客運賃等級を二等級に改めるとともに、旅客及び貨物運賃率を是正すること等を内容とするものでありますが、本案につきまして、それぞれの立場から、忌憚のない御意見を承ることができますれば幸いと存じます。  議事の順序は、まず参考人各位より御意見を賜わり、御意見の開陳が終わった後、委員各位より各参考人の方方に対し質疑を行ないたいと存じます。それでは細野参考人よりお願いいたしたいと存じます。
  3. 細野日出男

    細野参考人 参考人中央大学教授細野日出男でございます。五十七才であります。  私の今日意見を申し上げたいことは、順序といたしまして、ハンド・ライティングのカーボンでございますが、項目だけ書いて差し上げてございますので、それについてごらんを願いたいと存じます。  まず第一に、総括的意見を申し上げます。今度の国有鉄道運賃法改正案は、国鉄運賃体系正常化ということが、私は一番基本だと思います。同時に、それは運賃体系近代化合理化をはかるものとして、私はこの法案に積極的に賛成いたします。運賃には、本運賃付加運賃あるいは料金があるわけでございますが、終戦後国民経済国民生活の窮乏、それからインフレーション爆発的高進というような時期に、本運賃は経済政策的な見地あるいは社会政策的な見地から引き上げかおくれ、あるいは率が非常に低くとられたのであります。その収入欠陥を補う意味でもって、付加運賃的なものの方が、ことに急行料金のごときものか割合に高く引き上げられたのであります。また一般運賃に対して定期券運賃とか学生割引というような社会政策的な運賃が、著しく低くきめられて参りました。これが、インフレーション終息後の国鉄運賃のインフレ乗りおくれを回復するという改正のことが、たびたび行なわれましたが、そのつど、終戦後の初期の三、四年の間にきめられましたそういう一時的に歪曲された運賃体系というものが、プロラータで引き上げられて参りました。そのために、運賃体系全体が非常に歪曲されたアンバランスのものになってきておったのであります。貨物運賃につきましても、特別運賃率や各種の割引運賃というようなものに、そういう傾向が出てきておったのであります。今般の改正はこれを正常化し、また航空機やバス、トラックというようなものの競争の激化に対して対抗できるような近代化合理化案であると思いますので、私はこれに賛成する次第であります。たとえばアンバランスの例といたしまして、急行料金というものは、国有鉄道昭和三十三年度の旅客収入千六百億円強のうちでもって急行料金収入が実に百四十三億円、全体の九%というような大きなものに達しておるのでありますが、戦前に比べますと、大へんな伸び方であります。またそれに対して、非常に問題になります定期券収入はどうかと言いますと、わずかに二百七十六億円であります。急行料金の二倍までないのでございます。世間では定期券のことは非常に問題にいたしますが、急行料金のことはあまり問題にしないというような、そういう盲点がございます。そこでこの付加運賃的な急行料金というものが、やはり大幅に大幅にと引き上げられるという結果を生じたわけでありますが、定期運賃の実に五二%——急行列車利用者は大体七千万人程度ではないかと思いますが、定期券利用者は実に二十八億人に達しております。二十八億人の払っておるものと、七千万人の払っておるものとがわずか四八%しか違わない、つまり定期券運賃の五二%が急行料金収入に当たる、こういう収入状態でございます。これは非常なアンバランスであります。いろいろな物価が上がって、三百五十倍見当に平均上がっておりますうちに、国有鉄道旅客運賃は平均十五倍前後というようなことでございますけれども、実は急行料金は、東京—大阪間の例でとりますと、三百五十倍に上がっております。特別急行料金は、東京—大阪間の例でとりますと、三等について四百倍に上がっております。そういうように、一般物価水準よりもはるかに上がる、もしくはほとんどそれと同じ程度まで上がっておるわけであります。また本運賃に比べてみますと、急行料金というものは本運賃の一割五分から二割ぐらいというようなところが、大体世界的に普通というところでありますが、一日本の場合は、東京—大阪間の例で申しまして、普通急行料金が三五%、それから特別急行料金がほとんど八〇%に達するというような、非常に高いものです。特別急行料金のごときは、もう少し距離が短くなりますと、特急料金の方が本運賃よりも高いというような、そういうケースが出てくるわけであります。こういうことがいわば体系アンバランス——歪曲ということであります。今度はこれが改正されるんだという点において、私は賛成する次第でございます。  その次に、収支の見地から申しますと、今回の改正は不増収、不減収を目標としておりまして、国民経済上あるいは国民生活上与える悪影響は、全体としては少ないということが言えるわけでございますので、その点につきましても、全体としては積極的に賛成をする次第であります。今度の改正は、旅客については相当思い切った改正でございます。いわば抜本的な改正でございますからして、個々の利用の面から見ますと、値上げになる場合、値下げになる場合というものが当然出て参ります。相当の変化は避けられない。一般運賃について言えば、もちろんこれは値上げになるわけでございます。しかし、それは急行料金の方の引き下げということとバランスをとりまして、多くの主要地点におきましては、大体事実上不増収急行利用客にとっては不増収、不減収というようなことになるわけでございます。一番大きな影響を受けますのは、百五十一キロから三百キロまでのところの人たちが、これは数が比較的多いのでございますからして、影響を考えなければならない点でございますが、国鉄側の調査されたところによりますと、「図表でみた国鉄運賃問題点」の七ページに、百五十一キロから三百キロのところの二番目の棒図が出ておりますが、このところで見ますと、急行利用客が四六・七%、それが三十四年度においては五八%に達する見込みである。これはもちろん三十四年度におきましては、ディーゼル準急電車準急が非常にたくさん増発されまして、これがやはり百五十一キロから三百キロまでのところでもって非常に利用が多いわけでございます。私も旅行してみますと、普通列車はがらがらだけれども、準急は常に満員だというような状態でございます。百キロ未満でもずいぶん準急に乗る常磐線「ときわ」第一号以下のものを見ておりましても、常に満員でございます。九州の「ひかり」という準急のごときも、私、乗ってみましたが、これまた満員普通列車の方はかなりすいてしまっているというような状態でありまして、国民所得が上がって、国民生活のレベルが上がってきておりまして、国民は、いいサービス、快的なサービス鉄道に対して要求しているということが非常に現われてきております。急行準急等利用客がどんどんふえておりますからして、百五十一キロから三百キロのところの人たちにおいても、急行がとまる、準急がとまるというような駅の間の旅行の人にとっては、これは大した負担にはならない。中間駅は、御承知通り乗客の少ないのが例でございます。そういうところの人たちはお気の毒でありますけれども、やはり全体の体系としてはこれでよくなるものだと考えておる次第であります。  三番目に、国民経済国民生活発展向上は、国鉄輸送力改善拡充をきわめて必要としておるのであります。国有鉄道輸送力経済発展の隘路である、あるいはわれわれの楽しみたい旅行におきまして、常に行列あるいは満員状態、立ちんぼ旅行をさせられるというようなことが、御承知通りずっと続いておるわけでございますが、これは結局国鉄輸送力の不足である。それを改善拡充するためには、国鉄財政健全化が根本なのでございます。その国鉄財政健全化をはかるためには、今回は不増収、不減収でございますから、今回の改正だけでは足らないのであります、やはり引き続いて、できるだけ早い機会に広範囲な財政健全化をはかり得るような運賃改正が必要だと私は思っておるのでございます。これは国有鉄道にまかされた運賃の決定というものを相当含んでおりますが、しかし世論等も大いにあるのでございまして、国会の十分な御理解と御推進とを要望申し上げたい次第でございます。  もう一つ、実は自動車というものが非常な伸び方でございます。国鉄伸び方が割合少ないことはその図表等に出ておりますが、これは結局自動車にすぐれた点がたくさんあるということでもございます。しかし一方、国鉄輸送力が不足だということが自動車を伸ばしておるということでもあるのであります。国鉄輸送力が十分であって、いつでもすわれる、あるいは荷物がすぐに出せるというようなことであるならば、これは必ずしも自動車にいかないでも済む。それどころか、実は鉄道の方が安いというケースの方が多い。ところが、それが不十分でありますから自動車にいく。一たん自動車にいったものはなかなか戻って参りません。これは結局国民の財産である大きな固定施設国有鉄道利用効率を悪くするということにもなるのでありまして、交通政策見地から見まして必ずしも適当ではない。適正なる分野というものが必要であります。そのためには、やはり輸送力を拡充し、質を改善し、健全なる交通の分野に持っていくということが必要だろうと思います。このためには、過度の社会政策的あるいは経済政策的な公共負担が伝統的に国有鉄道に負わされておりますが、この過度の分は近い将来において是正する必要があるものと考えますので、国会皆様方の十分の御推進をお願い申し上げたい次第でございます。  第二に、旅客運賃でございますが、第二条の改正点、これは等級改訂と改称でございますが、一等の廃止は当然でございます。私は昭和十年に「国有鉄道旅客等級制度の研究」という論文を、もう二十五年も前に書いたことがございますが、そのときに私は、一等、二等を廃止して単級にすべし、モノクラスにすべしということを提唱しております。と申しますのは、これは結局運賃理論から申しますと、負担力のあるものに高い運賃をかけて鉄道が少しよけいもうけるという趣旨である。ところが実質は、一等、二等は国鉄にとっては赤字でございます。急行列車の一部は二等でもペイしておるでありましょうけれども、普通列車等においては二等はほとんどペイしているとは考えられません。一等は、もちろん特急「はと」と「つばめ」しかございませんが、ペイしているとはとうてい考えられないわけでございます。結局三等運賃負担している一般公衆負担において、一等、二等の旅客が安楽な輸送を受け、サービスを受けているというようなことに事実上なってしまっております。そういうことを直すためにモノクラスがいいのだ、寝台車座席車というふうに分けて、普通座席車というものはずっとよく、今日の「つばめ」や「こだま」の三等車のような、ああいうものにしてしまえばモノクラスでいいのだという趣旨のことを書いたのでございますが、二十五年たちまして一等がようやく廃止されるということになりました。私はその意味からも賛成でございます。  今度名称の方は格上げということでございますが、これはもちろん名称だけのことでありまして、イギリスあたり一等と三等、途中の二等というものは廃止しっぱなしになっております。三等を二等に格上げするというようなことはいたしません。それはイギリスという国が非常に保守的な国で、ものをあまり変えないという性格の国民でありますからなんでありますが、日本におきましては、サービスという点から見ましても、二等が一等になる、三等が二等になるということはけっこうなことだと思います。現在の状態では、モノクラスにするということは、まだなかなかにわかに断行できないかとも思いますけれども、将来の方針といたしましては、東海道新幹線等におきましては、もうモノクラスでしかるべきだというふうに考えておる次第であります。それから外人等に対しましては、特別車を作りまして、特別賦課料金を取ればいいのだということでございます。  次の(2)の法第三条の改正点は、遠距離逓減の縮減と単純化ということでございますが、旅客運賃は御承知通り世界的に距離正比例であります。アメリカのような大国でも距離正比例であります。しかし日本は伝統的に遠距離逓減制度をとって参りました。それはやはり国土が非常に細長いことと東京大阪というような大都市が、地方から見ますと相当な距離の位置にあるということが影響しておるのでありまして、日本におきましては距離正比例制度に完全に踏み切ってしまうということは、私はやはり反対なのであります。途中で一ぺん変わるくらいの二段逓減くらいはやむを得ない制度ではないか。地形的に、人口配置的に、そういうふうに考えております。今度はそれが二段に変わったわけでありまして、これの変わる点を三百キロにするか、四百キロにするか、五百キロにするかというようなところは問題のあるところでありましょうが、やはり三百キロというあたりのところがちょうどいいところではないかと思います。そしてこれは運賃が非常に単純化されまして、百キロ二百四十円は変わりないわけでありますが、次の段階は百二十円ということで非常に単純になりましたから、運賃計算等をしろうとがします場合にも、きわめて簡単にできるということになりまして、はなはだ単純な一般運賃体系を持つということになったので、この点も賛成でございます。三百キロまでの普通列車旅客負担増ということが問題でございますけれども、コストから見ればこれはやはりやむを得ないところである。旅客運賃はあまり遠距離によって逓減いたしません。初めのうちは今の運賃では十円の最低運賃でも損である。やがて余ってきまして、百五十キロ先逓減しておりますと、一ぺんに半分になってしまって損になってしまうという面がございますので、百五十キロ以内の旅客が主として負担するというよりも、三百キロまでの旅客負担するということの方がもっと公平だと考えております。国民所得が増加し、国民の高速とか快適とかいうことに対する要求が非常に上がってきております。国鉄もこれに対応してディーゼル準急電車準急というようなものを大幅に増加しておるのでありますから、三百キロメートルの圏内でも準急利用者が非常に増加して、準急料金の方が均一化でもって百円の値下げになりますので、準急利用者にとっては三百キロ以内でも負担が大して重くはならないという結果になっておるわけであります。旅客運賃の大幅の逓減のために著しい不合理を生じております例として、徹底的な環状線の例で、私の研究指導しておりました学生が、実際旅行した報告を聞いておるのでありますが、東京から関西線で湊町へ出ます。それから別府航路の船でもって別府へ出る。それから鹿児島へ行って、それから博多へ出る。門司、下関、大阪、それから北陸線、羽越線回りで青森に行く。それから東北本線もしくは常磐線東京へ帰る。これが全部つながります。途中で船が入りますが、連絡運輸をやっておりますから、前後が続くわけであります。それでこれが三千五百十五キロほどになりまして、その運賃が、現行でもって二千七百十五円であります。二千七百十五円でもって、日本じゅう北海道を除いて、四国にもタッチしまして、全部回れるわけであります。これは、大阪へ行って、帰って、また行くぐらいの運賃でもって日本全国が回れるというように、そういうひどく安い運賃でございます。これを学生が五割引で乗れるのでありますから、私の研究指導しておった学生の報告では、船まで入れて、二千三百円で日本全国回れた。これは極端に激しい遠距離逓減の結果なのでございます。これが今度是正されるということでありますので、私は、やはりあまり極端な遠距離逓減というものは是正すべきである、これが実現されたものとして、賛成するわけでございます。ただ、遠距離客負担増に対しましては、往復割引の帰りの方が一割ということができるようでありますが、これは大へんけっこうであります。従来の国鉄運賃体系におきましては、往復に対しては何らの特典がございません。どころか、通用期限の制限というハンディキャップさえつくのであります。ところが、航空等は、御承知通り割引をやっております。船なんかはもちろんやっておるわけでございます。そういうものに対しまして、国鉄がやはり往復に対する割引を実施して遠距離客負担を軽減するということも適当であり、また競争機関対抗上も必要なことだと考えております。  それから(3)の第六条の改正で、これは急行料金寝台料金等決定権国鉄への移譲ということでございますが、これは基本運賃に対する付加運賃という性質のものでありますから、将来とも、実情に合わせて変更の機会は、本運賃よりも多いものと考えます。これを一々国会のお手にかけるということは、時期的に間に合わないという問題もございます。また、比較的問題が軽微であるというような点もございます。これは国有鉄道におまかせになって、第九条の二によって、運輸大臣の認可に待つ。これは、結局運輸審議会が審議し、答申して大臣が認可するということになるわけでございますが、そういうやり方は、きわめて適当なやり方だと考える次第であります。  なお、急行料金等については、今度大きな改正が行なわれるわけでございますが、この国鉄に移譲された事情から、法律では直接問題になっておりませんが、つけて出されておりますような改正は、私は賛成でございます。準急を百円に均一化する、急行を二百円と三百円にする。それから特急料金につきましては、これは非常に問題があるのでございますが、名古屋—大阪間、あるいは熊本—鹿児島間、とか、博多—鹿児島間、博多—長崎間というような、こういう端のところ——東京から離れた、ある特急列車の端のところというものは、どうしてもこれは空席が出ます。従来のような六百円というような特急料金では、これはどうしてもあきが出てしまうのであります。現に名古屋—大阪間のごときは、近畿日本鉄道は二百五十円の特急料金で、しかも国鉄の三等よりはいい座席のサービスをやっているわけであります。ですから、ここのところで三百円程度の区間を設けるということは、空席利用、空席をできるだけ出さないという見地からも必要なことでありますし、その地域に住んでおる人たちにとりまして、また、その地域間の旅行者にとっても、これは非常な福音だと思うのであります。  次に、第三は貨物運賃でございますが、第七条、車扱運賃等級改正ということでございますが、これは主として自動車対抗競争として、どんどん出てきておりますトラックというものに対抗する改正という面と、それから物価変動、価格が上がったとか下がったとかということに対応するこの負担の比例というものを維持するという点からの改正でございまして、千百十九種の等級品目のうち、上がるのが二百三十三、下がるのが三百二十一、変わらないのは五百六十五だそうでございますが、上がるのは二百三十三、そのうちの六〇%は価格が騰貴したからプロラータ的に等級が上がるというもののようであります。百五種のものが一ないし一九%の値上げになる。これは、値上げということは、やはりその業者にとっては、関係者にとってはつらいことでございますけれども、しかし、大体経済界の最近の情勢を見ておりますと、鉄道にうんと赤字を出させておいて、それを使っている産業が非常な黒字を出して大もうけをしておる。何割という配当、利益率から言えば五割、六割といったような大利益を上げている事業が相当あるのであります。これらは相当やはり是正をして、国鉄の赤字分は回収するだけの負担力が十分にあるものとして改正されてしかるべきだと与えるわけでございます。貨物運賃については、簡単でございますが、その程度にいたします。  第四は、その他の希望的意見でございますが、ここは、特に国会皆様方に、一交通学徒といたしまして希望を申し上げたいと思います。それは、運賃決定機構と国会との関係でございます。運賃の決定ということと国会との関係。私は、運賃というものは物価である、つまり国営企業の物価なわけでございますが、物価体系のうちの一つのものであります。つまりマーケットにおけるプライスというものでございます。それに対して国会が法律でもってこれを決定するということは、実は欧米においても以前はあったことでございますが、ずっと前からこれはなくなっておりまして、専門の判定機関に判定をまかす、ちょうど裁判所が一々のケースについて判決を下すというような式のものにまかされておる。専門判定機関にまかされるということになっております。これは実は私は、国会国有鉄道運賃、国営企業の料金等についてなさるべきことは、その料金決定の基本方針は何であるか、基本原則は何であるかということを根本的におきめになるということ、これが一番大事なことだと思う。これはぜひ国会でやっていただかなければならない。今までの国有鉄道運賃法の第一条に、決定原則らしいものが四カ条あげてありますが、そのうち原則らしいものは原価を償うことということ一つであります。あとは抽象的でありまして結局それは要するにつけたり的な、希望的な、物価に影響を与えないことなんていいましても、国有鉄道運賃改正をやって、物価に影響を与えないでおくということは、根本的にはこれはできないことでございます。やはり物価に影響を与えることはやむを得ないけれども、それをいかによくとどめるかということが問題なわけでございますが、結局国有鉄道運賃というものを、あるいは電電の料金でも郵便の料金でもそうでございますが、こういう料金というものはどういう原則できめるのかということの原則を、十分に国会でもっておきめを願いたい。公正、合理料金の原則というのが公益企業の料金原則にございます。しかしながら、近ごろは運輸公益事業につきましてはだいぶ競争が激化してきております。独占を奪われてきておりますので、その公正、合理料金の原則というものは、必ずしもそのまま適用できなくなってきている。こういうものをどういうふうに直していくかということは、非常に重要な問題でございますが、これこそ国会でもって大いに論議して基本原則をきめていただきたい。国有鉄道運賃法ではなくして、国有鉄道運賃決定法、決定原則法というような、そういう法律をお作りになっていただいたらということを考えます。そうしてあとの実際の決定ということは、これは個々のケースでございます。個々のケースというものは、専門機関をこさえてその判定にまかす、それはこの国会が承認して任命したところの公正な委員——アメリカにおいては州際交通委員会イギリスにおいては運輸審判所というようなものがございますが、そういった機関をこしらえて、これにまかされるということが適当であると考えます。現在の運輸省の運輸審議会が大体それに当たりますが、これは独立規制委員会ではなくして、大臣の諮問機関であるという点が違っているわけでございます。しかし、大臣が国民経済全体に対する運賃に関する責任を負われるということでございますから、運輸審議会の答申に対して大臣が認可をするという制度は、日本におきましては当分維持する必要があるかもしれませんが、そういうような機構に変えることが理論上、実際上正しいのではないかと思います。国会運賃を直接おきめになりますと、これは国会議員諸公もお困りになる場合が事実おありになると思います。というのは、有権者というのは国有鉄道の全面的利用者でございます。値上げというような問題が起こる場合には、有権者は全部利用者でありますから当然反対でございます。従って、選挙の上に立たれる国会議員の皆様方というものは、どうしても有権者の意を迎えなければならない。場合によっては、自分の信念に反してでもこの意を迎えなければならないというようなことも起こるわけでございます。そういった苦しい立場を国会というものはとるべきものではない。従ってこれは公正なる判定機関にまかせる。その公正なる判定機関がよってとるべき原則というものは国会がおきめになるということをおやりになることが必要ではないかと考える次第でございます。  それから、次にやはり法律のことでございますが、ちょっとここで申し上げさせていただきたいのは通行税の問題でございます。通行税というものは悪税だということで三等については廃止されました。しかし二等については全面的に残っております。二等の座席指定料以外は、全部あらゆる二等の料金というものに二割の税金がかかる。ですから、二等の運賃というものは実は三等の二倍ではなくて二倍四分である。これは利用率を悪くする大きな原因でございます。また実際は、出張等におきまして、二等の旅費はもらっているけれども二等はあまり運転していないところもある、そうでなくても三等で行けば安くつく、一倍四分がふところへ入ってしまうというようなケースが実際は相当ございます。出張させている機関は通貨として全部払っておりますけれども、国鉄にそのうち三等の運賃しか入らないというようなケースが相当あると思います。国鉄運賃の通行税は三十億円余りということでございますけれども、実は一般公衆のふところに入ってしまっている通行税が相当あるということ、こういうことから考えましても、通行税というものは廃止すべきである、廃止できなければせめて基本運賃にだけ認めるか、あるいは特にぜいたくと認められるところの急行料とか寝台料にだけ認めるか、基本運賃の方を廃止した方が私はむしろいいのだと思います。そういう運賃をおとりになることを一つ御推進願いたい、一学徒として御要望申し上げる次第でございます。  次には国鉄への要望でございまして、ここで申し上げるほどのことでもございませんが、関連がございますので……。定期運賃、これが先ほど申しましたように、昭和二十三年くらいまでの改正というのは通勤費を安くしておかなければならないという事情のもとに、定期券というものを非常に低く抑えている、それがそのままの割合もしくはさらにその後も追加されて値上率が低くされるといったことから、七割からあるいは九割一分という大きな割引率になっている。学生などは十二人寄らなければ一人前の収入にならぬという状態になっているわけでありますが、これは国鉄だけでなしに、私鉄にも今非常に財政的な大きな影響を与えております。こういう運賃はやはりある程度是正する必要がある。国有鉄道運賃法には三カ月までのものは本運賃の五割以内、六カ月のものは四割以内という規定がございますが、その規定よりもずっと大きな割引が実は行なわれているわけでございます。私は、やはりこれはどうしても近い将来において直さなければ、鉄道というものの不健全財政は直らない。今までは普通運賃、普通旅客運賃があらゆる鉄道の財源になっているというのが実情、あとはみんな赤字だと言ってもいいというような状態のようでございます。そういうことによって、定期券運賃改正ということがどうしても避けられない必要なものだと考えます。これをやって初めて国有鉄道運賃体系正常化合理化がほぼ完成するというふうに考えておる次第でございます。  それから車両設備、急行列車準急列車、いい車両を作る、いい列車を運転する、これは最近国鉄が非常に推進されておる政策でございますが、これはもっとやっていただきたい。というのは、非常に利用が多い、国民生活が向上してきていると申しますか負担力がふえてきていると申しますか、優秀列車の利用が非常に多い。ですから、やはりこういう優秀列車というものはどんどんふやす方針をとっていただきたい。三等車などの設備も、今度は二等と名前を変えられれば、やはり名前だけではなく、従来の古い車両の改造というようなことにはできるだけ手をつけて、いい車両、二等らしくなったというようなものにしていただきたい。  それから座席指定制度、これが特急と一部の急行準急にあるようでありますが、ほとんどの座席指定が当日では間に合わぬというのが多くの場合の実情でございます。これでは困るのでございまして、やはり座席指定制度というのはもっとも拡充する必要がある。安心して乗れるという制度をもっと拡充する必要がある。  それから、そういう場合に、ことに乗車中等におきましては、御婦人、老幼、傷病者等の優先取り扱いというようなことも、これは規則でできるかどうかわかりませんけれども、車掌等の権限で乗車区域の乗りかえといったような場合には、そういう人たちの優先取り扱いを許すということもやっていただきたい。  それから、寝台料金は高過ぎる。ことに三等の料金は高過ぎると思います。二等でも三千円をこえるものもございます。三等の上段などは、戦前に比べますと実に税金込みで七百二十倍、あらゆる物価の中で一番高くなっているものの一つであります。一晩一円でありましたものが七百二十円になっている。本料金は六百円、百二十円が税金でございますが、三等の通行税なんというものは、何といってもまず第一に廃止されてしかるべきものだと思います。この寝台料金のある程度値下げがやはり必要ではないか。国民が長距離のオーバー・ナイトの旅行をするならば、大てい寝台車に乗れるというようなところにサービスを向上していただきたい。  それから、寝台車というものは昼間遊んでいる区間が相当あるのでございますが、その遊んでいる区間が非常にむだでございます。しかも普通の三等車や二等車は超満員であるというような状態で、そういうことにおきまして乗務員も非常に困っているようでございますが、昼間使用料制度、これはアメリカの寝台車にはあるのでありますが、そういう制度をこしらえることによって、寝台車なども昼間でも十分に空席なく利用できるといったような、あるいは区間についてもこういう利用ができるというような、もっと合理的な、そしてゆるい——ゆるいと言うと何ですが、弾力性のある料金体系を設定されてはどうかというふうに考えている次第であります。  大へん長時間にわたりまして、委員長にも御迷惑をかけましたが……。
  4. 平井義一

    平井委員長 次に、大島参考人
  5. 大島藤太郎

    ○大島参考人 私、細野先生と机を並べて研究している大島藤太郎であります。意見はだいぶ細野先生とは違うのでありますが、しばらく御清聴のほどをお願い申し上げます。  実は今回のこの法律案に現われております諸問題は、昨年発表せられました鉄道運賃制度調査会の答申の一環として出ている、こういうように理解をいたしております。従いまして、運賃制度調査会の答申との中でこれは理解しないと、これだけがこつ然と出ているわけではない、私はそういうふうに理解をしております。それからまた、運賃制度調査会の答申というものは、考えてみますと、実は五カ年計画の問題、さらには、中では東海道新幹線の建設が始まってくるというような問題、これと切り離してはやはり運賃制度調査会の答申も理解できないのではないか。さらにその二つの問題をさかのぼってみますと、三十二年から始まりましたいわゆる国鉄の五カ年計画という工事の問題にやっぱり入って参るわけであります。従いまして、今回の法律の問題をよくこん基本的に理解いたしますために、若干序言といたしまして五カ年計画の問題、新幹線の問題、運賃制度調査会の答申の問題というものの私の考えを述べさしていただきまして、しかる後にこの法律に対する意見を申し上げ、最後に、しからばどういうふうにしたら、今非常な危機に陥っておる国鉄が更生していけるかという私見を申し上げてみたい、こういうように考えております。  最初に五カ年計画でありますが、これは御承知通り、三十一年が神武景気の頂点でございまして、非常に輸送が行き詰まりました。当時、電力と鉄鋼と輸送日本経済の隘路であるということを予算の基本方針に大蔵大臣などが申しまして、そういうような関連の中から五カ年計画というものは三十二年に出発したものと私は理解をいたしております。御承知通り、このときに一割三分でしたか運賃値上げが行なわれまして、部内の合理化とともに運賃値上げという形で一千億に達する新しい工事をこれからやっていくという膨大な計画がここで出発をいたしたわけであります。値上げを受けた国民大衆といたしましては、五カ年計画が終われば、さぞかし輸送が楽になるであろう、おそらくこういう見通しをもってこの運賃値上げを甘受したことは私は間違いないではないかと思っております。しかるに、この五カ年計画は、出発するやいなや、三十二年度早くも例の神武景気がとたんにしぼみまして、いわゆるなべ底景気に移っていく中で、設備投資の抑制という政府の命令を受けまして早くも一千億のうち一割程度のものを抑制を受けてしまったわけであります。あるいは三十三年になりますと、貨物輸送が非常に減送になりました。このためにこれまた予定よりも七、八十億に達する資金の不足を来たす。さらにまた他方では人件費が非常に増加をして参る。この人件費の増加につきましては、実は国鉄の労働者を調べてみますと、平均年令というものは逐次上昇して参っております。しかも最近は十年未満の経験年数の労働者というものは一割くらいしかおりません。戦前におきましては三割、四割は十年未満の経験者だったのであります。つまりこのことは何を意味しているかといいますと、定員法以来ほとんど新規増員というものを抑制してきた。従って国鉄労働者の平均年令は上がって参ります。ということは、非常に腕のいい大体三十才前後の者が今一番多いのでありますが、戦前におきましては二十四、五才程度の者が一番多かったのであります。非常に熟練者が今たくさんおる。従って国鉄の労働生産性と申しますか、労働者一人当たりの仕事量というものも非常にふえてきております。昭和二十三年に比べまして、人トンキロにいたしますと倍近くに増大して、非常に現場では忙しい、人が足りない、労働強化だという問題が起きているわけであります。労働者も当然年令をとれば結婚もしますし、結婚すれば子供がふえるわけであります。従って労働者一人当たりの扶養家族もむろんふえてきております。そういうふうな関係から人件費というものがふえて参っておる、こういうように理解をいたしておるわけでありまして、人件費がふえたから労働者が楽になったというような形ではない。むしろ新陳代謝というものは非常に行き詰まってきておる。ここに私は国鉄の経営の非常に大きな問題点がある、こういうように理解をいたすわけであります。  次は利子の増加。これは非常に無計画な借金の増加、つまり外部からもそういう事情からして抑制せられる、五カ年計画が削られる、これに対してやむなく当面を糊塗するために借金を増加して参りますから、当然利子が増加して参ります。あるいは工事面におきましては、車両の問題、あるいは電化の施設費、車両などをとりましても、たとえば六つばかり大きな車両メーカーがございますが、いずれも社長さんは前の国鉄の局長さんであります。しかもこういう大メーカーを調べてみますと、二十社くらい大メーカーがございますが、下請を二次まで入れますと、一千以上に達する下請工場があるのであります。しかも材料は大体半分以上国鉄が支給するというような形でございます。こういうような車両メーカーの方にそれこそ合理化の必要があると私は思うのでありますが、どうしてもこういう関係でメーカーの価格というものは高くなってくる。あるいは電化の施設にいたしましても、すでに先年淡谷代議士が国会でも明らかにいたしましたように、新生電業、日本電設工業、この二つが六割以上の仕事をいたしておりますが、この会社は大体六割くらい国鉄の退職者がおられるわけであります。そういうような関係になっておりまして、やはり私はこういう方面にこそ相当合理化の必要があると思いますけれども、実情はそういうような実態になっておるわけであります。  かくして五カ年計画というものは非常に狂って参りまして、もうほとんど今では解体状態になって、七カ年計画なり六カ年計画というような言葉に変わって、やがて長期計画に今移り変えようという段階にきておると思うのでありますが、そういうような苦しい資金状態の中で、国鉄当局が辛うじて筋を通していこうという特色は、やはり企業性ということで、これが問題が出てきておると思うのであります。新しい支社制度、管理所制度というような形で、せめて資金の使い方は収益の上がる方面に使うことによって、この資金の不足を当面補いたいという、いわゆる厳密なる投資効果といいますか、当局の言葉で言いますと経済効果と言っておりますけれども、そういう形で資金は使っていこう、つまり資金を使う以上は、何らか経費の節約になるもの、あるいはまた収入の増加になるものに使う以外にないというところへ追い詰められてきているように見られるわけであります。  そういうような結果、どういうことが起こってくるかといいますと、やはり資金の使い方としては、競争的な分野といわば国鉄に依存せざるを得ない独占的な分野との資金の使い方が非常にアンバランスになってくるという問題であります。一方では、確かに東海道線を中心にいたしまして、あるいは観光地その他に非常にいわゆるデラックス版の車両、急行の増発、こういうことがたくさん行なわれております。しかし、その反面には、非常にじみな場面におきまして、非常に施設、サービスが落ちておる。たとえば、最近この一カ月間に、朝日新聞の「もの申す」というところに国鉄のことについて投書が三つ出ております。ちょっと読ましていただきますと、四月一二十三日の「もの申す」というところには「新宿駅の京王線ホームから南口へ通ずる陸橋は古いうえ狭く、毎朝のラッシュ時にはゾッとするほどの混雑ぶりだ。小田急を降りた客とカチ合って狭い通路にひしめき、整理に駅員が声をからして叫び続けているが、大した効果もない。大きな事故が起きないのが不思議なくらいだ。惨事を招かないうちに関係者は真剣に対策を考えたらどうか。」五月三日になりますと、「五反田駅の東急池上線と国電との連絡階段は、高く、狭く、けわしくて有名だが、いっこうに改められる気配がない。池上線の朝のラッシュは日ましにひどくなっている。ラッシュ時間にこの階段で二、三人つまずいたら人津波が起きるのは必至だ。いったい国鉄と東急は対策を考えているのだろうか。」それから五月十三日、「国電恵比寿駅裏口の階段はコンクリートづくりだが、痛み放題に痛み、アナボコだらけ。そこをラッシュ時には、こぼれるほどの通勤者がひしめき合う。夜は離れたところに電灯が一つで足もとは見えない。国鉄のものだか、渋谷区のものかハッキリしないが、とにかく事故のないうちに手を打ったらどうか。」一カ月の間に三つこういうような山手線についての投書が出ておるわけでありますが、これは九牛の一毛だと思うのであります。あるいは汐留駅、秋葉原駅などとりましても、自動車の使用問題がやかましく言われております。汐留駅にいたしましても、笹島駅にいたしましても、ホームは馬車時代の配置でございます。ですから奥に参りますと、ホームが狭くなって、自動車が転換ができないのであります、馬車は転換ができましたけれども。あるいは秋葉原の駅のホームの高さにいたしましても、あれは馬車時代でありますから非常に工合が悪い。こういうことこそ荷物が自動車にいく非常に大きな原因ではないかと考えております。あるいは肝心の東海道線でございますが、これほど非常にすばらしい汽車が走っておりますけれども、これまた驚くべき実情がございまして、二カ月間の新聞を拾ってみますと、東海道線で実に六回の事故が起こって、汽車をとめております三月十二日には霧で静岡、名鉄管内の各地で送電線が故障する。四月十一日は蒲原—由比間で電気機関車のパンタグラフが故障いたしまして、これがとまる。四月十四日には新子安と東神奈川間で踏み切り事故があった。四月二十日には、風と雨で、彦根で「こだま」のパンタグラフが故障いたしました。四月二十一日には浜松駅の構内で脱線事故が起こっております。五月十二日には、東神奈川で連結器が故障して汽車がとまる、こういうような状態であります。これを分類いたしますと、線路の故障が二回、踏み切りの事故が二回、それからパンタグラフの故障が二回、さらに連結器の故障と送電線の故障、こういうような分類になっておりまして、これはわずか二カ月ばかりでありますけれども、一つの大きな問題点をいろいろ示しておる、こういうように考えております。実は今のこの問題は、線路の保守度の問題、実は非常に財政が苦しいので修繕費にしわ寄せが参るわけであります。中でも一つの典型は線路の保守費だと思いますが、これが非常に不十分であるということの結果、線路が非常に老朽してきておる。保線課長なども、はっきり雑誌の中で、この近代化アンバランス、つまり上を走る方の近代化と土台の近代化が非常にアンバランスである、自分たちはいかにしてこのアンバランスを回復するか、線路の立場の人としては、そういうことを雑誌にもはっきり書いておりますし、いろいろな白書などを見ましても、まさにそういうような実情が私は立証されておると思っております。  もう一つ申し上げますと、東北線の場合なんでございますが、これまた重大なことなんであります。たとえば大宮と北海道との輸送というのは、非常に国鉄の戦後のネックであり、非常に苦しい場面でございますが、東北線が単線でありますので、国鉄は非常に不経済な輸送をしなければならない状態に置かれておるのであります。一日平均を大宮操車場と青森との間にとってみますと、北海道向けの貨車は、東北線を直通するものが二十五車、これに対しまして裏縦貫線——羽越と奥羽で青森へ行くものは百二十二車、それから常磐線経由が四十二車ということになっております。ところが、裏縦貫線を経由いたしますと、大宮—青森間が千百九十五キロ、常磐線経由で七百五十キロ。東北線経由で七百九キロで済むわけでありますから、まさに裏縦貫線経由は東北線よりも六割以上長くなるわけであります。むろん運賃北海道向けは最短距離の計算でございますから、たとい裏縦貫線を回ったからといって運賃をよけい取るわけではありません。これは一に東北線がネックになっておるために、国鉄は非常に不経済な輸送をしなければならない、こういう状態だと思うのであります。しかるに、あの五カ年計画の始まりましたときの新聞を読んでみますと、東北の局長は、やはりこの東北線の複線化を先にしてもらいたい——しかし、本社では、やはり東北線の電化を先にしている、こういう意見の食い違いがあったように見えますが、結局先刻お話ししましたような企業性ということから、むしろ電化の方が優先されていっている。むろん東北線の複線化も進んでいっておりますけれども、順序はそういう形になっていっておるというところに、これまた一つの金の使い方、投資の方向の原則、そういうところにも具体的に出てきておるのではないか、私はこういうふうに思います。あるいはまた、要員事情等におきましても、北陸線などにつきましては、本社の安全委員会の答申を見ましても、実に兼務職が多い。つまり、下級職の労働者が責任あるいろいろの仕事を現場でさせられておる。タブレットの交換であるとかというようなことのために非常に危険だ、あるいはまた、信号なども、雨が降った場合、だんだん列車が長くなってきまして、昔のような腕木式の信号機——これは八割くらいありますが、これは非常に見通しが悪い、危険であるというようなことで勧告いたしておる状態でございまして、私はそういう点で非常に心配をいたしておるわけでございます。でありますから五カ年計画がくずれてくる条件の中で、やはりこの投資効果を上げるということに優先される工事の進め方になって参りますと、今のようなアンバランス、つまり本来の輸送力拡充は、やはり私は現在の場合は線路の拡充ということが中心になっていくべきだと思うのでありますけれども、それよりも、やはり一方では、今、現実には電化であるとか近代化というような点が優先されてきておる。その結果今申し上げたようなアンバランスが起こって参っておる、こういうように感じるわけであります。こういうような苦しい現実を当局は当局なりに解決していこうとしておるわけでございますが、その解決方法は、やはり新幹線と運賃値上げの問題になってきておる、こういうように私は理解をいたすわけでございます。新幹線の問題につきましては、いろいろな説明があったのでございますけれども、最近の日本経済新聞に、これは三月十五日ですが、総裁が端的に言っておる。これがほんとうのねらいじゃないかと思います。「東海道線は国鉄のなかで最ももうかり、客や貨物が多い線だ。新幹線で東京—大阪間を三時間にちぢめれば気楽に東京大阪が往来できるようになり客はもっとふえる。そしてもうかる。いってみればドル箱の東海道からもっとかせごうというのが新幹線のねらいだ。」私は、総裁は正直にそのものずばり言ったと思うのであります。そういうような苦しい中から新幹線をやるということもわからないわけではないのでございますが、しかしながら、今申し上げたような苦しい財政の中でこの新幹線をやっていくということは、これまた並み大ていのことでないことは火を見るよりも明らかでございます。で、新幹線の場合に、率直に申し上げますと、タヌキの皮算用でもうけのいい話がたくさん当局から出てきておるのでございますけれども、これは輸送量その他の問題で、学者の間でも実に議論百出でありまして、当局のような数字が出るかどうか非常に疑いを持っておりますとともに、さらに問題は、旧東海道がどうなるかということについても、やはり納得する資料が出ていない。新幹線がもうかるから旧幹線がもうからなくなったのでは、これはあまり変わりないわけであります。この点がほとんど触れられていない、私はこう考えます。さらに、これは当然別勘定でおそらく政府にやってもらおうというのが、当局の初めのお考えだったと思うのでありますが、現実には、これが工事経費の中に割り込んできたわけであります。利子を含めて二千億に達する工事経費が、今五カ年計画がくずれている中で入って参りましたことは、全くこれは壊滅状態で、これは何と申しますか、お先まっ暗で、二年、三年先はどうなるかということを心配せざるを得ないのでありますが、そういう一つの解決方法として、世銀の借款の問題が起こっておるのは、皆さん御承知通りでございます。しかしながら、これは非常に政治的な銀行であると私は思っております。有名なアスワン・ダムの問題でナセル大統領がソ連の方に少しなびいたということになると、たちまちダムの世銀がその他の借款が中止された。そのために、かの大統領はスエズ接収という大きな政治的な手に出たわけなのでございます。そういう中で、最近なども、フルシチョフ首相がインドやインドネシアに行きますと、世界銀行の方は、これまた。パキスタン、インドを調査している。両者は影と形のごとく相添って、投資の部面も、後進国開発でありますけれどもやっておるわけでありますから、非常に問題があるのではないか。さらに最近の動向としては、世銀が日本を後進国としては認めない。そうなって参りますと、民間投資の導入の問題を抱き合わせてくるのではないか。私は事情を知りませんけれども、そういう心配をいたすわけであります。こうなると、貿易自由化の問題と安保の改正の問題につながってくる問題でございますが、民間投資が入って参りますと、すでに私の知っておる日本電気その他でも、重役室の隣にはちゃんと向こうの人の部屋が一つ設けられまして、日常の業務まで見ておるというような事情が方々にあるわけでございまして、これは非常に国民国鉄として私は心配にたえない。こういうことを感じるわけでございます。  さらにもう一つ、東海道新幹線の問題は、飛行機と競争の問題が当然に起こって参るわけであります。すでに「こだま」その他が相当そういう心配があるわけでありまして、実はここにいらっしゃる磯崎さんが雑誌の中にこういうことを書いております。「この点でわれわれが一番注目しなければならぬのは、羽田—東京間の自動車利用道路がどうなるかということであり、これが竣工して朝でも昼でも晩でも、一五分から二〇分で行くとなれば、飛行機の利用者はぐっとふえ、せっかく鉄道に来たお客がまた飛行機に戻る結果になるのではないかと思われるので、それまでに何とか対策を樹てておかねばならない。」これまた正直なお話で、こういう形でこの競争というものが国鉄の政策の中に大きなウエートを占めてきておる、こういうように感じるわけであります。これは当然運輸省の交通政策のあり方の問題であって、いろいろ申し上げたいのでありますが、そこが一つ問題だと思います。  こういうわけで、新幹線は、さらにそういう問題を含みますとともに、次に申し上げたいのは運賃制度調査会の答申の問題でございます。この答申は不減収、不増収ということが建前になっておるわけでございますが、私はこれに非常に疑問を持っております。たとえば幾ばくの何が増収になり、幾ばくの何が減収になるかという数字を私は拝見いたしておりませんし、抽象的にただ上がるものと下がるものがあるというだけではとうてい私は納得できない。後にお話しします貨物等級の問題について見ましても、引き上げられるものは非常に数量のかさばった大きなものでございます。引き下げられる方のものはいわば下級品で、若干、中にはそうでないものもございますが、原則としては自動車にとられるものでありますから非常に数量は少ないわけでございます。そういうものの数量と運賃との関係を十分計算ができるんではないかと思うのであります。そういうことからしましても、あるいはまた、最後に細野先生が盛んに賛成しておられた定期券値上げなどにいたしましても、これはかなり大きな増収になっていくということは私は事実だと思います。そういうことからして、すでに運輸省のある高官は五百億の増収になるということを活字にも出してございますし、あるいは石井常務理事は雑誌の中で、今国鉄は苦しいのだから、当面増収の部面から手をつけていけということを正直に述べておられますが、そういうことからいたしましても、私はこの不減収、不増収ということについては非常に納得いたしかねておるわけであります。たとえば石井理事は、「国鉄の現状は現行運賃体系の下においても能うる限りの増収を図りたい情勢にあるのだから、一方において値下げを行ってまで運賃体系の整備を強行するよりは、増収部面から手を付けて均衡的な運賃体系に持って行くことの方が現実的である」こういうようなわけでありまして、やはりこれは増収というものが現実的には起こってくる、こういうふうに私は理解をいたしておるわけであります。  そこでこの運賃制度調査会お考え方の一つの特色は競争という問題でございます。確かに競争が起こっていることは事実で、実は競争につきましては国鉄自身が競争を激化している重要な問題ではないかということを私は申し上げざるを得ないわけなんでございます。たとえば、かの日光線にデラックス版の特別急行快速「日光」号が走ることになったわけでございますが、この「日光」号が走ることによってどういうことが起こっているか、日光線電化の旅客吸引力は国鉄側としては相当なものになったけれども、同月中の日光駅定期外降車人員十四万六千人で、対前年一九%増、乗車人員十五万四千人で同二一%の増加、収入は云々……。ところが、この反面、影響を受けたのは東武日光駅で、乗降客ともに対前年九%減の打撃を受けたと思われる。それからさらにこの問題は、この新聞によりますと、地の利を得た東武の電車も国鉄の強敵になった。バスの進出はきわめて猛烈で、電車のなわ張りに食い込んできておる。こういうわけで、日本一の観光地日光市をめぐって国鉄、私鉄、バスの競争というものはまさに血みどろの状態になってきていると思うわけでございます。実はこういう反面、先刻細野先生からちょっと触れられましたけれども、東京—大阪間の問題や飛行機の問題は別にいたしましても、国鉄においては一面では非常に奇々怪々なことが起こってくるわけであります。たとえば配車課長は新聞でこういうことを申しております。「貨物輸送の最も重要な基本的な仕事は、「送る」ことである。送ることは何よりも優先に果たされなければならない。これはサービスを云々する以前の問題であることは、何人も否定しない事柄であるはずである。」「三十四年度における鉄道自動車及び船舶の輸送の増加率をみると鉄道が最下位にある。これは鉄道に依存度が減少し、斜陽化しているためではなく、むしろ鉄道によって輸送したい貨物を、その能力の不足によって他に追いやっている結果であることが少なくとも三十四年度においては断言できることである。」それから「慢性的輸送能力の不足、欠乏は、鉄道の独占的、売手市場的感覚を助長する危険性が極めて強い。国鉄基本的方向としては、斜陽化への衰退を防止するために多くの課題があり、それに真剣に取り組んでいるのに、一方では売手市場的な現象が常に起こされている。貨物輸送は、足りない能力を国鉄の判断で荷主に割当、配分しているような事態を速かに解消することが最も必要であって、三十四年度の輸送事情からこのことが痛感される。」こういう工合に言っておるわけであります。  もう時間があまりありませんから申し上げませんが、要するにあるいはまた通勤輸送の問題も一言申し上げておきたいわけでありますけれども、たとえば新宿駅の朝の状態につきまして、新宿の公安室長はこういうことを座談会で正直に述べております。「電車はすし詰めの満員で入って来ますから、ドアが開くと四斗樽の栓を抜いたようないきおいで飛出す。その場合後向きのまま押出されて来る人があって、ホームと電車の高さが違うために転んで脳震盪を起したりするので、これを防止するために、開けると同時にお客さんの飛出るのを受止めるような姿勢をとります。また降りるお客さんがぐずぐずしていると、乗る人のために逆に中に押込められてしまうので、早く降りてくださいと声をかけて、全部降りきったことを確認してから乗ってもらう。乗るときはどっと入って行くから、押す方はお客さんにまかせます。そうしてドアが閉まるときには、お客さんがまだ乗ろうとして押えていますから、なかなかうまく閉まらない。そんな時いきなりお客さんの手を払うと苦情が出ますから、もう一台待ってくださいというんですが、おれはもう二台も待ったんだというような場合が多いのです。それで暫く黙って見ていて、まだやめないときは実力で押えている手を放させて、二人がかりでドアを閉めるという状態です。こうした混雑のために、ハイヒールが一日に多いときは一〇足ぐらい落ちていることがあります。脱げても拾うことができないんですね。その場合はどこで降りるのかきいて、車掌さんに持って行ってもらいます。またドアにはさまれて指がちぎれたという事例もあって、これには気をつけております。」新宿の場合は朝はちゃんとお医者さんが駅に張り詰めているようであります。そういうようなわけで、あるいはまた混雑にまぎれて女子高校の……。
  6. 平井義一

    平井委員長 大島参考人に申し上げますが、時間の関係上、あなたの意見を述べて下さい。新聞その他の意見委員会でちょいちょい出ておりますから。
  7. 大島藤太郎

    ○大島参考人 実は私の意見の裏づけなんですがね。
  8. 平井義一

    平井委員長 人のことはあまり言わぬようにお願いします。
  9. 大島藤太郎

    ○大島参考人 そういうわけで非常にアンバランスが、一方ではデラックス版の車両とともに、片一方ではまさに交通地獄と言われるような状態で、要するに私は競争ということについて非常な疑問を持っておるわけであります。そういうような状態なわけでありますから、次に、競争というのは一部の部面であって、一方では国鉄はまだまだ輸送量をたくさん送らなければならない、こういうような状態が一方では非常に山積しておる。それは結局国民の大衆、あるいはさらにこれは上野駅の十二月末をごらんになればわかりますように、まさに交通地獄のような、あのコンコースが人間で全く充満しているような状態が起きているわけであります。こういうもので、競争の問題についての私の見方というものは非常に当局の方と違うのでございまして、その点を一つ申し述べておきたいわけであります。  次に、原価主義の問題でございますが、この原価主義は、実は原価とは何かという問題につきまして非常に私は疑問を持っておるわけであります。総括原価、つまり国鉄全体としての原価一本、これはわからないわけではありません。わかります。しかしながら貨物旅客に分けた場合の原価も、これはもうかなり伝統的にやっておりますけれども、しからば各等級別の原価、あるいは扱い別の原価、貨物の場合には貨物別の原価なんということになって参りますと、これはまだまだ試算程度であって、ほとんど実態がわかっていない。等級表の上位のクラスに入っているものが、はたしてこのコストが安いか高いか、あるいは下の方に、低級に入っているものがコストが安いか高いかということは、これはわからないわけであります、極端なことを言うと……。さらにまた最近では運送種別原価と申しますけれども、そういうわけで非常に原価の概念があいまいである。かりにジャガイモ一トン送る場合でも、北海道のああいう積雪地帯で送る場合と、九州で送る場合と当然コストが違うわけであります。あるいは東海道線で送る場合、北陸線で送る場合、非常に違うわけでございまして、これの原価計算というものはむろん進んでいないわけでありますから、そういうような現下の実情で原価主義を押し通すということについては、私は非常な疑問を持っておるわけであります。特にこの中で私が感じておりますのは、長年国鉄というものは旅客輸送がもうかりまして、貨物輸送というものはもうからなかった、こういうふうにいわゆる数字もたくさん出ているわけでありますが、その旅客輸送の中で特にもうかるのは申すまでもなく三等旅客であります。二等車の場合には車両の価格が、おそらく最近の車両になりますれば三等の二倍半から三倍くらいの製作費がかかります。しかも輸送効率、乗車効率が三等は満員すし詰めでございますから、そういうような状態でありますから、一番もうかっているのは近距離の三等旅客である、こう私は推定をしておるわけであります。そういうような関係から、近距離の三等旅客というものが非常にもうかっておる。さらに東京地方の場合におきましても、電車区間だけをとりますと、三十二年度の場合には電車区間だけで七十億の収益が上がっておるわけであります。山手線のごときは一〇〇の収益に対して五〇以下の支出でありまして、定期券割引率が非常に高いと申しますけれども、サービスが非常に悪いわけでありますから、これはやはりもうかっておる、私はこう思っております。定期券旅客だけの原価計算というものができていないわけでありますが、そういう状態で、私は原価主義には相当の問題があるというふうに見ておるわけであります。  そこで本論なんでありますが、実は前置きが長くなってまことに恐縮でありますが、大体申し上げたことはこれからの中に出てくるわけであります。  一等廃止の問題ですが、これは現実にはもう確かに飛行機の関係からしまして、事実上一等というものは有名無実でありますから、廃止することは私はけっこうだと思います。ただ、実態的なサービスの内容はどうかと思って見てみますと、私は最近くらい三等、二等の実質的な差の出てきた年はないと思います。同じ三等にしましても、東海道線のようなところの三等と、ローカル線のようなところの三等、同じ二等にいたしましても北海道のようなところの二等と東海道線の二等の差なんというものは、非常にひどいものがあるわけであります。特に電車化、ディーゼル化がこれだけ発達して参りますと、実質的なサービスの差異というものが非常に離れて参りましてバランスがくずれる。そうして、そういう意味での等級制度というものには何ら触れないで、ただ一等だけを廃して単純化したって、ちっとも問題は解決しないのではないか、こういうふうに考えるのであります。  遠距離逓減の問題でありますが、これは確かに、一応コスト的に見ますと旅客の場合には遠距離になっても下がらない。発送、到着地の費用というものが貨物のように多くありませんから、原価主義からいけば一応遠距離逓減廃止すべきだと思います。しかしながら私は、先刻すでに申し上げましたように、逆に言うと、近距離が非常にもうかっておるということになるわけであります。だから遠距離逓減をやめるよりも近距離を下げるべきじゃないか、そういうことによって実質上このカーブを並行さしていくのが私は本来の道ではないか、こういうふうに考えるわけであります。  それから急行料金法律からはずす問題でありますが、これは私問題だと思います。と申しますのは、国鉄運賃法にはずいぶん穴があるように私は思うのであります。実は最近も鹿児島県に指宿線という新線が開通いたしました。ここでは運賃計算キロ程というものを大体六割増しいたしまして、事実上ここは一般の路線の場合よりも三割か高い運賃になったわけであります。これは新線建設の問題に関連してでありますが、従来この運賃計算キロ程を変えることによって運賃を操作するというような例は、青函とか下関—門司間の、いわゆる海については聞いたことがありますが、線路につきまして、運賃の計算を変えることによって、実質的に運賃そのものを変えていくことは、今回初めてじゃないかと私は思います。これは能登線にも適用されるようでありますが、こうなって参りますと、事実上当局と運輸大臣との間だけの了解によって、鉄道の方の線路が幾らでも変えてこれるのではないか、こういう心配が出て参るわけであります。これは法律が一つ大きな盲点を持っていることになりはしないか。
  10. 平井義一

    平井委員長 大島さん、時間の関係がありますので、結論をお急ぎ下さい。
  11. 大島藤太郎

    ○大島参考人 そういうわけでさらに急行料金をこれからはずしますと、これは急行料金のウエートからして、実質的にこれによって完全に急行に対する運賃というものは操作できる。上げることも下げることもできることになるわけであります。だから国会を通さないで事実上運賃操作のできる範囲というものはさらに広まってくる。さらに貨物の営業割引というものがありまして、その場合は局長権限だけでもできるのであります。石灰石の氷川、川崎地区の間、これは大量輸送でありますが、事実上石灰石は規定通り運賃でも二割程度の赤字になりますが、さらにその区間を限って一割の特別営業割引をいたしておるわけでありまして、事実上これによって、特殊な——たとえばセメント・メーカーであるとか、先刻細野先生もおっしゃった、非常に景気のいい事業に、安い貨物運賃が供給されておるというのが現実にあるわけであります。こういうようなわけで運賃急行料金法律からはずすということは、事実上これによって当局が運輸省との間で相当操作できるという結果を招いてくるものと私は考えるわけであります。ですから国鉄運賃法というものがさらにざる法になっていくのではないかという危惧をいたすわけであります。  それから四番目に、貨物等級制度改正の問題でありますが、これはすでに触れましたように、高級の貨物の減る量と低級の貨物のふえる量との、数量上のいろいろな収入収支の関係が出ておりませんので、私は相当増収になるのではないかと思いますが、これは結局野菜その他の特別割引制度に、値上げの問題が起こってきはしないか。これはすでにいろいろ国会でもんでおりますので、私があらためて申し上げるまでもないのでありますが、そういう意味で大衆負担になっていくのじゃないかということが、この問題に対する私の考えでございます。  最後に結論でございますが、しからばどういうふうにしてお前は国鉄を解決していくのかという点を若干申し上げてみたいと思います。  その一つは公共負担の政府支払いということであります。国鉄は当局の計算によりますと約五日三十一億の公共負担があるといわれております。フランスの国鉄などは、一九五二年に政府と国鉄の間に協定ができまして、公共負担につきましては大幅に政府がめんどうを見る。たとえばこの協定によりますと、国鉄の監督の任に当たる官吏、あるいは陸海軍軍人、学生、生徒、傷痍軍人、労働者の定期割引、その他の公共割引、こういうもの。あるいは運賃値上げをしたい、しかし値上げ国会で許されない場合、そういう場合の補償金、あるいは赤字の場合の補給金、こういうものまでも見ておりまして、現実にそれによって行なわれたものは、政府が二二%を支出している事実がございます。私はこれはやるべきであると思います。  それから二番目は資本金の増加であります。国鉄は八十九億円で、実体財産二兆をこえ、帳簿面でも一兆四、五千億円に達する。しかも借金は長期負債で二千七、八百億に及んでおります。こういうようにきわめてアンバランスな資本金と財産、長期資金の関係では、国鉄はまともな経営はできない。当然その結果利子の増大という問題が起こってくるのはあたりまえであります。少なくとも公共投資と称するものについて投じた資金については、当然資本金に繰り入れるべきである、私はそういうように感じておるわけであります。  次に車両メーカーの合理化、これはすでにお話ししたことなので、省略いたします。  それから次は本社機構の簡素化であります。これは事情がいろいろ違いますけれども、イギリス鉄道経営委員会、レールウエー・イクゼキューティブ、これなどは五百人だといっております。国鉄などは二千人くらい本社におるわけでありますが、そういうようなことが問題になるのではないか。たとえば本社の局が現在十四、五ありますが、戦前はこれは六つです。技術系統が四つ、事務系統が二つでありますが、現在事務系統の局だけで九つにもふえておるのであります。これは当然事務が煩瑣になる。すでに監査委員会もはっきりその点を勧告いたしておるのでありますが、当然地方分権に伴って、本社は基本的な計画の策定、つまりトップ、マネージメントの仕事に限るべきであって、執行業務は本社がやるべきでない、そういう形の簡素化、これは合理化の最も大事な問題点である、こういうように私は感じておるわけであります。これなくしては、幾ら管理の末端で三人、五人の労働者の合理化をやりましても、問題にならないのではないかというふうに感じております。このようにして得た資金によって、輸送力拡充の本来の仕事にそそぐべきである。それは当然線路の増設の問題を中心にいたしまして、操車場の改良、駅舎の改善、こういうようなほんとうのじみちな輸送の本筋——日本ほど単線区間の多いところはございません。しかも列車回数の多いのは世界一であります。外国では大体五、六十回でありますが、一部では百回をこしておる、こういう極端な輸送状態でありますが、それを本来の姿に直していくということが、私は基本的な筋だ、こう考えております。  最後に、結局これは運輸省、特に輸送の問題におきましては、当然監督している運輸省の国鉄の監督は何をやっておるのか。特に今交通政策のあり方、国鉄との競争につきましては、民間の私鉄の経営者やバスの経営者は非常に不満を持っていると思います。たとえば東海道線をめぐって、今、貨物の場合でも、私鉄が大規模にトラック会社の買収を始めておりますが、おそらく、日通の合同トラックの設立というような問題、さらに国鉄の新幹線の問題をめぐって激しい貨物輸送の問題が起こるのではないか、こういう危惧をいたしております。運輸省というものは、おのおの国鉄の守るべき分野、私鉄の守るべき分野というものをある程度打ち出すべきではないか。ことに、国鉄のように、重大な国家的な使命、公共的な使命を持っている場合には、財政的な配慮とともに十分交通政策というものを確立して、国鉄本来の使命をはっきりさせて、それによって経営を確立していくということは、一に運輸省並びに内閣のなすべき問題である、こういうように考えるわけであります。  だいぶ時間も超過したようで申しわけないと思っておりますが、一応私はこれをもって意見の開陳を終わることにいたします。
  12. 平井義一

    平井委員長 大島さん、結論において賛成ですか反対ですか。
  13. 大島藤太郎

    ○大島参考人 大体内容におきまして言ったつもりでございますが、四点に分けまして大体反対ないし疑問を開陳したわけであります。
  14. 平井義一

    平井委員長 次に渡辺参考人
  15. 渡辺三樹男

    ○渡辺参考人 毎日新聞論説委員の渡辺です。私は、ただいま大島先生が開陳された国鉄に対する種々な注文もしくは苦情、不満、不平というようなものの相当多くの部分に対しては賛成します。しかしながら、今私に与えられたものは、国有鉄道運賃法の一部改正案であって、これに対する私の意見は、国鉄に対する苦情、不満、不平とは一応切り離しても論ずることができるような気がするのです。  実はこの国鉄に対する国民の不平、不満もしくは注文というものはほとんど数限りなくあるのでありまして、大島先生があげられた朝日新聞の「もの申す」ばかりでなく、毎日新聞も、読売新聞も、あるいは交通新聞などという新聞も、しょっちゅう国鉄に対する不満、不平を取り上げておりますけれども、何しろ国鉄という機関はばかにずうたいが大きくて、世界的にも相当ずうたいが大きい方です。国土は日本の方がずっと小さいのですけれども、ソ連の鉄道などと匹敵するくらいずうたいの大きいものであって、国のあらゆるところに張りめぐらしておるのでありますから、これはもう日常絶えずぶつからざるを得ない、ほとんど毎日のようにぶつかっておるわけです。私も実は国鉄旅行するたびにいろいろと不満に思うことがあります。さきに四月半ばに開かれた運輸審議会の公聴会でも、私は率直に実例をあげて、ここ数カ月間に私の経験したいろいろな事例をあげて非常なアピールをしたわけです。しかし、それは国鉄に対する苦情、不満もしくは注文であって、今ここに私たちが与えられた国有鉄道運賃法の一部改正というものについていうならば、ここに問題点が四つ上がっておりますが、第一は先ほどから問題になっております一、二、三等の問題、第二は旅客運賃の問題、第三は急行料金を法定事項から運輸大臣の認可事項とするということ、第四は貨物運賃、この四つについて私の意見を申し上げます。  第一は一、二、三等の問題ですが、これは今日世界的に文明国は大体二つのクラスになっております。特に、二十何年前でありましたか、だいぶ前に開かれた世界運輸会議というものでも、将来世界じゅうが二階級になることが望ましいという決議がされておるくらいであり、事実ヨーロッパ、アメリカ、ソ連、中共もこの二階級制であります。この点は資本主義国も社会主義国も二階級でありまして、必ずしもこれは資本主義特有の階級制度ではないわけです。私は毎日新聞のモスクワ特派員として前後六年間ソ連におりましたけれども、一、二等について感ずることは、これはこれでいい。さらに細野先生の理想論としてモノクラス、つまり一つのクラスにするということはさらにけっこうです。これはいずれ世界の大勢はその方向にいくものと思われますけれども、さしずめ、一、二等はいいとして、私は名称を何とか考えていただきたいと思うのです。服飾評論家といいますか、デザイナーの花森安治さんがどこかの雑誌で、一、二等という階級的な呼称をやめて、立てばシャクヤク、すわればボタンの、シャクヤク、ボタンという名称にしたらいいのではないかという提唱をされておるようでありますけれども、私はシャクヤク、ボタンというのでは少し飛躍があり過ぎるように思います。これは、たとえば社会主義国に例をとると、中共は革命以後、軟車、硬車という名前をとっております。これはそのまま日本で採用できるかどうか。どうして軟事、硬車という名前になっておるかというと、その祖先はソ連なんですけれども、ソ連ではミャーフキー・ワゴン、ジョーツキー・ワゴン、英語に直すとソフト・ワゴン、ハード・ワゴンということになるのですが、そういう名称を持っております。それは要するに向こうの大陸国の汽車というものは、日本と違って——日本では汽車といえば大体すわるもの、例外として寝るものという観念ですけれども、ソ連、中共では汽車とは寝るものである。すわるのは例外であって、たとえばモスクワの日常会話でも、おれはあすから出張するというと、それは何日間かかるところかと聞く。日本ではあした出張するというと、何時間かかるところかというふうに時間が単位で、向こうは日にちが単位になっておるくらい寝台がおもである関係上、寝台にやわらかいシートが敷いてあるのとかたい木のものとがあるというので、名称はきわめて分けやすいのですけれども、日本の場合はなるべく一、二等という名称を、先ほどのシャクヤク、ボタンほどではなくても、何か国民の気分にもマッチし、実際の列車の状態にも合うように一つ工夫せられんことを望みたいのであります。しかしながら、私は第一項は賛成であります。  第二の旅客運賃、これが一番問題なんですけれども、これは次の三点から私は意見を申し述べます。  第一点は単純な値上げでないという点であります。新聞も昨年値上げしまして、非常に悪評さくさくだったのですけれども、値上げというものは私は何でも反対です。特に単純値上げならばできるだけ値上げしない。これは原則的にそうでありますけれども、今度の国鉄値上げを見ますと、単純な値上げでなくて相当長年調査した結果そうなったということについて、私は重要視しないわけにいかないのであります。現に国鉄内部では数十年にわたって運賃を検討してきて、今日のこのシステムをだいぶ前に主張された方がおられたということを聞きましたが、さらにごく近くは一昨々年ですか、昭和三十二年の十月に鉄道運賃制度調査会というものを作って、各方面の学識経験者、専門家に委任を願って、研究を足かけ三年にわたってやられたあげくに作り上げた結果であるという点、これは私はやはり重視しなければいけないと思うのです。急にあわてて何かの情勢につり合わせて値上げしたというのでなくして、ある一つのシステム、ある一つの合理主義的な体系に基づいて、長い間かかって調査した結果である、こういうふうに見ざるを得ないので、まず、その点、第一に、この制度についての今日の結論に対しては理解を持つということです。  第二点は原価主義に近づいたということ、先ほどの大島先生のお話ですと、原価主義ということも非常に疑問だということでありましたが、私は非常に厳密に原価主義と言っておるわけではありませんけれども、大ざっぱに見てたとえば赤字線が非常に多い、あるいはどういう分野には大体どれだけ金がかかっておる、こういう分野にはこれくらいしかかかってないというのを大ざっぱにつかまえた原価というものは、私は国鉄の場合もあると想像します。また事実あるらしいですけれども、そういった大ざっぱな意味でも原価主義に一歩近づくという意味で、これは資本主義社会の当然の結論であって、なるべく原価に近い値段を決定する。これは需給の法則からいっても当然のことであって、遠距離逓減というのは、考えてみるとおかしなものです。この点、細野、大島両先生も別な角度から遠距離逓減には御反対意見を述べられましたけれども、これは非常な保護政策というか、まだ汽車ぽっぽといって珍しがっておった明治、大正時代ならいざ知らず、昔は鉛筆を買ったって、一本一円の鉛筆を一ダース買っても十円で、二円おまけだったのですが、今は一円の鉛筆を一ダース買ったって十二円取られます。それは当然であって、ことに鉄道の場合は、たくさん乗ってくれたからおまけするという精神は、およそ時代離れをした観念であって、私は原価主義に近づくということは、そのこと自身として非難することはできないものだと思うのです。従って第二点として、私はこの運賃体系には賛成するわけです。  第三点として、これは第二点と矛盾するのですけれども、原価主義に近づきながら、しかも独占的な公社として——この公社というのがなかなかむずかしいのですが、画一主義を一応保存し、それを貫いたという点、これも私は賛成する第三の理由としてあげたいと思うのです。原価主義ならば、極端に言えば東海道線はうんとサービスして、東北のつまらぬ——と言っては失礼ですけれども、非常にもうからない線ではもっともっと今よりもサービスを悪くしても本来ならいいと一見思えますが、それは公社——コーポレーションとデパートの違うところで、デパートならば特売場でうんと安くして売って、そうしてお客を集めて、そのかわりどこか高級品のところでは相当のサービスをする。そういうところは一私企業のデパートではあまり非難はできませんけれども、いやしくも一国の独占企業体である公社というものは、純然たる営業会社でもなく、相当の公共性を持っておるが、しかしながらまるっきり国家機関でもないという妙な制度なんですけれども、公社として画一主義を保存したということは——九州の指宿線ですか、今度上げておる。これはただ一つの例外であって、この画一主義はやはりある程度保存しておくべきではないか。将来とも絶対に全国一律でいけとは私は言いませんけれども、できるだけ貫いていくべきではなかろうか。この三点から、私は大体において今回の旅客運賃改正に対しては賛成します。  ただ、法案の方の第三の急行料金の問題ですけれども、先ほど大島先生も御指摘になりましたが、私はこの三項に対しては若干の疑問を持つのです。現在国鉄運賃に関しましては三段階あると思うのです。その第一は国鉄総裁がきめられるもの、第二は運輸大臣の許可を要するもの、第三は一番きびしい法定事項という三つに分かれていると思いますけれども、急行料金の第三段階の法定事項ということを運輸大臣の認可制の第二の形式にするということは、どうも今少し下げておいて、また少したつと上げるんじゃあるまいかという多少の危険を感じます。しかしながら反対の細野先生のように、むしろ国会があまり関与しないで、別個の専門の機関と申しますか、判定所のようなものを設けた方がいいという御意見もありますけれども、私は比較的やさしく運輸大臣の認可事項となっても、急行料金は、ここで改められたものが、下げる分には少しも差しつかえありませんけれども、そう急に上げられては困ると思う。聞くところによりますと、この三項の含みとしては、急行料金に対しても今後もっと柔軟性を持たせるという考え方のようでありますけれども、それならばそれで、たとえば今度東海道線の「つばめ」と「こだま」に電話がつくそうでありますけれども、その場合、電話をつけたから急行料金を上げるというのではなしに、電話のついた特急の方はそのままにして、そうでない方の電話のついていない方をむしろ下げるという精神でこれを活用していただきたい、かように思うわけです。  第四は省略します。私ごとき者には貨物の数百種類にわたる運賃の是か非かということに対しては、判定が非常にむずかしいので省略させていただきます。  最後に、実は四月半ばの運輸審議会参考人として呼び出されたときにも申し上げたのですけれども、条件付賛成で、条件とはどういうことかと申しますと、一部大島先生のお言葉の中にも出てくるのですけれども、この法案とは関係ないことをあらかじめお断わりしますけれども、要約して国鉄に対する根本的な態度の反省というか、改革をこの際お願いして、私の最後の言葉といたします。前にも申した通り、これは言い出せば切りがないのです。いろいろありますけれども、私はこれを要約して三点にしぼって注文する次第です。  第一点は、官僚主義というか、形式主義というか、煩瑣主義というか、何でも国鉄には規則の印刷したものだけでもわれわれの背よりも高い書類があるそうで、寒にこまかなことまで規定されておりますけれども、あまりこまかい規定にとらわれることがすなわち形式主義であり、官僚主義であり、逆にそれが日常の円滑な回転、運用をじゃましているのではないかということであります。例をあげれば幾らでもあるのですけれども、あんまり規則に縛られて、また規則を作って、それをしやくし定木に適用するということはかえって不便であり、また実際に効果をそぐということに関しては、私、戦争中にモスクワにおって、ドイツとソ連との戦争のときに体験したのです。ドイツは進撃しているときは非常に強い。操典を開いて操典に書いてある字句通りに行動する。どういうふうな状態のときにはどうしろ、タンクがこうなったらこうしろ、敵の攻撃があったらどうしろということが書いてある。それを、ドイツ兵がやってきた、勝ちいくさになっているときはいいけれども、一たん負けいくさになってその適用が効果がなくなるとがたがたとつぶれていくということを見聞しました。戦争の話と国鉄と直接結びつけるのはどうかと思いますけれども、どうも形式主義、官僚主義が少し多過ぎるではないか。考えてみますると、国鉄は今日では公社でありますけれども、長いこといわゆる鉄道省であった。その前はもっと別な名前があったそうですが、国鉄だけを責めるわけにはいかない。日本国じゅうにそういう風潮が相当強くあるわけですけれども、特に今日国鉄が公社となり、いろいろな困難と戦っておられるのですから、この際さらに一歩前進されて、こういう方面の弊害をなくすように一種の自己批判をお願いしたいと思います。  第二点は、やはり赤字解消の努力をもっとすべきではないかということであります。これは運賃改正もその一翼をになっておると思うのですけれども、二兆円という膨大な財産を持っておる今日の国鉄としては、もっともっといろいろな方面の経費を節約し、黒字の源を探り出す手が打てるのではないか。吾孫子さんを前に置いて言うわけですけれども、どうか一つ——これも私は専門家でありませんから具体的にこことこことここ、あれとあれとあれをこうやったらどうかということまでは提案できかねますけれども、専門家に聞いてみますといろいろあるやに伺っております。  第三点として私は赤字線の問題、これももちろん第二点に関連しておると思うのですけれども、特に一つ赤字線の合理的解消という問題を取り上げたいと思います。今国鉄の持っておられる二百二十五線ですかのうち、わずか十五線が黒字であって、あとの二百十ですかは赤字だという、実に驚くべき状態なんです。そこでたまりかねて国鉄ではそのうち五十線、特に赤字のひどい三倍とかなんとかいう線にバスをかわりに運行することを検討中だとか聞いていますけれども、私は非常にけっこうだと思います。しかしそうやっている一方において、政府、自民党からまた十一線、あまりもうからぬ線を押しつけてこられるということでは、これはますます矛盾の積み重ねであります。新線建設というものは、よほどの重大なもの、どうしても国民経済上なくてはならないものに限っていただきたいのでありますけれども、残念ながら、新線建設審議会というものは自社両党、民社党も入っておるかもしれませんけれども、代議士諸公の利害関係が相当反映するやに承っておりますので、これは細野先生の提唱にもありますような、むしろ学識経験者や専門家、そういう人たちを主とした別な審議会に改革する必要があるのではないか。そうしてもっと合理的に新線を検討する。百歩を譲って、どうしても新線を建設しなければならぬというのであれば、政府や自民党の御意向がそうであるならば、当然赤字であることが最初からわかっておるのでありますから、私は国庫から補助してしかるべきものだと思う。しかし国庫となるとこれは予算となり税金ということに相なってきまして、今度は国費の節約という観点からは矛盾します。それではその点をどうするか、その財源をどこに求めるかといえば、一つの具体的な提案としては、たとえば鉄道公債というようなものを作ってはどうか。現在すでに電電公社では電話公債というものを作っておりまして、電話を新設する人たちに有無を言わさずこれを売りつけるという制度をとっておりますけれども、私は一つの私案として、全然赤字であることが前からわかっておる新線建設などに対しては、しかるべき方法で公債を考えてもいいのではないかという意見であります。  以上私の意見を終わります。
  16. 平井義一

    平井委員長 次に中林参考人
  17. 中林貞男

    ○中林参考人 私は日本生活協同組合連合会の中林でございます。しかしながら、きょうは私は全国消費者団体連絡会という消費者団体の責任者をしておりますので、消費者と申しますか、利用者という立場で少し私の意見を述べさしていただきたいと思います。先ほどすでに三人の方がいろいろとお述べになっておりまして、いろいろ重複する点、国鉄に対する通勤時などの問題については大島先生から詳しくおっしゃいましたし、いろいろしますので、できるだけ簡単にもう時間もあれですから述べることにいたしたいと思います。  今度国鉄運賃改訂という大きな問題にいろいろお取り組みになって、そうしてここにそれに関連する法律案が出ているわけであります。私は国鉄が現在国民経済なり国民生活にどういう意義があるかという点を考えますと、四、五年前あるいはもっと古くという時代と今日の国鉄というものを考えました場合に、私たち消費者と申しますか、国民生活の中に非常に深く食い入ってきている。従って国鉄運賃なりすべての問題は、利用者の、利用者ということよりも国民の生活、憲法でいっております健康で文化的な生活ということを考えました場合に、国鉄がその中で非常に大きな役割を果たしている。たとえば最近家庭の奥さんたちが旅行される旅行会が非常に多くなって参っております。私が知っている中でも、奥さんたちは一年に一ぺん旅行するということでみな積み立てをやっておいでになるわけです。あるいはまた労働者の間でもそういうことが行なわれているわけです。従って旅行ということは単にぜいたくだということではなくて、国民の生活を高めていくという上において、なくてはならない一つのものになってきているのじゃないか。私は国鉄運賃の問題もそういう立場を十分考えていただきたい。せんだっても私はある婦人団体の会合に参りましたときに、秋の旅行などの積み立てをしているのを、国鉄運賃が変わるということでまた計算をし直さなくちゃならないということを言っておいでになったのです。そういうふうに、非常にささいなことかもわかりませんが、これは国民感情にとって非常に大きな問題であるということを十分お考えをいただきたい。  そういうような点から今度の運賃改訂の問題を見ますと、原価主義とかいろんな点を強く打ち出しておいでになる、あるいはまた等級制の問題などでも、先ほど前の方がおっしゃいましたように、等級制を改めたということなどは、私も外国の例などから見てこれは非常にいいことだというふうに考えるわけでございますけれども、もっと国鉄国民のものだという立場からお考えいただいた方がいいのじゃないか。国鉄の赤字の解消ということも、国鉄がほんとうに国民のものになっていったならば、もっと打開の道があるのではないかということを痛切に感ずるわけでございます。従って国鉄はもはやわれわれの日常生活になくてはならないものだから、もっと国民経済的な立場から国鉄運賃なりいろんな経営の問題が考えられてしかるべきだ。そういうことを考えますと、今度の鉄道運賃制度調査会の答申の中にもあるように、たとえば自動車とか船舶とか飛行機、そういうものに関連する道路とか港湾とか空港等のいろんなことが国の負担においてなされるが、国鉄国鉄負担において、いわゆる利用者負担においてすべてやらなくちゃならない、そういうような点についていろいろ問題がある。あるいはまた傷痍軍人の利用なりそういう点についても、もっと国自身が積極的に考えてしかるべき問題があるのではないか。そうしてトラックなりあるいは飛行機等の国が援助しているものと国鉄との競争ということになりますと、国鉄利用者負担においてすべてやっていかなくちゃならない。そうなって参りますと、運賃の原価計算ということになりますと当然運賃の中に入ってくるわけですけれども、そういういろんな点を考えました場合に、やはり国民経済的立場からもっと公平に考えてしかるべきじゃないか。そうして国鉄運賃の問題は、今申し上げましたような形でわれわれの生活に重大な影響を与えますし、また国鉄運賃が上がるということは、これは直接物価に非常に影響をしてくるということになりますので、そういうような点についても私は十分お考えをいただきたい。そういうような点から考えますと、今度の運賃の改訂ということの中においても、まだ私はそういう大衆的な利用者にしわ寄せされている面が非常にあるのではないだろうかというふうに考えるわけでございます。そういう点については先ほど大島先生のおっしゃった中にかなり具体的にいろいろ指摘になっている点があるわけでございますが、そういう点を私はもっと十分にお考えをいただきたい。そして、そのことを考えて参りました場合に、大島先生もおっしゃっていましたが、いわゆる国鉄の赤字解消、そして合理化、そのことは当然やらなくてはならないことだし、今度の運賃制度調査会の中でもいろいろ御苦心になっている点はよくわかるのでありますけれども、たとえば国鉄の原材料の仕入れが非常に割高である。そういうことと関連して、国鉄にいろいろなものを納める会社との関係、あるいはその下請の会社との関係というようなものについてももっとメスを入れてみる必要があるのではないかというような点、さらに国鉄運賃というものが、これは答申にもありましたが、国会の承認を得るということになっておりますが、そういうような点について政治的な影響国鉄の経営なり運賃というものに日本においては非常に影響することになっている。その点は今渡辺さんもちょっとお触れになりましたけれども、私はやはりもっともっとそういう点についてはお考えをいただく必要があるのではないか。特に国鉄の建設審議会というような審議会には、こう言っては非常に失礼な点になるかもわかりませんが、国会の先生方が非常に関係をしておいでになるというような点、いろいろそういうような点についてもっと厳正な第三者的な一つの委員会——この点は細野さんがおっしゃいましたことと同様な意見になるかもわかりませんけれども、第三者のもっと公正な委員会でいろいろなものをやっていく。そしてそういうような際には利用者の立場に立つ人をぜひたくさん入れるようにしていただきたい。利用者はまた利用者のエゴということがあるかもわかりませんが、利用者のそういうエゴについては学識経験者から正しい意見を出していただいたらいいわけでございますけれども、いろいろな問題を——やはり国鉄国民のものでございますから、利用者である私たちの意見というものをもっと委員会に反映して、その委員会を中心にしてやっていく。そういうような点などについてもっと根本的に御検討を今後の段階においてやるようにしていただきたいというふうに私は考えるわけでございます。そういう政治的なものの影響なりあるいはいろいろな利権的な影響なり、あるいはまたそういうことから国鉄に対する影響を断つということが一つと、それから国鉄の原材料の仕入れとかそういうような面にやはりメスを入れていく、そういうことがもっと強くなされないと、それらの問題に目をおおっていると、そして現在の国鉄のワク内だけにおいてどうするかということになってきますと、結局運賃原価主義ということになりますと必要以上に消費者にしわ寄せがされてくるというような結果になるのではないだろうか、そういう点についてまず十分お考えをいただきたいという工合に私は考えるわけでございます。  それから具体的な問題になりますと、今度の国有鉄道運賃法の問題の一の等級の問題については、私も今度の一、二等の二等級制ということは賛成ですし、この点、名称については渡辺さんと同様の考えを持っています。こういう一、二等というよりももっと何か親しみの持ても名称を私はぜひお考えを願いたい。  それから二の旅客運賃遠距離逓減の従来四地帯制であったのを二地帯制に改める、この点について私は、やはり原価主義に立ちますとこういうような立場になるのかというふうにも考えますが、一度にこういう二地帯制にするよりも、もう少し斬新的な形が考えられないものかというような感じを持っておるわけでございます。  それから三については、これは私は他の問題とともに第三者の委員会というようなものに順次移していく、委員会によって国鉄が正しく経営されるというような形にしていくことがいいと思います。原則的にはこういう形にいくことがいいのではないだろうかという工合に考えるわけでございます。  第四番目の貨物等級の問題については、私はあまりこれは詳しくはわかりませんけれども、しかし消費者の立場から考えました場合に、いろいろ意見を私たちの仲間に聞いてみますと、現在の貨物等級そのものの中に非常に不合理な要素がたくさんある。たとえば大企業とか、いろいろなものに関連するところの貨物輸送等級というものとの関係において、いろいろ不合理な要素があるということを私は耳にしておるのでございますが、そういうような点については、私はやはりもっと厳正な立場からこの問題は検討してみる必要があるのではないかと思いますけれども、具体的な点については私もあまり貨物輸送というようなことについては十分知識を持っておりませんので、これのきめ方についてやはり大衆の負担にならないような形で、一部の大きな産業に利するというような形にならないように、これらの等級のきめ方についてもっと配慮をする必要があるのじゃないかという私は私の周囲の友だちの意見を述べまして私の意見にかえたいという工合に考えるわけでございます。  さらにもう少し具体的に触れてみますと、これは今度のこの法律には関係がないかもわかりませんが、私が利用者の立場に立って国鉄というものを考えました場合に、私は最近国鉄のことで私自身非常に憤慨したことがあるのです。急行座席指定でございますが、この座席指定ということは混雑を防止するということがもともとの理由だったと思うのですが、最近準急座席指定が非常に多くなりまして、たとえばウイークデーなどで列車ががらがらにすいておる。しかしその中で準急券のほかに座席指定料金を取られる。たとえば熱海だとか伊豆の方にウイークデーに旅行する。そういうような場合に、新橋で乗りましたときに座席ががらがらだ、そうしてすわっても準急券だけではなくて座席指定券の料金を取られる。私は一度車掌さんに文句を言ったことがある。こんなにがらがらになっておって座席指定料金をどうして取るのだと言ったら、こういう制度になっていますから私に文句を言われても仕方がないと言われたのですが、その後乗りましたらやはりほかのお客さんが同様のことを車掌さんに言っておる。がらがらにすいておるにもかかわらず、準急の中において座席指定券の料金を取るということは、これは料金値上げしたと同じようなことになるのではないだろうか。そういうことが何か知らないうちになしくずし的になされるということは、やはり国民国鉄という立場からいって、そういう点は国鉄のために私は非常に好ましくないことではないかという工合に考えるわけでございます。  それから学割の問題だとか、あるいは学生の通学定期のことが、すでにもう一部実施されたりいろいろしているわけでございますけれども、学生につきましては、今度の改訂で学生負担が大きくなるという問題がございます。私は、外国のように教育のことが国家負担でいろいろなされているところにおいてはいいかと思うのでございます。しかし、今日私たちの生活において一番親の負担になるものは子供の教育費でございます。教育費の負担ということが今日家庭生活にとって一番大きな問題だろうと思うのです。その教育費のことで家庭の主婦などが一番頭を痛めているのでございますが、教育費の負担の問題が何も解決されずに——国会の諸先生方は学割なりあるいは学生の通学定期というのは待遇し過ぎるというふうにお考えになるかもわかりませんけれども、そのことは一般の教育費の負担がどういうふうになっているかということの関連において考えていただきたいし、それを国鉄だけに一方的に原価計算してしわ寄せすることがいけなければ、それは国の負担においてやるべきであって、やはり学割なりあるいは学生の通学定期——このことは、実際に私自身も通学している子供を大ぜい持っておりますし、そういう方たちからいろいろ言われておりますので、もうすでに一部実施されている点があるのでございますけれども、今度のそういう点については十分諸先生方にお考えをいただきたいという工合に考えるわけでございます。  それから等級制において二等級制にしましたけれども、今度の二等と一等というものを見ましたならば、その運賃についても、それからまた先ほどどなたかおっしゃいました三等寝台券の問題にしましても、大衆に対する負担ということの方が、より強く大衆にしわ寄せされているのではないだろうかという工合に考えるわけでございます。そういうような点については、国会の御審議の中において十分御検討をいただきたいというふうに考えるのでございます。  それから、この赤字の解消ということについては、先ほど渡邊さんもちょっとお触れになりましたが、新線ができるというような場合には、それができたらその周囲の人はそれだけ利益を受けるわけでございますから、何か国鉄の債券なり利用債のようなものを発行して、そういういろんなことを考えることによって一般の利用者に対する負担ということではなくて、新線ができれば地価が上がる、私鉄などでは新線を作って経営者が地価をつり上げてもうけるというようなことがありますが、国鉄も、敷かれたらその付近の地価が上がったり、いろいろ利益する人がたくさんあるわけでございます。そういうような方たちに国鉄の公債か何か債券のようなものを負担していただくというようなことも一つの方法ではないだろうかという工合に考えるわけでございます。従って、非常に簡単で恐縮でございますけれども、今度の改訂の趣旨なり方向については了解する点もあるのでございますが、利用者という立場に立ちました場合においては、国会の御審議の中でもう少しいろんな点を御検討いただきたいという工合に考えるわけでございます。
  18. 平井義一

    平井委員長 これにて参考人の方々の御意見の開陳は終わりました。  質疑を行ないます。質疑の通告がありますので、これを許します。久保三郎君。
  19. 久保三郎

    ○久保委員 大島先生に一つお尋ねしたいのですが、運賃制度調査会の答申をごらんになったと思うのでありますが、その中で、現在の国鉄運賃法の運賃決定の四原則がございます。これに答申は言及いたしております。第二番にある原価を償うものであること、これが主力であり、あとの三つのものは現状に合わぬから修正するのが望ましいということも答申されているわけであります。と同時に、この調査会では、あとの三つの条件については、それぞれ適宜に加味して現状に即した解釈をして今度の答申をした、こういうことになっておるのでありますが、これに対する先生の御所見はどんなものか。
  20. 大島藤太郎

    ○大島参考人 私は、そういう解釈にも反対なんです。やはり国民生活、それからまた産業の発達ですか、もう一つは物価でございましたかね。そういう点は十分考慮しなければいけないと思うわけであります。
  21. 久保三郎

    ○久保委員 そこで、今度は細野先生にお尋ねするのでありますが、先生は先ほどの御所見で、この答申案に大体全面的に御賛成の御意見でございました。そうしますと、先生の御所見では、第二番目の原価を償うものであるという趣旨一本でお貫きのように拝聴したのでございますが、そういうことでございましょうか。そうだとするならば、先生の御所見だけではないと思うのですが、現実には、先ほど来その他の方からも御意見が出ている通り、原価を償うのには相当問題があるということなんです。そこで、先生に関連してお尋ねしたいのは、現在公共負担の問題に言及されております。五百億ないし六百億の公共負担がある。これは原価主義と相反する問題でありますが、公共負担についてはどういうふうにお考えになっておられるか、この点を一つ。
  22. 細野日出男

    細野参考人 原価主義のことが国有鉄道運賃法印一条にございますけれども、原価とは何ぞやということについては何も規定がないわけであります。これが非常に不備でありますためにいつでも運賃改訂のときに問題になるので、これをはっきりおきめになるということが国会でやっていただきたいことなのであります。原価と言います場合には、独占ということを前提といたしまして、公益事業は一般に長い間の歴史を経て発展してきたものでございまして、公正なる利益という原則がございます。消費者、利用公衆の公正なる利益、公正なるということが大事です。それからこれにサービスを提供する公益事業、国鉄等の健全なる発達ということとを調和させるということが基本のまた基本であります。それを調和させる、つまり消費者の方は安ければ安いほどいいということは当然でございますけれども、それが公正なる利益でなければならない。いわゆる一方的な欲望が、安ければ安いほどいい、原価を割ってでも安くしろと主張することは公正なる利益ではない。だれが見ても無理がないところの利益というものは消費者に対してぜひ守らなければならない。そういう公正なる利益と、これに対してサービスを提供するところの国有鉄道というものの健全なる発達のためには、必要な資金が集まるということが一番必要なわけでございます。必要な資金が集まるということと調和をするという点がいわゆる総括原価主義ということになるわけです。総括原価主義、かかっただけは取り、かかった以上は取らないということ、その場合に独占公益事業でありますというと、総括原価の方でカバーができれば、個々の運賃とか料金とかいうようなものは原価に比べて高いものがあり、安いものがあるということは、独占の場合にはそれが可能なのであります。独占でありませんというと、それが非常にむずかしくなる。しかしながら独占である場合には、それが可能なのであります。  そこで総括原価というものを割り振るときに、どういう方法でやるのかということ、これはいわゆる従来長くとられてきたのは、負担力主義というものであります。ですから、定期券運賃は非常に安くしておく、しかしそれで出る赤字は一般定期外で負担させるということで、総括原価がカバーされるということになれば、それで一応公正合理料金です。総括原価はカバーされていくわけであります。ところがこれにも程度の問題があるわけです。あまりに片方が安くて、あまりに片方が高いということになれば、それはやはり負担の不公平という点の方がひどくなって参りますから、その辺のところをどこでとめるかということが、非常に問題になるわけであります。赤字地方線がたくさんできておる、たくさんできておりましても、国鉄全線がみな同じように原価を回収するということは、できない相談であります。運賃というものは、決して個々の線ごとに、あるいは個々の区間ごとにきめられるものではない。そんな複雑な運賃体系はとれないのでございますから、どうしたって、これはもうかる線と損する線が出るのは当然であります。もうかる線でもって、損する線をカバーするというところに、国鉄が総合経営をやるということの使命があります。そこに公共性というものがありますが、ただそれがあまりに過度になると、国鉄の財政を危うくする。つまり赤字になった部分の方が大きくなってきて、それをさらに一般の赤字でない方の旅客貨物やあるいは線路に負担させるというようなことになりますと、その負担の不公平がひどくなって、そこにある程度の限界があるわけであります。国有鉄道の地方赤字線といったような問題におきましても、そこの営業費もペイしないというようなものについては、これは相当問題があるわけであります。しかし、営業費はペイするけれども、資本費はペイしないという程度のところは、これは他の有力なる黒字線でもってカバーできるということになると思います。ですから、あまりに赤字線——赤字線があるのは当然でありますけれども、あまり多過ぎるということが問題なんで、その程度が問題であります。そういう程度をどの辺のところにするかというようなことは、これはやはり国家の政策の問題であります。総括原価を運賃料金でカバーするということが、独立採算企業としてやっていくということの建前なわけでありますが、独立採算の立場を貫く限りは、総括原価を運賃でもって回収すればいい。そのときの運賃の割当方というものには、負担主義を採用するというのでありますが、この負担力主義というものが、あまりに程度がひどくなく、つまり国民が、一般の普通運賃を払って乗っているお客が、定期券の方の赤字がひどいけれども、それは背負ってやってもいいということを意思表示する、結果的にいえば、国会がそれをお通しになるということになるわけでありますが、お通しになるということであれば、それでいいわけであります。それで一応、個々には不満の国民もありましょうけれども、国民の総意としては、そういう負担力主義を認めたということですから、いいと思います。しかしながら、その程度が、赤字の方がひどくて、しかもそれを普通運賃の方にはしわ寄せできないというような段階になってきますと、これはもはや総括原価主義はとれない。その場合には、大島教授も言われましたような国家の補給、それは公共政策の立場から国家が公共政策を国有鉄道をして行なわしめる。独立採算制の範囲ではやれないということに対しては、国税補給というような方法をとらなければならない。従来鉄道というものは、いつでも独立採算ということでもって見られてきましたが、自動車や飛行機の競争が激しくなってきまして、だんだんどこの国でもそれがむずかしくなってきております。そのむずかしくなっているということが、結局国税補給ということになってくるわけであります。幹線においては大体どこの国でもまだペイしているわけでありますけれども、支線的なところ、あるいはお客でいえば、一般旅客に対して割引旅客、公共割引をやっているいろいろな旅客貨物運賃といったものに対する補給をする、そういうようなことになってくるわけであります。  総括原価の中に、実は国有鉄道の場合非常に問題になりますのは、資本報酬の問題であります。利子の問題、これは一応わかります。しかしながら、普通公正合理料金の原則というものは、私企業に対して適用されるものでありますから、私的資本に対する利潤の問題、利潤と利子と両方合わせて資本報酬と申しておるわけでありますが、国有鉄道の場合、その資本報酬をどれだけ認めるべきか——資本報酬的なものです。配当しませんから、資本報酬とは言えませんけれども、それをどれだけ認めるかということが問題でありますが、その場合、国有鉄道はこれから改良し、サービスを向上していくために相当投資が必要でありますが、実はそういう投資をしても収益が増してこない、収入が増してこないという性質の改良が相当あるわけです。そういう改良に対しては、やはりこれは財源としては自己負担、つまり今まで使ってくれた人に、よけい持ってもらった運賃でこれからその人たちの使っているところをサービスをよくするということによってカバーする、つまり収益の還元の原則でもって改良をやっていく。たとえば電化をいたしますとコストが下がるという面があります。この方は投資効果があるわけであります。ところが同じ電車でも、たとえばモハ一〇〇を中央線に入れたとか、あるいは電車の暗い電気を螢光灯にかえたとかというようなことは、さまつな例でありますけれども、これは資本はかかりますけれども、報酬は何も生みません。こういった種類のものの費用をどこから出すかといいますと、これはやはり国営企業であります国有鉄道においても、いわば私企業でいえば利潤、利益に当たるものによって資本の自給をする、つまり資本負担のかからない資本を持たなければならない。国有鉄道や電電が長く発達してきましたのは、そういう益金の自己投入ということでもって、相当大きな改良をやってきたからであります。ですから、その改良費の出所の限度というものを、この総括原価の中でどの程度認めるかということは、国会でもって十分に御審議になって決定をしていただきたいことだと思うのでございます。  それから他の三つの原則につきましては、これは抽象的な一般的な原則でありますが、実は公正妥当ということは、公正合理料金そのものが公正妥当ということを言っているわけであります。それから国民経済に及ぼす影響とか国民生活に及ぼす影響とかいったようなものは、もちろんこれは国会が一番最高の認定権を持っておられるわけでありますけれども、私どもが考えておりますところの運輸大臣とか運輸審議会国有鉄道とかいうものは、それ自身公益代表でありまして、決してそれぞれの私的な立場から決定するものではない。ですから、その公益代表である——国鉄も公益代表である、運輸大臣も公益代表である、運輸審議会も公益代表であるというところから、これらの人たちに、やはり国民経済に及ぼす影響というものは、その公益代表としての立場から健全な認定をしてもらうということでもっていいのではないか、こういうふうに考えておる次第でございます。
  23. 久保三郎

    ○久保委員 時間もございませんから、それでは中林さんに一つだけお伺いしたいと思います。  先ほどの御所見の中で、赤字線区の問題、これは渡辺さんも大体同じような御所見でございましたが、いわゆる新線建設というかそういうもの、あるいは赤字線区の問題で、たとえば鉄道債券等を御負担願うのもいいのではないか、こういうお話でございましたが、これは電電やその他のものと国鉄はだいぶ違うとわれわれは思っておるのです。電電は大体事業としてもペイする事業だとわれわれは考えております。国鉄は今の実態では、残念ながら、これを大きくどういうふうにか性格を変更すればできるのですが、どうもゆるふん的な立場に入って、公共性と企業性がどこでマッチするのかどうもわからぬような事態では、これでは少しもの足りない。何かさらにゆがむのではないか、こういうふうに考えるわけであります。そこで一つの問題として、こういう赤字線区のある地方は、大体線路だけ長くて収益はないというので、赤字が出るわけです。ところが、一方では、地方財政の穴埋めということで、御案内の通り、三十二年に運賃値上げをされたと思うのですが、約三%を切って、これを固定資産税見合いの納付金ということで各町村へ還元しています。国鉄自体の観点からいけば、そういう債券を持ってもらうよりは、むしろ赤字線区もこういう固定資産税見合いの納付金等を減免してもらえば実際いうとやっていける線区も相当あると思うのです。ただし当該市町村にとってみればそれだけ非常に穴があくわけでありまして、これは本来ならば地方交付税の中でまかなうべき性質のものだろう。地方の開発ということ、あるいは低開発地区の問題を最近も地方行政委員会で取り上げておりますが、そういうものをからめてむしろ債券というよりはそういう問題を解決するのが先決ではなかろうかと思うのですが、どうですか。
  24. 中林貞男

    ○中林参考人 私は、今、久保さんがおっしゃいましたような税制なり、いろんな面でそういうことをお考えいただくことは賛成なんです。しかし、ただ私が思いましたのは、東武とか、西武とか、私鉄でいろんなことがあります。また新聞などで見ておりますと、国鉄の場合も新線を敷くと、その駅をどこにするかということで、いろんな利権が伴っておるということも事実だと思うのです。そういうような点を見ますと、やはり新線を敷くことによって、赤字経営というようなことももちろんありますし、それをどうしていくかということについては、税金の面などで十分考えなければならぬ面もあるが、一面において、そういう利権というものが非常に伴っている。そういうような点から、そういう債券のようなことも考える余地があるのじゃないか、それだけが全部ということではないのでありまして、そういうこともその中に取り入れていっていいのではないかという工合に考えましたので申し上げたわけでございます。
  25. 館俊三

    ○館委員 関連して。今大ぜいいらしたのですが、この際私の疑問としておることをちょっとお聞きしたい。たとえば、お話の中に、一等をなくして二、三等にしたところで、ローカル線の二、三等とそれから東海道線の二、三等とが違うという矛盾ができてくる。いろんな矛盾ができてくる、そういうことなんですが、それは大島さんがおっしゃったように、利潤を目的としての投資をしなければならないという状態にだんだん国鉄が追い詰められてきたという傾向が出てきたというふうにも考えられる。そこで根本的に、問題は公共性を主体としたもとの国鉄といいますか、そういう形でなければ問題は解決しないのか、純然たる営利を目的とした一私企業の会社という形でやった方がいいのか、この両方の問題を根本的に解決しないと、今お話を承った諸問題はいつまでたっても続くと私は思うのです。そういうことから国家の補助の問題もやかましくなってきますし、そればかりではなく、新線はやはり建設したいのだという建設審議会の、利権問題かどうか知りませんが、すなおに考えれば新線を建設したいという問題が建設審議会からこたえられてくる。そうすると国鉄の内部ではそれは利潤を生まないのだ、赤字線が五十線もあるのだからやれ切れないという問題ができてくる。この矛盾は性格をはっきりしないといつまでも解決しない。それから交通機関がどんどん発達してくる。バスやトラックやその他に奪われてくる。道路が非常に発達してくる、これから追い詰められる鉄道という姿も解決しないで、要するに最高の交通政策というのですか、それをすっきり確立して、その中におけるいわゆる国鉄というけれども、利潤を追求しなければならぬ形に半分ばかり追い詰められておる、その国鉄のあり方をどうするのか、こういう問題を深刻に考えないことには、国鉄の幹部諸君が非常に努力しても、ちぐはぐな政策が具体的に現われてくる。この問題について、参考人の方、大島さんでもどなたでもいいですが、簡単な御意見を発表していただけばいいと思います。
  26. 大島藤太郎

    ○大島参考人 私はやはり公共企業体という形で、本来の公共企業体にするという考えです。そのかわり、それに負担させるには、やはり負担させた分だけは政府は持て、こういう考えですね。だから一般の企業体とはちょっと違うわけです。本来利潤追求じゃなくていく、十分公共性を考えながら、それなりの独立計算をやっていくという考えなんです。そうすると、労働慣行なども一般の民間並みに、ある程度アメリカのようになっていくわけですが、そういう中で経営委員会などにはやはり荷主なり乗客の代表の意見が入るような形でやっていく、経営者には経常的なセンスのあるすぐれた人になってもらうという形で当面やっていくことを私は考えているわけです。
  27. 細野日出男

    細野参考人 私企業でありましても、公益事業というものはある程度以上の利潤を認められていないわけであります。しかし国営事業、公営事業となれば、利益を上げることは目的ではないことは非常にはっきりしております。これは要するに、私企業におきましても公益企業の場合には、健全なる事業の発展と公正なる利用公衆の利益の調整ということなんでありますが、国営事業の場合には、そのうちに私的利潤というものが入らない。ただ国営事業的なものはとかく能率において下がるというような問題がある。あるいはいわゆる政治的干渉というような問題が多く入るというような傾向が世界的にあったわけであります。そういう問題に対して、能率を上げるということと、いわゆる政治的な問題で赤字が出てくるというようなことを防ぐために、公共企業体というものが作られておるということでございますが、公共企業体の目的は明らかに公益であります。公益の追求が第一であります。ただ、その公益を追求していきます場合にも、企業としては独立採算を命ぜられておるという場合には、片一方においては赤字サービスがあるという場合におきましては、片一方において黒字を上げるという努力をしなければ独立採算ができないのでありまして、やはり企業性というものを大いに努力しなければならない。しかし公益性が第一であるということは非常にはっきりしております。その公益性を第一として、そしてその公益性を達成するために企業がペイしなければならないという意味合いにおける能率の向上——必ずしも利潤の追求という言葉は当たらないのだと思いまして、能率を上げていく、そして収支を適合せしめるということだと思います。しかしながら、その収支適合の場合に、国民の総意として、赤字的なものを埋め合わせる方に黒字的なものの方をこれ以上上げることができないというような場合には、税金の補給、国費の補給といったような問題が出てくるということだと思います。
  28. 平井義一

    平井委員長 本日は御多用のところ御出席いただきまして、いろいろ貴重なる御意見をお述べ下され、まことにありがとうございました。ここに厚くお礼申し上げます。  次会は明十八日水曜日午前十時より理事会、午前十時三十分より委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後一時二十九分散会