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細野参考人 参考人、
中央大学の
教授細野日出男でございます。五十七才であります。
私の今日
意見を申し上げたいことは、順序といたしまして、ハンド・ライティングのカーボンでございますが、項目だけ書いて差し上げてございますので、それについてごらんを願いたいと存じます。
まず第一に、
総括的意見を申し上げます。今度の
国有鉄道運賃法の
改正案は、
国鉄運賃体系の
正常化ということが、私は一番基本だと思います。同時に、それは
運賃体系の
近代化、
合理化をはかるものとして、私はこの法案に積極的に
賛成いたします。
運賃には、本
運賃と
付加運賃あるいは
料金があるわけでございますが、終戦後
国民経済や
国民生活の窮乏、それから
インフレーションの
爆発的高進というような時期に、本
運賃は経済政策的な
見地あるいは社会政策的な
見地から引き上げかおくれ、あるいは率が非常に低くとられたのであります。その
収入欠陥を補う意味でもって、
付加運賃的なものの方が、ことに
急行料金のごときものか割合に高く引き上げられたのであります。また
一般運賃に対して
定期券運賃とか
学生割引というような社会政策的な
運賃が、著しく低くきめられて参りました。これが、
インフレーション終息後の
国鉄運賃のインフレ乗りおくれを回復するという
改正のことが、たびたび行なわれましたが、そのつど、終戦後の初期の三、四年の間にきめられましたそういう一時的に歪曲された
運賃体系というものが、プロラータで引き上げられて参りました。そのために、
運賃体系全体が非常に歪曲された
アンバランスのものになってきておったのであります。
貨物運賃につきましても、
特別運賃率や各種の
割引運賃というようなものに、そういう傾向が出てきておったのであります。今般の
改正はこれを
正常化し、また航空機やバス、
トラックというようなものの
競争の激化に対して対抗できるような
近代化、
合理化案であると思いますので、私はこれに
賛成する次第であります。たとえば
アンバランスの例といたしまして、
急行料金というものは、
国有鉄道の
昭和三十三年度の
旅客収入千六百億円強のうちでもって
急行料金収入が実に百四十三億円、全体の九%というような大きなものに達しておるのでありますが、戦前に比べますと、大へんな
伸び方であります。またそれに対して、非常に問題になります
定期券の
収入はどうかと言いますと、わずかに二百七十六億円であります。
急行料金の二倍までないのでございます。世間では
定期券のことは非常に問題にいたしますが、
急行料金のことはあまり問題にしないというような、そういう盲点がございます。そこでこの
付加運賃的な
急行料金というものが、やはり大幅に大幅にと引き上げられるという結果を生じたわけでありますが、
定期運賃の実に五二
%——急行列車の
利用者は大体七千万人
程度ではないかと思いますが、
定期券の
利用者は実に二十八億人に達しております。二十八億人の払っておるものと、七千万人の払っておるものとがわずか四八%しか違わない、つまり
定期券運賃の五二%が
急行料金の
収入に当たる、こういう
収入の
状態でございます。これは非常な
アンバランスであります。いろいろな物価が上がって、三百五十倍見当に平均上がっておりますうちに、
国有鉄道の
旅客運賃は平均十五倍前後というようなことでございますけれども、実は
急行料金は、
東京—大阪間の例でとりますと、三百五十倍に上がっております。
特別急行料金は、
東京—大阪間の例でとりますと、三等について四百倍に上がっております。そういうように、
一般物価水準よりもはるかに上がる、もしくはほとんどそれと同じ
程度まで上がっておるわけであります。また本
運賃に比べてみますと、
急行料金というものは本
運賃の一割五分から二割ぐらいというようなところが、大体世界的に普通というところでありますが、一
日本の場合は、
東京—大阪間の例で申しまして、
普通急行料金が三五%、それから
特別急行料金がほとんど八〇%に達するというような、非常に高いものです。
特別急行料金のごときは、もう少し
距離が短くなりますと、
特急料金の方が本
運賃よりも高いというような、そういう
ケースが出てくるわけであります。こういうことがいわば
体系の
アンバランス——歪曲ということであります。今度はこれが
改正されるんだという点において、私は
賛成する次第でございます。
その次に、収支の
見地から申しますと、今回の
改正は不
増収、不
減収を目標としておりまして、
国民経済上あるいは
国民生活上与える悪影響は、全体としては少ないということが言えるわけでございますので、その点につきましても、全体としては積極的に
賛成をする次第であります。今度の
改正は、
旅客については相当思い切った
改正でございます。いわば抜本的な
改正でございますからして、個々の
利用の面から見ますと、
値上げになる場合、
値下げになる場合というものが当然出て参ります。相当の変化は避けられない。
一般運賃について言えば、もちろんこれは
値上げになるわけでございます。しかし、それは
急行料金の方の引き下げということとバランスをとりまして、多くの
主要地点におきましては、大体事実上不
増収、
急行利用客にとっては不
増収、不
減収というようなことになるわけでございます。一番大きな影響を受けますのは、百五十一キロから三百キロまでのところの
人たちが、これは数が比較的多いのでございますからして、影響を考えなければならない点でございますが、
国鉄側の調査されたところによりますと、「図表でみた
国鉄運賃の
問題点」の七ページに、百五十一キロから三百キロのところの二番目の棒図が出ておりますが、このところで見ますと、
急行の
利用客が四六・七%、それが三十四年度においては五八%に達する見込みである。これはもちろん三十四年度におきましては、
ディーゼル準急や
電車準急が非常にたくさん増発されまして、これがやはり百五十一キロから三百キロまでのところでもって非常に
利用が多いわけでございます。私も
旅行してみますと、
普通列車はがらがらだけれども、
準急は常に
満員だというような
状態でございます。百キロ未満でもずいぶん
準急に乗る
常磐線「ときわ」第一号以下のものを見ておりましても、常に
満員でございます。九州の「ひかり」という
準急のごときも、私、乗ってみましたが、これまた
満員、
普通列車の方はかなりすいてしまっているというような
状態でありまして、
国民所得が上がって、
国民生活のレベルが上がってきておりまして、
国民は、いい
サービス、快的な
サービスを
鉄道に対して要求しているということが非常に現われてきております。
急行、
準急等の
利用客がどんどんふえておりますからして、百五十一キロから三百キロのところの
人たちにおいても、
急行がとまる、
準急がとまるというような駅の間の
旅行の人にとっては、これは大した
負担にはならない。中間駅は、御
承知の
通り乗客の少ないのが例でございます。そういうところの
人たちはお気の毒でありますけれども、やはり全体の
体系としてはこれでよくなるものだと考えておる次第であります。
三番目に、
国民経済、
国民生活の
発展向上は、
国鉄輸送力の
改善拡充をきわめて必要としておるのであります。
国有鉄道の
輸送力が
経済発展の隘路である、あるいはわれわれの楽しみたい
旅行におきまして、常に行列あるいは
満員状態、立ちんぼ
旅行をさせられるというようなことが、御
承知の
通りずっと続いておるわけでございますが、これは結局
国鉄の
輸送力の不足である。それを
改善拡充するためには、
国鉄財政の
健全化が根本なのでございます。その
国鉄財政の
健全化をはかるためには、今回は不
増収、不
減収でございますから、今回の
改正だけでは足らないのであります、やはり引き続いて、できるだけ早い機会に広範囲な
財政健全化をはかり得るような
運賃の
改正が必要だと私は思っておるのでございます。これは
国有鉄道にまかされた
運賃の決定というものを相当含んでおりますが、しかし
世論等も大いにあるのでございまして、
国会の十分な御理解と御推進とを要望申し上げたい次第でございます。
もう一つ、実は
自動車というものが非常な
伸び方でございます。
国鉄の
伸び方が割合少ないことはその
図表等に出ておりますが、これは結局
自動車にすぐれた点がたくさんあるということでもございます。しかし一方、
国鉄の
輸送力が不足だということが
自動車を伸ばしておるということでもあるのであります。
国鉄の
輸送力が十分であって、いつでもすわれる、あるいは荷物がすぐに出せるというようなことであるならば、これは必ずしも
自動車にいかないでも済む。それどころか、実は
鉄道の方が安いという
ケースの方が多い。ところが、それが不十分でありますから
自動車にいく。一
たん自動車にいったものはなかなか戻って参りません。これは結局
国民の財産である大きな
固定施設の
国有鉄道の
利用効率を悪くするということにもなるのでありまして、
交通政策の
見地から見まして必ずしも適当ではない。適正なる分野というものが必要であります。そのためには、やはり
輸送力を拡充し、質を改善し、健全なる交通の分野に持っていくということが必要だろうと思います。このためには、過度の社会政策的あるいは経済政策的な
公共負担が伝統的に
国有鉄道に負わされておりますが、この過度の分は近い将来において是正する必要があるものと考えますので、
国会の
皆様方の十分の御推進をお願い申し上げたい次第でございます。
第二に、
旅客運賃でございますが、第二条の
改正点、これは
等級改訂と改称でございますが、
一等の廃止は当然でございます。私は
昭和十年に「
国有鉄道旅客等級制度の研究」という論文を、もう二十五年も前に書いたことがございますが、そのときに私は、
一等、二等を廃止して単級にすべし、
モノクラスにすべしということを提唱しております。と申しますのは、これは結局
運賃理論から申しますと、
負担力のあるものに高い
運賃をかけて
鉄道が少しよけいもうけるという趣旨である。ところが実質は、
一等、二等は
国鉄にとっては赤字でございます。
急行列車の一部は二等でもペイしておるでありましょうけれども、
普通列車等においては二等はほとんどペイしているとは考えられません。
一等は、もちろん特急「はと」と「
つばめ」しかございませんが、ペイしているとはとうてい考えられないわけでございます。結局三等
運賃を
負担している
一般公衆の
負担において、
一等、二等の
旅客が安楽な
輸送を受け、
サービスを受けているというようなことに事実上なってしまっております。そういうことを直すために
モノクラスがいいのだ、
寝台車と
座席車というふうに分けて、
普通座席車というものはずっとよく、今日の「
つばめ」や「こだま」の三等車のような、ああいうものにしてしまえば
モノクラスでいいのだという趣旨のことを書いたのでございますが、二十五年たちまして
一等がようやく廃止されるということになりました。私はその意味からも
賛成でございます。
今度名称の方は格上げということでございますが、これはもちろん名称だけのことでありまして、
イギリスあたりは
一等と三等、途中の二等というものは廃止しっぱなしになっております。三等を二等に格上げするというようなことはいたしません。それは
イギリスという国が非常に保守的な国で、ものをあまり変えないという性格の
国民でありますからなんでありますが、
日本におきましては、
サービスという点から見ましても、二等が
一等になる、三等が二等になるということはけっこうなことだと思います。現在の
状態では、
モノクラスにするということは、まだなかなかにわかに断行できないかとも思いますけれども、将来の方針といたしましては、
東海道新幹線等におきましては、もう
モノクラスでしかるべきだというふうに考えておる次第であります。それから
外人等に対しましては、
特別車を作りまして、
特別賦課料金を取ればいいのだということでございます。
次の(2)の法第三条の
改正点は、
遠距離逓減の縮減と
単純化ということでございますが、
旅客運賃は御
承知の
通り世界的に
距離正比例であります。アメリカのような大国でも
距離正比例であります。しかし
日本は伝統的に
遠距離逓減制度をとって参りました。それはやはり国土が非常に細長いことと
東京、
大阪というような大都市が、地方から見ますと相当な
距離の位置にあるということが影響しておるのでありまして、
日本におきましては
距離正比例制度に完全に踏み切ってしまうということは、私はやはり反対なのであります。途中で一ぺん変わるくらいの二段
逓減くらいはやむを得ない制度ではないか。地形的に、人口配置的に、そういうふうに考えております。今度はそれが二段に変わったわけでありまして、これの変わる点を三百キロにするか、四百キロにするか、五百キロにするかというようなところは問題のあるところでありましょうが、やはり三百キロという
あたりのところがちょうどいいところではないかと思います。そしてこれは
運賃が非常に
単純化されまして、百キロ二百四十円は変わりないわけでありますが、次の段階は百二十円ということで非常に単純になりましたから、
運賃の
計算等をしろうとがします場合にも、きわめて簡単にできるということになりまして、はなはだ単純な
一般運賃体系を持つということになったので、この点も
賛成でございます。三百キロまでの
普通列車の
旅客の
負担増ということが問題でございますけれども、コストから見ればこれはやはりやむを得ないところである。
旅客運賃はあまり
遠距離によって
逓減いたしません。初めのうちは今の
運賃では十円の
最低運賃でも損である。やがて余ってきまして、百五十キロ先
逓減しておりますと、一ぺんに半分になってしまって損になってしまうという面がございますので、百五十キロ以内の
旅客が主として
負担するというよりも、三百キロまでの
旅客が
負担するということの方がもっと公平だと考えております。
国民所得が増加し、
国民の高速とか快適とかいうことに対する要求が非常に上がってきております。
国鉄もこれに対応して
ディーゼル準急や
電車準急というようなものを大幅に増加しておるのでありますから、三百キロメートルの圏内でも
準急の
利用者が非常に増加して、
準急料金の方が
均一化でもって百円の
値下げになりますので、
準急利用者にとっては三百キロ以内でも
負担が大して重くはならないという結果になっておるわけであります。
旅客運賃の大幅の
逓減のために著しい不合理を生じております例として、徹底的な
環状線の例で、私の研究指導しておりました
学生が、実際
旅行した報告を聞いておるのでありますが、
東京から
関西線で湊町へ出ます。それから
別府航路の船でもって別府へ出る。それから
鹿児島へ行って、それから博多へ出る。門司、下関、
大阪、それから北陸線、
羽越線回りで青森に行く。それから
東北本線もしくは
常磐線で
東京へ帰る。これが全部つながります。途中で船が入りますが、
連絡運輸をやっておりますから、前後が続くわけであります。それでこれが三千五百十五キロほどになりまして、その
運賃が、現行でもって二千七百十五円であります。二千七百十五円でもって、
日本じゅう、
北海道を除いて、四国にもタッチしまして、全部回れるわけであります。これは、
大阪へ行って、帰って、また行くぐらいの
運賃でもって
日本全国が回れるというように、そういうひどく安い
運賃でございます。これを
学生が五
割引で乗れるのでありますから、私の研究指導しておった
学生の報告では、船まで入れて、二千三百円で
日本全国回れた。これは極端に激しい
遠距離逓減の結果なのでございます。これが今度是正されるということでありますので、私は、やはりあまり極端な
遠距離逓減というものは是正すべきである、これが実現されたものとして、
賛成するわけでございます。ただ、
遠距離客の
負担増に対しましては、
往復割引の帰りの方が一割ということができるようでありますが、これは大へんけっこうであります。従来の
国鉄の
運賃体系におきましては、往復に対しては何らの特典がございません。どころか、
通用期限の制限というハンディキャップさえつくのであります。ところが、
航空等は、御
承知の
通り、
割引をやっております。船なんかはもちろんやっておるわけでございます。そういうものに対しまして、
国鉄がやはり往復に対する
割引を実施して
遠距離客の
負担を軽減するということも適当であり、また
競争機関対抗上も必要なことだと考えております。
それから(3)の第六条の
改正で、これは
急行料金、
寝台料金等の
決定権の
国鉄への移譲ということでございますが、これは
基本運賃に対する
付加運賃という性質のものでありますから、将来とも、実情に合わせて変更の機会は、本
運賃よりも多いものと考えます。これを一々
国会のお手にかけるということは、時期的に間に合わないという問題もございます。また、比較的問題が軽微であるというような点もございます。これは
国有鉄道におまかせになって、第九条の二によって、
運輸大臣の認可に待つ。これは、結局
運輸審議会が審議し、答申して大臣が認可するということになるわけでございますが、そういう
やり方は、きわめて適当な
やり方だと考える次第であります。
なお、
急行料金等については、今度大きな
改正が行なわれるわけでございますが、この
国鉄に移譲された事情から、法律では直接問題になっておりませんが、つけて出されておりますような
改正は、私は
賛成でございます。
準急を百円に
均一化する、
急行を二百円と三百円にする。それから
特急料金につきましては、これは非常に問題があるのでございますが、
名古屋—大阪間、あるいは
熊本—鹿児島間、とか、
博多—鹿児島間、
博多—長崎間というような、こういう端のところ
——東京から離れた、ある
特急列車の端のところというものは、どうしてもこれは空席が出ます。従来のような六百円というような
特急料金では、これはどうしてもあきが出てしまうのであります。現に
名古屋—大阪間のごときは、近畿
日本鉄道は二百五十円の
特急料金で、しかも
国鉄の三等よりはいい座席の
サービスをやっているわけであります。ですから、ここのところで三百円
程度の区間を設けるということは、
空席利用、空席をできるだけ出さないという
見地からも必要なことでありますし、その地域に住んでおる
人たちにとりまして、また、その地域間の
旅行者にとっても、これは非常な福音だと思うのであります。
次に、第三は
貨物運賃でございますが、第七条、
車扱運賃等級の
改正ということでございますが、これは主として
自動車対抗の
競争として、どんどん出てきております
トラックというものに対抗する
改正という面と、それから
物価変動、価格が上がったとか下がったとかということに対応するこの
負担の比例というものを維持するという点からの
改正でございまして、千百十九種の
等級品目のうち、上がるのが二百三十三、下がるのが三百二十一、変わらないのは五百六十五だそうでございますが、上がるのは二百三十三、そのうちの六〇%は価格が騰貴したからプロラータ的に
等級が上がるというもののようであります。百五種のものが一ないし一九%の
値上げになる。これは、
値上げということは、やはりその業者にとっては、関係者にとってはつらいことでございますけれども、しかし、大体経済界の最近の情勢を見ておりますと、
鉄道にうんと赤字を出させておいて、それを使っている産業が非常な黒字を出して大もうけをしておる。何割という配当、利益率から言えば五割、六割といったような大利益を上げている事業が相当あるのであります。これらは相当やはり是正をして、
国鉄の赤字分は回収するだけの
負担力が十分にあるものとして
改正されてしかるべきだと与えるわけでございます。
貨物運賃については、簡単でございますが、その
程度にいたします。
第四は、その他の希望的
意見でございますが、ここは、特に
国会の
皆様方に、一交通学徒といたしまして希望を申し上げたいと思います。それは、
運賃決定機構と
国会との関係でございます。
運賃の決定ということと
国会との関係。私は、
運賃というものは物価である、つまり国営企業の物価なわけでございますが、物価
体系のうちの一つのものであります。つまりマーケットにおけるプライスというものでございます。それに対して
国会が法律でもってこれを決定するということは、実は欧米においても以前はあったことでございますが、ずっと前からこれはなくなっておりまして、専門の判定機関に判定をまかす、ちょうど裁判所が一々の
ケースについて判決を下すというような式のものにまかされておる。専門判定機関にまかされるということになっております。これは実は私は、
国会が
国有鉄道の
運賃、国営企業の
料金等についてなさるべきことは、その
料金決定の基本方針は何であるか、基本原則は何であるかということを根本的におきめになるということ、これが一番大事なことだと思う。これはぜひ
国会でやっていただかなければならない。今までの
国有鉄道運賃法の第一条に、決定原則らしいものが四カ条あげてありますが、そのうち原則らしいものは原価を償うことということ一つであります。あとは抽象的でありまして結局それは要するにつけたり的な、希望的な、物価に影響を与えないことなんていいましても、
国有鉄道の
運賃の
改正をやって、物価に影響を与えないでおくということは、根本的にはこれはできないことでございます。やはり物価に影響を与えることはやむを得ないけれども、それをいかによくとどめるかということが問題なわけでございますが、結局
国有鉄道の
運賃というものを、あるいは電電の
料金でも郵便の
料金でもそうでございますが、こういう
料金というものはどういう原則できめるのかということの原則を、十分に
国会でもっておきめを願いたい。公正、合理
料金の原則というのが公益企業の
料金原則にございます。しかしながら、近ごろは運輸公益事業につきましてはだいぶ
競争が激化してきております。独占を奪われてきておりますので、その公正、合理
料金の原則というものは、必ずしもそのまま適用できなくなってきている。こういうものをどういうふうに直していくかということは、非常に重要な問題でございますが、これこそ
国会でもって大いに論議して基本原則をきめていただきたい。
国有鉄道運賃法ではなくして、
国有鉄道運賃決定法、決定原則法というような、そういう法律をお作りになっていただいたらということを考えます。そうしてあとの実際の決定ということは、これは個々の
ケースでございます。個々の
ケースというものは、専門機関をこさえてその判定にまかす、それはこの
国会が承認して任命したところの公正な
委員——アメリカにおいては州際交通
委員会、
イギリスにおいては運輸審判所というようなものがございますが、そういった機関をこしらえて、これにまかされるということが適当であると考えます。現在の運輸省の
運輸審議会が大体それに当たりますが、これは独立規制
委員会ではなくして、大臣の諮問機関であるという点が違っているわけでございます。しかし、大臣が
国民経済全体に対する
運賃に関する責任を負われるということでございますから、
運輸審議会の答申に対して大臣が認可をするという制度は、
日本におきましては当分維持する必要があるかもしれませんが、そういうような機構に変えることが理論上、実際上正しいのではないかと思います。
国会が
運賃を直接おきめになりますと、これは
国会議員諸公もお困りになる場合が事実おありになると思います。というのは、有権者というのは
国有鉄道の全面的
利用者でございます。
値上げというような問題が起こる場合には、有権者は全部
利用者でありますから当然反対でございます。従って、選挙の上に立たれる
国会議員の
皆様方というものは、どうしても有権者の意を迎えなければならない。場合によっては、自分の信念に反してでもこの意を迎えなければならないというようなことも起こるわけでございます。そういった苦しい立場を
国会というものはとるべきものではない。従ってこれは公正なる判定機関にまかせる。その公正なる判定機関がよってとるべき原則というものは
国会がおきめになるということをおやりになることが必要ではないかと考える次第でございます。
それから、次にやはり法律のことでございますが、ちょっとここで申し上げさせていただきたいのは通行税の問題でございます。通行税というものは悪税だということで三等については廃止されました。しかし二等については全面的に残っております。二等の座席指定料以外は、全部あらゆる二等の
料金というものに二割の税金がかかる。ですから、二等の
運賃というものは実は三等の二倍ではなくて二倍四分である。これは
利用率を悪くする大きな原因でございます。また実際は、出張等におきまして、二等の旅費はもらっているけれども二等はあまり運転していないところもある、そうでなくても三等で行けば安くつく、一倍四分がふところへ入ってしまうというような
ケースが実際は相当ございます。出張させている機関は通貨として全部払っておりますけれども、
国鉄にそのうち三等の
運賃しか入らないというような
ケースが相当あると思います。
国鉄の
運賃の通行税は三十億円余りということでございますけれども、実は
一般公衆のふところに入ってしまっている通行税が相当あるということ、こういうことから考えましても、通行税というものは廃止すべきである、廃止できなければせめて
基本運賃にだけ認めるか、あるいは特にぜいたくと認められるところの
急行料とか寝台料にだけ認めるか、
基本運賃の方を廃止した方が私はむしろいいのだと思います。そういう
運賃をおとりになることを一つ御推進願いたい、一学徒として御要望申し上げる次第でございます。
次には
国鉄への要望でございまして、ここで申し上げるほどのことでもございませんが、関連がございますので……。
定期運賃、これが先ほど申しましたように、
昭和二十三年くらいまでの
改正というのは通勤費を安くしておかなければならないという事情のもとに、
定期券というものを非常に低く抑えている、それがそのままの割合もしくはさらにその後も追加されて値上率が低くされるといったことから、七割からあるいは九割一分という大きな
割引率になっている。
学生などは十二人寄らなければ一人前の
収入にならぬという
状態になっているわけでありますが、これは
国鉄だけでなしに、私鉄にも今非常に財政的な大きな影響を与えております。こういう
運賃はやはりある
程度是正する必要がある。
国有鉄道運賃法には三カ月までのものは本
運賃の五割以内、六カ月のものは四割以内という規定がございますが、その規定よりもずっと大きな
割引が実は行なわれているわけでございます。私は、やはりこれはどうしても近い将来において直さなければ、
鉄道というものの不健全財政は直らない。今までは普通
運賃、普通
旅客の
運賃があらゆる
鉄道の財源になっているというのが実情、あとはみんな赤字だと言ってもいいというような
状態のようでございます。そういうことによって、
定期券の
運賃の
改正ということがどうしても避けられない必要なものだと考えます。これをやって初めて
国有鉄道運賃体系の
正常化、
合理化がほぼ完成するというふうに考えておる次第でございます。
それから車両設備、
急行列車や
準急列車、いい車両を作る、いい列車を運転する、これは最近
国鉄が非常に推進されておる政策でございますが、これはもっとやっていただきたい。というのは、非常に
利用が多い、
国民生活が向上してきていると申しますか
負担力がふえてきていると申しますか、優秀列車の
利用が非常に多い。ですから、やはりこういう優秀列車というものはどんどんふやす方針をとっていただきたい。三等車などの設備も、今度は二等と名前を変えられれば、やはり名前だけではなく、従来の古い車両の改造というようなことにはできるだけ手をつけて、いい車両、二等らしくなったというようなものにしていただきたい。
それから座席指定制度、これが特急と一部の
急行、
準急にあるようでありますが、ほとんどの座席指定が当日では間に合わぬというのが多くの場合の実情でございます。これでは困るのでございまして、やはり座席指定制度というのはもっとも拡充する必要がある。安心して乗れるという制度をもっと拡充する必要がある。
それから、そういう場合に、ことに乗車中等におきましては、御婦人、老幼、傷病者等の優先取り扱いというようなことも、これは規則でできるかどうかわかりませんけれども、車掌等の権限で乗車区域の乗りかえといったような場合には、そういう
人たちの優先取り扱いを許すということもやっていただきたい。
それから、寝台
料金は高過ぎる。ことに三等の
料金は高過ぎると思います。二等でも三千円をこえるものもございます。三等の上段などは、戦前に比べますと実に税金込みで七百二十倍、あらゆる物価の中で一番高くなっているものの一つであります。一晩一円でありましたものが七百二十円になっている。本
料金は六百円、百二十円が税金でございますが、三等の通行税なんというものは、何といってもまず第一に廃止されてしかるべきものだと思います。この寝台
料金のある
程度の
値下げがやはり必要ではないか。
国民が長
距離のオーバー・ナイトの
旅行をするならば、大てい
寝台車に乗れるというようなところに
サービスを向上していただきたい。
それから、
寝台車というものは昼間遊んでいる区間が相当あるのでございますが、その遊んでいる区間が非常にむだでございます。しかも普通の三等車や二等車は超
満員であるというような
状態で、そういうことにおきまして乗務員も非常に困っているようでございますが、昼間使用料制度、これはアメリカの
寝台車にはあるのでありますが、そういう制度をこしらえることによって、
寝台車なども昼間でも十分に空席なく
利用できるといったような、あるいは区間についてもこういう
利用ができるというような、もっと合理的な、そしてゆるい——ゆるいと言うと何ですが、弾力性のある
料金体系を設定されてはどうかというふうに考えている次第であります。
大へん長時間にわたりまして、
委員長にも御迷惑をかけましたが……。