○佐藤(一)
政府委員 最初の点でございますが、もちろん黒字、
赤字と申しますのは、損益勘定における黒字、
赤字の議論としての黒字と申し上げておるのであります。いわゆる建設勘定、これは当然財産として残るものでございまして、それは資金繰りの問題といたしまして、現在
国鉄は、東海道の新幹線その他五カ年計画の遂行で非常に建設投資の面におきまして資金が要ることは御存じの
通りであります。従って、ただいま申し上げました損益勘定で生じたところの黒字はすべてこれを建設のために振り向けておりますし、さらにその不足するところは
財政資金をもって
政府ができるだけの援助をしておるという状況でございます。それで、いわゆる企業が
赤字であるか黒字であるかということは、もちろん損益勘定で黒であるか赤であるかということで議論すれば十分であると思います。それで、建設勘定に多額な資金が要ることは確かでございますけれども、これはもちろん
国鉄の財産として将来残る。また投資でございまするから、それは資金繰りの問題として議論すべき問題ではないか、こう考えております。
それから第二点でございますが、公共
割引というのは実は最近急に始まったことではなくして、もうずいぶん長い沿革を持っているわけであります。私鉄においてさえやはり
割引という
制度はやっておるわけであります。これらはこういう公共的に運輸事業というものの性格から見て、ある程度社会的に当然要請されて今日まできたろうというふうに考えていいんではないかというふうに考えております。でありますからして、
国鉄だけが
割引をやったから税金で穴埋めをしていくというのは、少し議論としては筋が違うように実は感じております。
それから、ただいま海運の問題が出たのでございますが、御
承知のように、いわゆる税金の中から各種の産業に対して補助金が出ておりまして、ひとり海運だけではございません。国の政策の遂行上必要な場合におきましては、
相当各種の補助金が出ておることは御存じの
通りであります。今回海運につきましてああいう特別の補給が行なわれるというようなことになりましたのは、御存じのように、海運はいわゆる国内の運輸機関と違いまして、海外との競争を行なわなければならぬ。そうしてこれは日本
国民としての貿易
収支にも重大な
関係のある問題でございます。幾らコストがかかったからそれだけ海上
運賃を
値上げしようとしても、これは
利用者が言うことを聞かない問題でございまして、いかんともしがたい点があるわけでございます。で、現在の海運の状況は、御存じのように、
相当造船の利子等に経費として莫大なものを出しておるわけであります。大体外国との金利の比較において日本の金利がとかく高過ぎるというような議論もございまして、そういうことから特別に海運対策として利子補給をいたしたわけであります。もちろん個々の企業が、個々の海運会社が
赤字であるか黒字であるかということを別に取り上げて補給をするという思想ではございません。全体の立場から見て、海運の造船利子
負担というものを軽減するためにとられた特別の対策でございまするからして、いわゆる特定の企業の
赤字を救済するというような思想とはやや違うという観点で取り上げたのであります。