○朝田政府委員 お答え申し上げます。
まず第一の問題でありますが、
国内の石炭鉱業の合理化に伴いまするところの専用船建造の問題と配船センターのお尋ねでありますが、これに対する影響並びに
運輸省としての対策はどうか、こういう御
質問でございますので、その線に沿ってお答えを申し上げたいと思うのでございます。
御
承知のように、石炭の非常な不況のどん底にあって、現在石炭鉱業審議会というのが通産省に設けられておるのでございますが、この中間報告案を審議されました際にも、今御指摘の問題が取り上げられたのでございます。これに対しまして、私どもといたしましては、その影響が内航海運にとって非常に重大な影響があるというふうに考えたのでございまして、これに対しまする
運輸省の見解をこの審議会に出席をいたしまして述べたような過去の経緯もございます。御
承知のように、内航海運につきましては、国鉄の政策的な運賃、こういったものと慢性的な企業の不振によりまして非常な悲境にあるのは、石炭と並んで
状況が悪いといっても差しつかえないと思うのでございます。そこで、私どものこういった専用船に対する問題並びに配船センターにつきましては、私どもの考えを申し述べました内容は、こういった配船を計画的に調整して、舶船の稼行率を向上させるという配船センターの
目的はよくわかるのでありますが、ただ、こういったことだけでやられることがどういう影響を来たし、どういう内航海運全体の
状態になるかということをやはり石炭の合理化対策を審議される場合に、あわせて考えてもらわなければならぬということでありまして、他の産業の犠牲において石炭のみが合理化が達成されても、正常な産業構造としての達成ができませんので、私どもはこういった
目的は一応了解ができますが、稼行率の向上というものは一般的に申し上げてロットの大口化、あるいは荷動きの安定、あるいは港湾能力の強化、あるいはバースの確保、こういったものを前提といたしまして、こういったものが実現されて初めて稼行率の向上というものが可能になるのである。また配船センターが取り扱うことが可能と見られます石炭の輸送量は、現在の海上石炭輸送量のうちわずかに大口需要の北海道炭及びその他一部の電力用炭にすぎないものであると考えられるのでございます。
以上のような
現状から配船センターの制度で船舶の稼行率が保障されないままでごく一部分そういった銘柄の統一、規格の統一、あるいは埠頭の専用化といったようなことで、一部の配船センターによります稼行率の向上がありまして、そういったものが全体から見ますとごく一部である、こういうようなことが当然予想されるのであります。ところが、そういった
状態になりますと、その他の大部分の一般の石炭の運賃にまでしわ寄せをされる。従って船舶の稼行率がその他の大きな輸送部分について、配船センターのような
措置をとられないような一般の石炭輸送に対してまでも運賃の切り下げが行なわれることをおそれるわけでございます。しかもこういった低運賃が配船センターと
関係のない、今申し上げた全石炭運賃のスタンダードとなる可能性がきわめて強いものでありますので、こういうことになりましては内航海運にとって、先ほど申し上げました国鉄の政策運賃等によって不振にあえいでおります内航海運業は二重の出血をしいられるということが予想されるのでございます。こういった影響に対しまして、私どもは十分こういう配船センターを通じての稼行率向上について実施をする場合に、技術的にも専門的な知識を持った海運業界と十分打ち合わせの上で実行してもらいたいということを申し述べておるのでございます。また石炭専用船の建造につきましては、高能率船を効率的に運用するということによりまして、輸送コストの低減をはかることを
目的としておると思われるのでございますが、ただいま御指摘になりましたように、元来内航船は石炭輸送をおもな
目的で作られたものであります。また新造船と比較して構造上の優劣はそう大差はないように思われますし、スピードにおきましても内航は外航と違いまして輸送距離が短いものでございますから、航海時間の短縮による能率化はありましても、ごくわずかであるというふうに考えられるのでございます。従いまして、こういう
目的のために石炭の輸送に十分船腹のある現在、そういった専用船の新造船を建造するよりも、むしろ償却の進んでおる現有船腹を活用してこれを専航化する、ピストン輸送して回転率の向上をはかり、輸送コストの引き下げをやる方が、国全体の投資効果から考えて望ましいと私どもは考えておるのでございまして、この旨を十分この審議会並びに通産省に対して公文書をもって意見を申し述べておるような次第でございます。
そこで、対策について、スクラップ・アンド・ビルドのようなものを考えておるかどうかというお尋ねでございます。この問題につきましては、石炭の合理化に伴う内航海運の輸送能率の向上ということからして全体の石炭以外の輸送量ともにらみ合わせて、船腹需給の面から、過剰船腹が出て参りました場合には、海運政策上スクラップ・アンド・ビルド方式による船腹の需給調整をはかるということをあわせて考慮する必要がある、こういうふうに私どもは考えておる次第でございます。ただ、つけ加えて申し上げておきたいことは、石炭専用船が作られます場合、荷主が直接建造しますことは私どもとしては好ましくないという結論を持っておるのでございます。この理由は種々ございますけれども、船員の配乗あるいは保船等の問題につきましてもきわめてロスが多いものであることは、私ども過去の経験からそういうことを申し上げられるのでございます。また、最後に、非常に重大なことは、石炭合理化資金というものがこの国会で御承認になりまして、無利子またはそれに近い低金利の資金を石炭専用船の建造に利用するということを一時ある方面で考えられたように思われますので、こういったことがもし利用できますならば
——内航海運全体のために利用できるならともかくでありますけれども、一部のきわめて限られた特殊の船舶のみがその恩典に浴して、その結果当該船舶のコストがスタンダードになって、内航海運全体に影響を及ぼすようなことがあってはならぬ、こういうことについては強く反対をいたしておるような次第でございます。以上が第一点のお答えでございます。
第二の、鉄鋼会社が最近石炭専用船を建造する考えを持っていて種々の形態を考えられておるようでございますが、こういうことに対します推移と対策いかん、こういう御
質問でございます。最近海運造船合理化審議会でもその問題が取り上げられたのでございますが、私どももこの石炭専用船の問題につきましては十分検討をいたしたのでございます。要するに、輸出船の場合と
国内で利子補給を受けまして作った場合とを比べてみましても、平均金利負担というものが数字の問題としてやはり相当の開きが出て参るのでございます。
[
委員長退席、川野
委員長代理着席〕
大体
国内舶で参りますと、利子補給を受けましても平均金利は七分一厘、輸出船の場合におきましては、契約船価から頭金を引きまして、造船所の利益と減価償却費を引きましたものの八割が輸出入銀行の金融の対象になるわけでございます。そういった計算をいたしてみますと、この際の頭金の金利をどう見るかという問題と、輸出入銀行の償還期限の七年以降借りかえの金利をどう見るかということによって相当計算の仕方が変わって参ります。かりに頭金の金利は、大体
外国の金利水準で五分五厘、延べ払いは造船所と
外国の船主との契約において五分ということが現在行なわれておりますので、そういったものの平均金利を出してみますと五分一厘六毛、こういう平均金利になるのでございます。従いまして、ハンプトンローズと
日本の間の石炭の採算運賃は、
国内船で利子補給を受けました場合にも、五年平均にいたしますと七ドル三十四セント、輸出船の場合は六ドル七十四セント。従いまして、六ドル八十前後で長期に石炭を鉄鋼側が運びたい、こういうことに輸出船の場合にはあうわけでございます。従いまして、こういったような場合の金利条件ということのために、
国内船より輸出船の場合が採算ベースがよいということになりますので、ここに問題が投げかけられておりますことは、
国内船とそういった輸出船との金利の差をなくしてイコール・ベースでものを考えていくことが解決策として一番よい考え方だというふうに私どもは現在考えておるのでございます。そういうことで、開発銀行の支払い猶予あるいはたな上げ
措置がもしありました場合には、それが五分六厘五毛ということで、輸出船の五分一厘六毛に相当近くなって参るということから、最近開発銀行の支払い猶予
措置を至急実現すべしという意見がここから出て参っておるような次第であります。
第三の御
質問でございますが、いわゆる計画造船におきまして、定期船にスクラップ・アンド・ビルドを適用すべきであるという御趣旨は、たびたび当
委員会で
久保先生からも御発言がありまして、私どもはそういう御意見を拝聴しておるのであります。従いまして、私どももそういう方向でただいま検討中でございます。ただ、私どもが予算編成の際に予算要求として主張しておりましたのは、いわゆるスクラップ代金と平均簿価との差額の二分の一を解撤助成金として要求したことであります。こういう一般会計からの助成金というものがあって、かつ、法律を出しましてスクラップ・アンド・ビルドを計画的に遂行していくという制度のもとにおいて促進するならばともかくでありますが、現在そういった法律もなく、また、一般会計からの解撤助成という
措置もない場合におきまして、定期船についてスクラップ・アンド・ビルドをやることは、実際問題として幾多の問題が起こって参るのでございます。といいますことは、定期船の充足についてはどうしても船体を整備して参らなければならぬという建造側の要望は非常に強いものがございます。定期船のそういった運航担当者につきましては、そういったスクラップの対象になるような適当な船を持っておりませんし、定則船の中にももちろんそういったものはございません。持っておりますのは主としてオーナーに多いわけでございますから、そのオーナーが譲らなければ船価が高騰する。作りたい意欲が片一方にあって、片一方においては売り惜しみといいますか、売り控えをしておりますならば、船価が高騰して参るということであります。そうなっても、なおかつ定期船にこれを義務づけますと、企業基盤の強化から見て、新造船のあり方についてまで議論があった昨年の海運
論議の経過から見ましても、この点については相当むずかしい問題が起こってくるというふうな感じがいたすのでありますけれども、決してそれだからといって定期船についてスクラップ・アンド・ビルドをやらないんだということを申し上げておるわけではございません。できれば私どももそういう方向で実際問題としてスムーズにこれが実現できるように、業界の協力も得なければこれが実現できませんので、せっかく最近そういったことのために業界あるいは私どもも、業界の協力の限界というものについて今検討中でございますので、この点につきましてはそういう方向で検討しておるということで御了承願いたいと思うのでございます。
第四番目のニューヨーク航路の問題でございますが、これは先ほど御指摘になりましたようにマルチェシーニという、ニューヨーク航路に対してアウトサイダーが出現して参りました。それに対するアウトサイダー制裁手段というものが行なわれないのを不満といたしまして、ノルウエーの船主であります、同盟のメンバーで同時にありますところのバーバー・ウイルヘルムセンという船会社が脱退をするということを二月に通告をして参り、それが四月から効力が発生するということであったのでございますが、たびたび同盟において真剣に対策を検討されました結果、フィデリティ・コミッション・システムという
一つのアウトサイダー対策を決定いたしまして、
日本政府にもその届出があったわけであります。ところが
アメリカ政府に対しても同時にこの届出をしなければならないのでありますが、御
承知のように米国政府は、海運同盟に対してはオープン・コンファレンスの建前をとっております。しかもまた
国内の法制、ものの考え方といったようなものが独禁法あるいはシッピング・アクトで
規定されております考え方から見ますと、海運同盟を強くしない、むしろ非常に弱めるといいますと少し語弊がございますが、これを強化しないという方向ですべてが処理されておりますので、過去においても世界各国の海運会社七十一社に対して召喚状をワシントンの地方裁判所から発せられたというような
事態も起こっておりますのは、根本はこういった海運同盟を強化しない、むしろ独禁法的色彩が濃厚であるという
国内の制度なり、そういった事情からくるのであります。今申し上げたアウトサイダー対策であるフィデリティ・コミッション・システムというものにつきましてもこれを認めるかどうかわからない。むしろ希望がないような観測が強いのでございまして、これに対してバーバー・ウイルヘルムセンは、そういうものにはたよってはおられない、むしろ七品目について運賃をオープンにして、そしてアウトサイダーに対抗すべきである、こういうことを主張して譲らないというのが現在の
状況でございます。私どもは
日本政府として、こういうフィデリティ・コミッション・システムというのは公正取引
委員会とも連絡をいたしましてこれは認める
——アメリカ政府が認めなければこれは実現をしないという段階でございますので、
アメリカ政府も
日米間の通商及び航海の安定という大きな見地からこういうフィデリティ・コミッションというものの制度を認めるべきであるということを外交機関を通じて折衝をいたしておるような
状態であります。従いまして同盟側としては、この対策以外に現在としては有効な対策はないというふうに深く思い込んでおりますし、
日本側船主も一致してそういうことを言っておりますので、この問題解決のためにただいま
お話が出ました、私を米国政府に派遣して交渉させるという大臣のお考えもございまして、今それが問題になっておるわけでございますが、私どもの考えといたしましてはこのフィデリティ・コミッション・システムの実現のためにだけ私が渡米をするという考えではございませんで、業界なり海運同盟の考え方はそれでありましても、私どもはもっと広い見地から、むしろ高い見地から
日米間の通商貿易というものが阻害されないように、運賃がオープンになり、昭和二十八年当時の混乱を来たしますというと、これは大へん
日本の
国内の産業にまで影響し、貿易が正常化をされない、むしろ混乱を来たすというふうな考えのもとに海運問題について先ほど申し上げました独禁法違反の事実の調査、あるいはこういった海運同盟の強化の方向あるいは北米—
日本間の航路の安定策について政府間で話し合うべき幾多の困難な問題がございますので、それについて
一つ向こう側と話をしてみたらということが大臣のお考えでございます。そういうことでありますので、
現状に対して
国内態勢はどうかということでありますが、幸いにして
運輸大臣の強い要請のもとに、昨年グループ化ということで三つのグループが編成されまして、そこに運賃の共同計算、業務の提携ということが強く
運輸大臣から要請されて、それが着々実施に移されつつあるのであります。
日本側だけのチーム・ワークは非常に強固なものがありまするし、これは
日本側が幾ら結束を固めても外船のメンバーである者の協力が得られなければ、とうてい航路の安定が得られないのでありますから、この点につきましては
国内態勢はなお一そう強くして
外国船主との協調を保っていきたい、こういうふうに考えるのでございます。
最後の御
質問でございますが、自己資金の問題について大蔵省と見解の相違があってどういうことだというお尋ねでありますが、償却前利益を主張して大蔵省が譲らないというようなことにつきましては、これは私の方の考えとして、原則として借入金の増大を来たさないことを目安として計画造船はやるのだ、今後の新造船はやるのだ、こういうことであります。従ってこれはあくまでも原則でありまするし、自己資金につきましては昨年以来海運界並びに金融機関双方ともに自主調整を行なわれてきておるのであります。私どもも利子補給対象会社につきましては、こういった設備投資について厳重なる規制の
意味におきまして基準を持っております。金融機関におきましても
一つの承認基準というものを持って、企業の基盤が弱化しない、むしろ自己資金で作る船が企業の基盤強化に役立つものでなければならぬということであるのでありますが、船価が計画造船に比して割高でないこと、あるいは初年度平均金利が七分五厘以下であること、あるいはその新造船がただいま申し上げましたように過去の借金の返済に十分貢献するものであることというような、いろいろな承認基準を設けて一々の自己資金の申請について私どもは十分注意しながらやっておるわけであります。ただここに造船所が最近操業量において安定を欠くような、むしろ受注が減退をいたしまして、造船所事情ということもございます。
運輸省といたしましては海運企業の面ばかりでものを考えるわけには参りません。造船所におきましてはストック・ボートというものが、自衛手段として、自分で船を作って当分の間売れるまで自分が保有するというようなことまで造船所の雇用の維持という面からも出て参ります。そういうものを船主が割合船価が安いので買い取るということも、私どもはむげに否定をいたしておるわけではございません。また計画造船の資金のワクというものに限定がありますので、すべてのものがこの低船価のときに企業の基盤にプラスになると思っても計画造船には入らないということもありますし、船が沈んでその保険金が入ってきた、それを頭金にして造船所の低船価と延べ払いを通じてそういったものができていく、また長期に見て運賃が安定し、荷物の保証があるというものについて、むげにこれを否定するということは実情に合いませんし、また企業自体の基盤強化の上に役立つものを、役人の単なる恣意的な判断で、これを押えることはどうかという見解を私どもは持っておりますので、ただ企業基盤が弱化しないということをあくまでも原則にしてケース・バイ・ケースで認めて参りたい、こういうふうに考えておるのでございます。