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1960-04-27 第34回国会 衆議院 運輸委員会 第18号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十五年四月二十七日(水曜日)     午前十時四十四分開議  出席委員    委員長 平井 義一君    理事 天野 公義君 理事 川野 芳滿君    理事 井岡 大治君 理事 久保 三郎君    理事 土井 直作君       宇田 國榮君    高橋清一郎君       竹内 俊吉君    塚原 俊郎君       長谷川 峻君    三池  信君       村瀬 宣親君    島口重次郎君       下平 正一君    正木  清君       山花 秀雄君    菊川 君子君  出席国務大臣         運 輸 大 臣 楢橋  渡君  出席政府委員         運輸事務官         (大臣官房長) 細田 吉藏君         運輸事務官         (海運局長)  朝田 靜夫君         運 輸 技 官         (船舶局長)  水品 政雄君         運輸事務官         (鉄道監督局         長)      山内 公猷君         運輸事務官         (航空局長)  辻  章男君  委員外出席者         外務事務官         (アメリカ局安         全保障課長)  東郷 文彦君         専  門  員 志鎌 一之君     ————————————— 四月二十一日  個人タクシー大幅免許に関する請願外一件(岡  崎英城紹介)(第二五四三号)  同外三件(帆足計紹介)(第二六二四号)  新玉川線の全線地下鉄化に関する請願關谷勝  利君紹介)(第二五六六号)  都道府県陸運事務所運輸省直轄化に関する請  願(門司亮紹介)(第二六二三号)  国鉄自動車営業係臨時雇用員定員化に関する  請願外六件(井岡大治紹介)(第二六二五  号)  同(内海清紹介)(第二六二六号)  同(木下哲紹介)(第二六二七号)  同(久保三郎紹介)(第二六二八号)  同(小平忠紹介)(第二六二九号)  同外六件(下平正一紹介)(第二六三〇号)  同(田中幾三郎紹介)(第二六三一号)  同(竹谷源太郎紹介)(第二六三二号)  同外六件(楯兼次郎君紹介)(第二六三三号)  同(堤ツルヨ紹介)(第二六三四号)  同外五件(戸叶里子紹介)(第二六三五号)  同(中崎敏紹介)(第二六三六号)  同外一件(羽田武嗣郎紹介)(第二六三七  号)  同外九件(長谷川保紹介)(第二六三八号)  同外七件(原茂紹介)(第二六三九号)  同外一件(正木清紹介)(第二六四〇号)  同(門司亮紹介)(第二六四一号)  同外二件(矢尾喜三郎紹介)(第二六四二  号)  同外二十五件(横山利秋紹介)(第二六四三  号)  同外四件(正木清紹介)(第二七四四号)  同外八件(柳田秀一紹介)(第二七四五号)  同外三件(堂森芳夫紹介)(第二八二八号)  同外六件(久保三郎紹介)(第二八二九号)  同外十四件(正木清紹介)(第二八三〇号)  同外五件(山田長司紹介)(第二八三一号)  鉄道貨物集約輸送実施に関する請願八田貞義  君外一名紹介)(第二六九五号)  わら工品国鉄貨物運賃公共政策割引存続に関  する請願足鹿覺紹介)(第二七三九号)  国鉄貨物運賃公共政策割引存続に関する請願(  足鹿覺紹介)(第二七四〇号)  南千住駅北口改札口設置に関する請願天野公  義君紹介)(第二七四二号)  平市外四市連名による公営乗合自動車営業申請  許可反対に関する請願菅家喜六紹介)(第  二七四三号)  越後線快速列車運行等に関する請願田中彰  治君紹介)(第二七四六号)  栃木県野木村丸林地先の無人踏切りに警報器設  置の請願山口好一紹介)(第二七四七号)  東北本線古舘、日詰両駅間紫波高等学校前に簡  易停車場設置等に関する請願山本猛夫君紹  介)(第二七六五号)  桜島一周観光バス路線免許及び高免、黒神間の  定期バス路線延長に関する請願宇田國榮君紹  介)(第二七六六号) 同月二十六日  国鉄自動車営業係臨時雇用員定員化に関する  請願外二件(井手以誠君紹介)(第二八五六  号)  同外四件(小松幹紹介)(第二八五七号)  同外二十四件(兒玉末男紹介)(第二八五八  号)  同外六件(多賀谷真稔紹介)(第二八五九  号)  同(滝井義高紹介)(第二八六〇号)  同外十九件(正木清紹介)(第二八六一号)  同外五件(佐野憲治紹介)(第二九四五号)  同外六件(矢尾喜三郎紹介)(第二九四六  号)  同(柳田秀一紹介)(第二九四七号)  鹿児島駅舎改築に関する請願(上林山榮吉君紹  介)(第二八七九号)  同(宇田國榮紹介)(第二九四九号)  同(赤路友藏紹介)(第三〇四九号)  道路運送法の一部を改正する法律案反対に関す  る請願外二十件(横山利秋紹介)(第二九一  三号)  同外一件(横山利秋紹介)(第三〇三八号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  航空法の一部を改正する法律案内閣提出第一  〇二号)  臨時船舶建造調整法の一部を改正する法律案(  内閣提出第七八号)(参議院送付)  陸運に関する件      ————◇—————
  2. 平井義一

    平井委員長 これより会議を開きます。  航空法の一部を改正する法律案を議題とし、審査を行ないます。  質疑の通告がありますので、これを許します。久保三郎君。
  3. 久保三郎

    久保委員 先般御質問申し上げたのでありますが、外務省に尋ねてほしいという御要請がありましたので、外務省からどなたかおいででしょうか。
  4. 平井義一

    平井委員長 東郷安全保障課長が見えております。
  5. 久保三郎

    久保委員 それでお尋ねしたいのは、米軍との関係でありますが、現在の安保条約に基づく行政協定で、日本領空については、いかなる条項でこの航空といいますか、これを許与しているのか、一つお尋ねします。
  6. 東郷文彦

    東郷説明員 ただいまの御質問の点は、行政協定の第五条におきまして、五条の一項には、御承知のように、米軍飛行機は、「入港料又は着陸料を課せられないで日本国の港又は飛行場に出入する権利を与えられる。」ここでこの規定は、同時に、航空機に関しては、着陸料免除規定しておりますけれども、着陸料免除規定する以上は、当然その港、飛行場に出入りするということを前提としておりますので、外国から来る米軍軍用機が、日本領空を通って日本飛行場に入る権利というのは、まずここで認められております。次に五条の第二項に参りまして、そういう軍用機施設の間を移動しまた日本国の港の問を移動することができるというふうに書いてございますが、ここで、現行協定では、第二項の終わりのところに、「日本国の港」としか書いてございませんけれども、この文脈からいいまして、航空機というのは主語の方に入っておりますので、この港は広く解しまして、船については港、飛行機については空港というふうに読んでおります。なお、この点につきましては、今後新しい協定では、「港又は飛行場」というふうにいたしまして、ここで一たび日本に入った軍用機が、日本の中で施設間あるいは飛行場施設の間を航行してよろしいということになっておるわけであります。
  7. 久保三郎

    久保委員 行政協定五条第一項によって領域外から入ってくるあるいは出ていく、こういうものには着陸料というかそういうものは課さない、そういうものがあるから当然これは出入りできるのだ、こういうことであります。第二項では、その施設及び区域の間を出入りしたり、その間を移動したりということ、それから今の御説明では、その施設及び区域の間と日本の国の空港飛行場、その間を移動する権利を与える、こういうことですが、それではそれ以外の航空、たとえば演習のための飛行、こういうものは現実にやっておると思うのですが、そういう場合の規定はこれにはないと思うのです。これはどうなんですか。
  8. 東郷文彦

    東郷説明員 お話のように、なるほど第五条一項、二項からは、たとえば一つ施設から出てまた同じ施設に帰るというような規定は確かにございません。一つ飛行場から出てまたそこへ戻ってくる場合の規定は、お話のようになるほどございません。しかしながら、条約に基づいて駐留するアメリカ空軍が、たとえば日本において演習をするということは、これは駐留ということから出てくる一つのことだと考えられます。また二項について申せば、字をその通り読みますと、施設でない空港空港の間を飛ぶということも、なるほどここには出ておりませんけれども、実際問題としまして、米軍飛行機施設でない日本飛行場の間だけを動いてそれで終わりだということは、実際問題としてはないわけで、結局どちらか一方の端は施設であり、あるいは外国にいく、こういうことになるわけでありますけれども、かりに日本施設でない飛行場から施設でない飛行場にいく場合もそこでとまるのではなくて、さらに施設にいくか、あるいは外国に出る、こういうことになるわけでありますので、そういうことからしまして米軍飛行機日本上空条約範囲内で飛ぶことはできる、こういうふうに解しております。
  9. 久保三郎

    久保委員 これは常識的な解釈であって、米軍駐留することを認めているんだから、これに伴う演習などを認めるべきはあたりまえの話だと思う。ところがこれは現在において日本民間航空に相当な支障があるという今日、はっきりした証文というか、文言がない限りはおかしいんじゃないかとわれわれは思うわけです。というのは、施設並びに区域は確かにこれを貸与している。ただし領空の使用についてはこれは貸してない。しかもこのアメリカとの合意によりましても、日本国は完全かつ排他的なこの領空権限を持つということになっておる。自分が持っている主権というものですか、そういうものに対してアメリカの都合のいい解釈だけではできないんじゃなかろうかと私は思うのです。なるほどあなたのおっしゃるようなことは現実常識で通る話です。ところが、この行政協定並びに安保条約に基づいても、日本領空のいかなるところにも自由に航空をしてよろしいという規定はございません。御案内の通り国際民間航空条約によれば、国の飛行機は特別な条約というか、協定あるいは特別な取りきめがなければ領空の上を飛んではいかぬ、こういうことになっておる。しかも一般民間航空はICAOの条約に基づいてそれぞれ飛行している。国内においては国内管制路あるいは管制圏に基づいて日本航空交通センターの指示のもとにやっているわけなんです。ところがこれは確かに常識としての解釈にはなろうかもしれません。そういう場合との競合、いわゆる  一つ条約と他の条約との競合、そういうものを考えるというと、これはこういう解釈だけでは相済まない問題ではなかろうかと思うのでありますが、もう一ぺん一つはっきりわかるように答弁して下さい。
  10. 東郷文彦

    東郷説明員 ただいまのお話の点につきまして、日本領空に対して日本主権を持っているという点については、まさしく日本主権を持っておるわけでございまして、特に去年の七月までは実際問題として航空交通管制を全部アメリカ側が握っていた、こういう事情がありますので、あたかも主権がないというような状態があったわけでございますが、しかしながら、去年の七月以来御承知のように航空交通管制日本に戻りまして、従って日本の空の航空交通管制は全く日本政府の責任においてなされておるわけでありまして、ただ米軍提供をしておる施設飛行場上空においては、これは提供した飛行場提供目的に従って運営をする、その必要から飛行場上空並びにその周辺進入管制飛行場管制アメリカに委任しておるわけでございます。その他の場所におきまして、すなわち施設なり軍用飛行場上空を除きましては、これは日本航空交通管制のもとに服しておるわけでありまして、そういう意味におきましてどこでも飛べるということでは必ずしもないわけであると思います。そこで、たとえば演習の問題にいたしましても、施設として提供してある演習場上空は、施設提供した結果として米軍がその上で演習をして、その結果危険区域ということになる、こういう関係でございまして、条約に基づいて米国軍隊駐留しておる、その結果、第六条の規定にもございますように航空交通管制条約目的からして調整するということはございますけれども、そのことは日本主権を捨てたのではなくて、日本の意思においてそういう取りきめをしましてやっておることであると思います。従って、もし米軍演習なり何なりによって民間航空が非常に圧迫される、こういうようなことがもしあるとすれば、これは条約上の問題として日米間で話し合って改善の措置を講ずる、こういう性質の出題だと思います。空の主権という問題は現状においても日本が確実に持っておる、こういうふうに考えます。
  11. 久保三郎

    久保委員 空の主権はあなたの解釈では常識的な解釈としてはなるほど侵されていないという解釈も成り立つかもしれません。条約上の問題からいけば空の主権は侵されているのではないか、こういうふうに思うのですが、どうですか。
  12. 東郷文彦

    東郷説明員 ただいま申し上げましたように、条約においてたとえば米軍飛行機の入ってくる、領空に入ることを認める、そういうことを取りきめることは、これは主権が侵されたということではないと思います。
  13. 久保三郎

    久保委員 このほかの例もあるだろうと思うのですがね。一切の航空管制航空管制本部によって統合されているというようなお話でありますが、実際は統合されてはおらないのであります。というのは、統合される部面は日本航空圏あるいは航空路といいますか、そういうもの以外はこれは統制されていないのじゃないですか。というのは、米軍が使っているところの飛行場周辺、そういうものの進入管制並びに飛行場管制は全部向こうで勝手にやっている。これは連絡ありません。勝手にやっていると言っちゃおかしいですが、日本で委任している、おまかせするということであります。航空管制上もあなたが御解釈いただくような形になっておらぬ。そこで私が言いたいのは、常識論としてはなるほどそういう解釈も出てくるでしょう。アメリカ空軍駐留させることに同意しているのでありますから、これが出入りしたり、飛行演習したり、いろいろなことをすることについて制約を加えていたのでは、なるほど駐留目的は達せられないかもしれない。ところが一歩翻ってわが国の立場からいけば勝手に何でもやってもらっていいのだということではないのです。現在も論議の的になっているように、米軍の出動についても、これはいろいろな問題が出てくるわけであります。ましてや民間航空との競合の問題が今日大きな問題になっているわけであります。そのときに領空全体は貸してあるという文言はどこにもない。しかも領空の三権は完全にわが方にある。ところが行政協定の中にも書いてある。領空に対する問題は、残念ながら今の常識的な解釈以外は出てこない。これをどう調整し、どうやろうとしているのか。今ま  では単に四条、五条ですか、こういうものだけでやっていたのか。それとももう少しこまかい取りきめがあったのか。今度の改正にしても従来と同じように区域及び施設だけは貸してある、貸すことになっている。主権の及ぶ範囲はこれ以外に領空がある。その一つが全然これは入っていない。こういうところに日本のいわゆる従属性があるのじゃないかとわれわれは思う。なお、形式的には去年の七月一日から管制は全部日本の手に握ったというけれども、形式上の握り方です。実際は日本の空を全部わが国が統轄し、これを見ていることは不可能である、こういう現状であります。こういう問題については論議はないのですか、御不審はないのでしょうか、いかがですか。
  14. 東郷文彦

    東郷説明員 ただいまの点でございますけれども、日本の空に対する主権というのは日本が持っておる。それで安保条約という条約関係から、アメリカとの間に、アメリカ軍用機に関して条約目的から必要な取りきめをしておるということでありますので、まず基本的には日本が自主的に結んだ条約に基づいて措置することでございますから、外国日本主権を侵犯するということではないと思います。  それから提供した飛行場上空についてはアメリカ管制をやっておるということは、提供されたアメリカにしますれば、これを提供された目的に従って運営するために、ある程度の権限と申しますか、地位を認められるわけでございますが、軍用飛行場については、その上空出入管制飛行場管制をやるということは、その中に当然伴っていくべきことではないかと思いまして、日本政府が行なっておる航空管制の全体の網の中で、そういうふうに提供した飛行場上空に関しては米軍管制しているというのは、組み入れられている状態自身は、日本政府としての航空交通管制運営のために支障があることはないのだと考えます。
  15. 久保三郎

    久保委員 支障はないんだというお考えでありますが、実際は支障があるわけです。実際の飛行に優先して米軍飛行は特権的にやっている。その間を縫って一般民間航空航行をするというようなことが、例としてあるわけですね。こういうことは、実際において主導権というか、主権を持っておる者が向こうに御遠慮申し上げてやっているような形であって、決して対等でも何でもないのです。新しい行政協定を見ましても、そういうことは何ら変化はないようであります。いずれこの問題は安保委員会の方に回しますが、われわれの方としては、今回の航空法改正についても、一元化すると言うが、実際は一元化することができないのではないかということに大きな不満を持ち、疑問を持っているわけです。  続いてお尋ねしますが、きょうは防衛庁は来ておりませんね。——それでは航空局に最初お尋ねいたします。バッジ・システムが全国にあるわけです。地域的防空警戒管制ですね。この方はいわゆる日本航空交通管制とどういう関係にあるか、これをまず説明願いたいと思います。
  16. 辻章男

    辻政府委員 これは航空交通管制とは直接は関係がないのでございますが、米軍との協定によりまして、そういう線を越える場合には飛行場に通報をさせまして、米軍の方に連絡するという取りきめをいたしております。
  17. 久保三郎

    久保委員 防衛庁が来てないのであとの方は聞けませんが、直接防空警戒管制の方は御関係がないと言うが、実際に何かが起きたという場合には直接関係が出てくるんじゃないでしょうか、航空管制で……。これはどうなるのですか。
  18. 辻章男

    辻政府委員 これは通例の場合におきましては、いわゆる飛行機の所在を明らかにいたしまして、その飛行機がいわゆる国籍不明機等と間違えられないように、情報提供しているわけでございます。今御質問のございましたように、そういうふうな情報提供しておるということから、非常の場合にどうなるかという問題でございますが、これは別の点で協定がございますような、保安管制をしき得る権能を与えておる。おそらくそういう場合には、保安管制が何らかの形で行なわれるのじゃないか、かように考えます。
  19. 久保三郎

    久保委員 そこで外務省にお尋ねします。これは三十四年の六月の取りきめだと思うのでありますが、「防空上緊急の必要があるときは、防空担当機関保安管制を行なうことに同意している。」ということになっていますね。これはどういう意味なんですか。どういう形になるのですか、常時と変わった形は……。
  20. 東郷文彦

    東郷説明員 その取りきめは非常事態の取りきめでありまして、その場合には防衛上の考慮が非常に重要になってきますので、その限度において航空交通管制の方も制約を受ける。そのときに実際にどういうふうにやっていくかという問題については、防衛庁なり運輸省なりで将来御研究になる問題だと考えます。
  21. 久保三郎

    久保委員 御研究になる問題だといいますと、条約で一応取りきめて大綱をきめたら、その中身について取りきめてない場合、この文言だけで持っていかれるわけになりますな。防空上緊急の必要がある場合、それ以外なければ……。これは早く言えばそんなに時間がないと思う。そういう場合に何らかの取りきめがなければ、ここにある取りきめだけで、一切の航空管制向こうが掌握するということになると思うのです。これは航空局長、実際問題としてどうなるのですか。
  22. 辻章男

    辻政府委員 緊急事態の度合いの問題その他の状況につきましては、あらかじめ仮定をして考えるわけにも参りませんので、私ども、そういう場合にどうなるかという具体的な腹案は持っておりません。今御指摘がありましたように、あるいは非常に、多くのいわゆる敵機が来襲したような場合には、ある期間民間航空航行をストップしてくれというような指令もあり得るかと思うのでありますが、これはあくまで仮定の問題でございまして、私ども、そのときの保安管制状況に応じて、航空交通管制を適合さしていくという考え方を持っている次第でございます。繰り返して申し上げますが、具体的にどうするかということは、そのときの状態によって臨機の措置をとっていきたい、かように考えます。
  23. 久保三郎

    久保委員 最近の事例ではこういうのはないですか。たとえば台湾海峡におけるところのこの間じゅうの動乱というか、戦闘行為がありましたが、そういうときにはどういう態勢をとったか。
  24. 辻章男

    辻政府委員 現在までのところ、米軍の方で保安管制をしいたことはございません。
  25. 久保三郎

    久保委員 そうしますと、これはそのときそのときによってきめていくということなんです。その場合日本航空交通管制センターはその米軍防空センター指揮下に入るということではないですね。
  26. 辻章男

    辻政府委員 これはそのときどきの状況で変わるわけでございまして、航空交通管制の行ないます行政権というものは、あくまで現在の建前におきましては運輸大臣のもとにある。ただそういう緊急の事態に、防衛上の見地から軍事的な保安管制がしかれる。そのものと調和をさす意味において、ある程度の制約は受ける、かように考えております。
  27. 久保三郎

    久保委員 次に航空禁止区域ですね、これの設定がそれぞれあると思うのですが、これはどういう取りきめでそういうものを作るのか。
  28. 辻章男

    辻政府委員 米軍演習区域の問題でございますが、これにつきましては実際の扱いは合同委員会の下にございます航空に関する小委員会協議をいたしまして、米軍の方の演習をするということも必要でございますし、またそれによって民間航空にもある程度の影響もございますので、それらの点を話し合いまして協議の整った空域につきまして、航空局といたしましてはその当該地域危険区域であるということを一般に公示いたしまして、一般民間機危険防止をはかっておる次第でございます。
  29. 久保三郎

    久保委員 最近の事例でありますが、この取りきめによってやっていると思うのでありますが、一つの例は東京——札幌間の定期航空路の問題でございます。これは御存じかと思うのでありますが、結局三沢飛行場が中心でやっています。現在は三沢から千歳に約二十キロ遠のいてから入っていくという迂回をしているわけです。ところが米軍爆撃演習場が二カ所この近海にある。そこで西から東に横断してやっているというのがある。天ケ森という爆撃演習区域、それからもう一つはジェット機の空戦演習空域というような二つのものがあって、大きく東京—札幌間の航空路を迂回しなければならぬ。現在約八十キロも迂回していく。それで函館へ回って、函館から千歳へ入るということをいわれているわけです。これが三沢から直行して千歳へ入るならば相当な、時間にしても約二十分程度短縮できるという。ところが米軍演習のためにじゃまされている。日本民間航空にしてみれば、この航空路は非常に重大な路線だと思うのです。にもかかわらず八十キロも迂回し、二十分以上も遠回りをせねばならぬような事態は、これはどういうわけでできているか、なるほど米軍演習が主であるということならば話もわかるが、わが国は対等の立場でやると同時に、演習というものと日本の同意というものをどう天びんにかけて考えるか、この点について航空局はどんなふうな考えをしているか。
  30. 辻章男

    辻政府委員 今三沢周辺米軍演習区域の設定のために東京から札幌に参ります空路がある程度デビエートしているという点でございますが、これは久保先生の御指摘の通り事実でございまして、民間航空を助成しようというわれわれの立場から申しますと、できるだけそういう事態を避けて、三沢から直行をさしたいという念願はかねがね持っておるのであります。ただ問題は実は演習区域だけの問題ではございませんで、三沢という飛行場米軍提供いたしますれば、ある程度、演習場規定いたしましても、どうしても三沢の基地から出ましてまた三沢へ帰ってくる関係上、どうしても民間機の安全をはかりますためにはある程度のデビエートはやむを得ないわけであります。そういう意味から申しまして、実は三沢飛行場提供するということまで根本的に、あるいはそれを取りやめるかという問題まで根本的に考えなければこの問題は解決し得ないと思うのであります。御承知のように米軍のジェットの演習飛行場は相当な、約一万フィートの滑走路を要しまして、相当施設も完備しなければならぬというふうな関係から、今にわかに三沢飛行場にかえてどこか適当な飛行場提供するということも困難な情勢のように伺っておりますので、現在のところは民間航空の見地から申しますと遺憾ではございますが、今おっしゃったような不便はやむを得ないかと、かように考えておる次第でございますが、将来そういう適当な、三沢に代替するような飛行場がございますれば、むしろそちらに移転をして、三沢から札幌へ直行できることをわれわれとしては念願しておる次第でございます。
  31. 久保三郎

    久保委員 大体禁止区域というか、そういうものの設定は行政協定第三条によってやっているのでしょう。これは安全保障課長の方が専門でしょう。
  32. 東郷文彦

    東郷説明員 三条によりまして提供しました飛行場周辺については、米軍がその飛行場に出入する便をはかるために措置をとることができる。従って進入管制のようなことができるということは三条から出て参ります。しかしながら施設となっておらない土地の上空については三条のその規定そのものは該当しないかと思われます。そういう場合には、先ほど航空局長から御説明がございましたように、米軍協議の上、ある空域においては米軍演習をするので、その危険防止のために運輸省の方から危険空域として告示をする、こういうことになると思いまして、ちょうどこれを例にとりますと、公海の上に漁業制限区域というものがございます。これは公海でございますから提供するというわけには参りません。しかしながら、そこで実際問題として米軍がどこでも勝手に演習するよりは、やはりある特定の地域でした方が漁業全体のためからも安全のためからも適当でありますので、三条に準ずる手続で公海上の地域を演習区域として指定しておる、こういう例もございます。従って今の空域の問題も協議の上運輸省からそういう措置をとっておる、こういうことだと考えます。
  33. 久保三郎

    久保委員 ちょっと課長、おかしいのじゃないですか、公海の問題と領空の問題を一緒にされては困るのですね。主権の及ぶ範囲と及ばぬ範囲と、これは一緒じゃないと思うのですよ。今の取りきめは、日本領空あるいは区域ですよ、あるいは領海内ですよ。そうだとすれば、今の御解釈はちょっと違うのじゃないかと思うのですが、どうでしょう。
  34. 東郷文彦

    東郷説明員 ただいまちょっと手続上の類例を申し上げたわけでございまして、お話しのように、公海の場合と領海の場合とは全く性質が違うわけでございます。そこで、今の空域は、もちろん日本領空で、日本主権の及ぶところ、また運輸省航空管制下にあるところでございまして、そこで、米軍がある特定の空域演習する、たまたまその下がたとえば爆撃演習場のようなところで、提供施設上空ということでありますれば、その下の土地自身を、二条の手続によって提供しておりますから、それから派生的に、その上空についても、米軍がそこで安全に演習できるという結果が生まれて参ります。そういうところでない空域については、先ほどの御説明のように、米軍協議の上、政府の行政権範囲内で、そういう措置をとって、航空の安全をはかるということになると思います。
  35. 久保三郎

    久保委員 私が実例を一つあげたのは、三沢飛行場とジェット機爆撃演習区域、あるいはその他の海上における区域、こういう間の移動といいますか、演習の経路、そこを通らねば日本飛行機が遠回りするよりほかないという、そういう実例でございます。これは航空局長にお尋ねしますが、こういう場合、これは日米対等の間での協議ですか、それとも行政協定にどこかにありますが、米軍はこの航空路を優先的に使用するという権利に基づく協議ですか、どっちなんです。
  36. 辻章男

    辻政府委員 これはお互いに対等の立場でもって話し合っております。ただ、先ほどもちょっと触れましたように、その際に、実は先ほど問題になりました例で申し上げますと、三沢飛行場提供するということが大前提になっておりますので、その提供飛行場を十分に利用いたしましてその演習の機能を発揮するということが前提になっておるという意味におきましては、それが三沢というところが非常に適しておるという観点に立てば、それらのものを生かすということをわれわれの方も配慮しなければならないのじゃないか、かように考えております。
  37. 久保三郎

    久保委員 どうも航空局長としては、向こう様に御理解が深いような御答弁でありまして、それならば、日航機は宮古から千歳に直航するのを、今のように八十キロも迂回して函館を回っていくということでは、時間的にも損だ。時間的にも損だと同時に、これは費用の問題にも関係する。どの程度の損害になるかわかりませんが、大体日航あるいは全日空というようなものをひっくるめますれば、年間少なくとも一億二、三千万円の損失にはなるだろう。こういう損失があるとすれば、これは補償はしないのでありますか。
  38. 辻章男

    辻政府委員 これは御指摘の通り、ある程度そういうデビエートしましたルートをとります関係上、最短距離をとりますよりも費用かよけいかかることは事実であります。ただ、これはそういうデビエートしたルートを政府が指定するわけでありますので、そういう費用がかかることに対しまする政府からの補償は考えておりません。
  39. 久保三郎

    久保委員 どうも話が、政府がルートをきめたんだから、そのルート以外に直航するような道があっても通さぬのだから、それは補償する必要がない。日本の国民にすれば、これはどうも納得がいかない点なんですね。日本領空は、排他的に、主権日本の政府が持っておる。日本の政府が持っておるということは日本の国民が持っておる、そういうことになりましょう。そうだとすれば、そこで国民の権利権限制約するとするならば、これに応じたものの補償というものは、当然国家補償なり何なり出てくる。この場合は、米軍施設提供並びに航空路提供によって損害が出るとするならば、駐留米軍というか、米国に対して、日本が、これだけの利便提供のためのデビエートの補償をしろという要求も出てくるんじゃないか。至って常識的な考えばかりで、この行政協定ばかりじゃなくて、安保条約もその他の問題も、全部あまりにも常識的にばかり運用されているので、こうやってくると、国民の権利権限というものは、だんだん縮小されてくる、こういうことは思い直すべき時期だと私は思うのですが、航空局長いかがですか。
  40. 辻章男

    辻政府委員 これは三沢を例にあげて申し上げますと、三沢飛行場提供、それからそれに伴いまする演習区域の設定をいたしまして、これを危険区域としてやるわけでございますが、これは政府が政府の責任におきましてアメリカ条約を結びまして、それに基づいてやっているものでございますから、ちょうど今米軍三沢飛行場を使って演習をやっておるわけでありますが、これは防衛庁が、みずからそれを使ってやっておると同様に考えるべきじゃないかと思います。そういうふうに、政府が防衛のために必要な措置といたしまして、ある地域を軍事的目的のために使い、また空域をそういうふうなもののために制限するということから起こるものに対しまして、直接的なものは別にいたしまして、その結果として出てくるすべてのものに補償するという建前をとる必要はない、かように考えております。
  41. 久保三郎

    久保委員 どうも、既成事実というか、そういうものをもとにしていろいろなことを考えておられるのでありますが、われわれ自身のものの考え方は、おのれ自身の立場をまず先に考えて、次は人様のこと、こういうふうに筋道を立てるのが当然じゃなかろうかと思うのです。占領下から引き続いてのこの安保体制であります。そういうものを従来の慣行なり行きがかり上だけの頭で解釈していたんでは、航空交通管制の一元化もこれはむずかしいし、あなた方は単に民間航空管制だけしていればいいという立場ではないと思うのです、運輸大臣そのものも。日本領空に対して、これは全体の管制を担当するなり、航空行政というものを担当するということになれば、その行政を主体にして物事を進めていくので当然だと思うのです。いずれこの問題は安保の特別委員会の力に回しますが、今までの外務省あるいは航空局お話では、どうも納得しがたいものがたくさんございます。はっきり申し上げますが、領空は貸してないのだ、領空提供しておりません、こういうことですよ。その問題をはっきりしない限りは、問題の解決はできないと思うのです。  それから航空局長に最後に念を押しますが、今私があげた実例、東京—札幌間の航空路について、現在における日本民間航空支障のないような解決の方法を、これから米国と折衝する考えがあるかどうか、これを一つ最後にお尋ねします。これは外務省にもあわせて考えを聞きます。
  42. 辻章男

    辻政府委員 この三沢の基地を中心とした航空路のデビエーションの問題については、実は従来からも事あるごとに折衝しておりまして、今後とも、私どもとしましてはできるだけ民間のルートが最短距離になるように折衝を進めていきたい、かように考えております。
  43. 東郷文彦

    東郷説明員 三沢提供しておりますということは、ほかに代替施設がないので、単に過去のいきさつだけではなくて、現在の状態から判断して、どうしても続けていかなければならぬということでございますが、それと、民間航空の調整については関係省とも御相談の上、われわれとしても努力はいたすつもりでございます。
  44. 平井義一

    平井委員長 他に御質疑はございませんか。——他にないようでございますので、本案に対する質疑はこれにて終局いたしました。     —————————————
  45. 平井義一

    平井委員長 これより討論に入りたいと存じますが、討論の申し出もありませんので、これより直ちに採決いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  46. 平井義一

    平井委員長 御異議なしと認め、これより採決いたします。  航空法の一部を改正する法律案に賛成の諸君の起立を願います。     〔賛成者起立〕
  47. 平井義一

    平井委員長 起立総員。よって、本案は原案の通り可決すべきものと決しました。  この際久保三郎君より発言を求められておりますので、これを許します、久保三郎君。
  48. 久保三郎

    久保委員 ただいま可決されました航空法の一部を改正する法律案に対して、次のような附帯決議案をつけたいと思います。  まず、附帯決議案を朗読いたします。    航空法の一部を改正する法律案に対する附帯決議案   航空交通管制は、航空の安全を確保するため、欠くことのできない重要な業務であるにも拘らず、その現状を見るに、庁舎及び管制施設は極めて不備であり、また管制官の給与は業務内容に比較し不均衡であって、業務遂行上万全を期し難い。   よって、政府は本法施行に際し、速かに左記の措置を講ずべきである。      記  一、航空交通管制本部を移転するとともに、管制塔の庁舎並びに管制施設等の整備拡充を図ること。  一、航空交通管制官の責任体制を確立すること。  一、航空交通管制官の業務に即応し特別な職種の制定等により、その待遇改善に努めること。  右決議する。  以上が附帯決議案全文でありますが、こまかい御説明はする必要はないかと思うのです。今までの審議過程でもそれぞれはっきりした通り、昨年の七月一日からわが国日本航空交通管制が移管され、今度のこの法律の一部改正にあたっては、従来防衛庁にまかせてあったものまで運輸大臣の統制下に置くということになったのでありますが、これを運営するそのもの、いわゆる航空交通管制本部そのものにしましても、現在は入間川にあるジョンソン基地の中の防空壕の一室を占めている。早くいえば、米軍施設の中に管制本部が置かれて、幾多の不便があるわけです。これは当然昨年七月からの移管でありますから、三十五年度の予算において、その移転を実施すべきであったと思うのです。残念ながら本年度はそういうものはございません。しかしながら、現実にはこれは早急に移転してわが国が独立国としての建前を保持すると同時に、名実ともに航空交通管制が一元化し、掌握できるような体制をとるべきだと思うのであります。  なおこれに付随しまして、管制施設の老朽というものは、米軍からのそのままの引き継ぎもございましょうし、さらには近代的なジェット機の飛行には間に合わぬようなものもたくさん出てきておるというので、政府は当然早急にこれが整備計画を樹立し、早急にこれが改善をはかるべきだと思うのであります。  一方、航空管制官の責任体制についても、先般から小牧における全日空機の事故以来の問題になっております。これはそれ以前にも問題があったのであります。現在、人間の面でも充足されないし、さらには勤務体制も非常に劣悪であるということで、この問題も早急に改善する必要が当面あると思います。よって政府は、この決議案に基づいて今日ただいまできる範囲のものは早急に改善してもらいたい、こういうふうに思うわけであります。  以上、簡単でありますが、提案の説明の趣旨にかえます。
  49. 平井義一

    平井委員長 ただいま久保三郎君の動議のごとく、航空法の一部を改正する法律案に対し附帯決議を付するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  50. 平井義一

    平井委員長 御異議なしと認め、さよう決しました。  この際政府当局より発言を求められておりますので、これを許します。楢橋運輸大臣
  51. 楢橋渡

    ○楢橋国務大臣 当委員会において航空法の一部を改正する法律案に御承認を賜わりましたことを厚くお礼申し上げます。つきましては、今、久保委員より申されました附帯決議の趣旨は十分に尊重いたしまして、すみやかに善処いたしたいと思いますので、御了承願います。
  52. 平井義一

    平井委員長 ただいま可決いたしました本案に関する委員会報告書の作成等につきましては、委員長に御一任願いたいと思いますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  53. 平井義一

    平井委員長 御異議なしと認め、さよう決しました。      ————◇—————
  54. 平井義一

    平井委員長 次に、臨時船舶建造調整法の一部を改正する法律案を議題とし、審査を行います。  質疑の通告がありますので、これを許します。久保三郎君。
  55. 久保三郎

    久保委員 先般海運局長がおいでにならぬので、船舶局長だけでは御答弁ができなかったことがございます。一括して申し上げますので、御答弁をいただきたいと思います。  まず第一に、国内における石炭合理化に伴う専用船建造についてお尋ねします。この石炭専用船の配船センターを中心にする専用船建造は、まず第一に内航船に対していかなる影響を与えると予想されているか、もし今日の状況からして内航船に重大な影響がありとすれば、何らかの方策を考えるべきであるが、これは運輸省当局として考えているかどうか。   もう一つは、石炭合理化も至上使命だと思うのでありますが、この石炭合理化と内航船の問題と一元的に考えた解決方法は考えているかどうか、すなわち、たとえばライニング・レーディアス方式の運賃、いわゆる回転率の向上による運賃方式、さらには石炭輸送の一元的運営、これは言うまでもなく、計画的配船、さらには専用船の建造については、現在ある船会社の内航船をスクラップ・アンド・ビルドの方式をとる必要があると思うのだが、こういう方法は考えているか、大まかに言ってそういう問題について見解を伺いたいと思います。  続いて申し上げます。先般御質問を申し上げた中で鉄鋼と造船との関係、これは鉄鋼界において自由化に備えて鉄鋼のための専用船を建造するという動きがある。これも輸出船方式によってやる、海運政策上の問題からしてこういうものに対する確固たる方針が今日あるのかないのか、あるいはどのようにこの推移を見ているのか。  次には、先般もこれは再三にわたってお尋ねしておりますが、計画造船の場合の定期船のスクラップ・アンド・ビルド、これもやる考えがあるのかどうか。最近聞くところによれば、一般金利もあるいは開銀もその利子引き下げを運輸大臣が先頭になってやっておるそうだが、大よそめどがついておるのか。そういう利子引き下げをやるとするならば、当然船体の船質改善、そういうことからいっても、定期船にもスクラップ・アンド・ビルド方式は適用さるべきではないか、こういうふうに思う。  さらにもう一つは、引き続いて問題になっておりますニューヨークの定期航路はどうなっておるか。聞くところによれば、この五月には朝田海運局長は渡米して問題を解決するということでありますが、その場合の国内態勢はどういう形で持っていくのが正しいのか。  それからもう一つは、自己資金船の建造方針でありますが、これは船舶局にも関係があると思う。この自己資金船の建造方針はまだきまっていないようにも思うのだが、これについて大蔵省と運輸省の間には見解の相違があるというが、その見解の相違は、いわゆる償却前の利益、こういうものの問題で一致しないという話も聞いているが、これに対してはめどがついたかどうか。  以上について、一括御答弁を願いたい。
  56. 朝田靜夫

    ○朝田政府委員 お答え申し上げます。  まず第一の問題でありますが、国内の石炭鉱業の合理化に伴いまするところの専用船建造の問題と配船センターのお尋ねでありますが、これに対する影響並びに運輸省としての対策はどうか、こういう御質問でございますので、その線に沿ってお答えを申し上げたいと思うのでございます。  御承知のように、石炭の非常な不況のどん底にあって、現在石炭鉱業審議会というのが通産省に設けられておるのでございますが、この中間報告案を審議されました際にも、今御指摘の問題が取り上げられたのでございます。これに対しまして、私どもといたしましては、その影響が内航海運にとって非常に重大な影響があるというふうに考えたのでございまして、これに対しまする運輸省の見解をこの審議会に出席をいたしまして述べたような過去の経緯もございます。御承知のように、内航海運につきましては、国鉄の政策的な運賃、こういったものと慢性的な企業の不振によりまして非常な悲境にあるのは、石炭と並んで状況が悪いといっても差しつかえないと思うのでございます。そこで、私どものこういった専用船に対する問題並びに配船センターにつきましては、私どもの考えを申し述べました内容は、こういった配船を計画的に調整して、舶船の稼行率を向上させるという配船センターの目的はよくわかるのでありますが、ただ、こういったことだけでやられることがどういう影響を来たし、どういう内航海運全体の状態になるかということをやはり石炭の合理化対策を審議される場合に、あわせて考えてもらわなければならぬということでありまして、他の産業の犠牲において石炭のみが合理化が達成されても、正常な産業構造としての達成ができませんので、私どもはこういった目的は一応了解ができますが、稼行率の向上というものは一般的に申し上げてロットの大口化、あるいは荷動きの安定、あるいは港湾能力の強化、あるいはバースの確保、こういったものを前提といたしまして、こういったものが実現されて初めて稼行率の向上というものが可能になるのである。また配船センターが取り扱うことが可能と見られます石炭の輸送量は、現在の海上石炭輸送量のうちわずかに大口需要の北海道炭及びその他一部の電力用炭にすぎないものであると考えられるのでございます。  以上のような現状から配船センターの制度で船舶の稼行率が保障されないままでごく一部分そういった銘柄の統一、規格の統一、あるいは埠頭の専用化といったようなことで、一部の配船センターによります稼行率の向上がありまして、そういったものが全体から見ますとごく一部である、こういうようなことが当然予想されるのであります。ところが、そういった状態になりますと、その他の大部分の一般の石炭の運賃にまでしわ寄せをされる。従って船舶の稼行率がその他の大きな輸送部分について、配船センターのような措置をとられないような一般の石炭輸送に対してまでも運賃の切り下げが行なわれることをおそれるわけでございます。しかもこういった低運賃が配船センターと関係のない、今申し上げた全石炭運賃のスタンダードとなる可能性がきわめて強いものでありますので、こういうことになりましては内航海運にとって、先ほど申し上げました国鉄の政策運賃等によって不振にあえいでおります内航海運業は二重の出血をしいられるということが予想されるのでございます。こういった影響に対しまして、私どもは十分こういう配船センターを通じての稼行率向上について実施をする場合に、技術的にも専門的な知識を持った海運業界と十分打ち合わせの上で実行してもらいたいということを申し述べておるのでございます。また石炭専用船の建造につきましては、高能率船を効率的に運用するということによりまして、輸送コストの低減をはかることを目的としておると思われるのでございますが、ただいま御指摘になりましたように、元来内航船は石炭輸送をおもな目的で作られたものであります。また新造船と比較して構造上の優劣はそう大差はないように思われますし、スピードにおきましても内航は外航と違いまして輸送距離が短いものでございますから、航海時間の短縮による能率化はありましても、ごくわずかであるというふうに考えられるのでございます。従いまして、こういう目的のために石炭の輸送に十分船腹のある現在、そういった専用船の新造船を建造するよりも、むしろ償却の進んでおる現有船腹を活用してこれを専航化する、ピストン輸送して回転率の向上をはかり、輸送コストの引き下げをやる方が、国全体の投資効果から考えて望ましいと私どもは考えておるのでございまして、この旨を十分この審議会並びに通産省に対して公文書をもって意見を申し述べておるような次第でございます。  そこで、対策について、スクラップ・アンド・ビルドのようなものを考えておるかどうかというお尋ねでございます。この問題につきましては、石炭の合理化に伴う内航海運の輸送能率の向上ということからして全体の石炭以外の輸送量ともにらみ合わせて、船腹需給の面から、過剰船腹が出て参りました場合には、海運政策上スクラップ・アンド・ビルド方式による船腹の需給調整をはかるということをあわせて考慮する必要がある、こういうふうに私どもは考えておる次第でございます。ただ、つけ加えて申し上げておきたいことは、石炭専用船が作られます場合、荷主が直接建造しますことは私どもとしては好ましくないという結論を持っておるのでございます。この理由は種々ございますけれども、船員の配乗あるいは保船等の問題につきましてもきわめてロスが多いものであることは、私ども過去の経験からそういうことを申し上げられるのでございます。また、最後に、非常に重大なことは、石炭合理化資金というものがこの国会で御承認になりまして、無利子またはそれに近い低金利の資金を石炭専用船の建造に利用するということを一時ある方面で考えられたように思われますので、こういったことがもし利用できますならば——内航海運全体のために利用できるならともかくでありますけれども、一部のきわめて限られた特殊の船舶のみがその恩典に浴して、その結果当該船舶のコストがスタンダードになって、内航海運全体に影響を及ぼすようなことがあってはならぬ、こういうことについては強く反対をいたしておるような次第でございます。以上が第一点のお答えでございます。  第二の、鉄鋼会社が最近石炭専用船を建造する考えを持っていて種々の形態を考えられておるようでございますが、こういうことに対します推移と対策いかん、こういう御質問でございます。最近海運造船合理化審議会でもその問題が取り上げられたのでございますが、私どももこの石炭専用船の問題につきましては十分検討をいたしたのでございます。要するに、輸出船の場合と国内で利子補給を受けまして作った場合とを比べてみましても、平均金利負担というものが数字の問題としてやはり相当の開きが出て参るのでございます。   [委員長退席、川野委員長代理着席〕 大体国内舶で参りますと、利子補給を受けましても平均金利は七分一厘、輸出船の場合におきましては、契約船価から頭金を引きまして、造船所の利益と減価償却費を引きましたものの八割が輸出入銀行の金融の対象になるわけでございます。そういった計算をいたしてみますと、この際の頭金の金利をどう見るかという問題と、輸出入銀行の償還期限の七年以降借りかえの金利をどう見るかということによって相当計算の仕方が変わって参ります。かりに頭金の金利は、大体外国の金利水準で五分五厘、延べ払いは造船所と外国の船主との契約において五分ということが現在行なわれておりますので、そういったものの平均金利を出してみますと五分一厘六毛、こういう平均金利になるのでございます。従いまして、ハンプトンローズと日本の間の石炭の採算運賃は、国内船で利子補給を受けました場合にも、五年平均にいたしますと七ドル三十四セント、輸出船の場合は六ドル七十四セント。従いまして、六ドル八十前後で長期に石炭を鉄鋼側が運びたい、こういうことに輸出船の場合にはあうわけでございます。従いまして、こういったような場合の金利条件ということのために、国内船より輸出船の場合が採算ベースがよいということになりますので、ここに問題が投げかけられておりますことは、国内船とそういった輸出船との金利の差をなくしてイコール・ベースでものを考えていくことが解決策として一番よい考え方だというふうに私どもは現在考えておるのでございます。そういうことで、開発銀行の支払い猶予あるいはたな上げ措置がもしありました場合には、それが五分六厘五毛ということで、輸出船の五分一厘六毛に相当近くなって参るということから、最近開発銀行の支払い猶予措置を至急実現すべしという意見がここから出て参っておるような次第であります。  第三の御質問でございますが、いわゆる計画造船におきまして、定期船にスクラップ・アンド・ビルドを適用すべきであるという御趣旨は、たびたび当委員会久保先生からも御発言がありまして、私どもはそういう御意見を拝聴しておるのであります。従いまして、私どももそういう方向でただいま検討中でございます。ただ、私どもが予算編成の際に予算要求として主張しておりましたのは、いわゆるスクラップ代金と平均簿価との差額の二分の一を解撤助成金として要求したことであります。こういう一般会計からの助成金というものがあって、かつ、法律を出しましてスクラップ・アンド・ビルドを計画的に遂行していくという制度のもとにおいて促進するならばともかくでありますが、現在そういった法律もなく、また、一般会計からの解撤助成という措置もない場合におきまして、定期船についてスクラップ・アンド・ビルドをやることは、実際問題として幾多の問題が起こって参るのでございます。といいますことは、定期船の充足についてはどうしても船体を整備して参らなければならぬという建造側の要望は非常に強いものがございます。定期船のそういった運航担当者につきましては、そういったスクラップの対象になるような適当な船を持っておりませんし、定則船の中にももちろんそういったものはございません。持っておりますのは主としてオーナーに多いわけでございますから、そのオーナーが譲らなければ船価が高騰する。作りたい意欲が片一方にあって、片一方においては売り惜しみといいますか、売り控えをしておりますならば、船価が高騰して参るということであります。そうなっても、なおかつ定期船にこれを義務づけますと、企業基盤の強化から見て、新造船のあり方についてまで議論があった昨年の海運論議の経過から見ましても、この点については相当むずかしい問題が起こってくるというふうな感じがいたすのでありますけれども、決してそれだからといって定期船についてスクラップ・アンド・ビルドをやらないんだということを申し上げておるわけではございません。できれば私どももそういう方向で実際問題としてスムーズにこれが実現できるように、業界の協力も得なければこれが実現できませんので、せっかく最近そういったことのために業界あるいは私どもも、業界の協力の限界というものについて今検討中でございますので、この点につきましてはそういう方向で検討しておるということで御了承願いたいと思うのでございます。  第四番目のニューヨーク航路の問題でございますが、これは先ほど御指摘になりましたようにマルチェシーニという、ニューヨーク航路に対してアウトサイダーが出現して参りました。それに対するアウトサイダー制裁手段というものが行なわれないのを不満といたしまして、ノルウエーの船主であります、同盟のメンバーで同時にありますところのバーバー・ウイルヘルムセンという船会社が脱退をするということを二月に通告をして参り、それが四月から効力が発生するということであったのでございますが、たびたび同盟において真剣に対策を検討されました結果、フィデリティ・コミッション・システムという一つのアウトサイダー対策を決定いたしまして、日本政府にもその届出があったわけであります。ところがアメリカ政府に対しても同時にこの届出をしなければならないのでありますが、御承知のように米国政府は、海運同盟に対してはオープン・コンファレンスの建前をとっております。しかもまた国内の法制、ものの考え方といったようなものが独禁法あるいはシッピング・アクトで規定されております考え方から見ますと、海運同盟を強くしない、むしろ非常に弱めるといいますと少し語弊がございますが、これを強化しないという方向ですべてが処理されておりますので、過去においても世界各国の海運会社七十一社に対して召喚状をワシントンの地方裁判所から発せられたというような事態も起こっておりますのは、根本はこういった海運同盟を強化しない、むしろ独禁法的色彩が濃厚であるという国内の制度なり、そういった事情からくるのであります。今申し上げたアウトサイダー対策であるフィデリティ・コミッション・システムというものにつきましてもこれを認めるかどうかわからない。むしろ希望がないような観測が強いのでございまして、これに対してバーバー・ウイルヘルムセンは、そういうものにはたよってはおられない、むしろ七品目について運賃をオープンにして、そしてアウトサイダーに対抗すべきである、こういうことを主張して譲らないというのが現在の状況でございます。私どもは日本政府として、こういうフィデリティ・コミッション・システムというのは公正取引委員会とも連絡をいたしましてこれは認める——アメリカ政府が認めなければこれは実現をしないという段階でございますので、アメリカ政府も日米間の通商及び航海の安定という大きな見地からこういうフィデリティ・コミッションというものの制度を認めるべきであるということを外交機関を通じて折衝をいたしておるような状態であります。従いまして同盟側としては、この対策以外に現在としては有効な対策はないというふうに深く思い込んでおりますし、日本側船主も一致してそういうことを言っておりますので、この問題解決のためにただいまお話が出ました、私を米国政府に派遣して交渉させるという大臣のお考えもございまして、今それが問題になっておるわけでございますが、私どもの考えといたしましてはこのフィデリティ・コミッション・システムの実現のためにだけ私が渡米をするという考えではございませんで、業界なり海運同盟の考え方はそれでありましても、私どもはもっと広い見地から、むしろ高い見地から日米間の通商貿易というものが阻害されないように、運賃がオープンになり、昭和二十八年当時の混乱を来たしますというと、これは大へん日本国内の産業にまで影響し、貿易が正常化をされない、むしろ混乱を来たすというふうな考えのもとに海運問題について先ほど申し上げました独禁法違反の事実の調査、あるいはこういった海運同盟の強化の方向あるいは北米—日本間の航路の安定策について政府間で話し合うべき幾多の困難な問題がございますので、それについて一つ向こう側と話をしてみたらということが大臣のお考えでございます。そういうことでありますので、現状に対して国内態勢はどうかということでありますが、幸いにして運輸大臣の強い要請のもとに、昨年グループ化ということで三つのグループが編成されまして、そこに運賃の共同計算、業務の提携ということが強く運輸大臣から要請されて、それが着々実施に移されつつあるのであります。日本側だけのチーム・ワークは非常に強固なものがありまするし、これは日本側が幾ら結束を固めても外船のメンバーである者の協力が得られなければ、とうてい航路の安定が得られないのでありますから、この点につきましては国内態勢はなお一そう強くして外国船主との協調を保っていきたい、こういうふうに考えるのでございます。  最後の御質問でございますが、自己資金の問題について大蔵省と見解の相違があってどういうことだというお尋ねでありますが、償却前利益を主張して大蔵省が譲らないというようなことにつきましては、これは私の方の考えとして、原則として借入金の増大を来たさないことを目安として計画造船はやるのだ、今後の新造船はやるのだ、こういうことであります。従ってこれはあくまでも原則でありまするし、自己資金につきましては昨年以来海運界並びに金融機関双方ともに自主調整を行なわれてきておるのであります。私どもも利子補給対象会社につきましては、こういった設備投資について厳重なる規制の意味におきまして基準を持っております。金融機関におきましても一つの承認基準というものを持って、企業の基盤が弱化しない、むしろ自己資金で作る船が企業の基盤強化に役立つものでなければならぬということであるのでありますが、船価が計画造船に比して割高でないこと、あるいは初年度平均金利が七分五厘以下であること、あるいはその新造船がただいま申し上げましたように過去の借金の返済に十分貢献するものであることというような、いろいろな承認基準を設けて一々の自己資金の申請について私どもは十分注意しながらやっておるわけであります。ただここに造船所が最近操業量において安定を欠くような、むしろ受注が減退をいたしまして、造船所事情ということもございます。運輸省といたしましては海運企業の面ばかりでものを考えるわけには参りません。造船所におきましてはストック・ボートというものが、自衛手段として、自分で船を作って当分の間売れるまで自分が保有するというようなことまで造船所の雇用の維持という面からも出て参ります。そういうものを船主が割合船価が安いので買い取るということも、私どもはむげに否定をいたしておるわけではございません。また計画造船の資金のワクというものに限定がありますので、すべてのものがこの低船価のときに企業の基盤にプラスになると思っても計画造船には入らないということもありますし、船が沈んでその保険金が入ってきた、それを頭金にして造船所の低船価と延べ払いを通じてそういったものができていく、また長期に見て運賃が安定し、荷物の保証があるというものについて、むげにこれを否定するということは実情に合いませんし、また企業自体の基盤強化の上に役立つものを、役人の単なる恣意的な判断で、これを押えることはどうかという見解を私どもは持っておりますので、ただ企業基盤が弱化しないということをあくまでも原則にしてケース・バイ・ケースで認めて参りたい、こういうふうに考えておるのでございます。
  57. 久保三郎

    久保委員 時間がありませんから、この次に機会があればまたお尋ねいたしますが、ただ一言っておきたいのは、石炭合理化の問題に対する内航船の関係でありますが、お話もありましたように、内航船界そのものが石炭合理化にやはり協力態勢を築くというのが先決ではなかろうか、単に専用船を作ったり、配船センターをやったら困るというだけではなかなかもってうまくいかないのだろうと私は思うのであります。石炭合理化に対する内航船界の協力態勢というものはどうあるべきかということを詰めて考える必要がありはしないかと私は思います。  それからニューヨーク航路の問題でありますが、これは何といっても交渉にお出かけになるその下の足もと、いわゆる国内における海運界の結束、グループならグループ化されたものの船主の結束を固めて最後まで戦い抜くということがなければ、オープン・コンファレンスのニューヨーク航路で戦い抜くということは困難だと思います。結束を固めて最後まで切り詰めた考えで持っていかぬとくずれると私は思うのであります。そういう点を一つお考えをいただきたい、こういうように思います。  時間もありませんのであとにします。      ————◇—————
  58. 川野芳滿

    ○川野委員長代理 次に、陸運に関する件について調査を行ないます。  質疑の通告がありますので、これを許します。久保三郎君。
  59. 久保三郎

    久保委員 時間がありませんので、簡単に鉄監局長にお尋ねいたします。  先般来いわゆる地下鉄の国会議事堂前の駅が事業停止といいますか、運輸事業を停止して閉鎖した、きのうもやったと思いますが、土曜日にもやっております。これは聞くところによれば、衆議院の用地に停車場の一部がある。用地の貸借関係の契約の条件として、衆議院側の要請があれば、そのときにはこれを閉鎖するという条項があるそうであります。その土地の貸借関係は私的な契約だと思うのであります。ところが地下鉄運営というものは一般公共的な契約だと思うのです。この私的な契約の制約のもとに、公共的な運輸事業の一般大衆に対する契約が時々刻々変わっていくということでは、交通機関としての使命はどうかと思うのであります。これはどういう法規によってやっておるのかわかりませんが、少なくともこういうものはもう少し慎重に扱うべきだと思う。一衆議院の事務総長といいますか、警務部長から警視庁に連絡があった、あるいは警視庁から今度は地下鉄の駅に連絡があったので、突然閉鎖するというがごときはやるべきではない、こういうふうに思うのであります。これについて鉄監局長はどういうふうにお考えですか、これをお尋ねします。
  60. 山内公猷

    ○山内(公)政府委員 地下鉄の建設並びに営業開始に際しまして、国会と地下鉄との間にそういう契約があったことはわれわれも承知いたしております。ただ、地下鉄をとめるということは公共の交通機関をとめることでございまして、軽々しくやるべきでないということは、先生の御指摘の通りでございますが、現在これに基づきます法規といたしましては、鉄道営業法の第六条によりまして「天災事変其ノ他巳ムヲ得サル事由ニ基因」いたした場合には、旅客の運送を拒絶し得るという条項がございます。それで私どもの方には、そういう場合には届出をするということに法規上なっておるわけであります。地下鉄は御承知のように地下に駅が設置してございまして、非常に狭いということが一つあります。それからまた、御承知のように第三軌条を通しておりまして、東京の地下鉄でございますと、六百ボルトの高圧の電気を通しておるわけでございまして、駅が混雑し、人がホームから落ちるという場合には非常な危険を生ずるわけであります。そういったような情勢が起こる可能性があるということになりますと、やはりそれに伴って、そういう緊急の場合に処する処置をしなければならないわけでございます。これは単に国会の御要請によって締めたというばかりではございませんで、皇太子殿下の御成婚のときには、やはり警察から、非常に混雑してあぶないということで締めた事例があるわけでありまして、人命尊重、交通安全の見地から、われわれはそういう場合に地下鉄がノン・ストップで通ることはやむを得ないことではないかというふうに考えております。
  61. 久保三郎

    久保委員 常業法第六条の運送拒絶条項はそういう場合に当てはまるかどうかということは、私は大へん疑問があると思います。これは軽々しくとるべきじゃない、最期の一言と同じだと思う。皇太子の場合もそうでありますが、今度の場合も旅客の流れがそういう事態の傾向が出てきたというときに初めてやるべきであって、予想してやるべき筋合いではない。しかも今度の手続から見ても、これは営業法第六条には載っておりましょうが、実際は違う。国会の方でとめてくれ、閉鎖してくれという要請があって、それに基づいてやった。営業法第六条の運送拒絶の判断は、いわゆる地方鉄道業者の自主的判断に基づいて解釈すべきものであると私は思う。他からの働きかけによって運送拒絶すべきじゃない。もちろん情報その他はとるべきだと思います。しかも先ほど言ったように、天災事変その他やむを得ざる事由に基因して、しかもそれがもとであって運送上の支障があるとき——支障があるときというのは支障が予想されるときではない。ところが今度の場合は、予想されるということだけで閉鎖した。本来ならば天災事変の場合においても、これをやる場合には、突発事故なら別ですけれども、相当手配をとって予告すべきである。ところが今度の場合、予想されるという認定からやったのでありますが、事前には一般公衆に対してあまり放送してない、放送というか知られていないということなんですね。各駅では国会議事堂前に運送契約を結んでどんどん切符を売っているわけです。しかも地下鉄は全線一区ですから、どこに行くかわからぬ。そういう場合の扱い方というのは、私は非常に慎重に考えるべきだと思う。これについては営業法第六条で拒絶条項によってやったんだということで簡単に片づくことかもしれませんが、皇太子の場合もそうですが、前もってそういう場合を予想されるというならば、親切な事業者ならば、何月何日あるいは明日には、こういうわけで地下鉄の国会議事堂前の駅が大へん混雑すると予想されるから、その場合には閉鎖する場合がございますというようなことをやるべきである。皇太子の場合も同様です。そういう手配を何もとらぬでやったことについて——これは常業法第六条によってやったのではないというふうに私は思うのです。こういうことで一般運輸事業がちょいちょい停止されたり閉鎖されたりしたのでは、一般大衆は因ります。これに対しては別に不思議に思っていないのでしょうか。
  62. 山内公猷

    ○山内(公)政府委員 ただいま申し上げましたように、地下鉄というものはほかの鉄道と特異な性格を持っておるわけでありまして、地下鉄のそういう危険性を十分考えまして措置しなければいけない問題だろうと思います。それで事前にそれを十分周知させるということは、ごもっともでございますが、二十三日の場合はその余地が非常に少なかった。そういうことでございます。もちろん地下鉄といたしましては、事前にわかっております際には、各駅の出札、改札、ホームというようなところの公衆の見やすい場所に、一時閉鎖するということについて掲示をいたします。またホームとか一部列車ではそういうPRをいたしました。これは皇太子の場合は事前からそういう混雑が予想されておりましたので、十分そういう措置をとったわけでございますが、四月二十三日の場合におきましては、非常に急にお話がございまして、全学連が一時十八分茗荷谷駅から百名乗車した。それから百五十名が十三時二十五分お茶の水駅から乗車して、混乱が予想されるから、警備上議事堂口を十三時二十二分、総理府口を十三時三十分閉鎖してもらいたいという要請があったわけでございます。それで、そういう要請に基づきまして地下鉄が措置をとるということは、われわれやむを得ないのじゃないかと思っておりますのは、そういう混乱の情勢というものは、国会の建物管理の責任のあられるところの御判断によらなければならないわけでありまして、地下鉄自身そういう情報を持っておりません。それで国会の警備の責任者から混乱が予想されるということであれば、地下鉄がそれに基づきまして、今までの申し合わせによりまして通過をするということは、事故を未然に防ぐ意味で、交通業者といたしましてやむを得ないのじゃないかと考えております。
  63. 久保三郎

    久保委員 いずれにしましても今のお話では、事故を未然に防ぐということでありますが、停車場構内においての事故を未然に防ぐことは、当然鉄道事業者の責任だと思うのであります。今回のは衆議院からの要請でやったというのは、地下鉄の駅をおりて、シャッターの締まる歩道へ出てからの話なんだ。少なくとも国会周辺が混雑する、よってその連鎖反応で地下鉄が混乱するということだと思うのですね。そういう場合に、本来ならば、これは道路交通の方の問題でありまして、この流れをどうするかは警察権にゆだねる問題だと思うのであります。鉄道事業者としては、交通の流れを左右するような権能は、実際においてどこにも持っていないのですね。国会議事堂前におりる人間を虎ノ門でおろしたり、霞ケ関におろすということは、交通整理上はあり得ないことなのです。鉄道常業法第六条では、そんなことはどこからも出てこないのです。そういうことを考えると、もう少し鉄道事業者のいわゆる責任の分界と衆議院側の責任の分界というものをはっきりしてやるべきであって、土地の貸借関係でそういう条項が入っておる契約を認めること自体が私はおかしいと思う。実際要請があれば、いつでも停車場の戸を締めるのだというようなことは、これは相手が衆議院であろうが何であろうが、普通では通らないでしょう。私的な契約です。私的な契約からいわゆる一般公共が制約される、それはどうもおかしいですね。時間がありませんからこの程度にいたしておきますが、少なくともこれからちょいちょいあることですから、もう少しはっきりした見解に基づいてやるべきだと思う。交通の流れを左右する権能は鉄道事業者にはない。それをやることはいわゆる交通警察の方の問題である。道路交通の問題だ。それからもう一つは、私的な契約が公的な契約を左右することはあり得ない、こういう観点からも地下鉄閉鎖は違法である、不当である、こういうふうに私は思うのです。
  64. 山内公猷

    ○山内(公)政府委員 契約の点につきましては、これは司法裁判所の決定すべきことでございまして、われわれ行政官が云々すべきことではないと思います。ただ国権の最高機関でありますところの国会が必要ありといって御指示のあった際に、一営業者がそれは必要がないということは、現在の情勢ではなかなかむずかしいのでございます。それからまた、そういった国会周辺が混乱をするというものを判断をすることは、一経営者に責任を負わすということは、これはちょっとむずかしいのではないか。やはり警備の責任を持っておるところの御判断に従って処置をするということは当然ではないかと思っております。それからまた地下鉄と道路との関係でございますが、地下鉄をおりて道路に上がってくるということでございまして、全体的にやはり道路と接続した混乱というものが予想されるわけでございまして、やはりそういう際に警備御当局から、連関してそういう御要請があるということになりますと、何といいましても危険なところでございます。先ほども申し上げましたように、繰り返して言いますが、ほかの一般地方鉄道と違いまして、サード・レールに六百ボルトの高圧の電流が通っております。ホームから落ちますと、死ぬという危険性が非常に高いところであり、かつまたほかの鉄道と違いまして地下に設置した駅でございますので、非常に狭隘であるという、危険の発生すべき余地が相当多いところでございますので、その危険の発生を未然に防ぐということは、やはり一般の観念からいいまして必要ではないかとわれわれ行政官庁としては考えております。
  65. 久保三郎

    久保委員 大へん理屈になりましたから理屈でいきましょう。国権の最高機関である国会からとめてくれというお話があったのだから当然ではないか。これは国会は意思表示しておりません。局長それはないのですよ。契約の問題は司法裁判所がきめる。きめるでしょうが、常識的からいっても、公的な契約というものが私的な契約で制約されるということは、一般にこういう場合あり得ない。私が土地の所有者だ、地下鉄に貸します、私が通るときは停車場締めてくれというような契約を結ぶばかはいないと思う。それと同じです。この場合は国会としての私的なものです。最高機関でしょうが、やはり地主です。そういうことと、一般公衆の用に供するという契約を結んだものと競合した場合、どっちをとるかということは、公衆の方をとるのはあたりまえです。それから六百ボルトの電流ということをたくさんおっしゃるのですが、ホームからこぼれたら困るというのですね。それは国会議事堂前を通過して虎ノ門へいってもやはりこぼれますよ。あぶないです。どこへ行っても同じでしょう。渋谷か新宿までいってずっと向こうへいってこぼしますか。理屈になれば同じですよ。だから私が言うのは、こういうことは鉄道事業者に責任を負わせるわけではないが、いわゆる鉄道事業者が営業法第六条でやるにしても、やはりその分界というものをはっきりしてやるべきだ。契約に基づいて、国会の要請に基づいて、いわゆる衆議院の警務部長か事務総長か知らぬが、そういうものから、ちょっときょうはあぶないようだからとめてくれと言われたからとめたなんて不見識ですよ。しかしその辺の調整は後刻いたしましょう。私としては了解できぬ。実情わからぬわけではないですよ。わからぬわけではないが、そういうやり方自身変である、私の了解しにくいものがある、こういうことです。以上です。
  66. 川野芳滿

    ○川野委員長代理 次会は、委員長の指定により来たる五月四日水曜日午前十時より理事会、午前十時三十分より委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後零時二十九分散会      ————◇—————