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1960-03-30 第34回国会 衆議院 運輸委員会 第11号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十五年三月三十日(水曜日)     午前十時四十九分開議  出席委員    委員長 平井 義一君    理事 天野 公義君 理事 生田 宏一君    理事 川野 芳滿君 理事 關谷 勝利君    理事 井岡 大治君 理事 久保 三郎君    理事 土井 直作君       宇田 國榮君    高橋 英吉君       原 健三郎君    三池  信君       村瀬 宣親君    島口重次郎君       下平 正一君    田中 稔男君       館  俊三君    正木  清君       内海  清君    菊川 君子君  出席国務大臣         運 輸 大 臣 楢橋  渡君  出席政府委員         運輸事務官         (海運局長)  朝田 静夫君         運輸事務官         (自動車局長) 國友 康弘君         海上保安庁長官 林   坦君  委員外出席者         海上保安官         (警備救難部         長)      樋野 忠樹君         専  門  員 志鎌 一之君     ————————————— 三月三十日  委員横山利秋君辞任につき、その補欠として田  中稔男君が議長の指名で委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  外航船舶建造融資利子補給及び損失補償法の一  部を改正する法律案内閣提出九六号)  道路運送法の一部を改正する法律案内閣提出  第六四号)  海上保安に関する件      ————◇—————
  2. 平井義一

    平井委員長 これより会議を開きます。  外航船舶建造融資利子補給及び損失補償法の一部を改正する法律案を議題とし、審査を行ないます。  質疑の通告がありますので、これを許します。島口重次郎君。
  3. 島口重次郎

    島口委員 利子補給の問題につきまして、海運業界立場から見ますれば、いろいろ調査いたさなければならぬ諸般の事情もありまするけれども、この問題を民主政治立場から、運輸大臣たる楢橋さんというよりも、国務大臣楢橋さんにお尋ねいたしたいのであります。  新船等につきまして利息が高いのは、あえて船舶海運業界だけではないのであって、先ほど来問題になりました例の東海道の新幹線につきましても、世界銀行の方が金利が安い、あるいは日本のあらゆる機械産業なり中小企業等におきましても、いずれも国際的な利息よりも高いのは、あえて議論に及ばないと思います。さらに国内的に見ますと、何十億、何百億を借り入れいたしております大企業よりも、中小企業がはるかに商い金利で商売をしなければならない、こういう状況なのでありまするが、もしその対金融関係から資金コストが高いという面で保護育成しなければならぬというならば、あえて、海運業界助成いたしまする前に、国内中小企業等に大きく保護政策を立てなければならないと考えておりまするが、この点、大臣はどう考えておられるか、お尋ねしたいと思います。
  4. 楢橋渡

    楢橋国務大臣 外航船舶利子補給という問題は、その根本考え方は、つまり外国海運業者と申しますか、船舶業者との間の国際的なフェアな競争という建前からこれを補給する。端的に言えば、国際競争力を強化するという問題が、その特殊性があるのでありまして、運賃その他の点につきましても、国内でありますならば、いろいろと調整もつきますけれども、全部外国との間における対象物外国との間における問題であるというところに、一つのこの利子補給の問題のなすべき根拠があると思うのであります。今おっしゃいましたように、国内における中小企業者に対する金融の道、利子補給等——利子補給といいますか、金利を安くするとか、あるいは融資をしてやるとかいうことの重要性を、決して軽視するものではありませんが、運輸大臣といたしまして、海外船舶国際競争力という問題について、外国御存じのように、アメリカも建造費の半額は国家がこれを見てやって、残りの四分の三は三分五厘で国が見てやる。英国もそういうふうな非常な補助政策をとっておりますし、またドイツも千四、五百億の金を出してやり、かつ利子補給金利体系をしてやる。各国ともそういうように海外におけるところの競争力といいますか、そういうものを助長いたしておって、しかるに日本では、説明申し上げましたように、国家自己戦争目的のために、民間の船を徴用しておいて、これを沈めておいて、外国と違って国が何らかの保証を与えておらない。そこに、日本海外海運競争力において、全部自己資金負債をもってやっておるというところに、国際競争弱体化があるという点から、この法律案が出、こり問題が取り上げられておるのでありますので、そこに国内的な中小企業者その他の問題と違う特殊性のあるということを、御了承願いたいと思うのです。
  5. 島口重次郎

    島口委員 海外との競争の問題、海海運業界だけだというような御答弁にお聞きいたしたのでありまするが、これは何も海運業界だけでなくて、特に今後におきましては、貿易為替自由化の問題に関連いたしまして、日本中小企業世界各国工業と戦わなければならない。むしろ自由貿易によりまして、日本中小企業なり農民が、そり圧迫、間接的な束縛から、相当破産、倒産しなければならないというような現状が展開されつつあるのであります。そういう際に、海運業界だけそりだという御点に立って議論いたしますことは、若干欠ける点があるの、ではないか、こう考えます。  そこで海運局長が来ておられますからお尋ねをいたしまするが、この利子補給をいたしまする各会社が、一体何はどの資本金を有するか、お尋ねしてみたいと思います。
  6. 朝田静夫

    朝田政府委員 払込資本金の額は、利子補給対象会社で現在千十億円であります。全体の五十九社の資本金の総額が千十億円であります。
  7. 島口重次郎

    島口委員 総体ではなくて、各社ごとの詳細がわかりましたら御答弁願います。
  8. 朝田静夫

    朝田政府委員 五十九社ございますが……。
  9. 平井義一

    平井委員長 それはあとで書面で出したらどうですか。
  10. 朝田静夫

    朝田政府委員 それでは資料で提出いたします。
  11. 島口重次郎

    島口委員 ただいま海運局長から総研の答弁がありましたが、おそらく日本郵船なり大阪商船と称するのは百億内外であろうと思います。この大企業も助長しなければならぬということもわかりますけれども、それよりも、景気の底の浅いと称する中小企業なり農夫等助成いたしますのが、政治立場から申し上げまして、優先しなければならないと考えますが、大臣はどう考えておられますか。
  12. 楢橋渡

    楢橋国務大臣 今、島口さんおっしゃいましたのは、利子補給日本海運にやることによって、自由貿易その他において中小企業者に重圧でもくるのではないかというようなお話であったと承ったのでありますが、少なくとも国際競争力を強化して、日本海運国際収支の改善をやり、いろいろとやるということは、日本中小企業者の仕事の上にもやはりいい影響をむしろ与えるのでありまして、これはさいぜんも申し上げますように、国際競争、つまり各国の船を持っておるものを相手として、日本側が要するに船の面において優位を占める、つまり有利に展開するということでありますから、日本経済全体にいい影響を与えるということは、間違いありません。ただ、今おっしゃいましたように、中小企業者、底の浅い者に対して十分にめんどうを見るということは、これはやらなければならない問題であると思うのであります。従って、その点については、それぞれの所管大臣通産大臣あるいは農林大臣等においても、自分の所管においてやっておると思いますけれども、私の担任いたしまする海運の面、ことに外航船舶に対する、日本基幹産業としての国際競争にたえ得る体質を作るということは、やはり絶対的必要条件である、こういうふうに思うのであります。
  13. 島口重次郎

    島口委員 私も海運助成するという原則には、あえて反対するものではありません。ただ、ただいま大臣の御答弁によりますと、基幹作業助成いたしまして強化をいたしますることが、即中小企業の防衛であるというような御答弁でありまするが、私の言っているのは、それを否定するわけではありませんけれども、政治優先順位といたしまして、むしろ中小企業なり農業というものを基盤強化いたしまして、その後に取り上げる問題じゃないか、少なくともただいま申し上げました通り、百億というような膨大な資本を有する独占企業と称しまする大企業に助長いたしまするよりも、むしろ中小企業なり農民助成いたしますのが当然である、こういう面から、運輸大臣たる楢橋さんにお尋ねするというよりも、国務大臣楢橋渡さんにお伺いしたいという見解であります。
  14. 楢橋渡

    楢橋国務大臣 私も、中小企業その他弱い方面の人々に対して、十分にこれを健全化するということに対しては、賛成であります。しかし、御存じのように、それぞれの所管大臣がおりまして、私は運輸大臣としての責任の体制から言いますと、一面から申しますと今日本の重要な産業の柱である外航船舶というものを強化することが、当面の私の責任であると思うのでありますが、国務大臣としておっしゃいますように、中小企業者農民その他の弱いものをかまわぬでもいいか、そういうことは決してありません。これも十分にめんどうを見なければならないものであると実は思うのであります。また資本金が今百億円、いろいろおっしゃいましたけれども、これらの資本金はそうでありますが、これに何倍するという借金をもって船を作っておるというところに問題がありますの、で、資本金借金との関係等につきましては、海運局長からちょっと説明させたいと思います。
  15. 朝田静夫

    朝田政府委員 資本金借金関係でございますが、昭和三十四年三月末現在では、先ほど申し上げましたように、利子補給対象会社の五十三社につきましては千十億円であります。その資本構成比率他人資本が七七・四%、自己資本が二一・六%でございまして、依然として改善されていないのでございまして、ただいま大臣から御答弁がありましたように、他人資本が圧倒的に比率として大きい、これは全産業中でも最も悪い部類に属するのでございます。  また借金の問題でございますが、大臣から申し上げましたように、戦後補償打ち切りによって、新船を作って参ります場合にすべて借入金によってまかなわなければならなかった、こういう状況でありますので、設備資金として今の借り入れ残高財政資金が千四百五十四億、市中金融機関からの設備資金借り入れ残高は千百二十一億でありまして、合計いたしまして二千五百七十五億円の借金に及んでおるのであります。この支払い利息昭和三十三年度におきまして二万七億円という、絶対額においても膨大な額に達しておる。しかもその率が国際金利水準から見て非常に高率である。国際競争の上から見ましても、この点が日本海運企業体質のもろさを端的に現わしておるということでございます。
  16. 島口重次郎

    島口委員 海運業界資本構成が弱体であるということは、先ほども申し上げました通り私は否定するものではないのであるが、ただ、今説明いたしましたのを基礎にいたしまして海運業界が弱体であると申しますならば、今日の中小企業と称するものは金を借り入れたくともできないような状況であります。そういう面から見ますと、二千五百余億の借り入れができるということは、今日における中小企業者実態から見ますならば、むしろ悪い状況だとは言いがたいと考えております。こういう面から松橋運輸大臣といたしましては、それぞれの担当大臣がある、こう申しますけれども、今度の国会へ提案されました中小企業対策といたしましてはわずかに二十五億八千万という、ないと称してもいいくらいでありますが、ただ海運業界だけにこの九億五千万という膨大な利子補給をいたしてまでも保護しなければならぬというのは、民主政治なり議会政治立場からどうも納得いかぬのでありますが、この点もう一度大臣から御答弁願いたいと思うのであります。
  17. 楢橋渡

    楢橋国務大臣 さいぜんからお答え申し上げますように、現実国際競争船会社は日々厳しくやっておる。しかも各国が非常に安い金利で、しかも助成をしてやっておる。わが方は九分五厘あるいは六分五厘という商い金利で、二千五百億の借金を背負って国際競争をやっておる、これをほうっておきますれば、弱体化すれば自然に外国の船に荷物をとられ、外資はみな外国の船に払わなければならぬ。従って日本の船員その他においても非常な不利を来たしますから、日本産業にも大きな影響を与える。従って日本のように、四つの鳥に九千万がおって、原料を仕入れて作ったものを海外に出すという場合におきましては、船は日本の国民の経済的生活基盤の大動脈になるのでありますから、これを強化することはひいては中小企業その他にも、すべての産業にもいい影響を与えるものと信ずるのであります。私は、今、島口さんのおっしゃいますことについて、決して否定はいたしません。中小企業その他のものの金融額船会社の額は非常に違うじゃないかとおっしゃいますが、それはごもっともでありますけれども、それぞれの企業体において負債その他というものは企業基盤においてやっておるものでありますから、これを単純に比較して金額だけで測定するわけにはいかないと思うのでありますが、仰せのごとく、中小企業農民その他恵まれない方面につきまして、できるだけの手を差し伸べてこれを強化するということについては私も賛成でありますから、そういう点につきましては国務大臣としてできるだけ努力をいたしたいと思うのであります。
  18. 島口重次郎

    島口委員 ちょっと論理が飛躍いたすかもわかりませんけれども、大臣から承りたいのは、中小企業金利は、いなかに参りますと——都会においてもおそらくそうだろうと思いますけれども、年一割二分の金利で借りております。年一側二分の利息で借りようといたしましてもできなくて、やみ金融で借り、没落、倒産しておるのが今日の中小企業実態で、あります。ところが百億以上の大資本を有する大企業が、このままでいくならばおそらく倒産するから利子補給しなければならない、中小企業の力に対しましては一割三分の高率な利息で貸しておりまして、これで没落、倒産するならばやむを得ないというような見解であるとするならば、やはり大臣中小企業を顧みる……。がすこぶる薄いと思いますが、七の点はどう考えておられますか。
  19. 楢橋渡

    楢橋国務大臣 決して私は中小企業没落してもかまわないという考え方を持っておるのではありません。また、今言っております利子補給対象となっておる外航船舶会社は倒産するからこれを補助するというのではなくして、さいぜんから申し上げますように相手がある、たとえば英国であるとか米国であるとかノルウエーであるとか、各国相手船会社はお互いに競争しておって、外国会社はさいぜん申し上げるように三分五厘の金利で、しかも戦時補償等も払ってやり、相当な補助政策をやって競争させておりますから、日本だけが戦時補償も払わず、膨大な借金を背負わせて、高い金利を払って国際競争をさせるといっても、そういうことをすれば当然日本運賃その他についてもコストが非常に高くなってきますから、必然的に外国に貨物をとられ、日本の船は遊ぶようになり、失業者は出る、そうして緒川そのために外貨をとり得べきものをとり得ずして、かえって日本に重正を加えるということになるから、この海運政策と今の中小企業の問題は、別個とは申しませんけれども、有機的にそれぞれ進んでおるのですから、中小企業中小企業の面で、海運現実において資本構成国際的競争という立場からこの問題について進んでいく。こういうことはやはりおのおの有機的に効いておるものでありますから、こっちがないからこっちをやるというわけにはいかない問題であると思うのでありますので、私がさいぜんから申し上げますように、私の管轄である国際海運助成というものは、民族のためにも日本経済を健全化するためにも、これはあくまでもやるべきものであるという信念のもとにやっておりますし、一面において、通産大臣農林大その他の管轄いたします中小企業なり農民の点につきましては、またそれぞれの所管大臣がそれらの立場からやっておると思うのでありますが、私も国務大臣の一人としては、中小企業者なり農民が健全に、しかも金融その他の面においても十分にめんどうを見るようにやっていくことは必要を認めるのでありますから、その点もできるだけ考慮を払うことについては国務大臣としてやぶさかでない、こういうことを申し上げておるのであります。
  20. 島口重次郎

    島口委員 私が前提を置きましたように、若干飛躍した質問だと思いますがということを言いましたが、海外との競争にいたしましてもその通りであります。ただいま日本海運業界の置かれております立場と、日本中小企業の置かれております立場というのは、むしろ中小企業の方が深刻であろうと考えます。その際中小企業対策といたしましては、先ほども申し上げました通り、二十六億にも足らないものでありまして……。(「そんなことはない、融資しているじゃないか。」と呼ぶ者あり)融資融資でありまして、やはり金を返さなければならないのであります。今度の利子補給融資ではなくて助成金なのであります。そういう面から融資助成金を同一に考えること自体が矛盾だと考えております。そういう面から申し上げますれば、海外との競争の場におきましても、中小企業にも競争しなければならない場がある。あるいは海運業界におきましても競争しなければならない必然的な運命であります。この際いずれを重点的に取り上げるかということをお尋ねするのであります。さらにこの助成金等内容等の問題でありますが、たとえば国鉄のような政府関係いたしまする一機関であるとかあるいは公団であるというような団体であるならばあえて了承をいたしますれども、営利会社にあえて九億五千万というような助成をいたしますることがどういうものか、この点をお尋ねしたいと思います。たとえば今度の東海道新幹線の建設にあたりまして、国内から融資をいただきたいけれども、むしろ世界銀行の方が安いから世界銀行に協力を仰ぐというのでありますが、こういう公的な団体助成いたしますならば了承できますけれども、営利団体である法人会社助成いたしますことはどういたしましても納得ができないのでありまするが、この点の見解お尋ねいたします。
  21. 楢橋渡

    楢橋国務大臣 さいぜんから申し上げますように、日本船舶を国労で今やっているわけでもありませんし、国際競争ということの建前から日本海運の持つ一つ役割ということを申し上げておるのでありまして、しかも今おっしゃいました補給金というものは一定利益がありますれば返還しなければならないという法律になっておるのでありまして、その点は無制限にこれを援助するとか、何でも利益が上がっても返さぬでもいいということではなくて、ちゃんと制限がありまして、十五年間で一定利益があった場合はこういうふうに返せという法的な根拠になっておるわけでございます。従いまして、今おっしゃいました国鉄その他の問題については、私は今おっしゃいました国鉄利子補給についても、これはその点は賛成でありまして、その点は大蔵大臣とも折衝をいたしたのですが、成功しなかったのでありますけれども、やはりもうからないような線を国家目的のために新線を建設させる、たとえば十一線をすれば四十億の赤字が出る。それもやはり地方その他の開発を国家的な要請においてやらなければならぬという場合において、国鉄は独立採算的な立場をとっておるから、本来からいえばもうからぬ線はやらぬでもいいということは公共性からいって拒絶できない。そういう場合は、国がやらすのだから十分にめんどうを見てもらいたいということは、これは私からも主張いたしておる次第でありますが、その点はまだ不幸にして成功いたしませんでしたけれども、今海運の問題は、さいぜんからるる申し上げますように、国際競争ということを建前として、日本の持つ海運業というものの、日本経済基盤における重要なる役割、ひいて国家民生に与える一つの大きな影響力等を考えて、これを一定制限を付して利子補給制度を設けておくということ百でありますから、そういう点において御了承を願いたいと思います。
  22. 島口重次郎

    島口委員 了承はできないけれども、再質問をいたしますから……。ただいま一定の限度以上に利益が出ますれば返済してもらう、こういうようなお答えでありましたが、しからば年何ぼの配当をした際には補給金を返還してもらうか、その点をお尋ねいたします。
  23. 朝田静夫

    朝田政府委員 その点は現行法の第十二条、第十三条に明記してあるのでございますが、一定利益率が上がりました場合には、第十二条においては、その期の利子補給金政府に返させる、第十三条におきましてはある一定利益率が出ましたならば過去の分についてまで、その期の利子補給金はもちろんのこと、過去に受けました利子補給金の返還をさせるということになっておるのでありまして、その一定利益率政令で定めておるのでございます。現在の政令では十三条につきましては一割の利益率、十三条につきましては一割五分の利益率ということになっておるのでございますが、今回の改正に伴いましてこの政令を変更いたしまして、十二条につきましては一側を八分に下げ、十三条につきましては一割五分を一割二分に引き下げるつもりでございます。従いまして利益率でございますから、配当はその利益率そのままではございませんで、若干それより下回った配当率になると思うのでございます。
  24. 島口重次郎

    島口委員 大臣お尋ねいたします。ただいま局長答弁によりますと、今度は一割を八分、一側五分を一割三分に引き下げる。これ以上の配当がありました際には助成金を返還してもらう、こういう答弁でありますが、今日の中小企業というのは年間一側三分どころか六分もない。あるいは無配と称するのを十年以上も続けておる会社があるのであります。この際一割、分までの配当を認めるならば助成金を返還要求しないというような限界をどこに基礎を置きましたか、お尋ねいたします。
  25. 楢橋渡

    楢橋国務大臣 さいぜんからしばしば申し上げますように、国際競争力を強化するという意味における海運利子補給法律制度という根本の精神と、それから中小企業者の今おっしゃいますような金融あるいは問題、そういう問題とはこれは切り離して考えるべき問題であって、今おっしゃるように国務大臣としては一体どう考えるかとおっしゃいますから、中小企業及び農民その他についてもできるだけの助長策はやっていくということを申し上げている次第でありまして、それと対比してどうだということの議論は、私からは主管大臣といたしましては、さいぜんから申し上げますように、国際競争力にたえるような態勢をとらせることが、ひいて全般の日本経済に対して影響を与えるのだという建前からこの問題をやっているということを申し上げるのであって、あと通産大臣その他からでもその問題については一つお尋ねになってやったらどうかと思うんですがね、中小企業金融のことは。
  26. 島口重次郎

    島口委員 それでは、その問題はまたいずれかの機会に通産大臣なり大蔵大臣の方にお尋ねすることにいたしまして、運輸大臣お尋ねをいたしますが、船主協会なり造船工業会から、三十二年から三十四年度にわたりまして一億三千六百万の政党献金があることはおわかりでありますか。
  27. 楢橋渡

    楢橋国務大臣 これは私はそういうことがあるか、先般の予算委員会で社会党から御質問がありまして、自治庁答弁されたのでありますが、その政治献金の問題は運輸大臣管轄ではございませんが……。
  28. 島口重次郎

    島口委員 主管大臣が異なりますからあえてわかりますかということでお尋ねしたのであります。そこでお尋ねいたしますが、こういう赤字団体政党献金をして、しかもそれにこういう利子補給いたしますという仕方は、はたしてよいように考えますか、悪いことであると考えておられますか。
  29. 楢橋渡

    楢橋国務大臣 これは決して政治的の献金が一がいに悪いということは言えないのでありますけれども、赤字会社はなるたけそういうことは自粛した方がいいということを考えておりますので、その点は運輸大臣といたしまして自粛しろということを申し渡しておるのでありますけれども、この点はやはりまた別の方面からいろいろ要請があってやっておると思いますから、私としてはそういう方針をとっております。
  30. 島口重次郎

    島口委員 この問題は、あれはたしか昭和二十九年のころだと思いますが、造船業界からリベートをもらいまして、現大蔵大臣、当時の自由党の幹事長をやっておられました佐藤榮作氏が検察庁から逮捕される直前におきまして例の指揮権発動をされたような問題もあるのであります。従いまして、こういう赤字会社であり、利子補給をしてもらわなければ会社の経理が成立をしないというような、極端に悪い海運業界があえて政党献金をする。その利子補給政府がいたすということになりますると、何となく民主主義制度建前から、非常に疑惑が出てくる不明朗な政治だと思いますが、こういう面から特にこの点を加味いたしまして、今度海運業界利子補給いたしますことは妥当でないと考えておるのでありますが、結論をお尋ねしたいと思います。
  31. 楢橋渡

    楢橋国務大臣 利子補給の問題は全然別個の問題でありまして、さいぜんから申し上げますような純粋な国際競争力の強化という建前からやっております。会社が政党に、経済何とか懇談会という名前でもって献金をずっとやっているというようなお話がありましたのですが、こういうことは会社側の監督官庁である私どもとしては、なるべく慎めということを先般のときに私から警告をしておりますけれども、これはまた別個の問題で、やはり政治という全般的な問題からいろいろな献金という問題も起こってくるかもしれませんが、それはちょっと私の管轄外でございますから、御了承願いたいと思います。
  32. 久保三郎

    ○久保委員 関連して。この問題は先般の予算分科会で一応お尋ねいたしたのですが、時間がありませんでしたのでさらに追加してお尋ねしたいのです。  現在の海運界の立て直しには三つの要素がある。これは言うまでもなく、経営基盤の強化あるいは新造船のあり方、それともう一つは船質改善、こういう大まかに言って大体三つだろうと思う。そこで、今回提案になりました利子補給と一口に言われている法律でありますが、これは経営基盤の強化に役立てようとするのか、それともそれ以外の目的を持っているのか、これを一つお聞きしたいと思います。
  33. 朝田静夫

    朝田政府委員 ただいま御指摘になりました海運政策の三つの柱は、御指摘の通り、各方面からの対策を見ましてもすべてそういう三つの柱を立てて対策の提唱をしておられるのは御承知の通りでございます。そこで、御質問利子補給の復活は企業基盤の強化に資するものであるのか、それ以外の目的に対してやるのか、こういう御質問でございますが、まさに三つの柱のうちの一つであります海運企業基盤強化のために復活する目的を持っているのでございます。
  34. 久保三郎

    ○久保委員 そうだとすれば、現在のような多くの不良資産というか、そういうものを持っている海運界に対して、九億何がしかのいわゆる利子補給だけで基盤強化がなると思っておりますか。
  35. 朝田静夫

    朝田政府委員 お説のように、九億五千万円程度の利子補給国際競争にもたえ、基盤強化にも役立つと考えるかということでございますが、この点について私どもはこれで十分であるとは思っておりません。しかしながら、国際競争力の上から見ますと、各国ともにこういった新造船の建造におきましては、すべて借入金でやるようなことは通常世界の各国においてはあまりないのであります。自己資金でありますとか、内部留保金でありますとか、長期の社債を発行して充てるとかいうことでやっている例が御承知の通り多いのでございます。しかもまた、それを借入金でやる場合におきましても、各国の社債の平均利率というものからながめてみますと、五分ないし五分五厘という程度でございますので、国際競争にこの九億五千万円で七分五厘程度にまで市中金融機関の利子を引き下げても対抗できないのじゃないかという御疑問があることは当然でありまして、私どもも先ほどから申し上げますように、これで十分だとは思っておりませんが、政府も努力し金融機関も努力し、企業みずからの努力はもちろんのことでありますが、三者三様の努力を払って海運企業の立て直しなり強化をはかっていきたい、こういうふうに考えておるのであります。
  36. 久保三郎

    ○久保委員 私はこれでは基盤強化の足しにならないだろう、という意味は、お尋ねしたいのは、総体の額からいけば大した額ではないという率直な見方が一つあります。それからもう一つは、こういう利子補給だけによって基盤強化がなるというふうに考えているとするならば、これは大きな誤りだということ。先ほど島口委員からも話があった政治献金は、各党がもらっているかもしれませんが、こんな赤字会社政治献金を出す理由がどこにあるかというのです。これも一つの例でしょう。もう一つは、カルテル強化をやるべき筋合いのものがそこからはずれていくというようなものもある。グループを結成して太平洋航路をやったというが、そこからはずれていく、こういうものに対する方策が全然とられていないようにわれわれは見ている。そうだとすれば、利子補給をする前に打つべき手がたくさんありはしないか。もう一つは、海運強化策の三つの柱の一つは、なるほど利子補給もあるかもしれぬ。ところがあと二つの問題は、計画造船の問題にしてもあるいは船質改善の問題にしても大きな問題があるのだが、このあとの二つの問題に対してはあまり大した方策もないように見受けられる。  そこで私は総体的に運輸大臣からお訪ねしたい。日本海運強化策というものはどういう方向にあるべきかということです。大体三つの問題点はわかったが、どういう方向にあるべきか、船質改善とはいかなる程度にまですべきか、新造船のあり方というものは、いかなる船腹まで増強するのが見通しとして正しいか、基盤強化というものは利子補給以外に何があるか、そういう問題について解明してほしいと思います。
  37. 楢橋渡

    楢橋国務大臣 利子補給だけで基盤強化ができるとは思いません。今御指摘になりましたように、経営の合理化はもちろんのこと、第一に体質の改善と申しますか、船の体質を改善するということも必要であります。従って、たとえば太平洋における船の過当競争をやめさせるために、私が運輸大臣になりましてからグループ化をやらせて、経費の節減その他の効果を見ることができたのであります。一方、経営の合理化という線から、あらゆる運航費あるいは経営費その他についても基準を設けて、これも約八十億近くの成績を上げて節約することができたのであります。まだこれで十分とは申しませんけれども、予定数よりもはるかに上回るだけの海運業者も自粛して合理化に協力しているような次第であります。従って、スクラップ・アンド・ビルドというような、悪い船をつぶしまして新しい船にかえる、こういうこともやはり国際競争力を強化し、経営の合理化の一端となると思うのでありまして、この点についても主機換装その他をめぐってただいま検討いたしております。全般的に見まして、日本海運業者のなすべき点は、今、経営の合理化あるいは船体の改造といいますか、体質改心及び過当競争等を抑制するための問題、従って、同即加盟以外のものが運賃体系を乱すというようなことが起こって参りましたので、先般同盟関係の業者を集めまして、これに対する一つの対策、及び同盟脱退が自由にならないような、紳士協約に違反しないような自粛等を私からも警告し、同じ同盟に入っております外国会社に対しましても、海運局長から協力方を要請しているような次第でありまして、そういう線に沿うて海運全体の国際競争力にたえるような諸施策につきまして努力を続けておるのであります。利子補給の問題もまたその一端をになうものである、こういうように思うのであります。
  38. 久保三郎

    ○久保委員 運輸大臣はやはり政治家だから、大まかな話でありまして、私の質問にどうもあまり答えていただけない、残念であります。私が今申し上げたような点については、後刻一つ書類でもって見解を発表してほしいと思うのです。今利子補給の問題でいろんな批判が出ているのは、やはり問題が正しく把握できないということです。それからもう一つ政府の施策は、はっきり言うと無原則のきらいがあるわけです。たとえば利子補給をしながら、海運同盟を乱すというようなものについては規制をするのかしないのか、そういう点もはっきりしないし、それから先般お尋ねしたように、利子補給しながら、一たん外航でうまくないといえば内航へ持ってくるので、内航船圧迫の問題もある。こういう点についても、何とか研究しようというだけであって的確な方策はない。  それからもう一つつけ加えてお尋ねしたいのは、この法案ができる際に問題になったと思うのでありますが、管理委員会を設けて管理体制を確立していこうという話があったと記憶しております。これは何でこの法案には載らなかったのか、これを一つお尋ねします。
  39. 朝田静夫

    朝田政府委員 お説のように管理委員会を設けまして、海運企業から企業の強化計画を提出させまして、それを審査いたしまして適当と認めたものについて利子補給をしよう、しかも今までにやっております経理節減を主といたしまする合理化以上に、ある程度積極的な合理化計画というものをやらせよう、こういう考え方は当初あったのでございます。この点につきましては、私どもの考えを盛り込んで予算折衝の場合でも管理委員会に要する経費を要求いたしたのでございます。政府部内で種々検討いたしました結果、いずれにいたしましても運輸省なり政府の中に、そういう管理委員会というものを置きます際には、どうしても諮問機関のような形にならざるを得ない。ということになりますと、やはり運輸大臣が最終的な責任機関として実施して参らなければならぬということにもなりますので、民間の知識、経験を活用することにつきましては、別の方法でこれが達成できるというような考え方をいたしまして、責任の分界というものがあいまいになるようなその他の委員会というものは好ましくないという結論に産しました。管理委員会がなくても、管理委員会がやろうと予定しておりました機能は十分果たして参りたい、こういうふうに考えておるのでございます。
  40. 久保三郎

    ○久保委員 率直に言うと、大蔵省がこれ以上この問題で予算をつけることは反対だということでやめたのじゃないのですか。本来ならば利子補給よりは経営基盤の強化で管理体制を強めていく方が重点だとは思うのですが、実際は——いずれにしきてもこの問題はあとで白書とか、そういうものをちょうだいして政府の方策をしさいに検討したいと思いますが、ここで最後に大臣に再び申し上げておきますが、この前も予算委員会で申し上げたように、戦時補償をやってないからこれは戦時補償のためにやるんだというふうに何回も繰り返されているが、これは誤りだと私は思うのです。もうやる時期でないのですよ。船主協会がもしもいまだにそういうことを錦の御旗のように振りかざしていくとするならば、国民大衆の大きな反撃を食うと思う。またそういうことでは、国際競争に勝っていくようなものにはできないと思う。いつまでも二百億とか五百億とか損した、そのときの船の代金を返してくれ、そういう脅迫に乗って政治はやるべきでないと思う。ところが大臣はさっきも戦後補償の問題を出した。私はもう不見識だと思うのです。戦後十五年、しかも国際競争にたえていかなければならぬということならば、真剣にかからなければならない。そこに経営法律の強化が業界において、できない一つの大きな原因があると思う。私はこれはこの前もあなたに申し上げた。船主協会やあるいは内閣でそういう考え方を持っていれば大きな誤りであると思いまして、強く反省を求めます。
  41. 楢橋渡

    楢橋国務大臣 戦時補償をやっておらないからやるという意味ではありませんの、で、戦時補償をやってないために、それから二千何百億という借金を持ってやっておるその実態が、外国競争相手と体系等から比較してみますとあまりにも重圧であるから、その点についてこれを配慮するというのであって、戦時補償をしておらぬから補償してやるという意味ではなくして、戦時補償をしておらないという現実の事実、彼らは非常に膨大な借金を持って自主的にやっておるけれども、そのやっておる姿というものは、国際的な相手方のやっておるすべての助成政策からいえば、あまりにも落差がある、これを二つ補強してやろう、こういうここでありまして、そういう点で一つ了承願いたいと思うのです。
  42. 平井義一

    平井委員長 他に質疑はございませんか。
  43. 館俊三

    ○館委員 二十八年から二十九年にかけてこの委員会でこの問題で非常に混雑を来たした。そうして、たしか二十六年ごろまでさかのぼって利子補給をやったのだと思っておる。そうでしたね。そうすると今日まで十年くらいかかって利子補給を続けてきて、それで。なおかつ経営基盤の強化が、できない。そうしてまたぞろ、大蔵省が反対するにもかかわらず、利子補給を頼む拝むというてこういう形が、できてきに。私はその時分に岡田海運局長に対して、今後海運界の経済はどうなるのだ、好況になるのか不況になるのか、見通しはどうだと聞いたところが、好況になるという見通しはありませんという話でした。現実に今利子補填をやって、三部の経営基盤強化を達成するのだというお話もあるのだが、一千億の借金を持っていて、その借金は返してもらわなけれならぬ、利子も払ってもらわなければならぬ、そこで今この法案をかけて、何年ごろになったら経済界もよくなって、海運経済界もよくなって、利子が返してもらえるのか、それから元金が返してもらえるかという、経済界、海運界の見通しについて私は非常に心配しておる。そういうことになると、この法律は永久的な法律になってしまっても利子補給をしなければならぬ、そういう形が出てくるに違いないと私は思う。今運輸大臣の話や海運局長の話を聞いておりましても、国際競争にたえ得るためにということなんだが、国際海運界が一生懸命やっておる、それが、国内外航船舶は、運輸省あるいは海運局長からいろいろな示唆あるいは強制を受けておりながら、それの言うことを聞かないらしいのじゃないですか。二重の競争にたえられなくなっておるのが日本海運界で、でたらめな海運政策のために、造船のために、今日こういうはめになっておる。いつになったらこの法律はこれでよろしいということになるのか。そういう見当を持たないで国費をむやみにつぎ込んでしまう。島口君の話じゃないけれども、中小企業の問題を並べてみても寒心にたえないので、見通しはどうかということをちょっとおっしゃって下さい。
  44. 朝田静夫

    朝田政府委員 二千五百億の借金をかかえておって、いつになったら全部完済できるのか、こういうことでございますが、何年になれば各企業が立ち直ってということを、今明確な年限を切って申し上げる自信もございません。これは国際海運の動向にもよりましょうし、世界的な海運市況にもよると思うのでございますが、企業企業でみずから血のにじみ出るような努力をするということは当然のことでございます。従って私どもは、企業強化計画というものを出させまして、できるだけ早い機会に立ち直って、みずからの力で国際競争にたえていくという計画を推進していきたいというふうに考えておるのでございます。
  45. 館俊三

    ○館委員 この十年間、利子補給船会社が受け取った間に、好景気のときもなかったわけではない。そのときにおける配当状態はどうなっておるか。配当しないでも国から借りたものは返さなきゃいかぬ、その点はどうなっておるか。配当制限があるはずだ。
  46. 朝田静夫

    朝田政府委員 先ほども申し上げましたように、配当の問題につきましては、会社利益率がある一定の率にまで達しますと利子補給金は返さなければならぬことは、現行法の第十二条と第十三条に明記してある通りでございます。この利益率政令で定めておりますけれども、先ほど申し上げましたように、これを一割を八分、一割五分を一割二分というふうに下げる方針でございますが、この利益率がそのまま配当率にならないのでございまして、それより若干低めの配当率になるわけであります。好況のときに配当をいたしました会社は事実ございましたが、その当時スエズ動乱によりますところのブームが現出いたしまして、従いまして、政府は十三次船以降の利子補給をしなかったわけでございます。従いまして十三次、十四次、十五次にわたって利子補給をしないで今日まできた、こういうことでございます。
  47. 館俊三

    ○館委員 その話を聞きたかったのです。スエズ運河のときに大へんもうけてきた。三十二年でしたか、三十二年から三十三年、三十四年にかけて船会社は非常に利益があった。そこで利子補給を断わった。なぜ断わったかという裏幕は、利子補給を受けておったのでは制限配当しかできないので、制限配当をこえて配当をたくさんやりたいために利子補給を断わった、そういう風聞が流れておる。われわれは信ずるのでありますが、そういう商社根性、商人根性というか、そういうものでは日本海運の再建なんかできやしないのです。利子補給を受け取ったのでは配当制限があるから、たくさんもうかっても配当ができない、そういう意味で利子補給会社から断わった。政府で断わったのではなく、当局からやめたのじゃなくて、配当がたくさんほしいために会社みずからが利子補給を断念した、そういう非難がある。そうしておいて、三十三年、三十四年になって今度また少しずつぐらついてきた。国際海運競争が激しくなってきた。国内における外航船をやっている会社競争の統制がとれない、そういうことで困難してきて、しかも八幡の鉄鉱船のような問題が出てくる。国内における海運業の統制というものができておらない。国際競争をやる時分に、国内が自由主義体制でやっておっては、勝てる道理がない。そういうところへ利子補給をつぎ込んでいったら、そうして前途の見通しがつかぬという海運局長のお話だが、この法律案はいつまでたっても続いていく。それでは国の費用をむだにつぎ込むことになる。それは、戦時中非常に災害をこうむって、それを補償しておらぬということになれば、国民の大多数のうちで、大小にかかわらず戦時のために非常に困難したものがたくさんある。もうそういうときは過ぎておる。今こそ自由主義経済のもとで、日本船会社は十分に経営合理化を、てんでんばらばらにでもいいからやって、弱肉強食が自由主義経済建前なのだから、やるべきだ。(笑声)そういうところを今までおせっかいをするがゆえに自立ができない。笑いごとじゃない。あんまりおせっかいが過ぎる。私はそういう意味において、見通しのつかないこの法律案をいつまでもやっていることに非常に百不信、不安を持つ。
  48. 平井義一

    平井委員長 島口重次郎君——。簡潔に願います。
  49. 島口重次郎

    島口委員 先ほど運輸大臣答弁によりますると、国鉄利子補給の問題は賛成であるけれども、大蔵大臣了承しない、こういう答弁があったのでありまするが、大蔵大臣はいかなる見解国鉄利子補給は反対して、船舶に対する利子補給賛成したか、おわかりでありましたら御答弁願いたいと思います。  さらにもう一点、運輸大臣楢橋さんは、現段階では手おくれだと、こうおっしゃるかもわかりませんけれども、この海運業界に関する利子補給国鉄利子補給に切りかえいたしまする折衝をする場合に、非常な異議があると思いまするが、その意思があるかないかをお尋ねしたいと思います。
  50. 楢橋渡

    楢橋国務大臣 今、佐藤大蔵大臣の心理的経過はちょっと私にはわかりませんが、財政上その他いろいろな点からやはり大蔵大臣はそういう態度をとっておると思うのでありまして、また今の段階で利子補給国鉄の方の利子補給にすりかえるということは考えておりません。また別個の問題と考えております。
  51. 平井義一

    平井委員長 他に御質問もありませんので、これにて本案に対する質疑は終局いたしました。
  52. 平井義一

    平井委員長 これより討論に入りたいと存じますが、討論の申し出もありませんので、これより直ちに採決いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  53. 平井義一

    平井委員長 御異議なしと認め、これより採決いたします。  外航船舶建造融資利子補給及び損失補償法の一部を改正する法律案賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  54. 平井義一

    平井委員長 起立多数。よって、本案は原案の通り可決すべきものと決しました。  ただいま可決いたしました本案の報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  55. 平井義一

    平井委員長 御異議なしと認め、さよう決しました。  この際、政府当局より発言を求められております。楢橋運輸大臣
  56. 楢橋渡

    楢橋国務大臣 どうもありがとうございました。      ————◇—————
  57. 平井義一

    平井委員長 次に、道路運送法の一部を改正する法律案を議題とし、審査を行ないます。  質疑の通告がありますので、これを許します。土井直作君。
  58. 土井直作

    ○土井委員 この際運輸大臣お尋ね申し上げたいのは、今回の道路運送法の改正に関連いたしまして、現在の自動車行政は、いろいろな角度から見て参りまして、改正すべき点が多々あるように思われるのであります。従って、今後における自動車行政に関する運輸大臣としての方針をこの際お伺いいたしたいのであります。それは具体的に申し上げまするならば、現在運審の方で答申がございまして、東京都内におきましては約二千八百台の自動車を許可すべきである、こういう決定を見ておるのでありまするが、現在の、実情から見て参りましても、まだ全部的にこの答申に従うところの許可がなされておらないのであります。しかし自動車の需要の点は時々刻々と増加しておりまして、一般の需要者の要求にこたえることができておりません。従って、二千八百台の許可をいつごろまでになされるつもりであるか。それから、二千八百台のものを許可されまして、なおかつ不足をいたす情勢でございます。ことに一九六四年にはオリンピックが日本で開かれます。従って、そういうような面から考えましても、今後のいわゆる自動車行政の対策というものを今から講じていかなければならないと思いまするが、この点に関しまして、運輸大臣として、今後の自動車行政に関する方針をどういうふうに考えられておるか、明らかにしていただきたいと思うのであります。
  59. 楢橋渡

    楢橋国務大臣 今、土井委員の御指摘になりましたように、自動車、特にハイヤー、タクシーというものが非常な不足をしておって、東京におきましても、都民に非常な迷惑をかけておるような次第でありますので、さきに答申を得ました二千八百台につきましては——現在申請件数六千九百件のうち、五千七百件だけ聴聞が終わりましたので、残りの千二百件はすみやかに処理いたしまして、自動車運送協議会の、つまり二千八百台につきましては、六月末までにはこれを解決をしたい。しかし六月末ではおそいのだから、できるだけ早くやれということを当局の方にも私の方から自動車局長を通じて申しておるような次第であります。土井さんも御存じのように、一々聴聞して現場等を見るというような関係がありまして、東陸等の人員等の関係がありまして、はなはだ遅延して世間の期待に十分沿えない点は恐縮いたしておりますが、できるだけ督励して、一日も早く市中を走るようにさしたい、こう思うのであります。  第二点につきましては、御指摘のように、とうてい二千八百台では足りませんので、引き続き答申を求めて増車さしたいと思うので、先般、私、岸道路公団総裁に——あの人がその委員長になっておりますので、お会いいたしまして、至急やはりあと引き続いてなにしてもらうように実は要請しておるような次第でございます。
  60. 土井直作

    ○土井委員 二千八百台の許可の問題は、六月末ごろまでに聴聞会が終了すれば片づけたい、こういう御答弁でございまするが、これは早急にやっていただきたいと思います。さらに今後これを増加しめなければならないという問題については、今協議会の方に、それぞれ大臣から、審議をしてもらうように要請しておるということでありまするが、これは、はなはだそういうことを申し上げては恐縮でありますけれども、今そういう質問があったということでなくて、具体的にはやはり再類なりあるいは何かによってそういう要請を運輸大臣がしなければならないと思いますが、そういう手続はとっておられますかどうか、この点をお伺いします。
  61. 楢橋渡

    楢橋国務大臣 先般、私、岸さんとプライベートといってはなんですが、話をしまして、東陸の方に手続をするように申しておるのでありまして、前の二千八百台というものが処理されたら直ちに次の増車する分を決定してもらうような下準備と申しますか、そういうことをしてもらいたいということを申しておるのでありまして、今お話のありましたように、あとの分もできるだけ早く答申を得るような段取りを今つけさせつつあるのであります。
  62. 土井直作

    ○土井委員 そこで、なおお聞きしておきたいと思いますることは、御存じ通りオリンピックが参りまするについて、外国の人は、いわゆる国産車、日本の車では満足をしないというような傾向がございまするが、現在、運輸省では外車の輸入を大体禁止されておるようでありまするが、今後これに対処するために外車の輸入をするというようなお考えは持っておられるのかどうか、この点をお伺いします。
  63. 國友康弘

    國友政府委員 外車の輸入につきましては、ハイヤー、タクシー事業と新聞報道関係に外車を毎年相当数輸入しておりまして、この三月に、本年度分として四百両ほどの輸入をいたすことになって手続をいたしましたのですが、今後貿易の自由化にも即しまして、外車のハイヤー、タクシー事業への輸入については促進していきたいと考えております。
  64. 土井直作

    ○土井委員 いずれにいたしましても、ハイヤー、タクシーが非常に少ないので、そのために需要家が非常に困難をしておるということでありますが、今回の道路運送法の改正は、いわゆるやみタク、言いかえれば白タク等に対する取り締まりを対象にしておるように考えるのであります。事実われわれが体験いたしまするところによりますれば、四、五年前までは、やみタクの諸君は、実を言えば遠慮気がねをしながらやっておったような状態であったのでありまするが、最近の状態を見ますると、これは白昼堂々と横行闊歩しておる。そうして流しをどんどんやって、路傍に自動車を必要とするだろうと思う人がおりますれば、そこへどんどんつけて、そうしてお客を拾っていくというようなことを公然とやっておるのであります。これに対する取り締まりというものが一体どういう形で行なわれておるのか、私としてはちょっと疑問に感ずるわけであります。ことに共済組合であるか、あるいは白タクの集団であるかどうかわかりませんが、新橋の駅、十時半あるいは十一時半ごろ、いわゆるあの方面のラッシュ・アワーというようなときでありまするが、そこへ参りますると、何といいますか、客引きというあまり風采のよくない連中が五、六人いて、そうして新宿までは一人三百円、あるいは渋谷まではやはり二百円というような調子で、乗り合いの形で五人なり拾えば初めて出る。それまでは客を待たしておく。それで普通のタクシーがそこへつけるわけにはいかない。もしタクシーがそこへつければ、それを暴力で追っ払ってしまうというような傾向さえも出てきております。これは、おそらく局長の方でもそういう事実を御存じであって、ただ手不足その他のことで取り締まりができておらないのかもしれませんけれども、そういう点について事実を知っておられるかどうか、知っておられながら、なおそれに取り締まりができないならば、一体どういう意味において取り締まりができないのか、こういう点について御質問申し上げます。
  65. 國友康弘

    國友政府委員 取り締まりに関しましては、陸運局及び陸運事務所で、その取り締まりを警察と協力して実行するという建前で現在実施しておりますが、先生がおっしゃいますように人手不足でありまして、全部に及ぼすことがいまだでき得ない状態でありますが、私といたしても、夜間、駅に白ナンバーの自動車が集まって客引きをする状態、あるいは競輪場、あるいは野球場その他において、白ナンバー・タクシーが集まっております状態はよく存じておりまして、何とかこれの絶滅を期するように措置をいたさなければならないと考えておりまして、運輸省といたしましても、今申し上げましたように、警察当局と協力をして取り締まりに努力をしておりまして、昨年四月以来、全国で約九百名に対しまして、道路運送法第四条あるいは第百一条違反として自家用自動車の使用禁止処分を行ないました。これにつきましては聴聞をいたしまして、全部証拠を収集して、こういう自家用自動車の禁止処分をいたすわけでありますが、そのほかこれでも実効の上がらない部面がございますので、さらに警察当局あるいは検察当局に対しまして約五百二十名告発いたしました。これはやはり取り締まりをし、今回の道路運送法に関しましても罰則の強化という問題を取り上げておりますが、やはり違法行為に対しては刑事処分をされなければならないと考えておりますので告発をいたしまして、これらの者のうち約四百八十名が警察の方で取り調べを、受けて検察庁に送致されております。さらに百六十六名がすでに起訴されておる、こういう状態でございますが、現在われわれの方で大体把握しております白ナンバー・タクシーの数字は相当多いのでありまして、組織を持って行なっているものは全国で団体数は約百ございまして、活動しております都市は約六十ございますが、約二千両程度のものが組織を持って活動をしております。このほか組織をしていない白ナンバー・タクシーというのが、これは把握のしようが非常にむずかしいのでありますが、相当数に上っておる状態でございます。これらに対しましては先生も先ほどおっしゃいましたように、私も申し上げましたように、陸運事務所の人手不足のために全体的に大々的にやることはできませんけれども、特にしょうけつをきわめておる都市というようなところでは、われわれとしては積極的に努力をいたしたいと考えておりますが、陸運事務所の所属の問題等に関連いたしまして、実効の上がらない部面もございますが、しかし当局の取り締まりなどが原因となりまして、昨年の九月以降共済組合の点では十六組合、約百五十両ほどが解散をいたしまして、この程度の効果は上がっておるのでございますが、今後道路運送法の改正が御審議を経て通過されました暁には、さらに警察当局ともよく連絡をとりまして、白ナンバー・タクシーの根絶に努力をしていきたいと考えておる次第でございます。
  66. 土井直作

    ○土井委員 白ナンバー・タクシーが実際上法違反の形でやっておるからこれを取り締まられることは当然でございますが、実際上の問題としては白ナンバー・タクシーが横行闊歩するという大きな原因は、先ほど自動車行政に対する大臣の御意見を聞かしていただいたのでありますが、車が足りないというところに原因があると思うのであります。ですから営業用のタクシー、ハイヤー等を大幅に許可すれば、あの種のものが実際上仕事をするということは不可能ではないか。それはもとより絶滅するということはなかなか困難でありましょうが、元来客を拾うのに自家用車である場合においては、お客としてはあまり手をあげないのであります。向こうが立ち寄ってくるということで、それはなぜかといえばそれだけ自動車が少ないからである。たくさん来ますれば何も白タクを選ばなければならない、自分のそばへ来ても、それを利用しなければならないという必要はないのであります。従って、実質的には営業用のタクシーが少ないのだからして、この際大幅に、やはり早く協議会を経てこれを増強するという対策をとることによって問題がかなり解決するのではないかと思いますが、この点に対する大臣または局長の御見解を聞かしていただきたいと思います。
  67. 楢橋渡

    楢橋国務大臣 御説ごもっともでありまして、やはり白タクが横行するということは需要と供給のアンバランスからくる間隙に乗じてそういうものが族生しておるのでありまして、私も先般北九州等に参りまして、小倉市におきまして、非常に急激な人口がふえているのに白タクが横行して、しかもそれに暴力団が結びついて三人くらい殺されたというような大きな事件が起こって、各地で白タクの持ちます一つの方向というものが次第に暴力団と結びついて非常な犯罪的温床にすらなりつつあるという状況でありますので、先般も石原長官ともその点について打ち合わせをいたしまして警察の協力を求めておるような次第でありますが、今、土井さんがおっしゃいますように、やはり根本は車が足りないという点でありますので、ことに聞くところによれば、東京のごときは五年もストップしておって、ようやく二千八百台の増車の答申をしたというような状態で、これは運輸行政上非常にまずいことだと思うので、全国的に増車をさせ、こういうような根源を断つように努力させる、こういうように考えます。
  68. 土井直作

    ○土井委員 大臣が積極的に増車の考え方を持っておることに対しては私も非常に賛意を表するのであります。そこで今度の道路運送法の改正によりまして、従来いわゆる違反を犯した者に対する罰則が直接的には十分に徹底することができなかったが、おそらく今度の法律改正によって相当積極的にそれをやることができるようになると思うのであります。ただその場合に特にお聞きしておきたいと思いますことは、いわゆる自家用自動車の使用者の事業場に立ち入ることができるように、ここでは改正の点で書いてありまするが、実際上においてこれはどういうところに意図があるのか、どういう条件のときにどうするのかということについて、具体的にもし考えがあればこの際御解明を願いたいと思います。
  69. 國友康弘

    國友政府委員 自家用自動車を所有しております者の組織する団体の事務所その他の事業場に検査等に立ち入ることができるという規定につきましては、自家用自動車の形式をもちまして、たとえばドライブ・クラブが現在自家用の範疇に入っておりますが、これらに関しましても今後ドライブ・クラブはオリンピックも控えまして私どもとしてはやはり発展さしていかなければならない事業であると考えておりますが、これらのものに対しまする検査を一般事業用、自動車と同じように扱いたい。また共済タクシーにつきましては一定の事務所等を設置いたしまして白タク行為をやっておりますが、これらのものに対しましてはやはり立ち入り検査をいたしたいということで、立ち入り権の範囲を若干拡張することにいたしたわけでありますが、これらに関しまして事業場でございますので、これは普通の人が住居しております家屋等には入らない。事業場というような形で一定の区画で自動車を置いておりますところには立ち入りができる、こういう解釈でおるのでございます。
  70. 土井直作

    ○土井委員 事業場ということになりますると、その事業場というものは最初から違反をやるというようなことを前提として事業場が設けられておることになると思うのですが、それはそういうふうな解釈でいいのですか。事業場というものが、自家用車の場合にはそういうものはあるのですか。
  71. 國友康弘

    國友政府委員 事業場と申しますのは、今御質問のございました営利的事業の場合は事業場ということはわかりますが、しかし、非常利的な事業でありましても事業の経営というものはあると思いますので、その事業経営の内容であるところの活動が行なわれている一定の場所は事業場というふうに解釈しております。これは営利事業であると非営利事業であるとを問いませんけれども、少なくともその事業活動のために区画された一定の場所が必要でありまして、先ほど申し上げましたように、一般の住居内においてたまたま事業活動が行なわれているというような場合は、私どもは事業場とは解釈しておりません。
  72. 土井直作

    ○土井委員 それは非常にむずかしい問題でしょうが、事業場というような形からいきますと、たとえばトラック事業のような場合、ある大きな会社が自分の仕事に利用するために自家用車をたくさん持っておるという場合には事業場ということが言い得ると思うのですが、一般のやみタクや何かをやっておるものは事業場という形を認めることができるかどうか。この法律の中では事業場というものを認めておるわけです。おそらくこれは、共済組合のようなものがあって、その共済組合がタクシー事業をやっておるということを一応想定したり、あるいはドライブ・クラブが将来やみタクのようなことをやる場合のことも想定されているのかもしれぬけれども、元来事業場ということ自体は認められないのが原則じゃはいかと思うのです。この法律対象となる事業場というものは一体どういうところにあるのか、いわゆる共済組合がタクシーのような事業をやっておりとか、ドライブ・クラブとか、先ほど局長が言われたようなそういうものの違反をあらかじめ想定してこの法律の内容を決定されておるのかどうか、その点ちょっと疑問に思うのですが、いかがでしょう。
  73. 國友康弘

    國友政府委員 事業場といいますと、あたかも自動車運送事業を遂行するというふうにあるいは読めるかとも思いますが、この事業場というのは、そういう自動車運送事業という形ではなしに、一定の区画をもって事業活動をしておる場所という意味でありまして、これはすぐに自動車運送事業に結びつくものではないのでございます。と同時に、この百二十六条の考え方といたしましては、単に違反の摘発とかいうことではなしに、いろいろな資料を収集するとか、あるいは指導をするとかいうような意味におきましても、立ち入り権の若干の拡張を認めたいということでございまして、その間に違反行為に対する根絶の指導等もいたすと思いますけれども、大体、その検査とか、調査とか、その自動車に対するいろいろな道路運送車両法上の問題もございますが、そういう検査、立ち入りを認める権限を与えたい、こう考えておるところでございます。
  74. 土井直作

    ○土井委員 自動車運送事業法によるところの事業場というものの対象と今局長の言われる事業場というものとは、内容的には違うのじゃないかというような気がするのです。たとえばそこまで立ち入っていろいろやらなければならないという事業場、これはあくまでも想定であって、確定的なものではないはずだと思うのです。なぜかといえば、いわゆる共済タクシーのごときは、元来法律的にも実際的にも認められておらないでしょう。認められておらないものを事業場という形で認定するということは法的にもちょっとおかしいような気がするのですが、この点はどうなんですか。
  75. 國友康弘

    國友政府委員 これは、先ほど申し上げましたように、自動車運送事業を遂行し、あるいは自動車運送事業と類似の行為をいたします事業をする事業場という意味ではございませんで、たとえば事務所とか、営業所とか、あるいは事務室というふうに通称呼ばれる場所があると思いますが、そういう一定の区画をされました事務所とか事務室とかいうようなところを、この法律では事業場と称しておるのであります。
  76. 土井直作

    ○土井委員 この点についてはいろいろ見解の違う点がございますので、あとで伺いたいと思います。  そこで、なおお聞きいたしたいと思いますが、自家用自動車というものにはトラックも包含されておりますね。
  77. 國友康弘

    國友政府委員 入っております。
  78. 土井直作

    ○土井委員 ところが実際は、今取り締まりの対象になっておるのは、営業用のタクシーとかあるいはハイヤーとかいうものを対象にしておるのですね。
  79. 國友康弘

    國友政府委員 今回の道路運送法の改正に関しましては、もちろん白ナンバー・タクシーの取り締まりも考えておりますが、もぐりトラックの取り締まりに関しましても、当然この規定で取り締まりを進めていくところでございます。
  80. 土井直作

    ○土井委員 局長から明快な御答弁をいただいたので私も非常に満足するのでありますが、実は自家用トラックというものが白ナンバーのタクシーよりももっと公々然と今まで違反をやっておるのです。おそらく自家用トラックの八割から九割は、全部いわゆる道路運送法の第百二条に該当する違反を公然とやっておる。これが放置されておる。それは私の考え方では、事実上の問題として各事業会社が自家用車をたくさん持ってやるよりも、いわゆる外にある自家用ナンバーを持っておるものを雇い入れて有償で運ばせておるということが、産業構造上から見てやむを得ない一つの抜け道として行なわれておるのではないか。はなはだしいのになりますと一番問題になって、この前永野運輸大臣も朝の五時ごろ、いわゆる京浜国道方面を疾走するトラック隊を調査のために出かけたことがありますが、今特に自家用トラックとして一番公然と違反をやっておるのは砂利トラックです。砂利トラックのおそらく八割から九割というものは自家用車で個人持ちです。そういうものが堂々と平然と運行されておる。ところがこれには手をつけておらない。これはやはり事業形態の中から、日本産業が実質的には自家用車を自分のところで使って事業に役立たせるということよりも、他からその供給を仰ぐということが経営上、採算上よろしいという考え方でやっておるのではないかと思うのです。この点に対する取り締まりという事柄は、ハイヤー、タクシーなんかに対する取り締まりと法律的には同一の対象をもって臨まなければならないわけですけれども、実質的には運輸当局としては幾らか区分して考えておるのじゃないか。実際はこう思っておるのでありますが、今後の取り締まりの方針としては一体どうお考えになっておるか。実はきのうも私、タクシーに乗りまして虎の門のところまでやってきました。九時ごろだと思いましたが、そうすると、虎の門のところで赤信号があるにもかかわらず、砂利トラックが突っ走っておる。タクシーの運転手に、ああいう違反行為をやっておる、と言うと、あれは砂利トラといいましてわれわれでもこれを避けるのだ、われわれも相当専門家であるけれども、あの砂利トラという名称のトラックが来たらわれわれも遠慮しなければあぶなくてしょうがない、こう言っておるのであります。そういうふうにいわゆるトラックの自家用車というものはほとんど違反を行なっておるというのでありますが、それに対する当局の見解、いわゆる取り締まりの対象として今後どう考えられるか、この点をお伺いしたいと思います。
  81. 國友康弘

    國友政府委員 砂利トラックの問題につきましては、事故防止の観点からも大いに取り締まっていかなければならない点と考えております。ことに先般の新子安の火薬の爆発等の事故も、現在砂利トラックの運転手の過失と推定されておりますが、そのような状況であのような大きな事故が起こりましたので、これらに関しましては現在警察当局と十分連絡をとって取り締まりを進めていくようにいたしております。今お話のございました白ナンバー・トラック、もぐりトラックの問題に関しましては、たとえば道路運送法で申しますと、無償で自家用自動車の貸し渡しをする場合には許可が要らないのであります。有償で貸し渡しをする場合には運輸大臣、すなわち陸運局長の許可が要ることになっております。この許可を得ますれば有償で貸し渡しをすることができますが、大型のトラックはそういう措置はいたしておらないと思います。そこでそういう状況で運用されておるのでございますが、これらに関しましては、従来から、私どもといたしましても、むしろ白ナンバー・タクシーよりも先に取り締まりを進めておりまして、昭和三十四年中におきまして、全国の違反摘発件数は、無免許営業のかどで摘発されましたものが七百七十五件、有償運送行為のかどで摘発されましたものが六千九百八十三件、その他が二万一千七百九十一件、合計三万九千五百四十九件になっておるのであります。この中で処分といたしましては、自動車の使用禁止をいたしましたものが四千四十三件、訓戒をいたしましたものが六千六十九件、その他一万三千三百二十九件でございまして、このように取り締まりはいたしておりますし、今後この道路運送法が改正されました暁には、先ほど先生のお話がございましたように取り締まりがしやすくなると考えておりますし、積極的にこのもぐりトラックの点につきましても是正させるための取り締まりをさせていきたいと考えております。昭和三十四年度でも今申し上げました程度の処分をいたしておるわけでありますが、何しろこのもぐりトラックの問題に関しましては数が非常に多いものでありますから、われわれは少ない人数で非常に多い数のものを追っかけまして取り締まりに当たっておるという状態でございますが、警察とも連絡を十分とっておりますし、砂利トラックの問題等に関しましては事故防止の問題もございまして、警察当局でも今後これを積極的に取り上げようといたしておりますから、私の方と警察の方とで努力いたしまして、是正の方向に持っていきたいと考えております。
  82. 土井直作

    ○土井委員 私は、自家用自動車に対する道路運送法違反に関する事項ということで、取り締まりだけを強化しろというようなことに観点を向けておるのではないのです。私の考え方というのは、日本のいわゆる産業構造の中で、自家用トラックというものが実質的にはその一つ一つ企業の歯車を回転させるためにやむを得ない一つの仕事をやっておるのじゃないか、こう考えられるので、従ってこれを違反だから取り締まってびしびしやっつければよろしいというのではなくて、むしろ今後のこの種のものに対する考え方は、これは運輸大臣にもお聞き願いたいのでありますが、国として産業構造上この種のものをどう、取り扱う方がいいのか、この点は考えていただかなければまずいのじゃないか。これを極端に取り締まりをして、びしびしやっつければそれで事が済むというのではなくて、むしろこれはある意味における必要悪といいますか、法律の上からは罰せられなければならないけれども、いわゆる生産をやる面においてはやむを得ない存在、こういう形のものがかなり強くあるのじゃないか。従っていわゆる国の産業育成という面から見て、自家用トラックというようなものは単なる取り締まりをするという対象でなくて、もっと違った角度からこれを見る必要がある、こう考えるのでありますが、いかがででございましょうか。
  83. 楢橋渡

    楢橋国務大臣 御説ごもっともでありまして、今おっしゃいますように、やはり経済構造の上から、またその持っている機能が、そういうように自然発生的にできており、社会の要請にこたえ得る面があるとすれば、私は今おっしゃいましたようにこの面につきましては、取り締まりも別の角度からこれらのものの生きていく一つの方向あるいはこれを合理づける方向に持っていきたいと思うのでありまして、それらの方法について至急勘案したいと思います。
  84. 土井直作

    ○土井委員 それでは、いろいろ大臣の御都合もおありだそうでありますから、この際大いに譲歩いたしまして、私の質問は次会に留保することにいたしまして、一応質問を終わらせていただきます。      ————◇—————
  85. 平井義一

    平井委員長 次に、海上保安に関する件について調査を行ないます。  質疑の通告がありますので、これを許します。田中稔男君。
  86. 田中稔男

    ○田中(稔)委員  まず大臣お尋ねしたいと思いますが、大臣楢橋渡君は、少年のころ炭鉱に働き、その後苦学して弁護士試験に及第し、今日大臣の地位につかれて、その立身出世美談はだれも知っているところであります。若いころ炭鉱で働かれた体験からして、炭鉱の労働者の苦しい事情はよくわかると思う。たまたま大臣と私は同じ選挙区であります。私どもの選挙区の大牟田で三井三池の炭鉱の深刻な争議が行なわれている。その場合に労働法において認められている労働者の団体行動権、特にピケの権利、こういうことは大臣は十分理解をされ、これを尊重するというお気持があろうと思いますが、どうですか。
  87. 楢橋渡

    楢橋国務大臣 私も実は三池炭鉱の争議については非常に憂慮しておる一員でありまして、かつて田中君が選挙に出る前は、三池炭鉱の労働者は私に全部票を入れておったのです、昭和十七年は。あと田中君が出てきてから分かれたのですが、従ってこのたびの事件につきましても非常に憂慮をいたしておりまして、また私は法制局長官のときに、労働法を起案した人間でもありますから、公正なる労働行為というものを尊重すべきことはもちろんでありますので、合法的なピケ等についてこれを尊重することはあたりまえだと思うのです。
  88. 田中稔男

    ○田中(稔)委員 ところが実はあなたの所管事項にかかることですが、海上保安庁の船、これが会社側にくみし、第二組合側に協力して正当なピケ行為を妨害している、こういう重大な事実があるのであります。大臣も御承知の西日本新聞には、そのことの詳細が書いてあります。ごく要点だけをちょっと読んでみますが、会社側は第二組合の組合員を約三百人、チャーターした鳴潮丸という船に乗せて熊本県の三角港から大牟田の第二人工島に向かって海上輸送をやったのであります。ところが三角海上保安部はその輸送を援護するというようなことで、これに協力している。さらにまた一部の資材の輸送にも当たったというようなことが言われておるのでありますが、このことにつきまして、運輸省の方に報告が来ておると思いますから、こういうことの事実について、まずわかっている限り詳細に一つ御説明願いたいと思います。
  89. 楢橋渡

    楢橋国務大臣 海上保安庁としては、労働争議には不介入の立場をとるべきことは当然のことでありますし、また介入すべきことではありません。その報告を聞きますと、一部新聞に伝えられておるような、海上保安庁の巡視艇が新組合に便宜を供与したというようなことは、全然事実に相違いたしておりますので、この点において御説明を申し上げたいと思うのであります。  ただいままでの報告によりますと、二十七日の午後八時三十分過ぎに、有明海の長州を出港して第二人工島に向かった第二組合員を乗せました漁船十三隻が、一時間たっても未着であって消息不明というので捜索してほしいという旨を、会社側、これは人事部の人事係長谷口という人からの連絡を受けましたので、三池海上保安署では、灯台見回り船「ありあけ」その他をして捜索に出たらしめたのであります。「ありあけ」は三池の南防波堤にいる新組合員に対しまして、その捜索中の船が到着しているかどうかを確認するため、第二人工島桟橋に到着して、係船して、搭乗保安官が調査のために上陸しておる問に、大牟田港を出港した新組合の傭船である「さらし丸」が「ありあけ」の左舷に接舷上陸したのであります。  なお、その際他の巡視艇「うぐいす」「すずなみ」は、「ありあけ」に接舷しようとする船影を認めましたので、捜索中の船であるかどうかということを確認するため探照灯を照らした。「さらし丸」の便乗者に便宜を供与する意図をもって照明灯を照らしたのではないという報告を受けておるのであります。  それで私からも、海上保安庁としては争議介入は絶対にしてはならない、しかしながら、海上において暴力行為等が、あるいは公共の秩序を乱すような不法行為がある場合におきましては、会社側といわず、組合側といわず、取り締まるべきであって、紛争に際して衝突その他によって海難等がある場合においては、当然海上保安庁の責任として救助に当たるべきであるということを指示しておるような次第であります。
  90. 田中稔男

    ○田中(稔)委員 どうも大臣の話は事実とだいぶん相違しているようであります。実は二十七日の夜にそういうことが起こったのでありますが、私どもは二十八日の午前一時ごろでありましたが、三池海上保安署に参りまして、保安署長の鳥丸猪之市、次長の徳永淳、こういう保安官と会いまして、そうしていろいろ事実を究明したのであります。これらの保安官は、会社とは何ら関係なく行動したのだと申しておりますけれども、しかしながらだれが考えましても、この場合、会社と何らの連絡がなかったわけではないと思います。そうすると、こういう争議行為におきまして、第一組合は正当なピケ行為をやる——あの場合には第一組合側が船がなかったから、実は十分なピケ行動ができなかったのでありますけれども、もしあの場合に第一組合側に齢の用意があれば、この第二組合のストライキ破りの行動として海上輸送が行なわれる場合、第一組合の船がこれに対抗して、実力をもってこれを阻止するという行動をとっても、これはあてまで合法的であります。ところが第一組合の方でそういう船の用意もない、またそういう対抗的な行為すら行なわれていない場合に、第二組合員を乗せた船の援護の行動を海上保安庁の船が積極的にやる、こういうふうなことは、結果においてはやはり会社側に加担して、そうして労働運動に介入するということになると思うのでありますが、その点についての大臣見解を聞きたいと思います。
  91. 楢橋渡

    楢橋国務大臣 海上保安庁が会社側に味方して第二組合を援護するというような、そんなばかげたというか、そういう間違ったことは私は絶対にやっておらないと思うのでありまして、この報告によりますと、「南方より揚陸せんとしたとき、第一組合員乗船の漁船数隻及び海岸線で待機中の第一組合員から投石等の妨害に」あった云々というようなことがありましたが、こういうような、第一組合、第二組合がごたごた何かやっておって、海上保安庁としては、会社側から、今申し上げた谷口という人から、十三隻、乗った人間が行方不明になったという通告を受けたので、これは海上保安庁としては当然に捜査しなければならないので、捜査に当たった場合に、ちょうど第二人工島のところに着けて、その船の行方不明になったということを確かめようとしたときに、今度ほかの船がまた来て上陸したというようなことになっておるのであって、海上保安庁が、田中さんの言われるように会社とぐるになって第二組合を上陸せしめるというようなことは、私は常識上から言ってもそういうばかげたことをなすはずはないと考えるので、海上保安庁長官がここにおりますので、詳しい御説明をさせたいと思います。
  92. 林坦

    ○林(坦)政府委員 ただいま大臣からお答え申し上げましたように、海上保安庁といたしましては、争議行為の中に介入するということはもちろんなすべきことでないのみならず、そういう疑惑を招くようなこともしないようにという指導を常々からいたしております。今度の場合におきましても、器材を輸送したとか人員を輸送したとかいう事実は絶対にないと私は確信いたしておりますし、また現地にただしましたところそういう事実は全然ないという報告を受けております。  なお、先ほどちょっと大臣から御説明いたしましょうに、海上保安庁の船は当然海上における人命財産の保護の使命を持っております。従って海上における両者の問題がやや実力的な点にまで発展いたします場合には、直ちに人命の問題がそこに起こるのでございまして、海上においては陸上における以上に、人命の安全という点については非常に注意をしなければならないことは当然でございます。従って、海上保安庁はそういう意味で準備といいますか、警戒をしておったことは事実でございます。先ほど大臣が説明申し上げましたごとく、当日会社側から、十三隻の漁船に乗って出た組合員が、一時間たってもまだ情報がわからないというので、当日の風邪は九メートルないし十メートルくらいの風でございましたけれども、あるいは遭難したのではないかという意味で捜索してくれないかという電話を受けた。海上保安庁としては当然捜索に当たる義務があるわけでございまして、そして今度の問題になっております「ありあけ」あるいは「うべ丸」その他が海面の捜索に当たったわけであります。ちょうど二十七日の二十三時四十分に「ありあけ」という、これはわずか八トン、六メートルくらいの灯台見回りの小さな船でございますが、その船が上に海上保安官を乗せまして第二人工島のところに参ったわけでございます。第二人工島は、そこに人工鳥の事務所がございます。そこに保安官は上陸しまして、はたして聞かれておる船が着いたであろうかどうかを調査するためにそこに立ち寄っておる間に、実は別に出てきました船が第二組合員を乗せましてここに着きました。それが「さらし丸」という船でございます。それでその着ける場所はそう広い場所でございませんので、海上保安庁の船の外側にこれが接舷いたしまして、海上保安庁の船の上を踏んでどっと上がってしまった、こういう事実なのでございます。決して、海上保安庁が争議行為の一方に加担してやるというようなことは、平素から常に注意もいたしておりますし、そういうことをやったということはないと確信いたします。
  93. 田中稔男

    ○田中(稔)委員 大臣はお急ぎのようですから、私のこの一問で、御退席願っていい。あと海上保安庁長官お尋ねします。事実問題はあとから究明します。  大臣お尋ねするが、大臣がどういう善意を持っておろうと、海上保安庁の現場の諸君が間違った行動をすることはあり得ることです。今度のことは私は明らかに間違った行動だと思うのだが、今後こういう問題が再び起こらないように、あくまで労働争議には不介入の立場を厳守する、こういうふうな立場一つ管下の海上保安庁の保安官その他にあくまで一つ指令を徹底していただきたいと思うのでありますが、その点についての大臣の所信を聞いておいて、あと帰っていただいてけっこうであります。
  94. 楢橋渡

    楢橋国務大臣 ごもっともでありまして、私は冒頭に申し上げましたように、争議行為に海上保安庁が入るべきではない。従ってこのたびのことにつきましても、会社側並びに第一組合双方に対しましても、洋上において漁船、機帆船等で人員を輸送する場合には、成規の手続を経て海難事故を未然に防止するように厳重に実は警告を発しておるのであります。また会社側が第二組合員を漁船、機帆船を利用して洋上を輸送した事実は、海上運送法違反の容疑があるのであるから、現在争議中であるので、事態が平穏化した時期を見て捜査する方針をきめておるのであります。今次の争議において海上において不祥事件が起こらないように、厳正公平に保安庁の使命を果たすように努めておるような次第でありまして、御趣旨の点は十分に徹底させる所存でございます。
  95. 田中稔男

    ○田中(稔)委員 ほんとうにやってもらわなければいかぬ。そこで、まず長官にお尋ねするのですが、一体海上保安庁の巡視艇といいますか、そういう船は何の必要があって出動したのですか。第一組合の方で船の用意がなく、洋上で何か対抗的な行動が起こるということは——あの場合、そういう事実関係は現地の海上保安庁の関係者によくわかっているのだな。さらにまた、その晩のことですが、風速九メートル、十メートルという話で、実は私も徹宵第二人工鳥に通ずる突堤に立っておりました。     〔委員長退席、土井委員長代理着席〕 ほとんど風がない。こういう気象状態でありましたから、沿岸をずっと船が行くのに、それこそ遭難なんというものは全然予想されない。こういう状況のもとにおいて、長崎や福岡からまで海上保安庁の船を集結して用意をされておる。そうしてそのうちの何ばいかが援護に出たられたということは、私はこれは非常に計画的なものだと思う。だから、一体何のために、何の必要があって保安庁の船が出動したか、それを一つ聞きたい。
  96. 林坦

    ○林(坦)政府委員 海上保安庁は海上における生命財産の安全をはかるというのが使命でございます。それで今度の場合におきましても、もし海上で問題が起こるとしますと——かりに一方かないといいましても、傭船もできないわけではないのであります。もし問題か起こったならばすぐに人命の問題に関連してくる、われわれとしては準備はやはり当然やっておくべきものである、かように考えております。  また当日風もないのにどうして回ったかというお話でございますが、先ほど御説明申しましたごとく、出ておる船が帰ってこない、あるいは消息がわかりないという情報によりまして、それを捜索するために出たのでございまして、われわれの方は、介入する意図を持って、あるいは一方を応援する意図を持ってあそこに船を集結したり、あるいは洋上を哨戒したということは絶対にございません。
  97. 井岡大治

    ○井岡委員 関連。長官にちょっとお尋ねしますが、海上における人命の保護あるいは財産保護のために準備をしておったんだ、こういうことですが、それでは会社側は三角から出港さすということの連絡があって承知しておったのかどうか、この点先に聞いておきたい、この問題は非常に重要ですから。
  98. 林坦

    ○林(坦)政府委員 海上保安庁としては、あるいはいろいろの情報を聞いておったかもしれませんが、会社側から、そういうものを出すからという情報をこちらは受けておるということはないように聞いております。
  99. 井岡大治

    ○井岡委員 それじゃおかしいじゃないですか。先ほどのお話は、そういう人命救助のためにすでに用意をしておったんだ、こういうことです。ですから情報を聞いておったということは、それによって判断をしたというのなら話はわかるわけです。しかし、今の話は先ほどの話とは迷う。この点をはっきりしておいてもらいたい。
  100. 林坦

    ○林(坦)政府委員 私ども、その点につきましても調べたのでございますが、私どもの受けた報告によれば、荒尾の警察から、漁船に乗ってあの方面に行く気配があるという情報を受けておったということを聞いております。
  101. 井岡大治

    ○井岡委員 通常、海上保安庁の巡視船が出動する場合は、どういう場合に出勤するのですか。だれからの要請があっても出動するのですか。これは法律では、共助行為として、陸上の警察と協力をしてと書いてあるのです。会社側から要請があったら直ちに出るのですか。そんなことはないでしょう。
  102. 林坦

    ○林(坦)政府委員 問題が救難のよううな場合には、どこからの情報でございましても、寸刻を争う場合でございますので、これは出るのが当然であると私どもは考えております。ただいまお話のございました警察の協力につきましては、一般の場合に警察が協力を要請してきたような場合には協力するということを書いてあるのでありまして、もちろん警察等から協力の要請があれば出るのが当然でございます。
  103. 井岡大治

    ○井岡委員 そこの問題を明らかにしておいてもらいたいと思うのです。人命の問題だといって係長から電話がかかってきた。どこへかかってきたんです。
  104. 林坦

    ○林(坦)政府委員 報告によりますと、三池の海上保安署の小佐々という保安官に電話がかかってきたわけであります。
  105. 井岡大治

    ○井岡委員 そこで、直ちにそこにおもむいた船はどこにおったのですか。
  106. 林坦

    ○林(坦)政府委員 当時の船でございますが「いそちどり」という船は港外一・六マイルのところで錨泊いたしておりました。それから「うぐいす」という巡視船は、三池港の防波堤灯台から七十度、約一千メートルのところにおりました。それから「すずなみ」は今度のあれで捜索のため出港行動中でありました。それから「しらぬひ」「もくせい」「うべ丸」それから六〇七号艇、これはほんとの小さな船でございますが、三池港内の六号岸壁付近に係留してございました。六〇一号艇というのは大牟田港内におりました。「ありあけ」というのは三池港から、ただいま御説明申し上げました第二人工島桟橋に参って、あそこに係留していた。こういう状況でございます。
  107. 井岡大治

    ○井岡委員 先ほどのお話では、八時三十分に三池の人事係長の谷口という人から電話があった。そうして九時四十分にはすでに捜査中だった、こう一言っている。そこまで行くのに何ぼかかるんですか、その船で。時間が合わないじゃないですか。
  108. 林坦

    ○林(坦)政府委員 連絡を受けましたのは、あるいは先ほどちょっと間違えたかもしれませんが、二十二時二十分でございます。会社の船が出ましたのは、二十時三十分に出た、こういうことでございます。
  109. 井岡大治

    ○井岡委員 おかしいじゃないですか。船が出たのが二十時三十分で連絡を受けたのが二十二時二十分。それで三十三時四十分に保安官が上がって調べておったと今あなたは言ったじゃないですか。
  110. 林坦

    ○林(坦)政府委員 十冊隻の漁船が出たという時間が二十時三十分、それから一時間たっても着かないというのでこちらに連絡がありましたのが二十二時二十分でございます。それから、こちらの船が、二十二時四十分ころ「うべ丸」を出し、続いて二十三時三十分ころ「ありあけ」を交代して捜索に出した、こういう状況でございます。
  111. 井岡大治

    ○井岡委員 じゃ先ほどのはみなうそだったというのですね。もう一度言いますよ。会社の谷口さんから連絡を受けたのが二十七日の午後八時三十分、このときには二十時という言葉を使っていない。八時三十分、こう言った。そうして二十三時——このとき二十三時という言葉を使った。二十三時四十分に保安官が人工島のところに行って、遭難依頼を受けた船かどうかを調べに上がっている間に、ほかの方が来て上がったのだ、こう言った。そうして今海上保安庁の三池の保安署に連絡があったのは何時かと言ったら、八時二十分だ、こう言う。今の話と違うじゃないですか。だから、それは違うのなら違うでいいのですが、その点をはっきりしておいてもらわないと、初めと今のと言っていることが全く違うじゃないか。
  112. 林坦

    ○林(坦)政府委員 時間の点が、あるいは私の申し違いがあったのかもしれませんですが、今ははっきりここで訂正さしていただきます。三十七日の二十時三十分に十三隻の漁船が長州を出港した。それから一時間たっても着かないというので、こちらの方に連絡のありましたのが二十二時二十分でございます。これは二十二時でございますから十時三十分でございます。それから三池の保安署では二十二時四十分、すなわちそれから二十分後に「うべ丸」を出し、また二十三時三十分でありますから、ちょっとおくれておりますけれども、「うべ丸」に交代いたしまして、十一時半でございますが、十一時半に「ありあけ」を交代して捜索に当たらした、こういうわけでございます。そうしてその「ありあけ」が第二人工島に着きましたのが二十三時四十分、すなわち十一時四十分でございます。その間に別に大牟田を出港いたしました機帆船「さらし丸」が二十三時五十分、すなわち十一時五十分に接舷上陸した、こういうのが時間を追うての御説明でございます。私の、あるいは時間の問題間違えたかもしれませんので、そういうふうに訂正さしていただきます。
  113. 田中稔男

    ○田中(稔)委員 だから、長州から出発した十三隻の漁船ということについての今の御説明だが、それと別に、僕が最初質問した熊本県三角港から鳴潮丸という船に乗って人工島に向かった第二組合員のことについては全然お話がないのでありますけれども、西日本新聞にはそのことの詳細が書いてあるのですね。これは一体西日本新聞が事実無根のことを書いたものかどうか、私は非常に重大だから、確かめたい。ついでに、こんなに大きな紙面をとって書いてある。ところどころを読みますと、こういうことを書いてあるんだな。二十七日のことですが、その前の二十五日、または三十六日から会社は第三組合員を個々にずっと集めて汽車で三角港に集結させた。しかも、それは大牟田港から乗ったんじゃわかるから、大牟田近くの荒尾駅あるいは銀水駅から個々ばらばらに汽車に乗せて三角港に集結させて、そうして鳴潮丸という例の島原観光の定期船ですが、二百八十四トンの船、これに乗せて人工島へ運んだんですが、その鳴潮丸が八時前に人工鳥に着いているわけです。だから、長州からの漁船十三ばいが長州港を出発したのが八時半というのですから、その前にすでに鳴潮丸は人口島に着いて、乗っている人はもう十陣して、鳴潮丸は八時二十分には何事もなかったように静かに離岸したと書いてある。だから、結局考えられることは、長州からは十三隻の漁船で運ぶ、ところが、それよりずっと前に熊本県の三角港から相当大きな船に乗せて運ぶ、こういうふうに二隊に分かれておったと考えられる。それからさらにあなたの御説明にあったように、もう一つ今度は大牟田港から出発した「さらし丸」に乗った第二組合員がおるわけだ。それを加えると三万のコースからずっと人工島に向かったと考えられるわけですが、その辺のことについて、御説明がこの西日本新聞の記事を全く否定するような御説明だが、現地からの報告がなかったためにそういう御説明があるんだろうと思う。そうすると、現地の連中が今度は報告を誤っている、あるいは故意に隠匿しているとしか思えないのだが、その辺についての御説明を願いたい。もしあくまでこの事実を否定されるなら、これはあらためて西日本新聞の記事の正確かどうかということを確かめなければならぬ。
  114. 林坦

    ○林(坦)政府委員 ただいまお話のございました九州商船所属の鳴潮丸二百八十四トンの件は、もちろん報告はございました。ただ、これは海上運送法上の手続が済んでの輸送でございます。しかも、この船による輸送は二十七日の十七時三十分に三角を出港しまして二十時五分に三池第二人工島に到着、二十時十分に第二組合員を上陸、入坑せしめたという事実は私どもの方に報告がございます。ただ、これは先ほど大臣が御説明しましたときには、これは別に問題になっていないというので説明をしなかったのかと思いますけれども、こういう事実の報告はもちろんございました。
  115. 田中稔男

    ○田中(稔)委員 そういうことは当然に聞かれなくても……。私はそのことを最初に聞いたんです。そういうことについて答弁を怠るというのはきわめて不誠意だと私は思う。その成規の手続を踏んで人を運んだということにしましても、これはやはり労働場法上問題があると思う。これは会社が計画的に運ぶ、それを海上保安庁の巡視艇が護衛した……。そのことははっきり新聞に書いてある。護衛するために必要だから長崎や福岡の海上保安本部からも船を集めたわけです。そのことがすでに労働法違反ではないか、つまり正当なピケ権を否定するような行動ではないかと私は考えるのですが、どうですか。
  116. 林坦

    ○林(坦)政府委員 海上運送法上の手続は海上保安上でやるわけではございません。しかしこれを護送するために海上保安庁の船を集結したというふうにおとりのようでございますが、そういうことは絶対ないわけでありまして、もちろんこういうこと以外に今申しましたいろいろと海上で問題が起こり、また海上で遭難事故等が起こっては困るというので、三角にはきわめて小さな船しかないので、ほかの方から応援に出して、そうして人命財産の保護という面から船を配置したというにすぎないのであります。
  117. 田中稔男

    ○田中(稔)委員 それでは一体そういういろいろな輸送協力なんかやって主導的な立場にあるのはどこなんですか。三角海上保安部がやはり主導的な立場で動いたんでしょう。これははっきりして下さい。
  118. 林坦

    ○林(坦)政府委員 輸送協力をやったということはございません。
  119. 田中稔男

    ○田中(稔)委員 輸送協力をあなたが否定するならいいですが、とにかく海上保安部の巡視艇その他を動かして海上の警備その他に当たらしたということ、その一切の手配をしたのはどこですか。大牟田の海上保安署ではないでしょう、その上の上級の機関である三池海上保安部が主体になってやったんでしょう。
  120. 林坦

    ○林(坦)政府委員 三池の保安署、これは三角の海上保安部の下部の機関でございますが、三池の保安署が主として連絡その他に当たったということは当然でございます。
  121. 田中稔男

    ○田中(稔)委員 それで報告はどこから来たんですか、あなたの方に対する報告者はだれすか。
  122. 林坦

    ○林(坦)政府委員 私どもの方は第七管区海上保安本部を経由いたしまして、三池の保安署等から情報をとって報告を受けておるわけでございます。
  123. 田中稔男

    ○田中(稔)委員 方々から船を集めたんでしょう、三池の保安署は小さな船が三つしかないのだから、それを今あなたが言ったように、私が覚え切れぬほど多くの名前が出たんですが、こういう船を一ぺん全部話して下さい。どこの船はどこの所属か、福岡、長崎から集めておるが、福岡からはどれとどれが来たのか、長崎からはどれとどれが来たのか、そんなことは簡単にできることではないでしょう。いつから……。
  124. 林坦

    ○林(坦)政府委員 二十六日当時三池におりましたのは十メートルの「しらぬひ」と十五メートルの「うべ丸」それから八トンくらいの「ありあけ」という灯台見回り、そのほかに伝馬のような雑船が六〇一号、六〇七号というのがございまして、二十七日の午後九時ごろまでの間に参りましたのは、牛深の方からいわゆる飛行機救難艇になりましたARBという船型の約百二十トン程度の船だと思いますが、「いそちどり」というのが参りました。それから長崎から「うぐいす」という、これは六十トンないし七十トンないし七十トンぐらいの木造船でございますが、それが参っております。それから三角から十五メートルの「すずなみ」とそれから十メートル程度の「もくせい」というのが参っております。そういう状況でございます。
  125. 田中稔男

    ○田中(稔)委員 それでこういうのを相当前から集めたということは、これはよほど会社側と密接な事前連絡がなければできることじゃない。ところが、さっきのお話では何か長州から出発した漁船が行方不明になったので、それで会社の人事関係の担任の人から連絡があった、そこで急にあわてて出ていって捜査に当たったというのだが、それは全然事実に相違しているのじゃないですか。だから海上保安庁では出動にあたって相当前から会社の連絡があったとしか思えないが、その辺について一つ
  126. 林坦

    ○林(坦)政府委員 二十六日には、先ほど申し上げましたように、三池港におる船だけでございました。二十七日の夜の九時ぐらいまでに集めましたのは、先ほども御説明申しあげましたごとく、荒尾の警察から、こういった海上を利用される向きがありそうだ、気配があるという情報を得ましたので、事が起こる前に私どもの方としては準備の態勢を整えたのでございまして、決して会社側と特に連絡をとって集めたとかなんとかいうことではございません。
  127. 田中稔男

    ○田中(稔)委員 どうも私どももまだ十分な事実調査が済んでおりませんから、今の説明は非常に不審な点が多いのですけれども、事実関係についてこれ以上のことは言えないが、ただ一点はっきりしている点は、「ありあけ」という船が第二人工島の岸壁に着いておった。そこに大牟田港から出発した「さらし丸」というのに乗った組合員かやってきて、そしてこの横にまた接舷した。そしてこの海上保安庁所属の舟艇を足場にして、ここからこっちに上陸したということですね。しかもこれは、私は現場におったのでありますが、ちょうどこの接岸地点の近くには暴力団が二、三百名おりまして、この写真ですが、そして鉄条網でバリケードを築いて、長い突堤の方から第一組合員のピケ隊が行動を起こそうとしても寄りつかれない。この連中は盛んに石を投げ、それから消防用のホースを持っておりまして、海水を振りかける。そのために、その日は風はなかったけれども非常に寒かった、そのときに薄着をしていた組合員は、火をたいておっても、その火も海水を吹きつけられて消されてしまって、ぶるぶるふるえておるという状態。しかも向こうは完全武装している、こっちは何も武装していない。こういう状態で相対峙していた。だから寄りつけない。そういう状態のもとにおいて海上保安庁の巡視艇が接岸しておって、そうして第二組合員がほかの船でやってきて上陸するまでの結局幇助をした、援護したということになるわけです。こういうことは私は明らかに労働者のピケ権をじゅうりんするものであって、不当な労働行為だと思うのでありますが、この点について、あなたたちは労働省の役人でもないけれども、こういうことを一体認めていいと思うのかどうか、その点について一つ
  128. 林坦

    ○林(坦)政府委員 もし幇助したとするならば、そういうことをやるべきではないと思います。しかし、これは決して幇助したわけではないのでありまして、先ほどから繰り返し申し上げておりますように、そこに調査のために着いた、そうしたら、ほかにつける場所が同じ埠頭にはないので、そこに重ねてつけたいということでございまして、いわばむしろじゃまをされたとあるいは言われることになるかもしれないとさえ思うのでございまして、決して幇助をしたわけではございません。
  129. 田中稔男

    ○田中(稔)委員 積極的な幇助ではないにしても、海上保安庁所属の舟艇がおって、それを足場にしてどんどん上がっていく。これはほんとうに客観性を保とうというならば、それは断わるべきだと思う。海上保安庁の舟艇は離岸をして、そうして第二組合員を乗せた「さらし丸」はじかに接岸すればよろしい。それをそのまま置いておいて、第三組合員がどんどん巡視艇を通って上がっていくのを傍観しているというのは、結果においてこれは幇助と言えるのじゃないですか。
  130. 林坦

    ○林(坦)政府委員 その船を足場にされたということは事実でございますが、当時、これは灯台の見回り船でございまして、上に乗っておりました保安官が調査のために上陸しておりましたために、その船には三人ほど灯台見回り船の乗組員が乗っておったにすぎない状況でございます。従ってもちろん、あるいはそれを離して、そうして今度の海上をやって参りました組合の船をつけるということが正当であったかもしれませんが、当時としては、暗い中で突如としてそういうものが船をつけまして、どっと上がってしまったという状況でございまして、事実問題としてそれを阻止することができなかったのだというふうに報告を受けております。
  131. 田中稔男

    ○田中(稔)委員 あなたはそう言うけれども、現場におる者とすれば、会社と暴力団と海上保安庁、この三者が一体になって第二組合の上陸作戦というものを結局援護したというしわざになる。そうでしょう。組合員がピケ行動を起こそうと思って第二人工島の突堤に行っても、海水をぶっかけられ、石を投げつけられる。こっちは無防備、向こうは完全に武装している、こういうので歯を食いしばってくやしがっている。しかも暗夜である。だから、こういう深刻な場面をあなたが想像されたならば、こういう場合において、ほんとうに海上保安庁の保安官が国家公務員として労働運動には不介入という立場を守ろうとするならば、そういう場合に黙ってどんどん上陸を許すなどということは絶対にすべきではないと思う。そういうことに、ついてあなたの、利用されたから仕方がない、むしろこっちが被害者だというふうな、そういう認識というか感覚というのは、私は運輸大臣先ほどわれわれに向かって厳粛に誓われた立場と全然違うと思う。あなたたちはそれじゃ今後こういう労働争議が起こったときも、会社側の要請にこたえて、一方的にどんどん会社側のために便宜を供与するというのですか。
  132. 林坦

    ○林(坦)政府委員 今のような情勢のもとにおきまして、海上保安庁の船の上を踏み板がわりに使われたということが、そういう誤解を生むような状況であったとしますならば、これはまことに私どもとしても遺憾であったと存じます。しかし海上保安庁としては、争議には不介入という方針は、もう常に前からとっておるのでございまして、現地にも厳重に申し渡してございます。今後ともこういったようなところからいたずらに誤解を招くようなことを起こさないようにということは十分注意するつもりでございます。
  133. 田中稔男

    ○田中(稔)委員 だいぶ時間がたちましたが、それでは若干遺憾の意を表されたので、一つ三池の海上保安署なり、これは私は、当然その上級機関である三角の保安本部も責任がある、むしろ三角の保安本部が指導的な立場をとったと思うのだが、さらにその上には第七管区がありますから、それぞれの機関に対して、今度のことについて十分な警告を発するという措置をとっていただきたいと思いますが、いかがですか。そして今後こういうふうなことが絶対に再発しないように一つ指令をしていただくように希望いたしますが、どうですか。
  134. 林坦

    ○林(坦)政府委員 海上保安庁としては、すでに厳重に申し渡してある方針でございますけれども、さらに確認をいたしまして、こういった問題を起こさないようにもちろん十分注意するつもりでございます。
  135. 土井直作

    ○土井委員長代理 本日の質疑はこれをもって終了いたしました。  次会は、委員長の指定によりまして、四月一日金曜午前十時より理事会、十時三十分より委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。     午後一時二十一分散会