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国務大臣(岸信介君) 私は対
中共の関係におきまして、現在の状態は、両国のために、これは非常に望ましくない不幸な状態である。これを打開していかなければいかぬということは常に一貫して考えてきておるのであります。この打開するについては、両国が、おのおの両罰の置かれている
立場、その国際的な関係というものを、十分に両国が理解し合って、そうして
お互いの
立場というものに対して尊重し合っていく、そうして国交をなにしていかなければならない。今、
中共の
立場と、また
日本の
立場につきましては、違う関係がいろいろとあると思います。
具体的に申しますというと、第一の問題は、私は台湾の問題について、
日本の置かれておる
立場というものをですよ、これは、中国の方から望ましいか望ましくないか、そういうことは、
中共としては非常に困るということであるかどうかは別として、現にこれとの間に、平和
条約を結び、友好関係があり、これとの間の一切の外交関係が樹立されておる、そのもとに、
日本は国際社会の一員としての義務を果たし、そうして友好関係を続けておる。これは現実の事実である、
日本が置かれておる現実の
立場であるということを、やはり認識し、そうして理解してもらわなければならない。また同時にわれわれは、
中共が共産主義国であり、
ソ連との間において、いろいろな
条約関係があり、それが
日本として望ましくないことであっても、これは、既存の事実としてわれわれは尊重し、理解し、そうして両国の友好親善の関係を、どうして築き上げていくかということを考えていかなければ私はならぬと思うのであります。
そういう
意味において、私は従来からも申しているように、今の現状のもとにおいては、それは、いろんな政治との関係という
意味におきましても、これはいろんな、政治という観念が非常に広いことでありますから、いろんな
内容を持っておりますが、とにかくこれについては、われわれが文化的な交流であるとか、あるいは経済上の交流であるというようなことを積み重ねていくことが、現状においては最も両国のために必要な友好関係を進める上においていい道じゃないかというのが、私ども従来から、ずっと一貫して考えておることであります。それは、決して
中共に対して敵視政策をとっている、あるいは静観ということを申しておりますのも、実は私は中国との間に、こういう関係は望ましくない関係である。どうしても将来に向かって、友好親善の関係が作り上げられるように努力しなければならない。そこで、いろいろこういう際に誤解を生ずるようなことや、あるいはかえって両国の関係を、今言ったような
基本的な理解の上に立って
お互いの
立場を尊重し合うという気持を作り上げる上からいって、それに、むしろいろいろな支障を来たしたり、あるいはそれの上において誤解を生ずるようなことはとってはならぬという
意味において、私は静観ということを申しておるのであります。決して、向こうから友好親善の関係を結ぼうというものを、私は静観だから一切の関係をとらないというような
意味において、拒否する
意味において、私は静観と申しておるのじゃございませんし、また、そういう
立場はとっておらないのであります。
ただ、今言ったような前提を、
お互いが理解し合って、そして、われわれの親韓友好、関係を、こういうふうに築き上げていくことができるか、それには、現在いろいろの向こうの主張もありましょうし、また、われわれの考えもありますけれども、そういう問題になっておるところのものは、しばらくおいて、そして問題のない経済の問題や、あるいは文化の交流とかいうようなことから積み重ねていくことは、私は両国のために、友好関係を築き上げる上において必要であり、また、最もそれがいい道であるという考えのもとに静観ということを申しておるのであります。