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1959-11-16 第33回国会 参議院 予算委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十四年十一月十六日(月曜日)    午前十一時十一分開会   —————————————   委員の異動 十一月四日委員天田勝正辞任につ き、その補欠として東隆君を議長にお いて指名した。 十一月六日委員藤田進君、藤原道子君 及び羽生三七君辞任につき、その補欠 として占部秀男君、佐多忠隆君及び松 澤兼人君を議長において指名した。 十一月七日委員中村正雄辞任につ き、その補欠として基政七君を議長に おいて指名した。 十一月十三日委員吉江勝保辞任につ き、その補欠として武藤常介君を議長 において指名した。 十一月十四日委員基政七君辞任につ き、その補欠として曾祢益君を議長に おいて指名した。 本日委員郡祐一辞任につき、その補 欠として青木一男君を議長において指 名した。   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     小林 英三君    理事                  大谷藤之助君            佐藤 芳男君            館  哲二君            西田 信一君            秋山 長造君            亀田 得治君            鈴木  強君            千田  正君            杉山 昌作君    委員            青木 一男君            泉山 三六君            太田 正孝君            草葉 隆圓君            小林 武治君            斎藤  昇君            重政 庸徳君            下條 康麿君            杉原 荒太君            手島  栄君            一松 定吉君            武藤 常介君            村松 久義君            湯澤三千男君            米田 正文君            占部 秀男君            木村禧八郎君            久保  等君            小林 孝平君            佐多 忠隆君            永岡 光治君            松澤 兼人君            松永 忠二君            大和 与一君            辻  政信君            原島 宏治君            曾祢  益君            森 八三一君            岩間 正男君   国務大臣    内閣総理大臣  岸  信介君    法 務 大 臣 井野 碩哉君    外 務 大 臣 藤山愛一郎君    大 蔵 大 臣 佐藤 榮作君    文 部 大 臣 松田竹千代君    厚 生 大 臣 渡邊 良夫君    農 林 大 臣 福田 赳夫君    通商産業大臣  池田 勇人君    運 輸 大 臣 楢橋  渡君    郵 政 大 臣 植竹 春彦君    労 働 大 臣 松野 頼三君    建 設 大 臣 村上  勇君    国 務 大 臣 赤城 宗徳君    国 務 大 臣 石原幹市郎君   政府委員    内閣官房長官  椎名悦三郎君    内閣官房長官 松本 俊一君    法制局長官   林  修三君    法制局次長   高辻 正巳君    総理府総務長官 福田 篤泰君    総理府総務副長    官       佐藤 朝生君    外務省アジア局    長       伊関佑二郎君    外務省アジア局    賠償部長    小田部謙一君    外務省アメリカ    局長      森  治樹君    外務省条約局長 高橋 通敏君    大蔵省主計局長 石原 周夫君    通商産業大臣官    房長      斎藤 正年君   事務局側    常任委員会専門    員       正木 千冬君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○昭和三十四年度一般会計予算補正  (第2号)(内閣提出、衆議院送  付) ○昭和三十四年度特別会計予算補正  (特第1号)(内閣提出、衆議院送  付) ○昭和三十四年度政府関係機関予算補  正(機第1号)(内閣提出、衆議院  送付)   —————————————
  2. 小林英三

    委員長小林英三君) ただいまから会員会開会いたします。まず委員変更につきまして御報告いたします。先週までの分につきまし、は、お手元に配付いたしておりまする刷り物によって御了承をお願いいたします。なお、本日郡祐一君が辞任いたし、その補欠といたしまして青木一男君が選任せられました。
  3. 小林英三

    委員長小林英三君) 次に、去る九日の委員長及び理事打合会におきまして、本委員会運営について協議決定いたしました事項を御報告いたします。  総括質疑は四日間とし、右の質疑時間は五百六十分。各会派の割当は自民党一百分、社会党二百分、無所属クラブ六十分、社会クラブ四十分、緑風会四十分、共産党二十分とする。質疑の順位は、今回も従来の慣例に従いまして、社会党自民党無所属クラブ社会クラブ緑風会共産党の順といたしまして、以下これを繰り返すことにいたします。関連質疑は努めて自粛すること、以上でございますが、委員長は右の理事会決定に基づきまして、委員会運営を行ないたいと存じますが、御異議ございませんか。
  4. 秋山長造

    秋山長造君 今の委員長理事会の御報告関連質問は努めて自粛するという言い方は、ちょっと私理事会での話し合いとは少しそれているのじゃないかと思う。努めて自粛するというのは、どういう意味でおっしゃったのか知りませんが、もし関連質問はできるだけしないようにするという意味でおっしゃったなら、これは理事会申し合わせとは全然違うと思うのです、趣旨が。もう一度その点誤解のないように、正確な御報告を願っておかないと、やはり重要なことですから、困ると思うのです。
  5. 小林英三

    委員長小林英三君) 今の秋山君の御質問でございますが、私が今申し上げましたのは、関連質問というものは、やはり現在質疑を行ないつつある人についての関連質問である。さかのぼって関連質問をするというようなことにつきましては御遠慮願いたい、こういう意味の自粛でございます。
  6. 秋山長造

    秋山長造君 それでけっこうです。だから結局関連質問趣旨をはずさないように気をつけることだろうと思います。
  7. 小林英三

    委員長小林英三君) その通りでございます。  ただいま理事会での申し合わせ事項をお諮りたいたしましたが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  8. 小林英三

    委員長小林英三君) 御異議がないものと認めます。
  9. 小林英三

    委員長小林英三君) これより、昭和三十四年度一般会計予算補正(第2号)、昭和三十四年度特別会計予算補正(特第1号)及び昭和三十四年度政府関係機関予算補正(機第1号)を一括して議題といたします。  それでは、これより総括質問に入ります。(拍手)
  10. 秋山長造

    秋山長造君 亀田君の質問に入る前に、議事進行について……。きょうは総括質問の第一日の、しかも第一人目の質問ですが、それにしてはあまり大臣の御出席がよくないと思うのですがね。いろいろ御事情のあることはわからぬでもないが、もう少し大臣をそろえて政府側もかかられたらどうですか。これでは参議院予算委員会の第一日の最初質問の態勢としては、あまりにも政府側がだらしのないように思うのですがね。せっかくこうやって、ずらっと大臣が並べるように、いすも考慮してやっておるのに、この程度の出席じゃちょっと困ると思うのです。
  11. 小林英三

    委員長小林英三君) 秋山君の御意見ごもっともでございます。委員長は今後さように取り計らいをいたします。きょうは第一の亀田君から、先ほど委員長に対しまして、総理大臣が見えたらすぐ始めてよろしいというお申し出がございましたから、委員長総理が来ると同時に開会を宣したわけでありますので、今後、秋山君の趣旨はよく体したいと思います。(「参議院予算委員会全体の問題ですよ」「大蔵大臣いないじゃないか」「大蔵大臣どうしたのですか」と呼ぶ者あり)大蔵大臣は、災害特別委員会答弁中でありますが、直ちに来ることになっております。(「大蔵大臣だけはそろえてもらいたい」「最初の形としては政府側は全員出るくらいな誠意を見せて下さいよ」と呼ぶ者あり)
  12. 亀田得治

    亀田得治君 私は、主として外交、防衛に関する質問をいたします。  最初総理にお伺いいたしますが、けさの朝日新聞の報ずるところによりますと、安保改定調印は、来年の一月十日から十五日、その間にワシントンにおいて行なうと、こういうことが日米間で大体了解をされたやに報ぜられております。そして、岸総理もそれに出かけると、こういうふうに報ぜられておりますが、真相のほどをお伺いしたい。
  13. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 安保条約改定の問題につきましては、すでに外務大臣より経過の中間報告をいたしましたような次第でございまして、日米両国間における交渉もほぼ妥結に近づいておる状態でございます。  また、私は、かねて安保条約改定に関する批准は、通常国会においてこれを得るようにしたい、事の重大性にかんがみまして、十分国会における御審議の期間を得るために、なるべく通常国会の劈頭に近い時期にこれを提案いたしたいということを申し述べております。そういう意味におきまして、できるならば年末年始にかけてこれが調印をいたしたいというのが、かねての私ども政府考えでございます。もちろんわが方だけのことではございませんので、アメリカ側の都合もあることでございますから、そういう考えのもとにアメリカ側と打ち合わせをいたしておることも事実でございます。しかし、一月の十日から十五日の問、いわゆる朝日新聞に出ておりますような具体的のことについてまだ話し合いが出ておるという情況ではございません。また、この調印につきましては、ワシントンにおいてこれを行なうという大体の考えで進んでおることも事実でございます。私がワシントンに参りますかどうかにつきましては、まだ決定をいたしておるわけではございませんで、そういう考え方検討いたしておることは事実でございますけれども、まだ決定をいたしておる情況ではございません。
  14. 亀田得治

    亀田得治君 調印の日につきましては明確でないようでありますが、これは年末から年始にかけてというのであるから、大体の見当はつきます。私はこの際、岸総理に対して要求いたしたいと思うのは、はっきりこの際、新条約の締結を急ぐという態度をやめてもらいたい、従って、当然年末から年始へかけて予想されるあなたの渡米、ただいまの答弁では必ずしも総理みずからの渡米は明確でないようですが、そういうことも断念をしてもらいたい、こういうふうに私は要請いたします。  その理由を簡単に申し上げたいと思うのですが、第一は、政府は現在しゃにむにこの安保改定を進めておりますが、私から申すまでもなく、世界情勢は非常に刻々変わっていきつつあります。しかも、たとえば最近米国上院外交委員会に提出されたコンロン報告、あるいはマックスウエル報告、こういうものを見ても、いずれも米国基地政策、この再検討を求めております。もちろんこういう報告書が、アメリカ外交なりあるいは世界情勢に、どの程度影響してくるかということは、簡単にはこれは即断ができません。しかし、米国自身にこういう基地政策に対する批判的な意見というものが相当まとまった意見として出されてきておるということは、私は十分重要視しなければならないことだと考えます。私はそういう意味で、もう少し国際情勢の動きというものを見きわめた上で、こういう重大な問題に手をつけるべきではないか、こういうふうに第一に考える。  それからもう一つの点は、国内世論でございますが、決して国内世論安保改定に熟してはおりません。むしろ政府のやり方に批判的であるといわなければならないと思う、こういうわけで、内外いずれの情勢から見ても、ここでしゃにむにこの安保改定を急がなければならぬ、こういう事態にはないと私は考える。で、皆さんとわれわれとは、基本的に立場の違う点はありますが、多少自民党の諸君の立場に立って見た場合でも、私は、今申し上げたような内外情勢を背景にして、しゃにむに改定を急ぐということは、非常に軽率だと思う。そういう意味で、あなたの渡米というものが、まだ確定はしておらないのであれば幸い、そういうことは断念してもらいたいし、交渉自身をこの際ストップするという態度に出るべきであると思うのでありますが、総理の忌憚のない一つ考え方をお示し願いたいと思う。
  15. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 亀田委員の御意見は私が渡米するかどうかということは末梢的ななにであつて、根本的に、安保改定を行うことはこの際はやめろという御意見と拝聴したのであります。すでに国会、本会議におきましても、外務大臣より交渉中間報告をいたしましたような経緯でもって、われわれはこの問題を初めから慎重に検討をいたして今日に至っておるのであります。しこうして、現行安保条約そのものについて、いろいろと論議のありましたことは、この条約の成立の初めから、また、その後における国会におきましても、しばしば論議されたところでございます。これは、現行安保条約が制定された当時の日本状態国内並びに国際的な地位等からかんがみて、きわめて不満足な、国民的に見て不満足な点が多々あるけれども、これはやむを得なかった事情でございまして、国内の国力の回復と、日本国際的地位の向上にかんがみて、これを検討して、合理的基礎において日米間の条約に改めることは、最初から実は現行安保条約そのものにまつわっておる根本的な原因が、私はそこにあったと思うのであります。しこうして、この点に関しましてわれわれは、あるいは私がアメリカに参り、アイゼンハワー大統領話し合い、また、その後においていろいろと検討をいたしました結果、われわれの立場から、この現行条約改定するという条項等——大体においてこれは国会等においても従来論議された点でございまして——それらをあげてアメリカ側折衝をし、アメリカ側の、大体の方針について承認を得て、その後においてのいろいろな折衝を経て、今日に参っておるわけでございます。しかしてこの国際情勢からこの条約が不必要である、あるいは適当でない、あるいは現在のところにおいては、なお検討をするためにこれを延期すべきであるという御議論でございますが、今申しましたように、現行安保条約そのものに関する欠陥なり、あるいは国民感情の上から、われわれのとうてい適当でないと考えるような事項に対する改定でございまして、根本的に、日本の安全を保障し、平和を守るために、こういう安保体制というもの自体は、やはり私は現在の国際情勢においても必要であり、その体制を合理化さそうという今回の改定は、当然これを行なっていってさしつかえない、また、そうしなきゃならぬ、かように思っております。また、国内において、国民の間におきましてこれに賛成しない方々があることも、これは事実であります。あるいはまた、今日まで国民の間に十分な理解納得のいくように徹底をしておらないという点にしましても、また、私どももその点を認めるのであります。そこで、政府並びに与党におきましては、これが国民理解納得と協力によって成立するように、あらゆる努力をいたしております。しこうして、いろいろな調査によりましても、最近において国民の間に理解を深めつつある現状でございますので、私どもは、予定の通りこれを進めていくことが適当である、かように考えております。
  16. 亀田得治

    亀田得治君 米国内における基地政策の批判的な意見、これはどういうふうに総理考えておりますか。
  17. 岸信介

    国務大臣岸信介君) アメリカが、現在世界各地に持っております基地につきまして、基地をそのままに維持することについては、いろいろとその過去の経験にかんがみましても論議があるようでございます。また、各地域についても、いろいろなそのときにおける状況や、あるいは国民感情等から見て、これに対して検討が加えられていることは事実でございます。しかしながら、日米安保条約によりましても基地の問題につきましては、すでに従来の現行条約のもとにおきましても、陸上部隊については日本からは引き揚げていく、それからさらに基地等につきましても、その後これが変更を見、日本に返すべきものは返しておるというような情勢でございますが、今日、アメリカが一切の基地を、全世界におけるところの基地を全部やめるというような情勢では、私はないと思います。
  18. 亀田得治

    亀田得治君 国内において安保改定支持が最近されつつあると、そういう意味のことを今おっしゃったが、具体的にどういう一体、証拠があるんです。何か、政府でわれわれの知らないような調査でもされておるのか、明確にしてほしい。
  19. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 内閣におきまして世論調査のなにを月々やったところの報告がございます。この安保条約に対するそういう改定の問題を知っておるとか知らないとかという数、並びにこれを支持するところの数字等を調べております。これはそのつど報告をされておりますが、一般に公表されておりますが、最初数字よりは、非常に最近におきましては安保改定の問題を理解し、この問題を知っておる人の数がふえております。また、支持の数もふえておるようにこの数字があるわけでございます。公表しておりますが、今この数字をここに持っておりませんので、今日のところ、数字的に申し上げることはできませんが、資料としては調査した数字ははっきりしておりますから、後刻御報告申し上げます。
  20. 亀田得治

    亀田得治君 国民を無視してこういう問題を進めるということは、これは大へんあとに禍根が残る。だから、そういう意味で何か秘密調査をされておるというのは、はなはだいかぬ。そういう調査はできたら即刻公表すべきなんです。すぐ出せますか。
  21. 岸信介

    国務大臣岸信介君) もちろんそのつど私は公表しておると思いますが、もちろん出します。別に秘密調査ではございません。
  22. 亀田得治

    亀田得治君 私たち支持されておらない資料こそ見ておるが、そんな、だんだん支持されておるといったようなものは見ておりません。具体的に今数字を言って下さい、大事なことですから。
  23. 小林英三

    委員長小林英三君) 今、総務長官に答申させます。
  24. 亀田得治

    亀田得治君 こういうことは零コンマ何パーセントまで報告を求めておるわけじゃない。大まかな数字ですね、こういうことは総理自体が知っておるべきことです、大事なことですから。法律の末梢のことを聞くわけじゃない。総務長官なんかにあらためて聞くといったようなことはおかしいですよ。
  25. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 正確を期すために私申し上げておるのでありまして、最初におけるわれわれの調査によりますと——本年初めごろの調査によりまするというと、この改定を知らなかった人の方が五〇%以上になっております。その後これが五〇、五〇となり、最近におきましては、これが知っておる人の方が六〇%前後にふえていっております。こういうふうに国民の間にこれが漸次浸透し、理解をされておるということを私は申し上げたのでございます。数字的には、なお正確を期するために、われわれの調査の結果を事務当局より御報告申し上げます。
  26. 亀田得治

    亀田得治君 詳細な資料は後ほど出してもらいましょう。しかし今の答弁でけっこうなんです。知っておるものがわずか六〇%しかおらない。そういう状態で、こういう大事な問題を進めていいでしょうか。おそらく六〇%の人が全部賛成しておるわけじゃないでしょう、中身を見れば。私たちがすでに公表されておるその調査を見ても、政府が実際に中央調査社を使っておやりになった今年の中ごろのもの、知っておるものはなるほど五〇%にふえておるが、政府考え賛成のものは一五%しかない。だから知っておるものが五〇%が六〇%になったところで、その比率で賛成者がふえたとしたら、二〇%以下じゃありませんか。そんなことであなたは国民支持がだんだんふえて、了承されるような段階にきておるなんというようなことを考えておられたら、大へんなことじゃないですか。毎日新聞が八月の下旬に発表した調査によりますと、今すぐ改定した方がいいというのが七・二しかない。一〇%にもなっておらない。今の発表だけでいいです。今のお示しになった数字だけで判断してもらいたい。それで安保条約に対する国民の気持というものが熟して、了承を得ておるといったような考え方をとって一体いいかどうか、総理としてもう一度はっきりお答え願いたい。そんなことでいいということなら、それはあなた民主主義じゃないですよ。
  27. 岸信介

    国務大臣岸信介君) この安保条約の問題に関しましては、私ども政府与党におきましても国民に徹底するように努力をいたしております。今おあげになりましたように、この問題が比較的国民の日常の生活に関係が薄いと国民考えておるせいか、一般にこれが普及につきましては、私ども非常に努力をいたしておりますが、なお十分でないと思います。しかしこの賛成数字をおあげになりましたが、同時に反対数字も必要なんでありまして、決してそのあと反対ということではございませんで、問題は、この改定の要旨なり改定という問題を、国民に広く普及し、徹底せしめて、そして国民のこれに対する批判を聞かないというと、反対賛成も、全体の数からいいますというと、まだそういう調査に現われたところは少ないのであります。私はそういう意味において、全体の国民に徹底して、そして国民支持されるところの数字をさらにふやしていく必要がある、かように考えております。
  28. 亀田得治

    亀田得治君 賛成反対いずれも少ない、今お認めになっておる。だから私は、自民党社会党立場でいえば賛成反対だが、多少その立場を離れて、国民全体の第三者から考えたら、これは熟しておらないのだと、そういうふうに扱うのが正当じゃないかと言うのです。一〇%にも満たないような賛成反対で、どうして一体熟しておると言える、賛成反対抜きにしましょう。問題が熟しておらぬじゃないかと、その点を言っておる。もっとはっきり言って下さい、倫理が合わぬです。
  29. 岸信介

    国務大臣岸信介君) まあこういう世論調査等は、政府がいろいろな民意をうかがう上におきまして、重要な問題等について時々行なっておるわけであります。しかし、言うまでもなく民主政治の根本は、われわれが国民の代表としてこういう重要な問題について国会においてこれを論議し、これによって責任政治の確立がなっておるわけでありますから、これはわれわれ議員として責任をもって問題を決すべきものであると思います。従って私は、ただ単に一つ参考資料として、われわれがそういう点についても意を用いて動向を知るという従来のことを申し上げておるのでありまして、この数字だけでもってすべてを決するのじゃない、やはりわれわれが国民から選ばれておって、国会においてこういう重要問題に関しては責任をもっておのおのその所信を披瀝し合って、そうして決定するというのが私は民主政治のあり方であると思うのであります。
  30. 亀田得治

    亀田得治君 それならば、世論は熟しておらないという点はお認めになるか。
  31. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 私は世論が熟していないというふうには見ておりません。現にいろいろな言論機関等におきましても、また、いろいろな各方面における識者の間におきましても、この問題は十分に論議の対象となり、これに対する意見が発表されておりまして、私はこの問題に関する世論が熟さない、こういうふうには見ておりません。
  32. 亀田得治

    亀田得治君 まあそういう無理な答弁をされても、これはだれも納付できません。あまりここだけにこだわりすぎても困りますので次に移りますが、そういう世論も熟しておらない状態で、なおかつあなたがこの年末から一月を目ざして、そうして調印を強行しようとしておる、非常に無理なんです。だからそれほどあなたがこの問題を推進したいのであれば、やはり解散をして、そうして安保の問題だけで総選挙をやる、そうしてその結果に従う、こういうふうにいくべきだと思いますが、その点はどういうふうにお考えになりますか。
  33. 岸信介

    国務大臣岸信介君) この問題につきましては、しばしば国会でも論議されて、そういう御意見もあるのでありますけれども、私は、この問題についてはきわめて明確に申し上げております通り、私自身はこの問題について解散をする意思は持っておりません。
  34. 亀田得治

    亀田得治君 なぜないんです。世論は熟しておらない。あなたは先ほどの論理からいいますと、世論は多少熟しておらぬでも、国会議員としては国民から仕事をまかされておるのだから、われわれの立場でやったらいいんだ、こういうことをおっしゃったのだが、ほんとうにそういうことをあなたは思っておるのですか。決して選挙というものは国会議員にすべてを白紙委任しておるわけではありませんよ。重大な問題については、われわれがみずから国民に諮っていく、これはイギリスでもどこでもやっていることでしょう。どうなんです。
  35. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 私はしばしば申し上げておる通り、その必要を認めないという考えに立っておるのでありまして……  ○亀田得治君 理由を言ってくれ。
  36. 岸信介

    国務大臣岸信介君) われわれは責任をもって、先ほど申し上げましたように、この問題を扱うことが適当であるということでございます。
  37. 亀田得治

    亀田得治君 結論だけを聞いておるのではない、世論が十分熟しておらないことは、これは明確なんです。そういう状態で解散もやらないで進めていく根拠を聞いておるわけです。だから私今根拠をあなたにお聞きしておるのです。ともかく選挙で当選してくれば、国民からはどんな問題であろうが白紙一任をされておるんだ、そういう立場考え方にあなたは立っておるようですが、そうなのかということを聞いておる。
  38. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 一般的の議論としましては、特にこの問題を——ただその問題だけで選挙をしたことはございませんが、最近に行なわれた選挙におきましては、安保改定問題はわが党の重要政策にも掲げて選挙を行なっております。従って、今日におきましてはその必要を認めておりません。従って解散する意思はない、かように申し上げます。
  39. 亀田得治

    亀田得治君 私も前回の参議院選挙を戦った一人ですが、自民党の候補者の諸君は、この問題に触れるとどういう反対を受けるかもしれない、そういうことをおそれて、だれ一人としてこの問題には触れておりません。実態ですよ。お触れになった方も私はあろうかと思うのですが、大部分の方はそうなんです。決して自民党に票が多数入った、これが即安保支持、こういうふうには言えないのです。世論調査の結果から見てもそうでしょう、安保参議院選挙がきまったものであれば、自民党の数は、世論調査の数からいけばもっと少なくならなければならぬ。矛盾がはっきりしておるではないか、参議院選挙でよけいなことは私あまり言いたくないが、しかもいろんな買収をやったりたくさん出ておるでしょう。おかしいのが。そういう安保だけでほんとうにあの参議院選挙をやった、こういうことなら、私たち総理の言う理屈には多少譲歩いたします。実態はそうじゃない。あなた自身が一番知っているじゃないですか。明確に、もう一ぺんその点答えて下さい。
  40. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 過般の参議院選挙におきましては、わが党の政策といたしまして、国民に訴えるべき要綱をごらん下されば、安保条約改定問題を入れております。私自身もそういう意味におきまして、各地においてやはりこの問題に触れて演説をいたしております。また、あるいは個々にすべての候補者がこの問題に触れたかどうかという問題は別としまして、自民党としては掲げておるのでございます。おそらく反対党の社会党におきましての候補者も、いずれも安保条約反対の演説をされたと私は思います。従って、国民のこの問題に関する大体の動向を知ることは、私は参議院選挙においても現われておる、かように思っております。(「その通り」と呼ぶ者あり)
  41. 亀田得治

    亀田得治君 その通りなんということを言っておる感覚じゃだめですよ。参議院選挙後に調べたこの世論調査がたくさん出ておるわけです。その調査で知らない人がたくさんおるでしょう。そう言うあなたは、参議院選挙の際に安保問題が十分検討されて投票された、こういうへ理屈はつけぬ方がよろしい。  次にお聞きしますが、自民党内には、これは政府にもあるのでしょうが、例の砂川事件に関する最高裁の判決ですね、これがどういうふうに出ようが、そういうことにはおかまいなしに安保改定を進めたらいい、こういう議論があるやに聞きます。船田政調会長なんかはその強硬な意見の持ち主らしい。岸総理はこの点はどういうふうにお考えになっているでしょう。
  42. 岸信介

    国務大臣岸信介君) その点も、かつて国会におきまして明瞭にお答えを申し上げたのでございますが、私は政府として行政府責任におきましてこの問題を遂行するということを申しております。もちろん憲法の最後の解釈が最高裁できまることでございますから、それがきまった場合における処置につきましては、もちろん考えなければならない、それは当然のことでございます。しかしながら、三権分立の本質から見ましても、行政府として責任のあることにつきましては、これを実行することがその権限をまかされておるのみならず、私は義務であると考えております。従ってそういうことにこだわりなく、われわれの所信の通りに進めて参る、こういうつもりでございます。
  43. 亀田得治

    亀田得治君 私の質問間違わないで聞いてもらいたいのです。総理の今おっしゃるのは、最高裁の判決があるまでのことを言っておる。あるまでにおける行政庁としての態度。そうじゃない。お聞きしたのは、最高裁の判決で憲法第九条に対する解釈が含まれて出た場合ですね、その場合に政府の従来の解釈と異なっておる、こういう事態に直面した場合におけることを私は聞いておる。そういう場合であっても、判決の効力は個別的なものだ、こういう理屈ですね。われわれの安保改定改定として進めたらいいんだということを政調会長なんかが言っておるから、岸総理にその点を聞いておるのだ。どうなんです。
  44. 岸信介

    国務大臣岸信介君) もちろん判決は個別的なものでございますが、私はそういう意味において申しているわけではございません。憲法の解釈としての最高の解釈は最高裁の判決によって示される。これに従っていかなければならぬとはこれは当然であると思います。私はその場合において判決に従わないということを申しておるのではございません。
  45. 亀田得治

    亀田得治君 そうすると、判決に従うわけですから、判決理由の中で憲法第九条に対する解釈が触れられて、そうして政府の解釈が否定された場合には、あなたはこの安保条約は当然やめますね、従うのだから。そうでしょう。どうです。
  46. 岸信介

    国務大臣岸信介君) その最高裁の憲法の解釈に抵触しないように処置をいたします。
  47. 亀田得治

    亀田得治君 だから私は言っておる。抵触するように処置したら大へんですよ。そこで抵触しないように処置するとしたら、最高裁判決で九条の解釈が明確になったら、そして政府の解釈が間違いであるということになったら、この安保条約はやめにするかということを言っておるのです。普通ならそんな仮定のことを聞いたりしても、仮定だから答えられぬというようなことをよく言いますが、重大な問題なんですから私ははっきりしてもらいたいと思う。
  48. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 私よく御質問の御趣旨理解しかねるところがありますが、私どもこの安保条約改定におきましては、常に憲法の規定に従うことを大前提として、また条約の上にもそれを明瞭ならしめております。従いまして、最高裁において憲法解釈としてきめられたことはこれはそれが権威があるのでございますから、それに抵触するような行動のできないことはこれは当然でございます。従ってそれに関してその判決の現実に下される場合なり、その判決そのものをはっきりとつかんで、それに対する私は抵触するような処置は一切しないということを申し上げているのであります。
  49. 亀田得治

    亀田得治君 そういたしますと、私の方で解釈すれば、結局最高裁の判決で九条の解釈に関して政府の今までの解釈が否定されたらその通り従うというわけですから、安保条約はこれはやめにしなきゃならない。やめにする、こういうふうに総理考えているというふうにこれは当然なる。そこを何べんやっても押し問答になるから、私はそういうふうに解釈する。  そこで、そうであれば今最高裁で専門家が大いにこの問題について議論をしている。なるべく早く結論を出そうとしておる。そういうときを見はからって、この問題になっておる安保条約世論も熟しておらない、こういうものをぐんぐん進めるということは間違いではないか。渡米の打ち合わせまでするといったようなことはなおさら間違いではないか。それをどういうふうに考えますか。決して裁判所と行政庁は別だ、裁判は裁判、行政は行政、そういうわけには参りません。これは。総理大臣は一番憲法に忠実でなきゃならぬのですから、こういう浮動的な状態の中でこれを進めていくということは間違っている。だれが聞いても私はそう思うと思うのですが、総理はどうなんです。
  50. 岸信介

    国務大臣岸信介君) これは先ほど来お答え申し上げている通り、私は現在のこの日本の三権分立の精神から申しまして、やはり行政官庁は行政官庁の責任において、その是と信じ、またやらなければならぬことを行なっていく、しこうして憲法の解釈そのものの最後の最高の権威は最高裁の判決でございますから、これは他の行政庁もその他のものもこれに従わなければならぬことはこれは当然でございます。私は行政府の長としてわれわれが正と信じ、またやらなければならぬと考えていることをわれわれの責任においてこれを遂行することは当然である、かように思っております。
  51. 岩間正男

    ○岩間正男君 関連質問。先ほど砂川判決があのまま支持されれば、通れば、これに対して従う、憲法の範囲内でやるということを言われましたが、しかしそういうことは抽象的です。具体的に言えば、たとえばこの判決は共地を認めることが非常にこれは憲法違反だ、あるいは米軍のいることが憲法違反だ、こういうふうに明らかに言っている。従って現在の安保条約、あなたの進められている安保条約は全然根底がなくなると思うのですが、そういうふうにはっきり明確に了承していいのかどうか。この点明らかにしておいてもらいたい。
  52. 岸信介

    国務大臣岸信介君) これは先ほど来私がお答えを申し上げている通り、われわれは憲法の範囲内においてすべてのことをやる権限もあり、また責任も負うているわけでございます。そういう意味のことをこの安保条約改定にあたりましても大前提といたしておるのであります。また憲法の解釈の問題につきましては、最高裁の判決を最高のものとしてこれに従うということを申し上げている。具体的のことにつきましては、最高裁の判決等をいろいろと今日から憶測することは私は適当でないと思います。われわれは行政府に課せられた責任においてその是と信ずることを行なっていく、こういう考えでございます。    〔岩間正男君「そういう抽象論ではこれはごまかしになる。砂川判決は軍事基地に……」と述ぶ〕
  53. 小林英三

    委員長小林英三君) ちょっと待って下さい。底だ発言を許していませんよ。    〔岩間正男君「それじゃ許して下さい」と述ぶ〕
  54. 小林英三

    委員長小林英三君) 岩間君。
  55. 岩間正男

    ○岩間正男君 ただいまの総理答弁は、これは全く私の聞いていることに具体的に答えていない。聞いていることに具体的に答えてもらいたい。砂川判決がこれははっきり示されて、最高裁でそういう判決があのまま通るということになれば、当然基地は憲法違反であり、それから米軍が日本に駐留することは、これは憲法違反になるわけです。従って、あなたは憲法に従う、砂川判決の結果に従うというならば、それは取りやめる、米軍は返す、軍事基地は取り払う、こういうことを明確にここで明らかにされなければ、あなたの答弁にならないと思う。今のような抽象論でごまかそうとしても、僕は聞きませんよ。はっきりもう一回答弁していただきたい、このことに限って。ここのところをごまかしているからだめなんです。
  56. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 私は、先ほど答弁を申し上げたことで十分であると思います。
  57. 亀田得治

    亀田得治君 最初にお聞きした総理渡米ですが、これは確定しておらぬようなことを言われましたが、大体行くつもりでおられるのじゃないですか。一点だけ確かめておきます。
  58. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 先ほどお答え申し上げました通り、その問題は検討いたしております。行くつもりであるとか行かないつもりであるとかというような一つの既定観念を持っておるわけではございません。検討いたしております。
  59. 亀田得治

    亀田得治君 あなた個人は行きたいのですか、どうなのです。
  60. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 別に行きたいとか行きたくないとかというような考えは持っておりません。
  61. 亀田得治

    亀田得治君 では次に外務大臣一つ移ります。  安保条約の中の交換公文に主として限定して若干質問したいと思う。この前にもあなたはお聞きした点ですが、この交換公文のいわゆる事前協議ですね、これに拒否権が含まれておるという解釈、これは非常に無理ですよ。政治的にいろいろ解釈する立場なら別ですが、純粋に言葉そのものをとって解釈した場合に、事前協議に必ず拒否権が入る、こういうことは非常に無理だと思うのですが、その後外務大臣はやはり同じ考えでおるかどうか。何か新しい研究でもされておるのなら、それをも一つ述べてもらいたい。
  62. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) その協議に、まあ拒否権という言葉はどうかと思いますが、協議というものは合意が——協議が成立するためには合意がなければならぬと思います。従って、当然協議をして、不成立——協議が整わないという場合があり得ると、こう思っておりますし、またアメリカもそういう解釈をいたしておりますので、当然協議においては拒否されるものがあると、こういうふうに思っております。
  63. 亀田得治

    亀田得治君 それは拒否されるものもあるでしょう。しかし、それは単なる事実上のことですね。拒否権があって、ノーと言えば、それは法律的にも先方にはできないということになる。ところが拒否権がない状態で協議そすると、協議だから、ノーとあなたがおっしゃる場合があるでしょう、あってもそれは法律的な効果はない。ただノーと、人間が二人会えば、されていいか悪いかくらいのことはだれでも言いますよ。それが法律的な効果を持たぬじゃないですか、協議の場合にノーと言ったって。それを聞いておる。あなたはいつもノーと言えるから拒否権があるのだと、こうおっしゃるのですが、そういうことにはならぬじゃないですか。
  64. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 条約において協議という言葉を使います場合に、ただいまお話のように、事実上におきましても、日本がノーと言った場合に、そのこと自体協議が成立しないことになるわけであります。協議が成立しないでそれを実行いたしますれば、それは条約違反になろうと思います。
  65. 亀田得治

    亀田得治君 条約違反になるのですか。
  66. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 条約違反になります。
  67. 亀田得治

    亀田得治君 どうして条約違反になるのですか。そんなことは何もあなたの中間報告を見たって書いてないじゃないですか。あなたの方でノーと言えば条約違反になると、条約の成文からそんなことがどうして出てくる、それを聞いておきましょう。
  68. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 協議であります以上、協議が整わなければ相ならぬわけであります。従って、やはりこの成立には同意を必要とすることは、これは一般的通念だと存じます。従いまして、協議が成立するためには、イエスかノーかがそのときに行なわれると思います。従って、そういう場合に、イエスの場合は協議が整いましょうけれども、ノーの場合には協議が整わないのであります。でありますから、当然それは拒否されるものと考えざるを得ないのであります。
  69. 亀田得治

    亀田得治君 ざるを得ないということでしょうな。これはまあ国内法の場合でもそうですが、何か協議をすると、それだけで終わっておる場合にはこれは単なる協議なんです。協議が整わなければ、第三者の機関にまかすとか、あるいは別な方法をとるとか、普通は書くわけなんです。これは書いてないわけですね。だから、これはどうにでも解釈できるわけですよ。あなたのような解釈しか成り立たぬ問題ではこれはないわけなんです。そこで、あなたに聞きますがね。一体協議——これはまあ英文ではコンサルトを使うことになっておるようですが、協議——コンサルト、これだけであなたのおっしゃるような拒否権まで含めた意味に使われたような国際条約はあるのかないのか。私はあまり国際法のことは詳しくありませんが、寡聞にして私は知りません。あればここで示してもらいたい。
  70. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 特に、今回の交換公文においては、事前に協歳をするということを言っておるのであります。事前に協議をするということは、当然協議が成立しなければならぬわけです。協議が成立するためには、イエス、ノーということがあるわけなんです。それがノーの場合には成立しない、イエスの場合には成立する、これは当然なことだと思っております。
  71. 亀田得治

    亀田得治君 前例があるかということを聞いておるのです。どうです。
  72. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 条約局長をして答弁させます。
  73. 亀田得治

    亀田得治君 だめだよ。そんな総括質問条約局長の出るところではない。外務大臣自身がこれほど問題になっておることについて、はっきりあなたはつかんでいなければだめですよ。そういう前例をあなたは知って、これならばこういう前例があるからおれの解釈で大丈夫やっていけると、この自信がなければ、外務大臣としてだめですよ。だからあなたに聞いておる。こまかい条約なんかどうでもよろしい。どこそこに大体こういうものが一つ二つあるとこういうことを答えられたらよい。どうです。
  74. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 私ども前例はあると思いますし、またわれわれ交渉の過程においてそういう話し合いをいたしておりますので、今お話しのように、私はそういう自信を持って交渉をいたしておるわけです。また、交渉の過程においてそういう話し合いをいたしております。
  75. 亀田得治

    亀田得治君 前例があると思うといったようなあいまいなことですが、あなたはこういう前例がどこそこにあるとか、こういうことをつかんでおらぬのですか。
  76. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 一般的に協議は当然そうあるべきでありまして、それは私は、協議という言葉を使っている以上、特に事前協議の場合そうだと考えております。
  77. 亀田得治

    亀田得治君 前例をあなたは知らないのです。そう解釈していいですね。
  78. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 一々の前例につきましては、条約局長から御説明いたさせます。
  79. 亀田得治

    亀田得治君 一々じゃない、一つでいいのです。たとえば、私が若干調べてみましたが、国連憲章の第五十条、ここでやはり、コンサルトを使っておる。ライト・ツウ・コンサルト、協議権となっておる。これはその方面の専門家に私聞きましたが、決してそういう拒否権まで含むものではない、こういうふうに言っております。それが私は通説だと思う。あなたの方でないようだから、私から一つ聞きますが、どうなんです。そんなら、五十条なんというのは、あなたは調べておらないのか。大臣から承ります。
  80. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 条約局長から御説明いたさせます。
  81. 亀田得治

    亀田得治君 だめだ。
  82. 小林英三

    委員長小林英三君) 亀田君、一応、条約局長に……。
  83. 亀田得治

    亀田得治君 局長には委員会で聞きます。あなたに聞いているのじゃないから、よろしい。重大なことです。質問しない者が出てきちゃだめだ。委員長、横暴じゃありませんか。私の質疑をじゃますることになる。だめだ。  私は、個々の枝葉末節のこまかい条約のことなんかを聞いておるのじゃない。これほど重大なことだから、少なくとも外務大臣としては、一つや二つの前例というものを握って、そうしてやっておられると思ったのだが、それがない。私の方から国連憲章五十条を示して、この場合のコンサルトの意味を聞いたって、それが答えられない。そんなことで外務大臣が勤まりますか。それは知っておるのですか、五十条のコンサルトは。
  84. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 最近のアメリカとフィリピンの条約には、やはり協議は合意を前提としているそうでございます。
  85. 亀田得治

    亀田得治君 そういうものは、条文を示してもらいたい。私が今聞いておる国連憲章五十条は、どうなんです。外務大臣、知らぬのですか、それは。
  86. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 私、今国連憲章五十条を存じておりません。どういう規定があるか、法律的にそういう問題、条約上そういう問題は、条約局長からお答えさせます。
  87. 亀田得治

    亀田得治君 じゃ、こういうふうに聞いてみましょう。このコンサルトと、コンセント、承認、それから合意、アグリーメント、この三つの言葉が普通使われるわけですが、これは言葉自体意味がはっきり違うでしょう。三つとも同じものだ、そういうふうに外務大臣考えておるのですか。言葉自体について一つお答えを願いたい。
  88. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 協議というのは、広い意味に解釈されると思います。むろん、合意というのは、一方的な通告の場合もございましょう。しかし、協議というのは、お互いに話し合いをして、そして話し合いが成立する、合意するという意味に解すべきだと思います。
  89. 亀田得治

    亀田得治君 だから、この三つの言葉は意味が違うということなのか、結論をはっきり言って下さい。
  90. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) むろん、言葉のニュアンスからいえば、違うと思います。
  91. 亀田得治

    亀田得治君 日本語の場合には不明確な点がありますが、英語の場合には非常に明確なんです。言葉自体に入っておらない意味を政治的に持たせようと思ったって、これは無理なんです。だから、聞くわけですが、全くあなたはそういう点はっきりしておりませんね。  そこで、あなたはまあそういう無理な解釈をされるわけですが、そういう無理な解釈をするには、これはよほど日米間でそういう点がはっきりなっておらなければいけない。どういうふうにはっきりなっておるのですか。
  92. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) われわれ、交渉の過程において、先ほど申し上げましたように、協議というものが成り立つためには、やはり合意されなければならぬということの前提のもとに、話し合いをいたしておるわけであります。
  93. 亀田得治

    亀田得治君 それは、何か議事録にでも明確にされておるのですか。
  94. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) むろん、今日まで話し合いの過程において、そういう前提のもとに話し合いをいたしておるわけであります。
  95. 亀田得治

    亀田得治君 議事録に書いてあるかどうかということを聞いておるのです。
  96. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) まだ条文等を最終的に作成をいたしておりませんし、全体の問題についてそこらは話し合いをいたしておりません。しかし、われわれ、条約交渉の過程において、そういう態度でやっておるということはむろんでございます。
  97. 亀田得治

    亀田得治君 それでは、議半録に書いてないのですね、まだ。そこだけを聞いておるのです。聞いたことを言って下さい。
  98. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 現在、われわれとしては、そういう日米間の話し合いをいたしておりますときに、そういうふうに解釈をして言葉を使ってきておるのでありまして、そのこと自体を、今議事録にすぐ書こうというふうには考えておりません。
  99. 亀田得治

    亀田得治君 十六回、日米会談を今日までやっておるようですが、議事録はそのつど作られていると、私はこれは常識的に思うのですが、これは作られておるのでしょうね。
  100. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) むろん、交渉をしております過程においては、話し合いについての記録はとっております。しかし、それを議事録という形にするかしないかということは、別個の問題だと思います。
  101. 亀田得治

    亀田得治君 両者で意見の一致したものを文書にして、そうして両方で確認をして、そうして次に進んでいくという、こういうことでなければ、あなたの説明していることはこちらだけの  メモになってしまうじゃないですか。そんなずさんなやり方をやっておるのですか。やはり、十六回の公式会談があるわけですから、議事録というものを作って、確認し合ってお互いにやるわけではないですか。
  102. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) むろん、交渉はいろいろな点に触れて、そうして話し合いをいたしていくわけでありまして、それに対する記録は、われわれはとりながら参っております。しかしそのもの自体をすぐに議事録に作成するかしないかというような問題、またそれを必ず全部入れなければならないかという問題は、別個の問題でございまして、そういう点につきましては、まだ何も触れておりませんし、私どもといたしましては、話し合いがついたものを今後条約上にどういうふうに書いていくかということを、これからやるわけでございまして、そういう過程にあるということを申し上げたいと思います。従って、記録をとりましたら、それが全部議事録になるということは申し上げかねるのであります。
  103. 亀田得治

    亀田得治君 はっきり言って下さい。十六回の会談の議事録というものはあるわけですか。
  104. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 議事録というものの、どういうふうな御解釈か知りませんけれども、われわれはむろん、話し合いをしているときに、記録をとっております。従って、前回の話し合い、あるいはそこまで来た結論については、結論的にこうなったんだということを確認しながらいっておることは、むろんでございます。しかしながら、そのこと自体がいわゆる公式議事録になるかどうかということは、別個の問題だと申し上げております。
  105. 亀田得治

    亀田得治君 それはその通りです。公式に発表する議事録というものは、最終段階においてまた整理されるだろうと思うのですが、ただ、私がこういうことを聞くのは、私が指摘しておるような点等についての答弁がきわめてあいまいである。それで、議事録について私は関心を持たざるを得ないわけです。  そこで、記録自体はあるような感じを私は受けたわけですが、その十六回の議事録を、われわれの参考に、国会に出してもらいたいと思う。できますか。
  106. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) これは外交交渉の内容でございますから、出せません。
  107. 亀田得治

    亀田得治君 多分そう言うだろうと思っておったのですが、しかし、私たちは、あなたから中間報告を受けた。しかし、きわめてあいまいなんです、いろいろな点を追及すると。寄るところは、結局は議事録です。だから、その議事録そのままでなくてもよろしい、第何回目にはどういうことがきまった、第何回目にはどういうことがきまった、これは大体公表しているわけですから、そのきまったことだけを、日付順に議事録を抄録したものを私は出してもらいたい。そうすれば、大体私たちがそれを通じて、この拒否権等の問題についてもどういうふうに扱われておるか、参考になるわけです。あなたの中間報告に対する現段階におけるわれわれの国政調査権として、これは要求するわけです。それなら出せるでしゃう、そのままのものじゃないのですから。
  108. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 中間報告以上には申し上げかねます。
  109. 亀田得治

    亀田得治君 なぜですか。議事録そのままを出せと言っているのじゃない。抄録したものを出してくれと言っている、口付順に。どうしてできないか、できない理由をおっしゃって下さい。
  110. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 中間報告の説明として、私から口頭では説明を申し上げております。しかし外交交渉でございますから、その中の過程のものを全部出しますことはできません。
  111. 亀田得治

    亀田得治君 それじゃわれわれの国政調査に非常に不便じゃないですか。立場を変えて考えてごらんなさい。出して、何も有害なことはないでしょう、きまったことだけを書いて出したらいいのですから。どうせそこに書いてないことは、われわれはきまらないと、こう判断するのですから。それだけでも非常に重要なんです。そういうことがどうしてできないか。
  112. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) これは外交交渉の過程でございますから、私から中間報告をいたし、それに対する説明をいたす以上に、出すわけには参らぬと思っております。
  113. 亀田得治

    亀田得治君 この拒否権の問題ですが、あなたはコンサルトに拒否権を含む、こういう解釈をあくまでもおっしゃるわけですが、それほどあなたがそういう解釈をされ、そうしてアメリカ側もそういう解釈を了解するということなら、いっそのこと、コンセントなり、アグリーメント、こういう言葉を使ったらどうなんです。そうすれば、この点に関する限りは問題は一応解消していくわけなんです。そういう言葉を使おうということを、アメリカ側にあなたから提起したことがあるんですか。提起したけれども、断わられたのか。どっちなんです。
  114. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 交渉中いろいろな話し合いはいたしましたけれども、その交渉自体外交交渉でございますから、今どちらがどういうことを話して、どちらがどういうものを拒否したということは、申し上げかねると思います。
  115. 亀田得治

    亀田得治君 コンサルトのかわりにコンセントなりアグリーメントを使おうじゃないか、そういうことを言うたことがあるかないかぐらいは、外交秘密とか何とかの問題じゃないでしょう。何でも外交秘密秘密と言う。そんなものは秘密になるのですか、一体。秘密にしなければならぬ理由をはっきりして下さい。とんでもない話であります。
  116. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) われわれとしては、この条約交渉をやっておりまして、いろいろな字句上の問題その他について、お互いにいろいろな意見を交換したことは事実でございます。しかし、それを最終的にきまります過程において、どういうふうな意見があったかということをこまかく申し上げることは、私は適当でないと思っております。
  117. 秋山長造

    秋山長造君 議事進行。ただいまの亀田委員と藤山外相との質疑応答を聞いておっても、これはもう全然進展しておらない。大臣のおっしゃっておることはさっぱりわれわれにはわからない。特に、先ほどの日米交渉、十六回にわたる日米交渉の議事録云々ということについても、外交機密だから一切資料は出せないとおっしゃるが、しかし、それにしても、この間の国会においてはこういう分厚の中間報告をやられているでしょう。外交交渉の途中でこれだけの中間報告をやられるからには、その根拠になるいろいろな資料というものが当然前提になっておると思う。だから、中間報告の根拠になるところの資料という範囲内なら、資料は出されても決して不都合はないと思う。だから、委員長におかれては、その範囲でよろしい、この中岡報告の根拠になっているところの議事録その他の資料というものを、われわれに提供していただくようにお運びいただきたい。(「異議なし」と呼ぶ者あり)
  118. 小林英三

    委員長小林英三君) これは今、外務大臣亀田君に対する御答弁を拝承いたしておりまして、たまたま今議事進行によって秋山君からそういう問題が提案されたわけでありますが、これは重大な問題でありますから、秋山君のそういう提案を委員会が用いるか用いないかという問題は、私は一応委員会がきめる……。
  119. 秋山長造

    秋山長造君 もう一度言って下さい。
  120. 小林英三

    委員長小林英三君) 今の秋山君の議事進行による御提案というものいわゆるこれだけは出すべしということですね、これは今の亀田君と外務大臣との質疑応答を聞いておりまして、私は、委員長で独自で決定すべき問題じゃない、委員会に諮って決定すべきものである、こういうことを申し上げております。
  121. 亀田得治

    亀田得治君 今諮るのですか。
  122. 小林英三

    委員長小林英三君) これは、その前に理事会に諮って、理事会できまらない場合には、また委員会に諮ってきめたいと思います。
  123. 久保等

    ○久保等君 議事進行理事会で相談ぜられるということは一つの方法だと思うのですが、ただ、私は、委員会の通常として特に委員長に要望しておきたいと思うのですが、委員会運営ですから、政府の方からやはり出してもらわぬと審査の都合上どうしてもやむを得ないというような問題については、これは私はもう右から左に政府当局に対してやはり所要の資料委員長として要求してもらいたいと思うのですが、何か委員長政府の気持を察して適当に処理をされるというようなことでは、私は、委員会の円満なかつ十分な審査は不可能ではないかと思う。少なくとも、ただいま秋山委員の方から要求せられた資料は、先ほど来の答弁を聞いておられて、どの委員もおそらく、私は、何か外務大臣がことさら内容的なことについては説明を全然やっていない。しかも、外交上の機密というような言葉でもって巧みに答弁をそらしておったけれども、少なくともきまってしまったことだけは、合意できまってしまった議事録の事実関係を公表することについては、これは何も私はデリケートなことは何にもないと思う。きまらないことについて、ぜひ一つ、こちらの主張はどうだ、向こうの主張はどういうことだというので、資料を出せというのなら、いかぬかもしれぬけれども、きまったことを日時を追って、十六回に及ぶところの会議の結論について委員会報告しろというようなことは、これは当然委員会として要求してもらいたい。ぜひ一つ、私は、この委員会委員長がその通りお取り計らいを願いたいと思う。
  124. 小林英三

    委員長小林英三君) 今、委員長の申し上げた通りであります。秋山君の議事進行に対する私の委員長としての意見は、今申し上げた通りであります。
  125. 亀田得治

    亀田得治君 こういう問題は、数でものを言わすのじゃなしに、できるだけ国会の参考になるようにやってもらう、この点、質問者から希望しておきます。  それから、もう一点この問題でお伺いしておきますが、米韓相互防衛条約の第二条ですか、これによりますと、武力攻撃があった場合の米軍の出動について協議と合意による措置、こういうふうにコンサルテーション・アンド・アグリーメントと、念を入れて二つ言葉が使われておる。これはこの言葉の意味が二つとも違うから、こうなっておる。そうしてこの米韓条約でいえば、緯国の同意がなければ、これは来年は動けないことになる、こういうふうにはっきりしている。李承晩政府すら取りつけのできることを、一体、藤山外相ができないのですか。こういう努力を今までしておらぬとしたら、今からやる考えはありませんか。
  126. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 米韓協定の中にそういう言葉があることは知っております。また、それが唯一のものであることも、それは御承知の通りだと思います。しかし、今日われわれとして、先ほど申し上げましたようなはっきりした解釈のもとに話し合いをいたしておりますので、それで差しつかえないと私ども考えております。
  127. 亀田得治

    亀田得治君 これはいずれその中間報告に関連した資料等も見て、もう少しあらためて追及します。  次に、同じく交換公文の中の問題ですが、装備の重要な変更、重要な装備、こういうことが事前協藤の対象になっておるのですが、端的にいって、私は国民の気持からいうならば、核兵器という言葉を明記すべきだと思うのですが、藤山外相はこの点どういうふうにお考えになるか。また、そういう点、米国側に要求したことがあるのか、明記することを。
  128. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 重要な装備の中に核兵器が含まれておることはむろんでございます。われわれは、重要な装備という名称によりまして協議をいたすことが、一番適当だと思っております。
  129. 亀田得治

    亀田得治君 しかし、そのことは、これもまた議事録になりますが、明確にされておるのですか。一切の核兵器が重要装備の中に含まれるということは書いてあるのですか。
  130. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 一切の核兵器はむろん重要装備の中に含まれております。
  131. 亀田得治

    亀田得治君 書いてあるかと言うのです。時間がたってしょうがないです。
  132. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) われわれは、こういう問題を論議しますときに、むろん核兵器が一番大事であります。従って、核兵器ということを前提にして、そうしてこの話をしておるわけでありますが、むろん重要な装備の方が適当だと私どもは思っております。
  133. 亀田得治

    亀田得治君 やはり、議事録をどうしてもこれは出してもらわなければだめです、そんなごまかしの答弁ばかりして。たとえば、核兵器といっても、岸さんが、何でしょう、従来、防衛用のものは憲法違反にならない。ある意味ではこれは核兵器を非常に軽視しておる。こう言うておる。また米軍にしても、これは常識ですが、米軍全体が原子武装化が進んでおるわけなのです。だから、そういう状態ですから、あいまいにしておけば、ある時点ではある種の核兵器というものは重要装備に入らない、こういう解釈が出てくる余地というものは多分にあるわけなのです。ないと言えますか。だれでもこれは心配しますよ。    〔委員長退席、理事館哲二君着席〕
  134. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) その中で装備と申しますのは、核兵器を含んでおることはむろんでございます。核兵器を含んだ重要な装備というものを事前協議の対象にいたしております。
  135. 亀田得治

    亀田得治君 だから、そのことが議事録で文章化されておるかということを聞いておるのです。
  136. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) われわれは、その前提のもとに話し合い——その前提がきまって話し合いをしておるわけでございます。そういうことだとはっきり申し上げておきます。
  137. 亀田得治

    亀田得治君 委員長に要求しますが、政府側の答える人にはっきり忠告してもらいたい。こちらが質問したことに答えてほしい。書いてあるかないかということを聞いておる。書いてないなら、ないと言いなさい。
  138. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 議事録と申しましても、先ほど申し上げましたように、われわれとしては今日まで話し合いの記録はとっております。正規の議事録というものは別の問題でございますから、そういう意味において申し上げているわけであります。
  139. 亀田得治

    亀田得治君 政府側のこういう要点をはずしたような答えのために、私の質同時間がだんだんたっていくわけです。だから、委員長の方でもっとはっきり処理してもらいたい。私はもう質問しませんから、私の答えがぴたっと出るまで、何回でも委員長の方から質問してほしい。(「委員長委員長」「必要なし」と呼ぶ者あり。)
  140. 館哲二

    理事(館哲二君) 議事進行ですが……。
  141. 岩間正男

    ○岩間正男君 亀田君の今の要求は当然だと思うのです。これは委員会の権威に関すると思うので、委員長権限でできることだと思う。ちゃんと質問したことに答えるのは当然だと思う。的をはずして、いつでもそらしている。そのために非常に時間のないことを亀田君あせっていますが、そういうことのないように、はっきりやってもらいたい。委員長の権限で要求してもらいたい。
  142. 館哲二

    理事(館哲二君) 政府側としてもおそらく、御質問者の意向をよく汲んで御答弁になっていると思いますが、将来ともよろしくお願いします。(発言する者多し)  亀田右、どうぞ質問を継続して下さい。
  143. 亀田得治

    亀田得治君 書いてあるかないか、答えさせて下さい。ほかの説明は要りません。
  144. 館哲二

    理事(館哲二君) 藤山外務大臣から御答弁ありますか。
  145. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 先ほどお答えした通りでございまして、現在われわれとしては、そういう記録をとりながら話はいたしております。が、しかし、そういう公式の議事録というものはまだございません。    〔理事館哲二君退席、委員長着席〕
  146. 亀田得治

    亀田得治君 だめですよ。それでは。結局は書いてないのでしょう。腹の中でそんなことを思っているだけなんです。ともかく、私から申し上げるまでもなく、一九二八年ですか、条約に関する条約というのがある。この第三項に、条約の有権的な解釈というものは文書によらなければならない。これは当然なことですが、大事なことなんです。腹の中でどれだけあなたが一方的に考えておっても、国民了承できません。  それから、もう一つ、じゃ、書いてあるかないか聞きましょう。それは、これは衆議院の段階でも若干問題になったことですが、極東の平和と安全ということが、いわれておりますが、その範囲ですね、大体米軍の作戦行動の範囲は極東に限定される意味なのかどうか。こういう点はどうなっているか、明確にしてほしい。
  147. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 極東につきましては、先般も衆議院で御答弁申し上げましたように、フィリピン以北、日本の周辺を含んでの一帯、こういうふうな解釈のもとにわれわれは仕事を進めているわけであります。
  148. 亀田得治

    亀田得治君 ちょっと、聞こえなかったので、もう一度。
  149. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) フィリピン以北——大体フィリピンから北、中国の沿岸、沿海州、日本の周辺を含めて、そういうふうに解釈をしてやっております。従来の条約の中に、極東という字が使われることむろんでございますけれども、極東の平和と安全というものが日本の平和と安全と同じ意味において重要だということをわれわれは考えておりますので、その点についての表現において極東の平和ということが用いられると思います。
  150. 亀田得治

    亀田得治君 もう一つあります。あと時間がないから、私の質問に丁寧に答えて下さい、残さぬように。
  151. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) もう一つは、極東に……。
  152. 亀田得治

    亀田得治君 米軍の出動の範囲。それは出動の根拠でしょう、ためにというのは。出動したあとの範囲は極東に限定されておるのか。
  153. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) それは協議によって、むろん、われわれとしてはやっていくわけであります。
  154. 亀田得治

    亀田得治君 限定されるのか、されぬのか。極東外に出ていいのか、悪いのか。
  155. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) むろん、アメリカ軍としては、自由に出られると思います。しかし、日本としては、極東の平和と安全が日本の平和と安全に重大な問題なんでありますから、極東の平和と安全がどういうふうにして日本の平和と安全を脅かすかということを、まず検対しなければならぬと思います。極東以外のそんな遠くの地域にあるものが、すぐに日本の平和と安全につながってくるとは思えませんが、ある場合もあるが、ない場合もある。従って、極東の安全と平和という問題について、これは当然協議しなければならぬ。従って、それが日本に対して直接侵略、あるいは非常な日本の平和と安全を脅かすというような状態を、われわれは考えざるを得ないのであります。その範囲内において、われわれとしては米軍が出動することに対して同意をするかしないかという問題になろうかと思います。
  156. 亀田得治

    亀田得治君 あるいは、ただいまの答弁ですと、米軍の作戦行動範囲は極東に必ずしも限局しない、こういうことなんです。そうすると、法律上の問題としては、中国やソ連の奥地まで行ってもよろしい、こういうことになりますね、この交換公文そのままであれば。どうでしょう。
  157. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) むろん、極東の平和と安全に寄与するかどうかということが今回大事なんでありまして、極東の平和と安全に寄与するということが、日本の平和と安全とにうらはらになっております。従って、そういうことを基準にしてわれわれとしては考えざるを得ないのでありまして、その意味において、むろんわれわれが侵略的な——国連憲章に従って参ります以上、侵略的な行動をアメリカ軍がするとは思っておりません。まあ、従って、そういう意味においては、極東にどういう事態が起こるかということによってのみ、われわれはこれを考えていけばいいだろう、こういうふうに考えております。
  158. 亀田得治

    亀田得治君 よけいなことを言わないようにしてもらって……。結局、極東の平和と安全に必要だといううことになれば、ソ連や中国の奥地まで行っても、この交換公文にもとるものではない、こういうふうに解釈できますね。
  159. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) むろん、その極東という意味を非常に広く解釈をわれわれはいたしておらぬ。今申し上げたような意味に解釈をいたしておるわけであります。従って、広く出ていくというようなことは考えられもしないわけでありますが、しかし、日本自体に直接の攻撃がかかってくるような場合、そういうような場合には、日本の安全を守るためには、アメリカ軍としては行動をせざるを得ないと思います。しかし、前提として申し上げておるのは、極東の平和と安全が脅かされて、ヨーロッパの平和と安全が脅かされたからといって、すぐに協議をするという段階にはならぬということをはっきりさしておるわけであります。
  160. 亀田得治

    亀田得治君 どうも答弁がぴたっと来ませんな。交換公文を純粋に法律的に見た場合に、米軍の出動範囲に限界がなければ、目的さえ明確になれば、行動範囲はソ連や中国の奥まで行くことになるのではないか。なったところで、交換公文にもとらぬ。もしそれはいかぬということであれば、交換公文に制限を加えるなり、あるいは議事録でそれを明確にしておかなければならない。それを聞いておる。
  161. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 今御答弁申し上げましたように、日本の平和と安全が脅かされる、あるいは日本が直接侵略を受けるという場合には、当然、協議が行なわれると思います。従って、それが極東の平和とつながっていることはむろんだと、われわれはそういう解釈をとっておるわけであります。極東に起こりました、平和が乱されましたときに、日本の平和と安全というものがやはり影響を受けるわけであります。でありますから、そういうときには協議をして、アメリカが作戦行動をするかしないか、それについては日本の意思を十分伝えざるを得ないと思います。また、それによって日本基地を使用してもらわなければ、極東以外の問題について勝手に日本基地を使用されるということは困るのはむろんでございます。
  162. 亀田得治

    亀田得治君 どうも、答弁がわざとこうぼけて言われるので、大へん迷惑ですが、この交換公文は、条約と同じように、国会の承認を求める立場で提出されることになっておるかどうか。
  163. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 交換公文そのものが必ず国会に批准を求めるというものばかりではないと思いますが、この交換公文は国会の批准を得るようにいたして参りたい、かように考えております。
  164. 亀田得治

    亀田得治君 米国においてもそういう扱いですか。
  165. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 米国側は、米国のそれぞれの国内の手続がございますから、上院等に対して政府としての手続をいたすと思っております。
  166. 亀田得治

    亀田得治君 どういう国内手続をとるか、あなた聞いておりませんか。交換公文は非常に重要な問題ですよ。これは関連してくる、あとの効力の問題に。
  167. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) アメリカとしては、法制上いろいろな場合に日本と違っておるようでありますから、とるものもあれば、行政府に権限をまかされておるものもございます。従って、交換公文の全部が日本と同じように上院の批准を得なくても、それだけの権限が与えられることは当然だと思うのであります。そういう意味におきまして、この交換公文はおそらく上院には参考文書としては出ましょうけれども、批准の対象とはならないんじゃないかと思っておりますが、しかし、そのこと自体が効力に影響はございません。
  168. 秋山長造

    秋山長造君 ちょっと、委員長、関連して。
  169. 小林英三

    委員長小林英三君) 亀田君、いいですか。
  170. 亀田得治

    亀田得治君 どうぞ。
  171. 秋山長造

    秋山長造君 今の外務大臣のお話だと、アメリカでもやはり日本と同じように、交換公文は、そのときの都合によって、あるいは国会にかかったりかからなかったりするという話ですが、われわれの聞くところによると、交換公文というものは、これはアメリカでは国会にはかからないということをはっきりしてあるということを聞いておるのですがね。そこらはきわめて重要ですから、問題が問題だけに。これは十分の根拠をもってはっきり説明して下さい。
  172. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 私は、アメリカの法制そのものには詳しくございませんから、全部について申し上げかねますが、この交換公文につきましては、アメリカ国会に批准をしなくても、行政府にまかされている範囲において条約締結の上において、同じ効力を持つと言っております。
  173. 秋山長造

    秋山長造君 さらにお尋ねしますがね、今の交換公文というものがアメリカにおいてどういう扱いを受けることになっておるのか、また従来どういう扱いになっておるかという、アメリカの扱いについては、ただそうであるというようなばく然としたことでなしに、これはやはり法律上の問題だろうと思うのですから、はっきりしておると思う、どちらかに。だから、その点は一つこの際明確にしていただきたいということ。  それから、第二は、もし大臣のおっしゃるように、日本国会において、あるいは国会の外部においても、この交換公文の扱いというものが、事前協議の内容と関連して、これだけ重大視されて、重大な議論の中心になっておりながら、アメリカの方ではこれが国会にかからぬという、政府の一存でやるのだ、政府の行政上のただ文書にすぎないのだというようなことで適当に扱われるというならば、日本だけで幾ら国会にかけるとかかけぬとかいうことを議論しても、これは意味がないじゃないですか。ナンセンスですよ。だから、なおさら、先ほど来亀田君が繰り返し質問を重ねておりますように、この交換公文に核兵器の問題その他を譲ったことが、そもそも非常に疑問があるということ、さらにまた、事前協議というものに拒否権が一体あるのかないのかということが、これまた聞けば聞くほどばく然として、捕捉に苦しむという結果になっておる。これはますますこの安保改定の問題について国民に不安を与える一方だと思う。ですから、これらの問題については政府側でも見解を統一していただきたいと思う。たとえば、事前協議には拒否権は当然あるのだ、あるのだとおっしゃるけれども、現に自民党の中の有力な幹部の一人である三木武夫氏が外遊から帰ってきて一番に言ったことは、どうしても拒否権というものをはっきりしておかなければならぬということを繰り返し言っているじゃありませんか。また、その突き上げに動かされて、外務大臣自身もこの拒否権の問題についてあらためてマッカーサー大使と交渉をやり直すというようなこともわれわれは新聞紙上で承っているのです。だからちっともはっきりしておらぬと思うのです。こういう問題について、もっと政府としても見解を統一して、われわれに対してはっきりと根拠を持った、確信のある、しかも法律論からいっても筋の通った答弁をしていただきたい。特にお願いします。第一の質問外務大臣から……。
  174. 林修三

    政府委員(林修三君) 前段の、アメリカにおける上院に対する承諾を求めるという点でございますが、これに当然にアメリカの憲法、あるいは国内法の手続の問題でございまして、私どもがとやかく言うべきことではございませんが、御承知の通りに、アメリカにおきましては、いわゆるアドミニストラティブ・アグリーメントと申しますか、行政取りきめの制度が、相当古くから慣例がございましてこれに、交換公文のようなものは大体行政府にまかされておる、こういう取り扱いになっておると思います。従いまして、先ほど外務大臣が言われました通りに、おそらく交換公文は上院の参考文書として出されるだけであろう、こういうことだと思うわけであります。しかし、それによってそのアメリカの取り扱いがどうこうということはございません。アメリカとしては、その範囲のことは当然行政府にまかされておることだと、かような解釈でやっておるわけでありまして、その拘束力が変わるわけでは私たちはないと思います。
  175. 亀田得治

    亀田得治君 変わらないのであれば、国民がこれだけ騒いでおる問題点なんですから、条約の本文に入れたらいいじゃないですか。アメリカ条約の本文にそこを入れれば、国会アメリカではかけなければなりませんから、それで向こうは交換公文と、こう出ておるわけでしょう。変わらないのであればどうして条約本文に入れることができないのですか、外務大臣
  176. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) むろん、この重要な装備でありますとか作戦行動といいますようなものは事前に特に協議するのでありますから、いろいろな協議事項の中からこれを特に摘出して交換公文にいたしたわけであります。それらの問題について話し合いをしてきめていくということなんでありますから、その意味において重要な交換公文であることは申すまでもございません。しかし、ただいま法制局長官も言われましたように、アメリカにおいては、それらのものについての運営の権限というものを行政府にまかしております以上、その点についていささかも遜色のあるものではないと、こういうことははっきりいたしております。
  177. 亀田得治

    亀田得治君 条約本文に入れようという交渉をしているのですか。
  178. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) われわれは今申し上げたような理由によりまして、条約本文に入れるよりも交換公文にいたす方が適当だと、こういうふうに思っております。
  179. 亀田得治

    亀田得治君 結局この問題は、米側と日本側と別々な解釈をもって適当にごまかしていこうということなんです。明白なんです。あなたがおっしゃるような拘束を米軍が受けるようでは、米国国会としてはなかなか実際問題としては了承できないはずなんです。そういうところにこの問題に関する非常に不明朗な点がある。本日のあなたの答弁からみても、全くその辺があいまいもことしておりますが、時間が大体きておりますので、この程度にいたしておきます。しかし、いずれ私は本日不明確な諸点については、十分あなたと一つ論議をしたい、こういうふうに思っておりますから、きょう追及されたような点はもっと勉強しておいてもらいたい。川島幹事長が、外務省は勉強が足らぬとしかっておるようですが、きょうもやはりやってみるとまことに勉強が足らぬのです。そんなことでアメリカを相手にしてほんとうに総理が言うような、自主的な外交、そんなことができるものじゃないですよ。何も自主的なしっかりとした外交をやるには、ねばるとか大きい声を出すとかそんなことは必要ない。しかし、あらゆる資料というものを十分調べてかかるとか、そんなことは当然必要なことなんです。そういうことにも欠けておる。そういうことではいけません。注意しておきます。  次に、防衛庁長官に、だいぶお待たせしましたが、お伺いします。  私は戦闘機の問題をお聞きするつもりでありましたが、時間の都合でこれは一つ省略しましてほかの問題を聞きますが、それは本日の朝日の朝刊に出ておる十五日のマエラ発AP電報ですが、この十四日と十五日にフィリピンのパギオでフェルト米太平洋司令官の主催で軍事に関する秘密会がもたれた、こういう報道があります。私たちの仄聞するところでは、林統幕議長もこの会議に出ておるようでありますが、そういう事実がないかどうか確かめておきたいと思うのです。
  180. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) お答えいたします。  フィリピンにおきまして武器の展示があります。その展示に林統合幕僚長が招待されましたので、出発いたしております。
  181. 亀田得治

    亀田得治君 統幕議長はいつ出発して、いつまでの旅券で行っておるわけですか、旅券といいますか、期間で。
  182. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) 十一日に出発いたしまして、十日間の予定でございます。
  183. 亀田得治

    亀田得治君 そうすると、ちょうどこの軍事秘密会議の期間に一致するわけですが、私がさきお聞きしたのは、この会議に出ておるのだろうということをお聞きしている。これはどうなんですか。
  184. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) 軍事秘密会議があるかどうか私は承知しておりませんが、林統幕長が行きましたのは、それとは関係ありません。
  185. 亀田得治

    亀田得治君 また外務大臣と同じようなお答えをされますが、私が聞いておるのは、その軍事秘密会議に林議長が出たかどうかを聞いておる。知らぬのなら知らぬ、出たなら出たとはっきり答えてほしい。
  186. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) 武器の展示について招待を受けたのでありまするから、軍事秘密会議等には私は出ることはないと思っております。その点についてはまだ報告を聞いておりませんが、私は出ることはない、こう考えております。
  187. 亀田得治

    亀田得治君 もし林議長が出ておりましたらこれは大へんな問題だと思いますが、あなたはどういうふうに処置をいたしますか。
  188. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) 出張の目的が武器展示を見てくると、こういうことで行ったのでありまするから、出張の目的に反すると思います。何か秘密の会合に出るというのは範囲を逸脱すると思いますので、よくその点は調査いたしたいと思います。
  189. 亀田得治

    亀田得治君 私の言うのは、そういう出張命令書に書いてあるそのこと以外のことはしてならない、そんな、役所で理屈をこね回しているようなことを言っているのじゃない。必要なことなら、その文書に書いてないことだってついでに大いに勉強してくるということはいいことです。そんなことじゃないので、私の聞くのは、もし行き過ぎてこういうところに出ておることが明確になったら、これは日本の防衛なり、あるいは日本には第一そういうものに出る法律上、国際法上の根拠はない、非常なこれは越権行為になるわけですね。そういう点を言っておる。長官というものは何もそんなこまかいことに目をつけぬでも、もっと大きなところを考えておってもらわなければだめだ。あなたの先ほどのお答えですと、こちらからちゃんと出張命令にそのことを書いておけば、そんな秘密会議に出ても差しつかえないような逆から言うと感じも受けるのですが、どういうことを一体あなたはこういう問題を私から聞かれて考えておるか。こまかいことを言っているのじゃない。絶対にいかぬ。従って、ただ調べて事実だったら役人として注意する、そんな問題じゃない。日本全体の防衛というものが変質しておる、そういうことにもとれるわけです。そういう点からの一つ考え方を聞いておきたい。
  190. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) 武器の展示に出かけたのがほんとうのことなんですから、そういう秘密会議に出るという性質とか目的を持って行ったわけではないのでありまするから、そういう秘密会議に参加することもないと思いまするし、必要もないと私は思っております。でありますので、出席したのかどうかということも私は今承知しておりませんので、調べておきたいと思います。
  191. 亀田得治

    亀田得治君 この点はもう少し事態を明確にして、いずれさらにお尋ねします。
  192. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 関連して……。今の防衛庁長官のお話によりますと、そういうために出張をしたのではないから出るはずもないし、出る必要もないと思うと、さらに亀田議員が申しましたように、むしろそういうものには出るべきで絶対にないんです。日本のの憲法その他から見て、そうであることは非常に明瞭であると思います。しかしながら、これまで防衛庁の当局が、特に制服の諸君がアメリカの軍隊と特に太平洋軍その他とのいろいろな話、折衝考えると、これに必ずしも出ないとは言い切れない。従って、絶対に出ていないと長官は確信を持って言えないような状態であると思うのです。だから、取り調べましてと言いますが、これは絶対に出るべきものでないんだから、従って、長官は今からでもそういうものに出てはならない、出張の所期の目的にも反するから出てはならないという指令をさっそくお出しになるべきだと思いますが、それを私は要求しますが、どうですか。
  193. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) 先ほどからお尋ねでありましたその会議がどういう会議であるかということも私はまだ承知しておりません。でありますので、再々申し上げまするように、よく調べてからお答え申し上げたいと思います。
  194. 小林英三

    委員長小林英三君) 亀田君、時間がもうきておりますから……。
  195. 亀田得治

    亀田得治君 最後に、それでは大蔵大臣一つお伺いしておきます。  けさ時間におくれてあなたが来たために大へん皆迷惑したわけですが、一つ今後こういうことがないように御注意願いたいと思います。  そこで、大臣は衆議院の予算委員会の最終段階で、今回の補正で足りない場合には通常国会で善処する、こういう意味のことを言われております。これははなはだけっこうなことです。ところが、同時に、現状では第二次補正はやらずに済むと思う、こういうことも絶えずくっつけておっしゃる。私の邪推でなければけっこうなんですが、この二つの説明を考えますと、大臣は例の激甚地の指定では相当譲歩した。しかし、実際の工事査定の段階に入ったら大いにこれを辛くして、結局はこの第二次補正をやらぬでもいいようにつじつまを合わしてやろう、ざっくばらんに言ってそういうことを考えておられるのではないかと思うのですが、これが邪推であれば大いに私は意を強うするのですが、はっきりと一つ腹の中をこの際おっしゃってもらいたい。
  196. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) まず第一に、朝おくれたことでおしかりを受けましたが、今後十分気をつけます。  次に災害予算の点でございます。この災害予算は私が申し上げるまでもなく、災害が発生いたしましたその災害に対する対策でございます。他の一般の予算の場合と実は本質的に違っております。予算の場合におきましては、しばしば財政上の都合からそれは計上できないというようなことを申しますが、この予算がどうであろうと、現実に災害が発生いたしておるのであります、その災害の復旧費でございます。従いまして、災害の復旧費につきましては、一般予算編成の場合と事変わりまして、あらゆる努力をいたしまして所要の全額を調達する、これが政府のもともとの考え方であります。今さら現実に発生した災害をふやしたり、また小さくしたりするわけのものではございません。そこで今回の三十四年度の災害に対しまして、当初から予備費につきまして手当をいたしましたものはすでに七十億程度に上っておると思いますが、これではもちろん足りない。今回の予算に際しまして三百四十三億これを計上し、なお、未査定部分等を考えまして、予備費の八十億の中の大部分のものをこれに充てるということをいたし、さらにまた、なお、不足分が考えられますので、三十六億程度債務負担行為としても議決をお願いいたしておるわけであります。しかも、これらの財源を確保するにあたりましては、すでに御承知のように、本年度の自然増収分を計上するばかりではございません。税外収入におきましても、あるいは既配付分の予算につきましても、特に節約をお願いをいたしまして、今回の予算編成をいたしたのでございます。これらのことは冒頭に申し上げましたように、災害対策予算は現実に発生をしておる災害に対してあらゆる努力を払ってその復旧に遺憾なきを期する、これが政府考え方でございます。そこで私どもは、今回の予算の審議にあたりまして、特に予備費の計上分等については実は非常に苦心をいたしたものであります。と申しますのは、ただいまお話のありました激甚地そのものを十分に予算編成の際に明確にすることができなかった。と申しますのは、御承知のように、今回の災害まことに甚大でありますから、できるだけ早い機会に臨時国会を開き、できるだけ早く予算を提案いたしまして、そうして罹災者の方々に対しまして落ちつきを与えたいと申しますか、将来の復旧のめどを与えるということが目的であります。そのために予算編成の当初から、全部についての査定はもちろんでありますが、実地調査等も実は完了しておらないのであります。しかしながら、そういう際ではあるが、今回の災害が特に激甚であるということに思いをいたせば、この際に早急に臨時国会を開き、予算を提案することが筋だということで非常に急いで予算の編成をいたしたわけであります。で、最近激甚地指定も発表いたしまして、これらの点から予算編成当初においては大体六制程度の特例地域を考えたらいいかというような考え方でございましたものが、相当上回ってこの激甚地指定に入っている。そこで、予算が合うか合わないかという問題がございますが、ただいま申し上げたような理由がございますので、当初から大体その編成の際に予備費なりあるいは特別な債務負担行為なりこういうことを予定いたしておりますし、また、一般予備費もなお残っておりますし、そういうことを考えますと、この際に第二次補正を考えなくても、私どもは、災害に対して復旧工事を予定しておるものが一応まかなえるということを実は申し上げておるのでございます。冒頭に申しましたように、災害復旧予算でございますので、これはどこまでも災害事実、これに対処する必要な予算を計上いたすのであります。その意味におきまして、私どもは、その厳粛なる事実を無視するものではございませんということは、はっきり実は申し上げておるのであります。しかし、財政当局といたしまして、全然見通しのないようなことはいたしておりませんから、二回、三回と御迷惑をかけなくても済むような予算が計上してあるということを申し上げておる次第でございます。
  197. 小林英三

    委員長小林英三君) 亀田君、これで時間が終わりましたから。
  198. 亀田得治

    亀田得治君 もう一ぺん時間はこっちで打ち合わせがありますから……。
  199. 小林英三

    委員長小林英三君) それはいけません。質問はこれで中止して下さい。
  200. 亀田得治

    亀田得治君 私の方のワク内なんです。
  201. 小林英三

    委員長小林英三君) それは約束をしました。それでも時間が来ました。
  202. 亀田得治

    亀田得治君 大臣も呼んであるのです。わざわざ来てもらったのですから……。それではちょっと時間が早いじゃありませんか。
  203. 小林英三

    委員長小林英三君) 早くはありません。時間が来ました。
  204. 亀田得治

    亀田得治君 さっきの答弁が大体おかしいんですよ。質問時間がむだになっている。
  205. 小林英三

    委員長小林英三君) ではもう一分許しましょう。
  206. 亀田得治

    亀田得治君 政府が約束を守らぬからだめだ。  建設、農林、運輸の各大臣もお越しになっているから、一点だけ敬意を表してお聞きをします。  それは歴代政府が、災害のたびごとに今後は大いに災害防止のためにやる、こういうことを言われるわけですが、大体時間がたつと消えてしまいます。今度も同じようなことを言っておりますが、私は具体的に建設、農林、運輸の三大臣にだけ聞きますが、今回の経験にかんがみて今後どういうことを一体計画しておるのか、再質問せぬでもいいように具体的に一つ答えてもらいたい。
  207. 村上勇

    国務大臣(村上勇君) お答えいたします。  今回の災害につきましては、ただいま大蔵大臣から御答弁がありましたような今年度の補正につきましては、遺憾のないような予算を計上いたしております。ただいまも今後どういうふうな治山治水についての考え方でおるかという点につきましては、御承知のように、昭和二十八年に大体治水事業の計画ができまして、その線に沿って建設省といたしましては事業を実施中でありましたが、どうもこれだけでは遺憾な点がありますので、治水事業の五カ年計画というようなものをここに新しく樹立いたしまして、それに向かって、今、昨年度からこの五カ年計画を実施いたしておるのであります。しかしながら、これとても私どもとしては十分とは言い得ませんので、今回の災害等にかんがみまして、三十五年度の予算からは十分この治山治水対策が抜本的にできるように、しかもその危険が最も危険な区域あるいは緊要度の高い点から十分この抜本的な災害復旧あるいは災害間連による改良事業等も加えまして、将来かようなことのないように処置いたしたい、かように思っておる次第でございます。
  208. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 農林省の所管の関係につきまして、特に開拓地帯で非常な惨害を起こしたことをまことに私は遺憾に存じます、しかし、この遺憾な事態を再び繰り返してはならぬというのが農林省といたしましての基本方針でございます。干拓堤防の復旧等にあたりましては、今全国の最高土木知識を動員いたしまして、これなら大丈夫であるというふうに復興いたしたい、かように考えておる次第でございます。また、全国にわたる治山対策といたしましては、ただいま建設大臣が話された通り、長期的な治山対策を作りまして、建設省と一体となりましてその万全を期したい、かように考えておる次第でございます。
  209. 楢橋渡

    国務大臣(楢橋渡君) 今回の伊勢湾台風の災害を顧みまして、どうしても港湾に関する限りにおきましては、高潮防止をしなければならないという対策を再検討いたしまして、ことに背後に大きな人口を擁しておりますわが国に最も重要な港湾——伊勢湾、東京湾、大阪湾でありますが、大阪湾は神戸、尼崎を含んでおりますが、また、有明湾等におきましては、今回の伊勢湾台風の程度、また、それ以上の台風が襲来した場合も予想いたしまして、各省とも緊密な連携をとって根本的な対策を立てているのであります。  この機会に、当予算委員会を通じてその根本対策の要点について申し上げますが、第一に、今回の伊勢湾の台風と同程度、または、それ以上の台風に対しては、最前申し上げましたように、完全な計画を立てること。第二には、同じ高潮に対しましても海岸の埠頭、港湾の埠頭地区及び臨海工業用地についてはそれぞれの対策が異なるものがあります。海岸につきましては、背後の陸地が海面より低い場合は絶対に海水を入れてはならないということはこれは当然でありますが、また、埠頭地区及び臨海工業用地等におきましてはあまり堤防を高くすれば港湾使用上の差しつかえ等もありますので、また、工業用地の荷役所等にも影響を与えますので、堤防の高さはおのずから限界があるのであります。埠頭におきましては貨物の損傷を防ぐために上屋、倉庫等につきましても、できるだけ二階あるいはそれ以上にするということが望ましいという指導を与えておりまして、平家の場合はその側面を防水装置をやって指導をするつもりであります。臨海工業用地については、亀田さんも御存じのように、各地の港湾において今日いろいろの作業をやっている等の関係もありますから、この地盤を極力高くするほか、工場の建物等の設営にいたしましても指導を与えたい。たとえば今回の名古屋の災害につきましても、やはり住友金属のごときは敷地を高くしておったために、また、工場内におけるモーター等を直ちにクレーンでもって上げるというようなことをいたしまして直ちに作業ができるというようなことになったのでありますから、こういうことをやはり中心として高潮の被害をできるだけ防止したいと思っております。また、伊勢湾等におきましては、その高潮の波のエネルギーを減殺するために、あすこに相当の、大体九千メートルの防波堤を築きまして、高潮の侵入を防ぐというような施策をとっておるのでありまして、その方策をとりたい。また、今度御存じのように、貯木場に非常な被害を与えましたから、貯木場の位置及びこれに対する災害の防止等につきましても、これが万全の策を講ずるように、今港湾局において指導をいたしておるような次第であります。大阪湾等におきましても、非常な大きなこういうような波が来れば被害を受けることは明らかでありますから、大阪港は従来の計画を再検討いたしまして、埠頭の前面にやはり防波堤を十キロずつかさ上げいたしまして補強をする、波浪及び高潮の侵入を防ぐようにいたしております。ことに市内の地盤沈下等の地点がありますから、その高潮防止のために地上げ、防波堤を築くということに今日指導をいたしておるような次第であります。大体、大阪等におきまして、港湾局でこれに対する、一つの、要する費用といたしましては約二百七十億くらいの予定をして大蔵省と折衝をしている、こういう状況であります。  一方、気象庁でありますが、気象庁はどうしてもこの機会にやはり相当台風に対する予防のための強化をしなければならぬということで、レーダーの設置あるいは、今、飛行機をもって台風の観測をやっておりますけれども、これは米軍によってやっておりますが、これを日本の方の飛行機をもってやる方法はないかということで、防衛庁等といろいろ折衝をして研究をしておるような段階であります。レーダーは、ご存じのように、台風の基地から三百キロくらいの程度は接近してかからなければレーダーの効能というものがありませんので、どうしてもこれを増設しなければならない。こういうようなことで、現在東京、大阪、福岡、種ヶ島、奄美大島にありますけれども、今般室戸崎に一つ新しく作ることに話がつきましてやっておりますが、なお、予定地として名古屋、大阪、仙台、函館等、八丈島等にも幾らか要求しておるような次第でございます。
  210. 亀田得治

    亀田得治君 丁寧に答弁してもらって、どうもありがとうございました。
  211. 小林英三

    委員長小林英三君) これにて亀田君の質疑は終了いたしました。  午後は二時半より再開することにいたしまして、暫時休憩いたします。    午後一時三十二分休憩    —————・—————    午後二時五十五分開会
  212. 小林英三

    委員長小林英三君) これより委員会を再開いたします。  午前中の亀田君の質疑に際し要求のありました安保改定に関する世論調査についての結果を、資料としてすみやかに本委員会に提出されるよう、この際、政府に要求しておきます。  午前に引き続きまして、質疑を続行いたします。
  213. 青木一男

    青木一男君 本年七月以降、数次にわたる風水害によりことに台風十五号の襲来により、人的、物的に未曽有の犠牲と損害を起こしましたことは、まことに国家の一大不幸であり、その犠牲者、罹災者に対して深甚なる同情の恵を表明するものであります。これらの大規模な災害に対しては、国家の力を中心として救援並びに復旧に当るべざことは当然であり、政府も全力をあげてその任務達成に努めてきた努力の跡は、これを認めるにやぶさかでありません。予算措置については、政府はさきに予備金支出を行ない、今回補正予算の提出とともに、幾多の災害対策特別措置法が提案されたのであります。これらの対策をもってしてなおかつ不十分であるという批判もありましょうが、関係方面の要望の大部分はこれらの対策に織り込まれており、諸般の状況から判断して、今日の段階では予算案、法律案を一日もすみやかに通して、対策の実行に邁進するのが最も適当であると信ずるものであります。ただ、私は災害の跡を顧み、将来あのような悲惨事を繰り返すことのなきを期したいという見地から、二、三の点について政府の所信を伺いたいと思います。  私が特に所管大臣を指名しない場合には総理よりお答えをいただきたいと思います。ただし、政府の都合によって他の大臣より答弁されてもけっこうでございます。  まず、災害時における人命の安全という問題であります。この点については総理と自治庁長官からお答えをいただきたい。本年の風水害により五千有余の犠性者を出したということは、現代の悲惨事であると同時に、文明国家としてまことに恥辱ですらあると思います。もし予報連絡、避難命令、救助等の制度、方式が整備していたならば、この犠牲者の大部分は助かったのではないかと思うものであります。まず、現行法のもとでは、災害による緊急事態の発生時において、避難命令及び救助の責任と権限の所在が必ずしも明瞭でありません。知事と町村長の責任関係はどうなるのか。今回も名古屋市については、当局の措置敏活を欠いたという一般の批判があります。また警察官や消防担当者の指揮、連絡にも欠くるところがあったようであります。現在の地方自治法は、もっぱら自治権の拡充という点に重きを置いた結果、非常時の総合的保安行政措置の遂行には遺憾の点が多いという実情にあります。今回の経験に照らし、法制を整備して、災害非常時の責任の所在を明らかにし、平素それに基づく訓練などを行なうようにしておくことが望ましいと思いますが、政府の所見を伺います。
  214. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 今回の災害におきまして、多数の人命を失ったことは、青木委員の御意見のように、私ども心から遺憾にたえないのであります。将来そういうことを再びしては相ならぬということを強く痛感いたしております。御指摘にありましたように、これにつきましては、どうしてそういうことを避けられるかという点を考えますというと、台風の進路や、これに伴うところのいろいろな警報をすみやかに徹底せしめるということについて、従来のやり方についてはなお欠けているものがある。さらに、避難命令を出しますについて、現行制度の上におきましては、今御指摘のような点において迅速かつ適切にいかない、十分にそういう機能を発揮しにくいような点もあるいうに思います。これらの点を、今回の経験にかんがみまして、根本的に検討して、そうして災害に対処する万全の方策を立てることは何よりも必要だと思います。そういう意味において、政府におきましては、根本的に目下検討いたしまして、これに対する法制、その他の整備につきましても目下検討をいたしておりまして、ぜひこれを整備して将来に備えたいと、かように考えております。
  215. 石原幹市郎

    国務大臣石原幹市郎君) お答えいたします。今回の伊勢湾台風、ことに中部三県の災害にあたりまして、いろいろの法制の不整備、不統一等のために、非常な措置がおくれたというそれほどの事態は私はなかったと思うのでありますが、しかし、御指摘の通り、避難命令等に関しまする法制はいろいろ多岐にわたっておりまして、水防法あるいは消防法、あるいは警察官職務執行法、いろいろの法制にわたっておるのであります。そこで、ただいま総理がお答えになりましたように、今回の災害の体験にかんがみまして、これらの防災に関する組織なり、あるいは法制の統一性、要すれば災害基本法のようなものの制定と、こういう構想等も出ておりまして、これらの問題について関係各省いろいろに協議をただいま進めておるような段階でございます。
  216. 青木一男

    青木一男君 次に、総理と建設大臣にお尋ねをします。今回の水害地のある村では、避難したくも適当な場所がなかったという話を聞いております。私は、かつて中国の水害の現場を飛行機から視察したことがありますが、一望千里の海と化した洪水の中において、部落の家々は点々として残り、市民は平静に船で連絡をとっておったようであります。これは、先祖からの経験で、家だけは高い安全地帯に作ってあるからであります。わが国でも、水害の予想される地方では、敷地や家の構造上、この点を工夫する必要があると思います。ことに、役場や学校の敷地の選定と家の構造には格段に意を用い、非常時の共同避難所たらしめることが、必要であると思いますが、政府の御所見を伺いたいと思います。
  217. 村上勇

    国務大臣(村上勇君) このような地区に対しましては、建物に対する土盛り工事を行なわせるとか、あるいはまた、コンクリートによるかさ上げ工事をやるというようなこともあるのでありますが、特にこのような地帯には、できる限り木造でない、いわゆる恒久的な二階建以上の建築をやる必要があろうと思います。なお、かような危険区域に対しましては、建築基準法の第三十九条の規制を住かしまして、県条例、その他によって危険区域を指定してこれを規制する必要があろうと、かように思っている次第であります。
  218. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 御指摘のように、私どもも、非常災害時における避難場所ということを考える必要がある、いろいろな点で考えなければならぬと思いますが、一つの方針として、学校がそういう場合に避難場所に用いられることにもかんがみて、今回のそういう地域における災害学校の復旧につきましては、これをコンクリート建の恒久的な堅牢な建物にするという方針で復旧をしたいと、かように思っております。
  219. 青木一男

    青木一男君 次に、総理と法務大臣にお尋ねをいたします。  家財等の盗難をおそれて避難をがえんじないため生命を失う者のあることは、まことに痛ましいことであります。水害、火災等の他人の不幸に乗じて盗みをするというようなことは、反社会的行為中悪性のはなはだしきものであります。私は、刑法を改正し、または特別刑法を制定し、災害時を利用した窃盗の加罰制度をとることが適当であると思います。これによって、一般予防に資するとともに、罹災者が安心して避難命令に服するようにするのが適当であると思いますが、政府の御所見を伺いたいと思います。
  220. 井野碩哉

    国務大臣(井野碩哉君) ただいま青木委員のお話しのように、非常に一般の被災者が困っておるときに窃盗行為をやるというようなことは、社会道義から見ましても許すべからざることでございまして、これに対して厳罰をもって臨むことは適当であると考えまして、私、名古屋の被害地へ直後に参りましたときに、検事長初め関係官を集めまして、そういう方針のもとに処理に臨むように指令もいたしました。その結果、現在百八十件ほどの事件を受理しておりますが、そのうちもう過半は処理をいたしまして、その中でも、新聞等に出ておりますように、三百円くらいの盗難事件に対して二年の懲役にしたというような事犯もございまして、相当厳罰主義をもって臨んでおります。これを特別立法で今後考えていくかどうかという問題につきましては、まだそこまでは考えておりませんが、そういったような方針で進んで参りますれば、相当に事前に盗難を予防し得るものと、こう考えておる次第であります。
  221. 青木一男

    青木一男君 まあ政府において研究されればけっこうでありますが、今法務大臣のお答えの中で、現行法の運用でできるというようなお話でありましたが、しかし、裁判に行政権が干渉したりいろいろ注文することは適当でないから、私は、制度としてそういう精神をはっきりしたほうがよろしいと、こういう意味で申し上げたわけであります。  次に、総理、建設、農林各大臣にお尋ねします。  高潮の防御施設に決壊のあったことは、今回の災害が実証しております。さりとて、四方海に囲まれた日本として、すべての海岸堤防を完全なものにすることは容易でございません。しかし、今回の災害地の堤防復旧については、最優先に完璧を期し、再び同じ災害の起こらないようにすることは、絶対必要であると思います。それから、その次には東京と大阪の高潮の予防措置が緊急事であると私は思います。そのためには、人口の稠密度、産業の配置と災害の可能性などを勘案して、必要度の高い所から漸次完成をはかるというのが当然の順序であろうと思います。これらの作業にあたりましては、所管の異なるために規格の異なる堤防が並列し、その弱い個所から決議するというようなことのないために、関係省間の連絡統一に遺憾なきを期せねばなりません。そうしてこれらの施設の完備していない地帯にむやみに人口や産業を吸収することは、防止すべきものであると思います。これらの点について政府の見解を伺いたいと思います。
  222. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 今回の伊勢湾台風の被害の体験にかんがみて、高潮対策につきましては御指摘のように十分な措置を講じなければならないと思います。しかして各省の間の統一をとる。さらに伊勢湾の復旧だけじゃなしにその他の地域において、産業上あるいは人口の集密の度合いからいって、重要な港湾に対して同様に高潮対策としてのこの海洋堤防の強化について、力を用いなければならぬということも私ども同感であります。また将来の工業立地あるいは都市の発展等の趨勢につきましても、十分そういう災害予防の施設とあわせて考えるべきものである、無計画に乱雑に発展にまかすというようなことのないようにしていくことが必要であると、こう思っております。具体的なことにつきましては関係大臣からお答えいたします。
  223. 村上勇

    国務大臣(村上勇君) 今次伊勢湾等の高潮による破堤につきましては、今後かようなことを絶対に繰り返すことのないように十分科学的に、総括的に計画を検討していきたいと思っております。特に今回は建設、農林、運輸と、この三省の間に高潮対策協議会を設けまして、すでにその堤防の高さあるいは構造、強度等につきまして十分検討いたしております。この検討した結果をなお民間の学識経験者等にも諮りまして、今後再びかようなことがないように抜本的な施策をいたしたいと考えている次第でございます。
  224. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 農林省におきましては干拓堤防の一部を所管いたしておりますが、その復旧につきましては、今後今回のような災害が起こらないようにということを根本の方針といたしまして、堅牢なものを築造する、かように考えている次第でございます。ただいま建設大臣からお話がありましたように、関係各省の間に連絡協議会を設けましてその設計の統一をはかる、かようにいたしている次第でございます。  なお、復旧関係以外の干拓堤防、今後新設するというようなものにつきましては、干拓地を作るという考え方のほかに、国土の第一線を築くんだというような海岸法的な考えを取り入れて堅牢なものを築造したい、かように考えている次第でございます。
  225. 青木一男

    青木一男君 次の問題も総理、建設、農林各大臣より御答弁をいただきたいと思います。  河川のはんらん、洪水の予防については治山治水計画の推進に得たなければなりません。すなわち砂防、植林、河川改修、ダムの築造等の一連の対策を計画的に実行することが必要であります。今回の災害の跡を検討しても砂防その他の施設の効果は歴然たるものがありました。今日までも治山などの長期計画が立案されていましたけれども、予算の裏づけに欠くるところがあったために事績が上がっておらないのであります。自民党の経済調査会も、国土保全の見地からこれらの政策の重要性を強く指摘しております。この事業も全国にわたるものであり一挙に解釈はむずかしいのでありますけれども、財政の許す限り、重要な個所から漸次実行に移すほかはないと思います。要はこの問題の重要性の認識と予算の裏づけある制度の制定及びその適切なる運用にあると思うのでありますが、政府の所信を伺いたいと思います。
  226. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 今回の災害そのものに対して、復旧を強力に施行していくことはもちろんでございますが、さらにこういうことが年々繰り返されている日本の実情にもかんがみ、日本全体の国土の保全の見地から、治山治水の総合的な対策を立ててこれが施行をしていかなければならない。これは今御指摘になりましたように、相関連するいろいろな事業を総合的な見地から立案し、計画する必要があるということ、またこれを表づける予算的な裏づけの必要があること等を考えまして、政府としてはぜひ根本的な——相当の期間を要すると思いますから、長期計画になると思いますが——計画を立て、これに関する予算の裏づけにつきましても特に考慮して、国土の保全について抜本的な策を立てたい、かように思っておりまして、通常国会にはそれに関する方策を提案いたすように検討を急いでおります。
  227. 村上勇

    国務大臣(村上勇君) 防災の最も原則となるものは、それは台風の前に施設を完備しておくということであります。特に河川の災害につきましては、ただいま青木委員の御指摘のように、最もその被害の大きな役割をなしておりますものは、それはいわゆる砂防事業の不完備にあるということを私ども痛感いたしております。かような意味におきまして、従来やり来たった方針につきましても再検討を加えまして、ただいま総理の御答弁にありましたように三十五年度からは抜本的な方針を樹立いたしまして、緊要度の高いところから逐次積極的にこれの事業に取りかかりたい、かように思っておる次第であります。
  228. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) お答えいたします。お話のように山を治めなければ下流の水も治まらない次第でございますので、農林省として所管しておりまする林野の砂防につきましては、ただいま建設大臣がお話のように、来年度予算以降におきまして長期計画のもとにその整備計画を進めていきたい、かように考えておる次第であります。大体の目標といたしましては、昭和初期の山の安定した状態をこの計画において実現をする、かように思うのでございます。来年度の予算において準備をお願いする予定になっております。
  229. 青木一男

    青木一男君 次に経済問題についてお尋ねいたします。まず所得倍増計画について、総理と企画庁長官にお尋ねをいたします。  前国会における岸総理の言明に対しまして、自由民主党では国民所得倍増計画の大綱を決定いたしました。この計画は今後おおむね十年間に国民所得を倍増して国民生活の水準を引き上げ、雇用の増大をはかって完全雇用への接近をはかるとともに、農業・非農業問、大企業・中小企業間、地域相互間に存在する生活上及び所得上の較差の是正に努め、もって国民経済と国民生活の均衡ある発展を期することを目的とするものであります。この計画におきましては、年平均七・二%の経済の成長を見込んおりますが、これは国民努力政府の適切なる施策により、実現可能であると信じております。今後の十年間に、十五才以上の青年人口は毎年平均百三十五万人づつの増加が予想され、わが国人口問題のピークを形成するのであります。このピークを乗り越え雇用問題を解決するには、上述の程度の速度で、かつ安定した姿で経済規模を拡大し、成長をはかることが絶対に必要であります。この長期計画を実現する原動力は、民間経済人の創意工夫による自由な活動にあるのでありますけれども政府もこの民間活動の円滑な推進を支援し、協力しなければなりません。ことに科学技術の画期的振興、公共施設等、産業発展の基盤の整備、適切な財政、金融、税制政策の運営等、政府としても一大決意をもって一貫した計画のもとに進む必要があります。ことに上述の各種較差の是正ということは、実行はまことに容易ではありませんけれども、真に平和な日本を建設するがためには、万難を排してその目的達成に進む必要がありと思います。また、雇用問題の解決一つとってみましても、非常に大きなそして重要な政治問題であります。政府自民党の計画に呼応して所得倍増計画を立案し、実施する予定であったのでありますが、いまだ実行されておりません。成案はいつごろできるのでありましょうか。またこの計画実施に対する熱意のほどを伺っておきたいと思います。
  230. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 所得倍増計画につきましては、今、青木委員が御指摘になりましたように、日本の経済の発展から見、日本国民生活の向上の上から見まして、ぜひこれを実現しなければならないと私は考えておるのでありまして、おあげになりました雇用問題の一つを取り上げてみても、日本が今後安定した基礎のもとに、相当な拡大が常時行われていくことが絶対に必要であります。いろいろな困難な問題がこれに伴うと思いますが、私は政府与党の全力をあげてこれが実現に邁進する、そして国民の皆様がよくこの趣旨理解していただいて、御協力を得るように努めて参ってこれを実現していきたい、かように考えます。
  231. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 国民所得倍増計画につきましては、政府の基本的な考え方はただいま総理からお答えいたした通りでございますが、さきに自由民主党からその基本構想が発表されております。政府におきましてもこの共本構想の線に沿いまして、各担当部局においてただいま検討を重ねている段階でございますが、この検討終了いたしますと正式にこれを経済審議会にはかって、成案を得るという段取りに運びたい、かように考えております。従いまして、現段階におきましては、政府としてのいわゆる所得倍増計画というものはただいままだ樹立されておりません。従って、来年度予算案の編成作業に具体的にこれを織り込むという段階にはまだ至っておりません。しかしながら、先ほど御説明いたしましたように、すでに自由民主党の某本構想が発表されておりますので、その趣旨につきましては十分これを汲み入れて予算案の編成作業を進めて参る所存でございます。
  232. 青木一男

    青木一男君 次に人口及び産業の地方分散と道路との関係について、総理及び建設大臣にお尋ねいたします。  わが国産業の発展は、自然の推移にまかされた結果として、人口と工場が大都市にのみ集中し、東京の人口がやがて一千万人に達ぜんとしておるのであります。他方、経済と文化の発展に取り残されたままの地域が数多く存在するのであります。これは決して健全なる国の姿ではありません。これらの較差を是正するため、おくれた地域への対策を推進し、人口、教育、産業の分散と立地の適正化をはかり、おしなべて国民生活の向上と国土の均衡ある発展をはかる必要があると考えます。  わが国の人口と産業が特定の海岸地帯に集中しているのは、今回の災害から見ましても大きな問題であります。海岸を離れた安全地帯にも、人の住む適地、工場を作る適地学校を設ける適地がたくさんあります。それがなぜ海岸地帯に集中するかといえば主として交通運輸の便に原因するのであります。先年、衆議院、参議院両院で、超党派の総意によって成立した国土開発縦貫自動車道建設法は、わが国の中心部を貫く高速自動車道を建設し、一面自動車交通網の幹線とするとともに、この自動車道の開設によって国土の総合開発と、産業立地と人口分散をはかったものでありまして、まことに先見の明ある画期的立法であったと思います。中央道のうち、小牧—吹田間はすでに建設に着手されております。しかし、小牧—東京間を完成し、東京—大阪を結ぶのでなければ中央道の機能は発揮されません。本年三月の本予算委員会において、本員の質問に対し当符の遠藤建設大臣は、小牧以東の中央道の路線建設に関する法律案を、次の通常国会に提出することを、公約されました。これは建設大臣の更迭によって変わるはずはないと思いますが、念のため現建設大臣の所見を伺っておきます。  その後、国鉄では高速鉄道の新線を東海道に敷設することに決定いたしました。もしかりに、この上高速自動車道を東海道に建設するということになりますれば、わが国の心臓部とも言うべき東京—大阪を結ぶ鉄道、自動車道の幹線全部が東海道一カ所を通ることになるのでありまして、かくては将来地震、風水害の大災害が起こったような場合、わが国心臓部の麻痺状態に陥る危険を意味するものであります。中央道、小牧以東線が山間地帯を通ることは建設法第一条の明文と立法措置から当然の結論でありますが、さらに災害の場合の危険分散、国家の安全という見地からも少くも、幹線交通路一本は、海を隔てた山間地帯を通すことの適切なることを痛感するものであります。政府の御所見を伺っておきたいと思います。
  233. 村上勇

    国務大臣(村上勇君) 過大都市を招来しないように、人口の地方分散をはかり、国土の均衡ある開発をはかることはきわめて肝要だと思っております。このための道路整備政策としましては、都市部と農漁村部と、これを通じましてその幹支線道路網の均衡のとれた整備の実施が必要でありまして、建設省といたしましては、これらについては慎重な検討をいたしまして、道路整備五カ年計画を立てて目下鋭意実施中であります。中央道につきましても、その一環として一部につきましては、すでに事業に着手して実施中でありますが、残部につきましては、すでに大体の調査を終りましたので、目下その結果を取りまとめ中であります。  なお、中央道の完成は、人口、産業の地方分散開発の促進に大いに役立つものと思います。従って一部につきましては、すでに事業を実施しておりますが、残部の東京—小牧間につきましてもすみやかに計画を立てるよう調査中でありますが、その大体の調査を終りまして、目下その結果を取りまとめておりますので、この予定路線につきましては、来たる通常国会に法定できるように目下準備をいたしておる次第であります。
  234. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 中央高速道路の建設につきましては、ただいま建設大臣からお答え申し上げた通りであります。  日本の全体から見て、都市に人口が集中するというために、いろいろな問題を生じておりまして、これをできるだけ地方に分散し、全体としての均衡のとれた繁栄を作り上げるということは最も必要であり、その上から見て交通、運輸の問題は、非常に重要でございます。また御指摘のように、災害の点から考えましても、日本の重要都市を結ぶ幹線につきましては、鉄道、道路等を含めて総合的に検討して善処しなければならぬと思います。十分、御趣旨のような意味において、中央道の高速自動車道路の建設につきましては、調査研究を促進をいたしまして実現をはかりたい、かように考えております。
  235. 青木一男

    青木一男君 建設大臣が、前大臣の本院における公約に基づいて小牧以東の計画路線の法律案を次期国会に提案されるということを言明されたことは満足いたします。  ただし、私の第二の質問である、今回の災害から見ても東京—大阪間のこの心臓地帯の高速路を、鉄道も道路も一個所に集中するということの危険、従ってそれを避けるために、山間部も一本は少くとも交通路を求めたいということの私の意見に対しては御答弁がなかったのでありますが、あらためて御意見を伺います。
  236. 村上勇

    国務大臣(村上勇君) 経費等の関係で、なかなかすぐ東京—小牧間等の道路について、これを直ちに着工するというような点については、相当慎重を要すると思います。しかし、バイパス等による、いわゆるただいま御指摘のような危険のある部分に対しましては、十分考慮して参りたいと思っております。
  237. 青木一男

    青木一男君 建設大臣答弁は、私は要領を得ないと思うのです。東海道の交通——もしローカルの交通が輻湊して不便であれば、これはバイパスその他の国道の改修、あるいは第二国道を作るということによって、これは解決されてよろしいのでございます。  しかしながら、国会の意思によって、ああいう特殊な使命を持つ幹線自動車道を作るという問題について、今度の災害の経験から見ましても、こういう大都市を結ぶ幹線の交通路は、一本ぐらいは海岸を離れた中央部に持つことの必要を、建設大臣としては感ぜられたか感ぜられないかということをはっきりお答えいただきたい。
  238. 村上勇

    国務大臣(村上勇君) 御指摘の点につきましては、十分痛感いたしております。
  239. 青木一男

    青木一男君 次に、貿易の自由化について、総理、通産、農林、大蔵、各大臣の所見を伺いたいと思います。  世界の経済は、科学技術の躍進と貿易為替の自由化への大勢を軸として発展しつつあります。わが国では、戦前から、外国為替管理法の運用によりまして事実上の輸入制限を行ない、保護政策がとられてきたのでありますが、世界の大勢には抗すべきではないからして、新時代に順応した日本経済の立て直しを考えるべきときが来たと思います。  もちろん、貿易の自由化と申しましても、一挙にすべて自由貿易に改めることではありません。性質上、輸入の自由を認めがたいものもあります。たとえば財政専売、またはこれに準ずるものの目的物のごときは、その例であります。また、新しい国内産業保護の見地から、当分輸入制限のやむを得ざるものもありましょう。政府は、この区別を明らかにし、自由化に踏み切る場合におきましても、その措置が日本の輸出増進に見合うような配慮を加え、順序と時期を慎重に研究し実行にかからなければならないと思います。  一般鉱工業について考えますと、鉱工業は、所得倍増計画、雇用問題解決のおもなにない手でありまして、しかも、その大部分が自由化の対象になるものと考えねばなりません。これに備えて、科学技術の革新を中軸として、産業の高度化と体質の改善をはかり、もって国際競争力を培養することが緊要であります。工業の中でも、今まで輸出産業として伸びてきたものは、世界の荒波の経験者でありますが、今まで温室的に育った工業は、特に体質改善の必要に迫られておるわけであります。  貿易自由化に伴って、一番問題となるのは農産物であります。農業と非農業との均衡を保たせることを一つの目標として、農業の近代化と生産の拡大を行ない、農家所得の増強をはかることが、今後の農業の進む道であると思いますが、それには、価格の安定等により、ある程度の保護を続けることは避けがたいことと思います。けれども保護政策一本やりでは、健全なる農業の育成は望まれないのでありまして、ことに、貿易の自由化の傾向と、どう調整するかということは、今後の農政の大きな問題であるわけであります。政府は、いかなる方針でこれに対処をぜんとするか、以上、工業及び農業についての御所見を伺っておきたいと思います。
  240. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) お答え申し上げます。  お話の通りでございまして、われわれは、世界貿易の拡大という方向に向かって、その一助である、わが国の貿易の自由化に進みたいと考えておるのであります。ただ、お話のように、わが国産業の保護ということも一つの命題でございまするから、産業の保護と自由化の拡大という、二つの問題を調節しながら進んでいきたいと考えております。
  241. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) お話の通り、農林物資につきましても、今、自由化という問題があるわけでございまするが、農林物資につきましては、鉱工業物資と異なりまして、各国とも特別の考慮が払われておる次第でございます。わが国におきましても、広範な輸入制限措置がとられておりまするが、これは今日までの農業を育成する上におきまして、非常に力があった。しかしながら、今後の、また今日の世界の自由化の大勢ということを考えてみますると、それ一点張りでは、もういけない時代である、かように考えております。  従いまして、まず、私どもといたしましては、対ドル地域に対する差別、これの撤廃から始めていきたい、さらに第二段といたしまして、その他の物資の自由化ということを考慮したい、かように考えておる次第でございます。  しかしながら、それを実行するにあたりましても、国内農業者の立場というものを考慮しながら、それに対する適切なる対策というものを立てて、それと見合いながら、これを実行する、かような方針をとっておる次第でございます。
  242. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) お答えいたします。  為替貿易の自由化、先ほど青木さんから、るる御意見をまじえてのお尋ねでございます。かっては、国際収支の関係から、為替政策を通じていろいろの保護政策を実施し、あるいは、また、国内産業に対する個々の保護、助長政策等とって参りました。しかし、世界の大勢は為替貿易の自由化の方向に動いておりますし、また、今日のわが国の国際収支の面から見ますと、為替の面で国際収支に支障を来たすというような意味においての制限をつけ加える段階ではもうございません。また、わが国経済の立場から見ましても、むしろ自由化を大いに進めるべきだと思います。  ただ、その自由化を進めます場合に、御指摘になりましたような点を種種考えていかなければならない、これはもちろんであります。しかし、私どもが基本的に考えておりますのは、企業の合理化、その適正化をはかることによりまして、体質を改善し、国際競争力を強める、こういう方策をとっておるのであります。しかし、ただこれだけでは十分だとは言えないと思いますし、個々の産業等につきまして、あるいは関税であるとか、その他の方法による価格差調整の問題があると思います。しかして、この価格差調整の問題と企業の合理化、この二つを大柱にして自由化の方向に進めて参りたい、かように考えます。  ただ、この際に一言お断わりしておきたいのは、この自由化の方向に踏み切りました場合に、その保護に非常に厚いということになりますと、せっかくの自由化の効果を上げることにならないのであります。何といたしましても、企業の合理化、適正化という方面に相当の力を入れまして、そうして、国際競争に負けないような基盤を作る、こういう方向でなければならない、かように考える次第でございます。
  243. 青木一男

    青木一男君 次に、石炭対策について総理と通産大臣にお尋ねいたします。  岸総理は、本会議の演説において、石炭産業の危機を打開するため、労使双方の平和的な話し合いで事態の収拾をはかることを念願すると述べておられますが、三井鉱山の団体交渉の決裂を機として、石炭産業の労使の対立は、憂慮すべき状態に陥ったもののようであります。石炭産業は、国家再建上の基礎産業として、今日まで巨額の財政資金を投入して、援助を与えてきたにもかかわらず、今日の不況を見るに至ったことは、まことに遺憾とするところであります。ただ、石炭産業の不況は、世界共通の現象でありまして、その主たる原因は、石油の圧迫にあります。つまり石油に比べて石炭が割高であるということでありますから、相当思い切った対策を講ずる必要があることは当然であります。企業者としては、経営の合理化によって、生産費の低下をはかり、石油に対抗しようとしておるのであり、労組は、合理化の内容たる人員の整理に反対して、再建案の一致を見るに至らないようでありますが、石炭の生産費の大部分は、労賃でありますから、生産費を引き下げるために、人員整理の問題は避けるわけにはいかないと思います。  元来、わが国の石炭業が右のような国家の強大な支援にもかかわらず、今日の不況を見るに至ったことは、単に石油の圧迫だけであるか、それとも、そのほかに企業経営上の欠陥がなかったかどうか、また労使双方の再建の熱意が、どの程度であるかというようなことは、この際、十分確かめておく必要があると思います。  私は、例を三井の三池炭鉱にとって考えてみたいと思います。一般国民の目からいたしますと、不思議なことは、三池炭鉱の現状であります。三池は、その炭質と炭層において、わが国の代表的優良鉱山であり、その設備や厚生施設も、ずば抜けてすぐれたものを持っております。もし、瞬時において他の弱小炭鉱が皆没落しても、三池だけは健在を誇るであろうというのでないと、常識に合致しないのであります。しかるに、その三池がまつ先に深刻な苦況に陥って悲鳴を上げたのであるからして、ここに労使ともに、冷静に反省すべき経営上の根本問題の伏在しておることは容易に想像し得るところであります。聞くところによりますと、三池の一人当たりの出炭量は、他のすぐれた山の半分くらいだということであります。これでは毎年何十億という赤字を出し、企業が危殆に陥るのはむしろ当然であります。しかしエネルギー資源として、また工業原料として、石炭は、わが国の大切なる資源であって、石炭業は、絶対につぶしてはならないと思います。そういう産業でありますから、再建方法を講じなければなりません。それには、まずもって企業の関係自体の反省と決意が第一であることを繰り返して力説ぜんとするものであります。  そこで、労使の交渉を円滑に求め、業界の再建案を軌道に乗せるには、離職者を他の職場に引き取り、合理化の犠牲者を出さないことが要諦であります。政府が、今回炭鉱離職者臨時措置法案とともに、補正予算中に石炭業離職者に対する応急措置の経費を計上したのも、それがためでありまして、まことに適切な措置であると思います。また業界でも、それぞれの企業系列の内部において、離職者の転用を計画しており、また、日経連でも、相当大量の離職者受け入れ計画を立案しておるのでありますが、私は政府においても、もっと徹底した離職者受け入れ態勢を整備し、たとえば今後数年にわたり各種の公共事業、鉄道建設、国土開発、自動車道建設等に大量に転用する計画を立案する考えはないかということを伺います。  労組が合理化に反対するのは、失業をおそれるからでありますから、政府と民間と協力して、失業者を出さないようにすることになるならば、労組の心配もなくなり、再建案が容易にでき上がると思うのでありますが、政府の御所見を伺いたいと思います。  今、大牟田市では三池がつぶれるとなると、市民をあげて路頭に迷うことになるといって、憂色に満ちております。私は、この点からも労使の話し合いがすみやかに妥結に至らんことを望むものであります。  また大牟田市には、労組の外部応援団体や指導者が続々入り込み、女保反対の政治闘争と結合して、一大デモの進行が報道され、市民は戦々きょうきょうとしておるのであります。今や石炭業が浮沈のせとぎわに臨んでいる際でありますから、政治闘争の具に供されるなどという余裕がないはずであり、私は、そういうことのないことを期待するものでありますが、万一にも、この争議が、治安上憂慮すべき事態に発展しては大へんであります。政府の見通しと対策について伺っておきたいと思います。  また私は先年、高碕通産大臣のときに、エネルギー総合対策について質問したのでありますが、この問題は、長期経済計画の円滑なる進展の一つの基礎をなす問題であり、ことに石炭産業の対策、石油の輸入、原子力発電等々にも関連して、総合対策の樹立は今や急務となっておると考えます。政府調査機関の進行状況等は、どうなっておりますか、この総合対策に対する政府の御所見も伺っておきたいと思います。
  244. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) お答え申し上げます。  石炭企業に対しまする根本的な考え方は、青木さんと全く同感でございます。三井鉱山の問題でございまするが、ただいま労使が再建につきまして、真剣に検討を続けられておるのであります。私は、まず石炭企業に直接の関係のある労使の方、また間接に関係のある方等がこの問題につきまして、十分御検討を願い、政府といたしましても、その点につきまして、できるだけの努力をいたしたいと思っておるのであります。  石炭の総合対策につきましては、他の産業との問題もございます。また石炭自体の今後の利用方面も考えなければなりません。従いまして、私は次の通常国会までには、石炭の根本対策につきまして案を作り上げたいと考えております。
  245. 青木一男

    青木一男君 次に、外交について総理大臣にお伺いします。  東西対立の世界情勢の動きをいかに判断するかということは、わが外交方針決定の基礎をなす問題であります。(「外務大臣いないぞ」と呼ぶ者あり)今期国会における論議の跡を顧みますと、社会党の諸君は、フルシチョフ・ソ連首相のアメリカ訪問によって冷戦の雪解けが始まり、今後は、世界の恒久平和と軍縮の時代であるとし、かような時代に、安保条約は時代に逆行するものであるとの説をなしております。  私は、この見方は世界の動きに関する希望と現実とをいささか混淆されておるのではないかと思います。岸首相が、本会議において「両陣営の話し合いによって、国際間の懸案が解決され、世界平和を一歩一歩前進させることを、衷心より願うものであります」と述べておられるのは、明らかに希望を表明したものであります。岸首相のこの希望は、敗戦と原爆を経験した日本人、すべての悲願であると申してもよろしいと思います。  しかしながら、世界の客観的情勢は、必ずしもこの希望の通り動いているものではないのでありまして、フルシチョフ首相の訪米や軍縮提案以来、現実に冷戦の雪解けが始まったと解すべき現実の事実は、いまだ上がっておらないのであります。もちろん、全面戦争の脅威はいよいよ遠のいたものと見るべきでありますけれども、それは核兵器の破壊力の与える共通の恐怖と、両陣営の軍事力の均衡が保たれているという事実の上に築かれた不安定的な安定、表面的な平和に過ぎないことも、一般認められておるところであります。しかも武力的戦争ともいうべき紛争や衝突は、主としてアジア地域を舞台に毎年繰り返されておることも事実であります。両陳営の冷戦に終止符を打つには、まずもって相互の信頼の回復がなければなりません。ところが、フルシチョフ首相がはるばる米国に出かけてアイゼンハワー大統領と会見し、また国連の会議が、軍縮の大演説をいたしましたけれどもアメリカや自由陣営側では、この平和の呼びかけに呼応する姿勢は示しつつも、心の底からの安心感と信頼感を寄せるに至っておらないのでありまして、フ首相を迎えた米国民の表情は、すこぶる複雑であったと伝えられておるのも、この点にあったと思うのであります。それは要するに、フルシチョフ首相の行動を巧妙なる平和攻勢と解しているからであります。核兵器の廃棄を含む徹底した軍縮にしても、完全なる査察制度のためには、相互に国土のすみずみまで開放しなければならないが、それは、ソ連の鉄のカーテンとは両立しない問題であり、ソ連側に実行の意思あるとは見ていないのであります。また軍縮と申しますことは、それだけで、真の平和を意味するものではありません。何ゆえに各国が軍備の充実拡大を競うようになったかという問題の根源にさかのぼって話し合いを遂げ、相互の了解と信頼を回復するのが根本でありまして、軍備縮小だけを取り上げても、根本的解決を意味しないのであります。こういう問題が片づいて、初めて世界の平和ということができますけれども、現実の問題としては、いかにその実現が困難であるかということは容易に想像し得るところであります。  かような状況下において、岸首相が民族の希望として述べたことをもって直ちに情勢判断と解するのは誤りであると思いますが、首相は、世界の動きをいかに見ておられるか、希望と現実とを区別して率直にお示しをいただきたいと思います。
  246. 岸信介

    国務大臣岸信介君) われわれが常に世界の恒久的平和を念願しておるというのは、国民の一致した希望であり、強い念願であることは言うをまたないのであります。このため、われわれは国際連合におきましても、あるいは各国との友好親善の問題にいたしましても、常に、これを念頭において努力して参っておるのであります。世界が、東西両陣営に分れて対立しており、そしてそのものの考え方の基本は、これは両陣営において異なっておる。しこうして、現実に、この東西両陣営が、いろいろな点において、いわゆる冷戦といわれる対立を来たしておる。しこうして、最近における軍事科学の発達は、遂に原子爆弾、われわれが体験した広島や長崎においての原爆に比してさらに強大な破壊力を持つところの兵器が続々と作られる、こういう情勢になりまして、どうしてもこの間において、そういう実力を現実に行使して、そして問題を解決するということは、これは人類の破滅を来たすものであり、どうしてもその勢いに対しては話し合いの方法によって懸案を解決していかなければいけないという考え方が両陣営の首脳部の間に、また世界の人類の間に起ってくるのは当然であると思います。こういう見地に立って、最近いろいろな話し合いによって東西間において未解決の問題を解決しようという努力が払われております。未だそれらの懸案事項について現実に話し合いによって解決をしたという事例は見ることができないのであります。そういう傾向が現われたこと、私はこの傾向はわれわれが念願しておる世界平和の恒久的平和の上からみて、望ましいことであると考えております。ただ青木委員の御指摘のように、これは私どもが、国民的の非常な強い念願であり、また悲願であるところの世界恒久平和という見地から、これを望ましい傾向と見ておるのでありまして、現実にまだそういう事実が積み上げられていっておるという段階には達しておりません。しかもこの話し合いという事柄は、言うまでもなく両陣営が自分たちの持っておる一つの力を背景として話し合いをするということが現実の姿でございます。その力には今申しました武力の点ももちろんでございます。しかしさらにこの両陣営の経済力やあるいは両陣営における同じ理想を持ち、同じ方向に向って進んでおり、政治的、経済的基盤を同じくする国々の協力というようなことを背景として、話し合いによって物事を解決しようというのが、これからの国際の現実の情勢である、しかし実力、武力を行使していわゆる全面戦争の形において問題を解決しようということは、何としてもこれを回避しようということが現われておるわけでございまして、従ってそういう国際の現実、私はその現実はこれを無視してはならない。そういう見地に立って、私どもは一面において強く世界の平和の増進に向って努力すると同時に、この現実に即してまたわれわれの国の安全なりあるいは発展なりということを考えていかなければならぬ、かように思います。
  247. 青木一男

    青木一男君 次に、現時の国際情勢下におけるわが国の立場について、岸首相にお尋ねいたします。  世界の自由主義国が北大西洋条約機構、東南アジア条約機構というような共同防衛体制を固めておるのは、国際共産主義の世界支配の脅威から自国の独立と国民の自由を守らんがためであることは、関係諸国のしばしばの共同声明によって明らかでありまして、わが国が日米安保条約を結び、自由主義諸国との提携をはかっておるのも結局同じ目的に出ておると思います。国際共産主義の世界支配の手段が、単に思想宣伝にとどまらず、他国の革命や内乱の援助はもとより、最終的には武力の行使を辞せない態勢を示しておりますがために、自由主義国側でもこれに対抗して軍備を充実し、共同防衛の体制をとっておるのでありまして、これが世界の今の緊張の真の原因であります。ドイツと日本の降伏により第二次世界大戦が終り、米英両国初め多数の国はここに世界の平和が到来したと信じて、軍隊の復員、軍事予算の大削減を行ない、すべての国家機構を平時体制に戻したのであります。しかるに、朝鮮事変を契機として、国際共産主義の侵略の危険を感じ、またソ連の核兵器、ロケット兵器の充実を中心とする軍備の拡充に刺激されて、急遽自由主義国の共同防衛体制を組織することになり、今日の両陣営の深刻な対立が最近十年間に起こってきたことは歴史の証明するところであります。今や国際共産主義の戦術は、ロケット兵器の優位を背景として平和攻勢に出て、自由主義国の団結にくさびを打ち込もうとしておるのでありますが、彼らの日本に対する平和攻勢も最近とみに熾烈を加え、中立主義の名のもとにわが国を自由主義陣営から引き離すことに全力を傾けておるのであります。かつてソ連の最高責任者は、今日の情勢下において中立主義というものは存在し得ないと喝破したのでありますが、その存在し得ないものを日本に強要しようとしておるのであります。もし彼らの言に従ってわが国が中立主義に転じ、安保条約を破棄したならば、わが国は丸裸の無防備国となるのであり、わが国を囲む内外の圧倒的な共産勢力に制圧されて、わが国が共産化し、共産圏の一衛星国となることは時期の問題と見なければなりません。近時国際共産主義者はわが国内の中立主義者と呼応して、日本を自由主義陣営から引き離すことに努めると同時に、保守陣営内部の分断に力を注いでおるのであります。特に、中共が攻撃のほこ先を岸総理に集中しておるのは警戒を要するところであると思います。中共は岸首相が日本人民の意思に反して敵視政策をとっておると宣伝しておりますけれども、私は岸首相が国会においてしばしば言明したごとく、中共に対し敵視政策をとったという事実は存在しないのであります。中共のあげておる敵視政策の実例の最たるものは日米安保条約でありますが、これはサンフランシスコ講和条約以来、わが自由民主党が国家の独立と安全のため採用しておる党の基本政策でありまして、決して岸首相個人の考えではないのであります。また中共首脳のいわゆる政経不可分論にいたしましても、中共は数十の自由主義国と貿易をいたしておりますが、その貿易の前提として政経不可分論など唱えたことばなく、自国を承認していない国とも進んで貿易をしておるのであります。しかるに日本に対してのみ不可分論を主張し、日本の対中共外交政策の転換を要求しておるのは理解に苦しむところであります。思うにこのことを主張することによって、日本国内世論の分裂と自由民主党内の団結の動揺を企図しておるものと解するよりほかありません。政府はかような外部からの干渉や策動を排し、積極的に安保体制を中軸とするわが外交政策の必要性と妥当性を国民に明らかにして、国論の帰一をはかる必要があると思いますが、政府の決意のほどを伺っておきたいと思います。
  248. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 日本を取り巻いておる国際情勢につきましては、日本は言うまでもなく、どの国とも友好親善の関係で進んでいって、そして日本の繁栄と安全をはかると同時に、世界の平和を念願していくと、こういういわゆる平和外交の基礎に立っておるわけであります。決して、われわれがある国を敵視するとか、ある国に対して敵視政策をとるというようなことは、われわれの内閣において、かつて考えたこともございませんし、またそういう政策はとっておらないのであります。ただ、日本があくまでも自由主義の立場を堅持して、そうして自由主義国の一員として、これらの理想を同じくするところの国々と協力をしていく、これが日本の繁栄と日本の平和を守る上からいって、最も望ましい方法であり、最も適当な方法であるという信念に立って、戦後政局を担当して参りました問に一貫してとってきておるのであります。そうして、その中核をなすものとしては、日米の協力によって日本の安全と日本の繁栄を作り上げていくというのが、戦後におけるところの一貫した一つの方針でございます。現実に、今日まで日本が平和であり、安全であり、他から侵略をされておらない。また、最近におけるいろいろな経済の発展、戦後におけるところの国力の充実を考えますというと、私は、このわれわれが一貫してとってきたところの方針というものが間違いでない、また、この方針によっていくことを国民の大多数が支持しておると、私は固く信じておるのであります。で、こういう見地に立って、安保体制というものは日本の安全と平和に寄与しておるという、過去のこの現実的な結果からも見まして、私どもはこれはあくまでも堅持しなきゃならぬ。また、われわれがいかなる外交政策をとるかということは、先ほど申しましたような平和外交の大きな基本に立っておりますが、もちろん日本国民が自由に独立国としてわれわれが自主的にきめるものであって、他からの制約によってわれわれが方針を二、三すべきものではないと思います。この意味において、日本が、自由主義の立場を離れて中立政策をとる、また共産主義の方向に進んでいくということは、私どもの絶対に認めないところであり、また、これは同時に、日本国民の多数がそういう考え方支持しないものだと固く信じておりますので、われわれは従来とってきた方針を堅持して進んで参りたいと、かように思っております。
  249. 青木一男

    青木一男君 私の質問を終わります。
  250. 小林英三

    委員長小林英三君) 青木君の質疑は終了いたしました。   —————————————
  251. 小林英三

    委員長小林英三君) 次に、辻政信君。
  252. 辻政信

    ○辻政信君 私は、ベトナム賠償問題について、総理大臣外務大臣及び松本官房副長官質問いたしたいと思います。きょうは時間の関係で、法務、防衛、総務長官質問の時間がありませんから、どうぞ帰ってお休みになって下さい。(笑声)  まず断わっておきますが、外交問題はずぶのしろうとでありまして、もし間違いがあったら、くろうとの藤山大臣から直していただきたいと思います。そのかわり、ごらんの通り資料は整えて参りました。この資料は、これは岸さんにも責任のある資料でありまして、最高戦争指導会議決定した書類の原本であります、当時の。それからこの資料は、これは当時仏印におきまして、政務関係に携わっておりました募僚の詳細な手記であります。これは私が戦後仏印に百日間もぐっておりまして、この目で全部の仏印の状況を見て参りました記録であります。従いまして、これからの質問は、抽象論じゃなしに、事実をあげて資料によってやりますから、大臣資料によって御答弁を願いたい。  まず最初に申し上げたいことは、南ベトナムに対する賠償は、トラン・バン・フー氏の国籍問題で、かなり紛糾いたしましたが、政府答弁は、サンフランシスコ条約調印をしたから賠償を要求する資格がある、とお答えになっておりますが、それに相違ございませんか。
  253. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) それに相違ございません。
  254. 辻政信

    ○辻政信君 単に調印したということだけで賠償を要求する資格があるならば、このサンフランシスコ条約調印をした多くの国々も、同様の資格を持つことになります……。
  255. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) サンフランシスコ条約第十四条の規定に従ってやっておるわけであります。
  256. 辻政信

    ○辻政信君 その十四条の規定は、日本国は、戦争中に生じさせた損害及び苦痛に対して、連合国に賠償を支払うべきことを承認することになっております。では二つの問題がここに出てくる。それは、賠償を請求する資格のある国は、日本と戦争状態にあったという条件、及びその戦争中にこうむった損害、この二つの条件が当てはまってくると思いますが、いかがでございますか。
  257. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) そうだと存じております。
  258. 辻政信

    ○辻政信君 ではお伺いしますが、ビルマ、フィリピン、インドネシア、これは損害を与えた事実があるが、日本はこれらの国と交戦した事実はありません。これに支払うのはどういうわけでございますか。
  259. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) それらの所属した国と交戦状態におりました。
  260. 辻政信

    ○辻政信君 これらの国々が賠償を受け、また日本が賠償を支払う理由は、私は英、米、オランダ、三国と日本が交戦をしておった、従ってその主権を受け継いだ新しい三国が、英、米、オランダの賠償請求権を継承したものと考えるが、それでよろしゅうございますか。
  261. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 正確に申せば、必ずしも継承ではございませんけれども、事実上の問題として、そういうことになろうかと思います。
  262. 辻政信

    ○辻政信君 これは重大な点ですから、念を押しておきますが、戦後に独立した国々に対して、賠償を支払っておるが、これらの国は、正式に日本と交戦した事実はない。しかしその旧主権国のその関係が継承されて賠償問題が起こってくると思いますが、はっきりもう一つ答えて下さい。
  263. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 技術的な問題につきましては、条約局長から……。
  264. 高橋通敏

    政府委員(高橋通敏君) 継承という言葉でございますと、少し正確さを欠くかと思いますので、私から補足させていただきますが、連合国でありまして、その地域が日本軍隊によって占領されたことがありますずれば、それによって、十四条によって賠償をする義務が生ずるわけであります。
  265. 辻政信

    ○辻政信君 そのことは——念を押しておきます、林さんも御異存ありませんか。
  266. 林修三

    政府委員(林修三君) ただいまの条約局長がお答えした通りだと思います。
  267. 辻政信

    ○辻政信君 それではベトナム共和国と賠償協定を結んだのは、日本が、ベトナムとは交戦をしていないが、ベトナムの旧主権国たるフランスと日本とが交戦関係にあった、同時にまた日本が占領しておったという現実、この二つが賠償の理由になりますか、大臣
  268. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) そういうことだと存じております。
  269. 辻政信

    ○辻政信君 岸総理もこの解釈に御異存ありませんか。
  270. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 異存ございません。
  271. 辻政信

    ○辻政信君 では、あらためて伺いましょう。フランスと日本が交戦関係にあった、この事実を示してもらいたい。
  272. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 御承知の通り、ドゴールが開戦と同時に日本に対して宣戦を布告したわけでございます。しかし、当時ドゴールはフランスにおりませんし、ビシー政府が正統の政府でございます。従って。(「大きい声で言って下さい」と呼ぶ者あり)大きい声で言います。ドゴールが復帰して参りまして、パリに来て政府を作りましたとき、一九四四年八月二十五日が開戦の日だというふうにわれわれは考えております。
  273. 辻政信

    ○辻政信君 それでは根本問題にさかのぼって岸総理にお伺いします。岸総理昭和十六年十月十八日東条内閣の商工大臣に就任をされて、閣僚中最も積極的に開戦を主張なさった責任者であり、従いまして、開戦初頭における戦争指導方針は十分御承知のはずだと思いますが、それをまず承りたい。
  274. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 私が昭和十六年十月十八日に商工大臣に就任したことは、これは事実でございます。しかし、私は当時の東条内閣において、今、辻委員の言われるように、最も強い主戦論者であったという事実は、これは事実に反しております。また当時の状況から、御承知のように戦争の指導要綱というものにつきましては、普通の大臣はこれに関与しておらなかったのであります。
  275. 辻政信

    ○辻政信君 ただいまの御答弁ちょっと疑問があります。私はこれ以上この席上で追及はいたしません。あなたが当時閣僚の中で最も積極的にやられたということは、この席上では公言できない事実がある。これはやめておきましょう。しからば、あなたは国務大臣としては、少なくも戦争指導方針に関与し、関係を持っていらっしゃる、責任を。当時フランスに対し、仏印に対して東条内閣はどのような指導精神で臨まれたか。残っておるのはあなたです。そこに青木さんがおられますが、まず総理からお答え願いたい。
  276. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 仏印に対しましては、いわゆる平和進駐という方向において進駐をしていったことは御承知の通りであります。外務大臣が申しましたいわゆるドゴール政府日本に対して宣戦をし、それが全フランスを支配するようになったときからこのドゴールの日本に対する宣戦というものは、全フランスを含めて日本に対してそういう敵国の関係になった、かように考えます。
  277. 辻政信

    ○辻政信君 私の問に答えていただきたい。そういうことは外務大臣に聞けばわかるのだが、あなたは東条内閣国務大臣として、日本の戦争指導の根本、仏印とタイ国に対しては絶対に最後まで静ひつを保持する、こういう大方針がここに示されておる。それを伺っておる。
  278. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 日本側におきましては、そういう意向を当時持っておったものだと考えます。
  279. 辻政信

    ○辻政信君 持っておったものだと考えるじゃなしに、あなた自身が東条内閣の閣僚としてその責任をお持ちになっているのです。人ごとじゃありませんよ。人ごとじゃない。藤山さんに承りますが、もう一回念のため、日本がフランスと交戦状態に入ったのが昭十九年の八月二十五日、こう見てよろしいのでございますか。念を押しておきます。
  280. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 昭和十九年八月二十五日、一九四四年でございます。
  281. 辻政信

    ○辻政信君 間違いありませんね。
  282. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 間違いありません。
  283. 辻政信

    ○辻政信君 それに応じて、当時の日本政府はどのような対策を講じましたか、宣戦布告を受けて。
  284. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 日本としては、今日法律的にその日が日本とフランスと戦争状態になった日だ、こういうことにきめております。
  285. 辻政信

    ○辻政信君 それではさらに伺いますが、ドゴールがパリに入り、フランス臨時政府の主席に就任したのはいつでありますか。
  286. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 同日パリに入りまして、そして正統政府になりました。むろんほかの国の承認等は若干おくれておると思います。その事実の上に立っております。
  287. 辻政信

    ○辻政信君 そこにまず間違いの第一点が出てきました。  あなたは八月二十五日とおっしゃったが、そのときにはドゴールはまだフランスの臨時政府の主席になっておりません。正確に申しますというと八月二十九日であります。いかがですか。だれか政府委員でいいですよ。
  288. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 二十五日にパリに入りまして、実体的には二十五日から政権をとっておると思っておりますが、詳しいことは条約局長に。
  289. 辻政信

    ○辻政信君 そうすると、まことにこっけいなことはまだ主席にも就任しておらない二十五日は、どこの国も承認しておらない、ドゴール個人である。ドゴール個人が日本と戦争状態にあるということをまともに受けて、その日から交戦伏態とお考えになるのですか。
  290. 高橋通敏

    政府委員(高橋通敏君) ただいまの、事実の点でありますから補足さしていただきます。政府は一九四四年の六月三日にフランスのこのドゴールを首班とします解放委員会と申しますが、その時期に共和国臨時政府を作っております。そうして、八月二十五日に至りまして実体的に連合軍とともに上陸しまして、そこでパリを回復いたしました。そこで、私どもはこのパリを回復した日が、実効的にも次期の——前の政府を打倒し政府を立てた日である、このように考えております。
  291. 辻政信

    ○辻政信君 私の資料で正確と思っておるのは十九年の八月二十九日臨時政府の主席に就任をしておるが、これはあとでもう一回あなたの方で資料をよく調べて下さい。間違ったら私が訂正します。  では申しますが、フランス自体において臨時政府の主席となったとしても、国際関係状態はどうなっておるか、どこの国がどういう日付においてフランスの臨時政府を承認をしたか、それを承りたい。
  292. 高橋通敏

    政府委員(高橋通敏君) その後一九四四年の十月の二十三日、ニヵ月ばかりあとになりまして米英によって承認されております。
  293. 辻政信

    ○辻政信君 米英だけですか。
  294. 高橋通敏

    政府委員(高橋通敏君) ただいまの調べでは米英だけでございますが、十月の二十六日になりますと連合国共同宣言にも正式に加入いたしております。
  295. 辻政信

    ○辻政信君 そういうずさんな調べじゃ困る、主任者が。お聞きなさい。米、英、ソ連、カナダ、豪州のこの五カ国が昭和十九年十月二十三日に承認をしております。そうして、さらにおくれてスペインが十月三十一日に承認をしておる。そうなりますと、藤山外務大臣がおっしつやた八月二十五日は、なるほどパリに入ったでしょうけれども、国際的には承認されなかった、一つの幽霊というか、子供というか、そういうものがやったにすぎないのであって、その宣戦布告というものをまじめに取り上げるという根拠はどこにある。
  296. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) ドゴールは御承知の通り解放政府を作っておりまして、その前から相当実質的には各国政府と連絡をつけておりまして、むろんフランスに上陸いたしません間は、そういう状態であることは当然でありますが、フランスに上陸しましてパリに入りました以上、実質的に、その承認の手続そのものは別といたしましても、実質的にそのときから宣戦の布告が有効になったと見るのが適当だと考えております。
  297. 辻政信

    ○辻政信君 どこの国からも承認されておらない亡命政権、その間は、承認されて初めて責任のある臨時政府というものが発言できるはずだと私は思うが、これはしろうとの考えですか。
  298. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 今申し上げました通り実費的に、その日まで解放政府として、フランスにはおりませんでしたけれども、各国と連絡をとりながらやっております。従って、フランスに上陸しましてパリに入ってきたという日が事実上宣戦布告した日だと、それからさかのぼるということは無理だと思います。やはりその日が初めてわれわれとしてはそれを認めなければならぬ日だと、こう考えております。
  299. 辻政信

    ○辻政信君 では、ここに提出を願いたいのは、その八月二十五日ドゴールがいかなる文書によっていかなる声明をしたか、当時の内容をはっきり出していただきたい。
  300. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 当時まででも日本に対してそういう態度をとっておったのでありまして、従って、当然そういう態度がはっきり過去の経緯からいいまして認められるわけであります。
  301. 辻政信

    ○辻政信君 私は、当時フランスでドゴールが演説したその記録があるのですが、そういうことを言っておりません。日本に宣戦を布告するということは何を根拠におっしゃいますか。
  302. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) ドゴールは、先ほど申し上げましたように、解放政府を作りまして外国におりましたときにすでにそういうことを申しておるのでございまして、従って、そういう状態に引き続き継続されているというふうに解釈すべきだと思います。
  303. 辻政信

    ○辻政信君 これは賠償の金額を決定するために、この期限というものはきわめて重大だ、いつ幾日から戦争状態に入ったということ。それならば、なぜ、権威ある資料によってこういうことを発言し、こういう宣言をしておるから戦争状態に入ったとなぜ言えぬか。何を根拠に言う。
  304. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 今申し上げたような事実問題からしてその日とするのが一番適当であろうとわれわれは考えておるのであります。
  305. 辻政信

    ○辻政信君 一番適当な根拠を示せ。物的証拠を示せ。私は証拠によって質問しておる。観念論じゃない。どういう宣言をなされているか、その宣言の内容を御準備下さい。
  306. 高橋通敏

    政府委員(高橋通敏君) ドゴールは英国に亡命いたしまして、それからいろいろ委員会を作っております。その委員会を作って対独活動をいたしておりますが、そのころから、たびたび日本とは昭和十六年以来戦争状態にあるということを申しております。しかし、それは政府としての地位を持っておりませんから、そのような宣言をいたしましても、国際法上の効果がある宣言とはわれわれはみなすことはできないわけであります。しかし、八月二十五日、国際法上政府としての地位を回復いたしました。それから当然日本と戦争状態にあるというふうに判断されるわけであります。
  307. 辻政信

    ○辻政信君 では、日本にいたフランスの大使館及びパリに行った日本外交官は、ドゴールがパリに入ると同時に、外交の仕事を停止して引き揚げましたか。
  308. 高橋通敏

    政府委員(高橋通敏君) これは戦争が開始すれば必ずそうしなければならないというような問題じゃございません。それは適当にやるべきかやらぬべきかは、その当時の政策によるものと考えております。
  309. 辻政信

    ○辻政信君 それはおかしい。今の御答弁は、あなた方が戦争に入ったと言うならば、それからあとはフランスというものを相手に外交交渉はできないはず。その、現に松本俊一さんは仏印大使としてやっているじゃありませんか。その矛盾はどう解くか。
  310. 松本俊一

    政府委員(松本俊一君) 私からお答えいたします。私は終戦の前年、一九四四年の十月、たしか下旬だったと思いますが、特命全権大使に任命されまして仏印に派遣されましたが、私は、  それは芳沢大使が従来仏印においてとっておられた任務、すなわち仏印にビシー政府が出しておりましたドクーという総督がおりました、その総督であるドクーとの交渉のために派遣されたのでありまして、フランスの本国とは何ら交渉する任務は持っておりませんでした。
  311. 辻政信

    ○辻政信君 では、当時のドクー総督はドゴールから絶縁して、仏印は独立したのですか。
  312. 松本俊一

    政府委員(松本俊一君) ドクーは、仏印におきましてビシー政府の壊滅と同時に、ドクーは実はその任務をみづから継承する形をとりまして、ドゴール政権とどういう関係にありましたかは、当時私としてもわかりませんでした。
  313. 辻政信

    ○辻政信君 これはうかつな話だ。あなたは日本を代表する堂々たる大使であり、その前は外務次官をなさっておったんですよ、外務次官を。その人がドクーとそれからドゴールの関係を知らぬで、一体赴任できますか、外交官の常識上どうです。
  314. 松本俊一

    政府委員(松本俊一君) 私は、日本は当時仏印とは戦争状態にない、フランスとも戦争状態にない、という関係で、それで仏印に私を派遣しまして、そこに事実上おります——これは法律上ですね、また、事実上どういう資格であるかは別としまして、ともかく、あそこで行政権をつかさどっております総督との問に万般の交渉をしなければいけない、その任務を私に日本政府が委任したわけであります。そういう資格で私は行っておりましたのでありまして、従って、私は、ドクーのその背後関係いかんはですね、実は私の任務ではないのであります。私はドクーと交渉しろという任務を受けて参ったんでありまして、それだけしか私としては任務はないわけであります。それははっきりしております。
  315. 辻政信

    ○辻政信君 待って下さい。今、藤山さんははっきり申しました。十九年の八月二十五日以後フランスと交戦状態にあった。松本さんは当時の外務次官です。そうして仏印大使に行かれるときに、今あなたのおっしゃった言葉の中に、はっきり、当時フランスと日本は戦争状態をしておらぬ、仏印ともやっておらぬとおっしゃいましたね。今の答弁ではそこに食い違いはありませんか。重大な食い違いが。
  316. 松本俊一

    政府委員(松本俊一君) 私の答弁が誤解を与えるといけませんので、はっきり申し上げておきますが、先ほど総理も言われましたように、日本の当時の戦争指導をやっておりました戦争最高指導会議におきましては、日本とフランスとは初めからずっと戦争状態にないという建前でやっておりました。これは後日、いつから日本とフランスが戦争状態に入ったかと判断することとは、全然別個の事実であります。これを現在は、先ほども条約局長その他から回答がありましたように、一九四四年の八月二十五日以後、日仏間は交戦状態にあったという法律上の解釈をしておるわけであります。(「現在はと」呼ぶ者あり)現在は。当時はこの日本の戦争指導の建前としては、仏印並びにフランス本国とは戦争状態には入らないという考えで戦争を指導しておったことは、これまたはっきりした事実であります。
  317. 辻政信

    ○辻政信君 それはおかしい。松本さん、申しますがね、松本さん非常にりっぱな方なんで、私は尊敬しておるんですが、あなたは当時の重光さんの外務次官ですよ。そうして外務次官が特に抜擢されて重要な仏印大使においでになった。その当時の事実をはっきりおっしゃりなさい。事実は事実なんです。それを今になって政府は苦しまぎれに、その事実を曲げて十九年八月二十五日から、ありもしない交戦状態にあったという、政府が間違いなんです。あなたの方が正しいのですよ。
  318. 松本俊一

    政府委員(松本俊一君) 明確にお答えいたしておきます。日本の当時の方針並びにこの私が受けておりました任務を申しておるんでありまして、その後日本が敗戦いたしまして、そうしてこのサンフランシスコの平和条約が締結されました以後、日本立場はすっかり変わっておるわけであります。従って、戦争状態がいつから始まったかということはこの平和条約の解釈として当然きめられるものであって、その当時の日本の意思は……。  それからもう一つは、先ほどお尋ねがありましたが、戦争布告というものは一方的の宣戦だけで成立するものでありまして、双方の意思の合致は必要ないのであります。日本がたとえ絶対にフランスとは戦争状態に入らないと申しておりましても、先方が宣戦をした事実があれば戦争状態はできるのでありますから、これは後日の解釈の問題になると、私はこれは私の国際法上の解釈を申し上げておるのであります。
  319. 辻政信

    ○辻政信君 がっかりしましたね。私はあなたを見上げたりっぱな人だと思って尊敬をしておったのだが、当時の外務次官でありながらドゴールの宣戦布告をおそらく認めていないに違いないのだ。認めたら仏印大使に行けないはずですよ。それが事実なんです。その事実を今適当に政府諸公はごまかして、日本に不利なようにさかのぼって八月二十五日から交戦状態認めようとする。その開きは賠償の額を決定する上にこれは軽視できない開きなんです。だから言っている。  それではもう一つ聞いてみましょう、それを裏づける資料はたくさんありますから。それじゃ聞きますが、ドゴールがパリに入ったときにビシー政府というものを認めたか認めないか。ということは、ビシー政府の持っておった今までの主権を継承したのか。ビシー政府が外国と取りきめたものを破棄したのかどうか、これをはっきりお答え願いたい、大臣
  320. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) ドゴールがフランスに、パリに戻りまして、ビシー政府の外国関係のものはむろん破棄できないと思っております。
  321. 辻政信

    ○辻政信君 そうすると、仏印で使った、ビシー政府との国際貸借関係にあった金三十三トンと現金十六億五千万円を払っておりますね。もしドゴールがビシー政権を認めないというならば、ビシー政権とわれわれが結んだその国際的な関係というものをそこで中断するんじゃないですか、どうお考えになりますか。
  322. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) ビシー政府の外国関係は引き継いでおると考えております。
  323. 辻政信

    ○辻政信君 じゃ、もう一つその誤まりを指摘しましょう。いやしくも国際法の常識で交戦状戦に入ったというならば、その相手国の金を、貨幣を使うことはできますか。現に仏印においては戦争終了までフランスのピアストルを使って、日本の軍票を使っておらない。この事実をどう解釈するか。
  324. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) その点は事実問題ではないかと思うのでありまして、八月二十五日以後交戦状態にあるというふうに認めるのが適当であって、あとは事実問題だと思います。
  325. 辻政信

    ○辻政信君 交戦状態にある相手国の貨幣を引き続いて使えるのですか。アメリカと戦争してからドルを使っていますか、日本は、どうなんですか。
  326. 林修三

    政府委員(林修三君) この点は先ほど外務大臣あるいは松本副長官からお答えがありました通りに、つまり日本としては、当時フランスと積極的に交戦状態になる、戦争するつもりはなかった。しかし、ドゴール政府の側ではかねてから昭和十六年以来日本に対して宣戦の布告をしたということを言っておったわけであります、それで終戦後に日本が降伏し、その後、連合軍が日本を占領したときにももちろんフランスは加わっております。あの平和条約においてフランスは連合国としての立場において、つまり交戦国であったという立場において日本との条約調印しておるわけであります。そういう状態あとから振り返ってみれば、いつから日本はフランスと交戦状態にあったということの解釈として、先ほど松本副長官が言われた通りに、一九四四年八月二十五日、これが交戦状態の始まりというのが一番妥当であろう、こういう法律解釈の問題でございます。今おっしゃいました通貨の問題、これはいわゆるほんとうにそこで事実上の交戦状態、事実上と申しますか、そこで日本とフランスとが敵対行動をしておるというようなことが起これば、通費の問題についてもいろいろのとり方があるわけであります。しかし、交戦状態にあるからといって、外国の通貨を使ってはならないというようなことは、これは国際法上別にないわけであります。それは便宜の問題で、どういう通貨を使おうと、それは便宜の問題だと思います。
  327. 辻政信

    ○辻政信君 私は今のあなたの議論を聞き、条約局長その他の議論を聞きまして、あなた方は一体日本外交官であり、日本大臣であるかということを疑わざるを得ない。なぜ日本の利益のために、われわれが事実においてこうだったということを示して、戦争状態に入った時期を少なくともあと一年間引き述ばすということができないのか、戦争に負けたといっても厳然たる事実というものは何人も欺くことができない、貨幣はピアストルを使っておる、堂々たる仏印大使がドクーを相手に交渉しておる、しかも日本外交官も向こうの外交官も引き揚げておらない。何を根拠に日本に不利な解釈をなさる、藤山さん、あなたは日本外務大臣ですよ、この認定をいつにするかによって賠償額がきまるのです、損害の程度が。従いまして、二百億の税金をかけるか、百億で済むかという国民にとっては重大な問題です。それならば日本外務大臣らしく、われわれがこういうふうに列挙した事実に基づいてなぜ相手方にそのわけをただそうとしないのか、もう一回総理大臣、どうです総理大臣、お答えなさい。
  328. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 先ほど来外務大臣及び政府委員から答弁のありましたごとく、問題は現実にその当時日本がどういうふうな方針をとって、また戦争を指導し、どういう考え方に出ておったかということが日本側からはいえるわけでございます。同時に、フランス、ドゴール政権が最初から日本に対して戦争状態を宣言して、それがフランスにおいて事実上全フランスに支配権を持っておったという事実を見て、われわれはそこから戦争状態に入ったと解釈することが最も妥当な解釈であるという見地に立って、そうして交渉をし、交渉を妥結ぜんとしておるのであります。決して私は、このことは日本立場を無視しておるとかいうことではなくして、今日から冷静にその当時の多くの関係を法律的に解釈すればそうなると、こういう見地に立っておるのであります。
  329. 辻政信

    ○辻政信君 あなたもフランスの総理大臣になったのですか、私の言うのは八月二十五日、十九年の。これから賠償の損害を算定していきますと、二百億になる。それをさかのぼってさらに縮めて二十年の三月九日、武力行使のときから戦争状態に入ったとなれば、ここに出ておる損害の大部分は消えるのです、消えるのです。でありますから、この交渉の最大のポイントはいつ、いかなる時期から、いかなる物的な証拠によって日本がフランスと交戦状態に入ったか、これをきめずに外交交渉ありますか、そういう無責任な、ずさんな交渉が。あなた方のポケット・マネーを出すならば文句言わない、この代償は国民の税金にかかっておる、そういう無責任態度がありますか、総理総理大臣、無責任です、あなたは。どこにその根拠がありますか、(「向こう側に特別の都合のいい解釈をする必要はない」と呼ぶ者あり)お答えなさい。
  330. 岸信介

    国務大臣岸信介君) これは向こう側の主張とわれわれの主張か違うのであります。向こう側はすでに先ほど来言っておるように、最初から日本に対して戦争状態がある、従って、昭和十六年十二月八日からあるという主張をしておるのでありますが、私どもは、今先ほど来質疑応答のような事実に基づいて、ドゴールがパリを回復したその日に、そのドゴール政府日本に対する宣戦の効果は発生したものだ、こういうふうに解釈をいたしておるのであります。
  331. 辻政信

    ○辻政信君 どうしてあなたは日本国民のための利益をもう少し主張なさらぬか、私は主張できる理由を今示しておる。  もう一つ、それじゃいいですか、よく聞いていなさいよ。最初日本に協力的であったドクーが、戦況が不利になるとともに非協力になって、そこで昭和二十年三月九日、仏印軍の武装解除になったのであります。この問、松本さんは現地軍のロボットではなかった。あなたはほんとうに現地軍の行き過ぎというものを押えておられた。そうして重光外務大臣の指示に従って、きぜんたる信念ある外交をおやりになっているのですよ。そうでしょう、松本さん。
  332. 松本俊一

    政府委員(松本俊一君) 私はドクー総督と、この軍事費その他の行政各般の問題にわたって、きわめて友好的に交渉してきたことは事実であります。
  333. 辻政信

    ○辻政信君 それではもう一つ昭和二十年の三月九日午後七時ですね。覚えていらっしゃるでしょうが、日本政府の方針をあなたが体して、そうしてサイゴンのリュー・ベルラン街にあった総督官邸に行かれて、河野総領事を連れて乗り込んで行かれた。あの深々と茂った奥深い官邸に午後七時に行かれたが、そうして九時まで外交折衝をやっておられるが、その状況を一席どうぞ。
  334. 松本俊一

    政府委員(松本俊一君) 当時、私は重光外務大臣からの訓令によりまして、この訓令は最高戦争指導会議の方針に従って出されたものでありますが、ドクー総督に対して、仏印の各般の行政について日本の要求をするようにという訓令でありました。私はそれに従ってドクー総督に申し入れをいたしました。しかし、不幸にしてドクー総督は、その私が訓令を体して申し入れた事項を全面的に拒否したのであります。
  335. 辻政信

    ○辻政信君 仏印軍の武装解除は昭和二十年の二月二十六日、最高戦争指導会議決定されたこの方針、それによってなされたものであるが、当時あなたは外務次官であって、どういう方針をお示しになっているか、松本さん。これから本物が出ますよ。
  336. 松本俊一

    政府委員(松本俊一君) 私が外務次官の時代にはそういう方針が決定してはおりませんで、私が仏印に参りました以後、最高戦争指導会議におきまして、そういう方針が決定されまして私に訓令されたわけであります。それで私は、その訓令の作成にはあずかっておりません。
  337. 辻政信

    ○辻政信君 その訓令の内容の重要なポイントは覚えていらっしゃいますか。
  338. 松本俊一

    政府委員(松本俊一君) もうすでに十四年前のことでありますので、詳細は覚えておりませんが、先ほど申し上げましたように、ドクー総督が、それまでその総督としての権限を全面的に行使しておりましたが、そのドクー総督の行政権、それから軍事に関する権限等を日本側に移譲するようにということがその主体でありました。それだけは今でも覚えております。
  339. 辻政信

    ○辻政信君 非常に大事なこと覚えておりませんね。一番大事なことは何かといえば、これは岸さんごらんなさい。国家機密第三最高戦争指導会議報背第十一号二十のうちの十八号、決定版、それには昭和二十年二月二十六日の日付で、インドシナ政務処理要領というものを決定されて、外務省、陸軍省、海軍省で、そうして重光さんからあなたに訓令が行っております。この通りの訓令が電報で行っておりますよ。そのうちの要点だけを読んでみましゃう。「仏印処理に伴う政務処理要領の定むるところによる。」これが一。「仏印が全面的にわが要求を受諾した場合」、これは現状通り。第二、「仏印側がわが要求に応ぜず武力を行使する場合」その冒頭に「日仏関係は戦争状態にあらざるものとす」、いいですか。武力行使をするんだが、「日仏関係は戦争状態にあらざるものとす」と、こうなっておる。第二項には「フランス人及びフランス人の財産を敵国人、あるいは敵産として取り扱わざるものとす」となっている。いいですか、武力行使をする段になっても、敵国扱いにしないで、ほんとうにやむを得ずやるということをいっておるんですよ。これは最高戦争指導会議決定版。そうなってくると問題は大きい。あなた方はその前の年の八月二十五日です。こういうれっきとした歴史的事実があるにかかわらず、それを否認し、日本に不利なように一年前にさかのぼって戦争期間を算定し、そうして損害をよけい見積って、よけい賠償をしようとする、こういうべらぼうな外務大臣総理大臣が一体おりますか。怠慢というか、研究不十分というか、答弁の余地がありますか。
  340. 岸信介

    国務大臣岸信介君) もちろん重大なことでありますから、わが国としては、十分あらゆる点を検討して、八月二十五日が相当であるという結論に達したのであります。フランス側は、ずっと前から戦争状態にあるということを主張しておるのでありますけれども、私どもは先ほど来お答えをしたように、事実関係からいって、八月二十五日が相当である、かように考えております。
  341. 辻政信

    ○辻政信君 それが日本総理大臣として、日本国民の利益であると信じますか、あなたは。どうですか。
  342. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 賠償の問題は、実は全体から見まして、どこに支払う場合におきましても、国民の租税から支払われるものでありますから、なるべくこれが少なくあることが望ましいことであることは言うを待ちません。しかしながら、われわれはサンフランシスコ条約の十四条によるところの賠償義務というものを、われわれの国力や、あるいはその当時におけるところの各種の事情というものを十分に検討して、われわれとしては妥当であるという額を定めることに努力をいたして参っておるわけであります。
  343. 辻政信

    ○辻政信君 その賠償額を決定する基準は、いつから交戦状態に入ったかということが基準になる、そのものさしだ。そのものさしをあやふやないいかげんにきめて、一体どうして国民に済むと思うか。
  344. 岸信介

    国務大臣岸信介君) そのものさしをきめるのに、どこを開戦の日と見るかということにつきましては、私どもは先ほど来お答えを申し上げますように、十分に検討して、一九四四年の八月二十五日、すなわち、ドゴールがパリーを回復して、そうして事実上全フランスを支配したというときが、最もわれわれとしては相当であるという考えに立っておるのであります。
  345. 辻政信

    ○辻政信君 ですから先ほど言うように、あなたは日本の利益よりも、フランス側の主張というものを甘く取り入れておると言っているんです。
  346. 岸信介

    国務大臣岸信介君) フランス側の主張は、先ほどお答えしておるように、それよりもずっと以前にさかのぼって日本が開戦したときを主張しておるのであります。私どもはそれは認めることは適当でないということで今申したようにしておるのでありまして、決して日本の利益を無視して向こう側の主張にそのまま合わすというような、ルーズな考えでこれを決定しておるわけではございません。
  347. 辻政信

    ○辻政信君 一体、日本が仏印に武力行使をするというせっぱ詰まった段階になっても、このように最後まで最高戦争指導会議で、フランスは敵にしないという決定をした。その大きな理由を御存じですか。御存じだったらどなたでもいい、答えて下さい。なぜ仏印に対してこれを慎重にやったかという、藤山さんは御存じないから、だれでもいい。その理由。大きな最高のポイントがある。お答えなさい。だれでもいいから、政府から。答えられないならば、前提が狂っておるんですから、問題を整理せずして賠償額に入るわけにいかない。何がゆえに日本は戦争したんだ、戦争しておらない、最後まで。それを二十五日と認めるということは、日本国民が承知しない。国民の税金を払う。岸さん、あなたは別荘を売って払うなら別問題です。そうでないんですから、それをはっきりするまでは、私は後段の質問に入れない。
  348. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 先ほど来お答えをしておりますように、戦争状態というものが、いわゆる交戦状態がいつから始まったかということは、一国が宣戦をすれば、これでもってそういう状態ができるので、合意であるとか、あるいはその相手国がどういう気持を持っておったらどうだということは、これは、事実そのときのいろいろな政治的の理由でもって相手国がどういう態度をとるかは、私は、これはいろいろな関係があると思う。しかしながら、それだから、われわれがそういう態度をとったから、それでは相手国が宣戦したことは無効であるというようなことは、これは国際法上成り立たないのでありますから、従って戦争状態が、今日から考えてみるというと、向こうは日本がこの戦争を開戦した昭和十六年の十二月八日であると言っておりますけれども、われわれはそうは見ない。そうして最も妥当であるところの開戦の期日を検討した結果、八月二十五日、こうきめておるわけであります。
  349. 辻政信

    ○辻政信君 では、八月二十五日ドゴールのどういう宣言、どういう声明があったか、それをはっきり物的証拠によってこの委員会にお示し願いたい。そうでなかったら、今の解釈は納得できない。私のこれからの質問はできませんから、委員長、休憩して、あしたその資料を出してもらってから、これに基づいてその疑惑を解いてから、次の質問に移ろうと思う。どうですか。
  350. 林修三

    政府委員(林修三君) この点は、先ほどからお答えしていることで御理解ができると思いますが、ドゴール政府は、八月二十五日からということは言っておるわけではないのです。向こうはもっと前からと言っているのです。従って、八月二十五日にそういう宣言をするはずもございませんし、そういうことはあるわけがないのであります。日本としては、フランスが連合国であり、日本との間に交戦状態があったということは、サンフランシスコ条約によってはっきりしております。また、日本の占領にフランスが加わっております。従いまして、日本としては、フランスとの間にこれは敗戦国として交戦状態があったということを認めざるを得ないわけであります。その場合に、その交戦状態はいつから始まったかということを現在において振り返って検討してみますときに、これはやはり、ドゴール政府がフランスの主人になった一九四四年八月二十五日と見るのが一番解釈として妥当である、こういうようなわれわれの見解でございます。そのときにドゴール政府がどうこうするというようなことは、これはお考えになってもわかるように、そういうことはあり得ないわけであります。
  351. 秋山長造

    秋山長造君 ただいまの法制局長官のおっしゃったことは、先ほどの藤山外相のおっしゃったことと全く食い違っておると思う。先ほど辻さんの質問に対して藤山外務大臣は、一九四四年八月二十五日にドゴールがパリに入城すると同時にドゴールと交戦状態に入ったと、こう言っているのです。また、その次の質問の場合には、八月二十五日にドゴールが日本政府に対して正式に宣戦布告したということも言っておられるのですね。ところが、今法制局長官のお話によれば、これは、八月二十五日に宣戦布告も何もしてない。前々から宣戦布告して戦争をやっておるのだと、こういう話なんです。そこらに非常な食い違いがあると思うのです。そこらをはっきりして下さい。もう少し外務大臣はっきりして下さい。
  352. 林修三

    政府委員(林修三君) 先ほどから外務大臣もおっしゃいましたように、私の今申しましたことと全然これは変わっておりません。同じことでございます。八月二十五日にドゴール政府が宣戦したということは、外務大臣は言っておられません。つまりフランスとの間に交戦状態が始まったのが八月二十五日である、こう見るべきであると言われておるのです。私といたしましても、先ほど申しました通り、これは、フランスはもっと前からということを言っておりますけれども日本立場から考えてみれば、八月二十五日より前ではあり得ない、少なくとも八月二十五日と見るのが一番妥当である、こういうふうに解釈しておるのであります。(「議事進行」と呼ぶ者あり。)
  353. 亀田得治

    亀田得治君 質問者の方から要求されておる点が何回やっても明確にならない。それで、われわれが聞いてみても、こういう質疑のやり方では、質問者に大へん気の毒だと思うのです。いたずらに時間を食う。だからそこで、このへん一つ休憩をしてもらって、政府の方で、八月二十五日以前にドゴールがパリに入る前にいろいろな宣言をやったと言っておりますが、その正確なものを資料として出してもらいたい。それがあるから、八月二十五日パリを回復したときに、それが引き継がれるのだという意味のようであります。しかし、その元のものが明確にされないわけでありますから、そういう点でも、質問者としては、大へん論点整理するに困っておられるわけです。それからもう一つは、質問者が再三要求しておるのは、日本が仏印になぜ先ほど示されたようなそういう態度をとったのか、理由があるわけですね。政府はお答えにならない。戦争前の政府のことだから資料がないとおっしゃるのかどうかわかりませんが、この点も、質問にやはり答えてほしい。日本側の事情とフランス側の事情と、両方つき合わせて、私たちはこの問題についてはやはり判断しなければならないと思います。だから、その二つの点について、政府の方ではどうも準備不足で、十分お答えができないようでありますから、質問者の時間はあとわずかでありますが、ここで一つ休憩をしてもらって、そして準備をして、しっかりとやっぱり答えてもらいたい。やはりこういうふうに疑問が出た以上は、そういうふうに委員長の方でお進め願うのが、民主的な一つ運営の仕方だと私ども思うので、ぜひそうしてもらいたい。
  354. 小林英三

    委員長小林英三君) ただいま秋山君と亀田君から、お聞きの通り議事進行についての御発言がありましたが、一応委員長といたしましては、辻君に対しまして、どういう点とどういう点が政府答弁で食い違いがあるのかということを明らかにしてもらいたい。
  355. 辻政信

    ○辻政信君 先ほどの私の質問に、政府委員はだれ一人答えておらない。それは、日本が武力行使をする重大な時期に、それほどまでに慎重にフランスを敵にしないという方針をきめたには重大な理由がある、それを答えておらない。だから、次の質問ができない。いま一つは、それはドゴールがロンドンにおいてもしゃべっている。パリに入ってもしゃべつておるが、しゃべった内容に、日本に対して宣戦布告したという言葉は一つもない。その二つの記録を出して、あなた方がはっきり八月二十五日から交戦に入ったという証拠の資料を示さぬ限り、これを基礎にしてこれから述べていく質問ができない。答弁しておらぬから。だれでもいいからやってごらんなさい。
  356. 小林英三

    委員長小林英三君) 辻君にお願いいたしますが、今、政府側でも答弁するそうですが、もう少しゆっくり質問してやって下さい。その上で答弁をします。
  357. 辻政信

    ○辻政信君 時間を下さい。時間を縛っておくから、ゆっくりできないんだ。
  358. 小林英三

    委員長小林英三君) 早く質問しないで、ゆっくりわかるように質問して下さい。その上で答弁しますから。
  359. 高橋通敏

    政府委員(高橋通敏君) ただいまの第一点にお答え申し上げます。  ドゴールは、一九四一年の十二月八日ロンドンにおきまして、英国とともに対日宣戦を明らかにしております。宣言をいたしております。それ以後一九四三年十二月に至っても、また同じような声明を繰り返しております。さらに一九四四年八月になりまして、やはり同様に対日宣戦を明らかにいたしております。(「八月のいつだ」と呼ぶ者あり)八月の二十九日でございます。
  360. 辻政信

    ○辻政信君 私、当時ドゴールがしゃべった記録を持っておるのですが、対日宣戦という言葉は、不敏にしてまだ発見しておらぬのだが、この次の日まで、どういう文句の言葉があったか、あなたは印刷物にしてその疑問を解いてもらいたい。
  361. 高橋通敏

    政府委員(高橋通敏君) ただいまの答弁を補足さしていただきます。  一九四四年の八月二十九日の在スエーデンの岡本公使からの公電によりますと、日本とは昭和十六年十二月以来戦争状態にあるということを明らかにいたしております。
  362. 亀田得治

    亀田得治君 ただいまのこのお答えのドゴール側の宣言そのものをおっしゃっておるものではない。だから、こういう重大な質問をしておるときに、そういう間接的なものを幾ら並べたってだめだ。だから、最初に申し上げたように、二点について一つ資料をそろえて、やはり質問者に出してもらいたいと思うのです。だから休憩してもらいたい。これ以上おそらく続けてもむだです。
  363. 千田正

    ○千田正君 たった一点だけ聞きます。
  364. 小林英三

    委員長小林英三君) 何ですか。議事進行ですか。
  365. 千田正

    ○千田正君 条約局長のあれについてちょっと関連して聞きたい。確かめておきたいと思うのです。  条約局長の今のお答えは、当時の公文、スエーデンの大使か公使か知らぬが、公文というものも、むしろ政府に情報を入れた程度のことであって、政府それ自体がそれを宣言文と解釈したかどうか、これは非常に疑問であります、そういう態度は。外務省としては、そういう点をはっきりしてもらいたい。
  366. 高橋通敏

    政府委員(高橋通敏君) 当時正式に公電としてその趣が入っているわけでございます。
  367. 辻政信

    ○辻政信君 私の要求するのは、スエーデン公使の報告じゃなしに、ドゴールが演説をしあるいはビドーが演説した、その内容がほしい。
  368. 小林英三

    委員長小林英三君) 辻君にちょっと承りますが、今の演説をしたのは、だれが演説をしたというんですか。
  369. 辻政信

    ○辻政信君 ドゴール。
  370. 小林英三

    委員長小林英三君) その演説をしたということが証拠というんですか。(「議事進行」「委員長」と呼ぶ者あり)
  371. 小林英三

    委員長小林英三君) 議事進行ですか。
  372. 佐藤芳男

    佐藤芳男君 関連であります。(「議事進行が先だよ」と呼ぶ者あり)議事進行については、すでに千田君の発言は終わっておりますが、それが中途に消えた格好になっておりますので、私は、この紛乱を緩和する、正常の姿に戻す意味をもちまして、私は関連質問をいたしたいのでありますから、きわめて簡単でございますから、お許しを賜わりたいと思います。  私は、政府答弁を聞いておりますと、政府としましては、やはり出先の大公使よりの公文を信頼をして、それを根拠にして答弁をされることは、これはけだし当然だと思うのでありますが、しかし、一面においては、辻委員御指摘のように、ドゴールの演説の速記まで御持参に相なっているやに想像するのであります。しかしながら、そのドゴールの演説そのものでありましても、はたして伝えられるごとき演説内容であるか、あるいはどうであるかという、これもまた、真偽は私どもは断言ができない。従って私は、こうした問題につきましては、もう少し真にお互いが、賠償問題を中心としての御質問でございますから、もう少し冷静に、辻委員からも、また政府委員からも答弁をされて、お続け願いたい。休憩は私はこの際早いと、こう考えております。(「的確な資料がなければ質問できない」「休憩動議を諮って下さい」「理事会をやって下さい」と呼ぶ者あり、その他発言するもの多し)
  373. 小林英三

    委員長小林英三君) この機会に、今休憩の動議が出ておりますが、休憩すべきであるか、あるいは政府が今答弁いたしましたように……(「理事会でやりなさい「休憩して理事会」「それこそ紛乱する」「そのままにしておいて暫時休憩」と呼ぶ者あり)  それでは、休憩の動議がございましたが、このままの状態で五分間休憩をいたしまして、直ちに理事会開会いたします。    午後五時二十三分休憩    —————・—————    午後五時四十六分開会
  374. 小林英三

    委員長小林英三君) 休憩前に引き続きまして委員会を再開いたします。
  375. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) ただいま辻委員の御質問の第二点、日本の戦争指導会議において、フランスを敵としないという方針をきめたということでありますが、私ども現在そうした書類を手に持っておりませんので、その点のはっきりしたことはわかりません。ただ、われわれの想像といたしましては、おそらく当時の政府としては、仏印において敵対行動をなるべくしたくない、また同時に領土的野心も日本は持っていないのだし、そういうことによって混乱させることは適当でないというような見地から、戦争指導の方針をそういうふうにきめられたのではないかと推測いたしております。  第一点については、条約局長よりお答えさせます。
  376. 高橋通敏

    政府委員(高橋通敏君) 第一点につきまして、岡本公使外電を読み上げます。昭和十九年八月三十日岡本公使来電であります。  「仏臨時政府は、二十九日ラジオにより左の通り声明せり。  仏国は、一九四一年十二月八日以来、日本と戦争状態にあり、現に海上において、日本と戦争しつつあり。しかして連合諸国側に組みして、仏国領土が解放せられるのみならず、アジア及び欧州における仏国の敵を撃退するまで全力をもって戦争を継続すべし。」こういう公電が参っております。
  377. 辻政信

    ○辻政信君 ちょっとお伺いしますが、八月は、ドゴールがパリに入城したときには、まだペタン政府がヴィシーにあった。ドゴールは実効的な支配権を持っておらなかった。米、英がドゴールを承認したのは十月です。そうすると、全くフランスを支配する力のなかった者の言葉を、政府は対日戦争の状態と御認識になるのですか。
  378. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) ドゴールがパリに復帰いたしました、——復帰と申しますか、あるいは進攻したと申しますか、そのこと自体は連合国と一緒に進んでおるわけでありまして、実質的に実力を持って入ったことだと考えられるわけであります。当然、それでありまするから、実質上の支配権を獲得したと、こう見るべきだと存じております。
  379. 辻政信

    ○辻政信君 それじゃ、今の公電は八月でしょう。その八月、演説をしたときには、ペタン将軍がヴィシーにまだおって、そうしてペタンの外交支配権というか、国の代表としての権力が強かった。まだ亡命政権の域を脱しておらなかった、ドゴールは。それを採用なさるかと言うのです。
  380. 高橋通敏

    政府委員(高橋通敏君) ただいまの点、パリを回復した日を開戦の日だと考えます。
  381. 辻政信

    ○辻政信君 パリを回復したときには、——くどいようですが、ドゴールはまだどこの国からも承認されておらない。いわゆるフランスの支配者じゃない。そういう者の言葉をとって、そうして日本の重大な問題を決定する資料とすることはできません。(「その通り」と呼ぶ者あり)
  382. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 先ほど申し上げましたように、ドゴールはロンドンで解放政府を作り、あるいはアフリカで解放政府を作り、その関係においてはイギリスなどとの接触を持っておったわけでございます。同時に連合軍として入って参ったわけです。フランスに来たわけであります。こういう事実から見まして、むろん当時まだヴィシーの、ペタンが必ずしもヴィシーから退いていなかったかもしれない、パリという首都を回復して、そうして現実にそこに政権を立てました以上、その事実の上に立脚すべきではないかとわれわれは考えております。
  383. 辻政信

    ○辻政信君 国民納得いたしません。この問題はいずれ他の機会に追及いたしますが、では引き続いて次の質問に移ります。  伺いますが、ベトナムという文字が国際的に公然と使われたのはいつからですか。
  384. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) おそらくいろいろに使われておったかもしれませんけれども、われわれとしましては一九四八年の六月におけるアロン湾宣言において使われて、そして国際的に認められたと思います。
  385. 辻政信

    ○辻政信君 それも間違っておるようですね。一九三○年、十八才の若い大学生ベトナム人フユーという男がフランスからつかまって断頭台上に上るときに、ベトナムと叫んで殺されておる、それからずっと禁句になっておりましたが、一九四五年昭和二十年の三月九日、日本軍が武装解除をいたしまして、バオダイを中心として政府を作った、ベトナム政府を。その宣言にベトナム帝国はフランス安南保護条約を廃棄し、完全独立を回復することを宣言する、このときが初めて国際的にベトナムという語ができたのであります。いかがでございますか。
  386. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 国際的にはやはりアロン湾宣言のときだろうと考えます。
  387. 辻政信

    ○辻政信君 日本がこれほどまでにフランスに対して慎重な態度をとったのは、外務大臣が先ほどお答えになったが、これは非常にセンスのない御答弁です。その根本原因は、当時ドゴールがソ連に行きまして、ソ連ドゴールの軍事同盟を結んでおった、日本としてはフランスを敵にするとソ連が出てくる、これがこわいから最後までフランスというものを刺激しないようにしたのです。どうです、この見解は。
  388. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 当時の戦争指導方針としては、いろいろそういう事情もあったかと存じます。今日想像をしていろいろ考えて参るよりほかない。私の申し上げたことも別に違ってはおらぬのではないかと思います。
  389. 辻政信

    ○辻政信君 ベトナムの独立に次いで、カンボジア、これが二十年三月十三日、ルアンプラバン、ラオス、これが四月八日に独立を宣言しています。この両国が日本に対する賠償請求を自発的に放棄をしておる、当然であります。しかるにこの両国と全く同じ性格を持ったベトナムだけが賠償を要求しておる。なぜ岸総理は、このラオス、カンボジアと同じような態度でもってベトナム問題を解決しようと努力をなさらなかったか、努力をしたけれどもできなかったのですか。それを総理から……。
  390. 岸信介

    国務大臣岸信介君) いわゆる仏印三国のうち、カンボジアとラオスは日本に対する賠償請求権を放棄したのであります。しかるにベトナムは日本に対して、サンフランシスコ条約十四条 に基いて、最初から賠償を要求して参りました。そうしてしかもその賠償として向う側が要求した額はきわめて巨額に上っておったのでございます。今日まで七年間交渉をいたしましたことは、このベトナムの非常なわれわれから見るというと過大であると考えられる賠償請求を請求し続けてきたのに対して、われわれが折衝して、日本立場を十分に向うに理解せしめまして、そうして今回両方の大体の意向のまとまった、われわれから見るというと、最初ベトナム側が主張した額から見ますと、非常に少額なものに、これを定めて、そうして賠償協定を作ろうというわけであります。ただラオス及びカンボジアは全くラオス、カンボジアの好意に出た賠償請求権の放棄でございます。これに対してベトナムは今申しましたように、全然態度を異にしてきておったという事情からこういう賠償協定の問題に最初からならざるを得なかった事情でございます。
  391. 辻政信

    ○辻政信君 けさの産経新聞にベトナム賠償の実態と称して、小松清という人が書いております。これはゴ・ディエンディエムとは十五年間の親友であります。この人自身もまた、この賠償の形式はまずい、なぜ経済協力の形にしなかったか、こうすれば北との問題も起こらない、こう言っておりますが、これに対していかがでありますか、岸総理
  392. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 今申しましたように、この賠償協定の交渉の段階におきましては、われわれとしてはいろいろの主張をベトナム側に提案したことはこれは事実でございます。しかし、ベトナム側としては二億五千万ドルという賠償請求額を最後まで強く主張をいたしておりまして、これに対してわれわれの主張を通すために非常に苦心し、努力したのでございます。もちろん賠償の問題もそういう意味においてわれわれとしては、ベトナムの交渉においては最小領であると考えられる三千九百万ドルにこれを限定いたしまして、その他、経済協力、クレジット等の方法によって全体の問題を解決しよう、こういういわゆる両建の方法によったわけでございます。
  393. 辻政信

    ○辻政信君 では具体論に入りまして、戦争中に生じた損害と苦痛、具体的にどういう損害を与えたか、藤山外務大臣
  394. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 御承知のように一九四五年の春には明号作戦と申しますか、六月にはイ号作戦、北部から日本軍が入って参りました。それによりまして戦闘行為も行なわれたわけでございますが、また同時に日本がその期間におきまして徴発をし、あるいは経済的なベトナムにおける利益を害したことも、また物的損害も若干にしてもあると思います。また人的損害というものについては相当大きいことを向うは言っておりますが、必ずしも向うの言うことだけを受ける必要はないのでありまして、しかしそれにいたしましても、作戦もございましたし、相当な人間の餓死その他あったということは推定されるわけでございます。
  395. 辻政信

    ○辻政信君 その相当の損害を具体的にお示し下さい。
  396. 小田部謙一

    政府委員小田部謙一君) これはまずベトナム側がわが方に対しまして、全般的の賠償交渉最初におきまして、自分の方はこういうふうな損害があるのだということを人的な方面、物的な方面——物的の方面はたとえば生産の減少、製造業の減少、農業の減少、それから貿易の減少、それから通貨のインフレという形において出して参りました。これを合計しますと二十億ドルになるということを向うで言っております。もちろんわれわれとしましては、これは第一番目には、五年間にわたるものでございましたので、われわれといたしましては一応交渉するに際しまして、これを開戦時から終戦時までに限って大体のエスチメートを出しまして、これを参考にして交渉したわけでございます。
  397. 辻政信

    ○辻政信君 どのくらいの人が死んでいますか。
  398. 小田部謙一

    政府委員小田部謙一君) これは先方からの要求によりますと、一九四五年の飢饉によって百万人以上の餓死者を生じた、こういうことを言っております。われわれの方としては日本人その他から材料を集めまして、この程度になっていない、せいぜい三十万程度であろうかと、一応のエスチメートをしたものでございます。
  399. 辻政信

    ○辻政信君 とんでもないこと言います。三十万死んだって大へんなことなんだが、だれからそういうことを調べたか、どういう経路から調べたか、それをお示し下さい。
  400. 小田部謙一

    政府委員小田部謙一君) これは日本において、その前軍に関係しておりました人とかその他から聞きまして、また小長谷大使から当時の事情を、あまり当時の事情は現在になって必ずしも確実には発見できませんけれども、どの程度のものかというようなことを聞きまして、一応三十万……二、三十程度じゃなかろうということです。しかしこれに対してもちろん交渉いたします際には、この人的損害というのは、一応の参考にしたという程度でございます。
  401. 辻政信

    ○辻政信君 それじゃ困難々々と言うが、これほど楽なことはない。仏印じゃいくさしておらないし、生きた軍人はみな残っておるし、調べるならどこでも調べられる。一体どういう人間にどこで会ってどういう数字を聞いたか。(「辻参謀に聞いたか」と呼ぶ者あり)僕のところには聞きに来ておらぬじゃないか、おれが一番知っておる。名前を出しなさい、だれがそういうことを言ったか。
  402. 小田部謙一

    政府委員小田部謙一君) 今ここで名前を言うのは差し控えますけれども……。
  403. 辻政信

    ○辻政信君 国民の前にはっきりしろ。松本大使と最も親友のあった当時の軍司令官土橋勇逸中将は現存しておる、それに聞かれたか。聞いたか、聞いたかそれだけだ。
  404. 小田部謙一

    政府委員小田部謙一君) 土橋さんに聞きました。
  405. 辻政信

    ○辻政信君 どういうことを言われたか、その内容。
  406. 小田部謙一

    政府委員小田部謙一君) そういうふうな内容を基礎にいたしまして、大体二、三十万くらいは餓死者があるだろうということでございます。
  407. 辻政信

    ○辻政信君 土橋中将が二、三十万死んだと答えましたか。
  408. 小田部謙一

    政府委員小田部謙一君) それは土橋中将だけではなくて、いろいろな人に聞きました結果を総合いたしまして、そこで向うは百万と言っているけれども、百万というのはとてもこんなもの問題にならぬ、せめて三十万くらいだろうということです。(「バナナのたたき売りじゃないよ」と呼ぶ者あり)それはお答えいたしますが、当時の人がたぶんそのくらいにはなるだろうと言ったのでございまして、われわれは当時そこにいませんでしたから、そういうことはわからないのでございます。
  409. 辻政信

    ○辻政信君 土橋中将ばかりでなくというのは、ばかりの中には土橋さんの言ったことは含んでいるのか、呼んできますよ。
  410. 小田部謙一

    政府委員小田部謙一君) 土橋中将はそのような大きい数字は言っておりませんでした。
  411. 辻政信

    ○辻政信君 どのくらいと言われたか。(「答える必要ない」と呼ぶ者あり)答える必要ないとは何を言うか。
  412. 小田部謙一

    政府委員小田部謙一君) 土橋中将は少くとも五万程度は死んでいるだろうということを言っておりました。
  413. 辻政信

    ○辻政信君 当時の部隊長、主任幕僚、司政官、外交官はみな現存しております。これはほかの地域よりも調査は最も容易な条件です。それを調べておらない、これは私があの地区に百日もぐっておった、終戦後。そうしてそのとき書いた資料がここにあります。絶対にありません、どんなに多くても一万、こう見ておった、当時の軍は。三十万という数字はどこから出たか。(「広島と間違っておる」と呼ぶ者あり)
  414. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 外務省としていろいろな人の話を聞いておったと思います。従いまして大きく言う人もありましょうし、少さく言う方もありましょうし、またどの程度が真実か不明瞭な点も多々あると思います。従って今申し上げたようなことにつきましては必ずしも外務省が二十万とか十万とかというようなことを目標にしてこういう問題を考えておったわけではございません。ただ問題はやはり餓死者なりあるいはそういう戦争によって死傷を受けた人もあろう。しかしそれはそんなに百万だとかいうような大きな数字じゃない。向うで言うような数字じゃないということをわれわれは考えておるわけでありまして、それらのものを総合的に考えながら問題の処理をいたしたというわけでございます。
  415. 辻政信

    ○辻政信君 大臣は先ほど明号作戦とイ号作戦があった、この損害はどう見ておりますか。
  416. 小田部謙一

    政府委員小田部謙一君) 明号作戦は、一九四五年二月にすべてのフランス軍と武装警察とを日本の指揮下に置くこと、軍事行動に必要なすべての通信運輸機関を日本の管理に置くことという目的で始まっております。そしてサイゴンにおいて若干の撃ち合いがあったのみで降伏した。ハノイにおきましては、ハノイ仏印軍兵営攻撃で三月十日午後仏印軍降伏、兵営、燃料倉庫等破壊した。ユエにおいてユエ仏印軍兵営攻撃、三月十日降伏、ランソンにおきまして仏印軍と交戦六日にして十四日降伏、こういうふうになっております。  そのほかにも地方の小都市とか僻遠の地の仏印軍の分遺隊と小規模の戦闘が行なわれております。もちろんこれらはこの場合に原住民にも若干の損害を与え、また日本兵の略奪などもあった、こういうふうに聞いております。これは明号作戦でございます。
  417. 辻政信

    ○辻政信君 日本が略奪した事実があったら示して下さい、これは重大な発言です。
  418. 小田部謙一

    政府委員小田部謙一君) これはもちろん現在にありまして証拠があるとか証拠がないとかいうことはわかりませんのでございまして、皆ただ人の話でございますが、たとえば南支から光兵団が帰って参りましたときに幾分そういう行為があったのではなかろうか、そういう話を承っておるわけでございます。
  419. 辻政信

    ○辻政信君 作戦によって与えた損害はこれはほとんど原住民にはないのです。私は知っております。なぜならばフランス軍の正規軍だけをやった。兵営と官術はやられている。ベトナムにはほとんどない。それから先ほど、これは私は軍人として軍の名誉のために弁解しておきますが、あのときおった車は絶対に軍紀は厳正であったということです。そのために一つの例を申し上げましょう。ただ一つあった、略奪したことが。それは武力行使のときに北部国境の要塞を攻撃した三十七師団の大隊の大隊長であった沢野源六少佐、最も有能な将校であったのですが少数の兵力で要塞に入っている多数の仏印軍の武装を解除する一つの手段として、攻撃をやる前の晩に仏印側を宴会に呼んだ。そしてだまして将校を殺したとき、その際に一部の民衆に同時に数名の死傷者を出した。それによりまして三十七師団長の土橋司令官は懲役六カ月にして少佐を降等して一等兵にしている。しかも終戦後戦犯として死刑になっておる。大事な大隊長を少佐をやめさせ、六カ月の懲役にして死刑にしておる。これでいかに軍紀が厳正だったかということがわかる。いかがでありますか。
  420. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 当時日本軍の軍紀が非常に厳正でなかったということをわれわれは言っているわけではありませんが、そういうような作戦がございますればいろいろの損害、被害というものを原住民に与えたことはあろうと思いますし、またあったのではなかろうかというような話も聞いております。むろんそういう点についてその真偽をほんとうに確かめるということは非常に困難だとは思います。が、しかし、そういう話もいろいろありますれば、やはりそういう点も、われわれとしては念頭に置かざるを得ないかと思うのであります。
  421. 辻政信

    ○辻政信君 調査できる条件をそろえておる。軍司令官以下健在です。なぜ、それを呼んでほんとうに検討しないのか。
  422. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 外務省として、むろん過去七年間の問題でございますから、いろいろな面からいろいろな方に対していろいろなお話を伺ったことだと思います。そういうものを総合されて損害があったということは推定されるのでありまして、それがどのくらいな金額なり、あるいはどの程度の確実な死傷者なりということは、それはとうていはっきり定めるわけには参らぬのは、こういう状態においてはまあ当然ではないかと思うのであります。われわれとしましては、賠償というものは、やはりその国に迷惑をかけたこと、その国にいろいろな損害を与えたという事実の上に立って、そうしてできるだけ日本の財政経済のことも考えながら、最小限から話し合いをしていくという立場にあるわけでありまして、従来の賠償交渉等も、その意味においては非常に交渉としてはむずかしい交渉であること、むろんでございますが、そういうことと御了承願いたいと思います。
  423. 辻政信

    ○辻政信君 サイゴンに餓死者は出ましたか。
  424. 伊関佑二郎

    政府委員伊関佑二郎君) サイゴンに餓死者が出たということは聞いておりません。
  425. 辻政信

    ○辻政信君 聞いておらない……。
  426. 伊関佑二郎

    政府委員伊関佑二郎君) いわゆる北部のような意味における餓死者が出たということは、聞いておりません。
  427. 辻政信

    ○辻政信君 戦争中ベトナム人に精神的苦痛を与えたということは、どういうことですか。
  428. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 戦争でありますから、その土地に住んでおる人に対しましては、直接作戦行動の上からの苦痛もありましょうが、そうでなしに、経済的な諸般の困難も起こって参ります。あるいはそういうことのために、流通過程において十分な物資の流通が起こらないというような状況もございます。そういう意味におきまして、直接人命の損害以外にも苦痛を与えた、あるいは餓死に至らないまでも非常な窮迫に陥れたというような苦痛は、相当に考えられるのではないかとわれわれは考えておるわけであります。
  429. 辻政信

    ○辻政信君 ベトナム人の一番大きな苦痛は、八十年間にわたるフランスのこの統治であります。それを日本というお医者さんが注射をしてフランス病をなおした。(笑声)そうすると、なおった病人が注射が痛かったから賠償を要求する、また、なおした患者から訴えられて、お医者さんが、それは注射が痛かったのはしようがないから、慰謝料を出そうという、そういうばかな医者はおりますか。
  430. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) むろん、フランスの植民地あるいは保護領の時代に苦痛があったということは、それはあり得たことだと思います。植民地解放ということが重要な問題であります以上、やはり独立国家としての十分な立場よりも苦痛であったということは、われわれは考えます。がしかし、当時の戦争にあたりまして、現実に先ほど申し上げたような理由による苦痛というものも、決して少ない苦痛ではないと思うのでありまして、それらの問題に対してやはり賠償において何らか慰めて参るということは、私は適当なことではないかと考えるわけであります。
  431. 辻政信

    ○辻政信君 餓死者が北部に出た大きな理由はどこにありますか。
  432. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 餓死者が北部によけい出たのは、北の方からの作戦行動もございますし、あるいは当時のような状況下におきましては輸送関係その他が円滑でなかった点もございます。従って、南の方からの輸送というようなものが完璧でなかったということによって食糧の供給その他が十分でなかったということも言えると思います。なお、日本軍の必要によって、徴発等によって北部の方にいく食糧その他が十分に、円滑に、あるいは数量的に十分でなかったという場合もあろうと思います。それらすべての理由が一体になりまして、やはり北部の方が一番影響が多かったのであるというふうにわれわれは考えられているわけなんであります。
  433. 辻政信

    ○辻政信君 もっと大きな原因はあったはずです、御存じないのですか。
  434. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 今も申し上げたようなものが理由だと、われわれも考えておりますが、何かそのほかにありましたか、そのことについては、私はよく存じておらないのであります。
  435. 辻政信

    ○辻政信君 根本問題は、十九年と二十年が非常な不作です、雨が多くて。その結果であります。雨が多くて不作の結果まで、日本軍の責任にして賠償を払うのですか。
  436. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 雨が多くて不作だったというようなことは、自然現象としてあり得ると思います。がしかし、その不作にいたしましても、その輸送等が円滑に参る、あるいは日本軍の徴発その他がなければ、なおかつ北部に餓死者が出ましたときに、それに対する対策がよほど違っているのじゃないかと思うのでありまして、やはりそういうような不作も影響はいたしていると思います。それは全体の量が少なくなれば、日本軍が徴発し、あるいは輸送が困難になるというような事情のもとにおいて、南部の方の食糧の関係もありましょうし、いろいろありますから、北部に対して特に影響がひどかったということはそういう意味では言い得ると思います。
  437. 辻政信

    ○辻政信君 日本軍が徴発したから餓死者が出たと言われるが、それじゃ根拠を聞くが、仏印にどれくらいの日本軍がいつおったのですか、その総数。
  438. 伊関佑二郎

    政府委員伊関佑二郎君) この仏印におりました部隊の数は、ときどき変わっていると思いますが、われわれが調べましたのでは、大体定員にすれば八万くらいの予定になっておりますが、終戦時には南支からも入ってきておりますし、多少ふえているのじゃないか。その八万が大体兵団の兵力で出ておりますので……。一個師団幾らというふうに。これが多少減っておるかと思いますが、われわれが調べました範囲では八万、こういうふうに思っております。
  439. 辻政信

    ○辻政信君 各別によって兵力が逢っているが、各別における給与兵力をお調べになりましたか。何にも調べていないが、ただそう思うのじゃないか。はっきり言いなさい。こんな調べやすいことはないじゃないか。
  440. 伊関佑二郎

    政府委員伊関佑二郎君) 御質問がちょっとよくわかりませんでしたが、各地区別の兵力というものは調べております。
  441. 辻政信

    ○辻政信君 時期別。何年に幾らおったかということ。
  442. 伊関佑二郎

    政府委員伊関佑二郎君) その点は、それほどはっきりいたしません。
  443. 辻政信

    ○辻政信君 そういうことを調べずに、日本軍が徴発したから餓死者が出たという議論がどうして言える。
  444. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 先ほどから御答弁いたしておりますように、日本軍が徴発しただけで、あるいは徴発したというのも語弊があり、若干の現地通貨は払っておるかもしれんが、そういう意味だけと申しているのじゃない。いろいろ他にも事情、複雑な交通機関の問題その他の事情もいろいろございますので、総合的に判断せざるを得ないと思います。
  445. 辻政信

    ○辻政信君 外務大臣のこういうずさんな調査の上に賠償金額を決定するという態度を、私は詰め寄るのであります。よろしゅうございますか、これで。もう一ぺんやり直しませんか。
  446. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) むろん、賠償交渉に当たりまして、損害ということも念頭に置かなければなりませんし、苦痛ということも念頭に置かなければなりません。同時に日本側の立場で言えば、そのときに応じ得る財政経済の日本の能力というようなものも考えて、最小限に、向こうに対しても、日本が当時行ないましたいろいろな過失と中しますか、あるいは損傷というものに対して、できるだけ向こうの立場考えなければなりませんけれども、同時に日本政府としてやはり最小限に、こういう支払いは、日本の経済復興その他の過程からして考えなければならぬのでありまして、そういう点を考慮しながら、賠償交渉というものは従来ともやっているわけであります。その意味におきまして、私どもとしては、そうせざるを得ないということを申し上げる以外に方法はないと思います。
  447. 辻政信

    ○辻政信君 二百億の賠償の、この算定の基準が戦争中に与えた損害なんです。その損害という基礎条件をもっとまじめに、生きている人から開いて、そうしてやらなければ、国民は何のために、どのくらいの損害で二百億取られるかわからぬじゃありませんか。
  448. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) むろんできるだけ関係方面から調査をし、そうした損害についても考えなければならぬことは当然でございます。ただわれわれといたしまして、向こう側の言いなりほうだいにそれを聞いているわけには参らぬことも、またむろんであります。日本が支払い得る能力その他というものも十分勘考して参らなければならぬ。損害が大きいからといって、そのときにすべてそういうものを満足するように払ってやるというわけには参りませんし、また、それらのものについて、われわれとしては、十分日本の経済実情というものを向こう側にも説明して、そうしてできるだけ、与えた損害が多いとそれは内輪にしぼって参る。従ってこの種の交渉でございますから、当然最小額から話を進めて参るということにならざるを得ないと思います。
  449. 辻政信

    ○辻政信君 その調査国民の目から見るとでたらめであります。その一語に尽きます。まじめに真剣に科学的に、調査された資料じゃない、山かんでやったんだ、それでいいかと言う。
  450. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 調査を、まあ山かんという言葉がございましたが、どういう……。
  451. 辻政信

    ○辻政信君 山かんですよ。基礎がないじゃないか、出して下さい。
  452. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) どういうことかわかりませんが、しかし、われわれとして、むろんそういう調査を、いろいろな方々から当時の事情等を聞いて、そうしてそういうことについての参考資料は持って参らなければならぬこと、当然だと思います。念頭に置かなければならぬこと、当然だと思います。しかしながら、同時に、先ほど申し上げましたように、日本立場からして、この賠償の金額というものはできるだけ少額にしていくという立場を堅持して参りますれば、それによって話はなかなか困難ではありますけれども、最終的妥結に持っていくためにそういう努力を続けていくことにいたしてきているのが、今日までの賠償の実情でございます。
  453. 辻政信

    ○辻政信君 要するに、この問答を通じて明らかになったことは、政府は十九年の八月二十五日、ドゴールを相手に交戦状態に入ったというこの認定に誤りがある。国民納得できない。ほんとうは、もし戦争状態に入ったと仮定しても、二十年の三月九日、それ以後じゃないか。そうすると、二十年三月九日以後だと、この与えた損害というものはほとんどゼロになります。多いのは十九年に出ている、天災、不作のために……。そうなりますと、この賠償は根拠がはなはだ不確実であり、いいかげんな資料で、日本国民にとってはたまらないところの重圧を受けることになるのだ、外務大臣、いいですか、総理大臣どうです、総理大臣……。
  454. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 先ほど来、お答え申し上げておりますように、この賠償額を決定するにつきまして、その基礎になる損害額の算定につきましては、政府としては各種の事情を、またいろいろの方面から資料を整えてこの額を決定したわけであります。今、辻委貸のお話しによりますと、何ら根拠がないという御意見でございますが、私ども政府の力としてなし得るあらゆる方法によって相当な資料を集めて、そうしてその上に賠償額というものを両国の間の交渉によって決定した、こういうことでございまして、政府としては、われわれは損害額の算定及び賠償額の決定につきましては十分に各般の事情資料等を参考にして決定いたしたわけでございます。
  455. 辻政信

    ○辻政信君 私は戦前仏印におった者です。戦争中も仏印におった。戦後も仏印におった。そうして現在司令官以下幕僚みな生きておる。あなた方の資料はどういうのか知らぬが、その資料によっては、いつでも証人をここに呼んで対決できます。これほどずさんな資料はありません。そうして国民には百万死んだとか、百何万死んだとか、日本軍を鬼畜のようにあなた方は言っている。あなたは日本総理大臣ですよ。これでいいのですか。どうですか。やり直しなさい、調査を。
  456. 岸信介

    国務大臣岸信介君) お答えをすることは、さっきの通りでありますが、私は日本軍を鬼畜のごときものだというようなことを申したこともございせんし、そんなことは絶対に考えておりません。
  457. 辻政信

    ○辻政信君 そう君は言っておるでしょう。日本軍は略奪したとか、餓死者が日本軍の徴発によって三十万人できたと言っている。そんなことはない。あったら証拠出しなさい。私は反駁する資料がある。証人を持っておる。お出しなさい。
  458. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 先ほどから外務省からお答え申し上げているように、向こう側の主張は非常な大きな百万ということを申しております。そうして外務省におきましては、各般の調査からいってそんなに大きな額には及んでおらない。しかしながら、一方において戦闘行為等によってある程度の死傷者も出たでしょう。さらに大きくは、餓死者も出たという北部の問題につきまして、先ほど来その原因をいろいろな点において総合されてそういう原因が出たのであってその数につきましても、明確に何人という証拠を出せというふうなお答えはこれはむずかしいと思います。そういう意味のことは外務省の方からも申しておるわけじゃありませんで、またそれに関していろいろな方面から資料を取ったことにつきましても、先ほど来事務当局から申し上げている通りであります。
  459. 辻政信

    ○辻政信君 時間がないので結論を急ぎますが、この問答を通じて明瞭になったことは、日本はフランスと戦争したことなし、向こうは宣言しても最後までこっちはしておらない。これが一点。それから、この物的損言はきわめて軽微でありますが、その調査はでたらめで根拠がないということが第二点。苦痛を与えたというが、苦痛じゃない。多少の苦痛はあったが、独立を得たという喜びの方が大きいから、プラス・マイナス感謝がくるはずです。これが三点。こういうような見えすいた、はっきりした問題を前提にして、二百億の賠償を、悪いことをしたからおわびに持っていくという態度が気に食わない。なぜ二百億というものを生かさぬか。経済協力として生かしたらいいじゃないか。悪いことをせぬのに、おわびのために二百億国民が出させられたのでは、たまったものじゃない。だから、岸さん、ほんとうにあなたはこの戦争を開いた大責任者ですから、それをもう一ぺんお考えになって、今この問題をもう一ぺん白紙に返して、今の外務省のお答えはなってないから、それをやり直して、今小松君も言っているように経済協力の線でやりなさい。これは日本のためにです。これをあなたが押し切ってやるならば、与党は多いからできるでしょう、できるけれども、やった結果はどうなるか。実に大きな危険と疑惑を抱く。その疑惑の第一点は大したことはないのに二百億国民に払わして、ダニムの発電所あるいは工業センターを日本の業者が入札して、その上前を日本の政治家がはねるのだという疑惑が生まれてくる。第二点は、これをやりますと、北ベトナムが日本に対して敵視政策をとる。同時に、将来中共が日本に対して国交問題を解決するときに、鶏三羽に二百億やったのだから、おれのところはもっとよこせという、そういう中共に大きな口実を与える何からいっても、この賠償問題は、国民のために絶対に賛成できない。おそらくこれに賛成するのは、この賠償に便乗してもうける土建屋、その上前をはねる政治家でしょう。大多数の国民はがっかりする。これは私は良心から言っているのです。何もあなたに対して反感を持っているから言っているのじゃない。あなたは、ほんとうに賠償をやるというのなら、戦争の責任をほんとうに最も強く感じているあなたです。戦争に負けて総理大臣になった。勝っておったらなっておらない。総理大臣になって別荘を買った。だから、ほんとうにやるなら、熱海の別荘を売って、岸個人のプレゼントとしておわびする。にもかかわらず、それを黙っておいて、罪のない国民に二百億の税金を割勘で払わして、この賠償問題をやるということはとんでもないことだ、どうですか。
  460. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 賠償の問題につきましては、先ほど来お答えをしておる通り、サンフランシスコ条約の第十四条の規定に基づきまして戦争中に与えた損害につきまして、迷惑をかけた国々との問に賠償協定を結んで、そして、将来の両国の間の友好関係、さらに、それによって両国の親善に資するということは、これは日本としてとるべき根本の方針であるという意味において、私ども賠償問題を扱ってきております。そうして、賠償額の決定については、先ほど来、るる御説明申し上げました通り、十分に日本事情考えて、そして、われわれは、この額が日本の経済の上から見て非常な負担にならないように、また、できるだけ向こう側の要求をリーズナブルなものに圧縮するように、これは各国に対して、ビルマ、フィリピン、インドネシア等に対しても、そういうつもりで賠償協定を結んで今日に至っております。残っておるベトナムにつきましても、長い交渉の結果、そういう考えのもとに一貫してやってきております。その調印を見た今日におきまして、私は、これを日本として誠実に履行することによって、両国の一そうの友好関係を進めていくことは、両国のために、また、日本の東南アジア諸国に対する立場からいっても適当なことであるという信念に立って、実はベトナムの賠償問題を扱っておるわけであります。その点につきましては、不幸にして辻委員意見を異にするところがあるようでありますけれども、どうしても私どもはこれについて、あるいは何か疑惑があるというふうな話がございますが、そういうことは絶対にしないことを明瞭にいたしまして、お答えいたします。
  461. 辻政信

    ○辻政信君 最後に一問。
  462. 小林英三

    委員長小林英三君) 時間がありませんから。
  463. 辻政信

    ○辻政信君 私は、これだけ全国民の疑惑に包まれた賠償問題、しかも、その前提においてきわめて不的確な条件、調査も疎漏、そういうところから、資料をそろえ、条理を尽くして申し上げておるのです。感情的に言ってはおりません。そこで、こういう問題を、今展開されておるような議論に解明を加えずに、単に与党委員の数だけで押し通したという結果は、どうなるか、ということを一言申し上げておきたい。この結果は、岸内閣の命運は二、三カ月後に迫る、そういうことを結論として質問を終わります。
  464. 小林英三

    委員長小林英三君) 辻君の質疑は終了いたしました。  明日は午前九時半から理事会を、十時から本委員会開会いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後六時三十四分散会