○藤田進君 第四班は自民主党苫米地英俊君、日本社会党藤田進、日本共産党岩岡正男君の五名で構成され、広島、島根、鳥取の三県を視察して参りました。
七月十五日東京を出発し、一週間にわたってこれら各県の
一般経済事情、地方財政
状況、総合開発計画の進捗
状況、国有財産、特に旧軍事
施設の管理
状況等について調査を行いました。
この間、広島、島根、鳥取の各県庁を初め、中国財務局、呉市、米子市の各市役所、八本松町の町役場等において資料の提供を受けるとともに、現地の
実情について詳細な
説明を聞いたのであります。また八木松町の元国連軍の射撃演習場、太田川・郷川の
改修工事現場、江ノ川ダム建設予定地、宍道湖・中海干拓
工事現場、日立金属安来工場、境港の港湾
施設、原子燃料公社の人形峠ウラン鉱探鉱現場等を視察いたしました。
以下右調査の結果を御
報告申し上げます。
まず、
一般経済、金融の
状況についてでありますが、中国地方も全国的な景気の回復と歩調を合わせておおむねゆるやかな上昇過程をたどってはいますが、その上昇のテンポは若干低く、生産面では鉱工業生産指数が三十二年のピーク時に比べて本年三月現在九五・二%という
数字を示しております。これは鉄鋼及び化学工業などが高水準を持続する反面、中国地方で産業構造中ウエイトの高い繊維、造船等の立ち直りがおくれていることが原因となっています。中小企業も輸出、内需の好調、下請発注額の
増加傾向から、総じて明るい傾向にあります。このような生産面の好調を反映して、労働市場の需給
関係は漸次よくなってきていますが、雇用人口、賃金面で積極的に上昇するという段階には、至っていません。
他方消費面を見ると、
一般景気の回復を反映して、前年水準を上回る状態ですが、全国水準に比較するとこれまたかなり低い増率であります。また
一般金融機関の資金供給
状況は、昨年秋以来の商況の活発化で運転資金が若干
増加したほかは積極的な資金の動きは見られません。
三十四
年度の設備投資の、面は、前
年度に比べ〇・九%増にとどまり、その
内訳を見れば、現在好調の鉄鋼及び化学工業が主体となり三七%を占める
状況で、石油精製、金属鉱業等が
増加している反面、化繊、紙パルプ工業等は減少している状態であります。
次に、地方財政について御
報告いたします。
広島県では
昭和三十三
年度の
決算見込みによると、歳入百九十億五千万円で十八億三千万円の増、
歳出は百八十七億円で約十九億六千万円
増加しており、形式収支は三億五千五百方円の黒字を示していますが、単
年度収支は一億六千二百万円の赤字となっています。
三十四
年度の
予算見込み額を見ると、赤字の危険が増大しております。すなわち
交付税、国庫支出金の
増加をそれぞれ四億円及び三億八千万円
見込んでも、地方税収入が制度改正等に伴い三億一千万円ほど減収が予想され、その他の減収を含めて歳入は一億三千五百万円の
増収が
見込まれるだけであります。
これに対し
歳出の面では、給与
関係費の
増加額だけでも六億九千七百万円が必要であります。これは期末
手当〇・一五カ月分増、初任給改訂、昇給
財源などで、いずれも
増加を義務づけられた
経費であります。その他公債費一億一千三百万円増のほかに、投資的な
経費の
増加が五億三千九百万円
見込まれております。このうち国庫
補助に伴う
公共事業費の
増加は四億六千三百万円で、これは国の
補助事業の内示額を道路
関係について一〇〇%、その他八〇%として計画した場合の
数字であります。国庫
補助を伴わない投資的
経費は七千五百万円であります。
これらの
経費の
増加のため、庁費その他の
経費の削減を三億八千六百万円行なっても、なお八億七千四百万円の
歳出増という結果に相なり、従って歳入
歳出差引不足額は七億三千九百万円にも達する
見込みとなっています。
このような赤字
見込みの原因は、前述のごとく種々の
歳出増加に見合う歳入増が欠けている点にあるわけですが、特に
公共事業費の増が二〇%に達するのに、起債が五%増しか認められないのも大きな原因をなしており、また臨時
特例法の廃止による
負担増加も六千百万円あり、これも一因をなしているとのことであります。これがため、せっかくの
公共事業費のうち、県当局の見通しでは、地方
負担額二億一千四百万円に
相当する四億六千九百万円を返上せざるを得ないのではないかと言っておりました。
島根県では
昭和三十三
年度歳入百六億五千八百万円で、前
年度比増十四億五千九百万円、
歳出百四億五千九百万円で、十七億七千百万円
増加しており、形式収支で一億九千九百万円の黒字を
計上しております。しかし、三十二
年度の黒字形式五億一千百万円と比べると大幅に減少し、単
年度収支では三億一千二百万円の赤字となっています。
昭和三十四
年度の当初
予算はまだ肉づけが行なわれていない段階ですが、それでも
財源に困難を来たしている
状況がうかがわれます。すなわち収入の面で税法改正による減収のほか、重要産業であるパルプの不況等による減収を合わせ、地方税の減収が五千三百万円ある等のこともあり、
交付税の見通しが四億五千六百万円の
増加であるにもかかわらず、
一般財源は二億三千百万円しか
増加していない。しかも
交付税の
増加分はほとんど人件費に取られてしまう勘定であります。人件費の
増加は、教員増百三十七名、定員化による人員増百九十六名の給与費と、期末
手当の増額によるもので、合わせて五億円に達するとのことであります。従って投資的
経費は著しく削減され、国庫
補助を伴なわない事業で
災害復旧事業の当然減少分五億円を含めて六億五千百万円の減少を示し、
補助を伴う事業は二十六億八千九百万円で、前年に比べて二億五百万円
増加になっていますが、認証
見込み額の二割
相当分三億八千八百万円を返還予定としており、実質上は一億八千三百万円の減少となっております。
鳥取県の財政は、
昭和三十三
年度の
決算見込みによると一億六千九百万円の黒字を
計上しております。これは
交付税が未開発
補正の減のため、県の最終
予算に比べて一億七千万円少なくなったにかかわらず、前
年度の繰越金が一億円
増加し、費用の未使用分が一億九千万円あり、それに県税六千万円、
雑収入九千万円の
増加があったためであります。従って単
年度の収支では逆に六千万円赤字を出しているわけで、前
年度は二億九千二百万円の黒字であったのに比べて大幅な逆転を示しています。
昭和三十四
年度の
予算によると、
公共事業費増に伴う県
負担増が四億二千八百万円に達し、人件費の
増加も二億五千四百万円あり、また公債費が五億八千七百万円あるので、大幅な赤字、あるいは
公共事業費の返上が予想されるのであります。
以上二県の県財政に共通して言い得ることは、第一に三十三
年度の
決算じりは赤字を出すには至っていないが、単
年度収支ではいずれも赤字となっていて、好調な三十二
年度から逆転していること。第二に、三十四
年度の
予算に見られるところでは、人件費の増、公共事業増等
歳出の面の
増加が著しい反面、歳入の
増加はあまり期待できず、従って一そうの後退が生ずる恐れのあること。第三に、国の
公共事業費の一部が県
負担分の
財源難から返上される動きがあること等であります。各県の財政当事者から、これらについて、地方財政が再び破綻することのないよう、国の適切な
措置を要望されるとともに、三十四
年度の
公共事業費の
財源のため、臨特法の復活、
直轄事業の全額
国庫負担、
交付公債の利子免除等の強い要望があったことをお伝えいたします。
次に、視察した現場のうち、おもなものについて御
報告いたします。
広島県八本松町にある旧陸軍の演習場は、戦後連合軍によって、また朝鮮事変後は国連軍によって、実弾による演習場として使われ、そのため隣接する村有林三百町歩を灰にされ、さらにはげ山となった山からの土砂のため、
河川は決壊し、溜池、農業用
施設に多大の
被害を受け、その
被害総額は三億二千万円に上るとのことであります。一部についての補償はすでに行なわれ、また、三十四
年度も、治山及び砂防にそれぞれ千二百六十万円、千四百五十万円国費から支出される計画になっているのでありますが、村有林の焼失等により村財政の基本財産が失われている現状から、根本的な損害回復事業の実施が強く訴えられたのであります。
また、呉市の旧軍用
施設の利用
状況を視察したのでありますが、旧軍用地二百五十万坪のうち、すでに百八十万坪については処分されております。すなわち、旧軍港市転換法により学校等公共
施設に譲与されたもの四十六万坪、工場に使用されたもの五十二万坪、その他道路、農地、宅地に利用されるもの八十二万坪であります。未処分の七十万坪のうち、工場に利用せしめる予定のものは四十三万坪、その他二十七万坪であります。工場に使用され、あるいは使用を申請している土地は、
合計九十五万坪で、おもなものは尼崎製鉄、日曹製鋼、日立製作、東洋パルプ、呉造船等であり、なお、これと関連して、広島呉工業地帯整備計画により、広島県を工業生産県とする計画が進められています。
次に、郷川の問題について御
報告いたします。郷川、これは江ノ川といいますが、広島、島根を貫流する中国地方第一の
河川でありますが、県境よりやや下流、島根県側に入った地点高梨に、高さ約六十八メートルのダムを築き、有効貯水量約一億立方メートルの大貯水池を設けて、十四万八千キロワットの発電を行なう計画があります。中国地方は水力資源に乏しく、特に調整に容易なダム式発電が少ないため、この中国第一の
河川を開発することは大きな意義があるわけですが、この江ノ川ダムには、すでに当
予算委員会で質疑が行なわれたこともあるごとく、三江線の問題がからんでいるのであります。すなわち、長年地元で要望していた陰陽連絡の三江線が、あとわずかで完成するのですが、もしこの高梨地点にダムができると水没し、また、水没しないためには数十億円の
追加工事費が必要で、電源開発側でそれを
負担すると、電力コストが引き合わなくなるジレンマがあるわけであります。この問題の取り扱いについて、昨年十月通産省、
運輸省、経済企画庁の三省で一応の調整を行ない、覚書をかわしたのでありますが、それによると、ダムの高さを五メートル低くし、その場合におけるダムその他の経済性を比較検討する。五メートル低くして水没しない口羽地区まで三江線を計画
通り進めるというのであります。この覚書に従い電源開発側が検討したところでは、五メートル低くすると、有効貯水冠が激減し、経済的に引き合わなくなるとのことであります。また、国鉄側は、
工事を進行させていますが、口羽地区の駅をどこに設けるかが決定できず、
昭和三十三
年度予算の割当のあった
工事費四億円を未使用のまま繰り越しております。私どもが現地へ参りましたところ、地元のダム反対派、あるいはダム賛成派からそれぞれ陳情を受けたのであります。ダム反対派の意見は、千戸をこえる町の
中心部の室屋が水没し、また、農耕地の大半が失われること、先祖伝来の土地を去りたくないこと、補償を受けて転業をしてもなかなか困難であること、せっかく三江線が近くまで開発されながら日の目を見なくなること等であります。また、賛成派からは、耕地が少なく資源に乏しい事情から、むしろこれを機会に別途生計を立てたいこと、江ノ川のはんらんによる
被害がひどいこと、水没予定区域内の居住民はむしろ賛成しているとの意見が述べられました。しかし、反対派、賛成派ともに、一日も早い解決を強く望んでおり、早期に調整を行なう必要を痛感した次第であります。
斐伊川・宍道湖・中海総合開発計画は、斐伊川流域多目的貯水池群の建設、斐伊川つけかえ、中海・宍道湖の干拓計画、中海・宍道湖の淡水化、中海臨海工業地帯の建設等、この地域の社会経済的水準の飛躍的向上を約束するもので、総
事業費は二百九十億円に達する計画であります。このうち第一期
工事として、七十八億円で中海約三千町歩の干拓及び中海・宍道湖の淡水化の計画が取り上げられ、基礎調査費に一億円を費やし、干拓の方式、潮どめ地点の調査、土壌試験、栽培試験を行ない、あと若干点を除き、ほぼめどがついたとのことであります。また、中海臨海工業地帯と
関係して、境港の整備五カ年計画が遂行されています。すなわち、外国貿易港として一万トンの岸壁を整備するとともに、国内貿易のため小型埠頭を整備する計画で、総
経費三億三千万円、三十三、三十四
年度はそれぞれ四千万円、五千五百万円で、浚渫及び埋立、岸壁の一部が作られる予定になっています。
最後に、人形峠のウラン鉱についてであります。
昭和三十年に発見されたウラン鉱床は、原子燃料公社によって、一昨年末からボーリング、坑道などにより探鉱が鋭意進められ、
相当広範囲にわたって鉱床が存在していることが明らかになってきています。現地では、輸送の方法、汚水の処理等困難な問題もあり、また、国際価格と比較すると若干割高となるが、国内資源開発のためにも、原子力の平和利用のためにも、ぜひ本格的な開発を遂行したいとの意向で、そのための強い財政的支持が切望された次第であります。
以上、簡単でありますが、御
報告といたします。