○郡祐一君 ただいま
議題となりました
昭和三十四年九月の暴風雨により被害を受けた農地の除塩事業の助成に関する特別措置
法案外二十六件につきまして風水害対策特別委員会における
審議の経過及び結果について御
報告いたします。
右の諸
法案は、今次の風水害等に関し、その対策を講じようとするものであります。以下その要旨を簡単に御説明申し上げます。
まず、農林水産
関係六件について申します。農林水産業施設の災害復旧事業については、農地、農業用施設及び林道につき十分の九、共同利用施設及び開拓地の入植施設等については三万円以上の工事につき十分の九の補助を行ない、また災害関連事業についても三分の二の補助を行なうものであります。塩害をこうむった農地の除塩事業については、灌漑排水施設の設置等につき十分の九、客土については二分の一を補助するものであり、衆議院において、
法律施行前の事業についても適用する旨の修正が行なわれました。また、被害を受けた沿岸漁業者の小型漁船の建造については、漁業協同組合が組合員の共同利用に供する場合は十分の八の補助を行なうものであります。天災による被害農林漁業者の資金の融通については、畜産物を被害農業者の損失として認定し、経営資金の貸付対象に、家畜、家禽及び小型漁船の取得等を追加するとともに、貸付限度額を、通常の場合は二十万円に、家畜等の購入及び果樹栽培の場合は三十万円に、畜産専業者及び真珠等の養殖施設の場合は五十万円にそれぞれ引き上げ、果樹栽培の償還期限は延長して七年としたのでありまして、衆議院において、政令で定める水産養殖施設についても貸し付けられる旨の修正が行なわれたのであります。また、米穀を生産する被害農家に対しては、その飯用米穀を確保するため、おおむね生産者価格をもって米穀を売り渡すこととするのであります。なお、被災農家の
建物にかかる任意共済事業については、保険金の支払いに充てるための資金を農業共済基金から農業共済組合連合会に対し融通することができる等の措置がとられたのであります。
次に、建設
関係四件について申し上げます。
公共土木施設の災害につきましては、地方財政の
状況にかんがみ、復旧費に対し、標準税収入の二分の一までは十分の八、標準税収入までは十分の九、それ以上は全額とする高率の国庫負担を行ない、さらに、再度災害防止のため、災害関連事業に対しても三分の二の高率負担を行なうものであります。伊勢湾等に面する地域については、被害の
実情にかんがみ、これを高潮対策事業として、その災害復旧に関し前述の補助負担率によることとし、改良事業等については十分の八の高率負担をしています。また、災害による堆積土砂及び湛水の排除については十分の九の補助を行なうことといたします。
さらに、公営住宅の建設は建設戸数及び補助率について、産業労働者住宅は貸付金の償還期間延長等について、それぞれ特別の措置を講じております。
次に、文教
関係二件について申し上げます。公立の学校の災害復旧については、その
建物等に対しましては四分の三の国庫負担、公立の
社会教育施設の
建物等に対しては三分の二の国庫補助を行なうものであります。また私立学校の災害復旧については、二分の一の国庫補助を行なうほか、私立学校振興会からの特別貸付の道を開いております。なお、公立学校等の改良復旧につき必要な措置を講ずることとしております。
次に、厚生
関係七件について申し上げます。まず、公衆衛生の保持については、伝染病予防費等についての国の負担率を高め、上水道及び簡易水道の復旧について二分の一の国庫補助を行なうものであり、衆議院において、汚物処理等に対し三分の二の国庫補助を行なう旨の修正が加えられました。
社会福祉事業施設については、保護施設及び児童
福祉施設の復旧について国の補助率を引き上げるものであります。災害救助費については、都道府県の災害救助費及びこれに対する国庫負担について特別の措置を講ずるものであります。母子
福祉資金の貸付については、被災者に貸し付ける生業資金等について据置期間を延長するとともに、貸付金の財源を確保するため所要の措置を講ずるものであり、衆議院において、事業継続資金及び住宅補修資金の貸付について、据置期間を生業資金と同じく二年に延長することの修正が加えられました。
国民健康保険事業については、同事業を行なう保険者で災害により保険料または一部負担金を減免したものに対し国が補助金を交付するものであります。公的医療機関の復旧については二分の一の国庫補助を行ない、私的医療機関の復旧についても特別な金融措置を行なうものであります。被災者に対する
福祉年金については特例を設け、支給停止の要件を緩和しようとするものであります。
次に、労働
関係二件について申し上げます。まず、失業対策事業の特別措置として、被災地における失業対策事業の実施について労力費五分の四、資材費二分の一、事務費五分の四の高率の国庫補助を行なうこととしております。失業保険の特例措置としては、災害に基づく事業所の事業停止による労働者の休業を失業とみなして、これに失業保険金を支給するとともに、休業期間前後の継続雇用期間を一定の方式により通算することとしております。さらに衆議院において、三十日以上の失業については待期期間を撤廃する旨の修正が加えられました。
次に、中小企業
関係四件について申し上げます。罹災中小企業者に対する災害復旧資金の融通円滑化と、その事業の再建促進をはかるため、商工中金に対し利子補給を行なうとともに、中小企業信用保険の填補率の引き上げ及び保険料の引き下げ等を行ない、また中小企業信用保険公庫に対して
政府出資を十億円増額して災害地の信用保証協会に貸し付け、その保証能力の増大をはかり、さらに国有の機械等を時価の五割以内で売り払い、交換し、または貸し付けようとするものであります。なお、衆議院災害地対策特別委員会提出で、事業協同組合等の施設復旧費につき国庫補助を行なう等の措置を講ずることといたしました。
次に、地方自治
関係の二件について申し上げます。起債の特例につきましては、被災地方
公共団体に対し、地方税の減免等について地方債の発行を認めるとともに、
公共土木施設、公立学校施設、市町村の行なう農地その他の農林水産業施設の小災害復旧事業にかかる地方債について、国が一定率の元利補給を行なうものであり、衆議院において、
公共土木災害等いわゆる激甚地指定の政令の基準との
関係で、所要の修正を行なったのであります。また、市町村職員共済組合が組合員に支給する災害見舞金の額について特例を設け、給料の二月分以内の額を割増しすることができることといたしております。
以上が
法律案の要旨であります。
次に
審議の経過について申し上げます。
まず特別委員会の設置とともに直ちに風水害対策の
調査を開始いたしました委員会は、
法案が予備審査のため付託になりますと同時に
法案の審査に入り、連日にわたり熱心に討議を重ねて、
関係者大臣に質疑を行ない、本付託になるとともに、岸
内閣総理大臣以下
関係大臣に対して総括的に質疑し、さらに四個の小委員会を設け、慎重に
審議を尽くした次第であります。特別委員会は、これを開会すること二十回に及んでおります。
以下、その間における質疑応答のおもなる点について、その概要を申し上げます。根本的な問題として、
第一に、「年々相次ぐ台風あるいは豪雨等による大きな災害は、防災対策について、統一性においても技術面においても重大な欠陥があるのではないか。また抜本的対策の樹立については、財政上の制約の
関係でいかに処理する
考えか」との質疑に対し、
政府から「今後は原形復旧にとらわれず、改良工事ないし関連工事を行ない、治山治水対策、防潮対策については、企画庁を中心に協議して、その規模、期間、財政的裏づけを決定し、三十五年度から長期にわたって挫折しないよう実施していき、防災基本法についても検討しており、また財政上はあくまでも健全財政を維持する建前はくずさず、これから予算編成までにその財源の捻出に努力する」旨の答弁がありました。
第二に、今次補正予算編成に関し「初めに予算のワクを定めてそれに応じて査定をするというやり方でなく、被害の大きさに応じた予算を組むべきではないか」との
質問に対し、「在来のような、いわゆる財政的立場で物事をきめるという
考え方でなく、すでに発生した災害の額に応じ、それを予算化するという
考え方に基づいて、あらゆる財源を調達し、予算を編成した」旨の答弁がありました。
次に、「小型漁船の建造については共同化をはかっているが、他の農林水産業施設の災害復旧についても共同化をはかるべきではないか」との質疑に対し、「今回の
法律は漁船についてであるが、行政
指導でできるものは進めていく方針でやっておる。今後も大きな施設の災害復旧や部落の復旧についても行ない、農林水産業の経営の合理化をはかっていきたい」との答弁がありました。
また「治山及び森林
保全は災害防止対策の根本であるが、これが拡充強化については万全を期すべきではないか」との質疑に対しては、「来年度には従来の構想を改善して、十カ年
計画で実施する方針である」との答弁がありました。
次に、「災害によって困窮者となっている者に対する救助措置は、どのようになされたか」との質疑に対し、「今次災害において、災害救助法による救助の期間延長、救助基準単価の引き上げ、また世帯更生資金の期間延長、貸付金額の引き上げを行ない、母子
福祉資金については、ワクの拡大、据置期間の延長、長期にわたる困窮者に対しては生活保護法の生活扶助、医療扶助等を適用いたしておる」との答弁がありました。
次に、「失業保険特例措置に要する経費は、次年度一般会計から失業保険特別会計に繰り入れるのが適当ではないか」との質疑に対し、「この範囲の措置は失業保険法で処理してもその根本原則を乱すものではないから、特に経費を一般会計から補てんする必要はない」旨の答弁がありました。
また、今回の特例法を適用する災害激甚地の推定基準については、
政府の説明を聴取した後、その具体的な
内容について、活発な質疑が行なわれたのであります。なお、
一、国土
保全、防災対策の基礎として、高精度の全国地形図の作成並びに主要都市における地盤図の作成の必要性、
一、
わが国工業の臨海性にかんがみた高潮及び地盤沈下の対策、
一、国土
保全と開発のための水行政の一元化、
一、個人災害の問題、
一、文教施設復旧費の国庫負担率または補助率の問題、
一、地方負担分等については、地方財政
計画あるいは個々の地方
団体との
関係からの財源の問題、
一、標準税収入との比較で、国の負担率の特例の適用が変わってくるが、標準税収入とは具体的に何を指すかの問題、
その他、多岐にわたる各般の
事項について、きわめて熱心な質疑応答が行なわれたのでありますが、詳細は
会議録によって御承知願いたいと存じます。
かくて本三十日質疑を終了し、直ちに討論に入りましたところ、
自由民主党を代表して重政庸徳君、
社会党を代表して安田敏雄君、無所属クラブを代表して大竹平八郎君、
社会クラブを代表して向井長年君、緑風会を代表して森八三一君から、それぞれ
賛成の意見が述べられました。
次いで二十七件の
法律案を一括して採決を行なったところ、
全会一致をもって可決すべきものと決しました。
なお、
法律案議決の後、委員全員発議にかかる次の附帯決議が
全会一致をもって決定された次第であります。
附帯決議
今次災害の地域の広大性と激甚性に鑑み、再びかくの如き災害を繰返さないよう恒久的対策を樹立し、国土の
保全と産業の興隆に資し、民生の安定を期すべきである。これがため
政府は、今回の風水害対策諸
法律の実施に当り、予算措置並びに機構の整備等に意を用いると共に、特に左記
事項につき格段の施策を講じ、遺憾なきを期せられたい。
一、各種工事の施行に際しては、原形復旧にこだわることなく、改良復旧を充分におりこみ、再度災害を繰返さないよう措置するは勿論、過去の慣例的年次別比率にこだわることなく、速かに完成すべきである。
二、各省に
関係のある復旧工事については、その間に有機的連絡をとり、
計画、施行、工程及び完成期にそごを来たさざるよう万遺憾なきを期すべきである。
三、農林水産業並びに
公共施設災害の小災害施設復旧につき、農林災害にあっては一個所の工事の対象となる被害個所の間隔五十米を百米に、
公共土木にあっては二十米を五十米とし、なお災害関連事業についてもその適用範囲の拡大を図るべきである。
四、除塩事業の助成に当っては、塩分を含んだ被害わらの処分に必要な経費を補助の対象とすべきである。
五、小型漁船の建造に関する特別措置については、補助の対象及び条件等につき
実情に即し適切な措置を講じ、もって被害漁民の救済に万全を図るべきである。
六、農業共済組合及び同連合会の行う任意共済事業は極めて多くの問題点を有しているから、
政府は速かに根本的な検討を行い、確固たる方策を樹立すべきである。
右の決議に対し、佐藤大蔵大臣から
政府を代表して、「趣旨のあるとこりを十分検討して、
法律の適切な運用をはかって参る所存であります。」との発言がありました。以上をもって
報告を終わります。
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