○
国務大臣(
藤山愛一郎君) 本
臨時国会の開会にあたりまして、
わが国の当面する
外交上の諸問題と、これに対処する
所信を明らかにいたしたいと存じます。
私は、本年九月初旬、
国連総会に出席のため渡米いたしたのでありますが、ほぼ時を同じ
ゅういたしましてフルシチョフ・
ソ連首相の
訪米が行なわれましたので、その直後に親しく
ハーター米国務長官とも
会談をいたし、
国際情勢全農とともに、今後の
日米両国の
関係につきましても同
長官と隔意のない
意見の
交換を行なうことができたのであります。
すでに、本年初頭の
通常国会に際しても明らかにいたしましたごとく、私は、わが
外交の
基調として、あくまでも
平和外交を旨とし、このため
国際問題はすべて
平和的手段によってのみ解決さるべきことを主張して参ったのでありますが、このほど
米ソ両国首脳の
話し合いにおいて
国際問題の
平和的解決という原則が一応確認されましたことは、
政府といたしましても歓迎するところであります。
今回の
両国首脳の
話し合いの結果を見まするに、問題は主として
欧州問題、しかもその重点はベルリンの
危機回避に置かれた模様であり、
期限付き条件のもとにおける
交渉というような
事態は一応回避されましたけれども、すべては今後に予想されます外相
会議なり、巨頭
会談なり、
長期にわたる折衝の結果にかかるものと考えるのであります。
軍縮問題に関しましても、最近、
国連において英国及び
ソ連より全面的な
軍縮案が提出される等、
軍縮を通ずる
緊張緩和の新たな
努力を行なおうとする
傾向が見られますことは、まことに喜ばしいことであります。
わが国といたしましては、多年主張し続けて参りました
核実験中止協定の
早期締結を最も重要視するものでありまして、これが今後の
全面的軍縮問題解決の
契機となることを願うものでございます。
われわれは、これら
東西間の
話し合いが今後逐次
具体的成果を見ることを希望し、これがためにあらゆる
努力が払わるべきことを期待するものであります。その際、
自由民主主義諸国といたしましては、ますますその
結束を強固にして、いささかのゆるぎのない立場に立ち、
共産陣営との公正かつ合理的な
話し合いに臨む
体制を整えることが最も肝要であり、今後
長期にわたる忍耐強い
交渉を行なうことによって初めていわゆる雪解けも期待し得るものと考えるのであります。
次に、今次
国会において御
審議をお願いいたします
ベトナムとの間の
賠償協定及び借款に関する
協定につき御説明いたします。
ベトナム国政府は
世界の約五十カ国より
ベトナムにおける唯一の
正統政府として承認されており、一九五一年九月八日の
サンフランシスコ平和条約には全
ベトナムを代表する
正統政府としてこれに
調印をいたし、翌五二年六月十八日、同
条約批准書を寄託いたしたのであります。これによりまして、
わが国は、
ベトナムに対し、
平和条約第十四条に基づく
賠償支払の
義務を負うことになったのであります。その後、
本件賠償に関する
交渉は七カ年の長きにわたって続けられ、幾多の紆余曲折を経ましたが、ようやく本年五月
調印を見るに至った次第であります。
本
賠償協定は、
わが国が
条約上
賠償義務を負っている
アジア諸国との間の
賠償協定として最後のものでありますが、
わが国が
平和条約上の
義務をできる限りすみやかに果たしますことは、
国際信義の上からも望ましいことであるとともに、他方、この
賠償の
実施は、
ベトナムの
経済建設と
民生安定に寄与し、
両国間の
友好親善関係を
強化し、政治、
経済、通商、文化の
各般にわたる
両国間の
協力を一そう緊密にするものと
確信いたすのであります。
次に、当面の
重要案件について御説明いたします。
政府は、過去一年にわたり
日米安全保障条約改定の
交渉を行なって参ったのでありますが、その要旨はすでに
国会におきましても累次にわたり御説明して参ったところであります。すなわち、現行
条約締結後七年を経過し、名実ともに独立国としての地歩を確保いたしました
わが国として、安全保障の分野における
日米両国間の
協力関係を今日の
事態によりよく適合せしめるとともに、
国連憲章の精神にのっとりつつ、
わが国の独立と安全とを確保し、
両国の
友好関係をさらに
促進することを目的とするものであります。
政府は次期
通常国会において新
条約の承認を求めるべく
交渉の進捗をはかっております。
日韓
会談につきましては、本年八月十二日再開以来、法的地位
委員会と漁業
委員会が開催されておりますが、
政府といたしましては、過去における日韓
両国間の複雑な経緯にかかわらず、相互の
努力によってすみやかに信頼感を確立し、大局的見地から諸懸案の公正かつ合理的な解決に努め、もって日韓
両国間の恒久的
友好関係の基礎を築きたいと念願いたしている次第であります。
また、釜山に抑留されている日本人漁夫の帰還問題につきましては、
政府は引き続き
努力して参りました炉、近くこれが実現に至るものと期待いたしております。
なお、在日朝鮮人の北鮮帰還問題につきましては、九月二十一日より帰還申請の受付を開始いたし、
実施の段階に入らんとしております。
わが国といたしましては、本件は個人の自由意思に基づく帰還であるという基本方針を堅持しつつ、帰還が所期のごとく円滑に
実施されるよう万善を期しております。
国連におきましては、
わが国は昨年一月以来、安保理事会の非常任理事国として、各種
国際紛争の
平和的解決のため公正かつ建設的な態度をもって
努力して参りましたが、最近はラオス問題に閲し、その
事態の平静化のため積極的な役割を果たしましたことは、各位の御承知のところであります。この非常任理事国の任期は本年末をもって終了いたし、
わが国は来年初頭より
経済社会理事会の理事国として、
世界の
経済的、社会的発展を通じて
国際平和を
強化するという
国連の事業に積極的に参加することになりました。私は、今後ますます重きを加える
わが国の責任を自覚いたし、
国連の平和建設事業にでき得る限りの
協力をしていきたいと考えておるものであります。
すでに御承知のごとく、このたびわが
政府の招請にこたえて、ガット
総会が初めてジュネーブを離れ、その第十五回
総会が東京において開催されておりますが、私はこの
機会に、訪日する
各国の
関係大臣及び代表が親しく
わが国の
産業経済の実情を視察され、その認識を深められんことを期待するものであります。同時に、今回の
総会が
契機となり、多年懸案となっております
わが国に対する
貿易上の差別待遇撤廃の問題がすみやかに解決することを期待するものであります。
以上、当面の諸問題に関し
報告かたがた私の
所信を明らかにいたしました。各位の深い御理解と御支援とを要請する次第であります。(
拍手)