○
説明員(
大沢一郎君) ただいまより
法務省所管の
昭和三十五
年度概算要求の概要について御
説明申し上げます。
昭和三十五
年度法務省所管の
概算要求総額は四百三十六億八百九十四万円でございます。その
内訳を大別いたしまして、
一般行政費につきましては、三百三十七億五千四百四十五万九千円、
営繕費が九十八億一千四百四十八万一千円と相なるわけでございます。このうち
一般行政費のうち、百七十三億九千二百四十五万三千円、
営繕費の二億六千二百九十六万七千円がそれぞれ
標準予算となっておるわけでございます。この三十五
年度概算要求の
総額と三十四
年度予算額二百六十七億九千八百六十九万九千円と比較いたしますと、百六十八億一千二十四万一千円の
増額要求となっておる次第でございます。
この
概算要求の概要の細部に入ります前に、
法務省予算の
特異性について簡単に御
説明させていただきたいと存ずる次第でございます。
御
承知のように、
法務省所管の各組織の
所掌事務は、多岐多種類に分かれておりまして、また、その性格を異にするものが多いのでございますが、おおむね民事局、訟務局、法務局、
人権擁護局等が所掌いたしますところの
事務は、国民の
権利保全を目的とするものと、また
刑事局、検察庁、
矯正局、刑務所、少年院さらに
保護局、
保護観察所及び
入国管理局、
公安調査庁等が所掌いたします
治安維持を目的とする
事務、この二つに大きく分けることができるかと思うのでございます。しかしながら、このいずれにいたしましても、かような
事務の性格上
法務省予算はきわめてじみな
事務的予算という性格を持っておるのでございます。
本年度予算について申し上げてみますると、
予算額の二百六十七億九千万円のうち
人件費が約六三%の百六十八億円を占めておるのでございます。国の
歳出予算のうち
人件費の占めております割合は約一四%でございまして、これに対しまして
法務省予算では六三%というふうに
人件費の占める割合はきわめて多いのでございます。それに旅費、
庁費等のいわゆる
事務の
経費を含めましていわゆる
標準予算系統経費と申しますものが総体の約九〇%を占めておりまして、いわゆる政策的な
事業計画、あるいはまた
経済的効果を直ちに発生するというような
事業計画というものはほとんど皆無であるというような状態でございます。しかしながら、一歩突き進んで
考えてみますと、法務省の
予算は
事務的予算といわれておりますが、この
事務は、直接には国の治安に、また国民の
権利保全といういわば民主法治国家の根底をなすところの重要な
事務でございますので、このような重要
事務が数字として化体された法務省の
予算も当然これにふさわしい姿であるべきであると
考えられるのであります。こうした観点から見ますときに、改善助長すべき問題が山積しておると
考えておる次第でございます。従いましてここ数年来所管各組織の
所掌事務を逐一分析検討いたしまして、
機械化の可能なものは極力
機械化をはかって能率の増進と人員の節約に努力してきたのでございますが、いかんせんその
所掌事務がほとんど人を中心として行われます
事務でありますために、
機械化にも限度がございますし、結局その大半を人に頼らざるを得ないのが実情なんでございます。そこで法務省が毎年のように
増員要求を続けているのは、その
所掌事務の性格自体に基づくものでございます。この点他の官庁といささか趣きを異にするのではないかと
考えている次第でございます。
そこで、明
年度の
概算要求を編成するに当たりましては、
予算の有効的執行を確保するためにも極力
事務の簡素化、能率化ということに努めましたが、結局は三千四百三十七名の
増員を要求せざるを得ない
状況に相なったので、この三十五
年度予算においてこの人員を要求している次第でございます。その他の
経費としては、山積している懸案を年次計画を立てまして重点的に逐次解決し、法務行政の総合的、有機的、計画的、かつ科学的な遂行の実現に不動の態勢を整える方針をもって、
予算編成に臨んだ次第であります。
そこで、明
年度予算におきまして、法務省が特に取り上げて主要施策とした
事業計画の各項目について御
説明申し上げたいと存じます。
第一は、
青少年対策の強化推進でございます。わが国の次代を背負うべき青少年を健全に育成することは、最重要政策の一つでございます。しかるに、最近の青少年の風紀犯罪は、増加並びに悪質化の傾向をたどりつつあるのでございまして、これが
対策として一貫した方針と施策のもとに青少年犯罪の原因を科学的に究明しまして、その一般的予防を積極的に推進するとともに、個々の処理を適正ならしめ、保護観察機構を強化し、また、少年院の機構を人的、物的に整備強化して健全なる社会復帰を強力に推進する必要があろうかと
考えるのでございます。
それでその一つといたしまして、まず第一に実効ある青少年風紀検察の推進をはかりたいと存ずる次第であります。そこで、青少年犯罪の検察
関係の指揮、命令系統の中心であります
刑事局に青少年課を新設いたしまして六大都市所在の地方検察庁、その他主要地方検察庁計十五庁に
刑事資料
調査室を設置して、青少年風紀検察を中心として一般
刑事検察の合理化、科学化をはかり、公訴権の行使をより適正、有効ならしめるとともに、これら犯罪者に対する改善、更生につきまして、
関係機関との連繋をより緊密化することによって犯罪、特に青少年風紀犯罪の防止並びに犯人の改善を強力に推進し、また、
対策の一環として現行少年法の検討を行ない、少年犯罪
対策の法制の確定をはかりたいという計画を実施いたしたいと存ずる次第でございます。これに要します
経費が、
増員八十八名分を加えまして七千七十五万円を要求しております。
第二が、青少年保護観察の強化でございまして、年々逓増している事件数に対処しまして、保護観察官を
増員しまして、それとともに現在、
保護観察所は
地方裁判所にしかございませんので、
地方裁判所の甲号支部八十一カ所に
保護観察所の支部を設置しまして、
裁判所、検察庁からの事件授受の完全を期しまして保護観察の
充実強化をはかりたいと存ずる次第であります。こうした一方、
家庭裁判所において不処分あるいは審判不開始処分となりました非行青少年に対して適正な補導を行ないまして、再犯防止をはかるため、各保護区に二名の保護司を指定して補導、相談を行なわしめ、なお更生保護会収容の青少年収容者の完全なる更生をはかるため、食事付宿泊委託
期間を現行の十二日を三十日に延長しまして、それとともに、これに伴います委託
事務費を
増額することによって処遇の適正を期し、
充実をはかりたいということを計画している次第でございます。これに要します
経費が、
増員七百二十一名に要する
経費を含めまして九億二千八百三十九万二千円となっております。
第三が、少年院の整備の計画でございます。近年、少年犯罪の増加、その内容の悪質化は、そのまま少年院収容者の数に反映いたしまして、収容人員も年々増加している現状でございます。三十五
年度一月平均収容見込み人員一万一千人と推定せられるのでありまして、その既設の施設を整備し、少年院の増設によりまして過剰収容の緩和をはかりますとともに、教官を
増員することによりましてその補導を強化し、また医官等の
増員によって医療衛生等の管理
充実を行ないまして、相待って少年院の機構を人的、物的に整備強化いたしたいと
考えている次第でございます。これに要します
経費は、
増員は教官、医官の二百八十四名を加えて一般行政が八億一千四百四十九万、施設費が七億五千八百九十四万円、合計十五億七千三百四十三万円を要求しておる次第でございます。
その四が、青少年犯罪
対策の推進でございます。本
年度去る七月発足いたしました法務総合研究所の研究部におきまして、
関係諸科学に基づく総合的
調査研究を通じまして総合
刑事政策を打ち立てますとともに、研修部においても非行矯正の技術としてカウンセリング教育を実施することにより、犯罪の予防及び犯罪者の処遇の効率化をはかり、推進いたしたい所存でございます。それに要します
経費が、
増員十五名を加えまして五千九百七十六万三千円となっております。
次ぎ第二は、刑務所の移転問題
対策の処理でございます。御
承知のように最近
主要都市の目ざましい繁栄のために、当初郊外地にございました
法務省所管の刑務所、拘置所等の施設が、その大半が都心部に位するようになりまして、都市計画あるいは経済センターの設置というようなことで、都市の発展が著しく刑務所がありますために阻害されるに至っておるのでございます。そのため近来さような都市の方面から、その移転が強く要請せられまして、地方議会の議決や陳情も多数に上っておりまして国会に請願採択されたものも二、三にとどまらない。その中にはその改築につきまして閣議了解事項となったものもすでにある現状でございます。一方法務省といたしましても、その施設自体として見ました場合に、きわめてその設置条件が不適当で、今まで郊外地の静かな場所にございましたのが都市になるというようなところから、社会復帰を実現するための矯正の場としての立地条件上、きわめて不適当となったのでございます。それからまた、その施設自体といたしまして、いずれも旧時代的なものでございまして、老朽化した木造で、通風採光等きわめて悪く、いわゆる応報刑観念を表象するような牢獄的な建物が多いのであります。犯罪者といいましても、その中に長く拘禁することは、人権上放置し得ないというような現状に立ち至っておりますので、都市繁栄と国民の福祉と人権尊重という憲法の精神からも、その早急解決をはからなければならないと
考えるに至った次第でございます。現在の刑務所でこれらの焦眉の急に迫られております刑務所の数は、現在本所六十六、支所十七、拘置所は本所七、支所九十二に上っております。そのうちかような条件のもとで解決を急がれておりますのが二十二庁に及んでおるのでございます。その
経費は約百数億円を要するということに相なりますので、かような巨額の
経費は、通常の営繕
予算では数十年にわたってこれに全力を注ぎましても、とうていこの要請に応じ得ないような状態でございます。
そこで振り返ってこれらの現有施設の価額を概算してみますると、いずれも都会の中心地になりまして、地価等も相当に高騰いたしております。さような点で、一応の
計算をいたしますと、大体現有施設を売却処分いたしますときには、右の所要
経費を十分に充当し得るような
計算に相なるわけでございます。かような観点からいたしまして、現に移転を要請せられておるものにつきまして種々検討いたしました結果、
名古屋刑務所等の緊急を要するものをとりあえず十庁を取り上げまして、それを移転することにいたしまして、その計画を推進していきたいと存じておる次第であります。その所要
経費が七十六億八千七百五十三万七千円に達しますので、これを五カ年計画といたしまして、初
年度は
名古屋刑務所外三刑務所の第一期分を実施する計画のもとに、これに要する
経費を十二億二千六百十八万二千円計上して要求している次第でございます。
第三は、反民主主義活動
対策の確立でございます。組織活動、大衆運動に関する集団的実力行使を伴う公安事件に対しまして適切な検察を実施するため、その機能の拡充強化をはかるとともに、公安
調査官の
増員と科学的
調査、器材の
整備充実とによりまして、国際共産主義運動の
調査態勢を確立いたしたいと計画いたしております。
その一が、国際共産主義運動の
調査態勢の確立でございますが、国際共産主義陣営の基本的戦略戦術とその発展の実態を、世界的視野に立ちまして政治、経済、労働等の一切の部面にわたりまして総合的に的確に把握、解明する必要がありますので、それに要する
経費といたしまして、
調査官の
増員並びに科学的
調査のための器材の
整備充実を行なって
調査態勢を確立し、
職員を海外に派遣しまして、情報資料等の入手をはかっていきたいと存じておる次第でございます。これに要する
経費が、
増員二百十名を含めまして四億一千二百一万円となっております。
二が、公安労働検察の
充実強化であります。組織活動、大衆運動についての犯罪の実態、性格、検察運営と行政施策との調和及び事件処理、公訴維持の効率化についての
調査を行ない、資料を収集整備しまして、集団的実力行使を伴う公安事件に対しまして、適切、強力なる検察を実施する必要があると
考えられますので、かかる組織活動、大衆運動に関する犯罪の
実態調査並びに事件処理公訴維持等のため、
刑事局に参事官、課長補佐等の
増員を行ないまして、一方主要地検に公安係検事、
検察事務官の
増員を行なって、公安
事務室の拡充強化をはかり、情勢の統一的把握を期する計画でございます。これに要する
経費が
増員百四十二名を含めて、一億六千三百六十三万八千円を要求しております。
第四に、不動産不法占拠、めいてい犯罪等に対する緊急立法
措置についての
経費でございます。戦後罹災都市を中心にいたしまして発生いたしました他人の土地、建物に関する不法事件は、依然としてあとをたたず、特にこの種事犯の中には、暴力ないし暴力団を背景とし、不法占拠の成果を確保するため、直ちに多数の者がその占拠に参加し、あるいはその周辺に多数の者が移り住んで、たちまち付近一帯に一大既成事実を作り出し、他からする排除を拒否する手段を講ずるものが少なくないのであります。しかるに、これに対する取り締まりについては適切な法令を欠く一方、民事訴訟は調停をも含めてあまりにも遅延しまして、とうてい国民の権利保護救済に役立っていないのであります。かくて法軽視の思潮はいよいよはなはだしくなりまして、法治主義は重大な危機に立たされると
考えられますので、この種事犯に対する実態を
調査研究し、すみやかに立法をも含めた抜本的
対策を樹立する必要があると
考えられるのであります。そのほか、めいてい犯罪に対する立法
措置に対しましても、その施策を講ずる必要がございますので、この種事件の実態を
調査研究し、立法を含めた根本的
対策を樹立する計画を進めていきたいと存じまして、これに要する
経費五十六万九千円を要求しております。
第五は、登記
事務及び訴務
事務の適正かつ迅速処理についてでございます。法務局の
事務の大半を占めます登記、台帳事件の
事務量は、逐年激増の一途をたどっておりますので、これらの
事務を円滑適正に処理いたしますために、
増員及び
機械化により、
事務の処理
充実をはかる必要があると
考えられるのであります。また他面不動産登記制度と台帳制度を一元化しまして、手続の簡素化をはかりますとともに、計量法の施行に伴いまして、
昭和四十一年四月一日以降登記台帳の面積の表示を、従来の尺貫法からメートル法に書きかえる必要上、
昭和四十
年度までに登記台帳の整備を実施する必要がございますので、
昭和三十五
年度から五カ年計画をもって事業を推進する計画でございます。一方、訟務事件も激増いたしまして、その内容がますます複雑化困難化を来たしているため、
増員によりまして円滑適正な
事務処理をはかりたいと存ずる次第でございます。これに要する
経費が、
増員要求千三十六名を含めまして、十五億七千九百二十七万一千円を要求いたしておる次第でございます。
第六は、入国審査業務の適正迅速化でございます。逐年出入船舶の増加に伴いまして、臨船業務の強化によって、不法入国事犯の抑圧を当然なさねばなりませんとともに、観光政策が国策として推進せられましたため、観光船に対しましてその入国審査を入国審査官を乗船せしめまして、迅速に処理する必要から、入国審査官の
増員並びに乗船に必要な
経費を必要とするわけであります。また、今秋から東京国際空港にジェット機が乗り入れることになりまして、一時に出入国者が激増することが
考えられますので、羽田空港
事務所を東京入国管理
事務所から独立昇格させまして、そこに入国審査官を
増員して、同
事務所の整備拡充をはかりたいという計画でございまして、そのために、
増員五十八名を含めて、一億三千九百六十万八千円を要求いたしておる次第であります。
第七は、人権侵犯事件
調査処理機能の強化
充実でございます。人権侵犯事件は、累年増加しまして、特に公安労働
関係事件が最近長期化する傾向があるとともに、これに伴いまして集団行動と、その中の個人の人権問題が問題化する傾向が見受けられるのでございまして、このような事件は、いずれも
関係人が非常に多数に上りまして、その処理についても種々困難な問題を含んでおりまして、そのために
調査処理に相当長
期間を要しております。そのために他の違反事件の処理がおくれまして、平均三七%が事件処理未済というような現状でございますので、本省に相当高度の
調査能力ある専門
調査官八名を配置いたしますとともに、
調査旅費等
経費の
増額をはかり、その機能の
充実強化を期する計画でございます。これに要する
経費が、
増員八名を含めまして六千九百六十一万五千円を要求しております。
第八が、一般
営繕費でございます。御
承知のように、
法務省所管施設は検察庁、法務局、公安
調査局、入国管理
事務所、
保護観察所、刑務所、少年院、少年鑑別所等非常に複雑と同時に多方面にわたっておりまして、その数も三千四百庁に上っておるのでございますが、完備された施設を有するものはきわめて少なく、いまだに国有の施設を有せず借り上げ
庁舎の一部に執務しているもの、あるいはまた、
裁判所の一部を借り受けて同居しているもの、また
庁舎がございましても、建築後数十年を経た老朽建物を使用しているもの等が非常に多くて、治安の確保、権利の保全、犯罪人の矯正、保護等、きわめて重要な
所掌事務を適正、円滑に遂行するためにも、また一面国民の利便をはかる上から見ましても、はなはだ遺憾な点が多いのでございます。これらの改新築につきましては、国家財政を
考えまして、数年前より長期営繕計画を立てて緊急度の特に高いものから逐次実施することにいたしておりまして、逐年
増額を認められておりますが、何分にも
庁舎の数が多うございますので、格別の御配慮をお願いいたしたいと
考えております。本
年度は
概算要求七十五億七千二百四十万一千円を要求しております。そのうち法務官署の施設費が四十二億九千七万七千円、法務収容施設費三十二億八千二百三十二万四千円、その他の補修費、不動産購入費等九億七千八百十三万三千円を要求しております。
以上が
法務省所管の三十五
年度予算要求の概要でございます。目下、この要求に基づきまして、
大蔵省事務当局と折衝いたしておる次第でございます。
次に、
伊勢湾台風によります
法務省所管施設の
被害状況並びに復旧
対策について御
説明申し上げます。
伊勢湾台風によります
法務省所管施設の
被害は、九州、北海道を除きまして、愛知、三重、岐阜の三県を中心といたしまして、ほとんど全域にわたりまして
被害を受けまして、その
被害総額は約一億六千六百二十一万九千円に上っておるのでございます。建物の全半壊いたしましたもの六十戸、浸水十四戸、
庁舎の外塀の倒壊四千六官六十二間でございまして、その他、屋根、壁等に
被害を受けました庁を含めまして、
被害庁は本庁で百七十六庁、支分部局が四百二十三庁、宿舎六百三十八戸となっておるのでございます。そのうち、愛知、三重、岐阜の三県下では、
被害を受けたのが七〇%に及んでおりまして、本庁で三十二庁、支分部局で百六十五庁に達しまして、
被害額は一億四百九十八万八千円でございまして、建物の全半壊五十三戸、浸水十一戸、
庁舎の外塀の倒壊が三千二百十九間に及んでおるのでございます。
これを組織別に申し上げますと、検察庁
関係といたしましては、本庁二十四庁、支部区検百二十五庁、宿舎百二十五戸が
被害を受けまして、
被害総額が千九百十三万二千円であり、中でも、
名古屋管内の岡崎支部は、
庁舎の東半分が傾斜いたしまして、執務上危険な状態に陥りまして、また、同管内津島区検は床上三十センチ、津管内の四日市区検は床上浸水七十センチ、桑名区検は同二メートルに達しましたので、これらの庁におきましては、施設に加えまして、証拠品及び記録に汚損したものが相当出たのでございます。法務局
関係は、本庁十六庁、支局出張所二百六十五庁、宿舎五戸が
被害を受けまして、
被害額は千九百五十一万八千円でございまして、最も甚大な
被害を受けたのは、津管内の桑名出張所で、床上浸水一メートル、富洲原出張所同じく二メートル、福井管内の和泉出張所で八十センチ、名田庄出張所同四十センチ、
名古屋管内の弥富出張所が三十センチ、蟹江出張所が同じく三十センチ、津島出張所三十センチの七カ所が、最も甚大な
被害を受けたのでございます。特に、弥富、蟹江、桑名の出張所につきましては、
被害がはなはだしく、執務不可能となりましたので、一時、
事務停止の
措置をとりまして、
職員を一時引き揚げさした
状況でございます。ただ順次、蟹江及び弥富等につきましては、
事務停止を解除し、目下平常に復した次第でございます。なお、浸水しました出張所では、登記簿等も罹災、損傷が生じまして、回復登記の
措置等を講ずる必要があるのでございます。次に、矯正施設につきましては、管区四庁、宿舎五戸、その
被害額百九十七万四千円、刑務所本所では五十一庁、支庁三十庁、宿舎三百二十三戸、その
被害額七千二十九万六千円。少年院は、本院三十五庁、分院一庁、宿舎百四十九尺その
被害額四千七百十五万四千円。少年鑑別所で二十二庁、宿舎二十四尺その
被害額五百九十九万五千円。婦人補導院一庁、その
被害額五万円でございますが、特に大阪刑務所管内の堺支所の外塀六十六間が倒壊し、百間が破損いたしました。また、岐阜刑務所の外塀が百六十間倒壊し、
名古屋刑務所の舎房一棟百三十三坪が半壊しました。そのほか、
名古屋刑務所管内の半田、豊橋両支所の外塀が全壊、三重刑務所管内の伊勢支所の外塀がやはり全壊いたしましたほか、その他、外塀の倒壊、破壊を含めまして、千五百四十八間の
被害を受けて治安上憂慮される所もあったのでございますが、
職員の応急
措置を講じました結果、早急に復旧せしめ、何ら事故の発生を見ずに終わったわけでございます。少年院につきましては、豊ケ岡農工学院の建物全壊百二十八坪で、その他
屋根等を含めまして、一庁で三百九十五万円に上り、また、愛知少年院は外柵五百八十間倒壊等で一千万円に上る
被害を受けております。しかしながら、この風水害にもかかわらず、収容者の中で死傷害を受けた者は一名もございません。また、逃走その他の事故もないが、ただ、一時、
名古屋市におきまして、食糧入手困難等により、緊張いたしたのでございますが、緊急搬送を実施いたしまして、事なきを得た次第でございます。その他、地方更生保護
委員会、
保護観察所、公安
調査局、入国者収容所、入国管理
事務所、法務研究所支所につきましても、それぞれ若干の
被害が出ておるのでございます。
これらの
被害の応急復旧
対策についてでございますが、
被害発生と同時に、
名古屋高等検察庁に法務災害
対策本部を設けまして、本省より営繕課長外九名の係官を派遣いたしまして、最も
被害の甚大でありました愛知県を中心として、
被害状況の
調査並びに復旧
対策の実施に出たらしめたのでございます。応急
対策といたしましては、とりあえず、各庁手持ちの
予算のある所は、これを充当せしめ、その年の分については本省より、とりあえず一千百九十三万一千円を応急復旧として示達しまして、当面の執務に支障のない範囲の
措置を講じたのでございます。
次に、
事務費
関係につきましては、施設
関係の備品消耗品等の復旧費三千二百七十五万円、法務局
関係出張所等罹災登記の回復登記復旧費三千二百七十九万円、矯正
関係収容者の被災警備、防疫等の
対策費八百九十万円、更生保護会施設復旧及び対象者罹災救助費八百四十万円、罹災各所の復旧応援
人件費その他八百九十万円でございまして、目下、これらの復旧に努力いたしておる次第でございます。
なお、災害に伴います治安
状況と
対策について付言をいたしたいと思います。
災害発生に伴いまして、東海地区等では一時、主食、野菜、建築資材等の価格が急騰いたしまして、暴利、売り惜しみ等の行為が見られ、また、これらの事犯に加えまして、深夜、浸水家屋等をねらって窃盗等の悪質な刑法犯が発生いたしましたので、
名古屋高検、地検等では、警察
関係機関と密接なる連絡をとりまして暴利取締本部または水上パトロール班等を編成いたしまして、その取り締まりを強化し、万全の
措置を講じたのでございます。以上が
被害の概要でございます。
以上の災害の復旧
経費といたしましては、
大蔵省に対しまして、施設費一億四千五十二万二千円、備品等整備及び回復登記等
事務費九千四百二十二万四千円の
予備費使用を要求いたしまして、その結果、施設費としまして六千八百六十三万一千円の
予備費使用の内示を受けたのでございます。これと三十四
年度の一般
経費の各省の
人件費を合わせまして、応急の
措置は講じ得るものと
考えております。また、
事務費につきましては、本
年度において当省所管の余剰財源をもちまして、流用等の
予算措置を講じまして処理する予定でございます。
以上が
伊勢湾台風被害状況並びに法務省の
対策費でございます。
以上をもって御
説明を終わります。