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政府委員(
大沢融君) それでは御
説明を申し上げます。目録を見ていただきますと、第一
分冊でございますが、「
蚕糸業の不安定は克服されたか」というようなことで書いてございますが、これはむしろ第二
分冊で明らかになっておりますけれ
ども、これの九ページに
グラフがございますが、第2図として、二十二年から二十六年まで
上糸の
生産数量というのは飛躍的に
増加しておるわけです。
あとの点に触れていますが、この間の
増加というのは、
桑園の
増加というよりは、糸の
増加とか、あるいは反当
収量の
増加ということにささえられてきているわけですが、その後、二十七年から三十一年の
グラフが十ページにございますが、その後、
生糸の
生産数量というのは二十六年までよりは落ちておるわけですが、この間の
増加というのは主として
桑園面積の
増加にささえられております。そこで、この間の
価格の
関係はどうなったかというようなことが十三ページに4図、5図ということでグララが書いてございますが、
生糸の
価格は二十四年から二十六年は大体
年率一・二%くらい、多少上がってきておる。しかし、その次の一十七年から三十一年、十四ページにございますが、この間にはむしろ
価格が
年率マイナス五%ということで、だんだん下がってきたということでございます。そこで5図を
ごらんになっていただきますと、二十四年から二十六年は
価格も第4図に示すように上がり、それから
生糸の
消費価額も十三ページの下の図で
ごらんになられるように
年率一三%でずっと上がってきておる。しかるに、その十四ページで見ていただきますように、二十七年から三十一年になると、その
価格は下がるのに、さらに、
消費価額の方も
年率わずかではありますが、だんだん
減退の
傾向を示しているというようなことです。その間に
一体生産費の方はどうなったかというふうなことを見ますと、これは二十七年から三十一年の間には、
生産費はむしろ
年率四%くらいずつ上がってきた。それはちょっと文章の中に書いてございます。それから二十六年までは、
生産費は徐々に下がってきたというようなことだったのです。そういうような
生糸の
需給状態、
価格の
状態というようなものが、二十七年以降から
需要は
減退傾向である。しかし、
生産は相変わらず、ことに
桑園増反というようなことで
増加傾向であります。従って、
価格はかえって
低下傾向である。しかも、逆に
生産費は上がる
傾向にあるというような
矛盾があるわけです。そういうような
矛盾をはらんでおったのでは、
蚕糸業の不安定は克服されたことにはならないのではないかということが第一の書き出しであります。
そこで、こういうような
事情になったのはなぜなのだろうかということを、第一
分冊に戻っていただきまして、「戦後における
蚕糸業の推移」ということで述べております。
終戦直後の
蚕糸業の
再建計画をここでは批判しておりますが、
需要に見合う以上のものが、ここで
製糸設備ができた、それが今日まで温存されているということが
一つ原因である。それから
自由経済へ移行とともに、
蚕糸業も
自由経済の中で活発な
自由競争をするという羽目に陥らざるを得なかったにかかわらず、さらに
統制時代の思想を続けていろいろの意味でのささえがされたということ、そのために、今申し上げたように、
需要の
減退、増産の継続があり、そうしてその結果が昨年のように
蚕糸業の
混乱になったということが書いてあります。
そこで、それじゃ今後これを安定させるためにはどうしたらいいのかということが「
蚕糸業安定化の
考え方」ということで、ここに一応の
考え方を述べておるのですが、
一体「当面の課題は安定か
登展か」、これはよく
誤解をされるのでありますが、
農林省は
拡大均衡をやりめて
縮小均衡に移ったのだ、こういうことをよくいわれるのでありますが、私
どもは
拡大均衡をするためには、まず安定をしなければいけない。先ほど申し述べたように、
需要の
趨勢は
マイナスだ、
生産は
プラスの
傾向、
価格は
マイナスの
傾向だ、
生産費は
プラスの
傾向だ、そういうようなことでいきなり
拡大ということに移ることはできさない、だから、まずそういう要因を取り除いて安定をして、しかる後に
拡大をしなければいかぬ、こういう
考え方です。
それからそれと第二に「
輸出産業という
考え方の反省
——競争力ある
産業へ」、これはここもよく
誤解をされるのでありますが、
農林省は
輸出産業というふうに
蚕糸業を見ないのだ、そういう
考えは捨てたのだということをよくいわれるのですが、私
どもは
輸出に力を入れなければならぬということはもちろんでありますが、ただ
輸出産業だという一本だけで
政策をやったら間違いじゃないかという反省であります。特に副題としてありますように、
中共生糸、あるいは
化繊糸との
競争、ことに、ここに触れてありませんが、今後の
自由化というようなことを
考えれば、ますますもって「
競争力ある
産業へ」という力を尽くさなければいけないということを、まあ
考え方として述べておるわけです。そのためには
需要増進をしなければならない。しかし、
需要増進というのは、これは従来は、あるいは
政府だけがやる
仕事だというようなことの観念があったけれ
ども、そうじゃなくて、
業界自体、自分の販売
対策なり、
生産対策なりでやるべき
仕事なんだという
考え方を述べております。
そこで次に、それじゃこういうことで安定をするために、どういう問題があるだろうということが四以下に述べてございますが、
製糸業の
合理化、
過剰設備というのは、先ほどちょっと触れましたように、
終戦直後の
蚕糸業の
再建計画の中にあったわけですが、それが最近
自動機のいわば
技術革新とも言うべきような、ああいう進んだ
機械が出てきてに、
製糸業というのは再
編成の
過程にある、しかし、それをどうしていったらいいかということはまた別でありますが、再
編成の
過程にあるのじゃないか、そういう問題がある。いずれにしても、
製糸業というのは
合理化の方向へ進む必要がある。しかし、まあ
自動化、
自動機の発達というようなことで、そういうことに進む素地は大いにあるのだと、こう思うのでありますが、また、その場合に
原料繭の調達に不合理なことがあればそれを直さなきゃいけないだろうということ、さらに
養蚕業の
合理化については第三
分冊で触れておりますが、
考え方といたしましては、地域的な
集中傾向があるわけでありますが、
養蚕業の
合理化をしていくのには、やっぱり
コスト切り下げ、その
コスト切り下げということのためには、普通
考えられるのはまあ
機械化というようなことでしょうけれ
ども、ここで
機械化というようなことはなかなか
考えられないので、やっぱり
労力節約といいますか、そういうことを
中心に
考えていかなきゃならない、
労力節約をする場合には、並行的に掃き立て規模の
拡大というようなことが相伴うものであって、そのためには反当
収量の
増加、場合によっては
桑園の増ということを
考える必要がある。さらにまた、
蚕作の安定ですか、そういうようなことも並行的に
考えていって、徹底的に
合理化——生産費の
切り下げということに徹していかなければいけないということが、
養蚕業の
合理化の点であります。さらに
価格安定制度でありますが、これは
安定制度の堅持というようなことが書いてございますが、
養蚕業あるいは
製糸業あるいはこれに携わっておられるもろもろの
関係の方の経営の安定というようなことを
考えても、さらに、
輸出増進あるいは
需要増進というようなことを
考えても、
安定制度というものは今後もとっていかなければならないということ、
安定制度を
考えます場合に、今までの
生産費——現行の
生産費基準方式というものであっては、ここに
一等おしまいの方、三十八ページに書いてございますが、
現行方式による
生産費水準で
価格を安定させようとすることは、農家がこのような
生産費を採算の尺度にして
生産の増減をしていないので、実勢から遊離した
価格支持に陥るということ、このことが昨年の
混乱の
一つの
原因であったと思うのです。そこで、
一体、
生産費基準ということをどういうふうに
考えたらいいのかということが一番大きな問題になるのではないかということを
問題点として指摘しておるわけであります。今まで出しましたものについての御
説明を申し上げますと以上の
通りでありますが、くれぐれも申し上げておきたいのはこれはオフィシャルな見解ではございません。従って、今の
安定法改正、
臨時措置法改正とはつながってはいないということを再度申し上げておきたいと思います。