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1959-12-15 第33回国会 参議院 農林水産委員会 第13号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十四年十二月十五日(火曜日)    午前十時四十七分開会   —————————————   委員異動 本日委員秋山長造君及び羽生三七君辞 任につき、その補欠として亀田得治君 及び片岡文重君を議長において指名し た。   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     堀本 宜実君    理事            櫻井 志郎君           小笠原二三男君            戸叶  武君    委員            青田源太郎君            秋山俊一郎君            石谷 憲男君            重政 庸徳君            高橋  衛君            田中 啓一君            大河原一次君            片岡 文重君            亀田 得治君            北村  暢君            清澤 俊英君            千田  正君            北條 雋八君   政府委員    農林政務次官  大野 市郎君    農林省農地局長 伊東 正義君    海上保安庁長官 林   坦君   事務局側    常任委員会専門    員       安楽城敏男君   説明員    水産庁次長   高橋 泰彦君    水産庁漁港部長 林  真治君    運輸省船舶局首    席船舶検査官  畑  賢二君    建設省河川局治    水課長     川村 満雄君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○農林水産政策に関する調査の件  (愛知ダムに関する件)  (漁港に関する件)   —————————————
  2. 堀本宜実

    委員長堀本宜実君) ただいまから農林水産委員会を開きます。  最初に、委員異動について御報告いたします。  本日秋山長造君及び羽生三七君が辞任され、亀田得治君及び片岡文重君が選任されました。   —————————————
  3. 堀本宜実

    委員長堀本宜実君) 愛知ダムの件を議題にいたします。  この件について亀田委員から質疑の御要求がありますので、この際、これを議題にいたします。御質疑を願います。  なお、本件に関し、政府から出席予定は、農林政務次官大野市郎君、伊東農林省農地局長でございます。
  4. 亀田得治

    亀田得治君 滋賀県の愛知ダムの件ですが、これはさきに、昭和三十一年でしたか、一度当委員会質問したことがありますが、最近国の方でこの起工式をやって工事に取りかかる、こういう段取りにまでなってきておりますが、依然として、この水没者で作っておる愛知ダム反対委員会、この委員会との話し合いがつかないで紛糾しておる、こういう現状にあります。こういう状態では再度非常に不祥なことが起こるんではないかといったような感じも私どもいたしますので、そういう立場から若干お尋ねをしてみたいと思っております。  そこで、最初にお尋ねしたい点は水没者との了解がつかないで紛糾が続いておる、この原因ですね、これをどういうふうに農林当局は見ておられるのかをお聞きしたい。
  5. 伊東正義

    政府委員伊東正義君) お答えいたします。水没者の方々とまだ完全に了解がつきませんことは、はなはだ遺憾でございますが、ある程度の人は実は話し合いがつきまして、他に出られて入植されたような方もございます。しかし、三分の一程度の人は、まだ反対を続けておられるのが現状でございます。どういう原因と見るかというお話でございますが、大きく言いまして一つは、下流で水が要らぬのではないか、自分らだけが犠牲になるのだが、犠牲をしいておきながら、上流では水を要らぬと言っておるのではないかというようなことを言っておられることも、一つ原因でございます。それからもう一つ大きいのは、実は先生も御承知のように、過去に非常に経緯がありまして、絶対に墳墓の地は離れぬ、どんなことがあっても自分らは条件話し合いに応ずることはできぬ、墳墓の地を離れることはできないのであるからして、絶対に反対だというようなことも言っておられます。こういうようなことを私たち見まして、そのほか、いろいろ小さいことがございますが、大きく分けまして、そういうようなところが反対理由ではなかろうかというふうに考えております。
  6. 亀田得治

    亀田得治君 これは、なぜ、あれだけ強硬に反対しておるのかという見方については、大体、今、問題点については局長が指摘されましたが、今、御指摘になったのは二つあったようですが、それだけではない、いろいろ問題があります。それは後ほどお聞きしたいと思うのですが、そういう問題を一つ一つ水没予定者と突っ込んだ話し合いをして、そうして解きほぐしていく、こういう努力が私は非常に足らぬように思うのです。私もこういう土地改良のことですから、土地改良をやろうという諸君立場もわかりまするし、そういう諸君からもいろいろ陳情もあったりして、ことしの夏、相当両者話し合いがつけばと思って努力もしてみた。してみましたが、そのとき、私が率直に感じたことは、いろいろな問題点がある。それは非常に長い間もめてきておる問題で、それらについてただ理屈を言うだけなんですね。役所の側は、そういう考え方は間違いだという、そういうことでは私はやはり処理がつかないと思うのです。これだけの長い紛糾を、一ヵ月や二ヵ月ちょっと話をかけたからといってどなたがおやりになったって片づくものでない。非常に急ぐような態度がありありと現われていたわけですが、そういうことではこれはとても話にならないということで、私もこの話し合いからは途中で抜けさしてもらったわけですが、その辺にどうも農民の人のほんとう気持に触れていくというものを、やはり感じさせてないのじゃないかと私は思うのです。たとえ理論的に理屈が違っても、相手がほろりとするような、そこまでの努力をやらなければ、なかなかこれはらまくいかぬと私は思っております。これは一応抽象的に申し上げておきます。  そこで、水没者諸君が、しからばどういう点について、農林省なり、県当局態度に不満を持っておるか、そういう点、大きなものを一つ二つ出して、一つお聞きしてみたいのですが、たとえば反対者の数の問題ですね、今、局長は三分の工程度すでに賛成をして、水没者反対をしておるのは三分の一だというふうなことを先ほどもちょっと言われた。それで地元でもそういうふうに当局側の方は言うておるようです。それはどういう根拠に基づいてそういうことをおっしゃるのか。ともかく水没者は約百五、六十戸で、地元諸君からすればみんなわかっておるわけです、だれがどういう立場ということは。決して当局がおっしゃるような、三分の二なんてないわけなんですね。ないものをあたかもあるかのごとく言うものですから、そういうことが一つの大きなこじれになっておる。だからどういう根拠でそういうことをおっしゃるのか、そういう点を一つ、はっきりしてもらいたいのです。
  7. 伊東正義

    政府委員伊東正義君) 前段にありました努力が足らぬというお話でありますが、私もまことに力及ばずまだ解決せぬのは、はなはだ遺憾でございますが、この夏は現場にも入りまして、反対者人々懇談会も開きまして、過去にありました事件等につきましては、私も今から考えてみますれば、非常におかしいという感じがしますことにつきましては、率直に役所側としても、まずい点があったのじゃないかというお話もしてみたのでございます。この点につきましては、私といたしましては、今後とも引き続き何とか納得してもらえるような努力をいたすつもりでおります。  それから、今、数の点で御質問がございましたが、私もさっき約という言葉を使いまして、三分の二くらい同意があるということを申し上げたのでございますが、これは御承知のように、あすこに私の方の愛知川の事業所がございます。あすこ現場人々と、県の人々一緒になりまして、従来このダム事業の推進について話し合いをしてきたのでございますが、その際に起工承諾をした人が、これは何のたれ兵衛というふうに、実は私の方ではわかっております。その人の数が百をこえておるのでございます。そういう状態でございますので、約三分の二くらいの同意を得たということを申し上げたのでございますが、私どもは約三分の二くらいの同意があったからどうということを、強くたてにとって言っておるわけではございません。最後まで何とか話し合いをしたいというようなつもりでおる次第でございます。
  8. 亀田得治

    亀田得治君 ことしの九月八日に、反対委員会の方で再度反対をする人の署名をずっととったわけです。それでいきますと、七十九戸が今までの態度というものを再確認しておるわけなんです。この数に非常に問題があるものですから、実際にどうなんだということで、私が再度これは確認してもらったところが、半数をこして七十九名というものが、再度みんなで確認して署名捺印してきておるわけなんです。そういう点、どうも矛盾があるわけですがね。だから、地元では納得せぬわけだ。そういううそまでついて、何といいますか、反対者立場を追い込めるようなことはおかしいじゃないか、これはどういうふうに見ておられますか。
  9. 伊東正義

    政府委員伊東正義君) 数の問題でございますが、先ほど申し上げましたように、私の方にも起工承諾という、そういうものをもらっております。現場事業所でやっておるわけでございます。実は私懇談会に出ましたとき、いろいろ反対者の人と話したこともあるんですが、実は中には起工承諾した人も、だいぶ反対意見を言っておられた人もあるそうでございます、これは、私あとで聞いたのでございますが。それで小さい部落の中で賛成者反対者がございますので、賛成者諸君はそういうことが外へわかると困るから、これは秘密にしてほしいというような要請がございますので、私の方は、具体的な個人名前につきましては全然外へ出さぬという約束をして出しておりません。先生のおっしゃいました七十九という数字は、今、私初めて伺ったのでございますが、数につきましては、私どもの方へ出されておる起工承諾が私は正しいものだというふうな解釈を実はいたしておる次第でございます。
  10. 亀田得治

    亀田得治君 だから、ほんとに起工承諾が三分の二あっても、この七十九名という確認書が正しいとすれば、むしろ、いやいやで起工承諾を押しているということになるかもしれない、ダブるところは。そうとは私は断定しませんよ。あるいは起工承諾が正しいのであって、再確認書の方が部落のいろんな運動なんかがあって押したというふうにあなたの方ではお考えになるかもしれない。しかし、その辺はもっとざつくばらんにしたい、明らかにしたら私はいいと思うのですよ。だから、これが非常に納得いかないのです。賛成せぬものを賛成した、したと、こういうふうなことを言われるのは心外だということが一つ大きな問題になってくるのです。それからもう一つは、大体、起工承諾をされたような人は、あまり村に関係のない人が多いわけなのです。今度は中身の問題ですがね。それで、この水没反対しておる農家は、古い農家でほんとの百姓という立場の人が多いのです。で、私はそういう点を数学的に明確にするために、賛成反対者宅地農地山林、この比率をとらしてみたわけなのですが、それによりますと、七五%に進ずるわけです、水没反対者の方が。この七五%というのは、先ほど申し上げた七千九戸についての集計です。だから、この何戸という、その数もさることながら、やはり農村における一つ傾向というものをとるためには、ほんとう農村に密着しておる諸君、そうでなしに、つまり疎開等できた、幸いこういうことで多少でも金もらえりゃ渡りに舟だといったような、そういう感じ諸君と、これは全然違うわけなのです。で、そういう点も理解されないで、ただその数がこれだけになった、なったと、こう言われることが、ともかく心外でならない、こういうふうにその諸君は訴えるわけなのです。私はだからそういうものはことさらに何か促進側に有利なような理屈をこね上げる、こういうことじゃ、ざっくばらんな話、こういうことにはなっていかぬと思うのでね。この土地所有関係ですね、共有地は別として賛成反対者のそういう点等は、農林省の方でどういうふうに見ておられるのかお聞きをしたい。
  11. 伊東正義

    政府委員伊東正義君) 私ども、ことさらに隠すという気持は毛頭ないのでございますが、御承知のような紛糾を来たしましたので、賛成者の方で、やはりみんな賛成しているということは、これはまだ事が結着するまでは言わぬでほしいという話し合いになっておりますので、そういう約束の上に立ちまして、個人名前等発表はいたしておらぬような次第でございますので、その点は御了承願いたいと思います。  それから面積等関係でございますが、先生おっしゃいましたように、反対している人の中には、中ぐらいからの山持ちの人が多いことは確かでございます。今、面積的に比率は私はここでちょっと覚えておりませんが、反対の幹部になっておられる人の中には山持ちの人が多い。そしてそこに、狭い所でございますので、そこにまたその山に入って働くというそれについた人等も、かなり反対の中についておられるというのが現状でございまして面積比率はちょっと覚えておりませんので、大きな山持ち等でだいぶ反対しておられることは事実でございます。
  12. 亀田得治

    亀田得治君 これは山だけの問題ではないのでありまして、たとえば、その内訳をとってみますと、農地関係では賛成者の方が一町八反しかないのです。ところが、反対者の方は十二町所有しておる。だから、それは宅地でも同じような比率がずっと出ております。だが、そういうわけで、これはだれでも農村の内部へ入ればそういうものを無視して、ただ頭数だけで判断しちゃ実情に沿わないということはわかるのでございまして、この点はやっぱり検討してもらいたいと思うのです。それで反対者の数についてもう一つお聞きしたいのは、局長は、起工式があった後においても、できるだけ、今後反対者了解を得るように一つやっていくということを首でも言われるし、また手紙等を書いておられるわけですが、起工式の後に新しく賛成に回ったという方はないはすです。それはどういうことにへなっておそでしょうか。
  13. 伊東正義

    政府委員伊東正義君) 起工式あとでは、私どもの知っております範囲では、新しく補償を払った人が二人ございます。これは従来賛成をしておった人で、まだ補償金をもらってなかったという人がございまして、その中から二人払っております、が、追加いたしまして、承諾をもらったということはまだ聞いておりません。
  14. 亀田得治

    亀田得治君 それはその通りなんです。追加して新しく反対側賛成に回ったという者はないわけです。それで局長起工式をなるほどやっても、今後とも新しく賛成者を求めるとか、そういうことを続けていくのだと、こういうふうな意向を出しておられるのですが、これは一人もそういう者が現われて来ぬ状態なんです。もちろん局長の出された書簡の意味は、一時に全部賛成に回るというほどの期待を持ってのものではないと思うのですが、起工式をやっても一人の変化もない、こういう状態では、私は条件付起工式をやられたそのときの気持とは非常に現状というものはやっぱり違っておると私は思うのですがねどういうふうにその点お考えになっておりますか。
  15. 伊東正義

    政府委員伊東正義君) 起工式をやりましたのはたしか十月の五日であったと思います。十月五日現場起工式を行ないまして実は私も参りまして、反対の人も押しかけておられたのを知っております。私としましては、起工式でもあいさつをしたのでございますが、何とか完成までに全員の御了解を得られるようにしたいというあいさつを申し述べましたが、先ほどから申しますように、その気持一緒でございます。ただ、起工式をやって帰りますときに、反対の人はだいぶ押しかけてもこられましたので、すぐにまた新しい手を打って起工承諾の印をとることもしばらく様子を見て、ある期間、様子を見てそれから始めたらどうかというようなことを実は現場関係者に申したことがございます。起工式をやりましてまだ二ヵ月ぐらいでございますので、先生のおっしゃいましたように、まだ形の上には現われておりませんが、私としましては、ある時期が来ましたら、また話しかけて納得してもらいたいというふうに考えております。
  16. 亀田得治

    亀田得治君 そうすると、もう少し賛成者がふえるまでは、起工式はやったけれども工事はしばらく待つ、そういう気持でしょうか。
  17. 伊東正義

    政府委員伊東正義君) 私の申し上げましたのは、そういうことではなくて、今年度の予算は節約がありましたので、たしか一億七千万でございますが、ことしやりますことは、工事用の道路を作ること、それから一部の架設物を作るという程度予算でございます。これにつきましては、私は起工式も終わりましたし、やっていきたいというふうに考えております。
  18. 亀田得治

    亀田得治君 どうですかね、この賛成反対関係というものをもう少しざっくばらんに明確にしてもらえませんですかね。私たちその賛成者の名簿を見たからといってそれに対して反対者が何か押しかけていって乱暴するとかそんなことは考えられません。今までだって何も賛成者にそんな乱暴をする、明らかにわかっておる賛成者に対してもそんなことはないわけですから、こういう問題を不明確なままでやられるということは、やっぱり一つの大きなしこりになっておるわけです。役所というのは何かこう理屈をつけてわれわれを不利にする、私はその数がどうなってもいいと思うんです、それが本質の問題じゃないんですから。だから、そんな点はもっとざっくばらんに明らかにしてほしいと思う。戸数とその村における土地所有状況などから判断した状態ですね、それはできませんかな。
  19. 伊東正義

    政府委員伊東正義君) 私の方では何名の方に起工承諾をもらったということは、数は申し上げております。ただ、具体的にどういう万ということにつきましては、これは約束もありますので今まで一ぺんも申し上げておりません。
  20. 亀田得治

    亀田得治君 だから、そういう約束があっても承諾者にさらに了解を求めたらどうですか。何もそんなことは秘密にすべきことでも何でも私はなかろうと思うんです。ただ、そういう数の合わぬことをおっしゃること自体に、素朴な百姓は割り切れぬ気持を持っておるわけですから。そうでしょう。了解させて発表したらどうですか。
  21. 伊東正義

    政府委員伊東正義君) 起工承諾をされた人でも、もう村を出られまして入植しておる人とか、あるいは部会に出た人は先生も御承知のようにはっきりしておるわけでございます。その残りの人はまだ村に実は残っております。残っております一つの大きな理由は、この部落が持っております共有林関係もございます。村を出ればこの権利がなくなってしまうのじゃないかというような問題もあり、その他でまだ村に残っていて、自分賛成者であることは発表せぬでくれといっておられる現状でございまして、半分近くは、名前は実はもうわかっておるわけでございます、もう出ておりますから。残った人について先生の御質問でございますが、私どもとしましては、その点はやはり御本人の希望もございますし、そこははっきり約束しましたので、まだ外にだれが賛成ということは今の段階では言いたくないというふうに考えております。
  22. 亀田得治

    亀田得治君 農地所有状況なんかは、あなたの方でも調べて発表できますね。それはどうです。
  23. 伊東正義

    政府委員伊東正義君) これは出た人については、もう実にはっきり何のだれということがございますから、その人が幾ら山を持っており、幾ら土地を持っていたということはこれははっきり出せます。あとの人につきましては、まだ具体的にだれということは言っておりませんので、その点残った賛成者土地山林についてどうするか、もう少し研究さしていただきたいと思います。
  24. 亀田得治

    亀田得治君 私は何も個人発表を求めているのじゃなしに、村におけるそういう一つ傾向を見るために、総計でいいわけですからだから、それは一つ固いことを言わずに、やっぱり検討して出してもらいたいと思います。われわれだけで言うたのじゃ、何か計算間違いがあるというふうに考えられても困りますからね。  第二に、もう一つの問題は、下流受益地帯農民気持ですね。これはそんなに無理してまでこんなダムを作ってもらわぬでもいい、こういうふうに下流諸君考えているとこの水没者諸君は思っているわけなんです。この問題は、局長が八月十九日でしたか、地元懇談会に行かれたときにもこの意見は相当出たはずです。局長としても、せっかく金をかけてやっていろいろ迷惑もかけてそういうことについてどうも利益を受ける諸君がそんなに積極的でないということならこれは大問題だから、やはり検討しなければならぬというふうに局長みずからもおっしゃったように地元諸君からわれわれ聞いている。この点ですね、これは私重大だと思うのですが、農民が納得するかしないかについて、どういうふうに実際見ておられるのか。その当時、農林省でもその点は再度検討してみるとおっしゃったようですが、どういうふうに検討されたかお聞かせを願いたい。
  25. 伊東正義

    政府委員伊東正義君) 私も現場に行きましたときにそういう話を聞きました。下流農民が何もやってもらわぬでいいというのです。これはやる必要ないじゃないかという意見もだいぶ強く言われました。私もその点はよく調べますということを反対者には言って参りました。それで、その後私の方で調査をしたのでございますが、一つは、実は昭和三十二年に土地改良法が変わりまして、特別会計でやれるということになりましたときにも、ここの下流土地改良区全部集まりましてこの事業特別会計でやってほしいという陳情も出ております。それで、その陳情だけじゃいかぬので、われわれとしましては、もっと新しい時点に立ってどうなんだという調査をする必要があるということで、県にも話しました結集、県なり土地改良区が受益地諸君署名といいますか、必要かどうかということで意見を聞きましたものを実は提出してきております。それは九割一分何厘でございますかの人からは、必要だからぜひやってほしいという意味のものが役所には出ております。それが最近私どもの知りました最も新しい数字でございます。
  26. 亀田得治

    亀田得治君 それはいつ提出されたのですか。
  27. 伊東正義

    政府委員伊東正義君) 私どもの方へ出て参りましたのは九月の末でございます。
  28. 亀田得治

    亀田得治君 それには受益地帯の九割一分何厘の人が署名しておるということですか。
  29. 伊東正義

    政府委員伊東正義君) その通りでございます。
  30. 亀田得治

    亀田得治君 で、まあこれも両者意見が非常に食い違っておるわけなんです。この問題が起きた直後に、水没される農家諸君がずっと受益地帯を回って意見を聞いてみたことがある。そうすると、その当時には、まあほとんどの人が、そんな無理してまで私たちはやってもらう気持はないということで、ずいぶん判を押してくれた。その写しがここにありますがね。ところが、県がその途中で、そんなことはやらぬでおいてくれというふうな横やりを入れまして、これは途中でストップしておるのですが、そのときずっと続けてやっておればずいぶんだくさんの署名が集まっているはずです。しかし、それはまあ済んだことですし、私はこの点で非常に両者の言い分が違うものですから、実はことしの夏、この問題で仲裁に入ったときにも、一ぺんともかく世論調査正立にやってみたらどうか、土地改良区なり、反対者両方から公平に人を出して、そういう考えも出してみたのです。しかし、これはそのかわり、やる以上は出た結論は尊重する、こういうことじゃなければなりません、当然ね。まあ両方ともそういう点で自信がなかったのか、その点を私がだめを押しますと、なかなか両方ともいい返事をしなかったわけなんです。結局は、そういう世論調査ということはその段階ではできませんでしたが、ただ、まあ話が決裂してそうしてまた元の対立状態になった、そういうことから、実はその反対者の方で正規の世論調査に頼んでこれをやったわけなんです。その資料が今あるわけなんです。それによると、まあ反対者諸君が言うほどではないのですけれども農林省が言うほどこの問題について受益地帯諸君が手をあげて歓迎しているというものではないということがはっきり数に出ておるのです。で、非常に大事なことですから、ちょっとこの点出し上げておきますが、いずれまあこの資料を研究もしてもらいたいと思いますが、全日本農民組合の関西地方協議会が、大阪世論調査研究所に依頼をして実施したのです。時期はことしの九月十四日から三日間、関係市町村役場でサンプル抽出をやって、そうして九日二十日から十日間、実際の調査作業をやったものです。それから調査の対象ですが、今年の四月現在で、滋賀県内の愛知川沿岸土地改良区組合員の戸主、またはその戸主に準ずる人、そういう人を選んだわけですが、五百世帯を対象として行なったものです。これは従来からの世論調査からいってこういう小さな地区で五百世帯といえば、決して数では少な過ぎるというものでは絶対ないわけです。調査の結果、いろいろ出ておるんですが、この受益地帯農民考え方というものに触れておる点だけをちょっと申し上げてみたいと思うのですが、一つは、愛知ダムについて、どう思うかという問いに対する答えですが、現在の農林省考え賛成が四一・二%、反対が四七%です。で、もちろん反対の中には、そんなものは不必要だと頭からけっておる者と、それからそんな家屋をたくさん水没させてまで自分たちに水を引っぱってくる、そんなことは必要ないというのと一緒になっておりますが、そういう数字です。それから灌漑用水の状況もこれで調べられておりますが、お宅の灌漑用水の状況はどうかという調査項目に対して、十分であるというのが五二・二%もあるのです。それから何とかやっておるというのが二七・二%、それから少し不足しておるというのが一五・四%、非常に不足しておるというのが五・二%。私はここに、積極的でないということを今まで聞いてきておったのですが、なるほどと思う数字がやっぱりここに出ておるわけです、そういう意味では。それから、先ほど局長が言われた、九月末に提出されたダム促進の陳情書の署名ですね。なぜ陳情書に署名したかという理由が調べられておりますが、ダムをやってほしいからだというのが三二%、つき合いで仕方なく判を押したというのが三四%、みながしていたので仕方なく押したというのが三三%、だから、あなたの方へ今まで出された九割一分何厘かのそういう陳情書というものの実態ですね、私ははっきりわかると思うのです。大体陳情書というものはどういう場合でもそんなに正確なものじゃこれはないわけですが、あまりにも違い過ぎるわけですね。で、私たち下流地帯の傾向だと聞いていたのと、むしろこの世論調査の方が合っておる、こういう感じをこれで持つわけです。こういう数字が出ておるのに、それでももうこの陳情書一本でいいんだといったようなふうに私はちょっと片づけられないと思うのですね。どういうふうにお考えでしょうか。
  31. 伊東正義

    政府委員伊東正義君) 実は今初めてこの数字を伺ったおけでございます。それからまた、日農がそういうことをやられたという、具体的な方法、今初めて伺った、大阪世論研究所に御依頼になったということも実は初めて伺ったわけでございますが、これにつきましては、私どももまた資料をいただきまして、解析いたしてみたいと思います。ただ、この中に出ました中で、たとえば水が十分であるとか、間に合っているということでございます。この数字が出ておりますが、これは聞き方が非常にむずかしい問題だろうと私思います。私どもこのダムの容量、千二百万トンという容量をきめました場合にも、過去の渇水期をとりましてその容量を作ったわけでございまして、旱魃がこの地帯にあるかないかということで、また非常に農民のこの調査によって受ける感じも違います。この点は、私どももら少し解析させていただきたいと思います。  それから、先ほど申し上げました九割一分という数字でございますが、これは実は起工式をやる際にも、どの程度の人が実際この事業賛成しているのかということを知っておかぬといかぬという理由で、これをやったわけでございまして、しかし、これが私どもも最終的にこれで絶対動かぬものだ、増減はないのだというふうにはそれは思っておりません。ただこの事業自体は土地改良法の、全部の受益地の三分の二以上の同意を得てやっているというような、法的には、単に陳情ということじゃなくて、法的な手続も実は踏みましてやっていることでございますので、その点は一つ御了承願いたいと思います。
  32. 亀田得治

    亀田得治君 いや、私は、その土地改良法の手続がどうとかなんとか、そんなことを申し上げているのじゃない。これはもちろん土地改良法に基づいておやりになる仕事ですから、そんな、法律に違反してやっておられるとは、これはもちろんそんなことはあり得ない。ただ実際にいろいろそんな反対なり、もめごとを起こしてまでやる、それにはよほどやはり必要性というものが関係者の問で確認されなければいかぬわけなんだ。その点が実際に調査をしてみますと、決して、私たちがやっぱりうわさに聞いていたように、それほど積極的なものはないのだというものが出ておるわけなんです。農林省としては、あなた、予算を使いたいところはたくさんあるわけでしょう、ほかにだって。こんなにもめて、十年間ももめて、そうしてぼつぼつぼつぼつ費用を使って、私は、そういう意味じゃ、これは非常なロスだと思うのです。しかも、受益地帯でこういう数字が出てくるということでは、非常に無理があるという感じを持つのです。この資料は、最近、こういうふうに集計されて印刷にもなりましたので、これはまああなたの方にもお渡ししたいと思いますが、やっぱりもう少し謙虚な気持で検討してやってもらいたいと思うのです。これは反対者諸君も、相当な費用をかけてこういう調査をやろうなんというのは、もうよほどなやっぱり気持なんですから、そのかわり、こういう調査反対者諸君に不利に出たらこれは大へんなことになるのです、立場をかえて考えてみれば。それでもいい、とにかく押し切ってやってみようという、そういう気持をくんでもらいませんとつね、よけいこれはこじれてきますよ。こういうものは出ても、そんなものはそしらぬ顔をして素通りしていくと、おれの方にはこんな陳情書がある、それだけではちょっと納得できないと思うのですね。  それから次に、今まで、水没者承諾なしにはこの愛知川の工事はやらない、こういうことをいろいろな機会に当局が再三言うてきているわけなんですね。そういう点はそれは過去の人が言うたんで今は違うとも言えぬでしょうし、そういう過去にあった事実というものをどういうふうにお考えになっているのでしょうかね、お聞きをしたい。これは実は大臣にそういう点は開きたいと思っておるところなんです。百姓はやっぱり純朴ですからね。偉い人が言うたことはいつまでもこれは覚えておるわけですからね。その点どういうふうにお考えでしょうか。政務次官が大臣にかわって一つお答え願いたいと思うのですが、まあお二人お答えになってけっこうです。
  33. 大野市郎

    政府委員大野市郎君) この問題になっていろいろ御質疑をいただいておることもよく承知しておりますが、実はこの地点だけでなくて愛知用水などの大規模の土地の買収問題につきましても、非常な実は苦心がございまして私どももその問題には委員の一人として携わった経験もございますので、大きな事業目的を立てまして計画を立てるにあたっては、土地改良法の規定その他をもちろん守って、先ほどの九一%以上の賛成があるかどうかとか、いろいろなそういうふうな法に基づく基礎的な資料は重ねて参っておるのは事実のことでございます。それで、先般来からこの地元の、特に水没地帯の方々の御承諾がないうちは軽々に断行ができないという考え方はもっともであり、当然だと思います。それで、ただその問題の裏には、そこは大きな意味から必要性が考えられておるので、その水没をされる方たちの何とか立っていくような方法が、代案が考えられるならば御協力願いたいと、こういうような形で、他の地点のこういう、電源開発もそうでございましたが、いろいろだくさんの交渉経過をもちまして、最後は納得していただいておる実情でございます。今回のこちらの一件につきましても、入植地の準備、それから補償金の支出に対する考え方、こういうふうな基本的な問題もいろいろ折衝の段階では今まで何回か話し合いが続いておるようでございまして、しかも、先ほどの相当数の方々もそれで支払い済みで御協力をいただいているふうなことを存じておるわけであります。ただ問題は、それは、そこで大きな山林を持った方々を除いた比較的利害関係の浅い方々が先に賛成したのであろうから、数だけでは甘い考えであるぞという御指摘でございます。この点は確かにそういう点が、説得をいたします熱意に対しましても、大きな山林などを持っておる方々の利害関係は特段深いわけでございますから、強い努力を必要とするのは当然だと思います。結論として、そういう工合で、下流の地域の受益の方々、一万戸以上の方々のほとんど大多数の方々が御賛成であるという認識をもとにいたしまして、この認識が、先ほどの御指摘で、ほかの調査ではぐらついておるのではないかという御指摘でございますが、現段階で九一%の受益者が賛成しておるという大まかな網の中でこの事実自身を考えましたときに、何とかもう一骨これは骨を折って、それらの方々に入植地、補償金、こういうふうな条件の問題で御協力をお願いすべきでないか。その御協力をするにあたって、強権発動などということは穏当でございませんので、あくまでも納得していただくまでお話し合いをしたい、こういう気持でございます。
  34. 亀田得治

    亀田得治君 まあ次官はあまりこの問題の経過等も知らぬようですから、そういう一般的な体裁のいいことをおっしゃるのですが、私の今お聞きしておるのは、まあ本件は特別ないろいろな経過をたどっておるのでありまして、当局が、水没者承諾なしでダムをやらないということを再三言明してきているのです。そういうものは約束にならぬという考えを持っておるのかということをお聞きしている。私は、そうはいくまいということを言うておるのです。そんな、愛知用水の場合にどうだとか、それはいろいろあることは私も知っておる。そういう一般的なことじゃなしに、約束している、約束を。約束をほごすにはやはり相手方の十分な了解というものがなければいけないのでね。その約束をどう考えておるかということです。
  35. 伊東正義

    政府委員伊東正義君) 先生のおっしゃいました約束の問題でございますが、過去において刑事事件を起こしました県の部長が土地改良区に行きまして、そういうものを一札入れたというのは、たしか二十七年でございましたか、ころに一回ございます。それからその後、何とか水没地帯の人と話し合いをして、その上で考慮していきたいという意味の答弁を大臣が言っていられることも私知っております。私、現場にも行き、こちらでも水没反対の人と何回も話をしたのでありますが、要するに反対者の最強硬派の人は、絶対ここは死んでも離れぬのだという一点張りの人が実はかなりございます。で、私はその人々現場に行っても話しをしたのでありますが、日本で開発をするという段になりますと、一戸も水没がないというような所は、ほとんど今までの例でもございません。そういう意味のことを言われれば、日本のこういう所では開発ということはできないということになりますから、私どもはそうではなくて、一つ並行的に皆さんとお話し合いをし、しかし、工事にも手をつけていくという、並行的に進めてお話し合いを続けていきたいということを実はその方々にも話をし、現場にも話しておりますので、今われわれ事務当局態度といたしましては、並行的にものを進めていくというような態度でこれを考えている次第でございます。
  36. 亀田得治

    亀田得治君 そういうことはあなたに最終的な問題としてあとで聞きますが、とにかく本件については約束をしているわけですからね、もう一ぺん読んでみましょうか、昭和二十七年十月二十八日付覚書、「愛知ダム水没に関する一切の行為は永源寺村及水没住民の了承を得た后取運ぶものとし之に関する責任は私達に於て負ふことを約束します」と。で、今、局長土地改良区の人だと言ったのですが、これには滋賀県の農地部長上條林三郎、この人も連署して、そうして土地改良区の理事も連署しておる、こういうことになっている。はっきあとした約束なんで、幸といいますか、不幸といいますか、この文書が実は強要罪だということで辻善三郎が刑事事件にでっち上げられて、それでずっとこれが法廷闘争になって、最終的に三十年の四月二十五日、大阪高裁でこれは強要でないということで、役所の方の主張というものは結局破れたことになり、従って、この約束というものは厳然として生きているわけなんです。だから、普通ちょっとこの辺で何か工事をやる、で、役所から来て、まあ君らとよく話し合っていくからというふうに口頭でちょっと言うた、それを約束だといったようなことを今私申し上げているのではない。で、こういう文書で確認されてしかも、それが水没者にしてみれば刑事事件にまでされて、ところが、逆にそんなことは強要じゃないということにされた。こういういきさつからいったら、地元諸君がこういう文書にこだわるのはあたりまえなんです。こういう文書をどういうふうに処理されるのか、そんなことは一つもされておらない。ともかく、そのうち納得してもらうつもりだと、そう言ったってなかなか、こういう一徹に考えているという人たちはおさまらぬわけです。それで前の三浦農林大臣のときでも、それからほかの局長でも、そういういきさつがあるわけですから、そんな反対を押し切ってまでやるということはせぬという意味のことを言うておるし、そんなことはみな知っておるわけですよ。地元水没農民も知っておるし、それから関係者も知っておる。だから県の方でもそういう約束は何とか一つ解消するようにしてくれぬかという陳情があなたの方に来ておるはずです。そういう約束は解消するようにしてくれという、そういう意味陳情が来ているはずです。だから、その約束があるということは、これははっきりしているのです。あるものをあたかもないかのごとく知らぬ顔をして通るようなことではとてもじゃないが話が軌道に乗るものじゃ絶対ない。それを私は言うている。本件についての約束を一体どうされるのか。
  37. 伊東正義

    政府委員伊東正義君) 先ほど私答弁しました中で、県の部長も入っているということを申し上げたのでございますが、お聞き取りにくかったかと思いますが、もう一回繰り返しておきます。県の部長が入っております。それで、これは問題がございますのは、ここに「永源寺村」「水没住民の了承」という両方ございますが、御承知のように村当局自身は賛成してぜひやってくれということになっております。それで水没住民の中の数の問題でございますが、先ほどから先生が御質問になる数が、私どもは約三分の二ぐらいの承諾を得ているということを出したのでございますが、これにつきまして、これを書きました当時の部長の話も私聞いたのでございますが、水没住民が一人反対していてもやらぬというような意味でこれは書いたのではないということを本人は言うております。ここは一つ解釈の問題があるだろうと思っております。  もう一つの問題は、国営の工事でございますが、県の部長がこういう国と打ち合わせもなくてこういうことを書いたというようなことになるわけでございまして、その辺のところにもこの約束といいますか、書いたことにつきましては問題があるだろうと思っております。ただこれを書きましたことが、強要されて書いたのだというような刑事事件になりましたことは、私ははなはだ遺憾でございまして、これは私も現場に行きまして、非常にそういうことは非常識だ、そういうことを言ったこと自身は非常識だということで、もしあやまれというなら、この問題は非常に官側にますい点があったということで、私は現場懇談会で話をしたことがございます。それから県から約束の解消をしてくれ、あるいは土地改良区から約束の解消をしてくれという陳情があるはずだということをおっしゃいましたが、私はそういうことは、その点は記憶いたしてはおりません。
  38. 亀田得治

    亀田得治君 その当時、覚書に判を押した農地部長に会われたということですが、その人の説明だと、一人や二人の反対があってもやれないという意味ではないという意味のことをおっしゃっておったようですが、私が今言うているのは、そんな、反対者が一人や二人しか残っていないという場合には、これは当然覚書があっても、事態は、おのずからやっぱり取り扱い方が違うと思うのですが、そうじゃないのですね。それは最初申し上げたように、土地所有関係からいっても、あるいは戸数の関係からいったって相伯仲しているわけなんです。一人や二人残っている、そんなこととはこれは全然違うわけですからね。当時の農地部長からそんな説明があったところで、それはもうこの問題の解決には何らの役に立たない。それからもう一つは、県の農地部長が国と連絡なしにそういうことをやったので、国はそんな覚書なんか知らぬ、どうもそういうふうに局長おっしゃるようですが、そういうことを言うから百姓がよけい怒るのですね。それはあなた、都合のいいことは県の人が農林省を代行していろいろなことをやっているわけです。平生はやらしておいて、そして自分の都合の悪いことだけ、それはそんなことはおれは知らぬとそう言うても、法律的な問題はいろいろ検討の余地があってもそんなことを言うたんじゃそれは百姓はよけい怒るですよ。ちょっと今、局長はどうもそういうふうな腹でおるようなことをおっしゃったが、どういう考えですか。それははっきりしてもらわぬといかぬと思うのですよ。それからこの七月四日の日に、農地局長に対して地元の町長、土地改良区、それから県などが、承諾なしにはダムはやれぬと今まで言うてきておるわけです。それの反対言質を明文で要求したと、こういうことが県の報告書の中に書いてあるのです。県の報告書ですよ。だから、そんなことをあなたは聞いたことないようなことをおっしゃるのですけれども、ちょっと何か記憶違いじゃないかと思うのですが、どうでしょうか。
  39. 伊東正義

    政府委員伊東正義君) 今おっしゃいました最後の点でございますが、そういうことを私記憶しておらぬと申し上げたのですが、これは調べて、またありましたら後刻訂正さしていただきます。今現在はちょっとそういうことを覚えておりません。  それから上條部長、それから土地改良区の代表者が書きましたものを農林省は全然知らぬというような態度はけしからぬというお話でございますが、私の申し上げましたのはそういう意味ではございません。こういうことがあったことは、これはよく知っております。ただ、先生もちょっとおっしゃいました、法律的に問題がどうということをおっしゃいましたが、私はそういう点に問題があるかもしらぬということを申し上げましたのは先生と同じ意味でございまして法律的な場合になれば、あるいは問題があるかもしらぬということを申し上げましたので、このことはよく知っております。  それから上條君の言いましたことでございますが、少し表現がまずかったのでございますが、上條君の言っておりますのは、全員の賛成がなければ手をつけないのだという意味で書いたんじゃないというようなことを申しておりますので、表現がまずかったのでございますが、そういう意味でございます。
  40. 亀田得治

    亀田得治君 まあともかく大臣や局長などが言うてきたことが百姓にしてみれば簡単に撤回されるとは思っておらぬのでしてね。私、きょう農林大臣の出席を求めていたのは実はその点なんです。これは大臣おられませんからこの程度にこの問題は打ち切りまして、最後に一つ水没者の十分な了解なしで工事を進めておるわけですが、私はまあこのいきさつから見て必ず事件が起こると思うのです、事件が。局長、どういうふうにそこを考えておられますか。
  41. 伊東正義

    政府委員伊東正義君) 私は先ほどから申しますように、何とかこれは水没者の人に話をしまして先生のおっしゃいましたような不祥な事件等にならぬように、ぜひそういうことで私の方としては努力いたしていきたいというふうに考えております。
  42. 亀田得治

    亀田得治君 農林省では、これは強権発動を前提としない立場で現在のところは工事を進めておるわけでしょう。
  43. 伊東正義

    政府委員伊東正義君) 私の方といたしましては、土地収用法とか、そういう事態にならないようになるべく話し合いで仕事は進めていきたいというのが基本的な態度でございます。
  44. 亀田得治

    亀田得治君 ところが、そういう立場と矛盾するわけです、現場の空気というものが。ともかくダムが完成すればみんな水へつかってしまう人たちがその辺にずっとおるわけですよ。その横で朝から晩までかんかんかんかん工事を進めておるわけですね。私はこれは一種の脅迫だと思うのですよ。強権発動をされておるならこれはまた別です。ところが、この問題についてのいきさつ等からそういう立場をとらないでやると言いながら、しかし一方では、工事が進んでいけば水へつかってしまうようなことを朝から晩までやっている。これはあなたがあそこに土地を持っておるとして、そこで住んでおる立場考えたら、これはとても圧迫感を与えると思うのですよ。こんなことは私はきわめて不適当だと思うのです。それでいいと思いますかね。それを何回も訴えてきております。
  45. 伊東正義

    政府委員伊東正義君) 私は今のような事態でなくて実は工事を進めるのが一番いいやり方だというように考えております。今の事態はやむを得ずああいう事態になっておるというような考え方でございます。
  46. 亀田得治

    亀田得治君 だけれども農林省ではこういうことはときどきおやりになっておるのですか。とにかく人数については若干争いがある。面積からいったって圧倒的に水没する人がまだ了承しておらない。そのままで工事をかんかんやっていく。私はこれが事件にならないでどうするかと思っております。必ずそれは何か不祥事件が起きます。そんなことを私は何か農林省がほかでおやりになったことを聞いたことがないのですがね。どうもここのやつはそういう点でははなはだ私も心配しておるのです。ほかでそういうことはないでしょう。
  47. 伊東正義

    政府委員伊東正義君) これほどたくさんまだ反対があるというところはございません。ただ、ごく小人数の場合にやりました例はございますけれども、こういう例は今のところはございません。
  48. 亀田得治

    亀田得治君 それは小人数の場合には、そういう場合にこそ土地収用法とか、そういうことが妥当性を持ってくるのです。こういう状態で実際上は強権を発動しておるのと同じようなことをやられる。じゃ、何か事件が起きた場合に第三者が判断する場合、それは農林省が悪かったじゃないかと逆にもう一度そういうことを言われた場合どうするか。きょうは言いませんけれども、この工事ではもう一つほかに刑事事件が起きておるわけです。これは局長、御存じの通り、文書偽造、土地改良の方で。それは有罪になっておるのです。こっちの方は無罪で向うの方は有罪、そういうことをやって私はこのままやっていけば必ず何か突発的にいろいろな問題が起こると思う。地元諸君は、こういうことをやられる以上はダムが完成したって水浸しになったって立ちのきません。単なる官伝とかそういうことでなしに、真剣にそんなことを言うておりますよ。これはどうするのですか。ダムができてもあなた水が入れられない。立ちのかぬ者に水を入れるつもりですか。そこまでの腹がなければそれはできませんよ。どうですか、それは。
  49. 伊東正義

    政府委員伊東正義君) この問題は今おっしゃいましたような事態にならぬように何とかそれまで話し合いをしたいというのがわれわれの希望でございます。
  50. 亀田得治

    亀田得治君 それは希望はわかりますけれども先ほども聞いてみますと、これほどたくさんの人が反対しておるのに強権発動を前提としない工事を進めておるのはほかには例がないと言っておる。なぜこれだけにそんなことをやらなければならぬのか。私はだからもっと最初から申し上げたようないろいろ食い違いがあるわけでしょう、地元役所の側の。賛成者の問題にしても、現地自体の考え方の問題にしても、大事なところで大きな開きがある。そういう点が調整されないで、こういうことをやっていたのでは私はますいと思う。事件が起きてからわれわれ役所の責任を追及してみたってこれはおそいですよ。だから、私は以上のような立場で最終的に申し上げたいのは、やはり計画をもう少し検討してもらって、そうして水没家屋をなるべく少なくすると、何かそういうことでやる方法がないのかとうか。一応それは検討はされたようでありますがね、下流地帯の状況等から見ても、私はもっとそういう点は真剣に検討してもらいたいと思っております。  それから受益地帯の移行ですけれども、これもそんな単なる陳情書だけを基礎にして考えるのじゃなしに、実態的なやはり調査、これもやってほしい。そうしてそういうことをもう少し検討されるまで今のままの状態でこれをやられることは、私も事態を知っているだけにはなはだ不適当だと思っているのです。これも大臣とよく相談してほしい。一たんきめたらやるのだというようなことをやってもちょっと工合が思いと思います。  それで、今農林省が手をつけておられる輸送道路ですね、この輸送道路が愛知川を渡るところの左岸に、白木寅一という人の土地がある。この人の土地はまだ農林省の方に売ってもいないし、また、そんな工事承諾どもしておらないわけです。ところが、この白木寅一の土地に、最近橋をかけるためなんでしょうが、くいを打っているのですね。これは明らかに不法行為ですわ。こういうことがいろいろな事件に火をつけるのです。こういうことをなぜされるのか。地元水没農家考え方というものをますます追いやっていく結果になりますよ。その点一つお聞きしておきたい。
  51. 伊東正義

    政府委員伊東正義君) 最後の点でございますが、今、承諾ない人の所にくいを打ったという話でございますが、実はこれはわれわれも最近知ったわけでございます。それでその承諾ないという、今調査しておりますが、今、先生おっしゃった人は、この十二月の三日にだれかから買って、そして所有権の移転登記をした人でございます。つい最近でございます。前の所有者との関係その他を実は今われわれ調査いたしております。これは先生のおっしゃるように、許可なしにやっては問題でございますし、どういうことでこういう事態になったのか、つい最近その白木という人がこの土地の所有権の移転の登記をしたということがございますので、われわれ調査いたしまして間違いのないようにその点はいたしたいと思います。  それから受益地の移行でございますが、これは先生のおっしゃいましたことは、きょう初めて伺ったわけでございます。これにつきましては、私どもも、もう少し資料をいただきましていろいろ解析をいたしてみたいと思っております。  それから計画の検討でございますが、これは実はいろいろダム地点の検討もいたし、それから水没を少なくして、小さいダムを点々と作ってやる方法もないかというようなこともいろいろ考えたのでございますが、この案も結局むずかしいということで、現在の案になっておりますので、これの再検討ということは、ちょっともう今の段階では困難なことではなかろうかとわれわれは考えております。
  52. 亀田得治

    亀田得治君 だいぶ予定の時間も超過しましたので、ちょっと最後に、この事業の全体の計画ですね、全体の予算面、それからいつまでに仕上げるつもりなのか。とてもじゃないですがな、とにかく輸送道路をつけるまで十何年間もかかっていちゃ、これは問題にならないのですよ。だからそういう面からも、もうこの辺でちょっとほんとうに再検討されて、もっと必要な方面で予算を使う場所、手をあげて待っている所がたくさんあるわけですからね、少なくて困るといって盛んに農林省陳情してきているのがたくさんある。なぜそういう方面へどんどんたくさんやらぬのか、不思議でならぬ。そういう意味でちょっとお聞きしておくわけなんですが、全体の予算規模、そうして大まかな計画年度ですね。
  53. 伊東正義

    政府委員伊東正義君) 予算でございますが、現在の国営ダム、水路関係は四十二億ということになっております。その中に開拓地が入っておりますので、開拓地は全額国が見ますが、ほかは国が六割、県二割、地元一割というようなことでやっていくことになっております。先生の今おっしゃいました十年かかって工事道路もできていないじゃないかというお話でございますが、これは先ほどからるるおっしゃいましたような問題がありましたので、そういうことになっているのでございますがて大体われわれの考え方としましては、特定土地特別会計を作ります場合には、特別会計でやるものは七ヵ年ぐらいで完成しようというようなことになっております。でありますので、ダムにつきましても、私どもとしましては、幾らおそくてもこれから七ヵ年以内にはこれは完成さしたいというような考えでございます。
  54. 亀田得治

    亀田得治君 それは局長、七ヵ年なんかじゃとてもできません。必ずそれは、その間にいろいろ問題が起こるでしょうし、平生、農林大臣にいろいろ事情を話しても、委員会で話しするほど、問題点を深めて話し合うというようなことはなかなかむずかしい。そういう意味で私はいろいろな不祥なことが起らぬように、事前に実は委員会で一ぺん問題点を追及して、それを十分大臣にも聞いておきたいそうして大局的なやはり扱い方というものを、もっと大きな気持考えてほしいという実は希望があったわけです。しかし、きょうはまあ何か衆議院の関係等で来れなかったのが、そういう意味では非常に残念なんですが、大野次官はずっとお聞きになりましたから、これは一つ大臣に、局長からもお話し願うのは当然ですが、次官からも十分一つ、相当問題のある点についてお話を願いたいと思います。私たち下流の住民が双手をあげて賛成しているとか、それから地元側が水没農家が大部分賛成して、残っているのはほんの例外のつむじ曲がりだとか、こういうことなら、そんなことは党議としてわれわれだって別に問題にしませんよ。そういう実態でないところに問題があるのですから、これは過去のことにこだわらぬで再検討をお願いしておきます。  大へん時間をとりまして恐縮でございます。
  55. 堀本宜実

    委員長堀本宜実君) 他に御発言もないようでありますから、本件はこの程度にいたします。   —————————————
  56. 堀本宜実

    委員長堀本宜実君) 次に漁港の件を議題にいたします。  この件について、片岡委員から質疑の御要求がありますので、この際、質疑を願うことにいたします。  なお、この件について政府からの出席は、高橋水産庁次長、林水産庁漁港部長、巻幡運輸省船員局労政課長、畑船舶局首席船舶検査官、林海上保安庁長官、樋野海上保安庁警備救難部長、川村建設省河川局治水課長でございます。
  57. 片岡文重

    片岡文重君 私も、できるならきょうは大臣の御出席をいただいて十分この問題に対する認識を深めていただいて、今、亀田委員の取り上げておられましたような問題で、予算のやりくりが十分できるような問題については、ぜひ緊急性を認め、必要性に重点を置いて一つやっていただいたなら、こういう、これからお尋ねしようとするような問題は事もなく解決して、貴重な人命が失われるようなことのないことになると思いますが、大臣もおられませんので、一つ次官も十分お聞きいただいて、この私どもの要望を伝えていただき、かつ、実現するように一つ努力をお願いしたい。  きょうこれからお尋ねしようとしまする問題は、実は、坂東太郎といわれる利根川の河口にある銚子漁港においての海難をどうしたら根絶することができるか、結論を申しますとそういうことなんです。あの銚子におきまする海難事故は年々回数を増し、しかも、貴重な人命が非常に多く失われております。ことしに入りましてからすでに三十四名、昨年が十七名、まさに昨年の倍であります。こういう事態を年々繰り返しておきながら、地元でももちろん、県としてももちろん、農林省その他関係の機関に向かってはできる限りの援助、根絶の対策等について協力を求めておるようですが、根本的な、抜本的な対策がさっぱり講ぜられておりません。まあ少し冗漫になって恐縮ですけれども、銚子にはてんでんしのぎという言葉が昔から使われております。てんでんしのぎというのは、自分だけで始末をしろ、簡単にいえばそういうことです。この銚子の河口で起こりまする海難については、せんだって十一月二十五日に、一隻で二十八名の人命を失った。さらにそのあと入ってきた船から、一入落ちまして、これも行方不明、この行方不明になった一人のごときはその船の船長のむすこさんなんです。観たる船長が目の前にわが子が落ちておぼれていくのを見ながら助けに行くことができない、こういう状態に置かれておる。従って、それほど危険な所ですから、たとえ親であろうと子であろうと、とにかくその災難にぶつかった以上は自分で始末をしなければならない、助けに行くことはできぬのだ、そこの漁民たちも仕方がないのだということで、政治に対する信頼なんというものは寸毫もありません。しかし、これでよろしいのかどうか。私は地元民がもら少し政治的に目ざめてきたなら、まさに亀田君は今愛知川でもって一騒動起こるのじゃないかと言われておりましたけれども、現に銚子あたりで漁民大会、市民大会を開いて、一つ政府に押しかけようなどという声すらほつぼつ起こっております。信頼をして裏切られたのではなくて最初から信頼をしないでそういう暴動になってくるということは、これは政治としては非常に何といいましょうか、危険な思想を政府みずから作りつつあるのではないかと思います。私は別に意地悪い御質問を申し上げたりなどする気持は毛頭ございません。願わくは一つ、本日御出席をお願いいたしておる関係の方々、あるいは私が浅学にして、本日お願いしてある以外にも関係をされる方々もあるかもしれません。また、お願いしてあって今日出席できない方々もあるかもしれませんが、それらについては、本日御出席になっておられる格関係の方々から十分な連絡をとっていただいて、この銚子漁港における——漁港というても銚子の川口における海難事故をすみやかに一つ根絶できるような措置をぜひ樹立していただいて、早急にその実現のできるようにお願いをいたしたい、こういうことで御質問を申し上げるわけでありますから、その点をお含みの上でその点御答弁をいただきたいと思うのであります。  まず、次官にお尋ねしたいのですが、今申し上げた通りに、この銚子の漁港では年々多くの人命を失っておりますが、この銚子漁港におけるこういう特殊な遭難事故について、次官並びに大臣はどの程度の認識を持っておられるのか、その点を一つお尋ねしたいと思います。しかもなお、つけ加えて一体どうしてこれを今まで放置されておったのか、今後どうしてこれを根絶しようと考えておられるのか、おられなければおられないでやむを得ませんが、おられるならば農林省としての御方策を一つ当初に伺っておきたいと思います。
  58. 大野市郎

    政府委員大野市郎君) 銚子港の河口におきまする河流のいろいろな流れ方の変化が激しいために、せっかく漁港が一応完成しながら、ただいまのようなしり上がりの事故の発生を伝えられておりますことは、漁港の担当省といたしましては、大へん申しわけなく存じておるものでございます。ただ河口に設けられました漁港の性質というものが、非常に流れ方の変化が激しいせいでありましょうか、技術上にもむずかしいと承っておりますので、その点で避難港の問題などが欠点としてで、私も事務当局からもうその点報告を受けておるのでございます。従いまして漁港自体の技術的な点は、不肖で実はつまびらかでございませんが、当面の防御策として、遭難を防御するために一番近い避難港そのものの整備が緊急のことである、そういうふうに報告を受けておりますので、その避難港自体の完備ということを急げという指令を実は出しておったところでございます。いろいろ御意見承りまして、さらに善処をいたしたいと存じます。
  59. 片岡文重

    片岡文重君 今、具体的な措置はお持ちになっておらないようですから何ですが、河口港であるからやむを得ないんだという、地元でもそう考えておる漁民も多いようでありますけれども、同じ河口港でありても新潟にしろ酒田にしろ那珂湊にしろ、たくさんあるわけです。しかし、銚子のように人命をそこならような不幸な件数の多いところはない。それはなぜないかといえば、それぞれあるいは分流措置を講ずるなり、水深の維持に努めるなり、それぞれの漁港の地理的条件に合った対策が曲がりなりにも立てられておるからだと私は思うんです。絶無とは言いませんけれども、私が望みたいことは、海である限りにおいては防げないんだという事故まで銚子漁港から取り去れということは申しません。これはしけにでもなれば、たとえば横浜の港であっても、防波堤にぶつかって沈む大きな船があるくらいですから、海である限りは防げないような事故まで根絶せよということではありませんけれども、少なくとも銚子が河口だということだけで起こっておるところの事態は、今日の学術なり土木技術なりをもってすれば防げるんだ、金さえあれば防げる、やりさえすれば防げる事態で、方法があるならばこの際それをやってほしい、こういうことなんです。  従って、きょうのお尋ねをする問題は、大きく分けますと、一つは、抜本的な対策を早急に立ててほしい、それにはどうしたらよろしいのかということが一つ。それから、少なくとも、いかに人命がそこなわれるからといって何十億、何百億の金をすぐに銚子にだけ出して一年でやれといったところで、これはできぬことでしょうから、当然継続工事なり何なり幾ばくかの期間を要するでありましょう。直ちに御了承いただいて、農林省なり建設省なりガ着手していただいても、その期間はあるわけでしょう。しかし、この危険な事態というものはその工事の完成を待っておるわけではないのです。ですから、完成をし、河口港なるがゆえに起こり得る、あるいは銚子港なるがゆえに起こり得るところの海難を、抜本的に芟除し得る事態までは、救難の方法が万全でなければならぬわけです。従ってこの抜本的な対策がなされるまでの間の救難対策、これを一つ万全にしてほしい。特に救難対策は、これは一日もゆるがせにできません。かつ、それに要する費用なり要員というものは、これはそう多くの費用ではないと、私は現地を調査しいろいろの関係の機関にお尋ねをした結果、そういうことが考えられます。従って、この二つの点について、きょうはぜひ結論を出していただきたい、こう思うわけです。  そこで、お伺いしたいのですが、漁港整備計画の第一次計画では、銚子はすでに完成港として取り扱われておるようです。しかし、漁港としては完成をされても、漁港に入るまでのことが、今申し上げたように、危険な区域を通らなければならぬということになると、これは必ずしも私は漁港としての機能を十分に備えておるとは言えないんじゃないか。つまり、具体的に申し上げれば、一の島灯台の付近を通って入らなければならぬ。これを通ることなくしては、銚子の漁港にははいれない。しかも、この漁港整備計画においてすでに完成だということになると、若干遺憾な点があるのではないか。これはなぜ完成港としてそういう入出港の危険を防除する方法を考えられなかったか、この点を一つお伺いしたいと思います。
  60. 林真治

    説明員(林真治君) お答え申し上げます。先生お話のように、銚子の漁港につきましては、ただいま確立いたしておりまする漁港整備計画といたしましては、昭和三十三年に完成をいたしたのでございます。計画につきましては、完成をいたしたのでございます。御承知のように、銚子は東日本におきまする昔からの大漁港でございまして、農林省といたしましても、この利用改善につきましては、かなり努力を払って参ったのでございます。古くは大正の末期からいろいろ改良工事をいたしまして、今問題になっておりまする航路につきましても、干潮水面下五メーター五〇までの浚渫を一応完了いたしまして、漁船の航行安全にまあ資したいということでやって参りまして、それらの工事が三十三年に一応完了をいたしたわけでございます。  ところが、お話のように、この遭難の問題につきましては、お説のごとく、絶対に避けたいのでございますが、避け得られるかどうかは別といたしまして、できるだけ遭難という悲惨事がないように、われわれの港の立場におきましても努めて参らなければならないと考えておりまするわけであります。これは、計画というものにつきましては、経済投資効率と申しますか、いろいろの面もございますわけでございますが、遭難等につきましては、ただいろいろな悪条件が重なりましたときに、不幸にして遭難という事態が起こるものと考えられるわけでございまして、お話の一の島灯台付近におきましても、たとえば水深等から見ますと、現在管理者でありまする千葉県でいろいろ測量いたしておりまする結果を見ますると、干潮水面下五メートルくらいはあるのでございます。それから少し入りました所が埋没、つまり河川の流砂、あるいは海岸の漂砂、これらが波と下流との戦いによりまして堆積をいたしまする分が、航路に少し入りましてからにあるわけでございまして、まあこれをできるだけ今後も研究を重ねまして、なくしていきたいということで考えているわけでございます。まあ応急的な問題といたしましては、浚渫という問題がございまするが、なかなか、先ほどお話の出ましたように、河口におきまする航路維持という問題は、ことに利根川のような大河川におきましては、大河川と、重なるに漂砂、流砂の関係が多いという所ではむずかしい問題もございまするので、抜本的に何とかいろいろ研究討議を重ねまして、ただ浚渫して維持していくというだけでなしに、何とか航路の維持ができまするように、ただいまいろいろ研究を重ねているところでございます。
  61. 片岡文重

    片岡文重君 一の島灯台を出た所が、五メート元以上の水深を干潮時において維持しているというお話でしたが、最近の状態では、まあ始終風向きや潮流関係によって動いているのですから、いつの時点をとらえておっしゃっているのかわかりませんけれども、またその灯台の中に入ってからの地点等も問題になりますし、どこをとっておられるかわかりませんが、五メートル以上の水深があるということは、もら遭難地点を通り過ぎてからの地点であって、その以内における、いわゆる遭難の起こる原因は、やはり水深が足らない。そこで、いそ波になったりさか波になったりして事故が起こるわけですから、水深が足らないことは、これはごく最近海上保安部でもって調査をした資料に基づいても、現にこの問も「なみちどり」という救助艇が出動できなかったほど浅いのですから、この点はおっしゃられる通り、希望としては干潮時における五メートル半の水深を維持するように計画もし、努力もしておられるのでしょうけれども、実際には、漁港から外洋に出る間は、そういうことにはなっておらないと私は思うのです。  なお、この点については、これは漁港部というよりも、むしろ建設省の所管になるかもしれませんので、なおこの問題の、今の質問のほかにも、本日お尋ねしております質問内容は、広くそちこちに関係いたしますから、一々御指名申し上げて御質問申し上げませんから、所管の点であるとお考えになられましたならば、一つそれぞれの方々から遠慮なしに進んで御指示をいただきたいと思います。  そこで、今の問題も、これは建設省の関係にもなろうかと思うのですが、銚子漁港から一の島灯台の前を通って出て行く水深は、最近の御調査では一体どういうことになっておりますか。関係の方の御答弁をお願いしたい。
  62. 川村満雄

    説明員(川村満雄君) 建設省におきましては、一年に一ぺんくらいの水深測量をやっておると思っておりますけれども現状ではまだはっきりした結果を私現在持っておりませんから、お答えできません。
  63. 林坦

    政府委員(林坦君) 銚子港の水深につきましては、私の方の水路部で調査をいたしております。それによりますと、もちろん、水路によりましては三メート九四〇、三メートル六〇といったような深さで、ずっと続いておりますけれども、あの河口の中には、二メートル一〇あるいは一メートル何がしといった所もあるのでございます。しかし、一応現在の船の出入りは、灯台に寄りました方向で、そちらを通って参りますと、大体三メートル六〇ないし四メートル、五メートルといったような所を通って出る、こういうふうになっております。
  64. 片岡文重

    片岡文重君 技術屋さんの調査によったことでしょうし、今の御答弁はもちろん最新のものでしょうから……。一体、それはいつごろ調査をされた結果ですか。私の聞いておるところでは、三メートル以上全部あるというわけではない。もちろん、これは航路についてです。航路以外の所は、これはむしろ治水関係において問題になるでしょうが、そうでなしに、漁港まで入る外洋と漁港との出入りの航路で、すべて三メートル以上ということではない、もっと浅い所もあるというふうに私は聞いておるのですがどうですか。
  65. 林坦

    政府委員(林坦君) ただいま御指摘のございましたように、航路筋といえども、奥の方に参りますと二メートルの所もある。あるいは岸に寄った所は、もっと浅い所ももちろんございます。しかし、先ほどお話のございました例の防波堤のある近くを申し上げますと、大体三メートル六〇から四メートルということを申し土げたわけでございます。
  66. 片岡文重

    片岡文重君 そこで、水深を最低限維持するということが、遭難防止のためには、ますもってきわめて必要なことだと思うのですが、この水深を維持するためには、やはり上流からの土砂並びに鹿島灘から押し寄せてくる砂で埋没されることを防がなければならない。そのためには年々浚渫をしていかなければいけないと思うのですが、最近とられた措置を見ると、本年度国から一千万、総額三千万円の浚渫を特にこれは認めていただいたそうでして、大蔵省、建設省等では大へんに御尽力いただいたということで、地元でも非常な感謝を申し上げております。しかし、来年度からの浚渫ということになると、これは、ことしとった措置がきわめて特異なことであるから、今後はやることはできないということをおっしゃっておられるやに聞きますが、少なくとも第三種漁港として認められており、しかも、年々今申し上げましたような貴重な人命が失われておる。その大きさな理由としては、水深の維持が困難であるからということであるなら、これはやっぱり続けてやっていただかなければいけないのっではないか。浚渫は続けてやっていただかなければいけないのではないか、特に河川管理の面からいっても、水深を深め、河口の水勢を強くして埋没を防ぐと同時に、高波の起こることを防ぐように、上流の洪水被害もなくするような措置を今からとってねかなければいけないのではないか。  幸いにして関東地方には、年々北九州や中部地方、近畿等におけるような風水害はあまり起こりません。しかし、青史以来絶無であったとは言えぬわけです。そろそろ関東地方にも台風被害の訪れるころになってきておるのではないか。中部地方等における、名古屋を中心としたあの激甚な被害地では、今もなお、きのうおとといのNHKのテレビなどでは、まだ水の中にある悲惨な状態を伝えておりましたけれども、あれとても、もし予防措置か十分に政府によってとられておったならば起こらなかったであろうということが、死児のよわいを数えることになりますけれども、言い得るわけです。この坂東太郎が一たび怒るという事態を想定すれば、上流はもちろん、下流に及ぼす被害も想像に余りあると思う。起こってから巨額の費用を投ずるならば、年々わずかな費用を投じて河川管理を十分にしておくことの方がよろしいのではないか。この点については、一体河川関係の方々はどういうふうにお考えになっておられるか。それから、保安庁の水路部としては、調査をされるだけであって、そういう河川管理の面からの要請なりあるいは希望等、あるいは措置などということについては、権限外としてタッチしないのか。この点を一つ双方からお聞きしたい。
  67. 川村満雄

    説明員(川村満雄君) 利根川の河口につきまして、ただいま片岡委員から御質問がございましたけれども、われわれの方といたしましては、利根川の洪水流量を疎通させるための能力は現在でも持っておりまして、洪水時に砂が掘れて流れていくという現状でございまして、その後洪水が減水してくるごとにまたもとへ戻っていくという現状で、洪水流量が最大なときには砂が掘れて流れていく、こういう現状で、現在では洪水疎通上さして障害がないように感じております。
  68. 高橋泰彦

    説明員高橋泰彦君) 漁港周辺の水深がだんだん浅くなっているというような傾向がございますので、私ども非常に憂慮しているような次第でございます。通例によりますと、漁港の維持管理は漁港の管理者が行なうことが建前でございますけれども、ただいま申し上げましたような心配もございまするので、先ほど御指摘のように、三十四年度では約三千万円でとりあえず航路の浚渫をした次第でございます。  なお、特に、川と漁港の問題でございますが、これは、先ほど政務次官よりお答えいたしましたように、なかなか技術的にはむずかしい問題がたくさんあるようでございます。それで、技術的な問題を解決することがやはり必要だと思われます。で、とりあえずたまった砂を除去することは、もちろん応急対策として必要なことは、これはもう申し上げるまでもありませんが、しかし、できますれば、たまったのを取るというだけではなくって、河川と漁港との両立し得るような技術的な建設ができれば一番いいわけでありまして、こういうことが可能かどうかということについても非常に私ども関心を持っているものでございます。この考え方に基づきまして、昭和三十三年度以降三ヵ年の事業費、約千六百二十万円計上しておるわけでございますが、これを計上いたしまして建設省に委託いたしまして、ただいまこの港の模型実験を実施いたしておりまするので、こういう点について何らか技術的な解決の道をはかることができれば、かなり基本的に解決できるのではないかというふうに考えております。しかしながら、御指摘のように、これはまだ技術的研究の段階でございますので、やはりたまりました砂を取ることも応急対策として必要であることについては、これはもう御説明申し上げるまでもない点ではなかろうかというふうに考えておる次第でございます。
  69. 片岡文重

    片岡文重君 治水課長に伺いますが、そうすると、建設省の立場から見た河川管理の面からいえば、年々の利根川河口における浚渫は必要がない、台風被害に対する対策もあの程度で十分である、現在こういうお考えですか。
  70. 川村満雄

    説明員(川村満雄君) お答えいたします。現在では、利根川といたしまして、銚子の河口よりももっと堆積した所がございまして、それの浚渫に主眼を置いておりまして、銚子河口までは手が伸びておりません現状でございます。
  71. 片岡文重

    片岡文重君 そうすると、予算工事その他の関係で、上流における措置はやっておるが、でき得るならやっぱり河口もやりたい、やらなきゃいかぬのだ、だができないのだ、こういうことなのですか。それとも、上流だけやっておけば河口は今の程度で年々の浚渫等は必要ない、こういうことなんでしょうか。
  72. 川村満雄

    説明員(川村満雄君) 現在、われわれの方で、建設省でやっております仕事の内容を申し上げますと、銚子の河口につきましては波崎川の導流堤をやっておりまして、これにつきましては、大体昔から、銚子漁港をやるときに一ノ鳥灯台の右岸の防波堤をやったわけでございますが、左岸の方は一つも取りかからなかったわけでございましてその関係上、砂州の消長が、左岸の方の波崎川の砂州の消長が非常にはなはだしくて、いわゆる利根川の流砂と、それから海の方の沿岸潮流や漂砂の関係で非常に砂州がはなはだしく消長しておりまして、その砂州の消長をできるだけ避けるようにしたいというので、左岸の導流堤を昭和二十三年から取りかかっておりまして、現在まで大体工事費が、一億六千六百万円の工事費を投じて現状までできておるわけでございますが、今後われわれの方といたしましては、全体計画といたしましては、導流堤に五億くらい金をつけたいという総体の計画を持っているうち、ただいま御説明申し上げましたように、一億六千六正百万円の事業をやってきた現状でございまして決して銚子のそのものについて水深を維持するためにどうこうという問題ではございませんで、われわれの方としては洪水流量を排除するのに差しつかえない程度工事をやっておりまして、航路の水深につきましては、建設省としては別にどうという考えはございませんで、洪水の疎通を最大にさせると、こういう考えを持って仕事をしておる現状でございます。
  73. 千田正

    ○千田正君 関連して。さっきから片岡委員の御質問伺っておりますが、先般来の片岡委員からの質問の内容によると、年々いろんないわゆる災害が起こる、その起こる原因は何ですか。さっきからお話を伺っていると、漂砂あるいは流砂、そういうものが滞留して、そのために水深がだんだん浅くなる、そういうために起こるような災害なのか、その点は何が一体そういう原因なのか、はっきり……。私は、水産庁とそれから今建設省の治水課長が言っておるような、洪水の流量の調節だけがあなた方の仕事ではない。建設省としては国の全般のことを考えなくちゃならない。何がそういう原因なのかということをここではっきり、そういう対処する方針を片岡委員質問に対してお答えしていただきたい。何が一体そういう原因なんですか。二十何名も人命を失うとか、あるいはどうしても人命の救助ができないという現状は何が原因なのか、それをはっきり究明しなければ話にならない。
  74. 林坦

    政府委員(林坦君) 銚子の河口につきまして今度のような遭難が起こったということにつきましては、いろいろ問題があると思います。ただ、ここは河口港でございまして、その特殊性といたしまして水深が浅いというのも一つ原因でございます。それから、川から流れ出す水流と、それから風、うねりの方向等が交差するときに、複雑な波が起こるという、そのためにその船の出入が非常に危険になる。特に銚子におきましては、東または北東の風が吹きました場合に、特にその点が顕著である。そういうような問題が、銚子の河口港としての避難に関連しました特長であろうと私ども考えております。従って、ただ水深だけの問題ではございませんが、水深もやはり、あすこが浅いことのために非常に操船がむずかしいという面におきましては、やっぱり一半の原因であることは事実だろうと思います。
  75. 千田正

    ○千田正君 水産庁の立場からいえば、漁港をどうして維持するかという問題、それから建設省の立場からいえば、やはり利根川の治水と銚子の河口におけるそうした災害を除去するというのが、一つの目標でなければならない。それが海上保安庁としましては、航行の安全、そして船舶の出入に対して安全を保持しなければならない。これは三者三様としての背任があるわけです。それが一つになって政策をやらなければ、こういう問題は解決しない。いわゆるそこには、セクショナリズムという非難を受ける原因がそういうところにあるので、あなた方の総合研究した結果を、ここで一つ片岡委員質問にお答えしていただきたい。そうでなければ、人災というもの、天災を防止するための——人災ということまでいわれておる。天災か人災か。セクショナリズムをおのおの言っておったのじゃ問題を解決しないから、総合して、どういうところに重点を置いたら解決できるか、解決の対処方針をここで話していただきたい。
  76. 川村満雄

    説明員(川村満雄君) 現在、われわれの方で水産庁から委託を受けてやっております土木試験の現状を、御説明申し上げたいと思います。それは、昭和三十三年に企画庁の調整費が銚子の漁港につきまして、そんなにしょっちゅう維持をやっては非常に金がかかるという水産庁の申し入れで、どういう構造物を作ったら川の方に障害がないかという申し入れがあったわけでございまして、それにつきまして水産庁と協議しまして、ある程度の形、潜堤みたいなものを河口に、現在の導流堤にほほ並行して作る、こういう形になったわけでございますが、それにつきまして大型の模型実験をやりまして、その模型実験を作って、そういう潜堤を作ったことが上流の川に対してどういう影響を与えるかということにつきまして、目下土木試験所で研究しておる、模型実験をやっておる最中でございます。昭和三十三年度におきましては、調整費として六百八十万円ついております。それから昭和三十四年度には五百万円ついております。そのうち、われわれの方としては、三十三年度に模型試験の製作費で四十万円使っただけでございまして、あとは現地の波力とか、河口とか、潮流とか、漂砂の状態とか、そういうものの基礎調査をやりまして、実験のデータを整えたにとどまりまして、三十四年度には模型が大体九月にできて、来年の十月ごろまでには結果が出る、こういう現状でございますことを御報告申し上げます。
  77. 林真治

    説明員(林真治君) 同じ問題でございますが、ただいま治水課長からお話がごさいましたように、根本的な問題といたしましては、先ほど私の方の次長からも話がございましたように、維持は基本的には管理者の責任ということになっておりまするので、継続いたしましてこれをやりますことにはいろいろ問題がございますので、銚子の航路の水深維持という問題につきましては、抜本的な問題を考えたい。これが利根川に関係をいたしまするので、いろいろ先ほど水課長からお話がございましたように、御協議をいたしました。なお、これには千葉県当局も加えまして御協議をいたしまして、どういう方法をとりましてどういう工作物を作れば、治水上及び航路の水深維持上長も有効であり、またこれが経済的に成り立つかという問題をただいま研究をいたしておるわけでございます。この確立を待ちまして、漁港立場といたしましては航路の水深維持という問題を一つ考えて参りたい。遭難につきましてはいろいろな事情があることと考えまして、先ほどお話が出ましたが、水深の不足ということのみではない。これは私ははなはだ申し上げかねる次第でありますけれども、今回の試験によりましても、船の大きさその他の点から見まして、必ずしも定められておりまする航路の水深が不足するためにのみ起こったものではないというふうに感じておるのでありますが、ともかくそれはそれといたしまして、航路が完全でないということは誘発いたす原因となる場合が多いのでありますから、その根本的な解決をほかりたいということで、今鋭意研究しておる次第でございます。
  78. 片岡文重

    片岡文重君 大体この銚子における海難の起こる原因というのは、今千田さんからもお話がありましたけれども、銚子の港の地理的な形、港の形、それから太平洋に面しておる日本列島の北部に属する風向き、それから潮流、こういうものももちろん影響しておるでしょうし、それからこの日本一といわれる利根川の河口にあるということが問題であろうと思う。しかし、風向きとか潮流とかいうものは、だからといって、今すぐ変えるわけには残念ながらいかぬでしょう。残された問題は、この河口なるがゆえにということになれば、その河口における水深なり水勢なりというようなものが問題になってくる。そうしてまた、港の形というものが問題になってくると思う。そこで、この災害をなくするためには、今さしあたって考えられる風向きや潮流は変えられないということになれば、そういう前提に立って考えれば、少なくとも人力によって左右できるところの水勢なり、水深なり、あるいは港の形なり、港の形を変えるということになれば、ほかに港を移すということになろうかと思いますが、そういうことで、今さしあたり人力によってなし得る、解決し得る点について今質問しておるわけであります。  そこで、さっきの治水課長お話によると、どうも漁港の機能発揮ということについてはあまり——あまりじゃなくて、全然考慮されておらない。従って、漁民の生活というものについては全然関知しておられないような口ぶりでしたけれども、これは今千円委員から御指摘された通り、やはり政府一つの機関としておやりになるのですから、治水対策、河川管理の面からどうである、あわせてこれは切っても切れない銚子漁港の機能発揮のためにどうである、遭難防止のためにはどういう役割を果たすのかということを十分お考えになって、これはやっていただかなければ私はならないと思うのです。今の治水課長お話を伺っていると、水産庁から依頼を受けて、江戸川の篠崎でやっておられる模型実験も頼まれたからやるということだけであって、やった結果、漁船の航行にはさしつかえない、よくなる、けれども河川管理の面からいって困るということであるなら、建設省としてはその背割堤の実施には反対をされるのかどうかということも、われわれとしては心配になってくる。少なくともあの模型実験をされているのは、これは私——私ばかりじゃありません、地元の漁民は、少なくとも水産庁と建設省とが十分なる合意の上で、今日考えられる方法としてはこの河口に背割堤を作って、今あなたのお話しになった導流堤をさらに沖へ延ばすこととあわせて、背割堤を中に作って水深の維持をはかる。そのためには、その背割堤をどういう方向で、どのくらいの長さで、どのくらいの高さでというような技術的な具体面を見出すために実験をしておられる、こういうふうに理解をしておるのですけれども、そうではなくて、一つの方法としては考えられるが、場合によればほかのこともやるのだ。この実験はやってみなければ何とも言えない、ただ頼まれたからやっているのだということだけなんでしょうか。それとも、合意の上で、今日考えられる方法としてはこの背割堤だけだ。河川管理の面にもよろしい、漁民のためにもよろしい、漁船の出入にもよろしいということの合意に達してならば私の方で試験をしましょうということで、水産庁の依頼を受けてあそこで模型実験をされておると、こういうことなんですか。その点一つ明確にしていただきたい。
  79. 川村満雄

    説明員(川村満雄君) 三十三年度に調整費を要求するときは、建設省で要求したわけでございますけれども、建設軒に調整費を出しますと、全額国費ということに相なるわけでございまして、これは調整費を県の方へ出しますと補助になってきまして、全額国費でなくて済むという関係で、水産庁の方に調整費がついたわけでございます。決して建設省が逃げているわけではございません。建設省が頼まれたからというわけでもなし、必要があるからやるべきだという関係で、一応こちらの建設省といたしましては、利根川の河口の銚子漁港をいろいろ調べていかなければならぬというので、調整費を要求したわけでございますが、大蔵省の関係でかように相なったわけでございまして、決して建設省の責任じゃございません。
  80. 片岡文重

    片岡文重君 その点はわかりましたが、私ども伺っているのは、今試験をしている模型実験は背割堤をつけるということでやっているそうですが、その背割堤をつけるということは水産庁からの要求によってやっている。従って、その意見を調整したのか、あるいは建設省として、あなたがさっき言われるように、調整費は建設省で要求したのだからということで、水産庁の意向等にはあまり縛られないで、建設省の立場、つまり河川管理の立場からだけ考えて今の実験をやっておられるのか、その点を明確にしてほしいと思うのです。つまり、今やっておるのは、くどいようですが、さっき申し上げたように、今やっておる模型実験は、この河口に導流堤を延ばすのはどの程度に延ばしたらいいのかということのほかに、背割堤を中に作る。その背割堤は高さがどうだとか、長さがどうだとか、方向がどうだとかという具体的な面を、水産庁の何といいますか、希望に沿うように、つまり漁船の航行に差しつかえなく、しかも治水対策に差しつかえないように、こういうことの結論が出てやっておるのか。そうではなくて、建設省としてはそういう面についてはあまり関係ない。つまり、河川管理だけは考えるけれども、漁船の入出港等についてはあまり考えておらぬのだ、こういうことなのか、その点を明確にしてもらいたいということです。
  81. 川村満雄

    説明員(川村満雄君) ただいまの御質問にお答えいたします。われわれの方といたしましては、非常に、銚子の漁港につきましては、毎年水深維持のために、非常に浚渫をしなければならぬとかいうために、年々莫大な経費がかかる、こういうことで、非常に銚子の漁港としては、将来維持費にたえきれなくなる、こういうことになって、非常に、何とか特別な方法はないかという御要望があったわけでございまして、いろいろわれわれの方でも研究しましたし、同時に水産庁でも研究してわれわれの方と一度打ち合わせしたこともございますし、それによってある程度、昔寄州が相当出ておったときがございまして、その寄州の消長の、一番水深維持に必要なときがどういうときかということもある程度あったわけでございますが、その程度までに、ある程度水深維持のために潜堤——もぐりの堤防でございますが、そういうものをこしらえた場合に、水深維持が必ずできるかどうかという問題が一つと、それから潜堤を作りましたために、上流の水位を上げる悪い影響が出てくるかどうか、そういうために潜堤の高さをどういうふうにしたらいいか、それから船が入るために、その潜堤の方向が水深の方向にどういうふうに悪い影響があるかどうかという線の関係を出してみるとか、そういういろいろな目的で実験を現在している現状でございます。
  82. 片岡文重

    片岡文重君 どうもはっきりつかめないのです。しかし、そうすると、漁船の航行についても十分考慮の上で、なおかつ、河川管理の面で支障を来たさないということで、今の模型実験をやっておる。従って、その模型実験の対象となっておるのは、現在の学術なり技術をもってしては、この背割堤を設けることは最上の方法である。しかも、これは水産庁とは十分合意の上でやっておる、こういうことなんですか。簡単でけっこうですから。
  83. 川村満雄

    説明員(川村満雄君) ただいまのおっしゃる通りでございます。
  84. 片岡文重

    片岡文重君 そうしますと、私もあの実験じゃよく見ていろいろ御説明を伺って参りましたが、いつごろ結果が出るのですか。さっきちょっとお話があったようですけれども、聞き落としましたが、試験結果が十月ごろに完成されるというお話だったのです。しかし、これはもっと早めて試験結果を出すわけには参りませんか。
  85. 川村満雄

    説明員(川村満雄君) お答えいたします。いろいろ模型ができましたのはことしの九月でございまして、実験をやっておる最中でございましてこれからデータを整備したりして、結論が出るのは来年の十月でございます。
  86. 片岡文重

    片岡文重君 もう波起こし機さえつければ、すぐ全般の実験ができるのですから、もっと早く試験結果を出すわけにいかないのかということをお尋ねしておるわけです。なるべく早くしてほしいということです。
  87. 川村満雄

    説明員(川村満雄君) それにつきましては、いろいろ試験所の方へ折衝して今後御意見通り、御趣旨の通りに、実験の結果が早く出るように努力いたしたいと思いますが、それにはやっぱり先立つ予算というものが出てきやせぬか、この点もよく調査してみなければ御返事いたしかねるのでございます。
  88. 片岡文重

    片岡文重君 どうも時間がなくて何ですが、今の点については、大体それではこのままにしてやめておきたいのですが、なお水深維持のために、建設省としては私は十分考えていただきたい。特に浚渫をしなければならないというのが現状であり、年々川は埋まっておるんですから、これはぜひ毎年浚渫のできるような方法を一つ考えて全額国庫負担でなければできないというならば、地元とも十分御相談の上、措置するように強く御要望を申し上げたいと思います。  それから、保安庁にお尋ねをしたいのですが、すでに長官もお聞きになっておられると思うのですけれども、せんだっての、つまり十一月二十五日の海難事故に対して、地元銚子の保安本部の諸君も、部長初じめそれぞれの諸君は、現在の装備でもできる限りの努力を私はされたものと思うのです。しかし、お気の毒ですが、地元の漁民も、遭難された遺家族も、感謝よりもむしろ遺憾の意を表しておる方が多いようです。これは、あの危険な状態の中にあってせっかく努力をされながら、そういう逆な考えを持たれたのでは、はなはだお気の毒だと思います。そこで、一体そういう結果を招いたことは、感謝をされないで不満を抱かれたということはどういうところに原因があるか、装備が不十分で活動できなかったのか、あるいはいわゆる士気が弛緩しておって十分な活動ができなかったのか、そういう点について一つ考えのほどをお聞かせいただきたい。
  89. 林坦

    政府委員(林坦君) ただいま片岡委員から御指摘になりました点につきまして、私ども、あの直後に人を派しまして、実情をいろいろ調査いたさせたのでございます。その結果によりますと、とにかく海上保安庁の現地の職員は、あの非常にむずかしい場所で、彼らとしては一生懸命にやったということは認められるのでございますが、いろいろむずかしい状況が重なって参りましてたとえば船を出すという場合に、それがほかの船といかり綱がもつれ合って、そのために出るのがおくれたというようなこと、あるいは河口の波の工合、あるいは浅さの関係から、いろいろと出る場合に波の呼吸をはかるような関係で、非常に出るのがおくれたというような点もございます。これらは事情を知らない人から見ますと、いかにも元気がないようにあるいは思われたかもしれませんけれども、少なくともああした海難の起こるような状態でもございますし、非常にむずかしい場所であります関係上、それらの点において、はなはだ十分なる信頼にこたえることかできなかったということは、私としてきわめて遺憾に存じております。  で、これらにつきまして、海上保安庁としては、しからばあの場合にどういう措置をとり得たのであろうかというような点を考えてみますと、確かにあの河口の複雑な状況の港におきましては、いろいろむずかしい、波の状態、風の状態等を考えますと、現在の船がああいう場合に外に出ていくのに適当な船であるかどうかということについては、さらに研究を要する問題である。特殊な河口港に配置すべき巡視船としては、必ずしもあれが特殊な条件を備えたりっぱな船であるということは申し上げられないと思います。従ってそういう点では、われわれとしてももっともっと研究し、さらに努力いたしまして、期待に沿うようなものを備える必要があるということは、われわれ考えておるのでございます。たとえば、もっと、ああいう場所がやむを得ないものであるとするならば、たとえば浅喫水であって速力も相当速い、すなわち波の速力以上に高速であるというような点も必要でございましょうし、また耐波性も、そういう浅喫水でありながらも耐波性にすぐれておるというようなことも必要でございましょうし、いろいろ問題としてはむずかしい点があるかとも思いますけれども、それらが十分満たされておったとは言えないというような点はございます。  なおまた、あの職員が出かけて行きまして、もやい銃を発射したりなどしましたけれども、それがうまくいかなかったという実情もございます。もちろん、あの場合、もやい銃を発射したら必ず助けられたかどうかということはわかりませんけれども、あの場合、持って行きましたもやい銃なるものは、その射程も比較的短いものでございます。二百五十メーターぐらいのものでございます。もやい銃を、さらに長距離に届くようなもやい銃をもっと早く持たしておいたらよかったではないか、あとからいえば悔やまれることでございます。これらにつきましても、私どもとしましては、目下実は予算をたまたま要求中でございましてそうしたものを、こうした場所に、四百メーター程度届くような射程のものを十五台ほど買いたいというので、目下予算を要求いたしております。またあの場合に、あのような浅い場所で、波のひどい場所においてあれだけの人たちを助けるためには、普通の船ではなかなからまくいかないとするならば、もっと別にわれわれの方で研究いたしておりますものとしては、ライフ・セービング・ネットというようなものも研究いたしております。これも実は来年度に買いたいといいますか、そういうものをこちらでまあいろいろ考えまして購入するようなことにしたいというので、これもやはり現在予算を要求しておる途中で、不幸にああいった事故が起こったわけでございます。  その他、あのときはなかなかむずかしいことではございましたのですが、気象の関係からいえば、必ずしもいつでもそういうことができるとは限りませんけれども、航空機による救助などももっと早くやれたのじゃないかというようなことも、現地の人たちは航空機というものの天候状態についての知識が十分にないためもありますけれども、あるいは不満の一つになっておるのじゃないかと考えられます。この点につきましても、私どもは航空機の購入ももちろん予算要求しておりますけれども、これが必ずしも実現しない場合でも、羽田に、現在北の方に配置しておりますヘリコプターをこちらの関東方面に持って参りまして、こうした場合の措置を講ずるように、実は近くそういうことの実現するように、現在配属がえの研究をいたしております。  そういったような、われわれとしてもまだまだ、予算の面もございますけれども、足りなかった点があることは深く反省いたしております。地元の方々の御満足を得られなかったことは、私ども現地の者が努力しました点を顧みますと、きわめてどうも私どもとしても遺憾に存ずることでございますけれども、もう少し地元の方々と平素緊密に連絡をとってやっておくというようなことが必要であろうと思いましてさらにそういった面についても今後努力するつもりでございます。
  90. 片岡文重

    片岡文重君 だいぶ具体的に今日お考えになっておられる点をお述べいただいたようですが、おっしゃられるように、装備の点においては、私も現地を見て参りましたが、きわめて不十分だと思います。それについて今のいろいる、たとえばライフ・セービング・ネットなり、あるいはもやい銃等に十分な——十分とは申しませんが、とにかくその予算を要求しておられる。大へんけっこうですが、この予算の獲得について自信を持っておられるのかどうか。たまたま、ことしは中部地方における十四号、十五号台風その他、あるいは七号台風等もあり、全国的に西の方面において大きな事故がありました。天下を衝動させるような大きな事故がありましたから、この銚子港における遭難のごときはあまり問題にもされておらなかったようですけれども、とにかく一挙にして二十八名の漁民が海難のために人命を失っておる。その遺族たちは今日もなお、この雨の中にも、あの一の島灯台付近に集まって遺体を求めておる。こういう状態を、やはり東京におられる方々も十分現地に思いをはせて、その対策を急いでいただきたいと思うのです。  で、今の海上保安部における装備というものは、あまりにも私は無責任なやり方ではないのか。もやい銃を持って行ってそれが用をなさないなとということでは、たとえそれが距離的に届かなかったとしても、私は弁解の余地がないと思うのです。しかも、なぜその訓練をしなかったのかと言ったところが、一度その訓練をすれば三千円か四千円の金がかかる、一つのたまで。ところが、その三千円なり四千円の金がないと、こういうのです。幾ら日本の国が貧乏でも、このくらいの金まで渋っていかなければならぬのかと思うと、私はまあ実際腹立たしくなるというよりも、その人命を軽んずるといいますか、少なくとも漁民や農民に対する政府考え方というものがあまりにも冷淡過ぎるじゃないかと私は思うのです。ぜひそのもやい銃なりあるいはセービング・ネットなりを備えつけられると同時に、そういうものの使用が、使うことが、いっどんな場合にもすぐに、巧みに使えるような状態に、平素その関係諸君を訓練をしておくようにしていただきたいと思うのです。そのために予算が必要であるというのならば、これは十分確保していただかなければ、せっかく備えつけられたものが用をなさない。むしろ、その買った金だけがむだになるというものです。その点については十分に一つやっていただきたいと思うのです。時間があれば、それらの性能なり、それから装備される台数なり、員数等についてもこまかにお聞きしたいのですけれども、時間もたっておりますからそれは省略いたして、長官の誠意に私はお願いをして、この問題を一つ解決をしていただきたいと思うのです。  それから、このヘリコプターとか飛行機等の航空機の活用でありますが、何か衆議院における久保君の御質問にお答えになって、長官は、羽田かどこかにヘリコプターを設けられるような御答弁があったように伺っております。しかし、現地で遭難をされたせんだっての諸君は三十四名です。で、生き残った方が六名。この六名の諸君は大体一時間ぐらい——四十分ないし一時間泳いで助かった人たちです。で、この人たちの泳いで助かった状態をいろいろとお聞きし、今後の参考のためにいろいろお聞きしたのですけれども、羽田から一体ヘリコプターが飛び立って、銚子から連絡を受けて羽田から飛び立って銚子まで来るのにどれくらいの時間がかかるか、それから助かった諸君は、ほんのわずかの棒切れを持っておったために助かった。で、もしこのヘリコプターが現地に、銚子に備えつけられておって、直ちに出動をして、そうしてたとえば膨張式救命ブイとか、あるいはその他の浮環なり、セイビング・ネットなりを直ちに投下してやれば、まああとの祭りですけれども、おそらくこの二十八名という諸君は、ほとんどの諸君は助かったのじゃないかと思うのです。そういう点を考えますと、羽田に置くというようなことはせぬで、ヘリコプターの一台や二台は、私はあの銚子の海流なり潮流なりを考えた場合、また風向き等によってそれは航法上困難なことがあるでしょうけれども、いつもあそこからでないと飛び出せない、いつも用をなさないということではないと思う。十分な訓練をさせておいて、でき得れば避難がなくとも、しけ等の場合には常に海上を遊よくして、その漁船の定められた航路の案内をするなりなんなり予防の措置を講じてやることも必要ではないか。やろうと思えば、してやらなければならないと思われるような仕事がたくさん現地にはあります。そういう措置がとられるような方法を講じてやらなければいけないと思うのですが、そういう点について、長官はどのようにお考えになりましょうか。
  91. 林坦

    政府委員(林坦君) 今、私どもこちらの救難態勢を強化するという意味におきまして、航空機のことも申し上げたのでございますが、もちろん航空機がありますれば、あらゆるところに航空機というものがあれば非常に助かるということは事実でございます。ただ現在の海上保安庁の勢力及び現在要求しております予算程度におきましては、各現地の、比較的こういう危険な場所にヘリコプターを全部配置するというような状態に、どうもちょっと今の見通しとして簡単にできないのじゃないかと、実はその点は私としても楽観はいたしておりません。特に羽田あたりから行くとなれば、御指摘の通りとにかく一時間以内に到達するというわけには参りませんので、今の御指摘のような場合、非常に困るということは、やはりそれだけではこの問題は救済できないということになります。問題は、個々の問題としては、根本的には先ほども御指摘がございましたように、この港湾改良によるほかは解決の道はないと私も思います。ただ、それまでの間、できるだけ私どもとしましては、航路筋の岩礁の除去であるとか、適当な推進の位置であるとかいうような面について関係方面によく連絡をとって、できるだけそういう面を進めていただくとともに、また、その付近の名洗その他の避難港の整備を急いでいただくというような面でも、関係の方面に連絡をして促進するようにしたいと思っております。なお、出入港の船舶あるいは船員の操船の関係等につきまして、できるだけの機会をとらえまして、技術指導なり、あるいは研究会なりを催すというようなことによって、こうした災害をなくするように一つ努める必要がある、これは現に明日の午後に現地におきまして海難防止の対策協議会を開くことにしております。いろいろ現地の漁民の方々が、その土地になれ過ぎたあまりに、航海の方法等に若干無理があるというような面も多分に原因一つではないかと考えられますので、そういう点についても、よく一つ研究を進めていくようにしたい。また波浪の問題につきましては、波浪の警報といったような問題も、できるだけこれを早く実現するように努力をしたいというので、現在海難防止協議会その他と打ち合わせをして実施に至るように取り運んでおります。その他現地の漁船の有効な救命具、さっきのお話にございましたが、救命具を十分船に積んでおりますならば、あるいは遭難も相当軽減されたかもしれないというような面もございます。これらも現地に当たってみますと、実はあまりそういった面についての注意が十分払われていないという実情もございますので、こういう点についても、その協議会その他において十分に周知徹底をはかり、ヘリコプターで物を落とすのも、もちろん必要でございますが、そういったことよりも前に、常にそうした準備を持っているということが、まず一番手近であって一番必要なことではないかと考えております。  それから波浪の問題につきましても、水路部でもすでに去年の九月に約二十日間ほどあの方面の波浪の観測をいたしました。なお、今後のいろいろ巡視艇の建造その他とも関係がございますので、こういった面もざらに進めることにいたしまして、できるだけ、今御指摘のございましたような問題を、われわれの手の届く範囲においては全力を尽くして一つ努力いたしたいと考えております。
  92. 片岡文重

    片岡文重君 予算の面に問題が帰着するのですけれども、たとえばヘリコプターを一台設置してみたところで一億とはかからないでしょう、今は。そこで、先ほど愛知川の例等を聞いておれば、地元でそういう何が何でもと言っておられないところにはやろうとしている。地元から何が何でもやってくれというところは、そう大した予算もかからぬのに、予算でできない、できないというのはこれは所管が違うのだとおっしゃられればそれまでですけれども、少なくとも、事人命に関するのですから、もう少し誠意をもって御努力を私はいただきたいと思うのです。船になると、積んでおるのが、救命ブイ等は一番簡単である、早い、おっしゃる通りですけれども、とっさに、あっという間に転覆をしてしまってどうすることもできないというような事態もあるわけですね、そういうときに、これはやっぱりはたから投げてやるよりほかに手はないのです。そういう事故の方がむしろ銚子沖などにおいては例が多い、そういう点等もやはり考えていただきたい。こまかな議論をここでもって繰り返して言おうとは思いませんけれども、そういう点等考えられて、少なくともセイビング・ネットなり、あるいは救命ブィというようなものは、私はでき得れば一の島灯台の近所に見張所のようなものを作っていただいて、そしてそこにそういうものは保管をしておく。そして見張員もそこに置いて、そして荒天の場合には、できるならば無線等で操縦ができるように、無線等といっても漁船の方にそれを持っていなければどうにもなりませんが、とにかくヘリコプターなり、あるいはその信号等によって危険を知らせたり、誘導したりするような措置をとる。この見張所を作るといっても、私はそう驚くような予算が必要だとは思えません。私は一つの方法として申し上げるわけです。そうすればこの間のように、もやい銃の所在をまず探して、それから持ってきたら役に立たなかったというようなことでなしに、海岸に、波打ちぎわに置くわけですから、すぐに使えるようにして、平素その訓練をする。今は遭難があったということで届けをして一年に一回か二回やればやるのだ、こういう状態です。従ってその手入れも不十分でしょうし、いわんや、訓練も操作も未熟であるということになるわけですから、そういうことのないように一つぜひお手配をいただきたい。重ねて私は強く要望申し上げるわけです。どうしてもヘリコプターの一台ぐらいは一つ銚子の保安部の所管として現地に常備するように、そして見張所も一つ作るようにということをぜひお願いをしておきたい。  それから保安部の何ですか、構成といいましょうか、現在の規模ですが、これも伺ってみますと、肝心の救難係が一人しかおらない。一体、こんなことではたしてこれまでこの海難防止、海難救助に誠意をもって当たってきたと言えるかどうか。警備係三名、救難係一名、警備救難課長一名、大体これが警備関係、こういうことでは、これは高級船員の住宅であるとか、連絡の方法であるとか、もうこういうことについては幾ら言っても切りがないほど誠意がなさ過ぎると思うのです。この点について長官は、この保安部の人員構成にもう少しゆとりとまでいかなくても、少なくとも必要最小限度の備えをする必要があるのではないかと私は考えるのですが、長官はどういうふうにお考えになるか。それとも今日のこの銚子保安部の構成で十分にやっていけるとお考えになっておられますか、お伺いしたい。
  93. 林坦

    政府委員(林坦君) 保安部の定員につきましては、現在定員の外にあります非常勤といいますか、それを二名ほど加えております。なお、三管本部におきまして、さらにこれの、いろいろ事故が多い関係もありますので、強化をいたしまして、現在保安部の陸の関係におります者は二十一名をもってやっております。今、御指摘ございましたが、救難係に現在は三名を配置いたしてやっておる状況でございます。もちろん海上保安庁の人員は全国各地にばらまかなければなりません関係上、一カ所において十分とはもちろん申し上げることはできないのでございましてこの定員の増加につきましては、われわれいつも予算折衝その他におきまして全力を尽くしておるのでございますが、現在のところにおきましては、相当無理をしてほかから回してここを何とかしのいでおるという状況でございます。今後ともそれらの点につきましては努力いたしたいと思います。
  94. 片岡文重

    片岡文重君 ほかのところからということは、どこから回されるのか知りませんけれども、ほかの港湾についても、おそらくこの銚子と同じようにそうそのゆとりがあるとは私は思えません。そういうところから持ってくると、今度は持ってこられた方が欠員になるわけです。手薄になるわけです。そういうことを私は望んでおるわけではもちろんございません。やはり必要な人員の必要の程度にもよりますけれども、とにかく、くどく申し上げて恐縮ですが、事人命に関するのですから、こういう点にかける予算なり要員というものは思い切った措置をとられても私は決して行き過ぎであるとは思えないのですよ。例はまあ適切じゃないかもしれませんけれども、せんだってルバング島の二名の元日本兵生存に関しての捜査で、厚生省から支出した金は八百万と聞いております。私はこの八百万が、結果から見れば生存されておらないと確認をされたようであります。しかし、そのために、生存しているかいなかの確認のために八百万という金が使われたのです。民間の金を加えたらおそらく一千万円をこえるだろうといわれております。しかし、この一千万円を使ったことについて、国民だれ一人として私は非難をする者はない。厚生省が来の私はヒットだと思う。やはり人命のとうとさをほんとうに理解されるならば、私は保安庁としてももう少し思い切った措置をとって、装備なり要員の面について考慮していただきたい。それで、おっしゃるように根本対策は、港の問題です。ですから、港の問題についてこれは関係者の熱意と努力を要望し、私どもも及ばずながら、でき得るならば御協力を申し上げたい。しかし、解決するまでの問は、何といってもこの保安庁におすがりをしなければならぬのですから、そういう点で、少なくともそれまででも万全の対策をとっていただきたいということをお願い申し上げるわけです。  次に、海運関係の方にちょっとお尋ねをしたいのですが、今、保安庁長官からもブイを船に備えつけておくのが最も手っとり早いではないかというお話があった。ところが、確かに行ってみてあぜんとすることはそのブイを船体検査の場合に貸し借りをしておる、こういう事態がある。さらに同姓同名の船長が非常に多い、こういうことについて、一体海運月関係では——船舶局ですか、船舶局とも違うのですが——どういうふうにお考えになっておるか、御答弁をいただきたい。
  95. 畑賢二

    説明員(畑賢二君) お答え申し上げます。お話のように以前はだいぶそういうことがございまして、まるで検査のために救命器具を持っておるというふうなことで、特に漁船の場合は漁具が必要でございますので、おろしてしまっておるというようなことがございましたので、最近は救命器具に船の名前を書かせて、そうして検査のときにそれをチェックする、数も規定以上持たせるというようなことを最近は実施しておるような状況でございます。
  96. 片岡文重

    片岡文重君 それでそういう常識では考えられないようなことをやっておるのですが、これはなれ過ぎておるからだと思うのですが、問題は検査のやはり不徹底にも私は原因しておると思う。いろいろ実情を聞いてみると、現在船体検在官だけで、遭難の原因となるエンジンやなんかの検査官は銚子海運支局には一人もおらない。一体こんなことで十分な検査ができるのかどうか。労務官も一人もおらない、こういうことで私は海運局としての義務が果たせるかどうかきわめて遺憾だと思うのですが、一体この補充はいつされるつもりか。ほかにも、これは銚子ばかりではない、ほかの海運支局にもこういう例があるのかどうか、お尋ねしたい。
  97. 畑賢二

    説明員(畑賢二君) お答え申し上げます。今、全国では百八十一名の検査官がおります。これは船体、エンジン両方でございます。検査官がおります海進局、本局を除きまして支局で約四十八ヵ所ございます。そこに分散しておるわけでございます。それで若い検査官は船体、エンジン、経験が多少落ちますので、それぞれ専門のことをやらせますが、ある年輩になりますと自然わかりますので、船体もエンジンも両方検査できるというふうなことでございます、しかし、御指摘のように検査官の数が少ないということはごもっともでございます。私どもも何年も検査官が足りないからといってさ増員の要求をしております。もちろん来年度に対しましても要求をしておるわけでございますが、どうも私ども努力が足りないせいが、いまだに実現しないというのが実情でございます。しかし、私の考えでは、検査官が足りないから検査の質が落ちておるのではないかというふうなことは万々あるまいかと、こう考えておるわけでございます。
  98. 堀本宜実

    委員長堀本宜実君) ちょっと速記をとめて。    〔速記中止〕
  99. 堀本宜実

    委員長堀本宜実君) 速記を起こして。
  100. 片岡文重

    片岡文重君 時間がないのできわめて私遺憾ですが、お昼もだいぶ過ぎておりますから、これで質問を打ち切って、あとは個々に一つお日にかかってお願いをするなりいたしたいと思います。  そこで、政務次官に一つ総括をしてお願いをしておきたいのですが、私の本日お伺いしたいと思っておった事柄は、大体半分お伺いしておりません。しかし、何といいますか、事柄の概要については、お聞きいただいただけでも十分に御理解いただけたと私は思う。根本的な対策を地元民は強く要望いたしております。このためには、先ほど申し上げました通りに、河口港であるということで、どうしてもこの海難が防げないということであるならば、外港を設けるなり、あるいは利根川の流れを変えるなり、あるいは運路を設けて適当な措置を講ずるなり、とにかく抜本的な措置を講じなければならない。そのための研究を、少なくとも銚子市だけでないのはもちろん、千葉県だけの問題ではないわけですから、関東一円に及ぶ利根川の問題ですから、国として責任を持ってその対策を早急に一つ樹立していただきたい、これが一つ。  それからその治水対策とあわせて今申し上げた漁港の問題を一つ解決するように、それからそういう抜本的な解決のできるまでは、少なくとも海難は続くものと考えなければなりませんから、この海難の犠牲を一人でも、少しでも少なくするためには、やはり海上保安庁の非常な御努力をわずらわさなければならない、そのためにはやはり海運局等はもちろん、この要員、装備等について万全を期していただかなければならぬ。これは保安庁といい、海運局といい、運輸省所管ですから、農林政務次官の所管ではないですけれども、本日御出席の何といいましようか、因縁と申しましょうか、大へんお気の毒ですが、ぜひ運輸大臣等にもお話をいただいて、農林大臣ももちろんですが、運輸大臣にもお話をいただいて、この救難のために万全の措置をとるように、せっかくの御尽力をいただきたい。でき得ますならば御所見のほどを伺って、私の質問を終わりたいと思います。
  101. 大野市郎

    政府委員大野市郎君) ただいまの抜本的な対応策につきましては建設省に委託事業もお願いしてあります。その結論を急がせまして完結をさせたいと思います。  それからただいまの保安庁関係は、もちろん所管外でございますが、漁民の生命の問題でありますから、これは農林大臣を通じまして運輸大臣にも、漁民の保護の立場から強く要清を申し上げたいと思います。
  102. 堀本宜実

    委員長堀本宜実君) 他に御発言もないようでありますから、本件はこの程度にいたしまして、ここでしばらく休憩し、午後は三時から再開をいたします。    午後一時四十四分休憩    〔休憩後開会に至らなかった〕