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国務大臣(
中曽根康弘君) その問題は一番重大な問題でありましたので、
原子炉の設置の
基準の基本的態度という
意味で、原子力
委員会において一番重点を置いて検討したことでございます。それで現在どれくらいの放射能が出ることが許容されるかという
許容量の
基準がまず中心になります。で、現在一般に言われているのは
国際放射線防護
委員会、いわゆるICRPというのがございまして、その勧告が
一つの
基準になります。
科学技術庁ではこの
国際放射線防護
委員会の
基準を参考にして、さらにそれより厳格な数字で
科学技術庁の
基準を作りまして、この限度は厳守しなければならぬという
基準ができているわけでございます。そういうのを参考にしまして、原子力
委員会の中に安全の
基準委員会というものができておりまして、伏見康治教授が主査でそれを専門に検討しているのでございます。それでその
委員会におきましては、
国際的にもまだ確立した
基準はないので、
日本だけ先走って幾らというふうにはまだきめにくいのであります。というのは、遺伝の問題やら、その他まだ経験的に出てきていないものもございますから、にわかに
日本だけ独走してきめがたい。そこで一番安全なことは、最も厳格な国よりさらに厳格にしたらいいだろう。今の
基準で行きますと、一番
基準がゆるやかになっているのは
アメリカであります。
アメリカは緊急時の一般大衆に対する
放射線の
事故許容量というものを約千レムないし二千レムと非常に大まかにとっております。そのほかの国々はそれを二百レム、百五十レムぐらいにしてございます。ところが
イギリスにおいて、医学界でいろいろ検討し、決議して、幼児に対する緊急事の
事故許容量は二十五レム、これならば大体安全であるという
基準をとつて、これが一番厳格なわけであります。二十五レムというのは沃度に対するものであります。そこでわれわれの方としましては一番厳格な二十五レムを
基準にして、いわゆる、つまり二百レム出てくるときよりも、二十五レム出てきたらいけない、そういう
意味の
基準で、設計の審査等もやりまして、現在の
コールダーホール・タイプにはもちろんこれが確保されておりますし、今の原子研究所が持っているのもそれが確保されているのであります。それで今のファーマーの
原則によりますと、この構造によってどれくらいの緊急冷却装置を作り、どれくらいの自動ストップ装置を作り、どういう地震に対する対応策をとっておけば、かりにガスダクトに何インチの穴があいて、何秒後に空気がどれくらい入って、それがガスの方へ入っていって、そして
燃料要素の、ちゃんと
被覆してありますが、そこにピンで作ったくらいのかりに穴が幾つあった場合に、そこから空気が浸入していってそこでガス
事故を起こして沃度がそこから出てくる。そういう解析を厳格にやっておりまして、その炉の強さや構造によってみんな
基準が違ってくるわけであります。それで、現在の
コールダーホール・タイプの審査におきましては、そういういろんな全部の解析をやりましても、緊急時における二十五レムが確保されることになっております。ファーマーの
基準によりますと、たしか
三つくらいの
一つの工地条件の
基準がございまして、
一つは四百五十メートル以内に人家がないというようなこと、たしか四百五十メートルだったと思います。それから第二は、炉の中心から三十度の扇形に線を描きまして、そして一・六キロの
範囲内に五百人以上の人間が住んでいないということ、それから、たしか八キロでありましたか、一万人以上の人口がないことが望ましい。それから飛行機の滑走路の線上にないということ、そういうのがファーマーの論文の要旨になっております。原研が今度やろうとするものは、もちろんその条件に適合しておりますが、ただ
一つ久慈という町が一万一千五百人口があるのです。これは約四キロくらいのところにたしかあるので、その
基準にははずれておりますが、しかしファーマーがそれを作りましたのは、いろいろ
放射線の測定をやつておって、それから保健管理をやっておるために、あまり人口が多いというと、いろいろ複雑になってきて手数がかかる、できたら保健管理の上から人口が少ない方かやりいい。前の一、二に比べましてそう重点的なものではない。そういうことでありまして、ファーマーも大丈夫であるということでありますので、われわれば久慈町がありましても、いろいろモニタリング・ステーションその他万全を期してやろうと思いますので、大丈夫だろうと思っております。