○
政府委員(
百田正弘君) 本
法案の
内容につきまして逐条的に御
説明を申し上げたいと思います。
お手元にございまする「
炭鉱離職者臨時措置法案関係資料」のちょうど中ほどに「
主要条文説明」を入れてございますので、御参照願います。
第一条の
目的は、再三
労働大臣からの
提案理由の御
説明にございますように、
石炭鉱業における
失業の情勢が非常に深刻になってきた事実にかんがみまして、
政府におきましても、従来からあるいは
職業紹介、
職業訓練、
公共事業への
吸収といったような一連の
措置をとって参ってきたのでありますが、現状におきましてなお多数の
離職者が
産炭地に滞留しており、その後におきましても、
失業者の
発生を見ておる
状況にかんがみまして従来だけの
措置をもってしては不十分である、特に
石炭産業の
離職者というものは特定の
地域に集中して
発生すると同時に、その
地域全体が非常に
労働事情が悪くなるばかりでなく、
石炭産業の
労働者の
特殊性から考えましても、これらの人が
職業を
転換していくという場合にも普通の人よりは非常に困難な
状態にあるわけでございますので、この
法律によりまして、特にこの施策の
強化をいたしますために、第一には
広域にわたる
職業紹介の
強化、それから
炭鉱離職者を
吸収するための特別の
事業の
実施、
炭鉱離職者緊急就労対策事業、
特別職業訓練の
実施、あるいは
炭鉱離職者の再
就職を
援護するための特別の
機関の設置というような
措置を
強化してやっていくことが必要であるというようなことから、本
法案を提出いたしましたわけでございます。第一条の
目的はその
意味のことをうたってあるわけでございます。
第二条におきましては、この
法律の中で使われまする用語の定義を書いてございます。第一に「
炭鉱労働者」というのは、「
石炭の掘採又はこれに附属する選炭その他の作業に従事する
労働者」とする。今申し上げました
趣旨から、
炭鉱労働者というものは、非常に
就職が困難であり、その
地域において多数
発生し、かつ、
炭鉱労働者の
特殊性からして
就職が困難であるという
事情からいたしまして、特に
炭鉱労働者を明記したのでございます。
「
炭鉱離職者」と申しますのは、これは特別な制限がございませんので、
炭鉱労働者として
離職した
労働者でございます。現在
失業している、あるいは何らかの収入を得ている者でありましても、
社会通念上その
職業がきわめて不安定であるといったような、いわば
失業と同様の
状態にあると認められるもの、これも含めて
対策の
対象としていくというふうにいたしておるわけでございます。
「
鉱業権者」につきましては、他の
法律にある
通りでございます。特に
説明を要しないわけであります。
第二章は、
職業紹介等でございます。これは今
職業紹介と
炭鉱離職者緊急就労対策事業並びに
職業訓練、それから
炭鉱離職者の
優先雇用、四つの
事項を
規定してございます。
第一の、
職業紹介でございますが、先ほども申し上げましたように、
炭鉱離職者の多数
発生している
地域と申しますのは、非常に一
地区に多数
発生しておって、それがその場所におきましては非常に再
就職が困難であるという現在
実情にあるわけでございますので、そうした
炭鉱離職者につきましては、まず第一に、
職業の
転換ないしは他
産業への
吸収ということをはかっていく必要があるわけでございます。これも単に
通常の手段をもってしては非常に困難でございますので、
政府におきましては、積極的にこれらの
炭鉱離職者が他
産業、他
地域へ
吸収され得るような
措置を講ずる必要があるわけでございます。従いまして、それについての
職業紹介に関する
計画をここで作成して、その
計画に基づいて必要な
措置を講ずることといたしたわけでございます。
職業紹介に関する
計画と申しますと、その
地域における他
地域への転出の
希望者並びにその実態、
職業訓練を必要とするかどうか、また、他
産業においてどこにどれだけ
吸収できるか、
政府におきましても、そうした、積極的にこれらを
吸収するための
措置を講ずるための
計画を立てるわけでございます。そういうことによりまして、
広域職業紹介を
実施することによって、他
産業にできるだけ
吸収していくことのために必要な
職業紹介の
措置を講ずることにいたしておるわけでございます。第二に、
炭鉱離職者の
緊急就労対策事業でございますが、原則は今申し上げましたようなことによりまして、
職業安定機関の努力ないし
産業界一般の
協力によりまして、これをできるだけ他
産業に
吸収していくということを建前といたすわけでございますが、多数の
離職者のことでございますので、この
措置によっても
職業につくことが非常に困難であるという
炭鉱離職者につきましては、現地におきまして暫定的に就労する機会を与えるための
炭鉱離職者緊急就労対策事業というものを新たに設けるということにいたしたわけでございます。この
計画は、従いまして今申し上げました
趣旨によってこれを
計画していくわけでございますが、これを定めようとする場合には、あらかじめ、
地方々々で行なわれます
事業でございますので、
関係地方公共団体の長の意見を聞くことといたしたわけでございます。
なお、この
緊急就労対策事業におきまして、大体
地方公共団体の長が
実施していくということになるわけでございますが、その
地方の
産炭県におけるところの
地方公共団体の財政の
実情にかんがみまして、その要する
費用につきましては五分の四の
補助をするということにいたした次第でございます。で、今回の
補正予算におきましては、
緊急就労対策事業によって
吸収を予定しておりますのが五千五百人、
補助金額にいたしまして四千四百八十万円ということになっているわけでございます。
で、この
緊急就労対策事業につきましては、これに第四項によりまして
一定数の
炭鉱離職者の使用を義務づけているわけでございまして、
労働大臣がこの
事業につきましては幾ら以上ということをきめることになっております。現在考えておりますのは、率におきまして八五%以上を
吸収する、こういうふうな
計画でございます。
その次の第五条の
職業訓練でございますが、第三条の
措置における
広域職業紹介を
実施していくという場合におきましても、
炭鉱離職者の前職の
関係からして、そのままでの
転換が非常に困難であるという
事情等もございますので、その再
就職を容易にするために、
職業訓練につきまして特別の
措置を講ずることといたしております。で、特別の
措置と申しますのは、第一には、できるだけ
炭鉱離職者の前職に適するような
職種並びに
就職しやすいような
職種を選定する。それから
入所時期等につきましても、従来のような四月あるいは十月というようなことでなくて、
入所時期についても特別の
措置を講じていく。同時に、
職業訓練の
期間につきましても、その
実情に即した
措置を講じていく。これがために従来の
職業訓練施設のみでなくて、
職業訓練施設の増設ないし新設を考慮いたしたいと考えているわけでございます。
で、第二項の
職業訓練に要する
費用でございますが、これに対する国庫の負担につきましては、
職業訓練法に基づいて
規定がございますが、それによるほか、「政令で定めるところにより、その一部を負担する」、これは
施設費につきましては二分の一でございますが、
運営費につきましては
一般の二分の一を三分の二に引き上げて負担するということにいたしているわけでございます。
第六条の
炭鉱離職者の
優先雇用につきましては、
鉱業権者に対しましては、相当現在におきましても
炭鉱労働者の雇い入れというのが毎月
一定の数があるわけでございます。そうした場合におきましては、従来の経験からいっても、できるだけ、地元には多数の
離職者がいるのでございますからして、その
炭鉱離職者を優先的に雇い入れるようにしてもらいたいということを第一項に
規定いたしております。
従いまして第二項におきましては、
鉱業権者が
炭鉱労働者を雇い入れたいという場合には、
公共職業安定所に
求人の
申し込みを義務づけたわけでございます。それによりまして、その
安定所に登録してあるところの
炭鉱離職者をまず優先的に採用してもらうというような
措置を講じまして、
炭鉱労働者が非常に
一般的には
就職しにくい
状態にありますのを、こうしたことによりましてできるだけ
就職可能になりますように、
通常のものと同様な
程度までそのハンディキャップが克服されますように、こうした
優先雇用の
措置を講じたわけでございます。
第三章は
炭鉱離職者援護会に関する
規定でございます。で、これらの
措置を
政府が講じていきます場合におきまして、やはり
炭鉱労働者の
特殊性から考えましてこれらの人の
就職が
通常の者よりも非常に困難であるという
実情にかんがみまして、やはり特別な
援護の手を差し伸べる必要があるということからいたしまして、本
援護会を新設することにいたしたのでございます。
第七条、第八条、第九条、この辺は
法人に関する
例文でございますので、特に御
説明をすることを省略させていただきたいと思います。
第二節の
役員及び
職員につきましても、
役員は、
理事長一名、
理事三人以内、
監事二人以内。
あとの権限は
通常の場合と同様でございます。第十五条におきましては
役員の任命及び
任期。
理事長及び
監事は、
労働大臣及び
通産大臣が任命する。
理事は、両
大臣の
認可を受けて
理事長が任命する。
役員の
任期は、三年といたしました。
その他の十六条以下の
条文は、特に
説明を省略さしていただきたい。
第三節の、十一ページの
業務でございます。
業務の範囲につきまして御
説明いたします。
第一は、二十三条の第一号は
移住資金の
支給でございます。
援護の
業務の主といたしまして、
移住資金の
支給を掲げておりますが、この
移住資金は、
炭鉱労働者及び
炭鉱離職者が多数居住する
地域からその他の
地域に移住する者に
移住資金を
支給するということになっております。この
内容といたしましては、大体、第一に
移住資金の
支給の
標準でございますが、これにつきましては、その者の
扶養家族の
状況あるいは
炭鉱における勤続の
状況、と申しますのは
炭鉱労働者としての
貢献の度合いと申しますか、それから移住する所の
距離等によりまして、多少の
区別をいたしていくわけでございますが、大体の
標準といたしましては、
標準家族世帯数三・三人ということにいたしまして、九州を基準にして考えまして、
関西地区、
大阪地区あたりまで移住するという者につきましては、十万円
程度を
一つの目途といたしまして、
予算的には本年度内四千人分、
平均単価七万五千円—三億円を一応めどにいたして計上いたしてございます。
扶養家族を有する者と
単身者の場合にはそこに
区別をつけていくというようなことを考えております。
その次の
職業訓練を受ける
炭鉱離職者に対する
手当の
支給でございます。これは今回の
措置によりまして
職業訓練を
実施して参るわけでございまして、しかしながら、
失業保険の
受給期間中はとにかくといたしまして、その以降につきましてはその間の
生活の問題もございますので、なかなか
訓練を受けられないというような
状況にある人もあるわけでございまして、これらの者に対しまして
訓練手当を
支給することにいたしておるわけでございます。
それから次の
職業訓練を受ける
炭鉱離職者の
宿泊施設でございますが、これは今回の
予算によりまして、従来
総合訓練所は北九州にも
山口等にもございますが、これらの
総合訓練所を拡充いたしまして、これに
炭鉱離職者のための
職業訓練の特別の
施設を作りたい。そういう際に距離的に離れております
関係上そこに行って受けなければならぬという場合が生じますので、その
人たちのために寄
宿舎を
援護会が設置するということにいたしております
第四号は「
炭鉱離職者を雇い入れる
事業主に対して
労働者用の
宿舎を貸与すること。」、これは
公共事業その他の
建設事業、あるいはその他の
事業に
雇用される
労働者に対しまして、必要な場合に
移動式の飯場と申しますか、
移動式の
宿舎をその
事業主に貸与することによって、その
人たちのそういう
地域において働くことを可能ならしめようというために
移動式の
宿舎を貸与することといたしました。
第五号は、今の四号は多少今度は、
職業訓練の場合とはもう少し軽微になりますけれども、
短期間の
訓練というところまではいきませんけれども、
短期間のいろいろな、再
就職のためのいろいろな必要な知識ないしは簡易な技能の習得というための
講習会を
実施する。
六は
求職活動についての
安定所との
連絡。
七は、
炭鉱離職者でみずから
事業をやりたいという
人たちに対しまする
相談、並びにそれに対する
金融等につきましての
相談を行なうということができるようにいたしたい。
八、九、十につきましては特に御
説明を要しないと思います。
第二項は、これらの
業務を行ないます場合に
援護会として大体どういうふうなことでやっていくかということでございますが、特に今回の場合におきまして
移住資金の
支給と
訓練手当の
支給というのが
一つの大きなウエートを占めているわけでございます。これを、一号、二号の
業務とこれに付帯する
業務につきましては、第二項によりまして主として次のような各五号に該当するようなものにつきまして行なうということにいたしたわけでございます。三号以下の
業務につきましては、この各号に該当しなくても全部の人にやっていくということでございます。第一号は「
当該離職がその者の責に帰すべき重大な
事由又はその者の都合によるものでないこと。」、これはいわゆる
任意退職でございますとか、あるいは
懲戒退職というものは含まれない。その者の責めに帰すべからざる
事由によってやむを得ず
炭鉱を離れるという人を重点的に置く。その「
当該離職の日が
昭和三十年九月一日以降の日であること。」、三十年の九月一日と申しますのは
合理化法の
施行された日でございますが、一応そこに区切りを置きまして、それ以降に
離職した者を
対象といたしたい。
第三号は、この場合におきまして、その者が
炭鉱に対する
貢献度と申しますか、
炭鉱にわずかの
期間しか働いていなかったものと、
一定の
期間以上働いておったものとはおのずからそこに差異があるわけでございますので、この三号におきましては、一年以上引き続き
炭鉱労働者として
雇用された
経歴を持つものであること。
昭和三十年九月一日以降の
離職者であること。二十九年の九月一日といたしましたのは、この三十年九月一日以降の
離職者で、その前に一年以上いることを明確にするための念のための表現でございます。
第四号は「この
法律の
施行後において新たに安定した
職業に就いたことのないこと。」、この
法律が
施行されました
あとにおきまして、
炭鉱というものは非常に
離職者の
発生が多いし、また、今後もそうしたものが見込まれるというときにおきまして、
法律施行後もうすでに
社会通念上安定した
職業と認められるものについた
人たちにつきましては、これは
対象としないということでございます。
第五号は「この
法律の
施行の際現に、
炭鉱労働者及び
炭鉱離職者が多数居住している
地域に住所を有すること。」これは、もうすでにほかの
地区に安定した
職業を求めて行っておるという
人たちが、この後におきまして新たに
━━それまでは
対象といたさない。現にその
産炭地帯におきましてそこに住居を有し、前四号の要件を持っておる、これだけにつきましては、
移住資金並びに
訓練手当の
対象としていこうということでございます。
第三項は、第一項第十号の特別の
業務を行なうわけでございまするが、これは特に
説明はございません。
第二十四条の
業務の
運営でございまするが、「
援護会は、
炭鉱離職者の
発生の
状態その他の
雇用状況を考慮して、
援護の必要の大きい
地域について重点的に
業務を行うものとする。」
援護会がやっていきます場合におきましても、いろいろおのずから限りがございまするので、
援護の必要の大きい
地域について重点的に行なう。具体的に申しますれば、福岡県、北海道、福島県、
山口県、佐賀県、長崎県というような
地区になろうかと思います。
「
援護会の
業務は、前項の
規定によるほか、
炭鉱労働者としての
経歴、
離職の原因、
離職後の
生活の
状態その他の
事情を考慮して行うものとする。」同じ
援護をいたします場合につきましても、その緊要度という問題があるわけでございまして、そういう点を十分考慮してやっていくというのが二十四条の
業務の
運営の指針でございます。
二十五条は、これらの点を具体的に
業務方法書で
援護会が明確に
規定いたしまして、両
大臣の
認可を得ることにいたしたい。
第四節の財務及び会計につきましては、
例文でございまするので
説明を省略さしていただきたいと思います。
第五節の監督でございますが、これも特に御
説明を申し上げる
事項はございません。
第六節の補則につきましては、
援護会の
解散の時期につきましては別に
法律で定めるということになって、
援護会の
解散はいつする
━━この
法律全体が五年以内に廃止することになっておりますが、
援護会の
解散につきましては、別に、その以前におきまして必要がなくなる場合もございましょうし、あるいはこの
法律等を運用する場合もございます。これは、その
状況等によりまして別に
法律で定めることにいたします。
第四章の雑則につきましては、第四十条で、前の
鉱業権者につきまして
炭鉱労働者の
優先雇用ないしは
安定所に対する
求人の
申し込みを義務づけたわけでございまするが、これの実行を確保いたしますために、
安定所長に対しましては、定期的に、そこの
雇用ないし
離職の
状況はどうであるかというようなことを
安定所長に対して
報告を命じるという、
鉱業権者に
報告の義務づけをいたしてあるわけでございます。
第四十一条は、
援護会と
安定所の相互の
連絡、
協力について記載してございます。
第四十二条でございますが、これは
共済組合の
組合員期間の特例でございますが、これはきわめて事務的な
規定でございまするが、今度
援護会ができました場合に、
国家公務員がこれに対しまして出向と申しますか、そういうことでこの
業務を行なう、で、
組合の
職員になる
━━援護会の
職員になるといった場合におきまして従来のいわゆる
恩給通算でございまするが、十月一日から
共済組合の
長期給付ということになっておりまするので、その場合におきましては、これが本人の
希望によって通算できるというような
方法を
規定いたしたわけでございます。
次に二十四ページの四十四条でございます。
移住資金または第二十三条一項二号、これは
勤勉手当でございます。これの権利は譲渡、差し押えの禁止の
規定を設けまして、これに対する保護をはかったものでございます。
第五章は罰則でございますが、これに対しましては特別な御
説明は省略さしていただきます。
附則につきましては、税法におきまして他の
特殊法人の例によりまして、租税の免税を
規定いたしておるわけでございます。この
附則によりまして、
石炭合理化臨時措置法の改正をいたすことにいたしておるわけでございます。これは
援護会の、先ほどちょっと私落としましたが、
援護会に対しましてこの
石炭鉱業整備事業団から
交付金を
交付するということになっております。この点を
合理化臨時措置法の
関係におきましても、
援護会に対して
交付金の
交付につきましてこれを行ない得る
規定を設けたわけでございます。でこれによりまして、
援護会といたしましては、
石炭鉱業整備事業団からの
交付金並びに国の
補助金その他
寄付金によって
業務を行なっていくわけでございます。
この
法律の廃止の時期でございますが、本法におきましては、
施行の日から五年以内に廃止するということになっております。このことは、五年以内といたしましたのは、今後五年以内にできるだけ
政府としては、こういう
措置を講ずることによって
石炭離職者の問題に対処していきたいということでございます。
以上、非常に簡単でございまして、聞きづらかったと思いますが、逐条につきまして簡単に御
説明申し上げました。