○竹中恒夫君 注意してもこういう不祥事件がまた重なってあったわけですから、よほどのあなたは考え方を確立されて指導なさらぬといかぬと思う。単にこの場限りの議会答弁では私困ると思いますから、その点をよく反省していただきたいと思います。
次は、大臣に
質問というよりお聞き願っておきたいのですが、監査は一審制なんですね。裁判のように三審制じゃないのですね、監査というものは。なるほど行政訴願その他の方法であるいは異議を申し立てる方法もあるかもわかりませんが、多くの場合は被監査の者は二年以内に復権したいという一つの希望を持つわけなんです。そこで、技官に迎合的に、この不正事件があったということよりも次の復権を考えまするから、行政訴願などした例はございませんし、
結論的には一審制なんですね。こういう考えでもって監査をするということになりますというと、私は監査に当然萎縮、不自然が伴うと思うわけなんです。今後、監査に対するいろんな条文を、監査要綱等を変えるというような場合には、この
監査制度のあり方ということについては、一審制でいいのか、二審制がいいのか、あるいは地方庁で監査を受けてそして判決が下ったという場合に、中央の
厚生省の方にこれを申し出て、しかも復権には何ら
関係のない萎縮しない気持でもって中央にもいろいろと申し出られるような道を開いてもらいませんといかぬと思う。そういうような点、一つお考えおき願いたいと思うわけです。
その次にもう一つの
問題は、これに
関連いたしまするが、技官は判事ないし裁判長の権限と検事の権限と二つの権限を持ったような形で現在監査を行なっておるわけです。これは実際そうなんです。いやそうでないと事務局は言うかもわかりません。
法律の上からはその判決は医療協議会がするんだとお逃げになろうと思いますが、医療協議会というものは、実地に調べたのは技官一人ですから、出ておりまする医療協議会の
委員というものは何らの実際的な反論をするような資料を持っておらないわけですから、結局は検事の
立場で調べた技官のその
報告なりその技官の
意見によって医療協議会というものは多くの場合にオーケーになるわけです。これは私非常に重大なポイントであろうと思うんです。特に皆保険になりますというと、これは医師の基本的人権、生活に直結した
問題でございまするからして、新憲法の精神からいたしましても、基本的な人権を脅かされるようなこういう
問題を
処理するのに、公平な裁判官というものがなくして、しかもまた、弁護士のないような形で死刑にひとしい求刑なり判決が下るわけです。事実自殺したのですから、これは死刑にひとしいんです。死刑にひとしいような判決が下るような形でもって今後皆保険に突入するということは、これは重大
問題だと思うんです。そういう点も特に大臣はお考えおき願いまして法の改正、要綱の改正等について適当に御指導を願いたい、かように私思うわけでございます。
それからいま一つ重大なことは、監査の資料、証拠というものは記憶なんですね。
医学知識のないしろうとの記憶を唯一の証拠として処罰されるわけなんです。抗弁する医師のほうはカルテなりあるいは
医学的
立場からの
説明をするわけなんですが、軽重が反対になりまして、被保険者の言うことが重点的に取り上げられて証拠としてこれがやられるわけです。記憶というものは、私非常に不正確なものだと思うんです。三十一年の
健康保険の改正案のときに私は時の神田
厚生大臣に
質問したことがございまするが、きのうの朝召し上がつた味噌汁の加薬は何だ、昨晩のおかずは何だと聞いたら、神田
厚生大臣は即答はできなかった。それくらい人間の記憶というものはあいまいなわけです。しかもその記憶を唯一の証拠として処罰するのですから、よほど慎重にやってもらわなければいかぬと思うんです。現に、あの三十一年の当時に日赤がこの
問題で非常に努力いたしまして、通院している有名の
患者にアンケートを出した。あなたは何回日赤病院に通院したか、そうして何回治療したか、しかも痛い手術を何回したかというその手術の回数すらも正確にアンケートによって回答を得られなかった。三〇%くらいしか正確な通院回数、治療回数が回答せられなかったというんです。しかも、監査のポイントは、通院回数が違っている、
患者の言うこととお前のカルテと違うじゃないかということによって不正だ詐欺だということで処罰されることが多いわけです。先ほどのように入院しないものを入院したというような極端な例もありましょうが、多くの場合は
患者の記憶によってやられるというこういう点は、やはり当時神田
厚生大臣の答弁にありましたように、医者のカルテを重点的にして医者の
医学的な陳述によって判断し、
患者の供述は一つの参考とする。非常に
患者は官吏の前に行きますとおびえております。特にいなか、農村の純朴な農夫などはおびえておりますが、そういう精神の平衡を失ったときの陳述というものをうのみにするということのないように、重点を医者の人格を尊重し、医者のカルテによってやるという建前でなければ、先ほど申し上げましたような皆保険の医師の協力、熱意というものは出てこないと思うのですから、そういう点もただ記憶という点に重点を置かないような一つお考え方をお持ち願いたい、かように思うわけでございます。
それから、その次の重大な
問題は、もう一つ監査によって起こる事故としては、差額徴収の
問題がございます。差額徴収したということによっての不正だということで、処罰をされる場合があるわけです。この差額徴収につきましては、現在すでに入院と、歯科におきましては、金冠の差額徴収を認めているわけなんです。ところが、
厚生管は非常に私としてはずるいと思うのですが、保険経済の上から言うて金冠は三本までは差額徴収してはいけない、もし必要があればそれ以上は差額を徴収してもいいんだということになっているわけなんです。これは大臣事実なんです、医療課長、よく知っているはずなんです。そういうように都合のいいときには差額徴収を認めておいて、一方では認めないというような不徹底な差額徴収に対する方針が、私は災いしていると思うのです。この点も、前々の橋本
厚生大臣に私は公約があるわけなんです。当時、
健康保険法の診療報酬の甲表、乙表の
問題のときでございましたが、いろいろと討議いたしまして、私は甲表の考え方に賛意を表して、単表に踏み切ったわけでございますが、そのときに橋本
厚生大臣は私に対して、なるほど歯科についてのそういう矛盾があることはおもしろくないから、弊害のない範囲内においては、すみやかに差額徴収をして、よりよい医療を国民に与えようという公約をなさったわけです。大臣がかわられますというと、こういう大事な基本方針もそのままほっかぶりしていかれるということでは、非常に私は国民にとっても、あるいは医師なり歯科医師にとっても、これは非常に不幸な
問題だろうと思います。どうか前々大臣のそうした考え方も一応お聞きいただきまして、決してこれは私のこの場限りの話ではございません。はっきりとよりよき医療と弊害のない範囲内においてはすみやかに差額徴収しよう、こういうことであったのが、栄転か何か知りませんが、かわられたことによってこうなっているわけです。そうした点も特にお考えおき願いたい。同時に、そのときに、高田前
局長も歯科における特殊的な医療に
関連して、差額徴収は必要である、自分の在任中にしよう、これまたお約束になったのでありますが、これまた転勤なさったということでございまして、非常にその間に、テンポがおそいと申しまするか、あるいは今日の当局の考え方——昨日の大臣の衆議院における御答弁等も聞きましたが、差額徴収についても一つ
研究してみようという意味合いのようにとれたのですが、もう歯科においては
研究でなくて、すでに前々大臣もそこまで言うておられるということを、この機会に御記憶願いたいと思うわけでございます。そうしたことにつきまして、いろいろ申し上げましたが、大臣の御答弁を賜わりたいと思います。