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政府委員(
西原直廉君) 金約款ということをいろいろ
お話しいただいているのですから、その点について御
説明申し上げたいと思います。
お話しございましたように、
昭和十六年五月六日の「
日本国印度支那間関税制度、
貿易及其ノ
決済ノ
様式二関スル日仏協定」には「金二兌換シ得ル同一外国貨幣ニ対スル横浜
正金銀行及印度支那
銀行ノ円及「
ピアストル」ノ建値ニ現ハルル両貨幣ノ金価値ヲ基礎トシテ両
銀行間ノ合意二依リ決定セラルベシ」ということが第二十一条にきめられています。
それから次に二十四条及び二十五条で今
お話しございましたように、月時
決済及び
協定終了の際の
決済はいずれも「金又ハ金ニ兌換シ得ル外貨ヲ以テ」なさるべきこととなっております。
それからこの二十六条で、「円又ハ「
ピアストル」ノ金価値ノ変更ノ場合ニハ合意ニ依り両貨幣ノ新金価値ヲ基礎トシテ」各
勘定の
残高の両評価をすべきだということになっていたわけであります。そういうようなことで、円及び
ピアストルの換算率は両貨幣の金価値を基礎として規定さるべきであるというような点から、有効な金約款であるという学者の
意見もあったわけであります。
次に、十八年一月二十日付の「
日本国仏領印度支那間
決済ノ様式二関スル交換公文」によりますと、十八年の一月一日以降の
日本国及びインドシナ間の
決済についてはもっぱら
特別円を使用することとなりましたが、この円と
ピアストルの換算率は、交換公文発効の日の換算率により行なわれる、その変更については
日仏両
政府の合意によって決定されることになったわけでありまして、またこの十六年の
協定の規定で、本交換公文の規定に抵触するものは、交換公文の規定もってかえられることと定められました。これは
お話しの
通りであります。
昭和十六年のこの
協定と十八年の交換公文との
関係につきましては、交渉の当時
フランス側からは次のように主張して参ったわけであります。すなわち
昭和十八年の
協定は旧
制度と根本的に変更するものではなく、今の
お話しのように
勘定の方式を簡易化し、柔軟化することを目的とする限度にのみ前者が変更されるものであるとの立場から、
特別円勘定は従前の
協定により金または金に兌換し得る外貨によって
決済さるべき円価額に
振りかえられたものにすぎない。
決済方式は中断されるものでないから、金約款は十八年以降も有効になるという主張をしたわけであります。
フランス側としては、もちろんこれは自分たちの利益を守るという
意味において当然の主張ではなかろうかと思います。しかし実際上の問題として先ほどからいろいろ
お話がありますように、十六年から十八年にわたりました
関係で、一体木村先生の
お話がありましたように、金約款というものがあるのかどうか。これはいろいろ問題もあり
疑いのあるところであろうというところから、いろいろ考えたのだろうと思いますが、
フランス側も諸種の
事情を勘案したものか、この交渉
解決促進のために、実際的な
解決として金約款の主張は必ずしもしない。しかし換算率保証によるいわゆる
最終残高の十倍くらいである百三十億というものはこれは払ってほしいという主張をしたわけであります。今申し上げましたように、十六年の
協定と十八年の交換公文との
関係につきましては、いろいろ議論があるわけであります。当方といたしましては、いろいろ申し上げておりますように、こちらとしてはなるべく
債務の払いを少なくしたいということは当然のことだと存じますが、そういうようなことから、いろいろ交渉の過程におきましては、もう金約款はないとか、そういうものはどうこう、いろいろなことを申したわけです。一体このようなことで、もし国際的なところで裁判と申しますか何かになりましたときに、一体どういう結果になるかということになりますと、なかなかそこに今
お話しのような
事情がございます。それで大体、一体
フランス側の主張のように、十八年以降も金約款が存続したと認められるというおそれもあるいはないとは全然言い切れるかどうか、非常に問題もあったわけであります。そういうようなことで、私どもとしては、まあ先ほどの
協定、この諸
勘定の処理の
協定にございますように、ああいうようなことで、これをけりをつけるということが最もわれわれとして適当だというふうに考えて、ああいう
協定でけりをつけた、そういうことです。