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1959-12-10 第33回国会 参議院 外務委員会 第15号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十四年十二月十日(木曜日)    午前十時四十五分開会   —————————————   委員異動 本日委員辻政信君辞任につき、その補 欠として石田次男君を議長において指 名した。   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     草葉 隆圓君    理事            井上 清一君            剱木 亨弘君            苫米地英俊君            吉田 法晴君    委員            青柳 秀夫君            梶原 茂嘉君            笹森 順造君            杉原 荒太君            永野  護君            堀木 鎌三君            加藤シヅエ君            小林 孝平君            佐多 忠隆君            森 元治郎君            大和 与一君            石田 次男君            佐藤 尚武君   国務大臣    外 務 大 臣 藤山愛一郎君   政府委員    法制局長官   林  修三君    法制局次長   高辻 正巳君    外務政務次官  小林 絹治君    外務大臣官房長 内田 藤雄君    外務省アジア局    賠償部長    小田部謙一君    外務省条約局長 高橋 通敏君    大蔵政務次官  前田佳都男君   事務局側    常任委員会専門    員       渡部 信雄君   説明員    外務省アジア局    南東アジア課長 影井 梅夫君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○日本国ヴィエトナム共和国との間  の賠償協定締結について承認を求  めるの件(内閣提出衆議院送付) ○日本ヴィエトナム共和国との間の  借款に関する協定締結について承  認を求めるの件(内閣提出衆議院  送付)   —————————————
  2. 草葉隆圓

    委員長草葉隆圓君) ただいまから委員会を開会いたします。  まず、委員異動について報告いたします。本日辻政信君が委員を辞任され、その補欠として石田次男君が選任されました。   —————————————
  3. 草葉隆圓

    委員長草葉隆圓君) 日本国ヴィエトナム共和国との間の賠償協定締結について承認を求めるの件、日本国ヴィエトナム共和国との間の借款に関する協定締結について承認を求めるの件(以上衆議院送付)の両件を一括して議題といたします。  昨日に引き続き質疑を続行いたします。
  4. 小林孝平

    小林孝平君 私は、本日は、先日政府が発表されました秘密交換公文について主としてお尋ねをいたしますけれども、その前に、ちょっと政府のお考えをただしておきたいと思います。  このベトナム賠償に関する外務当局国会における答弁は、著しく不明確、不十分であって、準備の不足を完全に露呈したことは、外務大臣自身それから事務当局自身も、これを十分お認めになっているところでありましょう。このため、過般、川島幹事長は強く外務事務当局を非難したと伝えられているのでありますが、この川島幹事長の非難は全く見当違いであって、かりに注意を要する必要があったとしても、外務大臣自身が直接指示し、監督さるべきものであるはずであります。それはともかくとして、このように外務当局答弁なり説明が問題になるのは、一体どこに原因があるかと考えてみますと、私は、川島幹事長指摘したように事務当局の怠慢のみによるものだとは考えられません。また、事務当局本質的能力それ自身に基づくものだとも考えません。外務省幹部諸君の多くは、厳重かつ困難な資格試験を通過した各省を通じての最も優秀だと自他ともに許す人々であります。今回のように資料が不備であったり、間に合わなかったり、あるいは不正確であったり、答弁に戸惑ったりしているのは、関係者の怠慢、不勉強によるもののみとは考えられないので、むしろ理由は二つあるのではないか、こういうふうに思うのであります。  その一つは、何といっても、このベトナム賠償が筋が通らず、良心的に積極的に他を首肯させることができないことでありましょう。しかし、この点は今ここで論ずるつもりはありまんが、他の大きい理由一つは、外務省機構の不備を指摘しなければならぬと思うのであります。もっと端的に言えば、外務省予算が下足のために必要な人員が足らず、特に在外公館の陣容が十分でない。従って、その調査ができないので、われわれの要求にも応ずることができないので、今回のような結果になったのではないかと思うのです。  そこで、この点に関連して、わが外交事務的方面から支障を来たしたり、今回のごとく国会審議に著しい渋滞を来たすことのないように、今後十分の配慮がされなければならないと考えるわけであります。この点について、外務大臣はどういうふうに考えられるか。さしあたり、来年度の予算において外務省関係予算を必要にして十分なだけのものを組むお考えはないか、また、そういう努力をあなたはされるつもりはありませんか、外務大臣のお考えをお伺いいたしたいと思います。
  5. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) ただいま小林委員より外務当局に対する懇切なお言葉をいただきまして、まことにありがたいしあわせでありまして、外務当局といたしましても、できるだけ勉強もいたし、努力もいたさなければならぬことは当然でございまして、あるいは努力をいたしておりましても、国会出席の経験の浅いというようなことのために、あるいは答弁等がとかく十分でない点もあろうかと思いますので、その点は、できるだけ私どもとい、たしましても、今後注意もいたし、努力いたさなければならぬと思っております。同時に、御指摘のありましたように、外務省組織なり、予算なりというようなものにつきましては、これを逐次充実し、拡充して参らなければ——今日のような国際情勢に対応いたしまして、しかも世界が大へんに狭くなってきておりまして、世界各地に起こりました問題が身近に影響をしてくるというような事情のもとにおきましては、充実した外務省組織人員の配置とを必要とするわけであります。戦後の外務省は、今日まで実はいわゆる旧態に復帰すると申しますか、あるいは外務省機構を一応整備するという段階に私も努力してきたわけでありまして、ようやくある程度充実をして参りましたが、それは今申し上げましたような見地において充実をしてきたわけであります。今も申し上げましたような新しい時代に適応して外務省の機能を十分に発揮するためには、さらに正そう組織人員との充実が必要でございます。先般もちょっと申し上げましたように、たとえば外務省調査機構拡充して、そして調査部等を設けるということにつきましては、数年来われわれも主張してきたところであります。あるいはまた外務省の部局にいたしましても、今日欧亜局というようなものが、ソ連、ヨーロッパ、中近東、アフリカ、濠州、ニュージーランドを持っているというような体制では、実ははなはだ仕事がしにくい。一例を申しますればそういうことでもございます。でありますから、今後外務省予算を、十分に大蔵当局等も説得いたしまして、その必要を十分痛感していただきまして、そうしてできるだけ拡充して参り、御要望に沿うように努力いたして参りたいと存じております。まあ今日の財政事情下におきまして、一時に十分なこと、一年度に十分なことをいたすことも若干無理があるということもわれわれも存じておりますので、昨年来、数年にわたる計画によって、一定の方向で拡充していきたい、こういうふうに考えて今日努力をいたしておるわけでありまして、御同情ある御質問に対して甘えることは、はなはだ失礼かと存じまするけれども、どうか外務委員皆さま方は、予算拡充等につきまして、この上とも御尽力をお願いすることをお願い申し上げます。
  6. 小林孝平

    小林孝平君 外務大臣の御決意を承りましたけれども具体的に来年度の予算に相当の拡充をすることができる見通しがあるのでありますか。
  7. 内田藤雄

    政府委員内田藤雄君) 私、予算の方をやっておりますので、ちょっとお答えいたしたいと思います。  見通しがあるかという御質問でございますが、これは率直に申しまして、まだ今のところ何とも申し上げかねます。われわれといたしましては、大臣の方針もございますし、なるべく締まった予算で、できる限り今度提出いたします予算獲得をいたしたいというつもりで努力いたしておりますが、まあ大蔵当局の話によりますと、災害その他いろいろ予想せざる事態も生じておるので、今度の予算には非常に財源がなくて窮屈である。これはまあ毎年大蔵当局の申すことでもございますから、必ずしも額面通りには取っておりませんが、しかし相当真理もあろうかと思いますので、われわれが期待しておりますほどの予算拡充ができるかどうか危ぶんでおります。しかし展後までねばるだけはねばりまして、最善の努力をしていきたい、かように考えております。
  8. 小林孝平

    小林孝平君 与党議員の方は、他のいろいろな省の予算獲得にはずいぶん熱心におやりになる方が多いのですけれども、この外務省関係予算獲得に、他の省ほどはいかないけれども、相当やられておるのですか。実際問題としてどうなんですか、官房長。(笑声
  9. 内田藤雄

    政府委員内田藤雄君) これは与党議員の方も非常に御理解をいただいておりまして、前々から大へん支援をいただいておることにつきましては、大いに感謝いたしております。しかし実際問題といたしまして、やはり農林関係とか建設関係とか、非常に大口のものにごっそり持っていかれますと、どうしても外務省予算というような、何と申しますか、あまり身近なものでないものでございますから、過去の実例から申しますと、ややともするとあと回しにされておったというのが大体の傾向であったのではないかと思いますが、しかし先ほど大臣もおっしゃいましたように、今年度の予算、つまり昨年の暮れなどの実情などから、大へん与党議員の方々の熱心な御支援もございまして、ことしはさらに一そうの御支援をいただけるものと期待しておる次第でございます。(笑声
  10. 森元治郎

    森元治郎君 古いことを申し上げてなんですが、私も外務省の、ずっと内田焦土外交外務大臣から見ておるのですが、歴代外務省予算の取り方いうのは、各省から比べて手ぬるいのです。その責任は、ここにもおられますが、佐藤外務大臣初め、もう大臣責任なんですよ、決してがんばってない。歴代外務大臣も……。やった人があるなら手をあげてごらんなさい。大臣責任なんです。これはいつでも外務省そうなんです。だめですよ、そういうごまかし言っていたんじゃ。真剣さを持って……。藤山さんの責任なんですから。
  11. 小林孝平

    小林孝平君 これは、今、森委員から外務大臣責任を言われましたけれども、それももちろんありますけれども、何といっても閣内における大蔵大臣の協力、理解がなければならぬと思って、本日も特に大蔵大臣出席与党理事諸君にあらかじめ連絡しておったにもかかわらず、出席がない。これを見てもあまり熱心でないことが私はわかるんじゃないか。そこで委員長にお願いいたしたいのは、私も外務委員は今回初めてでございます。委員長委員長になられたのは初めてであろうと思いますが、今回の審議をごらんになっておれば、いかにこれは私が申し上げたことがその通りであるかということは、委員長自身も痛感されたところであろうと思いますから、このベトナム賠償審議を促進されるその熱意の万分の一をもって、この今回の予算獲得外務大臣に協力して、予算が取れるように一つ努力していただきたいと思うのです。これは一つ委員長、大じょうぶですか。
  12. 草葉隆圓

    委員長草葉隆圓君) 了承いたしました。
  13. 小林孝平

    小林孝平君 それでは、これから先般政府が発表いたしました秘密交換公文について、数点お尋ねをいたしたいと思います。秘密交換公文先ほど発表になり、そういうものが現に存在したということは、ベトナム賠償に関する国民疑惑を一そう深めたわけであります。政府外交上の秘密に名をかりて、国民の目から国際関係の実態を遮断しているものであると思います。相手国側との約束公表しなかったなどということは、秘密外交の隠れみのでしかないと言わなければなりません。今後ともこの秘密外交を続けるのかどうか、政府のお考えお尋ねいたします。
  14. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 外交交渉をやります、あるいはその結果を御報告いたしますときに、できるだけ率直にすべての経過なり、あるいはすべての文書なりを御参考に提出いたしますことは、われわれ当然の責務だと思っております。ただ、外交交渉本質として、相互に発表し得ないもの、あるいは発表するにしても一応の了解を得て、その条件のもとに発表するというようなものが、これがありますことは、外交折衝の従来の観念でもございますし、あり得ることだと思うのであります。でありますから、そういう意味においては、われわれとして必ずしも全部のものを公表できない、あるいは全部交渉過程が発表できないということもあり得ることは、御了承願いたいと存じます。
  15. 小林孝平

    小林孝平君 外交は、その交渉を有利に導くために、今、外務大臣がおっしゃっておるように秘密の保持を必要とする場合は、ある程度それはやむを得ないとしても、条約承認国会に求めておきながら、これに付随しておる文書相手国との約束で、国会で追及されるまで秘密にしておくがごとき処置をとることは、はなはだしい国会軽視であると言わなければなりません。条約承認について、一体政府は、国会を尊重するのか軽視するのか、明確にお答え願います。
  16. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 私は国会が国権の最高機関として、十分国会の御審議を尊重いたしておるつもりでございます。従いまして今回の場合におきましても、国会等質問があった場合には、これを説明し、これを了承を得なければならぬということを向こう側にも申しまして、そして向こう側にそれだけの許諾を得ておるわけであります。積極的に公表はいたしませんけれども、国会立場を十分考えまして、それだけの念を押したことをいたしておるつもりでございます。
  17. 小林孝平

    小林孝平君 きょうもおっしゃいましたけれども、この前の発表されたときもおっしゃいました。国会から出せと言われたら出すという約束をされた。これは秘密になっているものを、そういうものがあるはずだから出せということを言われるのは、一体何のために秘密になっておるのかわからぬと思うのです。これは秘密になっておれば——たまたまわれわれはそういうものがあるということがわかって追及しましたけれども、普通なら、あなたたちが秘密にして公表されなければわからないはずなんです。従って、国会公表を迫られたら出すという約束をしたということ、それ自身が私はおかしいと思うのです。その点どうなんですか。そういう秘密は漏れる場合もある、こういうふうにお考えになったのか。またこんなものは漏らしてもいい秘密だと、こういうことでそういうお約束をなさったのですか。
  18. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 私は、この交換公文が特に秘密を要するものだとは考えておりません。で、先方はこれを発表したくないという意向を表わして参りましたので、私としては、国会等において関連の質問がありまして、この交換公文があるかないかという問題に関連して質問が起こりましたときには、この交換公文によって説明しなければならぬ。そのときには国会に対してこれを示し、あるいは説明をするという了解を得たわけであります。
  19. 小林孝平

    小林孝平君 今のような御答弁であれば、国会では、今までこの条約に関連する一切の資料を出してもらいたい、必要なる資料をと、こういうことを要求しておるわけです。従って、別に秘密にする必要はないとお考えになったら、その要求によって出されるのが当然じゃないかと思うのです。私は、論理的にこの間からどうも外務大臣の御答弁が納得いかない。
  20. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) ただいま申し上げましたように、向こう側意向としては、積極的に公表はしてもらいたくない、しかし日本側の言うように、国会審議の途上、説明の必要その他があれば、それは消極的な意味公表をしても差しつかえないという意向なのでありまして、そういう意味において、それだけのことをわれわれも取りつける努力をいたしましたことは、やはり国会を軽視しておったのではないというつもりでございます。
  21. 小林孝平

    小林孝平君 そこで、この点は非常に論理的に私は矛盾していると思いますが、先に進みまして、一体、こういうものが出ましたので、本件以外にも秘密約束秘密文書があるかもしれない、あるのではないかという疑惑が今持たれておるのであります。そこで、これ以外には絶対にないのですか。
  22. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 全然ございません。
  23. 小林孝平

    小林孝平君 そのないという意味は、これは今のやつは言われたから出す、こういうことになっておるが、言われても出さないという意味で、ないというわけですか。(笑声
  24. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) これにはこれ以外には言われてもないとかいう意味でなしに、全然ございません。
  25. 小林孝平

    小林孝平君 これは外務大臣お笑いになっておりますけれども、非常に重要な問題だと思うのです。私はさっきから論理的におかしいと、この前の説明をお聞きしたときから私は非常にこれは疑問だと思う。今のお話でも疑問なんです。これはこちらは大したことでないから、そういう約束を取りつけて、その結果発表した。そういう約束が取りつけられない場合に、あるいはかりにあったといたしまして、国会でここでないとやはりおっしゃるわけでしょうか。その場合、私がこう申したら、ある場合は、秘密のものがあるけれども、それはないとおっしゃるでしょう。
  26. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 外交折衝の場合におきまして、秘密文書がないことが当然望ましいことであります。私としては、折衝の際において、秘密文書の作成ということを厳に避けて、そうして、そういうことなしにやって参りたいと今日でも思っておりますし、今後もそう考えております。従いまして、この文書も特に私としては秘密文書とは考えておりませんが、向こう側がそういうことを申したので、従って、そういう取り扱いをいたしたということでございます。
  27. 小林孝平

    小林孝平君 私は、これ自身は大した問題でないかもしれませんが、ところが、こんなものは大した問題でないと、大した秘密を要するものでないと——こういうようなものがともかく一応秘密文書という形になっておる。これは何といっても……。そこで、それくらいのことを向こうに納得させることができなかったのですか、こんなものは大した問題じゃないですかということを。このくらいの程度のものを納得させることができないということになれば、もう少し重要なものはすべて秘密になってしまうのではないか、こう思うのです。こういうことを、これは意地悪でもない、からんでいるわけでもないのですが、論理的にそうなるのです。ただ、この一片の秘密交換公文のために、藤山外務大臣秘密外交をやっているのではないかという印象を、非常に強く一般に与えたわけなんです。
  28. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 私としては、秘密外交をやる意思は持っておりません。できるだけ外交の実体というものを御審議に際して提出して、そうして十分な御審議を仰ぐことは、これは当然なことだと思います。従いまして、今回の場合におきましても、これ以外の秘密文書はございません。
  29. 小林孝平

    小林孝平君 そういう御説明では納得できないのです。たとえば、だれでも自分が悪いことをやろうと思うものはなくとも、その結果が悪いことになっているという場合が多いのです。今だって、藤山さんも、外務大臣として何も秘密外交を初めからやろうと思ってあなた外務大臣になられたわけじゃないけれども、結果として、こういうささいなことから、あなは秘密外交をやっているんではないか、また、現にやったと、こういうふうに批判を受ける、そういうことになるわけなんです。  そこで、まあそれはまた他日やるといたしまして、次に、これに関連しまして、ベトナム賠償に関連してアメリカとの間に何か秘密約束はありませんですか。この秘密というのは、今ここで申されたような、大したことはないという程度のものも含んでいるわけです。そういう秘密約束はございませんか。発表しても大したことはないけれども、まあこれは発表しないで置こうというものも含めて、そういうものがあるかないか。  それから、国民は非常に深い疑惑の眼で岸内閣の今次の賠償を注視しておるわけです。特に、理論的にも無理に無理を重ねて高額な賠償を支払おうとしている裏には、アメリカからの指図があったか、あるいはアメリカICA援助費割当に関して何らか特別な約束があったかもしれないという疑念を生じているのは、私はむしろ当然であろうと思うのであります。従来ベトナム賠償に関連してアメリカ側と何らかの話し合いが行なわれていたならば、その経過の一切と、今日まで発表されていない秘密文書というようなものを、一切公表されたらいかがですか。
  30. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 賠償交渉にあたりまして第三国意向を尊重する、あるいは考慮するということは、全然ございません。従いまして、今日までベトナム賠償に関してアメリカ折衝をいたしたことも接触を保ったことも一度もございませんし、それらの関係において何らの文書等もないことをはっきり明言いたしておきたいと思います。
  31. 小林孝平

    小林孝平君 はっきりそういうことを言い切っておられますけれども、第三国意向考慮したことはないとおっしゃいますけれども、そんなことはないのではありませんか。賠償をきめるには、他国との均衡、あるいはそういうことをやったら、たとえばビルマのように総額を変更する条項がございますから、そういうことも考慮してやるということは、当然あるわけです。外務大臣は、今全然ないとおっしゃったけれども、私はそれは間違いじゃないかと思うのですが、いかがですか。
  32. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 今御指摘になりました問題は、われわれ日本立場として賠償交渉をいたします場合に、前提として、前回あるいは前々回でありますか、本委員会にも申し上げました通り、当然他の賠償請求国との振り合いというものを考慮することは、これは当然でございます。しかし、その振り合い考慮します場合に、その国と何か了解を得るとか何とかというようなことをいたしておるわけではございません。日本としては、やはり賠償請求国の間ができるだけ、何と申しますか、バランスのとれたように考慮をしていくということでございまして、その意味においては、むろん第三国というものを、インドネシアなりあるいはビルマなりフィリピンなりを考慮に入れていることは、それは当然でございます。
  33. 小林孝平

    小林孝平君 従来、交換公文という名称の国際約束で、国会承認を求めたものもあり、求めてきていないものもあります。そこで、たとえば第十八国会において日米通商航海条約第八条に関する交換公文、これは国会承認を求めております。さらに、もう一つの例としては、第二十六国会特殊核物質の賃貸借に関する日米協定第一条の特例に関する交換公文、こういうものは国会承認を求めておりますが、相手国は、これは議会の承認を求めておるのですかどうですか。
  34. 高橋通敏

    政府委員高橋通敏君) ただいまの件でございますが、日米間のは、当然この内容から見まして、相手方の国会承認手続をとったものと考えます。それから、原子力協定の場合は、ちょっと私記憶にございませんが、いずれこれはお互いの国内法制上の相違からくる問題でございますので、御承知の通り条約にしろ交換公文にしろ、一方の国は国会承認手続をとる場合があり、同じ条約でございましても、他方の場合はこれをしないというような場合があるかと存じます。
  35. 小林孝平

    小林孝平君 第一回の交換公文片方承認をする、片方承認をしないでもいい、そういうこともあり得ると、こうおつしゃいましたけれども、そういうことは、その交換公文を交換するとき、はっきりわかっていなければならぬことじゃないですか。今の第一回の通商航海条約のごときものでも、第二回の方はわからない、第一のものでも「と思います」という程度で、おかしいと思うんですね。一体それだけのものをやるには、議会の承認を求めるのか求めないものであるかくらいのことは、そのときわかっているはずじゃないですか。
  36. 高橋通敏

    政府委員高橋通敏君) もちろんその当日——実は私自身の記憶としてちょっと今記憶にございません。原子力協定に関するウラニウムの返還に関する交換公文では、なかったかと思います。当然、この条約交渉の過程におきまして、先方ではどういう手続をとっているのか、また、とるべきであるかということは問題になり、お互いに承知し合っての上でこういう交渉はもちろん行なわれたと思います。
  37. 小林孝平

    小林孝平君 今回の安保条約の附属交換公文は、日本では国会承認を求めるということでございますか。アメリカの議会においてはどうなるんです。
  38. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 日本の場合には、条約の附属交換公文は当然国会の御承認を得ることになっております。そのつもりでわれわれもやっております。アメリカにつきましても同様であると私どもは考えております。なお、よくその点は調査をいたします。
  39. 小林孝平

    小林孝平君 これは国会で、たしかこの前は、アメリカにおいてはこれは議会の承認を得ない、日本承認を求めます、こういうふうに御答弁になったと思うんですがね。
  40. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 今回の場合で一番はっきりいたしておりますものは、行政協定でございます。これは、アメリカ国会の批准を要しなくていいそうでありまして、行政府に立法府から委任された事項だそうでございますが、日本としては、これは国会承認を得るということで進めておるわけであります。本条約の方の附属交換公文につきましては、アメリカ承認を求めなくてもいいと思っておりますけれども、それらの点について正確を期するために、一応さらに調査をして申し上げます。
  41. 小林孝平

    小林孝平君 ちょっとそれはおかしいです。これは私念のためにお尋ねした。この国会ではっきり政府答弁として、日本国会はこれはその前に、交換公文条約と同じ効果があるかどうかという議論をした際に、日本においてはこれは条約と同じであるからその承認、批准の手続をします、しかし、アメリカにおいてはしませんと、こういうことを言われて、それはおかしいじゃないかということで、そのままになっておるんです。一体これはどうなんです。大体アメリカとこの交換公文の批准の問題について話し合われたことがあるのですか。
  42. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 私どもはむろん、いよいよこの草案を作成いたします段階に入りますれば、そういう問題について全部話し合いをしまして、そうして当然やっていくわけであります。まだ御承知のように、日米交渉は問題点を論議をいたしまして、そうしてその問題点に対する話し合いの決定をして、これから条約文の作成に入るわけでありますから、その段階においてすべて解決をしていく、こういうっもりでおります。ただ、行政協定につきましては、初めから日本は今回の場合には国会にかけるということを前提としてやっておりますので、その点をアメリカ側にも言っております。アメリカは、自分の方はかけないでいいんだということを言っておりますから、初めにそういう話がございましたから、はっきり申し上げることができます。しかし、全体につきまして、むろん御指摘のように、交換公文その他の付属のものができまして、これをどういうふうに整理していくか、日本側で整理していくか、アメリカ側で整理していくかということは、その段階においてはっきりいたすわけであります。
  43. 小林孝平

    小林孝平君 それはおかしいです。今ごろになって、今度交換公文というものはいかにも付属文書であるような御答弁です。もう条約のあれはほとんどできているじゃないですか。そうして、しかも国会でこの交換公文ということが非常に問題になって、この条約の内容にこれは事前協議のごときは入れるべきではないかという大議論になって、そうして政府は苦しまぎれに、これは条約と同じものである、従って、日本国会でも批准の手続をいたしますと、こういうことで逃げ切ってこられたんです。そうして、その際に、アメリカはどうなるのか、アメリカの方はやらないことになっております、こういうようなお話で、全然今のお話は違うんです。今整理する段階とか、そういうことじゃないでしょう。今回の新安保条約の最も大きい国民的関心の的のこの交換公文を、大臣は急に今度は非常に軽く取り扱われてお話しになっている。私はこれは非常に問題だと思うんです。
  44. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 私は、この問題を軽く取り扱っているわけではございません。日本側としては、当然国会承認を得る条約と同等の付属文書だと、こう思ってこれを国会の批准にいたすごとになっております。アメリカにおきましては、これは法制上の立場、あるいは国会が行政府に対した委任事項の関係もございますから、日本と同じような取り扱いをいたさない場合がありましても、それは条約と同じ効力があることは、その範囲内においてはむろん当然なことだと存じております。
  45. 小林孝平

    小林孝平君 私はそういうことをお尋ねしているのじゃないんです。行政協定は、これははっきりしていますから、行政協定のことをお尋ねしているんじゃございません。交換公文のことをお尋ねしておるのです。それならば、この米国の行政協定のある部分が法律で行政府に授権されている授権法がありますか。それは交換公文についても全く一般の行政協定と、今回の行政協定交換公文についても同じ取り扱いをされているのですか、その授権法は。
  46. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 御承知のように、あるいは先般、林法制局長官が言われましたように、交換公文という名称のもとにあります文書というものは、その内容によって判定をいたさなければならぬと思うのであります。条約という形におきましての内容を持ちますものと、あるいは行政府に一任されていることによって施行し得るものと、交換公文にはそういう種類のものがあることは当然でありまして、それを一応総括的に交換公文という名称で呼んでおります。でありますから、われわれは交換公文を作りますときには、その内容によって国会の批准を仰ぎ、あるいはその内容によっては、直接の批准は仰ぎませんけれども、付属文書として国会審議の必要上提出するというようなことをとり行っておるのでありまして、決して何か軽く取り扱うとか、そういうような扱いをいたしておるわけでは毛頭ございません。
  47. 小林孝平

    小林孝平君 おかしいじゃないですか。その交換公文というのは、今、林法制局長官の話が出ましたけれども、春の予算委員会において、はっきりと、この交換公文はこういう形式をとるけれども、条約と同じなんだ、こういうことを言われた。これはこの前の委員会で問題にしたんです。包括的に交換公文というものについてそういう説明をされたんですけれども、今の問題は、この安保条約に付属する交換公文と限ってもいいですが、その交換公文は、明らかにこれは条約と同じなんだ、ただ条約の中に入れなくとも、こういう形式をとった方が都合がいいからこうやったんだ、こういうことをおっしゃった。従って、会、藤山外務大臣のお話では、交換公文条約と同じ内容のものなら、当然アメリカ国会の批准を経なければならぬ、こうおっしゃったんだから、もうこれは経なければならぬ問題じゃないですか。そうしてもう一つは、従来は、アメリカは批准をしないんだ、今度はわからない、日本はする。こういうことで答弁が全然食い違っているんです。しかも、そのうち整理したらとかおっしゃいますけれども、もう整理の段階じゃないんじゃないですか。これはもう基本的な交換公文を作るときからの私は問題だと思うんです。交換公文の性格それ自身関係する問題じゃないですか。
  48. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 若干お話が、まあこんがらかっているんじゃないかと思いますが、御承知のように、核兵器の問題でありますとか、作戦基地の問題でありますとかいう付属交換公文を作ることになると思います。これは条約と同じような内容、重要性を持っておりますから、われわれは日本として、これは交換公文でありますけれども、条約の付属書として、国会の御承認を求めることにわれわれはいたして参りたいと思います。で、日米安保条約の改定に当たりまして、それ以外にも交換公文がいろいろできることになろうと思います。で、それらのものについては国会の御批准を得るものと、御批准を得なくとも、参考資料として添付していって差しつかえないものと、そういうような交換公文があり得るわけなんでありまして、その点を御理解いただければはっきりいたすのではないかと思います。アメリカ側については、われわれは条約につきまして、当然国会承認を得ると思っておりますし、またそういうことでやることが当然だと思います。付属交換公文につきまして、これは国会の批准を得なくとも、アメリカ法制ではいいと考えておりますけれども、またそういうふうにわれわれ理解しておりますが、今御質問がありましたから、さらに慎重に確かめた上で確答申し上げるということを申しておるのでありまして、決してないがしろにいたしておるとか、何かけちをつけておるというようなことではございません。
  49. 小林孝平

    小林孝平君 大臣は、私が問題にしていることをそらして、それ以外のことに発展させられるからおかしいんです。いろいろの交換公文ができるのは、それはわかっている。今一育っているのは、われわれは事前協議を含む、あるいは城外出動の事前協議、核兵器持ち込みの事前協議、そういう事前協議事項を含む交換公文の話をしている。しかも、これは国会においての論議に今まで明らかなんです。今の大臣の御答弁は、従来の政府の見解と違うんです。初めは述って、その後に今度はぼかされて、どちらにもとれるような、それはどうなるかわからぬ、こういうふうにおっしゃっているんです。だから、要するにこの問題は、その場その場で質疑をかわされるために答弁をされているからそういうことになる。非常にこういう重大な問題を、そういうあいまいなことでは私は困ると思うんです。大体条約局長も、いつもは元気よく立つが、さっぱりこれに答弁できないのはどういうんですか、あなたは。知らないのか、知っていても工合が悪いから答弁しないのか。いつもあなたは聞きもしないのに答弁する。きょうは黙っている。
  50. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 私、混同しているわけではございませんで、先ほど申し上げましたように、核兵器の問題あるいは作戦基地の問題についての交換公文は、従来とも国会の、日本においては国会の批准を仰ぎ、付属交換公文であってもその条約の内容について非常に大きな影響を持っている。ただ、それを交換公文にしたということは、一般的協議の中から特殊のそういうものを取り出して規律することであるから交換公文にしたという御説明を従来ともいたしておるわけでありまして、特段に変わった説明をきょういたしたのではないと考えております。
  51. 小林孝平

    小林孝平君 そこまではわかったのです。それはもう明確なんです。そこまでは明確で、そういうことを言っているのではない。それはお尋ねしているわけではないのです。別のことをお尋ねしているのにお答えがない。
  52. 森元治郎

    森元治郎君 大臣に伺いますがね。交換公文を、これは、安保条約の話に移っておりますが、条約本文に入れる方が適当か、あるいは入れるよりも交換公文の形式にした方が適当と、いずれにお考えになりますか。
  53. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) それは、ただいまの御質問は、一般論的な意味でのお話か、あるいは安保条約という特定の問題について……。
  54. 森元治郎

    森元治郎君 安保条約に関してです。
  55. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 私はかねてから国会答弁しておりますように、また今も御答弁申し上げましたように、今回の条約作成に当たりまして、協議という事項が条約本文に出て参ります。数カ所出てくることになろうと思います。その中から特に事前に協議をする、そうしてこれこれのことを協議するという特定のものを取り出して参る関係上、これは付属交換公文にいたして、しかも、それは条約のほんとうのいわゆる付属交換公文として参ることが適当であると、こう考えております。
  56. 森元治郎

    森元治郎君 それを承服したわけではありませんがね。これを、交渉の当初から政府交換公文のあの趣旨を条約本文に入れるという努力はしたようですが、どうですか。しかし、それは向こうの強硬な突っぱりによってできなかった。やむを得ず交換公文で、引き下がらなければならなかったというのがほんとうの実情、夜に入ってまっ暗になったら、あなたと私とお話をすればそう答えるだろうと思うのだが、今ここでは言えませんか、はっきりして下さい。
  57. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 初めから本文でこれを書くという交渉をいたしたことはございませんし、従って、アメリカ側からこれを断わられた事実はございません。初めから事柄の内容から見まして、こういうものを摘出して特融するという形は交換公文の形式が適当であるということでございました。
  58. 森元治郎

    森元治郎君 内容からいえば本文に入れるべき性質、その例は、現行の安保条約交渉のときに外務省の先輩方が一番苦労したのは、例の行政協定二十四条の緊急協議、これをどうかして本文の方に入れたいと努力した。アメリカは断じて入れない。お前の国はまだ自分の軍隊もないじゃないか、おれと対等の品をきけるわけはないじゃないか、そういうことを言うなら安保条約を結ばないぞということを言われて、泣きの涙であの行政協定二十四条に緊急協議の条項が入った。その行政協定政府間の行政協定であって、条約でないということで向こうは逃げた。アメリカの一番いやなことは、行政協定でやって、条約約束をしたくない。今回の交換公文は重要なる装備、配備についての趣旨である。これは、日本と、しかも自分と同じ力を持っていない、百分の一かあるいは千分の一の力しかないものにこういう事前協議の条項を協議するとかいうことを条約本文に約束するということは、とてもアメリカの上院が通過しないということで、日本政府、がまんしてくれ、これは交換公文でやってくれと言われたにきまっている。ですから、日本はどうしてもああいう重大なものは入れたいが、向こうは入れたくない、こういう経緯であったと思う。アメリカとしては、こういう重要責任を負いたくないというのが、本文に入れなかった趣旨であるということは、現行安保条約交渉の経過に見て歴然たる事実だと思うのですが、どうですか。
  59. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 御指摘ではありますけれども、私ども今お話のようなふうには解釈いたしておりませんし、考えておりません。交換公文でありましょうとも、その価値が下がるわけではないわけです。いわんや内容につきまして、国会にも、日本側においては御批准を得るわけであります。私どもとしては、その事の性質上付属交換公文にいたすことが適当であるということで、最初から交渉いたしたのであります。むろん交渉は激しく議論をいたす場合もございますけれども、この点に関して泣きの涙で引き下がったということは全然ございません。
  60. 森元治郎

    森元治郎君 それならばこれを国会に、アメリカの上院に出す場合には参考文書として出すというのが政府の御説明でありますけれども、参考文書というのは、一体どういうことですか、法的拘束力があるのですか、何です参考文書とは。
  61. 高橋通敏

    政府委員高橋通敏君) やはり条約本文と申しますか、条約を出す、提出し、その批准審議のための参考として添付してこれを提出するということになるかと思います。ただいま御指摘の点でございますが、ただそれは私から申し上げるまでもなく、アメリカにおけるそういう国内法におけるそのような手続でございまして、それが批准であろうが参考文献であろうが、両国政府代表が署名するということにおいて国際約束を構成しますから、その国際約束の効果としては双方とも何ら関係がない、こういうふうに考えます。
  62. 森元治郎

    森元治郎君 参考文書という意味は、どうですか、今の交換公文をこれに送付して国会に出すというならわかりますが、参考文書という、漢字で四ついうと、ちょっと試験の参考書みたいな感じがするのですが、参考文書というのはないでしょう。
  63. 高橋通敏

    政府委員高橋通敏君) 条約に添付をして送付するという意味、参考文書とちょっと俗な言い方でございますが、批准の対象は条約であるということであります。
  64. 森元治郎

    森元治郎君 こういう法律問題を交換公文に、条約という程度の高い話をしているときに、そんな俗な言葉だなんていう言葉で国会答弁をしないでもらいたい。それだけ。
  65. 小林孝平

    小林孝平君 ともかくこの問題は、従来の国会答弁と全然違います。これはもう後刻速記録を調べまして、改めて昼からお尋ねをいたします。その俊敏なる条約局長も補佐できないじゃないか、さっきから全然違うからなんです。こんな重大なことはないですよ。そうして外務大臣もお人柄に似合わず私の答弁に違うことを言っている。外回りばっかり御答弁になる。全然違う。こういうことでは私はほんとうは質問は継続できないと思うけれども、特にまあ次に移りましょう。(笑声)  そこでこの今の重大な問題は、われわれは十分速記録を調べまして、そうしてただします。外務省当局も十分調べて昼から外務大臣に恥をかかせないようにしっかりやりなさい。  そこでですね、国会の、今言ったように、今日本の例でも、私はそれ以上あるかもしれません。日米通商航海条約の第十八条に関するもの、それから特殊核物質賃貸に関するもの、この交換公文は、国会承認を求めておりますけれども、国会承認を求めるものと、しからざるものと、どういうふうに、どういう基準でもって区別をしておられるのですか。
  66. 高橋通敏

    政府委員高橋通敏君) 御承知の憲法七十三条でございますが、「条約締結すること。但し、事前に、時宜によっては事後に、国会承認を経ることを必要とする。」、ここにございます条約という、これは条約あるいは交換公文という名称によって、交換公文または条約という名称がついたならば、必ず事前または事後に締結について国会承認を得べきである。または条約でないものは得べきでないという意味ではございません。条約という名称がついていましても、またついていなくても、またいろいろ議定書とかあるいは交換公文という名称もつきます。そういうような名称がつきましても、要は実体において国家間の権利義務関係を確定するというような内容でございますれば、その名称いかんを問わず、事前または事後に、原則として事前でございますが、国会承認を得るというふうに考えておるわけであります。
  67. 小林孝平

    小林孝平君 私が聞いているのは、どういう基準でもって区別をするか、こういうのです。前の方の、そのくらいのことは私も知っています。そんなことを聞いているのじゃない。どういう基準で、これは国会承認を得るものである、これは国会承認を得ないでもいいと、どういう基準で一体やっているか。今の、国家間の権利義務の設定に関して関係あるものは承認を得る。——その基準は……。明確に書いてある場合はいいですよ、だれでもわかる場合。わからないような場合が多いんじゃないですか。その基準を、その判断はだれがするのですか。
  68. 高橋通敏

    政府委員高橋通敏君) 政府側といたしましては、条約または交換公文の内容につきまして、これが行政権の範囲内で処理できる事項であるという場合におきましては、これは条約でありましても、提出、承認は仰がない。それ以外の場合、すなわち国家間の権利義務関係を設定するような場合、もっと具体的に申し上げますれば、その条約を実施するに際しまして国民の権利義務に関係がある場合、たとえば、そのために特別の立法をしなければならぬ、こういう場合においては、事前に国会の御承認を得るということになります。
  69. 小林孝平

    小林孝平君 その内容の判断はいろいろあると思うのです、そのときになれば。それはそういうことに関係がない。あなたが今言われた条件に該当するかしないかということは、だれが判断するのです。具体的には、一体これは国会に出したらいいか、出さないでいいかという判断を、だれがするのですか。
  70. 高橋通敏

    政府委員高橋通敏君) もちろん、その内容によりまして客観的な基準があると思いますが、条約を提出するのは政府が提出いたしますから、政府がそれを判断いたしまして、その必要がある、また必要ないと判断することによって処理すると思います。
  71. 小林孝平

    小林孝平君 政府と言うけれども、実際、外務省の担当事務官がやっているじゃないですか。そういう重大なことを、あなた政府とか何とか言うけれども、実際は外務省の担当事務官がやっているのです。そういうことでいいですか。
  72. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) もちろんいろいろな検討につきましては、外務省の事務官がやっておりますけれども、責任は全部外務大臣として私が背負っておるわけであります。私の発案によりまして内閣がこれを決定するということでございます。
  73. 小林孝平

    小林孝平君 そういうしゃくし定木というか、形式的な答弁は、私はあなたに求めているのじゃありませんよ。藤山さんは、政界に入られてから、だんだん人が、そういうふうな事務官僚のそのまねをされたような答弁をする。あなたが今そういう答弁でもってすべて押し通されるなら、この間、日本工営の社長に、外務省調査員という、調査員の発令をした発令者はあなたですよ。それを、全然そんなことは知らない、関係がないと言い切ったじゃないですか。そういうことは、これは表面上のことであって、私が全部責任を負っていますなんてえらそうなことをおっしゃって、実際やるのは、あなた、外務省のそこらにいる事務官ですよ。あなたの一つ一つ答弁だって、条約局長が答弁しなければわからないのです。それが外務大臣です。外務大臣に私らそんなことを求めているのではない。もっと高い政治的な判断をあなたに求めている。私が全部責任を負っていますということは、いかにもそれは外務大臣として責任をとっているようだけれども、それはむしろ責任をとらない。われわれは、こまかいことはあなたの責任ではないと思っている。あなた、もっと高い政治的な判断をやられるといいのです。そういうつまらないことにみえを切られる必要は全然ないのです。  そこで、私は、そういうことだから、この際に国際間の公文書国会に付議するものといなとの基準に関する立法をする用意は、あなたはないかございますかどうか。そういう事務官僚に、一外務事務官にそういう重要な判断をまかせておくということではなくて、こういう基準を立法される必要がないか。それはアメリカにおける授権法のようなものですけれども、まあそれも一つの例でしょう。そういうことはいいか悪いかは別にして、そういうやられる考えはあるかないか。
  74. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 現在、私は、御指摘のような、何か法律案を提出するという考え方は持っておりません。
  75. 小林孝平

    小林孝平君 外務大臣は、現在はとおっしゃったけれども、それはそれ、何もおわかりにならないから、そういう御答弁になったんです。今までの本日の経過をお聞きになれば、それはあらためて検討を要する事柄ではないかと思うのです。それは前からお考えになっているような御答弁で、私はありませんとおっしゃるけれども、そんな簡単な問題じゃないと思う。あなたが、もしそういうことを、今も確信を持ってそういうことをお答えになるならば、従来通り政府の一属僚の判断で国会条約審議権が阻害されることに私はなると思うのです。国会として看過できないところでありますが、これに対するあなたのお考え。これは総理大臣にもお尋ねをしたいと思います。本日はその意味において理事に総理大臣出席を求めておったのですが、実に職務怠慢ではないですか。あなた、まあ外務大臣一つ
  76. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 今日までむろん、属僚が決定するということでございますが、いろいろな問題について、外務大臣としてはとうてい細部にわたって自分自身調査し、研究し、あるいは判断する、その資料を得るということは、それは困難なこと、御指摘通りであります。従って、省内の人たちの意見の上に立って仕事をいたしますことは当然でございます。でありますから、今日までの経過から申し上げますれば、そういうものがまとまって出ますときには、やはり責任としては外務大臣がとるべきものだということを申し上げたわけでありまして、決していばってみえを切ったわけでもないのであります。今日今までの法律上の関係その他から見まして、当然国会に出すべきものと、あるいは行政府にまかせられたる範囲内におけるものとの判断というものは、一応基準があって、それでやっておりますので、特に今国会に対して何かそういう基準をきめるような法律を出す必要はないと、私は考えております。
  77. 小林孝平

    小林孝平君 何か基準があるとおっしゃったのですけれども、基準があったら、それを、外務省の内規のようなものかもしれませんが、それを出して下さい。どういうものがありますか。
  78. 高橋通敏

    政府委員高橋通敏君) 別に内規というようなきまったものはございません。
  79. 小林孝平

    小林孝平君 今あると言った。
  80. 高橋通敏

    政府委員高橋通敏君) しかし、外務省といたしましては、ただいま申し上げたような基準に従いまして、(「憲法にあるじゃないか」と呼ぶ者あり)個々の条約交渉におきまして、その基準に合うかどうかということで検討して参っている次第であります。
  81. 小林孝平

    小林孝平君 何か、憲法にあるじゃないかなんという不規則発言があったけれども、憲法の解釈すら非常に、特に拡大解釈される、あるいはゆがめられる、こういうことでありますから、私は、今の権利義務の設定に関係のあるものというようなことを言われても、具体的にそれがはたしてそうであるかどうかということは非常に判断がむずかしいと思うのです。先ほどは外務官僚、非常に優秀な方々だけだと申し上げたけれども、いかに優秀であっても、それは誤りなきを保しがたい。まして、今のような予算の不備であって、ろくに調査もできない、そういう外務省の陣容で、できますか。一体、外務省の先輩ならそんなことはできると言うかもしれませんけれども、私はできないと思うのです。どういう基準でやっているのです。大臣はあると言ったでしょう。
  82. 高橋通敏

    政府委員高橋通敏君) ただいまの基準でございますが、これはただいま申し上げましたように、新しい国家間の権利義務を定めるものであるかどうか。もっと具体的に申し上げますれば、個々の条約交渉におきまして、個々の条文をしさいに私ども検討いたしまして、これが直接国の、国民の権利義務に関係するものであるかどうか。もしそれならば、立法を必要とする事項であるかどうかという点を具体的に個々の条文に照らして研究いたしまして、それによって確定する次第でございます。また条約締結した場合に、その条約の条文によりまして、各条項によりまして、実施細目と申しますか、実施については行政権にゆだねるという規定がございます。そういう場合には、その条約の条項の規定に従って、行政権同士で締結をしていくということになる次第でございます。
  83. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 関連。ただいまの政府答弁を聞いておりますと、憲法の問題、非常に重要ですから、私は特にお尋ねするのですが、憲法にいうところの国会承認を求めるという段階では、条約——この条約説明として新しい国家間の権利義務の関係、そこまではわかっております。あとのところで、特に具体的な国民の権利義務に関するもの、新しい立法を要するもの、そこの点にそういうふうに限定してくると、私は憲法の解釈問題として、これは重大問題だと思います。その点ははっきりそういうふうに限定をされるのか。その点だけはあとのこともありますから、ここではっきりしておかれた方がいいと思いますが、その点の見解を一つお尋ねしておきます。
  84. 高橋通敏

    政府委員高橋通敏君) もちろん、その点につきましては、従来のわれわれの扱いといたしまして、そのようなことを基準として考えている次第でございます。ただ、もちろん条約でございますから、国家間の権利義務を定めます次第でございます。従いまして、条約即法律というふうな考え方でこれも扱っていけるということは考えられる次第でございます。この条約交渉及び効力の問題といたしまして、これがたとえば、もちろん、個々におきます賠償関係でございますれば、賠償関係の代表者が参ります。その代表者に外交官と同じような特権を与えるということがございます。そういうことになりますと、やはりその問題は特権の扱いで、厳密にそれを実施する場合には、やはり法律という必要があるかもしれません。しかしながら、必ずそれをそういうふうな扱いをいたしませずに、条約即法律というふうな考え方と申しますか、条約を法律として適用していくという場合もございます。
  85. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 それではちょっと尽きませんから、一点だけお尋ねしますが、条約の内容によって、国民の権利義務には関係ないことを内容とし、対象とすることがあることは、私は、言うまでもないことであります。そういう場合には、国民の権利義務ということが一つも出てこない。しかし、それに対して国として新しい権利義務を負う、そういいり条約かあるので、それだからずっとしぼっていって、国民の権利義務に関係するものということは、厳密に限定し過ぎはしませんか。そこのところをそういうようにここで限定してしまっていくと、憲法の解釈として、政府の解釈として非常に困りはせぬかということを私は質問している。
  86. 高橋通敏

    政府委員高橋通敏君) 国民の権利義務または具体的な立法ということに、一つの具体的な例証として最も具体的なことをあげて申し上げたつもりでございます。それがすべてであり、それがすべて一般化される問題ということまでは私は申し上げていないつもりでございます。
  87. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 そこをはっきりしておけはそれでいい。
  88. 小林孝平

    小林孝平君 私は今の議論でもさっぱりはっきりまだしておらぬと思う。これだけまあよくおわかりになった方が論じ合っても、ようやくこの程度了解に達するのです。われわれちっともよくわからない。そうすると、あなた方の判断によって勝手にこの国会審議権を拘束しているじゃないか、あるいは阻害しているじゃないか。もう一つ、その的にお尋ねしたいのは、この問題、後日ゆっくりと、私は初めから申し上げているように、この国会で法律論をやって政府委員と論争しようとは思っておらぬのです。また、そういうことを、あなた方は専門家であるから、われわれに疑義がないように答弁をされるはずなんです。それはいつもわれわれしろうとにもわからないようなことを、納得できないような議論をやっていられるのが私はおかしいと思うから、その点は後ほどやりますが、先ほど条約でも国会に批准を得ない、いいと、こうおつしゃいましたけれども、この憲法七十三条の三号には、条約政府締結し、事前または事後に、国会承認を経るものとすると書いてあるじゃないですか。いっその条約は批准を必要としないでいいということになったんですか。憲法はいつ改正になったんですか。おかしいじゃないですか。
  89. 高橋通敏

    政府委員高橋通敏君) 先ほど条約と申し上げましたのは、実体的な意味と形式的な意味と……。
  90. 小林孝平

    小林孝平君 冗談じゃない。さっきは条約、付属議定書、交換公文、行政協定、こういうふうにお話しになったんです。おかしいですよ。私は一つずつやろうと思ったんですけれどもね、そういうふうに条約すらあなた方の判断で国会の批准を経ないでいいというようなことになっては、それは大へんですよ。いつの間に憲法を改正したのです。こういう先ほどからの答弁では、これは質問を続けるわけにいかないと思うのです。ちょっと休憩してもらったらどうかと思うな。
  91. 高橋通敏

    政府委員高橋通敏君) 先ほどちょっと言葉が不十分だったかと考えますが、この条約と言っております内容は、これは実体的な意味条約であると考えております。そして、そのような実体的な意味条約は、われわれの扱いにおいては常にやはり条約という名称をもうほとんど使っております。従いまして、この場合においては、実体的な名称も形式的な名称も一致いたしますから、この条約というのは、ここの条約はそのような意味合いにおきまして、国会の事前または事後に国会承認を経るということになると思います。
  92. 小林孝平

    小林孝平君 私はこの法律の専門家でないことは先ほど御承知の通りです。そういうふうにわれわれ専門家でないと思って、その場その場でいいようなことを言われても困る。外務省答弁はややもすればそうなんです。専門的の外交用語でもって国会をいつも乗り切ってこられる、私はこれは非常に重要でございますから、こんなことで憲法をいつの間にか改正されたような解釈をされて、それでいいものかどうか、これは疑問ですから、私も研究しますし、私は条約局長の俊敏は認めるけれども、あなただけでいいかどうかという問題です。これは法制局長官に来てもらってよく話を聞かんければならぬと思うのです。これは委員の中には十分そんなことはわかっている、しろうとの議論のようなことはやらぬでもとおっしゃる方があるかもしれません。御迷惑かもしれませんけれども、ここで十二時になりましたから休憩をして、そしてあなた方もよく研究をして、そして今後は法制局長官でも来てもらってやったらどうかと思うのです。理事はいないけれども、こんなことじゃ質問続けられませんよ。あなた御答弁になるとなお混乱しますから……。
  93. 草葉隆圓

    委員長草葉隆圓君) これにて暫時休憩し、午後二時から再会し、さらに質疑を続行いたします。    午後零時一分休憩    —————・—————    午後二時三十三分開会
  94. 草葉隆圓

    委員長草葉隆圓君) 休憩前に引き続き、委員会を再開いたします。  ベトナム賠償協定関係両件の質疑を続行いたします。御質疑を願います。
  95. 小林孝平

    小林孝平君 私は午前、秘密交換公文関係いたしまして質問をやっておりました途中におきまして、政府側の答弁におきまして、条約でも国会承認を得る必要がないものがある、こういう御答弁がなされたわけであります。今、速記録を読み上げますが、政府委員高橋条約局長は、「政府側といたしましては、条約または交換公文の内容につきまして、これが行政権の範囲内で処理できる事項であるという場合におきましては、これは条約でありましても提出承認は仰がない、それ以外の場合、すなわち国家間の権利義務関係を設定するような場合」云々と、こういうふうに書いてあります。これは一カ所ではなくて、他の個所においても言われておるのであります。要するに憲法第七十三条の第三項に、明らかに政府条約締結して、事前または事後に国会承認を経ると書いてあるのに、この条約のうち、あるものは国会承認を得ないでいいというようなことは、憲法の改正をしなければできないことなんです。大体、いつ政府は憲法の改正をしたのですか。こういうことでは私は困ると思っておるのですが、こういうような情勢では、今後質疑をいたしましても、こういう重大な憲法の規定をも無視するような御答弁があるのですから、他は推して知るべしだと思うのです。従って、この状態では、質疑を継続しても満足な審議ができないのではないかと、私はこう思います。委員長のお考えを……。委員長のあれを聞いているのです。
  96. 草葉隆圓

    委員長草葉隆圓君) 委員長は、十分答弁をせしめて、質疑を続行し、慎重に御検討をいただきたいと存じます。
  97. 高橋通敏

    政府委員高橋通敏君) 今の御指摘の点でございますが、条約という意味を私は実体的な意味に使ったつもりでございます。少し言葉が不十分であったかと考えますが、条約という言葉が使ってなくても、たとえば御指摘のよりに日ソ共同宣言、それから議定書、その他協定というような名前ももちろんでございます、交換公文という名前もございますが、そういうような名称で、条約以外の名称を使っておりましても、やはり憲法七十三条の条約考え国会承認の対象になる、こういうことであります。
  98. 小林孝平

    小林孝平君 条約局長はそうおっしゃったけれども、あなたの言うことは、ほかのところで別の表現になっているのです。これは数カ所において明らかなんです。条約という言葉を使ってなくても内容は条約のようなものがある、そういうものはそれは国会承認を得る必要があるということを言われておりますけれども、条約という書架を使ってあるそのものは国会承認に得なくてもいいということを明らかに言われている。これ以上あなたが御答弁になっても、これはむだですよ。それなら速記録をちゃんとごらんになってからお話しになっていただきたいと思います。
  99. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 議事進行。小林君のところと委員長のところに速記録があるのですが、われわれのところには速記録はございません。横にあるのを見ることはできますが、委員長、速記録を見て、速記録によって質疑を続けるというなら、これは速記録を印刷して下さい。先ほど委員長小林君の申し出に対して、いや、条約局長そのままでも質疑は続行できるだろう、こういう御答弁ですが、あなただけ見ていて審議をしていても、これは片手落ちです、どうされるのですか。あなたはそこにお持ちであるから見ておられるか……。
  100. 草葉隆圓

    委員長草葉隆圓君) 吉田君から、委員長だけ速記録があるというお話でありますが、私と小林君との手元にありまするが、とりあえず午前中の高橋条約局長のこれに関する速記録を取り寄せて私よく見ているのであります。これを読み上げます。
  101. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 ちょっと待った。委員長の手元にあり、小林君の手元にあるだけで審議するのは、それは片手落ちじゃないか。
  102. 草葉隆圓

    委員長草葉隆圓君) 速記をやめて。    〔速記中止〕
  103. 草葉隆圓

    委員長草葉隆圓君) 速記を始めて。  それでは、午前中の発言について、ただいまいろいろ御意見があり、私からも申し上げましたが、これは暫時ここで休憩をいたしまして、理事会に諮った上御相談をきめて、それから荷閲することにいたします。暫時休憩をいたします。    午後二時四十六分休憩    —————・—————    午後三時三十五分開会
  104. 草葉隆圓

    委員長草葉隆圓君) 午前の高橋条約局長の答弁について理事会において協議いたしました結果、その答弁中、条約と憲法との関係において誤りがあったという結論に達しましたので、藤山外務大臣高橋条約局長から政府の意思を明確にされたいと存じます。
  105. 高橋通敏

    政府委員高橋通敏君) 先ほどの私の発言中、趣旨不徹底のため条約国会承認のため提出しない場合があると申したことは誤りでありまして、取り消しさせていただきます。
  106. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 先ほどの条約局長の答弁が不徹底でありまして、皆様方に御迷惑をかけましたことを、ただいま条約局長が取り消した通りでございますので、お許しを願いたいと思います。
  107. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 委員長理事打合会で検討いたしましたところ、先ほど委員長から読み上げられたように、午前中の条約局長の答弁の中で、条約と憲法との関係についての見解は誤りである、こういう認定をしたわけであります。今の御答弁は、大臣あるいは局長とも不徹底だということです。誤りであるとはお認めになりませんでした。そうしてその不徹底な点を取り消された、こういうのですが、それでは取り消された見解に基づく正しいと思われる見解が述べられなければ、そうして誤った部分が直されなければ、われわれとしては了承するわけには参りません。不徹底であったのか、誤りであったのか、それから訂正を取り消しをしてどういうように考えておられるのか、その点をもう一ぺん御答弁を願わなければ、何とも私どもとしては判断をいたしかねます。
  108. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 午前中の条約局長の答弁が、いろいろ議論を誘致しまして、そうしたことについてはまことに申しわけないと思います。答弁そのものが誤っておったということで条約局長取り消しておりますので、御了承願います。
  109. 小林孝平

    小林孝平君 今の条約局長の御説明では、誤りであったとおっしゃったのですか、それならば正しい見解はどうであるか、その点に関して。
  110. 高橋通敏

    政府委員高橋通敏君) 条約は全部国会承認のために提出いたします。
  111. 小林孝平

    小林孝平君 外務大臣もそれを確認されるわけですか。
  112. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 先ほど申しました通り条約局長取り消しております。従って、取り消した理由を今申し述べたのであります。当然確認いたしております。
  113. 小林孝平

    小林孝平君 途中中断をいたしましたので、午前からの連絡がよくおわかりにならないようなことになったのではないかと思いますが、秘密交換公文に関連いたしまして、その性格それから今後の交換公文の取り扱いについて継続してお尋ねをいたします。  そこで、先ほど政府は、これからは国会を尊重すると答弁されましたけれども、この賠償協定国会承認を求めることについても国会を尊重しておられますか。
  114. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 私は常に尊重いたしておるつもりでございます。
  115. 小林孝平

    小林孝平君 しからば、今回の秘密交換公文は、国会承認の対象になるのかならないのか。
  116. 高橋通敏

    政府委員高橋通敏君) これは承認の対象にならないと思います。
  117. 小林孝平

    小林孝平君 国会承認の対象にならないとするならば、その理由はなぜか。これは広く先般秘密交換公文公表されましたら、これは当然国会承認要求すべきものであるという意見が強まっておりまして、現に与党の一部にも、強力にそういう御主張をなさる画きもあるのですが、(「ない」と呼ぶ者あり)要らぬことを言うな。政府はどうお考えになりますか。(「思い違いだ、取り消す」と呼ぶ者あり)取り消すとは何だ。はっきりと、与党の有力なる議員が言われておりますから、私は言うただけだ。
  118. 高橋通敏

    政府委員高橋通敏君) この公文の中で、第二次世界戦争の遂行に関連して云々、日本国の軍隊がとった行動から生じたベトナム共和国及びその国民の、日本国に対する請求権は存在しないという事実を確認しているわけでございます。そういう事実をここで述べているわけであります。
  119. 小林孝平

    小林孝平君 事実を述べているからいいという法はないのじゃないですか、事実の内容がどういうものであるかというところに問題があると思う。  委員長に申し上げますけれども、条約局長は相当お疲れじゃないですか、いいですか、続けても、また間違いがあるといけない。
  120. 草葉隆圓

  121. 小林孝平

    小林孝平君 それはだめだ。私は午前中から一貫して、これはずっとやっているのです。法制局長官、途中から来たってわからぬ。
  122. 林修三

    政府委員(林修三君) ただいまの点は、前回も私お答えしたところでございますので、実は御議論の筋、あるいは政府側の答弁いたしました筋は大体わかっておるつもりでございます。もし間違っておりましたら、またそれは御指摘願いたいと思います。  これは先ほどから、前回も申し上げました通りに、いわゆるこの交換公文は、この賠償協定に基づいて、お互いにきまりました。日本として幾らその賠償を払う、そういうことに関連いたしまして、この賠償協定が妥結になりましたあとは、当然それはそれで、賠償請求権というものは、それでなくなるのはあたりまえのことであります。そういう事実を単に解釈として述べたにすぎない、そういうものと私どもは解釈いたします。従いまして、これは新しく国家間に権利義務関係を設定するものではない、かように考えますので、ただいま条約局長がお答えいたしましたように、国会の御承認の対象になるべきものではない、条約に付随する文書ではございますけれども、参考として、今回御提出した、こういうものだと思います。
  123. 小林孝平

    小林孝平君 それはおかしいじゃありませんか。そんな意味のないものなら、なぜ秘密条約にしておいたんです。交換公文にして、意味のないものならやめたらいい、そういうものを、意味のない交換公文を作ったりいろいろするから、重要な交換公文も、意味のないものと同じことになると思う、私は非常にその答弁が問題と思う。しかもぎょうぎょうしく秘密交換公文などと、そのために藤山秘密外交というように言われることになる。私は、非常にこの問題は重大な問題があると思うのです。林法制局長官はそういう御答弁ですけれども、条約局長どうです。
  124. 高橋通敏

    政府委員高橋通敏君) ただいま申し上げました通り、請求権はないという事実をここではっきり確認している問題でございますので、これは賠償を支払った以上、もう請求権はないのだということを言っておるわけでありますので、ただいま申し上げた通りだと思います。
  125. 小林孝平

    小林孝平君 それは非常に問題なんです。あなたが先ほど言われた国民の権利義務に関係のある問題じゃないですか。これは政治的に見ましても、その内容は、実に重要であります。この請求権を放棄する、しかもこの北ベトナムの請求権を奪ったという点で、また非常に問題であります。これは、将来この問題は紛争の種になって、国際裁判に提訴しなければならぬ、こういうような問題を含んでいることはわかっておりながら、この北ベトナムの請求権を奪ったという点で、この点は、非常に重大な問題だと思う。どういうふうに考えられますか。  それからさらに、法律的にも何らの権利義務がないからであるというふうに御説明になっておりますけれども、それは違います。ビルマ賠償協定では、この賠償総額について再考慮条項があります。この交換公文は、将来の再考慮を封じた効果があるものでありまして、その意味においても、本文に挿入しておいても不思議でない規定なんです。今のような御答弁は、私は全然間違いだと思います。
  126. 林修三

    政府委員(林修三君) ただいま御質問……。
  127. 小林孝平

    小林孝平君 いやだめなんです。私は条約局長にお尋ねすると思った……あなた立たれたけれども、私は法制局長官でも、だめなんです。これは、外務大臣お尋ねしたい、こういうわけなんです。そんな事務当局のお話を——私は片々たる法律論をやろうという意味ではないのです。初めから言っておるのです。そんな法律論なら、あなたの方は勝つことはさまっているのです。ときどき負けておりますけれども……。それでもあなた方負けている。そんなことをやろうと思っているのではない。政治家としてどういう判断をするか、この重大な問題を。それを外務大臣お尋ねします。あんたたちは、法律論をちょっと聞きたいと言うたとき、お答えになればいい。あなた方がそんな出しゃばりをやる必要はない。
  128. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) この交換公文の解釈につきましては、ただいま条約局長の申した通りであります。私どもは、その解釈の上に立っております。これが、何か政治的な特殊の将来にわたる関係を持つというふうには、私ども考えておりません。われわれはサンフランシスコ条約の義務を履行いたしておりますので、その点に関しまして、この問題が、北ベトナムの何かを封じたというような種類のものとは考えておらないのであります。われわれとしては、サンフランシスコ条約の義務を履行したということでございます。
  129. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 この交換公文の署名者は藤山愛一郎君、藤山外務大臣ですから、藤山外務大臣がこれは責任をもってお書きになり、お出しになったのだと思うのですが、先ほどからの問題は、権利義務に関係があるかないかということが、国会に批准をすべきかどうかという点に、今かかっている。条約という名前がついたものは、全部国会に批准をするのだ、こういう点は、先ほど取り消して、認められました。権利義務に関係があるというものは、これは国会にかけるのだ、こういう御答弁の後に、藤山外務大臣が今認められた、条約局長の答弁は、請求権がなくなる、請求権がないということを明確にした、こういう御答弁、今の藤山大臣答弁のような、政治的な問題がこの中に含まれている——重大な政治問題が含まれているかどうかという問題ではございません。賠償請求権に関連して、この書簡あるいは復簡ですか、そういうものは関係があるかないか、こういうことをお尋ねをしておる。条約局長は、請求権がなくなる、あるいは請求権がないということを明確にしておる。そうすると、請求権、権利義務に関係があるのじゃありませんか。藤山外務大臣一つ答弁願いたい。
  130. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) ただいま小林委員より、政治的な立場でというお話がありましたもので、そういう点について申し上げたわけであります。条約局長が御説明申し上げました通り、事実を確認したものでありまして、新しく権利義務が設定されるという種類のものではないと、こういうことでございます。
  131. 森元治郎

    森元治郎君 関連。まず形式で聞きたいんですが、この交換公文の、外務省から刷ってわれわれに下すったこの中に、日本側書簡と、こうあっさり、ベトナムの書簡ですな、ベトナム書簡の方……日本側書簡と書いた交換公文はないんですがね。やはりいかなる交換公文でも、紙は今統制じゃないんですから、交換公文などは、ちゃんとあなた、書いて……何ですか、まん中に日本側書簡と、まことにばかにした……。この交換公文は、これは交換公文じゃないですよ、われわれにくれたのは。
  132. 高橋通敏

    政府委員高橋通敏君) これは、その交換公文そのものを写真版でレプロデュースするという意味でございません。ここは、この日本側書簡というのは、この前の日本側書簡をそのまま引用するわけでございますから、これは同じことでございますから、便宜的に省略したわけです。
  133. 森元治郎

    森元治郎君 それなら、そういうの見せて下さい、条約集を出して。前のやつは、これをリフレインするのがめんどうだから……。それならありますか。そこにあるでしょう、二国間条約集、ありますか。そんなの、交換公文、抜いてありませんよ、全部入ってますよ。
  134. 高橋通敏

    政府委員高橋通敏君) 資料としてお出しするときに、便宜省略しましてお出ししたわけでございます。
  135. 森元治郎

    森元治郎君 だめだなあ。私らのときには、交換公文何ですかといったら、大臣があわてて、おたおたやったの見ているんですから、三、四日前。どこに省略と書いてあるですか。ちゃんと交換公文と書いてあるじゃないですか。そういうこと言わないで、やっぱりこれは手落ちであったと、こう言えばいいんです。それ、お認めになるでしょう。
  136. 高橋通敏

    政府委員高橋通敏君) それを詳しく書けば、それは……
  137. 森元治郎

    森元治郎君 じゃ、まああなたの顔もあるから、許してやるけれども、そういうことはやっぱりちゃんと雷くんです、今後ね。たくさん交換公文出るそうですから………。さっきちょっと大臣口からすべったのが、私、入ってます。今は重要なる装備、配備についての交換公文一つかと思ったら、二つ三つあるそうだということを、ちょろっと言ったのを……、私はいずれ別の機会にお尋ねいたしますが……。そこで、この藤山外務大臣向こうの人との交換公文ですが、なぜこの中に昭和十九年八月二十五日と入っていないんですか。
  138. 高橋通敏

    政府委員高橋通敏君) 日付……、いつの日付でございますか入ってないのは。
  139. 森元治郎

    森元治郎君 今度さんざん戦争開始では昭和十九年八月二十五日だと押し切ったんだから、それ以前というのを……。その八月二十五日という字を入れないで、これはベトナムが入れさせないんでしょうがね。入れないで、ただ、賠償協定の場合を除き請求権がないというような、不明確な交換公文を作っているじゃないですか。そこで、私伺いたいのは、なぜ入れなかったか。そうして国民に、はっきり八月二十五日と、政府の法律的見解を明らかにしなかったかということが一つと、ベトナム側が、藤山さん一つ世間に出さないでくれ、と言ったほんとうの気持は何ですか。
  140. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) ベトナム側の気持だけで、あとは条約局長から御答弁申し上げます。  ベトナム側としてはどういう気持でありましたか、むろん、ベトナム側のいろいろな国内の事情等によるだろうと思います。従って、私ども、それを必ずしも突き詰めて聞いてはおりません。しかし、そういうことを言いましたことは事実であります。こちらは、今まで申し上げております通り国会等審議に当たってそれらのものがあるということは申さざるを得ないだろうし、むろん、そのときには出すということを申したわけでありまして、ベトナム側の意図がどこにあったかということを推測はいたしておりません。
  141. 高橋通敏

    政府委員高橋通敏君) 一九四四年八月二十五日というのは、わが方の法律的立場でございます。これは、しばしば申し上げた通りでございます。そこで、これはいかなる法律的立場に立とうとも、そのことは問題外といたしまして、とにかく第二次世界戦争の遂行に関連しては請求権はないのだということの事実を確認しておる次第でございます。
  142. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 言葉じりをとらえるわけではありませんが、第二次世界大戦に関連して請求権はないというのは、どういうのですか。文字通りとれば、あなたの言った通りとれば、ベトナムと日本関係については請求権は全くないのだ、こういうことをこの文書は確認しておるのですか。
  143. 高橋通敏

    政府委員高橋通敏君) 賠償協定締結することによって、そこで権利業務関係ができますと、それによって全部済ましたわけでございまして、それ以外には請求権は存在しないということでございます。
  144. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 それでは、政府の言う一九四四年八月二十五日以後の損害に対して三千九百万ドルの賠償をする。それ以外には請求権はないのだ、こういう意味だというわけですね。
  145. 高橋通敏

    政府委員高橋通敏君) 日本側の法律的立場では、一九四四年八月二十五日でございますから、それ以後でございますが、この点は、この書簡におきましては、その点は何ら触れていないわけでございます。
  146. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 先ほど森委員から、八月二十五日をどうして入れなかったかという質問に対しては、御答弁がありませんでしたが、それはわが方の解釈であって、この書簡の中には八月二十五日は入っていない。そうすると、八月二十五日以降というのは、わが方の見解だけであって、向こう、ブ・バン・マオ氏に代表されるベトナム側からすれば、八月二十五日以前の請求権については、これは争いが残っておるというわけですか。
  147. 高橋通敏

    政府委員高橋通敏君) それは、いろいろ法律的立場はございましょうが、そういう立場とは別問題といたしまして、ここに書いてありますように、第二次世界大戦遂行に関連してはもう存在しないということをいっておるわけでございます。
  148. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 そうすると、法律的見解については対立があった、その対立は協議に達して、三千九百万ドル分は片づいた、あとは残っていない、こういうことなんですが、法律的見解が対立したまま、ここに日にちが入らないで、その前の八月二十五日以前の請求権については争いが残っておるということを認められるならば、この交換公文の点については、これはどういう法律的な効果があるのか。法律的見解が残ったまま、額についてだけ協定をした、こういうことになれば、あなたたちの説明からいうと、まだ残っている、こういうことになろうかと思うのですが、それはどうなんですか。
  149. 高橋通敏

    政府委員高橋通敏君) 戦争損害の点につきましては、この賠償協定締結することによって、もうこれで済んだのである。そうして第二次世界戦争遂行に関連しては、もう請求権は存在しないということをいっておるわけであります。
  150. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 そうすると、ブ・バン・マオ閣下との間には了解に達したけれども、ほかに対しては、特に北ベトナム側あるいは他の国の関係においては、その点は了解に達していないという事実もございましょう。あるいは、別に請求があった場合、この文書では対抗ができぬ、こういうことになろうと思うのですが、その点はどうですか。
  151. 高橋通敏

    政府委員高橋通敏君) それは、北ベトナムの関係でございますから、これは別問題と申しますか、賠償協定と同様に解すべきであると考えます。
  152. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 賠償協定と同様に解すべきであるというのは、どういうことですか。条約局長の答弁を……。
  153. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 日本が負っております責任は、サンフランシスコ条約十四条による賠償責任でございまして、従って、それを完遂いたしたことによりまして、われわれは戦争に対する賠償責任は果たしたと、こういうことでございます。従って、北に対してそういう関係がございませんので、北から何らの請求があろうとは思いません。
  154. 高橋通敏

    政府委員高橋通敏君) 従いまして、この交換公文も、ベトナム国及びベトナム政府に対してこのような交換公文を交換しておるということでございます。
  155. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 平和条約十四条を、すぐ何でもとにかくまじないのつもりで出されますけれども、これはまじないにはならぬ。今、日にちも入っておらぬし、日本政府とそれからブ・バン・マオ閣下との間にはこれで了承がついたと、こういうことになるかもしれませんけれども、第三者あるいは北ベトナムあるいはその他の国に関連をして、あるいはラオス、カンボジアということもあるかもしれません。あるいは再検討条項を援用されるビルマ等に対して、八月二十四日以前の請求権が放棄せられるというのはどこにも出ていない。そうすると、第三者に対しては、これで片づいたということは、これは了解はできぬじゃないですか。どうなんですか、条約局長。
  156. 高橋通敏

    政府委員高橋通敏君) これは、第三者というような問題ではございませんので、全ベトナムを代表するベトナム政府、そのベトナム政府の全権委員とわが方の全権委員との書簡の交換でございます。
  157. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 ですから、私も、藤山愛一郎全権委員に代表される日本政府、あるいはブ・バン・マオ閣下に代表されると称するベトナム共和国全権委員との間に合意ができたということは、これは認めざるを得ない。しかししそれが第三者に対して対抗できるかと、こういうことを申し上げておるわけでありますが、両方の間に合意に達したというだけじゃ、両方の合意に達していることは、これは私も知っている。これは了解している。それが第三者に対抗できるかという点を条約局長に聞いているのです。それは、条約局長が答弁の能力を失っていると言われるなら別問題、あるいは、あなたが条約局長にかわられるなら別問題、私は条約局長に聞いているのです。
  158. 高橋通敏

    政府委員高橋通敏君) 第三者の問題と申しますか、これは、先ほど申し上げました通り、ベトナム全権及び——そのベトナム全権と申しますのは、ベトナム政府、すなわち全ベトナムを代表するベトナム政府、それから、日本側は同じく日本政府日本国という関係で、この書簡の交換が行なわれたわけであります。
  159. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 そのことは私も認めるのです。これは、藤山愛一郎と書いてあるし、ブ・バン・マオ閣下と書いてある。だから、両方の間に合意に達したことは、私も認める。それから、両方の政府の間に合意に達したということは、これは認める。しかし、国会に出てきて、その両方の政府の間に合意には達したけれども、しかし、法律的な見解については、見解の食い違いのままになっておると、こう言われると、それじゃ今のゴ・ディン・ジェム政権がひっくり返って、新しくまた政権ができる、あるいは革命が起こって別な政権ができる、あるいは統一されたというときに、これは対抗できぬじゃないですか。そういう場合口の点は、どういう工合に対抗できると考えられるか。あるいはこれは、横田外務省の顧問ですか、あれによると、問題になったときには、司法裁判所に提訴なさいというアドバイスがあるが、司法裁判所に出したときに、今のように、法律的見解については、これは争いが残っております。こういう場合に、この書簡で対抗できると、こういうことが言えますか。言えないじゃないですか。
  160. 高橋通敏

    政府委員高橋通敏君) 当然これは引き継がるべきものでございますし、ベトナム国及びそれを代表する政府日本政府との関係でございますから、これは当然対抗できるものと考えております。  それから、先ほどのビルマとか、そういうほかの国とは、もちろん関係はございません。
  161. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 いや、政府がかわって、そしてこの賠償総額は、これは八月二十五日以降の損害について賠償をしたものであって、それ以前の分については、私は主張を留保してある、であるから、私はあの賠償額では満足することができぬと、こう言った場合に、この文書でもっては、これは対抗できぬじゃないですか。それは、ブ・バン・マオ閣下に代表せられる政府は、これは請求はせぬでしょう。承継をするはずだというのは、あなたたちの解釈です。藤山愛一郎氏に代表せられる政府の言い分です。対抗できるものだとは書いてないじゃないですか。「国際法の原則からいって当然だよ」と呼ぶ者あり)まああなたが政務次官ならば、あなたに答弁を求めるけれども、もう政務次官をやめているのだから、そこから野次を飛ばすのはやめて下さい。実際問題として、これは大事な問題ですよ。政府がかわったり、あるいは革命があったり、あるいは想定をせられるような常北の統一があった場合、あるいはそれが南から北も統一するということなら別問題、しかしそういうことは考えられません。客観的な事実については、この間辻さんも言ったように、アメリカのつっかい棒がなくなったら、ゴ・ディン・ジェム政権なんかひっくり返るということは四、五年を出ぬだろうといわれておる。そうすると、賠償請求権を留保するというベトナム民主共和国の主張というものは残ってきます。そのときに、これには何も書いてない。法律的見解については、争いが残っておる。しかし実際には、法律的見解を別にして、二つの政府の間にはこういう了解に達した。しかし、八月二十五日とは書いてない。何をもって対抗できますか、条約局長。
  162. 林修三

    政府委員(林修三君) 私からお答え申し上げます。
  163. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 条約局長。これが国際司法裁判所に提訴されたときにも、条約局長が補佐されるのだから。
  164. 林修三

    政府委員(林修三君) 政府全体の立場を私が代表してお答え申し上げます。
  165. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 あなたに答弁を求めておるのではない。
  166. 林修三

    政府委員(林修三君) 政府に対する質問だと思いますから、私が政府を代表してお答え申し上げます。
  167. 草葉隆圓

    委員長草葉隆圓君) ちょっと、両方の個人的な発言はおやめ願います。
  168. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 大臣答弁をして、足らないところを補足されるならわかるけれども、条約局長が答弁を続けておって、その条約局長を抑えて、あなたが立つという法がどこにある。
  169. 高橋通敏

    政府委員高橋通敏君) ただいま御指摘の法律的な立場、いつから戦争が起きた云々という問題は、この中には、これをお読みになります通り、全然触れてはおりません。そうして、賠償協定締結いたしました以上、もう第二次世界戦争の遂行に関連しては存在しないということを、ここで書簡の交換をしておるわけでございます。
  170. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) この賠償の今回の条約というものは、当然将来にわたって継承されるのが国際上の慣例でございまして、特に革命等が起こりまして、国際信義を破った場合には、違う事態が起こる場合がございましょうけれども、普通の継承の場合におきましては、国際信義の上に立ちまして、当然継承されるべきものだと、われわれは考えております。御承知のように、賠償そのものの権利が発生しますことは、講和条約に伴いまして、講和条約の中にあります条項によって発効するのでありまして、その責任を今度の賠償協定によって果たしたわけでありますから、それ以外に、ほかに何か賠償があろうとは考えておりません。
  171. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 平和条約を持ち出さなくても、平和条約第十四条から出ていることは、私どもも、とにかく一応主張は何べんも繰り返してきているのですから、そこは繰り返して言わなくてもいいです。争いになったときに、三千九百万ドル以外には請求権はないという点は、ブ・バン・マオ閣下に代表されるいわゆるベトナム共和国政府、これは承知しているでしょう。しかし、第三者にはどこに持っていって対抗するんですか。対抗できぬじゃないですか。(「第三者じゃないよ、相手国との条約だ、相手国に対抗すればいいじゃないか」と呼ぶ者あり)
  172. 草葉隆圓

    委員長草葉隆圓君) 御静粛に願います。
  173. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 相手国といっても、政府が変わったらどうするんだ。これはその次のとにかく国だ、予定されている。実際にはその通りにいかない。これは藤山さんの思う通りにいかない。事実は藤山外務大臣の思う通りにいかないので、選挙をやったら、これは民主共和国になる可能性が強いということは、この間もここで辻さん、その他から言われてあなたも否定されなかった。そうすると、それは継承されないという事態が起ってくる。そういうときに、これは今のような根拠のない、いや継承されるだろうこういう期待だけで対抗することはできない。司法裁判所にいって証拠を持っていって争う場合に、どこに証拠があるか。それは今のベトナム共和国が三千九百万ドル以外には賠償請求権はないということをそれは了承したかもしれない。しかし、その法律的な効果がどこにも現われていない以上、あるいは法律的な見解についての争いが残っておる。こう言われると、それはやはり継承をしたくないと考え政府は援用するでしょう。あるいはベトナム民主共和国に統一されたら、さらにそれは言いますよ、あるいは国際司法裁判所に持っていっても十分勝てる自信がありますか、ないでしょう。
  174. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 政府の詳しい法制的解釈については、法判局長から今答弁いたします。
  175. 林修三

    政府委員(林修三君) 今の御資問の趣旨でございますが、御承知の通りに、日本は平和条約の十四条に基づいて賠償義務を負っているわけでございます。その平和条約に署名した国は、南ベトナムと申しますか、ベトナム全域を代表する南ベトナム政府でございます。日本はそういう意味のベトナム政府に対して賠償義務を負っている。それ以外のところに対してこういう種類の義務を負っているわけではございません。従いまして、かりに南ベトナム政府について、南ベトナムが現有のベトナム政府を承継しない政府ができたというような場合におきましては、平和条約上の義務は何らないわけでございます。従いまして、前々からお答えしていることだと思います。これはもちろん、そういう承継とか、あるいは承継しない場合にどうなるという問題ではございません。それから交換公文そのものは、これは御承知の通り、ある国との間に賠償協定ができたということは、それが暫定協定か、あるいは仮りの中間賠償協定でない限りは、最終の処理をしたものでございます。当然賠償請求権というものは、これで全部片づいたというのが当然でございます。それは中間賠償協定とでも書いてあれば別であります。そうでない以上は、賠償請求はこれで解決したというのは、当然でございます。当然のことをこの交換公文は念のために確認したにすぎない。そういう意味でこの交換公文があるからとかないからといって、今の吉田委員のおっしゃったような承継問題が起こるとか起きないとかいう問題は、これは全然ないわけでございます。
  176. 小林孝平

    小林孝平君 今、佐多委員から関連質問がありますが、その前に、そんなに意味のないものなら、どうしてこんなことをやったんです。これは全くおかしいです。他に意味があるから、こういうことをやっているんです。この問題については、他にどういう意味があるかということは、またあらためてやりますけれども、そんなにさっきから、意味のないものだ、どうでもいいようなものだというものに、こんなもっともらしく藤山愛一郎なんという署名をしてあれを作る必要はどこにあるのですか。何か作ろうという話があったら、何でも署名するんですか。これはおかしいです。これは、答弁は、あなたの答弁を聞いたって、今解決しませんから、要りません。
  177. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 ちょっとつかぬことをお尋ねするのですが、ベトナム側の書簡の、「閣下の次の書簡を受領した」ということ、「次の書簡」というのは、どれを指しているんですか。
  178. 高橋通敏

    政府委員高橋通敏君) 前の書簡でございます。すなわち、日本側の書簡でございます。
  179. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 そうしますと、前の書簡を受け取ったことを確認をしておるだけで、前の書簡が主張をしておる文言に対して、ベトナム政府承認をしたということは言っておりませんね、そこのところはどうですか。
  180. 高橋通敏

    政府委員高橋通敏君) その次に申しておるわけでございます。「本全権委員は、前記の閣下の書簡における了解の文言に対するヴィエトナム共和国政府承認を確認する光栄を有します。」
  181. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 ああ、そうですか。それならその点はいいですが、今の交換公文に関する効力の問題は、もっと基本的には、この交換公文だけでなくて、賠償協定自体の問題でもあるし、それに関連して、いわゆる今論議になっておるベトナム共和国が唯一正当の政府であるかどうかという基本的な問題に関連をいたしておると思います。この点は私はきょうはやりませんが、いずれ他の機会にいたします。ただ、先ほどから非常に憲法と条約あるいは協定交換公文等の関連が非常に問題になっておりますので、これは質問でなくて資料要求をいたしておきたいと思いますが、日本の新憲法ができてから後に行なわれた条約協定交換公文それら一々を、これは件名だけでいいのですが、件名をあげていただいて、そして国会承認を求めたものと、しからざるもの、それから国会承認を求めた場合にも、事前に承認を求めたものと事後に承認を求めたもの、それらの区別のはっきりわかる件名、リストだけでよろしゅうございますから、少しお手数かもしれませんが、整えて御提出を願いたいと思います。
  182. 小林孝平

    小林孝平君 政府条約審議にあたって、国会を尊重すると、こうおっしゃったんですけれども、私は、そういう御意見でありますけれども、どうも国会を尊重しておるとは思わないのであります。それは具体的に申しますと、政府は、われわれに条約国会承認を求めてきておりますけれども、全くその求め方がおかしいのですね。よろしゅうございますか、これは外務大臣お尋ねするのですが、外務大臣にこれを差し上げてあるかな、日本国とベトナム共和国との間の……、お持ちですか。よろしゅうございますか。国会に議案を提出しますと、普通の議案は賛成するか、反対するか、修正をするか、廃案にするか、この四つなのです。ところが、外務大臣はわれわれに議案を回しておりますけれども、いいですか、日本国とベトナム共和国との間の賠償協定締結について承認を求める件という、こういう案をよこされまして、「日本国ヴィエトナム共和国との間の賠償協定締結について、日本国憲法第七十三条第三号ただし書の規定に基き、国会承認を求める」。われわれに求められておるのはこの紙切れ、これだけなのです。私は外務大臣お尋ねしているのです。いいですか、そのあと一枚めくると理由があります。このあとに今度は協定があるのです。そうしますとこれは普通のこの議案は、あなたにこれを参考のためにごらんに入れますけれども、それは法律案があって、それから条文があって、それから理由がくっついているのです。そうしますと、これは普通のあれからいくと、われわれに承認を求めた、イエスかノーかというこの無条件降伏を迫ったような態度でもって、われわれに臨んでおられるのです。肝心の内容は参考書類で、うしろに別の紙で、ザラ紙のようなものでくっついている、こういう情勢ですな。そこで、これはおかしいじゃありませんか。われわれの普通の議案の審議は、賛成か反対か修正か廃案か、この四つのわれわれは審議する権限があるにもかかわらず、条約については、片々たるこの紙切れでもって、これでイエスかノーか言えとは、あなたわれわれを尊重しているとさっきから言われますけれども、尊重していると言えますか。私は法制局長官に聞いているのではないのです。大臣に聞いている。大臣、この点いかがですか。
  183. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) われわれは国会を尊重しておりますので、従来国会を尊重している形において提出をいたしておるのでありまして、詳しい法制的な問題については、法制局長官より答弁をいたさせます。
  184. 林修三

    政府委員(林修三君) これは、実はもう新憲法が成りましてからの条約承認の取り扱いは、すべてこの方式でやっているわけでございますが、これは御承知の通りに憲法の解釈につながることでございまして、御承知の通りに、条約締結は、憲法七十三条で、行政権のところに入っております。これはいわゆる法律案の審議、立案、制定等は、これはまさに立法権の作用でございます。条約締結は、行政権の作用であり、七十三条に内閣の権限として書いてある。ただし、七十三条で、条約は事前または事後に国会承認を得べしということになっておるわけであります。従いまして、国会に議案として出すものは、その条約について御承認を求める、締結について御承認を求める。国会の御返事は、承認または不承認ということだというわけでございます。これはあたかもほかの、たとえば公安委員会とか、あるいは公正取引委員会委員の人事が、あれは両議院の同意を求めることになっております。あれはまさに行政権の作用でございますけれども、特に重要な人事でございますから、国会の御同意を求めることになっております。そういうものと実は議案の取り扱い方が同じでございます。従いまして今小林委員のおっしゃった通りに、議案は、このベトナム協定で申せば、ベトナム賠償協定締結について承認を求める件、そこに締結について承認を求めるということがついておりますが、これが議案でございまして、そのあとに理由がついている。条約そのものは参考資料でございます。これはつまり条約というものの締結の性質からくるわけでございます。そういう意味でございますから、決して国会を尊重するとかしないとかいうこととは全然無関係でございます。
  185. 小林孝平

    小林孝平君 私は法制局の言われることなんかわかっている。そんなことを言っているのじゃない。私は初めから何べんも繰り返している。ここで法律論議をやろうとは思っていない。きょうは法制局長官来ないでもいいと言ったんです。それをなんでこんなところへおいでになるんです。初めから私はあなたと法律論議をやろうとしているのじゃない。私は政治家としての政治的な見解をただそうというので園芸に来ているのです。法律論議をやるなら、何も国会に来る必要はない。そこで、今まで新憲法になってからそうしている、それは間違っているから言っているのです。こういう今までやっていることが間違いじゃないか。繰り返し繰り返し、国会を尊重されますか、条約審議について国会を尊重されますか、尊重される。尊重されるというなら、今までのこのやり方はおかしいじゃないか。こんな参考書類をわれわれにくれて、片々たる紙きれでもって承認するかしないかということを言うのはおかしいじゃないかということを言っているのです。法制局長官の御説明はよくわかります。あなたは従来の慣行その他に適当に理屈をつけて、それがいいのだ、こういうことを言っておられればいいのだから、それは楽です。われわれはそういう楽な道を歩もうとは思わない。間違いがあったらこれを改めて、そうして正しいところのあり方をやりたいと思っているわけです。現にこの条約審議して、われわれはこの協定の内容がいろいろおかしい。賠償を払わないとは言っていないのだ。そういうイエスかノーかでなくて、賠償は払います。適当な賠償は払います。しかし、それは適正なものでなければならん。従ってこれについて言いますれば、われわれは五千五百万ドルは高過ぎるじゃないか。従ってまあニワトリ三羽に相当する時価にするように修正をしたい、こういう意見があったら、それが現実に通る通らぬは別として、やれるようにしたらどうか。私はこれはまた専門家でございませんからわかりませんけれども、アメリカではたしか条約の内容の修正ができるようになっていたのじゃないか。第一次大戦のときの講和条約国会批准を拒否したとき、修正案が通ってあれが批准ができなくなったというように私は記憶しているのです。これは専門家でありませんからわかりませんが、だからそういう例もあるのだから、各国の例をお調べになったらどうですか。法制局長官、今ごろになって調べられているけれども、過去にそういう例があるから、私はそういうことをしたらどうか。従ってそういうことをやると憲法第七十三条に、もとへ戻って、条約の批准は事前または事後にこれを行なう、こういうふうにあの憲法の規定の通り事前に行なうようにすれば、そういうことがまた行ない得るというふうに私は思うのです。外務大臣、こまかい法律論議はいいです。あなたはどうお考えになりますか。それがそうすれば、みなが賠償は払います。適当なものに見合う、ニワトリ三羽というのは極端かもしれないけれども、まあ適当なものは払います。みなが納得して払うようにしたらいい。そういうふうにして、参考文書とか何とかでなくて、国会を尊重するとあなたが繰り返し繰り返し言われるなら、一つ今後は、この形式を、議案の形式を直したらどうか、こう思うのです。それで本日は、これは非常に重要な問題でありますから、法制局長官出席要求しなかったけれども総理大臣出席要求している。総理大臣の所見を尋ねようと思っていたのですが、おいでになりませんから外務大臣のお考えお尋ねいたします。
  186. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 国会を尊重いたしますことはわれわれむろんでありまして、その点において人後に落ちるものではないと思っております。しかしながら、条約はやはり相手国のあることでございますし、政府に与えられた権能の範囲内でこれを取りきめまして、そうして御承認を求めることは当然の措置だと考えております。そのこと自体が国会を軽視しているというふうには私は考えておりません。
  187. 小林孝平

    小林孝平君 そういうしゃくし定木なお答えをいただこうとは思わない。現に外国にもそういう例があるはずなんです。そうしてまた憲法の規定を正しく、日本国憲法の七十三条の三号の規定を忠実にやれば、条約の調印の前に国会承認を求める形をとれば可能なんです。だから、そういうしゃくし定木な、法制局長官が先ほど説明されたから、あなたはそれと同じようなことをおっしゃっているのだけれども、そうでなくて、政治家として、こういうことでは私はうまくないのじゃないか。賠償のごときは国民全部が納得してやる、そうして納得してやれば——調印してから、さあ今度は国会でこんなになって、何人も納得するものはない。ごく一部の人しか納得しない。一般ではこの国会の論議を見て、野球にたとえれば、もう十対ゼロくらいで政府は負けている、こういうことも言われているのです。そんなことでは向こうもありがたくないのじゃないですか、賠償は。私は心よくこういうことをやったらいいのではないか。そこで藤山さんはそういうしゃくし定木な御答弁でなくて、将来、せっかく外務大臣におなりになった機会に、今後はそういうふうに改められるお気持がおありですかどうかをお尋ねしているのです。
  188. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 私は先ほど来申しておりますように、国会を軽視しようとは考えておりませんし、尊重して参ることは当然のことでございます。しかし、この条約締結というのは相手方もございますし、相手方との交渉によってわれわれは締結したものを国会に御承認を求むるというやり方について、外交上の立場から見まして、今日これが適当であるということを考えているわけでありまして、その点と、国会を尊重しないというのとは全然別個であろうと考えております。
  189. 小林孝平

    小林孝平君 私はこれで最後で、もう申し上げませんけれども、藤山さんは憲法七十三条の規定を御存じないのじゃないかと思ってちょっともう一度申し上げます。第七十三条の三号は「条約締結すること。」と、その前に「内閣は、他の一般行政事務の外、左の事務を行う。」、その三号に「条約締結すること。但し、事前に、時宜によっては事後に、国会承認を経ることを必要とする。」、従ってこの憲法の規定から言えば、事前に、まあ調印前に行なうのが筋なんです。ところが全部事後に最近はなっておりますが、事後にやるからそういう議論ができますけれども、事前に行なえば今のようなことが可能である。事後においても可能でありますけれども、事前に行なえばなお可能である。従ってそういうことを申し上げて、私はもうその御答弁は要りませんが、そういう論議があったということを頭に入れておいて、もしあなたに一片の誠意があれば、国会を尊重してやるという誠意がございますればそういうことをお考えになったらいかがと思います。これ以上申し上げません。またしかし、いずれの機会にかこの問題を行ないたい、それからこの問題については、総理大臣の御答弁をお願いいたしたいと思いますので、いずれ機会を改めていたしたいと思います。
  190. 森元治郎

    森元治郎君 ベトナムの通常国会はいつから開かれる予定なんですか。
  191. 高橋通敏

    政府委員高橋通敏君) ベトナム側は七月二日の国会承認を得ております。
  192. 森元治郎

    森元治郎君 これから開かれる一番近い国会です。
  193. 影井梅夫

    説明員(影井梅夫君) ただいま手元にベトナムの国会法のこまかい規定は持っておりませんが、ベトナムの通常国会、これは毎年四月及び十月、この二回招集されるというふうに了解しております。
  194. 森元治郎

    森元治郎君 これは、この二つの案件と交換公文をその他いつごろ国会——交換公文は別だろうけれども、協定は批准は。
  195. 高橋通敏

    政府委員高橋通敏君) すでにことしの七月二日に国会承認を得ております。
  196. 森元治郎

    森元治郎君 こういう電報が外務大臣のところへ来てないかと思うのですが、五月十三日に結んだときには八月二十五日で押しまくって、そうして一札をすっと取って、なかなかうまい手口ですよ、これはもう。さあ最近は十二月八日と告示に出ている。これでベトナムの方ではしまったということになってだいぶさわいでいるらしい。久保田大使から大臣にこういう情報、国会における論議がどういうふうに向こうにひびいているかの電報は来ておりませんか。
  197. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) そういう電報は来ておりません。
  198. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 ちょっと関連して。  さっきの憲法と条約国会政府との関連の問題ですが、私さっき資料をいただいてから、これは一つ重要な問題として改めて根本的には、本格的には別の機会に論議をしようと思っておりますが、ただちょっと今の大臣小林君に対する御答弁を聞いていて非常に気になるのですが、この条約は本来ならば今御説明通りに行政権ではありますけれども、原則としては事前に国会に諮って承認を求める。しかし事宜によっては、例外的には、都合によってはあとでもいいというのが、文字通りに読めば私は憲法の考え方、精神、解釈でなければならないのじゃないかと思う。それをどうも今まで、まあほとんどといっていいくらいに事後に承認を求めておりますので、それを当然なことにし、しかも、それがあたかも当然であり原則であるかのごとく、もうなれっこになってしまって、外務大臣もそういうおつもりで、非常に軽いつもりで、事後の国会承認が当然であるというような気持でどうも答弁をされているのじゃないか。むしろここは、やはり厳格に、原則としては事前にやるべきだ、しかし都合上実際は事後にやったことがあるのだ、こういうふうな気持でなければならないと思いますが、この点、大臣はどういうふうにお考えになっておりますか。
  199. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) この締結ということは批准書交換という意味と思います。従って、私どもは議会に御承認を求めて、そうして締結にいく、こういう状況になると思います。詳しいことは法制局長官から御説明いたさせます。
  200. 林修三

    政府委員(林修三君) ただいま佐多委員のおっしゃいました問題は御承知の通り昭和二十六年の平和条約のときにずいぶん議論があったところでございます。これはその当時からの政府の解釈でございますが、ここで条約締結といっておりますのは、条約を発効させるまでのすべての手続を含む。従いまして批准あるいは批准書の交換ということまで含んだ意味と解釈しております。単なる署名、調印というもののみが締結ではない、かように考えておるわけでありまして、締結ということは、要するに条約の効力を生じさせるための一切の行為が内閣の権限である、かように考えております。従いまして、批准条項のありますものは批准をいたしまして、それから批准書交換あるいは批准書寄託をやって、これが効力が発生するわけであります。そういう前に署名、調印によって条約の案文が確定する、案文が確定しなければ国会の御承認を求めても、これは実は不確定なものを御承認を求めても、国会の御審議のしょうがないのじゃないか。政府としてのはっきりした態度をもちまして、相手国と案文を確定した上で、しかも効力を発生させる前に、いわゆる締結前に国会の御承認を求める、これがいわゆる事前承認考えておるわけでありまして、ただいままでの条約国会承認は、大部分がこの意味の事前承認をお願いしております。まれに事後承認をお願いした例も、条約が効力を発生した後に、まれに事後承認をお願いした例もございますけれども、つまりここでいう事前、事後の観念は、効力発生という最終段階までいったものの事前または事後と、こういうふうに私どもは解釈してそれを取り扱ってきておるわけでございまして、批准条項のありますものは従って調印後批准前、批准条項のございませんものにつきましては、なかなか従って事前承認はむずかしいわけでございますが、調印だけで効力の発生するものは非常にむずかしいわけでございますが、国会の御承認を受けるべきような条約につきましては、そういう意味から大体において批准条項あるいはこれに準ずるような承認条項とか受諾条項とか、そういうようなものをみな入れまして、事後の関係は、前に国会の御承認を得るように、署名、調印後できるように取り扱ってきておるわけでございます。
  201. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 それじゃその点についての議論は後に譲りまして留保しておきますが、ただ、それじゃそれに関連して、先ほど要求しました資料もその点を、調印をした日付と、それから批准をした日付と、それから今言った効力を現実に発生した日付、それらが明瞭にわかるように、それから国会で、衆参両院議院でいつ通過したか、それらの関連が各件名について、はっきり具体的にわかるように、一つ資料を作って御提出願いたいと思います。
  202. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 ちょっと議事進行。先ほど小林君から午前中来、公表せられなかった森君の指摘と請求とによって出されました交換公文をめぐって質疑をいたしましたが、この交換公文が権利義務に関係があるのかどうか、こういう論議をいたしましたが、小林委員の発言の中にもございましたように、これは権利義務に関係があるという、有力な与党委員の御意見もあるということを申し上げましたが、委員長は押えぎみでございましたが、私は参議院の運営の仕方として、野党と政府側が質疑をするというだけでなしに、これは党派の議論に縛られることだけでなしに、自分の意見あるいは疑問というものはこれは率直に出して、そして参議院の審議を全からしめるというのが私は当然だと思う。その点は委員長もそれから与党理事諸君も皆意見がなかった、これは私に論議をした際でございますけれども。そこで率直にございます疑問、これは理事会の席上出ましたことでありますけれども、苫米地委員の持っておられます疑問、意見等は率直に出していただきまして、そうして審議を進めることが、議員政府だけで質疑をするというだけでなくして、やはり参議院の権威を高からしめるためには、論議もやはり大いにすべきだと私は思う。そこで一つ苫米地さんの御意見等も一つお出しいただいて、さらにこの審議を深めたいと考えるのですが、委員長一つ公正なお取り計らいを願いたいと思います。
  203. 草葉隆圓

    委員長草葉隆圓君) ちょっと速記をやめて。    〔速記中止〕
  204. 草葉隆圓

    委員長草葉隆圓君) 速記をつけて。
  205. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 それでは関連でもございましたし、交換公文の性格あるいは権利義務に関係があるかどうか、あるいは批准すべきかどうかという点については、これは論議を譲りたいと思います。途中で切りましたけれども、苫米地さん等の意見もございますし、別な機会にすることにして、きょうはこの程度で質疑を打ち切ることの動議を提出いたします。
  206. 草葉隆圓

    委員長草葉隆圓君) 本日はこの程度とし、明日午前十時より開会し、ベトナム賠償協定関係両件について、午前は参考人から意見聴取を行ない、午後は両件に関する質疑を続行いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後四時四十八分散会