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国務大臣(
藤山愛一郎君)
賠償問題を取り扱います今日までの
態度、ひいてそれが
ベトナム賠償に対して適用されたかという御
質問だと思うのであります。御
承知のように、
平和条約を
締結するにあたりまして、
日本は、
サンフランシスコ条約の十四条によって
賠償の
義務を課せられたわけであります。でありますから、この
義務を遂行いたしますことは、当然
日本が
国際社会に復帰いたします
前提として、これを完全に履行していかなければならぬ、こういうのがむろん
前提にあることは当然なことだと思います。ただ、
賠償を取り扱います場合においても、むろんそれぞれの国に与えました物的、精神的な
損害及び
苦痛に対して、われわれが遺憾の意を表明するという
気持を精神的には持って参らなければならぬことは当然でございまして、その
気持は、
国民各層皆さんの御
意見であり、御意思であろうと思います。ただ、これが履行にあたりましては、
実施にあたりましては、われわれとして
考えなければなりませんことは、一面では、
賠償を
支払います
国々が
東南アジアの
国々でありまして、政治的な
独立をいたしましたけれ
ども、経済的な
独立をまだ完璧に行なってない。そういうことのためには、できるだけそれぞれ
賠償を受けられる国において
経済建設その他
生活安定等に役に立つような
方法で、この
賠償を通じてそういう
方法でいくべきであるということが、これは
一つの
考え方であろうと思います。また、おそらく今回の場合におきまして、われわれが当然
賠償をやって参りますときに
考えなければならぬ
考え方も、そういう線が他面ではございます。同時に、一方では、われわれもそれらの国に対して、できるだけ
苦痛と
損害に対して償って参らなければなりませんけれ
ども、しかし一方では、
日本におきます
財政金融の
事情から申しまして、十分それを履行することのできる
金額というものを
考えて参らなければならぬと思うのであります。そういうことを
考えて参りますと、われわれとしましては、それぞれの国の
要望がありましても、
日本の
財政金融の
事情を
考え、将来の
支払い能力も
考えて、そうしてできるだけ
最小限でありながら、
向こうが満足し得るように落ちつけて参らなければならぬと思います。
賠償を
締結いたしまして、第一次
世界大戦の
あとの
賠償処理のように、非常に膨大な
金額を安易に引き受けまして、そうしてそれが途中で支払えないというようなことに相なってはならぬのでありますから、
支払い能力というものを
考えて、そうしてできるだけ
最小限であり、そうして引き受けた
義務だけは、途中でもって不履行にならないようにしていかなければならぬ。これは当然なことだと思う。それ自身が信義の上に立つことだと思います。でありますから、そういう
意味において、できるだけ
最小限の
金額でもって落ちつけていきたいというのが、これはわれわれの当面
考えて参らなければならぬことだと思います。
そういう
意味においてわれわれは、
賠償に対する基本的な
態度をきめて
折衝をいたして参るわけでありまして、この点につきましては、
最初の
ビルマ賠償以来当然のことと思います。また同時に、この
役務賠償という問題が純粋に労務の提供というだけには……先般いろいろ御
議論もありましたけれ
ども、
解釈をもう少し拡大していくことがあれだということは当初からの
考え方であり、これは、与野党同じような
考え方であったと思います。でありますから、そういう点については、そういうような
解釈を採用しながら、われわれも
交渉に当っていくというのが基本的な
交渉の
態度だと、こう
考えております。