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1959-12-01 第33回国会 参議院 外務委員会 第9号
公式Web版
会議録情報
0
昭和三十四年十二月一日(火曜日) 午前十一時二分開会
—————————————
委員
の
異動
本日
委員津島壽一
君辞任につき、その
補欠
として
後藤義隆
君を
議長
において 指名した
—————————————
出席者
は左の
通り
。
委員長
草葉
隆圓
君 理事 井上 清一君 剱木
亨弘
君
苫米地英俊
君 吉田
法晴
君
委員
青柳 秀夫君
後藤
義隆
君 杉原
荒太
君 永野 護君
野村吉三郎
君 堀木 鎌三君 佐多
忠隆
君 羽生 三七君 森 元治郎君 大和 与一君 石田 次男君 曾祢 益君
佐藤
尚武君 国務大臣
内閣総理大臣
岸 信介君 外 務 大 臣
藤山愛一郎
君 大 蔵 大 臣
佐藤
榮作君 国 務 大 臣 赤城
宗徳
君
政府委員
法制局長官
林 修三君
法制局次長
高辻 正巳君
防衛庁防衛局長
加藤 陽三君
外務大臣官房長
内田 藤雄君
外務省アジア局
長
伊関佑二郎
君
外務省アジア局
賠償部長
小田部謙一
君
外務省アメリカ
局長
森 治樹君
外務省欧亜局長
金山 政英君
外務省条約局長
高橋 通敏君
大蔵省理財局長
西原 直廉君
事務局側
常任委員会専門
員 渡辺 信雄君
—————————————
本日の
会議
に付した案件 ○
在外公館
の
名称
及び
位置
を定める法
律等
の一部を改正する
法律案
(
内閣
提出
) ○
日本国
と
ヴィエトナム共和国
との間 の
賠償協定
の
締結
について
承認
を求 めるの件(
内閣提出
、
衆議院送付
) ○
日本国
と
ヴィエトナム共和国
との間 の
借款
に関する
協定
の
締結
について
承認
を求めるの件(
内閣提出
、衆議
院送付
) ○
国際情勢等
に関する調査の件 (
国際情勢
に関する件)
—————————————
草葉隆圓
1
○
委員長
(
草葉隆圓
君) ただいまから
外務委員会
を開会いたします。 まず、
委員
の
異動
について報告いたします。本日
津島壽一
君が辞任され、その
補欠
として
後藤義隆
君が選任されました。
—————————————
草葉隆圓
2
○
委員長
(
草葉隆圓
君)
在外公館
の
名称
及び
位置
を定める
法律等
の一部を改正する
法科案
(本
院先議
)を
議題
といたします。 別に御
質疑
もございませんようですから、
本案
に対する
質疑
は終局したものと認めて御
異議
はございませんか。 〔「
異議
なし」と呼ぶ者あり〕
草葉隆圓
3
○
委員長
(
草葉隆圓
君) 御
異議
ないと認めます。 それでは、これより
討論
に入ります。御
意見
のおありの方は、賛否を明らかにしてお述べを願います。
——別
に御
意見
もないようでございまするから、
討論
は終局したものと認めて御
異議
はございませんか。 〔「御
異議
なし」と呼ぶ者あり〕
草葉隆圓
4
○
委員長
(
草葉隆圓
君) 御
異議
ないものと認めます。 それでは、これより採決に入ります。
在外公館
の
名称
及び
位置
を定める
法律等
の一部を改正する
法律案
全部を問題に供します。
本案
を原案
通り
可決することに
賛成
の方の
挙手
を願います。 〔
賛成者挙手
〕
草葉隆圓
5
○
委員長
(
草葉隆圓
君)
全会一致
でございます。よって
本案
は、
全会薮
をもって可決すべきものと決定いたしました。 なお、本
院規則
第七十二条により
議長
に
提出
すべき
報告書
の作成につきましては、これを
委員長
に御一任願いたいと存じまするが、御
異議
はございませんか。 〔「
異議
なし」と呼ぶ者あり〕
草葉隆圓
6
○
委員長
(
草葉隆圓
君) 御
異議
ないものと認め、さよう決定いたします。
—————————————
草葉隆圓
7
○
委員長
(
草葉隆圓
君) 次に、
日本国
と
ヴィエトナム共和国
との間の
賠償協定
の
締結
について
承認
を求めるの件、
日本国
と
ヴィエトナム共和国
との間の
借款
に関する
協定
の
締結
について
承認
を求めるの件(
衆議院送付
)、以上の両件を一括して
議題
といたします。 まず、
小田部賠償部長
から
補足説明
を聴取いたします。
小田部謙一
8
○
政府委員
(
小田部謙一
君) それでは、
補足説明
といたしまして、今度の国会にかかりました
日本国
と
ヴィエトナム共和国
との間の
賠償協定
、
日本国
と
ヴィエトナム共和国
との間の
借款
に関する
協定
と、この
二つ
のものが大体どういう内容であるかということを御説明いたします。 まず、
日本国
と
ヴィエトナム共和国
との間の
賠償協定
に関してでございますが、この
前文
から参りますと、「
日本国
及び
ヴィエトナム共和国
は、千九百五十一年」云々という字が書いてございますが、その
前文
は、
フィリピン
のときの
前文
と同じものでございます。なお、ここでちょっとつけ加えますと、「
日本国
と
ヴィエトナム共和国
との間の
賠償協定
」という方は、
インドネシア
と
日本国
との
賠償協定
の条文とほとんど大体一致しております。ただ、この
前文
は、
インドネシア
が
平和条約
を新しく
日本国
と結んだときのものを引用してなく、
フィリピン
の場合と同じような文句が引用してございます。 それから第一条に参りますと、第一条におきまして、
日本国
は、現在において百四十億四千万円に換算される三千九百万
アメリカ合衆国ドル
に等しい円の価値を有する
日本国
の
生産物
及び
日本人
の
役務
を、五年の
期間
内に提供するということになっております。これは、そのほかの
協定
と同じように、現在においてこれこれに換算される
ドル
ということで、
ドル
がその
基準
になっておるわけでございます。それから、その次の第二項には、その
支払い方法
は、どういうふうにして
支払
うかということが書いてございます。すなわち、三千九百万
ドル
を、最初の三年間におきましては毎年一千万
ドル
、それから次の二年の
期間
におきましては、
残り分
四百五十万
ドル
づつというふうになっております。この点、その他の
賠償協定
におきましては、大体
ビルマ
の場合は一億
ドル
で、毎年三千万
ドル
、それから
フィリピン
の場合は五億五千
ドル
ですが、結局十年間二千五百万
ドル
、その次の十年間は三千万
ドル
ということになっております。また、
インドネシア
の場合は
端数
がございますから、
最後
の年はその
端数
というふうになっておる次第でございます。 それから第二条に移りますと、第二条は、まず、
日本国
の
生産物
及び
役務
を
日本
が提供するといいますが、そのものは
ベトナム共和国政府
が
要請
してかつ、
両国政府
が合意するものでなければならないということが書いてありまして、その次に、「これらの
生産物
及び
役務
は、この
協定
の
附属書
に掲げる
計画
の中から選択される
計画
に必要な項目からなるものとする。」となっておりまして、この
協定
の一番
最後
に
附属書
というものがございまして、その
附属書
の中に、一応「
水力発電所
の建設」「
機械工業センター
の
設備
」、3として、「両
政府
間で合意されるその他の
生産物
及び
役務
の
供与
」ということになっております。それでございますから、この
協定
が発効いたしました場合に、
べトナム政府
が
要請
し、かつ、
両国政府
が合意するものは、この
附属書
の中から選択されるということでございます。ただ、従来の
解釈
によりまして、1、2、3と
附属書
ではなっておりまして、必ずしも
向こう
が
水力発電所
を
要請
しなくても、
機械工業センター
を
要請
しなくても、
最後
の「両
政府
間で合意されるその他の
生産物
及び
役務
の
供与
」ということで、その他のものが何でもできるというふうに
解釈
されております。 それから
附属書
のことでございますが、その他
フィリピン
とか
インドネシア
の
附属書
は、非常に網羅的のものが出ております。ただ、こういうふうに三つを限っておりますのは、
賠償協定
ではございませんが、それに似たカンボジヤとの
経済協力協定
の中には、「一
農業技術センター
、二
種畜場
、三両
政府
間で合意されるその他の
生産物
及び
役務
の
供与
」ということになっております。 それからその次には、
賠償
として
供与
される
生産物
は、
原則
として
資本財
とする。ただし、
ベトナム共和国政府
から
要請
があったときは、
資本財
以外の
生産物
を
日本国
から
供与
するというようなことを合意することができるということになっております。これもその他の
協定
にございます。それから、この二条の二項に関しましては、参考として
提出
されております「
日本国
と
ヴィエトナム共和国
との間の
賠償協定
に関する
交換公文
」というのがございまして、そのうちの二、「
賠償協定
第二条2にいう
生産物
に関する
交換公文
」というのがございます。それに基づきまして、
資本財
以外の
生産物
の
供与
というものは、それは、「現在において二十七億円に換算される七百、五十万
アメリカ合衆国ドル
に等しい円の額をこえないものとする。」これは一応
最高限
というものがきめてあるわけでございます。ここで
資本財
以外の
生産物
の
供与
と申しますのが、いわゆる
消費財
というものでございます。ただしこの
消費財
と申しましてもいろいろ種類がございまして、また、
消費財
という定義がなかなかわかりにくいものでございまして、たとえば、
ビルマ
に提供しておりますイワシの
カン詰
のような
消費財
もございますし、それから、トラックとか自動車のような、ある場合には
生産
に寄与するというような
消費財
というのもございます。ただ
資本財
以外であるということです。
資本財
以外の
生産物
を
日本
から
供与
することができるということになっております。 それから第二条の第三項は、この
協定
の
実施
上の注意でございますが、これは、第一番に、
通常
の
貿易
が阻害されないように
実施
されなければならない。それから第二番目に、
外国為替
上の
追加
の
負担
が
日本国
に課せられないように
実施
されなければならないという
二つ
の要件が書いてございます。これに大体基づいて、
先方
からいろいろ
要請
がございました場合、従来の三国の例でございますと、
生産財
の場合で申しますと、
資本財
の場合ですと、大体
通常
の
貿易
が阻害されないわけでございますが、
消費財
を提供いたします場合は、
通常
の
貿易
が阻害されるおそれがあるということでございます。もちろん、
通常
の
貿易
が阻害されると申しましても、今まで全然行かなかった
消費財
をこの
賠償
で提供する場合に、はたしてこれをもし
賠償
で提供しなかったならば
通常
の
貿易
で行くんではないかというような議論ではありませんので、たとえば、
綿製品
とかその他大きいものについて
向こう
の
要請
が万一あった場合に、それが従来の
貿易
を阻害しないかというようなことを考えるわけでございます。もっとも、
実施
していくうちに、たとえば、
ビルマ
のように、
日本
から買う米が少ないために
外貨
が少ないとか、
向こう
の
外国貿易
、
日本
以外の国から買う
外貨
が少なくなったために
輸入
が全般的に減っているというようなことは、これはその場合の
賠償
で提供してはいけないということを厳格には決して書いてございません。 それから、その次の
外国為替
上の
追加
の
負担
と申しますと、
日本
から大体提供されます
資本財
でございましても
消費財
でございましても、ある程度の
外貨
は必要でございます。これは、原料がほとんど
外国
に仰いでいるという
情勢
でございまして、ある程度の
外貨
は必要でございます。そこでたとえば、ここで申しますのは、
日本
の普通の
資本財
なり
消費財
にどれだけ
外貨
の
負担
が要るかというような大体
統計
がございます。その普通の
外貨
の
統計
の。パーセンテージを特にこえないように、あるいは特別の
外貨
をそのために割り当てない。割り当てるようなものは従来拒否してきたわけでございます。たとえば、特別の
外貨
を割り当てますといいますと、船を
向こう
が注文してきましても、もちろん船には
外貨
の
負担
が要るのでございますが、その船のある
エンジン
の
部分
だけは
英国製
の
エンジン
を使ってくれとか、あるいはスイスの
エンジン
を使ってくれ。そのために特に
外貨
の割り当てをしなければならない。市場でこれを獲得しようとしても普通には獲得できない。そういうようなものの場合には、これを拒否するか、もしくはその
外貨
の
部分
だけ
先方
に
負担
をしてもらうということにしてやっております。 それから第三条の
規定
は、いわゆる
実施計画
でございまして、この
協定
が発効いたしますれば、いろいろ
細目
の取りきめもございますが、その後
向こう
が毎年度々々々
実施
一
計画
を出して参りまして、その
実施計画
につきまして、
日本
が、たとえばこれは
通常
の
貿易
を阻害するかいなか、それから
外国為替
上の
追加
の
負担
が要るか要らないかということを一々審査しました上で、そうしてこれはいいということになれば、
実施計画
というものはできるわけでございます。
あと
に述べます
賠償契約
というものは、この
実施計画
の中にそれがあげられていなければならないということになっております。 その次が第四条の
規定
でございますが、第四条の
規定
の第一項は、これはいわゆる
間接方式面接方式
といわれまして、そのうちの直接
方式
の
規定
でございまして、
契約
の
当事者
は、
ベトナム共和国政府
と、それから
日本国民
またはその支配する
日本国
の
法人
と直接に
契約
をするということになっておりまして
政府
はこの
契約
の
当事者
ではないということになっておるわけでございます。
政府
の
仕事
は
認証
するという
仕事
でございまして、
認証
し、これを
支払
うという
仕事
でございますが、直接
方式
という
契約
をとるわけでございます。これは、
ビルマ
の
賠償協定
以来この形式をとっているわけでございます。 それから第二項には、
賠償契約
は、どういうふうなときにこれを
賠償契約
と呼ぶか。それから前に申し上げました
通り
、
契約
は
ベトナム政府
の
当局
と
日本国民
もしくは
日本国
の
法人
でございますが、それを
認証
するその
基準
はどうするかということが書いてあるわけでございます。その
基準
の
一つ
としては、(a)この
協定
の
規定
に合っているかどうか、それはあるいは
実施計画
にはありましたが、さらに
契約
の段階に行きまして、
外貨負担
が多いとか少ないとかいうことが詳しくわかってくるわけでございます。それから(b)は、両
政府
がこの
協定
の
実施
のために行なう取りきめのための
規定
、この
協定
の中でいろいろこまかい取りきめがあるわけでございます。
認証手続
とか、その他こまかい
手続
があるものでございますから、その取りきめのこまかい
規定
、及び(c)当該時に適用される
実施計画
、つまり
実施計画
の中に入っていなければならない。そういたしますと、これを
日本政府
が
認証
をいたしまして、そうしてこの
認証
を得た
契約
を
賠償契約
と呼ぶわけでございます。 それから、ちょっと飛びまして、三項に行きます前に、その
あと
の方の第四条四項の、「一の
規定
にかかわらず、
賠償
としての主産物及び
役務
の
供与
は、
賠償契約
なしで行うことができる。ですから、
通常
の場合は
賠償契約
というものでやるのでございますが、
賠償契約
をやるのができないものというものがあるのでございます。それは
賠償契約
なしでやることができる。ここに入りますものは、たとえば、ことに
ミッション
がありますと、その
ミッション
の
経費
をどうするか。
ミッション
の
経費
でも、この場合は何も
賠償契約
を結ばなくてもいい。もう
一つ
は
銀行手数料
、これは
銀行
を通じて、いろいろ
銀行
に
賠償勘定
を設けたり、
銀行
へ取り立てとか
支払い
を受けさせる権能を
使節団
が授権するわけでございますから、その
手数料
、そのようなものは、これは
賠償契約
なしで行なうことができるということが書いてあるのでございます。 それから元に戻りまして、第四条の三項は、これは
仲裁
に関する
規定
を含まなければならないということになっております。そこで「両
政府
間で行われることがある取極に従って
商事仲裁委員会
に
解決
のため付託される旨の
規定
を含まなければならない。」ということになっておりまして、これは、たとえば
フィリピン
の場合などでは、
交換公文
によりまして、この
商事仲裁
というのが、
日本
の
商事仲裁委員会——ジャパン・コマーシァル・アービトレーション・アソシエーション
にかけるということを合意しております。それから次は、「両
政府
は、正当になされたすべての
仲裁判断
を最終的なものとし、かつ、
執行
することができるものとするため必要な
措置
を執るものとする。」ということになっておりますが、
日本
としては、
民事訴訟
の
規定
並びに
仲裁判断
の効力に関する
条約
にも入っておるため、特に
措置
をとる必要はないと考えております。 それから第五条は、
支払い
をどうするかということになっております。「第一条の
規定
に基く
賠償義務
の
履行
のため、
賠償契約
により第六条1の
使節団
が負う債務」というのは、これは
賠償契約
によるものでございます。それから「前条四の
規定
による
生産物
及び
役務
の
供与
の費用に充てるための
支払
を、」
あと
に述べる
手続
に基づいて
日本政府
が
支払
う、その
支払い
は、
日本円
でするということが書いてございます。 それからその次の
規定
は、
賠償義務
の
履行
というものは、どういうときに
履行
が終わるのであって、どの
限度
まで終わるかと、その時点並びに免責ということが書いてあるのでありまして、「
日本国
は、前項の
規定
に基く円による
支払
を行うことにより及びその
支払
を行った時に、その
支払
に係る
生産物
及び
役務
を
ヴィエトナム共和国
に
供与
したものとみなされ、」ということが
規定
してありまして、円による
支払い
を行なったときに、その
限度
内において
賠償義務
を果したということになるし、またその
支払い
を行なったときに、詳細に申しますれば、小切百手を
賠償勘定
を持っておる
銀行
に
支払
ったときに、その分だけは、
義務
を
履行
したというふうに
解釈
をされております。 今までは実体的な
規定
でございますが、第六条は、その
契約
をする相手方の
機関
ということが
規定
してございます。すなわち、第六条の一項は、「
ヴィエトナム共和国政府
の
使節団
が、この
協定
の
実施
を
任務
とする同
政府
の唯一かつ専管の
機関
として
日本国内
に設置される」、これは、現在におきましても、
フィリピン
、
ビルマ並び
に
インドネシア
は
使節団
というのが
日本
にございます。 それから二は、その
使節団
の事務所は
東京
に設置されるというふうに書いてあります。
インドネシア
の
協定
によりますと、
東京並び
にその他二国間で合意される他の場所ということが書いてございますが、
現実
には
東京
のみに置くことになっております。これは、
賠償額
も
両国
に比しましては小さいし、
東京
にのみ設置される」いうことに書いてあります。それから、
使節団
の
任務
を
遂行
するにあたりましては、
不可侵権
を持つとか、暗号を使用することができるとか、それから直接その
任務
の
遂行
のために使用される
不動産
は、
不動産取得税
及び
固定資産税
を免除されるということが書いてあります。それから、
関税
に関しましても、公用のために
輸入
する財産は
関税
その他の
課徴金
を免除されるという
規定
が書いてございます。 それから第六条の第四項は、「
ヴィエトナム共和国
の
国民
である
使節団
の長及びその
上級職員
二人は、
国際法
及び
国際慣習
に基いて一般的に認められる
外交
上の
特権
及び免除を与えられる。」ということを書いてあります。ほかの
協定
では、
上級職員
の数を合意によりふやすことができるということが書いてありますのは、数が多いということを予想して書いたものでありますので、これはそのままになっております。 それからその次は、
使節団長
、
上級職員
以外の
職員
も、
外交官特権
は与えられないけれども、自己の職務の
遂行
について受ける報酬に対する
課税
を免除されるとか、
日本国
の法令の定めるところにより
関税
並びに
輸入
については
課徴金
を免除される、
引っ越し荷物
だとか、
携行品
だとか、その他に対する
関税
を免除されるということが書いてあります。 それから第六番は、これは前のところで、
賠償契約
はこれを
仲裁判断
によって決定するということが書いてございますが、
紛争
が
仲裁
によって
解決
されなかった場合とか、もしくは、その
仲裁判断
が
履行
されなかったときは、
最後
の
解決手段
として、
日本
の
管轄裁判所
に提起することができる、この場合は、この
訴訟
の
手続
の目的の用にのみ、
使節団
の長及び
上級職員
がその
限度
において
外交特権
の制限を受けるということが書いてございます。 それから第七項は、裁判の
執行
にあたりましても、「
使節団
に属し、かつ、直接その
任務
の
遂行
のため使用される土地及び建物並びにその中にある動産は、いかなる場合にも
強制執行
を受けることはない。」ということが書いてございます。 それから第七条の第一項は、「両
政府
は、この
協定
の円滑なかつ効果的な
実施
のため必要な
措置
を執るものとする。」、行政的におのおの便宜をはかるということが書いてございます。 それから第二項は、
賠償
は
日本国
の
生産物
並びに
役務
を提供するものでございますが、
現実
に
向こう
においていろいろなそれでもって
仕事
をするという場合、それはわが方は金を出すことができないという立場をとっておりますために、現地の労務とか資材とか
設備
とかを提供するということになっております。たとえば、ガソリンであるとか、あるいはダムを作るとすれば、砂利であるとか、そのようなものは
ベトナム共和国
が提供すると、こういうことになっております。 それから三は、普通の
規定
でございます。 四は、「
日本国
の
国民
及び
法人
は、この
協定
に基く
生産物
又は
役務
の
供与
から生ずる所得に関し
ヴィエトナム
における
課税
を免除される。」、これは二重
課税
を避けるという意味でこの
規定
がございます。 それから第五は、
日本国
から
生産物
を出しても、その
生産物
が
ベトナム共和国
の領域からほかの国に輸出されないということを書いてあります。これは、ほかの
協定
にもそのままございます。 第八条は、
合同委員会
というものを設置すると書いてございますが、
使節団
と
日本
の
賠償部長
との間に
会議
を定例的にやっておりまして、そうしてその結果を
日本政府
に勧告を行なうということになっております。 第九条は、この
協定
の
実施
に関する
認証
の
手続
とか、
支払い
の
手続
とか、そういうものを両
政府
間で協議して決定するということになっております。 第十条は、これは、この
協定
の
解釈
及び
実施
に関する
紛争
が起こった場合にどうするかということが書いてございます。 大体これが
賠償協定
の方でございますが、この
賠償協定
に付属しまして、
一つ
のいわゆる
生産物
に関する
交換公文
は御説明いたしましたが、第二番目の
賠償協定
の
実施
に関する
細目
に関する
交換公文
は、これに付加してございますが、これは大体、
賠償協定
を
実施
するために、
認証
の
手続
だとか、その他が書いてあるのでございます。そこで、一、二重要な点を述べますと、
賠償契約
というものができまして、その
交換公文
の1
賠償契約
というところでございますが、「
認証
を得るため
日本国
の権限ある
当局
に
提出
されるものとする。」と、この
手続
は「
原則
として十四日の
期間
内に行われるものとする。」と、「
原則
として十四日」ということになっておりますが、これは従来の例でも延びることはあるということでございます。そうして、従来の
インドネシア
などの場合には、この十四日以内というのは、本文の方に入っておりますが、ここではこちらの方に入れました。 それからもう
一つ
は、二項には「
賠償契約
は、
日本円
で
通常
の
商業
上の
手続
によって
締結
されるものとする。」ということが書いてございまして、とにかく一方の
当事者
は
向こう
の
使節団
でございますし、それから一方の
当事者
は
日本人
並びに
日本国民
でございまして、御承知の
通り
、
日本国民
のときには、
過当競争
というものがございますから、どうしても
ミッション
に乗じられるというようなことが起こるおそれがある、その場合でも、
政府
といたしましてはこれは
通常
の
商業
上の
手続
、
通常
の
商業
上のフォームか
賠償契約
かによってでなければ、特に
日本側
に不利であって、これは
通常
の
商業
上の
契約
だと認められないようなものは、これを
認証
する際に、これは変えてくれという折衝する余地がここに残っておるわけでございます。 それから第三項は、これはどの
細目
交換公文
にありましても、
実施
の責任は、
使節団
と
契約
当事者
である
日本
の
国民
または
法人
が負うものとするということになっておりまして、
契約
の
実施
に関するクレームだとかその他が出ました場合には、
日本政府
に出すのではなくして、
契約
の
当事者
たる
日本
の
国民
または
法人
に出すということになっております。 それから第四番目は、業者推薦の
規定
でございますが、
向こう
は
日本国
政府
は一応
国民
及び
法人
を、適当だと思われる
国民
及び
法人
を推薦をすることができる、ただし、この推薦を受けた者のみが拘束される、
向こう
は拘束はされないけれども、
日本
の事情がわからない場合において、あるものを作るのにどの業者がよいかということを推薦を求めてくることがございます。この場合は、従来の
日本
の慣行ですと、大体その業界に頼みまして推薦をさせましてその結果を
日本政府
が通知をするというような形をとっております。 それからその次の
規定
は、
賠償契約
に付随しまして輸送の問題が起こる、保険の問題が起こる、検査の付随的な問題が起こる。このときでも
賠償
から
支払
うものは、
日本国民
またはその支配する
日本国
の
法人
によって経営されているものでなければならないということになっておりますから、たとえば
日本
船で運ばない場合は、これは
賠償
から落とし得ない、それから
日本
の保険にかけない場合は、これは
賠償
では
供与
することができない、それからまた、検査
機関
も、たとえば国際的な検査
機関
に頼むというような場合は、これは拒否するということになっております。 それからIIの「
支払
」の
規定
は、これはこまかい
規定
でございまして、
賠償契約
ができて
認証
しまして、これを期日が来まして
支払
うときには、どういうふうにするかという
手続
が書いてあるということでございます。 それからIIIも、これは
使節団
のことでございまして、あまり重要な
規定
ではないと思います。 そこで
賠償協定
の御説明を終わりまして、次に、
日本国
と、
ヴィエトナム共和国
との
借款
に関する
協定
ということに参りたいと思います。 この第一条は「(七、五〇〇、〇〇〇
ドル
)に等しい円の額までの貸付を、」三年の
期間
内に、
ヴィエトナム共和国
に対して行うものとする。」ということになっております。これは七百五十万米
ドル
にひとしい円の額まででございますから、必ずしも七百五十万
ドル
にいかなくてもいいのだと
解釈
されるものだと思っております。 それからその次は、「前項の貸付は、この
協定
の
規定
に従い、両
政府
が合意する
計画
の
実施
に必要な
日本国
の
生産物
及び
日本人
の
役務
の
ヴィエトナム共和国
による調達に充てられるものとする。」まず、
賠償
に関連してこれは起こった問題でございますから、大体両
政府
が合意する
計画
というものが出てきます。それに必要な
日本国
の
生産物
及び
日本人
の
役務
を調達に充てるということになっております。 それから第二条に移りまして、貸付の各年次の
限度
額を毎年度両
政府
が協議して決定するということになっておりますが、
現実
に貸付の
当事者
となりますものは、この場合は
日本
の方は輸出入
銀行
でございます。輸出入
銀行
とべトナムの
ミッション
の方で、これをいろいろ、
ベトナム政府
の方で、いろいろこれを相談するということになって、この
協定
で相談することになっております。 それから第三条は、「
日本
輸出入
銀行
と
契約
を
締結
するものとする。」ということになっておりますが、その中の第三条の二項が重要な
規定
でございまして、「
日本国
政府
は、
日本
輸出入
銀行
が前項の
規定
に従って
締結
される
契約
に基いて貸付を行うために必要とする資金を確保することができるように、必要な
措置
を執るものとする。」これは七百五十万
ドル
を三年でございますから、これが毎年幾らになるということは、一応はっきりきまっておりませんが、第一年度だけは幾らにするということは、この
交換公文
の参考として付しました中に入っております。この中の、現在において九億円、三百五十万
ドル
、それだけの額を、
協定
が発効しました第一年度に確保するという
義務
があるわけでございまして、それは
日本
が輸出入
銀行
に対する予算と、それからこういう財政投融資などの
計画
を行なうときに、この七百五十万
ドル
の三分の一だと思います。その額だけはあらかじめ考慮して、これを輸出入
銀行
に確保しなければならないということでございます。それでございますからして、ほかのところと違いますのは、輸出入
銀行
というものは、金がなくなれば、いつでも断われるのでございますが、ベトナムに対してこの七百五十万
ドル
、これは三年間でございますが、それに関しては、金がないからといって断わるということはできない。その他の条件がうまくいかないということで、
現実
に
借款
ができないということ、これはあり得ると思いますが、少なくとも金がないという理由では、断われないということになっておると思います。それと非常に似たような
規定
は、
ビルマ
との
賠償協定
の
借款
の中に、五千万
ドル
の中の二千万
ドル
だけはいわゆる
政府
が提供するという条項が入っておりますが、それと類似の
義務
を持っておる
協定
だと思います。 それから第三条の第三項は、
向こう
が、これは
借款
でございますが、
借款
を
支払
う場合にどういう
措置
をとるかということが響いてあるのでございまして、
日本国
の関係法令の
規定
に従って、
ドル
を売ってやるとか、そういうようなことが書いてございます。 第四項もそういうふうでございます。 それから第四条の
規定
は、実際上、貸付は
法人
と
向こう
の
当事者
がやるのでございますが、実際上
計画
との関連もございますので、
計画
との関連におきましては、毎年度
政府
と協議をするという条項になっております。 それからちょっと申し忘れましたが、この
借款
に関しましては、参考の
交換公文
の中の、
日本国
と
ヴィエトナム共和国
との間の
借款
に関する
協定
第一条及び第二条に関する
交換公文
がございまして、その第一は、「同
協定
第一条に関し、
借款
は、ダニム
水力発電所
建設
計画
に充てられるものとする。」ここでははっきり、ダニム発電所建設
計画
というものが中にございます。
吉田法晴
9
○吉田
法晴
君
交換公文
の方ですね。
小田部謙一
10
○
政府委員
(
小田部謙一
君)
交換公文
の参考として
提出
いたしました
日本国
と
ヴィエトナム共和国
との間の
借款
に関する
協定
に関連する
交換公文
の第一条及び第二条に関する
交換公文
という中の第一項には、「
借款
は、ダニム
水力発電所
建設
計画
に充てられるものとする。」ということが書いてございます。これは
賠償協定
の方には、ダニム発電所と書いてございませんで、
水力発電所
という字しか出ておりませんから、法律的にはダニムであるかどうかということはわからないわけでございますが、
実施計画
ができてくるまでわからないわけでございますが、
借款
の方は
向こう
も望みますし、それから
借款
でございますから、このまま入れてあった方がむしろいいということで、ダニム
水力発電所
建設
計画
に一応充てられるということになっております。 それからこの
借款
に関する
交換公文
にもう
一つ
ございまして「第三条Iに関する
交換公文
」というのがございます。これは
借款
自体は、輸出入
銀行
とべトナム共和国
政府
またはその所有し、もしくは支配する
法人
との間で取りきめられるべき
契約
でございまして、
政府
としては輸出入
銀行
を何も強制する力は持っていないのでございますが、しかし、この中に大体の標準というものがきめてございます。利率はどうするかとか、貸付はどういうふうにされるとか、それから返す場合にはどういうふうにされるかというようなことが書いてございます。 それから
最後
が、経済開発
借款
に関する
交換公文
でございます。この経済開発
借款
交換公文
に関して、これはわが方としては、これによりまして特に法律上何らの
義務
を負っているわけではない、これは九百十万
ドル
にひとしい円の額まででございますが、
賠償協定
の効力を生ずる日から五年を経過した後、
日本国
の
国民
または
法人
により
締結
される適当な
契約
に基づき、これに対して行なわれるものとする、ということが書いてございます。これは
原則
として予想していることは、
日本国
の
国民
もしくは
法人
が
向こう
の
政府
、それから
政府
の所有し、または支配する
法人
と
契約
を結びまして、
日本
が物を出すというときに、この輸出入
銀行
及びその他の
銀行
が、これを金融をするのに便宜をはかるということになっております。 そこで第二項に、「
商業
上の基礎により、かつ、
両国
の関係法令に従って行われるものとする。」ということになっております。これは
フィリピン
の場合、
インドネシア
の場合、たとえば
インドネシア
の場合ですと、四億
ドル
ですか、それから
フィリピン
の場合ですと二億五千万
ドル
といういわゆる経済協力に関する
交換公文
と趣旨は同じでございまして、関係法令の範囲内で容易にし、かつ、促進すると、ただ、
日本国
は行政権の範囲内であっせんをする。しかし
現実
には、その
当事者
同士で話し合いをするということになっているわけでございます。 それからその場合、ほかの
協定
と違いますものは、ほかの
協定
は非常に多い額を想定しておりますために、
借款
の対象というものが別に出ておりませんが、ここでは一応「尿素製造工場の建設その他の
計画
の
実施
に必要な
日本人
の
役務
及び
日本国
の
生産物
の形で行われるものとする。」こういうことが出ておりますので、これは
先方
は尿素製造工場を
借款
でぜひやりたいということを申し述べました経緯で、これが入ったわけでございますが、これは何も尿素でなくて、その他の
計画
であってもいいわけでございます。それでこの取りきめは、十年間の効力を有するが、もし十年間が過ぎても額に達しない場合は、さらに延長するために協議を行なうことができる。 大体以上であります。
森元治郎
11
○森元治郎君 経済開発
借款
に関する
交換公文
の第五項、もう一ぺん言って下さい。
小田部謙一
12
○
政府委員
(
小田部謙一
君) 経済開発に関する第五項でございますが、「
借款
は、尿素製造工場の建設その他の
計画
の
実施
に必要な
日本人
の
役務
及び
日本国
の
生産物
の形で行われるものとする。」、一応これは
先方
の希望もございまして、尿素製造工場ということの名前は出ておりますが、しかし、これは
借款
でございますから、尿素製造工場が経済的に成り立たない、あるいは
日本
にその相手がいないということになりまして、その他の
計画
を持ってきた場合においても、これはまあ大体便宜をはかってやる、こういう趣旨であります。
苫米地英俊
13
○
苫米地英俊
君
ドル
為替の相場は、いつごろできまるわけですか。
小田部謙一
14
○
政府委員
(
小田部謙一
君) これは現在においては三百六十円でございますが、これは、
日本国
と
ヴィエトナム共和国
との間の
賠償協定
に関する
交換公文
、というのがございまして、「一
賠償協定
の
実施
に関する
細目
に関する
交換公文
」というのがございます。その中のII「
支払
」というところの九項に、まず、「
賠償義務
を
履行
したものとされる
限度
額の算定は、
日本国
政府
が正式に決定しかつ国際通貨基金が同意した
日本円
の
アメリカ合衆国ドル
に対する平価で、」パー・バリューでやるということでございます、しかも次に掲げる日に適用されたもの。
賠償契約
に関する
支払い
の場合には、
契約
を
認証
した日。その他の場合においては、その他の場合というのは、
賠償契約
でない場合でございますが、両
政府
間で合意する日。ただし、合意した日がないときは、
日本国
政府
が
支払
請求書を受領した日、となっております。現在の場合には当分の間三百六十円というのは変わりませんが、平価切り下げ、平価切り上げで変わりました場合には、IMFに登録したそのあれを
認証
した日、もしくは
支払
請求書を受領した日ということでございます。
苫米地英俊
15
○
苫米地英俊
君 ダニム・ダムの
計画
書はもうできて、
ベトナム政府
に
支払い
を済ましたわけですね、これは
賠償
金額に入るんですか、入らぬですか。
小田部謙一
16
○
政府委員
(
小田部謙一
君) これは従来でも、この場合はすでに
商業
上の
契約
に基づきまして
支払い
が済んでいるわけでございますから、入らないわけでございます。従来問題になったケースがあるんでございますが、
ビルマ
のことがあったのでございます。ちょうど
ビルマ
はもっと進行しておったんでございますが、その場合でも、
日本政府
の立場は
賠償協定
が発効した日以前に、
日本人
が提供した
生産物
及び
役務
は、これは
賠償
には入れない、
賠償協定
が発効した以後のものであって両
政府
が適当だと合意したものだけを
賠償勘定
に入れるということになっております。今度の場合におきましては、
商業
契約
はすでに
支払い
は済んでおりまして、その
役務
もすでに提供しておりますから、これが
賠償
の中から
支払
うということは絶対にありません。
吉田法晴
17
○吉田
法晴
君 資料要求をしたいんですが、資料要求の一覧表を実は今持っておりませんが、大臣がおられるところで資料を要求いたしますから、資料は出してもらいたいということを確認をしておいて下さい。
草葉隆圓
18
○
委員長
(
草葉隆圓
君)
委員長
からも、今の資料要求は、外務省はその資料要求に基づいた資料をお出しいただきたいと思います。 それでは、これにて暫時休憩いたし、午後二時より再開いたします。 午前十一時四十九分休憩 —————・————— 午後二時十九分開会
草葉隆圓
19
○
委員長
(
草葉隆圓
君) 休憩前に引き続き、
委員
会を再開いたします。 これより両件の
質疑
に入ります。
羽生三七
20
○羽生三七君 ベトナム
賠償
関係二件の審議に際して、これとは直接の関連はありませんが、私は主として、ガリオア、イロアの問題について、外務大臣、大蔵大臣にお尋ねをいたしたいと思います。この問題につきましては、私、数年前に参議院の本
会議
で、当時の緒方副総理にお尋ねをいたしたことがあります。その後も、さきに本院の予算
委員
会で大蔵大臣にちょっとお尋ねをしたことがありますが、私の基本的立場では、この種の問題について、やぶをつついてヘビを出すようなことをしてもいかがかと考えましたので、さきになくなられた重光外相当時、差しつかえがあるならば、むしろ質問は控えてもかまわないが、ということを申して、お打ち合わせをして、私は質問をしてきた経過があるのであります。 ところが、今度このベトナム
賠償
はこれが
賠償
としては
最後
であると
政府
は、言われておりますが、このガリオア、イロアはもちろん
賠償
ではありません。これは債務の百返還でありますが、それにしても
政府
が今まで対米交渉の際ずっととってきた態度は、このガリオア、イロアに触れるというと、
賠償
を
支払
うべき東南アジア諸国に対して感情的にもいろいろまずいことがあるので、
賠償
問題が一段落になるまでこの交渉はしばらく先に延ばしてもらいたい、こういう態度をとってきたのが、
政府
の今日までの方針だろうと思うのです。それで私といたしましては、たとえばこのベトナム
賠償
等の問題にいたしましても、この金額の内容あるいはそのことの正当性の是非等は別としましてこれが出てきたときにはときすでにおそいという印象すら受ける事情でありますから、ましてやこのような大きなガリオア、イロアといわれる約二十億
ドル
に相当する膨大な債務の返還の問題を取り扱う場合に、たとえそれが西独
方式
のように三分のになって長期年賦償還ということになろうとも、それにしても、
日本
経済あるいは
国民
生活に与える影響は相当大きなものがあろうと思うのです。従って
政府
としてはベトナム
賠償
が終わると同時に、この問題と取り組まれると思うのでありますが、取り組まれてしまって債務が確定をしてすべてが終わった
あと
に、それから国会で審議をするということではおそいと思うので、私はこの機会に若干の問題についてお尋ねをしたいと思うのであります。ただお断わりいたしておくことは、私はこの占領中アメリカから受けたそれぞれの好意について、それをかれこれ言うわけじゃありません。好意は好意として十分受け取りながら実態の把握をこのガリオア、イロアの返済問題についてどのようにするかと、こういう角度からお尋ねをするのでありますから、その点は御了承をお願いいたします。 そこで、第一にお尋ねいたしたいことは、この問題についてはすでに
政府
でも御承知のように、衆参両院とも、特に衆議院においては数回にわたる感謝決議を、対日援助に対する感謝決議を行なっております。従って
国民
の大多数も、これは純粋な債務を伴わざる援助ではなかったかと考えておる向きが非常に多いと思うのであります。従ってまず第一番にこの点は、この金額の内容等は
あと
にいたしまして、純粋のこれは債務なのか、あるいは今まで与えられた米国からの好意というものは、全部と言わなくても、相当の
部分
債務を伴わざる純粋の援助と解すべきであるか、その基本的な立場はどういうことでお進めになっておるのか、アメリカとの交渉の経過もあろうと思いますが、まず
政府
の基本的立場についてお飼いをいたしたいと思います。これは外務大臣か大蔵大臣か、その辺よくわからないのでありますが……。
藤山愛一郎
21
○国務大臣(
藤山愛一郎
君) 戦後の
日本
の経済処理にあたりましてアメリカ側が非常な大きな援助をしてくれているガリオア、イロアということを通じて援助してくれたことに対しては、
国民
ひとしく感謝しておるところだと思いますが、これが大いに力になっておるということは申すまでもございません。従って衆参両院においてもそれぞれ感謝をされておることだと思います。ただこの問題につきまして、やっぱり未確定の債務でありまして、これを確定さして、そうして何らかの形で処理するということが必要であるということは、
政府
の基本的な方針でございます。
羽生三七
22
○羽生三七君 その場合、債務の総額を判断する場合、いろいろな算定の基礎があるようでありますが、
政府
としては現在どういうようにこれを算定されておるのか、たとえば米国側としては援助物資が十九億五千五百万
ドル
、占領軍放出物資が八千九百万
ドル
計二十億四千四百万
ドル
という算定をしておると聞いておりますが、その
通り
かどうか、まずその点から
一つ
お伺いしたい。
佐藤榮作
23
○国務大臣(
佐藤
榮作君) 実は今、外務大臣からお答えいたしましたように過去におきまして、はっきり
政府
が債務と確認したということはないように思いますが、衆参両院の本
会議
なりあるいは、その他の
委員
会等を通じて
政府
自身が申しておりますことは、この援助物資は
日本政府
としては債務と心得るという実は表現をしておるわけであります。
羽生三七
24
○羽生三七君 心得えるですか。
佐藤榮作
25
○国務大臣(
佐藤
榮作君) ええ心得る。いわゆる法律的な債務じゃなくて、自分たちとしては債務と心得ておるということでございます。この関係に立ちまして、これはもちろん返済を要求された結果でもありますが、そういうような表現をしてきた。それで吉田
内閣
時分ですが、相当金額が一時交渉の結果、狭まったという時期もあったやに伺います。そして私、大蔵大臣に昨年なりました際も、もう長い懸案事項だが、今まで早期
解決
ができておらない問題、この、ガリオア、イロアはそのつど
日本政府
の言っておることは
賠償
問題等もあるから、
日本
の債務としてこれを
支払
うことができないという話だったが、大体損害
賠償
の最終的のものの見通しのついた今日であるから、そろそろこの問題を取り上げてくれないか、こういう申し出が昨年ございました。また、ことしになりましても、重ねて早期
解決
を要望された。またつい先だってでしたか、私はIMFの世銀の総会に出席いたしましたその際にも、大蔵大臣が来るならば、
日本政府
の考え方を明確にしてもらいたい、こういう強いお申し出がございまして、
政府
としても考え方は一応整理はいたして参りましたが、ただいまお尋ねになります総額自身、ガリオア、イロアの総額自身が三十億前後とは言われておるが、それを確認することができるかできないか、この点がまず基本的問題じゃないか、そうして西独
方式
を採用するにしても、その基本の金額は一体どうなっているか、それを双方で十分確認することが必要だ。まだその交渉が実はできておりません。で、今回私参りました際も、この金額を決定することがまず第一だ、ことに返済方法については、西独
方式
ももうすでに採用されておることだから、これは当然このまま採用されるものだろうと思うが、しかしいずれにしても、基本的の総額を確認しない限り、そういう話にもいかない。ことにこの問題を扱うのについて、私ども考えるのは、ただいま羽生さんがお話しになりましたように、感謝決議はしている。また、ガリオア、イロアについての
国民
感情というものもございますから、そういうものも十分考えなければ簡単な処理はできない、こういう点だけの、非常に抽象的な話だけをして帰ってきているというのが現状でございます。 で、今後じゃこの問題はどうするのか、あるいはお尋ねを受けてからお話しをするのがいいのかもわかりませんが、ついでに経過を申しますと、この総額が一体幾らになるか、それをできるだけ確認したい、で、時期的にみますと、二十四年以降のものは、これは比較的はっきりした資料がございます。しかし、二十四年四月以前のものにつきましては、これは完全占領下の形でございますから、その資料が非常に当方としてはない、そういう意味で、アメリカ側の十分私どもの納得のいくような説明を
一つ
聞こう、こういう態度で実はおるわけでございます。
羽生三七
26
○羽生三七君 これは数年前のワシントン側の数字として、この債務は、つまり
日本側
の債務、これは一九四五年九月二日から対日
平和条約
の発効した一九五二年四月二十八日までの間
日本
が受けとった原料、物資その他の援助である、こういうように言っておるのでありますが、この場合わが方の、今大蔵大臣のお話しのありました見返資金積み立ての以前のものは、もう全く米国の一方的な記帳を基礎としておる、これはもう明白だと思います。従ってこの算定の基礎というのは非常にあいまいでありますが、数年前私がお尋ねをしたときに、当時の小笠原大蔵大臣は、こういうふうに答えております。「総司令部経済科学局の
統計
によりますると、一応十一億八千四百万
ドル
となっておるのであります。この数字に見返資金特別会計設置以後の分として八億七千万
ドル
ございまするので、これを加えますると、合計三十億五千四百万
ドル
となる次第であります。ところが通商産業省企業
局長
が出しました決算
委員
会での資料によりますると、この十九億五千万
ドル
をガリオア、イロアの分として見、更にSIM、サープラス・インセンティブ・マテリアルス、この分が四千二百万
ドル
、QM、クオーター・マスタース・マテリアルス、これは五千七百万
ドル
、こういうものを合せて合計二十億五千四百万
ドル
、こういう数字が出されておるのであります。」、こうなっております。これは今も大蔵大臣御自身からもお話しになりましたように、実際にこれに取り組む場合には算定の基礎をどこに求めるか。この見返資金積み立て以前のものについては全く何らの基礎がない。しかも実際には常識的に一般的に二十億
ドル
前後というものが周知の既定事案みたいになって伝えられておるわけです。しかし今大蔵大臣のお話しを聞くと、必ずしもそういうものは確定的なものではないので、今後話し合いをするというわけでありますが、いずれにしても、ベトナム
賠償
すら三千九百万
ドル
ということで、こういう、正当性ということもありますけれども、大きな騒ぎをしておるのに、三十億
ドル
前後というこの膨大な数字が、しかもほとんどこれという的確な数字、基礎的な資料なしに、今後外務大臣なり大蔵大臣が対米折衝をされる場合に、ずるずると交渉の過程に既成事実を受けて立つというような形で入っていってしまうということは得策ではない、こう思うわけでありますけれども、もう少しその基本的な考え方について伺ってみたいと思います。
佐藤榮作
27
○国務大臣(
佐藤
榮作君) 私はただいま羽生さんがお話しになったような意味で数字を確認したい。それから過去におきまして、あるいは某々大臣、それぞれの閣僚は確認されたことがあるかもしれません。少なくとも私のときに、私が担当しておるという限り、私自身で納得のいく基礎数字をつかみたいと、実はかように思っておりますので、ただいま申し上げた基礎的な数字についての必要な資料を十分出してもらいたいし、またその内容については詳しく説明を聞きたい、こういうことの申し出をしておる段階でございます。まだ具体的にそういう話はいたしておりません。おそらくただいま言われますように相当古いものですし、その古いもの自身が、あるいは向うの予算的支出だけの数字は、それは確認できるかもわかりませんが、そういう点が今後実は折衝の問題じゃないか、かように私は思っているのでございます。この点はただいま羽生さんが述べられたような気持で、この数字を十分確認したい。だから過去の数字は過去の数字として、それを全然無視するという意味ではございませんが、新しく取り組む場合におきましては、それも
一つ
の資料だという程度に考えて折衝することが必要だろう、その心づもりで実はおるわけであります。
羽生三七
28
○羽生三七君 次の問題は、そこでもう
一つ
基本的な問題でこの際お尋ねをしておきたいことは、今の二十億
ドル
前後と言われている債務と終戦処理費との関係であります。終戦処理費は、その総額が五千二百億円となっております。これは御承知のように
日本
が終戦処理費として毎年度予算に計上して正当にアメリカに
支払
ってきた額であります。その総額が五千二百億円、これは四十七億
ドル
ということになっておりますが、この五千二百億円が四十七億
ドル
というと変なようでありますが、正式の今の為替レートでいうと一兆六千九百二十億円ということになるわけでありますが、調べてみると、当時は正式の単一為替レートがなくて複数制のレートであったことと、もう
一つ
は
政府
が暫定的な軍の換算率によったものがこの五千二百億円——四十七億
ドル
と、こういう数字になっているようであります。そのことはともかくとしてこれは換算の仕方の問題でありますから、為替レートの関係でありますから、それはともかくとして、この膨大な五千二百億に上がる終戦処理費は、
日本国民
はもう毎年度予算で
負担
をしてきたのですから、対日援助とこの終戦処理費との関係は、これは非常に重大だと思う。だからこの終戦処理費を
支払
ってきて、なおかつまた別に債務として二十億
ドル
前後というものが残るのか。少なくとも今の大蔵大臣のお話では、まだ固まった交渉にはなっていないようでありますが、固まってしまっては困るのであります。だから固まる前に、膨大なこの五千二百億円という終戦処理費というものは、すでに年度の予算を通じて完全に
支払
ってきたものであるから、今後外務大臣としても大蔵大臣とされても、今後交渉なさる場合には、これは当然一番大きな比重をもって取り組まなければならない問題であろうと、私はこう考えるわけでありますが、いかがですか。
佐藤榮作
29
○国務大臣(
佐藤
榮作君) 先ほどの、基本的な二十億
ドル
前後という表現をいたしましたが、これは過去の数字であります。実は羽生さん御自身から将来の交渉に云々というお話もございました。私は非常に御理解をいただいておると思って、ありがたく思っておりますが、実は金額自身が出ましてそうしてそれがいろいろ議論されることが
一つ
の既定事案になりやすい、こういうことを実は非常に私も心配している一人でございます。ただ今まで二十億
ドル
前後ということはすでに言われているのでございますから、その程度はいかざるを得ないと実は思いますが、この中身を決定していく場合、あるいは当方が主張すべき事柄、いろいろ交渉にはあるのでありまして、そういう場合にどういう材料をいかに使うか、これは
一つ
政府
側においても十分真剣に取り組んでみるつもりでございます。ただいま、言われます終戦処理費そのものは、これはもうどこまでも終戦処理費であり、いわゆる、ガリオア、イロアとは一応区別すべきものだと思います。これは理論的にはしかし私どもがガリオア、イロアについていろいろ考えます場合に、具体的な事情等で当方として主張すべき事柄は幾つも実はあるように思うのであります。そういう点が相手方の主張と当方の主張と相当の開きが当然できるだろう、それを交渉の結果どんなにまとまっていくかというところが
最後
の落ちになるだろう、おそらく西独
方式
というような、頭から三分の一とかいうような点も、非常に大まかな
支払い方法
をきめたということじゃないかと実は考えますが、そういう点になってきますと、いろいろ当方として主張したいものがあるわけでございます。そういう点は、一々詳細には申しかねると思いますが、ただいまの終戦処理費自身は、一応理論的にはガリオア、イロアとは区別さるべきものだと、かように実は思っております。
羽生三七
30
○羽生三七君 この問題につきましては、やはり私が本院の本
会議
で質問した際に、当時の岡崎外務大臣が次のように答えております。「実際上
日本
としましては、相当厖大なる財政支出を終戦処理費としていたしておるのでありまするから、今後の交渉に当りましては、この点は十分考慮いたすべきものと考えております。」、これは当時の岡崎外務大臣の答弁でありますが、これは理論上はもちろん私は分けて考えられるであろうと思います。しかし実際問題としては、ほとんど私たちが毎年度予算に取り組む場合に、これはもう当然、まあアメリカの援助に対する見返支出とは思わないけれども もうこれは当然に対日援助の返還というようなことが起こり得るような性質ではないものとして毎年
日本
がアメリカの占領費を終戦処理費という形で
負担
しておる、そういう
解釈
でずっときておる、当時の岡崎外務大臣もそういうものじゃなかろうかという意味のことを言われておるわけです。従って、理論的にはすぐ割り切ってどうというわけにはいかぬけれども、これは今後の御交渉の場合に、十分頭の中へおいていただくべきだろうと考えるわけであります。 それからその次は、これは純粋に国内問題に関連することですが、当時
国民
は、おのおのが受け取った食糧については、当時の配給所を通じて正当な代価を
支払
っております。当時はおそらく掛売りはなかったのですから。配給制度の末期には若干掛売りも出ましたが、最初のうちは掛売りは絶対なかったのであります。だから
日本
全
国民
一人残らず食糧の配給を受けたものは正当な代価を払ってきました。それからもう
一つ
は、いわゆる特殊放出物資、くつや毛布のようなものだろうと思うのですが、あるいは薬品、こういうようなものも全部みな正当な代価を払っております。黄色い払い下げの毛布ですね。それから兵隊ぐつ、代価はまあ幾らであったかは別として、みな正当に払っております。そういうものを払ってこられて、さらにその
あと
御承知のように、先ほど申し上げましたように、対日見返資金特別会計というものがその後できたわけであります。この資金の積み立ては、あの特別会計ができてからは、八億五千万
ドル
となっておることは、これは特に
政府
の方が私より詳しいだろうと思うのであります。これは最初、この見返資金の特別会計は二十七年度で廃止になりましたが、この二十四年度から二十七年度までの総収入は三千六十五億円、約八億五千万
ドル
です。ところがこの使途は、公企業並びに私企業にそれぞれ分かれておりますけれども、まあいろいろな企業に大
部分
これは貸し出したわけであります。その返還の内容も、ここに全部私数字を持っております。そこで、これはアメリカに関係のない、純粋な国内問題でありますが、
国民
からいうと、この何千億というものは全部一度
支払
っておるわけであります。それが一部積み立てられて、そうしてこの見返資金特別会、会計が、後のこれは開発
銀行
ですか、へ受け継がれて、そうして御承知のように、開銀、輸出入
銀行
、農林漁業金融公庫、電源開発会社等々、その他一般私企業にも貸し与えられておるわけであります。従って、
国民
からいうと、一度全部正当な代価を
支払
ったのに、またもう一度、今度新しい立場で、税金の形で
支払い
をしなければならない。こういうことになるわけであります。それで三千数百億に上るこの特別会計を通じて、
日本
経済が、当時のドッジ・ラインとのこれは関連でありますが、インフレを克服して、経済再建のために、大いに特別会計が役立ったという事実を私は見のがすものではありません。これは大いに役立っております。しかしそれはそれとして、
国民
の零細な、正当な通貨で
支払
ってきた金が積み立てられてそれ特殊な会社に貸し与えられて、今度は、それが
支払
うときには、
国民
がもう一度税金で
支払
うというときには、今後の債務返還に際しての、純粋の国内問題であります、アメリカに関係ありません。国内問題としては、これは
支払い
の財源その他については、私は十分考慮すべき点があるのではないか、これは先の話でありますけれども、これもこの機会に一応
政府
の考え方を承っておきたいと思います。
佐藤榮作
31
○国務大臣(
佐藤
榮作君) 私は、先ほどただ単に、この、ガリオア、イロアについての
国民
感情というものを軽視できないということを申しました。実はそういう意味のものがあるわけでございます。今言われますように、二十四年四月以降のものは、これはちゃんと会計ができておりますが、言われました
通り
の、約三千六十五億ですか、そういう金額に上っております。そのうちから債務償還、電電、国鉄等の公企業への支出に充てられたものを除いて、二千二百九十五億というものが、二十八年八月に、産業投資特別会計の資産として引き継がれておる。産投の資産になっておる。産投の資産になってくると、ただいまお話しのように、開発
銀行
であるとか、輸出入
銀行
、あるいは農林漁業金融公庫等に対する貸付金、あるいは
政府
の出資金、こういう形になっておるわけであります。同時に電源開発に対する出資金というのもあるわけであります。ですから二十四年以降のものについては、入ってきた金額も明確だし、その後の、国内における使い方もこれも非常に明白でございますから、将来の問題として、どういうように出資金を取りくずしていくかというような、そういうふうな問題は
一つ
あると思います。だからまあそういう点について、私ども十分考えなければならないことは、こういう金を債務として
支払
っていく場合に、そういう
国民
感情を軽視しないような立場においてこれは処理しなければならない。こういうことでありますし、また同時に、そういうことも含めて考えてみますと、返済の条件というのは、少し言い過ぎかもわかりませんが、返したものの将来の使い方については、返す側からもある程度の希望というか、強い希望を述べることも、これは当然じゃないか、実はかように思っております。そういうような気持の点は、一応披瀝してございますけれども、何と申しましても、最初の千五百二十億前後というのは、実はきまらないし、また
支払い方法
もきまらない。こういうのが今の現状であります。この際に、誤解のないように願いたいことは、先ほど岡崎外務大臣の話が出ておりますが、岡崎外務大臣当時に、よほど話が詰まったような、一時話が出ておりますけれども、この点を披露いたしますことは、いかにも既成事実を
承認
するという感じを持ちますので、私ども、なるべくその点は預からしていただきたい。かように実は思っております。
羽生三七
32
○羽生三七君 それから、やはりこれは数年前に、一度問題になったことがあるのですが、朝鮮動乱の際に生じたと言われる、対米債権四千万
ドル
というもの、これはどうなっておりますか、これは片づきましたか。これは河野一郎さんがさんざんやった問題ですが。
佐藤榮作
33
○国務大臣(
佐藤
榮作君) 先ほどの話なり、今のようなものがあります。まだそれ以外にも、私どもが主張するものはあるだろうと思います。そういう点、あまり実は、交渉の過程だものですから、なるべく具体的に申し上げたくないと思ったのでございます。
羽生三七
34
○羽生三七君 この債務確定の場合には、もちろん国会の
承認
を求めるわけですね。
佐藤榮作
35
○国務大臣(
佐藤
榮作君) 債務
支払い
の場合ですね。
羽生三七
36
○羽生三七君 債務を確定する場合には、これは憲法第八十五条の
規定
があるわけですね。それからこれは財政法上にもありますが、特に憲法第八十五条の
規定
であって、この前の私の質問に対して、緒方副総理、関係者全部は、この場合には当然国会の
承認
を求めると、これは憲法八十五条に明白に
規定
されております。
佐藤榮作
37
○国務大臣(
佐藤
榮作君) ただいまは御承知のように債務と心得ているわけで、債務というわけじゃありません。この心得ている債務がだんだん詰まってきたときにどう扱うか、それは、ただいま言われるように、はっきり債務として国会の
承認
を得なければ
支払い
はできないという問題は、これはさらに私ども研究してみたいと思います。
羽生三七
38
○羽生三七君 これは研究じゃなしに、もうすでに副総理以下各大臣明白に、それは国会の
承認
を得ることなくしてはできませんと、憲法の
規定
上これはできませんと、明白に私に答えられておるし、これはもう憲法上の
規定
から、財政法上から言って、当然これは確定債務と見なす場合には国会の
承認
が要るわけだ。
佐藤榮作
39
○国務大臣(
佐藤
榮作君) 憲法八十五条ですか。
羽生三七
40
○羽生三七君 ええ。
佐藤榮作
41
○国務大臣(
佐藤
榮作君) はい。
羽生三七
42
○羽生三七君 そこで、そういう
承認
を当然求められると思いますが、求められる場合に二
通り
あると思うのですね。
一つ
は、たとえばガリオア、イロアという名前になるかどうか知りませんが、対米債務返還に関する日米間の
協定
とかあるいは
条約
、そういうものができると思うのですね。ちょうどベトナム
賠償
のこの
協定
ができると同じように、対米債務返還に関する
条約
とか
協定
というものがこれはできると思うのです。だから、それが出てきたときが、国会にその債務確定の
承認
を求めるときと、こう考えられるのか。あるいは、それより前に、あるいは金額が固まったときに、国会に、債務、つまり確定債務となる場合の
承認
を求めて、それからアメリカとの
条約
なり
協定
を作るのか。
条約
や
協定
を作つちまって、それから国会へ
承認
を求めるときに、それが債務
承認
の確定要因、要項ということになるのか。これは非常に微妙なところだと思いますが、しかし、まあこの前の各大臣の私に対する答弁を見ますと、これは当然もう国会の
承認
を得なければできないことだということを明白に言われておることですが、その辺はどうですか。これはずるずるっと額がきまっちまって、
条約
や
協定
ができちまって、さあ国会へ出してきた。それが債務確定を求める場合だということになると、これは私妙なものだと、今までの各大臣の答弁から見ても妙だと思うし、やはり私は適正な額が出てきたときに、国会の
承認
を得て、それから
条約
なり
協定
に取り組むというのが普通の行き方じゃないかと思うのですが、いずれにしても、それは一緒になるか前後になるか——
あと
はないから、前になるかは、それは別として、あまりちょっとイージーに考えておられやしないですか。
佐藤榮作
43
○国務大臣(
佐藤
榮作君) 大体私どもは一緒じゃないかという感じがしておりますが、先ほどおあげになりました、どういうような名前をつけるか、まだ検討はしておりませんが、やはりその債務何々
支払い
協定
というか、そういうような形で
承認
を求めるのじゃないか、かように実は考えております。何にいたしましても、まだその辺まで参りませんから、今いい御注意をいただきましたので、十分検討してみますが、たぶんそうじゃないかと思います。
羽生三七
44
○羽生三七君 外務大臣はそういう問題についてまだ全然タッチしたことはないですか。
藤山愛一郎
45
○国務大臣(
藤山愛一郎
君) むろん内容につきましては、これは大蔵大臣の十分な御
意見
に従ってわれわれも行動するわけでありまして、折衝の過程からいいますと、おそらくそれが確定するということが
条約
において確定するわけでありますから、
条約
が確定する、それを国会に
提出
するという形になりますと、金額の決定と、それを処理する
条約
の決定というものはほとんど同時になるのじゃないかというふうに考えております。
佐多忠隆
46
○佐多
忠隆
君 ちょっとそれに関連して。今の点、それじゃまあ債務と心得る、従って、どういう性格のものとして日米の間に取りきめができるかは、いろいろ今後の問題でしょうが、どういう性格のものにしろ、取りきめをしたら、その取りきめは必ずこの
協定
なり何なりとして、取りきめ自体を必ず国会に
承認
を求めるということだけははっきりしていると考えていいですね。ということは、そういうことは、取りきめその他は行政的な
措置
として話し合いだけをやって、予算に数額だけを出して予算の
承認
の問題として取り扱えばいいんだというようなことは、よもや考えて、おられないと思いますが、その点をはっきりしておいていただきたい。
佐藤榮作
47
○国務大臣(
佐藤
榮作君) もちろん必要なら予算には計上しますけれども、予算に入っているからといって、その
協定
をかけないという筋のものではございません。それははっきり
協定
として片づけなければならないことだと思います。
羽生三七
48
○羽生三七君 この冒頭にも申し上げましたように、また先ほど大蔵大臣からも私の述べた気持をある程度参酌されて御答弁もありましたが、私は、もう繰り返し申し上げるまでもなく、こっちが先に金額をきめてかかってしまって、抜き差しのならぬところに追い込まれてくるような形で
政府
の答弁を引き出そうとは思っていない。毛頭そうは思っていない。それこそ
日本
の国に有利になることを考えておるのでありますから、私はあえてこの金額のこまかいところ、内容には触れませんが、しかし、このベトナム
賠償
すらがこれだけの大きな問題を起こしている際に、知らぬうちに、おそらくべトナム、
賠償
が済めば、アンダーソン財務長官ですか、さきに来られてお話もあったようですから、間もなく私はこの問題に取り組まざるを得ないことになると思うのです。しかもわれわれ知らない間にどんどん既成事実が進んでしまって、
あと
で
条約
、
協定
ができたわで、
あと
の祭りの大騒ぎをするというのでは、私どもとしてはこれはいけないことだと思いますので、今
政府
の注意を喚起する意味で、私はあまりこまかいことには触れないながらも、ある程度問題を提起したわけです。従って、どうかこの問題は、先ほど来申し上げるように、終戦処理費との関係もあり、それから見返資金特別会計の運用の問題もあり、これは引き継がれた
あと
の運用の問題もあり、それからもう何回も感謝決議をしてきておるという議会並びに
国民
感情の問題もあり、私も何かずっと前に、急に参議院だけの緊急集会で呼ばれてきてみたらこの感謝決議だったという事例をたしか記憶いたしております。そういうこともあったので、ぜひこの問題は真剣に
一つ
取り組んでいただいて
向こう
としては、今申し上げましたように、二十億四千四百万
ドル
ですか、それをまあ決定的なものとして押してくるように伝えられておるけれども、あくまで
日本側
の正当な資料をできるだけ提示されて、この問題と取り組まれたいということを、要望するわけです。
佐藤榮作
49
○国務大臣(
佐藤
榮作君) 大へんまあ時期が時期の問題でございますので、私どもの話にいたしましても、基本方針にしても、具体的な答弁をいたしませんので、大へん御不満だろうと思いますけれども、先ほど来羽生さんの非常に好意のあるお尋ねだと思いますので、その意味において、私ども全力を注ぎまして皆様方の御要望にこたえたいと、こういう気持で実はおります。しかし、いずれにいたしましても、その基本的な問題なり、その債務と心得るというその言葉自身も、非常に幅のある言葉でございますので、その
支払い
方式
なりその他等、全部総合的にきめていかなきゃならない。まあ当方から金額を先に出すことも非常に困るでしょうが、逆に一方的に金額を押しつけられることは困りますから、そういう意味においては、私どもが納得のいくような資料を出してもらう。十分の説明を聞いてしかる上で総額をきめていく、こういう処置をとって、幸いにいたしまして、その基本的態度についてはアメリカ
政府
も了承してくれております。そういう意味で、私ども国際信義を重んずる立場において、また国内の
国民
感慨というものも十分勘案いたしまして、しかる上で最終的な結論を出しでいく、こういうような折衝を続けていく、こういう考えでございます。
羽生三七
50
○羽生三七君 この問題はこの程度にいたしまして、もう
一つ
は、ベトナム
賠償
をもってこの
賠償
が全部終わると思いますが、それ以外に国際的にまだ
支払い
を要するような、
賠償
の形でなしに、必要とするような要件はまだ残っておりますかどうか、若干まだあるように思うのですが……。
藤山愛一郎
51
○国務大臣(
藤山愛一郎
君) まだ戦前債務としての処理を要するイギリスとの関係がございます。まだ
解決
いたしておりません。その他……。
羽生三七
52
○羽生三七君 イタリアは片づいたですか。
藤山愛一郎
53
○国務大臣(
藤山愛一郎
君) イタリアは片づきました。イギリスだけです。こまかいことは大蔵省から……。
羽生三七
54
○羽生三七君 こまかいことならよろしいです。一応全部洗いざらい、これで全部だというものを出していただかなければ……。
佐藤榮作
55
○国務大臣(
佐藤
榮作君) まだ未決分として中立国のクレーム、これはどこということを申さないで、やはり請求国
二つ
ばかりありますクレーム、また連合国関係の、日華事変関係のクレーム、これもやはり八件ばかり、八カ国ですが、そういうところからの要求のものがございます。でも、これはいずれも金額的には小さなものであります。小さなものでございます。この請求そのものを直ちに
承認
するというわけでもないようでありますので、これは中身は省かせていただきたい。
羽生三七
56
○羽生三七君 ガリオア、イロア等の問題で、まだ明年度予算なんかに何らかの形で出すということは全然ないですね。
佐藤榮作
57
○国務大臣(
佐藤
榮作君) この点だけははっきり申しますが、そういうことはございません。明年度予算には出て参りません。
羽生三七
58
○羽生三七君 さきに大蔵大臣が渡米された際に、若干この問題に触れられたと思うのですが、その問題は、先ほど申し上げたように、ベトナムが終わるというとすぐ触れてくる問題ではないかと思うのですが、どういう事情になっているのか、その間のところだけ承って、私の質問を終わります。
佐藤榮作
59
○国務大臣(
佐藤
榮作君) 先ほど来申しますように、ガリオア、イロアというものは、これは一部、あるいは債務じゃないというような考え方もあるわけですが、
日本政府
としては、在来とってきた債務と心得るというこの基本的態度に変わりはないのであります。ただ問題は、債務と心得る範囲を決定することについて、十分私どもが納得のいくようなその、説明なり資料がほしい。そういうものがまだできていない。それから
あと
の問題の
支払い
なりあるいは使途等についても、強い要望があり、その程度の申し入れがしてあるだけでございます。そこで一部ワシントンにおいて資料の突き合わせもするということになっておりますが、実は今日まで
現実
に具体的な交渉が進んでおりません。で、さらにワシントンの方から
東京
にあてて資料を送ってもらうことになっておりますが、まだ参っていないという段階でございます。従いまして、今日の段階において、そういう資料が参っておりませんし、また急速に、すぐに
解決
するとも実は思えないものが幾つもありますし、当方からも主張したい事柄が数点ありますので、そういうことを考えてみますと、来年度予算などには顔を出すところまでいかない、かように実は考えております。
羽生三七
60
○羽生三七君 もう
一つ
だけ。
日本側
の資料というものを取りそろえるという場合は、どこでおもにやっているわけですか。
佐藤榮作
61
○国務大臣(
佐藤
榮作君) 二十四年以降のものは通産省にございます。それ以前のものになりますと、
日本側
にはおそらくないだろうと思います。
草葉隆圓
62
○
委員長
(
草葉隆圓
君) 次に杉原君の御通告でございますが、ちょっと今総理の力を連絡しております。 ちょっと速記をとめて。 〔速記中止〕
草葉隆圓
63
○
委員長
(
草葉隆圓
君) 速記を始めて。
杉原荒太
64
○杉原
荒太
君
ベトナム共和国
との
賠償協定
及び
借款
協定
の件に関し、まず本件とわが国
外交
の基本政策との関係について質問いたします。 わが国
外交
の基本政策は、その目標の上から見て、わが国の独立完成の実をあげるということを目標とする独立
外交
の柱と、戦争を防止し平和を維持し国の安全を守ることを目標とする平和
外交
の柱と、
国民
の暮らし向きをよくすることを百標とする経済
外交
の柱を根幹とすべきものと信じます。 まず、独立
外交
の観点から見まするに、サンフランシスコの対日
平和条約
が、その内容におきまして、敗戦国としてやむを得ない事情があったとはいえ、わが国別民の苦痛するところを包含しておったにかかわらず、われわれがこれを
承認
した主たる根拠は、一日もすみやかにわが国が主権を回復して、独立国の資格を取り戻すということにあったことと信じます。対日
平和条約
によって、わが国は主権を回復したのでありますが、独立完成の実をあげるということを目標とする観点からいたしますれば、サンフランシスコ
平和条約
中には、なお問題が残っておるのであります。その最も大きなものは、固有の領土問題と
賠償
問題であることは申すまでもありません。ここでは、領土問題に触れることは避けますが、
賠償
問題は、わが国の独立
外交
の上からしても、捨ておきがたい重要な問題であります。いつまでも他国に対し敗戦に伴う
賠償
負担
を背負っておるという姿は独立国の名誉ではありません。われわれは一日もすみやかに、このような関係をきれいに精算して、この面からしても、独立完成の実をあげたいものであります。 このような意味合いにおいての独立
外交
の観点からお尋ねいたすのでありますが、
政府
は、本件
賠償協定
の件の提案理由としてサンフランシスコ
条約
に基づく
義務
の忠実なる
履行
が国際信義を全うするゆえんであるということを強調しておられる。なるほど、それはそうであるに違いない。しかし、そういった法律論的根拠のほか、政治論としてわが国が、一日もすみやかに対外関係の面においても、独立完成の実をあげるという大目標の上から見ても、これがための政策の一環として
賠償
問題は、なるべくすみやかに
解決
をはかる必要があるという、大所高所からり政治的考慮が伴っておるはずだと思うが、
政府
の見解はどうであるか。まずその点を
国民
の前に明らかにしていただきたい。 次に、同様の立場に立っての問題でありますが、
ベトナム共和国
に対する
賠償額
を三千九百万
ドル
とすることについては、一昨年十二月サイゴンに派遣された植村特派大使の
先方
に示した試案に対して、昨年三月
先方
より受諾の通告があったにかかわらず、
協定
が調印されたのは、本年五十三日となっておって、その間一年有余を経過しておる。東南アジア諸国に対する
賠償
問題の
解決
にあたって、ベトナムが
あと
回しとなった事情はよくわかります。また昭和二十八年七月の沈船引き揚げの中間
賠償
交渉及び昭和三十一年一月前面
賠償
交渉の開始以来、
先方
の一億五千万
ドル
という膨大要求を合理的、実際的な線にまで落ち着かせるために、いろいろと苦心、努力を重ねられたことは多とするところで、あります。しかるに、問題の焦点であった
賠償
総額についての
両国政府
間の了解がついてから、
協定
の調印まで一年有余もかかっておるのは、いかなる事情によるものであるか。何がそんなにおくらしたのか、そのわけとなる事情を明らかにしていただきたいのであります。 それとともに、同じく先ほど申し上げました意味合いにおいての角度からお尋ねするのでありますが、昭和十五年九月の
日本
軍の北部仏印進駐から、戦争状態開始時期と認められる昭和十九年八月までの間に、
日本
軍の与えた損得があったとした場合、それはサンフランシスコ
平和条約
第十四条(b)項の放棄対象にはならないと解せられるが、特にその分として、これに関するクレームの問題が、今後残ることはないか、その点、あわせてお尋ねいたします。
岸信介
65
○国務大臣(岸信介君) ベトナムの
賠償
に関するこの
協定
の問題は、申すまでもなくサンフランシスコ
条約
によって、サンフランシスコ
条約
上の十四条の
規定
による
義務
を果たすという、法律的に申しますというと、そういうことでございます。 しかしながら、この問題を
解決
するということは、単に法律的な
義務
を果たすということにとどまらずして、御指摘のように、
日本
が独立国として独立を完成し、またこの東南アジア諸国との間におけるところの戦争に関連しての、いろいろなこの問題というものを一切
解決
して明るい、将来に対して相協力して、平和を増進し、お互いの繁栄を期する、作っていこうという基礎に立って考えますというと、こういう
賠償
問題に関することは、
日本
にとっては、
一つ
の
負担
でございますけれども、これを、適当なところにおいて
解決
することが、私は、これらの国々との間の友好親善を果たす上から、またお互いの国の繁栄、またそれを
日本
の立場から見るならば、
日本
が独立国として、将来りっぱな国際的な、この
義務
を果たし、同時に、権利を十分に主張できる基礎を作っていくゆえんである、こういう見地から、この
賠償
問題というものが、従来も、
ビルマ
以下諸
外国
に対するものがきまり、さらに
最後
の、
条約
上の分としては、
最後
のこのベトナムの問題を
解決
するならば、これらのことが、すべて、今申しますように、
日本
が独立国として、また
日本
がアジアの一国として、東南アジア諸国との間における、この友好親善を進め、お互いの繁栄に資し、平和に資するゆえんである、こういう大局的な見地から、本
協定
を
締結
したい、かように考えておる次第であります。 なお、第二、第三の問題につきましては、外務大臣より、お答えいたします。
藤山愛一郎
66
○国務大臣(
藤山愛一郎
君) ただいま、お話のありました植村特使の提案に対しまして、その翌年三月承諾をしてきた、しかも、その後、調印まで一年余の時制がかかっておるのは、どういうわけだという御質問だと思いますが、御承知の
通り
ベトナム国との問題点につきましては、
解決
をいたしましたが、さて、これを実際の条文化して参ります点につきましては、はなはだ私から申しにくいことでありますけれども、ベトナム側においても、独立早々でございまして、これらの
条約
を
締結
する経験もあまり持っておりません。従ってそれらに対して、一々いろいろな点について協議もいたさなければならぬのであります。説明もいたさなければならぬのであります。それでありますから、そういう意味において、事務的に進行が非常におそかったということを第一に申し上げられると思います。 なお、当時久保田大使の赴任という問題もございましたので、それらの事情も、関連いたしておる次第でございます。
最後
に、若干二、三の点につきましても、事務的に、
向こう
側に納得いたさせるためには、相当の時間がかかりましたし、またこの
賠償
を取り行ないますと同時に、将来友好な通商関係を打ち立てるためには、ぜひとも通商
協定
を作って参りたいというのが、同時に作って参りたいというのが、われわれの希望であったわけでありますけれども、それらの点につきまして
向こう
側といたしましては、経験もないし、従ってどういうふうに、それらを扱っていくかということは、もちろん十分でないし、現状においても、そういう航海通商
条約
のようなものを
締結
はいたしておらぬ。またよその国からきても、そういう問題についてまだ受諾しておらぬので、将来の希望表明にとどめる努力をして、そういうものを作ろうというふうにとどめるということに至りますまでに、相当な時間を要したわけでございます。 そんな関係もございまして、最終的には、相当の時間がかかりましたことは遺憾でございましたけれども、右の事情であることを御了承願いたいと存じます。 なお、第三の御質問であります一九四四年八月二十五日にきめて、その後の
賠償
の今回払ったそれ以外の戦前における債務関係が、何か要求されるのではないかというようなことでありまして、今回の
賠償
の交渉に当たりまして、これをもって、ベトナムが要求いたしますすべてであって、その他に軍隊が、
日本国
のとった、それ以前その他においてとった行動に対する請求権は、もう存在していないということをベトナム側も確認をいたしております。私ども、その確認の文書をとっておりますけれども、ベトナム側は、それを公表することを望んでおりませんので、参考文書として
提出
いたさなかったのでございます。
杉原荒太
67
○杉原
荒太
君 次に、平和
外交
の観点からお尋ねいたします。 南北対立するベトナムが台湾海峡や朝鮮半島とともに、アジアにおける国際政治の危険地帯とも目されております。しこうして、ベトナムにおいては、共産主義の立場をとるホー・チミン政権と、反共の立場をとるゴ・ディン・ジェム政権が鋭く対立している。また一九五四年七月のジュネーブのベトナム休戦
協定
には、御承知の
通り
、
ベトナム共和国
の代表者は、これが
当事者
となっておりませんまたジュネーブ
会議
の最終議定書にも、
ベトナム共和国
のみならず、アメリカも参加しておりません。なお、平和の維持のためには、当該地方の安全保障とともに、民生の安定が不可欠のことも指摘するまでもありません。
政府
は、もとより、ベトナム地方に対しても、平和
外交
の方針をとっていかれるに違いない。私のお尋ねいたしたい点は、その平和
外交
の方針を、ベトナム地方の
現実
の事態に適用するに当って、
政府
は、いかなる事柄を
基準
とし、また重点としてやっていく考えであるかということであります。まだ本件
賠償協定
及び
借款
協定
の
実施
に当たって、
ベトナム共和国
の経済開発、民生安定に資することを配慮しておられることはわかるのでありまするが、軍需工場等、いやしくも軍事的色彩のあるものは、べトナム共和国において、安全保障上必要と認むるものといえども、わが国としては民間人にチェックせしめず、また民間取引もチェックする方針であるかどうか。また、ジュネーブ
協定
等に対しては、いかなる態度をとられるのであるか。ホー・チミン政権側から種々苦情も伝えられておるということもあり、この点あわせてお尋ねいたします。
岸信介
68
○国務大臣(岸信介君)
ベトナム共和国
との間の今度の
賠償協定
、また、
ベトナム共和国
と
日本
との関係を考えてみますというと、われわれは世界の多数の国と同様に、全ベトナムを代表する正統
政府
として、これとの間に今回の
協定
を結ぶつもりであります。ただ、この
賠償協定
も他の国と結んだ
賠償協定
も同様でございますがその国に対して、戦争からいろいろな苦痛を与え、損害を与えたことに対する償いとして行なわれるものであり、従って、その
賠償
は、これらの国々の民生の安定向上、経済の発展、福祉の増進ということを目標として
実施
されることが望ましいことであり、また、そういうことによって、初めて
賠償協定
を
履行
して、これらの国々の間の戦争中の一切の悪い記憶も一掃して、将来の友好親書の関係ができる基礎であると思うのであります。そういう意味において、このべトナムの
賠償
につきましても、われわれは、それがベトナムの経済の基盤をつちかい、ベトナムの
国民
の福祉の増進に役立つというものにこれを指向してやるべきことは当然であろうと思うのです。具体的の
実施計画
がいよいよできますのは、
賠償協定
に調印した後でありますが、この間において、プロジェクトとしていろいろ上がってきておりますものも、決して軍事的ないわゆる軍事工場としてのものではなくして、従って、われわれは、べトナムの産業の基礎ができ、その結果は
国民
全体の福祉の増進に役立つものであるというふうに見ておりますが、さらに、これが具体化する場合における
実施計画
の
承認
にあたりましては、そういう点に特に留意して、軍事的施設であるとか軍事工場の建設にわれわれの
賠償
の
履行
を充てることのないように、十分に留意して参る考えであります。
杉原荒太
69
○杉原
荒太
君 次に、わが国の経済
外交
の上から見まして、東南アジア諸国に対する
賠償
の
実施
は、重要な関係を待つものであることはあえて申すまでもありません。
賠償
は法律論としては、
条約
上の
義務
に基づくものであることは論を待たないけれども、東南アジアとの経済関係をよくすることを目標とする政策の一環として、
賠償
問題の合理的
解決
は一日もすみやかに実現することが望ましいと思う。ベトナムとの本件
賠償協定
も、そのような観点から評価されてしかるべきものと存じます。しこうして、ベトナムにおける南北の統一がはたしてできるか、その可能性ありとしてもいつのことか、全く見通しは立たない実情であると思う。しかるに一方、東南アジアの経済建設をはかるということは、今後におけるまさしく世界史的の大業であるに違いない。わが国も分に応じてこれに寄与することは、わが国の高い政策の方向でなければならないと思う。このような見地からしても、本件
賠償協定
の
解決
の時期を、便々として見込みも立たない南北統一というようなことにかからしむることは
現実
的でないと思う。しかるに、
国民
の間には、ベトナム
賠償
は何も急いでやる必要はない、もう少し
情勢
を見てやるがいいというような考え方があるようでありまするが、
政府
は南北の統一の時期を待つに値するようなことが、
一つ
でもあると見ておられるのか、はっきりしていただきたい。また、わが国の東南アジアに対する経済
外交
の上から見れば、開発
輸入
に
一つ
の重点が置かるべきであり、また
賠償
物資は
生産財
が主体となる、べきものと存じます。このような見地に立ってその角度からお尋ねいたすのでありまするが、本件
賠償協定
に基づいて
消費財
の
供与
がなされる場合、
交換公文
によりますれば、その額は七百五十万
ドル
相当の円の額の
限度
内ということになっており、そうすれば
消費財
供与
の
限度
額は
賠償
総額の約二割に上る、このような大幅の割合のワクを
消費財
に認めたのはいかなる理由によるのであるか、御説明を願いたい。また、
ビルマ
、
フィリピン
、
インドネシア
の場合の
賠償
実施
の今日までの実績から見て、
消費財
の割合はどうなっているか、また、これらの諸国に対する今後の
賠償
実施
にあたり、
消費財
の取り扱いについては、いかなる方針と具体的
基準
をもって処理せらるるか。相手側の要求もさることながら、わが方はわが方としての取り扱いの
基準
となるべきものを持っていなければ、そのつど主義というようなことでは、そこに種々の弊害も起こるすきができて、はなはだおもしろくないと思う。関係
当局
閥に一定の
基準
となるべきものを持っておられるのか、もし今日までそれがないとすれば、今後これを作る考えがあるかどうか、
政府
の所見をお伺いいたしたいのであります。 なお、ついでにお尋ねいたしますが、今後東南アジア諸国に対する経済協力上必要な財政の裏づけについて、
政府
はいかなる襟度をもって臨まんとしておられるのか、この機会にお尋ねいたしたいのであります。
岸信介
70
○国務大臣(岸信介君) 法律的にわれわれはベトナムとは、全ベトナムを代表する正統
政府
としてこれとの間に国交を正常化していると申しますけれども、事実上北ベトナムとの間において、今日は休戦の状態にはなっておりますけれども、かつて戦争が行なわれ、また実際上対立した状況にあるということは、これは非常にわれわれとしては望ましくないことであることは、言うを待たないのでありまして、これが統一をされることは心から望んでいるところであります。また、それに関してジュネーブ
協定
におきまして、統一に関する
一つ
の希望が表明されておりますけれども、実際の問題としてはこれは統一がいつできるか、ほとんど前途ははかり得ないということが事実であると思います。このことはベトナムだけでなしに、今日民族が分かれておる、世界の各地における統一問題がどこ
一つ
として今日
解決
の、統一の曙光がまだ見えないというのが
現実
であると思います。しかも、先ほど来お答えを申し上げ、御質問にもありましたように、
日本
としてこの
賠償
の
義務
を、
条約
上の
義務
を果たすことが、
条約
上に基づくところの
義務
履行
として国際信義の上に必要であるのみならず、さらに東南アジア諸国との間に大きな、大局的に申しましても、一日も早くそういうものを
履行
して済ますということが必要である。そこで
現実
の問題として、いつ統一ができるかわからないような状態にある、それをいつまでも待って、便々だらりと待ってそうして
賠償
問題というものを
解決
しないということでありますというと、私は、
日本
の東南アジアとのこの一切の大きな大局的の見地からの友好親善なり経済開発、
両国
の繁栄というような、あらゆる面から見て、これはそういうふうに漫然とこれを延期しておくべき筋合いのものでないと、かように考えます。今日のところでは不幸にして統一への道が開けておるような曙光が見出されないということは、非常に遺憾としますが、そういう
現実
に即してこの問題を早く
解決
することが、相互のためであり、また広く東南アジア諸国と
日本
との関係の上から申しましても、望ましいことであります。かように考えております。 なお、
消費財
の問題等につきましては、外務大臣よりお答え申し上げます。
藤山愛一郎
71
○国務大臣(
藤山愛一郎
君)
賠償
いたしますについて、御指摘の
通り
できるだけ
生産財
をもってこれを充当していくことは望ましいことでありまして、従って、それに重点を置いて参らなければならぬことは当然でございますが、しかし、過去におきます経験から見ましても、
賠償
締結
も、相当
消費財
の要求が多く出て参りますので、今、七百五十万
ドル
が約二割だという御指摘もありましたんですが、
ビルマ
の現状では二割四分三厘くらいになっております、
消費財
が。
インドネシア
が一割三分ですか、それから
フィリピン
は非常に少なくて一分五厘くらいでありますけれども、消費材の要求というものは逐次ふえて参ります。従いまして今回のベトナム
賠償
においても、
消費財
の
最高限
を七百五十万
ドル
以上をこえてはならないという心がまえをもちまして、これを書いたわけであります。同時に、
消費財
を出します場合に、むろん
生産
に寄与いたします
消費財
ということをわれわれもできるだけ主眼にいたしております。たとえばセメントでありますとか、トラックでありますとかいうような種類のものを
資本財
とすぐには見られない場合もありますけれども、これが変形して
資本財
になることは申すまでもないことでありまして、そういうものをやはりできるだけわれわれとしては念頭に置いてやって参る。ごく単純な繊維品でありますとか、あるいは
カン詰
類というようなものの要求も、
ビルマ
等におきましては、国の経済事情によりまして若干はございます。しかし、そういうものは避けて、特に今回は水力発電なり、あるいは
機械工業センター
なりというものを作るのでございますから、そういうものにできるような
消費財
、しかも、それは従来の例から見まして、だんだん要求がふえがちになってきますので、七百五十万
ドル
以内にそれを限定してしまうということにいたしておきますことが適当だと考えたわけであります。従って、七百五十万
ドル
は
限度
でございますから、むろん、それ以内でおさまる場合もございます。そういうように御了承願いたいと思います。 それから経済協力については、当然われわれとしては東南アジアの各国と経済協力を進めて参りますことはむろんでありまして、従って
通常
の場合におきましても、資金の
供与
なり、あるいは技術の提携なりというものをやって参らなければならぬのでありますが、
賠償
そのものが、今、申し上げたような
資本財
をもって行ない、また、それに伴いまして建設されるものが、
水力発電所
なり、あるいは工業センターなりということになりますれば、
賠償
を通じましてもこの経済協力の形が強く打ち出していけ得ると思うのです。それ自体は全ベトナムの
国民
に対して、将来大きな裨益をすると思うのでありまして、われわれは経済
外交
というような一環から見ましても、今回の
賠償
そのものは適当なとり行ない、取りきめになっておる、こう考えております。
杉原荒太
72
○杉原
荒太
君 私が先ほどお尋ねしました第三点のところは、むしろ今後の経済協力の政策を推し進めるにあたって、まだ
措置
ができていないけれども、今後どういうふうな財政的の裏づけをもってやっていこうというふうに
政府
は考えておられるかという点であります。
岸信介
73
○国務大臣(岸信介君) 東南アジア諸国の経済協力、いろいろなプロジェクトが具体的に上がってくるものに対しまして、そのつどそのプロジェクトを検討いたしまして、従来プロジェクト・バイ・プロジェクトで適当に協力して参っております。しかし、東南アジアの経済協力を推進する上から申しますというと、そういうことでなしにもう少し包括的な財政的な資金を設けておく必要があるんじゃないかという考え方、いろいろあります。現に東南アジア開発基金というものが五十億作られておりますか、これはその目的が国際的な投資
機関
に対して投資するというふうな、目的が限定されております。いずれにしても、やはり
計画
を単に、プロジェクト・バイ・プロジェクトだけで、プロジェクトを検討しながら、それに必要な財政的な
措置
を講ずるというだけでなしに、もう少し広い包括的なものを設けて、東南アジアにおけるところの経済開発を積極的にやる必要があるということを認めておりまして、それらの点についてはいろいろな財政・上の
措置
もありますし、また財源の問題もございますから、今後検討して参りたいと、かように思っております。
杉原荒太
74
○杉原
荒太
君 先ほどの質問の中で、今後の具体的の
消費財
の問題の取り扱いについて、具体的
基準
を一体
政府
の内部で持っておられるかどうか、かえってそういうものがないために、
当局
としてやりにくい面などできるかもしれない、それはやはり必要なことじゃないかということを私は申し上げておる。その点はいかがですか。
藤山愛一郎
75
○国務大臣(
藤山愛一郎
君)
消費財
を出します場合に、先ほど申しましたように建設的な
消費財
をなるべく出すというのが
一つ
の
基準
でございます。それから同時に、
通常
貿易
を阻害しないということは、これは当然
基準
としてわれわれ考えて参らなければならぬので、従って、それらの
基準
に応じてこの問題については対処して参りたいと、かように思っております。
杉原荒太
76
○杉原
荒太
君
最後
に、戦争
賠償
の本質と本件
賠償
問題との関係についてお尋ねいたします。本来、戦争
賠償
なるものは、戦争終結の必然的要件ではありません。また戦争
賠償
の権利
義務
は、直接一般
国際法
に基づくものでもありません。また
国際慣習
法によれば、明示的取りきめのある場合を除いて、講和の後には
賠償
の請求を提起し得ないとされておる。要するに
条約
ないし当事国間の合意の根拠なくして戦争
賠償
の権利
義務
は発生しないと思う。戦争
賠償
なるものは、そういった点において、民事上の損害
賠償
とはその法的性質を異にすると思う。この点について
政府
の見解はどうであるかお尋ねいたしたい。 さらに、これと関連する問題であるが、
ベトナム共和国
がわが国から戦争
賠償
を要求する権利を有するのは、もっぱらサンフランシスコ対日
平和条約
の第十四条と、第二十五条に淵源すると思う。第十四条によれば、その領域が
日本国
軍隊によって占領され、かつ
日本国
によって損害を与えられた連合国は、
賠償
を要求する権利が認められている。しかして、その連合国というのは、連合国の定義を定めた第二十五条によって、
日本国
と戦争をしていた国、または、以前に第二十三条に列記する国、たとえばフランスなど十一カ国の領域の一部をなしていたもので、しかも、サンフランシスコ
平和条約
に署名し、かつ批准した国に限られておる。ゴ・ディン・ジェム
政府
の代表する
ベトナム共和国
は、この要件に合致する関係にあるからこそ、わが国に対し戦争
賠償
を要求する権利を持つに至ったものと思う。しかるに、現在のホー・チミン政権はこの要件を備えていない。従って、対日
平和条約
に基づいての戦争
賠償
を要求する権利は、現在のホー・チミン政権にはないと断定してよいと思う。二重払いの良否の問題については、
国民
の間にも疑念が残っておるようでありますから、特にこの点については、
政府
のはっきりした御見解をお示し願いたい。
藤山愛一郎
77
○国務大臣(
藤山愛一郎
君) 私ども
政府
としては、今御指摘のありましたような見解をとっております。詳しいことは
条約
局長
から御答弁いたさせます。
高橋通敏
78
○
政府委員
(高橋通敏君) ただいま御指摘の点でございますが、戦争の後における
賠償
という問題は、御指摘の
通り
戦争終結による必然の結果と申しますか、戦争が終結したならば、当然いずれか一方が他方に対して
賠償
の権利または
義務
が発生するというわけでは、ございません。この点御指摘の
通り
、戦争終結に際します
平和条約
においてそのような
規定
が設けられます場合、初めてその
規定
に従いまして双方の間に
賠償
に基づく権利
義務
が発生するわけでございます。従いまして、
通常
の民事上の不法行為とか、それに対する
賠償
だとかそうい問題と全然別個の問題であると考えております。この点御指摘の
通り
、従いまして、今回の
賠償
にいたしましても、第十四条に従いまして
日本側
におきましては
賠償
の
義務
が生じ、ベトナム側におきましては、第十四条並びに御指摘の、第二十五条によりまして、
賠償
の権利が発生ずるわけでございます。いずれもこの
平和条約
に参加した国及び参加し、署名した国について、この
規定
に従いまして
賠償
の権利
義務
が発生するわけでございましてこれに参加しないという国については、
日本
の関係におきまして、何らそのような法律の
賠償
の権利
義務
は発生しないということになっております。
草葉隆圓
79
○
委員長
(
草葉隆圓
君) それでは本件に対する本日の
質疑
はこの程度にとどめたいと存じまするが、御
異議
ございませんか。 〔「
異議
なし」と呼ぶ者あり〕
草葉隆圓
80
○
委員長
(
草葉隆圓
君) 御
異議
ないと認め、さよう決定いたします。
—————————————
草葉隆圓
81
○
委員長
(
草葉隆圓
君) 次に、
国際情勢等
に関する調査を
議題
といたします。 これから
質疑
を続けたいと思います。
佐多忠隆
82
○佐多
忠隆
君 昨日、外務大臣にお尋ねした結果、新安保
条約
は大体において
意見
がほとんど一致して最終の段階に到達している。伝えられるところによると、総理もともに来春早々渡米をして調印が行なわれるということが、今日アメリカ本国との間に話し合いが済んでいるというふうなことが伝えられておりますが、これは最終的にも大体確定をしたし、従って、来春のいつごろ認印と、めどをつけておられるというふうな予測がはっきり立っているのかどうか。それから岸総理が行かれるということも、もうほとんど確定的な事項として打ち合わせ済みになっているか、その点はどうですか。
藤山愛一郎
83
○国務大臣(
藤山愛一郎
君) 調印の時期につきましては、まだ、昨日申し上げましたように、最終段階でございまするが、
最後
的には決定をいたしておりません。しかしながら、総理も重ねて言われておりますように、来春国会開会劈頭においてこれをできるだけ出すように、そうして批准をお願いするということに努力するように、総理も言われておりますので、その方針に従いまして、できるだけそれまでの間に調印をいたしたい、こう考えておりますので、一月の中旬ごろまでには、調印をいたすように努力して参りたい、こう考えております。
佐多忠隆
84
○佐多
忠隆
君 首相が行かれるということはどうですか。
藤山愛一郎
85
○国務大臣(
藤山愛一郎
君) 総理が行かれることについては、まだ何ら決定を見ておりません。
佐多忠隆
86
○佐多
忠隆
君 首相自身はどういうお考えですか。
岸信介
87
○国務大臣(岸信介君) 私は、この
条約
は
国民
的な非常な重大な関心のある問題でありますし、さらにその機会に、できれば大統領と会談して、
国際情勢等
についても、
意見
の交換をすることができるならば適当なことじゃないか、あわせて考慮をいたしておりますが、ちょうど
通常
国会の開かれておるときでございますから、いろいろな国内の政治
情勢
もございますので、
最後
の決定はいたしておりません。
佐多忠隆
88
○佐多
忠隆
君 ただ、しかし、それじゃ、
最後
的には決定をしておられないが、首相の意向、御希望としては、ぜひやっぱり行って、この際アイゼンハワー大統領その他といろいろ会談をしておきたいという御意向であるということは、そういうふうに了解してよろしゅうございますか。
岸信介
89
○国務大臣(岸信介君) そういうことを私も希望していることは、これはそういうふうにお考えいただいていいと思います。まだ、いろいろな関係におきまして、
最後
的決定はいたしておりません。
佐多忠隆
90
○佐多
忠隆
君 以前、そういう点が、首相がそういう意向を持っておられるのみならず、むしろアメリカ側において、特にアイクがそれを非常に希望をしているということが一時国内で伝えられ、さらにそれが
向こう
に電報で行ったときに、
向こう
は必ずしもそう思っていないのだが、
日本
の岸総理がそういう希望であれば、必ずしも拒むものでないというような意向であるというようなことが伝えられたりしたのですが、その辺の事情はどういうふうに了解していいのですか。
藤山愛一郎
91
○国務大臣(
藤山愛一郎
君) ただいま総理が述べられました
通り
、総理自身まだ行くとも行かないとも御決定になっておりません。従って、当方から行くということを申したこともございませんし、アメリカ側が、ぜひ来なければ、あるいは百吉本側の意向を来たらば受け取るという、何と申しますか、感じを出すということも、まだその意味においては正確に表現されておるものではございません。そういう意味において、いろいろの新聞紙上にうわさが出ておりますけれども、最終的には、やはり総理の言われましたようないろいろの国内事情その他を勘案した上で決定される、そうして初めて正式に
向こう
に通知してやるべき問題だと、こう考えております。
佐多忠隆
92
○佐多
忠隆
君 これまで総理あるいは外務大臣のいろいろお話しになった点から考えますと、新安保
条約
は、共産圏の脅威、もっと具体的にいえば、中国、ソ連の軍事的脅威に対して
日本
がアメリカと共同して軍事的に対決をするという姿勢を維持、強化する、これがねらいである、こういうふうにとれるのですが、そういうふうに考えておいていいのですか。
藤山愛一郎
93
○国務大臣(
藤山愛一郎
君) 今回の安保
条約
の改定は、御承知のように、出発点におきまして、われわれは、現行安保
条約
が七年たちまして、いろいろな今日の時勢に適合しておらぬ。従って岸・アイク共同声明による新しい百米新時代が来たと、それに対応するために対等で話し合いをして今後日米の問題を
解決
するという、この大きな方針から見ますると、安保
条約
の改定というものは必然的にやらなければならぬということがわれわれの考え方でございます。従って、そういう線に沿ってわれわれとしては改定を試みてきておるのでありまして、特にいずれの国を対象にして、そうしてこの改定を行なうというのではございません。
佐多忠隆
94
○佐多
忠隆
君 いや、その点は、なるほど現行の安保
条約
を改定するということが問題だというふうに言われていますけれども、それは改定であって、その基本的な精神、あるいは底に流れるもの、それは依然として変わらない。むしろ、それをさらにどうその体制を維持し発展させるか、強化するかという意味においての改定ではあるかもしれないけれども、依然として対決するものは共産圏の脅威だというふうに考えていいんじゃないか。今まであなた方がいろいろお示しになったところによると、まさにそういうふうにとるべきだと思うのです。その点はどうなんですか。
藤山愛一郎
95
○国務大臣(
藤山愛一郎
君) むろん、今日の
国際情勢
において共産圏と自由主義圏とが相対立しておりますし、しかも、それがいずれの陣営においても相当膨大な軍備を持って対立しておるというような事情も、むろん
日本
の平和と安全を庶幾する上においては考えなければならぬことは当然でございますが、そればかりでなしに、やはり
国際情勢
全般を見まして、局地的な
紛争
というものもまだ必ずしも絶えておるわけではございません。現に、最近でもインドと中共との間に局地的な
紛争
が起こっているようなわけです。やはり
日本
の安全というものを対象にして考えますれば、自衛の方法だけは十分講じて参らなければならぬと、われわれは当然のことだと思うのでありまして、特にいずれの国を相手にしてという立場をとっておるわけじゃございません。
佐多忠隆
96
○佐多
忠隆
君 対決するかまえが、戦略的にいって全面戦争になるのか、あるいは局地限定戦争に対決する戦略態勢でいくのか、それらの問題は後ほど御
意見
を聞きたい思うのですが、そのいずれの態勢であるにしろ、とにかく今もちょっとお話しになったように、日共産圏の脅威があると。そうしてそれに対しては、自由主義陣営として、団結の力によってしかも力を背景に、従って武力を背景にして、対決の姿を確立し、あるいは強化する以外にないというふうにお考えだと思うのですが、そうでしょうか。
藤山愛一郎
97
○国務大臣(
藤山愛一郎
君) むろん、これらの対決を武力だけで
解決
するということではないので、ありまして、当然われわれは国連機構を通じて、できるだけ話し合いでそういう問題を
解決
するというのが
日本
外交
の方針でありますることは当然のことでございます。ただ、お話のありましたように、今日の現状からいいますれば、中ソ友好同盟
条約
もございますし、われわれは特定の国を、対象にしてはおらぬにいたしましても、そういう
現実
の事態も考えて参らなけれならぬといたしますれば、そういうことも考慮にあることはむろんでございます。しかし、力によってのみ……。われわれ
日本
の
外交
は、こういう問題を
解決
するのだという上にも、国連を中心にしてできるだけ平和な話し合いにおいて
解決
をはかっていこうというのが、これが
日本
外交
の本質でございます。
羽生三七
98
○羽生三七君
一つ
関連して。今の佐多さんの質問に関連してですが、先ほど言われた日米新時代というのを目途として、いろいろ前から総理大臣が考えておられた問題、これがたまたま今度安保改定という形で、表現されているわけでありますが、そのことのよしあしは別として、そういう体制を新しく作るということが、単に軍事面を強化すること、それから従来
政府
が言われてきた、不合理な目的があるのか。このことだけに主要な目的があるのか。こういう体制を通じて、将来何か新しい国際的な動きに次のステップを踏み出す、そういう背景としてこういうものを必要であるとお考えになっているのか。何にもそういう要因はなしに、ただ軍事面を強化参るための
一つ
の手だてとして考えておられるのか。何か新しい動きをするためにもこういう建前を通じて、次の緊張緩和なりあるいは新しい国際的な取りきめなりに踏み出そうというふうなかまえであるのか。そういうことは何もない、とりあえず軍事的な面の強化ということだけか。その辺、総理大臣、どうですか。
岸信介
99
○国務大臣(岸信介君) もちろん、今度の安保
条約
の改定の問題は、先ほど来外務大臣がお答え申し上げましたような趣旨で、この改定のことに話し合いをいたして参っておるのでございます。しかし、同時に、やはり
国際情勢
のいろいろな変化や、また、われわれが国際的に
解決
しなければならない問題もいろいろございます。これらについて
日本
としましては、今あるところの安保
条約
体制というもののいろいろな不備や欠陥あるいは不合理なところを改めた、この
情勢
に基づいて、いろいろ処理すべきものは処理していかなければならぬと私どもは考えております。 私は、
国際情勢
の変化というものも、やはりこの東西両陣営のいわゆる対立というものの根底である思想上の問題は、ものの考え方の基礎というものは、これはお互いに譲れない問題であって、それで共存していくという立場を一応話し合いによって見出すというのが、これからの平和を作り上げていくところの道であって、共産主義の国々に、共産主義を捨てて自由主義になれとか、あるいは自由主義の国々に、自由主義の考え方を捨てて共産国になれというような考え方でもってお互いに話し合いをするということは、これは成り立たないことだと思うのです。そういう意味において、やはり
日本
の立場が自由主義の立場を堅持しておる国であり、そういう立場においてすべての問題を話し合いによって共存の道を見出すように
解決
していく、こういうことでなければならぬと思います。そういう意味において、この安保
条約
の改定というものが、従来いろいろな不合理があり、われわれの立場としてはなはだ不満の点が少なくなかった点を改めることによって、私は、その新しい体制を基礎にして、いろいろの問題を話し合いによって
解決
するように今後努めていかなければならぬ、かように考えております。
羽生三七
100
○羽生三七君 前段は了解しましたが、了解といって——立場の違いはあっても、言われる意味はよくわかりますが、それじゃ、それを基礎にして新しく何か局面打開等についても将来考えられることを企図されておるのか。何もそんなことは当面ないが、とりあえず日米間の体制の強化だけを考えておられるのか。その辺をもうちょっとはっきりお答え願いたい。
岸信介
101
○国務大臣(岸信介君) 今具体的に、これを基礎として、新しい体制ができればそれを基礎として、どこの問題はどういうふうに
解決
するんだということを申し上げるまだ段階で私はないと思います。しかし、われわれが考えておることは、言うまでもなく、そういう体制によって、
日本
の立場であり
日本
の主張というものを裏づけて、そうして東西のこの対立の間における共存の道を平和的な方法で見出していくということが、今後の
日本
外交
の進むべき道である、かように考えます。
佐多忠隆
102
○佐多
忠隆
君 そこで、今お二人のお話によりますと、新安保
条約
では、アメリカ軍の
日本
における駐留の問題、あるいは、従って、それに関連して基地を
供与
するという問題、それらは現行の安保
条約
とほとんど変わりなく、文字
通り
にそれらは継続するというふうなものであると伝えられておりますが、大体そういうふうに考えていいですか。
藤山愛一郎
103
○国務大臣(
藤山愛一郎
君) 御承知の
通り
、今までの安保
条約
で、駐留する権利を有すると、アメリカが駐留する権利を有するということになっています。それに対して基地を提供し、あるいは防衛分担金を払っているわけであります。今度は、
日本
がアメリカに対して荒地を
供与
するということ、そうしてアメリカはその
日本
の防衛の
義務
を生ずるという形になると考えております。
佐多忠隆
104
○佐多
忠隆
君 まあ、二、三の変わった点はありますが、駐留する、従って軍事基地を貸与する、この面においてはほとんど変わらないというふうに考えていいと思うのですが、この点は、米韓相互防衛
条約
、あるいは米華相互防衛
条約
、あるいは米比相互防衛
条約
においては、どういうふうになっておりまするか。これは
政府委員
でけっこうです。
高橋通敏
105
○
政府委員
(高橋通敏君) 米韓相互防衛
条約
でございますが、第四条に「大韓民国は、自国の領域内及びその附近にある合衆国の陸軍、空軍及び海軍の軍隊を合意により定めるところに従って配置する権利を許与し、アメリカ合衆国はこれを受諾する。」このようなことになっております。それから、米比
協定
は、別に、御承知の
通り
、軍事基地に関するアメリカ合衆国と
フィリピン
共和国との
協定
がございまして、この
協定
におきまして詳細な
規定
が盛られておる次第でございます。それから、米華相互防衛
条約
でございますが、第七条に米韓とほぼ同様な
規定
が置かれておる次第でございます。
佐多忠隆
106
○佐多
忠隆
君 ところが、今度新安保
条約
においては、伝えられるところによると、武力の維持発展に関する条項第三条にあると伝えられておりますが、それは大体どういうことを考えておられるのか。
藤山愛一郎
107
○国務大臣(
藤山愛一郎
君) 御承知の
通り
、
日本
とアメリカとがお互いに防衛に協力をしていくというような場合には、やはりそれぞれ、おのおのの国が自分の国を守るという精神的な意欲、また守るに対しては相当な
設備
をしなければなりませんけれども、それはおのおのの経済力その他自分の持っております力以内でなければならぬ、その範囲においてできるだけの努力をするということを、相互に表明し合うことになろうと存じております。
佐多忠隆
108
○佐多
忠隆
君 そうすると、その武力の維持発展ということを、自助あるいは相互援助によってやるということを相互に確認をし合うわけですから、それは、ここで初めて
日本
が武力の維持発展についてアメリカに対して確約をし、従って、そういう意味ではアメリカとの関係において国際的な
義務
を新たに負ったものと、こういうふうに考えてよろしいですか。
藤山愛一郎
109
○国務大臣(
藤山愛一郎
君) 言い落としましたけれども、ただいま申し上げたことが憲法上の範囲内であることむろんでございます。むろん、これは精神的にお互いの意思を表明したのでありまして、何か
義務
づけられて
日本
の防衛
計画
がいくというような形のものではございません。
佐多忠隆
110
○佐多
忠隆
君 そうじゃなくて、
条約
案文として、明瞭に「単独で又は協力して、自助及び相互援助により、武力攻撃に抵抗するための能力を維持しかつ発展させるものとする。」と、こういうような約束を両方し合った以上は、これは国際的な
義務
を負ったことになるというべきではないですか。後ほど申し上げるように、あなた方は、アメリカに対して
日本
を防衛する
義務
を負わせたのだということを、今度の新
条約
の非常なプラス面として強調をされる。その精神なりその考え方からいえば、当然に、第三条においては、
日本
がその面においてやはり同じように
義務
を負っている。武力の維持発展に対して
義務
をここで初めて負ったのだということは確認をしなければ、
条約
の意味が全くないことになる。
藤山愛一郎
111
○国務大臣(
藤山愛一郎
君) 特に今回、今申し上げたような
規定
を作りますことによって新たな
義務
を負ったわけではないのでありまして、その限りにおいては、お互いにそういう意思の表明をするわけであります。むろん、現在において、MSA等によりまして承知しております以上の
義務
というものを、何ら新たに負ったとは考えておりません。
佐多忠隆
112
○佐多
忠隆
君 それじゃ、今のお話は、この新
条約
によって新たに
義務
を負ったのではないんだけれども、すでに、少なくともMSA
協定
からはそういう
義務
が出てきているんだという意味で、新たではないという弁解はされるけれども、
義務
そのものはこの
条約
上、はっきりしているんだというふうな意味なのかどうか、そこのことをあらためてもう一回はっきりしていただきたい。
藤山愛一郎
113
○国務大臣(
藤山愛一郎
君) 先ほどから申し上げましておりますように、現在の安保体制を合理的に直していくという意味で、今回着手しておりますので、従って今回、三条になるか、四条になるかわかりませんが、そういうような
規定
を置きましても、それは新たな
義務
を負ったことにはならぬのであります。われわれとしては、そういう観点に立って
仕事
をいたしております。
佐多忠隆
114
○佐多
忠隆
君 いや、それは
義務
を負ったことにならぬというわけですか。新たに
義務
を負ったわけではなくてすでに、これは前からお互いに
条約
として
義務
を確認し合ってるんだという意味で、そうおっしゃるのか、そこのところ、はっきりしない。そこのところをはっきりして下さい。
藤山愛一郎
115
○国務大臣(
藤山愛一郎
君) 今まで、御承知の
通り
、MSA
協定
その他でもって負っているものもございます。しかし、何か新たに、ただいまお話のように、
義務
が加わったというものは何にもつけ加わっておりません。
佐多忠隆
116
○佐多
忠隆
君 どうもそこのところがはっきりしませんね。
政府委員
の方はどうですか。
高橋通敏
117
○
政府委員
(高橋通敏君) 私から補足さしていただきます。この条項は、NATO
条約
の第三条にもほぼ同様な条項がございます。そこで、NATO
条約
をアメリカの国会で審議しました際のアメリカの上院の
外務委員会
、これを通過させました上院の
外務委員会
の一九四九年六月六日の報告がございますが、この報告によりますと、当時、これによっていかなる
義務
を負ったのであるかということが問題になったわけでございますが、その報告によりますと、これは、これによって、いついかなる方法で、どういう範囲のことをするかということは、各当事国がみずから誠意をもって判断するところである、というふうな
解釈
をいたしておる次第でございます。
佐多忠隆
118
○佐多
忠隆
君 そのいかなる
義務
を負ったかという意味で、その
義務
の内容、維持発展の態様あるいは内容、規模、そういうものについては、もちろん各国が主体的に、自主的的にやることは、これは当然だろうと思います。今の御説明はそのことを言っているにすぎないのであって、一般として、そういうものが
条約
で
義務
づけられているという、
義務
一般を負ったということにおいては、何ら反対をしてない説明だと思うんですが、その点はどういうふうにお考えですか。
藤山愛一郎
119
○国務大臣(
藤山愛一郎
君) お互いの決意の意思を表明し合っていくんでありまして、新たに何か
義務
を負ったというものではないと承知しております
佐多忠隆
120
○佐多
忠隆
君 その点は、たとえば米韓、米華、あるいは米比、あるいは東南アジア集団
条約
、それあたりではどういうふうな文言になっておりますか。
高橋通敏
121
○
政府委員
(高橋通敏君) お答え申し上げます。この点は、いろいろただいま御指摘の
条約
のほとんどすべての
条約
に、大体同様な
規定
が挿入されております。その中で、たとえばNATO、米比、米韓、アンザス、そういうのは武力攻撃に対抗する個別的または集団的能力を維持発展させるというふうな文言でございます。それから、このほかに、共産主義の破壊活動に対抗する能力もあわせて維持発展させるというふうにつけ加えられた条文がございますが、これは米韓、SEATOにそういう
規定
がございます。
佐多忠隆
122
○佐多
忠隆
君 そういう点においては新たに
義務
を負ったかどうかということについては、必ずしも大臣の御答弁ははっきりしないし、
政府委員
の答弁もはっきりしないんですが、いずれにしても、その第三条といいますか、武力の維持発展ということは、新安保
条約
の新規な条項だ、新しい条項として、今まで現行の安保
条約
に見られなかったことを、ここで新たに相互に確認し合ったものであるということは間違いありませんね。
藤山愛一郎
123
○国務大臣(
藤山愛一郎
君) 御承知のように、初めから申し上げておる
通り
、今回の
条約
を、現行安保
条約
の改定をしていく場合にとりました態度は、お互いに対等な立場に立ってものを言おうということでございます。従って、この条文ばかりでございません。経済関係の条文についても、お互いに経済を密接にいたしていくというような、お互いの意思の表明はいたしております。対等の立場においてお互いに意思を明白にしておきますことが必要だと考えられるわけであります。これは対等の立場でものを言うという形において、そういう形がとられるのは当然だと思います。
佐多忠隆
124
○佐多
忠隆
君 私が聞いておるのは、対等な立場か不平等な立場でそういうことを言っておるのかというようなことではなくて、これは今度の新安保
条約
の新規条項として、あらためて事新しくここに
条約
として挿入をされた条項だというふうに了解をしていいですね、ということです。
藤山愛一郎
125
○国務大臣(
藤山愛一郎
君) むろん、今回の
条約
において、そういう他の経済条項その他とともに、新しくそういう決意を表明することにいたしたわけでございます。
佐多忠隆
126
○佐多
忠隆
君 それから、それでは第五条と伝えられるものに、武力攻撃に対する共同行動を日米双方でやるということが、第五条の内郭になるというふうにいわれておりますが、これはそういう、ふうに考えていいのかどうか。それから、ここでは、武力攻撃に対する共同行動に対しては、お互いにどういう話し合い、どういう決意をお互いに披瀝し合おうとしておられるか、その点を明瞭にしていただきたい。
藤山愛一郎
127
○国務大臣(
藤山愛一郎
君) 条文の点については、訂正する必要もあろうかと思いますので、五条とかなんとかいうことは、……、まあ、かりに五条といたしまして、
日本
が武力の攻撃を受けました場合には、
日本
は当然、
日本
の自衛権を発動することになろうと思います。同時に、その場合において、アメリカ軍がこれに援助を与える、そうして、
日本
の外部からの攻撃を排除することに努力をしていくというお互いの決意を表明いたすことは当然でございます。
佐多忠隆
128
○佐多
忠隆
君 そうしますと、この点は、前の現行の安保
条約
では、申し上げるまでもなく、アメリカに守ってもらうという体制であったのが、今度の場合には、ともに守り合うという精神で、そういう約束を両方からされる、こういうふうに
解釈
していいですか。
藤山愛一郎
129
○国務大臣(
藤山愛一郎
君) 現行安保
条約
ができましたときには、
日本
に自衛隊もございません。従ってすべてをあげてアメリカに守ってもらうということを
日本
から願った、と思います。しかし、今回は自衛隊もございまして、最小
限度
、少なくも、
日本
の自衛については、
日本
自身が努力をいたすことも、独立国家として当然なことでありまして、その限りにおいて、そういう意思を表明いたしますことは当然のことだと思っております。
佐多忠隆
130
○佐多
忠隆
君 その条項は、私たちが聞いているところによると、「両締約国は
日本
の施政下にある領域において、いずれか一方の締約国に対する武力攻撃が自国の平和及び安全を危くするものと認め、自国の憲法上の
規定
と
手続
に従って、共通の危険に対処するため行動することを宣言する。」と、こういうふうな文句におそらくなるだろうというふうに伝えられておりますが、大体そういうものと了承していいですか。
藤山愛一郎
131
○国務大臣(
藤山愛一郎
君) 字句等の点につきましては、若干違っておる点がありますけれども、大筋の趣旨というものは、そういうような考え方で条文の作成がされると思います。
佐多忠隆
132
○佐多
忠隆
君 そうすると、これも現行安保
条約
にはなくて、新たに今度の新安保
条約
につけ加えられたもの、新たにできた条項、しかも、さっき言ったように、精神は、これまでの守ってもらうということから、ともに守り合うという体制に変わったんだというふうに了解してよろしゅうございますか。
藤山愛一郎
133
○国務大臣(
藤山愛一郎
君) もちろん、
日本
が、
日本
の国自身を
日本
自身の力で守るということは当然でございまして、先ほども申し上げましたように、自衛隊すらなかった時代と、今日自衛隊が、とにかく十分ではないにしてもあります場合には、
日本
自身がこれを守るということをまず声明いたすことも、当然のことでありまして、従って、現行安保
条約
におきますそういう点の対等性と申しますか、あるいは
日本
の独立性というものを、やはりこの際うたって参らなければならぬのでありまして、それが条文にはそういう形になって出てくることだと思います。
佐多忠隆
134
○佐多
忠隆
君 そこで、そういうふうに伺うと、これまでしばしば総理あるいは外務大臣が御主張になりましたように、ここで
日本
は、アメリカに対して、
日本
を守らすんだという
義務
を負わしたことになる。従来は、それが、ただ守ってもらうということで、その点が明瞭でなかったのだ、この新しい条項によって
義務
をはっきりとここで確定をしたんだ、それが非常な今度の
条約
の進歩なんだというふうなことを、これまでずっと御説明になっておると思いまするが、それはそういうふうに考えていいですか。
藤山愛一郎
135
○国務大臣(
藤山愛一郎
君) 現行安保
条約
におきましては、御承知の
通り
、アメリカは
日本
に基地を持つ権利を持っておりますけれども、
日本
を守る
義務
というものは声明いたしておりません。今度の場合におきましては、アメリカは、そういう意味において、字句等どういうふうに最終的になりますか、宣言するというふうな形において、
日本
を守る
義務
を明記いたすことに、明瞭にすることに相なろうと思います。
佐多忠隆
136
○佐多
忠隆
君 それならば、文句はどうであるにしろ、第五条が、日米
両国
がともに守り合うという
義務
を国際的に負い合ったものとするならば、同じように、さっき申し上げた、武力、防衛力を維持発展するというお互いの申し合わせも、これは同様に、
義務
をお互いに負い合ったものというふうに考えなければならないのでありますが、ただ自分の都合のいいときだけこれは
義務
を負って、
向こう
に
義務
を負わしたんだということを言ってこれは、しかし、同時に第、五条は
日本
も
義務
を負ったことに当然なると思いますが、のみならず、この第五条でいわれるこの共同の宣言が
義務
を負い合うと同じように、精神としては、内容としては、第三条にいわれる武力の維持発展も、同じようにお互いに
義務
を負い合ったもの、こういうふうに
解釈
し、考えなければ、今のこの
義務
を負わしたんだという主張が成り立たなくなるんじゃないかと思いますが、大臣、どうですか。
藤山愛一郎
137
○国務大臣(
藤山愛一郎
君) 先ほど申し上げましたように、このお互いにそれぞれの自分の外部からの武力抵抗に対してそれを排除する能力を、お互いに
一つ
できるだけ自分自身の自主的な考え方でやっていくのだということは、全く自主的な考え方でやっていくことなんでありまして、それはそういう防衛に対する意思を表明する——現行の安保
条約
では、自衛隊すらないのでありますから、防衛に対する意思を表明するわけにも参りません。われわれとして今日ではやはりそういうような意思は持っている国だということをお互いに表明し合うことは、新たな
義務
を負ったわけでもないわけであります。従って、今御指摘のような——一応第五条と申しますその条文も、全然、今のような第三条、もしくは第四条になりますか、それらとの関係は何らないのでありまして、申し上げたように、今日では、われわれ自身が攻撃されたときには、われわれ自身がやはり自衛力をまず発揮するのだ、同時に、
日本
を守るためにおりますアメリカ軍隊でありますから、
日本
が攻撃されたときに援助をするのだということをはっきり宣言いたしますことは、アメリカ側においては、それの
義務
を引き受けたことに相なると
解釈
いたしております。
佐多忠隆
138
○佐多
忠隆
君 どうもその点が、第五条の場合には、そういう宣言をしたことが、お互いに守り合うという
義務
を国際的に負ったことになるし、第三条においては、そうでなくて、自分たちの気持なり、意向をただ表明したのだというようなことで、何かその問題をごまかすというようなわけには参らないと思うのです。
条約
というのは、そうでなくてお互いにそういう問題を表明し合ったら、少なくともその国の間には、それを
義務
として負ったということにしなければ、
条約
として
規定
をしたことにならないのじゃないか。 しかし、これはどうもはっきりしませんから、また他の機会にさらにこの問題は論議をいたしますが、そこで、それならば、いずれにしても、今申し上げたように、この基地を貸与し、アメリカの軍隊を駐留せしめるこれまでの現行安保
条約
から、さらに進んで武力の維持発展をお互いに僕に言わせれば
義務
づけ合う、大臣に言わせれば声明し合う、さらに武力攻撃に対しては共同行動をとるということを宣言し合う、
義務
を負い合う、こういうことが新たに加えられて参りますと、これはまごうかたなく本格的な相互防衛
条約
、そういうものである。 わざわざ私が米韓、米比、あるいは米台等の条文を
一つ
一つ
あげていただいたゆえんも、それらと本質的には何ら変わらないものだ、従って、
条約
の体制としては相互防衛
条約
体制にこれがはっきり変わったのだ、こういうふうに考えてしかるべきだと思いますが、大臣はどういうふうにお考えですか。
藤山愛一郎
139
○国務大臣(
藤山愛一郎
君) 私どもは佐多
委員
のお説と違うのでありまして、ただいま申し上げました点が骨子でありますけれども、むろん今回の
条約
に当たりましては、
条約
地域というものは
日本国
に限られております。相互防衛の本質的な
条約
から申しますれば、
日本
以外の土地に何らか起こりました問題に対しましても、
日本
が出ていくということでなければならぬのであります。今回の
条約
は、
日本
以外の土地に起こりました場合に、
日本
がそれに出ていくというような、相互に防衛をし合う、というような形のものではございません。従って今御指摘のような、相互防衛
条約
ということは、いわゆる世界に一般的に行なわれております相互防衛
条約
とは異なるのでありまして、やはりこの
条約
は
日本
に対する軍事的援助の
条約
だと考えるのが至当だと思います。
佐多忠隆
140
○佐多
忠隆
君 その点はもっと後ほどあれしますが、そんなら総理にお聞きしますが、総理がアイクと共同声明を出されたときに、日米新時代を画するのだと言われたときの新時代の内容としては
条約
的に示せばこういうことになる。こういう安保の改定になるのだと、先ほどから言うように武力の維持発展をお互いに約束し合い、さらには武力攻撃に対する共同行動をお互いに
義務
づけ合うということに変わってくるのだ。これが日米新時代のその
条約
体制なのだというふうにはっきりお考えになっていたのかどうか。
岸信介
141
○国務大臣(岸信介君) 私がアイゼンハワー大統領と会見をし、共同声明を出しまして、いわゆる日米間の、新しい新時代がこれから開けるのだと言っております。考え方は、言うまでもなくお互いに独立国として対等な立場において物事をやっていこう、そして真の理解と信頼の上に立ってすべての日米間の問題を
解決
し合おう。その間において、一方が優越な地位を持っており、一方が従属的な関係だというような考え方は一切払拭してそうして対等な立場において、お互いが信頼と理解の上に協力していこうという考え方をはっきり両方が認識して、ああいう声明を出したわけであります。これをいろんな
条約
の問題であるとか、あるいは
協定
やその他の取りきめであるとか、あるいは
現実
に懸案を
解決
する上におきまして、すべて共通の考え方でございましまて、日米安保
条約
の今回の改定というものもやはりこの考え方にわれわれは基因していると考えております。従って、両者の間の関係を平等な立場において、対等な立場において物事を考えていく、しかしながらこの
条約
の前提として
二つ
の問題が、これはもう動かすべからざる前提になっておるわけでありますが、
一つ
は国連憲章を守るということ、
一つ
は特殊の憲法を持っておる
日本
の憲法の条章の範囲に限るということで、この話をいたしておるわけであります。従って、いわゆるそういうことのなんの方は、国連憲章はもちろん各国の、国連に入っている国はすべて守るでしょうけれども、
日本
のような特殊の憲法を持っておらない国との関係とはその点において、われわれが平等であり、対等であると申しましても、おのずから制約を受けることは、これは当然である、こういうように思っております。そうして、先ほど来お話のあります、いわゆるバンデンバーグ決議の問題、及び第五条にいわれる宣言の内容というものにつきましては、私はいわゆるバンデンバーグ決議に関する三条か四条かの
規定
というもののなには、まあ
義務
という、新しい
義務
を負ったのかどうかという先ほど来の御議論でございますが、
義務
という言葉の問題になろうかと思うのです。しかし、普通に言う
義務
というのは、もう少し具体的な何かの内容を持っておるものであって、一方的に自分たちが自分のそれぞれの立場において、それぞれ独自に何々をするということを声明し合うようなものについて、この
規定
によって
義務
を負うたと普通には私は申さないのじゃないか、かように考えておりまして、先ほど来の外務大臣の答弁も、そういう意味であると思っております。また、五条のいわゆる宣言によってアメリカ及び
日本
海国が一種の
義務
を負うことは、これは当然でございますが、その場合において先ほど申しました
日本
憲法の範囲内という
一つ
の制約のもとにおいて
日本
の施政下だけにこの問題を限っておるというところに、他のいわゆる相互防衛
条約
というようなものと、非常な特色があると、本質的な違いがある、かように私どもは考えております。
佐多忠隆
142
○佐多
忠隆
君 その非常な特色があるという点は
日本
の憲法に合わそうと、少なくとも表面上は合わすというような体裁をつくろうという意味においていろいろ努力をされたでしょうし、従って、そういう意味での特色はなるほどあるだろう。しかし、それらのニュアンスはあるにしても、底に流れるもの、本質はやはり体制としては相互防衛
条約
体制だということはこれは否定し得ない
現実
じゃないかと、先ほどわざわざ私がいろいろなそれに該当する
条約
の案文を具体におあげ願って御説明を願ったところでそれは非常に明瞭だと思うのです。そこで、いろいろなそういうニュアンスがあるにかかわらず体制としては、体系としては相互防衛
条約
であると思うのですが、その場合にその国連憲章の精神に従ってやっているということがしばしばいわれていますが、なるほど第一条その他には武力によって
解決
をするんではなくて、あるいは力によって
解決
するのではなくって、話し合いによって問題を
解決
することが
原則
である、あるいはただ許されない場合に、特殊な場合に国遠憲章の第五十一条に基づくような場合にのみ集団的な安全保障体制が考えられるのだ、こういうことをしばしば、言って弁解をしておられると思うのですが、この国連憲章第五十一条というものを一体総理大臣あるいは外務大臣は国連憲章全体を貫く精神との関連においてどういう性格のもんだというふうにお考えになっておりますか、これが、ここから援用されて日米の新安保
条約
その他が出てくるのでしょうから、その問題にも関連をするので、その点を
一つ
明瞭に御説明を願いたい。
藤山愛一郎
143
○国務大臣(
藤山愛一郎
君) 御承知のように、国連は話し合いによってすべての
紛争
を
解決
していくというのが国連成立の本旨だと思います。
紛争
を話し合いによって
解決
する。しかしながら、残念にも今日の現状においては必ずしも
紛争
が話し合いだけで
解決
せず、あるいは
現実
には
紛争
が起こると同時に武力が行使されるという場合もあるわけです。国連としては、従いまして、それらに対して十分な指令と申しますか、
一つ
の方針を示さなければならぬと思うのです。特に侵略的な、この自衛以上の侵略的な軍隊の行動というものそのものが世界の平和を害することむろんでありますから、自衛のためにするこの行動というものに限られるという精神をうたって参らなければなりませんし、またそれに対応した処置を国連としてもとっていかなければならぬと思うのであります。でありますから、侵略に類似するような行動はこれを厳に国連加盟国としては慎んで参らなければなりませんし、むしろ慎むというよりは禁じていかなければならぬ精神を持っておると思います。その趣旨に従いまして国連憲章五十一条というものはできておるとわれわれは考えております。
佐多忠隆
144
○佐多
忠隆
君 その国連憲章は今外務大臣のお話のように、問題を平和的に
解決
する、しかもそれを集団安全保障という関係において
解決
をしていく、武力侵略その他があったらそういう形で
解決
をしていくことが根本の精神だと思う。しかもその場合に、集団安全保障という考え方は米ソのような和対立する国々があっても、それらが国連という
一つ
の組織の中に入って、そのいずれを排除することもなく、それらが中に入って、そしてそれらの中のある特定国が侵略をした場合に、それ以外の国があげてその侵略に
措置
をする、集団的に
措置
をする、こういう考え方が平和的な
方式
、しかも侵略が起こった場合の処理
方式
として考えられておる一貫した精神だと思う。ところが五十一条の場合には、そういう精神、全体を貫く精神はそうであるにかかわらず、五十一条だけはそこのところ例外的に、そういう場合でない場合を、国連憲章の基本的な精神とは違ったものとして特別な
措置
としてそこへ出している。そういうふうに考えていいのじゃないか。従ってもしこの特異例で、さらにそれを、この特別例をあからさまに出していくということになれば、これは軍事同盟、相敵対する国あるいはグループを外に出してしまつて、敵対的な関係において問題を処理しようとする方向でありますから、それを最も露骨に現わしていけば相互防衛
条約
体制になるし、今度の日米安保
条約
体制もまさにその特殊な場合を非常にはっきりと打ち出して、その特異例でむしろ
原則
を否定するような形の組織にまで発展せしめたものと、こういう意味で、これは軍事同盟外の何ものでもないということになると思うのですが、この点を総理あるいは外務大臣はどういうふうにお考えになりますか。
藤山愛一郎
145
○国務大臣(
藤山愛一郎
君) 私が申し上げた
通り
の精神が国連憲章全体にわたって貫いておるのでありまして、五十一条についても特に何か例外的な問題だと考えますことは根本的には誤っておるのではないかと思います。むろん集団安全保障——個別的自衛の場合でも、あるいは今日の状況において必ずしも個別的な自衛だけで平和が保てるとは思えない状況でありますから、集団的な安全保障によって、そしてお互いに守っていくということも国連が国連の精神において認めますことは、これは当然国連精神の特別な例外でもないと思っております。そしてその上に立ちましてむろん国連精神の徹底して参りますように処理されておるわけでありますから、そういう意味におきまして、私どもは、何か五十一条が特に国連憲章の特殊な例外
規定
である、その例外
規定
を援用することによって何か特殊の別個の状態が現われていくというようなことは考えておりません。
佐多忠隆
146
○佐多
忠隆
君 そういうふうにお考え一になれば非常な誤解であって、これは私から申し上げるまでもなくよくいわれているように、この国連憲章の第五十一条はもともと国連憲章を起草するときに、国連の中に相変わらず軍事同盟的なものへの余地を残そうというような二、三の大国の意向が無理に押し込められた結果、そういう妥協の産物としてこれができた。従って、これは国連憲章の基本的な精神とは全く違った異例的な例外的なものがここに差し込まれているというふうに考えることがむしろ普通なんじゃないか。従って、これをさらに極度に使っていけば軍事同盟に発展して軍事同盟的な役割を果たし、所期の話し合いによる平和
外交
という精神が全くくずされていく、これが大体の国連憲章の
解釈
であり、あるいは国連憲章ができて、その後いろいろな集団安全保障体制ができた結果の
現実
の事態であったり、その結果それにもはやたえられなくなったから、もう一度話し合いの
方式
に返そうという機運が今もう一ぺん起こってきておる。こういうふうに考えることの方が
現実
にも合うし、憲章の
解釈
としても正しいと思うのですが、ここいらになりますと
意見
になりますからこの点は私はこれ以上は申し上げませんが、それならば、実際の具体的な問題についてもう少しそうであるかそうでないかをお尋ねをしたいと思うのですが、岸総理がこの日米新時代を作るというような共同宣言をされて、その中に安全保障に関する日米共同
委員
会を作って、今後この安保
条約
の運営の問題について、さらには要すれば安保
条約
の改定その他の問題について十分討議をしよう、というふうにあのときにおきめになったと思うのですが、そのとききめられた気持、それからそれがその後どういうふうに運営をされて参ったかということについて、総理と外務大臣から御答弁をお願いいたします。
藤山愛一郎
147
○国務大臣(
藤山愛一郎
君) 総理は日米共同声明におきまして、日米安保
委員
会を作って、そうしてこの問題を検討しようということを言われたのでありますが、それを基礎にして日米安保
委員
会ができたわけであります。日米安保
委員
会の第一の
任務
は、申すまでもなく国連憲章に沿っていくということでありまして、御承知の
通り
安保
委員
会の会合を三回でありましたか重ねた後に、当時現行の安保
条約
ができましたときには、
日本
は国連に加盟をいたしておりません。そうして現行の安保
条約
には国連憲章の趣旨に沿って行動するということが書いてございませんから、日米安保
委員
会におきまして両者が合意をいたしまして
交換公文
によって、国連の憲章に準拠をしてわれわれは運営をするのだということを取りきめた次第でございます。同時に、安保
委員
会の目的については、安保
委員
会が現在の安保
条約
の運営面について改善を加えるものがあるかどうか。そういう問題を検討してみよう。また、さらに両
国民
の願望によって
条約
そのものを検討しようということを目的といたしておりますので、その点につきまして現在の安保
条約
の運営上についていろいろな話し合いをいたしておるのでありまして、防衛関係の問題その他についても検討をいたしております。同時に、日米
両国
の願望に沿いますように現行安保
条約
の改正についても話し合いをいたしたわけでありまして、今日まで六回会合を重ねて参ってきております。
佐多忠隆
148
○佐多
忠隆
君 今日まで六回話し合いを重ねてきておるというお話でありましたが、記録によれば、これが昭和三十二年の八月十六日から出発して第一回、第二回、第三回、第六回は三十三年の八月二十七日、これまで一年間にわたって安保に関する日米
合同委員会
が開かれて、しかもそこでは現行安保
条約
の運営
実施
の問題とあわせて安保
条約
の改定の問題について内容的な問題をいろいろ論議をされたというふうに私たちは考えるのであります。それが今の大臣のお話によりますと、ときには防衛の問題も出たということでありますが、ときにはでなくて、ほとんどもっぱら防衛の問題、軍事態勢の問題、戦略の問題をどうするかということが一年間にわたってしばしば論議をせられておる。そういう戦略態勢の問題のしばしばなる論議が行なわれて、それを背景にして、さらに今度は日米安保
条約
の
条約
交渉の問題、こういうふうに移って参っておると私たちは考える。そういう意味においては、先ほどから言っているように、日米安保新
条約
は本質的には相互防衛
条約
であり、従ってこれは軍事同盟
条約
なんだということを私たちが言うゆえんもそこにあるのですが、一体、この六回の
合同委員会
において主としてどういうことが話されたのか、どういうことが論議をされたのか、それをもう少し詳しく説明を願いたい。
藤山愛一郎
149
○国務大臣(
藤山愛一郎
君) 六回の会合につきましては、一応その会合の際のプレスレリーズを出しておりますので、先般も御要求がありましたから、それをまとめて差し上げることにいたしておりますが、御承知のように当時は陸上兵力の撤退問題もございます。従って、陸上兵力の撤退に伴います諸般の運営上の処置というものも論議をされております。ただいま申し上げましたような国連憲章に準拠するという
交換公文
を作ることも問題となっております。そのほかに、むろんそういうような状況で話し合いをいたしておりますから、施設でありますとか防衛関係でありますとか用務の関係でありますとかも出ましたし、また、全体としての
国際情勢
に伴います軍事
情勢
の話も出たわけであります。しかし同時に、先ほど申し上げましたように、現行安保
条約
を
国民
の願望に従って検討をしていくという問題も取り上げてきたわけでございます。そういうことが主たる目的でありますので、従って安保
条約
改定になって参りまして、まだ今日においては昨年の八月二十三日から会合を開いておらぬという状況なのでございまして、御了解いただけると思っております。
佐多忠隆
150
○佐多
忠隆
君 この
合同委員会
では防衛問題、ほとんどもっぱら防衛問題、戦略問題が論じられたと私たちは思うのですが、その中で、まず一番しばしば論ぜられたのは極東の戦略態勢であったと思うのです。そこで、ここで論ぜられた委細について、私はそれを全部詳しく説明を願いたいとは申しませんが、大略どういう問題がどういうふうに論ぜられ、現在の極東戦略態勢、編成をどういうふうに考えようということになったのか、それらの点についての御説明を願いたい。
藤山愛一郎
151
○国務大臣(
藤山愛一郎
君) むろんこの種会合のことでございますから、詳細に申し上げるわけには参りません。しかし、
日本
から陸上兵力を撤去するに伴います
国際情勢
及び軍事
情勢
の全般の問題あるいは大気圏外のミサイルが打ち上げられたというような
情勢
に伴います
情勢
の判断など、そうした問題について話し合いがありましたことは事実でございます。
佐多忠隆
152
○佐多
忠隆
君 いや、話し合いがあったというのじゃなくて、どういうふうなことが話されたのかということなんです。特に
一つ
一つ
お聞きをしていきたいと思いますが、まず第一には、極東の戦略態勢をしばしば論議をされておるので、これについて大ざっぱに、一体どういう戦略態勢だというふうに話し合いがなされたのか、これを私は聞いておる。私が特に申し上げるのは、日米
合同委員会
の第二回会合においては、スタンプ大将、これは申し上げるまでもなく太平洋地区総司令官スタンプ大将は、極東の一般軍事
情勢
に関し、特に
日本
の防衛と関連せしめつつ概説を行ない、引き続きこれについての
意見
の交換が行なわれたこれが筆画です。それから第四回、第四回ではやはりスタンプ大将が出席をして、そこでは極東の軍事
情勢
に関して討議をした、こういうふうにいわれております。なお、その前提として、ちょうど当時行なわれていた大西洋
条約
機構
会議
に関していろいろな説明が行なわれております。それから第五回、第五回には太平洋軍司令官は出なくて、それの代理としてのスミス中将が出席をしてここでも
委員
会は
日本
の安全保障に関連する最近の
国際情勢
特に極東における最近の事態に関し
意見
を交換した、これをやっております。さらに最終回の第六回会合、これはちょうど今から思い起こすと三十三年の八月三十七日ですから、八月の二十三日に例の金門、馬祖で大砲撃が始められたときであり、その前後にフェルト太平洋地区総司令官はたまたま
東京
に来て指揮をやっていたと思うのです。そのときにやはり第六回の会合が持たれて、
委員
会は極東の一般軍事事
情勢
に関して討議をした。フェルト大将は特に
日本
の防衛と関連せしめつつ、その概説を行ない、引き続きこれについて
意見
が交換をされた。六回のうち四回にわたってまず極東の
国際情勢
、特に極東における戦略態勢の問題がつぶさに論議をされて、しかも金門、馬祖のあの作戦行動その他をやるさなかにおいてそれらの相談が行なわれております。そういう相談が行なわれて、そういう軍事態勢の相談が行なわれて、その結果として、いよいよ
あと
一年間は
条約
改定の問題と、こう進んで参っておる。従ってこれだけしばしば論議をされておるのでありますから、極東の戦略態勢についてどういうふうにお考えになるのか、どういうふうな
意見
が出たのか、われわれはそれをどう認識をしなければならないのか、そこをもう少しはっきり御説明を願いたいと思いますこれはなお単に外務大臣だけの問題ではなくて、同時にこの席には防衛庁長官が必ず出ておられるのでありますから、外務大臣とあわせて、防衛庁長官は防衛庁長官の専門の立場から、それらの軍事態勢をどういうふうに考えるかという面もあわせてお示しを願いたいと思う。
藤山愛一郎
153
○国務大臣(
藤山愛一郎
君) この日米安保
委員
会の
会議
の内容につきましては、この発表文以上に私から申し上げることはできません。その点は御了承をいただきたいと思います。
佐多忠隆
154
○佐多
忠隆
君 防衛庁長官、どうです。
赤城宗徳
155
○国務大臣(赤城
宗徳
君) 外務大臣のお答えした
通り
でありますが、極東においてどんな事態が発生しましても、これに対処し得る戦略と、これに適応する配備をとっておってその上に立って協議が行なわれた、こういうふうに私は聞いております。
佐多忠隆
156
○佐多
忠隆
君 私は、それならば、その会合の一々においてどういうことが論議されたかということをあらためて内容的にそれを追及しようとは思いません。しかし、しばしばそういう問題が論議をされておるのでありますから、外務大臣としては、そういう極東の戦略態勢をどういうふうにお考えになるか、さらにあの金門、馬祖の戦略態勢以後、どういうふうに変化をしてきつつあるか、それを
二つ
御説明願いたいと思います。
藤山愛一郎
157
○国務大臣(
藤山愛一郎
君) むろん私は、この問題に関連してそうした発言をいたしますことは、今申し上げたような趣旨から申しまして、不可能であるわけでありまして、その点は御了承をいただかなければならぬと思います。
佐多忠隆
158
○佐多
忠隆
君 私は、どの会合でどういう
意見
が出てどうというようなことを、さらに詳細に述べていただきたいとは申しません。あるいはそれは、こういう会合の性質上、言えないとおっしゃるのかもしれませんが、私はそのこと自体がおかしいと思うんです。しかも、相当過去のことではありますし、それから今後われわれが安保
条約
の改定をどう考えるかというときに、非常に重要な審議の素材になり、背景になる問題であると思うので、それらの点は十分に御説明がなければどうも困ると思うのです。事が戦略の問題であり、軍事の問題であるから、一切何も話せないんだというような態度がおかしいのではないか。今どこの国際
会議
でも、どこのあれでも、やはり非常に戦略の問題が重要な問題として論議をされておる。しかも外務大臣みずからがそれらの問題の討議なり審議に入り、自分はこう考えておるということが、外務大臣自身の口から、外務大臣自身の言動としてしばしば行なわれ、しかもそれが国会において
国民
に十分に諮られ、論議をされておのずからきまっていくというのが、アメリカにおいてもイギリスにおいても、どこでもそういう態度だと思うんです。事が軍事の問題だからといって、一般的な戦略の問題にまで口を緘して語らないという態度はあり得ないと思うんです。もっとそれじゃ具体的にお尋ねをいたしますが、極東における戦略態勢、特にアメリカ側がこれをどう見ているかということの御説明を願いたいのですが……。もっと具体的に申しまして、それならば太平洋極東地区におけるアメリカ軍司令部の組織、これがどういうふうになっているのか、あらまし概説でいいんですから、御説明願いたいと思います。これは外務大臣または防衛庁長官から御説明を願います。
赤城宗徳
159
○国務大臣(赤城
宗徳
君) 公表資料とか、あるいは新聞、雑誌等によって申し上げる以外には申し上げられませんが、極東方面におきます配備状況について申し上げます。陸上部隊は、韓国に二個師団、ハワイに一個師団、沖縄に一海兵師団、
日本
には管理補給部隊を主とした約一万人でありますが、その他台湾、
フィリピン
に若干配備されております。海軍部隊は、極東海域におきまして第七艦隊を配備いたしておりますが、根拠地は
フィリピン
であります。空母、巡洋艦、駆逐艦、潜水艦、補助艦船、航空機五百機以上であります。空軍は、
日本
、韓国、沖縄、台湾、
フィリピン
等にそれぞれ必要な空軍部隊を配置しております。こういう状況であります。
佐多忠隆
160
○佐多
忠隆
君 その在日米軍のいろいろな詳しい点は、もう少し後にお尋ねしようと思っております。その前に、私たちがよくわからないのは、太平洋と極東地域における米軍司令部の組織、これはどういうふうになっておりますか。これは日米
合同委員会
の第三回の
会議
で、スタンプ大将が詳しく説明をしたということになっておるんですが、これはどこで説明されようとどうしようと、それはどうでもいいんです。
藤山愛一郎
161
○国務大臣(
藤山愛一郎
君) 日米安保
委員
会にスタンプ大将が出席することになっております。それからもおわかりいただげるように、この在日米軍というものは、極東軍司令部の管下になっております。
赤城宗徳
162
○国務大臣(赤城
宗徳
君) ハワイに陸海空の司令部があります。
佐多忠隆
163
○佐多
忠隆
君 私のお伺いするのは、ハワイにおける太平洋軍、いわゆるスタンプ大将あるいはフェルト大将の指揮下にあるそれと、第七艦隊と称せられるもの、それからさらに戦術空軍、戦略空軍がおもなるものであります。それらの配備、しかも米軍司令部の相互の組織、そういうものがどういうふうになっておるか。私がこれを特にお聞きするのは、後ほどさらに
日本
の安全、あるいは極東の安全と喜平和のための
条約
地域の問題、あるいは軍出動の問題、あるいはさらに
条約
で問題になる配備、装備の問題、そういう配備、装備における重要な変更の問題、これに関連して参りますので、その前提として、その序論として今概説的なことをお聞きしているので、そこいらは概説的なあれでいいですから、一応はっきりしておいていただきたい。それでないと
条約
内容の審議ができません。
赤城宗徳
164
○国務大臣(赤城
宗徳
君) 先ほど申し上げましたように、太平洋地区陸海空の司令部はハワイにあるわけであります。戦略空軍はグァムにあります。朝鮮には第八軍、
フィリピン
に第十三空軍、
日本
、沖縄に第五空軍があります。
佐多忠隆
165
○佐多
忠隆
君 第八軍というのは何ですか。戦術空軍じゃなくて、陸上部隊ですか。
赤城宗徳
166
○国務大臣(赤城
宗徳
君) 陸上部隊です。
佐多忠隆
167
○佐多
忠隆
君 それらの内容をもう少しあれしたいんですが、時間がありませんので急ぎまするが……、
草葉隆圓
168
○
委員長
(
草葉隆圓
君) 総理は、十五分というのをだんだんおくらしてきたけれども、最初の約束で五時十一五分までとしておりましたので、次の御予定もあるようでありますから……。
佐多忠隆
169
○佐多
忠隆
君 それじゃもうやめますが、これからむしろ戦略問題を、そしてそれに関連して極東出動の問題等をお尋ねしようと思ったんですが、時間がありませんのでこれでやめますが、しかし、今も申し上げたように、これらの問題が一番重要な問題として、日米安全保障に関する
合同委員会
で、あなた方は一年にわたり内容的に論議をされた。しかもそれを基礎にし、それを背景にしてあの金門、馬祖の戦闘が行なわれておる。しかも、そのときには——これも
あと
から詳しくいろいろお聞きをしたいと思っていたのですが——そのときには作戦行動の基地として、補給基地としてのみならず、作戦行動の基地として
日本
の軍事基地が、各地が使われておる。そういう問題がいろいろあって、従ってそれらの事態を背景にし、そこから今の安保
条約
の改定という問題が具体的に非常に必要になってきて、
あと
外務大臣の
条約
交渉の問題に展開をしていったと、こう見なければならないと思う。しかるに、安保
条約
の
条約
文の案文のいろいろな論議のときには、ああでもない、こうでもないと言って、答えるごとく答えられないごとく、いろいろなあれをやられるが、事の背景になる具体的な戦略の問題になると口を緘して語られない。だからこそ日米安保
条約
の改定なり、新
条約
の背景には、そういう意味での秘密取りきめがあるのではないかという疑問をすら抱くようになるのだと思う。しかし、私はそういう秘密
協定
なり何なりはないことを確信をしたいから、それならば大臣がもう少しそういう問題を十分に論議されたい、また論議されてしかるべき問題だ。
意見
は違っていようとも、この戦略の問題は避けられない問題でありましょうから、十分に論議をしなければならないし、従って論議をするならば、この国会において十分に具体的に論議をされなければならない。それをやらないで、事の性質上何も申せませんといって、今みたいに口を緘して語らないというようなことになれば、かつて
日本
が日独伊三国同盟からあの大戦争に引きずり込まれたときと全く同じだ、その前夜だと言っても過言ではないような感じなり何なりを
国民
は受けると思う。どうかそれらの点も十分にお考えになって、私はあらためてこの問題について十分に御
意見
を聞きたいと思いますから、
一つ
十分に準備をして、他の機会を与えて下さることを希望いたしまして、きょうの質問はまずこれで終ります。
草葉隆圓
170
○
委員長
(
草葉隆圓
君) 本日はこの程度とし、次回は明後三日午前十時より開会し、ベトナム関係二法案について
質疑
を続行いたすことにいたします。 本日は、これにて散会いたします。 午後五時二十四分散会