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本島百合子君 私は、
民社クラブを代表いたしまして、ただいまの
議長発議によりますところの
会期延長に対し、
反対の意思を述べるものでございます。(
拍手)
先ほど、
自民党の代表が、
参議院におきまして
審議が
遅々として進まない、こういうことを言われたのでありますけれども、過日、三日の日に、
自民党は七役
会議を開かれ、しかも、
参議院の
自民党幹事長である
安井謙氏並びに
国会対策委員長である齋藤氏を呼び、そうして、
参議院の
審議状況を聞かれたはずであります。そのとき、順調に進んでおるから
会期一ぱいに
議案は終了できるということを言われておるのであります。そのことは、当日の新聞にも発表されておるわけであります。従いまして、
会期最終の十四日以内において
審議は終了できると確信を持って
自民党幹事長が言ったにもかかわらず、本日十三日間の
会期を
延長しなければならないという
理由は、一体どこにございましょうか。(
拍手)
本
臨時国会は、御承知の
通り、
伊勢湾台風による異常なるあの犠牲をいかに救済するかということと、
政府の無
責任なる、いわゆる
無為無策の結果、
炭鉱の
離職者がたくさんに出たわけであります。明らかにこれは
政府が
責任を持ち、この
離職者に対する
救援対策は急速になさなければならなかった
事件でございます。これがすでに
衆議院において議了されております。そういたしますと、残る問題は何かというと、
南ベトナム賠償ということになるでございましょう。
皆さん、今日、十三日間の
会期を
延長されるという、この
理由をどこに見出したかということを私検討してみましたところが、
衆議院から
議案が
参議院に回されまして三十日を経過いたしますならば、その
議案は
参議院の
議決があるなしにかかわらず
成立するということになっておるそうであります。しかも、
会期は、もし
延長したいと考えるときには、
国会の
先例集によりますと、
会期延長の議は、当日であるか、あるいは前日か、もしくは
前々日に
提案されるものとされておるわけであります。にもかかわらず、今日、
会期の終了四日前にこの十三日間の
延長が
提案されたというのは、一体どういうわけでございますか。(
拍手)どちらから考えてみましても、これは明らかに
南ベトナムに対する
賠償の問題を
成立させたいというのが、今日
政府・
与党が考えられたこの
延長の動機であるということを忘れてはならないはずであります。(
拍手)
皆さん、過去の歴史を考えていただきたい。特に、
岸総理は、静かに戦後の
民主国会のあり方を考えていただきたい。今まで
会期を
延長して
混乱をいたしましたのは、
警察法、破防法、
教育法、昨年の
警職法、このような
反動立法が出されたときに、
会期が間に合わないというので
延長され、しかも、その瞬間におきまして時間切れとなり、
野党の激しい攻撃にあって
国会が
混乱を来たしたことは、お忘れでないはずであります。今日、このような問題が外にないと
皆さん方はお思いになるでしょうか。
過日、
外務委員会におきまして、多数をもって
質疑の打ち切りをいたされた、あの状態はどういうことであるか。
国民がどのように批判をしておるかということは、皆様方静かに考えて見られればわかるわけであります。
国民が
疑惑を持ち、しかも、俗にニワトリ三羽といわれ、そして二百億円の
血税を払っていこう、こういうような問題が、
質疑が十分に整わない、なおかつ、
野党の議員から、御承知の
通り、日本におけるところの算定基準になった資料を提出されたいと迫られたにもかかわらず、
政府は、特に
岸総理、藤山外相は、これに対して納得のいく資料を出されていないはずであります。(
拍手)
国民は、ばかではございません。今日、失業に悩み、生活困窮に苦しんでおる人々、風水害のために生活もできない人々に対しても、
疑惑を持たれておるこの
血税を支払っていこうということに対して、何で承服できましょうか。この十三日の
会期を
延長するというならば、その当時、
衆議院において、いま少しく
審議の日時を与え、資料を十分提出し、
国民ともに納得のいくだけの
責任を持って
答弁をされなければならなかったはずであります。(
拍手)このようなことを考えて参りますときに、私どもは、
賠償に
反対ではございません。戦争により、相手国にその犠牲を負わしたとするならば、喜んで
賠償は払っていくだけの心がまえを
国民は持っておるわけであります。しかし、その算定さえわからない。思惑により、また
疑惑さえ持たれておるものに対して、これを何としてでも
成立させなければならない、そのためには十三日間を
延長していかなければ
成立しないということは、卑怯未練といわざるを得ないのであります。(
拍手)
このような事態に際しまして、いま一つ申し上げたい。
衆議院の
外務委員会が二十五日、六日の払暁にかけて行なわれ、
暁国会で、あの
議案は本院を通過させたわけであります。翌々二十九日、北ベトナムは、日本に対して、この
賠償は無効であるということを声明しておるではございませんか。無効であるばかりでなく、なお、北ベトナムは日本に
賠償を請求するところの権利を保留すると世界に声明したわけであります。
皆さん、南北の統一も行なわれていないこの際、何をあわてて、
自然成立を待ってまでも、この
案件を通さなければならないのでございましょうか。(
拍手)むしろ、
国際信義の上に立っても、南北の調整がとれ、日本の
賠償が真に南北ともに受け入れられるときに初めてこの協定に
賛成すればよろしいわけであるはずであります。にもかかわらず、何がゆくえに
会期延長をしてまでも
自然成立を待とうとするのか、
岸総理を初めとし、
自民党、
与党の方々の考え方に、私は非常な
疑惑を持つわけであります。(
拍手)
国民もひとしくこの
疑惑を持っておると思います。今回の、この
疑惑は、やがて不安となり、次に起こってくるものは憤激であるはずであります。
国民は黙っておりません。憤激に変ったときに、一体、
国会の信義、また、
信頼というものを、どこに持たせて参ることができるでしょうか。この
案件のために
会期を
延長するというお考えならば、
通常国会に持ち込んで、慎重に継続
審議されるのが当然だと私は考えるのであります。(
拍手)
国民もこのように望んでおります。
今日、外には日米安全保障条約改定の
反対並びに
ベトナム賠償の協定に
反対という声が盛り上がっておることは、
皆さん方、すでに御承知の
通りであります。また、一方、
憲法におきますところの二院制度を、これは冒涜するものではないでしょうか。
参議院においてどのような結論が出ようとも、それが出なくとも、
自然成立を待つということは、
参議院の
審議というものを軽視しておる証左であると思います。二院制度におけるところの
憲法上の
審議を
政府みずから破っていこうといたしておるわけであります。このような
理由から、
民社クラブにおきましても、この
会期延長には絶対
反対であります。(
拍手)
どうか、
政府・
与党といわれる
自民党の皆様方、このような
観点を十分にお考え下さいまして、
会期延長に御
反対をなさることを心からお願いいたしまして、私の
討論を終わりたいと存じます。(
拍手)