○淺沼稻次郎君 私は、日本社会党を代表いたしまして、岸
総理大臣の施政
演説に関連して、祖国日本の当面しておる内治
外交の重大課題について質問せんとするものであります。
ただいま開かれておりまする
臨時国会は、さきに、わが党が、憲法の規定に基づきまして、衆参両院とも定員の四分の一以上の署名をもって、それぞれの院の
議長を通じて
政府に要求したのであります。すなわち、第一には、安保
改定交渉の中間報告、第二に嫁、岸
総理の外遊報告、第三には、最近の
日本経済の動向並びに
経済危機の打開、第四には、南
ベトナム賠償問題、第五には、引き続いて起こっておる
風水害の
政府の
施策、こういう工合に
案件を付して
臨時国会の召集を要求したのであります。しかし、
政府は、この開会をちゅうちょして現在に至りました。開会をちゅうちょして現在に至ったことは、はなはだ遺憾であります。しかも、われわれが一番要求した
日米安全保障条約改定の
交渉の経過について詳細な報告がなかったことは了解ができないのであります。(
拍手)
総理大臣の
演説原稿を見まするならば、原稿にして三行であります。さらに加えまして、
外務大臣の
演説の中は七行のみであります。しかし、このことにつきましては、
総理大臣みずから街頭に出て国民に訴えております。さらに、自民党幹部会におきましては、また、議員
総会におきましては、その
内容について
外務大臣が報告して、そして党議をきめておるのであります。このようなことをやりながら、この
国会に対しては何ら中間報告をしないというところに重大な課題があると私は思うのであります。(
拍手)
そこで、まず、この点よりお伺いをしたいのでありまするが、安保
交渉の現在までに至る経過を見ると、岸内閣は、民主主義、議会主義の原則を踏みにじるものといわなければなりません。(
拍手)
改定交渉が始められたのは昨年秋であります。それ以来、国民は全くつんぼさじきに置かれ、その
内容については全然知らされておりません。(
拍手)自民党は、本年五月の参議院選挙の争点としてこれを取り上げることを故意に避けたのであります。現に、
政府の委託した世論調査においてさえ、五〇%以上のものは安保
改定は知らないと答えておるようであります。そこで、われわれは、
国会を通じて
政府の中間報告を求め、
国会の論議を通じて国民が聞かんとするところを聞いてしかるべきと存じて、これを要求したのでありますが、これをやらないことは、はなはだ遺憾と思うのであります。ここに、
政府の態度は、明らかに反対党の存在を軽視し、
国会を軽視し、一党独裁の姿が現われておるといわなければなりません。(
拍手)
これより安保
改定に関して質問をいたしますが、安保
改定は
世界情勢に逆行しておると思います。
ソ連、アメリカの首脳部の
交換訪問、
フルシチョフ・
ソ連首相の
訪米で、
東西冷戦の氷が解け始めました。これを一そう
促進して、平和の機運を強力に進めることが、
世界各国政府の責任であると私は思うのであります。(
拍手)
東西首脳
会談も、本年じゅうか、あるいは来春には必ず開催され、核実験禁止
協定、全般的な
軍縮協定の
話し合いが
促進される
情勢にあります。
振り返ってみまするならば、一九五〇年代、この十年間は、まさに
危機の時代でありました。
世界は戦争と平和の間を危うく切り抜けてきたのであります。そうして、今ようやく平和への見通しが開けて参りました。これからの一九六〇年代の十年間は、との平和の風がいよいよ強まり、
世界は恒久平和と
軍縮の時代に入ることが期待されております。現在の
日米安全保障条約は、一九五〇年代の
危機と冷戦の時代の遺物であります。かくのごときものは冷戦の氷とともに過去に葬らるべきものであると私は信ずるのであります。(
拍手)
しかるに、岸内閣は、これを今
改定して、日米間の双務的軍事同盟を結び、今後、最低十年間、日本の運命をこの
条約に縛りつけようとしておるのであります。これは
ソ連、中国を敵視する軍事同盟であります。必然的に韓国、台湾等とつながる反共軍事同盟に発展する可能性を持っておるのであります。(
拍手)すなわち、今アメリカと台湾との間には相互防衛
条約があります。現に金門、馬祖に問題が起きたときに、アメリカの第七艦隊は介入せんとしたのでありまするが、原子力戦争に発展する危険性を感じて、アメリカ軍部も慎重な態度をとりました。しかし、一歩誤れば、台湾と中国との争いにアメリカが出て、その極東の平和という名において日本が介入させられるような結果を生じやしないかということを、私どもは憂えるのであります。(
拍手)今後
世界は
緊張緩和と
東西交流の六〇年代を迎えようとしているときに、これは著しい時代錯誤であります。時代の歯車に逆行するものは必ず滅びる運命にあります。
われわれは、国の
外交政策を一部の階級やグループの利益に従属させてはならないと思うのであります。(
拍手)韓国が米韓同盟を結んでおるのは、倒壊に瀕しておる李承晩政権の余命を保たんがためであろうと思うのであります。(
拍手)台湾の蒋介石政権が米台軍事同盟を結んでおることは、米軍を台湾に引き入れることによって国民党政権の終えんを引き延ばすための工作であろうと思うのであります。(
拍手)同様に、岸内閣が
日米安全保障条約を
改定せんとするのは、これを
契機に警職法の改悪、防諜法、小選挙区制、労働三法改悪、農村の反動的支配等々を実現して、現憲法のもとで日本国民の獲得しておる民主主義を剥奪し、もって一部独占資本の独裁
体制を維持しようとする野望に端を発しておると私は思うのであります。(
拍手)岸内閣は大資本家グループの階級的利益のために日本民族の運命を犠牲にするもの、これが岸内閣の
外交政策であるといっても過言ではないと私は思うのであります。(
拍手)
改定案は、ヴァンデンバーグの決議に基づいて、十年間の長きにわたって日本がアメリカと実質的な軍事同盟を結ぶことになるのであります。現在、表に現われておりまする
条約の
内容を見ましても、たとえば、新
条約第三条には、「日本は自助及び相互援助により単独で対抗するための能力を維持し、かつ発展させる」というヴアンデンバーグの決議による
義務を明らかにしております。単独で何と対抗する能力を持つか、それは言わずとはっきりしております。中国、
ソ連と対抗するためでありましょう。ところが、今日は、ICBM、原水爆の時代であります。こうした軍備とは何を言うかといえば、それは、必然的に、防衛庁第二次防衛力整備
長期計画でも、こういうことをいっておるのであります。「核用、非核用を問わず、ミサイル兵器を持つ」とはっきり申しておりますように、アメリカ軍の指揮のもとに日本を原水爆兵器で武装化しようとすることは明らかであると私は思うのであります。(
拍手)岸内閣は、二年来、そんなことはやらない、今でもそれを言っておるのでありますが、防衛庁の計画には、今申し上げましたように、核用、非核用ミサイルは持つといっておるのであります。ここに核兵器持ち込みの必然性があると私は思うのであります。
さらに、防衛庁計画では、戦車や、あるいはジニット戦闘機、あるいは潜水艦等を国産化しようとしておるのであります。これらの財政負担は、防衛庁の計画が示しておるように、六年後には、現在の防衛費の二倍となって、二千九百億となるといっておるのであります。これによって国民の生活は圧迫されざるを得ないのであります。すなわち、今回の安保
改定に伴い、平和の脅威のみならず、国
民生活は非常な圧迫を受けるのであります。こういう点について、
総理の所見を承っておきたいと思うのであります。
しからば、このように充実して参ります軍備によって何をなすかと申し上げまするならば、安保
改定案の第五条の中には、こういう文句がうたってあります。「両締約国は、日本国の施政下にある領域において、いずれか一方の締約国に対する武力攻撃が自国の平和および安全を危くするものと認め、自国の憲法上の規定と手続に従って、共通の危険に対処するため行動することを宣言する。」こうあるのであります。すなわち、共同防衛の姿がはっきり現われておるのであります。これは、日本自体が攻撃された場合は、米国が日本の防衛のために行動し、在日米軍が攻撃された場合は、日本側が防衛に立つということで、まさに相互防衛
条約であります。(
拍手)さきに藤山外相がアメリカの新聞記者に語ったところによりますならば、もし、日本にあるアメリカ軍事基地、アメリカ駐留軍を攻撃するものがあれば、日本の敵として戦うであろう、ということを言っておるのであります。明らかに共同防衛
条約になっておることを裏づけておると思うのであります。
これは非常に重大であります。憲法上から見まするならば、
国際紛争を解決するためには戦争を永久放棄するという規定を持っておるのであります。しかし、日本が
国際紛争の解決の手段として戦争を採用するような国家になりはしないかと私どもは思うのでありまして、ここに大きな憲法違反を犯す結果となるのであって、実に重大であるといわなければなりません。(
拍手)
総理の所見を承っておきたいのであります。
特に、この
改定案は、若き青年の血潮をアメリカに売らんとするところの、いわば買弁的な政策であるといっても過言ではありません。岸
総理は、東条内閣の閣僚として、太平洋戦争宣戦布告の
責任者であります。署名人であります。そして、鬼畜米英を倒せといって、数百万の国民はその血潮を流しておるのであります。十五年たった今日、今度はアメリカと結んで、アメリカのために若き青年の血潮をよこせ、こう言っておるのであります。(
拍手)まさに権力主義者としての岸
総理の姿がよく現われておると私は思うのであります。岸
総理は、この戦争責任についていかように考えるか、この点も伺っておきたいのであります。
さらに、安保
改定の重要な問題の一つは、その期限の問題であります。
緊張緩和が
世界の大勢となっておる今日、十年の長きにわたって日本を拘束する軍事同盟を結ぶことに対しては、自民党の内部にも大きな異論があり、
外交調査会は多数決を強行せざるを得なかったのであります。(
拍手)さらに加えまして、自民党の議員
総会におきましても、
意見を留保する者があったといわれておるのであります。このような
条約に対して、与党の
意見さえ満足にまとめることのできないということは、いかに国民の意思に逆行しておるかということを現実に証明しておると思うのであります。(
拍手)
また、このほか、問題となった極東の平和と安全のための米軍出動、間接侵略に対する米軍の介入を許し、アメリカの内政干渉を許したこと、行政
協定の大幅
改定に失敗したこと等、与党でさえ、まだ批判の声が絶えないありさまであります。また、自民党の有力なる幹部は、藤山外相はアメリカに向かって
交渉していない、自民党に向かって
交渉しておる、アメリカ側でだめだといえば、もうそれで
交渉をあきらめてしまって、アメリカ側の言い分を自民党にのませようと努めておる、と語っておるのであります。(
拍手)これは、断わっておきますが、自由民主党の幹部、しかも有力なる幹部の発言であります。かくのごとき事情であるから、岸
総理は、日本の完全独立と平和のために、
改定交渉をすることを打ち切るべきであると思うのでありますが、この考えを承りたいと思うのであります。(
拍手)
次に、お伺いしたいと思いますることは、
わが国外交の基本であります。およそ、一国の内治
外交の基本はどこに置くべきかといえば、それはその国の憲法に置くべきであると思うのであります。憲法は、その国の内治
外交の基本であり、国家活動の源泉であります。祖国日本は、冷厳なる敗戦の後、戦争に対し鋭い批判が行なわれ、偉大なる変革を行ないまして、その進むべき方向を憲法によって決定したのであります。その結果、第一には、主権在民の大原則が打ち立てられ、基本的人権が保障され、さらには、戦争放棄の規定が確認されたのであります。すなわち“憲法の前文には、「
政府の行為によって再び戦争の惨禍が起ることのないやうにすることを決意し、」とあります。さらに、憲法第九条には「日本国民は、正義と秩序を
基調とする
国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、
国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。」と規定をしっておるのであります。(
拍手)従いまして、日本の
外交はこれを基点として行なわれていかなければならぬのであります。それには、いずれの国とも軍事同盟を結ばない、軍事基地反対、戦争不介入、中立堅持、これが日本
外交の基本でなければならぬと私は思うのであります。(
拍手)
しかるに、対日
平和条約が
締結せられた際、アメリカとの間に軍事基地提供のために
日米安全保障条約を結び、そして、日本にアメリカ軍隊が駐屯するようになったのであります。ここに問題があります。わが党は、日本が
東西両
陣営の中にあっ完全
独立国家になるためには、アメリカとの軍事
関係を切り、中ソ友好同盟の中にある対日軍事
関係もその解消を求めて、日本の積極的中立を保障するために、日・米・中・ソを中心として、それぞれの国との間において不可侵
条約を結び、さらに、それぞれの国の上においては、お互いの領土、独立は尊重する、さらに、内政の干渉はやらない、侵略はしない、互恵平等の立場に立って、平和共存の大原則の上に、われわれは日・米・中・ソを中心に新しい
安全保障体制を作り、積極的中立政策を保障すべきである、と主張しておるのであります。この社会党の主張の積極的中立政策に対して、岸内閣の一部には必死となって反対しておるものがあります。
しかし、諸君、たとえば
欧州のオーストリアは、米・英・仏・ソ四大国の保障のもとに、中立政策をとっておるのであります。アジア・アフリカ地域には広大なる中立地帯が形成されております。また、アメリカ自身について考えてみましても、モンロー主義の宣言を行ない、アメリカは他国の問題に干渉しない、他国もまたアメリカの問題に干渉すべからずという方針をとった。これが一つの典型的な中立主義であるといっても過言ではないと思うのであります。このモンロー主義のもとにアメリカは国力を発展させ、しかも、現在はモンロー主義を放棄して他国を隷属せしめんとしておるのであります。さらに、そのアメリカでさえ、
東西の力の
関係からいたしまして、
ソ連との間に直接相互訪問の道を開き、さらに
緊張緩和の道を探求しておるのであります。かかる
情勢のもとで、
わが国は、従来の
外交方針を転換して、その完全独立と平和のため積極的中立政策をとるべき絶好の
機会なりといわなければならぬと思うのであります。(
拍手)それによって
世界の
緊張緩和に大きく貢献して、文字通りアジア
外交のイニシアチブを握るときと思うであります。また、中国・
ソ連、
アジア諸国の間に
貿易も無制限に拡大し、将来無限の可能性を持っておる広大な市場と結びつくべきであると思うのであります。それこそ、
日本経済発展の道と思います。このために、安保
条約改定交渉を打ち切り、
外交政策の転換を行なうべきであると思うのでありますが、
総理の所見を承っておきたいと思うのであります。
次に承りたいのは、日中国交回復の問題であります。岸
総理は、日中の
関係においては静観的態度をとっておられます。はなはだ遺憾であるといわなければなりません。さきに、英国の保守党の党首マクミラン首相は、みずから
ソ連を訪れ、
話し合いによって
国際緊張の緩和に
努力したことが、米・ソ両首脳の相互訪問、
東西首脳部
会談のきっかけとなったのであります。日本の保守党の代表者たる岸
総理も、この際、安保
条約改定によっていたずらに中国を敵視する政策を取りやめ、極東並びにアジアの緊張を緩和し、
世界の平和に寄与するため、みずから率先して、中国との間に、虚心たんかい、友好親善の
話し合いを行ない、日中国交をすみやかに回復すべきであると思うのであります。
岸
総理と同じ党派に席を置く石橋湛山氏は、病躯を押して、国家百年の長計のために中国を訪問し、岸内閣の政策転換を要求しております。その識見には、まさに敬服するものがあります。(
拍手)また、自民党の長老松村謙三氏も、今、中国にあります。今や日中国交回復は日本天下の世論となっておるといっても過言ではないと思うのであります。(
拍手)すなわち、今までは、日中国交回復を論ずる者ね革新政党側だといわれたのでありますが、保守党とはいえ、自由民主党の中に、これはやらなければならないというものが漸次ふえており、国民的大勢になっておるということを知ってもらわなければならぬと思うのであります。(
拍手)そこで、国民の世論を見て、この際、私は、中国と日本との間における国交回復のため一段の
努力を払うかどうか、承りたいと思うのであります。
次に伺いたいのは、
ベトナム賠償問題についてであります。一九五四年の七月ジュネーブ宣言は、南北
ベトナムを分かつ軍事境界線十七度が暫定的のものであります。いかなる場合においても、政治的または領土的境界線をなすものでないことを確認しておるのであります。今回の南
ベトナムに対する
賠償をもって全べトナムに対する
賠償にかえようとする
政府の態度は、明らかにジュネーブ宣言に反するといわなければならぬと思うのであります。(
拍手)さらに、一九五五年のバンドン
会議には、南北統一して
ベトナムの
国連参加を支持し、
ベトナムの統一はアジア・アフリカ諸民族の一致した要望であります。しかも、バンドン
会議には、
藤山愛一郎氏も日本商工
会議所会頭として参加をしております。さらに、日本
政府代表も参加して、決議に賛成をしておるのであります。しかるに、今回の
賠償問題の取り扱いは、バンドン
会議の決議を否定するものでありましょう。
国際信義に反する行為といわりなければなりません。(
拍手)かくのごとき
政府の行動は、結果においては、日本をアジアの孤児たらしめる方向にいかしめるものと思いまして、はなはだ遺憾しごくといわなければならぬと思うのであります。(
拍手)ジュネーブ宣言並びにバンドン
会議の決定を支持、尊重し、また、アジアの
緊張緩和・
世界の平和を願うならば、かかる
ベトナムの統一を阻害する
賠償は今直ちに支払うべきでないと思うのであります。少なくとも、統一が達成されるまで待つべきであると思うのであります。現に、北
ベトナムは、
ベトナムの統一実現後は
賠償請求権は放棄してもよいと言明しておるのであります。何を好んで
賠償を急ぐか、了解に苦しむのであります。本年五月、南
ベトナムと
賠償協定の
調印がなされた直後、北
ベトナムは、将来
賠償請求権は留保すると正式に声明しております。
政府はいかなる態度をとるか、また承りたいと存ずるものであります。(
拍手)
政府は、すでに
昭和二十五年一月、金塊三十三トン(当時の金額にして百三十四億円相当)、さらには、三十二年三月、十六億七千万円と、二軍の支払いをフランスに対してやっておるのであります。当時、日本とフランスとの間には戦争状態はなく、日本軍の仏印進駐によって戦争の
被害を受けたものは、フランスではなくして、
ベトナム人民であります。(
拍手)フランスに支払う必要はごうもありません。
ベトナム人民に支払うべきものを支払わずに、必要のないフランスに支払い、今また、今度は北
ベトナムを無視して、南
ベトナムのみに
賠償を払わんとしておるのであります。
賠償、それは戦争の犠牲に対する支払いであります。これはやらなければなりません。しかし、それは国民の血税で支払われるのであります。
政府が、この国民の血税を全
ベトナム人民に支払わないで、二重、
三重、でたらめな支払い方をやることには承服できないのであります。(
拍手)この
政府のやり方に対しては、徹底的に糾弾をされなければなりません。特に、この
賠償が、一部独占資本家の利益と結びつき、汚職の疑いがかけられていることは、インドネシアの
賠償の場合と同様でありまして、まことに遺憾しごくといわなければなりません。(
拍手)
南北
ベトナムの平和的統一にとって、アメリカの南
ベトナムに対する軍事援助の
強化は、北
ベトナムとの
対立を激化するものであります。その統一を阻害するものであります。われわれは、このアメリカの態度を非難し、平和のためにその方針の是正を要求すべきであると思うのであります。しかるに、今回の南
ベトナムに対する
賠償は、むしろ、アメリカのこの軍事援助を間接に支持せんとするものでありまして、はなはだ了解に苦しみ、南
ベトナムの軍事化を
促進する結果となると思うのであります。(
拍手)過去の侵略戦争によってアジア諸民族に与えた損害や戦争の責任について何ら反省することなく、
賠償の名において再び戦争準備に
協力することは断じて許されないのであります。(
拍手)これらの諸点につきまして、
政府当局の考えを承りたいと思うのであります。
次に、
風水害対策と
補正予算について伺います。
政府は、今回の
補正予算で、
災害対策費は、
地方交付税増額をあわせて約四百二十四億円を計上し、そのため、税の自然増収あるいは専売益金など、
財源は洗いざらい出した、こう言っておるのであります。ところが、それだけの支出では、結局焼け石に水であることは、
政府も認めておるようであります。
一般会計の
補正予算が一千億円、
財政投融資の
追加に一千億円の要求が殺到しております。これをどうするか。
政府は
財源を洗いざらい出したといって逃げておるのでありますが、これでは問題は解決がつかないのであります。ほんとうに
財源がないかといえば、決してそうではありません。それは、一千三百億の軍事防衛費の削減、このことを考うべきであると思うのであります。(
拍手)
今回の大
災害におきまして、
自衛隊の隊員の諸君が
救助、
災害対策に大活躍をいたしました。しかし、それは岸内閣の再軍備政策を合理化する理由にはならないと私は思うのであります。(
拍手)わが党が、
自衛隊を平和
国土建設隊と改め、防衛費は
災害復旧、
国土開発に使うべきであるといって一貫して主張して参りましたことが具体化しておるのが、
現地の姿ではなかろうかと思うのであります。岸内閣は、国を守り、国民を守るために
自衛隊の増強が必要であるといわれております。しかし、ごらんなさい。今、フルチョフの全面的
軍縮提案がなされ、アメリカのハーター国務
長官も、イギリスの外務省も、これを真剣に
検討すべきであると言っておるのであります。しかも、
国際連合では取り上げて、これと取っ組んでおるのであります。この際に、原水爆、月ロケットの今日、一機二億、一億ががるジュット戦闘機が何で必要であるか、常識ある者には、これがいかに浪費以外の何ものでもないということがわかるのであります。(
拍手)
今年の
風水害で、東海
地区においては、
死者、行方不明者合わせて五千数百名という尊い人命が奪われておるのであります。民間の財産五千億、公益施設で二千億の損害をこうむっております。祖国日本は、かくのごとき
災害を毎年冷々受けておるのであります。岸内閣は、この緊急の際、防衛費の増強はこれを取りやめて、その費用をもって
災害対策に充てるべきであると考えるのでありますが、これについて
総理の考えを承っておきたいと思うのであります。(
拍手)
さらに、ここで指摘しておきたいと思いますることは、戦後、日本に多い一つの特徴は何であるかといえば、
災害が多いということであります。戦後十年間、
昭和二十一年から三十二年まで、
風水害の
被害総額は、人命損失九万一千人、はんらん面積七百五十万町歩、
被害家屋が六百四万戸、総
被害金額は二兆五千八百億円といわれております。巨大なものであります。これを毎年に平均してみますならば、年間に七千六百余人の人命を失い、六十三万町歩がはんらんし、五十万戸以上の家屋が
被害を受け、さらには、二千百五十四億の富が失われておるのであります。実に重大であるといわなければなりません。それは何のためであるかといえば、
昭和二十九年の建設省の建設白書がこれを明らかにしております。そうして、特に、戦時中、治山治水事業がそでにされた結果、水源山地の山林は乱伐され、土地も無計画に利用されたため、
河川の状態は著しく荒廃し、そのため、この戦後の
わが国に大きな
被害がきておると思うのであります。これ、すなわち、日本が、民族と民族との争い、戦争にその
全力を集中して、自然との争いを放棄したところの結果がこうなっておるといっても過言ではありません。(
拍手)まさに、戦後起きておりまする天災、それは
災害にあらずして政治
災害であるといっても過言ではないと思うのであります(
拍手)本年の
災害は、まさに、自然のいたずらに対する岸内閣敗北の姿がここに現われておると思うのであります(
拍手)この意味合いにおいて、私どもは、日本国民が文化国家として日本国を建設していく以上、あらゆる場合において自然のいたずらに対抗して参らなければならぬと思うのであります。そうすることが、私は文化国家をうたうゆえんであろうと思うのであります。そこで、
政府は、この際、
災害に対する総合的な研究をやるために、総合科学研究所、こういうようなところを作って大いに研究をしたらいかがであろうかと私は考えておるのであります。
次に、石炭問題につき質問をいたします。
今日、
石炭鉱業は、
政府の政策の貧困と、石炭資本家の無策から、重大な
危機に直面をしております。すでに九州筑豊
地区には約六万人の失業者が生活に追われ、大手炭鉱において大量の首切りが行なわれておるのであります。今や、炭鉱は大きな社会問題を提起しておるのであります。(
拍手)この打開策は一刻の猶予も許しません。
申すまでもなく、
石炭鉱業は、その無謀な戦争の廃墟の中から
日本経済の
復興をはかるために大量の国家資本がつぎ込まれ、数十万の労働者を投入して生産の拡大をはかって参ったのであります。その後、今日に至るまで、炭鉱労働者は、低賃金と労働
強化を強要されながら、劣悪な作業条件のもとに働いてきたのであります。今や、この人々が失業のちまたにほうり出されんとしておるのであります。これに対して、
政府はいかなる態度をとるか、伺いたい。失業者とは、働く意思はある、働く力もあるが、働く場所なき者が失業者となっておるのであります。従って、失業者諸君の中には、
政府に対して、働かせろ、食わせろという要求を出す。
政府の政策の欠陥によりこのような状態になった以上は、
政府は、当然の帰結として、これらの人に食を与え、さらに仕事を与えていくということをやらなければならぬと思うのであります。これに対する
政府の
施策を承りたいと存ずるのであります。(
拍手)
さらに、
石炭鉱業が重油その他外国からのエネルギーに侵食されておるのは、
政府の政策の貧困と石炭資本家のサボタージュ、ここからきておるということを指摘しなければなりません。(
拍手)従いまして、このエネルギー資源革命の今日において、これをいかに処理するかということを、お伺いしたいと思うのであります。
以上申し上げまして私の質問
演説は終わりますが、答弁いかんによりましては再質問もするということを留保いたしまして、これで降壇をいたします。(
拍手)
〔
国務大臣岸信介君
登壇〕