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1959-12-11 第33回国会 衆議院 農林水産委員会農業法人等に関する調査小委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十四年十二月十一日(金曜日)     午後零時十分開議  出席小委員    小委員長 永田 亮一君       秋山 利恭君    金丸  信君       高石幸三郎君    野原 正勝君       足鹿  覺君    石田 宥全君       角屋堅次郎君  小委員外出席者         農林水産委員  倉成  正君         農林水産委員  笹山茂太郎君         農林水産委員  松岡嘉兵衛君         農林事務次官  渡部 伍良君         農林事務官         (農林経済局農         業協同組合部         長)      酒折 武弘君         農林事務官         (農地局管理部         長)      庄野五一郎君         農林事務官         (農地局管理部         農地課長)   中島 正明君         専  門  員 岩隈  博君     ————————————— 十二月十一日  小委員角屋堅次郎君十一月十四日委員辞任につ  き、その補欠として角屋堅次郎君が委員長の指  名で小委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  農業法人に関する件      ————◇—————
  2. 永田亮一

    永田委員長 これより農林水産委員会農業法人等に関する調査小委員会を開会いたします。  農業法人等に関しまして調査を進めます。  この際、農業法人法制化等基本的な考え方について農林省当局意見を聴取することといたします。渡部農林事務次官
  3. 渡部伍良

    渡部説明員 農業法人の問題につきましては、今年の三月二十七日に農林水産委員会決議の次第もありまして、なるべくすみやかに法人による農業経営を認める考えのもとにいろいろ検討を重ねてきたのであります。検討いたしますと、今党の方でお考えになっておる——党の中でも、政調の農林部会あるいは基本政策調査会のお考え、いろいろ考え方ニュアンスも変わっております。あるいはまた、社会党では生産組合法というようなものを持っておりますし、農業会議所、あるいは農業協同組合中央会、それぞれ考え方もいろいろなニュアンスを持っておるのでございます。  そこで、一番法人問題で問題になりますのは、そもそも法人問題が発端したのは、一つ法人にすれば農業課税が非常に少なくなるということ、それから、もう一つは、法人形態にして経営と家計を分離することによって経営合理化生産性を高めていく、こういう二つの点から問題が発端しておるのでございます。税金の問題は、これは問題は簡単でございますが、経営合理化という点から法人問題を取り上げていきますと、一体、現在の農地法との関係で、農地改革によって地主制を改めて自作農制基本を確立したが、法人組織によることによって経営合理化ができれば、法人組織しておる構成員労力配分等が変わりまして、今まで個人経営でやった場合に使っておった労力そのものが要らなくなる、そうしますと、いわゆる組織員のある人だけが農業に従事し、ある人は他の仕事に従事して所得をあげるという形態も当然出てくるじゃないか、あるいはまた、経営合理化を進めていくと、農地農地法による保有限度全国平均で三町歩が一人の保有限度になっておりますが、かりに法人組織してその三町歩限度組織員倍、つまり三人が法人組織すれば九町持てる、そういうふうに農地法のワク内で経営のあるいは保有最高限度をきめることは経営合理化とは矛盾するじゃないか、機械の導入とかあるいはいろいろな生産技術の向上によってもっと経営規模を大きくした方がいいじゃないか、しかし、現在の農村の現状、すなわち農家農地との関係から見ますと、やはり農地法で定められている保有最高限度は、農家人口の減少がない限り、これを軽々にゆるめることは今は当を得ないじゃないか、こういう問題が出てくる。さらにまた、会社組織の当否においては、そういう問題でなくして、それぞれ現在農業経営をやっている人が会社組織して、かりにその会社の中で仕事をやっておりましても、その人が死んで、その子供権利が相続された場合、子供工場なら工場あるいはほかの都市に出ていっている場合、一体その法人組織員あるいは農地法との関係をどういうふうにしたらいいか、こういういろいろ複雑な問題ができてきますので、われわれの方の研究におきましても相当難問にぶつかってきているのであります。しかし、そういう将来の農業構造というふうな問題に関係する部面は、せっかく、農林省におきましても内閣にできました農林漁業基本問題調査会におきまして検討をお願いいたしますし、自民党でできております基本政策調査会等におきましてもそういう基本問題は議論されているのでございますから、その結論が出ないうちに将来の根本問題を今処理するということは行き過ぎじゃないかという観点に立ちまして、当面におきましては、農地法基本理念、すなわち土地兼併防止不在地主発生防止、また適正小作料維持確保、そういう農地法基本理念を維持し得る範囲内において、税金の問題なりあるいは農業経営合理化の面から法人経営にした方がいいという利点を取り入れることができるのはどういう範囲であるかということを検討いたしたのでございます。まだ農林省といたしましては最終的な結論を出しておりません。しかし、一応、事務的な段階におきまして、ただいま申し上げましたように、農地法基本理念農業経営法人組織によって行なう利点との妥協点は、この程度のことでないかという点に到達しているのでございまして、その点を順を追って御説明申し上げたいと思います。  そういう観点から、法人問題を処理する方法として考えるのには大体五つ方法考えられ得ると思います。  すなわち、現在の農地法は、これは、今までの農林省行政方針といたしましては、新規に会社等法人に対して農地法上の権利を与えるということはとらないことにしております。ただ、しかし、法律を文字通り読みますれば、現行法のもとにおきましても、法人農地法上の権利を持っておることを認めておるのでございます。この際、従来の行政方針を改めて、そうして、政令または省令改正によりまして、会社等現在の法律その他の現行法による法人農地賃借権あるいは使用貸借による権利取得を認める、こういうのが一つ方法でございます。しかし、これは、先ほど説明申し上げましたように、今までの私ども行政方針とまっこうから百八十度の転換ということになりますので、事務当局といたしましては非常に苦しいのでございます。しかし、農地法に基づく政令または省令改正によって方向転換ができないというわけでもないのでございます。  次に、第二の方法といたしましては、農地法改正いたしまして一定の要件を具備しておる会社その他の現行法に基づく法人に限りまして農地賃借権及び使用貸借上の権利取得が可能なような措置に進む方法があるのであります。これは、第一段に申し上げました政令だけで——あとで申し上げますが、解決できないような問題もございますから、行政方針転換と同時に法律改正をやって法人を認めていったらいい、法人による農地法上の権利取得を可能なようにしたらいい、こういう考えであります。すなわち、第一点は、たとえば今創設農地は賃貸を認めておりません。しかし、農業法人組織する人が創設農地取得者であるという場合には、当然その法人賃借権の設定ということをやらなければいけませんから、これは法律でその権利を認めるということが必要になる。あるいはまた、小作地転貸農地法では認めておりません。しかし、たまたま農業法人組織する人が小作地を持っておる場合、その小作地を新たに組織する法人保有せしめるという場合には、小作地転貸という格好になりますから、こういうことは法律改正を必要とするということでございます。そういう点が第一に申し上げたのと違うところであります。  それから第三点は、現在、農業協同組合法に基づきますと、農業協同組合が一体農地保有することができるのかどうか、農業経営を営むことができるかどうかということにつきましては、法律規定ではできるというふうに書いておりません。そうかといって禁止する条項もございません。しかし、これは、漁業協同組合法森林組合法との関連からいきますと、少なくとも協同組合法を制定したときにはそういうことを予想しておらなかった。従って、もし農業経営をやるということになりますれば、ある一定規定を置いた方がいいじゃないか、こういうわれわれの検討の結果になりましたので、会社その他に農業経営を行なう権利を認めるならば、協同組合にもはっきりそういう農地賃借権及び使用貸借による権利取得が可能になるように法律を改める、こういうふうに考えるのが第三点であります。  それから、第四点といたしましては、以上のいろいろな農業法人というものは、会社法なりあるいは協同組合法——今までのような説明によって考えましても既存の法律そのもの農地賃借権なり使用貸借権利を与えるということでございますが、もっと思い切って特殊法人として農業法人を作る法律を作ったらよくはないか、こういう意見が第四としてあるわけです。  それから、第五といたしましては、今まで申し述べましたような議論は、一切農林漁業基本問題調査会結論が出るまで見送っていこう、こういう考え方でございます。  この五つの線に沿っていろいろ議論をいたしました。私ども考え方を率直に申し上げますと、現に農業法人がいろいろ問題を起こしておるけれども、各所で、税の問題あるいは経営の問題としてぜひその法人組織政府は公認すべきである、こういう議論が出ておるのでありまして、その組織を見ますと、有限会社なり、合名会社なり、合資会社なり、株式会社というものでございます。従って、根本的な問題が解決するまでは、最初に申し上げたように、法人形態については、この際は、行政庁がどういう法人でなければならないとか言うことは言い過ぎではないか。従って、法律上認めておられる会社なりその他の法人で、法人組織員の利益の保護なり、取引の相手方の保護ができる形態ならば、どういう法律に基づいて、たとえば会社法なりあるいは協同組合法、そういうものに基づく法人であろうとも、この際農地法上の権利を認めて、そのかわりには、農地法上の根本理念であります、土地兼併であるとか、不在地主発生であるとか、あるいは高率小作料というふうなものができないような、いろいろな事項を法定し、あるいは行政指導をいたしまして、農地法現行建前と背馳しない範囲内において法人を認めていったらいいじゃないか、こういうように結論を出したのであります。  そこで、それでは具体的に今のような考え方法律あるいは行政方針を改めるということになればどういう点が問題になるか、たとえば農地法改正しなければならないということになればどういう点がひっかかるかということになりますと、まず農地法関係でございますが、取得を認める権利賃借権及び使用貸借による権利というふうに限定した方がいい、すなわち、所有権その他の物権は、農地法の現在の建前ではやはり自然人が持つことを原則的に非常にウエートを置いておりますから、その建前は存置して、経営合理化なりあるいは税金の問題を処理するに必要な範囲内において賃借権及び使用貸借による権利だけを法人に認めることにするということが第一点でございます。  それから、それでは認める場合に農地法許可の基準をどういうふうにしたらいいか、こういうことでございます。  それは、農地賃借権なり使用貸借による権利を認める法人農業——もちろんこれは広い意味の農業でございます。及びその付帯事業のみを行なう法人ということに限定しよう。それから、法人出資者または組織員は現に農地使用収益権利を有する者またはその世帯員に限る、つまり、農地賃借権なり使用貸借による権利を認める法人は、現に使用収益権を有する者またはその世帯員出資者あるいは組織員でなければ農地法上の許可をしてはならない、こういうふうに農地法規定を置いたらどうか、こういうことでございます。それから、法人耕作または養畜事業に要する農地等は、その出資者もしくは組織員またはこれらの世帯員が現に耕作または養畜事業の用に供している農地等、及び、小作地等所有制限範囲内において法人出資者または組織員以外の人から借り受ける農地等に限る、こういうことでございます。すなわち、これは、農地法によりますと、各個人小作地を含めて平均で三町の保有限度を持っております。ですから、先ほどちょっと申し上げましたように、小作地を現に保有しておる人が組織員になった場合にはその小作地、これはその人が借りておる最高限までふやし得るのでありますが、組織員以外から転貸格好によって借りた農地でもよろしいけれども、それはあくまでも現在の農地法上各個人に認められた権利範囲内の合計限度とする、こういうことでございます。従って、これまた、正面からうたいますと、法人保有し得る経営面積最高限は、出資者または組織員あるいはまたそれらの世帯員経営し得る面積合計というものをきめなければならない、こういうふうに考えておるのであります。すなわち、これは、先ほどから申し上げておりますように、平均個人小作地を含めて保有限度が三町になっております。三人が法人組織すれば、その新しい法人は九町歩保有面積最高限度、五人ですれば十五町歩、それ以上は、幾ら法人組織にしても、現在の農地法の根本的な建前から言って、その限度を拡張することは、農林漁業基本問題調査会等において結論が出た後においてその方向をきめればいいじゃないか。こういう考え方でございます。  それから、なお、今申し上げましたが、農地法改正点は、創設農地法人への貸付あるいは小作地転貸というものは農地法の現在通りのままではできないから、その範囲内において農地法改正したらいいじゃないか、こういうふうに考えておるのでございます。  それから、協同組合法関係では、協同組合農業経営を他の法人と同じように行なうことができるという規定をはっきり明文化した方がいいではないか、こういうのが第一点でございます。さらにまた、もし協同組合にそういう権利を与えるとすれば、現在の協同組合法できめられておる協同組合は、十五人以上が集まって組織するという法律規定になっておりますが、その規定は少し範囲が大き過ぎるのであって、構成員最低限度等について、たとえば森林組合はたしか五人になっておりますが、もう少し農業経営を行なう場合に限って限度を下げた方がよいのではないか、こういう点がもしやるとすれば法律事項になる、こういうことでございます。  以上が現在私ども考えております点で、最初に申し上げました各方面の法人に対するお考えを現在の農地法基本理念のもとで整理すると、この程度が事務的の最高限度ではなかろうか、こういうふうに考えまして、目下これをもとにしてさらに細部の点を議論いたしております。従って、今申しました法律改正を必要とする事項、すなわち、法律事項を、農地法及び協同組合法それぞれの改正法で出したがいいか、あるいは、それらを一本の特別措置法というものにまとめまして、一本の法律で、農林漁業基本問題調査会結論が出るまでの暫定的な措置法という考え方で出したがいいかという点等も、法律的に内部で検討し、あるいは法制局等とも、もしやるとすればどっちがいいだろうかということで相談しております。また、いろいろこまかい点で、先ほど申し上げましたように、余剰労力といいますか、経営合理化によって余った労力をどういうふうに処置するか、あるいは相続等によって農地所有者がいわゆる不在地主になって農地法農地を持つことができなくなった場合、これは私どもは今は当然不在地主としてその土地は国が買うことにしておるけれども、その際に残存する法人と今の権利を失った土地をどういうふうに結びつけるか、優先的に法人がそういう場合に限って土地を持つことができることにしたのがいいのか、あるいは不在地主分は残った組織員が優先的に買うことにしたがいいのか、そういうこまかい点が残っております。  現在農林省事務当局検討いたしております問題点整理点は以上の通りでございます。
  4. 永田亮一

    永田委員長 質疑の通告があります。この際これを許します。  石田宥全君
  5. 石田宥全

    石田(宥)小委員 農業法人に関しては、衆議院農林水産常任委員会が、今年三月二十七日、これがすみやかに立法化等措置を講ずべきであるという決議をいたしておったのでありますが、その後農林省内の準備が遅々として進まなかったようであります。先般本委員会懇談会を開きまして、その前に発表されましたいわゆる庄野試案という農地局案ともいうべき考え方と、同時に、経済局農協部長考え方等参考として承ったのでありますが、いずれもまだ成案を得るに至っておらない、はなはだ遺憾であるということで、すみやかに農林省としての統一的な具体案を作成せられたいという要望をいたしておったわけでありますが、その後、幸いにいたしまして、農林大臣談話等によって、農業法人化立法化について、通常国会に提案をする用意があるということが伝えられて、大へん喜んでおったわけであります。私どもは、農業法人の問題については、単独立法——これにはいろいろ関連的な点もあります。すなわち、農地法上の問題点、あるいは農協法上の問題点はありますけれども、やはり、それらの点についての特別な措置を講じたところの単独立法を作るべきであるという見地で、社会党といたしましては農業生産組合法案というものを準備をいたしております。従って、私どもは、単独立法でやるべきであるという見解を実は持っておるのでありますけれども、しかしながら、先ほど次官から説明もありましたように、いろいろやはり省内でも意見があって、場合によったならば基本問題調査会に一任しようというような見解もあるということでありますが、私は、これは実は非常に危険な考え方であると考える。幸いにしてまだ政治的にはいわゆる省議としてはまとまっておらないように承ったわけでありまするけれども事務当局としての要綱がほぼまとまったということでただいま御説明を伺ったわけでありますが、その中で特に問題点について若干御質疑を申し上げ、さらにこまかな点については、きょう御説明になったこの要綱一つお配りを願って、それについて審議を進めたい、かように考えておりますので、小委員長におかれてもそういうように手配をされて、今後十分一つ御討議を願いたいと思うのであります。  この法人化の問題は、先ほど説明にもありましたように、その動機は税対策というような形で出たことは、これは否定することはできませんが、しかし、この税対策の中から出ておりながら、実は、この法人成り等が、論議の過程においてあるいは法人化を推進する中において本質的に問題が変わってきておる。すなわち、農業共同化の問題というようなものが日本農業の性格の中心となるべきものではないだろうか、今大きな壁に突き当たったと言われておる日本農業というものはやはり共同化方向に進むことが妥当ではないか、これは農林水産常任委員会において権威ある参考人陳述等も承ったのでありますが、これはほとんど同じような考えをお持ちのようであります。日本のこういう小規模経営の中において、兼業農家がだんだんと大きくなっていく、また小農がさらに小農化するような傾向が出ておる中において、やはりこの共同経営ということが現段階で相当程度可能なのではないかというようなことを、われわれは今日までの経験の中で学びとっておるわけであります。これについては、一部の人たちの中には、学者の中に、あるいは農民の中にも、これは完全な共同経営までいくべきではないか、こういう考えもある。私はその点についてはまだ若干疑問を実は持っておるのでありますが、現段階においては少なくとも生産共同化というところまではやり得る、こういうふうに実は考えておるわけでございます。  そこで、具体的にちょっとお尋ねしたいことは、さっき申しましたように、法人問題は、税問題に出て、そうして、農業共同化の問題、あるいは共同経営というような問題にまで農民経験の中から発展しておるけれども税金の問題というものはやはり解消したわけではない。これについては、いろいろ、自由民主党の幹部の人たちも、一時は青色申告をしなくとも専従者控除をなすべきであるということを決定されたように承っておるのでありますが、その後これが少しあいまいになってきておって、中には青色申告を簡素化することによって税金の軽減をはかるべきであるというような意見もかなり強くなってきておるように伝えられておるわけでございます。やはり、この日本農業経営の中における税金の問題というものは見のがすことのできない問題でありましてこれは法人の問題と関連する問題でありますが、農林省として、事務当局としても、相当これは大きな問題の一つであろうと思うのですが、それに対しては、どういうふうな心がまえで、また具体的にどういう措置をお考えになっておるのか、この点をまず一つ伺っておきたいと思う。
  6. 渡部伍良

    渡部説明員 これは、一つ農業課税と他の産業課税との均衡の問題がある。その均衡の問題から言いますると、はたして現在の農業——主として所得税について申しますと、これでいいのかどうか、こういう問題が一つあるわけです。それから、またもう一つは、同じ仕事をやるのに、法人組織ならば税金がうんと安くなって、個人経営ならば税金が高いということは、やはり税法上問題がある、こういうことが言えるのでありまして、私どもの方の考えといたしましては、第一点は、農業課税が重過ぎる、従って、個人経営といっても、個人世帯員について、全体の生活水準が非常に向上しておるのであるから、他の事業に従う人と同様な生活が享受できるような所得を認めるべきである、また、生活費経費であるから経費として所得から引くべきである、こういう考えから、いわゆる専従者控除というものを農業個人経営に当然認めるべきであるという考え一つあるわけでございます。これはひとり農業だけの問題でなくして、普通の商工業個人営業をやっているのがたくさんあるわけでありますから、もし農業にそういう専従者控除を認めるならば、他の産業でも当然でございます。しかし、農業と他の産業と変わっているところは、他の産業では個人経営にしようが法人経営にしようが、個人自由選択にまかされておるが、ひとり農業だけは、農地法の運用から言って、法人化しようとしてもそれには問題があるということは不当ではないか、そういう見地から、やはり法人の問題は法人の問題として税に関連して考えるべきじゃないか、こういう考えでございます。  ただ、この農業法人化の問題は、そういう趣旨でございますから、ある特定の形の農業固有法人であるという必要は少しもないのであって、農業といえども、そのほかの現在の会社法なら会社法に基づくいろいろな形態法人、あるいはそのほかの法律に基づく法人で十分ならば、何も特殊法人を作る必要はないのではないか、どうしてもそれでは不十分であるということならば、初めて特殊の法人農業固有法人というものを考えたらいいのじゃないかというふうに考えておるのでございます。しかも、法人は、繰り返して申し上げますが、あくまでも政府なり行政庁でしいるのでなくして、やはり農家自由意思に基づいて、法人形態にした方がいいのか、あるいは個人形態がいいのか、それも、その土地あるいは営む農業の種類によってどういう形態をとったらいいのかということを、あくまでも自主的にきめていただく方がいいじゃないかというふうに考えております。
  7. 石田宥全

    石田(宥)小委員 ただいまの最後の点ですね、この点かなり重要だと思うので、別に質問したいと思ったのですが、明らかになりました。と申しますのは、ややもすると、一部の農民の間には、こういう立法が行なわれると強制的に規制するのではないかというような疑惑を持つ者が多いのでありますが、私どもは、あくまでやはり自由意思に基づいて法人組織し、そしてそれを運営していくという農民の自主性というものを十分尊重して、自由選択制でいくということでなければならないと考えておったのですが、この点明確でないと、いろいろデマの材料などになるおそれがある。大へん明確な答弁でよかったわけですが、なお、税金との関連におきまして、いろいろ、まだ立案の過程でありますから、はっきりせぬ点もあると思うのでありますが、現在行なわれておる共同化、いわゆる共同法人化というものも、まだ法人というものまでいかない状態の単なる生産共同化という形態のものが相当多いわけであります。耕転機を共同に購入し使用するということをやる、あるいは作業の一部だけは共同にやるという形態のものもあるわけでありますが、生産の共同というだけでは税金の面ではこれは法人としての取り扱いができないということになりますと、やはり農民使用収益をやっておる全体のものを全部統合した法人にするということもあり得るし、あるいは、佐渡の琴浦などにやっておりますように、全体のものは見ないけれども、一部の農地だけは完全な共同経営にするというような形態もあり得るのです。そういうように完全な共同経営をやった場合においては当然税法上法人としての取り扱いを受くべきものであると考えるのでありますが、これだけの立法措置を行なわれるということになりますならば、生産共同化までは可能であるという、そういう道をはっきり開かないと、実は非常に利用度が薄いことになると思うので、この点は、やはり、生産共同経営まで含め、さらに、もし可能であるならば、また農民が要望するならば全体の経営共同化ということもやり得るというようにすることが、重要なポイントの一つであろうと思うのでありますが、それらについての御見解を伺いたい。
  8. 渡部伍良

    渡部説明員 ただいま御指摘の点は、そこが一つのむずかしい問題でありまして、これは、農業政策全体あるいは今の農地法建前をどの程度まで農業の近代化あるいは経営合理化に役立てるために変えていくか、こういう問題になりますので、それらの点はやはり農業全体との関連においてもう少し時間をかけて検討すべきである。私の方としても、今農業がぶつかっておる壁というものは相当かたい壁であるし、どうしても解決しなければいかぬ壁であるという考え方からいきますと、今不十分な検討で早急な結論を出すよりも、そういう問題を頭に描きながら、現在可能な範囲内において農業経営の近代化なり合理化なり、あるいは税金に対処できる道を選んだ方がいいのではないか、こういうふうに考えております。
  9. 石田宥全

    石田(宥)小委員 それが問題点のきわめて重要な点でありますが、今五項目ばかりこまかな点の法律的な取り扱いの見解を述べられたわけでありますが、一番基本になるところの賃貸権、使用収益権というものだけを対象として、所有権には触れないという考え方のようでありますが、この点は私どもは何か少しもの足らない感じをいたすのであります。これは、いろいろな問題と関連いたしまして、法人が単なる使用収益権だけだ、賃借権だけだということになりますと、農民の心理上に及ぼす影響もございますし、もう一つは、やはり農地の分散相続というようなものに何とか制約を加うべきであるということは多年の懸案でありますけれども、やはり、憲法との関係で、なかなかこれは法律措置はできないということになっておるわけであります。これは、日本農業の零細化の現過程におきまして、何らかの自由意思に基づく制約というものが経営規模の維持のためにきわめて重大な意味を持つものだと思うのでありまして、できるならば、この点はもう少し考慮されて、その団体の自主性によっては所有権までも取得できるという規定が望ましいと思うのでありますが、特にこの点をはずされた意図はどういうところにあるか、伺いたい。
  10. 渡部伍良

    渡部説明員 これは、法人組織を選ぶ目的、あるいは意図、それとの関連において考えなければならないと思うのであります。お話のように、個人自由選択ならば所有権までも認めろ、こういうことは、それだけを切り離して見ますと、徹底して、そうして非常にいい点があるんじゃないかと思います。しかし、先ほどもちょっと触れましたように、たとえば、前に外国に例がありましたように、農地を家産的に見て、それにその家族の世襲的職業を結びつけるというふうな考え方でもありませんと、所有権法人に渡した場合に、その法人の性格が、何代かの相続によって、全然農地あるいは農業関係のない人が組織した法人農地を持ち農業経営するという格好になることが考えられる。そういう場合に、そういうことが発生しないように防止する方法とか、あるいは、そういうことが発生した場合にどういうふうに処置するんだということをきめない限り、今そこまで踏み切ることは、現在の農地法ができましてからまだ日もたっていない、そうしてその農地法の前後処理についてもいろいろ問題があるという時期には、あまりに早まり過ぎるのじゃないか。そういう点から、やはり、法人化によって利得を得る可能の最大限度まで必要な権利法人に認めればいいんじゃないか。それを検討いたしますと、賃借権使用貸借権利で現在は満足すべきでないか、不十分である部面がありますけれども、これでがまんしなければいかぬ、こういうふうに考えております。
  11. 石田宥全

    石田(宥)小委員 それから、その次に、創設農地の場合、これは法律上の貸付制限等があるわけでありますから、現行法ではその通りであるけれども、やはり、こういう場合にも、法人化の場合には特例を認めるというふうにやるべきではないか。創設地というものを、現行通りの制限規定をそのままに存置するということは、これはどうかと思うので、こういう点をもう少し前進的に考えられてはどうかと思うんですが、その点はどうですか。
  12. 渡部伍良

    渡部説明員 法人経営にする場合には、現行法創設農地を貸し付けてはいけないという規定を、除外例を設けようという考えでありまして、法人には創設農地は当然貸付をする道は開かなければ困る。それと同時に、それでは、創設農地を一般の個人が持っておって、法人に貸すのであるなら、一般にも貸せるようにしたらいいじゃないかという意見もないことはないと思いますけれども、それは現在は触れない。現に創設地を持っている人が法人組織した場合、その創設地を法人に貸し付ける、その道だけを開けば十分である、こういうふうに考えております。
  13. 石田宥全

    石田(宥)小委員 先ほど申しましたように、きょうその構想を初めて承ったので、具体的な点については、要綱等をお配りを願って、その上でよく討議したいと思うのであります。大臣が新聞記者会見等で発表しておられるその意思は、通常国会までには成案を得てこれを提出したい、こういうことを言っておられるのでありますが、そういうふうに準備は進みそうですが。いつごろまでにまとまるというお見通しで作業を進められておりますか。
  14. 渡部伍良

    渡部説明員 これは、説明申し上げましたように、何といいますか、非常に複雑な法律関係を作ることになりますから、そういう点について、観念的には私が説明したので一応の段階はいいじゃないかと思いますけれども、その観念論が、法律的に詰めていくとどの程度まで詰まるか。法律的に詰めて、これならば法律上問題がないということがきまりますれば、至急法案の格好にして国会に提出をきめるということであります。これは、私ども事務としましては、なるたけ早くやりたいと思って、今各局が分担してそれぞれ詰めております。
  15. 石田宥全

    石田(宥)小委員 今御説明を承った通りで、法人化に対して、農地法の抵触する部分を一部改正をし、農協法の一部をちょっと改正するというようなきわめて暫定性の強い暫定措置のようなものでありまして、このような考え方だとすれば、法律上そう大きな問題点はないのではないか。私ども考えでは、少し物足りない、不徹底の感を持つのでありますけれども、しかしながら、諸般の情勢を勘案いたしました際に、現在全国では表向きになっているもので三、四百ですかの法人ができておる。まだ表面に出てこないものがやはり相当数あると思うので、現に法律上いろいろな隘路や障害がある中ですでにもう現実にできているものが数百ある。また、地方を回ってみますと、若い青年諸君などの中には、現在は法律上どうも困難性があるが、立法化についていろいろ運動が進められておるようであるから、これが立法化が行なわれたならば一つ取り組もうというようなことで、寄り寄り相談をして、その準備態勢を作っているものが意外に多いということを痛切に感ずるんです。ですから、もう実態はそこまで進んでいるんだ、やはりこういう認識のもとで、せっかく農村の青年諸君が、今の日本農業の隘路をどう打開するか、近代化と機械化をはかっていくのには今のような姿ではだめなんだが、一体どうやってこれを再建していくかということで真剣に取り組んでおるときに、やはり一日も早く一つの光明を与えて、その方向を示してやるということが、農林省としての大きな課題であり、責任の一つだと思うのです。ことに、渡部次官は農林官僚のベテランで、今ちょうど重要なポストにおられますから事務的には一つすみやかに省内の統一をはかられて、そうして政治的にもこれは一つすみやかに御決定を願って、次の通常国会には間に合うように、農村の青年に希望を与えるように御尽力を願いたい。  要綱によってなお御質疑をいたしたいと思いますが、きょうのところはごく概括的な点だけにとどめておきまするけれども、そういうことについての考え方、今承ったようでありますけれども、もっとはっきりしていただきたいと思います。
  16. 渡部伍良

    渡部説明員 利害がいろいろ衝突するところがありますから今までひまがかかったのでございますが、それらを要約して、やっと考え方をまとめたのでございますけれども、あとは法律手続を進めていきたいと思います。これからはできるだけ早くやって、御趣旨に沿いたいと思っております。
  17. 永田亮一

  18. 高石幸三郎

    ○高石小委員 私もごく簡単に二、三の点についてお伺いしたいと思うのでありますが、ただいま石田委員から特に念を押されたようでありますけれども通常国会を提出目途としていろんな準備作業を進められておると思うのでありますが、農林省としてはぜひ提出いたしたいという意思発表は正式にできないのですか。
  19. 渡部伍良

    渡部説明員 これは、最初にお答え申し上げましたように、まだ大臣の決裁を仰いでおりませんから……。われわれが大臣に説明を申し上げましたけれども、いろいろな御指摘の点がございます。いろいろな法律の問題とか、あるいはこまかい点などもございますが、それを整理して、省の意思としてできるだけ早く発表できるようにしたいと思っております。
  20. 高石幸三郎

    ○高石小委員 大体御説明を承りますと、従来この委員会ないしは他の機会に承りましたところでは、経済局農地局と意見の相違があったようでありますが、大体経済局意見にだいぶまとまってきたようでありますけれども、従来農地局が考えておりました特殊法人、こういう考え方は、一体どういうふうないきさつとどういうふうな見通しで、撤回というか、後退したのですか。
  21. 渡部伍良

    渡部説明員 一つは、特殊法人にした方がいいという考え方のもとには、やはり、これは単なる税金対策ではなくて農業経営の近代化なり合理化なりに必要な組織として法人問題を取り上げておるんだ、こういう考え方だと思います。それから、また、今まで、農業は劣勢産業であるとか特殊産業であるとか、これは私は考え方が間違っておると思いますが、そういうことから、会社法なら会社法のような非常に進んだ資本主義的な考え方で利用している法人でなくして、もっと簡素な法人考えられないのか、こういうふうな点から特殊法人というものを考える、私も最初はそういうことを考えました。しかし、これは、よく考えてみますと、やはり経営の近代化、合理化の問題もありますし、税金の問題もあるのは事実でございます。それと同時に、また、現在の農林の進んだ状態では、そんなことを心配するのは役人だけで、世間にもう会社成り法人はどんどん農家などには進んでいるのではないか、それならば、それを簡単に法人組織を作るというふうなことを考えても、かえってそれが農家の意思に沿わぬようになるのではないか、こういうようなことも考えました。また、もう一点は、さっき石田委員が御指摘になりましたように、特殊法人が一方では非常に旗色が鮮明になるけれども、一方では特殊法人を作るとそれを農家側に押しつけるというような印象がないでもない。また、そういうことを御注意いただいた面もございますので、あれやこれや考えまして、やはり根本問題はまだほかにもあるわけだから、そういう特殊法人にしたらいいのかということも、今は問題はあとに残しておいた方がいいのではないかというような考え方で、特殊法人をとらない方がいいではないかというので、これは相当議論したのでありまして、これはちょっ農地局には気の毒なんですが、農地局の考え方が私は正当だと思っているけれども、実際は、考えてみると、そういう根本論が解決しない間は、やはり現状をそのまま率直に認めて、非常に問題をあとに残すけれども、とりあえずやれるところからやった方がいいじゃないかという裁定を次官として下しておるような次第であります。
  22. 高石幸三郎

    ○高石小委員 先ほども御説明がありました通り農林漁業基本問題調査会で政党も政府もこの農業法人の問題を取り上げてやっているのだからその結論を待とう、ことに農業一般の構造問題に関連して検討すべきものだから、それまで待とうという、これはごもっともと思う。従いまして、今回の農業法人の法制化が、先ほどお話しの通り、一応臨時的な措置であり、暫定的な法律措置になるかもしれぬ、これは了承するのですが、とかく、最近は、臨時措置法だの暫定法などで一応当面を糊塗し問題を回避して、そのうちに根本問題を忘れてしまうというのがおそらく最近の悪い例だと思う。こういうことを実は案じているのですが、この農業法人に関する限りいかがですか。
  23. 渡部伍良

    渡部説明員 そもそも、この法人問題は、官側から出たのではなくして、農業をみずから営む人の側から出てきておるのでございまして、この問題で、かりに私が説明したような案が一応出ましても、さらにもっと突き進んだ工夫が必ず出てくると思う。従いまして、率直に申し上げますと、法人問題は役所が農家の側に引っぱられておると私は認識しておるのでありますが、ほかの問題で御指摘のような点がございますけれども法人の問題はそう簡単にほうっておける問題ではない。これは時間の問題はあると思います。何年先になるか問題はあると思いますけれども、やはり農家自身の経営生活の問題ですから、こういうふうに一歩進めていけば、役所の方も問題を取り上げる足がかりができることになりますから、それで、いろいろな資料なり考え方なりも今よりは容易にできることになると思います。御心配の点はないようにいたしたいと思っております。
  24. 高石幸三郎

    ○高石小委員 政党なりあるいは調査会なりに一切をまかし切ってしまって、そうして、せっかく、今お話しの通り農民の要望というか、あるいは本質的に日本農業の将来を規制するというような大きな問題でありますから、取り上げた以上は、少なくとも農林省として一つ大きな問題として、御自身が構想を持ってやるように御指導下さることを希望しておきます。  そこで、農地法改正なり農協法改正なりで一応法人を認めるというと、現行会社法による法人になるわけですね。その場合、新聞では、あるいは見違いかもしれませんが、株式組織はいけないと書いてあったのです。そういう話はどうなんですか。
  25. 渡部伍良

    渡部説明員 これは、私の方では、現在法人は、会社法によるもの、それから協同組合その他特殊立法による法人、それからまた民法による法人がございます。たとえば民法の法人ども農家が新しい農業を取り入れるのに、ある一定土地をみなが出し合って、そこを試験地にするということなら、そのものが試験研究の法人として民法上の法人でできる、こういうように思っております。従って、会社法による会社に限定するというつもりはございません。もっと広く考えております。これは、あくまでも、農家が、その目的によって、どういう組織にしたら、どういう形態にしたらいいかということを選定していくものです。従いまして、今の会社法の中の株式会社が悪いという考え方は成り立たないのでございます。ただ、議論の過程におきましては、農業と株式会社というものは従来の観念からすればあまりにも離れた観念じゃないかという考え議論の過程ではございました。まあ、株式会社とすれば、三井、三菱や大きい会社をすぐ観念するのですが、しかし、農家が株式会社でもよろしいということになれば、これは設立の手続なりあるいは株主総会の招集権とかあるいは株主の権利とかそういういろいろな問題が複雑にはなりますけれども、私の方ではその株式会社にすることによって農地法建前がくずれる心配はないように、出資者の制限とか組織上の制限とか農地保有の制限ということをやる。株式会社であろうが合名会社であろうが、そういう従来の先入観念にとらわれた感情の問題で処置してはいけない、こういうように考えております。
  26. 高石幸三郎

    ○高石小委員 よくわかりました。そうすると、やはり、同族法人、いわゆる一戸一法人という問題の点も、これも差しつかえないということで了承ていいのですね。
  27. 渡部伍良

    渡部説明員 その通りであります。
  28. 高石幸三郎

    ○高石小委員 もう一点ですが、そうすると、現在いろいろな法人が現在の法の盲点をくぐってできております。この法人と、それから今これから御心配下さるという法人と、切りかえと申しますか、経過的な措置はどういうふうに指導されるおつもりですか。
  29. 渡部伍良

    渡部説明員 これは、もし私が御説明申し上げましたような案が出ますれば、簡単に切りかえることができると思います。今、農地賃借権使用貸借権もないながら法人を作っておるわけでございますから、これを私が説明したような方法で切りかえればいいのですから、これは簡単にできると思います。
  30. 高石幸三郎

    ○高石小委員 そうすると、問題は、この税法上の問題です。現在すでに国税庁と既存の法人の間に訴訟問題が提起されておるわけであります。そういった現実の事態は、この法律というか、とにかく単独法にしろ改正法ができた場合に、どういうような帰結をさすべきか。
  31. 渡部伍良

    渡部説明員 これは、法律上の問題になりまして、すでに発生しておる納税の義務が正しいかどうかという判定になると思いますが、かりに私が説明したような案が施行された後のことと、それまでのこととは、これはおのずから解釈が違ってくると思います。これは具体的な事例によって一つ一つ解決していく以外にないのじゃないかと思います。
  32. 高石幸三郎

    ○高石小委員 私ちょっと三月二十七日の決議の文をよく記憶しておりませんが、この農業法人の法制化ができるのだが、そのできることがはっきりしておるとすれば、現在国税庁と既存の農業法人との間に起こっておる課税上の問題は、ある程度行政措置というか話し合いによっていま少し実情に即した取り扱いができないかというようなことも決議に含めたと思っておるのですが、そういう意味において、いわゆる立法化が確実になった節は、農林省当局として、これらの全く熱心な、そして真剣に共同経営に取り組んでおる人たちのために、何とか経過的に、法律ができる前は知らないのだということでなく、——法律というものは厳正ですから、その事態の発生主義に大ていなっておりますからやむを得ないのですが、何とか、こういう機運ができたとすれば、行政的に話し合いの措置ができるような親切味がないかどうか、承りたいのです。
  33. 渡部伍良

    渡部説明員 もしかりに私が御説明申し上げましたような案が実施されて、今まで問題になっておる法人がその趣旨に沿って適法にできていくということになれば、その前の問題につきましては、これは行政上の処置の問題でございますから、三月二十七日の御決議には、「実質課税の原則によるも、不当に農業法人を抑圧するが如きことのないよう取扱上特に慎重を期すること。」、こういうことになっておりますから、過去の問題の処理につきましては、先が不確定ではなしに、先はこうなっておるのだから、それに照らして行政上善処いたしたい、こう思っております。
  34. 高石幸三郎

    ○高石小委員 これは、希望とも、あるいはまた、ぜひそうしてもらいたいという気持でもあるわけですが、実際まだ要綱は拝見しておりませんのでわからないのですが、問題は税務会計の点です。おそらく、かりに農家法人を作っても、いわゆる現在の税法上の税務経理を完全にやり得るということは少ないだろうと思うのです。従いまして、青色申告にすればずっと簡単でありますが、なかなかその青色申告まで持ち込むということは困難であるので、われわれが心配なのは、法人化が普及してくればだんだんと実際の段階において必ず今度は税務関係においていろいろの問題が起こるのじゃないかということを憂慮しております。このせっかくの立法化をお計らい願うのであれば、そういう点について、何とか法律なり政令なりにおいて、あるいはまた国税当局との話し合いにおいて、事前にそういう心配を除いていくような方途は講ぜられないかどうか、それを最後に承っておきます。
  35. 渡部伍良

    渡部説明員 私の考えは、先ほど来申し上げましたように、法人組織による経営というものは行政庁で強制するのではないということが第一点であります。従って、経理、これは今個人にも農業簿記を非常に奨励しておりますが、そういう知識あるいは能力のない人までも法人組織にせいというわけではないのであります。それからまた、逆に言いますと、公益法人ならばあるいは今までそういう知識がある人も相当ある、何人か寄ってやる法人になりますと、必ずその中にはそういう経理についても進んだ人がおるわけであるが、今まで農業簿記をつけろと言ってもつけなかった人に、勢い法人組織によって簿記の知識が普及していくということは、やはり、家計と経営の分離がはっきりして、農業に対する生産の意欲が出てくることになるのではないかと思います。従って、今の一般の商工業の方面において、これは御承知だと思いますが、洗たく屋、そば屋、私の近所なんかほとんど有限会社などになっております。それはやっぱり税務署にはやっかいをかけております。その程度においてのやっかいをかけることは、これは、とる方と払うのがいやだという対立ですから、いやだと言う方もあると思いますが、少なくとも農林省としましては、やはり法人を作る以上は、そういう知識の普及なりPRなり指導、そういうものは力を入れてやっていかなければならない、こういうふうに思っております。
  36. 高石幸三郎

    ○高石小委員 いろいろ承った点についてなお若干伺いたいと思いますけれども、こちらも少し勉強しなければなりませんので、保留いたします。
  37. 永田亮一

    永田委員長 本日はこれにて散会いたします。     午後一時三十四分散会