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1959-11-27 第33回国会 衆議院 農林水産委員会社会労働委員会商工委員会連合審査会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十四年十一月二十七日(金曜日)     午後二時八分開議  出席委員   農林水産委員会    委員長 吉川 久衛君    理事 田口長治郎君 理事 永田 亮一君    理事 丹羽 兵助君 理事 赤路 友藏君    理事 石田 宥全君 理事 芳賀  貢君       今井  耕君    金丸  信君       倉成  正君    笹山茂太郎君       高石幸三郎君    綱島 正興君       野原 正勝君    早川  崇君       福永 一臣君    三和 精一君       保岡 武久君    足鹿  覺君       川村 継義君    松浦 定義君   社会労働委員会    理事 大坪 保雄君 理事 八田 貞義君    理事 五島 虎雄君       柳谷清三郎君   商工委員会    委員長 中村 幸八君    理事 田中 武夫君 理事 松平 忠久君       始関 伊平君    板川 正吾君       武藤 武雄君  出席政府委員         総理府事務官         (経済企画庁調         整局長)    大堀  弘君         農林政務次官  大野 市郎君         通商産業政務次         官       内田 常雄君  委員外出席者         厚 生 技 官         (公衆衛生局環         境衛生部長)  聖成  稔君         厚生事務官         (公衆衛生局環         境衛生部環境衛         生課長)    小野沢知雄君         水産庁次長   高橋 泰彦君         農林事務官         (水産庁漁政部         長)      林田悠紀夫君         通商産業技官         (企業局工業用         水課長)    藤岡 大信君         通商産業事務官         (軽工業局長) 秋山 武夫君         通商産業技官  代永 久寿君         海上保安官         (警備救難部         長)      樋野 忠樹君         海上保安官         (水路部海象課         長)      松崎 卓一君         農林水産委員会         専門員     岩隈  博君     ————————————— 本日の会議に付した案件  水俣湾における漁業被害に関する件      ————◇—————     〔吉川農林水産委員長委員長席に着く〕
  2. 吉川久衛

    吉川委員長 これより農林水産委員会社会労働委員会商工委員会連合審査会を開会いたします。  先例に従いまして私が委員長の職務を行ないます。  水俣湾における漁業被害に関する件につきまして調査を進めます。  質疑の通告がありますのでこれを許します。八田貞義君。
  3. 八田貞義

    八田委員 今度の水俣病発生に関しまして、抜本的に対策を講じまして、二度と発生しないような状態に持っていかなければならぬわけでありますが、まず、そのためには、対策といたしまして、水俣病患者被害漁民の救済問題、それから原因究明に力を尽くしていくということ、それから工場排水との関連問題がございます。  こういった三つの問題につきまして質問申し上げてみたいと思いますが、まず第一に、原因そのものがはっきりしておりません。まず原因究明問題についていろいろと質問申し上げたいと思うのでありますが、その前に、まず、疫学的な面から、患者発生状況につきまして詳しく御説明願いたいのであります。たとえば、何年度に何名患者発生し、しかもその患者年令とか性別の問題、それから月別分布、こういった面につきまして精細に御報告をいただきたいと思います。
  4. 聖成稔

    聖成説明員 水俣病患者の多発いたしましたのは、すでに御案内のように、昭和三十一年でございます。この多発によりまして、すでに二十八年ごろからぼつぼつ発生しておったということが明らかになって参ったわけでございます。従いまして、はっきりこの問題が表面に出ましたのは三十一年からでございます。各年別の患者発生を申し上げますと、二十八年が一名、二十九年が十二名、三十年が九名、三十一年に、先ほど申しましたように四十三名まとまって出たわけでございます。それから三十二年は一名も発生がございません。三十三年に三名、三十四年、本年度に十名発生をいたしました。     〔吉川農林水産委員長退席田口農林水産委員長代理着席〕  なお、患者月別発生は、三十一年の一番多発したときを月別に申し上げますと、一月に一名、二月に一名、三月に一名、四月に八名、五月に七名、六月に七名、七月に二名、八月に七名、九月に四名、十月に一名、十一月三名、十二月一名、合計四十三名。これは三十一年の各月別でございまして、三十一年は一番多く発生いたしておるわけでございます。  それから、性別に見ますと、ちょっと古い統計で恐縮でございますが、患者総数が六十九名の段階の際に、男子が四十名、女子が二十九名でございます。  それから、患者年令でございますが、零才から四才までが十名、五才から九才までが十四名、十才から十九才までが八名、二十才から二十九才までが七名、三十才から三十九才までが八名、四十才から四十九才が十四名、五十才から五十九才が十二名、六十才から六十九才が三名、七十才から七十九才が二名、こういったような状況でございます。
  5. 八田貞義

    八田委員 今の御報告によりますと、別に年令別差異もないし、性別差異もない、一年を通じて患者発生がある、こういうことになって参ります。  ところで、三十二年に患者発生がなかったんですが、どんな予防措置を講ぜられて患者発生しなかったのか、ちょっとその点をお知らせ願いたい。
  6. 聖成稔

    聖成説明員 三十一年に多発いたしましてこの問題が表面にはっきり出て参りまして、当初は何か日本脳炎類似ヴィールス性疾患ではないかというようなことで調査が始まったのでございますが、翌年、三十二年の四月に至りまして、これは水俣湾に生息いたします魚介類を多量に摂食することによって起こる一種の食中毒に基づくものであるということがはっきりいたしましたので、直ちに、熊本衛生部あるいは現地保健所等を通じまして、水俣湾魚介類を摂食することは非常に危険であるということを周知することに努めたわけでございます。当該年度におきましては患者発生がなく、三十三年の七月まで引き続いて患者発生がなかったのでございますが、三十三年の八月に至って一名の患者が出まして、再び発生の兆を見たわけでございます。この間終始衛生当局におきましては現地魚介類危険性を強調して参ったのでございますが、遺憾ながら、一部この魚介類を多量に摂食する人が出て参りまして、かような結果を見たようなわけでございます。
  7. 八田貞義

    八田委員 それから、もう一つ聞き漏らしたのですが、総計を通じて患者は何名で、そして死者は何名で、患者死者致命率が幾らになるか、これもお知らせ願いたいと思います。
  8. 聖成稔

    聖成説明員 現在までの患者発生総数七十八名、それから死亡総数は二十九名でございまして、致命率三七・二%でございます。
  9. 八田貞義

    八田委員 三十二年には患者発生がなかったのは、何か魚介類による中毒であろうという観点から魚介類摂取を禁止されたように伺ったのでありますが、その以前は何か濾過性病原体、いわゆるヴィールスによる原因と考えて研究をやられたようでございますが、最近になると、ケミカル・インタクシケーション、すなわち有機水銀中毒に変わって参ったようです。ずっと報告を伺いますと、初めは、何か細菌性の、あるいは病毒性のものの存在によってこういった患者発生したんだということだったが、ついには、魚介類に基づく中毒であろう、そういうふうに変わってきて、さらにまた、魚介類中毒原因物質として有機水銀というものが台頭して参ったのでありますが、そういったいわゆる原因物質の発表の経過有機水銀によるところの中毒だと結論づけるに至った経過を一つお知らせ願いたい。
  10. 聖成稔

    聖成説明員 先ほど私が申し上げましたように、当初は何かヴィールス性疾患ではないかということが疑われたわけでございますが、先ほども申し上げましたように、これが、幾ばくもなくして、水俣湾に生息いたします魚介類を多量に摂食することによって起こる病気である、食中毒であるということがはっきりいたしたわけでございます。そうして、当時主としてこの問題の究明に当たりました熊本大学医学部におきまして、まず、この疾病にかかる人の大部分が漁業関係者である、魚にきわめて縁の深い職業の人に限られておるということ、さらに、ネコが人間とほぼ同様の中枢神経を侵される疾病にかかっておるといったような事実、こういうことから、これは何か魚に関係があるのではなかろうかということが疑われまして、今度は実験的に魚介類を健康なネコに食べさせてみますると、全く自然発症と同じような病症を呈するということによりまして、今や魚介類による食中毒であるということが明白になったわけでございます。その後、しからばどうして水俣に生息いたします魚介類を摂食することによってかような疾病が起こってくるかということにつきまして研究が続けられておったわけでございますが、特に厚生省におきましては、昨年以来、厚生大臣諮問機関でございます食品衛生調査会の中に水俣病特別部会というものを設けまして、当時熊本大学学長鰐淵博士部会長に御就任いただきまして、研究班を設けまして、そうして政府の方からも必要な研究資金を投じまして、そして原因解明に当たっていただいたわけでございます。かような中毒事例というものは、わが国におきましても全く例のないことであり、熊本大学におきましても、ずいぶんその全力をあげて原因究明に当たられて参ったわけでございますが、このほどその結論が出て参りまして、ただいま八田先生がおっしゃいますように、原因物質魚介類中に含まれている有機水銀化合物であるということが断定されたわけでございます。  その理由は、第一点といたしましては、本病の主要症状が、運動失調中枢性視野狭窄知覚障害、この三つ主要症状でございます。これは水俣病患者のほとんど全部に例外なく現われておる症状でございます。これはまた文献に記載されております有機水銀化合物中毒症状と全く一致しておるという点が第一点でございます。第二点といたしましては、本病にかかられて不幸なくなりました方の病理解剖結果の所見でございますが、小脳の顆粒細胞に強い退行性変化が認められるということと、視中枢退行性変化がある、これまた有機水銀化合物中毒剖検例に全く一致しておるという事実。第三点といたしましては、患者の尿中に水銀排泄量対照例に比較いたしましてきわめて多量であるということ。また、解剖いたしました結果の化学分析で、脳、肝臓、じん臓等には、水銀が、本病による死亡者の場合には対照例に比べて多量に検出される。さらに、水俣湾底の泥土中には、他の地区に比べましてきわめて多量の水銀検出されること。あるいは、この地区から採取いたしました貝類の中にも多量の水銀が発見され、これを他の動物に与えることによりまして臨床的にも病理的にも全く同じ所見を認めることができること。かような実験のほかに、さらに、有機水銀化合物の一種でございますジメチル水銀あるいはエチル燐酸水銀といったようなものを実験動物に投与することによりまして、これまた症状的にも病理組織学的にも本病と同様の病変を起こさせることができる。こういったようなことがおもなる点でございます。  過般鰐淵特別部会長が御上京になりまして、食品衛生調査会特別部会におきまして御報告になりました結果、満場一致をもちまして、本病の原因魚介類中に含まれておるある種の有機水銀化合物に間違いないという断定が下されたような次第でございます。
  11. 八田貞義

    八田委員 今の御報告を伺いますと、熊本大学は三十一年から研究に着手しており、それから三十四年になって初めてある種の有機水銀化合物というような結論が出て参ったのですが、そうすると、三年間、原因究明について空費されたということがわかるわけです。三年間、患者発生原因物質究明に心がけておった。しかし、結果を追っていくと、三年間は空費されておる。そうして三十四年になって初めて有機水銀化合物というふうに言われてきたわけですが、御承知のように、水銀というものは非常に検出のむずかしいもので、水銀というものを頭に入れて検索をしていかなければ、これをみな逃がしてしまう。ですから、私は、こういった今まで熊本大学でやられた研究は非常に尊敬すべきものと思いますが、しかし、大学研究機関というものは、言うならば保健衛生とは直接関係のない研究機関なんです。厚生省がすでに今日まで報告を入手されていながら、保健衛生と直結しない大学研究機関にまかしておったということは、非常に私らには理解できない。保健衛生に直接タッチしておる厚生省国立研究所になぜ依頼せずにおったか。これは実際保健衛生研究者でないとこういった物質というものはなかなか究明できない。結論がつけられないというのは、大学研究機関というのは保健衛生関係ない研究機関だ。ここに三年間も空費しておいて、しかも患者発生が七十八名というような大きな数字を出したということは、少なくとも保健衛生の衝に当たる厚生省がなぜ自分の手足になって働いている研究機関を利用されなかったかということであります。一地方大学研究機関にまかせ切りにしておったこの三年間の空費ということが非常に大きな問題になった。この点、今までの原因究明に対して回り道をとったと私は思う。これをもし保健衛生に直結するところの国立研究機関でやったならば、もう少し成績のすっきりしたものが出てきて、対策がもっと早く講ぜられておったんではないかというふうに私は考えます。しかも、有機水銀説に変わったのは、これはアメリカ人がサゼストしてきたんじゃないですか。それまでは日本学者水銀というものは頭になかった。これは、今まで政府でとられておった態度が、非常に緩慢と言えば緩慢、悪い言葉で言えば怠慢と言わざるを得なくなってくる。これは一体どうですか。有機水銀に変わったのは、水銀というものが頭になければとても原因究明はできない。すっと見てみますと、今までは伝染性疾患ではないだろうかというようなことで進められてきた。水銀という頭がなかった。ですから、水銀というものは全然浮かび上がってこない。三年間もたって初めて、こういった魚介類中の有機水銀らしい、しかもある種の有機水銀だといって、あげられた水銀化合物としては、ジメチル水銀とか、あるいはエチル燐酸水銀とあげられているが、これはともにアルキル水銀なんです。あとは何にもやっておらない。こういうことから見ますと、私らには、何か研究の進め方に対して保健衛生から離れた研究機関政府の施策が進んでおったというところに三年間の空費が起こったんではないだろうかというふうな気がいたします。アメリカ人に言われて初めて有機水銀検出をやって、ほかの地区と比べて非常に多いからやはり有機水銀らしいということになってしまったんですが、一体、その間の真相、日本学者アメリカ人から言われるまでじいっとしておったということ、この点についてお知らせ願いたいと思います。
  12. 聖成稔

    聖成説明員 先ほど申し上げましたように、当初三十一年にこの問題がはっきり表面に出て参りました際に、厚生省といたしましては、直ちに国立公衆衛生院疫学部長松田先生を中心といたします疫学調査班を設けまして、これに熊本大学現地方々にも加わっていただき、熊本衛生部あるいは衛生研究所方々にも加わっていただきまして、そうして最初の疫学的な調査に乗り出したわけでございます。その結果、先ほど申し上げましたように、これはヴィールス性疾患ではなくて魚介類による中毒事件であるということがはっきりいたしたわけであります。従って、私ども厚生省関係研究機関最初から全然頭に置かなかったというような事実はないわけでございます。ところが、現実には、患者のほとんど全部は熊本大学付属病院に入院をいたし、ここにおいて治療を受けたわけでございます。すでに治療に一段落を告げて郷里に帰りました者も多数ございますが、現にまだ治療続行中の者もあるというような状態で、臨床的には熊本大学において見ていただくこと以外に方法はなかったということが第一点。同時にまた、なくなりました方の病理解剖ということにつきましてもこれまた熊本大学病理学教室において解剖が実施されるといったようなことから、先ほど私が申しました有機水銀ということに断定されるに至りました根拠につきましても、臨床的な所見あるいは病理学的な所見というものが大きくものを言っておることは、先生のお聞きいただいた通りであります。そういった点から、これは東京衛生試験所であるとか予防衛生研究所といったような機関だけではこうした臨床的な研究あるいは病理学的な研究というものは不可能に近い問題であったということで御了承をいただきたいと思います。決して、保健衛生研究機関でない大学にのみ依存いたしまして、私どもが全然これにゆだねて手をこまぬいておったというわけではございません。終始熊本衛生部大学、それからこちらの食品衛生調査会——食品衛生調査会には、予研の所長あるいは衛生試験所所長等皆さん関係者出席になっております。また、最終的には、衛生試験所におきまして、水俣湾試験材料東京衛生試験所に送りまして、ここでもやはり検査をしていただきまして、ここの検査の結果もまた、この水銀がほかと比較いたしまして多量に出るというデータがはっきり出て参りまして、それの裏づけもしていただいたような次第でございます。  なおまた、有機水銀ということになるにつきましてアメリカ学者から何かサゼストされたというようなお話がございましたが、私どもはそういうことを伺ったことはございません。先般熊本大学の御報告におきましても、当初から、これは重金属による中毒、あるいは重金属類魚介類の体内に入っておって、その魚介類を摂取することによって起こる重金属中毒であるということは早くから熊本大学断定をいたしておったのでありますが、さてこの重金属なるものが何ものであるかということに相当苦心をされまして、今日のある種の有機水銀というところまで試験研究が進められた、こういうような経過でございます。
  13. 八田貞義

    八田委員 聖成部長の今の答弁はよくわかるのですが、実は、ここでお話しになれば、いかにも厚生省がタッチして大いにやったように伺うのですけれども、実際は、保健衛生研究機関の実際に働いておられる人を現場に派遣するとか何とかやらなければ、研究体制というものができ上がってこないのです。書類の上においては、それは、食品衛生調査会を持たれて、いろんな所長なんかをお呼びになって相談されたことはよくわかるのですが、実際はその下に現実に働いておられる専門家が一つも動いていないということです。ただあなたは材料を受け取って机の上で分析してみたってこれは仕方がないので、現実保健衛生専門家を派遣して、そして熊本大学と協力するような研究体制ができて、初めて原因究明というものができ上がってくると思うのです。そうでなければ、書類だけでは何もできません。私なんかがこれを見たって、何だ、この答申というのは作文じゃないか、こういうような感じがするのです。こんなものは、ちょっと人の話を聞けばすぐできることなんです。しかし、実際ここに書かれておるこの文句が出るまでの裏づけ実験というものを保健衛生専門家によってやらなければ、これはどうにもならないのです。この裏づげはいわゆる保健衛生専門家がやっていないのですよ。出てきた文句は、単に熊本大学のやられた成績を総合されて書類の上の検討で書かれた文句なんです。  特に私が伺いたいのは、今まで保健衛生研究機関がほんとうは動員されていなかったという一点と、それから、毒性物質性質についてです。熊本大学報告によりますと、水俣病を惹起する毒性物質は水に溶けない、そうして有機溶媒に溶けない性質を持っている、ところが、ジメチル水銀エチル燐酸水銀などのアルキル水銀化合物を使った場合には水俣病類似症状を呈したとある。しかし、アルキル水銀は水に溶けないが有機溶媒に溶けるという性質を持っております。すなわち、両者はその物理的な性状が違うということが熊本大学報告からわかります。そうしますと、この有機溶媒に溶けないような水俣病毒性物質がどうして脳の方へ行くのだろうか、神経系統に結びつくのだろうかという疑問が出てこなければならない。一体、この報告を見ますと、ハンターラッセルジンドロームという有機水銀中毒臨床症状と非常によく似ているから、多分それであろうというような推定が非常に大きいのです。一体ハンターラッセルジンドロームというのは、三徴候をあげられておりますけれども、私も調べてみたのですが、その出所文献がよくわからない。また、主因は有機水銀中毒というように報告の方には書いてございますが、一体有機水銀中毒のどんなものを言っておるのか、はっきりしていないのです。アルキル水銀だけの中毒ハンターラッセルジンドロームを起こすのか、あるいはまた、アセチル硫酸水銀というような有機水銀化合物ハンターラッセルジンドロームを起こすのか、あるいはマーキュロクロームのようなカメの甲のついた有機水銀化合物ハンターラッセルジンドロームを起こすのか、ちょっとはっきりしないのですが、この点について、多分調査されておるだろうと思うのですが、お知らせを願いたいと思います。
  14. 聖成稔

    聖成説明員 ハンター氏の報告は、文献によりますと、メチル水銀化合物の吸入によりまして、アタキシーだとか、あるいは言語障害視野狭窄、こういった症状を起こす、さらに、記憶・知能障害といったようなものは起こさなかったというようなことが記載されております。それで、今先生からいろいろお話がございましたように、このジメチル水銀あるいはエチル水銀というのは、ただこの実験に使ってみてこういう結果が出たというだけでありまして、従って、本病の原因物質ジメチル水銀あるいはエチル水銀であるとか、ないしアルキル水銀であるというような断定はいまだ行なわれていないわけでございます。従いまして、今後の原因究明の私どもの担当いたします分野といたしましては、もっぱらこのある種の有機水銀化合物というものが一体何であるかということにその重点を置いてやって参るということで、今後もまた関係研究機関一体になりましてその究明に進みたい、このように考えております。
  15. 八田貞義

    八田委員 そのハンター氏の文献というのはどういう文献ですか。
  16. 聖成稔

    聖成説明員 一九五四年に出ました「ジェー・ニューロル・ニューロロジー・アンド・サイカイアトリ」という書物でございます。これに「フォーカル・セリブラル・アンド・セリベラ・アトラフィ・イン・ア・ヒューマン・サブジェクト・デュー・ツー・オーガニク・マーキュリー・コンパウンズ」、こういう題名で報告されております。
  17. 八田貞義

    八田委員 この文献あとで詳しく読ませていただきましょう。  それから、ある種の有機水銀化合物ということを考えたということですが、これはどうしてこういうものができ上がるかという問題なんです。この熊本大学報告を見ますと魚介類中毒、あるいは今の報告でも魚介類中毒ということになっておるのですが、報告を見ますと、有機水銀検出したのだという材料はイガイを使っておられるのですね。そして、あと泥の中から出ておる。魚は何も検体としてあげられていないのですが、魚は一体どんな検体をとって水銀がどれくらいに検出されていますか。
  18. 聖成稔

    聖成説明員 スズキの筋肉内に一六・六PPM、それからチヌの筋肉内に二四・一PPM、それから同じくチヌの内臓に二六・三PPM、サワラの筋肉内に八・七PPM、同じくサワラの内臓に一五・三PPM、コントロールはいずれも〇・一PPM以下、こういうことであります。
  19. 八田貞義

    八田委員 イガイの方はどれくらいですか。
  20. 聖成稔

    聖成説明員 水俣湾産イガイにつきましては、九八ないし九九PPMでございます。
  21. 八田貞義

    八田委員 イガイが非常に多いのですね。今言われたイガイの九八とか九九とかいうPPMの計算は、熊本大学じゃないのですね。
  22. 聖成稔

    聖成説明員 ただいまのイガイのあれは国立衛生試験所報告でございます。
  23. 八田貞義

    八田委員 このスズキとかチヌとかサワラですか、こういう魚、それからイガイ、これはほかの方の地区なんかとの比較はございましょうか。たとえばほかの湾でとれた場合。一般に、水銀というのは、人間が正常状態でも小便の中に出しておりますね。それから、黒パンでも、ジャガイモでも、タラ、ニシンなんかでも、みんな水銀検出できるわけですが、このスズキ、チヌ、サワラという成績熊本大学で出された成績だと思いますが、イガイの方は非常にたくさん含まれておって、しかも国立衛生試験所で出された成績だ。一体、ほかの方の無毒地域というふうに見られる対照例との比較はどのくらいのものでしょうか。
  24. 聖成稔

    聖成説明員 先ほどスズキ、チヌ、サワラ等につきましての検出率を申し上げたわけでありますが、対照例として有明海でとれました同種の魚につきまして水銀の含有量が調べられておりますが、いずれも〇・一PPM以下であるということでございます。
  25. 八田貞義

    八田委員 ほかの地区と言われても、どういうふうにとられたか、伺わなければならぬのですが、それはそれとしまして、国立衛生試験所でやられたイガイの中の検出成績、これを見ますと、イガイの中の水銀検出率は高いことは高いのですが、マンガンが非常にたくさん出ておるのですね。マンガンは、イガイから八五PPM、それから、泥の中から七二OPPM。ところが、X線を使った検査成績では、マンガンが、イガイからは一〇四プラス・マイナス七PPM、泥の中からは一〇五八プラス・マイナス一二OPPMと、非常にたくさん出ております。むしろ水銀よりたくさんマンガンが出ておるのですが、一体、マンガンを否定してしまって水銀だけにしぼったという点はいかがでしょう。結局、臨床症状ハンターラッセルジンドロームから結びつけてマンガンを否定されてしまったというような格好になっているようですが、私は、やっぱりマンガンの問題についての成績検討がはなはだ少ないと思うのです。マンガンを否定するような成績はこれから見てほとんど出てこないのですね。現実にはこれだけのマンガンがたくさん出ておる。しかも、大切なことは、泥の中からマンガンとか水銀とかセレンとか鉛が検出されておりますが、そのほかに硫黄に対する検出成績はないのですね。硫黄はどうしてこういう場合やられていかなかったか、こう思うのですが、どうでしょう。
  26. 聖成稔

    聖成説明員 食品衛生調査会からの厚生大臣への答申につきましても、水俣病の主因をなすものはある種の水銀化合物であるということで、主因という言葉が使われておるのであります。従いまして、その他の何らかの物質が関与しているかもしれないけれども有機水銀が主たる原因であることは間違いない、こういうような断定が下されたわけでございます。従いまして、マンガンその他の物質につきましても全面的に否定されたというわけではございません。特にマンガンにつきましては、かつて昭和十四年に神奈川県の平塚で井戸水の中にマンガンが入りまして、それによる経口的な中毒が起こった、そういう唯一の例がわが国にもあるわけでございます。これは、文献にも記載されておりますように、やはり中枢神経が侵されますが、顔面の硬直いたします、八田先生よく御存じのパーキンソニスムスが主要症状であるという点におきまして、若干今度の水俣病の場合と所見が違うというようなことが言われておるわけでございます。しかし、マンガンもまた一時かなり濃厚に疑われた物質でございまして、これも何らかの役割をあるいは果たしているかもしれないというようなことを言われておりますが、何といたしましても、主たる原因有機水銀化合物であるというようなことが、先ほど申し上げたような諸点から断定されておるような次第でございます。
  27. 八田貞義

    八田委員 これは聖成さんにお聞きしてもお困りになるだろうと思うのですが、実際はマンガンとか硫黄というものを否定すべき実験というものをたくさん重ねておかなければならぬ。特に魚介類中毒では有毒アミン類をまず否定しなければならぬのですが、否定すべき実験が非常に乏しいということがわれわれには考えられて参ります。特に、こういったある種の有機水銀化合物というのですが、新聞なんかを見ますと、工場排水と非常に結びつけておる、こういうふうに言われるのですが、工場排水と結びつけた場合に、一体結びつけ得るものか得ないものか、この魚介類中毒工場排水と関連があるのかないのか、あなた方は、いろいろなところから報告を聞かれまして、一体どういうふうにお考えになっているか、一つお答えを願いたい。
  28. 聖成稔

    聖成説明員 先ほど申し上げましたように、まずもって第一段階として、水俣病原因水俣並びにその周辺に生息いたします魚介類を多量に摂食することによって起こる中毒性の病患であるということが第一点として明らかになり、第二点といたしましては、その魚介類中にあるいかなる物質原因であるかということが追及されまして、これが主たる原因はある種の有機水銀化合物である、こういう断定が行なわれたというのが現段階であります。従いまして、まだ工場廃液と直接の関係ありというところまで断定の段階には至っておらないわけでございます。しかしながら、御案内のように、現地の化学工場におきまして多量の水銀が触媒として使用されており、これがまた、現在においてはある程度処理されておりますが、かつてはほとんど処理されないままに水俣湾に排出されておったという事実、また、海底の泥土の中に相当多量の水銀が発見されておるという事実。しかしながら、工場廃液に出されてくるのは、御案内のように無機水銀でございます。従って、この無機水銀がかりに水俣病原因であるとした場合に、この無機水銀がどの段階において有機水銀変化して魚介類の体内に入り、そして人体に入ってくるかという一連の経路というものが今後究明されなければ、工場廃液によるということを断定するということは、私はできないと思うのであります。そういう段階で、今後の研究は、当然多角的に、今申し上げたような諸点に向かって、いろいろの学問、いろいろの立場から原因が追及されていかなければならない、かように私どもは考えておるわけでございます。
  29. 八田貞義

    八田委員 泥の中に水銀が多量に検出された、そうすると、水銀を触媒に使っておる工場からの排水なんだ、こういうふうな結びつけが考えられて参りますが、一体その工場では何のために水銀を触媒に使っておるのか、そして、水俣湾にどれくらい近接した工場であるかということをちょっとお知らせ願います。
  30. 秋山武夫

    ○秋山説明員 ただいまで工場の名前は出て参りませんでしたが、問題になっておりますのは新日本窒素の水俣工場でございますので、はっきり名前を申し上げておきます。  ここで作っておりますのは、いろいろなものを作っておりますが、大きく分けて、有機部門、無機部門、二いろあります。無機部門の主たる製品は硫安その他の肥料で、有機部門で作っておりますのは、塩化ビニール、アセトアルデヒド、酢酸等でございます。水銀が触媒に使われますのは、この塩化ビニールの部門と、アセトアルデヒドの部門であります。水銀量としてはアセトアルデヒドの方がよけい使用されております。
  31. 八田貞義

    八田委員 今アセトアルデヒドの方に使われておるというのですが、塩化ビニールの方にも水銀が触媒に使われておりますね。アセトアルデヒドの場合にも使われておりますが、酢酸ビニールを作るのですか。
  32. 秋山武夫

    ○秋山説明員 酢酸ビニールではありません。酢酸そのものであります。
  33. 八田貞義

    八田委員 私が伺っておるのは、塩化ビニールの方はわかるのですが、酢酸ビニールを作る場合にはアセトアルデヒドの段階があるのです。やはり酢酸ビニールを作っておるのではありませんか。
  34. 秋山武夫

    ○秋山説明員 失礼いたしました。最後的には酢酸ビニールになるわけでございます。アセトアルデヒドから酢酸を作る、それから酢酸ビニールにいくという経路でございます。
  35. 八田貞義

    八田委員 そうしますと、この工場は少なくとも塩化ビニールと酢酸ビニールを作っておるのだ。そうすると、酢酸ビニールの場合にはアセチル硫酸水銀というものが使われて参ります。これはやはり有機水銀です。ところが、アルキル水銀だけが熊本大学では取り上げられている。アセチル硫酸水銀というものは全然取り上げられていないのです。同じ有機水銀ですよ。これは、もちろん、やはりハンターラッセルジンドローム、そういうものが起こってくるのではないだろうか。もちろんアルキル水銀の方はイオン化しがたい化合物でありますが、アセチル硫酸水銀になるとイオン化しやすい。それが海水に入った場合どういうような変化をしてくるだろうかというような疑問が出てくるわけですね。  そうしますと、この塩化ビニールを作る場合に水銀を触媒に使うが、一体どれくらい触媒用として使われるかですね。そしてまたその触媒の寿命はどれくらいに計算されておるのか、この点をお伺いしたい。
  36. 代永久寿

    ○代永説明員 ただいまの御質問、私からお答えいたしますが、塩化ビニールの方で触媒として使うのは、例の昇汞として使うわけでありまして、これは現在〇・〇三程度であります。それから、アルデヒドに使いますのは〇・〇八。触媒の寿命は、不活性になりますとかえますので、大体三カ月ないし四カ月で触媒をかえるのが平均になっておりますが、場合によってはニカ月くらいでかえる場合もあるかもしれません。
  37. 八田貞義

    八田委員 二週間くらいじゃありませんか。
  38. 代永久寿

    ○代永説明員 いや、カ月です。これは連続充填しておりますからロス分だけをチャージすればいい。ロス量がわずか二%か三%くらいでございます。
  39. 八田貞義

    八田委員 私が調べた「合成樹脂便覧」の百二十二ページの塩化ビニール合成の項、これによりますと、触媒量として、一リットルの活性炭に昇汞三十から百グラム、触媒の寿命は十日から十五日というふうになっております。この場合、その点はあとでよく調べて……。
  40. 代永久寿

    ○代永説明員 それはロスを入れないでただ単体で使った場合の量だと思います。
  41. 八田貞義

    八田委員 それでは、それは別としまして、水銀を回収しなければならぬのですが、回収率はどれくれいですか。
  42. 代永久寿

    ○代永説明員 回収は大体八〇%か九〇%。これは工場全体の比率でございます。あそこは、アルデヒド、塩化ビニール、いろいろ使っておりますが、回収率は八〇から九〇くらい回収していると思います。
  43. 八田貞義

    八田委員 回収率が八〇%から九〇%ということにしますと、残部は一般にどうなんですか、みんな捨ててしまうのが習慣なんですか、それとも埋めるのが習慣なんですか。そういった指導ですね。私はもちろん回収一〇〇%にいかないことはよくわかるのですが、それを捨ててしまうという場合に、海に捨ててしまう場合と、それから穴を掘って埋める場合とあるわけですね。一体今までそういった面について指導はどういうふうにされていましょうか。どんどん海の中に捨ててしまっていいのだというふうなことでやっていられるのでしょうか。
  44. 代永久寿

    ○代永説明員 これは、水銀はもともと酸化物なりそういうものになっていれば害がない場合が多いこともありますが、大体水銀製剤というのは有害であるというのが常識論でありますので、それについては厳重なる処理の仕方もやっていたわけでございますが、水銀は、ある酸化物なり硫化物になっておりますと、非常に水等に溶けやすい点もありますので、工場の沈澱池の中にそのまま入っている場合もあるのだろうし、今やっております酢酸プールを設けて回収していますと、これは〇・〇八くらいしか残っておらない、ほとんど〇・一の有効限界以下であるという今の現状でございます。ロスというものは今の段階ではだんだんなくなりまして、ほとんど回収できる可能性が十分あるということでございます。
  45. 八田貞義

    八田委員 回収が非常に近ごろうまくできるんだというお話でございますが、新日本窒素ですか、この会社ではそういった回収はどんなふうにやっていましょうか。泥の中に非常に多いというのですが、そうすると、回収が非常によくなったのだというのですが、どういうことなんでしょうか。
  46. 代永久寿

    ○代永説明員 この水銀の回収につきましては、一応工場で使っておりますのは無機化合物でございます。それで、酢酸プールの中にあらかじめ鉄くずを入れておきまして、その鉄くすにその水銀を付着させて、それを沈澱させて、上澄みはさらに硫化物を付加して硫化水銀として、この硫化水銀でありますと大体害はないわけであります。そういう処置をしております。
  47. 八田貞義

    八田委員 私が伺っておりますのは、それはわかるのですが、現在はそういうふうに硫化水銀にして安定なものにしていくのですが、一体日本窒素会社ではそういうことをやっておられたかどうかですね。
  48. 代永久寿

    ○代永説明員 今までは酢酸プールは設けておりませんので、八幡港と百間港の前に沈澱池を設けまして、そこの中にある程度の水銀の無機物が入っておりまして、それは回収できないわけであります。ですから、上澄みはほとんど水銀が入っていないと見てもいいじゃないかと思います。それは有効限界以下であるか以上であるかということは、沈澱池の中のものを十分検討してみなければわからないわけですが、上澄みの中には多分〇・一以下であるというように今までの中では見ております。場合によっては〇・〇三なんというときもあるわけであります。
  49. 八田貞義

    八田委員 それは最近でしょうね。
  50. 代永久寿

    ○代永説明員 これは最近であります。
  51. 八田貞義

    八田委員 そういった装置を会社でやったのはいつからですか。その点をはっきり……。
  52. 代永久寿

    ○代永説明員 百間港と、それから今の八幡港ですが、百間港はずっと前から……。
  53. 八田貞義

    八田委員 そういう政治的な発言じゃなくて……。
  54. 代永久寿

    ○代永説明員 八幡港に入っているときは、アセチレンとカーバイドの残査をそこべ積み上げましたが、それは従来は水銀量はある程度よけい入っていたと思います。それが以前の問題であります。排水処理をしてもさらに強制沈澱させない前でございますから。
  55. 八田貞義

    八田委員 あまりあいまいな答弁じゃなくて、いつからだと、ぴしっと……。
  56. 代永久寿

    ○代永説明員 昭和三十四年の三月くらいまでは……。(「ずっと流して…」と呼ぶ者あり)流してといって、上澄みは流れておりますが、沈澱池には固形物として入っているわけであります。沈澱池には、もちろん自然沈澱ではなくて、ある程度の中和剤は入れて強制沈澱をさしておるわけであります。
  57. 八田貞義

    八田委員 その点が、実際現場へ行って、強制されてはいないのですよ。そういう点はちょっと私らにはわからぬのだが、ちょっと疑問を投げておきます。  もう一つ聞きましょう。熊本大学でいろいろな抽出をやったときに、イガイの中にも、すす、アッシュがたくさん検出された。そうしますと、活性炭を一緒に触媒に使いますから、すすといわれているのは活性炭だと私は考えます。そうしますと、回収できないのをどんどん流しておったということになります。聖成さんのところが、あるいは通産省の方で、そういったイガイの中にはかの地区のイガイよりもすすがたくさんに検出されたということについての報告を聞いておるだろうと思いますが、もし報告を聞いておられなければ、ちょっとうかつですよ。これについてはどうですか。
  58. 聖成稔

    聖成説明員 今の点は、私、まだ伺っておりません。
  59. 松平忠久

    ○松平委員 関連。  今の八田委員の質問ですが、われわれ現地調査をしたときのいろいろな報告によると、戦時中は増産々々ということでどんどん流しっぱなしにしておいた、そういうことを伺っておるわけです。それから、終戦後、百間港の方へ流す分については沈澱池に入れてやった、しかし、最近、昭和三十四年以降は、もっと完備した沈澱池を作って、そうして水銀を含んでおるような汚水は全部回収できるような装置をほぼ完成した、こういうような報告をわれわれは受けておるのですが、そういうことであるかどうか、一つここで答えてもらいたい。
  60. 秋山武夫

    ○秋山説明員 先刻私から実はそのことを申し上げようと思いましたが、発言できませんでしたけれども、ただいま松平先生から御説明がございましたように、戦争中は、全く増産一方でございまして、排水関係ということには何らの考慮が実は払われていなかったようでございます。それから、戦後も、その点についての配慮は、正直に申し上げましてそう完璧であったとは私どもは考えてはおりません。むしろ、水俣病とその会社の排水とに結びついた疑念が抱かれるようになってから初めて会社としては排水問題に重大な関心を払い出したというのが真相のようでございます。と申しますのは、実は、私、本年八月に本省に参りましたので、その以前の事情についてはあまり明るくないのでございますが、過去の調査等を調べましてもそのようでございます。ただいまの排水プールを作りまして沈澱をさせるという、ややこそくではございますが、とにかく排水処理ということを本式に始めたのは本年に入ってからであります。ただ、その際でも、確かに相当大きな沈澱池でございますので能力としては相当な沈澱能力を持っております。従って、その上澄みの水は、確かに疑念を持たれるほど濃い有毒物を含んだものが排出されていたとは、私どもにはまだ認められないのでございます。一時ある時期に、操業が非常に多くなり、従って水の量もふえるというようなことで、若干オーバーフローという時期もあったようでございますが、大部分の時期においては、沈澱池が何か会社で特許を持っておるとかいうことでございますが、浸出——土手の回りから排水をしみ出させるような方法で、みぞに集めて海へ流すというようなしかけになっておりますので、相当浄化されたものが出ていたはずだというふうに認めております。
  61. 八田貞義

    八田委員 そうすると、今の答弁ではっきりしましたが、ことしになって初めてそういった浄化装置を作っている。百間港の泥の中には、これを見ますと二〇〇OPPM以上の水銀検出されておる。しかも、塩化ビニールを作り、酢酸ビニールを作るという生産工程に入ったのは昭和十七年ごろと聞いておりますが、もっと早いのでございますか。
  62. 秋山武夫

    ○秋山説明員 酢酸は戦前、たしか昭和七年から製造をいたしております。それから、塩化ビニールは戦後でございまして、昭和二十六年から試験を始めまして、大規模な工業生産に入ったのは二十八年ごろかと思います。
  63. 八田貞義

    八田委員 そうすると、患者発生昭和二十八年の終わりですね。そうすると、結びつければ結びつけられるという格好になってくるのですが、先ほど申しましたように、水俣湾におけるイガイというのは、すすがたくさん入っておる。私に言わせれば、これは活性炭。その活性炭は一体どこから来たかというと、触媒に使った。すなわち水銀は昇求の形で使った。こういうことになってきますと、それまでは全然浄化装置というものがなくてどんどん出されておった。そして泥の中に多量のものが含まれてきた。だから、結びつければ非常に結びつけられて参るのです。  ただ、私がさいぜんから申し上げているのは、こういうふうに工場排水と結びつけて考えられてくるのですが、ところが、現在の状態では、あそこから出るイガイというものはあぶない、また魚もあぶないということになって参りますと、抜本的な対策としては、もちろん潮流との関係調査していかなければならぬわけですが、原因究明されても、しかし、依然としてそういう舞台というか温床を残しておくことは非常に問題なんです。ですから、こういった温床は、原因がわかったってそのまま残しておけば、また発生する可能性というものを残しているわけです。だから、研究研究として進めていただくことにしまして、まず、抜本的にいくためには、袋湾になっているような水俣湾ですから、これを埋め立ててしまうということです。ほかに方法ははっきりしたことは言えないわけです。これは農林省あたりでいわゆる干拓問題と同じように考えて埋めてしまう、これしかないでしょう、はっきり申しますと。われわれは、政治的には人命の尊重、人心の安定ですから、これを残しておけばいつまでたってもどうにもならぬことです。たとえば、袋小路のようなところがある場合には、すぐに予防消防の見地から袋小路の整理をやる、そういうことがやられているわけです。そうしますと、こういった袋湾みたいなところは埋めてしまう。幾ら原因がわかってみたって、これは再び魚介の養殖地とは考えられないのですから、もう埋めてしまうというようなことが、私は、農林当局の方から対策として打ち出されていいのだ、こう思うのです。そうしなければ民心の安定ということはないのです。  しかも、こういったことが鹿児島県の方にも移ったというようなことが聞かれるのですが、一体どうなんでしょうか。水俣湾だけに限局されて聞かれているこういった中毒事件が、津奈木という五キロも離れたところにも起こってきた、さらにまた、鹿児島県にも同じような水俣病発生が見られたというふうに新聞は報じておりますが、この点の真偽をお知らせ願いたいと思います。
  64. 聖成稔

    聖成説明員 幸いにして、現在まで鹿児島県の方に患者発生したという報告は受けておりません。なお、現在までに発生いたしました七十八名の患者のうち、七十名が水俣湾内の沿岸地帯、あとの八名が、ただいま先生がおっしゃいました水俣の北方、もちろん熊本県内でありますが、津奈木、並びに水俣川の河口に当たります、要するに不知火海の沿岸に八名の患者が出ているということであります。だから、水俣湾内に七十名、湾外に八名、いずれも熊本県で、鹿児島県関係は一件も現在発生がありません。
  65. 八田貞義

    八田委員 時間も過ぎましたから、ほかの方に譲りますが、このイガイ、ヒバリガイモドキですか、こういったものはほんとうは日本人は食べないのです。イガイなんか、これは食品とはならないやつなんです。食品とはならないものを食べて中毒したということは、零細漁民が中毒の被害を受けた、こういうことになるのですが、人間は食べていないのですかどうですか。
  66. 聖成稔

    聖成説明員 ネコだけだそうです。
  67. 八田貞義

    八田委員 私は人間が食べてこういった中毒を起こしたのかと思ったのですが、人間は食べないのですか。ネコだけに食べさせているのですか。
  68. 聖成稔

    聖成説明員 実験的にネコに食わせまして水俣病発生させるのに使っております。現地でも人は食べないというふうに私どもは聞いております。
  69. 八田貞義

    八田委員 そうすると、魚を食べて人間が中毒するのだということになりますね。私は、イガイと聞いたときに、イガイを食べるのは、商品にならないものを人間が食べるのですから、零細な漁民がこれを食べて中毒するのだろうと思った。というのは、イガイの場合は非常に水銀量が高いものですから、これだなと思った。イガイというものは習性から言ってあまり動かないですね。ハマグリにはあまり出ていないようですが、アサリなどはあまり動かない。そうすると、アサリとかイガイなどを零細な漁民がとって食べる、従って中毒を起こす、こういうことではないかと思ったのです。魚は非常に動くのです。魚の中の水銀量を見ると非常に少ない。こうしてみると、何だかわれわれにははっきりしないのですが、蓄積していって毒性を出してきたのだろうという説明になりますが、水銀は非常に排泄されやすい。大腸とかじん臓からどんどん排泄されてしまう。そういうことを考えると、何だかはっきりしない面が起こってくるのですが、今後原因究明のために研究体制を強化していかなければならないのですが、もちろん研究題目はたくさんな題目が起こってくるのですが、これは熊本大学一つにまかしておいたのではどうにもならない。やはり保健衛生研究機関を動員した研究体制というものを作り上げていかなければならぬ。そうしなければとてもこの原因究明はできません。  先ほど、アメリカ人からのサゼスチョンによってやられたのではない、こういうことは聞いていないのだと言われましたけれども、私の調べたところによっては、アメリカ人のサゼスチョンによって初めて水銀説が台頭してきたのです。結局は無機水銀とか有機水銀という言葉を使っておりますけれども水銀イオンの中毒であることには間違いがない。しかも、ある種の有機水銀化合物であるということで出てきたことについて、研究が非常に不十分であるということがわかる。早く毒性物質を抽出分離して、そして本体をきわめていかなければならない。本体をきわめて参りますと、主因が有機水銀化合物であるということになっておりますけれども、あるいは逆に、これがくっついたある種の化合物、ある種の毒性物質というものが考えられてくるかもしれません。ですから、私は、この主因という文句を非常に大胆率直にある種の有機水銀化合物であるというふうに書かれた答申には、まだまだこのように断定するには実験的証拠が少ないと思う。もしそろっているならば、主因はある種のというようなあいまいな言葉は出てこないはずです。私はむしろ水銀というものが付帯的にくっついた毒性物質を考えているのです。  この点、非常に保健衛生研究機関と結びつかない研究体制がいろいろな疑問点を残し、さらにもっともっとやらなければならぬ調査実験を残しているのですが、一体保健衛生の当事者としての厚生省は今後どのような研究体制を進めていくか、これは、研究委員の選び方によっては、結局いわゆる偉い人ばかり集めちゃってちっとも動かないことになる。ほんとうに現場にししとして働いておられるところの保健衛生専門家を動員する必要がある。ただ食品衛生調査会水俣病対策委員会ですか水俣食中毒部会に予算を出すのでは、これは何ともしょうがない。一体どのような構想で研究体制というものを強化されていくか、これを一つお伺いしたい。
  70. 聖成稔

    聖成説明員 私ども、今後の問題といたしまして、ただいま八田先生御指摘のように、ある種の有機水銀化合物が主因であるということまで先般実は食品衛生調査会の答申によりまして考えておるわけでございますが、これだけでは不十分であるという先生の御指摘はごもっともであると思います。ある種の有機水銀化合物というものが一体何であるかということにつきましては、今後も研究を続行していかなければならぬと思います。この点につきましては、もちろん、従来からこの問題と取っ組んでいただいております熊本大学の医化学の教室あるいはまた公衆衛生の教室、こういう方面ももちろんタッチをしていただきますし、また、先ほど来先生のおっしゃいますように、衛生試験所あるいは公衆衛生院というような機関も動員いたしまして、そうして最終的な原因の追及に当たらなければならぬということを考えているのであります。しかしながら、何と申しましても、生きている魚介類がどうしてそのような通常には持っていない物質を多量に体内に保有するに至ったかという問題につきましては、これは、厚生省というか、あるいは医学の分野だけで追及は非常に困難だ、ほとんど不可能に近いものではないかとさえ考えられる。そういう点から、先般来関係各省ともたびたび御相談をいたしまして、今後各省の立場で、通産省は通産省、水産庁は水産庁、私どもの方は今申し上げたような意味で医学的な観点から総合的な研究をいたしまして、最も問題となる有機化との関係といったことにつきましても最終的な結論を得なければならないということで、経済企画庁にお願いして企画庁を中心に関係各省が集まりまして今後の研究体制を進める、あるいは対策を進めていくというようなことにいたしたいと存じている次第であります。
  71. 八田貞義

    八田委員 予算の裏づけなんかは一体どのくらいの予算でやられるつもりでいるのですか。ただ研究体制強化と言ったって、金がなければ何もできない。実際、今の国立衛生試験所とか予防衛生研究所なんかを見ますと、こういった現場に出張する金さえほとんどないのですね。また、国立衛生試験所、国立予防衛生研究所の者に聞きますと、この問題については、金も全然出してくれないし、むしろ行くのをちょっとやめてくれというような、こういう調子で、そのために全然現場の検査ができなかったというような状態だ。これは非常に問題だと思う。やはり、ああいった付属研究所はどんどんそういう事件が起こればすぐに研究者が出て行って問題究明に当たる、これが一番大切なんです。ところが、そういった研究体制ができていない。ただ計画の上においてはできますよ、いろいろな人を並べて。ところが、全然手足となって動く研究者に対しては何の予算の裏づけもない。これではいつまでたってもできないでしょう。この際、こういった特殊なケースについては、日本学者を総動員して、どうしてこういったどろの中に入った水銀魚介類の体内に入って、そうして人間が食べて中毒するか、これは今までにない中毒のケースですから、これを明らかにしていくことは日本にかけられた大きな問題です。ところが、ただここで研究体制を強化しますと言っても、実際動けなければ、いつまでたっても同じです。これは厚生省として保健衛生の立場から大きな予算を要求されてけっこうです。予算の腹づもりは一体どれくらい考えておられるか。金額によっては、ほとんど研究なんかできませんよ。これが当面一番大切な問題なんです。一体どれくらいのことを考えておられるか。
  72. 聖成稔

    聖成説明員 この原因究明に関しまして、全く八田先生と同じような考えで昨年以来大蔵当局と折衝をいたしておるわけでありますが、従来から厚生科学研究費あるいは文部省の文部科学研究費——文部科学研究費は熊本大学に相当に支出せられておりまして、そういった関係から、行政支出としての調査費は非常にとりにくかったのでございます。昨年いろいろ国会方面でも御心配いただきまして、年度半ばで原因究明費に百万円を予備金から支出してもらったわけであります。本年度も同額の百万円が原因究明費に厚生省としては年度当初から予算計上されておるわけであります。今後の追及に関しまして、これだけでは不十分であると考えまして、昨日も企画庁で各省集まっていろいろ相談いたしたわけであります。私どもといたしましては、原因物質の追及に関しまして、さらに予備金から百六万円支出してほしいという要求をいたし、明年度も約百万円の予算要求をいたすことにいたしておるわけであります。     〔「ネコ代だ」と呼ぶ者あり]
  73. 八田貞義

    八田委員 問題にならぬような小さな金額でやられてきておるわけですね。しかも、このような特殊なケースであって、重大な中毒なんですね。ところが、この問題について中央官庁で取り上げたのはことしになってからだ。実に行政官庁の態度が怠慢と言えばこれほど怠慢なものはない。しかも、今の研究費として出された金額を見ますと、これは全く子供だましみたいで、これでは何にも研究できません。これではとてもできませんから、聖成さんは、一つ、これを自分の一番大きな仕事であるという考えで、中心になって予算獲得並びに研究のための助成ということについて大いに努力していただきたいと思います。  大蔵省の役人は来ていないようですが、大蔵省の役人というのは非常にそういう点に対して認識が浅くて、日本の科学研究というものを押えに押え切っておるような格好です。また、通産、農林、厚生関係の人が来ておられるのですが、一つは、あなた方の頭の中に、大学教授の方は偉いのだ、そして自分の付属研究所の研究員はちょっとレベルが下だというような考えがありはせぬかというような感じがする。私自身が国立衛生試験所に長くおったから十分わかるのですが、どうも、大学教授の方が偉いのだ、何か問題が起こると大学研究所の方にお願いしようということで、保健衛生について非常に経験の深いあなた方の手元にいる研究者はちっとも動員しない。大学先生方ばかりに頼む。大学先生方のやっておられる研究保健衛生機関のやっておられる研究では全然性質が違う。これをうんと動員しなければならない。今お伺いすると、文部省科学研究費を少しばかりつけたというようなことなんですけれども、国立衛生試験所とか国立予防衛生研究所とか、あなた方優秀な研究所を持っておられるのですから、そういうところにどんと予算を出して、そうして水俣病の毒性物についての究明をやってもらうということにすれば、もっともっとこれは早くできたのですよ。私に言わせると三年間は空費されていたのです。今まで研究体制強化々々ということは三十一年からやられているはずなんだけれども、三十一年から三十四年までの三年間というものは全く原因究明について空費されておったような気がする。これは、過去を顧みて、中央の行政当局がこの問題について関心が非常に低かったということになる。ですから、この際、聖成さんは保健衛生の行政官庁の一番責任ある地位にあるのですから、あなた方が声を大にしてやっていただくのでなければ、問題はとうてい解決できない。あなた方にかけられた問題は原因究明です。農林省、通産省にかけられた問題は、農林省は干拓地としてこれを取り上げ、そうして抜本的な対策を講ずる、さらにまた、通産省の方においては、こういった工場排水が海流との関係においてこれからもいろんな不明な毒性物を作り上げていくような未知の危険というのはたくさんあるのですから、この際海岸地帯の工場排水ということについては指導を徹底して強化されていくということが一番必要ではないか、私はこう考えます。  私はなお質問したいことがたくさんありますが、あとは五島委員がいろんな点について質問があるそうでございますから、私は一応これで質問を打ち切ります。
  74. 田口長治郎

    ○田口委員長代理 この際企画庁大堀調整局長から予算問題について発言を求められております。これを許します。
  75. 大堀弘

    ○大堀政府委員 ただいま御指摘がございましたように、従来厚生省を中心に調査をして参りましたのですが、先般来、調査の範囲が非常に広範でございますし、相互の関係もございますので、主として関係のあります厚生省、通産省、水産庁、それから水質関係で企画庁の関係がございますので、これが寄りまして、それぞれ分担をきめて総合的な調査を実施しようということで、昨日、本日も相談をいたしておるわけでございます。企画庁といたしましては各省間の有機的連係をはかって調査をやって参りたいと存じておりますが、それぞれの分担に応じまして、ごく大ざっぱに申しますと、厚生省は人体関係調査、水産庁は魚介類と微生物関係、プランクトンなんかの関係でございますが、そういった方が水産庁、水質及び泥の性質関係、これは水質調査一般をやっております企画庁が担当いたします。通産省は工場排水のデータを中心に調査いたします。  予算につきましては、本年度予備金支出を要求いたしたいと思って今各省で計数を整理いたしておりますが、企画庁といたしましても総合的立場から強力に大蔵省の方に要請をいたしたいと思っております。引き続いて来年度の予算につきましても同様な見地で目下各省と相談をして整理をいたしております。整理でき次第、至急に折衝いたしたいと思います。
  76. 赤路友藏

    赤路委員 関連して……。  今大堀さんの方から予算関係で発言を求めて説明したのですが、年度内の金額はなんぼになっているのですか。
  77. 大堀弘

    ○大堀政府委員 概算でございますが、今日まで各省合わせまして約九百万円でございます。
  78. 赤路友藏

    赤路委員 今大蔵省とやっておるのでしょう。
  79. 大堀弘

    ○大堀政府委員 まだ今全部やっておるわけではございませんで、今日もまだ整理中でございますが、現在あります私の方の予備金でやりたいと思っておりますのが約九百万円でございます。(「それを水俣に全部つぎ込むのですか」と呼ぶものあり)そうでござま古す。この関係だけでございます。
  80. 赤路友藏

    赤路委員 大堀さん、もう一ぺん考え直して下さい。私は今ネコ代だと言って、ちょっと口は悪いが、これはしんぼうしてもらおう。ネコ代だと言ったのだが、僕の方で調査しに行って、ゆうべ帰ってきたのですけれども水俣の市ではネコがなかなか手に入らないのです。それで、周辺から手に入れて、一匹二百円。それから、一匹を飼育して研究する費用が一年間二千円かかる。それはどういうことをやっているかというと、今あなたがおっしゃった通り、魚類、貝類、これを各海域別にとってきてやっておる。そして非常に高くついておる。この一つの研究所、水俣研究所で、ネコ代だけで年間——ネコの飼育とネコ研究するだけで四百万円かかっているのですよ。何を一体やるのですか。もう少し現地の情勢というものをよく見きわめてもらわなければいかぬ。もう一ぺん考え直してもらわなければ、それはだめだ。
  81. 田口長治郎

    ○田口委員長代理 松平忠久君。
  82. 松平忠久

    ○松平委員 今予算の関係が出ましたけれども、大堀君か、あるいは環境衛生部長、もしお知りならお答えを願いたいのだが、熊本大学で今日までこの水俣病究明にあたって使ってきた全部の金額は幾らだと思っておられますか。
  83. 聖成稔

    聖成説明員 ちょっと今手元に資料がございませんので、後ほどお答えいたします。
  84. 松平忠久

    ○松平委員 われわれが調査してきたところによると、今までに二千万円使っております。それは、今まで研究費をことごとくこういうところへ入れて、それから、今言われたところの百万円というものもつぎ込んで、ほとんど大学の経費というものをさらってきてこれにつぎ込んでおるのです。それが今日までに二千万円かかっている。ところが、今同僚委員も言ったように、まだこの研究というものは、まるでなっていない。つまり、この不知火の海域全般にわたっての泥土の調査とかあるいは魚介類調査というものも全然手についていなくて、ただほんの水俣湾だけのことをやっているにすぎない。これで今言ったような工合に二千万円使っているのです。従って、今度総合的にやるということになりますと、これは大へんな金になると思う。今赤路君が言われたように、ネコだけでも四百万円ということになると、九百万円やそこらでは絶対にできない。すでに今まで熊本大学だけでもって二千万円でようやくこれだけしかできない。これが現状なんです。その点を一つよく考え直してもらわなければいかぬが、どうですか。今私のこの現地調査報告を聞いて、考え直して、もっと倍くらいにふやさなければならぬという気はないかどうか。
  85. 大堀弘

    ○大堀政府委員 私どもも実は企画庁を中心に相談にあずかりましたのが最近のことでありますので、詳細な研究が行き届いておりませんので、はなはだ恐縮でございますが、本年度は現在のところ九百万円、来年度は千八百万円ということになっておるのでございますが、ただいまのお話もございますので、なおそれぞれ担当の省の実施計画についてさらに検討を加えたいと思っております。
  86. 松平忠久

    ○松平委員 次にお尋ねしたいのは、この研究問題から入っていきますけれども水俣病原因究明ということに関しては、新日本窒素は、いかにして水銀説でない——水銀とは関係がないという観点に立って研究しているわけです。そこで、この研究が対立をしておる。今環境衛生部長が言われた、いろいろな魚介類の中に有機水銀があるというこの分量というものも、日本海あるいはその他の方面からの魚介類をとってきて、そうして有機水銀をどのくらい含んでおるのかというようなことを研究して、水俣湾魚介類よりももっとよけいに水銀を含有しておるところの魚介類があるというような研究をしておるわけです。そこで、ある意味においては対立した研究もいいでありましょうが、私は、やはり、会社側としては、ただ単に対立したところの研究だけではなくて、熊大その他と一緒になってやらなければいかぬと思う。これはわれわれ同僚も会社側に忠告してきたわけでありますが、こういう新日本窒素の研究というものに対して、あなた方はこの両方の研究を結びつけていくようなお考えを持っているかどうか。今までのようなやり方、相変わらず対立をした研究ということでいいかどうか、それをどういうふうにお考えになっておるか、これを伺いたい。
  87. 秋山武夫

    ○秋山説明員 ただいまの松平先生の御指摘の点、まことにごもっともでございまして、全面的に私ども同感でございます。まことに残念なことに、技術者と言っては少し語弊があるかもしれませんが、特に水俣工場の技術者の感覚と熊本大学研究者の感覚との問に相当なずれがあるという感じがいたすわけでございます。これは、どちらが悪い、どちらがどうということでなしに、また、過去はどうあれ、今後これだけの問題を処理いたします場合には、両方の持っておるデータを過去の分にさかのぼってさらけ出すことはもちろんでございまして、今後も緊密な連絡をとりながら研究を一緒にやっていくという態度がぜひ望ましいと考えまして、先月でありましたか、社長を呼びまして、今までの態度について警告を発しまして、多少感情的な面もあったように見受けましたが、そういうことを一切避けなければならぬ、末端の運営に至るまでその考え方を徹底してもらいたいということを特に注意しておるわけでございます。
  88. 松平忠久

    ○松平委員 工場側は、とにかく研究についても真剣になってやっておるようであります。ところが、本社の社長以下の態度、考え方というものに、私は相当のずれがあるのではないかと思う。工場側はむしろ涙ぐましいくらいにやっております。ところが、本社の方ではそれほどでもないような態度ではなかろうか、こういうふうに私どもは見てきたわけです。そこで、新日本窒素の本社に対する従来の通産省の指導の仕方というものが緩慢であったのではないか、こういうふうに私どもは見てきたわけですが、その点はどうですか。
  89. 秋山武夫

    ○秋山説明員 私、先刻も申し上げましたように、この夏からただいまのポストに参りました関係で、過去のことをつまびらかにいたしておりませんけれども、私、参りまして以後も、直接個々の工場の首脳部に一々接触するという機会は実はそう多くはございませんで、ことに、この場合、新日本窒素は大阪に中心を持っておりますし、私が参りまして以後、先生からもそういう御注意を受けましたので、直ちに、社長に対して本社と工場との連絡の緊密さが足らぬということについておしかりを受けておる、その点についてもっと十分注意をしなくてはいけないという意味の警告を発しております。
  90. 松平忠久

    ○松平委員 それから、先ほどの同僚委員の質疑応答の中で、私が聞き漏らしたのであるかどうかわかりませんが、今までわれわれとしては、この工場の排水の中には無機水銀があって、そうして今日まであの海の中に流れておるのが大よそ六十トン程度のものがある、こういうふうな報告を工場側から受けておるわけであります。ところが、先ほどの質疑応答の中に、酢酸ビニールですか、これの触媒には有機水銀を使う、こういうお話があったわけですが、この会社は無機水銀のほかに有機水銀というものをやはり触媒に使っておるのですか。
  91. 秋山武夫

    ○秋山説明員 ただいまのお話は、私が実は聞き漏らしておりましたのですが、もしそういう点が触れられたとすれば、これは実は誤りであります。工場の使います水銀は、あくまで無機水銀。有機ではございません。
  92. 松平忠久

    ○松平委員 同僚委員に対して質問することができますか。
  93. 八田貞義

    八田委員 私が言いましょう。今水銀の問題があったのですが、塩化ビニールの場合には昇汞と活性炭をまぜたものを触媒に使う。ところが、酢酸ビニールの場合には、酢化水銀から使ったアセチル硫酸水銀という有機水銀を使う。これは合成樹脂便覧にはっきり載っているのです。
  94. 松平忠久

    ○松平委員 もしそういうことであるとすれば、これは新説で、この委員会でまた新たなる説が出たわけです。説だか何だか知らないが、そういう新説が出たわけでありますが、この会社は無機水銀のほかに有機水銀をはたして使っておるということであるならば、先ほど来いろいろ問題になっておった、魚介類の中の有機水銀というものと海中にある有機水銀というものの結びつきがっくのではなかろうか、こういうふうに思うのですが、政府側は、この立場で有機水銀を使っておるということは今まで知らなかったのか、みんな無機水銀だったと思っておったのですか。どうですか、その点は。
  95. 秋山武夫

    ○秋山説明員 しろうとの局長でございますが、私が知っておりました限りにおいては、全部無機水銀と心得ておりまして、有機水銀は使っていないものと思っております。
  96. 松平忠久

    ○松平委員 それでは、その点は、この意見は違っているわけだから、一つはっきり調査をして、この委員会に報告してもらいたいと思う。  それから、その次にお尋ねしたいのは、一体、無機水銀というものが有機水銀になるということは、きわめて簡単になるものですか。これはどなたか知っている人にお尋ねしたいのですが。
  97. 秋山武夫

    ○秋山説明員 一般の化学の論議といたしましては、無機物を有機物に返す、すなわち炭素がくっつくわけでございますが、そのことは相当複雑な機構を必要とするというふうに、しろうと局長は心得ております。
  98. 八田貞義

    八田委員 関連質問。  これは無機水銀から有機水銀になる可能性ということはいろいろ考えられますね。これは、もちろん一番大切な毒性物質の単離ができておりませんから、はっきりしたことが言えず、これが議論になってくるのだと思います。特に、本毒性物質有機溶媒に溶けず、水にも溶けないと報告されている。ところが、アルキル水銀を使った場合、たとえばジメチル水銀とかエチル燐酸水銀とか、そういうものを使った場合には、水俣病類似の病気を起こすけれども、この性質は、水に溶けないけれども有機溶媒に溶ける、ところが、ネコを殺し人間を殺したりするような中毒性物質は、水にも溶けないし、有機溶媒にも溶けないとこれには書いてあるわけですね。ところが、有機溶媒に溶けないものがどうして神経に結びつくのだ、こういう疑問もあるわけです。同じく、鉛なんかの例をとってみても、有機鉛の場合の例なんか考えてみましても、四エチル鉛とか酢酸鉛とかいう有機鉛でも非常に吸収の工合が違う。そうしますと、有機溶媒に溶けないというふうに断定されておるのですが、実験に使った有機溶媒の種類が非常に少ない。すなわち、アルコールとかエーテルしか使っていない。こうした化学的な検討がまだまだ研究が足りないということと、それから、もう一つは、御承知のように水銀は非常に蛋白と結合しやすいから、毒物の蛋白結合体が考えられる。硫化アミノ酸のSH基が水銀と結合しやすい性質があるわけですね。そうしますと、水俣湾の泥の中に硫黄がたくさん含まれておりますと、硫黄と水銀の有機化合体というものが考えられる。いわゆる硫黄と水銀と結びついた有機化合体というものが考えられる。これはたとえば泥土の中の硫黄と水銀が結合してメルカプチール水銀というものになるのではないかと考えられる。それが生体内に入っていって毒性を出すのだということが考えられるわけなんですが、こういった面の検討はまだ足らぬように私は考える。ですから、この点の無機水銀から有機水銀に変わるということはいろいろと考えられる点はたくさんありまするけれども、それを裏づけする実験が足りないのだ。ですから私が先ほど申しますように、保健衛生研究機関を動員しなければ、こういったメカニズムというものはとうてい検討が不十分になってくる、こういうふうに申し上げておる。  松平委員の御質問に対して関連的に私がまた質問の形で申し上げたのですが、今後の研究体制の強化ということはそこにある。松平委員の、無機水銀から有機水銀に簡単に変わるのか、なっていくのかという質問は、そういう裏づけ研究体制を作らなければならぬということになってくるのですから、これは非常に重要な問題。ですから、その点の研究を促進するために予算をとらなければならないし、そのための研究体制というものを力強いものに発展させていかなければならぬ、こういうわけです。
  99. 松平忠久

    ○松平委員 今お聞きのようなわけであります。政務次官がここに二人すわっておられるわけでありますが、そういう一番重要なポイントについては何ら今日解明をされていない。しかも、これが解明されることによって、この汚水との結びつきというものがどうなるのかという、きわめて重要な問題なんです。  そこで、もう一つお尋ねしたいのは、今までの実験の中で、その泥を、大きな池かなんか、あるいは人工的なものの中に入れて、そこヘイガイだとかあるいはその他の魚を飼って、そうして、それに水銀が入って、それを食べさせたら水俣病になった、こういう実験はおやりになっておりますか。
  100. 秋山武夫

    ○秋山説明員 これは会社からの報告でございますが、ただいま御指摘のような実験を、池ではなくて実は水槽でございまして、やや小規模かと思いますが、排水口の近くの海底の泥を持ってきて、それにイガイとそれからドジョウを飼って実験をしたことがあるのであります。その場合には実は異常を起こしておらぬという報告でございます。ただ、この点は、ドジョウは淡水魚なんだ、海水魚とは違うという、何か熊本大学からの反論があったやに聞いております。
  101. 松平忠久

    ○松平委員 私もあの工場の実験をした報告書を見ると、そういったようなことが書いてあるのですけれども、イガイではなかったような気がするのです。ドジョウは確かにあったと思うけれども、そのほかの魚ではなかったか、こういうふうに思います。そこで、考えられる点は、工場では、水銀を吸入しないような魚ばかりそこで実験して、水銀を吸入するようなイガイだとかその他のものは飼わなかったのじゃないかというような憶測もできるような実験ではなかったか、私はそういう印象を受けた。従って、これは、今言うような泥を入れて、そうして、スズキとかチヌとかサワラとか、その辺でとれて有毒なものと同じような種類のものをやるような実験をしなくちゃならぬと思うのだけれども、そういうことを怠っておるように、私はそういう印象を受けたんです。これは一つ指導してやっていただくようにお願いしたいと思うのです。  そこで、原因のことはその程度にしておきまして、これは応急対策と恒久対策を考えるよりしようがないと思うのです。そこで、応急対策としては、今会社でやっているあれを一刻も早くやるということにしなければならぬが、もう一つ、社会問題化されておるのは、その辺の魚が、とってきても売れない、こういう実態であって、そうして漁民がほとんど失業しておるというようなことなんです。そこで、それは漁撈の範囲ということになるのでありますけれども、水産庁の方にお聞きいたしたいのは、スズキとかチヌとかサワラというものはどのくらいの程度まで泳いでいくんですか。
  102. 高橋泰彦

    ○高橋説明員 今御質問の点が今後の対策に非常な重要な点だと思いますが、来年度の予算その他で詳細な調査をする計画を持っておるのでありますけれども、従来の私どもの知っている範囲での知識としてお聞き取り願いもいと思うのですが、ただいま御質問(魚は相当広範囲に移動するものと思います。
  103. 松平忠久

    ○松平委員 もし相当広範囲に移動するということになるならば、不知火海一帯についての魚の調査をしなければならぬと思いますが、そういう種類の魚は、この不知火海から外海の方へ出るような性質のものですかどうですか。
  104. 高橋泰彦

    ○高橋説明員 その点も、大事な問として、回遊の範囲、それから回遊の経路等も詳細調べてみたいと思っておりますが、これも先ほどの御質問に対するお答えを繰り返すようでございますが、若干のものはやはり外海にも出る可能性はあるだろうというふうに推定しております。
  105. 松平忠久

    ○松平委員 そこで、お伺いしたいんですが、この調査区域というようなものを設けるとか、あるいは、その調査区域を設けたあとにおいて、禁止区域——現在はこの水俣湾は禁止して自粛しておるんですが、それを津奈木方面まで広げていくとかいうことになろうかと思うのです。そういう調査区域、さらに進んでは禁止区域といういうなものを設定するにはどういうような今後調査が必要か。
  106. 高橋泰彦

    ○高橋説明員 これは、まず第一に、有毒である魚を確認する必要があろうかと思うのです。その上で、その魚がどの程度回遊するかということを詳細に具体的にしっかりと調べ上げることが根本問題だと思っておりますので、それに役に立つような調査をぜひやりたいというふうに考えておるのであります。
  107. 松平忠久

    ○松平委員 今日までの医学的な調査で、いろいろな種類の魚を食べてなったということでありましょうけれども、大体どういうような魚を食べた結果なったというような、そういうデータはございませんか。
  108. 聖成稔

    聖成説明員 特に魚の種類についてはどういうものかということはございません。エビとか、カニとか、あるいはイカとか、あるいはジャコとか、いろいろそういう魚介類一般にわたっております。
  109. 松平忠久

    ○松平委員 ちょっと水産庁にお伺いしたいのですが、さっきの政府側の御答弁によりますと、魚の種類によって有機水銀を含有しておる量は相当違っておるように聞いたのですが、たとえば、スズキは一六・六PPMとか、チヌはどうとか、サワラはどうとかとなっておりますが、これは、上を泳ぐ魚、下の方を泳ぐ魚によってそういうふうになるのですか。
  110. 高橋泰彦

    ○高橋説明員 ただいままでいろいろな報告されました文献を見ますと、比較的回遊の少ない、どちらかと申しますと底に住んでおるような貝類ないしは魚類が有毒の度合いが多いように見受けられます。しかしながら、この点につきましては、まだ実験例もそう多くはございませんし、はたして今までの資料でそのことを確認していいかどうかについても必ずしも自信を持つものではございません。従いまして、その点も今後の研究でしっかりしたものにして参りたいというふうに考えておるものでございます。
  111. 松平忠久

    ○松平委員 その次に、これは対策の方に移っていくわけですが、応急対策として、今言うような、不買同盟というようなことでもって何でもかんでも買わない、こういうような状態があるわけでありますが、そういう社会問題化されておる不買同盟等の動き、あるいは一般の社会不安というものに対して、水産庁としては一応どういうような対策を持って臨まれようとしておるのか、お伺いしておきます。
  112. 高橋泰彦

    ○高橋説明員 この問題に対する考え方は二つあろうかと心得ております。  その第一点は、何よりも真相をはっきりさせることが根本的に大事ではないかというふうに考えられます。それで、ただいままでの試験その他の問題は先ほど来各省から説明した通りでございますけれども、なお、その後における経過を拝見いたしますと、単なる実験室的な調査、及び実験だけでは事の解明がなかなかむずかしかろうと思われまするので、水産庁といたしましても、厚生省その他の諸官庁に協力いたしまして、いろいろな海の上での魚の毒性の問題その他につきましてできるだけの調査をするということに努めたいと思います。要約いたしますと、やはり何と申しましても真相の究明が第一であろうかというふうに考える次第でございます。  次の第二点といたしましては、この真相が究明されなくても、現実に漁業者はただいま御指摘のように非常に困窮しておりますので、それとの関係におきましても、漁業者の生活を何とかめんどうを見たい、こういう対策を考える必要があろうかと思うのでございます。
  113. 松平忠久

    ○松平委員 今の問題は、応急対策として、すでに社会不安を生じておるのだ、こういうような実情なのでありますから、その対策はもっと早くお立てにならなければならぬと思うし、また、調査も一刻を争うというような実情にあると思うのですが、そういう点のテンポ、早さの問題ですね、そういうのに対しては、一体どういう具体的な措置をとろうとしておるか。予算もあるでしょうし、具体策がなければならぬと思う。
  114. 高橋泰彦

    ○高橋説明員 実は、この漁業の対策といたしましては、三十二年度及び三十三年度におきましても若干対策を講じた次第でございます。それを若干説明いたしますと、毒性を持つ魚が湾の奥の方にあるであろうという想定のもとに水俣湾の外に魚の巣をこしらえまして、そこで魚をとるような施設に対しまして、三十二年度及び三十三年度におきまして若干の対策を講じました。しかしながら、このことは、結果としては、はなはだ残念な話でございますが、大へん不十分な結果でございました。それは、私どもの毒のある魚のおる範囲についての認識が多少間違ったと思っておりますが、結果としては、その程度の沖出しでは不十分でございまして、その付近からとった魚についても結果としては毒を持つ魚が出たという結果になった参わけでございます。従いまして、その意味では、三十二年度と三十三年度の施策は必ずしも効果を得なかった次第でございまして、はなはだその点は不明をわびる以外にいたし方ないと考える次第でございます。  なお、三十四年度につきましては、これは沿岸漁業振興のための予算がございまするので、現在県御当局と連絡を遂げた次第でございまするが、ただいまの県御当局の希望並びに地元漁民側との連絡の上では、若干の舟を用意いたしまして、舟を対馬方面に集団的に出漁させよう、そのために若干の補助金を用意しよう、その隻数は、県のただいまの打ち合わせでは二十隻ほど出したいというような御希望もございまするので、その点につきましては、三十四年度直ちにこれからでもそのような措置を講じたいというふうに、ただいま準備中でございます。なお、三十五年度につきましては、引き続き、先ほど申しましたように、さらにこの計画をもう少し大きなものにして参りたいというふうに考える次第でございます。  なお、研究の問題につきましても、ただいまの既存の予算の中から分離いたしまして、直ちに研究体制も今年度から整えて参りたいというふうにただいま検討中でございますが、早い機会にその体制を整え、すでにもう会議も持ちましたので、そういうような体制のもとに、一つそういう格好でいきたいと考えておる次第でございます。
  115. 松平忠久

    ○松平委員 漁業対策については同僚議員もおりますから譲りまして、恒久策としては、先ほどの質疑応答の中にもありましたけれども、湾の中にある泥が直接この水俣病関係あるなしにかかわらず毒性を持っておるということは事実なんでありますから、この泥を浚渫しなければならぬという問題があるわけでありまして、先ほども、干拓というか、そういう意見が出たわけでありますが、政府では具体的に干拓というようなことについて何らかお考えになっておりますかどうですか、関係省の方からお答え願います。
  116. 大野市郎

    ○大野政府委員 先ほど八田委員からも袋湾の問題も出ましたが、この点は、熊本農地事務局に命じまして、干拓が可能かどうか、その基礎調査をやるようにということで、方針をきめましてそういうふうな指令を出しております。
  117. 松平忠久

    ○松平委員 そこで、そういう場合におきましては、それが実施される段階になりますと、多かれ少なかれ会社筆の関係というものが出てくるのじゃなかろうかと思うのです。そこで、お伺いしたいのは、この新日本窒素という会社は、現在資本金幾らで、それから配当は幾らであるか、どの程度の売り上げであるかということをお聞かせ願いたい。
  118. 秋山武夫

    ○秋山説明員 新日本窒素肥料の資本金は、ちょっと端数はございますが、約二十五億円でございます。それから、配当率は、ちょっとはっきり記憶がございませんが、たしか一割二分ではなかったかと思っております。考課表その他こまかい資料につきましては、手元に持っておりませんので、後ほど調べてお答え申し上げたいと思います。
  119. 松平忠久

    ○松平委員 年間の売り上げはどうですか。
  120. 秋山武夫

    ○秋山説明員 それも、ただいま手元に資料がございませんので、至急調べましてお答え申し上げます。
  121. 松平忠久

    ○松平委員 そういう点は、当然、質問があることと予想して調べてこなければならぬ、資料を持っていなければならぬと私は思う、至急一つそれを調べて出してもらいたい。  そこで、今政府は、これが調査に対しては、大堀君から、各省関係を緊密にしておのおの分担をきめてやろう、こういうお話がありましたが、さて、この対策について、これは関係各省にまたがることだと思うのです。そこで、各自ばらばらにやっておったのでは何にもならない。そこで、この対策の立て方も、どこかが音頭をとって、そして有機的な連係を持ってやらなくちゃならぬと思うのだが、そういうような態勢に政府は今日動いているかどうか、これをお伺いいたします。これで私は質問を打ち切りたいと思うのだが、その点、どういうふうになっておりますか。
  122. 大堀弘

    ○大堀政府委員 調査といたしましては先ほど申し上げた通りでありますが、対策といたしましては、かなり各省の直接行政に関する面が多いものでございますので、調査と同様な運営にすることが適当であるかどうか、実は私ども決断がつかないのでございますが、しかしながら、関係省に関係のあることでもございますので、当然、私どもの役所といたしまして、各省の関係の調整という意味で連絡調整の役を務めたいと考えております。
  123. 松平忠久

    ○松平委員 それは、関係各省とすでにそういう話をしての発言ですか、あなた個人の発言ですか。
  124. 大堀弘

    ○大堀政府委員 ある程度話し合いをいたしておるわけでございますが、まだ最終的にこういう委員会を作ってやろうとかいうところまで結論が出ていないわけでございます。事実上は相談をしておるわけでございます。
  125. 田口長治郎

    ○田口委員長代理 五島虎雄君。
  126. 五島虎雄

    ○五島委員 八田委員と松平委員の質問の中に重複するところもあろうと思いますが、ただいま松平委員が質問されましたように、通産、厚生、企画、農林の水産庁、それがいろいろこれから総合的に研究をしていくのだ、そして、その窓口が、従来厚生省の食品衛生課を窓口として対策を講じられていたけれども、総合的な面から考究しなければならないから、そこでその窓口を企画庁に移したというようなことですが、その移されたところの名称は何ですか。ただ窓口が企画庁であるというふうにわれわれは心得ておったらいいのでしょうか。
  127. 大堀弘

    ○大堀政府委員 実は、まだ正式にどういう委員会というような公式なものにいたしておりません。現在のところは、各省の連絡協議会という形で、実際上各省の局長と私どもが話し合っておるということでございますが、たまたま企画庁が水質保全法の所管をいたしておりまして、広い意味の水質調査に関しましても企画庁が責任があるというように考えられなくもないのでございまして、従いまして、そういう意味で私どもは議長の役を務めておる、こういう関係でございます。正式にまだ対策委員会というようなきまった名前のものを設置しておるわけではございません。
  128. 五島虎雄

    ○五島委員 そうすると、正式に委員会等々の名前でまだ発足していないけれども、とりあえず連絡会議ということで発足した、こういうことですが、そうすると、将来はっきりした委員会等々を考慮されているのですか。そういうような話し合いが行なわれておるのですか。
  129. 大堀弘

    ○大堀政府委員 その点につきましては、まだ最終的な結論を得ておるわけではございません。
  130. 五島虎雄

    ○五島委員 そうすると、今八田委員や松平委員からいろいろ病気の原因究明について質問が行なわれましたけれども、この特殊な病気に対するところの政府の心がまえというのが、何かはっきりこれにぶつかっていくというようなその力が抜けているように考えられるわけです。従って、私は、冒頭に、この問題については今日まで発展してきたこれらの問題を早急に対策を講じなければならないから、政府関係としても、あなたたちとしても、よりすみやかに組織を作って、そうしてこれが原因究明をされるように希望いたしておきたいと思います。  私は、水俣奇病の調査のために、先月末同僚議員とともに水俣奇病に対する調査委員として派遣された一行に加わって行ったわけです。そうして、数日間熊本県に滞在しまして、病人を見舞い、あるいは土地の人々と話し合い、そうして痛感したことは、これは大へんな病気である、何とかすみやかに対策を講じなければならないというように思ってきました。そこで、熊本県の地元の方たちとよく話をしましたけれども、その要望は、第一に、病気原因の急速な追及。これを早くしなければ農民生活にも、漁民生活にも、あるいは県民一般の生活に大きな影響がある。あるいは工場にも大きな影響がありましょう。そこで、原因究明とともに、もう一つは、現在まで起こったところのもろもろの問題についていかにしてこれに対策するかという、原因究明と今後の対策という二つの面があろうと思います。ところが、さいぜん、これに対して連絡協議会を作って、企画庁が窓口になられて、本年度九百万円、来年度一千八百万円ばかり予算として計上したいというように説明されたわけですけれども、これは、いろいろの対策の面も考慮されて、来年度において一千八百万円、今年度において九百万円というようなその予算の中に入っているのですか。あるいは水産庁関係の潮流の調査とか、あるいは水質の調査とか、あるいは漁業権の問題とか、あるいは従来通り熊本大学に対するところの研究費とか、そういうようなものを合わせての病気原因追及のための予算ですか。
  131. 大堀弘

    ○大堀政府委員 ただいまの予算の数字は、原因調査に関する経費だけで、対策の方のものは入っておりません。
  132. 五島虎雄

    ○五島委員 西日本新聞の十一月二十一日の所載記事ですけれども、従来まで厚生省から委託されて病気原因研究を行なっておった熊本大学の鰐淵教授の談話が発表されているのです。これは皆さんもお読みになった方があろうと思いますけれども熊本大学の鰐淵教授などの談話の中には、従来、水俣特別対策の担当として厚生省から委託されて、鰐淵教授を中心として原因研究を行なって、昨年度は一百万円、ことしもまた一百万円の研究費をもらって研究をし、学者的な学問的な追及をこれまでやっておった、しかし、結果において有機水銀説結論がついて、そうして今申し上げますように総合対策の組織として連絡協議会ができて、そうして厚生省が担当されることにならなくなったから、これについての研究は非常に停滞するのじゃないか、もう水俣病原因究明できぬのじゃないか、また、工場はこれによって協力しなくなるのじゃないかというように心配をされておるわけです。また、今までの説明によりましても、今までは理学的に、医学的に、臨床学的に熊本大学一本として研究を進められておったのですけれども、今後の各般の知能を集めて研究をするのだ、熊本医大だけには限らない、こういうようなことが言われておるので、これは非常に心配だというような談話の記事が載っておるわけです。この点についてはどういうように施策をされるわけですか。
  133. 大堀弘

    ○大堀政府委員 実は、私ども企画庁でこの仕事を連絡調整して各省協力してやろうという話をきめますまでに、私どもちゅうちょいたしておりましたことは、こういうことは、とかく、委員会でまとめますと今まで個別にやっていたところが力が抜けてしまうということをおそれまして、私としては実は非常にちゅうちょしたわけでございます。その点は、各省と十分話し合いをいたしておりまして、今後企画庁を中心に連絡調整いたしましても、各省が従来やっておりますことはやはり各省がそれぞれ手を抜くようなことはもちろんなく、さらに進んで協力してやっていくという建前で話し合いができております。なお具体的なことにつきましては厚生省の方からお話があると思いますが、私どもはそういう考えでやっていきたいと思います。
  134. 聖成稔

    聖成説明員 ただいま五島先生が御指摘になりました現地の新聞の報道記事は、私も承知いたしております。また、直ちに熊本県の衛生部長に連絡をとりまして、鰐淵先生のお気持を聞いてもらいました。その報告も参っておるわけであります。実は、今月の去る十二日に、食品衛生調査会の常任委員会が開かれまして、鰐淵先生が御上京になって御報告になり、そうして常任委員会で満場一致あの結論が認められたわけでございますが、そのあといろいろ私と御相談いたし、また食品衛生調査会委員長とも一緒に御相談いたしました結果、魚介類の何が悪いかという点において、これはある種の有機水銀化合物であるということが断定された、しかしながら、これがどうして魚介類の体内に侵入したかという今後の追及においては、むろん医学の分野においてもやっていかなければなりませんけれども、それだけではとうてい解明は困難である、従って、いろいろな方面の、草間的にも広範な多角的な原因究明が必要である、行政的にも、単に厚生省だけでなく、水産庁であるとか、あるいは通産省であるとか、各省の協力が必要であるという結論に達しましたので、一応食品衛生調査会の中に設けました水俣病特別部会というものを委員長の意向もありまして解散をいたしております。そういう状態で、鰐淵先生も全く意見が一致しておるわけです。しかしながら、私どもは、これでもう厚生省の責任は果たしたのだ、従ってわれわれは今後は関係ないのだ、そんな気持は毛頭持っておらないわけでございます。先ほど来八田先生がるるおっしゃいましたように、ある種の有機水銀化合物一体何ものであるかということは少なくとも私たちは各方面の研究機関の御協力をいただいてどうしても解明していかなければならぬ問題であるというふうに考えておるわけでございます。今までは、率直に申し上げまして、ほとんど厚生省だけでやっておったわけであります。それだけではとてもこれから先の追及は私どもとしては責任を持ち切れない、こういう気持でおる、かように御了承いただきたいと思います。
  135. 八田貞義

    八田委員 関連して……。  今聖成部長お話を伺って、もっともなのです。ただ、先ほどから原因物質についてお尋ねしておるのですが、結局なかなかわからないのです。水産庁の方も来ておられますが、ミチロトキシンなんかについても実際ははっきりと本体がつかまっていないようですね。それから、前に日本に起こった浜名湖のアサリ中毒なんかでも、はっきりしていない。ところが、こういったアサリ中毒とかイガイ中毒というのは季節的発生というのが見られる。今度の水俣湾における魚介類中毒というのは季節的な発生でない。ずうっとコンスタントにある。これはほんとうに特殊なケースですね。ですから、こういった点について今までにない研究強化ということが必要だ、私はこういうふうに考えます。ミチロトキシンなんかは、プランクトンによるものであろうというようなことを言っている人もあるようですけれども、これさえまだはっきりしない。特に水銀中毒なんというのはなかなか簡単には断定できがたいのですね。特に、水銀というのは、頭に入れておかなければ検出できないのですから、そういうところから考えると、これは特殊なケースで、これから研究体制の強化が一番大切だと思います。
  136. 五島虎雄

    ○五島委員 八田委員の説明の中にもあったと思いますけれども昭和七年から今日に至るまで酢酸やあるいは塩化ビニールの製造等々に伴って工場排水の中に汚物というか化合物が流れ出たのが、熊本大学の発表によると、六百トン程度流れ出ただろう、こういうように説明がありました。その六百トンは、水銀ということではなくて、あらゆる物質が流れ出て水俣湾の湾底に沈澱しているのが六百トン程度であろうと思われる、こういうようなことでした。ところが、その翌日新日本窒素工場に行きまして会社の関係者と会いましたところ、六百トンの水銀が流れ出たことはないと言う。ここにちょっと食い違いがあるわけですけれども、工場関係では、昭和七年から今日まで流出したと思われる水銀は六十トン程度であろう、こういうように説明されました。そうして、無機水銀は人体に被害がない等々の反証もいろいろ私たちは聞いてきたわけですけれども熊本大学研究調査の結果の、工場から流れ出た排水の中に含有した物質昭和七年以来今日までに湾底に沈澱している泥土が六百トンというようなことは、大体正当と思われますか。
  137. 秋山武夫

    ○秋山説明員 私どもは、会社の調べだけでありまして、直接の調査はできませんし、いたしておりませんが、大体六十トンという数字が正しいのではないか。これは古くからの累加量でありますが、現在、日本じゅうの、それも同種の工場ばかりじゃございませんで全部の化学工業等が消費いたします数量が一年間に大体六十トン前後であります。大体一年分の全国の消費量に相当するものが過去何年かの間に流れ出たという計算になるわけであります。かりに六百トンといたしますと、それの十倍でありますが、どうもわれわれにはちょっとその数字の根拠は推定できかねるわけであります。
  138. 五島虎雄

    ○五島委員 これらの問題についての原因の早期究明のためには、すみやかに組織を明確化してやらなければならないのですけれども原因究明ですから、大蔵省関係や労働省関係はこの連絡協議会の中には入る必要がないとお思いになるのですか。
  139. 大堀弘

    ○大堀政府委員 必要に応じて関係省も出ていただこうと思っておりますが、当面のところは、直接調査を分担しているところだけでやっていこうかと考えております。
  140. 五島虎雄

    ○五島委員 さいぜん赤路委員から発言がございまして、ことし九百万円、来年千八百万円等々では、ネコを飼育する研究費についても相当多額の費用がかかるだろうということでしたが、熊本大学について、従来研究をし始めてから、熊本大学の費用だけでも千数百万円から二千万円程度使われておるが、政府からもらった研究費は年間百万円程度である。従って、たとえば泥土を研究するための出張旅費もなかなか手に入らないような状態であって、年間二万円程度しか私たちの研究費はない、こういうように言われた一学者がおられたわけです。それではとうてい研究も完全にいかないというような状態も出るだろうと思う。ところが、環境衛生部長の説明によると、今年度も百六万円を追加したんだという説明でありましたけれども、私たち、熊本大学について十分な研究が進められるような費用はどの程度かと質問いたしておりましたところ、その資料が提出されました。これも厚生省関係では御承知だろうと思うのですけれども、大体六百九十万円、七百万円程度あれば研究ができるのだという資料を手にとったわけです。そうすると、今年度百万円、追加するのに百六万円、合わせて二百六万円の研究費ということでは、なかなか十分に研究ができかねると思いますけれども、これで熊本大学は今後十分に研究を続けていけると考えていいのでしょうか。
  141. 聖成稔

    聖成説明員 先ほど企画庁の調整局長からもお話がございましたように、私どもとして追加の百六万円というものをこれから大蔵省に持ち込む段階でございます。まだこれをとったわけでもないわけであります。それで、今後の厚生省、ひいては衛生関係の分野といたしましては、先ほど来問題になっておりますある種の有機水銀化合物というものの本体をきわめることであり、それにプラス、先ほど八田先生のおっしゃったように、何かほかの物質関係しているかどうかを究明するのが私どもの担当すべき分野かと考えておるわけでございます。そうした関係につきましては、一応この程度で十分ではないかというふうに考えておったのでございますけれども、先ほど八田先生からもいろいろ御指摘もございまして、なおもう一段と検討いたしまして、場合によりまして予備金の要求をさらに追加をいたすというようなことも考えてみたいと思っております。
  142. 五島虎雄

    ○五島委員 この予算の問題ですけれども、連絡協議会あるいは厚生省関係で検討したのがその程度で、これからは予算を獲得するためには大蔵省との関係があろうと思います。きょう大蔵省が出てきているだろうと思ったのですけれども、出てきておりませんから、大蔵省関係にその所信を聞くわけにいきませんので、他日質問をすることにいたしますけれども、せっかく厚生省関係が窓口となって水俣病対のために努力をされておったのが、今度は総合的なこれが対策を行なわれるわけですから、企画庁が中心になられまして——私たちは九百万円とか千八百万円程度ではとうていだめだと思いますけれども、あなたたちが計画されたことを一応信ずるとしましても、これは完全にとれる自信があるんですね。あるんですねと言ったって、それはわからぬでしょうが、そういうような気持で一つ大蔵省と折衝されることを期待します。  それから、私たち実は熊本から水俣まで三時間程度自動車で案内をされたわけです。その理由は、熊本県の配慮があっただろうと思うのです。不知火海に面した道路を自動車で行ってみまして、海上には一そうの漁船も出ていないのです。不知火海に入ってから一時間程度の道のりでしたが、至るところに小さい漁港あるいは港がある。その港の外の海には一そうの漁船も見えなかったわけです。そうして水俣に至ったわけですけれども、数千名の漁民の方たちがわれわれに陳情をされました。当日は新日本窒素工場とのいささかの紛争が行なわれたわけです。われわれは水俣市民病院に至りまして病人の状況を見せてもらったのです。見せてもらったと言うと語弊がありますけれども、その実情について私たちは外見上見たわけです。全く、盲であり、おしであり、つんぼでありました。それから、死ぬ前の重病患者が二名くらいおられましたけれども、目があいたまま動きがとれない。あるいは非常に激しいけいれんをもって、私たちしろうとから言わせると、リウマチのひどい、関節は曲がり、足は曲がり手は曲がるというようなことで、この患者はあしたかあさってにはもうだめだとお医者さんが言っておられました。そこで、私たちが熊本大学の教授にこの病気の予防法はないかと聞いたら、予防法は現在ないというように言われました。予防法というのは何かというと、魚介類を食べないことが予防法ですと言われました。私たちが調査書、陳情書などをずっと見てみましたところが、現在生存している患者が四十五名あるわけですけれども、四十五名の中に治癒したという患者が三名ある。そうして、ある者は工場に通勤をしているし、ある者は学校に通学をしていると言われたものですから、この病気にかかっても治癒するのですかと質問をいたしましたところ、熊本大学の教授の方はこう言われました。治癒は全然ないんだ、治癒するということは近代医学ではとうてい考えられません、治癒というような診断は、ある程度歩行ができる、ある程度目が見える、ある程度ものが言えるということで、この病気にかかった以上は後遺症は残るのだということを言われたわけです。しかも三八%程度の死亡率があるということで、この病気は大へんな病気である。従って、病気になったところの患者対策一体どうだというようなことを調査いたしましたところが、患者はなお今二十九名入院しているということです。ところが、実際その患者の出たところの村に行ったわけですけれども、歩行困難、目があいていても視力がない、耳が聞こえない、ものが一声えないという患者をまのあたり見たのです。どうしてこの人たちは病院に入ってないのだというふうに聞いてみたら、病院に入ると金がかかると言うのです。それが、病院に入ると、あの付近の通念としてですか知りませんけれども、必ずだれかつき添いが行かなければならぬ。そうすると、家庭ではつき添いに行く者がいない。つき添いに行ったらさっそく家の生活が困ってくる。病院に行ったら金がかかるから、居宅療養をしているんだというようなことで、全く気の毒なことだと思いました。まだ病院には数ベット残っているような状態ですけれども、そういうような患者が入院をしていないということも考えられたわけです。ところが、病院の話に戻りますけれども、病院では病人に必ず家族の人がついておるわけです。そうすると、完全看護が行なわれていないんじゃないか、こういうふうに思ってきたわけです。これは厚生省関係のここにいらっしゃる人々にこういう問題を聞いても具体的な答弁は得られないと思います。たとえば医務局あたりに来てもらってそういう質問をしたらいいのですけれども、これもまたの機会にいたしますが、病院対策等々について、あなたたち、連絡協議会では、今後これらの問題などもひっくるめて対策をされていかれるのですか。
  143. 聖成稔

    聖成説明員 実は、私も、昨年七月に環境衛生部長に就任いたしまして、直ちに八月に水俣に参りまして、現地に視察に行ったのであります。そのとき私が感じましたことは、水俣病患者に関しましては、いわゆる急性期における治療という問題と、ただいま五島先生お話しになりましたように、一応の治療が一段落ついてなお非常に強い後遺症状が残っておる人たちが家庭におりまして、手がかかる、これを家庭の中に置いておいたのではしようがないじゃないか、特に多くの家庭が漁民であって生業を奪われておるし、あまつさえ家庭で足手まといになる非常に手数のかかる患者をかかえておる、これはどうしても一定の施設を作りましてここへ収容しなければいけないということを考えまして、昨年水俣の市立病院に水俣病患者専用の病棟を建設いたしたわけなんです。三十二名の患者収容のキャパシティで施設を作りました。通常の場合では生活保護の適用にならない、つまり医療は一段落ついておるという者もここへ収容いたしまして生活保護法でめんどうを見るということに社会局と話をつけまして、それから、生活保護法の適用にはならないボーダーライン以上の人につきましても、本病の特殊なあれにかんがみまして、特に国費を計上いたしまして、国費と県費と水俣市費と三分の一ずつ持ち合いということに結果はなったのでございますが、生活保護適用外の者についても入院費を見るというような措置をとりまして、一応全員を水俣市立病院に収容するという措置をとったのであります。先生現地へ行って御視察になりましてお聞きになったかもしれませんが、中には、どうしても病院へ行くのはいやだ、家庭で療養したいと言ってがんばっておる人もおるやに聞いております。今後も、患者の数も若干ふえましたので、病床を増設するかどうかという問題につきまして、昨日も県の衛生部長と話し合ったのありますが、水俣病院そのものに空床がありますので、この空床を活用して極力全員収容をはかる、こういう方針で進んでおるわけであります。
  144. 田口長治郎

    ○田口委員長代理 外部が騒然としておりますから、ちょっと相談する意味において、暫時休憩いたします。     午後四時五十一分休憩      ————◇—————     〔休憩後は会議を開くに至らたかった〕