○石田(宥)委員 私、直接農林大臣に質問を申し上げるというよりは、農林大臣に
一つ聞き手になってもらわなければならない。
これは御承知のように、科学技術がずっと進むにつれまして、
農業というものと他産業とのアンバランスがはなはだしくなってくる。これについては、岸内閣総理大臣も、施政
方針演説の中でこの産業の二重構造を強調され、農民の
所得と他産業の
所得との較差がますますはなはだしくなっていくということを指摘され、ここに
所得均衡の上に立った
日本の
農業の発展的成長をはかるということを述べておられます。ところが、いろいろな
施策を見ておるというと、具体的な政策の面では必ずしもそれに沿うておらない。今取り上げられておりまする運賃の問題にしても、あるいは貨物駅の集約の問題にいたしましても、その
一つの現われであると言ってもよろしい。この点で、ことに
経済企画庁長官、それから運輸大臣にはっきり
一つ腹へ置いていただきたいと私は思うわけです。ここで数字を述べるまでもないことでありまするけれ
ども、とにかく、全人口の四〇%も占めるところの農民の総
所得が一七%か一八%なんです。こういう実情にあるということ、これ
一つでもすっかりわかるわけですけれ
ども、さらに、最近の動きを見ますると、
昭和二十二年には農民の
所得が他産業に比較いたしまして二分の一であった。ところが、三十二年には他産業の三分の一に低下しておるわけです。こういうような実情の中において、農民の
所得較差というものがますますはなはだしくなりつつある。このことについては、
昭和三十三年から
昭和三十七年までの
経済長期計画というものが
経済企画庁で一度出されたことがあるのです。その中での
農業部門のごときは、その翌々年にもう破綻をしておるわけです。今
政府は
所得倍増し論をいろいろやっておられるようです。これは
経済企画庁長官の持ち分だと思うのですが、なかなかどうも農民の
所得の倍増しというものは困難だということが伝えられておる。これがほんとうの農民の姿だと思うのです。
また、農民の個々の
経済状態を見ましても、
昭和二十六年と
昭和三十二年を比較いたしますると、農民の粗収入というものが一二七・三%に伸びたのです。ところが、物財の投下関係の必要経費の方は一六六%に伸びておる。粗収入のふえた分は一二七・三%で、支出の方は一六六%ということでありますと、この差はますますはなはだしくなっていくわけです。
こういう中で
所得の倍増論というようなものを
考えてみても、かつて国民
所得が倍になったことがあるのです。ところが、国民
所得が倍になったときに、物価の値上がりが七〇%あった。あとの三〇%は一部の独占資本が収奪してしまって、国民の前は、国民
所得の倍増論は素
通りをしてしまっておった。農民の前ももちろん素
通りしてしまったのみならず、逆に物財投下の負担のみが多くなっておる。こういう現実の認識が問題であろうと私は思うのです。だから、
経済企画庁で今立案されておるといわれる
所得倍増論、これでも、新聞の伝うるところでは、農民の
所得は二%か二・二%程度しか伸びが見られないが、他産業の方は六、七%も伸張度が見られるということが伝えられておるわけです。
農民の
所得較差のこの不均衡を、全人口の四〇%を占めるところの農民の
所得を他産業に均衡させて、そうして
農業の発展的な成長をはかるということは、具体的には一体どういうことをやればいいんだということを、皆さんは一体どう
考えておるか。なるほど、国鉄は、国鉄の営業の中において赤字が出ては困るからといって公共政策割引を手直しをする、あるいは遠距離逓減の修正をしようということをお
考えになる。日通は、先ほど
お話があったように、一昨年は一割四分の配当をし、昨年は一割二分の配当をしておる。その上にまた通運料金の値上げをはかろうという。こういうように、すべての政策が総理大臣や農林大臣の言っておられることと逆な方向に今動きつつある。その
一つの要素として今取り上げられておる問題があるということ。これは運輸大臣もそういう点で基本的に
考えていただかなければならないのです。その認識がないと、この問題を理屈だけこね回したって意味がないのです。
なるほど、日通も、
自動車局長の
お話によると、五%の
利益で中間四回転を見て二〇%の
利益、うち一〇%程度は税金と見て、一〇%程度の配当が適正利潤だと
考える、こうおっしゃるけれ
ども、
農林水産業の方は一体どこと比較してどうやって将来立っていくか。こういうことを
考えた場合に、今公共政策割引の総額で二十億程度のものは、国が直接農民に対する保護政策をやることがいいか、あるいは国鉄の中へこの
政府資金等を投入して
農林水産物に対する特例を認めるということによって従来の制度を維持することがいいかということについては、これはきわめて慎重を要する問題であると思うのです。今議論されておる問題はこまかな問題でありまして、そういう基本的な
考えについて農林大臣からよく聞いて、農林大臣はその腹で運輸大臣や企画庁長官に談判をしてもらわなければならないのです。ただ、日通が赤字が出るから、国鉄が赤字が出るから、そんな問題じゃないと思うのです。全人口の四〇%を占める
日本農業の将来を一体どうするかという、この大きな見地に立ってこれらを処理していただきいと思う。
なお、これらの点についてやはり農林大臣が
中心になって他の省と折衝に当たらなければならないが、運輸大臣や企画庁長官はそういう点についてどのように認識しておられるか、この点を
一つはっきり伺っておきたい。