○柏村政府
委員 去る十一月二十七日に行なわれました安保条約改定阻止国民
会議の主催いたしまする第八次統一行動におきまして、
〔渡海
委員長代理退席、飯塚
委員長代理着席〕
国会構内へ多数の群衆が乱入し、ジグザグ・デモとかその他の気勢をあげる等の行為をいたし、国会の神聖を侵す
事態を生じましたことを心から遺憾に存ずる次第でございます。
警察におきましてとりました処置並びに当日のデモ隊の
状況等につきまして、簡単に御
説明を申し上げたいと思います。
まずこの第八次の統一行動につきまして、安保改定阻止国民
会議におきましては、おおむね七万五千の動員を指令しておったのでありますが、これに応じて動員された者は約二万五千名でございます。この動員された者は、チャペル・センター前と、人事院付近と、特許庁付近と三カ所に集まるようになっておりまして、ここから国会に向けて行動を起こすという計画がなされておったようであります。まず集まりました者は、チャペル・センター前が一万一千三百名、人事院付近が六千七百名、特許庁付近が六千二百名でございまして、おおむね二万五千という数に相なるわけでございますが、このデモ隊は国会に対する
請願という名のもとに集まっておるわけでございますが、こうした集団が集まるということは、これは当然都公安条例にいいます集会に当たり、これが示威の行動に移る場合には集団示威運動ということに相なるわけでありまして、いずれも許可を要する行為とされておるわけでございますが、何らそうした許可の手続をとることなく集まって参ったわけであります。
しこうして、このような集団によって
請願デモが行なわれるということになりますれば、国会の近辺でもございまするし、不測の
事態も生ずるおそれがございましたので、警視庁といたしましては、これに対しまして必要なる規制を加える態勢をとったわけでございます。すなわち、チャペル・センター前には九百七十名、国会正門前に七百四十五名、国会外周に千七十二名、人事院付近に千四百十八名、特許庁付近に千百七名、総人員五千七百五十五名という
警察官を配置をいたしたわけでございます。このほかに、方面
警察隊約三千というものを編成して、第二次的な部隊として確保しておいたわけでございます。
ところが、非常に大ぜいの者が集まり、この勢いが、まず学生を先頭にした態勢で
警察の制止線を突破するように試みて参り、人事院わきの道路上におきましては完全にこれが制止された形になった後におきまして、そのうちの半数
程度の者が態勢を整え直して、議員会館の前の通り、例の大蔵省のわきのところを上って行って、そして国会への突入を試みるということで、そちらの方にまたさらに待機の部隊を回わすというような
事態もございました。また、特許庁から上りました者も、非常な激突を来たしまして、一部
警察の制止線を突破して、総理官邸前に殺到するというような
事態もございまして、これを制止するという
状況もございました。また、国会わきの地下鉄から上ってくる者が数百名、これは
警察官から見て地理的に非常にむずかしいところから入ってくるわけでざいまして、これがチャペル・センター前その他へ圧力をかけるというような
状況でございまして、特にチャペル・センター前におきましては自動車を連ねて制止線を確保いたしておったのでありますが、国会から見まして右側の人道上、ここは
警察部隊をもって制止線を確保いたしておって、ここにおいてデモ隊との間に非常な押し合いが起こり、
相当数の負傷者を出しておる
状況であります。また、そういう
関係でデモ隊の中においても非常な圧迫を受けて、助けてくれというような悲鳴をあげる者も出てくる
状況でありまして、そういう
状況下において
——従来は、チャぺル・センター前に
相当集団が集まりましても、代表者等を送り込む、あるいは送り込んだ代表者が帰ってくるというまで待って、おおむねこれらは人事院前の道路を通って流れ解散をするというのが従来の慣例になっておったわけでもありますし、これ以上この
事態を継続すれば
相当の死傷者を見るであろうという現場の指揮官の判断もあり、これからほこを少しゆるめて、人事院前の方に誘導する態勢をとったわけであります。ちょうどその時刻に、淺沼議員その他の国
会議員と代表団と思われる二、三十名の者が国会の正門前におりまして、そのときは門のとびらは全部あいておったわけでありますが、今申しました人事院わきの道へ誘導するという態勢をとった連中が、
警察の囲いを突破して門の方へ殺到しそうになったというので、これは国会側の仕事でありますが、門扉を閉ざした。そうしたところが議員団等によって、議員をなぜ入れないかというようなことで、一番わきの小門を少しく開いて数十名の者を通すことにしたのでありますが、それとほぼ時を同じゅうして、先ほど申しました、誘導されて誘導をきかない連中がそこへ殺到して数百名が中に入る。さらにそれにしばらく時をおきまして、その他の集団が正門を突破して構内に流れ込むという
状況に相なったわけでありまして、五時過ぎごろには、最高一万二千名
程度の者が国会の構内に乱入して気勢を上げたという、非常に遺憾な
事態を生じたわけでございます。四時二十分ごろであったかと思いますが、衆参両院
議長から警視庁に
警察官派遣の要請がございまして、これは各院とも二千五百名ずつを限度としてということで、実際には四千名ぐらいかと思いますが、その
警察部隊が国会の構内の議事堂のうしろわきという、あまり見えないところに待機の姿勢をとっておったわけでございます。
議長の方からの要請は、応援派遣をとったわけでありますけれども、いずれ説得等によって群衆が退散するであろうから、何分の指示のあるまでは実力行使をしないようにという申し入れもございまして、
警察部隊としましては待機の姿勢をそのまま持続いたしたわけでございますが、五時過ぎごろになりまして、だんだん労組
関係の者は退散する、しかし数千名の学生は依然として残って気勢を上げ、おおむね鎮静に帰したのは六時過ぎになったという
状況でございます。その後、夜間の学生と一部学生が合流しまして、防衛庁前等からさらにデモ行進を行なって、人事院のわきを通って国会の方へ向かったのでありますが、これは
警察部隊の阻止にあって、日比谷公園の方へ向けて解散をいたしておるわけでございます。その間に、
警察官としては三百数十名の負傷者を出しておるわけでございます。
以上が大体当日の国会乱入事件、
請願デモの
状況でございますが、
警察といたしましては、こういう
事態の予測につきまして、全学連等の間に
相当過激な行動をとるという確実な情報もキャッチいたしておりましたので、従来にない部厚い警戒態勢をとったわけでございますが、何分にも五、六倍の集団というものに対峙いたし、態勢としては常に守勢で、これを集団的なはね上がりから防ぐ、国会乱入を防ぐという態勢をとっておりましたために、ついに突破をされ、最後には先ほど申し上げましたように、一万数千名というものが国会構内へ乱入するというような
状況に相なったわけでございます。われわれといたしましては、こういう事案につきまして、やはり国民が法を守り、秩序を維持する、国会を尊重するというような気風が横溢して参ることを期待し、特にこうした集団行動についての
指導者等に対しては、慎重な態度をもってよくこれらを
指導するという実力と気魄とを要望いたしたいのでございますが、翻って
警察自体といたしましても、今度の事案につきまして第一線の
警察官は、先ほど申しますように実に五、六倍の相手に対してよく隠忍自重し、数百名の負傷者を出しながら常に守勢に立って職責の遂行に努めたわけでございまして、私も警視庁の部隊に対して、その労苦に対して非常に感謝の気持を持っておるわけでございますが、さらに今回の
事態というものを重視し、
警察としても部隊の配置の仕方あるいは数の問題、さらに装備訓練というような点につきまして、
警察自体としては今後さらに一そうの検討を続け、遺憾なことの起こらないように
努力いたしたいと思います。
なお、今後さらに第九次の統一行動がいかなる形において行なわれるかということは、今直ちに予測しがたいのでありますが、願わくはこうした平穏に行なう
請願であるということであるならば、今回のような行動でなく、堂堂と大集会でも持って代表を国会に送る、もし
請願ということをやられるのであるならば、そういうことをされるべきではないかというふうに考えておりますし、そういうものにつきましては
関係者に対しても必要な注意、警告を行なって参りたいというふうに考えておる次第でございます。
なお、当日の全国の模様をちょっと申し上げますとこれまた従来に見られないほどの盛り上がりを見せておるわけでありますが、東京におきまするようなはなはだしい不法事案というものはその割には見られておらないのであります。数字的に申し上げますと、労組のストライキ及び職場集会を行なったのが六千六百三十八カ所、六十一万四千四百五十名、これは全国でございます。集会を持たれましたのが四十四
都道府県にわたり、二百六十八カ所、二十四万三千二百七十名、この集会のうちデモを伴ったものが四十三
都道府県、二百五十四カ所、二十一万一千六百余名ということになっておるわけでありまして、今までの安保闘争から見ますと最大の動員を示しておるわけでございます。ただ先ほども申し上げましたように、不法事案としましては、当日公務執行妨害罪において三件四名の検挙者を出しているという
状況でございます。
なお、先ほどちょっと申し落としましたが、この東京におきまする
請願デモのあとのわれわれの心がまえを申し上げましたが、さらに当日の事案を慎重に、正確に把握いたしまして、刑事
責任の追及という点につきましては今後捜査を着々と進めて参るつもりでございます。現在まですでに数名の逮捕を見ており、数カ所の捜索を行なっておりますが、この捜査の進展に伴いまして、さらにこれが拡大されていくであろうという予想を申し上げておきたいと思います。