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木村説明員 最近の
交通事情あるいは
交通事故につきましては、もうすでに
新聞紙上で毎日のように報道されておりますので、大体におきましては御案内かと思いますけれ
ども、かいつまんで概略を申し上げたいと思います。
一言にして申し上げますと、
交通事故の
状況が毎年々々非常にふえております。まことに大きな問題であるのであります。大勢を申し上げますと、戦後、
交通事故がどんどんふえておりますけれ
ども、特に最近におきましては
昭和三十一年に目立ってふえております。その
状況を申し上げますと、
昭和三十一年に
交通事故による
死傷者、これが十万八千八百二十三名ということで、前年の八万二千八百八十名に比較して三〇%も
死傷者がふえております。この年の
状況をわれわれは
神武天皇以来の
交通事故の
増加の最大のものであるということで、非常に注目いたしたのでありますが、その後さらにふえまして、三十二年には十三万二千百五名の
死傷者を出しておりまして、その前年に比較すると二二%の
増加であります。さらに昨年は十五万三千六百八十名、十五万の線を突破いたしまして、非常にふえまして、前年に比較して一六%の
増加を示しております。十五万といいますと、ちょうど浦和か長野市くらいの
相当大きな都会の全人口に匹敵するような
犠牲者を出しておるような
状況でありまして、非常に痛ましい社会問題ではないかと思います。特にまた、さらにことしになりましてこの情勢がますます激しくなってきました。本年九月までの
状況を申し上げますと、本年九月までの
状況は、
死者において昨年同期に比較いたしまして二二%
増加を示しております。非常な急カーブを描いて
死者の
ふえ方を昨年よりもさらにいたしておるわけであります。それから
けが人はやはりこの九月までの
状況が二二%増であります。これも非常な数になっておるわけであります。この
状況でことし
一ぱい、すなわち九月までの
統計でありますので、十月、十一月、十二月、
あと三カ月の
状況を推移していきますならば、
死者において一応推定の計数といたしましては一万二百九名――一万人を突破する、こういうふうな
状況になっております。それから
けが人におきまして十七万七千四人、すなわち十八万近くの
けが人を出す、こういうふうな
状況でありまして、
死傷者合わせて十九万近くの非常に多くの
犠牲者がことし
一ぱいにおいて出されるのではないか、こういうふうに思うのであります。ことし
死者の上がり方は非常に激しゅうございまして、昨年中における
死者の
状況を一日
平均で
計算いたしてみますと、一日に二十二人の
死者が昨年は出ておりましたけれ
ども、ことしの一月から九月までの
統計でいきますと、一日二十六人の
死者を出しております。すなわち、一時間に一人以上の
死者を出しておるような
計算でありまして、かりに真夜中の十一時ごろからまだ世間の
活動を開始しておりませんところの七時ごろまでの、そういう時間を省いて
計算してみますと、おそらく一時間に世の中の
活動時間においては二人近くの
死者を出すというような
計算でありまして、非常に大きな
犠牲者を出しているような
状況であります。
こういうふうに非常に大きな
犠牲者を出しておりますところのいろいろな
事情というものをある程度解剖してみましたのでありますが、その一番大きな
原因は、やはり
車両の
激増であります。これは七月末現在だったかと思いますが、七月末現在の
自動車の数が二百五十五万という数になっておりまして、ただいま現在では、おそらく二百六十万をオーバーしておるのではないかと思います。この数はちょうど現在の
道路交通取締法が制定されました
昭和二十二年の年末ごろの
自動車の
状況に比較いたしますと、二十二年の年末の
自動車の
全国の数は十八万八千台、まあ十八万台でありますので、最近の二百五、六十万という数は十四倍前後になるというような非常な
激増ぶりであります。しかも毎月三万台以上の
自動車がふえておりまして、年四十万近くあるいは四十万以上の
自動車が毎年々々ふえております。こういうふうな勢いでいきますと、おそらく一九六四年のオリンピックの開かれる年には、
全国で四百九十万前後の非常な数の
自動車になるのではないかと思われる。こういう
車両の
激増ということが
一つの大きな問題であります。その
激増の
状況に対処いたしまして、
警察としては、
指導なり、
取り締まりの面において非常に
努力いたしておりますけれ
ども、ただいま申し上げたように、毎年々々
交通事故はふえる一方である、こういうふうな
状況であります。
さらに
一つの
問題点といたしましては、最近の
砂利トラックの問題、いわゆる
神風トラックと呼ばれる非常にたくさんの
事故を起し、また残酷な
犠牲者を出しておりますところの
神風トラックのような問題が、ここ一両年はなはだしく社会問題として生起して参ったのであります。これらの問題は、
運転者にももちろん順法の精神が欠けておるために、その無理な
運転からくる
交通事故の派生ということが考えられますが、その
背景には、それを使っておりますところの雇い主、
事業主などの
労務管理の問題もありはしないかと思われるのであります。
積載量を
成規の倍も積むというような
積載量違反なり、あるいは非常な
スピードで飛ばしていくというようなことの陰には、やはり無理な
積載をさせ、無理な
スピードを出さざるを得ないような
背景として、
労務管理の問題がありはしないかと思われるのであります。そういう
意味で最近は
トラックによる
事故というものが非常に多うございます。
それから最近特に新らしい問題として生起しました
カミナリ族の出現であります。これは主として二十歳前後、七十%くらいは二十歳以下の若い少年が、いわゆるマッハといいまして、秒速三百四十メートル、時速千二百キロというようなものすごい音速というものを夢想して、そういうふうな超
スピードのスリルを満喫するというような、無謀きわまる
運転をいたしまして、その間にかよわい
歩行者あるいはかよわい幼児というものに対して非常に大きな
死傷事故を起こして
犠牲者を出している、こういうのが非常に目立ってきております。これは最近の八月までの
統計によりますと、この
カミナリ族によっていわゆる
オートバイ、軽自動二輪車の
運転によって起こしている八月までの
事故は、全体で三万八千七百七十件でございます。そして
死者千四百三名を出しております。この
状況は昨年同期、すなわち昨年の一月から八月までの同期に比較いたしまして、三五%の
激増ぶりであります。いろんな
事故のうちで、この
カミナリ族によりますところの
交通事故の
ふえ方というのが
最高の
ふえ方であります。しかも前年に比較して約二倍になっておる、こういうふうな
状況でありまして、この
カミナリ族が、最近最も
事故が多かった
トラックの
事故よりも、さらに上回っておるというような
状況であります。この社会の悪風潮といいますか、
カミナリ族一連の、法を無視し、またものすごい
スピードを満喫するというような、そういう
心理状態からくるところのこの
事故に対しましては、
警視庁初め神奈川県あるいは静岡県などでは、非常に力を入れまして
取り締まりをいたしておるのであります。
警視庁では、毎月
カミナリ族の検挙においては六千件前後の、非常に数多い
取り締まりをいたしておるような
状況であります。
以上申し上げましたように、
交通事故による
犠牲がどんどんふえております。ことし
一ぱいでは十九万近くの
死傷者を出すのではないかというような
状況でありまして、私
たちも非常に心を痛めておりますところの大問題であるのであります。
以上申し上げて御
報告といたします。