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1959-12-03 第33回国会 衆議院 社会労働委員会商工委員会連合審査会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十四年十二月三日(木曜日)     午前十時二十六分開議  出席委員   社会労働委員    委員長 永山 忠則君    理事 大石 武一君 理事 大坪 保雄君    理事 田中 正巳君 理事 八田 貞義君    理事 小林  進君 理事 五島 虎雄君    理事 滝井 義高君 理事 堤 ツルヨ君       池田 清志君    亀山 孝一君       藏内 修治君    河野 孝子君       齋藤 邦吉君    古川 丈吉君       柳谷清三郎君    山下 春江君       伊藤よし子君    大原  亨君       岡本 隆一君    多賀谷真稔君       八木 一男君    今村  等君   商工委員会    委員長 中村 幸八君    理事 小平 久雄君 理事 松平 忠久君    理事 武藤 武雄君       始関 伊平君    中井 一夫君       勝澤 芳雄君    八木  昇君  出席国務大臣         通商産業大臣  池田 勇人君         労 働 大 臣 松野 頼三君  出席政府委員         通商産業事務官         (石炭局長)  樋詰 誠明君         労働政務次官  赤澤 正道君         労働事務官         (職業安定局         長)      百田 正弘君  委員外出席者         社会労働委員会         専門員     川井 章知君         商工委員会専門         員       越田 清七君     ————————————— 本日の会議に付した案件  炭鉱離職者臨時措置法案内閣提出第三一号)      ————◇—————     〔永山社会労働委員長委員長席に着く]
  2. 永山忠則

    永山委員長 これより社会労働委員会商工委員会連合審査会を開会いたします。  先例によりまして、私が委員長の職務を行ないます。  炭鉱離職者臨時措置法案議題とし、審査を進めます。     —————————————
  3. 永山忠則

    永山委員長 まず趣旨説明を聴取いたします。松野労働大臣
  4. 松野頼三

    松野国務大臣 ただいま議題となりました炭鉱離職者臨時措置法案につきまして、その提案理由及び内容の大綱を御説明申し上げます。  石炭鉱業におきましては御承知通り深刻な不況に悩まされており、そのために多数の炭鉱労働者が離職している実情にあります。このような事態にかんがみ、政府といたしましては、従来から職業紹介職業訓練失業対策事業等対策を推進して参りましたが、さらに総合的かつ有効な離職者対策を確立すべく検討を進めて参りましたところ、このたび成案を得るに至りましたので、ここに、炭鉱離職者臨時措置法案を提出いたし、御審議を仰ぐことといたした次第でございます。  次に、その内容について概略御説明申し上げます。本法案は、炭鉱離職者が一定の地域において多数発生している現状にかんがみ、これらの者に特別の措置を講ずることにより、その職業生活の安定に資することを目的としておりますが、その内容といたしまして、第一に、炭鉱離職者が多数発生している地域においては炭鉱離職者職業につくことが困難であるという実情にかんがみ、労働大臣がその地域以外の地域においてそれらの者が職業につくことを促進するための職業紹介に関する計画を作成し、かつ、その計画に基づき必要な措置を講ずることといたしました。  第二に、離職者の多数発生している地域において、炭鉱離職者緊急就労対策事業計画実施し、炭鉱離職者就労の機会を与え、生活の安定をはかることといたしました。また、この事業につきましては、高率国庫補助を行い、もって地方財政負担の軽減をはかることといたしました。  第三に、職業訓練については、炭鉱離職者実情に即した特別の措置を講じ、これに対しては、一般の場合よりも高率国庫負担を行ない、離職者が他の職業に再就職することを円滑ならしめることといたしました。  第四に、石炭目的とする鉱業権者新規労働者雇用するにあたりましては、できるだけ炭鉱離職者を雇い入れるようにしなければならないこととし、公共職業安定所の積極的な職業紹介活動と相待って、これら離職者就職促進をはかることといたしました。  次に、炭鉱離職者職業につくことに対して特別の援護措置を行なうことを目的といたしまして、炭鉱離職者援護会を設立し、移住資金支給職業訓練受講者に対する手当の支給、寄宿舎の設置等の援助、炭鉱離職者雇用する雇用主に対する労働者用宿舎の貸与、就職を容易にするための職業講習の実施、公共職業安定所との連絡その他炭鉱離職者求職活動に関する協力、生業資金借り入れのあっせん、生活指導その他の業務を行ない、政府施策に協力して離職者対策に万全を期することといたしました。  また、この援護会の財源は、政府補助金及び石炭鉱業整備事業団からの交付金のほか寄附金をもって充てることとしております。  なお、本法は、その目的にかんがみ、施行後五年以内に廃止いたすこととしております。  以上簡単でございましたが、この法案提案理由並びにその概要につきまして御説明申し上げた次第であります。何とぞ、御審議の上すみやかに御可決あらんことを切に希望してやまない次第であります。
  5. 永山忠則

    永山委員長 以上で趣旨説明は終わりました。     —————————————
  6. 永山忠則

    永山委員長 質疑の通告がありますので、順次これを許します。始関伊平君。
  7. 始関伊平

    始関委員 炭鉱離職者臨時措置法案内容と、それからこういう法案の提出されるに至りました背景となっておる事情、さらに政府石炭政策というような問題につきまして、若干の質疑を申し上げたいと思います。  政府は、石炭鉱業が深刻な不況に悩まされており、そのために多数の炭鉱労働者が離職しているという実情にあるのにかんがみて本法案を提出せられたというのでありますが、他の産業、たとえば繊維でありますとか造船であるとか、この辺が今の時点におきまして適切であるかどうかは別といたしまして、政府のおっしゃるように、ある時点において、特別の多くの失業者が出たという事例は今までにございますし、また今後もあり得るであろうと思うのでありますが、そういう他の産業と切り離してと申しますか、そちらの方はやらないで、石炭についてだけこういう特別な措置を講ずるというのは、どういうような考え方理由に基づくのかという点を最初に伺いたいと思います。  なおそれとあわせまして、石炭不況に対処いたすということでございますれば、おのずから一つの体系を持った総合的な石炭対策というものが打ち出されるべきはずだと思うのでございますが、今回は離職者対策というものだけが取り上げられておるように思われるのでございますが、この辺はどういう理由なりあるいは考え方なりに基づくものであるかという点を、労働大臣から一つ伺いたいと思います。
  8. 松野頼三

    松野国務大臣 石炭にだけ特に今回特別の措置をとったという理由は、第一は石炭産業特殊性、これは産業なり経済的な特殊性と、もう一つ地域的な特殊性、もう一つ労働力者特殊性、実はこの三つ特殊性があると私は信じます。  第一の経済的特殊性は、これは通産大臣及び通産省からお答えいただくとして、第二番目の地域的な特殊性は、始関委員承知のごとく、石炭地帯というのはほとんど石炭だけであって、他に産業というものがほとんどないという、日本でも四カ所か五カ所ときめられた範囲内にしかありませんし、またこの産業が他に移動するということは、地下資源関係で不可能だという意味で、私はまず第二番目の地域的特殊性と申し上げたい。  第三番目の労働者の、労働力特殊性というのは、炭鉱労務者というのは、他の産業への移動性が非常に少ないのであります。他の産業への移動は今までほとんどございません。不況であろうが好況であろうが、石炭部内の移動は非常にひんぱんに行なわれますけれども、石炭から逆に機械工になるということは、今日までほとんどその例を見ないくらい、いわゆる石炭だけの労務者特殊性というものがまたございます。  そういう三つの条件から、この際石炭だけを特別に扱うことは妥当であろう。それでは他の産業、かつて繊維の場合はどうだという御質問でございますが、繊維の場合も一時帰休制という制度をとったことがございます。しかし繊維の場合は、御承知のごとく、石炭の場合とは労働力移動はおのずから異なっておりまして、ある場合は、繊維から精密機械に転業するくらいの移動性も実はございます。また地域的に申しましても、繊維日本じゅう、大体において相当大幅ないわゆる移動性のある産業だ、そういうところでおのずから分けまして、しかも石炭の今日の不況は、社会不安にも及ぶような状況でございますので、石炭を緊急に取り上げたというのは、他の産業とはおのずから別だ、この三つ考え方をもって、石炭だけ特別に扱うことが日本経済に妥当なものだ、また今日雇用産業伸びております中に、石炭だけは労働力も非常に減っておる、また将来においても見通しが非常に暗い、こういうことを考えますれば、今日手を打たなければ、おそらくこの産業不況が他の産業にも及ぶような危険性もあるのじゃなかろうか、こう考えまして、石炭特殊性という意味から、この際特別にやることが妥当だ、こう考えております。
  9. 始関伊平

    始関委員 ただいまの御答弁の中で、私のあとで申し上げました一般的な対策が出て参らぬで、離職者対策だけが出ておるという点も、国務大臣としてこの際松野さんから御答弁を願いたい。
  10. 松野頼三

    松野国務大臣 エネルギー及び石炭の総合的な対策は、次の通常国会までに根本的な対策を立てることにいたしております。ただそれでは通常国会まで待てばおのずからいいじゃないかという議論になるかもしれません。あるいは基本的計画臨時国会に急げばいいじゃないか、そうすれば離職者基本計画と一緒に出せば、始関委員がおっしゃるようにまことに説明がしいいかもしれません。ただそれを待てないほど実は離職者の問題は緊急になって参りました。ことに本年になりましてから急激に離職者というものがふえてきた。同時にその生活がだんだん困窮になってきたというので、まず今回は、すでに出ております失業保険も切れたという完全離職者対象対策を立てるということが緊急の問題になりましたので、実は総合計画というものはある時間かかるかもしれませんが、すでに出ております者を今回は対象にいたしまして、将来出る者は今回の対象人員には入れておりません。将来出る者は基本計画に合わせてやるべきだ、こう考えまして、従って今回の者は今日まで失業保険が切れておる、しかも炭鉱離職者というものだけに限定いたしまして、二万一千人という対象を立てたわけであります。これは今日非常な要対策人員という意味でありますので、ちょっとその辺は、基本計画が出なくとも、この生活状況というのは今日困っておる——将来の基本計画は、将来の離職者対策とあわせて通常国会に御審議願いたいという意味で、時間的にずれておりますのは、ただいま御説明申し上げましたような理由から、緊急にこの際先にやるべきだという意味で、この離職者法案を先に提案いたした次第であります。
  11. 始関伊平

    始関委員 基本対策通常国会でお出しになるというお話でございますが、石炭鉱業が今日のような事態になりましたのは、客観的に考察いたしますと、主として重油の急激かつ予想外の進出によりまして、いわゆるエネルギー消費構造というものが根本的に変化いたしまして、いわゆるエネルギー革命というものが進行中だ、そういう事柄による影響だ、客観的にはそういうふうに考えられるのでありますが、一面から申しますと、誤まった需給計画の策定、特にこれは最近まで政府は相当の大きな需要数量を見込みまして、これによって業界指導しておられた、そのために石炭鉱業の将来ということについての労使双方見通しというようなものを誤まらした点があるのではないか。その意味におきまして、政府指導よろしきを得なかった、こう思うのであります。もっともこの点は日本だけの問題ではございませんで、西ドイツその他においても同様な事態が起こっておるということでございますが、従来の石炭鉱業指導に対して政府は誤まった点がなかったかという点の御見解を伺いたい。  なお同時に、石炭鉱業対策は、簡単に申しますと、非能率炭鉱閉鎖、同時に優良炭鉱に対する生産の集中、増産、さらに新規に有望な炭田を開発するというような積極面消極面があるわけでございますので、石炭鉱業というものを局部的に見ますと、縮まる部分とふえる部分があるわけだと思うのでございます。私はこの際政府に、こまかい数字にわたってエネルギーの将来計画というものを伺いたいとは思いませんが、ただ大きな方向として、石炭生産規模というものは大体現状維持程度でいくのか、あるいは差し引きいたしましてさらに増産にしようというのか、あるいは縮小生産重油などとの競争に耐える優良炭鉱だけ残そう、その結果が全体として縮小になる、こういう方向に進むのか、こういう大きい方向についての見通し、特に最近有力な石炭会社首脳者の中で、この際縮小政策を打ち出すべきだという議論もあるようでございますが、こういう大きな方向につきまして、あわせて政府見解を伺いたいと思います。
  12. 樋詰誠明

    樋詰政府委員 まず政府エネルギー見通しが狂ったために非常に業界に迷惑をかけたのではないかというお話でございますが、確かに三十二年に、昭和五十年には七千二百万トンの石炭を掘るのだといったような一応の見通しが立てられまして、石炭生産につきましても将来非常に拡大するのだといったようなことが立てられた直後、急に情勢が変わりまして、非常に石炭需要伸び悩んでおるという点につきましては、これはわれわれ政府見通しが必ずしも非常に正鵠を得たものでなかったという点は率直に認めざるを得ないもの、こう思います。しかし、たとえば昭和三十三年度の生産をどういうふうにするか、どの程度消費があるかということにつきましては、これは業界方々もあるいは学識経験者もお入りになりました石炭鉱業審議会においていろいろ検討した結果、一応年度当初の推定では五千四百万トン程度需要があるはずだ、そういうふうに想定されて、それに基づいて生産計画を立てたのでございます。たまたま豊水が非常に大きかった、あるいはエネルギー原単位の消費向上があった、あるいは各産業伸びの中でもエネルギー消費産業伸び悩んだというような特殊な事情がありましたために、思わざる計画のそごを来たして、御承知通り四千八百万程度生産に制限せざるを得ないということになったわけでございます。この点につきましてはわれわれ責任がなかったとは申しませんが、業界方々とも十分検討した結果を一応政府計画として発表しておるというものでございまして今までの経験にかんがみまして、今後はエネルギー全体の伸びに対する見通しというものをもう少し甘くなく、客観情勢をしっかりと認識することによって、間違いない方向に持っていきたい、こういうふうに考えております。  それから、政府がそういう大きな計画を出したから業界の方で増産態勢をとって、非常な迷惑をこうむったのだというお話でございますが、実は政府見通しを発表いたしましたところをピークにいたしまして、会社の増員ということもむしろ減少の方向にだんだん実質的には向かっております。投資にいたしましても、従来の継続投資というもの以外、特にその計画ができたために思い切って大投資をしたというような事実はほとんどないのでございまして、従来からありました工事を継続することによって体質改善をやっていきたいというために、金額にいたしましては三十二年度よりも三十三年度が若干伸びたということはございますが、われわれといたしまして、特に政府長期エネルギー見通しが発表されたために業界の方で非常に大きな負担をこうむったということはないというふうに信じております。  それから今後の石炭をどう持っていくかということにつきましては、御承知のように、三十万人からの雇用を持っておりますし、また石炭をやめてほかのエネルギーに転ずるということになりますと、非常に膨大な外貨の支出を伴うということになるので、国際収支効果雇用効果、あるいは投資効果といった各種の効果を十分に判断いたしまして国民経済的な見地から、最もふさわしいあるべき姿の石炭規模というものを把握すべく、現在基本問題部会というものを設けまして、せっかく検討中でございます。私見にわたって恐縮でございますが、私の感じといたしましては、少なくとも現在生産能力として五千五百万トン程度と思われておりますが、能力としてこの程度のもの——現実生産は四千八百万トンぐらいでございますが、この程度のものは、国民経済的な見地から維持していく必要があるのじゃないか。またやり方によっては、消費産業に大きな迷惑をかけることなしに、国民経済全体としてその程度石炭鉱業は維持し得るのではないか、そういうふうに確信いたしておりますので、今後の基本問題部会検討と相待ちまして、さらに政府としていろいろな施策検討していきたいと考えております。
  13. 始関伊平

    始関委員 石炭鉱業の根本的なあり方の問題と関連いたしまして、炭主油従という考え方がございます。きょうお見えになっておりませんが、池田通産大臣は、炭主油従という考え方は変える考えはないということをどこかで申されておったのでございますが、これは非常に重要な点でございますのでお伺いしますが、振り返って考えてみますと、終戦直後、石炭増産ということが日本産業経済の再建上のいわば至上命令であるといわれておりました時代はもとよりでございますけれども、ずっと最近に至りますまで、概して申しますと、石炭についてはその増産、量の確保ということが石炭政策の主たる問題であるというように考えられておったと思うのでございまして、反面から申しますと、価格とかコストという問題はむしろ二の次の問題とされておったような傾向があるだろうと思うのでございます。外貨事情によりまして、重油などの輸入数量確保が必ずしも十分ではない、またその供給安定性についても疑問なきを得ないというような事情が、とにかく石炭については量が第一だという考え方背景になっておったと申して差しつかえなかろうと私は考えております。石炭業界の一部には、このように量が大事だという点からいたしまして、石炭が割高についても、これは国内資源だからまず優先的に使用させるべきだ、政府はそういう意味での総合エネルギー対策というものを立てろ、これが石炭業界の一部に非常に根強くあるところの考え方でございまして、それがいわゆる先生方の言う炭主油従考え方であると思うのであります。しかしながら私どもとしても、国内に賦存するほとんど唯一のエネルギー資源であります石炭をでき得る限り活用するのは、これは当然であると思いますけれども、重油価格に比べてはるかに割高につくような石炭を優先的に使えといってもこれは無理である、長続きはしない。これが経済の原則上当然でもございますし、またこのことは事実によって証明されておるところと思うのであります。そこで私はこういう大事な考え方の問題でございますので、誤解を招きやすい炭主油従というような政策というか考え方、あるいは言葉はもう使わぬ方がよろしい、このように思うのでございます。しかるにもかかわらず、池田さんはそういうことをおっしゃったと私は記憶をいたしておるのでありますが、政府の中に炭主油従という考え方が現在でもまだあるのだとすれば、その持っております意味内容というものはどういうものであるのか、石炭局長の了承している限りで一つ御返答を願いたいのであります。
  14. 樋詰誠明

    樋詰政府委員 いわゆる炭主油従という言葉は、業界方々あるいは新聞、雑誌等でよく見受ける言葉でございますが、政府自体方針の中で、炭主油従という言葉は正式に使わなかったというふうに私は了承しております。ただいま始関先生の御指摘になりましたような、経済性を全然無視した炭主油従といったようなことについては、政府は言ったことはない。これは今のところは割高である、しかしやりようによってはもう少し合理的な価格で、競争価格供給するということも不可能ではないので、それまでの間しばらく待っていただきたい、これは水力と並んで日本に残された最大のエネルギー資源でございますので、できるだけ合理的な開発をやることによって、ほかの競争エネルギーに対して特別不利でないというところまで合理化によって値を下げるという努力を政府業界あげてするので、それまでの間は需要業界方々もしばらく待っていただきたい、数年後には必ず業界の方で満足されるような合理的な価格で、しかも安定した供給態勢をとりますという意味で、しばらくの間御不便をかけても御了承いただきたいといったような意味の、一種の石炭保護政策というものを政府がとってきましたのを、たまたま業界あるいはジャーナリズム関係で、これは炭主油従政策だということでいろいろ発表しておるというふうに私は了解するのでございまして、この前池田大臣が、この席上だったかあるいは予算委員会だったかと思いますが、従来のいわゆる炭主油従方針というものは変えるつもりはないというふうに私も伺ったのでございますが、そのときにも、経済性を離れて、とにかく高くて不安定だろうが、国産第一主義だということで、国産原料を使いなさいという国粋主義的な炭主油従政策というものは従来からもとっておらないし、またそういうことはとるべきではない、あくまでも経済性に立脚した炭主油従政策であるべきだというふうにおっしゃったはずでありまして、われわれといたしましては、今申し上げましたような経済性安定供給、合理的な価格、この二つが実現されるめどがあるから、それまでの間もうしばらく石炭に対しては保護の手を加えるという政策をとり続けていかれるものだ、そういうふうに信じております。
  15. 始関伊平

    始関委員 石炭鉱業合理化とか、あるいは炭鉱の若返りというようなことは、ずいぶん前から問題にされておって、終戦以来今日まで、年間少なくとも百億を下らざる政府資金借り入れ資金などが炭鉱に投入されておるはずだと私は思うのであります。また石炭鉱業合理化臨時措置法施行以来、不良炭鉱、非能率炭鉱閉鎖、買い上げというようなことが非常に行なわれておるのでございますけれども、それにもかかわらず石炭生産費というものはあまり下がっていないのじゃないかというふうにいわれておりますが、その辺の実情と、下がっておらないとすればその理由について、当局の見解を簡単に御説明願いたい。
  16. 樋詰誠明

    樋詰政府委員 合理化をやったにもかかわらずコストが下がってないということは、ただいま御指摘通りでございます。これの理由を考えてみますと、まず第一には物価が若干上昇しておる、ことに坑木その他炭鉱で使う主要資材というものに上昇があったという物件費上昇、それから生産性が御承知のように相当上がってきておりますが、しかし生産性上昇よりももっと人件費関係の給与の上昇というものが大きかったという点、それからこれは形式的な問題でございますが、途中で税法が変わったりいたしまして、昔コストの中に見ていなかった要素がコストの中に見込まれるということになったために、コスト内容が変わったために、いかにも表面ふえたといったような面もございまして、もしそれらの面をいろいろ修正して考えますと、これは二割程度上がったことになっておりますが、四、五%は、やはりこの数年の間に人件費等上昇にもかかわらず実際には下がっている、こういうふうな計算ができると思います。
  17. 始関伊平

    始関委員 ただいまの、なぜ石炭鉱業コストが引き下がらぬかという問題に関連いたしまして、労働大臣にお尋ねをいたしたいのでございますが、いわゆる企業整備をめぐりまして三井鉱山の労使の対立は、双方が中労委会長中山さんのあっせん案を拒絶したために、最悪の事態を迎えておるというふうに言われております。私は三井鉱山の争議自体について政府の御見解を伺うことは差し控えたいと思うのでございますが、ただここで私どもが見のがせないことは、三井鉱山の再建のための企業整備の一番重要な、またむずかしい問題といたしまして、会社側で言ういわゆる業務阻害者、生産阻害者の解雇という問題がある。もっともこの業務阻害者は組合の方からいえば組合活動家ということであるそうでありますが、これが非常に大きい争点になっておるということでございまして、これらの人々はいわゆる職場闘争を通じて会社側の職制支配の排除をねらっておる、これは企業の組合管理戦術にほかならないというふうに、新聞なんかでは論評を加えておると思うのでございます。そうであるといたしますならば、こういったような事態のもとにおいて職場の規律保持が妨げられ、生産能率の向上とコストの引き下げを阻害しておるということは、これは疑いの余地がないように考えられるのでございます。  そこで先ほども申し上げましたように、三井鉱山それ自体の問題としてではなしに、むしろ一般的な問題といたしまして、ここで言われておりますような生産阻害の問題というのはどういう内容と実態を持ったものであるのか、こういった問題に対する労政当局としての御見解を聞かせていただきたいのであります。
  18. 松野頼三

    松野国務大臣 業務阻害者という言葉が今回三井で使われておりますけれども、この使い方と内容について、これは種々あるのじゃなかろうか。会社側の見解、組合側の見解、あるいは第三者の見解、実は業務阻害者という言葉がいろいろ広範囲でありまして、その内容をどこに置くかということは、今回の団体交渉及び中労委の交渉の間におきましても実はたびたび議論が出たところでございます。従って業務阻害者の定義の問題からまず議論が分かれるわけで、労働大臣がこうだと言うのではなくて、今回こういう例があったという点以外は、この三井及び一般的な業務阻害者の範疇が出てこない。今回業務阻害者と言われておりますものは、いわゆる組合専従者という意味ではございません。組合専従者だからという意味ではございません。なお三井は労務者が大体一万五千人であります。この中で三百人も専従者がおったということは常識的に考えられませんので、まずその範疇が組合専従者というわけでは断じてない。またこれが組合専従者であるときまりますれば、これは労働組合法の第七条の違反になるわけであります。従ってそういうことは労使ともに会議の内容では言っておらないはずであります。ただ要するに業務阻害者というのは、一般的会社業務に服しなかった、そのために会社の成績を上げなかったという、一般的の意味の業務阻害者というのが、今回の三井の場合に使われた業務阻害者の定義であります。この中にはいろいろございましょう。いろいろな問題が実はありまして、過去何年間の問題であります。ある場合には出炭を急に阻止した。あるいはストライキの戦術だったかもしれません。しかし会社側がそのストライキを違法と認める場合には、これはやはり会社の正常業務の阻害者という解釈も出てくるだろうし、あるいはある場合には出勤はしておっても少しも仕事をしていない、これは業務阻害者の範疇に入るのではなかろうか。こういうふうにいろいろありまして、業務阻害者と言われても、双方の団体交渉のさなかにおいても、何を業務阻害者と言うのかということで、実はいろいろ議論が出たわけであります。従ってその解釈によって、会社側と組合側における業務阻害者の解釈が違うこともこれは当然であります。また中労委の中山さんがまん中に入って、今回裁定を出されましたけれども、この中山さんの考え方も、業務阻害者は会社側にも偏せず、組合側にも偏しない解釈をされておったと思います。従って業務阻害者の人数というものは、一方的に幾らが妥当だとかどうだとかいう規格、範疇をきめるわけには参りませんので、それは個々の会社内容に応じて、業務阻害者というものをもしきめるならば、おきめいただく以外にはなかろう。また労働法において、業務阻害者という言葉は法律的にはございません。そういう意味で、これは実はなかなか解釈のしようで問題が多いのではなかろうか。同時に、これがどちらが妥当でどちらがいけないというわけでもございません。従って今回新しく業務阻害者という言葉が団体交渉の中に特に強く出ましたけれども、それをきめることは、これは労働大臣としてはなかなかきめられない。これは両者の間で業務阻害者の範囲、範疇をまずきめて、そしてここに議論が出ることで、要するに正常な業務を不法に阻害したという範囲で、おそらくこの問題が議論されるのじゃなかろうか、こう考えておりまして、その内容について、あるいは個々の問題について、これは労働大臣の解釈すべき問題でもなければ、労使間は今日労使間において団体交渉をやっておられるさなかでありますから、私の方でとやかく言うわけには参りません。中労委でこの解釈を、判定を下すことは、これはまたはっきりするわけには参りません。ことに中労委のあっせんを両者とも拒否されておる立場でありますから、労働大臣としては両者間において違法行為のないように、いわゆる労働争議の範囲内において、正常な自主的な解決をはかってもらうということを期待する以外に、今日私は立ち入るべきではなかろう、こう考えております。
  19. 始関伊平

    始関委員 当面の石炭業界不況に対処いたしまして、石炭業界では六一体昭和三十八年度までに八百円の炭価引き下げをやろう、こういうふうに計画をいたしておるのでありますが、これは実現可能というふうに通産当局では考えておられるかという点を伺いたいのであります。それから八百円程度価格引き下げでは、将来想定される重油との競争ができないのではなかろうかというおそれもあると思うのでありますが、そういう点についても御意見を伺いたい。  それから輸入重油などに対してある程度の関税をかけるとか、あるいはドイツのように消費税を設けるとかいう必要があるのではなかろうかと思うのでございます。先ほど私は炭主油従というようなまぎらわしい言葉は使うべきではない、こういうふうに主張いたしたのでありますが、しかし石炭鉱業というものを日本国内においてある程度温存しておきまして、これによってエネルギー供給安定をはかろうというようなことでありますれば、この程度保護政策というものは、私は必要なのではなかろうかというふうに考えるのであります。現在重油ボイラー規制法というものがございますが、これは消費構造の変化そのものを否定していこうという考え方でございまして、相当に無理の多い、また実効の上がらない制度ではなかろうかというふうに考える。従いまして、これにかわるという意味を持たして、関税なり消費税というものを考えていくことが一つの行き方ではなかろうかと思うのであります。さらに今日まで重油石炭との規制の問題につきまして大きな役割りを果たしておりましたのは、全体としての外貨割当操作というものであると思うのでございますが、これも外貨事情の好転、それから自由化の方向などと相待って、輸入数量の操作で石炭鉱業保護をはかることも、実はだんだんやりにくい情勢になるのではなかろうかと私は思いますので、残った方法としては今申し上げたような方法があるのではなかろうかと思うのでありますが、通産大臣の御所見を伺いたいと思います。
  20. 池田勇人

    池田国務大臣 お答え申し上げます。御質問の第一点の八百円の値下げ、すなわち昭和三十八年までの計画——会社の方から山ごとに一応の計画書が出ております。われわれはその内容につきましてただいま検討中であります。無理に値下げをするために、炭鉱労務者が非常にたくさん整理されるということも避けなければなりませんし、また八百円で、これで重油との競争ができるかという点もまた考えなければなりませんし、そういう点から次の関税の問題、ボイラー規制法の問題が出てくると思うのであります。     〔委員長退席、大坪委員長代理着席] 関税の問題はいずれ大蔵省でおきめになることでございましょうが、われわれにも御相談があることと思います。従いまして今の石炭の値段、また重油との関係等を考えまして、今検討中でございます。ボイラー規制法につきましてはいろいろ議論がございます。お話通りに、これは消費構造を法律で変えるということも非常に無理な点もありますが、現状におきます見通しといたしましては、これを全部やめてしまうというところまではいけないと私は思います。しからば今のままでおくかということにつきましても、これまた検討もしなければなりません。それから外貨の割当につきましては、いろいろ自由化の問題がございますが、私は石炭鉱業現状から申しまして、まだ原油輸入の外貨の割当につきましては、石炭事情を考慮しながら続けていかなければならぬ問題だと考えております。
  21. 始関伊平

    始関委員 今回の離職者法案の重要な内容をなすものの一つに、いろいろな職業紹介、特に広域職業紹介ということがあると思います。本法案の第三条によって、職業紹介に関する計画というものが作られるのでございますが、この内容をきわめて簡単に一つ説明願いたいのであります。それから本年九月の政府の決定によりまして、応急措置としていわゆる広域職業紹介によって二千人の離職者を再就職させるということでございまして、せっかく予算もとり、厚生省、労働省当局では一生懸命おやりのようでございましたが、これは今日までに何人くらい目鼻がついたのかという点を伺いたい。こういう過去の実績等から推しまして、今後もこの方法によってどの程度の、何と申しますか再就職についての期待が持てるというふうに労働省でお考えでいられるのか、こういう点を大臣からお答え願いたい。
  22. 松野頼三

    松野国務大臣 今回三条に規定をいたしますが、第六条に新しい条文を入れまして、鉱業権者は今後労務者を雇い入れるときには石炭労務者から雇い入れなければならないという規定を入れました。これは今まではないことでありますけれども、今後石炭労務者を雇い入れる場合には、石炭離職者から雇えということで、他の一般の労務者の市場からは一応やめて、石炭離職者からという優先条項を入れましたので、今回は一応石炭労務者というものの大ワクをきめまして、その中から今度有無相通ずるという業者間の労務者移動というものをきめて参るわけであります。これで一応計画の底をきめたわけであります。この計画によりますと、大体今日三十万というものがございます。これから自然減耗というものもございます。退職によるもの、病気によるもの、あるいはけがによるもの、あるいは結婚によるものという自然減耗の数を減らして参りますと、おのずからここに石炭労務者の総数が出て参ります。これに合わせて、今度は各炭鉱移動性をとって参りますと、一応の基準が出て参りますが、これではいわゆる石炭合理化労務者の自然減耗の速度がなかなか合わないというので、いわゆる純離職者という数が出て参ります。これを広域職業紹介によって吸収しようというのが、いわゆる第三条の始関委員の御指摘の、実は基本的な要対策人員というものの数であります。今日、九月から予備金で出しましたが、約一カ月半の間に六百六十九名の者が、広域職業紹介によって他の産業就職が決定しております。今回初めてのことでありますので、必ずしも優秀な成績とは申しませんが、他の産業の方も最近石炭離職者に同情を持たれて、一般産業に喜んで受け入れようということを、日経連を通じて各種会社に要請しまして、最近大工場でも、富士鉄あたりでも、百五十名、二百名引き受けようというお申し込みをいただいております。必ずしも中小ばかりとか、労働条件の悪いところばかりということではございません。今日六百六十九名は、必ずしも一流会社とは申しませんけれども、今後の問題は必ずやれる。非常に他の一般の産業の方も離職者に同情をいただいておりますので、私はできると思う。その前に、どうしても職業訓練をしてくれという御希望があるのです。やはり石炭からいきなり機械工にはなかなかなれないからというので、その中間に職業訓練というものを大幅に取り入れて、まだ足りませんので、来年はより以上推進をして、職業訓練というものを実はこの中に入れたい。また企業内におきましては、職業講習をやるように、今回の法案に規定しております。石炭鉱業の中において、離職以前に職業講習を受けて、なるべく他の職業を身につけてもらう。政府職業訓練所を拡充して、これに吸収する。こういう一つの窓口を開きながら今回やって参りますれば、正確に計算することは、私は必ずしもそう不可能ではなかろう、また同時にこれに期待するところが多大なものがある、そういう基礎の条件のもとにおいて実は今後適用計画というものを立てていきたい。しかしこの法案通りませんと、今日だれを雇っても自由でございますから、一方で離職者が出る、一方では新規工員を雇う。これをやるとすれば計画が立ちませんので、今回は第六条に、その前に必ずそういうことにしてくれと規定した。まず底を締めて、そうして計画を立てようというのであります。基本的には、まだやっておりませんけれども、まず基礎条件としてはそういうものの上に計画を立てたい、こう考えております。
  23. 始関伊平

    始関委員 広域職業紹介職業訓練とを通じまして、このむずかしい炭鉱離職者の再就職の問題につきまして、すでに相当程度の実績を上げられたということでございまして、私は労働当局の労を多としたいのでございますが、この問題に関連いたしまして、失業保険法による保険給付の期間を多少延長いたしまして、特に職業訓練中の者にも、ある程度やったらどうかというような意見がだいぶ方々にございまして、労働省当局でも御研究中と伺っておるのでございますが、この問題につきまして何らかの結論に到達いたしたのであれば、これをお伺いしたいと存じます。
  24. 松野頼三

    松野国務大臣 失業保険の改正ということは、これは御承知のごとくすべての産業に及ぶことで、石炭だけにこれを急に改正するということは、実はすべての産業の中における審議会がなかなか難航いたします。といって、今回は特に失業保険の受給者が、職業訓練所に入所した途中で切れたという方は、これはお気の毒じゃないか、次に再就職の道と方向がきまっておるにもかかわらず、失業保険の切れたために退所しなければならない、こういうのははなはだお気の毒じゃないかというので、これは検討したい。すでに切れた方につきましては、失業保険でやるわけに参りませんので、援護会の費用から支給するようにしております。  なお始関委員承知のごとく、失業保険法を延長したらどうかというようなことが、いろいろな方から出ております。ただここに考えなければならないことは、失業保険法をいたずらに延長して、失業期間を延長するという結果になっても、これは大へんであります。しかも不幸にして、失業保険の受給が長ければ長いほど、次の雇用条件が実は悪くなっておる。離職された方が一カ月目、ニカ月日に就職される場合には、ある程度条件がよくなる。六カ月も一年も失業者となると、実は再雇用の条件が逆に悪くなる。従って、失業保険を延長することは甘い人情ではありますが、雇用面からいうと、非常に労働条件の悪い雇用に押しつけなければならないという結果になっても、これは大へんでありますから、そういう意味で、失業保険法は、なるべく再雇用の方にこの金を使いたい。その意味で、失業保険の金を実は職業訓練所の金に回しておるわけであります。従って、失業保険で本人に払うかわりに、職業訓練所にこの金を使いまして、そうして再就業の方にこの失業保険の金というものをなるべく回していきたいというのが、今回の労働省の考えであります。甘い考え方かもしれませんけれども、いたずらにそれに堕すると、次の再雇用というものを悪化するということがあったら、これは本末転倒じゃないだろうかというので、今回はさしあたり入所中の方については失業保険の延長を考えて検討しておりますが、一般の場合には援護会で援護を行なうというふうに規定し、援護会でこれを受け持つつもりであります。
  25. 始関伊平

    始関委員 ただいまお話のありました炭鉱離職者援護会の設立ということは、今回の法案の非常に重要な眼目であると思うのでございまして、現地の切迫した情勢等から申しまして、特に急速にまた手ぎわよく、一日も早くこの事業を開始する必要があると思うのでございます。およそ一つの組織を作りまして、これが具体的に動き出すところまで持っていくということは、これはなかなか大へんなことだと思うのでございます。これについては、何らかの特別の構想なり工夫なりがなければならぬと思うのでございますが、法案が通ったといたしまして、一体いつごろから具体的な事業活動を開始するようにするお見通しであるのかという点と、それからあわせて、援護会の予算が六億くらいあるようでございますが、この援護会の予算は三十四年度内のものであろうと思いますので、これを年度内に有効に消化いたしまして、これによって離職者対策に役立たせるということにつきましての自信をお持ちであるかどうか、この点をお伺いいたしたいと思います。
  26. 松野頼三

    松野国務大臣 この法案を一日も早く通過さしていただきたいというのは、昨日の委員会におきまして、実はほとんどすべての参考人の方が一致して早く通してくれという御意見で、一番緊急に言われましたのが福岡県の知事さんです。福岡県の知事さんは、約三十分この法案に対する意見を言われましたが、要するに、早く通してくれということを、約三十分の間に二十回くらい言われました。実は地元の市町村及び県の方の計画は緊急就労でありますけれども、緊急就労事業として、失業保険というよりも、早く仕事を与えたいという気持が非常に旺盛であります。私はまずこれは年内に発足すると思います。緊急就労は年内に発足すると思います。援護会の方は、今から準備を急いで至急にやりますから、正月早々に発足できると思います。しかし、この法案の一部の緊急就労は年内、十二月中にも動きまして、そうしてただいま始関委員の御指摘の、失業者で困っておる、失業保険も切れたという要対策者を、至急に年内にもこの事業を起こして吸収したい、これは私は十二月中にも動くと思います。そういう意味では、なるべく一日もすみやかに通していただかなければ、これは実行できませんので、いろいろな御議論もございましょうが、とにかく最大の誠意を持ってこれをやってみる。あとはどうなるのか。あとは、これはやはり個人々々の就業能力と就業希望によってやりますので、なるべくこの予算が三月三十一日までに消化できるように順調に進めば、これはけっこうであります。といって、これは一般の公共事業でありますから、予算もちびりではなしに、なるべく多くの方がこの法案に合致するような就業能力と就業希望を早く出していただいてそうして私どもの広域職業とあわせていただきたいというので、やはり個人々々の希望もありますので、私どもはなるべくこれを三月三十一日までに消化して、より以上の方をお救いしたいという気持であります。しかし、これができるかどうかということは、個々の方の就業の能力と希望と家庭の事情がございますので、強制するわけにはいきません。援護会は正月、緊急就労は年内にも実施できると私は確信しております。
  27. 始関伊平

    始関委員 この法案の指定いたしております職業紹介、それから職業訓練、さらに援護会事業活動の開始その他いろいろ規定があるようでありますが、炭鉱労働者緊急就労対策事業の実施というような事柄をもっていたしまして、いわゆる炭鉱離職者の問題は、大体においてこれでやっていける、この法案通りまして、この法案に規定するいろいろな対策がスタートを切れば、今回の炭鉱離職者の深刻な事態というものは、大体においてこれで解決できる、こういうお見通しであるのか、またそういう確信がおありなのかという点を伺いたいと思います。
  28. 松野頼三

    松野国務大臣 今回の要対策人員としての二万数千名が、この法案で完全に実施できると思っております。二万一千に足りなかったらどうするか、それは個々の方が希望されなければ足りない。希望されれば二万一千人は必ずこの予算で完全に消化して参りたい。ただ最後に一点ですが、広域職業紹介——やはり個人々々の希望、受け入れ側の希望もありますから、これを強制するわけに参りませんけれども、そういう条件はおそらく今回満たされて、そうして二万数千人の方はこれで完全に消化できる、私はこういう確信を持っております。
  29. 始関伊平

    始関委員 日本におきまして炭鉱の問題が非常に深刻になっておるという一つ事情といたしまして、外国では炭鉱地域と申しますか、あるいは場合によりましては炭鉱のすぐ上に工業地帯がある。ところが日本では、概して申しますとそうではございませんで、工業地帯は炭鉱地帯と離れておるというところに非常に大きな理由と申しますか、立地条件上の理由があると思うのでございます。炭鉱地帯に工業地帯を造成しろといっても、そう簡単には参らぬいろいろなほかの立地条件が要ると思うのでございますが、こういったような事柄について今後調査を進め、これを実現していきたいというお考えがあれば、これは非常に動かしにくい炭鉱離職者の再就職のためにも望ましいのではなかろうかと思いますが、この点、通産大臣の御所を伺いたいと思います。  また同様な意味で、ただいま筑豊炭田が一番大きな問題になっております。今まで掘っておりましたところはだめだけれども、深部の開発が合理的にかつ経済的に成り立つということであれば、炭鉱離職者を動かしませんで、その場所で再就職の機会を与え得るわけでございますので、これも同様な目的のためにも非常に役立つということに考えますが、この二点につきまして通産大臣の御所見を伺わしていただきたいと思います。
  30. 池田勇人

    池田国務大臣 お話のごとく外国におきましては、産炭地に大工場がございまして消費するということは、ドイツでもイギリスでもその慣例をなしておるのであります。この問題はそれが望ましいのでございますが、日本の国の形が今のような状況でございます。産炭地で使えば重油と対抗できる、しかし東京、名古屋、大阪で、その運賃のために対抗できないという問題が日本にはございます。従ってこれから後に産炭地になるべく工場を作るということを考えなければなりませんが、これは非常にむずかしいことです。従って今後炭鉱を開発するという場合におきましては、やはりその近くにございますから、廃鉱になったかわりに優良な炭田を早く開発する、たとえば有明のあの付近の炭鉱を早急に開発しようという計画を私はいたしておるのであります。  またお話のありました筑豊炭田等につきましても、今鉱区が錯綜し、縦坑その他の関係で、一つの鉱区では採算がとれないというふうな場合も聞き及んでおりますので、今回、遠賀川の汚水その他と同様に、そういう面の調査をいたすために予算をとっておるのでございます。たとえば直方の東北方にあります二、三の会社の鉱区を一まとめにして縦坑を掘ったならば採算がとれるかどうか、こういう点も私は考えていきたいと思っておるのであります。イギリスでもやはり廃炭地区に対して財政的の補助をして工場を設けるという施策をやっておるようでございますが、なかなか十分にはいかぬようであります。
  31. 始関伊平

    始関委員 現在炭田地帯の近所にいろいろな意味での就職の機会を多くするような事業を興すという事柄につきましては、通産大臣のお力に待つところが非常に多いと思いますので、この上とも一つ善処されますようにお願い申し上げます。  これは私通産大臣に伺ってみたいのでございますが、石炭鉱業の現在の状態に対処いたしますために石炭鉱業を国有化する、あるいは国家管理をやる、そうしたらいいじゃないか、これが石炭鉱業の当面の危機打開にも役立つ、こういう主張があると思うのでございます。自民党内閣としてはそういう政策はとらない、これは伺うまでもないのでございますが、もしそういったような政策をとった場合に、これが何らか当面の危機打開その他に役立つ点が多少ともあるというふうにお考えかどうか、その点を伺いたいと思います。
  32. 池田勇人

    池田国務大臣 国営ということは、お話通りわれわれは考えておりません。ただ国営を主張しない形で、ある程度合併その他でいったらどうかという説はございます。それは私は何ら差しつかえないと思います。業者の間で経営上合併する……。しかし通産省として国営その他につきましての考えは今持っておりません。
  33. 始関伊平

    始関委員 これまでの経験によりますと、ある時期には石炭が不足することがあったのであります。今は非常に余っておりますが、これからでも、場合によっては石炭が不足するようなことが絶対にないとは言えないと私は思うのであります。この石炭の不足、これは不足いたしました過去の実例を見ますと、炭労のストライキなどによりまして石炭供給が不足になった、こういったような事態が非常にしばしばあったのでございまして、このようにある時期の間石炭供給が不足になったということが、今日重油の使用が非常に普及して参った一つの契機をなしているというふうに考えて差しつかえないというふうに思うのでございます。こういうような事態に対処いたしますためにも、また価格の安定というような事柄に資しますためにも、これは一般の商品についてあれもこれもというような考え方はよろしくないと思いますが、石炭のようなものについては公的な需給調整機関を設置して、余ったときにはある数量を限って政府が買い上げてやる、また不足のときには、あるいは値段の上がりそうなときにはこれを放出してやる、こういうことが石炭についてはと申しますか、日本のいろいろな産業あるいは商品の中で、石炭についてのみはそういうふうにやるということについての非常に合理性、妥当性があるように思うのでございますが、こういう調整機関を設置するという問題について、通産大臣の御所見を伺わせていただきたいのでございます。  それから、新昭和石炭というものがありまして、これは民間の会社のようでありますが、これが私の申し上げましたような活動を、きわめて微温的な程度でやっているやに伺っておりますけれども、その活動状況といったものをちょっとお答えをいただきたいのでございます。
  34. 池田勇人

    池田国務大臣 今日のように重油が非常に伸びてきた一つの原因としまして、一時非常に石炭が不足だった、従って石炭にたよっておったのでは安心できないという考え方も相当あるのでございます。私はそれは認めます。従いまして需給調整の機関を国営で持つかというお話でございますが、私はこれまたあまり感心いたしません。  それから、大手の方は新昭和石炭会社である程度買い上げしてやる、これは私は民間でやるべきだ。中小企業の方につきましては、金融で当座をしのいでおるのでありますが、この方法でいくよりほかにない。しかし今のお話のような点を除去するために、私は炭鉱会社は大消費者と長期の契約をすべきだ、こういう考えを持っておるのであります。私は石炭鉱業の再建の方法として、流通面において相当改善しなければならぬ点があると思います。それはいわゆる大需要者と長期の契約を結ぶ、そして炭主を一つきめてしまう、こういうふうな方法で流通面における価格の引き下げをはかって、そして需給の安定を生産者と消費者との間でつけていくことが合理的な方法ではないかと考えております。新昭和石炭事業のことは局長からお答えします。
  35. 樋詰誠明

    樋詰政府委員 新昭和石炭は大体百万トンの大手関係の貯炭を、別に封鎖といいますか凍結するということで、市場から隔離するということを目的に、ことしの四月発足したのでございますが、大体今までにほぼ三十万トン程度のものを買ったわけでございます。これはわれわれといたしましては、この新昭和石炭が作られました趣旨が、できるだけ市場に圧迫を与えないように過剰分を凍結しようということでございますので、各生産会社が自分の力で持ち得るというところまでは自分で持っていく、持ち切れない、これ以上では市価を暴落させるというものだけを凍結するという意味でそっちの方に回すという趣旨から考えますと、むしろ生産業者がいろいろ努力した結果、大体炭価もそう大きな暴落なしに維持できたということで、百万トン買える機関がありながらそこに三十万トン弱しか持ち込んでおらなかったということは、結果的に考えますと、百万トン買うつもりで作ったが百万トン買わぬではないか、目的を達しないというふうに見るよりは、むしろここべさらに非常に危機的なことが起こっても、さらに七十万トン程度は常に買うだけの準備がしてあるということで、結果的にこういう特殊の機関がフルに活動しないということは業界のためには——大体業界自体がそれだけ持ちこたえる力があって、自分でやっているということで、結果的に見て悪いというよりはむしろ非常にいいことではないか、そういうふうに考えます。実績といたしましては、大体三十万トン弱を今まで買っております。
  36. 始関伊平

    始関委員 ただいま予算の編成時期でもございますので、一ぺん通産大臣の御所見を伺いたいのでございますが、石炭コストを引き下げるということは、何と申しましても非常に大事なことでございまして、そのために新しい技術の採用、導入ということが非常に必要であるというふうに考えられておりまするし、その新しい技術とは何かということについてのお考えもいろいろおありだろうと思うのであります。このような石炭技術振興対策についての大筋のと申しますか、こまかいお答えをいただこうとは思いませんが、どういったふうにお考えになっておられるかということをお答えいただきたいと思います。
  37. 池田勇人

    池田国務大臣 先般工業技術院等の主催で、石炭技術者会議を四日間開きました。生産から輸送、消費に至る間の合理化、また石炭の使用面におきましての新しい天地の開拓等を検討していただいておるのであります。その結果を見てまた考えたいと思いますが、いずれにいたしましても、やはり生産性を上げるよりほかにございません。今大手の方は、生産能率十五、六トンと言っておりますが、中には合理化のために月五十トン近く掘っているところもあるのであります。私は各社から今出ております再建案を検討いたしまして、将来有望なものにつきましては相当の合理化をし、そして労使の間で生産性を向上するように努力し、それには財政的にもいろいろの援助をいたしたい、こう考えておるのであります。
  38. 始関伊平

    始関委員 ありがとうございました。私は終わります。
  39. 大坪保雄

    ○大坪委員長代理 八木昇君。
  40. 八木昇

    八木(昇)委員 できる限り私は商工委員の立場から、今回の炭鉱離職者臨時措置法案に対しまして質問をいたしたいと思います。  まず、やはり私は今度のこの問題を考えます場合に、北九州方面あるいは北海道その他全国の炭鉱地帯におきまして非常に深刻な不況という問題が起き、しかもたくさんの炭鉱離職者生活が今日窮迫して、そして山元付近に滞留しておる、これが大きな社会問題となっている、こういう事態に立ち至ったことについては、結局するところそういった労働者の人たちに責任はない。     〔大坪委員長代理退席、委員長着席〕 むしろこういった重大な深刻な事態をもたらしたについては、炭鉱の経営者側並びに政府に重大な責任があるのではないか、一体こういう事態に立ち至った責任の所在はどこにあるのかという点がやはり第一に明確にならなければならぬのではないかと、私はそういうふうに考えるわけであります。ここで経営者の人々の責任を追及してみましたところで、政府相手にそれをやったところでいたし方ありませんので、主として政府の責任についてある程度明確にしなければならぬのじゃないかと、こう思うのでございます。一口に言いますと、今日までの数カ年間の政府石炭行政というものが全く一貫性を欠いており、極端に言うならば非常な誤りを続けた、その結果が今日非常な社会問題を惹起している、結論的に言うとそう言わなければならぬのではないかと私は考えるわけであります。  そこで若干具体的に伺ってみたいと思うのですが、昭和三十年、今から四年ぐらい前に石炭鉱業合理化法というのを提案をせられた。そのときに、三百三十万トン相当の炭鉱をこの際政府は買い上げて取りつぶしたい、これをやることによって、すなわち非能率炭鉱三百三十万トン相当分を政府が買い上げ取りつぶすことによって、それだけで事が成就するというわけではなかったのでございましょうが、これによって炭価は漸次下がっていき、石炭鉱業界は安定する、これは政府として非常に抜本的な方策であるということを、当時私ども商工委員をいたしておりましたのでこの法案審議に参加したのでありますが、政府は非常に強調せられたわけであります。ところが現実は一向に炭価は下がらない、しかもその後三百三十万トンの買い上げでは十分に成果を上げることができないというので、この春はさらにプラス百万トン、四百三十万トンの買い上げをやる、そうして聞くところによりますと、近くまたさらにプラス二百万トン、こういう計画だ、こういうことなんだそうでありますが、この点やはり政府としての見込み違いというか、そういうものがなかったかどうか、率直な御見解を承っておきたいと思います。もちろんこれは今日の通産大臣の責任であるとは考えません。これは石橋大臣から水田大臣、それからその後通産大臣も三人ぐらいかわっておられますが、その間、石炭鉱業合理化法を制定せられた当時からしてすでに判断の誤りがあったのではないか。この点についての御見解を大臣からまず伺っておきたいと思います。
  41. 池田勇人

    池田国務大臣 昭和三十年に石炭合理化法を制定いたしました。お話通り状況で、またそういう見込みであったのでございますが、御承知のごとく三十年から三十二年の初めにかけましてのあの好景気で、実は失業者が相当出ると考えておったのが、失業者が出ずに、逆に炭鉱労務者はふえた、こういうことです。従って下がるという炭価は下がらずにいった。これは私は政府の見込みが違ったと言えると思います。その後はずっとジリ貧の状態をたどってきておる。従って五千五百万トンというのが五千三百万トンになり、今では四千八百万トン、こういうふうに生産が減って参っても、なおかつ二、三カ月前は千二百万トンという未曽有の貯炭があったような状況でございます。
  42. 八木昇

    八木(昇)委員 その点は非常に率直に大臣としてお認めになったわけでございますが、昨年の時期においてさえも、前尾通産大臣のごときは、昭和三十三年度の出炭量はどうしても五千六百万トンの出炭をやってもらわなければいかぬ、そこで炭労がストライキその他をやって一部減産になっておるという事態はまことに遺憾であって、炭労ストによる出炭の減少という点をある程度加味したとしたところで、少なくとも五千四百万トン前後の石炭は本年度どうしても掘ってもらわなければいかぬというようなことを、委員会でも強調せられておったし、各方面に向かっても通達をせられた、こう承っておるわけです。ところが事実は、御承知のように、何と昭和三十三年度の荷渡しは四千六百万幾ら、四千七百万トンに達していない。こういうあり方というものは、ものが石炭でありまして普通食糧なんかにおきましても、昔から米の相場というのが、米は少し余るとものすごく値は暴落するし、少し足らないということになると値はものすごく奔騰する。これと同じように、産業エネルギーであるところの石炭については、どうしても、わずかでも不足すると値は奔騰し、ちょっと余ると値は暴落する、こういう自然的な一つの要素を持っておる。しかもものは石炭だ。こういうものについては政府は慎重な施策が必要であるにかかわらず、今申し上げましたように、一口に言えばまことにナンセンスな行政指導をやっておる。その結果が実に一千二百万トンにも及ぶ膨大な貯炭の山というような現象を引き起こしてしまった。そして石炭不況問題がにわかに喧伝されるに至った。こういう点についても政府は非常な責任があるのじゃないか。
  43. 池田勇人

    池田国務大臣 経済界の動きに。きましては、よほど慎重に考えてやっておるのでございます。たとえば電気について申しますと、今年の初めごろは電気は一割くらい余裕があるといっておりましたが、もう今ではこの渇水期にどうしようかというようなことになって参りました。この一、二月には何人も、鉱工業生産が前年に比べて二割、二割五分もふえるというようなことを想像し得なかった。またそういうことと逆のこともある。これは日本ばかりではございません。アメリカは別でございますが、イギリスにしても、ベルギーにいたしましても、ドイツにいたしましても、大へんな貯炭で苦しんでおるのであります。政府見通しが誤りということも立ちましょうが、これはなかなかむずかしいのでございまして、どこの政府もこの石炭問題につきましては見通し違いで悩んでおるのであります。従って今後におきましては、需給の安定がやはり石炭の信用を維持する一番の方法でございますので、需給の安定ということにつきまして生産者と大口消費者の間で一つの話し合いをしていこうという考えを私は持って、今までのような、見込み違いが起こるにしても耐え得る見込み違いをしていきたいと考えておる次第でございます。
  44. 八木昇

    八木(昇)委員 これは単に日本のみならず、ヨーロッパ各国におきましても、石炭問題が多かれ少なかれ相当深刻な問題となっているということそれ自体は、私どももわかるわけでございますけれども、日本の今起きておる石炭問題というのとやはり相当違う。というのは、日本の場合には政府の不手ぎわというものが特に指摘されざるを得ないのじゃないかと私は思うのです。そこでお伺いをいたしたい点は、ここのところ非常にそういった不手ぎわが具体的に現われて、そうして千万トン以上の貯炭が出てきて、さあどうするかというような大騒ぎをしているというわけでございます。しかし全体としての石炭需要見通し、今後五年ないしは十五年というところに向かっての石炭需要見通しというものについては、これは昭和三十一年にも通産大臣の諮問機関であるところの産業合理化審議会のエネルギー部会が一つ見通しを出しました。それから昭和三十二年の末には経済審議会で新長期経済計画というものを出したわけです。これによりますと、昭和五十年度ころまでの石炭需要見通しという点からしますと、やはり石炭需要はまだどんどん伸びていく、こういう見通しは大体立てられる、それ自体については今日も大して間違いはなかったという見通しをお持ちであるのかどうか。もしそうだとするならば、ここに一時的に政府その他の不手ぎわから一千万トンの貯炭ということで騒ぎが起きておるけれども、しかしながらそれは一時的な現象であって、石炭産業そのものがもう本質的に斜陽産業だというふうにきめつけるべきものではなく、ある程度長期の見通しとしてはやはり石炭需要はまだ相当伸びていくが、今の現象としてこの千万トンの貯炭というようなものが現われて、当面何とかしなければならぬ、こういう現象が出ておるのであるか。すなわち今起きておる石炭不況というものは長い展望から見ると一時的な現象である、こういうふうな見方が成り立つのではないかと私は考えるのですが、その辺のところの通産省としてのお考えを伺っておきたいと思います。
  45. 池田勇人

    池田国務大臣 燃料エネルギー源としての石炭の地位は、私は大方の人がいわゆる斜陽的のものだと考えておられると思います。しかしわれわれ産業をあずかっておるものといたしましては、それはそうであろうけれども、努力によってこれを伸ばしていかなければならぬという気持があるのであります。だから問題はそこにあるわけで、見込みの点なんかにつきましても、産業行政をやっておる方は、私が先ほど申し上げたように、雇用の面からも、外資の面からも、とにかく日本石炭業を伸ばしていきたいという一念がもとをなしておりますから、見込み違いもそれによって起こることになると思うのです。長い目で見ていけばこれは斜陽産業といえる、しかしこれを斜陽にしてはいかぬ、できるだけ伸ばしていこうというのが石炭行政のもとであるのであります。私はそういう気持で今後石炭鉱業政策をやっていきたいと考えております。
  46. 八木昇

    八木(昇)委員 そこでちょっと問題を他へ移したいと思うのですけれども、今の通産大臣のお答えではございましたが、私の考えをもってすれば、当面は、やはりこの石炭の経営者側が非常に困っておるということは、これは事実でございましょうが、しかしもとをただせば、この石炭経営者にいたしましても、ある時期、存外の石炭景気というものが二年くらい前に出てきたために、そこで石炭鉱業というものの社会的な責任というものを忘れて、すぐ目の前の利益の追求にきゅうきゅうとした行き方をし、それからまた当時二年くらい前に、近い将来予想される石炭鉱業界の不況というようなことも念頭に置かないで、そうして先ほど申し上げましたようなやり方をしたために、そこで今日のこういう状態が出てき、そうして石炭需要者からは、石炭資本家が非常に信用を失墜してしまっておる。そこで今非常に困った状態に立ち至った。こうなってくると、今度は石炭斜陽論というものをまことしやかに宣伝をして、結局コストを下げなければならぬ、近代化しなければならぬ、人間を首切るほかはない、こういうようなことで、その責めを一切労働者に転嫁をして、首切りを今やって、当面の状態を何とか乗り切ろう、こういうことをやっておるのではないか、まことにもって私どもは遺憾千万と考える。  そこで、それはそれといたしまして、今度は労働大臣にお伺いしたいと思うのですけれども、そもそもあの石炭鉱業合理化法ができましたときに、私どもが当時非常に労働大臣に迫りました点は、政府がこれから炭鉱の買い取り、取りつぶしという強硬策をやるというのだけれども、それに伴って起るところの労働者の失業問題の処理をどうするかということを、非常に繰り返し繰り返し——当時は西田労働大臣でございましたが、私どもとしては追及をしたわけであります。そのときに、本会議におきましても、委員会におきましても、私から言わせると、非常に大きな口をたたかれたわけです。まかせておいてもらいたい、そうして何か北九州においては、国鉄の新線の事業をどうやります、こうやります、この事業に何人、こういう事業に何人、これだけ吸収する見込みでございます、というようなことをまことしやかに答弁をせられたのでございますが、その後何らこれが実施をせられておらない。これは一体どういうわけでそうなったのか、その点の責任です。これは今の松野大臣に言うことは、あるいは過酷かもしれませんけれども、しかし労働省はあくまでも労働省でありますから、その点一つ明快にこの際答えておいてほしい。
  47. 松野頼三

    松野国務大臣 昭和三十年に合理化法が通りましてから、御承知のごとく、三十二年には五千数百万トンという画期的増炭が実はできました。そのために、離職者の方はほとんど石炭業者に吸収されまして、その当時の川崎線というものに対する需要というものは必ずしも出てきませんでした。そういうわけで、ある程度そのときの状況と結果においては差はございます。そのときにも、もちろん失業対策事業とか、公共事業に吸収するという計画はございましたが、やはり石炭労務者は、まず石炭産業というものに従事することが一番適当でもあるし、また御本人の希望でもございましたので、そういう意味で必ずしも職業紹介に出てこなかった。そのあと押しが一挙にして今日出てきて、このような法案を作らなければ完全消化ができないというわけで、私は過去は全部よかったとは申しません。しかしそのときはそういう事情もあって、そういうふうな計画を立てられたが、今日では、そういうものでは計画は立たないというので、特に今回緊急措置としてこういうものを立てたわけでありまして、過去のことはいろいろありますけれども、過去は、計画と現実と確かに相違があったことは事実であります。しかしどちらがいいか悪いかという責任問題は別といたしまして、そういう事情のもとに、過去においてはその計画通り実施できなかった。今回はそういう一つの希望的計画では、日本産業すべての問題からむずかしいという判断のもとに、二万数千人という要緊急対策者が出ましたので、これはあくまで臨時的な失業対策に吸収するということでは妥当でないというので、緊急就労を、援護会によって、他の産業あるいは他の公共事業に吸収するように、計画を完全に立て直したわけであります。八木委員の御指摘のように、過去はよかった——いいとは思いませんが、責任はどうだという問題とこの問題は別であります。計画と実行という問題が、産業の動きに応じて労務対策にも出てきたということは、認めるに私はやぶさかではありません。
  48. 八木昇

    八木(昇)委員 要領のいい答弁として、適当に答弁をしておかれる分には、それはそれでよろしゅうございますけれども、しかし現実は、現地では非常に困っておるわけです。どうも政府の方の御答弁、そうして言われることは、いつの場合でも、口先はみごとであるけれども、実質がないという印象というものは、どうしてもぬぐい切れない。そうして大臣の方も、大てい長くて二年か二年半くらいで、次々にかわっていかれるというと、どうもそれはおれの時代のことではないというので、いつも適当に横すべりさせられてしまう。そういうようなことでは実際困るのです。それで結局、思わざる石炭景気というものが二年前にちょっと出てきたために、そういった状態に幻惑されたのか、これはいずれまた深刻な不況がくるということを知っておりながらも、一時的な石炭好況に適当に便乗して、サボったのか、どっちか知りませんけれども、この間失業、労務者問題というものについて真剣に手を打たずして、今日までずるずるときたという怠慢は、どうしたってこれを擁護するわけにはいかぬと私は思うのであります。要するに、そういうように今度の事態が惹起されたことについての責任が、相当政府にもあるという認識の上に立って、今度の離職者問題についても、やはり責任ある処置をする、そういう考え方を持つべきである、またその責務が政府にはあると私は考えるわけであります。  そこでこの合理化法に関連して、もう一点伺っておきたいのですが、ことしの春合理化法が一部改正になりますに際して、これが国会通過の際に、実は附帯決議がなされておるわけであります。ところが、その四項目の附帯決議の内容が、今日までほとんど政府の実践面において生かされていないのではないか、こういうふうに考えられる点がございます。全部については申し上げませんが、一つの点は、これは整備事業団が山を買い上げる場合に、実際その買い上げ対象となるような炭鉱の場合には、ほとんど賃金も未払い、もしくは遅欠配になっておる。そうして解雇予告手当というものは、もちろんもらえるような状態にはない。それから退職金も、とても山の経営者は払える状態にはない。こういうような状態のもとにおいて買い上げられておる。そういう場合には、「離職労務者の退職金については、未払賃金に準じ、石炭鉱業整備事業団炭鉱買収代金より弁済が受けられるよう措置すること。」という、こういう附帯決議がなされております。それで実際には、今日こういった離職労務者の退職金問題について、事業団が山を買い上げる場合にはどういう処置をしておられるか、これを伺っておきたい。というのは、山が買い上げられたとたんにもう炭鉱労務者は退職金なりをもらっておるならば、ある程度の期間の生活を支えることができ、その間転職やその他の問題もやっていくについて、ある程度の時期的にもゆとりがあるのでありますが、そうでないのですね。山が買い上げられたとたんに、もう完全な生活困窮者に一挙に転落しておるという状態が現出をしておる。この点、これは局長さんからお答えいただきたいと思います。
  49. 樋詰誠明

    樋詰政府委員 ただいまの八木先生の御質問になりました退職金も未払い賃金と同じように、合計して六カ月までは優先して弁済するようにという附帯決議をいただきました政府といたしましては、あの直後関係各省の次官の間で申し合わせをいたしまして、今附帯決議の通り措置をするということに所要の改正をしたわけであります。ただ、御承知のように、六カ月の未払い賃金あるいは退職金というものは、買い上げてくれといって申し込んできた日までの未払い賃金あるいはそのときの退職金というものを対象に考えておるのでございまして、御承知のように、大体買い上げを希望する炭鉱では、そのほかにいろいろな借金等をたくさんしょっておるわけでございます。そこで、わずかな財産をもって数多くの債権を処理するということのためには、どこかで債権額を確定して、そうして未払い賃金には優先してこれだけ払う、その他の国税あるいは地方税というものはこの通り支払う、一般の銀行にはこうやるんだといった債務弁済計画を立てなければならないために、どうしても申し込みの日というところで切らざるを得ないということになるわけでございます。そうして、申し込みを受けましてから、そこの山にはたしてどれだけの財産があるか、鉱害の関係はどうなっておるかということを一々検討して参りますと、実際には平均八カ月くらいの期間がかかるわけでございまして、調査の結果、この山は積極財産よりもはるかに大きい鉱害を持っておって、マイナスの資産しかないといって、買えないといった山も中には出てくるわけでございます。従いまして、整備事業団の方といたしましては、はっきり申し込みを受けたから必ず買うというのではなくて、申し込みを受けてからいろいろ審査いたしまして、そして正式に契約を締結したというときに初めて、債権者に対してどういう計画で、どういう順序で払うかということも確定するわけでございますので、確かに今御指摘になりましたように、山の方は買い上げを申し込むと同時に、あるいはそれから若干おくれて実際上操業を停止する。ところが、そこで失業状態に陥った鉱員たちが、離職金あるいは退職金あるいは未払い賃金というものをもらうのは、数カ月先になるという点は、これは確かに御指摘通りでございまして、われわれもその点はなはだそういう山から失業せざるを得なくなった方々はお気の毒にたえない、こう思うのでありますが、しかし将来買えるか買えないかまだわからない段階において、申し込みを受けると同時に、すぐ賃金を払う、あるいは退職金を払うということをいたしますと、調べた結果あるいは買うことのできない山であったといった場合には、これは非常にあとから問題が起こりますために、一応調査して、確実に買えるという見込みがついて契約したときに過去の分をさかのぼって支払うという、現在のやり方をとらざるを得ないということになっておるわけでございまして、附帯決議の御趣旨は、その直後に関係各省の間で、その御趣旨通りの改正をいたしまして、実行いたしております。
  50. 八木昇

    八木(昇)委員 そういった点は一つ極力実情に合うように、今後なお一そうの努力をしていただくようにお願いをいたします。  そこで、先ほど与党の方の御質問に通産大臣はお答えになっておったのですが、石炭需給の安定をはかるために、ここに何らかの需給のための調整機構というものを設ける必要があるのではないか。石炭が余った場合には、石炭価格が暴落する。それから少し不足する場合には、価格が非常な騰貴を一挙に来たす。それで、神わざのごとく石炭需給の見込みをほとんど狂いなく常に見通しを立てるということは、これはほとんど不可能に近い。そうすれば、どうせ何百万トンか程度の需給の見込みのずれといいますか、違いというものが毎年ある程度は出ることは、これは不可避的な面もある。そうしますると、そこにやはりどうしても石炭価格の安定化をはかるためにも、従って石炭鉱業それ自体の安定化をはかるためにも、ここにある程度のコントロール策というか、需給調整機構というか機関というか、そういうものをどうしても立てないでは済まぬのではないかと私どもは考える。そこでことしの四月の附帯決議の第一項にも、「石炭需給の安定を図るため、需給調整機構を確立する等、速やかに抜本的方策を樹立するごと。」という決議がなされておるわけで、その点もう一度お答えをいただきたい。
  51. 池田勇人

    池田国務大臣 先ほどお答え申した通りでございまして、私は石炭の性質から申しましても、貯炭しておればカロリーが下るというような点がございますので、今やっておりまするような新昭和石炭会社、こういう業者間で一つの調整機関を設けて、そうして金融的には政府がある程度見ていくということが適当じゃないかと、今も考えておるのであります。
  52. 八木昇

    八木(昇)委員 そういうお考えであれば、まあ一応はお手並みをしばらくは拝見をし、おかざるを得ないと思いますが、しかしそういうことで石炭問題がほんとうに安定するということになり得るかという点については、非常な疑問があるという点は一応提起し、それはまあそのまま一応保留をしておきたいと思うのです。  で、こういった問題だけをいろいろ聞いておりましても何でございますので、今度は法案の中身に関連をいたしまして、数点お伺いをいたしておきたいと思います。  一つは、今度の臨時措置法によっていろいろ対策を受けるところの人員が、先ほごの松野大臣のお答えでは二万一千名。それは要対策者大体全部にわたるのだ。この二万一千名を対象として対策を今度打っておるのであって、それで大体人員的には適当だ、こういうお考えのように承ったのですが、ところが、実際は私はそれだけでは人員が少ないのじゃないかという考え方を持っております。それは、私は出身が佐賀県でございますが、佐賀県あたりの炭鉱は、福岡県の筑豊炭田地帯に比べますると、炭田そのものがまだ若いのですから、比較的に影響は軽いわけであります。それでも佐賀県の県の職安が中心となってずっと出しましたところのデータによりますると、今度この法律によって炭鉱離職者緊急就労対策事業として佐賀県へ割り当てられた割当数は、わずかに二百九十名。全国で五千五百人、佐賀県の割当二百九十名。ところが現実に起きておるところの離職者の状態はどうか、詳しくは申し上げませんが、石炭鉱業合理化法によって本年九月までに買い上げられた炭鉱離職者だけで千数百名に達しておる。それからいろいろな炭鉱合理化によって離職をした数が、昭和三十一年から本年九月までの間に約四千名に達しておるわけです。それからなお今後確実に出てくるもの、それから先般来の杵島炭鉱合理化、これは労使の話し合いがついたわけでありますが、こういうので離職をしていく人、そして今後ほぼ確実に大手の合理化によって発生してくると認められる離職者数がまた一千名近くある。そういうことを考えますると、もちろんその中には相当数ほかの炭鉱へ再就職ができた者、他の産業へ転職ができた者なども若干はございますけれども、しかし要対策者の数というものは、この緊急就労対策事業の割当二百九十名というような、こういうわずかな数がないことは明らかなんですね。各県からはこういう事情の報告が労働省には集められ、それぞれ各県からいろいろ具体的な人数、自分の方は何名くらいの緊急就労対策事業のための人員の割当がほしいというような要望などが来たろうと思いますが、それらについてどういうふうに判断をし、今度の数字をはじき出されたか、そこら辺を端的にお答えを願いたい。
  53. 松野頼三

    松野国務大臣 今回の措置は、御承知のごとく緊急就労が五千五百人、広域紹介が四千名、その他いわゆる援護会から約四千名という数字を合わせて二万一千人でございます。従って、その緊急就労だけでは要対策人員を吸収するというわけには参りません。従って、広域職業とか、あるいは帰農される者、自営をされる者、総合して、そして何人というものがきまるものでありまして、離職者が、直ちにすべてが要緊急者というわけでは断じてございません。そういう意味から計算をして、実を申しますと、福岡県は一万六千人ばかり実態調査をいたしまして、その結果の統計というものを基礎にいたしまして佐賀県及び長崎県の各県の実情に合わせまして、今回この対策の割り振りというものをきめたわけでございます。緊急就労の希望が多いこともごもっともでございますけれども、同時に他の広域職業における希望もまた今後十分見なければなりませんので、個々の家庭の事情とか、あるいはおれはどうしても佐賀県におりたいという人には緊急就労就労してもらう。また単身者、独身者、若い方は他の職業に広域職業で御紹介する。こういうものを考えませんと、三百名が多いか少ないかということは個々の方の家庭事情も考えた上でないと、私どもは判断するにはまだ早計ではないかと思います。一応佐賀県でも計画を出していただく。ですからその計画を出すときには何人だ——基準なしでは計画が立てられないということで、三百人とか二百九十人とか、一応計画の基準に申し上げただけでありまして、もうきまったのだとか、そういうことではありません。この計画に合わせて、今回のこの緊急就労に適当なものならそれをお認めして私の方の予算の配分をする。あるいは八木委員のおっしゃる、二百九十とか三百とかおっしゃるかもしれませんが、私ども決定しておるわけではありません。一応計画の基準をこの辺でお立て願いたいという、第一の実は私どもの要請を出したのが、あるいはその数字かもしれませんけれども、私のところにまだ人数の決定も来ておりませんし、私が署名した覚えもありませんが、あるいは事務的にそういう意味で各府県に早く緊急就労に適当な事業を御計画願いたいというので、この予算編成と同時に各府県に要請をいたしましたその数が、あるいは八木委員のおっしゃるような数かもしれませんけれども、それらを一人もまけないのだ、一人もふやさないのだとか、そういう意味のものではございませんので、その辺は各職場、各家庭の事情を見た上で決定さしていただきたいというので、法案もまだ通っておりませんし、実は私が決定した覚えもまだございません。そういう意味で今の数字は御勘案を願いたい。
  54. 八木昇

    八木(昇)委員 ただしかし、総トータルとしては、今の緊急就労対策事業人員としては大体五千五百人、こうなっておるわけでしょう。総トータルはそうなっておるのですから、そのワクの中でやるわけでしょう。そこで佐賀県あたりでは、当面最小限六百九十名の人員を吸収できる緊急就労対策事業をやりたい、こういう要請をしておるわけです。それに対して大体労働省方面で考えられておるのは、私が県の職安課長から聞いたのでは二百九十名、大体そのくらいのところの数字をお考えになっておる。これは間違いはありませんか。
  55. 松野頼三

    松野国務大臣 離職者の数を算術平均に割って参りますと、そういう計算になるというわけであって、その計画ができまして六百九十名というものが、また何百名か知りませんが、非常に適当なものがあるならば、適当なものに割り振るわけであります。算術平均してみるとその辺の数字になる、こういう基礎数字でないかと思いますので、まだ計画も出ておりません。どうやるのだという計画は出ておりません。それを今度私どもの方の計画に合わせて、その上できまるのですから、佐賀県の六百名も、またどこへ何人、どういう個所をやるのか、その時期はどうなのだ、その土地買収はどうなっておるかということもまだできておりませんから、そういうものを合わせて私どもの方はやるつもりであります。三百名で足りなければ、六百名がいけないというわけではありません。  一応五千五百を算術平均で割りますと、この限度のものが参りますということで、一応の計画基準に差し上げたのだと思います。また個所別にあるいは場所ごとに、あるいはもっと非常にいい仕事があるならば、私どもはその二百九十、三百三十を堅持する意味ではありません。私どもは炭鉱関係府県の相互融通も考えておりますが、まだ実はきまったわけではございません。この法案通りましてから、各府県の計画の優秀なものから、十二月早々からきめて参りたい、こう考えております。
  56. 八木昇

    八木(昇)委員 そこでお伺いしたいのですが、今度補正予算で七億何千万でございますか、補正予算を組まれたわけでございますけれども、結局労働省としては、もっと人員の幅も広く、そうしていろいろな中身についても、たとえば国庫負担の割合であるとか、あるいは職業訓練を受けておる人に対する日当の金額についても、もう少しくよけいやりだいとかいう希望はもっと持っていたのだけれども、予算の総ワクとして七億程度くらいしかとれなかった。結局内容をその予算の総ワクの方に合わせてきた、こういうようなことがあるのかどうか。すなわち労働省それ自体としては、あるいは対象人員も多く、それらを調整する内容についても、もっとよく、そうしてでき得べくんば、もっと多くの予算がほしかった、こういう考え方に立っておられるかどうか。これは将来にその考え方が影響してきまずから、ちょっと伺いたい。
  57. 松野頼三

    松野国務大臣 要対策人員につきましては、大蔵省から一歩も譲っておりません。労働省の人員を全部承認と同時に、それでなければ一人、二人の方を削るという理論もなければ、そういうことはできませんので、要対策人員は大蔵省の意向、労働省の要求というものは一致しております。これは少しも変動しておりません。予算の幅があったというのは、いわゆる予算単価というか、施行単価八百五十円という問題は、確かに多少の異同はございました。この考えは、言うならば機械器具をどう見るのだ、あるいは用地買収をどうするのだということが大きな問題でありまして、機械器具はこれは請負業者に出せるものでありますから、請負業者が当然機械器具を持っているじゃないか、あるいは県においても最近土木工事機械というものは相当持っているじゃないか、これを活用すれば単価を下げていいじゃないか、そういうところは多少の異同がございましたけれども、さしあたり私どもの大体の希望は——今回の予算単価八百五十円というものは、私どもが実情に沿ってそういうものを勘案すれば、機械を新しく買わなくてもいいのじゃないか、借りればいいじゃないか、それならば八百五十円でできる、こういうことで異同があったわけですが、人員については、当初から私ども実態調査をしまして、これは大蔵省承認の上で金額、予算を出しまして、実態調査予算というものでやったのですから、政府の予算で実態調査をやりましたから、この数字を動かすことは大蔵省といえども労働省といえどもこれはできません。従って人員は今回予算当初から変動はなし。単価の問題は、機械器具をどう見るか、あるいは買収費を入れるか入れないか、そういうところの見解がありましたから多少の異同はございましたけれども、基本的には労働省の意向というものは十分入れてもらった、それで一致したというのが今回の内容でありまして、そういう機械器具をどうするかというところに多少の予算単価の異同はございました。しかし県も持っておる、これは請負工事だから請負工事屋が機械器具は当然既存のものを使えばいいじゃないか、それで予算単価八百五十円でいいじゃないか、こういう議論はされましたけれども、内容においてそう大きな基本的なものを譲ったということはございません。
  58. 八木昇

    八木(昇)委員 この人員については、実際は各県が要望をしておる対象人員はもっと多いのですね。そこら辺の問題については、私ども自身も的確にその数字を握っておるわけではありませんから、どうしても抽象的なやりとりにしかなりませんので、これ以上は言えないわけですけれども、しかし現地の都道府県が要望しておる対象人員は、そういった線に今後ともやはりできるだけ、これを色めがねで見るようなことではなく、やはり現地の要望する数字にできるだけ近づくような、そういった形で対策をしてもらいたい、こう思うのです。  そこで今後の問題に関連するわけですが、特に援護会関係の資金計画について、ちょっとこの際確かめておきたいと思うのですが、これは通産大臣でありますか、あるいは労働大臣でありますか、通産大臣だと思いますが、ことしは援護会に整備事業団の方から三億円の金を出させるということになっておるわけであります。そういたしますと、来年以降も当然相当金額の金を援護会の方に整備事業団の方から出させるということになるのだろうと思うのですが、そこで整備事業団の資金計画ですか、そういうものの概要を簡単にお願いいたしたい。これは大臣でなくても局長でも、いずれでもけっこうであります。
  59. 池田勇人

    池田国務大臣 お話のように、援護会の方に整備事業団から相当な金を出さなければならぬと思っております。ただ今回は政府の方と整備事業団とが三億円ずつになっております。将来その割り振りをどういたしますか、それが今度の事業団の資金計画にもなってくるわけであります。ただいまその点につきましては検討を加えておるのであります。御承知通り、整備事業団も資金運用部から借り入れをしておる状況でございます。根本的にトン当たり二十円というものをどうするか、これはしかし今の状況からいたしまして、これを引き上げるということは非常に困難であります。私はできるだけ国の方を多くしてもらいたいという考えで今進んでおります。いずれ来年度予算が決定しますまでにはわれわれとしても腹案をきめまして、大蔵省と折衝いたしたいと思います。
  60. 八木昇

    八木(昇)委員 そこで具体的にはどうなんですか、その整備事業団の方も鉱害復旧事業や、その他これから先に相当金も要るわけですね。しかも一方においては、きのうの参考人の供述にもありましたように、大手関係で実人員を向こう三カ年間に大体六万人程度をこれは減らさなければならぬ、それから中小炭鉱関係で約三万人、それから職員等を含めますと、約十万人ぐらいはさらに実人員縮小がはかられる、こういう考え方に立っておられる、それがその通り、文字通りに行なわれるかどうかは、労使関係の紛争その他もありましょうから別にしまして、そういたしますと、将来は整備事業団が負担すべき金額、すなわち援護会に出すべき金額というものは相当な金額で、しかも相当年数これを必要とする、こういうことになるわけなんですが、結局今のトン当たり二十円でございますか、こういった措置だけでまかない得る、そういった財源だけでまかない得るという見通しじゃないわけでしょう、その点どうですか。
  61. 池田勇人

    池田国務大臣 先ほど申し上げましたごとく、今の二十円を上げるということはしかく困難じゃないか。そういたしますと、事業団の資金徴収計画は現行法で三十六年までになっておりますが、これはもちろんもっと延ばさなければいけません。三十八年、四十年、あるいは四十二年くらいというふうないろいろな計算をしてみまして、とにかく片一方ではできるだけ国から出すのを多くすると同時に、片一方においても離職者が事欠かないように協力態勢をとらしていこう、こういう考えで今進んでおるのであります。
  62. 八木昇

    八木(昇)委員 そのお考えはわかりましたのですが、そうすると、やはり国の一般会計から出すというような形になるわけでしょうか。
  63. 池田勇人

    池田国務大臣 一般会計より出すよりほかに出すところはありません。
  64. 八木昇

    八木(昇)委員 それでは問題を先に移しまして、あと二、三で、時間もおそくなりましたから、きょうのところは終わりたいと思いますが、今各地方自治体あたりからの要望がいろいろございまして、これは労働大臣に伺うのですが、今の緊急就労対策事業について五分の四の国庫補助、こうなっているわけですね、できれば全額国庫補助にしてもらいたい、しかし全額補助がとてもできないとするならば、少なくとも台風災害などの場合と同じように、十分の九の補助にしてもらって、残りの十分の一の分についても特別起債といいますか、その他の措置を講じてもらいたい。いずれにせよ当該府県市町村というような、地方自治体の負担ということにならないように極力願いたい。今日の地方自治体の財政逼迫の実情に照らして、特にその点をぜひとも願いたいという強い要望があるわけでありまして、実際そういった炭鉱不況の状態下にある地方自治体は、いろいろな鉱産税やその他の税収入も逆に地方自治体に非常な悪影響を与えておるし、加えてその対策のために地方自治体が金をひねり出さなければならぬということになりますると、実際問題として非常に困っておるわけですね、ここいら辺のお考えをこの際明らかにしておいていただきたいと思います。
  65. 松野頼三

    松野国務大臣 地方自治体の財政の大きな欠陥というものは、当然これは不況の問題で出て参ります。しかしこれは炭鉱離職者のこの問題だけで問題が解決するわけじゃございませんし、あるいは学校経営も地方財政でございますし、あるいは社会保障制度の問題もございますし、これだけがすべて地方財政の負担だというわけじゃございません。しかし、やはり何といっても負担を大きくすることはよくありませんので、今でも一般失対というものは、三分の一は地方が負担されておる。これでも非常に大きな負担になっておりますので、今回それに合わせて、今回の緊急就労は、五分の四の負担ということで負担率を上げまして、なるべく地方財政の負担を少なくするということであります。全部が全部という御希望はございますけれども、これだけ救えば地方財政が救えるかというと、そうではありません。やはり鉱産税その他すべての減収というものは、平衡交付金の予算でこれはまかなうべきものである。同時に、今回の場合は緊急の場合でございますから、地方の起債その他については、自治庁その他と十分打ち合わせまして、すでに九月にも同じような臨時措置をいたしまして消化をしていただいておりますので、このものが、その意味高率適用をする、同時にある程度負担というものは平衡交付金または特別起債でこれをまかなうということが、今までのすべての自治体の地方財政の立て方でありますから、これだけを急激に上げるということはどうか、こう思います。しかし三分の二の一般失対事業が、これでは負担が多過ぎるという、両方を勘案いたしまして、五分の四というものをやったわけでありまして、これは地方においても非常に希望が多く、しかもなお今日より以上にたくさんの割当をしてくれという御希望もあるのでございますから、これは完全に消化できる。  なお、八木委員非常に御心配でございましたが、福岡、長崎、佐賀の関係府県から、要対策人員の希望が出ております。一応の陳情書が、二万五千人というのが出ておる。しかし、これは一応の地方の御希望でありますから、私どもの方で調査いたしました二万一千人というのは、そう大きな隔たりはございません。従って、数字が架空だとか、いろいろな御疑問もございましょうけれども、一応地方の各府県からの要望が二万五千人でありまして、私どもの方で実際調査をいたしましたのが二万一千数百人で、大体においてこれは合っておると、自信を持って申し上げて差しつかえないと思います。こういう客観的事情もあわせて御説明申し上げればなお的確じゃなかろうか、こう考えております。
  66. 八木昇

    八木(昇)委員 あとは平面的に三項ばかり質問しまして終わりますが、法案の第六条の点でございますが、これは、炭鉱労働者の雇い入れについて、鉱業権者炭鉱離職者を雇い入れるようにしなければならないという条項があるわけでございますが、これは、雇い入れなかった場合の罰則というものがあるわけでもありませんし、単に第六条でこういう条文をうたっておるだけ、炭鉱労働者の雇い入れについては炭鉱離職者を雇い入れるようにしなければならない、こういうことだけで、これでは、実際問題としては単なる訓示規定に終わるのじゃないか。これはやっぱり雇い入れる側にしますと、離職者の中には、相当年輩の人もありましょうし、家族をたくさん持っている人もありましょうし、それから能力がすぐれておる人もありましょうし、そうでない人もありましょうし、いろいろしまするから、結局こういった規定だけでは、実際にはこれは訓示規定にとどまって、実際の効果を奏しないのではないか。そこでやはり炭鉱離職者については、それぞれ各人から、離職者がそれぞれ登録をするようにしておいて、そうして新たに鉱業権者炭鉱労働者を雇い入れようという場合には、その登録された炭鉱離職者の中から必ず雇い入れなければならない、こういうふうに義務化し、そうしてそのような条項に反した行為をやった者については、罰則を設けるというくらいに明確化さないというと、これは何ら実効を伴わない条文に終わってしまうのではないか、こういう私ども懸念を持つのであります。その点についての見解を一応承っておきたい。
  67. 松野頼三

    松野国務大臣 第六条の第二項には、御承知のごとく鉱業権者炭鉱離職者を募集する場合には、公共職業安定所に求人の申し込みをしなければならない、こういう逆に求める方の規定もございます。今度は逆に求職者の方は、おっしゃるように職業安定所に登録をいたします。希望登録をいたします。これはカードも別にいたしますから、おのずから炭鉱離職者というものは、職を求める方も人を求める方も職安を通じなければならないのですから、その間において当然これは強い義務規定にしなくても、運用上これはほとんど間違いがございません。間違いがないという理由は、これは非常に好景気の場合なら別でありますが、今日炭鉱というものはすべて不況の立場に立っておるときでありますから、よそから雇うということはまず非常に少ない。あるいは移動の場合がございます。AからBへの移動ということはございますが、今まではこの報告を求めるという規定もあまりきつくやっておりませんでしたから、今回これだけ書くということは、実は非常に大きな制約を受けられると思う。もしもこれ以上求めるというならば、よほど特殊な技能者以外は、こういう規定を破る方はおりますまい。やはり、自分の家族だからといいましても、公共職業安定所に、一人でも雇うときには登録、届けをしなければなりませんから、その意味において相当しぼられる。こういう意味で、これ以上強い罰則を課さなくても、今日すべての産業炭鉱に理解を持っておるこの際でありますから、これだけの規定があれば十分やる。求める方も、あるいは入るときも、ともに職安がまん中の仲介に立つのだということが規定してあれば、それから先の罰則がなくても、今日の運営で十分できると私は考えております。
  68. 八木昇

    八木(昇)委員 それは一応見解を承っておくだけにいたします。  それでもう一点は援護会についてでありますが、援護会理事ですね。これについて、今度の炭鉱離職者援護会というのは非常に特殊な任務を持っておる。炭鉱労働者離職者対策という純然たる、異常な事態に対応するための援護専門の機関、こういうわけでございますが、この理事には一体どういう人の中からこの理事を選任しようというお考えなのか。特に今度のこういうような場合、しかもこの援護会がそう長期に存在するわけでもないわけでございましょうから、こういう際には炭鉱労働者実情というものに非常に通暁しておる労働者出身というか、労働者代表的な理事をこの際は一名就任をさせるという必要があるのではないか、そういうことを私どもとしては痛切に感じておるわけですが、どういった人々を理事にされるお考えであるか。特に実際の労働者実情というものを身をもって体験し、また実情に具体的に明るい、そういった労働者出身理事といったようなものを選出するお考えはないか、この点をちょっと伺っておきます。
  69. 松野頼三

    松野国務大臣 これは通産大臣との協議事項でございますから、私一存に言えませんけれども、実はまだ決定をしておりません。しかしいずれにしましてもこの法案の性質から、炭鉱労務者のことをよく知っている方、同時に将来とも、逆に広域職業紹介もやりますので、受け入れられる他の産業にも信用のある方、同時にこれは寄付金も受け取るのでありますから、民間からも進んで、あの人ならば寄付金を出しても有効にやってくれるのだという一つのレッテルの信用もある方、そしてなおかつ労働省、通産省との連絡もいい方ということが一つの基準になることは常識的に考えておりますけれども、まだだれをどうするのだ、どういう方を選ぶのだということは、通産大臣とも協議をしておりません。しかしいずれにしましてもこの法案の性質から、そういう要素を持った方を選ぶということは、一つ法案の性質から当然ではなかろうか。われわれは実はまだきめておるわけではございません。まだだれだれという個人的な選考までいたしておりません。
  70. 八木昇

    八木(昇)委員 ただいまの点につきましては、私の申し上げました希望というものを十分におくみとりいただきますように御要望申し上げておく次第でございます。  あと、特別失業手当を炭鉱離職者に対してはやってもらいたいという問題であるとか、あるいは労働者住宅の問題についてとか、いろいろたくさん問題がございますが、一切省きまして、最後に一点だけ伺いたいと思います。  生業資金借り入れのあっせんを行なうということに二十何条かでなっておると思いますが、これは実際問題としてはどういうふうにやられるのでございますか。生業資金借り入れのあっせんということですが、これはいかなる金融機関を通し、どういうやり方で実効の上がるようにこれをやられるのか、これをちょっとお聞かせいただきたいと思います。
  71. 百田正弘

    ○百田政府委員 生業資金借り入れのあっせんにつきましては、主としては国民金融公庫になるのじゃないかと思いますが、御承知通り炭鉱離職者で何らかの生業をやりたいという方々に対しまして、金の借り方その他につきましても、十分な知識を有しておられない場合もございましょうし、そういう御相談に乗って、そうしてあっせんをしてやるというわけであります。
  72. 八木昇

    八木(昇)委員 ただそう言いましても、炭鉱離職者あたりに金を貸すように、国民金融公庫に極力一つよろしくやれというようなことで多少のあっせんをしてみたところで、これは実際はなかなか貸さぬのじゃないですか。それをやるためには、たとえば国が資金運用部なら資金運用部から炭鉱離職者生業資金引き当て分なら引き当て分として、ある一定金額を出すなら出して、そしてワクを設けるとか何とかというような具体的措置というものを伴わないと、全くこれは名のみであって、実効は上がらぬ、こう考えるのですが、その点どうでしょうか。
  73. 百田正弘

    ○百田政府委員 事実上特別のワクを作るかどうかは別といたしまして、現実の問題といたしましては、駐留軍離職者の場合も特別のワクは設定いたしておりませんけれども、条文上も借り入れのあっせんという形になっておりますが、現在まで相当程度借り入れというものを行なっております。炭鉱離職者の場合は多少駐留軍離職者の場合と、生業をやるという場合は事情は違うかと思いますけれども、できるだけ国民金融公庫その他の援護会の中に立ちまして、事実上そうした効果が上がるように努力しなければならぬ、こういうふうに考えます。
  74. 八木昇

    八木(昇)委員 やはり一番問題は保証措置だと思うのですが、保証をするために、たとえば援護会の中にそういった保証協会みたようなものをこしらえるとか何とか、そういう積極的な措置をとらないと、これはとてもむずかしいというふうに思うのですが、そこいら辺の見解と、それから国民金融公庫は二十万円が限度ですか、その限度の点からいいましても、それは生業資金というにほとんど値しないんですね。今の時代に二十万ぐらいで一体何がやれるだろうか、独立して事業を行なおうとする者についてという、見出しは大きいのですが、そこいら辺の二点をお伺いいたしたいと思います。
  75. 池田勇人

    池田国務大臣 国民金融公庫の貸し出しは、最高限個人で百万円、法人で二百万円だと思います。それからこの援護会を設けてあります関係上、その人の計画によりましては、一般的の金融の保証協会というのがございます。援護協会があっせんをするという建前になっていますから、そういう指導もやっていきたいと考えております。
  76. 八木昇

    八木(昇)委員 一応終わります。
  77. 永山忠則

    永山委員長 次は武藤武雄君。
  78. 武藤武雄

    ○武藤委員 いろいろ御質問がありましたから、私はできるだけ重複しないように質問いたしますが、当面緊急の問題として炭鉱離職者臨時措置法案が出されているわけですけれども、これはあくまでも当面の現われて参りました現象に対するごく消極的な対策でありまして、基本的には石炭産業をどうするかということが問題でなければならぬと、こう考えておるのであります。そういう建前に立って考えてみますと、先ほどからいろいろ御意見がありましたけれども、今日の石炭不況といいますか、需要の減退というものは、一体どのような背景でどういうふうに進行しているかということを的確につかんでいなければ対策は出てこないのではないかと思います。そういう情勢を正しく把握して、対策の上においても、機構の上においても、根本的な問題が検討されてしかるべきだ、こういうふうに思うのであります。最近学者やあるいは新聞その他の方面で言われておりますように、燃料の消費構造が次第に石炭から石油に移ってきている、こういうことが言われているのでありますが、特に第二次大戦が終わりましてからこの動きは国際的に見てだんだん決定的に変わってきておるのではなかろうかと思います。これはアメリカについても言えますし、あるいはイギリスについても、西ドイツについても、その他の石炭産出国についても同様に言える現象であろうと思うのでありますが、特に最近国際的にぐるっと歩いて参りました北炭の萩原社長なんかが最近言っておりますように、原子力発電にしても、大体商業ベースに乗っかってくるのは十三年ぐらい先ではなかろうかというようなことをこの前新聞で言ったようでありますけれども、しかし脇村教授等の話によりますと、それは当初は一九七五年ぐらいと、こういうふうに思っておったけれども、現在では一九六〇年ぐらいには大体実現するのではなかろうか、これはイギリスの場合を考え、あるいは今日わが国で東海村の原子力研究所に原子力発電炉をイギリスから持ってくるというあれを見ましても、相当早くなる、しかも商業ベースにも合ってくるというようなことを盛んに最近は力説をしておるわけであります。こういう現状を考えました場合、あるいはソビエトが宇宙ロケットを発射した、あれに使用された新燃料の発明等を考えてみますと、いわゆる石油と新しい燃料との競合が現実の課題になってくるというのも、ここ十年ぐらいの間に問頴になるのではなかろうか、こういうふうなことも言われておるわけでありますけれども、こういった石炭から石油、石油から原子力あるいは新しい燃料エネルギーというふうに非常に大きく変わっておるようであります。こういう情勢の中で、一体政府総合エネルギー対策を、大体見通しとしていつごろを目標にして、今真剣に総合エネルギーの全体的な対策というものを一応立案しようとしておられるのか、通産大臣に、現在進行している状況でもよいから御説明を願いたいと思います。
  79. 池田勇人

    池田国務大臣 総合エネルギー対策につきましては、主として企画庁の方で関係学識経験者等を集めてただいま検討中でございます。以前に一応やりましたけれども、事情がだんだん変わって参りますので、今せっかく検討中であるのであります。
  80. 武藤武雄

    ○武藤委員 企画庁で検討中だという通産大臣の御意見でありますけれども、それで、私は石炭に関して考えてみまして、今わが国で石炭の基本のそういったエネルギー対策というものを考えておる主体は一体どこになっておるのかということを、一つこの際お聞きをしておきたいと思うのであります。  第一に、通産省の通産省設置法第十四条の石炭局の事務、その中に「石炭の輸出、輸入、生産、流通及び消費の増進、改善及び調整を図ること」こういうふうにありますけれども、今回離職者対策を立てざるを得なくなりましたのは、生産の調整対策の一環としても必要だ、またそういうことだということでこの問題も含まれて考えておられるのかどうか、お聞きいたします。
  81. 池田勇人

    池田国務大臣 設置法にありまする生産調整ということと今度の離職者とは直接の関係はございません。われわれは、今回の離職者の問題は、当面発生しております離職者方々に対して措置をしなければならぬ、こういうので来ております。
  82. 武藤武雄

    ○武藤委員 直接関係はないと言われますけれども、これは合理化によって首切りが出てくる、あるいは生産調整の一つの手段、方法として合理化法による事業公団ができて、その中から出てきておる離職者も当然入っておるわけでありますから、これは関係がないということではないのではないかと思うのでありますけれども、一応直接的な関係はないということで了解をしておきます。  それでは、通産省設置法のただいま申し上げました中で「調整を図ること」と、こうありますけれども、その調整とは一体どういう範囲のものをさしておられるのか、一つお聞きしたい。
  83. 樋詰誠明

    樋詰政府委員 石炭の需給の調整をはかるということでございまして、たとえば、合理化法にもございますが、市価が標準炭価を著しく下回る、そしてそのままほうっておくと石炭全体に非常に大きな悪影響を与えると思われます場合には、通産大臣が共同行為によって生産制限をお互いに申し合わせるということをしてもよろしいという告示が出せるといったようなことが、その今御指摘になりました需給の調整という言葉の一番具体的な内容であろうと存じております。
  84. 武藤武雄

    ○武藤委員 調整という意味は、需給の調整が主体だというお言葉であります。そうすると、石炭鉱業合理化臨時措置法第三条に言う合理化基本計画というのと調整の関係は、一体どういうふうになりますか。
  85. 樋詰誠明

    樋詰政府委員 基本計画は、御承知のように生産の目標、能率、あるいはコストといったようなものについて定めるものでございます。その基本計画を達成すべくいろいろ努力していきます過程におきまして、一時的にいろいろ需給が均衡を失するというような場合等がございますので、その際には必要な調整措置を講ずるということでございます。
  86. 武藤武雄

    ○武藤委員 合理化基本計画が、昭和四十二年度における石炭生産量、生産能率その他の合理化の目標をきめると規定しておりますけれども、この目標設定の前提条件には、総合エネルギー対策がどうしてもなければならぬと思うのであります。この総合エネルギー対策の構想は一体どういうことになっておりますか。
  87. 池田勇人

    池田国務大臣 先ほど申し上げましたように、企画庁でやっております。しかしまた通産省といたしまして石炭、電気、石油等の直接の関係がございますから、われわれといたしましても十分の検討をいたしておるのであります。  それから、もう御承知とも思いまするが、とにかくわれわれの生活水準の引き上げということはやはりエネルギー消費ということとマッチしてくることでございますから、私はできるだけそのエネルギー源の開発育成に努めていきたいと思います。しこうして石油、電気、石炭、その割り振り等につきましては、やはり経済性ということも考えなければなりませんので、各方面からいろいろの知恵を借りながら検討中であるのであります。
  88. 武藤武雄

    ○武藤委員 そうすると、エネルギー基本計画の責任として計画を立てておられるのは経済企画庁、こういうふうに認識してよろしゅうございますか。
  89. 池田勇人

    池田国務大臣 一応企画庁の方で総合エネルギー計画を今検討いたしておるのであります。もちろん通産省もこれには参加いたしております。
  90. 武藤武雄

    ○武藤委員 経済審議会令第一条で、長期国民経済計画の策定に関する事項を審議し、経済企画庁設置法によって、調整局は産業に関する基本的政策及び計画の総合調整を行ない、総合計画局は長期経済計画に関する関係行政機関の重要な政策及び計画の立案に関する総合調整を行なうと、こう規定しておりますが、今大臣の御説明によりますと、総合エネルギー対策については経済企画庁が行なうのだ、こういう御意見でありますから、それでこの点については大体了承いたしておきますけれども、石炭鉱業合理化臨時措置法第七十条に規定する石炭鉱業審議会は、合理化に関する重要事項を調査審議すると、こう規定しておりますが、この審議会は総合エネルギー対策について答申を今までしておりますか。それとも今後そういった総合エネルギー対策についてもここで答申をする計画でありますか。ちょっと御説明願いたいと思います。
  91. 池田勇人

    池田国務大臣 石炭鉱業審議会は通産省の所管でございまして、私就任以来数回開いております。しかも、最近におきまして石炭問題に対しての根本的施策を講じなければならぬというので、石炭鉱業審議会の中に基本部会というものを設けまして、これには生産者、消費者、労働関係者、学識経験者という十名をもって、特別の委員会でただいま検討中でございます。
  92. 武藤武雄

    ○武藤委員 まだここ自体は今までまとまったエネルギー対策というものは発表しておりませんね。
  93. 池田勇人

    池田国務大臣 全体の分は発表しておりません。ただいまは主として石炭問題を中心にわれわれはやっておるのであります。
  94. 武藤武雄

    ○武藤委員 経済企画庁の長期計画作業と、それから石炭局の合理化作業とでは、当面の緊急に必要とする燃料の消費構造の変化に基づく石炭産業体質改善対策を立案する主体——先ほどの御説明によりますと、どうも主体は経済企画庁の方で全体的な総合エネルギー対策は立案する責任は持っておるのだ、また今の大臣の御答弁ですと、何か石炭に関する基本の問題についてもここでやるのだ、こういうふうな御意見にもとれるのでありますけれども、当面問題になっておりまするような将来の石油との競合なりあるいはその他の、石炭を固定燃料としてから、最近の情勢に応じて流動体燃料としてこれを考えていくという、そういう全体的な問題、あるいはそれに即応する石炭産業の経営上の体質改善、そういうものを全体を討議する立場としては、双方いずれも、どうもはっきりここでやれる、こういうふうな主体にはなっていないのではないかと思うのです。鉱業審議会ができた経過、それからただいまの経済企画庁の作業等を考えてみましても、それにはなかなか主体となってやるという状態にならないのではないかと思うのですが、どうでありますか。
  95. 池田勇人

    池田国務大臣 企画庁の方は、各省所管につきまして、いろんな点がありますので、あそこが中心になって、将来の総合エネルギー対策検討しておるのであります。通産省の方は、先ほどお答えいたしましたように、石炭鉱業審議会というものがございまして、今まで審議会におきましては、価格の問題、いろんな問題をやっておりましたが、今回特に基本問題についての部会を新たに設けまして、石炭についてどうあるべきかということを検討しておるわけであります。もちろんこの場合におきましても、石油、重油に対しての問題、あるいは電気についてのいろんな問題も頭に入れて、石炭を中心に通産省の所管の石炭鉱業審議会で今検討いたしておるのであります。別個のものでございまするが、これはやはり先ほど申し上げましたように、燃料エネルギーの大部分をなしまする石炭、電気、石油ということにつきましては、直接に通産省が所管しておりまする関係上、相当の発言力はあるのであります。関係は十分保たれていると思います。
  96. 武藤武雄

    ○武藤委員 今までの大臣の御答弁から考えましても、やはり私は、ほんとうに今の国際情勢なりあるいは国内エネルギーのとり方の変わり方等を考えても、どうも企画庁の方は、そういうふうに長期の総体的なエネルギー計画の立案を一生懸命やっておる、それから通産省の方は、今石炭という問題を中心として、当面のいろんな問題の基本について計画をしておる、こういうお話でありますけれども、これは前の質問者の答弁にもありますように、現実に、昭和三十二年度に一応の計画として出しました長期計画昭和五十二年度ですか、七千五百万トンという計画すらも、先ほどいろいろ理由をあげられたようでありますけれども、しかし現実には、もうその翌年から大幅な変更をせざるを得ない、こういう情勢になってきておるのでありますから、結局企画庁が長期の、全体のエネルギー構造の中における石炭の占める部分というものを計画をされるということにいたしましても、また今石炭の主管省としての通産省が基本的な計画を立てるにいたしましても、これはあくまでも表裏一体であるべきであって、企画庁の方は将来の問題だ、しかし通産省の方は当面の問題だというように切り離すことは不可能であって、やはりこういうふうな、しかも石炭産業などというように、関連の産業あるいは関連の住民、そういうものにたくさん影響力を持っておる石炭産業を考える場合に、これはもう切り離して考えることは不可能なのでありまして、やはり表裏一体のものとしてこれを研究して立案していくという責任態勢というものが、やはり政府の中に、国策として出てこないと、どうもそれぞれ分かれてやっておるということについては無意味ではないかと思うのですが、どうなんですか。
  97. 池田勇人

    池田国務大臣 先ほど申し上げましたごとく企画庁ではおやりになっておりまするが、通産省が最も重大な関係を持つことでございまして、通産省の発言も相当行なわれておりますし、その間の関係は、御心配のような点はないと私は考えております。
  98. 武藤武雄

    ○武藤委員 所管大臣でありますから、心配があるというわけにはいかないでしょうけれども、しかしだれが考えましても、そういうふうにこれからの経済の動向を見れば密接不可分のものとして処理しなければならぬということであれば、この際やはり石炭関係するところの総合的な対策機関というものを政府部内において、各省協議をして、そこで一本の形でそういった全体的な問題に取り組んでいく、こういうふうな態勢をとるお考えがあるのか、そういうことは全然必要ない、こうお考えになっておるのか。
  99. 池田勇人

    池田国務大臣 当面の問題といたしましては、通産省におきまして石炭鉱業審議会の意見を聞き、通産大臣が責任をもって結論を出す、それを閣議できめればそれが一番早道だと私は考えております。
  100. 武藤武雄

    ○武藤委員 これはこの場で問題にしてもしょうがないのでありますけれども、われわれの方としては、この重大な石炭の問題を解決するためにはいろいろの問題がある。合理化をやるためにはいろいろの問題がある。先ほど大臣も御答弁になったように、石油との関連における石炭の、暫定的であろうがどうであろうが、保護問題等もある。あるいは税制上の問題がある。いろいろの問題がある。それから一般産業の面における受け入れ態勢の問題もある。あるいは新しい燃料転換の協力態勢の問題もある。そういうことを考えますと、この際あらゆる知識をしぼって、石炭の重大な他に与える影響ということを考えて、一つの会議を作ってはどうかということで政府に申し入れをしたのでありますけれども、政府の方も趣旨には全く賛成であって、今度の臨時国会ではなかなかむずかしいけれども、通常国会を目途として十分検討したい、こういうことを政府も言っておるわけでありまして、また与党の方でも原則的には全く賛成である、こう言っておるのでありますから、ただいまの大臣のお答えはちょっと一方的ではないかと思うのでありますけれども、そういうことについては研究をする余地もない、こういうお考えですか。
  101. 池田勇人

    池田国務大臣 私は社会クラブの方の御意見も聞き、また自民党の方の意見も聞き、また官房長官の意見も聞きまして、そうして今ある石炭審議会を活用するのが最もいい、こう考えまして、石炭鉱業審議会の中に当面の石炭企業の根本問題について、新たにいわゆる基本部会というものを設けたのであります。私は皆さん方の御意見を聞きまして、これが一番手つとり早くてそうして各方面の方がもうすでに審議会に三十名の人がおられますから、その中からピック・アップして、十人で新たに基本部会というものを設けて、先々月から出発しておるわけでございます。皆さん方の御意向はそれで十分果たせるのではないか、屋上屋を架するよりも、これが早くていい、こういう考えで新たにこしらえた次第でございます。
  102. 武藤武雄

    ○武藤委員 ただいまの大臣の発言は非常に重要でありまして、これはあとでわが党として政府の全体の責任あるいは与党の責任等をも追及しなければならぬと思うのであります。官房長官は、これは十分検討をして通常国会に考えたい、しかし今臨時国会でそれを考えるといってもなかなか技術的に困難だ、しかし、今石炭の問題を考えると、直ちに手をつけなければならぬ幾多の問題があるので、それは一つ石炭鉱業審議会に民間からあるいは有識者も入れて、まず当面の緊急問題をここで審議したいと考えておるのであるから、そういうふうに一つ御了承願いたいということを正式に御回答になっておるのであります。政府全体を代表する意味で回答された官房長官の回答と今の通産大臣の回答はまるっきり違っておるのでありますけれども、これはどういうことでありますか。
  103. 池田勇人

    池田国務大臣 官房長官がいつ言われたかわかりませんが、私はそういうつもりでやっておるのです。しかし将来において大規模石炭問題についての調査会を設けることに私は反対するものではございません。しかし通常国会法案を出してやるということになると、来年の五、六月ごろになります。それでは意味をなしませんから、今あるこれまでの法律に基づく大規模審議会を活用していこうというので、従来は部会が二つございました、これを経済部会と基本問題部会、こう二つふやしまして、それを使って当面の問題に結論を出そう。それが出まして、あとあなた方の要求によって官房長官が別にこしらえるというならまたそれはそのときでございます。私は社会クラブのある方のお話を聞きまして、けっこうだ、基本部会でいきましょう、こういうお答えをしておるので、大して矛盾がないと思います。
  104. 武藤武雄

    ○武藤委員 ただいまの大臣のお答えなら矛盾がないのでありますけれども、どうも先ほどは考えていないというふうにとられたものですから……。ただいまの大臣の答弁をそのまま了承しておきます。  それでは私はあと離職者問題に入る前に、合理化の問題について業界の方あるいは基本部会の方、いろいろ行なわれておるのでありますが、いろいろの議論があるようであります。この前業界が発表いたしました八百円のコスト・ダウン、あるいはその後官側ともつかない民間側ともつかない立場にある有識者等の意見によりますと、大体八百円では無理だ、千三百円から千五百円ぐらいのダウンを考えないと、やはり将来予想される石油との競争は不可能だ、今の価格そのものならばあれだけれども、まだ石油が相当の合理化をやってくるだろう、そうするともうそれだけでは不可能だ、こういう議論があるようであります。そこで、そういう合理化を大体において進めなければならぬということは、これはもう事業家といわず労働側といわず認めざるを得ないと思うのでありますけれども、問題は合理化の方法がいろいろ問題が出てきて、いろいろの混乱を生ずる場合もあると思うのであります。その点は合理化をやる場合に、先ほどの大臣の御答弁もあって大体真意は了解したのでありますけれども、たとえばそういう合理化に努力をする一定期間というものは、やはりいろいろの側からのこれに対する保護政策というものが伴わないと、実際には合理化は不可能ではないかと思うのであります。特に日本のように今まで石炭事業というものが原始労働的なものに多分におぶさってきておる状況では、なおむずかしい問題だと思うのでありますけれども、そういう場合に、たとえば先ほどボイラー規制法の問題が出まして、大臣としては、内容はそのままでいいかどうか別として、原則としてボイラー規制法の存続は必要である、こういうふうに御答弁をされたと思うのでありますけれども、これは間違いございませんか。
  105. 池田勇人

    池田国務大臣 まだ結論を出しておりませんが、現状から申しますと、一挙にこれをやめてしまうということは非常に石炭業にとって打撃じゃないか。早い話が、一トン・ボイラーを置くにいたしましても、重油であればこれが五百万円、石炭をたくということになりますと、七、八百万円、こういうふうな差があるのでありますから、ボイラー規制法を一挙にはずしてしまったならば、これは石炭業にとって大へんな打撃だと私は考える。しかし産業全体から申しまして、燃料の使用を設備によってぴしゃっと法律でとめるということは、これは世界にもあまり例のないことで、非常ににひどいやり方なんです。その間に私はさまって苦慮いたしておるのですが、何とかそこを調整しよう。で、ボイラー規制法を全廃するということについての打撃を考えますと、ただいまのところ、ボイラー規制法を全廃するという結論にはいっていない。もう少し研究してみたいと思っております。
  106. 武藤武雄

    ○武藤委員 石炭を流動体燃料として転換させる以外に今後の石炭の生きる道がないというのは、常識としてそうだと思うのであります。それでは一体どこに多く期待できるかといえば、電力あるいはガス、そういったところに期待する以外にはなかなかほかに——いろいろ石炭産業の新しい化学研究をしろとか言っておるわけでありますけれども、なかなかむずかしい問題だと思うのであります。しかも最近の火力開発というものは非常に急速な勢いで需要の増大とあわせて各社が考えておるわけでありますが、この石炭が最も重点を置いて生きていかなければならぬ電気に対する転換の場合に、そのかんじんの電気の方まで重油専焼という格好にされてしまったのでは、もう石炭の生きる道というのは、ほとんどワクが狭められてくると思う。そういう意味一つ大臣もこの点は特に重要に考えて、善処を願わなければならぬ問題だとわれわれは思うのであります。  それでちょっと事務当局にお聞きをいたしますが、だいぶ今電気業界を中心として、石油はもちろんでありますけれども、重油専焼のボイラーで火力発電ができるように盛んな運動をされておるわけです。現実に各電力会社では重油専焼の計画で今発電所の計画をしておられるということが、新聞等にときどき出てくるのでありますけれども、実際に今どの程度規模で準備が進められておりますか。事務当局の方でもしつかんでおられたら御説明いただきたい。
  107. 樋詰誠明

    樋詰政府委員 一応各電力会社、これは北海道、九州という山元を除きまして、それ以外の七つの地域の電力会社は、ほとんど重油専焼の発電所を持ちたいというような希望を持っておるようでございます。ただその中で今までのところはっきりと、中部の三個所以外のところは、これは絶対困るということで、これは会社の方もその計画を今のところは全部撤回された。それから中央の三地区につきましてはいろいろ希望を持っておられますが、これは通産省といたしまして、私から申し上げるのはどうかと思いますけれども、また全体としてこれでよろしいといって正式に認めるというところまでいっておりません。これはいろいろボイラー法等の関係もございますし、将来石炭がどこまで供給できるかという問題がございますので、石炭供給量あるいは電力需用量というものをあわせて検討いたしておりますが、いまだに強い希望を中央の三地区は持っておるということは事実でございます。
  108. 武藤武雄

    ○武藤委員 今のボイラー規制法のワク内で、重油専焼の火力発電所の設置は一応可能なんですか。それをちょっとお聞きしておきます。
  109. 樋詰誠明

    樋詰政府委員 現在のボイラー設置法並びにそれに伴います省令というものを、現状のままにおきまして厳格に読んだ場合には、専焼ボイラーということは設置できないということでございます。
  110. 武藤武雄

    ○武藤委員 わかりました。  それではその次に、これは全体のコストの中から見れば、そう大きな問題ではないかもわかりませんけれども、やはりいろいろ合理化をやる場合に、業界に真剣なる努力をさせると同時に、やはり政治的にもいろいろの施策をしてやらなければならぬと思うのです。たとえば税制等の面で、固定資産税のかけ方等についても、どうも他の産業から見ると、石炭の場合には非常に固定資産税のかけ方がバランスがとられていない、こういう声が非常に強いのであります。統計を見てみましても、ほかの産業と比べてみても、売り上げ原価一万円当たりの税額を見てみますと、石炭の平均は百七円、鉄鋼が六十七円、紡績が六十九円、造船が四十一円、化学が八十四円、こういうふうになっておるようであります。特に炭鉱の固定資産税に対する考え方でありますけれども、御承知のように一般の工場や何かでありますれば、かりに発電所等におきましては、一回発電所を作りますと、それはもうほとんど半永久的な資産として運営されると思うのであります。ところが炭鉱の場合は、御承知のように、新しい坑道を掘りましても、それにたくさんの設備がかかるわけでありますけれども、しかしそれは設備がかかったにいたしましても、必ずしもそれは固定資産として残らないというのが炭鉱の実態ではなかろうかと思うのであります。石炭を出すということは、それは設備を破壊することと同じであります。だんだん掘り尽くせばなくなってしまうわけでありますから、かりにそこに何千万、何億の設備を投資いたしましても、その鉱区がなくなって参りますと、それは消滅をする。そういうふうに、生産と破壊というものが同時並行の形で進んでいかないと、炭鉱企業というものは成り立たない。生産をするということは企業を破壊することである。これが炭鉱産業の宿命だと思うのであります。  そこで、現状の税金のかけ方で見てみますと、片磐坑道はこれを免除しておりますけれども、主要坑道等についても、やはり税制をかける場合に、大きくそういった今言ったような面を、実際の資産にあらざる資産としての炭鉱の宿命があるわけでありますから、固定資産税のかけ方等については、やはり考慮する必要があるのではなかろうか。特に実績にも出ておりますように、炭鉱の場合には非常に高いのでありまするから、これらに対して、大蔵大臣もやられました通産大臣でありまするから、よく実態は御存じと思いますから、御見解をお聞きしたいと存じます。
  111. 池田勇人

    池田国務大臣 先ほどの御質問のボイラーの問題について、御承知通り、昨年か一昨年、中部電力が新鋭火力の発電所を作った。これは専焼の予定であった。ところが通産省から、規定上は石炭の方の設備もしなければならぬ、こういうことであとからつけたのですが、これが多分五、六億円の投資だと思う。今後二十万キロ、三十万キロという火力発電を作ります場合において、非常に不経済石炭ボイラーというものを設置するということは、いわゆる電力料のコストにも相当影響する点があるので、一つこういうことをお考えおき願いたいと思います。  次に、この石炭鉱業体質改善の点から、固定資産税の問題、こういうお話でございます。従来この固定資産税の基本になりまする特殊の施設、いわゆる坑道等でございます。これにつきましては、二、三年前に、かなりの償却年数の短縮をやった。これは主として固定資産税の問題でなしに、償却の問題だと思います。これは売り上げに対しての先ほどの固定資産税の問題ということでございますが、御承知通り、最近鉄鋼にいたしましても、化学関係、造船にしましても、売り上げが非常にふえているが、石炭鉱業の方は、どちらかというと、ふえていない、それである程度の設備はせざるを得ぬというふうな状況でございますので、ただいまお話しになった数字に誤りはございませんが、基本的においてこの三十一年くらいから償却が上がってきたと思います。石炭鉱業の実態から申しまして、私は坑道その他の特殊施設の償却は、もっと思い切って償却すべきではないか。そうすれば、もとが少なくなりますから、固定資産税も相当軽くなる。また固定資産税の税率自体についてこれを分けるかという問題もあります。こういう問題はまだ議論になっていないようでありますが、私はやはりもっと償却を早くしていく、一般の償却は残存価額の一割に見ておりますが、坑道なんかの残存価額は一割どころか、やめていくときにはいろいろな施設が要るような状況であるのであります。こういう点も今後私は大蔵当局に話していこうという考えであります。
  112. 武藤武雄

    ○武藤委員 そのほか一般の事業税と鉱産税との比較を資料によって見てみましても、大体全産業の平均の倍くらいになっています。鉱産税は二〇二%くらいになっておるわけであります。しかし今特に石炭を中心として離職者や何かをかかえ、非常に困っておる関係市町村の実態を見ると、直ちに鉱産税の問題に手をつけるということは、軽々しくやるべきでないと思うのであります。しかしこれが不当に高いという点は統計上に明らかに出ておると思うのです。これは二〇二%、こう出ております。従いまして、これらについても、地方自治体との関係も十分考慮しながら、税制全体の問題としてこれから考えていく必要があるのではないか、こういうふうに私は考えておるのであります。  それから、特に合理化の問題とからんで、事業主自体が積極的に行なうものと、それから国の援助によって相当合理化効果が出てくるという問題等については、特に輸送面等においては相当考慮されていいのではなかろうかと思うのであります。特に将来火力の設備がどんどんふえてくることになっておるわけでありますけれども、最近はほとんどが海岸地帯に、船による輸送を中心として発電所の設備ができておるようであります。こうなりますと、これも一般の機帆船や何かの関係もありますから、そのまま公団式による輸送会社を作って、一貫した輸送の中でコストを下げる、あるいはこういうようなことも、なかなか問題があるでありましょう。これは統計によりますと、大体二千八百万トンくらい船で運んでおるようでありますから、なかなか大へんなことでありましょうが、これは合理化の面では、施策を通じて軽減できる面では、相当大きな要素を持っておるのではなかろうかと思います。たとえば共同の埠頭設備を相当政府施策の援助によって近代化する、一本化する、あるいは先ほど申しましたような海上輸送の近代化、合理化をはかっていくというようなことを積極的に施策の中で検討していけば、コストに対する相当の影響が出てくるのではなかろうかと私は思います。ですから、こういう問題も石炭合理化の中には特に政府も大きな関心を持って進めてもらいたい、こういうふうに考えます。これは一つ要望を申し上げておきます。  それから、最近大きな問題になって参りました石炭ガス化の問題であります。新聞や何かでありますから真相はわかりませんけれども、どうもガス会社の方があまりこういう施策には賛成でないというので、陰に陽に通産省の方をつっつきまして、ガス化については技術的にも実際的にも可能性が少ないというようなことの意見が大へん強く出ておるということであります。しかしわれわれの知る範囲では、石炭局を中心として、大臣も相当な関心を持ってこれに当たっておられる、こういうふうに聞いておるのでありますが、これも電気と関連をいたしまして、これから石炭が流動体として転換をしていく面における大きな要素になるわけでありますから、これに対して相当重要な関心を持って通産省としても考えてもらいたいと思うのでありますが、これに対しての御見解を伺いたい。
  113. 池田勇人

    池田国務大臣 鉱産税並びに輸送に関しての御意見、まことに同感でございます。そういう方向で進んでおります。  それからガス化の問題は、石炭の将来の需要が増大する最も大きい問題でございますので、試験所並びに事務当局の方でも十分な検討をいたしておるのであります。先般も常磐炭をドイツへ送りまして、ルルギー方式によって十分ガス化できるかという試験もしてもらったり、そしてまたこれをガス化して、それで企業化できるかということについての検討をいたしておるのでございます。また一方には、外国の燃料を液化して持ってくるというような理論もございまして、今まんじともえで実は研究し論争をしておる状況であるのであります。一つの問題といたしまして、われわれは十分検討を続けていきたいと考えております。
  114. 武藤武雄

    ○武藤委員 ガスは公益にも非常に重要な関係がありますし、また石炭対策という面についても重要な影響のあるものでありますから、この問題については一部の利潤追求というものだけからくる反対論で押しつぶされるということでは大へんでありますから、そういうことはもちろん私はないと信じておりますから、一つ積極的に取り組んでこの問題を進めていただきたい、こういうふうに思います。  それでは次に、時間もありませんから離職者法案内容について一つ、二つ質問をいたしまして終わりたいと思います。労働大臣に御質問いたしますけれども、この法案炭鉱離職者といわれておりますが、この炭鉱離職者というのは単に事業団で買い上げの対象になった離職者という意味ではなしに、いわゆる休廃山によって離職した者あるいは会社の解雇等によって離職した者、何か自己の責でない者というようなことがあるのであります。これは会社の方では、一応解雇ではあるけれども、表面は肩たたきで自己退職みたいなふうにしておる者もたくさんあるわけでありますから、そういう者は全部この法案に含まれる離職者対象になる、こういうように考えていいわけですか。
  115. 松野頼三

    松野国務大臣 さようでございます。すべての炭鉱離職者というのが規定でありまして、特に事業団とか何々会社とか、そういうものは考えておりません。
  116. 武藤武雄

    ○武藤委員 われわれは、今回の離職者法案が出ましたときに、今回出して参りました政府の七億程度の予算ではどうしても離職者の万全を期すことは困難だ、こういうことで予算の組みかえを提案いたしたわけでありますけれども、これは否決されたわけでありますから何とも仕方がないのでありますけれども、労働大臣にお尋ねいたしますが、二万一千人が一応失業者だ、こういうふうに考えられて、そのうちの三〇%が大体要保護者だ、こういうふうなお考えで数字を出されたようであります。私どもはこの三〇%という数字にはなかなか疑問があるのでありますけれども、政府は一応数字的に計算されてやったのでありましょうから、それはさておいて、実際に離職者を考えていきます場合に、どうも三〇%という数字は甘かった。深刻な問題が相当続きそうだという場合には、これは予算でありますけれども、また新たな救済の措置も何かほかの方法で考える御意図があるかどうか。新聞なんかによっても、最近は炭鉱地帯における生活保護者というものが非常にふえてきている、そういうことが報道されております。これによって見ましても、全国的には生活保護者のふえ方というものはあまり変わっていないけれども、たとえば福岡県なんかを見ると、今年の六月から今の段階までで、六月には六万九千八百三十人くらいあったものが、今日では九万四千五百人にもふえている、こういうことが発表されております。それから佐賀県では一万五千百三十人あったのが一万七千四百人にも増大している。地区別に見ると、直方では千二百五十二名であったのが二千五百八十二人と、倍にもなっている。田川市では二千五百二十六人から五千四十九人というふうに、約倍に近い数字にふえているというようなことが報道されているわけでありますけれども、これは非常に深刻な問題になっている一つの証拠だと思います。従いまして、こういう大きな社会不安ともいうべき深刻な問題になっているわけでありますから、一応予算はきまりましたけれども、実際に対策を進めてみて、三〇%という数字は甘かった、こういうふうな実態が現われた場合には、何らかの方策は考えなければならぬと思うのですが、どうですか。
  117. 松野頼三

    松野国務大臣 一応ただいま出ておりますものを中心に今回計算いたしまして、今後のものは、もちろん武藤委員がおっしゃるようにいろいろな問題があると思いますが、私の方はそれできめるのだ、予算できめて人員を割り出すということは、この問題は断じていたすべきものではございません。予算の変動ということは、離職者の質によって変わってくる。今回の二万一千人は、すでに出ているものを調査したところが二万一千人にちょうどなった、合わせますとちょうど何十%と逆算していったわけであって、常にこの数字を固定化す意味もございませんし、私どもの方は職安を通じて個々に審査いたしますから、予算の変動というものはあり得ることだ。同時にまた、いろいろな問題がありますから、日経連の調査というものもございますし、従って将来の問題はございますが、今回の二万一千人については予算の変動はございません。将来どういうふうに出てくるか、それによってはおのずから予算編成上において弾力的に運用する考えでおりますけれども、今回の二万一千人には予算の変動はございません、ということと二つ話しておきませんと、いろいろ誤解があるかもしれませんから……。
  118. 武藤武雄

    ○武藤委員 大臣は、どちらにでもとれるような御答弁でありますけれども、これは現実問題として私どもは出てくる心配があるわけでありますから、その場合には、やはりこれに相当する対策を立ててもらわなければならぬと思うのです。  それから先ほども議論が出ましたように、炭鉱離職者の優先雇用の問題ですけれども、確かにこの法案でいくと精神規定でありまして、必ず雇わなければならぬということにはなっておりません。これは資本主義政党の現内閣において、雇用の完全性を認めるような、そういったようなことはなかなか出し切らぬとは思いますけれども、しかし一面においては、今度の法案で、事業所の責任者がその月々の雇用状況を安定所に報告しなければならぬ、それを怠った場合には罰則をしておるわけですね。そういうふうに、一面においては強い態度で雇用の出入りをながめておるわけです。また一面においては、精神規定ではありますけれども、離職者を優先的に雇わなければならぬ、こういっておるわけですから、私はこの際、石炭産業というものが今後いろいろな意味でどういうようにしていくかという面で、やはり相当経済的にも政治的にも大きな考慮が払われる、そういう段階において、われわれの側に立ってみても、やはり場合によっては合理化に協力しなければならぬ場合も、これは当然自己の産業の存立の問題でございますから、出てくるとは思いますけれども、しかしそれも今行なわれているように、経営者が一方的に解雇を進めていくというようなことは、これはもう断じて私は許すべきではないと思うのであります。私は、何日か忘れましたが、多分朝日の社説ではなかったかと思いますが、違いましたらあとで訂正願いたいと思いますけれども、その中にもこういうことを書いておりました。どうも政府は、戦争中や、戦争が終わったあとの日本産業の復興を考える場合に、これはもう石炭労務者の奮起を促す以外に方法がないのだ、国が立ち直るかどうかは、かかって石炭労働者の双肩にかかっておる。また戦争中は、この大東亜戦争に勝つか負けるかは、すべて石炭産業労働者の双肩にかかっておる、こういうことで中央表彰であるとかあるいは一級功士であるとか、私も一生を炭鉱の坑内で採炭夫をやりましたから、たびたびそういうふうな政府の恩恵といいますか、そういうちょろまかしといいますか、そういったものにもあずかっておりますけれども、しかし私はあの社説が指摘しておりますように、そういう利用するときだけは最大限の賛辞をもってこたえるけれども、しかし一たんこれが必要がなくなってくると、もう弊履のごとく考えないという態度では、これはもうこういう労働者に対する取り扱いとしては、私はまことに不見識きわまるものだと思うのであります。私いつかドイツ等の話を聞いたことがありますけれども、ドイツ等においては、戦時中と平時とを問わず、石炭産業労働者というものは、国を、いわゆる産業を守る最大の戦士であるということで、戦時といわず通常といわず、炭鉱労務者というものを優遇する。この町には炭鉱があるということをその町は大きな誇りにしておるという話を聞きましたけれども、日本の場合は、利用するときは最大限の賛辞で利用するけれども、利用価値がなくなると一向かまわないという態度があるのであります。そういう点は、特に炭鉱経営者に私は露骨だと思うのであります。確かに今行なわれておるいろいろの労使問題に対する戦いについては批判もありましょう。あるいは確かに行き過ぎがあるかもしれません。しかしそれはあまりにも一方的な経営者の態度に対する労働者の反発ということも、私は大きな原因がそこにある、こういうふうに見ておるのであります。従いまして、私は将来のいろいろのそういった石炭産業の苦難の道を考えた場合に、この際、一つ政府は十分そういう点に責任を感じて、今後は一つ、この際労働大臣も真剣にそういった新しい労働慣行というものに留意をされまして、たとえば解雇制限法、こういう言葉がいいか悪いかどうか知りませんけれども、とにかくそういったふうに一方的に、経営者が自分の利潤追求のままにどんどん問題を進めていくというようなことのできないように、公平妥当な論議が行なわれるように、たとえばそういう方法として解雇制限法とか、あるいはこの解雇制限法が悪かったらば労働安定法とか、あるいはそういった中に経営と労働側の極端な紛争が起きるような場合には、そういった法律に基づく調停機関的なものを考えていくとか、そういった何かほんとうに労働者の立場というものも十分尊重する新しい労働慣行というものを、お前らの戦いがけしからぬ、お前らの行動がけしからぬという前に、やはりそういった過去の反省の上に立って、何か新しいモラルをこの際労働大臣は考えられる意図があるかどうかお聞きいたします。
  119. 松野頼三

    松野国務大臣 武藤委員のように、非常に国家の産業に苦労されて、ほんとうにあの危機を御努力された労務者方々がおられますから日本産業が今日まで復興したのだ、今になって弊履のごとくということは、これは断じてやるべきではないというので、こういうふうなほかの産業にやったことのない特別立法というものをやっておるわけであります。こういうような雇用問題として、離職者の問題を出したことはありません。これはやはり多年の功績と特殊性というものをあわせて、今回石炭だけは、これはよかろうというので与野党一致して、これは今日御審議をいただいて、御賛成をいただけるものだ、というのは、やはり石炭の過去における努力が、今回国民の中から同情と、また政府法案というものを出すようになったと思います。  なお労使問題につきましては、すべての労務者が悪いということでは断じてございません。炭鉱の労働組合の中には、暫時この際は、経営者であろうと労働者であろうと、ともに同じ産業をになうものであるから、労使休戦をやろうではないかという話がつけば、なるほどこれはおっしゃるように、新しいモラルの上に立って、敵と味方でなしに、お互いの産業ではないかという考えで、大きな組合の方が、そういう労使問題の話し合いをされて、労使で満場一致やられておる組合もあるわけであります。私はすべての、炭労が悪いとか、労働者が悪いということは断じて考えておりません。ただ一部の方が行き過ぎておられると、すべての場合にこれが及ぶ。これは非常に不幸なことであります。労使問題として、石炭というものは、そういうふうに今日お互いに戦いではなく、みずからを立て直そうという、ともに産業のにない手という基本的な考えから、この問題は解決してもらいたいということを真に望むわけであります。政府がきめるということ、あるいは労使協約できめるということは、おのずからこれは限界がございます。私の指導としては、やはりこの際とにかく闘争を暫時やめて、お互いの産業の自立をはかろうじゃないか、しかる後にお互いの配分をきめようじゃないかということは、当然、日本のみならず世界に通用するものだと存参じております。ドイツにおきましても、ある程度炭鉱労務者合理化は行なわれております。やはりその問題の中には、労使間におけるお互いの理解で、今後の対策というものを立てるべきである——政府がこのようなものを立てましたという理由はそこにあるわけであります。この内容について厚い薄いの議論はございますけれども、方向としては、武藤委員のおっしゃるように、私は石炭を契機として新しいモラルを立てたい。それには政府が責任を負うべきものは負おうではないかというので、一般会計から、特に石炭労務者と限って出したというその精神はおくみ取りを願いたい、やはり産業はそういうふうにあるべきだ。利潤の多いときには賃金が上昇するのは当然であります。しかしもし賃金が払えないという状況のときには、お互い同士、労使ともにその産業の立て直し、お互いのモラルをもう一度再検討するというのは、労働大臣としては当然なことだと私は考えております。これを強制するかどうかということは、日本の労働法全般に及ぶことでありますから、今日は、私は指導——また労働組合自身も、かつてにおいては、いわゆる戦いの労働組合でありましたが、今日は非常に大きな自覚と発展をされて、みずから産業方向をきめるという段階にきたと思います。産業状況方向をみずから立てるのだという時代がきた。かつては地主と小作の争いでしたが、小作農が自作農になれば、みずから農業方向を立てなければならない。同じような意味において、組合は、今までしいたげられた、圧迫されたというところから今日立ち上がって、団結と力、今度はみずから産業方向をきめるというように、大きな成長をしたと思っております。そういう意味で、全部の組合がそこまでいったとは申しませんけれども、一、二日立った場合はすでに自分の方向を決定されるという一つの大きなモラルが生まれてきていると思います。そういうような方向で労働行政も進んで参りたいと考えております。
  120. 武藤武雄

    ○武藤委員 どうも具体的な提案とは少し離れたようでありまして遺憾でありますけれども、大きく今後はやはりそういった問題に取り組んでいかなければほんとうの労働政策とは言えないのじゃないかと思います。  それから最後に私は援護会の業務内容の問題ともからんで、どうも今ここに提案されておるような援護会では、何か援護会という名前をつけて一つの組織は作ったけれども、実際にはこんな組織を作らなくても、官庁の出先機関でもやれる程度内容になってしまうのではないかと思うのです。私はやはりこの際、ただいま大臣も言われたような、そういう新しい立場で石炭の問題と離職者の問題を考えていくというならば、やはり援護会というものをもっと積極的な面で考え直してもらう必要がある。これは今度の臨時国会にはもちろん間に合わないでありましょうけれども、少なくとも当分まだ石炭のこの問題は続くのでありますから、通常国会等を中心として十分考えてもらう必要があると思います。そこで私は、ここで援護会の中で、先ほども八木君の御質問がありましたけれども、たとえば生業資金を借りる場合にも、国民金融公庫を通じて借りる。しかしそれに対しては別に授護会として保証するとか何とかいう問題ではないのでありまして、口をきいてやる程度のものだろうと思うのであります。そういう格好でなくてそれから移動資金の支給問題、それからもう一歩進んで、この際失業手当の問題等もこの援護会に委託をして、やはり支払いができるようなことも一つの方法ではないかと思うのです。ですから、そういう実際的に援護会としての役目が果たせるように、これは当初の仕組みとしてこういうお考えで出されたものと思いますけれども、やはりもう一歩突っ込んで、実際的に離職者援護の活動ができるように、もう一歩突っ込んで、実体のある援護会というものにする必要があると思うのですけれども、この点について……。
  121. 松野頼三

    松野国務大臣 今回の援護会は、なるべく民間の方を、実際お世話するのに身近な方を採用したいというので、役人という考えをあまり強く出しますと、何となく官制ということで四角定木になりますので、主として今回約九十八人、百人くらいの定員を予定しておりますけれども、ほとんど半数以上の方は、今まで各炭鉱労務者のお世話をされた方に今度は援護会に入っていただいて、援護会の職員でお世話をいただくという意味で、あまり官にならないように、といって民間ですと、こういう組織はなかなかできません。あるいは何々会社のいわゆる勤労部ということでは、なかなか世間に通用いたしませんので、そういうものを抜きにして、各石炭関係者の方にみな入っていただいて、そうして何々会社という色目で見ずに、公平な意味で今後お世話する。受け取る方も、何々会社から来たというのではなくて、援護会でお世話することになれば、おのずから受けられよいということで、なるべく援護会は民間的な色彩を強めて、しかもある程度資金の問題とか、会計の問題がございますから、そこに多少規制を加えて、今回の援護会というものにしたわけであります。性質からいうと、これはお世話するのですから、やはり役人気風をここに吹き込んではいけないという意味から援護会を作ったわけであります。こういうことが運営に一番いいのではないか。しかし、やってみなければ、これは論じられません。端的に申しまして、悪いところは幾らでも直します。しかし、今日考えられるこの案が一番よかろうということで提案をいたしました。
  122. 武藤武雄

    ○武藤委員 そういう配慮で民主的に運営されるということは賛成であります。ですから、先ほど八木君からも出ましたように、労働側の優秀なものも一つこういう機関の中に入れて、より民主的に行なわれるように配慮されることを望んでおきます。それから、そういう民主的な運営をされるために援護会という格好で出発されることは賛成であります。ただそれが名前が民主的であって、ただ事務費と人件費だけに食われてしまうような援護会ではしようがないのでありますから、実際に援護活動ができますように、やはりもう一段の検討が必要だと思います。それはあとでおそらく社労の方でわが党の方からも具体的な内容についての修正動議なり何なりが出ておりますから、その点で十分御審議を願うことにいたしまして、私はこれで終わります。
  123. 永山忠則

    永山委員長 本日はこれにて散会いたします。     午後一時五十六分散会