○大島説明員 先般
ILOの第百四十三回
理事会が開催されました。これは先月の十六日から三十日まで行なわれました。この
理事会に先立ちまして、
理事会付属の各種
委員会が開催されました。結社の自由
委員会はその中の一つの
委員会でございますが、この
委員会は九日、十日の両日に開かれ、その
委員会に付託されました各国
政府に対する
苦情は十数件ございましたが、この中に日本の
全逓に関する
苦情も含まれております。結社の自由
委員会といたしましては、まずこの十数件の事案を、緊急事案と緊急でない事案に分類いたすことになったのであります。労働側の方々としては、日本の
全逓の問題は非常に緊急だから緊急事案にいたしたいという御
意思であった
ようでありますが、結社の自由
委員会といたしましては、日本の事案は緊急事案でないという決定をいたしたのであります。緊急事案と緊急事案でないものとはどういうふうに違うかと申しますと、緊急事案につきましてはその会期の本
会議、すなわち
理事会において審議されることになるのでありますが、緊急事案でないものは次の会期の
理事会において審議される、こういうことに手続が、昨年の十一月の
理事会で決定いたしておるわけであります。この手続によりまして、今回の結社の自由
委員会で緊急事案でないということになりました事案については、従って三月の
理事会で審議されるということに必然的になるわけであります。これが九日、十日の結社の自由
委員会の模様であります。
さらに二十日、最後の
理事会、本
会議の日でございますが、ここで結社の自由
委員会の結果についての審議が行なわれたのでありますが、当初
議長から、この十数件のうちフランス
政府に関する事案とハンガリー
政府に関する事案が緊急案件になっておりまして、その他の十数件の事案につきましては緊急でない、こういうことになっておりますので、この緊急でない事案についての報告書は、単に
理事会のメンバーに参考のために配付されるにとどまるものであるから、
理事会としてはハンガリー
政府の問題、それからフランス
政府の問題、この緊急事案に進みたい、こういうふうに
議長から発言があったわけであります。
これに対して労働側の
代表としましては、日本の問題を緊急事案として出したいという意向を言い出したのでありますが、
議長はこの非緊急事案につきましては単に参考のために配付されるだけであって、三月に審議さるべきものであるからということであれしたのでありますが、労働側の
代表といたしましては、昨年十一月にきめました緊急事案と非緊急事案の取り扱いの手続、この問題自体を再検討したい、たとえばということで、日本の事案をるる説明なさったのであります。これに対しまして私からは、結社の自由
委員会の非緊急事案の報告書については論議する必要はないと
考える、ただ日本
政府としては
労働組合の
権利を侵害し
ようとも思わない、ただ
ILOとして非常に大事なことは、
労働組合の
権利の確保と同時に、各国
政府の公共の福祉を擁護する
責任の重要性を
認めることもまた同時に必要であるという旨を私から強調いたしております。これに対して
政府側からは、フランス側の
代表、イギリスの
政府代表から意見の開陳がありまして、これはとにかくその手続できまっておるのだから、今さら日本の事案を緊急事案とするのは、それは無理であるということです。それから日本
政府としては八十七号条約を
批准するということを言っておるのだから、これ以上
ILOとしてもどうもいたし方がないということで、まあ言うとすれば従来
ILOが言っていることを繰り返す
程度のものである、こういうのが
政府側の意見であります。それから使用者側の
代表が進んで立ちましたが、これは手続上きまっておるのだから無理だということ、それから今急に審議せいと言われましても、まだ内容も読んでおらぬし、それは無理だということ、それからその緊急事件の手続そのものの再検討であれば、これは結社の自由
委員会にもう一度戻して審議すればいい、すなわち二月の結社の自由
委員会でこれは審議すればいい、こういう意見の開陳があったわけです。そういう議論の経過を経まして、最後に
議長から、それでは本日の議論の模様を事務総長から日本
政府に通報することにして、次の問題に移ろうということでフランス
政府の事案に移ったわけであります。従って今回の結社の自由
委員会としては、別に何らの
ILOとしての
意思決定を、
意思表示を日本
政府にいたしてきていないわけであります。
それからさらに
ILOの事務総長からは、日本
政府に対しまして、昨年の十一月の
理事会で表明せられた意見と同じものについて日本
政府の注意を喚起したい、それから日本の
法律改正、あるいは八十七号条約
批准の可能性について新たなる事態の発展があれば通報してほしいということを申されております。
第一段の問題につきましては、先ほど申し上げました
ように、フランス
政府の
代表の発言、すなわち日本
政府としては
批准をすると言っておるのだから、言うとすれば従来言っておることを繰り返す
程度のものであるということに基づいております。それから新たなる事態の発展があれば通報せられたい、これは従来の各
理事会において必ず言っておる、従って事態の発展があれば通報いたします、なければ事態の発展はないということであります。これが今回の
理事会の模様であります。なお九十八号条約との
関係につきましては、これは七月の
国会におきまして、私、本
委員会に喚問せられまして、詳細御説明した
通りでありますが、この春、条約勧告の適用の専門
委員会におきまして、日本の四条三項の規定によれば使用者側が不当干渉をする可能性があるのではないかと、こういう意見の発表があったわけなんであります。これに対して総会で同じく私から、九十八号違反ということはない、すなわち日本の
公労法においては不当労働
行為の制度があって、そういうふうな不当干渉については
法律で禁止されておる。さらにもしそういう事実があるとすれば、それに対してはそれぞれ救済手続があるということ、それからそれぞれの事業法におきまして、ほしいままな解雇はできない、解雇事由については一定の制限が加わっておる、こういう法規の実際を説明いたしたのであります。と同時に、この九十八号条約とは
関係なく、八十七号を
批准するためには、四条三項の問題あるいはその他の国内条件の整備ができれば八十七号を
批准したい、こういうふうなことを申し上げたのであります。ただしこれは九十八号とは独立の問題であるということを言っておるわけなのであります。これに対して総会の
委員会といたしましては、日本
政府の言う
ように四条三項が削除されることは望ましいという希望の表明があったわけであります。日本
政府が言っておる
ように、そういう文書が出ております。大体九十八号については、総会においてはそういうことであったのであります。従ってこの九十八号条約に違反云々という問題については、エキスパート・コミッティがそういう意見の表明があったと同時に、これについての日本
政府の意見をさらに次のエキスパート・コミッティに出してほしいこういうことをつけ加えております。従って私がただいま申し上げました
ような日本の法制の実情というものを、来年の春でございましょう、エキスパート・コミッティが再び開かれます際に、そこで日本
政府の意見を参酌しながら、あらためて
法律的に再検討せらるべきものであります。
以上が大体ただいま御
質問の点に触れる大綱についての御説明であります。