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1959-12-02 第33回国会 衆議院 社会労働委員会 第9号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十四年十二月二日(水曜日)     午前十時十九分開議  出席委員    委員長 永山 忠則君    理事 大石 武一君 理事 大坪 保雄君    理事 田中 正巳君 理事 八田 貞義君    理事 小林  進君 理事 五島 虎雄君    理事 滝井 義高君 理事 堤 ツルヨ君       池田 清志君    大橋 武夫君       亀山 孝一君    藏内 修治君       齋藤 邦吉君    柳谷清三郎君       亘  四郎君    伊藤よし子君       大原  亨君    岡本 隆一君       多賀谷真稔君    中村 英男君       八木 一男君    今村  等君  出席政府委員         通商産業事務官         (石炭局長)  樋詰 誠明君         労働事務官         (職業安定局長)百田 正弘君  委員外出席者         参  考  人         (国民経済研究         協会理事長)  稲葉 秀三君         参  考  人         (朝日新聞論説         委員)     江幡  清君         参  考  人         (日本石炭鉱業         経営者協議会会         長)      伊藤保次郎君         参  考  人         (日本石炭鉱業         連合会会長) 菊池 寛実君         参  考  人         (日本炭鉱労働         組合委員長) 野口 一馬君         参  考  人         (全国石炭鉱業         労働組合書記         長)      斎藤 茂雄君         参  考  人         (福岡県知事) 鵜崎 多一君         参  考  人         (全国鉱業市町         村連合会副会         長)      鈴木 栄一君         専  門  員 川井 章知君     ————————————— 十二月一日  栄養士法及び栄養改善法の一部改正に関する請  願(池田清志紹介)(第九九五号)  国民年金事務費増額に関する請願池田清志君  紹介)(第九九六号)  老人福祉に関する請願池田清志紹介)(第  九九七号)  国民健康保険組合療養給付費国庫補助に関す  る請願五島虎雄紹介)(第九九八号)  薬事法の一部改正に関する請願外一件(芳賀貢  君紹介)(第一〇〇〇号)は本委員会に付託さ  れた。     ————————————— 本日の会議に付した案件  炭鉱離職者臨時措置法案内閣提出第三一号)      ————◇—————
  2. 永山忠則

    永山委員長 これより会議を開きます。  炭鉱離職者臨時措置法案を議題とし、審査を進めます。  本日は、お手元に配付いたしました参考人名簿に記載の方々の御出席を願っております。この際、参考人方々に一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、お忙しい中をおいでをいただきましてありがとうございました。何とぞ本案につきまして忌憚のない御意見をお述べ願いたいと存じます。なお、議事整理上、御意見を一応お一人十分ないし十五分程度に要約してお述べ願い、その後委員の質問にもお答え願いたいと存じます。ただ、議事規則の定めるところによりまして、参考人方々が発言されます際には委員長の許可を得ていただくことになっております。また、参考人方々委員に対して質疑をすることはできないことになっておりますので、以上お含みおき願いたいと存じます。また、発言の順序につきましては、勝手ながら委員長におまかせを願いたいと存じます。  それでは、日本石炭鉱業経営者協議会会長伊藤保次郎君に参考人としてお願いをいたします。
  3. 伊藤保次郎

    伊藤参考人 私、ただいま御指名をいただきました伊藤でございます。今回の石炭鉱業離職者に対する法案についてでございますが、石炭鉱業が現在置かれております情勢につきましては、もう十分常識的にわかっておりますので、詳しいことは省きたいと思います。しかしながら、この画期的な法案をどうして政府が提出しなければならなかったかということにつきましては、石炭鉱業体質改善エネルギー源の改革問題に関連しまして、石炭鉱業からはどうしてもある程度の失業者が出ることを防ぐことはできないという情勢国家的にも看取されてこの法案が提出されたものと思います。  その理由を簡単に石炭鉱業経営者側として申し上げますと、現在の石炭鉱業は、従来のような不況とは全然異なっております。戦後におきまして、石炭鉱業は大体三回の不況を味わっておるのでありますが、その三回と現存のこの危機と比較しますと、ある場合には同じ性格を持っているものも含まれておりますが、根本的には性格が全然違っておるといっても差しつかえないのであります。私どもの見るところによりますと、従来は石炭が少し余ったということで、生産制限をすればそれで間に合った。あるいは足りないから急に増産したというようなことで、石炭鉱業は維持し来たったのでありますが、現下の情勢は全く反しまして、簡単に申し上げますと、石炭エネルギー資源として、重油にもう完全に押されておるということであります。従ってその原因は、石炭値段が高い。供給が不安定であるとよくいわれていますが、根本問題は、やはり石炭値段競合燃料に対しまして高いということであります。高いという原因はいろいろありますけれども、結局は石炭鉱業経営能率というものは低いんだということに帰着すると思います。従ってこれから石炭鉱業経営していきますのには、量の問題では解決できない。量は一定量制限を受けることははっきりしております。従ってそれに対処するには非能率的な炭鉱をやめて、能率のすぐれた炭鉱に集中して仕事をしなければ、原価の低減ということはとうていはかり切れないということは自然に出てくる結論であります。そうなりますと、現在石炭鉱業の持っております従業人員というものは、どうしても過剰といわざるを得ないという結論に達しましたので、失業者を出すことは、国家としても非常に困る問題でありますが、石炭鉱業の占めている範囲というものが、きわめて産業的に大きいのであって、この産業をこれから生かしていくには、どうしてもある犠牲者が出ざるを得ないという結論に至ったので、私どもはこの整理人員を策定いたしまして発表したわけであります。  このことをちょっと数字的に申し上げますと、最近昭和二十七年から三十三年まで六年間をとってみましても、日本エネルギー需要額は四四%の増加を示しております。六年間に四四%を示しております。今後の四年か五年間の増量はもっと大きいものだと思います。これをさらに四、五年延ばしましたら、おそらく一〇〇%くらいにいくんじゃないかと予想されております。それで石炭の占める比率を考えますと、その増加した四四%のうち石炭が当初は五一%を占めておったのでありますが、現在においては四〇%に低下しております。その反面、石油が占めておりますのは当初は一一%しかなかったのでありますが、現在は二三%と、倍量になっておるのであります。これを見ましても、いかに石油というものはエネルギーにおきまして優位な地位を獲得したかということがわかるわけであります。従ってこれに対処いたしますには、先ほど申し上げました通り、どうしても縮小計画を立でなければならぬ。一方においては需要の拡大をさらに計画しておりますけれども、しかしながらこれは今当面の問題としてはこれ以上の需要を拡大して対処するということは、全く困難、まあ不可能に近いことだと思うのであります。従って今度の法案に盛られておりますように、離職者というものは当然この産業からは出てこなければいかぬ結論でありまして、その点は政府におきましても、この事情をよく理解されたものとわれわれは考えておるのであります。  しからば、この離職者の数はどれだけ出るのか、これが非常に問題になると思います。これも昭和三十八年度までわれわれは策定しておりますが、三十八年度というものをどうして策定したかといいますと、三十八年度までかかれば炭鉱合理化というものは大体完成する見通しがあるということで計算をいたしたのであります。石炭には大手中小との二つの分け方がありますが、私ども所属しております大手炭鉱におきましては、約六万人の離職者を策定せざるを得なかったのであります。中小の方のことも、それについてかりに数字を持っておりますが、これは中小の方からもお話があると思いますが、大体三万七千とわれわれは計算しております。従ってこの数を合わせますと十万近い離職者であります。その中にどうしても職業をあっせんし、生活の一応の安定をはからなければならぬという数字は、大手におきましてはその六〇%、中小の方は、われわれの計算したところによりますと、七〇%というものがどうしても離職者としまして職業訓練なりあるいは直ちにある職業のあっせんをしてもらわなければならぬという数字だと計算しております。三十八年度にはどうするのかという問題がありますが、これはまだ四年も先の問題でありまして、とうていその見通しまではついておりません。しかしながら私どもは一応炭価軽減ということをうたっております。軽減の限度も、昭和三十八年度までには石炭一トンにつきまして八百円を下げるという公約をしておるのであります。従ってこれを実行しますには、今申し上げたような離職者の数というものは決して過剰に出した数字ではありません。自分の勝手に出した数字だといわれるかもしれませんが、私ども十分企業努力というものを入れまして、できるだけ従業員に対して迷惑をかけないようにという精神を持って出した数字でございますけれども、しかし三十八年度以後のことにつきましては、遺憾ながら見通しがつかないのであります。こういう建前から、今度の法案を拝見いたしまして、私どもは最も適切なときに提出されたということを感謝するのであります。自分たち仕事の一部じゃないかという批判が世間には多分にあります。しかしながら私どもとしましては、率直に言いまして、離職者の取り扱いにつきましては、とうてい一産業だけではできない問題でありまして、いわゆる社会問題化しておりますので、どうしても国家の力、あるいは国民全体のお力を借りなければ、この問題は解決できないというふうに考えますので、この法案に対しましては、私は全体としまして、もちろんその通過の一日も早いことを希望してやまないのであります。  法案内容につきましては私ども一応拝見しておりますが、この法案がこの通り施行され、運用されれば、石炭問題の解決にも非常に明るい面が出てきはしないか。現状におきましてはまだそういう面が出ておりません。テレビを見ましても、まことに悲惨な状況が写し出されております。これは一部の現象であるという人もあるかもしれませんが、とにかくまだ解決されない状況が社会的にはっきりしておりますので、法案通過の早いことを切望いたします。  法案運用につきましては、国会で御審議なさいますから、われわれがかれこれ申し上げる必要はないかもしれませんが、なるべく広い範囲において離職者を吸収するようにお願いすることが一つであります。それから、これは官庁のやることだというふうにも考えておりますが、しかしながら社会問題といたしましては、なるべく広範に円満に運用されることを望んでおります。  もう一つは、下手するとこういう法律は、言葉はちょっとどうかと思いますが、官僚的な運用に流れるおそれがありはしないかということであります。十分民意を察して離職者に安心を与えていっていただくように、どこまでも運用に御考慮を払っていただきたいというのが私どもの希望であります。  石炭状況につきましては、これ以上のことを申し上げても蛇足だと思います。いかにして離職者が出ざるを得ないのかということを申し上げれば、この法案に対するわれわれの態度もわかり、それからもう一つは、この法案日本では従来ない画期的な石炭離職者に対する法案である、いかに国家石炭というものをエネルギー資源として重要視されているかということもわかると思います。ですからこの法案は決してへんぱな法案ではないと思う。そういう意味合いにおきまして、なるべく早く国会通過することを望んでおります。
  4. 永山忠則

  5. 菊池寛実

    菊池参考人 私はただいま御指名菊池寛実でございます。私は全国六百中小炭鉱代表者であります。大体伊藤さんが石炭に関する法案に対する要望を申し述べたことと大同小異でありまして、私からとやかく申し上げる点はございませんが、一応考えを申し述べさしていただきたいと思います。  その前に皆さんに申しわけをしたいと思います。それは石炭事業というものは、皆さんも御承知通り国家重要産業であるのであります。それをわれわれにお預けになりまして、経営に当たりまして今日の事態を起こしたということは、われわれの至らぬ点が十分あるのでありまして、この点は深く国民並びに諸賢に申しわけをいたします。この点はわれわれ六百炭鉱、申しわけない、ざんきの至りと恐縮しておる次第でありますから、六百炭鉱代表して皆さんに申しわけをいたします。  それから今後どうしたらいいかと申しますと、石炭というものは、今社会事業化すか国家事業化すかという非常に重大な事態に当面していると思いますが、私はやはり石炭鉱業国家事業として所有していきたいと考えております。今日この大きい事態に至ったのは、決して私らの罪ばかりではないと私は思います。これは大きい災害であります。先般も伊勢湾台風によって名古屋の災害がありましたが、災害があるということはだれも承知しております。けれども、ああいう大きい災害が突然来るということは、おそらく考えた人はないと思います。あの災害は有史以来かつてない災害と思うのですが、今次の石炭産業はどうであるかといいますと、熱資源としての石炭石油に侵されるということはだれでもわかっておったろうと思う。けれども今日のような大きいこういう事態になるということを予測した人はないと思います。私はあの災害と同様に、今日の石炭の急激な変化というものは、経営者のよしあしとかいうことではなくて、一つ災害考えている次第なのであります。その点でいろいろの問題を惹起して、皆さんに非常に御心労願っておる次第なのであります。つきましては、今後石炭をどうしたらいいかといいますと、私はあくまでも国家産業としてこれを維持していきたい。それにはわれわれこの老骨にむちうって、この事業のために最後の終わりを告げたいと思うので、皆さんにこの点をお耳に入れておいていただきたいと思うような次第であります。つきましては、この皆さん国家的事業として残しておいていただきたいというのは、その原因はどういうことかと申しますと、現在非常に石油というものに圧迫されておりますが、この石油日本地下資源として少なくとも十分の三とか十分の四とかいうものが産出されるならば、私は石炭産業というものは社会事業化していいと思います。しかし実際には百分の一とか二に足りないものでありまして、石油燃料として使いまして、何か大きい問題があったときに、その入手が困難になるようなことになりましたならば、日本国家産業というものは壊滅するのではないか。そういう関係上、値段の高いとか安いとかいうのは別個の問題として、この石炭産業というものを常に国家的産業として育成するというのは最も大切ではないか。それには、われわれ業者が努めて生産を安く上げて、石油との競争にたえ得るように持っていかないといけない、こういうことで今研究をし、実行にかかっておるような次第でありますから、その点も今後協力を願いまして、国家重要産業としてこれを育成することに御協力を願いたいと思います。この点、特に私の考えの一半を申し上げて、御賛意を願えれば過分のしあわせと思います。  それから、この離職法案は、実は今朝これを拝見してまだ全部読んでおりませんが、われわれが石炭産業に当たる以上は、人間尊重ということが根本の問題だと思うのです。常にわれわれは人間尊重ということを根本義に置いて経営に当たっておりまして、そうしてこの事態を——今日のような状態になるとは思わぬが、ある程度石油の圧迫は受けるということを承知いたしまして、どこか適当のところに配置転換をしていくというので、パルプ事業であるとか、鉄事業であるとか、あるいはガス事業であるとか、その他のいろいろな事業転換させようと思うと、炭鉱労働者転換というものは容易でない。この点は皆様の耳をかしていただきたいと思うのです。それは自分が実際やった体験談をお話し申し上げるのでありますが、私のところで百人ばかり配置転換させたいと思いまして指名をしましたら、喜んで配置転換労働者も賛成したのであります。ところが、実際やってみると、これはなかなか容易じゃないのです。なぜ容易じゃないかというと、彼らは、今まで俗にモグラと称して、日の目に当たることのない仕事をしておるのです。陸上にありまして配置転換させて働かせますと、太陽に当たるとからだが溶けるような状態になる。その間にまた始終急激な生活変化によりまして病気を起こすというようなことでありまして、実際やってみますと、配置転換は容易じゃないのであります。その間に半年とか一年とか、ある程度訓練しなければ、この配置転換人たちを働かせることができないという結果を招来したわけであります。つきまして、このたびの離職法案によって、援護会というものを作りまして彼らを訓練する、これは人権尊重という意味からいって適宜の処置で、非常にけっこうなことであると思います。今日、科学が進歩して、やはりこれは多産主義でいかなければならないというときに、人間尊重という意味において、彼らを他の事業転換させるためにこの離職法案をお出しになったということは非常によいことだと思います。この問題については、私はもう二年前から政府に対して要望しておったわけです。高碕さんに、将来、炭鉱人員を減少して、一人の能率を高めなければ油と競争ができませんよ、ついては何かこういうふうな転換方法一つ政府考えていただきたい、こういうことを要望しましたが、今回こういう法案がここに提出されたということは、人間尊重という意味において非常にけっこうなことと思って、満幅賛意を表する次第であります。  ところで、それはけっこうでありますが、この法案を見ますると、三十三ページをごらん願いたいのですが、ここに費用の問題があるのです。これはどういう費用でやるということがはっきり明記してないのであります。この点が自分の納得いかないところであるのであります。この費用事業団から交付を受けてこの事業を継続する、こういうふうになっておるのであります。これが明確でないので、これが自分らの不安を感ずるゆえんなのであります。御承知通り炭価を安くするのには、炭鉱は努めて経費を節減しなければならないというのがわれわれの使命なのであります。今日炭鉱経営に対しまして、この事業団関係で一トンで二十円ずつを負担させられております。この点は、今日の事態として一トン二十円というものはなかなか大きい問題なのでありまして、その上経費の加算をされますと、事業自体に大きな影響を来たすのではないか、この内容はわかりませんが、非能率炭鉱買収費用の負担とか、離職法案とか、こういうふうな問題を一切総括して二十円以内であげていただきたい、これを特にお願いする次第であります。私は、事業の性質上、これは当然国家が持つべきもので、われわれ業者が負担すべきものではないという考えを持っておるのでありまして、この離職法案に対して満幅賛意を表すると同時に、私は、この経費の問題に対して御注文を申し上げて終わらせていただきたいと思います。ありがとうございました。
  6. 永山忠則

  7. 野口一馬

    野口参考人 ただいま紹介されました日本炭鉱労働組合の副委員長野口一馬でございます。私は、石炭産業に二十二年間働いておる労働者でありまして、日本炭鉱労働組合は、石炭産業に働く労働者の三分の二の結集体であり組織である組合であります。私がただいまから申し述べますことは、ただ単なる個人の私見でなく、石炭産業に働く労働者、また石炭産業に働く国民の声であるというふうにお聞き取り願いたい、このように考えます。  また、私は、炭鉱離職者臨時措置法案参考人として意見を述べる前に申し上げたいのでありますが、過去何回か衆参議院参考人に出て参りました。そして国会においていろいろ参考人としての意見を述べますが、その意見が、当然国会法に基づいて述べておることだと思いますけれども十分参考になる意見を述べておると存じながらも取り入れられてないということが多くございました。ただ単に国会法に基づく形式的な参考人を呼んで聞かれるということでなく、参考人意見の中で十分傾聴に値する内容があると考えられた場合には、党派を超越して法案の中に織り込んでいただきたい、このように考えるわけであります。しかしながら、今度の臨時措置法案意見を述べる前に、すでに国会においては予算がきまっておりますし、しかも予算使い道等においてもきまっておることを考えますと、いささか意見を述べる中でもさびしさを感ぜざるを得ないわけであります。私たちがどのような卓越なる意見を述べてみても、それは無意味に終わるんではなかろうかと考えますので、さっき述べましたように十分皆さん方の御配慮をお願いしたい、このように考えるわけであります。  私は自民党岸政府資本家階級だけの代表であるということは百も承知しております。また今度の法案を見ますと、そういうことが多分に感じとられるわけであります。現在炭鉱労働者は、他の資本主義国にもその例を見ない大量の首切りをされようとしておるわけでありますが、このことは私が強調するまでもなく、十分皆さん方承知しておられることだ、このように考えます。また私たちは四年前石炭合理化措置法案が制定されたときに、私ども炭鉱労働者はその当時この法案に対し、これは炭鉱労働者を救済するものではなく、ただ大手炭鉱のみの市場安定政策を講ずる一つ法案にすぎないということをるる述べて参りました。四年後の現在その法案をながめてみますと、私たち反対のための反対ではなく、われわれが反対する意見等が今日の情勢の中では出てきておるということを、十分理解していただきたいと思うわけであります。またこの法案の中で労働者の受けた今後の措置をいろいろ皆さん方自身も聞いておられること、また見ておられることと思いますが、離職したほとんどの炭鉱労働者生活保護法の適用を受けて、要保護世帯となって炭鉱地帯に定着し、現在は黒い羽根運動としてありますように、社会問題を起こしておるというのがその実態である。またそのような労働者はごくわずかの労働者でなく、全国的に見て参りますと十万人にわたる労働者であり、特に本日参考人として福岡県知事鵜崎さんが来ておられますが、福岡県においては、ことに福岡県の筑豊炭田においては、黒い飢餓地帯、灰色の谷間といわれるほど、その悲惨さを加えておるわけであります。大手炭鉱労働者は、もう本年初めから、三井を中心に数多くの労働者職場を去っておりますが、その数はすでに一万以上に達しておるわけであります。現在石炭資本家は、三十八年までには大手十八社の中で約七万人の労働者職場から追放しようと考えておりますし、中小炭鉱においても三万人の労働者を同じような状態に追い込もうとしておるわけであります。このような状態考えて参りますと、この数が十万人にわたる数字でありますと、現在大手石炭産業に働いておる労働者の三五%ないし四〇%の数字になるということを理解していただきたい。三人に一人、四人の一人の労働者が、一人に三人の扶養家族をかかえて再び失業のちまたにさまよわなければならないという実態が訪れてきておる。それがただ単に石炭産業合理化、企業安定ということでなく、せんだっての三井争議に見られるように、生産阻害者の名において正常なる組合運動を行ない、また正当なる職場活動を行なっておる組合運動家に対する組織の破壊と攻撃をかけられてきておるのがその実態であります。私たち石炭産業不況の中でこのような暴力的な暴挙が首切りという形でしゃにむにわれわれに襲いかかってきておる実態等をよく理解していただきたいと考えるわけであります。石炭産業はこのような状態の中でどういうことを言っておるかと申しますと、斜陽産業だから縮小生産をせざるを得ない、こういうふうに言って、非能率炭鉱でないのも非能率炭鉱の烙印を押して、次々に閉山と大量の首切りを行なっておるのがその実態であるわけであります。またマスコミ等におかれましても、現在の自民党の力、岸内閣の巧妙なる弾圧のもとにおいて、現在の石炭産業の置かれている立場が全く天然現象のごとく、また労働組合の一方的な労働争議の中からできたものかのごとき印象を与えて宣伝されているということについて、いささか私たちも危惧を感ぜざるを得ないわけであります。  われわれは今度石炭産業のとられる方途は、近代的な合理化をまず行なってもらわなければならぬ。また能率を一方的に出して、その中から利潤の追求を行なうところの、七万人に及ぶ首切り予定人員を出す、このようなやり方はやめてもらわなければならぬ、このように考えるわけであります。また労働者援護協会そのものの正体等を十分考えてみますと、これはただ単に炭鉱失業者を救済するということでなく、現在石炭産業で行なわれている首切りを側面から援助する、そして世論の集中攻撃を受け流して、石炭資本家にその目的を達せさせようというものにほかならないような感じが非常にするわけであります。  私たちはこの法案に対する見解を述べる前に、石炭産業がどのようにすれば現在の危機を脱却し、しかも労働者の犠牲だけでなく、それを切り抜けることができるかということを指摘するのでなければ、ただ単に離職者法案についてのみ意見を述べることは、決して現在の石炭産業の危機を救うことにはならないであろうと考えるわけであります。  まず石炭危機をわれわれが考えて参りますと、それを鋭くしている一つ原因は、石炭産業に近代性がない。古い生産機構の中に立って、そして明治初年から日本炭鉱が三井、三菱などの財閥炭鉱で優良な鉱区を独占されて、その中で鉱山地代を労せずして手に入れ、過剰人員を利用して、低賃金労働の中で炭鉱経営されてきているという実態を現在は見ております。万事このような調子で、石炭資本家生産力を引き上げるための投資には意を用いず、しかも戦後における投資はボルネオまた南米等において、東南アジアにおいて数多くの投資を行ないながらも、石炭産業自体の若返りというか、合理化には多くの力を入れられることなく、鉱区の買収、拡張に暗躍し、財閥系の他の産業にのみ投資をされていることが、石炭危機を作り出している原因ではないだろうか。また鉱区の所有状況等をながめてみましても、三井、三菱、住友、北炭の四社で日本の全鉱区の四九%を独占し、しかも大手十二社で八八%、約九〇%の鉱区を独占しておるが、現在もその状態が続いている。その中において、景気のいいときには石炭が必要だということで、どんどん人を入れて石炭を出し、不景気になると古いわらぞうりを捨てるような感じで炭鉱労働者の首を切られるということは、これは封建的な昔さながらの経営のあり方ではなかろうかと考えるわけであります。昭和二十四、五年、同じく二十八、九年の二回にわたる炭鉱不況の中で二十万人の労働者が首を切られ、六十万人の家族が路頭に迷わされて参りました。これは石炭産業体質改善として今までやられましたけれども、現在四年後の今日においてもそのようなことが再び繰り返されておることは、一時期において不況を脱却する一方法にしかすぎないのではなかろうかと考えるのであります。今回の合理化においても、私たちはさっき申しましたように石炭生産の古い機構を脱却するには、経営者自身、資本家自身が根本的に近代化をもたらすための情熱と、それから国家が積極的な投資を行なうならば可能である、このように考えておるわけであります。われわれは今後いかような状態でありましょうとも、炭鉱労働者並びにその家族にしわ寄せされるところの炭鉱若返り、合理化には断固反対しなければならぬ。その反対はただ単なる反対ではなくして、生活権を守るための反対であるということを考えておるわけであります。またそのような炭鉱経営の中でしわ寄せされているものは、中小炭鉱、粗鉱権炭鉱の問題であります。これは極端なる低賃金の中において、労働者が労働基準法を上回る労働時間の中において働いておる実態等もありますので、皆様方の労働委員会等においては、今後十分長い期間をかけられても、炭鉱労働者の実態等を、将来の炭鉱のあり方に関する参考のためにも、調査をしていただきたい、このように考えるわけであります。  またわれわれが考える中において、石炭産業が重油に押されてきておるという面は考えられないわけではありません。しかしながら、そのような状態がどこからもたらされてきておるかということを考えて参りますと、第二の原因として、われわれは自民党、岸政府の対米従属の政策にあるのではなかろうか、このように考えるわけであります。戦後日本の経済はアメリカに支配されていることはだれでも知っていますが、その中でも経済発展のもとであるエネルギーは、アメリカに対する依存度をますます強めて参りました。国内においては石油の株五一%は米国資本であり、しかもほとんど日本の各地には外国商社のマークをつけたはでなガソリン・タンクが数多く建っておる。これは日本の経済力を示すものではなく、アメリカに対する追従性を現わしているものではなかろうか、このように考えるわけであります。また、私たちは、各国のエネルギーの構造を考えてみますると、このような一つの液体燃料を中心にするアメリカ型、もう一つ石炭の六〇%以上を国内資源の活用という意味において使用しておるところのヨーロッパ型——またわが国におきましては戦前石油資源が少ないという理由に基づいて、また今後国際的な競争の中では、ヨーロッパ型に属した政策をとられてきたことは明らかであるわけであります。ところが戦後二十八年ごろから急速にアメリカヘの従属性が高まって参りますとともに、政策的にも、要するに政府の計画のもとにおいてそれらのことが進められ、昭和五十年度には石油が四〇%、石炭が三四%、水力が二〇%という全エネルギーの中で、ほとんど外国に依存する率が高まって参りまして、四八%も占めておるというのがその実態であります。  われわれはまた、石炭産業が資本主義の国で危機にあるということは事実認めておるわけでありますが、西欧各国のエネルギーに関するやり方と申しますのは、さっき申しましたヨーロッパ型を現わす一つの現われとして、昨年の五月には英国の議会下院において、モードリング国務相は、英国におけるエネルギーとしての石炭の地位は、他のいかなるものともかえることはできない、英国政府はあらゆる方策、方途を講じても、現在の石炭産業を永久に維持し、また発展させなければならないということを言っておるわけであります。また西ドイツにおきましても、アメリカの重油攻勢に対応して、要するに三十マルク、二千五百七十一円に当たる関税をかけて国内産業の育成強化に努めておるというのがその実態であります。しかしながら日本の国のみが、皆さん方が民族意識または日本の将来を考えてやられておるとするならば、現在行なっておられるところの政策の誤り等を十分考えていただいて、ヨーロッパ型において日本石炭産業に積極的な投資と積極的な若返りを講じていただくことが最も必要なことではなかろうか、このように考えるわけであります。それは石炭の縮小生産にとどまるのではなく、あくまでも石炭が重油に対抗し、しかも重油を上回る資源として活用することに重点を置いた政策でなければならぬ、このように考えるわけであります。今後われわれは、資本主義のもとにおいては政治経済そのものが危機を作り出す母体であるということは十分わかっておりますが、資本主義政治経済の機構の中においても、さっき申しましたように、まだまだやるべきものが数多くあるということを、特に強調しておきたいわけであります。このことを忘れて、ただ単に離職者法案のみをいろいろ論議することは、今後何年か後に再びこのような論議を繰り返さなければならぬ、またこういう悲惨な状態に逢着しなければならぬということを考えるわけであります。どうかそういうことでなく、石炭産業の置かれておる立場を賢明なる議員の皆さん方に十分理解していただいて、今後の処置等をやっていただきたい、こういうわけであります。しかも三十八年までの十万人の首切り等につきましては、皆さん方自身が十分、選挙スローガンにありましたように、日本国民経済安定ということを十分考えられまして、しかも生活向上ということを考えられまして、やられてきた公約等を十分守っていく政治をやっていただかなければならぬ、このように考えるわけであります。またわれわれが離職者法案のみをいろいろ考えて参りましても、今年度の予算は十三億の予算で組まれておるわけであります。しかもその十三億は、せんだって論議がありましたロッキード三台分にも満たない金額であるわけであります。しかもこの十三億の金額において、今後十万人に及ぶところの労働者並びに家族の生活を安定させるということが十分考えられるかどうかは、賢明なる皆さん方の想像におまかせするわけであります。今後われわれがその予算を検討して参りましても、職安の就職あっせん協力費、それから職業訓練のための材料購入費、海外移民促進援護、遠隔地就職者のための短期宿泊所建設費、雇用主が住宅を建設する場合の補助費、遠賀川汚水処理費、鉱害復旧費、失業対策費、こういうものが多く出ておりますけれども、ほとんどそれは労働者に返ってくるものではなく、雇用主に返っていくものが多くを占めておるということをわれわれが知るときに、真にこの法案は、われわれがさっき申しましたように、現在行なわれておるところの大手炭鉱の首切り、中小炭鉱の首切りに援護射撃の意味を持つものであって、あくまでもその経済の安定の意味を持つものではないのではなかろうか、このように指摘をせざるを得ないのであります。今後われわれが十年間、このような首切りに遭遇いたしましても、われわれはいかなる事情であっても炭鉱労働者の立場が、さっき申しましたように、ただ単なる自分の立場でなく、家族を含めたものの立場として反対していかざるを得ないということを考えると、政府は現在の政策等において——せんだって通産大臣が発表いたしましたように、一千万トンの石炭には七十五万人の雇用者があるといわれております。また炭鉱労働者は六万人——その一千万トンの石炭労働者として働いておる一人の労働者が首を切られるということは十人の労働者の雇用に影響することである。これら関連産業労働者のことも考えて、ただ単なる石炭産業に働く労働者だけのことを考えないで、その全体的な炭鉱地帯に占めるところの住民の生活権と結びつけて施策を講じていただきたい、このように考えるわけであります。また西ドイツにおけるところの重油関税につきましては三億マルク、二百五十七億円の大部分の金額を炭鉱離職予定者五万人に対しての手当、転業資金、転職先の賃金、その格差の補償などに向けられ、そうして生活の安定に資するようにやられておる。日本の国と勢力や国情の違いはいろいろありましても、資本主義の国の中において、これほど人権の尊重に対する政策の違いが歴然と現われておることをわれわれが考えてみます場合に、あぜんとせざるを得ないというのがわれわれの心からなる考え方であります。また失業者に対して今後どのように行なっていかれるかということについては、まず自民党はこの法案に対し根本的に検討し直していただきたい。また根本的に長期石炭政策の樹立の中で皆さん方が言われた公約の一部を果されるものとして、誠心誠意、今後予算の大幅変更を行なってでもこの措置を講じていただきたい、このように考えるわけであります。以上の観点にわれわれが立ちますときに、現在失業中の十万人の労働者政府の責任において就労せしめることと、今後起きてきょうとするところの問題に関しましては、次の要求を、また次の考え方を、ぜひ法案の中に盛り込んでいただきたいと考えるわけであります。  一番初めに、閉山問題が起きた場合は、民主的方法によって選出された委員会を構成し、国家資源の利用と地方経済、労働者並びに家族の将来の生活保障について十分検討していただくように講じていただきたい。また離職する労働者に対しては、これにかわる炭鉱、また永久性のある今までと同じ収入を保障するような他の雇用を与えられるところの保障が十分なされたときだけ閉山を行なっていただきたい、このように考えるわけであります。  このようなことを申しましても、われわれがこの雇用計画を閉山された炭鉱と結びつけて考えていく場合において、遠きところに失業救済、離職者を救済する工場建設を考えてみることなく、最も近距離地に民間の工場設置並びに国家の融資におけるところの積極的なる工場設置等を十分考えられまして、中央におけるところの京阪神または大阪周辺におけるところの工業地帯だけの発展でなく、国家資源の十分あるような地域においてでも新しい工業を興して、日本全土におけるところの工業生産の実を上げていただくように特に御配慮を願いたい。  また将来において無制限無原則の失業手当の獲得を目ざして、当面、現在の失業保険の給付額を八〇%に引き上げていただく。われわれが炭鉱に参りまして炭鉱をやめた方といろいろ話し合いをいたしましても、六〇%の給付では現在のニコヨンの生活とほとんど変わりないというような実態を考えてみまして、八〇%の生活の中から十分将来の各個人の生活安定の方途を組み入れるだけの、生活に追われないで済むだけの余裕を作り出していただきたい。私たちも八〇%では満足でないと思いますけれども、現状置かれておる実態の中では、どうしてもその限度までは国家の力において上げられることが可能ではないか、このようにも考えるわけであります。また現在の支給期間を二年間に延長をしていただきたい、このようにも考えるわけであります。  それから、その次には、どうしても離職した人が生活ができない場合が多うございますので、生活保護法の適用範囲を拡大し、基準の額を倍額にして、そして予算のワクを広げて支払いをやっていただきたい、このように処置を講じていただきたいと考えるわけであります。  なお失業者、半失業者に対し、現在一年間の技術教育を行なっていただきたい、このようなことを政府の責任において、また国会議員の任務と義務において当然やっていただくことが、現在の置かれておる石炭産業離職者法案の中における唯一の将来の生活安定の方途ではなかろうかと考えるわけであります。  以上、はなはだ重複する点もございますし、また言っている意味が十分おわかりにならない点もあるかと思いますけれども、私どもが誠心誠意参考人として出てきて述べた意見等をおくみいただいて、いい結論法案の中にぜひ織り込んでいただかんことをお願いいたしまして、参考人として皆さん方に対する意見を終わる次第でございます。
  8. 永山忠則

    永山委員長 次は全国石炭鉱業労働組合書記長、斎藤茂雄君。
  9. 斎藤茂雄

    ○斎藤参考人 私は全国石炭鉱業労働組合の斎藤でございます。  私たちは今日の石炭産業がここまでこない前に、経営者側に常々要請をしておったわけでございます。と申し上げますのは、現在の石炭産業は、単なる経済の好不況によって受けた不況でないわけでありますから、従ってこの状態を脱却するためには、いかにしても労使がみずから石炭産業というものを改善しなければならない、こういう点を主張いたしまして、従来やって参ったわけでありますけれども、昨年の末にそれがやっと理解をされまして、労使協議会が設置されまして、今日まで話し合いを持って参りました。先月の二十一日現在まで、約十カ月余にわたる間いろいろ論争して参りました結果、今政府が言っております昭和三十八年度までに石炭産業がほんとうに重油、外炭と対抗でき得る改善をする、あるいは経営者自身もそういう一つの計画をしております。これについてはいろいろ異論もあるところでありますけれども、やはりわれわれ炭鉱に従事する労使を問わず、みずからの手によって石炭産業というものを建て直していくというその気概と気魂を持たなければならぬと思います。今日いろいろ提出をされております離職者法案あるいはその他炭鉱に関しますいろいろな法案国会に上程をされようといたしております。もちろんそれらの問題についても、大いに積極的な石炭産業に対します施策をやっていただかなければならぬと思いますけれども、当面石炭産業に従事いたします者の立場から、この問題を根本的に掘り下げて検討しなければならぬ状態にきておると思います。     〔委員長退席、大坪委員長代理着席〕 従って、これは理屈で反対をするとかしないとかを問わず、結果的にこの問題については労使が話し合いをしなければ解決のしない問題が数多くございます。そういう建前から、私たちとしては七項目にわたりまして、先月の二十一日に労使協議会の名によって調印をいたしまして、これをそれぞれの地区に持ち帰りまして、現在諮詢の段階に参っております。そういう建前から、私たちは長い間この炭鉱離職者の問題もその一つの項目として今日まで主張して参りました。従いまして、今回出されております法案につきましては、方向としてわれわれ全炭鉱としては賛意を表したいと思います。ただしかしながらこの法案を検討してみた場合に、法案内容に幾多の矛盾あるいは不満足な点が多々あると思います。さらに先ほど経営者代表伊藤さんから言われましたように、今後石炭産業から大手が六万余あるいは中小炭鉱から三万余の失業者を出さなければならないという数字をあげられました。私はこの法案が実施をされるという目的は、今日まで離職しておる者の臨時措置として救済をするというのが目的であろうと思います。従って今後炭鉱からそれらの数多くの離職者が出されるなら、この法案をそういう面で利用いたしまして、離職者を出して、それによって石炭産業体質改善労働者側にしわ寄せをするというものについては、この法案の実施にあたっては、厳にそれらの点については監視をしていただきたいというふうに考えております。そういう建前から、私はこの法案内容について意見を申し上げたいと考えておるわけであります。  法案の第二条でありまするが、この中で炭鉱労働者の定義が書かれてございます。この法案を見ますると、炭鉱労働者というものは「石炭の掘採又はこれに附属する選炭その他の作業に従事する労働者をいう。」こういうふうに規定をされております。これから私が解釈いたしますときに、炭鉱の職員というものは度外視をしておるというのがこの第二条の精神だろうと思います。さらに事務職員、こういうものはこの法案から除外をされておるというふうに解釈をして間違いないと思います。これは非常に大きな問題だと思います。炭鉱の職員にも二通りあるわけであります。実際に労働者から実地を経て職員になる者、あるいは学校を出て職員になる者と、二つのケースがございます。この場合に、実地から上がって職員になった者につきましては、技能、性格、それから実態からいきましても、当然炭鉱労働者とみなしてこの法案の救済を受けることが妥当だというふうに考えております。従ってこの炭鉱労働者という解釈の中には、それらを明確に包含をしていただきたい。さらにホワイト・カラーにつきましては、この法案と別個な立場に立って救済措置を講じていただきたい、こういうふうに第二条については考えておるわけであります。  それから次は第三条でございまするが、この中に炭鉱離職者の緊急就労対策事業ということが載せられております。これは予算内容を見ますると、なるほど非常にこの字句から見ましてけっこうなことではございますけれども、実際問題として、この緊急就労対策事業に従事する者の生活というものは、単にニコヨンを作るという性格のものから出ない状態がくると思います。従ってニコヨンという性格をここで作っていくのだという考え方でなくて、これはあくまでも臨時処置として、将来は安定をした一つの生業につけるというのが目的でなければならぬと思います。従ってこの内容から見ますると、それらの点が非常に不明確であり、またニコヨン的な性格で押しつけようという考え方が出ているように判断をいたしますので、この点につきましては明確に従来のニコヨンの性格ではなく、あくまでも将来はこれらの者については生業を与えていくということを規定をしていただきたいというふうに考えておるわけであります。  次は第五条でありまするけれども、第五条の中に職業訓練のことが言われております。この職業訓練というものについては、非常にわれわれも賛意を表したいというふうに考えております。ただこの中で、労働省が発表しておりまする炭鉱離職者というものを見た場合に、現在すでに失業保険が切れておって再就職を希望する者が全国で二万一千七百人と言われております。これを対象にして先ほど申し上げました緊急就労の事業をやっていく、こういうことを言われております。この予算が約四億ということで計上をされておるわけであります。ただ、今二万一千七百人の失業者がおりまするけれども、この予算上からいきまして、就労いたしまする人間は一日当たり五千五百人と言われております。これは数の点で、一方は離職者が二万一千おる、しかしこの緊急就労事業に吸収するのは一日五千五百人であります。従ってそこに大きな開きがあるわけであります。さらに現在失業保険を受給中の者が失業保険の受給が切れる、あるいは今後離職者が出る、こういうことを考えますならば、この数は相当膨大な数になってくるというふうに私は判断をいたして間違いないと思います。さらに二万一千七百人の算出根拠でありますけれども、これはあくまでも筑豊炭田を実態調査してこれを全国的に当てはめて数字を出したにすぎないわけであります。さらにまたこの二万一千七百人という、一応労働省で出しました数字を、さらに今度は再就職を希望する者を三二%という低率で押えております。この低率で、三二%で押えた中で予算措置が組まれておる。私はやはり現実的に炭鉱失業者をほんとうに救済するとするならば、この数に見合って、それに予算というものがつかなければならぬと思います。しかしながら予算の方はそういうことで削減をされておる。現実的にはやはり炭鉱の労務者というものは、労働省の発表そのものを申し上げても二万一千七百人おる、あるいは実際には五万五千の失業者がおるわけであります。従って労働省で発表しておりまする炭鉱離職者というものの二万一千という数字は、五万五千から見ると約半分、さらにまたその二万一千の中から再就職をさせようとするのはその三二%だというふうに言われております。さらにまた職業訓練を受ける対象人員予算上千百六十人というふうに組んであります。それから講習会を受ける者の数を三百三十人に限定をいたしております。さらにまた就職をあっせんされて移動する場合の移動資金の交付人員は四千人というふうに規定をいたしております。そういたしますと、どこからこの数字を見ましても、労働省で発表しておりまする二万一千という労働者がほんとうに救済される処置ではないと思います。この数字の矛盾というものは非常に大きいのではないか。従ってこれは単に、現実にそういうものを考えないで予算をきめて、予算に当てはめていった数字がこういう状態だというふうに考えますので、この第五条の問題は職業訓練という問題にからみ合わせまして、予算上の問題と現実的な炭鉱離職者の数、それから救済されるべき人員というものに非常に大きな誤差があるということを私は指摘いたしたいと思います。この点はやはり明確に御修正を願わなければならないというふうに考えております。  次は第六条の問題でありまするが、この第六条では炭鉱離職者の優先採用についてうたっております。この中で、炭鉱事業主は炭鉱労働者の雇い入れについては、炭鉱離職者を雇い入れるようにしなければならないというふうに法案はうたってあります。これは単なる訓示規定だと私は思います。こういうような条文では、現実に炭鉱離職者炭鉱事業主が優先的に採用するということにはならないと思います。これはその場合に、あくまでもわれわれを信頼せぬかということが経営者の方から言われると思いますけれども法案としてこういうことが一応うたわれるとするならば、訓示規定でなくて、やはりあくまでも炭鉱離職者を優先的に採用する保障というものをこの法案の中にうたってしかるべきではないか。従って、これについては強力な規制を法案の中にうたう必要があるというふうに私は考えますので、この点はぜひそういうふうにしていただきたいというふうに考えております。  次は第二十二条であります。援護会の業務の範囲についてであります。この条項の中で、まず最初に第二項に「職業訓練を受ける炭鉱離職者に対して手当を支給すること」こういうふうにうたってございます。これは先ほど若干触れましたけれども、この職業訓練を受ける者の手当というものは二百三十円というふうに私たち予算上から伺っております。そういたしますと、これは現在のニコヨンよりさらに低い手当の支給ということになって参ります。現在のニコヨンの諸君でさえも、現在の経済情勢からいって生活ができないということで、国会に陳情をし、あるいはそれぞれ地方自治体と交渉して、その給与を引き上げることにいろいろ苦心をしておるようであります。その人たちよりもさらに低い手当によって半年なり一年なりの職業訓練を受けろといってみても、その受ける側から言えば、当然これは生活が維持されないということになれば、正常な職業訓練を受けて、そうして近代産業に再就職をするということがなかなか困難になってくると思います。従って私は、あくまでも炭鉱離職者というものをほんとうに近代産業に振り向けるための職業訓練を施していくのだということであれば、この手当の問題については、もっと考慮する必要があるのではないか、この点が非常に私たちとしては不満な点でございます。  それから次は、その第四項でございます。この第四項には労働者用の宿舎の貸与ということがうたわれてあります。これは私は非常にけっこうだと思います。ただしかし、もう少し突っ込んでこの点について意見を申し上げますならば、事業整備団等で買い上げて現在持っておりまする住宅というものが相当ございます。それらを優先的に炭鉱労働者に貸与するというようなことも、単にこれは事業主だけにするということでなくて、事業団が持っておる、買い上げた住宅の貸与ということも、この中で当然考えてしかるべきではないか。さらにまた、個人が実際に自分で家を見つける、あるいは作る、こういう問題を指導することが望ましいのではないか。その場合に重点的に力を入れるべきことは、個人が住宅を自分で見つける、作るということに重点を置いて、その場合の資金というものは当然この法案に盛られてあるように支給をされてしかるべきではないか。特に炭鉱労働者というのは、従来からそうでありますけれども、やはり住宅に不自由しておるということであります。従って、現在全国的に住宅難でありますから、どうしてもこの住宅の問題が一番魅力的になって参りますので、住宅のないところに移転ということはなかなか不可能であります。そういう形の中で、炭鉱労働者というものは一つの場所に定着をするという今までの実績がございます。特にこの場合には、先ほど申し上げました個人住宅を作る、見つけるという場合には、資金援助の強力な処置をとっていただきたいということを申し上げたいと思います。  その次は第七項であります。これは「生業資金の借入」の問題でありまするが、この法案を見ますると、あくまでも「生業資金の借入のあっせんを行うこと」ということになっております。これは今日の経済状態からいきまして、単に金融機関にあっせんをする、こういうことで簡単に金の借り入れということができる状態ではないというふうに判断をいたしております。あくまでも金融機関は従来のコマーシャル・べースによって行なう以外には方法がないというのが今日の実情ではないかと思います。従って、ほんとうに生業につこうとする者については、やはり資金というものが一番大きな問題になって参ります。従って、ここで単なる「資金の借入のあっせん」でなくて、もっと資金の貸し出し、あるいは資金の融通ということで、生業につこうとする者が資金で困って生業につけないというような状態のないように、もっとこの点は配慮すべきではないかというふうに考えております。  それから次は第八項であります。第八項は生活の指導のことをうたってあります。これは単にここで「生活の指導を行うこと」というふうになっております。私はやはり生活の指導というものは強力に指導をしていただかなければならぬと思います。炭鉱離職者が非常に生活に困窮をしておる、こういう場合には、内職とかあるいは授産場、一つの例をあげれば、そういうこともあり得るわけであります。そういう形の中で強力な生活の指導ということが当然必要になってくる。従って、この点ではどの程度まで行なうのか私理解できませんけれども、単にここで「生活の指導を行うこと」という形でなくて、もっと突っ込んだ生活の指導体制というものをこの中では確立をしていただきたいというように考えておるわけであります。  その次は、この法案の適用を受けて救済を受ける者の資格の問題がうたってございます。まず一番先に「当該離職がその者の責に帰すべき重大な事由又はその者の都合によるものでないこと。」というふうにうたわれております。ここで問題になりますることは、「その者の都合によるものでないこと」というふうにうたわれております。「その者の都合による」というものを考えた場合に、この中に正当な理由によって個人の都合でやめなければならぬ者があります。たとえばからだが弱い、あるいは家庭の事情でどうしてもやめなければならない、あるいはもう一つの例をあげて申し上げますならば、福島県の平に山崎炭鉱というのがあります。ここでは従来まで十何年間炭鉱に就職しておって、結局退職手当というものがございます。この退職手当を全部御破算にしよう、それで賃金を現在の賃金から三割ダウンしよう、それで炭鉱経営していくというのが経営者側から提案をされました。その場合に、そこにおりました全従業員が、これはえらいことだ、退職手当を一銭ももらえないとかいうのでは非常に困るということで、全員離職をいたしました。これは一つの例であります。そうすると、これから申し上げますと、あくまでもそれは本人の都合による退職でありますから、この法案の適用は受けないことになるわけであります。私は、そういうものでなくて、正当な理由によって、個人の都合によって離職した者はやはりこの法案の適用を受けさせるのが当然ではないか、かように考えておるわけであります。従って、この条項の解釈を明確にしていただきたい。さらにまた「その者の都合による」という字句が二通りあるということを理解していただきたいというふうに考えておるわけであります。  次は第三でありますが、「昭和二十九年九月一日以降において一年以上引き続き炭鉱労働者として雇用された経歴を有すること。」こういうふうに規定をされております。ここで問題になりますることは、大手炭鉱の場合には、これは別でありますけれども中小炭鉱の場合に、一つ炭鉱に一年以上就職をしておるということがなかなか困難な事情にあることを御理解願いたいと思います。従って、一つ炭鉱に一年以上いなければこの法案の救済を受ける資格がないという規定の仕方は、これは中小炭鉱の実情を無視した扱い方であるというように私は考えます。従って、これは「一年以上引き続き」の「引き続き」という字句を修正願いたい。一年以上炭鉱に云々というなら、これは理解できます。しかし、この「引き続き」という字句が問題になりますので、この点は十分法案の審議の中で、一つ意見を取り上げていただきたいというふうに考えております。それからもう一つ関連をして出て参りますことは、「一年以上引き続き」ということにこの場合なっておりますが、現在の失業保険は、どんな作業場でも半年以上一つ事業場に就職をし、あるいは炭鉱に半年以上継続して就職しておれば受給資格があるのでありまして、この点、失業保険の受給資格であるこの半年というものに私はこの法案内容を修正をすべきではないかというように考えております。  次は、この法案内容から見まして、将来この法案運用する場合に、協力団体が数多くなければこの法案の完全な運営はできないと思います。従って、これは中央もそうでありますけれども、特に私は地方の協力団体がこの援護会に参加できるような処置をとるべきではないか。そして数多くの協力団体を網羅をして、この援護会の運営そのものが誤まりのないように、またそれがスムーズに運営されるようにすべきではないかというふうに考えておるわけであります。この点は特に地方の協力団体についての処置をお考え願いたいと思います。  それから従来もそうでありますけれども法案がきまってからそれを実施に移しますのに、半年ないし一年近くもかかっている例が数多くあります。この種の問題は非常に緊急を要する問題でありますので、法案通過と同時に事業の開始というものの時期を極力早めていただかなければ、この法案の趣旨というものが半減をするきらいがありますので、どうぞ業務開始の時期等については、法案通過をすると同時にすみやかに実施をしていただきたいということをお願い申し上げます。  時間の関係上非常に省略をして申し上げましたけれども、以上申し上げたことをこの法案の中へ十分盛られるならば、われわれといたしましてはこの法案に賛成すると同時に協力をすることを申し上げて、私の意見を終わります。
  10. 大坪保雄

    ○大坪委員長代理 次に稲葉参考人にお願いいたします。
  11. 稲葉秀三

    ○稲葉参考人 私稲葉でございます。すでにお話がございましたし、これからもいろいろ法案に対する全般的な考え方、また個々の点についてお話があると思いますので、私は日ごろ自分が専門としております二、三の点に限りまして、この法案に対する意見を申し上げます。  その一つは、時限立法でございますけれども、ここに炭鉱離職者臨時措置法案が提出をされるということになったについては二つの大きな問題があると思います。その一つは、御存じのようにわが日本では、十分ではございませんけれども、失業対策に対する政府の処置も行なわれている、失業保険制度も行なわれている、さらにそれで救済できない方に対しましては、生活保護その他の処置もとられているわけであります。けれども、そういう法案と相並んで、時限立法であるけれども、ここに炭鉱離職者に対しまする特別措置をしなければならないということにつきましては、一つの面から申しますと、日本の失業対策や社会保障が全体としてまだ非常に不十分であるか、それともいわゆる石炭産業を中心に特別の事態が起こっておる、こういったようなことによるものだと思います。私はどちらかと申しますると、後者の原因の方が非常に強い、そうして強ければこそ皆様方がここでこの法案を審議なされ、またいろいろ御検討願って可決をされるのではないかということを期待するのであります。そこで私の申し上げたい点は、やはりそのもとを直さなければこういう法律は意味がないのではないかということであります。やはり石炭鉱業をしてある一定の時期において自立せしめる、ちゃんとする、こういったことが他方においてとられるということを前提として初めてこの法案意味があると思います。と申しまするのは、確かにわが国民経済の中におきまして石炭鉱業の占める地位は非常に大きいと思います。ですけれども石炭鉱業の地位が大きいということであれば、永久的に石炭鉱業者を何とかしなければならないということは成り立たない。むしろ永久的にやるとするなれば一般の社会保障措置ですべきだし、また技術革新とかエネルギー革命とか、そういった情勢によりまして、ほかの産業にもこれと同じ、もしくは場合によっては——局部的でありますけれども、これよりもっと大きなものが起こってこないとは限りません。そういうことを考えますと、この法案に対する措置としては、でき得る限り手厚い離職者援護をすると同時に、三年、四年の期間を置いて炭鉱企業がりっぱに成り立つということが他方において行なわれなければ意味がないのではないか、また不公平ではないかということを私は強調いたしたいのであります。その意味を特にここで強調しまするゆえんのものは、ちょうど四年前の昭和三十年に石炭鉱業の臨時措置法を皆さん方が御審議をなされ、そして御可決になったのであります。この法律によれば、一方においては石炭企業の合理化をする、それから標準炭価の引き下げをする、そうして今回の措置ほどではございませんけれども、それに引き続きいろいろな合理化資金の導入とか、あるいは非能率炭鉱の買い上げとか、また転業対策ということにつきましては、当時の方々は万全の措置をとるといったようなことを言っておられます。そういったことを前提として皆様方は合理化臨時措置法案をお通しになったのではないか。ところがその現実はどうなっているかと申しますると、炭価は下がらない、失業者方々自分の行くところもないといったようなことになる。さらにエネルギー革命が急激に進展をいたしまして、今日のような炭鉱の非常にむずかしい状態を起こさしめるということになったと私は思うのであります。そのために、これと並行いたしまして——私もその委員を仰せつかっておりますけれども、やはり基本は日本石炭産業をいかに安定せしむるかということにある、そういった具体策をとらねばならないということで、他方においてはいろいろ審議が行なわれております。  私は、この法案は次のように了解をするということを申し上げたいのであります。つまりこの法案は、出発点において、今まで特に十分の措置ができなかったために非常にマイナスの影響を与えている現存の人々をまず救済をする、しかし来年度以降におきましては、今後の石炭鉱業のあり方その他を考えて、より計画的な措置をとる、しかもその措置の期間はおおむね三年、四年だ、三年、四年たてば一応これをもとに復元をする、こういったことを確認をしてこそ、私は国民の中に一応全体の公平の観点において支持も受け、この法案が了承され、またこの法案が実行される価値があるのではなかろうかということであります。もっとも、以上のように申し上げましても、私は他の失業対策全般、また失業者を救済するための公共事業の計画がどんどん前進をしてくれるということをお願いをしないというわけではございませんので、むしろ四、五年先にはそういったような措置によって救済をされるんだ。しかしやはり臨時にこういったような産業構造の変化ということによってきたものについては、ここで特別の措置をとらねばならぬものだ、こういうふうなつもりでいっていただきたいし、またこの法案をお通しになったからには、通り一ぺんではなくて、それに必要な関係官庁も、産業団体も十分その趣旨を了して、今までのようにいわゆるマイナスの面が起こらないということを、私は十分国会その他におきましても御監視願いたいということを切望いたしたいのでございます。  第二点として申し上げたい点は、今までと違いまして、ここにりっぱに時限立法だけれども、法律ができる。またそれに必要な予算は、不十分だけれども、つく。またそれに必要な援護会ができたり、また先ほどおっしゃいました外郭団体、協力団体ができるということは、私はこの部面におきまする一大進展だと申し上げたいのであります。ですけれども、ずっと今までの過程をフォローして参りますると、初めは万全の策をとったというものの、だんだん事態が深刻になってきた、何とかしなくちゃならぬという形で、こういったような組織が上からのプランとして作り上げられたという形跡がある。しかしほんとうに失業対策とか、転業対策というものをするには、それぞれの地域の特殊性、また受けられる人々のお気持とか、それぞれの地域におけるいろいろな特殊的なあり方というものを十分誠意をもってやっていかねばならないといたしますると、私はこの組織そのものには反対ではございませんけれども、どうか今度は、関係各省や協力方々がおやりになって、やはり一年、二年、三年を通ずるほんとうの具体的な実行計画というものを作ってほしい。またそれなしに、ただこういう形で上の方の団体とか、予算をお作りになりましても、今までよりは前進をいたすと私は思いますけれども、場合によっては二年先、三年先にまた黒い羽根運動をしなくちゃならぬという事態になる。今度はそうならないという十分の保障をもって皆さん方も御審議なさり、そして同時にあとに対する御監視を切望いたしたいと思うのであります。  私の申し上げ方はほかの方々と違いまして、国民経済的なバランスというものを考えまして、ややシビアーだというふうにお考えになるかもしれませんけれども、やはり全体の国民生活保障とか、あるいは転業対策という中において、特別にこういったような臨時措置法案をお出しになって、そうして国民の税金を特別に使っておやりになるということについては、これが済む暁においては、石炭企業も一応普通の産業として安定をする、それからほかの人々にも、著しくおれの方が不公平ではないんだということを十分納得せしめるだけのことをやっていただきたい。いろいろなことが行なわれるたびに一つ一つ、やれ金が要る、何が要るというようなことで使いますと、結局国家財政が紊乱をしてしまうと思いまするので、特に私はこの法律措置と並行して、産業政策とか、そのほかの協力措置ということについて十分生きた魂のあるやり方をとっていただくことを前提といたしまして、この法律案に対しまして全的に賛成いたします。
  12. 大坪保雄

    ○大坪委員長代理 委員各位に申し上げます。稲葉参考人は質疑を受ける時間の余裕がないそうでございますから御了承を願います。  次に、江幡参考人
  13. 江幡清

    ○江幡参考人 結論から申し上げますと、この法律が今度国会に出されたことにつきまして、私は非常に敬意を表します。  現在の石炭の危機が、単なる景気の変動というだけじゃなくて、いわゆるエネルギー革命あるいは産業構造の変動に伴う非常に大きなものであることは申し上げるまでもございません。そして、そういう場合にそこから生まれるところのいろいろな労働者あるいは雇用関係の変動、こういうものにつきまして、国が相当大きな責任を持ってこれに当たらねばならないということは、申し上げるまでもないと思います。一般の景気変動でありますならば、従来の失業対策あるいは公益事業、そういうもので吸収していくことも可能でございましょう。またそれでいいと思います。しかしながら、今度の石炭あるいは燃料のような大きな産業構造の変動に対します場合は、やはりそこに雇われておる従業員をどうするか、これを計画的にどこに配置転換するか、そういうような雇用政策というものが片方に伴わないと、これからのいろいろな産業政策あるいは雇用問題は解決しないと思う。従来の政策でありますと、要するに景気の変動に伴って産業がこういう危機に直面した、そこでいろいろと人員整理が行なわれる。その整理された人員は、失業保険なり対策なり、あるいは生活保護の対象になる、それからさらに景気が上昇いたしまして、そこに再び吸収されるということでありますが、今度の場合は、一たん石炭から離職した労働者は、おそらく再び石炭産業で再雇用されることはまずあり得ないと見るのが常識であります。といたしますならば、これを再び新しい職業につけるための職業訓練あるいは再訓練をいたしまして、同時にまたこの再訓練された労働者を受け入れるための新しい産業を作っていく、そういうふうに転換が計画的に行なわれることが必要だろうと思うのであります。そういう意味におきまして、私はこの法案が出されたことに対しまして、非常に賛成をいたします。  同時に、先ほど稲葉参考人も申されたことでありますが、この法案は申すまでもなく時限立法であります。そして一般の労働者あるいは国民に対しますより以上の手厚い保護をやっておるわけであります。これは今申し上げたような意味において当然でありますが、しかし、やはり特別の税金なり国民の負担を必要とする以上は、今日の石炭産業におきましても、これは産業構造の変動に伴うやむを得ない事態であるとは申しましても、今危機に面しておる石炭鉱業というものを、労使がこの時限立法の行なわれておる期間に建て直す、そういう労使双方の努力あるいは国の政策、そういうものが片方にないと、これは不公平の印象を与えることを免れません。そういう意味で、この法案が雇用促進あるいは雇用転換というような法案として出されておると同時に、当の石炭産業におきましても、この法案を機会といたされまして、新しい石炭産業の再建方策を立てられまして、そうしてその基礎を打ち建てる、そういうことを希望するわけであります。  それからこの法案の個々の条項は、私おくれて参ったのでありますが、先ほど全炭鉱の斎藤書記長が非常に詳しく申されました。あれを私一つ一つ聞いておりまして、賛成でございます。できますならば、ああいうふうな御意見がこの法案の中で実現されることを希望しておきます。  それといま一つ、ついでにこの法案を離れて申し上げたいのでございますが、石炭離職者対策といいますものはこの臨時法案だけではなくて、同時にそれ以上に大きな根本対策が必要でなかろうか。たとえばこの前、日経連なら日経連が出した対策を見ましても、実はこの石炭離職者法案あるいは現在政府がお考えになっておる対策、それ以上に日経連の対策の方が一歩先に進んでおる、そういう印象も持つわけであります。たとえばこの前日経連の出した対策の中に特別訓練隊という構想がありましたが、そこに離職者を吸収いたしまして、いろいろな国土開発事業をやっていく、あるいはそういうふうな国土開発に必要な能力、職業の再訓練を行なう、そういうような構想があったように思います。これは今後のいろいろな産業構造の変動なり、あるいは国土の開発なり、あるいは経済の発展を考える場合におきまして、非常におもしろい着想である、そういうふうに考えております。でありますから、単にこの離職者法案をもって今度の雇用対策が十分だということではなくて、それ以上に根本的な問題、今申し上げましたような特別訓練隊の問題なども考えてみる必要があるのではなかろうかということであります。  それからいま一つ、やはりこの国土開発に関係することであろうと思いますが、おそらく今の北九州におきましても、石炭離職者の対策の困難ということは、離職した炭鉱労働者がすぐに転換できる産業なり工業なりというものがその近くにないということです。たとえば北九州に参りますと、あの筑豊の地区におきましては、これは立地条件が悪いのかと思いますけれども石炭のほかにはほとんど産業がない。従ってあそこで離職いたしますと、どこにも職がない。そういう点から、今度の炭鉱援護会におきましても移住手当を出すのかと思いますけれども、しかしその辺のところをもう少しいろいろ考えまして、何か新しい工業というものをその辺に興す可能性はないだろうか。もっともあの辺は、たとえば水が非常に悪いということで、新しい産業が興りにくいところだそうでありますけれども、やはりそういうところを、いろいろな産業の立地計画、あるいは産業の配置計画というものをもう少し計画的に考えて参る。そういうふうなこともこの際考えてみたらいかがだろうかということを考えます。  同時にいま一つ、これもこの法案から離れますが、やはり石炭の最低賃金協定を法制化したらどうかということを考えます。法制化というと語弊がありますが、現在組合と申しますと、大体賃金協定ができておる。各企業別、あるいは各産業別にできておりますが、別にあれは法律に基く最低賃金じゃないわけです。要するに労使双方の最低賃金協定だ、これは非常にけっこうなのでありますか。ただこれが法律に基づく最低賃金協定として法制化されますと、その後のいろいろな措置についてかなり有利な面が出てくるのではなかろうかと思います。たとえば炭鉱で賃金の遅払いがある、あるいは不払いがある。それからその炭鉱がつぶれてしまった場合に、実は離職した労務者は不払い賃金というものをもらえない、そういったケースが非常に多いわけであります。しかしかりにその場合、最低賃金協定なり、最低賃金というものが炭鉱の労使関係について法制化されておりますと、あるいはそういうふうな不払い賃金というものも優先的に債権の中から確保する可能性が生まれるのではないだろうか、そういうふうに理解いたします。これは私専門家でないから何とも申し上げられませんが、そうではなかろうかと思います。  大体そういうことを考えるのでありますが、要するに、以上申し上げましたように、石炭というものが今後の産業構造の非常に大きな変動期にある。その中における雇用者の問題というものは、これは従来にも増して特別の対策をとる必要があるのだ、そういう意味におきまして、この法案に若干の希望あるいは修正がつけ加えられる——修正と申しますのは、この法案はもう少し充実したものにするという修正が行なわれることを希望しながら、賛成いたします。
  14. 大坪保雄

    ○大坪委員長代理 江幡参考人も質問を受ける時間の余裕がないそうでございますから、これまた御了承を願います。次に鵜崎参考人
  15. 鵜崎多一

    鵜崎参考人 福岡県知事鵜崎でございます。また全国石炭関係道県知事協議会の代表、世話人をいたしております。そういう立場から意見を申し上げたいと思います。  石炭鉱業不況、及び合理化に基づきまして、昭和三十一年以降政府の一連の合理化計画の推進と相待ちまして、石炭鉱業が所在する道県は全国的に非常に多くの石炭関係離職者が発生しておるのでありまして、その大半が当該地域に滞留し、他に職もなく、その生活は日一日ときわめて悲惨な様相を見せるに至りまして、この点につきましては従来しばしば陳情申し上げまして、重大な社会問題化になっておると考えておるのであります。全国で十一万人、福岡県におきましては五万五、六千に上り、対策をしなければならぬ者だけにつきましても、福岡県だけでも一万数千人に上がっておる状況でございます。これに対しまして、今まで政府並びに国会におかれましても、今年の四月、公共事業の拡大実施等の措置を講じられまして、また最近九月には、緊急措置として鉱害復旧事業の追加実施・広域職業紹介の推進及び特別職業訓練の実施措置等、石炭鉱業離職者対策につきましても絶えず御配慮を願っておるのでありまして、この点、関係道県を代表いたしましてこの機会にお礼を申し上げる次第であります。  しかし石炭離職者の発生、滞留の状況は、申し上げました通り膨大な数に上がるのでありまして、今日地元道県及び市町村におきましては、一県民としてあるいは一市町村民として、離職者の対策に鋭意腐心いたしておりまして、一般失業対策事業及び生活保護等の措置を十分講じておるのでありますが、しかし今日の離職者状況におきましては、地方公共団体の力をもってしてはもういかんともしがたいという状況になったのでございます。本県につきましても、一般の失対事業、これは全国でも非常に多い県ではありまするが、登録しております失対労務者が二万五千人、しかも一般的なあぶれと申しますか、これがなお数千おる現況の上への石炭離職者の問題でございます。その事業費といたしましても、県の予算においても二十数億円失対事業にやっておるのであります。また生活保護費の適用をやっておりますのは、福岡県だけで見ましても十一万人おるのでありまして、これに対する事業費といたしましても十三億投入して、そういう点については十分に努力はいたしておりますが、これをもってしては何ともしがたい状況でございます。また鉱害復旧事業、これは県内において十億円の事業をただいまやっておるのでありますが、これに対しましても純県費一億五千万円を投じましてこの事業をやっておる現況であるわけでございます。また一面、一般の失対登録者というものは日雇い制度で、一日々々のその日が食えないという制度になっておるのでありますけれども、御承知のようにその実態は、五年から十年滞留しておるのが実態でございまして、そういう観点から、また問題の対処に従来非常に苦心をいたしておったのでございます。  それから全般的に、石炭鉱業とその関連産業が極度に不振いたしておりますので、県としても町村としても、収入の減少によりまして、収支両面から非常に財政的な苦境に当面いたしておる現状でございます。各県の財政規模につきまして、よく県民一人おおよそ一万円、百万人の県民がおりますと財政規模は大体百億前後といわておりますが、福岡県は四百万の県民がおりますけれども、財政規模は三百三十億程度でございます。県民は非常に多いのでございますけれども、財政的の問題は、通常においても非常に苦しい状況にあります。ときどき、福岡県は大事業を持っておりますので富裕県だと一般的にいわれておりますが、現実の財政規模というのはそういうように、一般の県の常識で考えてもおわかりのような状況でございます。従いましてこの石炭の対策につきましては、どうしても特別の対策を国にお願いいたしたいというので、先般来福岡県といたしましても、また全国石炭関係道県知事協議会といたしましても、政府国会に陳情申し上げました。その趣旨を了とされまして、今回臨時国会石炭鉱業離職者特別措置法の審議が行なわれておりますことは、私ども非常に喜びにたえないところでございます。しかしこの問題につきましては、現況といたしますと、今のように県民の問題としても強くいわれておりますし、生活保護を受ける連中の方にも波及いたしまして、生活保護の方々あるいは失業者の連名の形におきまして、また自由労務者の形におきまして、県、市町村に連日これが措置を徹夜で迫られておる現況でございます。これらの就労対策また就職の問題が早く実現するということに、私は最も望みをかけておるのでございます。     〔大坪委員長代理退席、委員長着席〕  石炭産業の置かれておる特殊性にかんがみまして、この石炭産業離職者の問題を特に御考慮いただき、またその対策はなかなか万能薬的なものはないとは思いますけれども一つ一つ実行する離職者対策がそれぞれインテグレートいたしまして解決するものだと、自治体としては考えて——今まで何もしないではないという声が非常に多いのでありまして、離職者の就労事業については、この離職者臨時措置法案に盛られております点の実施を早くお願いいたしたいというのが、私どもの願いでございます。  なお参考までに、今までの、特に福岡県におきます措置の概要を申し上げますと、第一点の広域職業紹介につきましては、今年の三月に伊豆地方の災害復旧事業に三百六十人の労務者を出し、その後奈良県の十津川のダム建設工事に二十七人を送出いたしたのでありますが、その後九月末に、関係都道府県の職業安定関係方々と本県において打ち合わせをいたしまして、十三都府県に今日のところ求職二千人をお願いしまして、ただいま十一月の二十四日までに千三百五十八人の全国からの求職がございます。これに対しまして、ただいま六百三十五人の就職がすでにきまりまして、あとの問題につきましても間もなく就職のあっせんができるものと考えております。でありますから、さらに今後の問題といたしましても、各職場へのごあっせんを全国的にもお願いいたしまして、その措置が進捗いたしますような内容をぜひこの法案に盛っていただきたいと思っておりましたが、この法案に盛っていただきまして、私ども喜びにたえないところであります。  ただ現実から見ますと、今まで不調になった点は四点ありまして、就職期間が非常に短くて、土工の求人で将来非常に不安だというところに行ったのは、なかなか長続きしていない現況であります。また第二は、これが特に重要でございますが、生活保護等によって生活を維持している現況に対しまして、労働条件が二重生活に耐えるほどよくないのでありますから、そういうことで長続きしない。またこれと関連して、需要地におきまして家族を受け入れる態勢が整えられていないので、そういう点につきましても隘路がございます。また生活環境が、今までの石炭から他の産業ということで、非常に変化したというようなこと等もございます。そういう実例から考えますと、労働条件が非常にいいものにつきましては別でありますが、圧延見習いだとか鋳物工だとか、その他一般工員——日雇い的な作業ではなくて、将来性のあるようなところに行っておるのは、ずっと持続いたしておる現況でございます。  また特別職業訓練の実施につきまして御配慮をいただきまして、先般の追加予算で、筑豊地区に五百六十人の特別職業訓練措置をいたすことになったのでありますが、さっそく既存の直方、飯塚の両職業訓練所におきまして、十一月から、直方の地区におきまして九十四人特別訓練を実施し、また飯塚地区におきまして九十人の実施をいたしております。また田川地区においては一月から開所するように、今訓練所の設置をいたしておる現況でございます。  また公共事業、鉱害復旧の就労強化につきましては、県といたしまして、緊急失対法に規定されておる率以上に、公共事業においても離職者の吸収効果を上げるために、知事の通牒を出しまして、失業者の吸収率の引き上げを実施いたしております。また請負契約時におきます所定失業者の吸収を契約条件にするというようなことで、実施いたしておるのでありますが、これではまだ不十分でございます。また鉱害復旧事業につきましても繰り上げ施行をやっておりますが、こういう関係では農地関係が非常に多いために、十二月から本格的に入るというようなこともありまして、少しはおくれておりますが、これらの点も十分その期待の目標を実行いたしますように、県といたしまして努力はいたしておるのでございます。その実績を申し上げますと、本年四月以降九月末の実績で、公共事業等で延べ二十八万五千人、一日平均にいたしますと二千百人でございます。しかし、そのうち石炭離職者は延べ七万四千人、一日平均五百四十人でございます。公共事業の方は一般の失業者を吸収することになっておりまして、石炭の方はやはり非常におくれておるという現況でございます。それでどうしても私どもは県の責任者といたしまして、石炭の問題を、ただ今後離職者が出るにまかせるというのでは、県としては処置ができかねますので、できるだけ、離職者が出るのは、その受け入れの関係で調整する限度、  その方途がなければならぬという点を考えておるのでありまして、できるだけすみやかにこの離職者の問題とともに——先般政府の九州総合開発審議会で私どもお願い申し上げたのでありますが、北九州の総合開発をいたしますにいたしましても、現在の石炭産業をどう持っていくかということ、それと関連産業、これが基盤になりますので、そういう点について御陳情申し上げ、それについては政府としてはっきり、すみやかに石炭の対策を樹立して示すということで、先般九州総合開発審議会の答申がなされたような状況でございます。そういう点におきまして、この離職者の問題にまた引き続きまして石炭の対策についても、私どもは要望いたしておるところであります。しかし当面の問題といたしまして、何よりも石炭離職者の就労の事業、就職あっせん、それに伴います特別訓練等の問題と、それからそれに伴う援護施設の問題、これだけはすみやかに実施していただくように御配慮をお願いいたしたいと願っておるのであります。  それにつきまして私どもの方から、石炭離職者臨時措置法案に対します二、三の点について御要望申し上げたいと思います。  第一は、何と申しましても、実はもうおそきに失しておるのでありまして、私ども県といたしまして、県議会においても一般失対事業でやるということでございますし、先ほどのように五年も十年も滞留する、またその事業というものが、ただ労力費だけの事業で、その事業種別もはなはだ少ないので、どうしても特別の緊急就労事業としてやらなければならぬということでその準備をいたしまして、国会において御措置いただきますならば、もう即日工事着手というところまでいっておるのであります。ただ石炭離職者の緊急就労対策事業につきましては、私どもはこれはやらなければならぬ事業でありますので、赤字施行にならぬようにしていただきたいということを要望申し上げ、全額国庫においてやっていただきたい、こう申し上げて参ったのでありますが、予算措置等においてはすでに五分の四の国庫補助がきまっておるようであります。その点は私どもとしてはさらに県として赤字措置でない実施、——まあ私どもとしては、決して五分の四でけっこうでございますとはいえないので、あくまでも一つ国の負担においてやっていただきたいと願っておりますが、それにつきましては今申し上げましたような事情が各県市町村にございますので、やむを得ない場合は特例債をもってその部分を補てんしていただきたいということが第一点でございます。  それからなお先ほど数字を申し上げましたように、事業量といたしまして、予算の方は五千五百人を目途に計上されておりますが、すでに福岡県だけでも要対策者が一万三千名に上っておりますので、さらに全国ということになりますとまだ相当の数がありまして、この事業についても今後とも拡大の希望を強く持っておる次第であります。また事業費につきまして、先ほど一般の失対事業ではいけないということで緊急就労事業をお願いいたしておりまするので、多少資材費その他の問題が要る事業にならざるを得ないのでありまして、御承知の特別失対事業等は事業費単価が千二百円になっておりますが、予算は、聞くところによりますと八百五十円、そうすると非常に事業的にも限定されますので、現実の問題では、これらをやりますと簡易道路補装程度の事業が限度で、私どもはただいま四、五億で実行着手してできる事業計画を立てておる事業がございますが、それはやはり道路、河川、都市計画事業、あるいは農林関係事業と、相当やはり事業費が多く要る事業でありまして、こういう点も御考慮をお願いいたしたいと考えております。  それからまた二十三条の援護会の業務につきましては、訓練手当、離職者に対する移住資金等を出すことに案がなっておるようでございますが、それらの実施につきましては、この援護会がこの法案に伴って発足すると思いますので、大へんおくれておる実情であります。先ほど申し上げましたように、すでに飯塚、直方等では訓練をやって、これは制度内自体の訓練ということになって、もうすでに発足しておりますので、この援護会の本法律ができましたならば、もうすでに十一月からやっておりますそういう訓練者の問題につきましても措置ができるような御配慮をお願い申し上げたいと考えております。またこれも予算の問題で、すでに予算はもうきまったというようなことになっておりますが、訓練手当が聞くところによりますと昼間が二百三十円、夜間が百三十円となっておりますが、どうしても職業訓練を効果あらしめ、また先ほどの実績から見ますと、そういうような措置をしたのが長続きする実況でございますので、どうしても訓練に専念できる程度の手当が必要で、少なくとも失対とか生活保護程度の昼間三百円、夜間は二百円程度の支給が考慮されなければほんとうの訓練はできないのではないだろうかと考えております。また先ほど申し上げましたように、先般来千三百五十人全国から求職の申し込みがありまして、それに対して六百幾らと申し上げましたが、その内容におきましても、たとえば愛知県三州瓦の協同組合から家族ぐるみ八世帯来てくれ、こういう要望があるのでありますが、その求人申し込みに対しまして、今百世帯の希望が殺到しておる。ですから、家族ぐるみわずか八世帯来てくれというのに対して百世帯の申し込みがあるという実況でございますので、どうしても住宅建設の問題が援護措置といたしましては非常に重要な問題だと私ども実際の問題から考えておるわけであります。ところが今度の予算措置では貸与飯場購入費が計上されておるだけで、家族用の住宅建設という問題が出ておりませんが、私はこれが一番重要な問題だと考えております。今の実際に来ております求人の申し込み、また今の石炭離職者の特異性、これはもう私お願い申し上げませんでも、実はなぜこんなに困窮者が集団的にたまったかというに、やはり石炭離職者の特質でありまして、呼ばれてきたときはやはり炭住に入っていて、今度は石炭の廃山、休山で、経営はなくなりましても炭住は残っておる、そこで生活保護、失対とかいっている間に半年たち、今度はもうじっとしゃがんで無気力な困窮状態になっておるというような姿になっておりまして、就職あっせん等の援護には、ぜひ単身赴任の問題とともに、家族ぐるみ就職ができることが援護の一番重点だと、実際のあっせんの現況から私は考えましてお願いいたす次第でございます。  また先ほど申し上げましたように、法律制定の実施はなるべく早くお願いいたしたい。特にこの年末を控え、石炭離職者の問題、その他自由労務者の問題、生活保護者の問題等、やはり年末の非常に困難な時期に参っておりますので、一日も早く緊急就労事業をやって、石炭関係は登録してなくても就労できる、そうしてそこへ引き出しまして、それから就職あっせんをしてお世話をする、その手を一日も早くやることが重要と思いますので、この法律ができましたならば、事業の実施はもう施行即日からでも——私どもは遡及を実は先般来お願いいたしておったのでありますが、もう施行即日からでも事業を実施するような措置を御考慮願いたいと思っております。その他ございますけれども、私どもは今まで関係知事として、また福岡県知事として政府国会にお願いしております点につきまして、今度の離職者臨時措置法案に盛っていただきまして御審議いただきますことは、非常に感謝にたえないことであります。ただこの問題だけでは石炭の問題は措置できませんので、これは一日も早く、今まで何もしていないという声が私ども実は一番痛い点でございますので、石炭対策の一部として早くこれを実施していただきますようにお願い申し上げまして、意見を述べた次第でございます。
  16. 永山忠則

    永山委員長 次は、全国鉱業市町村連合会会長、鈴木栄一君。
  17. 鈴木栄一

    ○鈴木参考人 私は全国鉱業市町村連合会の副会長をいたしております福島県石城郡好間村長の鈴木栄一でございます。本日は特に社会労働委員会において、炭鉱離職者臨時措置法案について参考人として意見を開陳する機会を与えられましたことに対しまして、厚く御礼を申し上げる次第であります。  御説明するまでもなく、石炭産業エネルギー需要が激増しておるにもかかわらず、重油、輸入炭等の競争エネルギーの進出によりまして、需給面でも、また採算面でも、重大なる危機に直面しておりますが、御参考までに炭鉱所在市町村の実態について御説明を申し上げてみたいと思うのであります。  石炭産業合理化をはかるために、昭和三十年九月、石炭鉱業合理化臨時措置法が施行せられ、炭鉱の買い上げが促進されるに伴い、全国で百数十の炭鉱が買収され、さらに買い上げ申請の受理されたものが百余鉱あると聞いております。さらに企業不振などによる休閉山を加えると三百数十に及ぶ炭鉱が閉山いたしており、離職者の数はすでに三万八千人の多きを数え、今後さらに行なわれるところの炭鉱合理化及び炭界不況に伴う企業整備による離職者の増加を考えまするときに、さらに六万人をこえる離職者を生ずるのであります。この数字はもちろん炭鉱に正式に在籍しておる者の数字でございまして、これに関連する下請業者、その他の関連事業に携わっておる者の数は入っていないわけであります。そうなりますと、私は大へんな数字になるだろうと予想しておるのであります。  離職者の多発地域におきましては、この離職者が膨大な失業群となって、そのまま地元市町村に滞留しており、生活の困窮と環境の悪化によりまして一種の社会不安を醸成しており、その実情は犯罪の件数の増加に見られるがごとくに、治安上の脅威となっておるばかりでなく、まことに憂慮すべきゆゆしき事態となっておるのであります。たとえば私の村におきましては、失業者は千人に対して五十人、生活保護者は千人に対して六四・七人という驚くべき数になっておるのであります。しかるに炭鉱所在市町村の行財政は、税収入の面では鉱産税、固定資産税、市町村民税、電気ガス税などのすべてが大幅な減収となっており、反面これらの離職者の急増によって生活保護費、失業対策事業費その他の民生安定対策に要する諸経費が急速に増高して参っておるのであります。財政は極度に困窮しておる現状でございまして、とうてい貧弱なる市町村の財政力をもってしては、この膨大なる失業者の応急の援護すら処置できない実情でございます。  全国鉱業市町村連合会といたしましては、石炭鉱業合理化臨時措置法が国会に上程された公聴会におきまして、すでに今日あることを予想いたしまして、炭鉱離職者に対する対策処置を講ぜられることを条件とし、要望いたしまして、この法案賛意を表したのであります。しかるに合理化実施後、多数の離職者の発生するにかかわらず、援護については適切なる処置を講ぜられてこなかったために、われわれは自来その不備な点を指摘をいたし、要望を続けて今日に至っておるのであります。  政府におきましては、このような実情のもとに職業紹介、失業対策諸事業の推進にあたりまして、従来から御配慮をいただいて参っておるのでありまするが、現行法では、とうていこの膨大なる失業者の吸収をはかることは困難であろうと思われまするので、われわれ炭鉱所在の市町村は、その対策といたしまして、離職者の緊急就労事業の別ワク実施、公共事業などへの離職者の吸収計画の拡大、国の直轄事業の拡大実施、鉱害復旧事業の繰り上げ実施、離職者の援護機関の設置と援護事業の強化及びその他離職者の住宅問題などの諸対策の実施の特別立法処置を講ぜらるべく、再三にわたって国会並びに政府関係方面に要望し、陳情して参った次第であります。幸いに本国会においてわれわれの念願である炭鉱離職者臨時措置法案が上程されまして、さらに本日委員会において、全国鉱業市町村連合会代表いたしまして、私が本法案に対する参考要望を述べさしていただく機会を得ましたることは、まことに光栄に存ずるところでありまして、厚く御礼を申し述べる次第であります。本法案内容につきましては、全国鉱業市町村連合会代表いたしまして、参考までに、二、三の意見を申し述べさしていただき、本法案賛意を表する次第であります。御趣旨はまことにけっこうでございますが、その内容につきまして、私どもが日ごろ要望いたしておりまするところにいささか欠ける点を遺憾としますので、その点につきまして重ねて要望を申し上げて参考に資したいと存じます。本会といたしましては、離職者の対策につきましては、原則といたしましては、事業はすべて全額国庫の負担において実施していただきたいとともに、国の責任を明らかにする方法を講じていただきたいのであります。また市町村が歳入の面で鉱産税を初め固定資産税、市町村民税及び電気ガス税などが多大の減収を来たしますが、それらの点につきましては、歳入の欠陥を何とかカバーしていただきたい。その他失業対策事業費、生活保護費あるいは職業訓練実施費、その他の民生の安定の諸経費については、国庫の高率の補助をお願いしたいのであります。このような要望は、ただでさえ地方自治体が財政に困窮しており、特に炭鉱所在市町村が市町村税の減収に苦しんでおる現状を御認識いただけるならば、御理解がいただけると思うのであります。  それでは本法案内容につきまして、二、三お願いいたしたい点を要望申し上げます。まず第一点は、第三条の職業紹介についてであります。離職者が現在の居住地域を離れて、再就職のために他の地域に出かけていくという場合には、国は炭鉱離職者が家族とともに移動できるよう、住宅の提供、住宅建設資金の補助及び移動資金の支給などについて必要な措置を講ぜられるように、御配慮をお願いしたいと思うのであります。  第二点は、第四条の緊急就労対策事業費についてでありますが、この費用は労働大臣が大蔵大臣と協議して定める算定基準に従い、その全額を国庫において負担していただきたい。もし関係地方団体の負担を徴するならば、せめて台風第十五号に対して措置せられた十分の九の高率の補助をお願いしたいと思うのであります。しかし十分の  一の地方負担額については、さきにも申し上げました通り炭鉱所在市町村の財政の業態にかんがみて特別の起債  を認め、元利償還の全額については特別の措置を講ずるようにしていただきたいのであります。また国は、事業の実施について炭鉱離職者の吸収を容易ならしめるために、労務者の輸送の施設及び収容施設に要する費用については、その全額または高率の負担をしていただきたいのであります。  次に第三点は、第五条の職業の訓練についてでございますが、国は第一項の措置にかかる公共職業訓練を受けるために職業訓練所に入所中の炭鉱離職者に対しては、訓練期間中必要なる生活資金、交通費、その他訓練に必要なる費用について援助する措置を講じていただきたいのであります。  次に四点は、炭鉱離職者の自立に資するために、その必要とするところの事業資金の融通のあっせんに努め、また必要ある場合には債務の補償を行なうようにしていただきたい。また海外移住を容易にするために、必要な措置を講じていただきたいのであります。  最後に本案に関連いたしまして、本年度の補正予算について次の八点について要望いたしたいと思うのであります。  まず第一点は、緊急就労事業費は五カ月五億円というふうに承っておりますが、五千五百人程度の吸収では、先ほど申し上げましたように離職者の完全な吸収は困難であり、要対策人員は二万一千六百人を予想されておると聞いておりますが、将来発生を予想される離職者数字を勘案いたしまして、補正予算数字を大幅に増額していただきたいと要望するものであります。  次に第二点は、この事業の単価は一人八百五十円を予想されておるようでございますが、特別失対の一人千二百円と比較いたしますときには、相当の差があるのでございます。千二百円以  上に措置されるように、この面からの予算の増額の考慮もしていただきたいと存ずるのであります。  第三点は、事業に伴う用地の買収費などについて計上されていないようでございますので、この点も御考慮を願いたいと存ずるのであります。もしこの点が困難な場合は、市町村に起債がそのために許可されるような措置をお願いしたいと思います。  第四点は、緊急就労事業の国庫負担金についてでございます。事業の特殊性にかんがみて、国庫負担金の早期交付方について御配慮いただきたいと思います。  第五点は、市町村の財政実情から資金繰りに困難がありますので、その間政府資金による短期融資について、御配慮をいただきたいと存ずるのであります。  第六点は、緊急就労事業に対する起債につきましては、起債の充当率を百パーセントに高めていただくとともに、起債の限度額を撤廃していただきたいと存ずるのでございます。地方債には少額制限がございまして、一件当たりの金額につきまして、たとえば百万円以上でなければ認められないという制限がございますので、これに対する制限額の撤廃をお願いしようという意味でございます。あわせて将来この元利償還に当たっては、交付税において全額措置されるように御配慮をいただきたいと思うのであります。  第七点は、生活保護費の勤労控除についてでございますが、七百五十円を二千円以上に引き上げていただきたいと思うのでございます。  第八点は、この緊急就労事業昭和三十五年以降継続的に遂行できるように、御配慮をお願いしたいのであります。  あわせまして、炭鉱所在市町村は、炭鉱と表裏一体、不離不即の立場にあるのであります。炭鉱の繁栄は市町村の繁栄に通じ、炭鉱の衰微はすなわち市町村の衰微を意味するものでございます。石炭の輸入エネルギーに対する競争力の涵養、需給の調整、需要の増大、新需要の開発など、石炭鉱業そのものの体質改善をめざす法律上、予算上一貫した恒久、根本的対策を策定し、遂行し、もって石炭鉱業を将来に安定化し、同時に炭鉱所在市町村の行、財政の運営上に支障なきよう、さらに民生安定の根本的対策を講ぜられるようにしていただきたいと存ずるのであります。  以上をもちまして、私の公述を終わらしていただきます。
  18. 永山忠則

    永山委員長 以上で意見の開陳は終わりました。次に参考人に対する質疑を許します。滝井義高君。
  19. 滝井義高

    ○滝井委員 簡単に、伊藤さんと鵜崎さんに一、二点お尋ねいたしたいのですが、まず第一に伊藤さんにお尋ねをいたしたい点は、昭和三十年に石炭鉱業合理化法ができまして、能率の悪い炭鉱というものを今やめさしておるわけですが、さいぜんの御公述の中にも、能率の悪い炭鉱というものをやはりやめてもらわなきゃいかぬというお言葉があったのです。現在三百三十万トン、さらに百万トン追加しまして四百三十万トンなんですが、今政府の方では、石炭鉱業臨時措置法を改正をして、さらに二百万トンくらいは追加するというような何か意見もあるように承っておりますが、石炭鉱業経営者の方の意向としては、現在日本の約五千万トン程度出炭のベースを持っているこのもろもろの炭鉱の中から、能率の悪い炭鉱と目されるものは一体どの程度あるのか、そういう点のあなた方の立場からの御調査でもできておれば、お示し願いたいと思います。
  20. 伊藤保次郎

    伊藤参考人 お答えします。ただいまの御質問は非常にむずかしい答えになると思いますが、現在買い上げた炭鉱は主として中小といいますか、大手を離れた炭鉱の買い上げが多かった。そうして現状に至りましては、経営が困るからというような段階を離れまして、コストを大幅に引き下げ得る炭鉱だけ残さなければいかぬということになっておりますので、従来と様相が相当変わっておると思います。従って今石炭大手の方で検討しておりますのは、一部の会社ではもうすでにある山を閉鎖するということを発表しておるところもありますが、これはどうしても、いかに掘ってみても大幅の原価切り下げができないという観点に立っておるのでありまして、そういうものは、個々の会社においては大体わかっておると思いますが、私がこの席でそういうものを発表するということはなかなかデリケートな問題がありまして、その会社の経営自体に非常に関係が多いのであります。従って私ども先ほど申し上げましたのは、高能率炭鉱というのは大体——皆さん承知だということは少し言い過ぎと思いますが、石炭に対して相当関心を持っておられる人は大体おわかりじゃないかと思うのです。その意味は、たとえば私が関係しております三菱鉱業というものがありますが、この会社の内容を見ましても、この炭鉱ならば十分経営を持続していけるということは言えますが、他の会社のことに対しましては私は申しかねるのであります。ただしこの限度でありますが、これも相当むずかしいところだと思いますが、やはりそれには先ほど申し上げましたように、値段を安くしなければいかぬということと、普通皆さんが言っているように、石炭は約束した需要量を供給できないのじゃないかという点が一つあります。この点も従来は大きな問題でありましたが、この段階になりますと、やはり第一番は炭価の問題、それから供給の不安定ということが、労使間の問題に大きくかぶさっている問題であります。これは先ほど労働組合側の御意見もありました通り、私どもはこの問題はどうしても労使間において解決すべき問題であって、この問題を解決しないで値段だけ下げるかということになりますと、これはやはりできません。なぜかというと、一定の基準  をもって、仕事を平静に運んでいかなければ炭価の引き下げというものはできない状況にあります。ことに炭鉱の坑内作業というものは相当計画的にやらなければなりませんし、今後優良炭鉱を開発するには、やはり増産というものを考えなければいかぬのです。それに対しましては技術の革新とか、あるいは合理化というものを進めていくには、労使関係というものにつきまして話し合って、どうしても一つの平和協定というものがなければそれもむずかしいわけであります。私どもはそれを考えておりますけれども、その段階に到達したかという御質問があれば、まだ遺憾ながら全体はそこまでいっていないということをお答えするほかに方法はありません。個々の問題につきましては、各社の内容に触れる問題でありまして、きょうの参考人としては、私自身はっきりしない点もありますし、また多少知っておりますけれども、その点までここでお答えすることは差し控えたいと思います。
  21. 滝井義高

    ○滝井委員 出炭のベースをどの程度に保持していくかというこの問題は、今御参考意見をいただきました石炭鉱業離職者臨時措置法と重大な関係があるわけであります。これは伊藤さん御存じの通り、現在の石炭鉱業合理化臨時措置法は三十六年の八月まであるわけです。三十五年、六年のべースというものは大体五千万トンだという政府の答弁を昨日いただいたのです。そうしますと、大体その出炭のべースとしては、ここ二年程度は五千万トンベースでいけるという形が出てきておるわけですね。こういう点については、伊藤さんの方はどうお考えになっておりますか。
  22. 伊藤保次郎

    伊藤参考人 これも現在石炭の基本問題の部会が開かれておりまして、この部会におきましてもこの問題が一番重要な問題になっております。私どもは五千五百万トンというものを三十八年度に予定はしております。しかしこれも先ほど申し上げました通り、いわゆる原価の大幅の引き下げということを目標にしました場合、はたして五千五百万トンという需要を確保できるかできないかという問題にかかっているわけです。しかし現在測定したところによりますと、大手中小全部入れまして大体五千五百万トンというものをわれわれは予定しております。
  23. 滝井義高

    ○滝井委員 そうしますと、三十六年までの合理化法との関係で、政府の五千万トンベースというものの見方と、伊藤さんの方の三十八年五千五百万トンというこの見方は、そう大きな開きがないように見受けられます。そこでお尋ねをしたいのですが、実はこの法案をわれわれが審議するにあたって一番今困っておる点は、この法案で御存じの通り、緊急就労対策事業について政府はやはり計画を立てなければならぬわけです。それから同時に職業紹介のための計画も立てなければなりません。それから援護会では援護会事業計画を立てなければならぬわけです。そうすると、緊急就労対策事業の計画、職業紹介の計画、援護会事業計画というものは、一体日本石炭の出炭ベースというものがどの程度になって、そして現在の約三十万程度おられる炭鉱労務者の中からどの程度の失業者というものが出てくるのか、この関連がなければこの計画は立たないわけです。そこでことしは五千五百人——今度この法律が出て、それに見合う予算措置は、緊急就労対策事業は五千五百人程度、移動資金は四千人、これはさいぜん全炭鉱の方が言われた通りですが、そうすると、今昭和三十五年度の予算編成期にあたって、来年度の緊急就労対策事業というものは一体幾ら見積もっておるか、来年度における職業紹介というものはどの程度のものを見積もったらいいか、こういう問題が出てくる。そうしますと、実は今労使間で話し合い中であるが、労使間の話し合いがある程度見通しがつけば根本的な対策を出しますと政府はおっしゃる。ところが一方三井と炭労との間をあっせんした中山中労委会長は何と言ったかというと、労使間のあっせんを自分がやるにあたっては、政府石炭政策というものがどういう形で出るかということが前提だ、これを労使双方は頭に置いて一つ労使の話し合いに入ってくれ、こういうことになっておる。中山さんでさえも、政府石炭政策がどういうふうに出るかということが前提だと言っておる。そこで政府に尋ねると、いや労使の話し合いがどうつくかによってわれわれの計画はきまるんだということになって、われわれは一体どこに計画のほんとうの出し手がおるのかということに今迷っておるわけです。こういう点がありますので、一つお尋ねしたいのは、さいぜんの伊藤さんの御説明にもありましたように、三十八年までには、大手から大体六万人の失業者が出ていく、それから中小から三万七千人出て、約十万人、職員を入れたらちょっと十万を越えるという離職者が出てくるわけです。そうすると、これは一体三十八年までなんですが、年次的に見たらどういう形で出るかということなんです。およそこれは個々の炭鉱で事情は違うと思いますが、大ざっぱにいって全国大手中小炭鉱で五千万トンないし三十八年までに五千五百万トンのべースをずっと上昇さしていくためには、年次的な計画でいうと、一体どういう形で約十万の失業者が出ていくという見積もりをされているのか。
  24. 伊藤保次郎

    伊藤参考人 その御質問は当然出るだろうと私は予想しておりました。予想しておりましたけれども、明確な答弁ができないということも予想しておったのです。なぜかと言いますと、五千五百万トンの石炭を出すのにどれだけの人が要るかという前提は、七千二百万トンと予定されたこともありましたが、これは政府はまだ取り消していないようでありますが、私どもは取り消しております。それでその数字をさぐっていきますと、能率が現在十四トン程度、これを二十六トンぐらいまでに上げなければ予定の単価引き下げはできないというところから割り出しました数がちょうど大手にとっては六万、その経過が——これから三年あるいは四年の間に経過はどうだという御質問のようでありますが、これはただいま地方、市町村あるいは県の御答弁もありましたが、地方に影響するところが相当大きい問題であります。それで早ければ早いほどいいということも、われわれとしては考えられますが、しかしながらやはり離職者というものを考えたり、いろいろなことを考えますと、急激な変化は、国家的に見まして非常に不安な空気を多くかもすだろうということも考えておりまして、平均しましたら、はっきりした数字は私持っておりません。これは出せません。それで三十四年度のものは大体現在見通しはついております。三十五年度、六年度、七年度で大体終結すると思いますが、三十八年度中にこれを完了するという目標を立てております。従ってその間の経過は大体平均的にいくほかないだろうと思うのです。これは急に離職者を一ぺんで出すとなるとなかなか大へんな問題でもありますし、それから実際の取り扱い問題としましては、炭鉱をやめればスクラップにするということもありますが、スクラップ化するということも相当時間のかかる問題でありますので、私どもは算術計算でちょっと決定いたしませんけれども、急激なものをそこにすぐ持ち出してやるということはむずかしいのでありまして、それで三十八年度というものを予定したわけであります。ですから、その辺のところはあなたのお考えで大体割り出していただくほかない。しかし中山さんがああいうことを言って、政府石炭対策、こちらから言えば労使の問題で、どっちも逃げているのだろうというお話でありましたが、私は逃げているのではない。やはり自分たちの問題は自分たちの問題としてどこまでも責任を持って解決していくということを申し上げたので、あいまいなことをもって逃げようというようなことを答弁したわけではないのであります。
  25. 滝井義高

    ○滝井委員 もう少し入ってみたいのですが、政府の答弁によりますと、現在一年間に首を切られる炭鉱労務者の数は大体七万四、五千、この七万四、五千の中で病気とか結婚等で自発的に退職するというのは五千四、五百、そうすると大体七万程度首を切られる人が出てくるわけです。それから現在すでに合理化その他によって対策を必要とする人たちは押えて大体五万程度、少く見積もっても五万程度なんです。その中に二万一千程度は緊急に必要とすると言っているのですが、まず五万程度。そこで大体十二万程度のものが普通に見ますと出てくるわけです。そうすると今度は石炭鉱業が異常な状態にあるというので、さいぜんから伊藤さん御説明になったように十万が出てくるわけですから、今まで普通の退職の七万のほかに、十万の中からどの程度プラス・アルファとして七万に加わってくるかということが、今後われわれが石炭離職者の対策を立てる場合に、一番わかっておらなければならぬ点なんです。そこで今伊藤さんが言われるように、自分の方も漸進的にやるのだ、数ははっきりわからない、こういうことになりますと、これはいよいよ予算を組んでやった場合に、あとになって手違いが生ずることになるのです。何万人かの人が計画に漏れておって、あとからぐっと出てきた、こういうような問題が出るので、私は特にそこらあたりを実はお聞かせを願いたかったわけです。三年か四年で十万をやる。四年でやれば、四で割れば一年に二万五千、この二万五千の中で七万の中に入る人が相当おるでしょうから、そうすると一万かそこらになるか、こういうことはあなたの方で計算したらわかるだろうという御意見もありましたが、そういう形になるのですが、ここらあたりがやはり政策を立て、予算を組む上に、あるいはわれわれが政府に政策を迫る上において、確実な数字というものがなくてはどうしても工合が悪いという点があるわけです。  もう一つは、もちろん経済というものは生きもので、動きます。日本経済というものは今異常な、神武以来の好景気以上の上昇を示して、きょうはまた公定歩合も引き上げるというような事態にもなっておるようであります。だからこれは予測はなかなかしにくいでしょうけれども、今度は首を切られる労務者の側に立って考えてみますと、大手中小で十万首を切るということは、一体いつ首を切られるのだろうか、こういう不安があるわけです。そうすると、そういう不安の気持で石炭鉱業の増産をせよといっても私は無理だと思うのです。やはりその仕事場において誠心誠意労働に従事をするからには、自分の職が安定をしておるという安定感というものが、人生にとっては非常に大事だと思うのです。そうしてまたいつ首を切られるのかというのでは人生計画も立たないし、子供の教育の計画も立たないということになれば、家庭生活というものは全く破壊される、こういう形になるわけです。そこで私はやはりこういう席を通じて経営者代表である伊藤さんの方から、自分の方としては漸進的にやるんだという御答弁をいただいたので、これは非常にありがたいと思いますけれども、こういう数を出されるからには、その年次計画というものが、その腹づもりというものがあわせて出されないと、今度は石炭を買う側からいいますと、また二十八年や九年と同じように石炭業者はうそを言うのじゃないか、あなたの言ういわゆる石炭の価格というものは労使関係だけの不安定だということでなくて、経営者自身が確固不抜の石炭対策に対する見通しを持たぬところにこういう問題がくるのだ、こういうぬれぎぬを着せられるおそれもあると思うのですが、そういう点からいっても、私は何かそこらあたり——きょうは伺わなくてもけっこうですが、何か適当の機会に、経営者としてはこういうことを出せばこれで大丈夫だという自信のある、科学的な根拠に基づいた資料というようなものを、できれば国会に出してもらいたいと思うのですが、そういう点どうですか。
  26. 伊藤保次郎

    伊藤参考人 ただいまのお話によりますと、ちょっと私の見解と違いますが、毎年整理じゃなくて七万人以上の首を切られるというお話でありますが、最近の炭鉱労働者の移動というものは非常に少ないのです。問題になっておるのは、人が少なくなれば、その転換をしてその補充をしてくれという問題が炭鉱内にはしょっちゅう起こる問題です。しかしそれすらも大した数字ではありませんが、なるべく補充しないように対策をとっているわけです。七万人というものが今われわれが考えている数に加わっていることはないと思うのです。七万人の炭鉱労働者経営者の方から毎年解雇されておるという事実は私は初めてでありますが、そういう数をわれわれが何も考えないで、今度こっちの方から積極的にやめてもらうという数を出した根拠は私はちょっと不思議に思います。その点はどうですか……。
  27. 滝井義高

    ○滝井委員 実は政府の答弁で炭鉱労働者の解雇は、昭和二十九年には十万八千、三十年には七万二千、三十一年が六万八千、三十二年七万六千、三十三年七万四千、三十四年七万七千、大手中小合わせてこれだけが解雇された。そうしてそのほかに今度は新しい雇用というものは炭鉱で二十九年六万八千、三十年六万七千、三十一年七万八千、三十二年八万九千、三十三年五万九千、三十四年度は五万台になるだろう、従ってこれは三十四、五とずっと新しい雇用というものは少なくなってくるだろう。今解雇というのはやめたのも含まれておると思うのですが、実際はそれはある意味では解雇です、そういうものが七万七千、こういうことなんです。その中で自然に退職の形をとるのが五千四、五百だ、こういうのが政府の公式のわれわれに対する答弁なんです。そこで七万程度が年々炭鉱労働者としてやめていく。そうすると今度新しく、十万というものと七万というのは幾分重なるところもあるだろうと思いますけれども、一体その十万がどの程度七万に加わるのか、そしてそのほかに現実に対策を要するものが五万はおるということになると、十二万プラスなんぼかが出てこなければならぬ、私の言うのはこういうことです。従ってその中から対策を必要とするものは一体どの程度だというと、さいぜんの御説明では、六万の中には約六割、それから三万七千の中小の中には七割くらいが出るだろう、こういう御説明があったわけです。それで、そういう数を基礎にして今後三十八年度までに一体政府は——この法案は時限立法で五年以内ですから、そうするとそれに対する予算要求というものは当然やっておかないと、これは大へんなことになるわけです。そういう点で、今政府のそういう答弁があったのでお尋ねをしておるわけです。
  28. 伊藤保次郎

    伊藤参考人 よく御質問のことはわかりましたが、しかし今の数字をあげられた根拠を見ますと、過去における、私きょう申し上げましたが、三回にわたって大きな不況がありました。そのときの数字が大体そこに入っております。それを平均しましたらそういうことになると思うのです。しかし一方景気の直ったときはまた雇い入れをしておるということを触れられましたけれども、今度のわれわれの出した数字は、整理された人間だけの数をきめまして、毎年自然減耗がこれだけ出るとか、あるいは不況だからやめさしたということは重複しておりません。今度三十八年度までの六万幾らというものは、実際今度の現在の炭鉱の改善ということの純粋な計算であります。ですからそのほかに毎年の数字が七万に加わるんじゃないかというようなことはありません。
  29. 滝井義高

    ○滝井委員 そうしますと、今まで年々大体七万程度のべースでずっと出ておったものというのはなくなって、そして今度は四カ年間に十万、こういうことですか。そうしますと、今までよりか解雇というものはぐっと減ることになるのです。野口さんの方のここらあたりの見解はどうですか。
  30. 伊藤保次郎

    伊藤参考人 この点、そういう自分からやめていったような人も今度の離職者臨時措置法案に入るべき数であるかどうかということを考えていただきたい。今度の私ども考えでは入らぬと思うのです。移動というものは毎年ありますよ。そういうものも今度の対策の内容にしなければならぬかということは、私どもは立法者じゃありませんから、そういうことは予想はしておりません。今度私の申し上げました大手中小みな入れました数の合計が大体この目標にして対策をお願いしたいというふうに考えておったのであります。
  31. 野口一馬

    野口参考人 その点については、三十八年度に五千五百万トンの石炭が、労使首脳者懇談会の席上において経団連から石炭経協に示されて、それが炭労に示されました。それと別に出されておる内容というのは、石炭を七百円から千円三十八年度に価格を下げる場合には、要するに現在人員能率を二十二トンにして、そして十万人の人間を減らさなければならないのだ、こういうふうに逆算方式で出されてきておる。今まで人員が減りましても炭労と各社の協定に基づいて、生産規模に合わして人員を労働強化にならないように採用して参りました。今後そういうことを一切やめて、何が何でも十万人をやめさせたい、こういうわけですから、今後の十万人は過去の例を見ない様式において、二十九年、二十四年の整理のように膨大な数字がここ二、三年のうちに出るのではなかろうか、こういうふうに考えております。これが経営者の、石炭資本家考え方であります。決して炭労はそれに賛成しておるわけではありません。それをめぐって今後労働争議が相当ひんぱんに起きる、またわれわれの生活権を守るために必ず戦わなければならぬ、こういうふうに考えておるわけであります。
  32. 滝井義高

    ○滝井委員 もう一回そこらあたり伊藤さんに念を押しておきたいのですが、今まで私の解雇と言ったのは、炭鉱をやめていく人という広い意味、一応それが七万台にずっときておったわけですが、そうすると今度はとにかく三十八年度までに十万人程度やめていただけばそれで大体——いろいろの経済条件、いろいろのファクターが加わって参ります。また今二十六トンというお話がありましたが、野口さんは二十二トンとおっしゃいました。そこらの数字の違いはありますが、二十六トン程度の能率ということになると、八百円下っていく、こういう理解の仕方でよろしゅうございますか。今まで七万程度やめておったというのに比べると、今度三十八年まで十万というのはずっと少なくなるわけですね。これだったら自然減耗と同じ程度になってしまう。これはそういう趣旨ですか。
  33. 伊藤保次郎

    伊藤参考人 炭鉱従業員は、自分からやめていく人は炭鉱にあいそうをつかした人が相当あると思います。そういう人はふえるかもしれません。しかし自分でやめていく人は——われわれは希望退職というものを募集しました。その希望退職に応じた人の中には、やめたくないけれども、どうかと言われたからやめた人もある。それから炭鉱におってももうしょうがないからやめるという人もあると思うのです。その点は区別はしておりません。けれども、現在の人員を標準にしてわれわれはこの改革計画を立てたわけでありますから、従来のあなたの計算の七万人というものは私は出てくる余地がないのじゃないかと思うのです。もしそういう自然減耗が七万人もふえるということならば、こういう対策はずっと内容が変わってきやしないかと思うのです。現状では今炭鉱労働者は三十万人程度おるという、現況そのままを見つめた姿をいっておるのですから、それを黙っておれば、人を雇い入れなければ年々減っていくんだという数字はとっていないのです。そのところが私の理解に苦しむところであります。
  34. 滝井義高

    ○滝井委員 今私の調べたところでは、三十四年九月現在で炭鉱労働者の数は二十七万七千八百四十七人です。そうしますと、二十七万七千八百四十七人から三十八年までに十万人減らす、すなわち十七万人になったならばよろしい、こういう意味なんですか。
  35. 伊藤保次郎

    伊藤参考人 そうです。
  36. 滝井義高

    ○滝井委員 わかりました。今までは、さいぜん私が御説明いたしましたように、大体七万はやめるが五万くらいの雇用が新しく入ってきておったわけですね。そうすると今後は石炭企業は新しい雇用というものはあり得ない、こういう理解に立つわけですか。
  37. 伊藤保次郎

    伊藤参考人 そうです。
  38. 滝井義高

    ○滝井委員 それでようやくわかりました。  次は整備事業団の問題ですが、今度の援護会に整備事業団から金を三億円出しておるわけです。これは菊池さんも、どうもこういう金は出さずに政府の方でという意味の御公述があったように承ったのですが、実は来年度の見通しがつかないのです。今年は三億円のお金を整備事業団の、皆さんの納付金の中から援護会に交付金として出しております。そうすると、今の整備事業団事業の進捗の状態等を見てみますと、買い上げられた炭鉱の鉱害の復旧がうまくいかないために、納付金とそれから開発銀行の利ざやだけでは整備事業団が弾力的な事業の遂行ができないで非常に困っておるというのが現状だと思うのです。そうしますと、来年度にまたその援護会事業団から金を出すということは非常に問題だと私は思うのです。こういう点について、大手の方の伊藤さんはどういうお考えでございますか。
  39. 伊藤保次郎

    伊藤参考人 私ども考えとしましては、そう大した変化はないと思っております。来年度急激に石炭需要がぐっと減ってしまうというような現象は起らぬと思います。大体なだらかな方向で——石炭は高いから買わぬ方がいいという人はあるかもしれませんが、ぐっと減るということはない。すると、納付金の方も大体今の線を確保していく。それはやはり少ない方がいいかもしれませんけれども、私どもとしましては二十円というものはやはり負担するということにしておりますが、天然現象とかいろいろありましたときに、こういうところで言ってもしようがない問題で、私ども同業の炭鉱整理だということで二十円というものを負担して、そうしていってもそんなに金に狂いはない。たとえば今度三億円出す、その次なお継続して出さなければならぬ事態も生ずるんじゃないかと思います。その金は今あなたのおっしゃる通り、開銀の利子の移譲ということによるわけですし、トン二十円ということもはっきりしてるわけで、大体買い上げの金額は予定できるんじゃないか。しかしこんな金額では鉱害問題は処理できないというお話ですが、その点はまだ考えておりません。事業団の方からその点は十分聞いておりませんからはっきりした答弁はできませんが、なおその点において疑問がありましたならば、私調べましてあなたに申し上げたいと思います。
  40. 滝井義高

    ○滝井委員 私が申し上げておるのは、石炭鉱業事業主が納付金をトン当たり二十円ずつ納めるということ、これは今おやりになってるので、それに反対するわけではありませんが、そうでなく、その納めた納付金から今度は援護会に三億円ことし出しています。これは四半期分です。三カ月分です。すると今度来年度の予算を組むときには、一年分を出すというと、相当の金を出さなければならぬことになると思います。これは伊藤さん御存じだと思いますが、現在石炭鉱業事業主のトン当たり二十円の納付金の未納がだんだんたまって来つつある。未納者がふえてきております。おそらく今三億円をこえてるんじゃないかと思う。そこで整備事業団では業務方針を変えまして、買い上げを受ける人は納付金を納めなければ買い上げの対象にしない、こういうふうに聞きました。そういう状態で、未納もありますが、問題は、整備事業団が来年度も莫大な金を援護会に持っていくことがよろしいかどうかということをお聞かせ願いたいというのです。
  41. 伊藤保次郎

    伊藤参考人 その問題は業界として検討したことはありませんけれども、この法案をよく運用していただくには、炭鉱業者としてはそういう継続的な考えを持たなければ——この法案は、三十八年までの時限立法でありますけれども、大体私の考えてる時期まで継続されるように聞いております。従ってそれに調子を合わせるためには、途中で炭鉱業者が腰を折ったということになりましては重大な問題になりますので、これは私の個人的意見がだいぶ入っておりますが、私どもはやはりその線は継続するということでなければいけないと思っております。しかしこれはまだ正式に協議した問題ではありませんから、あらためてまた申し上げた方がいいと思います。
  42. 滝井義高

    ○滝井委員 伊藤さん個人の意見としては、整備事業団のことし出した三億円は、納付金も来年度からずっと出していくんだから、来年も整備事業団の金を援護会経費の一部に負担をしていくことがいいだろうという御意見、よくわかりました。  時間がありませんので、次は鵜崎さんにお尋ねしたいのですが、実はさいぜんから鵜崎さんの公述の中にもありましたように、炭鉱労務者が広域職業紹介あるいは職業訓練を受けて、新しい天地に向かって就職をしていく場合に、住宅の問題が非常に大きな隘路になっておるという話があったのです。そういう点から考えてみますと、これはやはり筑豊地帯あるいは佐賀あるいは長崎の関連産業を含めますと、相当膨大な人口が石炭産業と関連をして住んでおるわけです。そうすると、人間というものは自分の故郷あるいは第二の故郷というような住みなれたところを捨て去って、他に移転をしていくということは、よほどの決意がなければなかなかやっていけないものだと思います。そういう意味から、あの筑豊炭田というものが石炭がなくなった、あるいはカロリーの高い石炭がなくなって、低品位炭はある、こういう状態の中で、あそこの筑豊七、八十万の人間というものを全部民族移動をさせるということは、なかなか困難な問題だと思うのです。従って北九州の特定地域の総合開発あるいは今できております九州の総合開発、こういうものの一環として、幸い筑豊地帯には低品位炭も残っておりますし、それから石灰石が豊富にあるわけです。従って問題は、石灰石と低品位炭とを結びつけた何か新しい工業を興す。ところがそのためには、さいぜん朝日新聞の江幡さんの公述の中にありましたが、水がない、水が悪いという問題があったわけです。そうすると、先般来われわれも主張しましたが、通産当局からも言われておる遠賀川の改修といいますか、遠賀川の汚水を処理して、汚水の中に入っておる微粉炭を回収して低品位炭として使う。残った水は九州の総合開発の工業用水に持っていくという構想が、政府の方にもあるように思います。それからもう一つは、この筑豊炭田にはなお深部開発が、鉱区の問題がある程度片ずけば可能だという面があるわけです。そういう点を結びつけて参りますと、民族移動をやらせるということも一つ考え方ですが、そうでなくて、炭鉱労務者が第二の故郷あるいはみずから生まれたときからの故郷としておるあの地区を、何らかの形で、われわれが頭を使うことによって、立地条件の再編成をやって総合開発をやったならば何かあそこへ定着ができる姿ができるんじゃないかと、おぼろげな感じがしてくるのですが、そういう点について何か福岡県では御検討になったことがあるかどうかという点、実は昨日池田通産大臣にお聞きしましたところが、この遠賀川の汚水処理の問題、深部開発の問題等をひっくるめて、約五百万円の調査費を政府は来年度に計上する予定だというお話もあったのですが、それに見合って何か福岡県でそういうことをお考えになっておるかどうか、あるいはそういうことを積極的に推進するお考えがあるかどうか。
  43. 鵜崎多一

    鵜崎参考人 石炭離職者福岡県内の産業に就業させるという方向につきましては、私どもまず第一番に重点を置いて考えておる次第でございます。鉱害の復旧事業につきましても、食糧の需給から申しますと、今の筑豊に相当の金をかけて鉱害復旧事業をやるよりは、あるいはその他の地区に開拓地でもやって米を作るという場合には、食糧の需給としては変わりませんけれども、しかし、やはり今後筑豊地帯に県民の住み得る地帯を作っていきたい、こういう観点から、実は農地の鉱害復旧等にも力を入れまして、相当工事費がかさみましても復旧事業をやっていくというような方向でやっておるわけであります。  それから県内におきましてある程度離職者の吸収をはかることは当然でありまして、遠賀川の筑豊の地帯におきましても、ただいま来年度から着工いたしたいと考えております八木山のダムの問題であるとか、あるいは中願寺ダムの問題であるとか、あるいは、少し離れますけれども、やはり福岡地区の那珂川のダム建設、また私どもが具体化したいと考えておる高速度道路とか、そういうものを計画いたしまして、そういうところにも離職者を入れるということについても考えておるわけであります。一万何千名のうち、現実に計画的に一般就職あっせんによります就職の者が三千なら三千、あるいは緊急就労でとりあえず所在市町村で就労できる事業の吸収は、五、六千、その他のものは、できるだけ、対策として今後具体的に計画を作っていくものとも見合わせてやりたいと思っておりますが、県内におきましても、就労の機会を作るように計画をいたしております。  石炭の問題で、具体的に低品位炭の火力発電所を一つ設けたいという話は、地元の業界でも、また私どもも中に入りまして考えておるのでありますが、その点は多少鉱区調整というような問題で行き悩んでおりまして、今後まだ解決すべき点が残っております。またさらに先般の九州総合開発審議会においても、県の立てておる計画をすぐ実現するようにしていただきたいということで、筑後川の総合開発が特に九州の北部の開発では一番の重点を置く仕事でありますので、それを取り上げていただくようにいたしましたが、なかなか大きい問題というようなことで、すぐその就労の方に結びつける点にまではまだいっていないのでございます。それから遠賀川の汚水処理の問題も、私どもといたしましては、運営等についての問題はまだ検討をいたしておる段階でありますが、公共事業としてそういう工事に着手していって、それによって就労してもらうということについては、私どもも、もし県がそれを担当するならば実行していきたいという点までは考えておるわけであります。  それから今のお尋ねの点で、私ども県当局として石炭産業の問題について一番懸念しておるのは、私ども県内において今の石炭離職者の配置あるいは生産の配分というものを計画的に考えていかなければならぬという現実の問題であります。たとえば日鉄鉱業が今二瀬の方で整理をやっております。それから同じ日鉄が柳河地先の海底炭の採掘をやりかけておる。その事業をやるのに柳河地先の干拓を押えてくれ、こういう問題が当面の問題として起こってきておる。ところが、日鉄二瀬の関係は筑豊だけで問題を個々に処理するということで、柳河沖の海底炭の問題とは別個の問題になっております。同じ会社ですから、離職者の問題を出さずに、海底炭の方に就労させるということにすれば、県としても、それなら干拓の方は少し待ってもらおうという意思表示ができますが、それがばらばらなものだからわれわれとしては何も打つべき手がないわけであります。今後、石炭産業の問題としては、鉱区調整なり、その他県でごあっせんいたしますにしても、何か国でよんどころがあるようなことがないと、具体的な事業の配合がしにくいという点もあるわけであります。私ども、今のように、主体はできるだけ県内に離職者の就労、就職をはかっていきたい、その上に立って、しかし現実においてそれでは十分でございませんので、県外の就職あっせんもお願いし、また現実の問題として起こりました問題についても力を入れていきたいと考えております。
  44. 滝井義高

    ○滝井委員 今伊藤さんもお聞きの通り、ある程度筑豊地区の総合的な開発をやろうとしますと、やはりそれに結びついてくるものは燃料なんです。燃料をあそこで高い見地から解決をしようとすると、鉱区の調整の問題が出てくるわけです。これについては、経営者の方の団体としてはどうお考えになっておりますか。
  45. 伊藤保次郎

    伊藤参考人 この問題は、この前鉱業法の改正あるいは合理化法の問題のときに、鉱区の統合調整をやるということは法文にもうたわれたと思います。その原則には反対はしておりません。ですから、あとは具体案をどう盛るかということです。先ほども、鉱区は大手何社かで独占しているのではないかというような話がありましたけれども、これは過去からずっと継続している問題で、今急に独占を始めたというような問題ではありませんから、そうした事業の歴史を考えないと、そういうことは言ってもしょうがない。ただこの緊急な事態に処して、鉱区の調整というものは必要なのだということが国会においても出ましたならば、われわれはそういう点については反対しておりません。あの法案改正にうたわれた点は、何も別段これは困るのだということを言ったことはないのでありまして、それがほんとうの石炭合理化あるいは日本エネルギー合理化に役立つのであれば、その点はそうむずかしくなく解決できるものではないかと思う。
  46. 滝井義高

    ○滝井委員 よくわかりました。  最後に、これは鵜崎さんにお聞きしたいのですが、今回緊急就労対策事業政府が五分の四の金を持つことになっておるわけです。その五分の四の金は、総額一人当たり八百五十円、大体賃金を三百五十円くらい、それから資材費を三百円以上、その他、これは用地費も含むと政府は言っておるのですが、それが二百円、大まかなめどはそういうことになっておるわけです。賃金が三百五十円で資材が三百円ちょっと上回った程度で、用地費その他で二百円、これで八百五十円になるわけですが、この場合に、五分の四を国が持って、五分の一、二割を県が持つことになりますが、これをこのままの形で実施した場合に、一体自治体の実質的な負担はどの程度になるかという点なんですが、これは鈴木さんでも鵜崎さんでもどちらでもけっこうなんですが、両方ともいただければ両方とも……。たとえば鈴木さんの御意見にもありましたように、労務者の輸送の費用等も全部事業主体持ちになると思うのですが、そうしますと、今までの経験からいって、大体実質的に自治体の持ち出しはどの程度になるか、ちょっと知りたいのです。
  47. 鵜崎多一

    鵜崎参考人 今の緊急就労事業で、実は県におきまして筑豊の地帯、特に離職者の多い地域に道路とか河川とか都市計画事業あるいは農林関係事業等、就労の率の高い仕事一つ一つ地元にも市町村にも計画をさせまして、県もそれを指導して、一応十数億の事業量の計画を作ったわけです。これの内容といたしましては、県が予算を作るときの前提になる程度の計画書を作ったのでありますが、そのときには大体千二百円程度の事業単価でその事業考えておりました。ところが先ほども申し上げましたように、今度の八百五十円程度ということになりますと、今の特別失対事業費がちょうど千二百円でございますから、そういうふうな点から見ると、道路で言うと簡易舗装程度の事業しかピック・アップできない。それで一応十四億程度の事業を吸い上げたのでありますが、そこで就労の率が高く、八百五十円くらいでというような事業になりますと、三分の一かせいぜい半分くらいが現実に把握されておる事態で、今後八百五十円でやっていくということになりますと、事業量が減ってしまって、一般の失対事業並みになることを私どもはおそれておるわけでございます。  第二の、五分の四の国庫補助で、あと五分の一を県費負担ということでやるといたしますならば、その五分の一は、私どもとしては今の財政上、市町村と同様でありますけれども、実は純県費というものがございませんので、起債によらざるを得ない。そうしますと、その起債を考えていく、それと県費の負担ということで考えますと、今審議されております予算事業量は、緊急対策の事業量でいきますと、大体五億程度と聞いておりますけれども、五億程度でありますと、大体一億程度が——そのうち福岡県が主体でありますけれども、大体八割福岡にくるとしますと、一億足らずが緊急事業で起債をかぶる。それから例の職業訓練所その他の建設の問題がありまして、これは今度の法律には出ておりませんが、従来のあれでいきますと、施設費につきましては二分の一でございますから、この間田川等に新設しましたときも、純県費を三千万ほど実は継ぎ足してやっておることになっております。さらに職業あっせんその他の施設等をやりますと、そういう点から見まして、今審議されております予算の現況からいきますと、福岡県の問題といたしますとおそらく一億五千万から二億近くのいろいろな経費負担が出てくると思います。それで私どもはそういう形でないように——もしそういうこと  があるならば、福岡県は、起債の問題につきましては、実はほかの県と違い  まして、日本の国の経済と半永久的にずっといきます事業体が非常に多いのでありますから、税収は少なくても、その信用能力といいますか、そういうものから、福岡県としては起債能力があるのではなかろうか。でありますので、そういう点をぜひお認め願いまして、石炭産業の問題を赤字でやらぬという形で——石炭産業の問題に十分手を尽くして赤字県政といわれますと、今までも相当石炭産業に対するいろいろな一般の対策をやっております上での問題でありますので、そういう点について御考慮願いたいと考えております。
  48. 永山忠則

    永山委員長 これにて参考人方々に対する質疑は終了いたしました。  本日は長時間にわたり種々貴重なる御意見をお述べいただき、本案審査の上に多大の参考となりましたことを厚く御礼を申し上げます。ありがとうございました。  本日はこれにて散会いたします。     午後一時四十八分散会