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1959-11-13 第33回国会 衆議院 社会労働委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十四年十一月十三日(金曜日)     午前十時四十三分開議  出席委員    委員長 永山 忠則君    理事 大石 武一君 理事 大坪 保雄君    理事 田中 正巳君 理事 八田 貞義君    理事 藤本 捨助君 理事 小林  進君    理事 五島 虎雄君 理事 滝井 義高君    理事 堤 ツルヨ君       池田 清志君    亀山 孝一君       藏内 修治君    河野 孝子君       中山 マサ君    古川 丈吉君       柳谷清三郎君    山下 春江君       伊藤よし子君    大原  亨君       河野  正君    多賀谷真稔君       中村 英男君    今村  等君  出席国務大臣         労 働 大 臣 松野 頼三君  出席政府委員         農林事務官         (農地局長)  伊東 正義君         労働事務官         (労政局長)  亀井  光君         労働基準監督官         (労働基準局         長)      堀  秀夫君         労働事務官         (職業安定局         長)      百田 正弘君  委員外出席者         総理府事務官         (自治庁行政局         行政課長)   岸   昌君         通商産業事務官         (軽工業局窯業         建材課長)   東  辰三君         労働事務官         (大臣官房労働         統計調査部長) 三治 重信君         専  門  員 川井 章知君     ――――――――――――― 十一月十三日   委員池田清志君及び柳谷清三郎辞任につき、  その補欠として松永東君及び八木徹雄君が議長  の指名委員に選任された。 同日  委員松永東君及び八木徹雄辞任につき、その  補欠として池田清志君及び柳谷清三郎君が議長  の指名委員に選任された。     ――――――――――――― 十一月十二日  中国及び北朝鮮地域遺骨処理に関する陳情書  (第二二〇号)  三陸海岸一帯国立公園指定に関する陳情書  (第二二三  号)  業務外の災害によるせき髄損傷患者援護に関す  る陳情書  (第二二四号)  同  (第二二五号)  同  (第二二六号)  けい肺及び外傷性せき髄障害に関する特別保護  法の一部改正に関する陳情書  (第二二七号)  同  (第二九四号)  原爆被災者援護等に関する陳情書  (第二二八号)  原爆被災者援護対策確立に関する陳情書  (第二二九号)  同(第二  三〇号)  原水爆被爆者並びに放射能障害者に対する援護  法制定に関する陳情書  (第二三一号)  同  (第二三二号)  国民健康保険法成立の際の附帯決議完全実施に  関する陳情書  (第二三七号)  同(第二三八号)  国民健康保険事業費国庫負担増額等に関する陳  情書  (第二四〇号)  同(第二四一号)  同(第二四二号)  同(第二  四三号)  同(第二四  四号)  社会保険診療報酬点数表合理化に関する陳情  書  (第二四五号)  結核医療費公費負担国庫補助増額に関する陳  情書(第  二四六号)  同(第二四七号)  国民健康保険団体連合会事業運営に対する資金  融資に関する陳情書  (第二四八号)  けい肺等特別保護法改正に関する陳情書  (第二四九号)  国民健康保険組合療養給付費二割国庫補助に  関する陳情書(第  二五〇号)  戦没者遺族年金等受給者国民年金適用に関す  る陳情書  (第二五  一号)  国民年金法施行費増額に関する陳情書  (第二五二号)  同(第二五  三号)  舞鶴に引揚記念塔建設に関する陳情書  (第二五四号)  医師、看護婦保清婦及び現業職員増員等に  関する陳情書  (第二五五  号)  北海道における未開発地厚生事業促進に関する  陳情書(第二五六  号)  元満州及び北朝鮮地域遺骨処理に関する陳情  書(第二五七号)  戦傷病者戦没者遺族等援護法の一部改正に関す  る陳情書  (第二六一号)  生活保護法による保護基準引上げ等に関する陳  情書(第二六二  号)  同(第二六三号)  未帰還者留守家族等援護法適用患者に対する療  養期間延長に関する陳情書  (  第二六四号)  同  (第二六五号)  水俣病発生海域調査等に関する陳情書  (第二六六号)  国民健康保険運営改善に関する陳情書  (第二六七  号)  下水道工事水洗便所設備普及促進に関する  陳情書(第二七〇  号)  京都市吉祥院下水処理場放水口設置等に関す  る陳情書  (第二七一  号)  同  (第三七一号)  特別都市下水路事業汚水処理場建設促進に関  する陳情書(  第二七二号)  都市清掃事業整備に対する国庫補助増額等に  関する陳情書(第  二七三号)  岳南排水路汚水処理施設建設費国庫補助に関す  る陳情書(第二  七四号)  動員学徒犠牲者援護等に関する陳情書  (第二七五号)  失業対策事業就労者の処遇に関する陳情書  (第二七六  号)  ILO条約批准促進に関する陳情書  (第二七七号)  社会保障制度拡充強化に関する陳情書  (第二七八号)  国民年金事務取扱費増額に関する陳情書  (第二七九号)  保健所費国庫補助率引上げに関する陳情書  (第二八二  号)  昭和三十五年度保育事業関係予算増額に関する  陳情書(第二八三  号)  保育所措置費国庫負担金交付基準改正に関する  陳情書(第二八四  号)  北海道国立光明寮設置に関する陳情書  (第二八五号)  国立筑紫病院施設整備促進に関する陳情書  (第二八六号)  身体障害者拠出年金支給に関する陳情書  (第二八七  号)  失業対策事業に関する陳情書  (第二八八号)  失業対策事業費全額国庫負担等に関する陳情書  (第二  九二号)  はり、きゆう及びマッサージの健康保険適用等  に関する陳情書  (第二九三号)  海外抑留同胞引揚問題に関する陳情書  (第三六六号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  労働関係基本施策に関する件      ――――◇―――――
  2. 永山忠則

    永山委員長 これより会議を開きます。  労働関係基本施策に関する件について調査を進めます。発言の通告がありますので、これを許します。小林進君。
  3. 小林進

    小林(進)委員 大臣が御就任になりましてから数カ月の歳月を経過いたしたのでございますけれども、御就任のごあいさつを承っただけで、まだわれわれは新大臣——新といっても相当古くなったのでありますけれども、その古き間に、まだ新大臣労働行政一般に対するお考えというものを詳しく承っておらぬのであります。同じ政党に所属をせられておりましても、やはり大臣ともなればその人、その人によって何らかの特徴あるいは本質というものが現われていいと私は思う。そういう意味で、労働行政を担当しておいでになります大臣が、今われわれの足元にころがっておりまする重大なそれぞれの問題について、一体どういう御所見をお持ちになっているかということをお伺いいたしたいと考えるのであります。しかし大臣もずいぶんお忙しいと思いますので、大体私のお伺いいたしたい点を八つの点に要約をして参ったのであります。この八つの点をお伺いするには大体三時間もあればと思ってその時間を予定してきたわけでありますけれども、何か十一時過ぎには御用事があるそうであります。そのために一つ他に問題を移しまして、また用事が済んでお帰りになったら質問を継続する、こういうふうにして私の質問に対してお答えを願いたいと思うのであります。  第一番目は最低賃金法です。ずいぶん国会でわれわれはもみましたが、現在これが実施をせられております。この実施状況をまずお伺いいたしたいと思うのであります。
  4. 松野頼三

    松野国務大臣 最賃法はことしの国会で御審議をいただきまして、その後さっそく実施をいたしましたが、短時日でございまして、必ずしも全国に徹底したとまでは申せませんが、今日最賃法地方審議会委員は全部任命が済みまして発足をいたしました。二番目に審議内容といたしましては、最賃法適用を受けられる方がすでに五万人以上にふえて参りました。件数は、今日まで確定いたしておりますのが五件、そのうち四件が静岡県、一件が神奈川県であります。その審議内容は、労働代表の方も御賛成をいただいております。また静岡県の中には、一部の労働代表の方が退場をされたというのが一件ございますけれども神奈川県はすべての労働委員の方が御賛成をいただいております。従って審議内容及び結果を簡単でございますが概略申しますと、非常に順調に進み、今後ますますふえてくるものが、今告示になりつつあるのがまだ相当ございます。今のは告示を済ましたものであります。中央におきましてはいまだに審議中でございまして、まだ中央決定してはおりませんが、地方賃金審議会で今日五件は確定をいたし、その対象人員が約五万人程度になるかと思いますが、その内容は、最賃法決定以前と比べますと賃金上昇率は一五%ぐらい上昇いたし、その業種をとってみますと、最賃法告示決定の前とあとと、大体一五%くらいの上昇を見て最賃の決定がなされております。なお詳細のことは基準局長からお答えいたさせます。
  5. 堀秀夫

    堀政府委員 ただいま大臣から御説明がありました通りでありますが、その業種について見ますと、ただいままでに最低賃金決定いたしました業種が二十業種でございます。件数はただいま大臣が言われたようなことになっております。それからその内容はいろいろ分かれておりまして、あるいはカン詰製造業水産加工業、それから織物関係手捺染関係機械製造業あるいは鋳物関係あるいはかわらの製造業関係あるいは陶磁器の製造関係というふうにいろいろ分かれております。正確に申しますと適用労働者数が五万六千四百六十一人、業者の数が約二千四百業者、このような状況になっております。
  6. 小林進

    小林(進)委員 この問題は私は決して了承するわけではないのです。ほんのお伺いしただけでございましてあとまた細部は掘り下げて参りますからどうぞ一つ……。  次に大臣にお伺いいたしますが、最低賃金法ILO一体批准をなされるお考えがあるのかどうかということ、これはILOの二十六号の問題でございますが、前の労働大臣は、私ども最低賃金法審議の過程の際においては、これが日本国会を通過した将来にはこれを批准することを十全考慮する、まあ批准したいという、そういう意思を表明をせられているわけであります。もう済んだのでありますから、一体現大臣はこの批准をどうされるつもりかということをお伺いいたしておきたいのであります。
  7. 松野頼三

    松野国務大臣 ILO議論になりますのは最賃法と、もう一つは今回新しくできました方の強制労働法強制労働法は、たしか古いのと新しいのと二つILO採択になっておりますが、新しいつい最近採択になりました強制労働法、この二つをこの次の通常国会に実は批准をいたしたいと準備を進めております。しかしさしあたり最賃法の方は直ちに批准することにそう異論もございませんので、次の通常国会には提案いたしたい。強制労働法の方は検討いたしたい。この二つ議論になるILOの問題でありまして最賃法の方は次の通常国会批准をいたしたい、こう今考えております。強制労働法の方はいたすつもりで検討を始めております。多少ここにニュアンスが違いますが、そう考えております。
  8. 小林進

    小林(進)委員 ILO最低賃金批准を次の国会にやりたいという大臣の明確なお答えを承りまして、私ども賛成をいたしたいと思います。しかし具体的に批准をされたときに、現在の日本のこの業者間協定等々が国際場裏でどういう工合に受け入れられるか、私どもは疑問を残しておりますけれども、これはまた将来の問題にして、一つお手並を拝見いたしたい、かように考えておりますが、この最低賃金の問題に関連いたしまして、最近の日本の貿易の進出について、また新しく日本賃金が諸外国、特にアメリカでございますが、問題にされている。これは新聞紙上その他の情報で伝えるところでありますから、詳しいところはわかりません。それは私どもの言うソーシャル・ダンピングというような意味の問題の取り上げ方ではなくて世界の文明国における労働賃金水準から眺めて日本賃金が非常に安過ぎる、その安い賃金で作り上げられた日本製品国際市場を荒らし回っている、こういうことに対する非難に近いようなものが現われて参りましてその結果日本輸出品相手国にすれば輸入品でございますが、その輸入品を受け入れる際に、その安い労働賃金ででき上がった品物に対しては相当額の関税をかけて、安い労働賃金ででき上がつた品物輸入を阻止する方式をとるところがある。あるいは何か相手国の国内の製品と価格のバランスがとれる程度に操作を行なう、あるいはまた輸入を制限する、こういうようなことがか具体的に進められているようにわれわれは受け取りますけれども労働大臣はこういうことをお考えになっているかどうか。あるいはこれに対して、賃金問題を主体にしてこれを一体どう修正をしていかれる考えか、もし御所見があれば承りたいと思います。
  9. 松野頼三

    松野国務大臣 先般もアメリカのある上院議員の方がそういうものを中心日本に御研究に来られまして、そういう議論が出るかと思っておりましたが、私に対してはそういう議論は出ませんでした。ただ御研究にこられたという程度で、まだそういう結論が出たという話は伺っておりません。ただ、日本賃金が諸外国に比べて高いか安いかという議論でありますけれども、これはいろいろな場面がございまして、少くとも今統計に載っておりますいわゆる標準賃金というものは、そんなにソーシャル・ダンピング的な過当に安いものだとは統計上出ておりません。ただ議論がもし出るとするならば、その他の部門、いわゆる賃金というよりも加工賃という方向賃金が不当に安いじゃないかという議論が出るかもしれない。簡単に申しますれば、これは家内労働的な仕事賃金と今日いわゆる法律的に言いますよりも、加工賃とか、あるいは請負賃というふうなものが非常に不当に安いんじゃないかということは議論が出るかもしれませんけれども賃金そのものについて諸外国比較して非常に安いのだというふうな議論は、日本をお調べいただけば出ないのじゃないか。もちろん高いとは私は言いませんが、そういうふうなソーシャル・ダンピング的に非常に賃金が過酷なことは、諸外国のだれにお調べいただいても日本賃金体系にはないと思います。     〔永山委員長退席八田委員長代理着席] ただもし議論するならば、加工賃とか請負賃、いわゆる賃金というよりも家内加工という方向が、私たちが正直に考えますと、どちらかといえばまだ進歩がおくれておるというふうな印象を持ちますために、今回家内労働法というものを実は作りましてこれはさしあたり賃金までは入りませんけれども、最賃法の中に、ある時期におきましては家内労働加工賃もいずれ議論になりましょう。その手始めとして今回家内労働法を作りたいという意味で、本日実は家内労働調査をしていただくために二十数名の方に委嘱をしたわけであります。どちらかといえば、この辺は日本労働問題としておくれておったところじゃなかろうかというので、家内労働法というものを目標に置きながら家内労働調査をしていただきたいということで、本日実はその調査員の方の委嘱発表をしたわけでありまして、議論が出るとなればそういう場面で、いわゆる賃金というものは、私は日本じゅうお調べいただいても、諸外国に比べてそんなに高いとは申しませんが、不当に安いという言葉は多少疑義があるんじゃないかと考えます。
  10. 小林進

    小林(進)委員 ちょうど私が第二問でお伺いいたしたいと思っておりまするところを大臣が先にお答え贈わりましたから、非常にお伺いするに都合がいいのでありまするが、たまたま大臣は今のお話で、日本賃金は諸外国に比べてそう安くない。高くもないけれどもそう安くないという御所見がございました。家内労働加工賃請負賃の問題は第六番目くらいに用意しておりますのであとでお伺いしますが、今仰せになりました賃金の問題です。これは私は大臣のお考えの一端に触れたような気持がしたのでございまするが、私は日本賃金に対して、今大まかに言って二つ考え方があると思っております。一つ考え方は、今もおっしゃったように、日本労働賃金、特に官公労あるいは一般組織を持っておる大企業会社に勤めている労働者賃金は高い、こういうふうなものの考え方が非常に強いようでございます。決して赤旗を振ったりあるいはストライキをやったりするような、それほど安いものじゃない。非常に賃金は高い。恵まれておる。しかもそのほかに諸多の厚生施設を持ったり、あるいは厚生年金を持ったり、自分はおろか家族の晩年までも保障せられていて非常に恵まれている。むしろ高きに失するくらい恵まれている。こういうふうなお考え方が、今、日本一般、特に保守党の方々に私は多いのじゃないかと思う。そういうような恵まれた中産階級以上と思われるような方を社会党は活用して、組織労働者だけを扇動して旗振りしているのが社会党だなどというようなことをよくあなたの所属していらっしゃる自民・党の方々はおっしゃる。だから高いと考えておる。ところが全く逆なのです。官公労を初め大企業会社においても日本賃金は安過ぎる。一体日本貧乏原因はどこにあるか。厚生白書的な貧乏は、失業者が多い、生活保護者が多い、家内労働者が多い、零細企業者が多い、あるいは日雇い労働者が多い、低所得者があって、その諸君が日本貧乏のもとをなしているという、こういう見解は白書的な貧乏観ではあるけれども、そうじゃない。日本ほんとう貧乏はそういう貧困が問題ではない、低所得者の問題ではない、日常りっぱに勤めている俸給生活者労働者階級賃金俸給がまことに安過ぎるというところに日本ほんとう貧乏の根本があるのだ、こういうようなことを、これは俗間の議論ではなしに、相当りっぱな学者やあるいは労働問題、雇用問題、賃金問題の研究家が、日本賃金は安過ぎるるということを言っておられる。そういうふうなまじめな議論が行なわれておるのです。賃金が安いという原因は一体どこにあるのか。それはいわゆる日本資本主義に突入する前に、明治の中期からでありますが、まず繊維工業から始まってきている。そのときには農村の孝女と称する女の子が、いわゆる移動的に流動的に、口減らし的に勤めていったことから日本賃金制度が生まれてきた。それから第二段階としては大正、昭和に入って、今度は農村の次男、三男、やはり農村における潜存失業者農村の口減らしやあるいは生活を詰めるため家庭を離れていったことから、日本賃金というものが、農村主体にして、そういうふうに要らない者、飛び出していった者を基本にして賃金構成が行なわれた。だから、今でも日本賃金単身者賃金である。家族、世帯を中心にして考え生活給という建前ではなしに、独身者が職を求めて町や工場へ行って働く、不景気になればまた帰農して、農村へ帰ってきて家族の一員となってたんぼ仕事をするというような、そういう不安定なところを基礎にして賃金というものが構成されたから、世界的にもこれは実に変則であり、そして非常に安過ぎるのだという議論が行なわれているのであります。私は、一体大臣がどの説をおとりになるか、どういう基本的な考えに立って労働政策雇用政策賃金政策をおとりになるのかということを非常に興味を持っていたのでありますけれども、今承りますと高過ぎる——高過ぎるとまではおっしゃいませんでしたが、日本賃金はどうも高いというふうな御見解のように伺いましたけれども、こういう二つの説に対して、一体どちらの考えにお立ちになるのか、いま少し明確に、大臣基本的な思想を一つ御披瀝願いたいと思います。
  11. 松野頼三

    松野国務大臣 私は賃金が高過ぎるということは少しも思っておりません。ただ諸外国に比べて非常にソーシャル・ダンピングという非難には当たらない。ただ諸外国における賃金決定というのはオーソドックスな方法がございません。従ってどれが妥当な賃金かというのは、諸外国ともに非常に今日迷っているのがほんとうの姿である。同時にその国の経済情勢生活水準によってきめるべき一つの要素があることも、これも否定できないことである。今日本で一番高いといわれておるのは電気ガスの三万一千円、三万二千円で、これが高い方の一つ平均賃金になっておりましょうが、これをドルで換算すればどうだ、これはアメリカドルから見れば問題にならないくらいである。しかし、生活水準とか国民の総生産とかあるいは一般的国民の常識からいうならば、三万一千円が今日高いか安いかというならば、これは全勤労者の中からいえば高い部類に入る賃金だ、こういう比較のとり方によって議論があるので、私の言うことも正しければ、小林委員のおっしゃることも正しいのであります。  その一つの例は、そういうところをとればまた議論が出るけれども、逆にいえば、大きな組織産業の中でも一番今日安いといわれておりますのが、年令その他ございましょうが、やはり繊維業木材業である。この統計で参りますと、三十三年は木材業は約一万二千円、繊維産業がやはり一万二、三千円、鉱業ですが、石炭が二万四千円、化学工業が二万四千円、この辺が一つ基準になるかもしれません。どこをとるかによって高い安いが、その比較対象によって、これはきまることであります。やはり、木材業というものは農村地帯であるという意味で一万二千円というのが今日の賃金になるでしょうし、あるいは電気ガスは都会にきまっているのだというので三万一千円が妥当であるという意見も出るでありましょう。従って、賃金は何によってきめるのか、これは世界中どこにしたって非常に議論のあるところで、ある地方においては、今回は生産性に応じてスライド制賃金をやろうじゃないかというのが、最近ある先進国労使間における一つ決定の例が出ております。今後は賃金アップとか定期昇給とかいうことではなしに、生産性に応じてやろうじゃないかというのを、ゼネラル・モーターというのがそういう方式をとって、将来の賃金生産性に応じて、われわれはこういう獲得をするのだということによって、労使間の協定を結ばれたところもあります。日本におきましても、ある私鉄が三年間の長期の賃金基準をきめられたところもあるわけです。従って、これは各企業々々、国々によって非常に違うので、高いか安いかという場合これは非常に議論になるところで、高いということも一部においては正しい、安いという方も正しいのであって、この高いか安いかということは、何をとってどうするのだという前提によってきめられなければならない。ただ諸外国が、日本ソーシャル・ダンピングだといわれるその非難には、私は、日本経済情勢を調べた限り当てはまらない。もし当てはまるなら、それは何だというと、組織されておらない未組織中小企業とか農林漁業とか、手内職の家内工業とかいうもので、これはまだ統計賃金として確定しておらないために議論の多いところであろう、こう私は考えております。ことに、最近の産業構造からいいますと、目立ちますのは、千人以上の大企業を一〇〇としますと、中小の三十人あるいは三十人以下のところの賃金は五〇、ある場合には四五、六となる、こういう格差があるということを私の労働行政において直したい。こういう同じような仕事をしながら、同じような労働をしておりながら、ある場合においては同じ地域に住んでおりながら、大企業の方を一〇〇という。パーセンテージをとると、中小の場合には五〇、ある場合には四五という、この格差を是正したいというのが、労働大臣として一番注意しなければならぬことではなかろうか。それで、最低賃金制というものができました以上は、幸い今五万人の方がことし実施されておりますから、来年はこれを三十万ぐらいに伸ばしていきたい。そして日本の格差をなるべく縮めていきたい。これは労働大臣として私が一番心配しておるところであって、そういう意味賃金考えていかなければならない。これは上がることを阻止する意味ではございません。しかし、どうしても上げられないという階級の方は何とか上げていきたい。これは何も厚生自書ではなしに、労働白書としても指摘しておることでありますから、こういうことを考えていきたい。もう一つは雇用の安定性であります。今日一番問題なのは、賃金と同時に、臨時雇が非常に、かえている。これはやはり長期雇用に吸収していくというのが労働者にとっての福祉の安定ではないかと思います。そうして賃金を上げていく。こういう意味で、どこを上げるかによって議論は百種百様出て参りましょうが、われわれとしてはやはり低い賃金、不安定な雇用というものを解消していきたい、こういうのが実は私の情熱であります。
  12. 小林進

    小林(進)委員 大臣はこれからどこかおいでになるそうでありますので、それではお帰りを待っておりますから、なるべく早くお帰りを願いたいと思います。  それでは亀井さんに今の問題でお尋ねいたします。今の大臣の答弁は全然答弁になっておりません。それで、そばにおいでになる皆さんから大臣に大いに教育していただきまして、もっとピントの合う答弁になるようにしていただかなければなりませんが、それで、私は、今の日本賃金が単身者を中心にして構成せられておる建前上、基本給というものが非常に安過ぎるのだ、安過ぎる関係上、それを一つカムフラージュしてごまかす手段として、家族手当を作ったり、年功賃金を定めたり、あるいは住宅手当を作ったりしているのです。そしてだんだん賃金が複雑化しているのですけれども労働省の賃金に対する指導といいまするか、その考え方としては、こういう複雑な賃金形態をむしろいいと思っていられるのか。あるいはだんだんそういう尾ひれをなくして、やはり賃金を単純化するのが一体ほんとうなのかどうか。その考え方が日常の指導に現われてくるのですから、その点を私は一つお伺いしておきたいと思うのです。
  13. 亀井光

    ○亀井政府委員 御質問賃金政策そのものにつきましては、労働省内におきましてもいろいろ論議もあり、また研究もいたしておる問題でございますが、ただいま小林先生の御質問の中で、日本の現在の賃金の体系が非常に複雑ではないかという御質問でございまするが、現実は私ども全く同感でございます。われわれの基本的な考え方としましては、できるだけ賃金体系というものを簡素化していく、そうしてその賃金がやはり生産性と見合う賃金といいますか、具体的に申しますれば、その人の持っておりまする能率と見合う賃金というものにだんだん置きかえられていくべきではないか。すなわちもっと詳しく申しますると、終戦後の生活給体系から能率給体系へというふうに、だんだん体系も、またその内容合理化されていくべきであるという考え方を持っております。
  14. 小林進

    小林(進)委員 今の労政局長お答えにもいろいろ問題はありますけれども一般質問大臣がおいでにならないので終わります。  次に、大臣が来るまでの間に一つお尋ねをする。これはこの前の問題の継続で、例の青海電化の問題です。労働省も一つ青海電化の実態というものをよく御調査願って、あらためてわれわれの方に御報告を願いたいとお願いいたしました結論です。この前は、書面で御回答下さればさらにいいですが、何も書面でなければというわけでもございませんというところで言葉を切っておいたのであります。その御調査の結果を一つお伺いをいたしたいと思います。
  15. 亀井光

    ○亀井政府委員 経過を詳細申し上げますれば非常に長くなりますので、そ一の概要だけを申し上げたいと思います。これも小林先生は十分内容を御存じのところと思いますので、そういう点は省略をいたしまして、問題の焦点を申し上げたいと思うのであります。  この電気化学の青海工場の処分をめぐりまする問題の発端は、三十三年の三月ごろ日本カーバイド、信越化学、昭和電工の三社の合併によりまする石灰石開発会社設立という案が協議をされまして、三十三年の…月十五日に、前記の三社の合併による明星セメント株式会社という会社の設立が一般に発表されたわけであります。そこでその発表と時を同じくいたしまして電気化学の青海工場とこの明星セメント株式会社との間に用地の売収をめぐりまする紛争が深刻化しまして、町議会あるいは農業委員会等、地元のこれらの機関におきましても賛否両論が対立して参ったのでございます。三十三年の四月に電気化学の経営者は、青海駅の貨物線が狭小だ、その他立地条件が劣悪であるという理由から、企業防衛の立場から明星セメント設立反対の方針を具体的に決定をいたしまして、その反対に乗り出したようでございます。一方電化の青海化学の五月二十八日の定期大会で、労働条件の維持あるいは生活の防衛、企業防衛の立場から、明星セメント誘致に反対する決議をいたしております。満場一致に近い数で可決されて、労使一体となってこの誘致の反対運動を起こしてきたという事実でございます。その間におきまして、三十三年の十二月に革新同盟という名のもとに五月の、先ほど申し上げました組合大会の明星反対決議は会社側と一緒になってやった八百長決議である、電化労働組合の幹部は会社と共謀しておるというふうに労使のそのときの行為を批判しまして組合を誹謗した内容のビラが散布されたわけでございます。そこで組合としましては、革新同盟というものは一体どういう性格のものであるかということにつきまして調査委員会を設置して、その電化の青海労組の中から組合員がこれに参加しているかどうかというふうなことについて実地調査を開始したのでございます。調査の結果、それらのビラは富山県の魚津市の印刷所で印刷されておるということがわかりましたし、またその調査委員の中にも革新同盟という同盟の中にも労働組合員が参加しているのではないだろうかということが調査の結果出ております。また一方会社の中で、職場を明るくする会などでいろいろなガリ版刷りの宣伝文が流されたり、また電化の実情は暗黒政治そのものだというふうな内容のビラがまかれたりしております。  そこで三十四年四月十八日になりまして、今申しましたように、電化の青海労組の調査委員会調査をして参りました結論が一応出ております。職場を明るくする会という今の工場内にできて参りましたそういう団体の行動というものは、先ほど申し上げました革新同盟の行動であるというふうな結論に達しましてこれは五月の大会の決議に違反しておるのだ、従ってこれは統制処分に処すべきであるという趣旨の報告書がその調査委員会から出されたわけであります。従って組合としましては、懲罰委員会を開きまして、その結論を本年の四月二十日の中央委員会に報告して満場一致で確認をされて、権利停止一年の者が三人、権利停止六カ月の者が四人というふうなことで、組合はそういう調査の結果現われましたものにつきまして処分をいたしております。そこで五月の二十八日になりますと、組合はその定期大会でいろいろな問題が論議されて参っております。さらにそれが六月二日になりまして会社としましては、今度は懲戒委員会を開きまして、その結果、就業規則違反あるいは経営方針の背反というふうな理由で、懲戒解雇一名、そのほかの懲戒処分をいたしております。これに対しまして懲戒を受けました組合員は、懲戒無効確認の訴えを新潟の地裁に直ちに出しております。さらに引き続いて、組合は七月二十五日の中央委員会におきまして、五名の組合員につきまして組合規約に基づく統制違反ということで除名を決定しております。これは大会の正式な手続で決定しておるようであります。会社側はそれを受けまして労働協約の規定に従ってその三名を解雇いたした。従って一この懲戒処分と三名の解雇をめぐりまして、紛争が現在続いておる。しかもこの解雇者につきましては、新潟地裁に対しまして解雇無効あるいは地位保全の仮処分の申請がなされて、ただいま裁判所におきまして、それらのものが審理されておるというのが現状でございます。
  16. 小林進

    小林(進)委員 今の労働省の報告にあったのは、私がこの前質問したのと同じでございまして、ちっとも違いがないのでございます。そういうことを長々とお聞きしたいために質問をしたのではないのでありまして私のお尋ねしたいことは何にも入ってない。あらためて一つお伺いいたしますが、この青海電化の労働者の人権問題、一体組合員の人権が民主的に守られているかどうか、こういうことを一つ調査願ったらどうか。第二番目は地元の労働基準監督署、これは堀さんがおいでになりませんのであとでもいいのですが、青海電化の内部の調査が監督署では十分おやりになれないのじゃないか、こういうふうな見方をわれわれしてきたのでございまして、監督行政についても本省から直接調査をおやりになった方がいいと思うのでありまするけれども、そういうことをおやりになったかどうか。まずそこら辺からお尋ねを申し上げたいと思うのであります。
  17. 亀井光

    ○亀井政府委員 基準局の問題は、後ほど基準局長が参りまして御説明があろうかと思いますが、私どもとしましては、地元の県の労働部を通じまして、詳細な資料あるいは調査の結果につきまして報告は受けております。
  18. 小林進

    小林(進)委員 詳しい報告があったとおっしゃいますならば、その中に労働者基本人権がほんとうに守られているかどうかという報告があったと思いますが、いかがでしょう。
  19. 亀井光

    ○亀井政府委員 具体的に、どういう工合に組合員の基本的人権が侵されたか、また侵されるおそれがあるかというようなことにつきましての具体的の報告はございませんが、一応県の報告を詳細に見て参りますると、組合のいろいろな活動というものは、やはり組合の活動として正当な手続を経て行なわれておるということが、われわれとしては、確認されるわけであります。たとえば先ほどの組合のいろいろの権利停止その他統制違反に基づきまする懲戒処分、あるいは統制違反に基づきまする除名というような問題につきまして、はたして組合が正当な手続で正当な決定をしたかどうかということを調べました結果は、正当な手続で行なわれているというふうにわれわれは了解しております。
  20. 小林進

    小林(進)委員 私が九月二十一日にそういう労働者基本問題をお伺いいたしましたのは、馘首の問題だとか、懲戒だとか、処分だとかいうことの手続が民主的に行なわれたかどうかということだけの質問ではございませんでした。もちろんそれも含まれておりましたが、それに加えて、この会社には一つの問題として、守衛さんが七十人——これはもっと多いと思いますが、最低七十人、消防が二十人、社会係が五十人というものがおられてそして労働者が青海町の近くの糸魚川あたりまで出て歩くのまでもちゃんと尾行がついたり、監視がついたりしているということが現実に行われている。あるいはまた労働者の私宅に配付せられる信書の秘密が犯されておるというふうな懸念もある。こういうようなことが実際にあるのかどうか。私どもはあるように承っておるけれども労働省の方の御調査はどうか、一つあなたの方もこれをお調べを願いたいということを私はお願いいたしました。会社では、労働組合の役員選出の場合にも、会社の好ましからぬ人物が出ようとすると、会社側の方で、お前やめた方がよかろう、こういうことで事前に何か、命令ではないけれども、やめないとどうも損だというふうな話が、一、二回ならず、その例がある。こういう点もお調べ願ったかどうかということを私はお尋ねいたしました。組合の主要な役員がやめますと、全部といっていいくらい、ほとんど会社の、重要とは言いませんけれども、よい地位です、係長以上のよい地位におつきになっておいでになる。そうしてその人・たちが特別のグループを作って、今度は組合を会社的に育成強化をする。     [八田委員長代理退席、藤本委員長代理着席〕 会社側の粛清の有力なる末端機関となって組合を適当に指導をする、そういう役割をおやりになっておるが、こういうことも一つお調べ願ったかどうか。あるいは、これは自治庁の方がおいでになったそうでありますからあとでもお伺いいたしますが、選挙のときに会社がちゃんと特定の候補者の名前を教えてそれを選挙するということにきめて、予行演習までやってそうして投票をおやりになっておる。こういうようなこともお調べになったかどうか、これを私はこの前お伺いいたしたのでございます。局長はこういうところには全くお触れになっておらないのでありますが、私のお尋ねしたいのはそういう点でございますので、一つ明快なる御答弁をお願いいたしたいと思うのであります。
  21. 亀井光

    ○亀井政府委員 今御指摘のいろいろな具体的な問題につきまして、県当局といたしましても、過去の過ぎ去った一いろいろの事実でございますので、それをフォローいたしまして判断するということは非常にむずかしいのだという実は連絡がございました。はたしてそういう事実があったかどうかということは、いろいろ当事者に聞かなければなりませんでしょうし、またそういう問題は非常にデリケートな問題でございまして、その場に居合わせるとか、あるいは立ち会っていないと、なかなか心証というものも得がたいということで、県当局としましてもその調査に非常に苦労しておるということの報告は参っておりますが、具体的にそういう事実があったのかどうかという明確な報告は実は受けていないのでありまして、われわれとしましては引き続きそういう問題につきましては、関係者をたずねて具体的に調査を進めていくという以外に手はないと思うのでありまして、そういうようなことにつきましても、なお引き続き県の労働部におきまして調査をしていただいておると思いますが、その結果をまだ具体的に私の方に報告を受けておりません。
  22. 小林進

    小林(進)委員 巷間言われておることでございまするし、これは世間の評判だけではございません。私どもが他の官庁に行っても聞いておる。具体的に言いますと支障がありますからやめますけれども、一応問題を知っておられるお役人の方々は、これは数年前にあった近江絹糸よりももっとひどい、これは人権闘争だ、お役所仲間でもそういう話を公然としておられるということを私はし、ばしば聞いておる。けれどもこういう問題は一番敏感にして、しかも一番こういう問題を調査して、そしてこういうことのないように日本労働行政を民主化するために努力してもらわなければならぬ主管官庁である労働省の、しかもあなたは労政局長として、行政官としては一番トップ・レベルにおられる責任者なんだ。それが何ですか。あるようなないような、まだ調査中で、しかもやっているでしょうなどという、そういう無責任な答弁じゃ、これからの近代的わが日本における最も重要なる労働行政を担当していただくためには私は非常に心細い。涙が出ますよ局長。われわれに涙をこぼさせることのないようにいま少し、他の官庁あたりが気にしている以上に、もう少し敏捷にして、神経を使って、そういう問題をせめて具体的な——私は警察官じゃないし、検事じゃない、判事じゃないから一々の証拠物件をあげて白だの黒だということを言うわけではありませんけれども、大まかなところくらいはちゃんとつかんでいただいて、私は明快な答弁をしていただかなければならないと思うのです。何かあなたの答弁を聞いていると、労働行政を担当して日本労働行政を民主化しようとか、労働者の立場を保護しようとか、一歩でも前進させようとかいう意欲がちっとも見えない。何とかうまいことを言って逃げてしまおう、逃げてしまおう、そういう御答弁しか私は伺うことができません。他の官庁の方もお見えになっておりますから、あなたの問題ばかり追及もできませんけれども、これはもう一回調査して下さい。今の点につきまして、そういうことじゃなしに、いま一回明快な御答弁をいただきたいと思います。
  23. 亀井光

    ○亀井政府委員 御指摘の問題はいわゆる労働法上、労使関係以前の問題でございまして従ってそれだけに非常に調査がむずかしいということは、先生も御了承いただけると思うのですが、しかも過去の事実ですし、またそういうところに立ち会っていない、あるいは居合わせていないということで、県当局としても苦心をして調査しておるだろうと思いますし、まだ結果がきていないところを見ますと、まだ具体的の確証を県として握っていないというふうに判断せざるを得ないのでございますが、今御質問の趣旨もございますので、さらに県の方を督励いたしまして、具体的にもう少し調査を進めて参らせるようにしたいと思います。
  24. 小林進

    小林(進)委員 これは私は大臣がおいでになったらお伺いをいたしたいと思うのでありますが、これは私の主観が入りますから、労政局長の御意見だけ承ればいい。私は青海電化の問題について、電化の労働組合の諸君が二つの間違いを犯しているというふうに考えているのです。その第一番目は、やはり労働組合がいわゆる企業防衛、あるという立場に立って、自分の会社の独占的な企業を守ろうとしている。会社の独占的な企業を守ろうとして、そして競争する会社の進出を拒否する、妨害する、こういうことを決定しているということなんです。そこには片一方、進出しようとする明星セメント会社にも労働者がいる。その同じ労働者でありながら、横につながる労働者の連帯性だとか、そういう考え方というものは一つもないのです。ただ自分たちの労働を買っている買い主の、いわば搾取者だ、搾取する企業だけを守ることを考えて、同じ立場にいる労働者を、これはむしろ産業別労働組合という組織がきちんとでき上がっていれば、こういうばかげた、企業々々に立てこもって企業一家主義といいますか、企業に忠誠を誓うような、こういうばかげたことはできっこない。自分たちの労働者を犠牲にした企業防衛のやり方だ。これは私は一つの間違いを犯しているのじゃないかというふうに考えているのであります。同じ理屈になりまするけれども、第二点は、そういう考え方に立って労働者労働者の首を切る。しかも首を切る理由が、同じ仲間の労働者がその企業を防衛しないからといって、僕らにいわせれば資本家に忠実でなかったから、しかもそれは職務に忠実でないとして首にする。企業を防衛するとか、他の企業の進出を阻止するとかいうことは資本家同士の争いであって、それに協力しなかったからといって労働者を首にしているという、こういう大きな間違いを犯している。私はこの二つの間違いがあると思うのでありまするが、労政局長のお考えはいかがでありますか。
  25. 亀井光

    ○亀井政府委員 御指摘の中心は、日本労働組合は企業別組合であるというところに問題があるという御指摘でございますが、私もその点は同感でございます。しかしそれかといって、超企業別組合が望ましいか望ましくないかという組合の組織論の問題になりますると、これはわれわれとしましてあくまでも中立の立場を保っておるのでございまして、そのこと自体は、組合員みずからが自主的に決定をいたす建前になるべきだというふうに考えておりますが、ただ諸外国の例等が超企業別の組織になっておる。いわゆる近代化された国におきましては、そういう形のものがあることは、これは一つの事実であることは確かであるし、一方また日本労働組合の組織というものが企業組織主体である、あるいはそれが数が多いということもまたこれは事実でございます。しかしそれのよしあし、あるいはどちらが望ましいかという判断につきましては、これは組合員みずから決定すべき問題ではないかというふうに、基本的な問題としては考えております。  そこで御質問の青海電化の労働組合が、明星セメント株式会社の誘致に反対するという会社の態度を支持しておる。組合みずからそういうことを大会で決定することが、組合運動として少しおかしい方向にいっているのではないか、しかも労働者の連帯ということから考えれば、そこに誘致さるべき工場の労働者とやはり利益が一致してこなければ、ほんとう労働運動というものはできないのではないかという御質問でございます。法律的に、形式的に議論をいたしますると、条件を全く同じくする他の企業が、狭い地域において二つ競争的にできるということは、具体的に申しますれば、青海電化工場の企業の成績が将来において低下するおそれがある。低下するおそれがあるとすれば、その結果は、労働者労働条件というものに直接影響してくることになります。そこで労働者企業意識と申しますか、そういう点からいって、自己防衛という見地から、会社側のそういう方針に対して組合みずからも協力していく。従ってそういうことをすること自体が労組法上にいう労働組合のあり方としておかしいじゃないかということになりますと、これは法律的、形式的には直ちにそれをもって、そういう活動が法律に違反する、あるいはそういう活動をする組織が、労働法上の労働組合ではないのだというふうには断定しかねるのではないかというふうに考えております。そこで問題の根本は、やはり日本労働組合の組織企業組織であるというところに問題があることは、これは先生の御意見と私一致する、こう考えております。
  26. 小林進

    小林(進)委員 この問題に対しては、まだ疑問点を幾つも残しておりまするが、これはまた大臣がおいでになったら繰り返して御質問することにいたしまして、自治庁、農林省、通産省がお見えになったそうでございまするから、労働省にはちょっとお休みをいただきまして、自治庁にまずお伺いしたいと思うのであります。自治庁、どなたがいらっしゃいますか。
  27. 藤本捨助

    ○藤本委員長代理 岸行政課長が見えております。なお農林省は伊東農地局長、通産省は東説明員が見えております。
  28. 小林進

    小林(進)委員 自治庁にちょっとお伺いしますが、青海町のことはきのう電話で申し上げましたから、アウトラインは御承知願ったと思うのでありまするけれども、新潟県西頸城郡青海町一と申しまして、以前は人口三千ぐらいの町でございましたけれども、青海電化というカーバイトを作ったりセメントを作ったりする会社ができ上がりましたら、人口が一万七千にふくれ上がってしまいました。その一万七千の人口のうちの大体一万人が一企業会社の職員、あるいは労務者、あるいはその家族、関係者、こういうふうな構成になっているそうでございます。そういう人口の構成から参りまして、これから申し上げることが、当然だといえば当然のことでありまするが、その青海町の町長さんは一企業会社青海電化のかって課長であられた。今でもやはり関係を持たれて、青海電化株式会社から若干の、若干といいますか、応分の俸給をおもらいになっておりまするし、籍もちゃんと持っておいでになるそうであります。こういう人が青海町の町長をもう三期か四期お勤めになっている。それから青海町の町会議長も青海電化の現在工場次長がおやりになっている。ことしの四月に行なわれた選挙には、この青海電化という一企業体から十四名——この町会議員は定員二十六名でありますが、十四名この工場から町会議員に立候補されて、これが全部当選されている。しかもその当選が、今申し上げました町会議長を一位にいたしまして、十五位までずっと青海電化の会社方々が当選をしておられる。そのまん中にたった一人だけ青海電化に出入りをしております下請会社の人、同じ青海電化の従業員でありましたけれども、今は青海電化から俸給をもらっていないから従業員ではありませんけれども、この人一人だけが十番目に当選しておりますが、この人を含めて一位から十五位まで一企業会社の方がずっと当選をされている。しかもその序列も、全部そうではないが、やはり偉い人、次長から課長というような、大体そういう序列で当選をされている。こういう格好ができておるのでございます。その結果、この町がいろいろな特異な現象を現わしている。たとえていえば、この町には映画館が一つもない。それは青海電化が、従業員そのために映画館なんというものはあまりためにならぬ、労働強化といっちゃ悪いかもしれませんけれども、よろしくないという考え方からかもしれませんが、映画館がない。それに料理屋がございません。これもいいのかもしれません。企業会社の成績を上げる意味においては、料理屋などはいかぬかもしれません。私ども一目調査に行って参りましたけれども、すみからすみまで料理屋を尋ねて歩くわけにいきませんので、町の人の一つの話を聞いた程度でありますから、あるかないかはっきりはわかりませんけれども、そういう状況であります。それからいろいろの現象が現われておるのでございまするが、それはそれとしてあまり長くなりますると御答弁もなんでございますが、こういう一民間企業会社が、言葉を強めて言えば一つの町の町政を独占しているというか、支配をしているというか、こういう形が現われている。こういう表現は間違っているかどうか知りませんが、実はそうです。一企業会社が町長、町会議長、町会議員の過半数を持っておるのですから、支配しているという格好をとっておる。こういう特異な現象を自治庁あたりはあたりまえなものとしてお考えになっているかどうか、こういう形がまたほかのどこか市町村にもあるのかどうか。もし特異な例として他にもあるというならお聞かせ願いたい〜思うし、これが全国でもただ一つだというならお聞かせ願いたい。
  29. 岸昌

    ○岸説明員 ただいまのお尋ねの第一点は、そういう一つ会社の関係者が町長を初出議員の大郷分を占あておる、そういうことが正常な状態であると考えるか、そういうお尋ねであったと理解いたしたわけでございますが、これは、一般的にそういう状態が常にある、またあるべきであるということは申せないわけでございますが、ただいまのお話のように、住民の過半数、 一万七千人のうち一万人近くの割合を一会社の関係者が占めておるというような条件のもとにおきましては、先生も御承知の通り、現在の地方制度のもとにおきましては、町長も、また町の議会の議員もそれぞれ住民の選挙によって選ばれるわけでございますか一ら、選挙の際に、そのような住民の構成というものがおのずから反映してくるということはやはりやむを得ないのではなかろうか。これを特に人為的に左右をするというようなことは、ただいまの地方自治の本旨から申しましても、または選挙の建前からいたしましても、できないと考えられますので、そういう選挙の結果、住民の意見に基づきまして、公選の職にある者がそういう形で選ばれて参るということは、そういう住民構成を前提といたしますれば、やむを得ないのではなかろうか、かように考えるわけでございます。  それから、ほかにこのような例があるのかというのが第二番目のお尋ねであったと理解いたしましたが、私どもも、いまだ、ただいま御指摘のような観点から各市町村の長なり、あるいは議員なりの構成を調べてみたことはないのでございますが、きのう御質問の御通告がございましたので、私どもの方で大規模の償却資産——自治庁長官が評価をすることになっております。そういう関係から大規模の工場があると思われます市町村を調べましてそれの市町村の人口を比べてみますと、比較的に人口の少ない市町村におきましては、現実に議員構成を、あるいは町長の職を調べたことはございませんので、正確にはお答えいたしかねますが、同じような現象あるいはこれに近い現象があり得るのではなかろうかと想像しておるわけでございます。これは多数ございますが、たとえば福島県の磐梯村、これは人口七千六百程度の村でございますが、ここへ日本曹達の相当大きな資産があるようでございます。それから石川県の野々市町、これは五千八百くらいの町でございますが、ここにもやはり大規模な丸一紡績と申します会社の償却資産があるようでございます。その他静岡県の富士川町、ここには日本軽金属の会社がございます。それから兵庫県の加古郡の阿閑村、ここは八千四百くらいの人口でございますが、ここに別府化学の大規模の償却資産があるようです。それから福岡県の香春町、これは六千人くらいの人口でございますが、ここに日本セメントのかなり大規模な資産がある、こういう資料が出ておるようでございます。これは繰り返し申しますが、そこの議員の構成なりあるいは市町村長がそういう会社から出ているというような調査ではございませんが、ただいまのような条件のもとにおきましては、同様な現象が起こり得ると考えられるわけでございます。
  30. 小林進

    小林(進)委員 その現行法律のもとにおいてこういう現象が起きるのは余儀ないという御答弁は、それはその通りなんです。私はそういうきまり切ったことをあなたにお尋ねしておるのではない。しかし、現行の自治法が初めて立法化されるときに、こういう一企業体が自治体を支配する、独占するなどということを予想して私はこの法律が作られたのではないと考えられる、こういうことなんです。これを作るときには、まさかこんなおかしな現象のものができ上がるなどということを予想した立法者はなかったのじゃないか、こういうことなんであって、今もお尋ねしますと、詳しいことはわからぬけれども、固定資産税その他の関係からは、どうも一企業会社が町政の大半をまかなっているという形ができるとおっしゃいましたが、お聞きすれば幾つもある。これはこの法律をそのままにしておけないが、やむを得ないだろうということで放任しておいたならば、そこの害が起きてくるのじゃないか。むしろこんなところが幾つもあるなら、もう少し精密に調査をしていただいてその弊害が一体どんなに現われているか、長所がどんなに現われているか、だから法律はどのように修正しなくちゃならぬ、私はそろそろそういう作業に入っていただいてもいいんじゃないかと考えるわけです。今お聞きしたら、私の電話で初めて気がついた。なるほどこれに近いものがあったという。これじゃどうも話がおそ過ぎますよ。おそ過ぎますが、それは一つ結論にいたしまして、私は青海町の問題なんかあなた方どの程度御存じか知りませんが、私の知っている程度のことをあなたにお知らせをしながら私は御質問をいたします。  そのほかに町会議員なんかもその通りです。私は十四名と言ったが、そのほかに社員ではないけれども、社宅の配給米を一手に扱っているというような商店から一名、それから工場内の粉末石炭の処理を一手に請け負わしている請負組合から一名、そういうのが入って、二十六名の町会議員のうち十七名が電化の意のままで動く議員で構成せられているわけでございます。その結果、私ども調査しただけでも、青海町に御幸橋という永久橋があるのですが、それを町費で建設した例を私は申し上げておきますが、町費でかけた。ところがそれは何か山の中へ行く県道でもなければ田道でもない、村道でもないところにそういう永久橋を作る。その近くには国道が走っているけれども、国道の橋はまだ木造でがたがたしておるにもかかわらず、まるで行き詰まりのそういうところに町費でこういう永久橋がかけられる。町民は不思議でたまらない。たまらないでおりますけれども、一年か一年半たつとその御幸橋の向こうの方に青海電化のセメントエ揚が設立をせられる、なるほどそれでわかった、こういうような形も現われている。何かこの橋が一千六百万円の町費でできたそうでございますが、そういう形のものが現われている。  それから青海町では工場誘致条例というものを三十四年の一月に施行しておるのでありますが、この青海電化の田海の有機合成工場を建設する際に、ちゃんとこういう誘致条例などというものを作って、そして青海電化の田海合成工場を新設するときにちゃんと適用しておる。ところがこの工場誘致条例というものは、今度問題になっている明星セメントというものをその地区で設立しようというときには、こういう条例は適用しない。だから町民に言わせると、何だ、これは青海電化の工場だけを誘致するための工場誘致条例であって他の工場に対しては不誘致条例じゃないか、こういうふうな形で現われておる。これはわれわれに言わせれば、そこで町政を独占しているからこういうことができ上がっている。条例を適用したり不適用したりしている。それから町民の黒姫山の地上権及び採掘権あたりを取得するにあたっても、非常に安い値段で手に入れている。それから日本セルロイド会社という他の会社に対しては、そのうちのほんの九分の一か十分の一か、九牛の一毛というのですか、ほんの一部分の採掘権を五年間二千五百万円でこれを他の会社に譲渡している。町議の決定に基づいて、地上権や何かを安く獲得しておいて、それを他の会社に、ほんの一部分を高々と譲渡している。法的には何か理屈があるそうでありますけれども、町の財政それ自体から考えていきますと、自治体というものは全く犠牲になって、自治体の決議に基づいて一企業会社がすばらしいもうけをしている。町有財産をそういう形でもうけさしているという節がある。それから町の警察が、私ども警察署長にお会いいたしました。調査に行ったのでありますが、どうもこれは具体的にどういう例があるというわけにはいきませんし、一末端の警察署長あたりにそういう過重な負担をかけるということはお気の毒でありますから私は何も言いませんでしたが、総体的な感じから見て、まことに電化一辺倒という形が現われている。先ほども申し上げましたけれども、選挙なんかにも非常に露骨な、青海電化一本の選挙が行なわれているけれども、警察というものはなかなか手も出せない。選挙の取り締まりもできない、そういう形が現われている。電化さんのおやりになることならば警察も黙って見ておる。そういう形をわれわれは看取せざるを得なかった。それからああいう電化工場、三千四、五百名から四千名近くの労働者もおいでになっているのですが、その大きな電化工場の煤煙が町をおおい、農産物に対する被害というものも非常に大きい。町民は洗たく物もほしておけない。黒くなってしまう。夏も窓をあけておけない。そういうはなはだしい煤煙が出たり、町がまつ黒くなっているけれども、電化さんのおやりになることに対してはものもしゃべれない。町会でもその不満は取り上げてもらえないし、泣き寝入りする以外にない、こういう形も現われている。電化工場の住宅の前を流れている川は、これは海に注いでおりますけれども、その川に糞尿や汚物がそのまま放出せられて、臭気とその不衛生は常識以上のものがあるけれども、町政の中においてもこれを論議すれば、禁ぜられているわけではありませんけれども、どうも口に出して言うことができない、こういう実情だ。これは直接自治法との関係ではございませんけれども、町の名前を勝手に、今までは固有の北斗通りという名前があったのを、電化さんの名前を永久に伝えるために電化通りという名前に変えられてしまった。商店ができるのを避ける会社の方針で、物資の配給ルートを通じて商店を圧迫する。料理屋は工場の能率のためや家庭の円満のためによろしくないという理由で、青海の町には一軒も設立を許されない。映画館も電化さんの直営で、他の設立は許されないというふうに、有形無形の町の支配状況というものは全くおそるべきものがある。こういう形が自治体に現われているわけでございますが、これも自治庁として、法律の建前上違法じゃないからそれはやむを得ないとおっしゃればそれきりでありますが、こういうことを今までお調べになりましたか、お知らせ願いたいと思います。
  31. 岸昌

    ○岸説明員 先ほども御説明いたしましたように、そういう条件の市町村におきましては、議会なんかの構成が、会社関係の人が非常に多くを占めて参る、こういうようなことは想像されるわけでございますが、このこと自体は直ちに悪いことであるとは申せないわけでございまして、そのために市町村の行政がゆがめられている、あるいは公共の福祉を害するというような事態が起りまして初めて市町村の行政のあり方として問題になるわけでございますが、私どもは幸か不幸か、そういった具体的な事例につきましてまだ承知いたしておりません。従いまして青海につきましても、本日御指摘をいただきまして初めて承知をいたしたような次第で、私の方から調べた事実はございません。
  32. 小林進

    小林(進)委員 私は自治庁としては少し勉強が足りないと思うのです。非常に残念ですが、あなたばかりに質問していては時間もありませんから、今ここで申し上げます。一番目には町税収入における電化社の直接間接の影響、これをお調べを願いたい。それから町の歳出における電化の直接間接の奉仕といいますか、寄付をしたり何かいろいろやっていると思うのでありますけれども、そういうような内容を承りたい。それから本年の町長、町議選挙の実態です。これは私どもは非常に疑点を持っております。これは自治庁としても労働省とは変わった立場において選挙の実態を御調査願いたい。それから青海町における一般商店の数と他の町村との比較、商店だとか料理屋こういうこともお調べを願いたい。私ども調査に行ったのです。そして青海電化の重役さんにも、労働組合にもお会い願いたいということで会見を申し込んだのです。われわれは直接行ったのじゃいけないと思いまして、こういう話は一番公正な労働基準監督署にでも通知をして署長さんにも行ってもらおうと思いまして方々探したけれども、日曜日で監督署長さんがおいでにならなかった。やむを得ずわれわれの方で直接会見を申し込んだのです。そうしたら六時から労働組合と会おう、それで今度は経営者側が七時からあなた方にお会いしよう、こう言われたので、私どもは二時ごろ1何しろこちらはお願いしてなるべく公正にやろうというところから、それまでの間は旅館に行って休んでいようと思いまして、青海町の旅館に行きまして、済みませんけれども休ませて下さいといったが断わられた。そこには青海電化工場御指定旅館という看板があった。だめです、何でだめだ、満員でございます、一人もお客さんがいないのに、満員ですからだめだと断わられた。これはどうも弱ったということで、今度は次の旅館に行きましたら、またやはり青海電化指定旅館、一つ休ましてくれといったら、いや、部屋はあいていますけれども手伝いがいません、数が足りません、若い人がごろごろしておりますけれども、手伝いをする人がだれもいませんから、お休み願うわけにいきません、こういうふうに断わられて、われわれはその町の旅館においては休むことができなかった。それはどういう意味かわかりませんけれども、すなおに見れば、電化に不利な調査をする者は、旅館といえども一歩も入れない、そういうふうに解釈する以外にない。がらあきの旅館なんですが、そういうことで断わられてきたのであります。そういうことも一つ含めて御調査願いたいと思います。  なおそのほかに警察と会社との関係、これはやはり若干の寄付金が警察にいっているのじゃないか。これはあっても今の情勢ですからいいけれども、その点もお調べを願いたい。  それから電化の社宅がある。これは一般の住居なんでございますが、これが一般町民としての基本的な権利を享受しているかどうか。何か工場や拘束時間の延長みたいです。一般市民のいこいの場所としての自由が与えられていないのじゃないかという感じを受けておるのでございますが、そういう点も一つお調べ願いたい。  それから電化の工場というのが非常に大きいのでありまして、構内や社宅への道路の管理権と道路関係法規との関係、普通は県道、公道並みに通行を許しておるけれども、都合が悪いと私道だといってぴたりととめられる。私なんかが行ったときに、火事があってポンプが走って行ったけれども、そのポンプをとめたというような話があって、だいぶもんでおりました。こういう社宅への道路の管理権と道路関係法規の関係及び社宅居住者の基本的人権との関係をお調べ願いたい。  それから先ほどもちょっとお話がございましたが、全国市町村においてこういう例が幾つもあるのか。幾つもあったのじゃ困りますが、そういうことも一つお調べ願って、ごめんどうではございますけれども、いま少しく明確で具体的な御返答をお願いしたいと思います。
  33. 岸昌

    ○岸説明員 ただいまの資料要求の中で、町税関係の問題、それから町の歳出の分析の問題、町議の選挙の実態の問題、それから最後に御指摘ございました他の市町村に同様の例があるか、この四つにつきましては自治庁の所掌事務でございますので、私どもの方で責任を持って調査をいたしまして御報告いたしたいと存じますが、警察との関係、社宅の問題、道路の問題、商店の問題につきましては、市町村に関係はございますが、自治庁の所掌事務とはいえないと思いますので、それぞれしかるべき官署の方へ御要求願いたいと思います。
  34. 小林進

    小林(進)委員 それでは自治庁は御苦労さまでございました。  次に農林省の方にちょっとお伺いしたいと思います。これは例の農地法に関係する問題でございますので、もう十分御存じだと思っております。新聞紙上によりますと、あなたの下におられる管理部長さんの大体の御意見なんかも出ておるようでございますから十分御承知だと思いますが、この明星セメント会社が例の青海の町でセメント工場設立のために、何か六万坪の予定地の購入を計画した。そのうち三万坪のたんぼを工場に転用してもらうが、あとの三万坪は山林でありますから農地法には関係がないわけでございます。その農地の買収の問題について、だいぶいろいろな問題が出ておるのでありまするけれども、聞きますと、明星セメント側では一反六十万円、坪二千円になりましょうか、そのくらいな価格で盛んに買収をおやりになっているという。現在までで八千八百坪ばかりの買収を完了せられた。さしあたり六万坪の中の八千八百坪ですから、完全な工場を設立するわけにはいかぬだろうけれども、この八千八百坪だけについて工場用地の許可をしてもらいたいということで昨年新潟県へお出しになり、新潟県から金沢農地局を経て農林省へ申請をされた。聞くところによりますと、五千坪から一万坪か二、三万坪あたりは慣例としてブロック別の農地局あたりで許可になる。五千坪以下は県の許可でよろしいそうですし、五万坪以上くらいになりますと農林省直接の許可を要するというふうに聞いております。この問題は今農林省にひっかかっておりまして、なかなか許可をお出しにならない。私どもは何も明星とか電化とか、資本家同士のけんかには縁もゆかりもない。むしろ問題は、労働者労働者の首を切ったというところから私どもがいろいろお尋ねしなければならぬ問題が出てきたのでありますから、一つこの問題について今日までの経緯を局長さんからお聞かせを願いたいと思います。
  35. 伊東正義

    ○伊東政府委員 今御質問の点でありますが、先生もそのことは御承知の通りでございまして明星ができます前に、あそこにはたしか三十一年でございましたか、三社で石灰石開発株式会社という石灰石を掘る会社を作っております。これは三十一年にできまして、たしか三十三年に今お話しの明星セメントという会社を作ったわけであります。それで去年の八月ころ最初の農地転用の許可申請が出ております。これはキルンを二基作るということで出ておりますが、農地転用その他の関係で現在は計画が変わって、キルン一一基ということで出ております。昨年の八月ごろ申請が出まして、町の農業委員会では意見を保留して県の農業委員会に出すということになりまして、県の農業委員会では、許可相当でないかという返事を知事の諮問に対していたしております。それが昨年の十二月ごろでございましたか、新潟の知事さんが、実は四社とも昔から新潟県内の工場であるので、何とか自分が中に入ってまとめたいということで四社の間の調停に立ったが、これがうまくいきませんで、ことしになりまして県の方でも、許可して差しつかえないのじゃないかという意味の意見をつけて金沢の農地事務局に申請が出ております。これはことしの二月でございます。そういう申請が出ましたが、新潟の知事さんとしましては、やはり自分としては、県内の問題であるし、自分が中に立って、農林省で結論を出す前に私が何とか調停をやりたいということを私の方にも大臣にも言っておられますので、私の方としましては、この問題につきまして直接結論を出さずに、実は知事さんの調停を待っておるというような状態でございます。今先生のおっしゃいましたように、五千坪以下でありますればこれは知事の許可でございます。五千坪をこえますと農林省になりますが、問題が問題でありますの一で、金沢事務局でなくて実は農林省の方にこの問題が来ております。今来ておりますのは、先生からさっきお話がありましたように、坪数でいきますと八千余坪であります。そのうち農地法の適用になります農地はたしか六千四百坪でございます。そういう申請が出ております。それでこの問題は、実は農地法といいますか、あるいは農業問題と離れまして、先生御指摘になりますように、四社の間の紛争の問題が青海の町自身の問題というなことにも相なっております。それから実はこれは非常に異例でございまして、両者であそこの狭い土地——大体耕地は十町歩くらいでございますが、これをめぐりまして両者で工場を建てたいということがございまして、両方で農地の所有者と話し合いをして農地転用の許可を申請するということになっております。図面をお見せするとおわかりになるのでございますが、かすりのように転々と飛び地になりまして、両方が買いたいというような妙な状態になっております。農林省としましても、それだけではなかなか判断いたしかねるところがございますし、知事さんの調停をお待ちしておるのでございますが、農林省としても判断する場合の参考にという意味で、通産省にも実は照会しております。通産省に対しましては、最近企業にいろいろ生産制限がございましたり、いろいろな問題がございますので、大きな問題については大体全部照会しております。これは問題があろうとなかろうと、私ども農林省だけで産業関係、工業関係の判断をしてはまずいことがございますので、そのつど照会をいたしております。これについても照会をいたしておりまして、通産省から返事をもらったのですが、先ほど申し上げますように、この両者が工場を建てるためにこれから農地を買いたいというようなことを言って、妙なことになっておりますので、そのままの農地転用の坪数ではたして明星側の言うようなセメント工場ができるかどうかということはにわかに判定しがたいというような意味の御返事を実はもらっております。私どもとしましては、先ほどから申し上げますように、新潟の知事から、この問題は自分の責任で何とも解決したいということを数回言われておりますので、私の方といたしましては、知事さんの調停によって平和裏にこの問題が解決できないかということを待っておるというのが現状でございます。
  36. 小林進

    小林(進)委員 いろいろの御答弁をいただきましたが、順次お尋ねをしたいと思います。今のお話の中に、農地法を離れて問題が町、知事、その他の手に移っているというようなお話があったのでございますが、私も現地を見て参りました。鉄道を越えていきますと、村の細道を中心にして右側の山手が明星セメント買収予定地、左側の平地の中に青海電化の予定地、これは三十一年か三十二年か三十三年か、とにかくその間に買収を完了した予定地です。これが約八万坪です。これは農地からいえばこっちの方がずっとりっぱです。山手じゃない、平地なんです。鉄道のわきのりっぱな平地です。このうちの八万坪が青海電化に工場用転用地として許可になった。許可になってから一年半、二年も放任されておったという話です。私ども調査に行ったときは、何か工場を作るような整地をやっておりましたが、これは農林省やその他に対するはったりでやっておるのだ。他の会社の進出を妨害するために八万坪も手に入れてみたけれども、せっかく買った土地を遊ばしておいて、なおかつ他の工場の進出までも阻害しているのはけしからぬという非難にこたえるために、最近ようやく八万坪の荒れ地にしていた田畑の整地に任じているのだ、こういうふうな話を聞いてきましたし、私は現実に現地を見て、さもありなんと思った。ようやく整地をしている。そうすると片方にはそういうりっぱなところを八万坪も、農林省はこれは無条件と言っては悪いが、ちゃんとそれは転用許可をお出しになっておいて、そして同じその土地の山の果ての、たんぼとしては一等田と四等田ぐらいの違いのあるような転用地八千八百坪ばかりですけれども、しかも新潟県としては許可をしていただきたいという許可の申請さえも含めているものを、農林省が握りつぶされているということは、これはどうも農地法といものがあってなきがごとしです。そうするとやはり問題は政治だ。法律も何もない。やはり政治問題で、政治の強い方に農林省も肩を持つのだ、こういうふうな考え方を私は住民に植え付けるのではないかと思う。農地法というものは実際には適用にはならないものであって、農地法の適用はもっぱら政治力の強いことによって決定されるという条項でもおありになるのかどうか、その点をお聞かせ願いたいと思います。
  37. 伊東正義

    ○伊東政府委員 先ほど私が農地法の問題を離れて、別の意味の問題になっているということを申し上げましたが、それは会社の話でありますとかあるいは町の内部の問題とか、いろいろそういうことを申し上げたのでございまして、やはりこれは農地転用の許可万申請でございますから、最最後は農地法で解決しなければならぬということは当然なことでございます。  それから、ちょっと先生誤解されたのじゃないかと思うのですが、実は知事からそういう申請が出ますと同時に、申請は出したが、これはあくまで県内の問題であるし、自分の責任において解決したいのだ、それで何度でも調停に立つから、自分の方にまかしてくれぬかという話が再三ございまして、われわれもできれば県内事業でございますから、こういう例は全国であまりございませんし、知事さんもこの問題の解決には非常に熱意を持っておられますので、そういう意味で知事さんに調停をお願いした方が、問題の解決には一番円満にいくのじゃないかということで、知事さんとわれわれの方で話しておるのでございまして、それ以外の関係のことではございません。
  38. 小林進

    小林(進)委員 私も最近は知事にま会いませんので、最近の意向はわかりませんけれども、これは昨年の十二日に一回、具体的な一つの調停案をもってやられた。しかし知事の腹は、局員も御存じのように、何といっても県内産業なんだから、妥協さしてセメント工場を二つや三つ大いにやっていきたいという腹で、電化側ののめるような条件をもって調停に臨まれたけれども、電化からはねられた。ことし一月か二月に第二回目の調停をやられました。これは今度は片方で断わった。それから知事はソビエトへ行ったり何かしましてだいぶこの問題から遠ざかられたようです。私は知事と会わぬけれども、知事自身は、今のところ具体的に手はない、やはり法規に従って、法の命ずるところによって処置をする以外にはないだろう、もう調停も疲れた、こういう心境じゃないかというふうに私は聞いているのです。私、知事には直接聞きませんけれども、いずれにしても去年の十二月、ことしの一月と二回やってから、十一月までやらないのです。やらないでおいてこの問題が放置できる問題ならいいのです。私が一番申し上げたいのは、一方では坪二千円、一反六十万円も金を出して農民の土地の買収に着手して、何か聞くところによると、その土地を得るために、農民を料理屋へ呼んでごちそうしたり、汽車に乗せて旅行に連れていったりしている。片方の青海電化セメントは、御承知のようにもはやあなたの方から工場予定地として八万坪も払い下げを受けているのに、今また明星が三万坪予定している耕地を一つ転用させてくれということは許可できない。八万坪現実に遊ばしているのだから、なおかつ加うるに三万坪の土地を転用させてくれということは……。あなたは先ほど青海電化の方でも、工場予予定地の申請をしているということだが、それはうそです。それまでずうずうしいことはできない。八万坪も完全に消化できないのだから……。そして将来いろの目かこちらも工場に転用するかもしれないから、その土地を農民は売るなというので売らしめない。いわゆる明星側の買収に応ぜしめないところの運動を今度やっている。つまり農地擁護同盟というものを作って、農民をしてその反対の会社に売らしめないような工作をしておられる。その工作の仕方が、これは農地局長も御存じかもしれませんが、その権利保留の意味において一年間に坪百円ずつその農民にくれておられるそうです。これは現実に私は聞いているし、また青海電化の方々からも聞いている。これは全部の耕地じゃないけれども、百円ずつやっている。一反について一年間三万円、農民は売りませんという権利証書に調印することによってもらえる。僕はあのたんぼを見たが、四等田か三等田で、せいぜい米六俵、二石四、五斗しかとれないたんぼだろうけれども、二石四、五斗として二万五千円ですが、そのほかに一反について、土地を売らざれば三万円ずつの金が、いわゆる電化セメントから入ってくる。そうすると農民は一反について五万五千円から六万円近くの年収を得るということになる。これはどんな多収穫の日本のたんぼでもないような収入をそれによって得ておる。片方は札束で農民を買収し、片方はそういう売らないということで毎年々々農民に金をまくという、これは一体何ですか。典〜 地法なんかあるのかないのかわけがわからない。これは金がものをいう世の中だということで、全くこれでは法の秩序もなければ農地法もなく、農林省も農地局もないのですよ。これはまことに乱脈きわまれる状態です。こういう状態を監督官庁として黙って放任をして、知事の裁定を待つ、ソビエトへ行かれたから帰ってくるのを待つ、またアメリカへ行ったから帰ってくるのを待つということでは、そのうちに死んだら生き返るのを待つ——そうまでおっしゃらないかもしれませんけれども、じんぜん手をこまねいて放置しておられるようなことは、私は責任がなさ過ぎるのじゃないかと思う。私ども労働運動から農民運動をしてきたが、これでは農民を堕落せしめるし、こういうようなことは局地の問題じゃない。こんなことが他へ伝染していくと、大へんなことになると私は思います。その意味において、私はいま少ししゃんとして御処置していただかなければならないと思う。このままじんぜん手をこまねいているということは、農地局が大きな独占にひもをつけられて、伊東局長は買収されておるのじゃないか、そういうことも勘ぐらざるを得ないくらい、私どもはあなたの決断のおそきをあせっているわけです。そういうことでありますから、一つ明快なる御答弁をお願いしたいと思います。
  39. 伊東正義

    ○伊東政府委員 今先生がおっしゃいますように、これはいろいろ問題がございます。それから農林省に質問がある前に各省に御質問がございましたが、そういうような問題も含んで、農地法だけで判断するほかにいろいろな情勢も判断して、最も平和にやっていくのが一番いいじゃないかということを実は考えております。今先生のおっしゃいました、まだ転用の許可がないものに、電化が一反三万円なり何なり払っておるというお話でございますが、実はこれはわれわれの方もそこまで調査ができておりません。これは調査いたしてみます。農地法違反がございましたら、私の方としては実際に取り締まっていきたいと考えておりますが、今後これは調査してみたいというふうに考えております。
  40. 小林進

    小林(進)委員 どうぞ一つ、農民を堕落せしめないように、十分御調査を、願いたいと思います。片方はともかく一坪二千円、一反六十万という金で、農民の農地の買収のために狂奔をしております。片方はそれを売らせないために、毎年々々、将来この土地を売らないという権利証を入れさせて、その一坪に百円ずつ、一年に一反三万円ずつの金を毎年農民に支払うという約束をしております。それのみならず、農地擁護同盟は、農地を売らないという電化側の者には、耕転機を買うからといって金を出してやったりする。また農地擁護同盟が農地擁護の運動をするからといって会社が金を出してやったりする。そういうふうなことで、農民は二手に分かれて、利益の多いところへころんだりころばなかったりしている。それでまた農民も零細農民でございますから、電化の方へ勤めておる兼業農家が多いのでございます。電化の工場へ勤めておる農民は、お前は明星セメントの方へ土地を売ったということで、会社を首切られておるということがある。こういうような人権問題も惹起しているというのでございます。一体これをどこで解決すればよろしいか。せんずるところは、やはり法の適正なる運用を待つ以外にないと思います。そういう複雑怪奇なところだから、あなた方も知事の調停に待とう、町民の世論に待とうなどということを言っておったら、なかなかこれは問題の解決にならないで、むしろ問題をこんがらかして、不幸な人たちを作るだけだと思うから、早く峻厳なる法の適用をおやりになったらどうか。御都のいいときには法を上もって相手を討ち、都合の悪いときには法の適用をなくし、もつぱら責任を他に転嫁するということは卑怯なやり方です。そうして円満に、平和裏に問題を解決するためにという、これは美名だ。一億一心などという戦争中よく用いられた言葉と同じです。一億一心、死ぬまでほしがりませんということを、今度は和のために、明るい農村建設のためにという言葉にかえて、何もおやりにならないじゃありませんか。そういうことは、どうしても調査を峻厳にせられると同時に、物事を幾らかでも解決するように持っていって、問題を処理するように御努力を願いたいと思うのでございます。御意見がありましたら承りまして、時間が参りますから、次に通産省に伺います。
  41. 伊東正義

    ○伊東政府委員 御意見をよく承りまして調査すべきところは調査いたします。農林省としても、責任回避という意味ではなくて、私はほんとうに知事のお話もありますし、何とかうまくこれを解決したいということを考えておりますので、いろいろ調査すべきことは調査いたします。
  42. 小林進

    小林(進)委員 通産省は、今私は農林省農地局にお伺いしましたからわかりましたけれども、何か農林省からお問い合わせがございましてこの青海電化のセメント工場設立の問題についてお問い合わせがありまして、農林省に対して御回答をなされたということを今承りましたが、どういう回答をされたのか。実は私はこの問題についても、この前通産省にお伺いしたのです。政務次官に会って聞いたのですが、詳しいことならば係を呼びましょうかと言いましたが、政務次官として聞いている範囲のことは、これは国家が統制する産業でも何でもないので、私どもに統制権も支配権も命令権も何もないのだからというふうに答えておきましたというふうに言われたのであります。何かたよりない返事だと思いますが、ここら辺を通産省の明確な御見解を承っておきたいと思います。
  43. 東辰三

    ○東説明員 それでは私の方から、農林省の照会に対しまして、通産省が回答いたしました点について御説明申し上げます。  第一の質問は、農林省農地局長より、現在セメントの生産について、生産制限に対する行政措置、または業界の取りきめ等があるかということでございます。このことにつきまして、当省といたしましては、セメントの生産に関する生産制限の措置はない旨を回答しております。  第二の点につきましては、農林省より、農地申請がありました際に、図面を添付いたしまして、その図面による計画、これをベースとする計画で、このセメントの生産が技術的に見てどうかということでございます。このことにつきましては、私の方といたしましては、その資料に基づきまして検討いたしたわけでございますが、年間十五万トンのセメントを物理的に生産すべき操業の可否につきましては、施設の配置状況から見まして通例の場合と異なっておりますので、その辺についてはいろいろと問題点がありますので、にわかに判定しかねるというふうに回答をいたしております。
  44. 小林進

    小林(進)委員 今のお話でよくわかりました。一体将来ともこの問題については、その御回答以上に通産省は関係を持たれる余地があるのかないのか、その点もお聞かせおきを願いたいと思います。
  45. 東辰三

    ○東説明員 私の方といたしましては、現在農地局に対しましてそのような回答をいたしまして、農林省のそれに伴います処置を待っておる次第でございます。
  46. 小林進

    小林(進)委員 それで、農林省が御処置になったら通産省はどういうことになるのですか。
  47. 東辰三

    ○東説明員 私の方といたしましては、いろいろとセメントの需給状況その他を勘案いたしまして、その後の経過等について検討をする段階に入ると思います。
  48. 小林進

    小林(進)委員 それで通産省の方はよろしゅうございます。  農林省の伊東局長に伺いますが、今の青海電化の問題ですが、私が先ほどから申し上げておりますように、われわれは労働問題から入った。私は資本家同士のけんかには興味がないのです。だんだんこの問題は熱を加えて参りまして、今も言うように町の問題になり、そうしてまた県全般の労働組合の問題になり、それがひいては全国的な労働組合の問題にまで発展してきておる。労働組合の基本的なあり方の問題に対して際限なく広がっておる。その間に、今申しましたように町民も手がつかないで、首を切られた労働者は訴訟をしておるということであらゆる問題が起こっておる。要は、ただあなた方のイエスかノーによって問題は終末を告げる。問題はせんじ詰めていけば、あなた方の方でその工場の設立の敷地を許可するか許可しないかということで問題の中心は終わってしまうのです。派生の問題はずっと波を打っていきます。波は幾つも大きく打っていきます。収拾するにはまだ相当の問題がありましょうけれども、争いのポイントはその工場敷地の問題なんです。二つの工場を青海町において作るか作らないかという問題なんですから、その意味においてあまり人心を不安、動揺に陥れたり、問題を混迷ならしめないような意味において、一つ農林省はころ合いにおいて腹をきめていただきたいと思うのです。局長、どうですか、ほんとうに腹をきめていただきたい。はたがみんな迷惑している。繰り返し申し上げまするけれども、新潟県の知事が世話をするとおっしゃいまするけれども、ともかく地方産業なんですから、ただそれを両者を仲よくさせて、ともに繁栄せしめたいという、これは知事としては当然でございましょう。その線で御努力願うのはいいけれども、といって、じんぜん日を過ごすようなことのないように、私は腹をきめていただきたいと思います。もう一回一つ御決意のほどを承りたいと思います。
  49. 伊東正義

    ○伊東政府委員 先ほど申し上げた通りでございまして、私ども単にじんぜんという意味ではないのでございまして何度も申し上げますが、知事とよく相談して狭い町のことでございますから、ごく円満に問題を解決したいというのがわれわれの考えでございます。
  50. 小林進

    小林(進)委員 それでは農林省はもうけっこうです。今度はもとに戻りまして、労政局長一つ大臣がおいでになりますまで……。
  51. 藤本捨助

    ○藤本委員長代理 ちょっと速記をとめて。     〔速記中止〕
  52. 藤本捨助

    ○藤本委員長代理 速記を始めて。
  53. 小林進

    小林(進)委員 それでは大臣にお聞きするところだけは別にしまして、労政局長一つお伺いします。青海電化の問題はこれで一応終りまして、また調査をいただくことになっておりますが、私は国会のある限り何ぼでも次々にこれをお伺いいたします。今までは質問のしつぱなしで、どうも仕上げが一なかったのが国会審議質問では非常に欠点だ、自分ではそう思っておりますので、私がお尋ねする問題は、私が納得するまで執勤にやらしていただきますから、その点はあらかじめ御了承をいただきたいと思うのであります。  労政局長にお伺いしたいのでありますけれども、臨時工とか社外工の問題について、まず第一に、大体その数はどれくらいいるものですか。臨時工とか社外工というものがいると思いますが、民間の、公企業体等も全部含めまして、どれくらいいるのか。造船なんかへ行きますると、臨時工は五割以上いるのだそうでございますが、私は直接造船まで行って調査したわけではございませんけれども、全国的な数字を一つお聞かせ願いたいと思います。また、一体将来これをどう処置されるお考えなのか、これをこのまま放任しておかれるお考えなのかどうか、お聞かせ願いたいと思います。
  54. 亀井光

    ○亀井政府委員 臨時工、社外工の問題、その労働条件等の問題につきましては、基準局の所管でございまして、私は今数字はどのようになっているかわかりませんから、いずれ調査いたしまして御報告いたしたいと思いますが、労政の立場から申し上げますと、そういう雇用の状態というものが日本産業の中で必然的に必要なものもあるかと思います。具体的に言えば、発注によりまして生産をしまする産業は、その発注の波によってそういう臨時的な労働者あるいは社外的な労働者というものの必要な面もあるのでございますが、これは先ほど労働大臣からも御答弁がございましたように、基本的にそういう不安定な雇用関係というものはできるだけ排除いたしまして、長期にわたりまする雇用契約というものが締結される方向に雇用関係を推進していく、これはわれわれとして当然従来もそういう方向で進んでおりまするし、今後もまたそういう方向で進みたいと思います。ただ企業の中で、産業の中で、そういう実態を持っておりまするものにつきましては、やはりそういう条件というものは考慮してやらなければならぬ問題もあろうと思うのであります。
  55. 小林進

    小林(進)委員 なるほど、今は、社外工や臨時工が必要な面もあるとおっしゃった、その存在の必要の価値があるというようにおっしゃいましたが、その存在の必要の価値があるというのは、それはやはり資本主義下だから必要なんじゃないか。私はその点は反対ですな。私はこれは必要はないと思う。今の日本資本主義というものは多くの罪悪があります。その罪悪のうちの一つがこの臨時工、社外工の制度だと私は思っている。一つはその下請制度だと思っております。景気の波の荒いときにはこの臨時工、社外工を夜の夜中まで過重労働であおるだけあおって、下請工場に作るだけのものを作らせて、そうして一生懸命に生産に従事させながら、不景気になればさっと下請の注文を停止して、あとは滅びていこうと失業していこうとかまわない。臨時工は臨時工で安くこれをかかえておいて、しかも手当金もくれない、自由勝手に首にできるという態勢を整えておく。そうしてまた景気が出てくると、その安いやつをまた雇い入れて、一生懸命にあおるだけあおって、過重労働で利益の追求をやるという、これは必要などというものではなくて、大きな罪悪じゃないかと思う。雇用行政、雇用の関係からいけば、もし資本主義の修正という言葉が許されるならば、こういう形こそ修正しなければならないと思う。特に労働行政を担当しておられる立場からは、こういうものに対しては明確な回答を出して、一歩でも二歩でも前進する方向労働行政を進めてもらわなくちゃならないと思うが、いかがでございましょうか。
  56. 亀井光

    ○亀井政府委員 ただいま御答弁申し上げましたように、基本的な雇用政策といたしましては、先生の御主張の通り、雇用というものを長期にわたって安定さしていくということは当然のことでございましてこれは労働省の従来とっております基本的な立場でございます。そこで、資本主義下において、あるいは自由競争の立場からいって、企業がそういう形の、いわば一番例外的な雇用の形というようなものをとることのよしあしにつきましては、これは先生の御主張も御主張としてあろうかと私は思うのであります。しかしまた、企業の実態、産業の実態という面から見ますると、例外的であるにせよ、できるだけそういうものは望ましくないことは言うまでもありません。言うまでもありませんが、そういう実態がある程度存在をしているという現実の姿というものは、やはりわれわれとしては看過できないものがございます。
  57. 小林進

    小林(進)委員 数はおわかりありませんですね、労政局長
  58. 亀井光

    ○亀井政府委員 あとで、……。
  59. 小林進

    小林(進)委員 一体これは、将来具体的に臨時工や社外工を何とか本工や常用工に直すような努力をするとか、あるいは臨時工でも三年とか五年の長期にわたった者は、何か中間的な方法を講じて、少くとも何か家族手当——労働組合にも入れない、家族手当ももらえない、退職金ももらえない、何年勤めてもそのまま放任しておかれるという形を、労働省がじんぜん手をこまねいて放任しておかれるというようなことは、どうもこれは人道問題からいっても重大問題だと思うのですけれども、何か具体的に一歩でも二歩でもこれを前進させる、改めるという具体的な策はございませんですかね。お考えを承りたいと思いますね。
  60. 亀井光

    ○亀井政府委員 労働基準法の規定におきましても、そういう臨時に雇用される者の範囲、あるいはそれに対しまするいろいろの労働条件の保護、こういう法律の規定がございます。これは私の所管ではございませんが、基準局といたしましても、その法の定めるところに従いまして、たとえばその者が実質的に長期にわたって雇用される、形式は一カ月ごとの契約更新という形でありましても、実質的にその契約更新が引き続き数回にわたって行なわれるという場合には、これは常用的なものであるという見地から、労働条件として、基準法が定めておりまするいろいろな基準というものを適用していこうということにつきましては、基準局みずから努力をしておるわけでございます。問題は、そういう場合におきまして、脱法的に基準法を適用していこう、あるいは基準法の目をのがれていこうというような経営者に対しまして、厳重な監督の措置をもちまして、できるだけその数を減らしていくという運営の方針をとっておるということを聞いております。
  61. 小林進

    小林(進)委員 労働省には、臨時職員とか臨事嘱託という勤務者はおりますか。
  62. 亀井光

    ○亀井政府委員 数は私は記憶ございませんが、定員法の関係におきまして、なかなか定員法の上で、これを改正して、増員するということは非常にむずかしいという現実の姿からいたしまして、職業安定局、その中の失業保険というような現業事務、あるいは労災補償保険の運営というふうな現業事務につきまして、若干の者がございます。しかしこれは逐年そういう非常勤の常勤化という政府全体の政策の中で、毎年予算化をし、また定員化をしておることは事実でございますが、まだ若干の者は残っておるわけであります。
  63. 小林進

    小林(進)委員 これはどうも、嘱託や臨時工がおりまして、款項目でいきますと、物になったり、消耗品になつたり、ちり紙になったりして、そして人間としての待遇は予算的措置においては認められない、そういうやり方は、私はせめて労働省にはないと思った。労働省はそういうことをやらないだろうと思った。私はやはり働いている人の人格を高く評価しておいでになると思っておりましたが、これはどうもいけませんですな。全国的に一体臨時職員とか臨時嘱託というものはどれくらいのものか、これはやはり数はわかりませんか。
  64. 亀井光

    ○亀井政府委員 これは各省の予算の上から見ますれば、その数はわかると思いますが、私今ここに数字を持っておりません。必要がありますれば、後刻……。
  65. 小林進

    小林(進)委員 これはお聞かせ願いたいですな。私どもは今まで、もう戦後でもなといか、あるいは国防六カ年計画だとか、いや再軍備だとか、安保条約の改定だとかいう、こういうことを耳にいたしますると、これは意地が悪いようだけれども、やはりこういうことに神経を使わざるを得なくなってくると思うのですよ。そんな時代ではない。緊急の問題は足元にあるのではないか。一体社外工だとか臨時工だとか、これはどのくらいいるのですか。臨時嘱託とか臨時職員がどのくらいいるのですか。将来希望がない。しかしこれは今までも政府の言われる低所得階層の中にも入ってきません。失業者の中にも入ってこない。要保護者の中にも入ってこない。しかしこういう人たちが現実に生活の不安に投げ出されておるという悲しみは想像以上です。同じ職場に働きながら、同じ労働に従事しながら、しかもこういう状態です。一体この問題はだれが世話するのですか。やはりこういうことを真剣になって考えてくれる主管官庁というのは労働省以外にないのです七労働省がこういう問題をいま少しピック・アップをしまして、大衆にアッピールしながらこれを措置するようなことを真剣に考えていただきたい。私はこういう立場から質問を繰り返しておるのでございますが、一つ正確な数字をどうぞお聞かせを願いまして、そうして今あなたの関係じゃないかもしれませんが、労働基準局長がいらっしゃいませんから、お帰りになったらぜひお聞かせ願いたい。こういうことは真剣に取り組んでもらいたいと思うのでございます。
  66. 藤本捨助

    ○藤本委員長代理 午後二時まで休憩いたします。     午後零時五十六分休憩一午後二時二十二分開議
  67. 永山忠則

    永山委員長 休憩前に引き続き会議を再開いたします。休憩前の質疑を続行いたします。小林進君。
  68. 小林進

    小林(進)委員 それでは大臣にお尋ねいたします。私は午前中から主として、今の世の中で日の当たらない場所にいられる方々中心を置いてお伺い旧して参りましたが、第一番に午前中の問題の続きをお聞かせ願いたいのであります。  それは臨時工、社外工——官庁、民間ともに、これらの方々が合わせて大体どれだけいられるかという数字、それからあわせて臨時職員、臨時嘱託、筆生という方々が、これも官民通じて一体どれくらいいられるものか。こういう方々こそ低所得階層でもなければ要保護者でもない。やはり表面は同じ生活を営むような形をしておりながら、いわゆる大臣がお述べになったような、毎日生活の不安に投げ出されて、不安定な生活をしておられるのであります。こういう数字を明確につかむと同時に、こういう方々に対する新たなる労働政策一つ打ち出してもらわなければならないと思うのでありますが、これについて御答弁をお願いいたしたいと思います。
  69. 松野頼三

    松野国務大臣 臨時工については後ほど局長から答弁いたさせますが、ただ傾向として、ある程度改善はされております。大企業はある程度改善が顕著な統計が出ております。中小の方も、だんだん改善の傾向が出ておりますけれども、まだやはり中小の方はどうしても臨時工の方が多いということでございます。  あとの詳細のことは局長から答弁いたさせます。
  70. 堀秀夫

    堀政府委員 いわゆる臨時工とは、常用工とおおむね同様の作業に従事し、相当長い期間にわたって雇用されておるにもかかわらず、短期契約または日雇い契約の形で雇用されている労働者のことを常識的に言うものであろう、このように考えております。  そこでこの正確な雇用状況はどうであるかということは、ただいま申し上げましたような非常に特殊な形態にありますので、なかなか把握しがたい現状にあるわけであります。既存の調査であります労働調査等によってみますると、臨時労働者、日雇い労務者が全雇用労働者のかなりの割合を占めておるということは御指摘のように明らかであります。そこで最近の、三十四年八月の労働調査によりますと、全産業につきまして雇用者二千五十五万のうちいわゆる臨時雇用契約、期間が一カ月以上一年未満というものを臨時というワクにはめておりますが、これが大体八十九万ということになっております。それから日または一カ月未満の雇用の者を日雇いという形で呼んでおりますが、これが百七万、こういう数字になっております。このうちの相当部分がただいま申し上げました臨時、日雇いの形であるにもかかわらず、常用的な仕事を行なっておる臨時工であろう、このように考えております。それから社外工につきましては、親会社の構内において労働する下請労働者をさしまして社外工と申しております。これについては全産業についての調査実施されておりませんので、その詳細は不明でありますが、労働省において製鉄、造船、化学というような非常に社外工の多い業種について行ないました結果によりますと、社内工に対する社外工の使用率が大体二六%程度に達するというふうに推定されております。また運輸省におきましては特に造船につきまして、これは社外工のみならず臨時工が相当多い業種であります。これにつきまして一年に二回くらいずつ調査を行なっておりますが、ことしの四月の調査によりますと、いわゆる本工が八万七千九百人、臨時工が一万四千三百人、それから請負、これは社外工でございますが、二万二千人というような数字になっておりまして、やはり相当高率を示しておるということでございます。これらの臨時工、社外工につきましては、実質的に常用工と変わりのない実態があるにもかかわらず、雇用の形式の相違のためにいろいろな条件がよくないということにあるだろうと思うのであります。この問題につきましては労働省全体として対策を考え、あるいはこれは結局現在の日本の産業の底が浅い、景気変動等によって大きくゆすぶられるというような面にも基因するものであります。産業政策全般としても考えなければならない問題であると思うのでありますが、労働基準局の立場といたしましては、臨時工でありましても常用工と同じような実態で作業しておりますものにつきましては、労働基準法の適用にあたりましては一般常用工と同じに扱う、こういう方針で終始臨んでおります。それから社外工につきましては、これも根本的にいろいろの問題があるのでありますが、特に一時非常に問題になりましたいわゆる貸工のような形をとりまして直用でもなくあるいははっきりした請負でもない、しかし何か身柄が親会社のところに行って、親会社の指揮を受けて働いておるという非常にはっきりしない形があるわけで、これについては中間搾取その他の弊害が見受けられるわけでございます。これは労働基準法の中間搾取の違反にもなり、また職業安定法の労務供給事業の違反にもなるおそれが非常にあるのでございます。このような貸工的な形態は親会社の直用に切りかえる、あるいは請負の形にはっきり切りかえる、そのいずれかに整理すべきであるという方針で昨年来指導を続けております。貸主につきましては、今のようなどちらかの形に切りかえられつあるというふうに考えております。また非常に悪質のものにつきましては労働基準法違反として処罰した例もございます。今のような考え方に立ちまして労働省としては労働行政の面からこれに対する保護をだんだんと厚くしていく、一般の常用工との差を縮めていく、こういう方向で努力しておりますが、根本的にさらに産業政策全体としての今後の総合的な考え方で行政の総合的運用をはかることも必要であろう、このように考えている次第でございます。
  71. 小林進

    小林(進)委員 ただいまのお話の中で、まず最初の臨時工の三十四年八月の労働調査の二千五十五万の中の数字をお上げになりましたが、この中で一番長期が一カ月——十二カ月以内で八十九万という数字になっております。ところが現実には、大げさじゃないけれども、五年も六年も勤めて、まだ臨時工のままに置かれているものが実際にはいるのです。三年も四年も勤めて、まだ臨時工並みで、本採用にも常用工にもならない。どうですか、そういう数字は出ていませんね。
  72. 堀秀夫

    堀政府委員 ただいま私が申し上げました分類は、雇用の契約の形式がそうなっておるという分類を申し上げたのです。そこで私が申し上げたように、いわゆる臨時、日雇いのワクの中にある相当数は、ただいま先生の指摘されたように、期間を切りかえて常用的な働き方をしておる、だからこの相当部分がいわゆる臨時工であろう、こう申し上げた次第であります。
  73. 小林進

    小林(進)委員 そういたしますと、まだ労働省には臨時工あるいは社外工としての統計ないしは数字は一つもないわけですね。     〔委員長退席、田中(正)委員長代理着席〕
  74. 堀秀夫

    堀政府委員 ただいま申し上げましたように、このような既存の調査を使いましての推定数字でございますので、いわゆる臨時工そのものを目的とした総合的な調査は現在まだ行なっておりません。
  75. 小林進

    小林(進)委員 私が御質問をしている趣旨は、そういう臨時工、社外工の推定の数字ではなく、できれば一つのいま少し明確な統計上の数字がほしいということなのですけれども、ないとおっしゃるならばしかたがない。これは専門的技術を動員いたしましてできるだけ一つ数字を出してもらって、後日でよろしゅうございますけれども、実際に近いものを私の手元までちょうだいできるように御配慮願いたいと思います。お願いしておきます。  それから、これは午前中にも繰り返したことなのでありますが、産業の形態を見ながらこういう臨時工、社外工というものをだんだんなくしていきたいということをおっしゃったのですが、日本の産業とか経済形態、いわゆる国家機構、政治機構がみんなこのままである限りは、やはりそういう産業上からだけでながめていったら、これはなくすることはできないと思う。やはり世の中には景気、不景気という波がある。これは資本主義の必然的な波です。景気、不景気の波がある限りは臨時工、社外工というものは、いかに今のままの形で苦労されてもなくなりはせぬでしょう。この臨時工、社外工、下請という形が私は日本資本主義を支えている柱だと思う。午前中にも、大臣がおいでにならない前に労政局長に申し上げましたが、景気のいいときに下請にぐんぐん仕事をやらして、不景気になったらすぱっと発注を中止してもう縁を切ったからお前はやめていこうとどうしようと勝手だ。臨時工が、忙しいときには昼夜を分かたず本工と同じように労働強化をして、不景気になると賃金を安くしてさっと首を切ってしまう。家族手当も退職金も勤続手当もやらない。実に便利な方法で首を切ってしまう。こういう資本主義の悪をそのまま利用したのが臨時工と下請制度である。この二本の柱で日本の独占資本というものは支えられておる。先ほども申し上げたように、造船、運輸あるいは製鉄というところにはこういう制度が一番多い。だからこれは産業の面とか経済の面ではなしに、やはり雇用自体、日本労働行政それ自体、もっといえば基本的人権です。人間の労働を尊重するという、産業は第二次にして、労働の価値を認めるという全く考えを別にした面からこれをとらえていかなければ、問題は解決しないと思います。その意味において、やはりこういう問題を真剣になって取っ組んで解決してくれるその責任官庁というものは労働省をおいてほかにない。労働大臣をおいてほかにない。だからその意味においてこういう数字を明確につかんでいただくと同時に、やはり抜本的に、もう三年も常用工と同じような仕事をしたら本工に直すとか、何年も勤めたら労働組合にも——労働組合は自主的なものですから、これは別として、退職金をくれるとか、本工並みに扱うとか、厚生制度を本工並みに全部その恩典に浴することができるとか、何かそういうことをいま少しく行政的にきちっと措置してもらえないかどうかということを私はお尋ねしているわけですが、大臣いかがですか。
  76. 松野頼三

    松野国務大臣 特に法律的に失業保険とかすべての福祉施設を臨時工なるがゆえに拒否しているという法律の建前ではございません。勤続年数が六カ月以上で、賃金を支給された者は失業保険に入るのですから、この問題は小林委員が指摘されるように、やはり臨時工というものは最後の退職の問題とか、そういう大きな長期的な給付のときに非常に差が出てくるというので、やはり安定するためには、臨時工というよりも常用工という固定したものにして、退職金も臨時工というものよりも常用工の方が退職金とかすべてにおいてやはり有利になることはあるのですから、法律上私の方はこれを差別は今日もしておりませんが、結果においてやはり雇用の安定と不安定というところに、個人的にいうなれば大きな差があるということが御指摘の問題点だろうと存じます。これが産業機構が資本主義だからどうだとか社会主義だからどうだとかいうことは、これはいろいろな議論がありましょうが、私たちはやはり産業構造が今日のままであっても、そういう不公平がないように努めることが私の務めではなかろうか。産業構造をいろいろ考えれば、これを全部国家雇用にしたらいいかというと、やはり問題がある。また民間企業にすれば、労働大臣がこれを常用工にしろというところの命令権がない。従ってどちらにも長所、短所がございますが、現在の産業構造の中においても雇用の安定と向上をはかる。——実は一番問題がありますのは、先ほどの話に戻りますけれども中小企業と大企業との賃金の差がどこで出てくるか。初任給は必ずしもそんなに差はございません。大体年令でとって参りますと六千円くらいの初任給の方というのは、中小の臨時工に雇われた方と大企業の常用工に雇われた方とは、最初はそんなに差はございません。しかし勤続年数が三十年もたって参りますと、片方は約四倍の二万四千円くらいになる、片一方は三十年たってもせいぜい二倍半から三倍の一万五、六千円程度しか昇給しない。そういうところで差がつくので、いわゆる格差というものが大きくなる。中小企業の一番大きな問題は、初任給と最終給との差が少ない、従って幾ら働いても賃金上昇率が少ない。大企業の千人以上のところは年々の昇給率が高い。ここに実は問題があるのじゃなかろうか。これがいいか悪いか、いろいろ議論はあります。ある外国では、初任給から五年くらいぐっと上がる、そのかわりあとはずっと上がらないというところもあります。日本はやはり年数に従ってずっと上がっていく。ここにも賃金体系の問題があろうかと思いますが、これは一がいにどちらがいいか悪いか言えません。これはどの学者もなかなか言えないのじゃなかろうかと思います。そういうところが問題の格差が出てくるところで、どれがいいということは言えませんけれども、今の産業構造と今の伝統の中においてやるには、やはり安定した上昇率がある程度保証され、退職後における問題もやる。これが賃金だけでいけないときに、やはりここに社会保障という機構も勘案していくということで、保守党内閣が社会保障制度とかあるいは年金制度生活保護制度とか保険制度というものをあわせて行なっている理由はここにあるわけで、賃金だけで日本の産業がカバーできないところは国家機構でこの補填をするという、両々相待っていかなければ、私は賃金だけがすべてではなかろう、またそれでやれないからあらゆる経済機構がそこに出てくるという、縦から横から実は議論の多いところであります。しかしいずれにいたしましても、労働基準局あるいは労働大臣といたしましては、雇用の安定を目途としておりますので、各企業内に非常に不安定な企業があるならば、これはやはり基準局を通じて、雇用者の立場を重んじてその業者にある程度の働きかけをする、あるいは指導する、勧告する、いろいろなことをやりながらやる以外になかろう。こういうことで、最終的には、ある場合には強制雇用法を作ればいいじゃないか。1いずれ通常国会小林委員の御審議をわずらわすと思いますけれども身体障害者の雇用法というのはたびたび当委員会議論にも出ております。これは国によって強制雇用にしているところもあります。しかし日本の場合はそうは参りませんので、強制雇用とはいかないが、勧告とか、あるいはある。パーセンテージを雇用するように一つ努めようじゃないか、これは主として国家機関あるいは公共企業体に先に使おうじゃないかとか、いろいろな議論がいずれ出ることでありましょうが、そういうこともあわせて考えていただかないと、雇用問題とかいろんな問題は、一がいに臨時工だけ解決すればいいとは言えないと思います。それらの身体障害者の雇用問題はどうであるか、あるいは婦人労働者の問題はどうするか、いろいろ実はある問題で、そういうことを考え合わせながら、私の方は何といっても雇用者、労働者の質の向上ということを焦点にあらゆる努力をしていく。あるいはなまぬるいとおしかりをいただきますが、しかし今の状況ではそういうことを進めていくのが一番妥当ではなかろうか、こう考えております。
  77. 小林進

    小林(進)委員 今基本給を安くして年功賃金にしたり、家族手当をくれたり、住宅手当、勤続手当をくれたり、退職金制度を設けたりして、そういう尾ひれ葉ひれをつける賃金制度は、先ほど大臣はどっちがいいかわからぬとおっしゃいましたから、私はこの議論は避けますけれども、これは日本賃金の発生、由来からながめてみますと、決していい方法ではない。私はやはり基本給というものは、その人の職務だとか能力に応じてきちっときめるべきものだと思っております。けれどもこの議論は私は避けますが、先ほども言いますように、臨時工と社外工、こういうものは、臨時職員、臨時嘱託の数字だけはどうしてもあとからお示し願いたいと思います。  次に今度、完全失業者、不完全失業者、潜在失業者、未就職失業者、こういうものの数が一体どれだけあるのか。これは大臣、私は問題の焦点がぼけないように申し上げますが、僕は今新聞なんか見ますと、同じ内閣ですけれども、防衛六カ年計画で四十年までに今までの防衛費一千五百億円のやつを三千億まで持っていこう、     〔田中(正)委員長代理退席、藤本委員長代理着席] 三十六年度は一年間で五百五十億円の防衛費を増額して、それから毎年度毎年度二百五十億円ずつふやして、四十年には三千億円にするという具体的な数字を示された。あるいはまたいろいろわれわれの身辺に金を使うような話が出て参ります。そういう問題の中で、どれが一体緊急性があるのか。私は日本の政治の場面においてどれが一番——そういう立場から今大臣にお聞きしているのですから、その点において一つお答え願いたいと思いますが、完全失業者が一体今幾らおりますか。私は完全失業者の定義を何回も聞いているのですが、その完全失業者の定義たるやわからない。わかりやすく一つ完全失業者の定義をお聞かせ願いたい。それから不完全失業者、これは半失業者といいますか、こういうものの数字が幾らか。潜在失業者、それから私が言うのは未就職失業者、これはおかしいのですが、学校は出たけれどというか、就職しないうちに失業する。こういう珍現象が日本にも相当多いのだが、こういう数字が一体それぞれ幾らあるのか、一つお聞かせを願いたいと思います。
  78. 松野頼三

    松野国務大臣 ここに一つ統計を端的にとって御説明する方がいいかと思いますから、一つの三十三年平均という労働統計中心に御説明申し上げます。  労働統計の総人口が九千百八十万、十五才以上の人口が六千三百七万、労働力人口の総数が四千三百六十八万、就業人口の総数が四千三百十二万、その中に農林が千五百四十七万、非農林が二千七百六十五万、この中に製造業が八百六十二万ありますが、その差の五十六万が完全失業者という、統計上の完全失業者になります。これからその次の説明を申し上げますが、それではその完全失業者とは何だ。これはほんとう統計でありますから、五十六万人ぴしゃっとおるのか、そういうわけでもございません。おらぬのか、そういうわけでもございません。これは一つのサンプル調査をしてみて、全国約大体五万人ばかりの摘出調査をするわけです。この地域に何人・それが就業をしたか、失業をしたかという移動状況調査した結果出てくる統計を積み重ねてきておるわけでありまして、従ってこれは五十六万というのがほんとうに五十六万おるのかというと、そういうわけではありません。しかし統計上ずっとその統計をとってくると昨年が五十二万、一昨年が六十三万、三十年が六十八万、そういう積み重ね統計に出てくるわけで、一番もとの統計が正確ならば三十三年の統計は正確でなければいけないわけです。一番もとの統計はいつをとったか、それは実はなかなか統計学として正確とは言えません。これは日本だけでなく、諸外国ともこれをやっているのです。諸外国ともこういう統計を何年かやって、それから年がたつに従ってこの統計が正確度を増す。初年度は不正確だ。日本も十何年たちましたから、ある程度この経歴を踏んで五十六万は正確の度合いに近づいたということが言えますが、ほんとうに正確か、そういうわけにはどうしても統計は出て参りません。そのたびそのたびに五年に一回国勢調査を実はやるのであります。これが一番正確1である。しかしこの国勢調査統計が最終的にきまりますのは、三年後でないと統計が全部出て参りません。その出たときは三年たっているのですから、そのときはもう三年古い統計しか出てこない。従って五年ごとに国勢調査をやりましても、その統計の発表のときはもう三年前の統計であります。その年には通用しない。これは統計学上の一つの理論であって、従って統計は一割くらいの前後は国際的にこれは認められておるわけであります。ことに先般も、統計国際会議を毎年やっておりますが、しかし一割前後の統計の差はある程度どの国でも幅を読まなければいけないということでやっておりますから、これは統計理論で、日本でできる最高の正確度において、完全失業者は五十六万以上の統計は絶対だれも出せないということだけは私は言えますので、五十六万とお信じいただきたい。  ではこれはどういう基準であるのかというと、統計を出します一週間の期間に就業活動をしている—何もしないでうちにいる御隠居さんはいけません。どうしても職につきたいという努力をしている者で、一日の日給も一時間の俸給も完全にもらえなかったという一週間の期間をとったわけであります。一月もとりません。大体月末の一週間をとるわけであります。それを毎月々々とって年間にならしたというのが完全失業者であります。その中に一日でも仕事をしたお方は、小林委員のお言葉からいえば不完全失業者ということになります。一週間少しも給料をもらえなかったという統計をとったのが今の完全失業者の一数であります。毎月統計をやっております。その毎月がいいか、どこをとるか、これも議論が多いところであります。一年間の平均をとるか、これも議院論が多いところであります。しかし毎月とってこれを一年にならして、この中である程度給料をもらった者、これが不完全失業者。つい先般の厚生白書には、いわゆる転落の要対策として約千何百万という数が厚生省から出ました。しかし労働省で不完全失業者は何人だといえば、概略的にいわれますのは八百万であります。その八百万の中でほんとうに求職活動をする者はどうか、二百四十万という数字が雇用審議会の中に一応出ております。従ってほんとうに不完全就業者というものは二百四十万という数字が一応いわれる数であります。その中で先ほどの家内労働労働者はどれだけか、八十万から九十万と予想されるのがおそらく不完全就業者の中に入る。それはまだ分類が正確にできておりません。統計的に申しますとそういうところまでは御説明いたされるかと思います。不完全就業だとかいろいろな言葉はありましょうけれども、私の方の分類で申しますと、そういうものが一応御説明できる分類の羅列的なところだと思います。
  79. 小林進

    小林(進)委員 完全失業者統計上の問題ですが、われわれが雇用問題を論ずるときには、完全失業を中心にして雇用政策を論議されるのでありますけれども、私は考えようによっては完全失業者なんというものは、この世の中川においてまだしあわせな方だと思って一おる。職を失って——大臣のお話によれば、就業活動をしながら一週間一日でも職につかない者が完全失業者だ、この切迫した世の中で、一週間も職につかないでのうのうと就業活動をしておられますか。一時間も働かないで食っておるというのは、日本の経済の現状ではしあわせな方です。もうそんな世の中ではないのであって、それこそきょう失業したら、あすにでもどんなに悪条件のところでも何でもよいからしがみついて、その日の。ハンをかせがなければならないというのが、わが日本失業者階層の現状です。こういう実情に即しない統計なんかに現われてくる失業者などというものはまだしあわせ者だ、私はそういう言葉を言い得るくらい、日本の就業状態は逼迫しておると見ている。完全に遊んでいて、一カ月のうち一週間か五日か三日なり、何らかの形で収入を得た者が不完全失業者といわれるわけですが、あなた方の統計にいわれるこの不完全失業者というものは、完全失業者に対してどれくらいいるものか。あなたのお話では八百万、そのうちに職を求める者が二百四十万とおっしゃいましたけれども、私はこの数字自体も非常に甘いものだと思っておる。こういうことももう少し明確にお教えをいただきたい。  それから潜在失業者、たとえていえば炭鉱をやめたとか、糸姫になったが繊維工場が操短を開始したということで、農村に帰って家事労働に従事しておる。あるいは田植えとか、秋の忙しいときに取り入れに従事しておる。これはみんな統計ではおそらく家事従業者という名前になっておると思う。これは不完全失業者でもなければ完全失業者でもない。おそらく職のある者として統計の数字に現われておるはずであると私は解釈しておるが、こんなものはどんなふうに扱われておるか。  まだあります。学校は出たけれども——私なんか実際政府のしりぬぐいをしているようなものだ。私の部屋に来て下さい、就職をお願いしますといって、履歴書だけでもこんなにたまっています。始末に負えない。労働行政がうまくいっておれば、われわれはこんな苦労をしなくたっていい。全くえらい迷惑だ。みな政治の貧困がわれわれのところにしわ寄せされておる。戦争の資材を買う費用があるなら、なぜ完全雇用の問題をすぐやらないのかと言いたいのです。学校は出たけれども、どうも就職の道がない、しょうがない、花嫁学校にでも籍を置こうか、大学院にでも籍を置こうか、そして就職の道でも探そう、こういう就職せざる失業者、こういうものがどれだけ数字に現われておるのか。またこういうものを統計上どういうふうに勘定をされておるのか。正確な数字と正確な分類を承りたい。
  80. 三治重信

    ○三治説明員 まず一番最後の問題から申し上げます。未就職の失業者、これにつきましては、先ほど大臣が御説明になりました、ほんとうの完全失業者ということで、就職活動をする者ということでとらえてあるわけです。だから学卒者で、未就職の者で就職活動をしなければ、やはり完全失業者としては出てこない。それから毎月の統計を見てみますと、完全失業者は毎月の数字の中で、三月には非常にたくさんふえます。たとえば三十四年の三月では、労働調査によりますと九十二万という数字が出ておる。年平均ですと五十六万、従ってその差額の三、四十万というのが、新規の学卒者が最初は就職活動をしていて、三月から一カ月の間にはそういうことで若干完全失業者となる。しかしそれが四月以降ずっと減るということは、四月以降就職するわけでありまして未就職者が就職活動をしない場合においては、やはり非労働力として出てくる。いわゆる労働調査の中に入ってくる。それが非労働力として統計上は出ておる。それから先ほどの繊維の帰郷者なんかにおいては、失業保険を受給中は毎週安定所に行くわけですから、失業者として出てくる。ところが失業保険が切れて安定所にも来ない。そして就職活動をしないと、非労働力として計算されるというのが統計上の失業、就業の区別でございます。  それから不完全就業者につきましては、労働調査の方の不完全就業者といえるものを労働調査から分類するやり方につきましては、先ほど大臣が申されました二百四、五十万という数字は、現在若干なりとも就業なりあるいは自家就業でも働いているけれども、現在の職については非常に不満である。それで生活も十分でないということで転職を希望する者、それから現在の仕事でいいんだけれども、さらにもう少し労働時間が長くなればそれで生活できる、いわゆる追加就業希望者という者、それから、完全失業者みたいに就職活動はしていないけれども、それは現在は就職活動してもとても職がないと思っているからしないのだ、しかしながら職があれば働きたいという希望もあるんだというふうな、結局これは本来からいえば完全失業者として出てこなければならぬけれども、現在の世界の統計基準からいくというと、やはり失業者としての就職活動はしない、ただ内心を聞かれれば働きたいという、それを就業希望者という名前をつけておりますが、そういう三つの分類を含めて大体二百四、五十万ということでございまして、その三つを大体いわゆる潜在失業者としての統計として、概念的に集計しているわけでございます。
  81. 小林進

    小林(進)委員 これは私わからないのですが、三十二年度の労働力臨時調査はどういうことなんですか。それによりますと、完全、不完全それから失対等々、そういう未就職者等を含めて、失業状態にある人たちが一千二百四十万という数字が出ているのですが、この数字は一体何の数字でございますか、ちょっとお知らせ願いたいのでございます。     〔藤本委員長代理退席、田中(正)委員長代理着席〕
  82. 三治重信

    ○三治説明員 その三十二年の千二百四十万という数字は、私の方はちょっと存じませんが、それはいろいろの分類の中での寄せ方によって違ってくるわけでありますが、私の方の先ほどの御説明から申し上げますと、大体昨年三月の臨時調査の結果から見ますと、転職希望者のうちで仕事がおもな者が八十二万、それから追加就業希望者で仕事がおもな者が五十八万、それから就業希望者で特に本業を希望する者、これは内職とか何かではなくて本業を希望する者、これが百九万。それを合計いたしますと二百四十九万。その千何ぼというのは、おそらくこのうちでも、副業をやりたい、または自分は仕事を主としているけれども、さらに副業もしたい、就職希望者のうちでも、完全に仕事について働くことはできないけれども、内職をしたいというふうに、もう一つ仕事の追加を望む、それから副業を望む、内職を望むというふうなものを全部入れた数字じゃないかと思いますが、やはり不完全失業者というからには、ただおかみさんが小づかいを得たいために内職をしたい、それからちょっと。パート・タイムに出たい、それから自分は大体仕事があるけれども、今の仕事が楽だから、本業はそれでいいけれども、さらに何かもう少し別な仕事で追加的な収入を得たいというのを、われわれの方の不完全失業者の方から除いておりますから、そういうものも全部含めるとあるいはそういう数字になるかとも思います。
  83. 小林進

    小林(進)委員 大体お話は承りました。承りましたけれども、ちっとも信頼感はございません。これはまあ統計のいたずらというようなもので、かつてヒットラーが政権を握ったときも、ああいう失対の統計を出しながらも、だんだん失業手当をやりたくないというようなことで、何か申し込みや申請をこやかましい規則にしてしまったら、さっと失業者が減ってしまったというようなことで、こういうことは統計や手続その他によってはどうにもならぬことだ。今あなたの数字を承っても、われわれが実際に見て歩く世界とはおそらくどうも縁の遠い数字でありまして、これではとても信頼がおけない。もっと親切に、もっと失業者のことを考えてやる政治が行なわれれば、数字がもっと表面に出てきますよ。だけれども、これはこういう統計の資料がないんだから仕方がありません。しかし、完全失業が五十六万とおっしゃれば、雇用の専門家などに言わせると、失業者はまずその十倍いるものと見て大体当たらずといえども遠からずと思いますから、わが日本はまず七、八百万の失業者がいるものとみなしてよろしい、こう私は解釈しておきます。  次に、日雇い労務者の問題についてお伺いしたい。これもやはり数字です。最近は一体どれくらいおりまして、その生態はどういうことになっておるか。病人やあるいは老人をかかえた世帯、あるいは母子世帯等が、必死の抵抗を試みながら、あるいは幾変遷を経ながら、最後にたどりいく道がこの日雇い労務者の姿なわけです。失業保険の受給期間も切れてしまった失業者、あるいは親工場から見離された零細な下請工場のおやじさんだとか、もうどこへも泣きつくところのなくなった人々が、人生の幾星霜の苦難の峠を越えながら、たどりつくところとして職業安定所へ入っていくわけでございますが、一体職業安定所へたどりつく人は、その数が今どれくらいあって、どういう生態ですか、それを一つお聞かせ願いたいと思います。
  84. 百田正弘

    ○百田政府委員 現在職業安定所に登録しております日雇い労働者の数は百五十二万でございます。その生態というお言葉でございますが、これは実は非常に多種多様でございまして、年令から申し上げましても、二十代から六十代というところで、最近の状況は、この年令層が漸次上の方にいきつつあり、平均年齢四十七、八——五十になんなんとするというような状況でございまして、その平均世帯数は三・五人といったことになっております。収入その他の状況は、大体労働省で調査いたしましたところによりますと、これもいろいろ幅がございますので、平均して言うのは比較的危険でございますけれども、平均率をとりますと、世帯主の収入、それから家族の内職その他の収入ということで、一万三千三百円程度ということでございます。ただこの場合には、単に日雇いといいましても、港湾とかなんとかに行く人たちと、失業対策事業にのみ行く人たちとの間には、大きな開きがあることは当然でございます。
  85. 小林進

    小林(進)委員 日雇い労務者と職業安定所との関係なんでございますが、職業安定所というのは、やはり失業救済を主にしてやっているわけでございましょう。失業救済といいますか、こういう失業者に職を与えるという形ではありませんか。結局私の聞きたいのは、言葉をかえていえば、日雇い労務者は職業安定所に通っていって、職業を発見してもらって新しく就職をしていく、いわゆる日雇い労務者が新しい職場を求めていく、一体その方の就業率が今どのくらいあるのか。私の言いたいのは、いわば固定してしまっているのじゃないかということです。日雇い労務者は、職を求めに職業安定所に行くのではなくて、職業安定所に毎日勤務をする気持で今通っているのじゃないか。その形が、われわれにも定休日をよこせ、盆暮れの賞与といいますか、年末賞与をよこせ、もち代をよこせ、あるいはどこそこの職場に働いている労働者の要求する要求を、彼らが職業安定所を通じて政府に求めているのは、自分たちは職業安定所に勤務をしているという形である。今私が申し上げたいのは、日雇い労務者に就職をあっせんをして、他の職場へ行かせることを任務とする職業安定所が、何か日雇い労務者の就職の場所、勤務の場所みたいになってしまっているが、一体これでいいのか悪いのかということを私は聞いているのです。
  86. 百田正弘

    ○百田政府委員 今の御質問の点は、最も私ども頭を悩ましている問題でございます。沿革的に申し上げますと、職業紹介というのは、いわゆる日雇い労働者の職業紹介から始まったのでございます。いわゆる自由労務者と申しますか、これが始まりまして、それから一般の職業紹介は、わが国でも大正八年以来職業紹介法を制定いたしまして今日に及んできているわけでございまして、実は日雇いが先に始まった、こういう状況でございます。この場合におきましては、やはり日雇いの一つ労働市場といたしまして安定所がこれをあるいは港湾に、あるいはトラックの上乗りとか、あるいは建設事業その他にということでやって参ったわけでございます。ところで、現在におきまする五十数万という登録日雇いの内容を見ますと、この状態が非常に変わってきております。昭和二十四年に緊急失業対策法ができましたが、これは当時の状況によりまして相当多数の失業者が発生したので、一時的にこれらの離職者を再就職の期間まで労働力を保全していくということのために、緊急失業対策事業失業対策事業というものが実施されて参ったわけでございます。ところが実際の現実の状態といたしましては、漸次それが一般労働市場べ復帰する能力がない人たち——ないと申しますと語弊がありますが、乏しい人たちも、自分の生活が苦しい、いろいろな事情のために失対事業に働きたいというような形で、今日の失業対策事業内容がずっと変貌して参りました。だから一面から申しますと、そうした労働者一般民間に復帰するための事業であるということが、実は低所得者と申しますか、そういう方々のための一つの糊口の資になるといったような形になって参りました。従いまして、現在の内容を見ますと、一般労働市場、民間の求人があってもそこでは採用できない、使えないという人たちが、ほかに生活保護だけに依存するということでは生活困難だというようなことで失業対策事業に出てくる。従いまして、最近の状況を見ますと、男子と女子を見ますと、女子の比率が漸次高まってきております。しかもそれが相当年令が上の方になってきております。ここに非常に大きな問題があるのでございます。現在でも大体総就労延べ数の中に、民間、公共事業等を合わせますと、毎月大体全体の三割近くの人が民間の事業あるいは公共事業に就労しておりまして大部分の人は、入れかわり立ちかわりと申しますか、そういう方面に働けない能力の乏しい人たち、これが失対事業に固定しておる、焦げついておるという現状であります。これにつきましては根本的に、先生の御指摘のように、考えなければならぬ問題が非常にたくさんあるのでありまして、社会保障とも関連して考えなければならぬ問題でございます。これが定安所に勤務しておるというような状態にいわれるということは、私も正常な状態とは決して考えておりません。
  87. 小林進

    小林(進)委員 先ほどおっしゃった五十二万というのは、五十二万世帯でございますか、五十二万人でございますか。
  88. 百田正弘

    ○百田政府委員 五十二万人でございます。
  89. 小林進

    小林(進)委員 五十二万人おるうちの三割がようやく就労できる、あとの七割くらいが職業安定所に固定化しておる、そういうお話でございましたな、今の御説明は。
  90. 百田正弘

    ○百田政府委員 五十二万のうちの三割、計算すればそういうことになりましょうが、一月の総就労延べ数のうちの三割が民間、公共事業に行った人の延べ数である、こういうことでございます。
  91. 小林進

    小林(進)委員 今のお話で大体それはわかったのですが、結局、労働政策ばかりでなく、日本ほんとうに戦後でないとか、あるいは文化国家とかいわれるならば、私は少なくとも日本の雇用問題に関する限りは——完全失業をしてそういう失業対策とか社会保障とかいう形で救済をされている者と、あとは完全に雇用して労働協約等に基づいた賃金をもらっているか、あるいは最低賃金法等、国家のきめたもので生活を保障されているか、そういう二つの分類しかできないはずだと思っている。それがわが日本においては、完全失業でもなければ完全雇用でもないという、その中間に先ほど申し上げたようにわやわやしておる者があってまことに恥ずかしながら、こういう職業安定所に勤務しているみたいな日雇い労務者がいて、とても一人前に働けない、就労能力もない、社会保障でも救われない、だから職業安定所で飼い殺しにして食わしておる、こういうぶざまな労働政策というものはあるものじゃない。世界のどこにもこういう珍現象はないと私は思う。こういう問題をちっとも整理もされなければ処理もされないで、そうして一生懸命大砲を作り、ロッキードがいいのグラマンがいいのということをおやりになっておる今の内閣はまことに、大宮人が桜かざしてきょうも暮らしつというように、のんきにやっておりますが——あなた方はロッキードでいいでしょう。自分のきめた飛行機を買ってくれないから私は何とか局長をやめます、それはそれでいいでしょうが、こういう問題を国として何で責任を持たないのかと私は言いたい。そういう意味においてこんな珍現象——労働能力のない、といって救いのない人たちが、職業安定所へ勤務して、そうして年の暮れになるともち代やパン代を要求するという、こういう恥ずかしい姿を、私は労働大臣がどうしてもやはり政治で解決していかなければならぬと思うが、大臣いかがでありましょう、御意見を承りたいと思いまする
  92. 松野頼三

    松野国務大臣 なかなか大問題ですが、要するに小林さんのお考えも私の考えも同じように、労働能力者を最大限に働かして、生産を上げて、そして生活を上げていくというこの方法をやはり厳格に一つの目標にしなければならない。その過渡的には、やはりある意味においては半分の能力、半分の就職あるいは半分の賃金という、これだけの者を切り捨てるわけには参りません。従って、ある時期までは、これは厳格に言うならばいわゆる就業者からはずして、そしてほんとうのきれいなものというか、はっきりした労働者に分類したいのであります。それではあとの人はどうするか。それにはやはり社会保障とかあるいは年金とかその他の部面において拾い上げられるような組織と法がなければ、人道上これを切り捨てるわけにはいきません。そこが今ちょうど日本の過渡的な問題であります。従って、おっしゃるように、緊急失業対策事業は能率がいいかというと、よくありません。ではこれは事業なのか社会保障なのかといわれると、これは非常に疑義があります。やはり法律は事業という形をとっておる。しかし精神は、社会保障的な、ある程度社会政策的な意味が含まれている。そういうものが過渡的にはどうしても出てこなければいけない。そこは、やはり生きておる人を扱う意味において、ある程度能率本位にもいきますまい。といって、それは全然生活保護じゃない。そこが割り切れないというのが、私は小林さんの御意見じゃないかと思います。だから、ほんとうならば、全部の者が完全就労者になって、中間的階層というものがなくなる、その他はいわゆる恩給なり年金なりという方向で、別な方向で、その労働市場からはずして生活ができる社会を作ることだ、これが目標だと私は考えております。従ってなるべく、失業対策事業をふやすということよりも、雇用者をふやすという方向にしなければいけない。そこで、私としてはなるべく、失対登録人員をふやすよりも、そこにいく前における雇用の確立をはかりたいという趣旨で政治を立てまして、今回いずれ御審議いただきます炭鉱離職者には失対事業の適用をしないで、もう少し事業的な、生産的な面に吸収するように、緊急就労、ある者は特別失対あるいは臨時就労といういろいろな型を考えながら、なるべく失対という、採用能率からいうと非常に低い、しかも賃金も非常に低いところに陥らないようにいろいろなことをやっておるわけであります。願わくは、そういう計画でいくことを望みますけれども、過渡的にはやはり割り切れないところがある。これは社会の現象でありますから、それを否定するわけにはいきません。現実にこういう方がおられることは否定するわけにはいきません。一人の方も飢え死にさせるようなことは、国家として非常に大きな注意をしなければならないという趣旨でやっておるのですから、方向と努力は大いに買っていただきたいと思います。ただ、その面が百点にいかないけれども、まあ八十点くらいのところまで努力している姿は一つお認め願いたいと思います。それは方向は同じです。私も小林さんも意見は違いません。ただ現実にあるものをどうするかという処理は、これはややはり人間の社会ですから、そう理論的に、きょうからこうするんだというふうにはいかないのじゃなかろうか。ことに、先般も、実は夏でしたが、当委員会でだいぶいろいろな議論が出ました。高年令者を失対からはずして、社会保障でこれを救おう、これにも、おっしゃるように与党、野党からいろいろ議論があった。それはやはり一つ労働能力、労働市場というものを整理したかった。しかし、なかなかそう一がいにいきません。その一つのことでもあれだけ議論が出るのですから、さあ、これを振り分けるとなると大へんな問題です。私は、やはり労働市場を確立して、雇用者あるいは被雇用者というものの生活を安定させることをはっきりさせれば、もっと議論がはっきり出るので、過渡的にはそういう社会情勢を否定することはできませんが、こういう姿でいく以外にはしばらくは仕方なかろうかと考えます。
  93. 小林進

    小林(進)委員 もう五島さんが次の質問を用意しておられますので、私はまだ半分にしかならないが、後日またお伺いすることにいたします。  先ほども大臣はおっしゃったが、家内労働者の数は七十万から八十万、こういう数字があるのですが、なおそのほかに、零細企業者の中に相当困っておる人たちがおります。零細企業者の小僧さんや店員さんなんかの生態も、実は私はお聞きしたがったのです。それから浮動的な小売店舗の経営はいつ転落していくかわからない、こういう数が一体どれくらいあるのか、そういう数字も私はお伺いをしたかったのでございますけれども、もう時間がありませんから、これは後日に譲ります。  こういう数字を全部分類して参りますと、その中で、生活保護法による被保護世帯というものは今百五十万人あるのですが、私どもに言わせれば、これは厚生省の関係ですから厚生省にお伺いしますけれども、要するに生活保護法による受給者になった者はまだしあわせなんです。これは一、二、三、出級に分かれておりまして、五人標準家族でいうと、一級地なら一万円ちょびっとです。五人で一万円ちょびっとで一カ月食っていけるものじゃないと思うのです。六十何才のおじいさんに、三十何才の母親に、九才とか六才とか二才の子供を三人含めての標準家族で、一カ月一級地で一万何ぼ、四級地へいくと七千円ばかりになるのですが、これで五人食っていく、そういう生活保護法に基く生活費が与えられておるけれども、食えない。食えないけれども生活保護法によって辛うじて与えられた者は百五十万人になるのです。ところが、その生活保護法の窓口を求めて千百万人、これは厚生省や厚生白書がいっているのですから、私の数字じゃないが、千百万人も押しかけておるのです。私にもこの生活保護法に該当させてくれということで、全く押すな押すなの大盛況でございまして、これが生活保護法の窓口へ押し寄せている。けれども国は、予算がないからといってくれない。ようやく百五十万人の人間が資格を得て、受給者は、食えないながらもその金で辛うじて糊をつないでおる。何を食っているか。私も、ひまじゃないのですけれども、だいぶ調べてみました。そうしたら、要保護者の家庭なんかに行ってみますと、こういうことを言う。先生、それはコッペパンです。パンにジャムをつけて食べて生活していくのが一番安上がりだ。辛うじて生きていくためにはこれがいい。けれども、もっと安く上がる方法があります。それはコッペパンに水を飲む、これが一番安上がりです。なべも要らなければ、かまも要らない。燃料も要らない。なべ、かま、燃料が要りませんから、この生活が一番安上がりでございます、こういうふうにわれわれに説明してくれるけれども、そんな話を聞いているわれわれは一体どう思いますか。これは、今生活保護法を受けている人たちは、若干のでたらめはあるでしょうけれども、これが実際の生活です。こういう人たちが、厚生白書によっても千百万人もおいでになって、それが一生懸命に押すな押すなの大盛況なんですが、この千百万の中で、私が申し上げました、家内労働者やら、あるいは日雇い労働者やら、そういう方々が一体幾ら含まれているか。このボーダーライン層、低所得層等の数字も私は知りたかった。何しろあまり当てにならぬ統計ですけれども、それにしてもやはり数字をお聞きしたいと思うのですが、結論としては、こういうことです、二重経済といわれるわれわれの経済の底には、私が今申し上げただけでも、こういう多くの悲惨な状態がある、これを解決する者は、労働大臣、あなたをおいてほかにないのです。だから、私は労働大臣の奮闘を望むや実に切なるものがある。幸いにして名大臣と思って非常に期待をしておるのです。私は、保守党の中のことは何も知りませんけれども、最近三木武夫さんがヨーロッパに二、三カ月いて帰ってこられた。そうして、これからは社会保障と労働行政である、政治の中心労働行政、雇用行政に置かなければならぬということを新聞で発表された。私はそれを見まして、やはりうまいところに着眼を持ったものだな、これをやられたらわれわれ社会党も困るな、政権をとるわけにいかぬなというふうに考えたのですが、それはそれとしましても、私は、ほんとうにこれからはやはりこういうところに政治の重点を置いていくように考えてもらわなければならぬ。産業を助長するための雇用政策ではないのです。働くための産業であり、人間がみな所を得て、安心して生活できるための経済であり政治であり産業でなければならぬと思う。今までの考え方を逆にしなければならぬと思う。それを逆にして、世の中に生活の不安をなくす、貧乏もなくす、所を得てみんなが安心して暮らせるような、そういう平和な、豊かな社会にすればいいのです。安心して暮らせればいい、生活の不安がなければいい、そういう安定した生活を与える政治の中心は・労働大臣、あなただと私は思っている。だから、そういうことを含めて一つ大臣としての大きな規模、方針を、だあっとやってもらいたい、これを私はあなたに期待している。大いに一つ御奮闘をお願いいたしまして同僚諸君に譲ります。いずれ後日また御質問いたします。
  94. 田中正巳

    ○田中(正)委員長代理 五島虎雄君。
  95. 五島虎雄

    ○五島委員 あとに滝井さんが質問をされますし、もう時間もだいぶおそくなっておりますので、数点質問を用意したのですけれども、私は、きょう二つの問題について、要点だけ質問をすることにいたします。  第一は、大臣もよく御承知だろうと思いますけれども、熊本県と鹿児島県の県境に近い水俣湾の魚介を摂取すれば奇病にかかって一生不治の病気になるというような、いわゆる水俣奇病の問題について、労働行政に関する面だけに限って若干の質問をしておきたいと思います。  御承知の通り、農林委員、商工委員、社労委員の八名の議員が衆議院から派遣されまして、今月の一日から三日にかけてそれぞれ各関係の調査をいたしました。当委員会からも自民党の柳谷議員と、それから社会クラブの堤議員と私、三人が派遣をされまして、実地に調査いたして帰りました。  昨日の委員会でこれが報告を行なわれ、私かねて水俣奇病に関しては新聞記事などで大へんな病気らしいというように考えておりましたけれども、向こうに行ってみて、病院に収容されている患者あるいは家庭で自宅治療をしているところの患者などを直接まのあたり見て、この水俣奇病という病気は、これは大へんな病気であると思い、そうして、これをどういうようになおせばいいんだろうというようなことにつかれて帰京したわけです。  県庁あるいは水俣市あるいは地元住民などのそれぞれの立場からの陳情を聞きましたが、熊本県一円については、すみやかにこの病気の原因を究明してくれというのが切なる願いであったわけです。ところが、この病気はもう昭和二十八年から突如として出て、今日に至るまで約七年間ですか、七年間の時日が経過いたしておりますけれども、奇病といわれるだけあってこの病気の原因が究明されていない。厚生省では熊本大学に、この病気の原因を探求するために百万円の予算を投じて研究をさせているわけですけれども、この熊本大学の研究に基づいての報告を聞くところによると、大体、水俣市におけるところの新日本窒素工場から排水されるところの工場廃水にまじって水銀が水俣湾に流出される。それで、その堆土となった水銀を魚介が摂取してその魚介の中で無機水銀が有機水銀になるのではなかろうか。その有機水銀を魚介とともに人間が摂取すると水俣奇病になるんじゃなかろうかという疑いが濃厚であるというところまでは、臨床学的にあるいは理学的に・探求することができるけれども、無機水銀が魚介の体内に入って、どういう過程を経て有機水銀になるかという化学的な証明、医学的な証明ですか、理学的な証明が結論がつかないから、工場廃水とともに流れ出たところの水銀を魚介が摂取することによってこの水俣奇病が発生するのであるという断定的な結論を発表するに至らないということをわれわれは聞いてきたわけです。  ところが、昭和二十八年から今日に至るまで七十六名の患者が出て、二十九名の死亡者が出て、そうして現在の患者をわれわれが水俣市民病院にたずねてみましても、もうきょうかあすかというような重態患者が数名おられました。目は見えなくなり、耳は聞こえなくなり・よだれをたらし、口はものを言えなくなってそうして死ぬまぎわになると重症のリューマチ患者のようになって、腕は曲がってしまって伸ばすことができない、足も伸ばすことができない、物も摂取することができない、こういうような状況を見てきました。それで、この七十六名の中に治癒という診断を受けた人が二人あります。この二人の治癒した患者は通学をしたり通勤をしたりしていると聞いていましたから、熊本大学の教授に、こういう人たちは一人前の健康状態に返って、工場に通勤するあるいは学校に通学しているのですかと聞いてみましたら、一人前に返ったのではなくて、入院をしたり自宅療養をしたりするよりも軽い者とみなしたから治癒という判断をしたのでありますけれども、医学的には、完全治癒というのは現在の医学ではとうてい不可能である、こういうように言われたわけです。ですから治癒になった場合でも後遺症はあるということです。     〔田中(正)委員長代理退席、委員長着席〕  そうすると、こういうような説明の中から類推いたしますと、この奇病にかかれば絶対に治癒することのない不治の病気である、こういうようなことになるわけですね。そうすると、水俣湾一円の漁民とか、あるいは非常に漁の好きな床屋さんたちがこの病気にかかっておりますが、かかったが最後、原爆病と同じじゃないか、もう死を待つばかりじゃないかと思って帰ってきました。  そこで、この問題に対しましては、厚生関係としましては生活保護の問題一も出てきましょうし、あるいは治療費の問題も出てきましょうし、病院の施設の問題も出てきましょう。それから、通産省関係としては、工場廃水の問題が結論づけば、新日本窒素は工場廃水を湾に流す場合、その汚水を一体どういうように処理をして、浄化して水俣湾に流し込むかどうかというような対策の問題が出てきましょうし、また農林水産といたしましては、遠洋漁業の問題等々について思いをいたさなければならない。あるいは水俣湾という二重の袋湾を干拓しなければならないというような問題もありましょう。要するに、われわれが見てきたところによると、水俣湾に、新日本窒素から流れ出たところの廃水の泥土が三メートルから四メートルぐらい積み重なっておる。船の上から漁師さんがさおをずっとさしてみたら、三メートル半ばかりにまつ黒い土がついてきた。われわれがにおってみると悪臭を放つわけですね。そういうような状態の中に水俣奇病という不治の病が出ておる。ところが、七十六名の患者が出て、それを治療して、一人前の健康状態に返すというような医学的な措置が講じられれば、病人の方はそれでいいと思うのですけれども、これに関連して社会問題が起きております。ちょうどわれわれが調査に行った十一月二日に水俣に着いたのですけれども、あの水俣湾の沿岸であるところの熊本県と、そうしてもう指呼の間に鹿児島の島が見えますから、鹿児島の漁師さん、それから向側は天草灘の漁師さん、またずっと不知火海一円の漁師さんたちが三千人ばかり集まりまして、われわれに社会問題として陳情されたわけです。そのあとで工場に押しかけましてそうして門を開いていろいろ乱暴があった、器物を破壊したという事件もあったのですけれども、それらの問題は別といたしまして、なぜその三千人の漁師さんがわれわれに大挙して陳情したか。こういうような問題で、私たちは熊本県庁から自動車で送られて水俣に至ったわけですけれども、あの十数里の沿岸に、われわれはこの目で、日奈久から鹿児島の県境に至るまで一そうの漁船も出漁していなかったということをつぶさに見てきたわけです。そして漁民の方たちから陳情を受けたときも、涙を流してわれわれに陳情をし、そう  してすみやかに病気の原因を追及してもらいたい、でなければわれわれは漁をすることができない。生活に困って、漁をしてそれを売らんとしても、不買同盟などあって絶対に魚を買ってくれない。そうすると、漁師の生活というものは、もう今や破綻に瀕しているというようなことの中からすれば、漁師の生活というのをわれわれは何とか考えてやらなければならないのじゃないかというように思って帰ったわけです。そこで熊本県に対しても、失業対策の費用がある程度いっておるはずですけれども、熊本県について失業対策、緊急失対の予算はどのくらいいっておるのですか。
  96. 百田正弘

    ○百田政府委員 熊本県全体といたしましてはちょっと数字がございませんが、水俣市に関係の分について申し上げますと、現在の割当は一般失対、特失も入れまして大体二百五十程度でございます。
  97. 五島虎雄

    ○五島委員 二百五十程度というのは、二百五十人ですか。
  98. 百田正弘

    ○百田政府委員 二百五十人のワクということでございます。
  99. 五島虎雄

    ○五島委員 そこで地元では漁民の陳情、あるいは水俣市の陳情、熊本県の陳情の中には、実は失業対策という項目はなかったのです。労働省の行政関係としては、この水俣奇病の問題についてはより密接な関係は二次的に生じてきますから、一次的には関係がなかろうとは思うのですけれども、二次的にこれは関係が深くなってくるんじゃないか、従って私は大臣に対して、こういうような問題についてぜひ質問をして、熊本県の漁民の生活、ひいてはあの付近一帯の問題について一つ考え方を聞いておきたいと思ったのです。というのは、水俣には四百戸ばかりの漁民がおります。ところが水俣湾内ですから、水俣市だけで七十余名の患者が今まで出ていたのですけれども、ことしの九月、十月になってから、五キロばかり北の津奈木村に患者が三名出た。五名出るに及んで、いよいよ問題は発展してきました。さいぜん私が言うように、もうこういうようなことになると、水俣湾の魚や貝を食わなければ病気にはならないのじゃないかというようなことを言われておりましたけれども、津奈木村に患者が五名出るに及んで、これは大へんなことだ、魚は泳いでくるのだからということで、ずっと日奈久の沿岸までもう魚は売れない、こういうようになってきたわけです。この奇病が発生してから、もうすでに六年にも七年にもなって、だんだん漁民の生活は困窮してくる。そしてあの付近一帯は山つきですから、田畑の面積は非常に狭いですね。それで農村の耕作面積だって、一戸平均四反か三反くらいじゃないのでしょうか。そして蛋白質を摂取するのに魚類が主になってやっておられたのですけれども、あの付近の近海漁業というものはできなくなったものですから、百姓さんたちだって、あるいは水俣市民だって、あるいは農村の人たちだって、近海からとれるところの魚は食えなくなった。そうすると、カン詰類とか、あるいは林兼とか、日本水産とか、遠いところ一でとれた魚を買って蛋白質をとる。こういうようになって生活費はいやが上にもかさんでくる。そこで水俣奇病という問題は、農民にも市民にもあるいは労働者にも非常に大きな影響が及ぼされておるということを私痛感してきたのです。ところが漁民は今言ったように、もう魚を買ってくれない、買ってくれないから漁をしたってしょうがない。従って波の静かな海上を見詰めて、毎日々々暮らさなければならぬ。夏の夕方なんかは、三味線なんかをひいて、やけのやんぱちだというように歌って生活をしているというような状態だということを聞いてきました。  そこで、これは漁業の転換とかあるいは病人に対するところの処置とか、そういう当面急がなければならない問題はあるけれども、それらの問題を解決するまでは生活をいかにするかという問題が出てくるだろうと思うのです。それで今水俣の失業対策のワクとして二百五十名ですけれども、あそこは新日本窒素に大体労働者が吸収されておって、そうして水俣の地方財政の状況は、法人税とか固定資産税とかあるいは市民税とかいうようなものを計算すれば、ほとんど六五%くらい新日本窒素に負っているということを聞いたわけです。そこでこういう漁民に思いをいたして、この二百五十名の失業のワクでまかなわれているだろうかどうかということを聞いたら、そうじゃないらしいんですね。そういうことをやりたいんだけれども地方財政として非常に遍迫のおりから、熊本県の財政も再建特別措置法の適用団体であるし、そういうようなことはやろうとしても財政的にもやれないのだ、こういうようなことを聞いてきました。従って今政府が一生懸命やっておられ、われわれ日本社会党も特別に何とかしなければならぬと思うところの九州、北一海道の石炭労務者の離職者の問題等々については、法律のワク等々が考えられているようですけれども、こういうような漁民に当面の緊急をしのぐところの失業対策の行政的措置が必要になってくるんじゃなかろうかと思うのです。この奇病について、大臣が熊本県出身だから私は言うんじゃないですよ。大臣は全国の労働行政に対して公平に行なわれなければならない。従って大臣が熊本選出であるから、ことに熊本県のことについて何とかしなさいということじゃないのであります。しかしこの水俣の問題について、もう水俣市のみならず全熊本県のおそらく半分に当たるところの漁民が、有明海と不知火海漁業になるわけですから、その漁民に対してこれらの手を打ってもらえるだろうかどうだろうかということについて、大臣の所信といったらあんまり強過ぎますけれども、そういう考え方を聞いておきたいと思うのです。
  100. 松野頼三

    松野国務大臣 五島委員が非常に詳細に御報告のように、水俣病というのは、実は今日調査いたしますと、だいぶ古い時代からぽつぽつ出ておりました。なぜそれじゃ今回急に大口に出たかといいますと、これがだんだん拡大してきたということから、水俣病というのが非常に日本じゅうで注目されるようになり、三十四年の予算ではたしか政府も研究費と治療費の補助金を計上したはずであります。それでもやはりいろいろ研究の結果、ますますその原因と不安が拡大する。その原因は何であるかといえば、本日私もいろいろ個人的見解を持っておりますが、昨日でしたか、厚生省の方の研究で発表になったものが、けさの新聞に出ておりました。同様なことが本日の閣議で厚生大臣から御発表がございました。それを合わせますと、やはり新日本窒素というものがある程度嫌疑濃厚だ、しかしこれだという原因の究明はまだ早急には実はできません。しかしほかに工場がないとなると、一応新日本窒素というものに対するみなの注目が今日集まっておる、私はこれは否定できないことだと存じます。ただ、目の前にお医者さんの滝井委員がおられますが、有機水銀と無機水銀の変化というのは、これは私もわからないことで、また学者の中にもずいぶん御議論があるらしい。これは今後の結論を見ませんと早計に政府としての判断はつかない。しかも私が一番心配しますのは、二十九名という死亡率が非常に高いこと、これは軽々に放置できないことだ、こう考えて、この問題は私もいろいろ個人的な関係から話を聞いておりますが、では今までなぜこういうことを強く発表しなかったかといえば、やはり漁民というものは自分の生活が脅かされることを一番おそれますので、自然に魚というものを販売する方向に多少気を使ったということで、ある程度みな気がついておりましたけれども、そう大きく取り上げると、うつかりすれば全部の魚が売れなくなる、そうすれば自分たちの生活が困る、これは今日水俣ばかりでなしに、有明海全部の問題だというふうな非常に大きな配慮があったために、なるべく穏便に済ましたいという漁民の気持も私はあったかと思いますが、もうこうなりますと、そう内々で済ませる問題じゃない。しかも人命にも影響があることで、非常に私も成り行きを心配しております。政府もいずれ共同的な総合的な対策を立てるでございましょうし、熊本県は県として、この調査委員会組織すると聞いております。従ってこれは漁民と日窒という二つの争いじゃなしに、もう少し広範囲な意味調査研究するように、熊本県も対策を立てる、政府としても当然これに対して対処されるという話を聞いております。ただその中間で、どうしても生活が困るということは、これは大事でありますし、今日漁業というものが非常にこのために確かに影響を受けております。そういうことで、ある程度やはり生活の問題で、労働省関係として失業対策というものが必要だ、あるいは県としても必要だという話が現実にぼっぼつ出て参りますので、そのときは労働省として失対が必要ならば当然今日のワクを広げて、水俣市というよりも熊本県としてある程度対策を立てなければいけないのじゃなかろうか、水俣から相当広がって参りましたから、やはり県として対策を立てるべきだ。熊本県は再建団体だというならば、特別平衡交付金というものも勘案されていいのじゃなかろうか。政府の一般会計でさえも今日補助研究予算を組んでおりますから、これこそ平衡交付金というもので対処できるのじゃなかろうか。熊本県の財政から言うならばある程度影響はございましょうが、しかしそれ以上に人命の問題は放置できないと考えます。労働省にはまだ現実にはきておりません。しかし五島委員の御指摘のように、いずれそういう問題が出て参りましょうから、そのときには今までのワクを抜きにして、予算の中で私は十分対策を立てるというつもりで、実は事務当局に準備はさせております。何人幾ら出すかということは、そこまで県と打ち合わせが済んでおりませんから、本日そこまでの発表はいたしませんが、そういう準備は私どもいたしておりますので、どうか一つこの原因が明確になり、漁民の不安を除いて、そして漁業が再開できることを期待いたします。労働省としてはそういう準備は万々いたすつもりでおります。
  101. 五島虎雄

    ○五島委員 大臣が言われましたように、事務当局としてこれに準備をしている。ところが一部で、聞くところによると、何か石炭問題で予算が食われてしまって、そのほかの方面に回らないんじゃないかといって心配している向きの事務官もおられるようですが、そういうことはないでしょうね。
  102. 松野頼三

    松野国務大臣 今日相当石炭問題で大幅な対策費をとりましたので、予算の余裕というのは実を申しますとなかなかございません。ございませんが、一少なくとも水俣奇病に対して緊急対策を立てるということは、これは既存予算でいかなることがあっても捻出いたしたいと考えております。それは何万人ということは大へんですけれども、少なくとも今緊急なものというのは、水俣が二百五十人という既存のワクでございますから、これを倍に広げるということは、また二百五十人の準備をするわけでございます。従って何万人と言われれば、これは既存予算ではまかない切れませんから、補正予算でしなければなりませんが、少なくとも今日緊急な場所における緊急な対策というものは十分これでやっていける、こう私はお答えしておきます。
  103. 五島虎雄

    ○五島委員 それから失業対策の問題については、今大臣が努力すると言われましたから、具体的にどれだけをしてやってもらいたいとかなんとかいうようなことは今後に譲っていきたいと思います。ただ私たちは水俣市のみならず、今年度に入ってから三名新しい患者が出たところの、水俣を去る北五キロの津奈木村に調査に行ったのです。ところが老若男女全部出ましてそうして涙を流しておられました。私たちは非常に痛切に感じたのですけれども陳情書、要望書を見て、そこの村の生活状態をちょっと検討してみたのです。ところが農業と漁業だけの村でした。そこで農業の収入は、ざっと計算して九百六十五戸で一億七百万円あるということを村長が説明しておられたのです。そうすると二戸当たりが月平均一万二千円の収入ということに大体なるんじゃなかろうかと思う。その中に専業農家が二百四十六戸で、兼業農家が七百十九戸ですから、大体三対一の割合で兼業しなければならない、こういう状況の中に、一戸当たり月平均収入一万二千円程度である。しかも=F当たりの家族構成が非常に高いんじゃないかと思います。六人から七人おるわけであります。そうして一万二千円の平均収入であるということは、耕作面積が多いところは比較的いいかもしれませんけれども、多いところがあれば一万二千円よりも少ないところの収入戸数があるということを立証しますから、そうすると一戸当たりの家族構成ではなかなか生活も困るんじゃないか、こういうように思います。また漁民は、九千百二十二人のうちに二千三百五人の漁業関係の家族がおられます。しかも漁業組合員というのですか、漁業者が三百十戸ありますけれども、それに雇われている人たちが六百人おるのです。それは、かこと言ったりふなこと言ったりするんでしょう。そういう人たちが六百人もおられるわけです。ところが雇ってきて仕事ができないのですから、その人たちはおそらく村に帰るか町に帰るかして失業しているんじゃないかと思うのです。そうしてこの戸当たりの漁業家の平均収入が二万七千円です。そうすると、ふなこに対するところの賃金も払わなければならぬ。網代も払わなければならぬ。船の修理費も、あるいは油代とかいうようなものを差し引けば、これは農業と同じような収入になるんじゃないか、そうしてこれも七人ばかりの家族構成になるわけです。従って生活も非常に苦しいんじゃないかと思う。私たちがこういうところで苦しいと言うと、向こうの人たちは怒られるかもしれませんけれども、大体比較的に収入が少ないということがこの数字の上から言い得ますから、今大臣が言われたように、生活を守ってやるところの労働行政として特に大臣の言われたように十分これに対して今後対策をしてもらいたい、こういうように思います。この問題はこれで切ります。  次にベンゾールの問題で若干聞いておきたいと思います。去る十一日の各種の新聞に発表されました、ベンゾールのり有害物に指定される、あるいはある新聞は、全面的にベンゾールの製造を来年一月一日から禁止するというような見出しで書かれておるわけです。先月の当委員会において多賀谷君からベンゾールのりの危険について質疑がありまして、当時、労働基準局長は、一週間ばかりの期間に東京都と協力して実態調査をやるんだというようなことを言っておられたわけですけれども、新聞の記事の内容から見ましても、大体四〇%程度要注意者がおる。これにかんがみて、審議会では禁止する答申が出たので、労働省も近く省令をもってこれを禁止する運びになっているということが十一日の新聞に発表をされました。ところが、この中で疑点が二、三点ございます。というのは、大工場が自家で製造する場合はこの限りではないということになると、かわきの非常に早いベンゾールのりを大工場だったら使ってよくって中小企業には禁止してしまうというような問題もあるでしょう。またある地方新聞の記事を読みますと、これは神戸の新聞ですけれども、経営者に属する人が、神戸のゴム工業は換気その他完備しているから、ベンゾールのりを使用しても一向に人体には被害がないのだ、大阪や東京のようなところではそういう問題が出るだろうけれども、神戸ではそういうような問題は起きないんだから、ベンゾールのりの使用禁止については反対であるというような談話を発表している。そうすると、ベンゾールのりは非常に能率がいいですから、そうして製造方法というのは、私は知りませんけれども、新聞の記事によると、なまのりにベンゾールを入れて揮拝すればさっそくベンゾールのりができるんだというように、簡単にできる。簡単にできるならば、製造は禁止されたけれどもやはり使う、こういうようなことになるんじゃないかと思うのです。そこで、先月多賀谷君の質問に対して、労働基準局長が、一週間にわたって実態調査を行なうと言ったことについては、この文章から、どういうような実態調査の趨勢であったかということはわかりかねます。それで、わが社会党といたしましても、すでに御承知の通り、最低賃金法とともに家内労働法を作り、生活の安定の面からこの衆議院に提案をしておる。政府案と対立をいたしましたけれども、さらに衛生的な問題等々を取り上げて家内労働法をすみやかに策定しなければならないと思っております。政・府も何か、この家内労働法を策定するための調査機関を設置されて、もうすでに本日委嘱したんだというような午前中の大臣の説明がありましたけれども、実態調査の概要について、簡単でいいですから、ちょっと説明をお願いしたいと思うのです。
  104. 堀秀夫

    堀政府委員 この前の委員会で御説明申し上げましたように、労働省といたしましては、東京都と協力の上、ベンゾールのりを使用しておる家内労働者につきまして巡回検診、巡回指導を実施したわけでございます。その結果によりますと、検診を実行した家内労働者総数八百十六名でございますが、そのうち異常なしというものが四百六十七名、要注意というものが二百七十一名、さらに精密検査を要するという診断を受けましたものが七十八名、このような状況になっております。上従いまして、巡回検診を実行いたしましたうち、約四三%の家内労働者について要注意あるいは要精密検査、こういう診断が出ておるわけでございます。そこで、私どもといたしましては、その後労働者、使用者、公益の三者からなります労働大臣の諮問機関である中央労働基準審議会にこの問題をお諮りいたしまして中央労働基準審議会では数回にわたりまして、小委員会等も設け、また関係の使用者、メーカーあるいは家内労働者の組合、このような方々をお呼びいたしまして詳細な意見聴取と審議を行なわれました。その結果、現状から見ますと、ベンゾールを含有するゴムのりにつきましては、これを基準法四十八条の有害物として指定することが適当である、このような結論に達されて、労働大臣にその旨を答申されたわけでございます。そこで、この答申を受けまして、労働省におきましては、ベンゾールを含有するゴムのりについて原則的に基準法四十八条に基づき製造、販売、輸入及び販売の目的による所持を禁止する、このような省令を公布いたしました。その省令の実施期日は明年の一月一日、このようにいたしております。ただ、この間におきまして、問題は、家内労働あるいは零細企業等においてベンゾールのりを使用する場合に、今のような非常にゆるがせにすべからざる現象が起きておるわけでございますが、そこで、使用禁止をする場合に、そのようなおそれの少ないものについて過渡的にどのような措置を講ずるかという点が問題になりまして、これも中央労働基準審議会で詳細御審議の上、意見が一致して答申をされたわけでございます。それに基づきまして経過措置を規定しております。そこで、ただいま五島委員の御指摘に、大工場等におきましてベンゾールのりをみずから使用するために製造しておるところについてはどうであ・ろうか、このような問題があったわけでございます。そこで、問題が二つあります。すなわち、販売するために製造しておる、これはいかに大工場でありましても禁止すべきである。要するに、出回らしてはいけない、こういうことでありまして経過規程はつけておりません。そうでなくて、自分のところで使うために自分のところで製造する場合はどうであろうか。これにつきましては、大工場その他で非常にしっかりした排気装置その他ベンゾールのガスを一定限度以下に押えることのできるしっかりした施設を持っているところで、自分のところで使うために製造しておるものにつきましてはしばらく猶予期間を設けてもいいじゃないかという結論に達したのであります。その意味から、そういうもので、監督署長の許可を条件といたしまして、許可を得たものについては向こう三年の間自分で使用するためにベンゾールのりを製造できる、このような猶予期間を設けました。この許可の条件がございます。そこで、どのようなものについて許可するかということにつきましては、さらに引き続きまして中央労働基準審議会において許可基準を策定願うことになって、目下作業を続けておられるわけでございますが、原則的な考え方といたしましては、ただいま申し上げましたように、ベンゾールをその職場の環境において一定限度以下にそのガスを押えることのできるりっぱな排気施設を持っておるものに限る、このような許可条件をつけて許可を行なう考えでおります。このような考えでいきますと、これによって労働者が被害を受けるということは防げるのではないか、このように思います。また、ただいま例として神戸の一業者の言として御指摘になりましたが、やはりこれが出回りますということは、家内労働世帯あるいは零細企業等における何の排気装置もないというような環境でベンゾールのりを使わせることになりますから、これは出回らせるべきじゃない、すなわち禁止すべきである、このように考えております。また、大工場はちゃんとベンゾールのりをよそに回すものも使えるのだ、このように誤解する向きもありますが、そうではないので、自分のところで使用するために自分のところで製造するというものについては、今のような厳格な基準をつけまして許可をする、このような考えでおるわけでございます。
  105. 五島虎雄

    ○五島委員 今の概略はわかりましたが、ある新聞によると、附則として一項、すでに製造済みの分は三月まで売ってよいというような新聞の内容になっておるわけです。これが間違っているかほんとうであるか知りません。しかし一月一日から禁止するという見出しの中に、すでに製造済みの分は三月末日まで売ってよいということは、買ってよいということになるわけですね。そうすると、これは一月一日から禁止したことについて、所有はいかぬのだ、使用はいかぬのだといって、この三月末日までは売ってよいということは、どこに売ってよいのかというような疑念も持たれます。こういうことは小さい問題でしょうけれども、こういう記事を見たら、ベンゾールのりの家内労働者とかあるいは事業者とかいうのは、これは買っていいんだったら使っていいんじゃないかというようなことにもなります。それから大工場という見出しをされるということは、ゴム産業というのは大体中小零細企業が多いんじゃないかと思います。大工場だけが何か排気設備が完備している、そういうような傾向にはあるだろうと思いますけれども、大工場々々々といっても、中小工場が完備すればいいんでしょう。大工場が換気設備が完全であって、人体に有害でないと認められる場合はいい、しかし中小零細企業だったらいけないのだというような疑念も生じます。そこで全く人体に障害がないのだったら中小零細企業でも使っていいというようなことになりはしませんか。そこで大工場には三年間は許すんだ、ところが三年間許すという余裕をとったのは一体どこからだろう。そうすると四年目からはこれが禁止されるのだから一その三年の間にベンゾールのりの性能にかわるものを研究して使うんだという、その何かがあるのですか、どうですか。ですから三年という猶予期間が大工場のみに許されるということは、大工場と中小零細企業の競争的な立場の上からちょっとおかしいなと僕は思うのです。これはそういうような問題を疑念に思っているということです。ところが東京だけでもこのベンゾールのりを使用するところの労働者の八百名について実態調査が行われたけれども、一万人程度のこういう関連労働者がおられたと新聞には書いてある。何万人かわからぬ。従って、今小林君から質問されて、家内労働者は何万かと言ったら、従来までは四十七、八万だと言われておったけれども、八十万程度あるだろうと言われたわけです。八十万人すべてがベンゾールのり使用とかなんとかいうような労働者じゃないのですけれども、相当多数の労働者がおられるでしょう。ところがベンゾールのりを使用するところの工賃は、実態を聞いたり調べたりしたところによると相当の収入があるそうです。あるけれども、ベンゾールのりが使用禁止になるとその性能が落ちますから、それで労働者の収入はこの禁止とともに低下するんじゃないか。もちろん製作の能率が悪くなりますから低下する。これは生活の問題だ、こういうように私たちは思えて仕方がないのです。ですから家内労働賃金家内労働法の問題がそこに提起されて生活の安定をしなければならないというような問題が出てくるでしょう。そこでわれわれ社会党は、最低賃金法家内労働法二つ並べてそしてざるの目からすくい上げるんだというふうに家内労働法を提案したのです。基準局長なんかは一生懸命やられたので、この最低賃金法の中に労働工賃として数項目入れられておる。ところが午前の説明によると、最低賃金法の関連労働者が五万六千人適用になった、そして一五%程度上昇したんだということですが、これに関連するところの家内労働工賃というのはどういうような趨勢になっておるか、一人も適用されておるところはないのじゃないかというように思いますが、その点についてはどうですか。
  106. 堀秀夫

    堀政府委員 ただいまいろいろな問題について疑問を御提起になりました。その点につきまして一つ一つ申し上げます。  第一に、三カ月の猶予期間がある、そうするとそれはどうなるのかということでございます。その点は三カ月の猶予期間をつけております。すなわち一月以降、製造は禁止されます。しかしすでに製造済みのものについては、三月末までは販売することは認められております。この問題につきましては、中央労働基準審議会においても詳細に御検討になったわけでございます。労働大臣あての答申を作られるにあたりましても、代替品を早く見つけることが大事であるということでございます。そこでこの答申にも「本省令は、なるべく速かに施行することが望ましいが、トルーエンその他の代替品の需給状態に十分留意し、関係者に無用の波乱の及ぶことのないよう行政運営上充分配慮すること。」こういうことを基本的観念といたしまして、ただいま申し上げましたような附則をつけることを認めたわけでございます。これは要するに、トルーエンその他でもやはり毒性はございます。ございますが、ベンゾールそのものに比べますと、大体十分の一以下ということになるのでありまして、相当の注意をして取り扱えば被害を防ぐことは保証できる、このような考え方であります。そうすると、トルーエンその他の代替品が、一月一日から禁止されましてもすくに全部出回るわけではございません。大体二月末ごろになると相当出回ってくる、そういうこともございます。従いまして家内労働者その他の方が現在これを一つの材料としてお使いになっておる。その材料がないために仕事がなくなってしまう、生活ができなくなる、このようなことではいけないというような配慮で、猶予措置といたしまして三カ月だけ認めた、こういうことでございます。それから第二番目に、みずから使用するために製造しておる工場等について三年間認めたことについてお尋ねがございました。これもやはり同様の趣旨でございまして三年間に適当なる代替品を関係者が研究の上しっかりと整備して生産していただくということを期待しておるわけでございます。  それから大工場保護ではないか、このような御議論もございましたが、これは新聞等に大というふうな記事で書いておったところもあったと思いますが、これは省令を見ていただけばわかりますように、大とか中小というようなことは何もつけておりません。要するに、五島委員もただいま御指摘になりましたけれども、大であっても中小工場でありましても、ちゃんとしたりっぱな排気施設を整備して、それを客観的に認定を受ければよろしい、こういうことになります。れわれは大工場保護、あるいは中小だけ禁止する、そんなような考えでなしに、排気施設が十分であるかどうか、こういう点について客観的な認定を下して、経過措置期間において認めていこう、こういう考えでございます。  それから最低賃金の関係でございますが、これは御承知のように関連の家内労働について最低工賃をきめることができる、このようなことになっております。先ほども御説明いたしましたように、ただいままで約二十業種につきまして五万六、七千人の対象労働者に対して最低賃金決定されました。その内容につきましては、これは加工賃はまだ入っておりません。と申しますのは、御承知のようにこの法律ができましてそうして施行になりましたのが七月の末でございまして、現在までに至る約三カ月くらいの間に、われわれはどの程度できるかということを考えておったのでありますが、ただいま申し上げましたような数字が出てきたということは、われわれといたしましても予想以上に、この法律の運営が順調に行なわれて実施ができた、このように思っておりまする関連の加工賃は、最低賃金がきまった上で関連の家内労働者について必要があると認められたときに審議会の調査審議を経てきめるということになっております。第二段の問題でございますので、現在まで実績がないわけでございますが、今後この法律の運用につきましては、労働者、使用者その他関係者の御協力をお願いしたい、このように思っておるわけでございます。  大体ただいま御指摘の点についてお答え申し上げましたが、なお根本的な問題といたしましては、当面の応急措置としてただいま、相当われわれとしても勇気を持ってこの省令を、禁止令を出したわけでございますが、根本問題につきましては、大臣から先ほど御説明のありましたように、家内労働調査会の委員委嘱を申し上げまして、二十一日に第一回の会合があることになっております。この調査会によりまして家内労働の根本問題について徹底的に御討議をいただき、その内容によってわれわれは善処して参りたい、このように思っておるわけであります。
  107. 五島虎雄

    ○五島委員 最低賃金の問題がわが国にずっと表面に出てきたのは昭和二十六年ごろだと思います。昭和二十六年ごろには私は当院に登院していなかったわけですけれども最低賃金審議会というのがありました。そうして当時審議会では最低賃金対象職種を十四種にきめたんじゃなかろうかと思うのです。そうしてそのつづまるところ玉糸あるいは絹、人絹などの四業種にこれを指定して勧告するのだ、こういうようなことになって最低賃金法が制定されないまま昨年に及んだ。こういうようなことになったわけですけれども、当時の最低賃金審議会では十四種目を設定して、それについて具体的にその実態調査が行なわれているんじゃないか、その資料もあるはずである、こういうように思うのです。従って政府が調査委員委嘱されて、これから家内労働法に着手するんだ、こういうようなことを言われました。さいぜん私が申しましたように、党でも家内労働法案はすでに持っておりますけれども、それにいろいろ衛生の面とかなんとかを加味して、家内労働法をすみやかに策定したいと思うのです。従って政府も一生懸命この問題についてはやらなければいけないことですし、私たちもやりたいと思う。従って資料として昭和二十六、七年の、あの十四種について実態調査をされた資料があるはずだから、それを資料としていただきたいと思うのです。二十六年から今日まですでに八、九年過ぎておりますから、経済的な変化もあっただろうと思いますけれども、それらの問題について資料を下さい。  それから最低賃金の中の労働工賃として、分離されざるまま最低賃金法の中に家内労働者の工賃という数条の項目があって、そうして今ベンゾールのりの使用禁止の問題を中心として、家内労働法の制定に着手する。その調査のために委員を設けられた。ところがこれが結論が出て答申されなければ、家内労働法に着手されないことになるのじゃないかと思うのです。そうすると、どういうような時期の間にこれを調査してもらいたいといって委嘱されたのか。聞くところによると二年ばかりかかるんじゃないか。そうすると家内労働法を作るのだとアドバルーンを政府は上げながら、二年先なんだ、こういうようなことになると、家内労働者は浮かばれないのではないか、こういうように思いますが、それは事実ですか。
  108. 堀秀夫

    堀政府委員 この前の中央賃金審議会でいろいろ御調査をされまして、その資料につきましてはございますので、お手元の方にお届けいたすようにいたしたいと思います。次に家内労働調査会の運用でございまするが、これは御委嘱申し上げただけでありまして、まだ二年かけてくれとかあるいはいつまでにというようなお話は全然しておりません。家内労働の問題につきましては、五島委員も御承知のように、わが国の家内労働は非常にその実態が複雑かつ特殊な問題を含んでおります。その内容につきましても、いろいろ特殊な事例があるわけでございます。家内労働者の保護をはかりますためには、単に一片の法律だけをもって解決する問題でないことは御承知の通りでありまして、法律的な対策と並びまして、総合的な、経済を含む対策が必要である。そういたしませんと、家内労働者を保護しようとして、かえって家内労働者に不利な条件を作るというようなおそれも考えられるわけでございます。従いましてそういう点につきまして、よばど掘り下げて、真剣な調査審議を行なわなければならないと考えております。その意味におきまして、各方面の有識者を御委嘱したわけでございますが、第一回の会合を二十一日からいたしまして、いろいろ御勉強を願うわけでございまするから、まずこの問題につきまして徹底的にまず根本的な自由討議をやっていただきまして、それらの御意見を伺った上でわれわれとしてもそれと並行して努力を重ねて参りたい、このように考えております。
  109. 五島虎雄

    ○五島委員 ほかに失業労働者の問題等々についても質問したいと思いましたけれども、相当時間をとりましたし、なお滝井さんや伊藤さんが質問があるそうですから、質問を保留して終わることにいたします。
  110. 永山忠則

  111. 伊藤よし子

    ○伊藤(よ)委員 時間もございませんので、簡単に御質問申し上げますが、今回の十五号台風によりまして起きた一つの例でございます。これは今後もいろいろなときに起きると思いますので、一例をあげて労働省の御見解を聞き、御要望を申し上げたいと思うわけでございます。それは名古屋にございます大同病院という病院でございますが、今度の災害を受けたわけでございます。ここは完全看護の病院でございますので、ほんとうは外からのつき添い看護婦は入れないわけでございますが、実際には、つき添い看護婦が当時七人おったそうです。高潮などで浸水して参りまして、そのつき添い看護婦さんが患者を避難させまして、一度成功して第二回目にまた患者を避難させるために努力中に、その看護婦さんも巻き込まれて、四人なくなったそうでございますそれ。につきまして、病院の看護婦さんには労災保険がございますが、つき添い看護婦には現在労災保険がないわけでございます。私は特につき添い看護婦さんとか、あるいはつき添い婦というような人たちは、大体未亡人で、子供さんを持ったりして非常に苦労している人たちが多うございますので、何とかしてこういう緊急な場合あるいは火事等の起きたような場合も、必ずしも風水害ではございませんでも、患者を避難させるためにけがをするとか、死亡するとかいうような場合があり得ると思うのでございますこういう人たちに労災保険がかかるような方法をお考えになって拙いるのか、なっていないとすればお考え願いたいと思うのでございますが、その点につきまして伺いたいと思います。
  112. 堀秀夫

    堀政府委員 ただいま御質問の点につきましては、現在の労災保険は強制適用の事業と任意適用の事業と二つに分かれているわけでございます。看護婦等につきましては、保健衛生の事業ということになるわけでございますが、これは現在労災保険では任意適用ということになっております。従いまして病院が労災保険に加入している場合には労災保険がもちろん適用があるわけですが、加入していない場合には労災保険の適用はありません。しかし業務上の傷病でありますれば、加入していませんでも労働基準法の災害補償という問題で、使用者から災害補償を受けられるということになるわけでございます。そこでこの問題につきまして、強制加入にすることが適当かどうかという問題は、ほかの業態等につきましても問題のある事業がありますので、われわれこれを常時検討しているわけでございますが、看護婦、保健衛生等についてどうするかということにつきましては、ただいまお話のような御趣旨もございますので、よく検討してみたい、このように思っております。  それから看護婦さんが働いておられる間に、今度のような天災地変によって死亡されたという場合にどうするかという問題でございます。これは要するに業務上であるか業務外であるかという認定の問題になるわけでございます。一般的に天災地変によって死亡されたときには、業務外になる場合が多いわけでございます。ただそれも場合々々に応じて事実を認定するということによってきまる問題でございます。ただいまお話のような問題点につきましては、われわれも伊勢湾台風に際して生じた労働者の災害につきまして、非常にお気の毒な面があり、また一生懸命働いておられた場合も見受けられるのでございますから、なるべく実情に沿うように、認定にあたりまして十分気をつけていきたいと思います。あと具体的な問題につきましては、愛知、三重その他の基準局によくその点を親切に調査するように命じまして、事実上の認定調査を行なわせたい考えでございます。
  113. 伊藤よし子

    ○伊藤(よ)委員 ただいま御答弁がございましたのは病院の、看護婦のことでございます。私が申し上げておるのは病院の看護婦ではなくて、外からのつき添いの派出看護婦さんでございます。こういう場合には、会か何かが事業主になりまして保険にかからないとだめなんでございますね。それが今できにくい状態じゃ、ないかと思うのです。ですからそういうつき添い看護婦さん、派出看護婦さんなんかの場合にも、監督官庁の方から会に、労災保険に入るようにというような、何かそう  いうふうにしていただけないかという要望なんでございます。
  114. 堀秀夫

    堀政府委員 派出看護婦それから家政婦等についても同じような問題があると思います。労働基準法、労災保険法は労働関係し雇用関係を前提にしておりますので、雇用主がないといけないわけでございます。ただ患者のつき添いをやっておるというようなことではなかなかその適用はむずかしいことになります。そこでお話のようなことができるかどうかという問題でございます。すなわち看護婦会、派出婦会、そういうものを使用者にすることができるかどうかという問題でございます。これは要するにその会と派出看護婦あるいは家政婦の方との間に雇用関係、労働関係があるかどうかという事実認定の問題になるわけでございます。お話の趣旨はよくわかりましたか一ら、一つわれわれも何かうまい考えが出ないかどうか、よく研究いたすことにいたしたいと思います。
  115. 伊藤よし子

    ○伊藤(よ)委員 最後に、大へん弱い立場の人でございますので、監督官庁におかれましてそういう労災なんかにかかれるような方法のお考えを願いまして私の質問を終ります。
  116. 永山忠則

    永山委員長 滝井義高君。
  117. 滝井義高

    ○滝井委員 どうも毎日しんがりになっておそくなるので非常に気の毒ですが、大臣も御存じの通り、今いわゆる大手の炭鉱の人員整理の問題が、三井鉱山を中心として非常に重大な転機に差しかかっております。そこで私は客観的に、静かに現在いろいろ新聞記事その他に現われておるものを見ておりますが、納得のいかない点が多々あるわけです。詳細なことはいずれまた炭鉱離職者の臨時措置法案が出て参りましたとおりにお聞きいたしたいと思いますが、当面重要と思われる一、二の点について特に大臣の御見解を承りたいと思うのです。それは、職場活動家の指名解雇をするということについて、労働省は一般論として一体どうお考えになるのかということです。こういう職場活動家というものが経営にじゃまになるのだ、だからこれは指名解雇をやるということが世間に流布されておるわけです。これに対して大臣はどういうお考えを持っておるのか、これをまず第一にお聞きいたしたい。
  118. 松野頼三

    松野国務大臣 職場活動家は労働法で保護されております。ただし職場活動家といえど会社の規則は守らなければならない、同時に会社の在職者である、従って職場活動を理由に解雇をしたり、不当な差別をしたりすることはできません。ただし給与とか特別なものは暫時停止してやるわけであります。従って身分上においては社員であり、同時にそのワクに縛られる。と同様に会社におきましても、すべての場合において、職場活動家なるがゆえに差別待遇をするということはできない。ただいま御指摘の解雇ということは、職場活動家たるがゆえにこれをどうこうするというその理由は、私は労働法の規定による不当労働行為の疑いがあると存じます。
  119. 滝井義高

    ○滝井委員 職場活動家を指名解雇することは、労働組合法七条のいわゆる不当労働行為に該当する疑いが濃厚であるという大臣の御見解です。おそらく私もそうだろうと思います。そこで基準局長にお尋ねをいたしますが、現在三井鉱山はどういう状態で賃金の遅配、欠配が行なわれておるか、それを一つ御説明願いたい。
  120. 堀秀夫

    堀政府委員 三井鉱山につきましては、実は経営が非常に赤字になりまして、十月に支払わるべき賃金につきまして約四〇%が十一月に繰り越されておるという状況でございます。
  121. 滝井義高

    ○滝井委員 十月に支払われる賃金の四〇%が十一月に繰り越されておるだけで、あとは何もないのですか。そういう状態だけですか。
  122. 堀秀夫

    堀政府委員 私どもの承知しておりますところでは、その繰り越された分は十一月十五日支払われるという予定になっておると聞いております。しかしわれわれの今の感じからいたしますと、そのようにして同額程度が、今度十一月に支払われる分が十二月に繰り越されるおそれが多分にある、このような報告を受けております。
  123. 滝井義高

    ○滝井委員 賃金がなしくずし的に遅配、欠配される状態は、いつごろからそういう現象が起こっておりますか。
  124. 堀秀夫

    堀政府委員 二、三カ月前からそのような現象が起きておりますが、問題は九月分までは——私も今手元に詳細な数字を持っておりませんので、やや正確を欠くかもしれませんが、同じ月のうちの支払い日が、十五日の分がたしか月末に延ばされてその月のうちに支払われたというふうに聞いております。それが十月支払い分の賃金から次の月に繰り越されるようになった、このように聞いております。
  125. 滝井義高

    ○滝井委員 その延ばす賃金の中で、現物給付的なものはありませんか。
  126. 堀秀夫

    堀政府委員 私どもの聞いておりますところでは、ないように聞いております。ただ、ただいま詳細手元に持っておりませんので、やや正確を欠くかもしれません。私今の感じでは、たしかなかったというふうに聞いております。
  127. 滝井義高

    ○滝井委員 炭鉱地帯には金券というのがよくありますが、たとえば炭鉱指定の配給所ならば物をとってもよろしいのだ、それはあとで賃金で差し引いてやるからという、賃金支払いの形態を一応形式的にとるが、本人には賃金を渡さないという方法がよくとられるのですが、三井鉱山はそういう方法はやっておりませんか。
  128. 堀秀夫

    堀政府委員 三井鉱山以外のところでそのような例を聞いております。三井鉱山については、たしかなかったのじゃないかというふうに聞いております。
  129. 滝井義高

    ○滝井委員 そういう状態があるのじゃないですか、配給所で、たとえばみそとか、しょうゆとか、お米をとってもいいという……。
  130. 堀秀夫

    堀政府委員 私、今そのように聞いておりましたので、そう申し上げたのですが、突然の御質問で、そこまで具体的な調査は今手元にございませんので、後刻調べまして御報告を申し上げます。
  131. 滝井義高

    ○滝井委員 労働基準法二十四条で——労働組合は法律を守らなければいかぬということを政府、労働大臣以下よくおっしゃるのですけれども、当然経営者も旧財閥ですから、やせても枯れても三井、三菱、住友といえば、五億や十億の金が右から左に融通がつかぬはずはないと思うのです。基準局として何か三井鉱山に警告をしましたか。
  132. 堀秀夫

    堀政府委員 本省におきましては、三井鉱山本社の首脳部を呼びまして、すみやかに支払い計画を立てて二十四条違反の状態を解消するようにという警告を発しました。また福岡、北海道におきましても、現地の各基準局から地元の三井鉱山の幹部に対しまして同じような警告を出しておりまする
  133. 滝井義高

    ○滝井委員 それはいつ警告をしましたか。
  134. 堀秀夫

    堀政府委員 はっきり記憶はありませんが、十一月の下旬であったと記憶しております。最初はそのような警告をいたしまして、その後十一月になりましても同様なことを繰り返しております。
  135. 滝井義高

    ○滝井委員 それで会社はおとなしくその通り実行いたしますということなのですか。
  136. 堀秀夫

    堀政府委員 会社の首脳部といたしましては、誠意を持って解消に努力するという返答をいたしております。しかしその後の状況はまだ解消されておりません。
  137. 滝井義高

    ○滝井委員 二、三カ月前からそういう状態があったと申しますが、二、三カ月前はもっと条件がよかったのじゃないですか。遅配の状態がもっと少なかったのじゃないですか。
  138. 堀秀夫

    堀政府委員 二、三カ月前は、先ほど申し上げましたように、その月の中におきまして繰り越しが行われた、十月分からは次の月に繰り越しが行われた、こういう状況であります。
  139. 滝井義高

    ○滝井委員 従って、だんだんいわゆる人員整理の問題が逼迫するにつれて、賃金支払いの状態というものは悪くなりつつあるという客観情勢が出てきつつあるわけです。まずそういう背景というものがここにあるということが一つ。次には、大臣も御存じの通り、筑豊炭田の情勢というものは、遠賀川の両岸に林立しておった中小の山はもうほとんどありません。全部息が絶えてしまったのです。この状態を昭和三十年八月に合理化法が通って以来、筑豊炭田の炭鉱労働者はいやというほど見せつけられてきました。今われわれが大牟田に行くと、大牟田の組合にどういうスローガンがかかっておるかというと、去るも地獄、残るも地獄、こういうスローガンがかかっておる。希望退職して百万か百五十万の金をもらっても、一、二年したら金がなくなってしまう。あとだれも雇ってくれる人はない。だから、去っても地獄、残っても地獄なんだ。どうしてかというと、今度の四千五百八十人の三井の首切りが終わったあとには、もう一回大手十八社の七万ないし十万の首切りがくるんだ、四千五百八十人が終わってもまたくるんだから、また地獄がくるんだ、だからわれわれは戦わなければならぬ、こういう姿です。三十年以来合理化政策を政府が断行して、出た失業者に対して何らの具体的な対策をとっていない。そして路頭に迷った炭鉱労働者の姿を、大手の労働者の諸君はいやというほど見せつけられている。合理化のあらしがぐっと一当たり中小を吹いてくると、今度はそのあとに大手のいわゆる人員整理、首切りがやってきたわけです。こういう背景がまずある。そうして財閥といわれる…井鉱山が賃金の遅配、欠配をやり、労働者生活を極度に逼迫に陥れている。横には栄養失調で、青空会といって自分の住んでいる家に月や星がさし込むような、雨の漏れ込むようなところに住ましておる。そういう状態の中で今度は大手が首を切るんだ、こういう状態にある。それを労働者が団結して防ぐ、これは人情ですよ。生の本能ですよ。そして、しかもその生の本能を守るためにみんなを語らっ  て団結した者を、職場活動家といい業務阻害者といって首を切ろうとしておる。これをもし労働省が黙って見ておるというならば、日本には労働行政は要らない。私は、少くとも松野さんは三井の栗木社長を労働省に呼びつけて、こういう三井の実態は日本労働行政を毒するものであるということをがんとして一つ怒りつける必要があると思う。これをこのまま放置しておったならば、日本労働法はあってなきものです。これくらい天下にはっきりしておる不当労働行為というものはないと私は思う。もしこれを黙って許すならば、これから資本家が何をやろうと、不当労働行為というものはない。この前私は亀井さんに、警察の問題について宿題にしておりました。警察が不当に資本家側を擁護することについて、労政当局は目をつぶっているということを言いました。今度は衆人環視の中でやられておることでしょう。私は医者で、労働問題はしろうとです。しかし、私たちしろうとが見ても、今の三井鉱山のやり方というものは、これは大へんなことだという感じがするのです。こういうむちゃなことをやるなら労働法なんか要らぬ。まず、三井の今度の四千五百八十人の人員整理の基準を知っておると思いますが、その基準は一体どういう基準ですか、説明してみて下さい。
  140. 亀井光

    ○亀井政府委員 数項目ございますが、その中で一番問題になりますのは、業務について十分会社側に協力しなかったという条項が一番多いようであります。高年令あるいは生活上の条件だとかいろいろでございますが、今滝井先生のお話の中でやはり一番問題なのは、会社の業務に協力しないという問題、これが一つの問題だろうと思います。ただこの問題は、労働協約の本旨に従って労務を提供するという、これは労働者として一つの責任がございます。従って、そういう労働協約の本旨に従って労務を提供しなかったかどうかという問題は、会社側の学務管理の上から申しましても、あるいは就業規則の上から見ましても、問題は若干あろうと思います。ほかの点は、その者が解雇されましても、生活上の問題として解決され得るとか、あるいは高齢者だとか、一応各社の合理化の際に持ち出されるいろいろな条件を掲げておるようであります。今申し上げた第一点の問題が、やはり今回の整理基準の中で一番問題があろうかというふうな気がいたします。
  141. 滝井義高

    ○滝井委員 集団生活に不適格な人というのがある。われわれ人間というものは社会的な動物でです。集団生活をやることがわれわれの本能です。なるほど集団生活の中で賭博をやる、けんかをする、これは不適格な人でしょう。しかし労働運動で集団生活に不適格な人というのは一体どういう人を経営者が言うかというと、レッド・パージをやったような、ああいう形がこの中に言われておるのじゃないか。その形が今度具体的に出てきたのが職場活動家ですよ。そういうものを退職者を募集したりあるいは指名解雇をやるときの基準の中に入れておるということがあなたの方にわかっておって、それを黙って見ておるということは間違いだと思うのです。少なくともこういうものは撤回させるように当然勧告すべきですよ。これがやはり労働省設置法にいう労働者生活を守るために労働省が作られた本来の趣旨だと私は思います。ところが民間の労使双方のことだから、われわれとしては知らぬと言って手をこまねいて見ておれば、これは労働省というものは要らぬことになる・こういう背景に追い込んでいっておりますが、これは松野労働大臣見解を承りたいのですが、十一月十二日に栗木社長が談話を発表しております。その談話を読んで私はあぜんとしたのです。今度四千五百八十人の首を切るのだが、三池についてはもう人数だけが問題じゃないと言っておるのです。四千五百八十人だけ希望退職を募集いたしますといって、新聞ではいわゆる希望退職者が四百人か出ておるということですが、いよいよ大詰めの段階にきたら、三池は人数だけが問題じゃないのだ、問題は質だよということを言っておる。それなら一体何が問題だというと、結局質の問題、職場活動家の問題になるわけです。さらに、三池の体質改善は会社にとってぜひやらなければならぬ、これは私はどういう体質改善か知らぬけれども、それは御自由に体質改善をやってよろしい。しかしその次がよくない。流血ざたを初めいかなる事態が起きょうとも、また何年続こうともいとわず努力する、こういうことを言っておる。これはわれわれ社会党を容共といい、暴力革命をやるんだ、こう言う人がおるのです。ところが資本家のチャンピオンで、昔の財閥のチャンピオンである三井鉱山の社長が、流血の惨事をいとわない、いかなる事態が起こってもやるのだと言うことは、これは無政府ですよ。こういう談話が二十世紀の後半に白昼堂々とやられておるのです。私は今までじっと見ておったのですが、これでは国会で問題にせざるを得ないと思いました。私も三井鉱山のそばに住んでおる男です。しかし、これではわれわれの人道主義が許さぬのです、社会正義が許さぬのです。こういうことを会社の社長が平然と口にし、労働省が黙っておるということならば、これはわれわれも総評と語らって対決をするということになる。会社が流血の惨をいとわぬのだ、こういうことを言うのです。そんなら会社は、暴力団でも雇ってやるの・かということになる。こういう点については、一体松野労働大臣はどうお考えになっておりますか。これはちゃんと新聞に出ておる。流血の惨をいとわぬというなら、暴力で一つお前らの首を切るぞということじゃないですか。こういう点について松野労働大臣は一体どう考えておるのか、お伺いいたしたい。
  142. 松野頼三

    松野国務大臣 栗木社長かどういうことを言ったか、その新聞記事は私も拝見しましたけれども、その通り言ったのかどうか。また栗木社長が私のところにそれを言いにきたわけではございません。従ってもちろん不穏当な言葉だとは存じますけれども、栗木社長がそれを言ったか言わぬかということは、これは私が直ちに呼んで聞くというまでには至っておりません。私のところに来てそれを言ったならば、それは私のとる方法もございましょう。  なお、職場活動家三百名と言われますが、私の方で聞いておるところでは、職場活動家三百名を切ってそして第七条に違反するんだというような会社側の申し出とは聞いておりません。そういうことは聞いておりません。組合員なるがゆえに首切るのだということは、今回の条件には加えていないはずであります。ただその疑義がありますのは、おっしゃるように会社に協力しないとか、会社の規則を守らないとか、あるいは非常に労働に対して不調和だということについてはあるかもしれませんけれども、組合員たるがゆえにとか、組合活動家という、三百名というのが一部に発表はされておりますが、それは会社側の発表かどうかはお調べになりませんと、新聞の発表だけで私がそうだと断定するには少し調査不十分ではなかろうか。従って正式に提案されたその場における労使間の問題というものもよく判断の上に私たちは議論しなければならないと思います。ことに労使間の問題ですから、政府が直接関与しないとは言っておりません、しかし政府が関与すべき時と場所というものはおのずからあるのだ。さしあたり労働委員会というものがございますから、これも政府がもちろん関与し、あるいは法律でできておる調停機関でありますが、そこにまだ労使が御出席になっていないという段階で、いきなり労働大臣がこれがいい、あれがいい、あるいは社長の放言は一々是なり非なりということを断定するには少し早いのではなかろうか。新聞紙面を見ますと、必ずしも穏当でない言葉だと私は考えますが、直ちに私が呼んで、それを言ったのかどうか、それは私どもとしてはまだ時期が——ことに中山さんという中労委の方もございますし、会社側もあるいは労働者側も、正式に労働委員会を通じて平和解決の手段を今までとっておりませんので、労使間の問題として今日政府が取り扱う問題ではございません。提案になれば今度は中労委の問題になりましょう。その上に、いろいろ政府が言うべきことがあればそれは言うべき時期もございましょう。しかし今の段階は、今日はそういう手続はまだ踏まれておりませんで、初めて昨夜及び今日から中山さんという中労委の方が中に入られるという報告が来ておるだけでありますから、私は一々会社の社長の言葉に対して、それは新聞記事を読んでこれはどうだと言われれば、非常に不穏当だなと私は思います。しかし私にその言葉を言いに来られたわけではございません。どこで、どういう場所でお言いになったか、それは栗木さんにお聞きしなければ、あるいはそのときの条件によら、なければならない。そういう段階でありますから、労使間の問題ですから、どうかもう少し、一言片句にとらわれず、なるべく穏便な方法で労使間の解決をはかりたいというのが私の念願です。出るべきときがあれば出なければならぬが、今日はまだその段階にあらず、また三百名という組合活動家を首切るのだという交渉の内容は現実にはまだ出ておらなかったと聞いております。
  143. 滝井義高

    ○滝井委員 お互いにころばぬ先のつえが必要です。少なくとも今莫大な人を首切ろうとしておる石炭鉱業の中における一番チャンピオン的な社長が——とにかく私は新聞のこの記事はそううそだとは思いません。各紙の状態を見ても、談話の内容は大同小異です。従ってやはりこれはこういう談話を社長がみずからやり、そして賃金の遅配、欠配を、すでにこれだけでも明らかに労働基準法違反なんですから、そういうことをやっている社長のもとにおいてこういう事態が起ころうとしておるならば、労働省は公式でなくてもよろしい、非公式に社長を呼んで、これは刺激しない言動なり態度に出てもらいたいということを、ころばぬ先のつえで個人的に警告を発していいと思う。なるほど新聞記事だから、これは松野さんもお読みになって不穏当だとお思いになっても、おれに言うてきたのではないからと言うけれども、これは言ってきてなくても、やはり一つの現象を見て、その現象の背後というものを眼光紙背に徹するのが労働大臣の役割だと思う。予防的の措置を講じなければ、流血の惨が起こってからかいにばたばたしてもあとの祭りです。だから私はきょうは特に、こういう状態でございますのであなた方に御警告の意味で御質問をしておるわけです。  それからもう一つ重大な問題が起こっております。それはこういう資本家側の態度というものは連鎖反応を他の資本家に起こしております。これは朝日新聞にも出ておりましたが、大牟田の高等学校か中学校を卒業して来年度の就職を大阪の繊維問屋か何かに頼んだ。ところが三井三池の大牟田の出身ならばもう雇いません、こういうことです。これは私自身も経験がある。しかもこういう事態は、今度はそれから四、五日した朝日の投書欄にも、経営者側に属するいわゆる採用に当たる人が、自分もそういうことで採用しないんだということを裏づけして書いておる。私きょうは持ってきておりませんが、いずれこれは離職者援護法が出たときにもう一ぺん問題にしますが、やっているわけです。私もこういう経験を持っておる。私はかって今から二、三年前に優秀な男を東京のある銀行に入社試験を受けさせました。優秀だから試験にパスした。ところが銀行は保証人が要るのです。そこで私は、ある有名な、私の昔から親しい評論家を頼んで保証人になってもらいました。ところが、この評論家が近衛内閣の時代にある研究会に入っておった。そうしたら、その銀行の面接者が、試験官が何と言ったかというと、あなたの保証人は近衛内閣のときに国家改造の運動をやった人だ、だからこの保証人ではどうも会社は雇えないのだというわけです。そこでその知り合いの学生が私のところに来て、先生、これはどうも保証人が悪いというから、だれかほかの人を紹介してくれませんかと言うので、実は私はなくなった三輪寿壮氏をかわりに立てたことを覚えています。三輪寿壮先生ならばよろしかろうということで、三輪寿壮先生になった例があるのです。この三井鉱山のあの大牟田、今一番問題になっておるその中学校、縁もゆかりもないその中学校の子供らには罪がないはずです。ところが、そのかわいい子供、何の罪もない無実の子供の就職を拒否するという現象が出てき始めているということです。これは私は大問題だと思います。こういうように会社の社長は流血の惨をいとわずと言い、そうしてしかも同じ資本家の陣営というものが、そういう労働者の権利を守るために団結をした者の子供は雇用しないのだ、こういうことになったら、日本二つになりますよ。こういう事態が日本の資本家の頭に巣くい始めたということは、私は大へんなことだと思うのです。こういう点については、あなた方が労働協会その他をいろいろお作りになって、労働組合のために再教育をやる、同時に一その場合にも経営者の再教育をやるのだ、こういうことで労働協会法をわれわれは通したわけですが、こういう状態では、もう労働組合の教育は二の次にして、やはり私はもう一回日本の経営者の教育をやり直してもらわなければいけないと思います。そうでなければ、幾ら暴力革命をやってはいかぬと言っても、こういうところから暴力革命が出て参りますよ。会社の経営者が、流血の惨もいとわずにおれの所信を貫くのだ、こうおっしゃっていけば、相手方だって流血の惨をいとわずにやるのだぞという思想が出て参ります。これは春秋の筆法をもってすれば、まるっきり資本家の方が暴力革命を奨励するようなことでしょう。こういう事態というものを一体松野労働大臣はどうお考えになるかということです。天下の大新聞に堂々と、経営者側もそれを肯定するがごとき記事を出しておる。しかも、あれは夕刊だったと思いますが、朝日の夕刊にそういうものが出てきておる。これは私は大へんなことだと思います。あなたはたびたび日経連の総会その他においでに一なっておりますが、こういうことはやはり今声を大にしてあの経営者の耳に入れる必要があります。この前の日経連の総会では、過去十五年間は労働者の時代であった、しかしこれからの十年間は資本家の時代、経営者の時代であるということを、五十嵐さんであったか、だれか演説しているのです。それならば、経営者の時代になるならば、ますます暴力革命をやるような経営者じゃ困るのです。労働者の子弟は、労働組合の幹部の子供はおれの会社には雇わぬというような、そういうしりの穴の小さい経営者じゃ因るのです。こういう点、あなたは一体どうお考えになっておりますか。また資本家の教育をどうお考えになっておりますか。
  144. 松野頼三

    松野国務大臣 日経連及び経営者の会議に出ました私のあいさつは、いずれにしましても速記がとってありますからお読みいただけばわかりますが、私は、経営者についての反省をずいぶん露骨に審っております。かりに言うなれば、組合に対する偏見は持つな、あるいは、組合がいまだに組織されておらないところには、早く正当な組合を作れ、こういうことを私は相当露骨に言っている方で、私のあいさつですからあるいは新聞に出なかったかもしれませんが、経営者陣には私は相当露骨な話をしております。  なお、栗木社長には八月にお目にかかりましたが、そのときに、これはここでは公表をはばかりますが、滝井さんが言われるならば申し上げますが、相当なことを私は御本人に申し上げております。個人的なことですから発表いたしておりませんが、相当なことを申し上げております。今日三井の問題は労使間の——今日は微妙なときでありますから私はあえてなるべく言葉を慎んでおりますけれども、私自身としては相当なことを実は申し上げております。ただいまの新聞記事を見ましても、その記事その通りの発言ならば、私も不穏当な言葉だと存じますし、なお、大牟田出身だから雇わないというようなことは、これはやはり教育が足らないのであって、同時にこれはお互いに反省させるべき問題があるのじゃなかろうかと思います。これは私の郷里にも非常に近いところでありまして私もよくあそこの気風を知っているものでありますから、そういうふうな偏見を日本国内に置くということは大へんなことだ、これは非常に注意し なければならない、大牟田出身たるがゆえにというような差別を置くということは非常な誤りだ、ほかの理由があれば別だが、しかし、そういうふうなことを言われることは、大牟田でも、熊本でも、福岡でも、九州人は同じような憤りを感ずるのではなかろうか、このように、私は問題を別な意味で非常に深刻に考えております。私たちがいかにも資本家にばかりどうとかというような、そういうことは労働省としては断じてございません。いつも会議に出ますると、ややもすれば使用者の方から、労働省は組合の方ばかり向いているとおしかりをこうむることもたくさんあるのですが、私たちはそういう言葉に耳をかしながら、公平な立場で組合というものの健全な発展の方向に努力して、それを使用者に教育するということが労働省の務めでなければならない、こう考えております。いろいろな極端な例はどちらにもあります。しかし、今のようなお話は私も非常に心配していることで、この三井の問題は、労使の問題でただいま非常に微妙なときでありますから、願わくは私の口からは言わせないでいただきたい、こう思っておりますし、中山委員長がせっかくあっせんに乗り出されつつあるときでありますから、いろいろなことよりも、大局的な一日も早い円満解決を願うわけでありますから、いろいろな問題は別の意味一つ十分警戒すべきものだ、こう考えております。
  145. 滝井義高

    ○滝井委員 問題は、やはり力を背景にして強硬に押してくるということになれば、こちらもやはり歯には歯、目には目という形になるわけであります。だから、今あなたの言われるように、事態が非常に微妙な段階のときにこういう記事が出るだけでも問題だと思うのです。従って、私どももこの問題はこれ以上申し上げませんが、しかしやはり大臣は個人的に栗木社長にも相当強いことを申したということでありますが、今後機会があればこういう点についても一つ十分自重していただいて、そうして堂々と団体交渉の中で、フェア・プレーで、お互いに労働法のルールを守りながらやる方向にぜひ御勧奨いただくことを要望して私の質問を終わります。どうもありがとうございました。
  146. 永山忠則

    永山委員長 本日はこれにて散会いたします。     午後五時八分散会