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足鹿小委員 調査をしておるということでありますが、この際、私は、現地の
鍋田干拓の生き残り者であり、移住前に長野県で村長をしておって、引率して
鍋田干拓に入ってきた関勝夫という人に直接聞いた話を一応申し上げて、御参考に供しておきたいと思うのです。
その話を要約しますと、先ほ
ども話しましたように、堤防は前面からくずれて崩壊したという。
当局は、高潮あるいは波浪に基づく水がオーバーフローして、堤防を越えて、内側の土砂をすくったので倒れたと言っておる。この辺の食い違いは非常に大きいわけです。これは
委員長にもしばしば提言をしており、理事の諸君にも善処を願っておるのですが、当
委員会も現地を一ぺん
調査する必要がある、または参考人を呼んでその意見を求める必要があるということを私は力説しておるのであります。当面の対策に追われておるために実現しておりませんが、これはまた日にちをかけて、当
委員会が今後も取り上げていかなければならぬ問題だと思っております。その際、堤防の前面の基定と上部に亀裂があったと関さんは言っております。それから、この延長七キロですか、八キロですか、その大部分の堤防工事のコンクリートの中には、無底管が全部入らなければならぬことに設計上なっておった。ところが、その無底管のないところが五百メートルもあったと言っておるのです。これは非常に重要なことであろうと私は思うのです。賠償法によりますと、設置または管理上の瑕疵があった場合に問題になる、こういうふうに
規定されておるのでありますが、堤防は水にのまれてしまい、その当時おった人は死んでしまい、その瑕疵があったかなかったかということの立証がつかないままに——また、訴訟の手続等になりますと、経費も非常に要し、また
めんどうだ。当面生きていくのが精一ぱいの干拓地の入植者たちは、そのいとまがない。そういう事情から、ややもすればこの種のものはうやむやになってしまう、これは私は非常に遺憾なことではないかと思います。むしろこれは行政管理庁あたりが、行政管理査察の立場から
調査をし、そしてこれは公の立場からも立証に必要な
資料を出していくということも必要ではないか。そういう点から、私は益谷長官にも御出席を願って聞いたところが、本年の三月から八月にかけて、去年の伊豆
災害と、今度の伊勢湾
台風の問題に関連しまして、名古屋
地方行政監理局は、水や風のくる前に、伊勢湾の水防体系等について詳細な膨大な
調査をし、そしてこれをまとめて、
当局へ
資料として警告を発しておる事実を明らかにされております。そういう点から見ましても、瑕疵がなかったとは私は言えないと思う。現に国の機関である行政管理庁が、去年の伊豆
災害の前車のくつがえったのを見て、それに基づいて警告を発し、水防体制の整備充実のために、いろいろな欠陥を
指摘して、警告を発しておる、そういう点から見ましても、設置または管理上瑕疵がなかったとはどうも言えないように思う。現地生き残り者の話から、あるいは名古屋
地方行政管理庁が発した警告の内容から、いろいろな点から見て……。ただ、これを現実に
法律に照らして立証していくということになりますと、訴訟費用の免除の法的手続もあるそうでありまして、どれか一人は、その手続もあわせて行なっておるやに聞いております。法務
当局がそれを奨励するというわけにも参りますまいが、少なくとも、こういう場合には、この瑕疵を立証して、
被害者が賠償の提訴を
一つでも二つでも出しておるわけでありますから、これを
機会に、行政管理庁等とも連絡をいたされまして、もう少し突っ込んだ
検討を法務
当局としてやられる必要があるのではないか、こういうふうに思うわけであります。
調査を命じ、現在いろいろと準備をしておるということでありますが、私は、その御参考までにこのことを
一つ申し上げたい。
次に、今までこういうことに対して事例があったかなかったかということについて伺っておきたいのですが、私の知っておるのでは、
昭和二十六年に京都の平和池の決壊事件というのがある。これは死者が七十数名あり、全壊の戸数が三十一戸、半壊が十二戸で、三十町歩の田畑が流れて、京都府と原告との間に示談が成立をいたしまして、一人当たり十五万円ですか、何か示談の慰謝料が出てケリがついておる。これは国家賠償法に基づいて提訴はしたが、京都府がまあま
あというところでおさまえたらしい。当時の金で十五万円と聞いております。このように、一応それが動機となって、何らかの形で話のついた事例もあるわけでありますが、ほかにもそういう事例がありますかどうか。私が今平和池問題について述べたことは、間違っておるかどうか。それに対するあなた方の
研究された結果はどうか。ほかの事例、平和池事件の経過、それとの関連において、この
鍋田干拓その他の前線堤防の決壊からくる多くの犠牲者を出した件は、国家賠償法の適用の精神に基づいて
救済の方途を
考え、これを実施すべきものではないかと私は思うわけです。そういう見地から
お尋ねをしておきたい。